約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7568.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ ソーサリー・ゼロ これまでのあらすじ 第一部「魔法使いの国」 君は、若く勇敢な魔法使いだ。 祖国アナランドを危機から救うべく、カーカバードの無法地帯を横断する旅を続けていた君だったが、ふと気がつくと周囲の光景は 一変していた。 そこは、ハルケギニア大陸のトリステイン王国と呼ばれる未知の土地であり、魔法を使える特別な血筋の者たちが王侯貴族として君臨し、 大多数の平民たちを支配しているという、奇妙な世界だったのだ。 君がこのハルケギニアにやって来たのは、ルイズという少女が執り行った、『≪使い魔≫召喚の儀式』が原因だった。 ルイズは大いに戸惑いながらも、とにかく君を≪使い魔≫にすることに決め、自分に対する忠誠を求めた。 今すぐカーカバードに戻る方法がないと知らされた君は、当面の庇護を得るために彼女に従うことに決めるが、自分が重大な任務を帯びた 魔法使いであることは、黙っておいた。 ルイズは、貴族の子弟のための学び舎『トリステイン魔法学院』の生徒であり、君も彼女の学業につきあわされることになる。 君の『ご主人様』であるルイズは、名門貴族の令嬢でありながら、どういうわけか魔法がまったく使えぬ劣等生であり、 心ない者たちから≪ゼロのルイズ≫という屈辱的な名で呼ばれていた。 ハルケギニアに召喚されてから七日目に、事件が起きた。 学院の教師コルベールが、解読の助けを求めて君に手渡した≪エルフの魔法書≫と呼ばれる書物が、≪土≫系統の魔法を操る正体不明の盗賊、 ≪土塊(つちくれ)のフーケ≫によって奪われたのだ。 森の中でフーケに追いついた君は、盗賊の正体が美しい女だと知るが、そこに思いもよらぬ乱入者が現れる。 かつて、君によって全滅させられたはずの『七大蛇』のうちの二匹、月大蛇と土大蛇が、君とフーケに向かって襲いかかってきたのだ。 さらには、ルイズと、彼女の同級生であるキュルケとタバサまでもが駆けつけ、激しい闘いの末、月大蛇は打ち滅ぼされ、土大蛇は逃走した。 学院に戻った君は、ルイズと学院長のオスマンに、自らの正体と≪諸王の冠≫奪回の任務について打ち明ける。 ふたりは大いに驚きながらも、君の話を信じ、君がカーカバードに帰還する方法を調べると、約束してくれた。 翌日の夜、学院で催された舞踏会から抜け出したルイズは、君のところへやって来て、必ず≪ゼロ≫から抜け出し、君より偉大な魔法使いに なってみせる、と宣言する。 君は、『ご主人様』のルイズや学院の人々、そして、この美しい世界に対して愛着を覚えるようになっていたが、自身の内側で起きている 恐るべき異変には気づいていなかった。 第二部「天空大陸アルビオン」 トリステインの王女アンリエッタが学院を訪れた日の夜、君とルイズはオスマン学院長の呼び出しを受ける。 オスマンが話すところによれば、彼の旧友であるリビングストン男爵という貴族が、遠く離れた二つの場所をつなげる≪門≫を作り出す魔法を 研究しているのだが、その≪門≫は、このハルケギニアと、君が居たカーカバードを結んでいるかもしれぬというのだ。 カーカバードへ戻れる望みが出てきたことを知った君は、男爵が住まうアルビオンに向かうが、その旅には『ご主人様』のルイズと、 かつて君を相手に決闘騒ぎを起こしたギーシュが、強引に同行してきた。 港町ラ・ロシェールで≪土塊のフーケ≫と再会した君は、彼女と力を合わせて水大蛇を倒すが、七大蛇がアルビオンに拠点を置いて、 何かを企んでいることを知る。 『白の国』の異名をもつアルビオンは、雲と霧に包まれて天空を漂う、驚異の地だった。 空飛ぶ船でアルビオンに降り立った君、ルイズ、ギーシュの三人は、リビングストン男爵の領地へ向かうが、アルビオンは国を二分しての 内乱に揺れており、男爵は行方知れずになっていた。 男爵を探してとある村に立ち寄った君たちは、そこで酸鼻きわまる虐殺を行っていた傭兵たちと出くわし、捕らえられてしまう。 君は、以前にオスマンから貰った、意思を持つ魔剣であるデルフリンガーの謎めいた力の助けを借りて、彼らの首領格であるメンヌヴィルを 討ち取り、残った傭兵たちは、突如現れた、アルビオン王国の皇太子ウェールズ率いる一隊によって、殲滅された。 君たちがアルビオンに来るにいたった事情を知らされたウェールズは、リビングストン男爵は貴族派と呼ばれる反乱軍によって捕らえられ、 むごたらしく殺されたと告げる。 ウェールズは、帰還の望みが絶たれたことを知らされて意気消沈する君を、ニューカッスルの城へと招いた。 追い詰められた王党派にとって最大の拠点であるその城には、男爵の遺品や書き置きが残されているかもしれぬのだ。 秘密の地下通路をたどってニューカッスルの城に入った君たちは、倉庫で男爵の日記を見いだすが、君の役に立つような記述は何もなかった。 ≪門≫の探索をあきらめてトリステインに戻ることに決めた君たちは、トリステインから派遣された大使、ワルド子爵と出会う。 婚約者であるルイズとの偶然の再会に喜ぶワルドだったが、その正体は、アルビオンの貴族派を背後から操る結社≪レコン・キスタ≫の 一員だった。 巨大なゴーレムがニューカッスルに襲来した混乱に乗じて、国王の命を奪い、ウェールズをも手にかけようとしたワルドだったが、その場に 君が立ちふさがる。 ルイズとデルフリンガーの助けもあって、どうにかワルドに打ち勝った君だったが、そこに火炎大蛇が現れ、ワルドは逃走する。 火炎大蛇が倒されたのち、ウェールズは君たちに、裏切り者のワルドにかわって、トリステイン大使の務めを果たしてほしいと頼む。 務めとは、かつてアンリエッタ王女がウェールズに宛てた恋文を、王女のもとへ持ち帰ることだった。 この恋文の存在が明らかになれば、締結直前にあるトリステインと帝政ゲルマニアの同盟は破棄され、トリステインは単独で、 ≪レコン・キスタ≫が主導する新生アルビオンの脅威に、立ち向かうことになってしまうのだという。 君たちに手紙を託したウェールズは、数日のうちに全軍による突撃を敢行し、名誉ある戦死を遂げるつもりだと言うが、ルイズはそれに反対し、 トリステインへの亡命を勧める。 ウェールズはルイズの意見に頑として耳を傾けなかったが、ついで説得に立った君の言葉に心を動かされ、たとえ卑怯者と呼ばれようとも 生き延びて、≪レコン・キスタ≫を苦しめてみせると告げた。 ウェールズと意気投合した君は、彼が語った噂話から、七大蛇が≪レコン・キスタ≫の頭目クロムウェルの忠実なしもべだと知る。 君たちはニューカッスルの城から脱出する難民船に便乗し、トリステインへの帰路につくが、その頃アルビオンでは大陸全土に、 奇妙な甲高い音が鳴り響いていた。 それは、二つの世界を隔てる壁が引き裂かれた音だった。 第三部「さまよえる冒険者」 トリステインに帰り着いた君たちは、アルビオンでの顛末とウェールズの決意をアンリエッタ王女に報告した。 アンリエッタは感謝の証として、ルイズに王家伝来の秘宝≪水のルビー≫を譲り、また、同じく国宝ではあるが、何も書かれていない頁が 連なるだけの書物≪始祖の祈祷書≫を預け、その調査を頼む。 アンリエッタは、大国ガリアを中心とした≪レコン・キスタ≫討伐のための諸国連合軍が結成され、トリステインもこれに参加することを、 君たちに伝える。 これによって、アルビオンの脅威は遠からず消滅することは確実なため、トリステインとゲルマニアの同盟締結は中止され、アンリエッタは、 ゲルマニア皇帝との望まぬ政略結婚をまぬがれることとなった。 学院に戻った君はタバサと言葉を交わし、彼女の家族が重い病に臥せっていると知り、近いうちにその者の治療に行くと約束した。 数日後、君は荷物持ちとして、ギーシュとその恋人モンモランシーとともに『北の山』へ行くことになったが、そこで土大蛇の襲撃を受ける。 土大蛇を倒した君だったが、深手を負ったギーシュを救うために、ブリム苺のしぼり汁を使い果たしてしまった。 この薬は、タバサの家族に試すはずの癒しの術を使うために、必要不可欠な物なのだ。 タルブの村の出身で、今は学院に奉公している少女シエスタの実家に、同じ薬があることが明らかになり、君、ルイズ、タバサ、キュルケ、 シエスタの五人は、タルブへと向かった。 シエスタの実家でブリム苺のしぼり汁を手に入れた君は、シエスタの曾祖父が、君と同じように≪タイタン≫の世界からハルケギニアに 迷い込んだ人物であることを知る。 君たちは、シエスタの曾祖父がくぐり抜けた≪門≫が存在するという洞窟を調べ、最深部にそれらしき場所を見出したが、そこに≪門≫はなかった。 洞窟の調査を終えた君たちがタルブに戻ると、そこに、生きた泥沼のような姿をした≪混沌≫の怪物が来襲する。 草木や家畜をむさぼり喰い、土や空気を汚染して、どんどん大きくなる≪混沌≫の怪物を前に、進退窮まる君たちだったが、ルイズが偶然開いた ≪始祖の祈祷書≫に現れた呪文を唱えると、まばゆい光が炸裂し、怪物は跡形もなく消滅した。 デルフリンガーによれば、ルイズが唱えた呪文は、伝説の失われた系統≪虚無≫のものであり、彼女は≪虚無≫の担い手なのだという。 ルイズが普通の≪四大系統≫の魔法を使えなかったのは、≪虚無≫を受け継いだ代償だったのだ。 タバサに連れられて、彼女の実家にやってきた君が見たものは、恐るべき毒に心を狂わされ、我が子を目にしておびえた声を上げる、 タバサの母親の姿だった。 タバサの母親に癒しの術をかけた結果は、完治には程遠いものだったが、それでも彼女は、恐怖や苦痛からは解放されたようだった。 タバサと、彼女の実家を管理する老執事は涙ながらに喜び、君は、タバサがガリア王家の出身であり、彼女とその両親は王位継承争いの 犠牲者だということを知らされた。 タルブから持ち帰ったブリム苺のしぼり汁は数に余裕があったため、君は次にルイズの姉を治療するべく、ルイズの実家である ラ・ヴァリエール公爵の屋敷へ行くが、そこで執事殺しの疑いをかけられ、屋敷の中を逃げ回ることになってしまった。 ルイズの姉カトレアは君の無実を信じ、部屋にかくまってくれるが、そこに今回の事件の黒幕である風大蛇が現れ、君たちに襲いかかる。 七大蛇の主人クロムウェルは、正体不明の兵器を用意していたが、それを妨げる手段を知るかもしれぬ君を危険な存在とみなし、 抹殺するべく土大蛇と風大蛇をさしむけてきたのだ。 風大蛇はルイズの母親によって倒され、怪物の放つ毒を吸って重態に陥ったカトレアも、君のかけた術によって救われたが、 癒しの術も、彼女の生まれつきの体質を改善するまでにはいたらなかった。 学院に戻った君は、≪虚無≫の絶大な力を恐れたルイズが、アンリエッタと相談した末、自分が≪虚無≫の担い手であることを絶対の 秘密とし、二度と≪虚無≫の術を使わぬと決めたことを知った。 ルイズやキュルケ、ギーシュたちと一緒になって、アルビオンに向かって出征するトリステインの軍勢を見物する君の内心は、 穏やかではなかった。 クロムウェルが用意しているという、この世界の常識を超えた恐るべき秘密の兵器とは、いったいなんなのだろうか? 一 夏の訪れを感じさせる陽射しを受け、額に汗をにじませながら、西の空を見上げる。 視界の遥か先を漂っているであろうアルビオン大陸の姿は、見えるはずもないが、雲と霧をまとって空に浮かぶ『白の国』の壮大な眺めは、 君の頭に刻み込まれている。 かの地では今、敵味方合わせて十万をゆうに越す大軍がぶつかり合い、火花を散らしているはずだ。 ハルケギニア諸国連合軍によるアルビオン遠征が始まって、二十日近くが経つが、トリステイン王国と魔法学院は平和そのものだ。 アルビオンにおける戦況について、宮廷からの発表はなく、人々の情報源はもっぱら、徴用された貨物船の水夫や荷役夫たちが持ち帰る土産話と、 貴族の将校たちが家族や恋人に宛てた手紙による。 君は学院とトリスタニアの町でこの大戦(おおいくさ)に関する噂を拾い集めたが、その多くは、万事が順調に進んでいることを示していた。 ──アルビオンへの進撃において、驚くべきことに、精強を謳われたアルビオン空軍の迎撃はなく、艦隊はまったくの無傷で上陸した。 ──連合軍は各地で快進撃を重ね、トリステイン軍は交通の要衝である古都シティ・オブ・サウスゴータを占領した。 ──主力をつとめるガリア軍は首都ロンディニウム攻略の準備にかかっており、もうすぐ≪レコン・キスタ≫は崩壊し、戦は終わるだろう。 噂を聞くかぎり、連合軍の勝利は揺るぎなきものと思えたが、君が本当に知りたいこと──ウェールズ皇太子の安否とクロムウェルの秘密兵器── に関する情報は、なにひとつ得られなかった。 『白の国』に上陸した連合軍はすぐさま、アルビオン王家の最後の生き残りであるウェールズの生死を確認すべく動いたが、 彼の足跡は、王党派最後の拠点ニューカッスルの城──今は瓦礫の山に変わっているそうだ──を最後にふっつりと途絶えており、 その行方は杳として知れぬという。 君は、アルビオンを発つ前夜にウェールズと交わした言葉を思い起こす。 「たとえ卑怯者のそしりを受けようとも、私は生きる」 「この命が続く限り、奴らの悪だくみを邪魔し続けてやるさ」 力強くそう言った皇太子が『名誉の戦死』を遂げたとは思えぬが、ならばなぜ、彼とその部下たちは連合軍と合流しておらぬのだろうか? また、ルイズの実家で風大蛇が語った、クロムウェルが準備しているという『百万の軍勢でも千フィートの城壁でも防げぬ、 まったく新しい武器』の存在も噂にあがらず、その実態は推測することもままならない。 追い詰められたクロムウェルにとって、起死回生の策となるであろう兵器は、結局のところ間に合わなかったのだろうか? それとも、連合軍を懐に引き寄せてから使って、一網打尽にするつもりなのだろうか? 君の不安はつのるばかりだが、アルビオンへ出向いて直接調べるわけにもいかない。 君の身分は、トリステイン魔法学院の生徒ルイズの≪使い魔≫にすぎぬのだから。 今日の授業は終わり、生徒たちは夕食までのあいだ、めいめいのやりかたで時間を潰している。 時間を潰さなければならぬのは、君も同じだ。 とくにルイズから言いつけられた用事があるわけでもなく、今の君は手持ち無沙汰なのだ。 これからどこに向かうべきかを考える。 マルトーやシエスタの居る調理場へ行けば、食糧や日用品を扱う出入りの商人から仕入れた、新しい噂を聞けるかもしれない。 噂といえば、ギーシュと話してみるのはどうだろう? 彼は武門の生まれであり、三人いる兄はいずれも、アルビオン遠征に参加しているらしい。 かの地の様子を記した手紙も、何通か受け取っているだろう。 授業が終わった直後に、東の広場へ向かっているところを見かけたので、そちらへ向かえば会えるはずだ。 そこまで考えたところで、君は唐突に、アルビオンから戻った直後にコルベールとかわした会話を思い出す。 コルベールは、君の左手に刻まれた≪ルーン≫の効果に興味を示し、人間のような知性をもつ生き物に≪ルーン≫が刻まれた例を 探してくれると言ったはずだが、あれから何の音沙汰もないままだ。 君は今の今までその事を忘れていた──考えてみれば、なんとも奇妙なことだ。 調べ物には何の進展もなかったのかもしれぬが、それでも彼の『研究室』を訪れるのは有意義だ。 彼のような学識豊かで誠実な人物と言葉をかわすというのは、悪くない時間の使いみちだろう。 どこへ行く? 調理場・二二二へ 『研究室』・一三六へ 東の広場・五三四へ ルイズの部屋・一二三へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/nolnol/pages/5959.html
上祈祷札 相場 買値/売値:文/文 備考 宝飾之れで生産可能 分類 価値 重量 特殊効果 1 なし 材料 上祈祷札:4 柳材:2上羽毛筆:2 主な用途
https://w.atwiki.jp/otassya2/pages/5487.html
上祈祷札 相場 買値/売値:文/文 備考 宝飾之れで生産可能 分類 価値 重量 特殊効果 1 なし 材料 上祈祷札:4 柳材:2上羽毛筆:2 主な用途
https://w.atwiki.jp/nobon/pages/714.html
上祈祷札 相場 買値/売値:文/文 備考 宝飾之れ?で生産可能 分類 価値 重量 特殊効果 1 なし 材料 上祈祷札:4 柳材:2上羽毛筆?:2 主な用途
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2480.html
前ページ次ページKNIGHT-ZERO ロボット工学三原則 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。 アイザック・アジモフ「われはロボット」より 「はい、ルイズ、ブレーキを踏みながらセレクターをPからNへ、一息置いてDに入れてください NからDに動かす時にはロックボタンから指を離してくださいね、シフトミスの元になりますから」 「うっさいわね!あんたを早駆けさせる時はこの棒を『1』ってのにブチこんで『あくせる』を踏んづければ いいんでしょ!んで止まる時は左足でこの『ぶれーき』って板を力いっぱい蹴る!それで充分じゃないの!」 異世界の昼下がり トリスティン魔法学院、標高が高く冷涼で快適な高原に設けられた貴族子女のための全寮制学院 授業を終えたルイズと、彼女が召喚し使い魔としての契約を交わした、言葉を話す異世界の機械KITTは 学院の敷地がある高原から街や王都とは反対方向に20リーグほどの、人里離れた広大で平坦な草地に居た その一帯の山々を所有する公爵が趣味の牧羊に励み、公爵の病没以来長らく放置されている広い牧草地 KITTの居た異世界の基準で10キロ四方の平坦な草地が、ルイズがKITTを乗りこなす練習場だった ルイズが異世界から不思議な機械を召喚してから数日、彼女はその機械の『調教』に傾注していた ヴァリエール家に居た幼少の頃から親の目を盗んで屋敷の馬に跨り、馬車を操っていたルイズにとっても その奇妙なウマ無し馬車の『操縦』は未知の物であり、また乗馬や竜乗りとは異なる興奮を与える物だった 人語を解す異世界のウマ無し馬車、感情を有する機械はルイズに自身の操作法を根気よく理論立てて教え ルイズはもっぱら勘と力技、そして「習うより慣れろ」の経験則でその機械を乗りこなしていった 理論と経験則のバランス 少なくともそれに関しては荒馬の調教と同じようなものだとルイズは思った きっと世界が違い、馬がそれに替わる別の物になっても、決して変わることのない事だと信じていた 「ひとつわかったわ、あんたは本当に異世界から来たってこと、馬車や船じゃないし、獣でもない」 飼い葉もニンジンも石炭もランプ油も、水や食事も、風石さえいらないなんて、どうかしてるわ」 「私は私の世界における最新の動力技術、水素核融合によって機動および制御のエネルギーを得ています 私の内部に封入された水素燃料が尽きるのは、あなたの孫の孫のその孫が老婆になったその後でしょう」 加硫合成ゴムの無いこの時代の馬車に装着されていた木製の転輪はこまめな手入れと交換が必要だったが KITTが履いていたグッドイヤーのタイヤはいくら不整地や石畳で酷使しても磨耗や損傷とは無縁だった その機械は単なる馬車ではなく、他に様々な能力を秘めていることにルイズは何となく気づいていたが KITTは「それはあなたに然るべきが技量が身についた時、その都度お教えしましょう」とだけ言った 世界の各所に真贋入り混じり存在するという始祖ブリミルの祈祷書に似たものかな、とルイズは思った KITTを操作する上で必要となる様々な数値をKITTの従来基準であるインチ・フィート表示にするか ハルケギニア公用のサンチ・メイル表示に修正するかについてはKITTとルイズの間でひと悶着あったが 結局、目方はハルケギニアと同じながら名称は地球準拠であるメートル法ということで双方が妥協した KITTの各種表示に用いられている異世界の文字、ルイズはアラビア数字の表記法則を一日で覚えた アルファベットなる未知の文字で記された単語類については、使用頻度の多い順から紙に書いて記憶した 強引に自分を操るルイズの生真面目な一面はKITTにとって意外で、それは魅力ともいえるものだった ルイズはもう一度KITTを急発進させる、後方確認などというものは彼女の思考回路には無かった 「ウィルトン・ナイト氏、私の操縦システムをオートマティックに設計してくれたことに感謝いたします 願わくば私を丁寧に扱うに足る技術と思慮を持った人間に恵まれる『幸運』を装備して欲しかった物です」 「始祖ブリミル・・・・・・こんな理屈っぽくてイヤな奴を私の使い魔として授けたことをお恨みします」 ルイズはこの機械の調教練習を切り上げる事に決め、草地から森の木々の間にKITTを乗り入れた 景色の綺麗な池のほとりを選び、教えられた通りにセレクターをPレンジに入れると、シートを倒した さっきまで腹にしみる轟音を響かせていた水素核融合エンジンはV8のアイドリングに似た音を発する ルイズの知らぬ低く力強い音、なんだか少しロマンチックな気分になったルイズはKITTに囁いた 「・・・・・・ねぇ・・・・・・なんか・・・お話しして・・・あんたの居たっていう異世界のことでもいいわ、聞いたげる」 「私が居た世界についての情報を開示することは、私と貴女、双方に悪影響を及ぼす可能性もあります」 「あ・・・あんたは使い魔のくせにお茶も入れられない、洗濯もできない、せめて話相手くらいしなさいよ!」 KITTは少しの間、「話相手」なる非常に高度な処理能力を要するプログラムに必要な演算をしていた 「それならば・・・私の世界の音楽でもお聞きになりますか?以前に私のパートナーだったマイケルは とても素晴らしい方でしたが、私には不快な雑音にしか聞こえない音楽を嗜好する困った癖がありました しかし貴女と私は趣味が合いそうです、私の世界が誇る至宝、後期バロック音楽をお楽しみ頂きましょう」 KITTの室内全体を振動させる独特のサウンドシステムが、バッハの管弦楽組曲を演奏し始める 聞いたことのない旋律、しかしその楽曲の持つ雰囲気は、ルイズが慣れ親しみ、飽きの来た物だった ルイズはその「まいける」とかいう奴への奇妙な感情を覚え、KITTのコンソールを軽く拳でつつく 「・・・その・・・あんたが不快な雑音とかいう、異世界の音楽とやらを、聞いてやろうじゃないの」 KITTはボイス・インジケーターをひん曲げた口の形にして唸ると、内部のコンポを作動させた そして、マイケルがとても好きだったローリング・ストーンズの初期ヒット曲を大音響でかけ始めた ルイズは最初、その刺激の強い高音と重低音に耳を塞いだが、聞きなれた宮廷音楽では感じられぬ音に 次第に陶酔し、やがてKITTのダッシュボードを平手で叩き、桃色の髪を激しく振り、歌い始めた 学院周辺の野原を走り回る運転教習の時間と、その後の音楽とお喋りの時間はルイズの午後の日課となった ルイズはKITTのメモリーにあるハードロックの中ではジャニス・ジョプリンを最も気に入った メイジとして、ヴァリエール家の娘としての人生を開きつつあるルイズと、それに伴するKITTを ジャニスが命を削り歌った「MOVE OVER」が包む、悲鳴を上げるように、救いを求めるように 自らのコンプレックスに苦しんだジャニスの人生とその最期は話さないほうがいい、KITTは思った 前ページ次ページKNIGHT-ZERO
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/101.html
前ページ次ページゼロとさっちん 「これが、曾お祖母さんのお墓です」 シエスタに案内されてそれを見たさつきは、「あ……」と声を上げてから静かな眼差しでそれを見つけた。 ここはタルブの村である。 なんだかんだと色々とあって、さつきはアルビオンの任務から帰還して、休養と称してこの村にやってきた。 どうしてタルブなのかというと、シエスタの故郷だからである。シエスタは学園で働く給仕というかメイドで、まあ色々とあってさつきと仲良しになった。 もっとも、さつきはそんなに人見知りしない性格なので学生にも教師にもメイドにもそれなりに知り合いができていた。シエスタはそれらの中でも特に仲がよいのであった。 それで三日前、 「丁度曾お祖母さんの命日が近いので、お墓参りをしようと思っているんです。サツキさんも、遊びにきてみませんか?」 「あ、どうしようかなあ……いってみたいけど、わたし、一応はルイズさんの使い魔だし」 「――いいわよ、別に。アルビオン王家はあんたのおかげで救われたようなものだし。ご褒美がわりに休暇くらいあげるわよ」 「あ、本当に? ありがとう!」 「……別にこの程度のことで感謝しなくてもいいんだけどさ……あんたはもっと、ご主人様である私に頼ってもいいんだから……!」 とかそんな会話の後に、二人は連れ立ってやってきたのだった。 まあ、さつきとしては物見遊山というか、久々に「お友達同士でお泊り」という女子高生らしいイベントが楽しみであった訳で、場所がタルブであるとかはかなりどうでもよかったのだが。 ちなみにルイズとも毎日のように一緒に寝ているわけだが、最初の三週間で慣れた。アルビオンへの旅はそれどころではなかったし。 今回は本当に彼女にとっては楽しみだったのであるが……。 とりあえずとばかりにお参りしたお墓は、まったくもって予想外のもので、何処か浮ついた気持ちがそれを見ることによってしゅんと萎んだのをさつきは感じていた。 それは―― 十字架なのだった。 弓塚さつきは、このハルケギニアでの墓の形態を熟知しているわけではなかった。 それでもなお、それはこの世界にはありえない形状なのだと察した。いや、直感したと言ってもいい。 (これは……) 目を丸くしてその墓標を見つめる。 たまたま、彼女のしるモノと同様の形態をしているのかも知れない。そう思い返したからである。 だが、無情にもというべきか、それは確かに彼女の知る形式のものであった。 墓標にはどう見てもアルファベットが刻まれていたのだ。 (……読めない) Il meurt dans EREISHIA et le monde inconnu. 「……英語じゃないみたい――えーと、これは……エレイシィア?」 恐らくはこれが人名であるというのは解った。 エレイシア、という人がここで眠っているのだとなんとなく見当をつける。 「曾祖母の墓です」 「シエスタさん?」 振り向くと、しかしシエスタはいなかった。 そして返答の代わりに、強烈な痛みと衝撃に襲われてさつきは吹き飛んだ。 ◆ ◆ ◆ 「あら、サツキはいないの?」 祈祷書を前にうんうん唸っているルイズの部屋に、キュルケはいつものようにアンロックで勝手に鍵を開けて入り込む。 ルイズはじろりと横目に睨み付けるが、いつものことなのでそれだけで済ませて 「いないわよ」 と応えた。 「いない? いつも一緒なのに珍しいわね」 「そうそういつまでも一緒ってわけにもいかないわよ」 「使い魔なんでしょ?」 「使い魔でもよ」 ルイズは不機嫌な顔で。 「友達のメイドの故郷に招待されていったわ。一週間くらい骨休めしてくるって」 キュルケは「ふうん」とどうでもよさそうに頷いてから。 「でも、サツキでしょ?」 「何よ?」 「どうせまた何か、不幸なことに巻き込まれているんじゃないかしら」 ルイズは顔を上げて何か思案するように天井に視線を彷徨わせる。 「まさか……そう毎回毎回、変なことになるなんてことはないわよ。多分」 ◆ ◆ ◆ そこにいたのは、さつきの知るシエスタではなかった。 メイド姿のエプロンを脱ぎ捨て、肩とか露出したドレス姿になっていた。その肩にはなんか何処かで見たようなタトゥーが入っている。 その手に持つのは――というより、指で挟みこまれているのは三本の長剣。 爪の如く拳から伸びている。 さつきはそれを知っていた。 黒鍵。 代行者が用いるという、礼装……。 「な、なんでシエスタさんがそんなのを持っているのかな……?」 かつて諸人の罪を背負ってはりつけられた預言者のように、さつきの体は十字架の墓標に縫いとめられていた。 右腕と左脇腹と右の脛を貫いているのは、シエスタの手にあるのと同じ黒鍵だ。 そこから生じている痛みに脂汗を流しながらも、事態のあまりの唐突な変化にさつきは混乱して恐怖を覚える以前の問題だっ。 シエスタはいつもと違う姿でいつもの笑顔を浮かべ、 「曾祖母より授かりました」 「ひ、ひいおばあさんから……」 ごくりと唾を飲み込む。 「一撃で並の死徒ならば六度は滅ぼせるという話でしたが、曾祖母が大げさにいったのか私の技が未熟なのか――それとも貴方がそもそも並ではないのか。どちらにしても、死徒相手に使うのは初めてなのでよくわかりませんが」 「あの、シエスタさん、こういう危険なものは人に向けて使うのは危ないよ……」 よくわからずにトンチキなことを口走ってしまう。 シエスタは当たり前のようにそれをスルーした。 「曾祖母はある事情があって、この世界に迷い込んだ異邦人でした。元々の世界では死徒と呼ばれる、この世界の吸血鬼とは異なる吸血鬼を狩り出す仕事をしていたそうです」 「へ、へえ……」 「曾祖母はいつしか帰還を諦めてこの世界で暮らしましたが――それでも、自分の技と使命を残しました」 さつきは問わずとも知っていることを、だけど改めて問うた。そうしてしまうくらい、目の前にいる少女と いつも、ついさっきまで一緒にいたメイドとギャップがありすぎる。 「技と、使命?」 技――それは代行者の持つ技。 対軍にも達する異能(バケモノ)じみた体術。 使命――それは代行者のするべきこと。 神の摂理に反する不死者(バケモノ)を打ち倒すこと。 「曾祖母は言っていました。もしも私の墓標に書かれている文字を知るものがいれば、それは自分と同じ世界からきたものであると――そしてサツキさん、あなたは吸血鬼ですね。曾祖母と同じ世界よりやってきた吸血鬼」 即ち、死徒。 「主の名のもとに、サツキさん、貴方を滅ぼします」 塵は塵に! 灰は灰に! 「シエスタさん!? 落ち着こう! 落ち着こうよ!」 さつきは叫ぶが、シエスタは聞いてないのか、愉悦の笑みさえ浮かべて黒鍵を持った右手を首に巻くように振り上げる。 「エイメン」 ◆ ◆ ◆ 「ま、どうせ何かあったってどうにかしちゃうわよ」 「それもそうね」 「サツキは自分で思っているより、ずっと強いんだから」 ◆ ◆ ◆ 「わー! 遠野くん助けてぇー! ピンチだよおッ!」 まあとにかく、さつきは何処の世界でも、やっぱり不幸だった。 おわり。 前ページ次ページゼロとさっちん
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6673.html
前ページ次ページゼロの黒魔道士 「フハハハハハハハ!!踊れ踊れ踊れぃ!!」 「ク、クェェェェェッ!?」 「う、うわわっ!?」 よく、普通の人間の子供がやる遊びに、『鬼ごっこ』っていうのがあるらしい。 鬼役の子供につかまらないよう、他の子供たちが逃げるっていう遊び。 遊びじゃないって点を除けば、これはその『鬼ごっこ』に近い状況だったんだ。 ……逃げるしかない。悔しいけど、空中戦はワルドの方が上だった。 「やっこさんブチ切れすぎだろ!?」 「ぼ、ボコ、大丈夫!?」 「クェェ~……」 詠唱速度の差や、身のこなしの速度はやはりあいつの方が勝っている。 立て続けに巻き起こる風の刃や矢からは逃れるので精一杯になってしまう。 加えて、チョコボが飛べない鳥なのが問題になっていた。 あいつが乗っているのは空を駆け巡るワシの頭をしたクァールみたいな猫っぽい生き物。 ボコは甲板を跳び跳ねるように避けるのに対して、 ワルドはマストの間を縫うようにすりぬけて迫ってくる。 間合いを自由自在に操る相手ってかなり厄介なんだ。 おまけに、この船が敵の物だから、ときどき敵の兵士がこっちを狙ってくるんだ。 ……さっきから、何回『スリプル』や『ストップ』を唱えたか分からない。 息もあがってきて、呪文を詠唱するのもきつくなってきた。 「あぁ、やはりこうでなくてはな!やはり力とは、弱き者を睥睨するためのもの!」 ワルドの高笑いが、マストの上の方から聞こえてくる。 逃げていてもしょうがないって思ったのはこのときだった。 帆が何枚も目隠しになって、狙うときは今しかないって思ったんだ。 「違うっ!力は……」 ワルドの言葉を否定しながら、一気にボコを駆る。 折り重なる白い帆を貫くようにデルフを突き出して、狙いはワルドそのもの。 懐までもぐりこんで決着をつけるつもりだった。 「あ、相棒、前に出すぎだってぇのっ!!」 「誰かを守るためにあるものなんだっ!!」 それは、守りたいものを守るための一撃だった…… ゼロの黒魔道士 ~第四十幕~ 守るべきもの 「ふんっ!!」 その一撃は、ワルドの腕の一振りでアッサリといなされる。 「クェッ!?」 「うぁああっ!?」 重い一撃。ただの義手とは思えないほど重厚な一撃だったんだ。 そのまま甲板に叩きつけられる。 甲板の木材が体のあちこちに刺さって小さな傷になった。 呼吸が無理矢理、体から引きはがされるように吐き出され、息ができない。 動こうにも、まずその苦しさに反応すらできない。 「悪くない義手だ!しかし、子鼠を痛めつけるには少々加減が利かぬのが難点か」 「く……」 辛うじて首を動かすと、ボコは少し離れたところでぐったりしている。 デルフは、手の届かない位置に転がっている。 なんとか、つかみたいけど、ワルドがそれよりも速く甲板に降りたっていた。 「ほぅ、手ごたえの割には持つな。流石は“神の盾”……だが、しつこすぎるっ!」 「う……が……」 禍々しい金色の爪をつけたその左手で、喉元をしめあげられる。 苦しい。目の前が歪みそうになるぐらい 「相棒ぉぉっ!?」 「あるいは、この左手をまず落としてやろうか?俺のようにな」 「わ……ワルド……」 杖を突きたてられて、声を絞り出すのが、やっとだ。 それでも、意識を手放したらそのまま動かなくなっちゃいそうだった。 だから、声を出すことに意識を集中した。 しゃべる内容は、ほとんど思いつきだ。 「死に際にまだしゃべるか?いいだろう、何を語る?」 「……お前は……何を、したいの……?」 ルイズおねえちゃんを裏切って、レコン・キスタに取りついて、ワルドの狙いが分からなかった。 目の前が真っ暗になりそうだけど、そこに納得がいかなかった。 「なかなか的を射た質問だな。教えてほしいか?冥土の土産にでも?」 「――ワルド殿っ!」 遠くで、駆け寄る足音が聞こえる。レコン・キスタの兵士なんだろうか。 「――やれやれ、余計な加勢が出てきたようだ。冥土の土産をやる暇は無いな。 最も――はなからやるつもりなぞ、微塵も無かったがな!」 「う……ぁ……」 左手の義手で首をつかまれたまま、甲板に思いっきり叩きつけられる。 息をどう吸っていたかを忘れるほど、空気が恋しい。 クラクラして、『苦しい』って声を出すことすらできない。 「生きたまま捕えた方が勲功は大きいのだが――」 揺れる視界の中に、ワルドの突きつけた杖が見える。 「――ガキ共に虚仮にされた恨みは、勲功では贖えなくてな!」 左目と右目の真中の、杖の向こうに、ワルドの歪んだ、醜い笑い顔が見える。 「あの世で俺に詫び続けるがいいっ!!ガンダールヴよっ!!」 聞きたくない勝利宣言が、頭の中にグワングワンと響いた。 ピコン ATE ~記憶の歌~ 少女は黄色い鳥の上にいた。 顔色を言えば三日飲まず食わず寝ずで過ごした者と同程度に青白い。 メルカトール号の断末魔は、タルブからもやや遅れて聞こえた。 最初は祝福のための催しの一環であると考えていた。 しかし、直後シエスタの弟からもたらされた急報が、その事実を否定した。 同級生と使い魔の、少年二人が、戦乱の真中へ、鳥馬を駆って向かったという。 まず失ったのは言葉だったが、目の前の現実を失うのも、そう離れた時間ではなかった。 そして、言葉を発せないまま、報を伝えた少年からショコボと呼ばれる鳥を奪い取り、 焔色の爆発が見えた方向を目指したのも、わずかな間であった。 後ろで友が、認めたくはないが心の奥底で友と認めた者たちが止めようとする声が聞こえた。 しかしそれは足枷にはならなかった。 ある焦燥感が、少女の頭を満たしていたからだ。 私は、また置いて行かれてしまう。 また一人取り残されて、泣いたまま終わってしまう。 彼女の乗るショコボは、風を巻いて木々を駆け抜けた。 木々を抜け、現場に近づくにつれ、 大砲の奏でる空気の振動が肌で感じるほどに近づくにつれ、 焦燥感は不安へと変わっていった。 それは彼女と、今、物理的に彼女が追いつこうとしている二人の違いから来る不安であった。 もちろん、自分も彼らも、未だ幼い身であることは承知のとおりだ。 至らず、足りないものがまだまだ多い。 ビビに足りないものは速さだったのだろう。 彼はそれを強さで補った。 何よりも強い、その優しさを足した。 ギーシュに足りないものは目標だったのだろう。 彼はそれをビビに見出した。 カッコいい自分を目指すことで歩みを足した。 では、私は?ルイズは小さき胸に問いかける。 何が足りないの?何を足せばいいの? いくつもの果てないハテナが浮かんで消える。 背が?力が?優しさが?目標が? 何もかもが足りない。 前を進む彼らには物理的に追いついたとして、 この私に一体何ができるというのだ? 私には、追いつけない。 追いつかせてくれない。 いつかは追いつくと思っていた。 共に並んで歩きたかった。 守られるだけは、もう嫌だったから。 できることは何でもやった。 暇があれば、優しくなれるように笑顔の練習だって内緒でやった。 目標も描いた。 毎日毎日、追いつけるように、走った。 毎日毎日、届くように、背伸びをした。 でも、追いつこうとすればするほど、彼らは前に進んでいる。 いつも見えるのは、小さいけれど大きいその背中。 手綱を握る手をじっと見る。 この小さな手では、何1つ、つかみ取ることがかなわぬと言うのか。 手綱を握る手が、ゆるゆると弛み、ショコボの速度が人の走る程にまで落ちる。 大声で、泣き叫びたかった。 情けないほどちっぽけな自分に。 揺れる鳥上で、目から溢れた雫が、頬を伝わり、 風に乗って後方へと流れていく。 泣くのは無駄だと、ルイズも頭のどこかでは考える。 涙で強くなれるというのなら、とっくに強くなっている。 だが、この感情をどう止めろというのだ? 溢れる悔しさが、小さい胸では納まりきらず、 あとからあとから涙腺を伝って流れ出てくる。 バカルイズっ!軽く自分の頬をひっぱたく。 涙で前が見えなくなった頃だ。 何て愚かな悩み事なのか!それでも貴族と言えるのか! 小さき苦悩でウジウジと、みすぼらしいではないか! 自分を奮い立たせる文句を、口で小さくつぶやく。 涙をぬぐって前を見よう。 私は臆病で、いっつも自分の影見てた。 今日こそ影に背を向けよう! どんな坂道でも這い登って、追いついてやるのだ。 敵に背を向けない者を貴族と言うのだ。 だからといって、己の影ばかりが敵なのではない。 影を作る眩いばかりの光を、しっかり見据えてやる! それが貴族として、いえ、私が私として、できることだ! 何ができるかではない、やるしかないのだ! 無謀ではある。だが、何もせずに泣くのはもっと嫌だから! 手綱を再び強く握りしめる。 もう、ゆるめない。一直線に追いついてみせる。 そして、勝手な真似をした二人を思いっきり叱ってやるのだ。全てが終わった後で。 滴る頬の水路をぬぐい、混沌と化す空の下を目指し、再び少女は風となる。 覚悟を抱いたルイズの左手、 涙をぬぐったその甲にはめられた指輪の宝石に、 己の小ささを悔やんだ涙が触れ合って、 微小な光の悪戯か、小さき虹を作りだす。 それがじんわりと広がって、懐に潜む白き本と呼応する。 遠い昔に賢人が、言ったとされる事実がある。 奇跡とは、決意の先に光る物。 覚悟を決めた少女が、奇跡の存在に気づき手を伸ばす。 「何なのよ、これ!?」 白い本が、虹色の光を発している。 光源は、無地であったはずの祈祷書に描かれた文字。 いかに秀才とはいえ解読に時を要する古代ルーンを、ルイズはいとも簡単に読み取った。 否、感じ取ったと言うべきなのだろうか。 それは、『序文』という簡素な言葉と、万物を司る四系統の説明からはじまる文面だった。 「神は我にさらなる力を…… 四の何れにも属せず。我が系統は……四にあらざれば零(ゼロ)。 零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん……」 読めぬはずの文字を読む速度が上がる。 文面を書いた人物に思いを馳せれば、もっと感動的だったのだろうが、 その先の文言に、彼女の望む答えがあった。 『命を削る』という危険予告の文面や、 『指輪をはめなければ読めない』という注意書き内の注意書きは飛ばして読み進める。 彼女の視界に映ったのは、1つの呪文。 『初歩の初歩』とされている以下の呪文。 「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」 なんのためらいもなく、紡がれる文言。 「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド……」 聞いたことも無い響き、だがどこか懐かしさを感じさせる。 そうそれは、母がかつて歌ってくれた子守唄のような。 「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ……」 唱えるごとに、体の中の歯車がカチリカチリかみ合っていく感覚がする。 失っていたパーツを、足りなかった部分を、全て取り戻すかのように。 「ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……!」 全てを歌いあげた後、ルイズは理解する。 自分のできること、やれること、そしてしたいことを。 彼女は全てを選んで破壊することができる。 彼女は自分の使い魔を助けることができる。 彼女は追いつけなかった背中を守れる。 能力と望みが合致し、彼女は迷うことなく、最後の言葉を叫んだ。 ビビを、ギーシュを、友を、国を、全てを守りたい!! この呪文は、足りない何かを足す力!! 「エクスプロージョンッッ!!!!」 ・ ・ ・ 2つ目の太陽が、ルイズの願望と共に出現ししばらく経った後、 キュルケ、モンモランシー、シエスタが川原で見つけたのは、 満足そうに祈祷書を抱えて眠りこける少女の姿であった。 ……目の前が、真っ暗になるものと思っていたら、 強い光が、ボクの瞼を通して瞳の中に入り込んだんだ。 「――なんだ、この光は?」 「十一時二十五分方向中心に光源っ、どんどん広がって――」 「そ、そこら中、光だらけですっ!雲の中のような――」 「――貴様か、ガンダールヴ!!何を、何をしたっ!?」 いくつもの叫びが聞こえる。 ワルドの握力を首に感じる。 でもそれ以上に、もっともっと強くて、優しい感覚を、光の中に感じたんだ。 「……ルイ……ズおねえちゃ……ん……?」 何故だか分からない。でも、ルイズおねえちゃんの歌が、聞こえたような気がしたんだ。 花火のような音が、それに続く。 いくつもいくつも重なって、まるで何かをお祝する祝砲のように聞こえる。 「なぁっ!?」 驚いたのか、ワルドの手が首から離れる。わずかだけど、息をする余裕ができた。 「そ、操舵部から爆発音!同時刻に動力部からも爆発音がっ!!」 「救難信号です!ハイウィンド号とエンタープライズ号が航行ふの――いえ!周囲の僚艦全てから救難信号がっ!」 「航行不能!航行不能!脱出艇に急げっ!」 「おのれ、貴様が、貴様がっ!この俺を!どこまでも邪魔を――」 さっき離れたワルドの手が、金色の爪が、思いっきりボクの左腕に…… 「ぅっ……ぐぁ……」 鋭い痛みの後、軽さを感じる。大きな荷物を失ったような感覚。 そのちぎれるような音に、左腕がどうなったか見たかったけど、そっちに首を向ける力が無い。 「さぁ、次はその首を――」 影になってワルドの顔が見えない。 だけど、光の向こうから、マストが崩れ落ちるのが見えた。 「ぐはぁぁっ!!??」 ワルドの姿は、グズグズに崩れ落ちるマストと共に消えた。 そして、ボクの目の前も……暗くなった。 ・ ・ ・ 「おい、相棒、相棒!目ぇ覚ませよっ!おいっ!」 デルフの声が聞こえる。 聞こえるってことは、なんとか助かったんだろうか。 それとも、ここって空の向こう、なのかなぁ……? 「ゴメン……ちょっと……厳し……そう……かな……」 右腕がすごく痛むのに、左腕の感覚が無い。 あぁ、痛いってことは、かろうじて生きてるみたいだ。 マストは、ボクの体を避けて倒れたみたいだ。 ……小さくて、良かったなってちょっと思った。 それでも、体を動かすのは少し厳しそうだ。 体に力が全く入らない。 「クェー?」 チョコボの悲しそうな目を、初めて見た。 視界いっぱいに、黄色い羽毛にくるまれた、潤んだ瞳が見える。 「……ボコ……ゴメンね、巻き込んで……」 「――“虹”が見えたら会おう、そう僕は思っていたが――」 静かな声が、今だ続く爆音の中に、微かに、でもはっきりと聞こえた。 「やはり、再会は晴れた空の下が一番だね――雑音が多すぎるのはいただけないけど」 「だ、誰でぇ、こらぁっ!剣一本でも相手すっぞ俺様!」 聞き覚えのある、声。 何かが腐ったような甘さを持った声。 「お久しぶり、ビビ君!会いたかったよ!」 「ク……ジャ……?」 焦点の定まらない風景に溶け込むように、そいつの姿が映っていた。 ボクを、ボク達を“作った”男の姿が。 黒魔道士を、ひどいことに使おうとして作った男の姿が。 「僕達の脚本を、君“達”は見事に砕いてくれた――フフフ、もちろん、良い方向にね! あぁ、なんと素晴らしい役者達なんだろう!最高の舞台だよ!」 「お……まえ……なんで……」 全てを滅ぼそうとして、ジタン達と一緒にやっつけた男が、そこにいた。 「さて、盛り上がってきたお芝居も、いよいよクライマックス!至高のショーは脚本家も意図できないものになりそうだよ! 何だかゾクゾクしてこないかい?六千年分の集大成を特等席で観劇できるんだよ?」 いくつもの『なんで』や『どうして』が頭に浮かぶけど、それも段々ゆっくりになる。 視界が少しずつ狭くなってきたんだ。 「――だから、君“達”には演じてもらいたいんだ――」 目の前が真っ暗になる寸前、クジャの背筋が凍るような笑顔が目に焼きついた。 「――悲劇に幕を降ろす、重要な役割をね――」 ボクの記憶は……一旦ここで途切れてしまったんだ。 それは、深く、深く沈むように…… 前ページ次ページゼロの黒魔道士
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7393.html
前ページゼロの使い魔 対 ショッカー 「あんた達、誰?」 ルイズが目を覚ますと、白い覆面をした男達が彼女を覗き込んでいた。 その異様な雰囲気に思わずルイズは身構えそうになるが、しかし両手はまったく動かせない。 それどころか彼女の身体は何か円形の台らしき物に仰向けで寝かされ、固定されている状態だった。 これでは逃げようもないが、それでもせめてもの抵抗にとルイズは部屋の様子を探ってみる。 視界に入る範囲では天井と壁と何らかの機械の一部しか分からない。 だが、不気味なまでに薄暗く、彼女が今まで見たことも無い様式の部屋。そして自分を照らす怪しい灯。 覆面の男達だけでなく、自分のいるこの空間そのものが異様なものだった。 ここは一体、何処なのだろう。この連中は一体、誰なんだろう。そもそも自分は何故、こんな所にいるのだろう。 そんな疑問が頭をよぎった時。 「お目覚めかな、ルイズ・フランソワーズ」 突然かけられた声にルイズは聞き覚えがあった。 氷のように冷たく暗いその声――それは二週間ほど前に自らが召喚した使い魔の老人のもの。 声と共にそれまでルイズを括りつけていた円形の台が動き、彼女の身体ごと起こされる。 目の前には、やはり自らの使い魔の姿があった。 「し、死神博士!? ちょっと、一体これはどういうことなのよ! ここは何処!?」 「場所が知りたいか、いいだろう。ここはトリステイン魔法学院の地下に作った、我ら『ショッカー』のアジトだ」 「しょっかー? 何よそれ。だいたい、学院の下にそんなもの作れるわけないでしょ!?」 「頭の悪い娘だ。お前は我々の言うことに疑問を挟む必要など無い」 ルイズは混乱しながらも状況を把握し、整理しようと試みた。 どうやら自分は使い魔によって、本当に学院の地下なのかは分からないが、とにかく彼が独自に用意した怪しげな部屋に拉致された。 まとめればこれだけなのだが、どれもルイズの常識では決して受け入れられないようなことである。 そもそも使い魔が人間であること自体が異例なのだ。 使い魔が主人に対して忠誠を誓わないどころか反逆するなどハルケギニアの歴史上、聞いたことが無い。 そんなことを考えながら、ルイズは死神博士を召喚してからのことを思い返していた。 ルイズの通っているトリステイン魔法学院では伝統として春の使い魔召喚が行われる。 二年生に進級する際、『サモン・サーヴァント』で自らの使い魔を召喚し、主従の契約をする。 召喚された使い魔からメイジの属性を判断、固定することが目的の神聖な儀式だ。 そこで彼女はハルケギニアの幻獣や動物ではなく、人間を召喚してしまったのだ。 それでも、召喚した直後は「役に立たない年寄りを呼んでしまった」ぐらいにしか思わなかった。 外国の田舎の出身らしく、メイジや系統魔法についてさえ知らないことで驚いたぐらいだ。 とはいえ使い魔になることに抵抗することも無かったし、使い魔としての仕事も雑用ぐらいしかさせなかったが、特に問題となるような行動は無かった。 あえて挙げるなら、学者のようなものだったということで図書館の使用の許可を与えたら、自分を放って三日ほど入り浸ったことぐらいである。 特に変わった所も無く、何も期待はしていなかったが…… 「どうして……どうして、こんなことになったのよ……」 「案ずることはありませんぞ、ミス・ヴァリエール」 不安と恐怖に押し潰されそうになった彼女にかけられたのは想像だにしなかった人の声だった。 〝炎蛇〟のコルベール。 死神博士を召喚した時にも居合わせた、魔法学院の教師である。 「ミスタ・コルベール!」 「恐れることはありません。今、君に必要な知識、事実は私が全て教えましょう」 正直、ほっとした。 コルベールは変人だが、誠実な人間であることはルイズも知っている。 しかも魔法学院の教師なだけあって、メイジとしてもトライアングルクラスの実力を誇る。 これで少なくとも身の安全は保障されたようなものである、そうルイズは考えたのだ。 しかし。 「ミス・ヴァリエール、君は知らなければなりません。君が呼び出した使い魔のことを。そして、2つの世界を救う偉大なる『ショッカー』のことを」 それからコルベールは熱弁をふるった。 死神博士がこの世界とは別の世界から来た科学者で、ショッカーという組織の大幹部だということ。 そしてショッカーがそちらの世界を正しい方向に導くための選ばれた存在だということを。 さらに異世界の文明やその歴史、さらにショッカーの持つ科学技術の素晴らしさについて。 それらの説明を聞く中でルイズは感じ取っていた。 コルベールの異常に。 「ミス・ヴァリエール、これは光栄なことですぞ。死神博士の仰る世界は素晴らしい。ショッカーの世界こそまさに理想郷だ! 君はそれを創造することが出来る力と権利を手に入れた。君はまさに神と始祖に愛された人間なのです!」 ――狂っている。 おかしな研究に没頭していた先生だ、ショッカーの何かに惹かれたのは事実だろう。 でも、いくらなんでもこんなことを言う人じゃなかった。 変えてしまったのだ、先生を、彼らが。 ショッカーが。 「で、でも、どうして〝ゼロ〟の私なんかを? 私が死神博士を使い魔として召喚したから?」 コルベールへの恐怖とは別に、彼の説明を聞く中で浮かんできた疑問。 ショッカーが魔法を超越した科学を持ち、魔法など必要としていないのであれば説明はつく。 自分が召喚した関係もあるし、単に一番手近な存在として選ばれただけということでも理屈は通る。 しかし、やはりどうしても何か引っかかる。違和感が拭いきれない。 「ならば教えてやろう」 そのルイズの疑問に対して答えたのはコルベールでは無く、死神博士だった。 死神博士の指示により、大きな鏡のような物がこちらに見えるように向けられる。 そこに映し出されたのはルイズも見慣れた古代文字――使い魔に刻まれる紋様だった。 「ルーン?」 「そうだ。解除したルーンから、お前が伝説の系統の担い手であることが分かった。お前は我が改造手術の素体としてはこれ以上ない……『仮面ライダー』を倒しうるだけの逸材だ」 「な、何を言ってるの…? 伝説って…? 改造手術って何の冗談よ!?」 「冗談などではない。先日、捕らえた吸血鬼の血を用いてお前の体に改造手術を行った。お前はもはや人間ではない『改造メイジ』なのだ」 「そ、そんなの信じない! 信じられないわ!!」 「……いいだろう。コルベール、やれ」 「はい」 コルベールは頷くと杖を振るう。すると巨大な炎の蛇がうねり、ルイズの体に巻きついた。 「きゃぁあああああ! 先生、何を!?」 「これが今の君だ、ミス・ヴァリエール。私のヘビ君を受けたのなら、普通の人間なら一瞬で燃え尽きている」 そう言われ、はたと気が付く。 コルベールのあれだけの炎を受けたにも関わらず、自分はほとんど痛みを感じていない。 おそらく、身体には火傷の一つさえないのだろう。 それが何を意味するか……ルイズの顔色が蒼白に変わる。 「お前の潜在能力は既にショッカーのコンピューターにより90%以上が解析済みだ。あとは始祖の秘宝と指輪さえ手に入れれば、こちらが必要とする魔法を強制的に覚えさせることが出来る」 「そんなことして……私の魔法を使って、一体どうするつもりなのよ……」 「お前には、まず『世界扉』を開いてもらう。そして日本に行き、あの憎き一文字隼人を始末するのだ」 「……そうはいかない。そしてルイズは返してもらう」 死神博士の言葉を遮り、朗々たる声が部屋に響く。 そして現れたのは羽帽子に黒いマントを纏った一人の貴族。 「何者だ、貴様……!?」 「魔法衛士隊、グリフォン隊隊長……〝閃光〟のワルド!」 ジャン・ジャック・フランシス・ワルド。 トリステイン王国三つの魔法衛士隊の一つ、グリフォン隊の隊長であり、子爵の地位を持つ貴族。 そして影では貴族連盟レコン・キスタと通じ、己の目的のために聖地を目指す野望の男である。 そんな彼にはかねてより目をつけていた少女がいた。 幼い頃より自分を慕っていたヴァリエール家の三女。ワルドは彼女の秘めた才能を見抜いていた。 その力がどのようなものなのか、どれほどのものなのかは分からないが、計り知れない可能性を感じていた。 彼女はいずれあの始祖ブリミルにも劣らぬ優秀なメイジになるだろう、そんな予感めいた確信さえあった。 だから彼は魔法学院での使い魔召喚の儀式の時からルイズを密かに見張っていた。 召喚される使い魔にはメイジの力量と属性が大きく影響するため、彼女の力を見極める絶好の機会だったからだ。 そして、それが偶然にもワルドにショッカーの存在を教えたのである。 「怪しい老人だとは思っていたが、まさかここまでのものとはな」 「小癪な小僧が。カメレオン男!」 死神博士が手を振り上げると同時に虚空から現れる異形の姿。 ショッカーの改造人間、その名は死神カメレオン。 「なるほど。貴様がショッカーの改造人間とやらか」 「クェーッエッエッエ、ショッカーに歯向かう者は皆殺しだ!」 そう処刑宣告をすると、怪人は手を広げ悠然とワルドの方へと間合いを詰めていく。 メイジ相手に自殺行為としか思えないその行動が意味するもの、それは相手の絶対の自信。 これまで経験してきた緊張や戦慄とは別種の恐怖を感じ、杖を構えつつもじりじりと下がるワルド。 敵は改造人間という未知数の相手。どういう能力を持つのか、どれだけの戦闘力を誇るのかは想像もつかない。 分かることがあるとすれば一つ、それはまともに勝負を挑んでも勝算は低いだろうということだ。 「どうしたワルド、かかってこい」 死神カメレオンの挑発を受け流しながらワルドは戦況を読み、打開策を練っていた。 この戦いに勝機があるとするならば、この怪人が彼自身の実力を知らないことの一点につきるだろう。 ならば相手がこちらを甘く見ているうちに、自らが持つ最強の呪文で一気に畳み掛けるしかない。 そう結論付けたワルドは呪文を詠唱――せず、視界の端に映っていた白覆面の男に向かって、懐から取り出した円盤状の物体を投げた。 「イー!?」 「むっ?」 ワルドが投げたのは変装用に持っていた白い仮面。武器でもないため特別な殺傷力など無い。 が、その思わぬ攻撃は白覆面の男に苦悶の声を上げさせ、死神カメレオンの注意も逸らさせた。 そう、それこそがワルドの狙いだった。 まともに放っては魔法が防がれる可能性も考えられたため、虚を突く必要があったのだ。 そして再び死神カメレオンがこちらに注意を戻した時には既に呪文の詠唱は完成されていた。 「走れ、稲妻! 『ライトニング・クラウド』!!」 放たれたワルドの電撃魔法の直撃に肉体を焦がし、悶え苦しむ死神カメレオン。 本来ならばショッカーの怪人は数万ボルトの電流にも耐えられる。生半可な電撃など通用するはずがない。 しかし過去に一度葬り去られ、破損箇所を修復されて蘇った『再生怪人』の場合は別である。 再生怪人は一部を除いて著しく戦闘力・耐久性が劣化する…サッカー選手に腹を蹴られた程度でも大きなダメージを受けるという例もあった。 そして、この死神カメレオンも過去に三度も倒されている〝再生〟死神カメレオンだった。 「流石に俺の『ライトニング・クラウド』を受けてはただでは済まないか」 魔力の大半を込めた渾身の一撃とはいえ、想像以上にダメージを与えられたことに安堵の表情を浮かべるワルド。 このまま一気にとどめを刺さんと明らかに弱り、ふらつく怪人に近付き、杖を向ける。 その瞬間、死神カメレオンの目が見開かれた。怪人の鋭い舌が伸び、ワルドを襲う。 「なるほどカメレオンの名に恥じない能力だな。しかし!」 ワルドに油断は無かった。 『エア・ニードル』により青白く輝きを放つ杖が死神カメレオンの舌を受け流す。 そしてワルドはそのまま怪人の胸元に入り込み、深々と杖を突き刺した。 それで決着はついたかに見えた……が。 「き、貴様!?」 「エェーッエッエッ! 俺と一緒に死ねぇ!!」 閃光を発し、怪人とワルドを中心に小さな、しかし人間一人を殺すには十分な爆発が起こる。 ショッカー血の掟――敗者には死、あるのみ。 だが死を前にした怪人に、それでも敗北を選ぶことは許されなかった。 致命傷を負わされた状態から敵を倒す唯一の手段……死神カメレオンは自爆を選んだのだ。 「メイジ一人と相打ちか。改造人間の恥さらしめ」 崩れ落ちた虫の息のワルドを見つめながら、つまらなさそうに吐き捨てる死神博士。 まあいい。再生怪人などいくらでも用意できる。それにこの結果は悪くはない。 予期せぬ事態だったが、ルイズの目の前で希望の芽を摘んだのは効果的だっただろう。 これで観念してショッカーに服従を誓えば面倒な洗脳処置を行う必要も無くなる。 脳改造手術や大幅な肉体の機械化はメイジが呪文を唱える過程に弊害が発生しかねないために行うことは出来ない。 よって、コルベールのような心の隙間をついた洗脳か脳波コントロール処置を考えていたが、自発的にショッカーに下ればそれが一番なのだ。 と、死神博士はそこまで考えた時、先程からルイズが声を発していないことに気付いた。 ワルドが現れ、始末されるまでの間に救いを求めたり、悲鳴の一つもあげそうなものだというのに。 嫌な予感と共に慌てて振り返ると、手術台にいたはずのルイズの姿が忽然と消えていた。 「まさか!?」 「……かかったな。そうだ、俺はただの時間稼ぎだ」 地に伏したままのワルドはそれだけ言うと、煙のように消滅する。 「こ、これは風のユビキタス……!?」 「おのれぇ、スクウェアのメイジだったか! コルベール、奴を探せ!!」 「……どうやら、気付かれたようだな」 魔法学院から数リーグ離れた上空。 双月の輝く夜の中の闇を縫い、空を駆けるグリフォンの姿があった。 その背には先程、ショッカーのアジトから脱出したばかりのワルドとルイズ。 脱出の際に気を失ったルイズを胸に抱きながらワルドは思案する。 ショッカーはルイズの力の覚醒に始祖の秘宝と指輪が必要と言っていた。 秘宝と指輪、これはトリステイン王家が所有する始祖の祈祷書と水のルビーに違いない。 ショッカーが逃げたばかりのルイズの捕獲に乗り出すか、先に秘宝を奪いにかかるかは分からない。 だが、どちらにしてもこちらは連中に対抗する力を得るために祈祷書とルビーを手に入れる必要がある。 「ならば、行き先は決まっているか……」 ワルドは急ぎグリフォンをトリステイン王宮へと走らせた。 <次回予告> 我らがルイズ・ヴァリエールを狙うショッカーのハルケギニア支部が送り込んだ次なる使者は、ガンダールヴ。 ショッカーの盾と化した伝説がルイズを狙う。ワルドはルイズの、神の左手となれるのか? 次回「13人のガンダールヴ」にご期待下さい! <怪人紹介> 【死神カメレオン】 仮面ライダー第6~7話に登場した怪人。 日本に隠された「ナチスの秘宝」を奪うために東京や大阪で暗躍、仮面ライダーと争奪戦を繰り広げた。 周りの景色に同化して姿を隠す特殊能力を持ち、戦闘面では伸縮自在の舌を使った攻撃を得意とする。 ショッカー首領にカメレオン男と呼ばれていたことから死神カメレオンの名は異名と思われるが…? ちなみに劇場版で再生怪人として登場した際には死神博士への配慮からか「カメレオン」と名乗っていたりする。 前ページゼロの使い魔 対 ショッカー
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/3827.html
リク「俺が、俺がやらなきゃ、ミオが!」 【名前】 偽祈祷師 【読み方】 にせきとうし 【登場作品】 仮面ライダークウガ 【分類】 グロンギ 【モチーフ】 不明 【通し番号】 なし 【所属集団】 不明 【詳細】 小説『HERO SAGA』に登場した女性のグロンギ。 リントの祈祷師に成り済まし、グロンギと戦う戦士「クウガ」の変身者として青年・リクを指名する。 しかし、それは「一族でも戦いに向かない人間」の彼をクウガにする事が目的だった。 彼の妹・ミオに真相を明かして嘲笑うが、最期は他のグロンギと共に封印された模様。 正式名称と怪人態は不明。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2089.html
「我が名はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ。」 金髪を縦ロールにした少女が呪文を唱えると、その視線の先に銀色の鏡が作り出される。 小さなその鏡からは、更に小さなグラス入りのワインが現れた。 少女は首を傾げながらもグラスに軽く口付けをする。 その同時刻に、青髪碧眼のとある婦人が長い長い夢から覚めた事など知る由も無く。 「我が名はギーシュ・ド・グラモン。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ。」 矢鱈と派手な金髪の少年が呪文を唱えると、その視線の先に銀色の鏡が作り出される。 等身大のその鏡からは、茶色のマントを纏った栗色の髪の少女が現れた。 突然の事で驚きに目を見開くも、取り敢えず少女は目の前にいた想い人を抱き付いた。 ダラダラと脂汗を掻きながら、少年は背後にワイングラスを握り潰した様な音を聞く。 「我が名はタバサ。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ。」 年齢よりも幼く見える青髪の女の子が呪文を唱えると、その視線の先に銀色の鏡が作り出される。 小柄な彼女よりも頭一つ程度大きなその鏡からは、彼女と同じ青い髪の高慢そうな少女が現れた。 憎々しげに自らを呼び出した女の子を見詰めた後、少女はありとあらゆる言葉で罵倒した。 奪われていた宝物を取り戻したその女の子によって、後日政治的な取引の材料とされる運命など予想もせずに。 「我が名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ。」 情熱的な姿態と燃える様な赤毛が特徴の女性が呪文を唱えると、視線の先に銀色の鏡が作り出される。 それなりに背が高い彼女よりも更に大きなその鏡からは、筋骨隆々で黒い眼帯を巻いた男が現れた。 白濁した瞳で周囲を見回した大男は、旧知の親友でも見付けたかの様な笑顔で監督役の頭が寂しい教師へ炎を放つ。 襲い来る炎を華麗に捌いて巨漢を征したその教師の姿を見て、赤毛の女性は胸の鼓動を高鳴らせた。 「我が名はマリコルヌ・ド・グランドプレ。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ。」 小太りで丸っこい少年が呪文を唱えると、視線の先に銀色の鏡が作り出される。 学院のメイドが使うお盆位の大きさのその鏡からは、妙にカラフルな絵が表紙に描かれた本が現れた。 困惑した顔で頁を捲った少年の目に、美しい女性のあられもない姿が緻密かつ鮮明に描かれた絵が飛び込んだ。 扇情的なイラストを嘗め回す様に鑑賞し始めた少年へ、周囲の女生徒は汚らわしい物を見るかの如く嫌悪の視線を送る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の運命に従いし〝使い魔〟を召喚せよ。」 桃色の髪が目を引く少女が呪文を唱えると、視線の先に銀色の鏡が作り出される。 自分よりも遥かに小さいその鏡からは、四個の宝石と革の装丁の古びた本が現れた。 召喚した物の中にとある幼馴染の持ち物と国宝を認めると、少女は大慌てで走り寄った。 青い宝石を眺めて傷が出来てない事を確認した後に、染みが出来てないかとパラパラと本を拾い上げて頁を捲る。 こうして 今回の春の使い魔召喚の儀式によって ある金髪の少年は2人の少女に殴り飛ばされ 青髪の女の子は呼び出した少女と睨み合い 赤毛の女性はある教師へ恋心を燃やし 小太りの少年は蔑みの目で見られて興奮し 桃色髪の少女は白紙の筈の本で魔法が使える様になった。 ぶっちゃけ、 宇宙の果ての何処かにいる存在の意思でも働いたのかと思う程に 儀式の場となった広場では様々な混沌とした事態が集中して発生している。 しかし。 実の所、この訳の分からない事態の魁となったのはトリステイン魔法学院では無い。 誰も知らぬ真なるその矯矢の名前は…………ガリア王ことジョゼフ1世。 「ミューズ……ミューズ………余の可愛いミューズ。」 今日も今日とて、そのガリア王の前には、黒い窓と大量のキーが付いた板の使い魔が鎮座している。 本来ならばこのハルキゲニアにはある筈の無いその使い魔は、ボンヤリと明るい光を放つ窓の中に異世界を映し出していた。 朗らかに笑いながら、ジョゼフ1世はその異世界を愛おしそうに眺めている。 常々弟との比較で荒んでしまった彼の心には、 決して誰も馬鹿する様な言葉を投げ付けて来ないその世界が酷く魅力的に映ったのだろう。 例え、その世界の住人が目の異常に大きい……人ならざる者であったとしても。 「では、次はこれで如何だね……ふふふ……可愛いミューズよ。」 カタカタと、彼はブラインドタッチでキーを楽しそうに叩いている。 周囲からは無能王と馬鹿にされてはいるが、彼は元々頭が恐ろしく良いのだ。 流石に召喚したその時は戸惑っていたが、 召喚して1日目にはキーと窓の変化の間に規則性を見付けた。 召喚して5日目には窓の中の世界の言語を解明した。 召喚して10日目には使い魔を完全に使いこなしていた。 そして今。 元々その使い魔がいた世界でも同程度の使い手は存在しないだろうと言う位のレベルに、彼は到達している。 「そうかそうか、余のミューズよ。 良くやったぞ。」 現在の彼は、ほぼ全ての政務を放り出して薄い板状の使い魔に構うだけの毎日である。 メイジと契約した恩恵なのか、その使い魔は疲れて光を放つのを止める素振りすら見せない。 まあ、使い魔を弄る時間に比例してモリエール夫人の心労は嵩んで行ったのだが。 「……おいたわしや、陛下。 こんなにお慕い申し上げている私がいるこの世界よりも、斯様な怪物共の魔界を愛すると言うのですか? ……………分かりました。 陛下が私の方へと再び目を向けて頂けるその日まで、私がこの国をお守りします!!」 最早年中ゲームしかしていないジョゼフの背後で唇を血が出るまで噛み締めると、 モリエール夫人は小姓に命じて自室にジョゼフが放棄した仕事の書類を集めさせる。 その書類を神速の域に達さんばかりの速度で処理をするその姿は、 夫人の傍付きである小姓が語る所によると,さながらガンダールヴの様であったそうな。 これが後の世に知られるガリア史上最高の女王・モリエール1世の誕生秘話である。 商業や流通の発展の為に町を繋ぐ街道を整備したり, 貴族の名を失ってしまった者達の為に仕事を回す施設が作られたり, 平民に様々な知識を広める為に学校を建設して義務教育制度を始めたりと、 彼女の名とその数知れぬ偉業は後世においてハルキゲニア人ならば誰もが知っている常識となっているとかいないとか。 数人の不幸な人物が生まれはしたが、この混沌とした世界は今日も平和です まる -------------------------------------------- モンモランシー:水の精霊の薬入りワイン ギーシュ:ケティ タバサ:イザベラ キュルケ:メンヌヴィル マリコルヌ:エロ凡パンチ・ 75年4月号 ルイズ:四系統のルビーと始祖の祈祷書 ジョゼフ:才人のパソコン 以上をそれぞれ召喚