約 216,096 件
https://w.atwiki.jp/revival/pages/577.html
隊列は、イザナミ海岸の戦没者慰霊公園を出発し、オロファト市中心部のメインストリートを通ってクライン=アスハ平和祈念スタジアムへと行進した。 先頭を行くのは地上軍第1機動師団。オノゴロ島に置かれた統一連合地上軍総司令部の直隷下、オーブ防衛を主任務とする精鋭師団だ。 行進に参加しているのは、その中からさらに選別された3個MS大隊だった。100機を越える鋼鉄の巨人は、併走する軍楽隊の奏でる行進曲に合わせて一糸乱れぬ歩調で進み、沿道を埋める数十万にも達する市民の興奮を高める。 ザフトMSの系譜に連なる曲面主体のシルエットと、ダガー系列の特徴が強く現れた頭部ユニットを併せ持ったその姿が、陽光を受けてきらめく。統一連合軍の現行主力MSであるGWE-MP006Lルタンドだ。外見から分かるように連合・プラント双方の技術を組み合わせて開発された機体で、『ナチュラルとコーディネイターの融和の象徴』として地球圏全域に配備が進められていた。 興奮した少年達が、目を輝かせて吹奏に合わせて合唱する。 他の大人達もそれに唱和し、歌声はあっという間に広がっていった。 歌が終わらぬうちに、それまでとは質の異なる甲高い響きが上空から降って来る。見上げた市民の目に映ったのは、鏃のような隊形を組んだ、3機の戦闘機だった。 鋭角的な前進翼と機首のカナードが特徴的な機体は、だが正確には戦闘機ではない。GWE-MP001Aマサムネ――第2次大戦時のオーブ軍可変MS、ムラサメの後継機だ。原型となったムラサメ同様、空戦型MAへの変形による高い機動力を誇っている。 3機のマサムネは、飛行機雲の尾を引きながら上昇する。続いて旋回、錐揉み、急降下。1隊だけではない。十数の編隊が入れ代わり立ち代わり僅かな時間差で現れては、巧みなアクロバット飛行の軌跡を蒼穹のキャンパスに描く。その度に地上からは、大きな歓声が上がった。 尽きぬ歌声と歓声の中を、パレードは進んだ。 「いい気なものだな」 官庁街の一角にある、統一連合政府情報宣伝省の長官執務室。強化ガラス張りの窓から街路を見下ろしながら、部屋の主――アンドリュー=バルトフェルドは呟いた。 その隻眼には、パレードと群集の姿が映し出されている。 「大衆は豚だ。連中に真実など必要無い。ただ奴らが望む情報を、餌として与えてやればそれでいい」 最高級のスーツに包まれた逞しい肩が、小刻みに震える。笑っているのだ。 「愚民どもが」 浅黒い精悍な顔に、傲慢そのものの笑みが浮かぶ。悪意と嘲弄が広い室内に満ち―― 「……で、今日は愚民ごっこですか?」 心底、呆れ返った一言で雲散霧消した。 「その手の台詞は、夜景でも見下ろしながらブランデーグラス片手に口にして下さい。真っ昼間からコーヒー飲みながら言っても、馬鹿にしか見えません。ていうか遊んでる暇があったら仕事して下さい」 「手厳しいね、ダコスタ君」 むしろ淡々と続ける声に、バルトフェルドはマーチン=ダコスタ補佐官を振り返る。ザフト以来の腹心の部下は、本来ならバルトフェルドが決済すべき書類の山と格闘していた。 「いやあ、持つべきものは有能で勤勉な部下だねえ」 先程までの凄味はどこへやら、緩み切った表情と声で、バルトフェルドは椅子に座る。だらしなく背もたれに寄りかかると、両足を机の上に投げ出した。 「一応は閣僚の一員なんですから、もっとしゃんとして下さい。折角の礼服に皺が寄りますよ。式典で恥をかいても知りませんからね」 「夜の睡眠時間まで削って取り組んでいた一大イベントが、一応の成功を見せてるんだ。多少だらけても罰は当たらんさ」 「その代わり、昼寝はしっかり取ってましたね――何にせよ、お疲れ様でした」 実際、バルトフェルドの演出は完璧と言って良かった。 統一連合を構成する8つの加盟国の元首と6つの自治領の代表(ただし、西ユーラシア領のホデリ総督は多忙のため、総督府№2のマランツァーノ行政長官を代理として派遣していた)が一堂に会するこの場で、統一連合軍はその力を遺憾無く見せ付けていた。 主権返上に異を唱える非主流国――今年の大統領選で非htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。のジョンソン政権が誕生した大西洋連邦や、第2次大戦でオーブから独立したアメノミハシラ――に対しては、大きな示威となるだろう。 「どうせならピースガーディアンも出した方が、印象が強いと思うんですが」 「今日の主役はアスハ主席だからね。正規軍に花を持ってもらうさ。と、本命のお出ましか」 パレードの隊列に、真紅と黄金に輝く2体のMSが姿を現した。 赤い機体はGWE-X002Aトゥルージャスティス、金の機体はGWE-X003A旭。それぞれアスランとカガリの専用機であり、統一連合の力を象徴する超々高性能MSだ。 真紅の騎士と黄金の王者の勇姿に、一際大きな歓声が上がる。 「目立つねえ。ま、宇宙艦隊を丸ごともう一揃え建造できるだけの予算をつぎ込んでるんだ。せめて看板の役には立ってくれないとね」 「またそんな事を。その内、舌禍で失脚しても知りませんよ」 「そうなったら、田舎に引っ込んで暴露本――もとい、回想録で一山当てるさ。ダコスタ君、君の事は誠意と勇気に満ちた、有能な人材として描写しておくからね。安心したまえ」 「そいつはどうも……」 どこまでも気楽に振る舞う上司に、ダコスタは深々と溜め息をついた。 アンドリュー=バルトフェルド情報宣伝長官と比較すれば、カガリ=ユラ=アスハ首席代表は少なくとも1万倍は勤勉だった。 彼女はまだ若く、指導者として多くの欠点を有していたが、少なくともその中に怠惰は含まれていなかった(もっとも、周囲には時折フォン=ゼークトの箴言を思い起こす者が少なからず存在したが)。 この日、カガリは中央政庁で式典開始のぎりぎりまで政務を執った後、ドレスに着替えてアスランを伴い戦没者慰霊公園に向かう。大戦の犠牲者を追悼する短いが印象的なスピーチの後、続いて軍服姿で軍事パレードを閲兵。次にパイロットスーツで旭に乗り込み、自らパレードに参加してスタジアムへと向かった。 「着せ替え人形にでもなった気分だな」 スタジアムの一角に用意された控え室で、カガリは大きく伸びをする。式典での演説に備え、再びドレスに着替えていた。 「やはり、子供の頃はそういうので遊んでいたのか?」 湯気の立つ紅茶のカップを差し出しながら、アスランが言った。 「うーん、どちらかというと、外で駆け回ってた方が多かったかな」 紅茶にやや多目の砂糖とミルクを加えながら、カガリは答える。甘めのミルクティーを1口。疲れた体には心地良かった。 その時、インターホンが鳴り、来客の訪れを告げた。 「誰だ? 余程の事が無い限り誰も近づけるな、と言っておいたはずだが」 不審そうに眉をひそめるカガリ。何か『余程の事』が起こったのだろうか。 インターホンを取ったアスランが、しばらく話すと振り返った。その顔には微苦笑が浮かんでいる。 「フラガ大将が、御家族と一緒に挨拶に見えたらしい。どうする? 疲れているならまたの機会に、と言っているが」 「ば、ばか! 早く通せ!」 慌てたカガリに頷くと、アスランはインターホン越しに答える。 待つ事しばし、30代半ばの長身の軍人と、同年輩の軍服を着た女性が姿を現した。女性の胸では、ふくよかな赤ん坊がぱちりとした目で辺りを見回している。 統一連合宇宙軍総司令ムウ=ラ=フラガ大将と妻のマリュー=フラガ予備役准将、そして2人の間に生まれた愛娘のアンリだ。 「お久しぶりです、主席閣下」 無数の傷痕が残る端整な顔に陽性の笑みを浮かべ、ムウは敬礼する。 「そういう物言いは止めてくれ。ここには私達しかいないんだから」 口を尖らせながら、カガリは言った。カガリにとってムウとマリューの2人は、何よりも前に1次大戦以来、共に戦ってきた大切な『仲間』だった。 差し出されたカガリの右手を、ムウは苦笑しながらも力強く握り返す。マリューもいつもの柔らかな笑みで、それに倣った。 来客用のソファーに腰を下ろしたムウとマリューに、アスランは新しく淹れた紅茶を差し出す。 「近衛総監直々の御点前とは、いたみいるわね」 珍しく軽口で返しながら、マリューは紅茶を受け取った。 現在のムウは月の新プトレマイオス基地におかれた宇宙軍総司令部が任地であり、マリューとアンリはオーブに残されている。何気ない雑談を交わしながらも、久しぶりに愛しい夫に会えた喜びが、言葉の節々から滲み出ていた。 「キラ達は、夜の晩餐会ぐらいには顔を出すのか?」 「いいえ。ラクスが体調を崩したらしく、出席を見送るとの連絡がありました」 ムウとアスランの問答を聞きながら、カガリは冷めかけた紅茶をすする。 「仮病だろう。私に気を使っての。つくづく私は至らないな。あいつらに余計な気ばかり回させてる」 嘆息するカガリの目が、アンリに止まる。その頬が嬉しそうに緩んだ。 「アンリも、少し見ない間にずい分と大きくなったなあ」 「ああ、親の俺もびっくりさ」 アンリのすべすべした頬をつつきながら、フラガはカガリに答えた。その指を、アンリは丸まっちい両手でしっかりと握り締める。まるで、もう二度とどこにも行かさないと宣言するように。 「アンリも、お父さんに会えて嬉しいのね」 優しく娘の頭を撫で摩るマリュー、そして愛する妻子を見守るムウ。ありふれた、だが何よりも尊い家族の肖像に、カガリは胸をつかれた。アスランの方へと泳ぎかけた視線を、慌ててもぎ離す。 もう遥か昔に思えるあの頃、カガリは自分とアスランの人生が不可分のものだと信じていた。言葉にはしなかったものの、アスランもまた同じ想いを抱いていると思っていた。 「カガリ、そろそろ時間だ」 カガリの想いを知ってか知らずか、アスランが時計を確認しながら言った。 「おっと、じゃあ俺達は先に会場に行っとくから」 「じゃあ、また後でね、カガリさん」 立ち去るムウとマリューを見送りながら、カガリは小さく頭を振った。 もう、全ては終わった事だ。道は既に別たれている。 たとえアスランが常に自分の傍らにあり続けているとしても、2人の軌跡が交わる事は、もはやけして無いのだから。 「カガリ……?」 「何でも無い。私達も行こうか、ザラ少将」 首席代表の顔と声で、カガリは答えた。 ○ ● ○ ● 《――会場より、情報宣伝省報道局のミリアリア=ハウがお送りします》 つけっぱなしのラジオから流れる若い女性報道官の声に、シンは顔を上げた。 ゆっくりと立ち上がり、首をめぐらす。目に映るのは日の光も照明も無い、暗く薄汚れた階段の踊り場だった。 《そろそろ時間だ》 腕時計に内蔵された通信デバイスから、レイの声が流れる。小さくああと返事をすると、シンは足元に置かれていた大小2つのケースを拾い上げ、階段を登る。 登り切ったつきあたりの鉄扉に手をかけ、力を込めて押す。軋んだ音を立てながら、錆びついた扉がゆっくりと開く。 《――ただいま、会場に汎ムスリム会議のザーナ議長とアメノミハシラのサハク執政官、そして南アジア自治領のナーリカ代表が到着しました》 扉の向こうに広がっていたのは、狭くコンクリートが剥き出しの床面と、雲1つ無い空だった。 ここは、オロファト市東部の再開発地域にある小さな廃ビルの屋上。地上の喧騒もここまでは届かず、沈黙に閉ざされた中にラジオの音声だけが白々しく響いていた。 《――ご覧下さい。世界中の国と地域の指導者が、互いの手を取って平和と融和を誓い合っています。あの悲惨な大戦から4年半、人類は、世界はここまでたどり着きました》 感極まった報道官の声を無視し、シンは鋭い視線を地上の一角に向ける。狭隘なビルとビルの隙間から、平和祈念スタジアムが小さく覗いていた。 「俺だ。予約していた特等席についた。いい眺めだ。舞台が一望できる」 腕時計の通信機を操作し、指定のチャンネルに合わせると、シンは低い声で囁きかける。 ややあって、通信機から若い娘の声で返事があった。言わずと知れたコニールだ。 《了解。他のみんなはもうとっくに席に座ってるよ。弁当もちゃんと配り終わった。あんたもしっかり楽しみな》 「ああ、そうさせてもらうさ」 全チームが配置完了、別ルートで持ち込んだ武器も支給済み、作戦内容に変更無し。符丁を頭の中で変換すると、シンは通信を打ち切った。 傍らのチェロケースを手にし、ロックを解除。中身――長大な狙撃用ライフルを取り出す。 「ここにするか」 伏射姿勢を取るのに適当な位置を選び、腰を下ろす。銃身固定用の二脚架を展開し、ライフルを抱えたままうつ伏せになった。銃床を肩に当て、両腕でライフルを構えると、都市迷彩が施されたシートを頭から被る。 二脚架で銃身を支えているため、重量の割に荷重は少ない。シンの鍛え上げられた背中と首の筋力は、易々とライフルの重量を受け止めた。 片手でもう1つのケース(中型の携帯用コンピュータだった)を手繰り寄せる。ケーブルを引き出し、ライフルの上部にマウントされた電子スコープに接続する。 念のため空を見上げ、シンは太陽の位置を再確認。問題無い。スコープに陽光が差し込み、レンズの反射光で位置を知られる心配は無かった。 スコープのキャップを外し、覗き込む。各種の照準情報と共に標的――遥か2,500メートル先のスタジアムの演壇に立つカガリの姿が、網膜に直接投影される。 これだけの長距離狙撃になると、風や湿度による僅かな弾道の捻じれが、無視できない大きな影響を与える。それに対処するため、シン達は前もってビルとスタジアムを結ぶ直線上に、複数の偽装センサーを設置していた。もたらされた様々なデータは観測手――本来とは意味が異なるが便宜上そう呼ぶ――のレイによって解析され、その結果がスコープに表示される。 現在、快晴で湿度は約15パーセント、風は東南東の微風。狙撃には絶好の状況だ。 《――いまだ争いは現実として世界に存在し続けている。90日動乱は、まだ皆の記憶にも新しい事だろう》 ラジオから流れる声は、いつのまにかカガリの演説になっていた。 《――しかし、たとえ何度も芽が摘まれ、踏みにじられようとも、私達は種をまき続けよう。いつか、平和という大輪の花が咲き誇るその日まで》 「さすが、奇麗事はアスハの御家芸だな」 苦々しく呟くと、シンは弾倉をライフルの機関部に差し込んだ。レバーを引き、薬室に初弾を装填する。 スコープの向こうに見えるカガリの脳天に照準。だが、まだ指は引き金にかけない。演壇の周囲は、防弾仕様の強化プラスチックのケースによって守られている。この時点で発砲しても射殺は不可能だ。今は、まだ。 《時間だな。状況開始だ》 レイの静かな声が、ひどくはっきりと聞こえた。 ○ ● ○ ● 「ありがとうございました」 コーヒー1杯で1時間近く粘っていた常連客を笑顔で見送ると、ソラは小さく息をついた。急にがらんとした店内を見回し、エプロンに包まれた細く華奢な肩をとんとん叩く。 ここは、オロファト市の南部にある喫茶店『ロンデニウム』。半年ほど前から、ソラはこの店でアルバイトをしていた。 「ソラ君、ご苦労さま」 カウンターの向こうから、ロンデニウムのマスターが笑顔を向ける。半白の髪をした年齢不詳の人物で、ソラたち従業員や馴染みの常連客も本名を知らず、『マスター』とだけ呼んでいた。 「店が空いているうちに、少し休むといい。何か食べるかい?」 「あ、じゃあカルボナーラを」 そう答えると、ソラはカウンター席に腰を下ろした。少しぼんやりとした目で、窓の外を眺める。 オロファトの街並みには、つい先程まで続いていた軍事パレードの熱気が、まるで祭りの後のように残っていた。 「お待たせ」 しばらく待つと、店の奥の厨房からマスターが出てきた。手にしていたトレーをソラの前に置く。トレーの上には、湯気を立てるパスタとサラダの皿、アイスコーヒーのグラスが載せられている。 「わあ、いただきます」 ソラは手を合わせて歓声を上げると、フォークを取った。 フォークでスパゲティの麺を巻き取り、白いソースをたっぷりとからめて口に運ぶ。バターと卵と生クリームの濃厚な味と、ベーコンの程良い塩辛さが口中に広がった。 お腹が空いてたため、つい麺をすする大きな音を立ててしまい、ソラは思わず赤面する。 「そういえば、今朝は大変だったみたいだね」 マスターが口にくわえた煙草のパイプをひねりながら言うと、ソラは憤然と頷く。 「そうなんですよ。信じられますか、大の大人がよってたかってお年寄りに暴力を振るうなんて!?」 あの騒動の後、警官がまだ混乱しているうちにソラは老人を連れて逃げ出した。普段のソラからは考えられない行動だが、憤りと同情心が、いつもの分別をはるかかなたに吹き飛ばしてしまったのだ。 ふとソラは、記念式典の中継を流しっ放しにしているテレビに目を留める。 《世界の恒久の平和のため、人類の永遠の未来のため、どうか皆の力を貸して欲しい》 演説するカガリの姿に、深々と溜め息をつくソラ。 「あんな事、ラクスさまやカガリさまが喜ばれるはずないのに」 「まあ、エターナリストと一口に言っても、色々な人がいるからね」 マスターが苦笑したその時、ズンという鈍い音と共にロンデニウムがぐらりと揺れた。 「地震!?」 国土が火山島であるオーブは、当然ながら地震も多い。思わず悲鳴を上げたソラだが、揺れはその一度きりでおさまった。 胸を撫で下ろすソラに、マスターが大股で歩いてくる。 「大丈夫かい、ソラ君――」 そこで、マスターが硬直した。驚いた顔で視線を窓の外へと釘付けにする。 「あ、あれは?」 ソラもその視線をたどり、そして気づいた。 オロファト市南の高層ビル街、そのうちのビルの1つが、炎と黒煙を噴き上げているのを。 「火事……事故――?」 呆然と呟くソラの胸に、不安が黒雲の様に湧き上がっていった。 ○ ● ○ ● カガリの演説が後半に差し掛かった時、アスラン・ザラのポケットから機械音が鳴り響いた。こんな時に、といぶかしみながらも通信機に手を伸ばす。 「私だ」 呼び出しに答え、部下の報告に耳を傾けるアスランの顔にさっと緊張の色がよぎる。 「爆破テロだと?」 周囲に気取られないように、小声で答える。 《はっ、郊外の軍施設と市街地外れの政府機関が数箇所、爆破されました》 (式典警護のため、市の中心部に兵力を集中させ過ぎてていたのを、逆手に取られたか。式典自体ではなく、手薄になった施設を狙うとは) 舌打ちするアスラン。 《幸い、民間にはほとんど被害が出ておりませんが》 「分かった。以後はオノゴロの指揮下に入れ。私も急いで現地に向かう」 そう答えると、アスランは通信を打ち切った。小さく舌打ちして立ち上がる。 「何があったんだい?」 隣に座っていたムウが振り向く。表情も声色も緩んでいたが、目だけは鋭かった。前列のバルトフェルドも同種の視線を向けてくる。 <エンデュミオンの鷹>と<砂漠の虎>――かつての旧連合軍とザフトで屈指のエースパイロットだった2人だけに、鉄火場への嗅覚が並みではない。 「実は――」 後事を任せるため、状況を説明しようとするアスラン。正にその時、スタジアムを閃光と轟音が襲った。 式典会場は、一瞬でパニックに陥っていた。 あの爆発がセレモニー用の花火を流用したものであり、殺傷能力は皆無だと知れば、連中はどういう顔をするだろうか――2,500メートル先からスコープを覗き込んでいたシンは、意地悪く考えていた。 本来、オセアニア解放軍が立てた原案では、武装した決死隊を会場に潜入させる予定だったらしい。しかし、警備の厳しさと加盟国の元首に危害が及ぶ可能性から放棄され、スタジアムへの攻撃は爆破――爆薬を持ち込む必要がないため工作が可能だった――と狙撃の二構えとなった。 混乱し、逃げ惑う市民達を尻目に各国要人や政府首脳といったVⅠPは、SPに守られながら会場から脱出しようとしている。 カガリも例外ではない。演壇を下り、アスラン達と合流する。激しく動揺した表情が、スコープ越しからでも見て取れた。 「煙で燻せば狐は巣穴から飛び出してくる、か」 口元を、笑みというにはあまりにも歪んだ形に吊り上げるシン。 《風力、風向き共に変化無し。いけるな?》 レイの問いに頷き、シンはライフルの引き金に指をそえる。 いいだろう。貴様らが目を背け続けるのならば、襟首をつかんで引きずり回してでも見せ付けてやろう。かつて踏みにじられた者の無念を、いま切り捨てられている者の怒りを―― 「思い知れ」 低く呟くと、シンはトリガーへとかけた指に力をこめた。 不意にアスランの背筋を悪寒が走った。 周囲、少なくともコロシアムの中にテロリストとおぼしき姿は無い。だが、幾多の戦場で培われたモノが警鐘を鳴らす。 それが戦士としての勘なのか、それとも無意識下で現状と経験を照らし合わせて判断した結果なのか、自分自身でも理解できないままアスランは咄嗟に傍らのカガリを突き飛ばした。 その瞬間、アスランを凄まじい衝撃が襲う。超音速で飛来した何かがアスランの側頭部を掠め、一瞬前までカガリの頭部が存在していた空間を貫いたのだ。 (狙撃!?) 飛びそうになる意識を必死で繋ぎとめ、アスランは倒れたカガリの上に覆いかぶさる。 「なっ!?」 状況が理解ができずに呆然としていたカガリが、すぐ傍らに穿たれた弾痕とアスランのこめかみの裂傷に気づき、引き攣った声を上げる。 カガリを安心させるために小さく微笑むと、アスランはようやく状況に気づいたSPに怒鳴った。 「主席を守れ!!」 「アスラン=ザラっ!!」 スコープに映された狙撃の結果に、怒りと失意の叫びを上げるシン。信じられなかった。この距離からの銃撃に、対応できる人間がいた事が。 素早くライフルのボルトを操作する。薬莢排出、次弾装填。だがその数秒の間に、SP達がカガリの周囲で横並びの隊列を組む。 カガリへの射線を塞いでいるSPを狙い、発砲。打ち抜かれた頭から血と脳漿をぶちまけながら崩れ落ちるSP。だが生じた穴は、あっという間に他のSPによって埋められた。 「アスハの狗が!!」 叫ぶシンに、レイが冷静な言葉をかける。 《失敗だな。撤退するぞ》 「何を言ってるんだ、レイ!?」 《元々、博打の要素が高い奇襲だ。こうも態勢を固められては、付け入る隙が無い」 「馬鹿な」 呻くシン。指を、式典会場に突きつけて押し殺した声を上げる。 「あそこに――すぐ手の届くあそこに連中がいるんだぞ!! それを見逃せというのか、お前は!?」 《直にこの位置も特定される。軍なり治安警察なりの特殊部隊がやってくるぞ。無駄死にをするつもりか?》 「…………」 淡々と指摘するレイ。数秒の逡巡の後、シンは頷く。 「その通りだ。レイ、お前が正しい。撤退しよう」 内心でいかなる葛藤があったとしても、その声は冷静さを取り戻していた。 《式典自体の妨害には成功した。俺達の一方的な敗北ではない。それより、B班の撤収が遅れているらしい。援護に向かうぞ》 「了解」 素早く立ち上がるシン。最後に一度だけ振り返り、怒りと憎悪に燃える目でスタジアムを睨みつける。そして足早にその場を立ち去った。 銃撃は、2度で唐突に止んだ。 諦めてくれたのか? ずきずきと痛むこめかみを押さえながら、アスランはゆっくり立ち上がった。 傍らにいた兵士の1人が首から高倍率の電子双眼鏡をかけているのにアスランは気づいた。ひったくっると、銃弾が飛来して来たと予想される方向を覗き込む。 (銃弾の方向と角度――まさか、再開発地域から撃ってきたのか?) 内心で呻くアスランの目が、ぴたりと止まる。いかなる偶然か、小さな廃ビルの屋上にライフルを持った人影、その後ろ姿を発見したのだ。 倍率を最大に上げる。黒髪に黒尽くめの服装をした、まだ若い男。黒1色のその姿は、まるで死を告げる大鴉のごとき不吉さがあった。 不意に男が振り返った。燃え上がるような真っ赤な瞳が、正面からアスランを貫く。 「な――っ!」 驚きのあまり、双眼鏡を取り落としかける。慌てて再び覗き込んだときには、すでに男の姿は無かった。 「どうした? 大丈夫か、アスラン」 心配するカガリの声にも気づかず、アスランは不意に過去から現れた亡霊の名を口にする。 「お前、なのか――シン……?」 前 ←第一話Aパート後編(DC私案)
https://w.atwiki.jp/inotiwoyaruo/pages/136.html
赤(0/10) ★カガリ・ユラ・アスハ→青へ ★佐藤 和真 ★杏 ☆兵藤 和尊 ☆デク・オールマイト ☆ハンナ・マルセイユ ☆ターニャ・デグレチャフ ☆マリナ・イスマイール ☆平坂 黄泉 ☆C 黄(0/10) ☆山岡 士郎=謎の参加者→青へ ★黒雪姫(南の島)→青へ ★セイバー→青へ ☆狛枝 凪斗 ☆アンチョビ ★マサル・ゴジョー ☆H.N ☆一方通行 ☆4日目に投入された代役 ☆角谷 やらない夫 青(8/10) ★司波 達也 ★闘争のやる夫 ★中島 銀河 ★ベル・クラネル ★カガリ・ユラ・アスハ ★黒雪姫(南の島) ★セイバー ☆山岡 士郎=謎の参加者 ☆神宮 鹿島 ☆やらないのか夫 ☆桂木 桂馬 ☆城ヶ崎 美嘉 ☆フレイザード ☆鑢 七実 色の不明な参加者(0/30)残り(青 0、赤 0、黄 0) 初期色配置; 青:やる夫、司馬、中島、鹿島、ベル、美嘉、のか夫、桂馬、フレイザード、七実 赤:カガリ、兵藤、杏、ターニャ、デク、ハンナ、マリナ、平坂、カズマ、C 黄:黒雪姫、セイバー、ゴジョー、狛枝、アンチョビ、やらない夫、一方通行、山岡、HN、KI その他の登場人物 プロシュート(ラプラス) ピカチュウ ユーノ アタゴ 愛宕 渚 ☆桜崎 刹那 ☆構成員A ☆構成員B ☆構成員C ☆村長 できる夫
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/230.html
23 00~ ロランの部屋 ベットに座る2人。 ソシエ「全く…危なかったわねぇ…。あんたもそろそろねとかないと、明日楽しめないわよ。」 ロラン「そうですね。ソシエお嬢様。」 ソシエはベットから降り、部屋から出ようとしつつ言う。 ソシエ「じゃぁ私は行くからね。後、ロラン…す・・・」 ロラン「す?」 ソシエ「素で女装生活してみたらどう?」(誤魔化しちゃう所が私の甘い所なのよね。) ロラン「そ…そんなの嫌ですよ…。」 ソシエ「そう…わりと似合ってると思ったんだけどね。じゃぁね。おやすみ。」 ロラン「お休みなさい…。」 23 00~ ゲーセン イザーク「今度こそあいつに勝てるようにするぞ。ディアッカ。」 ディアッカ「そうだな、イザーク。」 二コル「……あれ、ここは…?」 イザーク「ゲーセンだよ。お前が酔いつぶれた後、先公にバレそうになったからつれてきた。」 ディアッカ「そうそう、この連ジオDXで俺たちの相手になってくれよ。特訓してるんだ。」 二コル「いいですよ。別に。」 二コルのエルメスに軽々翻弄される2人。 イザーク「お前…いつの間にそこまで強くなったんだ?」 二コル「今まで通りですよ。別に。」 ディアッカ「そんな馬鹿な、2人がかりでも勝てないなんてまるでガロードじゃないか。」 二コルは酔いで強くなってる上、2人は酔いで弱くなっている事には全く気がつかない2人だった。 この後、30分ほど繰り返したが、イザーク達は1度も勝てず、それぞれ部屋へ戻っていく。 23 00~ カミーユの部屋 カミーユ「フォウ…。」 フォウ「やっと二人っきりになれたわね。」 カミーユ「ファ、酔いつぶれて下で寝てるからね。」 フォウ「……ねぇ…カミーユ。明日は一緒に滑らない?」 カミーユ「そうだね…。フォウ。」 フォウ「そう言ってくれると嬉しいわ。じゃぁ…明日に備えてもう寝ましょう、カミーユ。」 カミーユ「ああ…。」 23 00~ ジュドーの部屋+ビーチャの部屋 ガロード「せっかくの初日なのに騒ぎ終わっちまったな。」 ジュドー「これからだよ。」 ガロード「でも多分大半は寝てるぜ。」 ジュドー「でも…な。いいからこいよ。酒も持ってくぞ。」 ガロード「Ok。なんか面白そうだぜ。」 ビーチャの部屋に先ほど余った酒を持って行く2人。 ビーチャ「やっぱり来たか。」 パーラ「やっと酒のごとうちゃくっと~皆、飲むぜ~」 ガロード「え…?一体…。」 イーノ「あの後、すぐ皆で集まってそのままこんな感じさ。どうせ1~2人見つかって絞られてるから見回りはこないよ。」 エル「面子も揃った事だし、のもうか。」 カリス「そうですね。」 ティファ「ふふふ。」 ガロード「ティファまで…。」 ティファ「ガロードがここに来る気がしたから…。」 そして、四次会が始まる。 23 00~ リリーナの部屋 甲斐甲斐しくもリリーナを部屋まで運んできたヒイロ。 ヒイロ「…任務完了。これより撤退する。」 任務に縛られる彼に、告白への対応の準備は出来ているのか。そして、告白する事はできるのか。両思いでも進行しない愛が続く。 ヒイロはこの日、リリーナの部屋の前で見張りをしながら仮眠についた。 22 55~ アスランの部屋近辺 フレイは暇をもてあましていた。 フレイ「折角キラが酔ってるんだもの…垂らし込むチャンスね。」 フレイはアスランの部屋の前に来る。その様子を隠しカメラで中の連中に見られていて、しかもキラは別の場所にいることも知らずに…。 アスラン「来てる。もうすぐ扉が開くぞ。カガリ。」 カガリ「…わかった!!…ポチッとな。」 フレイは部屋に入る。突然顔面に粉が降りかかってきた。 フレイ「ゴホッ…ハックシュン…。一体これは…なんなのよ!!」 アスラン「成功だな、カガリ。」 カガリ「馬鹿…それは足止め、これで…とどめだ…。」 フレイの口のあたりに睡眠薬をかがせ、眠らせた所で教員の部屋前に放置しておく。 カガリ「これで大丈夫だ。」 アスラン「…そうか。これで今日は安心だな。」 カガリ「ああ…。部屋に戻るぞ。アスラン…。所で、あの二人も上手くやってるかな。」 アスラン「両方とも遠慮してるかもな。わざわざ部屋かわってるんだし、上手くいくといいが。」 少し経って部屋で…。 アスラン「このお酒…美味しいな…。」 カガリ「親の酒蔵から一番よさそうな白ワインを持って来たからな。当たり前だよ…。」 アスラン「相変わらず凄いな…。」 カガリ「誉めるんなら別の所を誉めろよ…馬鹿…。もう寝るぞ。明日の為に。」 アスラン「すまない…。」 二人とも就寝に入る。 カガリ(折角ほとんどしない化粧をしたってのに鈍すぎるな…。優しい事は優しいんだが。) アスラン(化粧してる…そこを誉めてほしかったんだろうけど、いつものカガリの方が…俺は…。) 上手くいかないとこもあるものではある。 ラクスの部屋 それぞれベットに腰掛け、話している。 キラ「今日は面白かったね…ラクス。」 ラクス「そうですわね…キラ様。所で、こんな物…一緒にのみませんか?」 ラクスが見るからに高そうな赤ワインをピンク色の鞄から取り出し、持ってくる。 キラ「これは…赤ワイン?」 ラクス「ええ…100年物ですの。かなり美味しいと思いますわ。」 キラ「そんな高い物…一体…どこで…?」 ラクス「このホテルも父上の会社の子会社の物ですの。ホテル側には周囲にそれが分からないように 工夫するようにお願いしておきましたから分かり難いでしょうが。それで事前に贈っておいたんですわ。 今日届くように。で、ホテルの方々にお願いして、鞄に入れておいて貰ったんですの。」 キラ「なるほど…。嬉しいよ、ラクス…。」 ラクス「そう言ってくれると嬉しいですわ。キラ様。」 キラ「ラクス、これをお礼に受け取ってもらえるかな…?」 ラクス「あら…これは…ピンクのノートパソコンですの?」 キラ「うん…セキュリティを極端に強固にせず、扱いやすさを考えて作ったOSを運用する為にこっそり・・・ね。 マウスとかも動かしやすいように工夫してみたんだ。」 ラクス「嬉しいですわ…。キラ様…。」 ラクスがグラス2つにワインを注ぎ、二人で一つづつ手にとる。 二人「乾杯。」 相変わらずののろけモードで、壱時間ほど話した後に、酒に弱い2人は互いに倒れる。 そして明日がくるのである。(修学旅行二日目へ続く。) (流石に超長編殆ど一人は辛いぽ…誰か手伝って…。) link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ 5コマ以上 修学旅行 学校 学生組
https://w.atwiki.jp/pazdra/pages/14722.html
素材 進化後モンスター 翠の華龍・カサブランカ 【進化用素材の編集】
https://w.atwiki.jp/pazdradraz/pages/591.html
図鑑 No.208 聖天龍・シャングリラ図鑑説明文 入手方法 コメント欄 図鑑 No.208 聖天龍・シャングリラ No.208 編集 タイプ レベル 1 最大 主な生息地 スキル レア度 HP 進化前 Lスキル 属性 攻撃 進化後1 必要チップ1 経験値 防御 進化後2 必要チップ2 図鑑説明文 入手方法 コメント欄 名前
https://w.atwiki.jp/nothing/pages/217.html
Level 23 国の行事には必ず出席し、国民や王都の姿をその目に納めていた第1107エターナル王の最後は、あっけないものだった。 「おとーさまあぁぁ――――――っ!!」 逝去の瞬間、王女が泣き叫んで崩れ落ちた。 ズラリと取り囲んだ議会高官や神官達も一様に頭を垂れ、そして非情にも王女カガリへと向き直って告げる。貴方が次の王だと。 そうして、自動的に第一子にして唯一の子供であるカガリへと王位が移った。 だが、正式にエターナル王として即位する為には数々の儀式を踏まなければならず、その中の最たるものが、君主の杖の継承だった。 君主の杖を携えてドラゴンズピークへ出向き、ゴールドドラゴンに騎乗して戻ってくるのだ。王としてその力を広く遍く知らしめる為に。 ドラゴンズピークには数十体とゴールドドラゴン達が住み着いていて、頂上にいる長の下に統率されている。彼らは全て、これから会う長の子孫達だ。 金の鱗と金の目をした竜に負けじと、金の髪となびかせ、金の瞳で睨み返して新女王がドラゴンズピークを登る。 新王カガリが頂にある竜の門を潜る。ゴールドドラゴンに認められて初めて、エターナル王と言えるのだ。 不安と恐怖に震える心を奮い立たせる為に手に光り輝く金の杖を握り締める。 「志は私が引き継ぎます・・・お父様・・・」 門をくぐり、霧で覆われた通路の先に見えた巨大な鉄の扉。 中央に大きく掘り込まれた金のレリーフはエターナルの紋章。 その門がカガリが触れる前にゆっくりと開く。 軽く息を吸い込む新王を待っていたのは意外な姿で。 「お、お前はっ!?」 仄かな恋心を寄せていた王国最強のメイジ・キラ。執政に影のように寄り添う彼がどうしてここにと、カガリの思考が混乱する。口を開きかけては、パクパクと空気だけを食む。 そんな彼女の様子に苦笑して、カガリの目の前の存在が視線を逸らした先には。 「紹介するよ。君は初めて会うことになる」 たおやかな微笑を湛え、ピンク色の長い髪を揺らしている女性がゆっくりと歩いてくる。 「ラクス。エターナルの新しい王、カガリだ」 「始めまして。ラクス・クラインですわ」 ゴールドドラゴンと共に悪を打ち倒し、エターナル王国を打ち立てた伝説の乙女。 初代女王。その女性が目の前にいる。 「・・・ラクス・クライン様・・・っ!」 夢や幻かしなのではない。王国が興る時に在った女性がなぜ、ここに。 確かに肖像画や言い伝えどおりの姿をしているが。 カガリはしばし呆然とし、はっとして最高礼を取った。 「お願いがあるのですわ」 カガリがそろそろと顔を上げる。 笑みを浮かべたままの顔で、興国の女王が言う。 「その杖、渡してくださいな」 杖を両手で握り締めたまま、新女王が息を呑む。 「取り上げるのか?」 「杖で無理やり竜を跪かせて何になりましょう。力ずくで国を支配し、竜を支配して、それで満足ですか? 私は貴方のお父様にも、そのお父様にも同じ事を問いましたが、皆、貴方と同じ答えでした。もう一度言います。もうその杖に頼るのはお止めなさい」 「それはできない」 カガリが小さな声で伝える。私にはこれが必要だ、と。 議会と戦う為に、国の為に、国民の為に。だから、これを私から取り上げないでくれ。彼らの魔法に対抗するにはゴールドドラゴンの力が必要なんだ。そう、訴える。 「杖の力を使って、ゴールドドラゴン達に戦いをさせる気なのですか?」 「ラクス。別にそれはいいんだ。それが僕達の選んだ道なのかも知れないから」 「でも、キラ!」 そう、初代女王の横に平然と立つこの男はキラだった。 「一体、何者なんだ。なぜドラゴンズピークの頂にいる?」 「君は、もう分かっていると思うけど?」 キラは他でもない、ゴールドドラゴンなのだと。 「でも! ならどうして、執政の下で働いている!? どうしてエターナルの為に動かないっ! そのためにお父様は・・・」 涙を散らして新女王が叫ぶが、ゴールドドラゴンは答えない。 その昔、ゴールドドラゴンと共に悪の竜を倒した女性が打ち立てた王国エターナルは、竜に守護される国と言われている。君主の杖はドラゴン達の忠誠の証として送られたと。 それが、本当はどうだろう。 ゴールドドラゴンの加護など、どこにあると言うのだ。ただ、杖の力で無理やり彼らを従えているだけ。貴族達がメイジの力で国民を力ずくで支配しているのと何も変わらない。 それが、この王国エターナルの真実。 「私は諦めない。今はまだドラゴンの力に頼らなきゃ何もできないけれど、いつかお父様が目指された、皆が平等に暮らせる国を作って見せる」 そう言って、カガリは君主の杖を高く翳した。 杖の先の宝珠が金色に光り輝いて、新女王はゴールドドラゴンに王宮まで送れと命じた。 文字通りゴールドドラゴンの背に乗って王宮に舞い戻った新女王。歓喜に包まれて臣下が女王を取り囲む。王宮へ下がろうとする女王を臣下が一人、執政が待ち構えていた。 「何か恐ろしいものでも見られましたか、女王?」 執政の後に控えるキラを盗み見て、硬い表情のままカガリ女王が侍女に囲まれて王宮に消える。程なくして開かれた議会で、女王が先王と同じ法案を議会に提出すると宣言する。 その年、カガリ女王の即位と同時に、議会と女王との亀裂が決定的になる。 Level 24 「ここが杖のある所・・・?」 シンは小高い丘の麓で、辺りを見回した。 鬱蒼と茂った森、深い渓谷とか怪しげな古城など、迷宮になりそうなものが何もない。 「なんだか、のどか~って感じですよね」 「ダンジョンなんてどこにもないし」 「シンの目の前にあるぞ」 そう言うアスランが見上げる先には、青空とそこに続くなだらかな丘があるのみ。 まさか、この丘全体が? 杖は掘り当てるのかっ!? 「入り口は結界に隠されている。違いますか?」 シンは声のした方を振り返れば、アスランの横にワイバーンに乗った金髪のエルフがいた。事も無げにワイバーンから飛び降りて、丘を前に立ちすくむシン達に近づく。 「レイっ!?」 「あっ・・・俺たち・・・」 廃城からこちら、レイのことをすっかり失念していたシンとルナマリア。 大怪我したシンの事でそれ所ではなかったし、レイは杖を狙う盗賊ギルド側だから一々報告する義務はないのだが、何か気まずい気がする。 「気にするな。俺は気にしていない」 「うっ」 レイに先手を打たれて謝ることもできなくなってしまい、シンはもやもやしたものを抱えたまま口篭もる。 「おまえ達に事情があるように、俺にも事情がある。それだけだ」 「まだ杖を、狙っているのか・・・?」 「女王や、執政に渡すよりは」 ただでさえ君主の杖でゴールドドラゴンを操る国王は巨大な力を持つのだ、さらに杖を手に入れて、手がつけられなくなったら困る。まして、国王と反目する執政側が杖を手に入れて王国が内乱に発展にするのも宜しくない。 権力を持つ者が、過ぎた力を持つことほど厄介なものはない。 レイが彼の主であるギルドマスターの言葉を借りて説明する。 「その点、お前は安全だ。ただの盗賊だからな」 ちょっと、その言い方は傷つくよ。 シンはムッとして、「そうだよねえ」と笑うルナマリアやメイリンを見る。アスランまで苦笑しているではないか。 「どうせ、俺はただのこそ泥だよ!」 「だからだ、シン。君は人が生きていくのに、本当に必要なものが何かを知っている」 シンの肩に手を置き、誉めているのか疑わしい言葉でアスランが慰める。 本当に必要なもの? 「俺は最初、君がドラゴンの瞳を手に入れられるなんて思ってなかったんだ。またギルドに騙されたかわいそうな盗賊がやってきたなあと思って。それが、見事リトルレッドドラゴンを倒して、あのキラとやりあうなんて信じられなかった」 ああ、どうせ、そんなことだろうと思ったよ。 この人は俺のことをまるで何も知らない子供を見る目で見る。 「今は、そうだな、シンなら杖を渡してもいいかって思う」 それが今は。 まるで自分が杖の持ち主みたいに、そんなことを。諦めた夢を託すように言って。 「忘れないで欲しい。ジュールの杖を手に入れても、力に飲み込まれるな」 それが、今、アスランから託された杖の名前。 恐ろしい呪いと引き換えに力を約束してくれる、その杖の名は、ジュールの杖。 心地よくて、不思議と懐かしい彼の声が頭の中にストンと落ちて、一瞬、シンはこの場にはアスランと二人だけしかいないような気になっていた。 トリップしてしまったシンを横目にレイが姉妹に声をかける。 「ルナマリア、メイリン、力を貸してくれ。丘の入り口を出現させる」 「えっ? あっ、分かったわ」 シンがアスランに忠告めいたことを言われている後で、3人がかりで、隠蔽されている丘本来の姿を解除するリリースの魔法をかける。何の変哲もない丘の周囲には崩れ落ちた石垣を出現し、その一角に僅かに門らしき跡があった。 続く うむ。取り留めのないつなぎの話ばかりで、まとまりがありませぬ。本当は、「次回、D D 『嘱望』 王位の継承の為に訪れたドラゴンズピークでカガリ王女は王国の真の姿を知る!?」みたいな引きから、今回のお話に繋がるはずだったのに。そんな感じになってませんよねえ。元々、継承の話の一部だったからかなあ・・・精進。精進。
https://w.atwiki.jp/mhp2g_ss/pages/21.html
対古龍・究極戦法 この方法は、テオ・クシャ・ナヅチ・ミラ系など、撃退可能で体力が引き継がれるモンスターのみ有効な戦法です(イベクエを除く) ラオやシェンは撃退可能ですが、体力が次クエに引き継がれないので、この方法は無効です この方法は、P2Gのプレイ環境を最低2台分必要とします (1台はダミー、もう1台は自分用のマジPSP) この方法は、最大3人まで同時に恩恵を受ける事ができます (ダミーPSP1台使うため、4人では不可能) まず例として、ナヅチをターゲットに説明していきます。 <準備編> まずは、瀕死ナヅチを作ります。 1.ダミーPSPでクエを受注 2.なんとか頑張って瀕死にする 3.この際、ツノは破壊しておく(尻尾は絶対に斬らないこと!) 4.おそらくナヅチが瀕死だろうという時点で3死する 5.必ずセーブしてクエを終了 これ以降、ダミーPSPで受注するナヅチは瀕死です。 当然ですが、この準備は1度だけ行えばOKです。 <実戦編> 1.ダミーPSPを対ナヅチ本気装備にしておく 2.ダミーじゃない方のマジPSPを剥ぎ取り激運コウリュウにしておく 3.ダミーPSPでナヅチを貼る 4.マジPSPでそれを受注してクエ開始 5.クエ開始時のプレイヤー位置を考慮して、どちらかを退避させるなどする 6.任意でダミーPSPを使ってナヅチを倒す。もちろん尻尾も切る (もちろん最初からマジキャラで戦っても良い。とにかく最終的にマジキャラが剥ぎ取れるようにしておく) 7.重要! 討伐後、ダミーPSPの[HOME]ボタンからゲームを終了する (これによって瀕死ナヅチが永遠に継続する) 8.マジPSPの方でセーブして終了(部位破壊もちゃんと出る) 以上です。 これを数時間も続れば大宝玉が10~20個は溜まると思います。 ちなみに実戦の際、3人いれば剥ぎ取り激運コウリュウでも数分で終了します。 友人と狩る時は絶対にオススメです! ここではナヅチが例ですが、テオクシャでも頭・翼破壊後に3死すれば同じ事が可能です。 ただしイベクエでは撃退が無いので不可能です。 <ミラ系の場合> 基本的な考え方は全く同じですが、ソロより仲間がいた方がやり易いです。 ここでは3人プレイを例に紹介します。 1.ダミーPSPで集会所ミラ系を受注 (こいつにモドリ玉・竜の爪・カラ骨小・麻痺牙などを持たせておく) 2.3人のうち、2人が麻痺ガン(増弾反動2根性)、残り1人は太極(高耳匠砥石見1) 3.クエ開始後、両ツノ→眼→翼を破壊 (胸は無視で良い) 4.部位破壊したら、頑張って瀕死にする(拡散撃ち切ればOK) 5.3人とも全弾撃ち切ったら、誰でも良いので3死する 6.重要! ダミーPSPが必ずセーブしてクエを終了 (残りの3台は無関係) これで瀕死ミラの完成。もちろんこの準備は1度だけ。 あとは、またダミーPSPで同じクエを貼つて倒しまくるだけです。 3人で拡散撃てば2分で終了します。(もちろん部位破壊報酬も出る) 何戦も繰り返せば、ミラ武器も防具も一瞬で揃うし、カネ稼ぎにもなる。 ボレバルルーツ、全てに応用可能です! まぁルーツは要らんが… ただし討伐後は、必ずダミーPSPをHOMEボタンで離脱させること!!! 間違ってセーブしてしまうと、せっかく作った瀕死ミラが消えてしまいます。 PSPを新しく買い直したりして、P2G環境を2つ持っている人は少なくない筈! 是非お試しあれ! .
https://w.atwiki.jp/pazudora-z/pages/247.html
モンスター図鑑 > 巨樹龍・イルミンスール 基本データ No.48 巨樹龍・イルミンスール 属性 木 タイプ 真龍 レア ★4 進化前 樹龍・アーシュ 進化1 必要アイテム: 進化2 必要アイテム: 進化3 必要アイテム: 入手方法 ■出現ダンジョン:エピメニデス迷宮、万竜の巣窟、仙樹島ユグドラシル、黄金郷エデン ■進化:樹龍・アーシュ スキル アーマーブレイク 3ターンの間、敵全体の「防御」をかなりダウンさせる リーダースキル だいちのソウル 木属性の味方の「攻撃」が2倍になる レベル HP 攻撃 防御 1 (最大)
https://w.atwiki.jp/trio/pages/175.html
ムウ「我々ナチュラルとコーディネーターは今度こそ争いへの道を閉ざすため、この条約を両間で締結させた」 ムウ「一つ、全コーディネーターはプラントに、全ナチュラルは地球へ居住するものとする。例外は認められない」 アスラン「そんなバカな!」 クロト「異・常!」 アウル「めちゃくちゃじゃん!」 オルガ「黙れ。まだ続くみてぇだ」 ムウ「これに従うため、地球のザフト軍はプラントに撤退する。また現在地球のザフト領は全て地球軍に返還する」 シャニ「よかったじゃん」 スティング「かなり無茶だが、地球軍にとって悪い話じゃないんじゃないか?」 カガリ「地球軍にはな…」 ムウ「また・・は・・とし、・・」 ステラ「また長い。ステラ、飽きた」 キラ「確かに賛成できる話じゃないね…。でも、そんなに慌てる必要ある?」 カガリ「肝心なのは最後なんだ」 キラ「???」 ムウ「警告を無視し、この条約に反したプラント、及び国家に対しては武力制圧も辞さない。またやむを得ず武力を行使する場合、必ずザフト軍又は地球軍が制圧軍を支援する。以上!」 ムウの朗読が終わり、会議室の中の時間が一瞬だけ止まる。 しかし止まるのは本当に一瞬だけですぐに時間は動き出し、事の重大さを理解し始める。 ムウ「おいおい、まずいんじゃないのか、これは…」 アスラン「何でこういうことしか考えられないんだ…」 スティング「どうすんだ?このまま黙ってのか」 オルガ「ここにコーディネーターってどの位いるんだ?」 カガリ「全人口の45%だ…」 シャニ「多…。でも大人しく従うかな?」 キラ「多分、みんな拒否するだろうね。いくらなんでも身勝手すぎるからね、これは…」 ステラ「じゃあ、条約拒否?」 カガリ「このままだったらな。あぁ!またオーブが戦地になってしまうのか!」
https://w.atwiki.jp/revival/pages/710.html
「……それは、本当の事なのか!?」 統一地球圏連合主席官邸、主席執務室。 カガリはその一報を聞くや否や、血相を変えてマホガニーのデスクから立ち上がった。 信じられない。 紅潮する顔にはそんな思いがべっとりと張り付いている。 「ティモールが……。まさか仮にもオーブ五大氏族に席を連ねていた男がテロリストと結託など……!」 先の統一地球圏連合樹立三周年記念式典で発生した『カガリ=ユラ=アスハ暗殺未遂事件』。 その首謀者の一人が、なんとオーブ政権の重鎮の一人だったというのだ。 だがその凶報をカガリにもたらした治安警察省長官ゲルハルト=ライヒは、表情何一つ変えずに淡々と捜査結果を報告していく。 「確かな筋からの情報で同行を願い出た所、本人が自供しました。今回の御身を狙った一連のテロ――その首謀者の一人と見て間違い無いでしょう」 目の前で刻々とその全容が明らかになっていく中、カガリの顔は次第に血の気を失っていった。 だがそれでもカガリは両足に力をこめ、必死に踏ん張る。 そうしなくてはこの場で倒れて、そのまま気を失ってしまいそうだったから。 彼女の中では、まさかという思いと認めたくないという拒絶感がぐるぐると駆け巡っていた。 よもや身内に殺されかけるなど、一体誰が想像できようか。 それもよりによってあの記念式典会場がその舞台だったなどと。 「な、何かの間違いという事はないのか!?あるいはティモールが何者かに嵌められたとか……!」 一縷の望みをこめてカガリは反論するが、それも冷たい声に遮られる。 「残念ながら、全て事実です」 「……!」 沈黙が二人の間に横たわる。 冷徹な宣告にカガリはそれ以上何も言い返せない。 ヘルムレのアンティーク高級置時計の秒針がコツ、コツ、コツと時を刻む。 普段は気にならないその音が、静まり返った室内にひどく響く。 まるで自分の心臓の鼓動のように。 彼女の脳裏に目の細い、苦虫を噛み潰したような顔をした老人の面影が蘇る。 カガリはうつむいたまま、無念に震える拳をただ握り締めるしかなかった。 (どうして……どうしてこんな……!?) セイラン家先代頭首、ティモール=ロア=セイラン。 彼は前大戦でのザフトのオーブ侵攻で死亡したウナト=エマ=セイランの後を継ぎ、セイラン家の取り纏めた重鎮である。 また大戦後は統一地球圏連合の主席となったカガリを、裏方でよく補佐してきた人物でもあった。 一言居士という言葉がピッタリ当てはまる老人で、その口煩さにはカガリも閉口していた程だ。 彼に説教をされた後、キラやラクスによく愚痴をこぼしていたのも、今では彼女の懐かしい思い出のひとつになっている。 しかしそんなティモールも寄る年波には勝てず、娘婿に家督を譲った後は、現在では平穏な隠居生活に入っていた。 もっとも今でも時々カガリに手紙をよこし、言葉遣いが荒っぽいだの君主の心得がどうだの、相変わらずの口調で説教をしてくる。 そんな彼にカガリはやはり辟易としつつも、しかし一方で嬉しくも感じていた。 その不器用な文面から、世界を統べる主としての自分を気遣かう彼の気持ちが読み取れたから。 相手が誰であれ親身になってもらえるのはいい、と。 だが。 「……どうして……、どうしてだ……。あんなに私に手紙をくれたじゃないか!いつも私を気遣ってくれたじゃないか!体の事も!政治の事も!オーブの未来の事も!!あれが全部嘘だったというのか!?私は……嬉しかったのに!信じていたのに!」 やり場のない怒りをぶつける様に激しく執務机を殴った。 何度も何度も。 血がにじみ、痛みに眉間が歪む。 のろのろと傷んだ拳を抱きしめ、カガリはうめく様に呟いた。 「どうして……私を……殺そうとしたんだ……」 するとライヒは一言だけ、こう告げた。 「恨み、だと」 ”恨み” 自分とは無縁だと考えていた言葉。 不意にそれを向けられたカガリは激しく反発する。 「う、恨みだと!?そんなバカな!?私は別にティモールに何も酷い事はして……!!」 と、そこまで言いかけてカガリはハッと気がついた。 忘れかけていた過去が記憶に蘇る。 思わずカガリは唇を噛んだ。 (……そうか……!ユウナの事か……!!) オーブ五大氏族のひとつセイラン家の雄、ユウナ=ロマ=セイラン。 前大戦でカガリを担ぎ、オーブの実権を握った男。 しかし彼の野望もザフトのオーブ侵攻による頭首ウナトの死、そしてカガリのオーブ帰還で起きた軍のクーデターで脆くも潰える。 だがその時、実権を奪還したカガリがユウナにとった対応は、類例を見ない程酷いものだった。 ――ユウナ…私を本物と、オーブ連合首長国代表首長カガリ=ユラ=アスハと認めるか。 ――ならばその権限において命ずる。将兵達よ、直ちにユウナ=ロマを国家反逆罪で逮捕、拘束せよ! 5年前のあの日、オーブがザフトに蹂躙される最中にカガリは帰ってきた。 そして軍の指揮権を奪還するや否や、ユウナに一方的に国家反逆罪の汚名を着せ、あげくに兵達によるリンチまで加えたのだ。 下士官達にいい様に殴ら続けるユウナの姿を、カガリは平然と座視していた。 その後、連行されたユウナは戦火の中で行方不明――恐らく死亡したのだろう――となる。 それまでウナト、ユウナの両者はオーブの明日を背負うものとして、セイラン家一族全員の期待を一心に背負っていた。 しかしその期待もザフトが侵攻してきたあの日に全て打ち砕かれる。 よりによってカガリの手によって。 彼らにセイラン家の行く末を託していたティモールの心は、いかばかりか。 (……確かにセイラン家の失政は紛れもない事実だが、オーブから逃げ出した私にそれを責める資格があったのか?国を導く者がいなければ、例えセイラン家であろうと誰かが代わりを務めるしかないじゃないか!) なんと愚かだったのだろう、と今更ながら後悔がこみ上げる。 (だいたいデュランダル議長のロゴス討伐宣言の後、どうしてすぐにオーブに戻らなかったんだ?いや、戻れなくても連絡のひとつも入れられたはずだ!そうすればオーブのジブリール受け入れも、ザフトの侵攻も防げたかもしれなかったのに!なのに私は……!) 代行とはいえユウナ達の統治は合法的なものだった。 にも関わらず首長としての責務を放棄した事を全て棚上げにして、一方的にユウナに反逆の罪を負わせ、死なせた。 若かりし頃の過ちとはいえ悔いが残る。 「それでもティモールは……私と一緒に新しい世界を、新しいオーブを作ってくれると信じていたのに……」 だが消えたと考えていた禍根は、実は近臣の心中で息づいていたのだ。 密かに、そして根深く。 たまらずカガリは椅子に崩れる様に座り込み、大きくため息をついた。 「結局、私は……許されていなかったのか……」 信じたくない現実を前にしてカガリは力無くうな垂れる。 そんな彼女をライヒは無言のまま冷たく見下ろしていた。 (これがこの世界に君臨する者の実態か) 前大戦でのユウナとカガリの衝突、そしてセイラン家の没落も所詮は権力闘争による結末のひとつに過ぎない。 ただ勝者が残り、敗者が消え去っただけの事。 連合時代から策謀にまみれてきたライヒにとって、それは実に見慣れた光景でもあった。 だがそれに馴染めない世界の支配者が今、ここにいる。 (こうも情に溺れる者が闘争に打ち勝ち頂点に立つとはな。とかく世界は運がないと見える) ライヒにはカガリという人物が手に取るように分かった。 彼女は愛し愛される事を全ての行動基準にするために、常に目先の私情に振り回され、最後には大局を見失ってしまう人間なのだと。 迂闊に逆臣の一族の一人を傍で重用し、謀反の種を作ったのもそれ故だ。 だがその方が都合がいい、とライヒは内心ほそく笑む。 御し易く、操りやすいが故に。 「ご安心下さい、主席。既に手は打ってあります。我々治安警察の名に賭けて、二度と御身に危害の及ぶ様な不手際は致しません事を確約致します」 静かにライヒは一礼する。 忠臣の見本であるがごとく。 その彼にカガリは特に考えること無く後事を託す。 落胆し、声を落としたまま。 「……解った。あとは宜しく頼む、ライヒ長官」 「拝命します、我らが主席」 我が意を得たり。 しかしライヒは笑みすら見せなかった。 ――ソラがリヴァイブの基地で日々を過ごす様になって、既に五日。 事態は動きつつあった。 ようやく支援組織からソラの帰国手続きが完了したので、彼女を引き取りたいという連絡が入ったのだ。 その旨が書かれた手紙をロマの自室に届けに来たのは、まだ幼さが抜けたばかりという風の青年であった。 リヴァイブに入ってまだ1年の若年兵である。 「リーダー、これが例の件の返信です。なおこれのチェックはすでに済ましており、異常なしです」 「ありがとう。感謝するよ」 「いえ、これも仕事ですから」 組織の長に素直に感謝された青年は、素直に笑顔をほころばす。 外部からリヴァイブへの連絡ルートは複数ある。 幾重にも偽装された通信ネットワークを使ったり、仲介者を介した連絡要員からのものであったりと、その種類は多岐にわたる。 今回は後者を経由したものであった。 こうした手紙や荷物はかならずリヴァイブ基地に着く前と、着いた後で入念なチェックをする手順となっている。 担当のメンバー達がX線スキャン等にかけて”仕掛け”が無いか丹念に調べ、仕掛けがあった場合は処置をする。 そしてその後に、ようやくロマの手に渡るのである。 「やっとソラさんの帰国手続きが完了したわけか。これで僕らもお姫様をお慰めする日々から解放されるよ」 「そういう事ですね」 ロマは支援組織を通してオーブの協力者と連絡を取り、そのルートを使ってソラを帰国させるつもりだったのだ。 その準備が整うまでやややきもきさせられたが、これでやっと肩の荷が下りたかと、内心安堵する。 手元に届いた封筒を見てみると、それは片隅に南国模様をしつらえた航空郵便であった。 時代を感じさせる古いプリンター文字で宛名がされている。 ロマは表裏をざっと眺めると、ペーパーカッターで封を切り、さっそく中の手紙を取り出して読み始めた。 だが文面を読み進めていくうちにその表情がにわかに曇る。 「どうかしましたか?リーダー。内容に何か問題でも」 「いや、なんでもないよ。なんでもない……」 そう言葉を濁しつつも、ロマは何か考え込むように手紙をじっと見つめていた。 目の前で心配そうにしている青年を他所に。 すると次の瞬間、不意にこう告げたのだった。 「ここに大尉とシン、コニールの3人を呼んで来てくれ。大至急だ」 ――そして翌日早朝、ソラとコーニル、ロマの一行はリヴァイブ基地から出発した。 「……確かにここなんでしょーね、リーダー」 「手紙によると、ここだよ。……まあ見事に荒野のど真ん中だけどね」 「見事に何もないわねー。地平線の向こうまで一面砂と土だけ。まともな木一本生えてやしないわ」 「まあこの国はどこもこんな感じだけど……」 シープで走る事、数時間。 コーカサス州中央部から南部にかけて広がる大平原地帯の一角。 そこが今回の待ち合わせの場所なのだという。 しかしようやくたどり着いた目的地は、なんと辺り一面全く何もない荒野の真っ只中であった。 コニールは背伸びをして周りを見回してみるが、付近には村や町はおろか一軒家の影すらない。 近くに人が住んでいる気配は全くなかった。 持ってきた地図やGPSも調べてみるが、確かにここは手紙で指示された座標――会合場所で間違ってはいなかった。 「本当に大丈夫なの?リーダー」 「大丈夫……だと思う、たぶん……」 そう言うとロマは地図と手紙を見比べながら、黙りこんでしまった。 コニールは横から彼の顔を覗いてみるが、仮面のせいでどうにも表情が読み辛い。 ロマが何を考えているのかあれこれ詮索しても仕方無いので、今度はジープの後部座席にいるソラの様子を見てみる。 シートにもたれかかって、ぼーっとしている。 長時間砂利道で揺られた旅路がきつかったのだろうか、疲れた様子が見て取れた。 「大丈夫、ソラ?かなり強行軍だったから疲れたでしょ」 「……うん、平気です」 「ほら、水でも飲んで気持ち落ち着かせなさい。もうすぐ帰れるんだから」 そういうとコニールは、クーラーボックスに入れてあった水筒をソラに渡した。 受け取ったソラはコップに水を注いで一気に飲み干す。 「ありがとう、コニールさん」 「どういたしまして」 今日は幸い風も強くなく好天に恵まれた。 視界良好。 太陽は天頂よりやや傾きつつあるが、その日差しは暑くも寒くも無かった。 ジープの運転席に座りながらコニールは、ぼんやりと空を眺める。 ゆっくりと雲が流れていた。 「……もう秋も終わりね。そろそろ冬も近いわ」 「え?まだ10月になったばかりですよ」 「ここは一応北国みたいなもんだからね。夏もそうだけど秋も短いのよ。冬ばっかりやたら長いから嫌になるわ」 「そうなんですか……」 「ま、秋はともかくこの国の夏なんてただ暑っ苦しいだけで、何の得もないんだけどね。その分オーブはいいわよねー。一年中暖かいし、夏は海があるから泳げるし、サーフィンもできるわよねー。あーあ、私も南国の海のある街にでも引っ越そうかなー」 「あ、でもここにもカスピ海とか大きい湖があるじゃないですか。それに海があるからっていい事ばかりじゃありませんよ。毎年台風が来ますし、沖合いにはサメもいますし」 「サメ?嘘ぉ?」 「本当ですよ。時々サーファーの人が食べられたとか新聞に出てます」 「……」 急にコニールは昔見た古い恐怖映画を思い出した。 大きな人喰いザメが泳いでいる人を襲うという内容のもので、お陰でその夜寝れないくらい怖かったのを覚えている。 「……やっぱこの国でいいわ、私」 ゲンナリとなるコニールに、ソラはクスクスと笑った。 そんなにこやかな二人の様子に、ロマは内心ホッと胸をなでおろしていた。 (やれやれ、コニールのおかげで助かったよ。ソラさんが滞在している間、彼女をどうやって一人にさせないか、本当に悩んだからなあ……) 荒くれ揃いのリヴァイブの男達がちょっかいを出す可能性から、脱走や自殺という最悪の事態まで、基地内でソラを一人にするリスクは実に大きかった。 今までは傍らにはAIレイがいたが、その彼も仕事がある時は席を外さざるを得ず、その間どうしても一人になってしまう。 下手に人をつければ逆効果にもなるし……と、ほとほと困り果てたロマに助け舟を出してくれたのがコニールだった。 ――リーダー、ここにいる間あの子の世話は私が見るから。 ――コニール。シンと一緒に彼女を連れてきた事を負い目にしてるなら、無理しなくてもいいんだよ。 ――別にそんなのじゃないわ。大丈夫、私に任せて。 以来、コニールはソラと寝食を共にして来た。 幸いソラもそんなコニールに心を開いてくれたようで、今では二人は友達のように話している。 その懐の深さにロマもただ感心するしかない。 (だてに幼い頃から気難しい大人たちに囲まれて育ったわけじゃないって事か。その人付き合いの上手さは、僕には到底マネ出来ないよ) 結果オーライ。 おかげでロマの心労もひとつ減ったのだが……。 「これさえなければ、もっと喜べたんだろうけどね」 手にあるのは昨日届いた一通の手紙。 彼の元に送られてきた”依頼”の返信だ。 一見すると普通の回答だったが読んだ瞬間、ロマは今までにない微かな違和感をそれに感じていた。 それがずっと頭にこびり付いている。 (……叔父上。嫌な予感が当たらなければ良いが……) 約束の時間まであと一時間。 そこでロマはこんな事もあろうかと、持ってきたある物の準備をする事にした。 「コニール、ちょっと手伝ってくれないか?」 薄暗いコックピットの中。 どれほど時間が経っただろうか。 シンは目を閉じてじっと待っていた。 こういう時は誰もが軽い無駄口のひとつも叩くものなのだが、何故かシンはずっと黙り込んでいた。 先ほどロマからの”万が一のために準備をするから”という連絡を受けた後も。 《何事も無く無事に終わるといいがな》 今、AIレイはコックピットの一システムとして機内にいる。 これまでの長い沈黙に堪りかねたのか、それまで静かにしていたAIレイが話しかけてきた。 「……そうだな。どころで中尉は?」 《もう配置についている。保険は万全だ》 「そうか」 《ところでどうしたシン?先程から不機嫌な様だが》 するとその瞬間シンが怒鳴った。 「この状況下でどうやればご機嫌になれるのか、俺は知りたいね!サイの奴、『コックピット周りの防水処置が間に合わなかった』だって?それで許されるのかよ!?」 見れば足元の床に真新しい泥が付着している。 実は――シンはモビルスーツごと”溺れかかった”のだ。 今回、シンと中尉は不測の事態に備えるために、ソラの返還交渉に向かったロマ達の護衛として選ばれた。 ――今日のソラ君の“迎え”に若干不審な点があるんだ。そこで君達には予想される危機に際して備えて欲しいんだよ。ちょっと嫌な予感がするんだよね。取り越し苦労だったらいいんだけど。 今朝のブリーフィングでのユウナの言葉。 そこでロマとコニールがソラと共に交渉現場に行き、シンと中尉が周囲から護衛するという案が採用された。 それも相手を警戒させないために、それぞれモビルスーツに乗って、会合予定地点の付近に潜む、という作戦である。 そこでシンは相手に気取られない様に、近くを流れる川を潜伏場所に選んだ。 ところがモビルスーツを川の中に沈めた途端、コックピットに座る自身の足元まで泥水で浸かってしまうという、思わぬ事態に直面する。 なんと彼の愛機は防水加工が間に合っていなかったのだ。 慌ててモビルスーツを河からすぐに出したので、特に問題は起きなかったのだが、呆れるやら腹が立つやらこの上ない。 結局、代わりに付近の丘の影にタコツボを掘り、カモフラージュシートをかけて潜んでいる。 《軟弱だな。多少水没した位で怒るなど、男らしくもない》 まるで他人事の様に言うAIレイにシンは苛立ちをぶつける。 「普通コクピットは“浸水”しねぇよ!何処の世界にこんな新型があるんだ!?」 《新型、と言ってもレストアが殆どだからな。流石は整備班長サイ=アーガイル、パーツ同士の齟齬が殆ど無いのは正に職人芸。機体のことを心から愛するエンジニアの魂を見た気分だな》 「チッ。道理でサイの奴、俺にノーマルスーツを着せたがったわけだ……」 出てくる前にやけにしつこかった眼鏡の整備班長の顔を思い浮かべる。 この場にいたら一発殴っていたかもしれない。 《ノーマルスーツは宇宙用だからな。当然、潜水服の代わりにもなる。そのスーツも闇市場の横流し品だとサイが言っていたぞ》 「ったく、濁った河の水の中で待ちぼうけ喰らう趣味はないぞ。頭まで水没してみろ。モニターまで泥水に浸かっちまって何も見えなくなるし、それどころか電装品も全部パーになって機体が動けなくなる」 《ああ、それなら大丈夫だ》 「?」 《サイが貴重な電子部品やシステムには処置を施したと言っていたからな。当然俺も防水加工済だ》 コックピットシステムの一部としてセットされているAIレイにそう言われて、シンは思わず右拳を左の掌にパンッと叩きつけた。 「ケッ。俺は電装品以下の扱いかよ」 ふて腐れるシンに、ふと叩いた両腕が目に止まる。 身を包むノーマルスーツの色。 薄い紫とワインレッドの二色に塗り分けられたそれは、忘れようも無いザフトレッドの証だ。 そして今はもう滅んだ国のシンボル。 言いようの無い郷愁が蘇って来る。 「……もう5年になるんだな。この服を最後に着てから」 《そうだな》 5年前のあのメサイア攻防戦。 あの戦いで一度シンの全ては終わった。 あとは絶望に身を任せ、ただ死を待つばかりであった。 だがデスティニーの残骸とともに宇宙を漂流していたところ、偶然アメノミハシラの輸送船に拾われ、九死に一生を得る。 「そういえば俺は地球に降りてからずっと今まで、一度もノーマルスーツには袖を通してなかったな。今更思い出したよ」 《歩兵として戦ってきた時はもちろん、モビルスーツに乗った時もそうだったな。意識していたのか?》 「……特に必要なかったから着なかっただけさ。ここは宇宙とは違う。空気も重力もある」 《それだけが理由なのか?シン》 「……いや……」 ふとシンは自分を振り返ってみる。 もしかしたら無意識の内に忌避していたのかもしれないな、と。 5年前の前大戦では、これと同じノーマルスーツに身を包み愛機インパルスを、そしてデスティニーを駆って全身全霊で戦った。 だが最後はアスラン達に敗れ、守るべき祖国も居場所も仲間も、そして愛する人までも全て失う。 その瞬間からザフトレッドはシンにとって敗北の過去であり、己が無力の証になった。 今でもそれは心の奥底に深く刻み込まれている。 辛い過去を思い出させるが故に。 だが一方でそんな想いすら冷静に見つめる事ができる自分がいた。 ――そしてザフトを、プラントを滅ぼしたオーブへの復讐。 ――全てを奪ったあの四人への復讐を。 かつての無念はいまや復讐の炎となり、己が身中で猛り狂っている。 先の式典襲撃もその幕開けに過ぎない。 「……ひょっとすると、ここからが俺達の始まりなのかもしれないな」 偶然か因縁か。 過去と現在が今、狭いコックピットの中で不可思議に交錯していた。