約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/god-wars/pages/32.html
説明:回復や支援の法術スキルを扱う初期の中後衛職 寸評:回復支援の初期職。 HP回復、状態異常回復を一手に引き受け、出撃メンバーに一人は欲しい職業。 またこの職業で覚えれる。熟練度入手強化のスキルはキャラクター育成にはほぼ必須のスキル。 前衛職にするつもりでも祈祷師で「熟練度強化」のスキルは覚えておきたい。 スキル名 スキルタイプ 射程 範囲 説明 おススメ度 状態異常回復 常時スキル - - 行動順が来るたびに確率で状態異常が自動回復する ★★★ 防御支援 常時スキル - - 自身の周囲に味方が多いほど物理防御力と回避力が上がる ★★ 熟練度入手強化 常時スキル - - JP入手量が増える ★★★★★ 祓いの祈り 回復 0-4 通常1 単体の状態異常を回復する。高低差5.0h ★★★★ 回復の祈り 回復 0-4 通常1 単体のHPを回復する。高低差5.0h ★★★★ みそぎ 支援 0-4 通常1 単体のけがれを下げる。高低差5.0h ★★ 気力の祈り 支援 0-4 通常1 単体のターンMP回復率を上げる。高低差5.0h ★★★ 防御の祈り 支援 0-4 通常1 単体の物理防御力を上げる。高低差5.0h ★★ 護法の祈り 支援 0-4 通常1 単体の法術防御力を上げる。高低差5.0h ★★ 回避の祈り 支援 0-4 通常1 単体の回避力を上げる。高低差5.0h ★★ 攻撃の祈り 支援 0-4 通常1 単体の物理攻撃力を上げる。高低差5.0h ★★★ 法撃の祈り 支援 0-4 通常1 単体の法撃攻撃力を上げる。高低差5.0h ★★★ 命中の祈り 支援 0-4 通常1 単体の命中力を上げる。高低差5.0h ★★★ スキル寸評:熟練度入手強化はほぼ必須。他の常時スキルもありといえばありだが パッシブの枠が3つでは優先順位は低い。 回復の祈りは最大成長でHP100%回復なのは地味に便利。 ステータス上昇系のスキルは中級職、上位職で完全上位互換が出るので 全部覚える必要はない。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5461.html
前ページ次ページランス外伝~ゼロと鬼畜な使い魔~ 姫訪問から3日後。 アルビオン王家崩落。 アルビオンの女子供を乗せた脱出船は難民として、トリステインに迎えられる事になった。 アンリエッタはその難民の1人に、ウェールズはどうだったかを聞いていた。 「…そう、ウェールズ様は勇敢に戦ったのですか…。」 「はい…前日のパーティーでは、臆した所も一切無く…。」 もちろんこの女性に勇敢に戦ったかどうかなんて分からない。 だが、ウェールズの名誉に関わるので適当な事を言った。 「ありがとう…、下がっていいわ。」 「はい。」 アンリエッタがその女性の背を見送る。 そして、女性が部屋を出て行くと、アンリエッタは泣き崩れた。 「…ウェールズ様、のこされた…残された私はどうすればよいのでしょう。」 そうやって泣いていると、姫の部屋のドアがノックされた。 「………開いてます。」 アンリエッタは、私には泣く時間すらないの…と考えながらそう言うと ドアが開いた。 そこには、冷や汗を掻いているマザリーニ枢機卿であった。 「…姫、不味い事になりました。」 「……何でしょうか。」 もしや、手紙のことでは…という予感がアンリエッタの心拍数を上げる。 「ゲルマニアとアルビオン新政府が昨日アルビオンにて会談をし、トリステインとの同盟を断つと…。」 「何ですって!?」 「ゲルマニアに潜ませた間諜によりますと、会談が終わった後のゲルマニア皇帝は何やらとりつかれたような顔をしていた。との事…。」 「とりつかれたような顔…? 魔法…かしら?」 「その可能性が高いでしょうな、もしやアルビオンの貴族の中にエルフがいるのやも…。」 「先住魔法…。」 「そうやもしれません。」 「…では、何故協力してトリステインを倒す事をしないのでしょうか…。」 「国民が認めないからでしょう、アルビオン新政府も不自然すぎると怪しまれる事を分かってるからでしょうな。」 そう、アルビオン新政府は全てのハルケギニアの国を征服しようと企んでいる。 それなのにゲルマニアと協力する事がおかしい。 しかし、同盟を断つというだけなら、まだ自然の内なのだ。 そう、アルビオンは空中に浮いている為戦艦による攻撃によって多くの勝利を収めた。 が、トリステインの国土を入れて陸地で戦うならゲルマニアが勝利を収めれる。 ゲルマニアの国にとって、トリステインとの同盟はほぼ意味がなく、自国の損害の方が大きくなると予想して、同盟をきった。 と言えば、国民は納得するのである。 「まさか…そんな…。」 「姫には選ぶ権利が3つございます。」 「…なんでしょう。」 「1つ目総力戦を予想し、街それぞれに関を構え、兵器の製造を急がせ、国民に軍事訓練をさせる。」 「…。」 「2つ目、逃げる準備をする。」 「3つ目は?」 「…3つ目、アルビオンに降伏する」 3つ目…これはアンリエッタの恋人の復讐を断念する事になる。 「国は国民を守り、国民は国を支えるのが国家…私は王家の人間です。」 マザリーニが頷く。 「3つ目も…亡きウェールズ公への冒涜です、それに国民も認めないでしょう。」 「それでは戦に詳しい者を集めて軍議ですな。」 「…お願いします、私も呼びたい者がおりますので…。」 「分かりました、フクロウを呼びましょう。」 場は変わり、トリステイン学院へ。 「はぁー、暇ね。」 ルイズが机に肘を付いて暇そうにため息をつく。 その暇という願いを聞き届けたのか、教室のドアを開けコルベールが入ってきた。 「えっと、ミス・ヴァリエール王室から君あてに手紙だ。」 王室!?と周りの生徒が騒ぐが、ミス・シュヴルーズ先生がそれを押さえる。 ルイズはその手紙を急いで開き、中身を見る。 ルイズが急いでシュヴルーズ先生の元による。 「姫殿下が急用で私を呼んでます、早退していいでしょうか。」 「アンリエッタ姫殿下が?何があったんでしょう…分かりました、気をつけていってください。」 「ランス!謙信!シィル!ついてきなさい!」 ルイズが自分の使い魔に対して怒鳴る。 その声にシィルと謙信はすぐそばによるが ランスはしぶしぶ寄っていく。 「今から王室に行くわよ。」 「おー、姫に会いに行くのか。」 「えぇ、急ぎましょう。」 そう言いながら、小走りで学院の馬を止めている所へ向かう。 「また馬か…。」 「ぐずぐずしないの!ほら、乗って!」 ランスは乗馬が下手である為、乗る気が起きない。 数学苦手だから数学したくない。見たいな理屈である。 こうして約3時間半馬をかっ飛ばし続けて、王宮へ付いた。 「アンリエッタ姫!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが参上しました!」 「おぉ!良くおいでになられました!」 「姫様、何故私を呼んだのでしょうか。」 「それはこれから話します、使い魔達もいますね?」 「はい、この通り。」 アンリエッタが3人を見ると、少し頷く。 「では、こちらにいらっしゃってください。」 アンリエッタが案内した場所には、既に有力貴族と将官が集まっていた。 ルイズが驚いて姫に尋ねる。 「姫様…ここは?」 「今から話します。」 そう言うと、アンリエッタは長いテーブルの一番奥へ行く。 そこにはマザリーニ枢機卿、グラモン元帥がいる、その手前にド・ポワチエそしてアンリエッタの後ろにはワルドもいた。 またその手前の手前位にはラ・ヴァリエール公爵がいた。 ルイズを見ると、驚いた顔をするが、すぐに顔を背ける。 ここで親子話をするわけにもいかないのだ。 「おーおー、こりゃすげぇ面子だな。」 「おー、何が始まるのだ。」 「…多分、軍議だと思う。」 「軍議?何で?」 「分からない。」 そうひそひそ話をしていると、マザリーニ枢機卿が立った。 「今回皆に来てもらったのは他でもない、ゲルマニアとの同盟が反故された事だ。」 突然の話に、全員が驚く。 「原因は詳しくは分からない、が、ゲルマニア皇帝が何者かに操られている事が有力だ。」 「操られる?そんな魔法聞いた事無いぞ!」 「予想しているのは、アルビオンに先住魔法を使える者がいるかもしれないと言う事だ。」 「先住…エルフの魔法ではないか!!」 「いかにも、だからこうして集まってもらったのだ。多分相手は2・3日後には準備を整えてこちらへ侵攻してくるであろう、 それの対抗策を考える為に集まってもらった。」 「なるほど…、アルビオンからここはほぼ下り…戦艦も通りやすい…。」 「ふむ、それならまず空の脅威を取り払わなければな。」 「いやまて、2・3日後…国民を何処に避難させる。」 「これは総力戦だ、国民全員には槍をもたせるべきでは?」 「いや、それでは国に対する信頼が――。」 「守れなかったら信頼も何も無いのだぞ!」 わいのわいのと話し合いが段々白熱していく。 そう、アルビオンの艦隊はトリステインの艦隊では足にも付かない位に強いのだ。 小型戦艦製造に3月中型なら5月大型で半月の時間が掛かる。 これだけ時間が掛かり、国力を浪費するなら、陸の守りを固めた方が…というマザリーニ枢機卿の考えである。 トリステインは小国なので、この判断は正しかった…が、今回の場合裏目にでてしまったのだ。 「――地から空へ撃てる大砲?そんな物ができても空からの砲撃でつぶれてしまうわ!」 もちろん竜騎士もアルビオンの兵には負ける、つまり制空権は奇跡がおこらない限り取られる。 「地上に降りてきた制圧兵を迎え撃つべきか?」 「空の砲撃で易々侵攻されるだろうな。」 「…なら、地下を掘って…。」 「馬鹿を言うな、火使いのメイジがいる事をお忘れかな?」 地下壕等ほってもメイジの前では無力、そう火炙りにされてしまうのだ。 「なら、どうすればいいんだ…。」 室内に沈黙が流れる。 謙信がハルケギニアの地図や船の図面をずっと見ている。 JAPANに船は無いのだ、興味があるのだろう。 まぁ大陸でも造船所はあってもそう見られる物でもない。 「…少し、いいだろうか。」 謙信が手を挙げる。 皆が謙信を見る、アンリエッタが頷いた。 「ええ、どうぞ。」 「こういう船で攻めてくるのか。」 「うむ。」 「後ろからの攻撃は手薄のように見えるのだが…。」 「――結論を言えい!結論を!」 「…で、この地図を見てみると…そう、この辺りに兵を置いておくといいと思う。」 マザリーニ枢機卿がその地域を確認しに近寄ってくる。 「どれどれ…ふむ、なるほど、通り過ぎた時にそこから竜騎士隊と小型艇をだせば…。」 奇襲というのは恐ろしい、それはランスも身にしみている。 そのランスが謙信に問う。 「驚いたな、愛ちゃんが隣にいた影響か。」 「確かに私は1人で突撃していたが、多少の兵法だって、心得ている。」 「まぁ愛はJAPAN一の軍師だからな、無理も無い。」 「うむ。(貴方を守る為に勉強してたなんて言えない…。)」 「顔が赤いぞ、大丈夫か?」 「…なんでもない。」 「ランス様…。」 「どうしたシィル。」 「まだ続いてるようですので…その…。」 その言葉に周りを見ると大勢がこちらを睨んでいる。 ランスも謙信も静かになる。そう、ただでさえ平民なのに私語までぺらぺら言われたのではたまったもんじゃないのだ。 「では、空に対してはここに竜騎士と小型艇で奇襲を行う、大きく期待はしては駄目だ、指揮系統を多少混乱させる程度でよい。」 「…地上に降りてきた敵に関しては…。」 「その点は大丈夫だ。船に乗ったまま陸に下りて、万全の体制で戦える兵等おらん。」 「そうですな、一つの船を動かすのに必要な兵も引いて…さしたる影響は無いでしょう。」 「……そうだな。では今回の軍議は解散、軍には訓練を国民にも警戒するようにいっておくように。」 「…そうだ…ガリアに援軍を求むことは?」 「多分無理かと…。」 「そう…。」 「それと所々の街には土系統のメイジを呼んで防壁に固定化を掛けさせるように。」 「分かりました。」 マザリーニが1人の将官に命令をするとその将官は急いで室内から出る。 「先程行った奇襲地点には火と風の竜に選りすぐりの竜騎士隊を置け。」 また将官の1人が室内から出る。 各担当の長なのだろう。 こうして、軍議は解散した。 ぞろぞろと部屋を出る貴族達の顔には汗が浮かんでいた。 「…姫。」 ここまで何も喋ってなかったルイズが喋った。 「なんでしょう?」 「戦争…なんですか?」 「…はい、時期が早まりました。」 「そう、ですか。」 「貴方には一番にこの事態を知って欲しかった…。」 「姫…。」 そんな会話をしていると、ヴァリエール公爵がこちらに近づいてくる。 「ルイズ…学院は危ない、家に帰ってきなさい。」 「…はい。」 ゲルマニアのすぐ隣にあるヴァリエール家はアルビオンから最も遠い。 つまり、戦火が飛びにくいのだ。 学院は危ないので、多分全ての生徒が実家や色々な地方に移るだろう。 姫の後ろにいたワルドが。顔を俯けたルイズに微笑みながら話しかける。戦争の事で心配しているのだろう。と思ったらしい。 「大丈夫だよルイズ、この戦争は勝てる。」 「!…お久しぶりですワルド様…貴方が言うなら…そうなんでしょう。」 「ワルド君…頑張りたまえ。」 「はい、義父さん。」 「まだ結婚はしてないんだから義父はやめてくれたまえ。」 そんな冗談を言い、ヴァリエール公爵とワルドが豪傑笑いをする、2・3日後には戦というのに。 「さ、明日には学院の生徒ともしばしの別れだ、帰りたまえ。」 「わかりました。」 ルイズがそう言うと、部屋を出て城を出て、休憩させてた馬に乗る。 見ると、兵が大量の紙をもって走っていっていた、戦争を知らせる為だろう。 「さて、帰るわよ。」 「馬…。」 「ほら、ぐずぐずしない!」 こうしてトリステイン魔法学院に戻る。 既に戦争の事を聞いたのか生徒がざわざわしている。 「あら、ルイズ。帰ってきてたのね。」 「えぇ。」 「で、本当なの?戦争の話。」 「本当よ。」 「そう、本当なのね。じゃあ私実家に帰ろうかしら。」 そういってキュルケはタバサを連れて自分の部屋に向かう。 「何でタバサちゃんまで?」 「たぶん事情があるのよ。」 シエスタが走ってこっちへ向かってきた。 「ランスさん、戦争が始まるんですか!?」 「うむ、らしい。」 「あわわわ、大変だー。実家に行かないと!」 シエスタがそう言うと、早速メイド用の部屋に駆け込んでいった。 「…皆、忙しいな。」 「えぇ、こちらが受ける側の戦争だからね。」 「ふーん。」 「……さて、私達も荷造りしないと。」 ルイズは自分の部屋に戻り、自分の荷物をまとめていく。 シィルも手伝っていた、…にしても服の多さだけはゼロじゃない。 「さて…できたわ。」 「カバン7個分…よくロッカーだけで収まってたなぁ…。」 「後は…無いわね。」 部屋は既に藁とベッド以外何もなくなっていた。 「戦争かー、いやだねぇ人間は。」 「剣がよく言うわ。」 「なんだとぅ、6000年生きるこのデルフ様から見れば人間なんてちっちゃいもんだ。」 「…6000年?」 「あれ?………6000年…あ、そーか。思い出した。」 「何を思い出したのよ。」 「俺ぁガンダールヴに使われてたのよ、昔ね。」 「はぁ?ボケた?」 「ひでぇ…。まぁボケてはいるけどさ。でも本当さ。」 「ふーん。で、それがどうしたのよ。」 「いやね、ランス。お前左手見せろ。」 ランスは目何処だ。と思いだから左手をデルフに近づける。 「あぁ、やっぱりだ、何か引っかかってると思ったら。お前ガンダールヴだよ。」 「はぁ?ランスが?何で?」 「俺様がどうかしたか。」 「ランスよ、お前カオスを持つと体軽くなったりするだろ。」 「おぉ、良く分かったな。」 「それだ、それ。武器を持つと左手のルーンが光って色々効果が出る。」 「使い魔と契約した時の特殊な効果みたいな?」 「おう、そうだ。」 「へー…で、それ本当?」 「本当。デルフ嘘つかない。」 「じゃあ何で私に伝説の使い魔が召喚できたのよ。」 「さぁな。」 その疑問は突然扉を開けた人によって解決された。 「それは主が虚無の担い手だからかもしれんのぅ。」 「オールド・オスマン!」 「戦争が始まってしまうとはのう…あぁ、嫌じゃ嫌じゃ。」 「で、虚無の担い手かもとは?」 「伝説の使い魔ガンダールヴは虚無の使い手ブリミルの使い魔、ならそれが召還されたと言う事は君が虚無の使い手という事かもしれん。」 「ですが…虚無は御伽噺では?」 「いやいや、火の無い所に煙はたたんよ、ミス・ヴァリエール。」 「…では…。」 「うむ、君が虚無の使い手かもしれん…そういうことでこれを君に届けに来たのじゃ。」 「…なんですか、それ。」 「始祖の祈祷書らしい…が、何も書いてないんじゃ。贋作の可能性もあるが虚無の使い手が触れると現れるかも試練と思ってな。」 「何も書いてない…?」 「そうじゃ…結婚式が間近に迫っていたから取り寄せたんじゃが…まさかこんな風に渡す事になるとはのぅ…。」 「いえ、ありがとうございます。」 「うむ…では、わしもまだ学院生徒への呼びかけがまだなのでの…長く話ができんくてすまんの。」 「お気になさらずに…。」 そういってオスマンは部屋を出る。 ルイズが始祖の祈祷書を眺める。 「……本当に真っ白ね。」 「日記にでもすればいいんじゃないか?」 「それもいいかも…ってちがーう。」 「もしかしたら…何か特別な物がないと文字がでないとか…。」 「…そうね、でも考えるの疲れたわ、明日は早くに出発よ、もう寝ましょう。」 「はーい。」 前ページ次ページランス外伝~ゼロと鬼畜な使い魔~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2092.html
前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 大気の生霊(せいれい)を呼び出すため、外界に出る松下。太陽が地平線の上に出るまでに、呪文を唱えなくては。 しかし、眼下遠くの闇には、燃え盛る炎が見えた。タルブの村の方角だ。轟音も聞こえる。 「あっ! あれは、フネ(飛行船)ではないか……空襲か!」 さしもの松下も仰天し、寺院に戻って二人に急を知らせる。 「何てこと! あれは、アルビオンの艦隊ではないですか」 「奴らめ、不可侵条約などとはおこがましい。覚悟はしていたが、全くの奇襲ですぞ」 まあ、不可侵条約など破られるために存在する。日本とソ連のように。 「ど、どうしましょうメシア! 村が……!」 「ミスタ・コルベール、シエスタ。火竜たちに乗って、急いで村人をここまで誘導しましょう。 それから『悪魔』を呼び出します」 山の麓には、すでに村人の姿も見られた。火竜に追われている者もいる。 「はい、ミスタ・マツシタ! 一刻を争いますな!!」 艦隊からは、凶暴なオーク鬼やトロール鬼も降下し、人間を貪り喰らう。 松下とコルベールは魔法でそれらを撃退しつつ、村人たちを山の上へと導く。 シエスタも村人たちを宥め、いくらか死傷者は出たものの、数十人が寺院へと避難できた。 村はなお、燃えている。 「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり! 朽ち果てし大気の生霊よ、眠りから覚めよ! 気体より踏み出でて、万人の父の名の下に行う、我が要求に答えよ!!」 火竜の山の崖上。松下は全身に汗をかきながら、一心不乱に呪文を唱える。 地水火風の激しい変動が起こり、黒雲は渦を巻いて雷雨が降り出す。落雷が火竜を撃墜する。 もうすぐ夜明けだ、早く召喚を完成させなければ。 やがて黒雲の中から白く巨大な『生霊』が現れ、ザワザワと音を立てて近づく。 「天地万物を混乱に陥れている地獄の悪鬼よ!! 陰気なる棲家を去りて、三途の川の此方へ来たれっ!!」 地下の魔法陣の中の大地が鳴動し、生臭い空気がたちこめる! コルベールとシエスタの眼前で、円形の魔法陣の中の大地は、ドロドロの溶岩のように廻り出した! 松下に誘導された『生霊』は、バーーーンという物凄い音とともに魔法陣の中へ飛び込む!! ずるり、とその中から、人間の形をしたものがせり上がる。 いや、さらにその下にも……。 「おおっ」 召喚されたのは、いくつもの彫像が刻まれた、巨大な青銅の『門』であった。 その上には松下しか読めない文字で、こう書いてあった。 『Per me si va ne la citta dolente, per me si va ne l'etterno dolore, per me si va tra la perduta gente. Giustizia mosse il mio alto fattore; fecemi la divina podestate,la somma sapienza e 'l primo amore. Dinanzi a me non fuor cose create se non etterne, e io etterno duro. Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate' 』 すなわち、 『我を過ぐれば憂ひの都あり、我を過ぐれば永遠の苦患あり、 我を過ぐれば滅亡の民あり。義は尊きわが造り主を動かし、 聖なる威力、比類なき智慧、第一の愛我を造れり。 永遠の物のほか、物として我よりさきに造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、 汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ』 ……と。 翌朝。トリステイン魔法学院にも、早くも急報は伝わっていた。 「たたた、大変だ! 戦争だ! 諸君! アルビオン軍が攻めてきた!」 「「ええっ!?」」 生徒や教師の間に、動揺が広がる。 「ラ・ロシェールとタルブの村を奇襲で占領して、戦艦が次々と降下しているらしい」 「やっぱり! 『レコン・キスタ』は最初からトリステインを攻める気だったんだ!」 「でもゲルマニアからの援軍は間に合いそうにない……けど、どうなるんです?」 「うむ、それで、アンリエッタ姫殿下が、おん自ら軍を率いて出陣するとかしないとか」 「姫様が!?」 「マザリーニ枢機卿はお止めしたらしいけど……」 タルブと聞いて、ルイズは飛び出す。 「タバサ! シルフィードを出して! タルブの村へ行くわ!」 「了解」 「あらルイズにタバサ、私も行くわ。確かマツシタくんも行っているんでしょ?」 いつもの面々が集まり、空へ。しばらくすると、ルイズのポケットから声が聞こえてきた。 松下から預かっていた、遠隔通話用のマジックカードだ。 『ぼくだ、ルイズ! 松下だ! タルブにアルビオン艦隊が攻めて来た!!』 「ええ、知っているわ! 今、タバサの風竜でそっちに向かっているの! 無事でしょうね!?」 『今は山奥の寺院にいる! 村人のいくらかはここに避難させた。 これからぼくは「悪魔」を召喚し、艦隊にぶつける!! なるべく離れていろ!!』 簡潔に用件を伝え、通話を終える。松下は全身の力を使い果たし、ぐったりしている。 「め、メシア、この『門』は何なのでしょう。ひょっとして……」 「『La Porte de l'Enfer』……これは『地獄の門』だよ、シエスタ。これを開けられるのは『罪と死』か、『神とメシア』かだ。 今からこれを開け、悪魔の力でアルビオン艦隊を滅ぼしてやろう。肩を貸してくれ」 「今の、マツシタくんから?」 キュルケが問い、ルイズは肯く。シルフィードに乗り、最大速度でタルブへ向かう。 早くも煙と炎、そして巨大な艦隊が平原に集まっているのが見えてきた。 黒雲から雷雨が降りしきっているが、炎が弱まる様子はない。 「この調子じゃ、私たちにはできることもなさそうね。それとも艦隊に突っ込んでみる?」 「あるわよ、できること! 村人だって生き残りがいるでしょうし、多少の損害を与えて足止めとか……」 「焼け石に水ね。とりあえずマツシタくんと合流しましょう」 「同意見」 冷静なキュルケとタバサに、トリステイン人のルイズはつい激昂する。 山の方に、寺院らしき建物が微かに見える。あそこにマツシタたちがいるのだろう。 「さ、行くわよ。『ゼロ』のルイズに、何ができるっていうの」 「ッッッ! ツェルプストー!! 馬鹿にしないで! 私は、私は、『ゼロ』なんかじゃ……!!」 その時、ルイズの脳に直接声が響く。指にはめた『水のルビー』が輝き、『始祖の祈祷書』と共鳴し始める。 白紙のページに、文字が浮かび上がる。 《否、お前は『ゼロ』だ。偉大なる『ゼロ』なのだ》 《おお、『虚無』よ。大いなる『虚空の蔵』よ》 《万物の最小の微塵は汝のものなり》 《開け、その力で『虚無の門』を開くのだ》 ―――『ゼロ』という二つ名もそう悪いものでもない。 『東方』でゼロは『0』と書くのだが、これはプラスにもマイナスにもなる 無限の可能性を持った円環であり、未分化の力である『ウロボロスの蛇』を象徴する。 また無尽蔵の扉である時空間の子宮でもあり、仏教における…… ……だから現代量子力学における『ゼロ』というのは、無限大と無限小の…… エネルギーがどこから湧き出すかと言えば、つまりさっき説明した次元間の断裂が…――― 地上で詠唱される松下の呪文にあわせ、トランス状態になったルイズは『虚無の門』を開く呪文を唱え始めた。 「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり……」 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2241.html
トリスティン魔法学院から父王と共にイザベラが帰国してから幾らかの日数が過ぎた。 元々偽の名前で訪れる予定であり、ジョゼフも非公式での訪問だったため気にかける者は殆どいなかった。 それよりも去っていくイザベラと仲睦ましげに別れの挨拶を済ませたネアポリス、ジョルノの方へ注目が集まっていた。 仔細までは学院と言う特殊な場で生活する貴族の子女達にも知らないが、多種多様な事業を展開し利益を上げて噂になった貴族が、自分達とそう変わりない年齢だという事の方が素性を隠している貴族よりも生徒らにとってインパクトが強かったのだ。 ヴァリエールの使い魔だったはずの亀と親しくし、平民にまでわけ隔てなく接する成り上がりをプライドの高いトリスティン貴族の子女が無視できなかったとも言えるのかもしれない。 何故ヴァリエールの亀と親しいのか、疑問に思う声も囁かれる食堂の中を抜けてルイズはテラスでタバサとサラダを食べているジョルノの元へ歩いていった。 同じテーブルに着いているのは先日ルイズと共にフーケ討伐に向かったタバサと、平然とサラダを食べるジョルノから目を背けるラルカス、ジョルノを唖然とした表情で見るテファの三人だった。 ポルナレフがいなくてホッとしたが、逆にどこにいるのか少しひっかかりを覚えたルイズは、彼らの顔つきを見て内心首を傾げた。 天気もよいし、適度に風が吹いていてとても気持良さそうな空間にそぐわない態度は奇妙に感じられる。 だが妙に思ったルイズは、接近に気付いて顔を上げたジョルノが持つフォークに刺さるはしばみ草を見て、心で理解した。 はしばみ草…極々一部の愛好家がいるのは認めるが嫌いな野菜ナンバー1の座を数千年独走し続ける野菜の王様が、朝日に照らされて口の中が苦くなりそうなその姿をルイズにこれでもかと主張していた。 「お、おはようございます。伯爵…朝からはしばみ草なんて、ヘヴィ過ぎません?」 「おはようございます。馴れてくると独特の味が癖になってきます。栄養は満点ですしね」 ジョルノの返事と、何気に隣に腰掛けているタバサがわかったような顔で頷くのを見て、ルイズはげんなりした。 だが用件は済まさなければならない。ルイズは許可を求めてからジョルノの正面に腰掛けた。 朝の清清しい空気を胸いっぱいに吸い込み、真剣な表情で見つめる。 「伯爵「ジョナサンで構いません」…ジョナサン。貴方は舞踏会の夜、私の系統について心当たりがあるとおっしゃいました」 舞踏会の夜の事を思い出しながら、確認するように言うルイズにジョルノは頷いた。 ルイズの系統は恐らく始祖の系統だと舞踏会の夜ジョルノはルイズに告げた。 伝説の系統がゼロと蔑まれてきた自分の系統であるという話は、到底信じられない話だった。 ジョルノ以外が言ったら一笑に付していただろう。 だが、ジョルノは家族以外は…家族さえも諦めていたカトレアを治療してのけた男だった。 だから肩にとまる小鳥という形で自分の使い魔との関係を一方的に清算したルイズは、ジョルノに話を聞きに来た。 ルイズは同じテーブルに着く者達をチラッと見て言う。 「それについて詳しくお聞きしたいんです。お時間をいただけませんか?」 「彼らがいても良いのでしたらこの場でお話ししましょう。お嫌なら今晩か明朝、学院の中庭でなら時間を作れますが」 「…その、この方達に一旦席を外していただくことは」 「ルイズ。先日までの貴方ならそうしてもよかった」 残念そうに言うジョルノは、唇についたサラダのドレッシングの油をハンカチで拭い、ルイズの肩にとまる鳥を見る。 「だが、タバサ達の方が先約だし、その使い魔を選んだ貴方の為に皆に紅茶を持って向こうに行ってくれとは言えません」 「ぅ…わかりました。今夜、中庭ですね」 反論しようとするルイズに首を横に振ったジョルノは既に頼んでいたらしいメイドが持ってきた紅茶を付け取る。 ルイズは唇を噛みながら席を立とうとする。 だがそれより先にタバサが席を立った。 「飲み終わったから、私は向こうに行く」 「わ、私も…向こうに行ってるから。ルイズさんとゆっくり話して」 続いてテファが立ち上がったのを見て、ラルカスも仕方ないなと言いたげな仕草をして立ち上がる。 「じゃあ私も今のメイドをナン「少し遅れますのでかわりに仕事をしておいてください」…いえすさー」 ラルカスにだけ釘を刺して、錆び付いた飾り気の無い剣を手渡すジョルノを見ながらルイズは心の中で彼女らに礼を言った。 肩にとまった小鳥を撫でながらルイズは席に座りなおす。 それを待って、ジョルノは口を開いた。 「呪文を覚える方法は始祖の秘宝を手に入れることです」 「始祖の秘宝?」 「ルビーとそれ以外の宝です。この国にあるのは水のルビーと始祖の祈祷書ですね」 テファの名前は伏せたまま、テファから聞いた話から推測した事をジョルノはルイズに説明していく。 ルビーをつけてオルゴールを開けた時にテファは忘却の呪文を覚えた。 王家に伝わる秘宝とか…テファが言っていたので調べてみた所、それは二つとも始祖の秘宝でありルビーと呼ばれる秘宝は他の王家にも引き継がれていることが確認できている。 三人の子供と一人の弟子が開いた四つの国にある四つのルビー。 テファが歌った歌… "神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。 そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。 四人の僕を従えて、我はこの地へやってきた……。” 歌を裏付けるように先日ロマリアの枢機卿からは、始祖は己の強大な力を4つに分け、秘宝と指輪に託しました。また、それを託すべき者も、等しく4つに分けたのです。 その上で、始祖は「四の秘宝、四の指輪、四の使い魔、四の担い手……、四つの四が集いしとき、我の虚無は目覚めん。」 そんな言葉を残していると教えてもらってもいた。 話を聞かされたルイズの方は、ジョルノが情報の入手経路などを隠したせいで半信半疑だった。 自分がそうであるかさえ疑っているというのに、虚無の担い手は他にもいる可能性があるなどといわれても信じられるわけが無い。 それを察したジョルノは奇妙なことだが、ルイズをまるでちい姉さまのように安心させる声で言葉をかけた。 「半信半疑なようですね」 「失礼ながら…それに始祖の秘宝なんて私が持つ機会は…」 ルイズの家は王家とも血の繋がりがあり、このトリスティンでも有数の貴族だが王家ではない。 その上ただの学生であるルイズに王家の秘宝に触れる機会が生涯を通して存在するかどうかといえば、限りなく低いとルイズは考えていた。 だがジョルノは「既に半分はクリアできる状態です」と告げた。 「今の状況が続けば恐らく貴方が祈祷書に触れる可能性は十分にあります。ルビーに関しては私に心辺りはありますが…」 「今の状況って、どういう意味でしょうか?」 理解が追いつかないまま尋ねるルイズにジョルノはすぐには返事を返さなかった。 少し考える様子を見せ、他人には聞かせられないということをわざわざ周りに人がいない事を確認してルイズに伝えながらジョルノは少し声を潜めた。 「(これは内密な話です)ゲルマニアの皇帝とこの国のアンリエッタ王女が結婚する話が進んでいるからです」 「なんですって!?」 ある意味ルイズが虚無であると言う事以上に突拍子も無い事を聞かされたルイズは、激怒して席を立ち上がった。 アンリエッタ王女は先の王が忘れ形見であり、民衆の人気も高く「トリスティンの可憐な花」など彼女を称える言葉は限りない。 対してゲルマニアの皇帝は、ゲルマニアを野蛮な国と蔑むトリスティン貴族にとってはゲルマニアの皇帝と言う時点で既にありえない。 しかもそのお相手であるゲルマニア工程と言えば、権力争いの末に親族や政敵をことごとく塔に幽閉し、皇帝の座に就いた40代の男なのだ。 「私をからかっているの…!? 姫殿下が」 怒りに染まった表情で顔を寄せてくるルイズの口を押さえ、ジョルノは座るように言う。 「声を抑えて座ってください。この国の伝統で王族の結婚式には貴族より選ばれた巫女が『始祖の祈祷書』を手に式の詔を読み上げる習わしになっています」 「だから…! どう「同じ事を言わせないでください。次に大声を上げたりしたらこの話はここまでです」…ッわかったわ。だから教えて。どういうことなの?」 低い声で言われ、ルイズは周りを見る。 大声を上げたルイズに食堂から視線が集まっていた。 悔しそうな顔でルイズは席に座りなおす。紅茶を飲みながらジョルノはその事についても説明を始めた。 アルビオンで起きている内戦は貴族派の勝利で終りそうな事。 次はトリスティンに攻め込む可能性が限りなく高く、トリスティン一国ではそれを防ぐ手立てはないということ。 自分の魔法のことなどどーでもよくなるような事を淡々と説明するジョルノに、ルイズの血の気は引いていった。 アルビオンで戦争が起きていることは知っていたが、王家への忠誠心が厚いルイズは王党派が勝利すると考えていたし、 所詮は対岸の火事として、既に過ぎ去った話題に過ぎなかった。 どんな状況になっているかなんて気にも留めていなかった自分をルイズは恥ずかしく思った。 ルイズは昔、アンリエッタの遊び相手だったことがある。 その頃の思い出は今もルイズの小さな胸の中で輝いているのに… 「そういうわけですから、今はあの爆発を上手く使うことを考えてはどうでしょう?」 ルイズがアンリエッタの事を考えている間もジョルノは説明を続けていたらしく、我に返った時には最後に締めくくる言葉を告げられていた。 自嘲気味な笑みがルイズの顔に浮かんだ。 「上手に使うですって? 失敗して爆発してるだけじゃない…!」 「仮にそうだったとしても、貴方は爆発について良く知るべきだ。モノは使いようです。全ての魔法で全く同じように爆発するのか。爆発する場所は指定できるのかなど…細かく特性を調べることです」 「そんなこと言ってる場合じゃないわ。姫殿下の為に何かしないと…何か、できることは無いのかしら」 自分の悩みなど忘れたように言うルイズに、ジョルノは首を振って個人の力でどうこうできる問題ではないと忠告する。 今のルイズの力では及ぶはずもない。 「ですが彼女は今度この学院に訪れる事になっています。貴方が彼女の友達であるなら、彼女の心を慰める事はできるかもしれない」 「姫殿下がこの学院に?」 「急な訪問らしく、今日の午後にはオールド・オスマンの所に連絡が届くはずです」 言葉の端々からルイズを気遣っているんじゃないかという気がしたが、ルイズは眉をよせて怪訝そうな表情を作っていた。 自分が知らない情報を幾らか知っているのは、既に一人の貴族として大人達に交じっているジョルノなら当然かもしれない。 だが、王女の今後の予定まで知っているものだろうか? 「…貴方、何者? 姫殿下の予定まで知ってるなんて」 「情報を集めるのは商売の基本です。それよりもルイズ」 得たいの知れなさから疑いを持ち始めたルイズを見つめ、ジョルノは言う。 「ここまで話したのは、貴方だからです。軽々しく他人に話さないと信じて構いませんね?」 「も、勿論よ。私は貴族よ? 軽々しく他人に話したりなんてするわけないじゃない」 静かな口調に何故か気圧されるものを感じながらルイズは返事を返した。 一つ頷き、ジョルノは予定が詰まっているからと席を立つ。 去っていくジョルノを目で追いながら、ルイズは好きでもない相手と結婚させられるアンリエッタと何年も連絡の無い、親が決めた婚約者のことを思い出していた。 ルイズと別れたジョルノはテファ達と合流して、その日は勉強をした。 テファ達が組織に参加することが決まってしまった以上、何か仕事を振らなければならない。 だが今もっている技能だけで参加してもらう気はジョルノにはなかった。 まずは地球の学問を学んでもらう。マチルダ程の土のメイジが地球の学問を習得すればどうなるかを考えると楽しみだった。 幸いというか、ジョルノの亀の中には図書館ほどの蔵書がある。 そんなものがあるのは仲間の死を引き摺っていたフーゴが発端だった。 一度仲間から抜けてしまったが、フーゴの頭脳はジョルノ達に必要だった。 暗殺チームを失い、ペリーコロが自殺。親衛隊などにも多数の死傷者が出たパッショーネの為にフーゴは力を尽くしてくれた。 ある時そんなフーゴが、その途中必要になっていくだろうと勉学に勤しみ始めたと聞き、ポルナレフとミスタの音頭で強力に支援してみたことがあった。 だが、結果はこんなにいらないと断られ死蔵することになった…ジョルノもある程度個体差があるとはいえ亀数匹を犠牲にしても余る量を発注した二人を見た時は頭がどうかしたのかと思ったものだ。 幹部になり突然大金を持ったからと言って調子に乗って無駄遣いしちまったらしいが…煽てられて買わされるにも限度があるだろう。 こちらに着てからはそれが案外役に立っている。 別の場所で何人かの手で訳書も作成させているのだが…話が逸れたが、要するにジョルノとしてはマチルダにはコルベールや既にネアポリス領内に集まっているメイジ達と合流し、研究を行って欲しいと考えているのだった。 そしてテファには政治や経済などを学んでもらいたいと考えていた。 「テファ、貴方は政治や経済を学んでれると助かります。余りにもできないのも困りますからね」 「が、頑張るわ」 「僕の所に来る文書にもある程度は目を通してもらう事になります。教師役は、今はラルカスにお願いしましょう」 ラルカスは頷くが、内心はちょっと面倒だったりもする。 何せ現場に出て勢力を拡大したり統治したりもしているし、ネアポリス領内で優秀な水のメイジとして研究にも参加している。 地下水と交代できるとはいえそれなりに忙しいのだ。 だがまぁ、目の保養になるからいいか、とラルカスは安請け合いした。 「だが、いいのかボス。イザベラ様の教育係に既に頭の回るのを一人振ったのだろう?」 「イザベラ王女を味方にすることには、それだけのことをするメリットがあります。二番手三番手だった者達に発破をかけ、ジョゼフ王が潰した元貴族達を更に集めさせて対応します」 「恩を売るだけなら他の奴でもいいと思うがな。アイツきっとイザベラ様の鼻っ柱叩き折る所か砕いて塵も残さんぞ」 「それでいい。そこから這い上がってきてこそ、信頼できる」 「アンタ、ガリア王女にも手を出してんのかい?」 そうかいとラルカスがため息をつく間にマチルダが剣呑な声を出したが、ジョルノはええ、と返事を返し話を続ける。 普段ならというか、これまでこんなことを話したことはなかったのだが、テファ達が加わり近況は知らないポルナレフがいるのだから仕方がなかった。 眉を寄せるマチルダの前にポルナレフは何も言わずに酒を置く。 何も言わずに一気に飲み干すと、マチルダは二杯目を要求した。 「話を続けますよ。先日、打診していたヴァリエール家などから協力を取り付けましたので、ネアポリス銀行を開く目処が立ちました」 「はぁっ?」 聞くことに徹しようかと思っていたポルナレフは、ジョルノの突拍子も無い発現に耳を疑った。 「ジョルノお前、そんなことまでやる気かよ。てっきり俺は…」 「飲む、打つ、買う。では市場規模が小さすぎるんですよ。僕の目的を果たすにはとても足りない」 「目的? ギャングになるってことじゃねぇのか?」 「それは夢の話です。ゲルマニアの工場などは稼動していますし、各国の商会も順調に成長していますが…研究にもお金がかかりますからね。そろそろもう少し手を広げておきたいんですよ」 「だからって…上手くいくのかよ?」 ポルナレフは幾らなんでも無茶だろと考えているようだが、ジョルノは力強く頷いた。 ゲルマニアには多額の金を抱える者が出てきている。金を手元に抱え込むリスクを懸念した金所有者から既に預かり始めてもいた。 「…商会?」 「はい。アルビオンの戦争で儲けるには必要でしたからね。思ったより長続きしてくれたお陰でそれなりの利益はでました」 「えげつない真似したんじゃねーだろうな?」 「ええ。誠実に商売させていただきましたよ。いい取引ができました」 どちらとも取れる返事を返すジョルノに業を煮やしたポルナレフはラルカスに視線を送る。 ラルカスはそれを予想していたのか、既にポルナレフに触れない方がいいという意味を含んだ生暖かな視線をポルナレフに送り返していた。 ちょっぴり買い占めて値段を吊り上げる位当たり前と考えていたっておかしくはないと、ラルカスは思っていた。 「戸籍が怪しい者もいますが、回収は最悪パッショーネを使います。ゴールド・エクスペリエンスで生み出した植物の栽培を始めた貴族も多数いますから需要はあります」 クンデルホルン大公国からは睨まれそうですが、とジョルノは肩を竦めて言う。 二人の会話にテファ達はついていく事ができずにいた。テファがジョルノの手を引く。 「ジョルノ。銀行って?」 首を傾げるテファの反応はもっともだった。 ハルケギニアではまだ銀行という概念が無い。 貴族達が借金を申し込む相手は、クンデルホルン大公のように金を持った貴族だし、ようやくゲルマニアで溜めた金を奪われる懸念ができる者達が出てきた程度だ。 一言で言えば預金の受入、資金の移動(決済)や貸出(融資)、手形・小切手の発行などを行う金融機関と言うだけでは済まないだろう。 だからジョルノはとても簡単に言う事にした。 「とても簡単に言うと他人からお金を預かって、それを必要としている他人に貸してあげる仕事です」 「そう…他人の役に立つ仕事なのね」 「勿論です。ちょっぴりだけ貸したお金に利子をつけて貰ったりしますけどね」 払えなかったら担保も頂くし、逃げたら逃げたでパッショーネの怖いお兄さん達がやってきて逃げる気がなくなる程度に体で払ってもらう事になるでしょう…メイジはいい労働力になりますからね、とはジョルノは言わなかった。 貸す時には勿論、肉体の一部は徴収しておく予定なので、最後には捕まえられるだろう。 まだテファには言わなくてもいいだろうと考えたからだが…言わなくても、マチルダ達には伝わったらしく引きつった顔をしている。 ポルナレフはもう何か、悟ったような顔にも見えたが。 その視線に不服そうな態度でジョルノはその後も日が暮れるまでテファ達の教師役と普段通りの仕事をこなしていった。 夜になり、日中悩んでいたルイズは学院内を歩いていた。 授業中ずっとジョルノに言われた事を考えていた。 お陰で既に舞踏会などのイベントも終わり、引き締めを行おうとする教師達の目にはばればれで軽い注意をされてしまった。 アンリエッタの為にすぐになにかがしたいという気持ばかりが逸り、眠れそうになかった。 「こんな時にいれば話相手位にはしてあげるのに。まったく、どこほっつき歩いてるのかしら?」 既にポルナレフはジョルノの所で寝泊りしている。 別にまだルイズのところにいても構わなかったのだが、小鳥が着てから同じ部屋にいるとちょっぴり切ない気分になるからだった。 この場にいないポルナレフをなじりながら、ルイズは歩いていく。 その足が女子寮を抜けても止まらずに、学院の本塔へと向かい始めた時だった。 ルイズは中庭で動き回っている影を見つけた。 不審者かと思い、ルイズは身を隠そうとしたが、それが誰かはすぐに判明した。 それはジョルノとサイトだった。 二人共重そうな荷物を抱えて、走っている。 ジョルノから離されているらしいサイトは今にも死にそうだったが、ジョルノも辛そうにしていた。 そこから少し離れた所に、ポルナレフの亀がいた。 少し躊躇ってからルイズは彼らのところに歩いていく。 足を止めかけたサイトが、ルイズに気付き声を出そうとしてむせ返る。 「ん? …ルイズ」 「ポルナレフ…こんなとこでなにやってるの?」 「あ、ああ…サイトの奴が体力が無いんでな。少し鍛えてやってるんだ」 微妙な態度のポルナレフに、ルイズは不機嫌そうな言い方をする。 「伯爵もおられるけど?」 「アイツはこっちに来る前からやってたみたいだがな。理由は知らん」 ジョルノを見てみると、背中に荷物を手にも何か抱えてまだ走り回っていた。 なぜかその姿は何かを振り払おうとしているように、ルイズには見えた。それが何かはわからなかったが。 サイトがまだむせているのを見てポルナレフが声を出した。 「サイトッ! 今日はもう上がっていいぞ!」 「う、うぃっ…ウッ」 『サイト! 頼むから俺の体にだけは吐くんじゃねぇぞ!?』 急に運動をやめた反動か苦しそうにするサイトにポルナレフはため息をつく。 「あのみすぼらしいの、もしかしてインテリジェンスソード?」 「ああ、デルフって言うらしい。なんか用があったらしいんだが、物忘れが激しくて使い物になりそうになかったんでな。俺が無理言って借りた」 錆びた長剣は柄をカタカタ鳴らしながらサイトに話し掛けているが、サイトの方に返事を返す元気はないようだ。 ポルナレフはそれを見て苦笑を漏らしたような調子で続けた。 「案外気もあうようだし、サイトの教師としちゃ悪くないさ」 「ほっといていいの?」 「サイトの野郎はほっといても大丈夫だ。直にシエスタが来るからな」 「シエスタ?」 「学院のメイドだ。困ってるサイトを助けてくれてからの仲らしいが、結構お似合いなんだぜ?」 ルイズは返事を返さずに自分の使い魔になるかもしれなかった平民を見る。 今朝ジョルノに、その事で咎められたことが思い出される。 確かに、貴族として余り褒められた事じゃないと思ったが、仕方ないじゃないと自分に言い訳をして視線を外した。 ポルナレフの言うとおり、メイドがやってきてサイトを世話しているせいか…余り酷い状態でもなさそうなので罪悪感は幾らか薄れた。 「…使い魔のことだが、俺は気にしちゃいないぜ」 「な、何言ってんのよ。誰もそんなこと言って無いでしょッ」 「そうだな。だが、なんか俺の手が必要な事があったら言ってこい。俺はコレでも腕には覚えがあるからな」 少し寂しそうに言うポルナレフを見ないように、ルイズは走るのをやめ虚空に向かって殴ったり蹴ったりしているジョルノを見る。 ルイズにスタンドが見えれば、そこにジョルノに関節技を仕掛けようとするマジシャンズ・レッドの姿が見えただろうがルイズには見えなかった。 勿論本気でやったら生身のジョルノなんぞ軽く捻れるんである程度加減はしていたが。 「調子に乗りすぎよ。あ、アンタはもう私の使い魔じゃないんだから余計な事は考えなくっていいわ」 「そりゃそうだが、俺がルイズに手を貸してたのは別に使い魔だからじゃあないからな」 「じゃ、じゃあなんだって言うのよ?」 意外な返事を聞いたルイズが動揺している姿を見れば、少しはポルナレフも気分がよくなったかもしれない。 けれど、実際はそれを邪魔するようなタイミングで、隙をみせたマジシャンズ・レッドの腕を取ったジョルノが、普通の人間だったら腕をへし折られかねないやり方でマジシャンズ・レッドを倒そうとする。 「ん? チッ、ルイズ。話は後だ。俺はあのクソガキに年季の差を見せ付けてやらなきゃならねぇ。生身だから手加減してやれば調子に乗りやがって」 「ちょ、ちょっと…! …答えなさいよ」 ルイズが声をかけてもマジシャンズ・レッドのコントロールに集中し始めたポルナレフの耳には届かなかった。 アンリエッタのことを相談しようか考えていた事など忘れて、ルイズはないがしろにされた怒りに任せてその場から離れていく。 ポルナレフが気付いた時には、ルイズの姿はもう女子寮の方へ消えていた。
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4315.html
552 名前:『魔法戦隊メイガスファイブ』1〜5話ダイジェスト[sage ] 投稿日:2006/10/27(金) 19 15 59 ID NWW1LrkC 第1話『五人目の戦士』 ある日、トリステイン魔法学院に突如襲い掛かったアルヴィーの群れ。それは、暗黒神聖帝国ガリアの放った尖兵だった。 それを迎え撃つは、ガリアに対抗するべく編成された『魔法戦隊メイガスファイブ』の五人。 『微熱』のキュルケ。『雪風』のタバサ。『青銅』のギーシュ。『香水』のモンモランシー。 そして、『ゼロ』のルイズ。しかしルイズだけは、魔法が全く使えないために変身できない。 四人で戦うことになるメイガスファイブ。しかし、ガリアの尖兵は巨大なゴーレムを繰り出し、それに対抗する。 ピンチに陥る四人。しかしそこに、変身できないルイズの代わりに、キスによって彼女の魔力を受けた才人が現れる。 第2話『妖精のシエスタ』 ガリアの尖兵を破ったメイガスファイブ。しかし安心したのも束の間、街にアルヴィーの大群が現れたとの報告が。 才人たちが街に着くと、アルヴィーたちと戦う妖精たちに出会う。 妖精たちはガリアからトリステインの魔法の使えない一般市民を守るために作り出された『人工妖精』。 妖精たちの助けもあって、一般市民を避難させることに成功する才人たち。 そこに現れる、ガリア最強を名乗る暗黒騎士ワルド。ワルドの猛攻に、次々倒れるメイガスファイブ。 トドメを刺そうとしたワルドの攻撃を防いだのは、『人工妖精』の一体、シエスタの張ったバリアーだった。 第3話『香水のモンモランシー』 遠方の町がガリアに襲われているという情報が魔法学院に届けられる。 単独で助けに行く、と名乗り出るギーシュ。それに猛反対するモンモランシー。 しかし、コルベールの考えでは、メイガスファイブを二人以上、辺境に送るのは王都の警護上できない、という。 モンモランシーの説得をギーシュに依頼される才人。 モンモランシーに理由を尋ねると、「ギーシュは選ばれていい気になっているだけ」と語る。 才人は一計を案じ、モンモランシーにギーシュの実力を見せる作戦を立てる。 第4話『ルイズの変身』 今日もトリステインに現れたガリアの尖兵を倒したメイガスファイブ。しかし、常に見ているだけのルイズは、不満でしかたない。 自分も戦う、とコルベールに申し出るルイズ。しかし魔法を使えないものを前線に出すわけにはいかない、とあしらわれる。 次の日、ルイズは王都に呼び出される。王都では、ルイズをメイガスファイブに選出した、アンリエッタ女王が待っていた。 女王はルイズに、「今こそあなたを魔法戦隊の一人に選んだ意味をお教えしましょう」と一冊の本を渡す。 それこそが『始祖の祈祷書』。それを読んだルイズは、封印を解かれ、虚無の力に目覚め、変身を果たす。 そして現れたガリアの尖兵に戦いを挑むが、彼女の力には決定的な弱点があった。 第5話『幻の大合身』 度重なる敗北に、業を煮やした神聖皇帝クロムウェルは、ついにガリア最終兵器を送り込む決定を下す。 トリステインを襲う、巨大な石のドラゴン。これがガリア最終兵器、ゴーレム・ドラゴンであった。 巨大すぎる敵に、手も足もでないメイガスファイブ。しかし、コルベールはメイガスファイブにはまだ隠された力がある、という。 それこそが『大合身』。スクウェアの奥義『合身』を超える、幻の奥義である。 それは、魔力を極限まで高め、己が使い魔とともに、巨大な魔神と化す魔法であった。 『大合身』を果たしたメイガスファイブは、ゴーレム・ドラゴンを易々と打ち破るのだが…。 601 名前:魔法戦隊メイガスファイブ6〜10話ダイジェスト[sage ] 投稿日:2006/10/29(日) 20 16 47 ID G4a+YxuG 第6話『シエスタの決意』 先の戦いで本来ありえないはずの才人への『恋心』に目覚めたシエスタ。それ以来、かいがいしく才人の世話をしている。 本来の役目を離れるほどの感情を持ちえたシエスタに、魔法研究所が目をつける。 魔法研究所は、彼女の心の力を使い、彼女をさらに強力な『兵器』へと変える、という。 当然才人は反対するが、そこへ暗黒騎士ワルドが現れ、メイガスファイブはピンチに陥る。 才人の危機にシエスタは決意し、己が身をより強く変えてくれと、研究所所長エレオノールに申し出る。 才人たちのピンチに現れたのは、『妖精獣』となった、シエスタであった。 第7話『雪風のタバサ』 普段ずっと本を読んでいて、めったに話さないタバサ。才人はそんなタバサに興味を持つ。 何度もアプローチしてみるが、すげなくかわされる。それどころか、アプローチがシエスタとルイズにばれ、ぼこぼこにされる始末。 一番の親友であるキュルケになぜタバサが話したがらないのか聞いてみるが、彼女にもわからない、という。 ちょうどその時、才人とルイズとタバサの3人に、出動命令が下される。 いい機会と思い、何度もタバサに話しかける才人。むくれるルイズ。 しかし、タバサから返ってきたのは、「深く関わらない」という、謎めいた台詞だけだった。 第8話『暗黒騎士の秘密』 街に出たルイズと才人の前に、暗黒騎士ワルドが現れる。変身して戦うことを主張する才人だったが、何故かルイズはしぶる。 あわやというところでシエスタの加勢が入り、ワルドは撤退する。 なぜ変身をしぶったのか、ルイズに問い詰める才人。応えないルイズ。 学院に帰って、才人はギーシュにそのことを話す。ギーシュの話した内容は、驚くべきものだった。 ワルドは元ルイズの婚約者で、メイガスファイブの隊員に選出される可能性の最も高い騎士だったのだ。 彼が何故裏切ったのか。再び現れたワルドに、才人はその疑問をぶつける…。 第9話『孤島の決闘』 トリステイン辺境の孤島で、ガリアが何かを探しているらしいという情報が学院に入る。 それが古代の超兵器かもしれない、ということで、ルイズと才人、そしてシエスタが派遣される。 ここぞとばかりに才人にモーションをかけまくるシエスタ。べべべべつに犬がどうしようと知ったこっちゃないけど!と邪魔するルイズ。 調査の結果、その島に眠るのは、『恋愛成就の秘宝』だという。 シエスタとルイズの、血で血を洗う戦いの幕が、今切って落とされた。 第10話『銀麗の騎士』 突然襲ってきた暗黒騎士ワルドと、土くれのフーケの波状攻撃に、ピンチに陥るメイガスファイブ。 しかし、そのピンチに、銀色に輝く鎧を身に纏った戦士に、助けられる。 戦士は『銀麗銃士アニエス』と名乗る、女性騎士であった。 彼女はトリステイン魔法研究所の生み出した新兵器、『銀銃』の使い手で、以降、メイガスファイブの補佐と、戦術指導を行うと言う。 彼女曰く、メイガスファイブの動きには無駄が多すぎる、とのこと。 それに激昂したキュルケとモンモランシーとルイズが、珍しく共闘し、アニエスに戦いを挑むのだが…。 602 名前:せんたいさん[sage ] 投稿日:2006/10/29(日) 20 19 25 ID G4a+YxuG 腰が痛くて死にそうでつotz 風邪の次は腰痛かよorz しかも今日日曜で病院やってねえし明日早番だしorz まあそれはともかく、6〜10話です。 こんなかんじで、5話ずつ考えていっております。 気に入ったエピソードはひょっとするとフルに書くかもしれんけど、エロは一切ないので…。 いかんな、そろそろエロいのかかんとここが何のスレか忘れてしまうorz ではノシ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7411.html
前ページ次ページゼロのロリカード 「何も読めんな・・・・・・」 ジョゼフはやや落胆したような声で呟いた。 土のルビーをその指に、始祖の祈祷書をその手に。 何度か祈祷書をパラパラとめくるものの、文字が光り浮かび上がる気配は一向に無い。 「俺にとってまだ必要な時ではない、と言うことか・・・・・・」 尤もジョゼフとしては読めないなら読めないで、それも構わなかった。 今覚えている呪文だけでも、充分過ぎる。新たな魔法を覚えなくても特に不都合はない。 「これで四の指輪と四の秘宝の内、五つが我が手にある・・・・・・か」 指輪が二つ、秘宝が三つ。と言っても、集めたからどうだというものでもない。 少しだけ興味が湧いたから、なんとなく収集している程度に過ぎない。 ジョゼフは、人質である少女達に目を向ける。後ろ手に縛られ、身動きが取れない二人の少女。 「・・・・・・全く。片方はおよそ闘争に向く性格ではなく、もう片方は杖を落として持っていないとはな」 自分を含めて虚無同士戦わせ、戦おうと思っていた。 しかし虚無を使えないのではと、最早興味は半ば失せていた。 「正直ギリギリだったからね」 ウォルターは、悪びれる様子もなく言い訳をする。 ルイズを攫ってきた経緯は、既に報告済みであった。 タバサの裏切りから、虚無魔法により強化された剣でヨルムンガントを破壊された事まで。 ――――――しかし、杖を落としたという報告は嘘であった。 ルイズは一度拾った杖を、混戦の中でも絶対に手放さなかった。 杖のないメイジが、どれほど無力で役立たずであるかをわかっているから。 例え片手を犠牲にしようと、両足を犠牲にしようと、杖だけは手放さない。 ルイズにはそれくらいの覚悟があった。 実際には、杖は落としたのではなく――――――ウォルターに奪われただけであった。 「まあよい、まだロマリアが残っているしな。どの道、あのような小娘共に最初から期待はしておらん。 それよりも・・・・・・ヨルムンガントの改良が必要だな。虚無で壊れているようでは、話にならんぞ?」 「わかっている。事が終わって戻り次第、早急に改良を進めよう」 ルイズは考える。 杖を奪ったのは――――――最初は、呪文を唱えさせない為・・・・・・だと思っていた。 自分を捕えているガーゴイルを魔法で破壊されない為に、ウォルターが杖を奪うのは当然のこと。 しかし・・・・・・今も杖を持っているウォルターが、それを報告しないのがいまいち解せない。 ジョゼフは虚無の担い手と戦いたがっている。杖を渡してくれれば、自分はジョゼフと戦える。 そのジョゼフの意思を無視し、ウォルターが杖を渡さない理由・・・・・・導き出される帰結。 つまり・・・・・・アーカードに零号開放をさせる為なのだ。 私という人質がなくなれば、アーカードは零号開放する必要はなくなる。 自慢の不死性で持久戦に持ち込み、ゆっくりと全てを殺していけばいいのだ。 だからこそウォルターは杖を奪い、私とガリア王ジョゼフと戦わせないようにした。 ジョゼフの強さはわからない・・・・・・が、私が死ぬにしてもジョゼフが死ぬにしても。 ウォルターにとって面白くない、望ましくない状況に陥るから杖を渡さないのだろう。 故にルイズは杖のことを言わない。少なくとも、今はまだその時ではない。 まだ・・・・・・付け入る隙があるかも知れない。置かれた状況が絶望的となるまでは行動は起こさない。 ジョゼフと対決するのは――――――最後の手段だ。 とりあえず、ウォルターからは敵意を感じない。 杖を奪われた時も、「悪いようにはしない」と言われた。 あの夜の会話からも、ウォルターはアーカードと心底闘いたいだけなのだと感じ入った。 だから・・・・・・今はまだ、ウォルターの言葉を信用しておこうと思う。 † ウォルターは考える。 ――――――自分は今、ルイズの杖を奪い、持っている。 しかしそれをジョゼフに報告はしないし、勿論渡すこともしない。 もし渡してしまえばジョゼフは虚無同士で戦いたがり、ルイズに杖を返すだろう。 ルイズの気性からしても・・・・・・もう一人の担い手とは違い、十中八九勝負を受けるに違いない。 そうなれば勝つのは間違いなくジョゼフ。それだけジョゼフの虚無は強力だ。 ルイズに勝ち目はない。そして負ければ怪我は免れない、最悪死ぬことも有り得る。 そうなれば己の目的遂行に於いて、非常に困る事態となりかねない。 ルイズに危害が及べば、アーカードの気まぐれなど簡単に吹き飛ぶだろう。 なんとか零号開放させても、アーカードが自分とタイマンしてくれなければ意味がない。 死の河が敵を飲み込むその間に、適当にはぐらかされ、逃げられたらどうしようもない。 ルイズを完全な人質として扱い、闘わなければ殺すと言うこともやれないことはない。 だがそのようにして、強制的にアーカードと対決するのは・・・・・・最後の手段だ。 それにアーカードが、ルイズを助ける為ならば自分の命を懸けることすら辞さない心持ちなのかもわからない。 そして・・・・・・少女ながらもアーカードの主人であるルイズに、少なからず畏敬の念を感じる。 インテグラと似ていて、それでいて別の・・・・・・人間としての強さ、その魅力を感じる。 あの夜の会話で、真剣に話を聞き、答えてくれたルイズに、多少なりと好意を感じている。 (・・・・・・悪いようにはしたくない) とは言え、そんな真意までペラペラと喋る程、自分はお人好しでもない。 情報が少ない中、疑問に思うことが数あろうに。 それでもルイズが杖のことを言わないところを見るに、なかなか聡明な少女だ。 己の置かれた状況を的確に認識し、決して取り乱さず、冷静に判断をしている。 先の闘争でもそうだった。・・・・・・もう一人の怯えてるだけのとは大違い。 (ホント・・・・・・アーカードがムキになるのもわかる気がする) ウォルターは胸中で呟く。 鉄の女として完成されたインテグラとは違い、まだ発展途上。 だがインテグラと同じように、大成するだろうその器。 アーカードでなくとも・・・・・・、その将来に楽しみを覚えるというものだった。 だから・・・・・・今はまだ、結果としてルイズに危害が加わるような真似はしない。 「・・・・・・そういえば、元素の兄弟はいないの?」 ウォルターはふと気付いて訊ねた。 ガリア首都リュティスのヴェルサルテイル宮殿には、いくつもの花壇が存在する。 同時にガリアの騎士団は、それぞれ花壇の名にちなんだ名称を持つのである。 しかし・・・・・・北側には花壇が存在せず、表向きは存在しないという騎士団があった。 タバサも所属していた裏の仕事を一手に担う連中、『北花壇警護騎士団』。 殆どが所属している者同士の顔も名前も知らず、様々な厄介事・面倒事を請け負う実力派の騎士達。 その中でも珍しく、四人組の兄弟で仕事をこなす者達がいた。 「虚無の担い手の所在を、長期間調べさせていたからな。いい加減休みが欲しいそうだ」 ダミアン、ジャック、ドゥドゥー、ジャネットの四兄弟。 ウォルターの強さに比べれば、大多数のメイジはまるで相手になりはしない。 が、彼らは卓越した北花壇騎士団の面々の中でも、さらに随一の実力を持っていた。 四人組としても、個人としても。ハルケギニアでは数少ない、戦力として頼りに出来る連中。 元素の兄弟がいたのなら、色々と役に立つのだが・・・・・・いないのであれば仕方がない。 「ヨルムンガントは?」 「一体だけだが既に手配はしてある。そう時間は掛からずに届けられる筈だ」 ウォルターの質問に、ビダーシャルが答える。 トリステインから戻る途中に予め連絡を入れていた。 零号開放させるのに、今のところ集結しているガリア兵だけでは心許ない。 打てる手は全て打っておいた方がいい、当然ながらヨルムンガントがあって越したことはなかった。 「また破壊されたりせんだろうな」 ヨルムンガントは目下生産中。 一体破壊された今、現在稼動可能なのは今から届けられる一体のみであった。 それまで破壊されるのはあまり面白くない。 「虚無はこっちにあるし、大丈夫だと思うけど――――――」 † (ヨルムンガントが・・・・・・もう一体!?) ルイズの胸中が驚愕に染まる。 ウォルター、ジョゼフ、そしてエルフのビダーシャルは、対アーカードの打ち合わせをし始める。 もはや自分達は眼中に無いのか。お構い無しに話をし続けている。 ルイズは耳を澄まして、会話の内容を聞く。 ――――――なるほど、要するにアーカードに零号開放させることを目的としているわけだ。 ウォルターがそうしたいのは、予想ついていた。 アーカードを倒す為に、拘束制御術式の零号開放は必須事項であるからだ。 が、ガリア王ジョゼフまで――――死の河を――――この世の地獄を見たがっているとは。 (・・・・・・エルフ) ルイズは心の中で呟いた。ハルケギニアの人間にとって、最も恐るべき敵。 テファと違ってハーフエルフではない、純粋なエルフ。 会話を見聞きするに、エルフはあまり乗り気ではない様子であった。 が、それにしても人間と組むエルフなんて・・・・・・。通常考えられる事態ではない。 ルイズはエルフを見つめる。ルイズの体が俄かに震えた。 実際に、戦ったわけでもない。その強力な先住魔法を、目の当たりにしたわけでもない。 それでも・・・・・・わかる。肌が敏感に感じ取る。心が理解する。 仇敵の秘めたる力に、メイジとして、虚無の担い手として、畏怖を覚える。 そんなエルフにヨルムンガント、そしてウォルターの実力は言わずもがな。 さらに虚無の担い手であるジョゼフも・・・・・・恐らく戦力に数えられるだろう。 運ばれる途中で、空から見たアーハンブラ城とその周辺を思い出す。 ガリア艦隊は無いようだったが、布陣されている兵の数は、外にいただけでも相当数。 間違いなく・・・・・・アーカードが零号を解放せざるを得ない環境が作り出されている。 敵方が圧倒的物量を有し、同様に物量をぶつけねば効率の悪い状況。 且つ、私と言う人質がいる所為で悠長に殲滅する暇もない、時間的に差し迫った状況。 (アーカードが・・・・・・死ぬ?) 命を全て吐き出した状態のアーカードは、心臓を貫かれれば死ぬ。 そしてウォルターは、その殺せる状態のアーカードと闘うことを望んでいる。 虚無がなければ、反射の掛かったヨルムンガントを破壊する方法は無い。 もしウォルターとヨルムンガントとの波状攻撃を受ければ・・・・・・。 アーカードはきっと退かない。私を助ける為に。 退却しようとしたとしても、私に危害を加えると脅されたら・・・・・・アーカードは――――――。 (いえ・・・・・・アーカードなら、・・・・・・大丈夫) 信じるしかない。アーカードなら勝つ。 私が信じる私の使い魔なら、アーカードなら。 自分を助けてくれる。こんな奴らに負けるわけがない。 (でも・・・・・・出来るなら・・・・・・) 私を助けに来なくても構わない。 アーカードが死ぬ可能性を考えるなら・・・・・・。 ・・・・・・それに、ガリアとの戦争にもなりかねないのだ。 アーカードが助けに来るのは、様々な要素を鑑みるに好ましくない。 そう、助けに来なくてもいい。 (それならそれで、自力で何とかして見せるから・・・・・・) ルイズはギュッと唇を結び、拳を強く・・・・・・血が滲みそうなほどに握り締めた。 ◇ シルフィードを飛ばして学院へと戻る。 アーカード、タバサ、アニエスはそれぞれ軽やかに中庭へと降り立った。 「タバサッ!!アーカードッ!!」 すると待ち構えてたように走ってきた、燃える様な赤髪の女。 キュルケと、さらにコルベールが走って来た。 「ルイズが攫われたんですってね」 「・・・・・・オスマンから聞いたのか」 学院内で起こった事件。 ヨルムンガントの残骸の後始末も含め、責任者であるオスマンには王宮へ行く前に報告していた。 キュルケはコルベールと共にオスマンに問い質し、そしてこうして待っていたのだった。 「そっちの人は?」 キュルケの言葉にアニエスはフードを取る。 普段日差しがある時は、アニエスはフードを被っていた。 まだ他者の血を飲んでいない、真の意味で吸血鬼となっていないアニエスにとって、日差しは体を蝕むもの。 それ故に日中に出歩く時は、フードを被るのが常であった。 「アニエスくん・・・・・・」 「・・・・・・変に気遣われても煩わしい、普通にしていろ」 顔を見て気付いたコルベールの対応に、アニエスはそう言うとフードを被り直す。 既に復讐の件については決着がついている。今更あーだこーだ言及するつもりもない。 「あ・・・あぁ・・・・・・」 コルベールは申し訳無さそうに頷いた。 「・・・・・・助けに行くんでしょ?」 キュルケの言葉に、誰も答えない。その態度をキュルケは無言の肯定と察する。 「私も行くわ」 「・・・・・・足手纏いはいらん」 はっきりとアーカードは告げた。 「言ってくれるわね。お言葉ですけど、私とタバサのコンビネーションは身を以て知ってる筈よ? それにルイズは友達よ、助けに行かない理由はないわ。それにタバサのお母様だって助けなくちゃいけないでしょ」 キュルケの言葉に、アーカードはタバサへと視線を向ける。 タバサは己の母親のことは何一つ言っていなかった。 自分の中だけで決着をつけるべきことであり、わざわざ言う必要はない・・・・・・ということか。 視線に気付いたタバサは、小さく答える。 「母もアーハンブラ城にいる、だから問題ない」 「そうか。それならばついでに救出できるの」 母がアーハンブラ城へ連れて行かれたこと。 その旨が書かれた手紙が、トリスタニアに行く前にタバサのもとに届けられていた。 ルイズを助けに行くと同時に、母親も助け出せる。 都合が良いのか悪いのか、その安否がわからない以上は何とも言えないが。 アーカードは再度キュルケへと目を向け、理由を指し示す。 「確かにコンビネーションは素晴らしいが・・・・・・キュルケ、お前の実力はタバサにすら遥かに劣る」 「そうね、否定しないわ。でも連携するんだし問題ない、むしろ補って余りあると思うけど?」 キュルケの主張に対し、アーカードはかぶりを振って否定する。 「言い方が悪かったな、連携がどうこうと言うわけでない」 「じゃあ・・・・・・どういうことよ」 「仲間思いは結構なことだがな。聞くがキュルケ、お前はいざという時にタバサを見捨てられるか?」 「・・・・・・そんなこと、できるわけないでしょ」 キュルケは質問の真意が分からないまま、眉を顰めつつ否定した。 「だろうな、それはタバサも同じだ。故にお前の存在が足枷になる」 アーカードは淡々と通告する。 タバサも反駁することなく、静かにそれを聞いていた。 「短期決戦での連携は買うがな、長期戦にならんとも限らない。魔力の切れた足手纏い二人を同時には守れん。 となれば、自分の始末は自分でつけられる吸血鬼のアニエスを除けば、当然連れて行けるのは一人だけだ。 まだアニエスは他者を守る程の余裕はない。そしてタバサよりも経験不足で弱いお前を守るのは、負担が大きくなる。 シルフィードで向かうこと、戦力としてのカウント、そしてタバサ自身の因縁と・・・・・・その為すべきこと」 アーカードは一拍置いて、射抜くようにキュルケを見つめた。 「その、いずれも・・・・・・お前に勝る」 キュルケは反論しようと思うが、口篭る。・・・・・・確かに、タバサと比べれば私は弱い。 戦闘経験は言うに及ばず、同じトライアングルメイジでもその魔法の威力も精度も段違い。 そして・・・・・・時に、友愛が足を引っ張ることになりかねないことも認識した。 キュルケは一度だけ嘆息をつくと、観念したように口を開く。 燃ゆる強き瞳で、アーカードの紅瞳を見据える。 「・・・・・・わかったわ。そのかわり――――――」 「んむ、必ず皆で帰って来る」 アーカードの言葉に、キュルケは安堵の息を漏らす。 変に意固地になられても困るし、はっきり言わないと納得しないだろうと、半ば取り繕った言葉だった。 実際にはルイズやタバサの母の安否は知れないし、誰一人帰って来れない可能性も0ではない。 とは言え・・・・・・その言葉を、決して嘘にはしない気負いはある。 ――――――その時だった。 空気が一変し、凍りつく。 急激に周囲の気温が下がるような錯覚に、誰もが囚われた。 ・ ・ ・ ・ アーカードは――――その人物が歩いてくる方向へと――――振り向く。 そしてその人物と同様に、アーカードは嬉々として殺意を剥き出しにした。 本来いる筈のない・・・・・・その人物が放つそれと、アーカードが放つそれ。 二つが衝突し、混ざり合い、空間を埋め尽くす程の圧迫感となる。 体中に鋭い針を・・・・・・何千本何万本も突き刺される、そんなような感覚に襲われる。 アーカードは、思わぬ宿敵との再会に――――――酷く凶暴な笑みを・・・・・・浮かべていた。 前ページ次ページゼロのロリカード
https://w.atwiki.jp/sinoalice_kousatu/pages/62.html
ウェポンストーリー 実装時期 none/ none/ none/ none/ none/ none/ none/ none/羽ばたきの杖 精霊奉葬SS1点確定ガチャ none/曙光の杖 特化43 none/氷妖精の休息 SS1点確定PickUpガチャ none/孤滅の毒花 猛狼と雅熊 none/翠雨の杖 純真ノ花束 none/幽世の音響杖 正義の楽隊 none/炎花の姫杖 特化42 none/巣立ちの杖 聖ノ祝祭19 none/仄暗い水瓶の杖 特化41 none/賢人の秘杖 世界ノ軌跡3 神殿の杖 聖ノ祝祭5 深潭の瞳 怠惰な臙熊 煌めく妖香(百錬) 百錬ノ果テ 蠱惑の籠杖 振袖警察、出動! none/癒水惑星の杖 覇者ノ頂キ2 none/薄羽の杖 特化40 none/殺戮の女王杖 浄火の訪れ none/豊穣の祈り 稲穂の守護者 none/悪魔の手 特化39 none/燃焼する命 リサイクルガチャ9 none/授けの杖 嫉妬の奏蛇 none/暴海の杖 傀儡館の演者達 none/海瓶の杖 特化38 潤沢の杖 傲慢ノ獣翼 甘美な果実 大食の虎舞 none/夕闇の鈴蘭の杖 特化37 none/剥製の首 SS1点確定+SS出現率6%ガチャ~陰・陽属性武器PickUp~ none/堅牢なる砦の杖 絶美の楽奏 none/青い果実の杖 精霊奉葬SS1点確定ガチャ none/神癒の杖 憤怒ノ狼宝 none/赤月の杖 特化36 none/治癒妖精の籠杖 強欲ナ舞鴉 none/産屋の護り手 第4回キャラクター人気投票結果ガチャ none/蜻蛉の杖 特化35 none/不死の鳥籠の杖 リサイクルガチャ8 none/紳士の時計の杖 淘汰ノ深潭 none/冥界の杖 死禍祭特化 none/創造の杖 4周年記念武器配布 none/銘酒の奇跡 4th ANNIVERSARY SELECTION none/夜訪騙し 冥宮ノ邁進2 none/瀉血の針杖 冥宮ノ邁進2 none/風響の呼杖 禍・凶禍・惨禍特化(復刻) none/アスクレピオスの杖 冥宮ノ邁進 none/神秘の白杖 冥宮ノ邁進 none/双竜の宝杖 傲慢の獣兵 none/樹女神の腕 強欲ナ疾鴉 none/慈光の杖 純潔の械好 none/心の点滴 美男への変貌 none/朽ちた時間の杖 特化34 none/清廉の水杖 燭火の風来 none/水秤の杖 リサイクルガチャ7 none/永劫の灯火杖 特化33 愛憎の果て 版菓の闇 滅厄の炎 聖ノ祝祭8 none/幽月の杖 特化32 none/冷徹の王 精霊奉葬水属性SS1点確定ガチャ none/錬金術師の杖 入湯の旅装 none/流星の杖 淘汰ノ果テ3 氷羅針盤の杖 初心者ナビリニューアル配布 邪念の杖 初心者ナビリニューアル配布 none/墜風の杖 クリスマス記念武器配布 none/氷鉄の杖 華宴の聖夜 none/解放の余波 特化31 none/沈黙の木馬 虚妄の撒き餌 none/太陽神の杖 特化30 冬品の氷杖 鹿角の狩人 none/魂の杖 リサイクルガチャ6 none/美への渇望 閑雅の鎚弦 none/花の精霊 特化29 none/無力の杖 精霊奉葬火属性SS1点確定ガチャ none/白色矮星の杖 淘汰ノ果テ2 none/朧げの道 淘汰ノ果テ none/悲嘆の操杖 特化28 none/生命の息吹 食祭の支度 none/雪幻の杖 業火の泡沫 none/慈愛の誘惑 特化27 none/クイーンロッド 憤怒の破狼 収奪の杖 花守の奉仕者 露命の樹杖 睡眠の揺り籠 静寂の祈り 強欲ナ淑鴉 博愛の雫 惨禍祭特化 純真の杖 幼年期ノ再来 生誕の宝錫杖 特化25 造波の杖 凶禍祭特化2 森神の祭杖 新生活応援ガチャ 水母の月影 特化23 幻の理 強欲な黒鴉 陽光の秘鏡 聖ノ祝祭 祈祷師の叫び 3周年武器記念配布 月夜の杖 精霊奉葬「淫蠍」報酬 大海の杖 傲慢ノ鼓獣 慈愛と執着 特化22 巻貝の杖 特化21 薬屋の愉悦 大食の術虎 叢雲の杖 白銅の旅人 プランツルーン 嫉妬の刻蛇 幽冥への誘い リサイクルガチャ4 煉獄の使者 特化19 照らす神光 特化20 来世の寝台 傲慢の獣騎 贄の涙 耽美の旋律 脆弱な愛の杖 恋菓子の祈り 呪樹の杖 憤怒ノ狼牙 遍く鎮魂 嫉妬の鎖蛇 鬼火の案内灯 大食の書虎 遠海の魚影 怠惰な熊皮 輪門の杖 悪夢ノ詠歌ログイン報酬 未洗練への反逆 年末年始JD祭記念武器配布 救済の導 リサイクルガチャ3 欺瞞の大火 強欲ノ鴉爪 守護者の杖 豪傑の将星 黒霧の灯 傲慢の白獣 雷鳴の杖 嫉妬の舞蛇 火輪の杖 特化17 星海の杖 特化18 縫い付く情念(錬) リサイクルガチャ錬 偽婦人の杖 特化15 夜明けの祝福 特化16 ジャッジメント 2nd ANNIVERSARY SELECTION 冥途の予言 2周年記念武器配布 風招きの杖 憤怒の狼鎖 麗しの黒杖官 白銀の星 占い師の杖 アリス オルタナティブ・ブラッド 海巨人の杖 憤怒の狼壊 零度の杖 水属性限定ガチャ 同胞の心 憤怒ノ狼紺 癒しの導き 強欲な寒鴉 戦いの儀 強欲ノ鎧鴉 蜘蛛の糸杖 運命紡ぐ糸車 大将首の杖 逆光の憧憬 月猫ノ願ヒ 怠惰な熊面 棘の枝 特化12 継承の杖 特化2 誓約の鍵 成金の宝物庫 独裁者の杖 特化8 氷山の杖 籠ノ灯リ 侵蝕の棘 純潔ノ響 炎囀の恵杖 逢魔ノ遺響 栄光の杖 賀正の宴 咆骸の杖 終焉ノ声 王妃の青い鳥 紋日の銀煙管 吊るされた男 特化13 祈雨の杖 特化14 開花の杖 特化11 氷神の杖 特化10 命の選択 特化9 来世の崩壊 羞恥ノ泪 真実と虚偽 特化7 黙祷の杖 特化5 竜神の餞別 特化4 風鹿の御蔭 夜会の狂騒 護衛夜叉 憤怒の狼砕 幻魔の杖 リサイクルガチャ 信者の嘆き リサイクルガチャ2 不条理な断罪 星散る聖夜 魔戒の杖 Library Summer Collection 双頭の杖 傲慢の獅子 腐食の蕾 大食の虎牙 僧侶の錫杖 リリース記念ガチャ 刻の蒼杖 リリース記念ガチャ 決起の杖 リリース記念ガチャ 祝福の杖 暴蝕と拒蝕 不倶戴天 リリース記念ガチャ 神風の杖 狂炎ノ調ベ 日輪招来杖 叡智ノ雫 愚直な少年と奇跡の杖 リリース記念ガチャ 号鐘の杖 不思議の国の小夜曲 異教の杖 路地裏ノ死神 深祈の杖 暗室ノ研究者 気遣いの杖 賤劣ノ銃槍 骸の杖 特化 宝樹の杖 特化3 再生の息吹 特化6 未修熟の杖 リリース記念ガチャ 入江の時砂 リリース記念ガチャ 服従の杖 リリース記念ガチャ 輪廻転生 正義の鉄槌 忘却の杖 チャームメダル 水帝の杖 匣中ノ熱帯魚 気炎万丈 二人の淑女 具現の杖 正義の鉄槌 森林の救済 血染メノ外套 逆行の杖 運命紡ぐ糸車 氷滝の宝杖 白銀の誓い 禁言の杖 茨ノ騎士 千里眼の杖 黒の禁書 権力の王笏 リリース記念ガチャ 悪魔の杖 リリース記念ガチャ 賢者の杖 リリース記念ガチャ 見習いの杖 リリース記念ガチャ 白雷の杖 リリース記念ガチャ 狂裁者の杖 リリース記念ガチャ
https://w.atwiki.jp/mangaroyale/pages/76.html
鬼と戦士と喧嘩師 ◆ozOtJW9BFA 特に目印の無い夜の住宅街を、津村斗貴子と花山薫はコンパスだけを頼りに市役所を目指しに進む。 セーラー服の少女、斗貴子はその姿に不釣合いなUSSR AK74を持ち周囲への警戒の念を顕にしている。 白いスーツの巨漢、花山は手に有るデイパックのみを荷物に悠然とした様子で歩いていた。 「君に言って置きたい事がある、私は錬金戦団という組織に所属する戦士だ」 「……戦士?」 「急にこんな話をしても信じ難いだろうが、私はホムンクルスと言われる人食いの化け物と戦ってきた。 君は私を助けてくれた程に強く勇敢だが、やはり誰かと交戦になったら私に任せてくれ」 「………」 「私は戦いを自分の使命として生きてきた、人々を守る為に命を賭ける覚悟は出来ている」 斗貴子から戦士だと聞かされて、花山は何処か合点がいった。 始めは只の女子高生だと思っていたが、殺し合いの最中だというのに落ち着きを失わない様子は 言うなれば命の危険に晒される事に、慣れているように思われた。 花山は斗貴子への認識を改めると共に、斗貴子の自分への誤解も解くべきだと感じる。 「姉ちゃんが戦士だというのは分かった、戦いに命を張る覚悟が有る事もな。 だがそういう覚悟なら俺にもある、こちとら喧嘩師として渡世してきたんだ」 「君の戦闘経験は、普通の人間相手の戦いだろう? 今の状況では、ほとんど意味を為さない」 「……俺は暴力で身を立てて生きてきた。自分の筋は通してきたが、世間の法に背を向けてきた事には変わりねえ」 「………」 「どんな理不尽にあっても誰にも文句は言えねぇ、てめぇの力だけで通る。それが通用しない時は死ぬだけだ」 「……分かった、ならば有事には君の力を借りよう」 「……ああ」 花山から喧嘩師としての覚悟を聞かされて、斗貴子は何処か合点がいった。 斗貴子は花山がこの危険な状況で同行する相手として頼もしく感じていたのは、最初に会った時に助けて貰ったからだと思っていた。 だがそれだけでは無い。 斗貴子は花山から錬金の戦士にも劣らぬ、気概を感じていた。 ◇ ◆ ◇ 赤髪に黒衣の男が、住宅街を歩く。 その男は、人であって人では無い。 その身から発する気は、獣をすら圧する。 その黒衣の下の高密度に発達した筋肉は、人のそれとは異なる形状を表す。 何より一日たりとて何かを殺傷せずにはいられないその精神が、彼を人の範疇から大きく逸脱させていた。 ―――鬼――― あるいはオーガ、あるいは地上最強の生物と呼ばれし男、範馬勇次郎は闘争に餓えていた。 SEXより!食事より!水より!酸素より!求めて止まぬものに餓えていた。 (こことは違う場所で、もう一度花火を上げるか……) 勇次郎は先刻見た地図を、思い返す。 (ここから近くで人の集まりそうな所は、北に在る繁華街だな。 あるいは東に在る、病院辺りか。……………!) 勇次郎の足が止まる。その赤髪が逆立ち、その双眸の光が増す。 遂に鬼は、前方に見付けたのだ―――餌を。 ◇ ◆ ◇ 斗貴子と花山の足はその場に縫い付けられた様に動けず、その足は30m程前方の人物から離せない。 その30m程前方の人物―――勇次郎の放つ、威圧感に縛られている。 (あいつは、最初の場にいた男か!?) 幾多のホムンクルスと渡り合ってきた斗貴子が、勇次郎に完全に呑まれていた。 「……勇次郎っ」 花山が発した言葉に、斗貴子はようやく我に返る。 そして確信する、前方の人物は殺し合いに乗っていると。 「会いたかったぜ、花山」 勇次郎が発した言葉は、字面だけとると友好の意を示す言葉。 だが勇次郎の発する異常な威圧感が、そう感じ取らせない。 「最大トーナメント以来の縁」 勇次郎からは話す言葉が分からなくとも、その意思が伝わる程の威を発していた。 「そそられていた」 その意思とは即ち、宣戦布告。 「君はあいつを、知っているのか?」 「ああ……どうやら俺に用があるみてぇだ、姉ちゃんは下がってな」 「いや、あいつは危険なのだろう? ならば私も、放っておく訳にはいかない」 「相手は一人だ、二人じゃ掛れねぇ」 「では君が下がってろ」 斗貴子は先程までとは違い、覇気を取り戻している。 「君に喧嘩師としての誇りが有るのは分かる、だが私にも戦士としての責が有る。 特に今のような状況で危険な人物を、放置していく訳にはいかない」 花山は無言で斗貴子を見る、その表情からは何の感情も読み取れない。 そして拳を握り締め、振りかぶる。 充分に溜めの効いた拳を、斗貴子の頭目掛けて振りぬいた。 (!!?) 斗貴子が自分の頭目掛けて振りぬかれたと思った拳が、頭上を通過したと気付いたのは 背後から真剣を突き付けられた様な殺気を感じ取ったのと、ほぼ同時だった。 何時の間にか斗貴子の背後に立っていた勇次郎が、花山の拳を受けふき飛んで行く。 「おめぇが、この場で仕掛けてくるなら……」 花山は悠然と、地に伏す勇次郎に語り掛ける。 「二対一だぜ」 「伝説の喧嘩師、花山薫の拳」 勇次郎は地に伏した状態から、手を使わず無拍子で立ち上がった。 「その速さッ!重さッ!どちらも近代格闘技一流の水準を凌駕している」 勇次郎の双眸の光が更に強さを増す、それは怒りの為かそれとも喜悦の為か。 「だが倒れ付した相手に戦意を問い、追撃の機を逃すとはなんという軟弱ッ!!消え失せいッッッ!!!」 歴戦の戦士と伝説の喧嘩師が、同じく敵とする者を相手に肩を並べる。 対峙するは、人にして人に在らざる者―――鬼。 【D-4北西部 一日目 早朝】 【津村斗貴子@武装錬金】 [状態]:健康 [装備]: USSR AK74(30/30) 水のルビー@ゼロの使い魔 [道具]:支給品一式、USSR AK74の予備マガジン×10 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔 キック力増強シューズ@名探偵コナン [思考・状況] 基本:主催者をなんとしても倒す 1:花山と協力して勇次郎を倒す 2:花山と市役所に向かう 3:カズキ、またはブラボーと合流。パピヨンには警戒 【D-4北西部 一日目 早朝】 【花山薫@グラップラー刃牙】 [状態]:健康 [装備]:無し [道具]:支給品一式、川田のタバコ@バトルロワイアル [思考・状況] 基本:乗っていない奴は助けるor手を出さない 1:斗貴子と協力して勇次郎を倒す 2:斗貴子と市役所に向かう 3:襲ってくる奴はぶっ飛ばす 【D-4北西部一日目 早朝】 【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】 [状態]健康 闘争に餓えている [装備]ライター [道具]打ち上げ花火3発 [思考] 基本 闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す 1 斗貴子と花山を喰う 2 此処以外の人が集まりそうな所へ行き、花火を上げる 3 首輪を外したい (備考) デイパックと二枚の紙(日本刀と自転車)は消防署内に放置しています 050 摩天楼の死兆星 投下順 039 北斗神拳の恐怖 050 摩天楼の死兆星 時系列順 052 永遠の夢に向かって 041 ふたりはスカーフェイス 津村斗貴子 084 はらわたをまく頃に~侠客立ち編~ 041 ふたりはスカーフェイス 花山薫 084 はらわたをまく頃に~侠客立ち編~ 042 オーガ=範馬勇次郎 範馬勇次郎 084 はらわたをまく頃に~侠客立ち編~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8859.html
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリスタニアの時刻は、既に昼の十二時を迎えていた。 街の各所にある大衆食堂にレストラン、そして露店からは美味しそうな匂いが漂ってくる。 丁度腹を空かした人々は各々が気に入った店へと入り、腹を満たす。 平民や下級、中級の貴族たちは自宅で食べるか、もしくは仕事で得た雀の涙ほどの賃金や年金だけで十分に食べれる場所へと足を運ぶ。 露店や食堂はたちまち賑やかになり、人々は笑顔を浮かべて始祖ブリミルから与えられし糧に感謝の念を送る。 それなりの地位と領地を持つ上級貴族たちは貴族専用のレストランへと足を運び、この国の安泰を願ってフルコースランチを頂く。 三つ星シェフの手によって作られた仔羊のソテーを頬張る彼らの顔にもまた、笑みが受かんでいる。 こうして見ると浮かべる笑みの意味はバラバラではあるものの、誰もが皆笑顔を浮かべて昼食を頂いている。 それは正に、「食べる」という行為が何事もなく行えることを有難いと思っている証拠でもあった。 気温は高く太陽も眩しくなってきたが、それよりも人々が浮かべる笑顔の方がはるかに眩しい。 もしもこの街に旅の絵描きが訪れているのなら、きっと人々が浮かべる笑顔を一つの絵としてメモ帳に描いている頃だろう。 自分の昼食を食べるのも忘れて絵を描くのに夢中になった彼は、きっとこう思うに違いない。 『あぁ、この国は平和なんだな――――』と。 そうして街が笑顔で溢れている中、とあるブティックの二階にある一室で、ルイズは落胆の表情を浮かべ項垂れていた。 「あぁ~…駄目だわ。全然、思い浮かばないじゃないのぉ…」 椅子に座った彼女の目の前に置かれた大きな丸テーブルの上には、鞄に入れて持参してきたメモ帳と【始祖の祈祷書】が置かれている。 ルイズは今、幼馴染であるアンリエッタ王女とゲルマニア皇帝アルブレヒト三世の結婚式で詠みあげる詔を考えている最中であったが、何を書こうか未だに悩んでいた。 デルフにこの事を説明してから一週間ほどが経つが、一ページ分どころか未だ一文字も書けないでいる。 もしもこの詔が授業でいつも出るレポートや作文であるのなら、ルイズなりの文章で書いたモノを素直に提出するだろう。 しかし…これは幼少のころから共に遊び笑い合った幼馴染が隣国のゲルマニアへ嫁に行く事を盛大に祝う詔だ。 いつも提出しているレポートの様な文章では無理だとルイズは理解していたが、それと同時に自分の文才の無さに嘆いてもいた。 ここへ来てから何とか書こうとしてそれでも書けず、既に四十分近くもの時間が経過していた。 「こんな調子じゃあ、姫様の結婚式に間に合わないっていうのに…」 「わざわざ鞄に入れて持ってきた本は何なのかと思ったが、まさか例の祈祷書だったとはな。感心するなぁ」 苦悩が垣間見える言葉を呟くルイズとは対照的に、向かい側の椅子に座っている魔理沙は面白いものを見るような目で向かい側の椅子に座るルイズに言った。 その言い方にムッとしたのか、不機嫌な表情を浮かべたルイズは魔理沙の方へとその顔を向ける。 「そこまで言うのならアンタが書いて…イヤ、下手に任せたら適当に書いちゃいそうだからやめとくわ」 ルイズは途中まで言って、魔理沙の性格なら自分の代わりに詔「じゃない何か」を書きそうな気がしてきたので、言うのはやめた。 「それは残念だ。今なら何か良い詔とやらが書けそうな気がするんだがな」 魔理沙はニヤニヤと笑いながらそう言うと、最後に確認するかのようにルイズは質問した。 「…アンタ、この世界の文字とか…もう書けるようになったの?」 ルイズの問いに、魔理沙は軽く頷きながら返事をする。 「意味は分からないが、とりあえず見様見真似で書くことは出来るぜ?」 彼女の口から出た答えに、やはり書かせなくてよかったとルイズは安堵した。 ブルドンネ街の中央通りから少し外れた所に、今ルイズ達の居るブティックがある。 この店は基本一人の客に対し数人の店員が対応し、服のリクエストからサイズの調整までを身振り手振りで教えてくれるのだ。 客層は主に商家の平民から下級の貴族までとトリステインではかなり幅広いのだが、客層の三分の二が魔法学院から来る生徒たちであった。 将来この国を支える貴族の卵たちはここで舞踏会などの行事用に着る服やドレスを発注したり、店内で販売しているアクセサリーを買ったりしている。 そのアクセサリーの一つ一つも店側で雇っているデザイナー達が作ったモノで、手作りなので値段もそこそこ高い。 しかしそれ故にオリジナリティーに溢れており、値段の方も貴族の子供たちが青春時代の記念にと買える程度に設定されている。 トリスタニアを遊び場とする貴族の子ども達にとって、正に流行の発信場とも言えるところだ。 その店の二階部分には幾つか部屋があり、今二人がいる控室は階段を上ってすぐ右手にある。 大きな観音開きの窓の傍に丸テーブルと椅子が二つ、そしてテーブルの下にゴミ箱が置かれているだけで他の家具は見当たらない。 精々テーブルの上に羽ペンが数本入ったペンケースとインク瓶、それにメモ帳兼こぼしたインクをふき取るための紙が置かれているだけだ。 部屋の中に明りを灯すものが無いのは基本夕方頃には店を閉めるからであり、決して売り上げが悪いワケではない。 その代わりなのか天井には大きなファンが取り付けられており、魔法によって羽根が回転して風を作り出す仕掛けとなっている。 この部屋は順番待ちをしている客や客の友人などが控える為の部屋であり、無礼がないよう中はちゃんと綺麗にされている。 魔理沙は窓から入ってくる微妙な風を受けながら窓の外から見える通りを眺め、ルイズは回転しているファンのちょうど真下でアンリエッタへの詔をなんとか書こうと奮闘している。 時折思い出したかの様に魔理沙が色んな話を持ち出し、ルイズは羽ペン片手に返事をしたり突っ込んだりしていた。 しかしその部屋にいるのは彼女達だけで、二人と一緒にいる筈の霊夢はどこにも見当たらない。 そもそも何故ルイズと魔理沙がこんなところにいて、あの巫女がいないのか…? それにはちゃんとした理由があった。 ルイズと魔理沙が詔について会話をしてからしばらくして、ふと誰かがドアをノックしてきた。 突然のノックに魔理沙は一瞬誰なのかと思ったが、ルイズは慣れた様子でドアの方へと顔を向け「どうぞ」と言った。 その声が聞こえたのか、ドアの向こうにいた店のボーイが「失礼いたします」と言ってドアを開け、部屋に入ってくる。 利発そうな容姿のボーイは店が用意した専用の服を着た平民で、しっかりとした教育を受けているのかルイズと魔理沙に対し恭しく頭を下げた。 「ミス・ヴァリエールにミス・マリサ。ミス・レイムの゛着替え゛が終わりましたので、最後のお目通しをお願い致します」 「あら、もう一時間経ったのね…。わざわざご苦労様」 ここにいない巫女の名前を口にしたボーイの言葉に、ルイズはそう言って満足げに頷くと鞄から財布を取り出し、そこからエキュー金貨を二枚ほど取り出した。 ルイズが金貨を手に取ったと同時にボーイも頭を上げるとその顔に笑みを浮かべ、ルイズの方へとスッと白手袋をはめた右手をそっと差し出す。 「やっぱりこの店は最高ね。平民の従業員もしっかりしているから嫌いになれないわ」 彼女はそう言って、差し出されたボーイの手のひらに金貨を置くとテーブルの上にあった始祖の祈祷書やノートを鞄に入れて部屋を後にした。 それに続いて魔理沙も部屋の隅っこに置いていた箒を手に取って出ようとした時、ふとボーイのすぐ横で足を止めた。 足を止めた魔理沙に前方のルイズとすぐ横にいるボーイがキョトンとした表情を浮かべると、魔理沙は何かを探すように懐に手を入れた。 「おぉ、あったあった!」 ゴソゴソという音が辺りに五秒ほど響いたところで、何かを見つけた魔理沙が大声を上げた。 その顔には喜びの色が浮かんでおり、一体何なのかと魔理沙以外の二人は怪訝な表情を浮かべる。 黒白の魔法使いが懐から取り出したのは…小さな包み紙に入った一個の飴玉であった。 白い包みに水色の斑点模様がついた包み紙に入った飴玉は、ゴルフボール程では無いにせよ普通の飴玉よりも若干大きい。 そして、金貨や銀貨どころか銅貨二枚で買えそうなそのお菓子を彼女は先にルイズの金貨が乗ったボーイの手の上に置いた。 「ま、チップの代わりに食べといてくれ」 魔理沙はその顔に笑顔を浮かべてそう言うと、ボーイを残したまま部屋のドアを閉めた。 パタンという音ともに閉じられたドアの向こうから聞こえてくる二人分の足音を耳に入れながら、ボーイは視線を下に落とす。 キラキラと輝くエキュー金貨が二枚に、何味かも知らされていない正体不明の飴玉…それが彼の手の上にあった。 金貨はともかく、飴玉を渡されるとは思ってもいなかった彼はただただその顔に苦笑いを浮かべた。 「まぁ偶には、こういうのも良いかな?」 ボーイはそう言って金貨と飴玉を、ポケットの中にしまいこんだ。 入れた瞬間、心なしか少しだけ元気になったような気がした。 部屋を出た後、後をついてきた魔理沙にルイズは開口一番先程の事を口にした。 「全く、何をするかと思ったら飴玉なんてね…」 「別に良いじゃないか。きっと初夏の思い出になると思うぜ?」 対して魔理沙はルイズの後ろを歩きつつ、彼女の言葉に笑顔を浮かべて返事をする。 ルイズはそんな黒白の態度に小さなため息をつきつつも、目の前に見える階段をゆっくりと降り始める。 (さてはて、レイムの奴はどんな姿になったのかしら…?) ルイズはひとり呟きながら、一階にいるであろう紅白巫女の事を思い浮かべて心の中でひとり呟く。 背後に魔理沙を従えて歩く彼女の顔には、期待に満ちた笑みが浮かんでいた。 店のメインフロアがある一階に降りてきたルイズと魔理沙は近くにいた女性従業員の言葉に従い、奥にある試着室へと向かう。 そこには既に他の女性従業員が二人いて更にその向こうには姿こそ見えないものの、二階にはいなかった霊夢がいた。 何やら話し合いをしていた彼女らは、やってきたルイズたちに気づいて振り向くと頭を下げた。 「これはこれはミス・ヴァリエール。貴女様のご注文通り、彼女は生まれ変わりましたよ…文字通りの意味でね?」 やけに気取った喋り方をする右の従業員の言葉と共に彼女らはスッと横にどき、ルイズたちに゛今゛の霊夢の姿を見せた。 そしてルイズと魔理沙は…彼女の言葉に嘘偽りは無かったと目を丸くして驚く。 何故ならそこには、文字通り゛生まれ変わった゛博麗霊夢がいたのだから。 赤いセミロングスカートの代わりに履いているのは、足首まで隠す黒のロングスカート。 スカートと同じ色の服と別離していた白い袖は身に着けておらず、代わりに纏うは新品の匂いが仄かに漂う白のショートブラウス。 そして袖や服と同じく彼女の外見的特徴の一つであった赤いリボンは外されていて、代わりにスカートと同じ色のショートハットを被っている。 黒のロングヘアーを白いリボンでポニーテールにし、以前よりも若干サッパリとした印象を放っていた。 そんな容姿を持った少女が、つい一時間ほど前まではこの街ではかなり目立っていた存在だったのだ。 もしも着替える前の彼女を知らぬ者たちに、その事を詳しく説明してもすぐには信じないであろう。 霊夢を召喚しもう二ヶ月近くも一緒にいるルイズと、霊夢とは数年の付き合いがある魔理沙がそう思ったのである。 それ程までに彼女のイメージがガラリと変わった。――――否、変わり゛過ぎてしまった゛。 「ご予約の際に承った注文通り、これからの季節に合わせて当店の既製服でコーディネイトいたしましたが…どうでしょうか?」 二人して驚いている姿を目に入れながら、左にいた女性従業員がルイズの顔色を伺うかのように問う。 「これは…もう完全に別人ね」 店員の問いに答えるかのように、ルイズはその顔に苦笑いを浮かべながら呟く。 装い新たな霊夢の姿を見て、やはり彼女に新しい服を着させたのは正解だったと改めて思いながら。 「く、くく…え~っと、どちら様だったっけ?」 一方の魔理沙は、意地悪そうな笑みをその顔に浮かべて霊夢に向けてそう言った。 黒白と同じくモノクロな印象漂う服装とは対照的な、どっと疲れた゛元゛紅白の表情を見て笑いを堪えながら。 「私の服が変わっただけで、何がそんなに可笑しいのかしら…」 着慣れぬブラウスの襟を左手で摘みながら、霊夢は照れ隠しするかのように呟く。 しかし色々と従業員にまとわりつかれた所為なのか、その顔には疲労の色が浮かんでいた。 ※ 場所は変わって、ブルドンネ街中央に建てられた市中衛士隊の詰所本部。 街の各所にある詰所と比べ二回りもでかい砦の様な外観を持つここには、総勢五十人近くもの平民出身の衛士やその関係者がいる。 市内で有事が起こった際には増援の衛士を派遣し、事件の規模が大きければ大きいほど重要な場所となってくる。 有事を起こした下手人がメイジであった場合は王宮から魔法衛士隊が駆けつけてくるが、その間は衛士たちが命がけで下手人の逃亡を阻止しなければならない。 衛士たちの方も下手人を逃がしては市民の命と自分の給料と出世に関わるので、文字通り命を懸けて日夜街に潜む悪と戦っているのだ。 その詰所本部の中にある一室で、女性衛士のアニエスがテーブルに突っ伏していた。 彼女の顔にはこれでもかと言わんばかりに疲れの色が浮かんでおり、医者が見れば彼女の睡眠時間が短いことにすぐ気づくであろう。 本来は過去にあった事件の記録などを閲覧する為の部屋で、彼女は空気が抜けて萎んでいく風船のようにため息をついていた。 部屋の中には多数の本棚があり、その棚の中にある本には過去トリスタニアで発生した事件の詳細が事細かに記録されている。 しかし長方形の木製テーブルにはそれらしい本が一冊もなく、テーブルの上には突っ伏しているアニエスの上半身だけが乗っていた。 どうしてここに彼女がいるのかというと、その理由はあるのだが実際のところそれ程大したモノでもない。 ただ、この時間帯には多くの衛士たちが詰所本部の中にいるので、一人でいられる唯一の場所がここだけであったからだ。 まぁこの時間帯ならばこんな部屋に来る者もいないだろうと、アニエスはこの部屋で昼寝をすることにしたのだ。 しかしいざ寝ようとしても中々寝付けず、窓を開けて部屋の中に風を入れても目を瞑って夢の世界へ入る事も出来ない。 誰も呼びに来ないせいか気づけば一時間という貴重な休憩の時間を、テーブルに突っ伏しているだけで終わらせてしまった。 「はぁ~…」 結局眠れなかったか。彼女は心の中でそう呟いてからゆっくりと上半身を起こす。 「…!っうぐぅ…!」 瞬間、腰の方から襲ってきた刺激が脊椎を通って頭に到達し、うめき声と共にトロンとしていた彼女の両目を無理やり見開かせた。 まだ二十代前半だというのに疲労の溜まった腰の関節がパキポキと音を立て、彼女の体に強烈な刺激を与えたのである。 その音がハッキリと耳に入ってきた彼女はハッとした表情を浮かべて部屋を見回し、誰もいないことに安堵してため息をついた。 「なんてこった。まさか二十代にしてこんな体になってしまうとは…」 アニエスは自分の体に向けて「情けない」と叫びながら鞭打ちたい気分に駆られた。 いくら衛士隊として鍛えていると言われても結局は人間であり、体の疲労には耐え難いものがある。 しかも女性である為か男性隊員の倍より努力し、体を鍛えなければいけないのだ。 普通なら女性は男性よりもある程度優しく扱われる筈だが、ここではそんな常識は通用しない。 女性だからという理由で生ぬるい訓練をしていては、街に潜む悪党外道な犯罪者を捕まえるどころか碌に近づく事さえできないのだから。 だからこそ彼女は努力した。 いつか果たそうと心に誓う一つの゛願い゛を胸に秘めて。 「本当なら休暇でも貰いたい所だが…貰ったとしても気になって休めそうにないな…」 彼女はそう言って、今からもう二週間ぐらい経とうとしている出来事を思い出した。 あの日…月が隠れた夜に「鑑定屋」がいるという場所を、物乞いの老人゛だった゛者に案内してもらった時の事だ。 そこは、旧市街地の中にある古びた扉の先にあった。 古びた階段を物乞いの老人を先頭にアニエスとその同僚であるミシェル、そして彼女らが所属する部隊の隊長という順で降りていく。 明りに照らされた階段を降りるのは造作なく、老人を含め誰一人転ぶ事もなく降りた先に作られた部屋へとたどり着いた。 「これはこれは。今夜は少し変わったお客が、三人も…」 扉を開けて待っていたのは、椅子に座って薄い本を読んでいた初老の男性であった。 外見で判断すれば四十代後半から五十代半ばなのだろうが、顔に刻まれた皺の数はそれ程多くもない。 白が混じっている茶色の髪をオールバックにしており、顔に浮かぶ表情も非常に穏やかなものであった。 着ている服もゲルマニアにいる平民出身の上流商人が好むような長袖の白いブラウスの上に黒いベストを羽織り、ズボンは茶色の革モノといった組み合わせだ。 「我が主。ご覧のとおり今日は衛士隊の者が三人…見てもらいたい物品があるとの事で」 ここまで案内してくれた老人がそう言うと、男性はアニエスたちの顔を見てウンウンと頷く。 「逮捕しに来た…って感じじゃあ無いな。ウン」 男はそう言うと座っていた椅子から腰を上げ、机の前にいる老人の傍に立った。 平均的な共同住宅の一室と比べて少し大きめ程度の部屋の中には、人がまともに住める環境が作られていた。 書類や本が置かれた大きな机と比べてやや小さめなベッドをはじめとして洋服ダンスやクローゼットもあり、奥にはキッチンかバスルームへ続くであろうドアが見える。 部屋の両端にそれぞれ二つずつ壁に沿って置かれている本棚は五段もあり、その中に本や書類などがこれでもかと納められている。 もはや年代物と化した古い石造りの床の上に赤茶色の絨毯を敷いていて、その場で座っても苦にはならないだろう。 部屋自体が地下にあるという利点と魔法で動くシーリングファンのおかげで室温は暑過ぎずまた寒過ぎることもなく、申し分はない。 しかし部屋を照らす明りが天井の二箇所から吊り下げられているカンテラだけなので、部屋全体の雰囲気はかなり薄暗い。 もしもここに普通の人が住むのであらば、壁の方にもカンテラを取りつけるべきであろう。 「まぁお客なら歓迎するよ。ようこそ、旧市街地にある『鑑定屋』――――もとい『私の部屋』へ」 男は目の前にいる三人の客にそう言って、両手を思いっきり横に広げた。 客と認められたアニエスとミシェルは、隊長の言っていた゛噂゛が本当なのだと今確信した。 『旧市街地の何処かにいるという盲目の老人に金貨を渡すと、元学者がやっているという鑑定屋へと案内してくれる』 その噂は、何処で誰が言い始めたのかは知らない。 ただ消えることも広がることもなく、チクトンネ街に住む平民たちや下級貴族達の間でハチドリの様に忙しなく飛び回っている。 そして噂というのは人から人へと伝わる度に尾ひれがつくもので、この話もまた例外ではなかった。 曰く…その元学者はガリアで何かの研究をしていたのだが事故により職を失ってトリスタニアにやってきた。 曰く…彼はハルケギニアやアルビオンといった大陸を歩き回った平民で、古今東西の出来事を知っている。…など、飛び回る内に様々な姿へとその身を変えていた。 その変化した噂の中には盲目の老人は幽霊で、彼の後ろをついていくとあの世へ連れて行かれるといったオカルト要素が入り混じったものまで存在する。 ある貴族は単なる怪談話だと笑い、ある平民は実際にいるのだろうと心躍らし、ある浮浪者はその老人を見たことがあると嘯く。 結局はどれが真実かは誰もわからず、今でも真夜中の酒場でそれを話し合う者たちがいる。 何人かは酒の勢いでテンションが上がり、その噂が真実なのかどうか確かめるべく旧市街地へ赴くのだが大抵は何の収穫も無しに戻ってくる。 例え酔っていたとしても廃墟が立ち並び、歩く屍のような姿になった浮浪者や街に住めない犯罪者たちの巣窟にそう長時間といたくはないのだろう。 何せ昼間でも恐ろしい雰囲気を放っている場所なのだ。真夜中ならば尚更であろう。 「どれくらいかは分からんが…これで足りるか?」 部屋の主人からの歓迎に隊長は懐を漁って手のひらに収まる程の革袋を取出し、机の上に放った。 体を机の方に向けた男がその袋の口を締めていた紐を解くと、中から六枚ほどの新金貨が転がり出てきた。 それに続いて銅貨と銀貨がそれぞれ二枚ずつ袋からその姿を出し、合計十枚の貨幣が机の上でその存在をアピールしている。 たったの十枚だけであるが、この十枚だけで下級貴族が一週間ほど仕事もせずに暮らしていける程の金額になるだろう。 「先月出た俺の給料の残りだ。これで調べてくれるくらいのことはしてくれるだろ?」 隊長の質問に、部屋の主は机の上に出した貨幣を手に取りながらも答える 「コレは趣味でやってるから金は充分なんだが……まぁ、明日のランチは美味しそうなものが食えるよ」 遠まわしに礼を言われた隊長は微かな笑みをその顔に浮かべつつ、今日ここへ来た目的を彼に告げた。 「今日は、アンタに見せたいものがあってここへ来たんだ」 隊長はそう言ってまたも懐を漁り、ここへ来る途中アニエスとミシェルにも見せた゛ある物゛を男と老人の目の前で取り出した。 それは先程貨幣が入っていた革袋と同じサイズのもので、その中には青い水晶玉の破片が入っていた。 破片の大きさはコガネムシ程度しかなく、うっかり落としてしまうとこの薄暗い部屋で見つけるのは困難を極めるだろう。 「実は昨日、ブルドンネ街の方で妙な事件があってな…現場を調べていたらこんなものを見つけたんだ」 隊長はそう言って袋から破片を取出し、男の目の前に突き出した。 男はその破片を見て怪訝な表情を浮かべたが、それを手に取ろうとはしない。 「これよりもっと小さいのを最初に見つけたんだが不思議な事に溶けて無くなっちまってな、それで気になって現場を調べてみたら溶けて無いコイツを見つけたのさ」 訝しむ男を前にして話を続ける隊長に、後ろにいるアニエスは彼が『最初に見つけた破片』の事を思い出した。 昨日起こった『妙な事件』の現場で見つけた小さな破片は、あの後一分も経たずに溶けて無くなってしまった。 後に残ったのは青色の小さな泡と、それを掴んでいた隊長の指から上がる白い煙だけだった。 あの後、別に火傷の心配はないと隊長自身が言ってひとまずは現場にあった遺体と内通者としての証拠品である書類などを持って詰所へと戻った。 しかし帰ってきて直後…隊長が「スマン、忘れ物をした」と言って現場であるホテルへ戻り、一時間もしないうちに帰ってきた。 その時はなんとも思わなかったのだがその翌日に隊長からの手紙を読み、旧市街地へと来たアニエスとミシェルはその破片を見て驚いた。 何せ最初に見つけたモノよりもおおきい破片を、隊長は一人現場に戻って見つけ出していたのだから。 「あの後部屋のどこかにまだあるんじゃないかと思ってな、箪笥やクローゼットの裏とか下を見てみたらドンピシャッ!ってワケさ」 まるで推理小説に出てくる少年探偵の様な軽い口調で得意げに言った彼を見て、二人は思った。 あぁ、この人は探偵業とかやりたかったんだろうな――――と。 そんな風に彼女が回想の最中にいる間に、隊長から詳しい話を聞いていた男はその顔を顰めていた。 先程の怪訝なそれから一変した事を見逃す三人ではなく、この破片に関して彼は確実に何か心当たりがあると察した。 表情を変えた男は顎に手を添えて何か考えた後、横にいた老人に声を掛けた。 「君、右の棚の三段目から四、五年前のレポートを取ってくれ。…あぁロマリアじゃなくてガリアのヤツな?」 「了解です。我がある…―先生」 ゛先生゛と呼ばれた男に命令された老人は自分の言葉を途中で訂正しつつ、懐から杖を取り出した。 ここへ通じる錆びたドアを開き灯りを作って階段を照らしてくれたその杖の先を、老人は自らの顔に向ける。 アニエスたち三人は老人がこれから何をするのかもわからず首をかしげると、彼はぶつぶつと呪文を唱え始めた。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん
https://w.atwiki.jp/before-one/pages/1022.html
せんよくきとう 千翼祈祷 【分類】 アイテム 折り紙 灰 禁術 魔道具 【概要】 『千羽鶴(キロジュラーヴリク)』 『祈り』を現実化させる魔術。 「1日」で「千羽の鶴」を「一人」で「祈りを込めて」折ることで発動する儀式魔術。 儀式が達成されると、どんな祈りでも叶うとされる。 ちなみに叶うのは「祈り」であって「願い」ではない。 なお、ここでいう1日というのは【日が昇って沈むまで】である。