約 3,877,163 件
https://w.atwiki.jp/happimylover48/pages/4.html
別れたくても別れられない… そんな男女問題を抱えておられる方がいらっしゃいます。 ご相談内容 別れたい彼氏がいます。 でも彼氏は絶対に別れたくないと言います。 別れる話をするとすごくネチネチとすがってきて鬱陶しいです。 付き合っている時もそんな感じで、 ちょっと連絡が取れないだけですぐに浮気を疑ってきたり、 束縛がきつくて別れたいと思うようになりました。 話しても話しても、別れたい別れたくないの平行線なので、 一回携帯も着信拒否にして一切連絡を取らずに無視して、 このまま強制的に別れようと思っていたら うちの実家にも電話してきたりファックスしてきたり、待ち伏せされたり… このままだとストーカーになりかねないと思って、 とりあえず別れ話を保留してズルズル付き合いを続けています。 私は好きでもなく、むしろ怖くなってきました。 でも実は、私は以前付き合っていた別の彼氏にも 別れた後にストーカーされた経験があり、それで怖い思いもしたので 正直、今の彼もそうなるんじゃないかと思っています。 どうしたら上手に別れることができるのでしょうか? こちらの方は、過去にもストーカーの被害経験があるということで、 今回もとても怖い思いをしている事でしょう。 こういった方と上手に別れる為には 2人だけの関係では難しいケースが多いのです。 一歩間違うとまたご本人が怖い思いをしてしまう、 場合によってはあなたの家族も被害に遭うと大変です。 別れてくれない側の心理からすれば ・あなたが居ないと生きていけない! ・ここまで尽くしたのに返してくれない! こういった、あなたに対する依存、そして期待を持っている訳です。 つまり、こうした依存や期待を別の第三者に向けさせる事で あなたが居なくても別の人がいるから大丈夫 と思わせることが出来れば 上手に別れられることが出来るでしょう。 どんなに難しいと思える状況でも、必ず解決方法があります。 無料相談窓口はこちら
https://w.atwiki.jp/25438/pages/2965.html
※まえがき 唯「どこかいこっか」梓「雨降ってますよ」の続き 唯「ふふ〜♪」 梓「機嫌良いですね」 唯「まあね。梅雨も明けて気分すっきり!」 梓「けど日中は日差しで暑いですよ?」 唯「もーそれを言わないでよ。せっかく暑さを忘れようとしてたのに……」 梓「現実逃避しないでください。けど、夜は少し風が吹けば涼しいですね」 唯「そうでしょ。ほら、今みたいに縁側にこうして座ってると」 梓「……まあ、落ち着きますよね」 唯「ねー」 チリン…… 唯「……………………」 梓「……………………」 チリンチリン…… 唯「月が綺麗だね、あずにゃん」 梓「……えっ?」 唯「ほら、月がまん丸だよ」 梓「え、ああ、本当ですね……。きらきら輝いていて綺麗に見えます」 唯「はぁ……きらきらだね……」 梓「……唯先輩がいきなり、『月が綺麗』だなんて言い出したから驚きましたよ」 唯「え、そうなの?」 梓「一瞬何か別の意味があるのかと思いました」 唯「別の意味? 『月が綺麗』に?」 梓「はい、こんな有名な話がありますよ。昔、夏目漱石が“I love you”を『月が綺麗ですね』と日本語に翻訳した、という話です」 唯「“I love you”が『月が綺麗ですね』に……? う〜ん……よくわかんないや」 梓「私も、なぜそうしたのかまでは知らないですけどね……」 チリンチリン…… 唯「……じゃあ、あずにゃんはわたしが遠回しに“I love you”って言ったと思ったの?」 梓「あ、いや……その…………ほんの一瞬だけそう思いました……」 チリンチリン…… 唯「ふふ……あずにゃんは意外とロマンチストなんだねえ」 梓「一瞬ですよ、一瞬!」 唯「ふふ〜そっか〜♪」 梓「なんでそんなに笑うんですか! もう……」 唯「ごめんごめん。うれしかったんだよ」 梓「どうだか……」 唯「……でもね。こうして二人並んで月を見ていると、そう翻訳した気持ちがわかる気もするよ」 梓「気持ち……?」 唯「そう、気持ちだよ。自分の大切な人といっしょにいると、まっすぐな気持ちを何か特別な言葉で伝えたくなると思うんだ」 梓「特別な言葉で、ですか」 唯「うん。だけどこの言葉は空回りしちゃって、単純に聞くとよくわからない意味になっちゃったのかもね」 梓「なるほど……」 チリンチリン…… 唯「風鈴の音が涼しいね……」 梓「風流ですよね……」 唯「ネコの形のやつもあってよかったね」 梓「はい。でも私よりも唯先輩の方がよろこんでましたね」 唯「えへへ。だってかわいかったんだもん」 梓「私もそう思いますけどね。けど普通の風鈴もいい音鳴らしてますよ」 唯「“チリンチリン”ってね。これぞ、日本の夏! って気分だよ。のんびり夜空を眺めて……」 梓「ゆったり並んで座って……」 チリンチリン…… チリンチリン…… 唯「月が綺麗だね、あずにゃん……」 梓「月が綺麗ですね……」 おわり。 戻る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/18572.html
純「おっす、もしもしー?」 その日の夕方、家に帰ってから、私は純ちゃんに電話をした。 憂「あのね、純ちゃん……」 まずは一人であるかを確認して、口外しないように伝える。 純「うんうん。いいけど、なに内緒話って。どうしたの?」 憂「実は。宝くじに当たっちゃって。それでお姉ちゃんとみんなで焼き肉に行こうってなったんだけど」 純「ほう、焼き肉……って、みんなって?」 憂「梓ちゃんと、それから軽音部の先輩たちに、あと和さんも」 純「へー。さわちゃんはいいの?」 憂「……うーん。いちおう誘ってみようかな?」 純「あ、ウソウソ。冗談、同窓会じゃないんだから。で、いつなの?」 純ちゃんは、さわ子先生の話が少し苦手だ。 別にお互い嫌っているというわけじゃないけれど、 なにぶん純ちゃんはまだ大学にいる長老なのだ。 送り出してくれたさわ子先生に対して引け目を感じるのも無理ない。 憂「次の日曜のつもり。日程変わったらまたメールするけど」 純「日曜なら平気かな。おごりってことでいいんだよね?」 憂「うん。せっかく宝くじ当たったのに、そんなにけちくさいことしないよ」 純「ま、いくら当たったとかはあえて聞かないけど……大事に使いなよ」 憂「……うん。大事にする」 じゃあまた、と軽く電話を切られる。 次は梓ちゃんに電話をかけることにした。 憂「もしもし、梓ちゃん?」 梓「珍しいね、憂から電話なんて」 確かにそうかもしれない。 私は主婦の身分だから、働いているみんなに対して遊びに誘おうというのには億劫だ。 早くみんな結婚して家庭に入ってしまえばいいのに、 純ちゃんといい梓ちゃんといい、どうにも恵まれていない。 梓ちゃんに至っては恋愛放棄宣言をして、就職した会社であくせく働いている。 何が梓ちゃんをそうさせたのかは分からないけれど、おかげで社内では信頼されているらしい。 実際、結婚をせずに働く男の人は多いのだし、 いくら梓ちゃんが女の子でも、そういう生き方は大いにアリだと思う。 憂「ごめんね、あんまり電話しなくて」 梓「いいよ。憂から電話がくるだけで、ぜんぜん嬉しいし」 電話口の向こうで、梓ちゃんはくすっと笑う。 昔に比べて、笑い声が小さくなったなと感じる。 梓「それで、どうしたの? わざわざ電話したからには、用があるんでしょ」 憂「あ、うん」 耳もとの遠くから、オフィス電話が鳴る音がした。 まだ会社に残っているらしい。 憂「次の日曜日なんだけど、軽音部のみんなで集まるんだ。梓ちゃん、来れる?」 梓「日曜日のいつ?」 憂「夜から……7時くらいかな。焼き肉屋に行くつもりなんだけど」 梓「7時……遅れても平気?」 憂「大丈夫、まだちゃんと決まってないし。都合つかないんだったら、8時にでも9時にでもするよ」 梓「ありがとう。できたら、8時ぐらいにしてくれると嬉しいかな」 憂「わかった。ちゃんと決まったら場所と一緒にメールするね」 梓「うん、よろしく」 一瞬、電話が切られかけて、また梓ちゃんの耳に戻ってきた。 梓「そういえば、どうして急に集まることになったの?」 憂「あぁ、それがね。ちょっと、お金が入ったから。みんなにごちそうおごりたいなって」 梓「へぇ……宝くじでも当たった?」 憂「えっ。あぁうん、その通り。……誰にも言っちゃだめだよ」 梓「ああ、けっこうデカい金額当たったんだね……」 デスクの前で遠い目をする梓ちゃんが容易に想像できた。 宝くじが当たってしまったことは、 一生懸命に働いている梓ちゃんに大してとても申し訳なく感じるのだけれど、 それについて詫びればよけいに嫌みたらしくなるだけだから、そのまま沈黙しておいた。 梓「まぁ唯先輩も仕事を頑張ってるわけでしょ? 憂と二人で生きるために」 憂「うん。お姉ちゃんはすごいよ……」 性転換のことは言わないでおこう。 私は携帯電話を握りしめる。 梓「まあ、天網恢恢疎にして漏らさずってわけだね。神様は頑張りを見てるんだって」 果たしてお姉ちゃんの努力を神様が快く感じているかどうかは分からないけれど、 私は電話を耳に当てたまま、小さく頷いた。 梓「じゃあ、そろそろ」 憂「あ、ごめんね。それじゃあ」 梓「うん。バイバイ」 憂「またね、梓ちゃん」 もっとお話がしたいところだけど、残業中なのに時間を取っては悪い。 そのまま、電話を切った。 お姉ちゃんはまだ軽音部の先輩達に電話をかけているみたいだ。 今話しているのは、紬さんらしい。 いまのうちに晩ご飯の支度を始めておくことにした。 宝くじは明日の朝、換金に行く。 けれど、少しだけ調べたが、明日すぐにお金を受け取れることは少ないそうだ。 貯金もほとんどない私たちにまだ贅沢をする勇気はないし、 外食をするにもまずは冷蔵庫の中の食材を使わないといけない。 ただ少し、いつもより豪勢な晩ご飯を作っても大丈夫だろう。 二人で分けていた一尾の魚を、二尾焼いても些細な問題にもならない。 一生そうして暮らすには足らないだろうけれど、 1億円という金額の重みと安心感が身にしみてわかる。 唯「あ、憂ごはん作るの?」 電話中のお姉ちゃんが台所に立った私を見上げて言う。 憂「うん。食材使っちゃわないと」 唯「そだね、たくさん使おう」 そうは言っても、冷蔵庫に残る食材は多くない。 お腹一杯になっても、必要以上ではないように。 憂「ごはん食べたら、おいしいお酒も買おうか」 唯「んお、いいね!」 お姉ちゃんと笑いあって、私は晩ご飯の準備を始めた。 むかし、大学のころに二人暮らしを再開した日の夜のうきうきを思い出した。 唯「じゃ、またねームギちゃん」 鳥のむね肉を切っていると、お姉ちゃんが紬さんとの電話を終わらせたらしい。 そしてまた携帯を動かして、誰かへ電話をかけた。 唯「わっ、どうしたの、風邪?」 ふと、お姉ちゃんが驚いた声を上げる。 律さんか澪さんか、体調を崩しているのかもしれない。 日曜日までに治ればいいな、と思った。 ―――― お腹一杯になって、それぞれお風呂に入ってあたたまったあと、 お姉ちゃんと一緒にスーパーまでお酒を買いに行った。 普段は買わないちゃんとした赤ワインと、ワインオープナーも一緒に買い、 お姉ちゃんが両手で大事そうに抱えて帰った。 家につき、ワイングラスを買わなかったことを思い出して、 はにかみながらいつものグラスにワインを注ぐことにした。 私はパジャマに着替え直してから、またひとつ、ボタンをとる。 唯「ねぇ、憂」 憂「うん?」 お姉ちゃんはおそろいのグラスにワインを注ぐと、ひかえめな声で言った。 唯「私が男の人の体になっても、えっちしてくれる?」 憂「それって……おちんちんを」 唯「……うん」 まだその実物はありませんが、いずれお姉ちゃんの股間につけられる男性器。 それが、私の中へ入る。一般的なセックスを行うのだ。 憂「……どうだろう」 怖いと感じる気持ちはあるけれど、 もうとっくに、お姉ちゃんの指は私のずっと奥まで触るようになっている。 もしかしたらオチンチンなんて目じゃないくらいに合わせた指を、深くまで。 問題や危険があるとすれば、むしろお姉ちゃんの方だ。 作って取り付けた男性器が、取れてしまわないか。 憂「それはお姉ちゃんだから、大丈夫なんだけど……お姉ちゃんこそ、平気なの?」 唯「えっ? ……ああ、どうなんだろう」 意図が伝わったみたいで、お姉ちゃんは腕組みをした。 唯「……今度、和ちゃんに会う時にこそっと訊いてみる」 憂「うん、それがいいね」 唯「もし、いれるのは無理でも、憂が欲求不満にならないようにするからね」 ワインを注いだグラスを手に、お姉ちゃんは笑った。 憂「お姉ちゃんのえっち」 そんなお姉ちゃんの隣にくっついて座り、私もグラスを手に取った。 猫を甘えさせるみたいに、お姉ちゃんの手が首の後ろを通り、私の顎をぺたぺた撫でる。 憂「……だいすき」 ―――― お姉ちゃんのキスと愛撫に溺れて、気が付けば朝になっていた。 歯茎や舌のつけねに残る疲れは、 声を出しすぎたせいで、お姉ちゃんがずっと舌を絡めて塞いでいた証だ。 宝くじの当籤で気が抜けた上に、ワインを飲みすぎてしまったのかもしれない。 お姉ちゃんとのえっちが嬉しくてたまらないとき、たまに声を抑えることを忘れてしまうのだ。 憂「ふう……」 隣でぐったりと眠っているお姉ちゃんを横目に起き上がる。 カーテンの向こうからすずめが小さく鳴く声がする。 仕事の無い日は、こうやってお姉ちゃんが疲れ果てるまでセックスができる。 言いかえれば普段のお姉ちゃんは、ある程度手加減をしてえっちをしているのだ。 あれで。 憂「……」 そういえば、なし崩し的にお姉ちゃんは会社をやめてしまった。 しばらくは生活費に困ることもないからいいけれど、いずれまた働きだす必要がある。 これからのお金の使い方は重要だ。 私たちは決して裕福な暮らしなどしていなかったのだし、これからの収入も少ないままだ。 ただ、なにか新しい仕事を始めるためのお金ならある。 お姉ちゃんが手術を受けても、1億円は尽きない。 どこか田舎の安い土地に家を建ててそこで働いたり、 広い土地を買い、田んぼをつくるのもいい。 マンションかアパートを買い、家賃収入で暮らすのもいいだろう。 そのための勉強は、今度こそきちんとやろう。 憂「ん~……」 体をよく伸ばし、ベッドを降りた。 シャワーを浴びて着替え、朝ごはんの支度をする。 そのうち、もぞもぞお姉ちゃんが起き出した。 お姉ちゃんがしゃんと目を覚ましてから朝食を食べ、 宝くじの券を持って、銀行に向かった。 案の定、次の日にまた来ることになったけれど、日曜日まではまだ余裕もある。 私たちは快く頷いて、その帰りにちょっと高い鉄板焼き屋さんでランチをとった。 それから家に帰って、余ったお金をどういう風に使おうかと相談した。 相談というにはあまりにボケボケしてて、子供の夢の語らいのようだったけれど。 三時にはお菓子屋さんでフルーツタルトを買ってきて二人で食べ、 あとはワインの残りをあけ、ずっとお姉ちゃんに唇をふさがれていた。 5
https://w.atwiki.jp/llnj_ss/pages/508.html
元スレURL あなた「でもしずくちゃんって付き合ってても都合が悪くなったら浮気しそうだよね」 概要 大女優を信じろ タグ ^あなた ^桜坂しずく ^短編 ^コメディ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/83452/pages/18576.html
憂「んぐ……」 やがて、少し無理をしてしまったか、喉に詰まりを感じた。 唯「憂、へいき?」 お姉ちゃんが水を取ってくれる。 だけど、それさえ飲める気配がしなくて、グラスをテーブルに押し返した。 唯「ちょっと、行こう」 お姉ちゃんが私の手を取って立ち上がった。 手首で口を押さえながら、靴をひっかけてトイレに引っ張られていく。 トイレの個室に押し込まれ、洋式の便座の前にひざまずく。 高いお店だからかは分からないけれど、 トイレはきれいに掃除されていて、その行動を取るにも抵抗感はなかった。 唯「出しちゃって、憂」 憂「うっぷ……」 お姉ちゃんの手が背中をさすると、こらえていた吐き気が一気にこみあげた。 目を固く瞑り、出てくるものを見ないようにする。 喉が奥からこじ開けられて、異臭が鼻を衝いた。 便器に重たい液体がびしゃびしゃとかかる音が耳に不快だ。 憂「ぷはぁ、ぇ……ごほっ」 口の中に酸い味が感じられた。 唯「ほれ、ほれ」 お姉ちゃんがなおも背中をさすった。 まだ吐くものが残っていたらしく、再びこみ上げて来て、私は便座に突っ伏した。 憂「うええええぇぇ……」 ごめんなさい、高級焼き肉。 憂「はぁー……」 いっぺんに吐き終えて、軽くなった胃のあたりをさすりながら膝を立てた。 唯「大丈夫?」 憂「うん、ひとまず……」 汚物を流して水道に向かう。 口の中全体にきつい味がしている。あまり喋りたくない。 蛇口をひねり、出てきた水で口をゆすぐ。 黄色のどろっとした固まりが排水溝に流れていく。 お姉ちゃんはその間ずっと、私の後ろに立ってくれていた。 憂「ごめんね、お姉ちゃん」 口をゆすぎ終えて、手を洗いながら言った。 唯「ん?」 憂「高いのに……吐いちゃって」 唯「そんなのいいよ。今はぜいたくしていいんだから、憂も戻ってまた食べ直そうね」 お姉ちゃんは私の頭をぽんぽんと撫でてくれる。 鏡には、似た顔の似た髪をした、双子の姉妹にしか見えないような二人が映っていた。 憂「……うん」 私は濡れた手で、お姉ちゃんの後ろ髪に触れてみた。 唯「くすぐったいよ、うい」 お姉ちゃんがくすくす笑った。 冷たい指先で首筋をなぞってみる。 唯「ちょっと……えっちいってば」 笑顔のまま、お姉ちゃんがその手をはねのける。 私だって、こんなところでだめだとは思う。 けれど、止まるきっかけがつかめない。今度は指をお姉ちゃんのくちびるに持っていく。 憂「お姉ちゃん……」 焼き肉の脂とタレに濡れたくちびるが、触れた指先にやさしくくっつく。 手のひらでお姉ちゃんの頬を包むように撫で、そっと引き寄せる。 唯「……憂?」 お姉ちゃんだってわかっているだろうに、わざとらしく首をかしげて抵抗しない。 そのままお姉ちゃんの顔に接近して、くちびるを重ねた。 唯「……んっ」 私の髪を撫でていた手が、肩を掴んできた。 けれど、その手は決して強く拒んできたりはしない。 せめて個室に行かないと。このままでは危険なのに。 唯「んぐっ……」 くちびるに唾を当てながら吸い、 お姉ちゃんの味だけになったところで舌を挟んでもらう。 トイレという空間にはまるで似合わない、高い水音が立つ。 扉の外で、人の動く気配がした。 さすがにお姉ちゃんが肩を強く押してくるけれど、 私はお姉ちゃんのくちびるにすがりついたまま離れない。 唯「こ、こらっ……んんっ」 一瞬、お姉ちゃんが私を叱った。 それでも私は自分を止めることができずに、お姉ちゃんとのキスを続けようとする。 どうしてこんなことをしているんだろう。 もう何処へでも逃げられるからといって、好き放題してもいいと思っているのだろうか。 確かに、傍から見て私とお姉ちゃんがただの仲良し姉妹にしか見えないというのは、辛いときもある。 だけどそれこそが何よりの隠れ蓑で、 仮に私たちが全てを失っても、決して消えることのない繋がりなのだ。 なのに、さっき鏡を見た時。 お姉ちゃんそっくりの姿が、私たちが姉妹であることのてっとりばやい証が、 とてつもなく厭わしく感じられてしまったのは、どうしてなんだろう。 姉妹でなければいい。 この関係をいち早く壊してしまいたい。 どうしてそんなことを考えてしまうのだろう。 唯「だぇ、ういっ……」 お姉ちゃんがうめいた瞬間、ホールとトイレを隔てる扉が耳障りな音を立てて大きく揺れた。 憂「ひゃわっ!」 唯「ぷはっ、ん」 鼓膜を叩かれたような衝撃が走り、私たちは反射的に離れた。 くちびるに残る熱をあわてて擦って、水道に体を向ける。 そして、ふた呼吸した後、扉が開いて知らない女性が入ってくる。 女性は私たちの方を一瞥して、個室へ入って鍵をかけた。 唯「……」 お姉ちゃんが私の頭にぽんと手を置く。 少し力を入れて、叩くような調子だった。 唯「……めっでしょ」 憂「ごめん……」 くちびるを拭った手を水に濡らし、水道を止める。 唯「戻ろっか」 憂「うん。遅くなると悪いよね」 さっきの失態はなかったことにして、 私はハンカチで手を拭った後で扉の把手を握った。 きぃ、と小さく蝶番が軋む。 外に出る前にそこに律さんが立っているのは分かっていたけれど、 後ろからお姉ちゃんに押されて立ち止まれなかった。 律「よう、バカども」 律さんがお姉ちゃんの頭に手刀を叩きこんだ。 唯「あぐ。……りっちゃん」 律「こんなところで何してんだよ、ほんと」 まったくである。 唯「だって憂が……」 律「お前が年長者だろうがっ」 またお姉ちゃんが一撃お見舞いされる。 そろそろ止めたい。 憂「あの、もしかしてさっきのは律さんだったんですか?」 律「ああ。人が来てたから……見せびらかすつもりじゃなかっただろ?」 相変わらず、少し喋りにくそうに律さんは言った。 律さんが扉を叩くか何かして、私たちに危険を知らせてくれたのだろう。 憂「はい……」 申し訳ない気持ちで私は頷く。 唯「でも、そしたら普通に入ってきて教えてくれてもよかったよ?」 お姉ちゃんが首をかしげる。 律「ばっ……」 憂「お姉ちゃん、それってどうなの……」 律さんがちょっと顔を赤くした。 お姉ちゃんの頭の中では律さんは絶対的に女の子なのだろう。 私だってそうだ。 だけど、律さんのことは男性として扱うのが礼儀だと思う。 むしろ私たちにこそ男性として見られたくて、律さんは今日あのようなサプライズも持ち込んだというのに。 律「まぁ、いちおうな……わた、あ、俺は、女子トイレには入れっこないしな」 律さんは少しどもったあと、誇らしげに言ってみせた。 女子トイレに入れない、それだけの当たり前のことが、律さんにとっては嬉しいのだろう。 唯「ところで、りっちゃんなんでここにいるの?」 律「あぁ、ちょっとタバコ吸いに行こうと思って」 憂「あれ、律さんって吸うんですか?」 律「まあな」 律さんは頷いた後、なにか考えるように唸って、私の方を見た。 律「……そう憂ちゃん、少し外に出ようぜ。気分悪いんだろ?」 憂「へ?」 9
https://w.atwiki.jp/suka-dqgaesi/pages/1574.html
573 :1:2008/04/30(水) 23 05 55 0 昔のDQ返し。 妹夫は超エネ&マザコン、妹トメは鬼、妹ウトは空気な妹義実家。 妹夫は徒歩3分ほどの義実家に毎晩行き、家には寝に帰るだけ。 もちろん「もう家でもらったから」と妹が実家に帰るのも禁止、電話も禁止。 連絡を取りたい妹は公衆電話からかけてきていた。 妹がそれを言うと 「同居しないでやってるのにお前は注文が多い! そんなに嫌ならお前も義実家にこい!」 それでしょうがなく行くと家じゅうを掃除させられ、おさんどん。 妹料理を「まずいまずい」と言いながら食べ、 ひどい時には「こんな物食べられたものじゃない」と捨て出前。 しかも妹の分は無い。 夫婦喧嘩をしたら妹夫はすぐに実家へ、 その後トメが凸してきて妹を罵り、口答えでもしようものなら殴る。 なんど説得してもエネme(共依存?)な妹は頑張って頑張って我慢して我慢して… そんな中妹の妊娠が発覚。 妹も「これで彼も変わるかもしれない」と喜んでいた。 不安ながらも私たちも喜んでいたが、偶然妹夫の浮気現場を目撃。 妹夫は私と目が合うと「チッ」ってして、女の肩をグイッと抱いてホテルの中に入って行った。 妹に言うべきか、でも今は妊娠中… こんなショッキングな事言えない、でも…と悩んでいたら妹は流産した。 お見舞いに行くと「もうやっていけない」と言う妹。 浮気は知っていたそうだ… 574 :名無しさん@HOME:2008/04/30(水) 23 07 09 0 二人で泣いていると、そこに妹トメが来襲。 私には目もくれず 「あんたね、子供流したんだって? 最悪ね、まともに子供も産めないで… あーあ、私の孫がこんな所で殺されて(と妹の腹を小突く) 元々ろくでもない女だって知ってたけど」 私「おトメさん、ご無沙汰してます。 ええ、ええ、◎◎家の家名に泥を塗った妹はこちらで引き取らせていただきますわぁ」 と言うとムッとする妹トメ。 「あんたは休んでなね、ちょっとこの人と話してくるから」 と問答無用で妹トメをトイレに連れ込む。 「黙ってきいてりゃ好き放題言いやがって、このくそババァ。 流産したのはてめーのくそ息子が浮気したから、てめぇが散々いびり倒したからだ馬鹿。 なーにが◎◎家だ、そんなにいい家なら家系図でも持ってきな。あ? 鼻くそつけてお返しするわ」 とあおるあおる。 妹トメプルプルして「この女…妹が妹なら姉も姉だ!」 「はーい、嫁いびりして孫殺した人殺し鬼クソババァになんて何言われてもナンマンタマングォ~」 (バカ殿で研ナオコがやってた。ちなみに「生卵」と言っていて 最後の「ングォ」で顔を伸ばして白目をむく) 「人聞きの悪い事言うな!○子の腹が不良品だったんだ!」 「さよーでっかー、じゃババァとくそ息子の頭はちょんちょこりん」 妹トメ「それ以上言うと…」 私「アイーーーン」(顔真似付き) かっとなった妹トメ私にビンタ。 575 :3:2008/04/30(水) 23 08 32 0 「いやああああ誰かーー!殺されるーー!いやあああ!」 駆けつけてきた看護師さんや患者さんが目にしたものは おびえた顔で倒れつつ、逃げようと這いずる私と、気が動転して逃げ出す妹トメ。 妹トメの背中に向かって「逃げたって無駄よ!訴えてやる!」 ビンタ位で…と思うかもしれないけど大丈夫。 倒れた時洗面台にヘッドバッドしましたからね… すぐに治療してもらって、診断書とって、弁護士入れて訴える気満々。 幸い妹は浮気の証拠も持っていた、というかクサレ妹夫隠してなかった。 クサレ夫と浮気相手から慰謝料とって、けがの治療費&慰謝料も取って きっちりすっぱり別れられましたわぃ。 最初ごねてたけど、 さくっと「早く決めないとお前のだいしゅきなママを訴えて前科つけるぞ」 とアドバイスしたら早かったね。 妹宅の荷物を持ち出す際、包帯1巻き使って頭ぐるぐる巻きにして行き、 興味本位、ではなく引っ越しのあいさつに見えた方々に 大変wktk、そしてkwskされたので長々と雑談。 妹トメ「もう私外も歩けない!」と泣き叫ばれたが、 弁護士さんに「人の口に戸は立てられないですからねぇ」とバッサリ。 あのド田舎でどうやって暮らしてるんだがwww せいぜい苦しめ、鬼共。 583 :名無しさん@HOME:2008/04/30(水) 23 20 40 0 573 ┃┃¨╋┓殿GJ しかし糞トメ+流産のコンボって多いのか… やるせないな~ 次のお話→576
https://w.atwiki.jp/jnffzmkb/pages/20.html
Vol.6 金儲けのことと一緒になるとちょっといやらしい気もするけど 今朝のニュースでもJSをターゲットにしたきせかえカードゲームとファッション業界のこと特集してました 若い女の子にとって、普段自分たちが周りからどんな風に見られているかは なにをおいてもまず第一位の関心事であるそうですね 気になる関心事の一番目というのはよくわかります とにかく女の子はかわいらしく見られたいんだよね だからかわいくなるために費やす努力やエネルギーにはすごいものがあるよね そして今は昔と違っていろいろ技術も進歩してるし 流行なんかのスピードもどんどん早くなっているから しっかり取り組まないとどんどんおいてかれるからね。大変だけど頼もしいね!! ガールズメーカーエタニティライン/JELLY読モ 二重アイテム 二重がクセづけ 人気商品ここ! New DROPeyes/小悪魔ageha掲載 ふたえ変身 二重の幅に悩む子 迷ったらココ! Cute eye maker/末広 ふたえグッズ S級キープ力 真実はここから! ここまで見てみてね EYEMAZING 涙袋美容液/水溶性コラーゲン配合 二重変身 しわも防止 気になる人ココ 情報満載!スマホ携帯掲示板
https://w.atwiki.jp/83452/pages/18575.html
予定の焼き肉屋に到着すると、 既に純ちゃんと和ちゃんと紬さん、そして何故かさわ子先生まで来ていた。 神出鬼没と言うより、嗅覚がすさまじいのかもしれない。 それにしてももう35歳くらいのはずだけれど、 焼き肉なんて食べて胃腸は大丈夫なんだろうか。 純「憂、あんたすごく失礼なこと考えてる顔してるよ」 それから少し待ち、梓ちゃんが駆けつけた。 結局律さんが最後である。 もしかしたら全員が集まるまで、どこかで待機、あるいは監視しているのかもしれない。 お祭り好きの律さんのことだ、夜の待ち合わせに遅刻することは考えにくい。 朝だったら平気で寝坊するし、昼も昼寝ですっぽかすことは多いけれど。 純「憂……」 憂「なあに?」 純「……いや、なんでも」 もう全員集まった。 ただの遅刻でないのなら、そろそろ律さんは現れるはずだ。 梓「律先輩遅いね」 焼き肉屋さんの壁際にしゃがみこんで、梓ちゃんが気だるそうに言う。 今日も仕事だったのだろうか。 憂「うん……寝てるってことはないと思うけど」 梓「へえ、なんで?」 憂「今日、病院に寄ってそのまま来るらしいから」 梓「病院? またなんで律先輩が」 憂「えっと……」 その理由は、私から梓ちゃんに話すべきではないだろう。 律さんと澪さんの問題を伝え聞いたからといって、 それをべらべら言いふらすのは間違っても私のような者がとる行動ではない。 憂「よくわからないけど、病院なんだって。澪さんが言ってたから」 梓「ふぅん……まあ転んだとかだろうけど」 憂「そうかな?」 苦笑して、もう少し待つ。 しかし五分しても律さんは来なくて、澪さんが心配して電話をすることにした。 わざわざ少し離れたのは、変化した律さんの声をみんなに聞かせないためだろう。 私はさりげなく、お姉ちゃんのそばに行った。 会話が他のみんなに漏れないように、顔を近づけて耳打ちするように言う。 憂「律さん、やっぱり……怖いのかな」 唯「うん……今までのりっちゃんじゃないんだもんね」 お姉ちゃんは俯く。 その言い方にはかげりがあった。 たぶんお姉ちゃん自身も律さんが変わってしまったことを悲しんでいるのだと思う。 憂「お姉ちゃんは平気?」 唯「平気って?」 憂「性転換して、いろんな人との関わり方が変わっちゃうの。怖くない?」 唯「うーむ」 お姉ちゃんは顔を上げ、澪さんの方を見た。 電話はまだ続いているみたいで、澪さんは呆れたふうに腰に手を置いている。 唯「……いっそ、リセットしちゃうのがいいかもね」 憂「……え?」 唯「どうせ遠くに住むんだよ。だったら人間関係ぜんぶ洗い流したほうがいいかもって」 唯「それに、憂がいたら、私にはそれで十分だし」 憂「私だってそうだよ。だけど」 お姉ちゃんの言っていることは、なにかおかしくないだろうか。 繁華街に流れるぬるい夜風とともに、そんな感情が歩く。 憂「……いやだな」 とにかく、こうして集まった場で、みんなと縁を切ることなんて考えられない。 わがままは承知で、首を振った。 憂「お姉ちゃんだけじゃ嫌ってことじゃないけど、でも」 唯「憂」 お姉ちゃんが私の目を射抜き、言葉を遮った。 唯「生き方を変えるっていうのは、それぐらいのことだと思うよ」 憂「……うん」 結局、頷いてしまう。 胸の奥にもやもやを抱えたまま、私はお姉ちゃんを信じるしかなかった。 澪さんがぱちっと携帯を閉じる音がした。 澪「あと3分くらいで着くそうだけど、待てる?」 お姉ちゃんが時計を見る。 予約はしてあるけれど、まだ遅れて問題はない。 唯「うん、平気だよ」 お姉ちゃんが頷く。 澪「にしても……」 澪さんは私たちを見て、頬を緩める。 澪「近いな、二人とも」 唯「エヘヘ」 つられてお姉ちゃんも笑った、その瞬間だった。 澪さんの後ろから、見覚えのある顔がすっと現れた。 憂「あっ」 輝かしいお日様のような色をした瞳。 高い鼻立ちに、いたずらっぽく笑っている口元。 輪郭は少し尖ったけれど、顔のパーツはほとんど変わっていない。 律「……いっても、私はもっと近くにいるぞ」 律さんがささやくと、澪さんの顔がぐわっと歪んで、 澪「いゃああああああっ!?」 ちょっと蒸し暑いほどの街に、冬の海風みたいな高い悲鳴が上がった。 その悲鳴でみんなも振り向いた。 後ろの方から、強い警戒心が放たれているのを感じた。 純「み、澪先輩!」 明るい茶髪も、髪型はともかくそのままなのに、 前情報が無いとそんなに律さんだと気付けないものだろうか。 純ちゃんが駆けだして、澪さんの肩を抱いてこっちに連れてくる。 あわあわ言いながら連れていかれる澪さんも澪さんだと思った。 律「いや、あの」 でも確かに、だぼっとした服を着た律さんの姿は男性に見える。 澪さんはまた少し背が高くなったというのに、 さっきの律さんは背伸びした様子もなく、澪さんの背後から顔を出した。 いくぶんか、澪さんに並ぶかそれ以上にまで背が高くなったのだ。 すっかり変わって、男性にしか見えない律さんがおろおろ歩み寄ってくる。 純「近づかないで!」 律「ちょっ」 梓「そうですよ、このチカン!」 律「お前わかってて言ってるだろ?」 そろそろ止めよう。 憂「もしかして、律さん?」 みんながいっぺんに私の方を見た。 律「……やっと気付いてくれたか」 唯「りっちゃんなの?」 お姉ちゃんも私の演技に乗る。 澪さんが事前に伝えてくれなかったらどうなっていたんだろう。 律「ああ、わたしだ……うんっ」 喋りにくそうな声だ。 やっぱり途中で咳ばらいが出る。 律「……おれだ。田井中律」 律さんはそう言い直した。 喧しい街の中、ここだけ静かなように感じた。 律「あぁでも、りっちゃんでいいぞ。今は」 唯「う、うん」 お姉ちゃんも曖昧に頷く。 顔を見た一瞬は何も違和感がなかったのに、 律さんを見るほど、律さんが喋るほど、言葉にしがたい気持ちが胸の中でうずくまる。 紬「……ねぇ、いったんお店に入らない?」 紬さんが提案する。 外で解決しようとするには、この問題は大きすぎる。 私たちはひとまず、焼き肉屋さんにそろって入ることにした。 律「澪、立てって」 澪「ああ、ぁ……」 律さんに手を取られて、うずくまっていた澪さんがむりやり引っ張り上げられる。 こうして律さんが澪さんを引っ張っていくのは昔からよく見られた光景だけれど、 いま、なんとなく違和感があったのはどうしてだろうか。 律さんはきっと、私たちの前では女性らしく振舞っていたのだろう。 たとえ男性的な行動を取る時でさえも、自分が女の子であることを意識していたのかもしれない。 さっきの律さんの手の取り方が、本当の律さんの手の取り方なんだろうか。 わたしにはわからない。 もしかしたら今の違和感は、律さんが男の演技をしているせいなのかもしれない。 もちろん、ただ私が本当の律さんを知らなかっただけかもしれない。 確かなのは、私には律さんや澪さんを悪く言うことなんてできないということ。 いや、悪く言ってはいけないのだ。 そうすれば私はまた、お姉ちゃんを苦しめることになってしまうのだから。 奥の座敷に通され、二つの七輪が埋め込まれた卓をみんなで囲んだ。 私の右隣はお姉ちゃん、左隣に澪さんが座り、その隣には律さんが腰を下ろした。 前には梓ちゃん、純ちゃん、和ちゃんに紬さん、少し詰めてさわ子先生が座る。 すでに卓にはやたら高いお肉が並んでいたけれど、 純ちゃん以外はいくつも並んだ皿に目を向ける気はないようだった。 唯「いったん、さ……りっちゃんから、みんなに説明してよ」 唯「ごはん食べるのは、それからにしよう?」 律「よし、わかった」 律さんが頷く。 そして、すっと立ち上がった。 律「まあ、見ての通り私は……俺は、男なんだ」 また言い間違えて、律さんは指をまごつかせた。 律「性同一性障害って、たぶん知ってると思うけど、それだったんだ」 みんなは黙って律さんの顔を見つめていた。 なんと言っていいのか分からないのは当然だろう。私は一対一でさえ何も言えなかった。 律「今のところ、正確には男の体にはなれてないけど……その、なんだ」 律さんはそんなみんなの顔を順繰りに見ていって、ふっと笑った。 律「どうやらそれなりに男に見えるみたいで、嬉しかったよ」 律「さて……」 澪「待て、律」 それだけ言って座ろうとした律さんを、澪さんが制する。 一緒に立ちあがった二人は、やっぱり同じくらいの背丈になっていた。 澪「それからなんだけど。私と律はつきあっているんだ」 毅然とした顔で、澪さんが言う。 さわ子先生だけが、少し表情を歪めた。 ここにいるみんなは、ほとんどが私とお姉ちゃんの件でそういうことには免疫がある。 おそらく私たちがみんなにこの関係を内緒にしていたら、 澪さんはここでカミングアウトすることはできなかっただろうと思った。 澪「性転換が認められたら、正式に籍を入れるつもりでいるけど……」 澪「もうどこかの二人みたいに、気持ちとしては結婚するつもりだ」 律「ああ、そうそう。そういうわけだから、よろしくな」 二人は軽い感じに言った。 私は正直なところ、心の底で苛立った。 澪さんは、本来の結婚とは社会的に認められる行為だと言った。 ならば、国に認められた結婚だったら、こんなふうに軽い気持ちでしていいというのか。 たとえ男性と女性の姿や性別であっても、普通はもっと覚悟があって、慎重になる。 深く考えていないふりをしているだけかもしれない。 それでも、反感をおぼえてしまうのは仕方がなかった。 せめて心の内だけにとどめて、細く息を吐いた。 憂「……はい、わかりました」 律「ん、よろしく」 唯「りっちゃんでいいんだよね?」 律「ああ。唯の呼びたい呼び方でいいよ」 唯「じゃありっちゃん座ろう? みんなもいいよね?」 お姉ちゃんがテーブルの向かいにいるみんなの顔を見ていく。 純ちゃんはお肉からちらっと顔を上げる。 梓ちゃんは、そんな純ちゃんの胸のあたりに目をやりながら、小さく頷く。 紬さんと和ちゃんは、憮然とした表情のまま、手指をむず痒そうに動かす。 さわ子先生は腕組みをして、深く頷いた。 和「……まあ、仕方ないわよね」 やがて和ちゃんがぼそりと言った。 仕方ない。 律さんは生まれ方を間違ってしまった。 もとは男性なのだから、まるで同性愛のように見えるけれど、気にしても仕方のないこと。 糾弾することはできない、ということだ。 紬「……うん、それがほんとのりっちゃんなら、私たちは気にしないから」 紬さんは悲しそうな目で笑った。 それでようやく、律さんと澪さんはこの場にいることを許されて、 ゆったりと座布団の上にお尻を落ちつけることになった。 純「さ、じゃあ、焼きましょうか」 待ってましたと言わんばかりに純ちゃんがトングを手にした。 唯「だね! いっぱい食べていいよ!」 そして私たちは、初めて会うような律さんが醸す違和感をせめてごまかせるように、 初めて食べるような高い高いお肉を網に乗せては炭火で焼き、胃袋におさめていった。 8
https://w.atwiki.jp/bitchgirls/pages/114.html
03-952 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 33 32.14 ID fRw2Bq6q 1/12 「悪いけど付き合えない」 目の前の男は私こと丹羽明美に信じられないことを言った。 放課後、新校舎と旧校舎の間で私とそいつは向かい合っている。 「な、なんで!?」 曰く、私の交友関係が気に食わないらしい。別にいいじゃん、五股でも……いや今は六だっけ? 愛されるならたくさんの人に愛されたいし、そんな私とデートしたり一緒に寝たりするのなんて光栄じゃない。 まあ、なんか勘違いした男が浮気するなとか言うけど、そういう奴一人で私が満足できるわけないし。 「俺は帰るけど、もっと人の気持ちをわかるようになった方がいいよ、丹羽さん」 そう言って、男(そういや名前知らなかった)は鞄を持ち直して帰っていった。 「んー……」 まずい。 何がまずいってあの男に振られた事じゃない、最近目に見えて告白の成功率が下がってる事だ。 髪型もいわゆる清楚系だし、顔も良い、ついでに身長も150台後半で女としてちょうど良い、なら問題は…… 下を見ると学生服がスっと下まで伸びていた。問題はこれか。 いや、でもこの胸はやっぱり私の唯一の短所として必要でしょ。完璧な女じゃ逆に近寄りづらいだろうしね。 どうせさっきの奴も恋人がどうとか言いつつおっぱい星人だっただけだ。私は悪くない。 「よしっ! 帰ろう!」 野良犬にかまれたと思って私はこれを忘れることにした。急に空いちゃった予定は彼氏でも呼び出そう。 03-953 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 36 48.22 ID fRw2Bq6q 2/12 「うあー最近男日照りー……」 彼氏は七人共(よく考えたらあと一人居た)バイトとか何かで昨日は会えなかった。 私を独りにするとか彼氏共は何を考えているんだろう。今度一人一人に高い貢ぎ物を請求しよう。 というわけで昨日寂しい夜を過ごし、涙で枕を濡らした私は机の上で伸びていた。 「それ、私への当てつけ?」 「ひかりは彼氏いないのがアイデンティティだから良いじゃない」 丸められた国語の教科書が頭に降ってきた。 「痛いじゃない」 「私の心はもっと痛い」 すこんっと良い音を響かせてまた叩かれた。こんなんだから彼氏できないのよ。 彼女は園山ひかり、何というか長いこと一緒にいる親友のようなものだ。 「っていうか明美、彼氏居なかったっけ? ……それも十人くらい」 「今はもう七人……」 すこんっ 「まだ七人でしょ、いい加減一人に絞りなさいよ」 「愛するよりも愛されたいマジで」 すこんっ 国語の教科書でこう何度も叩かれるとちょっとイラッとするけど、まあつきあいも長いし大目に見てやろう。 「ほら、あのお金持ってる大学生とかサッカー部の主将とかいたでしょ」 03-954 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 39 54.65 ID fRw2Bq6q 3/12 「二人とも振られた……」 「え、そうなの?」 「浮気するなんて最低だーだって」 思い出すだけで腹が立つ、私くらい美人なら浮気しなきゃほかの男に失礼でしょ。 「あーあんたが悪いね」 「なんで!?」 ごすっ 「……~~!!」 国語の教科書の角で叩かれた。畜生覚えてろよ…… 「当たり前でしょ、あんたはアラブの石油王か」 私より恋愛経験の少ない(ここ重要)ひかりに説教される覚えはないのだが、叩かれた頭が痛くてしゃべれない。 その後もひかりは、日本ではどうのとか、浮気がいけないだとか、一般論で私がだめな理由をくどくどと話す。 「全く、あんたは相手のことを考えることを知りなさい」 またそれだ、私だってちゃんと考えてるのに、なんでそんなことを言うんだろう。 「……じゃあ、どうすればいいのよ」 「どうするって言うか、浮気しなければいいのよ」 ぺちんっ こんどは私が叩いた。ひかりの頭はあんまり良い音がしない。 「……理由を聞きましょうか」 「ひかりはぜんっぜんわかってないね、私みたいな女の子とおつきあいしたい男の子なんていっぱい居るんだから」 「で、その男の子は付き合ってどうしたいと思ってるかわかる?」 03-955 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 43 01.60 ID fRw2Bq6q 4/12 「ヤりてーっておもってる」 「……ごめん、あんたってそういう子だったね」 む、なによそのかわいそうな物を見る目は。 ひかりの考えていそうなことは、どうせ古くて凝り固まった価値観なんだろうけど、この顔はちょっとムカつく。 「はぁ……どうしてこの子はこんな風に育っちゃったんだろう」 「なによーじゃああんたの言うとおり一人に絞ってやってやるわよ」 飽きるまで。 「じゃあ一人に絞らないとね、今つきあってる男から?」 「うん、じゃああいつにしよ、ほらバンドやってる……」 私は携帯をとりだして彼氏フォルダを開いてメールを立ち上げる。 「え、今送るの?」 「どうせいざとなったら新しい彼氏作ればいいっしょ」 <他に好きな人ができましたさようなら> 「っと、はい一斉そうしーん」 飽きた男にはいつもこう送ることにしている。大体どんな奴かとか聞いてくるけどそんなのは無視だ。 「あれ、明美……」 「ん?」 ひかりが不思議そうな顔をして私を見る。なによ、あんたがいったんじゃない。 「一斉送信って、そのバンドやってる彼にも……」 「……あっ」 気づくと同時に送信完了の文字。 「送られちゃった……」 血の気が引く、というのはこういう状況なんだろうか。一気に体温が下がったような気がした 「ええっ!? 間違って送ったってすぐ送らなきゃ! って明美?」 「……いやな夢を見たの、付き合ってる彼氏全員にお別れのメールを」 すこんっ ……はい、わかってます。夢じゃないですよね。 ああ、どうしよう。 03-956 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 46 10.40 ID fRw2Bq6q 5/12 <ふざけんなよビッチが> 放課後、そんなメールが届いて七人目の彼氏が他人になった。 「くおお……」 まさか誤送信だって言い訳したらそこから浮気がバレるとは…… しかも全員からビッチと言われて別れる羽目になるとは思わなかった。 誰に振られようがどうでも良いけどタイミングが悪すぎる。 まさかこの私が、世の男に愛を(性的な意味で)振りまいている私が、彼氏ナシになるなんて…… 「明美ー、何とかなった?」 ぺちんっ 元凶が明るい調子で話しかけてきたので数学の教科書を丸めて叩いてやった。 「うううー……あんたのせいよ、ひかり」 「あー、だめだったかー、まあ彼氏居ないのもさ、なれれば悪くないわよ」 「なれたくないーオメコに蜘蛛の巣が張るー」 こうなったら繁華街でおっさんでも捕まえて……やっぱ止め、おっさんの裸想像したら吐き気してきた。 「こうなったら今から彼氏作るわよ! ひかりに彼氏ができるくらい今はあり得ない状況だし!」 「あんたの中であたしはそういう位置づけなのね……もうつっこまないけど」 そうと決まれば教室の男子に片っ端から話しかけなきゃ。 「……って、あれ?」 男がぜんぜん居ない、というか私とひかりの他に二、三人しか人が居ない。しかも女の子だけ。 おかしいなと思って時計を見ると、放課後になって三十分位たっていた。そりゃ人もいないわ。 「男全員帰っちゃってるじゃない!」 すこんっ 数学の教科書を取られてそのまま一本取られた。 「なぜ叩かれたの私」 「いや、男居るから」 ひかりが指した指の先には、教室の隅でイヤフォンしながらラノベを読んでるオタク(名前知らない)が居た。 03-957 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 48 22.97 ID fRw2Bq6q 6/12 「いやいやひかり、人間には三つ性別があってね、男と女とオタクね、ちなみにオタクは恋愛市場から……」 すこんっ はい、わかってます。 「オタクかー……」 彼氏が居なくて今ものすごい緊急事態とはいえ、この私がオタクと付き合うとか有って良いのかな? 「どうせあんたのことだから、オタクと付き合うとかあり得ないとか思ってるんだろうけどね」 う、図星…… 「ぐぬぬ……わかったわよ! あいつにする!」 そういって私は勢いよく立ち上がる。 ひかりの想像通りにさせるのは何か癪だし、彼氏増やすまでのつなぎだと思えば…… 大股でオタク(やっぱり名前知らない)の机の前まで歩いていくと、机に手を叩きつけてこちらを向かせる。 「え、何……丹羽さん」 オタクはあわてた様子でラノベを閉じて、イヤホンを耳からひっこ抜いた。 「あんた、私と付き合いなさい!」 「う、うん、いいけど……」 よし、彼氏ゲット! 丹羽明美、彼氏居ない歴五分以内でストップ! 03-958 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 51 27.19 ID fRw2Bq6q 7/12 未だにポカンとしているオタクから目を背けてひかりに視線を送る。ひかりも唖然としていた。 「あんたの度胸には毎度のこと驚かされるわね」 「断られるわけないんだからさっさとやればいいのよ」 今回なんかもてなさそうなオタクだし、チョロいもんよ。 オタクの方は読んでいた本を鞄にしまって、帰るための準備を始めているようだ。 「いや、一人に絞るって話の後だったからてっきり厳選するんだと思ってたのよ、あたしは」 「あ」 いかん、忘れてた。 いやまだ大丈夫、そんな自分で決めたルールでもないのに律儀に守る方がどうかしてるのよ。 そう、明日にでも別の彼氏を作ってあのオタクと別れれば問題ない。 「あんたまさか……」 「えーと、丹羽さん、俺はどうすればいいかな?」 「と、とりあえず! カラオケいくわよ! えーと……」 そのまんまオタクって呼んでも良いけど、なんというか眠そうな顔と妙に柔らかい雰囲気といい…… オタクっていうより、どこかの癒し系ゆるキャラみたいな奴だ。 趣味は完璧オタクなんだろうけど。 「岡沢だよ、丹羽さん」 語呂良いし、こいつのあだ名オタ沢で決定。 「そういうわけだから、じゃあね、ひかり」 不安そうに私達を見ているひかりに手を振って空いてる方の手でオタ沢の手をつかんで私は教室から出ていった。 03-959 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 52 32.15 ID fRw2Bq6q 8/12 まさかカラオケで時間いっぱいまで歌い続けるとは思わなかった。 「楽しかったよ、ありがとう」 まあ私も結構歌ったけど、女の子と、しかもこんな美人と一緒にいて変な気を起こさないとかマジで変な奴だ。 早速ヤるのもちょっとがっついてるようでイヤだけど、フェラくらいはしてあげても良いかなーと思ってたのに。 そんなわけで夜の駅前を二人で歩いてるわけだけど、今まで付き合ってきた男となんか違うんだよね、こいつ。 胸チラしても押しつけても恥ずかしがるだけだし、そんな嫌悪感もないし彼氏なんだから襲ってきてもいいのに。 「ところで丹羽さん、付き合ってって言われたからそうしたんだけど、用事って何だったの?」 「は?」 なに言ってんのこいつは。 「いやいや、用事って何? 付き合ってるんでしょ、私達」 「え……えええ!?」 オタ沢が本気でビビってる声を上げる。 もしかしてこいつ「恋人として」じゃなくて「用事があるから」だと思ってたのか? ってことは、さりげなく彼氏居ない歴数時間……? 「いいから付き合いなさい、私と! 恋愛感情を持って!」 「え、いや……でも俺、丹羽さんの事全然知らないし」 「いいから! 私だってあんたみたいなオタクの事全然知らないから!」 「そんな、お互い知らない人同士で付き合うなんて、なおさらダメだよ」 ああ、こいつのことよくわかんないけど、これだけは分かるわ……一緒にいるとイラつくタイプだ。 「あーもー、分かったわよ! 今日のはデートじゃなくてただ遊んだだけ! それでいいでしょ!?」 「ちょっ、丹羽さん!?」 回れ右して自分の家の方向に足を向ける。彼氏は居なくなるし変な振られ方するし、今日は厄日ね。 後ろでオタ沢が何か言ってるけど、私にはもう興味も何もなかった。 03-960 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 54 32.10 ID fRw2Bq6q 9/12 ああ、今日は本当に厄日だ。 今までそういう事がなかった訳じゃないし、ていうか半年に一回位あったし、そこまで怖いわけじゃないけど。 「明美さぁ、俺言ったよな、浮気したら絶対許さないって」 「はぁ……だから別れたんでしょ?」 近道しようと思って通った公園の真ん中、目の前には四人の男、まあ多分やることはヤることなんだろうけど。 「それだけじゃ気が収まらねえんだよ!」 「……ってちょっと、離しなさいよ!」 男のうち一人が私の腕を掴む。 「なんだよ、いいじゃんどうせ浮気してたんだし、俺らにも抱かせろよ」 「なんで付き合ってもいないあんた等に抱かれなきゃいけないのよ!」 残りの三人も私の腕を掴んだり服を脱がせようとしたり、強い力で私を押さえつけてくる。 数回経験してるとはいえ、慣れる訳じゃないし、怖くない訳じゃない。 さらに付け足すならこういうのは優しくしてくれないから嫌いだ。 「うるせえな、何か口につっこんで黙らせちまおう、どうせ口は使えねーし」 そう言うと元彼の男は手持ちのスポーツバッグからタオルを取り出して私の口にそれを押し込んできた。 あまりに強く押し込まれた所為でのどの奥からカラオケ店で食べた物が上ってきて苦しい。 口の中いっぱいにタオルが詰め込まれると、次は私を引きずって茂みの奥へ向かい始める。 ああ、結局今回も犯されちゃうんだ。 私は力を抜いた。どうせマグロになってればつまらなくなってすぐ終わるから。 03-961 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 56 07.56 ID fRw2Bq6q 10/12 「お、こいつようやく観念したか、さっさとヤっちまおうぜ」 ああ、ひかり……うらむからね、あんたを。 「へへっ、その後どうするよ?」 「まあ俺んち連れ込んでセックス三昧だな、おまえ等も参加していいぜ」 え、ちょっと待って、ここでヤって終わりじゃないの? 「おっと、動くなよ、どうせやること同じなんだから抵抗したって無駄だぞー」 いつだったか、家で監禁されてそのまま犯されまくって死んじゃった事件を思い出した。 これはやばいって、今までのよりずっとやばい、死ぬ。 さっきまで力を抜いていた体にもう一回力を込めて、必死に体を動かす。 「や、やめろおまえら!!」 裏がえりがちの声がその場に響いた。 「……なんだお前」 見ると、足がガクガクふるえているオタ沢が居た。 「い、いやその……そう言うことは良くないと……って宇わっ!?」 話の最後の方に進むに従って語気が弱くなり、挙げ句の果てオタ沢が歩き出すと同時に足をもつれさせて転んだ。 一瞬でも助かると思った私がバカだった。 「ハハハッなんだこいつ、バカじゃねえの?」 バカっていうかヘタレっていうか……あ、でもこれなら…… 03-962 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 56 57.38 ID fRw2Bq6q 11/12 「あっ!? 待てよこのアマ!」 気が抜けたのか、呆気にとられたのか、私を押さえつける男の力がゆるんでいたので、私は遠慮なくふりほどいた。 そして、遠慮なく逃げる。いやあ生きてるって素晴らしい。 「え、ちょっ、逃げるの!? 丹羽さん!?」 「ちっ……お前、責任はとれよ……」 「うわわ、ご、ごめんなさいっ!」 「ごめんで済んだら警察はいらねえんだよ!」 「ぎゃああ! 警察必要なの俺の方……ゆ、許してー!!」 そんな会話が聞こえてきたが、そんな物は無視だ。 03-963 :明美と岡沢:2011/12/24(土) 03 57 36.06 ID fRw2Bq6q 12/12 「ってわけで昨日はあんたの所為でひどい目にあったのよ……」 「いわゆる身から出た錆じゃない」 昨日は本当に災難だった。 彼氏は居なくなるしオタ沢と付き合ったと思ったら自覚してなかったし、元彼とその取り巻きに襲われかけるし…… 「で、結局彼氏は作れなかったのね」 「うん、でもしばらく男はいいかな、ちょっと今回はさすがにあぶなかったし、いろいろ冷静になる」 彼氏いない歴は更新しちゃうけどね。 「あ、丹羽さん、おはよう、あの後大丈夫だった?」 声のした方を向くと、顔半分がガーゼで埋まってるオタ沢が居た。 「うわっ!? 岡沢君どうしたのその顔!」 「あーうん、でもしばらく関わらない方がいいよ、あんたも昨日みたいなのはゴメンでしょ?」 ひかりは無視して、私はオタ沢に言ってやった。 相当かっこわるいとはいえ、助けてくれたんだし、忠告くらいはしてあげよう。 「でも俺たち付き合ってるんでしょ? それおかしくない?」 「え?」 何で? ていうか付き合ってすら居なかったじゃん。 「別れた後しばらく考えたんだ。そんでつきあい初めてからお互いのことを知るのも悪くないなって思ってさ」 結果はこれだけどね、と付け足してオタ沢は笑う。 ってことは、私って今彼氏居る状態? 「……岡沢君、君って本当に良い人だね」 「ふーん、まあおもしろいし、オタ沢くらいなら付き合っても良いか、よろしくね」 涙を拭くジェスチャーをしているひかりはほっといて、私はオタ沢に笑いかけた。
https://w.atwiki.jp/translate_mystery/pages/41.html
作品名 誰がわたしを殺したか 書影 原題 The Bones of You 作者名 デビー・ハウエルズ 訳者名 真崎義博 解説 あらすじ ナイフで全身を切り裂かれ、森の奥に横たわり、死にかけている18歳のロージー。ニュースキャスターの父を持ち、恵まれた家庭で育った彼女が、なぜこんな目にあったのか、彼女の意識は徐々に凶行の瞬間から過去へと遡ってゆく。一方、事件を知った隣人のケイトは、偶然知ったある出来事をきっかけに事件の真相を追う。やがて少しずつ明らかになるロージー殺害の犯人とその原因とは? ケイトが行き着いた意外過ぎる真相と、その哀しすぎる原因とは? 出版社 早川書房 形態 ハヤカワ・ミステリ文庫 刊行日 2016/10/6 レビュー 名前 コメント