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アニメ終了時あまりに原作と設定が変わってしまった為に、 万が一アニメ第二期が作られるとしてもストーリや原作設定、 辻褄合わせが無理なんじゃ無いか…との声を受けて書いた物。 388 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 17 01 18 ID enMiiCsj こんなんどーよ? 『ゼロの使い魔』 第2期 序章 新生アルビオンの先遣隊を初戦で見事打ち破ったトリステイン前線軍。 幸先の良い成果を上げて皆は湧き上がるが、脅威が去った訳では無かった。 アルビオンは謎の魔法(虚無)の脅威に一時撤退…戦況は膠着状態に入った。 この期にトリステインは隣国ゲルマニアとの同盟を結び、その戦力をより 強固なものにしていた。 議会では…和平交渉を勧める穏健派と、攻め込むべきと勧める推進派が 真っ向から対立していた。 一方、事実上の指導者を失った新生アルビオンでは新たな指導者争いが… 我こそ指導者にふさわしいと喧々囂々と議論を交わす者達の背後から、 物静かに目深にフードを被った人物が現れた…。 事実上の休戦状態に入ったトリステイン国内は活気を取り戻しつつあった。 予断を許さない状況下ではあるが、アルビオンの先遣隊を一瞬で消し去った 素晴らしい力がトリステインを守護している…と、口々に噂していた。 ルイズと才人は「虚無」の魔法の事については最後まで話さなかったが、 アンリエッタの計らいで…王宮で秘密裏に開発された新兵器。という事で、 一応の収集がついてホッと胸をなでおろした。 コルベールの話によると、次の日食は少なくとも才人の寿命中には訪れない との話で…才人は酷く落胆したが、ルイズ達と数日を過ごす内に… まぁ仕方ないか…と思うようになった。 才人を気遣ってくれる周囲の気持ちが痛いほど伝わったせいでもあるが、 なによりもルイズを守るという使い魔としての役目がある。 こっちの世界にはこっちの世界でやるべき事、出来る事がまだある。 それをやろう!と…。 アンリエッタは心を痛めていた… 先の戦いは、相手から仕掛けられ…仕方なく応戦した戦いだった。 しかしこの先は違う・・・。 指輪を見つめ…愛しそうになでながら…二つの月を見据えた。 429 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 21 13 58 ID enMiiCsj 『ゼロの使い魔』第2期 暗躍 トリステインでは指揮を高める意味でも、前国王亡き後…ずっと空位であった 王位の復活を望む声が民衆を中心に広がっていた。 先の最前線での戦果も後押しして、それは王国上層部の意見も同様であった。 アンリエッタを女王とすることにより国をより強固なものにしようというのだ。 即位の礼には巫女が儀礼的に始祖の祈祷書を用いて詔を唱えるのが慣わしで、 その巫女の大役には、アンリエッタの希望によりルイズが選ばれた。 渡された始祖の祈祷書は、何も書かれていない形式的なものであったが… 新生アルビオンは戦況を読みあぐんでいた。不用意に攻めればまたあの謎の 未知の力でやられるだけ…。少なくとも兵を船隊を立て直す時間稼ぎが欲しい。 戦々恐々とする幹部を尻目に、目深にフードを被った謎の人物は事も無げに、 「案ずる事は何も無い」と…静かに左手を挙げ、後ろに控えていた男を指した。 それは紛れも無く…アルビオン王国の皇太子、ウェールズ・テューダーだった。 タバサとキュルケは水の精霊に指輪を返すべく馬車に揺られていた。 ルイズは即位の礼での詔の文句を考えるのに頭を痛めていたし、 才人は「ご主人様の側を離れるなんて許さない」と一喝され付いて来なかった。 途中ですれ違う馬車の中にキュルケは見覚えの有るような顔を見つけたが… それが誰であったか思い出せなかった。 以前に来た時より、すっかり水の引いた湖畔で…静かに精霊に呼びかけ、 水際に指輪を浸すと…精霊は現れた…そして 「似て非なるもの、模した異なるもの」と言ったまま…また消えてしまった。 タバサとキュルケは顔を見合わせるしかなかった。 頭を痛めるルイズが白紙の祈祷書に詔を書き連ねていると… 不思議なことが起こった。なんと文字が浮かび上がったのである。 それを見たデルフリンガーが…口を開いた。 「どうやら、本物を引き当てちまったらしいな」 433 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 21 24 48 ID enMiiCsj 430 まぁこれで大体の辻褄あわせは終わったから …もうお終いにする。
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メニュー トップページ プラグイン メニュー 更新履歴 召喚~コントラクト・サーヴァント 朝~授業 昼食~ギーシュとの決闘 決闘その後~フーケ登場 決闘が終わり~城下町で買い物 フーケ討伐~舞踏会 第2部OP~アンリエッタ登場 ワルド登場~ワルドとの決闘 街中散策~フーケ来襲 空賊来襲~頭目の正体判明 入港~結婚式 対決~アルビオン脱出 第3部OP~タバサの講義 探索~タルブの村の鬼退治 依頼~発見『竜の衣』 手紙~竜の羽衣輸送 呼び出し~恋文疑惑 開戦~竜の羽衣飛翔 追跡~竜騎士殲滅 ワルド再戦~戦艦撃沈 災厄襲来~本当の名前 迎撃~合流 祈祷書~黒衣の英雄 発動~帰還 エピローグ @ウィキ ガイド @wiki 便利ツール @wiki 更新履歴 取得中です。
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戦勝! 城下町でお買い物 その① 王宮にやって来たルイズを、女王になったアンリエッタは思い切り抱きしめた。 女王になったせいで気苦労が増大したそうな。 そして異国の飛行機械で上げた戦果をアンリエッタは褒め称えた。 本来ならルイズは領地どころか小国を与えられ、大公の位にしてもいほどだ。 承太郎にしても貴族の身分を与えていいとまで言っている。 だが、アルビオン艦隊を壊滅させた光の正体を知ると、前言撤回せざるえなかった。 ルイズが虚無の担い手だという事は、アンリエッタはすぐに信じた。 伝説の虚無は本来王家の中にその力を行使する者が現れるらしく、ヴァリエール家は王の庶子でありトリステイン王家の血を引いている。それが理由。 しかし、アンリエッタがルイズに恩賞を与えたら、ルイズ達の功績を白日の下にさらす事となってしまう。すなわち虚無の力を。 それはあまりにも強大であり、一国でさえ持て余すほど。 敵に知られたら間違いなく狙われるし、味方に知られても私欲のために利用しようとする者が必ず現れるに違いないのだ。 そのため、アンリエッタはルイズに虚無の力の事は秘密にするよう約束させた。 そして始祖の祈祷書はルイズに預ける事となった。 虚無と、ルビーと、始祖の祈祷書。みっつそろってなければ真の力は発揮できない。 それに始祖の祈祷書はもう不要の物なのだ。 なぜならアンリエッタとゲルマニア皇帝との婚約は解消されたからだ。 アルビオン軍に勝利したアンリエッタは『聖女』として崇められ、ゲルマニアとも十分対等で強硬な態度で接する事ができるようになっている。 アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとって、トリステインは今や決して同盟を切ってはならない強国なのだ。 という訳で始祖の祈祷書を与えられたルイズは、今後虚無の事を隠しながらも色々と動きやすいようにと、アンリエッタ直属の女官に任命され、許可証を渡された。 王宮を含む国内外へのあらゆる通行と、警察権を含む公的機関の使用を認められており、つまりすごくやりたい放題やれるという訳だ。 何せ女王の権利を行使する許可を得たのだから。 「あなたにしか解決できない事件が持ち上がったら、必ずや相談いたします。 表向きには、これまで通り魔法学院の生徒として振舞ってちょうだい」 ルイズにそう言ったアンリエッタは、続いて承太郎に向かった。 「これからもルイズを……わたくしの大事なお友達をよろしくお願いしますわね」 と、アンリエッタは身体中のポケットを探り、金貨や宝石を取り出すと、それを承太郎の手に握らせる。 「……何のつもりだ?」 「本当ならあなたを『シュヴァリエ』に叙さねばならぬのに、それがかなわぬ無力な女王のせめてもの感謝の気持ちです。 あなたはわたくしと祖国に忠誠を示してくださいました。報いるところがなければ――」 「勘違いしてもらっちゃ困るぜ。 俺はあんたやトリステイン王国のために戦った事は一度も無い。 忠誠なんて持っての他だ。俺は王国にも女王にもルイズにもかしずくつもりは無い。 あれはあくまでタルブの村と村人のために戦ったんだ……」 金貨と宝石を突き返され、アンリエッタは表情を曇らせた。 それを見てルイズは慌てて承太郎の学ランを引っ張る。 「なな、何言ってんのよ! 姫様からもらった物を、突き返すなんて!」 「……俺は金のために戦った訳でも、国のために戦った訳でもない。 それなのに金を受け取るって事は……俺のプライドに傷をつける」 ああ、これはもう駄目だとルイズは思った。 説得不可能。承太郎は自分の意思を曲げないだろう。頑固者め。 だがアンリエッタはしばし悩み、パッと表情を輝かせる。 「ではこれは、わたくしの国にあるタルブの村を救ってくれたお礼として差し上げます。 そしてわたくしの命や、数多くの兵達の命を救ってくれたお礼でもあります。 あなたがいなければ、わたくし達はアルビオン軍に敗北していたでしょう。 ですから、これを受け取ってください。報いではなく、純粋な感謝の気持ちです」 「断る。礼ならタルブの連中に十分してもらった。じゃあな」 こうして承太郎は一人でさっさと退室してしまう。 ルイズは全力で謝罪したが、アンリエッタは怒る事なく、今度はルイズに金貨と宝石を受け渡した。 「ルイズ。このお金は、あの使い魔さんのために使って上げてください」 「は、はい。解りました」 こうしてルイズは承太郎の後を追いかけて王宮を出て行くのだった。 「ねえジョータロー。あんた、これからどうする気?」 道中、ルイズは好奇心から訊ねてみる。 もう日食はすぎてしまって、元の世界に帰る手がかりは無くなってしまったのだ。 だが、さすがは承太郎しっかり手がかりを掴んでいた。 「竜の羽衣は……東から飛んできたと言われている。 だったら東……東方とやらに行けば、何か手がかりが掴めるかもしれねー。 竜の羽衣がどうやってこの世界に来たのか解る可能性もある」 「……でも、戦争始まっちゃったし、トリステインを放って行けるの?」 「…………さあな……」 もう置いて行かれるのは嫌だ、とルイズは思ったけれども、 そんなの絶対口に出して言えないし、考えた事すら知られたくなかった。 いっそ承太郎が自分から望んで手伝ってくれたら嬉しいんだけど。 と、悩みながら歩いていると、ルイズはいかつい男にぶつかってしまった。 「イテェなコラ! どこ見て歩いてやがる!」 どうやら傭兵崩れらしいその男は、手にした酒のビンを見るにそうとうデキてるようだった。 ルイズは無視して脇を通り抜けようとしたが、腕を掴まれてしまう。 「待ちなよ、人にぶつかっといて謝りもしねーで通り抜けようってのか? アァン?」 この騒ぎに傭兵の仲間達も気づき、ルイズの羽織ったマントを見て貴族だと解ると、 酔った傭兵の男をなだめ始めたが、男は逆にこう言った。 「今日はタルブの戦勝祝いの祭りだぜぇ? 無礼講だ! 貴族も兵隊も町人もねーよ。 ほら、貴族のお嬢ちゃん、俺に一杯つげや。ホレ」 「放しなさい! 無礼者!」 その言葉を聞いた途端、男の顔が凶悪に歪んだ。 「アァン!? てめー、誰がタルブでアルビオン軍をやっつけたと思ってんだ!? いいか! 『聖女』でもてめえ等貴族でもねえ! 俺達兵隊なんだよ!」 「ほーう、そいつは初耳だ。具体的に言ってみな」 ルイズを掴んでいた傭兵の手が、承太郎の手で掴まれる。 「何だてめえ!? 引っ込んでやがれ!」 「俺が知っている兵隊は……アルビオン軍のメイジが作ったゴーレムに恐れをなし、 タルブの村人を放って逃げ出した臆病者くらいしか心当たりがないんでな……」 酒に酔ってただでさえ赤かった顔が、さらに真っ赤になる。 「て、てめえ! 何で知ってやがる!」 「何だ、本当に逃げ出した奴等の一味だったのか。やれやれ」 馬鹿にした物言いに、完全に男はプッツンした。 「てめー! ぶちのめしてやるぁあああッ!!」 ルイズを突き飛ばして、傭兵の男は承太郎に拳を振り上げる。 が、承太郎の膝蹴りが男の腹部にめり込み、呆気なく這いつくばってゲロを吐いた。 「う、ウゲゲゲッ……て、てめー! もう勘弁ならん! ぶっ殺す!」 その頃、某武器屋にて。 「あっ! 今、俺を買ってくれる人が近くにいる! 心が通じ合った感じがしたぜ!」 「寝言は寝てからほざきな、デル公よぉ~」
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プロシュートに掴まる。それは、わたしの敗北を意味する。 わたしは覚悟を決め杖を振る。 「ファイアーボール」 爆発が起こるがプロシュートは避けながら、こちらに向かって来る。 「ファイアーボール」 また避けられた!狙い通りに爆発してるのに。 「どうして当たらないのよ?」 「どこが爆発するか分からない。だが、その場所さえわかってしまえば 避けるのは、そう難しい事じゃねえ」 「わかるのッ!」 「お前の魔法は杖と視線の交差する場所が爆発するんだッ!」 「ファイアーボール」 プロシュートが爆発を避けながら、こちらに向かってくる。 言われてみれば爆発は杖と視線の先。 プロシュート、ただ単に強い能力を使うだけじゃない。 わたし自身気がつかなかった特性を冷静に分析している! わたしはギーシュの様にゴーレムを作れない。 わたしはキュルケの様に火を打ち出す事ができない。 わたしはタバサの様に風を起こす事ができない。 何を唱えても爆発しか起こらない。 どうする?その爆発がよけられたら打つ手が無い! 気がつけば目の前にグレイトフル・デッドが! しまった考え込んでいた隙に。掴まる! 「エア・ハンマー」 タバサのエア・ハンマーがプロシュートとグレイト・フルデッド共々叩き付けた。 「こっちへ」 タバサは、わたしの手を取りモンモランシーの部屋に行こうとする。 「悪いけどそっちには行けない。わたしは自分の部屋に行かなきゃいけない」 「知ってる。シルフィードで空から行く」 その手があったわね。わたしは頷くとタバサの後に続く。 他の皆も部屋に入るがギーシュは、その場に残りゴーレム達を作り出した。 「何してんの、早く来なさい」 「僕はここで足止めをする!ルイズ、君には『対策』を調べる時間が必要だ」 「偏在すら見えないあんたが足止めなんて出来るわけ無いじゃない」 「わかるとしたら」 ギーシュはグレイトフル・デッドを指差した。 「あそこにいるのだろう」 「見えているの?」 「いや見えない。だけど僕が錬金した油が浮いているからもしやと思ったんだ」 スタンドは見えないけど油は見えるって訳ね。 「ギーシュ、あんた確実に死ぬわよ・・・恐くないの?」 「そりゃ恐いさ。だがもっと恐ろしい事は・・・ ここにいる女の子達が全員老いて死んでしまう事だッ!」 一体のワルキューレがわたしを抱え上げた。 「ちょ、ギーシュッ!」 「言い争ってる暇は無い。ラ・ロシェールの時と一緒だ!」 あの時は、わたしの意志なんか関係無かった。状況に流されていただけだ! また、このまま流されるの・・・でも時間が・・・ 「絶対死なないでよギーシュ」 それだけ言うのがやっとだった。 「薔薇はまだ全ての女性を楽しませてはいない・・・ だから、まだこんなところで枯れ果てる訳にはいかないッ!」 ワルキューレは、わたしをモンモランシーの部屋に押し込めドアを閉めた。 「さあ行けッ!うおおおおりゃああああぁあああ」 ドカ バキ ドグシャーッ 「ちょっとルイズ早くしなさいよー」 既にシルフィードに乗ったキュルケが急かしてくる。 「今行くわよ」 タバサの風に包まれるとシルフィードの背中に移された。 「きゅいぃ」 なんだか鳴き声に元気が無い、シルフィードも年を取ってるのね。 「飛んで、割れた窓」 ああ、キュルケのファイアーボールが窓を突き抜けていたっけ。 シルフィードが旋回しながら上昇していくと、すぐに割れた窓が見つかった。 乗った時と同じ様に風に包まれ部屋の中に移動した。 部屋の中は酷い有様だった。 タバサのウィンディ・アイシクルで壁や家具は穴だらけで水浸しだった。 床に残っていた氷を手に取り握り締め少しでも老化の進行を抑える。 それを見たキュルケとモンモランシーも慌てて氷を掻き集めだした。 始祖の祈祷書と水のルビーは確か机の引き出しに・・・あった! 「デルフリンガー。これから、どうすればいいのよ?」 「まず指輪を嵌めな」 指輪を嵌めた瞬間、水のルビーと始祖の祈祷書が光りだした。 「祈祷書を開いてみな。きっと読めるはずだ」 言われなくても既にページを捲っていた。 こんな時だというのに好奇心が抑えられない。 古代のルーン文字で書かれていたが読める・・・ わたしには、これを読むことができるッ! 「ねえルイズ、私には何も書いて無いように見えるけど本当に読めてるの?」 キュルケが祈祷所を覗き込みながら話し掛けてくる。 「ええ読めるわ」 「その水のルビーを嵌めると読めるのかしら」 「いや、それじゃ読めねえ」 キュルケの呟きをデルフリンガーは否定する。 「担い手が水のルビーを嵌めないと読めないんだよ」 「何よそれ、条件厳し過ぎない?」 デルフリンガーとキュルケの言合いも気にせずにページを捲っていく。 「真っ白になったわよ」 「気にせずページを捲りな、必要な呪文が読める様になってんだよ」 いわれるままページを進めると光り輝くページを見つけ手をとめる。 ディスペル・マジック(解除) わたしは祈祷書を閉じ顔をあげた。 「それでルイズ、何が書いてあったの?」 モンモランシーが神妙な顔つきで尋ねてきた。 「プロシュートを止める魔法よ」 一刻も早くプロシュートを止めなくちゃいけない。学院の皆が老化で死ぬ前に。 わたしは、意を決しドアを開けると廊下に一人の老人が倒れていた。 ローブを被っており老化が進み過ぎているので誰かわからない。 こちらに気が付いたのか顔を上げる。 「ううう・・・君達、早く非難しなさい・・・ 私達は先住魔法の攻撃を受けている・・・」 男の先生・・・?こんな場所に・・・ わたしの疑問を余所にモンモランシーは男の傍に駆寄った。 「もう大丈夫です。すぐに助けますから」 モンモランシーが氷をくっつけようとした時、その手を男に掴まれた。 「いいや・・・助からないさ!ただしお前がだ・・・モンモランシー」 「え?」 その台詞は!! 「モンモランシーそいつから離れて!早くッ!!」 「グレイトフル・デッド!」 ズギュウウゥゥゥン 「ぎゃあああああぁ」 「『直』は素早いんだぜ、パワー全開だ~」 言っておくべきだった・・・ 未確認の情報、自分自身も老化することが出来る事を。 「離れなさい。ファイアーボール」 「ちっ」 プロシュートはモンモランシーから手を放し爆発から距離をとる。 「プロシュート・・・ギーシュはどうしたのよ?」 「さあな・・・あの高さだ、無事じゃねーだろ」 曖昧な言い回し・・・直接手を下した訳じゃなさそうね。 「プロシュート。クロムウェルの支配から開放してあげるわ」 杖を構え解除の呪文を頭に思い浮かべる。 「クロムウェルの支配か・・・ 魔法に疎いオレに教えてくれないか。人を呼び出し強制的に使い魔にする事と 死人を生き返らせ操るのは一体なにがどう違うんだ?」 え? 「な、何を言っているの?だって自分は使い魔だって言ってたじゃない」 違う。こんな事が言いたいんじゃ無い。考えが上手く纏らない。 「オレが好き好んで使い魔をやっていたと思うか? お前のダメージがオレのダメージになるから守ってただけだ 何を勘違いしてたのやら。御目出度いガキだなオメーはよォ」 わたしは何をやってたというの?わたしは何処に立ってるの? わたしは何処に向かっているの?わたしは何処に向かえばいいの? わたしは わた わた わ 「掴んだ」 あっ、グレイトフル・デッド。 「エア・ハぐふッ」 「同じ手は食わねえ」 「タバサッ!」 「グレイトフル・デッド」 ズギュウウゥゥゥン わたしの体が、頭が、心が危険を訴えてくるが・・・杖を振るどころか 指一本・・・動かすことが出来なかっ
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「虚無って……何、これ」 アンリエッタも、ウェールズも、ルイズの疑問に答えることは出来なかった。 ルイズが更にページをめくり『始祖の祈祷書』を読み進めようとすると、よりいっそう『風のルビー』が強く輝いた。 「風のルビーが、輝いている」 アンリエッタがルイズの手にはめられた『風のルビー』を見ると、ウェールズの言ったとおり、不自然なほど強く光を反射して輝いていた。 「本当…ねえ、ルイズ、『始祖の祈祷書』を私にも……」 アンリエッタが試そうとするが『始祖の祈祷書』には何の文字も現れない。 もしやと思い『風のルビー』をはめて試すが、やはり何の文字も現れなかった。 「ルイズ、私の『水のルビー』でも読めるか、試して?」 「…………」 ルイズは無言のまま、アンリエッタの差し出した指輪を受け取り指にはめた。 「読める……読めるわ……」 『始祖の祈祷書』には、『風のルビー』をはめた時と同じように文字が浮き出ていた。 「まさか……私が、そんな、そんな」 ルイズは顔を押さえ、狼狽えた。 この本に書かれていることが本当なら、私は虚無の使い手。 今までの魔法の失敗は、私が系統魔法ではなく虚無の魔法の使い手だったからだと考えれば納得がいく。 だが、納得できない。 『なぜ吸血鬼になる前に教えてくれなかったのか!』 と、怒りにも似た感情が『始祖の祈祷書』に向けられる。 だが、本はそのまま、本として無機質な顔を見せたままだった。 アンリエッタから水のルビーを借りて、始祖の祈祷書を読もうとしていたウェールズだったが、自分には読めないことが分かると、顎に手を当てて何かを考えていた。 「アンリエッタ、この本がニセモノである可能性は?」 「ウェールズ様が疑われるのも無理はありません、ですが、『始祖の祈祷書』は過去に魔法学院やアカデミーで研究されているはずです。この本には『固定化』以外になんの魔法も付加されていないはずですわ……」 アンリエッタの言葉は少し震えていた。 ルイズの言葉が本当なら、伝説だと思われていた『虚無』の手がかりが現れたことになる。 そして、ルイズを悩ませていた魔法失敗の原因が、今解明されるかもしれないのだ。 アンリエッタは王女として、一人の友人として、期待せずにはいられなかった。 「そうなのか……ならば、石仮……いや、ミス・ルイズ。虚無の魔法とはどんなものなのか、確かめられるような魔法は書かれていないのか?」 正直なところ、ウェールズはまだ『虚無』に対して懐疑的だった。 アンリエッタやルイズを信用してはいるが、虚無の魔法ともなれば、その内容を確かめてからではないと信用は出来ない。 『伝説の虚無系統を、この目で確かめてみたい』というのが本音かもしれないが…… 虚無の魔法に対して懐疑的なのは、ルイズも同じだった。 あまりにも突然の出来事で、頭が混乱しているのかも知れない。 だが、今は『これが虚無である』と確かめられるような呪文を探すのが先だ。 ルイズは一心不乱にページをめくり、文字を探した。 「……以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』……意味は、爆発?」 爆発と聞いて、ルイズとアンリエッタが「あっ」と声を上げた。 ルイズはいつも、呪文を唱えると、爆発を起こしていた。 あれは、ここに書かれている『虚無』ではないだろうかと、思い当たったのだ。 考えてみれば、爆発する理由は誰も答えられなかった、ラ・ヴァリエール家の教育係も、両親も、姉も、誰もその疑問には答えられなかった。 ただ、彼らの望む結果を出せなかったから、ルイズの魔法は『失敗』で片づけられていたのではないか。 ルイズは更にページをめくる。 こんな所で爆発を起こしてしまったら、それこそ大問題だ。 別の何かはないかと、必死になって探した。 ルイズは本を凝視し、精神を集中させた。 ふとページをめくる手が止まる。 光と共に文字が浮かび上がり、別の呪文が姿を現した。 「初歩の初歩……〝イリュージョン〟……描きたい、光景……強く心に思い描くべし、なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すであろう…………かしら」 ルイズは、静かに詠唱を始めた。 それはアンリエッタとウェールズも聞いたことがない、長い呪文。 だが、ルイズにとっては、なぜか懐かしく、そして心落ち着く呪文だった。 ルイズは思い描く。 アンリエッタとウェールズの姿を思い描く。 テーブルの上に、二人が並んで立っている姿を想像して、詠唱する。 詠唱する。 詠唱する。 詠唱する…… テーブルの上に雲のようなものが集まり、徐々に人間の形を成して、色が浮かび上がっていった。 テーブルの上に立つのは、高さ15サント(cm)程のウェールズ、アンリエッタの姿。 ……だけではない。 羨ましい程のスタイルを持つ赤毛の女性。背丈より高い杖を持ち眼鏡をかけた水色の頭髪の少女。薔薇の造花を持った金髪の少年。長い髪の毛を綺麗にロールさせた女性。 ぽっちゃりとした体型で肩に鳥を乗せた少年。黒い頭髪と瞳を持つメイドの少女。眼鏡をかけた緑色の頭髪を持つ女性。逞しい肉体と髭をたくわえ豪華な鎧を着た男。ルイズを金髪にして眼鏡をかけたような女性。ルイズと同じ髪の色で目つきの優しい女性。 ほかにも沢山の人の姿が、まるで人形を並べていくようにテーブルの上に形作られていった。 「すごいな……、少し、確かめさせて貰うよ」 テーブルの上に作られていく人形に向けて、ウェールズは『ディティクト・マジック』を唱える。 光り輝く粉のような物が舞い、その存在を調査していく。 「手で触れることはできないが、ディティクト・マジックにすら反応しない幻……これが虚無なのか…」 「水でも、風の系統でもありませんわ、これが『虚無』の初歩なのね、ルイズ…………ルイズ?」 ウェールズが感心する一方、アンリエッタはルイズの表情に影が差していたのを見逃さなかった。 コンコン と、応接室にノックの音が響く。 「姫さま、会議の時間が迫っておりますが……」 アンリエッタは、ウェールズの処遇と、ワルド子爵の裏切りについて会議があるのを思い出した。 「ルイズ、後でまたお話ししましょう。すぐに部屋を一つ準備させますから」 ルイズはうつむいていた顔を上げ、アンリエッタを見て言った。 「は、はい……あ、私のことは、どうか誰にも言わないで」 「大丈夫ですわ、貴方がウェールズ様を守って下さったように、わたくしも貴方を守りましょう」 「……ありがとう」 アンリエッタとウェールズの二人は応接室を出ると、外で待機していた侍女がアンリエッタの言付けを受けて、すぐに上等なゲストルームへとルイズを案内した。 侍女が恭しく一礼し、ゲストルームを出て行くと、ルイズは糸が切れたようにソファに倒れ込んだ。 『イリュージョン』を唱えた影響なのか、ルイズの精神は思ったよりも疲弊していた。 侍女が出て行った途端、緊張の糸がほぐれたのだ。 ルイズは目と口を半開きにしたまま、意識を手放した。 夢の中で、ルイズは魔法学院にいた。 『ツェルプストー!見てみなさい、ふふーん、アタシは虚無に選ばれたのよ!』 『へー、すごいじゃない。でもその胸なら納得よね』 『ああああアンタ!エクスプロージョンでぶっ飛ばしてやるわよ!』 『ミス・ヴァリエール……貴方にお願いがある』 『え?お願いって……』 『タバサがお願いだなんて珍しいじゃない』 『虚無なら、ハシバミ草を育てる魔法があるはず』 『そ、そんなもん、無いわよ』 『……ふぅ』 『何よその落胆したようなため息はー!虚無よ虚無!凄いのよ!伝説よ!』 『ハハハ、ミス・ヴァリエール、君が虚無に選ばれただなんて、なんの冗談だい?』 『えい、金的』 『ウッギャー!』 『ちょっとルイズ!あたしのギーシュに何するのよ!』 『あれぐらい当然の罰よ、罰』 『駄目なの!ギーシュを罰していいのは私だけなのよ!』 『モンモランシー…あんた本当にギーシュが好きなのね。ならプレゼントよ”イリュージョン”』 『えっ、あ、ギーシュが一人、二人、三人……や、そんな、そんな沢山のギーシュに見つめられるなんて、私…ぽっ』 『あら、ヴァリエールったら、本当に虚無の魔法を使えるのね』 『ふふん、やっとツェルプストーも私の力を認める気になったのね』 『でも私はもっと派手なのがいいわ、心の底から恋を焦がすような、熱と光は無いの?』 『あるわよ』 『ふーん、じゃあやって見せなさいよ、ゼロのルイズ』 『ほえ面かいても知らないわよっ!”エクスプロージョン!”』 洪水のような熱と光に、魔法学院と級友達、そして自分自身が焼かれ、ルイズは目を覚ました。 ソファから身体を起こして窓を見る。 外には見慣れた月が二つ浮かび、ゲストルームをうす明るく照らしていた。 「……夢?」 自分の身体を触り、焼けこげていないか確かめる。 服を確かめても、夢の中のように魔法学院の制服は着ていない。 ルイズは「ふぅ」とため息をついて、再度ソファで横になった。 「戻りたい」 学院に。 「戻りたい」 人間に。 ルイズの小さな呟きは、誰にも聞かれることなく、月明かりに消えていった。 その頃、会議を終えたアンリエッタは、ルイズの作り出した幻のを思い出していた。 あの幻で作られたのは、ルイズの父母、姉達、魔法学院の制服を着た人々。 「子供の頃から、強がってばかり……」 空に浮かぶ二つの月を見上げると、月は一つの球体が二つに分裂するかのように位置をずらしていた。 アンリエッタは『おともだち』を、どんな手を使ってでも守ろうと決心していた。 ウェールズと再会できたのも彼女のおかげなのだから。 アンリエッタの表情は、いつもよりも遙かに堂々としていた。 沸き上がる『自信』も『決意』も、『おともだち』がくれたものだと思っていた。 「アニエスなら……ルイズに協力してくださるかしら?」 会議では、ウェールズの亡命を受け入れるには至らなかったが、親衛隊の新設が決定された。 ワルド子爵の裏切りが、親衛隊の新設を後押しする形となり、『銃士隊』の結成が決定されたのだ。 その隊長として、アンリエッタが選んだのは「アニエス」という平民の女性。 元傭兵のアニエスは、今はトリステインに所属する軍人として並々ならぬ功績を上げている。 アンリエッタは彼女に『シュヴァリエ』の位を与えたかったが、まだ他の貴族からの反感も大きく、実行には移せていない。 だが、機会を見てアニエスを中心とした『女性だけで構成された近衛兵』を集めるつもりだった。 「私も、私のお友達も、ずっと子供のままなのかもしれませんわ……」 アンリエッタは、ルイズと同じ月夜を見上げていた。 そして、数日後。 トリステイン魔法学院では、ある変化が生徒達を驚かせていた。 『風が最強だ!』と耳にタコができそうな程繰り返していたギトーが、どこか大人しくなり、傲慢さがなりを潜めてしまった。 それどころか、属性の使い分けと、連携を中心として授業が進められていく。 その変化に驚いたある生徒は『魅了』で記憶を改ざんされたのではないか……と言い出す程だった。 もう一つの変化は、シエスタの変化だった。 いつもより堂々と、自信に満ちた笑顔を見せて、授業を受け、実技に挑戦し、キュルケ達との会話にも物怖じしない、それは女性としての自信と言うより、戦士としての自信だったのかもしれない。 もっとも、それに気づいているのはキュルケとタバサぐらいのものだが。 元は平民なので、シエスタはどの貴族に対しても丁寧に接していたが、そのせいかマリコルヌが何かを勘違いして得意げにしていたのは秘密だ。 だが、いかに治癒の力を持つとはいえ、シエスタは元平民。 平民と貴族が同じ授業を受けるなど、馬鹿馬鹿しいと言って、シエスタに敵意を向ける者も存在していた。 シエスタは空を飛べない。 そのため、魔法学院の外で規模の大きい風の魔法を実習する時など、走ってその場まで移動する。 他の生徒達は『フライ』の魔法を使って移動している。 単独で空を飛行する魔法、風の基礎中の基礎、『フライ』すら使えないシエスタを馬鹿にする者も多かった。 だが、キュルケ達は違う。 ルイズが死んだ罪悪感からか、それとも純粋にシエスタの『治癒』の力を認めているのか、『フライ』が使えないからといってシエスタを馬鹿にすることは無かった。 キュルケ達と仲の良いシエスタを見て、ある生徒がこんなことを呟いた。 『キュルケは、平民上がりのメイジを飼っている』 その噂は瞬く間に広がり、キュルケとシエスタは侮蔑と好奇の混じった視線に晒された。 だが、元々同姓から羨まれ、恨まれるキュルケは気にしていない。 シエスタもそれがどうしたと言わんばかりの、堂々とした態度でいつもの生活を繰り返している。 そうなると面白くないのは、噂を広めた当人達。 キュルケとシエスタへ向けられていた好奇の視線、それが少なくなるに従って、今度は二人の人気が高まっていった。 姉のように振る舞うキュルケ。 優しい妹のようなシエスタ。 二人の人気を妬む、一部の生徒の『危険な』嫌がらせが実行されるのも、時間の問題だった。 To Be Continued → 25< 目次
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前ページ次ページ異世界BASARA 火竜に跨ったアルビオンの竜騎士達は、村の家々に火を付けて回った。 元々、メイジに対抗する事なんて出来ない平民達。しかも相手はかの有名なアルビオンの竜騎士隊である。 タルブの村人は、ただ悲鳴を上げて逃げ惑うしかなかった。 容易い仕事だと、竜に乗る騎士の1人が思い、次の家に火を付けようと高度を下げた。 「必殺!!!!」 突然であった。 頭上からの声に騎士は顔を上げた時、彼は既に得物を眼下の敵に振り下ろしていた。 「無敵斬りいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」 振り下ろされた刀は、恐るべき切れ味で騎士と、火竜の体を一度に真っ二つにした。 容易い仕事と余裕を決め込んでいた騎士の1人は、その生涯をここで閉じてしまった。 「わしがいる限り!この村を目茶苦茶にする事は許さん!! 無敵の力を恐れぬ者は、かかって来いいぃぃぃーー!!!!」 彼……シエスタの父は地面に着地すると、空を飛び回る竜騎士達に向かって叫んだ。 しかし運が悪かったのか、それとも彼の家系の宿命なのか…… 彼の活躍はこの後続く事はなかった。 「ぬぅ?」 ふと、一体の風竜がこちらに近づいて来るのが目に止まった。 「無敵のわしと一騎打ちをする気か?面白い!!」 刀を構え、竜騎士に向かって彼は名乗りを上げた。 「わしは無敵じゃあ!ちょっとでかいトカゲ如きに負ける筈がな」 彼が迫り来る竜騎士に名乗りを上げていた最中であった。 竜が、突如スピードを上げたのだ。 彼の元いた世界には竜などいなかった。 その為、それがスピードに優れた風竜だと分からなかったのである。 (速い!?) 彼は避けようとしたが、竜の方が素早かった。 竜は彼を咥え上げると、そのままグングンと高度を上げていった。 「うおおぉぉぉ!?」 竜に咥えられて空高くまで連れて来られると、突然彼を勢いよく放り投げた。 「む、む、無敵のわしが……」 彼が叫んだ時には、竜に乗った騎士……“閃光”のワルドはウィンド・ブレイクの呪文を完成させ、放っていた。 「吹き飛ばされるだとおおぉぉぉぉぉ~~!!??」 その呪文の直撃を受け、シエスタの父は自身の言った通りに吹き飛ばされてしまった。 結局、彼の活躍は竜騎士1人を倒したところで終った。 無敵なのにやられてしまったのだ。 トリステインにある急報がもたらされる少し前…… ルイズは、眠っている幸村の隣で本を開いていた。 といっても、その本には文字も絵も書かれていない。国宝の始祖の祈祷書である。 ルイズはこの祈祷書を手に、アンリエッタの婚礼の詔を考えていた。 だが、どうしても言葉が浮かんでこない。 いや、そもそもルイズは祈祷書を開いてはいるものの、別の事を考えていたのだ。 それは……今もベッドで眠っている自分の使い魔……幸村の事である。 あれから幸村はずっと眠り続けている。まったく目を覚ます気配がないのだ。 治療にあたったメイジは一命は取り留めたとは言っていたが…… “もしかしたら、このままずっと目を覚まさないのではないか?” 白紙のページを見ながら、ルイズの心中に嫌な考えが過る。 そんな訳ないと、ルイズは首を激しく振って今思った事を忘れようとした。 そして、再び始祖の祈祷書に目を戻した。 (……あれ?) と、祈祷書を見たルイズは首を傾げる。 白紙である筈のページに、一瞬文字のような物が見えたのだ。 ルイズはもう一度目を凝らしてそのページを見つめる。 その時だった。急に外が騒がしくなったのは…… トリステインの王宮に、国賓歓迎のためラ・ロシェール上空に停泊していた艦隊が全滅したという報せがもたらされたのは、それからすぐのことであった。 ほぼ同時に、アルビオン政府から宣戦布告文が急使によって届いた。 不可侵条約を無視するような、親善艦隊への理由なき攻撃に対する非難がそこには書かれ、 最後に『自衛ノ為神聖あるびおん共和国政府ハ、とりすていん王国政府ニ対シ宣戦ヲ布告ス』と締められていた。 ゲルマニアへのアンリエッタの出発でおおわらわであった王宮は、突然のことに騒然となった。 「タルブ領主、アストン伯戦死!」 「偵察に向かった竜騎士隊、帰還せず!」 「1人で奮戦していた村民も行方が分かりません!!」 「そんな平民はどうでもいい!!アルビオンから何か連絡はないのか!?」 次々と情報が王宮内に入ってくるが、会議は一向に進まず、不毛な議論を続けるばかりであった。 怒号が飛び交う中、アンリエッタの心にはある男の言葉が浮かんでいた。 “兵に守られるのが総大将ではない。兵を守るのが総大将だ。それを忘れるな” そしてあの日、自分はこう誓った。“自分は勇敢に生きよう。勇敢に生きて、皆を守ろう。”と…… そう決心した筈ではなかったのか? 愛するウェールズが勇敢に死んでいったのならば…… 自分は勇敢に生きて、皆を守ると…… 「……あなた方は、恥ずかしくないのですか」 アンリエッタは静かに、だが強い意志を込めた声で、議論を続ける重臣達に言った。 「国土が敵に侵されているのですよ。ここで議論を続けるより、もっとやらねばならない事があるでしょう」 王女の言葉に、その場がシンと静まり返る。 重臣の1人が、おもむろに口を開いた。 「し、しかしこちらの誤解やも知れませぬぞ。ここは先ずアルビオンに特使を派遣して話し合いの場を設けてから……」 「そんな話をしている間に!1人で戦っていた民が行方知れずになったのですよ!!」 アンリエッタはドンッ!と強くテーブルを叩いた。 その音と彼女の迫力に、一同はビクッと体を震わせる。 「あなた方は怖いのでしょう?アルビオンは大国、反撃に出たとしても勝ち目は薄い……敗戦後、責任を取らされるであろう、反撃の計画者になりたくないというわけですね?」 重臣達は答えない。いや、反論出来なかった。 殆どの者が彼女の言う通り、自身の保身を考えていたからだ。 アンリエッタは一度皆を見回すと、深く息を吸って言った。 「ならば私が戦います。あなた方はここで終らない会議を続けていなさい」 「「「な!何ですとおおぉぉ!!??」」」 アンリエッタの言葉に、一同は一斉に叫んだ。 「いけませぬぞ姫殿下!!お輿入れ前だというのに!!」 マザリーニが必死でアンリエッタを押し留めようとするが、もはや叶わない。 「あなたが結婚なさい!!結婚よりも、民を守る方が重要です!!」 そう言って、アンリエッタは会議室から駆けだして行った。 会議室から飛び出したアンリエッタは、中庭に向かっていた。 「姫殿下!」 と、急ぐアンリエッタの元へルイズが駆け寄ってきた。 「はぁはぁ……姫殿下、アルビオンが宣戦布告したというのは本当ですか!?」 肩で息をしながらルイズはアンリエッタに尋ねた。 「はい、どうやら彼等は最初から約定を破るつもりだったようですね」 「そんな……」 ルイズは言葉を失う。 しかし、アンリエッタは落ち着いた様子で話し出した。 「これから、アルビオンとの戦いが始まります。あなたは実家に戻った方が良いでしょう」 アンリエッタはルイズにそう勧める。 だが、ルイズは首を横に振った。 「……姫殿下……殿下はこれから戦いに行くのですね?」 「……トリステインの王女として、私は前線で指揮を取るつもりです」 「ならば、私も一緒に戦わせて下さい」 ルイズの言葉に、アンリエッタは驚く。 「私の使い魔……ユキムラだってきっとそう言うと思います」 「ルイズ……」 (そうでしょう?ユキムラ……) 未だ目覚めぬ使い魔に言うように、ルイズは心の中で呟いた。 アルビオンの宣戦布告がトリステイン魔法学院に届いたのは、翌日の事であった。 これを受けた学院長のオスマンは無期限の学院休校を行った。 「遂に……僕の特訓の成果を見せる時がきた!」 多くの生徒が実家に帰る予定の中、ギーシュは1人戦う決意を胸に燃やしていた。 「戦争ですって、私達も実家に帰るしかなさそうね」 オスマンの話を聞いていたキュルケは髪を弄びながら、利家に言った。 「……?トシイエ?」 だが利家が返事をしない。 気になったキュルケが目を向けると、いつもの彼らしくない、険しい表情で考え込んでいる。 「……タバサ。忠勝と王宮に行っていいか?」 しばらく考え込んでいた利家は、顔を上げるやいなやタバサに言った。 一方、トリステイン王宮…… この王宮の一室で、幸村は未だ深い夢の中にいた。 (……むら…………幸村) 深いまどろみの中にいる幸村を誰かが呼んでいる。 懐かしい……とても懐かしい声だった。 (目覚めよ……目覚めるのじゃ幸村) 再度その声を聞いた幸村は、カッと目を開く。 そこに立っていたのは、大牛を思わせるような兜を被った大男だった。 前ページ次ページ異世界BASARA
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【 Capacity 】 [統率:0][武力:5][知力:10+3][交渉:1][幸運:4] 【 Remarks 】 知る人ぞ知る、悪名高き外道法典・魔導書ネクロノミコンの原本 獣の咆哮(キタブ・アル=アジフ)とも 幻想記Ⅰの折にラナリキリュート大陸へ来訪し、今代の所有者アレルと出会う 現代よりおよそ半年ほど前、アレルと共にニクノラーシュ大陸を訪れたが…… 自身の最奥、“鬼神招喚”の呪法は未だ快癒せず 大陸にて遭遇した、流血祈祷書 無い筈の書 を名乗る血の怪異との遭遇 挙句、アレルが覚えの無い咎で指名手配を受けてしまう、と何かと鬱憤を溜め込む事に 現在はインディゴス地方はフェレ領公子、ロイの元で食客として厄介に 性に合わぬと毒づきながらも、乱破の真似事をして大陸を飛び回わる毎日を送っている
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「わたしが、姫様の結婚で詔を?」 トリステイン魔法学院の最上階に置かれた学院長室で、ルイズはミス・ロングビルに始祖の祈祷書を手渡されながら聞き返した。 「ええ。アンリエッタ王女の御指名ですわ。来月のゲルマニア皇帝との結婚式の場で詔を読み上げる巫女に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを、と」 秘書席で右手にペンを持ったまま座り、書類の山を片付けながら王宮からの急使の言葉をそのままに伝えたロングビルは、ちらりと学院長の席に視線を送る。 そこには歯も噛み合わず、熱い茶の入った湯飲みを震える手で持ち上げている今にも死にそうな老人の姿があった。 セクハラという生き甲斐を奪われたオールド・オスマンの、晩年の姿である。 「本来なら、学院長から通達されるべきことなのですが、土くれのフーケの事件からあの調子で……。学院の業務や公務も、私が代行している有様ですわ」 はぁ、と溜め息を吐いて優雅に憂いの表情を見せるロングビルを、ルイズは同情心の篭った目で眺めた。 いろいろと苦労しているのだなあ、と。 「ああ、そうそう。大切なことを言い忘れていました」 「……?なんでしょうか」 ペンを置いて向き直ったロングビルに問い返すと、ロングビルはルイズの手に収まっている始祖の祈祷書を手で指し示して、中身を見るように促した。 始祖の祈祷書とは、その名の通り、始祖ブリミルが神への祈りの文を書き記したものだ。 ただ、同じ名前の祈祷書が世界各地に存在しており、それぞれが自分が持つものこそ本物であると主張しているために、真に本物の場所は知られていない。 ルイズに渡された祈祷書もまた、本物である可能性は低い。王宮から送られたものであれば本物であるようにも思えるが、学院にも祈祷書と銘打った本が何冊か図書館に紛れ込んでいる。 王宮直下の機関である魔法学院でこれなのだから、王宮所有のものだって疑ってかかるべきだろう。 結婚式で詠み上げる詔は自分で考えなければならないが、その多くは祈祷書に書かれた文面を抜き出して引用すれば良い。ただ、無数にある祈祷書の中には、通常の言葉としての意味を持たないルーン文字や、訳の分からない記号の羅列だったりするものもある。 詔を考えるのに参考になるようなものでありますようにと祈りつつ、ルイズが祈祷書の表紙を開くと、ロングビルは申し訳なさそうに苦々しい笑みを浮かべ、ルイズは目を丸くして表情を固めた。 「ま、真っ白!?」 祈祷書の中身は、全てが白紙だった。 ぱらぱらと頁を捲ってみるが、そこには文字一つ書かれておらず、記号すらない。 ロングビルはそのことを分かっていたのか、席の後ろに置かれた本棚からいくつかの書物を取り出すと、ルイズにそっと差し出した。 「見ての通り祈祷書は白紙でして、ミス・ヴァリエールには自力で詔を考えていただかなくてはなりません。最終的には王宮の方々が草案を推敲して下さるとはいえ、一人で考えるにも限界があるでしょうから、こちらで過去の詔を集めたものと、参考となりそうな偉人達の詩集を用意いたしました。余計なお世話とは思いましたが、宜しければお使い下さい」 「余計なお世話だなんて、そんな……、是非とも使わせていただきますわ」 正直言って詩のことなど欠片も分からないルイズとしては、ロングビルの申し出は始祖ブリミルの助けとも思えるものだ。教養として詩の勉強もしていないわけではなかったが、厳格な母が匙を投げるほどに酷い結果を出して以来、欠片も接点を持っていない。魔法学院で詩の勉強が求められていたら、間違いなくルイズは魔法だけでなく勉学でもゼロ呼ばわりされたこと だろう。 差し出された本を始祖の祈祷書以上に大事に抱きしめたルイズは、ロングビルに深くお辞儀をして学院長室を退出した。 大命を拝してしまった緊張で、胸がきゅっと苦しくなる。 名誉なことだとは思うが、果たして期待に答えられるかどうか、ちょっと、いや、かなり心配だった。 本当に詩は苦手なのだ。 習い始めてばかりの頃に、魔法がまるで上達しないことを母や上の姉に叱られたとき、その心情を詩に綴ったことがある。だが、その詩を優しくて暖かくて、自分のことをなんでも受け入れてくれる笑顔を絶やさない下の姉に見せたところ、今までに身が事が無いほど微妙な顔をされた。 しかし、今は過去とは違う。あれから世の中のことを一杯勉強したし、本も沢山読んだ。語録も増えたし、気の利いたこともいえるようになったと思う。 詩の一つや二つ、作れないことは無いはずだ。 アルビオンに乗り込んで手紙を回収するという任務に比べれば、楽なことではないか。 そう思いつつ螺旋階段をゆっくりと下りて行く傍ら、祈祷書を抱える右手に視線を向ける。 そこには水の魔法でも治しきれなかった小さな傷跡が、赤みを帯びた状態で薄く残っていた。 アルビオンでワルドと戦ったときの怪我は既に治っている。優秀な水のメイジを派遣してくれたアンリエッタのお陰だ。だが、今もまだあのときの痛みを思い出すことがあった。 ワルドのエア・ハンマーが右手の形をまったく別のものに変えてしまった瞬間。あの時は任務のことやワルドに対する怒りでそれほど痛く感じなかったが、やっと治療が受けられる状態になったとき、気絶してしまいそうな痛みが全身に走った。 完治した筈の右手は、その時の痛みを思い出すとじわりと痺れたような感触を伝えてくる。 この手を見る度に、良く生きていたものだとルイズは改めて思う。 「でも、おかしいわね。手紙は奪われたはずなのに……」 結婚は予定通りに行われる。詔の巫女を指名されたということは、そういうことなのだろう。 ワルドに奪われた手紙はどうしてか、ゲルマニア側には渡っていないようだ。逃げたワルドがどのような経緯を持って自陣に戻ったのか知る由も無いルイズには、そのことがどうしても不思議で仕方が無い。 だが、それはもう考えても意味は無いのだろう。それよりも、もっと大切なことがある。 女子寮の塔に戻ったルイズは、自分の部屋に才人の姿ないことを確認した後、学院長室で受け取った祈祷書と参考資料をテーブルの上に置くと、ベッドの下に潜り込んで何かを引っ張り出した。 予備のマントに包まれたそれは、アルビオン王ジェームズ一世から託されたアルビオンの王権を移譲するのに必要なものだ。これがここにある限り、レコン・キスタはアルビオンの真の王にはなれない。 でも、コレを使うときは来るのだろうか。 そんな思いを胸に、ルイズはテーブルに置いた始祖の祈祷書に視線を移す。 姫殿下とゲルマニア皇帝との結婚。しかし、アルビオン王はそれが成る前にレコン・キスタがトリステインの地を攻めるだろうと言っていた。 それが真実なら、わたしの役目は詔を考えることではなくて、王宮の赴いて危険を知らせることではないのだろうか?いや、王宮も馬鹿ではない。レコン・キスタがトリステインを攻めると分かっているから政略結婚を考えたのだ。一歩時期を早くして、レコン・キスタが攻めてくる可能性くらい、考えていないはずが無い。 「やっぱり、起こるかどうかのことなんて考えないで、起こらなかったときのことを考えて行動しろって事かしら」 包みをベッドの下に戻し、ルイズは祈祷書を抱えてベッドに横になる。 自分が考えるようなことは、他の誰かも考えている。なら、心配するだけ無駄なのかもしれない。しかし、万が一のこともある。 もしも、誰も対処していなかったら? 自分が動くことで、救える人が居るかもしれない。助けれる命があるかもしれない。 「……うっ!?」 突然込み上げて来た奇妙な吐き気に、ルイズは口持ちに手を当ててそれを押さえ込んだ。 救う。 そんな言葉から連想したのは、ワルドとの戦いの中で見た真っ赤な光景だった。 血に沈む幾つもの死体。それを踏み躙るワルドの姿。圧倒的な力の差を見せ付けられ、無様に転がる自分。 手が、また痺れ始める。 自分にもっと力があれば。もっと気をつけていれば。あの惨劇は防げたかもしれない。 でも、もう一度ワルドと戦えといわれて、戦えるだろうか。 右手の痺れは広がり、脇腹や足の先まで痺れ始め、頭が割れるような酷い頭痛が考えることを放棄させる。襲い来る全ての感覚が恐ろしくなって、悲鳴を上げたくなった。 震える喉を息を通して、必死に呼吸する。 息苦しさが止まらない。空気が欲しい。 強い恐怖だ。 ワルドに対して、ルイズはどうしようもないほどの恐怖を抱いていた。 実戦という意味では、ルイズはラ・ロシェールの宿襲撃事件で一度体験している。だが、そのときは頼りになる仲間がいたし、誰一人として怪我もしていない。それに、敵は平民だった。 自分よりも強い力を持った存在と本当の意味で戦ったのは、ワルドが初めてだったのだ。 運が悪い、としか言いようがない。 一方は魔法もまともに成功させられない落ち零れのメイジ。一方は、歴戦の勇士であり、才能と努力によって大勢に認められるほどの戦士だった。 あの時、ルイズが受けた重圧は、本来なら普通の人間が耐えられるようなものではない。 目の前にちらつく死の気配は、逃げることも戦うことも許さないほど強いものだったのだ。 生来の気の強さと、背負った責任の重さ、その二つが無ければ、何も出来ずにワルドに殺されていたことだろう。 巨象に踏み潰される蟻の気分。そう言い表すことも出来る。 生きていたことは奇跡なのだ。 その事実を再認識するごとに、ルイズは全身が冷えるような感覚に襲われていた。 助けて。寒い。ここは、怖い。 なにかを求めるように左手を伸ばして、その先に浮かぶ黒髪の少年の姿に縋りつく。 その少年だけは自分を裏切らない。自分のために戦ってくれる。自分と共に生きてくれる。 そんな確信が少年に触れた部分から全身に伝わって、息苦しさがウソの消えていった。 頭痛も、痺れも無くなって、心地よい感覚が全身を抱き締めるよう包む。 母の胸の中のように、父の腕に抱かれているときのように、言いようの無い安らぎを感じる。 自分の中の何かと少年の間に、見えない絆がある。 もう、怖くない。 そう思ったところで、ルイズはハッと目を開いた。 「……あれ、寝てた?」 ふらふらと伸びた左手が、いつの間にか薄暗くなった部屋の中に浮かんでいる。 学院長室に呼び出されて祈祷書を受け取ったのが昼頃だから、外が暗いところを見ると、もう六時間か七時間は経っているはずだ。夕食も食べ損ねたことになる。 むっくりと体を起こして、ルイズは部屋の中を見回すと、そこに本来いるべき人間の姿が無いことに気が付いた。 「こんな時間まで、どこほっつき歩いてるのかしら。使い魔なら夕食の時間を見計らってご主人様を起こしなさいよ、もう」 異世界から召喚した黒髪の少年の姿を脳裏に浮かべつつ、始祖の祈祷書をベッドの上に放り出して自分の使い魔を探しに出かけようとする。 なにか酷い夢を見た気がしたが、なんとなく悪い夢でもなかったような、そんな不思議な感覚だけが残っていた。 内容はまるで思い出せない。 「一体、なんの夢だったのかしら」 以前にも奇妙な夢を一度見た覚えはあるが、その内容までははっきりと記憶していない。ただ、そのときの夢はガオンッ!だった。自分でも意味が分からないが、それだけは確かだ。 あと、キュルケやタバサも出てきた気がする。自分の使い魔の少年も、居たような、居ないような……。 「まあ、いっか」 深く考えたところで、夢は夢。現実には何の影響も及ぼさないのだ。 そう思い直して、ルイズは部屋の扉を開けるために左手を伸ばした。 唐突にフラッシュバックする、黒髪の少年の姿。 夢の内容が一気にルイズの頭の中に浮かび上がった。 「ああっ!あ、ああ、ひゃあああぁぁぁっ!ウソ!ウソよ!な、ななな、なんでわたしがあんな犬に助けを……!!あ、そういえば、ワルドと戦った後目が覚めたら、サイトの腕に抱かれてて……、ああでもそんな!違うのよおおおおぉぉぉぉ!!」 夢の内容の、特に後半部分を強く思い出したルイズは、顔を真っ赤にして扉を両手で何度も思い切り叩き、大きな音を立てて冷静になれと自分に訴えかけた。 「違うわ!違うのよ!あんなやつ、なんとも思ってないんだから!!そ、そりゃあ、ちょっとはカッコイイかなって、思っちゃったことも無いわけじゃないけど……、いや、でもそんなあああああぁぁぁ!!」 赤くなるだけでは足りず、熱まで持ち始めた頭を扉に打ち付け、何度も何度も否定の言葉を繰り返す。だが、否定する度に脳裏に浮かぶ少年の姿は色濃くなり、頭を扉に打ち付ける数に合わせて美化指数も上昇する。 がん ごん どん ごっ がっ めき ドコ ゴシャ ミシ メリ グキャ 様々な音を立てて確実に変形し始める扉の破損指数とルイズの中にある才人の美化指数が急上昇し、やがて両方のカウントが天井を突いてストップがかかった頃、やっと隣の住人が迷惑な音を聞きつけて現れた。 「なにやってんの、ルイズ」 「うひゃあぁぁっ!?え、き、キュルケ?あ、いや、なんでもないのよ!うん、なんでも」 原型を留めなくなった扉の向こうから顔を出したキュルケに、ルイズの全身が跳ねる。誤魔化すように乾いた笑いを浮かべるものの、キュルケの目は不審な色に染まっていた。 「なんでもないって、あなた、頭突きで扉壊しといてなんでもないってことはないでしょ」 キュルケの言葉でやっと気が付いたかのように、ルイズは自分の頭を打ち付けていた扉の状態に顔を青くさせる。 キュルケの姿がはっきり見えているが、別に扉が開いているわけではない。ルイズが何度も頭を打ちつけて壊したせいで、大きな穴が開いているのだ。 キュルケの姿は、その穴から見えていた。 「額から血が出てるけど、先生呼ぶ?」 「う、ううん、いいわ、本当になんでもないから!あ、あらイヤね、扉がちょっと老朽化してたみたい。職人を呼んで直さなくっちゃ。オ、オホホホホホホ」 ルイズが手を放すと、扉はゆっくりと蝶番を巻き込んで部屋の外側へと倒れる。キュルケはそれをひょいと避けながら、さらに強くなった疑念の篭った視線をルイズに向けた。 「老朽化って、ありえないわよ?あなた、三日に一度はダーリンを爆発して、その勢いで扉も壊してるじゃない。多分、この学院で一番新品よ、コレ」 と、見る影も無く廊下に倒れた扉を指差すキュルケ。 だが、ルイズはそんな言葉も笑って誤魔化し、部屋を出て廊下を下りの階段のある方へと向かって歩き出した。 「きっと、アレよ。何度も替えてるから、不良品に当たっちゃったのよ。うん、そうに違いないわ。ちょっと業者に文句を言ってやらなきゃいけないから、わたしはこれで失礼させてもらうわね。ごきげんよう、ミス・ツェルプストー」 また、オホホホホ、などという気味の悪い笑い声を上げながら階下に消えていくルイズの姿を見送ったキュルケは、先ほどまで眠っていたために乱れている髪を軽く撫で付けて、一体なんだったのかと、口を大きく開けてあくびをした。 「まあ、ルイズが変なのは今に始まったことじゃないか」 かなり失礼ではあるが、あながち間違いでもないことを呟いて、キュルケは様子を見に現れたほかの生徒を適当にあしらいながら、寝直すために自分の部屋へと戻っていった。 ハルケギニアの月は満ち欠けはあるのだろうか。自分が見たところ、二つの月は満月の形を変えていないように思える。 そんなことを才人が思ったのは、久しぶりに湯船に浸かってゆっくり出来たからだろうか。 平民は総じてサウナ風呂を使うのだが、才人は生まれ育った故郷の風呂が特に前触れも無く恋しくなり、厨房で働く料理長のマルトーから古くなった大釜を譲ってもらって、学院の中庭の隅に五右衛門風呂を造っていた。完成したのは、つい先ほどだ。 ただ、湯船に入った状態では火の調節が出来ないため、釜の下の火は万が一のことを考えて弱火になっている。この火が消えて湯がぬるなってきたら上がり時だろう。 冷めてしまう事を前提としていたために少し熱くしてあったお湯は、慣れない生活によって溜まった体の疲れを程よく吹き飛ばしてくれている。懐かしいからと作った風呂は、労力に見合った効果を上げているようだ。 体に伝わる熱に心地良さを感じて両腕を空に向けていっぱいに伸ばした才人は、肺の中の空気を吐き出して、ぼんやりと空を眺めた。 「そういえば、あの人にきちんと聞かないとな」 「聞くって、なにをだ」 鍔をかちゃかちゃと鳴らして、五右衛門風呂の傍の壁に立てかけられていたデルフリンガーが才人の呟きに問い返す。 「元の世界に帰る方法だよ。タバサの知り合い、っていうか、お尋ね者だったんだっけ?船の上で酷い目に遭った原因を作った人。名前は……、なんだったっけ」 「あの変なおっさんか。確か、ホル・ホースってんじゃなかったか?」 「そんな名前だったか」 剣よりも記憶力が低いのはどうかと思わないでもないデルフリンガーだったが、相棒は元々人の話をあまり聞かないタイプだからどうせ今回も聞いていなかったのだろうと判断して、話を続ける。 「相棒は、故郷に帰りたいか?」 聞かなくても分かる答えだが、聞いておいて損は無いだろう。 帰りたいに決まっている。普通は誰だって、納得する理由も無く故郷から突然引き離されたら、恋しくなって当然だ。 そう思っての言葉だったが、思いのほか答えが返ってくるのには時間がかかっていた。 唸り声を溢して首を捻り、両腕を胸の前で組んだ才人が必死に普段使わない脳味噌を使って自分の気持ちを探る。だが、そこまでして出した答えは、要領の得ないものだった。 「帰りたい気もするし、帰っちゃいけない気もする。ルイズのことは放っておけないけど、向こうに残してきた家族にも連絡したいし……、よく分かんねえや」 きっと家族は自分のことを心配しているだろう。いつものように出かけたと思ったら、突然居なくなったのだから、普通の親なら心配しないはずが無い。 母ちゃん、泣いてるかな。 そう思うと、今すぐにでも帰りたくなる。だが、そんな望郷の念に匹敵するくらい、才人にはこちら側に心配事が残っているのだ。 意地っ張りで、我が侭で、それでいて泣き虫で……、それなのに諦めることを知らない可愛いご主人様のことが、どうしても放っておけないのである。 自分が居なくなったら、ルイズはどう思うだろうか。 人間の使い魔が居なくなって清清したと言うのだろうか。それとも、寂しくて泣いてしまうのだろうか。あるいは、どうでも良いと思うのだろうか。 考えれば考えるほど、板挟みの感情に悩まされる。 帰りたいと思う気持ちと帰れないと思う気持ちの二つが絶妙なバランスで才人の心に存在しているために、答えが出てこない。どれだけ思い悩んでも、天秤は水平を保ち続けていた。 なら、あの人は、ホル・ホースって人はどうなのだろうか。 やはり故郷に帰りたいと思っているのだろうか。それとも、こっちに残る決心をしているのだろうか。 本人に聞いて見なければ分からない答えに、悶々と頭を悩ませる。あの時に交わした短い会話では、どう思っているかなんて分かるはずも無い。 そこで唐突に、才人は疑問を抱いた。 「そうだ。そういえば、俺達はなんで言葉が通じるんだよ?あの人、どう見ても日本人じゃないのに……、普通に話せるなんておかしいじゃないか!」 今更な疑問だが、思い返してみると確かに不思議だった。何故、今まで疑問に思わなかったのか。そっちの方が不思議なくらいだ。 才人は日本語を喋っている。だが、ハルケギニアの人間はハルケギニアの言語で当たり前のように会話をしている。二つの間に何の問題も無く意思疎通が出来ていることは、どう考えても不自然だ。 ハルケギニアの言葉が日本語と同じ、という可能性も無いとは言えないが、日本とはかかわりの薄そうなホル・ホースという人物が日本語をペラペラと喋るとは思えなかった。 「なんか問題でもあるのか?」 そんなデルフリンガーの問いに、才人は立ち上がった。 「おかしいだろ!俺、“異世界”から来たんだぜ!?なのに、なんでお前たちの言葉がわかるんだよ!お前達も、なんで俺の言葉が分かるんだっての!?」 才人から投げかけられた疑問の答えを探すべくデルフリンガーはしばし黙ると、鍔をカチャカチャと鳴らして心当たりを一つだけ示した。 「相棒は、どこを通ってハルケギニアに来たね?」 「どこって……、変な光ってるやつだよ。ゲートっていうのか?あれ」 「だとしたら、そのゲートに答えが隠されてるんだろうさ」 デルフリンガーの曖昧な答えに不服なのか、才人はむっと口をへの字に曲げると腰に手を当てて声を荒げた。 「じゃあ、あのゲートはなんなんだよ!」 「そんなことをしがない剣でしかない俺に聞かれても、わかんねえよ」 あっという間に放り出された問いの答えに気が抜けて、才人はそのまま空を見上げた。 ゲート。それを通ってハルケギニアに来た自分。なら、ホル・ホースもゲートを取ってこちらに来たのだろうか。 なら、あの人も誰かの使い魔なのか? ラ・ロシェールの“女神の杵”亭で会った時は、確か布で体を隠した小さな女の子と、大きな羽根帽子を被ったひょろっとした男を連れていた。見た感じ、誰か上で誰が下という扱いでもなかったから、あの中には彼の“ご主人様”は居なかったのかも知れない。いや、国王を暗殺しかけた、なんて話からすると、主はもう処罰されて亡くなっていることも考えられる。 「行き場を失って、ああやって旅して回ってるのかな……」 召喚されたときは自分と同じように理不尽な目に遭いつつも、頑張って生きていたのではないか。なんて、才人は見当違いも甚だしいことを考え、一人表情を暗くした。 「ああ、でも、そうか……」 ホル・ホースの境遇に同情する一方で、自分には少し嬉しい事実を見つけた才人は、顔を上げて手を強く握った。 「俺だけじゃないんだ。こっちには、俺以外にも仲間がいるかもしれない。一人見つけたんだから、探せば、きっと他にも見つかるはずだ。それで、みんなで力を合わせれば、きっと元の世界に帰る方法も……」 あるはずだ、と言いかけたところで、才人は肌寒さを感じて体を震わせた。 夏が到来したとはいえ、夜は少々冷える。肌についた水滴は気化して体温を奪うし、そよ風も知らない間に全身を冷やしていくのだ。 せっかくの風呂だというのに、風邪を引いては意味が無い。 もう少し温まろうと思い、腰を屈めたその時、少し離れたところで何かが割れる音がした。 「わ、わわわ、ば、バレちゃう、バレちゃう!夢中になってて、傾いてたことに気付かないなんて……」 外壁に沿って植えられた木の陰で、誰かが何かを拾っている姿が月夜に浮かぶ。その影の形と声から、才人はそれが誰なのかをすぐに理解した。 学院で働く黒髪のメイド、シエスタだ。 「し、シエスタ?なんでそんなところに……、うわあぁぁ!って、あっちいいぃぃ!!」 股間の部分が丸見えだったことに気付いた才人は、両手でそれを隠して湯の中に潜ろうとするが、その勢いで足の一部が底に敷いた木の板で覆われていない金属部分に触れてしまう。 股間のブツを隠そうと湯の中に隠れては火傷をして、火傷をしては湯から出る。そんなことを何度も続けている様子に、シエスタは顔を赤くしながらも心配そうに駆け寄った。 「だ、大丈夫ですかサイトさん!」 「うわあ!こ、こっちに来ちゃだめだシエスタ!て、熱い!」 風呂釜の中で踊るように飛び跳ねる才人を落ち着かせようと、シエスタは五右衛門風呂の縁に手をかけて身を乗り出す。だが、予想以上に熱かった金属部分に驚き、体勢を崩した。 「熱っ!き、きゃああぁぁぁっ!?」 風呂釜からお湯が溢れ、飛び散った水がデルフリンガーに降り注ぐ。 ただでさえ錆びてるのに、これ以上酷くなったらどうしてくれるんだ!という剣の抗議も届くことは無く、才人とシエスタは同じ風呂の中に絡まったような状態で沈んだ。 肺の中の空気を吐き出し、なんとか水面に顔を出そうとする才人。だが、腹の上にうつ伏せの状態のシエスタが乗っているために、上手く動けない。シエスタはシエスタで突然水の中に入ったせいで混乱していて、起き上がるという選択肢が頭に思い浮かばないようだった。 「ががぼ、がぼ、がぼぼぼっ!?」 漏れ出る空気を押さえようとしても、シエスタの体で押さえられているために肺は小さくなるばかり。口から漏れる空気は留まらず、才人の体からは確実に酸素が失われている。 そんな時、ぐにゅ、と何かが自分の股間に押し付けられたことに才人は気が付いた。 「ご、ごばばあばばぁっっ!!」 感触の位置を辿って向けられた視線の先には、黒髪の少女の頭がある。湯の温度のせいでシエスタの体温までは分からないが、間違いなくこれは触ってしまっているだろう。 顔面直撃だ。セクハラというレベルではない。 才人も年頃の若い男。可愛い女の子と接点を持てば色々と盛り上がってしまうこともある。 だが、このままでは別の意味で盛り上がってしまう。 とにかく抜け出さなければと、才人は全力で両腕を動かし、水を掻いて湯の中から脱出した。 「ぷはっ!し、シエスタ!そこはいろんな意味でマズいって!!」 足りなくなった酸素を一息で補給し、股間の辺りに埋もれたシエスタを湯の中から引き摺りだす。メイド服がびしょびしょに濡れ、肌にぴったりと張り付いている。ピンク髪のご主人様には無い大きな膨らみがはっきりと浮かぶ姿は才人の脳髄に高圧電流を流していたが、ここで暴走するわけにも行かないため、その辺りは見ないようにして目を回しているシエスタの頬を叩いた。 「なにか、柔らかいものが頬に……、いや、硬いものだったような……」 「き、きき、気のせいだよ、シエスタ。ほら、目を覚まして!」 ペチペチと頬を叩いている内に焦点の合わなかった目が少しずつ戻り、才人の姿を映し出す。 「あ、あれ、才人さん?なんで、わたし」 自分の見に何が起きたのか分かっていないのか、迷子の子供のように周囲を見回したシエスタは、目の前の肌色を見つけてカッと頬を赤くした。 「あ、そ、その、ごめんなさい!覗き見るつもりは無かったんです!あ、でも、ちょっと得したなーとか、いいもの見ちゃったなー、とか思っちゃったのも確かなんですけど……」 ハルケギニアに来て右も左も分からない才人を甲斐甲斐しく世話してくれた少女は、言わなくても言い事を口にして顔を下に向けた。 なんともコメントし辛い台詞に、才人はどう反応すれば良いものかと悩みつつ、目の前の少女をじっと眺める。いや、正確には目が離せなくなっていた。 普段つけているカチューシャは今は取り外され、湯で濡れた黒い髪は月明かりを受けて艶やかに輝いている。肌に張り付く服は、同年代の中でも発育の良いシエスタのボディラインを強調していて、妙に色っぽい。だが、それ以上に、羞恥に赤くした頬を隠そうと、顔を逸らす仕草が才人の男心を刺激していた。 どきどきと高鳴る胸を押さえて、才人は自分に冷静になれと訴えかける。だが、お湯の熱が容赦なく体温を上げて脳を沸騰させ、なぜか寄り添ってくるシエスタの柔らかい肌の感触が興奮を高めていた。 なんとかしてこの場を切り抜けなければ、なにかが危ない! このまま襲い掛かっても責める人間は極少数だろうが、逃げ道は確実に塞がれる。引き返せない場所に突撃するには、才人の覚悟はまだ十分ではなかった。 「そ、そそ、そうだ、シエスタ。シエスタは、な、なんであんなところに居たんだ?」 適当な話で場を誤魔化す作戦に出た才人に、シエスタは下に向けて何かをじーっと見ていた顔を上げて、激しく狼狽した。 「あ、え?いや、別に何も見ては……、じゃなくて、そ、そうです!と、とても珍しい品を手に入れたものですから、是非ともご馳走しようと思って!今日、厨房でお出ししようと思ったんですけど、おいでになられないから……」 姿の見えない才人を探して、直接渡そうと考えたらしい。 視線をそっと先ほどまで隠れていた木陰に移したシエスタは、そこに転がるティーセットを見て、はぁ、と溜め息を吐いた。 「その……、粗相をしてしまいまして、中身を全部溢しちゃったんです。ああ、また叱られてしまいます……、くすん」 「珍しい品って、なんだったんだ?」 ティーセットということは、珍しい品、というのは飲み物なのだろう。溢してしまったのは残念だが、せめて名前だけでも聞いてみようと思った才人に、シエスタは顎先に指を当てて名前を思い出そうとした。 「えっと、確か、“お茶”っていうそうです。淹れると、薄い黄緑色に色づいて綺麗なんですよ。少しだけ飲ませてもらったんですが、ちょっと青臭い気がしましたけど、不思議な香りがして美味しかったです」 お茶のどこが珍しいのかと疑問を抱く才人だったが、シエスタの説明から思い浮かぶお茶の姿に、それが自分の良く知る緑茶の類であることに気が付いて、思わず目元を拭った。 さっきも故郷のことを考えていたのに、ほんの少し故郷を思い出す材料が目の前をちらつくと、どうしようもなく恋しくなってしまう。 「だ、大丈夫ですか!?」 突然目を潤ませた才人を見てシエスタが慌てるが、才人は大丈夫だというように笑って首を振った。 「い、いや、ちょっと懐かしくなっていただけだから。平気だよ、うん」 風呂の中に女の子と一緒に入っている状況で、故郷を思い出して涙が出てくるなんて、奇妙な話だ。情けないやら、恥ずかしいやらと、居心地が悪くなってしまう。 「それより、シエスタ。その、言い難いんだけど、俺の格好がアレだからさ。出来れば風呂から出てくれない、かな?」 適度に緊張も解れただろうと、才人は話を戻して事態の解決に乗り出した。 シエスタも自分の状況がやっと分かったのか、両腕で胸元を隠して身を捩る。才人の目から体を隠そうという意図なのだろうが、水に濡れた服は体の動きに更に肌に密着し、より一層にエロティックな状態になっていた。 鼻の奥の方に血が溜まってくる感覚を覚えた才人は、そんなシエスタの姿を見ないようにと目を手で隠して顔を逸らす。だが、ここからのシエスタの行動は、才人がまったく予測し得ない方向に向かっていた。 「これ、お風呂……、なんですよね?貴族様が使っているような。でしたら、服を着て入っているのは変じゃないですか?変、ですよね」 何か一人で納得し始めたシエスタは、才人が止める間もなく着ているエプロンドレスに手をかけて、ボタンを外し始める。 ぽんと、白い布が一枚湯船の外に放り投げられた。 「え、ちょっと、なにしてんのシエスタ!」 「服を脱ぐんです。ほら、服もびちょびちょになっちゃったし、このまま帰ったら部屋長に叱られてしまいますから。火で乾かせばすぐに乾くと思うし」 そう言って、シエスタはブラウスのボタンやスカートのホックを外し、衣服を脱ぎ捨てていく。しかし、濡れた服は脱ぎ辛いのか、時折止まって困ったような声を漏らし、才人の耳を刺激していた。 目を覆う手の隙間から、そっとその向こうを覗き見てしまう才人の気持ちは、青少年として正しいのかもしれない。湯船の中で脱衣する少女の姿は月の光と白い湯気で幻想的に浮かび上がり、湯の熱を受けて桜色に染まった肌は異性を積極的に誘惑している。 耐えろ。耐えるんだ、才人!ここで暴走したら、俺はもう二度と故郷の土は踏めないぞ! やっと元の世界に帰る筋道が見えてきたというのに、このままでは行き着く先が暗い牢屋の中か、明るい家庭になってしまう。シエスタの性格からすれば、どちらかというと後者のほうが可能性は高い。 しかし、それでも高鳴る鼓動は期待の強さを示している。肌と肌とが触れ合う光景を想像してしまい、どっくんどっくんと元気に流れる血液が股間に生える陸生哺乳類で最大の動物に似ている物体に熱膨張を起こさせていた。 だって男の子だもん、下半身が元気でも仕方が無いさ。むしろ健康的で実によろしい。 苦しい言い訳を自分に告げて、才人は下着にまで手をかけたシエスタの姿を指の間から凝視していた。 だが、世の中そんなに甘くは無いようだ。 視界の端に映るピンク色の何かが、どす黒い空気を纏っていたのである。 恐る恐る目から手を離し、シエスタから距離を取る才人。突然様子がおかしくなったことに気付いたのか、シエスタは才人の視線の先を追って振り返った。 「……ヒッ!み、ミス・ヴァリエール!?い、いつからそこに……」 吹き上がる闘気が髪を揺らし、般若の如く顔を憤怒で歪めたルイズが、その爛々と輝く瞳をシエスタに向ける。 温かい湯に浸かっているというのに、シエスタはルイズに視線を向けられた瞬間、全身に氷水をかけられたような寒気を感じて身を震わせた。 「いつから、ですって?……ついさっきよ。だから、なにか事情があるのなら、わたしは聞いていないことになるわ。そうね……、このまま折檻したんじゃ、無実の者を痛めつけることになるかもしれないから、言い訳の機会をあげようかしら」 ぱし、ぱし、と一定の間隔で右手に握った杖を左手の平に打ちつける。 こめかみのあたりが痙攣しているところを見ると、ブチ切れる一歩手前といったところだろうか。ここで選択を間違えれば、即座に自慢の爆発魔法が飛ぶことだろう。 言い包めるチャンスは、今しかない。 説得するのに必要な材料は無いが、時間を遅らせればその分怒りは強くなるだろうと判断したシエスタが、ルイズの気を落ち着けさせるために口を開いた。 「ミス・ヴァリエール、これはわた……」 「はい、終了!言い訳する時間は上げたわ、五秒だけね……。十分でしょう?泥棒猫とエロ犬にくれてやる時間としては」 五秒。何の宣言も無く決められた制限時間は、余りにも無慈悲だった。 ルイズの口元には薄く笑みが浮かんでいるものの、目は一切笑っていない。その迫力に抗議の声を上げることも出来ず、シエスタは才人の傍に寄って、ただ閻魔の裁定が下されるのを待つしかなかった。 「ご主人様がこんなにも世の中のことで思い悩んでいるって言うのに……、その使い魔は鼻の下を伸ばしてメイドとお風呂?へ、へえぇ、い、いいい、良いご身分じゃないの!い、犬の分際で!」 杖が振り上げられ、ルイズの全魔力が込められた雷光が夜の闇を照らす。口ずさむ詠唱は協力無比な炎の魔法。ファイアーボールだ。当然、その効果はルイズに限っては炎の玉を生み出すことではなく、爆発仕様となっている。 「ま、まま、待てルイズ!誤解……、じゃないけど、誤解なんだ!」 「才人さん、わたし怖い!」 「シエスタ!?いや、今くっついたら逆効果だよ!」 怯えるように抱きついてきたシエスタを引き離そうとする理性。だが、本能に突き動かされた両腕は、彼女の肩を、腰を、しっかりと抱き締めていた。 「遠慮はいらないみたいね……!死んじゃえ、このエロ犬ううぅぅぅっ!!」 「う、うわああぁああぁああ!!?」 振り下ろされた杖の先から膨大な魔力が迸り、風呂釜ごとシエスタと才人を吹き飛ばす。湯船に溜められたお湯は四方に散り、釜の下にあった焚き火も爆風に乗って空を舞った。シエスタの服と思しき布切れは焼け焦げてボロ布に成り果て、才人の衣服と共に木の上に引っかかる。 余波を受けて弾き飛ばされたデルフリンガーは、理不尽過ぎる、と相棒とそのご主人様に心の中で愚痴を溢していた。 「今後、わたしの部屋への出入りは禁止するわ!二度と戻ってくるな!あんたなんて、そのへんで野宿でもしてればいいのよ!!」 怒りに赤く染まった顔で頬を膨らませたルイズは、地面にぐしゃりと落ちた才人に向かってそう告げると、肩を怒らせてその場を去っていく。 全身の痛みに耐えながらご主人様の後姿を見送った才人は、今回は自分が悪かったかもしれないと反省する。シエスタに押された形とはいえ、それを看過したのは自分なのだ。 湯にのぼせたでもしたのか、珍しく自分の非を認めるというまともな思考回路を形成した才人は、ルイズのことは後でなんとかフォローしようと考え、近くに落ちた焚き火用の木片で股間を隠した後、もう一人落ちてくるべき人間が落ちてこないことに首を傾げた。 「シエスタ?シエスター!どこだ、シエスタ!」 一応、下着まで脱ぎきっては居ないはずだが、それでも肌を晒していることには変わりない。 下手に人目につく場所に落ちては大変だと、デルフリンガーを拾ってガンダールヴの力を解放した才人は、木の上に引っかかった自分とシエスタの服を回収しようと枝に飛び移る。その時、何かが派手に壊れる音が耳に届いた。 「きゃあああああぁぁぁぁぁっ!!」 「な、空から女の子ですと!?いや、その、ご、誤解だああぁぁぁ!!」 シエスタのものと思われる悲鳴と少し年齢を感じさせる男の声が、魔法学院の周囲を囲うように立つ五つの塔の一つ、火の塔の方向から聞こえて来る。ついでに、何かを叩いたような乾いた音もしていた。 恐れていたことが現実になったらしい。 なんとか衣服を回収した才人は、とりあえずパンツとズボンを履いた後、声の聞こえてきた方向に向かって全速力で走る。誰かに見つからないように、と祈りながら。 ただ、残念なことにその祈りは天には届かなかったようで、シエスタと合流するまでの間に数人の女生徒に発見され、翌日話題の的になってしまうのだが……、それはあくまでも余談である。
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アイテム 装備レベル 効果 ドロップ ドヴァリンの鏡 20 攻撃時一定確立でクリダメ+9% リーファントの隠れ家 見透かす目 22 攻撃時一定確率でクリティカル命中力+90 忘却の草原 オーディンの彫刻像 26 被弾時一定確率で全能力+90 不安定な桜の森 揺れ動く卵 30 被弾時一定確率で防御力+600 古代の遺跡 流星の破片 36 攻撃時一定確率でクリティカル命中力+120 br;効果時間15秒 CT45秒 灼熱岩丘 追従者の祈祷書 38 攻撃時戦闘力+180 魔法増幅+120 38レベルのクエ報酬 性能はオーディンの彫刻が一つ二つ抜けてる からオーディンとろかね なお上記は黄色の場合の性能 青、紫とともに性能は上がる 例;オーディン黄色はALL+90 青はALL+120 紫はALL+150
https://w.atwiki.jp/7stars/pages/174.html
BOSSアクセサリー ※2008/10/22、公式HPよりBOSSアクセサリーの一部に於いて修正があったことが発表されました。(詳細はこちら ) Lv アクセサリー名 効果 LV20 ブンブンのオニックスネジ 力+7 体力+7 敏捷+7 瞬発+7 LV30 修道院長の祈祷書 精神力+10 知能+10 魔法攻撃力+30 LV35 怪力の環 力+15 体力+5 近距離攻撃力+30 LV35 守護者の閃光 瞬発力+10 敏捷+10 回避+20 LV40 ブラッディーロードの目 知能+10 命中+30 HP+250 LV50 墜落した騎士のペンダント 敏捷+10 体力+10 MP+400 LV55 ニッドホッグの怒り 力+10 敏捷+10 HP+300 LV55 リンドブルムの狂気 瞬発力+10 体力+10 HP+300 LV55 虚無のカメオ 精神力+15 知能+15 HP+200 LV60 神獣の魂 力+15 知能+15 敏捷性+15 HP+200 LV60 荘厳なる死の翼 力+15 敏捷+15 体力+15 LV65 黒い天使のスタッフ 体力+15 知能+15 精神+15 ラコン4F Lv アクセサリー名 効果 LV60 シャインソウルピースブローチ 敏捷+15 体力+15 遠距離攻撃力+100 LV60 シャインソウルピース腕輪 体力+15 瞬発+15 近距離攻撃力+100 LV60 シャインソウルピースネックレス 知能+15 精神+15 魔法攻撃力+100 LV60 シャインソウルピース指輪 力+15 敏捷+15 物理+50 LV60 ダークソウルピース腕輪 体力+20 敏捷+20 瞬発+20 LV60 ダークソウルピースネックレス 体力+20 知能+20 精神+20 LV60 ダークソウルピース指輪 力+20 体力+20 敏捷+20 LV65 デスカイゼルの紋章 敏捷+30 HP+200 近+100 物理+40 LV65 ヘルカルゴの紋章 知能+30 精神+30 MP+100 LV65 レビゲルの紋章 敏捷+25 瞬発+25 命中+30 回避+30 LV65 ルインテの紋章 体力+15 近距離攻撃力+300 LV65 ストゥラトゥスの紋章 力+20 体力+20 近距離攻撃力+100 命中+30 LV65 ベルゼブの紋章 体力+10 敏捷+5 遠距離攻撃力+300 LV65 バルシオンの紋章 体力+25 知能+20 物理+30 魔法+30 LV65 グロトの紋章 力+20 体力+20 敏捷+15 物理+30 LV70 イグシルトの心臓 体力+20 HP+1000 MP+500 特殊な計算のダメージからステータスに依存するダメージへと変更されたアクセサリー 修道院長の祈祷書 怪力の環 ベルゼブの紋章 ストゥラトゥスの紋章 ルインテの紋章 デスカイゼルの紋章 シャインソウルピースネックレス シャインソウルピースの腕輪 シャインソウルピースブローチ シルバの羽根 シレフィスの羽根 シリア・ロンの羽根 シュリエルの羽根 シレフィスのアミュレット シリア・ロンのアミュレット シュリエルのアミュレット シルバの目 炎のダイヤモンド 炎のサファイア 炎のトパーズ 炎のスピネル 虚無の逆十字 怠惰の首輪(30日) 怠惰の塊(7日) 貪欲の首輪(30日) 貪欲の塊(7日) 怨念の首輪(30日) 怨念の塊(7日)