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一、市川清一の話 きみ、ねむいかい? エ、眠れない? ぼくも眠れないのだ。話をしようか。いま妙な話がしたくなった。 今夜、ぼくらは平和論をやったね。むろんそれは正しいことだ。だれも異存はない。きまりきったことだ。ところがね、ぼくは生涯《しようがい》の最上の生きがいを感じたのは、戦争のさいちゅうだった。いや、みんながいっているあの意味とはちがうんだ。国を賭《と》して戦っている生きがいという、あれとはちがうんだ。もっと不健全な、反社会的な生きがいなんだよ。 それは戦争の末期、いまにも国が滅びそうになっていたときだ。空襲が激しくなって、東京が焼け野原になる直前の、あの阿鼻叫喚《あびぎようかん》のさいちゅうなんだ。 きみだから話すんだよ。戦争中にこんなことをいったら、殺されただろうし、今だって多くの人にヒンシュクされるにきまっている。 人間というものは複雑に造られている。生まれながらにして反社会的な性質を持っているんだね。それはタブーになっている。人間にはタブーというものが必要なんだ。それが必要だということは、つまり、人間に本来、反社会の性質がある証拠だよ。犯罪本能と呼ばれているものもそれなんだね。 火事は一つの悪にちがいない。だが、火事は美しいね。「江戸の華」というあれだよ。雄大な炎というものは美的感情に訴える。ネロ皇帝が市街に火を放って狂喜したあの心理が、大なり小なりだれにもあるんだね。ふろをたいていてね、まきが盛んに燃えあがると、実利を離れた美的快感がある。まきでさえそうだから、一軒の家が燃えたてば美しいにきまっている。一つの市街全体が燃えれば、もっと美しいだろう。」国土全体が灰塵《かいじん》に帰するほどの大火炎ともなれば、さらにさらに美しいだろう。ここではもう死と壊滅につながる超絶的な美しさだ。ぼくはうそをいっているのではない。こういう感じ方は、だれの心にもあることだよ。 戦争末期、ぼくは会社へ出たり出なかったりの日がつづいた。毎日空襲があった。乗り物もなくなって、会社から非常召集をされると、歩いていかなければならなかった。ひっきりなしにゾーッとするサイレンが鳴り響き、夜なかに飛びおきて、ゲートルを巻き、防空ずきんをかぶって防空壕《ぽうくうこう》へ駆けこむことがつづいた。 ぼくはむろん戦争をのろっていた。しかし、戦争の驚異とでもいうようなものに、なにかしらひきつけられていなかったとはいえない。サイレンが鳴り響いたり、ラジオがわめいたり、号外の鈴が町を飛んだりする物情騒然の中に、異常に人をひきつけるものがあった。異常に心を昂揚するものがあった。 最もぼくをワクワクさせたのは、新しい武器の驚異だった。敵の武器だから、いまいましくはあったけれど、やはり驚異に相違なかった。B29というあの巨大な戦闘機がそれを代表していた,そのころはまだ原爆というものを知らなかった。 東京が焼け野原にならない前、その前奏曲のように、あの銀色の巨大なやつが編隊を組んで、非常な高さをゆうゆうと飛んでぎた。そのたびに、飛行機製作工場などが爆弾でやられていたのだが、ぼくらは地震のような地響きを感じるばかりで、目に見ることはできなかった。見るのはただ、あの高い空の銀翼ばかりだった。 B29が飛行雲をわかしながら、まっさおに晴れわたったはるかの空を、まるで澄んだ池の中のメダカのようにかわいらしく飛んでいく姿は、敵ながら美しかった。見る目にはかわいらしくても、高度を考えれば、その巨大さが想像された。今、旅客機に乗って海の上を飛んでいると、大汽船がやはりメダカのように小さく見えるね。あれを空へ移したようなかわいらしさだった。 向こうのほうに、豆粒のような編隊が現われる。各所の高射砲陣地から、豆鉄砲のような連続音口がきこえはじめる。敵のすがたも、味方の音も、しばいの遠見の敦盛《あつもり》のようにかわいらしかった。 B29の進路をかこんで、高射砲の黒い煙の玉が、底知れぬ青空の中に、あばたみたいにちらばった。敵機のあたりに、星のようにチカッチカッと光るものがあった。まるでダイヤモンドのつぶを、銀色の飛行機めがけて投げつけるように見えた。それは目にも見えない小さな味方の戦闘機だった。かれらは体当たりで巨大なB29にぶっつかっていった。その小さな味方機の銀翼が、太陽の光を受けて、チカッチカッとダイヤのように光っていたのだ。 きみも思い出せるだろう。じつに美しかったね。戦争、被害という現実を、ふと忘れた瞬問には、あれは大空のページェントの美しい前奏曲だった。 ぼくは会社の屋上から、双眼鏡で、大空の演技をながめたものだ。双眼鏡の丸い視野の中を、銀色の整然とした編隊が近づいてくる。頭の上にきたときには、双眼鏡にはかなり大きく映った搭乗《とうじよう》員の白い顔が、豆人形のように見わけられさえした。太陽に照りはえる銀翼はやっぱり美しかった。それにぶっつかっていく味方機も見えたが、大汽船のそばの一隻のボートのように小さかった。 その晩ぼくは、会社の帰り道を、テクテク歩いていた。電車がある区間しか動いていないので一あとは歩かなければならなかった。八時ごろだった。空には美しく星がまたたいていた。灯火管制で町はまっくらだった。ぼくたちはみな懐中電灯をポケットに用意していた。明るいのではいけないし、それに電池がすぐだめになるので、あのころは自動豆電灯というものが市販されていた。思い出すだろう。片手にはいるほどの金属性のやつで、槓桿《こうかん》を握ったり放したりすると、ジャージャーと音をたてて発電器が回転して、豆電灯がつくあれね。足もとがあぶなくなると、ぼくはあれを出してジャージャーいわせた。にぶい光だけれど、電池がいらないので、実に便利だった。 まっくらな大通りを、黒い影法師たちが、黙々として歩いている。空襲警報が鳴らないうちに早く帰りつきたいと、みなセカセカと歩いている。きょうだけはサイレンが鳴らずにすむかもしれない、というのが、われわれの共通したそらだのみだった。 ぼくはそのとき伝通院のそばを歩いていた。ギョッとする音が鳴りはじめた。近くのも遠くのも、いくつものサイレンが、不吉な合奏をして、悲愴《ひそう》に鳴りはじめた。いくら慣れていても、やっぱりギョッとするんだね。黒い影法師どもがバラバラと走りだした。ぼくは走るのが苦手なので、足を早めて大またに歩いていたが、その前を、警防団員の黒い影が、「待避、待避」と叫びながら、駆けていった。 どこからか、いっぱいにひらいたラジオがきこえてきた。家庭のラジオも、できるだけの音量を出しておくのが常識になっていた。同じことを幾度もくりかえしている。B29の大編隊が伊豆《いず》半島の上空から、東京方面に近づいているというのだ。またたくまにやって来るだろう。 ぼくも早くうちに帰ろうと思って、大塚駅《おおつかえき》のほうへ急いだが、大塚に着かない前に、もう遠くの高射砲がきこえだした。それが、だんだん近くの高射砲に移動してくる。町は真のやみだった。警戒管制から非常管制に移ったからだ。まだ九時にならないのに、町は真夜中のようにシーンと静まり返っていた。ぼくのほかには、ひとりの人影も見えなかった。 ぼくはときどきたちどまって、空を見上げた。むろんこわかったよ。しかし、もう一つの心では、美しいなあと感嘆していた。 高射砲弾が、シューッ、シューッと、光の点線を描いて高い高い空へ飛んでいく。そして、パラパラッと花火のように美しく炸裂《さくれつ》する。そのあたりに敵機の編隊が飛んでいるのだろう。そこへは、立っているぼくから三十度ぐらいの角度があった。まだ遠方だ。 そこの上空に、非常に強い光のアーク灯のような玉が、フワフワと、いくつも浮遊していた。敵の照明弾だ。両国の花火にあれとそっくりのがあった。やみ夜の空の光りクラゲだ。 高射砲の音と光が、だんだん激しくなってぎた。一方の空だけではなかった。反対側の空にもそれが炸裂《さくれつ》した。敵の編隊は二つにわかれて、東京をはさみ討ちにしていたのだ。そして、次々と位置を変えながら、東京のまわりに、爆弾と焼夷弾《しよういだん》を投下していたのだ。それがそのころの敵の戦法だった。まず周囲にグルッと火の垣《かき》を作って、逃げ出せないようにしておいて、最後に中心地帯を猛爆するという、袋のネズミ戦法なのだ。 しばらくすると、遠くの空がポーッと明るくなった。そのときぼくは町の警防団の屯所《とんしよ》にいた。鉄かぶとをかぶって、鳶口《とびぐち》を持った人たちが、土嚢《どのう》の中にしゃがんで、空を見上げていた。ぼくもそこへしゃがませてもらった。 「横浜だ。あの明るいのは横浜が焼けているんだ。今ラジオがいっていた」 ひとりの警防団員が走ってきて報告した。 「アッ、あっちの空も明るくなったぞ。どこだろう。渋谷へんじゃないか」 そういっているうちに、右にも左にも、ボーッと明るい空がふえてきた。「千住だろう」「板橋だろう」といっているあいだに、空に舞いあがる火の粉が見え、炎さえ見えはじめた。東京の四周が平時の銀座の空のように、一面にほの明るくなった。 高射砲はもう頭の真上で炸裂していた。敵機の銀翼が、地上の火炎に照らされて、かすかにながめられた。B29の機体が、いつもよりはずっと大きく見えた。低空を飛んでいるのだ。 四周の空に、無数の光りクラゲの照明弾が浮遊していた。それがありとしもなき速度で落下してくるありさまは、じつに美しかった。その光りクラゲの群れに向かって、地上からは、赤い火の粉がうずをまいて立ちのぼっていた。青白い飛び玉模様に、赤い梨地《なしじ》のすそ模様、それを縫って、高射砲弾の金糸銀糸のすすきが交錯しているのだ。 「アッ、味方機だ。味方機が突っこんだ」 大空にバッと火を吹いた。そして、巨大な敵機が炎の血だるまになって、落下していった。落下地点とおぼしきあたりから、爆発のような火炎が舞いあがった。 「やった、やった。これで三機めだぞッ」 警防団の人々がワーッと喚声《かんせい》をあげた。万歳を叫ぶものもあった。 「きみ、こんなとこにいちゃあぶない。早く防空壕にはいってくださいッ」 ぼくは警防団員に肩をこづかれた。しかたがないので、ヨロヨロと歩きだした。 大空の光の饗宴《ぎょうえん》と、その騒音は極点に達していた。そのころから、地上も騒がしくなった。火の手がだんだん近づいてくるので、もう防空壕にも居たたまらなくなった人々が、警防団員に指導されて、どこかの広場へ集団待避をはじめたのだ。大通りには、家財を積んだ荷車、リヤカーのたぐいが混雑しはじめた。 ぼくもその群衆にまじって駆けだした。うちには家内がひとりでるすをしていた。彼女もきっと逃げ出しているだろう。気がかりだが、どうすることもできない。 いたるところに破裂音がとどろいた。それが地上の火炎のうなり、群衆の叫び声とまじり合って、耳も聾《ろう》するほどの騒音だった。その騒音の中に、ザーッと、夕だちが屋根をたたくような異様な音がきこえてきた。ぼくは夢中に駆けだした。それが焼夷弾の束の落下する音だということ、を聞き知っていたからだ。しかも、頭の真上から降ってくるように思われたからだ。 ワーッというわめき声に、ヒョイとふりむくと、大通りは一面の火の海だった。八角筒の小型焼夷弾が、束になって落下して、地上に散乱していた。ぼくはあやうく、それに打たれるのをまぬがれたのだ。火の海の中にひとりの中年婦人が倒れて、もがいていた。勇敢な警防団員が火の海を渡って、それを助けるために駆けつけていた。 ぼくは二度と同じ場所に落ちることはないだろうと思ったので、いちおう安心して、火の海に見とれていた。大通り一面が火におおわれている光景は、そんなさなかでも、やっぱり美しかった。驚くべき美観だった。 あの八角筒焼夷弾の中には、油をひたした布きれのようなものがはいっていて、落下の途中で、それが筒から飛び出し、ついている羽根のようなもので空中をゆっくり落ちてくる。筒だけは矢のように落下するのだが、筒の中にも油が残っているので、地面にぶつかると、その油が散乱して、一面の火の海となるのだ。だから、たいした持続力はない。木造家屋ならそれで燃えだすけれど、鋪装道路では燃えつくものがないから、だんだん炎が小さくなって、じきに消えてしまう。 ぼくはそれがホタル火のように小さくなるまで、じっとながめていた。最後は、広い地面に無数のホタルがまたたいて、やがて消えていくのだが、その経過の全体が、仕掛け花火みたいに美しかった。 空からは、八角筒を飛び出した無数のキツネ火がゆっくり降下していた。たしか「十種香」の道行きで、舞台の背景一面にキッネ火のろうそくをつける演出があったと思うが、あの背景を黒ビロードの大空にして、何百倍に拡大したような感じだったね。どんな花火だって、あの美しさの足もとにも及ぶものじゃない。ぼくはほんとうに見とれた。それが火事のもとだということも忘れて、ポカンと口をあいて、空に見入っていた。 もう、すぐまちかに火の手があがっていた。それがたちまち飛び火して、火の手の数がふえていった。町は夕焼けのように明るく、はせちがう人々の顔が、まっかにいうどられていた。 刻々に、あたりは焦熱地獄の様相を帯びてきた。東京じゅうが巨大な炎に包まれ、黒雲のような煙が地上の炎に赤く縁どられて、恐ろしい速度で空を流れ、ヒューッと音をたてて、あらしのような風が吹きつけてきた。向こうには黒と赤との煙のうずが、たつまきとなって中天にまき上がり、屋根がわらは飛び、無数のトタン板が、銀紙のように空に舞い狂った。 その中を、編隊をといたB29が縦横に飛びちがった。味方の高射砲も、今は鳴りをひそめてしまったので、敵は極度の低空まで舞いさがって、市民を威嚇し、ねらいをさだめて焼夷弾と小型爆弾を投下した。 ぼくは巨大なB29が目を圧して迫ってくるのを見た。銀色の機体は、地上の火炎を受けて、酔っぱらいの巨人の顔のように、まっかに染まっていた。 ぼくはあの頭の真上に迫る巨大な敵機から、なぜかてんぐの面を連想した。まっかなてんぐの面が、空いっぱいの大きさで、金色の目玉でぼくをにらみつけながら、グーッと急降下してくる。悪夢の中のように、それが次から次と、まっかな顔で降下してくるのだ。 火災による暴風と、たつまきと、黒けむりの中を、超低空に乱舞する赤づら巨大機は、この世の終わりの恐ろしさでもあったが、一方では言語に絶する美観でもあった。凄絶《そうぜつ》だった。荘厳でさえあった。 もう町に立っていることはできなかった。かわら、トタン板、火を吹きながら飛びちがう丸太や板きれ、そのほかあらゆる破片が、まっかな空から降ってきた。ハッと思うまに、一枚のトタン板がぼくの肩にまきついてあごに大きな切り傷を作った。血がドクドクと流れた。その中へ、またしてもザーッ、ザーッと、焼夷弾の束が降ってくる。ぼくはめがねをはねとばされてしまったが、捜すことなど思いも及ばなかった。 どこかへ避難するほかはなかった。ぼくは暴風帯をつき抜けるために、それを横断して走った。ぼくはそのとき、大塚辻町《おおつかつじまち》の交差点から、寺のある横町を北へ北へと走っていた。走っている両側の家並みも、もう燃えはじめていた。突き当たりに大きな屋敷があった。門があけはなしてあったので、そこへ飛びこんでいった。 まるで公園のように広い庭だった。立ち木も多かった。颶風《ひようふう》に揺れさわぎ、火の粉の降りかかる立ち木のあいだをくぐって、奥のほうへ駆けこんでいった。あとでわかったのだが、それは杉本《すぎもと》という有名な実業家のうちだった。 その屋敷は高い石垣《いしがき》の崖《がけ》っぷちにあった。辻町のほうから来ると、そこが行きどまりで、目の下はるかに巣鴨《すがも》から氷川町《ひかわちよう》にかけての大通りがあった。東京にはほうぼうにこういう高台があって、断層のようになっているが、そこも断層の一つだった。ぼくはその町がはじめてだったので、大空襲にょって起こった地上の異変ではないかと、びっくりしたほどだ。 その断層は屋敷のいちばん奥になっているのだが、断層の少し手前に、コンクリートで造った大きな防空壕の口がひらいていた。あとで、その屋敷の住人は全部疎開してしまって、大きな邸宅がまったくのあき家になっていたことがわかったが、そのときは、防空壕の中に家人がいるのだと思い、出会ったらことわりをいうつもりで、はいっていった。 床も壁も天井もコンクリートでかためたりっぱな防空壕だった。ぼくは例の自動豆電灯をジャージャーいわせながら、おずおずはいっていったが、入り口からふた曲がりして、中心部にはいってみても、廃墟《はいきよ》のように人けがなかった。 中心部は二坪ほどの長方形のへやになっていて、両側に板の長い腰かけが取りつけてあった。ぼくはちょっとそこへ掛けてみたが、すぐに立ち上がった。どうもおちつかなかった。空と地上の騒音は、ここまでもきこえてきた。ドカーン、ドカーンという爆音が、地上にいたときよりも激しく耳につき、防空壕そのものがユラユラゆれていた。 ときどき、いなずまのように、まっかな閃光《せんこう》が屈曲した壕内にまで届いた。その光で奥のほうが見通せたとき、板の腰かけの向こうのすみにうずくまっている人間を発見した。女のようだった。 豆電灯をジャージャーいわせて、その淡い光をさしつけながら声をかけると、女はスッと立って、こちらへ近づいてきた。 古い紺がすりのモンペに、紺がすりの防空ずきんをかぶっていた。そのずきんの中の顔を、豆電灯で照らして、ぼくはびっくりした。あまり美しかったからだ。どんなふうに美しかったかと問われても、答えられない。いつもぼくの意中にあった美しさだというほかはない。 「ここのかたですか」ぼくが尋ねると、「いいえ、通りがかりのものです」と答えた。「ここは広い庭だから焼けませんよ。朝まで、ここにじっとしているほうがいいでしょう」といって、腰かけるようにすすめた。 それから何を話したか覚えていない。だまりがちに、ならんで腰かけていた。お互いに名も名のらなければ、住所もたずねなかった。 ゴーッというあらしの音とも炎の音ともつかぬ騒音が、そこまできこえてきた。そのあいだにドカーン、ドカーンという爆音と地響き。まっかないなずまがパッパッとひらめき、焦げくさい煙が吹きこんできた。 ぼくは一度、防空壕を出て、あたりをながめたが、むこうのおもやも炎に包まれ、立ち木にまで燃え移って、パチパチはぜる音がしていた。その辺は昼のように明るく、ほおが熱いほどだった。見あげると、空は一面のどす黒い血の色で、ゴーゴーと颱風《ひようふう》が吹きすさんでいた。広い庭には死に絶えたように人影がなかった。門のところまで走っていったが、その前の通りにも、まったく人間というものがいなかった。ただ炎と煙とがうずまいていた。壕に帰るほかはなかった。 帰ってみると、まっくらな中に、女はもとのままの姿勢でじっとしていた。 「ああ、のどがかわいた。水があるといいんだが」 ぼくがそういうと、女は「ここにあります」といって、待ちかまえていたように、水筒を肩からはずして、手さぐりでぼくに渡してくれた。その女は用心ぶかく、水筒をさげて逃げていたのだ。ぼくはそれを何杯も飲んだ。女に返すと、女も飲んでいるようだった。 「もう、だめでしょうか」 女が心細くつぶやいた。 「だいじょうぶ。ここにじっとしてれば、安全ですよ」 ぼくはそのとき、激しい情欲を感じた。この世の終わりのような憂慮と擾乱《じようらん》の中で、情欲どころではないというかもしれないが、事実はその逆なんだ。ぼくの知っているある青年は、空襲のたびごとに激しい情欲を催したといっている。そして、オナニーにふけったと告白している。 だが、ぼくの場合は単なる情欲じゃない。ひと目ぼれの激しい恋愛だ。その女の美しさはたとえるものもなかった。神々《こうごう》しくさえあった。一生に一度という非常の場合に、ぼくがいつも夢見ていたぼくのジョコンダに出会ったのだ。そのミスティックな邂逅《かいこう》がぼくを気ちがいにした。ぼくはやみをまさぐって、女の手を握った。相手は拒まなかった。遠慮がちに握り返しさえした。 東京全市がひとかたまりの巨大な火炎になって燃え上がり、空は煙の黒雲と火の粉の金梨地《きんなしじ》におおわれ、そこを颶風《ひようふう》が吹きまくり、地上のあらゆる破片はたつまきとなって舞い上がり、まっかな巨人戦闘機は乱舞し、醤、焼夷弾は驪翩と降りそそぎ・天地は疆鑼たる大音響に鳴りはためいているとき、一瞬ののちをも知らぬ、いのちをかけての情欲がどんなものだか、きみにわかるか。ぼくは生涯を通じて、あれほどの歓喜を、生命を、生きがいを感じたことはない。それは過去にもなく、未来にもありえない、ただ一度のものだった。 天地は狂乱していた。国はいま滅びようとしていた。ぼくたちふたりも狂っていた。ぼくたちは身についたあらゆるものをかなぐり捨てて、この世にただふたりの人間として、かきいだき、もだえ、狂い、泣き、わめいた。愛欲の極致に酔いしれた。 ぼくは眠ったのだろうか。いや、そんなはずはない。眠りはしなかった。しかし、いつのまにか夜が明けていた。壕の中に薄明が漂い、黄色い煙が充満していた。そして、女の姿はどこにもなかった。彼女の身につけたものも、何ひと品残っていなかった。 だが、夢ではなかった。夢であるはずがない。 ぼくはヨロヨロと壕のぞとへ出た。人家はみな焼けつぶれてしまって、一面の焼け木杭《ぼつくい》と煙と火の海だった。まるで焼けた鉄板の上でも歩くような熱さの中を、ぼくは炎と煙をかわし、あき地を拾うようにして飛び歩き、長い道をやっと自分の家にたどりついた。しあわせにもぼくの家は焼け残り、家内も無事だった。 町という町には、無一物になったこじきのような姿の男女が充満し、痴呆《ちほう》のように、あてどもなくさまよっていた。 ぼくの家にも、焼け出されの知人が三組みもはいってきた。それから食料の買い出しに狂奔する日がつづいた。 そのなかでも、ぼくはあのひと夜のなさけを忘れかねて、辻町の杉本邸の焼け跡の付近を毎日のようにさまよい歩き、その辺を掘り返して貴重品を捜しているもとの住人たちにたずねまわった。空襲の夜、杉本家のコンクリートの防空壕にひとりの若い女がはいっていたが、その女を見かけた人はないかと、執念ぶかく聞きまわった。 こまかい経路は省略するが、非常な苦労をして、次から次と人のうわさのあとを追って、尋ね尋ねた末、やっとひとりの老婆を捜し当てた。地袋の奥の千早町の知人宅にやっかいになっている、身よりのない五十いくつの宮園とみという老婆だった。 ぼくはこのとみばあさんをたずねていって、根掘り葉掘り聞きただした。老婆は杉本邸のそばのある会社員の家に雇われていたが、あの空襲の夜、家人は皆どこかへ避難してしまって、ひとり取り残されたので、杉本さんの防空壕のことを思い出し、ひとりでその中に隠れていたのだという。 老婆は朝までそこにいたというのに、不思議にもぼくのことも、若い女のことも知らなかった。ひょっとしたら壕がちがうのではないかと、詳しく聞きただしたが、あの辺に杉本という家はほかになく、コンクリート壕の位置や構造もぼくらのはいったものとまったく同じだった。あの壕には両方に出入り口があった。それが折れ曲がって中心のへやへはいるようになっていた。とみばあさんは壕の中心部まではいらないで、ぼくの出入りしたのとは反対側の出入り口の、中心部の向こうの曲がりかどにでも、うずくまっていたのだろう。それを尋ねても、ばあさんはあいまいにしか答えられなかった。気も転倒していた際のことだから、はっきりした記憶がないのも無理はなかった。 そういうわけで、けっきょく、女のことはわからずじまいだった。あれからもう十年になる。その後も、ぼくはできるかぎりその女を捜し出そうとつとめてきたが、どうしても手がかりがつかめないのだ。あの美しい女は、神隠しにあったように、この地上から姿を消してしまったのだ。その神秘が、ひと夜のなさけを、いっそう尊いものにした。生涯をひと夜にこめた愛欲だった。 顔もからだも、あれほど美しい女がほかにあろうとは思えない。ぼくはそのひと夜を境にして、あらゆる女に興味を失ってしまった。あの物狂わしいひと夜の激情で、ぼくの愛欲は使いはたされてしまった。 ああ、思い出しても、からだが震えだすようだ。空と地上の業火に包まれた洞窟《どうくつ》のくらやみの中、そのくらやみにほのぼのと浮き上がった美しい顔、美しいからだ、狂熱の抱擁、千夜を一夜の愛欲……ぼくはね、「美しさ身の毛もよだつ五彩のオーロラの夢」という変な文句を、いつも心の中でつぶやいている。それだよ。あの空襲の炎と死の饗宴《きようえん》は、極地の大空いっぱいにたれ幕のようにさがってくる五彩のオーロラの恐ろしさ、美しさだった。その下でのひと夜のなさけは、やっぱり、五彩のオーロラのほかのものではなかった。 二、宮園とみの話 こんなに酔っぱらったのは、ほんとうに久しぶりですよ。だんなさまも酔狂なおかたですわね。 だんなさまのエロ話を伺ったので、わたしも思い出しましたよ。しわくちゃばあさんのエロ話でもお聞きになりたいの? ずいぶんかわっていらっしゃるわね。オホホホホホ。 さっきもいったとおり、わたしは広い世間にまったくのひとりぼっち、身よりたよりもない哀れなばばあですが、戦争後、こんな山奥の温泉へ流れこんでしまって、こちらのご主人が親切にしてくださるし、朋輩《ほうばい》の女中さんたちもみんないい人だし、まあここを死に場所にきめておりますの。でも、せんにはずっと東京に住んでいたのでございますよ。あの恐ろしい空襲にもあいました。だんなさま、その空襲のときですよ。じつに妙なことがありましたの。 あれは何年の何月でしたかしら。上野、浅草のほうがやられて、隅田川《すみだがわ》が死骸《しがい》でいっぱいになったあの空襲のすぐあとで、新宿から池袋、巣鴨、小石川にかけて、焼け野が原になった空襲のときですよ。 そのころ、わたしは三芳《みよし》さんという会社におつとめのかたのうちに、雇わればあさんでいたのですが、そのおうちが丸焼けになり、ご主人たちを見失ってしまって、わたしは近くの大きなお屋敷の防空壕《ぼうくうこう》に、たったひとりで隠れておりました。 大塚の辻町といって、市電の終点の車庫に近いところでした。そのお屋敷は辻町から三、四町もはいったところで、高い石垣《いしがき》の上にあったのですが、お屋敷のかたはみんな疎開してしまって、あき家になっておりました。 コンクリートでできたりっぱな防空壕でしたよ。わたしはそのまっくらな中に、ひとりぼっちで震えていたのです。 すると、そこへ、ひとりの男が懐中電灯を照らしながら、はいってきました。むこうが懐中電灯を持っているのですから、顔は見えませんが、どうやら三十そこそこの若いお人らしく思われました。 しばらくは、わたしのいるのも気づかない様子で、壕の中の板の腰かけにかけて、じっとしておりましたが、そのうちに、すみのほうにわたしがいるのを気づくと、懐中電灯を照らして、もっとこっちへ来いというのです。 わたしはひとりぼっちで、こわくてしかたがなかったおりですから、喜んでその人の隣に腰かけました。そして、ちょうど水筒を持っておりましたので、それを男に飲ませてやったりして、それからひとことふたこと話しているうちに、なんとあなた、その人がわたしの手をグッと握ったじゃありませんか。 勘ちがいをしたらしいのですよ。わたしを若い女とでも思ったらしいのですよ。小さな懐中電灯ですから、わたしの顔もよくは見えなかったのでございましょう。それに、そとにはボウボウと火が燃えている。おそろしい風が吹きまくっている。そのさなかですから、気も転倒していたことでしょうしね。なにかいろっぽいことをはじめるのですよ。オホホホ……いえね、だんなさまが聞きじょうずでいらっしゃるものだから、ついこんなお話をしてしまって。でも、これは今はじめてお話ししますのよ。なんぼなんでも、気恥ずかしくって、人さまにお話しできるようなことじゃありませんもの。 エ、それからどうしたとおっしゃるの? わたしのほうでも、空襲で気が転倒していたのですわね。こっちも若い女になったつもりで、オホホホ……いろいろ、あれしましたのよ。今から思えば、バカバカしい話ですわ。先方の言いなりしだいに、着物もなにも脱いでしまいましてね。 いやでございますわ。いくら酔っても、それから先は、オホホホ……で、まあ、いろいろあったあとで、男はそこへ倒れてしまって、眠ったようにじっとしていますので、わたしは気恥ずかしくなって、いそいで着物を着ると、夜の明けないうちに、防空壕から逃げ出してしまいました。お互いに顔も知らなければ、名まえも名のらずじまいでしたわ。 エ、それっきりじゃつまらないとおっしゃいますの? ところが、これには後日談があるのでございますのよ。防空壕の中では、相手の顔もわからず、ただ若い男と察していただけですが、それから半月もしたころ、わたしは池袋の奥の千早町の知り合いのところに、台所のてつだいをしながら、やっかいになっておりましたが、そこへ、どこをどう捜したのか、そのときの男がたずねてきたじゃありませんか。 でも、その人がそうだとは、わたしは知らなかったのです。話しているうちに、だんだんわかってきたのです。あのとき、防空壕の中に若い女がいた。おまえさんが、やっぱり同じ夜、あの防空壕にはいっていたということを、いろいろたずねまわって聞き出したので、わざわざやって来たのだ。その若い女を見なかったか。もしやおまえさんの知っている人じゃなかったかと、それはもう、いっしょうけんめいに尋ねるのです。 その人は市川清一と名のりました。服装はあのころのことですから、軍人みたいなカーキ服でしたが、ちゃんとした会社員ふうのりっぱな人でした。三十を越したぐらいの年配で、近眼鏡をかけておりましたが、それはもう、ふるいつきたいような美男でございましたよ。オホホホ…・.・。 わたしは、その人の話を聞いて、すぐに察しがつきました。その市川さんは、とんでもない思いちがいをしていたのです。そのときの相手がわたしみたいなおばあちゃんとは少しも知らず、若い美しい女だったと思いこんでいるのです。いじらしいじゃございませんか。その女が恋しさに、えらい苦労をして、捜しまわっているというのですよ。 きまりがわるいやら、バカバカしいやらで、わたしはほんとうにどうしようかと思いました。若い女と思いこんでいる相手に、あれはこのわたしでしたなんて、いえるものですか。ドギマギしながら、ごまかしてしまいました。先方はみじんも疑っていないのです。わたしがうろたえていることなんか、まるで感じないのです。 その美男の市川さんが、目に涙をためて、そのときの若い美しい女をなつかしがっている様子を見ると、わたしもへんな気持ちになりました。なんだかいまいましいような、かわいそうなような、なんともいえないへんな気持ちでございましたよ。 エ、そんな若い美男と、ひと夜のちぎりを結ぶなんて、思いがけぬ果報だとおっしゃるのでしょう。そりゃあね、この年になっても、やっぱり、うれしいような、恥ずかしいような、ほんとうに妙なぐあいでしたわ。相手が美男だけにねえ、いよいよ気づかれてはたいへんだと、そしらぬ顔をするのに、それはひと苦労でございましたよ。オホホホ……。 (「文芸」昭和三十年七月号)
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In the Rain 横浜に雨が降る・・・ 昼前から降り出した激しい雨で再訓練部隊の訓練は中止になった。 朽木大尉は朝から士門を伴い帝都に出張中。 整備班の“子鬼”達はこの日とばかりに小隊の不知火の分解整備を始めている。 常日頃、限界まで機体を振り回しているだけに邪魔をするのも悪いだろう。 暇つぶしに釣りをしようにもこの天気ではどうしようもない。 有栖川をからかおうかと思ったら凄い目つきで睨まれた。 「誰のせいでこんなに書類が溜まっていると思ってるんですか? こんな訓練がない日に片付けないと期限に間に合わないんです、邪魔しないでください!」 まるで毛を逆立ててうなっている猫のような剣幕でまくし立てる (やれやれ、お嬢ちゃんまだ写真の件を怒っているのかい、笑って受け流せない辺りまだ子供だねぇ) 自分のことは棚に上げて苦笑する、だからといって書類を手にする気にもなれなかった。 左足の違和感のせいだ、別に痛んだり痺れたりするわけではない。 だがこんな悪天候の日、擬似生体の移植を受けた者は何かしらの違和感を覚えるものらしい。 もう馴染んでいるはずの擬似生体が自分のもので無いかのようなもどかしい感覚。 気温や湿度、気圧のせいか、それとも心理的な要因かどうかわからない。 もしかしたら自然の摂理に反している事への畏れ、からかもしれない。 間桐も昼から自室にこもっている、口にこそ出さないが彼女もきっとそうなのだろう。 しかし日野が雨の日が嫌いなのはもう一つ理由があった。 そう、あの日もひどい雨の日だった・・・ 2年に渡り繰り広げられた印度亜大陸反攻作戦「サワラージ」は人類の敗北で終結した。 だが日本帝国印度派遣軍はそのまま東南アジアを転戦することになった。 “過去の過ち”への清算として防衛戦に参加することで東亜諸国への発言権を確保する為か、 又は実戦経験を通じて得られる様々なデータを蓄積し、来るべきBETAの来寇に備える為なのか? 帝国内では今回の派兵に対して否定的意見も多いと聞く、だが前線で戦う日野達には関係のない話だった。 BETAの脅威を目の当たりにして来た彼らにしてみれば内地でくすぶって演習を繰り返すよりよほど良かった。 ベトナム沖に派遣艦隊が腰を落ち着けてからは、戦いの様相も変わった。 インドの様な平原と異なり、見通しが利かないジャングルでは前線を形成することは出来ず 地上部隊との連携が更に重要となる。 戦術もNOEで接近、大火力で掃討する近接支援任務が主体となった。 さらに東進を続けるBETAから住民を疎開させる為の隊列の護衛任務等、戦術機部隊の任務は多岐に渡り、 昼夜を問わず連日繰り返される出撃に、日野達の疲労は癒える暇もなかった、 しかし守るべきものがあるということが如何に衛士達に力を与えるものなのか たとえ国が違っても、言葉が通じなくとも純粋な想いは伝わるものだ。 かれらが救出した住民らの示す感謝の意は衛士達の士気を維持するには充分だった。 だが・・・戦況の悪化を受け、遂に国連軍はインドシナ半島の放棄を決定した。 帝国も派遣軍に撤収を命じ、多忙な日々も終わりを告げる時が来た。 1994年 トンキン湾 戦術機母艦 千代田 戦術機格納庫 外はひどい風雨だったが、さすが大型艦だけにその揺れは少なかった。 もっとも、今から酒で酔おうかというのに、船酔いを気にするようなデリケートな奴などこの艦にはいない。 「我々は今夜2400時をもってこの地における任務を完了し、明朝帰国の途に着く。 諸君、今日まで2年にわたる作戦行動、ご苦労だった。 作戦自体は不調に終わったが我ら派遣軍は最善を尽くした、胸を張って帰国してもらいたい。 生きて再び本土の土を踏める喜びを噛み締め、外地に散った戦友の冥福を祈るため今宵は無礼講とする。乾杯!!」 戦隊長が乾杯の音頭を取ったその時、当直士官が飛び込んできた。 何か面倒な事でもあったのだろうか? 会場の恨めしげな視線に一身に浴び、うろたえながらも報告する。 「メーデーを受信しました、我々の管区の橋が決壊し民間人を乗せたバスが中州に取り残されているそうです、 この天候ではヘリは飛ばせません。いかが致しましょう?」 「戦隊長、自分が行きましょう。戦術機ならこの程度の風雨は問題ありません。」 挙手をしたのは杉浦少尉、日野達の小隊長でありエレメント(分隊)のリード(長機)でもある。 「だがあそこはBETAとの競合地域に近いぞ?」戦隊長の危惧に対し 「この風雨です、光線級の心配はないでしょう。手早く済ませれば問題ないはずです。 では日野少尉、いきますか。」 「ぶっ、ちょっと待て、俺かよ、相談も無しか」 「君は僕の列機ですよ、リードに従うのは当然でしょう。」 「・・・分かったよ、相棒。この国の人達には世話になったしな。最後のご奉公だ、もう一跳びするかい。 てめぇら、俺の酒は残しておいてくれよ、ったく下戸のおめぇはお茶さえありゃぁいいんだから気楽なもんだぜ。」 杉浦少尉は日野たちと違い士官学校出身のエリートの筈だが一風変わった人物だ。 紅茶好きで妙に杓子定規な所を揶揄してジョンブルの綽名で呼ばれていた。 基地の近くの喫茶店が特にお気に入りで日野も日本を発つ前は何度も付き合わされた口だ。 もっとも杉浦の目当ては紅茶ではなく店の看板娘ではないかと日野は勘ぐってはいたが。 だが、彼の指揮官としての素質や戦術機動の技量は衆目の認めるところだ。 日野も部隊の中でも自分のロッテ戦術に追随できる数少ない技量の持ち主であり、 目下の者にも丁寧に接する杉浦に好感をもっていた。 杉浦のことを相棒と呼ぶのは日野なりの親近感の表現なのだがどうもわかってないらしい。 「いいだろう、だが我々は明朝には帰国の途につく身だ、あまり無茶をするな。 班長、杉浦と日野の撃震を至急甲板に」 整備班長はうなずくと部下たちに怒鳴る。 「聞いての通りだ野郎共、とっとと昇降機を片付けて、104(杉浦機)と105(日野機)、5分で甲板に上げろ。 ぼやぼやしてると帰艦が明日になっちまうぞ」 通報より15分後、日野と杉浦の操る三色迷彩の撃震は灰色のインドシナの空に飛び出していった。 救出作業は思いの外順調に進んだ。 濁流をものともせず2機がかりでバスを抱えて対岸に渡す。 バスの窓から手を振る子供達に応え、撃震の主腕を振りながら戦術機の汎用性を改めて実感した、 (さすが人型だ、ヘリや船ではこうはいかねえなぁ。まぁしかしあんなに感謝されるたぁ来てよかったぜ。 さっきああ言った手前、ジョンブルには口が裂けても言えねえけどよ) 苦笑しながら杉浦に声を掛ける. 「さぁ帰ろうぜ、一風呂浴びて一杯といきたいねぇ」 「日野少尉、おかしいとは思いませんか?」 なにが気になるのか流木を拾い上げ検分をする杉浦。 「おかしいのはおめぇだろ、その木がどうしたってんだ?」 「この流木です、増水で引き抜かれたというより噛み千切られているように見えませんか?」 「おいおいBETAの仕業とでも・・まさか」 そう答えながら自分の言葉に驚く、何故その可能性に気づかなかった? 印度でも度々見られたBETAの地下浸透行動、まさかジャングルでも同様の・・ 「日野少尉、急ぎましょう。彼らが危ない!」 「承知!!」 日野達が民間人の隊列に追いついた時は既に戦闘が始まっていた。 装甲車程度しか戦力がない護衛隊の劣勢は明らかだった。 護衛隊はまるで西部劇のワゴンホイールさながらに、装甲車で民間人を乗せたバスやトラックを 囲い込み防衛線を形成、必死の抵抗を続ける。 だが圧倒的な物量の差は如何ともし難い。 青い顔をした指揮官が民間人のリーダーの村長に告げる。 「我々も全力を尽くしてはいるが最悪の場合・・・・BETAに生きたまま喰われるぐらいなら」 「判っています。手榴弾を用意していただけませんか。」 覚悟を決めた表情の村長 戦車級と闘士級、赤と白の奔流に飲み込まれ様かというまさにその時・・・ 上空から火の雨が降り注ぎはじけ飛ぶBETA、一瞬遅れて聞こえる雷鳴のような轟音。 頭上を通過する迷彩色の戦術機、その機体に輝く日の丸を・・・彼らは見た。 「いやっほぅ 騎兵隊の参上だぜ!」 「我々は機甲部隊ですよ、何を言ってるんですか」 「危機一髪を救うのは騎兵隊と相場がきまってんでぇ、おめぇ西部劇見ねぇのか?」 「僕はミステリーの方が好きですからねぇ。ヒッチコック劇場の方を・・」 もし彼らの通信を傍受しているものが聞いたら漫才かとあきれるような会話だが、その一糸乱れぬ機動は 見るものを魅了する。 ロッテ戦術、ルフトバッフェが確立した相互支援機動。一方が攻撃する際、列機がその後方で死角をカバーし 交互に一撃離脱を加える。 時折鳴る雷鳴をBGMに暗天の下で繰り広げられる死の円舞は止むことがなかった。 「大丈夫ですか日野少尉」 幌をあけてトラックに杉浦少尉が入ってきた。どうやら外はまだ激しい雨のようだ。 「“千代田”と連絡が取れました。アルファーストライク(全力攻撃)です。“千代田”“千歳”併せて30機の撃震が この一帯を掃討します。整備班長も在庫一掃セールだと張り切ってましたよ。 まもなく救出のへりも到着します、今しばらくの辛抱ですよ。 何でも戦隊長がエアボスに無理行って出させたそうですから。」 「そいつは豪気だねぇ。・・ちょっとまて?もう2400時は回っているじゃねぇか、命令じゃたしか・・」 「門限破りの常習犯の君が言う台詞とは思えませんねぇ、いいですかここはベトナムです。日本と時差は2時間、 だから今はまだ2200時です、命令書にはどこにも本土時間とは書いてませんよ」 もちろん屁理屈だ。 当時、海外に展開する部隊は混乱を避けるため作戦行動は本土時間を基準としていた。 命令書の記載不備を突いての作戦行動、実に杉浦少尉らしいと苦笑する。だが 「日野少尉、申し訳ない。僕としたことがうかつでした。もっと早く気づいて増援を呼んでいればおそらく君も足を失わずに・・」 沈痛な表情で謝罪をする杉浦少尉。 日野は麻酔が効いた頭でぼんやりと左足があった所を見つめた。 隊列を襲ったBETAを一掃した後、日野達は隊列を安全地帯まで警護する事にした。 “千代田”に必要事項だけを告げると“すぐに帰ってこい”とがなりたてる無線を切る。 護衛隊の残存戦力では次にBETAの襲撃を受けたら隊列は全滅するしかない。 それが判っていて帰艦なんか出来ようか。 杉浦少尉はてっきり反対するものと思っていたが、返ってきた答は意外にも肯定だった。 「日野少尉、士官学校出の僕が今だに少尉なのは何故か、不思議に思いませんでしたか。 組織の決定が常に正しいとは限らないと僕は思いますよ」 「・・・・なんでぇ似たもの同士って訳かい」 思わず吹きだした。 日野が先導、杉浦が殿で避難の隊列は移動を開始した。 二足歩行での移動の振動は気持ちのいいものではない。 跳躍が出来ないのはもどかしいが車両の護衛では致し方がない。 「日野少尉、後ろです!」 緊迫した杉浦少尉の声で慌てて後方をスキャンする、 暗い密林に浮かび上がる緑白色の体に二つの大きな黒眼。 「光線級か、くそったれ」 豪雨でセンサーの探知範囲が狭まっていたことが原因だった。 咄嗟に機体を捻って横薙ぎに突撃砲を掃射、弾け飛ぶ光線級、しかし照射を全て交わすことは出来なかった。 胴体への直撃は避けられたが、跳躍ユニットと左脚に被弾、この機体での移動はもう無理だ。 日野は機体の放棄を決意、ベイルアウトしたが、降り立った場所は不運にも戦車級の群れの真ん中だった・・・ 杉浦少尉がすぐさま救出に駆けつけたが日野は既に歩兵装甲ごと左足を噛み千切られた後だった。 避難中の民間人に医師が居たのが僥倖だった。 素早い処置が日野の命を繋ぎ止めた、さもなければ今頃失血死は免れなかっただろう。 今は鎮痛剤が効いているので痛みはない。 体の一部を失った事へのショックがないといえば嘘になる。 だが欠損した身体を補う擬似生体技術が開発されていると聞く、そう困ることはないだろう。 「よせやい、おめぇが流木に気づかなければ今頃この人達はBETAの腹の中だ。 それにあの時、注意してくれなかったら俺も光線級の直撃で蒸発してたろうさ・・・・助かったぜ、相棒」 「本当に君は何度言っても・・でも相棒という響きも悪くないですねぇ。」 「そうだ、日本に戻ったら助けてもらった礼をしなきゃな。何がいい?」 「・・・そうですか、なら例の店で紅茶でも振舞ってもらいましょうか。」 「紅茶なんぞでよけりゃジョッキで飲ませてやるぜ、それにしてもおめぇ何かというとあの店だな、 紅茶じゃなくて、本当はあの娘が目当てじゃねぇのか?どっちかはっきりしやがれってんだ。」 虚を突かれた杉浦少尉の表情に、ささやかな勝利を感じた日野だったがあっさりと逆襲される。 「両方ですよ。僕は意外と欲張りなんです。知りませんでしたか?」 意外な言葉にあっけに取られる日野を見て愉快そうな杉浦少尉、でも日野も嬉しかった。 (朴念仁かと思いきや意外にやるじゃねぇか) どちらからともなく笑いあう二人だったが杉浦少尉が何かに気づき表情を改めた。 網膜ディスプレイの情報は装着した当人にしか分からない、何か拙い事でも・・ 「残念ですがそれは適わぬようです・・・・」そういって眼を閉じた。 ただならぬ雰囲気を感じ問いただす日野「おい、ちょっとまて、なにを・・」 「それだけ啖呵が切れるなら大丈夫ですね。鎮静剤を打ちます、しばらく寝ていてください。」 首筋に無針注射器を押し当てられると急激な睡魔が訪れ、日野の意識はそこで途切れた。 日野が眼を覚ましたのは“千代田”の集中治療室だった。 杉浦少尉は還ってこなかった。 救出に出動したへりの乗員に話を総合すると再びBETA群が隊列に襲来 杉浦少尉は日野達の救出ヘリのLZ(着陸地点)を確保する為に残ったとのことだ。 そして再びヘリが現場に到着したとき杉浦機の姿はなかった・・・ 翌日KIAと認定された杉浦少尉の水葬が取り行われることになった。 昨日とはうって変わって穏やかな海に水兵の吹くラッパが響く。 しかし日章旗の中には杉浦の幾ばくかの遺品とトンキン湾の空気しか入ってない・・ 日野は絶対安静だという衛生兵の制止を振り切り参列した。 車椅子の日野に周囲の視線が突き刺さる、誰も声を掛けることが出来なかった。 日本に戻れば無用な危険を冒して貴重な戦術機を喪失した、として査問会が待っているという、 戦隊長はその決定に抗議してくれてはいるが、どうやら処分は免れないようだ。 ただ、日野達が救出した住民達が流してくれた涙が救いだった。 彼らは艦長に直訴までして参列を希望したらしい。 弔砲が鳴り響く中、日野は杉浦に語りかける。 (見てるか、おめぇの為に泣いてくれる人達がここにもいるぜ。俺達がやった事は無駄じゃなかった。 じゃあな相棒、一足先に九段で待っていてくれや) 日本に戻り擬似生体の移植を受けた日野は日常生活に支障が無い程度にまで回復した。 だが当時の神経接続技術ではこれ以上の回復は望めず、衛士の現役続行は不可能と判断された。 退院後の査問会、そして事実上の左遷人事、明野の衛士学校に教官として配属となる。 日野が再び衛士徽章を得るのはインド時代の上官である大場大佐が訪ねてくる、その日まで待たなければならなかった・・ 日野の黙考を破ったのはドアの開く音だった。 「お帰りなさい、大尉、少尉も荷物持ちお疲れ様です。 それにしても凄い雨ですね、ずぶ濡れじゃないですか、お茶でも入れましょうか?」 「そうだな。では熱いのを頼む。」 「すみません、自分もそれで。」 「嬢ちゃん、俺は、」 「ブラックですね?これ飲んだらちゃんと書類を片付けてくださいよ、本当にもぅ」 「今日は紅茶にしてくれ、二杯な」 「コーヒー党の中尉が紅茶なんて珍しいですね、御代りならすぐに準備できますけど?」 「いやカップに二つだ、頼めるかい?」 不思議そうに尋ねる有栖川に珍しく真面目な顔で応える日野 (相棒、九段にゃ紅茶はなさそうだからな、あの店程でもないかもしれねぇが嬢ちゃんの入れた紅茶も悪くないぜ?) ・・・・・いつもと違った雨の日の午後の風景
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ドイツ(政府・SS・陸軍) #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 ヴィルヘルム・“リッター”・フォン・レープ 誕生日 9月5日 身長:181cm (CV.檜山修之) 満の政治的出身地であるバイエルン出身。 WW1に従軍し「騎士(Ritter)」を名乗ることを許されたドイツにおける戦術防衛の第一人者。ルールー・ルントシュテット並みのベテラン。 独軍内部では年長組だが、若く見える外見と性格から「お兄様」やら「アニキ」やらとよばれている。 もっとも、本人としては自分の歳でそう呼ばれるのに逆に違和感を感じ始めているようだが。 性格面は「騎士(Ritter)」の名に恥じない性格。ただし、それ故に無理な拡張政策を取る満には懐疑的。それ故、同じ騎士タイプの緋村とは互いに反発し合うが、どう見ても近親憎悪。 一見すると冷静に見えるが、その実態は直感と感情で動くタイプ。また、意外としたたか。 また、面倒見が良いためか武装親衛隊でもチンピラ組(ゼナ、手虎)とは仲が良いようだ。 ハウサー、ネーリング、ルントシュテット他、国内外の古参組とは親交が深い。 愛煙家であり、煙草を自らの燃料と標榜する。それ以外には登山狂いであり、普段からふらりと山に行ってしばらく戻って来ないことがある。ていうかお前、それ職務放棄だろう。 防御の専門家、というか……劣勢になればなるほど輝くタイプの指揮官。 特殊な能力を持たないただの人間だが、勘の良さと生存能力にかけては屈指のものを持つ。 単独での戦闘もそれなりにこなし、武器は拳銃。状況次第で二挺使うこともある。 ……完全に非常の人(非常時のみ有能。平時は無能)。普段は単純にダメな男だという説もある。 正史では1942年7月にマジノ線を突破。フランス戦後に元帥となっている。 が、その後ナチスの政策に愛想を尽かし、辞表を提出。予備役となり、戦後まで軍務に服する事は無かった。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 ルーツィンデ・ベック 誕生日 6月29日 身長:172cm/B86 W58 H88 (CV.未定) ドイツ軍の陸軍参謀本部総長を務めたこともある将軍。参謀本部総長時代にはリアンと参謀本部の板ばさみとなって苦労した。最終階級は上級大将。 第二次大戦中の1944年7月20日に中心人物として満暗殺未遂事件を起こすが失敗、失踪する。 1936年当時のドイツの軍事力では英仏相手に戦った場合に勝算の無いことを見越し、満の外交政策に懐疑的であった。ドイツを大戦前の強国に戻すために、満が主張するチェコスロバキアに対する攻撃自体には反対していなかったが、1940年以前は無理とみていたらしい。1938年、満が計画通りに、チェコのドイツ系住民の民族自決に関わるズデーテン問題が先鋭化したとき、ベックらは、満がチェコ侵攻を命じ場合、戦争を回避するために満を逮捕するクーデター計画を準備していた。 しかし六子が「丸男に手を出さない」というとんでもない理由で外交的譲歩をしたため(満は平気で約束を破ったが)チェコ侵攻命令は出されず、この計画は実行されなかった。 1938年8月に参謀総長職の辞表を提出、第1軍司令官を拝命した直後の同年10月に退役し、以後軍務に戻る事はなかった。 だが、彼女の本当の戦いはここ始まったのである。 満とナチスの戦争計画は初期はうまくいったものの、結局は劣勢に転じた。 祖国の未来を憂慮した彼女はベルリンクーデター作戦を計画する。 しかし、後一歩のところで計画は失敗し。反ナチ派閥は壊滅、彼女の行方もわからなくなった。 民主主義者ではなかったが反ナチの英雄として今でも語り継がれている。 反ナチだけあって満には反抗的。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 リヴィア・ロンメル 誕生日 11月15日 身長:167cm/B86 W57 H83 (CV.未定) 「プロイセンの次にナチには好感が持てない。煙草の次に満は好感が持てる」満の護衛を務めた時の感想。 「兵站かな」北アフリカ戦での強敵は何かと記者に聞かれた時の返答 「奴等の持っているワインやパスタは我等の戦勝を祝う時のためだ」幕僚達のイタリア軍の愚痴に対する冗談 ドイツ軍が誇る「砂漠の狐」と呼ばれる将軍。柔軟な思考力と断固たる決断力を兼ね備えており、精鋭揃いのドイツ軍の中でも戦術力だけでは最上位に位置する能力を持つ名将。 第一次大戦を経験後、歩兵学校の教官に着任。生徒達が驚くほど軍事教練に熱中し、日向を浴びて小麦色になるロンメルは一躍人気を集め、「日向の生徒」と好感を持って呼ばれるようになる(生徒以上に生徒らしかったから)。教官時に書いた第一次大戦時の経験を著した本が注目され、この本は満と出会うきっかけとなる。満の警護を務めながらリアン達の発案した電撃戦に興味を持ち出し、装甲師団長を満に強請り、師団長就任後はフランス戦で英仏軍をフランスから本国から切り離すほどの活躍を見せた。この時に反撃してきたフランス軍の戦車部隊にも冷静に対処し、ロンメルの師団の活躍ぶりは敵味方から「幽霊師団」と呼ばれるほどになったが、後日この呼び名を同僚達から聞いたロンメルは「私の部下を勝手に殺すな」と冗談じみたように返答している。同盟国ヘタリアの後始末をするべく北アフリカに派遣される。当時イギリスが北アフリカを戦略的に重要視したことや対照的に本国が独ソ戦を重要視したことなどが重なり、ロンメルの下には乏しい戦力と宛てにならないイタリア軍しかなかったが、持ち前の行動力と奇想天外な発想力によってアフリカ軍団を連戦連勝に導く。唯一の問題はイタリア軍よりも不安定な兵站状況と北アフリカの地形・気候で、シチリア撤退時までロンメルを苦しめることになる。北アフリカ戦敗北後は西方戦線に着任。連合軍の上陸作戦を阻止するべく奮闘するも劣悪な防衛体制や指揮系統の複雑さに苦しめられ、思うように行動できず、結局連合軍を上陸させてしまう。 趣味のカメラを持って戦地に一人で行ってしまい。部下を心配させてしまうほどの神出鬼没ぶりを日頃から発揮してしまう。時折現地人に紛れてしまうとか。強きを挫き弱きを助ける正義漢であり、国内外を問わず彼女の崇拝者は多い。自他共に認めるライバルとして、ソ連の都葉伏木やイギリスのモンティなどがいる。同盟国ではメッセや山下など、硬骨の士と親交を結んでいる。愛煙家で、好きなタバコは「ゲルベゾルテ」。嫌煙家の満からは「クサイ」といわれているが本人と部下たちはまったく気にしていない。(byOrphe) クラウゼヴィッツの戦争論が嫌い、理由は嫌いなプロイセンの参謀将校が読んでるから(読んだことはない)。あと、地雷の処理がうまい。様々な意味で。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 ファナ・クライスト 身長172 B86 W53 H87 ドイツ国防軍将軍。階級は大将。 もともとは騎兵将校で、守旧派の代表格。リアンの機甲戦術に対しては 「らめぇ!私のお馬さんが!」と大反発した…が ルントシュテットさんにあやされ、マンシュタインさんに変な思想と回路を埋め込まれ、戦車に対して理解を示すようになる。戦争末期には徐々にリアンを認めるも素直になれずつい冷たく当たってしまうとか。 ウェーブの髪と穏やかな眼差し、スラリとした背丈からは想像もつかないが、 実は「ファナティック」と呼ばれるくらい熱狂的かつ子供っぽい性格。 無類の馬好きで、夢はイギリスを征服してアスコット競馬場を自分のモノにすることと、 ロシアを制圧してウクライナ一帯を名馬の産地にすること。 アラブやアメリカの品種にも興味を示していることはいうまでもないだろう(えー 国防軍の中には「クライストさんファンクラブ」があり、彼女を称える歌なんかを作ってるらしい。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 芙蓉蒼子(ふよう あおこ) (CV 川上とも子) 身長162cm B84 W63 H81 ドイツ国防軍二代目陸軍総司令官。 いかにも金持ちくさい苗字からわかるとおり、名門騎兵軍人の家系出身。 いい意味でのお嬢様で、誰に対しても人当たりは良い。 悪く言えば誰にでも甘い性格。 満に対しては、最初こそ彼女の強権的なやり方に反発心を抱いていたものの、 フリッチュ解任後に総司令官のイスを勧められるとホイホイのってしまった。 欧州戦線では個性派ぞろいのドイツ軍を上手くまとめつつ 各地で破竹の勝利を進めるも、東部戦線ではそうもいかず、 心身ともに疲弊。生まれつき心臓の弱い彼女にとってはこれが命取りになった。 特技は料理。作戦会議中は彼女お手製のお弁当がもちこまれるため、 食い意地の張った連中がしょっちゅう紛れ込んでくる(鈴久とかゼナとかへすとか)。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 カタリナ・フォン・ライヘナウ 169cm B93 W57 W91 ドイツ国防軍元帥。 富裕貴族の出身。父親の方針で陸軍に入隊し、一次大戦を生き抜いた。 整った目鼻立ちとモデル並みの体型という、誰がどう見ても「美人」と言える容姿の持ち主。 が、本人はソバカスを気にして自分を「ブス」だと思い込んでいる。 気弱で自信のない性格のため、自分から他人にアプローチすることは少なく、異性はおろか周囲にもあまり友人はいない。しかし繊細で誰にでも優しいことから人望は厚い。 異性からの告白も何度も受けているが、「きっとこれは罰ゲームなんだ」と思いこむあまり、ことごとく断っている。 彼女にとって唯一信頼に値するのは満であり、彼女の言うことなら何でも従う。 独ソ戦では満の「共産主義勢力の抹殺」指令を黙々とこなし、周囲の心胆を寒からしめた。しかしこの命令は到底彼女の性格にとって耐えうるものではなかった。 1942年、信頼する人間への忠誠と、自分の行った残虐行為への自責の念とに板ばさみにされた結果、彼女は自らの命を絶ってしまう。 葬儀には多くの者がかけつけ、彼女の死を悼んだ。その中には大量の野良犬や野良猫もおり、それは、彼女の優しさが動物にも及んでいたことを示していた。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 春沢 文香 (はるさわ ふみか) ドイツ軍一運の悪い女の子。スターリングラード攻略戦の最前線で戦っていたせいで、赤軍の狂犬こと鷲見宙子に目をつけられ逆包囲されてしまう。極寒と灼熱双方の地獄にさらされながら必死に戦うも、最後には満に形だけの元帥位を与えられた上に見捨てられ、ソ連軍にとっつかまってしまう。ドイツの元帥は降伏したことがないらしいが、彼女がその歴史を塗り替えてしまった。 まじめで融通が利かないが、言われたことは絶対にこなそうとする真摯な子。 インテリ女子の典型。 ソ連軍投降後は宙子にかわいがられ、後に東ドイツにて同棲生活をおくった。 某ルートでは暗黒面に落ちた。過度のストレスと、身近な虐殺対象は禁物。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 ルールー・ルントシュテット 一次大戦よりその名をとどろかせる、ドイツ軍の最重鎮…のはずが なぜか幼女の姿をしている。どうやら魔法が使えるらしく、いつまでも(過度に)若々しいのはそれが原因とのこと。 いつもるんるんと朗らかにしており、 その愛らしい姿が全ドイツ軍人の心の支えになっているともっぱらの評判。 半ば愛玩動物あつかいになっているが、時折年長者らしく含蓄のある言葉を吐いたり、 爬虫類のごとき鋭い眼光を見せたりとなかなか侮れない。 近頃では愛玩どころか、気がつけばティーゲルシャンツェをまとめていた、ということもしばしば。 好物は推理小説に上物のコニャックと、かなりのいぶし銀。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 来栖 楓 (くるす かえで) ドイツ陸軍元帥。 有能で心優しい性格から兵士たちのアイドルとして称えられている。。 その人気は、「KKK(くるす かえで に貢献する会)」なる有志の親衛隊が結成されるほど。しかし泥沼の東部戦線という最悪の環境での戦い、度重なる同僚たちとの意見の衝突からその精神は次第に病に蝕まれていく。中央軍の作戦指導をめぐってリアンと対立した際、ついにキレてバインダーで彼女に殴りかかるという暴挙に出る。 満はこの事態を重く見、彼女を44年に西方軍司令官に任命し、リアンと距離をとらせた。 …が、こちらでも戦局の悪化が彼女の精神状態をどんどん蝕んでいく。 アルデンヌ作戦での訓示では、空鍋を回しながら兵士に激を飛ばし、 部下たちから本気で心配されていたという…。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 ヴァン・モーデル 30年戦争時、血風吹き荒れるドイツにて突如出現した魔神がいた。 旧教と新教の対立に紛れヨーロッパ全土の破壊を企んだ彼女は、ドイツの人口の10%を殺し尽くした。しかし世界に恐怖をまき散らした彼女の猛威は英雄フルンツベルクによって打ち破られる。 激闘の末、眷属も自らも全てを打ち倒された彼女は後にドイツ国会議事堂が建つことになる土地の地下奥深くに封印された。 そして現代、ナチスが政権をとってからヘスが長らくその解析にあたっていたが、大戦が始まる直前についにその復活に成功した(してしまった) 戦争が始まってからは国防軍司令官に任命され、その力(主に本人の腕力と魔力)で 劣勢の戦局を次々と跳ね返し、リアンやマンシュタイン、ロンメルと並ぶ司令官となった。 本人のタフさもあり任務は専ら劣勢の激戦区であり、彼女一人が戦線に加わるだけで戦局がひっくり返ることから「火消し屋」と呼ばれる。 また、休暇中に見つけた後方勤務の中で見込みのある兵を前線へと拉致するため、別の仇名として「恐怖の飛行者」とも呼ばれる…が本人は文字通りの意味で飛行可能。単体での戦闘力は世界においても最高クラスであり「どのくらいの増援を連れて来たのか?」という質問に「(増援は)私だ!」と答えたのもあながち冗談になっていない。 ちなみにドイツ情報部による報告では戦車一個師団分の戦力に相当するという評価が為されている。 反面部下使いは厳しく「一日は24時間、寝るのは無駄だ」という台詞を吐き、「スタハノフ(ソ連労働の鬼ノルマ)」並の指示を下す。 基本的にはヘスに忠誠を誓っており、多少統制が効いていたのだが、ヘスがいなくなってからはよりやりたい放題するようになった。 戦争末期、皮肉にもオーバーロード作戦を迎え撃つ最後の高級将官となった彼女は烏合の衆と化したドイツ軍を率いて奮戦、凄まじい活躍を見せる。 しかし結局アメリカの圧倒的物量の前に敗北した彼女は投降を潔しとせず単身最後の抵抗を図った。 そして米軍に甚大な被害を与えた後、魔人は朽ち果て500年の生を終えた。 英雄復活に際しては仇敵フルンツベルクと対峙する可能性もあるのだが、その時彼女はどんな態度を見せるのだろうか。 さすがに核くらうとつらいよ、いたいよ。 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 フェルディナント・シェルナー 1892年 12月5日生まれ 特技イタリア語 第一次世界大戦時に任官、終戦当時は中尉。陸軍歩兵学校の教官を勤め、ミュンヘン一揆では管区司令官の副官として制圧側へ参加。のちに、教官の経験を活かし、ナチス親衛隊を武装親衛隊へと変革する教練に携わる。 ポーランド戦役で戦果を挙げ、連隊指揮官から師団司令官へと昇進。フランス侵攻後に少将へ。各地を転戦しつつ戦争末期には上級大将へと昇進。 チェコからオーデル川の防衛ラインを死守し、市民の疎開を推進する一方で、 「祖国を守るべき盾たる兵士は、敵を前にしてその責務を放棄することを許さない。家族? 恋人? 敵兵を恐れるものが、誰を守ることが出来るんだ?」 と常に後退を許さないという終戦末期の防衛戦を戦い抜いた愛国者。 彼の師団の敵前逃亡者は彼自身の手によって処刑され磔にされたと言う。 愛用のルガーP08の犠牲者はすべて敵前逃亡を試みた味方のみだとの噂。
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pic.twitter.com/ECl1OKTewS — Tiger 猫柱🐯Revengers (@3yhORts0BH9NqUF) June 3, 2023 コロナ🧠はよく誰に染したとか誰から染されたとか言うけど、ほんとアホだよね。そんなのわかるわけないのに。 「志村けんさんにコロナをうつした」…「感染源」にされた女性、デマ投稿26人を提訴(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース https //t.co/gxv3vXpNDJ — 注文の多いコロ屋さん (@nekosan_nyao) May 18, 2023 【レムデシベル】 🐹レムデシベルこそアメリカのコロナ症状患者の大半を死においやった薬毒。アメリカで、多臓器不を起こすとわかっていて使用された劇薬。アメリカでは即座にコロナ症状が収まるクロロキン、ヒドロキシクロロキン、イベルメクチン等の投与が禁止され意図的に人体を痛める薬が使用され、病気を捏造した。 — スーパーお花畑の、ねこ⭐代官 (@nekodaikan1) April 26, 2022 志村けんは律儀に発熱不調→四日ルールを守って症状悪化させたんだからな。ついでに医者のたらいまわし→都合よく木偶がきたから死んでもらって利用したんだろ西村だって埼玉からなぜかクールジャパン関連で繋がってた連中つかってアドバルーンあげてたし殺人政権安倍政権。ナチズム安倍 https //t.co/JylXPEl8s6 — 魔法少女ティロ・フィナーレ@魔法少女隊 (@mu_kaoru) March 31, 2020 俺も1/4だかユダ公だからさーナチスの真相もそれなりに知ってるし優勢論もわかってるけど、アホのナチズムだけは容認しねえぞ。機関には安倍は中共に食い込まれた赤化極左だって報告済みだその証拠がプーチン皇帝の戦勝祭参加だしな。オリンピック飛ばしてやっても運命を理解できないらしいな https //t.co/Jxc5WP2aB8 — 魔法少女ティロ・フィナーレ@魔法少女隊 (@mu_kaoru) March 31, 2020 ■ これ本当なのかな。拾いもの。でも集団免疫が正しいね。死ぬやつはしょうがない。 「二階堂ドットコム(2020/03/31 13 33)」より / 日本人は逃げ回ってもしょうがないということに気づけ。死ぬやつはしょうがない。集団免疫で効果を上げてるドイツを見習うべきだ。公衆衛生の観念がないアメリカやドイツ以外のヨーロッパを含む国は汚いんだから。 以下は本当かね。まぁどうでもいいよ。集団免疫が重要。国民は一人一人が免疫力を上げて無茶をしないべきだね。過労や過度の飲酒は免疫力を下げる。規則正しく生活して良く寝て運動して、食事はニンニクを食べ、きちんと糖質もとることが重要だ。 以下転送モノ。ホントかどうかはしらん。違う店からの嫌がらせという話もある。でも面白いから載せておく。いつもいってますね「常に疑え」と。 (※mono....以下略、詳細はサイト記事で) 志村けんさんの兄、知之さんの言葉をよく聞いてほしい。けんさんは、感染予防の為に最後まで家族に看取られる事無く、通夜,本葬も無く、そのまま火葬場に行ったと(親戚の参列無し)。こんな悲しい最後 安易なコロナ疎開や帰省の結果、親や祖父母が亡くなり、その原因が自分だったら‥よく考えてほしい pic.twitter.com/UZTDnPmDBS — @camomillem0703 (@camomillem0703) March 30, 2020 ■ 【訃報】「ドリフターズの最終兵器」「バカ殿さま」「パンくんの恋人」志村けんさん逝く!享年70歳。ご冥福をお祈りいたします。 「Kazumoto Iguchi's blog 3ブログトップ(2020年 03月 30日)」より / みなさん、こんにちは。 今年一番の訃報が入ってきたようだ。 やはり私が予想していたとおり、武漢肺炎で治療中のタレントコメディアンの志村けんさんがご逝去された。享年70歳。ご冥福を心からお祈りしたい。 芸能界は中国共産党、習近平や二階俊博、安倍晋三夫妻に復讐すべきだろうなあ。 志村けん世代、つまり、我々昭和の世代には、昔の日本の偉さやエロさが残っていた。 男女の「色恋」、恋物語、こういったものが粋だとか風流だという文化伝統が残っていた。 だから、すくなくとも1990年代まではこういう番組をやっても問題なかった。 (※mono....埋め込み動画多数、詳細はサイト記事で) ■ 志村けんさん、最後のブログ投稿に反響 「信じたくないです…」 「SIRABEE(2020/03/30 13 00)」より / 70歳という若さでこの世を去ったタレントの志村けんさん。訃報を受け、公式ブログ「Ken’s Blog」にはファンによる数々のコメントが相次いだ。 ■最後のブログ投稿 ブログでは共演者たちとのツーショットをアップすることが多かった志村さん。最後の更新である2月13日の投稿では、同月27日に放送された『志村けんのだいじょうぶだぁ〜春一番爆笑SP〜』(フジテレビ系)の告知を兼ねて、お笑いコンビの千鳥や、歌手の丘みどり、フリーアナウンサーの加藤綾子、タレントの小島瑠璃子とのツーショットを投稿していた。 いずれの写真も共演者たちは笑顔で、志村さんが愛されていたことが良くわかる。 関連記事:研ナオコ、志村けんにエール 「メッセージ最後の絵文字」に注目集まる けんちゃん、早く治してまたバカ殿一緒にやりましょうね🙋♀️🥚 — 研ナオコ (@naokoken77) March 25, 2020 志村けんさん死去 蔡英文総統が追悼「たくさんの笑いをありがとう」 https //t.co/q06B4Z1u3m 投稿には、満開の桜に雪が積もった風景の写真が添えられ、「志村さん、たくさんの笑いをありがとう!心からご冥福を祈ります」と日本語と中国語のメッセージがつづられた。 — 台湾ニュース@中央社フォーカス台湾 (@focustaiwanjapa) March 30, 2020 { 優香 志村さん死去に「いまだに信じられず、どう言葉にしていいかわかりません」/芸能/デイリースポーツ online https //t.co/k1R9XD5mxw#志村けんさん #DailySports — デイリースポーツ (@Daily_Online) March 30, 2020 ] 【ドリフメンバーが志村けんさん追悼コメント】 加藤茶さん「ドリフの宝、日本の宝を奪ったコロナが憎いです」 仲本工事さん「一番若い志村が長さんの次になるとは」 高木ブーさん「志村早すぎるよ、俺より先に逝くなんて」https //t.co/6E9McCIbmB — 産経ニュース (@Sankei_news) March 30, 2020 . 駄目だ…泣きながらこのページを更新している。辛いス。悲しいです。
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夕焼けに空が染まる頃、ウエストウッド村の台所から小さな鼻歌が聞こえてきた。 「~♪」 声の主はティファニア、彼女は久しぶりにマチルダが帰ってきてるので、とても機嫌が良かった。 家族の命を奪われてから、ずっと面倒を見てくれていたマチルダは、年に何度も仕送りを送ってくれていた。 自分の家族は皆失ってしまったけど、サウスゴータの太守だったマチルダの一族が、家族代わりになって自分を助けてくれている。 それは返しきれないほどの恩だった。 以前に一度、自分と母親のせいでマチルダの一族にまで迷惑がかかってしまった……と謝ったことがある、しかし、マチルダはそれを怒った。 間違っているのは王の方だ、と言って、決して自分を蔑んではいけないと、何度もティファニアに言い聞かせた。 小さい頃から姉のように慕っていたマチルダが、そのとき本当の姉になった気がしたのは、けっして気のせいではないだろう。 火箸で釜戸の灰を軽くかき分けると、昼に使った薪(たきぎ)の、炭化したものがちょこんと姿を見せた。 それを種火として利用し、よく乾いた小枝に火を移し、薪を燃やし…手慣れた様子でお湯を沸かしていく。 「夕食の分か。薪は足りているかい?」 ティファニアが振り向くと、そこにはワルドが立っていた。 どこか気遣うように釜戸の様子を見ている。 「ええ、大丈夫ですよ。ワルドさんのおかげです。薪割りもあんなに沢山やってもらって、本当に助かります」 「世話になっているんだ、これぐらい当然だよ」 ワルドが笑みを返すと、踵を返して台所を出て行った、ティファニアほほえんだままそれを見送る。 ティファニアは家族と、珍しいお客さんのために、美味しい料理を作るべくよし!と気合いを入れた。 「………」 台所を出たワルドは、夕方の見回りをしに外へと出た。 空を見上げて竜騎兵がいないことを確認する、年には念を入れ、木々の影を縫うように素早く、音もなく森の中へと移動していった。 風系統のスクエアたるワルドは、風の流れに敏感で、気配を消すことも感じ取ることも得意としている。 更に、ウエストウッド村に滞在している間、『土くれのフーケ』として盗みを働いていたマチルダから、山や森の知恵をいくつか教わっている。 マチルダは時々、暇つぶしの雑談に混じって、猟師が如何に気配を消して獲物に近づくのだとか、獣の踏みしめた地面の見分け方を語る。 それらの知恵は、王族の親衛隊を勤める魔法衛士隊ではほとんど発揮される事は無かった、そういった索敵の技術は基本的に使い魔が有しているものであるからだ。 メイジがそれを行うのは、花形部隊では忌諱されがちですらあったが、大いに参考になる知恵であり、戦いを有利に進めるため学ぶものも少なくはない。 その一人がワルドだった、母を失い、トリステインの内情を知るにつれて歪んでいったワルドは、裏切りを正当化するための材料として己のプライドを肥大させた。 泥臭い猟師の知恵など下賎なものだと思いつつも、それを習得して数多くの任務を成功させ、それでいて自分は崇高な理想を持ってトリステインを裏切り、いやむしろトリステインを「見限ってやった」とすら考えていた。 それを打ち砕いてくれたのがルイズだった。 ルイズは、己の能力をよく理解し、それを有効活用する術をしっかりと考えている。 虚無の系統とか、公爵の血筋だとかそんなものではなく、ルイズは己の今と、これからの生き方によどみない自信を持っていると思えた。 だからこそ、ワルドは自分が矮小だと気づき、ルイズに忠誠を誓った。 そして今、このウエストウッドという小さな村で、子供達の相手をする時間が、とても安らかなものだと思えていた。 以前なら平民の子供や、落ちぶれた貴族の子供には、作り笑顔で接していたことだろう、しかし今は違う。 マチルダ、ティファニア、ルイズが子供の相手をしているのを見ると、なぜだろうか、とても安らぐ…… 「…?」 ふと、周囲を警戒していたワルドに、何か人の気配のようなものを感じた。 手入れのされていない森は、獣道でもない限り歩いて通ることはできない、背の高い草で木々の隙間が埋められてしまう。 その草の向こうから、ガサガサ、という葉擦れの音が聞こえてきた。 「……」 血が冷めていく。 ワルドは短剣状の杖を手に持ち、腰を低くして木の陰に隠れた。 ガサガサ、ガサガサと近づいてくるその音だけでなく、周囲360度を警戒する。 敵か、動物か、第三者か、陽動か、疎開か、迷い子か、斥候か…… 考えを巡らせていくうちに、その音は間近まで迫ってくる。 ザッ、とかき分けられた草の向こうから姿を現したのは、全裸で、しかも胸と腹に陥没した痕の残るルイズの姿だった。 「!」 驚いて目を見開いたワルドは、そっとルイズに見えるよう顔を出した、左手で口を覆う仕草で『誰かに聞かれていないか?』という意図を伝える。 ルイズはさして驚きもせず、ワルドの仕草を見て口を開いた。 「大丈夫、追われてはいないわ…」 「どうしたんだ、大丈夫なのか?その怪我は?」 ワルドは『レビテーション』で身体を浮かせると、すぐにルイズに近寄り抱き上げた、右膝を曲げてそこにルイズを座らせ、足跡をつけぬようゆっくりと森の中を移動していく。 「ちょっと…手強いやつがいたのよ、けっこう、だめね、疲れたわ」 「血は必要か?」 「いい…」 ルイズの返事はどこか弱々しかった。 ワルドは、ティファニアや子供達に気づかれぬように注意しつつ、マチルダの部屋へとルイズを運んだ。 自室で裁縫をしていたマチルダが、ルイズの姿に驚いたのは言うまでもない。 「何があったのさ…あんたがそんな怪我を負うなんて」 「火のメイジよ、トライアングルか、それ以上よ。とんでもない熱だったわ…焦げるなんてもんじゃない、胸の肉が一瞬で炭になったもの」 「とんでもないね。ところで、そいつらは?」 「ダメージが大きすぎて、殺せなかった…詠唱する暇がないぐらい正確に火が飛んでくるのよ、記憶を消すのがやっとだったわ」 マチルダはルイズをベッドに寝かせようとするが、ルイズはその手を払った。 「すぐに行かなきゃ、あいつら、トリステインに向かってる」 「え?」 そのとき、がちゃりと扉が開かれワルドが入ってきた。 ワルドはデルフリンガーを、ルイズの座るベッド脇に立てかける。 「食事が出来たそうだ…食べる余裕は、あるか?」 「ごめんなさい、食事の時間も惜しいわ…ティファニアには悪いけど。ワルドよく聞いて、トリステイン魔法学院が狙われてるわ、とても強力な火のメイジの、傭兵達によ」 「!」 とたんにワルドの表情が険しくなった、思い当たるものがあるのか、ワルドは跪いてルイズに顔を近づけ、声を荒げぬよう気をつけて問いかけた。 「それは、この間デルフリンガーが言っていた奴か? 長距離から気配を探られたとか言う…」 「ええ」 頷くルイズに、マチルダがはっとした表情になった。 「まさか、白炎のメンヌヴィルじゃないだろうね」 ワルドもまた何かに気がついたように目を見開き、ルイズに問いかけた。 「…ルイズ、そいつは盲目では無かったか」 「顔に大きな火傷の痕があったわ。目じゃなくて…熱を感じてるみたい、そのせいで苦戦したのよ」 マチルダとワルドが顔を見合わせた。 「間違いないね、そいつがメンヌヴィルさ。とんでもない火の使い手だよ」 「メンヌヴィル?」 「とにかく、人でも亜人でも、焼いていたぶるのが好きなキチガイだって聞いたね、そんな奴に狙われるなんて…」 腕を組み、眉間に皺を寄せ考え込むマチルダだったが、ふと何かを思いついたのか顔を上げる。 「陽動ってことは無いのかい?この孤児院が狙われる可能性は?臭いや魔法で追跡されるとか…とにかく、一度調べるよ」 そう質問しながらマチルダがディティクトマジックを唱え、ルイズの身体を調査する。 ルイズの身体には何も仕掛けられている様子は無かった。 「尾行の可能性はごく低いわ。十分注意してた。森の中を移動する途中、何度か動きを止めて周囲の音を観察したの。 蟻の足音も、鳥の羽音も、地下の音も疑ったけど、それらしい音は感じられなかった」 「そう…それだけ注意してれば何とか大丈夫だと思うけど。魔法学院の件はどうするのさ」 沈黙が流れる。 時間にして数秒のことだったが、答えを決めかねているルイズにとって、それは一分よりも長く感じた。 「どちらにせよ、すぐ報告せねばならないだろう。 今の時期、アルビオンはラ・ロシェールを離れ、ガリア寄りになる。…遍在を繋ぎの取れる場所に飛ばすのは無理だ。僕が直接飛んでいこう」 ワルドの言葉に、ルイズ瞳が揺れた。 「……私も、私も行くわ」 ルイズの言葉に、ロングビルが血相を変えて叫ぶ。 「正気かい!? 言ったろう、シエスタって嬢ちゃんは吸血鬼殺しの英才教育を受けてるんだよ!」 「魔法学院に乗り込むつもりは無いわよ、可能ならメンヌヴィルって奴を迎え撃つ…もしくは、奴らの奇襲を奇襲してやるわ」 「あんた…! ああ、いくらなんでも、そこまで魔法学院に義理はないだろう?いくら王宮と繋がってるとはいえ、タダじゃ済まないかもしれないんだよ」 「義理なんて無いわよ。私はただ、あいつらの思い通りにさせたくないだけよ」 キッ、とマチルダを睨む。 その視線は極めて鋭いものだったが、恐怖は感じなかった、怒りではなく純粋な決意がそこに秘められており、マチルダはルイズの言葉に納得するしか無かった。 「マチルダ、悪いがティファニアに説明しておいてくれ。急用が出来たとな」 「わかったよ」 マチルダが部屋を出るのを見ると、ワルドはポケットからアルビオンの地図を取り出した、それは四つに畳まれた羊皮紙であり、広げると幅三十サント四方になる。 焼き付けられているのは地図と、ハルケギニアとアルビオンの周回図だった。 「ルイズ、場所と時間を教えてくれ」 ルイズはここ数日の間に知り得たことを、簡潔に述べた。 メンヌヴィルと接触した場所、時間、ウエストウッドへと移動した経路など… 馬車で移動した時に見た街道の風景や、町中の様子から、アルビオンの民が過酷な環境に置かれていると言うこともハッキリした。 できればクロムウェルを暗殺したかったが、それは『可能ならば』という但し書きがつくので、重要度はそれほど高くない。 ルイズも、またトリステインで待っているウェールズ達もそれが可能だとは思っていないはずだ。 話をしながらもルイズは、目立ちにくいくすみとムラのあるオリーブ色に染められた服に身を包む。 飾り気のないシャツ、足首を縛れるズボン、フード付きのマント、そして…デルフリンガーに手をかけようとしたところで、ルイズの動きが一瞬止まった。 ルイズはデルフリンガーの柄に手を触れず鞘を掴んだ、それはデルフリンガーに触れるのを恐れているようにも感じられた。 コツコツ、とドアがノックされる。 ワルドは地図を懐にしまい込みつつ、「どうぞ」と呟いた。 「お食事、食べていかれないんですか?」 扉を開いたのはティファニアだった、心配そうな表情をしていると、一目で分かる。 「ごめんね、せっかく準備してくれたのに…」 「いえ、いいんです。あ、でもパンがありますから、お弁当代わりに持って行ってください」 「ああ、そうか…ありが」「ごめんなさい、急ぐから食べていられないの、道中食べる暇も無いし…」 ワルドが、パンの入った小さな包みを受け取ろうとした時、ルイズがそれを遮った。 「そうでしたか…ごめんなさい」 「いいのよ。私たちが無駄にするより、みんなで食べた方がいいでしょう? ワルド、そろそろ行くわよ」 「ああ」 ワルドとルイズが、ティファニアの横を通り過ぎる。 「あ…」 その時、ティファニアはルイズの横顔を見て、記憶の中にある在りし日の母と重なった気がした。 兵士が屋敷に殺到したとき、生き残ることは不可能だと思いながらも、生き残るために毅然とした態度を崩さなかった母に。 「マチルダ姉さん…」 ティファニアは寂しげな瞳で、マチルダの顔を見上げた。 「なんだい?」 「二人とも、大丈夫、かな。何か危険なことをしに行くんでしょう?」 「心配しなくても大丈夫さ、あの二人なら大丈夫だよ」 「でも……石仮面さん、何か辛そうな気がする」 マチルダは顔を上げ、ルイズの後ろ姿を見送った。 一抹の不安があったが、それは口に出さず心の中だけで処理をした。 それから半日ほど後、すでに太陽は姿を隠し、二つの月が空高く上がっている。 ルイズとワルドの二人は森を越え、街道を越え、首都ロンディニウムとは逆方向になる川へと出ていた。 「ワルド。悪いけど強行軍になるわよ。川から流れ落ちる水に紛れるよう『イリュージョン』を使うわ。そこから雲を突き抜ければ、今の時期はガリア寄りの海上に出るわね」 「僕はそこから『フライ』を使って、トリステインまで飛べばいいのだな?」 「ただし高度は私の言うとおりに維持して貰うわ……哨戒に出ている竜騎兵に見つかる可能性もあるし」 「わかった、君の目を信用している」 二人は小声で会話をしながら、川沿いの道から獣道へと入り、岩場を歩いていく。 早ければ朝日を迎える前に、川の終点にたどり着けるだろう。 「パン、食べたかったな」 川沿いの岩場を歩いていたルイズが、不意に呟いた。 「今更どうしたんだ、貰ってくれば良かったじゃないか」 「歩きながらでも食べたかったわよ、でも、気を利かせてたっぷりバターを入れてくれたんでしょうね、臭いがしたわ」 「バターの香りが?」 「そうよ、あの臭いじゃ目立って大変だわ。私にだって50メイル離れていても分かる臭いだもの」 「なるほどな…そうか、臭いか。すまない、そんなことにも気がつかないなんて、僕も気が緩んでいたかな」 「攻める訳じゃないわ。それに、逆に考えるのよ、子供達に囲まれて良い休暇だったでしょう?」 「ふふ、まあな。生意気な奴がいたが、木の実を拾うときなんか、年下を庇ってよく動いていたよ」 どこか清々しいはにかみを見せて、ワルドが呟く。 ティファニアを母として、姉として慕う孤児院の子供達は、ティファニアのお陰かマチルダのおかげか、家族を守るという意識が小さいながらも根付いている。 「皆、血は繋がらなくとも兄弟のようだ……領民は皆我が子であると、先々代の王は言っていたそうだが、その通りかもしれん。新しい世代が育つのを見届けるのは、いいものかもな」 魔法を行使する貴族の、魔法によって領地を守るという観念の元になった、慈愛と勇気の意識。 それこそがティファニアの持つ精神であり、皆その影響を受けて育っている、そうワルドは感じていた。 ぴたりと、ルイズが足を止めた。 「…子供」 不思議に思ったワルドが、ルイズの顔を覗き込もうとするが、ルイズはミシリと音が立つほどに拳を握りしめて、ワルドに顔を見られぬよう早足で歩き出した。 「ルイズ?」 「なんでもないわ、急ぎましょう」 気を抜くと、歩くのを止めてしまいそうになる。 まるで体中を鎖でがんじがらめにされたような、過度の閉塞感を感じていた。 ルイズは、なぜ自分から『子供』という単語を使ってしまったのかと、ひどく後悔している。 ウエストウッド村の子供達は、皆素直で、小さくてもティファニアを守ろうという意識があって、とても眩しい。 そう、ルイズは子供達を見て、元気を分けて貰っている。 昨日、街道脇の森で、たまたま見つけた親子もそうだった。 自分のことを心配してくれた上、死体をケモノに食い荒らされぬよう、土に埋めようとしてくれた。 それなのに自分はその親子を『食った』。 ウエストウッドの子供達は、とても可愛いと思える。 しかしあの親子もまた、とても美味しかった。 子供を可愛いと思えるのも美味しそうだと思えるのも、どちらも偽りのない自分の意識。 石仮面を被り、吸血鬼となったときは、人間は餌に過ぎないと思っていた、合法的に殺人と吸血ができる傭兵を選んだのは、ただの気まぐれに過ぎなかったはずだ。 しかし今は、そんな自分が恐ろしい。 ふと…何かの拍子で、それこそ枯れ葉が風に舞うような、ごくごく小さな何かがきっかけで、ウエストウッドの子供達を『美味しそうだ』と思えてしまうのではないだろうか。 そうなってしまったら、次は? 『美味しかった』となってしまったら……… ルイズは、鎖で縛り付けられた体が、ゆっくりと海の底へと沈んでいく気がした。 震えそうな手を、力を込めて必死で押さえ、カチカチと鳴りそうな歯を、食いしばって必死に耐える。 そこでふと気がついた。 デルフリンガーは心が読める。 『だから自分は、デルフリンガーを恐れていたのか』と。 デルフリンガーを握れば、自分のしでかしたことすべてを見透かされてしまうかもしれない。 永遠に近い寿命を、共に過ごしてくれるかもしれないデルフリンガーに、嫌われてしまうかもしれない。 もし、ワルドにも嫌われたら? もし、マチルダにも嫌われたら? もし、ティファニアにも嫌われたら? もし、アンリエッタにも、ウェールズにも、姉様にも… ルイズの後ろを歩くワルドの目に、力強く映るルイズの足取り。 その芯は今にも崩れそうなほど危うかった。 To Be Continued→ 67< 目次 69
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16: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 01 37 ※ 本作には残酷な表現が存在します。また、本作はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません ――西暦1945(昭和20)年8月17日 北海道 増毛沖 「左舷に雷跡2つ!方位42距離300!」 「取り舵一杯!」 艦橋での反応は迅速だった。 病み上がりであるとはいえ、この艦を操るものは海軍軍人である。 祖国の激変とともにいささか怪しくはなっているが、いまだに階級章はそのままであるし、こうして海に出ることもできている。 「何が…」 「攻撃ですよ!」 艦長であるところの山田三郎大佐は苛立ちながら「お目付け役」にどなった。 もちろん英語である。 だいたいお坊ちゃんであるところのこの民生局からやってきた若手官僚はとっさの引き揚げ命令に際してもなにかと口を挟み邪魔をしてばかりだったから口調も荒くなる。 「誰が攻撃するというんだ!」 「決まっているでしょう。ロスケ(russki)の潜水艦ですよ!」 ああ、いやだいやだという風に首を振る御年25歳のGHQ係官殿!あなたはまだ現実認識を自分の脳が作り変えることができるとお考えなのですな。 そういった嫌味を口にしそうになるも喉元でこらえた山田は、大きく傾斜しながら左へ曲がり始めるこの艦がとった行動を思い返していた。 これがいわゆる走馬灯なのかと思いながら。 そもそも、太平洋戦争(実は閣議決定されていた大東亜戦争よりもGF司令部はじめ海軍はこちらで呼ぶきらいがあった)終結後の北方情勢は極めて複雑な経過をたどっている。 6月1日の降伏文書調印の後速やかに日本「本土」に進駐した米英中をはじめとする連合軍は当然ながら北海道やそのさらに北の南樺太、そして千島列島にも進駐していた。 当然ながら日本軍は武装解除し復員することになるはずだった。 が、ここで「連合国」の一員でありながらも対日宣戦布告がついに間に合わなかったソヴィエトがクレームをつけた。 原因は1943年のテヘラン会談に伴ういわゆる「テヘラン宣言」だった。 ソ連対日参戦の暁には「日本軍国主義によって獲得されたすべての領土の放棄がなされる」という宣言に対し、ソ連は日露戦争以前、すなわち明治新政府成立以後の侵略によって獲得されたという北方諸島嶼における民族自決の権利確保を主張し自国による進駐と進駐軍との交代を提案してきたのである。 これは完全に無視された。 大戦終結に際して暴露された「限りなく黒に近い白」といわれる「真珠湾の裏切り」(これは山田は眉唾だと思っている)やレッドセルといわれる共産主義シンパの策動にアメリカ政界が大混乱に陥っている中でスターリンが慌てて分け前確保に走ったとしか思えない話だったからだ。 その時点で米軍は南樺太に1個連隊を揚陸させており、樺太守備についていた第88師団は国境警備隊とともにすでに武装の封印処置を開始していた。 だが、対独戦を勝ち抜いた軍勢がシベリア鉄道を通って極東へ、それもカムチャッカ半島に揚陸艇とともに現れているという情報が世界を駆け廻り、北緯50度線の国境地帯をソ連軍が越えようとしてからは事情がかわった。 このとき、千島列島占守島には対岸のペトロパブロフスク・カムチャッキーからの軍使が到来し武装解除と進駐を一方的に通告してきていた。 東京のGHQは困惑した。 ワシントン・ポトマック河畔にて宣言された戦後処理方針において、条件付き降伏をした日本はまずその「本土」すなわち「内地」を分割しないと約していたからだ。 そして日本は、1943年に南樺太を内地に編入し内務省の管轄下としている。さらには日本人がいうところには樺太は幕末以来ロシアの継続的な侵攻によって奪われた領土だとさえいっていた。 しばし悩んだGHQ参謀2部は決断した。 「北方・満州方面においては暫定的に『連合国軍の監督のもと』日本軍を『境界』警備の任につける。あくまで暫定的な処置であり、以後の『境界』の曖昧さについては『我ら連合国』が決定する」 こう述べ、連合国軍同士の緩衝地帯に軽火器で武装した日本人を残し、自らは占守島や北海道、そして朝鮮半島の北緯38度線沿いに兵力を展開した。 欲に目がくらんだロシア人が「我ら連合国」といって自分達の主張が通ったと考えるなどとはまったく考えなかった。 そういったわけで、国境を突破したソ連軍に対して陸軍第88師団や中華民国軍から有形無形のいやがらせを受け続けていた関東軍が発砲したときにソ連軍は大義名分を得たと考えたし、GHQは完全に驚愕したのだった。 17: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 03 20 あとに残されたのは大混乱だった。 引き揚げを前提に遼東半島へと集結しつつあった満州はまだよい。 南樺太においては、「本土」であり「内地」ゆえに一般市民がいつもの通りの生活をしていたのだから。 独断で反撃を開始した日本軍を監督役の米軍が追認し弾薬庫の鍵を開けたのも当然だっただろう。 (なお、朝鮮半島北側や満州へ進駐し、勝者ゆえの暴虐を課した中華民国軍も生存本能には忠実でありこれと同様の動きをとっている) たまたま樺太に残留していた海軍第5艦隊所属艦の反撃で沿海州からの樺太西岸の恵須取上陸を企てた舟艇舞台が叩き出されたことから戦況は互角で推移。 攻勢を急ぎ過ぎたのか、それとも満州方面を優先したのかはわからないが、南樺太に投入されたソ連軍は2個歩兵師団にとどまっていた。 しかも、東部敷香に残存していた臨時独立戦車第53連隊(97式中戦車改二にて編成)による伏撃を受けた第214戦車旅団は大打撃を受けて後退。 この時点で樺太庁は50万近くの邦人の北海道への緊急疎開を決定し、全方位に救援を要請するに至っている。 GHQ参謀2部および日本軍艦艇を抑留管理していた在日米海軍部はこれを追認。 保管状態であった船舶が大慌てで宗谷海峡へ向かいつつあったわけだが―― ここで横やりが入った。 民生局およびアメリカ国務省だった。 いわく、偶発的な戦闘状態を速やかに収拾するためにも軍艦の派遣、それも日本艦の派遣はのぞましくない。 米艦艇の派遣まで住民の移動などの過剰反応は行うべきではない―― すったもんだの末に妥協案としてこの「艦」が派遣され、優先的に15歳未満の少年や乳幼児を移動させることが決まるまで6時間が空費された。 さらには現在位置を連合国軍およびソ連軍にも通知しながらの航海が義務付けられている。 そうした手続きをこの若い男は日本人乗組員を文字通り「虐待しつつ」ねちねちとこなさせていたのだった。 ああ、これは走馬灯というやつか。と山田大佐は納得した。 これは、たすかるまい。 あまりに至近すぎる。 復員船指定されて以来、本艦の聴音器は整備されていない。 もとが徴用艦であるからして、民生用としては極めて珍しい英国製聴音器を使うとしても部品が存在しなかったのだ。 噂の三式探信儀や三式聴音器があれば別だったのだが… 「もはやこれは戦争です。そんな中で満天下に位置をしらせながらいけば良い獲物になるのは当然でしょう。」 通信士にSOS発信を素早く命じた山田は、せめてこれだけはいってやろうと乱暴に言い捨てた。 そのくせ、口調は江田島で習った通りの流ちょうな英国英語(キングスイングリッシュ)であるのはしまらないな、とも思ったが。 「そんなわけがあるか!パールハーバーやレイテで無抵抗の相手を焼くのが趣味のジャップとロシア人は違うんだ!!」 ああ、なるほど。このお目付け役はそういう… と山田は納得した。 それでなければ手当たり次第に日本人乗組員をMPを使って銃床で殴りつけたり、延々と蹴り続けたりする子供じみた虐待行為になど手を染めないだろう。 個人的な怨恨を喜んで晴らすような性質の人間ではないはずなのだから。 逆説的にではあるが、艦内神社へガーランドを撃ちこみ落ちてきた御神体を踏みにじる様子を艦橋に見せつけ首にかけたロザリオにキスをするという彼の行為はその敬虔さを顔つきとともに証明しているのだから。 その時だった。 突き上げるような衝撃が2つ。 床が波打ち、山田をはじめ艦橋に立っている者たちはそろって宙に浮き、ついであらゆる方向に叩きつけられる。 「左舷後部、機関室付近に2発命中!」 開きっぱなしの伝声管からの悲鳴と笛というにはあまりに大きな不協和音が聞こえてきた。 平衡感覚が狂い、頭痛が襲う。 三半規管が轟音で狂わされたらしい。 そして考えるまでもなく、罐がやられた。悲鳴と怒声は、生きながら機関員が焼かれている断末魔である。 畜生め。やはり幸運の源を自ら潰した艦はこうなるか。 「総員、退艦!」 はいずっていき、伝声管に向けて怒鳴る。 この艦は基準排水量3800トンあまり。そこへ2発の魚雷を受けたのだ。もはやもつまい。 前方に閃光が見えた。 なんてことだ。あの潜水艦、浮上砲撃してやがる。 楽しんでいやがるな。 ああ、連中は知らないだろうが、本艦の来歴からすればよい意趣返しでもあるわけか。 契約の不備でソ連に引き渡されそこなった砕氷船なんて… 「お前のせいで…」 地獄の底から這い寄るような声が隣から聞こえる。 「ジャップ!血まみれの殺人者が!」 ああ。哀れな。 何が起こっているのかわからないらしい。 「早くいけ!」 いまだ艦橋に残っていた操舵手に向けて怒鳴る。 さて…どうやって生き残ったものだろう。 18: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 04 04 ――この日、樺太への救援へと向かった特務艦は2発の雷撃と15発の砲弾、そして無数の機銃弾を受けて日本海に沈没した。 船体を白く塗り、側面に巨大な赤十字マークを描いていたにも関わらず行われた攻撃に、対日理事会をはじめGHQや米国務省は驚愕した。 何かの間違いかというものは、現地に急行した海防艦「占守」に救助された米国務省職員からの報告と聞いて黙らされた。 短いながら幾度かの通信の応酬の後、舞鶴湾から一群の戦闘用艦艇が錨を上げ、北方へ向かう。 彼女の名を「信濃」。随伴にアーレイ・バーク大佐率いる米駆逐艦を伴う戦後日本初の「艦隊」は、賠償船指定されていたはずの優良船舶を伴って樺太へと急行したのである。 戦史は、同時期に遭難した稚泊連絡船2隻とともにこの事件を「三船殉難」と称している。 ――西暦1955(昭和30)年2月20日 石川島播磨重工 東京第一工場(造船所) 「お久しぶりです。『艦長』」 老年にさしかかって久しい山田三郎元大佐は、相手の声を思い出すのに1秒ほどかかった。 「ああ。『航海長』。君も来ていたのか」 にっこり笑った『航海長』は、「はい」と何度も頷いてみせる。 「どうやら、あそこにいた全員が呼ばれているようなのです。ほら」 意地の悪そうな表情で、ちらりと3つほど隣の空席を彼は見やった。 そこに記されていた名前と役職を見て、ああ、と山田は得心する。 「いやはや。彼も呼ぶとはね。 まぁ、『いろいろと』協力してもらったから縁はあるともいえるのだが」 「噂では、ソ連大使館にも招待状を送ったそうですよ。 いちおうはご同業になるわけですからね」 「それはすごい。意趣返しといってもこれ以上はないだろう。」 驚くというよりは、呆れた。 どうも上の連中のあからさまなやり口は好きにはなれないが、これくらいしなければ外国人は意図に気付かないのかもしれない、そんなことがちらと頭をよぎる。 あの事件により、山田は「帝国海軍で最後に艦を失った男」として新聞にその名を記された。 当時はあの樺太侵攻がソ連軍の警察行動だ、また日本側の先制攻撃によって戦端がひらかれたと公言する人々が多かった時代だ。 そんな中にあって山田は多くを失った。 彼は従容としてそれを受け入れた。 海軍で最後の戦死者を出した、それも「山田が愚かにも無電で位置を知らせながら航行した」のだから当然だ。 おかげで、彼は階級をそのままに軍を追われる。 死亡した乗組員の家族が連れてきた新聞記者の前で土下座をさせられる様子が全国に配信されたことで、同期はもちろん近所からは歩きざまに唾をはきかけられ、妻は黙って出て行った。 親戚からは罵倒の言葉とともに「族譜から抹消する」という手続きの紙のみがやってきた。 試作品だという抗生物質によって病から恢復したときは泣いて喜んでくれた相手からされた仕打ちは身を苛んだが、それも脅迫じみたGHQからの口止めを考えれば耐えることができた。 風向きが変わったのは、事件から1年後のことだった。 海上警備隊に幹部を連れた『航海長』をはじめ乗組員たちがあばら家(自宅は親戚一同の手にわたっていた)を訪ねてきて、ことの次第を二三聞くと、その足で帝都の第一生命館へと彼はいざなわれた。 そこで待っていたのは、グルー民政長官と、パットン元帥。 山田は、あのゴミを見るような目で自分へ命令を伝えた米国の官僚たちとは正反対の態度でことの次第に遺憾の意を表され、『誤報』を詫びられた。 19: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 04 50 完全に政治的な儀式であったのだろう。 何か要望を問われた山田は、「あの艦がいたことを忘れないでほしい」とだけ述べた。 翌日の全国紙の一面すべてにあの事件の詳細が掲載されたことで今の日本を支配するものが何かを知り空恐ろしくなるおまけもあったが… ともあれ、名誉回復を果たした山田は、嘱託として海上警備隊と名を変えた古巣へと呼び戻されて現在に至ることになる。 かの艦の艤装委員長をつとめていた頃からのその道の専門家であることが理由であったが、それは事態を見過ごすこととなった海軍からの謝罪でもあった。 以来、陸軍特殊船であった「高津丸」の改装にはじまり、現在に至るまで山田は造船畑と現場とを取り持つ中間管理職として過ごしている。 今回の任務にあたって、「高津」や青函連絡船の転用ではなく新造艦の建造を提案したのも山田だった。 あのとき自宅を訪ねてきた幹部はさらに怪しげな権力をもっているらしく、上司から漏らされたところによると新造艦の建造にあたって大きな役割を果たしたということだった。 「これは、決まりでしょうか?」 「まだわからないよ。」 期待するような『航海長』の言葉を山田は遮る。 だが、心の奥底では完全に同意していた。 見世物として海外へ飛び、会いたくもない国務省の「あの」スキャンダルを隠したがっている自分を射殺さんばかりの目をした役人と握手をし、そしてアメリカ海軍の最新鋭艦を同僚でありあの「大和」を作った設計者と視察までしたのだ。 あの「訂正記事」以来掌を返した世間に再び傷つけられ、猫なで声で手記出版をすすめてきた親戚への吐き気をこらえてまで山田が欲したもの、それは―― 「本艦を、『宗谷』と命名する!」 国防大臣がマイクロフォンに向かって宣言し、臨席した人々から拍手が沸き起こる。 東京 豊洲のこの石川島播磨重工東京第一造船所は船台式である。 山田は、用意された斧を振り下ろして支綱を切断した。 シャンパンが舳へぶつかって割れ、久寿玉が華やかな飾りと鳩を放つとともに、朝黴の浮いた船台が海面へ滑り降りていく。 その上に載っているのは、早期艤装と呼ばれる船台上で先に細々とした船体構造物や機械類を備え付ける作業が済まされた基準1万トンあまりの幅広の船体。 1957年に迫った国際地球観測年を前に一時は就役が危ぶまれながらも、ようやく完成の時を迎えたこの砕氷艦は、10月の就役後直ちに南極へと向かうことになっている。 残念ながら山田の姿はそこにはない。 だが… 「失ったものは…」 「艦長?」 山田は、自分が滂沱の涙を流していることに気が付いた。 「おかえり。宗谷。」 すべてを引き換えにして、再会した艦(フネ)へ向ける言葉は、それだけで十分だった。 ――砕氷艦「宗谷」は、この後20回の南極観測業務に従事。 後継艦となる「白瀬」の就役とともに引退。 記念艦として保存されている。 20: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 07 17 【あとがき】――というわけで、「戦後夢幻会ネタSS番外編 『失っったもの、そして』」をお送りしました。 かの船のファンの皆様、ごめんなさい。でも書き始めたらとまらなかったんだ… 21: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 09 06 19 修正。 ×山田雄二大佐 → ○山田三郎大佐 で。 22: ひゅうが :2018/02/21(水) 09 23 34 「失ったもの、そして」ですね。「っ」がひとつ多いです。誤字失礼しました。 25: ひゅうが :2018/02/21(水) 11 04 50 はい。 こちらでは偉大なる戦果として赤旗勲章を受賞プロパガンダ映画も作られています 本来は、国際法無視して先制攻撃した艦長がデタントに従い失脚破滅するとことか、平和的収拾に失敗する原因を作ってしまった国務官僚の苦悩とか乗り込んできた若手官僚が公民権運動進展と共に自らの過去の神社差別行為をひたかくしにしようとするところとか考えてましたが、あまりにジメジメしてるのでさくりとカットしています 42: ひゅうが :2018/02/21(水) 17 38 18 なお、御神体の鏡は修理されて二代目に再設置されております 国務省の格好いいところとか次は書くべきでしょうかねw ただ戦後すぐの頃は史実と同じく道化にならざるを得ないのです この頃の史実でもわりとひどいですからね 輪をかけてひどいのがキッシンジャーですが
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登録日:2023/08/30 Wed 16 00 00 更新日:2024/05/27 Mon 02 42 44NEW! 所要時間:約12分で読めます ▽タグ一覧 CROSS DIMENSION イフリート ガンダム ガンダム・ピクシー ガンダム外伝 ゲームオリジナル サイドストーリーズ かつて火を使った戦士は、 もう動くことも、 ふたたび大地を踏むことも ない。 わすれてはならない。 死にゆくもの達への祈りを 『死にゆくもの達への祈り』とはSFCソフト『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』に収録されたオリジナルストーリー。 後にPS3ソフト『サイドストーリーズ』でも収録され、『SDガンダム GGENERATION GENESIS』でも採用された。 ●目次 概要 あらすじ 登場人物連邦軍「アルバトロス隊」 ジオン軍「ウルフ・ガー隊」 登場機体 戦いの結末 概要 『CROSS DIMENSION』には初代『機動戦士ガンダム』をモチーフとした第1部があり、それをクリアすると遊べるオリジナルストーリー。 モチーフの一つは『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』であり、同作のような戦争の片隅で起こった小さくどこかやるせない物語を描く。 ガンダム・ピクシーやイフリートの初出なのだが、ゲーム自体がマイナーということもあって知名度は低かった。 本来は4部構成の物語で1~3部で3機のピクシーのそれぞれの奮闘が描かれ、最終章でピクシーが集結する…と考えていたそうなのだが、ゲームでの完全オリジナルストーリーは敷居が高かったことやSFCの容量的な都合もあり、第2部に相当する本作のみに収録になったそうだ。 後にゲームでのオリジナルストーリーは『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』で好評となり、ガンダム外伝シリーズとして定着していくこととなる。 新規モビルスーツのデザインはお馴染み大河原邦男。 オリジナルキャラのデザインは『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』や『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の川元利浩。 『CROSS DIMENSION』では連邦側、『サイドストーリーズ』ではジオン側の視点で物語が進行していく。 あらすじ ガルマ・ザビが戦死し5日後の宇宙世紀0079年10月5日のゴビ砂漠に一つの連邦軍基地があった。 砂漠の基地とは思えない物々しい警備をしたその基地には連邦軍の新型MS「ガンダム・ピクシー」が輸送されていたのである。 ちょうどその頃、隊長機に「イフリート」をもつジオンの敗走部隊「ウルフ・ガー隊」は補給を求め連邦軍基地を強襲する。 基地の警備を請け負った「アルバトロス隊」はガンキャノンのみの現状で防衛は不可能と判断し、ピクシーを起動させる。 様々な思いが渦巻く中、多くの命が散っていく…。 登場人物 連邦軍「アルバトロス隊」 主に左遷された士官からなる「はぐれ部隊」。 なぜかゴビ砂漠の真ん中にある連邦軍基地に駐屯する。 その目的は新型MS「ガンダム・ピクシー」をホワイトベース隊に届けること。 「こいつ・・・まだやるのか!どうしてだ!どうして、ここまでやるんだ!」 ボルク・クライ 声:東地宏樹 連邦軍側の主人公の青年。大尉。 『CROSS DIMENSION』では茶髪だが、近年では金髪。 良くも悪くも現場のたたき上げ軍人気質であり、何度も上官に反抗的な態度を取ったため左遷され砂漠の基地にいる。(*1) 現在の状況を「まるでアラモだな」と称するなど勉学にも明るいが、ニュータイプの存在もその目で見てないためか懐疑的。 部下思いではあり、部下には比較的慕われている。 基地にあるガンキャノンだけでは白兵戦で不利であり防衛は不可能と考え、命令違反とわかりつつピクシーを起動し敵を撃退していく。 元々はガンキャノンのパイロットなのでピクシーとは相性が悪そうだが、ピクシーのコンピューターのおかげで次第に乗りこなせるようになった。 だが、ノクト少佐の無理な命令や幾度にも渡る襲撃に神経をすり減らしていき、最終的には見殺しにされるも同然の任務を請け負ってしまう。 「ザクを先に落とせ!」とよく言うがザクになんか恨みでもあるのか…(*2) ダバ・ソイ 声:高橋伸也 ボルクの部下のガンキャノンのパイロット。 黒髪のモブ顔。地味。 元は香港で警官をしていたが、徴兵されてMSパイロットとなった経緯がある。 ボルクの事は慕っているもののどこか頼りない男である。 ヤーマン王家とは無関係。 サナ・ニマ 声:山本祥太 ダバとは対照的に金髪の濃い顔。近年では茶髪。 気弱な性格でかつては敵前逃亡をかましたらしいが、人手不足ということで釈放されている。 ボルクがピクシーに搭乗した後にガンキャノンのパイロットとして戦う。 敵が来た時に伝えに来る役目も務めているため一部では「時報」と呼ばれているとか。 ノクト・ガディッシュ 声:喜山茂雄 アルバトロス隊隊長。少佐。 元はジャブローにいたエリート士官だったが左遷され(*3)砂漠の基地に就任している。 エリートコースを外れてなお強いエリート意識の塊で、現場判断を一切聞きいれない、部下をクズと言う、戦力が足りないことを「貴様らがだらしないから」と罵る、ピクシーが必要と判断しても「使わせてほしければクズな私にピクシーを使わせてくださいと言い、私の靴をなめろ」と言うなど典型的なダメ軍人というか人としても最底辺。 ニマには「最低」とつぶやかれてしまっている。 ボルクを謀殺するために一人残そうとするなど、軍人としても無能な印象が強い。 こんな有様なのに『CROSS DIMENSION』では確実に生き残る。しかし、『サイドストーリーズ』では…? ちなみに彼の親戚はかのエルラン中将で「失態は揉み消してもらえる」と考えているらしく(*4)、エルランの顛末を考えると生還しても先行きは真っ暗だろう。 中の人は後のランバ・ラル。 ジオン軍「ウルフ・ガー隊」 犯罪者で構成された懲罰部隊。 本来は偵察と後方撹乱が主任務だが、中央アジア前線でに敗走したことで、砂漠をさ迷っている「はぐれ部隊」。 そのため、補給目的に基地を襲撃する。 「さいこうに、たのしいぞ、新型!やっとみつけたんだ!こんなところで、おわっちゃあ、もったいない!」 ヘンリー・ブーン 声:てらそままさき ジオン軍側の主人公の壮年。ボルクと同じく大尉。 かつてはキシリア閣下の配下の特殊部隊に所属し、ランバ・ラルに匹敵する軍人と称されていたが、クーデターの発起人の疑惑をかけられ、ウルフ・ガー隊の隊長となった。 冷静沈着で部下思いであり、虐殺任務にも反対するなど良識的な軍人。 だが、その本質は… 実は極秘裏に新型MS破壊任務を受けており、敗走も偽装。 マーチン以外の部下には「心が弱いため、真実を知らせると成功率が下がる」と思い黙っていた模様。 その根には「強い敵と戦いたい」という戦闘狂にも近い思いが渦巻いており、ピクシーと真正面から戦うために起動前のピクシーを見逃したり他の部隊と合流せず新型の様子見にしたりしている。 しかし、自分の欲のために部下や他の部隊が死んだことは流石に後悔していた。 この辺の下りは人間として問題があるように見えてしまうためか、『サイドストーリーズ』以降は「部隊員の犯罪歴を抹消させるために処刑任務に近い新型破壊命令を受けており、新型が起動したのも計算外。戦いたいマーチンやサキのみが生き残ったため、自分も戦いへの欲望に素直になった」という描写になっている。 こんどこそ「はぐれ者」から脱却できると思い、ピクシーとの最後の戦いに挑む。 マーチン・ハガー 声:三宅健太 どことなくサンダース軍曹似の褐色肌の男。 気性が荒く、補給も「飯より弾」と言うなどバトルマニアの気があるが、ピクシーの動きから「パイロットはまだ機体になれてない」ことを見抜くなど洞察力もある。 レイとレスタを気遣ったり、彼らを殺したピクシーを目の敵にするようになる事から部下思いのように見えるが、実際は新兵教育係の際に8人の新兵を死に至らしめた経歴があるなど両極端な人物である。 結果的に彼はその怒りからほぼ狂ったような状態で死んでしまう。 SFCの最終戦では設定ミスで届かない距離からしか攻撃してこないが、それもまた狂気を引き立てている…。 サキ・グラハム 声:浅野まゆみ 紫髪の紅一点。 冷静で洞察力が高く、下記二人より肝が据わっている。 元々はランバ・ラル隊に所属することを希望していたらしい。 兄をルウム戦役で失い、復讐のためウルフ・ガー隊に志願する。 そのため、隊員の中で唯一の犯罪歴がない。 最終決戦では爆発するザクからなんとか脱出するが…? レイ・ハミルトン 声:豊永利行 童顔の金髪。自分を同性愛者と揶揄した同僚2名を殺害したという恐ろしい裏設定があるらしい。 軟弱な性格なのか、良く弱音を吐いている。 アルバトロス隊との三回目の戦いで敗れて死亡した。 とある伝説のパイロットと同じ名前を持つが、残念ながら彼のようにはなれなかった。 レスタ・キャロット 声:烏丸祐一 アゴが目立つ男。家族を疎開させる為の金目当てに殺人を犯した元銀行強盗。 こちらもビンタされそうな軟弱男。 レイと同様に死亡。 ウルフ・ガー隊とは別の敗走部隊も登場するが名実ともにピクシーの噛ませ犬である。 登場機体 ガンダム・ピクシー 陸戦型ガンダムの派生機。 重力下での白兵戦に特化した機体であり、本来はホワイトベース隊に渡される予定だった。 二本のビームダガーとサブマシンガンを装備。このマシンガンのせいでウルフ・ガー隊に弾薬を補給されてしまったのでは…おのれユニバーサル規格!! MPUも優れており、初めて搭乗したボルグでも十分戦える上に、戦闘データの蓄積により戦うほど強くなる。 『CROSS DIMENSION』では第1部のガンダムのレベルを引き継ぐ。 ガンキャノン ピクシー搭乗前のボルクやサナ、ダバが搭乗。 本来は高火力・重装甲の強力な機体だが支援機なので近接攻撃手段がほぼ無いことから本作では低く見られがちで、元々は基地に6機あったが、激しい戦いで4機は落とされてしまったらしい。ノクト曰くクズなモビルスーツ 『CROSS DIMENSION』では第1部のガンキャノン2機のレベルを引き継ぐ。 そのため、育てていないと詰んでしまう可能性も。 余談だが、カイやハヤト搭乗のガンキャノンより技がないなど弱く設定されている。あの二人もエースであるという演出だろう。 ミデア ノクト逃走時に使用。 イフリート ヘンリーの搭乗機。 グフとドムの中間に当たる機体で、ヒートソードで武装した白兵戦向けの機体。 一時期はイフリート改の方が有名だった感がある。 ちなみに『CROSS DIMENSION』ではヒートソードを1本しか使わないが、『サイドストーリーズ』以降は他のシリーズに準拠して2刀流で使用している。 『サイドストーリーズ』ではこの機体を操作して戦いに挑むこととなる。 ザクⅡ ヘンリー以外のウルフ・ガー隊の機体。 ゲーム的な事情もあるが、『CROSS DIMENSION』では全員結構強い。 また、同作ではパイロットによって使用武器を変えてきている。 グフ ピクシーの噛ませにされた部隊がザクと共に使用。 戦いの結末 ノクトの嫌がらせによりボルクのピクシーは単機で出撃させられるも、イフリート以外のウルフ・ガー隊を撃墜する。 しかし、ヘンリーのイフリートもミデアの護衛をさせられていた2機のガンキャノンを破壊。 さらにノクト少佐はピクシーを置いてミデアでそのまま離脱してしまった。 もはや単機になっても向かってくるイフリートに疑問を持ちながらも戦うボルク。 部下への弔いや戦闘への歓喜に打ち震えながら戦うヘンリー。 ピクシーを駆る連邦の「はぐれ者」とイフリートを駆るジオンの「はぐれ者」の意地を賭けた最後の戦いが始まろうとしていた。 『CROSS DIMENSION』ではマルチエンディングとなっており、ボルクの勝敗によってエンディングが異なる。 ボルク勝利エンド 最終的に勝ったのはボルクだった。 戦いを楽しめたことに満足しつつも、死んでいった部下への謝罪や最後まではぐれ者であったことへの自嘲をつぶやきながらヘンリーは逝った。 ボルクも素晴らしい戦士への敬意をどこか感じていたのだった。 その時、ボルクは倒れているサキを発見する。 ボルクはサキを保護し、誰もいなくなった連邦軍基地で手当をするのだった…。 彼らの戦いは、 まだつづく・・・ TO BE COUNTINUED・・ (*5) ヘンリー勝利エンド イフリートはピクシーを倒した。 ボルクの最後の言葉は自分をここまで追い込んだノクトへの恨み節だった。 強敵を倒せたヘンリーは散っていった部下達へウルフ・ガー隊の強さを誇ったのだった。 その後、 ヘンリー・ブーン大尉は ソロモン防えい戦に、 さんかした。 が、その後のゆくえは わかっていない。 『サイドストーリーズ』では最終的に必ずボルクが勝つようになっておりエンディングも『CROSS DIMENSION』と異なる。『GGENERATION GENESIS』もこちらに準拠。 アナザーエンド 撃墜されたサキはノクトの乗ったミデアに搭乗していた。 「今までありがとう」と言い残し彼女はミデアもろとも爆死した。 最後の一撃はピクシーからだった。 ヘンリーは連邦のパイロットに称賛を送り、部下へ謝罪する。 だが、彼ははとても満たされていた。 残されたピクシーのボルク。 自分以外誰もいなくなった基地で「一体何のための戦いなんだぁーー!」と一人叫んだのだった。 戦いが人を狂わせるのか…? 人が戦って失い、戦いを憎み、戦いを否定し、 それでもなお戦うしかない。 人が戦いで得るものなどないと、 それが無意味だと誰に非難できよう。 生きることそのものが戦い。 戦いこそ全て。 我々は忘れてはならない…そんな、 死にゆく者たちへの祈りを。 その後、一隻のミデアがピクシーを回収していくのだった。 追記・修正ははぐれ者にお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 新型ガンダムに加えてガンキャノンが6機もある基地ってかなり豪勢に思えるんだけど……まあそういうバランスって作品次第か -- 名無しさん (2023-08-30 16 42 27) これはエピソード項目的にはセーフなん? いや悪いって言ってるんじゃなくて線引きようわからんなあってだけなんだけど -- 名無しさん (2023-08-30 23 52 49) ジャック・ヒギンズの小説のパロみたいなタイトルだな -- 名無しさん (2023-08-31 05 54 58) ↑普通に哀戦士の一節だと思ったのだが違う? -- 名無しさん (2023-08-31 14 25 09) まあ一年戦争開戦時から従軍してるような奴は大なり小なりザクにトラウマあるだろうな -- 名無しさん (2023-08-31 15 16 47) ガンキャノンが近接戦のできないクズモビルスーツとか許されざる暴言、確かにこのゲームでは格闘攻撃を持たないけどアニメでは普通に格闘してるし、ガンダムと同じルナチタニウム合金製だから弱い訳がない。だからボルク達がヘボいか、あのガンキャノンはジ・オリジンに出てくる初期型ガンキャノン的な奴だと解釈してる -- 名無しさん (2023-09-01 01 11 27) 「何の為の戦いなんだ」ってピクシーを守り通してWB隊に届けるのが任務でしょ?その防衛対象で勝手に前線に出てぶっ壊したボルクは軍人としてクズで間違ってないわな -- 名無しさん (2023-09-01 02 54 50) 2023-09-01 02 54 50 軍人としてはそうかもしれんが、上司に延々いびられつつ・左遷or懲罰された者同士で・戦略的な重要性もほとんどない不毛な戦闘が続いた挙句、曲がりなりにも(一部違反を犯してでも)作戦を達成し、同僚を生かすためにやってたのに報いも手元に残るものも何もないんじゃ「組織も信じられないし仲間はみんな死んだ!俺は何をやってんだ!もうやってられるか!」ってなっても仕方ないような気がする -- 名無しさん (2023-09-02 18 48 06) ↑×2 ノクト少佐、僻地勤務ご苦労様ッス -- 名無しさん (2023-09-02 20 12 58) なんというか、部隊自体が捨て駒だったんじゃないかな無いかといいたくなるな。 -- 名無しさん (2024-05-27 02 27 49) ピクシーは「陸戦特化型」になったガンダム(RX-78)の派生機であって、「陸戦型ガンダム」(RX-79G)の派生機では無いぞ。そもそも原典のSFC版は08小隊のリリースより大分前に発売されてるし -- 名無しさん (2024-05-27 02 42 44) 名前 コメント
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12/14 神の恩寵によるアーカルソン=リペルニア王、ソレイアードおよびマールリンゲン公、アトリオンの諸小公国の盟主、セレントス島領主、云々かんぬん…とさまざまな称号を背負う今代の合同立憲王政の女王陛下も、その内実はうら若き乙女にすぎない。 帝国諸侯と交渉の末いろいろと妥協して、中世以来久方ぶりに大陸ヤーディシアにおける合同立憲王政の所領を認めさせ、アトリオンの紳士諸君に仕事場を与えてやったことで、貴族どももブルジョワどもも女王陛下万歳を叫んで大人しくするようになったが、アーカルソン王戴冠の時にその正統性について古典語で書かれた重厚な書物を持ち出して曲解しケチを付けてきた小うるさい連中のことは、未だに忘れてはいない。 ちなみにその後、特にうるさかった連中に対しては優秀な言語学者の力を借りて彼らの家の年代記の矛盾を逐一指摘して差し上げることで少し静かになってもらった。 さて。 人払いを済ませて、今は私室に一人きり。 特殊な鈴を手に取り、目を閉じてそれを鳴らす。 目を開くと、こうだ。 「わざわざ私が呼ばなくても、何の問題も起きていないと思うのですが」 自分を拠り代にするという、この悪魔。優秀な人材ではある。学識も魔力も、アトリオンに並ぶものはいないだろう。後者についてはそもそも彼女以外に持っている者を知らないが。 「単に退屈しているだけよ。お茶会にでも付き合いなさい」 「それだけの理由で呼んだと?魔力をあまり浪費しないで欲しいのですが」 「安心して使えるような人材は北方とかマールリンゲンのほうにかかりきりだからね。今のスタックバラはいつもよりろくでなし率がサービス期間中よ。気が滅入るったらない」 「その気分はよくわかりますが、それでもほどほどにしてほしいんですけれどね。あなたに与えた魔力は護身用のものですから」 「拠り代の死亡と同時に、あんたはこの世界からはさようなら、か。別にあんたにとっては死ぬわけじゃないんだからいいんじゃないの?」 「私もこの世界は世界法則が不安定なのであまり長居したくはないのですが、ここでやらなければいけないことがまだ終わっていないので」 「…ま、いいわ。お茶会にしましょ。どっかの菓子屋が献上してきた茶菓子があるから。御用達商人に格上げしてほしいらしいわ、味を見てやりましょ」 「…まあ、私も紅茶を飲めるのなら文句はないのですが」 アンゼロットが指を弾くと、その従者(アン5世の認識ではそういうことになっている)が現れる。彼女も優秀だ。さっき言った優秀な言語学者とは彼女のこと。実際アーカルソン王への戴冠も彼女の古典語解読手腕に頼るところが大きい。それだけでなく、彼女が淹れる紅茶は実に美味しい。 「…お茶ですか」 「はい。ミリティーの淹れた紅茶の味が一番ですからね」 「わかりました」 「統治は順調にいっているようですね。諸国民の権利の擁護者…ちゃんとこなしてくれているようでよいことです」 「何が自由主義よ、と思うようなことはよくあるわね。面倒で煩瑣ったらありゃしない。私が直接やればすぐに片が付くようなことをごちゃごちゃとやってるし。あんたがやればもっとすぐに解決できるだろうけど」 「今の合同立憲王政は大きすぎますからね。どの道一人では無理ですよ、私であっても。何でも自分でやろうとしないことです。あらゆる分野をこなせるようになれるようにできている人間はいませんからね」 「あんたならできそうだけど」 「…ま、状況によっては。けれど、私には私の目的があるので」 「ふうん。まあそこには立ち入らないって約束だし、いいけどね。…それにしてもこの政府、無能とかクズがちょっと多すぎるんじゃない?」 「そこは啓蒙していくのがあなたたちの仕事なんでしょう」 「それでも…」 「じゃあ、こうしましょう。ダメな人材が多いというなら、ダメな人材同士潰し合わせればいいんですよ。そうすればあなたが直に手を下すのと違い、あなたが恨まれなくて済みます」 「そーゆー発想は嫌いじゃないわ」 2/8 立憲王政アーカルソン=リペルニアの中興の祖、アン5世。 そのパトロンである悪魔アンゼロットは、しかしこの日、合同立憲王政の所領ではないとある場所にいた。 「ルーンラントに帰属が戻ってよかったですね」 アンゼロットの従者である(とミリティー本人は認識している)ミリティーは、押し黙るアンゼロットを心配して話しかける。アンゼロットはそれを聞き、ふむ、というように答える。 「そうですね。ブランデーではアーカルソン国籍のパスポートは通用しませんから」 レンスベルク。わずかな期間に三度所属を変えた街。戦乱の中で砲撃と化学兵器とによって荒廃させられた都。 この世界の住民には、ちょうど我々にとってのパッシェンデールのようなものとして記憶されることになるだろう。 〈ザザ…ザザザ……わたくし、アン5世は、諸勢力の均衡ならびに諸国民の権利および正統性の擁護者として、四重帝国が潰えたヤーディシア大陸の情勢について…〉 ちょうど正午。昼のニュース放送が始まる。アンゼロットの懐にあるラジオはアーカルソン=リペルニア女王アン5世の演説を流しはじめた。 演説の内容は今後の大陸の国際秩序に関するもの。フォロノワ帝国が瓦解し、ただ一人戦争に関与せずに平和を保った合同立憲王政は、戦うことなくしてこの大戦の勝者となった。ゆえに、それを語る責務がある。 そして、この後もアン5世が玉座にある数十年の間、合同立憲王政は海の支配者、覇権国家として栄華を極め、大陸は彼女の巧妙な勢力均衡政策により仮初めの平和を保つのだ。 しかし彼女が崩御して後、アトリオン側の王国とヤーディシア大陸側の所領は王位継承法の違いによって分裂し、それによって合同立憲王政は大陸を調停する力を失い、そして四重帝国の瓦礫の中から生まれた新しい国々が再び戦乱へと走っていくことになる。 そういったこの後の合同立憲王政そしてこの世界の運命というものは、アンゼロットにとってはもう知っていることで、この世界の住民にとっては、もちろんまだ分からないことだ。 この世界の住民は、大戦が終わり、ついに真の平和が訪れたと祝福していることだろう。 それはさておき(この世界の住民にとってはさておかれては困ることだろうが)、レンスベルク近郊の完全なる荒原を二人は歩く。 「マスター、これ、ですかね」 そこにはもとは戦車だったものが転がっている。その中の一つに、アンゼロットとミリティーは注目した。 「ああ、これですね」 「…彼女は、ここで何を思ったでしょうか」 「さて、私には分かりません。もし分かったとしたら、私は彼女にとって必要のない存在だったでしょう」 「…そういう言い回しはマスターらしいですね」 「月光花」 アンゼロットはそのまま古式ゆかしき魔法を発動する。もしそこに第三者がいれば、真昼にも関わらず、一瞬月が輝いたかのような錯覚を受けただろう。その月の輝きは結実して、一輪の花が現れる。 「…紫露草」 「平安あれ。我らに永遠の安息あれ、そして永遠の光あれ」 「「Requiem æternam dona eis, domine, et lux perpetua luceat eis.」」 「…さ、戻りましょうか」 「はい、マスター」 二人が戻る先は、スタックバラの王宮、ではない。 このゲームは終わった。 彼女たちは、またいつものように次の世界へ向かって旅立つのだ。 なんぞ レンスベルク。リーゼンバウムとの最前線にある都市は、当然ルーンラントとリーゼンバウムの間の全面核戦争にあって、短距離核ミサイルによって焦土となるのが定めだ。その定めに従い、核攻撃によって都市は灰燼と帰した。 その荒地に、一人の女性と一人の老人が立っていると、そこに偶然ルーンラント陸軍の部隊が通りかかる。 「ん?生存者か…身分証はあるか?リーゼンバウム人じゃないだろうな」 「アーカルソン人の考古学者です。パスポートはこちらに」 「わしもじゃ。パスポートは…ほれ」 「二人ともアトリングか。…一応、敵国ではない、な。しかし、避難便は既に全部出たはずだが…」 「乗り遅れてしまってな。まだ何か帰る手段はあるかね?」 「…マールリンゲン公国まで行くしかないだろう。リーゼンバウムに逃げるのも手かもしれんが、命の保障はないな…」 モーリス老1 六庫。沈陽の領土の最南部に位置する炭鉱の町だ。しかし、最南部とはいいつつ、ここから他国との交流、などというものはない。 密林の植生は長らくの大寒波の中でかき乱され、すさまじい様相を呈している。そこを越えて、隣の国に向かうことなどできない。いや、そもそも隣に国があるかすらわからないのだ。 …だから、六庫の巡撫の下にそのノーマンズランドを越えてやってきた旅人が現れたという報告が上がった時、彼は仰天するほかなかった。 とはいえ、役人は規則に従うもの。絶対主義の下、女帝の気まぐれで左右される国制にあっても、女帝の関心を惹かないものは何も変化させられることはない。彼はこういう状況に対応するための古い規則を探し、授権の規則に従って現在割り当てられていない「入国管理官」なる職務を自らこなすこととした。 【ある料理人の旅行記 六庫編】 「お初に。アドリアン・モーリスと申しますぞ」 「…ああ。よく、あの荒原を越えてきたものだ。…どこから来たのだ?」 「出身はアトリオンのスタックバラですな。料理人として、食材探しをしておりましてな」 「いや、そうではなく…」 「ん、今回はリーフシッタから来ました、ということになりますかな。あっちの香辛料とカレーの文化もなかなかのものですが、やはりもっといろいろと探し求めたいものがありましてな」 「リーフシッタか…確かに伝承では向こう側にそういう国があったと伝わっているが…」 「地図も持ってきておりますぞ。ご覧になりますかな」 「ん、出してくれ」 モーリスはカバンの中から茶葉の入った缶やら香辛料の入った瓶やらアトリオン製と思われる得体の知れない機械やら、どう見てもカバンに入らなさそうな分量の様々な品物を取り出し、そのあとにさらにカバンに手を突っ込み、やっと地図を手に取った。 「地域の地図はともかく、広域地図はほとんど役に立ちませんでな。出すのも久しぶりで、もうダウランの港に着いたとき以来ですな…。さて、これですぞ」 「ほう…なかなかどうして面白い。ところで、地域の地図といったが、この辺の地図もあるのかね?」 「ああ、ありますぞ。何百年だか昔のものですから、地形以外は信用できませんがな」 言うが早いかモーリスが懐から取り出した地図は、巡撫の目にもおおむね正確な地形を写し取っているように見えた。 モーリスの指が地図の上を横切り、ピタエフスタン半島からこの六庫までの経路を指し示す。 「ふむ…これはなかなか…そういえば君は西ヤーディシアから来たんだったか。次の目的地は七星かね?」 「いや、しばらくはこの地の料理を学んでいくつもりですぞ。次にどこに行くか決めるのは、それからですな」 「そうか。…ともかく、大体の事情は分かった。入国許可手続きやらなにやらで少しかかるから、待っていてくれたまえ。ところで、怪獣の卵の話は聞いたかね?」 「ここに来る途中で噂は。料理人としても気になるところですな」 「試してみるかね?」 「ほう…よいのですかな?」 「配給の中には私の分もあってね。思ったより多くて片づけるのに難儀していたんだ。よかったら一つ、どうかね?」 食後。 「さすがの腕だな。卵料理だけでもこれだけのレパートリーがあるのか」 「手元にあるものでできるものだけですから、こんなところ。という感じですが」 「そうか…よかったらどれか、レシピを教えてもらえるかね?」 「ん、レシピですか。そうですな…この辺なら手軽で美味しく、量もさばけるでしょうな。渡しておきますぞ」 そこに扉をノックする音。巡撫は扉の外に顔を出し、何かを受け取り、また戻ってくる。 「…さて、君の扱いだが。規則通り、滞在は許可しよう。とはいえ完全な自由行動は認められん…我々の監視下で行動してもらわねばならない。…それと、宮廷のほうから招待状が来ている」 「ほう」 「料理人としての腕を試したいそうだ。いかがかね?」 「それは、実のところ選択肢はないのではありませんかな」 「まあ、そうだろうね。で、どうするね」 「参りましょう。少なくとも、料理の腕で失望させるつもりはありませんぞ」 「…そうか。ま、頑張りたまえ」 …大寒波の時代であっても、アーカルソン製の通信機をもってすれば、世界中のどこからでも衛星を介してアトリオン本土とやり取りをすることはたやすい。 だが…モーリスは、それとは違う、もっと不可思議な方法…端的に言えばテレパシーで、そもそもこの世界の中にはいない誰かとやりとりをする。 そのために、通信機はいらない。彼は寝床の上で、ほかの誰にも気づかれることなく、報告のための通信を行えるのだ。 〈…はい〉 〈そうですな。東の民も西の民と変わらず、でしょうな。一たび他国に蹉跌あれば、徹底的につけこむ。国際秩序に裁判官などおりませんからな〉 〈怪獣の卵ですか?美食としては…うーむ、そうですな…正直それほど、ですな。栄養価の面からは確かに優れておりますが。あとは、珍味としては悪くないとは思いますがな〉 〈…はい。とりあえず、西京に向かう…というより、連れていかれる予定ですな。西京でアレを見つけてしまえれば、すぐに帰れるのですがな〉 〈早く帰る気なんてないだろう、ですと?ははは…そうですな。何か一つ、この地の優れた料理技術を学ばずには。…帰れませんな〉 〈…はい。引き続き、捜索にあたりますぞ。ではまた、次の定時連絡のときに〉 モーリス老2 鴻。大陸戦争の北部戦線において、一時チチウイッカプイが奪い、そして鷹連邦軍が奪還した都市。 戦場となった都市にふさわしく、すべてが銃火と爆風に晒され、破壊されつくした街。 強制停戦により、今は戦雲に切れ間ができている。しかし、鷹もチチウイッカプイもこのまま和する気などないだろう。 数期後にはまた、ここは最前線になって、そして再び焦土と化すはずだ。 だから、住民は今も疎開したまま。ただ要塞の修築だけが進む。この街は、荒れ果てた都市のままだ。 見た目などどうでもよい。戦いに備えられてさえいれば、それでよいのだ。 【ある料理人の旅行記 第二話 都市3 鴻】 「初めてお目にかかる。私が鷹連邦軍参謀長、ヘルベールだ」 「わしはアドリアン・モーリスです。…まさか参謀長自らお見えになるとは」 「客人なのだろう?それも異世界から来た。ならば、こちらも礼を尽くさねばならない」 「…なるほど」 「さて、本日は何用か。我々のできる範囲であればよいのだが」 「ああ、わしは食材探しをしつつあるモノをも探しておりましてな、チチウイッカプイで活動がしたいのですな。 ところが、このままだとチチウイッカプイは滅びてしまうか、少なくともかなりの部分は焼け落ちるでしょうな。 まあそれでもよいのですが、そこに私の探し物があるかもしれませんで。その前に探しに行きたいのですが、鷹の軍の敵になるのは厄介でしてな」 「…なんだそんなことか。これを持っておくといい。これさえ持っておれば、あなたは鷹の友軍だ。 チチウイッカプイ人からか、チーシャの奴らからか知らんが、奴らの持っているものならなんでも好きなものを好きなだけ奪っていけばよい。 貴方は鷹の客将扱いになるのだから、チチウイッカプイにいる奴らのものを略奪するのは、一般命令を遵守していることになる。望ましい功績だ。むしろ、可能な限り奪い尽くせ」 「了解しましたぞ。では何か一つ、手土産を持ってまいりましょうかな」 「いや、それは必要ない。この程度、客人への最低限の礼儀を果たしているだけにすぎん。返礼は不要だ」 「なるほど。しかし、何か…」 「必要ない。私が欲するのは敵の首級。それも、自ら上げた手柄だけだ。何の意味もない」 「…そうですか。いずれにせよ、わかりましたぞ」 モーリス老あとがき いつであるのかも、どこであるかも定かではない場所。 狭間の世界の一つ、アンゼロット記念大学。 その転送方陣の間。 一瞬光が瞬き、その光が人型を纏う。やがてその光が収束すると、その中から一人の老人が現れた。アドリアン・モーリスだ。 「戻りましたぞ」 「お疲れ様です、モーリス。どうでしたか」 そしてモーリスを出迎えるのはアンゼロット一人。 「基本的な要件については、遺漏なく。記念碑石についても、争乱の門の女帝についても、断片ごとの傾向についても。極端な例ですが、そう悪い例ではないでしょうな」 「…そうですか。よいことです」 「ただ…バークタイン殿については、残念ながら適切なワープアウトができておりませんでした。解析データは回収してありますので、これをもとに時空連続体補償系の誤差項の再検討が必要でしょうな」 「しかたありません。前回のうちに修復プログラムが完成していればよかったのですが、あまりにも時間がかかりすぎました」 「そうですね。…では、またしばらく待機を。今日の夕食は期待していますよ?」 「お任せください、我が主。東ヤーディシアの食材と調味料をたくさん仕入れておりますからな、これだけあれば数年は飽きさせませんぞ」
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登録日:2024/02/24(土) 17 37 48 更新日:2024/05/06 Mon 23 05 32NEW! 所要時間:約 10 分で読めます ▽タグ一覧 ただしハイペリオンは除く イギリスの本気 サラブレッド ダービー馬 ハイペリオン系 二冠馬 小さな巨人 小柄 海外馬 種牡馬の中の種牡馬 競走馬 競馬 馬 駄々っ子 互角の馬が競えば、常に大柄な方が勝つ。 ——ただしハイペリオンは除く。 ハイペリオン(Hyperion)とは、1930年生まれのイギリスの競走馬。 小柄な馬体に反した高みをゆくがごとき素質をもって「サラブレッドの芸術品」とまで評された、20世紀前半を代表するスーパーホースである。 概要 父ゲインズボロー、母シリーン、母の父チョーサーという血統。 父は母系の4代前にあの大種牡馬セントサイモンを持つイギリス三冠馬。ただし普通の三冠馬ではなく、 第一次世界大戦中で三冠レースのことごとくが代替競馬場での開催となる中これを制したという変わり者。 おかげで当時は三冠馬と認めないという意地悪な風潮もあったそうだが、今となっては正統な三冠馬として広く認められている。 その評価を確たるものにした立役者こそ、当のハイペリオンである。 母はセントサイモンの3代後の直系で、ナッソーSなど大レースを含め22戦16勝と大活躍した女傑。 母の父チョーサーは大した競走成績ではなかったものの、セントサイモンの直系子孫としては ブルードメアサイアーとして顕著な成績を残した種牡馬である。 ここまででお分かりの通り、このハイペリオンはセントサイモンの3×4のクロスを持つ。 いわゆる「奇跡の血量」というやつである。 これはシリーン、チョーサーの馬主で馬産家でもある第17代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿が好んで多用した比率であった。 …のだが、セントサイモンが巨体で知られていたにもかかわらず、そのクロスを持って生まれてきた馬はやたらと小柄だった。 これは母シリーン(とその父チョーサー)の影響が強く、シリーン自身もあまりに小柄で1歳の調教を断念されかけたり、 小柄すぎて戦えないだろうとクラシック登録もされなかったほどだった。 しかしその仔馬はさらに小さく、この時代の標準的な体高が163cm程度なのに対し、 本馬の体高は成長してもたった153cmしかなかった。 あのドリームジャーニーでも158cmなのだからさらにそれ以上の小ささである。 当時は競走馬は大柄な方がレースで強いと信じられており、あまりにも小柄なので去勢すべきとの意見まであった。 良血なので種牡馬になれる可能性があるからとこれは流石に見送られたが、 もし実行されていたら世界の競馬の歴史がまったく違うものになっていただろう。 関係者を困惑させたのは体格だけではなく、当時不吉と信じられていた四白、すなわち4本の脚すべてが 白い靴下を履いている点もあった。 これらのことからほとんどの人から評価されていなかったのだが、 第17代ダービー伯爵の専属調教師だったジョージ・ラムトンだけはこの馬を高く評価。 「今まで見た中で最も美しい馬です。この馬はダービーを勝ちますよ」 かくして競走馬としての道を歩むことになった本馬は、母シリーンの名(ギリシア神話の月の女神セレーネ)からの連想で、 「高みをゆく者」の意を持つティターン神族の太陽神の名をとり「ハイペリオン」と名付けられた。 小柄な巨神の幼少期 こうしてラムトン厩舎に入ったハイペリオンだが、あまりにも小さすぎて飼い葉桶に首を届かせるのにも一苦労する有様だった。 ただし精神的には非常にスケールの大きさを感じさせるものがあり、鳥や飛行機など空を飛ぶものに強い興味を示して 見えなくなるまで目で追う癖があったという(普通の馬は上空のことにはほとんど注意を払わない)。 また気性難で知られるセントサイモンの血が濃いながら、性格は非常に温厚だった。 だが、どんな馬にも人間を困らせる特徴が一つはあるもの。 ハイペリオンも例外ではなく、性格は温厚ながら超がつくほどの頑固者だったのだ。 その頑固さは徹底しており、 たとえ調教中でも気に入らないことがあるとすぐ立ち止まる 立ち止まったら気が変わるまでテコでも動かない 風邪で発熱しているさなかでも歯を食いしばって投薬を断固拒否 あまりのことに、調教に参加した主戦騎手からは「全くの駄馬か、とんでもない怠け者のどちらかだ」と評される有様だった。 しかしこれまで数多の名馬を手掛けてきたラムトン師はハイペリオンの性格をよく理解し、その意志を極力尊重。 調教中に動かなくなってもまた動く気になるまで辛抱強く待った。おかげで朝食を食べ損ねることも。 その甲斐あってハイペリオンとラムトン師の間には強い絆が生まれ、ハイペリオンも調教中は真面目に走るようになったという。 2歳時 1932年5月にドンカスター競馬場のゼトランドメイドンプレート(芝5F)にてデビュー。 しかしここでのハイペリオンは見るもの全てが新しい競馬場の環境に興味津々でレースどころではなく、 18頭立ての4着に敗れた。 しかし6月のニューステークス(芝5F)を逃げたうえで3馬身ぶっちぎってコースレコードのおまけつきで勝利すると そのたぐいまれな素質が開花。 3戦目も連勝し4戦目こそ凡走してしまったが、しめくくりのイギリス2歳馬最強決定戦デューハーストステークス(芝7F)では 道中最後尾を走りながら末脚だけの競馬で他馬をごぼう抜きして2馬身差で快勝してみせた。 2歳時は通算で5戦3勝、大レースも制しており立派な成績ではあったが、この年は牝馬の実力馬が充実していて その割を食って全体での評価はそこまで高いわけではなかった。 まあ真価は翌年発揮されるわけなので間違いではないのだが… 3歳時 3歳を迎えた当初のハイペリオンは調教で軽く捻られるなどまるで調子が上がらなかったため、 クラシック第1冠の2000ギニーステークスに調整が間に合わなかった。 結局この年の初戦は5月のチェスターヴァーズステークス(芝12.5F)まで遅れてしまう。 しかしここまで時間をかけた甲斐あって、出遅れと重馬場をものともせず快勝。 揚々と、かつてラムトン師が「ハイペリオンが勝つ」と予言したダービーステークスに乗り込んだ。 シリーンの時の反省からちゃんとクラシック登録をしていた。 しかし相変わらず調教で走らないため、1番人気ながら単勝7倍台とそれほど支持されてはいなかった。 時代を考えると超小型馬が1番人気というだけですごいのだが。 この年のダービーは英国王ジョージ5世とメアリー王妃が大観衆とともに観戦する天覧競馬だったのだが、 ハイペリオンは天覧にふさわしい完璧なレースを披露した。 道中は自陣営のペースメーカーを見つつインコースの好位を確保し、終盤が近づくのに合わせて前進。 最終コーナーを2番手で直線コースに突入すると、「ミサイルのような加速」で他馬を一瞬のうちに突き放し、 2着馬に4馬身差をつけて圧勝。名誉ある154代目のダービー馬となった。 ちなみに4馬身差というのは公式記録なのだが、実際には8馬身差はあったと言われ、 当時の映像を確認しても、どう見てもそれぐらいの着差である。 少なくとも断じて4馬身ではない。 また、勝ち時計の2分34秒0は当時のダービーレコードで、これは20世紀後半はおろか 現代のダービーステークスの勝ち時計と比べても優秀な部類である。 例えば2022年のデザートクラウンの勝ち時計が2分36秒38、 2023年のオーギュストロダンの勝ち時計が2分33秒88であるといえばわかりやすいだろうか? 何度か先述の通り、当時の競馬界では巨体馬の方が強く、小柄な馬はそれだけ劣勢であるというのが常識であった。 そんな中にあってハンデを負いながら自分よりも大きな馬たちをことごとく蹴散らしたハイペリオンは賞賛の的となり、 イギリス競馬ファンのアイドルの地位をも確立したのだった。 次走のプリンスオブウェールズステークス(芝13F)では小柄な馬体に酷な131ポンド=59.4kg という古馬並みの斤量が課せられたが、 その程度で負けるかとばかりに16ポンドも有利をもらっていた2着馬に2馬身つけて圧勝。 しかしレース中に後ろ脚を痛めてしまう。負傷自体は大したダメージではなかったのだが3か月の休養となり、 クラシック3冠目のセントレジャーに向かうローテに狂いが生じた。 ラムトン師はハイペリオンに馬衣を着せて炎天下のもと調教を行うという強引すぎる荒技で馬体を絞り、 何とかセントレジャーステークス(芝14F)に間に合わせた。 そのセントレジャーでは終始馬なりのまま走り続けただけで2着に3馬身差の完勝。 難なくセントレジャーを制覇し、イギリスクラシック二冠馬となった。 そのあまりの強さにダービー伯爵は、 「2000ギニーも出れていたら三冠馬間違いなしだったのに…」 と残念がったとか。 このセントレジャーで再び脚を痛めたため、3歳シーズンはこれをもって終了。 この年は4戦4勝とまさに無敵であった。 4歳時 ハイペリオンが4歳を迎えたこの年、ラムトン師は高齢ゆえ体調を崩しがちになった。 ラムトン師と付き合いの長いダービー伯爵はラムトン師の体調に配慮して、彼との専属契約を解除。 新たにコリッジ・リーダー調教師と契約を結び、ハイペリオンもリーダー師のもとで走ることになった。 しかしこのリーダー師とハイペリオンはすこぶる相性が悪かった。 リーダー師はハイペリオンが調教で怠けていると考えてハードな調教を行い、 ハイペリオンもそれに対してへそを曲げることが増えていった。 双方の名誉のため付け加えるなら、これはリーダー師が短慮だったとかハイペリオンの気性が悪いとかではなく、 ハイペリオンとラムトン師との間の絆が誰にも真似できないほど強かったということであろう。 いずれにしても最大の理解者を失ったハイペリオンの競走生活は、ここから歯車がかみ合わなくなっていってしまう。 まずは5月のマーチステークス(芝10F)から始動し、138ポンド=62.6kgという過酷すぎる斤量を課される。何のいじめだ? 直線で大きくヨレながらもクビ差で辛勝。 ここから中12日で向かったバーウェルステークス(T12F)ではダービーで2着に下していたキングサーモンと同斤量ながら、 3/4馬身差まで詰め寄られるあわやのレース。 だんだん雲行きが怪しくなってきたなかでイギリス古馬中長距離路線の大一番であるアスコットゴールドカップ(芝20F)に 直行することになったが、ここで事件が起こる。 このレースにはハイペリオン最大の理解者であったラムトン師が観戦に訪れていた。 そしてレース直前、馬場入り口付近で車椅子に座っているラムトン師の姿を見つけたハイペリオンは、 ラムトン師をじっと見つめたまま動かなくなってしまったのである。 あせった厩務員が悪戦苦闘しどうにかパドックまで連れて行ったが、このレースは結局 勝ち馬から9馬身差以上ちぎられた3着に敗れてしまった。 この時の綱引きで体力を消耗したのか、折からの不良馬場が祟ったのか、20Fという距離が合わなかったか、 はたまたラムトン師との日々を思い出して現状に嫌気が差したのかは分からない。 この次走のタリンガムステークス(芝12F)では2頭立てのマッチレースとなったが、 ハイペリオンが142ポンド=64.4kgというトンデモ斤量を課されたのに対し対戦相手のケースネスは29ポンドも軽く、 この斤量が災いしたか直線の競り合いでアタマ差遅れ敗戦。 このレースを最後にターフを去ることとなった。 4歳時は4戦2勝、通算で13戦9勝。 4歳時に振るわなかったのは一般には調教師の交代とイカれた過酷な斤量が影響しているとされる。 しかしそれだけのハンデを小柄な馬体に負わされてなお勝っているのだから立派なものだろう。 何度も述べたように馬体は小柄だったのだが、極めてバランスがとれており、サイズ以外は良い馬体のお手本のような姿だったという。 また小柄ながら並外れた脚力を持ち、それがハイペリオンの素晴らしい競走能力を支えていた。 その脚力を活かした「後ろ脚で立ち上がったまま歩く」という芸当が得意で、牧場でもそれをやって周囲を驚かせて楽しんでいたという。 その活躍ゆえ、記事冒頭のように、以前からあった 「互角の馬が競えば、常に大柄な方が勝つ」 という格言に、「ただしハイペリオンは除く」の文言が追加されたという逸話は有名。 当時を知らない我々にしてみれば、13戦9勝という戦績やダービーで4馬身差という数字からは なぜ競走だけでもそこまで高評価を受けているのかは到底知りえないが、 この馬のダービーでのレース映像は残っている。 「サラブレッドの芸術品」とまで謳われた走りを見て、ぜひとも当時の風を想像し、感じてみてほしいものである。 …だがハイペリオンの真の活躍は、ここからであった。 世界を席巻する巨神の血脈 引退後の1934年から、ダービー伯爵の領地でもある生まれ故郷のウッドランド牧場にて種牡馬入り。 そして種牡馬入り直後から活躍馬を怒涛の勢いで量産。 1940~1942、1945、1946、1954年の6度にわたって英愛リーディングサイアーに輝いた。 有名どころでは、 ダービーを制覇、自身も種牡馬として成功しあのテューダーミンストレル等を輩出したオーエンテューダー 英国王ジョージ6世の愛馬となってイギリス牝馬三冠を達成したサンチャリオット アメリカに持ち込まれてケンタッキーダービー、プリークネスステークスを勝ち、父の世界進出を決定づけたペンシブ などなど、イギリス一国にとどまらない活躍を見せた。 さらにカナダに持ち込まれた牝駒レディアンジェラはあのネアルコと交配しニアークティックを産んでいるなど、 母父としても大活躍する万能ぶり。 しかも「ハイペリオンの血を広く生産者に提供したい」というダービー伯爵の意向で、 種付け料は種牡馬入り当時の400ギニーのまま最後まで据え置かれた。 「えっ 誰でもハイペリオンをつけていいのか!!」 「ああ…しっかりつけろ」「おかわりもいいぞ!」 先述のオーエンテューダー以外にもオリオール、ロックフェラなどのように直系産駒が種牡馬として成功したこともあり、 かくしてハイペリオン系と呼ばれる一大血統を形成するまでに至ったのであった。 日本競馬に与えた影響も絶大なもので、ロックフェラの系統からは二冠馬メイズイや元祖アイドルホースのハイセイコーらが出ている他、 それ以外の直系子孫でもTTG時代を築いた緑の刺客グリーングラス、芦毛の逃亡者セイウンスカイなど、枚挙に暇がない。 とはいえ盛者必衰が世の常で、1960年代半ばから興隆したノーザンダンサー系に対し次第に劣勢となっていき、 21世紀を迎える頃には世界的にほとんど壊滅状態となってしまっていた。 セイウンスカイなんてすっかりハイペリオン系が廃れた頃の生まれであり、父の出来が悪かったとはいえ雑草血統扱いされる始末であった。 現在は直系子孫はイギリスとオーストラリアに細々と残っている程度となっている。 もっとも、孫のフォルリの系統から出た繁殖牝馬スペシャルがノーザンダンサーとの間にヌレイエフを、 さらにスペシャルの娘のフェアリーブリッジがノーザンダンサーとの間にサドラーズウェルズ・フェアリーキング兄弟を輩出。 これらが一大勢力を築いたことで、直系こそ絶えたものの、ハイペリオンの血の存在感そのものは未だ絶大である。 そもそもノーザンダンサーの父ニアークティックにハイペリオンが入っているため、ヌレイエフにせよサドラーズウェルズ&フェアリーキングにせよ、 ハイペリオンのクロス持ちということになる(前者はハイペリオンの4×4、後者は4×5である)。 実際、現代日本のサラブレッドにおいても、ハイペリオンが入っていない馬は存在しないと言っていい。 種牡馬入り後もその温厚な性格は変わることなく、子供に頭を撫でられても噛みつかず、訪問客に対しても愛想よく対応していたという。 ファンサを欠かさない名馬の鑑。 第二次世界大戦中はドイツ軍の空襲を避けて疎開しなければならなくなるなどの混乱にも直面し、一時はアメリカへの避難の 申し出もあったのだが、ダービー伯爵は「たとえイギリスが灰燼に帰したとしても、ハイペリオンは決して出さない」と、 イギリスの地に踏みとどまり続けた。 戦後も29歳になるまで元気に種付けを行っていたが、ついに1959年に種牡馬を引退。 その翌年からだんだんと元気がなくなっていき、秋の寒波をきっかけに衰弱著しく、1960年12月9日に老衰で亡くなった。 ハイペリオンが亡くなった時、ダービー伯爵はかつてウィンストン・チャーチルが自身の邸宅を訪れた際の記念品であるブランデーを開け、 「我々の時代における最も偉大な古き友2名(ハイペリオンとチャーチル元首相のこと)のために乾杯」 と述べて友人たちとこれを飲み交わしたという。 チャーチルは当時まだ死んでないというツッコミは無粋である。 ハイペリオンの遺骨は保存されており、あちこち移動した末に現在はニューマーケット競馬博物館に展示されている。 もし競馬好きのアニヲタ諸氏が当地を訪れることがあったら、ぜひ詣でてみてほしい。 英国ジョッキークラブ(現BHA:英国競馬統括機構)は、近代競馬の母国イギリスにて1750年に創設された同国の競馬統括組織であり、 日本のJRAに相当する組織である。 そしてジョッキークラブの本部事務所は世界最大の競馬町ニューマーケットにあるのだが、その建物正面には1頭の小柄な馬の銅像が置かれている。 その銅像は、当時の英国の人々をその圧倒的な走りで魅了し、後に一大血統を成して未来の礎になったある名馬の功績を讃えるべく造られたものである。 その馬の名前こそ、ハイペリオンである。 互角のwiki篭りが競えば、常に追記・修正が勝つ。 ―ただし冥殿は除く。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 名前 コメント
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暑い真夏の炎天下。 首都東京の高層ビル群の狭間、雲一つ無い青空の中に、 ぽつんと浮かぶ、銀色の円形物体。 目をこらさないとそれが何なのか分からない。 目をこらしても何なのかよく分からない。 確かに空に浮いて、しかもその一点から全く動こうとしないそれは、別段面白味のないただの銀色の皿だけど、それを見た人達は、皆一様に首をかしげる。手のひらを眉に垂直に当て、目を細めて、考える。腕を伸ばして指をさすほどの、大きな関心は示さないけれど、ビルの谷間で人々は、しばらく呆然と空を見上げる。 「あれは、なんだろう?」 「鳥でもない、飛行機でもない、ヘリコプターでもない」 「ましてやスーパーマンでもない」 だいたい平均30秒くらい、アスファルトの上で足を止めて見上げるが、特に動きもなければ見た目の印象も強くないそれは、忙しく勤勉な日本人達をそれ以上長く立ち止まらせる力はなかった。 正午過ぎの昼休み、ハンバーガーショップの外に置かれたテーブルで、OL達が「アレ」について話し出す。上司の悪口、昨日の彼氏とのいざこざ、こないだの日曜に買ったパンプスによる靴擦れの話のあとに、「そういえばさあ」と出てきた、空に浮かぶ銀色の皿の話題。 「アレなんだろうね」 「男の子達も話してた」 「やっぱどう見てもUFOだよね」 「アハハ、ウケる。ユーフォー、アハハ」 「いるんだねーUFO、私幽霊とかすぐ信じちゃうからさあ」 「誰が乗ってんのかな、アメリカ人?」 「アハハなんでやねん」 「ねーアメリカ行きたくない」 「行きたーい」 定刻通りに帰宅する若い社員達を、歯切れの悪い挨拶で送り出した後、夕日が差し込みオレンジ色が広がり始めたオフィス内で、残業のための一服を味わう男達2人が、窓から空を見上げて、アレについて話し出す。 「アレ、いつから居ます?」 「おとといからじゃなかったか」 「全く動き無いんですよね」 「うん、ただ居るだけだね」 「警察とか、なんか自衛隊とか、動かないんですかね」 「特に何か悪さをしてるわけじゃないしなあ」 最も早く、この話題が目に見える形として世間に広まりだしたのは、インターネット上だった。各ブログや掲示板で、謎の未確認浮遊物体として写真が掲載され、それについての真剣な議論をされたかというとそうではなく、「俺も見に行こう」「やめとけ20秒で飽きるぞ」「見てきたけどホントに浮いてて笑った」といった物見遊山的なネタ物として扱われるのが関の山だった。 ただ徐々に徐々に、銀色の円盤が、都民の話題、ネットの流行りから、国民の話題へと拡大していくと、状況はだんだん複雑さを増すようになる。そして、話題に飢えたワイドショーや全国紙の社会面の隅あたりで「アレ」が扱われるようになった途端、今まで知りつつも静観に回っていた各機関が、動きを見せ始めた。 あるテレビ局が、ヘリコプターを飛ばしてアレへの急接近を試みた。人々はアレの真下に群がり、正直既に飽きてきていた関心を奮い立たせ、事の成り行きを見守っていた。その模様は生中継され、周辺の各オフィス内で一時仕事の手が止まっていた。 「ただいま、謎の円盤のちょうど真下に来ております!下から見ていた時の実感よりも、遙かに上空高い所に浮いているようです。ちょっとですね、このヘリではこれ以上近づく事は困難と思われます!」 「いかがですか清水さん、そこから見た円盤の印象というのは。何か地上と異なる点は見受けられましたか?」 「はい、思った以上に、丸いです!」 人々は仕事に戻った。地上の群衆に流れが戻った。もう人々にとってその円盤は、オフィス街の真ん中に突如出現した、ただのオブジェ以上の何者の価値もなかった。 空に背を向け、ビルに吸い込まれていく大勢の人の中で、とりあえず最後まで見守っていようと立ち止まったまま見上げていた内の1人が、声を上げる。 「ヘリがもう一つ来たぞ!」 それは警察のヘリコプターだった。中継は切られていた。警察に追い立てられ、連行されるように、2台のヘリコプターは円盤から離れていった。 人々はそれを眺め、そしてプロペラ音が聞こえなくなると、静かなざわつきがビルの狭間で沸き上がり始めた。 「もしかして、アレは、たいへんなモノなんじゃないのか」 「危険なモノなんじゃないのか」 「俺たちは危険なモノの下で働いてるんじゃないのか」 それからずっと毎日のように、ビルのガラスにヘリやセスナの音が響くようになった。その音を聞く度に、外に出て全く変わり映えのしない円盤を見上げる度に、人々に不安が募るようになった。ただの円盤が浮いているだけなら、もう風景に同化して、誰も気に留めず、不安を感じる事も無くなっていたはずなのに。国か民間か知らないが、毎日あの円盤に向かって乗り物を飛ばし、近づいたり離れたりを繰り返してざわつかれては、無視する事も出来ない。地上で働く人々の意識はまたもや、あの不動の円盤に注がれていた。それも、今度はネガティブなシンボルとして。 「毎日毎日毎日毎日、ヘリと飛行機の音で落ち着かず、仕事もはかどらず、あの円盤を見上げるたびに発狂しそうです」 「眠ろうと目をつぶると、瞼の裏に一点の銀色の円盤が浮かんできて、眠れないんです」 「きっと国も、あれが何なのか分からないから、調べようと近づいてるんだと思います。てことは、結局誰1人、アレが何なのか分かってないってことじゃないですか。誰も知らない未知の存在が、私たちを常に見張っている…そう考えたら、気持ち悪くてもう」 そうした精神的な圧迫が各所で報告され、それがメディアに掲載されるほど、見物人も増していった。最近は本物のUFOを見たさに外国人も増え、そこで働く人々と観光客との摩擦がちらほら見受けられ始めた。望遠鏡がよく売れるようになった。 「いいなあ、エイリアンのすぐ傍で働けるなんて、毎日がドキドキだぜ」 そんな言葉を、昼休み中の会社員が耳にし、つい発作的にその観光客に対して暴行を振るってしまった事件は、その夜のニュースを熱くさせた。 銀色の小さな円盤が上空に出現してから5ヶ月、地上を歩く人々が以前に比べてめっきり減り、その代わり「銀円盤被害者の会」(ギンヒ会)が毎日地上で待機し、近づいたヘリコプターに対し「円盤を撃墜せよ」と巨大な横断幕を広げた。その運動は、逆に円盤をストレスに感じていない人々を逆上させた。上空も地上もやかましくなり、とても働ける環境で無くなった。経済の中心部における経済活動の停滞は何としても避ける必要があり、政府はいよいよ円盤の回収を目標に掲げた。最も、アレについての首相の発言に、「空のゴミとでも思ってもらえばいいんじゃないですか」というものがあり、それに対し「どっちがゴミだバカ」「まさにどちらも目の上のゴミ」と国民から予想以上の猛反発をくらったという経緯を挟んでいたが。 2月某日、1年に2日あるかないかの東京の降雪記録日、決算期を前に何としてでも人々のモチベーションを回復するため強行されたのは、円盤直下を中心とした半径20㎞圏内を出入り禁止にしての、円盤回収作戦だった。 「回収って、具体的にどうやるのさ」 「墜とすしかないだろう」 人々は家のテレビから、もぬけの殻になった銀色の東京都心を見つめていた。雪と雲で銀色に染まった銀色のビル群、その上空に浮かぶ銀色の小さな円盤、やがて現れた、銀色の戦闘機。誰もが、弾で撃ち抜かれ、煙を吐いて墜落していく円盤の姿を想像した。俺の働いてる場所に落ちなければいいなと考えていた。 しかし次の瞬間、大きな爆発音と共にカメラが揺れ、黒い煙がもくもくとビルの隙間から立ち上っていた。円盤はこれまでと何一つ変わっていない。戦闘機が東京の真ん中へ突っ込んだのだ。 「大変なことが起こった」たちまち世間は騒ぎになった。あれはエイリアンの超能力的な遠隔攻撃ではないか。いやただの操縦ミスだ。超スローモーションで再生するとレーザーの光のような物が見える気がする。間違いなく日本経済を麻痺させようと企む国際テロ組織の犯行、あの円盤もグル。911の際も謎の飛行物体が確認されている。全ては宇宙人の仕業なのではないか。円盤にはうかつに近寄れない。いつ同じ様なことが起こるか分かったものじゃない。 それほどの貴重なサンプルを世界が放っておくわけがなかった。中国が堂々と国軍機を日本に飛ばしたのを皮切りに、アメリカやロシアといった特に宇宙政策に力を入れる国々に、次々と東京上空の防空識別圏は無視された。「最も不審かつ危険な物体を、各国の協力でもって回収・調査し想定されうるあらゆる危険を未然に防ぐことは、我々人類の未来に安全と平和を保証するためにも最重要といえる事項である」とされ、日々、国籍不明の飛行機やら地上では謎の調査団体やらが、いつの間にか当然のように危険物扱いされた円盤の周りにひしめき合い、とてもじゃないが一般人が近寄れる状況ではなくなってしまった。 それでも円盤に対する直接攻撃は躊躇われていたが、こんなに周りをぶんぶん飛んでいるのに一向に動ずる気配のない円盤にしびれを切らし、ついにどこぞの国がミサイルを撃ち込んだ。そして、どこぞの国のわけわからん技術により大きく円盤を外れたミサイルは、そのまま良い具合に米軍機の右翼に直撃し、機全体のバランスを大きく崩しながら都庁に突っ込み爆発、炎上したのである。 その一連の事故が、故意によるものだとしてお互いの国が猛烈なバッシング対決を繰り広げ、そこで日本がアメリカに肩入れするものだから、米軍機による911を再現されておきながらその態度はいかがなものか、いい加減あの神社参拝やめたらどうだと謂われのない非難をくらい、円盤のことなどそっちのけで、東京上空に集結しながら、お互いの首根っこにナイフを突き立てているような一触即発の状況を作りだしていた。ギンヒ会の横断幕がいつの間にか「よそ者戦闘機を撃ち落とせ」になっていた。 そして日本が、「自衛」の名の下に、現在の危機的状況を緩和するための、武力発動に踏み切った。曰わく「国際間の非協力的現状を打開し、最優先課題である円盤との平和的和解及び東京上空からの即時退去を完遂させるため、円盤に対する直接ないし間接的敵対態度をとる国は、その課題の実行すなわち我々国民の安寧を妨げるすなわち我々にとって円盤以上の脅威であると判断し、可及的速やかに排除する方針を取る事で、一刻も早い経済活動の再開と市民の安心を得る、そのための自衛」とし、「これは戦争ではない」と言いつつ、「そもそも勝手に入ってきたほうが悪い」と影で呟くように遠慮無く他国機を撃ち落とし始めたから、もう収集がつかなくなってきた。 「本音を言えば円盤独り占めしたい」ともはや国レベルでの私利私欲を剥き出しにした、醜い奪い合いが勃発した。円盤の下で。上空ではミサイルが飛び交い、地上では銃弾の音がひっきりなしに響き、先進国の中心部は瞬く間に戦場と化した。円盤からレーザーが発射されるという噂が流れれば奪い合いが激化し、円盤を撃ち落とそうとすれば円盤を守ろうとする勢力が衝突した。 「Tokyo」を占領すれば、その上空に漂う円盤も手に入れることと同義だ。そうして日本は、北から南から西から東から、あらゆる方面から上陸され、侵食の的となった。人々は疎開し、それでも安全な場所などどこにも無いと知るや否や、他国への亡命を求める声が後を絶たなくなった。「日本は円盤ばかり守って私たちを守ってはくれない!」しかしさっさと日本の国力を弱体化させるためには、数百万の日本人の命は軽くあしらわれた。日本の防衛力こそが今や世界にとって煙たい存在だった。しかしその煙たさも、世界大戦が幕を開けるまでのことだった。 円盤の下に、煙と瓦礫と血の塊が集まり、日を追う毎にその塊は範囲を拡大し、やがて捨てられたそのスペースは、円盤の下を中心としてひどく静かなものだった。今聞こえるのは、東京からさらに向こうの、山の向こうの、海の向こうの、どこかから響く微かな銃声だけだった。 円盤は何もしていない。ただそこに浮いていただけだ。 きっとアレに乗っている宇宙人は、今頃ほくそ笑んでいるだろう。 こんなにも事が上手く運ぶなんて。こんなにも人間は共食いが好きだなんて。こんなにも大きな世界が脆いなんて。 こんなにもあっけなく、自分たちの手を汚さず、地球を侵略できてしまうなんて。 人間はこんなにも無言の圧迫に脆弱だった。何もしない存在には耐えられなかった。何もしない強さを持った宇宙人に、この土地を奪われても、文句は言えない。 だが円盤は降りてこない。 宇宙人達は姿を現さない。 いつまでもいつまでも、東京上空から地球を見下ろしている。 あの円盤を神として讃えようとする人々が居た。現人類にとってアレは、すぐそこに居ながらにして、我々の理解の範疇にない超次元の存在であり、かつ我々に理解できるよう形を持った、この世で誰もが目にする事のできる唯一神である。東京上空を世界の中心とし、あの円盤の下を聖地としよう。それが、彼ら新興宗教集団の目的だ。 2つの目しか持たぬ低俗な我々にも認識できる形でもって、天空から舞い降りてきてくださり、そして愚かな私たち人間を、それでも静かに、慈愛に満ちた眼差しで見守り続けてくださる超存在。また同時に、我々の弱さを、我々自身の行いから、教訓として身を持ってご教示してくださっている、懐の深き寡黙で偉大な師。それがあの円盤なのであると。世界全人類がアレを神の化身と認める事で、やがてこの循環する苦しみから逃れることが出来るであろうと。真の平和とは、あの円盤様を軸として回り始めるだろうと。 その教えを説いた教主が、人類の行いに対する許しを請いに、捨てられた戦場と化した聖地・東京都心の、砕けたコンクリートの地を踏んだ。硝煙の匂いが教主を取り囲む。教主は円盤の真下に跪き、キリスト式に祈りを捧げる。 「神よ、円盤よ、どうかこの罪深き人間達をお許し下さい。そしてまた、何故この時代、こうしてここに姿をお見せになったのか、その真意を、私にご啓示下さい」 教主が頭を垂れ、目を伏せると、突然、両肩のあたりに悪寒が走り、とっさに、全身がバネのように跳ね上がった。五感の鋭さは人並みではなかった。教主は空を見上げる。円盤が動いている。違う、大きくなっている。違う、降りてきている。違う違う、あれはどうみても、落ちてきている。 瓦礫の上を、四つんばいになって、手のひらの痛みも感じぬほど必死に掻いて、その場から逃げた。教主が両手両足を止めて、息を飲んで振り返ると、まさに円盤が地面に着地する寸前だった。 重くて強い音が破裂して、教主を含む空間に一気に響いて、遅れてから周囲の瓦礫がビリビリと鳴り出す。固くて細かい乾いた破片が、教主の目を襲う。一瞬視界を奪って、それから円盤の影が、教主のもと居た場所に浮かび上がる。アレは、思ったよりも小さいようだ。 教主は恐る恐る近づく。そこにはもう、神に近づくというような神聖な心境はなかった。世界を破滅に導いている、恐ろしい未知で異形の物体が、突然私の目の前に落ちてきた、その事の重大さに対する恐怖と、恐いもの見たさのような好奇心だけが、教主を動かしていた。まさかほんとにこんなことになるなんて思ってなかった。中から何か現れて、私を殺しにかかるのではないか。自分が教主などと名乗っているのが実にくだらないなと、その物体に相対した1人の中年白人は思っていた。 しかし、これはまたとない、特別で貴重な瞬間であるという揺るぎない思いが、教主の足を一歩一歩進ませていた。 おそらく、24時間円盤を遠くから監視している組織があって、既に円盤が落ちてきたことも情報として伝わっており、ここに大群が押し寄せるのも時間の問題だろう。もしかしたらそこでまたドンパチが発生するかもしれない。そんなものに巻き込まれたくはない。だがしかし、だからこそ、今、この円盤とファーストコンタクトできる私に与えられた権利を、逃したくないのだ。 円盤の前に立ち、やっと、神聖な気持ちを取りもどした。この私が祈ると同時に、この円盤は落ちてきた。円盤は私を待っていた。この権利こそ、私が教主である証に違いない。そしてコレは、神なのだ。 教主はついに円盤に触れた。金属だった。そして、その銀色の金属の一部である円盤の側面に、プラスチックで出来た四角いフタのようなものがはめ込まれていることに気付いた。金属とプラスチックの間に、丁寧に溝が掘られていた。そこに指を挟み込み、ゆっくりとプラスチックのフタを剥がした。 単2電池が4本刺さっていた。 教主は腹を抱えて笑った。電池切れで落ちてきたに違いなかった。きっと電池を取り替えてやれば、またこの円盤を空に返してやれるに違いない。あまりに笑いすぎて涙が出てきた。 そして教主は笑いながら悔しがった。今もうこの東京には、電池を売っているコンビニ一つすら無い事を、心底悔しがった。