約 197,515 件
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/22.html
駅に到着する。熊井は、職場までビル街を行きながら秘書と連絡を取った。 部下からの報告や日程を確認、出社を果たす頃には、丁度よい按配に汗ばんでいる。 エントランスでガードマンに社員証を掲示し、部下や同僚等と挨拶を交わしていると、 正面からやって来た有原と遭遇する。彼から届いたメールへ返信しそびれていたが、 彼の方は気にした様子もなく、あっけらかんとした声で件のメールと同じ内容の事を言った。 「昨日はどうしたんだい、せっかく例の店予約していたのに。あれからどうだい?」 「うん、もういいんだ。悪いね折角よくしてもらったのに」 「いい? 疲れてるんだろう、疲れはとれたの?」 社の生え抜きの部長である熊井と、中途採用で課長待遇の有原とでは立場は違うが、 同い年という事もあり、親睦会等で懇意になってからは気さくに話せる仲であった。 とはいうものの、昨晩の桃子――今思い出したが苗字は嗣永といった――との係わりについては、 お互い触れずに置こうとする、暗黙の了解が知らぬ間に出来ており、一言も彼女の名は出なかった。 「まぁ、また疲れたと思ったら頼むよ」 「予約はすぐに取れるから、いつでも」と有原が言って、2人は別れた。 熊井が、個室デスクの椅子へ座ると、先ほど携帯電話越しに話した、秘書の徳永も入室した。 美人秘書というには些か器量に欠けるものの、彼女の脚線美は典型的なバービー人形タイプであり、 社内でも頗る評判がよく、当人もそれを意識してかしないでか、好んでミニスカートを穿いているようだ。 徳永は「シュガーも入れておきました」と、熊井に紅茶を差し出して、その花開く笑顔を注いだ。 朝礼を終え、熊井は会議に取り掛かった。 ←前のページ 次のページ→
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/38.html
晝間を無爲に過ごすのも口惜しいので、茉麻は部屋べやの掃除を始めた。 嘗て、掃除を日課と決め込んでゐた頃は隔世の感。 スッカリ身體の方も鈍つてしまつた。 と言つても、3日に一遍はするのだけれど、黒い家具が白くなつてしまふのはあつとひふ間だ。 まづはリビング。ウエスや掃除機等で、隈なく、住み家を綺麗に仕上げてゆく。 サイドボードに立てられてゐる、去年の夏に夫の友人である有原や、中島と、熊井一家で 長野へデイキャンプに行つた際、撮影した記念寫眞を懷かしみながら、付著した塵を拭きとつた。 次は寢室である。黏著クリーナーに、夫と自分の陰毛が纏はりついてゐる。 思ひがけず、茉麻は、昨晩の出來事を再び腦裡へ呼び戻すのだつた。 萎えてしまつた夫のそれを、口で懸命に慰めても、卻つて彼を苦しめてしまふ。 自分には彼を悦ばす術がない、彼が情愛を吐き出す寄す處とはなれない、……眼に涙液が滲む。 かうして、夫に愁ひでゐる茉麻ではあつたが、多分に自己の欲求不滿をも含有してゐた。 それは、本來の彼が與へてくれる、烈しく貪るでもなく、淡泊に片付けるでもなく、 ゆつくりと脈打つ樣な、やがては死に至るであらう豈弟への渇望だ。 彼の氣持ちが高まり、向き合つて一體となつてかたどられる、命を奪ふ“顎”が、 追憶を通して、茉麻の肝臟を啄ばむ大鷲となつた。 心に群がる猛禽どもを追ひ拂ふつもりで、ベッドの傍の小棚にある、長女が5歳のとき母に呉れた、 ピカチュウのぬいぐるみの埃を拂ひ、次いで、ぬいぐるみの隣の小さな立て時計を見た。 信樂燒の香爐等、有原からは樣々な品を贈られてゐるが、茉麻はこれが一番のお氣に入りだつた。 子供部屋へ入ると、フト茉麻は、先日中間テストのあつた事を思ひ出した。 梨沙子も舞も、あまり見せたがらないが、仕舞つておく場所は解つてゐるので、勝手に確認する。 「舞はまだましだけど、お姉ちやんはひどい點數ね。名前も間違へてるわ」 我が子達の答案用紙を眺めながら、母は再教育の必要を感じた。 ←前頁 次頁→
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/28.html
バーを出るなり紙を握りつぶさうとしてゐた熊井を、背後から特徴ある聲が呼びとめた。 「待つて、ごめんなさい」 振り向く熊井。桃子が必死の形相で驅けてくる。 あまりにも急ぎ過ぎるから、桃子はつんのめつて轉んだ。 助け起こす熊井。桃子は尚も縋りついた。 「どうしたの?」 「怒らないで聞いて下さいね」 さう斷つたのち、息を整へつゝ桃子は説明を始めた。 「わたし、本當は會社員なんかぢやないんです。全部、仕組んだことで……その、 實はクラブに勤めてるんですが、水商賣の人間とはお會ひしてゐただけないんぢやないかと 思つて、常連の有原さんに協力していたゞいたんです」 「有原が常連?」 「いつも中島さんとご一緖に來店されます」 「ふうん。それで、どうして會ひたいと?」 「中島さんの擕帶にくまゐちよー、いへ、熊井さんが寫つてゐるお寫眞を拜見して、 その、ひ、ひとめぼれ、を……奧さまがいらつしやることはわかつてゐますし、 たゞお顏を直接拜見してみたかつただけだつたんです。 でもやつぱり騙してゐるのには變はらなくて。本當にごめんなさい」 「さう。本當のことを話してくれてありがたう」 素つ氣なく返事をすると、熊井は捕まへたタクシィへ乘り込まうとしたが、 不意に橫から張り出して來た桃子の脣は避けきれなかつた。 尖りのある眞に迫つた感觸が、熊井の神經を隙間から刺戟した。 「困るよ」 熊井は、動搖を隱せないまゝ、桃子を振り切るやうにタクシィを發車させた。 あとで桃子の連絡先を記した紙を捨て忘れたことに氣づいたので、車の窻から投げてやつた。 丸めた紙は、一瞬だけ螺旋を描いて舞ひ上がり、道路を跳ねていつた。 ←前頁 次頁→
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/43.html
夕食後、茉麻は次女を部屋に戻してから、長女だけを呼び出した。 リビングテーブルに置かれてゐる煎餅と團子とお茶が、長丁場を臭はせてゐる。 呼ばれた理由を、當の梨沙子も薄々勘付いてゐるやうで、ソファに腰掛けたまゝ凋んでゐた。 「本當はパパが歸つてきてから話すつもりでいたんだけど、……」 茉麻は娘の傍へ腰を下ろしながら、答案用紙隱蔽の件は敢へて咎めず、 今後どのやうな方針で學業を修めてゆくのか、又將來についてどう考へてゐるのか、 といつた質問を、5つ6つと竝べつゝ問題を見つめ直していつた。 結果、梨沙子は纏まつた考へを有してはゐなかつたが、成績に關して懸念は抱いてゐた。 たゞ學習塾は希望してをらず、なるべく自分の時間を確保していたいらしく、 解決への道程を遲延させた。が、一先づ土日だけでも家庭教師をつける運びとなり、 矢張り詳しい話は、父親も交へた方が好からう、と結論付けたのだつた。 ←前頁 次頁→
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/44.html
歸り道のタクシィの中には、熊井の姿が見えた。 熊井は、桃子から渡された正式な名刺を手にして、溜息をついた。 あす同伴すれば、全てを審らかに述べる、らしい。 店のママと一悶著を起こしても引かぬ桃子に折れた形ではあるが、 いつかな埒の明かぬ状況を拔け出す爲、敢へて彼女を信用した。 半ば脅迫めいた誘ひだし、性行爲に及ぶわけでもないのだから後ろめたい事などない。 己に言ひ聞かせながら、國道を走る無數の夜光を眺める熊井がゐた。 娘の夏休みには家族旅行をしよう。 自らの多忙も辯へず、ひとりの父親は、罪滅ぼしを思案した。 そんな彼を乘せたタクシィが、交差點へ差し掛かつた時だつた。 タクシィ右後背部の衝突音と共に、突然、車體が跳ね上がり、前方を軸にして横に一囘轉した。 次に、遠くでブレーキ音と、金屬同士の擦れる音が鳴り響いた。 ←前頁
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/17.html
シャワーから放たれた湯が排水溝まで川を作っている。 浴槽には、まだ、熊井の為に残されていた、再び沸される事の無い水が張っている。 誰の物か判らない縮れ毛が沈殿しているのが見えた。それを手で掬いながら、 熊井は、事に運べそうな意欲の高まりを、確かに肌で感じていた。 情けないが、桃子から帰り掛けにされたキスが、思いの外、身心へ刺激を及ぼしたのだ。 謂わばカンフル剤となったアクシデントへ、感謝を捧げる様に、指に絡まった縮れ毛を流した。 浴室を出る。脱衣所で身体を拭き終えるまで、熊井は考えていた。 何故、出来なくなってしまったのか。別に夫婦関係の義務感から已むを得ずしてきた訳でも、 妻の魅力が衰えたとか言う訳でもなく、むしろ、官能的願望は弥増すばかりなのだ。 だからこそ、熊井は、果たす事も受け取る事も叶わぬ現状に苦悶していた。 沼地に潜む蛇に似て、密やかで獰猛な陰茎を、満たすべき獲物へ向かわせる為には、 ここは、どうしても、牙を剥いてもらわねばならぬ。という気概で、熊井は右手を揮った。 扱いている内に、蛇は鎌首を擡げて来た。熊井は堪らず興奮しながら、急いで着替えを済ませ、 廊下を抜け、我が寝室へ入った。寝間着姿の妻がベッドに腰掛けて髪を梳いていた。 無言のままで、熊井は、妻の櫛を取り上げ、微笑みかけた。 茉麻は、鼻息の荒い夫に当惑と期待を抱きながら、呑まれる様に押し倒された。 ←前のページ 次のページ→
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/45.html
原文 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 舊假名遣ひ編 壹 貳 參 肆 伍 陸 漆 捌 玖 拾 拾壹 拾貳 拾參 拾肆 拾伍 拾陸 拾漆
https://w.atwiki.jp/ssteam/pages/116.html
個人戦3回戦SSその2 PM 7 21 ショッピングモール アーケード越しの夜空が、安道ハル子を見下ろしている。 立ち並ぶ商店の暖かな光は、彼女の手による極彩色の広告とはまったく違う、生きた色彩のように思えた。 横のショーウィンドウに映り込んだ自らの姿を見る。乱雑に染めた金髪。無頓着な服装。 親子連れが、安道ハル子のすぐ隣をすれ違った。幸せに笑いながら、息子が母親の手を引いていた。 (――後悔だけは、十分に済ませてきた) 湧き上がる不安を押し殺すように、ポケットの中で手を握りしめる。 逃げ続けた果ての人生だったように思う。それでも、何かが間違っていたとは思わない。 心のどこかに、この光景になじまない惨めさを心地よく感じる部分がある、ということは安道も自覚している。 ある意味で誰もが、望んだ姿の通りに生きている。 たとえその姿が、下方修正や正当化で歪み果てたものであったとしても。 それは、数多の広告で人々の望みを歪ませ続けた彼女が辿り着いた哲学のひとつだった。 (……保坂一誠。アイドルか) 安道ハル子は、アイドルと戦っている。人々が望む姿の偶像。『無色の夢』が選んだ敵。 ……背後を振り返ると、監視カメラのひとつと目が合った。 このショッピングモールまで、相手は追ってくるだろうか。 (そうじゃないとこっちが困る。見失うなよ) あくまで自然に、ただ逃げているだけのように見せかけることが、何よりも重要だった。 群れなす数千のファンによる追っかけ。取材記者からの執拗なるパパラッチ―― 誰よりも『追われる』ことを知る存在ならば、逃げる者の立場を想像し、僅かな痕跡を追跡できるだろうか? どちらにせよ、このショッピングモールに到達した時点で、安道ハル子は目的の8割を達している。 逃げるのはここまでだ。 「……派手にやってやる」 『こちらとしても、そのようにお願いしたいところです』 口の中で漏らした呟きを逃さず、イヤホン越しの声が返る。 『準備は、既に万端整っております。今後の手筈は貴女のキャパシティ次第となりますが、 少なくともドリームマッチまでの貴女の生存及び勝率向上は、保証できるかと。 ――無論、相手方は決して殺さぬようお願いいたします』 買い物客を遠くに眺めながら、安道は小さく舌打ちをした。こんな場所でも会田の声が聞こえる。 今すぐにでもこの男の期待を裏切ってやりたい衝動を、抑えつけていなければならない。 敵を真に倒すプランのためには、彼女の魔人能力と……当の会田の力こそが必要不可欠だからだ。 この1日の出来事を思い出す。彼女ら2人は、悟られることなく、完全に仕掛けを終えていた。 「わかってるよ。そりゃ殺しはしないけどさ」 無数の監視カメラが見ている。道行く消費者を。安道ハル子を。そして……いずれ保坂一誠を。 広告の真髄は、消費者を騙す技だ。誰も気付けないうちに、獲物を罠にはめる。 「悪夢を見せてやる」 夢の戦いは、まだ始まっていない。 AM 5 08 マカマカ教団事務所 長く、待ち望んだ日が来た。 電話口でそれを告げた保坂一誠の言葉は短く、師父である天川宗理も、何も言わずにこの応接室に現れた。 「相手の出方次第だけど、犯罪のリスクも俺はありだと思っている」 ソファに座り、膝の上で指を組んだまま、保坂一誠が呟く。 開け放たれた窓からの風もなく、夏の空気は気怠く淀んでいた。 特徴的な三白眼は、一日のはじまりの薄明に浮かび上がって見える。 「始まる前にブッ殺す手か? そりゃ……」 向かいのソファで座る老人――天川宗理は、何かの反論を挟もうとして、止めた。 身振りで、まずは弟子に続きを促す。 「……殺すまではやらないさ。戦いが始まるまでに、最悪でも安道ハル子の足を潰しておきたい。 頭をブン殴るわけじゃないし、折ったとしてもまず間違いなく量刑は罰金で収まる。 理想としては右足の捻挫か、脱臼ってところかな」 「右足だァ? 安道ハル子の利き足もまだ分かってねぇだろおめぇ」 「――おいおい、ズレてんな? ボケはもうちょっと後にしてくれよ」 保坂は皮肉げに笑った。こういう時の保坂一誠は饒舌になることを天川は知っている。 議論や暴力の中で相手のイニシアチブを奪うことを楽しむ悪癖を、矯正してやるつもりもない。 アイドルとして必要な資質のひとつだからだ。 「俺が思うに、安道の勝ち筋で現実的な可能性は……戦闘領域離脱だけだ。 アンタの経験上、リングの境界は感覚的に分かるらしいけど、あいつの魔人能力はその感覚を乱すからさ。 境界付近で情報過多にさせるか、向こう側に自分の姿を投影するかで……踏み越えさせる」 「走る足がなけりゃ、誘いも隠れもできねェってか?」 「分かってないな。そうとも限らないから右なんだよ。夢の空間に車が置かれてる可能性だってある。 利き足がどっちだろうと……アクセルを踏むのは右足のほうだからさ」 「ハッ」 天川は、その考えを鼻で笑った。冷めた焙茶を飲み干す。 「おめぇは裏をかきたい気持ちが強すぎて、効率悪い手しか考えつかねェんだよ。 夢の戦いはタイマンだぞ? 仲間も呼べねえ、仕込みもできねえ。ならアイドルやってるおめぇの勝ちだ。 これよりマシな状況に持ち込めねえなら、そいつァおめぇの自己満足だわな。 それともアレだ、こっちで襲って、間違ってブッ殺しちまった時、どう言い訳するか答えられるか?」 「……戦いが起こらなくても、報酬の夢を見てる間は昏睡状態になるんだろ。 俺に殺人容疑がかかったとしても……その間は、勾留の執行停止が成立する。時間が稼げる。 アンタの弟子連中でも動員して、証拠なり目撃証言を――いいや」 準備期間は1日しかない。通常の倫理を逸脱した仕込みまでは、非現実的だ。 せいぜい、どこかに呼び集めたり、人海戦術で誰かを探し出させる程度だろう。 一部の信者による過激な事件が週刊誌を騒がせることもあったが、 マカマカ教全体の割合としても、違法に踏み込めるレベルの狂信者は滅多に存在しない。 「ボケてんのはやっぱおめぇの方じゃねえか。組織でぶつかりゃ、こっちが勝てねえよ。 安道の側にゃ――企業がついてやがんだからな」 安道ハル子の魔人能力については、2時間もかからずに調査させることはできた。 彼女の『あらゆる広告を展開する』魔人能力は、それ自体が自身の能力を喧伝するものだからだ。 ……そして、同時にそれは、彼らが敵に回すバックの大きさを知る結果ともなった。 具体的なプロジェクト内容は不明だが、安道ハル子を活用しようと目論む企業は、あまりにも多い。 仮に夢の戦いに勝利したとして、その後、社会的な脅威に追い込まれることはないか…… 「……下手に動くんじゃねェぞ。一誠」 「相手の出方次第って言っただろ。日が沈むまでに終わらせる。 こっち側で壊すのは、最悪の展開になった時だ」 保坂の横目が差し込んだ陽光を睨む。 どちらにせよ、保坂一誠は動くつもりだ。それが天川にもわかった。 やはり、悪癖だ。 PM 7 57 ショッピングモール ショッピングモールの光が、天の月をかき消している。 ムーンライトバタフライゴシックを身に纏う保坂一誠にとって、不吉なステージではあった。 安道ハル子が、あらゆる仕掛けを講じて迎え撃ってくるであろうことは、保坂も認識している。 今は、敢えてその状況に飛び込む必要がある。 (それでも……この1日、あらゆる不測の事態を想定して打ち合わせてきた。 大抵の状況になら対応できる。……今、やれる) ライブステージに臨む獰猛な眼光。ゴシックドレス調のコーデから覗く高密度の筋量。 周囲の買い物客が、保坂一誠を前にざわめき、道を作るように退いていく。 臨戦態勢に入ったアイドルが街に現れれば、当然そのようになる。 遍く生命には、捕食者の威圧と存在感を察知する、五感とは異なる原初的な防衛本能が備わっている。 オーラと呼ばれるそれは、特に強力なアイドルの出現を知らしめるものでもある―― 「安道」 捕食者が不意に呟き、視線を爪先に落とす。 【……の成分は、な、なんと! 《100%》 無添加・天然素材なんです! ある商品をたった《二週間》使っただけ! その驚きの結果とは!? 知りたい方はいますぐクリック! ↓↓↓URLはこちら↓↓↓ 】 無限じみた改行で羅列された、不自然に長大な広告が、保坂の足元に伸びている。 接触した物体の全てを広告媒体と化し、自由自在なデザインの広告を即座に掲載する魔人能力。 『興國アド魅ラル』という名で呼ばれていると聞いている。 「――そいつは、俺には効かない」 そしてこの時、保坂一誠もまた、魔人能力を使用している。 事実、圧倒的訴求力を誇る安道ハル子の宣伝の魔力は、この短い一言で無意味化されていた。 ――『自明なる公理』。自己暗示の範疇が許す限り、自身に対する言及を揺るぎない真実に変える能力。 偶然のめぐり合わせか、果たして無色の夢が意図してそのような悪意を振るったのか。 精神をかき乱す安道ハル子の広告効果に対し、まさに天敵となる魔人能力であった。 【エッ!?ぼくの週休が五日に!】【★超・応援★ムフフなお付き合い…】 広告を意に介することなく、王者のごとく歩を進める。 接触した箇所を起点に、広告を展開する能力。それを逆にたどるだけで良い。 「予想外だな。いきなり本体を晒すってさ」 「なんッで、効かねーんだよ……! 待った! お兄さん、まずあたしの話を聞いてかない!?」 「いいよ。まずどこか折ってからだな」 フリルスカートのポケットから、手に収まる程度の小石を取り出す。何の変哲もない飛び道具だ。 始球式という旧習を思い出すまで、遠距離がアイドルの間合いではないと錯覚する者は多い。 「いやそこまでする!? さすがに犯罪――」 ……その時。保坂一誠は、怯えたように右手を翳す安道ハル子の、左手側の動きに気づいていた。 まるで秒読みのように、簡単には気付かせないように、指を折っている。3、2、1。 安道が一瞬逸らした視線を追った。そして。 「――じゃないんだよね、これ!!」 横合いから飛び込んだ5tトラックが、保坂一誠の眼前にあった。 PM 0 12 パブリック・プレジャー株式会社 殺風景なオフィスに会田が姿を現したのは、ちょうど正午を回った頃だった。 一方安道は、『無色の夢』から目覚めてすぐに呼びだされ、ずっと1人で待機状態だ。 「遅くなってしまい、申し訳ありません。ヌシ様方との最終調整がどうしても必要でしたので」 「別にいいよ。謝るフリもやめろ。それより、本当に保坂一誠ってやつと戦うことになるわけ? あたしが?」 「……ええ」 会田は直立不動のまま、無機質な笑みを浮かべた。 「確実です」 原理は不明だが、この広告戦略を仕組んだ『DMネットワーク』なる実態不明の企業は本当に、 自由自在に無色の夢を見る……あるいは見せる方法を確立しているらしい。 というよりも、むしろこのノウハウを市場に売り込む目的で設立された企業と考えるべきかもしれない。 どちらにせよ、まともな連中ではない。 「勝敗問わずっていうのが、まず分かんないんだけど。まあ、ろくな説明がないのはいつものことだけどさ……」 「その件に関しても、先方とのミーティングで詳細な段取りを受け取っております。 貴女にはDMネットワーク社様の広告を可能な限り、ドリームマッチの場に掲載していただくことになりますね」 「……そりゃあ、今回のスポンサーだとDMが一番多く出資してるわけだし、大体はそうなるんじゃない。 それだけ? 賞品だか罰ゲームだかの夢があるって話だけど」 「ああ。それは、今回の商品とは関係ありません。副産物です」 無表情のままで、会田はあっさりと断言した。 瑞夢も凶夢も、この男にとっては等しく無価値なのだろう、と安道は思う。 「そもそも、何故『ドリームマッチ』が行われるのか? 競技のように、同じ魔人という条件で、隔離された平等な状況下において。 そして、勝敗は誰が裁定し、なぜ戦闘後の仮想体験が瑞夢と凶夢に分岐するのか。 DMネットワーク社様はこれらの原因を、その戦闘にオブザーバーが存在するため、と結論づけております」 「……『観察者』。あたしらを殺し合わせて、楽しんでるやつがいるってことになるのか」 「その程度の単純な動機であればより良いのですが。 重要なのは、オブザーバーが実在するのだとすれば、そこに知覚があり、精神がある、ということです。 少なくとも『ドリームマッチ』の間は、夢の内容を観察している――」 安道は、胸が悪くなるような悪寒を覚えた。自分が何をすべきなのかを察したからだ。 比喩ではなく、この連中の底知れない傲慢さに嘔吐しそうな気分だった。 「つまり、こう言いたいんだな? ……あたしに、『観察者』向けの広告を作れと?」 「ええ。接触は一度で構いません。貴女の広告がその1人の顧客に十分に訴求した場合は、 我々が動かずとも、顧客側からのコンタクトが期待できるとのことです。 オブザーバーが所有する莫大な広告スペースを、我々が買い取ります」 ――DMネットワーク社が安道ハル子に作らせようとしているのは、『広告業の広告』だ。 仮に『観察者』とやらが金銭価値の概念を持たない何かだったとしても…… 例えば、競技を盛り上げるさらなる生贄の提供を。人間の世界が生み出した、多種多様な堕落と娯楽を。 この狂人どもは、あらゆる対価を惜しみなく差し出すのだろう。それも、人間の夢を土足で踏み荒らすために。 (……こいつら、破滅させてやる) 何度頭に過ぎったか分からない思考と共に、脳を回転させる。すなわち、この戦いに勝利する方法だ。 夢の報酬についてヌシが無頓着であることは、ひとまず有益な情報であったはずだ。 「……会社の連中を使って調べさせてたみたいだけどさ。アイドルなんでしょ? 保坂一誠ってやつ」 「そのようです。その分だと、存外に早く、調査成果が上がっていたようですね」 「試合開始前にやれないかな」 「と、申しますと?」 「いや、あたしの実力でいくら逃げまわっても、本職のアイドル相手に、多分1分も持たないしさ。 すると、これだけ金が掛かったプロジェクトでCM枠が1分って事に。 試合開始前に相手がボロボロになってたりしたら、もっと時間掛けてやれるんじゃないかなー……って」 安道の内心は、全身が冷や汗に浸るような心持ちである。 だが、事前に十分に動揺は見せている。今更不信にも思われないはずだ、と楽観すべきだ。 ……敵を倒すために、こいつらの力を利用させてもらう。 「あのさ! この前の夜魔口の配信? あれ使えると思うんだよね! 場所と人間さえいい感じなら、あたしの能力だって結構いい線行けると思うしさァ……! 決まった場所で、あたしと保坂の戦いを広告主様に中継するってやつ…… リアルタイムで広告料を振り込めるようにすれば、残弾の問題だって解決するだろ、これ」 「成程。一理ある意見です。前回の試みは想定以上の成功を収めておりますので、説得材料は十分ですが」 「そ……そうだろ。その上で、保坂を半殺しにする」 前例を持ち出したことが功を奏したのかもしれない。 もちろんどのような提案であれ、最終的な決定権はあくまで会田にあるのだろうが。 「それと――こっち側でやるなら、もうひとつ掲載しときたい広告があるんだけど」 PM 8 03 ショッピングモール 中型トラックの直撃を受けて、保坂一誠は消失した。 ――少なくとも、次の一瞬はそうなったかのように見えた。 「……嘘だろ」 直後の安道は、苦々しい、呆れたような表情を浮かべた。アイドルとは、これほどのものか。 おそらく直撃の寸前、ギリギリまで地面に伏せて、車体の下を潜っていた。 反射神経はもとより、どのようなアイドルレッスンを経ればそんな柔軟さが身につくのか。 「そういう避け方、する!? そりゃ、この程度でやれるなんて思ってなかったけど!」 立ち上がった保坂をめがけた軌道で、さらに斜め後方からセダン。 これは軽いステップで回避される。だがその直後、左からミニバンが。 同時に反対側から走り来たもう1台を踏み台にする形で切り抜ける。 激突音と悲鳴が、重なりあって響く。すべての車両が、続けざまに商店を破壊した。 「なんだこりゃ……アンタの攻撃か?」 驚くべきことに彼は、次のステップの蹴りで、軽自動車のボンネットを破壊すらしてみせた。 ……ドライバー達がいくら撃破されようと、その実彼らは安道ハル子の仲間ではない。 ここまで保坂を襲っているのは、すべてが不幸な脇見運転の『事故』にすぎないのだ。 ただしその不幸は、言うまでもなくこの安道ハル子に起因している。 最初に展開した長大な改行広告を足がかりとして、ショッピングモール内へと張り巡らせた壁面広告だ。 【「金ならいくらでも出すわ!」普段は強気なアイツが…?「もっと…見て…」《全話無料》】 2014年、ロシア・モスクワ。女性の胸を強調した移動広告の宣伝用トラックが、 多数の男性ドライバーの脇見運転を誘い、1日のうちに実に517件の交通事故を引き起こした。 会社は自主的に補償費用を支払ったものの、この事件による行政処分を受けていない。 ――広告に触発された行為の責任は、消費者の側にある!! (罪を犯さず、勝つ。あたしの能力にはそれができる) 先ほどからの無軌道な広告展開すらも、例外ではない。 映像配信の準備の他に、戦いの場をこのショッピングモールに定めた理由がある。 『くれぐれも、有効なスペース活用をお願いいたします。 戦闘行動に不要な分も含め、出来うる限りの広告掲載を』 イヤホン越しに、会田の声が届く。 安道の戦いはドリームマッチの前哨戦であると同時に、PP社にとっての広告商品でもあった。 『そのために……このショッピングモール全域を、ひとつの巨大広告として借り受けているのですから』 この商店街の不動産は、このビジネスに参画したヌシのグループ企業が所有している。 そうだとしても、半日足らずでこれほど大掛かりな『イベント』を押し通した手腕は、 卓越した広告展開力を武器とする安道からしても、驚異的という他ない。 ドリームマッチを勝ち抜くのならば、会田は確かに恐るべき後方支援者だった。 「……カメラの集まるキルポイントに保坂を誘い込んだぞ。もうどの方向からも見える。 あたしの広告の扇動で、車と人間を、くたばるまでけしかける。 あいつが包囲を逃れてくるなら、そっちのほうでも把握できるんだよな?」 『無論、その程度であれば私が直接オペレート可能です。 貴女の方は、ああ。現在は逃走中と』 「当たり前だろ……あんな出鱈目な野郎、もう絶対近づかないからな! どれだけ広告を展開しても、スペースも金も尽きない。保坂の映像もモニタリングできる! もっと離れたところから、安全にやる……!」 ポケットの中に入れた手を、また不安に握りしめている。 先ほどのトラックとの交錯で保坂が見せた身体能力は、想像以上だ。 本物の……最強を標榜した時代のアイドルをやっているとの情報も、ハッタリではなかったのだろう。 ただ買い物客を暴徒化させたり、交通事故に巻き込ませるだけでは、試合の形すら成せないはずだ。 「それに……もうひとつの仕掛けのほうも、もう動いてるだろ」 夜魔口の一件でPP社が得た収穫は、もう一つある。 苛烈な戦闘で配信視聴者を興奮状態に置けば、広告商品の売上高は飛躍的に向上するということだ。 安道ハル子としても、広告主を十分以上に満足させる必要がある。 「何人来た?」 PM 8 09 ショッピングモール 先程まで穏やかな夜に息づいていたはずのショッピングモールは、 炎と狂騒、そして猥雑な広告の光と音に蹂躙され尽くしていた。 (……なるほど。事故の混乱に紛れれば、ある程度直接やりあっても誤魔化しが効くか? しかも今の玉突き事故で、アーケードの入口を塞いだ…… 警察や消防の横槍を入れずにやりたいわけね) その只中。脳裏に暴走車の襲撃を反芻しつつ、保坂一誠はひとつの違和感に気づく。 最初の5tトラックの強襲に、なぜ気付けなかった? 壁の広告に衝突した乗用車は大破したが、あのトラックはどこににも見えない。 「……俺には」 『自明なる公理』。一瞬で判断する必要がある。 「俺には、聞こえる」 潜在能力の全てを傾けた聴力は、それを捉えた。死角となる背後から迫るエンジン音。 重量に見合わぬ異様なほどの静音は、そのためだけにカスタムされているとしか思えなかった。 今度は、十分な余裕を持ってトラックの突進を回避する――が。 「うッ……お!?」 すれ違うトラックのコンテナ部分の形状が、突如としてひし形に『膨らみ』、保坂の頭部を刈ろうとした。 予兆を聞き取れていなければ、身を屈める間もなかったかもしれない。あまりにも予測不能の変化。 しかもコンテナの形状は、次の一瞬で直方体に復元している。 (魔人か。こいつ) 暗殺トラックは、その巨体で見事にサイドターンを決め、明確な殺意でこの道幅を反転してみせた。 ドライバーと『コンテナを変形させる』能力者は別であろう、と保坂は推測する。 あの操縦テクニックを奮いながら、魔人能力で攻撃を仕掛けているとすれば、集中力が持たない。 敵は2人―― 「ああ」 一瞬の判断。アスファルトの中から『湧いて出た』腕の手首を、保坂は爪先で切り払っていた。 アイドルのダンスレッスンがステップを最も重視するのは、下段への警戒と、対処のためでもある。 「……3人かよ!」 「キヒッ。速いねあなた」 甲高い笑い声とともに、黒い包帯に覆われた手が再び沈んだ。 地中からの手を掴んで捕らえることはできない。たとえば物質に潜り込み、泳ぐ魔人能力の使い手か。 こちらに相対した暗殺トラックが加速を始める。コンテナが四次元図形のように蠢く。 ――コンテナの変形がある。轢殺の『間合い』が読めない。そして奇襲するダイバーが1人。 「フ。本気かよ」 保坂一誠は笑った。絶好の機会を前にした今、それがもっとも自然な反応だった。 あの伝説のアイドルの、あの天川宗理の技を受け継いできた。 誰もを魅了する、真のライブパフォーマンスのためには、それを見せるに値するファンが必要だ。 「なかなか面白い相手を用意してくれるじゃないか、安道ハル子……」 PM 8 19 パブリック・プレジャー株式会社 「――ええ。送り込んだ者は、3人です」 広告戦略資料をなめらかに作成しつつ、試合映像を注視し、電話口の問い合わせに応答する。 人間性と引き換えにそう生まれたのか。会田という男には、経営者として明らかに非凡な才能があった。 もっともその欠落故に、安道ハル子と同じような、非合法の闇の内に生きるしかない人種なのだろう。 「全員が、我々ドリームマッチ・プロジェクトとの無関係を保証された魔人傭兵です。 同時多発事故の混乱に紛れて、保坂一誠の戦闘不能を確実なものといたします」 ひとつの箱として認識できる室内を、自在に変形させる能力を持つ者。 付近の対象1人の視界を、運転する車両のカーナビに反映する能力を持つ者。 およそ影と認識される、あらゆる領域へと潜行する能力を持つ者。 相手を誘う狩りならばともかく、屋外の乱戦であれば、このスリーマンセルが最も有効な編成なのだという。 コンテナ内に守られた『ボックス』の質量と破壊力を、『ドライバー』が機動力と奇襲性で運用し、 僅かでも綻びが生じたその時には、影に隠れた『ダイバー』が抹殺する。 『えっ、3人も集まったの!? 多すぎない!?』 顧客との会話を傍受していた安道が、驚いたように口を挟む。 「貴女の広告がそれだけ顧客にアピールしたということでしょう。 それと、インセンティブの額はこちらで設定させていただきましたので」 安道ハル子が掲載を提案したのは、彼女自身がスポンサーとなる広告だ。 内容は、彼女が最も訴えたい事柄――保坂一誠の殺害ミッションのための『求人広告』。 自分自身が戦わずとも、戦う力を集めることができる。 彼女の広告クリエイティブはその観点で、何よりも巨大な影響力を持つ稀有な才能であった。 『それより』 傭兵用無線機の向こう側で、『ボックス』が会話に加わる。 『カメラでターゲットの動向が分かるのはいいけど、モニタが無線だから画質がよくない。 車体を潜って来た時はチャンスだったのに、これで2回外した』 「装備の変更はありません。コンテナ内の電波状況ですので、ある程度了承していただく他ございませんね」 『しかたないな。ちょうど連続して下に潜ってくれてるから、とりあえず『菱』の頭狙いを何度かやって、 地面まで届かないと思い込ませた頃合いに、『屋根』で膝丈を切断してみる』 通話内容を裏付けるように、モニタの中の保坂は、3度目の轢殺を回避していた。 ヌシ達の快哉めいた声も届いてくる。順調だ。極めて順調に、マーケティングは推移している。 『あと、俺は荒い映像だからいいけど、ドライバーが広告を直視しなきゃなんないのがきついのかもな。 さっきからターゲットに直撃できない。クスリだけで精神影響を抑えるのは結構な負担じゃないのか?』 『どうなんスかね? 毎回きっちり視界の外からカマしてるんスけど、もう当たんないッスよ。 せめて狭いとこに逃げ込んでくれれば、先輩――ボックスの『針』でエグり殺せるんッスけど』 『わたしへの反応も速いけど、トラック避けてるのは妙ね。感覚強化か近未来予知と見たよ。 一撃狙いが当たらないなら、あいつの足止めて打ち合うしかないね』 『ドライバー』と『ダイバー』も、ターゲットの怪物じみた勘の良さを警戒しているようだった。 保坂一誠を相手取るにあたって、多くの者が最大の懸念事項として挙げたのが、魔人能力の不明さだった。 まったく無用な能力なのか。それとも完全に、使っていることを悟られない類の能力であるのか。 「――皆さん。ミーティングでお伝えした通り、他に警戒していただきたいことが」 会田の考えは違う。ショッピングモール全域の監視カメラにも、まだその最大の脅威の予兆はない。 「天川宗理です。SSランクのリスクファクター。伝説通りの危険度ならば…… 最悪の相手を、最悪のタイミングで殴りつけてくるでしょう。確実に」 PM 8 22 ショッピングモール 【*警告*悪質なソフトウェアに感染しています!】【あなたの漫画が本になる!?】 【実際安い】【あのiPadが……《限定》¥0】【本格的で、しかも基本無料】【今夜は爆乳で……】 保坂一誠は、冒涜的文面を吐き散らす広告の海に包囲されていた。 そのひとつひとつが、誘蛾灯的魔力で欲望を暴走させる、悪魔の認識兵器。 「ヤスイ……ヤスイ」 「イマダケ……ゲンテイショウヒン……」 「ニク、オイシイ。ネットクーポンナラ40%オフ」 譫言を漏らしながら虚ろな目でショッピングモールを徘徊する、ゾンビめいた有様である。 1時間前で平和を享受していた買い物客達は、いまや完全なる資本主義の奴隷と化した。 ああ。これが、欲望に突き動かされて進化を遂げた人類の、行き着く果ての姿だというのか。 しかもこの奴隷は、明確な広告配置パターンの流れに沿って、保坂一誠を包囲し、呑み込もうとしていた。 人をコケにした【 本 日 の 主 役 】のライトアップがロックオンマーカーの如く保坂に投影されている。 (……急迫不正の侵害。集団の暴徒や殺し屋相手に素手でやってるうちなら、正当防衛は成立する。 全力でやらなきゃ負ける。多対一のやりかたができなきゃ……アイドルは、話にならない) 一度でも掴まれ、押さえこまれたら終わりだ。スイッチを切り替えた後の動き出しは、保坂のほうが速い。 「――《涙の朝日》」 ~《涙の朝日》~ 作曲:真鍋智 作詞:ギャランドゥ=ウィトゲンシュタイン 「♪水面に揺れる 過去 と過去♪」 掴みかかってくる正面の相手の鼻面を殴り、反対側の手刀で別の相手の首を打つ。 「♪砂時計のように 指から崩れる の♪」 次の相手に叩き込んだ掌底は、顔面をすべらせるように襟首に。 指を引っ掛け、体勢を崩す予備動作になる。 「♪行かないで ひとりにしないでー♪」 同時に近づいていた2人の間にその体を割り込ませ、動きを止めたところで、右手側の敵に金的。 決して、1人にはしない。 「♪私の影 寂しそうにぃー 泣い てる……♪」 返す足で背後の相手の膝を砕く。 黒い包帯を巻いた手が生えつつあった地点に被せるように調整した。 今はこの潜行の殺し屋にすべての集中力を傾けるべきだ。2秒後には、蹴り足の反動で大きく跳んだ。 「♪ああ 夜明け 夜明け♪」 直後、無数の人間を轢き潰しながら、5000kgの鉄塊が眼前を通り過ぎる。 背後の暴徒を倒したのは、いざという時の回避方向を確保するためでもあった。 「♪涙のー 朝日が やみに泣く……♪」 保坂を狙ってブレード状に変形したコンテナも、密集しすぎた群衆の肉が阻む形になる。凌いだ。 「――まだだ。この程度じゃない。アイドルを舐めてるのか」 強い言葉で断言する。圧倒的実力差の勝利に見せかけるためだ。 ただ個人が群衆を制圧するだけのことなら、サブマシンガンでも持ち出せばずっと話は早いのだろう。 だが、それは武器の強さであって、個人に属する強さではない――少なくとも観客は、そう認識する。 武器が強かったから。仲間を引き連れていたから。環境が有利だったから。卑劣な手段を使ったから。 アイドルの強さは、そのようなものであってはならない。 少なくともステージの上でだけは、そうした言い訳のできない、最強の存在でなければならない。 「俺を見せてやる! もっとファンをくれ!」 「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 吠える保坂一誠に呼えるように、欲望の奴隷たちも熱狂した。 一般人多数。5tトラック1台。戦闘型魔人能力者3人。支援型魔人能力者1人。スポンサー多数。 かつては、誰もが知っていた。多対一の戦いは、アイドルにとって不利ではない。 ファンが多いほど、その憧れを一心に受けるアイドルもまた、強くなるものだからだ。 「……来いよ。全員、叩きのめしてやる」 誰もが圧倒的不利に思う。保坂一誠自身すら。その流れを引き寄せる瞬間を、待っていた。 ライブパフォーマンスの時だ。 「――《君 Dream...》」 ~《君 Dream...》~ 作曲:つきゆび 作詞:菜々原メイコ 「♪君との約束……忘れてないよ♪」 トラックが轢き殺した死体の山に踏み出す。押し寄せる群衆の足場を制限する。 「♪僕たち 大切な Partner♪」 当然、判断力を失った暴徒のひとりが躓き、よろめく。 「♪倒れそうなときは そばにいるっ のっ♪」 倒れそうな恋人に寄り添うように、ベルトを掴み、上手投げめいて倒す。別の相手にぶつける。 「♪君の背中 守らーせ て♪」 あえて背後に隙を見せる。だが、その一瞬を狙った相手には、 掴んだ暴徒をカウンターウェイトにした、後ろ足のハイキックがヒットしている。 絶好のコンディションだ。このまま歌い切れば―― 「♪信じてくれれば I ll Go Dreaming 夢の【アッ夢の新技術!マイクロ水素原子のすごいチカラ!】」 リズムが乱れた。耳障りな音声が割り込む。 ――なるほど。そういう演出で来たか。 「俺は、歌を乱さない。♪……の日、君のノートに【★驚愕★☆★お得情報満載!?★】だったね♪」 顔が歪む。右腕で、まともに角材を受けてしまったからだ。初めてクリーンヒットを食った。 振り下ろされた角材は掴むのではなく、踵で踏み、押さえ込む。両腕は背後の敵に備えなければならない。 『自明なる公理』の暗示がどのレベルまで有効なのか、保坂自身にも保証することはできない。 「♪今も【人気グラビアアイドルの×××画像♪】見つめて【《絶対儲かる》お金…困ってませんか?《FX》】」 ショッピングモールのスピーカーから。店舗が掲げる看板の全てが。アーケードの天蓋が。 すべてがノイズ情報のスクリーンと化し、誰もを悪意の泥沼に飲み込んでいく。 「♪【得袋→Click←】に君 Drea【DMネットワーク!新たな広告ソリューションを提案します!】」 ――1番のサビを封じられた。その事実を認識するより早く、黒い腕が伸びている。 ナイフはかろうじて左掌で止めた。 生体にも潜り込めるのか。潜行の殺し屋の腕が、広告の光で逆光となった暴徒から生えていた。 「♪【ちょっとモテすぎて困る件wwwwww】【お試しセットなら三週間無料】【安全なお・く・す・り】」 「多勢に無勢。あなたようやく終わりね」 中手骨に通したままの刃を返して、左腕を捻られる。痛みとともに、体幹に不自然なモーメントをかけられる。 この状態で固定されるのはまずい。空いている右腕で打ったとしても、腰が入らない体勢になる。 格闘技相手の『やり方』を知っているやつだった。それに、暴徒相手の戦いを観察されすぎた。 保坂は広告の海に抗いながら歌唱している。能力のために息継ぎをする暇もなかった。 「♪【○珍!?秘宝映像】なときは そばにいるっ 【嫁と姑…骨肉の争い…《今すぐ全話読む》】」 黒い包帯の殺し屋は、空いた左腕で、新たなナイフを腰から引き抜こうとしている。 口元に歪んだ笑みが覗く。おそらくこの男は、広告の狂気に抵抗していないのだろう。 すべての欲求を殺人のモチベーションに直結する才能。故に、この敵をもっとも警戒すべきだった。 「♪そっと教えてくれた ポエムの【水晶パワーで『痛くない』0%の運『俺は強い』】だから♪」 ――『自明なる公理』。突如として割り込んだ言葉が、痛みを消し、筋力を強化する。 ロックされた左腕を強引に引き戻し、ナイフを握る敵の右腕を逆に捻る。 腹部を狙って突き出された切っ先は逸れて、肋骨を浅く削るだけだ。 「キヒッ」 殺し屋は素早い判断で右手のナイフを離し、影に潜った。反撃する余地もない。 保坂一誠は、右ポケットの内で再生していたICレコーダーを止める。 能力を発動する意思があり、自分自身の声で、自分自身に言い聞かせることで発動する能力。 「♪……夢に落ちた瞬間 君に 触れて いたいから♪」 終局は近い。誰もが圧倒的不利に思う。保坂一誠自身すら。 地面を流れ続ける広告に目を落とす。 今まで止まっていた暗殺トラックが……この瞬間、死角から迫りつつあることがわかった。 そして保坂一誠はこの時、倒れた暴徒に、右手側の逃げ場を封じられていた。 左方の影が沸き立ち、黒い包帯の男がそちらに注意を向けようとしていた。 広告が切り替わる次の一瞬で、すべてが終わるように思えた。 「♪君に……君の瞳に♪」 ショッピングモールを覆い尽くす――すべての、広告表示が。 【 保 坂 一 誠 I S S E I H O S A K A Produced by SOURI AMAKAWA 2016.4.1 D E B U T 】 ありえない事態が起こっていた。 「♪――君……ッ、Dream!!♪」 保坂一誠以外のすべてが停止する一瞬。その一瞬だけでよかった。 敵の黒い包帯に指を掛け、体をトラックの軌道上へ放る。 急ハンドルで回避を試みた重い鉄塊は、それでも外輪差で殺し屋を跳ね飛ばした。 そして停止した。 群衆を魅了するライブパフォーマンスと広告クリエイティブが同じものを映し出したその瞬間、 欲望の奴隷になっていた暴徒たちのすべても、動きを止めた。 何もかもが、一瞬の逆転。 アイドルの戦いに、魅了されていた。 PM 8 40 パブリック・プレジャー株式会社 「……これは、一体?」 あり得なかった逆転劇を前にしても、会田の心は揺らがなかった。 不合理な状況に対する、無数の疑問だけがあった。 「安道さん、状況の説明をお願いします」 『や……そんなの……あたし、知らないって! だって、適当な広告に切り替えようとしたら、いきなり』 「ドライバーさん。ターゲットは左手しか負傷していません。戦闘の続行をお願いします」 『あ、無理ッス』 殺し屋のトラックは停止したままだ。彼らの動きもどこか妙だった。 保坂が群衆やダイバーと戦闘している間、ドライバーが攻撃する機会はいくらでもあったのではなかったか? 『多分、ラジエーターがイってるんスよ。水温計の温度が上がりすぎて、休ませないとエンジンが死ぬッス。 さっきはさすがに終わりっぽかったんで、ダイバーさんとタイミング合わせてやったんッスけど』 「機械のトラブルですか? ……一体」 『悪いけど会田さん。任務は失敗だ。こっちは引き上げる。田中……ダイバーを回収する必要もある』 『――トラックのラジエーターっていうのはさ』 続く声は、無線機からのものではなかった。 中継の音声を拾うマイク越しの、保坂一誠の声だった。 『シャーシの下に隙間があって、メンテナンスの時に、コアに手が届くんだよね』 「……?」 『ラジエーターコアは指で潰れるくらい強度が弱い部品で、異物が入り込んだらすぐに損傷する。 そうなると冷却液が漏れて、その状態で走り回れば、当然、オーバーヒートするってわけ。 ……ま、普通ならタイヤで跳ね飛ばした異物が入るような箇所じゃないんだけどさ』 カメラの映像の中で、保坂一誠が何も持たない片手を挙げた。 『そこで問題です。俺が最初に持っていた小石は、いつ、どこに消えたのでしょー……か?』 歓声が、殺風景なオフィスを揺らした。 戦いの場を取り巻く群衆の、中継を見守る広告主達の、興奮の声だった。 トラックの下を潜り抜けた離れ業。その時には既に、保坂一誠は破壊を済ませていた―― (それよりも、今のは一体、誰に話しかけて) モニタの画面に目を落とす。コンバージョン件数は、際限なく上がり続けている。 極めて順調に、マーケティングは推移している。 違う。これは過剰だ。広告展開として、あまりにも過剰な盛り上がりだった。 制御を離れるほどに、試合が盛り上がりすぎた。 会田は恐怖した。モニタを掴み、身を乗り出す自らの反応で、はじめてそれを自覚した。 『そうそう。最後のサプライズは楽しんでもらえたかな?』 なぜ、安道ハル子は最後に保坂一誠の広告を掲載したのか。 彼が――否、おそらく教団のダミー企業を通した天川宗理が、最初から彼女の口座に入金していたのだ。 敵の正体に辿り着き、その能力を知った時、彼らは自らスポンサーとなって、自分自身の宣伝を用意させた。 おそらく、そういうトリックだ。そこまでは理解できる。 『誰に言ってるのか、分かるよな?』 保坂一誠は、自分の戦いが中継されていたことに気づいていた。いや、知っていた。 何故だ。安道ハル子の口座残高への入金が止まらない。誰もが熱狂している。 会田は、気づくことの恐怖に直面していた。 (ドリームマッチの前哨戦ではなかった。広告配信ですらない。最初から、これは) 不自然だった。直接戦闘能力で圧倒的に勝る保坂一誠がなぜ、わざわざ試合開始前に仕掛けてきたのか。 なぜ、このショッピングモールに1人だけで踏み込んだのか。 熱狂し、興奮の空気を作り上げた群衆は、本当に全てがショッピングモールの買い物客だったのか。 保坂一誠の広告を無作為に選んだのなら、あのタイミングでの表示は出来過ぎた展開ではなかったか。 2番サビの直前、広告の妨害が停止した時間があった。いつでも、そうする用意があったのではなかったか。 最初のドライバーの奇襲。保坂にタイミングを知らせる、何らかの目配せや合図がなかっただろうか。 例えば安道の広告は、ボックスの攻撃の盾になるように、暴徒を誘導していなかったか。 保坂がトラックの突撃のタイミングを尽く察知していたのは何故か。 モニタを通してその方向を知る何者かが……地面の広告を通して、知らせていなかったか。 ――安道ハル子は、我々の破滅を望んでいる。 口では反抗しながら、本気で逆らうことだけはあり得ないと、思い込んではいなかったか。 (……最初から、そうだったのか) もう遅い。彼はこの戦いを配信してしまった。 最大の危機と逆転のスペクタクルに彩られた、誰もを熱狂させる『夢の戦い』を。 もう、DMネットワーク社以外の協賛企業の誰も、これが新たなる広告展開の宣伝だと考えることはないだろう。 そんな曖昧な商品よりも鮮烈な印象が、積み上げられた企画の全てを上書きしてしまった。 『えー、改めて自己紹介します。アイドル、保坂一誠。 デビュー前の特別イベント、楽しんでもらえたよな?』 カメラとマイクで全ての映像を余すところなく届ける、特別なステージ。 色とりどりの光と音。群がる無数のファンに武器を使わず立ち向かう、ただ1人のアイドル。 これではまるで、アイドル全盛期のライブではないか――。 (最初から、何もかもが) 『ファンの皆さん、応援ありがとーっ!』 (八 百 長) PM 8 45 ショッピングモール 「ざまあみろ……ハハ! ざッまァーみろ! バーカ!!」 安道ハル子は、無線機に向かって叫んだ。 積年の怒りと嫌悪の表現としては、あまりにも陳腐な語彙しか出てこなかった。 だが、いい気分だった。 「あたしはちゃんと言ったよな!最初に!」 広告の真髄は、消費者を騙す技だ。誰も気付けないうちに、獲物を罠にはめる。 保坂からの接触は、広告主との打ち合わせで、会田が不在だった午前。 彼女ら2人は、悟られることなく、完全に仕掛けを終えていた。 しかもこの1日、あらゆる不測の事態を想定して打ち合わせてきた。 「――悪夢を見せてやるってさ!」 保坂一誠の強さで顧客の印象を上書きするために、映像配信の提案もした。 全力で戦っても罪に問われることのない、強力な敵を用意してもらう必要もあった。 敵自身の力を以って……無力な奴隷が、真の敵を刺したのだ。 「おう安道、おつかれ。そいつが会田につながってるのか?」 保坂一誠。あの激戦の直後にしては、気の抜けたような声だった。 血に塗れた左手をポケットに隠している。 「ああ、うん。もう必要ないけどさ」 「貸してくれ」 無線機を投げ渡す。会田にさらなる屈辱を与えられると思ったからだ。 「……アンタもお疲れさんだな? 会田。ところでさ。 韓遂って知ってる? 馬超と組んで戦ってたけど、曹操軍のスパイ疑惑を着せられたってやつ。 韓遂は追いつめられて、マジに曹操軍に寝返っちゃっうんだよね……」 『………………………………。突然、何を?』 「まだショックが抜けきってないのか? つまり」 保坂は座り込んで、凶悪に笑った。 「アンタが韓遂で、DMネットワークが馬超ってことだよ。 観戦していた企業の連中には、新しいアイドル立ち上げ事業のスポンサーとして携わってもらいたい。 そうするには、あんたがDMネットワークを裏切ればいいだけだ」 『貴方に……いえ、貴方がたに従う理由があると?』 『そりゃ、あるだろ。なあ?』 無線機の向こう側で聞こえた声は、この瞬間を見計らっていたかのようだった。 このショッピングモールに最後まで姿を現さなかった、伝説のアイドル。 『天川……宗理』 最悪の相手を、最悪のタイミングで、殴りつける。 今がその時だった。狙われていたのは会田で、もう逃げられない。 『おめぇに選択権なんてねェんだ。安道って小娘が広告して……おめぇがスポンサーを集める。 見ただろ! この俺がアイドルを教えた、一誠のデビューだ! ハハハハハハハハ! いつかの時代みてェな、最強のアイドルになるぞ!』 ――アイドル全盛の時代の裏には、常に広告業界の助けがあった。 数多くのライブの裏側で、彼らはアイドルの最強を演出し、圧倒的な強さを宣伝し続けてきた。 国民の誰もの心をひとつにした、最強という偶像への憧れは…… 広告業界が新聞やテレビといった媒体を離れ、インターネットに移行するに従って消えていった。 ただひとりで勝ち続ける者など存在しない。 いるとすればそれは、偽りの夢だ。しかし。 「会田。俺と天川宗理が見せる夢は……夢の広告みたいな偽物じゃない。 バカどもに、本物の夢を見せてやるのさ」 武器が強かった。組織力と金という武器を持っていた。 仲間を引き連れていた。安道ハル子は、最初からグルだった。 環境が有利だった。ありとあらゆる演出は、その実保坂一誠に味方していた。 そして――誰よりも、卑劣な手段を使っていた。 それを知る者がいない限りにおいて、最強の偶像は、心の中で真実となる。 (――夢) 安道ハル子は、夢について思いを馳せた。 破壊と広告で蹂躙されたショッピングモールを眺め渡す。 いつかの商店街にしたことよりも、ずっと極悪な所業だ。 それでも安道ハル子は、自らの意志で、抗うことができた。 保坂も、天川も、会田も……そして安道も、誰もが平等に、悪党だった。 誰もが、望んだ姿の通りに生きている。 (あたしの魔人能力で、夢を見せられるだろうか) 保坂一誠が通話を終える。安道ハル子は、ポケットに入れた手を握りしめた。 距離は5m。2人ともが、これから何が起こるかを知っている。 ……夢の戦いは、まだ始まっていない。 PM 9 00 夢 安道ハル子には、最後の勝算があった。 そう呼ぶにはあまりにも陳腐で、身も蓋もない手段が。 彼女に誰かを殺す度胸はなかったし、その実力もないと自覚していた。 現実の戦いでひたすら裏方に徹していた彼女を見て、誰もがそう思ったことだろう。 逆に言えば、相手が死なないことさえ分かれば、殺せるのだ。 夢の戦いのはじまりを告げた、夜魔口組の男との対決。 あの日は、安道が倒れた男の懐を漁るところまでも中継されていただろうか? 幸運が味方した薄氷の勝利だった。そして臆病な安道は当然、次に同じ事態に遭遇することを恐れた。 不安のたびに握りしめていたポケットの中には、無骨な銃把があった。 現実世界では、永久に引き金を引くことができないであろう銃が。 もしも彼女自身の夢がほしくなった時には、夢の戦いですべきことを決めていた。 地面を通して伝わらせた広告で、保坂一誠の視界を直接塞ぐ。そして、銃を撃つ。 ――あまりにも陳腐で、身も蓋もない手段。 (……今だ) 距離は5m。思ったよりもなめらかに、保坂一誠に広告を投影することができた。 ただシンプルな、赤い同心円だ。実際に射撃の的としても用いられた、『撃て』という広告アイコン。 『ラッキーストライク』。その狙いに従って、撃てばよかった。 後ろに見えるアーケードは朽ち果てている。 ところどころの商店にシャッターが降りて、広告の一枚も見当たらない、灰色の光景だった。 世界に欲望がひとつもなかったのなら、こんな風景になるのかもしれない。 今も思い出すことができる。自分の仕事が、スーパーマーケットに客を溢れさせた…… 何も知らない人々が浮かべる、笑顔と喜びがそこにはあった。 (ああ) 時間が引き伸ばされている理由にも気づいていた。 焼き付いた過去を、ふたたび思い出す理由も。 安道ハル子は保坂一誠の魔人能力を知らない。 もしかしたら彼は天川宗理と同じ人間で、何ひとつ、特殊な能力など持ちあわせていないのかもしれない。 それでも、自分が敗北することを分かっていたように思う。 (こいつ、やっぱり強いなあ) 保坂一誠は悪党だ。けれど、あの絶望的なライブの中で、自分が口にしたことを、すべて実現させた。 まるで、その言葉だけが信じるに足る、自明なる公理だとでも言いたいかのように。 ――夢に落ちた瞬間、 確かに、その歌詞を聞いていた。 ――君に触れていたいから。 拳が到達していた。 状況を認識してから広告を展開した安道よりも速く、保坂一誠は自動的に動いた。 夢の戦いは一撃で終わった。 悪夢 安道ハル子は、自室のベッドで目覚めた。 天井の色がどこかおかしいように思ったが、よろめく足で洗面所に向かう方が重要だった。 蛇口を捻り、顔を洗う。水飛沫が不自然に散って、『D』『M』の文字を象っているようだった。 歯ブラシを手に取る。湾曲した複雑なカーブを描いている。どこかで間違って曲げてしまったのか。 パラケルススワークスのエンブレムに似ていた。持ちやすい。そのまま歯を磨き、口をすすぐ。 「……KPI」 自室に戻った安道は、天井の模様をぼんやりと眺めた。 そうだ。KPIグループ。ここの天井はKPIグループの提供だったのか。 「KPI。あなたの『べんり』をクリエイトする」 安道自身の言葉までもが、彼女の意志とは無関係にキャッチコピーを紡いだ。 不思議なことではなかった。声を出し、自ら動く人間は広告としてとても有用な媒体だ。 遍く広告スペースは、有効に活用されなければならない。 ラップにかけて放置していた、冷めた飯を口に含む。デジ産業のロゴが一粒一粒に刻印されている。 あのデジ産業製の食品を食べて生きていける。なんて夢のような暮らしなのだろう。 そうだ。あたしは夢の報酬を受け取った。全世界の人々の夢に、他でもないあたしが作った広告を届けるのだ。 「……。そうじゃない、だろ……」 本能が叫ぶ頭痛に耐えながら、窓を開ける。 それはさらに恐ろしい景色だった。 ――空白。 白く脱色された、茫漠とした町並みが、ただ広がっていた。 そのひとつひとつに、小さなゴシック体で刻まれた、『広告主募集中』の文字だけがあった。 「……違う」 安道ハル子は顔を覆った。 保坂一誠がどうだろうと、本当は従う気なんてなかったんだ。 本当は、もっと美しい何かを、すべての人の夢に届けられればよかった。 「まだ、やり直したい。何かを考えて、作り出せる能力があるのだと、信じてみたかったんだ――」 多くの人間の欲望を弄んだ安道は、また新たな悪党と組んで、欲望を煽ろうとしている。 それでも、彼女の作り出す虚構を見た誰かが、何か美しいものを夢見ることができるのなら。 (やりなおせるかな。あたしは) 悪夢を償うには、まずは自分がそうしなければならないこともわかっていた。 引き出しの中に仕舞ってあった、安物の色鉛筆を取り出す。 どこの企業のものだかわからない、ロゴマークすらもついていないものだ。 (会田。やっぱりお前は間違ってるよ) 扉を開けて、空白の世界に踏み出していく。 (人生の3分の1どころじゃない。人間にはもっと大きな領域があるる。 そこにだけはきっと、他の誰も踏み込めないんだ) そのひとつひとつに、彼女の描くデザインを刻みこむために。 美しいもので、再び心の中を満たせると証明するために。 瑞夢 夢の報酬で願うことは、最初から決まっていた。 保坂一誠の望みはずっとひとつだけで、他のことなど考えもしなかった。 だから最初に湧き上がった感情は、心配だった。 (夢の記憶は鮮明に保ったまま目覚められるとして――どの程度を記憶していられるか。 できるだけ多くの人間の『弱み』を握っておきたい。複雑な内容は後回しにしたほうがいい) (望みのままの夢なら、情報は手元の本やテキストファイルとして現れる形がいいのか? 画像や音声の証拠はどうなる? 持ち帰れなくても、知っておくことで有利になれるのなら……) ――ようやく。 もう一度この世界に、保坂が憧れた天川宗理を知らしめることができる。 マカマカ教を内側から支配して、日本最大のアイドル事務所に変える。 たったひとりのアイドルの師父(マスター)を、もう一度、本物のステージに立たせてやりたい。 自分が本物のアイドルになれないことくらいは、最初からわかっている。 夢を集めるにふさわしい者こそが、最強の栄光を受け取るべきだ。 次に目を見開くと、保坂は見慣れた自室に座っている。 普段と異なる違和感や、すべてを思いのままにできる全能感もなかった。 感覚すらも鮮明な、もうひとつの現実のようだった。 「おいおい……」 思わず苦笑した。机の上に封筒が置いてある。 夢の中で望んだ物事から正しい情報が得られるのか、事後確認のためだけの封じ手。 既に天川宗理が夢の性質を確かめている以上、そんなものを置く必要はない。 何気なく封筒を破り、手紙の文面を見た。 『お前の夢に、正直に生きろ』 それだけだった。 「……」 一生に一度の夢。 ただひとつの願い。 それは現実の夢を叶えるために、この部屋で秘密を暴き続けることだ。わかっている。 俺はのし上がるほうを選べる人間だからだ。 だから、外に出るドアを見るのが怖い。 「……クソ……なんだよ」 手紙を握りしめたまま、保坂は呻いた。 「今さら、ハハ。なんなんだよ……」 聞こえるのだ。 扉の向こうから、会場を満たすファン達のざわめきが。 色とりどりの光が、扉の隙間から漏れているのだ。 その向こうに何が広がっているのか、保坂一誠にも分かっていた。 自分の心の中にも、やはり、同じ望みがあったことを知った。 それも、師父の天川宗理よりも、ずっと遅れて気づいたことだった。 「夢に……夢に、正直に生きろだって?」 輝く星になれる、運命のドア。 ただ一夜だけ……まるでシンデレラのような、最強のトップアイドルの世界へと。 「俺の夢は――」 エピローグ 「おう。目が覚めたか」 天川宗理の声で、再びこの現実に戻ってきたことを知った。 薄暗い、いつものダンススタジオ。 あの日。保坂一誠はここから始まった。 「……安道は? あいつには悪いことをした」 「まだ眠ってるが、まァ大丈夫だろ」 天川宗理は、口元を歪めるように笑う。そんなアイドルだった。 「悪夢なんざ、クソッタレな現実に比べりゃ、大したことァねぇさ。 一週間か、一ヶ月か――目覚めるやつは何人もいた。 その時だ。はじめるぞ。おめぇのプロジェクトを!」 どこか遠い光景を、それでも確信を持って見つめているような、熱のこもった眼差しだった。 新しい弟子のこれからについて話すとき、天川宗理はいつも嬉しそうだ。 「――師父。俺が見た夢の話なんだけどさ」 「あぁ? そういや、そんなのもあったな」 保坂一誠もつられて、何でもないように笑った。 「夢の話をしたいんだ」 『ダンゲロスSSドリームマッチ ショッピングモール』 おわり
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/14705.html
登録日:2010/01/05 Tue 23 18 33 更新日:2024/09/18 Wed 17 50 02 所要時間:約 13 分で読めます ▽タグ一覧 ガンダム ガンダムSEED ガンダム仮面キャラ クルーゼ クルーゼ隊 クローン ザフト スパロボ版権作品最後の敵シリーズ ドラグーン ナチュラル ナチュラル最強候補 プロヴィデンス プロヴィデンスガンダム ラウ・ル・クルーゼ ラスボス 仮面の人 仮面の男 努力は才能を凌駕する 努力家 名言多し 哀しき悪役 復讐者 悲劇の男 扉 指揮官 機動戦士ガンダムSEED 滅びを望む者 火星の後継者を滅ぼした男 白服 破滅主義者 空間認識能力者 虚無主義者 金髪 関俊彦 関俊彦ガンダムキャラリンク 隊長 ストライク、討たねば次に討たれるのは君かも知れんぞ… 「機動戦士ガンダムSEED」の登場人物。 CV 関俊彦 人種:詳しくはネタバレを参照。 血液型 O型 生年月日 不明 年齢 25歳 身長 183cm 体重 77kg 【概要】 Z.A.F.Tに所属する仮面の男。 部隊指揮官相応の白服であり、クルーゼ隊の隊長。 非常に優秀なMSパイロットであり、世界樹攻防戦においてはジンハイマニューバを駆ってモビルアーマー37機、戦艦6隻を撃破しネビュラ勲章を受章。 グリマルディ戦線では地球連合第三艦隊を壊滅させる等、Z.A.F.Tのトップガンとして獅子奮迅の活躍を見せている。 その驚異的な優秀ぶりから、ザフト兵には嫉妬を抱く者も数多くいたらしいが、尺の関係などで作中では描写されていない。 【人物像】 冷静で理知的な性格だが、仮面の影響もあってか言動の端々が非常に胡散臭い。 温和とも冷笑的ともいえる笑顔と思わせぶりな言葉で真意をはぐらかして煙に巻いたり、相手の思考を揺さぶる様な皮肉を口にする場面も多々ある。 しかし、最終決戦までは隊員に対しては紳士な対応を徹底していた上、実務においても頼りになる隊長だったので、隊員からの評判はかなり良好だった。 とはいえ、常に仮面を付けていて友軍にも素顔を晒さず、表情をうかがわせないことに不快感等を示す者は少なくなく、 バルトフェルドは同じ士官としてクルーゼが優秀なことを認めつつも、その態度に不信感を隠さず、モラシムに至っては彼の映ったモニターを叩いて消すほどに嫌っていた。 また、「彼の素顔を知る者、知ろうとする者は戦死する」というジンクスもあり、ニコル・ミゲル・フレイはこのジンクスが原因で死亡したとも(*1)。 クルーゼとしても素顔を隠す目的で仮面を付けているだけで、好き好んで着用しているわけではないと思われるが、 そこまでして見られたくないだけに、他人の目がある場所では頑なに仮面を外すことはせず、 劇中で一度仮面が外れ、かつ回収できなかった時には、母艦に戻った後は誰とも顔を合わせないように一目散に自室に戻り、 薬を貪るように飲んだ後、即座に予備の仮面を取り出して装着する(*2)ほど、素顔を他人に見せることを嫌っている様子を見せている。 ※尚、自室の引き出しには大量の予備の仮面が常備されている。 何故かムウ・ラ・フラガとは、近くにいると互いの存在を認識し合う事が出来る。 また、その際にはニュータイプ的な効果音が挿入される。 病気か何かを抱えているのか、時々激しい発作に見舞われる場面もあり、発作を抑えるための錠剤を服用している。 水無し一錠ですぐに効くという優れものである。 スパロボでの客演では、あらゆる勢力から「信用出来ない」として白眼視されている。 一方、独自の思想を持っており、徹底して悪役としてブレなかった事、後述の強さに対する設定が秀逸だった事等から、名悪役として視聴者からの人気は高い。 変態仮面呼ばわりされたりもするけど。 余談だが、感情が高ぶると仮面の両眼部分が大きくなる。ジブリ作品のキャラが高ぶった際に髪の毛が震え立つ演出と似たようなものだろうか? 高確率で作画に気合いが入っている場面が多いのも特徴。 【クルーゼ隊】 部下は副官1名、赤服5名、緑服3名という構成で、緑服のミゲルも含めた6名が優秀な隊員である上、クルーゼ自身もエース級のパイロットで、 『足つき』ことアークエンジェル及びストライク撃破に失敗するまで、任務の完遂率は100%であったという超エリート部隊である。 アスラン・ザラ 赤服。最高評議会議長パトリック・ザラの息子。 文武に秀でており、冷静な性格だが、不器用なところが目立つ。 初期から親友がストライクのパイロットだと知らされており、その心情を汲み取りつつも、 「敵同士である以上、討つことを躊躇っていれば仲間や自分が討たれるかもしれない」等の、脅しとも心配とも取れる言葉を投げかけたりしている。 詳細は項目参照。 イザーク・ジュール 赤服。最高評議会議員エザリア・ジュールの息子。 士官アカデミーをトップクラスの成績で卒業した優等生だが、直情的で短気なところがあり、アスランに対抗心を燃やしている。 仲間が戦死や離反で抜けていく中、初期メンバーでは唯一ザフトに残ってプラントを守るべく戦い抜いた。 戦後は白服に昇格し、ジュール隊の指揮官として活躍した。 詳細は項目参照。 ディアッカ・エルスマン 赤服。最高評議会議員ダッド・エルスマンの息子。 イザークとは士官アカデミーの頃からの親友という間柄で、斜に構えた態度と皮肉屋なところが目につきやすいが、 度々衝突するイザークとアスランの仲裁に回ったり、ニコルの戦死にショックを受けながらも仲間を鼓舞するなど、情に篤い一面もある。 中盤、紆余曲折の末にザフトを離脱し、三隻同盟の一員として終戦まで戦った。 戦後は緑服に降格こそしたがザフトに復隊しジュール隊に配属されイザークの副官として活躍した。(後に黒服に昇格) 詳細は項目参照。 ニコル・アマルフィ 赤服。国防委員会の武官であるユーリ・アマルフィの息子。 温厚な性格でアスランとは特に親しい。臆病呼ばわりされる事もあったが、実際には勇敢であり、その人となりもあって仲間からの信頼は厚い。 物語中盤、オーブ近海の戦闘でボロボロの愛機でアスランを庇って戦死した。 詳細は項目参照。 ミゲル・アイマン 「黄昏の魔弾」の異名を取る、緑服ながら赤服に引けを取らない実力を持つエースパイロット。 ヘリオポリス襲撃のMS戦闘でストライクガンダムと相次いで交戦した際、二度目の戦いで戦死した。 詳細は項目参照。 ラスティ・マッケンジー 赤服。オレンジ色の髪が特徴の少年。 ヘリオポリスでのモビルスーツ奪取作戦のメンバーであったが、ストライク強奪を試みた際に機体の上でマリューの部下に撃たれて死亡した。 本編に於ける唯一の台詞である断末魔は中年男性の様な声だったが、アスラン・イザーク・ディアッカ・ニコル・ミゲルとラスティは士官学校を一緒に卒業した同窓生の関係にある。 本編では素顔や人となりは描かれなかったが、それぞれスペシャルエディションや番外漫画などで補完されている。 オロール・クーデンベルグ マシュー 共にヘリオポリスでアークエンジェルを襲撃したメンバー。 茶髪のオールバックがオロール、黒髪の褐色肌がマシュー。 どちらもムウが手動操作するゴットフリートに撃ち抜かれて戦死した。 フレデリック・アデス クルーゼ隊旗艦「ヴェサリウス」の艦長。黒服。クルーゼの副官的な立場にあった。 寡黙で実直な性格だが、良くも悪くも常識的な軍人の考え方をしており、その事をクルーゼに窘められる事もあった。 終盤まで副官としてクルーゼに付き従い続けたが、三隻同盟と交戦した際、包囲を突破するために三隻から集中砲火を浴びて母艦・ヴェサリウスが撃沈。 部下を脱出させたと思われる状況の中、ただ一人艦に残り、ブリッジで最期まで敬礼をしながら艦と運命を共にした。 この時点で既にZ.A.F.T.から離反していたアスラン、ディアッカからもその死を悼まれているところを見ると、部下から慕われる人柄であったことがうかがえる。 ゼルマン クルーゼ隊所属艦「ガモフ」の艦長。 低軌道会戦でアガメムノン級メネラオスと差し違える形で戦死。 シホ・ハーネンフース アイザック・マウ ザラ隊から結果的にイザークしか復帰しなかったため、補充された人員。 しかしクルーゼ自身の栄転に伴い即ジュール隊に再編成された。 以下ネタバレ 毎日放送 機動戦士ガンダムSEED FINAL PHASE「終わらない明日へ」より 画像権利所有者 株式会社サンライズ 知りたがり! 欲しがり! やがてそれが何の為だったかも忘れ! 命を大事と言いながら弄び殺し合う! 何を知ったとて! 何を手にしたとて変わらない!! 最高だな、人は……! そして妬み! 憎み! 殺し合うのさ! ならば存分に殺し合うがいい! それが望みなら! 何を! 貴様如きが偉そうに! 私にはあるのだよ! この宇宙でただ1人、全ての人類を裁く権利がな!! ふざけるなこの野郎! 覚えていないかなムウ? 私と君は遠い過去、まだ戦場で出会う前、一度だけ会ったことがある。 私は、己の死すら金で買えると思い上がった愚か者…… 貴様の父、アル・ダ・フラガの出来損ないのクローンなのだからな…!! その正体はムウの父、アル・ダ・フラガの細胞から作られたクローン人間の失敗作。 自他共に認める天才であったが、傲慢且つ猜疑心の強い性格だったアルは、 実子のムウを「自分程の才能も無い」上に「妻の反対で思う様に教育出来なかった」として後継者と認めず、 自分のクローン人間を作製し、それを自分の思う通りに教育することで、自分と同等の才能と考えを有する理想の後継者を作り上げようとした。 その事を知っていたのは、本編時点では自身とレイとデュランダル程度と思われる。 製作者はキラ・ヤマトの実父であるユーレン・ヒビキ。 個人のクローン作製が違法と知っていたため当初は反対していたが、コーディネイターの研究費の援助をちらつかされてクローン作製に手を染めた。 この資金援助によりユーレンの研究は完成し、その結実として後にスーパーコーディネイター「キラ・ヤマト」が誕生している。 つまり、クルーゼは生まれこそ特殊だが遺伝子操作を受けて生まれたわけではない為、分類上はコーディネイターではなくナチュラルとなる。 しかし、アル・ダ・フラガの類まれな才能を受け継いでおり、事実その能力はムウと同等かそれ以上(*3)。 更に彼自身の努力でその才能に磨きを掛け、それによってコーディネイターで構成されたザフト内でも目を見張る程の驚異的なまでの実績を挙げてきた。 ザフトに入った経緯や、それまでどういう活動をしていたのかは不明。 しかし、クローンニングという技術の性質上身体のテロメアが常人より短く、生まれた時点で当時のアルと同じ程度の寿命しか残っていなかった。 テロメアについて テロメアとは細胞に存在するキャップの様な部位。 生物の細胞分裂はテロメアを消費して行う為、細胞分裂の回数の上限が決まっており、これを使い果たす事で老衰死すると考えられている。 既にテロメアをある程度使った状態からコピーした場合、クローンも最初からテロメアを消費した状態で生まれるため寿命が短いと考えられ、80歳で死ぬ人間が20歳の時にクローンを作ったとしたら、そのクローンは60歳で死ぬ計算になる。だが、「クローン生物はテロメアが元から短い為寿命も従って短い」説、「テロメアの消耗は即ち寿命の消耗」説は現代では疑問視されている部分もある。 少なくともテロメアが老化に深く関わっている事は間違いないと考えられているが、詳細は未だに不明瞭である。 アルは後述の通り自然死ではないため、劇中では実年齢25歳とされるクルーゼが具体的にあと何年生きられるのかは不明瞭であるが、 小説版においては、仮面の下の素顔が老人のそれと語られ、ラウ自身も身体が老化していると述懐しているため、残る寿命はあと僅かであると推測される。 これにより、一時は「ラウ・ラ・フラガ」の名を与えられ、ムウに代わる後継者としてアルと教育係から厳しい教育を受けていたが、 寿命の問題が判明した時点でアルはラウを「失敗作」として捨て、再度ムウを後継者に据えようとした。 ラウがいつ自分の出生の秘密と、自らの短い寿命を知ったのかは不明だが、アルのエゴでクローンとして望まぬ生を受けたばかりか、 これまた身勝手な理由で自分の命を「失敗作」と断じ、捨てられたラウはアルを、ひいては彼と同じようなことばかり思いつく人類の業を深く憎んだ。 その憎悪はまたたく間に肥大化し、常人よりも遥かに短い寿命もあって性格も酷く屈折。 ラウはフラガ家の屋敷に火を放ち、アルと彼の妻を焼死させ、その後姿を眩ませて暗躍を開始する。 因みにこの直前、一度だけだが幼い(といっても互いに年齢自体は殆ど変わらないが)ムウと対面している。 前述の錠剤も、後述する友人ギルバート・デュランダルから与えられたテロメアの消耗を抑える(要するに老化を遅らせ寿命を延長する)薬であり、 時折発作に苦しんでいたのは薬が切れた時の禁断症状である。 発作を抑えるために薬を飲んでいたのではなく薬を飲んでいるために発作を起こしていたのである。 大量虐殺兵器が用いられる等戦況が悪化していく中、表では優秀で(少なくともザフトにとっては)善良な指揮官を演じ続け、最終的にパトリック・ザラの信頼を得る事に成功。 ザフトに不都合な暗躍もしているが、戦争中はバレていなかった為にパトリックから重宝され、 かなり良いポジションで暗躍&戦乱を観察し続ける事が出来、自身の計略を推し進めて連合とザフトの対立を煽っていた。 そして最終決戦の段階では既に精神的に無敵の人状態であり、キラの必至の叫びを「それが誰に分かる?何が分かる?分からぬさ!誰にも!」と一蹴した挙句、 違う!人は…人はそんなものじゃないッ!! っは! 何が違う! 何故違う! この憎しみの目と心と! 引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界で! 何を信じる、何故信じる!! それしか知らないあなたが! 知らぬさ! 所詮人は、己の知る事しか知らぬ!! といった具合に汚いエゴと虚飾こそがこの世と人の心の全てと主張し続け、最早クルーゼ本人はあらゆる人の言葉に拒絶を返す対話拒否状態に陥っていた。 【パイロットとして】 元々コーディネイターが使用する前提で設計されたMSは、OSもコーディネイターを想定して組まれており、 故にナチュラルではMSを操縦すること自体が非常に困難なはずなのだが、よほど努力したのか、四苦八苦していたムウと違ってクルーゼは苦も無く操縦している(*4)上、 かつては『赤服』を纏い、現在は指揮官としても優秀として認められた証でもある『白服』を纏っていることを加味すれば、 彼の能力はナチュラルでありながら並のコーディネイター達と比べても遥かに優秀な事がうかがえる(*5)。 おまけに上記の通り、ナチュラル+老化の激しい肉体でありながら、本編ではコーディネイターしかいないザフトで白服を授与された叩き上げのトップガンの地位にいた。 つまり、彼はコーディネイターだと名乗っても味方から全く疑われないほどのパイロット技量を保持していたことを示しており、 実際最終決戦では、SEEDを発動させた、しかもクルーゼを殺す気マンマンのキラと互角以上に渡り合うという離れ業も見せつけている。(*6) これらもあって『SEED世界最強クラスのパイロット』と評しても問題はない。 ましてや「ナチュラルのパイロット」という括りでは文句なしの世界最強のパイロットであった。 【主な乗艦及び搭乗機】 ナスカ級高速戦闘艦「ヴェサリウス」 クルーゼ隊旗艦。 ジンハイマニューバ(1号機) 本編未登場。『SEED MSV戦記』ではこの機体でグリマルディ戦線に参戦し戦果を挙げた。 シグー 初期搭乗機。 劇中においては、本機に乗っている期間がそれなりに長く、宿敵であるムウのメビウス・ゼロと度々交戦していることや、 クルーゼのパーソナルカラーと合致するシルバーグレーのボディ等から、プロヴィデンスと並んでクルーゼの搭乗機という印象が強い。 『SEED Re』では2基のガンバレルを搭載した大型バックパックに、ビームサーベルの機能が搭載されたシールドが装備された「クルーゼ専用シグー」なるものも登場した。 ラウ専用ディン 2代目搭乗機。クルーゼ専用機故にシルバーグレーに塗られている。 初のパーソナルカラーで塗られた専用機だが、カラーリング以外に特に追加武装等はない。 地球で暗躍していた頃に使われており、『オペレーション・スピットブレイク』参戦時にお披露目。 ゲイツ(指揮官用) 3代目搭乗機。ゲイツの制式配備に先駆け、先行導入された。 ディン同様にクルーゼのパーソナルカラーであるシルバーグレーに塗られているが、色以外は一般機と差はない。 資料では専用機ではないともされており、どっちが本当なのかは不明。 再度宇宙へ上がった後にディンから乗り換えた機体で、一応当時のザフトの新型機ではあるのだが、 終盤でもたまにビジュアルが若干似てるシグーが出てきたことや、ラスボス機たるプロヴィデンスのインパクトに隠れてしまい、クルーゼの乗機の中では影が薄め。 プロヴィデンスガンダム 最後の搭乗機にして『SEED』におけるラスボス機。 高い空間認識能力を持つクルーゼが乗るということで、オールレンジ兵装「ドラグーン」が主兵装となっているが、 元々は近接戦用のMSを急遽「ドラグーン」搭載機に変更したため、完成度という観点では兄弟機のフリーダムやジャスティスに劣る。 カラーリングの配色、オールレンジ兵装が主兵装、「未完成機」…と、そこはかとなくジオングを思わせる機体となっている。 TV放映時には徹底的に事前情報を伏せられていた経緯があり、2話しか登場していないがラスボスらしい圧倒的な強さと合わせて強烈なインパクトを残した。 フリーダムガンダム ゲーム作品で搭乗。まだプロヴィデンスガンダムの情報が出ていない時期だった為、まさかの後継主人公機に乗ることとなった。 だが寿命からの解放を望み、最終的には良くも悪くも自由に、自分が思うがままに振る舞ったクルーゼにとっては皮肉の塊とも呼べる機体となっている。 【本編での行動について】 SEED本編の所謂ラスボスに間違いはなく、スパロボ等では特に世界の破滅を望んで行動しているキャラとして描かれる事が多い。 フラガ家を破滅に追いやった後、プラントへと渡って名を変え、素性を偽ってザフトの前身組織である黄道同盟へ入隊。 ナチュラルでありながら優秀な成績を残し、エリートの証である赤服を身に纏い、戦果を挙げやがては指揮官という役務を得た。 尚、トレードマークである仮面はこの頃から着用しているが、これは急速な老化現象が表れ始めた素顔を隠すという目的である(*7)。 だが序盤においては彼自身は人類滅亡や世界の崩壊に対してそこまでの積極性は見せていない。(*8) とはいえ公に行動しているので暗躍というわけではないが、(連合の秘密工場があり、パトリックの意向でもあったが)中立コロニーのヘリオポリスに躊躇無く先制攻撃を仕掛けたり、 その攻撃によってコロニーが壊れようが全く気にする素振りを見せないなど、後の展開に繋がる一面は序盤から見せている。 ただし、あくまでも全てを操っていたわけではないだけであり、大きな暗躍はしている。 本編が中盤に入った頃、オペレーション・スピットブレイクにおいて、そのままだと下手すると戦争がそのうち終結してしまうところだったため、 彼はザフトの情報を連合に漏らしてサイクロプスの使用を促し、目論見通り戦争の膠着化と更なる復讐の連鎖を煽ることに成功(*9)。 サイクロプスが使われると踏んでいた根拠は謎だが(*10)、仮に知っていなかったとすると、 どさくさに紛れてアラスカの『地球連合軍統合最高司令部』のジョシュア基地に潜入するなんて真似は非常に無謀である。 すんなり中心部に辿り着いている事といい、やはり予め建物の構造と作戦の詳細な情報を受け取っていたと考えた方が良さそうだ(因みにアズラエルとの繋がりを示唆するのはこの時)。 この際、転属を嫌がって基地内をうろついていたフレイ・アルスターと遭遇。 彼女がクルーゼの声を聞いて「パパ?」と呟いた(*11)為、アルの関係者ではないかと疑ったため拉致する(結果的に救出したとも言える)。 そのためにしばらく近くに置いて探っていたが、後に全くの無関係だったと分かったので興味を無くした。 自身の遺伝子と深い因縁を持つムウ、自身のような犠牲の上に生まれたキラとコロニーメンデルで対峙した際には(*12)感情が昂ぶり、 ザフトではあまり本音を語らなかった反動もあってか、これまでの彼とはまるで違う一面と饒舌ぶりを見せた。 さらに、世界を滅びに向かわせる一手として、『NJC』のデータを連合にリークした。 これについては戦闘の最中、避難艇の内の一機にだけそのデータを持った人間(フレイ)を乗せるという賭けの様な行為に打って出ており、(*13) クルーゼ本人も、『NJC』のデータが連合に届こうが届くまいが構わないと内心で嘯くなど、「賭け」という認識があったと思われるが、 結果的には、フレイの乗った避難艇は撃墜を免れ、フレイと彼女に持たせた『NJC』のデータはドミニオンに回収されるばかりか、 同艦にたまたまオブザーバーとして居合わせていた、反コーディネイター組織『ブルーコスモス』盟主のムルタ・アズラエルの手に直接渡るという、想像以上の大成功になった。 小説版ではこの予想以上の成果に対し、「やはりこの世界は滅びを望んでいるのだな」と一人笑うシーンが追加された。 尤も、もしも『NJC』がアズラエルや彼に追従する過激派ではなく、穏健派の連合軍上層部の手に渡り、 彼らが地上のエネルギー問題等のために『NJC』を平和利用しようとした場合でも、存在が明らかになればブルーコスモスや過激派が目を付けないとは考えにくく、 連合に渡った時点で、情報抹消以外の方向だと遅かれ早かれ劇中と同じ流れになっていたと思われる。 つまり、上記の賭けはあくまでもクルーゼ視点の感想であって、そもそもの行動・前提条件が悪意に偏っているものである。 終盤にはパトリックの意向で特務隊へと異動する(*14)と共に、新たな乗機プロヴィデンスを与えられ、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦に参戦。 パイロットとしての超人的な技量とドラグーン・システムの圧倒的な火力で、ジェネシスに迫る連合軍や戦争を止めようとする三隻同盟を蹂躙し、 因縁深いムウと彼のストライクとの戦いでも、機体の性能差もあって撃墜こそし損ねたが一蹴している。 さらに、ムウの救援に駆け付けたキラのミーティア装備のフリーダムもほぼ一方的に攻め立て、 自機はほとんど損傷のないままに、フリーダムのミーティアを破壊せしめている。 そして、フリーダムとの戦闘中、戦場から撤退しようとする地球軍の避難船を撃墜し、そこに搭乗していたフレイを、助けようとしたキラの目の前で殺害してのけ、 一度は彼を戦意喪失に追い込むが、『SEED』を発現させて立ち直ったキラと再度交戦。 キラがドラグーンへの対応に慣れてきたこともあり、徐々に戦況はクルーゼ優勢からキラの方に傾き始め、 最終的にはキラ・クルーゼ共に、自機が半壊状態になるまでの死闘を繰り広げた。 クルーゼも徐々に自分が押し込まれていることに気付いてか、 キラに対し、自身がヤキン・ドゥーエに仕掛けた最後のトラップの存在を暴露。 フ…フフフフ、ハーハッハッハ!どの道、私の勝ちだ!ヤキンが自爆すれば、ジェネシスは発射される! 最早止める術はない!地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙となる! そんな… 人が数多持つ予言の日だ! そんなこと! それだけの業!重ねてきたのは誰だ!? 君とてその一つだろうがァ! 狂気じみた哄笑と共に、自身の勝利を確信するクルーゼ。 それでも戦意を失わないキラとフリーダムに、プロヴィデンスのドラグーンは次々と墜とされていくが、 クルーゼも負けじと、遮二無二迫ってくるフリーダムを着実に損傷させていく。 それでも…! 守りたい世界があるんだ! そして、ついにプロヴィデンスの両腕をフリーダムに破壊されたクルーゼは、 連結させてレンジを伸ばしたビームサーベルを掲げたフリーダムの突撃を、残るドラグーンで迎撃するも防ぎ切ることが出来ず、 ビーム刃をコクピット付近に受けたプロヴィデンスは機能を停止。 その直後にジェネシスの最後の照射に巻き込まれる形で、プロヴィデンスと共にクルーゼ自身もその爆発の中に消えていった。 しかし、彼の口元には敗北した悔しさなどは見られず、どこか安心したような笑みが浮かんでいた。 この最終決戦時の彼の口上は今でもクルーゼを代表する名台詞として語り草になっている。 自身の生い立ちから見出した人間の闇・悪性の主張にキラは圧倒されてしまうが、それも無理からぬこと。 大西洋連邦もザフトも自陣営の融和を求める穏健派を弾圧・粛清し、相手の絶滅を求めて悉く終末戦争の道を選び、 その愚行の果てに「人は互いに食い合い滅ぼし合う」殲滅戦が二人の後方で今まさに繰り広げられているのだから…。 さらには、皮肉な事にクルーゼの主張に真に共感し得るのは、彼と同じく「人の業」で生み出されたキラしかいない。 事態を俯瞰できるのも、理解できるのも、そして形は違えど「人の業」の化身がクルーゼとキラの二人である。 そういった背景を知れば、最後の舌戦はクルーゼがキラに理解を求めて訴えかけているように見えるかもしれない。 とはいえ、最後の明暗を分けたのもまた二人の歩んできた道の差であった。 舌戦ではクルーゼに押され気味だったこともあり、キラの「それでも守りたい世界がある」という言葉は些か軽く見られがちだが、 これまで『SEED』においてキラが歩んできた道のりを鑑みれば、その集大成とも取れるこの言葉は決して軽いものではない。 親友に友を殺され、自身もまた親友の友を殺し、一度は憎み殺し合いながらも、それでも和解に至ったのは紛れもない人類の可能性であるし、 キラやアスランに限らずAAの捕虜となったディアッカ(*15)やザフトに在籍し続けたイザーク、 果てはザフト中枢のザラ派すら、ジェネシスを地球にぶっぱする寸前で「これはおかしい、ここまでやる必要はない」と絶滅戦争の異常性に疑問を抱くに至っている。 クルーゼが「人は滅ぶべくして滅ぶ」と断じた人の業には、はからずも滅亡を望まない想いもまた含まれていたと言えるだろう。 また、クルーゼは確かに世界を破滅に導こうとしていたが、同時にそうしたくないという気持ちもあったと思われ、 『NJC』の流出の際に自覚しつつも賭けの様な行動に出たり、ムウに「貴様に討たれるならそれもまた…とも思ったがな」と(過去形だが)述べているのもその顕れで、 最後の瞬間に穏やかな笑みを浮かべていたのも、世界の破滅と自分を止めてくれた事への納得や安堵だと言及されている。 戦後における扱いの詳細は不明だが、行いは明らかになっているようで戦争犯罪者扱いになっている模様。 【人間関係】 キラに対しては憎しみや嫉妬が強いものの、生まれた理由やその扱いなど諸々が自身と重なるため、監督曰く愛しくも思っていたとのこと。 メンデルでムウとキラの二人と生身で相対するという、クルーゼにとってはそれなりに危険な状況に置かれながら、 キラに懇切丁寧に、熱も込めて彼の出自を説明したのも、この愛憎入り混じった感情が関係しているのだろう。 最も手強い敵の一人と認識しつつも、キラを一貫して「キラ君」とどこか親しげに呼んでいたのもその影響だろうか。 続編の劇場版『SEED FREEDOM』では、キラにとって相当なトラウマになっているのか、彼が敵の精神汚染を受けるシーンではほぼ全てクルーゼがバックになって映し出されている(*16)。 前述した通りムウとは非常に因縁深いというか同じ血が流れた宿業の相手だったので、キラ以上に拘っていた。 本編でも最終版まで拘りを見せ、尚且つムウに自身が倒されるならば、それもまた一興とまで考えていた。(*17) 小説版ではより克明にクルーゼの心中が描かれており、ストライクの残骸とムウが死んだ(ように視える)結果に、 「自身と同じ血を引き、最も自分に近い存在である、一番憎んだ男をその手で殺せなかった」と憤り、 只でさえ空虚だった彼の心の内に、より一層の虚しさが去来したと綴られている。 また、劇中でラクスの乗るエターナルを攻撃する際、「君の歌は好きだったがね」と一人で呟いている。 皮肉にも本気にも取れる言葉だが、彼女の歌をどう受け止めていたのか、どういう意味でラクスの歌が「好きだった」のかは謎のままである。 ギルバート・デュランダルとは友人関係にあり、その経歴を知る数少ない人物。 これはデュランダルが遺伝子工学の権威であり、嘗てメンデルの遺伝子研究所に研究員として在籍していた事が大きな理由だと思われる。 彼から細胞分裂を抑える薬物を貰い、老化の促進をある程度防げているが、その副作用は激しく、効果が切れた時には苦しんでいる。 デュランダルに対しては自身の内に秘めた憎悪を隠していなかった様で、デュランダルもまたクルーゼの言葉に共感し影響を受けていた節がある。 レイ・ザ・バレルは同じ遺伝子を持つクローン同士。資料によってはレイはクルーゼのクローン(二次コピー)とされる。 幼いレイを引き取ってデュランダルに預けたのはクルーゼであり、その後も親交があった模様。 メサイア攻防戦でのレイの言動から、彼にも本性を明かしていたと思われる。 【ゲーム作品】 第3次スーパーロボット大戦α~終焉の銀河へ~ SEEDの最終面で対決。 MAP移行前は幾ら倒してもド根性で復活する。 しかし、プレイヤー側は三万ダメージなんて軽い機体がうじゃうじゃしてるのと、プロヴィデンスの装甲が余り高くない事から案外普通に倒せてしまう為、重要な資金源となってくれたりする。 とはいえ、ターン制限や他のボスとの戦いもあるのでほどほどに。 MAP移行後はHPが10万越えに跳ね上がる。 また出撃枠が少なく少数の機体しか出せない。 しかし、その状況ですら自軍の総火力でアッサリ撃破されて、本来の目的であるジェネシスを規定ターンまでに余裕で破壊されることになりがち。 実は撃墜しなくてもクリア可能だが、熟練度獲得に必要なのと、最強クラスの強化パーツであるハロを落とすのでぜひ撃墜しておきたい。 アスラン、ディアッカ、イザーク(仲間になった場合)と会話イベントが発生。 人類の滅亡を願っている事から、前作、前々作での地球の危機には、内心ウキウキしていたらしい。 だが、その度に世界を救ってきたαナンバーズには鬱屈した感情を抱いていた模様。少しばかり小物臭い。 αナンバーズの面々に関しての情報はかなり調べ上げており、どこで知ったのか人類補完計画の詳細まで知っていた。 スーパーロボット大戦J 声優繋がりで中の人が同じ秋津マサトとの対戦時に専用セリフが存在する。 また、『機動戦艦ナデシコ』の草壁に引導を渡す(当然ながら原作にそんなシーンは無い)という誰もが予想しなかったであろう役どころを担い、 結果として劇場版ナデシコへのフラグをへし折ったことも。 能力的には最強クラスで、序盤から最終盤まで立ちはだかる厄介な敵。 しかも、なぜかコーディネイターの特殊スキルも持っているのでもともと高い能力がさらに強化される。 プロヴィデンスの性能もかなりのもので、版権キャラ最後の敵として立ちはだかる。 スーパーロボット大戦W ボン太くんに浄化されかけた。 味方側にもっと過酷な運命を背負ってる奴がいるからか、ここでも若干小物臭い。 似た様な出自の叢雲劾からは一定の理解を示されてはいたものの、その行動には弁護の余地無しと切り捨てられている。 ヤキン・ドゥーエ攻防戦で戦死したと思われたが実は生き延びており、最終前話ではDr.ヘル、シンクライン皇太子とともに今回も最後の版権敵として立ちふさがる。 なにげにガンダムシリーズのラスボスとマジンガーシリーズのラスボスが並び立つのはα以来である。 なお、本作ではNJCはフレイが自部隊側に回収された結果、ブルーコスモスと政治的に対立する立場の『勇者王ガオガイガーFINAL』のロゼ・アプロヴァールの手に渡ったため、 存在を明かした上でNJCの軍事利用不許可を明言した演説を行い、本当にブルーコスモスの手に渡らず、平和利用される事になった。(*18)シレっと劾がローエングリンランチャー用のNJC貰ってるけど スーパーロボット大戦X-Ω 本編では第3章で敵として登場。 期間限定イベント『錯綜する意志』ではあのエンブリヲに蘇生させられ、結託して悪事を働く。 『夢見た楽園は遠く』においてはジェネシスにぶち込まれたにも拘らずグラドス軍に救助されていたというさすがにちょっと無理がある設定で登場し、 グラドスの野望が地球人同士を戦わせて地球をボロボロにしようという計画(*19)だと知ると嬉々として参加、 圧倒的なカリスマ性でロゴス残党やテロリストを纏め上げて第3次地球・プラント戦争を引き起こそうとした。 同じくグラドスに保護されていたステラからは外見がネオそっくりだったため慕われていた。 また、ストーリーと自軍ユニットが関連付けられておらず、悪役キャラもプレイアブルとして実装されている本作では、彼とプロヴィデンスもまた自軍で使用可能。 ディフェンダータイプと大器シュータータイプの2種類がおり、シュータータイプの方は高い回避率に加えて暗闇の状態異常を付与する全体攻撃の必殺スキルを持つ強力なユニットでありながら、 確定で入手可能なガシャのユニットであったため、対人戦のアリーナで一時期猛威を振るった。 スーパーロボット大戦DD 原作通りなのでこれと言って書くことがない。 ゲーム的にも難易度がデノミされた第2章序盤のボスなのでちっとも恐れるに足らない。 SDガンダム Gジェネレーションアドバンス 発売が『SEED』放送終了からわずか2か月後(=制作・放送期間が丸被り)なだけあって良くも悪くも独特な展開がみられる同作。 クルーゼの扱いは最たるものの一つといえる。 連邦軍ジャミトフ派に内通しザフトを裏切り、フリーダムガンダムを連邦から受領して搭乗。 別れの挨拶と言わんばかりにヴェサリウスを撃沈して自軍に襲い掛かってくるのだが、終盤のソロモン攻略戦でムウと相打ちになって退場。 イージスに乗ったアスランに押されるわ、死亡後もフリーダムはほぼ無事だったのでキラに使われるわと、何がしたかったのかわからない中ボス感が拭えない。 SDガンダム GジェネレーションDS 概ね原作通りだが、ガトーの腕前を評価したり(*20)、「戦争を終わらせる鍵」が彼が手に入れた黒歴史のデータになっていたりする。 spモードのライバルルートでは主を失った「レギオン」の新たな保護者になっていたりと裏設定や「DESTINY」を彷彿とさせる行動をとっている。 機動戦士ガンダム Extreme vs. 中間アップデートでプロヴィデンスガンダムに搭乗して参戦。 主人公とラスボスという関係性もあってか、キラとの掛け合いが豊富に収録されているが、 原作再現のやり取りはストライク搭乗のキラ相手に設定されており、出撃ムービーではストライクに乗ったキラを相手にしていた(*21)。 劇中で直接的なやり取りの無かったアンドリュー・バルトフェルドやラクスに対して皮肉めいた台詞をよこしたり、 イザークやディアッカなどの部下からは味方なら信頼され、敵対するとその腕前を恐れられるなどされていた。 ちなみにパイロットグラフィックはこの手の作品としては珍しくパイロットスーツを着ており、熟練度を上げると衣装差分で白服状態にもできる。 EXVS2ではイラストがアップデートされたが、更に期中でイラスト変更され躍動感のあるものとなった。 SDガンダムバトルアライアンス これは「ガンダム作品のみのクロスオーバー」「原作の人やモノだけが他の作品や時代に移されたため、主人公はそれを 正しい歴史に戻す 」というゲームで、 原作のラウが他のガンダム作品の世界に転移したものを、主人公が捜索して倒し、元の『SEED』の世界に戻すことになるのだが、 よりによって転移したのは最終決戦直前の 行き着くところまで行ったラウ なので、 他のどんなガンダム作品の世界に行こうが、変わらず絶望と憎悪を撒き散らして暴れるだけのただのボスキャラになっている。 (主人公も立場上ラウを説得などで改心や救済することは許されないし、そんな言葉が通じる状態ではない) だからラウを説得とかしようにも聞き入れないのだが、 ラウが飛ばされた先にはラウの憎悪など相手にしないような奴ばかりいる事が多い。 (前述の世界に対する憎悪を叫んだラウに対して) カミーユ: お前はクズだ!生きていちゃいけない奴なんだ! 三日月:もういいよ。あんたの言うこと難しいし、 消えろよ。 この様に、ゲーム作品でもほぼ全ての作品では敵役・ボスキャラとして君臨し続けていたが、 ソーシャルゲーム「スーパーロボット大戦Card Chronicle」では、一度は自軍に倒されるも、 ショット・ウェポンとともにスパイラルネメシスを引き起こし、宇宙の崩壊を企てる悪役として出ては来るが、 最後の最後まで自軍であるカイルスに敵対し続ける点に関しては同じだが、 『冥王計画ゼオライマー』の塞臥の境遇に共感して自らの素性を明かして手を差し伸べるという、 これまでの作品では見られなかったクルーゼの内心を掘り下げる一幕があったり、 最終決戦において、「友人」のシンやルナマリア達との交流から未来への希望を見出したレイとの直接対決の果てに、 敗北を認めてレイの歩む未来にエールを送り、満足して散るという救いが漸く用意された。 ◆クルーゼの呪い? スパロボZにてネオやレイといったクルーゼと関連する二人に『声が低くなる』といったバグが生じ、それによって両者は声の雰囲気が驚く程クルーゼそっくりに。 特に、同じ声優のレイは完全にクルーゼにしか聴こえない。 何故この様な事態になってしまったのかは不明。一時は仕様と発表されていたが、ファンディスクでは修正された事から本当にバグだった様だ。 ◆セリフ集 SEED 「所詮、子は親には勝てぬということかな?」 「知りたがり、欲しがり! やがてそれが何の為だったかも忘れ、『命を大事』と言いながら弄び殺し合う!!」 「何を知ったとて! 何を手にしたとて変わらない! 最高だな、人は」 「使ってみせるさ……あの男に出来て、私に出来ない筈が無い」 「これが人の夢、人の望み、人の業!! 『他者より強く』、『他者より先へ』、『他者より上へ』!! 競い、妬み、憎んで、その身を喰い合う!!」 「もう遅いさムウ、私は結果だよ。だから知る! 自ら育てた闇に喰われて人は滅ぶとな!!」 「君の歌は好きだったがね……だが世界は歌の様に優しくはない!!」 「知れば誰もが望むだろう。『君の様になりたい』と、『君の様で在りたい』と! 故に許されない、君という存在も!!」 「これが定めさ! 知りながらも突き進んだ道だろう! 正義と信じ、分からぬと逃げ、知らず! 聞かず! その果ての終局だ! 最早止める術など無い!! そして滅ぶ!人は、滅ぶべくしてなぁ!!」 「知らぬさ! 所詮人は己の知る事しか知らぬ!」 「まだ苦しみたいか!? 『いつかは』『やがていつかは』と! そんな甘い毒に踊らされ、一体どれ程の時を戦い続けて来た!!」 「人が数多持つ予言の日だ!!」 「それだけの業、重ねて来たのは誰だ! 君とてその一つだろうが!!」 SEED DESTINY 「全てのものは生まれ、やがて死んでゆく。 ただそれだけの事だ」 ギル「だから何を望もうが、願おうが、無意味だと?」 「いやいや、そうではない。 ただそれが我等の愛しきこの世界、そして人という生き物だという事さ。 どれだけ、どう生きようとも」 「誰もが知っている事だが忘れている事。 だが私だけは忘れない。 決してそれを忘れない」 「こんな私の生に価値があるとしたら、知った時から片時も、それを忘れた事が無いという事だけだろうがね」 「そんな事は私は知らない。 私は私の事しか知りはしない」 「迷路の中を行く様なものさ。 道は常に幾つも前にあり、我等は選び、ただ辿る」 「君達はその先に願ったものがあると信じて。 そして私は、やはり無いのだと、また知る為に」 「そうして考えている間に時は無くなるぞ? 選ばなかった道など、無かったと同じ」 「もしもあの時。 もしもあの時。 幾ら振り返ってみても、もう戻れはしない。 何も変える事など出来ない。 我等は常に、見えぬ未来へと進むしかないのだ」 「今ではない何時か、此処ではない何処か。 きっとそこにはある。 素晴らしい『モノ』」 「それを求めて永劫に、血の道を彷徨うのだろう? 君達は……。 不幸な事だな」 「救いとは何だ? 望むものが全て、願った事が全て叶う事か? 『こんな筈では無かった』と、だから『時よ戻れ』と祈りが届く事か?」 「ならば次は間違えぬと、確かに言えるのか? 君は。 誰が決めたというのだ。 何を?」 スパロボシリーズ 第3次α 「人造人間エヴァンゲリオン! 早く君は使命を果たしたまえ! 補完という名の滅びを!」(対碇シンジの戦闘前会話) スパロボJ 「君の悪足掻きも、楽しませて貰ったがね。 だが世界は、正義と悪だけで語れる物とは思えんな」 「信じていた物に裏切られるのは辛いだろう? 楽になりたまえ」(草壁のかぐらづきを撃ち落とすシーン) 「君に代わって、私が冥王計画とやらを成し遂げてあげよう…」(対秋津マサト) スパロボW 「(くっ…あの機体を見ていると私の中の闇が薄れていく…!)」(対ボン太くん) スパロボCC 「それが君の答えか、レイ…。 ならば、辿れば良いさ…。 君が選んだ、その道を…」 「願ったものが先にあると信じるのは…君次第だからな…」 「フ…フフフ…ハハハハ。 ハハハハハハハハハハ!」 【余談】 フランスに「ル・クルーゼ(Le Creuset)」という鍋メーカーが実在する(*22)。 「クルーゼ」とは英語で「クルーシブル(Crucible)」、即ち「坩堝」の意味。 溶かした金属を混ぜる容器、または溶鉱炉の底に位置する溶融物溜まり、転じて様々な勢力がぶつかり合う状況や場を示す比喩表現でもあり、 また更にそこから転じてか「厳しい試練・苦難の状況」といった意味も持つ。 クルーゼの運命、行動、目的等も鑑みるに、大いなる皮肉とも盛大なブラックジョークとも言える名前である。 実は元々ラスボスの予定ではなかった。 当初の予定ではキラとアスランが和解せずに最後まで対立する流れだった(のでアスランがラスボスの予定だった)のだが、 脚本の筆が乗りすぎたせいか気が付けばアスランがキラの横に収まっていたため、急遽抜擢されたのがクルーゼなのだという。 実際、劇中でクルーゼが本格的に暗躍し始めるのは中盤のアラスカ戦のあたりからであり、序盤でも思わせぶりな発言はあるが行動はしていない。 『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』一巻の外伝と、『SEED ASTRAY』リマスター版本編で黒髪の姿の彼らしき男が登場しており、 スーパーコーディネイターの失敗作であるカナードに成功体であるキラ・ヤマトの存在を教えている。 また同作ではクルーゼと似た境遇の人物としてプレア・レヴェリーが、別のところではメタルギアソリッドのリキッド・スネークがいる。 世界を憎みながら失敗作と言われて育ち戦ったカナード、リキッド。 余命が幾ばくかのクローンでありながら、愛すべき世界や仲間の為に戦うプレア、スネーク。 それは奇しくも、キラとクルーゼの関係と真逆であった。 ちなみに声優を務めた関俊彦氏は以前から仮面キャラを演じたいと思っており、前々作の『ガンダムW』でもゼクス役のオーディションを受けるなどしていた。 結局『W』ではゼクスではなくデュオ・マックスウェルを演じることとなったが、『SEED』で漸く仮面キャラのクルーゼを演じることが出来た。 私にはあるのだよ! この宇宙でただ一人、全ての項目を追記・修正する権利がな! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 コメントログ 原作でもキラに向けて言ってる台詞やで、それ -- 名無しさん (2023-03-23 10 47 51) 最終決戦でクルーゼの言ってることってある意味正論なんよな。お膳立てしたとはいえ「戦争」の手段を選び取ったのは人類だと、それに対するキラの答えが「それでも守りたい世界」要は自分の手の届く範囲の人を守りたいっていう「エゴ」ってのが最高にイイ。続編はノーコメント -- 名無しさん (2023-03-23 15 36 06) 「悪意など介在しない善意の玉突き事故」によって独りぼっちになった水星狸を見たら、この人また病むかブチ切れそうやな…… -- 名無しさん (2023-05-23 18 57 31) キラとの最大の違いは回りの人脈に恵まれたか恵まれてないかなんだよな。 -- 名無しさん (2023-05-24 14 26 22) 遺伝子基準で診れば同じモノであるレイも人脈の違いで似て非なる答えを出す、という構成はいいと思うだよ。運命くんの根っこの構成はちゃんと種のアンサー出してるんだよ演出はともかく -- 名無しさん (2023-06-14 21 32 14) クローンとはいえこの人が最強クラスのパイロットであることがコーディネーターがまだ人類の枠の中にいる証明になっているのが皮肉 -- 名無しさん (2023-12-07 12 21 04) なおアル・ダ・フラガが自惚れるだけの事はある(本来の意味でのコーディネイターが人類と関係を調整する対象として想定されていた)新人類であった、とするなら「コーディネイターもクルーゼも人間じゃない」として人類の枠の外に出せてしまう模様。その場合「新人類もただの才能に溺れた資産家として生きて死んでってた」で味わい深い訳だけども…… -- 名無しさん (2023-12-08 06 06 25) 記事内で名前(ラウと書くかクルーゼと書くか)って使い分けがある?どっちでも伝わるからいいけど少し気になった。 -- 名無しさん (2023-12-08 06 21 31) RTA概念の流行のせいか「何故か完走しかけたRTAガバチャー走者」という点で再評価されてる感じ笑う。 -- 名無しさん (2023-12-08 17 58 01) 運極振りのガバチャー走者はデュランダル(ジブリール大暴れで良い立場を得るもラクス暗殺を悉く失敗した事のリカバリに失敗してDP導入RTA失敗)で、クルーゼはチャートも何も「物事を変える切っ掛けを与えてどう変えるか」を観察してただけの感覚 -- 名無しさん (2023-12-08 19 40 34) 第3次αでαナンバーズの個人情報を全て調べ上げたのが気になるんだよな。幾度となく地球圏を救ってきたαナンバーズに対する嫌がらせか? -- 名無しさん (2023-12-08 23 32 22) フロスト兄弟は期待されてたけど期待外れだったという面は共通するけどクルーゼは目的をもって生み出されたからまたちょっとスタート位置が違うな。ダルタニアスとかガンダムWFTのクローンは扱いはともかくオリジナルに対する生体パーツとしての存在価値が認められているというところだけはちゃんとあるのが… -- 名無しさん (2023-12-10 11 04 49) 劇場版の予告で思ったがクルーゼはあの世でどう思ってるのか気になる。あの時滅ぼすべきだったと怒ってるか呆れてるのか? -- 名無しさん (2023-12-14 08 39 54) ↑ひとしきり高笑いした後「はぁ…」ってクソデカ溜息つきそうだ。私が後押しするまでもなく滅んでたんじゃないかこいつらみたいな。 -- 名無しさん (2023-12-16 06 06 52) 世界が滅びそうな事に関してはま 笑うだろうがコーディネイターを超える種を産み出すに関しては激おこでしょ -- 名無しさん (2023-12-16 09 05 10) 間違いなくあの世で拍手喝采してるよなこいつ、人の業は見せ付けられたが同時に人の愛も見られたんだから -- 名無しさん (2024-01-29 07 23 30) 今回の映画見たら敵側のやる事この人からしたら確実にブチギレ案件 -- 名無しさん (2024-01-30 19 48 25) 間違いなくあの世でキラとラクスの後方理解者面で愛を祝福してるというのが大体の視聴者の満場一致過ぎて笑う。 -- 名無しさん (2024-01-30 20 14 24) 一番の強敵であり 被害者であり 理解者であり そして厄介ファン -- 名無しさん (2024-01-31 21 14 49) ポエマー気質なヤツがロマンチストじゃないはずないだろ説 -- 名無しさん (2024-02-03 02 16 58) ↑4 あいつらクルーゼ含む歴代敵役の地雷踏み抜きまくってるからなあ。キラ以上の人の業で生み出されてる癖にその事に思い悩んでない連中とかブチ切れ不可避でしかない -- 名無しさん (2024-03-02 04 24 10) 世界滅亡はおおよその人からしたら最悪だけど、あの生い立ちじゃそうなってもしょうがないよなぁと思う -- 名無しさん (2024-03-02 06 09 29) 映画まで待たなくてもフレイ生存してればコイツのお望みエンドになってたんだよなあコーディネーターナチュラルの架け橋としても -- 名無しさん (2024-03-02 23 08 23) アウラについては「生命倫理を冒涜する」「己のエゴで望まぬ運命を子に押しつけた親」と見事にクルーゼの逆鱗案件過ぎる。個人的にクルーゼは「仮にカーボンヒューマン辺りで復活させられても最初は悪の組織に手を貸すふりをして肝心要のところで悪の組織の目論見を全てブチ壊しにしていった後、悪あがきに走ろうとする悪の組織の首領に引導を渡しキラに対しC.E.世界で未来を目指し戦い続ける運命への激励ともこの人心が荒廃した世界で終わりの見えぬ戦いを続けることへの嘲笑とも取れるような言葉を送りながら悪の組織の首領を道連れに炎の中に消えていきそう」という感じの信頼がある -- 名無しさん (2024-03-03 21 34 11) イイ上司だの本当は真人間だの夢見てる人いるが後ろ盾ない戦えない弱者のフレイにしたこと(性暴力疑惑含め)が本性だと思う。太い実家の部下達を丁重に扱う頭なけりゃ出世できないしレイは自己愛の延長で議長は命綱の薬提供者だし人間味の証明にならん -- 名無しさん (2024-04-14 01 19 33) 人間は白黒では決められないし、善も悪も内包したグレーなものと思うけどクルーゼがちょうどそれでしょ -- 名無しさん (2024-07-12 12 38 46) コードギアス奪還のロゼに登場したラスボスが実質的にコードギアス版クルーゼ -- 名無しさん (2024-08-08 08 58 40) ECLIPSEのジョエルも自分の出自を呪う破滅願望持ちで主人公を君付けで呼ぶが、クルーゼは自分と似た境遇の人に情を見せる事はあったけどジョエルは自分と同じハーフコーディネイターを唾棄してる違いがあった -- 名無しさん (2024-08-29 08 28 30) コメントのログ化を提案します -- 名無しさん (2024-09-03 10 30 18) コメントをログ化しました。 -- (名無しさん) 2024-09-11 10 15 49 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yajikumaazu/pages/8.html
@wikiにはいくつかの便利なプラグインがあります。 アーカイブ コメント ニュース 動画(Youtube) 編集履歴 関連ブログ これ以外のプラグインについては@wikiガイドをご覧ください = http //atwiki.jp/guide/