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《遅延》《公開済》SNM002234 シナリオガイド 公式掲示板 五千年の時を越え、“琥珀の眠り姫”を目覚めさせろ! 担当マスター 八子 棗 主たる舞台 イルミンスールの森 タシガン空峡 ジャンル 冒険 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2013-03-04 2013-03-06 2013-03-10 リアクション公開予定日 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2013-03-22 - 2013-03-23 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) 最後の聖杯を探す! +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 聖杯を手に入れて、眠り姫を目覚めさせよう! ▼キャラクターの目的 最後の聖杯を探す! ▼キャラクターの動機 空賊に取られてしまう前に、探さなくちゃ! ▼キャラクターの手段 眠り姫を目覚めさせるには、三つ目の聖杯が必要なんだよね? 二つ目の聖杯は他のみんなに任せて、三つ目の聖杯を取りにいくよ! 【光術】で辺りを照らしながら探索しよう。 出てきたモンスターは、片っ端から切り伏せる! 空賊と空中決戦!! +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 奪われた聖杯を取り戻す! ▼キャラクターの目的 空賊と空中決戦!! ▼キャラクターの動機 聖杯を悪用されるわけにはいかない! ▼キャラクターの手段 早く聖杯を取り返さないと、何をされるか分かったもんじゃないわ! 相手は魔術で攻めてこようとしているようだから、飛空艇から落とされないよう慎重に責めるわね。 下っ端の空賊を挑発しておびき寄せ、片っ端から撃墜するわよ! ある程度疲弊させたら、空賊の首領の乗る飛空艇に乗り付けて戦うわ! 禁呪を解除する方法を探す! +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 呪いを解く方法が、他にあるかもしれない! ▼キャラクターの目的 禁呪を解除する方法を探す! ▼キャラクターの動機 本当の解呪方法はどこかに記されていないのか? ▼キャラクターの手段 禁呪を解除する方法を見つけに、遺跡のある洞窟を探索するぜ。 崩落の危険があるようだから、派手な動きはできねえな……。 当時のものと思しき物品を【トレジャーセンス】で探せねえかな。 みんなと協力してマッピングしながら、とにかく遺跡を探索するんだ! その他補足等 [部分編集] 【タグ:SNM イルミンスールの森 タシガン空峡 八子 棗 冒険 遅延公開済】
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IM/S30-P02 カード名:“映画『眠り姫』”春香&美希&千早 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:4000 ソウル:1 特徴:《音楽》?・《超能力》? 【自】 バトル中のこのカードがリバースした時、あなたは自分の山札の上から1枚を、クロック置場に置く。 ―今、伝説のアイドルが誕生する― レアリティ:PR クロスキャンペーン(ChaosTCG「アイドルマスター ワンフォーオール」初版BOX封入特典)
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チャプター5 ~眠り姫大作戦パート2~ 最初にマップを頭に叩きこんでください。 柱を上る際は細かいマップ表示にして、細心の注意を払いつつ進みましょう。 戦闘状態だとゴールできません。 戦闘になったらエスケープゾーンに逃げ込みましょう。 大まかに説明しますと、 最初の階では一番右端の柱、次の階はやや左よりの中央、 次の階は右端、次は階左より中央(すぐ右にエスケープスペース)、 その後、2本ほど右の柱を登れば最上階で、後はひたすら左に進むだけです。 攻略は二手に別れます。 強行突破、こっそりルパンらしい潜入でそれなりのやり方。 チャプター5 ~眠り姫大作戦パート2~強行突破プレイ 忍びプレイ Sにするには 強行突破プレイ コチラはてっとりばやくクリアする方法です。 普通に隠れずに移動して見つかります。 銀麗の部屋のすぐ階下のエスケープスペース(3つあるウチの一番上の)でエスケープ、 その後は見つからない様にします。 エスケープゾーンから再開後東側(右)を目指します。 エスケープ隣のバルコニーに部屋に入る巡回型がいます。 柱にとりつき様子を見て、部屋に入るのを確認してから飛び移りましょう。 その後ダッシュで移動し、次の柱で上に行きます。 ココまで上手くいってれば、 となりのバルコニーの警備員は、真反対に向かって移動しているはずです。 即柱を上ります。 右上の警備員に注意しつつ、やりすごします。 最上階に着くとヘリの追加となります。 ヘリの光が来たら、茂みの後ろにしゃがんで隠れましょう。 最上階は西(左)に進みます。 ムービー後、正面の監視型が外を向いたのを確認後、忍び歩きで後ろを通ります。 ここまで上手くいっていればヘリのライトを追うような形で通過出来ます。 あとは正面のバルコニーに巡回型がいるだけです。 ライトが帰ってきますのでとりあえず茂みに隠れた後、警備員に注意しつつ行きましょう。 一番左端のテラスに着けばゴール コンボは基本的に柱に移るテラスと部屋の前の間で、 スライディングを上手く使えばまとめてコンボが出来ます。 なお、スプラッシュを覚えてからチャレンジする際は端では使わないこと。 空にはみ出てしまい、○連打アクションが発生します。 戦闘しないとコンボを稼げないのに、エスケープを1回でもするとA。 オールSって不可能? リザルト項目 参考記録 評価 リザルト備考 クリアタイム 3分51秒 S - エスケープ 1回 A - 被ダメージ 49 B 20以下でA?~ マックスコンボ 10回 S 9回からA~ 評価 - S - 忍びプレイ 隊員は大きく分けて3タイプいます。 1タイプ目はバルコニーの隅から隅まで移動するタイプ、 2タイプ目は階上の柱の到達点やバルコニーの中心に陣取って、監視するタイプです、 3タイプ目は半分移動した後、部屋の中に入るタイプです。 1タイプ目は、詳細マップで確認して向いてない時に柱を上る。 2タイプ目は、物影に隠れてやり過ごし、バルコニーの外を向いたと同時に△歩きで急いで通過です。 3タイプ目は、部屋に入ったのを確認してからダッシュで通り過ぎましょう 柱の中央にある色が違う部分は発見されない地帯となっております。 上下の見張りに囲まれた時は、そこで待機しましょう リザルト項目 参考記録 評価 リザルト備考 クリアタイム 4分19秒 S - エスケープ 0回 S - 被ダメージ 0 S - マックスコンボ 0回 D - 評価 - S - ルパンだし見たくれも忍びプレイの方が良いですね。 記録にこだわる場合は普通にプレイしてSASSでしょうけど・・・ Sにするには ルートを頭に叩き込んで見つからずに行きましょう。 よっぽど時間がかからない限りはSになるかと思います。 一度も見つからずに行けばコンボ以外の項目がSとなりますので、 後は時間との戦いです。 次回→チャプター6 ~いにしえの衣装~ 攻略トップに戻る
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スズラン。ユリ科の多年草。 4月から5月にかけて、香りの強い花を咲かせる。 花言葉は…… ――――花言葉は…… ――カールスラントの、とある病院―― 俺「よう、ヘルマ。見舞いに来たぜ」 ヘルマ「…………」 俺「ごめんな、今日は遅くなって。自転車がパンクしちまってさ。自転車屋に行って直してもらってたんだ」 ヘルマ「…………」 俺「おいおい、怒らないでくれよ。ほら、またパンを持って来たんだ。お前の大好きなミルクガリアだぞ?」 俺「昔っから好きだったよなあ、ヘルマ……小さい頃、ミルクの所だけ取って食べてたのを覚えてるよ」 ヘルマ「…………」 俺「……お、花、萎れてきてるな。悪い、明日また買って来るからな。今日一日は我慢してくれよ」 ヘルマ「…………」 俺「……なあ、ヘルマ……」 ヘルマ「……………………」 俺「……まだ、目を覚ましてはくれないのか……?」 看護婦A「あ、あの…俺さん、そろそろ面会時間は……」 俺「…………ヘルマ……」 看護婦A「お、俺さん……?」 俺「! あ、はい。……すみません。……じゃあな、ヘルマ。また明日来る。 明日はちゃんと花を買って来るからな。そうだ、ジャガイモパンも持ってくるよ。あれも好きだったろ? ……それじゃあ、な……」 タッタッタッ… 看護婦B「……あの人…俺さん、っていったっけ? 毎日ヘルマさんのお見舞いに来てるけど……恋人の方?」 看護婦A「従兄弟らしいわよ。小さい頃から、ヘルマさんの兄代わりだったらしくて……」 看護婦B「……そうなの……」 看護婦A「……戦闘で撃墜されて、植物状態なんて……不憫よね……」 ――数年前―― ヘルマ「……!!」モグモグ 俺「どうだ? そのジャガイモパン? 今度新しく店に出そうと思ってるんだが……」 ヘルマ「……!! ……!!」ガツガツ 俺「……そ、その…食べてくれるのは有難いが、感想をだな……」 ヘルマ「ごくんっ……お……おいしい! すっごくおいしいです、俺さん!」 俺「ほ、ホントか!?」 ヘルマ「はい! これなら毎日食べても飽きません! 本当に、俺さんの作るパンは絶品であります! さすがはパン屋の二代目ですね!」 俺「ハハ……嬉しいな……。ありがとう、ヘルマ」 ヘルマ「あ、そこのガリアフランスも食べていいですか?」 俺「おいおい、女の子ががっつくもんじゃないぜ? それに、サラダがまだ残ってるぞ?」 ヘルマ「うっ……せ、セロリはどうも……その……」 俺「好き嫌いは良くないなー。パンばっかり食べたって、身長は伸びねーぞ、チビヘルマ?」 ヘルマ「だ、誰がチビでありますか!!」 俺「……くくっ、その『あります』ってのも、なかなか直らないな?」 ヘルマ「これは…そ、その、意識して言っているのであります! 私も…私もいつかウィッチになって……このカールスラントを…!!」 俺「はいはい、ウィッチになりたいんだったら、まずは好き嫌いせずに何でも食べるんだぞ? 甘いものばっかり食べてもダメだぜ? ほら、おいしそーなセロリ追加だ!」ドサッ ヘルマ「……俺さんの意地悪」 俺「ハッハッハ、何とでも言え!」 ――現代・俺自宅―― 俺「……ただいま」 父「…おう、お帰り。……どうだった、ヘルマちゃんは」 俺「……いや、今日もよく……眠ってたよ」 父「……そうか……」 俺「……明日、花を買いに行くよ」 父「……スズランか?」 俺「…ヘルマが好きだったからな……」 父「……明日の店番はいい。一日ゆっくりしてこい」 俺「ああ、ありがとう……おやすみ」 父「……おやすみ……そうだ、姉貴達がお前に伝言があるってよ」 俺「……? 伯母さんが?」 父「『娘が迷惑を掛けてすまない』と」 俺「……やめてください、と伝えてくれ。……じゃ、おやすみ」 父「……ああ……」 ――自室―― 俺「…………」 俺(ヘルマ……なんで…………なんで……) 俺「……ちくしょう……」 ――数年前―― 俺「……え? お前が……ウィッチに!?」 ヘルマ「ふふん、しかもタダのウィッチじゃないんですよ! 131先行実験隊『ハルプ』で、新型ストライカーのテストパイロットを任されたんであります! もう『ちびヘルマ』なんて呼ばせませんよ!」 俺「……やめとけ」 ヘルマ「!? お、俺さん!? ど、どうしてそんな事……!」 俺「…お前は、優しすぎる。自分よりも誰かを常に優先してしまうきらいがある。 ……お前は、戦いには向いてない。なあ……もう一度、考え直してみてくれ。お前が…お前がもしも撃墜なんてことになったら、 ご両親に何て詫びるつもりだ……!」 ヘルマ「……」グスッ 俺「……? ヘルマ……?」 ヘルマ「…俺さんなら……俺さんなら、応援してくれると思ったのに……ひぐっ…えぐっ……」ポロポロ 俺「!? お、おいヘルマ! いったいどうした――」 ヘルマ「俺さんなんて……俺さんなんて、大嫌いでありますっ!!!」ダッ!! 俺「!! ま、待て! 待ってくれ、ヘルマ! 俺は……俺はただ……!!」 ――現代・翌日、ヘルマの病室―― 俺「よう、ヘルマ」 ヘルマ「…………」 俺「今日は親父に『店番はいい』って言われてな。だから、朝一でこれ買って来たんだ」 俺「ほら、スズランだぜ。ヘルマ、この花好きだったよな。 ……懐かしいな、昔、『パンのお礼であります!』とか言って、野原で摘んできたのをくれたっけ……」 ヘルマ「…………」 俺「ませてたよなぁ、お前も……。スズランの花言葉がどうとか言いながら……まだ12だったのにな、ハハ……」 ヘルマ「…………」 俺「……聞いたはずなんだけど……忘れちまったよ。…なあ、何て言うんだ? スズランの花言葉……」 ヘルマ「……………………」 俺「……お前から、お前の口から……直接聞きたいんだよ……」グスッ 俺「!! そ、そうだ! パン持ってきたぞ、ほら、ジャガイモパンだ!」 俺「これ、今じゃあウチの人気NO,1商品なんだぜ? それもこれも、ヘルマが『おいしい』って言ってくれたからだ……」 ヘルマ「…………」 俺「ほら、食べないのか? 食べないなら……俺が……食べちゃうぞ……」 ヘルマ「…………」 俺「…………」モグ…モグ… 俺「…………しょっぺえ……塩……入れすぎたかなぁ……」 俺「……うっ……うぅっ…………」ポロポロ ――数ヶ月前―― 俺「『期待の“大食らい”、またもネウロイ撃破』……か」 俺「……がんばってるな、ヘルマのやつ……」 俺「……一言、言ってやりゃあよかったよ……」 ガチャリーン 俺「ん? はい、いらっしゃいませ――」 配達人「あ、どうも。えーと、俺さん宛てに電報です」 俺「電報? はい、どうも……誰からだ? ……ん? 軍…?」 俺「えーと何々……」 俺「………………え?」 俺「ヘルマが……ヘルマが……!」 俺「ネウロイに……落とされて……!?」 俺「……い、意識不明……!?」 ――病院、ヘルマの病室―― ダッダッダッダッ…!!! 俺「はぁ……はぁ……」 俺「ヘルマ……ヘルマぁ!!!」 バダン!! ヘルマ「…………」 俺「おい! ヘルマ! しっかりしろ! ヘルマぁ!!!」ユサユサ 看護婦A「こ、こら! 絶対安静ですよ!」 俺「おい……おい! ヘルマ! なんで……なんで……!! ……うぁぁぁぁ……っ……!!」 上官「……俺さん、ですね」 俺「……? あ……あんたは……?」 上官「ヘルマ・レンナルツ曹長の上官です。……この度は……」 俺「……なあ、アンタ…なんで……なんで…ヘルマは…………」 上官「……曹長は…随伴していたウィッチをネウロイの攻撃から庇い……そして……」 俺「!! おい…おい!! てめえ……じゃあてめえは……これはヘルマの自業自得だとでも……ッ!!」 上官「……!! い、いえ、決してそのような……!」 俺「…ッ! ……す、すみません。つい……カッとなっちゃって……」 上官「…い、いえ……こちらこそ……」 俺「…………ヘルマ……なんで……なんでだよ…… ……畜生……畜生……!」 上官「…お医者様が言うには……峠は越えた、と。あとは……目を覚ますのを待つだけだと……」 俺「……そう……ですか…………」 上官「……それでは、私はこれで……」 俺「…………はい……」 上官「…そうだ、曹長に命を救われたウィッチが……あなたと話したいと言っていますが……」 俺「……申し訳ありません。お引き取り下さい、と伝えて下さい……」 上官「しかし……」 俺「……その人に……何を言ってしまうか、分からないんです。もしかしたら…… 俺は……人間として、最低な事を言ってしまうかもしれない……」 上官「……分かりました。……それでは……」 ガチャ…バタン 俺「……ヘルマ……」 俺「……うっ……ああっ……」 俺「……なんでだよ……」 俺「なんで……よりによってッ……お前なんだよぉ……!!」 俺「うぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ」 ――現代・数週間後、ヘルマの病室―― サァァァァァァァ――― 俺「……雨か。雨だと自転車で来るのが大変だよ、ヘルマ……ハハ」 ヘルマ「…………」 俺「そうだ、今日は……ほら、友達の皆さんもお見舞いに来てくれたんだぞ?」 ゲルト「そ、曹長……」 エーリカ「……」グスッ ハイデマリー「……ひぐっ……えぐっ……」 ミーナ「…………」 俺「見ろよ……カールスラントのエースの皆さんが勢ぞろいだ……驚いたよ、ヘルマ…… お前、すごい人たちと友達だったんだなぁ……嬉しいよ……」 ミーナ「……花瓶の水、替えましょうか…?」 俺「! …すみません、ありがとうございます……お願いします」 ハイデマリー「……ヘルマさぁん……ううっ……」ポロポロ ゲルト「ハイデマリー……」 俺「……ほら、この前……ヴェネツィアが解放されたろう? 皆さんがカールスラントに戻った途端……お前を見舞いたいって言ってくれたんだ。 ……人望あるなァ、羨ましいよ……ヘルマ……」 エーリカ「…そ、そうだ俺さん! 私、花瓶に花入れるね!」 俺「! ……ありがとうございます、ハルトマン中尉……」 俺「ほら……今日は…ケーキも持って来たんだ。朝早く並んで買ったんだぜ? な、美味そうだろ……? もちろん、パンも持って来たぞ。……ほら、ミルクガリアに……レーズンパン。思い出すなぁ……レーズンも食べられなかったよな、ヘルマは……。 でも、そろそろ大丈夫だろう? ケーキもあるんだ、好き嫌いしちゃあ……」 ヘルマ「…………」 ゲルト「……俺さん」 俺「? どうしたんです、バルクホルン大尉?」 ゲルト「…………すまない」 ミーナ「! と、トゥルーデ…!」 俺「……やめてくださいよ……バルクホルンさんには……なんの責任も……」 ゲルト「!! あ、ああ……つい……」 ハイデマリー「……ヘルマさん……どれくらい、このままなんですか……?」 俺「……何ヶ月かな……それとも、もう…1年ぐらいは経ったか……すみません、数えてなくて……」 エーリカ「……幽霊ウィッチ騒動の後に……」 俺「……え?」 エーリカ「ヘルマから、俺さんのこと……聞いたよ」 俺「! な、何て……?」 ミーナ「『ちょっと意地悪だけど、とっても優しい、お兄さんみたいな人』……そう、言っていましたわ」 俺「!! …………そう、ですか……」 ハイデマリー「それから……『自分は、カールスラントを救って、俺さんをあっと言わせる為に飛んでいるんだ』って……」 俺「……ヘルマ……ヘルマぁ…… ……ごめんなぁ……ごめんよ…………素直に……がんばれって……言えばよかったんだ……ヘルマぁ……!」 ゲルト「……俺さん。我々も……毎日、見舞いに来る。ヘルマを……一人にはしない。安心してくれ……」 俺「……ありがとうございます……大尉…… ……さぁ、皆さん……どうぞ、ケーキ……召し上がっていって下さい」 ゲルト「…ありがとう。頂こう」 エーリカ「……いただきます」 ミーナ「……美味しいわ……俺さん。このパンも……」 ハイデマリー「はい……」 俺「……ありがとうございます、皆さん……」 サァァァァァァ――― エーリカ「……止まないね、雨……」 ――数日後―― (……暗いなぁ……) (……どこだろう、ここ……) (……なんだか、あったかい……風?) (それに……いい匂い……なんだろう……すごく……懐かしいような……) (……花? それから……小麦みたいな……) (……パン?) (そうだ……俺さんの! 俺さんの……パンの匂いだ……!) (俺さん……! 俺さん!!) ……パチッ ヘルマ「……俺さん……」 ヘルマ「……お腹……すいたな……」 看護婦A「ヘルマさーん、点滴で――え?」 ヘルマ「……? あ、あの……ここ、どこでありますか……?」 ヘルマ「私……そうだ、ビームが当たって……それから……」 看護婦A「……!!!! せ、先生! 先生!! ヘルマさんが! ヘルマさんが目を……!!」 ――カールスラント空軍本部―― ミーナ「…!! ほ、本当ですか!? はい、はい! 分かりました、すぐ向かいます、はい!」 ゲルト「どうしたんだ、ミーナ?」 ミーナ「ヘルマさんが……ヘルマさんが、目を覚ましたらしいわ!!」 ゲルト「!! な、何だと!?」 エーリカ「ほ、本当なの!? ミーナ!」 ミーナ「たった今、病院から連絡があったわ! トゥルーデ、すぐに俺さんに連絡して!」 ゲルト「あ、ああ! 分かった!」 ハイデマリー「へ、ヘルマさん……よかった、よかったぁ……」グスッ ゲルト「……? どうしたんだ、出ないぞ……?」 ――同時刻、俺自宅―― ジリリリリーン! ジリリリーン!! ジリリリーン!!! ……シーン…… ジリリリーン! ジリリリーン!! ジリリリーン…… ――同時刻、病院への道―― 俺「……っとと、走りにくいな……」 俺「前にパンクした所……また痛んでんのかな……」 俺「……ん、トラックが来るな……」 俺「ま、全力で漕げば渡れるだろ。うおりゃーっと!」 キコキコキコ…… …パシュッ 俺「……え? ぱ、パンク――」 キキィーッ!!!! 俺「――――え?」 ドシャッ… ――1年後、とある病室―― ヘルマ「えへへ、こんにちは、俺さん。お見舞いに来ましたよ」 俺「…………」 ヘルマ「ごめんなさい、遅くなっちゃって。もう日が沈み始めちゃいましたね……」 俺「…………」 ヘルマ「ほら、叔父さんからパンをもらってきたんです。『俺に渡してくれ』って。 やさしいお父さんですよね、叔父さんって」 俺「…………」 ヘルマ「……そうだ、スズランの花も持って来たんです。前のはちょっと萎れてきちゃったから……。 今替えますね」 俺「…………」 ヘルマ「……もう、1年になるんですね。私が目を覚まして……俺さんが交通事故に遭って、ずーっと眠ったままになってから……」 俺「…………」 ヘルマ「そうそう、私、この前またネウロイを倒しました! 最近はネウロイの数もどんどん少なくなってて……、 いろんな国が、次々に解放されてるんです。私も……がんばってるんですよ?」 俺「……………………」 ヘルマ「……バルクホルン大尉や皆さんから……聞きました。私が眠っている間……毎日、お見舞いに来てくれてたんですよね。 ……本当に……ありがとう……俺さん……」グスッ 俺「……………………」 ヘルマ「……懐かしいなあ……スズラン。昔……俺さんにあげたの、覚えててくれたんですね。 ……あの時は……『花言葉なんてよく分からない』って言われちゃったけど…… ……私、けっこう本気だったんですよ?」 ヘルマ「……これからは……私が、俺さんを…………ずっと…… 俺さんが……してくれた……みたいに……」ポロポロ ヘルマ「……えぐっ……俺さぁん…………!」 俺「…………」 ヘルマ「私……もう、無茶なんてしません! わがままも言いません! セロリも、レーズンも……何でも食べるようになれたんです……もう……好き嫌いなんて、してないんですよ……! だから……だから……! お願い……目を覚まして……俺さん…………俺さん! せっかく……せっかくまた……会えたのに…………!! ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん…!!!! 俺さぁぁあぁぁあぁぁん……!!!」 (……暗い。それに……寒い) (何だ……ここ? 身動きが……) (……俺、どうしたんだっけ……) (…まあ、いいや。ヘルマの……ヘルマの見舞いに行かなきゃ……) (ヘルマに……会いに……!) (…………? 何だ? ……暖かい) (誰かが……手を……?) (それに……眩しいな……) (……なんだろう、この匂い…………) (……ああ……思い出した…………) …パチッ 俺「……あれ……? ここは……」 ヘルマ「…………!!!」 俺「……ん……? ヘル……マ……? なんで……」 ヘルマ「えっ……あぁっ……うぁっ……」ポロポロ 俺「……ヘルマ? ヘルマ……? なんで……そんな……!? ゆ、夢……なのか……?」 ヘルマ「……俺さん……俺さぁん!!」ギューッ!!! 俺「!! へ、ヘルマ……ホントに…ホントに、ヘルマなのか……!!」 ヘルマ「やっと……やっと、また会えた……俺さん……うぁぁぁん……!!」 俺「……夢なら……夢ならどうか……! お願いだ……!! 醒めないでくれ……頼む……!!」 ヘルマ「…俺さんの、ばか。夢なんかじゃ……ありませんよ……確かめてください」 俺「えっ……」 ヘルマ「……俺さん……大好きですっ!!」チュッ! 俺「!!!」(へ……ヘルマ……ヘルマぁ……!!) 窓から流れ込む暖かい風が、スズランの花を小さく揺らす。 そして、辺りを包みこんでいくオレンジ色の夕焼けは、 今、世界で一番幸せな2人を―― いつまでも、いつまでも優しく照らしていた――。 おわり ご意見・ご感想等ありましたら 泣かせるじゃないかー。良い話だった!乙! -- 名無しさん (2012-03-31 22 13 21) 不幸を乗り越えた先のハッピーエンド……感動した! -- 名無しさん (2012-03-31 22 17 16) イイハナシだったよ。乙。 -- 名無しさん (2012-03-31 22 35 43) ヘルマちゃんかわええなー -- 名無しさん (2012-03-31 22 51 21) 良いじゃないですか…グッジョブ! -- 名無しさん (2012-04-01 00 17 41) やばい、これは泣けるぜ! -- 名無しさん (2014-03-06 11 02 11) 泣けるぜ! -- 名無しさん (2014-06-09 02 08 34) 名前 コメント ヘルマちゃんとは特に関係ない変態教授の話
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王子レイ(眠り姫) 章 名前 Lv HP ルーン 編成 ドロップアイテム スキル スキル 第1章 リトルジャック 27 849 240 軽飛 汎遠 汎近 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 汎遠 汎近 汎近 轟く波動 - 軽飛 軽遠 汎近 汎近 リザードマン 27 821 240 重飛 重遠 軽近 軽近 攻撃陣形(近) 攻撃陣形(軽) 重飛 重遠 軽近 軽近 エクスプロード - 重飛 重遠 軽近 軽近 ゲシモーク 27 934 240 軽飛 汎遠 重近 重近 攻撃陣形(近) 攻撃陣形(重) 軽飛 汎遠 重近 重近 ライトニング - 軽飛 汎遠 重近 重近 ゴブリン 27 878 240 汎飛 近遠 汎近 汎近 攻撃陣形(近) 攻撃陣形(汎) 汎飛 近遠 汎近 汎近 アイスクラスター - 汎飛 近遠 汎近 汎近 第2章 リビングメイル 27 934 240 軽飛 重遠 重近 重近 鉄の原石 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 重遠 重近 重近 氷狼の牙 - 軽飛 重遠 重近 重近 シャドーウルフ 27 849 240 軽飛 汎遠 汎近 汎近 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 汎遠 汎近 汎近 ボルトクラウド - 軽飛 汎遠 汎近 汎近 スケルトン 27 764 240 重飛 軽遠 汎近 汎近 攻撃陣形(近) 攻撃陣形(汎) 重飛 軽遠 汎近 汎近 アイスエイジ - 重飛 軽遠 汎近 汎近 リトルジャック 27 849 240 軽飛 汎遠 汎近 汎近 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 汎遠 汎近 汎近 轟く波動 - 軽飛 汎遠 汎近 汎近 第3章 アローゴブリン 27 821 240 汎飛 軽遠 軽遠 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(遠) 防御陣形(遠) 汎飛 軽遠 軽遠 汎近 アイスクラスター - 汎飛 軽遠 軽遠 汎近 マーダートーイ 27 849 240 汎飛 軽遠 軽近 軽近 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 汎飛 軽遠 軽近 軽近 朱雀の舞 - 汎飛 軽遠 軽近 軽近 ゴブリン 27 878 240 汎飛 軽遠 汎近 汎近 攻撃陣形(近) 攻撃陣形(汎) 汎飛 軽遠 汎近 汎近 アイスクラスター - 汎飛 軽遠 汎近 汎近 リビングメイル 27 934 240 軽飛 重遠 重近 重近 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 重遠 重近 重近 氷狼の牙 - 軽飛 重遠 重近 重近 第4章 ランタンゴースト 27 821 240 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(遠) 攻撃陣形(汎) 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 凍土壁断 - 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 ポンプフロッグ 27 821 240 重飛 重遠 重遠 軽近 攻撃陣形(遠) 防御陣形(遠) 重飛 重遠 重遠 軽近 メイルシュトロム - 重飛 重遠 重遠 軽近 スライム 27 878 240 軽飛 汎遠 汎遠 重近 攻撃陣形(遠) 攻撃陣形(汎) 軽飛 汎遠 汎遠 重近 バレットフレア - 軽飛 汎遠 汎遠 重近 アローゴブリン 27 821 240 汎飛 軽遠 軽遠 汎近 攻撃陣形(遠) 防御陣形(遠) 汎飛 軽遠 軽遠 汎近 アイスクラスター - 汎飛 軽遠 軽遠 汎近 第5章 アローメイル 27 906 240 軽飛 重遠 重遠 重近 鉄の原石 攻撃陣形(遠) 攻撃陣形(重) 軽飛 重遠 重遠 重近 煉獄の焔 - 軽飛 重遠 重遠 重近 マンドラゴラ 27 812 240 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 攻撃陣形(遠) 防御陣形(遠) 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 ボルトクラウド - 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 アロースケルトン 27 764 240 重飛 軽遠 軽遠 汎近 攻撃陣形(遠) 防御陣形(遠) 重飛 軽遠 軽遠 汎近 朱雀の舞 - 重飛 軽遠 軽遠 汎近 ランタンゴースト 27 821 240 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 攻撃陣形(遠) 攻撃陣形(汎) 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 凍土壁断 - 軽飛 汎遠 汎遠 汎近 第6章 リトルグリフォン 27 916 240 汎飛 汎飛 軽遠 汎近 招待状片(眠り姫) 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎飛 汎飛 軽遠 汎近 銀製の腕輪 アローウィスプ - 汎飛 汎飛 軽遠 汎近 力の断片Ⅱ(攻撃) インプ 27 849 240 汎飛 軽遠 軽遠 軽近 攻撃陣形(遠) 攻撃陣形(軽) 汎飛 軽遠 軽遠 軽近 ボルトクラウド - 汎飛 軽遠 軽遠 軽近 コマンドメイル 27 1086 240 重飛 重遠 重遠 軽近 攻撃陣形(遠) 防御陣形(遠) 重飛 重遠 重遠 軽近 メイルシュトロム - 重飛 重遠 重遠 軽近 ケルベロス 27 948 240 軽飛 重遠 重遠 重近 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 重遠 重遠 重近 氷狼の牙 - 軽飛 重遠 重遠 重近 第7章 ヒスウィッチ 28 892 240 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 雷鳴の門 - 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 フライマンタ 28 863 240 重飛 重飛 重遠 軽近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(重) 重飛 重飛 重遠 軽近 魔法玉 - 重飛 重飛 重遠 軽近 フンスキー 28 1008 240 軽飛 軽飛 汎遠 重近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽飛 軽飛 汎遠 重近 ブリッツァー - 軽飛 軽飛 汎遠 重近 リトルグリフォン 28 931 240 汎飛 汎飛 軽遠 汎近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎飛 汎飛 軽遠 汎近 アローウィスプ - 汎飛 汎飛 軽遠 汎近 第8章 カラスモドキ 28 1008 240 軽飛 軽飛 重遠 重近 鉄の原石 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(軽) 軽飛 軽飛 重遠 重近 テンペストフレア - 軽飛 軽飛 重遠 重近 ハルピュイア 28 892 240 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 アイスエイジ - 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 ゴーレム 28 806 240 重飛 重飛 軽遠 汎近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(重) 重飛 重飛 軽遠 汎近 手裏剣 - 重飛 重飛 軽遠 汎近 ヒスウィッチ 28 892 240 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 雷鳴の門 - 軽飛 軽飛 汎遠 汎近 第9章 リトルグリフォン 28 931 240 軽遠 汎飛 汎飛 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽遠 汎飛 汎飛 汎近 アローウィスプ - 軽遠 汎飛 汎飛 汎近 サカサスキー 28 892 240 汎飛 汎飛 軽遠 軽近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(汎) 汎飛 汎飛 軽遠 軽近 手裏剣 - 汎飛 汎飛 軽遠 軽近 フンスキー 28 1008 240 軽飛 軽飛 汎遠 重近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽飛 軽飛 汎遠 重近 ブリッツァー - 軽飛 軽飛 汎遠 重近 カラスモドキ 28 1008 240 軽飛 軽飛 重遠 重近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(軽) 軽飛 軽飛 重遠 重近 テンペストフレア - 軽飛 軽飛 重遠 重近 第10章 ヒスウィッチ 28 892 240 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 雷鳴の門 - 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 フライマンタ 28 863 240 重遠 重飛 重飛 軽近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(重) 重遠 重飛 重飛 軽近 魔法玉 - 重遠 重飛 重飛 軽近 フンスキー 28 1008 240 汎遠 軽飛 軽飛 重近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎遠 軽飛 軽飛 重近 ブリッツァー - 汎遠 軽飛 軽飛 重近 リトルグリフォン 28 931 240 軽遠 汎飛 汎飛 汎近 鉄の原石 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 軽遠 汎飛 汎飛 汎近 アローウィスプ - 軽遠 汎飛 汎飛 汎近 第11章 カラスモドキ 28 1008 240 重遠 軽飛 軽飛 重近 鉄の原石 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(軽) 重遠 軽飛 軽飛 重近 テンペストフレア - 重遠 軽飛 軽飛 重近 ハルピュイア 28 892 240 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 アイスエイジ - 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 ゴーレム 28 806 240 軽遠 重飛 重飛 汎近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(飛) 軽遠 重飛 重飛 汎近 アロ-ウィスプ - 軽遠 重飛 重飛 汎近 ヒスウィッチ 28 892 240 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 雷鳴の門 - 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 第12章 リトルジャック 29 882 240 軽飛 汎遠 汎近 汎近 招待状片(眠り姫) 攻撃陣形(近) 防御陣形(近) 軽飛 汎遠 汎近 汎近 狙撃手の眼 轟く波紋 - 軽飛 汎遠 汎近 汎近 力の断片Ⅱ(回復) サカサスキー 29 911 240 軽遠 汎飛 汎飛 軽近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(汎) 軽遠 汎飛 汎飛 軽近 手裏剣 - 軽遠 汎飛 汎飛 軽近 リッチ 29 731 240 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 攻撃陣形(飛) 防御陣形(飛) 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 雷鳴の門 アイスエイジ 汎遠 軽飛 軽飛 汎近 コマンドメイル 29 1128 240 重遠 軽飛 軽飛 重近 攻撃陣形(飛) 攻撃陣形(軽) 重遠 軽飛 軽飛 重近 テンペストフレア ボルトクラウド 重遠 軽飛 軽飛 重近
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1.滅びの理 作詞: 作曲: 編曲: 2.消えない欠片 作詞: 作曲: 編曲: 3.選ばれた民 作詞: 作曲: 編曲: 4.お姫様と道化師 作詞: 作曲: 編曲: 5.斑の王国 作詞: 作曲: 編曲: 6.独り夢 作詞: 作曲: 編曲: 7.空渡し 作詞: 作曲: 編曲: 8.絆の花 作詞: 作曲: 編曲: 9.終焉の刻へ 作詞: 作曲: 編曲: 10.羽に縋る者 作詞: 作曲: 編曲: 11.氷る世界 作詞: 作曲: 編曲: 12.逆廻りの命 作詞: 作曲: 編曲: 13.FEL FEARY WEL. 作詞: 作曲: 編曲:
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ラノで読む ◇序章 それはまるで母の後をついて回る子供のように、形を成さない黒い何かが空中を漂いながら追いかけてくる。対抗しうる異能力を持っていない私は、それに脅えながらただただ逃げ回ることしかできなかった。 走って、ひたすらに走って。 早くそれから離れたいのに、両足が鉛のように重く、体が言うことを聞かず、焦りと不安と絶望感で心が潰されそうになる。 私は、涙が止まらずぼろぼろになった顔で天を仰ぎ、一言つぶやいた。 「また……なんでまたこの夢……」 後ろからふわふわと迫るその黒い何かが私の後頭部に触れ…… 私は慌てて飛び起きた。 体中が火照り、呼吸が乱れ、寝汗でパジャマが体に張り付いていて気持ちが悪い。 ふと嫌な予感がしてゆっくりと後頭部を撫でると、そこには汗で湿った肩丈の癖っ毛が、いつもの寝起き通りにぐしゃぐしゃになっているだけだった。 何年ぶりに、またこんな夢を、何故―― 私はため息をつき、膝を抱え小さくうずくまった。 ◇一 高等部一年B組、窓から二列目、前から三番目の住人は、その名をもじって「眠り姫」と呼ばれていた。 「リム起きて、もうお昼だよ。一緒に学食いこう」 今日もいつもの通り、私は登校からずっと机に突っ伏したまま居眠りし続けていた彼女を揺り起こす。 「うぅ……ん。あと五分……」 もぞもぞとその長身を縮こませながら彼女が小さく呻くと、近くにいた茶髪ギャル系なクラスメイトの鈴木さんと田中さんがそれを聞き「くすくす」と小さく笑みを零した。 「授業中に居眠りし続けても怒られない異能なんて便利よねぇ」 「私もぉ。どうせ異能に目覚めるなら眠り姫様みたいなお手軽なものがいいなぁ」 「そうそう。下手に戦闘系の異能なんて身につけちゃったらたまらないわ。私まだ死にたくないもん」 「ねー、相羽さんもそう思わない?」 彼女たちは、多少の侮蔑と厭味《いやみ》のこもった言葉を残して教室を後にする。 私は何も言い返せないまま、立ち去る彼女たちにイラつきつつ、私たちのやり取りなど我関せずと言わんばかりにすーすーと寝息を立て続けるリムを見つめていた。 彼女は名を姫音《ひめね》離夢《りむ》という。 私は高校編入組の一般生徒なのでそれ以前のことは噂でしか聞いたことがないが、リムは中学時代にその能力を開花し、異能者として学園へと編入されたらしい。 その頃から既に彼女は『眠り姫』と呼ばれていたようだ。まぁ編入直後から現在と同じように授業のほとんどを居眠りして過ごし、またそれが異能による特例と扱われたこともあり、結果、誰からともなくそう呼ばれるようになっても不思議ではないだろう。 本人から詳しく聞いたわけではないが、私が知る限りリムは『眠り』の異能者である。他を探せば、戦力としても援護能力としても対ラルヴァ戦で前線に立つことのできる異能者が多数存在する中で、単に『能力者本人が眠ってしまう』だけの能力というものはやはり見劣りするものがあった。 実際、先ほどのクラスメイトの厭味のように、リムの異能を知る者は彼女に役立たずの異能者というレッテルを貼っているのは事実である。そんな能力に目覚めてしまい、しかも他のものへと変更することもできず、一生抱えていかなければならないとなると、彼女の姿が不憫にさえ思えた。 「ふん、鈴木も田中も無い物ねだりが裏返ったヤッカミみてーなもんじゃねーか。相羽も気にすることねーぞ」 声に振り返ると、男子二人女子一人の三人組が(恐らく声をかけた一人を除いて)心配そうにこちらを伺っていた。 伝馬君、氷浦君、姫川さん。彼らはこのクラスでもトップクラスの戦績を持つ戦闘系異能者のチームだ。彼女たちの言葉に聞き捨てならない思いがあったのだろう。 「さっきの台詞を俺たち異能者に直接言えるのか、ってんだ。感謝しろとまでは言わねーが、奴らとガチで戦ってる俺らを……」 「キョウちゃん、よしなよ。相羽さんも困ってるよ」 いや、特に困っているわけではない。実際、異能者がどういった気持ちで戦いに赴いているのかなどは多少なり興味があったりもする。 「ところで、リムを起こしたら、姫川さんたちも一緒にご飯、どう?」 ふと話を聞いてみたい気持ちが働き、お昼の同席を誘ってみた。しかし、 「え、ごめん、私たちちょっと……」 「お心使い痛み入ります。しかしながら僕達は本日午後より出動命令が下されてまして、これよりブリーフィングへと出向かなければなりません」 氷浦君が懇切丁寧に切り返してくれた。すると、当然のように、 「相変わらず堅っ苦しい野郎だな。『いまからラルヴァぶっ倒しに行くから』で伝わるだろ」 伝馬君が茶々を入れる。クラスでも見慣れたいつもの二人のやり取りだ。 「もう、二人とも……。ごめんなさい、相羽さん」 「ううん、気にしないで。でも、出撃命令とか大変そうだよね」 出撃命令。つまりは現時点で倒すべきラルヴァが存在しているというわけだ。 そして今からラルヴァの殲滅へ向うという彼らを前にして、私にはそのことに対する現実性が持てないでいた。 この学園へ来てようやく数か月。異能者の実態やラルヴァの脅威を知識として得たとはいえ、一般生徒にとって特に変化もない日常は、その真実に対する感覚をマヒさせているのかもしれない。 「うん。でも、私たち異能者はそれが仕事だから……」 異能者という単語と共に、姫川さんの視線がリムへと向く。 「それに、姫音さんだって……」 「でも姫音の能力って眠るだけなんだろ?」 「お前はいちいち上げ足を取るな。異能者である以上、その異能に目覚めた理由は必ずある。姫音さんも今は寝ているだけなのかも知れないが、何か隠された力を持っているかもしれないじゃないか……、と」 言葉を途切り、氷浦君が腕時計を確認すると、 「さて、時間が迫ってきたので僕たちはこれで……」 私へ向き、小さく会釈をした。私はそれに応えるように手を振りながら、 「あ、うん。それじゃ三人とも、気を付けてね」 「ま、俺たちが出向くんだ、どんな大物だろうがサクっと片付けてくるぜ」 「では、失礼します」 「姫音さんにも、よろしくね」 それはまるで、放課後に「また明日ね」と挨拶をするかのように、三人組の異能者チームはラルヴァを倒すために戦地へと赴いていった。 そして私は、相変わらずの姿勢で眠り続けているリムの肩を再び揺らす作業に戻った。 渋るリムを無理やり起こして学食へ向うも時すでに遅く食堂内は超満員で、座れず空き席待ちの列すら数十人に及んでいた。 私はリムを見上げ、互いに「困ったね」という表情で顔を見合わせると、隣の購買部で簡単な惣菜パンやおにぎりを購入し、中庭のベンチへ腰を下ろした。 「コト、ごめん。また私が寝てたばっかりに学食の席取れなくて」 手元のパンを見つめながらリムが小さく呟いた。私は首を振って 「ううん、大丈夫だよ。気にしないで」 おにぎりにかぶりつきながら微笑み答えた。 リムは口下手な上に口数が少ない。、学園にいる時間の殆どを居眠りで過ごしていることもあって人との接点も少なく、珍しく起きている姿を見かけたとしても、ぼんやりと焦点の合わない目で空を見つめていたりするばかりだ。 会話もそこそこに昼食を進めているうち、ふと気が付くとリムがまたこっくりこっくりと船を漕ぐように、前のめりになって頭を揺らしていた。 「リム……せめてご飯のときくらいは……」 私はリムの肩をさすって起こすと、彼女は寝ぼけまなこで私の顔を見つめ、 「あれ、コト? あ、私また……」 「あーあー、髪の毛食べちゃってる」 食事中に居眠りしたせいか、彼女のストレートロングの黒髪が頬を伝い唇に引っ掛かっていた。それを払ってやると、彼女はその目鼻立ちの整った容貌をぽっと赤く染め、バツが悪そうに再び俯いてしまった。いや、リムのその容姿でそんな仕草をさられたら、その、なんだ、困る。 「あー……、それにしても、リムのその居眠りって本当に異能によるものなの?」 場の空気に耐え切れず、先の異能者三人組との会話を思い出し、リムへと質問してみることにした。 「うん、学園での居眠りもそうだし、家に帰ってからもご飯とかお風呂とか以外はほとんど」 「寝る子は育つというけど、確かに」 女子の中では高い部類に入るリムの背、そして出るところはばっちりと出て、引っ込むところはちゃんと引っ込んでるという、女の私ですら見入ってしまうナイスプロポーション。 私は顎に手を当て、わざとニヤニヤした表情で、スケベオヤジよろしく舐めるようにリムを見回した。 リムはさらに顔を赤く染めると、両手を顔の前で振りながら 「でもでも、私なんて大したことないし、私よりおっぱい大きい子ならまだたくさんいるし。ほら、二礼さんなんて特に、私すら足もとに及ばないくらいこう、ボーンって。っていうか、そもそも時代は私みたいなのより、コトみたいな標準よりちょっと小柄なかわいい系の方が重要あったりするんじゃないのかな?」 リムがここまで多弁になるとは、完全に慌てふためいているな。それに、その発言は一部の人間を敵に回しかねないぞ。っていうか私も敵に回しかねないぞ、コンチクショウ。 まぁ、それはいいとして。 「昼も夜もずっと寝っぱなしって、逆に疲れない? 私、休みの日にダラダラ過ごしてると、それだけでダルくなっちゃうけど」 リムは手を振るのを止め、はにかんだように、 「うーん……これが私の異能だし、それが当たり前だから、疲れるとか感じたことはない、かな」 異能……か。 ふいに、先のクラスメイト達の厭味を思い出し、無意識に表情が陰り、両の手に視線を落とす。 異能者となってラルヴァと戦って、もし負けて死んでしまったら……? 死んでしまったら、そこで全てが終わりだ。ゲームのように残機もリトライも復活の呪文もない。 それなら、私は異能者になんて…… 「大丈夫。この学園に入学したのなら、きっといつかコトも目覚めるから。きっと誰にも負けない力、手に入れられるから」 リムが急に私の手を取り、まっすぐ目を見つめ力強く私を励ましてくれた。 「そっか、そうだね。私はどんな異能者になれるんだろうなぁ」 リムの熱意に押され、思いとは裏腹の言葉を私は笑顔で答えてみせた。 私の不安は隠せただろうか――。 ◇二 三人分の空き席が出来た午後の授業中、『眠り姫』ことリムは、そのあだ名の示すとおりぶっ通しで居眠りし続けていた。 HRも終わり、がやがやとざわめく教室で相も変わらず寝息を立て続けるリムの姿を、田中さんと鈴木さんがまた昼と同じく卑下するかのようにくすくすと笑い、私は反射的に彼女たちの方へ振り向いてしまった。 「……なに、相羽さん?」 睨むように見てしまった私にも非があるのは確かだ。うぅむ、最近どうもイライライしてしまっていかんな。 しかし……それにしても二人のこの敵意の現れようはなんなのだろうか。 「……別に」 相手にするのも億劫だ。私は彼女らを気にせず、リムを起こそうと彼女に手を伸ばした。 「もうちょっと寝かせてあげたほうがいいんじゃない?」 鈴木さんが私を制止し言った。その表情はニヤニヤと、あたかもリムをからかい材料にせんと言わんばかりだ。 その意図が読めず、首をかしげ頭の上に疑問符を浮かべたような表情で彼女を見返す。 「ほら、夜のほうが忙しい眠り姫さんにとって、授業中の居眠りは大事な時間なんでしょ?」 リムが夜忙しいだって? そんなはずはない、リムはさっきお昼御飯のときに「昼も夜も寝っぱなし」だと言っていた。 「は? リムは学校でも家でも、どうしても眠くなっちゃうって言ってたんだけど」 「でもー、夜に如何わしいバイトしてるって噂だし」 「え、私それ初耳ぃ。でも姫音さんスタイルいいもんねぇ。おっぱいも大きいしぃ」 「ね、ね、姫音さんってずっと眠りっぱなしじゃん。『眠り姫を好きなだけ悪戯できる』とかすごくエッチくない?」 「キャー! それってぇ変態オヤジがすごく食い付きそう!」 バカ女どもが好き勝手言いやがって。 「あんた達いい加減に――」 青筋立てて彼女たちに掴みかかろうとしたその時、 「あまり大声でそんな話してると、怖い風紀委員長に目を付けられちゃうぞ?」 けらけらと笑いながら、私よりもさらに小柄な加賀社さんが話の輪に入り込んできた。 彼女、加賀社紫穏さんは言わずと知れたあの醒徒会メンバーの一人なのだが、一般生徒である私とはクラスメイト以上の接点も面識もない。 しかし私と共にいた鈴木さんたちは、急にへらへらと媚び諂うような態度に変化する姿が見て取れた。 「でもまぁ、うちのクラスの風紀委員見習いさんは、HR終了と同時にすぐ教室出て行っちゃったみたいだけど」 きょろきょろと辺りを見回した後、加賀杜さんは座ったままのリムへ視線を落とすと 「リムっちは相変わらずの居眠りっぷりだねぇ。今日はどんな夢を見ているのかな」 加賀杜さんがリムの頭をぽんぽんと叩くとリムは「う……ん」と小さく呻きをあげむずがったが、それでもまだ起きることなく再び寝息を立て始めた。 二人が、ちょうど加賀杜さんからは確認できない角度で、鋭い目つきでリムと私を睨んでいるのが何とも痛々しい。加賀杜さんが面を上げると同時に取り繕ったような表情に戻ったところとか特に。 「……っと。それにしても、紫穏ちゃんはすごいよね、憧れるなぁ」 「ん?」 「この無意味な異能者さんと違って、紫穏ちゃんは醒徒会役員選挙でも当選するくらいだもんね」 どうやら鈴木さんの一言が、加賀杜さんの機嫌を損ねたようだ。露骨に嫌そうな表情で、なじるようにその一言を非難した。 「意味のない異能なんてないよ」 「え、でも、眠りひ……えっと、姫音さんみたいに異能者なのににラルヴァと戦えないとか、そうでなくても何の役にも立たないって酷過ぎじゃない?」 いつも元気で天真爛漫に振る舞う加賀杜さんとは思えない形相で、 「役に立つか立たないかはその異能者本人が一番わかってることさ。それを周りがとやかく言う権利はないんじゃね? それに……」 加賀杜さんは自身の右手を見つめ、グー、パーと動かしながら続けた。 「アタシらは『ラルヴァと戦うため』にこの力を得たんじゃないと思うな」 「え? それじゃあ何故――」 その意外過ぎる言葉に、私は咄嗟に身を乗り出し口をはさんだ。 彼女は私の方へ振り向くと、その右手を突き出しグッと親指を立て、笑顔にウインクのオマケ付きで 「そりゃもちろん『ラルヴァの脅威からみんなを守るため』さ。――まぁ、人の受け売りなんだけどね」 ちらりと視線だけリムに向け、終わりに小さく付け加えた。 「さて、と。今日の放課後もオシゴトだ。醒徒会室が今日もアタシを呼んでいるぜっ。じゃねー」 加賀杜さんは私たちに背を向け、後姿で手を振りながら教室を出て行ってしまった。 「はー、やっぱり紫穏ちゃんってカッコイイなぁ……、やっぱり異能者になるなら戦えるオンナノコがいいよねぇ」 まったく、昼休み前の台詞は何処へやら。「その話題」で盛り上がりながら席を離れる二人の後姿に私は小さくため息をついた。 「雨、降りそう」 風になびく長い黒髪を押さえながら、リムがぼんやりと空を見上げ小さくつぶやく。確かに、雨雲が立ち込めていて、これではいつ降り出してもおかしくない。 女子寮までの帰り道、先ほどのやり取りのことをリムに問われたので(前半部分には触れず)掻い摘んで説明すると、 「紫穏さん、そんなこと言ってたんだ」 「リムって加賀杜さんと仲良かったっけ?」 「えっと、ほら。お互い異能者だから。前にちょっと話したこともあって」 何となく軽くあしらわてしまった気がしたが、嘘が苦手なリムがそう言うのならきっとそうなのだろう。 「あ、そういえば」 ふと、加賀杜さんがさらっと言い流した言葉を思い出した。 「リムって昼も夜も寝てるっていうけど、いつもどんな夢見てるの?」 「私の、夢?」 リムは首を傾げ、眉を顰めながら、 「うーん……んー……自分の夢って殆ど見ないから、あまりよく覚えてない、かな」 「へぇ。今日はいい夢見たとか嫌な夢みちゃったとかも覚えてないの?」 ……嫌な夢? 全く意識せず自分の口から出た言葉を元に、思い出したくなかったものが記憶の底から湧いて出てしまい、私はふいに表情を曇らせていた。リムはそれに気づいたのか 「コト、どうしたの?」 憂色の含んだ表情で私の顔を覗き込む。私は咄嗟に、 「ううん、何でもない。ちょっとね、今朝見た嫌な夢を思い出しちゃって」 「嫌な夢……もしコトが良ければ話してもらってもいい? えっと、そういうのってほら、話せば楽になるって言うし」 口籠りながら、それでも私を心配してくれている気遣いが何とも嬉しい。 「小さい頃から『得体の知れない何かに追われる夢』をよく見ることあったんだけど、昨日の夜に、その夢を何年ぶりかに見ちゃってさ」 「追われる夢……?」 「うん。まぁ慌てて飛び起きて、それでそのまま忘れちゃう程度だけどね」 リムの意外な思案顔に、私はそれが大したことではないニュアンスを含めたフォローを自身に入れた。 するとリムは私の手を取り、真顔で私の目を見つめ、 「大丈夫、いざとなったら私がコトの夢に助けに行くから」 と。 それが、私の不安を和らげるためとはいえ、リムがそのような冗談を言うとは意外だった。私はそんなリムに乗り、 「それじゃ、次またその嫌な夢見た時は助けてくれる?」 「うん、絶対」 リムは真面目な表情で、私はその心遣いに喜色を浮かべ。 ぽつりぽつりと降り出した雨に、私たちは手を繋いだまま急いで女子寮へと駆け込んだ。 続・後編 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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307 名前:70【SS】[sage] 投稿日:2011/04/04(月) 14 22 58.87 ID tK7cM85p0 [1/3] タイトル『眠り姫(?)』 「ただいまーっと、あれ?」 学校から帰ってくると桐乃の靴があった。 部活やモデル活動などで多忙な妹が俺より先に帰ってくるなんて珍しいな。 いつものようにリビングに麦茶を飲みに行くと桐乃が居た―― ソファの上に寝そべって寝息を立てている。 「お~い、そんなところで寝てると風邪引くぞ」 声をかけるが返事は無い。ったくしょうがねーな… せめて何かかけてやろうと思い近付くとテーブルの上にある雑誌が目に付いた。 ―あ~萌え死にしそう!「女の子の可愛すぎる仕草」 20パターン― 「なんだこりゃ?」 そこには男性の心をくすぐる女の子のしぐさが理由と共に紹介されていた。 「こんなもの読んでどうするんだか…何々?」 1. 黒板を消すときの、無防備な左手 2. マスカラを塗るときに、口まで開く姿 3. 狸寝入りしてる時の作った寝顔 「………………………………」 そこまで読んで桐乃の寝顔に目をやると微妙に口角が上がっているみたいに見える。 さては寝たふりして俺をからかおうとしてやがるな? それともこの「可愛い仕草」とやらを試しているのか… どっちにしろ引っかかってたまるか! 「起きねーとチューしちまうぞ?」 「!!!」 顔を紅くしてガバッと起き上がる―― 「あんた何寝ぼけたこと言ってんのよ!?」 「寝ぼけてるのはどっちだよ。寝るならちゃんとした所で寝ろ」 そんなやりとりをしたのがついこの前だったのに――― ―――――チュッ! なんだ今の感触はっ!?俺の意識は急に覚める―― 「きゃっ!」 飛び起きるとそばには桐乃が居た、妙に顔が紅い? 「お、お前今何した??」 「何っていつまでもあんたが寝たふりしてるから…キ、キスしたんじゃん」 「キ、キス!?寝たふり!?何のことだよ!?」 「なにとぼけてるのよこのシスコン!!何回も言ったでしょ? 起きないとキ…、キスするって!!」 「ね、寝たふりなんてしてねーよ!!」 「うそっ!?」 「本当っ!!」 「――!!」「――!!」「――!!」…… どうやら寝てる俺をさんざ揺すったり声をかけたりしたが起きなかったらしい。 完全に熟睡してたみたいだ。それにしても本当にするか、普通!? 「いいかっ!?俺はマジで寝てただけであって、 決してお前にキスして欲しくて寝たふりしてたわけじゃないんだからな!!」 「でもさー、あれだけ叩いたり揺すったり声かけたりしても起きなかったのに 妹のキスひとつで目覚ますなんてあんたどんだけシスコンなの?」 どっちにしろ否定できませんでしたとさ、ちゃんちゃん♪ -------------
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《公開済》SNM002156 シナリオガイド 公式掲示板 “琥珀の眠り姫”の眠りを覚ます鍵の一つが、水没する遺跡の中にあるという……。 担当マスター 八子 棗 主たる舞台 パラミタ内海 ジャンル 冒険 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2013-01-07 2013-01-09 2013-01-13 リアクション公開予定日 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2013-01-24 - 2013-01-24 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) 別邸跡を調査する +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 MCに変わった遺跡を冒険をさせたい ▼キャラクターの目的 別邸跡を調査する ▼キャラクターの動機 干潮時だけアタックできる遺跡か……遣り甲斐がありそうだ! ▼キャラクターの手段 キロスはなかなかどうして面白いネタを持ってくるじゃないか。 時間制限がある遺跡は一発勝負だから、気を引き締めて乗り込むぞ。 キロスや仲間と協力して、できるだけバラけて個々に調査を行い、連絡を取り合うことで、できるだけ遺跡の全容を調べるようにする。 トラップは専門家がいればできるだけ任せて、俺は触らぬ神に祟りなし、とばかりにトラップには触れないようにする。 代わりにゴーレムといった敵との戦闘は前線で戦うぞ! 他の空賊の足止めをする +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 仲間のために戦うMCの姿を描いて欲しい ▼キャラクターの目的 他の空賊の足止めをする ▼キャラクターの動機 空賊達にキロスさん達の邪魔はさせません! ▼キャラクターの手段 シャンバラ古王国が滅んで5000年経ちましたが、地球に現れたことにより、蘇っているシャンバラ人も多くいます。 私は琥珀の眠り姫さんにも目覚めて欲しいと思い、キロスさんに協力します。 遺跡の入口のある海岸の草むらなど遮蔽物のあるところで待機し、空賊達が来るのを待ちます。 来ないに越したことはありませんが、来た時は先手必勝とばかりに奇襲を仕掛け、浮足立っているうちに武器を叩き落として無力化し、わざと逃がします。 その他補足等 [部分編集] 【タグ:SNM パラミタ内海 八子 棗 冒険 正常公開済】
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ラノで読む ◇三 それはまるで母の後をついて回る子供のように、形を成さない黒い何かが空中を漂いながら追いかけてくる。対抗しうる異能力を持っていない私は、それに脅えながらただただ逃げ回ることしかできなかった。 走って、ひたすらに走って。 早くそれから離れたいのに、両足が鉛のように重く、体が言うことを聞かず、焦りと不安と絶望感で心が潰されそうになる。 私は、涙が止まらずぼろぼろになった顔で天を仰ぎ―― うす雲が広がる淀んだ空に、学園指定の制服を纏《まと》った人影が宙に浮いていた。 「――リム……?」 すっと私の隣へ降り立ち、ふわふわと漂う黒い何かを睨みつける長身の少女。間違いない、リムだ……だが。 普段のぼんやりとした雰囲気と異なり彼女は鋭く凛とした表情で。また八重歯や爪が獣のように尖っており、目鼻立ちもどことなくくっきりしているようにも見える。 そして何よりもあの綺麗な長い黒髪が、赤茶けた色をした緩《ゆる》いウェーブがかった髪となっている点が強い違和感として残る。 その、私の眼前に佇み黒い何かと対峙する、記憶と明らかに異なるリムの姿。 「やっぱり。予想通りだったみたい」 リムは私へ振り向き、いつも見せるような微笑みを浮かべた。 「コト。助けに、来たよ」 ――そうか、これは私の夢なんだった。 これが夢であるという認識と同時に、私はリムが下校時に口にした言葉を思い出す。 『大丈夫、いざとなったら私がコトの夢へ助けに行くから』 こノ言葉は、こういうことを意味していたのか? 私は即座に強く首を振って自分の思考を否定する。 「ははっ。助けに来たとかありえないよ。こんなの……私の記憶や願望が夢としてそう見せてるだけ、そうでしょ?」 乾いた笑いをあげる私を、リムは表情を陰らせながらも、 「んー。私は、私の意思でコトの悪夢《あくむ》を退治しに来たんだよ」 それは、いつもの優しいリムの声で綴られた。 「リムの意思……私の悪夢?」 「そう、私の意思で、私の能力で」 「リムの能力って。リムはただの『眠り』の異能者じゃないの?」 「表向きは確かにそう、だね。学園にもそう登録されてる、はず。それに、外から見たらただ眠ってるだけにしか見えないし、今も、私の体は寮室でぐっすり寝てる」 ふふっとリムが微笑むとすぐに、その胸にそっと手を当て真顔で私を見つめ、 「えーっと、……私自身の夢を操作し、他者の夢へ干渉、同調する。そして私の夢は、現実の意識と感覚をもってその相手の夢へと侵入、共有することができる。それが、私の能力、なんだよ」 私は眉をひそめた。それを察したのか、リムが続ける。 「うーん、そうだね……。単純に『今、私がコトと同じ夢を見てる』ってのがわかりやすい、かな」 「同じ夢……でも何故そんな能力を、何のために……まさか――」 ――まさか。私は肩の上でふわふわ浮かぶ黒いそれへと視線を向ける。 「……そう、それは人の心に巣食いその寄生主の夢へと擬態し、負の感情を増殖させるラルヴァ『悪夢《ナイトメア》』」 これが、ラルヴァ……? それってつまり、私の中に、私の夢の中にラルヴァがいるってこと? 「カテゴリーエレメント、上級Cノ1。こいつだけならまだ嫌な夢を見させるだけの、人の夢の中で悪ふざけしてるだけのラルヴァだから。ちょっとだけ嫌な気持ちが続いたりするけど、直接的な実害はない、はず」 突如知らされたラルヴァの存在に怯える私を見て、リムは微苦笑を浮かべる。 「今日の放課後にコトの夢の話聞いて、まさかと思ったんだけど。でももう大丈夫、私に任せて」 不安がる私の表情を察してか、リムは鋭い爪を備えた手でそのラルヴァを掴むと、 「さて、さっさと退治しちゃうね」 そして、何の躊躇いもなく、 「それじゃ、いただきます」 「食べちゃうの!?」 あたかもおにぎりを食べるかのように、そのラルヴァを口へと運んだ。 黒い『悪夢《ナイトメア》』は抵抗する素振りをまったく見せることなく、徐々にリムの胃袋に収められていく。 そして、最後の一飲みと同時にリムが満足そうに「ふぅ」とため息をつき、両手を合わせ、小さくお辞儀をした。 「ごちそうさまでした」 「……ラルヴァって、食べても大丈夫なものなの?」 「うーん、えーっと……。これは夢だしイメージの問題、かな。食べてなくなれば『もうないよ』ってわかりやすいし、これも私の能力の一つだから。ほら、ひとまずこれでもう安心だよ」 面《おもて》を上げたリムの表情は、いつもの緩んだ微笑に戻っていた。 意表を突かれるとは正にこういったことを指すのか。もうわけがわからない。ラルヴァってもっと恐ろしい存在じゃないの? 私はこの夢の内容に頭を抱え込んだ。 リムが私の夢の中に助けに来て……私の中にラルヴァがいて……リムがそのラルヴァを食べて消しちゃって……で、それがリムの能力? 理解できずに脳内でパニックを起こしている自分に対して、やけにこの不可解な現状を、さも当たり前のように振る舞っているリムの姿に疑問が浮かんだ。 「もしかして、リムっていつも、ずっとこいつを……?」 「うん、寝てるときはだいたい、世界中の誰かの夢の中へ……『悪夢《ナイトメア》』に侵された人の夢の中へと出かけてる、かな」 言って、はっと何かに気づいたのかリムが口早に続けた。 「あ、もちろん全員が全員『悪夢《ナイトメア》』に悩まされてるわけじゃないよ。取り付かれやすい人もいれば耐性の高い人もいる。中には『夢を全く見ない人』もいたりするし」 「え、それじゃ私はもしかして……」 「うん、コトはどちらかというと取り付かれやすい側、なのかな。でもそういう人達のためにも、私はいつも……ね」 リムは、照れ臭そうに頬を掻きながら、 「これが、このラルヴァから皆を守ることが私に出来る唯一の……たぶん、私にしか出来ない仕事だから」 「リムにしか出来ないって、じゃあ今までずっと一人で……?」 考えたくもなかった事実が脳裏をよぎる。 昼も夜も、一日のほとんどを睡眠に費やしているリム、その夢の中で他者の夢へ次々と侵入していき、自分にしかできないからと単身ラルヴァ『悪夢《ナイトメア》』を追い続けているということは、つまり……。 リムは今までずっと、たった一人で『悪夢《ナイトメア》』を討伐してきたってこと? 一瞬だが、ふっと立ち眩みのように視界が陰った、そんな気がした。 「リムが……リムがこうやって一人でラルヴァを倒し続けてること、他の人は知っているの?」 私の問いに、リムは顎に指を当て首を傾げる。 「うーん。ほとんどいないはずだよ」 そして、反対の手の指を折り数えながら、 「私が把握してる限りでは……一、二、三……四人、かな」 「たった四人……、なんで? ずっと続けてきてたのなら、このラルヴァのことやリムの能力のことを知ってる人はもっとたくさんいるはずじゃないの!?」 「それは、無理、だよ。コトも今までのみんなも、目が覚めたらこの夢のことは綺麗すっきり忘れて『夢は見てなかった』ってことになる」 リムは俯《うつむ》き、お腹を撫でながら、続けた。 「だって、私がこの夢を……この夢を生んだラルヴァ『悪夢《ナイトメア》』を食べちゃったから」 何故かリムの言葉に深く心が痛んだ。 リムはみんなのためにこんなに頑張って、たった一人でラルヴァを倒し続けているというのに、誰にもそのことを覚えていてもらえないなんて。 それどころか、周りのみんなはリムを『眠り姫』と囃《はや》し立て、寝てばかりの役立たずな異能者というレッテルを貼っていたのだ。 ――そう、私も含めて。 悔しさが、情けなさが、恥ずかしさが、申し訳なさが、再び私の視界を陰らせる。それでも私は目が霞むのもお構いなしに、リムを見上げ、叫んだ。 「おかしいよ、そんなの絶対おかしいよ! ……リムの異能もなんかちょっと変だけど、じゃあリムが一人で倒さなきゃならない『悪夢《ナイトメア》』って一体何なのさ!?」 「んーと、さっきも言ったよ? 嫌な夢見させるだけの、夢の中に居るだけのラルヴァだって。こいつだけならまだ……」 「そんなん聞きたいんじゃない!!」 リムの言葉を遮《さえぎ》り怒鳴り返す。リムが小さくビクリとし、困惑した表情で私を見下ろした。 「コト、こんなのでも人に悪さするラルヴァだもん。退治できる人が退治しなきゃ駄目、だよ」 心がちくりと痛んだ。 「だけど、さ。他の異能者たちも前線に出て頑張ってるし、非戦闘系異能者の人だってその能力をもって評価を得てるじゃん。リムもこうやって頑張ってることをもっと知ってもらえば他の皆だってをもっと……」 「でも私の異能は……、ううん。私はあまりこのことを人には知られたくないから、このままでいいの」 リムが呟《つぶや》き、私から視線を逸らす。その仕草が何故か妙に癪《しゃく》に障《さわ》り、私は激昂《げっこう》した。 「なんで!? それじゃあ他のみんなはリムのことをこれからもずっと……、田中さんや鈴木さんなんて今日、散々リムをバカにしてたんだよ!?」 「えっと、違うよ、コト。あの二人も本当は……」 まるでその二人を庇《かば》うかのようなリムの言葉が、私の心の底に黒い感情を芽生えさせた。そして、それが私の心を強く締め付けてくる。 「私はリムの親友だと思ってた。まだ出会ってからたった数か月だけど、それでも一番仲のいいクラスメイトだと思ってた。それなのに……」 こみ上げてくる得体の知れない黒い感情が無意識に強い怒りへと置き換わっていき、私はリムの胸ぐらを掴みあげた。身長差もあってか、私の両肘がリムのふくよかな胸を押しつぶす。 「私よりあの二人の肩を持つっての!? それに、どうして今まで何も話してくれなかったのさ!?」 大声で怒鳴る。自分でももう何を言っているのか、何をしてるのかわからなかった。 「もうわけがわからないよ……。リムが助けにきてくれて、リムの本当の能力も教えてもらえたのに……それを忘れなきゃならないなんて……」 「コト、お願――ち着いて。でな――」 視界はどんどん暗くなり、耳すら聞こえ辛くなってきた。しかし、それでもなお心を覆いつくすほどに湧き上がった感情を私はもう止めることは出来なかった。 「それなら……それなら私は毎晩|悪夢《あくむ》にうなされたっていい! リムのこと忘れないから、忘れたくないから、私の『悪夢《ナイトメア》』を返してよ!!」 「――!! ……――!」 もう何も見えなかった。リムの声も届かなかった。リムの胸ぐらを掴んでいた両手の感覚も、肘に触れていた柔らかい感触も、何もかもなくなっていた。 全てを覆い尽くす闇。完全な無。 助けてに来てくれた親友《リム》を求めるが故に彼女を拒絶してしまった私へと、私《・》が囁くように声をかけてきた。 「私《ナイトメア》なら、いつでもここにいるよ」 不意に、私の中で黒い感情がはじけ飛ぶ。真っ暗だった視界が急に開けた。 ――そうか。私がずっと「悪夢《ナイトメア》」を生み続けてればいいんだ。 「あははははははははっ」 私はリムの胸ぐらを掴み上げたまま、新たに生み出した無数の「悪夢《ナイトメア》」に囲まれ高笑いを上げた。 ◇四 それは不思議な感覚だった。 全身に力が漲《みなぎ》り、視覚や聴覚などの感覚器が常識をはるかに上回る程に研ぎ澄まされている。 まるで、心に満たされた黒い何かが全身に沁み渡り、私の肉体が、意識が、感覚が、その全てを何十倍にも増幅してくれているような。そして何より、私の心がこの力の全てを既に理解できていることに驚嘆した。 すごい。この力があれば全てを私の思い通りにすることができるのかもしれない。私はその湧き出んばかりの力に感情が昂《たかぶ》っていた。 「コト、苦しい……」 私の両手で胸ぐらを締めあげられているリムが呻きをあげ、苦痛に顔を歪めながら、私の左右の手首にその鋭い爪を食い込ませるほどに強く掴《つか》み振りほどこうとする。 ……しかし、何故《・・》か《・》私はその手を緩めることはせず、むしろニヤリと唇をつり上げ更に力を込めてさえいた。 リムはしばらく私のその手から逃れようと四苦八苦していたが、一瞬、掴む手の力を抜くと、 「んっ!!」 両足を跳ね上げ上半身を引き落とし、まるで巴投げよろしく私の腹部を全力で蹴り飛ばして、無理やり私の両手から身を引き剥がした。 「ごめんね、コト。ちょっと形振り構ってあげられないかも」 その場で尻もちをついたリムが、げほげほとむせ返りながらゆっくりと立ち上がる。 少し離れたところまで蹴り飛ばされた私は、背中から激しく地面に落下した。しかし外傷や痛みは何もない。 「そっか。夢だから痛くないんだ」 私は背中を払いながら身を起こしリムへと目線を向ける。どうやら咳《せき》は治まったようだがまだ少し肩で息をしているようだ。 「あれ? でもリムは結構苦しがってるよね」 「……うん。私は意識と一緒に感覚もこっちに持って来てるから、ね」 「ふぅん」 リムの言葉に私は首をかしげた。 ということは、この私の力はもしかしてさっき聞いたリムの異能よりも有能? 考えて、頬が緩み、背筋がゾクゾクした。 そうか、今の私はきっとリムより強いんだ。 私の全身を満たした黒い感情が、快楽をともなってそう答えてくれている気がした。 「コト、ダメだよ」 息を整え、辺りに浮かぶ悪夢《ナイトメア》を払いのけながら、真顔のリムが私に歩み寄る。 「それは使っちゃダメ。今すぐに私が消すから、じっとしてて」 「何を言ってるの、リム? 私がようやく手に入れた力なんだよ?」 私は数歩下がり、腕を突き出しリムを制止する。その勢いで手のひらからポコリと悪夢《ナイトメア》が生まれおちた。 リムはそれを見つめながら悲しそうな表情で、 「コト、惑わされちゃ駄目。それは異能なんかじゃないんだから」 「じゃあ、なんだっていうのさ」 「これは、コトの夢。しかも、悪夢《ナイトメア》が見せてる悪夢《あくむ》なんだよ」 私たちの間をふわふわと漂っていた悪夢《ナイトメア》を掴むと、大口を開けて一飲みした。 「最悪の場合、取り返しがつかないことになる。退治して、一緒に現実に戻ろう?」 「この力を失って、全部忘れて、今まで通りの生活に戻れっての?」 私はリムに向けて突き出していた手を強く握りしめる。指の隙間から黒いもやが溢れ出た。 「……それなら私は現実なんていらない。今の私なら何だってできる。この夢の中で、この能力で、ずっと楽しむんだ!!」 すっと両腕を広げる。むず痒く伝わるわずかな快感とともに、私はその手のひらから無数の悪夢《ナイトメア》を産みだした。 「こんなことだって、できる」 一つの形を強く願う。漂う悪夢《ナイトメア》たちが連鎖的にポンポンと弾け、夢を塗り替えていく。 机が整然と並べられ、浮かびあがる黒板には、|HR《ホームルーム》でせんせーさんが板書した連絡事項が低い位置に書き連ねられてあった。 記憶に残っている、放課後の帰り際に見た一年B組の教室。 「他に誰もいない、私とリムだけの世界。なーんてな」 手を振りけらけらと笑ってみせる。 「そうだ、リムも一緒に遊ぼうよ。一人は寂しいし、リムも今までそうだったんでしょ? こうやって悪夢《ナイトメア》を生み続けてれば、リムはずっと私の相手をしてくれるんでしょ!?」 悲しそうな表情のままじっと私を見つめ続けていたリムが、私の叫びに首を強く振り、答えた。 「やだ、それは絶対やだよ」 「なっ!! ひどいよリム! それじゃこのまま私を一人にするって言うの!?」 「……うーん、やっぱり、かぁ……。失敗したなぁ、今夜はコトで三人目。しかも、悪夢《ナイトメア》だけのつもりだったのにまさかこいつがいるなんて……どうしよう、かな……」 おそらく独り言だろう。私に聞こえるか聞こえないかぎりぎりの声でリムがぶつぶつと呟やく。そして、 「……もういいよ。もう、コトのふりなんかしなくても」 リムは肩を落とし小さくため息をついて、続けた。 「私の知ってるコトなら絶対にそんなこと言わない。今のあなたは、コトだけとコトじゃない。ただの……ラルヴァ」 誰もいない殺風景な教室で、二人の間に不穏な空気が漂う。 「何を言ってるの? 私が、ラルヴァだって?」 リムは真顔で私を指さすと、 「今のあなたはコトの意識を乗っ取った『悪夢《ナイトメア》』の圧縮集合体。自身を分裂させて、あたかも悪夢《ナイトメア》を子供のように産み落とすラルヴァ『|子持ち悪夢《ナイトメア・プレグナント》』」 私が、ラルヴァだって……? リムの言葉に、私は俯きニヤリとしてみせた。再び数歩下がり、間合いをとる。 「……へぇ。なんだ、知ってるんだ」 「まぁ、初めてじゃないし、ね。前にも一度『子持ち悪夢』とは遭遇したことあるから」 リムは再びため息をつくと、困ったような泣き出しそうな表情で続けた。 「でも、あの時は……、このままの私じゃ手も足も出なくて結局……」 それを聞き、私は大いに吹き出した。 「あはははははっ、それは不憫だ。それでも|こいつ《・・・》をを助けるつもり? 諦めた方がいいんじゃない?」 「ううん」 急にリムが凛とした表情になり私を見つめてくる。ウェーブがかった赤黒い髪が、心なしか更に巻き上がったように見えた。 「私は私のまま全力をもって|あなた《プレグナント》を消して、コトを助けだす。それは、変わらないよ」 強い意志を込めた表情で私を見つめてくる。弱いくせに、全然大したことないくせに。私は苛立ちを覚え、怒鳴り返した。 「そんな『眠り姫』のリムが、今のこの私に敵うわけないじゃない!!」 「確かに、私は現実じゃただの役立たずかもしれない。でもここなら、夢の中でなら……たとえ私が戦闘型じゃなくても、誰も私には並ばせない! 返してもらうよ、私のコトを!!」 叫び、そして私に向ってリムの両足が地を蹴った。 ◇五 「ふっ」 リムが私へと一気に駆け寄る。 私は両手から『悪夢《ナイトメア》』を無数に生み出すと、迎撃するかのように迫るリムへとそれらを放った。 「くっ……!!」 黒い塊を右へ左へ弾き飛ばし、真正面へ飛んでくる避けられない『悪夢《ナイトメア》』を咥え込み、机をなぎ倒しながらもリムは減速することなく、私の体を押し倒した。 仰向けの私の胴へ馬乗りになり、その両腕で私の右手首と左肩を抑え込み、リムが必死の形相で私を見下ろしてくる。 現実のリムとは異なる赤茶けた長い巻き髪が私の頬を撫で、そして、いつもと同じリムの仄かな香りが鼻をくすぐる。 私は身動きを取らずリムを見上げたまま、リムも歯噛みした表情で私を抑え込んだままの体勢で動かず、互いに睨み合う。 「あまいっ!!」 私は空いた左手でリムの襟首をつかむと、強引に引き剥がした。自分の予想以上の腕力でリムを放り投げ、そのまま反動で転がり起きる。 なるほど、悪夢《ナイトメア》で夢を書き換える以外にも、願ったことや考えることを自分自身の力に変換できるのか。 遠くの方でリムが見事にヘッドスライディングで着地していた。 「まさかこれが全力? こんなんじゃ勢いあまってリムを殺しちゃうかもね?」 両腕に力を込め一つの形を強く願う。むず痒く伝わるわずかな快感とともに生み出された幾多の悪夢《ナイトメア》たちが私の指にそれぞれまとわりつき、その願いどおり長く鋭い十本の鉤爪《かぎづめ》へと成形された。 リムは立ち上がりパンパンと裾を掃うと、 「それは、困る、かな」 「それならもっと楽しませてよ!!」 私は一気に距離を詰め、悪夢《ナイトメア》の爪をもってリムへと攻め込んだ。 ……それはあまりに一方的な戦いだった。 その両手のひらに魂源力を込め私の攻撃を右へ左へといなし、紙一重で避け……、それでもかわしきれず、私の爪がリムの制服を裂き、薄皮一枚ずつ傷つけていった。 全身を徐々に切り裂かれ、それでもなおリムは反撃には出ず防戦一方を強いられている。 「ふっ、笑えるね。それでどうやって私を消そうって言うの?」 私は満身創痍のリムへと執拗に襲いかかった。 「……私は、コトが私を信じてくれてるって信じてる、から」 「リムのことを信じるだって? 信じて何になる!」 私の攻撃を見切ったのか、魂源力を込めたリムの両手が私の腕を受け止め、強く掴みかかった。 一瞬、再び睨み合う。私は言葉を続けた。 「それともリムを信じて、このままリムに呑まれようか。そして私と一緒に消されて、二度と目を覚まさない植物人間みたいになることを……こいつが望むとでも思うの!?」 「そんなこと……!」 表情を曇らせ、リムの両手の力が緩む。私はその隙に一気に両腕を引き抜き、叫んだ。 「リムに勝ち目はないよ。こいつは、この夢はもう私のものだ!!」 リムの胸元めがけ、爪を立て大きく振りぬく! リムは避けるように咄嗟に机へ飛び乗り、後方へ高く跳躍した。 「くっ! それでもあなたなんかに、絶対にコトは渡さないんだから!!」 涙。 リムは泣いていた。グスリと鼻をすすり、手の甲で涙を拭う。 その一瞬の隙が明暗を分けたのかもしれない。 「くらえぇえ!!」 私は一気に間合いを詰めると、着地するリムの左腹部へ、鋭い爪を備えた右腕で深く抉り込んだ。 「ぅぐっ!?」 リムが顔をしかめ呻きをあげる。 ヌルヌルとした感触が右手を覆う。ものすごく熱い。 「ぐ……ぁ……。まだ、大丈夫……」 リムは痛みを堪《こら》えるかのようにはっはっはっと細かく呼吸をしながら、両手で私の右腕を力なく掴み、そして覆いかぶさるようにもたれかかる。 「そう? それじゃあ……」 私は肩に乗せられたリムの頭を空いた左手で撫でながら、 「はい、プレゼント」 リムの腹部を貫く右手から体内へと直接、大量の悪夢《ナイトメア》を放った。 「がはぁっ!!」 まるで電気ショックを与えられたかのようにリムの体が跳ねあがる。そりゃそうだ、絶望と苦痛という負の感情を存分に込めたんだから。 「ぁぁぁああああ!!」 リムは激しく暴れ、自ら私の右手を引き抜くと、鮮血を垂れ流しながら地を転げ回った。 ……ちょっとやりすぎたかな? でももうこれで、リムが私を消すことなどできないだろう。 私は血だまりにうずくまるリムを見下ろしながらニヤリと口角をつり上げた……が。 そんな私の思惑は、次の瞬間に脆くも打ち崩された。 ◇六 力尽きたのか血まみれの姿で地に伏したままのリムの体が、ビクンビクンと小刻みに痙攣《けいれん》する。 「いやだ……またあんな――になんかなりたくない。コトに、見られたく、ない……。いやだ、いやだ……いやだぁあ!!」 左わき腹を押さえながら小さく縮こまり、右腕で強く抱き込むように顔を覆う。くぐもった悲痛な叫びが教室内に響き渡った。 「リ……ム……?」 叫ぶほどの体力などもう残っていないはずなのに。とどめを刺さないまでも、少なくとも追撃を加えるべきだったのだが、私は踏み込めなずたじろいだ。 それはこの悪夢《わたし》が、急変したリムの様子に対して強く「嫌な予感」がしたから。 「あぁぁ………!!」 バリバリという音とともに、リムの細身の体が数倍に膨れ上がりボロボロの制服を引き破っていく。その全身は赤黒い毛で覆われ、まるで熊のような厚い胴が露わになった。四肢は虎のようにたくましく大地に伸び、顔には太く長い鼻が備えられ、左右の牙が太く長く反り返っていた。 私を睨む巨躯の獣は、大型獣特有の雄々しい威圧感を持ちながらも、一概に格好良いとも可愛いとも言えない、むしろ見る者に畏怖さえ与えかねない姿で、その力強さを誇示するかのように長い鼻をひるがえし、 「ォォォオオオオオオオ!!」 重く響きわたる雄叫びをあげる。私が生み出したこの教室という空間がその衝撃によって音を立てて砕け散る。地に落ちた悪夢の破片は霧散し、辺りはまっさらな純白の空間が広がっていた。 「そんな……何、その姿……。これじゃまるでリムの方が化物《ラルヴァ》みたいじゃない!!」 まったく予想だにしないリムの変貌に、私は本能的に心底脅えきっていた。 ――おかしい。異能者は一人一系統のみのはず。それなのに……。 私の知る限りリムはすでに異なる四つの異能を発現させていた。 現実世界での「眠り姫」のリム、人の夢に入り込み、悪夢を食らい、そしてこの厳《いか》つい獣の姿に変身する。 ありえない、これってつまり……、 「……つまり、夢喰いの『獏《ばく》』への身体変化がリムの異能の本質ってわけ?」 低いの唸り声をあげながら、二メートルを超える巨体の獣がのそりのそりと私へと歩み寄る。私は間合いを保ち、後ずさった。 うぅむ、これが動物園で見た白黒のマレーバクのような、ずんぐりむっくりした姿であればまだ愛嬌もあっただろうに。 「ふ、ふん。でもいいの? 今の私は|こいつ《・・・》と一蓮托生。こいつの肉体が滅びるまでこの夢の中でずっと一緒なんだ! このまま私を消したらこいつだって……」 喚き散らす。しかし、リムは聞く耳持たずと言わんばかりにその脚を止めることなく、その瞳が鋭く私を睨みつける。 ……さっきの変身することへの怯えようといい、まさかこの姿では理性を失うとか、自身を制御できなくなるとか……? 「くっ。消されて、たまるかぁあ!!」 脚力強化をイメージ。獏に変身したリムと対峙したまま、私は後方へと高く飛び退く。間合いを取り出方を伺うべきだ。こんなのは私の知るリムじゃない。しかし、 「速っ!?」 さっきまでのリムの動きとは全く違う。たったの一歩。獏は一歩高く跳躍するだけで、私が脚力強化してまで稼いだ間合いを一瞬で眼前まで詰められてしまった。 このままでは着地して再回避するまでに、その巨体から逃れる術なく突進を食らってしまう!? 「くそっ!」 私は両手を突き出し、触れば致命傷レベルの激痛をともなう程の負の感情を込めた悪夢《ナイトメア》を、迫る獏の顔面に撃ち込む。 「ガァァァァアアアアアッ!!」 しかしその渾身の一撃も、込めた負の感情など関係ないとばかりに、いとも簡単にその大口で一飲みに嚥下されてしまった。 「うわぁあ!!」 そして次の瞬間、獏の鋭い牙が私の首筋を深く抉り込み、そのまま地面へ叩きつけられてしまった。 熱い、噛みつかれている首筋が熱い。 リムの舌が、肌に触れる口腔内が、皮膚を穿つ獏の牙が「リムに食べられた夢は消える」というリアリティを私に植え付ける。 しかし、リムはその体勢のまま噛み千切ることはせず、むしろリムの口を通して私の首筋から体内へと、何か更に熱いものが流れ込んでくる感触があった。 これは……魂源力《アツィルト》!? そうか、しまった!! 私はリムを振り落とそうと全力で体を揺さぶった。しかしリムの牙は深く首筋に食い込んだまま離れることはなく、むしろ暴れるなと言わんばかりに、太い前脚で押さえ込まれてしまう。 まさかのリムの機転に私は動揺した。理性を失うとか制御できなくなるとか勘違いも甚だしい。その姿になって尚、リムは十二分にしたたかだった。 流れ込むリムの魂源力が私の心を引っ掻き回す。私とこいつの意識は共に攪拌《かくはん》され、心の内側から徐々に消滅させられていく…… 『私は、コトが私を信じてくれてるって信じてる』 消えゆく意識の中、ふとリムの言葉が脳裏をよぎり、同時に私の中に抑え込んでいた私《・》が叫んだ。 「リぃムぅぅぅう!!」 ……私はリムを信じる。そう、私が間違ってたんだ。 リムの気持ちも考えないで、悪夢《ナイトメア》にそそのかされて好き勝手に当たり散らして……こんな酷いことをした私を、リムはそれでも必至になって助けようとしてくれてるんだ。 このまま|子持ち悪夢《こんなやつ》と一生を共にするくらいなら……、その結果がどんな運命であろうと、リムを信じよう。 リムの魂源力によって、私という存在が消え去さってしまうよりも先に、悪夢《ナイトメア》が消滅されることを。 私はリムを信じるんだ。 ふっと体の力が抜ける。視界は眩いほどに白い光に覆われ、音も全く聞こえず。全身の感覚が末端から薄らいでいく。噛まれていた首筋の感触だけが最後まで明確に残っていたが、それもいつしか消えうせていった。 全てを覆い尽くす光。完全な無。 そして次に私が覚えていた記憶は、一糸纏わぬ人の姿に戻った黒髪ストレートのリムが私に抱きつくように覆いかぶさり、いつも通りすーすーと安らかな寝息を立てている姿だった。 ◇七 私はゆっくりと瞼《まぶた》を開いた。 体を起こし、ボーっとした思考のまま辺りを見回す。うん、見慣れた自分の寮室だ。枕もとの目覚まし時計は四時半を指している。 んーっと両腕を上へと体を伸ばし、再びベッドへ倒れ込み大あくびを一つ。 ――何か今、すごくとんでもないことを忘れてるような気がする……? 「……トイレ」 誰に伝えるわけでもなくぼそりと呟き、ベッドを下りる。 一人部屋の寮室はたいして広くない。四畳半くらいだろうか、ベッドと机と小さなテーブルと、あと隅に簡単な棚が備え付けられてあり、エントランス側に小さなキッチンと狭いユニットバスがある程度。 まぁこの高等部女子寮においては、寮費のお手ごろさと一人部屋であることを加味すればこれで十分なのだが。 寝ぼけ眼《まなこ》でふらふらとトイレへと向かう途中。 ピンポンピンポンピンポーン!! けたたましくインターホンが鳴り響いた。 誰だこんな時間に近所迷惑な……。深夜は寮の正面玄関の鍵が掛けられているので、この訪問者が高等部生女子なのは間違いないだろうけど。 私は寝起きでボサボサになった髪を掻きながら「はーい」と呻くように返事した。 そして、鍵を開けドアノブに手をかけ、 「――コトぉぉお!!」 ドアを開けるなり、大声を上げて飛び込んできたリムに抱きつかれ、押し倒される形でエントランスに尻もちをついてしまった。 「よかったぁ……コトが起きてたよぉ……」 ちょっと、そんなに強く後頭部を抱きかかえられると、リムのいい匂いと柔らかい感触の先から感じられる、トクントクンという振動が右頬に響くのですが。 「リム? 何、どうしたの? 嫌な夢でも見たの?」 気持ちいいので姿勢をそのままにしばらくじっと……裸じゃなくていつもの淡い桃色パジャマ姿か。ってあれ? なんだこの記憶? 「ぐすっ……なんでもない、よ。でももうちょっと……ひくっ、こうさせてて……」 私の顔はリムの胸に挟み込まれるように強く押し付けられていたので、見上げて表情を確認することは出来なかったが、リムは泣いていた。 いったい何があった? 私が起きてて、よかった? 考えるが思い当たる節がまったくない。 エントランスに二人で座り込んだまま、ぐすぐすと嗚咽《おえつ》を漏らすリムとなにがなんだかもうさっぱりわけがわからない私。 そしてリムが泣き疲れて寝落ちるまで、私たちは結局そのまま抱き合っていた。 ◇終章 「それじゃ今日はここまでー。小テスト半分取れなかった子にはいつもの嬉しいプレゼントを用意するので、楽しみに放課後のHRを待つように。では号令ー」 担任のせんせーさんの言葉に教室中がクレームの悲鳴で溢れた。なんてことはない、プレゼントとは宿題の追加課題のことである。 クラス委員がやる気がない起立、礼、着席をこなし、教室内が昼休みの喧騒に包まれた。 「リム起きて、もうお昼だよ。一緒に学食いこう」 昨日と同じく、私は登校からずっと机に突っ伏したまま居眠りし続けていた彼女を揺り起こす。この子、また小テスト白紙のまま提出――もとい、回収されたんだろうな……。 「うぅ……ん。あと五分……」 もぞもぞとその長身を縮こませながら彼女が小さく呻くと、近くにいた茶髪ギャル系な鈴木さんと田中さんがそれを聞き「くすくす」と小さく笑みを零した。 「姫音さんって、いつもどんな夢見てるのかな」 「現実でコレだもんねぇ。夢の中でくらい強い異能者になってラルヴァと戦ってたりするんじゃない?」 「そうであればいいのかもね。それなら少なくとも『役立たず』ではないわけなんだし」 「うんうん、陰で人知れず戦うオンナノコとかカッコいいかもぉ」 「ほんとにね。頑張れ、眠り姫」 昨日の悪態は何処へやら。二人はリムの頭を軽く撫でると、小さく手を振り別の話題で談笑しながら私たちから離れていった。 私はその二人の後ろ姿を首をかしげながら見つめていると、 「――まぁ、もしかするとあの二人が言うこともあながち間違いじゃないのかもしれないな」 「え?」 声に振り返る。 クラスメイトの未見君が傍らに立ち、私と同じく教室を出ていく二人を見つめていた。 「それって、リムの異能が本当は……ってこと?」 実際、今まで未見君と話をしたことは数えるほども無かった。彼は何か訳有りといった表情で、リムへと視線を落とすと、 「可能性としてね、俺もたまーに、変な夢を見ることがあるもんでさ……あ、いや。別に姫音がその夢に出てきたってわけじゃないんだけど」 「ふーん……」 夢……か。ふと何かを思い出しそうな感じがしたが、結局もやもやとしただけだった。 「相羽さーん、姫音さん起きた?」 「早く学食行こーぜ……って、あれ? 未見と相羽ってなかなかレアなカップリングだな」 再び別方向からかけられた声に振り返る。 昨日は出撃命令で断っちゃったからと、お昼を一緒に食べようと声をかけてくれた姫川さんたち三人組の姿が。 「「カップリング言うな」」 「息もぴったり揃っちゃって、まぁ」 「「だからそんなんじゃ……」」 再び口を揃えて同じセリフが出てしまい、互いに顔を見合せた。 「それにしても、これだけ周りに人が集まっていても、相変わらず姫音さんって眠り続けることできるんですね」 「だなぁ。どうすりゃサクっと起こせるんだろうな」 「あ。それならほら、やっぱり……眠り姫を起こすには王子様のキス……とか?」 照れ照れと語る姫川さんを相手に、男子三人が明らかに絶句しているのが見て取れた。 「イグザクトリィっす」 更に後ろから、長髪の毛先を赤いリボンで結んだ少女が、両手を腰に当てその大きな胸を張り、二人の間を割って入ってきた。 「ね、そうだよね。神楽さんもそう思うよね?」 「当然っす。鬱蒼と繁茂した茨の古城を突き進み、麗しきお姫様を百年の呪いから救い出す王子がいてこその眠り姫、茨姫、眠れる森の美女っす。――というわけで……」 神楽さんが、氷浦君と伝馬君、未見君を順に見定めると、何かを思い出したかのようにぽんと手を打ち、 「……氷浦王子、さぁこの眠り姫の唇へと熱い口づけを、さぁずずいっと」 手のひらで「どうぞどうぞ」と促す。 「あれ!? 今こいつと俺らのこと見比べなかったか!?」 「外野は引っ込んでろっす」 「うわひでぇ!!」 伝馬君の抗議を鼻で笑い飛ばす。陰で呼ばれる外道巫女の二つ名は伊達じゃないな……。 そんな二人を尻目に、氷浦君が口を挿む。 「そういう基準なら僕なんかよりも適任がいるだろうに……なぁ、トラ?」 「んぁー、何?」 近くの席で、深々と頭を下げる錦君に左手をひらひらと見せながらノートを手渡す中島君へと氷浦君は声をかけた。……なるほど、錦君はまた小テスト赤点なのかな。 「あー、確かに。中島君と姫音さんなら美男美女セットっすね」 顎に手をあてニヤリとする神楽さん。 「気に入ったっす。こっちに来て眠り姫にキスしていいっす」 「……何かよくわからないんだけど、いいの?」 中島君がリムを中心にした輪に加わり、私に向って確認を求めてきた。……って何故私に? 「でも、私にもその決定権はないと思うんだけど」 きょろきょろと皆の顔を見回しながら答える。何故か頬が熱くなっているのが自分でわかった。っていうか、何故皆揃って何かを期待するような目で私を見ますか。 ……陰で氷浦君がこっそりと、矛先が離れたことへの安堵のため息をついていた。 そこへ、中島君のノートを鞄へとしまった錦君もまた、私たちのもとへ歩み寄り、 「なー、何の話? 俺は? 俺は?」 「おい待てドラ。お前じゃねぇ座ってろ」 「ちょっと、キョウちゃん?」 「んだよ、哀。裾引っ張んな」 「さぁ中島君、周りは無視して遠慮せずズキューンとやってのけるっす」 「未見ー、ちょっと助けてくれー」 「えー、じゃあここは俺が……」 「ふっふっふ。埒が明かないといった様子ね。では不肖この加賀杜紫穏さんが眠り姫を起こしてしんぜようぞ」 私たちのやり取りを覗いていたのか、加賀杜さんが未見君の言葉を遮り、にやにやしながらリムに近づいてくると、 「リムっちー。ほれほれほれ」 どこから持ち出したのか、猫じゃらしでリムの鼻先をくすぐりだした。 ――あれ? 加賀杜さんが猫じゃらしなんか使ったら……? 「へ……へ……っくしっ」 可愛らしいクシャミを一発。リムは何事かと鼻を擦りながら辺りを見回した。 「んー、あれ? みんな集まってどうしたの?」 確かに、目が覚めたらクラスメイトが十人近くも自分の周りに集まっていれば不思議に思うだろう。 「ほらリム、もうお昼だよ。一緒にご飯に行こう」 私は腕時計をリムに見せた。そろそろ出発しないと席が取れない可能性のある時間へとさしかかっている。 「さて、では学食へ向うとしましょう」 「腹減ったー。トラとドラも学食だろ? 未見も神楽も加賀杜もほら、一緒に飯行こーぜ」 「え? あぁ」 「いいっすよー」 「アタシも? おっけーおっけー」 「ドラ、今日のノートの分を早速おごってもらおうか」 「……A定な」 「相羽さんも姫音さんも、さぁ行きましょう」 今日も相変わらずいつもの「鋼のB組」メンバーだ。 私はリムの手を取り立ち上がらせると、皆とともに学食へと向かった。 高等部一年B組、窓から二列目、前から三番目の住人は、その名をもじって「眠り姫」と呼ばれていた。 彼女は名を|姫音《ひめね》|離夢《りむ》という。 本人から詳しく聞いたわけではないが、私が知る限りリムは『眠り』の異能者である。 【眠り姫の見る夢 -Koto-】 終 トップに戻る 作品投稿場所に戻る