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https //app.box.com/s/05jj3uy4ib40kkpqhri5b8g4e6ik2am8 一 ならっては〔學而第一〕 〔一〕先生──「ならってはおさらいするのは、たのしいことだね。なかまが遠くからくるのは、うれしいことだね。知られなくても平気なのは、りっぱな人じゃないか。」 〔二〕有先生──「人がらがすなおなのに、目上にさからうものは、まずない。目上にさからわないのに、むほんをするものは、あったためしがない。土台がだいじだ。土台あっての道だ。すなおということが、人の道のはじまりだな。」 〔三〕先生──「おせじや見せかけに、ろくなものはない。」 〔四〕曽(ソウ)先生 ──「毎日ふりかえることが三つ。人にまこころをつくしたか。友だちにすまないことはないか。教えは身についているか。」 〔五〕先生──「大きなかまえの国ほど、まともな政治をし、つましくなさけぶかく、人はひまひまに使うこと。」 〔六〕先生──「若い人は、うちではすなお、そとでもおとなしく、よく気をくばり、みんなにやさしくして道をまなぶこと。そのうえひまがあれば、学問にふりむける。」 〔七〕子夏──「色よりはチエを買い、親のためには苦労をいとわず、国にはすすんで身をささげ、友だちづきあいに、ウソをつかなければ、無学な人でも、学問があるというわけさ。」 〔八〕先生──「上の人は軽いと押しがきかぬし、学問も練れない。まこころを第一とし、つまらぬ人とつきあわぬこと。あやまちはアッサリあらためよ。」 〔九〕曽先生 ──「とむらい供養のしかたで、気風がずっとよくなるものだ。」 〔一〇〕子禽(キン)が子貢にたずねる、 「うちの先生はどこの国にいっても、きっと政治にかかりあうが…。たのむのかな、それともたのまれるのかな。」子貢──「先生はオットリとへりくだっていてそうなるんだ。先生のやりかたはだね、こりゃどうも人のやりくちとはちがってるね。」 〔一一〕先生──「ふだん父の気もちをくみ、死んだらやりくちを思い、三年そのしきたりを変えないのは、親孝行といえる。」 12〔一二〕有先生──「きまりにも、なごやかさがだいじ。昔のお手本も、ここがかなめだ。万事がそうなっている。だが例外もある。なごやかにするだけで、しめくくりがないのも、うまくいかないものだ。」 13〔一三〕有先生 「取りきめも、すじがとおっておれば、はたす見こみがある。へりくだりも、しめくくりがあれば、見っともなくない。たよるのも、相手をまちがえねば、たのみがいがある。」 14〔一四〕先生 ──「人間は、たべものにもこらず、よい家にも住まず、しごとは手ばやくて口をつつしみ、人格者を見ならうことだ。それでこそ学問ずきといえる。」 15〔一五〕子貢 ──「こまってもこびず、もうけてもいばらないのは、どうです…。」先生 ──「よろしい。だがこまっても苦にせず、もうけてもしまりのあるのがましだ。」子貢 「うたに、『切ってはこすり、ほってはみがく、』とあるのがそのことですか…。」先生「賜くんとだけは、うたのはなしができるわい。かれは打てばすぐひびくやつじゃ。」 16〔一六〕先生 ──「人に知られなくてもこまらぬが、人を知らないのはこまる。」 二 政治〔爲政第二〕 17〔一〕先生──「政治も良心的であれば、ちょうど北極星が動かずにいて、取りまかれるようだ。」 18〔二〕先生 ──「うた三百首を、ひっくるめていえば、『ひがまずに』ということじゃ。」 19〔三〕先生 ──「規則ずくめで、ビシビシやると、ぬけ道をつくって平気だ。親こころをもって、ひきしめてやれば、恥じいってあらためる。」 20〔四〕先生 ──「わしは十五で学問を思いたち、三十で一人まえ、四十で腹がすわり、五十で運命を知り、六十で分別ができ、七十では気ままをしても、ワクにはまっていた。」 21〔五〕孟孫さんが孝行についてきく。先生 ──「ほどを知ることです。」樊遅(ハンチ) のやる馬車で、先生がいわれた、 「孟孫が孝行をきいたから、わしは『ほどを知れ』といったよ。」樊遅-ー「どういう意味ですか。」先生 ──「親には、ほどよくつかえる。死んだら、ほどよくとむらい、供養もほどよくすること。」 22〔六〕孟武さんが孝行についてきく。先生 ──「父・母には、病気だけが心配です。」 23〔七〕子游(ユウ)が孝行についてきく。先生 ──「いまどきの孝行は、養うことだという。犬でも馬でも、みな養われている。うやまわないと、区別がつかなくなるぞ。」 24〔八〕子夏が孝行についてきく。先生 ──「態度がだいじだ。用のあるとき若いものが手つだい、ごちそうがあれば目上にあげる、そんなことで孝行になるかね。」 25〔九〕先生 ──「回くんと話してると、一日じゅうハイハイでバカみたいだが…。あとで実情を見ていると、けっこう教えられる。回くんはバカじゃない。」 26〔一〇〕先生──「人はそのしわざを見、いきさつをながめ、思わくをさとられたら、かくそうにも、かくせはしまいて。」 27〔一一〕先生 ──「古いものからも新知識、それなら指導者になれる。」 28〔一二〕先生 ──「人物は道具じゃない。」 29〔一三〕子貢が人物についてきく。先生 ──「おこないが先、ことばはあとだ。」 30〔一四〕先生 ──「人物は閥をつくらず、俗物は閥をつくる。」 31〔一五〕先生 ──「ならっても考えねばハッキリしないし、考えるだけでならわないとあぶない。」 32〔一六〕先生 ──「他流の末に走ると、損するばかりだ。」 33〔一七〕先生 ──「由くん、『知る」ということを教えようか。知ってるなら知ってる、知らないなら知らないという、それが知ることだよ。」 34〔一八〕子張は役人志願。先生 ──「聞いてよくたしかめ、たしかなことだけをいえば、まず無難だ。見てよくたしかめ、たしかなことだけをすれば、まず安心。そうバカをいわず、あまりヘマをやらねば、自然に出世するさ。」 35〔一九〕哀(殿)さまのおたずね ──「どうしたら民がおさまるか…。」孔先生の返事 「まっすぐな人を上におけば、おさまります。まがったものを上においたら、おさまりません。」 36〔二〇〕季孫さんがきく、「人民にうやまい、したがい、はげませるには、どうします…。」先生iー「重みを見せればうやまい、やさしくすればしたがい、すぐれた人にみちびかせれば、はげみます。」 37〔二一〕だれかが孔先生にいった、「なぜ政治をなさらないんです…。」先生 ──「歴史の本にある、『孝行いちずに、兄弟なかよく、家庭もおさまる。』あれも政治です。なにもことさら政治をせずとも…。」 38〔二二〕先生 ──「人間は誠意がないと、人として台なしだな。荷車も小車も、横木なしでは、それこそやりようがあるまい。」 39〔二三〕子張がきく、「十代あとの世がわかりますか…。」先生 ──「股(イン)は夏(カ)の時代をまねたから、たいしたちがいはないはず。周も殷をまねたから、たいしたちがいはないはず。周のあとがあったとて、百代までも知れているさ。」 40〔二四〕先生 -「先祖でもないのに祭るのは、物ほしそう。正義を見送るのは、いくじなしだ。」 三 八列の舞い〔八倫第三〕 41〔一〕孔先生が(家老の)季孫さんを批評して──「八列の舞いを自宅でやりおる。あれが平気ならば、なんでも平気でやれるさ。」 42〔二〕三家老は、「御歌」で祭りをおわる。先生──「『居ならぶ大名、大君おおらか』なんて、三家老のお宮では無意味だよ。」 43〔三〕先生 ──「人情をもたずに、なにが『きまり』だ…。人情味がなくて、なんの音楽だ…。」 44〔四〕林放が儀式の精神をきく。先生 ──「だいじな問いじゃな。儀式は、ハデにやるより、ジミがよい。葬式は、念入りよりは、しんみり。」 45〔五〕先生 ──「文化のない王国は、文化のある亡国におよばないね。」 46〔六〕季孫さんが(家老のくせに)泰山の祭りをする。先生が冉(ゼン)有に ──「おまえ、とめられないのか…。」返事 ──「ダメです。」先生 ──「ウーム、泰山も林放以下と見なすわけだな。」 47〔七〕 先生 ──「人物に争いはない。まあ弓ぐらいかな。おじぎして場に立ち、降りたら飲ませる。あの争いはりっぱだ。」 48〔八〕 子夏がたずねる、「『ニッコリえくぼ、パッチリまなこ、オシロイまぶしや』って、なんですか…。」先生──「絵は白でしあげるよ。」 ──「礼儀もしあげですね…。」先生 ──「商(子夏)くんには教えられるね。かれとなら詩のはなしができるわい。」 49〔九〕 先生 ──「夏(カ)(の時代)のきまりはわしにもわかるが、杞(き(の国)のはよくつかめない。殷(イン)(の時代)のきまりはわしにもわかるが、宋(ソウ)(の国)のはよくつかめない。書き物も人もすくないからだ。それがあればつかめるわけだが…。」 50〔一〇〕先生 ──「大祭も、おみきをまいたあとは、わしはもう見るのがイヤじゃ。」 51〔一一〕だれかが大祭のわけをきく。先生 ──「知らんです。それがわかっとれば世のなかのあつかいかたも、ここにのせたようでしょうな。」と手のひらをさした。 52〔一二〕 (先祖は)居るように祭り、神も居るように祭る。先生ll「白分で祭らないと、 祭った気がせぬ。」 53〔一三〕王孫賈(カ)がきく、「奥の間のきげんより、板の間のきげん』ってのは、どうですか。」先生l──「ウソですよ。天ににくまれたら、いのる間(マ)はないです。」 54〔一四〕先生 ──「周は夏(カ)と股(イン)(の時代)を目やすにして、文化の花をさかせたのだ。お手本にしょう。」 55〔一五〕先生は大神宮で、いちいち人にきく。だれかが ──「躑(スウ)村の若僧め、儀式を知らんじゃないか。大神宮で、いちいちきくとは。」先生はそれをきいて ──「そこが儀式だ。」 56〔一六〕先生 一矢は通さなくてもよく、ちからわざにも差をつけるのが、背のやりかただった。」 57〔一七〕子貢がついたちのヒツジをそなえまいとした。先生 ──「賜くん、ヒツジがおしいだろうが、わしは儀式がおしいよ。」 58〔一八〕先生 ──「おかみをうやまえば、ごきげん取りといわれる。」 59〔一九〕定(テイ)(殿)さまのおたずね- 「殿が使い、家来がつかえる、その方法は…。」孔先生の返事lr「使うには手あつくしてやり、つかえるには心をこめます。」 60〔二〇〕先生 ──「『ミサゴの歌』は、喜びにもおぼれず、悲しみにも負けていない。」 61〔二一〕哀(殿)さまがお宮のことを宰我(サイガ)にきかれる。宰我のお答え ──「夏(カ)の王さまは松、殷(イン)の時代にはヒノキ、周はクリの木を植えています。『ビックリさせる」んだそうで…。」先生がそれをきかれ ──「できた事はいうまい。やった事は見のがそう。すぎた事は責めまい。」 62〔二二〕先生────鰤管仲は人物がちいさいな。」だれかが ──「管仲はしまり屋ですか。」先生──「管には妻が三人、家来はかけ持ちなし。なにがしまり屋だ。」──「そんなら管仲は礼儀屋ですか。」先生 ──「殿さまは目かくしを立てるが、管も目かくしを立てていた。殿さま同士の宴会にはサカズキ台があり、管の家にもそれがあった。管が礼儀屋ならば、だれだって礼儀屋だ。」 63〔二三〕先生が魯(ロ)の国の楽隊長に──「音楽って、こうなんだね。はじめは、音をそろえる。そして思いきり、ひびかせる。すみ通らせる。長つづきさせる。それでいい。」 64〔二四〕儀の村の役人が会いたがっていう、「えらいかたがこちらに見えると、わたしはいつもお会いできたのですよ。」供の人が会わせる。あとでいう、「みなさん浪人もいいじゃないですか。世のなかはもう長いこと乱れている。世をみちびくのが先生の天職だ。 65〔二五〕先生は 「韶(ショウ)の曲」を、「みごとだし、このましいものだ。」といわれた。「武の曲」は、「みごとだが、ちょっとこまる。」といわれた。 66〔二六〕先生──「おかみはガミガミ、礼儀はゾンザイ、おとむらいに空なみだでは、どこにも見どころがないわい。」 四 住むには〔里仁第四〕 67〔一〕 先生──「住むには気ごころ。住みあてないのは、チエ者でない。」 68〔二〕 先生 ──「俗物は貧乏にたえられないし、安楽も、長つづきせぬ。人物は心を乱さず、チエ者はくふうする。」 69〔三〕 先生ー1「人物だけが、人をほめも、けなしもできる。」 70〔四〕 先生 ──「人物になる気なら、悪事はできぬ。」 71〔五〕先生 ──「カネと身分は、だれでもほしいものだが…。無理に手に入れたのは、ごめんこうむる。貧乏と下積みは、ありがたくないものだが…。身から出たのでなければ、逃げだしはせぬ。人の道を離れて、なにが人物だ。まことの人は食事のあいだも道を離れぬ。どんなに急いでも道、とっさの場あいも道だ。」 72〔六〕 先生 ──「わしはまだ道をこのむ者、道はずれをにくむ者に会わない。道をこのめば、それがなにより。道はずれをにくむのも、やはり道だ。道はずれの者に手だしをさせないからだ。一日でも道のためにつくした人があろうか。そのちからのない人にはまだ会わぬ。あるかもしれない が、わしはまだ出会わない。」 73〔七〕先生 ──「人のあやまちは、その人がらによる。あやまちを見れば、それで人がわかる。」 74〔八〕 先生 ──「真理がきけたら、その日に、死んでもいい。」 75〔九〕 先生 ──「真理を求める人が、着物くい物を気にしては、話せるとはいえないな。」 76〔一〇〕 先生 ──「まことの人なら世間にたいして、ヒイキもなし、意地わるもなし、ただ道理にみかたする。」 77〔一一〕先生 ──「徳をみがく人、土地にあがく人。おきてを守る人、おこぼれを待つ人。」 78〔一二〕 先生-ー「欲と相談でやると、うらまれる。」 79〔一三〕先生 ──「折りあいよく国をおさめれば、わけはない。折りあいよくおさめられねば、儀式もムダだ。」 80〔一四〕先生 ──「地位はなくてもいいが、いくじがなくてはこまる。知られなくてもいいが、知られるようなことをしたいもの。」 81〔一五〕 先生 ──「参(シン)くん、わしの道はひとすじじゃよ。」曽(ソウ)先生の返事 ──「ええ。」あとで、弟子たちがたずねる、「あの意味は…。」曽先生ll「先生の道とは、『思いやり』なんだ。」 82〔一六〕 先生 ──「道理が。ピンとくる人と、利益が。ピンとくる人。」 83〔一七〕先生 ──「りっぱな人は、見ならいたい。つまらぬ人でも、わが身のいましめにするのだ。」 84〔一八〕先生 ──「親には、それとなくいさめる。きいてもらえなくても、さからわずにおく。つらくてもうらまない。」 85〔一九〕先生 ──「親のある身は、遠出をしない。出るにはまず行く先。」 86〔二〇〕先生 ──「三年(の忌中)父のしきたりを変えないのは、親孝行といえる。」 87〔二一〕 先生 ──「親の年は、知っておかねばならぬ。安心にもなり、川心にもなる。」 88〔二二〕 先生 ──「晋の人の口重いのは、やれないことを恐れたからだ。」 89〔二三〕先生──「つつましくてしくじることは、まずない。」 90〔二四〕先生 ──「上の人は口は重く、事はキビキビやりたい。」 91〔二五〕 先生 ──「道をふむなら、つれはあるもの。」 92〔二六〕子游 ──「殿さまにも、うるさいのはきらわれる。友だちも、うるさいと遠のく。」 五 公冶長 〔公冶長第五〕 93〔一〕 先生は(弟子の)公冶長(コウヤ・チョウ)のことを ──「ムコにしてもいい。ナワつきになったとはいえ、かれの罪じゃないんだ。」といって娘をやった。また南容のことを ──「平和なときは、役につける。乱れた世にも、殺され 94〔二〕 先生は子賤のことを ──「りっぱだなあ、あの人は。 この国に人物がいなければ、かれもああは成れまいて。」 95〔三〕子貢がたずねる、「わたくしは、いかが…。」先生──「きみは、うつわ物だ。」──「どんなうつわで…。」 ──「国宝級だ。」 96〔四〕 だれかがーー「雍(ヨウ)くんは、いい人だがブッキラボウで…。」 先生 ──「ペチャクチャは無用だ。人にツベコベいうと、とかくにくまれる。かれの人がらは知らないが、ペチャクチャは無用だ。」 97〔五] 漆彫(シツチョウ)開を役人にしようとした。かれの返事 ──「それにはまだ自信がないです。」先生は喜ばれた。 98〔六〕 先生ーー「道のない世だ、イカダで海に乗りだそうか…。ついてくるのは、まあ由くんだな…。」子路はそれをきき、ニコニコ。先生 ──「由くんは、わしよりすごいが…。材木がないさ。」 99〔七〕 孟武さんがきく、「子路はいい人ですか。」先生 ──「知りませんな。」またもきく。先生──「由くんは、大きな藩で、いくさ奉行ができましょう。いい人だかどうだか…。」「冉(ゼン)求はいかが…。」先生 ──「求くんは、ちょっとした町か、家老格の家で、その差配になれましょう。いい人だかどうだか…。」「公西(コウセイ)赤はいかが…。」先生 ──「赤くんは、礼服で御前に出て、お客さまの接待役ですな。いい人だかどうだか…。」 100〔八〕 先生が子貢にいわれる、「きみと回くんと、どっちが上か。」答え ──「わたくしが回さんの相手なんぞ…。回さんは、一をきけば十を知ります。わたくしは、一から二を知るだけです。」先生 ──「かなわないな。わしもきみもかなわないんだ。」 〔注〕 回は、若くて死んだ清貧の秀才顔回。 101〔九〕 宰予(サイヨ)がひるま寝ていた。先生 ──「くさった木は彫り物にならぬわ。ゴミ土のヘイでは、コテがあてられぬ。予のやつときては、責めがいがない。」また ──「これまでわしは人を、いうとおりにするものと信じていた。これからわしは人の、いうこととすることをくらべてみる。予のせいだな、そうなったのは。」 102〔一〇〕先生「しっかり者には出会わぬ。」だれかがいう、「申〓(シンチョゥ)は…。」先生──「〓くんのは、欲だ。なんでしっかりなものか。」 103〔一一〕 子貢 ──「わたしは人からされたくないことは、こちらからも人にしたくない。」先生──「賜くん、きみにやれることじゃないね。」 104〔一二〕 子貢 ──「先生のご講義は、 いつでもうかがえるが…。先生の人間観や宇宙観は、なかなかうかがえないなあ。」 105〔一三〕子路は教えをきいて、それがやれないうちは、もうきくのをおそれた。 106〔一四〕子貢がたずねる、「孔文さんは、なぜ『文』とおくり名されました…。」先生 ──「才子で学問ずき、よく質、問された。その点が『文』とよばれたのじゃ。」 〔一五〕 先生は子産を批評し ──「人物のよさが四つあった。身のふるまいが、つつましい。おかみにつかえて、うやうやしい。民をおさめては、やさしい。民の使いかたは、正しい。」 〔一六〕 先生-──「晏平仲(アンペイチュウ)は、人とよく交際し、なじんでもスレなかった。」 〔一七〕先生 ──「臧(ゾウ)文仲は、(ウラナイ用の)亀をたくわえ、(お堂の)柱に山をきざみ水草をかいた。どうした分別なんだ…。」 〔一八〕子張がたずねる、「楚の国の総理子文は、三べん総理になれても、 ニコニコせず、三べんやめさせられても平気でした。前総理の事務は、ちゃんと新総理に引きつぎました。どうです…。」先生 ──「忠実だ。」「人道的ですか。」先生 ──「さあ、どうして人道的だか…。」「崔(サイ)さんが斉の殿さまを殺したとき、陳文さんは馬四十頭もあったのを、すてて去りました。ほかの国にゆくと、そこには、『くにの家老の崔みたいなのがいる。』といって、去ります。ある国にゆくと、またもや、『くにの家老の崔みたいなのがいる。』といって、去りました。どうです…。』先生 「清潔だ。」「人道的ですかご 先生 ──「さあ、どうして人道的だか…。」 〔一九〕季文さんは、 三べん思案してからなさる。先生がそれをきかれ「二へんでいいんだよ。」 〔二〇〕先生 ──「〓武(ネイブ)さんは、平利な世では切れ者、みだれた世ではバカになった。あの切れかたはまねしても、あんなにバカにはなりきれない。」 〔二一〕先生は陳の国で──「帰ろう、帰ろう。くにの青年たちが野ばなしだ。みごとな織り物の、たちかたがわからないでいる。」 〔二二〕 先生 ──「伯夷(ハクイ)・叔斉(シュクセイ)は、うらみを根にもたぬ。だからにくまれない。」 〔二三〕 先生 ──「微生高が実直だって…。人が酢を借りにゆくと、となりから借りてきてやったのに。」 〔二四〕先生 ──「おせじや、見せかけ、バカていねいは、左丘(サキュウ)明が恥じとした。わたしモ恥じる。うらみをかくしてつきあうのは、左丘明が恥じとした。わたしも恥じる。」 〔二五〕 顔淵(ガンエン)と季路がかそばにいた。先生 ──「きみたちの願いをいってみないか。」 子路──「乗り物、着物、皮ごろもを、友だちと共有で、いためられても半気だといいな…。」顔淵 ──「得手をふりまわさず、手がら顔をしないこと。」子路…ー「先生の願いは…。」先生「としよりを楽にしてあげ、友だちからたよりにされ、若い者になつかれること。」 〔二六〕 先生 ──「もうダメかな…。わしはまだ、あやまちに気づいて、みずからをさばく人を見ないんだ。」 〔二七〕先生 ──「十軒の小村にも、わたしぐらいのリチギ者はあるだろうが、ただわたしのほうが学問ずきだ。」 六 雍くんは 〔雍也第六〕 〔一〕先生 ──「雍(ヨウ)くんは、殿さまにしてもいい。」雍(仲弓)がきく、「子桑(シソウ)伯さんは…。」先生 ──「よかろう。大まかで。」仲弓 ──「気はついていて大まかに、民をおさめるのでしたら、それもいいでしょう。大まかな人の大まかなら、ズボラですね。」先生 ──「雍くんのいうとおりだ。「 〔二〕哀(殿)さまがきかれる、「お弟子でだれが学問ずきかね…。」孔先生、のお答え ──「顔回というのがいて、学問ずきでした。やつあたりせず、二度としくじりません。おしいことに、若死にしました。いまはもうおりません。学問ずきは聞きませんです。」 〔三〕子華が斎(セイ)の国にお使いにゆくので、冉(ゼン)先生がかれの母の手当てを願い出た。先生 ──「五、六升おやり。」もっとほしいという。先生 -「では一斗.九升。」冉先生は七石もの食糧をやった。先生ll「赤くんは斉にゆくのに、こ5た馬に乗り、いい毛皮をきていた。わしは聞いている、『こまれば救え、あまればたすな』と。」、原思(ゲンシ)が秘書長として、もらった給料は九百。多いという。先生 ──「いいよ。きみの近所となりに施すんだね。」 〔四〕先生は仲弓を批評して ──「マダラ牛の子だが、アメ色でツノもいい。のけものにしようたって、山川の神がすてはせぬ。」 〔五〕先生 ──「回くんは、三つきでも道徳的であり得た。ほかの人は、日に一度か月に一度がせいぜいだ。」 〔六〕季孫さんがきく、「仲由(子路)には、政治をやらせていいでしょうか。」先生 ──「由くんは度胸があるから、政治も問題ないです。」また、「賜(子貢)には、政治をやらせていいでしょうか..」先生 ──「賜くんはさばけているから、政治も問題ないです。」また、「求(冉求)には、政治をやらせていいでしょうか。」先生 ──「求くんは腕ききだから、政治も問題ないです。」 〔七〕(家老の)季さんが閔士騫(ビン・シケン)を費の町の差配にしようとした。閔子騫がいう、「うまくことわってください。もし二度とこられたら、わたしは国境に逃げますから。」 〔八〕伯牛がライ病なので、先生は見舞いにゆかれ、窓からかれの手をとって ──「おわかれだ。運命だなあ.…。こういう人でも、こんな病気になるのか…。こういう人でも、こんな病気になるのか...」 〔九〕先生 ──「えらいなあ、顔回は。 一ぜんのめし、 一ぱいの水で、裏長屋住まい。ほかの人なら苦にするが…。回くんは、たのしそうにしている。えらいなあ、顔回は。」 〔一〇〕冉求(ゼンキュウ)ーー「先生の教えに不満じゃないけれど、ちからがたりないんです。」先生 ──「ちから.のたりないものは、中途でへたばる。きみのは見かぎりだ。」 〔一一〕先生が予、夏におっしゃった、「大らかな学者になれ、ケチくさい学者になるな。」 〔一二〕子游が武城の町長をしていた。先生 ──「きみは人物を見いだしたかね。」子游 ──「澹台(タンダイ)滅明というのがいます。わき道をとおらず、公用でないと、わたくしの部屋にもやってきませんです。」 〔一三〕先生 ──「孟之反はゆかしい人だ。負けいくさのしんがりで、町の門まできてから、馬にムチをあて、 『しんがりはイヤだが、馬が走らないんだ。』」 〔一四〕先生 ──「あの祝鴕(シュクダ)の弁才がなくて、美男子宋朝の顔だけでは、とても今の世に無事ではすむまい。」 〔一五〕先生 ──「出るには戸口しかないのに…。なぜこの道をとおらないのかな…。」 〔一六〕先生 ──「気だてが勝てば、野人。手だてが勝てば、知識人。手だてに気だてがつりあい、りっぱにできた人。」 〔一七〕先生 ──「人生はまっすぐなもの。よこしまな生活は、ただまぐれハズれ。」 〔一八〕先生 ──「知っているより、すきであるのがまし。すきであるより、心たのしいのがまし。」 〔一九〕先生 ──「中以上の人には、高級なことをいってよい。中以下の人には、高級なことをいってはならない。」 〔二〇〕樊遅(ハンチ)がチエのことをきく。先生 ──「人間の義務をつくし、神をうやまうが、頼らないのは、チエがあるといえるね。」人道をきく。先生1--「なさけのある人が、難題を先にし利益をあとにするのは、人道的といえるね。」 〔二一〕先生 ──「チエの人は水がすき、なさけの人は山がすき。チエの人は動き、なさけの人は静か。チエの人はたのしみ、なさけの人は長生きする。」 〔二二〕先生 ──「斉(セイ)が革新をやると、魯のようになる。魯が革新をやると、理想国になる。」 〔二三〕先生 ──「サカズキとは名ばかり。サカズキなものか。サカズキなものか。」 〔二四〕宰我がたずねる、「なさけのある人は、『井戸に人が落ちています。』といわれたとしても、とびこんでいきますか。」先生 ──「なんでそんなことがあるものか。りっぱな人はおびきだされても、おとしいれられないんだ。だまされはしても、バカにはされないんだ。」 〔二五〕先生 ──「読書人はひろく文献をまなび、それを規律でひきしめれば、ともかく本すじにたがわないだろうな。」 〔二六〕先生が南子夫人に会うと、子路がいやな.顔をした。先生は天にちかって ──「わたしに罪があれば、天が見はなす。天が見はなす。」 〔二七〕先生 ──「ほどよさという取りえは、まったくえらいことだな。そういう人がすくなくなって、久しいものだ。」 〔二八〕子貢 ──「ひろく人民に施しをして、みんなを助けたとしたら、どうです…。人道的といえますか。」先生──「人道的どころか…。まさに聖人だな。 あの堯帝・舜帝にさえできかねた。およそなさけのある人は、自分を立てたければ人を立て、自分がとげたければ人にとげさせ身ちかに感じ取ることが、なさけの道というわけさ。」 七 受けつぐが〔述而第七〕 〔一〕先生「受けつぐが作りはしない。 たしかめて昔をこのむ。おこがましいが彭(ホウ)さんのまねだ。」 〔二〕先生 ──「だまっておぼえこむ。ねばってまなび取る。あきずに手びきする。わしにはほかに能はないが…。」 〔三〕先生 ──「人格もととのわず、学問もきわめられず、正しいことにもついてゆけず、欠点もあらたまらない、わが身のふがいなさ。」 〔四〕先生は自宅では、のびのびとして、たのしそうだった。 〔五〕先生 ──「ずいぶんと、おとろえたものだ。ながいこと、わしは周公さまの夢を見ない。』 〔六〕先生 ──「真理をめざし、個性をたもち、人情にそい、芸ごとをたしなむ。」 〔七〕先生 ──「ほし肉でも持ってくれば、わしはみんな弟子にしてやった。」 〔八〕先生 ──「意気ごまねば手をかさぬ。つかえねば引きださぬ。一方を見せて、三方に気がつかねば、もう教えない。」 〔九〕先生は不幸のあった人との食事では、あまりたべないのだった。死人をおくやみした日には、もう歌わなかった。 〔一〇〕先生が顔淵(エン)にいわれた、「地位につけばやるし、浪人すれば引っこめる。わしときみだけだな、それがやれるのは。」子路がいう、「先生が総司令官だと」、だれと組みます…。」先生────「トラを手どりにし川をおしわたる、いのち知らずの人とは、わしは組まないね。なんとしても用 心ぶかくて、計画的にやる人とだな。」 〔一一〕先生 ──「金持ちになれるものなら、馬かたのしごとでも、わしはやるんだが…。もしなれないものなら、すきな道をゆこう。」 〔一二〕先生の気を使われたのは、ものいみ、いくさ、やまい。 〔一三〕先生は斉(セイ)の国で、「韶(ショウ)の曲」を三つきも聞いてならい、肉の味もわからなかった。そしてー-「はてさて、よい音楽はこうもなるものか。」 〔一四〕冉(ゼン)有 ──「先生は衛の殿さまにみかたするかな...。」子貢──「そうだな、ぼくがきいてみょう。」奥にいってーー「伯夷・叔斉(セイ)は、どんな人でした…。」先生 ──「昔のえらい人だ。」──「不平家ですか…。」先生 ──「生きがいを求めて生き得たら、不平があるものか。」出てきて ──「先生はみかたしないよ。」 〔一五〕先生 ──「まずい物をくい、水をのみ、うでをまげてまくらにする。そうしたなかにもたのしみがある。すじの通らぬ金や地位は、 わしから見れば浮き雲だ。」 〔一六〕先生 ──「もう数年生きて、五十になっても易をやったら、ひどいまちがいはしないだろう。」 〔一七〕先生のいつもいわれるのは、詩と、歴史と、お作法。これはいつもいわれた。 〔一八〕葉(知事)さまが孔先生のことを子路にきく。子路はだまっていた。先生 ──「なぜいわなかった 『あの人ときたら、意気ごむと食事もわすれ、おもしろくて心配もわすれ、年をとるのも気がつかないしまつです。』と。」 〔一九〕先生 ──「わしは生まれながら知ってるんじゃない。古いことがすきで、のがさずに勉強したのじゃ。」 〔二〇〕先生は怪談、暴力、反乱、神秘を語らない。 〔二一〕先生 ──「三人もでやれば、きっとお手本はある。よい点をえらんでまねをし、よくない点があればなおす。」 〔二二〕先生-…1「天から徳をさずかった身だ。桓〓(カンタイ)なんぞに手だしはさせぬ。」 〔二三〕先生 ──「諸君はわしに奥があると思うか。わしはきみたちにはアケスケだ。わしのすることで諸君に打ちあけないものはない。それがわたしなんだ。」 〔二四〕先生の教え四すじ- 学問、行動、まごころ、信用。 〔二五〕先生「聖人にはなかなかお目にかかれない。りっぱな人に会えたら、それでいいな。」また ──「善人にはなかなかお日にかかれない。変わらぬ人に会えたら、それでいいな。ないものを有るふりし、カラッポをいっぱいに見せ、貧しいのを鵠かに見せる。変わらぬ心どころか…。」 〔二六〕先生は、サオ釣りだけでナワ釣りせず、飛ぶ鳥は射ても寝鳥は射ない。 〔二七〕先生 ──「知りもしないで作る人もあろう。わしにはそれがない。あれこれと聞いて、よいのをえらんでついてゆく。あれこれと見ておぼえておくのも、チエの下地だよ。」 〔二八〕互郷(ゴキョウ)はわからず屋の村。そこの少年が目通りしたので、弟子たちは面くらった。先生 ──「かれを受け入れはしたが、出たあとのさしずはしない。だのになぜそうさわぐ…。身を清めてやってきたら、清いものとみとめるんだ。あとのことまで保証はいらぬ。」 〔二九〕先生 ──「人の道は、遠いものかね…。道を求めれば、そこに道があるんだ。」 〔三〇〕陳の国の法務大臣がきいた、「(お国の先代の)昭殿さまは礼式をこぞんじでしたか…。」孔先生 ──「心得ていました。」孔先生がさがると、大臣は(先生の弟子の)巫馬期(フバ・キ)にあいさつして招ぎよせ、──「人物はヒイキせぬそうだが…。人物でもヒイキしますかね…。奥方は呉の人で、おなじ姫(キ)姓なのに、子(シ)姓のようによんでいた。あれで礼式を知っていたら、だれでも知ってるでしょう。」巫馬期が、そのとおり告げる。先生 ──「わしはしあわせだ。ヘマをやろうものなら、人が気づいてくれる。L 〔三一〕先生は相手の歌うのが気にいると、きっとくりかえさせて、あとで合唱した。 〔三二〕先生 ──「学問は、わしも人なみであろうが…。りっぱな人のおこないとなると、まだ身についてはいない。」 〔三三〕先生ーー「『聖人』とか『人道的」とは、とんでもない。まあ熱心にまなんで、根気よく教えているのが、取りえといえるくらいのものだ。」公西華 ──「それこそはわたしらのまねのできないことです。」 〔三四〕先生は病気が重い。子路が「おまじないを…」という。先生 ──「そんなことがあるのか。」子路は答えて-──「ありますとも。礼拝の文句に、『そなたをあめつちの神にいのる』と。」先生 ──「わたしは長らくいのってきた。」 〔三五〕先生 ──「ゼイタクは鼻につき、しまり屋はヤボくさい。鼻につくものよりは、ヤボがいい。」 〔三六〕先生 ──「人物はユッタリと落ちつき、俗物はいつもクヨクヨする。」 〔三七〕先生はおとなしいが、きつい。いかめしいが、あらっぽくない。ていねいだが、さばけていた。 八 泰伯さま〔泰伯第八〕 〔一〕先生──「泰伯さまは、この上もない徳の人だったことになる。とうとう国をゆずりながら、国の人がほめるきっかけもないんだ。」 〔二〕先生────「きりのないていねいはくたびれもうけ。きりのない用心はいじけさす。きりのない元気はさわぎのもと。きりのない一本気はなさけ知らず。上の人が身内によくすると、人民も人情味がます。古い人をわすれないと、人民も人によくする。」 〔三〕曽(ソウ)先生が死にぎわに、弟子たちをよんでいうにはー-「足を見ておくれ。手を見ておくれ。歌に、『おそれつつしみ、ふちべをあゆみ、うす氷ふみ』とある。これよりのちは、おそれもいらぬわ。諸君。」 〔四〕曽先生が病気で(家老の)孟敬さんが見舞った。曽先生は口をきいて ──「鳥も死にぎわの、鳴き声はさびしい。人も死にぎわの、ことばはまともです。上の人にだいじな心がけが三つ。ものこしは、ガサツにならぬよう。顔つきは、たのもしさをますよう。口ぶりは、下品にならぬよう。うつわ物のことなど、係りがあるはずです。」 〔五〕曽先生 ──「才能があるのに無能の人にたずね、知識があるのに無知な人にきく。才能もなく、知識もないようで、してやられても張りあわない。むかし友だちにそういうのがいたっけ。」 〔六〕曽完生 ──「十四五歳の若ぎみと、一つの国の政治をまかされ、重大なときにもビクともしないのは、りっぱな人か…。りっぱな人だ。」 〔七〕曽先生 ──「知識人はたくましくなくてはダメだ。任務は重く道は遠い。人類愛が任務とあれば、重いではないか。死ぬまで続くとあれば、遠いではないか。」 〔八〕先生──「詩に心いさみ、規律のなかに生き、音楽に高められる。」 〔九〕先生──「人民に信頼はさせても、理解はさせにくい。」 〔一〇〕先生 ──「いさみハダの貧乏ぎらいは、ただではすまぬ。ろくでなしを、ひどくにくむと、ただではすまぬ。」 . 〔一一〕先生ーー「周公さまほどのすぐれた才能でも、もしいばって教えなければ、ほかは見るまでもないことだ。」 〔一二〕先生 ──「なが年学問をしながら、役人になろうとしないのは、めずらしい人だ。」 〔一三〕先生 ──「心から学問をし、いのちをかけて真理を守る。つぶれる国にはゆかず、乱れた国には住まぬ。まともな世には身をあらわし、まがった世には身をかくす。まともな国で、貧乏浪人とは、ふがいない。まがった国で、栄華な身分も、人でない。」 〔一四〕先生──「本職でないのに、口だしはしない。」 〔一五〕先生 ──「摯(シ)楽隊長の第一曲、『ミサゴの歌』のおさめは、あふれるばかりに耳に残ったなあ。」 〔一六〕先生 ──「野ほうずでひねくれ、無知なくせに出しゃばり、無能でいてズボラなのは、わしにも処置なしだ。」 〔一七〕先生 ──「追っかけどおしでも、のがしそうなのが学問。」 〔一八〕先生────「大したものだ、舜(シュン)帝や禺(ウ)王が世をおさめるのは、かかわりがないみたいだ。」 〔一九〕先生 ──「えらいなあ、堯(ギョウ)さまの⊥さまぶりは。山のごとく、ただ天を上にし、堯さまがそれにあやかる。海のごとく、人はもうことばがない。そびえ立つ、その建設のあと。かがやかしい、その文化のすがた。」 〔二〇〕舜帝には部下が五人いて、世のなかがおさまった。(周の)武王は、「うできき十人をかかえた。」といった。孔先生 ──「『人物難」とは、まったくだな。堯.舜のころよりも、周のほうが多い。だが女がいたからじつは九人だ。それで天下を三つにした二つをもち、しかも殷につかえていた。周のゆかしさは、この上もないものといえるだろう。」 〔二一〕先生 ──「丙(ウ)さまは、アラのさがしようがない。食事は手軽にしても、祭りは手あつくした。ふだん着はわるくても、礼服はみごとだった。御殿はちいさくしても、ミゾ川には手入れをよくした。属さまは、アラのさがしようがない。」 九 先生はめったに 〔子罕第九〕 〔一〕先生はめったに利益や、運命や、人道を語らない。 〔二〕達巷(コウ)村のだれかがいう、「えらいや、孔先生は。なんでも知ってて、なに屋でもない。」先生はそれをきき、弟子たちにむかって──「なに屋になろうかな…。馬かたか…。弓ひきか…。わしは馬かただ。」 〔三〕先生 ──「黒麻のかんむりが本式だ。いま絹にするのは、略式。わしもそれでいい。下でおじぎが本式だ。いま上にあがってするのは、思いあがり。みんなとはちがうが、わしは下でする。」 〔四〕先生のしないこと四つ。かんぐらない、思いさだめない、こだわらない、わがまましない。 〔五〕先生は、匡(キョゥ、という土地)でとんだ目にあい、いわれた、「文王はいまはないが、文教はここにあるぞ。天が文教をほろぼす気なら、のちの人はおかげをこうむれないはず。天が文教をほろぼさないかぎり、匡のものはわしをどうにもできぬ。」 〔六〕大宰(だざい)職のかたが子貢にきいた、 「先生は聖人ですな。どうしてああ多芸でしょう…。」子貢──「天のおさずけですもの、聖人みたいで多芸ですよ。」先生がそれをきかれ ──「大宰どのはこぞんじか…。わしは若いとき下っぱで、雑務をよくこなした。人物は多芸なのかね…。多芸じゃない。」牢がいう、「先生はね、『浪人したおかげで、多芸だ。』って。」 〔七〕先生「わしに知識があろうか。知識はない。無学な人のたずねるのは、あけっぱなしだから、わしはあれこれときいて説きあかすのだ。」 〔八〕先生 ──「めでたい鳥も出ず、竜馬も現れぬ。わしもゆきづまりか…。」 〔九〕先生は喪服の人、礼装の人、それにメクラの人と会うと、年下とわかっても席を立った。まえを通るには、小走りした。 〔一〇〕顔淵がつくづく感心していう、「下から見ればいよいよ高く、もぐりこむにはいよいよかたい。まえにあると見るまに、たちまちうしろになる。先生は手順よく人をみちびかれる。文献で目をひらかせ、規律で身をひきしめる。やめようにもやめられず、こちらは精いっぱいだ。スックと高いところに立たれたようで、ついてはゆきたいが、手がかりがないんだ。」 〔一一〕先生の病気が重い。子路は弟子たちを家来にしたてた。持ちなおした先生 ──「まえまえからだな、由くんがとりつくろうのは。ない家来をあることにして。だれをだまそう…。天をだますか。それにわしは家来なんぞにみとられて死ぬよりは、いっそ学生諸君にみとられて死にたいものじゃな。ましてわしはりっぱな葬式はしてもらえなくても、このわしが野ざらしになることもあるまいしさ。」 〔一二〕子貢 ──「きれいな宝石があります。箱にしまっておきましょうか、いい値段で売りましょうか。」先生 ──「売るんだな。売るんだな。わしも売り物に出てるよ。」 〔一三〕先生が未開地に住みたいという。だれかが「下品で、しようがないでしょう。」先生──「まともな人が住めば、なんで下品なものか。」 〔一四〕先生 「わしが衛から魯に帰り、そのあと音楽も立ちなおり、雅楽も納まるところに納まった。」 〔一五〕先生 ──「そとでは目上につかえ、家では年上につかえる。とむらいごとはゾンザイにしない。酒に飲まれることもない。わしにはなにも取りえはないが…。」 〔一六〕先生は川のほとりで──「時もこうして流れ去るのか。昼となく夜となく...。」 〔一七〕先生 ──「わしはまだ、道徳が女ほどすきな人には会わない。」 〔一八〕先生 ──「山をつくるときに、あと一ぱいの土でも、やめたら、それっきりだな。くぼ地をうめるときに、ただ一ぱいの土でも、人れたら、そこからだな。 〔一九〕先生 ──「おそわるとシッカリやるのは、まあ回くんだろうな。」 〔二〇〕先生は顔淵を批評して ──「かしいことをした。いつも向⊥して、やまない人だったよ。」 〔二一〕先生 ──「芽は出ても穂の出ぬのが、あるんでなあ。穂は出ても実のらぬのが、あるんでなあ。」 〔二二〕先生 ──「若い者はこわい。どうして未来がわれわれ以下だといえよう。四十、五十になっても知られないようなら、それはもうこわくないがね。」 〔二三〕先生-──「正面きった意見は、きかずにいられようか。あらためるのがよいこと。遠まわしの意見は、喜ばずにいられようか。さぐりだすのがよいこと。喜んでもさぐらず、きいてもあらためないなら、わしにもそんな人はどうしようもないさ。」 〔二四〕先生──「まごころを第一とし、つまらぬ人とつきあわぬこと。あやまちはアッサリあらためよ。」 〔二五〕先生──「集団は、大将を人れかえてもいい。個人は、意志をうばうわけにいかぬ。」 〔二六〕先生-──「ポロ綿人れをまとい、よい毛皮をきた人とならんで恥じないのは、まあ由くんだな。『ねたまず取らず、これよからずや。』」予路はいつもこれをとなえる。先生 ──「そんな心がけは、よいことのほかじゃ。」 〔二七〕先生 ──「寒さがきて、ようやく松やヒノキの根づよさがわかるね。」 〔二八〕先生 ──「チエの人はまごつかない。なさけの人は苦にしない。勇気の人はおびえない。」 〔二九〕 先生「いっしょに学べても、いっしょに進めるとはかぎらぬ。いっしょに進めても、いっしょにガンバれるとはかぎらぬ。いっしょにガンバれても、いっしょに分別できるとはかぎらぬ。」 〔三〇〕『ニワウメの花、ヒラリやハラリ。思うおかたの、お里は遠い。」先生──「思っていないんだな。なにが遠いものか。」 郷里では〔郷黨第十〕 〔一〕孔先生は郷里では、ただもうおとなしくて、口もきけないようだった。だがお宮や御殿では、ハキハキものをいい、ただつつしみがあった。 〔二〕御殿で、下の家老と話すのは、なごやかそうである。上の家老と話すのは、きまじめそうである。殿さまのまえでは、「気をつけ」をしながらも、シャチコばらずにいる。 〔三〕召されて接待役になると、顔つきがあらたまり、足どりも重重しい。ならんだ人とあいさつするのに、手を横にうこかすが、着物のまえうしろは、キチッとしている。いそぎ足には、羽をひろげたよう。客が帰ると、かならず報告にきて ──「お客はあのまま帰られました。」 〔四〕ご門を入るには、身をまるくかがめて、入りにくいかのよう。通路のまんなかに立たず、シキイをふんだりしない。(殿の)お立ちどころを通るには、顔つきをあらため、足どりも重重しく、口をきくにも舌たらずのよう。スソひきあげて広間にのぼるには、まえこごみになり、ジッといきを殺したかたち。出しなに一段おりると、顔つきがゆるんで、ホッとしたかのよう。段をおりきるといそぎ足で、羽をひろげたよう。席にもどると、かしこまっている。 〔五〕(殿さまのしるしの)玉を持つと、身をかがめて、持てないかのよう。あげてもおじぎの高さ、さげても物をわたす高さ、顔つきは用心そのもの。足は持ちあげず、物がからんだよう。贈呈式には、顔をやわらげ、懇親会には、ニコニコしていた。 〔六〕ご自身はコンやクリ色(のような喪服ふう)のヘリをつけず、赤や紫(のようなハデな色)はふだん着にもつくらなかった。夏にはひとえの麻ごろもで、かならず下着をかさねる。黒い服には黒ヒツジの皮、白い服には子ジカの白皮、黄色の服にはキツネの皮をあしらう。ふだん着は長くし、右ソデをつめる。ネマキは別にして、身のたけと半分。キツネやムジナの毛ぶかい皮が家庭着。喪中のほかは、玉などをいつも身につける。祭りばかまのほかは、みなヒダをとらぬ。羊の皮に黒かんむりでは、おくやみにゆかぬ。ついたちには、宮中服で参内する。 〔七〕ものいみには、清いころもを着、それは布製。ものいみには、たべ物を変え、居場所も変える。 〔八〕 米は精白ほどよく、ナマスは細くきざむほどよい。飯のすえてまずくなったのと、魚や肉のいかれているのは、たべない。色のヘンなのは、たべない。においのヘンなのも、たべない。火加減のわるいのは、たべない。時期はずれは、たべない。切りかたのまがったのは、たべない。タレが合わないと、たべない。肉が多くても、飯をおかずのようにはしない。酒だけは、量をかぎらぬが、酔っぱらいはしない。街の酒やほし肉は、口にしない。肉にはショウガを放さぬ。たべすぎをしない。殿の祭りでいただいた、肉は晩を越させない。家の祭りの肉も三日を越させない。三日を越すと、たべないことにする。たべながら口をきかぬ。寝ながらものをいわぬ。ただの飯、菜っぱ汁、ウリ類でも、感謝の気もちでささげる。 〔九〕しき物がゆがんでいると、すわらない。 〔一〇〕村の宴会では、(六十以上の)老人が帰ると、すぐ帰りかける。村の「やくばらい」には、礼服をきて戸主の位置に立つ。 〔一一〕他郷の人を見舞わせるときは、二度おがむおじぎをして送りだす。(家老の)季康さんが薬をとどけると、おじぎをして受けとり、──「わたしは不案内ゆえ、あとでいただきます。」 〔一二〕馬小屋が焼けた。先生は御殿からさがって、「ケガ人はないか…。」馬のことはきかなかった。 〔一三〕殿からお料理をたまわると、しき物にちゃんとすわって自分がまずいただく。なま肉をたまわると、かならず煮て先祖にそなえる。生きものをたまわると、かならず飼っておく。お相伴のときには、殿のおそなえがすむと、お毒見をする。病気で、殿が見舞われると、東まくらにして、礼服をかけ、かざり帯をのせる。およびだしがあると、馬車を待たずに歩きだす。 〔一四〕大神宮では、いちいち人にきく。 〔一五〕友だちが死んで、ひきとり手がないと、──「わたしがあずかりましょう。」友だちのおくり物は、車や馬であっても、おそなえ肉でなければ、わしいただかない。 〔一六〕寝るには、のびきらない。家では、とりすまさない。喪服の人を見ると、心やすくても、顔をひきしめる。かんむりの役人、それにメクラには、ふだんでも、身じまいをただす。野べの送りの人には、車からでもおじぎする。国の書類を持った人にも敬礼する。大ごちそうには、顔つきを変えて立ちあがる。カミナリ大風にも、顔をひきしめる。 〔一七〕車に乗るには、足もとをしっかりし、ツナにつかまる。乗ってからは、うしろを見ず、 セカセカものをいわず、指さしをしない。 〔一八〕人の顔つきで、鳥は舞いあがり、クルグルまわって、それからおりる。先生──「山の橋のメスキジ、時を知る、時を知る。」子路がつかまえようとすると、ウサンくさそうに飛び立った。
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「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
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○第一回「暴走兎達の挽歌」 GM:ユウさん 参加PC:イレーネ、エール、オーベルン、ハルモニア、リムリアーナ、レッド(敬称略) 成長:生命力「2,4」 経験点:1250+50(シューター2→3、【武器習熟/ガン】取得) 報酬:1500+257ガメル 名誉点:22点 <イレーネ、語る> 「……人に銃を向けるということは、人から銃を向けられるということだって。師匠が言ってた」 <購入> ジェザイル(1200) サーペンタインガン(180)※戦利品買取につき半額 弾丸(50) <所持金> 285+1500+257-1430=612ガメル <topics> とりあえず内気でないことだけは確定的に明らか のっけから三途の川を渡りかけてみたり。お祖母ちゃんに追い返されたそうです ○×○(66/66) ○第二回「喫茶 竜宮城」 GM:しぇるさん 参加PC:イレーネ、オーベルン、カルナ、ゼール、ロア(敬称略) 成長:器用度「1,5」 経験点:1110点(マギテック1→2) 報酬:2000+66-100=1966ガメル(ロアの指輪補填込み) 名誉点:25点 <イレーネ、語る> 「……『踊る阿呆に見る阿呆、どうせ阿呆なら踊らにゃ損々』?」 <セッション内消耗> 弾丸4発(21→17、うち一発威嚇射撃) <購入> 宗匠の腕輪(1000) 叡智の腕輪(1000) 巧みの指輪(500) <所持金> 612+1966-2500=78ガメル <topics> 本人の経歴上、いじめっ子には結構容赦ない感じ(威嚇射撃してみたりね) 酒は強いらしいです。誰かさんとは大違いですね ×○×(33/50) ○第3回「C氏の敗北」 GM:おーかさん 参加PC:イレーネ、オーベルン、パンチョス、ファルエ、ユストゥス(敬称略) 成長:精神力「4,6」 経験点:1060点(スカウト0→1、エンハンサー0→1/【キャッツアイ】取得) 報酬:1500+54ガメル 名誉点:19点 <イレーネ、語る> 「……通じ合えるのって、すごく幸せなことだよね。いいなあ……」 <セッション内消耗> 弾丸3発(17→14) <補充> 巧みの指輪(500) 弾丸10発(50) <購入> スカウト用ツール(100) <獲得> 礼服 カトラリー(家紋入り) <名誉点消費> ジェザイルを専用武器化(器用度+2) <所持金> 78+1554-600=982ガメル <topics> 特技:『お姉ちゃんのフリ』(ただし、すごく疲れる) 何だかんだでこの子もお節介焼き? ○○○(100/66)※一発目指輪使用 ○第4回「Re Megaromania」 GM:アザレアさん 参加PC:イレーネ、デイジー、デュナ、マール、ミーメイ(敬称略) 成長:精神力「4,6」 経験点:1090点(マギテック2→3) 報酬:772ガメル 名誉点:17点 <イレーネ、語る> 「……やっぱり、家族は近くに居るべきだよね」 <セッション内消耗> 弾丸4発(26→22) <所持金> 982+772=1754ガメル <topics> 井戸さんとこのデュナ君が兄貴分になりました ○○○(100/75) ○第5回「真実はいつも……」 GM:童さん 参加PC:イレーネ、イザベル、ケイヴィ、ゼーリンク、デュナ、ブリジット(敬称略) 成長:器用度「1,5」 経験点:1100点(成長見送り) 報酬:1599ガメル 名誉点:8点 <イレーネ、語る> 「仕事がいい加減なのって、ほんとーに困るよね!(ぷりぷり」 <購入> マギスフィア(小、200) 魔晶石5点(500) スカウト用ツール(100) 魔香草(100) <セッション内消耗> 弾丸3発(22→19) <所持金> 1754+1599-800=2553ガメル <topics> 結構がめつい所があったりして。お姉ちゃんがその場に居たら説教ものですね、これは(笑 最後手前の見よう見まねは、やはり姉の姿を真似たものっぽい ○×(50/71:10/14) ○第6回「領主の頼み事」 GM:タイレンさん 参加PC:イレーネ、ケイヴィ、ゼーリンク、マール、ユストゥス(敬称略) 成長:知力「5,5」 経験点:1140点(シューター3→4) 報酬:2122ガメル 名誉点:23点 <イレーネ、語る> 「んー、特に悪いことはしてないはずなのに……罪悪感はあるの」 <獲得> 魔香草(100) <セッション内消耗> 弾丸3発(19→16) <所持金> 2553+2122=4675ガメル <topics> 一応、再会は高Lvに以降したら、の予定 ○○○(100/76:13/17) ○第7回「悪魔の双六~Lv:初級~」 GM:キャスターさん 参加PC:イレーネ、ヴィート、デイジー、ハノン、パンチョス(敬称略) 成長:器用度「1,6」 経験点:1230点(マギテック3→4) 報酬:1800ガメル 名誉点:20点 <イレーネ、語る> 「やっぱり物騒なの。何でこんなの作ったんだろ?……癒すのは、向いてないのかも」 <セッション内補給> 弾丸2セット(100/25) <購入> 俊足の指輪(500) ジェザイル魔法化(5000) ヘッドドレス(100) <名誉点消費> ヘッドドレスを専用アクセサリ化(50) <所持金> 4675+1800-5700=775ガメル <topics> ピン怖いったら ××○○(50/71:15/21) ○第8回「貴方色に染めたい」 GM:ユウさん 参加PC:イレーネ、ナリュー、パンチョス、ブリジット、リムリアーナ、ロジャー(敬称略) 成長:精神力「3,6」 経験点:1300点(シューター4→5、《MP軽減/マギテック》習得) 報酬:1600ガメル 名誉点:34点 <イレーネ、語る> 「道具に頼ってるうちは三流だって、絵画の先生が言ってたけど……言わぬが花、だよね」 <セッション内購入> 弾丸1セット(50/34) <購入> 知性の指輪(500) マギスフィア(中/500) <所持金> 775+1600-1050=1325ガメル <topics> 昔(といっても誘拐される前)絵を嗜んでいたことがあったとか 漸く姉と再会できたのだとか。少し人当たりが変わってる……のかなぁ ○○○(100/75:18/24) ○第九回「不可視の症候群」 GM:アザレアさん 参加PC:イレーネ、オーベルン、ジーン、デュナ、フィオリナ(敬称略) 成長:器用度「1,3」 経験点:1130(スカウト1→2) 報酬:2500+50ガメル 名誉点:26点 <イレーネ、語る> 「田舎のこういうところって嫌いなの」 <購入> 銀の弾丸3発(750) 使いやすい調理用具セット(50) 迅速の火縄壷(100) 頑丈なランタン(40) よく切れるナイフ(20) 化粧品セット(100) 食器セット(12) テント(350) <名誉点消費> 使いやすい調理用具セット(5) 迅速の火縄壷(20) 頑丈なランタン(10) よく切れるナイフ(5) 称号:「魔弾の妖精」(魔10+弾5+妖精10) <所持金> 1325+2550-1422=2403ガメル <topics> 銀の矢とか弾丸、なんでこんなに高いのやら ○○(100/76:20/26) ○第十回「今は平穏を望む」 GM:キャスターさん 参加PC:イレーネ、ヴィオラ、クロウ、コロナ、フレイ(敬称略) 成長:敏捷度「2,3」 経験点:1190(スカウト2→3) 報酬:3000+80ガメル 名誉点:39点 <イレーネ、語る> 「これは……流石におねえちゃんにも言えないよね?」 <購入> 巧みの指輪*2(1000) <名誉点消費> ガンベルトを専用アクセサリ/MP+2に(50) <所持金> 2403+3080-1000=4483ガメル <topics> 絶望してた自分が一番嫌いらしい ○×○○○(80/77:24/31) ○第十一回「人形の夢と目覚め」 GM:おーかさん 参加PC:イレーネ、エッジ、オージアス、デュナ、ユストゥス(敬称略) 成長:器用度「1,6」 経験点:1000(成長見送り) 報酬:3000ガメル 名誉点:0点 <イレーネ、語る> 「知る喜びって、あるとおもうの」 <購入> 宗匠の腕輪(1000) <売却> 巧みの指輪*2(500) <所持金> 4483+3000-500=6983ガメル <topics> 「閉じ込められた暗い部屋の中と同じ」と思ったらしい 判定なし(77:24/31) ○第十二回「ゆかいなやまのぼり」 GM:ユウさん 参加PC:イレーネ、アティ、エッジ、ジュディット、ベルベット、ロブロイ(敬称略) 成長:敏捷度「2,6」 経験点:1280+50(マギ4→5) 報酬:2550ガメル+クロノのスイーツ優待券 名誉点:23点 <イレーネ、語る> 「んー……帰ったらもうちょっとケーキ研究してみよ。目から鱗なの」 <購入> <売却> <所持金> 6983+3050=10033ガメル <topics> 料理人として振舞ったのは初なんじゃないかしらとか ×○○○○○(83/78:29/37) ○第十三回「残された力」 GM:アザレアさん 参加PC:イレーネ、エッジ、サンドラ、ドロシー、ノービィ(敬称略) 成長:敏捷度「2,5」 経験点:1180(シューター5→6) 報酬:3100ガメル 名誉点:19点 <イレーネ、語る> 「そろそろ練習しなおしのオーバーホールしなおし、かなあ?」 <購入> 宗匠の腕輪*2(2000) 弾丸(50) <売却> 知性の指輪(250) <所持金> 10033+3250-2050=11233ガメル <topics> 久々に当たらない事もあることを自覚 ○○○××○(66/76.7:33/43) ○第十四回「Sleeping Beauty」 GM:アザレアさん 参加PC:イレーネ、ウォルト、エレック、ミジカ、ルイ(敬称略) 成長:器用度「1,6」 経験点:1000(成長見送り) 報酬:2000ガメル 名誉点:0点 <イレーネ、語る> 「わたしは、置いてかれること決定の身だけどさ。だからこそ、わたしが覚えてればいいんじゃないかなって」 <購入> ロングバレル+1(13600) <売却> 銀の弾丸*3(375) <名誉点消費> ロングバレルを専用化(50) <所持金> 11233+2000+375-13500=108ガメル <topics> 心配だけど大好きなのは変わらないらしい 戦闘なし(76.7:33/43) ○第十五回「Sleeping Beauty」 GM:アザレアさん 参加PC:イレーネ、アキナ、オスヴァ、フェリル、リューネ(敬称略) 成長:生命力「3,4」 経験点:1160(シューター6→7、《魔法誘導》習得) 報酬:3230ガメル 名誉点:23点 <イレーネ、語る> 「芝居でのことなら……許せるの?わたし」 <購入> 巧みの指輪(500) 弾丸12個(50) <売却> <名誉点消費> <所持金> 108+3230-550=2768ガメル <topics> やっぱり誘拐はトラウマの一つではあるらしい ○○○×(76.6:36/47)
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バッグ→ロッカーで外見の変更や染色ができます。 ⇒衣装の見た目と染色例(男性・女性) 服 頭 腕 足 武器 背中 装飾 服 画像 名前 ランク 解放報酬 装着能力 入手方法 春暖の夢の服 SS 単品:HP+700セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+72003点セット:防御力+7204点セット:攻撃力+2%5点セット:攻撃力+2% 春暖の夢のコイン×1 クリスマス歓喜の服 S 単品:HP+350セット:防御力+160 単品:攻撃力+56,防御力+562点セット:HP+32003点セット:防御力+320()4点セット:攻撃力+1.5% クリスマスモール(クリスマス歓喜セットギフト) クリスマス巡礼の服 SS 単品:HP+700セット:HP+3600 アバターガチャ(クリスマス巡礼セット)クリスマス巡礼ベル×1 天青の服 SS 師弟(師匠) 新婚の礼服 SS 単品:HP+500セット:HP+3600 単品:攻撃力+70,防御力+702点セット:HP+40003点セット:防御力+4004点セット:攻撃力+2% ゴシックの服 S 単品:HP+350セット:防御力+160 単品:攻撃力+56,防御力+562点セット:HP+24003点セット:防御力+2404点セット:攻撃力+1% アバター交換 白狐の服 S 単品:HP+350セット:HP+1600 単品:攻撃力+56,防御力+562点セット:HP+32003点セット:防御力+3204点セット:攻撃力+1.5% ロイヤルの服 S 単品:HP+350セット:攻撃力+160 戦場ストア アンセムの服 S 単品:HP+350セット:防御力+160 バトルアカデミーの服 S 単品:HP+350セット:防御力+160 単品:攻撃力+56,防御力+562点セット:HP+24003点セット:防御力+2404点セット:攻撃力+1% アバター交換 セイラーの服 S アバター交換 ハートフルの服 A HP+150セット:HP+600 単品:攻撃力+21,防御力+212点セット:HP+12003点セット:防御力+120 軽装の服 A 単品:HP+150セット:攻撃力+60 和服 A 単品:HP+150セット:防御力+60 温泉あかすり A 単品:攻撃力+15セット:防御力+60 単品:HP+90,防御力+92点セット:+12003点セット:防御力+120 ギルドストア 春季制服 A 単品:HP+150セット:HP+600 単品:攻撃力+21,防御力+212点セット:HP+12003点セット:防御力+120 ソリッドの服 B 単品:HP+80セット:攻撃力+32 単品:攻撃力+11,防御力+112点セット:HP+640 服の装備を[極品1星] プリーストの服 B 単品:HP+70セット:攻撃力+28 単品:攻撃力+10,防御力+102点セット:HP+560 服の装備を[良品3星] クロウの服 B 単品:HP+60セット:攻HP+240 単品:攻撃力+8,防御力+82点セット:HP+480 服の装備を[良品1星] 共生の服 B 単品:HP+50セット:防御力+20 単品:攻撃力+7,防御力+72点セット:HP+400 服の装備を[精品4星] オースの服 B 単品:HP+40セット:攻撃力+16 単品:攻撃力+6,防御力+62点セット:HP+320 服の装備を[精品2星] オリジンの服 B 単品:HP+30セット:HP+120 単品:攻撃力+4,防御力+42点セット:HP+240 服の装備を[精品1星] 凱旋の服 B 単品:HP+20セット:防御力+8 単品:攻撃力+3,防御力+32点セット:HP+160 メインストーリー ビギナーの服 単品:HP+10 単品:攻撃力+1,防御力+12点セット:HP+40 初期装備 怠けパンダのシャツ SS 単品:他プレイヤーからの被ダメージ軽減+5%セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+36003点セット:防御力+3604点セット:攻撃力+1%5点セット:攻撃力+1% イベント(旅の始まり)怠けパンダ宝箱II 頭 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 春暖の夢の帽子 SS 単品:HP+700セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+72003点セット:防御力+7204点セット:攻撃力+2%5点セット:攻撃力+2% 春暖の夢のコイン×1 怠けパンダの帽子 SS 単品:ジャイアントからの被ダメージ軽減+5%セット:攻撃力+360 単品:HP+720,攻撃力+722点セット:HP+36003点セット:防御力+3604点セット:攻撃力+1%5点セット:攻撃力+1% イベント(旅の始まり)怠けパンダ宝箱II キューティヘア S イベント(吉福交換) 腕 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 春暖の夢の手袋 SS 単品:攻撃力+70セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+72003点セット:防御力+7204点セット:攻撃力+2%5点セット:攻撃力+2% 春暖の夢のコイン×1 怠けパンダの手袋 SS 単品:ジャイアントへの与ダメージ上昇+5%セット:攻撃力+360 単品:HP+360,防御力+362点セット:HP+36003点セット:防御力+3604点セット:攻撃力+1%5点セット:攻撃力+1% イベント(旅の始まり)怠けパンダ宝箱II 足 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 春暖の夢の靴 SS 単品:攻撃力+70セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+72003点セット:防御力+7204点セット:攻撃力+2%5点セット:攻撃力+2% 春暖の夢のコイン×1 怠けパンダの靴 SS 単品:他プレイヤーからの被ダメージ軽減+5%セット:攻撃力+360 単品:HP+720,攻撃力+722点セット:HP+36003点セット:防御力+3604点セット:攻撃力+1%5点セット:攻撃力+1% イベント(旅の始まり)怠けパンダ宝箱II 武器 ナイト 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 無銘 単品:攻撃力+2 単品:HP+20,攻撃力+2 ナイトの武器を[精品1星] オリジンソード B 単品:攻撃力+3 単品:HP+30,攻撃力+3 ナイトの武器を[精品2星] オースの剣 B 単品:攻撃力+4 単品:HP+40,攻撃力+4 ナイトの武器を[精品3星] 共生の剣 B 単品:攻撃力+5 単品:HP+50,攻撃力+5 ナイトの武器を[精品4星] クロウの剣 B 単品:攻撃力+6 単品:HP+60,攻撃力+6 ナイトの武器を[良品1星] プリーストの剣 B 単品:攻撃力+7 単品:HP+70,攻撃力+7 ナイトの武器を[良品3星] ソリッドの剣 B 単品:攻撃力+8 単品:HP+80,攻撃力+8 ナイトの武器を[極品1星] クリスマスツリーの刀 SS 単品:攻撃力+400 単品:攻撃力+240,防御力+160 パンダの竹刀 SS 単品:攻撃力+400 単品:,HP+2000攻撃力+200 イベント(ミルルーレット)パンダ武器選択ギフト ハンター 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 猟弓 単品:攻撃力+2 単品:HP+20,攻撃力+2 ハンターの武器を[精品1星] オリジンアロー B 単品:攻撃力+3 単品:HP+30,攻撃力+3 ハンターの武器を[精品2星] オースの弓 B 単品:攻撃力+4 単品:HP+40,攻撃力+4 ハンターの武器を[精品3星] 共生の弓 B 単品:攻撃力+5 単品:HP+50,攻撃力+5 ハンターの武器を[精品4星] クロウの弓 B 単品:攻撃力+6 単品:HP+60,攻撃力+6 ハンターの武器を[良品1星] プリーストの弓 B 単品:攻撃力+7 単品:HP+70,攻撃力+7 ハンターの武器を[良品3星] ソリッドの弓 B 単品:攻撃力+8 単品:HP+80,攻撃力+8 ハンターの武器を[極品1星] 聖夜の弓 SS 単品:攻撃力+400 単品:攻撃力+240,防御力+160 パンダの弓 SS 単品:攻撃力+400 単品:,HP+2000攻撃力+200 イベント(ミルルーレット)パンダ武器選択ギフト メイジ 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 学生の知識 単品:攻撃力+2 単品:HP+20,攻撃力+2 メイジの武器を[精品1星] オリジンブック B 単品:攻撃力+3 単品:HP+30,攻撃力+3 メイジの武器を[精品2星] オースの本 B 単品:攻撃力+4 単品:HP+40,攻撃力+4 メイジの武器を[精品3星] 共生の本 B 単品:攻撃力+5 単品:HP+50,攻撃力+5 メイジの武器を[精品4星] クロウの本 B 単品:攻撃力+6 単品:HP+60,攻撃力+6 メイジの武器を[良品1星] プリーストの本 B 単品:攻撃力+7 単品:HP+70,攻撃力+7 メイジの武器を[良品3星] ソリッドの本 B 単品:攻撃力+8 単品:HP+80,攻撃力+8 メイジの武器を[極品1星] 水晶玉 SS 単品:攻撃力+400 単品:攻撃力+240,防御力+160 パンダの書 SS 単品:攻撃力+400 単品:,HP+2000攻撃力+200 イベント(ミルルーレット)パンダ武器選択ギフト ガンナー 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 勇者のラッパ銃 単品:攻撃力+2 単品:HP+20,攻撃力+2 ガンナーの武器を[精品1星] オリジンガン B 単品:攻撃力+3 単品:HP+30,攻撃力+3 ガンナーの武器を[精品2星] オースの銃 B 単品:攻撃力+4 単品:HP+40,攻撃力+4 ガンナーの武器を[精品3星] 共生の銃 B 単品:攻撃力+5 単品:HP+50,攻撃力+5 ガンナーの武器を[精品4星] クロウの銃 B 単品:攻撃力+6 単品:HP+60,攻撃力+6 ガンナーの武器を[良品1星] プリーストの銃 B 単品:攻撃力+7 単品:HP+70,攻撃力+7 ガンナーの武器を[良品3星] ソリッドの銃 B 単品:攻撃力+8 単品:HP+80,攻撃力+8 ガンナーの武器を[極品1星] 鈴の大砲 SS 単品:攻撃力+400 単品:攻撃力+240,防御力+160 パンダの砲 SS 単品:攻撃力+400 単品:,HP+2000攻撃力+200 イベント(ミルルーレット)パンダ武器選択ギフト 背中 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 カバラの魂の翼 疾風の魂の翼 純白の魂の翼 来風の翼 凱旋の翼 メテオの翼 日曜戦神の翼 スイム! 極彩色 ミルのバッグ バックパック 蝶の翼 肥竜は天に 水晶の翼 霊魂の旋律 怠けパンダのリュック SS 単品:他プレイヤーからの与ダメージ上昇+5%セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+36003点セット:防御力+3604点セット:攻撃力+1%5点セット:攻撃力+1% イベント(旅の始まり)怠けパンダ宝箱II クリスマスプレゼントボックス 夢幻の星月 SS 単品:攻撃力+70セット:攻撃力+360 単品:攻撃力+90,防御力+902点セット:HP+72003点セット:防御力+7204点セット:攻撃力+2%5点セット:攻撃力+2% 春暖の夢のコイン×1 装飾 画像 名前 ランク 開放報酬 装着能力 入手方法 飛星 SS 単品:攻撃力+100 聖なる雪 サクラ つぶやきメロディ ホタルの森 夢幻の遭遇 エナジー充満 聖樹スカーアルマ・A 聖樹スカーアルマ・B 聖樹スカーアルマ・C 聖樹スカーアルマ・D 聖樹スカーアルマ・E 聖樹スカーアルマ・F ジンジャーブレッドマン 幽静なる竹林 春と福が来た
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#freeze トップ アップデート・パッチ情報 「Festival de Pescador」アップデート情報報告フォーム 「Festival de Pescador」アップデート情報報告フォーム また誰かが編集してくれるのを期待して、どんどん情報をお寄せ下さい。 公式 - 告知 ・ 詳細 「Festival de Pescador」アップデート情報報告フォーム [#rb92cefa] Liveイベント「オポルト漁師まつり 〜Festival de Pescador〜」 [#ea4c6bd0] 装備品・新しいレシピ・固定レシピ・生産物 [#k44a50f2] スキル・スキル一覧・職業 [#oaf696d1] 船 [#x55116f1] オーナメント [#j0f34af6] その他細かいアップデートなど [#ffaab724] グチ [#l8c21fe4] お願い-各フォーム内容が巨大になりそうでしたら、適当な名前で保存してログページを切り替えてください。(わからない方は適宜、掲示板でご連絡下さい)。 Liveイベント「オポルト漁師まつり 〜Festival de Pescador〜」 こちらの専用ページで 装備品・新しいレシピ・固定レシピ・生産物 西欧風デザインの新たな装備品が追加されます。また、それを生産するためのレシピが既存のレシピ帳に追加されます。 生産物 レシピ R 材料 性能 備考 シュヴァリエマント モード6 (R17) 絹生地30 金糸30 高級ベルベット5 騎士爵 名声150k 操帆+1 操舵+1 社交+2 男性用 職業縛りなし シュヴァリエローブ モード6 (R17) 絹生地30 金糸30 高級ベルベット5 騎士爵 名声150k 操帆+1 操舵+1 社交+2 女性用 職業縛りなし アドミラルコート 実用衣装縫製術・第2巻 実用提督服縫製法(R9) 毛織生地30 綿生地30 ししゅう糸20 耐久度50 正装度20 攻撃10 防御20 操舵+1 仕立道具で色替え可能(紫・赤・黒) アドミラルコート 店売り ピサ − 耐久度35 正装度15 攻撃8 防御20 操舵+1 144K/色変え不可(青)/要投資(180kで確認) シュヴァエリマントとシュヴァリエローブはモード6のR17のかな?普段使わないからわからん、、、 -- ↑もともとR17にサーカムライナーがあるようだけどそれとは別に追加された?なんかモード6に追加されたってSAYで言ってる人がおるがw -- モード6の下2つ(高位礼服縫製法)が追加されてますね -- シュバリエマントorロープはモード6で作成。騎士爵以上装備可能です。 -- リス仕立師 シュヴァエリマント 騎士爵 名声150k 操帆+1 操舵+1 社交+2 -- 実用衣装縫製術・第2巻に実用提督服縫製法(R9) 毛織生地30 綿生地30 ししゅう糸20 -- シュヴァリエローブも同じ効果 -- 騎士爵以上って結構厳しいな -- シュバリエ服 正装35 防衛力40 操帆+1 社交+2 操舵+ -- リス仕立師 冒険者専用ではない? -- アドミラルコートは仕立道具で色替え可能でしたー -- アドミコートの効果はなんでしょう? -- アドミラルコート 耐久度50 正装度20 攻撃10 防御20 操舵+1 -- ↑色は紫・赤・黒でした -- ジュヴァリエマント(ローブ) モード6(R17) 耐久50/正装度35/防御力40/操帆+1/社交+2/操舵+1/名声150k/騎士爵以上 -- 材料は共に絹生地30/金糸30/高級ベルベット5 -- 性能的には特筆すべき点はない、か。騎士爵以上をアピールするための服ってとこだな -- モード6の価値を上げるほどの物ではなかったですな -- 学生服最強ですな。他の服は全部趣味の世界。 -- 見た目も使いまわしなのだから何か他にはない使えるブースト1個でも付ければいいのにね -- アドミラルコートは職・名声縛りがないことが最大のポイントだな -- ↑操舵+1の他に地味めのがもう一つあれば羅紗製イェレクと区別化できてよかったなー -- アドミラルコート、ピサで店売り確認 -- 店売りいくらなんですかぁ? -- 確認した。店売りは耐久度35 正装度15 攻撃8 防御20 操舵+1だね -- 値段は? -- 店売り144K色変え不可(青)ブースト一緒 -- ちょっとだけ作ったほうが良いところもあるのですね。 -- 投資してないと見えないですな。<店売りアドコ いくら必要かはわかりませんが未投資キャラでは見えませんでした。 -- 最近1つ店売り+製作バリエ のパターンにしたのだろうか -- $180000で確認<アドコ -- イスパ人 服売りPCが少ないし、良い案ではないかとは思ってる→店売り+上位版生産 お洒落するにも入手製が悪すぎる服が多かったし -- アドミラルコートは何のレシピにのってますか? -- 過去ログみれ -- ↑↑wiki別館のレシピDBで探してみたら「実用衣装縫製術・第2巻」のところにあったよ>アドミラルコート -- ↑↑↑ごめん、ありました。ありがとです -- シュヴァリエってさ能力的にサーカムライナーの劣化版な感じw -- ↑廉価版な。 -- ブワヤジュールもサーカムライナーもシュヴァリエもブースト構成が微妙に違うから、劣化版でも廉価版でも無いと思うが。装備制限もそれぞれ違うし -- スキル・スキル一覧・職業 以下のスキルについて、専門スキルの職業に就いている場合にRank16まで成長させられるようになります。 上限がRank16となるスキル 専門スキルの職業 美術品取引 美術商 火器取引 武器商人 外科医術 軍医 回避 斥候 上限増えても今現在、美術取引R15なんて変わり者は全鯖にどれだけいるのやら… -- そもそも美術品の種類が少ないでしょw -- 東アジアでも実装されんことにはねぇw 中国画も地図では出るんだが…… -- ↑↑おっと、雑貨の悪口はそこまでだ -- 雑貨は家具作りに必要だったり錬金で使ったりするけど、美術品は使い道自体ないからなぁ -- 来たるべき極東実装の前に美術品を鍛えておけ という光栄の優しさですw -- 船 オスマントルコ軍公用の船材を用いて造船できるガレアスが登場します。 イスタンにてオスマン公用ガレアス確認。材料(重層船尾・大型二層櫂船・大ラティーンセイル・大マスト・砲門80)、 建造日数30日、増減なし価格22725000、必要造船レベル17 -- 性能は? -- ↑店売りと変わらず.JB戦列の様に鉄より耐久+7・帆性能は銅と同等.画像板2にSSUP -- che オーナメント “ダリア”や“オーキッド”といった花のオーナメントを始め、様々な発見物オーナメントが追加されます。 アムス花売りの娘でオーナメント「ダリア」卓・壷無し -- アムス 花売り婦人 オーキッド(必要カード ブルー・オーキッド)卓・壷無し -- アンボイナ スーリヤ像、ドラゴンの牙卓付 -- カーボヴェルデ ダリア花瓶・卓・壷付きシリーズ -- その他細かいアップデートなど リオデジャネイロとリマを結ぶ新たな航路が開通します。これにより中南米東岸と中南米西岸を行き来しやすくなります。 新たな航海者功労特典として“帆塗料その16”が追加されます。 一部の街の交易所の品揃えが強化されます。 ベイルート・交易品追加【紙】 -- リオでのドミンゴ便とリマ便の乗換えがすっごく不便。。特に日曜なんてなぜに10分後に着くの… -- 「一部の街(1件)に交易品を追加」ってことで、追加はベイルートの紙だけらしい。手を抜きすぎ…… -- 「一部の装備品(1件)の変装度が低すぎた不具合を修正」←これ、何だろうねー -- 紙は錬金術師見習いには嬉しいが? -- 紙だけw吹いた -- 錬金術にはありがたいのでは? よく紙を買い付けたりして苦労しているの見るからね -- ロンドンもマルセも要投資じゃない? 国籍関係なく買えるという意味でベイはいいのでは? -- え?ベイに紙? やっとふつうにかえるのか -- 変装度がなぜかなかったのなら特製ミトラフとか・・ -- 定期船はそろそろ1経路にもう1船用意して、運行していない時間帯をカバーすべきなきがするんだぜ -- もちろん紙が買えるようになったのはいいんだが、それだけってのがな -- ↑確かに紙だけ追加ってのはなーw -- どこの国籍でも紙が買えるようになったのはいいが、早くパラケルスス邸の近くに食堂作ってくれw -- 公式発表通り、イスタン前にオスマンの討伐艦隊出現しました。オスマン公用と思われるガレアスと、同じく公用と思しきタキガレ。 -- もちろん帆にはオスマン紋章w ベイルートの紙、他国だと20+7×工業品R -- フランスを貶めるアップデートがまた一つ・・・ -- 紙が買えるようになるとはなんという神アップデートw -- 一つの街の交易所の品揃えが強化されます に修正だな -- ↑↑審議中… -- ハイレディン ↑×4 紙はさすがに仕方無い。フランスには別の魅力的な交易品を領内に出してほしいんだがな -- 紙がベイに・・・これでサバのパピヨットが国籍問わず造り放題に・・・イラネ -- パピヨットはRを考えると結構いいと思うが?上級者にはいらんが中級者までは実用レベルだろ。まあピザ作れるならそっちのが手軽だがね -- 定期船何を考えて発着時刻を決めたんだろうな。不便すぎるにもほどがある。 -- 定期船が便利になってしまったら、このゲームの意味無いけどな -- ちゅる ↑言いたいことは分かるが……。実装するからには乗り換えもきちんとしてもらわないと、それこそ意味が無いと思うが? -- 意味ないと思うなら使わなきゃいいんじゃね?個人的には、リオ発リマ発見の冒険クエストが楽になるから大助かりだけど。 -- どうせなら使いやすくしてくれって話だろw -- 南米西まで行けるレベルの人達が何言ってんだか・・・ウシュアイア周って大航海しろよ -- ↑それとこれとは別問題だって分かりそうなもんだが。実装するならちゃんと乗り換え時間まで考えて実装しろよってこと。使う使わないは個人の自由、レベルの問題では無い -- 別に乗り継ぎを前提にダイヤ作る必要は無いと思うけど? -- あるだろw リスボンからインドor東南アジア行く時、ケープで2時間も3時間も待つのかい? -- 便利すぎるのも問題だと運営は反省したんじゃないの?かといって、いまさらカリカット行やアンボイナ行の定期船を不便にしたらブーイングの嵐だろうし。 -- グチ 煽り文句の最後に「!」が付かないアップデートは2回目、1年2ヶ月ぶりです。 -- 留守番A 17 45現在、未だに@モバイルが復旧せんのだが・・・公式には完了ってあるんだが? -- 船員 D docomo端末から@モバイルにログインできなかった不具合を修正、って何だよそれw -- @モバイルに限らず、トラブルの時はアカウント期限を延ばしてくれ -- ケチ ↑↑新規docomo端末の不具合販売停止を受けてなんかあったとか? -- NPC砲撃から浸水食らう確立が間違いなく増えています -- 行商と販売員の在庫数に修正かも…万年999だった僻地なのにガクンと数が減ってた…。単に大量買いがあっただけかもだけどw -- ↑↑バッカニアの火炎弾で初めて浸水くらったわw -- 漁師祭りなんだから、魚の発見物が増えてくれればよかったのに。50種くらい -- 今更だけど、アメリカ大陸のどこでもいいから、転職できる場所(ギルド)がほしいです>< できれば商会設定できる場所も>< -- 便利さだけ追求し尽くすとゲームがつまらなくなるぞ -- せめて商会の申請許可出来る場所だけでも増えないかなあ。 -- ↑冒険やら海事で篭っている時に管理局は近場に欲しいねw 納品もあるしさ -- 開拓地の改良フルリグドセイル生産の成功率があがってるような。成功率5/8でした。 -- 前からこのくらい? ↑成功率4/18でした(´・ω・`)。単に運が良かっただけなんじゃないかと思います -- 6月9日アップデートから、航行中の水と食料の消費が増えてる…? -- 元に戻っただけです。つPLAYSTATION3版発売記念 『大航海時代Online』をはじめよう!キャンペーン -- ↑thx 慣れって怖いね。今まで以上に消費してるように感じるよ --
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前ページ次ページ大使い魔17 朝も昼間も夜もトリステインは エキサイトしてる ついて来るならそっと君だけに 教えてあげよう 雨が降っても晴れてても 陽気にfunny walkin 此処で出くわす全ての物には エネルギーがある 目には見えない不思議なpowerを 浴びにでかけよう 追いかけて来る 銃士にゃ ちょいと御用心! ハプニング! パズルみたいな 迷路解き明かせば みんな誰でも 魔天郎のヒーローになる パズルみたいな 迷路解き明かせば みんな誰でも 魔天郎のヒーローになる 第五話「白い国へ行こう」 厳重なことで有名なチェルノボーグの監獄。 フーケと、彼女の使い魔が投獄されていた。 使い魔の方は2日前のダメージが残っていたのか、動かなかった。 「そろそろ頃合いかね……」 フーケが呟いた直後、使い魔は動き出し、再び狼の如き姿になった。 「ゴールドウルフ、遠慮はいらないよ。思いっきりぶち壊してやりな」 「はっ」 ゴールドウルフが牢屋の鉄柵を一撃で破壊し、フーケは悠々と出てきた。 「マチルダ様、杖はどうします?」 「取り戻す!」 「その後は?」 「一旦ウエストウッド村に帰る!」 フーケとゴールドウルフの脱獄が成功するのは、それから数分後であった。 ルイズは夢を見ていた。 池のほとりに浮かぶ小船の中で、毛布に包まり一人泣いていた。 母が自分を呼ぶ声にも耳を貸さず、ひたすら小さくなっていた。 そこに、一人の青年が近づいてきた。 「泣いているのかい?」 「……子爵様!?」 そこにいたのは、自分の婚約者、ワルド子爵であった。 ワルドが差し出した手を取り、安心するルイズ。 しかし、ワルドはルイズが自分の手を取った直後、ルイズの手を握る力を強めた。 「し、子爵様!?」 「僕のルイズ、僕は全てを手に入れる! この国も、聖地も、君の力を借りて。さあ、一緒に行こう」 邪悪な笑みを浮かべるワルドを見たルイズは、恐怖の余り手を振り解こうとしたが、ガッチリと掴まれたため出来なかった。 更に、ワルドの背後には大小さまざまなロボットたちがいた。 その中には、ワンセブンに破壊されたものもあった。 「助けて、助けて、助けて……。ワンセブーン!!」 泣きじゃくりながら使い魔の名を叫ぶルイズ。 それに呼応するかのごとく巨大な鉄の塊がワルドを吹っ飛ばした。 バゴグチャーン! 「うごふへ!」 ワルドは無残なバラバラ死体になってから吹っ飛ばされた。 ルイズが見上げると、そこにはワンセブンが立っていた。 ワンセブンがワルドを思いっきり蹴飛ばしたのだ。 そしてワンセブンは、ロボットたちに向かって突撃した。 ルイズの夢は、そこで途切れた。 「……」 「ルイズちゃん、どーしたの? 夜明けにはまだ早いよ」 「……そう、じゃあもう一回寝るわ」 いきなり寝ぼけた状態で起きたルイズは、ニヤニヤしながら再び眠りに突いた。 ロボターは唖然としながらルイズを見つめた。 寮の近くで待機している要塞ワンセブンの甲板では、シルフィードが寝息をたてていた。 朝、食堂にて。 「ルイズちゃん、今度はどうしたの?」 えらく上機嫌に朝食を食べるルイズを見て不審に思ったロボターは、思い切って上機嫌な理由を聞いてみた。 「今朝、速達で王宮のほうから連絡が来てね。フーケが使い魔と一緒に脱獄したせいで、私のシュヴァリエの爵位授与が取り消しになったのよ」 余り役に立っていなかった自分には授与が認められ、一番の功績者であるワンセブンと、ロボターの授与が拒否された事に憤慨していたルイズは、それはもう狂喜した。 「なるほど……。でも喜びすぎじゃない?」 「そう?」 ちなみに、他の捜索隊のメンバーの爵位授与と、タバサの精霊勲章の授与も取り消しになったのだが、ルイズには関係なさそうだった。 「ミス・ヴァリエール」 「何でしょう、ミスタ・コルベール?」 「何故ミスタ・ギトーは倒れているのですかな? ひょっとして、君が持っている銃と関係が?」 「その通りですわ」 礼服を着て、派手なヅラをつけたコルベールの疑問に、ショットガンを手にしたルイズが得意げに答えた。 ルイズによると、いつも嫌みったらしいギトーが前々から嫌いだった上、今日はいつも以上に自分に食って掛かってきたので、ワンセブンが作ってくれた「ショットガン」という銃で撃った、とのことであった。 なお、使用した弾は殺傷力皆無の特殊なもであった。 ルイズから事情を聞いたコルベールは、ギトーのことは放っておいて、今日の授業の中止を告げた。 「皆さん、アンリエッタ王女殿下が来ることになったので今日の授業は中止ですぞ」 生徒たちがどよめく中、コルベールが事情を説明した。 「明日の品評会に特別審査員として出席なさるそうです。皆さん、歓迎の準備をいたしますぞ」 こうして、学院全体が慌ただしくなった。 学院へと続く街道では、ユニコーンが引く馬車が歩いていた。 街道に沿って立つ民衆からは口々にこの国と、アンリエッタへの万歳三唱が響いた。 その中にマザリーニへの万歳三唱もあったが、これは少数だった。 さらに、「ジロー王子殿下万歳!」との声も上がった。 義兄への万歳が聞こえたのが嬉しかったのか、アンリエッタは妙に上機嫌だった。 「姫殿下、急に機嫌が良くなられましたが、一体何が?」 「ニワトリゾンビ、耳を澄ましてみなさい。聞こえるでしょう? 兄上への万歳が」 「……なるほど」 上機嫌であっても自分を本名で呼んでくれないアンリエッタに呆れながらも、マザリーニは納得した。 「聞いたか、ご主人? 今日の姫は枢機卿をニワトリゾンビって呼んだぞ」 高笑いする自分の使い魔を諌めながら、カトレアはマザリーニに詫びた。 「サブロー、やめなさいな。枢機卿、この子の無礼、代わりにお詫び申し上げます」 カトレアがマザリーニに詫びたためか、サブローは微妙にバツの悪そうな顔をしていた。 「ご主人と契約した際に情報を手に入れてはいたが、ジロー兄貴が本当に王子になっていたとはな……」 「私も驚きましたわ。まさか兄上の御実弟がいたなんて。……あら? この間まで兄上のことを呼び捨てにしていたのに、何故今になって敬称を?」 「カトレアが注意したのだよ。「実の兄を呼び捨てにするのはだめですよ」って」 アンリエッタの疑問に、仮面の男が朗らかに答えた。 「ご主人には頭が上がらん……。魔天郎、何故笑っている」 魔天郎が笑ったことが面白くなかったサブローは、学院に着くまで本を読んでいた。 「おー、ユニコーンだ」 「ロボター、はしたないわよ。ところで、ワンセブンは?」 「自己改良中。グラビトンの発射インターバルをもっと短くするって」 「そう」 ユニコーンが引く馬車が正門をくぐり、アンリエッタが姿を現すと、歓声が湧き上がった。 それに続きサブロー、そしてカトレアが馬車から出てきたため、ルイズは思いっきり面食らった。 「あの人って、確かカトレアさんじゃ?」 「そうよ。……でもなんで姫様と一緒に。それにあの黒ずくめは誰?」 「カトレアさんの隣にいる黒ずくめ、あいつは……」 「知ってるの?」 「……魔銃の本当の所有者だよ」 「ええ!?」 二人が軽いパニックに陥っている間、魔天郎も馬車から出てきたが、彼の姿に注目した者は何故か少数だった。 夜、ワンセブンの内部サロン。 「ルイズちゃん、どうした?」 「へ?」 呆けていたルイズは、ワンセブンの呼びかけにすぐに反応することが出来なかった。 「お姫様とカトレアさんが来てから、凄く反応が鈍くなった」 「……」 ルイズが再び呆け始めると、エレベーターのドアが開いた。 入ってきたのは、サブローと魔天郎、そしてフードをかぶった二人の女であった。 突然の珍客たちに気付いたルイズを他所に、その内の一人が杖をふった。 そして唱えられたルーンと、周囲を舞う光の粒から、ルイズは気付いた。 「ディティクト・マジック!?」 「念には念を、ですわ」 杖をふった女はそう言って、もう片方と一緒にフードを取った。 女の正体は、アンリエッタとカトレアであった。 「姫様に……ちい姉さま!?」 刹那、アンリエッタはルイズに抱きついた。 「ルイズ、ルイズ、ルイズ、ルイズ、ルイズ」 「……姫様?」 怪訝に思ったルイズは何とかアンリエッタを引っぺがしたが、今度はカトレアが抱きついてきた。 「ちい姉さま……」 「会いたかったわ。私の小さなルイズ」 カトレアがルイズに抱きつく光景を見ていたロボターは、思わずこう洩らした。 「おおー、眼福じゃー」 このおバカ発言に吹き出したらしく、魔天郎は声を殺しながら笑い始めたが、直後にサブローに注意された。 「おい、魔天郎」 「す、すまん。余りにもいきなりだったからつい……」 二人を見たルイズは、疑問をアンリエッタにぶつけた。 「姫様、この二人は?」 「彼ですか? 黒いヘルメットをかぶっている方はサブローさん。仮面をつけている方はマテンローさんですわ」 アンリエッタによる簡単な紹介の後、二人は改めて自己紹介した。 「よろしくルイズ。俺はサブロー、わけあってカトレア嬢の使い魔をしている」 「ちい姉さまの使い魔!?」 「嘘だと思うなら、後でご主人に直接聞いてみるといい」 「では今度は私の番だな。私は魔天郎、ワンセブンが元いた世界で怪盗をしていた」 魔天郎のこの言葉に、ワンセブンは即座に反応した。 「待て、私は貴方のことは知らないぞ」 「……当然だな。私があの世界で怪盗を始めたのは、君がこの世界に召喚されてから数年後だ」 「何だと?」 「更に言うなら、サブローは私が活躍していた時代から、十年以上経った後のあの世界から召喚された」 驚愕するワンセブンに、魔天郎は更に付け加えた。 「君より少し後に召喚された者が、君がいた時代の存在とは限らない、そして逆もまた然り、という事だ」 「……」 「もっとも僕の場合、あっちの方に迷い込んだだけなんだけどね」 急に喋り方を変えた魔天郎は、帽子と仮面、そしてカツラを取った。 現れたのは、青い髪の美丈夫だった。 その顔を見たルイズは即座に反応した。 「え!? 貴方は確か死んだはずの……!!」 「察しがいいね。僕の本名はシャルル・オルレアン。君の言うとおり、死んだはずの男だ」 「シャルル・オルレアン。「場違いな工芸品」を調べていた際に事故死。しかし、巷では実兄である現ガリア国王、ジョゼフにその実力と人格を妬まれ暗殺されたともっぱらの噂」 ワンセブンが淡々と言うと、シャルルはさっきとは比べ物にならないほど語調を荒げた。 「兄を、僕の兄さんを悪く言うな!」 シャルルの激昂ぶりに、全員が面食らった。 「兄さんは悪くない。むしろ被害者だ! あんな事をするまで追い詰めた、王宮の連中と両親の被害者だ! みんな王宮の連中と両親が悪いんだ!!」 一通り叫んだ後、平静を取り戻したシャルルは、先ず謝罪した。 「……すまない。取り乱したりして」 「はあ……。ところで、シャルル殿下は何故向こうの世界に?」 「……それは、後々話そう。あのときの事を最初に思い出す羽目になるから。それはそうと、アンリエッタ、ここに来た目的を告げないと」 強引に話を切り上げ、シャルルはアンリエッタに話をふった。 「……はい。ルイズ、我々がここに来た理由が分かりますか?」 「いえ……」 アンリエッタは深呼吸してから、こう告げた。 「今から四日後、私たちはプリンス・オブ・ウェールズを亡命させるため、アルビオンに行きます。ルイズにも同行して欲しいのです」 俺は凶器 アンドロイド~ 暗闇色のスーツの下に~ 流れる電流~ 血の火花~ 新たに電子頭脳得て 狙うは次兄 名はジロー 木枯らしに似た口笛は~ 死神の唄う子守唄~ 俺はサブロー ハカイダー…… 前ページ次ページ大使い魔17
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#shadowheader 【】内は裁縫スキル製作レベルです。 ※型紙の残りの使用回数 30 (共通) 型紙 [#z015b8ab] 英字ランク [#b8dc0fe9] 数字ランク [#wb655030] 特殊型紙 [#t453ad25] デザインコンテスト型紙 [#n39c8d72] ランダムボックス限定衣装型紙(仮) [#n77eb96a] コメントフォーム [#jf71d21d] 型紙 attachref縦2x横1(stack不可) 入手先 各地NPC、ドロップ、その他(詳細は下記) 売却価格 販売価格に準拠(NPC販売品)50G(巨大ボスドロップ品、ランダムボックス品) 英字ランク 型紙 素材 進行率 仕上げ 入手先 【F】魔道士の帽子 普通の革×1 70% 安い仕上げ糸×1 バルター,グラニテス,エフィー(200G) 【F】ポポスカート 安い生地×1 99.9% 安い仕上げ糸×1 ノラ,ガルビン(400G) 【F】バンダナ 安い生地×1 99.9% 安い仕上げ糸×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(400G) 【E】モンゴ旅行服(♀) 安いシルク×1細い糸×1 30% 普通の仕上げ糸×1 ノラ,ガルビン(1,250G)プレインドラゴンdrop 【E】モンゴ旅行服(♂) 安いシルク×1細い糸×1 30% 普通の仕上げ糸×1 ノラ(1,250G)プレインドラゴンdrop 【E】革頭巾 安い生地×1普通の革×1 99.9% 普通の仕上げ糸×1 バルター,エフィー(1,250G)ピシス地下トンネル宝箱 【D】モンゴロングスカート 安い生地×1安いシルク×1 99.9% 安い仕上げ糸×1 バルター,エフィー(1,600G) 【D】コレスヒーラードレス 安い生地×1安いシルク×1 50% 普通の仕上げ糸×1 ノラ,ガルビン,グラニテス(3,000G) 【D】魔法学校男子学生服 安い生地×1普通のシルク×1普通の革紐×1 99.9% 高級仕上げ糸×1 ノラ,ガルビン(1,700G)プレインドラゴンdrop 【D】コレス忍者スーツ(♂) 普通の生地×1普通のシルク×1太い糸×3 40% 安い仕上げ糸×1 バルター,グラニテス,エフィー(3,400G)プレインドラゴンdrop 【D】トークショートブリムキャップ 普通の生地×1安いシルク×1太い糸×1 40% 高級仕上げ糸×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(1万1,000G) 【C】コレスヒーラースーツ 安い生地×1普通の生地×1安い革紐×1 60% 最高級仕上げ糸×1 ノラ,ガルビン,グラニテス(4,000G)コンヌース地下迷路宝箱 【C】ガーディアングローブ 普通の革×1太い糸×1 30% 高級仕上げ糸×1最高級仕上げ糸×1 バルター,ガルビン,エフィー(4,600G)ピシス地下トンネル宝箱 【C】コレスヒーラーグローブ 普通の生地×1普通のシルク×1組紐×1 50% 高級仕上げ糸×1 ノラ,ガルビン,グラニテス(4,600G) 【C】スリムインナーローブウェア 普通の生地×2普通のシルク×1 36% 高級仕上げ糸×1 エレノア(アルバイト限定) 【C】ライミラク系修道服 普通の生地×1普通のシルク×1 40% 高級仕上げ糸×1 エレノア(アルバイト限定) 【B】一般用シルクの紡織手袋 普通の生地×1 99.9% 細い糸×1 バルター,グラニテス,エフィー(3,000G) 【B】リリナロングスカート 高級シルク×1細い糸×2 70% 高級仕上げ糸×1 バルター,グラニテス,エフィー(5,500G)コンヌース地下迷路宝箱 【B】コレスシーフグローブ 安いシルク×1高級革紐×1 70% 普通の仕上げ糸×1 バルター,グラニテス,エフィー(4,000G) 【B】コイキルトウェア 普通の生地×2普通のシルク×1 45% 普通の仕上げ糸×1 巨大ワニdrop 【A】モンゴ帽子 最高級生地×1普通のシルク×1 50% 最高級仕上げ糸×1 ノラ,グラニテス(1万1,250G) 【A】魔法学校女子学生服 最高級生地×2普通のシルク×1 70% 高級仕上げ糸×1 ノラ(1万1,500G)プレインドラゴンdrop 【A】エラベストスカート 高級生地×2安いシルク×1最高級革紐×1 20% 普通の仕上げ糸×2 レッドサキュバスdrop 【A】男性用ロングレザーコート:光沢なし 普通のシルク×1最高級革×2安い革紐×3 30% 最高級仕上げ糸×1組紐×1 ブラックサキュバスdropアルゴスdrop 【A】カリスウィザードシューズ 普通の生地×3高級シルク×2普通の革×2 28% 高級仕上げ糸×1 レッドドラゴンdrop 数字ランク 型紙 素材 進行率 仕上げ 入手先 【9】クロスメイル 最高級生地×2細い糸×1組紐×1 30% 最高級仕上げ糸×1 ノラ(2万5,500G) 【9】ボリュームベレー帽 最高級シルク×2高級革×1組紐×3 50% 最高級仕上げ糸×1 ジャイアントヘッドレスdrop 【9】アドベンチャースーツ 高級生地×2高級シルク×2組紐×2 40% 高級仕上げ糸×1 フレッタ(2万7,000G) 【9】ベーシックレザーアーマー 高級生地×3高級シルク×3普通の革×5 23% 高級仕上げ糸×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(3万2,500G) 【9】ビッグショルダーアーマー 普通のシルク×2普通の生地×2鉄板×1丈夫な紐×2 27% 普通の仕上げ糸x1組紐x3 グラニテス(4万7000G) 【9】ノルマンウォーリアアーマー 高級生地×2高級シルク×3普通の革×6丈夫な紐×3 30% 高級仕上げ糸×2アイアンインゴット×3 漁船宝箱 【8】ライトレザーメイル(♀) 高級シルク×1高級革×1普通の革紐×1 40% 高級仕上げ糸×1組紐×1 バルター,エフィー(1万6,000G)プレインドラゴン,レッドドラゴンdrop 【8】ライトレザーメイル(♂) 普通のシルク×1高級革×1普通の革紐×1 30% 高級仕上げ糸×1組紐×1 バルター,エフィー(1万6,000G)プレインドラゴンdrop 【8】ブロードフェザーハット 高級生地×1安いシルク×1最高級革×1 25% 最高級仕上げ糸×1高級革紐×2 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(5万5,000G) 【8】ライディングスーツ 高級シルク×4丈夫な紐×2丈夫な糸×2 19% 高級仕上げ糸x1組紐x3 ノラ,ガルビン,グラニテス(7万3000G) 【8】ダービースコットプレッドブーツ(♀) 高級生地×1高級シルク×2組紐×1 35% 高級仕上げ糸×1丈夫な紐×1 フレッタ(1万5,000G)巨大ワニdrop 【8】ダービースコットプレッドブーツ(♂) 高級生地×1高級シルク×1組紐×2 35% 高級仕上げ糸×1丈夫な紐×1 フレッタ(1万5,000G)巨大ワニdrop 【7】ルイスベストウェア 最高級生地×1普通のシルク×1最高級革紐×2 20% 高級仕上げ糸×1組紐×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(7万7,000G) 【7】踊り子用ズボン 最高級生地×2高級革×1最高級革×1 30% 最高級仕上げ糸×1 フレッタ(6万7,000G) 【7】スパークレザーアーマー 普通の革×5高級革×5丈夫な糸×5鉄板×2 20% 高級仕上げ糸x1丈夫な紐x3 ノラ,バルター,ガルビン,エフィー(12万1000G) 【7】キルステンレザーアーマー 最高級生地×2最高級シルク×2高級革×5 21% 最高級仕上げ糸×4 漁船宝箱 【7】カリスウィザードスーツ 最高級生地×3最高級シルク×3 22% 高級仕上げ糸×2 レッドドラゴンdrop 【6】専門家用シルクの紡織手袋 高級生地×1 99.9% 細い糸×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(5,000G) 【6】ステッチロングローブアーマー 高級生地×3高級シルク×3丈夫な糸×3鉄板×4 16% 最高級仕上げ糸x1丈夫な糸x3 グラニテス(9万4200G) 【6】テラエイシェントパターンウェア 高級生地×3高級シルク×3組紐×5 17% 高級仕上げ糸x1丈夫な糸x5 アークリッチdrop 【6】ビートクラックスアーマー 高級生地×2鉄板×4高級革紐×3 20% 高級仕上げ糸x1 巨大ワニdrop 【5】ミドルクラシックレザーアーマー 最高級生地×3高級シルク×2高級革×3 21% 最高級仕上げ糸×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(8万6,400G) 【5】タイアップロングブーツ 普通の生地×3高級シルク×3 17% 高級仕上げ糸×1 コンヌース地下迷路宝箱 【5】テラダイヤモンドシェイプレザーブーツ 高級革×3高級シルク×3丈夫な糸×3 13% 高級仕上げ糸x1組紐x3 バルター,グラニテス,エフィー(7万2200G) 【4】ボーンマリンアーマー(♂) 普通の生地×4普通のシルク×3キングクラブの殻×3 18% 最高級仕上げ糸×1トビウオのヒレ×1 シェナン,マーリン(7万4,000G) 【4】ボーンマリンアーマー(♀) 普通の生地×3普通のシルク×4キングクラブの殻×3 17% 最高級仕上げ糸×1トビウオのヒレ×1 シェナン,マーリン(6万8,000G) 【4】グレースプレートアーマー 最高級シルク×2高級生地×2高級革紐×1 17% アイアンインゴット×3最高級仕上げ糸×1 漁船宝箱 【3】コレスシーフスーツ(♂) 最高級生地×1最高級シルク×1最高級革紐×1 10% 最高級仕上げ糸×1組紐×1 バルター,グラニテス,エフィー(11万2,500G)プレインドラゴンdropピシス地下トンネル宝箱 【3】レザーミニワンピース:リングタイプ 高級シルク×1最高級革×1最高級革紐×1 10% 最高級仕上げ糸×2組紐×1 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(12万5,000G) 【3】キラフローリーパターンローブ 最高級生地×1最高級シルク×3丈夫な糸×5 21% 最高級仕上げ糸×1組紐×3 アークリッチdrop 【3】ベッキーウィッチドレス 最高級生地×3最高級シルク×4丈夫な糸×3 10% 高級仕上げ糸×2 巨大ライオンdrop 【1】チークスーツ 最高級生地×3最高級シルク×3最高級革×5 10% 最高級仕上げ糸×1濃霧柄のシルク×1 フレッタ(21万7,000G) 【1】ハイクラシックレザーアーマー 最高級生地×2最高級シルク×3最高級革×4 10% 最高級仕上げ糸×1鉄板×4 バルター,ガルビン,グラニテス,エフィー(17万2,000G) 【1】テラビーラインポアポイントアーマー 最高級シルク×3丈夫な紐×3鉄板×3プレインドラゴンの鱗×1 28% 最高級仕上げ糸×1組紐×5ミスリル板×5 アークリッチdrop 特殊型紙 特殊型紙で製作した服には、 年齢制限 があります。 特殊型紙で製作した服には、 魔法攻撃 自動防御確率:○% が付きます。(ココパンダローブには自動防御は付きません) 特殊型紙で製作した服には、 現在改造を入れることができません! 型紙 素材 進行率 仕上げ 入手先 【B】ココセーラーミニ( 11歳~14歳 魔防:5.00% ) 高級シルク×1高級革紐×2 80% 普通の仕上げ糸×1イエローベビーポーション×1 フレッタ(5,800G) 【9】ココパンダローブ( 10歳~14歳 ) 高級シルク×1最高級シルク×2高級革紐×3 30% 最高級仕上げ糸×1グリーンベビーポーション×1 フレッタ(5万G) 【8】セリナオープンレザージャケット( 13歳~16歳 魔防:8.00% ) 最高級シルク×3最高級革×1高級革紐×3 30% 最高級仕上げ糸×1ブラックユースポーション×1 フレッタ(7万5,000G)巨大ワニdrop 【7】セリナセクシーベアルック( 17歳~20歳 魔防:10.00% ) 最高級生地×2最高級シルク×2組紐×3 20% 最高級仕上げ糸×1レッドポーション×1魔法の金の糸×1濃霧柄のシルク×1 フレッタ(8万2,000G)プレインドラゴンdropコンヌース地下迷路宝箱マルコムのランダムボックス 【6】セリナレディードレス( 18歳~22歳 魔防:10.00% ) 最高級生地×2最高級シルク×1最高級革×1 20% 最高級仕上げ糸×1レッドポーション×1魔法の金の糸×1濃霧柄のシルク×1 フレッタ(9万5,000G)プレインドラゴンdropコンヌース地下迷路宝箱 【6】ビアンカドロワーズレイヤースカート( 13歳~16歳 魔防:8.00% ) 最高級シルク×2高級革×2最高級革紐×1 30% 最高級仕上げ糸×1ブラックユースポーション×1魔法の銀の糸×1 フレッタ(9万2,000G)ピシス地下トンネル宝箱 【5】剣士学校の制服ロングタイプ(♂)( 17歳~20歳 魔防:8.00% ) 最高級生地×2最高級シルク×2最高級革×5 12% 最高級仕上げ糸×1レッドポーション×1魔法の金の糸×1濃霧柄のシルク×1 フレッタ(13万2,000G)巨大ワニdrop 【4】剣士学校の制服ショートタイプ(♀)( 14歳~17歳 魔防:8.00% ) 高級生地×5高級シルク×5最高級革紐×5 10% 最高級仕上げ糸×1ブラックユースポーション×1魔法の銀の糸×1濃霧柄のシルク×1 フレッタ(10万7,000G)巨大ワニdrop 【3】ダービースコットプレッドウェア(♂)( 15歳~19歳 魔防:8.00% ) 最高級生地×3最高級シルク×3高級生地×2丈夫な糸×3 10% 最高級仕上げ糸×1レッドポーション×1魔法の金の糸×1 フレッタ(11万5,000G) 【3】ダービースコットプレッドウェア(♀)( 13歳~17歳 魔防:8.00% ) 最高級生地×3最高級シルク×3高級シルク×2丈夫な糸×3 10% 最高級仕上げ糸×1ブラックユースポーション×1魔法の銀の糸×1 フレッタ(11万5,000G) デザインコンテスト型紙 日本コスチュームデザインコンテスト(2007) ヴィセオ ブランシェ、クマタル(Kumataru) 日本コスチュームデザインコンテスト(2006) エミィロリン アルカレイド キュアレス 国際コスチュームデザインコンテスト(2005) 季鈴、イディカイ、サンドラ、ショウロンジュエン、ニューヨークマリオ、ウィス ラカド、ジャブシンセン、ナタネ 型紙 素材 進行率 仕上げ 入手先 季鈴 【B】季鈴冬天使のコート(♀) 安い生地×3普通の生地×1高級生地×1 58% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【A】季鈴冬天使のコート(♂) 普通の生地×2高級生地×1 56% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【B】季鈴冬天使の帽子 高級生地×1普通の生地×1 55% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【C】季鈴冬天使のグローブ 普通の生地×2 28% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【B】季鈴冬天使のブーツ 安い生地×1普通の生地×1 22% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス ショウロンジュエン 【9】ショウロンジュエンフォーマルドレス(♀) 普通の生地×2高級生地×1普通のシルク×2 34% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【A】ショウロンジュエンフォーマルスーツ(♂) 安い生地×1普通の生地×3高級シルク×1 31% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【C】ショウロンジュエンフォーマルシューズ(♀) 安い生地×1高級生地×1 --% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【B】ショウロンジュエンフォーマルシューズ(♂) 普通の生地×1高級シルク×1 --% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス ニューヨークマリオ 【8】ニューヨークマリオウエストテイラーウェア(♀) 安い生地×1普通のシルク×3高級シルク×1 32% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年) 【7】ニューヨークマリオウエストテイラーウェア(♂) 安い生地×2普通のシルク×2高級シルク×1 --% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年) サンドラ 【A】サンドラスナイパースーツ(♀) 高級生地×1高級シルク×1 45% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【9】サンドラスナイパースーツ(♂) 安い生地×1普通の生地×2高級シルク×1 34% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【9】サンドラスナイパーキャップ 普通の生地×1高級シルク×1 62% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【B】サンドラスナイパーグローブ 高級生地×1 62% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【B】サンドラスナイパーブーツ(♀) 普通の生地×1普通のシルク×1 32% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【A】サンドラスナイパーブーツ(♂) 普通の生地×3 36% 安い仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス ウィス 【7】ウィス防衛軍の服(♀) 普通の生地×2高級生地×2普通のシルク×1 45% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【8】ウィス防衛軍の服(♂) 高級生地×2普通のシルク×2 44% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【A】ウィス防衛軍の帽子(♀) 高級生地×1普通のシルク×1 58% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス 【C】ウィス防衛軍のブーツ(♂) 普通の生地×1高級シルク×1 35% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス イディカイ 【B】イディカイ聖職者の礼服(♀) 安い生地×3普通の生地×2高級生地×1 41% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年) 【A】イディカイ聖職者の礼服(♂) 普通の生地×2高級生地×1 46% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年) ラカド 【8】ラカドレイヤードマフラーローブ 普通の生地×1高級生地×1 42% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年) ジャブシンセン 【7】ジャブシンセンインペリアルローブ 普通の生地×2高級シルク×1 44% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年) ナタネ 【7】ナタネモフモフファーコート 普通の生地×3高級生地×1 45% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(1周年/2周年)マルコムのランダムボックス アルカレイド 【A】アルカレイドスターライトローブ 普通の生地×3高級シルク×4 --% イベント景品(2周年) エミィロリン 【9】エミィロリンアドミラルハット(♂) 普通の生地×2高級シルク×2 42% -- イベント景品(2周年) 【?】エミィロリンアドミラルハット(♀) 普通の生地×2高級シルク×2 44% -- イベント景品(2周年) 【8】エミィロリンアドミラルコート 高級生地×2安いシルク×2普通のシルク×2 36% -- イベント景品(2周年) 【8】エミィロリンアドミラルドレス 高級生地×1普通のシルク×2高級シルク×3 36% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(2周年) キュアレス 【7】キュアレスゴーグル付きキャスケット 高級生地×3高級シルク×3 45% 普通の仕上げ糸×1 イベント景品(2周年) ヴィセオ 【9】ヴィセオバッジ付き飛行帽 高級生地×3高級シルク×3普通の革×5 40% 高級仕上げ糸×1 イベント景品(3周年) クマタル(kumataru) 【9】クマタルバーバラスフォックスグローブ(♂) 高級革×1組紐×3 28% 高級仕上げ糸×2 イベント景品(3周年) 【9】クマタルバーバラスフォックスグローブ(♀) 高級革×1組紐×3 29% 高級仕上げ糸×2 イベント景品(3周年) 【8】クマタルバーバラスフォックスアーマー(♂) 最高級生地×2最高級革×1高級革×1 38% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 イベント景品(3周年) 【8】クマタルバーバラスフォックスアーマー(♀) 最高級生地×2最高級革×1高級革×1 36% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 イベント景品(3周年) ブランシェ 【9】ブランシェ炎紋のレザーキャップ 最高級生地×2最高級シルク×1最高級革×2 42% 高級仕上げ糸×1組紐×3 イベント景品(3周年) 【A】ブランシェ炎紋のレザーグローブ 高級革×1組紐×3 28% 高級仕上げ糸×2 イベント景品(3周年) 【9】ブランシェ炎紋のレザーブーツ 最高級革×2組紐×4 27% 高級仕上げ糸×2 イベント景品(3周年) 【8】ブランシェ炎紋のレザーアーマー(♂) 最高級シルク×3最高級革×1高級革紐×3 38% 最高級仕上げ糸×4 イベント景品(3周年) 【8】ブランシェ炎紋のレザーアーマー(♀) 最高級シルク×3最高級革×1高級革紐×3 36% 最高級仕上げ糸×4 イベント景品(3周年) ランダムボックス限定衣装型紙(仮) 従来は完成品だけ実装されていた「ランダムボックス限定衣装」の型紙が、2008年9月18日に追加されました。 型紙 素材 進行率 仕上げ 入手先 【D】眼帯 高級生地×5高級シルク×5 14% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【C】大きなリボン 高級生地×3高級シルク×8 18% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【B】ボニータツインリボン 高級生地×4高級シルク×8 17% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【B】トルディビンテージターバン 高級生地×8高級シルク×5 15% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【A】ねこの手ぶくろ 高級革×1組紐×3 17% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【A】トルディ4ボタングローブ 高級革×5組紐×3 15% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【A】ボニータプルームアンクルブーツ 高級革×4組紐×4 19% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【A】ビアンカロンググローブ 最高級生地×3最高級シルク×3 15% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【A】アスティングローブ 最高級生地×3最高級シルク×3 17% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【9】テンガロンハット 高級革×3組紐×3 15% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【9】ビアンカリボンブーツ 最高級生地×4最高級シルク×4 19% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【9】アスティンシューズ 最高級生地×4最高級シルク×4 18% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【8】ボニータシルキーグローブ 高級生地×5高級シルク×6 17% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【7】トルディシューズ 高級革×6組紐×2 20% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【7】ビアンカキャップ 最高級生地×2最高級シルク×2 15% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【7】アスティンキャップ 最高級生地×2最高級シルク×2 20% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【6】ヘッドドレス 高級生地×3高級シルク×5 17% 高級仕上げ糸×4丈夫な紐×1 マルコムのランダムボックス 【4】トルディビンテージウェア 最高級生地×5最高級シルク×3高級生地×2 18% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【4】アスティンダンディスーツ 高級生地×3高級シルク×2普通のシルク×2 18% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【3】執事衣装 最高級生地×3最高級シルク×3高級生地×2丈夫な糸×3 18% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【3】テラゴシックパンクスーツ 最高級生地×4最高級シルク×1最高級革×3 20% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【3】アーチャースクールウェア 最高級生地×5最高級シルク×3最高級革×5 11% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【2】エプロンワンピース 最高級生地×5最高級シルク×5高級生地×2 17% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【2】エレガントゴシックドレス(ロング) 最高級生地×5最高級シルク×3高級生地×2丈夫な糸×4 18% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【2】エレガントゴシックスーツ 最高級生地×3最高級シルク×3高級生地×2丈夫な糸×5 19% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【2】メイド衣装ロングタイブ 最高級生地×4最高級シルク×3高級生地×2丈夫な糸×3 19% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【2】テラゴシックフルドレス 最高級生地×6最高級シルク×1最高級革×2 19% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【2】ボニータシルキードレス 最高級生地×3最高級シルク×8高級生地×2 12% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【2】ビアンカウイングボレロ 高級生地×2高級シルク×4普通のシルク×1 16% 最高級仕上げ糸×4 マルコムのランダムボックス 【1】ボレロアンドジャンパスカート 最高級生地×7最高級シルク×3高級生地×2 10% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【1】グレースショールドレス 最高級生地×6最高級シルク×4高級生地×2 15% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【1】エレガントゴシックドレス(ショート) 最高級生地×4最高級シルク×2高級生地×2丈夫な糸×3 16% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 【1】メイド衣装ショートタイプ 最高級生地×3最高級シルク×3高級生地×2丈夫な糸×3 20% 最高級仕上げ糸×4組紐×1 マルコムのランダムボックス 名前 コメント コメントフォーム あと他にも型紙の入手先には店売り以外にイリアボスからのドロップもありますけどそれも書いたほうがいいのでしょうか? -- バイトで出る服類のところに(バイト有)と追加してみようと思うんだけどどうだろう。一回一回なにがあったかな~ってページ見比べっこしたりする手間も省けるし、これから上げようと思ってる人にもわかりやすくなるかな?と思うのですが・・・ -- ↑それは裁縫スキルやバイトのページでやった方がいいかと -- 続き 新しい枠組みを作って裁縫スキルページに作ってもらえるととても見やすいと思います -- テラビーの進行率27%の模様。30%は雷雨時ですね -- ショウロンジュエンフォーマルシューズ。男性用、天候・PTボーナス無しで進行率52%。女性用、同条件で進行率54%。・・・記載が無かったので、どなたか編集お願いいたします。 -- 箱型紙はランクの割には良心的な材料?扱える人にとっては良いトレ材料だがまぁ入手経路の問題はヒドいね・・ -- 全然良心的でもない。最高級革以上に流通していない一工程に最高級生地7つ使うボレロなんて鬼だろ。トレにしても流通量が限られるから期待はできない。しかも狙ったかのようにR5は外してるし。せいぜい保護付きが追加されたと思うぐらいがいいだろう -- 裁縫R4の人の大成功にR2型紙のビアンカウィングボレロはチークスーツ、ハイクラ作るよりもいいかもしれない。 -- 少なくとも売ってコストをある程度回収できる見込みがあるという点では上に同意。この辺が作れる裁縫スキル所有者なら大抵は高ランク紡績スキルも所持してるはずなので生地シルクの調達はドロップ頼みの革より楽。 -- 名前 コメント
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921: 194 :2020/11/28(土) 17 40 30 HOST ai126192001243.75.access-internet.ne.jp 現代日本大陸化&銀連神崎島クロスSS ある日、日本が『超』大陸と化してしまった件セカンドシーズン?その9 信任状捧呈式その1 その頃のゲート日本では、いよいよ信任状捧呈式が執り行われようとしていた。 その日の東京は、やや冷え込んではいる物の天気自体は晴天そのもの。 人々はこの歴史的一大イベントを一目見ようと、街道沿いに集まっていた。 テレビの報道番組も、生中継でその様子を放送している。 宮木「いよいよ、ゲートを挟んだ二つの日本国とティ連・彼方の世界の米国による信任状捧呈式が執り行われようとしています。現場に中継が繋がっています。長谷部さん」 長谷部「はい!こちら東京駅付近の様子です。コロナ禍の状況下の東京ですが、今回ばかりは多数の人達が街道沿いに駆けつけておりまして、この歴史的なイベントを一目見ようとですね、 大使達の登場を今か今かと待ち侘びている状況です!」 宮木「大使の皆さんは、まだ到着していないのでしょうか?」 長谷部「はい、まだ到着・・・・・あっ!来ました!ティ連のトランスポーターから、ヴェルデオ大使が降りて来ました!彼方の日本及び神崎島の大使の姿も見えます!」 長谷部「その他に、フェルフェリアさんの姿も見えました!わぁ!?スタジオの皆さん、聞こえますか?凄い大声援です!凄い熱狂的な状況です!!」 と、各局こんな感じで生中継がされており、視聴率もぐんぐん上昇していた。 一方の儀装馬車は既に丸の内口に到着しており、大使一行が馬車へエスコートされている。で、そのエスコート役だが・・・。 ヴェルデオ「では、今日は宜しくお願いシマス、しょうかくサン」 しょうかく「お任せください!ボク・・・じゃなかった私達の全力を持って、任務を全う致します!」 922: 194 :2020/11/28(土) 17 41 00 HOST ai126192001243.75.access-internet.ne.jp ヴェルデオの声に答えたのは、警備を担当する艦娘達の代表である「しょうかく」だ。しかし、少々上がっている雰囲気だ。 まぁ無理はない。任務の重大さと集まった沢山の人々、加えて自身にとって大先輩ともいえる神崎島の艦娘達を従えている状態なのだ。緊張するなと言っても、無理だろう。 尚服装だが、全員礼服を着用しその上から艤装を背負っている。 漣「し、しょうかくさん。ちょっと、緊張し過ぎ・・・ww」 朧「駄目だよ漣ちゃん。笑ったりしちゃ」 潮「そ、そうだよ。一世一代の晴れ舞台なんだし・・・」 暁「大丈夫よ、しょうかくさん!一人前のレディーたる私が居るんだもん!絶対成功するわよ」 響「・・・暁、調子に乗り過ぎ」 雷「そもそもレディー云々は、関係無いでしょ?」 電「・・・その自信は何処から来るのやら」 暁「な!?なによ、三人揃って!!」 曙「・・・残念だけど、三人の言う通りよ。本当に一人前のレディーならば、口では無くて行動で示しなさいよ」 暁「あ、曙まで~~~~~!?!?」 しょうかく「はいはい、喧嘩しないで。・・・・・ふふっ、いつも通りな皆を見てたら、こっちの緊張も解れて来たよ。有難う」 曙「お礼は、信任状捧呈式を無事終えてからよ。何せ、しょうかくさんが今回の護衛の肝の一つなんだから」 しょうかく「・・・そうだね。よし、それじゃあ全員馬車の四方に展開するよ」 923: 194 :2020/11/28(土) 17 41 30 HOST ai126192001243.75.access-internet.ne.jp 翔鶴の呼び掛けに応じて、馬車の四方・決められた位置に展開する艦娘達。先頭にしょうかく・曙・朧。右側面は雷・電。左側面は潮・漣。後方は暁・響となっている。 しょうかく「大使達は・・・乗ったね。それじゃあ、行くよ皆。しょうかく航空隊、全機発艦!!」 翔鶴が叫ぶと共に、両腕に装着されている飛行甲板の複数の電磁式カタパルトから、鏃上の金属片が次々と空中に射出される。 そしてその金属片が突如炎をまとい、次の瞬間には金属片が妖精さんの操る航空機ーーーF-4C「閃風改」・F-3C「烈風改」・F-35Cへと変化したのだ。 観客A「おお!!」 観客B「凄え!!」 ゲームやアニメの世界さながらの現象に、観客達から驚きの声が上がる。 スマホやカメラから写真撮影のフラッシュが瞬き、大歓声が上がる。 フェル「フフフ、コチラも負けていませんデスヨ」 フェルがそう呟くや否や、馬車の頭上に光学迷彩と音響ステルスを解除したフリンゼ・サーミッサが姿を現し、儀装馬車の進行コース沿道にシールドを展開したのだ。 観客達も最初は驚くも、我に返ると面白がってシールドに触れだし、空気の波紋が沿道を飾る。 更にヴァルメが偽装を解除して空中に現れ、そのヴァルメからトドメとばかりに、国防陸軍第一空挺師団一個大隊のパワードスーツ兵が降下。 艦娘達が守る馬車の更に外周に展開し、守りに付く。胸部装甲版の桜の紋様と「日本国防陸軍」の文字が、太陽に照らされて輝いているように見える。 見物に来ていた観客達は、当初は唖然呆然としていたものの、それ等の感情が過ぎ去ると共に称賛を示す盛大な拍手と大歓声が響き渡った。 その一方で、怒りと共に罵り声を挙げる者もいた。 そう、共産支那と米国の工作員だ。 中工作員A(攻撃役)「糞ッ!小日本と異星人共め!!」 中工作員B(観測役)「なんだ、あのSFな産物は!?反則だぜ!!」 当初聞いていた話とはまるで違う展開に、怒りを露わにする二人。最初は美国との共同作戦という事で、簡単な任務だと思っていた。複数のチームが対物ライフルで狙撃すると聞いた時は、 「流石に大袈裟じゃね?」 とすら思っていた。 だが現実はどうだ。空中から宇宙戦艦のシールドで、馬車を観客共々完全に守る等、誰が想像がつく事だろうか? 少なくとも、自国の場合ならメンツやら何やらで採用すらされないだろう。 中工作員B「だが、どうする?このままでは、任務失敗となってしまうぞ」 924: 194 :2020/11/28(土) 17 42 00 HOST ai126192001243.75.access-internet.ne.jp 顔を青くしながらどうするかを問う工作員B。 帰国後に受けるであろう仕打ちを想像しているのであろう。 中工作員A「いや、まだ手はある。要は騒ぎを起こせばいいのだ。ならば・・・、あそこを狙うぞ」 そう言って、この工作員は米国工作員から事前に渡されたAT-4CSを皇居に向けて構える。 中工作員B「成程!その手が有ったか!」 中工作員A「ああ、これで任務は成功。俺達は英雄だ!調子に乗っている小日本共に懲罰を下してやる!!」 勝利を確信し、安全装置を解除しながら窓から発射機を出した・・・・・次の瞬間! ガキィィィィィィィィィン!! 中工作員A「グワァッ!?!?」 中工作員B「!?」 大きな音と共にAT-4CSが弾け飛び、中工作員Aがもんどりうって倒れたのだ。 突然の出来事に驚く中工作員B。だが、我に返る前に第三者の声が響いた。 神州丸「そこまでであります!!」 あきつ丸「皇居に攻撃をかけようなどと・・・、恥を知るのであります!!」 転送装置でその場に駆けつけたのは、神州丸とあきつ丸の二人。 中工作員Bは、反射的に二人に67式微声手鎗を全弾叩き込む。だが・・・。 神州丸「・・・やってくれたでありますな」 あきつ丸「乙女に向かって、いきなり銃を発砲とは・・・。男の風上にも置けないで有りますな」 全く効いていないという光景に、中工作員Bは絶句する。 断層の交換すら忘れて呆然としている中工作員Bと未だ悶絶している中工作員Aに、二人はティ連製スタン弾を容赦なく叩き込み、行動不能にして拘束した。 神州丸「こちら神州丸。支那の工作員二名を拘束したであります」 神崎『よくやった。三人共』 まるゆ『二人とも、大丈夫でしたか?』 あきつ丸「大丈夫でありますよ。まるゆ、見事な狙撃でありましたぞ」 925: 194 :2020/11/28(土) 17 42 30 HOST ai126192001243.75.access-internet.ne.jp そう、AT-4CSを撃とうとしたまさにその瞬間、転送装置で最適な狙撃ポイントに移動していたまるゆが、バレットM95でカウンタースナイプをしたのだ。 結果は、見事にAT-4CSに直撃して射手もろとも吹き飛ばしたのだ。この作品のまるゆさんは、出来る娘なのだ。 一方、他の地点の米国のチームはというと・・・・・ナヨ様の襲撃を受けていた。 ナヨ様「宮城を狙おうとするトハ・・・、卑劣にも程が有りマスヨ!!」 割と怒り心頭な様で、米工作員二人にゼル端子を撃ち込み行動不能にしていた。 遠距離攻撃チームが順当に制圧されていく一方で、観客に紛れ込んでいる近接チームは部下達を突入させるか否かで迷っていた。 米工作員隊長・マクソン(以下マクソン)(クソッ!遠距離攻撃チームはまだ行動を起こさないのか?もうすぐ儀装馬車が皇居に辿り着いてしまうぞ) 焦りながら最善の行動をとるべく、必死に頭を働かせるマクソン。だがその時、公安警察官の山本(ゲート世界の同位体)が彼の肩にそっと手を置く。 マクソン「うおっ!?・・・だ、誰かと思えば山本じゃないか。一体何の用だ?」ボソボソ 山本「おう、マクソン。元気そうだな。・・・何やら、お仕事なのかい?」ボソボソ マクソン「・・・何の話だ?俺は、このイベントの見物に来たのだが?」ボソボソ 山本「とぼけなくても結構。あ、下手に動くなよ。警察の狙撃班が、お前に照準している。変な真似をすると、頭がスイカになっちまうぞ?」ボソボソ マクソン「・・・随分大袈裟な対応だな。で、何が言いたいんだ?」ボソボソ 山本「いや、なに。この付近に明らかに観光客とは思えない米国籍の白人・黒人さん達が複数いたのでね。ちょっと拘束させてもらったが、お前さんは何か知らないかい?」ボソボソ その一言に驚きながら、慌ててスマホで部下に連絡を取ろうとするも、誰からも応答はない。 山本「既に狙撃しようとした連中も、此方が抑えてある。こちらも余り事を荒立てなく無いからな。ここは、大人しく引いてくれんか?」 マクソン「・・・・・クソッ!!」 作戦の失敗に無念の表情で叫ぶマクソン。 中国側も失敗を悟り、作戦を中止せざるを得なかった。 その後、儀装馬車は予定通り護衛に見送られながら二重橋、正門石橋を渡って正面門に入っていった。 こうして、歴史に残る儀式が始まった。 926: 194 :2020/11/28(土) 17 43 00 HOST ai126192001243.75.access-internet.ne.jp 以上です。儀装馬車の進行と、その裏での工作員とのやり取りの様子でした。 しょうかくさんの艤装の飛行甲板ですが、両腕に二つに分けた形で装着。電磁式カタパルトで艦載機を射出するギミックを内蔵しています。そして航空機ですが、妖精さん仕様のは一部がデフォルメされた形となっています。なので、仮に写真を元に機体形状を真似ようとしてもまともに飛行出来ない代物と化したりします。なお、飛行機への変身(?)シーンはアニメ版艦これ準拠です(あのシーンは格好良かった) 敵工作員への裏での対処ですが、神州丸とあきつ丸が突入要員、まるゆは狙撃要員と任務を分担しています。そして、最後の方で出て来たマクソンさんは拙作オリジナルです。名前の 由来は特に無かったり(ヲイ) 「第三帝国様のパクリ乙」とか言われそうな内容ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 wiki掲載は、自由です。
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統一地球圏連合政府中央政庁は、オーブのオロファト市中心部の官庁街、そのやや西寄りにそびえ立っている。 高さは400メートル弱、100階を越えるその姿は、天を貫く柱にも雲海へと繋がる門にも例えられ、統一連合の権威の象徴として威容を誇示していた。 主席公邸の最上階は丸々、主席代表専用の執務フロアとなっている。 豪奢な内装の施された廊下を、濃い藍色の髪の青年士官が歩いていた。 年の頃は20代前半。 若々しい引き締まった体躯を、統一連合正規軍の第一種軍装で包んでいる。 胸元の階級章は少将。 だがその緑眼と秀でた額が特徴的な整った容貌を見れば、若年に似合わぬ階級を疑問に思う者は殆どいないだろう。 現主席の側近中の側近である近衛総監アスラン=ザラを知らぬ者は、軍には皆無なのだから。 従者の案内で、アスランは目指す部屋の前へとたどり着く。 受付の秘書官に形式的な手続きをすますと、部屋へ通じる重厚な木製扉が開いた。 扉の奥に広がっていたのは、主席が休息や仮眠を取るためのプライベートルームだ。 広々と広がる室内の内装や調度品は、よく吟味されているものの華美とは程遠い。 万事において気取らない主の為人(ひととなり)を反映したのだろう。 窓際で眼下の市街を見下ろしていた人影が、ゆっくりと振り向く。 金に近い琥珀色の瞳が真っ直ぐにアスランへと向けられた。 背筋を伸ばし、アスランは敬礼をした。 「お迎えに上がりました、主席」 「ご苦労、ザラ少将」 統一連合首席代表カガリ=ユラ=アスハは、今年で23歳を迎えた。 いつもは妙齢の女性にも関わらずオーブ首長服の上下で通しているものの、今は式典のためにドレスを着ている。 オーブの民族衣装を現代風にアレンジした薄緑色のドレスはカガリに良く似合っていた。 大胆に開いた首筋から肩にかけてのラインを隠すように、純白のマントを羽織っている。 数年前から伸ばし始めた金髪は、結い上げず自然に背筋の中程まで流されていた。 よく見ると、どこか少年じみた顔にも薄っすらと化粧が施されているのに、アスランは気づいた。 「まだ時間に余裕はあるが、そろそろ行くとするか。アスラン」 上品に微笑むカガリに、アスランは一礼した。 空調の効いた中央政庁から出ると、オーブの暑い空気が広がっている。 主席公邸を出発した公用車の前後に、SPを乗せた護衛車両が半ダースほど続く。 後部座席では、カガリがうんざりした表情をしていた。 「やっぱりこういうヒラヒラした服は苦手だ。気を抜くと裾を踏んで転びそうになる」 そういってドレスを摘み上げるカガリに、アスランは苦笑した。 20を過ぎて猫の被り方を覚えても、こういう素の部分は変わらないな――そう思いながら、アスランはカガリをたしなめる。 「折角の晴れの式典なんだ。こういう演出が必要なのは分かってるだろう」 こうやって2人きりになると、ついアスランの口調も昔の俺お前のそれに戻ってしまう。 ちなみに公用車の前後は特殊な偏光ガラスで区切られているため、後部座席のやり取りは運転手に届かないようになっている。 「分かっているさ、それぐらい」 口をとがらせたカガリは、窓の外に視線を移す。 首都オロファトの市街を行き交う人々に混じって、要所要所に青とグレーに塗り分けられたMSが立哨していた。 治安警察省特別機動隊保有の無人MS、ピースアストレイだ。 旧式化したかつてのオーブ軍主力機MBF-M1アストレイを再利用し、高性能AIを搭載した機体である。 武装もスタンロッドや放水銃といった対人非殺傷兵器が中心。 当然ながら対MS戦闘能力は低いものの、暴徒鎮圧やデモ隊の誘導などで大きな成果を挙げていた。 街並みを眺めていたカガリが感慨深くつぶやいた。 「豊かだな、オーブは」 「ああ」 アスランもそれにうなずく。 「カガリやラクスががんばったからさ。おかげで『統一地球圏連合』という、やっと世界を平和に出来る仕組みも作る事ができたからな」 ―『統一地球圏連合』― 通称、統一連合。 これはメサイヤ攻防戦、後の世に言う「第二次汎地球圏大戦(ロゴス戦役)」後、オーブが提唱した新しい国際的政治体制である。 過去二度にわたって世界は、人類絶滅すら危ぶまれるう世界規模の大戦争を引き起こした。 その反省から戦争勃発の危険を廃し、地球圏の恒久的平和の実現を求めて設立された。 それが『統一地球圏連合』である。 世界の国々は統一連合に加盟し、政府と議会が制定した「統一地球圏連合憲法」と、加盟各国の代表者(人口に合わせて増減。数名~十人前後選出)より構成された議会「統一地球圏連合最高議会」、そこで承認を受けた各連合政府機関のもとに、統治される。 議会からは代表主席が一名選出され、強力な権力によって軍や政府機関を統括していく。 加盟国は地球圏連合憲法の枠組みを超えて行動してはならない。 また議会や政府の決定に服す義務を有する。 その代わりに、国家間の諸問題(紛争や貿易問題、経済格差など)はもちろん、一国で処理できない問題(内戦や財政破綻など)の解決・援助を、議会や政府に求めることが出来る。 事実上、世界を支配する統一政治機構なのである。 オーブが世界各国の有力国をまとめあげて作り上げた経緯から、首都はオーブの首都オロファトに置かれ、そして現在の統一連合代表主席は、オーブ永世首長であるカガリ=ユラ=アスハとなっていた。 しかし世界を統べる盟主となったのに、カガリの表情は今一つ浮かない。 「……世界を平和に……か。ならいいんだけど」 「……何かあったのか?」 その声の微妙な響きに気づいたアスランが水を向けると、ややあってカガリは答えた。 「ついさっき、西ユーラシア総督からの報告があってな」 ああ、と頷いたアスランは、ようやくカガリの言葉にも納得できた。 CE73年に勃発した第二次汎地球圏戦争――ロゴス戦役において、地球で最も大きな被害を受けた国はユーラシア連邦だった。 まず開戦のきっかけとなったユニウスセブン落下の際、破片の1つが中心部である西ヨーロッパを直撃。 ローマ市が消し飛び、穀倉地帯のフランスも大打撃を受ける。 続いて以前からユーラシア政府の施政に反発をしていた黒海沿岸部で分離独立運動が起こる。敵の敵は味方、との判断からこの地域はプラントに支援を要請し、プラントもザフトの派遣で答えた。 対抗して地球連合も第81独立機動軍やオーブ遣欧艦隊を増援として投入するも、地中海を舞台とした一連の戦いで敗退する。 反連合の動きは、ロシアや東欧といったユーラシア東部全域に広がった。 追い詰められた地球連合軍は非常手段に訴える。 ユーラシア政府の黙認の下に超大型MA、GFAS-X1デストロイを投入して独立運動の鎮圧を計ったのだ。だが、モスクワやベルリンといった4つの大都市の壊滅と100万人以上の死傷者という悲劇の末、デストロイは撃破され、この暴挙は失敗に終わる。 激怒した『東』ユーラシアは、CE74年5月のメサイア攻防戦に前後して『西』ユーラシアに独立と宣戦を布告。 『東ユーラシア共和国』を名乗った。 以降、翌75年5月にピースガーディアンとオーブ軍を中心とした連合軍が介入するまで、約1年に渡って泥沼の東西内戦が続く。 ユーラシアの欧州半島からシベリアに至る広大な版図は、分断されたまま統一連合に編入される。 その分断ラインが旧西暦時代のいわゆる<鉄のカーテン>にほぼ沿っていたのは、歴史の皮肉だろうか。 それでも東ユーラシアは、かろうじて主権を持つ加盟国としての体裁を保っているものの、西ユーラシアは自治権すら放棄した直轄領として、統一連合政府から派遣された総督に統治されている。 現在の西ユーラシアは、莫大な数の領域内難民と壊滅した経済、戦禍で荒廃した国土を抱えこみ、統一連合から投下される援助物資を頼りにかろうじて復興が始まった状態だ。 欧州が人類の中心の1つだった時代は、過去のものとなっていた。 「どうやら、今年の冬は餓死者を出さずにすみそうだけど――」 「去年は酷かったからな。ユニウスセブン落下から続く異常気象が原因で、北半球は記録的な冷夏。そのせいで北半球全体でも500万もの餓死者を出す大惨事だ。しかもその犠牲のほとんどが東西ユーラシアときている」 「私達も、統一連合も打てる手は打ったんだ……。でも間に合わなかった」 「……」 「こうやってオーブの人間が平和と繁栄を謳歌する一方で、飢えと寒さに怯える人達もいる。矛盾だな」 「そうだな……」 今年の1月から4月にかけて、反統一連合勢力による一斉蜂起。いわゆる『九十日革命』まで起こった。 反乱軍と戦った統一連合軍もその中核は、旧オーブ軍とクライン派ザフトであり、アスランも近衛総監としてユーラシア戦線に出征している。 実の所、近衛総監という地位は、ほとんど名誉職に近い。 平時にはカガリの側近兼護衛、戦時には切り込み隊長。 もっとも、その立場を不満に思ったことはないが。 「でも今の世界にオーブの力が必要なのは分かっているだろう」 「……」 「オーブが揺れれば世界が揺れる以上、オーブ市民の不満を呼ぶような政策は取れない。違うか?」 「そのためには、ユーラシアの人達を見捨てろと?」 「彼らからの搾取の上で、オーブが太平楽を楽しんでいるわけじゃない」 「そういう問題じゃないだろう!」 思わずカガリは声を荒げる。 たとえ統一連合の元首であっても、現実にカガリが拠って立つ足場はオーブなのだ。 「世界のためだ。泥を被る覚悟ぐらいしろ」 「嫌な話だ……」 「安心しろ。何があっても、俺がお前を守る」 「え?」 アスランの真摯な眼差しに、カガリはきょとんとしてしまった。 思わず一瞬、ほんの一瞬だけかすかに頬を赤らめてしまうが、すぐもぎ放す様に視線を外すとそっぽを向く。 「ば、馬鹿! そういう事は私じゃなくメイリンに言ってやれ!」 「え、いや、そういう意味じゃ――」 妻の名を出され、急にしどろもどろになったアスランを横目で見ながら、カガリはふんと鼻を鳴らした。 沿道で歓声を上げる群衆の中に、黒衣の青年――シン=アスカの姿があった。 車載ラジオは、カガリの功績をたたえる放送を繰り返す。 「統一連合樹立3周年記念式典か。いい気なものだな、独裁者。今日が貴様の命日になるのも知らずに」 小声で吐き捨てるように呟くと、シンは足早にその場を立ち去った。 街路の角を何度か曲がり、路地裏に停車していた古い型のバンの助手席にに乗り込む。 シンが固いシートに腰を下ろしてドアを閉めると、バンはくたびれたモーター音と共に発車した。 「コニール、状況は?」 「今の所は予定通りだね。サハラの虎や南米の連中は、もう配置についてる。いけすかない、バラに十字のお歴々もね」 運転席でハンドルを握っている若い娘――コニールが答える。 年の頃は二十前後。 よく日に焼けた肌は褐色、頭の後ろで括られた髪は茶色だった。 気の強そうな眉が特徴的な顔立ちは、どこか猫を思わせた。 「ふん、どうやら幸運の女神は、まだ俺達にそっぽを向いていない様だな」 「女神さまはどうでもいいけどね」 ハンドルを切りながら、コニールがシンにどこか剣呑な口調で言う。 「1時間前に公園で騒ぎを起こしたの、あんたでしょう?」 「捕まるようなへまはしないさ」 「オセアニアのみんな、カンカンだったよ!うまく誤魔化しておいたけどさ」 悪びれずに肯定するシンに、コニールは声を荒げた。 「まったく、連絡役で間に入ってるあたしの身にもなってよ」 「元々、この作戦に参加する予定だったのは俺とレイだ。勝手についてきたのはお前だろうが」 「なっ――」 あまりの言い草に、激昂しかけるコニールだが、寸前で思いとどまると深々と溜め息をついた。 「あんたねえ。その前後左右360度に喧嘩売って回ってる態度、何とかしなよ」 「性分だ。今さら変えられん」 「……あっそ」 再び溜め息をつくコニールとシンの間に、第3の声がかかる。 《シン、この作戦で俺達リヴァイブの役割は、あくまでサポートだ》 不思議な事に、バンの中にはシンとコニール以外の姿は無い。 もっとも注意すれば、その3人目の声が合成された電子音声だと気づくだろうが。 《オセアニア解放軍はこの作戦の下準備に、少なからざる時間と人員を費やしている。それを忘れるな》 「ああ分かっているさ、レイ」 素っ気無く、レイと呼ばれた声の主にシンは答える。 その眼は街並みの向こうに覗く式典会場、クライン=アスハ平和祈念スタジアムに向けられていた。 式典パレードの隊列は、オロファト市中心部のメインストリートを進んでいた。 このままクライン=アスハ平和祈念スタジアムへと行進するのだ。 隊列を組んでいるのは、オノゴロ島に置かれた統一連合地上軍総司令部の直隷下、オーブ防衛を主任務とする精鋭師団「地上軍第1機動師団」だ。 100機を越える鋼鉄の巨人は、併走する軍楽隊の奏でる行進曲に合わせて一糸乱れぬ歩調で進み、沿道を埋める数十万にも達する市民の興奮を高める。 ザフトMSの系譜に連なる曲面主体のシルエットと、ダガー系列の特徴が強く現れた頭部ユニットを併せ持ったその姿が、陽光を受けてきらめく。 統一連合軍の現行主力MSであるGWE-MP006Lルタンドだ。 外見から分かるように連合・プラント双方の技術を組み合わせて開発された機体で、『ナチュラルとコーディネイターの融和の象徴』として地球圏全域に配備が進められていた。 興奮した少年達が、目を輝かせて吹奏に合わせて合唱する。 他の大人達もそれに唱和し、歌声はあっという間に広がっていった。 歌が終わらぬうちに、それまでとは質の異なる甲高い響きが上空から降って来る。 見上げた市民の目に映ったのは、鏃のような隊形を組んだ、3機の戦闘機。 鋭角的な前進翼と機首のカナードが特徴的な機体は、だが正確には戦闘機ではない。 GWE-MP001Aマサムネ――第2次大戦時のオーブ軍可変MS、ムラサメの後継機だ。 原型となったムラサメ同様、空戦型MAへの変形による高い機動力を誇っている。 3機のマサムネは、飛行機雲の尾を引きながら上昇する。 続いて旋回、錐揉み、急降下。 一隊だけではない。 十数の編隊が入れ代わり立ち代わり僅かな時間差で現れては、巧みなアクロバット飛行の軌跡を蒼穹のキャンパスに描く。 その度に地上からは、大きな歓声が上がった。 尽きぬ歌声と歓声の中を、パレードは進んだ。 「フン……下らんな」 官庁街の一角にある、統一連合政府情報管理省の大臣執務室。 部屋の主――アンドリュー=バルトフェルドは呟いた。 執務室にすえられたTVでは民間放送のレポーターが、式典の様子を実況中継している所だった。 《ご覧下さい。沿道を埋め尽くす人、人、人……。ここオロファト中央通りには記念式典のパレードを一目見ようと人々が殺到しております。今ちょうど私の後ろをオーブの守り神、第1機動師団の精鋭MS隊が人々の歓喜の声の中、整然と行進しております……》 「……連中に真実など必要無い。ただ奴らが望む情報を、餌として与えてやればそれでいい」 最高級のスーツに包まれた逞しい肩が、小刻みに震える。 笑っているのだ。 「愚民どもが」 浅黒い精悍な顔に、傲慢そのものの笑みが浮かぶ。悪意と嘲弄が広い室内に満ち―― 「……で、今日は愚民ごっこですか?」 心底、呆れ返った一言で雲散霧消した。 「その手の台詞は、夜景でも見下ろしながらブランデーグラス片手に口にして下さい。真っ昼間からコーヒー飲みながら言っても、馬鹿にしか見えません。遊んでる暇があったら仕事して下さい」 「手厳しいね、ダコスタ君」 むしろ淡々と続ける声に、バルトフェルドはマーチン=ダコスタ補佐官を振り返る。 ザフト以来の腹心の部下は、本来ならバルトフェルドが決済すべき書類の山と格闘していた。 先程までの凄味はどこへやら。 緩み切った表情と声で、バルトフェルドはだらしなく背もたれに寄りかかると、両足を机の上に投げ出した。 「いやあ、持つべきものは有能で勤勉な部下だねえ」 「一応は閣僚の一員なんですから、もっとしゃんとして下さい。折角の礼服に皺が寄りますよ。式典で恥をかいても知りませんからね」 「夜の睡眠時間まで削って取り組んでいた一大イベントが、一応の成功を見せてるんだ。多少だらけても罰は当たらんさ」 「その代わり、昼寝はしっかり取ってましたね――何にせよ、お疲れ様でした」 実際、バルトフェルドの演出は完璧と言って良かった。 統一連合を構成する加盟国の元首達が集うこの場で、統一連合軍はその力を遺憾無く見せ付けていたのだ。 「どうせならピースガーディアンも出した方が、印象が強いと思うんですが」 「今日の主役はアスハ主席だからね。正規軍に花を持ってもらうさ。と、本命のお出ましか」 TVが真紅と黄金に輝く2体のMSを映す。 パレードの隊列に参加したのだ。 赤い機体はGWE-X002Aトゥルージャスティス、金の機体はGWE-X003A旭。 それぞれアスランとカガリの専用機であり、統一連合の力を象徴する超々高性能MSだ。 真紅の騎士と黄金の王者の勇姿に、レポーターは興奮し、群集は一際大きな歓声が上がる。 「目立つねえ。ま、宇宙艦隊を丸ごともう一揃え建造できるだけの予算をつぎ込んでるんだ。せめて看板の役には立ってくれないとね」 「またそんな事を。その内、舌禍で失脚しても知りませんよ」 「そうなったら、田舎に引っ込んで暴露本――もとい、回想録で一山当てるさ。ダコスタ君、君の事は誠意と勇気に満ちた、有能な人材として描写しておくからね。安心したまえ」 「そいつはどうも……」 どこまでも気楽に振る舞う上司に、ダコスタは深々と溜め息をついた。 アンドリュー=バルトフェルド情報宣伝長官と比較すれば、カガリ=ユラ=アスハ首席代表は少なくとも1万倍は勤勉だった。 彼女はまだ若く、指導者として多くの欠点を有していたが、少なくともその中に怠惰は含まれていない。 オーブ中が式典に沸くころ、遥か遠くにスタジアムを望む高層ビルの一室に仏頂面の男が入ってきた。 肩には大きめのバッグを背負っている。 ここは以前は空部屋だったのだが、二ヶ月ほど前から事務所として借りられている。 しかし不思議なことに部屋には机一つなく、使われた形跡が全く無かった。 だが男はそれが当然のように、全く関心を示さない。 バッグを下ろすと、中にあった数々の部品を組み立てる。手馴れた手つきだ。 十分足らずでそれは完了し、彼は窓際に自身を配置、窓を開ける。 高層ビルであるにも関わらず、窓が開けられる。 何故ならこの日のために、そういう風に仕掛けたのだからそれは当然だった。 男は懐から取り出した通信機に語りかける。 「こちら『雀"1"』、配置に着いた。あとは『駒鳥』を待つだけだ。オーバー」 《こちら『牡牛』、了解。オーバー》 短い通話はそれっきりで切れた。 この日、カガリは忙しかった。 まず主席公邸で式典に参列する各国元首の表敬訪問を受ける。 そして次にドレスからパイロットスーツに着替え、旭に乗り込み、自らパレードに参加してスタジアムへと向かう。 さらに礼服に着替えた後、スタジアムで式典に参加。 大戦の犠牲者を追悼し、統一連合の成果を高らかに謳いあげる演説を行う。 その後は戦没者慰霊公園に向かい、遺族達を弔問。 夜はドレスに着替え、迎賓館でパーティー。 招待した各国元首や貴賓客をもてなす……。 分刻み、秒刻みのタイトなスケジュールだ。 「あーあ、着せ替え人形にでもなった気分だな」 スタジアム到着後、一角に用意された控え室で、カガリは大きく伸びをする。 式典での演説に備え、礼服に着替えていた。 「やはり、子供の頃はそういうので遊んでいたのか?」 湯気の立つ紅茶のカップを差し出しながら、アスランが言った。 「うーん、どちらかというと、外で駆け回ってた方が多かったかな」 紅茶にやや多目の砂糖とミルクを加えながら、カガリは答える。 甘めのミルクティーを1口。 疲れた体には心地良かった。 「ラクスにももっと手伝ってもらえばよかったなあ」 「カガリの演説のあと、一曲歌うんだろう?」 「知ってるよ。でも不公平だ」 「ぼやくなよ。統一連合の主席なんだから、仕方ないさ」 「む゛ー」 ラクスは統一連合の特別顧問、キラは精鋭部隊「ピースガーディアン」の隊長を務めている。 二人ともやはり式典には参加しているが、それでも仕事の量はカガリの方が圧倒的に上だった。 役職の責任に比例して、仕事量が増えるのは判るが何かずるいぞ、とカガリは思ってしまう。 そんなむくれるカガリの様子に、アスランは思わず苦笑してしまった。 その時、従者がドアをノックする。 来客だという。 「誰だ?余程の事が無い限り誰も近づけるな、と言っておいたはずだが」 不審そうに眉をひそめるカガリを置いて、アスランが応対する。 「フラガ大将が、御家族と一緒に挨拶に見えたらしい。どうする?疲れているならまたの機会に、と言っているが」 「ば、ばか!早く通せ!」 待つ事しばし、30代半ばの長身の軍人と、同年輩の軍服を着た女性が姿を現した。 女性の胸では、ふくよかな赤ん坊がぱちりとした目で辺りを見回している。 統一連合宇宙軍総司令ムウ=ラ=フラガ大将と妻のマリュー=フラガ予備役准将、そして2人の間に生まれた愛娘のアンリだ。 無数の傷痕が残る端整な顔に陽性の笑みを浮かべ、ムウは敬礼する。 「お久しぶりです、主席閣下」 「そういう物言いは止めてくれ。ここには私達しかいないんだから」 カガリにとってムウとマリューの2人は、何よりも前に1次大戦以来、共に戦ってきた大切な『仲間』だった。 差し出されたカガリの右手を、ムウは苦笑しながらも力強く握り返す。 マリューもいつもの柔らかな笑みで、それに倣った。 来客用のソファーに腰を下ろしたムウとマリューに、アスランは新しく淹れた紅茶を差し出す。 「上手く淹れられたか判りませんけど、どうぞ」 「近衛総監直々の御点前とは、いたみいるわね」 珍しく軽口で返しながら、マリューは紅茶を受け取った。 現在のムウは月の新プトレマイオス基地におかれた宇宙軍総司令部が任地であり、マリューとアンリはオーブに残されている。 何気ない雑談を交わしながらも、久しぶりに愛しい夫に会えた喜びが、言葉の節々から滲み出ていた。 「キラ達は?」 「キラとラクスはピースガーディアンへの閲兵を済ましてこちらに来ます。もうすぐ着くでしょう」 「そうか。式典って奴は作法と格式と手続きの塊みたいなもんだからなあ」 ムウとアスランの問答を聞きながら、カガリは冷めかけた紅茶をすする。 嘆息するカガリの目が、アンリに止まる。その頬が嬉しそうに緩んだ。 「アンリも、少し見ない間にずい分と大きくなったなあ」 「ああ、親の俺もびっくりさ」 アンリのすべすべした頬をつつきながら、フラガはカガリに答えた。 その指を、アンリは丸まっちい両手でしっかりと握り締める。 まるで、もう二度とどこにも行かさないと宣言するように。 「アンリも、お父さんに会えて嬉しいのね」 優しく娘の頭を撫で摩るマリュー、そして愛する妻子を見守るムウ。 ありふれた、だが何よりも尊い家族の肖像に、カガリは胸をつかれた。 アスランの方へと泳ぎかけた視線を、慌ててもぎ離す。 もう遥か昔に思えるあの頃、カガリは自分とアスランの人生が不可分のものだと信じていた。 言葉にはしなかったものの、アスランもまた同じ想いを抱いていると思っていた。 「カガリ、少し早いがそろそろ準備をしよう」 カガリの想いを知ってか知らずか、アスランが時計を確認しながら言った。 「おっと、じゃあ俺達は先に会場に行っとくから」 「じゃあ、また後でね、カガリさん」 立ち去るムウとマリューを見送りながら、カガリは小さく頭を振った。 もう、全ては終わった事だ。道は既に別たれている。 たとえアスランが常に自分の傍らにあり続けているとしても、2人の軌跡が交わる事は、もはや決して無いのだから。 「カガリ……?」 「何でも無い。私達も行こうか、ザラ少将」 主席代表の顔と声で、カガリは答えた。 《――会場より、情報管理省報道局のミリアリア=ハウがお送りします》 つけっぱなしのラジオから流れる若い女性報道官の声に、シンは顔を上げた。 ゆっくりと立ち上がり、首をめぐらす。 目に映るのは日の光も照明も無い、暗く薄汚れた階段の踊り場だった。 腕時計に内蔵された通信デバイスから、レイの声が流れる。 《そろそろ時間だ》 「ああ」 シンは大小2つのケースを持って階段を登る。 登り切ったつきあたりの鉄扉を力を込めて押すと、軋んだ音を立てながら錆びついた扉がゆっくりと開く。 《――ただいま、会場に汎ムスリム会議のザーナ代表とアメノミハシラのサハク代表、そして南アフリカ統一機構のナーリカ代表が到着しました》 扉の向こうに広がっていたのは、狭くコンクリートが剥き出しの床面と、雲1つ無い空だった。 ここは、オロファト市東部の再開発地域にある小さな廃ビルの屋上。 地上の喧騒もここまでは届かず、沈黙に閉ざされた中にラジオの音声だけが白々しく響いていた。 《――ご覧下さい。世界中の国と地域の指導者が、互いの手を取って平和と融和を誓い合っています。あの悲惨な大戦から4年半、人類は、世界はここまでたどり着きました》 感極まった報道官の声を無視し、シンは鋭い視線を地上の一角に向ける。 狭隘なビルとビルの隙間から、平和祈念スタジアムが小さく覗いていた。 「こちら『雀”3”』。"牡牛"。オーバー」 《こちら『牡牛』。どうぞ》 「俺だ。予約していた特等席についた。いい眺めだ。舞台が一望できる」 腕時計の通信機を操作し、指定のチャンネルに合わせると、シンは低い声で囁きかける。 ややあって、通信機から若い娘の声で返事があった。 言わずと知れたコニールだ。 《了解。他のみんなはもうとっくに席に座ってるよ。『雀”1”、"2"』もね。弁当もちゃんと配り終わった。あんたもしっかりね》 「ああ、わかってるさ」 全チームが配置完了、別ルートで持ち込んだ武器も支給済み、作戦内容に変更無し。 符丁を頭の中で変換すると、シンは通信を打ち切った。 傍らのチェロケースを手にし、ロックを解除。 中身――長大な狙撃用ライフルを取り出す。 「ここにするか」 伏射姿勢を取るのに適当な位置を選び、腰を下ろす。 銃身固定用の二脚架を展開し、ライフルを抱えたままうつ伏せになった。 銃床を肩に当て、両腕でライフルを構えると、都市迷彩が施されたシートを頭から被る。 二脚架で銃身を支えているため、重量の割に荷重は少ない。 シンの鍛え上げられた背中と首の筋力は、易々とライフルの重量を受け止めた。 片手でもう1つのケース(中型の携帯用コンピュータだった)を手繰り寄せる。 ケーブルを引き出し、ライフルの上部にマウントされた電子スコープに接続する。 念のため空を見上げ、シンは太陽の位置を再確認。 陽光が差し込み、レンズの反射光で位置を知られる心配は無い。 スコープのキャップを外し、覗き込む。 各種の照準情報と共に標的――遥か2,500メートル先のスタジアムの演壇に立つカガリの姿が、網膜に直接投影される。 これだけの長距離狙撃になると、風や湿度による僅かな弾道の捻じれが、無視できない大きな影響を与える。 それに対処するため、シン達は前もってビルとスタジアムを結ぶ直線上に、複数の偽装センサーを設置していた。 もたらされた様々なデータは観測手――本来とは意味が異なるが便宜上そう呼ぶ――のレイによって解析され、その結果がスコープに表示される。 現在、快晴で湿度は約15パーセント、風は東南東の微風。 狙撃には絶好の状況だ。 《――いまだ争いは現実として世界に存在し続けている。「九十日革命」は、まだ皆の記憶にも新しい事だろう》 ラジオから流れる声は、いつのまにかカガリの演説になっていた。 《――しかし、たとえ何度も芽が摘まれ、踏みにじられようとも、私達は種をまき続けよう。いつか、平和という大輪の花が咲き誇るその日まで》 「さすが、奇麗事はアスハの御家芸だな」 苦々しく呟くと、シンは弾倉をライフルに差し込んだ。 レバーを引き、薬室に初弾を装填する。 スコープの向こうに見えるカガリの脳天に照準。 だが、まだ指は引き金にかけない。 演壇の周囲は、防弾仕様の強化プラスチックのケースによって守られている。 この時点で発砲しても射殺は不可能だ。 今は、まだ。 《時間だな。状況開始だ》 レイの静かな声が、ひどくはっきりと聞こえた。 「ありがとうございましたー」 コーヒー1杯で1時間近く粘っていた常連客を笑顔で見送ると、ソラは小さく息をついた。 急にがらんとした店内を見回し、エプロンに包まれた細く華奢な肩をとんとん叩く。 ここは、オロファト市の南部にある喫茶店『ロンデニウム』。 半年ほど前から、ソラはこの店でアルバイトをしていた。 「ソラちゃん、ご苦労さま」 カウンターの向こうから、マスターが人懐っこい笑顔を向ける。 半白の髪をした初老の人物で、ソラたち従業員や馴染みの常連客も本名を知らず、『マスター』とだけ呼んでいた。 「店が空いているうちに、少し休むといい。何か食べるかい?」 「あ、じゃあカルボナーラを」 「判った。今日は僕のおごりだ。せっかくの祭りの日にわざわざ出てもらったお礼だよ」 「わあ、ありがとうございます。マスター」 そう答えると、ソラはカウンター席に腰を下ろした。 少しぼんやりとした目で、窓の外を眺める。 オロファトの街並みには、つい先程まで続いていた軍事パレードの熱気がまだ冷えずに残っていた。 「お待たせ」 しばらく待つと、店の奥の厨房からマスターが出てきた。 手にしていたトレーをソラの前に置く。 トレーの上には、湯気を立てるパスタとサラダの皿、アイスコーヒーのグラスが載せられている。 「いただきま~す」 ソラは手を合わせて歓声を上げると、フォークを取った。 フォークでスパゲティの麺を巻き取り、白いソースをたっぷりとからめて口に運ぶ。 バターと卵と生クリームの濃厚な味と、ベーコンの程良い塩辛さが口中に広がる。 お腹が空いてたため、つい麺をすする大きな音を立ててしまった。 「ソラちゃん。慌てずもう少し上品に食べて欲しいな。料理は逃げやしないよ」 「す……すいません。お腹減ってたんで思わず……」 「大丈夫。何だったらお替り用意しようか」 「もう、マスターったら」 ソラは思わず赤面する。 いたずらっぽく笑いながらマスターは口にパイプをくわえた。 「そういえば、今朝は大変だったみたいだね」 「そうなんですよ。信じられますか、マスター。大の大人がよってたかってお年寄りに暴力を振るうなんて!?ホント酷すぎます!!」 「まあまあ落ち着いて」 あの騒動の後、警官がまだ混乱しているうちにソラは老人を連れて逃げ出した。 普段の自分から全く考えられなかったが、頭で考えるより体が動いてしまったのだろう。 ふとソラは、記念式典の中継を流しっ放しにしているTVに目を留める。 主席カガリが威風堂々と演説をしていた。 《……世界の恒久の平和のため、人類の永遠の未来のため、どうか皆の力を貸して欲しい……》 「……あんな事、ラクスさまやカガリさまが喜ばれるはずないのに」 「ソラちゃんみたいに優しい娘もいれば、平然と酷いことをする人もいる。世の中には色々な人がいるよ。でも、ラクス様やカガリ様の様な御方はそうそういないからね」 「そういうものなんですか。なんか悲しいです」 小さく溜め息をついたその時、ズンという鈍い音と共に辺りがぐらりと揺れた。 「……地震……!?」 国土が火山島であるオーブは、当然ながら地震も多い。 思わず悲鳴を上げたソラだが、揺れはその一度きりでおさまった。 マスターはコップやグラスを手で押さえている。 「大丈夫かい、ソラちゃん――」 胸を撫で下ろすソラに話しかけたところで、マスターは硬直した。 「あ……、あれは……?」 窓の外へと釘付けになった視線を、ソラもたどり、そして気づいた。 オロファト市南の高層ビル街。 そのうちのビルの1つが、炎と黒煙を噴き上げているのを。 「火事……事故――?」 呆然と呟くソラの胸に、不安が黒雲の様に湧き上がっていった。 カガリの演説が後半に差し掛かった時、アスラン=ザラのポケットから呼び出し音が鳴り響いた。 こんな時に、といぶかしみながらも通信機に手を伸ばす。 「私だ」 呼び出しに答え、部下の報告に耳を傾けるアスランの顔にさっと緊張の色がよぎる。 周囲に気取られないように、小声で答える。 「爆破テロだと!?」 《はっ、郊外の軍施設と市街地外れの政府機関が数箇所、爆破されました》 「式典警護のため、市の中心部に兵力を集中させていたのを、逆手に取られたか。式典自体ではなく、手薄になった施設を狙うとはな」 《申し訳ありません。テロリスト達に裏をかかれたようです》 舌打ちするアスラン。 《幸い、民間人にはほとんど被害が出ておりませんが》 「分かった。以後はオノゴロの軍司令本部の指揮下に入れ。私も急いで現地に向かう」 そう答えると、アスランは通信を打ち切った。 「何があったんだい?」 隣に座っていたムウが振り向く。 表情も声色も緩んでいたが、目だけは鋭かった。 前列のバルトフェルドも同種の視線を向けてくる。 <エンデュミオンの鷹>と<砂漠の虎>――かつての旧連合軍とザフトで屈指のエースパイロットだった2人だけに、鉄火場への嗅覚が並みではない。 「実は――」 後事を任せるため状況を説明しようとした正にその時、スタジアムを閃光と轟音が襲った。 あの爆発がセレモニー用の花火で、殺傷能力は皆無だと知れば、連中はどういう顔をするだろうか。 2,500メートル先からスコープ越しに、パニックに陥った式典会場を覗き込んでいたシンは、意地悪く考えていた。 あれは統一連合主席を、穴から燻り出す煙なのだ。 本来、オセアニア解放軍が立てた原案では、武装した決死隊を会場に潜入させる予定だったらしい。 しかし警備の厳しさからそれは不可能と判断され、代わりに狙撃での暗殺となった。 さらにその狙撃も一弾が外した場合のフォローを考え、三方向から狙う。 スタジアム内で花火を焚き、防弾装備の演説台から主席を引きずり出す。 そして――。 マザーグースの童話『Who killed cockrobin?』になぞらえて、弓を持った三羽の雀が駒鳥「カガリ=ユラ=アスハ」を射抜くのだ―― 。 シン達の狙い通り 会場が混乱する中、逃げ惑う市民達を尻目に各国要人や政府首脳といったVⅠPは、SPに守られながら会場から脱出しようとしている。 カガリも例外ではない。 演壇を下り、アスラン達と合流する。 激しく動揺した表情が、スコープ越しからでも見て取れた。 「煙で燻せば狐は巣穴から飛び出してくる、か」 口元を、笑みというにはあまりにも歪んだ形に吊り上げる。 《風力、風向き共に変化無し。いけるな?》 レイの問いに頷き、シンはライフルの引き金に指をそえる。 いいだろう。貴様らが目を背け続けるのならば、襟首をつかんで引きずり回してでも見せ付けてやろう。 かつて踏みにじられた者の無念を、いま切り捨てられている者の怒りを―― 「思い知れ」 低く呟くと、シンはトリガーへとかけた指に力をこめた。 不意にアスランの背筋を、ぞくりと悪寒が走った。 周囲、少なくともコロシアムの中にテロリストとおぼしき姿は無い。 だが、幾多の戦場で培われたモノが警鐘を鳴らす。 ―――殺気――― 自分は知っている。 ―――戦場で幾度も向けられた、あの殺気――― 初めてのものではない。忘れていたものでもない。 ―――背筋に馴染む、この殺気は……!――― それが戦士としての勘なのか、それとも無意識下で現状と経験を照らし合わせて判断した結果なのか。 自分自身でも理解できないままアスランは、咄嗟にカガリを突き飛ばした。 その瞬間、アスランを凄まじい衝撃が襲う。 超音速で飛来した何かがアスランの側頭部を掠め、一瞬前までカガリの頭部が存在していた空間を貫いたのだ。 「アスラン!?」 「頭を上げるな!!」 こめかみの辺りから生暖かいものが流れるのが判る。 飛びそうになる意識を必死で繋ぎとめ、アスランは倒れたカガリの上に覆いかぶさった。 「なっ!?」 倒されたカガリは状況が理解ができずに呆然としていたが、すぐに"理解させられる"。 次の瞬間、さらに彼女がいた空間、すぐ傍らに弾痕が数発、たてづづけに穿たれたのだ。 「ひっ!!」 怯えるカガリを抱きかかえたまま、アスランは集まったSPに怒鳴った。 「カガリ様!アスラン様!ご無事で!!」 「狙撃だ!!主席を守れ!!」 「アスラン=ザラっ!!」 スコープに映された狙撃の結果に、怒りと失意の叫びを上げるシン。 信じられなかった。 この距離からの銃撃に、対応できる人間がいた事が。 どうやら他の連中もしくじったらしい。 素早くライフルのボルトを操作する。 薬莢排出、次弾装填。 だがその数秒の間に、SP達がカガリの周囲で横並びの隊列を組む。 カガリへの射線を塞いでいるSPを狙い、発砲。 打ち抜かれた頭から血と脳漿をぶちまけながら崩れ落ちるSP。 だが生じた穴は、あっという間に他のSPによって埋められた。 「アスハの狗が!!」 叫ぶシンに、レイが冷静な言葉をかける。 《失敗だな。撤退するぞ》 「何を言ってるんだ、レイ!?」 《元々、博打の要素が高い奇襲だ。こうも態勢を固められては、付け入る隙が無い」 「馬鹿な!?」 指を、式典会場に突きつけて押し殺した声を上げる。 「あそこに――すぐ手の届くあそこに連中がいるんだぞ!!それを見逃せというのか、お前は!?」 《直にこの位置も特定される。軍なり治安警察なりの特殊部隊がやってくるぞ。無駄死にをするつもりか?》 「…………」 淡々と指摘するレイに、数秒の逡巡の後、シンは頷く。 「その通りだ。レイ、お前が正しい。撤退しよう」 内心でいかなる葛藤があったとしても、その声は冷静さを取り戻していた。 《式典自体の妨害には成功した。俺達の一方的な敗北ではない。それより、β班の撤収が遅れているらしい。援護に向かうぞ》 「了解」 素早く立ち上がるシン。 最後に一度だけ振り返り、怒りと憎悪に燃える目でスタジアムを睨みつける。 そして足早にその場を立ち去った。 銃撃は数度あった後、唐突に止んだ。 (諦めてくれたのか?) ずきずきと痛むこめかみを押さえながら、アスランはゆっくり立ち上がった。 傍らにいた兵士の1人が、首から高倍率の電子双眼鏡をかけているのにアスランは気づいた。 ひったくると、最初の銃弾が飛来して来たと予想される方向を覗き込む。 (銃弾の方向と角度は――。まさか、再開発地域から撃ってきたのか?) 内心で呻くアスランの目が、ぴたりと止まる。 いかなる偶然か。 小さな廃ビルの屋上にライフルを持った人影、その後ろ姿を発見したのだ。 倍率を最大に上げる。 黒髪に黒尽くめの服装をした、まだ若い男。 黒一色のその姿は、まるで死を告げる大鴉のごとき不吉さがあった。 不意に男が振り返った。燃え上がるような真っ赤な瞳が、正面からアスランを貫く。 「な――っ!?」 驚きのあまり、双眼鏡を取り落としかける。 慌てて再び覗き込んだときには、すでに男の姿は無かった。 「だ、大丈夫か、アスラン!?傷はどうなってる!?」 心配のあまり狼狽するカガリの声も、届かない。 アスランは意識が遠くに引きずられていく感覚を覚えていた。 過去という遠くの世界へと。 ―――殺気――― 自分は知っている。 ―――戦場で幾度も向けられた、あの殺気――― 初めてのものではない。忘れていたものでもない。 ―――背筋に馴染む、この殺気は……!――― 「お前、なのか――シン……?」 このSSは原案文第一話Aパート後編(DC私案)、第一話Bパート前編(DC私案)を再編集、一部加筆したものです。
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* 「猫」 括りかけた腕を放し、焦点の合わない頬を叩く。 「猫」 ぱん、と何度目かの頬への衝撃でふっ、とチャトラの瞳に色が戻る。 「……あ……?」 きょとんと瞬いた拍子に、表面張力を超えた涙がぽろと頬にこぼれて、不思議そうに彼女はそれを拭った。 「……なに?」 「覚えてないのかな」 「……オレが?なにを?」 「知るか」 身を引き離し、男は髪を掻き上げた。我に返ったような気分だ。萎えた。死にかけた雌鶏の痙攣したような姿を見て、それでも興奮する趣向はさすがに己にはない。 目の奥が鈍く痛む。憑き物が落ちたように冷静を取り戻していた。 「寝台を使いなさい」 顎でしゃくってやると、ごしごしと眼元を擦っていたチャトラが眉をしかめて男を見上げる。 「冗談じゃねェ」 「私はまだ仕事が残っているから」 「はァ?……何言ってんのアンタ。ここ、アンタの部屋だろ。オレが別の部屋に行くよ」 「――いいからそこで寝なさい」 「だから、」 「大人しく寝ないのなら襲うよ」 「寝ます」 即答だった。 だるそうな動きで揺り椅子の背から身を起こし、ごそごそと寝台に潜り込んだチャトラが、背を向けかけ、躊躇い、物言いたげに男をじっと見る。 「――何かな」 「……いや、その……、もうやんないの?」 「欲しいのか」 「いらねェ!」 これも即答だ。 言い置いた後で、だけど、と歯切れ悪くチャトラが言葉を続ける。 「や、そうだけどさ、その、普通さ……嫌がったって止めないよね」 花売りの客を見てきたからわかるよ。 そこだけ大人びた顔をされて、男が苦笑を滲ませる。 「息をしていなかった」 「え?オレが?」 「覚えていないのかな」 「オレが?」 「興が冷めた」 身に覚えがないらしい。首を捻ってオレが、と何度か呟いていた猫が、思い返しても覚えがないことは仕方がないと諦めたのか、大きく息を一つ吐いた。 「なんかオレ、前もいっぺん、そうなったみたいなんだよね」 「――何が」 「ハラ空かしてブッ倒れかけた時に、どうしてもメシ代を稼げなくて、客を取ろうと思ったんだけど」 「ほう」 「……なんか、直ぐに息苦しくなってワケ判んなくなって、すげェ慌てた客に引っ叩かれて目が覚めた」 傭兵だったかな。商人だったかな。 思い出せない風で、首を傾げている。 「そん時も息してなかったって、死ぬんじゃないかって思ったって言われて、やめて。オレも掏摸の方が気楽でいいから、客引くのやめたけど……寝る」 そう最後に言い置いて、じゃあ、だとか素っ気なくチャトラが頭から潜った。 ――だとすると、心因性の何かなのだろうか。 積み上げられた羊皮紙の量に溜息を吐きながら、男は頭を振ってこれ以上の思考を追い出した。猫の過去に何があろうと、自分には関係のない話だ。 ただ、強気だった顔が泣き顔に歪めば楽しいのではないか、その程度の興味だ。 暫く文机に向かい、酒精のために霞む意識を無理やり手元の書類に引き寄せる。 「……なぁ」 とうに寝たと思っていたチャトラが寝具の間から顔を出し、声を上げたので男は小さく驚いた。 熱のせいか、潤んだ目が真っ直ぐにこちらを見つめている。 「――寝ていなかったのかな」 「寝るけど……あのさ、さっきの」 「――先の?」 どの出来事を指しているのかが検討がつかなくて、男は眉根を寄せた。 「えっと……味方はいないって言ってたヤツ」 「ああ――言ったが」 それがどうした。 「……アンタ、また怒んのかもしんねェけど。オレ、何も特技ないし、武器とかあんなもん怖くて使えないし、頭もよくないし……つまり、アンタの『役に立つ』ようなことは何もねェけど」 遠まわしに理由を言い連ねるのは、チャトラなりの防衛策なのかもしれない。視線だけ上げて、男は続きを促した。 「味方なんてなれないし、なれるとも思ってない」 「――端的に言うと?」 「でもオレ、アンタの敵じゃない」 言われて肩が僅かに強張ったのは、また、もぞもぞと掛け布の中に潜り込んでしまったチャトラには見られていないだろうと思う。 ――敵じゃない、か。 投げられた言葉を口の中で小さく転がした。 ――ならば、一体何だと言うのか。 急に仕事の書類も見る気が失せて、男は文机に投げ出した。補佐官どもの小言が一瞬聞こえてくるような気もしたが、今は知るものか。 立ち上がり、飾り戸棚を開けて、男は二本目の酒瓶を手にする。 呷る。 寝台からは早々に寝付いた猫の寝息が聞こえてくる。熱が高い以外に症状がある訳でもなし、直ぐに回復するだろう。 そうして、このまま椅子にでも座して寝てしまおうと男は思った。今度はこちらが風邪を引くかもしれないが、知ったことではない。頭を振り払い、男は瓶口に唇を寄せた。 * 目が覚めると正午をとうに回っていた。まるで気づかず眠りこけていたものらしい。 慌てて身を起こし、まだ幾分かぼんやりとしながら、チャトラは室内を見渡す。自分以外の気配はなかった。 無論エスタッド皇帝――この部屋の主の姿もない。 昨晩、仕事をするから寝台を使えと言われたきり、大した会話を交わすでもなく、言われた通りに布団に潜り込んで寝てしまったが、男は本当にあの後寝台に寄っては来なかったようだ。 目が覚めた瞬間に添い寝でもされていて、げんなりするのではないかと若干の覚悟を決めつつ、それでも熱のだるさには逆らえず、半ば捨て鉢になって眠ってしまったのだが、空振りした気分だった。 勿論、添い寝されていないに越したことはない。ない――が、普段と異なるエスタッド皇の側面を見せられると、どう対処してよいものか判らなくなる。 昨晩。抑え込まれた時が、そうだった。 あの時男は明らかに何かに対して苛立っていて、多分それは自分の言葉や態度がそもそもの原因ではないのだろうなとチャトラは思う。 部屋に戻ってきた時から、気配が荒れていた。 顔に出してまで驚きはしなかったものの、男が戸棚から酒を呷りだしたのを見て、何かあったのだろうなと直感はしていた。 だから、きっと男がチャトラを抑え込みかけたのも、その「何か」のせいなのだろうなと、そこまでは分析している。 男を怖いと思った。 それは、抑え込まれた恐怖などではなくて、もっと以前の、静かに沸々と苛立つ男が怖かったのだ。 正直、椅子に押し付けられた後のことはあまり覚えていない。やめろと暴れたところまでは判るけれど――すぐに息が苦しくなって頭が真っ白になった。 見覚えのある誰かの死に顔が浮かんだような気もする。判らない。 頬を張られて我に返ると、そこだけ切り取ったように皇帝が見えた。瞬くと一瞬安堵したような色を滲ませた。だから、混乱して何も言えなくなった。 ……何が、あったのかな。 夕刻には戻ると言った。その男の帰りが遅かったこととも、関係があるのだろうか。 聞いてもきっと答えてはくれないだろうと思う。 喉の渇きを覚えて、寝台から足を下ろす。立ち上りかけた拍子に、脇の小卓に細かな水滴の浮く水差しとグラスが、用意されていることに気が付いた。飲んで悪いこともないだろうと判断し、グラスに注ぐ。ほど良く冷えた水は僅かに柑橘の香りがした。蓋を取り覗き込むと、輪切りになったまだ青い柚子が数枚、ゆらゆらと沈んでいる。 汗もかいたせいか、口に含むと体に染みわたる気持ちになる。 小さく溜息を吐き、首を回した。 少しだけ頭が重い気もするが、一晩ぐっすり眠ったおかげで、ほぼ完調した。さすが「皇帝」の使う寝台だと妙なことを思った。起き上がりの節々の痛みもなければ、凝りもない。寝返りを打ったところで軋み一つしなかった。 安普請の、半ば連れ込み宿まがいの寝台しか知らないチャトラにとっては、軽く驚きだ。素材からして違うのだろうなと変に感心した。 それから、椅子に脱ぎ捨ててある男の礼服に近付く。 チャトラが皇帝の身の回りの世話を受け持ってから、着替えを手伝うのも彼女の「仕事」だったけれど、今朝は一人で着替えて出て行ったのだろうか。 身分云々はこの際脇に置いておくとしても、皇宮で着回されている衣装の造りは、あちらこちらに留め金があったり結び紐があったりで、結構面倒臭い。片手しか使えない男が一人で身支度を整えることは不可能ではないのだろうが、かなり手間取ることは確かで、目を覚まさないで寝続けてしまったことに若干の罪悪感があった。 それとも、誰かが手伝ったか。 昨夜男が着ていた礼服を拾い上げて、何気に皺を伸ばすように指でなぞっていたチャトラは、ある一点でぎくりと指を止めた。 血痕が点々と飛沫いていた。 前身ごろの裏の部分。一瞬男が噛み切った自分の喉元の傷のせいかと思った。けれどあれは僅かに滲んだ程度だ。袖口程度なら汚してしまうかもしれないが、吹きつけた覚えはない。 男が怪我でもしたのかとも思ったが、それなら染み入りこそすれ、こんな風に丁度対面から細かな跡にはならないような気がした。 勢いよく噴き出した、「何か」がないと、こうはならない。 男が苛立ちながら部屋へ戻ってきたことをもう一度思い出す。 最初、男はチャトラが判らなかったのだ。あれは何か他のことに気を取られていたに違いないと思う。 何があったのかな。 かさぶたになり始めている喉元の傷へ手をやって、チャトラは嘆息した。 そうして、汚れた礼服をひとまとめにして、籠に突っ込むと、洗濯ついでに教えてくれそうな「誰か」を探しに行くことにした。部屋でじっとしていても落ち着かないばかりだし、何しろ男の雰囲気は尋常ではなかった。 幸い、皇宮内の造りは昨日教わって頭に入っている。今日は迷わない。 籠を抱えてとりあえず洗濯場へと向かうことにした。 まず洗濯場を選んだのは偶然だ。そこへ至る道に、裏木戸を抜けずに表の回廊を選んだのもほんの気まぐれだった。 であったから、回廊を曲がった瞬間にセヴィニア補佐官とばったり対面してしまったのも、運命の悪戯と言う物で、 「うぇ」 体は正直に思わず酷い声が出た。 極力顔を合わせたくはない。できれば姿も見たくない。もっと言わせてもらえば金輪際関わりを持ちたくない相手へ、こうして不可避な距離まで接近してしまうと、回れ右をして逃げる訳にもいかない。後はなるべく穏便に、なるべく刺激せず、なるべく素早く撤収してしまうに限る。 「……お前……」 チャトラの願いは叶わなかった。 いつものように冷血質な目で一通り上から下まで見下された後、急に眉を顰めたセヴィニアに腕を掴まれ、有無を言わせない足取りで手近の部屋に押し込まれた。補佐官の後ろに続いていた数人に指示を与え(先に行っていろ、だとかそういった類の)、不意にチャトラに向き直る。 「何を考えている」 低く抑えた声の語尾が神経質に震えている。そんなに自分が気に食わないのなら、いっそ無関心を装えばいいのに、だとかチャトラは捻くれた気持ちで思った。 反論すればするほどきっと手酷い「教育」を施される。黙り込んでいるのが一番だ。 「聞こえているのか」 「聞こえているよ」 気に食わないのはこちらも同じだ。黙っていようと念じた端から、つい不貞腐れた声が出た。 「意図的か?」 「はァ?」 「お前、自分が何をしているのか判っているのか?」 「何がだよ」 苛々しながら答えると、盛大に呆れた溜息を吐かれた。掴まれた腕に指が食い込んで痛い。いい加減放してほしいと思う。 「判断できないのは相当の阿呆だな」 「……だから何が!」 つい頭に血が上って声を荒げた。なるべく穏便に、なるべく刺激せず。そんな言葉は糞食らえ。 喚いた瞬間、容赦なく側頭部を張られる。相手にダメージを与えることだけを考えた、軽い音の割に内部に響く叩き方。だのに叩かれた部分が頭では、相当のことがない限り目立つ跡が残らない。チャトラが口外しない限り、張られたことは誰も気が付かない。 ああやっぱり。 そんな言葉がよぎった。男が唐突に掴んだ腕を放したので、ずるずると壁伝いに尻をついた。最悪の気分だ。 「オレはテメェの羽枕じゃねェぞ!パンパン簡単にブッ叩くなよ!」 「意味もなく叩くような愚行はしない」 「判んねェよ。判る言葉で話せ」 「底無しに愚かな。教えてやるのも腹立たしいが、そこまで無知なら言ってやろうか。……なんて恰好だ」 「あ?」 まるで感情の読めない瞳で見下していたセヴィニアが、不意に腕を伸ばしてチャトラの胸倉を掴んだ。 持ち上げる。 「答えろ。ここに至るまで何人とすれ違った」 「知……るかよそんなん!」 意識して数えていた訳でもないし、そもそも見張りの兵士も含めれば、相当な数と行き違っているような気もする。何にせよ、相手は自分に注意を払わなかったし、自分も相手のことなど知らなかったから、無関心に通りすがった、その程度だ。 「お前は何がしたい」 「あ?」 「自分の立場を何と心得ているのだ」 「立場ってなんだよ!」 「救えんな」 ぞんざいに突き放され、壁に突き当たりチャトラは唸る。本当にこの男は気に食わない。殴りかかってやろうかとも思うが、男の腰に佩いた細身の剣が目に入って躊躇する。人目のない部屋の中で、男が本気で激昂し、あの剣に手を置かれたらそれはそれで笑えない状況になる。躱す技術は持っていない。 ずるい。武器はずるい、と口の中で呟いた。 「部屋の外に出る時はそれなりな恰好をしろ、と言っているのだ」 歯軋りをしていた彼女の頭上から、吐き棄てるように男が叱責した。 叱責。そう、それは叱責だった。 感情を以って振る舞われる怒声ではなく、苛烈ながら冷静で叱る物言い。 だから、チャトラの頭が冷える。 「え?」 割と素直に我に返ったチャトラは、初めて己の身繕いを見下ろした。何も考えないまま、寝台から起きだしたそのままに部屋を出てきたのだが、言われてみれば確かに、 「鏡を見ろ」 示された部屋の一面の壁は姿見だった。大きな鏡に呆けた彼女が、彼女を見返している。そこに映った自分は確かに、 「……あー、」 確かに――酷い恰好だった。 半ば引き千切られたタイが、結んでいるというよりは紐のように首に数回巻きつけてある。その間から痣とも傷ともつかない赤い印が点々と散らされ、けれどそれは所有の刻印と言うにはあまりにも痛々しい。釦は飛んでいくつか失われていた。両手首にも指の跡。恐らく昨晩、男がチャトラを抑え込んだ時の名残だとは思うのだが、 「部屋の中でお前が何をしようと何をされようと、私は一切の興味がないし口を挿む気もないが。その恰好で出歩いて風評を流され、その厄介ごとが私に回ってくるのは御免だ」 「……ああ、悪ィ……なんか、全然気づかなかった」 これはセヴィニアでなくとも眉を顰めるだろうと思う。 ダインに会わなくてよかった。 どうでもいいことをぼんやりとチャトラは思った。 何とかしてやる、だとか息巻いていた男に見つかったら、根掘り葉掘り聞かれるに決まっているし、上手くはぐらかす自信はない。下手に答えると、エスタッド皇でも殴りかねない。 自分でも何度か殴り倒そうとは思っていたものの、客観的にダインが皇帝を殴る場面を想像すると笑えない。 「悪い」 唖然としながらもう一度呟くと、呆れた溜息をもう一度吐かれた。 「懲りたらせいぜい部屋を出る前に身支度を整えることだ」 薄汚すぎて見ていられぬぞ、言いながらも乱暴に上着を脱いでセヴィニアがチャトラに放り投げる。 「羽織って歩くのも目立つ気はするがな。……それでも幾分かまともには見えるだろう」 思いもよらなかった行動に、チャトラの瞳が点になる。温情を示すような男には思えなかったけれど、もしかすると、 「えっと、でもオレ」 「ああ、返そう、などと言う気は起こさなくていい」 きっぱりとセヴィニアは言い切った。 「お前が羽織ったものを私が二度と羽織る気もない。早々に処分しろ」 ……やっぱムカつく。 一瞬見直しかけたのが莫迦だった。内心舌を出しながら不機嫌にチャトラが頷くと、舌打ちを一つ残して、男が踵を返しかける。 「おい」 ここまで貶されて、これ以上この恰好で出歩く気は流石にチャトラにはなかったし、かと言って着替えて出戻るのも癪だった。いっそ腹立ちついでに目の前の男に聞いてやろうと言う気になる。 「……何か」 「昨日、皇帝になんかあったのか?」 こちらを振り向く義理はないとでもいう様に、足を止めはしたものの、セヴィニアの声は肩越しに投げかけられた。 「……何か、とは」 「あのひとちょっとおかしかった」 上手く説明できなくて、結局思った通りをチャトラは口にする。 「どうしてそう思う」 「何かに怒ってた。忘れたいって言うか……気晴らししたい風に見えた。あと服に血が付いてた」 「……陛下には」 「聞けるかよ。聞いたって答えてくれると思えねェし」 なるほどな。セヴィニアが呟く。 僅かに間が開いた。 セヴィニアが言葉をまとめているのが判ったので、チャトラは大人しく待つことにする。 「……お前に言って理解できるとは思わないが……まぁどうせどこからか話を仕入れてくるのだろうから、尾鰭の付いた下世話な話よりまともだろう」 相変わらず彼女の方へは向き直らずに、セヴィニアは淡々と告げた。だから、一体彼がどんな顔でそれを口にしたのか、チャトラは知らない。 「昨日。午後に、地方の太守が謁見を申し込んできてな。予定には組み込まれていなかったのだが、それ程急ぎの用が他になかったことと、陛下のご予定が他に空いていなかったことと、――まぁそれはお前に言っても無意味か」 「……うん」 「我が国にはいくつもの主要の城塞が配備されていて、太守はそのうちの一つを守る位置にある。ある程度の爵位や軍位のある者が就くとは言え、通常ならば陛下直々にお目通りが叶うことは難しい……が。我々三補佐誰の許可も通さずの謁見が行われていることに、『遅れて』報告されて気付いた。我々の目を盗んで何者が許可したのか、画策したのかは、目下調査中だ。何かきな臭いと駆けつけたら案の定だった」 「だった、って」 「太守の脇に控えたお前と同じくらいの子供が数人、獲物を持って陛下へ襲いかかる直前であったよ。……直後であった、と言おうか。控えた護衛兵によって事なきを得たが」 引き攣った太守も含めて全てをその場で斬首した。口止めと言うよりは、その対応が一番楽だと誰もが判断したからだ。 辻褄は後からでも合わせられる。 埃ひとつ吹かない風に何気なく立っていたエスタッド皇帝の、無味乾燥な表情が印象的だった。 いや。 皇帝は嗤っていた。 声も立てずに嗤っていた。 「……死んだ、の」 「いいや?」 僅かに震えた声が出たので、拳を握ってチャトラは腹に力を入れた。意気地なしと思われるのは業腹だった。 「肝要なのは、『昨日は何も無かった』と言うことだ」 「なにも、なかった……」 「そう。陛下は長引いた会議のご公務以外、公式記録には『何も無かった』のだ」 「だって」 「『そういうもの』なのだ。判るか。五、六の死骸が今日か明日の何時だかに皇都のどこかに打ち捨てられようと、それは皇宮とは何ら関わりのない事件だ。違うか?」 だから黙っていろ。 呆気にとられたチャトラの耳に、被せられる無言の圧力。理解できないけれどここは頷くしかない。不承不承首を揺らしたところに、 「じゃあなんでオレに教えてくれたんだよ」 ふと疑問が出た。 「だから。お前はどこからか話を仕入れようとするだろう?」 尾鰭の付いた噂話を信じ込まれるよりは余程ましだ。言外にそう言われて、かちんと来てもよかったのに、怒りは何故か湧かなかった。 「以上だ。人目を避けて部屋へ戻れ」 言い置いて今度こそさっさとセヴィニアは部屋を出て行った。 後に残されたチャトラは、その背にかける言葉もなく、かといってすぐに立ち上がって部屋へ戻る気概もなく、壁に凭れて対面の鏡の自分を眺めながら、聞かされた話を反芻する。 自分と同じくらいの子供が数人。 それが男だったのか、女だったのか、セヴィニアは言わなかったし、チャトラは知らない。男でも女でも、その部分は重要なことではなかったのかもしれない。 チャトラを椅子に抑え込んだ皇帝は、抑え込んだ自分の体に、何を見ていたのだろう。頸切られた血まみれの遺骸を思い浮かべていたのだろうか。 ……それも、ぞっとしないか。 チャトラは一人語散た。 鏡の中の自分が困ったように膝を抱えている。 「あらかた片付いたぜ、旦那」 執務室にずかずかと入ったダインに手は止めず、鵞ペンを走らせながら、ちらとだけエスタッド皇帝は視線を投げかけた。 「ご苦労」 口調が戻っている。昨晩の冷徹なまでの無表情と比べると、幾分か穏やかな顔になっているなとダインは内心呟いた。 襲撃未遂とでも言ったらいいものか、あまりにお粗末な皇帝への反旗は、たった数秒で片が付いた。命を狙われる男と、それを守る兵士たちの姿が日常茶飯事とは言え、本当に昨日の襲撃は、拍子が抜けるほど呆気なく終わった。 きっとそれは、 「言葉が口に出ているよダイン卿」 「うへ」 「そんなに怖い顔をしていたかね」 つい口に出して呟いていたらしい。 どうにも苦手意識のあるこのエスタッド皇の前では、ダインの今まで身に着けてきた「処世術」とやらが身ぐるみはがされてしまう。 ダインは元傭兵だ。宮廷のお高くとまった礼儀とやらが気に食わないし、できれば鼻でもかんで丸めて投げ捨ててやりたい……くらいには思っているものの、まだ実行に移せない。色々と命が惜しい。 であるから、チャトラの境遇に割と近しい感情を抱いている。戸惑いもよく判るつもりだ。 そのダインを「便利だから」の一言で、駆り出す皇帝も皇帝だと思う。それには恐らく、皇妹ミルキィユとの関連――曲がりなりにも伴侶に近い関係――胸を張って皇帝にそう言い切れないところが辛い――にも依るもので、面倒な建前その他が省かれて皇帝がダインにある程度の信用を寄せている証だと思うのだが、 ……信用は、ねェか。 訂正した。 エスタッド皇はきっと利用はしても信用はしない。誰に対しても同じだ。 「だから――声に出ていると」 「すみません」 嫌いではない。だがはっきりと苦手だった。 「――首尾はどうであったかな」 初めてそこで書類を綴る手を止めて、皇帝が掬い上げるようにダインへ視線を流す。 ぞく、と背筋が凍った。 戦場で武者震い以外の震えを体験したことはないが、どうにもこの皇帝の前に出ると無闇矢鱈に緊張する。同じ人間とは思えない一種の気迫がある。 「上々」 思いを振り切るように、肩を竦めてダインは答えた。 「そうか。――ご苦労だった、下がって良いよ」 手を振られて暗に退室を促され、けれど微かに躊躇った彼の挙動を、皇帝は視界の端に止めたらしい。 「――ダイン卿」 「あ?」 「まだ何か言いたいことがあるような素振りだが」 「いや……」 「私は忙しい。言いたいことがあるのなら手短にまとめなさい」 忙しい、と口で言いながらダインを留めたのはきっと皇帝自身も息抜きを欲していたからだろう。本気で立て込んでいる時は、話しかける隙すら見せない。 そう判断して、ダインは皇帝に向き直り、部屋には他にディクスしかいないのをいいことに、応接椅子に無断で腰掛けた。 「……言われた通りに『全員』揃えたけどよ?本当に『全員』、始末するつもりなのか」 「後腐れがないからね。――君は躊躇するのかな」 「いや。命令されたら俺は従うぜ?」 だけど。 この男にしては珍しく詰まりながらダインは言葉を探す。 「まだ二つ三つのガキもいたけど……いいんだな?」 「情けをかけろと?」 「……命乞いのつもりはねェよ。けどアンタにしちゃあ珍しいなって」 「珍しい、か」 「おっかない目で見んなって」 「見逃す――つもりではあったのだがね」 あまり買い被るな。そう言いたかったのか僅かに皇帝が苦笑する。 「昨日の『あれ』を見せられては致し方あるまい」 苦笑は凶悪だ。研ぎ澄ました牙を瞬時剝きだした夜行性の獣をダインは連想する。 昨日の、と暗に告げられてダインの顔も顰められる。 全く酷い急襲だったと思う。 急襲と言うのもおこがましい。あれは、はっきりと、 「……あのガキら。お嬢ちゃんに似てたな」 ダインもあの場にいて、適宣処理した一人だ。刃を握り振り上げ皇帝へ向かい奔る子供を切り捨てたことに悔いはない。それがダインの仕事であったし、傭兵時分幾度かは、倫理に背くような胸糞悪い戦もしてきた。金の為だった。綺麗ごとを並べるつもりもない。 「君も――ミルキィユ将軍も。惑うたかね」 「俺が?」 冗談。 探る様な視線を向ける皇帝に、鼻先でダインは笑った。 「俺もお嬢も、お花畑にゃあ馴染めない戦狂いだぜェ?何人戦場でブチ殺してきたと思ってんだ。一人二人のガキを切り捨てるのを躊躇ったところで、煉獄往きは免れねェさ」 「それは頼もしい限りだ」 謁見の際に地方の太守に付き従っていた少年少女は六人。左右に分かれて大人しく頭を垂れていた。いずれも似たような顔形をしているなと、ふと気付いた時にダインの脳裏に警鐘が走った。 太守の目配せがあったものかどうか、確認する前に体が動いていた。 流れるように腰に佩いた愛剣へ手をやる。音もなく抜き去るのと、一人目の背中へ投擲の要領で投げつけたのは同時だ。次いで僅かに腰を折り、革長靴に仕込んだ短剣を抜き取り、これも投げる。 狙いは過たず、少年か少女か、短く切り上げた金髪の首筋へ突き立った。 苦悶の声は、なかった。 同時期に、皇帝への進路を塞ぐ形で立ちはだかったミルキィユが、細身の剣で数度宙へ薙ぎ払う仕草をする。三人倒れた。 手慣れた大剣の姿はない。あれは皇都ではあまりにも目立ちすぎるし、屋内で使用するには何かと不便だ。第一どこかに突っかかる。 そこまでが、一瞬。 唯一、はっきりと意識のあるもう一人の子供と太守を跪かせて、ディクスがその首筋に剣を当てる。 溜めのない動きで引かれた刃が、綺麗な直線でもって二つの首と胴を綺麗に等分した。 遅れて漂う血臭に、どこか安堵の表情を浮かべたのはダインもミルキィユも同じだ。嗅ぎ慣れた臭い。 戦狂い。 正常な感覚ではないのかもしれない。正常な感覚とやらがどこかに転がっていれば、の話ではあるが。生まれてくる時代がここで良かったな、そんな風に酒の席で語り笑ったこともある。半分が自嘲だ。 検分しようと小さな体の一つに近付いたミルキィユが、ふと眉根を寄せるのに気付いて、その視線の先をダインも追った。 真っ直ぐに突き立った短剣。 突き立ったことに対して、ミルキィユが嫌悪を示したのではないことくらい、ダインにも判る。 皇帝の刃となる為に、彼女は感傷を棄てていたからだ。 もうずっと前に。 彼女が眉を顰めたのは、突き立った短剣筋に襲撃者――この場合もそう名づけるべきなのだろうか――に、全く避ける意思が無いことが見て取れたからだった。最初から死ぬつもりだった。明らかに語っている。「つもり」がなかったのは、恐怖のあまり薄ら笑いを浮かべていた太守だけであったろう。 返した彼らの顔を見て、ますますミルキィユの眉が顰められた。 金の髪。青い瞳。多民族の集まるエスタッド皇国に於いても、見かけない訳ではないけれどここまで同じ背格好をこの人数集めるのは、それなりに苦労する。 意図的だ、と言うことだ。 どの顔もどこか、チャトラに似ていた。 苦虫を噛み潰した顔で一通りの改めを終えたミルキィユが、指示を仰ごうと皇帝へと振り返り、ぎくりと肩を強張らせる。 皇帝に一切の色は無かった。 無機物を見る目付きで、転がった死骸とミルキィユ、そうしてダインを眺めている。 「見て」 いるのではないのだろうなとダインは思った。眺めている、それだけだ。 その場に控えた他の兵士も侍従も動けない。動くことを躊躇う無表情さだった。誰もが息を飲み動向を伺う中で、 「愚かな」 皇帝が突如嗤った。 思わず視線を逸らす類の、あまりに凄惨な笑いだったと思う。かける言葉は無かった。思い当たりもしなかった。 であったから、皇帝が何を思ってあの時何故笑ったのか、ダインに知る術はない。 「――鳴かずば雉子もとられざらまし」 淡々とした皇帝の声。その時もダインは背筋を凍らせた。 三補佐の調査は迅速だ。未明には主犯の名が報告されている。軍籍に身を置く中将の一人で、実力ではなく家名で世襲した地位に驕った愚か者。 「火事、かな」 見せしめには。ぽつ、と呟いた言葉を拾って、ダインが頷く。皇帝は名指しで誰にも命じていない。ダインも何も答えていない。公式記録には何も残らない。 「……本日夜半、不始末火により書斎から出火。火の回りがかなり早く、就寝中の家人の救出はならず。中将殿以下ご家族全員の焼死を確認。享年五十三歳。不幸な事故でした」 呟きを耳にした脇で同じく淡々とノイエ補佐官が応じ、それを今度は書記官が書き留める。早送りされた過去に、ダインがもうひとつだけ頷いた。 あとは無言で部屋を出る。 夜半までの下準備は、早めに済ませておくつもりだ。 皇帝が執務室を出たのは、日も暮れて辺りの篝火が灯されてからだ。 昨日の一件以外にも煩わしい急用が次々と舞い込んで、ろくに通常業務もこなせなかった。草臥れているのが見て取れる。それでも自暴自棄気味に押して仕事を続けようとする男へ、静かな物言いで切り上げるように促したのはディクスだ。 皇帝自身も嫌気が差していたのだろう。大して抗いもせず、そうだね、と頷いて机から離れた。 皇帝を居室まで警護し、引き継いで、それでディクスの一日の仕事は終わる。あとは明けて翌日の朝まで皇都の一角に構えた自宅で体を休めるのが常だ。 であったから、部屋を出てからこうして居室へ送り届けるまでの道行は、自然その日の出来事をまとめながらの日課となっていた。皇帝もそれを理解していて、この間は他に人をあまり寄せ付けない。 言っても、もともと多弁ではないディクスと、見た目よりもずっと無口な皇帝二人では、会話もあまり振るうことはない。どちらかがぼつと呟き、どちらかがが頷く。いつもの光景だ。 回廊を伝い歩き、篝火に照らされながらふと皇帝が生活居住区への道筋から外れ、庭園への足を運んだのは、ディクスにとって割と珍しくもない光景であったので、黙ってそれに付き従った。中途から二人に気付き、会話が聞こえない程度に少し離れた形で追随していた交代の兵士に、目で促して先に居室へと向かわせた。 使える主が個人的な時間を邪魔されるのを好まないことは、ディクスもその兵士もよく知っている。 皇帝は黙ったままでもう何も言わない。 ディクスが付き従っていることも考えから払われているようで、と言うより、主の不興を買ってしまうと、文字通り 「追い払われる」 ことは目に見えていた。きっとこうして無関心を装うことが最大限、主の譲歩なのだろうとディクスは内心納得している。 東屋へ向かい、その一角に腰を下ろしてしまうと、主は石のように動かなくなった。 僅か顔を伏せ、視線は園丁によって整えられた花壇を見ているようで見ていないようで、想いに沈んでいるというよりは、何も考えない努力をしているようにも見て取れた。 東屋の内部とその周辺へ、視線を走らせ異常がないことを確認したその後は、ディクスはじっと佇む。 こうして日常の執務や業務やその他のしがらみ――から逸脱したがる傾向は昔からのもので、それが主の精神的な疲労度合いと比例していることをディクスは理解している。 草臥れているのだ。 けれど癒す術をディクスは持たない。 東屋の立てられたここは、宵の口の歩哨引き継ぎや夕食に携わる仕事をもつ者どもの喧騒からも少し離れていて、音は遠い。回廊ほどに照らされてもいないので、本格的に闇が迫ってくると、主の表情は伺えなくなる。 ふ、と第三者の気配を感じて、ディクスが頭を巡らし、遅れて気付いたものか億劫そうに皇帝もその視線の先を見た。 皇宮の側から、小走りに駆けてくる小さな影がひとつ。まるで足音を立てない走り方は、恐らく生来のものと言うよりは掏摸稼業で身に付いたものなのだろう。身のこなしがそうなのに、はっきりと気配を感じさせるのは、その小さな体がぴんぴんと闇を弾いているせい。 チャトラだ。 彼女が居室で男を待たずに、こうして探しにやってくることは今日が初めてだったので、一瞬ディクスはどう対処したものか躊躇う。彼女の動作が無礼だとかなんだとか、そんな小煩い意識が頭にあった訳ではなく、そもそももしそう言った 「常識」 をディクスが彼女に主張するのだとしたら、皇都に来るずっと前よりそうしたろう。ディクスが躊躇ったのは、草臥れている風な主の時間へ彼女を近寄らせて良いものかどうか、そうすることで主は快か不快か、その一点に尽きた。 迷った隙にチャトラは無用心にさらに近付いており、ふと顔を上げてディクスを仰ぐ。 「いいかな」 皇帝へと言うよりはディクスに確認したのだろう言葉に、仕方なしに彼は頷いた。今更否もない。 「――猫?」 億劫そうな声を隠さないまま、皇帝が顔を上げチャトラの名を呼ぶ。皇宮からの明かりを背にしているので彼女の表情は知れず、それは眺めていたディクスへ、昨晩の襲撃を喚起させる。 呆気なく、実に呆気なく転がった数個の体。あの体の持ち主が何を思って皇帝へと刃を向けたものか、ディクスは知らないし、知りたいとも思わない。けれど軍籍から離れ、皇宮勤めが長い彼にはまた、反抗といえども案外驚くほど軽い――肩透かしにも似た――例えばそれは、その日の家族の糧を満たされるといったような、実に命を懸けると思うには程遠い――理由でも行われてしまうと言うことを識っている。 「皇帝」 「――うん、」 「悪ィ!」 ぱしん、と軽く打ち合わされた音が響いて、主が小さく首を傾げたのが判った。チャトラが下げた頭の前で手を合わせている。要は謝っているのだろうが、その合わせた手の平が妙に黒い気がした。 影だろうか。 「――謝られるようなことがあっただろうか」 主からして不思議そうに呟いている。 「……あの。オレ、さっき、部屋を片付けようとして机とか動かしてたんだけど」 「ほう」 「インク壺の蓋が開いてるの気付かなくて……その。動かした拍子に壺、盛大にブチかましちまって……なんか、机の上に積まれてた書類とか、救える奴はすぐよけたんだけど、上の数枚がもうべったりで」 「ほう」 聞いた皇帝の声が、不意に押し殺された低いものへ変わる。 「うん」 頭を上げたチャトラの顔が、今度は明かりに照らされて見えた。心底困っていた。 「あの、これ」 差し出した羊皮紙は裏も表も真っ黒で、ついでに彼女の両の手も真っ黒だった。 確かにこれではもう書類の意味を成さない。 「『重要書類』……なんだろ。侍従のオッサンに聞いたら、おおごとだって、一枚作るのに一体どのくらいの時間と労力が掛けられているのか判らないって言われて」 「――」 「その……そんな大事なものだって知らなくて、って言うか、知らなかったとかそんなん言い訳にしか、なんねェんだけど」 「――」 「けど、アンタが昨日の夜頑張って仕事してた分、オレが台無しにしたってのは事実で……」 「それを、謝りにここへ来たと?」 「うん。部屋に先に来てた護衛のヒトに聞いたら、庭園に向かったって言われて……その、何ていうか謝ってどうなるってもんでもねェけど、本当にごめんなさ、」 無造作に皇帝の腕が伸ばされた。殴られる、と見ていたディクスですら思った。身構えていた当の本人は、思わず目を閉じている。そのまま、首後ろに手を当てられぐいと胸元へ引き寄せて、 「ちょ、おい、皇帝!」 ディクスは目を逸らす。 主が可笑しそうに肩を揺らして笑っていた。 瞬間放心したチャトラが、焦って身もがく。 「放せよ、オレ今、両手インクべったりなんだぞ!付くって。アンタに付くって」 「汚れる?」 「に決まってんだろ!」 突き放したい。けれど両手は使えない。矛盾した焦りに、チャトラがばたばたと暴れるものの、主は彼女を開放する意思はなさそうだった。 「汚れたら洗えば良い」 「無理無理無理無理!アンタ、自分で洗ったことないからそんなこと言えるんだよ。しかも今日白い服着てんじゃねェか!インクの染み落とすとか絶対無理!」 「ではお前は大人しくしていなさい」 「そう言う問題じゃねェッ……ああもう!」 付いたら落ちねェだろ、だとか喚いていたチャトラへ、 「――良い」 急に笑いを収めて、その細い肩口へ皇帝が額を押し付ける。くぐもった声がまだ少しだけ笑いを含んでいたけれど、 「良い」 「……」 「このまま」 「……皇帝?」 敏感に何かを感じたか。チャトラが暴れる動作を収めて、覗き込むように小さく呟いた。汚れた手のひらを、極力男の体から遠ざけたのがなけなしの努力だ。 「何か、あったのかよ」 「何もない」 「……あっそ」 逃れることは諦めたのか、腕を後ろ手に伸ばした状態で、諦めたようにチャトラが溜息を吐いた。 「猫」 「あ?」 「明日からまた少し周囲が騒がしくなる」 「うん、……?」 「逃げようか」 「え?ど、どこに?」 唐突な話の振りにチャトラが付いていけなくて、目を白黒させているのが判る。 「逃げるって、アンタ何か悪ィことでもしたの?」 「何もない」 「……いや意味判んねェし」 そう言って宙を睨んでいたチャトラが、あー、と喉奥で潰れた声を立てた。 「明日と明後日は無理だオレ」 「――無理?」 「うん。園丁の爺さんと、明日、バラの蔓を刈り込む手伝いする約束してる」 「薔薇」 「うん。あと明後日は何かアンタの聖誕式?がもうすぐあるとかで、その蝋燭をあちこちに飾るらしくてさ。それ手伝うの約束しちまった」 明々後日なら行けるけど。 そう答えたチャトラを不意にしんとした目で皇帝はしばらく眺めて、それから居心地の悪くなり始めた彼女が身動く前に、突然げらげらと笑い出した。 驚きに目を丸くした彼女はきっと、なぜエスタッド皇が笑いを誘われたのか理解できないに違いない。 聞いていたディクスには、よく判った。 思わず苦笑いを噛み殺す。 男が現在の皇位に就いたのが、今のチャトラより少し上の頃合い。十八か九の辺りだったようにディクスは記憶している。前代の死によって齎された、唐突な即位。整えられた訪れるべき過去。かなり昔の話だ。 その、継いでから今の間、「皇帝の誘いを断る」度胸のある人間はどこにもいなかったように思う。いなかった、では語弊があるかもしれない。誘いを断る行為が有り得ないのだ。選択肢として用意されていない。 仮令戯言のひとつだったとしても、平身して周りは男の意思として敬ってきた。男の意思が芯であり、中心であり、当然のようにそれを軸として皇宮は回ってきたし、今も回っている。 「バラの手入れがあるから」、断られるとは夢にも思っていなかったのだろう。 「な、……なんだよ。涙流して笑うようなことか?っていうかどこがツボなんだよ?」 「お前は、本当に――」 くつくつと喉奥を震わしながら、それ以上の言葉を男は飲み込んだ。チャトラを解放し、立ち上がる。部屋へ戻る気になったらしい。気が晴れたのだろう。 「あ、おい」 置いて行かれた風情のチャトラが、ばりばりと頭を掻いた。渋面になっている。掻いた弾みに金茶の短髪が黒く汚れたが、本人は気付いていなかった。 「……意味わっかんねぇぇぇ……」 未だに首を捻りながら、皇帝を追う。 二人の背を護るように付き従って、ディクスが後へ続いた。 お前は本当に面白い、そう皇帝は続けたかったのかとふとディクスは思い、そうであるような気もしたし、そうでないような気もした。お前は本当に。 その後に何と言いたかったのだろう。 思いを巡らせかけたディクスへ、皇帝がちらと振り向き、視線を流す。思考を見通していたのだろうと思う。 牽制の色だった。 知らず背筋が伸びていた。 (20101212) -------------------------