約 1,857,858 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/292.html
総括所見:ナウル(第1回・2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/NRU/CO/1(2016年10月28日)/第73会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年9月13日および14日に開かれた第2134回および第2135回会合(CRC/C/SR.2134 and 2135参照)においてナウルの第1回報告書(CRC/C/NRU/1)を検討し、2016年9月30日に開かれた第2160回会合において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルな部門横断型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書の批准またはこれへの加入を歓迎する。 (a) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(2011年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約(2012年)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2013年)。 (d) 拷問等禁止条約の選択議定書(2013年)。 4.委員会はまた、以下の立法措置がとられたことも歓迎する。 (a) 子どもの保護および福祉法(2016年)。 (b) 犯罪法(2016年)。 (c) 教育(改正)法(2015年)。 (d) サイバー犯罪法(2015年)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置に評価の意とともに留意する。 (a) 国家障害政策の採択(2015年)。 (b) 子ども保護サービス局の設置(2015年)。 (c) 国家若者政策(2009~2015年)の採択。 (d) ナウル・ジェンダー国別計画の採択(2014年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 立法 6.委員会は、条約の規定との一致および調和化を確保するために現行法の包括的に向けた努力が行なわれていることを歓迎するとともに、子どもの保護および福祉法の採択(2016年)および家族保護法の提案に、肯定的対応として留意する。委員会はまた、憲法でとくに子どもの権利を保障する手段として憲法再検討プロセスを再開しようとする努力も歓迎するものである。しかしながら委員会は、一部の法律について条約との調和を図る必要性が残っていることを懸念するものである。 7.委員会は、締約国に対し、条約の国内法化を確保するとともに、国内法と条約の原則および規定との調和を図る努力を引き続き行なうよう、奨励する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 関連の法律に掲げられている規定が子どもの保護および福祉法(2016年)と調和することを確保するための措置をとること。 (b) 家族保護法の成案の採択を、優先的事項として速やかに進めること。 (c) 国レベルで採択されるすべての新法を対象として子どもの権利影響評価を導入すること。 (d) 憲法再検討プロセスを再開し、かつ、子どもの権利が憲法でとくに保障されることを確保するための措置をとること。 包括的政策 8.委員会は、子どもの権利をとくに促進しかつ保護するための包括的政策が定められていないことを懸念する。委員会は、子ども保護サービス局の職員が子どもの保護および福祉に関する訓練を受けておらずまたは正式な経験を欠いていることを示す報告があることに、懸念とともに留意するものである。 9.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利を促進しかつ保護するための包括的政策を策定し、かつ、当該政策が十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられることを確保すること。 (b) 子どもの保護政策を策定し、かつその実施の有効性を定期的に評価するため、子どもを含むすべての関係者との協議を確保すること。 (c) 新たな子ども保護サービス局に十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (d) 社会福祉部門を対象とした能力構築戦略(内務省およびその諸部局を対象とした、子どものウェルビーイング、福祉および保護に関する教育・能力開発プログラムを含む)を発展させること。 調整 10.委員会は、部門を横断する形でならびに国レベルおよび地方レベルで、条約の実施に関連するすべての活動の調整が不十分であることを懸念する。 11.委員会は、締約国が、部門を横断する形でならびに国レベルおよび地方レベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための効果的機構を発展させ、かつ必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう勧告する。 資源配分 12.2015~2016年度の予算配分で条約の規定を実施するための対応がとられていることには留意しながらも、委員会は、編成過程において、関連部門および関連機関における子どものための予算配分額(指標および追跡システムを含む)ならびに被害を受けやすい状況に置かれた子どものための予算配分額が定められていないことを懸念するものである。 13.子どもの権利実現のための公共予算(第4条)に関する一般的意見19号(2016年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利の視点を含んだ予算編成手続を確立するとともに、関連部門および関連機関における、子どものための明確な配分額(具体的指標および追跡システムを含む)を定めること。 (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価する機構を設置すること。 (c) 公的対話、とくに子どもたちとの対話を通じて、かつ公的機関(地方レベルの公的機関を含む)に説明責任を適正に履行させる目的で、透明なかつ参加型の予算編成を確保すること。 (d) 子どもの予算上のニーズに関する包括的評価を実施するとともに、十分な予算資源を配分し、社会部門に配分される予算を増額し、子どもの権利に関連する指標に基づいて格差に対応し、かつ、とくに、教育および社会的援助の分野における配分額を十分な水準まで増やすこと。 データ収集 14.委員会は、体系的なデータ収集機構が存在しないために、子ども(とくに障害のある子ども、周縁化された状況で暮らしている子どもならびに子どもの庇護希望者および難民)に関する細分化されたデータが欠乏していることを懸念する。 15.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約のすべての分野を網羅するためにデータ収集システムを速やかに改善するとともに、データがとくに年齢、性別、障害、民族、国民的出身および社会経済的背景ごとに細分化されることを確保すること。 (b) データおよび指標が関連省庁の間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保すること。 (c) 統計的情報の定義、収集および普及を行なうに際し、「人権指標:測定・実施ガイド」(Human Rights Indicators A Guide to Measurement and Implementation)と題する国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れること。 独立の監視 16.委員会は、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがって国内人権機関を設置するべきである旨の、2015年の普遍的定期審査の際に行なわれた勧告を締約国が受け入れたこと(オンブズマン事務所の設置の可能性を含む)に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、これまでのところ何ら進捗がないこと、および、子どもの権利を監視する具体的機構が整備されていないことを懸念するものである。 17.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、子どもによる苦情を子どもに配慮したやり方で受理し、調査しかつこれに対応し、被害者のプライバシーおよび保護を確保し、かつ被害者のためのモニタリング、フォローアップおよび検証の活動を行なうことを任務とする、子どもの権利の監視のための独立機構を速やかに設置するよう勧告する。委員会はまた、当該機構に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分することも勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 18.委員会は、裁判所における子どもの権利について地域的状況に合わせた資料の開発とともに、条約に関連する意識啓発プログラムおよび研修の発展が進められていることに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、これらの資料にアクセスできず、かつ条約に掲げられた自己の権利を知らない、被害を受けやすい状況に置かれた子ども(とくに子どもの庇護希望者および難民)を対象とした、条約についての研修および意識啓発が不十分であることを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(法執行官、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者、ソーシャルワーカー、メディア専門職などおよび他の必要な集団)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を実施するための努力を強化すること。 (b) 寛容および多様性を強調しながら、あらゆる段階の学校カリキュラムに条約の原則および規定に関する教育を含めること。 (c) 子どもの権利に関する情報の普及への子ども参加に特段の注意を払うこと。 (d) 子どもの保護担当官および子どもの福祉を担当するその他の官吏を対象とした研修・業務マニュアルを開発すること。 (e) メディアに対し、子どもの権利に対する配慮を確保し、かつ、番組等の制作の際に被害を受けやすい状況に置かれた子どものことが含まれるようにするよう、奨励すること。 (f) 非政府組織その他の関係者と緊密に協力しながら、条約、その原則および規定に関する意識を国全体で高めるための努力を強化すること。 市民社会 20.委員会は、国際的な市民社会組織およびジャーナリストが、とくに地域対応センター(Regional Processing Center)における子どもの庇護希望者および難民への対応との関連で、子どもの権利に関して調査する能力を制約されていることを深刻に懸念する。委員会はまた、一部の国際的組織が脅迫を受けているという報告、および、同国を訪問するジャーナリストを対象とする返金不可の査証申請手数料が200米ドルから8000米ドルに引き上げられたという報告があることも懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの権利の擁護者およびその活動を正当に承認するための即時的かつ具体的な措置をとること。 (b) 国際的および国内的な非政府組織およびジャーナリストとの信頼および協力の環境を構築すること。 (c) 子どもの権利、とくに障害のある子どもおよび周縁化された状況で暮らしている子ども(子どもの庇護希望者および難民など)の権利に関連する政策、計画、プログラムおよび進展の計画、実施、監視および評価に市民社会の関与を得ること。 B.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 22.締約国の憲法で、とくに人種、出身地および政治的意見に基づく差別の禁止が定められていることには留意しながらも、委員会は、あらゆる分野、とくに水、衛生設備、教育、保健ケアおよび十分な住居との関連で、子どもの庇護希望者および難民に対する差別が根強く存在することを深く懸念する。委員会は、障害のある子どもも、とくに学校環境において差別に直面していることに、懸念とともに留意するものである。 23.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 条約第2条にしたがい、憲法第3条を改正して国籍その他の地位に基づく差別への言及を含めること。 (b) 子どもの庇護希望者および難民ならびに障害のある子どもに対する社会の否定的態度に対処するための公衆教育キャンペーンを強化する等の手段により、差別を禁止する関連現行法の全面的実施を確保すること。 (c) すべての子どもが十分な食料、水、衛生設備、良質な教育、十分な保健ケアおよび住居にアクセスできることを確保すること。 (d) 子どもの庇護希望者および難民に対して特段の注意を払いながら、子どもに対する差別事案に対応するための具体的機構を子ども保護サービス局の主導のもとで導入するとともに、そのための十分な人的資源、技術的資源および財源が利用可能とされることを確保すること。 子どもの最善の利益 24.ナウル法の一部分野で子どもの最善の利益の原則が支持されていることには留意しながらも、委員会は、当該権利を確保するための包括的保障が何ら存在しないことを遺憾に思う。とくに委員会は、子どもの庇護希望者および難民が、その最善の利益を考慮されないまま、締約国によってオーストラリアから受け入れられているという報告があることに、深甚な懸念を表明するものである。 25.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 権限のある立場にあるすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続を発展させ、かつそのための基準を定めること。 (b) 子どもの最善の利益の原則が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策およびプログラムにおいて適切に統合され、かつ一貫した解釈および適用の対象とされることを確保するための努力を強化すること。 生命、生存および発達に対する権利 26.委員会は、1990年以降、乳児および子どもの死亡率が全般的に低下してきていることを、肯定的傾向として歓迎する。しかしながら委員会は、ナウル国民ではない子どもおよび先住民族であるナウル国民の子どもの5歳未満児死亡率が高いことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの庇護希望者および難民が、地域対応センターにおける狭小な、湿度の高い、かつ生命への危険がある環境下での生活のために、相当の身体的リスクおよび発達上のリスクに直面しているということがあることも懸念する。委員会はさらに、このような環境下で長期間過ごすことは子どもの精神的および身体的ウェルビーイングにとって有害であり、かつ、そのために11歳という低年齢の子どもまで自殺未遂およびその他の形態の自傷行為を行なってきたことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 十分な保健ケアおよび栄養へのアクセスが、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた家族、とくにナウル国民でない家族および先住民族であるナウル国民の家族ならびに庇護希望者および難民である家族に対しても保障されることを確保するための努力を直ちに強化すること。 (b) 子どもの庇護希望者および難民に関連するすべての環境が、その健康的な身体的および精神的発達ならびに生存に資するものとなることを確保すること。 (c) 地域対応センターで働く職員が、とくに被害を受けやすい状況に置かれた子どもおよび自傷行為を行なう潜在的おそれがある子どもを特定するための十分な訓練を受けることを確保するとともに、事案が特定された場合に、適切なサービス機関への十分な付託およびフォローアップが行なわれることを確保するためのシステムを発展させること。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、新たな子ども保護サービス局内で、虐待の被害を受けた子どもの意見がその生活の手配に関する選択との関連で考慮されることを確保するための進展が見られることに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、全般的に、とくに家庭、学校、社会環境および司法現場における伝統的な慣行および文化的態度のために、自己の意見を自由に表明する子どもたちの権利の全面的実現が阻害されていることを懸念するものである。 29.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国に対し、家庭、学校、裁判所および子どもに関わるあらゆる関連の行政上その他の手続において子どもの意見が正当に考慮されることを、とくに学校における具体的な学習活動の確立および一般的な意識啓発を通じて確保するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもが公共政策に影響を及ぼせるようにする意味のある空間の創設を強化するため、関連の専門家と連携しながら取り組みを進めることも奨励するものである。 C.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(29、第34条、第37条(a)および第39条) あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 30.委員会は、とくに新たな子ども保護サービス局、子どもの保護および福祉法(2016年)、ならびに、家族間暴力および子どもの保護に対応するための統合的ケースマネジメントモデルの創設を通じて、子どもの保護制度を発展させるために締約国が行なってきた努力に留意する。このような進展にもかかわらず、委員会は以下のことを深く懸念するものである。 (a) 子どもに対する性暴力の訴えに関するナウル警察の捜査能力が限定されていること。 (b) 捜査その他の手続において救済の保証が行なわれておらず、かつ子どもにやさしいアプローチが欠けていること。 (c) 関連機関間の協力および情報共有が十分に行なわれておらず、かつ苦情のフォローアップも不十分であること。 (d) モス・レビュー(Moss Review)で明らかにされたとおり、地域対応センターで生活している子どもの庇護希望者および難民に対して非人道的なかつ品位を傷つける取扱い(身体的、心理的および性的虐待を含む)が行なわれていること、ならびに、島の周辺の難民居留地で暮らしている家族に対して脅迫、性的攻撃、虐待および暴力の脅しが行なわれており、いずれもその子どもの心理的ウェルビーイングに有害な影響を与えているという報告があること。 (e) ナウル到着前にトラウマを経験していた子どもの身体的および精神的回復のための援助が利用可能とされていないこと、ならびに、到着後、拘禁のような環境下で長期間暮らすことの影響により、自殺未遂、焼身自殺、自傷行為および抑うつの事案が多数発生していること。 31.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもがあらゆる形態の暴力および虐待(性的攻撃を含む)から保護されることを保障するための措置を直ちに確立すること。 (b) 不当な取扱いの被害を受けた子どもに対してケアおよびリハビリテーションのためのプログラムが用意されることをかくほとともに、いかなる種類の再被害も回避されることを確保すること。 (c) すべての関連の専門家を対象とした、子どもに対する暴力についての義務的研修講座を開設するとともに、関連部門で働く専門家に対し、子どもの虐待の通報を義務化すること。 (d) 関連省庁間で効率的な協力、調整およびデータ共有を確保するとともに、子どもに対する暴力に関わる支配的態度を変革する手段として公衆意識啓発キャンペーンを発展させ、かつゼロトレランスに向けた取り組みを開始すること。 (e) 子どもの庇護希望者および難民に対する不当な取扱い、虐待および性的攻撃のあらゆる訴えを独立の立場から捜査するための即時的措置をとり、これらの子どもが安全なかつ子どもにやさしい苦情申立て手続にアクセスできることを確保し、かつ、子どもに対する暴力の事案について適正な捜査および加害者への制裁を確保する目的で警察および司法機関の捜査能力を強化すること。 (f) 子どもの庇護希望者および難民に対し、その子どもが経験しているトラウマおよびその他の精神保健上の問題に対処するための十全かつ十分な支援および治療が与えられることを確保する目的で、精神保健上の問題を有する子どもを専門とする要員の能力を高め、かつその増員を図ること。 (g) 以上の問題に対応していく手段として、国際連合児童基金(ユニセフ)および国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)の技術的協力を求めること。 虐待およびネグレクト 32.委員会は、以下のことを深刻に懸念する。 (a) 締約国から提供された情報によれば、女子の約30%が15歳までに性的虐待の被害を受けていること。 (b) 強姦およびその他の性的暴行事件における量刑が、法律で定められた最高刑をはるかに下回っていること。 (c) 暴力の被害を受けた子どもまたは暴力を受けるおそれがある子どもの事案に対応するための調整機構が設けられていないこと。 (d) 虐待された子どものための避難施設およびカウンセリングサービスが不十分であること。 (e) 家庭内虐待を私事または家族の問題とみなす社会的態度が蔓延していること。 33.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対する性的虐待のあらゆる事案を優先的に捜査するとともに、加害者が迅速かつ速やかに裁判にかけられることを確保すること。 (b) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置するとともに、そのような暴力の規模、原因および性質に関する包括的評価を実施すること。 (c) 子ども保護サービス局が暴力および虐待の根本的原因に対処する長期的プログラムを実施できるようにするため、同局に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (d) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得ることならびにこれらの者に研修および支援を行なうこと等の手段により、家族間暴力、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対応することを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 (e) 児童虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略を策定する目的で、子どもたちの関与を得ながら、意識啓発および教育のためのプログラムおよびキャンペーンを発展させること。 体罰 34.学校および刑事施設における体罰を禁止する規定が教育法(2011年、第37条)および矯正役務法(2009年、第33条)に設けられていることには肯定的対応として留意しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 最近の法改正にもかかわらず、体罰が、子どものしつけおよび規律のための手段として社会で引き続き広く受け入れられており、かつ、家庭、代替的養護および保育の場面で全面的に禁じられていないこと。 (b) 学校および刑事施設において体罰が明示的に禁じられているにもかかわらず、拘禁のような環境(地域対応センターを含む)で暮らしている子どもに関して行なわれるようになった報告で、体罰が引き続き行なわれていることが示唆されてること。 (c) 一部の法規定、とくに犯罪法(2016年)第78条が、子育てにおける体罰の使用を正当化する根拠として解釈される可能性があること。 35.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) あらゆる場面における体罰を法律で明示的に禁止すること。 (b) 子育てにおける体罰の使用を正当化する根拠として解釈されうるすべての法規定、とくに犯罪法(2016年)第78条を廃止すること。 (c) 体罰の禁止規定が十分に監視されかつ執行されることを確保すること。 (d) 意識啓発キャンペーンを通じて、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進すること。 (e) 犯罪者が権限のある行政機関および司法機関のもとに連れてこられることを確保すること。 D.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境を奪われた子ども 36.親族養育がナウル文化の不可欠な一部になっていることは評価しながらも、委員会は、拡大家族の構成員による代替的養護に措置された子どもの地位および状況の監視が不十分であることを懸念する。 37.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書参照)に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭を基盤とする子どもの養護を監視するための法的枠組みを定め、かつ、家族のもとに留まることができない子どものための里親養育制度を確立すること。 (b) 家族および代替的家族養護者に対し、あらゆる必要なサービスおよび支援を提供すること。 (c) 利用可能なあらゆる形態の代替的養護に関して質の高い基準を定めるとともに、拡大家族による代替的養護の取決めに関して行なわれるいかなる決定においても子どもの意見を考慮すること。 (d) 拡大家族による代替的養護への子どもの措置に関する定期的再審査を確保するとともに、子どもの不当な取扱いを通報し、監視しかつ救済するための回路を提供する等の手段により、当該措置における養護の質を監視すること。 (e) 介入のための機構を確立し、かつ、拡大家族内の非公式な養子縁組システムの監視能力を強化すること。 (f) 親からの子どもの分離が、それが子どもの最善の利益にかない、かつ子どもの保護またはウェルビーイングのために必要な場合に、最後の手段としてのみ行なわれることを確保すること。 養子縁組 38.かつてナウル国民以外の者によるいかなる養子縁組も禁止していた子どもの養子縁組令(1965年)第9条が2015年5月に廃止されたことには肯定的対応として留意資ながらも、委員会は、公式な養子縁組制度との関連で用意されている登録および介入のための機構について利用可能な情報がないことを懸念する。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この慣行の広がりを理解し、かつ十分な政策および措置を採択する目的で、養子縁組に関する国家的研究の実施およびデータ収集の強化を図ること。 (b) 養子縁組を登録し、規制しかつ監視するための機構を確立すること。 (c) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年5月29日)の批准を検討すること。 E.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 40.この点に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 障害のある人へのサービスの提供または公共建築物、公共空間およびあらゆるサービス提供地域へのアクセスの保障を義務づける明示的な法規定が定められていないこと。 (b) 知的障害および心理社会的障害のある子どものインクルージョンが、訓練を受けた専門家(言語療法士、精神保健専門家および心理学者を含む)の不足のために依然として満足のできる水準に達していないこと。 (c) 社会的態度を原因として、親が、子どもの最善の利益を考慮することなく、インクルーシブ教育を実施している学校に障害のある子どもを通学させないという決定をすることがあり、そのため障害のある子どもの大多数がエイブル・ディゼイブル・センター〔特別学校の名称〕に通っていること。 41.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、 障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、かつ、障害のある子どものインクルージョンを確保するための包括的戦略を定めるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 障害のあるすべての人が、他の者との平等を基礎として、公共建築物、公共空間およびあらゆるサービス提供地域にアクセスできることを確保するための法規定を定めること。 (b) 余暇活動、コミュニティを基盤とするケアおよび合理的配慮のなされた社会住宅の供給など、公的生活のあらゆる分野における障害のある子ども(知的障害および心理社会的障害のある子どもを含む)の全面的インクルージョンを促進するための措置を優先的にとること。 (c) 障害のあるすべてのこども(知的障害および心理社会的障害のある子どもを含む)に対し、親の同意から独立した、普通学校におけるインクルーシブ教育への権利を保障するとともに、普通学校において資格のある者による援助が利用できることを確保すること。 (d) 学習障害のある子どもに対して個別支援および適正な配慮を提供する統合学級で活動する、専門の教員および専門家を養成しかつ配置すること。 (e) 障害のある子どもに関するデータ収集を強化するとともに、条約ならびに現行の法律および政策の実施の有効性に関する研究および分析を実施すること。 (f) 障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘うための意識啓発キャンペーンを実施すること。 健康および保健サービス 42.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 新生児および母親のための出産直後のケアが限られた形でしか提供されておらず、かつ家庭訪問政策が整えられていないこと。 (b) 5歳未満児の予防可能な死亡および罹病を減少させかつ解消するための政策およびプログラムの実施において、人権を基盤とするアプローチがとられていないこと。 (c) 完全母乳育児政策が定められていないことから、哺乳瓶による人工栄養が同国で非常に一般的になっていること。 (d) 子どもの肥満が高水準にあり、かつ、その結果として子どもの健康に影響が生じていること。 (e) 子どもの庇護希望者および難民(その多くは過密かつ非衛生的な環境における生活のために慢性的病態を有している)に対して保健サービスが提供されておらず、かつ、地域対応センターにおける主な医療提供者に小児科医が含まれていないこと。 43.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、かつ持続可能な開発目標のターゲット3.2(2030年までに新生児および5歳未満児の予防可能な死亡に終止符を打つこと)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 新生児および母親のための十分な産後ケアを確保するために十分な人的資源および財源を配分するとともに、保健相談員を任命して家庭訪問を実施させること。 (b) 5歳未満児の予防可能な死亡および罹病を削減しかつ解消するための政策およびプログラムの実施に対する人権基盤型アプローチの適用に関するOHCHRの技術的指針(A/HRC/27/31)を実施しかつ適用すること。 (c) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施するとともに、包括的キャンペーンを通じて母乳育児の保護、促進および支援を図るための国家的プログラムを策定すること。母親に対し、病院、診療所およびコミュニティにおけるカウンセリング体制を通じて適切な支援が提供されるべきであり、また「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブが全国で実施されるべきである。 (d) 世帯栄養水準、とくに新生児および5歳未満児の栄養状態ならびにビタミンおよび微量栄養素の十分な摂取について評価するための調査を実施すること。 (e) 健康的な食料の選択肢が負担可能な価格で利用可能とされることを確保するための政策を策定するとともに、子どもにとっての健康的な食習慣の利点を広報するための意識啓発キャンペーンを強化すること。 (f) すべての子ども、とくに社会的および経済的に不利な立場に置かれた集団の子ども(子どもの庇護希望者および難民ならびに障害のある子どもを含む)を対象として、良質なプライマリーヘルスケア、専門的保健ケアおよび歯科ケアが提供され、かつ公平にアクセス可能とされることを確保すること。 (g) 適切な資格を有する医療スタッフを任命し、地域対応センターおよび難民居留地における子どもの全般的健康状態のモニタリングを行なわせること。 精神保健 44.委員会は、資格のある専門家(とくに児童精神医学者および心理学者)が存在せず、かつ、すべての子どもを対象とする、コミュニティを基盤とする精神保健サービスが提供されていないことを懸念する。 45.委員会は、締約国が、コミュニティを基盤とする精神保健サービスが容易に利用できるようにし、かつ、学校、家庭およびケアセンターにおける予防活動を強化するよう勧告する。 思春期の健康 46.委員会は、10代の妊娠率が相対的に高いことを懸念する。委員会はまた、包括的な国家的プログラムが定められておらず、かつ機関間の調整も行なわれていないことから、若年妊娠予防のための戦略的かつ持続可能な対応を発展させていく可能性が阻害されていることも懸念するものである。加えて、委員会は、子どもおよび若者の間でタバコおよびアルコールの濫用が著しく多く行なわれていることに、懸念とともに留意する。 47.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族計画および避妊法、若年妊娠の危険性ならびに性感染症の予防および治療に関する情報を含む、セクシュアル/リプロダクティブヘルスについての包括的かつ年齢にふさわしい教育を提供すること。 (b) 思春期の女子および男子を対象とした秘密が守られるカウンセリングおよび現代的避妊法を含む、セクシュアル/リプロダクティブヘルスサービスを発展させること。 (c) 子どもおよび青少年によるタバコおよびアルコールの使用に対し、とくに、子どもおよび青少年に対し、このような物質の濫用に関する正確かつ客観的な情報ならびにライフスキル教育を提供することにより、直ちに対応すること。 生活水準 48.貧困および社会的排除に対処するために締約国が行なっている努力には肯定的対応として留意しながらも、委員会は以下のことを深く懸念する。 (a) 周縁化されたコミュニティの子どもが貧困の影響を不均衡に受けている一方、難民家族および障害のある子どものいる家族が多面的な貧困を経験する危険性の高い状況に置かれていること。 (b) 住宅環境が不十分であること(過密状態を含む)、および、住宅が必要な法的基準を満たすことを確保するための適正な規制が行なわれていないために子どものウェルビーイングに悪影響が生じていること。 (c) とくに、湿度の高い地域対応センターにおいて、清潔かつ安全な飲料水および衛生設備を含む基礎的サービスへのアクセスが限られており、かつ、1人が1日ごとに摂取できる水の量に制限があり、子どもおよびその家族が脱水症状およびその他の深刻な健康上の問題に直面しやすい状況に置かれている旨の報告があること。 49.委員会は、持続可能な開発目標のターゲット1.3(すべての者を対象とした、全国的に適切な社会保護制度および社会保護措置の実施)への注意を喚起するとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの貧困削減のための戦略および措置の強化を目的とする焦点化された協議を、家族および子どもたち(被害を受けやすい状況に置かれた子どもたちを含む)ならびに市民社会組織との間で持つことを検討すること。 (b) 貧困線以下の生活を送っている子ども(とくにひとり親家族、3人以上の子どもがいる家族および障害のある子どもがいる家族の子ども)に提供される支援を強化するとともに、社会的保護措置において、人間にふさわしい生活水準を子どもに保障するためにかかる現実の費用(健康、栄養のある食事、教育、十分な住居、水および衛生設備に対する子どもの権利に関連する支出を含む)が対象とされることを確保すること。 (c) 子ども(子どもの難民および障害のある子どもならびにその家族を含む)の特別なニーズを考慮に入れながら、住宅に関する法律、政策およびプログラムを見直すこと。 (d) 清潔な水および衛生設備へのアクセスをすべての子どもに保障するための即時的措置をとるとともに、地域対応センターで課されているいかなる水の摂取制限も直ちに解除されること、ならびに、衛生設備の見直しおよび改善が行なわれることを確保すること。 F.教育、余暇および文化的活動(第28条~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 50.委員会は、教育向上のために締約国が行なっている努力を歓迎する。委員会はまた、締約国が、職業訓練の促進を目的とした若者政策の策定を考えていることにも、肯定的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを依然として深刻に懸念する。 (a) 怠学対策がとられているにもかかわらず、不登校の水準が高く、かつ、学校からの早期離脱が依然として問題になってること。 (b) 子どもの難民および庇護希望者がフルタイムの教育に十分にアクセスできておらず、かつ、当初は通学していた子どもも、友人および教員による言葉の虐待および身体的虐待を理由としてすぐに脱落する傾向があること。 51.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、かつ持続可能な開発目標のターゲット4.1および4.2(すべての女子および男子が、無償の、公平かつ良質な初等中等教育を修了し、かつ乳幼児期の良質な発達、ケアおよび就学前教育にアクセスできることを2030年までに確保すること)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもを対象として、就学前教育、中等教育および高等教育を含む良質な教育へのアクセスを向上させるための努力を、さらに強化すること。 (b) 中退率を削減するためのプログラムを策定し、かつ、そのようなプログラムの監視および評価を実施すること。 (c) 子どもの庇護希望者が、同国の他のすべての子どもとの平等を基礎として、教育に対する権利を全面的に享受できることを確保すること。 (d) すべての子どもに対するいじめおよび暴力を防止するための学校内キャンペーンを開始すること。 G.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 52.締約国がUNHCRと協力していることは歓迎しながらも、委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚える。 (a) 庇護事案の処理に関してナウルとオーストラリアとの間で交わされた了解覚書において、全般的に子どもの最善の利益が考慮されていないこと。 (b) 子どもの庇護希望者および難民の事案が、子どもの最善の利益の原則にしたがって迅速に処理されていないこと。 (c) 地域対応センターの生活環境が、子どもの庇護希望者および難民の双方にとって将来の見通しが不確実であることとあいまって、精神保健上の問題を生起させかつ悪化させていて、絶望感およびしばしば自殺念慮を生じさせていること。 (d) 子どもの難民またはその家族を対象としたいかなる統合プログラムも実施されていないこと。 (e) 庇護希望者(保護者のいない子どもを含む)に対して無償の法的援助を確保するための行政上または財政上の体制が整備されていないこと。 (f) 地元のナウル人コミュニティからの敵意およびヘイトスピーチが広がっているという報告があること。 53.委員会は、締約国に対し、以下の措置を直ちにとるよう勧告する。 (a) オーストラリアからの子どもの庇護希望者または難民の移送に関連するすべての決定および取決めにおいて、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。 (b) 条約第10条第1項にしたがい、保護者のいない子どもの庇護希望者および難民が関わる事案を、恒久的解決策を特定する手段のひとつとして積極的、人道的かつ迅速なやり方で処理すること。 (c) 子どもの庇護希望者およびその家族を地域対応センター外に直ちに移送する作業を優先的に進めるとともに、難民(とくに子どもおよびその家族)を対象として、これらの者が合法的滞在を認められ、かつ就労その他の機会に合理的にアクセスできることを確保する目的で恒久的かつ持続可能な第三国定住の選択肢を設けること。 (d) 条約第6条、第22条および第37条、ならびに、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)にのっとり、国際的保護を必要とする子どもに対し、庇護制度へのアクセスの便宜を図ること。 (e) 身体的および精神的健康のための保健サービス、教育および警察・司法部門等において、子どもに対するサービス(とくに保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもに対する無償の法的援助の提供を含む)に関わる付託およびケース管理のための包括的枠組みを策定すること。 (f) 庇護希望者および難民(とくに子ども)に対するヘイトスピーチに対抗するためのキャンペーンを発展させること。 (g) 難民の地位に関する条約(1951年)、無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討すること。 性的搾取および人身取引 54.締約国が子どもの保護に関する政策および法律の増進および向上を図る措置をとっていることは認知しながらも、委員会は、出入国管理法(2014年)で子どもの売買、取引および誘拐がとくに犯罪とされていないこと、ならびに、売買、取引または誘拐の対象とされた子どもの保護、リハビリテーションおよび支援のために設けられている指針および措置が不十分であることを懸念する。 55.委員会は、締約国が、子どもの売買、取引および誘拐に関連する具体的犯罪について定義し、かつこれらの犯罪に対して十分に厳しい刑罰を定めた、包括的な人身取引対策法を採択するよう勧告する。 少年司法の運営 56.委員会は、全般的に、少年司法の運営に関する情報が締約国から提供されなかったことを遺憾に思う。しかしながら委員会は、子どもの権利に関する適切な訓練を受けた専門の判事および職員が存在しないこと、ならびに、法律に抵触した子どもに対応する際の、承認された少年司法原則の適用が不十分であることを懸念するものである。委員会はまた、締約国の矯正機関が著しく対応能力を欠いており、国際的に承認された少年司法基準を満たしていないことを示す報告があることについても懸念する。委員会はさらに、子どもを含む被拘禁者の不当な取扱いの報告があること、および、罪を犯した子どものための独立した拘禁施設が存在しないことを懸念するものである。 57.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らして、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的にしたがったものとするよう促す。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対応する裁判官が少年司法基準に関する適切な研修を受けることを確保すること。 (b) 法律に抵触した子どもに対し、手続の早い段階で、かつ法的手続全体を通じて、独立の有資格者による法的援助が提供されることを確保すること。 (c) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (d) 拘禁が避けられないときは、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。 (e) 少年司法に関する機関横断パネルが開発した技術的援助ツールを活用すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 58.委員会は、子どもの虐待および子どもに対する性的暴行をともなう事案であって訴追段階まで進んだものの多くが、金銭的困難および家族の評判が傷つけられる危険性に対するおそれから被害者によって取り下げられていることに、懸念とともに留意する。 59.委員会は、締約国が、社会的スティグマを取り除く手段のひとつとして、性的虐待およびネグレクトの事案の通報を子どもたちに奨励する意識啓発キャンペーンを発展させるよう勧告する。委員会はまた、再被害およびトラウマを防止する目的で、事情聴取が適切なやり方で、被疑者のいない場で、かつ十分な訓練を受けた警察官その他のスタッフによって実施されることを確保するための、子どもに配慮した手続および機構を確立することも勧告するものである。委員会はさらに、司法機関、保護観察担当官、被告人弁護士および司法手続に関与するその他のスタッフが研修を受けて子どもにやさしい手続への配慮を身につけるようにすることを勧告する。 H.通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准 60.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する条約の選択議定書の批准を検討するとともに、その全面的実施を確保するための適切な機構が整備されることを確保するよう勧告する。 I.国際人権文書の批准 61.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない以下の中核的人権文書を批准するよう勧告する。 (a) 市民的および政治的権利に関する国際規約。 (b) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約。 (c) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書。 (d) 市民的および政治的権利に関する国際規約の第1および第2選択議定書。 (e) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 62.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国の第1回定期報告書およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 63.委員会は、締約国に対し、第2回~第6回統合定期報告書を2021年8月25日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 64.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月22日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/82.html
総括所見:フィリピン(第3~4回・2009年) 第1回(1995年)/第2回(2005年)OPAC(2008年)/OPSC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/PHL/CO/3-4(2009年10月22日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年9月15日に開かれた第1428回および第1429回会合(CRC/C/SR.1428 and 1429参照) においてフィリピンの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/PHL/3-4)を検討し、2009年10月2日に開かれた第1452回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/PHL/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答が提出されたことにより、フィリピンにおける子どもの状況についての理解を向上させることができたことを歓迎する。 3.委員会は、さまざまな省庁の専門家も参加したハイレベルな締約国代表団との、開かれたかつ建設的な対話を評価する。 4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して2008年6月6日に採択された委員会の総括所見(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、以下のものをはじめとして、報告対象期間中に見られた、子どもの権利の保護および促進を目的とする多くの積極的進展を歓迎する。 (a) 女性大憲章(共和国法第9710号)が制定されたこと(2009年8月)。 (b) 包括的な少年司法福祉制度を確立し、かつ法務省に少年司法福祉評議会を創設した少年司法福祉法(共和国法第9344号)およびその実施細則(IRR)が採択されたこと(2006年)。 (c) 死刑を科すことを禁じた共和国法第9346号が制定されたこと(2006年)。 (d) 武力紛争および避難に焦点を当てながら子どもの福祉を促進することを任務とする、武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会(SC CAACD)が子ども福祉評議会内に創設されたこと(2006年2月)。 6.委員会は、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書が批准されたこと(2007年11月20日)および障害のある人の権利に関する条約が批准されたこと(2008年4月15日)を歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、フィリピンが群島国であること、および、このことが、同国が自然災害(とくにタイフーン)の被害をとくに受けやすいこととあいまって、子ども、とくに農村部および遠隔地に住んでいる子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施することに対する客観的な困難および課題を生み出していることを、認識する。 8.委員会は、フィリピン南部のミンダナオ地方で集中的に行なわれてきた十数年にわたる武力紛争が、子どもの権利の実現も含む締約国の全般的人権状況に悪影響を及ぼしてきており、かついまなお及ぼし続けていることを遺憾に思う。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 9.委員会は、締約国の第2回定期報告書の検討(2005年)後に表明されたいくつかの懸念および勧告、とくに少年司法の運営に関わる勧告について対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、勧告の多くが不十分にまたは部分的にしか対応されていないことを遺憾に思うものである。 10.委員会は、締約国に対し、部分的にもしくは不十分にしかまたはまったく実施されていないこれまでの勧告(性的同意に関する最低年齢、婚外子差別、児童ポルノ、拷問の禁止、ならびに、家庭、学校、官民の施設および代替的養護制度における体罰その他のあらゆる形態の暴力の禁止に関するものを含む)に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、次回定期報告書において、この総括所見に掲げられた勧告の十分なフォローアップを行なうようにも促すものである。 立法 11.締約国で多くの立法上の提案が行なわれてきたことには留意しながらも、委員会は、体罰の禁止、拷問の禁止および婚外子の地位に関する法律が存在しないことを依然として懸念する。委員会はまた、締約国で相当に先進的な一般的法的枠組みが採用されていることにも留意するものの、子どもに関する法律、とくに1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の実施および法的執行が行なわれていないことを依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、子どもの権利の保護を向上させる目的で国内法の全面的かつ効果的実施を確保し、かつ、自国の法律を条約の規定および原則と全面的に調和させるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。後者の目的のための手段には、体罰禁止法(法案第682号)、拷問を犯罪化する法案第5846号、児童ポルノ禁止法(法案第2317号)ならびに制定法上の強姦年齢および性的虐待行為法(法案第2172号)を迅速に採択することも含まれる。委員会はまた、締約国が、婚外子の地位に対応するための法律を制定することも勧告するものである。 調整 13.委員会は、子ども福祉評議会(CWC)の権限が2009年6月8日の大統領令第806号で確認されたこと、および、CWCが、フィリピンにおいて、子どもに関するあらゆる法律、政策、プログラムおよび措置の実施および執行を調整する権限を与えられた、子どもについての中心的機関横断型機関であり続けていることに留意する。委員会は、大統領人権委員会(PHRC)の存在、および、フィリピンにおける人権の実施に関わるその活動にも留意するものである。委員会は、バランガイ、自治体、都市および州のレベルに子ども保護地方評議会(LPCP)を設置することによって、地方レベルで実施が進められていないことに締約国が対処しようとしていること、および、子どもの福祉地方小委員会(RSCWC)が17か所に設置されて国の政府と地方政府部局とを結びつけていることを歓迎する。しかしながら委員会は、CWC、LCPCおよびRSCWCに人的資源および財源が配分されていないことから、これらの機構の効果的運用が妨げられている可能性があることに、懸念を表明するものである。 14.委員会は、締約国に対し、子どものための努力の一貫性、とりわけ既存の機関(とくにCWCおよびPHRC)間の効果的調整を、それぞれの具体的地位および能力を考慮しながら向上させるための措置を継続しかつ強化するよう、促す。委員会は、締約国が、子どもに関する主たる調整機関としてのCWCの権能を強化するとともに、とくにCWCならびにLCPCおよびRSCWCに対し、これらの機構の効果的運用を確保するための十分な人的資源、財源および技術的資源が配分されることを確保するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、全領域が網羅されることを達成するため、残りのバランガイ、自治体、都市および州にLCPCを設置することも奨励する。 国家的行動計画 15.委員会は、締約国が「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」の実施のための国家行動計画(NPAC)を策定したことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、NPACの地方版の策定を促進し、かつ地方開発計画の主流に子どもの権利を位置づけるための第6次および第7次国別プログラム(CPC 6/7)を実施するため、締約国がユニセフに技術的援助を求めたことも評価するものである。しかしながら委員会は、現行の資源および機構が、とくに地方レベルにおけるNPACの実施、監視および評価のためには不十分であることを、依然として懸念する。 16.委員会は、締約国が、国家予算においてNPACの実施のための予算線ならびに関連のあらゆる部門別および地域別プログラム全体の予算線を定めかつ明確に特定することにより、NPACが主流に位置づけられることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が〔これらの計画の〕全面的実施を確保するための十分なフォローアップ機構を設置することとともに、部門および地域の枠を超えて、達成された進展を定期的に評価しかつ存在しうる欠陥を明らかにして是正措置をとることを目的とした評価および監視のための機構がこれらの計画に組み込まれるべきことも、勧告するものである。委員会はさらに、すべての自治体、都市および州の地方行政単位(LGU)に対してNPACおよび条約を実施するための十分な資源が提供されるべきこと、ならびに、これが開かれた、協議を中心とする参加型の方法で行なわれるべきことを勧告する。さらに委員会は、締約国が、NPACの監視および評価に関して、より積極的に非政府組織の参加を得るよう勧告するものである。 独立の監視 17.委員会は、フィリピン人権委員会(CHRP)内に設置された子どもの権利センターが、子どもからの苦情を受理する権限を有する子どもオンブズマンとして機能していることに評価の意とともに留意するものの、同センターが、これらの活動のための十分な人的資源および財源または十分な法的根拠を有していないことを懸念する。 18.子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を参照しつつ、委員会は、子どもの権利センターがその権限を効果的にかつ独立して行使できることを確保するため、締約国が、CHRPを通じ、同センターに対して十分な人的資源および財源を提供するよう勧告する。委員会はまた、子どもの権利の保護および促進を強化するため、締約国が、議会による承認待ちとなっているCHRP憲章の迅速な通過を支持するようにも勧告するものである。 資源配分 19.委員会は、低所得家庭を対象とし、かつミレニアム開発目標(MDG)および「子どもにふさわしい世界」の目標(WFFC)を達成することを目的とした、貧困削減のためのさまざまな戦略および取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための社会サービス、保険サービスおよび教育に対する予算配分が、国家予算に占める割合の点からは減少していることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が国家予算の30%以上を債務元利払いに配分していること、および、ここ数年、債務元利払いに配分される予算割合が上昇していることに対する深い懸念をあらためて表明する。委員会はまた、子どもの権利(教育および健康に対する権利を含む)の促進および保護を効果的に向上させるための、すでに限られている資源の配分に対し、汚職が悪影響を及ぼしている可能性があることも留意するものである。 20.委員会は、締約国に対し、国および地方のレベルで子どものための予算配分を優先させかつ増額するよう促す。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (b) 不利な立場に置かれたまたはとくに脆弱な立場に置かれた子どもおよび積極的な社会的措置(出生登録など)を必要とする可能性がある状況に置かれた子どもに関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (c) 締約国で現在進められている地方分権化のプロセスにおいて、公の対話および(とくに子どもの)参加を通じ、かつ地方当局の適正な説明責任の面で、透明かつ参加型の予算策定を確保すること。 (d) 透明性および廉潔性を志向する政策を強化すること等も通じ、社会のあらゆる部門における汚職を防止しかつ撤廃するための行動を増進させること。 (e) とくにユニセフおよび世界銀行に対し、これらの目的のための技術的援助を求めること。 21.委員会は、世界でもっとも鉱物資源が豊かな国のひとつであり、かつ外国投資を求める中所得経済国であるフィリピンが、1995年鉱業法が社会的におよび環境面で及ぼす影響、とくに子どもの状況に対する影響にいまなお対処していないことに、懸念とともに留意する。同法は、最高100%外資により所有されている企業に対し、規制を受けることなく、鉱物、石油およびガスの大規模な探査、開発および利用に投資することを認めたものである。委員会はとくに、家族が採掘地域から立ち退かされ、先住民族が先祖伝来の土地を奪われ、かつきわめて汚染度の高い技術が用いられているために子どもが深刻な影響を受けているという、非政府組織および国際機関からの報告に懸念を覚える。 22.外国投資の必要性には留意しながらも、委員会は、同国における規制の枠組みに、国際的企業および国内企業が子どもの権利の尊重および充足について意識しかつそれに参加するようにさせる、社会的責任および環境保護の要件が含まれるべきことを勧告する。 データ収集 23.委員会は、データ収集システムを改善しようとする締約国の努力を認知するとともに、とくに、国レベルの主要な政府機関と連携したスバイバイ・バータ〔子ども観察〕監視システム(SBMS)がCWCによって開発されたこと、子どもの権利の主要7分野について143の指標が開発されたこと、および、「フィリピン子ども白書」が発行されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、地域別、ジェンダー別および年齢別に細分化されたデータが存在せず、かつ、特別な保護を必要とする子ども、とくに極度の貧困下で暮らしている子ども、虐待およびネグレクトの対象とされている子ども、法律に触れた子どもならびにマイノリティおよび先住民族集団に属する子どもについてのデータが不十分であることに対する懸念を、あらためて繰り返すものである。 24.委員会は、締約国が、既存のデータ収集システムをさらに拡大するとともに、データが地域別、ジェンダー別および年齢別に細分化されること、ならびに、データが更新されかつそこに特別な保護を必要とする子どもについての情報も含まれることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、「フィリピン子ども白書」が国全体で広く普及されかつアクセス可能とされることを確保するよう勧告するとともに、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する際の基盤として、かつ、条約およびその2つの選択議定書を実施するための政策立案に役立てる目的で、当該白書を活用するよう奨励するものである。その際、このプロセスにおいて子どもが意見を聴かれかつ協議の対象とされることを確保することが求められる。 普及、研修および意識啓発 25.委員会は、地方レベルにおけるものも含め、条約に関する知識を促進しかつ強化するために締約国が行なっているさまざまな取り組みを歓迎するものの、その意識啓発キャンペーンおよび研修活動が、農村部および遠隔地を含む同国のすべての場所および子どもとともにまたは子どものために働くすべての者とを対象とするには不十分であることを、懸念する。 26.委員会は、締約国が、意識啓発キャンペーンを引き続き強化するとともに、当該キャンペーンにおいて、先住民族コミュニティおよびマイノリティに属する子どもを含む農村部および遠隔地が対象とされることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、このような普及および意識啓発に関してメディアと緊密に協働するとともに、メディアに対し、子どもの権利(プライバシーに対する子どもの権利を含む)を尊重しながら子どもについての取り上げ方を向上させるためにいっそう子ども志向の記事および番組等を発展させ、かつメディア番組に対する子ども自身の参加を促進するよう奨励することも、勧告するものである。委員会は、締約国が、この点に関わるメディア向けの倫理綱領の採択を促進するよう勧告する。 27.委員会はさらに、締約国が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての者(たとえば検察官、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子ども自身)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての継続的研修プログラムを引き続き開発しかつ強化するよう、勧告する。 市民社会との協力 28.委員会は、締約国が、条約の促進ならびに子どものためのサービスおよびプログラムの提供に関して多数の国内的および国際的非政府組織と連携していることを歓迎するとともに、政府がとる行動においてこれらのINGOおよびNGOがしばしば協議の対象とされていることに留意する。委員会は、締約国に対し、国内的および国際的非政府組織を含む市民社会との協力を引き続き強化するとともに、子どもの権利の促進および保護に関わるあらゆる分野で幅広い協力を確保するよう、奨励するものである。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.子どもに対する差別を解消するために締約国が行なっている努力(「女子計画」ならびに先住民族およびマイノリティの子どもを対象とした多くのプログラムを通じてのものも含む)には留意しながらも、委員会は、多くの子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもが、とりわけ社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して差別に直面していることに対する懸念を、あらためて表明する。委員会はまた、主として女子および女性に対する社会的態度を理由として、事実上の差別がいまなお女子に影響を及ぼしており、かつその権利の全面的享受を阻害していることも、依然として懸念するものである。委員会はさらに、「非嫡出」として分類されることおよび相続の権利を制限されることのような差別的慣行にいまなお直面している婚外子の状況に対し、締約国がまだ対応をとっていないことに懸念を表明する。 30.委員会は、締約国に対し、子どもに対する差別を撤廃するための努力を強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 脆弱な立場に置かれたすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別(複合的形態の差別を含む)に対処する、かつ、女子、貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもに対する社会の差別的な態度と闘うことを目的とした、包括的戦略を採択しかつ実施すること。 (b) 女子が平等な取り扱いおよび自己の権利の全面的享受に対する権利を有することを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が「女子計画」を主流に位置づけ、かつ特に地方レベルにおけるその実施を強化するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、差別的慣行の被害を受けた女子が司法にアクセスできることを確保するよう勧告するものである。 (c) とくに婚外子を「非嫡出」子として分類することを廃止し、かつ相続に対する権利を含む婚外子の平等な権利を承認することによって平等な取り扱いに対する権利を婚外子に確保するため、国内法を改正すること。 31.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れた情報が、締約国の報告書に記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、次回の定期報告書で、このような具体的情報が、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する情報とともに提供されることを要請する。 生命、生存および発達に対する権利 32.委員会は、国内武力紛争を背景とするものも含む子どもの生命権侵害の態様について、あらためて重大な懸念を表明する。委員会は、締約国が超法規的処刑を「きわめて重大な懸念」として認知していることに留意するとともに、超法規的、即決または恣意的処刑に関する特別報告者その他の情報源が強調しているように超法規的殺害(子どもの殺害を含む)の事案が報告されており、かつ、このような超法規的殺害がフィリピン軍、フィリピン国家警察およびダバオで活動する死の部隊によって行なわれていることに、深い懸念を表明するものである。委員会は、メロ委員会および〔フィリピン国家警察〕迫害特別捜査班の設置ならびに救済令状(Writ of Amparo)規則および情報提出令状(Writ of Habeas Data)規則適用法の公布(2007年10月)のような、締約国が行なったいくつかの積極的取り組みには留意するものの、訴追件数が少ないことおよび加害者を裁判にかけたことによる成果が存在しないことに重大な懸念を覚える。 33.前回の総括所見をあらためて繰り返し、かつ条約第6条その他の条項を参照しながら、委員会は、締約国に対し、とくに子どもの超法規的殺害を防止することならびに殺害が疑われる事件を徹底的に捜査しかつ加害者を裁判にかけることを目的としたあらゆる必要な措置をとることにより、生命、生存および発達に対する子どもの権利の保護を強化するためにあらゆる努力を行なうよう促す。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、CHRPに対し、その任務を遂行しかつ報告された事件を調査するための十分な財源を提供することも勧告するものである。委員会は、次回の定期報告書に、苦情申立て、捜査、訴追および有罪判決に関するデータも含む具体的情報を記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、子ども参加に関する国家的枠組み(NFCP)を採択したこと、ならびに、サングニアン・カバタアン(SK)〔若者村評議会〕および学校における生徒評議会等も通じ、地方および国の双方のレベルで子どもの関与を進めていることなど、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっているさまざまな取り組みおよび努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもが自分たちの権利の保護および充足に関して意見を表明しかつ勧告を作成できるようにするため、委員会に提出する締約国報告書の起草過程でCWCの主催により行なわれた、子どもおよび子ども団体との協議会合(2007年)も歓迎するものである。しかしながら委員会は、子ども、とくにマイノリティおよび先住民族に属する子どもが意見を聴かれることは締約国ではいまなお一般的に困難であり、かつ、自己に影響を与える手続において意見を聴かれる子どもの権利が制限される可能性があることを、懸念するものである。 35.条約第12条に照らし、かつ意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国に対し、子どもの意見の尊重および自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を、家庭、学校、施設、裁判所および行政機関において、立法等も通じて促進しかつその便宜を図るための努力を、さらに強化するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国が、マイノリティおよび先住民族の子どもに特段の注意を払うよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 36.委員会は、出生登録プロジェクト(BRP)の実施、草の根レベルでの登録を容易にするためのバランガイ民事登録制度(BCRS)の設置、および、バランガイ民事登録担当者を対象とした民事登録法および移動出生登録手続に関する研修をはじめ、出生登録を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されていない子どもが同国に260万人存在すること(そのほとんどはミンダナオに住むイスラム教徒および先住民族の子どもである)に、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、出生登録が無償ではなく、かつ登録遅延の場合は罰金を払わなければならないことも懸念する。 37.委員会は、締約国が、すべての子どもを対象とする、効率的かつ無償の出生登録制度を発展させるための努力を追求しかつ強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、草の根レベルで民事登録制度をよりアクセスしやすいものとするため、BCRSを強化するよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、登録所に十分な財源、人的資源その他の資源が配分されることを確保するとともに、ミンダナオに住むイスラム教徒および先住民族の子どもにとくに注意しながら住民(同国の最遠隔地に住む人々を含む)が登録に容易にアクセスできることを確保するため、移動サービスを含むさらなる措置をとることも促す。委員会はさらに、締約国が、期限後の登録を奨励しかつ無償で行なえるようにするための機構を設けるよう勧告するものである。 名前、国籍およびアイデンティティ 38.委員会は、親の就労国のフィリピン大使館および領事館、多数の政府機関、ならびに、親を対象として出生登録の必要性および価値に関する意識啓発会合を実施している「移住労働者その他のフィリピン人海外就労者リソースセンター」(MWCFRC)を通じ、国外で生まれた、登録されておらずかつ身分証明書類を有していないフィリピン人移住労働者の子どもの登録を向上させるために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されておらずかつ身分証明書類を有していない子どもが多いこと、および、このような子どもが未登録を理由として名前および国籍に対する権利を奪われる可能性があることを、依然として懸念するものである。 39.前回の勧告をあらためて繰り返しながら、委員会は、締約国に対し、親がその在留資格に関わらず国外で生まれた子どもを登録できるようにするためさらに便宜を図るよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、登録されておらず正規の身分証明書類を有しない子どもが、フィリピンへの帰国と同時に、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスを認められることを確保するようにも勧告するものである。 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰 40.委員会は、2006年少年司法福祉法第5条(a)が少年司法の運営における拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは処罰の行為を禁じていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、締約国がこのような犯罪をあらゆる場面で禁ずる法律を制定していないことを、遺憾に思うものである。拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰に関する特別報告者の最近の報告書およびその他の情報源を参照しながら、委員会は、子ども、とくに拘禁されている子どもの拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取り扱いの報告件数が多数にのぼることを深く懸念する。委員会は、現行法は子どもに対して拷問および不当な取り扱いからの十分な水準の保護を提供していないという見解をとるものである。さらに、委員会は、訴追および有罪判決に至った事件が少ないことを懸念する。 41.条約第37条(a)に照らし、委員会は、締約国に対し、拷問および他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは処罰の行為をあらゆる場面で禁止するため、拷問禁止法案第5846号を迅速に通過させるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、拷問が行なわれたというすべての訴えが効果的かつ迅速に捜査されること、加害者が訴追されかつ処罰されること、ならびに、被害を受けた子どもに対して十分な賠償が行なわれることを確保するよう、求めるものである。さらに、委員会は、締約国が、拷問禁止条約の選択議定書の批准を検討するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの拷問、非人道的なおよび(または)品位を傷つける取り扱いが公的機関または関連機関に報告された件数、そのような行為の加害者のうち裁判所による刑の言い渡しを受けた者の人数および言い渡された刑の性質に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 体罰 42.あらゆる現場における体罰を禁止する体罰禁止法案が現在議論されていることには留意しながらも、委員会は、家庭における体罰が法律で明示的に禁じられておらず、かつ体罰に関する規定が子ども・若者福祉法に含まれていない旨の懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、社会、とくに家庭における体罰が蔓延していることに対しても懸念を表明するとともに、前回の総括所見(CRC/C/15/Add.25、パラ42)で委員会が勧告した、この問題に関する包括的研究が行なわれていないことを遺憾に思うものである。 43.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭、学校、子どもの代替的養護、職場および拘禁場所を含むあらゆる場面における体罰を法律で明示的に禁止するため、体罰禁止法案を通過させること。 (b) このような慣行の有害な影響について親および家族、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうこと、ならびに、子どもの尊厳と一致する方法による、かつ条約(とくに第28条2項)にしたがった、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律の活用を促進することを目的とした、意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) さまざまな場面における体罰の性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (d) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を正当に考慮すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 44.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究〔の勧告〕を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を撤廃するため、以下の勧告に特段の注意を払いながら、同研究の勧告の実施に優先的に取り組むこと。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 (ii) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての者の能力を増進すること。 (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報の制度およびサービスを創設すること。 (v) 説明責任を確保するとともに、加害者の責任を問われない状態に終止符を打つこと。 (vi) 国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、実施すること。 (c) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながらおよびとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 45.委員会は、自国の法律上、司法上および行政上の枠組みを改善しようとする締約国の努力に留意する。しかしながら委員会は、移民流出数が多くかつ増加していること、ならびに、国外で働く母親または父親が自国に残していく子どもが多くかつ増加していることを理由とする、家族状況の崩壊および変化に懸念を覚えるものである。委員会はさらに、自国に残される子どもの人数に関する体系的データがないこと、および、女性の移民が増加している状況またはその影響を評価する包括的研究が実施されていないことを遺憾に思う。 46.移住労働者委員会が採択した総括所見(CMW/C/PHL/CO/1、パラ45-46)を想起しながら、委員会は、締約国が、移民家族の子どもの保護およびその権利の全面的享受を、とくにコミュニティ支援プログラム、教育広報キャンペーンおよび学校プログラムを通じて確保するための十分な戦略を策定する目的で、これらの子どもの状況に関する包括的研究を行なうよう勧告する。委員会は、移住労働者委員会(パラ20)とともに、締約国が、細分化されたデータも含む「移民に関する共有政府情報システム」(SGISM)を設立するよう勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 47.委員会は、施設に措置される子どもが多いこと、入所型養護を受けている子どもの身体的および情緒的虐待の事例が報告されていること、ならびに、代替的養護に関する良質なケア基準および監視が存在しないことを、依然として懸念する。 48.委員会は、締約国に対し、子どもの脱施設化を進展させかつこのような子どもに家庭的環境を提供するため、里親擁護法案第263号を優先的課題として採択しかつ実施するよう求める。委員会はまた、締約国が、里親養護または入所型養護に措置されている子どものケア基準およびその状況の監視を増進させることも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、「親のケアを受けていない子ども」に関する一般的討議(2005年)の際に委員会が行なった勧告を正当に考慮するよう勧告する。 養子縁組 49.委員会は、2009年3月に採択された共和国法第9523号によれば、子どもの養子縁組が法的に可能であることを証明する権限が社会福祉開発省に与えられていることに留意する。しかしながら委員会は、養子縁組手続の費用負担を理由として、養子縁組手続を回避するため、「出生の偽装」または実親ではない者が行なう不正登録を利用する者が多いという報告に懸念を覚えるものである。委員会はまた、国際養子縁組に関する枠組みおよび条件についての情報、ならびに、受け入れ国ならびに養子とされた子どものジェンダーおよび年齢に関する細分化されたデータが存在しないことも懸念する。 50.委員会は、締約国に対し、データ収集に関わる点も含め、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を全面的に遵守するよう求める。委員会はまた、すべての養子縁組が子どもの権利条約の原則および規定ならびに他の関連の国際基準に全面的にしたがって、かつ子どもの最善の利益にかなうように行なわれることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、いわゆる「偽装出生」を防止しかつこれと闘うため、このような慣行の規模に関する意識啓発キャンペーンを市民社会の関与も得ながら実施することおよび責任者を処罰すること等も通じ、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する枠組みおよび条件についての情報、ならびに、受け入れ国ならびに養子とされた子どものジェンダーおよび年齢に関する細分化されたデータを次回の定期報告書で提供するよう、要請するものである。 虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱い 51.委員会は、女性およびその子どもに対する暴力禁止法(共和国法第9262号)等も通じ、子どもの虐待および不当な取り扱いに対処するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら、締約国報告書でも認知されているように、委員会は、子どもの身体的虐待、ネグレクトおよび性的虐待も含むドメスティック・バイオレンスの件数が増加しており、かつ、同法が制定されたにも関わらず、家庭における暴力はほとんど通報されないままとなっていることに、深い懸念を表明するものである。委員会はまた、宗教上の制度の枠組みのなかで子どもの性的虐待が行なわれているという訴えがあることについての懸念をあらためて繰り返す。1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の改正には留意しながらも、委員会はさらに、ドメスティック・バイオレンスおよび子どもの虐待の事案が子どもにやさしい手続のもとで調査されていないこと、虐待された子どもがそのような手続で被害を受ける可能性があること、および、証人である子どもが脅迫から保護されていないことを懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 女性およびその子どもに対する暴力禁止法の実施および普及を増進させかつ強化すること。 (b) 虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱いを含むドメスティック・バイオレンスについて包括的研究を実施すること。 (c) 宗教上の制度における性的虐待の規模について調査すること等により、このような虐待を防止しかつこのような虐待から子どもを保護するために効果的措置をとること。 (d) 加害者を裁判にかけるため、児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について、子どもにやさしい手続のもとで時宜を得た十分な調査を行なうとともに、虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことを確保するためにこのような手続において子どもに支援サービスを提供し、かつ、証人である子どもを脅迫から保護するために現行の証人保護プログラムを強化すること。 (e) 虐待およびネグレクトを防止する目的で、虐待を行なう親のための家族支援サービスが提供されることを確保すること。 (f) 暴力および虐待の被害を受けた子どもが十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保すること。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 53.締約国が2008年に障害のある人の権利に関する条約を批准したことは歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもが社会サービス、教育サービス、保健サービスその他のサービスに平等にアクセスできることを確保するための包括的政策が存在しないことに、懸念を表明する。委員会はまた、多くの原因(極度の貧困の結果として生ずる栄養不良および非衛生的な生活条件を含む)により、フィリピンの子どもの障害発生率が高いことも依然として懸念するものである。委員会はさらに、これらの子どもが事実上の差別に直面し続けており、かつこれらの子どもの役割が社会で不可視化されていることを懸念する。 54.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を強化するよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための包括的政策を策定しかつ実施するとともに、障害のある子どもが社会サービス、教育サービス、保健サービスその他のサービスに平等にアクセスできることを確保するために現行法を執行すること。 (b) 障害のある子どもに関する既存のデータベースおよびモニタリング・システムを強化すること。 (c) 障害のある子どもおよびその家族構成員が、プログラムの計画、実施および評価に参加することを確保すること。 (d) 障害(精神障害を含む)のあるすべての子どもにプログラムおよびサービスを提供し、かつこれらのサービスに対して十分な人的資源および財源が与えられることを確保するため、あらゆる努力を行なうこと。 (e) 障害のある子どもの権利および特別なニーズに関する講習の感受性を強化し、かつ社会への障害児のインクルージョンを奨励するための意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (f) 教員、ソーシャルワーカー、医療従事者、準医療従事者および関連要員のような、障害のある子どもとともに働く専門的職員を対象として研修を行なうこと。 (g) 条約第23条、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)および障害のある人の権利に関する条約を考慮すること。 健康および保健サービス 55.締約国の「健康に関する国家的目標(2005~2010年)」、乳児死亡率の低下(出生1000件あたり43(1990年)から23(2007年)へ)および妊産婦死亡率の若干の低下(出生10万件あたり172(1997年)から167(2005年)へ)には留意しながらも、委員会は、乳児および妊産婦の死亡率が高いことならびに死亡率に関わる進展の達成について地域格差があることを依然として懸念する。委員会はまた、新生児死亡および流産の登録および報告に欠陥があることも依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもの間で低栄養(低体重、低身長および痩せ)が生じており、かつ同国の遠隔地において良質な保健サービスへの子どものアクセスが全般的に限られていることに対する懸念をあらためて表明する。加えて、委員会は、援助を必要とする子どもおよび青少年のための精神保健サービスおよび関連サービスの問題に関する情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思うものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施するため、引き続き、保健部門に適切な資源が配分されることを確保し、ならびに子どもの健康状態を向上させるための包括的政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。 (b) 同国の農村部および遠隔地に特段の注意を払うことにより、産前産後の良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障するための措置(助産師および伝統的出産立会人を対象とする研修プログラムも含む)を強化しかつ実施すること。 (c) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率を低下させるため、引き続きあらゆる必要な措置をとること。 (d) 新生児死亡および流産について、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ28)を想起し、締約国が、とくに遠隔地において民事登録官へのアクセスを容易にするよう勧告する。 (e) 十分な栄養のある食料および補給剤ならびに幼少期からの健康的習慣に関する教育を提供することにより、低栄養の問題に効果的に対処すること。 (f) 精神的健康の促進、一般的に見られる精神保健上の問題ならびに外来および入院のサービスを含む、子どもおよび青少年の精神保健に関する包括的政策を策定しかつ実施すること。 (g) この問題に関して、とくにWHO、ユニセフおよび国連人口基金(UNFPA)と引き続き協力し、かつその技術的援助を引き続き求めること。 母乳育児 57.母乳育児を奨励するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、母乳育児の実践率が低いことに対する懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、母性休暇期間が不十分であること、および、労働者が母性休暇の取得を権利として認められる基準が公共部門と民間部門で異なることも、懸念するものである。 58.委員会は、締約国が、ミルク・コード(大統領令第51号)および2007年RIRR(改正ミルク・コード実施細則)の効果的実施を確保するために必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ59(f))を想起し、締約国が、生後6か月間は母乳のみを与え、その後はこれを修正して適切な乳児食を与えることをさらに奨励するとともに、健康的な摂食習慣の教育および促進を通じて子どもの栄養状態を改善するための措置をとるよう、勧告するものである。委員会はまた、母性保護に関するILO第183号条約(2000年)にしたがい、推奨されている14週間の母性休暇を与えることによって公共部門および民間部門で働く女性を平等に支援するため、母性保護に関する法律を見直すことも求める。 環境衛生 59.締約国がとった立法上その他の措置には留意しながらも、委員会は、大気および水の汚染ならびに環境悪化のような環境問題が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることに対する懸念をあらためて表明する。委員会はまた、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関して地域格差があることも、依然として懸念するものである。締約国がとりわけ自然災害の被害を受けやすいことには留意しながらも、委員会は、そのような災害の影響を受けた子どもを保護しかつ援助するために用意されているいずれかの行動計画または戦略についての情報が存在しないことを懸念する。 60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 環境関連の国内法の実施を強化することにより、汚染および環境悪化を低減させるための努力を引き続き強化すること。 (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。 (c) とくに農村部およびスラムにおいて安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させるために効果的措置をとること。 (d) 自然災害の影響を受けた子どもの援助および保護に関する行動計画または戦略を策定しかつ実施すること。 思春期の健康 61.委員会は、リプロダクティブヘルスに関するサービスおよび情報が不十分であること、避妊手段使用率が低いこと(現代的家族計画手法を利用している女性は2006年で36%)、ならびに、人工的避妊手段へのアクセスが困難であることから、締約国における高い10代妊娠率および妊産婦の死亡が助長されていることを、依然として深刻に懸念する。委員会は、女性大憲章の制定を歓迎するものの、女性および女子のリプロダクティブライツを促進するための効果的措置がとられておらず、かつ特定の信条および宗教的価値観によってその履行が妨げられていることを、依然としてとくに懸念するものである。同国のHIV感染率が低いことには留意しながらも、委員会は、フィリピン国家AIDS評議会(PNAC)が、HIV/AIDSの状況の特徴について、潜在化しておりかつ増加しつつあると説明していることに懸念とともに留意し、かつ、フィリピンの青少年の間でHIV/AIDSおよび性感染症(STI)に関する意識水準が不十分であることを依然として懸念する。 62.委員会は、締約国に対し、思春期の健康の分野でより子どもにやさしいプログラムおよびサービスを設置し、かつ、とくにこの問題に関する研究を通じて思春期の健康に関する有効なデータを入手するための努力を強化するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 議会による承認待ちのリプロダクティブヘルス法案を緊急に採択するとともに、条約に掲げられた子どもおよび青少年の権利が同法案に反映されることを確保すること。 (b) 10代の妊娠を予防する目的で、リプロダクティブヘルスに関する相談へのアクセスを確保し、かつ、正確かつ客観的な情報ならびに文化的配慮のあるサービスをすべての青少年に提供すること。このための手段には、幅広い種類の避妊手段にいかなる制限もなく広くアクセスできるようにすること、ならびに、家族計画に関する知識および意識を向上させることが含まれる。 (c) 若年妊娠の予防、STIおよび家族計画に焦点を当てた、女子および男子を対象とする公式・非公式の性教育を強化すること。 (d) HIV/AIDSに関する意識啓発キャンペーンを強化するとともに、子どもがHIVおよびSTIへの感染のしやすさに対処しかつこれを低減させるためのライフスキルを身につけられるよう、学校内外で、子どもを対象とした、HIV/AIDSに関する年齢にふさわしい教育および情報にアクセスできることを確保すること。 (e) とくにWHO、国連エイズ合同計画およびUNFPAの技術的協力を求めること。 (f) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)および子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を正当に考慮すること。 生活水準 63.委員会は、パンタウィド・パミーリャン・ピリピーノ・プログラム(4Ps)、飢餓緩和促進プログラム(AHMP)、条件付現金給付(CCT)プログラムおよび締約国報告書パラ49で説明されているその他の取り組み、ならびに、ユニセフの「子どもの貧困および格差に関する世界的研究」への締約国の参加をはじめ、貧困と闘うために締約国が行なっているさまざまな取り組みおよび措置を歓迎する。しかしながら委員会は、国の貧困線以下の世帯で暮らしている子どもが多いこと、とくに、子どもおよびその家族が農村部の貧困を逃れようとして都市で極度の貧困状況に直面していることについての懸念をあらためて繰り返すものである。委員会はまた、異なる地域間の生活水準レベルおよび基礎的サービスへのアクセスに関して大きな格差が存在することにも、懸念を表明する。 64.委員会は、締約国が、包括的かつ全国的な貧困削減戦略を策定しおよび実施し、ならびに、子どもがどこに住んでいるかに関わらず、貧困下で暮らしている子ども(とくに極度の貧困に直面している子ども)の生活水準を向上させるためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ67)をあらためて繰り返す。委員会は、当該戦略には子どもの参加が含まれるべきであることを強調するものである。委員会はまた、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた子どもおよびその家族に物的援助および支援を提供する努力を強化することも要請する。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 65.委員会は、就学率および学校修了率の悪化に関わる近年の傾向、ならびに、とくに初等学校の第1年次および第2年次で脱落する子どもまたは学校に行かない子どもの人数の増加に、懸念とともに留意する。委員会はまた、脆弱な立場に置かれた一部の集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、働く子ども、武力紛争下にある子ども、先住民族の子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)が教育に平等にアクセスできていないことも、依然として懸念するものである。委員会は、教室の席、教科書およびその他の学用品の数が不十分であることも含め、とくに遠隔地のバランガイにおいて就学のための便益が貧弱であることに対する懸念を、あらためて表明する。さらに委員会は、幼児ケアを受けている子どもの人数が若干増加している一方で、就園率がいまなお非常に低いこと(3~4歳児の13%)、および、この点に関して0~3歳児が看過されていることを懸念するものである。 66.条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために必要な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。 (a) 初等中等学校における中退率を削減し、学校教育未修の背景にある理由(文化的伝統および貧困を含む)に対処し、かつ中等学校への進学者数を増加させるための具体的措置をとること。 (b) 初等教育が完全に普及し、直接間接の費用負担をともなわず、かつすべての子どもにとってアクセス可能であることを確保するため、あらゆる必要な措置を緊急にとるとともに、最遠隔地にあるバランガイにおける就学機会および脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの教育上のニーズに対し、教育に対するこれらの子どもの権利を充足する目的で特段の注意を払うこと。 (c) 初等中等学校における教員ひとりあたり生徒数を改善し、同時に教員が十分な訓練を受け、十全な資格を有し、かつ十分な給与を支払われることを確保することを通じて、教育の質を増進させること。 (d) 学校および教室を新設し、教科書その他の学用品を開発し、教員の養成および研修を増進させ、ならびに、学習の前提条件が異なる子どもに適合した革新的かつ双方向的な学習手法を採用することにより、教育制度の基盤を発展させおよび改良すること。 (e) 乳幼児期の教育およびケアに関する包括的政策を策定し、かつ、就学前学校および早期の学習機会に関する親の意識を高めること。 (f) 初等中等教育を修了していない子どもを対象とするものも含む非公式な学習および職業教育の促進を引き続き強化するとともに、労働市場で必要とされることおよび市民的責任に関して子どもが学校で体系的に準備を整えられるようにする職業訓練校を設立すること。 (g) ユニセフおよびユネスコの技術的援助を求めること。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの難民 67.委員会は、締約国における子どもの難民の状況に関する情報が存在しないことを遺憾に思うとともに、子どもの庇護希望者および難民の具体的ニーズに対応した国内法が存在しないことに関する懸念をあらためて繰り返す。 68.委員会は、締約国が、子どもの庇護希望者および難民のニーズに対応し、かつ、保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民に関する特別手続を定めた、特別な法律および行政規則を導入するべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。これとの関係で、委員会は、締約国が引き続きUNHCRと協力するよう勧告するものである。 武力紛争下の子ども 69.委員会は、「武力紛争に関与した子どもに関する包括的プログラム枠組み」(CP-CIAC)の継続的実施、SC CAACD〔子ども福祉評議会・武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会〕の活動、および、武力紛争の影響を受けている子どもの状況に対応するためのさまざまな取り組みを歓迎する。委員会はまた、武力紛争と子どもに関する事務総長特別代表が2008年12月にフィリピンを訪問したこと、および、モロ・イスラム解放戦線(MILF)が、2009年7月、子どもの徴募を防止しかつ民間人としての生活への子どもの再統合を促進するための具体的かつ期限を定めた措置をともなった行動計画に調印したことも歓迎するものである。これらの積極的措置には留意しながらも、委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書を2008年5月/6月に検討した際に表明した懸念(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)をあらためて繰り返す。とくに、子どもの徴募を禁じた共和国法第7610号第10条22項(b)が曖昧であり、違反に対する懲罰的制裁を定めていないことをひとつの理由として、戦闘員、諜報要員、警備兵、調理担当または衛生兵として働かせるために武装集団が子どもを徴募しているという報告が引き続きあること、および、このような犯罪の加害者が訴追されていないことが、懸念の対象である。 70.委員会はまた、国内武力紛争の悪影響のため、子どもが避難を余儀なくされる状況が継続しおよび悪化しており、ならびに、これらの子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達に対して限られた形でしかアクセスできていないことにも、深い懸念を表明する。さらに、委員会は、敵対行為に関与していない子ども、とくにミンダナオに住んでいる子どもに対して国内武力紛争が与えている影響について、依然として懸念を覚えるものである。 71.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書を2008年5月/6月に検討した際に行なった勧告(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)を想起し、締約国に対し、当該勧告を全面的に実施するよう促す。とくに、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることを禁止しかつ犯罪化した現行法の効果的実施のための勧告、ならびに、被害者の動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を目的とする措置(子どもが避難を余儀なくされる状況に対応し、かつ、このような子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達にアクセスできることを確保するための措置も含む)の継続および強化のための勧告を実施することが求められる。委員会はまた、締約国に対し、子どもの徴募を禁じた共和国法第7610号第10条22項(b)の曖昧さに対処するために必要な立法上の措置をとることにより、このような侵害の加害者が処罰されることを確保するよう求めるものである。委員会はさらに、締約国が、武力紛争下の子どもが法律に触れた子どもとして扱われないことを確保し、かつ、国際刑事裁判所ローマ規程、および、国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)を批准するよう、勧告する。 児童労働を含む経済的搾取 72.サギップ・バータン・マンガガーワ〔児童労働者救援〕(SBM)救援機構およびSBM迅速行動班(QAT)の設置を含め、児童労働と闘うために締約国が行なっているさまざまな努力には留意しながらも、委員会は、締約国における子どもの労働者(5~14歳)の人数が多いことを深く懸念する。委員会はとくに、これらの子どもが有害なまたは危険な条件下で働いており、かつさまざまな形態の性的および経済的搾取(最悪の形態の児童労働を含む)にさらされていることを懸念するものである。 73.委員会は、締約国に対し、児童労働と闘い、かつあらゆる形態の性的および経済的搾取(最悪の形態の児童労働を含む)から子どもを保護するための努力を強化するよう促す。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 国際基準にしたがい、児童労働を禁止する国内法を強化すること。 (b) 最悪の形態の児童労働撤廃法(共和国法第9231号)を含む国内労働法および諸プログラムを効果的に実施するとともに、この問題の解決に関する議論に子どもの労働者が参加することを確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するため、労働査察官の人数を増やすこと等も通じて労働監察制度を改善するとともに、とくに、当該制度に対し、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限を付与すること。 (d) 不法な児童労働を利用した者に罰金および刑事的制裁が科されることを確保すること。 (e) 法執行官、検察官および裁判官を対象とする義務的研修を実施すること。 (f) 元子ども労働者の回復および教育機会へのアクセスを促進するためにあらゆる適当な措置をとること。 (g) 国際労働機関/児童労働撤廃国際計画に対し、引き続き技術的援助を求めること。 ストリートチルドレン 74.委員会は、路上で生活している子どもが多数(25万人近く)存在し、かつ、このような子どもがさまざまな形態の暴力および虐待(性的および経済的搾取を含む)の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることを、依然として深刻に懸念する。委員会はまた、子どもが路上で生活することの防止、このような子どもの人数の削減および保護の必要性に対処するための体系的かつ包括的戦略が引き続き存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、マニラのさまざまな地域で実施されている一部の救援活動(「窮乏者救済」、「路上生活者一掃」または「一斉摘発」とも呼ばれる)およびこれらの活動に対するフォローアップの欠如について懸念を覚える。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象の根本的原因に対処し、ならびにストリートチルドレンの人数を減らしかつ路上で生活している子どもを保護するための包括的戦略を策定するとともに、当該戦略にしたがい、問題の根本的原因に対処する地方レベルの具体的プログラムを策定すること。当該戦略およびプログラムは、とくに地方レベルで、子どもたち自身、市民社会および関連の専門家の協力を得ながら策定されるべきである。 (b) 家族、コミュニティおよびストリートチルドレン自身が国の支援を得ながら子どもの教育に注力できるよう、とくに教育を条件付現金給付(CCT)プログラムと関連させることによって、教育に対する子どもの権利を確保することを重視すること。 (c) ストリートチルドレンが法律に触れた子どもとして扱われないことを確保すること。 (d) ストリートチルドレンが十分な栄養、衣服およびシェルターならびに社会サービスおよび保健サービスならびに教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練など)を提供されることを、訓練を受けたストリートワーカーおよびストリートカウンセラー等も通じながら確保すること。 (e) ストリートチルドレンに対し、身体的および性的虐待に関わる回復および社会的再統合のための十分なサービスを提供するとともに、実現可能なときは家族との再統合を促進すること。 性的搾取および虐待 76.「子どもに目を向けた観光」(Child Wise Tourism)キャンペーンおよびパーソナル・セーフティ・レッスン(PSL)プロジェクトのような、子どもの性的搾取および虐待に対処するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、ストリートチルドレン、(たとえば授業料を稼ぐための)「学費売春」(prosti-tuition)を行なっている子ども、「コールガール/ボーイ」(もっぱら家族の緊急のニーズに対処するためまたは自分自身の生活維持のためにシーズン限定の売春を行なう子ども)および「興行」従事者として働く若い女性の海外フィリピン人労働者(OFW)を含む多くの集団が商業的性的搾取の被害を受けやすい状態に置かれているという情報に対し、懸念を表明する。 77.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 商業的性的搾取および児童ポルノの原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 性的搾取の被害を受けたすべての子どもに平等な保護を提供する目的で、このような搾取(ポルノグラフィーのために子どもを使用することも含む)からの子どもの保護に関する国内法を見直すこと。 (c) 親が子どもの福祉および安全確保を促進できることを確保するため、1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の改正法を効果的に実施すること。 (d) 第1回・第2回・第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取の対象とされた子どもに対して、援助、回復および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 売買、取引および誘拐 78.締約国がとったさまざまな立法上、行政上および政策上の措置には留意しながらも、委員会は、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および労働目的の人身取引の対象とされ続けていることに懸念とともに留意する。委員会は、人身取引を行なった者の訴追件数および有罪判決数が少ないことをとりわけ懸念するとともに、固定化された貧困、一時的な海外移住、セックス・ツーリズムの増加、犯罪者の噴処罰および締約国における法執行の弱さのような、人身取引活動を助長する既存のリスク要因についても懸念するものである。委員会はさらに、子どもの人身取引が違法でありかつ秘密裏に行なわれることならびに効果的なデータ収集機構が存在しないために、人身取引の被害者数および目的を確認することが困難であることを懸念する。 79.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、人間、とくに女性および子どもの取引(性的搾取および労働を目的とするものも含む)を防止しかつこれと闘う努力を強化するよう勧告する。 (a) 人身取引の被害者数および目的を確認するためのデータを収集する目的で強力かつ体系的な監視機構を設置すること。 (b) 人身取引を防止するためのプログラムおよび広報キャンペーンを支援するとともに、法執行官、検察官および裁判官を対象として人身取引禁止法制に関する義務的研修を行なうこと。 (c) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点について観光省および観光サービス業者と引き続き連携すること。 (d) とくに被害者に対する医療面、心理面および法律面の支援の提供を増強することにより、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を実施すること。 (e) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の批准を検討すること。 少年司法の運営 80.委員会は、2006年に共和国法第9344号(少年司法福祉法、JJWA)が採択されたことにより、刑事責任に関する最低年齢が9歳から15歳に引き上げられるとともに、法律に触れた子どもに対する拷問および不当な取り扱いの行為が禁じられかつ犯罪化されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、JJWAの実施ペースが遅いこと、ならびに、とくに、拘禁されている子どもが多いこと、および、法律に触れた子どもが実質的に法的保障を有せずかつ医療ケアにもアクセスできないことを懸念するものである。委員会はまた、ダイバージョンの利用が限られていること、および、子どもの審判前拘禁が広く行なわれているとされることにも懸念を表明する。委員会はさらに、専門の裁判所および職員が存在しないことを遺憾に思うとともに、過密な施設に、成人とともに、劣悪な条件のもとで収容されていることが多い子どもの拘禁環境について深刻な懸念を表明するものである。加えて、委員会は、子どもの刑事責任年齢引き下げに関する最近の提案について懸念を覚える。 81.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう促す。委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任年齢が引き下げられないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) JJWAおよび大統領令第633号の規定にしたがい、微罪を行なった子どもを引き続き釈放すること。 (c) ダイバージョン、保護観察およびカウンセリングならびに地域奉仕活動のような、自由の剥奪に代わる措置の活用を拡大すること。 (d) 子どもの拘禁が最後の手段として、可能なかぎり短い期間でのみ行なわれることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 拘禁が行なわれるときは、拘禁措置が法律を遵守して適用されることおよび条約に掲げられた子どもの権利が尊重されること、ならびに、未決拘禁の際も刑の言い渡しを受けた後も子どもが成人とは別に収容されることを確保するため、効果的な措置をとること。 (f) 子どもが拘禁中に不当な取り扱いを受けず、通信および面会を通じて家族との接触を保つ権利を有し、かつ、少年が関わる事件の審判が可能なかぎり迅速に行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (g) 拘禁された子どもが、逮捕後直ちにおよび拘禁のあらゆる段階を通じて弁護人および医療ケアにアクセスできることを確保すること。 (h) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)にしたがい、先住民族の子どもの場合には必要に応じ無償で通訳が提供されること、および、子どもが文化的に配慮のある方法で法的援助を保障されることを確保するための措置をとること。 (i) 関連の国際基準に関する研修プログラムを引き続き実施するとともに、JJWAに関する理解、意識および知識を増進させるため、一般公衆およびとくに少年司法制度に関わる活動をしているすべての専門家(警察官を含む)を対象としてJJWAの規定を広く普及すること。 (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよびNGOも参加する「少年司法に関する国連機関横断パネル」の技術的援助その他の協力を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 82.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、武力紛争、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 マイノリティおよび先住民族に属する子ども 83.フィリピン中期開発計画(MTPDP)(2004~2010年)に先住民族の関心事を初めて盛りこんだことなど、先住民族の子どもの不安定な状況に対処するためにとられた措置は認知しながらも、委員会は、マイノリティおよび先住民族の間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、1997年先住民族権利法(IPRA)の適用が子どもに与えた実際の影響に関する情報が、締約国報告書においても代表団との対話の過程でも提供されなかったことも懸念するものである。 84.委員会は、一般的意見11号(2009年)を考慮し、締約国が、先住民族の子どもおよびマイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、IPRAを実施するための努力を強化するとともに、先住民族およびマイノリティの子どもに対して文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう、勧告するものである。委員会はまた、子どもの具体的権利が擁護されることを確保するため、IPRAおよびMTPDPの見直しの過程で一般的意見11号が指針とされるべきことも勧告する。委員会はさらに、マイノリティおよび先住民族の子どもの人権の享受に関して存在する格差および障壁を特定し、かつそのような格差および障壁に対応するための法律、政策およびプログラムを発展させる目的で、締約国が、これらの子どもに関するデータ収集機構を強化するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、フィリピン社会の多文化的性質、および、さまざまな民族集団の伝統、言語および見方に対して敏感になるための教育の必要性に関する意識をコミュニティおよび学校において高めるよう勧告する。 8.国際人権文書の批准 85.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、とくに強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問禁止条約の選択議定書、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を内閣、議会および最高裁判所ならびに適用可能なときは地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 87.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第3回・第4回統合定期報告書、締約国が提出した文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 88.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年9月19日までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 89.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。/前編~後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/299.html
総括所見:南アフリカ(第2回・2016年) 第1回(2000年)OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/ZAF/CO/2(2016年10月27日)/第73会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年9月19日に開かれた第2141回および第2142回会合(CRC/C/SR.2141 and 2142参照)において南アフリカの第1回報告書(CRC/C/ZAF/2)を検討し、2016年9月30日に開かれた第2160回会合(CRC/C/SR.2160参照)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第2回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/ZAF/Q/2/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつさまざまな部門から構成された締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、さまざまな分野で締約国が達成した進展を歓迎する。これには、国際文書の批准またはこれへの加入、とくに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准(2009年)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への加入(2003年)が含まれる。 4.委員会はまた、前回の審査以降、子どもの権利に関連する多くの新法ならびに制度上および政策上の措置が採択されてきたことも歓迎する。これには、おおむね条約にのっとっている、子ども法(2005年法律第38号)および子ども司法法(2008年法律第75号)が含まれる。 5.委員会はさらに、締約国の裁判例において、条約に定められた権利および原則を司法機関が進歩的に適用していること、乳幼児死亡率およびHIVの母子感染率が全般的に低下していること、出生登録が増えていること、ならびに、暴力と闘うための強力な法的および政策的枠組みを発展させるための努力が行なわれてきたことを歓迎する。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国が、委員会の前回の勧告(2000年、CRC/C/15/Add.122)のうちまったくまたは十分に実施されていないもの、とくに立法(パラ10)、データ収集(パラ14)、予算配分(パラ15)、家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待(パラ27)、体罰(パラ28)、プライマリーヘルスケア(パラ29)、思春期の健康(パラ31)、教育(パラ34)ならびに少年司法(パラ42)に関するものに対応するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 7.委員会は、「南アフリカの子どものための国家行動計画(2012~2017年)」の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、同計画の実施が弱く、かつ進捗状況に関する報告書がまったく発行されていないことを懸念するものである。 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 同計画の包括的中間レビューを速やかに完了させること。 (b) 同計画で定められているように、報告書が時機を失することなく発行されかつ刊行されることを確保すること。 (c) 現在施行されている計画の成果を基礎とし、説明責任の履行を確保するための明確な機構を備え、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられた、2017年以降の期間を対象とする子どものための国家的行動計画を策定すること。 調整 9.委員会は、2015年に国家子どもの権利部門横断調整委員会が設置されたことに、肯定的対応として留意する。しかしながら、条約および選択議定書の実施ならびに「南アフリカの子どものための国家行動計画(2012~2017年)」の実施が同調整委員会の任務に含まれているのか否か、および、同調整委員会に対し、政府内のあらゆる関連部門の活動を効果的に調整するための十分な権限が与えられているのか否かが明らかでない。 10.委員会は、締約国が、さまざまな部門を横断して、かつ国、広域行政圏および地方のレベルで条約の実施、監視および評価に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を与えられた適切な調整機関が、高い省庁間レベル――同機関がもともと置かれていたレベル――に設置されること、ならびに、当該機関に対し、その活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。 資源配分 11.委員会は、審査対象期間中に、教育、保健、社会的保護および少年司法に関連する公共支出が全般的に増加したことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どものための予算配分額および支出額を特定しおよび追跡するためのシステムが設けられていないこと。 (b) 毎年の支出増に変動があること。 (c) 社会開発省の人件費の予算削減が計画されているために、子どもへのサービス提供に必要な人的資源の縮小が生じる可能性があること。 (d) 公共支出のしっかりした監査が実施されておらず、かつ無駄なまたは不正規な支出(汚職を含む)が存在すること。 12.子どもの権利実現のための公共予算(第4条)に関する一般的意見19号(2016年)を参照しながら、委員会は、締約国が、子どもの権利の視点を含み、関連部門および関連機関における子どものための明確な配分額を定め、かつ、条約の実施のために割り当てられる資源配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価するための具体的な指標および追跡システムを含んだ予算編成手続を確立するよう、勧告する。そのための手段には以下のものが含まれる。 (a) 成果および子ども(被害を受けやすい状況に置かれた子どもを含む)に対する効果の監視を可能とするため、子ども関連のプログラムの目標を予算配分額および実際の支出額と関連づける実績達成目標を定めること。 (b) 子どもに直接影響を与えるすべての支出の計画、確定、補正および実際の額について、詳細な予算科目および予算項目を定めること。 (c) 子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析を可能にする予算分類システムを活用すること。 (d) サービス提供のための予算配分額の変動または削減によって、子どもの権利の享受に関する現在の水準が低下しないことを確保すること。 (e) 利用可能な資源を子どもの権利の実施のために最大限動員する目的で、公共支出に関する透明性および説明責任を高めるためにすべての部門を通じて監査を強化し、かつ、汚職の根絶および不正規な支出の削減のための措置をとること。 データ収集 13.条約の全分野を網羅する細分化されたデータを収集するための戦略が策定されたことは評価しながらも、委員会は、この戦略に基づいて収集されたデータの公刊が遅れており、かつ、包括的かつ細分化されたデータが依然として利用可能とされていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 新たな戦略に基づいて収集されたデータの公刊および普及を速やかに進めること。 (b) 新たなデータ収集システムにおいて、人権およびアイデンティティの自己決定の原則の尊重を基盤としながら、条約の全分野に関する細分化されたデータ収集が対象とされることを確保すること。 (c) 収集されたデータを、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために積極的に活用すること。 (d) すべての関係機関(すべての省庁、専門家および子どもとともに活動している市民社会組織を含む)および子どもたち自身がデータベースにアクセスできるようにすること。 (e) とくに国際連合児童基金(ユニセフ)との技術的協力を継続すること。 独立の監視 15.委員会は、南アフリカ人権委員会に子どもの権利および教育を専門とする委員がいることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 法律上、子どもの問題に焦点を当てる委員が必置とされていないこと。 (b) 子どもの権利の保護および促進に関する同委員会の資源および能力が十分でないこと。 (c) 同委員会の個人申立て手続が子どもに知らされておらず、または子どもがアクセスできるものになっていないこと。 16.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南アフリカ人権委員会に対し、子どもの権利をもっぱら専門とする委員の任命を法律により義務づけること。 (b) 子どもの権利を効果的に促進しかつ保護するため、このような期間に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を提供し、かつその独立を保障すること。 (c) 子どもの権利の保護を任務とする国内人権機関の権限および活動に関する子どもおよび一般公衆の意識啓発を図り、かつ、個人申立て手続を子どもがいっそうアクセスしやすいものとすること。 市民社会との協力 17.委員会は、中央および地方の立法機関への公衆によるアクセスが憲法で保障されていること、および、サービス提供において市民社会組織が枢要な役割を果たしていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 条約の実施に関連する法律、政策およびプログラムの策定に、子どもの権利に関して活動している市民社会組織の組織的関与を得る取り組みが不十分であること。 (b) サービス提供の面で子どもの権利に関して活動している市民社会に対して提供される資源が限られていること。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施に関連する法律、政策、予算およびプログラムの策定、実施および監視への、市民社会組織の積極的なかつ意味のある参加を増進させる戦略を確立すること。このような戦略では、参加組織の特定に関する透明かつ非差別的な基準、明確な目的および市民社会の役割、ならびに、これらの組織の効果的調整および参加を可能にするための金銭的支援についても定めるものとする。 (b) 市民社会組織に対し、子どもに対するサービス提供のための十分な資源を提供すること。 子どもの権利と企業セクター 19.委員会は、締約国で操業している企業の活動、とくに採取産業の活動が、環境汚染および児童労働の搾取等を通じて子どもの権利の享受に悪影響を及ぼしていることを懸念する。 20.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が、企業セクターが国際的および国内的な人権基準、労働基準、環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を遵守することを確保するための規則を定めかつ実施するよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国で操業する産業および企業を対象とした、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関連するもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 採取産業の活動によって引き起こされる環境汚染から生ずる子どもの健康への影響(水質汚染の影響および採鉱から生じる粉塵の影響を含む)に関する、独立の立場からの研究を実施すること。 (c) 企業(とくに大規模なかつ十分に機械化されていない採取企業)による、国際的および国内的な環境基準および健康基準の効果的実施を確保すること。 (d) 企業(とくに大規模なかつ十分に機械化されていない採取企業)による前掲の基準の遵守を監視するための効果的機構を設置し、かつ、違反があった場合には適切な制裁を科すとともに被害を受けた子どもに救済措置を提供すること。 (e) 国際連合「保護・尊重・救済」枠組み(2008年)を指針とすること。 B.子どもの定義(第1条) 21.委員会は、子ども法(2005年)が最低婚姻年齢を女子について12歳および男子について14歳と定めていること、ならびに、婚姻法(1961年)および慣習的婚姻承認法(1998年)で、18歳未満の女子および男子について異なる婚姻条件が定められていることを、深く懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、最低婚姻年齢が女子および男子の双方について18歳と定められることを確保するため、あらゆる関連の法律の調和を図るよう促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 23.委員会は、女子、HIV/AIDSとともに生きている子ども、障害のある子ども、先住民族である子ども、無国籍児、子どもの移住者、庇護希望者および難民、路上の状況にある子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもならびにアルビノ(先天性色素欠乏症)の子どもが、基礎的サービスおよび子どもの保護サービスへのアクセスに関して差別に直面しており、かつ、暴力、虐待およびいやがらせにさらされることもいっそう多くなっていることを懸念する。委員会はまた、同国において、基礎的サービスへのアクセスおよび十分な生活水準に関して人種、居住地および経済的地位に基づく深刻な格差が存在しており、農村部および都市の非公式集住地で暮らしている子どもが不均衡なほど不利な立場に置かれていることも懸念するものである。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSとともに生きている子ども、障害のある子ども、先住民族である子ども、無国籍児、子どもの移住者、庇護希望者および難民、路上の状況にある子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもならびにアルビノの子どもに対して、かつ複合差別の累積的影響に対して特段の注意を払いながら、子どもの権利を前進させるためのあらゆる立法上、政策上およびプログラム上の措置において、構造的な不平等および差別の根絶に強力に焦点を当てること。 (b) ジェンダーに基づく差別的なステレオタイプ化およびジェンダー差別を根絶する目的で、ジェンダー平等に関する子どもおよび一般公衆の意識啓発の努力を強化し、かつ乳幼児期教育からの教育においてジェンダー平等を積極的に促進すること。 子どもの最善の利益 25.委員会は、子どもに関わるすべての事柄において子どもの最善の利益が至高の重要性を有する旨、締約国の法律で明示的に認められていること、および、具体的状況におけるこの権利の適用に関して司法機関が優れた裁判例を積み上げてきたことを歓迎する。しかしながら委員会は、関連の法律および政策がこの権利の実現に及ぼす集合的影響を評価するための手続が存在しないことを懸念するものである。 26.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに関連するすべての法律および政策が自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利の実現に及ぼす影響について事前および事後に評価する義務的手続を確立すること。 (b) この点に関して国際的に開発されたツールを活用すること。 生命、生存および発達に対する権利 27.委員会は、乳幼児死亡率の削減を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに(a)暴力(虐待およびネグレクトを含む)および火器による負傷ならびに(b)栄養不良、出生前の状態および予防可能な疾病を理由として、乳幼児死亡率が依然として高いことに留意するものである。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国における高い幼児死亡率の根底にある貧困および構造的不平等に対処すること。 (b) 持続可能な開発目標のターゲット3.2(5歳未満児の予防可能な死亡に終止符を打つこと)に留意し、高水準の暴力、子どもの栄養不良、HIV/AIDSの予防および治療ならびに子どもおよび母親の健康の促進に対処しながら、乳幼児死亡率を削減するための努力を強化すること。 (c) 5歳未満児の予防可能な死亡および罹病を削減しかつ解消するための政策およびプログラムの実施に対する人権基盤型アプローチの適用に関する国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)の技術的指針(A/HRC/27/31)を実施しかつ適用すること。 (d) 家族に対し、子どもに対する暴力ならびに子どもの虐待、ネグレクトおよび遺棄を防止するための支援を提供すること。 (e) 火器統制に関する努力を強化すること。 子どもの意見の尊重 29.この分野で行なわれている努力には留意しながらも、委員会は、子どもに影響を与える問題に関する公的意思決定への子ども参加が組織的に保障されていないことを懸念する。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この目的のために十分な技術的資源、人的資源および財源を配分することにより、あらゆるレベルにおける公的意思決定への、子どもたちの意味のある参加を確保すること。 (b) 子ども議会を常設の場として制度化することを検討すること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録、名前および国籍 31.委員会は、締約国の出生登録水準が相当に高まっていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 出生登録を行なう際の行政上および実際上の障壁(出生死亡登録法(1992年法律第51号)に基づく、登録遅延に対する懲罰的措置を含む)により、否定的かつ差別的な効果が生じている可能性があること。 (b) 南アフリカ市民権法(1995年法律第第88号)において、一部の集団の子どもへの締約国の国籍の付与について不均衡なほど厳格な条件が定められており、かつ、親の国籍の喪失を理由として子どもから国籍を剥奪することも認められていること。 (c) 締約国に移住してきた子どもまたは締約国で生まれた子どもであって、在留資格を有していない子どもおよび(または)出生登録がなされていない子どもが、子ども・若者養護センターに多数存在するとされていること。 (d) 自己の出生証明書を所持していることが、社会サービスおよび子どもの保護サービスにアクセスするための厳格な要件とされていること。 32.持続可能な開発目標のターゲット16.9(出生登録を含む法的アイデンティティをすべての者に与えること)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 出生登録および国籍に関連するすべての法令の見直しおよび改正を、一部の集団の子どもに懲罰的または差別的な影響を及ぼす可能性のある要件を削除すること等を通じて条約との全面的一致を確保する目的で進めること。 (b) 締約国の管轄下にある子どもであって無国籍であるまたは無国籍となるおそれのあるすべての子どもに対して国籍を付与するための規則を整備すること。 (c) 恒常的な監視を行ない、このような法令および指針においてとられた措置によって締約国のすべての子ども(国民でない者を含む)の出生登録が保障されることを確保すること。 (d) 締約国全域の子ども・若者養護センターに現在入所している、在留資格のないすべての子どもを体系的に特定し、かつ、これらの子どもが出生証明書および国籍にアクセスできることを確保すること。 (e) すべての者の出生登録のための努力を強化しつつ、出生登録が行なわれていないことを理由に子どもの保護サービスおよび基礎的社会サービスへのアクセスが妨げられないことを確保すること。 (f) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討すること。 (g) これらの勧告の実施のため、とくに国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)およびユニセフの技術的援助を求めること。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 33.委員会は、体罰、ジェンダーを理由とする暴力および有害慣行を含む子どもに対する暴力の蔓延度がきわめて高いことを懸念する。 34.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対応することおよび暴力の被害を受けた子どもを保護しかつ支援することを目的とする包括的な国家的戦略を採択し、かつ効果的に実施するよう促す。その際、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 暴力への政策対応が客観的データの分析に基づいて策定されることを確保すること。 (b) 子どもたちおよび子どもとともに活動している組織を含むあらゆる関係者の、意味のある参加を確保すること。 (c) 不平等、貧困、アルコールおよび薬物の濫用ならびに排外主義を含む、構造的暴力の事案に対処すること。 (d) 暴力にさらされるおそれが高まっている子どもの集団(農村部および都市の非公式集住地で暮らしている子ども、子どもの難民、庇護希望者、移住者および無国籍者、路上の状況にある子ども、セクシュアルマイノリティに属する子ども、障害のある子ども、先住民族である子どもならびにアルビノの子どもを含む)に正当な注意を払うこと。 体罰 35.委員会は、子ども法(2005年)に基づき、拘禁されている子どもおよび代替的養護の環境にある子どもの体罰が禁止されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、家庭における体罰が禁じられておらず、かつ広く行なわれていること、および、学校における体罰が、法律で禁止されているにもかかわらず、実際には根強く行なわれていることを懸念するものである。委員会はまた、保育施設における体罰の発生件数に関するデータがないことも懸念する。 36.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭におけるあらゆる形態の体罰(「合理的懲戒」を含む)を禁止する法律を速やかに採択すること。 (b) あらゆる形態の体罰の防止および根絶のための国家的戦略を策定し、採択しかつ実施すること。 (c) 積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育てならびにしつけおよび規律維持について、家族、コミュニティならびに子どものためにおよび子どもとともに働く専門家(教員および保育者を含む)の意識啓発および能力構築を図るための努力を強化すること。 (d) あらゆる場面(家庭、学校および保育施設を含む)における体罰についてのデータを恒常的かつ組織的に収集するとともに、当該データを、体罰の効果的防止および根絶のための基礎として活用すること。 (e) 人権に配慮したやり方で規律の問題に対処していく方法に関する、生徒と教員との恒常的協議を促進すること。 (f) 体罰を行なった者の責任が問われることを確保すること。 ジェンダーを理由とする暴力 37.委員会は、ジェンダーを理由とする暴力と闘うための立法上、政策上および制度上の枠組みの発展を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを深刻に懸念するものである。 (a) とくに農村部および都市の非公式集住地で、家庭においても学校においても、子どもに対するジェンダーを理由とする暴力が広く蔓延していること。 (b) 性暴力が広く蔓延しており、かつ被害者が低年齢である(被害者の過半数は15歳未満であり、かつ報告によれば7歳未満の被害者も増えている)こと。 (c) 通報率ならびに加害者の訴追率および有罪判決率が低いこと。 (d) 家族間暴力法(1998年)が、家族間暴力を犯罪としておらず、かつジェンダーに十分に配慮していないこと。 (e) 被害を受けた子どものための支援サービス(緊急シェルターを含む)の提供が全般的に行なわれておらず、かつその提供に地域格差があること、および、そのようなサービスの提供に関して市民社会組織への著しい依存が見られること。 38.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するジェンダーを理由とする暴力に関する研究の実施およびデータ収集の改善を進めるとともに、これらの研究および収集されたデータの分析の成果を、ジェンダーを理由とする暴力への対応を発展させるために積極的に活用すること。 (b) 非公式集住地で女子に対して行なわれているジェンダーを理由とする暴力が極度の水準に達していることに照らし、非公式集住地におけるこのような暴力についての調査研究を実施し、かつこのような暴力にあわせた対応を発展させること。 (c) 女性および子どもに対する暴力を防止しかつこれに対応するための国家行動計画(2013~2017年)を強化する目的で、説明責任の履行を確保するための強力な機構を当該計画に備え、かつその実施のために十分な技術的資源、人的資源および財源を配分するとともに、ジェンダーを理由とする暴力の構造的原因に対処すること。 (d) ジェンダー平等および子どもの権利について、メディアおよび教育プログラムを通じて公衆の意識を高め、かつ男性および男子ならびに女性および女子への働きかけを行なうこと。 (e) ジェンダーを理由とする暴力の加害者が責任を問われることを確保するとともに、子どもにやさしい通報機構を確立すること。 (f) このような暴力の被害を受けた子どもに対するサービスの提供を強化するため、このようなサービスの質、応答性および持続可能性を高める目的で十分な技術的資源、人的資源および財源を配分すること。 有害慣行 39.委員会は、児童婚および強制婚、処女性検査、魔術、女性性器切除、複婚、暴力的または有害な通過儀礼ならびにインターセックス性器切除を含む有害慣行が締約国で広く蔓延していることを懸念する。委員会はまた、締約国が対話の際に指摘したように、子どもを関与させるウクトゥワラ〔強制婚〕の慣行は「ウクトゥワラの濫用」と見なされて犯罪とされているものの、この慣行がいまなお存在することも懸念するものである。 40.女性差別撤廃委員会と合同で採択した有害慣行に関する一般的意見18号(2014年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに児童婚および強制婚の慣行を犯罪化し、かつイニシエーションスクール〔成人通過儀礼〕を規制することにより、締約国で子どもに対して行なわれているあらゆる形態の有害慣行が法律で禁じられることを確保すること。 (b) このような慣行を撤廃するための効果的な国家的行動計画を策定しかつ採択すること。 (c) 関連の法律および政策の策定、採択、実施およびその監視への、あらゆる関係者(有害慣行の影響を受けている子どもまたはそのおそれがある子どもおよびこのような子どもが属するコミュニティを含む)の意味のある参加を確保すること。 (d) 乳幼児期に不必要な医学的治療または手術を行なわないようにすることにより、すべての子ども(インターセックスの子どもを含む)の身体的不可侵性、自律および自己決定を保障すること。 (e) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団を対象として、有害慣行の事案を防止し、特定しかつこれに対応する能力ならびに子どもにとって有害な慣習的慣行および儀式を撤廃する能力の構築を図ること。 (f) 有害慣行の実行犯(ウクトゥワラの濫用の実行犯を含む)に対して制裁が科されることを確保し、かつ、有害慣行の被害者に対して効果的な救済措置を提供すること。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境を奪われた子ども 41.委員会は、家庭環境を奪われた子どもに関して法律上および政策上の枠組みが発展してきており、そこで、家族からの子どもの分離を防止すること、および、分離が避けられない場合における家庭的な代替的養護への措置が優先されていることを歓迎するとともに、子どもの扶養命令の執行の確保に関して相当の進展があったことも歓迎する。委員会は、締約国が、里親養育における制度的課題に対応するための措置をとろうとしてきたことに留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 多数の子ども(AIDSのために両親を失った孤児およびHIV/AIDSへの感染および罹患を理由として遺棄された子ども、ならびに、保護者のいないまたは遺棄された子どもの移住者を含む)が家庭環境を奪われていること。 (b) 里親養育の増加を理由として、代替的養護制度が制度的制約(里親養育命令の未処理件数および失効件数が相当に蓄積していることを含む)に直面していること。 (c) 主として虐待、ネグレクトまたは遺棄の結果として、かつ子どもがHIVに感染したことも理由として入所型養護への措置の対象とされる子どもの人数が増えており、かつ、子ども・若者養護センターのような入所型養護施設での滞在が長期化していること。 (d) 子ども・若者養護センターにおける養護の質が低いこと、地域によって子ども・若者養護センターに拠出される資金が不均衡であること、および、未登録の子ども・若者養護センターが存在すること。 42.委員会は、締約国が、家庭的な代替的養護に引き続き焦点を当てながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもたち、親および拡大家族ならびに代替的養護に関する活動をしている市民社会組織および専門家との幅広い協議に基づいて、里親養育制度における制度的課題を解決し、かつ、代替的養護のための体制および当該体制を監視するための体制を持続可能な形で見出すための行動を速やかに進めること。 (b) 十分かつ実現可能な監視機構を確保しつつ、孤児を養育している家族に対する拡大型支援金を導入することを目的として、社会援助法の改正を速やかに進めること。 (c) 時宜を得た家族再統合および措置の再審査期間の短縮を通じ、入所型養護への子どもの措置の期間を可能なかぎり短くすること。 (d) 最低標準および最低基準の遵守、暴力および虐待からの保護ならびに養護の提供および個別発達計画の提供との関連を含めて、入所施設における養護の質の監視を強化するとともに、子どもの不当な取扱いの通報、監視および救済のためのアクセスしやすい回路を用意すること。 (e) 子ども・若者養護センターの資金的地域格差を縮小させるとともに、すべての子ども・若者養護センターが登録されることを確保すること。 (f) 家庭環境を奪われた子どものニーズを満たすための代替的養護制度の対応を向上させる目的で、十分な資源を配分し、かつ関連の専門家の能力構築を図ること。 (g) 子およびその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する2007年11月23日のハーグ条約の批准を検討すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 43.委員会は、障害のある人の権利に関する条約を締約国が2007年に批准したこと、および、「南アフリカにおける障害およびリハビリテーションサービスに関する枠組みおよび戦略(2015~2020年)」が採択されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国の障害のある子どもの大多数が複層的な差別および排除に直面していることならびに以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子どもに関する正確かつ包括的なデータが存在しないこと。 (b) 明確なベースライン、明確な時間的枠組みおよび測定可能な実施指標ならびに実施状況の監視機構を備えた、障害のある子どもの権利を実現するための包括的な法律および政策が定められていないこと。 (c) 政府部内で、とくに農村部において、障害のある子どもに統合的なサービスを提供するための効果的な部門横断型調整が行なわれていないこと。 (d) 補助器具の提供ならびに点字および手話によるサービスの提供等を通じた合理的配慮が効果的に提供されていないこと。 44.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する細分化されたデータの体系的かつ包括的な収集を強化するとともに、より科学的証拠に基づいた、かつ障害のある子どものニーズにいっそう適合した政策的対応をとるためにその成果を活用すること。 (b) 障害のある子どもの権利に関連したあらゆる範囲の問題(公共移動手段へのアクセスおよび養育者への支援を含む)を取り上げた、障害の人権モデルに基づく包括的な法律および政策の策定を検討すること。 (c) 障害のある子どもに関連する法律および政策の実施に関して明確なベースライン、明確な時間枠および明確な指標を定めるとともに、その実施のために技術的資源、人的資源および財源が十分に配分されることを確保すること。 (d) 障害のある子どもならびにその家族および養育者に統合的サービスを提供するために部門間の調整を向上させること。 (e) 障害のある子どもについて定めた法律および政策の実施状況を、障害のある人(子どもを含む)およびその代表組織の積極的参加を得ながら監視するための機構を設置すること。 (f) 合理的配慮の提供に関連する、明確なタイムライン(予定表)および必要な資源の配分をともなった戦略の実施を速やかに進めること。 45.委員会は、フルサービス型学校を発展させることにより、障害のある子どもを含むすべての子どもにインクルーシブ教育を提供するために行なわれている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のあるすべての子どもに対してインクルーシブな基礎教育に対する権利を確認した法律が制定されていないこと。 (b) 障害についての専門性を有する職員が深刻に不足しており、かつ財源の配分が不十分であることを理由として、関連の政策の実施が不十分であること。 (c) 障害のある子どもに対して無償の義務的初等教育が提供されていないこと。 (d) 障害のある子ども、とくに心理社会的障害のある子どもの多くが学校に行っておらず、または特別学校もしくは特別学級で学習していること。 (e) 障害のある子どもに対し、教員および他の生徒による差別および暴力が行なわれていること。 (f) 障害のある子ども(とくに心理社会的障害、自閉症スペクトラム障害および感覚障害のある子ども)に提供されている教育の質が低く、かつこれらの子どものために使用されているカリキュラムの内容が不十分であるために、これらの子どもが、学校教育の修了後に高等教育、就労および自律した生活を追求する能力を身につけられないこと。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) インクルーシブ教育に関する法律上および政策上の枠組みをさらに発展させ、かつ、フルサービス型学校の拡大および普通学校の普通学級における障害のある子どものインクルージョンを優先させる目的で、「教育白書6-特別ニーズ教育:インクルーシブな教育訓練制度の構築」を見直すこと。 (b) インクルーシブ教育に対して十分な技術的資源、人的資源および財源(合理的配慮の提供を保障するために必要な資金を含む)を配分すること。 (c) 障害のあるすべての子どもに対して無償の義務的初等教育を確保し、かつ普通学校において無償で合理的配慮(パーソナルアシスタントを含む)を提供するとともに、費用のかかる移動および寄宿の手配を行なわないでよいようにするため、当事者である子どもの居住地の近くにある学校への就学を優先させること。 (d) 障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見を解消するために教員および生徒の意識を高める目的で、障害のある子どもの尊重ならびに尊厳およびインクルージョンを促進するカリキュラムおよび学習教育教材を開発すること。 (e) 障害のある子どもの社会的再統合および個人としての発達を可能なかぎり最大限に促進する目的で、これらの子どもに提供される教育の質、十分性および適合可能性を向上させること。 健康および保健サービス 47.委員会は、プライマリーヘルスケアおよびコミュニティヘルスケアに焦点を当てるため、ならびに、子どもの予防接種の実施範囲を拡大するために行なわれている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 農村部と都市部との間および公的部門と民間部門との間で保健ケアの提供に格差があること。 (b) 子どもの健康に関する包括的な政策およびサービス提供パッケージが存在しないこと。 (c) 保健ケアサービスの質が低いこと。 48.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公的なプライマリーヘルスケアへのアクセスを向上させることに強力に焦点を当てながら、全国を通じて保健ケアサービスの提供に関する格差を縮小するための努力をさらに強化すること。 (b) 子どもの健康に関する包括的かつ部門横断的な政策およびサービス提供パッケージを発展させること。このような政策およびパッケージは、新生児期から思春期までの健康を網羅し、かつ健康の基底的決定要因に関する介入策について取り上げるとともに、明確なタイムライン、明確なベースライン、測定可能な指標およびその実施のための十分な予算配分をともなうものとする。 (c) 十分な人的資源、技術的資源および財源を配分し、かつ保健ケア制度で働く専門家の能力構築を図りながら、保健ケアサービス一般の質および子どもを対象とする専門的保健ケアサービスの質を向上させること。 (d) 子どもたち、コミュニティならびに子どもの健康および思春期の健康について活動している市民社会組織の関与を得ながら、関連の政策の実施状況の監視およびサービス提供の監視を行なうための機構を確立すること。 (e) この点に関してとくに世界保健機関およびユニセフの技術的援助を求めること。 思春期の健康 49.委員会は、締約国が、思春期の健康に包括的に対処する目的で、青年期および思春期の健康に関する新たな指針を策定中であることに留意する。しかしながら委員会は、以下の数値が不均衡に高いことを含め、思春期の子どもがさらされている健康上のリスクが高まっていることを懸念するものである。 (a) とくに思春期の女子のHIV感染率。これは、思春期の子どもにやさしいサービスにアクセスできないこと、ヘルスワーカーの側にこれらの子どもへの差別的態度があること、および、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する年齢にふさわしい情報がないことを理由とするものである。 (b) とくに思春期の子どもの結核感染率。 (c) 自殺率および抑うつ発症率(妊娠した10代の女子の間で見られる率を含む)。 (d) 思春期の子どもの妊産婦死亡率(および、妊産婦の死亡に関する正確かつ包括的なデータがないこと)。 (e) 暴力、交通関連死および胎児性アルコール障害につながっている、アルコールおよび有害物質の濫用率。 50.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) セクシュアル/リプロダクティブヘルス、精神保健、暴力ならびにアルコールおよび有害物質の濫用についても網羅した、青年期および思春期の健康に関する新たな指針を速やかに完成させること。 (b) 介入策が応答性の高いものになること、および、思春期の子どもたちが生きている現実が正確に反映されることを確保する目的で、子どもおよび思春期の健康に関する法律、政策およびプログラムの策定、監視および評価への、思春期の子どもたちの全面的かつ意味のある参加を確保するための努力を強化すること。 (c) 思春期の子どもが健康関連の物資およびサービスに秘密の守られる形でアクセスできることを確保しながら、思春期の子どもを対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する政策およびプログラムの効果的実施を増進させること。 (d) 学校等において、避妊法に無償でかつ目立たない形でアクセスできるようにすることを検討すること。 (e) 保健専門職が、子どもにやさしく、非審判的でかつ敬意のある保健サービスを思春期の子どもに提供できるようにする目的で、これらの専門職の意識啓発および能力構築を図ること。 (f) 妊産婦の死亡に関するデータ(保健施設外で生じた死亡に関するものを含む)の収集を向上させること。 (g) 5歳未満児の予防可能な死亡および罹病を削減しかつ解消するための政策およびプログラムの実施に対する人権基盤型アプローチの適用に関するOHCHRの技術的指針(A/HRC/27/22 and Corr.1 and Corr.2)を実施しかつ適用すること。 (h) とくに、子どもおよび青少年に対し、有害物質の濫用に関する正確かつ客観的な情報ならびにライフスキル教育を提供することにより、子どもによる薬物の使用を減少させること。 HIV/AIDS 51.委員会は、HIVの母子感染率の削減および子どもの抗レトロウィルス治療の対象者の増加に関して相当の進展が見られたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことについて懸念を覚えるものである。 (a) 子どもの新規HIV感染件数が依然として多いこと。 (b) 妊産婦死亡の相当割合がAIDSを原因として生じていること。 (c) HIV感染の構造的原因(ジェンダーの不平等および女性に対する暴力を含む)。 (d) 女子の間でHIV/AIDSが不均衡なほど多く蔓延していること。 (e) HIVに感染した母親による抗レトロウィルス治療およびHIVに感染した乳児のための抗レトロウィルス治療が忠実に実施されておらず、かつ、生後18か月以上の子どものHIV感染の発見が組織的に実施されていないこと。 (f) HIV感染と合併した結核(多剤耐性結核を含む)が広く蔓延していること。 (g) HIV/AIDSおよび結核のための医薬品がしばしば在庫切れとなっていること。 (h) 南アフリカ国家AIDS評議会で、子どもの代表ならびに子どもに関する活動を行なっている機関および団体の代表が少ないこと。 52.HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIVの母子感染を予防するためにすでにとられている措置を維持するとともに、その実施を確保するための行程表を策定すること。 (b) 暴力とHIV/AIDSとの交錯を理由として女子が直面している複合差別および暴力に対処するための政策を策定すること。 (c) 早期診断(生後18か月以上の子どもの診断を含む)を確保し、かつ早期の治療開始および治療の忠実な実施を確保する目的で、HIVに感染した母親およびその乳児のフォローアップ治療を向上させること。 (d) 「HIV・性感染症・結核に関する国家政策」に採択および実施を速やかに進め、かつ、HIV/AIDSおよびセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する良質なかつ年齢にふさわしいサービスへのアクセスを向上させること。 (e) HIV/AIDSおよび結核のための医薬品を含む医薬品が在庫切れとならないようにするための効果的措置をとること。 (f) 子どもに関する活動を行なっている政府部局および市民社会組織の代表が南アフリカ国家AIDS評議会に十分な人数で参加すること、ならびに、HIV/AIDSおよび性感染症に関する国家的戦略計画の策定、実施および監視に子どもたちが積極的に関与することを促進すること。 (g) とくに国際連合AIDS合同計画およびユニセフの技術的援助を求めること。 栄養 53.委員会は、「南アフリカ栄養ロードマップ(2013~2017年)の採択、および、母乳育児促進のために行なわれている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 低栄養、微量栄養素欠乏症および栄養過多を含む子どもの栄養不良が、子どもの死亡および罹病を助長する主要な要因となっていること。 (b) とくに貧困、食料価格の上昇、人口動態の変化、エネルギー費用および気候変動によって、子どもの食料状況が不安定化していること。 (c) 生後6か月までの完全母乳育児率が低い状態が根強く続いていること。 (d) 学校給食プログラムで提供される食料の栄養が不十分であること。 (e) 子どもの肥満がますます蔓延しており、かつ、子どもを標的として不健康な食料の攻撃的販売促進が行なわれていること。 54.持続可能な開発目標のターゲット2.2(あらゆる形態の栄養不良の根絶)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの不安定な食料状況および栄養不良の根絶に正当な注意を払いながら、「南アフリカ共和国の食料・栄養安全保障に関する国家政策」(2014年)で構想されているように食料への権利に関する枠組み法を策定しかつ実施すること。 (b) HIVに感染した母親による母乳育児について適切な指針および支援を提供しながら、少なくとも生後6か月間の完全母乳育児を促進し、かつ母乳代替品の宣伝を規制するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 国家学校栄養プログラムの監視(同プログラムを通じた食料供給の頻度、食料の質および栄養価の監視を含む)を強化すること。 (d) 子どもの肥満の増加に対処する目的で、子どもを対象とする不健康な食料の販売促進を規制するとともに、貧困世帯が健康的な食料にアクセスできるようにする戦略を導入すること。 (e) この点に関してユニセフおよび国際連合食糧農業機関の技術的援助を求めること。 生活水準 55.委員会は、締約国で社会保障の対象とされる子どもの範囲が相当に拡大したことにより、子どもの貧困が全般的に減少してきたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 1~17歳の年齢層の貧困率があらゆる年齢集団のなかでもっとも高いこと。 (b) 身分証明書類に関して厳格な要件が課されていること、受給資格基準およびこれらの基準の評価が明確でないこと、社会保障給付についてのアクセスしやすい情報がないこと、子どもの養育責任を負っている子どものための配慮が不十分であること、ならびに、一部の集団の子ども(子どもの難民および10代の母親など)に対する差別およびスティグマがあることなどの行政的障壁によって、子どものための社会保障給付へのアクセスが阻害されていること。 (c) 子ども扶養補助金の額が、貧困下で暮らしている子どものニーズを満たすための実際の費用を下回っていること。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会保障給付へのアクセスを妨げる障壁を取り除き、かつ、すべての子ども(とくに乳児、思春期の子どもおよび障害のある子ども、ならびに、これらの子どもの養育者であって給付を受ける資格を有する者)が時機を失することなく給付にアクセスできることを確保すること。 (b) 不支給の場合に子どもおよびその養育者が請求を行なえるようにする不服申立て手続を設けること。 (c) 貧困下で暮らしている子どものニーズを満たすための実際の費用の客観的評価に基づき、子ども扶養補助金の額を再検討すること。 (d) 子どもに関連する社会保障制度の構築、見直し、実施、監視および評価に、子どもたちおよびその養育者が積極的にかつ意味のある形で参加することを促進すること。 57.委員会は、水および衛生設備へのアクセスを向上させることについて達成された進展、ならびに、十分な住居への権利に関する締約国の進歩的な法的枠組みを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 水および衛生設備にアクセスできる人の人数が相当に増加したにもかかわらず、多くの子どもがいまなお水および衛生設備にアクセスできておらず、そのため疾病および性暴力にさらされるおそれが高まっていること。 (b) 負担可能な費用で住むことのできる十分な住宅が存在しないために非公式集住地が形成されており、かつ、これらの集住地からの強制立退きの慣行が根強く行なわれていること。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての世帯、学校および保健施設を対象として安全な水および衛生設備へのアクセスを確保するための努力を引き続き進めること。 (b) すべての子どもが十分かつ負担可能な費用の住居にアクセスできることを確保するために効果的措置をとること。 (c) 強制立退きを防止し、かつ被害者に効果的救済を提供するために効果的措置をとるとともに、この点に関して、開発に基づく立退きおよび移転に関する基本原則および指針(A/HRC/4/18付属文書I)を指針とすること。 H.教育、余暇および文化的活動(第28条~31条) 教育 59.委員会は、教育へのアクセスは依然として優先順位の高い課題である旨の発言を対話の際に締約国が行なったこと、および、基礎教育へのアクセスの向上に関して相当の進展が見られたことを歓迎する。委員会はまた、学校インフラおよび教育の質の向上のために行なわれている努力にも留意するものである。しかしながら委員会は以下のことを懸念する。 (a) 良質な教育へのアクセスに関して、経済的地位、人種および地理的所在による大きな格差が根強く残っていること。 (b) 公的資源の不均衡な配分が根強く行なわれており、もっとも緊急の課題ではなくそれほど重要ではない問題に対処するために資源が配分されていること、および、教育制度における資金の管理に透明性が欠けていること。 (c) 劣悪な学校インフラが根強く残っていること、教材が不足していること、ならびに、教員の人数が不十分であり、かつその能力が低いこと(「母語」担当教員が不足していることを含む)。 (d) 生徒および教育者による暴力(いじめ、性的虐待およびセクシュアルハラスメントを含む)が広く蔓延しているために、学校において安全および安心が引き続き確保されていないこと。 (e) 妊娠した生徒の中退率が依然として高く、かつ、このような生徒の停退学が実際にはいまなお行なわれていること。 60.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照し、かつ持続可能な開発目標のターゲット4.1(すべての者を対象とする、無償の、公平かつ良質な初等中等教育)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 複合差別に直面している子どもが教育にアクセスできるようにすることに優先的に取り組みつつ、すべての子どもが無償のかつ良質な基礎教育にアクセスできるようにするための努力をさらに強化すること。 (b) 予算の策定に子どもたちおよび市民社会組織が積極的にかつ意味のある形で参加できるようにすること、ならびに、予算の実施状況を監視しかつ評価すること等を通じて、教育予算の管理の透明性、効率性および当該予算に関する説明責任を向上させること。 (c) もっとも不利な立場に置かれている学校を優先させながら、学校施設、教材、教員およびカリキュラムの質および利用可能性を含む教育の質を向上させること。 (d) 生徒および教育者の双方が行なう学校暴力を防止しかつ解消するために効果的措置をとること。 (e) 学習者の妊娠に関する新たな政策を速やかに採択するとともに、妊娠した10代および思春期の母親が教育を継続するための支援および援助を受けられることを確保すること。 (f) 女子および男子を対象とした、学校における必修のセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育を通じて、若年妊娠を予防すること。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの移住者、庇護希望者および難民 61.委員会は、締約国で子どもの庇護希望者および難民を保護するための法律上および政策上の枠組みが発展してきたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国に移住してくる保護者のいない子どもの人数が増えており、かつ、保護者のいない子どもが窮乏、搾取、暴力および虐待に直面するおそれが高まっていること。 (b) 子どもの移住者、庇護希望者および難民(保護者のいない子どもおよび(または)正規の在留資格を有していない子どもを含む)ならびに人身取引の被害を受けた子どもに関する正確なかつ細分化されたデータが存在しないこと。 (c) 関連の法律および政策が効果的に実施されていないこと。 (d) 難民法改正案(2015年告示第806号)における「被扶養者」および「家族」の定義では、条約で定められた家族再統合に対する権利が全面的に保護されない可能性があること。 (e) 持続可能な解決策のひとつとして締約国での永住を可能にする法律が定められていないために、子どもの移住者、庇護希望者および難民が退去強制のおそれに直面していること。 (f) 出入国管理上の地位を理由として子どもの逮捕および拘禁が行なわれていること。 62.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)、および、国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利に関して2012年に開催された一般的討議の結論を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの移住者、庇護希望者および難民(とくに保護者のいない子どもおよび(または)正規の在留資格を有していない子どもを含む)ならびに人身取引の被害を受けた子どもに関する体系的なかつ細分化されたデータの収集を強化するとともに、効果的対応の基盤としてこれらの子どもの状況に関する研究を実施すること。 (b) 子どもの移住者、庇護希望者および難民に対する時宜を得た子ども保護サービス((i)登録および身分証明書類の発給、(ii)暴力および虐待からの保護、(iii)家族の統合または代替的養護の提供ならびに(iv)基礎的サービスへのアクセスのためのサービスを含む)を効率化するための業務要領の策定および実施を速やかに進め、かつ、当該業務要領を締約国全域で一貫して適用すること。 (c) 難民法改正案(2015年告示第806号)が条約に全面的に一致することを確保すること。 (d) 子どもの退去強制を回避するため、子どもの移住者、庇護希望者および難民に対し、締約国における永住の選択肢を認めることを検討すること。 (e) 非正規な移住の状況にある子どもの拘禁を速やかにかつ完全に停止すること。 武力紛争における子ども 63.委員会は、近年武力紛争の影響を受けている国々から、多数の子どもが保護者のいない子どもの庇護希望者または難民として締約国にやってきていることに留意するとともに、武力紛争の影響を受けた子どもおよび(または)武力紛争に関与させられた子ども(子ども兵士として徴募された子どもを含む)を特定するための手続が設けられていないことを懸念する。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 武力紛争が行なわれている国出身の難民および庇護希望者のなかから、武力紛争に関与させられた可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構を整備すること。 (b) 国境管理機関の職員を対象として、子どもの権利、子どもの保護および事情聴取の技法に関する研修を実施すること。 (c) 元子ども兵士および武力紛争の被害を受けた子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助が提供されることを確保するための業務要領および専門的サービスを発展させること。 (d) この点に関してUNHCRおよびユニセフの技術的援助を求めること。 先住民族である子ども 65.委員会は、先住民族である子ども(コイサン人に属する子どもを含む)が周縁化および差別に直面していることを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国において、コイサン人を含む先住民族およびその権利が法的に承認されていないこと。 (b) 伝来の土地が歴史的に剥奪されてきたことにより先住民族である子どもに悪影響が生じており、とくに食料をめぐる不安定な状況、水へのアクセスの欠如および極度の貧困がもたらされていること。 (c) 先住民族である子どもが、教育等において自己の言語を使用する権利を全面的に享受できていないこと。 66.先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を参照しながら、かつ先住民族の権利に関する国際連合宣言にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) コイサン人を含む先住民族の権利を、先住民族である子どもの権利を全面的に承認することとあわせて、法的に承認することを検討すること。 (b) 先住民族である子どもの全面的かつ効果的な参加を得ながら、これらの子どもの権利を尊重し、保護しかつ促進し、かつ、これらの子どもが食料をめぐる不安定な状況、貧困下ならびに暴力および搾取の被害を受けやすい立場に置かれている状況を解消するための国家的行動計画を策定すること。 (c) 先住民族(牧畜民、狩猟採集民および森の民を含む)の強制的な立退きおよび移転を防止し、かつ、自己の土地から強制的に立ち退かされまたは移転させられた者に救済措置を提供すること。 (d) 先住民族である子どもに対し、自己の先住民族言語および締約国の公用語による二言語教育を提供すること等を通じ、先住民族言語の促進のための効果的措置をとること。 (e) 国際労働機関の先住民族・種族民条約(1989年、第169号)の批准を検討すること。 経済的搾取(児童労働を含む) 67.委員会は、締約国が、ILO・最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を2000年に批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) とくに農業における児童労働に子どもが従事する状況が根強く続いていること。 (b) 最悪の形態の児童労働が行なわれており、かつ最悪の形態の児童労働に従事している子どもについての細分化されたデータが存在しないこと。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 最悪の形態の児童労働を含む児童労働についての細分化されたデータを収集すること。 (b) 児童労働に関する法律および政策の効果的実施を確保すること。 (c) 児童労働の査察を強化するとともに、子どもの経済的な搾取および虐待を行なう者に対し、その犯罪の重大性に相応した処罰を科すこと。 路上の状況にある子ども 69.委員会は、「路上で生活しかつ働いている子どものための国家戦略」が策定されたことに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国において多数の子どもが路上で生活しかつ働いており、かつ暴力、虐待および搾取の被害を著しく受けやすい状況に置かれていること、ならびに、これらの子どもが身体的および精神的に不健康な状態にあり、かつアルコールおよび有害物質の濫用を行なっていることを懸念するものである。委員会はまた、保護者がいないまま締約国に入国した子どもの多くが、最終的に路上の状況に置かれるようになっていることにも留意する。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 路上で生活しかつ(または)働いている子どもの人数を評価し、かつ、これらの子どもが置かれた状況の根本的原因について新たな研究を実施すること。 (b) 「路上で生活しかつ働いている子どものための国家戦略」を、路上の状況にある子どもたちの自律および多様性を尊重しつつもその積極的関与を得ながら、実施し、監視しかつ評価すること。 (c) 同戦略に基づく支援(とくに家族との再統合または代替的養護への措置)が、子どもの最善の利益を全面的に尊重し、かつ、子どもの年齢および成熟度にしたがってその自律的意見を正当に重視しながら提供されることを確保すること。 少年司法の運営 71.委員会は、子ども司法法(2008年)によって刑事責任に関する最低年齢が10歳に引き上げられたことに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 10歳という法定最低年齢は依然として低いこと。 (b) 多数の子どもが未決勾留の対象とされており、なかには不当に長期間勾留されている子どももいること。 (c) とくに未決勾留の対象とされている子どもが、教育、保健その他のサービスにアクセスできないこと。 (d) 拘禁施設が過密であること。 72.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国が、国際基準にのっとって国内法を効果的に実施するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで引き上げる目的で速やかに見直すこと。 (b) 未決勾留の対象とされる子どもの人数を削減するとともに、子どもが出頭させられてから6か月以内に権限のある裁判所が被疑事実についての最終的決定を行なうことを、明示的な法的規定によって確保すること。 (c) 拘禁されているすべての子ども(審判を待っている子どもまたは刑を言い渡されていない子どもを含む)に対し、教育、保健ケアその他の利益へのアクセスを保障すること。 (d) 過密状態を緩和するために必要な措置を直ちにとること。 犯罪の被害者および証人である子ども 73.委員会は、犯罪の被害者および証人である子どもを保護するための法的枠組みが定められていないこと、ならびに、これらの子どものための良質な支援サービスおよびリハビリテーションサービスが存在しないことを懸念する。 74.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪の被害者および証人である子どもの保護およびエンパワーメントを目的とした法律(種々の措置のなかでもとくに被害者の身体的、心理的および社会的リハビリテーションのためのサービスの提供を含む)の策定を検討すること。 (b) 犯罪の被害者および証人である子どものためのリハビリテーションサービスおよび支援サービスの提供に対し、これらのサービスをいっそう持続可能なものとし、かつその質を向上させる目的で、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 J.通報手続に関する条約の選択議定書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 76.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約の批准を検討するよう勧告する。 77.委員会は、締約国に対し、2011年10月25日の時点で提出期限が過ぎている、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく報告義務を履行するよう促す。 L.地域機関との協力 78.委員会は、締約国が、締約国および他のアフリカ連合加盟国の双方における〔子どもの権利〕条約その他の人権文書の実施に関して、アフリカ連合・子どもの権利および福祉に関するアフリカ専門家委員会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 79. 委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 80.委員会は、締約国に対し、第3回~第6回統合定期報告書を2022年1月15日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 81.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月6日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/310.html
総括所見:イラク(OPSC・2015年) 第1回(1998年)/第2~4回(2015年)OPAC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/IRQ/CO/1(2015年3月5日)/第68会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1962回会合(CRC/C/SR.1962参照)においてイラクの第1回報告書(CRC/C/OPSC/IRQ/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/IRQ/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IRQ/CO/2-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/IRQ/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった以下の措置を歓迎する。 (a) 人身取引対策法(法律第28号、2012年)。 (b) アフターケアおよび家族統合プログラム。 (c) 2つのチャイルドヘルプラインの開設。 (d) 被害者支援部署、人身取引被害者のための国営シェルターおよび家族保護部署の設置。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年2月)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年2月)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2008年3月)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2001年7月)。 III.データ データ収集 6.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪についての体系的データを収集するためのいかなる機構も有していないことに、懸念とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野のデータ収集、分析、監視および影響評価のための包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的背景別に細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、起訴件数および有罪判決件数についてのデータを収集することも求められる。 IV.一般的実施措置 立法 8.選択議定書のさまざまな規定を締約国の法律に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、このような努力において、ほぼ人身取引および買売春だけにしか焦点が当てられていないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が現行法で明示的に取り上げられているわけではないこと、および、締約国の法律における子どもの売買の定義が議定書と一致していないことも懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、選択議定書を国内法体系に全面的に編入し、かつ、選択議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買(これは人身取引と類似してはいるものの同一ではない)の定義を改正するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と闘うための包括的な政策および戦略を直ちに採択し、かつ、その作成および実施に市民社会の関与を得るよう勧告する。 調整および評価 11.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と効果的に闘うための調整機構を速やかに設置するよう勧告する。 市民社会との協力 12.被害者を保護サービスに付託するために法執行官が時として非政府組織(NGO)および国際機関と協力していることには留意しながらも、委員会は、選択議定書の実施に関して締約国と市民社会との間で全般的に協力が行なわれていないことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) NGOに対し、選択議定書の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子ども全員の収容保護が認められているわけではないこと。 (b) NGOが、国から必要な保護を与えられないまま、依然として過激主義集団による暴力の脅威にさらされていること。 (c) 被害者に保護サービスを提供しているNGOに対し、締約国が資金または現物による援助を提供していないこと。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関する市民社会との協力を強化するとともに、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となった子どもに保護および支援を提供しているNGOに対し、十分な技術的資源および財源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、NGOが過激主義集団による攻撃から全面的に保護され、かつ活動の遂行に際していかなる法的障害にも直面しないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促すものである。 普及、意識啓発および研修 14.委員会は、裁判官、法執行官ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家を対象とする研修が不十分であることを遺憾に思う。委員会はまた、親および子どもたち自身を含む公衆の間で子どもの性的搾取に関する意識が欠けていること、ならびに、慣習および伝統により、性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもおよびその家族が辱めの対象とされており、そのためこれらの犯罪の通報が十分に行なわれていないことも、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、選択議定書を広く周知するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 裁判官、法執行官(とくに警察)ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働くその他の専門家が、選択議定書で対象とされている犯罪から子どもを保護するために自己の知識およびスキルを効果的に実践できるようにすることを目的として、これらの専門家を対象とする学際的な研修プログラムを発展させること。 (b) コミュニティ、地元の教員、若者グループおよび子どもグループの関与を得ながら、選択議定書の規定に関する集中的な意識啓発活動(マスメディア上のキャンペーンを含む)を実施すること。これらの意識啓発活動においては、性的搾取の防止、被害者に付与されるスティグマへの対処、ならびに、とくに被害者がアクセスできるすべての通報方法についての情報を被害者に提供することによるこれらの犯罪の通報の強調および奨励に対し、特段の注意が払われるべきである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(選択議定書第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 16.委員会は、現行の政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因(ジェンダーを理由とする深刻な差別および暴力、貧困、マイノリティに属する子どもの差別、国内避難および移住、教育へのアクセスの欠如、ならびに、子どもが路上で生活しかつ(または)働くことを余儀なくされる状況を含む)に対応するためには不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、以下のことを著しく懸念するものである。 (a) 多くの子どもが依然として登録されていないために、選択議定書上の犯罪の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。 (b) シリア・アラブ共和国からイラクに帰還した子どものイラク人難民(とくに女子)が、帰るべきコミュニティを持たないことが多く、かつ国からのいかなる種類の支援にもアクセスできないために、あらゆる形態の搾取および人身取引の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。 17.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対応し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれている家族および子どもを明確に対象とするために包括的アプローチおよび具体的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 委員会が条約に基づいて行なった勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4)、とくに生活水準(パラ63)、差別の禁止(パラ17)、子どもの国内避難民および難民(パラ67)、路上の状況にある子ども(パラ75)、職業訓練および職業指導を含む教育(パラ65)ならびに家庭環境を奪われた子ども(パラ47および49)に関連するものの全面的実施を確保すること。 (b) いわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配下にある子どもを救出するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、これらの子どもが回復および再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。 (c) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための措置を継続しかつ強化すること。 (d) 帰還民に対して支援へのアクセスを確保するとともに、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもを対象とする防止プログラムを発展させ、かつ、とくに、子どもの国内避難民、移住の状況にある子どもおよび路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 子どもの売買 18.委員会は、いわゆるISILの支配下に置かれたままの子どもが多数にのぼっており、かつ、誘拐された子どもおよび女性(とくにマイノリティ集団出身の子どもおよび女性)がISILの構成員間で性奴隷として売買される「市場」が存在することに、深い懸念とともに留意する。委員会はまた、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 女子が引き続き「贈り物」「報酬」または「取引手段」として利用され、または部族間の紛争解決のための「賠償品」として交換されていること。 (b) 婚姻した後に女子に売春を強要するための「一時的婚姻」であるムタア(muta a)の慣習が締約国でふたたび行なわれるようになり、多数の家族が、しばしば貧困および(または)失業をきっかけとして、娘(11歳という低年齢の女子も多い)をこのような結婚のために売り渡していること。 (c) 誘拐および(または)売買の被害者となった女子が深刻なスティグマに直面するために、これらの女子に対して行なわれた犯罪の通報が十分に行なわれず、かつ、これらの女子が家族から拒絶され、誘拐犯との婚姻を余儀なくされ、またはいわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪の被害者となるおそれが高まっていること。 (d) 女子が締約国の内外で(国外の目的地国にはヨルダン、シリア・アラブ共和国、アラブ首長国連邦およびイエメンが含まれる)売買および取引の対象とされており、かつ、シリア・アラブ共和国に逃亡したイラク人女子の多くが性産業に売られているという報告があること。 (e) 女子(非常に低年齢の者を含む)が、偽造旅券により、かつ(または)「夫」とされる者と同伴してきわめて容易に渡航しえいると報告されていること。 19.委員会は、締約国に対し、女子および女性のいかなる形態の売買(とくに、奴隷市場におけるもの、ムタアによるものおよび部族裁判所または宗教裁判所における紛争解決を背景として行なわれるものを含む、女子および女性の売買もしくは交換または贈り物もしくは賠償品としての使用)も全面的に犯罪化され、捜査されかつ訴追されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、委員会が条約に基づいて行なった早期婚および強制婚についての勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4、パラ42)に対する注意も喚起し、かつ、締約国に対し、貧困下で暮らしている家族を支援するためにあらゆる必要な措置をとることおよび以下の措置をとることを促すものである。 (a) 売買および(または)誘拐の被害者となった女子に対する差別的態度を変革するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 国境を越える女子の売買と闘い、入国審査を強化し、かつ女子の身元を同伴者とは別に確認するため、近隣諸国と緊密に協力すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(選択議定書第3条、第4条第2項および3項ならびに第5~7条) 現行刑事法令 20.委員会は、人身取引が最近犯罪化された一方、締約国の国内法で選択議定書上のすべての犯罪(子どもの売買など)が網羅されているわけではないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、刑法(法律第111号(1969年))第398条において、子どもに対する性犯罪の加害者が被害者である子どもと有効に婚姻したときは罪を免除されると定められていることを、非常に懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪が全面的に犯罪化されることを確保するために迅速な法的措置をとるとともに、刑法(法律第111号(1969年))第398条、および、子どもの性的虐待の加害者の罪を免除するために用いられうるすべての法的規定を速やかに廃止するよう、促す。 不処罰 22.委員会は、選択議定書上の犯罪に関する捜査、訴追および有罪判決の件数がきわめて限られていることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、警察その他の法執行当局が子どもの人身取引の共犯者になっているという多数の報告(政府職員による書類の偽造の援助および警察官による売春宿の庇護を含む)について深い懸念を覚えるものである。委員会は、政府職員が人身取引関係の犯罪の共犯者となった事件に関する捜査および訴追がきわめてまれにしか行なわれないことを懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の実行犯(政府職員を含む)の捜査、訴追および処罰を精力的に進めるよう促す。 域外裁判権および犯罪人引渡し 24.委員会は、刑事訴訟法において、選択議定書第3条第1項に掲げられているすべての犯罪についての明示的な域外裁判権が設定されているわけではないことに、懸念とともに留意する。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪を行なったとされる者が締約国の国民でありまたは締約国の領域に常居所を有する者である場合または被害者が締約国の国民である場合に、選択議定書第3条第1項に基づく犯罪についての域外裁判権を設定すること。 (b) 二国間条約の存在を条件とすることなく、選択議定書を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることを検討すること。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(選択議定書第8条ならびに第9条第3項および第4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 26.委員会は、15歳未満の子どもが犯罪の被害者または証人である場合、その証言が正当に考慮されないことがあり、かつ15歳未満の子どもは親の同意がなければ告訴ができないことを非常に懸念する。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意するものである。 (a) 人身取引および買春の被害者が、尋問中に不当な取扱いまたは虐待を受け、かつ、売春および出入国管理法違反のような不法行為を理由として収監され、罰金を科され、有罪判決を受け、退去を強制されまたはその他の形で処罰されているという報告があること。 (b) 買売春のために売られた女子が、家族/コミュニティに恥をかかせたことに対する報復から「保護」するために刑務所に収容されたままとなる場合があること。 (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを特定するための機構が整備されておらず、かつ、官吏に対し、被害を受けた子どもまたはとくにリスクの高い状況にある子ども(在留資格を有していない外国籍の子どもの移住者または買春容疑で逮捕された子どもなど)を特定するための研修または指針の提供が行なわれていないこと。 27.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの証言が完全な証拠とみなされることおよび子ども自身による告訴が認められることを確保するために迅速な措置をとること。 (b) 保護のためと称して拘禁されているすべての女性および女子を刑務所から直ちに釈放するとともに、これらの女性および女子に対し、必要なあらゆる支援を提供すること。 (c) 子どものプライバシーおよび尊厳が全面的に保護される、子どもに配慮した調査手続および司法手続を備えた効果的な通報制度を確立すること。 (d) 被害を受けやすい状況に置かれていて選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれのある子どもを特定し、発見しかつモニターするための効果的機構を確立するとともに、これらの機構に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子どもを特定するために必要な人的資源、財源および技術的資源ならびに研修の機会を提供すること。 (e) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となったすべての子どもが、いかなる場合にも犯罪者として扱われず、常に被害者として扱われること、ならびに、これらの子どもに対し、必要な保護、支援ならびに再統合および回復のためのサービスにアクセスする機会が提供されることを確保すること。 (f) 人身取引の被害者が、法執行官と接触する際にいかなる形態の不当な取扱いおよび虐待からも保護され、かつ通報のための経路にアクセスできることを確保すること。 被害者の回復および再統合 28.人身取引被害者のための国営シェルターが設置され、かつ虐待および人身取引の被害を受けた女性および子どもを援助する家族保護部署が警察署内に設けられたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国に人身取引被害者が存在するにもかかわらずシェルターに入所者がいないと報告されていること、および、保健省によって運営されている支援部署が、2013年の設置以降、人身取引被害者を特定しかつ援助するためのいあkなる努力も行なっていないことを懸念する。委員会はまた、以下のことを懸念するものである。 (a) 買春の被害を受けた子どもが、刑務所からの釈放と同時に、援助をなかなか見つけられない状況に置かれること(とくに、家族によって買売春のために売り渡された場合)。 (b) 人身取引被害者の付託のための全国的機構が2012年に創設されたものの、まだ完成および実施の段階に至っていないこと。 (c) 保健ケア施設が性的搾取の被害者を治療するための体制を整えておらず、または治療に後ろ向きである事例が報告されていること。 29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもの効果的特定のためのプログラムおよび政策を策定すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに支援および保護を提供するとともに、これらの子どもが心理的援助およびカウンセリングならびに医療ケアにアクセスできることを確保すること。 (c) 保健サービスにおいて、選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに対し、その身体的および精神的回復のためのあらゆる便宜が提供されることを保障するために、すべての必要な措置(法的措置を含む)をとること。 ヘルプライン 30.委員会は、バグダード県で2つのチャイルドヘルプラインが――カルフ地区の家族福祉局に1か所、および、ルサファ地区に設けられたコミュニティ基盤型の家族保護警察署に1か所――開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、全国的なヘルプラインが設置されておらず、かつ、既存のヘルプラインおよびその安全な利用に関して子どもの意識を高めるための十分な取り組みが展開されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、全国的な単一のヘルプラインの設置に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するためにあらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の防止およびこれへの対応を効果的に進めるため、既存のヘルプラインの運営担当者を対象として体系的な研修および能力構築を実施すること。 (b) 全国的ヘルプラインが、国全体のすべての子どもにとって全面的にアクセス可能でありかつ知られた存在となるよう、当該ヘルプラインにアウトリーチの要素が備えられることを確保するとともに、当該ヘルプラインと、子どもに焦点を当てるNGO、警察、ヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を促進すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 32.委員会は、締約国と近隣諸国との間で選択議定書上の犯罪と闘うための地域的取り決めが締結されていないことに、懸念とともに留意する。 33.締約国が地域的取り決めを締結していないことに照らし、かつ選択議定書第10条第1項に鑑み、委員会は、締約国に対し、議定書上の犯罪を防止し、摘発しかつ訴追するための、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じて、引き続き国際協力を確立するよう奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 34.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 35.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.通報手続に関する選択議定書の批准 36.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 XI.次回報告書 37.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年5月18日)。
https://w.atwiki.jp/childreninfukushima/pages/287.html
目的:福島の子どもたちが自然のなかで思いっきり活動し遊べる場を提供し、社会全体で福島のこどもたちを支える状況づくりをめざそうと、昨年に引き続き自然体験キャンプを実施します。 期間:8月4日~10日(6泊7日) 対象者:福島県内の小学3年生~中学3年生の子ども 10名(ただし、小3の子どもは1泊以上の経験者) 定員になり次第締め切ります。 場所:福井県福井市 上味見地区 福井市上味見生涯教育施設ほか 活動内容;テント泊/野外炊飯/森遊び・森探検/川遊び/キャンプファイヤー/クラフト/星空観察/民泊/地域の方との交流 など。 参加費: 2万円(参加費・交通費の一部負担金) 交通:福島県内⇔福井はチャーターバス等で移動 説明会:申込者を対象に7月7日に福島市、7月8日に郡山市で開催(親子でご参加ください) 主催者:NPO法人自然体験共学センター URL http //kyougaku.com/ 問合せ先:電話:0776-93-2013 FAX:0776-93-2012 メール: mail@kyougaku.com 担当者:長田
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/194.html
総括所見:カナダ(第2回・2003年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2006年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.215(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月17日に開かれた第894回および第895回会合(CRC/C/SR.894 and 895参照)においてカナダの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.6)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合(CRC/C/SR.918参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書、および、締約国における子どもの状況について最新情報を提供してくれた、事前質問事項(CRC/C/Q/CAN/2)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。しかしながら、連邦および州の報告書に基づいた総合的報告書が提出されていれば、委員会にとって、条約の実施についての比較による分析とともに、条約を実施するためにカナダがとった貴重な措置の、いっそう調整のとれた、かつ包括的な把握が可能になったであろう。委員会は、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が行なっている多数の取り組みを心強く思うとともに、これらの取り組みをさらに組織立ったものとし、かつその効果的実施を確保することにつながるであろう、子どものための国家行動計画の完成を待望する。とくに委員会は、以下の行動およびプログラムに留意したい。 「全カナダ子どもアジェンダ」。 全国子ども手当。 子ども・若者担当国務長官の設置。 社会政策改訂に関する連邦・州・準州閣僚評議会。 「社会的団結枠組み協定」・ C-27号刑法改正法案の制定。 カナダ通信教育網。 「力の結集:カナダ先住民族行動計画」 開発途上国による自国の子どもの権利の充足を援助するためにカナダ国際開発庁(CIDA)が果たしている建設的役割、および、カナダは2010年までに国際援助を倍増させる旨の代表団主席による宣言。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.3)の検討後に委員会が行なった勧告(CRC/C/15/Add.3、1995年6月20日付)の一部が実施されたことには留意しながらも、残りの勧告、とくに、留保の撤回に言及したパラ18、データ収集に関わるパラ20、一般原則が国内法に反映されることの確保に関わるパラ23、第22条の実施に関わるパラ24、体罰を許容する刑法の見直しを提案したパラ25に掲げられた勧告への対応が行なわれていないまたは不十分であることを、遺憾に思う。委員会は、これらの懸念がこの文書でもあらためて表明されていることに留意するものである。 5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の勧告を効果的にフォローアップするためにあらゆる努力を行なうよう、勧告する。 留保および宣言 6.委員会は、条約第37条(c)に対する留保の撤回に向けて政府が行なっている努力には留意しつつも、手続にやや時間がかかっていることを遺憾に思うとともに、締約国には第21条に対する留保を撤回する意思はない旨の代表団による発言をなおいっそう遺憾に思う。委員会は、第21条および第37条(c)に関して締約国が維持している留保についての懸念をあらためて表明するものである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約に対して付した留保を再検討し、かつその撤回を速やかに進めるよう促す。委員会は、条約第21条に対する留保を撤回する目的で、先住民族との対話を継続するよう慫慂するものである。 立法および実施 8.委員会は、条約の相当部分の適用が州および準州の権限であることに留意するとともに、このため、場合によって、州および準州段階における違いを理由として条約の最低基準がすべての子どもに適用されない状況が生じるおそれがあることを懸念する。 9.委員会は、連邦政府に対し、州および準州が自らの条約上の義務を理解すること、および、条約上の権利が、立法および政策その他の適当な措置を通じ、すべての州および準州で実施されなければならないことを確保するよう、促す。 調整・監視 10.多部門型の取り組みである「全カナダ子どもアジェンダ」が1997年に開始されたこと、および、子ども・若者担当国務長官の役職が創設されたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、人権に関する常設官公吏委員会および子ども・若者担当国務長官のいずれに対しても条約の実施の調整および監視が具体的に委任されているわけではないことを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、締約国に対し、前回勧告したとおり(CRC/C/15/Add.37、パラ20)、条約の実施において格差または差別が生ずるいかなる可能性も低減させかつ払拭する目的で、子ども〔の権利〕を促進しかつ保護するための政策の実施における、とくに連邦、州および準州の当局間の効果的な調整および監視を強化するよう、奨励する。 国家的行動計画 12.委員会は、「力の結集:カナダ先住民族行動計画」の導入(1998年1月)に留意するとともに、子どもの権利条約および子どもに関する国連総会特別会期の最終成果文書(「子どもにふさわしい世界」)にしたがって国家的行動計画が作成されていることを心強く思う。委員会はまた、カナダが、この点に関する行動は条約にしたがってとられなければならないと確信していることも心強く思うものである。 13.委員会は、締約国に対し、すべての子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団(先住民族、移住者および難民の子どもを含む)を対象とする、首尾一貫した、包括的なかつ権利基盤型の国家的行動計画が採択されることを確保するよう、奨励する。当該計画では、市民社会と協力しながら、連邦、州、準州および地方のレベルにおける責任分担、明確な優先順位、予定、および、条約にしたがった必要な資源の予備的配分についても定められるべきである。委員会はまた、政府に対し、国家行動計画の実施に関する組織的監視機構を指定するようにも促す。 独立の監視 14.委員会は、カナダの8つの州に子どもオンブズマンが設置されていることに留意するものの、すべての子どもオンブズマンが、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、1993年12月20日の総会決議48/134付属文書)にしたがった完全に独立した国内人権機関として任務を行なうための十分な権限を与えられているわけではないことを、懸念する。さらに委員会は、このような機関が連邦レベルで設置されていないことを遺憾に思うものである。 15.委員会は、締約国が、子どもの権利担当のオンブズマン事務所を連邦レベルで設置するとともに、その効果的運用のための適当な資金を確保するよう、勧告する。委員会は、このような事務所をまだ設置していない州、および、脆弱な立場に置かれた子どもが高い割合で住んでいる3つの準州においても、このような事務所が設置されるべきことを勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、パリ原則および国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号を全面的に考慮するよう、勧告する。 資源配分 16.委員会は、多くの取り組みおよびプログラム(とくに、子どもの貧困を削減しかつ防止することによって、危険な状態で暮らしているカナダの子どもの福祉を向上させることを目的とした全国子ども手当(NCB)制度)への資源配分を通じて政府が行なっている子どもの権利の充足に対する貢献に関して報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、一部の州におけるNCBの実施のあり方について社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.31、パラ22)および自由権規約委員会(CCPR/C/79/Add.105、パラ18・20)が表明した懸念を、あらためて繰り返すものである。 17.委員会は、締約国に対し、全国子ども手当制度によって一部集団の子どもに生じる可能性があるいかなる否定的または差別的効果も払拭する目的で、当該制度の効果ならびに州および準州における当該制度の実施に関する定期的評価を活用しながら制度の見直しを行なうよう、慫慂する。 18.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに周縁化されたおよび経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの権利の問題に関する優先順位を毎年明確に述べるとともに、子どもに関する支出の効果およびその有効な活用について評価できるようにする目的で、連邦、州および準州のレベルで子ども(とくに周縁化された集団)に費やされている予算の額および割合を明らかにするよう、奨励するものである。委員会は、締約国に対し、子どもが将来の経済的変動の影響を不相応に受けないようにするための措置を引き続きとり、かつ、条約の普及に関する活動を行なっている非政府組織への支援を継続するよう、奨励する。 データ収集 19.委員会は、報告書の付属文書および事前質問事項に対する文書回答の付属文書で提供された豊富な統計データの価値を認めるとともに、締約国が先住民族に関する統計研究所を設置しようとしていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とするすべての分野について情報が十分に整備され、細分化されおよび十分に総合化されているわけではなく、ならびに、子どもに関連するデータ収集に18歳未満のすべての者が体系的に包摂されているわけではないという見解に立つものである。委員会は、情報収集に関する前回の懸念および勧告(CRC/C/15/Add.37、パラ20)を想起しつつ、これに対する対応が十分ではないことを主張したい。 20.委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(すなわち先住民族の子ども、障害のある子ども、虐待およびネグレクトを受けた子ども、ストリートチルドレン、司法制度の対象とされている子ども、子どもの難民および庇護希望者)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野および18歳未満のすべての子どもに関する、体系的に細分化されたデータを収集しかつ分析するための機構を強化しかつ中央集権化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、開発された指標および収集されたデータを、立法、政策および資源配分プログラムの立案および評価ならびに条約の実施および監視のために有効に活用するよう、促すものである。 2.一般原則 差別の禁止 21.委員会は、文化的多様性を促進しかつ保護するための措置および差別に関わる具体的な立法上の措置に関連した積極的進展に留意する。後者には、多文化主義法(とくに寄宿学校制度との関連において)、雇用平等法、および、加重事由として人種差別を導入した刑法改正が含まれる(人種差別撤廃委員会(CERD)の2002年版年次報告書(A/57/18)、パラ315-343も参照)。しかしながら委員会は、CERDの懸念を、とくに、子ども(インディアン法に関するものなど)、先住民族ならびにアフリカ系およびアジア系の人々に対する拘禁中の暴力およびこれらの人々の拘禁中の死亡、メディアで見られる差別および偏見表現のパターン、ならびに、在留資格を有しない移住者の子どもの学校制度からの排除との関連で共有するとともに、一部集団の子どもに対する差別が根強く残っていること(前掲パラ332、333、335および337も参照)を依然として懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、差別の禁止に対する権利(条約第2条)を子どもに関わるすべての関連の法律に全面的に統合するための立法上の努力を引き続き強化するとともに、この権利が、政治上、司法上および行政上のすべての決定、ならびに、すべての子ども(とくに、障害のある子どもおよび先住民族の子どものような、マイノリティ集団その他の脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども)に影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて効果的に適用されるべきことを、勧告する。委員会はさらに、締約国が、社会の否定的な態度および慣行を防止しかつこれと闘うため、引き続き、包括的な公衆教育キャンペーンを実施しかつ必要なあらゆる積極的措置をとるよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、条約の一般原則を考慮しながら、文化的多様性を促進するための努力に関するさらなる情報を次回の報告書で提供するよう、要請する。 23.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画についてカナダが表明した留保に留意しつつも、ダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報が、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載されるべきことを勧告する。 子どもの最善の利益 24.委員会は、締約国が、子どもに関わるあらゆる立法、プログラムおよび政策の発展において子どもの最善の利益の原則がきわめて重要であると考えていることを高く評価するとともに、この点に関わる進展を認識する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきであるという原則が、一部の子ども(とくに、離婚、監護および退去強制の状況に直面している子ども)および先住民族の子どもに影響を与える一部の立法、裁判所の決定および政策においていまなお十分に定義されかつ反映されていないことを、依然として懸念に思うものである。さらに委員会は、この点に関する調査研究および専門家の研修が不十分であることを懸念する。 25.委員会は、第3条に掲げられた「子どもの最善の利益」の原則が、さまざまな状況にある子ども個人および子どもの集団(たとえば先住民族の子ども)との関連で適切に分析されおよび客観的に実施され、ならびに、子どもに関わる立法のあらゆる再検討、裁判所における法的手続ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスに統合されるべきことを、勧告する。委員会は、締約国に対し、調査研究、および、子どもに対応する専門家のための教育プログラムが強化されること、ならびに、条約第3条が全面的に理解されることおよびこの原則が効果的に実施されることを確保するよう、奨励するものである。 3.市民的権利および自由 アイデンティティに対する権利 26.委員会は、カナダ市民によって国外で養子とされた子どもの市民権の取得を容易にする新カナダ市民権法が採択されたことを心強く思う。委員会は同様に、先住民族の子どもおよび家族に対し、そのコミュニティ内で文化的に配慮されたサービスを提供する、「ファーストネーションズ子ども家族サービス」が設立されたことを心強く思うものである。 27.委員会は、締約国が、無国籍の子どもの状況を解決するため、条約第7条にしたがってさらなる措置(出生登録を確保するための措置および市民権の申請を容易にするための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、無国籍者の地位に関する条約(1954年)を批准することも提案するものである。 4.家庭環境および代替的養護 不法な移送および不返還 28.委員会は、カナダが国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の加盟国であることに満足感とともに留意し、かつ、親による子どもの誘拐の問題が拡大しつつあるという締約国の懸念に留意する。 29.委員会は、締約国が、カナダに誘拐されてきたすべての子どもに当該ハーグ条約を適用し、当該ハーグ条約の未加盟国に対してこれを批准しまたはこれに加入するよう奨励し、かつ、必要なときは、国際的な子どもの誘拐に十分に対処するための二国間協定を締結するよう、勧告する。委員会はさらに、不法な移送および不返還の事件を当事者の子どもの最善の利益にかなう形で解決するため、外交ルートおよび領事ルートを通じて最大限の援助が提供されるべきことを勧告するものである。 養子縁組 30.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をカナダ内外で促進することについて締約国が優先順位を与えていることを、心強く思う。しかしながら委員会は、養子縁組が州および準州の管轄事項である一方、法律上その他の適当な措置による当該ハーグ条約の批准のフォローアップがすべての州で行なわれているわけではないことに、留意するものである。委員会はまた、一部の州で、可能なかぎり自己の実親を知る養子の権利(第7条)が認められていないことも懸念する。 31.委員会は、養子の生年月日および出生場所ならびにその実親に関する情報が保全され、かつ当該養子がこれを入手できることを確保するため、締約国が法改正を検討するよう勧告する。さらに委員会は、連邦政府が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の全面的実施を自国の領域全体で確保するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 32.委員会は、子どもの体罰に代わる手段に関する調査研究を促進し、虐待の発生件数に関する研究を支援し、健康的な子育てを促進し、かつ児童虐待およびその影響に関する理解を向上させることによって体罰を抑制するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、あらゆる形態の体罰を明示的に禁止する法律を制定しておらず、かつ、体罰を許容する刑法第43条を削除するための行動をなんらとっていないことを、深く懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、子どものしつけにあたって「合理的な有形力」を使用することを認めた現行の規定を削除するための法律を採択するとともに、家庭、学校および子どもが措置される可能性のあるその他の施設における子どもに対するあらゆる形態の暴力を、たとえ軽いものであっても明示的に禁止するよう、勧告する。 5.基礎保健および福祉 健康および保健サービス 34.委員会は、とくに予算を増額し、かつ先住民族保健プログラムに焦点を当てることによってカナダ国民のための保健ケアを強化することに対する、政府のコミットメントを心強く思う。しかしながら委員会は、締約国も認めているように、相対的に高い健康水準がすべてのカナダ国民によって平等に共有されているわけではないことを懸念するものである。委員会は、とくに農村部および北部のコミュニティにおけるならびに先住民族コミュニティにとってのサービスの普遍性およびアクセス可能性に関して、州および準州による均等な法令遵守が懸念の対象となっていることに留意する。委員会は、先住民族の子どもの間で乳幼児突然死症候群および胎児性アルコール症候群の発生率が不相応に高いことを、とりわけ懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら、すべての子どもが同一の質の保健サービスを平等に享受することを確保するための措置をとるよう、勧告する。 思春期の健康 36.委員会は、締約国における乳児死亡率が平均して減少していることを心強く思うものの、先住民族の死亡率が高く、かつこの集団に属する若者の自殺率および有害物質濫用率が高いことを深く懸念する。 37.委員会は、締約国が、若者の自殺の原因として考えられる要因およびもっとも危険な状況にあると思われる若者の特徴に関する研究に引き続き優先的に取り組むとともに、この悲劇的現象の発生の削減につながる可能性がある、たとえば精神保健、教育および雇用の分野における支援、防止および介入のための追加的プログラムを整備するための措置を、実際的に可能なかぎり早期にとるよう、提案する。 社会保障ならびに保育サービスおよび保育施設 38.委員会は、親休暇の拡大、税控除の増額、子ども手当および先住民族のための特別プログラムを通じ、家族に対して援助を提供するために政府がとっている措置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、保育費用が高いこと、入所枠が不足していることおよび全国的基準が定められていないことに関する報告について懸念を覚えるものである。 39.委員会は、締約国に対し、保育の提供状況およびそれが子どもに対して与えている影響に関する違いを明らかにするために州および準州のレベルで比較分析を行なうとともに、すべての子どもがその経済的状況または居住地に関わらず良質な保育を利用できるようにすることに対する、調整のとれたアプローチを創案するよう、奨励する。 生活水準 40.委員会は、データの出典が限られているため、カナダ住宅貸付協会がホームレス問題を調査研究の優先課題に位置づけたことを知り、心強く思う。しかしながら委員会は、カナダの10大都市の市長がホームレス問題を国家的惨事であると宣言し、かつ政府に対してホームレス状態および貧困の削減のための国家的戦略を実施するよう促したことに留意した、社会権規約委員会の懸念(E/C.12/1/Add.31、パラ24・46)を共有するものである。 41.委員会は、子どもの貧困が問題として浮上してきていることに関する前回の懸念をあらためて表明するとともに、経済的および構造的変動ならびに女性の間で深刻化する貧困(これはとくにシングルマザーその他の脆弱な立場に置かれた集団に影響を与えている)、ならびに、その結果として子どもに生じる可能性がある影響についての、女性差別撤廃委員会(CEDAW)の懸念を共有する。 42.委員会は、とくに子どものホームレス状態が広がっていることの原因、および、ホームレス問題と児童虐待、児童買春、児童ポルノおよび子どもの人身取引との間に存在するいずれかの関係を明らかにするため、さらなる調査研究が行なわれるべきことを勧告する。委員会は、締約国に対し、この現象の発生を削減しかつ防止するための措置をとりながら、ホームレスの子どもに提供する支援サービスをさらに強化するよう奨励するものである。 43.委員会は、締約国が、貧困下で暮らす子どもの増加の原因となっている要因に引き続き対応するとともに、CEDAWが提案したようにシングルマザーの状況(A/52/38/Rev.1、パラ336)および脆弱な立場に置かれたその他の集団の状況に正当な注意を払いながら、すべての家族が十分な資源および便益を有することを確保するためのプログラムおよび政策を発展させるよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 44.委員会は、締約国における模範的な識字率および基礎教育の水準の高さを高く評価するとともに、カナダ国内および国際社会の双方において良質な教育を促進するために行なわれている多数の取り組みを歓迎する。委員会は、居留地に住む先住民族の教育水準を高めるための取り組みを、とくに心強く思うものである。委員会はさらに、低所得の生徒が中等教育以降の教育を受けようとする際の金銭的障壁への対応に関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/1/Add.31、パラ49)に対応するためにとられた措置に留意する。にもかかわらず、委員会は、在留資格のない移住者の子どもが一部州で学校から排除されているという訴えについての人種差別委員会の懸念(A/57/18、パラ337)をあらためて繰り返すものである。さらに委員会は、教育支出の削減、教員ひとりあたりの生徒数の増加、教育委員会の数の減少、先住民族の子どもの中退率の高さ、および、両方の公用語による指導が「生徒数に関する基準が満たされた場合」にのみ利用可能とされていることについて、懸念を覚える。 45.委員会は、締約国が、条約第29条1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目標を達成するため、とくに以下の措置をとることによって、締約国全域で教育の質をさらに向上させるよう勧告する。 (a) 農村部の子ども、先住民の子どもおよび難民または庇護希望者ならびに不利な立場に置かれたその他の集団の子どもおよび特別な注意を必要とする子どもにとくに注意を払いながら、子ども1人ひとりの文化的アイデンティティに配慮した無償のかつ良質な初等教育(子ども自身の言語によるものも含む)が、すべての子どもにとって利用可能でありかつアクセス可能であることを確保すること。 (b) 適用可能なときはさまざまな指導言語による人権教育(子どもの権利に関する教育を含む)が学校カリキュラムに編入されること、および、教員が必要な研修を受けることを確保すること。 (c) 国連教育科学文化機関の教育差別禁止条約(1960年)を批准すること。 (d) 学校におけるいかなる形態の体罰の使用も禁止するために適当な立法上の措置をとるとともに、規律の維持のための措置に関する議論への子ども参加を奨励すること。 7.特別な保護措置 子どもの難民 46.委員会は、新出入国管理および難民保護法(2002年)に子どもの最善の利益の原則が編入されたこと、および、国連難民高等弁務官事務所および非政府組織と協力しながら出入国管理手続における子どもの懸念に対応するための努力が行なわれていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、前回表明された懸念の一部について十分な対応が行なわれておらず、とくに家族再統合、退去強制および自由の剥奪の事案において、援助をもっとも必要としている人々が優先されていないことに留意するものである。委員会は、以下のことをとくに懸念する。 (a) 保護者のいない子どもの庇護希望者に関する国家的政策が定められていないこと。 (b) このような子どもについて法定後見人を任命するための統一手続が設けられていないこと。 (c) 「養育者から分離された子ども」の定義が定められておらず、かつ子どもの庇護希望者に関する信頼できるデータが存在しないこと。 (d) 脆弱な立場に置かれた子どもの公的福祉機関への付託について、十分な研修が行なわれておらず、かつ連邦当局が一貫したアプローチをとっていないこと。 47.条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ子ども(庇護を希望しているか否かは問わない)との関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養育者から分離されてカナダで庇護を希望している子どもについての国家的政策を採択しかつ実施すること。 (b) 後見の性質および範囲を明確に定めたうえで、後見人の任命手続を実施すること。 (c) 保護者のいない未成年者の収容は行なわないことを方針とし、かつこのような収容は「最後の手段」としての措置である旨の立法者意思を明確にするとともに、条約第37条にしたがい、収容の合法性を速やかに争う権利を確保すること。 (d) 養育者から分離された子どもであって国際的保護を必要としない者の出身国への送還について取り扱う、よりよい政策および実務指針を策定すること。 (e) 子どもの難民および庇護希望者が教育および保健のような基礎的サービスにアクセスできること、および、庇護希望者の家族のための手当の受給資格について、子どもに影響を与える可能性がある差別が行なわれないことを確保すること。 (f) 家族再統合への対応が迅速な方法で進められることを確保すること。 武力紛争の影響を受けた子どもの保護 48.委員会は、カナダが、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に関して批准時に宣言を行ない、軍隊への志願入隊を16歳から認めていることに留意する。 49.委員会は、締約国が、条約第38条3項に照らし、志願兵の採用手続において最年長者を優先させるためにとられた措置、ならびに、採用を18歳以上の者に限定するための努力(および法律をしかるべき形で見直すための努力)に関する情報を、来年提出予定の当該選択議定書に関する報告書において提供するよう、勧告する。 経済的搾取 50.委員会は、カナダが、子どもの経済的搾取に終止符を打つことに向けて国際的レベルで行なわれている活動に対して資源を投入してきたことを、おおいに評価する。しかしながら委員会は、カナダにおける状況についての情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約をカナダが批准していないことを懸念するとともに、13歳未満の子どもが経済活動に従事していることを懸念する。 51.委員会は、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約を批准し、かつその効果的実施のために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、必要なときはカナダにおける子どもの搾取的就労を防止するための効果的措置をとる目的で、子どもがどの程度働いているのかを十全に評価するための全国的調査研究を実施するよう、奨励するものである。 性的搾取および人身取引 52.委員会は、性的搾取に関する意識の促進およびその削減に向けた活動(1997年の刑法改正(法案C-27号)および2002年の法案C-15A号の導入により、性的搾取の被害者である子どもに対してサービスを求めた者の逮捕および訴追を容易にし、かつカナダ国民が国外で行なったあらゆる子どもの性的搾取行為についてカナダで訴追を行なえるようにしたことも含む)においてカナダが国内外で果たしている役割を、心強く思う。しかしながら委員会は、ストリートチルドレンおよびとくに先住民族の子どもが被害を受けやすい状況に置かれており、人口比に照らして不相応に多く、生存のための手段として最終的に性産業に行き着いているという懸念があることに留意するものである。委員会はまた、人身取引によってカナダに連れてこられる外国人の子どもおよび女性が増えていることも懸念する。 53.委員会は、締約国が、非政府組織および出身国との協力を増進させる等の手段も用いながら、文化的に適切なかつ調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護および援助(防止措置、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)をさらに増強するよう、勧告する。 ストリートチルドレン 54.委員会は、一定数の子どもが路上で生活しているのに、締約国報告書にストリートチルドレンに関する情報がないことを遺憾に思う。委員会の懸念は、子どもがカナダのホームレス人口の相当部分を占めていること、先住民族の子どもがこの集団においてきわめて過剰に代表されていること、および、この現象の原因には貧困、虐待的な家庭状況およびネグレクトを行なう親が含まれていることを示す、主要都市中心部から得られた統計によって際立つところである。 55.委員会は、締約国が、子どもがホームレスとなる現象の範囲および原因を評価するための研究を行なうとともに、これらの子どもの最善の利益にかなう形でかつこれらの子どもの参加を得ながらこの現象を防止しかつ削減する目的で、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら、これらの子どものニーズに対応するための包括的戦略を確立することを検討するよう、勧告する。 少年司法 56.委員会は、2003年4月に新法が制定されたことを心強く思う。委員会は、犯罪防止のための取り組みおよび司法手続に代わる手段を歓迎するものである。しかしながら委員会は、成人を対象とする刑が14歳という若年の子どもにも拡大して用いられていること、拘禁されている青少年の人数が先進工業諸国でも最高の部類に入ること、罪を犯した少年と成人を拘禁施設にいっしょに収容することが依然として適法であること、公衆が少年の記録にアクセスすることが認められていること、および、罪を犯した青少年の素性が公表されうることを、懸念する。加えて、青少年犯罪に関する公衆の認識は不正確であり、かつメディアによるステレオタイプに基づいていると言われている。 57.委員会は、締約国が、条約の規定および原則、とくに第3条、第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準を立法、政策および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 18歳未満のいかなる者も、諸事情またはその罪名の重大性に関わらず、成人として裁判の対象とされないことを確保すること。 (b) すべての裁判事件において、当事者である子どもの意見が十分に聴取されかつ尊重されることを確保すること。 (c) 条約第40条2項(b)(vii)にしたがい、法律に抵触したすべての子どものプライバシーが全面的に保護されることを確保すること。 (d) 拘禁されている子どもの人数を相当に削減するために必要な措置(たとえば拘禁に代わる社会内処遇措置および条件付釈放)をとるとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なかぎり短い期間でのみ用いられること、および、拘禁の際、子どもが常に成人から分離されることを確保すること。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 58.委員会は、とくに寄宿舎学校制度において先住民族に対して行なわれた歴史的不正に対するカナダとしての深い遺憾の意を表明した、連邦政府による和解声明を歓迎する。委員会はまた、カナダ全域の先住民族の生活向上に対し、第1回報告書の検討以降開始された、連邦予算で定められた多数の取り組みによって、政府が優先順位を与えていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、先住民族の子どもが、先住民族ではない他の子どもよりもはるかに高い頻度および深刻さで、多くの問題(いくつかの分野における差別を含む)を経験し続けていることを懸念する。 59.委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもと先住民族ではない子どもとの間に存在する人生の機会の格差に対応するための努力を継続するよう、促す。これとの関連で、委員会はとくに、自由権規約委員会(CCPR/C/79/Add.105、パラ8)、人種差別撤廃委員会(A/57/18、パラ330)および社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.31)のような国連人権条約機関が行なってきた、とくに土地および資源配分に関する所見表明および勧告をあらためて繰り返すものである。委員会は同様に、王立先住民族委員会の勧告に留意するとともに、締約国に対し、適切なフォローアップを確保するよう奨励する。 8.選択議定書の批准 60.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への署名を歓迎する。委員会は、締約国に対し、後者の早期批准を検討するよう促すものである。 9.文書の普及 61.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の行政および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 10.次回報告書 62. 委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、国連・子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的報告書の提出に関して困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回定期報告書の提出期限である2009年1月11日までに第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。 更新履歴:ページ作成(2012年4月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/305.html
総括所見:ベルギー(第3~4回・2010年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)OPAC(2006年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/BEL/CO/3-4(2010年6月18日)/第54会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年6月2日に開かれた第1521回および第1523回会合においてベルギーの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/BEL/3-4)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の状況に関する理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/BEL/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会はさらに、部門を横断した代表団の出席および同代表団との率直なかつ開かれた対話について、評価の意を表明するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書への締約国の第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/OPSC/BEL/CO/1)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書への締約国の第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1、2010年6月9日)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の法令が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 障害者が社会の主体的かつ集団的生活に参加する目的でアクセスする場所における合理的配慮を確保することにより、障害者の社会的および職業的インクルージョンを向上させる目的で、締約国の法律に「合理的配慮」の概念を導入した、2003年2月25日の法律の施行令(2006年10月11日)。 (b) 親が離婚した場合の子どもの共同親権を促進する2006年7月18日の新法。 (c) 破片弾の使用、製造および輸送を禁じた2006年の法律。 (d) 人身取引に関する2005年8月10日の法律。 5.委員会はまた、以下の条約の批准も歓迎する。〔訳者注/号番号が前項より連続しているのは原文ママ〕 (e) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年3月17日)。 (f) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2009年7月2日)。 (g) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(2005年5月26日)。 (h) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2004年8月11日)。 (i) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2004年6月17日)。 (j) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年のハーグ条約(2003年4月1日)。 6.委員会はまた、ドイツ語共同体でオンブズパーソンが任命されたこと(2010年5月17日)、国家子どもの権利委員会が設置されたこと(2006年)、および、「子どものための国家行動計画(2005~2012年)」が採択されたことも歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書に関する委員会の総括所見(2002年、CRC/C/15/Add.178)を実施するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら、一部の勧告については十分なフォローアップが行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、締約国の第2回定期報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの(とくに、調整、データ収集、貧困下で暮らしている子どもに対する差別、意見を聴かれる子どもの権利、体罰および少年司法に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。この文脈において、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2004年〔2003年〕)に対して締約国の注意を喚起するものである。 留保および宣言 9.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則に関する第2条についての宣言(ベルギー国民ではない子どもによる条約に掲げられた諸権利の享受を制限するもの)、および、刑事上の決定の上級司法機関による再審査に関する第40条についての宣言を維持していることに留意する。 10.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ7)にのっとり、かつウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、条約第2条および第40条について行なった宣言を撤回する手続を速やかに進めるよう勧告する。 立法 11.自国の法律を条約の原則および規定と調和させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、立法上の進展が3つの言語共同体間で異なっており、一部の共同体の子どもが、同国の他の共同体の子どもが享受している諸権利を全面的に享受できない状況が生じていることに留意する。とくに委員会は、ドイツ語共同体における立法上の進展が他の2つの共同体における進展に追いついていないことを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、すべての言語共同体における立法および行政規則が条約の規定および原則と全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 調整 13.2006年に国家子どもの権利委員会が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約の実施の全国的調整が行なわれていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利政策の包括性および一貫性を達成する目的で、条約の実施を調整する効果的制度を設け、かつ、連邦レベルおよび共同体レベルで設置された調整機構の協力を確保するよう勧告する。 子どものための国家的行動計画 15.委員会は、子どものための国家的行動計画に関する勧告(CRC/C/OPAC/BEL/CO/1、パラ9)が実施されていないことを深く遺憾に思う。とくに委員会は、「子どものための国家行動計画(2005~2012年)」に明確な目標、達成目標、指標またはタイムテーブルが掲げられておらず、目標の達成における進展を監視するためのいかなる機構も設けられておらず、かつ同計画に対していかなる特別予算も配分されていないことを懸念するものである。子どもに直接影響を及ぼす同国の貧困その他の格差を減らしていく政策を進めなければならないことを考慮に入れ、委員会は、締約国の一般的開発政策枠組みおよび計画立案環境において「子どものための国家的行動計画」が考慮されていない可能性があることに、さらなる懸念を表明する。 16.委員会は、締約国が以下のことを確保するよう勧告する。 (a) 「子どものための国家行動計画」が、子どもの権利によって下支えされ、かつ異なる地域的環境を正当に考慮した、開発計画の不可欠な一部に位置づけられること。 (b) 「子どものための国家行動計画」において具体的な目標、達成目標、指標およびタイムテーブルが掲げられ、かつ、達成された進展の評価および存在する可能性がある欠点の特定を目的とする監視機構が設置されること。 (c) 国家行動計画の全面的実施のために十分な予算配分が行なわれること。 (d) 条約の原則および規定、条約の両選択議定書、ならびに、2002年5月の特別会期で総会により採択された行動計画「子どもにふさわしい世界」および2007年の「子どもにふさわしい世界+5」レビューの宣言が考慮されること。 独立の監視 17.フラマン語、フランス語およびドイツ語の各共同体に独自のオンブズマンが存在することには留意しながらも、委員会は、これらの機関の根拠法、任務および能力がそれぞれ異なること、ならびに、連邦レベルで2つの異なるオンブズマン機関が存在することにより、締約国のすべての地域の子どもに対し、その権利の平等な保護およびその苦情に対する対応が保障されない可能性があることを懸念する。 18.委員会は、締約国に対し、すべてのオンブズマン機関の任務の調和を図るとともに、共同体レベルの諸オンブズマンの十分な調整ならびに連邦レベルおよび共同体レベルで活動している諸オンブズマン機関間の十分な調整を確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、オンブズマン機関が、子どもにとってアクセスしやすいものであり、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限およびこれに効果的に対応する権限を有することを確保するよう、促すものである。 資源配分 19.委員会は、締約国における社会支出が他の経済協力開発機構(OECD)諸国との関連で相対的に少ないこと、および、貧困下で暮らしている子どもの割合が高く、かつ近年上昇していることを懸念する。委員会はまた、締約国において一貫した予算分析および子どもの権利影響評価が実施されていないために、国および言語共同体のレベルで子どもに配分されている支出を特定し、かつ公共支出が子どもの生活に及ぼしている影響を評価することが困難になっていることにも懸念を表明するものである。 20.委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)後に採択された委員会の勧告(CRC/C/46/3参照)を考慮しながら、以下の措置をとるよう促す。 (a) 予算全体を通じて子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているかを追跡するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定に際して子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、いずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のために、当該投資が女子および男子に与える異なる影響について測定が行なわれることを確保しながら、この追跡システムを活用することも促す。 (b) 子どもに関する優先的予算科目が資源水準の変化から保護されることを確保すること。 (c) 公的な対話および参加(とくに子どもたちによる対話および参加)参加ならびに地方当局の適正な説明責任を確保するための対話および参加を通じて、透明なかつ参加型の予算策定を確保すること。 (d) 不利な立場に置かれた子どもまたはとくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども、および、社会的な積極的差別是正措置を必要とする可能性がある状況に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機の状況またはその他の緊急事態下にあっても保護されることを確保すること。 データ収集 21.事前質問事項に対する回答とともに付属資料として提供された統計は歓迎しながらも、委員会は、データ収集に対するアプローチが断片的である(条約のすべての分野が網羅されておらず、かつ、広域行政圏および言語共同体のレベルで不均衡な形で行なわれている)ことを依然として懸念する。委員会はまた、国家子どもの権利委員会に対し、データ収集の調整責任に対応するために必要な資源が提供されていないことも懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、常設のデータ収集機構を国レベルで設置するプロセスを速やかに進めるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、とくに、締約国のすべての広域行政圏および言語共同体の比較研究の基礎となりうる統一的なデータ収集システムを創設する目的で2009年に設置された作業部会の活動を支えるため、国家子どもの権利委員会に対し、子どもに関するデータの収集を調整するための十分な人的資源および財源が提供されるようにすることも求めるものである。 普及および意識啓発 23.条約の普及および条約に関する意識啓発のために締約国が行なっている取り組み(とくに、条約を子どもにやさしく書き直したものの刊行)には留意しながらも、委員会は、締約国が、条約に関する普及活動および意識啓発活動を、体系的なかつ対象を明確化したやり方で進めていないことを遺憾に思うものである。 24.前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ17および26)にのっとり、委員会は、締約国が、条約のすべての規定が大人によっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを確保するための努力を強化するとともに、この目的のため、ベルギーで暮らしている子どもたちおよび若者たちが委員会に提出した2010年2月の第1回報告書で行なった提案を考慮するよう、勧告する。 研修 25.若干の研修活動が実施されてきたことには留意しながらも、委員会は、この研修において、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、かつ条約のすべての規定が含まれているわけでもないことを懸念する。委員会はまた、人権教育がいまなお締約国全域の学校カリキュラムで明示的に位置づけられていないことへの懸念をあらためて表明するものである。 26.委員会は、締約国に対し、子ども、親ならびに子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、教員、保健ケア従事者およびソーシャルワーカーを含む)を対象とした、条約の原則および規定に関する体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを実施するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利を含む人権教育をすべての初等中等学校のカリキュラムに含めるよう求めるものである。 市民社会との協力 27.委員会は、国家子どもの権利委員会に市民社会の代表がいることおよびその活動に市民社会が関与していることを含む締約国と市民社会との協力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、締約国報告書に対する市民社会の意見が十分に反映されていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、子どもの権利の促進および保護への市民社会(NGOおよび子どもの団体を含む)の積極的かつ組織的な関与を促進するための努力を強化するとともに、政策の計画段階、委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成に対する市民社会の意見が全面的に考慮されかつ反映されることを確保するよう、勧告する。 国際協力 29.委員会は、ベルギー開発協力法(2005年)、および、2008年に議会に送付された子どもの権利に関する戦略ペーパーの起草を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの権利が――子ども兵士の使用など、いくつかの特定の子どもの権利侵害以外は――開発協力の主流に位置づけられていないように見えることを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国が2009年には国内総生産(GDP)の0.55%を国際援助に振り向けており、かつ、国際合意目標であるGDPの0.7%に2010年までに到達する決意を示していることに留意する。 30.委員会は、締約国に対し、2010年までにGDPの0.7%に到達するという決意を達成し、かつ可能であればそれを超えるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の実現が、開発途上国との間で締結される国際協力協定の最優先課題のひとつとなることを確保することも奨励するものである。その際、委員会は、締約国が、当該受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見および勧告を考慮するよう提案する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 31.委員会は、差別(とくに教育へのアクセスに関する差別)と闘うために言語共同体レベルで行なわれている取り組みに留意する。しかしながら委員会は、貧困下で暮らしている子どもが締約国で受けている複合的形態の差別(とくに教育、保健ケアおよび余暇へのアクセスに関わるもの)についての深刻な懸念をあらためて表明するものである。委員会はまた、障害のある子どもおよび外国出身の子どもが受けている継続的差別についても懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、事実上の差別の効果的監視を可能とする目的で細分化されたデータを収集するとともに、あらゆる形態の差別(被害を受けやすい状況に置かれたすべての集団の子どもに対する複合的形態の差別を含む)に対応し、かつ差別的な社会の態度(とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子どもおよび外国出身の子どもに向けられるもの)と闘う包括的な戦略を採択しかつ実施するよう、求める。 子どもの最善の利益 33.子どもの最善の利益の原則が、とくに養子縁組および被用者家族手当に関する法律に統合されていることには留意しながらも、委員会は、同原則がいまなお子どもに関わるすべての法律に一般的原則として反映されているわけではないことに、懸念を表明する。 34.委員会は、子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがい、すべての法規定、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定ならびにプロジェクト、プログラムおよびサービスに十分に統合されることを確保するために、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 35.委員会は、さまざまな分野で子どもの参加を促進するために多数の取り組みが行なわれていること(とくに、国家子どもの権利委員会の活動に子どもの関与を得ていること、および、ドイツ語共同体で2005年に「生徒議会」が創設されたこと)を歓迎する。しかしながら委員会は、ベルギーの子どもたちが、自分たちに直接関わる事柄についての意見がめったに考慮されないと感じていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、被害を受けやすい状況に置かれた子ども(すなわち貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、精神医療施設の子ども)が参加型のプロセスからしばしば排除されていることも懸念する。委員会は、報告プロセスへの子ども参加が連邦政府またはフラマン語共同体によって支援されなくなったことに、さらなる懸念を表明するものである。 36.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が引き続き、条約第12条にしたがって意見を聴かれる子どもの権利の実施を確保し、かつ、被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いながら、すべての行政段階ならびに家庭、学校およびコミュニティにおけるすべての子どもの参加を促進するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、報告プロセスへの子ども参加を引き続き支援することも求めるものである。 37.委員会はさらに、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の勧告を実施するために必要な措置を締約国がとっておらず、実施がもっぱら裁量的なものに留まっていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、離婚の際の居所および面会権に関して12歳以上の子どもの意見を聴取する青少年裁判官の義務が、実際には実効的なものとなっていないことも懸念するものである。 38.委員会は、裁判所における手続および行政手続について定めた法律で、自己の意見を形成する力のある子どもが意見表明権を有することおよびその意見が正当に重視されることが確保されるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ22)をあらためて繰り返す。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 体罰 39.委員会は、締約国が、家庭および非施設型の子どもの養護環境における体罰が法律で明示的に禁じられることを確保するために必要な措置をとっていないことを懸念する。 40.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)および前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ24(a))に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての場面、とくに家庭および非施設型の子どもの養護環境における子どもの体罰を、優先的課題として禁止するよう促す。委員会はまた、締約国が、非暴力的な代替的形態のしつけおよび規律維持が子どもの人間の尊厳と一致するやり方で行なわれることを確保するため、意識啓発キャンペーンおよび親教育プログラムを実施することも勧告するものである。 子どもに対する暴力に関する国際連合研究のフォローアップ 41.委員会は、家庭における暴力に対応するための新たな行動計画が2008年12月15日に採択されたこと、および、その他の態様のジェンダー特有の暴力(女性性器切除、強制婚および名誉犯罪など)にもその範囲を拡大することが構想されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、ブリュッセル地域において、緊急の状況下にある女性の暴力被害者およびその子どもを収容するシェルターが設けられていないことに、さらなる懸念を表明するものである。 42.委員会は、締約国に対し、女性差別撤廃委員会から2008年に勧告されたように(CEDAW/C/BEL/CO/6、パラ32)、女性および女子に対するあらゆる形態の暴力と闘うための包括的なかつ調整のとれた国家的戦略を速やかに策定するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、女性およびその子どもが締約国全域で専門の緊急宿泊施設を利用できるようにすることも求めるものである。 43.子どもに対する暴力に関する国際連合研究について、委員会は、締約国が、ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国際連合研究の勧告(A/61/299)を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる暴力を禁止すること。 (b) 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 (c) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (d) 体系的かつ全国的なデータ収集および調査研究を発展させかつ実施すること。 (e) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保すること、ならびに、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的なかつ(適切であれば)期限を定めた行動に弾みをつけることを目的として、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、同研究の勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (f) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表を支援すること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 44.委員会は、家族および子どものための社会サービスが広く利用可能とされていることは認知しながらも、緊急の援助を日露とする多くの子どもが、適切な社会サービスを受けるまでに長期間待機しなければならないことに留意する。委員会は、現在の保育サービスの供給が需要をはるかに満たせておらず、フランス語共同体では、主として保育に振り向けられる資金が不十分であるために、需要の27.2%しか満たせていないことに懸念を表明するものである。委員会は、この供給不足により、もっとも不利な立場に置かれた家族の子どもおよび障害のある子どもがとりわけ影響を受けていることに懸念を表明する。委員会はまた、フラマン語共同体において、保育職員のうち保育の訓練を受けた者が80%に満たないことも懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、適切な社会サービスを受けるまでに長期間待機しなければならない理由についての包括的な調査研究を実施するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、より多くの保育サービスを速やかに設置するとともに、子どもの特別な教育上のニーズまたはその家族の社会経済的状況にかかわらず、すべての子どもがアクセスできることを確保するようにも求めるものである。委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定に照らして、障害のある子どものためにこれらの子どもが必要とする特別な援助を備えた保育体制を整備するとともに、保育サービスが訓練を受けた職員によって提供することを確保し、かつ乳幼児期の発達を促進するよう求める。 家庭環境を奪われた子ども 46.委員会は、子どもの養護においていまなお主として入所施設への子どもの措置に焦点が当てられていること、および、フランス語共同体における3歳未満児の施設措置率がヨーロッパでもっとも高いことを懸念する。委員会はさらに、措置までの待機期間が長いことおよび措置変更が頻繁に行なわれることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、施設への子どもの措置を防止するために法的枠組みを見直すとともに、この目的のため、家族に対し、必要に応じて子育てのための社会的および経済的援助ならびに法的援助を提供するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、施設措置よりも家庭的な養護環境を優先させるとともに、条約第25条で要求されているように措置の定期的再審査を行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、2009年11月20日〔12月18日〕に採択された総会決議64/142に掲載されている、子どもの代替的養護に関する国連指針に対して注意を喚起する。 虐待およびネグレクト 48.委員会は、締約国における児童虐待の規模について、深刻な懸念とともに留意する。委員会は、フランデレン地域で虐待が乳児死亡の原因の第2位になっていること、および、締約国で児童虐待による死亡率が非常に高く、ほとんどのOECD諸国よりも高いことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、全事案の3分の1が性的虐待事案であること、および、性的虐待がいまなお、刑法において、暴力犯罪ではなく道徳に対する犯罪として位置づけられていることも懸念する。 49.国内全域における虐待およびネグレクトの規模に鑑み、委員会は、締約国に対し、児童虐待と闘いかつこれを防止するために必要な措置を緊急にとるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、虐待およびネグレクトに対抗する包括的な国家的行動計画を策定するとともに、防止および虐待防止の調整のための直接支援介入を行ない、かつ不当な取扱いを受けた子どもに具体的ケアを提供するサービスを相当に増加させるために必要な資源を確保するよう、求めるものである。委員会は、締約国に対し、女性差別撤廃委員会からすでに2008年に勧告されたように(CEDAW/C/BEL/CO/6、パラ30)、性的虐待を暴力犯罪として位置づけるよう求める。 養子縁組 50.国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約第21条との一致を図るために法改正が行なわれたことには留意しながらも、委員会は、国内養子縁組に比して国際養子縁組の割合が高いことに懸念を表明する。 51.委員会は、締約国に対し、とくに国内養子縁組手続を容易にすることにより、子どものいっそうの国内養子縁組を奨励するよう促す。 52.自己の出自を知る子どもの権利を保障するための法律を採択する意図が締約国にあることには留意しながらも、委員会は、養子縁組の一件書類に含まれる情報(両親の身元ならびに子どもおよびその家族に関する医療情報を含む)を収集し、保存しかつこれにアクセスするための明確な方式が定められていないことを懸念する。 53.委員会は、締約国が、養子となった子どもの出自に関する情報を収集し、保存しかつこれにアクセスするための具体的方式を速やかに定めるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)) 障害のある子ども 54.障害のある子どもの普通教育への統合に関する政令(2009年2月5日)がフランス語共同体で採択されたことには留意しながらも、委員会は、インクルーシブ教育が不十分であることおよび特別教育の定員数が足りないことにより、障害のある子どもがいかなる就学の可能性も奪われる可能性があることに、深刻な懸念を表明する。委員会はさらに、障害のある子どものなかでももっとも困難な状況を経験している子どもが、独自の基準にしたがって子どもを選抜する私立の保育所および入所ケアサービス施設からしばしば排除されていることを懸念するものである。 55.条約第23条および障害のある子どもの権利についての委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害のある子どもを対象とするインクルーシブ教育および保育所への統合を確保するためにいっそう実際的な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、障害のある子どもに対して配分される資源が、そのすべてのニーズ(普通学校において障害のある子どもを支援する専門家、とくに障害のある子どもを支援する教員の訓練のために設けられるプログラムを含む)を網羅するのに十分であること――および他の目的に流用されないように使途指定されたものであること――を確保するようにも求めるものである。 健康および保健サービス 56.委員会は、もっとも不利な立場に置かれた家族の子どもの健康状態について深刻な懸念を表明する。とくに委員会は、所得申告のない家族の子どもが生後1年以内に死亡する率が共稼ぎ家族の子どもの3.3倍であることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、医療保険に適切に加入していない家族のもとで暮らしている子どもが多いことも懸念する。委員会は、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を執行するために締約国が行なっている努力についての情報が乏しいことに、さらなる懸念を表明するものである。 57.委員会は、締約国に対し、もっとも不利な立場に置かれた家族の子どもの健康状態を生後1年間監視し、すべての子どもに対して保健サービスへのアクセスを確保し、かつ、自己の子どものために利用可能な保健サービスを求めるよう親に奨励する目的で、対象を明確化した緊急の措置をとるよう促す。委員会はまた、もっとも不利な立場に置かれた家族を対象とする保健サービスの費用負担を引き下げる目的で、健康保険制度の見直しを行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の執行を国内のすべての地域で強化するよう勧告する。 精神保健および精神医療を受けている子ども 58.子どもの精神的な健康およびウェルビーイングを向上させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、精神医療を受けている子どもの状況について深刻な懸念を表明する。委員会は、入院精神保健サービスを受けている子どもが、自己の見解を限られた形でしか表明できないこと、ならびに、外の世界からしばしば切り離されており、かつ、制限が正当である理由を明確に説明されないまま、家族および友人と定期的に面会する機会を制限されていることに、特段の懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、隔離措置が一般的に用いられていること、および、子どもの不可侵性を制限する可能性がある投薬が広く行なわれていることなど、入院精神保健サービスを受けている子どもに不当な取扱いが行なわれているという報告があることを深刻に懸念する。委員会は、精神保健ケアサービスを必要とする子どもの待機期間が長いことを懸念する。さらに委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された子どもに対する精神刺激薬の処方が短期間に急速に増加していることを示す情報について懸念を覚える。 59.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 入院精神医療施設の需要を減少させ、かつ子どもが家族から分離されることなく必要なサービスを受けられるよう、子どもおよび若者を対象とする精神保健ケア制度のあらゆる構成要素(プライマリーヘルスケアにおける精神障害の予防および治療ならびに専門的アウトリーチサービスを含む)を引き続き発展させること。 (b) 待機期間を短縮し、かつ必要とするサービスに子どもがアクセスできることを確保する目的で、あらゆるレベルの精神保健ケア制度に人的資源および財源を配分すること。 (c) 入院精神保健ケア施設に措置された子どもが、自己の状況(精神医療のための入院期間を含む)に関する適切な情報を提供され、家族および外の世界との接触を維持し、かつその意見を聴かれかつ尊重されることを確保すること。 (d) 市民社会と連携しながら、精神医療を受けている子どもの権利を独立の立場から監視するしくみを実施するとともに、子どもの不当な取扱いに関するすべての苦情および訴えを透明なやり方で調査すること。 (e) 子どもに対する精神刺激薬の過剰処方現象を調査するとともに、ADHDと診断された子どもならびにその親および教員が広範な心理的、教育的および社会的措置および治療にアクセスできるようにするための取り組みを行なうこと。 思春期の健康 60.委員会は、締約国における青少年の薬物および有害物質の濫用について懸念を覚える。委員会はまた、締約国で子ども、とくに青少年の肥満が増加していることも懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、青少年の薬物および有害物質の濫用と闘い、かつ子どもの過体重および肥満に対応するための努力を継続しかつ強化するとともに、条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に緊密な注意を払うよう勧告する。委員会は、締約国が、薬物およびアルコールの濫用を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 有害な伝統的慣行 62.委員会は、有害な伝統的慣行の状況に関する意識啓発および監視を図り、かつ、これらの観光と闘うための努力において、これらの慣行が蔓延している国々と協力するために締約国が最近行なっている努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国で暮らしている数百人の女子が女性性器切除の対象とされており、かつ、このような慣行を禁止する法律が、ヘルスワーカーにさえ依然として知られないままであることを懸念するものである。委員会はまた、この問題に関して正確な情報が収集されていないことおよび有罪判決例が存在しないことにも懸念を表明する。 63.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女性性器切除を禁じた法律を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) ベルギーで、またはベルギーに暮らしている女子を対象として国外で実行されている女性性器切除の規模および性質に関する研究を実施するとともに、このような研究に、この分野で活動しているNGOの関与を得ること。 (c) このような慣行を防止するため、同研究の結果を考慮に入れながら広報プログラムおよび意識啓発プログラムを組織すること。 (d) 有害な伝統的慣行の撲滅に関する国際協力を強化すること。 生活水準 64.委員会は、締約国から提供された、子どもの貧困が国家的優先課題に位置づけられてきた旨の情報、ならびに、権利を基盤とする「貧困と闘うための国家行動計画」について連邦、言語共同体および広域行政圏のレベルで合意が成立し、かつ同計画に子どもの貧困に関する独立の章が設けられている旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、子どもの16.9%以上が貧困線以下の生活を送っていること、ならびに、この割合が上昇しており、とくに外国出身の家族およびひとり親家族に影響を与えていることに、深刻な懸念を表明するものである。ホームレスの子どもに冬の間の宿泊施設を提供するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、ホームレスの女性および子ども(保護者のいない外国出身の子どもを含む)の人数が増えていると報告されていること、ならびに、このような女性および子どもの状況に対処するための統合的対応がとられていないことに、懸念を表明する。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 来たるべき欧州連合議長国担当期間中に、子どもの貧困に優先課題として引き続き焦点を当てること。 (b) 人権に裏打ちされ、かつ科学的根拠に基づいた包括的な貧困戦略を策定する目的で、子どもに影響を及ぼす貧困の複雑な決定要因、そのような貧困の規模および影響についての詳細な分析を実施すること。 (c) とくにひとり親ならびに多子家族および(または)親が失業中の家族など不利な立場に置かれた家族を対象とした、家族給付および子ども手当の制度の強化に対して多面的アプローチをとること。 (d) ホームレスの女性および子どもならびに保護者のいない外国出身の子どもを、貧困戦略(これらの者に適切な住居およびその他のサービスを提供するために緊急のかつ持続可能な措置をとることを含む)の優先的受益者に含めること。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育、職業訓練および職業指導 66.フラマン語共同体における教育の機会均等に関する政令の採択(2002年6月)および無償教育に関する2006年の通達を含め、教育への権利を確保するために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、締約国の子どもの間に存在する教育への権利の享受における相当の不平等、および、とくに子どもがアクセスできる教育機会およびその学業成績に社会経済的地位が及ぼす影響について、懸念を表明する。委員会は、以下のことに特段の懸念をもって留意するものである。 (a) 無償教育が憲法で保障されているにもかかわらず授業料が課されていることにより、教育へのアクセスにおける差別が非常に助長されていること。 (b) 貧困家庭の子どもおよび外国人である子どもは特別教育プログラムに付託される可能性が高いこと。 (c) 学校中退が犯罪視される傾向にあり、学校に行っていない若者が司法機関に通報されていること。 (d) フラマン語共同体において、学校に通っていない子どもの就学手当を削減する動きが出ていること。 67.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の憲法にしたがって授業料を廃止するために必要な措置をとること。 (b) すべての子どもがその社会的地位にかかわらず教育にアクセスできること、および、貧困家庭の子どもが今後特別教育プログラムに付託されないことを確保すること。 (c) 外国出身の子どもの教育の促進に特別な注意を払いながら、成績格差を削減するための努力を強化すること。 (d) 経済的および社会的にもっとも不利な立場に置かれた家族に悪影響を及ぼし、かつこのような家族による学校制度への関与の拡大に寄与する可能性が低い抑圧的措置をとることを控え、これに代えて、教員、親および子どもの関与を得ながら学校中退の根本的原因に対応する一貫した戦略を構築すること。 68.委員会は、学校でいじめ(とくに外国出身の子どものいじめ)が蔓延していることを懸念する。 69.委員会は、締約国が、学校におけるいじめおよび他のあらゆる形態の暴力と闘うための包括的な防止啓発プログラムを策定するよう、強く勧告する。 休息、余暇、レクリエーションおよび文化的活動 70.委員会は、休息、余暇ならびに文化的および芸術的活動への子どものアクセスを向上させるために地域レベルで進められている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに農村部および遠隔地において子どものための遊び場ならびに非公式な集まりおよびレクリエーションのための場所が不十分にしか利用できず、かつ、この点に関して自治体レベルで行なわれる決定への子どもの関与が限られていることに留意するものである。委員会は、もっとも不利な立場に置かれている家庭の子ども、難民受入れセンターの子ども、障害のある子どもおよび精神医学的ケアを受けている子どもがしばしばいかなる余暇活動へのアクセスも奪われているという懸念を表明する。委員会は、フランス語共同体で設けられていた、所得が不安定な家庭に手当を支給する「スポーツ小切手」が廃止されたことに、懸念とともに留意するものである。 71.委員会は、締約国に対し、すべての子どもの、休息および余暇に対する権利、子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するとともに、この点に関するいかなる意思決定プロセスにも子どもの全面的関与を得るよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、難民受入れセンターの子ども、障害のある子どもおよび精神医学的ケアを受けている子どもが遊びおよび余暇活動を行なうための十分かつアクセス可能な遊び場空間を提供されることを確保するよう、求めるものである。委員会はさらに、締約国に対し、不利な立場に置かれている家庭に、その子どもが条約第31条にしたがって自己の権利を全面的に行使できるようにするために必要な資源を提供するよう求める。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 路上で物乞いをする子ども 72.委員会は、ブリュッセル控訴裁判所第14法廷が2010年5月26日に行なった、関与している成人が親であるかぎりにおいて物乞いのために子どもを使用することを禁止しない旨の決定(判決第747号)について懸念を表明する。 73.委員会は、締約国に対し、関与している成人が親であるか否かにかかわらず、路上での物乞いのために子どもを使用することを明示的に禁止するよう求める。 保護者のいない子ども 74.委員会は、締約国における現在の受け入れ危機に対処するために行なわれている取り組み(とくに、単独渡航の未成年者に関する部門横断型タスクフォースが設置されたこと、ならびに、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者を受け入れるセンターが2か所で開設されたこと)を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どものうち、13歳以上であって庇護申請を行なっていない子どもが、受け入れセンターへのアクセスを拒否されて路上に追いやられていること。 (b) 受け入れセンターに利用可能な空きがないため、保護者のいない子どもが成人向けの庇護センターに収容されることがあり、かつ、場合によってはいかなるタイプの援助からも排除されることがあること。 (c) 2004年5月の後見法において、保護者のいないヨーロッパ出身の子どもが、後見人による援助を受けることから排除されていること。 (d) 時間および費用がかかる手続によって家族再統合が阻害されていること。 (e) 無国籍と認定された子どもに、締約国に在留する権利が認められていないこと。 75.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 庇護を申請しているか否かにかかわらず、保護者のいないすべての子どもに対して特別な保護および援助を確保する義務を遵守すること。 (b) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもであるすべての庇護希望者に対し、その国籍にかかわらず、庇護手続の期間中、後見人が任命されることを保障すること。 (c) 条約第10条にしたがい、かつ子どもの最善の利益を正当に考慮しながら、家族再統合への対応が積極的、人道的かつ迅速な方法で行なわれることを確保すること。 (d) 新たな無国籍認定手続に関する2008年5月の政府の宣言を実施するとともに、無国籍の認定を受けた者――子どもを含む――に対する在留許可の付与および無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討すること。 庇護を希望している家族の子ども 76.委員会は、2008年10月1日以降は子どものいる家族を閉鎖型センターにもう収容しない旨の移住政策・庇護大臣の決定にもかかわらず、子どもにふさわしくない施設において不安定な条件下でいまなお収容されたままの子どもおよびその親がいることに懸念を表明する。委員会はまた、ソーシャルワーカー、非政府組織および面会者がこれらの施設にアクセスできないことも懸念するものである。委員会はさらに、庇護申請を棄却された家族が施設から出なければならず、しばしば路上へと追いやられていることを懸念する。 77.委員会は、締約国に対し、閉鎖型施設への子どもの収容を取りやめ、庇護を希望している家族のために収容に代わる措置を創設し、かつ、庇護申請を棄却されて路上で生活している家族を対象として一時的居住の解決策を緊急に見出すために必要な措置をとるよう、促す。 武力紛争における子ども 78.委員会は、上院が、武力紛争における子どもに関する詳細な決議を2006年4月に採択したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、兵士の徴集について定めた法律(とくに戦時において、対象者が17歳に達する年の1月から民兵として採用することができるとするもの)の廃止のための措置をとっていないことを遺憾に思うものである。 79.委員会は、締約国が、前掲決議を政府の政策に統合することによってその全面的実施を進めるよう勧告する。委員会はまた、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の報告書の審査後に行なった、締約国が、戦時およびあらゆる態様の緊急事態下において18歳未満の者の軍隊への採用を認めたすべての法律を廃止するべきである旨の勧告(CRC/C/OPAC/BEL/CO/1、パラ11)もあらためて繰り返すものである。 売買、取引および誘拐 80.委員会は、強瀬労働および商業的性的搾取を目的とする子どもの人身取引と闘うために締約国が行なっている相当の努力(とくに、2008年7月11日に「人身取引・人の密輸対策国家行動計画」が採択されたこと、および、国際平和維持活動に派遣される軍隊を対象として人身取引対策に特化した研修が実施されていること)を歓迎する。しかしながら委員会は、人身取引の被害を受けた子どもが締約国で十分に保護されていないことに懸念を表明するものである。委員会は、子どもに在留許可が付与されるのは人身取引犯の捜査に協力する場合に限られていることに、特段の懸念とともに留意する。委員会はまた、人身取引の被害を受けた子どものシェルターへの収容または保護がしばしば十分でないために、これらの子どもが受け入れセンターから失踪し、かつ(または)しばしば路上へと追いやられていることも、深刻に懸念するものである。 81.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 問題の規模を評価すること等を通じ、性的目的の子どもの人身取引の発生を減少させかつ防止するための努力を強化すること。 (b) 人身取引の被害を受けたすべての子どもに保護を提供する義務を遵守し、かつ、これらの子どもに対し、その国籍および法的手続に協力する意思または能力の有無にかかわらず、在留許可を付与すること。 (c) 人身取引の被害を受けた子どもに援助を提供する入所施設を増設するとともに、社会サービスによる養護の対象とされた子どもが十分な援助を受け、かつ人身取引または再度の人身取引のおそれにさらされないことを確保するため、受け入れセンターおよびシェルターで被害を受けた子どもに対応する専門家の、子どもの権利に関する知識およびスキルを増進させること。 (d) それぞれ1996年、2001年および2008年に開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議の成果文書、および、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮に入れること。 少年司法の運営 82.2006年5月15日および6月13日の法律によって少年司法制度に加えられた修正には留意しながらも、委員会は、条約で唱道されている、少年犯罪の問題への対応に関するホリスティックなアプローチを防止、手続および制裁との関連も含めて採用するべきである旨の以前の勧告が、締約国によって十分に考慮されてこなかったことを懸念する。委員会は、以下のことについて特段の懸念を表明するものである。 (a) 罪を犯した16~18歳の子どもが、いまなお成人裁判所における審理の対象とされ、かつ、刑を言い渡された場合に成人用の刑務所に収監される可能性があること。 (b) 子どもの弁護人選任権が、予審判事による尋問を受ける際に常に尊重されているわけではなく、かつ警察による取り調べの際には認められていないこと。 (c) 子どもが自ら法的手続きを開始できないこと。 (d) 拘禁は最後の手段として用いられるべきであるところ、締約国が、子どもを対象とする閉鎖型施設の収容定員を倍増させたことに表れているように、厳格な拘禁方針をますます適用するようになっていること。 (e) 閉鎖型施設と主要都市との間に距離があるため、家族が、拘禁された子どもとの定期的接触を維持するうえで困難に遭遇していること。 (f) 未成年者の一時的収容のための連邦閉鎖型施設(エーフェルベルグ)で独居拘禁がいまなお科されていること。 (g) 子どもに対し、反社会的行動を理由とする自治体の行政罰が、少年司法制度の枠外で科される可能性があること。 83.委員会は、締約国に対し、少年司法関連の基準、とくに条約第37条(b)、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則が全面的に実施されることを確保するよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れるよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもが成人として審理され、かつ成人とともに拘禁される可能性を解消する目的で法律を見直すとともに、成人刑務所から子どもを直ちに退所させること。 (b) 手続のあらゆる段階(警察官による取り調べ中を含む)で、子どもが弁護士および信頼する大人の立会いを得ることを確保すること。 (c) 子どもが少年法弁護士の援助を得て法的手続を開始できるようにするための法的根拠を設けること。 (d) 子どもの拘禁が最後の手段として、かつもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保するため、罪を犯した少年に対する代替的制裁についての包括的政策を、優先的課題として策定すること。 (e) 自由を奪われた子どもが居住地の近くの施設に収容されることを確保するための方法を模索するとともに、これらのすべての施設に公共交通機関でアクセスできることを確保すること。 (f) 言い渡された刑が定期的に再審査されることを確保すること。 (g) 子どもが今後は事実上の隔離の対象とされないことを確保すること。 (h) 行政罰と条約との両立可能性について評価を行なうこと。 8.国際人権条約の批准 84. 委員会は、締約国が、まだ加盟国となっていない国際連合の中核的人権条約およびその選択議定書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問ならびに〔および〕他の残虐な、非人道的なおよび〔または〕品位を傷つける取扱いおよび刑罰に関する条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する〔国際〕規約の選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 85.委員会は、とくにこれらの勧告を内閣、議会(上院および代議院)ならびに該当するときは言語共同体および広域行政圏レベルの政府および評議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 86.委員会はさらに、条約、その選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会、若者グループ、メディアその他の専門家グループおよび子どもが同国のすべての公用語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 87.委員会が採択し、かつその報告書(CRC/C/114およびCRC/C/124)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、また締約国の第5回定期報告書の提出期限が第3回・第4回定期報告書の検討後4年を待たずに到来することに留意し、委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年7月14日(すなわち、条約で定められた第6回定期報告書の提出期限の18か月前)〔まで〕に提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではなく(CRC/C/118参照)、かつ、この総括所見のフォローアップ、ならびに、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施に関する情報を記載したものであるべきである。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 88.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/301.html
総括所見:東ティモール(第2~3回・2015年) 第1回(2008年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/TLS/CO/2-3(2015年10月30日)/第70会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年9月25日に開かれた第2041回および第2042回会合(CRC/C/SR.2041 and 2042参照) において東ティモールの第2回・第3回定期報告書(CRC/C/TLS/2-3)を検討し、2015年10月2日に開かれた第2052回会合(CRC/C/SR.2052参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解の向上を可能にしてくれた、締約国の第2回・第3回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/TLS/Q/2-3/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書の批准またはこれへの加入を歓迎する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2009年)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年)。 (c) 国際組織犯罪防止条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年。)。 (d) 国際労働機関・最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2009年)。 4.委員会は、とくに以下の立法措置がとられたことに満足感とともに留意する。 (a) 労働法(2012年)。 (b) 民法(2011年)。 (c) ドメスティックバイオレンス禁止法(2010年)。 (d) 刑法(2009年)。 (e) 証人保護法(2009年)。 (f) 教育基本法(2008年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置が確立されまたは採択されたことも歓迎する。 (a) 東ティモール戦略開発計画(2011~2030年)。 (b) 国家教育戦略計画(2011~2015年)および教育行動計画。 (c) 就学前教育に関する国家政策枠組み(2015年)。 (d) 国家子どもの権利委員会(2009年、現在の呼称は子どもの権利委員会)。 (e) 子どもにやさしい学校プログラム(2009年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(2008年、CRC/C/TLS/CO/1)を実施するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部、とくに普及、意識啓発および研修に関するもの(前掲パラ23)への対応が全面的にとられていないことに留意する。 7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第1回報告書についての総括所見の勧告のうち全面的に実施されていないものに対応するために必要なあらゆる措置をとるよう促す。 立法 8.委員会は、継続的な法改正が締約国における子どもの権利の向上に役立ってきたことを歓迎する。しかしながら委員会は、条約の実施にとって重要な、子どもの権利に影響を与えるすべての分野における法律の採択が遅れていることを懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼすあらゆる分野で、条約に一致する一貫した立法上の枠組みを発展させるための努力を継続しかつ強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/TLS/CO/1、パラ9参照)をあらためて繰り返す。とくに委員会は、子ども法、少年司法制度、人身取引の防止、抑止および処罰のための法律、ならびに、子どもの保護および代替的刑事処分に関連して現在起草されている法律を速やかに採択するよう促すものである。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、締約国における子どもの権利の実施のための国家的行動計画の策定について国民協議会で議論されている最中である旨の、締約から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、このような包括的行動計画の採択および実施が遅れていることを懸念するものである。 11.委員会は、締約国が、前回勧告されたように(CRC/C/TLS/CO/1、パラ11参照)子どものための行動計画を速やかに採択するとともに、その全面的実施のための戦略(締約国全域での子どもの権利の実施における進展を効果的に監視しかつ評価するための、具体的な、期限を定めた、かつ測定可能な大目標および達成目標を記載したもの)が策定されることを確保するよう、勧告する。このような国家的戦略は、加えて、その実施のために必要な人的資源、技術的資源および財源が適切に配分されることを確保するため、国家的な、部門別のおよび自治体の戦略および予算と関連づけられるべきである。 調整 12.委員会は、2009年に子どもの権利委員会が設置され、現在は国務大臣、社会問題調整官および教育大臣の権限のもとに置かれていることに留意する。しかしながら委員会は、同委員会が、その任務を効果的に履行するために必要な職員および資源を有していないことを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、子どもの権利委員会に対し、包括的な、一貫したかつ整合性のある子どもの権利政策の効果的な実施および調整をあらゆるレベルで進め、かつこれらの政策およびプログラムが子どもの権利に与える効果を評価するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう勧告する。 資源配分 14.委員会は、子どものための保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに対する予算配分が相当に増額されたこと、ならびに、条約の実施に関連する国際的援助および開発援助が行なわれていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約に基づく子どもの権利の実施のために配分される予算の割合に関するデータがないことを懸念するものである。 15.子どもの権利のための資源と国の責任に関する一般的討議(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの権利の視点を含んだ予算編成手続を確立するとともに、関連部門および関連機関における子どものための明確な配分額(具体的指標および追跡システムを含む)を定めること。 (b) 積極的是正のための社会的措置を必要とする可能性のある、不利なまたは権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもに関する予算科目を定めるとともに、当該予算科目が、たとえ経済危機、自然災害および緊急事態の状況下にあっても、とくに保健および教育との関連で保護されることを確保すること。 (c) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の効率性、十分性および公平性を監視しかつ評価する機構を設置すること。 (d) 国および地方のレベルで子どもの権利の実施のために配分される国家予算の割合についての、細分化された情報を提供すること。 データ収集 16.委員会は、データ収集のプロセスが発展中であり、かつ、子どもに関するデータの収集および分析のためのデータベースを開発した省庁もあることに留意する。委員会はまた、子どもの問題に関するさまざまな調査が実施されてきたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、子どもに関する全国的な中央データベースが開発されておらず、かつ、締約国の全般的データ収集体制に、とくに国家的計画立案、予算編成、監視および報告との関連で欠落があることを懸念する。 17.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、データ収集システムを速やかに改善するよう勧告する。データは、条約のすべての分野を網羅し、かつ年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。さらに委員会は、これらのデータおよび指標が関連省庁間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)および地域機構との技術的協力を強化することも勧告するものである。 独立の監視 18.委員会は、人権・正義監視官事務所が〔人権の促進および保護のための国内機関国際調整委員会から〕「A」認定を受けているという情報、および、同事務所が行なっているさまざまな活動(ディリおよび各県における、条約に関連した調査、監視、意識啓発プログラムおよび教育プログラムを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、専門性の欠如、人的資源の対応能力および財政的制約を理由として、同事務所内に子どもに関する特別部署も子どもの権利に関する窓口も設けられていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、同事務所が、子どもの権利の擁護、および、子どもによってまたは子どもに代わって申し立てられた苦情のフォローアップにおいて積極的役割を果たしていないという情報が寄せられていることも懸念する。 19.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 前回勧告されたように(CRC/C/TLS/CO/1、パラ15参照)、子どもによって申し立てられた苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応し、被害を受けた子どものプライバシーおよび保護を確保し、かつ被害者のために監視、フォローアップおよび検証のための活動を行なうことができる、適切な人員および資源を与えられた子どもの権利担当部局を、人権・正義監視官事務所内に設置すること。 (b) 苦情申立ての権利に関する、一般公衆およびとくに子どもたちの意識啓発を図るとともに、手続がアクセスしやすく、秘密が守られる、かつ子どもにやさしいものとなることを確保すること。 B.子どもの定義(第1条) 20.成人年齢が17歳であることには留意しながらも、委員会は、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護を享受しているわけではないことを懸念する。 21.委員会は、締約国が、すべての国内法において、条約第1条にしたがい、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護を享受できるようになることを確保するための措置をとるよう勧告する。 22.委員会は、最低婚姻年齢が男女ともに17歳とされていること、および、とくに女子の児童婚が締約国で依然として広く蔓延していることを懸念する。委員会は、16歳の女子および男子が親の同意を得て婚姻できることをとりわけ懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 男子および女子の最低婚姻年齢が18歳に引き上げられ、かつ、16歳未満の子どもはいかなる状況下でも婚姻できないことを確保することこと。 (b) 世帯、地方当局、裁判官、宗教的指導者およびコミュニティの指導者を対象とした、早期婚が女子の身体的および精神的健康およびウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを発展させること。 (c) 有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号に照らし、締約国で子どもに対して行なわれている有害慣行に終止符を打つための積極的措置をとること。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.委員会は、締約国の憲法およびその他の法律に、差別からの子どもの保護に関する具体的規定(障害のある子どもおよび婚外子に関連するものを含む)が含まれていることを称賛する。しかしながら委員会は、特定の集団の子ども(とくに帰還民の子ども、洗礼証明書を所持していない子ども、婚外子、家族間の性的関係によりできた子どもおよび障害のある子ども)が、もっとも重要な点として教育その他のサービスへのアクセスとの関連で、事実上の差別に直面していることを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、締約国のすべての子どもが法律上の差別も事実上の差別も受けることなく条約上の平等な権利を享受できることを確保するとともに、とくに意識啓発キャンペーンおよび教育(とくにコミュニティのレベルおよび学校におけるもの)を通じて、前述の集団の子どもおよび周縁化された状況に置かれているその他の集団の子どもに対するいかなる形態の差別も効果的に解消されることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 26.委員会は、子どもの最善の利益の原則は政府のあらゆる部門で主流化されており、かつ子ども法案および人身取引の防止、抑止および処罰のための法律案に掲げられている旨の、定期報告書に記載された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利をすべての行動において確保し、かつ、子どもに関連するすべての法律、行政上および司法上の手続、政策ならびにプログラムで当該権利を適用するために締約国が行なっている努力についての情報が不十分であることを懸念するものである。 27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利がすべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫した解釈および適用がなされることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断することおよびこれらの利益を第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう、奨励されるところである。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、子どもに関連するさまざまな法案および関連の行政手続および司法手続において子どもの意見の尊重を確保するために締約国が行なっている努力に留意する。委員会はまた、国家青年評議会、国家青年局および若者議会が行なっている、子ども参加の多数の活動および取り組みにも留意するものである。しかしながら委員会は、伝統的および文化的慣行において、家庭、学校およびコミュニティにおける子どもの意見が容易に配慮されかつ認められていないこと、ならびに、子どもの意見の尊重が、実際上、あらゆる関連の分野でかつ国および地方のレベルで、障害のある子ども等との関連で十分に実施されていないことを懸念するものである。 29.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化するための措置をとるよう勧告する。委員会は、この目的のため、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を定める等の手段により、関連の法的手続で意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 (b) 家庭、コミュニティ、学校および生徒評議会において、脆弱な状況下にある子ども(障害のある子どもを含む)に特段の注意を払いながら、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施すること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録 30.委員会は、出生登録所の拡大、オンライン登録簿および移動出生登録所の開設ならびに子どもの登録全国キャンペーンを通じて出生登録を増やすために行なわれてきた努力に関する、締約国報告書に記載されていた情報を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されていない子どもまたは登録が遅れる子どもが多いこと、および、とくに農村部の子どもおよび証明書の費用に関わって、登録を妨げる障壁があることを懸念するものである。委員会はまた、住民登録法案がまだ承認されていない旨の懸念もあらためて表明する(CRC/C/TLS/CO/1、パラ35参照)。 31.委員会は、締約国が、すべての子どもに対して出生証明書が無償で提供されることを、締約国の遠隔地における移動登録所およびアウトリーチプログラム等も通じて確保するための努力を強化するとともに、出生登録の重要性に関する意識啓発を図り、かつ住民登録法案の採択および実施を進めるよう勧告する。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 32.委員会は、子ども法案が学校における体罰を禁じており、かつ、学校内外の児童虐待に関する通報義務を定めていることに留意する。委員会は、学校における体罰について申し立てられた苦情を調査するために教育省がとった措置に関する、締約国報告書に記載されていた情報を歓迎するものである。しかしながら委員会は、体罰が、子どものしつけおよび規律のための手段として社会で広く受け入れられており、かつ、学校ならびに家庭および入所施設においていまなお合法とされていることを懸念する。委員会はまた、あらゆる場面で行なわれた体罰の件数に関するデータがないことも懸念するものである。 33.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および施設を含むあらゆる場面での体罰を明示的に禁止するため、子ども法の採択および法改正を進めること。 (b) 体罰に代わる手段としての積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育てならびにしつけおよび規律維持を促進するとともに、親教育プログラム、ならびに、校長、教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家を対象とする研修を拡大すること。 (c) 体罰が子どもに及ぼす悪影響について公衆一般に知らせるための意識啓発キャンペーンを通じて行なっている努力の強化拡大を図るとともに、このプロセスへの子どもたちおよびメディアの関与を積極的に求めること。 虐待およびネグレクト 34.委員会は、締約国が、子どもの虐待およびネグレクトの問題に対処するためのさまざまな取り組み(締約国の全13県に子ども保護担当官を追加配置したことを含む))を行なってきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国で子どもの虐待およびネグレクトが蔓延していることを懸念するものである。委員会はさらに、子どもの虐待およびネグレクトに関して利用可能なデータが限られていること、ならびに、調査、フォローアップ、回復および社会的再統合に関する情報がないことも懸念する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 必要な法律および政策(とくに家族間暴力禁止法および子どもの保護に関する政策)の実施ならびに子ども保護法案の採択および実施との関連も含め、あらゆる場面における子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略を立案する目的で、子どもたちの関与を得ながら、意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。 (b) 子どもその他の者が虐待およびネグレクトの事案を通報するための容易にアクセスできる機構を、被害者のための必要な保護を確保しながら確立すること。 (c) 被害を受けた子どもの身体的および心理的リハビリテーションの便宜を図り、かつ、これらの子どもが精神保健サービスを含む保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家および職員を対象として、家族間暴力の防止および監視の方法、ならびに、このような暴力についての苦情を子どもおよびジェンダーに配慮したやり方で受理し、捜査しかつ訴追する方法についての必要な研修が実施されることを確保すること。 (e) 子ども保護ネットワークが暴力および虐待の根本的原因に対処するための長期的プログラムを実施できるよう、同ネットワークに対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (f) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得ることならびにこれらの者に研修および支援を行なうこと等の手段により、家族間暴力、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対応することを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 性的搾取および性的虐待 36.委員会は、刑法において性的搾取罪および子どもの虐待罪が犯罪とされていることを歓迎する。委員会はまた、子どもの保護を増進させるために締約国が行なっているいくつかの取り組み(性暴力および性的虐待の被害者に対する援助および支援を含む)も歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国において、近親姦を含む子どもの性的虐待が広く行なわれていることを深刻に懸念する。委員会はまた、裁判所に持ちこまれた事件の件数および当該手続の結果に関する情報がないことも懸念するものである。委員会はさらに、「ジェンダーを理由とする暴力に関する国家行動計画」がその効果的実施のための資源を欠いていることを懸念する。 37.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの性的虐待、性的搾取および近親姦の事案の義務的通報、ならびに、これらの事案に関する迅速かつ効果的な捜査および加賀者の訴追を確保するための機構、手続および指針を確立すること。 (b) 性的搾取、性的虐待および近親姦の被害を受けた子どもに対するスティグマと闘うための意識啓発プログラムおよび教育プログラムを実施するとともに、このような人権侵害を通報するための、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしくかつ効果的な回路を確保すること。 (c) 子ども保護機関に十分な人員および資金が提供されること、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家および職員が、身元確認を受け、かつ必要な監督および研修を受けることを確保すること。 (d) 法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象として、このような暴力についての苦情を、子どもおよびジェンダーに配慮した、被害者のプライバシーを尊重するやり方で受理し、監視し、捜査しかつ訴追する方法についての体系的研修を実施すること。 (e) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、子どもの性的搾取の防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策が策定されることを確保すること。 (f) 「ジェンダーを理由とする暴力に関する国家行動計画」を効果的に実施し、かつ同計画に対して十分な資金が拠出されることを確保すること。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条ならびに第27条(4)) 家庭環境 38.子どもの養育責任の遂行にあたって親および法定保護者を援助するために目覚ましい数のサービスおよびプログラムが存在するにもかかわらず、委員会は、多くの家族が貧困状況にあり、食料が不安定な状況に直面しており、かつ適切な援助を受けられていないために、子どもが入所型養護施設に措置されていることを懸念する。委員会はまた、貧困削減の取り組みにもかかわらず金銭的支援が不十分であり、かつ乳幼児期教育および乳幼児のケアへのアクセスも不十分であることも懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの保護および子どものケアのために家族およびコミュニティを強化することに焦点を当てた「子ども・家族福祉制度政策」を完成させかつ実施すること。 (b) 家族給付および子ども手当ならびにその他のサービス(アクセスしやすい乳幼児期の教育およびケアなど)の制度を強化する等の手段により、子どもの養育責任の遂行にあたって親および法定保護者に(とりわけ貧困の状況にある者に対しておよびとくに農村部において)提供するための努力を強化すること。 (c) 家族カウンセリングおよび親教育のプログラムを拡大すること。 家庭環境を奪われた子ども 40.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 非公式な里親養育の取決めにより、子どもがさまざまな理由で実の家族以外の家族のもとに措置され、そのため虐待および搾取を受けやすい状況に置かれていること。 (b) 親族養育が東ティモールで広く行なわれている伝統的慣行であり、かつ一般論としては肯定的慣行であることに留意しつつも、保護機関による監視が限られているために子どもが虐待を受けやすい状況に置かれていること。 (c) 入所型養護施設への子どもの措置およびこのような施設における養護の質の監視に関して、政府による監督が不十分であること。 41.子どもの代替的養護に関する指針に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、金銭的もしくは物質的貧困またはこのような貧困を直接かつ唯一の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離すること、子どもを代替的養護に受け入れることまたは子どもの社会的再統合を妨げることの唯一の正当化事由とされてはならないことを強調する。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 家庭外への措置(非公式な取決めを含む)を防止するため、実の家族に提供される支援をさらに強化すること。 (b) 代替的養護を必要とする子どもが施設ではなく家庭を基盤とする養育先に措置されること、および、これらの子どもが、その子どもの最善の利益にかなうときは、家族との接触を維持しまたは家族のもとに復帰することを確保するための努力を強化すること。 (c) 子どもを代替的養護への措置の対象とすべきか否かの判断に関する、子どものニーズおよび最善の利益を基礎とした十分な保障措置および明確な基準(子どもホームへの子どもの措置の定期的再審査を含む)を確保すること。 (d) 入所型養護施設の運営に関する政府の監督を強化するとともに、「子ども養護センターおよび寄宿舎に関する政策、手続および基準」(2010年)を見直すことにより、すべての入所型養護施設が当該政策(これには執行のための機構も含まれるべきである)を遵守しながら運営されることを確保すること。 (e) 施設入所児のリハビリテーションおよび社会的再統合を可能なかぎり最大限に促進する目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 養子縁組 42.委員会は、しばしば貧困の状況または債務を理由として家族が子どもを他の家族に託すという、非公式な養子縁組に関わる慣行が締約国で行なわれていることを懸念する。委員会はまた、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准した締約国が、実際には同条約を実施していないことも懸念するものである。 43.委員会は、締約国が、締約国における非公式な養子縁組の問題について緊急に規制を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、条約にしたがった養子縁組に関する法律および政策を採択することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を実施するための法律および政策を採択するとともに、この点についてとられた措置(遵守を確保するための機構を含む)についての情報を次回の定期報告書で提供するよう勧告する。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3)および第33条) 障害のある子ども 44.委員会は、健康促進との関連で戦略開発計画に障害が含まれていることを歓迎する。委員会はまた、障害のある子どもを普通教育の場で支えるための研修を教員に対して実施する3か所の研修センター(ディリ、ローテムおよびアイレウ)が、パイロット事業として設置されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 社会のあらゆる領域で障害のある子どもの権利および積極的参加を保障するために必要な、法律および政策の改革ならびに国レベルでの調整が実施されていないこと。 (b) 障害のある子どもが、広範な差別、ネグレクトおよび虐待の対象とされており、教育および保健ケアにアクセスできておらず、かつ社会生活のすべての分野に効果的に統合されていないこと。 (c) 障害のある子どもの権利に関する公衆の意識が欠けていること。 (d) 学校、スポーツ施設、余暇施設および入所施設における、障害のある子どものための質量ともに十分な便益が、とくに農村部において整備されていないこと。 (e) 締約国における障害のある子どもに関する統計データが存在しないこと。 (f) 障害のある人の権利に関する条約を締約国がまだ批准していないこと。 45. 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、 障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を定め、かつ、以下の措置をとるよう促す。 (a) 「障害のある人々のための国家行動計画」および「インクルーシブ教育に関する国家政策および行動計画」の見直しおよび承認を図り、かつ障害のある子どもが利益を得られるようなインクルーシブなやり方でこれらの計画が実施されることを確保する等の手段により、障害のある子どもの権利の促進および保護のための立法上および政策上の枠組みの強化、ならびに、法律および政策を調整するための努力の強化を引き続き進めること。 (b) カウンセリングおよび研修の機会を提供すること、「ボルサ・ダ・メイ」(母の財布)給付金を増額すること、ならびに、障害のある子どもを支援する一助とするための養育者向け給付の実施を検討すること等の手段により、障害のある子どもの養育者に対する支援を強化すること。 (c) 障害のある子どものために働く専門家(教員、ソーシャルワーカーならびに保健、医療、治療およびケアに従事する専門家など)を対象として継続的研修が実施されること、指針および研修資料が作成されること、ならびに、ケア提供者の実績を監視するための機構が整備されることを確保すること。 (d) 学校および保健ケア施設がアクセシブルであり、かつ十分な人員および資金を提供されること、ならびに、障害のある子どもが尊厳および敬意をもって扱われ、かつ実効的保護を享受できることを確保すること。 (e) 公衆およびその他の関係者に対して障害のある子どもの権利について周知するための、持続的な公衆意識啓発キャンペーンを実施すること。 (f) 障害のある子どもが社会生活のあらゆる分野(学校、スポーツおよび余暇活動を含む)に全面的に統合されること、ならびに、諸施設およびその他の公的空間が障害のある子どもにとってアクセシブルであることを確保するために必要なあらゆる措置をとること。 (g) 障害のある子どもの状況を前進させるための適切な政策およびプログラムについて主要な部門が十分な情報を得られるようにする目的で障害のある子どもの状況に関する包括的評価を行なうため、障害別に細分化されたデータの収集を強化すること。 (h) 障害のある人の権利に関する条約の批准を検討すること。 健康および保健サービス 46.委員会は、締約国の全国民がプライマリーヘルスケアに無償でアクセスできるようにすることに対する締約国の決意を称賛するとともに、「国家保健部門戦略計画」ならびに予防接種、栄養ならびに子どもおよび青少年の健康関連のさまざまな戦略を実施する計画があることに留意する。委員会はまた、5歳未満児死亡率が減少したことならびに発育阻害、消耗症および低体重に分類される子どもを少なくするための努力が行なわれていること、子どもの栄養状態が全般的に改善されたこと、ならびに、子どもの予防接種の範囲が拡大されたこと(とくに妊産婦破傷風、新生児破傷風、天然痘およびポリオが根絶されたこと)も称賛するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 十分なスキルを有する保健ケア専門家の人数が不十分であること、保健に関する基準が劣悪であることおよび締約国全域(とくに農村部)で公式な保健サービスが不十分であることが、いまなお高い乳児死亡率および5歳未満児死亡率、高い妊産婦死亡率、子どもの障害ならびに疾病発生件数の多さを固定化させる根強い要因となっていること。 (b) 栄養不良、微量栄養素欠乏症および発育阻害率の水準が高いこと、予防接種を完全に受けていない子どもの人数が多いこと、ならびに、とくに農村部において安全な飲料水、基礎的衛生設備および個人衛生のための便益へのアクセスが(学校および保健施設等においても)不十分であること。 (c) 伝統的調理慣行のために屋内空気汚染の水準が高くなっていること。 (d) 母乳育児および補完食の与え方の実践について継続的に改善を図っていく必要があること。 47.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とりわけ農村部において、とくに新生児ケア、産前ケアおよび産後ケアのために十分な財源および人的資源が供給されることを確保するための努力を引き続き強化すること。 (b) 出産に関する保健ケア専門家および助産師の研修ならびにこれらの専門家へのアクセスを向上させるとともに、保健ケア施設における分娩件数を増加させるためのコミュニティ出産準備イニシアティブを拡大すること。 (c) 子どもの発育阻害、消耗症および栄養不良を防止するための対象特化型の介入策(乳幼児に対する適切な栄養補給実践の促進を含む)を継続するとともに、改訂国家栄養戦略等も通じ、栄養問題に関する意識啓発および全般的栄養教育の促進を引き続き進めること。 (d) 子どもが質の高い保健ケアサービス(全県における予防接種を含む)にアクセスできることを確保する目的で保健ケア専門家の増員および配置範囲の拡大を図るとともに、すべての子どもが予防接種登録の対象とされることを確保するために電子式の子ども追跡システムを実施すること。 (e) とくに農村部において、家庭、学校およびその他の公的施設に安全な飲料水、基礎的衛生設備および個人衛生のための便益が十分に備えられることを確保するための努力を強化し、かつそのための資源を増加させるとともに、屋外排泄ゼロの農村を促進するための政策を実施する等の手段により、屋外排泄ならびに適切な衛生維持のための実践および手洗い実践についての意識啓発を図ること。 (f) 政府による調整を強化し、行動計画を策定し、かつ水道局および公共事業省に対して十分な人員および十分な予算を提供することにより、とくに農村コミュニティを対象として、清潔な水道設備へのアクセスを向上させること。 (g) 清潔な調理技法の導入、および、呼吸器疾患と伝統的調理慣行における薪の使用との関連に関する意識啓発のための措置を強化するとともに、調理用燃料の費用を補助する等の手段によって薪への依存度を少なくすること。 (h) 東ティモール母乳育児政策ならびに母乳代替品、母乳補助品および関連製品の販売促進規則を承認しかつ実施し、これらの取り組みを支持する保健センターの数を増やし、かつ、適切な乳児栄養を支援するために産後休暇を現行の3か月から6か月に延長すること。 精神保健 48.委員会は、子ども、とくに性暴力およびセクシュアルハラスメント、虐待ならびにネグレクトを含む暴力にさらされた子どもにとって、子どものための精神保健ケアおよび心理社会的リハビリテーションへのアクセスが限定されていることを懸念する。 49.委員会は、一般的意見15号を参照しつつ、締約国が、子どもの精神保健のために現在設けられている良質なサービスおよびプログラムを強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの精神保健の専門家を増員し、かつ心理社会的リハビリテーションのための十分な施設および外来サービスを確保するための措置をとること。 (b) 子どもとともに働くすべての専門家が、とくに子どもホーム、安全確保施設および少年矯正施設において、精神保健上の問題を特定しかつこれに対応するための訓練を受けることを確保すること。 思春期の健康 50.委員会は、思春期の健康問題(リプロダクティブヘルス関連のものを含む)の予防および治療を目的としたプログラムおよびサービスに関する情報を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 10代の妊娠率が高いこと(これは締約国における児童婚の蔓延と関連している)、リプロダクティブヘルスに関する知識が限られていること、ならびに、社会的および文化的障壁によって若者および思春期の子どもがリプロダクティブヘルスに関する情報およびサービスを求められなくなっていること。 (b) 思春期の子どもがセクシュアル/リプロダクティブヘルスのためのサービス(HIVおよび性感染症の予防のためのものを含む)の実効的対象とされ、かつこれらのサービスにアクセスできることを確保するうえで、締約国が相当の課題に直面していること。 (c) 思春期の子どもによるタバコおよびアルコールの消費水準が高いこと。 (d) 締約国によって、思春期の健康問題の性質および規模を(有害物質濫用およびHIV/AIDS予防との関連も含めて)評価するための包括的研究が実施されていないこと。 51.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 若年妊娠が女子の身体的および精神的健康およびウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを、世帯、地方当局、宗教的指導者および裁判官を対象として発展させること。 (b) 10代の妊娠および性感染症(HIV/AIDSを含む)の予防に特段の注意を払いながら、青少年の子どもおよびコミュニティ一般を対象とした、年齢にふさわしい性教育を促進すること。 (c) アルコールの消費および喫煙についての最低年齢を定めた法律を採択するとともに、有害物質濫用に対処するための支援プログラムおよび支援サービスならびに介入プログラムおよび意識啓発キャンペーンを確立すること。 (d) 今後の保健政策および保健プログラムの基礎とするため、思春期の健康問題の性質および規模を評価するための包括的研究を、思春期の子どもの全面的参加を得ながら実施すること。 生活水準 52.締約国が家族に対して若干の金銭的援助を配分していることには留意しながらも、委員会は、貧困線以下の生活を送っている子どもの割合が高く、そのため条約で保護されている権利の多く(健康、教育および社会的保護に対する権利を含む)の享受に影響が生じていることを深く懸念する。 53.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの貧困と闘うための公共政策および国家的計画を立案する等の手段により、高い水準の子どもの貧困に短期的にも持続的なやり方でも対処するための努力を強化すること。 (b) 子どものための成果をさらに向上させる目的ですべての社会的保護プログラムを強化するとともに、子どもの排除に対抗するための優先的行動を特定する目的で、具体的かつ測定可能な目的、明確な指標、期限ならびに十分な経済的および金銭的支援をともなった貧困削減戦略を強化すること。 (c) 国際連合「社会的保護の最低水準」イニシアティブの一環として、ユニセフ等と連携しながら、子どもが基礎的サービスにアクセスできるようにするための社会的保護の最低水準に関する国家的定義を創設すること。 H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 54.委員会は、あらゆる段階の教育について相当の進展が見られたこと、校舎の建設および改築に相当額の投資が行なわれていること、ならびに、職業教育を含む教育のための予算配分が相当に増額されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 就学前教育施設に就学する子どもの人数が少ないこと、とくに農村部において中等学校就学率が低いこと、とくに中等教育以前の段階で子どもの脱落および留年が多いこと、ならびに、とくに男子の脱落率が高いこと。 (b) 公立学校の数が不十分であること、設備が不十分であること、教育に間接的費用がかかっていること、専門家として養成された教員の人数が不十分であること、教員の研修および教員用資料が不十分であること、ならびに、テトゥン語およびポルトガル語の識字水準が低いこと。 (c) 障害のある子ども、思春期の母親、働いている子ども、親のいない子ども、貧困下で暮らしている子どもおよび言語的マイノリティの、教育へのアクセスが不十分であること。 (d) 学校でセクシュアルハラスメントおよび性暴力が行なわれていること、思春期の女子の間で若年妊娠が生じていること、ならびに、そのような女子が復学した際にスティグマおよび排除に直面すること。 55.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「就学前教育に関する国家政策枠組み」および関連の戦略行動計画を実施し、かつ、子どもにやさしい学校イニシアティブの一環としてアイレウ県およびエルメラ県の遠隔地コミュニティに12の就学前教育施設を設置するパイロット事業を実施するとともに、乳幼児期教育の発展および拡大のために十分な財源を配分すること。 (b) とくに障害のある子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、妊娠している10代、遠隔地に住んでいる子どもおよびマイノリティ言語集団の構成員である子どもを対象として、インクルーシブな、より質の高い教育を通じ、基礎教育へのアクセスならびに基礎教育の継続および修了を増進させること。 (c) すべての子どもを対象として教育のアクセス可能性および質を引き続き向上させるとともに、農村部をとくに重視しながら、教員を対象とする質の高い研修を実施すること。 (d) すべての中核的科目について、二言語の教科書および教員用指導書の開発を継続すること。 (e) 学校奨学金および学校給食プログラムを増進させる等の手段により、とりわけ被害を受けやすい状況に置かれた子どもを対象として、間接的費用の支払い能力にかかわらず教育にアクセスできることを確保するとともに、学校設備の不足に対応する能力を引き続き拡大すること。 (f) ジェンダーの問題およびジェンダーへの配慮に関する研修があらゆる段階のあらゆる教員養成および教員研修における不可欠な、実質的なかつ必須の要素とされることを確保しながら、教育部門におけるジェンダー平等政策の主流化を進めるとともに、学校における暴力およびセクシュアルハラスメントの状況に対処すること。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 経済的搾取(児童労働を含む) 56.委員会は、国家児童労働対策委員会(2014年)および労働監察総監(2010年)が設置されたことならびに「最悪の形態の児童労働撤廃プログラム」が実施されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、労働に従事する子どもの多さ(その大多数は、コーヒー部門を含む農業、漁業、建設業、家事労働、路上および市場での物売りならびに売春に従事している)、および、家族の未払い債務を清算するために家事労働者として働くことを余儀なくされている子どもの状況について、懸念を覚えるものである。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 正規部門および非正規部門の双方における児童労働に対処するための法律および政策を採択し、かつ、条約第32条の遵守を確保すること(そのため、とくに、債務労働を含むすべての不法な活動および危険な労働のために子どもを調達しまたは提供することを禁止すること)によって、子どもが経済的に搾取されることを防止するための措置をとること。 (b) 公衆教育プログラム(児童労働反対世界デー記念キャンペーンなど、オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じ、児童労働の有害な影響に関する意識啓発を引き続き図ること。 (c) 国際労働機関・最低年齢条約(1973年、第138号)の批准を検討すること。 (d) 国際労働機関・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めること。 路上の状況にある子ども 58.委員会は、路上の状況にある子どもに対応するために締約国が行なっている取り組みについての情報を歓迎する。しかしながら委員会は、路上の状況にある子どもについての情報およびデータが不十分であり、かつ、この点に関する政策が策定されていないことを懸念するものである。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困、家族間暴力および教育へのアクセスの欠如など、子どもを路上の状況へと追いやる根本的原因についての包括的研究を実施すること。 (b) この現象の防止および縮小を目的として、路上の状況にある子どもの保護のための包括的戦略を策定すること。 (c) 路上の状況にある子どもに対し、シェルター、教育および職業訓練、十分な保健ケアサービス(HIV/AIDS検診を含む)およびその他の社会サービス(有害物質濫用治療プログラムおよび精神保健カウンセリングを含む)を含む、十分な保護ならびに回復および再統合のための援助を提供すること。 売買、取引および誘拐 60.委員会は、人身取引に関する省庁間作業部会が設置されたことを称賛するとともに、子どもの被害者および証人について具体的に取り上げている人身取引の防止、抑止および処罰のための法律案が、現在国民議会に上程されていることに留意する。しかしながら委員会は、締約国が、女性および女子の性的人身取引の目的地国であり、かつ、強制労働を目的とする成人および子どもの〔人身取引の〕送り出し国となってきたことを懸念するものである。委員会はまた、性的搾取(買春、児童ポルノおよび人身取引を含む)に関与させられた子どもの人数についてのデータがないこと、ならびに、国境管理官および法執行官を対象として実施された人身取引防止研修についての情報がないことも懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引の防止、抑止および処罰のための法律の採択および実施、人身取引と闘うための国家的行動計画の策定、承認および実施、ならびに、人身取引事件に関わる法執行官の対応を向上させるための能力構築の取り組みの強化を進めること。 (b) 責任の履行、透明性および条約違反の防止を向上させる目的で、このような虐待の捜査および是正のための監視機構を設置するとともに、買春または強制労働の目的で子どもを搾取した者の実効的な訴追および処罰を確保すること。 (c) 一連の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された成果文書にしたがい、被害者に対して教育および訓練ならびにカウンセリング、保健ケアおよびその他の社会サービスが提供されることを確保しながら、子どもの性的搾取の防止ならびに被害者の回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを引き続き実施すること。 (d) 被害者および加害者となりうる者の発見、防止措置ならびに観光産業内の援助および是正のための回路(世界観光倫理規範を含む)に関する公衆教育キャンペーンを拡大すること。 少年司法の運営 62.委員会は、少年司法制度についての相当の見直しおよび改革が現在進められている旨の、締約国報告書に記載されていた情報に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 12~16歳の未成年者に関する保護教育法案に関する情報がないこと、および、16~21歳の未成年者に関する特別刑事制度法案で少年司法上の保護年齢が16歳とされていること。 (b) 子どものための司法の運営に従事する人員(弁護士、裁判官、検察官、公選弁護人および矯正官を含む)の対応能力および専門的訓練が不十分であること。 (c) 法律に抵触した子どもに提供される法的援助、ダイバージョンプログラム、および、地域奉仕活動および保護観察のような拘禁に代わる措置についてのデータがないこと。 (d) 警察署での留置および未決拘禁の対象とされている子どもの人数、ならびに、このような子どもが裁判官または判事の前に引致されるまでの拘禁期間に関するデータがないこと。 (e) 法律に抵触した子どもの重大事案に対応するために非公式なコミュニティ調停機構が利用されていること。 (f) ベコラ刑務所で少年と成人受刑者がまとめて収容されており、かつ単一の少年センターが設置されていないこと。 63.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約に一致させるよう促すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子ども(定義上、18歳未満の者をいう)が少年司法制度によって保護されることを確保すること。 (b) 支援介入プログラム、職業訓練およびその他のアウトリーチ活動を拡大する等の手段により、リスクのある状況に置かれた子どもを早い段階で支援することを目的として、法律に抵触した子どもの問題および根底にある社会的要因への対処に関してホリスティックかつ予防的なアプローチをとること。 (c) 可能な場合には常に、法律に抵触した男女の子どものためのプログラムにおけるジェンダーの差異化を考慮に入れながら、修復的司法および拘禁代替措置(ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕活動など)を促進するとともに、拘禁が、最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられ、かつその取消しの方向で定期的に再審査されることを確保すること。 (d) 拘禁が避けられない場合、法律に抵触した子どものための十分な施設が存在すること、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。 (e) 立ち直りのための効果的サービス(精神保健カウンセリングおよび有害物質濫用治療へのアクセスを含む)ならびに効果的な社会的スキル育成教育(職業訓練プログラムを含む)を提供すること。 (f) すべての少年司法関係者(法執行要員、弁護士、裁判官およびソーシャルワーカーを含む)のスキルおよび専門性を高め、司法を強化し、かつ研修資料を強化すること。 (g) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、ユニセフ、国際連合人権高等弁務官事務所およびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。 J.通報手続に関する選択議定書の批准 64. 委員会は、子どもの権利の実施をさらに強化する目的で、締約国が、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 65.委員会は、子どもの権利の実施をさらに強化する目的で、締約国が、障害のある人の権利に関する条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、事務総長に寄託された中核的人権条約の選択議定書であってまだ加盟国となっていないものを批准することも勧告するものである。 L.地域機関および国際機関との協力 66.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会ならびにポルトガル語諸国共同体と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 67.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2回・第3回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 68.委員会は、締約国に対し、第4回定期報告書を2020年8月15日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 69. 委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがって42,400語を超えない範囲で作成された、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月18日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/74.html
総括所見:タイ(第1回・1998年) 第2回(2006年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.97(1998年10月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年10月1日および2日に開かれた第493回~第495回会合(CRC/C/SR.493-495)においてタイの第1回報告書(CRC/C/11/Add.13)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年10月9日に開かれた第505回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および委員会の事前質問票(CRC/C/Q/THA/1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。委員会は、報告書が詳細かつ包括的な構成をとっていることに留意するが、確立されたガイドラインに全面的にしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国代表団との間で持たれた建設的な、開かれたかつ率直な対話ならびに議論の過程で受け取った追加的情報にも留意する。委員会は、締約国との対話に子どもおよび非政府組織が活発に参加したことに、評価の意とともに留意するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国が最近新憲法(1997年)を採択したことに留意する。これは、条約で認められた子どもの権利を含む人権の促進および保護を保障し、かつ人権の監視を担当する国内人権委員会の設置を求めるものである。 4.委員会は、法改正の分野で締約国が最近行なった努力に留意する。これとの関連で、委員会は、男女双方に対するわいせつ行為に関わる改正刑事手続法、18歳未満の少年被疑者に関わる刑事手続法、女性および子どもの人身売買の防止および禁止の措置に関する法律(1997年)、売買春行為防止禁止法(1996年)、職業訓練促進法(1993年)および労働保護法(1998年)の制定を歓迎するものである。 5.委員会は、第8次国家経済社会発展計画(1997~2001年)において、子どもの保護および参加を含む人間的発展に優先順位が与えられていることに留意する。これとの関連で、委員会は、傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループに対する発展の機会を拡大し、かつ、子どもの労働および売買春の領域で特別な監視システムを実施するための取組みを歓迎するものである。委員会はまた、締約国が、社会指標(最低限の基本的ニーズ)、子どもおよび青少年の発達に関する指標および子どもの権利に関する指標を含む諸指標を確立したことも歓迎する。 6.委員会は、とくに報告書の作成における締約国と非政府組織との協力、および、条約との一致を確保するため現在進められている政策および立法の見直しの取組みに留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、締約国が現在直面している経済的および社会的困難が子どもの状況に悪影響を及ぼし、かつ条約の全面的実施を阻害していることを認識する。とりわけ、委員会は、高水準の対外債務、構造調整プログラムの要求、および失業および貧困の水準の上昇に留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 8.締約国が条約第29条に関する留保を撤回したことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、締約国が条約批准時に行なった(第7条および第22条に対する)残りの留保を懸念する。これとの関連で、委員会は、締約国が最近(1997年)市民的および政治的権利に関する国際規約を留保なしで批准したことに留意し、かつ、とくに規約第2条および第24条に対する注意を促したいと考えるものである。ウィーン宣言および行動計画(1993年)ならびに最近の市民的および政治的権利に関する国際規約の批准に照らし、委員会は、締約国に対し、留保を撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励する。 9.委員会は、締約国が立法上の枠組みを相当に発展させてきていることに留意する。しかしながら、委員会は、国内法がいまなお条約の原則および規定を全面的に反映していないことを懸念するものである。委員会は、締約国が、条約の原則および規定との全面的一致を確保するため国内法の見直しを行なうよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、締約国に対し、包括的な子ども法を制定する可能性を検討するようにも奨励するものである。 10.腐敗慣習委員会が設立されたことには留意しながらも、条約が対象とするあらゆる領域において法執行を強化しかつ腐敗慣習と闘う必要性があることは、いまなお委員会の特段の懸念の対象である。したがって、委員会は、締約国が、法執行を強化しかつ腐敗慣習を防止するため研修を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 11.子どもの権利の問題に関する調整を促進しようとする国家青少年局の努力には留意しながらも、委員会は、地方レベルにおける参加および調整がいまなおやや限られていることを懸念する。委員会は、締約国が、とくに子どもの権利を促進しかつ保護するプロセスを地方分権化することにより、条約の実施に対する包括的なアプローチをとるよう勧告するものである。委員会はまた、国家青少年局による調整をとくに地方レベルにおいて強化するため、締約国がさらなる措置をとるようにも勧告する。 12.条約の実施を監視するための指標が開発されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しかつ評価し、かつ子どもに関わってとられた政策の影響を評価することを目的として、あらゆるグループの子どもとの関連でかつ条約が対象とするあらゆる領域に関して細分化された量的および質的データを体系的にかつ包括的に収集することを確保するためには、現行のデータ収集機構では不充分であることをなお懸念する。委員会は、条約が対象とするあらゆる領域を編入するため、データ収集システムの見直しを行なうよう勧告するものである。そのようなシステムは、18歳までのすべての子どもを対象としつつ、経済的に搾取されている子ども、ひとり親家庭の子ども、婚外子、施設措置された子ども、およびノマドおよび丘陵地帯民のコミュニティの子どもを含む、弱い立場に置かれた子どもをとくに重視すべきである。 13.委員会は、条約に基づく自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情を登録しかつそれに対応する独立した機構が存在しないことに、懸念を表明する。委員会は、自己の権利の侵害の苦情に対応しかつそのような侵害に対する救済を提供する、子どもに優しい独立機構に子どもがアクセスできるようにすることを、提案するものである。委員会はまた、締約国が、子どもによるそのような機構の効果的活用を促進するため意識啓発キャンペーンを開始するようにも提案する。 14.委員会は、困難な経済条件にも関わらず締約国の社会支出への配分が増大していることに留意する。しかしながら、委員会は、条約第4条に照らし、子どものための予算配分を「利用可能な手段を最大限に用いて」行なうことに充分な注意が払われていないことを、依然として懸念するものである。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、利用可能な手段を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みにおいて子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励する。 15.条約の原則および規定に関する意識を促進するための締約国の努力は認識しながらも、委員会は、専門家グループ、子どもおよび公衆一般が一般的に条約のことを充分に認識していないことを、依然として懸念する。委員会は、非都市部および都市部のいずれに住んでいるおとなおよび子どものあいだでも同様に条約の規定が広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、条約をあらゆるマイノリティまたは先住民の言語に翻訳し、かつそのような言語で条約が入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、軍隊の士官および要員、教職員、学校管理者、心理学者を含む保健従事者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政職員ならびに子どものケアのための施設の職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループに対し、適切なかつ体系的な研修および(または)意識喚起を行なうようにも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、メディアおよび公衆一般のあいだで子どもの権利に関する意識を向上させるための措置をとるよう奨励する。委員会はまた、締約国が、条約が学校および大学のカリキュラムに全面的に統合されることを確保するよう努めることを、提案するものである。これとの関連で、委員会はまた、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるようにも提案する。 16.委員会は、刑事責任に関する法定最低年齢が低いことに懸念を表明する。委員会はまた、成人に達する法定年齢が定められていないことも懸念するものである。委員会は、締約国が、立法を条約の規定と一致させるためその見直しを行なうよう勧告する。 17.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定または政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることに、懸念を表明したい。条約の原則、とくに一般原則が、政策および意思決定の指針となるのみならず、いかなる法改正および司法上および行政上の決定においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業およびプログラムの開発および実施において適切に反映されることを確保するため、さらなる努力が行なわれなければならないというのが、委員会の見解である。 18.委員会は、弱い立場に置かれたグループに手を差し伸べるため締約国が行なっている努力を認知する。しかしながら、委員会は、すべての子どもが教育および保健サービスへのアクセスを保障され、かつあらゆる形態の搾取から保護されることを確保するためにとられた措置が不充分であることを、なお懸念するものである。とりわけ、女子、障害をもった子ども、丘陵地帯民を含むマイノリティに属する子ども、非都市部で暮らす子ども、貧困下で暮らす子ども、路上で暮らしかつ(または)働いている子どもおよび庇護希望者である子ども、不法移民の子ども、少年司法制度における子どもならびに婚外子を含む、傷つきやすい立場に置かれた一部のグループの子どもが懸念の対象となる。委員会は、締約国が、とくに、傷つきやすい立場に置かれたグループとの関連で、差別の禁止の原則の実施および条約第2条との全面的一致を確保するための努力を増大させるよう勧告するものである。 19.子どもの参加権を奨励するため締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、伝統的な慣行、文化および態度がいまなお条約第12条の全面的実施を制約していることを懸念する。委員会は、締約国が、子どもの参加権に関する公衆の意識を高めるために体系的なアプローチを発展させ、かつ、家庭ならびに学校、ケア制度および司法制度における子どもの意見の尊重を奨励するよう努めることを勧告するものである。 20.委員会は、締約国が出生時の登録を保障する立法(住民登録法)を制定したことに留意するが、いまなお多くの子ども、とくにノマドおよび丘陵地帯民のコミュニティで暮らしている子どもが登録されていないことを懸念する。条約第7条に照らし、委員会は、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、締約国が、政府職員、コミュニティ指導者および親の意識を高めるための努力を増大させるよう勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、丘陵地帯民の子どもの状況を正規化し、かつ、そのような子どもに対し基礎保健、教育その他のサービスへの権利を保障しかつアクセスを促進するため証明書類を提供するよう、奨励する。 21.委員会は、学校における体罰の使用を禁止するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は、体罰がいまなお実践されており、かつ、家庭、少年司法制度および代替的養護制度ならびに社会一般における体罰の使用が国内法により禁じられていないことを、懸念するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、家庭、少年司法制度および代替的養護制度ならびに社会一般における体罰を禁止するため、法的措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、代替的形態のしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約、とくに第28条2項に従って行なわれることを確保するため、意識啓発キャンペーンを行なうよう提案するものである。 22.委員会は、締約国が、家族環境の強化を奨励しかつ父母双方の子育てのスキルを高めるためのプログラムを確立したことに留意する。しかしながら、委員会は、子ども、とくに婚外子および貧困家庭の子どもが高率で遺棄されていることを依然として懸念するものである。これとの関連で、委員会は、また、代替的養護のための充分な便益およびこの分野における資格のある人材が存在しないことにも、懸念を表明する。委員会は、締約国が、子どもの遺棄を抑制するため、親に対して訓練も含む支援を提供するための努力を増大させるよう勧告するものである。また、里親養護を含む代替的養護を促進し、ソーシャルワーカーおよび福祉ワーカーに対して追加的な研修を行ない、かつ、代替的養護施設を対象とした苦情申立ておよび監視のための独立機構を設置するために、締約国が追加的プログラムを発展させることも勧告されるところである。 23.委員会は、被害を受けた子どもに保護を提供するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、家族間暴力、(家庭の内外における)性的虐待を含む子どもの不当な取扱いおよび虐待に関する意識および情報が欠如していること、適切な資源が(財政的にも人的にも)存在しないこと、および虐待を防止しかつそれと闘うための充分に訓練された人材が存在しないことは、依然として懸念の対象である。条約第19条に照らし、委員会は、締約国が、充分な措置および政策を採択しかつ伝統的な態度を変えることに貢献することを目的として、この現象の規模および性質を理解するため家族間暴力ならびに性的虐待を含む子どもの不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、家族間暴力ならびに家庭内の性的虐待を含む子どもの虐待および不当な取扱いの事件が子どもに優しい司法手続において適切に調査され、加害者に対して制裁が科され、かつ、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつそのような事件において行なわれた決定を広報することも、勧告されるところである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条に従い、強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合できるようにすること、および、被害者が犯罪者として取り扱われかつスティグマ(烙印)を押されることを防止することを確保するための措置がとられるべきである。 24.幼児および乳児の死亡率を削減するため締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、母乳育児の実践が依然としてはかばかしくないことおよび栄養不良率が高いことをなお懸念する。委員会は、締約国に対し、母乳育児の実践を促進しかつ向上させる包括的な政策およびプログラムを発展させること、子ども、とくに傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うこと、および、小児疾病統合管理その他の子どもの健康改善の措置に関してとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めることを検討することを、奨励するものである。 25.委員会は、10代の妊娠、中絶、自殺、事故、暴力、有害物質の濫用およびHIV・エイズを含む、青少年の健康に関するデータが存在しないことをとくに懸念する。これとの関連で、委員会は、締約国が、青少年の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスを強化するための努力を増大させるよう、勧告するものである。委員会はさらに、HIV・エイズおよび性行為感染症に感染した、その影響を受けているまたはそれに感染しやすい立場にある子どもの特別な状況を含め、青少年の健康上の問題に関する包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案する。加えて、青少年を対象とした、青少年に優しいケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が充分な人的および財政的資源の配分を含むさらなる措置をとることも、勧告されるところである。 26.委員会は、締約国が障害者リハビリテーション法(1991年)をまだ全面的に実施していないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもも含む障害者のための充分な便益およびサービスが存在しないことにも懸念を表明するものである。障害者の機会均等化に関する標準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ、社会へのそのインクルージョンを奨励するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の養成および研修のための技術的協力を求めるよう勧告するものである。この目的で、とくにユニセフおよびWHOの国際協力を求めることができる。 27.とくに初等段階における就学率が高いこと、および非都市部に補助学校を設置する取組みが最近行なわれていることには留意しながらも、委員会は、一部の子ども、とくに貧困下で暮らす子どもおよびノマドおよび丘陵地帯民のコミュニティで暮らす子どもが教育にアクセスできていないことをなお懸念する。最近の経済的制約に照らし、委員会はまた、労働に従事するため時期尚早にして退学する子ども、とくに女子が多いことも懸念するものである。委員会は、タイのすべての子どもに対して教育への平等なアクセスを提供するため、あらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども、とくに女子および貧困家庭および丘陵民家庭の子どもに対して学校に留まるよう奨励し、かつ早期の就業を抑制するために、追加的な措置を実施するよう努めることを勧告するものである。 28.委員会は、避難民の子どもに対して保護および人道援助を確保するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもの保護のための法的枠組みが依然として不明確であるという懸念を表明するものである。委員会はまた、出入国収容センターに措置されて自由を奪われた子どもの状況も、とくに収容期間が長期であることにかんがみて、懸念するものである。委員会は、人身の安全、健康および教育の分野におけるものも含めて保護者のいない子どもおよび庇護申請中の子どもの十分な保護を確保するための締約国の法的枠組みを、明確にするよう勧告する。また、家族の再統合を促進するための手続も確立されるべきである。庇護申請中の子どもが出入国収容センターに措置されることを避けるため、締約国によってあらゆる適切な措置がとられるべきである。締約国は、これとの関連でUNHCRの援助を求めることを検討することもできる。委員会はまた、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)およびその議定書(1966年)、無国籍者の地位に関する条約(1954年)ならびに無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討するようにも提案するものである。 29.労働保護法が最近採択され(1998年)、そこにおいて法定最低就業年齢が13歳から15歳に引き上げられたことは歓迎しながらも、委員会は、経済的搾取が高い割合で行なわれていること、および、自己および家族を支えるために働く目的でときには幼くして退学する子どもの数が増えていることを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、労働法制の執行を確保する監視機構を導入するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するようにも提案する。 30.委員会は、子どもの売買春ならびに子どもの取引および売買を含む子どもの性的虐待が依然として高い割合で生じており、そのことが男女の子ども双方に影響を与えていることに、懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、法執行を強化しかつ締約国の国内防止計画を実施するための措置を緊急にとるよう勧告するものである。さらに、締約国は、コミュニティのレベルで意識啓発キャンペーンおよび徹底した監視システムを実施する努力を、強化するよう努めるべきである。施設の内外におけるリハビリテーションがさらに強化されるべきである。委員会は、国際的な子どもの取引および売買と効果的に闘うための努力において、締約国が、取引された子どもの帰還を促進しそのリハビリテーションを奨励するため、地域会議である移住に関するメコン会議の枠組みにおけるものも含めて、近隣諸国との二国間および地域間協定の分野における努力を増大させるよう提案する。委員会は、締約国に対し、子どもの商業的性的搾取に反対するストックホルム世界会議(1996年)で採択された行動綱領に掲げられた勧告を引き続き実施するよう促すものである。委員会はまた、締約国が、人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(1949年)の批准を構想するようにも勧告する。 31.締約国が少年裁判所の設置に関わる立法を制定したことには留意しながらも、委員会は、少年司法の運営に関わる一般的状況、および、とくにそれが条約および他の関連の国際基準と両立するかどうかについて、なお懸念する。委員会は、とくに、少年司法制度が締約国全土で実施されていないことを懸念するものである。委員会はまた、法執行官による子どもの不当な取扱いの事例が報告されていることも懸念する。委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の国際連合基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するため追加的な措置をとることを検討するよう、勧告するものである。自由の剥奪は最後の手段としてのみかつ可能なもっとも短い帰還でのみ考慮すること、自由を奪われた子どもの権利を保護すること、および、締約国全土が対象とされることを確保するため少年司法制度を拡大することに、特段の注意が払われるべきである。少年司法制度に関与するあらゆる専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。委員会はまた、締約国が、拷問および他の残酷な、非人道的なおよび〔または〕品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約の批准を検討するようにも勧告する。委員会は、締約国が、少年司法における技術的助言に関する調整委員会を通じて、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう、提案するものである。 32.委員会は、第1回報告書において締約国が提案している、条約の実施に関する勧告に留意する。委員会は、締約国に対し、提案されている勧告を実施するよう奨励するものである。 33.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く利用できるようにし、かつ、関連の議事要録およびこの委員会の総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月18日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/277.html
総括所見:イギリス(第5回・2016年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2008年)英領香港(当時、1996年)/英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) とくにパラ76~77との関連で、国連のプレスリリース "Calais camp French and UK Governments fell well short of their child rights obligations – UN experts"(2016年11月2日付)も参照。 CRC/C/GBR/CO/5(2016年7月12日)/第72会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年5月23日および24日に開かれた第2114回および第2115回会合(CRC/C/SR.2114 and 2115参照)において大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第5回定期報告書(CRC/C/GBR/5)を検討し、2016年6月3日に開かれた第2132回会合(CRC/C/SR.21324参照)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/GBR/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.とくに断らないかぎり、この所見の各パートに掲げられた勧告は、大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の政府、ならびに、関連の権限がそれぞれの管轄下にあるときは、ウェールズ、スコットランドおよび北アイルランドの権限委譲行政地域の政府ならびに海外領土および王室属領の政府に宛てられたものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、諸国際文書の批准またはこれへの加入が行なわれたこと(条約の批准の効力がジャージー代官管轄区に適用されるようになったことを含む)、ならびに、子どもの権利に関連するさまざまな分野で締約国より進展が達成され、かつ、前回の審査以降、多くの新報ならびに制度上および政策上の措置が採択されてきたことを歓迎する。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条第6項) 留保 5.委員会は、締約国が、海外領土および王室属領に対する条約の一部条項の適用可能性に関する留保、とくに以下の留保を維持していることを遺憾に思う。 (a) ケイマン諸島に対する第22条の適用可能性。 (b) すべての属領(ピトケアン諸島を除く)に対する第32条の適用可能性。 (c) すべての属領に対する第37条(c)の適用可能性。 6.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、当該海外領土および王室属領の政府が、条約に付したすべての留保の撤回を検討するよう勧告する。 立法 7.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の原則および規定が国内法に基づいて直接に適用可能とされかつ司法判断適合性を有するものとされることを確保するっため、国および権限委譲行政地域のレベルでならびに海外領土および王室属領において、国内法を速やかに条約に一致させること。 (b) 聖金曜日協定〔1998年4月10日のベルファスト合意〕で合意された北アイルランド権利章典の制定を速やかに進めること。 包括的な政策および戦略 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「協働、さらなる達成」(Working Together, Achieving More)と題された全英レベルの戦略(2009年)を改訂して条約のすべての領域を網羅するとともに、その全面的実施を確保すること。 (b) イングランドおよび北アイルランドで前掲戦略を実施するための包括的行動計画を採択すること。 (c) スコットランドにおいて、「正しい対応を」(Do the Right Thing)と題された行動計画(2009年)および国家人権行動計画(2013~2017年)の全面的実施を確保すること。 (d) ウェールズにおいて、子ども・若者プログラム(2015年)の全面的実施を確保すること。 9.委員会は、その際、締約国が、戦略および行動計画の実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分し、明確な時間軸ならびに監視および評価のための枠組みを定め、かつ、もっとも被害を受けやすい集団に属する子どもに特段の注意を払うよう勧告する。 子どもの権利影響評価 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに影響を与える法律および政策(国際開発協力に関するものを含む)を策定する際に子どもの権利影響評価を組織的に実施する制定法上の義務を、国および権限委譲行政地域のレベルで導入すること。 (b) 当該評価の結果を公表し、かつ、提案する法律および政策でその結果がどのように考慮されたかを明らかにすること。 調整 11.委員会は、締約国が、締約国全域で条約の実施の効果的調整を確保するべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。委員会は、この目的のため、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 各権限委譲行政地域、海外領土および王室属領において、条約の実施に関わるあらゆる活動を諸部門全体を通じて調整する明確な任務および十分な権限を与えられた適切な制定法上の機関を、高い省庁間レベルに設置すること。 (b) 当該調整機関に対し、その効果的活動のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (c) 国レベルにおける条約の実施の調整および評価を強化すること。 資源配分 12.委員会は、近年の金融政策および資源配分が、子どもが自己の権利を享受する際の不平等を助長し、不利な状況に置かれた子どもに不均衡なほどの影響を与えていることを深刻に懸念する。 13.条約第4条ならびに持続可能な開発目標のターゲット10.2および10.4にしたがい、委員会は、締約国に対し、子どもの貧困の根絶ならびにすべての管轄地域内および管轄地域間の不平等の縮小にとくに焦点を当てながら、子どもの権利の実施のために利用可能な資源を最大限配分するよう促す。委員会は、このような取り組みにおいて、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているか、予算全体を通じて追跡するためのシステムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。 (b) 子どもたちとの対話を含む公的対話を通じ、透明なかつ参加型の予算編成を確保すること。 (c) 積極的是正のための社会的措置を必要とする可能性のある、不利なまたは権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもに関する予算科目を定めるとともに、当該予算科目がたとえ景気後退の時期にあっても保護されるようにすること。 (d) 子どもの権利に直接間接に関連する分野で、予算上および経済上の意思決定手続および結果(緊縮財政措置に関わるものを含む)についての子どもの権利影響評価を恒常的に実施すること。 (e) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価する機構を設置すること。 データ収集 14.委員会は、北アイルランド政府が、条約のあらゆる分野を網羅し、かつ、国際連合人権高等弁務官事務所が刊行した「人権指標:測定・実施ガイド」(Human Rights Indicators A Guide to Measurement and Implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れた、子どもの権利指標枠組みを速やかに完成させるよう勧告する。 独立の監視 15.委員会は、締約国の4つの権限委譲行政地域に設置されている子どもコミッショナーの独立性が高められたこと、および、子どもの権利の促進および保護を確保するために多くの取り組みが行なわれていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、北アイルランドおよびウェールズのコミッショナーの権限がいまなお限定されており、かつ、スコットランドのコミッショナーが、個々の子どものための調査を実施する任務の行使を開始していないことを懸念するものである。 16.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置〔訳者注/「子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割」の誤り〕に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人権の促進および保護のための国家機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがい、設置されている子どもコミッショナーの独立性をさらに強化するとともに、これらの機関が、とくに子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる子どもの権利侵害に関する苦情を受理しかつ調査できるようにすること。 (b) すべての法域のコミッショナーに対し、その任務を効果的なかつ調整のとれたやり方で遂行するために必要な人的資源および財源を配分すること。 国際協力 17.国際開発協力との関連で、委員会は、締約国が、援助受領国で営利企業が運営している授業料の安い私立の非公式学校に資金を拠出していることを懸念する。このような学校の数が急激に増えていることは、教育の低水準化、無償のかつ良質な公立学校への投資の減少および援助受領国における不平等の深まりを助長し、授業料の安い学校にさえ手の届かない子どもを置き去りにしてしまう可能性がある。 18.委員会は、締約国が、自国の国際開発協力において、無償の義務的初等教育に対する権利をすべての者に保障することに関する支援が援助受領国に提供されることを確保するよう勧告する。そのための手段として、締約国は、公立学校における無償のかつ良質な初等教育を優先し、営利目的の私立学校に資金を拠出しないようにし、かつ、私立学校の登録および規制を推進するべきである。 子どもの権利と企業セクター 19.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ビジネスと人権に関する第1次国家行動計画の改訂版に、子どもの権利に関する明示的な視点(企業が子どもの権利に関するデュー・ディリジェンス〔相当の注意〕を履行しなければならない旨の要件を含む)を統合すること。 (b) 企業セクターが、公共調達との関連も含めて子どもの権利を遵守することを確保するための規制を定め、かつ実施すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 20.委員会は、締約国が、すべての権限委譲行政地域、海外領土および王室属領で最低婚姻年齢を18歳に引き上げるよう勧告する。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 21.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 平等法(2010年)の多くの規定で、年齢差別からの保護の対象から子どもが除外されており、かつ、北アイルランドでは、年齢差別に関する法案で16歳未満の子どもが除外されていること。 (b) テロ対策のためにとられている措置が、透明性を欠いているために公衆の信頼を得られておらず、かつ、子ども(とくにイスラム教徒の子ども)に対して差別的なまたはスティグマを付与する効果を有していると広く捉えられていること。 (c) 特定の集団に属する子ども(ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、その他の民族的マイノリティの子ども、障害のある子ども、養護の対象とされている子ども、子どもの移住者、庇護希望者および難民ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもを含む)の多くが、メディアにおけるものを含む差別および社会的スティグマを引き続き経験していること。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 年齢を理由とする差別からの保護を18歳未満のすべての子どもに提供するため、法律の適用範囲を拡大する可能性を検討すること。 (b) テロ対策および過激主義対策のためにとられている措置(「防止戦略」(2011年)を含む)の実施状況を評価し、かつ当該措置の実施がいかなる集団の子どもに対しても差別的なまたはスティグマを付与する効果を持たないことを確保するための監督機構(定期的な第三者審査を含む)を強化すること。 (c) 差別およびスティグマ化に対する意識啓発その他の防止活動を強化するとともに、必要であれば、被害を受けやすい状態に置かれた子どもたちのために一時的な特別措置をとること。 23.委員会は、締約国が、メディアを含む社会における、「子ども時代に対する不寛容」ならびに子ども(とくに思春期の子ども)に対して向けられる公衆の否定的態度に対応するために緊急の措置をとるべきである旨の前回の勧告を想起する。 24.委員会は、若干の改善が見られたにもかかわらず、一部の子どもに対する法的差別が海外領土で残っていることを懸念する。 25.委員会は、英国政府が、海外領土の各政府に対し、移住者である子どもを含む「非現地人」(non-belongers)および婚外子に対する法律上の差別を完全に廃止するようさらに奨励することを勧告する。 子どもの最善の利益 26.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、とくに代替的養護、児童福祉、出入国管理、庇護希望者および難民としての認定、刑事司法の分野ならびに軍隊において、子どもに影響を与えるすべての立法事項および政策事項ならびに司法決定にいまなお反映されていないことを遺憾に思う。さらに、一部の海外領土ではこの権利を保障する法律上の規定が設けられていない。 27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が、領域内のあらゆる場所で以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保すること。 (b) 公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めること。 生命、生存および発達に対する権利 28.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 調査研究の結果、締約国における乳児および子どもの死亡(自殺を含む)は社会的および経済的剥奪の水準と関連性を有していることが明らかになっていること。 (b) 子どもが関わる不慮の死亡または重傷事故を検証するための機構が、締約国のほとんどの場所で設置されておらずまたは運用されていないこと。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 乳児および子どもの死亡の根底にある決定要因(社会的および経済的剥奪および不平等を含む)に対処すること。 (b) 子どもが関わる不慮の死亡または重傷事故(締約国の全領域に設けられた拘禁施設、ケアのための施設および精神保健ケア施設で生じたものを含む)について、第三者による公的な検討が自動的に行なわれる制度を導入すること。 子どもの意見の尊重 30.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもに影響を与える問題についての政策立案において子どもたちの意見が組織的に聴かれていないこと。 (b) 4つの全法域で行なわれた法律扶助の縮小に関する改革が、自己に影響を与える司法上および行政上の手続で意見を聴かれる子どもの権利に悪影響を及ぼしているように思われること。 (c) 北アイルランド、ウェールズ、モントセラト、タークス・カイコス諸島またはジャージー代官管轄区で、若者議会が設置されておらずまたは運用されていないこと。 (d) 自己に影響を与える事柄(家事手続におけるものを含む)について、ソーシャルワーカー、審査官、有償養育者、裁判官、法律に抵触した子どもを支援する職員またはその他の専門家によって意見を聴いてもらえないと感じている子どもが多いこと。 31.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 地方および国のレベルで法律、政策、プログラムおよびサービス(差別、暴力、性的搾取および性的虐待、有害慣行、代替的養護、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育、余暇および遊びに関するものを含む)を立案する際に、子どもが主体的にかつ意味のある形で参加できるようにするための体制を設置し、かつ子どもの意見を正当に重視すること。低年齢の子どもおよび被害を受けやすい状況に置かれた子ども(障害のある子どもを含む)の関与を得ることに対し、特段の注意が払われるべきである。 (b) 関連の改革によって司法にアクセスする子どもの権利に悪影響が生じないことを確保する目的で、イングランド、ウェールズおよびスコットランドで行なわれた法律扶助改革の影響を評価し、かつその再検討を速やかに進め、かつ、北アイルランドおよびジャージー代官管轄区で提案されている改革について子どもの権利影響評価を実施するとともに、これらの評価および再検討への実効的な子ども参加を保障すること。 (c) 自己に影響を与える問題についての国家的な立法過程に子どもたちが実効的に関与するための常設フォーラムとして、すべての権限委譲行政地域および領土で速やかに若者議会を設置すること。 (d) 子どもが、子どもとともに働くすべての専門家によって、形式的にではなく真に意見を聴かれ、かつその意見が正当に重視されることを確保すること。 32.委員会は、子どもに対して16歳から投票権を認めるべきであるという要求が増えており、かつ、スコットランドでは地方選挙およびスコットランド議会選挙について16歳および17歳も投票年齢とされたことに留意する。 33.委員会は、締約国および権限委譲行政地域に対し、投票年齢について子どもたちと協議するよう奨励する。委員会は、投票年齢を引き下げる場合、権利の行使は市民性の一環として自律性および責任をもって行使されるべきものであるという認識を子どもたちが早くから持つことを確保する目的で、投票を支えるものとしての積極的なシティズンシップ教育および人権教育が実施されること、ならびに、このような措置が不当な影響力を持たないことを、締約国が確保するよう勧告するものである。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録および国籍 34.委員会は、移住者である子ども(とくに当該領土で出生した子ども)が出生証明書を取得する権利を保障する目的で、締約国が、海外領土に対し、地方立法および英国国籍法の改正を奨励するよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 35.委員会は、公的資金を得ているイングランドおよびウェールズの学校において、「完全にまたは主として広くキリスト教的性質を有する」毎日の宗教的礼拝への参加を生徒が法律で要求されており、かつ、子どもは第6学年に達するまで親の許可なくそのような礼拝に出席しない権利を有していないことを懸念する。北アイルランドおよびスコットランドでは、子どもは、親の許可なく集団的礼拝に出席しない権利を認められていない。 36.委員会は、締約国が、公的資金を得ている学校における集団的礼拝への義務的出席に関する法律上の規定を削除するとともに、子どもが、学校で行なわれる宗教的礼拝に出席しない権利を独立して行使できることを確保するよう、勧告する。 結社および平和的集会の自由 37.移動および平和的集会の自由に対する子どもの権利を全面的に保障する目的で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 若者の集まりを解散させるために用いられる音声機器(いわゆる「モスキート音発生装置」)の、公的空間における使用を禁止すること。 (b) 反社会的行動への対応および群衆の解散を目的として子ども(10~11歳の子どもを含む)に対して使用されている措置についてのデータを収集するとともに、これらの措置の使用の基準および比例性を監視すること。 プライバシーに対する権利 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する、法律に基づかない職務質問および所持品検査を禁止すること。 (b) 法律に基づく職務質問および所持品検査が、比例性を満たし(その際、子どもの年齢および成熟度を考慮するものとする)、かつ差別的でないやり方で行なわれることを確保すること。 (c) 子どもに対して行なわれる職務質問および所持品検査についての、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景別に細分化されたデータを恒常的に収集し、分析しかつ公表すること。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 39.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 4つの権限委譲行政地域において、警察が子どもに対してテーザー銃(北アイルランドの場合には減エネルギー弾)を使用していること。 (b) イングランドおよびウェールズで拘禁下にある子どもに対する抑制措置その他の制限的介入措置の使用が増えていること、および、締約国のその場の地域における抑制措置の使用に関するデータが存在しないこと。 (c) イングランド、ウェールズおよびスコットランドで、青年犯罪者施設の秩序および規律を維持する目的で身体的抑制措置が用いられており、かつ施設環境に置かれた子どもに対して苦痛を与える手法が用いられていること、ならびに、北アイルランドで、施設環境における抑制措置の使用の包括的見直しが行なわれていないこと。 (d) 学校で、心理社会的障害のある子ども(自閉症の子どもを含む)に対して抑制措置および隔離措置が用いられていること。 40.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2を参照しながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) テーザー銃のような放電性の武器、減エネルギー弾(北アイルランド)および他のいかなる有害な装置についても子どもへの使用を禁止するとともに、当該禁止の実施を監視する目的で、これらの装置の使用に関する年齢別のデータを組織的に収集しかつ公表すること。 (b) 入所施設か通所施設かを問わず、あらゆる施設環境において、規律の維持を目的として子どもに対して用いられるすべての抑制手段を廃止し、かつ、子どもに苦痛を与えることを目的とするいかなる手法の使用も禁止すること。 (c) 子どもに対する抑制措置が、もっぱら自傷他害を防止する目的で、かつ最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。 (d) あらゆる施設環境(教育施設、拘禁施設、精神保健施設、福祉施設および出入国管理施設を含む)における子どもの規律の維持および行動管理が適切であるかどうかを監視する目的で、子どもに対する抑制措置その他の制限的介入措置の使用に関する細分化されたデータを組織的かつ恒常的に収集しかつ公表すること。 体罰 41.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)および前回の勧告を参照しながら、委員会は、締約国に対し、すべての権限委譲行政地域、海外領土および王室属領において以下の措置をとるよう促す。 (a) 「合理的懲罰」などのあらゆる法的抗弁を廃止すること等を通じ、優先的課題として、家庭におけるあらゆる体罰を禁止すること。 (b) あらゆる学校および教育施設ならびにその他のあらゆる施設およびあらゆる形態の代替的養護における体罰が明示的に禁じられることを確保すること。 (c) 子育てにおける体罰の使用が一般的に受け入れられている状況を解消する目的で、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律の維持、ならびに、人間の尊厳および身体的不可侵性に対する子どもの平等な権利の尊重を促進するための努力を強化すること。 暴力、虐待およびネグレクト 42.委員会は、イングランドおよびウェールズの重大犯罪法(2015年)で導入されたもののような、親密な関係および家族関係における強制的および支配的行動を捕捉するための新たな家族間虐待罪の導入を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 女性および女子に対するドメスティックバイオレンスおよびジェンダーを理由とする暴力が広く蔓延しており、かつ、このような形態の暴力が、被害者としてであるか目撃者としてであるかにかかわらず、子どもに悪影響を与えていること。 (b) 子ども青年法(1933年)において、子どもが、児童虐待およびネグレクトに関する刑法の適用上は16歳未満の者として定義されていること。 (c) 子どもに対する暴力への対応および家事手続において子どもの意見が正当に尊重されていないこと。 43.一般的意見13号および持続可能な開発目標のターゲット16.2を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満のすべての子どもを児童虐待およびネグレクトから保護する目的で、子ども青年法(1933年)を改正すること。 (b) あらゆる場面における子どもに対する暴力(ドメスティックバイオレンス、ジェンダーを理由とする暴力、虐待およびネグレクトを含む)についての組織的なデータ収集および情報の記録、ならびに、関連部門間での情報および付託事案の共有を強化すること。 (c) ソーシャルワーカーを増員し、かつ、子どもに対する暴力に対応するソーシャルワーカーの能力を強化すること。 (d) 暴力への対応(刑事手続および家事手続におけるものを含む)で当事者の子どもの意見を正当に重視すること。 (e) 女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約の批准を検討すること。 性的搾取および性的虐待 44.委員会は、子どもの性的搾取および性的虐待に対応するためにとられた措置(「WePROTECT」をモデルとする国家的対応を含む)、ならびに、部門横断型の行動計画ならびに関連の指針およびツール(ウェールズ)ならびにこの現象に関する第三者調査(北アイルランド)への子どもおよび市民社会による力強い参加を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 近年、子どもの性的搾取および性的虐待のうち有名人によるもの、組織暴力集団によるものおよび施設環境におけるものが広く行なわれているという訴えがあること。 (b) オンラインにおける子どもの性的搾取および性的虐待のリスクが高まっていること。 (c) このような搾取および虐待を防止し、発見しかつこれに対応する取り組みにおいて、子どもの意見が十分に尊重されていないこと。 (d) 子どもの性的搾取および性的虐待の訴追率が低いこと。 45.委員会は、締約国(権限委譲行政地域、海外領土および王室属領を含む)が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務的通報等も通じ、あらゆる場面における子どもの搾取および虐待についての包括的なかつ細分化されたデータを組織的に収集しかつ公表すること。 (b) 国および権限委譲行政地域のレベル、海外領土ならびに王室属領において、効果的な防止、早期の発見および介入を確保するための、子どもの搾取および虐待(オンラインにおけるものを含む)に関する包括的なかつ部門横断型の戦略を策定しかつ実施すること。 (c) 北アイルランドでの子どもの性的搾取に関するマーシャル調査勧告を実施すること。 (d) 性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子どもを支援するための包括的サービスをさらに発展させること。 (e) 子どもの性的搾取および性的虐待を摘発しかつ訴追する法執行機関および司法機関の能力を強化し、かつ、被害を受けた子どもに実効的な救済措置を提供すること。 (f) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討すること。 有害慣行 46.委員会は、イングランドおよびウェールズで重大犯罪法(2015年)が制定されたことにより、裁判所が、女性性器切除の被害を受ける可能性のある子どもまたは実際に被害を受けた子どもを保護するための保護命令を発布できるようになったことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 女性性器切除を含む有害慣行の影響を受けている子どもの人数、および、締約国の一部地域で行なわれている16~17歳の女子と男子の強制婚が相当数にのぼること。 (b) インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく同意を与えられるようになる前に医学的に不必要な手術その他の治療(これは不可逆的な影響をともなうことが多く、かつ深刻な身体的および心理的苦痛を引き起こしうるものである)が行なわれる事案があり、かつ、このような事案において救済および補償が行なわれていないこと。 47.有害慣行に関する一般的意見18号(2014年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 16~17歳の子どもの婚姻が、例外的事情がある場合にのみ、かつ、当事者である子どもの全面的な、自由な、かつ十分な情報に基づく同意を基礎として行なわれることを確保するために効果的措置をとること。 (b) 有害慣行の問題に対応するための防止措置および保護措置を継続しかつ強化すること。これには、データの収集、関連の専門家の研修、意識啓発プログラム、被害を受けた子どもに対する保護およびケアの提供、ならびに、そのような行為を実行したとして有罪と認められる者の訴追が含まれる。 (c) 何人も乳児期または児童期に不必要な手術または治療の対象とされないことを確保し、当事者である子どもに身体的不可侵性、自律および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。 (d) そのような治療の被害者に対して救済措置を提供すること。 (e) さまざまな性的多様性ならびに関連の生物学的および身体的多様性について、またインターセックスの子どもに対する不必要な介入がもたらす影響について、医療専門家および心理専門家を教育すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 48.委員会は以下のことを懸念する。 (a) とくにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子ども、障害のある子どもならびにマイノリティ集団に属する子ども(ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子どもを含む)に対する、ネットいじめを含むいじめが依然として深刻かつ広範な問題となっていること。 (b) 北アイルランドにおいて、子どもが、準軍事的な攻撃に関与する非国家的主体によって行なわれる暴力(銃撃を含む)およびそのような非国家的主体による勧誘に直面していること。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人権について教育すること、学校における多様性の尊重に関する生徒および職員の能力構築を図ること、生徒の紛争解決スキルを向上させること、学校におけるいじめの発生状況を恒常的に監視すること、ならびに、いじめの解消を目的とする取り組みおよび監視に子どもの関与を得ること等の手段により、学校におけるいじめおよび暴力に対処するための努力を強化すること。 (b) デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議を踏まえてまとめられた勧告に照らし、子どもたち、教員および家族を対象として情報通信技術の安全な利用に関する研修を実施し、ネット上のいじめが同世代の仲間に及ぼしうる深刻な影響に関する意識を子どもたちの間で高め、かつ、ネットいじめと闘う努力にソーシャルメディア業者のいっそうの関与を得ること。 (c) 移行期の司法および刑事司法関連の措置等も通じ、準軍事的な攻撃に関与する非国家的主体によって行なわれる暴力およびそのような非国家的主体による暴力的活動への勧誘から子どもを保護するための即時的かつ効果的な措置をとること。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項) 家庭環境 50.委員会は、必要とする層への保育の提供に関して締約国および権限委譲行政地域で優れた実践が行なわれていることを認知する。しかしながら委員会は、保育費用が高いことが子どもおよびその家庭環境に与える悪影響について懸念を覚えるものである。 51.委員会は、締約国および権限委譲行政地域政府が、保育および家族支援に対する資金拠出が最近減らされたことについて厳格な子どもの権利影響評価を実施し、かつ、必要とするすべての者が保育サービスを利用できるようにする目的で家族支援政策を修正するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 52.委員会は以下のことを懸念する。 (a) イングランド、ウェールズおよび北アイルランドで養護の対象とされる子どもの人数が増えており、かつスコットランドで養護の対象とされる子どもの割合が高いこと。 (b) 早期介入措置が適切な時期にとられなかった事案、親に対して十分な家族支援が提供されなかった事案、および、子どもを養護の対象とする決定において子どもの最善の利益が適正に評価されなかった事案があること。家族の経済的状況を理由として、または里親家族の方が子どもにとってより有益な環境を提供できる可能性があるという理由で、子どもが生物学的家族から分離されているという報告もある。 (c) 養護の対象とされている子どものソーシャルワーカーが頻繁に交代しており、かつ子どもがしばしば年に2つ以上の家族への措置を経験していて、子どもの生活のあらゆる側面に悪影響が生じていること。 (d) 子どもが生物学的家族から離れた場所に措置され、家族の接触を維持できない状態に置かれていること、および、きょうだいが適切な理由もなく相互に分離されていること。 (e) 北アイルランドにおいて子どもが閉鎖型施設に措置されていること。 (f) 里親養育または施設養護を離脱する子どもが、将来計画に関するものを含む適切な支援およびカウンセリングを受けておらず、しばしば元養育者から遠く離れた場所で生活しなければならなくなっていること。 (g) 北アイルランドにおける養子縁組手続が依然として時代遅れのままであり、かつ条約に一致していないこと。 53.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、貧困を直接かつ唯一の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離することの唯一の正当化事由とされることがあってはならないことを強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 親および法定保護者(インフォーマルな親族養育者を含む)が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与えるための努力を強化すること。 (b) 家族からの子どもの分離が、常に徹底的な調査の対象とされ、子どもの最善の利益にしたがって、かつ最後の手段としてのみ行なわれることを確保すること。 (c) 可能な場合には常に、子どもに対し、生物学的な親およびきょうだいとの接触を容易にするような措置先を見つけること。 (d) 北アイルランドにおける閉鎖型施設が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するとともに、そのような施設に繰り返しまたは長期間滞在することになる理由に対処し、かつ閉鎖型施設に代わる選択肢を発展させること。 (e) ソーシャルワーカーの交代を控え、かつ不必要な措置変更が行なわれないようにするための努力を含め、養護の対象とされている子どもが安定した生活を送れるようにするためにあらゆる必要な措置をとること。 (f) 養護および移行のための計画について早い段階から子どもへの情報提供および子どもとの相談を行なうとともに、養護を離脱する者に対し、居住、就労または継続教育に関するものを含む十分な支援を提供すること。 (g) 北アイルランドにおける養子縁組および子ども法案の承認および制定を速やかに進めること。 親が収監されている子ども 54.委員会は、裁判所と子ども保護機関との間の協力が不十分であるために、親が収監刑を言い渡されてそのまま収監され、子どもが適切なケアを受けられないまま取り残される場合があることを懸念する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが見守る者のいない状況に置かれることを回避する目的で、子どものいる者が収監されるときは常に子ども保護機関への通告が行なわれることを確保すること。 (b) 親である者に刑を言い渡す際には子どもの最善の利益を第一次的に考慮し、親が子どもから分離されることにつながる刑を可能なかぎり回避すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 56.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 障害のある多くの子どもが、人生における個人的決定(支援および将来の選択を含む)において自分の意見が正当に重視されていないと考えていること。 (b) 障害のある多くの子どもがいまなお特別学校または普通学校内の特別班に措置されていること、ならびに、多くの校舎および学校施設が障害のある子どもにとって全面的にアクセシブルなものになっていないこと。 (c) 成人期への移行のための支援の提供が十分さ、適時性または十分な調整のいずれの要件も満たしておらず、かつ、その際、障害のある子どもによる十分な情報に基づく決定が確保されていないこと。 57.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国が、障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、障害のある子どものインクルージョンに関する包括的戦略を確立し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自己に影響を与えるすべての意思決定(人的支援および教育へのアクセスならびにその選択に関するものを含む)において自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される障害のある子どもの権利が全面的に尊重されることを確保すること。 (b) インクルーシブ教育をさらに発展させ、特別施設および特別学級への子どもの措置よりもインクルーシブ教育が優先されることを確保し、かつ、普通学校を障害のある子どもにとって全面的にアクセシブルなものとするための包括的措置を確立すること。 (c) 関連諸部門全体を通じて立法、政策およびプログラムの調整を図ることにより、障害のある子どもに対し、成人期への移行のための包括的かつ統合的なサービスパッケージを十分に早い段階から提供するとともに、サービスの設計に関して障害のある子どもの関与を得ることならびに利用可能な選択肢についての助言および情報を提供することにより、移行における個人的選択に関する、障害のある子どもによる十分な情報に基づく決定を確保すること。 健康および保健サービス 58.委員会は、保健サービスへのアクセスおよび保健関連のアウトカム(結果)に関して不平等が存在し、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、その他の民族的マイノリティに属する子ども、移住者である子ども、貧困下および貧困地域で暮らしている子ども、養護および身柄拘束の対象とされている子ども、HIV/AIDSとともに生きている子どもならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに悪影響が生じていることを懸念する。 59.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国、権限委譲行政地域の政府、海外領土ならびに王室属領が、以下の要素を備えた、子どもの健康に関連する包括的なかつ部門横断型の戦略を策定するよう勧告する。 (a) 利用可能な資源が最大限に配分され、かつ、しっかりした監視機構が設けられること。 (b) 保健関連のアウトカムおよび保健サービスへのアクセスに関する不平等に強い焦点が当てられること。 (c) 健康に関わる根本的な社会的決定要因への対処が行なわれること。 精神保健 60.委員会は、精神保健サービスの向上のために国および権限委譲行政地域の双方のレベルで行なわれている重要な努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) アルコール、薬物および有害物質の濫用に関連するものを含め、精神保健上のニーズを有する子どもの人数が締約国全域で増加していること。 (b) 過去10年間、北アイルランドで子どもの自殺件数が着実に増加してきたこと。 (c) 精神保健上の病態を有する子どもが、しばしば自宅から遠く離れた場所で治療を受けており(イングランドおよびスコットランド)、子どもに特化した十分な配慮および支援を受けておらず、成人用施設に措置されており、または精神保健診療所の空きが不足しているという理由で警察の留置施設に収容される場合さえあること。 (d) イングランド、ウェールズおよびスコットランドで新たに目標として定められたまたは計画された待期期間の短縮が、インフラ(専門家および診療所/センターの数)が整備されていないために実際には実現できない可能性があること。 (e) 精神保健サービスの向上に対する相当量の投資が、必ずしもサービスの質の向上にはつながらないこと。 (f) コミュニティを基盤とする治療的サービスが十分に発展していないこと。 (g) 16歳未満の子どもが、同意のない医学的治療との関連も含めて、イングランドおよびウェールズの意思能力決定法(2005年)ならびに北アイルランドの意思能力決定法(2016年)に基づく保護から除外されていること。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被害を受けやすい状況に置かれた子どもに正当な注意を払い、かつ主要な根本的決定要因を網羅しながら、子どものライフコース全体を通じて細分化された、子どもの精神保健に関する包括的データを恒常的に収集すること。 (b) 子どもおよび青少年のための精神保健サービスへの力強い投資を進めるとともに、明確な時間枠、達成目標、測定可能な指標、効果的な監視機構ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源をともなった戦略を、国および権限委譲行政地域のレベルで策定すること。このような戦略には、よりリスクの高い状況に置かれている子ども(貧困下で暮らしている子ども、養護の対象とされている子どもおよび刑事司法制度に関わりを持たされている子どもを含む)に特段の注意を払いながら、これらのサービスの利用可能性、アクセス可能性、受け入れ可能性、質および安定性を確保するための措置を含めることが求められる。 (c) 精神保健上のニーズを有する子どもを成人精神病棟または警察署に措置することを速やかに禁止するとともに、年齢にふさわしい精神保健上のサービスおよび便益が提供されることを確保すること。 (d) 精神保健上の病態を有する子どものための、コミュニティを基盤とする治療的サービスを支援しかつ発展させること。 (e) とくに入院および同意のない治療との関連で、16歳以上の子どもの精神保健に関わる治療事案において子どもの最善の利益および意見が正当に考慮されることを確保するため、精神保健に関する現行法を見直すこと。 62.委員会は、国立保健研究所およびケア・エクセレンスによって、注意欠陥・多動性障害および関連の障害の診断および管理に関する新たな指針が刊行されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) メチルフェニデートその他の向精神薬を与えられている子どもの実数が利用可能とされていないこと。 (b) 行動上の問題を有する子ども(6歳未満の子どもを含む)への精神刺激薬および向精神薬の処方件数が、これらの薬の有害な作用に関する証拠が増えているにもかかわらず、相当に増加しているという報告があること。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対して処方される向精神薬(リタリン、コンサータ等)の量および頻度に関するデータを恒常的に収集し、かつ当該データを透明なものとすること。 (b) 薬の処方が最後の手段として、かつ子どもの最善の利益の個別評価を行なったうえで初めて実行されるようにすること、ならびに、子どもおよびその親に対し、そのような医学的治療の副作用の可能性および医学的治療に代わる選択肢について適切に情報提供が行なわれることを確保すること。 (c) 注意欠陥・多動性障害の診断またはこれに関連する診断について独立の専門家がモニタリングを行なうシステムを確立するとともに、診断の正確性を向上させることも目的として、このような診断の増加の根本的原因に関する研究を実施すること。 思春期の健康 64.委員会は、審査対象期間中、締約国における10代の妊娠が着実に減少してきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 10代の妊娠率がいまなお欧州連合の平均よりも高く、かつ貧困度の高い地域ではさらに高くなっていること。 (b) 人間関係およびセクシュアリティに関する教育がすべての学校で必修とされているわけではなく、その内容および質が学校によって異なっており、かつ、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもが自己のセクシュアリティに関する正確な情報にアクセスできていないこと。 (c) 北アイルランドにおいて、中絶があらゆる場合に違法とされており(ただし、妊娠の継続が母の生命を脅かす場合を除く)、かつ制裁として終身刑が科されること。 65.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)および一般的意見15号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 不平等の縮小に特段の注意を払い、かつ思春期の子どもたちの参加を得ながら、思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を策定しかつ採択すること。 (b) 意味のあるセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、締約国のすべての地域のすべての学校(アカデミー、特別学校および青年拘禁施設を含む)で必修学校カリキュラムの一部とされることを確保すること。このような教育においては、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する秘密の守られる保健ケアサービス、避妊手段、性的虐待または性的搾取(性的いじめを含む)の防止、そのような虐待および搾取を受けた場合に利用できる支援、ならびに、セクシュアリティ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どものセクシュアリティを含む)についての、年齢にふさわしい情報が提供されるべきである。 (c) 北アイルランドにおいてあらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、女子が安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で法律の見直しを行なうこと。中絶に関する決定においては、子どもの意見が常に聴かれ、かつ尊重されるべきである。 栄養 66.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 締約国の多くの地域で子どもの過体重および肥満が広く蔓延していること。 (b) 子どもの食料安全保障に関する包括的データが存在しない一方で、一部の調査研究は、無償の学校給食プログラムなどの現在利用可能なプログラムでは子どもの飢えに対する効果的対応になっていない可能性があることを示していること。 (c) 母乳育児率が著しく低いこと、完全母乳育児を6か月間続けている女性はわずか1%であること(2010年)、および、母乳代替品の販売促進の規制が不十分であること。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの不十分な食料安全保障および栄養不良の根本的原因を特定するため、子どもの食料安全保障および栄養に関するデータ(母乳育児に関連するものを含む)を組織的に収集すること。 (b) 子どもの食料安全保障および栄養に関する政策およびプログラム(学校給食プログラムを含む)ならびに乳幼児を対象とするプログラムの有効性を恒常的にモニターしかつ評価すること。 (c) 母乳育児が子どもの健康に影響を及ぼすすべての政策分野(肥満、一部の非感染性疾患および精神保健を含む)で母乳育児を促進し、保護しかつ支援するとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施すること。 環境保健 68.委員会は、大気汚染が高い水準で生じていることを懸念する。これは、締約国における子どもの健康に直接影響するとともに、締約国および他の国々の双方でさまざまな子どもの権利に影響を及ぼす気候変動の悪影響を助長するものである。 69.持続可能な開発目標のターゲット1.5を参照しながら、委員会は、締約国(権限を委譲された事柄との関連では権限委譲行政地域を含む)が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに学校近辺および住宅地で大気汚染の水準を引き下げるための計画の規模を拡大し、かつその実施を速やかに進めることを目的として、適切な技術的資源、人的資源および財源をともなった明確な法的コミットメントを確立すること。 (b) 新たな気候変動戦略等を通じて、かつ国際的な気候変動プログラムおよび財政支援の枠組みのなかで、国内的および国際的な気候変動適応・緩和戦略の中心に子どもの権利を位置づけること。 生活水準 70.委員会は、以下のことを深刻に懸念する。 (a) 子どもの貧困率が依然として高く、障害のある子ども、障害のある人のいる家族または世帯で暮らしている子ども、多子世帯および民族的マイノリティ集団に属する子どもが不均衡なほどの影響を受けており、かつ、ウェールズおよび北アイルランドの子どもがもっとも影響を受けていること。 (b) 福祉改革・就労法(2016年)により子どもの貧困法(2010年)が改正され、2020年までに子どもの貧困を根絶するという制定法上の目標、および、英国政府ならびにイングランド、スコットランドおよびウェールズ各政府が負っていた子どもの貧困戦略策定義務が廃止されたこと。 (c) 最近行なわれた税額控除法(2002年)、福祉改革法(2012年)および福祉改革・就労法(2012年)の改正により、世帯のニーズにかかわらず、子ども税額控除および社会給付(「世帯給付上限」および「寝室税」)の受給資格が制限されたこと。 (d) 審査対象期間中に、子どもの被扶養者がいるホームレス世帯の数がイングランドおよび北アイルランドで増えており、かつ、4つの法域のすべてで、一時宿泊施設に滞在するホームレスの家族(乳児がいる家族を含む)の数も増えていること。 (e) スコットランドにおいて、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子どものための、十分なかつ文化的配慮のある宿泊施設が依然として不十分であること。 71.委員会は、持続可能な開発目標のターゲット1.2(貧困削減)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 定められた時間枠および測定可能な指標をともなう具体的達成目標をあらためて設定する等の手段により、子どもの貧困根絶についての説明責任を確保するための明確な機構を設置するとともに、締約国全域における子どもの貧困削減の恒常的な監視および報告を継続すること。 (b) 貧困削減に関する締約国の戦略および行動計画(新たに策定された「ライフチャンス戦略」を含む)において子どもに明確に焦点が当てられることを確保するとともに、権限委譲行政地域における子どもの貧困削減戦略の作成および実施を支援すること。 (c) 2010年から2016年にかけて導入された、社会保障および税額控除に関するさまざまな改革が子ども(障害のある子どもおよび民族的マイノリティ集団に属する子どもを含む)に与える累積的影響について、包括的評価を実施すること。 (d) 必要なときは、これらの改革が異なる集団の子ども(とくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども)に及ぼす異なる影響を考慮に入れながら、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利を全面的に尊重する目的で、当該改革を修正すること。 (e) イングランド、ウェールズおよびスコットランドにおいて、公的機関が子どもを一時宿泊施設に長期間措置することを禁ずる法的規定を厳格に実施するとともに、北アイルランドでも同様の法律を制定すること。 (f) ホームレスの削減のために必要な措置をとるとともに、物理的安全、十分な空間、健康への脅威および構造的危険(寒さ、湿気、熱および汚染を含む)からの保護ならびに障害のある子どもにとってのアクセシビリティを備えた十分な住居へのアクセスを、すべての子どもに対して漸進的に保障すること。 (g) スコットランドにおいて、トラベラーに対して安全かつ十分なサイトを提供する、制定法に基づく地方当局の義務を導入するとともに、計画および意思決定のプロセスにおいて、子どもたちを含むロマ、ジプシーおよびトラベラーのコミュニティの意味のある参加を確保すること。 H.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条、第30条および31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 72.委員会は、教育達成度における不平等のギャップが徐々に縮小しつつあること、および、退学措置の使用が減少していることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) とくに男子、貧困下で暮らしている子ども、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、障害のある子ども、養護の対象とされている子どもならびにニューカマーの子どもについて、教育達成度の面で相当の不平等が根強く残っていること。 (b) 退学または停学の措置の対象とされた子どものうち、男子、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、カリブ海諸国系の子ども、貧困下で暮らしている子どもならびに障害のある子どもの人数が不均衡なほど多く、かつ、スコットランドを除き、退学または停学に対する不服申立ての権利を認められているのは障害のある子どもだけであること。 (c) 障害のある子ども、とくに心理社会的障害またはその他の「特別な教育上のニーズ」を有する子どもが、行動の統制のため、しばしば「非公式な」停退学または「学校外授業」の対象とされていること。 (d) 子どもの規律のために隔離室が用いられていること。 (e) 北アイルランドで、宗教による学校分離が根強く残っていること。 (f) 貧困下で暮らしている多くの子ども(とくに男子)が就学前の段階で期待される言語的発達水準に達しておらず、その初等教育に悪影響が生じ、かつ人生を通じた発達が妨げられていること。 73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの社会的背景または障害が学校の成績に及ぼす影響を少なくし、かつ締約国のすべての地域で真にインクルーシブな教育に対するすべての子ども(正規の教育を受けた経験がないニューカマーの子どもを含む)の権利を保障するための努力を増進させること。これとの関連で、イングランドにおけるアカデミーおよびフリースクールの設置および運営を緊密に監視し、かつ必要であれば規制するとともに、北アイルランドにおける初等学校後教育について規制のない入学試験が行なわれている慣行を廃止すること。 (b) 懲戒措置としての退学または停学は最後の手段としてのみ用いるものとし、「非公式な」停退学の慣行を禁止しおよび廃止し、ならびに、学校においてソーシャルワーカーおよび教育心理学者と緊密に協力することならびに仲裁および修復的司法を活用することにより、停退学の件数をさらに減少させること。 (c) 子どもに対し、停退学に対する不服申立ての権利が認められ、かつ、資産を有さない者を対象とする法的な助言、援助および適切なときは代理人が提供されることを確保すること。 (d) 隔離室の利用を廃止すること。 (e) 北アイルランドにおいて、全面的統合教育制度を積極的に促進するとともに、混成教育が社会的統合の促進につながることを確保する目的で、その提供状況を、子どもたちの参加を得ながら緊密に監視すること。 (f) 持続可能な開発目標のターゲット4.2(良質な乳幼児期発達サービスへのアクセス)に留意しながら、乳幼児期の発達に関する包括的かつホリスティックな政策に基づいて乳幼児期のケアおよび教育を発展させかつ拡大していくことに対し、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。その際、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払うこと。 (g) 子どもの権利教育を必修とすること。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 74.委員会は、遊びに関する政策を採択し、かつ、関連の法律および他の関連の政策に子どもの遊ぶ権利を体系的に統合しようとしてウェールズ政府が進めている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) イングランドで遊び・余暇政策が撤回され、かつ、北アイルランド、スコットランドおよびウェールズで遊び・余暇政策のための資金が十分に拠出されていないこと。 (b) 子どもの遊びおよび余暇のための場所および設備(とくに、障害のある子どもならびに周縁化された状況および不利な状況に置かれた子どもを対象とするアクセシブルな場所および設備)ならびに思春期の子どもが交流する公共空間が不十分であること。 75.休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国(権限委譲行政地域の政府を含む)が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 十分かつ持続可能な資源をともなう遊び・余暇政策を採択しかつ実施すること等により、余暇および休息に対する子どもの権利ならびに子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利を保障するための努力を強化すること。 (b) 子ども(障害のある子どもならびに周縁化された状況および不利な状況に置かれた子どもを含む)に対し、遊びおよび交流のための安全、アクセシブルでインクルーシブなかつ禁煙の空間、ならびに、そのような空間にアクセスするための公的移動手段を提供すること。 (c) コミュニティ、地方および国のレベルにおける遊び政策ならびに遊びおよび余暇に関連する活動の計画、立案およびその実施状況の監視に、子どもたちの全面的関与を得ること。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの庇護希望者、難民および移住者 76.委員会は、締約国が2010年に行なった、出入国管理目的での子どもの収容をやめる旨の決定を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもの庇護希望者(年齢について争いがある者を含む)についての信頼できるデータが依然として利用可能とされていないこと。 (b) 保護者のいないすべての子どもが、出入国管理手続および庇護手続の過程で独立後見人または法的助言にアクセスできているわけではないこと。 (c) 「年齢鑑別」(Assesing Age)に関する内務省の庇護訓令に基づき、子どもが身体的外見に基づいて成人と鑑別される可能性があること。 (d) 子どもが庇護手続の過程で収容される場合(締約国への入国直後の短期収容施設における収容を含む)があり、かつ、年齢について争いがある子どもの庇護希望者が成人用施設に収容される場合があること。 (e) 締約国の内外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの難民が家族再統合の制限に直面していること。 (f) 子どもの庇護希望者、難民および移住者ならびにその家族が、教育および保健ケアのような基礎的サービスへのアクセスについて困難に直面しており、かつ窮乏状態に陥る危険性が高い状況に置かれていること。 (g) 出入国管理法(2016年)において、養護の対象とされている保護者のいない子どもであってその出入国管理法上の地位が非正規または未解決である子どもに認められていた、養護を離脱する際の支援の受給資格が廃止され、かつ、「退去強制先行・不服申立てはその後」体制が採用されて、移住者は滞在の不許可に対する不服申立てをイギリス国外からしか行なえなくなったこと(当該退去強制によって子どもの移住者の家族の統合が阻害されるおそれのある場合を含む)。 (h) 子どもが、十分な保障措置のないまま出身国または常居所地国に送還されていること。 77.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 庇護を希望している子ども(年齢について争いがある子どもを含む)の人数に関する細分化されたデータを組織的に収集しかつ公表すること。 (b) 締約国全域で、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子ども全員を対象とする、制定法上の独立後見人を設置すること。 (c) 年齢鑑別は、重大な疑いがある事案に限って、学際的かつ透明な手続を通じ、あらゆる側面(鑑別対象者の心理的および環境的側面を含む)を考慮に入れながら実施すること。 (d) 子どもの庇護希望者および移住者の収容をとりやめること。 (e) 欧州連合ダブリンIII規則の実施等を通じ、締約国の内外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの難民の家族再会を促進する目的で、庇護政策を見直すこと。 (f) 子どもの庇護希望者、難民および移住者が基礎的サービスにアクセスできるようにするための十分な支援を提供すること。 (g) 条約との整合性を確保する目的で出入国管理法(2016年)を見直すこと。 (h) 子どもの送還が、十分な保障措置(子どもの最善の利益に関する正式な判断、効果的な家族追跡、リスクおよび安全に関する個別アセスメントならびに受け入れおよびケアのための適切な手配を含む)が整っている場合にかぎって行なわれることを確保すること。 少年司法の運営 78.委員会は、刑事責任に関する最低年齢の引き上げについてスコットランド政府が開かれた姿勢を示していること、および、これらの問題について検討し、かつ協議のための勧告をとりまとめる諮問グループが2016年に設置されたことに留意する。委員会はまた、2016年に成立する予定のモントセラト刑事司法法案によって同最低年齢が10歳から12歳に引き上げられ、かつ刑事犯罪に問われた子どもの権利を保護するために少年司法制度改革が行なわれる見込みであること、および、バージン諸島が、国際連合児童基金(ユニセフ)カリブ海諸国事務所の援助を得て、包括的な少年司法戦略の策定を計画していることにも留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢が依然として、スコットランドおよびタークス・カイコス諸島では8歳、締約国の残りの地域では10歳のままであること。 (b) 一部の子どもの審理が成人裁判所で行なわれていること。 (c) 子どもを対象とする終身刑(イングランドおよびウェールズでは「女王陛下の御意による拘禁」、北アイルランドでは「国務長官の随意のままの拘禁」およびスコットランドでは「期限のない拘禁」)が、罪を犯した者が18歳未満のときに行なわれた殺人について必要刑とされていること。 (d) 身柄を拘束されている子どもの人数が依然として多く、かつ、そのなかでも民族的マイノリティの子ども、養護の対象とされている子どもおよび心理社会的障害のある子どもが不均衡なほど多いこと、および、拘禁が常に最後の手段として用いられているわけではないこと。 (e) 子どもが、成人を対象とする場所と同じ自由の剥奪場所に収容される場合があること。 (f) 身柄を拘束されている子どもにとって、教育および保健サービス(精神保健サービスを含む)へのアクセスが不十分であること。 (g) 青年犯罪者施設等において、身柄を拘束されている子どもを対象として隔離(独居拘禁を含む)が用いられる場合があること。 79.少年司法における子どもの権利にについての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、少年司法制度(すべての権限委譲行政地域、海外領土および王室属領におけるものを含む)を条約その他の関連基準に全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 受け入れ可能な国際基準にしたがって刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。 (b) 法律に抵触した子どもへの対応が18歳に達するまで常に少年司法制度のなかで行なわれること、および、ダイバージョン措置が子どもの犯罪記録に記載されないことを確保すること。 (c) 子どもに対する、18歳未満のときに行なわれた犯罪についての必要的終身刑を廃止すること。 (d) 拘禁は最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられるべきである旨の制定法上の原則を確立するとともに、拘禁が特定の集団の子どもに対して差別的に用いられないことを確保すること。 (e) あらゆる拘禁場所で、子どもの被拘禁者が成人から分離されることを確保すること。 (f) すべての子どもを直ちに独居拘禁から解放し、あらゆる場合における独居拘禁の使用を禁止し、かつ、子どもの拘禁施設における隔離措置および孤立化措置の使用について恒常的査察を実施すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 80.委員会は、犯罪の被害者または証人である子どもが出廷して反対尋問を受けなければならないことを深刻に懸念する。 81.委員会は、締約国が、捜査時に行なわれる被害者または証人である子どもの事情聴取のビデオ録画を標準的対応として導入し、かつ、事情聴取のビデオ録画が法廷で証拠として認められるようにすることを勧告する。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 82.委員会は、人身取引に反対する行動に関する欧州評議会条約が批准されたことおよびこの分野で新たな法律が制定されたこと(現代的奴隷制法(2015年)、人身取引・搾取法(北アイルランド、2015年)および人身取引・搾取法(スコットランド、2015年)を含む)、ならびに、制定法上の独立後見人が、北アイルランドでは保護者のいないすべての子どもを対象として、またイングランドおよびウェールズでは人身取引の被害を受けた可能性があるすべての子どもを対象として、導入されたことを歓迎する。委員会はまた、子どもに対するあらゆる形態の暴力(子どもの性的虐待、性的搾取および人身取引を含む)との闘いに対するイギリスの決意にも留意するものである。にもかかわらず、委員会は依然として以下のことを懸念する。 (a) 18歳に達するまでのすべての子どもが、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されることを確保するための措置、および、締約国全域(権限委譲行政地域を含む)の国内法で、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について、双方可罰性の基準を満たさなくとも域外裁判権を設定しかつ行使できるようにするための措置が、何らとられていないこと。 (b) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもおよびそのような犯罪の被害を受けるおそれのある子どもを特定しかつ付託するためのシステムが脆弱であること。 (c) 人身取引の被害を受けた子どもが、いまなお、人身取引との関係で行なうことを余儀なくされた犯罪を理由として訴追される場合があること、および、人身取引の被害を受けた子どもが有する、独立後見人を任命される権利が締約国で全面的に運用されているわけではないこと。 (d) 2015年に制定された諸法律で、選択議定書で対象とされている犯罪からのさらなる保護が18歳に達するまでの子どもに提供されている一方、イングランドおよびウェールズの性犯罪法(2003年)および性犯罪(北アイルランド)令(2008年)について、18歳未満のすべての子どもに全面的かつ平等な保護を提供することを目的とした改正が行なわれていないこと。 83.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPSC/GBR/CO/1)に掲げられたことを全面的に実施すること、とくに締約国が以下の措置をとることを勧告する。 (a) 18歳に達するまでのすべての子どもが、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されること、および、締約国全域(権限委譲行政地域を含む)の国内法で、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について、双方可罰性の基準を満たさなくとも域外裁判権を設定しかつ行使できることを確保すること。 (b) 現行の子ども保護手続に備わっている、人身および搾取の対象とされた子どもを特定するための全国付託機構を強化すること。 (c) 訴追を行なわない明確な義務を定める等の手段により、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するための機構および手続を確立するとともに、このような子どもが、法執行機関および司法機関によって、犯罪者ではなく被害者として取り扱われることを確保すること。 (d) 刑事司法手続における、権限のある制定法上の後見人の任命を実際に運用すること。 (e) 18歳に達するまでのすべての子どもが、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されることを確保する目的で法改正を行なうこと。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 84.委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) 締約国が、選択議定書第1条に関する、適用範囲の広い解釈宣言を維持していることにより、一定の状況下で、敵対行為が行なわれている地域への子どもの配備および敵対行為への子どもの関与が認められる可能性があること。 (b) 志願入隊に関する最低年齢(16歳)が変更されておらず、かつ、イギリス常備軍への最近の入隊者の20%を子どもの志願兵が占めていること。 (c) 陸軍委員会が、人員不足を回避するための18歳未満の要員の採用数の増加を支持しており、かつ、これらの新規入隊者のなかで、権利を侵害されやすい状況に置かれた集団出身の子どもが不均衡なほど多いこと。 (d) 志願入隊に関する保障措置が、とくに、18歳未満の新規入隊者の大多数の識字水準が非常に低く、かつ、子どもの申請者およびその親または保護者に提供される説明資料で入隊後のリスクおよび義務について明確な情報提供が行なわれていないことに照らして、不十分であること。 (e) 軍隊において、子どもの新規入隊者が、成人新規入隊者についての最低期間よりも長い、最低2年間の軍務に就くことを要求される場合があること。 85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 全般的により高い法的基準を通じて子どもの保護を促進するために、自国の立場の見直しを検討し、軍隊への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げること。 (b) 軍隊に子どもを積極的に採用する政策を再検討し、かつ兵員募集の実務において18歳未満の者が積極的に対象とされないことを確保するとともに、軍の新兵募集担当者による学校へのアクセスが厳格に制限されることを確保すること。 (c) 18歳未満の者の採用に際し、入隊が真に自発的なものであり、かつ新規入隊者ならびにその親および法定保護者の完全に十分な情報に基づく同意を基礎として行なわれることを確保する目的で、選択議定書第3条で要求されている保障措置を強化するとともに、採用によって民族的マイノリティおよび低所得家庭の子どもに差別的影響が生じないことを確保すること。 (d) 軍に入隊した子どもに適用される最低軍務期間が成人の新規入隊者に適用される期間を超えないことを確保すること。 86.委員会は、「捕虜とされた者に関する合同軍事教義公刊1-10」(Joint Doctrine Publication 1-10 for Captured Persons、第2版、2011年10月)によれば、特別な保護を享受できるのは15歳未満の子どものみとされていることに、懸念とともに留意する。 87.委員会は、締約国が、選択議定書についての委員会の前回の勧告のうち捕虜とされた子ども兵士に関するもの(CRC/C/OPAC/GBR/CO/1、パラ29)を、18歳未満のすべての子どもを対象として実施するよう勧告する。 J.通報手続に関する選択議定書の批准 88.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 89.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、および、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう勧告する。 L.地域機関との協力 90.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における〔子どもの権利〕条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。 V.実施および報告 〔訳者注/IVが抜けているのは原文ママ〕 A.フォローアップおよび普及 91.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 92.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2022年1月14日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 93.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年1月13日)。