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【名前】クリスタルズ=リング 【性別】女 【所属】科学 【能力】生物十声(トゥルースヴォイス)レベル不明 【能力説明】 原石にカテゴライズされる能力。葉っぱの上に止まる虫、ビルの屋上で毛繕いしている鳥、路地裏を走る猫、建物の壁に刻まれた人の残留思念。 およそ生物のカテゴリーに入る全ての生き物達が発し、あるいは残した『言葉』をクリスタルズは聴く。傍に相手がいるのであれば自らの『言葉』を相手へ送り届け、心を通わす。 平たく言えば生物と話せる力。厳密に言えば生物の思念を自らの言語に翻訳し、意思疎通を図る『言葉』として自らの言語に再翻訳を施し、生物へ確実に送り届ける力。 クリスタルズ=翻訳機という解釈。間違っても生物を思うがままに操作する能力ではない。強いて言うなら、『言葉』を交わす生物達はクリスタルズを自分達と同類の生き物と見做すようである。 虫と喧嘩したり、鳥と近況を報告したり、猫とじゃれあったり。もちろん同類と見做されるからといって襲われないとは限らないが、今までクリスタルズが襲われた事例は1つも存在しない。 クリスタルズ曰く「虫や動物達へ敬意を払い、不用意に縄張りを侵さず、隣人として共に歩みたいと『言葉』を送り届ければ彼等は理解してくれる」との事。 この辺りの原理は原石らしく今のところ解明されていない。人間相手には一見意味がないように思えるが、錯乱や洗脳を施されている人間を正常に戻したという報告がある。 人間にしろ動物にしろ虫にしろ、クリスタルズは生物達の思念の中に隠れている本心・本音を引き摺り出し、そこへ自身の『言葉』をダイレクトに響かせる事ができるようである。 【概要】 ロシアに存在する、ある地方に生まれた少女。父子家庭で一人っ子。今年で13歳になる。愛称クリス。 神秘的と形容するしかない独特な雰囲気を醸し出し、右が灰色・左が青紫色を映すオッドアイと膝裏まで伸びる白銀の髪の艶は目にする者達へ強烈な印象を与える。 付近には自然保護区が有り、珍しいものを含めて様々な生物と触れ合う機会を持ちながら幼少期を過ごした。 鹿などの草食動物だけではなく虎などの肉食動物などに遭遇する事も多くあったクリスタルズが無事に育ったのは先天的に超能力を発現した原石だったからであろう。 自然に恵まれた環境で育った所以か、はたまたそれ以外の要因があったのか、しかしながら現在に至るまで能力発現の理由は特定されていない。 クリスタルズは虫や動物達と言葉を交わすのがとても好きで、普段は単身赴任で海外へ出張している父親と一緒にいられない寂しさを彼等と共に過ごす事で埋め合わせてきた。 偶の休暇に帰宅するクリスタルズの父は、動物が好きな娘への埋め合わせとしてよくクリスタルズを動物園やサーカスへ連れていった。 ロシアでも有名なものを父自ら選んだ末の小旅行のようなものだったが、そこでクリスタルズを待っていたのは動物達の悲鳴であった。 全ての動物達がそうであるというわけではない。だが、狭い檻の中に閉じ込められて人々の好奇的な視線を集める動物園の動物達、本来芸を行う事を目的としているわけではない動物達に火の輪を潜り抜けさせたりしているサーカスの動物達は叫んでいた。 視線を集めるストレスを。火を潜る恐怖を。躾と称して人間達から暴力を振るわれる動物達の悲鳴をクリスタルズは受け止め続け、あるサーカスの観覧中に限界を迎え意識を喪失した。 娘を思って旅行へ連れていってくれる父の為にそれまで我慢していたクリスタルズの限界を超えた当時の一件で、初めて父親は我が娘が常識では説明できない異能の力を抱えている事に気付いた。これが後にクリスタルズが父の勧めで学園都市へ転入する契機となった。 現在白帝学園に通う中学1年生。日向永弌と同じクラスに通う。学園都市に住むと決めたのはクリスタルズが12歳の時で、来日するまでに一通りの日本語を独学で習得済み。 父の判断でクリスタルズは白帝学園へ通う事となった。よって、クリスタルズが学園都市へ来たのは今年初め。貴重な原石という事もあって学園側もクリスタルズの編入試験を認めた。クリスタルズのレベルは初めて行った『身体検査』において情報不足が散見されるため不明とされている。 異国の地で父と離れて暮らす寂しさは確かに抱えているが、それ以上に父の愛情を強く感じるクリスタルズは父に依存するのではなく、自立した立派な女性となる事を目標としている。 そして、父兄らが気兼ねなく学園都市に入れる数少ない機会である大覇星祭までに少しでも1人の人間として成長していようと勉学に励んでいる。 日向永弌には色々世話になっている。新入生ながらとりわけ教師から期待されている者同士とでもいうべきか、教師から日向へクリスタルズの世話役を指示された事がきっかけとなり友達になった。 家族との確固たる繋がりを手に入れられていない日向を心配しており、世話を焼いてくれる彼の為に何かできる事がないか思案している。 最近では、自分と同じく異国から学園都市へ来たケリィ=エイトビットと仲良くなった。ケリィのマッサージの虜になってしまったのがきちんと会話するきっかけとなった。 神秘的な雰囲気を醸し出しながらも人当たりは良い方なクリスタルズでも唯一気に入らない人間が存在した。 自分に異能な力が宿っていると父が気付く契機となり、自身が学園都市で暮らす起因となったサーカスのメンバー募集の為に白帝学園の生徒へ声を掛けている帝白紫天である。 サーカス=動物虐待と考えていたクリスタルズは、どこで知ったのか動物と会話できる自分を勧誘しにきた帝白を延々と批判し続けた。 「あんなものは動物の虐待でしかない」「サーカスなんて興行が未だ続いている現状が嘆かわしい」「あなたには火に怯え、叩かれる鞭を恐れる動物達の気持ちがわからない」「学園都市でしか見られないサーカス一団を結成したい?それは動物達をモルモットとして使い捨てるという事か?」「あなたのような人間が私達生徒のトップだなんて私は認めない」等々それはもう散々に言い捨てた後、帝白の意見を聞かずに勝手に去っていく有様であった。 言いたい事も言ったし、これであの男も少しは自分の愚かさに気付くだろう―などと勝手に1人で納得していたクリスタルズだったが、次の日もその次の日も帝白が自分の前に姿を現した。 それら全てを一切無視し避けていたクリスタルズだったが、ゴキブリのような帝白のしぶとさに遂に根負けし渋々話に付き合った。 その後どういう経緯を経たのか、クリスタルズは帝白サーカス団『スタンティーク』の団員の1人に数えられるようになった。 クリスタルズ当人は団員を含め他人に入団に至るまでの経緯を聞かれる度に入団そのものを否定しているものの、帝白サーカスが開かれる際には殆ど顔を出している。 帝白サーカス団でのクリスタルズの担当は動物を用いた火の輪くぐりや自転車操作、縄跳びなどを代表とする動物演芸……ではなく、帝白サーカスを目にした周囲の生物達が人間の行っている芸についてどのような感想を抱いたのかを記録する係。 『生物達が人間の言動に対してどのような反応をするのか、どんな感情を持つのか』という自主研究テーマに合致しているとしてクリスタルズは渋々請け負っていると話している。 その過程で、団員である神輿庭麒太郎や御神楽帝達と交流を持つようになった。帝白の指示を受けた麒太郎が操縦するアクロバイクの後ろに乗っていつも各現場へ向かっている。 あれだけサーカスを動物虐待とイコール付けていたクリスタルズが、どんな経緯を経て帝白サーカス団の活動に付き合うまでに至ったのか、詳細は当人達にしかわからない。 断片的に判明しているのは2つ。いずれも帝白からクリスタルズへ向けられた偽りのない『言葉』。それは『謝罪』と『帝白が考えるサーカスの在り方』。 【特徴】 150センチに僅か満たない低身長に女性として起伏が乏しい体格に関わらず見る者達に強い印象を残す。右が灰色・左が青紫色を映すオッドアイ。目元はパッチリ二重まぶた。 膝裏まで伸びる白銀の髪。前髪も伸びており、白銀の毛先から覗くオッドアイと雪のような真っ白い肌が一際目立つ。 ロシア帽の形状を参考にした耳当て付きの青紫色の帽子を被る。時々能力が無意識に発動する為、負担を和らげる意味合いがある。 上質な青いウールにイチイの葉・花・果実が模様として描かれているウールショール、日本ではプラトークと呼ばれる伝統的な四角のショールを右肩から羽織り、ショールの先を首に巻いて落ちないようにしている。 私生活はおろか学校に通う時もプラトークを羽織っている。私生活では白系統の上着に青系統のスカートなどを着る。 日本に来てそれ程経っていないので、自分の知らない日本の文化に触れると内心興奮する。特に、食事前のあいさつである「いただきます」に込められた意味に感銘を受けた。 日向から日本発祥のマンガ文化やゲーム文化について教わって以降は、コンビニで毎週発売されるマンガを立ち読みするのが習慣となりつつある。 動物をこよなく愛するがベジタリアンというわけではない。魚も牛も豚も鳥も食べる。クリスタルズが本当に動物の死を全て許せない性分ならば、かつて暮らしていた村付近にあった自然保護区で肉食動物が草食動物を食らうのを黙って見てはいなかっただろう。 ここにクリスタルズ=リングが抱く価値観の1つが凝縮されており、帝白紫天との話し合いで彼及び彼が語るサーカス観と折り合いをつける事ができた最大の理由が秘められている。 【台詞】一人称「私」。二人称「君」「あなた」。他人の名を呼ぶ時は年上だろうが年下だろうが男だろうが女だろうが「~君」と呼ぶ。独学の影響のようだ。 歯に衣着せぬ言葉遣いが特徴。虫や動物に変な渾名や愛称を付ける癖がある。しかも、どれも石の名前である。その時々の直感で名称を決めるとの事。 「お父さん。ごめんなさい。私…これ以上ここにいれない。聴こえるの。あそこ…にいる動物達の悲鳴が。恐怖に染まった叫び…が……」 「日向君に私がしてあげられる事ってなんだ?きっと、日向君の家族は日向君を見捨てたりしていない。遠く離れた私のお父さんが、今もずっと私を愛し続けてくれているように」 「そうだ。この言葉は私の祖国には存在しないんだ。初めて言葉に込められた意味を知った時、私は涙が出た。生き物の命を頂き自らの生命に活かす。自然の恵みに対する感謝に有り触れた挨拶を共に紡ごう。……いただきます」 「日向君。ケリィ君。紹介する。あそこの黒い猫が閃亜鉛鉱君。隣の白い猫がホワイトバッファロー君。少し離れた場所で欠伸をしているのが橄欖石君だ。皆良い子達だ。仲良くしてやって欲しい」 「麒太郎君。もうちょっと君のお腹に回してる腕の力を強めていいか?…そうか。それでは失礼。それにしても、私が思う以上にアクロバイクはスピードが出るんだな。まあ私のせいで遅刻しそうになっているんだ。文句は言えない…ど、どうした麒太郎君?スピードがさらに上がったぞ?へ、返事をするんだ麒太郎君!」 「G君は私にこう言ったんだ。『おぬしの話を聞いてわしは思ったぞ。折角学園都市でしか見られぬサーカス一団を結成するのだ。楽しんでくれる観客が人間限定では些か勿体無い。ここは強欲にいこうぞ。クリス。動物達も楽しんでくれるサーカス一団結成の為におぬしの力をわしに貸してくれ』とな。最初耳にした時はボケたのかと思った。だが……ふぅ。この話はもうお終い」 【SS使用条件】 特になし
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>>next 朝、キュルケは寝ぼけ眼をこすり、大きく背伸びをして目を覚ました。 そして窓を開ける。早朝特有の弱い日差しと涼やかな風、それに乗ってくる腐った沼の瘴気のような鼻を突く臭い。 爽やかな朝の気分は一気に台無しとなった。 まただ、また臭いが強くなっている。先々週辺りからルイズはまた部屋に引きこもり始めた。 それを契機に、今までは隣から漂う微かな空気の濁りだったものは、段々と明らかに鼻を突く異臭に進化していた。 一体何をしているのかキュルケは想像もしたくなかったが、正直この臭いは耐え難い。 一言文句を言っても罰は当たるまい。 そう思い部屋を出て、ここ最近で人嫌いになった友人の部屋を訪ねる。 「ルイズー? ちょっとお話があるんだけれど」 強めに扉を叩き、声をかける。出てこない。 今度はさらに強く叩き、大声で呼びかける。それでもルイズは出てこない。 いい加減業を煮やしたキュルケが『開錠』を使おうと杖を振りかざした時、漸く返答があった。 相変わらず暗い顔つきのルイズが不機嫌そうに半開きの扉から顔を出す。 キュルケの顔を認めると、また瞳に隠し切れない悪意が溢れる。 「五月蝿いわ、ツェルプストー」 「っ! ……最近空気が悪くありませんこと? お掃除は欠かさずやっているのかしら」 その言葉に、あからさまに顔を顰めたルイズは、キュルケから視線を外した。 「ちょっと立て込んでいるのよ。すぐに解決するわ……これでいい?」 「──結構」 勢い良く閉じられた扉に向けて嘆息し、キュルケは湧き上がる吐き気を手で抑えた。 もっと追求するはずだったのに、あっさりと手を引いたのはもちろん理由がある。 扉が開かれた瞬間に、我慢の限界を超える疑いようの無い悪臭が襲ってきたからだ。 堪らずその場を離れようと会話を打ち切り、荒く息を吐きながら寮の玄関口へ向けて歩き出した。 臭いの元を確かめる気は起きなかったが、ある程度の想像はつく。彼女の使い魔だ。 怒りっぽくて高慢ちきで、でも努力家で正義感の強かった彼女を、見事に豹変させた使い魔にキュルケは怒りを禁じえなかった。 足を止め、暫く考えていたキュルケだったが、意を決したように顔を上げ方向転換する。 向かうのはこの寮の少し離れた場所にある親友の部屋。 以前交わした会話を思い出す。 タバサは、あの使い魔について何か知っているはずだ。 ── タバサは自室で一心不乱に本を読み進めていた。 机の横には山のように書物が積み重なっている。 無い、やはりどこにも載っていない。 タバサは捜し求めるものが手元の本に無い事を知ると、あっさりそれを投げ捨てた。 ─手がかりは、やはりこの一冊だけ? 書物の山とは分けて置いてあった、ぼろぼろの本を手に取る。 「~星の厄神と始祖ブリミル~」 何度も読み直したその本を再び開く。タイトルはよくある子供向けの童話のようだ。 世界に多く存在するブリミルに関する御伽噺の一つ、この本を図書館の奥で見つけた時、タバサはそう思った。 しかし何となく軽そうな見た目に反し、その内容は果てしなく重いものだった。 簡単に本の中身を説明するとこうなる。 遥か昔、流れ星と共に恐ろしく醜悪な生物の群れがある国に降り立った。 その生物は人を食らい、畑を荒らし、その国に住む人間達の生活を蹂躙していった。 普通の物語ならここで旅の勇者だの、光の巨人だのが現れて、人々を救い一件落着だがこれは違う。 生物は人を食うだけでなく、人を自分と同じ醜悪な姿に変え仲間を増やし、やがてその国を滅ぼしてしまう。 被害はそれだけに留まらず、隣国や大陸を超えてハルケギニア全土まで拡大しかけた。 世界に暗黒の時代が来ると思われたその時、漸く始祖ブリミルがおっとり刀で駆けつける。 ブリミルは自慢の虚無で滅ぼされた『国ごと』生物を焼き払う。そこで話は終了している。 こんな内容が所々挿絵付きで描かれている。実にシュールだ。 そもそも話にオチも救いも無いこの本は、物語として三流もいい所だ。 まるで御伽噺ではなく、実際の出来事を歴史として残したようだった。 中途半端に現実感を覚えるそんな所に、どこか言い様の無い不気味さを感じる。 そして重要なのは件の挿絵の事である。 降り立った生物というのが、そっくりなのだ。ルイズが召喚したあの使い魔に。 あの、『ロングビルを食らった』恐ろしい使い魔に。 目撃したのは偶然だった。 誰もが寝静まる深夜、タバサは突然尿意を催して手洗いに部屋を出た。 無事に用を済ませ、部屋に戻ろうと寮の廊下を歩いていた時、何となく窓から本塔の辺りを見た。 何か蠢く物が見えたような気がして、窓に近づいて目を凝らしたが良く分からない。 たまたま、シルフィードに乗る時に使う小さなスコープを持っていたので、覗いてみる事にした。 遠くの様子が良く見えた。ついでに見たくない物も見えた。 学院長の秘書が必死の表情で己の体に纏わりつく何かに抵抗するも、 善戦空しく腹を抉られ、頭を齧られた辺りでスコープを横に逸らした。 その先でどこか恍惚とした表情のルイズを見つけた時、流石のタバサも恐ろしさで顔が引きつった。 トイレを済ませておいて本当に良かった。 この事は既にオールド・オスマンに告げてある。 しかしオスマン氏は報告を受けた後、深刻な顔をして「口外を禁ずる」と述べただけだった。 現在に至るもルイズとその使い魔は何の処分も受けていない。 あの様な危険な生物を放って置く事など、正気の沙汰ではないというのに。 故あってこの学院から離れられないタバサは、己の安全の為に調査へと乗り出したのだ。 しかし図書館の本を読み漁り始めて既に一ヶ月以上、成果は芳しくない。 手がかりになりそうなのは、今のところこの童話モドキ一冊だけだ。 やはり生徒が入れる一般区域には重要な書物は無い。 教職員用の『フェニアのライブラリー』へ入る方法は無いものか? あそこは常に教師の誰かが当直に就いている為、余程の理由が無い限り入るのは難しい。 そんな事を考えていた矢先、部屋にノック音と聞きなれた声が響いた。 サイレントをかけるのを忘れていたらしい。 タバサは一旦本を閉じたところで、閃いた。扉が開く。 「こんにちはタバサ、ちょっと聞きたい事が──」 「来て」 「え、ちょ、ちょっと痛いわよタバサ。一体何なの?」 顔を出したキュルケの腕を引っ張り、タバサは図書館がある本塔へと向かっていった。 ── 「それで、どういう事なの?」 魔法学院の図書館内、高さ30メイルにも及ぶ書棚に囲まれたその一角で、二人は話し合っていた。 無理やり連れて来られたキュルケは、掴まれて赤くなった腕を擦りながら不機嫌そうに尋ねる。 タバサはこの一ヶ月、独自に調べていたルイズの使い魔の事を説明した。 ロングビルに関しては、一応口止めされているので話さないでおく。 暫く黙って聞いていたキュルケだったが、彼女に一つ疑問が浮かんだ。 「何でルイズの使い魔を調べてるわけ?」 「あれは危険」 「……どの辺が?」 急に探るような目つきとなったキュルケから目を逸らすタバサ。 キュルケはそんな様子を見て溜息をつくと、笑って小さな頭を撫でる。 「まぁ、良いわ。貴女の秘密主義は今に始まった事じゃないし。 もともと用件もあの使い魔だったからね。それで、ここに来たって事は手がかりがあるの?」 「あるかもしれない。でも一人じゃ無理。手伝ってほしい」 珍しく自分を頼るその姿に、何でも言いなさい! と大口を叩くキュルケ。 しかし続くタバサの言葉に一瞬頭が真っ白になった。 何かの間違いだろうと思い、聞き返す。 「……もう一回言ってくれないかしら?」 「フェニアのライブラリーに忍び込むため、協力してほしい。色仕掛けで」 ── 上手くいった。 本日の当直はコルベール師で、彼がキュルケの誘惑に葛藤している間に、小柄なタバサは二人の間をすり抜けた。 そして首尾良くフェニアのライブラリーに忍び込む事に成功したのだった。 今頃、コルベール師は滅多に無い色事に四苦八苦しているだろう。 彼女には感謝してもし足りない。渋々という様子だったが──何で私があのコッパゲに!── 頭を下げて上目遣いで頼めば一発だった──計画通り。 腹黒い感情を無表情で覆い隠し、奥へ進むタバサ。 入り込んだはいいものの、書物の量は膨大だ。一冊一冊探していたのでは日が暮れる。 そこでタバサは、重要な物はダンジョンの最奥にあるのがセオリーとばかりに一心不乱に突き進む。 暫く歩くと突き当たりに辿り着いた。 いい具合に古臭い書物が揃っている。ここから調べていこう。 『レビテーション』を唱え、書棚の一番上から、それらしいタイトルの本が無いか目を凝らす。 ─一段目、無し。二段目、無し。三段目、『出来る! 魔法で豊胸』……気になるが関係無い。 そうやって棚を一つ一つ注意深く観察し、四つ目の書棚に取り掛かった頃。 ─十ニ段目、無し。十三段目……これらは何だ? この段から異様な雰囲気の書物が数多く並んでいる。 血で染まったような不気味な紅い書物。何かの皮で出来ているのか、光りに異様な反射をする書物。 その中で、ある一冊がタバサの目に留まる。 『ヴォイニッチ手稿』 二百頁ほどのその本を手に取ってみると、中には不気味なイラストが多数描かれている。 タバサは歓喜した。これならあの生物が載っているかもしれない、と。 言語は現代のものではない。古代ルーン文字に似ている様な気もする。 一枚一枚丁寧に捲る。だが十数頁を越えた辺りで、タバサは異変に気がついた。 頁を捲る手を止められない! まばたきが出来ない! 視線を離せない! 全身に冷や汗が流れる。得体の知れない恐怖に体が震える。 これは不味いと思い、腋に挟んでいた杖に精神を集中させる。 しかし魔力は霧散し何の効果も表せない。結果、手を止める事も出来ない。 その事実に普段は冷静なタバサも焦った。 読み進める内に、もはや本を読んでいるのではなく『読まされている』状態となる。 目の前が段々と暗くなり、平衡感覚が薄れてくる。 割れるような激しい頭痛、それと同時に『何かが自分の中に入ってくる』のを感じて、タバサは正気を失いかけた。 その時、急に目の前へ『杖』が振り下ろされる。 「そこまでじゃ」 杖から放たれる魔力で一気に目が覚めたタバサ。 本の呪縛から解放され、気が抜けた事で『レビテーション』が解けた。 空中に投げ出される彼女を、歳に見合わぬ逞しい腕で受け止めたのは── 「んっ……オールド……オスマン」 「うむ」 汗を流して荒い息を吐く美少女という、一種アレな姿のタバサに、鼻の下を長く伸ばした魔法学院の長、オールド・オスマンだった。 >>next
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「なぜ・・・何故そんなこというの!!」 いきなり豹変した私の態度に驚きを隠せない唯。 「唯の気持ちは分かってる!好きだなんて言わないで!余計・・・惨めになるじゃない・・・」 唯に向かって一気に私の気持ちを捲くし立てると抑えていた感情が爆発して涙が溢れた。 脅してるからって唯がそこまでする必要はないのに、嘘で言われるくらいなら嫌いだと言われた方がマシだわ・・・。 「のどかちゃん・・・」 「触らないで!」 唯の手を払いのける、自分でも支離滅裂なのは分かっているでも抑えきれない。 ぎゅっっ! 不意に唯が私を抱きしめた。 「さわらな・・・」 「嫌わないで!!」 えっ!? 嫌わないでって・・・。 嫌っているのは唯でしょ、ひどいことをしてる私に・・・。 「嫌わないで、許してくれるなら私なんでもするから。だから私のことを嫌わないで!!」 顔を上げると顔中をぐしゃぐしゃにして泣く唯の顔が目の前にあった。 どうして私が唯を嫌いになるの・・・そんなことありえないのに。 「ごめんね・・・私が突き飛ばしたから、だから・・・怒ったんだよね、私の事嫌いになっちゃったんだよね」 鼻をすすりながらたどたどしく唯が話す。 「びっ・・・びっくりして手が動いちゃったの、すごくうれしかったの・・・に・・・でもそれで私が和・・・ちゃんを傷つけたから・・・ それに私が好きって言ったからおこ・・・怒ったんだよね迷惑なのは分かってるけど・・・もう好きって言わないから、 私に出来ることなら何でもするから嫌わないで!・・・ううん、私の事は嫌ってもいいから死んじゃいやだ!お願い!のどかちゃん・・・」 私はやっと理解した、『勘違い』それもまるっきり逆の!! 唯が好きだと言ってくれたのは本当だったんだ、勝手に勘違いして思い込んで・・・。 そんな勘違いした私に言われた「嫌い」って言葉と「死ぬ」って言葉を唯は信じてしまっていたんだ・・・。 「唯・・・ごめんね、本当にごめんね!」 ぎゅっと唯を抱きしめる。 「・・・のどかちゃん?」 「嫌いになんてなってないよ全部私の勘違いだからごめんね唯!・・・嫌いって言ったのも死ぬって言ったのも全部嘘なの!」 「・・・嘘?」 「うん、私が勝手に唯に拒絶されたと思い込んでただけなの。それで、その・・・それが悔しくて嘘をついちゃったの・・・ごめんなさい」 ぽろぽろと涙が溢れる、そんな私の頭を唯が優しく撫でてくれた。 「ううん、私が悪いの。和ちゃんは何にも悪くないの!」 「唯・・・」 「私が和ちゃんを傷つけたから、だから私が悪いの!和ちゃんは悪くないの!」 「唯・・・ありがとう、ごめんね大好きだよ」 「私も、あっ・・・の、のどかちゃん・・・好きって言っても怒らない?」 「うん、唯から好きって聞きたい、いっぱいいっぱい聞きたい!」 「えへへ、私も和ちゃんが好き!だーいすき!」 ぎゅうっ。 私の勘違いで大きなまわり道をしてしまったが、今やっと唯と一つになれた事がうれしかった。 「唯、本当にごめんね、ひどいことして。痛かったでしょ?」 「ううん・・・私もごめんね、痛くてびっくりして泣いちゃったりして、でも和ちゃんだからうれしかったの、本当だよ。それに・・・んと・・・ちい・・・欲・・・」 「ん?なぁに、聞こえない?」 「その・・・和ちゃんに触られてるとすごく気持ちいいの・・・だからまたして欲しいの・・・」 顔を真っ赤にしながら私を恥ずかしそうに見つめてきた。 そのまま唇を重ね、その日はくたくたになるほど愛し合った。 3日目- 昨日の疲れはあったけれどいつもより早めの時間に学校に着く、昨日サボって帰った分の雑務があるからだ。 「和さん」 下駄箱で憂ちゃんに呼び止められ、真剣な表情で人気がないところへ促された・・・もしかして。 「和さん・・・」 まさか唯・・・。 「お姉ちゃんをよろしくお願いします!!」 ぺこりと頭を下げる憂ちゃん・・・えぇ!? 「あの・・・憂ちゃん・・・」 「お姉ちゃんから全部聞きました」 ゆいー!あーーーっ・・・。 「でも、和さんだから許すんですよ!それに次にお姉ちゃんを泣かしたら・・・絶対許さないですよ?」 目が怖い・・・この子絶対本気だ・・・。 「うん、これからは絶対唯を泣かせたりしません、約束します!」 憂ちゃんは、私の返事を聞いて納得してくれたのかクスッと笑った。 「でも、よかった。お姉ちゃんずっと和さんのこと好きだったから」 「えっ?」 「お姉ちゃんから聞かなかったんですか?幼稚園のころからずーっと好きだったって」 ええっー! 「私なんて、和さんのお嫁さんになる!って何度聞かされたことか・・・」 そんな事、私は言われた事ない・・・いや、そう言えば子供のころ何度かお嫁さんにしてねって言われた覚えが・・・。 「あれって本気だったんだ・・・」 「もぅ、和さんだってお姉ちゃんの性格十分知ってるでしょ?」 ちょっとふくれっつらで指摘された。 確かに、あの子は思った事をそのまま口にするから・・・。 「!」 「どうしました?」 唯にそっくりのキョトンとした仕草で聞いてくる。 「憂ちゃんがきてるってことは、唯ももうきてるの!?」 「ええ、今日は朝練だからって・・・」 憂ちゃんの返事もそこそこに音楽準備室を目指す。 バタン!! 息を切らせて軽音部の部室の扉をくぐると・・・。 「おっ、唯!だんな様のお迎えだぞ!」 ニヤニヤとからかうように(間違いなくからかってるけど)話しかける律・・・。 「和ちゃんおめでとう~」 満面の笑みを湛えて祝福する紬・・・。 「そっ、その・・・おめでとう・・・」 何故か真っ赤になっている澪・・・。 「えっと・・・そ・・・その、お幸せに!」 こちらも真っ赤な顔の梓ちゃん・・・。 「えへへ~」 唯がテレつつも私の腕にしがみついてきた。 「ゆ・・・唯・・・」 「なぁに?和ちゃん?」 「だっ、誰にどこまで話した!?」 「えっと、まだ憂と律ちゃん、澪ちゃん、紬ちゃん、あずにゃんだけだよ」 どうして?って顔をしながら答える唯。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔だらけの中で、一番真っ赤な顔をして叫ぶ私だった。 【エピローグ】 私が恐れていた最悪の事態はなんとか回避された。 唯は約束通り憂ちゃんと軽音部メンバー以外に私達の関係を話すことはなく、私もやっと日常の日々を取り戻していた。 ただ、日常といっても今までの空虚な日常ではなく私の横には唯が居てくれた。 それに心強い仲間も出来た。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔で懇願する私に渋々といった感じで唯は了承した。 「まぁ、なんにしても良かったよな」 「うん、良かったね唯、和!」 「先輩、良かったですね!」 「うふふ、おしあわせに!」 軽音部のメンバーが再度お祝いの言葉をくれた。 「えへへ、ありがと~」 「みんな、ありがとう」 唯と二人で感謝の言葉を返した。 本当に感謝していた、普通ならこんなに暖かい反応は返ってこないだろう。 軽音部のメンバーと憂ちゃんに、もう一度心の中で感謝した。 「そっかーでもこれから先は二人に見せ付けられることになるのか・・・」 別に見せ付けるつもりはないが・・・多分そうなってしまうのかな。 今でさえうれしそうに唯が私の腕に絡まっているし・・・。 「うふふ、うらやましい限りね」 そう言う紬だが羨ましそうに見ている風には見えず、どちらかと言うと鑑賞されてるような気がする・・・。 「悔しいからこっちも見せ付けてやろうぜ、澪」 そう言った瞬間、律は隣に座る澪を引き寄せて・・・。 「んんっ!?」 もがく澪を押さえ込んで長々と唇を重ねる律。 「あらあらまぁまぁ♪」 うれしそうにそれを眺める紬。 ゴクリ。 両手で顔を覆ってはいるが、ちゃっかり指の隙間からのぞいて興味津々といった感じで眺める梓ちゃん。 「ねぇーねぇー、和ちゃん。私もしたくなっちゃった・・・」 「だっ、だめ・・・ここじゃ」 「えーっ、したいの・・・」 頬を高揚させ上目遣いに見てくる唯に欲求を抑えられなくなりそうだったがかろうじて我慢した。 「だめだって。・・・その・・・あとでしてあげるから、ねっ?」 最後は唯にだけ聞こえるように耳元でささやく。 「んっ、ちゅくっ・・・んふっ・・・」 澪は次第に抵抗をやめてぐったりとしてきた。 「ぷはっ・・・ってことで私たちのほうが先輩だからな!」 唇を離し、一息ついて律が自慢げに言い放った。 唇が離れたあとも、心ここにあらずといった感じだった澪の顔が徐々に紅く染まっていく。 「りっ・・・律!みんなのまえでその・・・するなんて、それにあれほど言っちゃダメだって!!」 「いーじゃん、唯達だって言ったんだし、ずっと黙ってるのって嘘ついてるみたいで嫌だったしさぁ・・・」 「そっ、それはそうだけど・・・でもはずかしい・・・じゃないか・・・」 「それで、それで!二人はいつからお付き合いしてたの!」 フンッ!と鼻息まで聞こえそうな勢いで紬が二人に詰め寄った。 「いや~、実は中学のときから」 若干照れた感じだが自慢げに律が話す。 「そっ、それでもちろんキスだけの関係じゃないわよね!」 紬の好奇心は留まるところを知らないようだ。 「それはもちろ・・・ムグゥ!?」 「わぁっっ!それ以上しゃべるなーー!」 両手で律の口を塞ぐ澪、もう遅い気もするけれど・・・。 「うふふふっ」 どんな妄想をしているのか、一人微笑む紬を見てこの子にだけは恋愛相談をしてはいけないと思った。 その後は、ところかまわず抱きついてくる唯の行動に当初は周りにバレてしまうのではないかと危惧していたが、唯の今までの性格や行動のためか気にしているのは私だけのようだった。 つまり、私たちの関係はこの上なく良好であり幸せな日々を送っている。 これからも色々な事があるだろう、楽しい事も辛い事も。 ただ、信頼できる仲間達が居てくれるから大丈夫だ、何があってもこの先ずっと唯と二人で進んでいく事を改めて心に誓った。 END- 戻る おまけ
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ブランド アトリエさくら Team.NTR ジャンル アドベンチャー メディア DVD-ROM 原画 綾風柳晶 シナリオ 中森南文里 発売日 2019/7/26 価格 2,800円(税別) 選評 【2019】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 2本目 https //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1559821854/ 567: 寝取られ妻・絵理奈 選評 ◆Ra9j1sVq3. :2019/07/30(火) 16 48 09 ID 30t8YOYY 寝取られ妻・絵理奈 ~愛する妻は他の男の上で腰を振る~ ジャンル アドベンチャー ブランド アトリエさくら Team.NTR 発売日 2019年7月26日 価格 2800円+税 6月末に「淫らに堕ちる、最愛彼女」をリリースしたアトリエさくら Team.NTRの新作。 前作の最愛彼女はNTRなのかはさておき話としては一応成立しておりまだマシであったが今作は完全にイカれてしまっている。 ○登場人物 西田 伸二郎 本作の主人公。 大学でヒロインと知り合い、その後大学を休学してヒロインと駆け落ちした。 いつヒロインを連れ戻しに来る奴が現れるか分からないのでなるべく目を離すまいと在宅ワークで生活費を稼いでいる。 鴻ノ池 絵理奈 本作のヒロイン。 バリバリのお嬢様育ちだったが普通の大学生として在学してる間に主人公と知り合う。 現在主人公と駆け落ち先で同居しており、主人公曰く「事実婚の妻」らしい。 作中ではキチガイじみた言動が目立つが実際ガチのキチガイである。詳しくは後述。 冷泉 敏彦 絵里奈の幼馴染で元婚約者。(元と主人公に呼ばれているが別に婚約は解消された訳では無いので正当な婚約者のはずだが・・・) 主人公曰く「金持ちらしくいけ好かない奴」らしいがあまりそういう雰囲気は無い。 おそらく作中で最もマシな人物。 ○シナリオ フルコンプまで2時間かからない位とボリューム自体はロープライス相応。 終盤まで一本道だが選択肢いかんで5つのエンディングが有る。 共通部分 ヒロインと駆け落ちして半年。 在宅ワークで生活費を稼ぎ駆け落ち生活を続ける主人公と絵里奈であったが主人公の仕事が上手く行かなくなって来た為に生活費に困窮し始める。 そんな折、今まで影も見せなかった敏彦から宅配便が送られてきた上に主人公に呼び出す電話をしてくる。 絵里奈に注意を促す主人公だがとっくの昔から敏彦と連絡先交換してると言い放つ絵里奈。 何故敏彦や絵里奈の実家が殴り込んで来ないのか不思議に思う主人公であったが取り敢えず敏彦の呼び出しに応じ待ち合わせ場所に向かう。 待ち合わせ場所に現れた敏彦に主人公は絵里奈を連れ戻す気なのか問いただすが、別にそんな気も無いし絵里奈の実家にも知らせてないと言う。 一安心した主人公であったが敏彦に駆け落ち生活を続ける資金が無い事実を突かれてしまう。 そんな主人公に対して敏彦は絵里奈と風呂に入らせてくれれば1ヶ月の生活費を貸すと提案する。 初めは拒否する主人公であったが金が無い事実に屈し絵里奈にこの提案を伝える。 てっきり絵里奈は嫌がってくれる物だと思ってたがアッサリ受諾する上に一緒に風呂なんて子供の時以来だと大はしゃぎする。 この態度に主人公は訝しむが自分の為に嫌な気持ちを抑えてくれているのだと思いこむ。 結局この場は本当に風呂に入っただけで約束通り敏彦は生活費を貸してくれるのであった。 主人公は生活費の為にこんな事を絵里奈にさせてはいけないと口だけは達者に語るが結局それから毎月絵里奈を敏彦に差し出しては生活費を貸して貰う。 敏彦が絵里奈に行う行為は毎月エスカレートして行きその内中出しセックスまで行うが絵里奈は相変わらず全く嫌がらないどころか非常に嬉しそうに行為に及ぶ。 この態度を不思議に思う主人公に敏彦は「お前はまだ絵里奈の本当の姿を理解出来ないのか?」と詰る。 ある日敏彦から「今日こそ絵里奈の真実を教えてやるから2人で俺の家に来い」と連絡が有り渋々主人公は絵里奈を連れて敏彦の家に向かう。 家に着くと敏彦は主人公と絵里奈でセックスをするように指示する。 主人公は嫌がったものの絵里奈はノリノリで結局敏彦の前でセックスをする2人。 行為の後に主人公が一息ついていると、なんと敏彦も絵里奈とセックスすると言い出す。 金も絡まないのに絵里奈が受け入れる訳無いと主人公は激怒するが絵里奈はアッサリ受諾。 主人公の眼前で敏彦とのセックスに励みだし、主人公は呆然とする。 一通りセックスが終わるとようやく絵里奈の正体について語りだす敏彦。 主人公は「絵里奈はビッチだったのか?」と聞くが敏彦曰く実際には「愛してると言われれば複数人相手だろうが躊躇いなく受け入れるという精神病質者」であると明かされる。 なんでも厳格な家庭環境のせいでその様になったらしく、この事を知っていた敏彦は婚約者としての立場を利用して治療の一環で普通の人らしく大学に行かせる様に仕向けていたのに 主人公が迂闊にも絵里奈に愛してると言って駆け落ちに誘った為に御破算になってしまったのだった。 愛してると言ってしまった以上絵里奈は主人公に依存状態になっているので、これを解消するには主人公側から絵里奈を拒絶する必要があった為、 主人公が絵里奈に愛想を尽かす為に敏彦は正体を知る様に仕向けていたのだった。 (ここから先の選択肢で5つのエンディングに分岐) ルート1 絵里奈の正体を知った主人公は最後に出会いの地である大学に2人で赴きセックス。 絵里奈を手放す事にした主人公は絵里奈に分かれを告げる。 その後絵里奈は敏彦の下に戻ったらしいがどうなったのかは分からず終了。 ルート2 やはり絵里奈を手放す事が出来ない主人公は2人でこれからも頑張ろうと言った所で打ち切りエンド。 ルート3 愛してるとさえ言ってれば絵里奈は自分の所に居てくれるんじゃね? と開き直った主人公は絵里奈にライブカメラ越しに売春させるという変態プレイで生活費を稼がせる様になる。 これを知って激怒した敏彦が家に殴り込んで来て終了。 ルート4 俺だけに夢中にさせてやるぜ! とばかりに主人公は絵里奈を開発しハメ撮り映像を敏彦に送り付ける。 すっかり主人公に夢中になった絵里奈の映像を見ながら敏彦が幼馴染として昔の回想をして涙しながら終了。 ルート5 逆に敏彦がルート4と同じ様に身体で分からせてやるモードに突入して終了。 ○問題点 何を狙ってるのか意味不明 ロープライスの抜きゲーらしからぬ変化球を駆使しすぎているせいでコンセプトは愚か普通の話としても何が焦点なのかサッパリ分からなくなっている。 色々とおかしな点はあるが最高にマズイのがヒロインの頭が狂ってるという誰得設定だろう。 +... 主人公についてきてるのも間男役と絡むのも全部頭がイカれてる事の延長線上でしかないのでNTR物に必須であろう主人公への恋慕や 間男と絡む事への後ろめたさ、心情の移ろい等が微塵も存在していない。 単に好きと言えばホイホイ付いてきて股を開くだけのBOTである。 百歩譲ってヒロインが病気の為に寝るという設定にするにしても、身体が男を求めてしまうので心に反して寝てしまう と言った塩梅であればまだ擁護も可能だろうし 主人公夫婦が金に困って仕方なくヒロインが身を売る・・・という話でも良かったと思うのだが。 また単純な話として整合性やジャンルの定義云々を抜きにしてもヒロインの頭がクルクルパーなどという設定自体気持ち良い物では無いだろう。 少なくともテーマを絞って抜きに徹するロープライスゲーでやる事ではない。 テーマと言えば「寝取られ妻」というタイトルではあるが、実際には主人公が勝手に妻だと思ってるだけのタイトル詐欺なのもどうしたものか。 間男以外全員頭クルクルパー このゲームにおいては設定があるヒロイン以外も皆頭がイカれてる。 間男役の敏彦はマシではあるが。 まずヒロインが狂ってるのは愛情云々という点だという設定だが、実際には日常生活や通常の倫理感すらもぶっ壊れている。 ・仮にも駆け落ち中なのに婚約者からの宅配便を受け取って平気な上に何故連絡を取って悪いのかも分からない。 +... +... ・それはお風呂だから当然よねえ(笑) +... ・実質売春 借金に何の抵抗も無いどころか親切だと思ってる +... +... また意図的な人選なのかは不明だが不気味な位声が幼く、人妻キャラとはとても思えない。 これも含めて狂ってる事の演出の可能性も捨てきれない所ではあるが・・・。 これに負けず劣らずイカれてるのが主人公である。 まず事の発端であるヒロインへの告白と駆け落ちの動機からして「彼女には許嫁がいて、そいつがいけ好かないから」である。 お前が寝取り体質でどうするんだ。 +... なるべく目を離したくないというもっともらしい理由で在宅ワークに固執しているがそれでは成立せず破綻すると分かって居ても改善する気はゼロである。 その結果毎月ヒロインを売りに出す事になり、その度に「来月はこんな事させない!」と決意するが数クリックで飛ぶ翌月になっても特に何も変えず同じことを繰り返してる。 敏彦にド正論でその事を批判されるが、逆に敏彦の陰謀による物だと言い出したりと非常に香ばしい。 +... +... その癖に土下座まがいの事をしてまで対価無しで借金出来るように敏彦に縋ったりと男気の欠片も無い。 +... またヒロインが毎度ノリノリで売春に応じているにも関わらず「本当は嫌なんだけど自分の為に隠してるだけだ」と都合の良い解釈で片付けてしまう。 一方でまだマシなのが敏彦である。 確かにヒロインの正体を主人公に伝える手段が回りくど過ぎたりと彼も変な所はあるが、全体的には正論で主人公を批判する側である。 またヒロインがイカれてる事を承知の上で幼少期から変わらず愛してるという筋の通った男でもある。 +... 基本的にヒロインと主人公が不幸にならない方向になるように動いてる事もあり真人間らしい。 終盤でヒロインの正体を主人公に明かした際は自分を信じてヒロインと決別してくれれば借金を帳消しにする上に復学にも手を貸すとまで言い放つナイスガイなのだ。 というか結果的にはある意味彼こそがNTRの被害者とも言える。 ○まとめ 前作の「最愛彼女」は変化球でNTRと呼べるか際どいラインを攻めすぎてはいたものの、物語としては成立しており それも専門ブランドならではの試行錯誤の為に生まれたのであろうなという「ヤル気は感じられる」一作であったのに対して 本作はただひたすらにコンセプト無視、意味不明な展開、不快な登場人物、誰得設定を詰め込んだだけのクソゲーである。 ちなみにシナリオライターの中森南文里氏は2017年次点作の「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!2」でもシナリオライターとして参加しているので コンセプト無視等の傾向もさもありなんと言った所なのだろうか?
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(スレ23より) 924 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 12 06 40 ID 4wq1Ekl2] 頻繁に親子で我が家へ遊びに来る奥の自宅に初めて招かれてお邪魔した。 さすがに床は片付いていたが台所は洗い物の山少し異臭・・・ 暑かったので3回促したら渋々エアコンを入れてくれたが全然冷えずカビ臭い。 出された麦茶はかすかに色が付いてる2番茶w 出された袋菓子も湿気てる。 手土産のシュークリームは冷蔵庫にしまったまま出てこない。 そりゃ我が家の方が居心地良い罠って思ったよ。 30分ほどで帰りました。 今後、付き合い方を変えなければorz 925 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 12 55 34 ID CEE8jYrb] 確かにちょっとあれ。。。なお宅かもしれないけど。 お呼ばれされたお宅で、エアコンを再三催促するって・・・ 926 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 11 51 ID YjoXqaWB] 914ですが、食器や文房具(やや高額なもの)、CD、スリッパやタオルですね。 その人の家に、我が家やよそのお宅にあったものがあったので聞いたら、 「うちにあったほうが良いと思ってもらってきてあげた」 とのこと。 うちの食器やCDもあったので取り返したら、 「こちらは奉仕の精神で、もらってあげているのに、がめつい。空気読みなよ」 と言われて、以後FOです。 927 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 13 16 58 ID 1zE15xfJ] 924の家に来ると、 「エアコンつけて、つけて、つけてぇぇぇ」 といつも言われてるから、やり返してみたとか。 ところで、そういうお宅に、何て言って招いてもらったのかが知りたい。 それから頻繁に遊びに来るときには、手土産は持ってくるの? 928 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 28 29 ID GXMdwUI7] 926 すげー、ドロボーじゃない。 929 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 33 25 ID dGnJuVr8] 926 うわああ、完全に頭おかしいねそりゃ。 縁切れてよかったねー。 930 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 13 33 45 ID CEE8jYrb] 926 ドロボーというより、本当に少しおかしい人なのでは... 931 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 14 19 54 ID lYDA7noF] もらって!と言われたわけでもないのに、奉仕の精神!? 932 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 14 48 18 ID /7u48ezf] 926 >がめつい。空気読みなよ この一言が特にすごい。泥棒にがめついと言われるとはw 完全におかしい人だ。 933 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 14 49 25 ID yFzv1aJG] 空気を読まずに警察を呼べ。 938 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 16 06 32 ID f+UzLEP/] 924 とりあえず人様の家なんで、エアコンは我慢すべきかと。 939 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 16 52 56 ID CrJdILzD] つか、異臭なら「ねえ、ちょっと窓開けていい?」の方が効果的な気が。 エアコン催促よりも言いやすいし 940 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 17 03 25 ID 6ohk/bao] 私も、いつも来るばかりの人に何て言って家に招待したもらえたのかが気になる。 941 名前:924 [2005/07/11(月) 18 10 03 ID 4wq1Ekl2] 925 936 買い物に行って偶然会ったので帰りに寄ったのですが、それまで締め切ってたみたいで湿気と熱気がムンムンで 外の倍くらいの不快指数だったんです。 座って1~2分で私も子供も奥の子供もじっとりとした汗が・・・ 私「汗が引くまででいいからエアコンつけようよ。」 奥「ごめん、窓開けて我慢して。」ここで二番麦茶登場。 1~2分我慢したが風が全く入ってこない。更に汗が滴り落ちる。 私「お願いだからつけてよ、子供も汗が引かないのよ。」 奥「今年はまだ一度も使ってないのよね。」ここで湿気た袋菓子登場。 タオルで汗を拭きながら奥の旦那実家への愚痴を聞かされてる最中に汗がテーブルに落ちた。 「ごめん、暑くて耐えられないから帰る。」 ここで渋々エアコンを入れてくれたのですが、匂いに耐え切れず用事を思い出した振りをして帰りました。 927 たまに封をあけて洗濯ばさみで止めた湿気てない袋菓子を持ってくる。 私も子供も封を開けて無くても袋菓子は好きではないので食べない。 940 買い物中偶然会って、「いつも行ってばかりで悪いから帰りに寄っていく?」 「そう、じゃあお土産かって行くからお茶でも飲ませてね。」って感じです。 942 名前:924 [2005/07/11(月) 18 14 06 ID 4wq1Ekl2] 意地になってるわけではありませんが、 袋菓子の湿気の件、好きではなくても出されれば一口や二口は摘みますよ。 夕飯の仕上げしなくちゃ。 943 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 18 18 38 ID Rd0GSC1+] なんつーか・・・相手のことを下に見てる感がムンムン。 相手は好意で呼んでくれたというのに・・。 シュークリームの件は「さっそく食べようよ!」ってサラっといえばいいじゃん。 945 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 18 19 31 ID m5PB9SVt] エアコンつけなきゃ熱中症で死にかけるぐらい暑い家はあるよ。 …うちがそうだけど。 神奈川だけど、今日は室温が38度でした。 特に、エアコン慣れしてると汗が滝のように流れ、ほんとに危ない。 でも、友達…ましてや初めてなら、汗だらだら垂らしてる時点でエアコン入れるよね…。 さすがセコケチ 946 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 18 28 47 ID vRrncdXn] 暑い、寒い、とお客さんを気遣うよりは さらっと「暑いからエアコン付けて」とか「冷えすぎだから止めて貰える?」 って言って貰った方が有難いな。 セコケッチンで付けない人は、悪いけど私も見下すと思うよ、、、、 947 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 18 44 27 ID LnPFiveF] 941 そのくらい性質の悪いセコケチさんって、その後は縁が切れてもいいと 思ってるんだろうか?なんかこう、気持ちが汲めないよね。 952 名前:名無しの心子知らず [2005/07/11(月) 19 00 50 ID 6VC0RfYK] 普通に暑い日にエアコンつけてない家って関東にあるの? 乳幼児は体に悪いとはいえ、軽くドライくらいはつけるでしょ?うちわで扇げば涼しい程度に・・・。 別に家はそれほど裕福な家庭ではないけど、催促しなきゃついてないって言うのがよくわからない・・・。 953 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 19 05 01 ID ahKAoeF3] 自分だけしか家にいないときに我慢するのは節約。 お客さんにまで我慢を強いるのはセコケチ。 ってことでつね。 954 名前:sage [2005/07/11(月) 19 07 34 ID nA23MyPB] 952 エアコン嫌いって人いるからね。 頭痛とか手足が冷たいとか言って、ものすごく 暑いのに付けないんだ。今月その家で集まりがあって うちの主人が「あ~この時期にあそこの家はキツ~っ!」 って今から言ってる。 964 名前:924 [2005/07/11(月) 22 16 05 ID X+Ya3SIU] ご意見は人それぞれで当然ですので・・・ 我が家では室温30度超えたらエアコン入れると決めてますので、 話題の奥とは考え方が違うと思って切ることに決めました。 私は細身ですが主人がデブとマッチョの境目で暑がりw 冬は室温ヒトケタにならなければ子供が居ない限り暖房は入れません。 現在は室温27度、部屋着の調整をしてドライすらも入れてません。 実は私がセコケチ? 965 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 22 20 33 ID HLV7EQO5] 964 どっちがセコケチかどうかじゃないと思う。 しかしアレだけのレスがありながら、切る事に決めましたって・・・。 エアコン要求も然り、場の空気が読めないんだろうね。 966 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/11(月) 22 51 57 ID heWn5sn2] 私は 941(= 924)の「ごめん、暑くて耐えられないから帰る。」 に引きましたよ。 どうやら何でもズバズバ言い合えるほど仲良し・・・ というわけではないみたいだし。 最初から急用思い出したふりすればいいじゃない。 976 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 00 24 17 ID zcqoozSo] 凄く古いエアコンだったりして。冷えない=フロン切れ、もしくは 稼働するまでに時間がかかるおばあちゃんの様なエアコン。 冬はエアコン以外の暖房器具使ってるとか。 でも自分すっごい汗ッかきなんで、三度目には切れ気味で 帰ると言いたくなるのも分かる・・・サウナ状態の部屋で我慢大会しながら お茶飲みたくないもん・・・ 978 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 00 42 39 ID iPFz4+uC] >976 まあそれにしても、「暑くて耐えられないから」なんて正直にいわず、 適当な理由つけて帰ればよかっただけのことで。 頭使ってないのは三度エアコン催促もいっしょだなw 979 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 00 50 40 ID zcqoozSo] 978 「帰り」は適当な理由つけてるみたいよ?>用事を思いだしたフリ 986 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 07 49 22 ID ccvwIZPE] 924は デ ブ なんだろ。要するに。 988 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 08 29 25 ID 9vvvBywF] うちも新聞とらないしクーラーつけると頭痛くなるから極力しない。 ゲームは子が寝た後にしてるけど、ドキュと思われてたのか・・・ 990 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 09 04 38 ID bm1oUzHU] エアコンは付けなくても平気だったり、付けると具合が悪くなるなら 付けなくても全然変じゃないけど、ガマンして付けないならセコケチでしょう。 「私は付けると具合が悪くなるから!セコケチじゃないから!」と 鼻息荒くする必要は無いと思うけど・・。 新聞は「ネットでニュース読めるから」って人もいるけど ローカルな話題とか全く知らない人がいて(新聞取ってるだけで読んでない人もだけど) 節約も良いけど、何だかなあと思う事はある。 991 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 09 41 39 ID oTaLtJxE] 節約の為だけに新聞を取っていないと決め付けている件について。 993 名前:名無しの心子知らずmailto sage[2005/07/12(火) 09 59 19 ID bm1oUzHU] 991 だーかーらーエアコンの件でも書いてるじゃない、 節約とかセコでお金を掛けてないわけじゃないんなら気にする必要ないでしょ。 決めつけてるように読めるとしたら被害者意識が強すぎる希ガス。 994 名前:名無しの心子知らず [2005/07/12(火) 10 13 26 ID Fhg/H5RG] 他人に迷惑をかけているわけでもないのに、そこまで感情移入できる なんて、立派なトメになりそう。 そうですねって答えるまで「だーかーらー」とか言われるんだろうな。
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「ミィ♪」 1匹の子タブンネがガラス越しに外の様子を見ている。 天気は雨。ガラスを流れていく水滴をおもしろそうに目で追いかけていく。 「タブンネ、外で遊ぶ時間だ」 後ろから声をかけられて子タブンネが振り向くと、いつもと同じ白い服を着た男が立っていた。 子タブンネは「ミィ♪」と笑顔になって男のもとへ歩いていく。嬉しい気持ちを表すかのように、尻尾がパタパタと揺れる。 1日中、せまい部屋の中に入れられている子タブンネにとって、外で遊ぶことはご飯の次に楽しみな時間なのだ。 「ミィッ♪ ミィッ♪」 激しい雨の中を子タブンネが楽しそうに走り回る。 固くて灰色の地面に溜まった水を手ですくったり、水たまりの中で転がったり。 せまい部屋の中では過ごす間は感じることのない楽しさ。 子タブンネは雨の日が大好きだ。 「ミィ……?」 しばらくして遊び疲れた子タブンネはふと気づく。 いつもなら傘をさして見守っているはずの男の姿がどこにも見当たらない。 不安になった子タブンネは、キョロキョロとあたりを見回し、「ミィッ! ミィッ!」と大きな声で男を呼ぶ。 しかし、どれだけ待っても男が姿を見せる様子がない。 子タブンネは男を探すために、激しい雨の中を歩きはじめた。 ……いったいどれだけ歩いたのか。子タブンネにはわからない。 ふわふわの尻尾は水を吸ってぐっしょりと重く濡れている。 体をプルプルと振って水を飛ばしても、雨の中ではすぐに濡れてしまう。 固い地面を歩き続けた小さな足には疲労がたまり、足の裏にはズキズキと鈍い痛みがある。 それでも男を見つけるために、子タブンネは歩き続けなくてはならない。 子タブンネ1匹だけでは何もできないのだから。 ……とても寒い。力尽きた子タブンネの頭にあるのはその言葉だけだ。 雨は子タブンネから体温を奪い、小さな体から容赦なく体力を奪っていった。 薄れていく意識の中で子タブンネは思う。 雨なんて降らなければいいのに。 子タブンネが次に目を覚ましたのはいつもの部屋の中だった。ふかふかの毛布に包まれていて、とても温かい。 自分の体を包んでいた毛布から出てくると、部屋の中にはいつもと同じ白い服を着た男がいた。 子タブンネは男のもとに歩いていき、男の足にひしっと抱きついて再会できたことを喜ぶ。 男は子タブンネの体を優しくなでながら尋ねてくる。 「タブンネ、雨の日は好きかい?」 子タブンネは首を振る。 寒くて寂しいのは嫌だった。 子タブンネは雨の日が大嫌いになった。 「ミィ♪」 子タブンネがガラス越しに外の様子を見ている。 天気は晴れ。ガラス越しでもわかるほど外は暖かいようだ。 「タブンネ、外で遊ぶ時間だ」 白い服を着た男が子タブンネに声をかける。 子タブンネは嬉しそうに男のもとへ歩いていく。 せまい部屋の中はとても退屈だ。広くて自由な外に出ることはとても楽しい。 それに雨の日と違って、晴れている日は寒くない。 子タブンネは晴れの日が大好きなのだ。 「ミ゛ィィィィ……」 強烈な日差しが子タブンネの体を焼く。 固くて灰色――コンクリートの床や壁は熱を蓄え、子タブンネの体に熱を加えていく。 上下から襲ってくる熱量に、子タブンネの体は熱を逃がすことを許されない。 ヒィヒィと息を吐く子タブンネの口から粘度の高いよだれが流れる。 よだれはコンクリートの床に落ちると、シュワッと音を立てて蒸発する。 タブンネという種族のもつ高い耐久性が、子タブンネを苦しみを長引かせていく。 体が焼け、水分を奪われていきながら子タブンネは意識を失った。 子タブンネが次に目を覚ましたのはいつもの部屋の中だった。 空調が効いた部屋はとても快適で、部屋の外の熱気とは無縁の環境だった。 目を覚ました子タブンネに、いつもの白い服―白衣をきた男が尋ねる。 「タブンネ、晴れの日は好きかい?」 子タブンネは首を振る。 とにかく暑くて苦しかった。 子タブンネは晴れの日が大嫌いになった。 子タブンネはあられの降る日が大好きだった。 いつものように白衣の男に連れられて、外に遊びに行った。 そして、目を覚ました子タブンネはあられの降る日が大嫌いになった。 子タブンネは砂嵐の日はもともと好きではなかった。 男に言われ渋々遊びに行き、子タブンネは砂嵐の日が大嫌いになった。 「ミィ……」 せまい部屋の中、子タブンネは壁に寄りかかりながらガラス越しに部屋の外を見ていた。 部屋の外は激しい雨のようで、ガラスに雨粒が次から次へとたたきつけられていく。 「タブンネ、外に遊びに行くかい?」 白衣の男にそう尋ねられ、子タブンネは首を横に振る。 部屋の外に出ればひどい目に遭う。それなら、退屈であっても部屋の中で過ごす方がよかった。 子タブンネは「ミィ……」と鳴いて、外には遊びに行きたくないと伝える。 「そっか、タブンネは部屋の中の方がいいんだね?」 自分の気持ちを理解してもらえたことで、子タブンネが笑顔になる。 尻尾を振りながら「ミィミィ♪」と鳴いて、男に感謝の気持ちをアピールする。 男は子タブンネを優しくなでながら、ドアの方に向かって「入ってきていいよ」と声をかける。 ガチャリとドアが開くと、部屋の中に次々と人間が入ってくる。彼らの手には様々なものが握られている。 何かが入っていそうな箱。トゲのついた金属の棒のようなもの。変な色をした水が入った容器。 入ってきた人間も、彼らが手に持っているものも、どれもが子タブンネには見覚えがなかった。 不思議そうな顔をする子タブンネに男が説明する。 「みんなで今からこの部屋で遊ぶんだよ」 子タブンネは大喜びした。 澪簿のない人たちが持っている見覚えのないものは、自分の知らないおもちゃか何かなのだ。 これから、たくさんの人たちに遊んでもらえる。子タブンネはそう考えた。 笑顔で手を振りながら、部屋に入ってきた人たちのもとへ歩いていく子タブンネ。 「たくさん遊んでね」と、ペコリと頭を下げる。 「ああ、嫌になるくらい遊んでやるよ」 次の瞬間、子タブンネの頭に強い衝撃が走った。 立っていることができなくなり、子タブンネは床の上にへたり込む。 何が起こったのかわからない子タブンネであったが、床の上に赤い液体が広がっていくのが見えた。 そして、それをきっかけに、激しい痛みが子タブンネの頭を襲い始めた。 「ミッ!? ミミィッ!? ミィィッ!?」 次々と襲いくる状況に、子タブンネは完全に混乱していた。 顔を上げて、救いを求めるように白衣の男の顔を見る。 「言ったじゃないか。みんなで今から遊ぶって。みんな、タブンネで遊びたいってさ」 子タブンネの首にひもが巻きつけられ、強い力で後ろに引っ張られる。 子タブンネの視界に映るのは、ニヤニヤと笑う人間たちと、その手に握られたいくつもの道具。 これから何が起こるのかを理解した子タブンネに、容赦のない暴行が加えられていく。 子タブンネの悲鳴を聞きながら、おもしろそうに男がつぶやく。 「部屋の外に遊びに行きたいって言ってればこういうことにはならなかったのに。 部屋の中がいいっていったのはタブンネ自身なんだから、しょうがないよな」 「…………」 うつろな目をした子タブンネが壁に寄りかかっている。 苦痛を与えられるだけの毎日。楽しみも、安らぎも、何もかも奪われてしまった。 ふわふわの尻尾も、カールした触覚も、ハート形の肉球も、何もかもなくなってしまった。 子タブンネには何も残されていなかった。 そんな子タブンネのもとに、白衣を着た男がやって来る。子タブンネは男の方を見ることもしない。 男がやって来たということは、これから苦しい時間が始まるのだから。 男の方を見ないのは、子タブンネにできるかすかな抵抗だった。 「タブンネ、『本当の外』に出てみたくはないか?」 その言葉に子タブンネの顔が上がる。『本当の外』という言葉に反応したのだ。 男の顔に視線を向けて、子タブンネは男の次の言葉を待つ。 「今までタブンネがいたところは実験施設の中なんだよ。 雨も晴れもあられも砂嵐も、どれもポケモンの技で作り出したものだったんだ。 施設の中じゃなく『本当の外』なら、あんなにひどい天気になることはないんだよ。 タブンネが望むのなら、そこに連れて行ってあげてもいいけど。……どうする?」 子タブンネは間を置かずにうなずいた。 ひどい天気でもなく、苦痛を味わうでもない、未知の世界に行ける。 それは子タブンネにとって、あまりにも魅力的な提案だった。 「よしわかった。こっちにおいで」 男にそう言われ、子タブンネは立ち上がる。 まともに力が入らないうえに、激しい痛みが全身を襲う。 それでも子タブンネは立ち上がり、不安定な足取りで1歩1歩進んでいく。 今の状態から抜け出せるという希望を目指して。 「ミィ……!」 外に出た子タブンネは今までにないものを感じていた。 ぽかぽかとあたたかい光。風に乗って運ばれてくる土や草のにおい。施設の中とは違うやわらかい地面。 それは子タブンネが初めて見る『本当の外』の世界。 「ミィ……♪ ミィ……♪」 ヨタヨタと子タブンネは歩き出す。 何もかもが新鮮で、何もかもが楽しい。世界は素敵なものだったのだ。 子タブンネは、生きることの素晴らしさをかみしめる。 子タブンネは近くの草むらへと足を向ける。草むらがかすかに揺れる。 「ミ……ッ!?」 草むらが揺れたと思ったそのとき、子タブンネは地面に押さえつけられていた。 次の瞬間、子タブンネの首が圧迫されて呼吸ができなくなる。 徐々に意識が薄れていき、体からゆっくりと力が抜けていく。 「あーあ。無警戒に草むらに近づくから」 白衣を着た男は楽しげな様子でつぶやく。 男の目の前では、肉食ポケモンにのどを噛みつかれ、力尽きた子タブンネの姿がある。 やがて、肉食ポケモンは子タブンネの体を離すと、小さな体をガツガツと食べ始める。 「施設の中で生きることを選んでいたら、こういうことにはならなかったのに。 次からはよく考えて……って、もう聞こえてないか」 男の目の前には、子タブンネを貪る肉食ポケモンと、お腹の中が空っぽになった子タブンネ。 ため息をついて立ち上がり、「次のタブンネを用意しないと」と言って施設の中に入っていった。 その光景を、かすかに残った意識で子タブンネは見つめていた。 タブンネの持つ生命力が、子タブンネが簡単に死ぬことを許さない。 生きながらにして自分の体が食べられていく感覚を子タブンネは味わい続けている。 やがて、肉食ポケモンの牙が子タブンネの頭に食い込んでくる。 目を失って視界がつぶれ、耳を失い音が何も聞こえなくなる。 自分の体を食べられることだけを感じながら、やがて子タブンネの意識は、二度と覚めることのない闇の中へ沈んでいった。 (おしまい) ーーーー 名前 コメント すべてのコメントを見る
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試供品ということで手渡された小さな安物の陶器。 中に入っていた琥珀色の液体を一気に空にしたところで余所見をしていたミレイがわたしに気づいた。 依頼の盗人探しでもしていたのか、普段は摂氏零度の視線を極低温まで引き下げてあたりに散らしていたミレイの瞳の温度が摂氏零度よりほんの少しだけ高くなる。 「お前さ。なんだ、子宝でも欲しいわけだ」 お前、と来た。あなた、ではなく。ちょっとフレンドリーさが増したようで嬉しくなってしまう。 「ただのお茶ですよね?」 「馬鹿。媚薬だよ」 「え゛っ」 慌てて屋台の店主の顔を見ると、底意地の悪い楽しげな笑顔でサムズアップを繰り出してきた。我が祖国とゲートが繋がったことでそういった仕草もこの国の若者の間では広まっているそうな。 突っ立ったまま腕組みをしているミレイに視線を戻すと、こちらの瞳もさして変わらない感情で彩られている。もっとも表情にこそ変化はないが。 「安心しなよ。嘘も言ってないが真実でもない。 ズーズという木の根っこを煎じたものなんだがな。この国じゃ汎く滋養強壮にと飲まれているものだ。薬師じゃないがこういうものに私は鼻が利いてね。 保証するよ。健康には間違いなく良いものだ」 言われてみれば何やら身体が火照ってくる気がする。 媚薬と言われれば淫猥な響きだが、薬用茶と言われれば身体を温めているに過ぎないのかもしれない。新陳代謝がなんとやら、という代物だろう。 漢方薬に似たようなものと思えば確かにそんな味がしたようにも感じる。 鯨都のお祭り。海上の屋台を飛ばし飛ばしながらひとまず巡り、さて次は海中のと進もうとした直前に出くわした屋台の前にわたしたちはいる。 得体の知れない乾物をこれでもかとぶら下げた、怪しげという表現の一言で括るにはあまりに淡白に過ぎる屋台である。 もはやこれは異国情緒という段階を超えているのではあるまいか。干からびた生物や枯れ木の枝で覆われたその屋台は邪悪な呪術師の住まいと勘違いさせるほどだ。 カウンターの奥に腰を落ち着ける、アロハシャツ(比喩ではない。一目見るだけでもはや間違いなく地球の既製品であると確信させる)に身を包んだ陽気そうな鱗人の青年がいなければ、だが。 「私の見立てじゃ、あなたはこんな怪力乱神どもに頼るほどくたびれているようには思えないけどな。 土産物にしても勧めないぞ。だいたいは効き目があるんだか知れない、素性の知れない代物ばかりだ」 商売の邪魔だと憤激する店主の青年を私は案内役だとミレイが睨みつける。 だがこれがどうして盛大にやっているらしい。草の根っこだの、木の皮だのに混じって思わずうっと来るようなグロテスクな品物たちの品揃えが不並びなのは、つまり売れているということなのだろう。 「ええと……これが、何?」 瓶詰めされた液体の中に何やら怪しげな黒い物体が浮かんでいる。薄い褐色に染まった粘性の液体の中で、謎の物体の表面に生えた細かな産毛が気泡を産んでいた。 「ウミサソリの天日干し。の、ハサミと尻尾だけ切りそろえて油に浸したもの。 こっちは誇張抜きに媚薬。と、言うことになっているけど。私の体験談によるところさして効果はなかったと思う。多分ね」 ちらりとミレイを振り返ると明らかに胡乱げな目つきになっていた。とろりと蕩けて、辛うじて鉄面皮だけ保って、楽しんでいるわたしに半分呆れ返っている。 ………面白くなってきた。次々とわたしは聞き出すことにした。 「これは?」 なめし革のような平べったい干し肉。メモ帳のように片隅にパンチ穴を開けられ、金輪を通して纏められている。店棚の目立つところに何束か置いてあった。 「そいつの正体を口にしろと言われれば言うがね。私だってこれでも女なもので、みだりにこんなところで言いたかないんだが。 どうしてもというなら教えるぜ。いきり立つやつさ。さすがに私も口にしたことはない、なるべく口にしたくない」 ミレイの瞳の倦怠が更に悪化し、眠たげな半眼となる。さらにやりきれなさそうな態度となった。 ああ、そういう。なんとやらのなんとかとか。なにがしのなにとか。 無理に詳しく聞き出さないことにしよう。同行人の無用の怒りを買う前に。 「こっちは?」 何本か軒先に吊ってある枯れ枝の束。葉も全て抜け落ちたその枝は地面に転がっていればただの朽ちた枝木にしか見えないだろう。 「モー・ウアの枝。薬屋に並んでるものだから雄の枯れ枝だな」 「雄?」 「モー・ウアには雌雄があるんだよ。木だけどな。 ここから少し北に行ったあたりの汽水域に唸るほど生えてるんだ。通称、惑い森」 「そんなに入り組んでいるんですか」 「それだけの林ならこのミズハミシマ諸島の山間にはたくさんあるよ。 なら何故そう言われるかというと、こいつら歩くんだ。つがいを求めて樹人ばりに。もっとも、2日とか3日をかけてのんびりとだがな。 印をつけても数日後には別の風景になってしまってるんで、てんで役に立たない。なら地面に印を残そうとすれば、これも汽水域だから押し寄せる海水が全部押し流してしまう。 モー・ウアの林を抜けたけりゃ精霊の力を借りるか、夜空に浮かぶ星でも眺めて真っ直ぐ突っ切らなきゃならない。だから惑い森」 脱線したが、とミレイが語る。 「で、モー・ウアの比較的活発に動く方、つまり雄の方の枝には薬効があるとされている」 「どういう効き目なんですか」 「この店に並んでるものなんてどれも同じようなものばかりだよ」 つまりは媚薬や精力剤の類か。 なんともありがたい話だ。エロスのためならば我らは種族の垣根を超えて硬い結束を誓えると見える。一周回って土産物としては逆に面白いかもしれない。 「一般的には煎じて茶にしたり、酒に浸し成分を抽出したりして飲む。 味は苦味の強い、いかにも薬といったものだ。で、実際に効くのかどうかというと」 「というと?」 「個人的な感想だが、さっぱりだ。男が飲めばまた違った効果があるのかもしれない」 「なんだか適当なものばかりですね」 「違いないね。だがどこだってこの手のものはそういう適当さも含めて売りだろ」 我が祖国でも、マムシだとか、スッポンだとか。 詳しく調べたことも無いので本当に効き目あらかたな代物なのか分かったものじゃない。そもそもお世話になるような状況に陥った例がない。 「なんだか身体に悪そうなものまでずらずら並んでるけれど、この国の医術はなんて言ってるんです。こういうもののこと」 「…………ううん。何から話せばいいかな」 率直に述べたわたしの感想を聞いて、ミレイが腕を組んだ。左手で右肘を支え、握った人差し指と親指を己の顎の先にやって頭を支える。悩む姿勢を取った。 「この国の医療というものはね、ふたつの流派が拮抗してせめぎ合ってるんだ。 ひとつはこの国の礎となった竜人がもともと持っていた伝統的なもの。 ひとつは延の国から流れ込んだ、食事を中心にした療法だ。どっちが定かなものなのかは知れないが、そういうことになっている」 滔々と解説を続けるミレイの表情は、口ぶりに反して浮かないものだ。顔の形こそ歪めたりしないが、瞳がそれとなく語っている。 あまり面白くはない話らしい。視線は薬屋の品物に注がれているが、見ているものは過去の追憶のようだった。 「ここの怪力乱神どもは延の国から来た御業によるものだな。 で、どちらにも権威のある薬師とやらが昔から一定数いるんだが、これがまた双方が双方とも蛇蝎のように嫌っている。商売敵だからな、当然かも知れないが。 毎度懲りずに口汚く罵り合っていらっしゃるよ。一度この騒動に巻き込まれたことがあるが、ひどいものだった。思い出したくもないね。 こんな調子なものだから、毒にも薬にもならないようなものにはまるで目を向けられない。結果、問題が広まってから重い腰を上げると。そういうことさ」 「広まってから、ですか」 「あなたの世界では大昔には水銀が不老不死の薬として飲まれていたらしいな。それと似たようなことが起きかけたことも一度ある」 困ったもんだとミレイは肩をすくめた。 何やら国の生々しい現状を聞かされてしまった。我が祖国でも医療関係で似たような話は耳にする。派閥争いで患者をたらい回しとか、そういうろくでもない話。 嗚呼、土地を違えど廻る負のスパイラル。素晴らしきエロスの力のように、人類みな兄弟ということで一致団結できないものか。 ……ようやくそこで店主の鱗人からの射殺すような視線に気がついた。 店先で冷やかしが得体の知れない話を延々続けていればさぞかし営業妨害だったろう。ミレイは素知らぬ顔だがわたしは気が気ではない。 ミレイに言ってそれとなく手頃なものを詫びを兼ねて見繕ってもらう。渋々と言った様子だったが引き受けると、唐辛子と赤いパプリカを折衷したような見た目の真っ赤な小粒の木の実を彼女は選び取った。 露骨に態度を変えた店主に小銭を渡して屋台を後にする。現金なものだ。 「ところで、これは?」 わたしの手元に水を通さない不思議な包み紙を預けるとミレイが先立って歩き出す。 「ベニカンラの実。あの中では私が効き目を保証する数少ない薬。 効能は……さて、いつか男が出来たら使ってみるといい。自分が使っても相手に使っても効能あり」 となると、だいぶ先の話になりそうだ。 そもそもこの品物を地球に持ち帰ることが出来るのかどうか分からない。持ち帰れなかった場合はきっと無駄にしてしまうだろう。 次なる祭りの舞台、海中へ続く桟橋へ歩を進めるべく私の前を行く小さな影に言ってみた。出来心で。 「使う相手が見つからなかったら、ミレイに使ってみましょうか」 人混みの中で立ち止まったミレイが錆びた歯車が回るようにゆっくりと振り返る。 瞳が先程の胡乱げな感情を更に煮詰めた色になっていた。来た道を足早に戻り、わたしの前までやってくる。 たどり着くなりわたしの胸元に細い人差し指をごつんと突き立て、藍色の瞳孔でわたしの顔をじろりと見上げた。 「先に言っておく。いいか、私はその気になったなら男も女も関係なく寝るからな。 お前が胸にぶら下げてる、ばかでかい水風船2つをどうすればいいかなんていくらでも知ってる。あんまり思わせぶりな冗談をぺらぺら喋ってたら、嘘から出た真にしちまうぞ」 話は終わりだとばかりにふんと鼻息を荒くつくと、くるりと踵を返して私の案内を再開する。 「何をしている」と声をかけられて我に返るまで、しばらくわたしはその細い背中を視線で追いかけながら呆けていた。 あー。びっくりした。 邪悪な干物屋台面白い。効くかなどうかなという異世界ならではの生物の干物は祭りの高揚する情緒も伺え説明もテンポがいい -- (名無しさん) 2016-10-20 07 05 00 異世界は媚薬とかそっち方面の薬が多いんだろうかというのはさておきミレイさん実践派なのか -- (名無しさん) 2016-10-22 00 36 08 話ごとにわたしとミレイの距離感が変化していくのが楽しい。薬には一家言ありのミレイだ -- (名無しさん) 2016-10-24 18 42 42 名前 コメント すべてのコメントを見る
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[名前]花々迫 虎一(ハナガサコ タイチ) [バース]β [学年]2-1 [部活]演劇部 [委員会]視聴覚委員 [性格]しッかり者で時々おッちょこちょい 、人思いで自分より他人を思う 、いけないと思ッたことは例え上の人でもしッかりと注意する 、非常にパニックになりやすくてパニックになると語彙力が下がる 、結構恥ずかしがり屋で人前で話すことが苦手 、でもやるときはやる男前 、夢中になると周りが見えなくなり話し掛けても無言 、おかん 、少しSッ気があって意地悪好き 、だからといッて暴力は振るわない 、人に頼られることが好き 、ひとのことをきにしすぎてよく疲れやすい 、好きな人には特別なことをしてあげたくなる 、話すたびに御花が周りに舞うことも…。 [容姿]手入れもなにもしてらしいがサラりとした綺麗な黒髪は肩よりも結構長め 、後ろで結んでおり前髪はかきあげている 、横の髪は肩より少し短く髪量が多く片目が隠れている 、少しつり目の下がりまろ眉 、目の色はエメラルドグリーン 、カラコンではない 、身だしなみは校則を一切反則しておらずキチッとしている 、ピアスなんて論外 、八重歯が吸血鬼のように綺麗で笑ッた時に見えるのが可愛い 、肌は白く体も細身で 、ヒョロッとしていて喧嘩は弱そう 、だが筋肉はわりかしついている 、身長は173 、 [備考]小さい頃からお金には恵まれておらず 、父は家を出て母は病に落ちいッている 、女手一つで育ててくれる母に恩返ししたくて部活もしないでバイトをさせてくれといッたが 、好きなように生きてほしいからと入りたかッた演劇部にいれてもらッた 、母は癌で病院に入院しているので働けず金も政府から貰っている生活 、部活が終わればすぐにバイト 、母にも楽になッてほしいのでバイトしていることは秘密にしているらしい 、 [サンプルボイス]「 、今日和、僕は花々迫 虎一と言います 、以後お見知りおきを、( ニヘ」「ヘブッ 、いててッ今日はつまづく事が多いみたい、…( 苦笑。」「嗚呼ッ 、ロミオどうして貴方はロミオなんだッ 、…どうかな 、演劇部のなかでロミオとジュリエットやるんだけど…どッちも男なんだけどね 、( テレッ 、ニヒッ」「○○さん 、それはよくないです 、校則をちゃんと守ッてもらわないとッ 、…!」」「ぁッ、バレちゃッた 、僕がバイトしていることはどうかッ 、…秘密にしてもらえませんか…?( クッ、」「 、βでも 、発情期ッてくるんですよね ッ、…?( 、トロン」「 、今とても貴方がほしい 、分からない…、でもなんだか 、貴方を見ていると他の人と話してほしくないと思うンです…( 壁ドン 、ジッ [名前]霧雨 アマネ(キリサメ アマネ、) [バース]β [属性]リバ [学年]1年4組 [性格]ナルシストで、自惚れがすんごいでも好きな人は自分より好き、知らない人でも話し掛けられるメンタル鋼、とてもフレンドリーだが巣自分をとても強調してくる、うざッたく嫌われ者でも悲しんだりしない(わざとらしくならするが、)、いざ何かやれと言われると恥ずかしくて固まる恥ずかしがり屋、怒ると態度は一変言葉遣いも荒くなる、先輩にはちゃんと敬語だがうざい、いたずら好きでよく好んでる先生にはちょッかいをだす、とでも心配性で泣いてしまう場面も、やる時はやる人間、 メンタルが強い代わり影で泣く、裏ではとてつもなく努力する努力家、感情がたまに顔に出てしまう、さらッと恥ずかしいことを口にする、嫌いな奴には取り敢えず笑顔向けとけ精神、好きな人には自分から接しに行く、とても寂しがり屋誰かいないと死ぬ、パリピ系は苦手、好きな人への愛情表現が凄い独占欲が人一倍多く酷ければ傷つけてしまう可能性も、ストーカー行為は当たり前、家事はそこそこ出来るが料理洗濯は大の苦手分野、同級生は愉快な仲間たちと呼んでいる、褒められるとすぐ照れる照れ屋さん、謎に老人に好かれる、裏表の対応が全然違う、友達大事傷つけたらぶッ殺、 [部活]無所属 [委員会]無所属 [備考]家がお寺をやッていていわゆるお金持ち、有名なお寺で父が継いでいる、母は無職で下2人の妹を育てるのに必死、神社をおじいちゃんがもッており巫女さんからはいつもチヤホヤされるがあまり神社の人とは関わりたく無い、母が嫌い何時も妹達ばかりに構ッていて母妹が嫌い、おじいちゃんも嫌い、神社お寺を継いでくれと煩いから、父はすき継いでくれなんて言わないし妖怪の事など色々教えてくれたから、 小学校の頃から自分は特別何だと思ッていたのがつかの間小学校の頃にいじめにあい馬鹿にされ裏の自分を隠し表の自分は何を言われても本当の自分じゃないから傷つかなくなッた、それからずっと、自分を隠している。好きになった相手には裏の自分をもろ出すが逆にそれが相手を傷つけてしまってるのではないかと思い相手を心配する。彼氏彼女ができた経験はなくいつも片思いで終わっている。想いを伝えたところで相手はきっと自分のことを気持ち悪いと思うだろうと勝手に思っている。身体中にボディステッチをしている、一度父には反対されたが無視したこれが初めてのわがまま。あまり人にはわがままを言わず育ってきたためあまり自分の意見を言えない。上っ面だけがいい。パフェやクレープなどは好まずあんこや飴もなかや昔ならではの菓子が好き。深爪の自分の爪が嫌い。伸ばそう伸ばそうとしているが気付けば切ってしまう、嫌な事や過去にあったトラウマにそっくりなことが起きると情緒不安定になり物などを散らかしてしまう可能性がある。「素敵」「かっこいい」などは心に響かないが「好き」と言われると相手が自分を好きなんだと勘違いしてしまう。それからストーカー行為が始まる、一度バレリーナをしていて身体は柔らかく運動神経がとても良い、 [容姿]身長176.韓国風センター分けは黒く右の一部が、赤紫ピンクと綺麗なグラデーションになッている、目の色は赤とピンクが混ざりあッた色、眉毛はキリッとしていて、顔立ちは少し子供ッぽくやんちゃそうな顔立ち、キリッとした眉毛に対して目はトロンとした目、裏の顔の時は男らしく色気が出ているが、表顔は目をパッチリと開けていて可愛らしい表情、肌は白く死人のような白さ、痩せ型でヒョロッちい、が運動神経がいいため筋肉は平均くらいついている、顔が小さく小柄なため細く折れるのではくらい、耳に赤のタッセルピアスを両耳につけている、右目の下には黒の糸で縫われたボディステッチの三つ縫われた跡がある、右の太股から膝にかけてボディステッチ、両手に細かくボディステッチされている、他に左の脇腹にも、服装は、白のシャツに、大きめの黒カーディガン、ネクタイは気分次第で付ける、黒のベルトに、赤のチェックパンツ、黒のチョーカー、赤黒の長め靴下、黒のローファー、 [sv]「霧雨 アマネさ、え?かッこいい?、しッてるさ、…何せ天才なのでね、(、ふふッ、決めポーズ)」「聞いてくれるかい、?今日鏡を見たらとてもイケメンな男が写ッていてね、…ン?それは誰かッて?、僕だッたよ、(、ドヤァ、腕組み)」「ァ、先輩今日もかッ子いいですネ、僕の次に、…(、クスッ、ヘラー)」「先生、こんな簡単な問題出して、…僕を舐めてるんですか?、天才ですから、こんなのかんたんですよ、(、全問不正解、ククッ、)」「い、痛い!暴力は良くないぞ君!!(、アウゥ、ズビッ)」「ヘ、ァ、本当に言われるとは、…思ッてなかッたんだッ(、カァ、グゥ)」「、ナァその、…僕にも構ッてくれないか、?寂しいんだが、…(、チラッ、腕グイグイ、チラッ)」「、ごめッ、傷つけたらッ、…キミが好きでたまんないんだッ(、ハァハァ、相手の鼻血ペロ、)」「なんで、俺意外と話すんだよッ、…嫌いになッたの?、俺以外考え無いでよ、イライラしてたまんねぇよ、(、爪ベリッ、)」「、妹?、そんなの居ないよ、…母も居ないよ、(、ケラッ目細め)」「可愛いッ、……ア、何でもないさ、気にしないでおくれ?、(、クスッ頭ポンポン)」 [名前]蝶汐 十々(ちょうせき とと) [年齢]25 [バース]α [教科]技術 [属性]リバ [性格]一言で言うと不思議ちゃん、たまにエセのいろんたなまりはいッてきたりする。生徒、先生には優しいがとても意地悪好きちょッかいをよくだす、熱しやすく冷めやすい。することがもはや子供無邪気で好奇心旺盛。先生という立場を知らない。したいことはなんでもしちゃう自由人、でも気を使うのが上手で結構な心配症、手先が器用でよく刺繍をしたりネイル塗ッたりしてる。心はオネェ。よくナンパ、セクハラをさりげなくしてくる変態先生。生徒は友達先生もともだち。食べること大好き基本嫌いな食べ物はない。弁当は自分で作る。お酒煙草はやッてる。お酒飲ンでも潰れないタイプ。動物好き。 [容姿]横ツーブロの、右かきあげてる。黒と黄色の混ざった髪。所々みつあみしてある。ギザ歯でスプリットタン。舌、唇、右目の下。耳骨部分と、耳たぶ二つ、指、ネイプ、ニップル、ピアスしてる。目には隈、特殊なコンタクトをしていて瞳赤白目の部分は黒のコンタクト、黒紅、黒ネイル、シャツ(黒)に、グレーノぶかぶかトレーナー、黒のダメージジーンズに黒シューズ、背中にタトゥー、肌は色白、キレ長の目、ほとんどない眉毛。 [備考]生まれたときから特殊家庭で、両親は育児放棄好きなことだけして暮らしてた、彼は行き場がなく渋々家を出ては保護施設にはいッた、そこそこ頭はよく高校にも普通に行けた、大学でピアスなど髪の毛に興味を持ち始めあけはじめた、友達がほしくて真似したのもあるが自分に個性が現れたように感じて嬉しくなッた。教師を目指していたがこの容姿じゃ入れんだろうと思ッていたが謎に入れた、だが週に何回か技術の先生と交代して技術の先生をやッている。生徒には真似されたくないのでピアスをとれとは言われてるがいやなのでマスクをしている。それでもバレるチャライ感、元々女も男も好きでどッちも抱けた。正直男のほうがすきかもしれない。保護施設を出て一人暮らしを始めている。あの両親から貰ったのと言えば空手を習わせてくれたことくらいだろう。喧嘩というより運動神経はいいのでバク転とかよくしてる。 [SV]「やホーッ、おいらトトだよー。センセーだよー、(、ケラ、目細ンべ」 「、技術ッていいよねェ、自分のすきなもの作れるもんネーッ、(、くふふッ、にまにま、」 「かッわいいー、ねッ、授業終わッたらオレのとこおいでよ、いいことしてあげる、(、くひひッ、腰擦り、」 「そうだべ、センセー舐めんじゃないよォーセンセーこれでも空手してたんだよー、、(、ふんふんッ、」 「食べ物、?何でも好きよオレ、…、(、ふひッ、ジイィ、」
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員 第2章(1) 「なンだァ、今日も超電磁砲の愛妻弁当かよ」 上条が広げた弁当を見て一方通行はからかうように言った。 青髪ピアスは上条の弁当を見てハンカチを銜えながら涙を流し、 土御門は何故か学園都市に侵入した魔術師に向けるような殺気を放っている。 上条は普段この三人と昼食を共にすることが殆どだ。 そして上条は特に意に介した様子も無く嬉しそうに言った。 「いやー、美琴が毎日弁当を作ってくれるお陰で昼休みに飢えることもないし、 おまけに待ち合わせに間に合うように部屋を出るから遅刻することもない。 上条さんとしては大助かりですよ」 上条の話はそこから自然な惚気話へと発展していく。 先日、上条から結婚を前提とした交際を申し込まれた美琴は上機嫌な日々が続いていた。 特に態度などに変化があったわけではないが、付き合いの長い上条には分かる。 そして美琴から昼食の弁当と夕食は毎日作ってあげたいと提案があったのだ。 『な、何よ、将来は朝食も含めて全部作ってあげるんだからいいじゃない!? それとも私が作った料理が食べられないって言うの?』 と、これまたテンプレ通りの言葉に押し切られた上条は 素直に美琴の厚意を受け取っているのだった。 一緒に並んで学校に登校するなど、前に比べてより恋人らしくなった関係に 上条と美琴は気恥ずかしさを感じながらも充実した日々を送っている。 ちなみに上条の惚気話を聞いた三人は… 「くっ、これだからリア充は嫌いだ。 男の友情なんて簡単に捨て去っていきやがる」 と、青髪ピアスは関西弁を用いるのを忘れ去り、 「俺には舞夏がいるから何も問題はないはずにゃー。 でもこの敗北感は何ぜよ? 教えてくれ、舞夏ーーーー!?」 と、土御門は奇声を発して、 「あン、何だか妙ォにこのコーヒーは甘く感じやがるなァ?」 と、一方通行は無糖のブラックコーヒーを片手に首を傾げている。 そして一方通行は自分が話を振ったことに責任を感じたのか、 話題を変えるべく自身は初めて参加する大覇星祭について話を始める。 「それよりも大覇星祭ってェのは、毎年こンなに面倒臭ェもンなのか? 正直放課後の準備とか、かったるくて仕方ねェンだが…」 「まあこんなもんじゃないかにゃー」 土御門が何処か面倒臭そうに言うと上条と青髪ピアスは相槌を打つ。 「まあ中学と高校じゃモチベーションが違うって部分も少なからずあるな。 特にウチのクラスは吹寄が運営委員をやってて張り切ってるっていうのもあるし…」 「でも実際の本番は暑さにやられて、だらけてしまうことが大半やな」 「あー、分かる分かる。 特に開会式なんかは地獄だよな」 一方通行は三人の話を聞いて、大覇星祭はやはり面倒臭いものだと偏見を持ってしまう。 吹寄あたりが聞いたら怒りそうな話だが、 どういうわけか仲のいい番外個体と転入してきたばかりの姫神と一緒に席を外している。 そんなこんなで四人の平和な昼休みは過ぎ去っていく。 しかし上条には放課後、思いも寄らぬ『執行部』としての仕事が待っているのだった。 放課後になり『執行部』の仕事が非番だった上条と美琴は共に夕食の買出しをし、 二人で並んで上条の部屋へと向かっていた。 するとエレベーターから降りた途端に甘ったるい匂いが漂ってきた。 顔をしかめる美琴とは対照的に、上条はその匂いに覚えがあった。 部屋に向かって走り出す上条の後を美琴も追う。 そして上条の部屋にいた人物は思った通りの人間だった。 「ステイル!!」 「やあ、待っていたよ上条当麻」 明らかに訝しげにステイルを見つめている美琴に上条は事情を説明する。 「前にインデックスっていう女の子について話したことがあっただろう? その時に一緒に戦ったイギリス清教の神父だ」 「…はじめまして、御坂美琴です」 先日のシェリー=クロムウェルの件もあってか、 イギリス清教と聞いても不信感が拭えないのだろう。 美琴の声音にはまだ警戒している様子が滲み出ていた。 それを悟ってかステイルの言葉にはいつもの刺々しさはあまり感じられなかった。 「先日のシェリー=クロムウェルの件はすまなかったね。 ただ彼女…いや僕達全体にも色々と問題があるのも事実なんだ。 許してくれとは言わないが、事情を察してもらえると嬉しいよ」 「イギリスは今どんな状態なんだ?」 「はっきり言って良い状態とは言い難いね。 本格的な戦闘こそ起こっていないが、各地で魔術師同士の小競り合いが続いている」 「そうか…」 「今日は君達に依頼があって来た。 学園都市の上の人間には既に話をつけてあるから心配しなくていいよ」 「依頼ですか?」 「そういえば美琴は初めてだったな。 偶にこうやってイギリス清教から直々依頼がくることがあるんだよ」 「今回はオルソラ=アクィナスという修道女を攫って来て欲しい」 「何者だ?」 「ローマ正教のシスターで何でも『法の書』の解読に成功したらしい」 「…」 上条はステイルの言葉に押し黙る。 美琴はそんな上条の様子を不思議に思うが、上条の代わりにステイルと会話を続ける。 「『法の書』って何なんですか?」 「僕達の世界で『伝説級の魔術師』と言われる エドワード=アレクサンダーによって書かれた魔道書だよ。 人間には使えない『天使の術式』が記されているとか、 解読と同時に十字教の時代が終わるとか、色々といわくが尽きない代物でね。 ローマ正教に兵器として利用されると厄介だから、 君達の手でオルソラ=アクィナスを回収してもらいたいんだ。 流石にバチカン図書館にある『法の書』自体はどうしようもないからね」 「オルソラは今何処に?」 今まで口を閉じていた上条が仕事の時の顔つきと口調になってステイルに尋ねた。 「どうやら天草式と呼ばれる魔術師の集団に拉致されて日本にいるらしい。 天草式の目的が僕達と同じローマ正教の戦力の補充の阻止だったらいいけど、 そればかりは話を聞いてみないと何とも言えないからね。 僕達イギリス清教は表立ってローマ正教と対立するわけにはいかないから、 学園都市の対魔術師のエキスパートである君達『執行部』に依頼することになった。 全て任せきりにするのは心苦しいが、よろしく頼むよ」 「…分かった」 上条と美琴は天草式のいると思われる大まかな位置をステイルから聞き、 今後の取り決めを行うと学園都市の外に向かって歩き出すのだった。 「美琴、天草式っていうのは相当手強いみたいだ。 何せローマ正教の部隊から一人の人間を奪取できるくらいだからな。 俺と違って美琴は対複数の魔術師との戦闘に慣れてない。 今回は基本的に俺を前衛として美琴は後方からの支援に徹するんだ」 「私だって当麻の隣で戦えるわよ」 「これは『執行部』の上司としての命令だ。 命令を破るなら『執行部』を抜けてもらう、分かったな」 「…分かった」 美琴は何処か不満が残るようだったが渋々といった様子で頷いた。 本当は美琴も分かっていた。 上条は『執行部』の名を出したものの、本当は恋人の自分の身を気遣っていることを… そして自分がまだ上条の隣で戦うには実力不足だということも… すると突然、美琴の前髪からバチンと静電気のようなものが飛び出した。 「どうやら当たりのようだな」 今のは今のが『人払い』という人間の感覚や認識に影響を及ぼす術式の効果と、 美琴の能力の制御法が競合を起こした結果、軽く美琴の能力が暴走したものだった。 実はこれか魔術師のねぐらを探すのに役立つ。 上条は『幻想殺し』という異能を打ち消す右手を持つため、 例え『人払い』という術式が張り巡らされていても 気付かず通り抜けてしまうことが殆どだった。 その場合、例え魔術師が近くに潜伏していても見逃してしまうことが多い。 しかし美琴と行動を共にすることで、そういった術式にも気付くことが出来るのだった。 「話し合いで済めばいいが上手くいかなかった場合、 俺が囮になって敵を引き付けるから、美琴は電磁波のレーダーで敵の動きと オルソラが囚われていると思われる場所の特定を急いでくれ」 「うん!!」 そして上条と美琴の共同任務が幕を開けるのだった。 結果として話し合いは決裂に終わった。 というよりも話し合いに至る前に天草式が襲ってきた。 『人払い』の術式を抜けられたことにより焦りが生じたらしい。 「くっ!?」 しかし上条に攻撃を仕掛けたはいいが、約50人にも上る天草式の戦闘メンバーは 一人しかいない上条相手に苦戦を強いられていた。 天草式は幕府の迫害から逃れつつも十字教を信仰するために仏教や神道で カモフラージュに『偽装』を重ねた宗派であり多角宗教融合型十字教とも称される。 用いる戦術もまさしく『偽装』で、 本命かと思えばフェイントで、フェイクかと思えば本物の魔術が襲ってくる。 よって天草式の術式を初見、しかも何の知識もなしに見切るのは不可能に近い。 にも拘らず上条は正確に物理攻撃と魔術による攻撃を見抜き、 確実に攻撃を仕掛けダメージを与えてくる。 それは上条の長年に渡る戦闘訓練と幾多に渡る魔術師との戦闘経験が生む技能だった。 「全員、下がるのよな!! ここは俺が引き受けるからオルソラ嬢の護衛に就け!! 敵がこの男一人とは限らないのよな」 恐らく天草式の代表であろうクワガタみたいな髪型をした男が言った。 まだ意識を失っていなかった数人の天草式の少年少女達が走り出す。 上条は心の中で毒づく。 天草式は決して弱くない。 実際に上条も壁を背にして直接相手にする人数を極力抑えて戦っていた。 このレベルの相手が五人以上いたら美琴も苦戦を強いられるに違いない。 上条は走り去った少年少女達の後を追いかけようとしたが、 その前に天草式の首領の男が立ち塞がる。 「まさかこれほどの男が科学側にいるとは思わなかったのよな。 名乗らせて貰おうか、天草式教皇代理の建宮斎字だ」 「…学園都市『執行部』の上条当麻だ。 話を聞いてくれ!! 俺はオルソラを保護してイギリス清教に匿ってもらおうとしてるだけだ。 別にお前達と争うつもりはない!!」 「必要以上に我らを傷つけようとしないお前さんの戦い方を見てれば、 お前さんが信頼に足る人間だということは分かるのよな。 だがイギリス清教を必要以上に信頼するなと女教皇様から言われてるのでな」 「…」 上条は建宮の言葉を否定することが出来ない。 上条自身が個人的な知り合いはともかく、イギリス清教のトップを信頼してないからだ。 上条と建宮は互いに睨み合い、相手の出方を模索する。 しかし二人の間に流れていた沈黙を突き破るように、辺りに爆発音が鳴り響いた。 「何だ!?」 互いに仲間の身を案じた上条と建宮は顔を見合わせると、 共に爆発が起こった場所へと走り出すのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員
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507 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/19(土) 21 20 32.73 ID BTEDHaXWo [4/8] 季節が巡るのは早いもので、外に出てみれば今はもう桜が舞っている。 それなりにのほほんできた春休みも明け、今日は始業式。今まで幾度も迎えた新学期の朝である。 めんどくせえなあという憂鬱な気分と、何かが起こるんじゃないかというわくわくを胸に階段を下りる。 そのままリビングへと続く扉を開き――そして、俺は言葉を失った。 「お兄様?」 「はっ!?」 沙織に呼び掛けられ、ようやく我に返る。 「大丈夫ですか?」 「あんた……始業式の朝から寝ぼけてる場合じゃないでしょ」 「たるんどるんじゃないのか?」 素直に心配してくれる沙織とは違い、辛辣――ってほどでもないが、厳しい言葉をくださる両親。 いやいや、親父にお袋もなんでそんなに落ち着いてられるんだ。 これはもしかして一大事なんじゃないのか? いったい何がどうしてこうなった? 「なんで……」 「?」 ようやく絞り出した声はかすれ、うまく言葉にならない。聞き取れなかった沙織が疑問の表情でこちらを見ている。 俺は、一呼吸おいて、すうと大きく息を吸い込んでからこう叫んだ。 「なんでおまえがその制服を着ているんだああああああああああ!」 沙織が着ているのは、我が高校の制服そのものであった。 どういうこと!? 沙織はお嬢様学校の高校へエスカレーター式に進学するんじゃなかったの!? まさか、問題起こして放り出されたの!? いやいや、沙織に限ってそんなことあるわけないだろ! じゃあ、これはどういうことだ!? 何がどうしてこうなった!? もはや俺の思考は滅茶苦茶だ。まとまる気配すらない。 「落ち着いて下さいお兄様」 沙織はまるで子供をあやすように優しい口調で語りかる。 「私がお父様とお母様に頼んだんです」 「……はい?」 どういうこと? まさか、沙織が自分から俺のいる高校へ行きたいと言い出したってこと? 「その通りですわ」 「いやいや、何でわざわざそんなことを」 沙織がブラコンなのは知ってたが、それで自分の進路を決めちまうほど愚かではないと思っている。 だから、何かやむにやまれぬ、特別な事情があったんだと思う。ではその事情っていったいなんだ? 「……何があったんだ?」 「それは登校の途中でお話します。今は朝ごはんを食べましょう? このままでは遅刻してしまいますから」 508 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/19(土) 21 22 54.09 ID BTEDHaXWo [5/8] 「で? 俺の高校に来た理由ってなんだ?」 いつもの登校路を沙織と連れだって歩く。見慣れた風景のはずなのに今日はえらく新鮮な気がするぜ。 単純に春休み明けってものあるんだろうけどさ。 「実はそんなに大したことではないんですけど……単純に遠かったからです」 「えっ? それだけ?」 「はい。今まで通っていた中学校とは少し違う場所に校舎があるものですから」 「ふーん」 はっきり言って拍子抜けだった。まさかそんな単純な理由だったなんて。 でも、本当にそれだけか? ……はっ!? まさかいじめにあっていたとかじゃないだろうな!? 進路を変えるという人生に大きな影響を与える事柄であるから、最低でも両親には話さざるを得ないが―― こいつのことだ、俺には無用の心配をかけまいと黙っているはず。 だとしたら俺はそんな沙織に今まで気づいてやれず―― 「ふふっ、そんな顔しなくても大丈夫です。いじめが原因ではありませんよ?」 「ぐっ……」 どうやら、本当に俺の心は筒抜けらしい。それとも顔に出過ぎるのがいけないのか。 「で、でも、大学進学のことも考えたらあっちの方がよかったんじゃないのか?」 実際、うちの高校は平凡そのものの進学率だぞ? あるのは普通科だけで、理数科だったりの特別進学コースがあるわけでもないし。 「それはあちらでも同じですから。一貫の大学には行きたい学科はありませんし。ですから、大学受験を考えるならどちらでも一緒なんです。経済的にはこちらの方が圧倒的に安上がりですし」 「そうは言ってもな」 沙織の言うことはもっともだ。付属の大学に行きたい学科がないのなら、普通に考えてうちの高校に来るのが妥当だと言える。 だけど、なぜだろう。このもやもや。腑に落ちないというか、なんとも言えないこの感じ。 「それとも、私が一緒では迷惑でしたでしょうか?」 うるうると目をうるませ、しょんぼりと項垂れる沙織。 「そ、そんなことないぞ! 俺だって一緒の高校に行けて嬉しいって!」 まるで恋人同士の会話だな。俺はいつからこんなシスコンになってしまったのか。 自分が言った内容に呆れ、自嘲気味に笑う。 すると、どこからともなくこんな声が聞こえてきた。 「あの子、超かわいくね? でかいけど」 「どの子? うお、まじだ。超かわいい。 でかいけど」 509 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/19(土) 21 26 02.53 ID BTEDHaXWo [6/8] 途端に、さっきまで感じていたもやもやが急速に膨らんでいく。 この瞬間、はっきりと理解した。今までは沙織が通っているのが女子校だったもんだから、こんな気持ちを感じることはなかったんだな。 そう、これはいわゆる親心というやつだ。……おまえは兄貴だろという突っ込みはなしだぞ。 そこら辺の男が沙織に言い寄ってくるかもしれない。どこぞの馬の骨ともわからんやつが沙織をかっさらっていってしまう可能性がある。 そんなことを考えただけで、俺の心はかき乱され一向に落ち着かない。 沙織が彼氏なんて連れてきた日にゃ、俺はまだ見ぬそいつをきっとぶっ飛ばすだろう。 別にそいつが憎いわけじゃない。ただ、それぐらいやらんと気が済まないのだ。 先ほどの声のを発した男たちをじろりと睨み付け「手を出したらぶっ殺す」と、視線で威嚇。これは最上級生だからできる芸当だ。 ……これから毎日こんな思いをして過ごさねばならないのか。とてもじゃないが身が持たねえ。 世間のシスコン様はこういうとき一体どうするんだ? いったいどうやって心を落ち着けるのだろうか。 あーあ、誰か近場にシスコンの兄貴がいねえもんかな。そうそういるもんじゃないってのはわかってるけどさ。 しばらく歩くと、いつもの場所で俺を待っている麻奈実が視界に入った。 ぱたぱたと鞄をせわしなく動かしている。 「あ、きょうちゃん、おは――」 いつもの間延びした挨拶をしようとしたところで、そのまま固まる麻奈実。 その目ははっきりと見開かれ俺の隣に立つ美少女を見据えている。 「よう、おはよう」 「おはようございます、麻奈実さん」 「えっ? あ、おお、おはようございます」 慌てて挨拶し返す麻奈実。なに慌ててんだ? おまえら初対面じゃねえだろ。 しかし、慌てていても麻奈実の綺麗なお辞儀の形は崩れない。 「きょうちゃん。え、え~と、どちら様?」 「何言ってんだ、沙織だよ。妹の沙織」 「よろしくお願いいたします」 「ほ、ほんとに沙織ちゃん? あ、あれ~、この前はこんな風じゃなかったよね?」 ……忘れていた。前に会った時はたしかバジーナ状態の沙織だったな。 その前に会った時はまだ小さかったし、まさか沙織がこんな美少女に成長するとは思ってもいなかっただろう。 「あ~なんだ。深くは詮索しないでやってくれ」 「う、うん。わかった。じゃあ、改めてよろしくね沙織ちゃん」 「はい。麻奈実さん」 そこからは3人で、他愛ない会話を交えながら、のんびりといつもの登校路を歩いていく。 某アニメには登校路がきつい坂道なのを愚痴っている高校生が登場するが、その点俺たちの学校は平地にあるからな。 そこに関しては千葉県gjと言わざるを得ない。 夏場とか大変だろ、あれ。しかも兵庫県下、特に北摂地域の高校は、そのほぼ全てが山の上に作られているらしい。 どうして兵庫県はあんなところに学校作っちゃうんだろうな。やめてやれよ。 と、実にどうでもいいことに考えを巡らせていると、少し先の道路を黒猫が横切った。 朝からなんて不吉な――という方の黒猫ではない。ましてや宅急便でもない。 510 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/19(土) 21 27 25.02 ID BTEDHaXWo [7/8] 「あ、あれ? 今のって……」 「黒猫さん――みたいですね」 「どうしたの? きょうちゃん、沙織ちゃん」 急いで黒猫らしき黒髪の少女を追いかける。どうやら向こうは俺たちに気付いていないようだ。 「く、黒猫?」 手が届くまであと少しの位置まで迫ったところで、その黒髪の少女に声をかけた。 その少女は上半身だけでこちらを振り返り、得意げにこう言った。 「おはようございます、先輩」 「く、黒猫……まさか、おまえも同じ高校だったのか」 黒猫が着ている制服は、見慣れた、俺の高校の制服だった。 「ええ、本当はもう少し黙っていようと思っていたのだけれどね。……あれ? おまえも?」 それまでにんまりとしていた黒猫が俺の言葉に違和感を感じとった時、後方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。 「お兄様、お待ちになって下さい」 「きょうちゃん待って~」 はあはあ、と仲良く息をきらして沙織と麻奈実が追いついてくる。 「ひどいです、お兄様。私たちをほったらかして行ってしまうなんて」 沙織が俺を責め立て、その隣では麻奈実がうんうんとしきりに頷いている。 「すまんすまん。でもおかげで黒猫に追いつけたんだし、許してくれよ。なっ、黒猫」 同意を求めるべく黒猫の方に向き直ると、当の黒猫は目を丸くして棒立ちになっていた。 「な、なぜあなたが……こ、ここに、その暗黒聖闘士を纏って立っているの?」 いつから俺の高校の制服は暗黒聖闘士に衣替えしたんだ。 震える指で沙織を指さし、質問する黒猫。その表情には驚きの他に恐怖すら垣間見える。 まあ、こいつとしても沙織がここにいるのが不思議でしょうがないんだろう。俺だっててっきりエスカレーター式に進学すると思ってたからな。 とはいえ、俺が言えた義理ではないが、いくらなんでも驚きすぎだろ。なんでそんな何かにびびってるみたいなリアクションなんだよ。 「実は少し事情がありまして。詳しいことは後程」 「くっ……まあ、いいわ」 びびっていると思ったのもつかの間、あっというまにいつもの黒猫に戻ってしまった。 「黒猫さん――だっけ? おはよう~」 「…………おはようございます」 麻奈実の挨拶に、一応返事を返す黒猫。……すっげー渋々だったけどな。 おまえはいつまで麻奈実を目の敵にしてるんだ。 ともあれ、今はそんなことを追求している場合ではない。 「やべ、ちょっとのんびりしすぎた。初日から遅刻しちゃまずいし、急ごうぜ」 そんな俺の言葉に対して三人は三者三様に頷いたのだった。 第十三話(沙織√)おわり