約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/mugentei/pages/119.html
【ナイトウィザード2nd オンラインセッション用キャラクターシート】 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 キャラクター名:永坂 東麻属性:地/冥 総合レベル:(10)消費経験点:(100) ウィザードクラス:魔物使い(5) スタイルクラス :ディフェンダー(3) クラス経歴 :吸血鬼(2) 【能力値】 基本能力値 ベース 能力 現在値 【筋力】 (11)+( 0)=(11) 【器用】 ( 7)+( 0)=( 7) 【敏捷】 ( 6)+( 0)=( 6) 【精神】 (12)+( 3)=(15) 【知力】 ( 8)+( 0)=( 8) 【信仰】 ( 6)+( 4)=(10) 【知覚】 ( 7)+( 0)=( 7) 【幸運】 ( 6)+( 0)=( 6) 【CF修正値(幸運÷3)】 =( 2) 【プラーナ 解/内】 (2/11) 【戦闘能力値】 【能力値】 ベース クラス修正 特殊能力 総合レベル 未戦闘値 装備修正 最終戦闘値 【 命中 】 ( 7) ( 5) ( 0) ( 0) (12) ( 0) (12) 【 回避 】 ( 6) ( 0) ( 0) ( 0) ( 6) (-4) ( 2) 【 攻撃 】 ( 9) ( 4) ( 0) ( 0) (13) (21) (34) 【 防御 】 (10) ( 7) ( 5) ( 3) (25) (25) (50) 【 魔導 】 (10) ( 5) ( 0) ( 1) (16) ( 4) (20) 【 抵抗 】 ( 6) ( 2) ( 0) ( 0) ( 8) ( 4) (12) 【 魔攻 】 (11) ( 0) ( 0) ( 0) (11) ( 7) (18) 【 魔防 】 ( 9) ( 8) ( 5) ( 6) (28) (20) (48) 【耐久力】 (18) (31) ( 0) ( 0) (49) ( 0) (49) 【魔法力】 (14) (19) ( 0) ( 0) (33) (-12) (21) 【行動値】 (11) ( 3) ( 0) ( 0) (14) (-4) (10) 【移動力】 ( 2) ― ( 0) ― ( 2) ( 0) ( 2) 【特殊能力】 特殊能力名称 SL タイミング 判定値 難易度 対象 射程 代償 効果 《リザレクト 》(―) オート なし 自動 自身 なし 3MP クリンナップに自身のHPを【治癒力】0で回復する。 《カバーリング 》(―) オート なし なし 単体 0sq 3MP,1C ダメージロールを代わりに受ける。 《ワイドカバー 》(2) オート なし なし 範SL 0sq 6MP,5C 範囲(SL)のダメージロールを代わりに受ける。 《物理防御UP 》(5) 常時 なし なし 自身 なし なし 【防御】【魔防】+[CL+2] 《リトライ 》(1) オート なし なし 自身 なし 3C C/F以外のときリアクションを振りなおす。 《代償軽減:防御魔装 》(1) マイナー なし なし 自身 なし なし 装備している防御魔装の「魔法力修正」を[SL*3]点減少(最低0) 《センチネル 》(1) 常時 なし なし 自身 なし なし 《ワイドカバー》をラウンドに1回使用可能 《悪鬼の腕 》(3) セット なし なし 自身 なし 3HP シーンの間、素手の攻撃力を[SL*3+3]。 《ドレインパワー 》(2) マイナー なし なし 自身 なし 1pr 対象に与えたダメージと同じだけMPを回復する(最大SL*2+3) 《霧散化 》(2) オート なし なし 自身 なし 5MP,2C ダメージロールの【防御】【魔防】ジャッジ+[SL*5] 《アーマーフォーム 》(5) 常時 なし なし 自身 なし なし 防具《アーマーフォーム》を得る 《シールドフォーム 》(2) オート なし なし 自身 なし 3C ダメージロール直後に使用、【防御】【魔防】ジャッジ+[SL*4] 《スピリットフォーム 》(1) 常時 なし なし 自身 なし なし 《ウェポンフォーム》or《アーマーフォーム》でのダメージは魔法ダメージとなる。 《レギオンフォーム 》(1) メジャー 命中 対抗 範1 武器 3C 《ウェポンフォーム》or《アーマーフォーム》での範囲選択(1)への物理攻撃(1ラウンド1回) 《サバイバルモード 》(1) セット なし なし 自身 なし 1pr シーン間、魔物使いの特殊能力のSLを+2(クリンナップ毎1Pur消費) ==汎用特殊能力================================================================================================================================================= 《絆の力 》(1) オート なし なし 自身 なし なし ジャッジ直後に使用、達成値+1(1シーンSL回、1[[シナリオ]]にコネクション数) 《リアクティブバリア 》(1) オート なし なし 自身 なし なし ダメージ適用の際使用、防具全て破壊される代わりダメージ-[SL*10] 《属性魔法防御 冥 》(1) 常時 なし なし 自身 なし なし 第一属性又は第二属性の魔法ダメージに対する未装備状態【魔防】を二倍 《闘気の才 》(3) 常時 なし なし 自身 なし なし プラーナの内包値+SL 《訓練:信仰 》(3) 常時 なし なし 自身 なし なし 信仰+[SL] 《訓練:精神 》(3) 常時 なし なし 自身 なし なし 精神+[SL] 《伝家の宝刀 》(3) 常時 なし なし 自身 なし なし SL個までアイテム常備化([100万+100万*SL]v.以下):エメタブ、外道、不幸の宝石 《伝家の術式 》(1) 常時 なし なし 自身 なし なし 魔法を1つ常備化([100万+100万*SL]v.以下):アンリーシュドウォール 【武装:魔装】 重量上限:筋力+総合LV=(16) 魔装可能LV合計:知力+総合LV=(25) 武装/魔装名称 種別 重量 魔L 命中 回避 攻撃 防御 魔導 抵抗 魔攻 魔防 耐久 魔法 行動 移動 射程 部位 効果 (素手 )武器(格) 0 ― 0 0 21 ― ― ― ― ― ― ― ― ― 0 両手 特になし (マジカルリボン )防具(頭) 1 ― ― 0 ― 1 0 0 2 3 ― ― 0 ― ― 頭部 特になし (アンチマジックマフラー)防具(肩) 2 ― ― 0 ― 0 0 0 0 3 ― ― 0 ― ― 肩 特になし (防弾ベスト )防具(上) 4 ― ― -2 ― 7 0 0 0 0 ― ― 0 ― ― 上半 特になし (アーマーフォーム(5))防具(衣) ― ― ― ― ― 9 0 5 0 7 ― ― 0 ― ― 衣服 SLで変化 (アンリーシュドウォール)魔装(防) ― 5 ― 0 ― 10 ― 0 ― 8 ― -12 -1 ― ― ― 防御修正は使用者の【精神】 ※伝家の術式 (エメラルドタブレット )[[その他]] 1 ― ― ― ― ― 2 1 2 1 ― ― -2 ― ― ― 《データファイル》《ヘルメス派》 (外道祈祷書 )その他 1 ― ― -1 ― -2 2 -1 3 -2 ― ― -1 ― ― ― 《データファイル》《アンラック》《禁断の知識》 (不幸の宝石 )その他 ― ― ― -1 ― ― ― -1 ― ― ― ― ― ― ― ― 《人生万事》《塞翁が馬》 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【合計】 9 5 0 -4 21 25 4 4 7 20 0 -12 -4 0 0 ― 【魔法】 魔法記憶容量:知力+特殊能力+総合LV=(25) 魔法名称 LV 種別 タイミング 判定 難度 対象 射程 代償 効果 (ヒールⅡ )(4) 治癒(―) メジャー 魔導 15 単体 1sq 5MP 【治癒力】:【魔防】-12(Max8)。 (アースシールド )(2) 付与(地) オート 自動 なし 単体 1sq 4MP、3C 防御ジャッジ直前に使用、【防御】+[【魔導】-10](Max15)。 (ダークバリア )(2) 付与(冥) オート 自動 なし 単体 1sq 4MP、3C 防御ジャッジ直前に使用。【魔防】+[【魔導】-10](Max15)。 ――――――――――――――― 【合計】 8 【所持品】 月衣内最大所持量:筋力×2+総合LV=(20) 名称 重量 効果 (MUGEN-KUN ) 0 《信用取引》 (Sm0-Phone ) 0 《モバイルシステム》《メモリ領域》《エスポラント》 (幸運の宝石 ) 0 ジャッジのF値を打ち消す(シナリオ1回) (死活の石 ) 0 《黄泉返り》《不死のかけら》 (MPヒーリングプログラム) 0 《データファイル》《MPリカバー》 (HPヒールポーション ) 0 治癒力0で使用者のHPを回復 (高級HPヒールポーション) 0 治癒力1で使用者のHPを回復 (MPヒールポーション ) 0 治癒力0で使用者のMPを回復 【コネクション】 名前 関係 永坂 みなと 妹 【キャラクターデータ】 性別:♂ 年齢:17 身長:175cm 瞳色:黒 髪色:黒 体重:65kg 肌色:肌色 種族 :オーヴァード 出自:死亡 特徴:黄泉返り |1シナリオ1回、生死判定+3 生活:かわいい家族 特徴:愛する家族 |任意のコネクションを1つ得る(関係は思慕) 【キャラクター設定】 妹を愛するオーヴァード。 いろいろあったけどわたしはげんきです。 【その他】 経験点内訳:転職10 汎用能力80 換金10(192万9800v使用→7万200V.余) 【幸運】 -5 装備がうさぎさんとすごい似てて笑った
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/2353.html
祈祷の守護精霊 種族:精霊 登場作品:封緘のグラセスタ 解説 青の月女神リューシオンの神域である祈祷岬を守る精霊。 雑感・考察 名前
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2330.html
銃声も、怒号も、靴音も、悲鳴も、 その咆哮は戦場に響き渡る全ての音を打ち消した。 アニエスもギーシュもキュルケも空を見上げる。 そこにいるのは竜に似た、しかし明らかに違う異質な存在。 「た……祟りだ! あの怪物を殺したから祟られたんだ!」 それを目にした誰かがそう叫んだ。 突然の竜の変貌。バオーの存在を知らない彼等には理由など見当たらない。 誰が口にしたのかすら判らない発言が水辺の波紋のように広がっていく。 倒すべき敵を前にして彼等の動きが止まった。 もしかしたら自分達も祟られてしまうかもしれない。 そんな考えが脳裏を過ぎり、彼等の身体を束縛する。 「ウオォォォォォオム!!」 雄叫びを上げながら“バオー”は舞う。 呆然とする竜騎士たちを余所に艦隊へと向かう。 分泌液から与えられた筋力が突風じみた速度を生み出す。 “バオー”は触覚で『ある臭い』を嗅ぎ当てていた。 人の生命を弄ぶ救いがたい下衆の臭い。 ウェールズと共に見上げたアルビオンの夜空で嗅いだ臭い。 その臭いが大嫌いだった。彼から掛け替えのない相棒を奪った、その臭いが。 “バオー”は思った! この臭いをこの世から消してやると! 振り落とされそうなほどに凄まじい加速の中、 ワルドはバオーが何処へと向かうのかを理解した。 奴が向かっているのは『レキシントン』ではない! クロムウェルがいる艦へと一直線に進んでいる! 総大将が討たれれば、この戦争は終わる。 だが、そうはさせない……させてなるものか。 クロムウェルは“虚無”の手がかりを持っている。 それを知るまでは死なせるわけにはいかない。 「虫けら風情が! 僕の野望を邪魔するんじゃないッ!」 杖を突き立てるように“バオー”の首筋へと打ち込もうとした。 だが突き刺す直前、“バオー”の背中が音を立てて変形する。 隆起するのは青く染まった帷子のような鱗。 それが逃げ場の無いワルドの目の前で爆散した。 「う……ウオォォォォォーー!」 放たれた鱗が次々とワルドの身体を撃ち抜いていく。 機銃弾さながらの衝撃に困惑と悲鳴が入り混じった声が上がる。 それでも血に染まった視界でワルドは睨む。 憎悪を滲ませ、執拗に“バオー”への殺意を滾らせる。 だが杖を振り上げようとした瞬間、彼の身体は炎に包まれた。 ただの鱗ではない、それは“バオー・シューティング・ビースス・スティンガー・フェノメノン” 幾万の針に神経を貫かれるかのような苦痛。 全身を焼かれていく苦しみに悶えながらワルドは背から引き剥がされた。 遠ざかっていく奇形の蒼い竜。 しかし、それもすぐに視界から消えた。 吸い込まれるような空の青だけが広がる。 不意にワルドは手を伸ばした。 世界を掴もうとした手が虚しく宙を漂う。 誰かに助けを求めるように突き出された腕。 しかし彼を助けようと手を差し伸べる者は誰もいない。 …………いや、一人だけいた。 彼女だけは僕を助けようとしてくれた。 たとえ、それが思い違いであったとしても、 『助けたい』という彼女の気持ちに偽りはなかった。 だが、アルビオンの空で差し伸べられた手を僕は拒絶した。 「報い、か」 呟いた一言は誰にも聞こえず、彼の身体と共に空へと消えていった。 絶え間なく響く艦の軋む音にクロムウェルは怯えるしかなかった。 艦隊からの砲撃を浴びても尚、怪物は止まらなかった。 瞬く間に自分の艦に取り付くと爪と牙で壊し始めたのだ。 まるで雪解けのように削り取られていく艦体。 竜騎士たちの応戦も実を結ばない。 静かに降下していく艦の中で沈痛な空気だけが流れる。 「皇帝陛下、早く脱出を!」 「馬鹿を言うな! 外には奴がいるのだぞ!」 兵士の声をクロムウェルの怒号が掻き消す。 無論、脱出艇の用意ぐらいはある。 しかし、艦から出た先には怪物が待っている。 小船などそれこそ容易く握り潰されてしまうだろう。 「艦隊は!? ジョンストン総司令は何をしておる!?」 「はっ! 今、艦隊の一部をこちらの救助に向かわせております」 「全部だ! 全ての艦を動かすように伝えよ!」 たった数隻では怪物に沈められないとも限らない。 既に御自慢だった艦隊への信用は失墜していた。 地上への砲撃でもさしたる被害を与えられず、 “光の杖”にはまるで歯が立たず、今も怪物を食い止める事さえ出来ない。 あれだけの数と質を揃えておきながら何の役にも立ってない。 もはやクロムウェルが頼れるのは手に嵌めた指輪の力だけだった。 「バルバルバルッ!!」 雄叫びを上げて“バオー”が艦を引き裂いていく。 “メルティッディン・パルム・フェノメノン”の前では強度など何の意味も成さない。 彼は嫌な臭いのする方へとひたすらに爪を走らせる。 ただ臭いを消すだけならば“ブレイク・ダーク・サンダー”を打ち込めばいい。 この至近距離ならば確実に艦体を吹き飛ばせるだろう。 だが“バオー”はそれを望まない。何故なら“彼”がそれを望まないからだ。 無用な犠牲を避けて戦い続けた“彼”の意思を裏切りたくはない。 消すのは“この臭い”だけだ。もうそれで十分だ。 あまりにも……生命の臭いが失われすぎた。 “バオー”の覚悟を示すように、その身体は正しく満身創痍だった。 至近距離で撃ち込まれた散弾の銃創に、魔法や息吹で負った火傷。 分泌液の修復無しではまともに飛ぶ事さえ叶わなかっただろう。 残された力を振り絞り“バオー”は戦いの決着を付けようとしていた。 とん、と小さな靴音を鳴らしてタバサは地上に降りた。 彼女の乗っていたシルフィードの周りにはギーシュやキュルケたちが集まっている。 何があったのかを彼女に問い質せる者はいなかった。 いつも感情を露にしない少女が浮かべるのは明らかな悲哀の色。 そして、続けて降りてきたルイズの姿を見て誰もが理解した。 視線を落として俯く彼女が抱えるのは小さな犬の哀れな姿。 頭蓋を穿たれて赤黒く染まった毛並み。 傷の深さも場所も素人目に見ても助かるものではない。 彼はまだ死んではいなかった。だが、それだけだった。 体内に残ったバオーの分泌液が僅かに彼の命を繋ぎ止めていた。 だけど、それもあと僅か。いつ息絶えたとしてもおかしくはない。 風が吹けば消えてしまうのではないかという生命の炎。 何かを言おうとしてルイズは言葉を詰まらせた。 代わりに溢れてきたのは止め処ない涙。 このまま泣き続けていても仕方ないと分かっている。 なのに立ち尽くして泣く事しか今の彼女には出来なかった。 その彼女の腕でもぞもぞと何かが動く。 何かなどと考えるまでもない、彼女の腕にいるのはただ一匹。 ルイズに抱きとめられたまま懸命に彼は前足を動かしていた。 遠のいていく意識の中で震える足で歩みだそうとする。 「だ……ダメよ! 動いたりなんかしたら……!」 そこまで口にして彼女はそれに気付いた。 ワルドに立ち向かっていた時と同じ、闘志に満ちた瞳。 彼は動こうとしているんじゃない。 こんな姿になりながら、まだ戦おうとしているのだ。 なんで、と言おうとして必死に飲み込んだ。 そんな事は訊かなくても分かっている。 いつも彼は私の為に戦ってくれた。 あの時と同じだ。フーケのゴーレムに襲われた、あの森と。 泣いていた私の代わりにアイツは立ち向かっていった。 あの頃からずっと変わらずに守り続けてくれた。 でも、もう戦わなくていい。 「タバサ。少しお願いするわ」 喉を震わせながらルイズは彼を託す。 空いた腕で、ぐしっと袖で涙を拭い取る。 ギーシュのブラウスを汚してしまったけど気にしない。 泣くのはもう終わりにしなきゃいけない。 いつまでも泣いていたらアイツは心配する。 「待ってて。すぐに終わらせてくるから」 彼に優しく微笑んでルイズは背を向けた。 もうすぐ彼はいなくなる、そして二度と会うことはない。 最後に憶えているのが私のくしゃくしゃな泣き顔だなんて、そんなの絶対に許さない。 助からないと分かっている。だからせめて最期に安心させてあげたい。 見せてあげなきゃいけないんだ、私が一人でも大丈夫だって。 自慢のご主人様だと、彼が胸を張って言えるように。 「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 自分の名を誇るように告げて歩む。 頭上には間近にまで迫ってきた無数の艦影。 実感する、私はようやく歩き始めたのだ。 メイジとして、一人の人間として、自らの足と意思で。 「私は背を向けたりしない!」 高々と杖を掲げる。それは宣誓であると同時に詠唱の姿勢。 『始祖の祈祷書』を広げ、そこに書かれたルーンと言葉を注視する。 偉大なる始祖ブリミルよ、きっとこれは貴方が望んだ使い方ではないでしょう。 だけど私は“この力”を使います。自分が正しいと思える事に使います。 彼がそうしたように、そして私もそうありたいから。 「私は自分の運命に背を向けたりはしない!」 戻る 目次 進む
https://w.atwiki.jp/prdj/pages/2240.html
冒険用装備 Adventuring Gear 冒険用装備 アイテム 市価 重量 動物笛 1SP ― アーケイニスト用具 21GP 34ポンド(更新)* ブラッドレイジャー用具 9GP 27と1/2ポンド(更新)* 本止め紐 3SP 1/2ポンド パズル本 50GP 1ポンド 戦場の祈祷書 50GP 1/2ポンド 点字腕輪 25GP ― ブローラー用具 9GP 26ポンド* カルメット 20GP ― メモ付きブックカバー 100GP 2ポンド 暗号指輪 10GP ― 折り畳み式トランポリン 50GP 10ポンド コルク入りベスト 25GP 1ポンド 高級売春婦用具 10GP 5ポンド* 消化ポンプ 200GP 500ポンド 足跡用石膏(更新) 2GP 1ポンド 格闘家の油(一壺) 5GP 1/2ポンド 手回し式ひき臼 10GP 20ポンド ハンター用具 15GP(更新) 43と1/2ポンド(更新)* 狩猟用照準器 100GP ― インヴェスティゲーター用具 40GP 37ポンド(更新)* 網通しスパイク 8SP 1/2ポンド 可搬式救護設備 1,000GP 500ポンド 麝香用具 25GP 1ポンド 祝福硬貨(12) 12GP 1/2ポンド 運搬用牢獄 200GP 300ポンド ロープランナー 50GP 3ポンド シデムシ壺 3GP 1ポンド シャーマン用具 15GP(更新) 44ポンド(更新)* スカルド用具 37GP(更新) 47と1/2ポンド(更新)* スレイヤー用具 22GP 43と1/2ポンド(更新)* ホルスター付き袖 100GP 1ポンド 嗅ぎ煙草入れ(骨製またはべっ甲製) 25GP ― 嗅ぎ煙草入れ(象牙または貴金属製) 300GP ― 嗅ぎ煙草入れ(錫製または木製) 5GP ― 飴ガラス瓶 1GP ― スワッシュバックラー用具 9GP 42ポンド(更新)* 叙述書 50GP 3ポンド 移動式養蜂巣箱 10GP 10ポンド 移動式庭園 200GP 500ポンド ウォープリースト用具 16GP(更新) 31ポンド(更新)* *これらのアイテムの重量は、小型キャラクター用に作られたものであれば、おおよそ4分の3となる。小型キャラクター用の容器は通常の4分の1しか運べない。 動物笛 Animal Call 市価 1SP;重量 ― この葦もしくは武で作られた笛は、様々な野生の動物の鳴き声を真似たものだ。笛はそれぞれ特定の動物の種別の特別な鳴き声(通常は近くの動物を引き寄せる、食糧の可能性を示す信号か交尾を示す信号)に調整している。適切な笛を使用する江波、特定の動物の種別を追跡したり自然の中でうまく凌ぐために行う〈生存〉判定に+2のボーナスを得る。 アーケイニスト用具 Arcanist's Kit 市価 21GP;重量 34ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、インク、ペン、鉄の深鍋、携帯食器一式、石鹸、呪文構成要素ポーチ、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。アルケミストは呪文書を持った状態でゲームを開始し購入する必要がないことから、この用具には呪文書は含まれていない。 ブラッドレイジャー用具 Bloodrager's Kit 市価 9GP;重量 27ポンド(更新) この用具には背負い袋、毛布、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、石鹸、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。 本止め紐 Book Lariat 市価 3SP;重量 1/2ポンド この金属製の編み紐には留め具がついており、一般的な呪文書1冊の鍵を取り付けることができる。紐の逆側の端をベルトや腰紐に結びつける。この紐は10フィートの長さがあり、長さの調整ができる。この紐につけている間に呪文書を落とした場合、標準アクションで呪文書を拾い上げることができる。取り付けている間、呪文書は持ち主から10フィート以上離れることはない。本を紐から取り外すのは移動アクションだが、本から取り去るために紐を切ることもできる(硬度10、hp10)。 パズル本 Book of Puzzles 市価 50GP;重量 1ポンド この本はそれぞれ精神を試し知性を呼び覚ますパズルが10問含まれている。パズル1つを解くには最低でも1時間が必要で、DC10の【知力】判定に成功しなければならない。【知力】判定の達成値がDCを5ポイント上回る毎に、パズルを解くために必要な時間が10分ずつ短くなる(個々のパズルを解くには、最低でも10分は必要となる)。パズル1つを解くと、以降24時間の間、〈真意看破〉、〈装置無力化〉、〈知識〉技能判定のいずれかを1回行う際、2回ロールしてより高い結果を用いることができる。全てのパズルを解いてしまうとこの本は価値の無いものとなる。しかし別のパズルが掲載されたパズル本を買うことができる。 戦場の祈祷書 Book of War Prayers 市価 50GP;重量 1/2ポンド この革で装丁された、戦場の祈祷を集めた小さい本の各ページは、素晴らしい上質皮紙で作られている。持ち主の【魅力】が13以上であるか、持ち主が〈芸能:朗誦〉に1ランク以上割り振っているならば、持ち主はこの本の祈祷を声高に読み上げることで、戦闘の前に来たる試練に備える者達を勇気づけることができる。効果を得るために祈祷を読み上げるには10分かかる。祈祷を聞いたものは、次に試みる[恐怖]に対するセーヴィング・スローに+2の士気ボーナスを得る。ただしこのセーヴィング・スローは祈祷後24時間以内に行われるものでなければならない。 点字腕輪 Braille Bracelet 市価 25GP;重量 ― この腕輪には小さな粘土製のビーズが10個埋め込まれており、それぞれが隆起した印として彫り込まれている。ビーズは腕輪から取り除くことができ、それぞれ好きな順番に並べ替えることができる。並べ替えると、彫刻を指で触れることで、印の意味を理解し、腕輪が伝えたい内容を解読することができる。ビーズ1つでも単純な短文を持ちうるが、複数のビーズを組み合わせれば互いに連続性を持ち、より複雑な文を編みあげることができる。ビーズを通訳として介することで、全く音を発することなく意志を疎通することができるし、完全な暗闇の中であってもよく、ものを見ることができなくてもよい。この腕輪を用いて適切にビーズを使用するには、使用者と仲間は互いにビーズの意味を最初に取り決めて置かなければならない。ビーズ1つの意味を思い出すには、DC10の【知力】判定に成功しなければならない。より複雑な文章を伝えるには、追加でビーズを1つ使用するたびに、判定のDCが2ずつ増加する。ビーズに取り決められた意味を知らないクリーチャーが文章の翻訳をするのは事実上不可能で、DCが20だけ増加する。 ブローラー用具 Brawler's Kit 市価 9GP;重量 36と1/2ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、ロープ、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。 カルメット Calumet 市価 20GP;重量 ― カルメットは2つのパーツで構成された儀礼に用いられる喫煙用パイプで、石や粘土から作られた椀が付いており、複雑に曲がった木製の柄には呪物がぶら下げられている。このパイプはビーズや布、安い宝石で飾られた特殊な革製のポーチに入れて運ばれる。このパイプでは特定の儀式には不可欠の、様々な薬草の混合物による煙を用いる。共同体におけるカルメットでの喫煙は、様々な集団の間の結束を表す印として、外交の席で利用されることもある。このようにしてカルメットを共有したものに対しては、〈交渉〉判定に+1の状況ボーナスを得る。 メモ付きブックカバー Cheat Sheath 市価 100GP;重量 2ポンド この革装丁のブックカバーの表面には、魔法記号や秘術式、一般的な呪文の起動方法や試薬が一覧となっていくつも書かれている。この記述をいくつも手元で参照できるため、使用者は呪文書や巻物を理解するため、借りた呪文書から呪文を準備するため、ディテクト・マジックを用いて魔法のアイテムの特性を識別するため、及び巻物を解読するために行う〈呪文学〉判定に+2の状況ボーナスを得る。 暗号指輪 Cipher Rings 市価 10GP;重量 ― この分厚い木製の指輪は指輪を作る際に決められた暗号を解読する鍵となっている。基本的なセットは2つの全く同じ指輪で構成される。追加で指輪を購入するには、1つあたり4GPが必要となる。暗号指輪の暗号を用いれば、使用者は筆記された単文から暗号を作ったり復元したりすることができる(判定不要)。正しい指輪がない状態で単文を解読するには、DC25の〈言語学〉判定が必要となる。 折り畳み式トランポリン Collapsible Trampoline 市価 50GP;重量 10ポンド この取り回しの良いトランポリンは簡単に運べるように、テントのようにばらばらになり、巻き取ることができる。トランポリンを組み上げたり分解したりするには1分間かかる。2体のクリーチャーが取り扱うならば、折り畳み式トランポリンは跳躍のために行う〈軽業〉判定に+5のボーナスを提供する。落下したクリーチャーがこのトランポリンに着地したなら、落下ダメージを計算する際、最初の10フィートを無視する。 コルク入りベスト Cork Vest 市価 25GP;重量 1ポンド この布製のベストにはコルクでいっぱいになったポケットが付いており、身につけたものを浮きやすくする。元々は漁師や船員が身につけていたこのベストは、溺れるのを防ぐためのものだ。コルク入りベストを身につけている間、使用者は【敏捷力】判定と〈水泳〉判定に-2のペナルティを受けるが、5以上の差で失敗した時に水中に沈むのではなく、10以上の差で失敗した場合にのみ水中に沈むようになる。さらに、使用者は疲労状態からダメージを受けるのを避けるために行う〈水泳〉判定に+4のボーナスを得る。コルク入りベストは鎧の下に身につけることができる。 高級売春婦用具 Courtesan's Kit 市価 10GP;重量 5ポンド この用具には高級売春婦が心と身体を慰撫するために助けとなるアイテムが入っている。身体用として、この用具には剃刀、香油と軟膏、香水、保温鍋、様々な魅力的な衣装が入っている。詩集、文学書、演劇本――しばしば淫らな内容をまとめたもので、性的な二重の意味がたくさん掲載されている――は心を楽しませてくれる。 消火ポンプ Fire Pump 市価 200GP;重量 500ポンド この重量型の馬車には水の入ったタンク、備え付けのポンプ、回転するノズルがついている。使用者がDC20の【筋力】判定に成功すれば、消火ポンプは30フィートまで届く水流を解き放つ。ポンプを支援する人が1人増える毎に、このDCは5ずつ低下する。操作や支援は全ラウンド・アクションである。ポンプは1ラウンドに5フィート四方の魔法のものでない火を消す。水の入ったタンクはこのポンプが10ラウンドの間噴出できるだけの水を入れることができ、水路や池、湖、その他の水域で10分間費やせばいっぱいにすることができる。 足跡用軟膏 Footprint Cast(更新) 市価 2GP;重量 1ポンド このすぐに固まる石膏は後で詳細を調べるために足跡を保存しておくのに最適である。1分かけて足跡用石膏を流し込み、乾燥させると、足跡を複製することができる。これにより、現地に移動することなく他人に足跡を説明し、時間経過その他の理由でDCを増加させることなく、〈生存〉判定で解析を行うことができる。(更新) 格闘家の油 Grappler's Grease 市価 5GP;重量 1/2ポンド 動物の脂肪から作られたこの青白い油を身体に塗布すると、使用者に対して組みつくのが難しくなる。この油に覆われている間、使用者は組みつき戦技に対するCMDに+4のボーナスを得る。この油を塗布するには1分間かかり、一度塗布するとその効果は10分間持続する。使用者が鎧を身につけた場合、格闘家の油の利益を得ることはできない。格闘家の油は通常、5回分が入った小さな粘土製の壺に入れて売られる。 手回し式ひき臼 Hand Rotary Quern 市価 10GP;重量 20ポンド この小さな石臼を使用すると、いくつかの材料を細かい粉へとすりつぶすことができる。石臼によって作られる粉の総量は材料によって様々だが、1時間で8ポンドの粉を作り出すことができる。 ハンター用具 Hunter's Kit 市価 15GP(更新);重量 43と1/2ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、携帯食器一式、ロープ、呪文構成要素ポーチ、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋、木製の聖印が含まれている。(更新) 狩猟用照準器 Hunter's Sight 市価 100GP;重量 ― この複雑なレンズは堅めにつけることができ、使用時には両目スロットを消費する。遠隔武器と同時に使用すると、攻撃における射程ペナルティを2だけ減少させる。しかし100フィート以内にいる物体は見にくくなり、狩猟用照準器を身につけている間、視覚に基づく〈知覚〉判定に-2のペナルティを受ける。 インヴェスティゲーター用具 Investigator's Kit 市価 40GP;重量 37ポンド(更新) この用具には錬金術キット、背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、インク、ペン、鉄の深鍋、携帯食器一式、石鹸、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。インヴェスティゲーターは処方書を所持した状態でゲームを開始し購入する必要がないため、この用具には処方書が含まれていない。 網通しスパイク Marlinspike 市価 8SP;重量 1/2ポンド この磨かれた金属製のスパイクは様々な縄を用いる作業、例えば結び目を作ったり解いたり、ものを縛ったり、ロープをつないだり、ロープをぴんと張ったり、といった作業の助けとなる。一般的なスパイクは先まで6インチの長さで、すらりとしたほとんど針のような細さである。そして両端は丸くなっている。より小さなスパイクはランヤード(訳注:首から小物を吊すための紐)に用いられ、より大きなスパイクは覆いを止める際に用いられる。網通しスパイクはロープを使用することに関する技能判定に+2の状況ボーナスを与える。 可搬式救護設備 Mobile Hospital 市価 1,000GP;重量 500ポンド この馬車用具は10人までの傷病者を一度に治療することができるだけの装備が搭載されている。この中には大きなテント2つ、携帯用寝具10個、がっしりとした机、外科手術用具、治療用具5つが含まれている。誰であれこれらを使用すれば応急手当のために行う〈治療〉判定に+2のボーナスを得ることができる。また、命にかかわる傷を治療する際、治療用具を2つではなく1つしか使用せずに済む。さらに長期的な看護で患者が回復するまでの速度が通常の2倍となる。 麝香用具 Musk Kit 市価 25GP;重量 1ポンド 麝香用具には濃縮された分泌物、すぐ使用できる動物の腺、植物の混合物が入った瓶が合計12個入っている。これを使用してこのはっきりとした臭いのする麝香を使って物質、位置、跡に印をつけることで、嗅覚でそれを識別したり追跡したりすることができるようになる。矢や他の武器を麝香に浸し、傷ついた獲物に印をつけ追跡するために用いる狩人もいる。 別の用法として、麝香用具から一度に4ビンを消費することで、麝香に印をつけた場所に2d6体の超小型の動物を引き寄せることができる。動物はおおよそ1時間後に訪れる。この一団は、周辺地域で最も一般的な種類の動物で構成される。 祝福硬貨 Obals 市価 12GP;重量 1/2ポンド 祝福硬貨は小さな銀貨もしくは金貨で、聖印が刻まれ戦争の神か死の神の神官によって祝福されている。インクィジターおよびウォープリーストは伝統的にこの効果を戦闘で死亡したものの死体に置く。通常はそれぞれの目に複数ずつと口に1つである。市価は1回分で用いる祝福硬貨12枚分のものである。 運搬用牢獄 Portable Prison 市価 200GP;重量 300ポンド この馬車用具は投獄された人やクリーチャーを輸送するために用いられるもので、扉が1つ付いた金属製の格子一揃いである。運搬用牢獄は元々、野生動物を捕らえる旅程を目的に作られたものだ。しかし街の護衛は一般に犯罪者を捕らえるために使い、多数の投獄者を輸送するために用いる賞金稼ぎもいる。ほとんどの牢獄には錠が付いている。運搬用牢獄の市価に、設置する錠の市価を加えること。人用に作られた運搬用牢獄には椅子と枷が付けられる柵が取り付けられている。動物用に作られた運搬用牢獄には水桶1つと、餌を入れるために用いる小さい扉が1つ付いている。 ロープランナー Roperunner 市価 50GP;重量 3ポンド この金属製の仕掛けをぴんと張ったロープの高いところから低いところに通すことで、ロープを簡単に滑り降りることができる。ロープランナーは片手だけで使用することができ、下降の際に片手を自由にしておくことができる。ロープランナーをロープに取り付けるのは移動アクションである。下降の開始は即行アクションである。ラウンド毎に60フィートの速度でロープを滑り降りることができる。使用者は下降の際にアクションを必要としないが、ロープに沿って下方向に移動しなければならない。ロープの端まで到達した後でロープランナーを取り外すのは移動アクションである。フリー・アクションでロープランナーから手を離すことができる。 シデムシ壺 Scavenger Beetle Colony 市価 3GP;重量 1ポンド このガラス製の壺には腐肉食性の昆虫のコロニーが1つ入っている。毎日1/4ポンドの肉を与えないと、昆虫は死んでしまう。有機体の死体に放たれると、昆虫は1d4日の間にその肉を分解し貪り食い、骨のみにしてしまう。不肉食性の昆虫は死体の肉しか食べないため、生きているクリーチャーに害を与えることはない。一度解き放たれると、昆虫は壺の中に帰ることはない。 シャーマン用具 Shaman's Kit 市価 15GP(更新);重量 44ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、ろうそく(10本)、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、携帯食器一式、ロープ、石鹸、呪文構成要素ポーチ、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋、木製の聖印が含まれている。 スカルド用具 Skald's Kit 市価 37GP(更新);重量 47と1/2ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、通常の楽器、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、携帯食器一式、鏡、ロープ、石鹸、呪文構成要素ポーチ、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。 スレイヤー用具 Slayer's Kit 市価 22GP;重量 43と1/2ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、枷、携帯食器一式、ロープ、石鹸、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。 ホルスター付き袖 Sleeve Holster 市価 100GP;重量 1ポンド この革製のホルスターを大きい袖の内側に取り付けることで、使用者は移動アクションとして隠しておいたハンド・クロスボウ1つもしくはコート・ピストル1つを移動アクションで取り出すことができる。この武器はすり板の上に置かれ、手の上に直接引き出される。手首鞘とは異なり、ホルスター付き袖はかさばるため、近くで見れば身につけているのは明らかである。しかしぶかぶかな衣服の下に取り付ければ、対抗〈知覚〉判定をさせずに済むかもしれない。ホルスター付き袖はそれぞれハンド・クロスボウかコート・ピストルのいずれか一方用にあつらえたもので、両方に対応させたものではない。 嗅ぎ煙草入れ Snuffbox 市価 さまざま;重量 ― 錫製または木製 5GP;象牙または貴金属製 25GP;骨製またはべっ甲製 300GP この小さく装飾のついた箱にはヒンジで固定された蓋が付いており、しっかりと封のできる掛け金が付いている。この箱は様々な嗅ぎ煙草、粉、煙草といった物質を入れておくために用いられる。この箱はいくつかの材質で作られる。材質は木から象牙まで様々で、宝石が埋め込まれた希少な金属であることもある。 飴ガラス瓶 Sugar Glass Bottle 市価 1GP;重量 ― このビンはガラスで作られているように見えるが、ずっと壊れやすく、これを使ってクリーチャーや物体に攻撃してもダメージを与えられない。劇場の芸人が用いる高価なものであれば、飴ガラス瓶は実際に戦闘しているように見せかけるために行う〈芸能〉及び〈はったり〉判定に+2の状況ボーナスを与える。 スワッシュバックラー用具 Swashbuckler's Kit 市価 9GP;重量 42ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、携帯食器一式、ロープ、石鹸、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋が含まれている。 叙述書 Tome of Epics 市価 50GP;重量 3ポンド この重たい本は油布で装丁され、古代の英雄と恐ろしいモンスターの間で行われた派手な戦闘の一場面を示した絵で飾られている。この本には勇気や勝敗に関する物語がいくつも掲載されており、その全てに明るい色で描かれたイラストが付いている。1時間かけてこの本を読んだ後24時間の間、読んだものは〈芸能:歌唱〉と〈芸能:朗誦〉の判定に+2のボーナスと、英雄譚に関する〈知識:貴族〉の判定に+2の状況ボーナスを得る。(更新) 移動式養蜂巣箱 Traveling Bee Hive 市価 10GP;重量 10ポンド この藁製のかごは、持ち運びできる蜂の巣となる。ドーム状の形で頭頂部には穴が空いており、蓋としてその穴を覆うことのできる小さな編みかごが付いている。この穴のお陰で、巣の全体を破壊することなく、少量の蜂が蜜を集めに出入りすることができる。特定の蜂が作物収穫量を高めると信じられており、養蜂家にお金を払い、蜂を連れて農場に来るよう依頼する農家もいる。 移動式養蜂巣箱を破壊すると、蜂が群れとなり半径5フィートの雲状に広がる。群れの中に巻き込まれたクリーチャーは、その中にいる限り盲目状態となる。さらにDC12の頑健セーヴィング・スローに成功しなければ、1分の間不調状態となる。この不調状態は[毒]効果である。 移動式庭園 Traveling Garden 市価 200GP;重量 500ポンド この重量型四輪馬車に取り付ける付属品には、様々な種類の植物を育てられるよう専用に作られた箱や鉢が備えられており、さらにゴート(山羊)などの動物数体とその食糧が入るだけの空間がある。移動式庭園からは食糧と治療用のハーブが採れる。このアイテムは治療用具と同様の効果を1日に5回分提供し、決して枯渇することがない。さらに、この庭園から様々な種類の新鮮なハーブと野菜を毎日摂取することで、病気に対するセーヴィング・スローに+1のボーナスを得られる。 ウォープリースト用具 Warpriest's Kit 市価 16GP(更新);重量 44ポンド(更新) この用具には背負い袋、携帯用寝具、ベルトポーチ、安価な神聖文書、火打ち石と打ち金、鉄の深鍋、携帯食器一式、ロープ、石鹸、呪文構成要素ポーチ、松明(10本)、保存食(5日分)、水袋、木製の聖印が含まれている。(更新)
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/2295.html
流離の獣祈祷師 種族:巨人族 登場作品:天秤のLa DEA。 解説 死を呼ぶ魔眼と魔術を操る祈祷師。 雑感・考察 名前
https://w.atwiki.jp/darthvader/pages/31.html
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 07 51.61 ID 9yCv5QLV0 ベイダー卿はしばらく各部の点検をした後、木材から削り出された車輪止めを外し、フォースを 使って竜の羽衣を格納庫の外に引きずり出した。 薄暗い建物の中ではなく日光の下で見てみたい、とでもいうかのように。 ベイダーのそんな様子を見て、ルイズが口を尖らせる。 「呆れた。新しい玩具を与えられた子供じゃあるまいし」 その一方―― 「かわいい」 ポツリと漏らしたタバサの顔を、キュルケが気味の悪いものでも見るかのような表情で覗き 込んでいだ。 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 12 47.56 ID 9yCv5QLV0 再び竜の羽衣いじりに夢中になり始めるベイダー卿。取り残される形のルイズたちが、どうし ようかと顔を見合わせていたところに、シエスタの父がやって来た。 彼は地面に転がるオーク鬼の死体を見てぎょっとした様子だったが、シエスタやルイズたちが 揃って無事であることを確認すると、顔をほころばせた。 「約束どおり、オーク鬼の討伐は済んだわ。そこに転がってるので全部よ」 ルイズがささやかな胸を張る。 シエスタの父は、任務の完了があまりにも早いことをいぶかしんだが、視線を向けて数え れば、転がってる死体の数は村人の目撃情報にも一致する。 貴族というのはやはりとんでもない存在だ――そんな思いを新たにしながら、彼は口を開いた。 「正直驚きました。こんなに早くオーク鬼を掃討していただけるなんて……。ところでさきほど、 喋るフクロウが教会に現れまして、ミス・ヴァリエールにこれを、と」 シエスタの父が差し出す手紙に捺された紋章を見て、ルイズの眉が怪訝そうにひそまった。 それは、魔法学院の紋章であったからだ。 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 15 51.19 ID 9yCv5QLV0 キュルケはルイズの手の中の封書を覗きこんだ。 「学院から?」 ルイズは頷き、封を破る。 その顔が、初めは蒼ざめ、次いで喜びと戸惑いの入り混じったような複雑な表情に変わった。 「帰るわよ。借金はちゃらになったわ」 読み終えた手紙をたたみながら、ルイズはそう宣言した。 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 20 02.42 ID 9yCv5QLV0 手紙の主はオスマン氏であった。 無断欠席への叱責から始まり、キュルケたちには罰として学院の教室という教室の掃除が 命じられていた。 ルイズには別の任が待っていた。 二週間後に催されるアンリエッタ王女とゲルマニア皇帝の結婚式の席上では、トリステインの 王族のしきたりで、選ばれた巫女が王家の秘宝『始祖の祈祷書』を片手に祝福の詔を詠み あげる。その巫女に、アンリエッタがルイズを直々に指名してきたらしい。 オスマン氏は、一刻も早く戻れ、と強い調子で命じていた。『始祖の祈祷書』を渡さなければ ならないし、詔を考える時間もぎりぎりである。 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 23 41.04 ID 9yCv5QLV0 また、急ぎの任務である上、学院としても大変名誉な話なので、ルイズとギーシュの借金は 学院が負担するとも述べられていた。 それを聞き、ギーシュの顔色が少し回復した。 手紙の末尾には、メイドのシエスタは、王女の結婚式が終わるまで実家で休みを取っていい と付け加えられていた。 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 26 18.48 ID 9yCv5QLV0 「どうする?」 と、キュルケ。 「どうするも何も、すぐに戻る他ないでしょ。でも、問題は……」 ルイズはちらっとベイダーの方を見た。 相変わらず竜の羽衣に夢中のようだ。 「約束どおり、竜の羽衣は引き取っていただいて結構ですよ」 ルイズの目配せの意味を誤解したシエスタの父が微笑んだ。 ルイズは曖昧に頷き返した。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 29 50.48 ID 9yCv5QLV0 しかし本当に問題なのは、どうやってこの馬鹿でかい竜の羽衣を持って帰るか、である。 ベイダーの力をもってしてさえ、辛うじて引きずり出せるくらいの重量なのだ。 タルブの村から魔法学院までの距離なんて持ち帰りようがない。 「心配ない」 ルイズの困惑に応えるかのように、いつの間にかベイダーがそばまで来ていた。 「ギーシュ、出番だ」 「え?」 突然の指名に、ギーシュは自分の顔を指差した。 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 33 37.03 ID 9yCv5QLV0 その日、ルイズたちはシエスタの生家に泊まることになった。 村を救ってくれた貴族を迎え、人々は盛大に歓迎してくれた。 秘蔵の家畜がつぶされ、仕込みたてのワインが次々とシエスタの家に運び込まれる。 ほとんど祭りのような賑やかさだった。 あるいは、本当に来年以降もこの日が祝われることになるのかもしれない。 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 38 20.98 ID 9yCv5QLV0 ベイダー卿はシエスタの家族に紹介された。父母に兄弟姉妹たち。シエスタは、八人兄弟の 長女だった。 父母は怪訝な顔でベイダーを見、兄弟たちはあからさまに怯えたが、わたしが奉公先でお 世話になっている人よ、とシエスタが紹介すると、すぐに相好を崩した。 幼い兄弟たちも、ベイダーがオーク鬼たちをあっという間に屠った段をシエスタに面白おかしく 語って聞かせられると、ようやく警戒を解いたようだった。 それでももちろんなつこうとはしなかったが。 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03 48 48.18 ID 9yCv5QLV0 最初は遠慮がちだったルイズたちも、宴の進行とともに打ち解け、村人と一緒に騒ぎ始めた。 その頃には家族も他の村人も分け隔てなく、シエスタの家に出入りしていた。 さらには、庭で素朴ながら賑やかなダンスパーティまでもが催される。 ベイダー卿はシエスタの家をそっと出た。 向かった先は、村はずれの草原である。 村の喧騒はここまで来てもわずかに届いてくる。 彼方の山の上にかかる月が野原を明るく照らし、風に揺れる花を時おりキラリと輝かせて いた。 そんな幻想的な景色の中で、竜の羽衣だけが異様な影をこちらに投げかけている。 オーク鬼達の死体は村人が処理したようだ。 ふと、竜の羽衣の前に人影が一つ立っているのが目に入った。 ベイダー卿が近づくと、影がゆっくり振り向いた。 「ふふふ、わたしも抜け出して来ちゃいました。ベイダーさんもここに来るだろうと思って」 人影の正体はシエスタだった。 193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16 36 00.36 ID 9yCv5QLV0 シエスタはいつものメイド服とは違う、茶色のスカートに、木の靴、そして草色の木綿のシャツ を身に着けていた。 そっと、竜の羽衣に歩み寄ると、ライトグレーのその機体の表面を掌で撫でる。 「ベイダーさん、この竜の羽衣は本当に飛べるんですか?」 「飛べる。これはこの星のものではない」 シエスタの背に向かい、ベイダーが答えた。 「この星のものじゃないって、どういうことですか? おじいちゃんは東の方から飛んできたって 言ってましたけど」 「文字通りの意味だ。この竜の羽衣の持ち主は、別の星、あるいは別の銀河からやって来た。 理解しがたければ、別の世界と言ってもいい」 「わたしが学のない村娘だからって、からかってらっしゃるんでしょう?」 シエスタが顔を曇らせた。 195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16 41 42.44 ID 9yCv5QLV0 ベイダー卿は首を振った。 「違う。なぜなら僕自身も別の銀河から召喚されたからだ」 シエスタはハッとした。 「じゃあ、おじいちゃんとベイダーさんは同じ国で生まれたのですか?」 ベイダーは再び首を振る。 「残念だがそれも違う。僕の知る銀河系とはまったく異なる技術体系だ」 「そうです……よね……。そんなすごい偶然なんて、あるわけないですよね」 シエスタは少し肩を落とした。 「だが、少なくとも彼が嘘をついているわけではない。この羽衣は、少し修理を加えて燃料を 補給すれば飛べる」 その言葉に、シエスタはもう一度竜の羽衣の巨体を見上げた。 「そうですか、飛んだら、素敵だな。飛んだら、一度でいいからわたしも乗せてくださいね。 おじいちゃんがそうしたように、この竜の羽衣でタルブの村とこの草原を上から見下ろして みたいから……」 ベイダーは少し考え込んでいたが、やがてわずかに頷くと、コクピットに飛び移り、キャノピー を開けた。 「来い、シエスタ」 そして、シエスタに向かって片手を伸ばした。 200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16 49 06.75 ID 9yCv5QLV0 シエスタは少し戸惑った様子だったが、おずおずとその手を掴んだ。 ベイダーの力強い腕が、その体をコクピットまで引き上げる。 「長くは続かんぞ。祖父が見た景色を見ておくんだ」 ベイダーはそうとだけ言うと、シエスタをコクピットに座らせてキャノピーを閉じ、自分は地面に 飛び降りた。 そして、両手を掲げてフォースを集中させた。 203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16 54 30.15 ID 9yCv5QLV0 キャノピー越しにベイダー卿を見つめながら、何が始まるんだろう、と体を強張らせていた シエスタだったが、やがてわずかな震動と共に竜の羽衣が上昇を始めたのがわかった。 きゃあきゃあわめくシエスタをよそに、羽衣は空中でいったん静止すると、物凄いスピードで 飛翔した。 それはもちろん、羽衣が本来出せるスピードには遠く及ばない速度だったが、ほとんど飛んだ ことのないシエスタにとっては関係がない。 竜の羽衣はあっという間に村の上空に差し掛かり、旋回を繰り返した。 上を見上げれば、初夏の夜空には雲ひとつなく、満天の星々と二つの月が光のシャワーを タルブの村へと注いでいた。 水平より下に視線を向ければ、祝賀会はまだ続いているようで、村のほとんどの家の窓には 灯りがついたままだった。 206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16 59 46.48 ID 9yCv5QLV0 少し慣れて落ち着いたシエスタは、キャノピー越しに見下ろす一つ一つの家屋を観察すること ができた。 最初に目に付いたのは、尖塔も見事な教会である。 次いで、ひときわ立派な門構えの、村長の家を認めることができた。 その頃にはもう、子供の頃から知悉する村の地理にも重ね合わせて、特長のない家も一軒 一軒識別できるようになっていた。 そして、その中でも、最も人の出入りが激しい一軒の家がある。シエスタの生家だ。 それと気づいた時に、シエスタは突然強烈な思い出の波に揺さぶられた。 213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 04 48.87 ID 9yCv5QLV0 あの家を建てたのは祖父だ。 十歳の頃に亡くなった祖父。 変わり者と言われながらも、一生懸命に働いていた祖父。 そして、自分にはことのほか優しかった祖父……。 彼もこうして、村に建つ家々を見下ろしながら空中を漂い、二度と飛べなくなって見知らぬ 土地に着陸したのだろうか。 「おじいちゃん……」 ぽつり、とそう口に出してしまったが最後、シエスタは自分の両眼からこぼれる涙を止める ことができなくなった。 215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 12 06.04 ID 9yCv5QLV0 星空の下の幻想的な飛行体験は、時間にして五分程度だった。 竜の羽衣は、軽い震動とともに草原の元の場所に降下した。 そのコクピットから、ベイダー卿の手を借りて地面に降りたシエスタは、いつかのルイズが そうしたように、彼の背中にしがみつくと、柔らかい生地のマントに顔をうずめ泣きじゃくった。 まだ漏れ聞こえてくる村の喧騒と、風にそよぐ草の音と、背後のシエスタの嗚咽だけが、辺り の静寂をかき乱していた。 だが、それもすぐに止み、彼女はベイダー卿の背からパッと離れた。 そしてぺこりとお辞儀をすると、微笑みながら言う。 「ありがとうございました」 少し泣き腫らした目ではあったが、いつものシエスタと同じ、ひまわりのような明るい笑顔 だった。 過度の集中でかなり疲労していたベイダー卿だったが、その笑顔を向けられると、悪い気は しなかった。 217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 16 40.72 ID 9yCv5QLV0 翌朝、タルブの村に二十騎ほどの竜騎士が到着した。 ベイダー卿の指示を受け、ギーシュが王軍の元帥である父のコネを使って雇った竜騎士隊 とドラゴンである。 ベイダー卿の発案で、太いロープで作った巨大な網に竜の羽衣を載せ、それで学院まで運ぶ ことになったのである。 一行はみな「どうしてこんなものを運ぶんだ?」と疑問に思っていたが、ベイダー卿相手に そんなことを言い出せるはずもなく、しかたなく折れた。 ちなみに、ギーシュは昨夜の宴に与ることができなかった。 最寄の軍の駐屯地まで夜通し馬を駆けさせ、使者を務めたからである。 そのギーシュは、隊長と見られる騎士が駆る竜の背で、村に到着したことにも気づかずに 眠りこけていた。 ルイズは少しだけギーシュに同情した。 226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 21 52.41 ID 9yCv5QLV0 「途中で落としでもしたら、一人残らず叩き切る」 居並ぶ竜騎士隊を前にして、ライトセイバーを抜いてそう言い放つベイダー卿。 ドラゴンたちもその気迫に気圧されてか、ギャアギャアと鳴いた。 竜騎士たちも、その言葉があながち冗談やハッタリだとも思えなかったようで、慌てて敬礼を した。 竜騎士を呼んだり、でかい網を作ったりしたので、運送代はバカみたいにかかった。 借金が帳消しになったばかりのルイズは、また出費か、と頭を抱えた。 しかし、学院の中庭に、でんっ! とあらわれた竜の羽衣を見て、快く運送代を立て替えて くれた人物がいた。 ミスタ・コルベールである。 233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 28 01.41 ID 9yCv5QLV0 ミスタ・コルベールは、当年とって四十二歳。トリステイン魔法学院に奉職して二十年。『炎蛇』 の二つ名を持つメイジである。 彼の趣味……というよりも生きがいは、研究と発明である。 コルベールは、ドラゴンに吊られて魔法学院の広場に現れたものを、研究室の窓から見つけて 慌てて飛び出してきた。 それは、コルベールの知的好奇心を激しく刺激したのであった。 「おお、ベイダー卿! こ、これはなんですかな? よければ私に説明を!」 240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 33 48.16 ID 9yCv5QLV0 竜の羽衣を地面に下ろす作業を監視していたベイダー卿が、その声に振り向く。 「ちょうどいいところに来たな。相談したいことがあった」 「私に?」 コルベールはきょとんとした。いったい、この平民は何者なんだろう? あの日、彼の目の前 でミス・ヴァリエールに召喚された、伝説の使い魔『ガンダールヴ』。そして、そんな伝説など 歯牙にもかけぬ、傲岸不遜な自称『シスの暗黒卿』……。 242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 38 08.41 ID 9yCv5QLV0 ベイダーはコルベールに事のいきさつを語って聞かせた。 「これが飛ぶのか! はぁ! 素晴らしい!」 コルベールは、竜の羽衣のあちこちを、興味深そうに見て回った。 「ほぅ! もしかしてこれが翼か! 羽ばたくようにはできておらんな! さて、この下について いるのは何だね?」 「ミサイルだ。この星の技術を遥かに超越した兵器だ。どんなに速く飛ぶ幻獣でも、これを避け ることはできまい」 傍らに立って二人のやりとりを聞いていたルイズは、思わず身をすくませた。 ベイダーが武器の話を楽しげに語るのを聞くのは、ルイズにとってはあまり嬉しいことでは ない。 自分たちはとんでもないものを引き取ってしまったのではないか、そんな予感すらした。 247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 44 27.92 ID 9yCv5QLV0 「この、下を向いている二つの穴は?」 ルイズの戸惑いをよそに、コルベールはさらに説明を促す。 「エンジンノズルだ。ここからガスを……」 ベイダーは口頭で説明しながら、ライトセイバーを抜き、刀身を伸長させた。 ルイズが驚いて飛び退くが、好奇心を満たすことに夢中なコルベールはまったく平気なよう だった。 「――すると、この翼の上下で圧力差が生まれ……」 ベイダーはライトセイバーの刃先で、あろうことか学院の石畳に図を描き始めた。 平らかな石の表面が高熱の刃で抉られ、赤熱した文字を浮かび上がらせる。 そこには、覚えたての文字による情報も付されていた。 タバサがどこか誇らしげな様子であることに、ルイズたちはもちろん気がつかなかった。 261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 55 16.95 ID 9yCv5QLV0 教師であるはずのコルベールは、その蛮行をとがめもせず、ノートに急いでメモを取っていた。 「すすす、素晴らしい! なるほど、よくできている! では、さっそく飛ばせてみせてくれんか ね? ほれ! もう好奇心で手が震えておる!」 コルベールはいつの間にか砕けた口調になっていた。 しかし、それに対してベイダー卿は首を振る。 「残念だが今は無理だ。燃料がないし、各部の修理も必要だ」 「燃料? この間の油では無理かね?」 「おそらく無理だろう。今からタンクに残った燃料を調べよう」 265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17 57 39.75 ID 9yCv5QLV0 まったく話についていけないルイズは、そこでようやく、自分たちを不安そうに見つめている 竜騎士隊の連中に気づいた。 この場の主導権を誰が握っているのか、彼らにもわかっているようである。 「お取り込み中のところ申し訳ないのですが……」 竜騎士隊の隊長が、おずおずとベイダー卿に歩み寄ってきた。 「取り込んでいるのがわかっているのなら、後にしろ」 ベイダー卿はそう言い捨て、器具を調達するためコルベールと連れ立って研究室の方に歩い ていってしまった。 結局竜騎士隊に運送代が支払われたのは、日暮れ近くになってからのことであった。 ベイダー卿とコルベールの、奇妙な協力関係がこうして始まった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4956.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ 3章 (39)病魔の進行 朝。あの舞踏会の夜から一週間ほども経過したある日の朝。 変わらぬ朝の変わらぬ目覚め。彼女はいつも通りに自慢の髪の毛の手入れを済ませ、食堂へ向かうべく支度を整えていた。 年の頃は十代の中頃、流れるようなブロンドと、絹のようなきめ細かい肌、顔に残ったそばかすは彼女が少女と淑女の境目にいることを示している。 彼女の名前はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。ちなみに名前と名字がほぼ同じなのは、彼女の家の伝統で、長女はそう名乗ると決められているからである。 季節は本格的に秋へと近づきつつある。 あれほど厳しかった日差しも、今ではやや斜めに差すようになってきている。騒がしかった虫達の合唱も、今では聞き苦しいほどではない。 モンモランシーにはつい先日までの緩やかな時間、学院でお茶をしながら他の沢山の生徒達とともに過ごしていたあの日々が、まるで遠いように感じられて仕方がない。 本来なら、そろそろ学院の夏期休業も終わりに差し掛かって、慌ただしく準備が始まる頃合いである。 しかし、彼女が今寝起きしているのは本来居るはずだった寮の自室ではなく、客人としてアカデミーから与えられている一室である。 あの日、襲撃した機械竜と降り注いだ巨石の雨によって、トリステイン魔法学院は見るも無惨な姿に壊滅した。 人づてに聞いた話だと、跡には瓦礫の山だけが未だ手つかずで残されており、きちんと形の残っている建物は何一つ無いということである。 当然、学院再開の目処は立っていない。 彼女はその事件の際に、ある少女に連れられて学院を脱出して難を逃れ、その後の紆余曲折を経て、今、この部屋に身を置いている。 紆余曲折と一言に片付けるには、あまりに様々な体験をしたのだが、それは彼女が今ここに滞在している、いや、滞在させられていることに深く関わっている。 彼女を始め、あの事件の中核にいた人間は、一人を除いて、皆その身を王都トリスタニアに置いている。 特に、学院関係者達は全員がアカデミーに集められているという状況だ。 様々な理由を提示されたが、要するに自分は知りすぎてしまったということなのだろうと、彼女はそんなふうに理解していた。 一方、トリステインでは今、未曾有の規模の徴兵と貴族の動員が進められている。 近く、浮遊大陸攻撃のためにゲルマニア領への大々的な侵攻作戦がかけられるらしい。 女王陛下がその旨の宣言を正式に発布を行って、男達は貴族から平民に至るまで、気勢をあげて続々と兵士としてトリスタニアへと集ってきている。 彼らが口々に叫ぶところは、『誓約の女王アンリエッタ』。 それが彼らの命を背負っている者の二つ名である。 モンモランシーは部屋に一つだけある窓へと近づいて、厚いカーテンを開けた。 二階に位置するモンモランシーの部屋の窓。そこからは、アカデミーの空き地に集められた士官候補である若きメイジ達の訓練風景が見えた。 「……ふん、何が誓約の女王よ」 モンモランシーは、世間では女王が始祖と契約したとされている事件の、本当の真相を知っている。 その正当な功労者が、誰であったかも知っている。 それでも、彼女はそのことで声を上げたりはしない。 女王という重責、責任、それらついて想像もつかない苦労があるであることは彼女も理解しているし、それに今の状況を女王が望んだわけでないというのも何となく分かっている。 それでも、呟かずにはいられない。 「あんなの、嘘っぱちじゃない」 心からあふれてこぼれた言葉の意味。 別に女王の行いに不満がある訳ではない、ただ純粋に悔しいのだ。 ルイズが目覚めたその日、モンモランシーはアンリエッタが人々から『誓約の女王』と呼ばれていることと、その経緯をかいつまんでルイズに教えた。 そのとき、涙を流して彼女はこう言ったのだ。 『うれしい。私なんかが姫殿下のお役に立てるなんて……こんなうれしいことは、他にないわ』 、と。 そうして、自分のことのようにそのことを喜んでいたルイズを思い出して、モンモランシーは薔薇色のその美しい下唇を噛んだ。 「だったらなんで……あの子を助けてやらないのよ……っ」 そう言ってモンモランシーは、テーブルに置かれている一冊の本を見た。 「ルイズ、どうしたのかしら」 舞踏会の翌朝、前日の分かれ際のルイズの様子が気になったモンモランシーは、とりあえず朝食の場で本人から詳しい事情を聞き出す腹づもりでいた。 「おはよう、モンモランシ」そんな風に声をかけてきた幼なじみ、グラモン家の三男坊ギーシュと食堂に向かった彼女だったが、問題のルイズはその場に一向に姿を見せなかった。 きちんと待ち合わせはしている。ルイズはどちらかというと時間に正確な方である。遅刻をするのは珍しい。 心配してそわそわした様子でルイズの部屋を訪ねると言い出したモンモランシーに、「どうせお腹でも壊したに違いないさ。昨日も変なものを食べたみたいだったしね」とギーシュは軽く言って、その言葉を受け流した。 その幼なじみの物言いに呆れたモンモランシーが、ギーシュをその場に残して一人ルイズの部屋へと向かおうとしたそのとき、食堂の入り口に件のルイズがその姿を見せた。 腰を浮かしていたモンモランシーが待つ席へと、ルイズはゆっくりとした足取りで近づいてくる。 その顔色は、心なしか青い。 そして、テーブルから三歩ほど離れた場所で足を止めると、ルイズは小さく、区切りながら言った。 「ごめん、食事は当分、一人で部屋で取ることにするわ」 その何かが張り詰めたような彼女の様子に、モンモランシーは不審を抱いた。 「ちょ、ちょっと何よ、藪から棒に。別に一人で食べたいっていうならそれで良いけど、理由くらい言いなさいよね」 ルイズはそのモンモランシーの言葉に目をつむり顔を伏せて、絞り出した声で応じた。 囁くように一言。 「……ごめん」 彼女はそうとだけ言うと、モンモランシー達に身を翻してしまった。 「ちょっとっ!?」 とっさにルイズを捕まえようとしたモンモランシーの手が、虚空を掴む。 モンモランシーの引き留める声にも耳を傾けず、ルイズは混み始めた食堂の人混みに紛れてしまった。 「っ!」 直感的に、追いかけなくてはいけないと感じたモンモランシーが席を立って、見えなくなったその背を追いかけようとする。 しかし、そんな彼女の勢いを、横からぬっと突き出された杖が遮った。 「やめたまえ」 いつの間にかそこには、男が立っていた。 その白い髪の毛は燃え立つ炎のイメージ、眼下の奥に潜むその目は色眼鏡によって窺い知れない。年月を刻まれた皺はまるで元からそうであったかのようにぴったりと彼自身の堅牢さと組み合わさって隙がない。 あの日、ルイズに呼ばれ『この世界』へと現れた男。姓は分からない、只名前だけがある男、彼の名はウルザ。 「邪魔しないで頂戴。あたしが何をしようと勝手でしょ。どこのメイジだか使い魔だか知らないけど、あたしの行く手を阻む権利はあなたにないでしょう」 キッと睨んでそう声をかけるモンモランシーに、ウルザは抑揚のない平坦な声で言った。 「……彼女を追いかけたとして、それで君は彼女になんと声をかけるのかね?」 「そ、……」 「彼女は君に何も語ろうとはしないだろう。それは君達を守るため、何の力もないただの学生である君達を巻き込まないために」 「だったら! 無理矢理でも聞き出してやるんだからっ!」 その言葉に、ウルザは出来の悪い生徒を前にした教師のようにゆっくりと首を振った。 彼のその所作にモンモランシーの血がますます上る。 しかし、次の言葉が氷の刃となって、モンモランシーを突き刺した。 「それで、君は彼女に何ができるのかね? 何の力も持たない小娘である君が、虚無の運命を背負った彼女に、どんな手助けができるのだね?」 息が止まる、決定的な宣告。 自分とルイズの間にある溝は深く、広い。 ルイズを捕まえ、彼女から事情を聞き出したとして、それで一体何ができるというのだろう。 伝説でも天才でもない自分に、何ができるというのだろう。 答えは、何も、できない。 ……自分は、無力。 何のことはない、そんな自覚。 現実を突きつけられ、己の無力を目の当たりにしたモンモランシーに、ウルザは更に畳み掛けるように言った。 「彼女は恐ろしく強大なものと、この世界の全てをかけて立ち向かわねばならないさだめにある。そして、彼女の隣に君達の並び立つ場所はない。彼女の苦しみは大きく耐え難い。だが、君達にはそこに立ち入るための資格がない」 唇を噛みしめる。 それは、あえて考えないようにしてきたこと。 『ゼロのルイズ』は『虚無のルイズ』で、自分たちとは比べものにならない尊い存在だという、歴然たる事実。 しかし、それでもモンモランシーは、ルイズの側に駆け出していきたかった。 理性では彼女は既に遠い世界の人だと分かっている。 けれどルイズは命の恩人で、何より彼女は臆病な自分に勇気をくれた、 大切な、友達なのだ。 一瞬だったのかそれとも数分だったのか。 気づいたときには、すぐ側からその声が聞こえた。 「もしも」 その言葉に、心を打ち据えられたモンモランシーはのろのろと、見上げる形でいつの間にかすぐ側まで近づいていた長身の老人の顔を見た。 「それでも君が、彼女の力になりたいと、分不相応の願いを持つというのなら」 ウルザは杖を持たぬ左手をぬっと差し出した。 「この本が助けとなるだろう」 そう言って、ウルザがどこからか差し出した本を目にしたモンモランシーは、突然ぐらりと世界が傾ぐのを感じた。 視線が本へと吸い込まれた。そして、それを見ているだけで彼女の平衡感覚が不確かになっていく。 まるで自分と自分以外の境界が薄れるような、不可思議。 ウルザの手にあるのは皮の装丁をした、鍵の封印が施された、やや大きい一冊の本。 表面には綺麗な字で何事かが書き込まれている。 モンモランシーは、まるで現実感が希薄となったような夢遊の心地で、それを両手で受け取った。 そして渡したウルザは身を屈めて、モンモランシーの手に本を握らせながら、 「きっと彼女も喜ぶだろう」 耳元でそっと優しく囁いたのだった。 『ドミニア異邦』 簡素なそれが、そのとき手渡されたその本のタイトルであった。 その中身は、ウルザが書いた魔法理論研究の解説書であるらしかった。 『らしかった』と言うのは、未だモンモランシーにも、まだその本の大部分を理解するには至っていないからである。 そこに書かれている内容は大きく分けて三つ、『ドミナリア』のウィザードと呼ばれる人々が使う魔法の概要論、『ドミナリア』の魔法と『ハルケギニア』の魔法の比較論、『ハルケギニア』向けにアレンジされた『ドミナリア』魔法の実例。 そのうち彼女が読み終えたのは最初の項目、『ドミナリア』魔法の概要論だけである。 ウルザが生まれたというその世界『ドミナリア』。そこにはモンモランシー達が知る魔法とは似て非なる魔法があり、そしてその土地では魔法を使うもの達をウィザードと呼ぶらしかった。 ウィザード達は、土地からマナと呼ばれる力を引き出して、それを己で精練して、魔法という形に加工して世界に変化をもたらすのだという。 そこに記された土地からマナを引き出すという感覚は、モンモランシーには今ひとつ分からない概念だった。 『ハルケギニア』のメイジは、普通、魔法を使う際には、精神力という自分の力を消費して行使する。 一方ウィザードは、自分の力は使わずに引き出したマナを使って魔法を行使する。 そもそも、根本、力の組成からして違うのである。そんな異界の魔法、異界の知識を一朝一夕、すぐに理解するというのは、一介のメイジであるモンモランシーには少々荷が重いと言えた。 強いて言えば、ウィザードのそれは、周囲の精霊から力を借りるという、先住魔法に近いのかもしれない。 モンモランシーに分かるのはその程度である。 「でも……もしも、ここに書いてある異界の魔法が、本当に使えたら……私だって」 ――ルイズの力になれるかもしれない、とは続けられなかった。 力を手に入れて、特別な存在になって、でもそれだけですぐに人を助けられるようにると思うほど、モンモランシーは思い上がってはいなかった。 確かに、平等な立場にはなれるかもしれない。 しかしそれだけである。 真に、ルイズの抱えた問題に関わろうとするなら、まだ何かが足りない。 モンモランシーにはそう思えて仕方がなかった。 「………あ、」 ふと再び窓へと目線を戻したモンモランシーは、開いた門からこちらへと歩いてくる、マントを着けた数人の人影を確認した。 それを見たモンモランシーの体が雷が落ちたように硬直する。 そして続いて慌てて窓から離れ、本を乱暴にベットに放り投げると扉を勢いよく開いて外へと飛び出した。 そう、彼女が目にした数人の中心にいた、その女性こそは、 『爆発/Explosion』 呪文に応え、爆発が巻き起こる。 ここはアカデミーの一室。地下に用意された攻撃魔法の実験を行うための一面に真っ白な部屋。 その一面にある、何重にも固定化や硬質化が掛けられた壁が、無残にも木っ端微塵に破壊されて、周囲に石の破片をまき散らしていた。 『空想/illusion』 一瞬の後、砕け散った壁が瞬時に元の形に再形成される。 いや、元の形に戻ったように見えた。 『解除/Dispel』 幻影の効果が強制的に解除され、まやかしの壁が消え去って、そこに真実の姿がさらけ出された。 「はぁ……はぁ……」 一連の呪文を唱え終わったルイズは、はずむ息を鎮めるように右手を胸にやる、そして左手が滝のように落ちる汗を払おうと額に伸びた。 ルイズの手には、彼女のサイズに合わせた手甲がはめられており、それがほんのりと薄く光を放っていた。 「その三種の魔法の扱いに関しては、ほぼマスターしたと言って良いだろう」 少し離れた場所で腕組みをして様子を見ていたウルザが、そうルイズに声をかけた。 「……まだいけるわ。どんどん、次の魔法を……」 口では強がっているが、その実情、疲労困憊という様子でそう口にしたルイズを見ながら、ウルザは腕組みを解いて自分の髭を撫でた。 「その籠手の力は、あくまで君の力を補強するものにしか過ぎない」 彼女が今、手につけている籠手は、ウルザが製作したアーティファクトの一つである。 魔力の集中を助け、本来であれば霧散しやすい魔力を余すことなく活用することで、マナの効率を倍加させるというものである。 「過剰な魔力の使用はやはり君の肉体を破壊する。無理は結果に繋がらない。続きはミス・ルイズの体力と精神力が回復してからにしよう」 ウルザのその言葉に、ルイズは何かを言いたげに含みのある表情を浮かべたが、結局はそれを飲み込んでこくりと頷いた。 正直なところ、ルイズは既に『始祖の祈祷書』に記された虚無のスペルについて、その全てを読むことができていた。 しかし、実際にそれを行使することに関しては、ルイズの病の症状を進行させることに繋がるとして、ウルザから厳しく戒められているのである。 加えて、ウルザは普段魔法を使う際には、必ずその籠手を着用することを義務づけていた。 籠手はルイズの体に掛かる負担を最小限に抑え、症状の進行を遅らせることができるとのことである。 兎も角、訓練の時間は終わった。 ルイズはその場に立ち尽くして、足早にその場を立ち去っていくウルザの足音を聞きながら、胸元に下げられた懐中時計の針を見た。 時刻は昼をいくらか過ぎた頃合い。 彼女は思った以上に時間が経過しているのに驚きを覚えつつ、自身もその場を立ち去るべく始祖の祈祷書や風・水のルビーといった貴重品をまとめ始めた。 この後には、彼女にとってとても大切な予定が入っているのである。適うことなら身を清めてから出向きたかった。 それから小一時間ほど。 ルイズは扉の前で、未だ薫る石けんの匂いを吸い込んだ。 そうしてその前で深呼吸一つ。緊張の末にヘマをしないように、入った後の行動を頭で再現しながら、心を落ち着ける。 じっくり三呼吸ほども間を取ってから、ルイズは扉を三度ノックした。 「ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。参りました」 「どうぞ、お入りなさい」 中から涼やかな声が響いた。 「はい」 扉が開かれて、視界が広がった。 正面の理事席に座っていたのは、彼女が心から敬愛する女王陛下であった。 奥に座するアンリエッタは、春の日差しのような穏やかな笑みでルイズを見ている。 彼女の服装はお忍びと言うことを意識したのか、普段よりは幾分か簡素で、華やかさが抑えられたものであったが、それでも事務一辺倒の部屋を華やかな空間に変えてしまうには十分であった。 しかし、そのアンリエッタの姿以上にルイズを驚かせたのは、その前に立ってルイズに背を向けていた、二人の大男を従えた一人の女性の存在である。 例え背中であっても分かる、特徴的な燃えた立つような赤毛、首筋から覗く褐色。 その姿は、見間違えようがない。 「ツェルプストー!?」 そう、そこにいたのは夏期休暇の前に別れ、ゲルマニアへと帰郷したはずの級友であった。 「な、なんであんた、こんなところにいるのよっ!? ゲルマニアに戻ったんじゃなかったの!? それに……その髪、ずいぶんさっぱりしちゃってどうしたのよ!?」 驚きの声をあげるルイズに、キュルケがくるりと振り返った。 にやりと笑ってルイズの方を向いたキュルケの髪は、最後に会ったときに比べて明らかに短い、かつては背中まであったその髪は、今は肩のところで綺麗に切りそろえられていた。 キュルケは以前と変わらぬ動作で後ろ髪を払う動作をすると、笑いを含ませてルイズに言った。 「相変わらずせっかちねぇ。そんなにいっぺんに質問しないで頂戴。それにあんた、今は女王陛下の御前よ? 頭下げなくて良いの?」 「あっ!」 にやにやと笑うキュルケの指摘に、ルイズは今最も重要なことを思い出して、大慌てでその場にひれ伏した。 「ひひひひひ、姫殿下、じゃなかった女王陛下っ! も、申し訳ございませんっ!」 なんということだろうか! いくら驚いたからといって、女王陛下を蔑ろにして良いわけがない! 顔を真っ赤にしてバネ仕掛けの人形のように頭を何度も下げるルイズを見て、アンリエッタはくすくすと笑った。 「良いのですよ、ルイズ。あなたは私のお友達ではありませんか、気を楽にして頂戴」 「はっ、ははっ! きょ、恐縮です」 カチコチに固まってしまったルイズに、アンリエッタは更に続けて言った。 「それにね。あなたに来てもらったのは他でもありません。彼女との再会を喜んでもらおうと思ったからなのです」 ハァ? 流石にこの言葉には、ルイズも間抜けな返事を思わず返してしまったのだった。 第二、第三段階は色彩感覚、温度感覚の変調 ――ウルザ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8981.html
前ページ次ページゼロのドリフターズ ――オルテ帝国。新帝都『ヴェルリナ』。 「戦局は悪化の一途・・・・・・特に東方戦域は膠着状態も崩れつつあります」 "貴族院"総力戦会議。一人の男が現状を語る。 「なにしろ兵士が足りません。かれこれもう40年近く戦い続けているのですから。占領地の維持兵まで使わざるを得ない始末。 各種物資もまるで足りていない。本土・属領における税収及び収奪ももはや限界です。こうなっては和平をも視野に入れるべきでは?」 「何を言うか!!」 別なる男が一喝する。それはその場にいる者殆どの代弁である。 「国父様のお考えになった万年帝国。それはこの国の"国是"だ、そう簡単にやめられるものか」 今から半世紀ほど前、オルテ国父が突如ガリア領内にて出現。 人々を先導して反乱を起こし、首都まで行進。6000年続いたガリア王家を滅ぼしてオルテ帝国を建国した。 旧体制を一新し、メイジのみならず平民でも貴族となれるのは、今は滅びたゲルマニアに似ている。 根本から変わっていても、旧ガリアの民で大半は構成されていた。 新たに貴族となった元平民だけでなくメイジも少なくはない。 国父亡き後。"人間の視点のみ"で見れば、これも一つの平等に近い共和制国家とも言えた。 「やーもやーも、おくれちゃったわー。ごめんあさーせー」 突然傍若無人に乱入してきたのは、女――否、男であった。 華美な衣装に豪華な装飾品、髪をカールさせて睫毛がピンと伸び、アイシャドウに頬紅と口紅を色濃く。 とにかくゴテゴテと、これでもかと言うほど化粧を施した印象の――端的に言えばオカマ。 「おまたせしましただわさ。おひさー」 「サ・・・・・・サン・ジェルミ伯」 一人の男が驚きと戸惑いと鬱屈と面倒と、様々な思いが名を呼ぶと同時に漏れ出でる。 「いやもう遅くなって遅くなって。出掛けにイロイロとあったもんだわさ」 同じく似たような出で立ちのオカマ従者を二人連れたその貴族。 非常識を詰め込んだような彼女――彼に、文句を言える人間は貴族院の中に誰もいなかった。 オルテ帝国の実に1/4にも及ぶ領土を所有する巨大貴族。 国父がオルテ国を建てるに際して、一番最初に寝返ったとされる人物。 彼が寝返らなければオルテは建国出来なかったとさえ言われるほどで、日々好き勝手に生きている御仁。 旧ガリアの頃から力を持っていた土メイジという話があり、年齢は不詳。 密かに名を継承しているだとか、謎多き漂流者だとか。 長命のエルフや、はては吸血鬼とも密かに疑われ、さらに不老不死なのではとの噂すらある大貴族。 「おくれたおみやげにいい話があるのよ。おどろくだわさにゃ」 サン・ジェルミは巨大なハルケギニア戦略地図の前に立つと、他の者達は静聴する。 従者から口紅を受け取ると、ゴリゴリとオルテからアルビオン大陸へ矢印を書く。 「あたしさぁ、この輸送口すっぱくして言ったわよね。無理臭くね? って。捕捉されて沈んだってばさ」 さらに書いた矢印の途中に大きくバツ印をつけて訴える。周囲から驚愕の声がいくつも漏れ出た。 「風石惜しんで、丸ごと奪われてちゃ本末転倒よね」 「た・・・・・・確かなのですか?」 「当然よ、マジも大本気。産地直送ホヤホヤ情報だわさ」 旧ガリアからそっくりそのままオルテが吸収した"両用艦隊"への補給。 アルビオン大陸侵攻の為の、空と海の両方に対応可能な主力艦船の一角。 元々トリステインの十倍近い土地を誇り、さらに旧ゲルマニアへとその領土を拡げ、圧倒的だった国力。 されど長きに渡って各国へ戦力を分散させて攻め込み続けていては、目減りしていくのは当然であった。 「アルビオンが引き付けて、トリステインが横合いから美事なまでに殴りつけてきた。 ついこの前のアルビオンとトリステインの同盟の効果が目に見えて発揮されたってわけね。 もっともあたしもまさかここまで、早く、スムーズに、やられるとは思わなかったけど」 サン・ジェルミはアルビオンへの侵攻そのものに反対し続けてきた。 しかし頭の堅い貴族院は国是を盾に押し通してきた。 結果、今回重大な資源を損失する事態を招いた。 とはいえ貴族達にも言い分はある。 元を正せばサン・ジェルミがトリステインへの侵攻を妨害していた所為であると。 トリステイン国の軍事力に余剰があればこその失敗になるのではないかと。 だがそれを今まさに本人を目の前にして言える度胸のある者はいない。 誰もが思っていても、自ずから進んで貧乏くじを引きたがる人間はいなかった。 それほどまでにサン・ジェルミの持つ影響力は大きい。 「同盟が必ず成功すると踏んでの行動だったのかもね。 結婚した王子と女王、実は昔から相思相愛だったとか」 「そ・・・・・・そのような情報まで?」 「うんにゃ、女の勘だわさ」 誰もが「おまえは女じゃねーだろ!!」とツッコミたかったが、そんなことを言えばどうなるか。 考えるだけでおぞましく、身震いをせずにはいられない。 (まっ、実際は同盟が締結されなくても問題はなかったとも言えるけどね――) 領土侵犯などではなく、海洋上の襲撃である以上は理由も言い訳もいくらでも出来る。 アルビオン側からすれば、戦力を正面から使って消耗することも免れる。 トリステイン側も収奪物資の一部と共に、新たに同盟の交渉材料にしたことだろう。 「四方八方に戦争吹っかけて周ったツケね。オホホ、愚かなこと」 もしもオルテがトリステインと戦争状態になければ、外交的交渉の余地はあっただろう。 しかしオルテという国は旧ガリアからの国力・軍事力を過信し、あらゆる国と敵対してきた。 全盛期ならばそれでも多少なりと保てていたことだろう。 今は実際的な負担を考えれば、対エルフ東方戦線だけでも手一杯なのが現状である。 「そしていよいよ占領地では反乱――」 「そんなものはどうにでもなるでしょう。たかだか奴隷どもの一揆。それよりも東方の戦況が・・・・・・」 遮ったその言葉を皮切りに各々は話し出す。これ以上サン・ジェルミ伯に、自由に発言させまいと。 現実から目を背けるのではなく、極々単純に現実が見えていない。 (ああやっぱり、だめだこいつら) そんな状況をサン・ジェルミは冷ややかに眺めた。 オルテは周辺を片っ端に攻めて拡張した。しかし同時に旧ガリアの領土もトリステインやロマリアに削られてもいる。 奪っては奪われてを繰り返し、占領した旧ゲルマニアまで拡がる各戦線は収拾がつかない事態となっている。 ただでさえオルテ南部を東西に伸びる火竜山脈を挟んだロマリアへの侵攻。 ハルケギニアで最も信仰されているブリミル教の総本山がある国を相手にしていて、根源的に全軍の士気が高くない。 侵攻するだけでも大変な労力となる浮遊大陸アルビオンへの侵攻も、結局は思い出したかのように突っつく程度で留まる。 空中艦隊戦に於ける、練兵程度には役に立つものの、所詮それだけだ。 北東の旧ゲルマニアのオルテ支配領では、黒王軍によって壊滅させられている場所も多い。 何よりも最大戦力を投入している東方戦線では、エルフの先住魔法と技術を相手に、常に予断を許さぬ状況。 あくまでエルフ達が防衛に留まってくれているから維持出来ているだけに過ぎない。 もし反転攻勢に出られれば、あっという間に瓦解するだろう。 その上駄目押しの反乱が起きている。それは伝播し――波及して、全占領地で不満が爆発しかねない。 しかもその発端となった漂流者達は、オルテの限界を、資料と檄文を通して言葉巧みに動かしつつある。 それはいずれ本国にも及び、そうなれば各所への兵站まで崩壊しかねない。 そして国家の中枢たる貴族院の連中を見れば、行き着く先は火を見るより明らかであった。 (この国、いよいよもって詰みね) 圧倒的なまでの自明の理。わざわざトリステイン王国への侵攻を、こっちでなるべく押し止めていたというのに。 結局は追い詰めに詰められた状況になってしまった。 豊富な国力にあぐらをかいて、皮算用で戦争を進めてきた結果。 もはや度し難い、腐敗したオルテの中心部。期待することが心底馬鹿らしい。 「アハッウフフオホホ、アタシ急用思い出しちゃったわん。それじゃ帰るわね、みなさん戦争がんばってね。それじゃごめんあそばせ」 さっさと帰ろうとするサン・ジェルミを引き止める者は誰一人としていない。 会議に夢中になっていたし、自由人の権力者がいても目障りにしか思っていなかった。 歪みは・・・・・・ゆっくりと、しかし確実に、オルテを蝕み続ける。 その先に待つものを知るは――極々一握りの人間のみであった。 † 小さな道の上をこれまた小さな箱が乗って動いていた。 道はテーブルの上に作られたもので、箱はその道の上をグルグルと通り、回り続ける。 「名付けて"走るヘビくん"だ」 「ネーミングはいまいちです」 「・・・・・・手厳しいな」 『炎蛇』という本人が忌み嫌う二つ名を持ちながら、蛇にちなんだ名前をつけるよくわからない価値基準。 シャルロットは腑に落ちないながらも、どうでもいいと言えばどうでもいい。 ただ命名はともかく、蒸気を利用した玩具は非常によく出来ていた。 これをスケールアップさせ、様々な難課題をクリアした暁には、きっと"鉄道"が完成するのだろう。 「あっ本当にいた」 何一つの遠慮なく、室内に来訪したのはキュルケであった。 ルイズのは無意識の無遠慮さだが、キュルケのそれはわかっている上での遠慮の無さである。 「おおミス・キュルケ、どうしたのかね?」 「あらミスタ・コルベール、それはこちらのセリフですわ。シャルロットにちょっかいをかけないでくださるかしら? そもそも教師が生徒に手を出すことを恥ずかしいと思わないなんて、独身男は惨めですわね」 「ちっ・・・・・・ちょっと待ってくれ! わたしは別に――」 「――狼狽えると変に怪しいですよ。・・・・・・キュルケ、別になんでもないから」 シャルロットはキュルケを宥める。誤解されるなんて正直こっちも迷惑極まりない。 一教師として、一研究者として尊敬はするがそれだけだ。 「そっ、ならいいけど」 キュルケとて、本当にシャルロットが篭絡されてるなんてことがあるなどと考えていたわけではない。 ただ男はケダモノの一面があることをよく知っているがゆえの心配である。 「でもあなた、最近通ってるって聞いたわよ」 それは事実であった。『白炎』を殺し、それを『炎蛇』に告げ、火のルビーを受け取って以来。 時折こうして足を運んでいた。傍から見ればおかしく見えるのも無理からぬことであった。 「理由の一つ目」 シャルロットは読んでいた本をキュルケへ手渡す。疑問符を浮かべる親友に説明を付け足した。 「ここにはちょっと他で見られないような本がある」 コルベールが20年の歳月を掛けて集め続けた実用書の数々。それも主に"科学"に類するものに富んでいる。 アンリエッタやウェールズに頼んで、特別に入れてもらったそれぞれの王立図書館。 蔵書数はトリステインもアルビオンもそれぞれ凄まじいが、なにぶん有象無象で探すのも骨だ。 その点この研究室にあるものは、既にコルベールが厳選して、実際的に役立つ物が多く、内容に申し分がない。 「理由その二、私の専攻」 「『土』系統だったわね」 シャルロットは首肯する。使い魔召喚の義の後に呼び出した使い魔の性質から、属性を固定して専門課程へと進む。 火トカゲのフレイムを召喚したキュルケは当然『火』であり、元から『火』が得意だから言うまでもない。 『風』系統に選ばれ、風韻竜イルククゥを召喚したジョゼットは『風』である。 得意な系統もなく、キッドという漂流者を召喚したシャルロットは、結局自分でただ選んだだけとなった。 ルイズは"姉を見習う"とかで『水』を選んでいたが、虚無に目覚めた以上は無駄な専門履修となっている。 「そういえばなんで『土』なのよ?」 「興味があったから。特に『錬金』とか」 「ふ~ん」 何の面白味もない理由に、キュルケは聞いておいて興味なさそうな相槌。 本当のところは、強いて言えば地下水が最も不得意とする系統だったというのが一番の理由であった。 「で、それがなんで"理由その二"なわけ? 「ミスタ・コルベールが卓抜してるから」 「『火』なのに?」 キュルケはコルベールの方へと向いて会話を振る。 「あぁ、分析などは好きだし、我ながら得意と言えるだろう」 20年前を境の研究者気質。彼が『土』系統に選ばれていたのなら、それこそ史に名を残していた可能性もある。 否――むしろ『土』に選ばれなかったからこそ、ただ純粋な研究者としての今があるのだろうか。 それにしたって身近にこれほどの逸材がいたとはシャルロットも思ってもみなかった。 王立魔法研究所実験小隊長だった頃も含めて、人は見掛けによらず。人に歴史あり・・・・・・だと。 「その三」 そう言ってシャルロットは『走るヘビくん』を指差した。 「なぁにこれ?」 「よくぞ聞いてくれたミス・キュルケ! これは――」 「――私が説明します」 確実に長くなるであろうコルベールに代わって、シャルロットが端的に説明する―― 「――ふーん、こんなもんがねぇ・・・・・・」 話半分に聞いて、さらに半分程度の理解にキュルケは走ってる物を見つめる。 キュルケにとっては単に物珍しい程度のもので、キュルケに限らず普通のメイジに真価はわからない。 平民であってもその道に通じた職人でないと理解し難いものだろう。 しかも『火』を使ってこんなチャチなことをやることに、キュルケは冷めた心地すらあった。 「私は"科学"に興味があるからここにいる」 「"カガク"ねぇ・・・・・・」 「どうかね、ミス・キュルケ。『火』とは破壊だけではないのだよ」 「わたくしには到底理解の埒外ですわね。むしろそんな日和った考えは唾棄すべきものと思いますわ」 キュルケは軍人の家系、今は没落したツェルプストーの血を引いている。 『火』とは戦場において最も貴く誉れ高き系統であると思っていたし、そう教えられてきた。 彼女自身も己の『火』をもって功を挙げ、ツェルプストー家の再興をする気でいる。 それゆえにコルベールの主義・主張とは相容れない。 「・・・・・・キュルケ。私はミスタ・コルベールに"も"同感」 「なっ・・・・・・」 やや裏切られたような気持ちにキュルケは詰まる。シャルロットはさっさと二の句を紡いだ。 「彼は彼なりの"果て"を見ている。その上で選択した意志を私は尊敬する」 「果て?」 シャルロットはコルベールへと視線を移すと、炎蛇はゆっくりと頷く。 コルベールは自身の過去と向き合わねばならぬと考えていたし、それが教育に繋がるなら尚のこと。 そして大まかにシャルロットの口からキュルケへと語られる―― 「――・・・・・・そうだ、わたしはかつて『火』によってその手を血に染めてきた」 「あなたがねぇ・・・・・・」 嘘っぽいが、嘘を言っているようには見えなかった。 キュルケとて人を見る眼はあるつもりである。授業でのひょうきんな態度や普段の人格はどうあれ・・・・・・。 目の前の教師が、確かにその道を通ってきたということは認識出来た。 「わたしは思い知ったのだよ。だけどそれを君に強要はしない。ただ心の隅にでも留めておいて欲しい」 (まっ・・・・・・私としては――) 両方選べばいい、とシャルロットは考える。どちらも活かす道だ。 戦は早々根絶するものではない。少なくとも今は力が求められる時代。 破壊と同時に創造をも司る"火"。発展のために必要な分だけ注げば良いのだ。 戦はそれ自体が経済にも深く関わり、発展や進化を促す。 近年ではマスケット銃などがそれであり、"異世界の技術"にしてもそうだ。 他国や種族に負けんとする競争意識、危機的状況が閃きを生むのを否定は出来ない。 「・・・・・・まぁ、少し見ていけば?」 キュルケの複雑な表情にシャルロットは提案し、ささやかな一押しをしてみた。 コルベールとしても教師が生徒に道を指し示す折角の機会である。 「そうだ、是非とも見学していってくれ」 「・・・・・・じゃ、少しだけ」 逡巡した後にキュルケは決める。シャルロットがいる間くらいは監視も兼ねて良いだろうと。 「何か質問があったら遠慮無く何でも聞いてくれたまえ」 そう言うとコルベールは別の蒸気カラクリを手にとって作業へ入る。 (・・・・・・ふゥ~ん) ひとたび集中して取り組んでいる姿は、あながち研究者という側面も頷ける。 そしてなんともはや、なかなかどうして、一つのことに信念をもって打ち込んでいる男とは―― (なかなかサマになるものね・・・・・・) などと考えながらキュルケは教師を眺めていた。 † ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは片肘をついて、始祖の祈祷書をめくっていた。 水のルビーを指に嵌め、女王陛下から譲り受けた大切な秘宝を。 詔も無事に終えて、結婚式はつつがなく執り行われた。 姫さまの心底嬉しそうな眩しい笑顔。愛するウェールズに寄り添っていた情景は、目を瞑れば容易に浮かぶ。 自分のことのように嬉しかった。国の為に働けたという実感も含めてだ。 「はぁ・・・・・・」 ルイズは憂いを帯びたように息を吐く。本当に美しかったアンリエッタ姫さま、もとい女王さま。 いずれは自分も・・・・・・などと考える。 今までまともに考えたことのなかった将来のこと。 トリステイン王家の為に、この新たに目覚めた力を使いたいと考えていた。 しかしアンリエッタさまは大きな戦争は今のところないこともあり、虚無を率先して使う気がないようだった。 シャルロットやジョゼットは、世話になっているトリステインの為にその実力を振るおうとしている。 キュルケはツェルプストー家の再興するという大望がある。 (わたしには・・・・・・) ――何もなかった。以前は魔法が使えなかったからガムシャラだった。 そしていざ使えるようになったのが虚無の系統。おいそれと公にも出来ない。 上の姉のように・・・・・・、"下の姉のように"・・・・・・、明確にやりたいことが無いのだ。 何故だか一人取り残されたような気持ち。 始祖の祈祷書はあれから、うんともすんとも言わない。 書にある始祖ブリミル直々の言葉――"聖地の奪還"? なんてことにも実感が湧かない。 ラ・ヴァリエール家の末娘として悠々自適に、何不自由なく過ごす? (そんなの・・・・・・) 昔ならいざしらず今は――・・・・・・ 目覚めた"力"・・・・・・別に何かを傷つけたいわけではない。 されど割り切れない。とめどなく溢れる感情に・・・・・・ルイズは苦悩していた。 前ページ次ページゼロのドリフターズ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2419.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (21)爆発 両手を広げ、今ぞ抱きつかんとしたワルド。 だがその刹那、横殴りに現れた旋風がワルドの頬を殴りつけ吹き飛ばした。 ワルドを殴り飛ばしたそれは、鋼鉄で武装した人間の腕。 ワルドの計画は九分九厘まで成功したといって過言ではなかった。 アルビオン掌握から始まり、ガリア王暗殺、傀儡の女王を擁立してその側近達を自分の意のままに操る。 軍事大国二国を手中に収め、トリステインにガリア方面から圧力をかけつつ、一方でゲルマニアを制圧。 ロマリアと交渉し、最終目標を聖地の奪還であることを盾にトリステインへの不干渉を取り付けた。 孤立無援となったトリステインを鼠をいたぶる猫のようにもてあそび、王都にいる人間達を人質にしてルイズを手に入れる。 ウェザーライトの起動を食い止めることは適わなかったが、最大の障害と目された老いぼれは無力化した。 もう何も、ワルドの前に立ちふさがるものは存在しない。 その慢心が、先の一人語りへと繋がった。 その中の一つ、ルイズに見せ付けた左手に握られた眼球。その気配が眠れる獅子を起こすことになるとも知らずに。 長身であるワルドを三メイルは吹き飛ばした腕。それは空間を渡り現れた虚無の使い魔ウルザの片腕であった。 その全身はルイズの見たこともない鎧に覆われており、左手にはデルフリンガー、背には杖を背負っている。 異様な戦装束。けれど、ウルザというこの老人が纏うと、まるでそれが彼本来の在り方であるかのように違和感を感じさせないのであった。 「無事かね、ミス・ヴァリエール」 仰向けに倒れたまま動かないワルドを、鋭く一瞥しながらウルザが言った。 「あ、ええ、勿論よっ」 心臓を鷲掴みにされたような恐怖が、いつの間にか薄れていた。 先ほどまで心臓を停止して倒れていた人間が、何事も無かったかのように現れたことに驚きを感じてはいたが、それ以上に強い安心をルイズは感じていた。 ルイズが気付いた時、ウルザの視線はルイズの手の中の『始祖の祈祷書』へと注がれていた。 「あの、ミスタ・ウルザ……これは」 けれど、ウルザは首を振って応える。聞き分けの悪い生徒に諭すように、優しさと威厳を込めて。 「君のやりたいように、すると良い」 そう応えたウルザが、体をワルドに向け、一歩前進する。 ウルザのその一歩を待っていたかのようにワルドは倒れた姿勢のまま浮き上がり、体を甲板に対して垂直に起こした。 「やはり君か、子爵」 「ご無沙汰です、使い魔どの」 ここに至って、ウルザは今出せる全力を以て目の前の敵を迎え撃つ決意をした。 今引き出せるプレインズウォーカーとしての力の総力を以て滅ぼす決意を。 ワルドの左手から感じる波動、それはまごうことなきファイレクシアの力。 かの暗黒王に察知されてしまったのなら、既にプレインズウォーカーとしての力を隠蔽する理由はなく。また、出し惜しみして屠れるほど目の前の男は弱くはないと感じ取った。 「愚かな。それほどの才能を持ちながら、何故ファイレクシアの狗に成り下がった!」 「違うな、私の力にファイレクシアが惹かれたのだ!」 同時に甲板から宙へと浮き上がるウルザとワルド。 ここから始まる戦いは、正しく人間を超えたものとなった。 「デルフリンガー!肉体の制御は任せた!」 「おうよ相棒!合点承知!」 人間以上の親和性によって放たれる、凶悪化した大量の魔法の槌。 ウルザ、いや、ウルザの体を操るデルフリンガーはこれを巧みに操り回避し続ける。 一方的に放たれ続ける風の凶器、その間隙を縫ってウルザは近づいていく。 「……来たれ第一槍!」 ウルザの召喚の呪文が高らかに響く。召喚の気配を察してすかさず距離を離そうとするワルド。 そのワルドに異変が襲う。 最初は体内の異物感、それは激痛へ変化しすぐさま外界へと飛び出した。 「があああっ!?」 ワルドの腹部を穿ちながら現れた鋸刃を持つ機械の槍。ウルザに召喚されたアーティファクトはワルドを腹部を貫きながら召喚主の手元へと飛んだ。 仕掛けたウルザは右手で機械槍を掴みながら、敵の傷の具合を観察する。 敵の手の内を知らぬ状態で攻撃を仕掛けるのは高いリスクを伴う、そのことをウルザは長いプレインズウォーカーとしての生涯で学んでいた。 腹部を貫かれたワルドは素早く牽制のウインド・ブレイクを放ちながら、左手の眼球を操作する。 果たして変化は直ちに訪れた。 ワルドの内部から光の触手が伸び、それが負傷した部分を組み替えるように動き回り、一瞬の後には何事も無かったかのように傷は完治していた。 「ミスタ・ウルザ、それがあなたのアーティファクトか。なるほど、知識で知っていても実際に目にするのとは大分違う」 「貴様のそれは……ファイレクシアのスフィアコアかっ!?」 ウルザの分析眼はアーティファクトに限定するならば多次元宇宙世界ドミニアの中でも最高位に属する。 その彼にとっても既に数度目にしたことのあるアーティファクト、多層構造を持つファイレクシアスフィアの各層を管轄するスフィアコアユニット。 かつてナインタイタンズが精神爆弾をもって破壊しようとしたファイレクシアの核の一つ。それこそがワルドの手に納まっているものの正体であった。 稀代のアーティフィクサーウルザをもってしても、そのスフィアコアにどれほどの知識が納められているのか推し量ることはできない。 だがしかし、ウルザは誰よりもそのコアの危険性を理解していた。 「それはお前を蝕む毒だ」 先駆者として、最も新しい後輩への助言を与える。 「毒ならば、食らい尽くして力に変えてやろう」 だが、逸る若輩にはその言葉は届くことは無い。 「……ならば取り込まれる前に私が引導を渡すまでだ、プレインズウォーカー・ワルド」 月光の下、ウルザとワルドの空中戦が行われる一方で甲板ではルイズの朗々とした詠唱の声が響いていた。 ――ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシュラ 今のルイズには前方に広がる大艦隊も、空で戦う二人のプレインズウォーカー達も見えてはいない。 彼女に見えているものはただ己の内側のみ、彼女に聞こえているのはただ自分の心臓の音のみ。 彼女の戦いは、自分自身との戦いであった。 ところ変わって、ブリッジの操舵席。 そこに腰を下ろしたギーシュと、その横にモンモランシーが立っていた。 「ねぇギーシュ!もう良いじゃない!あなたは良くやったわ、逃げずにここまで頑張った、でももう無理よ。敵があんなに近づいて……もう目と鼻の先よ! ルイズは失敗したのよ。そう、きっと上手くいかなかったのよ。だからギーシュ、もう……」 引き返すようにギーシュに言うモンモランシー、その言葉にギーシュは頑なに首を左右に振る。 「ルイズは、ルイズはここで僕がフネを動かすことが、僕の戦いだと言った。何をやっても中途半端で、大した力が無いくせに自分を大きくばかり 見せたがる、この僕を見て、これが僕の戦いだと言ってくれた。 そんな彼女が自分の戦いに向かったんだ、だから……僕は何があっても、彼女を信じる」 これが決意、ギーシュ・ド・グラモンの決意。 自分は自分の戦いをする、ただそれだけの平凡な、そして彼らしい決意。 そして二人に訪れるしばしの沈黙。 充血するほどにかたく操舵環を握ったギーシュの手に、そっと柔らかな手が添えられた。 「モンモランシー?」 「馬鹿、そんな意地に女の子を巻き込むなんて、ホント最低、自己中心的だわ」 「……ごめん」 「そんなことじゃ、絶対女の子に嫌われちゃうんだから」 「……」 「そんなあなたについて行ってあげようって言うんだから、大切にしてよね」 「え、モンモ……」 彼はそれ以上続けることができなかった、なぜならその唇を彼女が塞いでしまったから。 一瞬のキス、けれどそれは、永遠よりも長く切なく。 名残惜しそうに離れていくモンモランシーのうっすらと朱をひいたような顔。 それを見たギーシュは、これまで目にした女性より、どんな彫刻より、どんな夜空の星の煌きよりも彼女こそが世界一美しいと、心底思った。 「最後かも、しれないから、ね」 「いいや……そんなことは無いさ、こんなところで終わってなるものか。僕達は、きっと生き残る!」 タバサがうっすらと目を開けた。 経験豊富なシュヴァリエは、まずは現状の把握に努めた。 空中で戦っている使い魔ウルザと魔人ワルド、フネは進路を変えずに正面の大艦隊へと向かっている。そしてルイズは、祈祷書のルーンを読み上げていた。 体は――動かない。 ――ジュラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル 独特の韻を踏んだ古代ルーンによる詠唱。 それがどのような呪文であるのか、タバサには分からない。 けれど、その始めて耳にするはずの呪文を、タバサはなぜか懐かしいと感じた。 まるで母の子守唄のような、意識ではない、もっと深いところで覚えている郷愁を感じさせる不思議な詠唱。 そして直感的に理解した。これこそがルイズにとって本当の、自分の系統魔法なのだと。 そう思いながら、タバサの意識は再びまどろみへと落ちていった。 長い詠唱が終わり、遂に呪文が完成した。 その瞬間、ルイズは己がこれから放つ呪文の威力を理解した。 この呪文は巻き込む、全てを巻き込む。 だが同時に理解した。 自分が放つ呪文の範囲、生きているのはほんの数名。 ワルド、そしてその使い魔である一人と一匹。 それ以外は全て、全て死者であると。 視界に入る無数の巨艦、それらの中にいるはずの人間達は、既にこの世の者ではないのだと。 ルイズは口の中に苦く広がるせつなさを感じながら、杖を振り下ろした。 「爆発/Explosion」 ルイズが杖を振り下ろすと同時、甲板上に溢れんばかりの白光が満ちた。 放たれようとする虚無の魔法の予兆。 だが、事態は何人も予期せぬ方向へ転がり落ちようとしていたのである。 一見して白光に見える光、だがその真実は虹の光であった。 ルイズの右手と左手に嵌めた、水と風のルビー。 それが相互に干渉し合い、かつてイーグル号で皇太子ウェールズが見せた虹と同質のものを発生させていた。 ただ一つ違うのは、その規模と共鳴体。 かつて共鳴を引き起こしたものはウルザの両の瞳に納まるウィークストーンとマイトストーン、二つのパワーストーンであったが、今回共鳴を起こしたのは、ウェザーライトⅡに据えられたスランエンジンであった。 古代スラン文明の英知によって創造されたスランエンジンが、自身にとっての本来の動力源であるパワーストーンと共鳴し、その力を存分に増幅する。 即ち、ルイズの指に嵌った二つの指輪、風と水のルビーと呼ばれる、二つのパワーストーンである。 「ぬ、お、おおおおおお!!」 パワーストーンによる共鳴現象の余波は、ウルザのパワーストーンにも襲い掛かった。 強大なマナを内包するパワーストーンが、始祖のパワーストーンとの共鳴増幅によって、その力を爆発的に増大させる。 脳内に早鐘のように響くグレイシャンの呻き、体中の神経は溶鉄を流し込まれたかのように焼け爛れ焦げ付く。 押さえ込むことさえ敵わぬ強大な力の暴走にウルザは耐える。 「か、はっ!」 一方のワルドも、大きく血の塊を吐き出した。 その右手に嵌めたパワーストーン、土のルビーがウルザのウイークストーン・マイトストーンと同様に、共振を引き起こしたのである。 体中に裂傷が走り、裂けた部分からマナが噴出する。マナが溢れ出す度に傷口は広がり血とマナを溢れさせた。 「共感作用かっ、しかし、これはまるで……」 搾り出すように言葉を紡ぐウルザ。 「狂人め!何故こんなことを、彼女にさせるっ!生身の人間に、耐えられるはずがないではないか!」 純白であった制服を鮮血に染めながらワルドが叫ぶ。 そう、これは二人にとって誤算以外の何ものでもなかった。 ウルザとワルド、両者は共にルイズの力を求めている。故に危害を加える気などありえるはずも無かった。 だが、二人の思惑が交錯した時、互いの意図の超えた誤算が生じた。 ワルドにとってはルイズがアルビオンの大艦隊に対して正面から立ち向かうことが想定外であり、ウルザにとってはルイズの指に嵌ったパワーストーンが自分の設計したスランエンジンと共感増幅を引き起こすことが想定外であった。 「いかん、これでは……彼女の肉体が焼き切れるっ。エンジンを停止させねば……」 だが、消耗し疲弊し体内を荒れ狂うマナの濁流に翻弄されるウルザにとっては、宙に留まることすら困難であった。 対して、パワーストーン一つのフィードバックしか受けていないワルドは、ウルザに比べれば健在であると言えた。 ワルドはデルフリンガーを片手に胸を押さえて蹲るウルザを見て一瞬の躊躇を見せたものの、眼下のルイズへと体勢を向けて、大きく手を広げた。 「死にぞこないめ、見ているがいい。この程度の力……飲み込めぬ私ではないぞ!」 かっ、と眩しくワルドの体が輝いたかと思うと、その大きく開かれた口、そして目、鼻、耳、両手、そして体中の裂傷から光の触手が伸び、宙に浮んで全身から光を放つルイズに先端を『接続』した。 次の瞬間、繋がった触手を伝わり、ルイズの体内を駆け巡っていたパワーストーンの超大な魔力がワルドへと押し寄せる。 「――ッ!! ■■■■■!!!!!!! ――――――ッ!!」 言葉にならない絶叫がワルドの口から迸る。ワルドの魔力が風船のように膨れ上がっていく。 だが、ウルザの目から見て、それも一時の時間稼ぎに過ぎないことは明白であった。 ワルドに魔力を吸い出されながらも、ルイズの肉体は確実にパワーストーンに蝕まれている。 やはり、彼女を救うにはウェザーライトⅡのスランエンジンを停止する他に道は無い。 だが、どこの誰がそのようなことを行える? 自分自身はこの肉体を保つことで精一杯である。 オスマン・タバサは甲板の端に転がったまま動かない。 ギーシュとモンモランシーは? いや、そんな時間は無い。 誰か、誰かいないか、彼女を救えるものは…… ウルザは艦内に意識を飛ばし、注意深く探った。 想定外を超える想定外を。予期せぬ事態に対応しうる、予期せぬ存在を。 そして、それは見つかった。 小さく音と立てて、両開きの扉が開いた。 それまで錬金、その他の方策を試し、結果としてびくともしなかった強固な守りが、突然に開け放たれたのだ。 流石にこの変化に彼女もいぶかしんだが、何はともあれ厄介ごとが解決したのである、中へと入らない道理は無かった。 足を踏み入れた部屋は、めぼしをつけた通りの場所であった。 きらびやかな宝石類が棚に納められ、一方でどんな用途に使うのかも分からないガラクタが転がっている。武器や鎧、大きな鐘や中から釣り下がった円形をした何かの模型もある。 見覚えの無いものはちらほら目に付くが、それらの大部分は彼女が以前学院の宝物庫に侵入した際に目にしたマジックアイテムの数々であった。 「やっぱりね。最初から襲撃を予測して、こっちに移してたって訳ね。ふふん」 そう彼女がつぶやいたのと、彼女の目の前に男が現れたのは同時であった。 「ちっ!やっぱり罠か!」 『待て……土くれのフーケよ』 そう、船の宝物庫に忍び込んだのはブリッジから隙を見て姿を消していたフーケその人であった。 そして、その正面に立った男こそは、フーケが投獄されることとなった事件の当事者が一人、虚無の使い魔ウルザ。 だがその体は半透明でおぼろげ、背後が透けて見えている様子は誰に聞いても幽霊と答えるに違いない姿である。 『取引をしよう』 「……取引?」 『そうだ……今から私の言うことに従ってくれるというなら、この宝物庫にあるどのようなものでも一つ君に譲ることを約束しよう』 「へぇ、随分と気前がいいじゃないのさ。学院長でも無いのにそんな事言ってもいいわけ?」 『構わない、私が交渉する……』 口元に手を当てて目を泳がせて思考するフーケ、相手の提案を吟味する。 悪い話ではない、だが。 「それで、嫌だといったら?」 『君を、ここで殺す。そして君の大切なものにも消えぬ呪いを刻み付ける』 波一つ無い湖畔のような静謐さで呟くウルザ、だがその瞳はらんらんと輝いており、それが脅しでないという恐ろしいまでの圧迫感をフーケに与えた。 それは、いつかワルドから感じたあの恐ろしいまでの狂気と同質のものであるように思えた。 ならばフーケのとる道は一つ……。 「交渉も何も、強制じゃないか……」 『返事は?』 「……分かった、やるよ」 フーケは投射されたウルザの幻影の指示に従い、宝物庫から一つのマジックアイテムが納められた箱を持ち出した。 一メイルほどの大きさのその箱を両手に抱え、宝物庫から一区画離れた動力室へと走るフーケ。 フーケがそこに到着した時、動力室の扉は開け放たれており、中からはスランエンジンの咆えたける唸り声が轟いていた。 「それで、これからどうすればいいんだい?」 『箱を開き、中にあるものを取り出すのだ』 「はいはい……って、これが杖?何かの間違いじゃないの?」 フーケが取り出したのは、見たことも無い、筒状の物体。 その名は――『破壊の杖』 ウルザの指示通りの射撃姿勢を取り、引き金を引くフーケ。 肩に担がれた破壊の杖から三○○mm以上の装甲を貫通する六六mmの成形炸薬弾が発射され、ウェザーライトⅡのスランエンジンは停止した。 同時、張り詰めていた糸が切れるようにして、ルイズの『爆発』が発動し、世界を覆った。 トリステインだけでなく、ガリア、アルビオン、ロマリア、そしてエルフの聖地。 全ての国の全ての人がそれを目撃した。 この現象を、ある者はブリミルを御業だと涙し、ある者は世界の終わりと嘆いた。 各国に、この光によってアルビオンの無敵艦隊が全滅したと伝えられたのは、この暫く後のことである。 ただ一人戦場に残され、天を見上げていたジュール・ド・モットはことの顛末の一部始終を目撃した唯一の証言者となった。 彼はこの後に、アンリエッタに以下のような報告を行っている。 ――まるで、一瞬で夜と昼が入れ替わったかのようでした。 最初に単騎でアルビオン軍と戦っていたフネの上空に光の球が現れました。 それはまるで、小さな太陽のようにまばゆい光を放っていました。 続いて、その光の球が膨れ上がり、フネを包んだのです。 そのまま光の塊はどんどんと大きくなって、遂にはアルビオン艦隊にまで及びました。 それでも膨らむことをやめない光の球は、遂には空全体を覆い尽くし、やがては私自身も光に覆われてしまいました。 目を瞑り、両手で顔を覆っても、光はそれらを貫いて私の目に届くほどでした。 どれくらいの時間がたったのか分かりません、一瞬だったのか、それとも一分だったのか。 光が晴れ、再び夜の闇が訪れた時、アルビオンの全てのフネは青い炎を上げて燃えていました。 悪夢のように、朧のように背後に控えていたアルビオンも消えていました。 何が起こったのか私には分かりません。 ただ一つ、私にも分かることは、あの光こそがトリステイン王国を救ったということです。 ―――ジュール・ド・モット 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/satan_guild12/pages/12.html
祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈 祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷 祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈 祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈祷祈