約 1,667,675 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/670.html
武器屋に入っていくルイズ達を、キュルケ一行は影から観察していた。 「武器屋・・・?何しに行くのよあの子達」 「そりゃあ武器屋なんだから武器を買うんだろう?」 「普通はそうでしょうけど ルイズはメイジじゃない」 キュルケとギーシュがひそひそと話をしていると、 「ギアッチョ」 本を読みながら短く答えるタバサ。その言葉にキュルケが納得している横で、ギーシュはビクンと震えている。 それに気付いたキュルケが、 「ギアッチョ」 と呟くと、ギーシュは小さく「ひぃっ」と声を上げて縮み上がった。 「タバサ・・・コレどーにかならない?」 呆れた声でタバサに助力を求めるキュルケに、 「無理」 少女は簡潔かつ明瞭な答えを返した。 絹を引き裂くような悲鳴が聞こえたのはその時である。 ドグシャアァッ!だのドグチア!だのメメタァ!!だの何やら不穏な物音と共に、 「痛いって痛ギャーーーーーーーーッ!!」という大声が響いた。 音の発信源である武器屋にキュルケ達が眼を向ける。悲鳴と物音はなおも続き、 「ちょ、待って待って痛いから!ホント痛いからコレ!ね! 一旦落ち着こう!ってちょっとやめェーーーーーーーッ!!」 というどう聞いても被害者のものと思われる声に 「逃げてー!デル公逃げてーー!!」 という野太い声が重なり、「剣が一人で逃げられるかボケェ!!ってイヤァァァーー!!」 律儀にツッこみを返す先ほどの声、そしてその後に 「ちょ、ちょっと!何やってるのよギアッチョ!!やめなさいってば!!」 と何かを制止する少女の声が聞こえ、キュルケ達の99%の予想は100%の確信へと昇華した。 「・・・あの使い魔もなんとかならないかしらね・・・」 口の端を引きつらせるキュルケに、 「絶対無理」 簡潔な絶望を以って返答するタバサだった。 ちなみにギーシュは、あっけなくその意識を手放していた。 物音が聞こえなくなって数分、ルイズとギアッチョが武器屋から出てきた。 ギアッチョの手には古びた剣が鞘ごと鷲掴みにされている。 店主と思われる男が顔を出すと、 「生きろデル公ーーー!!」 と叫んでいた。 「デル公?」 誰の事だろう。キュルケがそう思っていると、ギアッチョの持っている剣がひとりでに鞘から顔――のように見えなくもない鍔――部分を露出させ、 「離せ!いや、離してくださいィィィ」とか「ゴミ山でもいいから俺を捨ててくれェェェ!」とかわめいている。 「インテリジェンス・ソードじゃない・・・また変なもの買ったわねルイズも」 当のルイズは、全力で魔剣から目をそむけていた。合掌。 「なぁ!ちょっと考え直そうぜマジに!剣買うなら安くてつえーの紹介すっからさ! 別に俺である必要はないわけじゃん?こんなオンボロよりもっと若くてイキのいいのが沢山あんだって!な!」 なおもわめき続けるインテリジェンス・ソードにギアッチョは目を落として言う。 「なるほど一理あるな・・・」 「だろ!?だったら早く俺を返品しt」 「でも断る」 「何ィィ!?」 ギアッチョは喋る剣を胸の高さに持ち上げて続けた。 「てめーはどうやらなかなか頑丈みてーだからよォォ~~ 武器兼ストレス発散装置として活用させてもらうとするぜ」 一片の光明も見出せないその返答に、デル公の微かな希望は崩れ去った。 「・・・ところでよォォ~~」 ギアッチョが急に声を大きくする。 「今日は大所帯じゃあねーか え?キュルケ いつまでコソコソ覗いてんだ?」 その言葉にキュルケの心臓が跳ね上がる。気付いていた!?いつから!? 「最初から」 と呟くように答えて、タバサは物陰から抜け出した。 「気付いてて放置してたってわけ・・・?これじゃまるでピエロじゃない」 こめかみを押さえて一つ溜息をつくと、未だ覚醒しないギーシュの首根っこを引っつかんで、キュルケは青髪の少女に続いた。 「キュ、キュルケ!?・・・に、ええと・・・タバサ・・・とギーシュまで どうして!?」 いきなり現れた三人にルイズは面食らっている。まさか見つかるとは思っていなかったキュルケは、そのストレートな質問に 「ど、どうしてって・・・えーと・・・」 しどろもどろで言い訳を考える。そして数瞬の沈黙の後、 「・・・そっ、そうよ!あなたが使い魔に振り回される所を見物しに来たのよ!」 と言い放った。 「な、なんですって~!?いくら暇だからって随分悪趣味なのねあんたって!!」 売り言葉に買い言葉で喧嘩を始める二人をやれやれといった眼で眺めるタバサがふとギアッチョに眼を向けると、同じような眼でルイズ達を見ていた彼と眼が合った。 「本題」 ギアッチョがキレる前にさっさと片付けようと思ったタバサは、そう言ってから身の丈よりも長い杖でポコンとギーシュの頭を叩く。 「あいたッ!もっと優しく起こし・・・ん?」 その衝撃で眼を覚ましたギーシュは、キョロキョロと辺りを見回し。汚い路地裏に倒れている自分を見、そしてその自分を眺めているギアッチョを見て―― 魔剣もかくやと言わんばかりの悲鳴を上げた。 「「ちょっと、うるさいわよギーシュッ!!」」 ルイズとキュルケの見事なハモりに、「ヒィッ、すいません!」と思わず直立しようとしてしまったギーシュだったが、松葉杖が手元になかったせいで見事にスッ転んだ。 見かねたタバサが、物陰に捨て置かれていたそれをレビテーションで持ってくる。 「あ、ああすまない・・・」 タバサに礼を言って松葉杖をつかむと、ギーシュは今度こそ立ち上がり、 バッチィィィン!! 自分の顔を思いっきりひっぱたいた。その音に驚いたルイズ達が喧嘩をやめてギーシュを見る。 「・・・よ、よし 気合は入った・・・ッ」 強く叩きすぎたのか、フラつきながらもギーシュはルイズへと歩き出す。 「な、何・・・?私?何の用・・・?」 状況を把握出来ていないルイズの前に立ち、ギーシュはおもむろに松葉杖を投げ捨てた。 そして支えを失ってバランスを崩しながらも彼は地面に膝をつき―― 「ラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに、グラモン家が四男ギーシュ・ド・グラモンが謝罪申し上げる!!」 ガツン!!と石畳に頭を打ちつける。 「申し訳ないッ!!僕が悪かった・・・今までの侮辱、どうか許して欲しい!!」 ルイズ達はあっけにとられていた。キュルケやタバサも、ギーシュはどうせギアッチョにビビって適当な礼もそこそこに逃げ戻ってくるだろうと思っていたのだ。 彼に家名と誇りをかけた謝罪をする決意があったなどと、夢にも思わなかった。 「ちょ、ちょっとギーシュ!何やってるのよ・・・もういいわ!顔を上げて!」 ルイズが慌ててしゃがみこむ。 「許してくれるかい・・・ルイズ」 自分を立ち上がらせようとするルイズに、ギーシュは頭を地面につけたまま問う。 「・・・ええ ヴァリエールの名にかけて」 「・・・・・・ありがとう」 そこまで言って、ギーシュはようやく血に塗れた顔を上げた。ルイズに肩を借りて 立ち上がると、ギーシュはギアッチョに向き直る。相変わらず膝は笑っているが、 その眼に迷いはなかった。 「・・・ギ・・・・・・ギアッチョ 僕は君にも謝罪しなければならない」 しかし口を開きかけたギーシュを、 「待ちな」 ギアッチョは押しとどめる。 「やれやれ・・・どーやらよォォ~~・・・ ケジメをつける『覚悟』だけはあるらしいな」 「ギアッチョ・・・ 謝らせてくれ、僕は」 というギーシュの言葉に被せてギアッチョは続ける。 「別にこいつの従者になったつもりはねーが・・・元はといえばオレがルイズの 使い魔として受けた決闘だ てめーはいけすかねぇ貴族のマンモーニだが・・・ 貴族として貴族に謝ったってんならよォォーー 平民に謝罪なんかするんじゃあ ねえぜ」 意外なギアッチョの言葉に、ギーシュは二の句が継げなかった。 「その代わり、だ 平民は平民らしくよォォーー てめーのツラを一発ブン殴って 終わりにさせてもらうぜ」 「・・・ギアッチョ・・・」 ルイズもギーシュも、この場の誰もが驚いていた。しかしギーシュはすぐに理解した。 まだよく分からないが、きっとこれが『覚悟』なのだと。貴族としての『覚悟』に、彼は 平民として応えてくれているのだと。 「・・・分かった・・・来たまえ、ギアッチョ!」 ギーシュはにこやかにそう答え、 トリステインの青空に、派手な音が鳴り響いた。 ギーシュは、学院へ向かって飛ぶシルフィードの背中で、風竜の主に問いかけた。 「・・・タバサ 『覚悟』って一体何なんだろう」 タバサは本からちらりと眼を外すと、 「意志」 一言短く、しかしはっきりと答えた。それが何を指すのか、ギーシュにはやはりまだ 分からなかったが――彼は今、不思議とすっきりした気分だった。 ==To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1506.html
ルイズメモNo.12-使い魔について- あの決闘から一週間が過ぎた。 意外にも、最大の懸念事項だった謹慎は無し。 ハゲ曰く、「怪我人が出なかったから今回だけは許す」らしい。 けれど、もしモンモランシーが機嫌を直していなかったら、ギーシュは確実に死んでたわね。 何かの陰謀を感じなくもない。だとしてもわたしに出来ることは特にないけど。 それよりもセッコね。格闘が強いのはうすうす判ってた、 けど岩を操ったのは何だろう?直接聞いてみたけれど答えは要領を得ない。 セッコは朝わたしを起こして、朝食を食べるといつの間にかいなくなる。一体どこへ行っているのだろう?要検証ね。 一応呼ぶと現れるので、それほど遠くへは行ってないみたい。微妙に感覚共有ができているのかも、そうだとしたら喜ばしいことだわ。 ふと思って「来い」と念じてみた。来る様子はなく、肩を落とす。しかし声に出して呼ぶと、いつも通りすぐにやってきたわ。意味がわからない。これも要検証。 気になることが多すぎるので一日使ってセッコを監視することにする。 他の使い魔達を連れて厨房に餌をたかりに行っている。やっぱり足りてないのかしら? 信じられないものを見てしまった。セッコはともかくとして、ドラゴンとジャイアントモールが食材の搬入を手伝っている。誰の使い魔か知らないけど意地汚いわね。 中庭でギーシュと話している。妙にギーシュの腰が低いのは気のせいだろうか。 ギーシュが錬金したとおぼしき棍棒をセッコが振り回している。もしかして武器が欲しいのかしら?今度の休みにでも何か買ってあげよう。 その間ギーシュは横で震えている。その様子は実に面白い。 思ったよりあいつは人望がある。わたしのよく知らない子と普通に会話していた。ハシバミ草愛好会って何なのかしら? 部屋に戻るといつの間にかセッコが戻ってきていた。謎の鎧のような服の手入れをしている。「大事なもんだ、何に使うかは忘れたが。」と言っていた。 呼べば来るけど念じても来ない謎が遂に判明。単にわたしの声を聞いていただけみたい。目がいいのに、耳もきくってのは珍しい。才能ね。 不思議な事も言っていた。硬い物を持つと身が軽くなる?理解できない。けど嘘ではなさそう。 「起きろー」 うるさい 「起きろぉー」 まだ眠いのよ 「起きろおおおお」 今日は休日じゃない 「起きろつってんだろおおおおおおおおおお!」 「ああ……おはよう」 そういえば、今日は買い物に行くから早く起こせって言ったんだわね。 「オレも行くのか?」 「当たり前じゃない、というかあなたの武器を買いに行くのよ。」 「うー」 ひどくやる気のない面でこっちを見ている。 「付いて来るなら飴を一缶買ってあげるわよ。来ないなら当分おやつ抜き。 もう一度聞くわね。付いて来るかしら?」 「うおお、うん、うん!」 いつもながらこの扱いやすさは評価できるわ。 「ならさっさと行くわよ。」 「うん。」 タバサはセッコの事が気になっている。 召喚した次の日、普通にハシバミ草を食っていたこと。 自分の使い魔である風韻竜シルフィードと妙に仲がいいこと。 そして……決闘で見せた不思議な、見たこともない戦い方。 しかも昨日はサイレントを掛け、かなり後ろからつけていたのにわたしに気づいて話しかけてきた。修行が足りないだろうか。 勘は鋭いが頭は良くないようで、適当にごまかしたら納得していた。 そうだ、今日は虚無の曜日だ。休みを満喫すべく図書館に向かうことにする。 部屋でゆっくり読もうと本を2冊借りて出てくると、窓から馬で町へ出て行くセッコと主人ルイズの姿が見えた。 どうも気になる。 ……空で本を読むのも悪くないか。そう自分を納得させシルフィードを呼んだ。 「きゅい?」 「馬2頭。食べちゃダメ」 「きゅいきゅい!」 あら?よく見たらセッコちゃんなのだわ! たぶん町へ行くのよね、ついでだし乗せてあげちゃおうなのだわ! シルフィってなんて友達想い! 「シルフィード?」 タバサが気づいた時既に遅し。シルフィードは、セッコとルイズのすぐ横まで急降下していた。 「きゃあああああああ!何?何なの?」 ルイズはあまりのことに落馬してしまった。 まあ、いきなり横にドラゴンが降りてきたのだ。 驚くなという方がどうかしている。 「いたた、セッコ生きてるかしら?」 ……あら? 「うおっ、おおおっ」 「きゅい、きゅっきゅ!」 「うん!うん!」 「きゅいい!」 「おあ、おうおう!」 「きゅいきゅい!」 腰をおさえながら起き上がったルイズが見たものは。 意味不明な言葉でドラゴンとコミュニケーションを取るセッコと、ドラゴンの背中でプルプルと震えている同級生の姿だった。 しかも……あのドラゴンは確かに校舎の裏手で食材を運んでいた奴だ。 「早い、早いわ!さすがドラゴン!」 横でルイズがはしゃいでいる。キュルケ並みに騒がしい。 「おっおっ」 「きゅい!」 シルフィードとセッコが何か言い合っている。はあ、何でこんなことに。 まだまだ「教育」が必要みたい。 (……シルフィード) (なに?) (帰ったらあれよ。) (な、なにもわるいことしてないの!喋れることもばらしてないの!) (追跡対象は今乗せた2人。) (……) 「タバサ、だっけ。ありがとう。凄く助かったわ。」 「いえ、別に。」 元は乗せるつもりなんかなかったのに。 「あれ、どこ行くの?」 「用事。」 もう頓挫したけど。 ……せっかく街まで来たんだし、秘薬屋に足を伸ばそうか。 「帰りも乗せてもらえる?」 「……」 シルフィードとセッコはまだ何か話し?ている。 害はなさそうだし、乗せてもいいか。 「ここで待つ。」 「ありがとう。タバサ」 タバサとわかれて武器屋を探す。どこだったかしら…… 「狭い道だなあ~」 え? 「ここが一番広いのよ?それはそうと、スリには気をつけなさいよ。」 「わかった。」 セッコを呼び出してかなり経つ。でもわからない事が多すぎるわ。 こいつ自体記憶喪失なんだから、どうしようもないのだけれども。 「見えたッ!チクリと見えたぜ!」 セッコが指差した先には何も見えない。何言ってるのこいつ。 「剣の看板!」 「どれよ」 「その先だ、オメー目が悪いぞぉ。」 あなたが良すぎるのよ。 100メイルほど歩くと確かに剣の看板であることが分かった。 そういえばこんな場所だったわね。 「こんにちはー」 店の中は薄暗く、乱雑に剣や槍や甲冑が並べられていた。 店の奥に座ってパイプを銜えていたヒゲ親父が、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめ、口を開く。 「旦那。貴族の旦那。うちは真っ当な商売してまさあ。 お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや。 「失礼ね、客よ。」 「こりゃおったまげた!貴族が剣を!おったまげた!」 「使うのはわたしじゃないわ、使い魔よ。 後、剣よりもハンマーとかメースとか、頑丈で重いものがいいのだけれど。」 店主がよく見ると、少女の後ろに変な鎧を着た男が立っている。 確かに力は強そうだ。 「困りましたなあ、うちは剣と槍が専門でしてね、 殴る武器はそれ、そこの護身用の棍棒しかありませんや。」 指した先を見ると、0,5メイルほどの貧相な棒が数本吊ってあった。 「うーん、さすがにこれはちょっと。」 ですよねー。 といった表情でヒゲ親父が何か考えている。 「ああ、そういえば物凄く頑丈な奴が居ますぜ、片手剣ですがね。 値段も新金貨で50もあれば十分でさあ」 「いいじゃない。」 「ただ、少々素行に問題がありまして。」 「素行……?」 突然、奥に積まれていた剣の山から低い男の声がした。 「何が素行に問題ありだ馬鹿親父!おめえと比べたら清廉潔白もいいとこだぜ!」 「やい!デル公!黙ってろって言ったろうが! せっかくてめえを売り込んでやろうと思ったのによ!」 「デル公って呼ぶなっつーたろう!デルフリンガー様と呼べ!」 「へえ、インテリジェンスソードじゃない。口は悪いけど。」 ルイズは妙に興味が湧いた。 「こいつの喋る以外の能力って何?」 「強いて言えば、硬いことですねえ。切れ味は悪いですが。」 「どのぐらい?」 「頑丈さだけなら、ここにある何よりも上でさあ。」 嘘は言ってない。あの外見と罵詈雑言がなきゃ業物で通るだろう、と店主は思う。 もっとも、その欠点のおかげで数十年売れてないのだが…… 「よさそうね、セッコ。ちょっとあの声の主を拾ってきて。」 「うん。」 「本人を無視して勝手に話を進めるなバカヤロー!使い手は自分で選ぶぜ!」 「黙ってろデル公、また話がこじれるだろうが!」 「うわっ変態!俺を掴むな!おめえなんかに使われてたま……ん? おでれーた!てめ、[使い手]じゃねえか!」 セッコは思った。この五月蝿さはともかく、持ち易いし丈夫そうだ、と。 「サビてるわね。」 「ええ、サビてはいます。」 「今にも崩れそうに見えるんだけど。」 「「そんなことはねえ」」 セッコと剣の声が重なった。 「そうかしら。」 素手でワルキューレの腕を捻じ切ったセッコが言うならそうなのかもしれない。 そうだ、いいことを思いついたわ。 「セッコ」 「何だ」 「その剣を、えーとデルフリンガーだっけ?思い切り殴ってみなさい」 「ちょおまやめ」 剣が何か言っているけど気にしない。 「……わかった。」 セッコが剣を机に置き、思い切り腕を振り下ろす。 ドッボオォォ 「UGYAAAAAAAAAAAA!」 物凄い音と聞くに堪えない叫び声がして、金属でできた机が凹む。しかし、剣は汚い叫びを上げはしたが無傷だった。 刃を横から叩くなんてことをしたら、普通の人がやっても折れて当たり前だ。 しかしこいつは……あのセッコに机が凹む勢いでぶん殴られても、曲がってすらいないのだ。 これはきっととんでもない掘り出し物に違いない。 「これに決めたわ。サビは見逃してあげる。新金貨50でいいのよね?」 「へえ、ありがとうございます。ところでですね。」 「何よ」 「あの……机の修理代を……できればでいいんでがすが……」 店主は泣きそうな顔で縮こまっている。正直哀れだ。 「いくらよ」 「新金貨20……」 ヒゲ親父はデルフリンガーを凄い勢いで振り回すセッコをちらりと見て、更に怯えた表情になった。 セッコにしてみれば、新しい玩具が手に入ったから遊んでいる、 その程度なのだろう。しかしこの状況ではほとんど脅迫といっていい。 「いや、15でいいでさあ。」 ちょっと哀れかもしれない。 それにこの剣はなかなか使えそう。もう少し払ってやってもいいわね。 「わかったわ。合計65枚ね。」 ヒゲ親父の顔がぱっと輝いた。 「へい!まいどありい! あと、もしあまりにもこいつが五月蝿いようなら、 鞘に入れれば大人しくなりますぜ。鞘はサービスでさあ。」 ……普通鞘は最初から剣についてるもんじゃないのかしら?まあいいけど。 デルフリンガーを振り回すのを止めさせ、鞘に突っ込む。 何か言いかけたけど、とりあえず無視が一番ね。 勝手に出てこないように厳重に紐で縛ってからセッコに持たせた。 おそらくセッコが使う分には、抜き身でも鞘に入ってても変わらない。 それに、このインテリジェンスソードはずいぶん性格が悪そうだ。付き合ってられないわ。 「学院に帰るわよ、セッコ」 「待て、飴一缶。」 すっかり忘れてた。危ない危ない。 「そういえばそうね。菓子屋に寄ってからタバサを探しましょ。」 飴って砂糖を沢山使うから高いのよね。クッキーとかじゃあダメなのかしら? ま、約束しちゃったものは仕方ないか。あ、菓子屋ってどこだっけ。 その頃、武器屋の店主は満面の笑顔でルイズたちを見送っていた。 デル公の厄介払いも素晴らしいが、せしめた机の修理代のおかげで笑いが止まらない。 鍛冶である己の技術をもってすれば、この程度の修理朝飯前である。 今日はもう休みにし、ゆっくり酒でも飲もう。どうせ客はめったに来ないのだ。 飴を買って最初に降りたところまで戻ると、既にドラゴンとタバサが待っていた。 セッコは後ろで買ってやった飴をバリバリと噛み砕き食べている。 飴は舐める物じゃないのかしら?まあいいけど。 「ありがとう、タバサ。待っていてくれたのね。」 「待ったのはシルフィード。」 「きゅい!」 「似たようなものよ。とりあえず帰りましょ。」 それにしても、キュルケのサラマンダーもあれだけど、風竜の使い魔とか、それに輪を掛けてうらやましすぎるわ。セッコが悪いとは言わないけど。 「きゃあああああ!」 突然シルフィードが急降下した。何、何なの? 「よぉーしよしよしよし!」 「きゅい!きゅい!」 セッコがシルフィードの頭をなでている。 その瞬間わたしは理解した……飴を投げて空中キャッチさせたのね。 「セッコ」 「シルフィード」 「「やめなさい。」」 「「……」」 一人と一匹が何が悪いのか理解できない といった表情でこっちを見る。 セッコを呼び出してから初めて、本気でぶん殴りたくなった。 ここが空中なのを思い出し、何とか抑える。ちらりとタバサを見る。 なんだか心が通じ合った気がしたわ。きっと気のせいじゃない。 風竜は速い。あっという間に馬を停めていた学院入口に到着する。 「今日はありがとう、助かったわ。これからもよろしく。」 「ちょっとした偶然。」 なんかわたし達を追ってきたように見えたけど気のせいよね。 気のせいということにしとこう。 「3個やる、3個!」 「きゅいきゅいきゅい!」 「「……」」 「セッコ、帰るわよ」 「……わかった。」 ルイズが去っていった後、本を読みつつ今日のことに付いて考える。 使い魔同士なんだか仲良くしているな、程度に思っていた。 とはいえ、シルフィードがセッコにあそこまで餌付けされているとは、想定の範囲外もいいとこだ。 やはり教育不足?まあそれは追っ付け叩き込めばいい。 それにしても……結局セッコの謎については全く不明のままだ。 かなり慎重に観察したのに。それも近くで。 もしかしてルイズが能力を隠させているのか?私のように。 それとも、記憶が? たしかキュルケはルイズと部屋が隣同士だったはず。暇な時に調べてもらおう。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/958.html
「サガ フロンティア」のブルー ゼロの使い魔・ブルー編-01 ゼロの使い魔・ブルー編-02 ゼロの使い魔・ブルー編-03 ゼロの使い魔・ブルー編-04 ゼロの使い魔・ブルー編-05 ゼロの使い魔・ブルー編-06 ゼロの使い魔・ブルー編-07 ゼロの使い魔・ブルー編-08 ゼロの使い魔・ブルー編-09 ゼロの使い魔・ブルー編-10 ゼロの使い魔・ブルー編-11 ゼロの使い魔・ブルー編-12 ゼロの使い魔・ブルー編-13 ゼロの使い魔・ブルー編-14 ゼロの使い魔・ブルー編-15 ゼロの使い魔・ブルー編-16 ゼロの使い魔・ブルー編-17 ゼロの使い魔・ブルー編-18 ゼロの使い魔・ブルー編-19 ゼロの使い魔・ブルー編-20 ゼロの使い魔・ブルー編-21 ゼロの使い魔・ブルー編-22
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1603.html
ラ・ロシェールで一番上等な宿、「女神の杵」亭に泊まる事にした一行は、一階の酒場でだらだらしていた。 さすが貴族を相手にするだけあって、隅々まで掃除が行き届き、テーブルは床と同じ一枚岩からの削り出しで輝いている。 そこに、「桟橋」へ乗船の交渉に行っていたワルドとルイズが帰ってきた。 ワルドは席に着くと、困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに・・・」 ルイズは口を尖らせている。ギーシュの瞳が輝いている。セッコは首を捻った。 「なんで隔日なんだあ?アルビオンてのは、そんなに田舎なのかよ。」 ワルドが答える。 「明日の夜は月が重なるだろう?[スヴェル]の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく。」 ワルドは、まるでこれが完全な答えだ、と言わんばかりの様子だ。 「・・・おあ?」 横でキュルケがなるほどと頷いているものの、セッコには完全に意味不明である。 考えるのをやめた。 「さて、今日はもう寝よう。部屋を取った」 「キュルケとタバサが相部屋だ。そしてギーシュとセッコが相部屋」 ギーシュが怯えた。 「僕とルイズは同室だ」 ま、婚約者ならなあ。 ルイズが反論する。何でだろ? 「そんな、ダメよ!まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない!」 「いや、大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 「・・・わかったわ」 「女神の杵」で一番上等な部屋。そこでワインを傾けながらワルドとルイズは話していた。 「姫殿下から預かった手紙は、きちんと持っているかい?」 ルイズはちょっとふくれた。 当たり前よ。もう子供じゃないんですから。 むしろ不安なのは、手紙を書きながら見せたアンリエッタの表情。 あれはもしかして・・・いや間違いないわ・・・ 「・・・ええ」 「心配なのかい?無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」 「そうね、心配だわ・・・」 「大丈夫だよ。きっとうまくいく。」 「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね。で、大事な話って?」 ワルドは何処か遠くを見つめている。 「覚えているかい?あの日の約束。ほら、きみのお屋敷の中庭で・・・」 「いやだ、そんな変な事ばっかリ覚えているのね。」 「そりゃ覚えているさ。君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、デキが悪いなんて言われてた。」 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。ワルドは言葉を続ける。 「でも、君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラを持っていた。 それは、きみが、他人にはない特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃない。だからそれがわかる」 ルイズにはなにがなんだかわからない。 「まさか」 「まさかじゃない。たとえば、そう、きみの使い魔・・・」 「セッコがどうかしたの?」 「そうだ。彼の身のこなし、そして武器をつかんだときに、左手に浮かび上がったルーン・・・ あれは、ただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説・・・?」 「そうさ。あれは、[ガンダールヴ]の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」 ワルドの目が鋭くなった。 「ガンダールヴ?」 「誰もが持てる使い魔じゃない。君はそれだけの力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ・・・」 ルイズは考え込んでしまった。確かにセッコは不思議だ。 変な格好をしているし、異常に目と耳が鋭いし、素早いし、不思議な力を持っている。 命令には忠実だし、悪い奴には見えないが、幼児のように無邪気で適当で残酷だ。 記憶のことも含めて謎が多すぎる。しかし、いくらなんでも伝説の使い魔とはとても思えない。 そういった神聖なものにしては、馬鹿すぎる。 そしてわたし。どう考えても魔法に関しては落ちこぼれだ。考えたくないけどゼロだ。 ワルドが言うようなことはやはり納得できない。 「きみは偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように、 歴史に名を残すような、すばらしいメイジになるに違いない。僕はそう予感している。」 ワルドの表情が熱っぽいものに変わる。 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 「え・・・」 いきなりのプロポーズに、ルイズは固まってしまった。 「で、でも・・・」 「ルイズ、僕にはきみが必要なんだ」 「ワルド・・・」 ルイズは俯いた。再びセッコのことが頭に浮かぶ。あんなのでも一応男だし、ワルドと結婚してしまったら側においておくのは問題だろう。 その時、わたしのコントロールを離れたセッコはどうなるだろう? セッコに信頼されているらしいタバサか、あるいはオールド・オスマン辺りが手綱を握ってくれるかもしれない。 けれど、もしそれがされなかったら? 理由もなく不安感が募る。でも・・・ 「どうしたんだい、ルイズ?」 ワルドが心配そうに私を覗き込む。 「あの・・・その・・・わたしまだ・・・」 「急がないよ、僕は」 「いえ、あのそういうわけじゃ・・・」 「いいさ、今返事をくれとは言わない。でも、この旅の間に君の気持ちを傾けてみせる。もう寝ようか、疲れただろう」 ルイズは再び俯いた。 ワルドは優しくて凛々しいし、もちろん憧れだ。でも、まだ早すぎる。 特に何か理由があるわけではない、そんな気がするのだった。 その様子を窓に貼り付いて眺めていたキュルケは呟いた。 「随分と純情ねえ、あのワルドって人。」 てっきり押し倒すとばかり思ったのに、残念。 ワルドとルイズがキュルケに観察されていたその頃。 セッコとギーシュとタバサはそのまま酒場で雑談しつつ食事をしていた。 しかし・・・ 「よく、君たちはそんな同じものばかり食べ続けられるねえ、ヒック。」 酒が回ってきたギーシュが辟易とした調子でくだを巻いた。 「そうかなあ。」 「・・・」 甘苦く、なんともいえない匂いが高級酒場の一角に漂っている。 「甘いのもう一皿くれえ。」 「はしばみ草サラダのラ・ロシェール風」 「は、はい。かしこまりました」 ウェイトレスの声もやや引きつっている。 ギーシュは右を見た。 セッコは生地が崩れるほど蜂蜜を塗ったホットケーキを貪っている。 気分が悪くなった。 正面を向く。 タバサがはしばみ草をドレッシングもかけずに頬張っている。 見ただけで口の中が苦くなった。 「もう、勘弁してくれぇ~!!」 翌朝。 目を覚ましたセッコが日課となっているスーツの手入れをしていると、ドアがノックされた。 ギーシュの方を見ると、二日酔いなのか伏せて唸っていた。 仕方なくスーツを着てドアを開ける。 「おはよう、使い魔くん」 ワルドが羽帽子を被って立っていた。 失礼な奴だなあ。部屋の中では帽子を取れよ。 「なんかあったのかあ?」 ワルドはそれには答えず、にっこり笑って言葉を続けた。 「きみは伝説の使い魔[ガンダールヴ]なんだろう?」 なんだこいつ? 「違う。オレはセッコだ」 「いや、そういう意味じゃない。左手のルーンの名前さ。」 「あー。それがどうかしたのかよ?」 そんなにこの印は目立つもんなのか? 確かにスーツの上まで浮き上がってるけど。 面倒なもんなら手袋でもするかなあ。それとも誰かに聞いたのかあ? いくらなんでも昨日今日でタバサが言うわけがねえ。言ったのがヒゲ校長だとしたら最悪だ。 そんな嫌がらせみたいな事ないと思いてえ。 「僕は歴史と、兵に興味があってね。フーケを尋問したときに、君に興味を抱き、王立図書館で君の事を調べたのさ。 その結果、[ガンダールヴ]にたどり着いた」 ・・・手袋決定。今すぐでも欲しい、面倒事なんか大嫌いだ。無かった事にしてえ。 「でだ、あの[土くれ]を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 「てあわせ?」 「つまり、これさ」 ワルドが腰に差した剣と杖のあいのこを引き抜いた。 「今ここでえ?」 「そうだ。この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったんだよ。 中庭に錬兵場があるんだ」 「いや、そういうことじゃねえし」 「ん、ああ、大丈夫だ。寸止めするし、きみの心配したようなことにはならんさ」 本当かよ。まあ体動かすのは好きだけどなあー。 「わかったよお」 「それでこそ男だ」 変な奴だなあ。 セッコとワルドは、今ではただの物置と化している錬兵場で向かい合った。 「昔・・・かのフィ・・・王が・・・」 ワルドが何か歴史的なことを言っているが、セッコには当然理解できない。 「でだ、立ち会いには、介添え人が必要なんでね。もう呼んであるが。」 なんかめんどくさい事になってきた。全力で断るべきだったかなあ。 と、物陰からルイズが現れた。 「セッコ!何やってんの!ワルドは味方なのよ!」 はあ? 「いやちげーし!オレ悪くねえ!向こうからやろうってきたんだって!」 「え、嘘、ワルド?」 ワルドは頷いた。 「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」 「もう、そんなバカなことやめて。今は任務中よ!」 「そうだね、でも、貴族というやつは厄介でね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」 「セッコもやめなさい!」 「ちょっと遊ぶだけだってえ。」 「ああもう、仕方ない人たちね!殺しても殺されても潜ってもダメよ!」 「わかった。」 「ちゃんと加減するから大丈夫だよ。安心して、僕のルイズ」 ワルドは首をかしげた。・・・潜るとは一体? 考えてもわからない。 「では、始めるとするか」 ワルドは腰から杖を抜き身構えた。 セッコは鞘に入ったままの剣を構えた。 「おや、抜かないのかい?」 「加減するつったのはテメーだろお。」 ワルドが電光の様に突きを繰り出す。セッコがそれを力任せに弾き返す。 「たいした怪力だな、だが隙だら・・・うおおおおおっ!」 本来死角のはずの場所へ飛びこんだワルドに、セッコの後ろ蹴りが襲いかかる。 「そうかなあ?」 間一髪で跳び退りワルドが体勢を立て直す。 「やはり、魔法無しでどうにかなる相手ではないか、[ガンダールヴ]よ」 「パワーなら負けねえぜ、多分なあ。」 セッコの単純かつ強力な大振りの攻撃をなんとかかわしつつ呪文を唱える。 これをかわさず受け止めたら、間違いなく杖か腕が折れてしまうだろう。 むしろ、こんな使い方をされて、損傷しない剣の正体の方がワルドには恐ろしかった。昨日見たときは、刃が錆びていたように見えたが。 一体どんな材質に固定化をかければこんな荒っぽい使い方に耐えうるのだろう? 「デル・イル・ソロ・ラ・ウィンデー・・・」 ボンッ! 詠唱が完了し、空気が撥ねた。巨大な空気のハンマーが剣を弾き飛ばし、 セッコ本人をも10メイルほど吹き飛ばして、そこに積んであった樽に叩きつける。樽がガラガラと崩れ落ちた。 ワルドは素早くセッコの剣を踏みつけた。 「勝負あり、だな。きみではルイ・・・」 ドボォッ! だが、ワルドは最後まで発言することができなかった。 セッコの投げつけた樽が今度はワルドを彼方に吹き飛ばす。杖を取り落とさなかったのは奇跡といっていい。 「思ったよりつええじゃねえか、帽子のおっさんよおおおお。」 セッコがゆっくりと剣を拾い上げ、鞘から抜いた。足元の地面が微妙に沈む。 「すまない、舐めすぎていたようだ。今度は全力で行かせてもらうよ」 起き上がったワルドはセッコから距離をとり低く、低く詠唱を開始した。 「ユビキタス・デル・ウィ・・・」 「いい加減にやめて二人とも!秘密任務を何だと思ってるの!」 その様子を見ていたルイズは、慌てて間に割って入り叫んだ。 「うおあ、冗談、冗談だよおルイズ。」 「失礼、ちょっと興奮してしまった」 二人はなんとか正気を取り戻した。 「俺様には、とてもちょっとした冗談に見えなかったけどな」 抜かれたばかりでその前の状況を理解してないデルフリンガーが呟いた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/791.html
なかなか戻ってこない二人に、ルイズ達は焦りを感じていた。 本当にここで待っていていいのか? 彼らの後を追わなくていいのだろうか? 口には出さなくとも、彼女達の表情が如実にその心境を表していた。 シルフィードで上空から様子を見るか? とタバサは考えたが、恐らく木々に阻まれて何も見えないだろうと思い直し、その案を却下した。 そんな風に皆が皆ギアッチョ達の方に気をとられていた為――彼女達の背後で聞こえていた、ズズズと何かを引きずるような集まって行くような音を意識する者はいなかった。 最初に気付いたのはタバサである。経験から来る何かがゾクリと警鐘を鳴らしたのを感じて、彼女は後ろを振り向いた。 そこにあったのは、もはや八割方完成しつつあるあの大ゴーレムであった。 そしてタバサより遅れること数瞬、同じく振り返ったキュルケが驚愕の声を上げ、その声でルイズがようやく後ろを振り向いた時には、ゴーレムの形成部位はもはや一割以下を残すのみだった。 「あっははははははははは!!」 ついに完成したゴーレムの肩で高笑いをあげる女性に、三人の眼は釘付けになる。 ミス・ロングビルと名乗っていたその女性は、今や正体を隠そうともせずに彼女達を見下ろしていた。 「ふふふ・・・いいわねぇその表情 伝来の至宝を盗まれた貴族みたいないい顔してるわよ三人とも!」 心底楽しそうに言って、土くれのフーケはまた高笑いをする。 「騙したのね!!」 ルイズがキッとフーケを睨む。しかしフーケはニヤニヤと笑うのをやめない。 「ええ騙したわ」と愉快そうに返答し、なおも続けて挑発する。 「このままあんた達を潰しちゃっても面白くないわねぇ そうだ、先に一発攻撃させてあげるわ ほら、やってみなさいよ ん?」 完全にこちらを侮って挑発を繰り返すフーケに、ギアッチョではないがルイズはもうブチキレ寸前だった。しかしキュルケはそんなルイズを片手で制して、 「それ、嘘じゃありませんよね?ミス・ロングビル・・・いや、土くれのフーケ」 微笑を浮かべながら問う。 「失礼ね 私が約束を破るように見えるかしら?」 どの口がそれを言うかと思ったルイズだったが、キュルケはそ知らぬ顔で話を続けているので唇を噛んで耐えた。 「それじゃあ、お言葉に甘えさえていただきますわ」 ニッと笑ってそう言うと、キュルケはタバサに何事か声をかける。それを受けてタバサが手早く抱えていた箱を開け、キュルケに破壊の杖を手渡した。 「あっ!」 とルイズが驚くのと、 「な・・・!?」 フーケが驚愕するのは同時だった。キュルケはフーケが約束を反故にしないうちに詠唱を始める。 唱える魔法は炎と炎。炎の二乗で生成する、フレイム・ボールだった。 破壊の杖がどんなものかは知らないが、この魔法に破壊力がプラスされればフーケのゴーレムとてただでは済まないはずッ! 一瞬のうちにそう判断したキュルケは、破壊の杖をゴーレムに向け、魔法を発動させる! 「食らいなさい!フレイム・ボールッ!!」 「・・・・・・」 シン、と場が静まり返る。破壊の杖からは、炎の弾どころか火の粉一つ発生しなかった。 「あ・・・あれ?なんで?どうして?」 キュルケは焦って杖を上にしたり下にしたりしている。両脇の二人も、何故魔法が発動しないのか全く理解出来ないようだ。 フーケは怯えていた・・・ような演技からさっきまでの凶相に戻り、 「期待外れだわクソガキ共」 と吐き捨てた。 「なんですって・・・!?」 キュルケ達がゴーレムを見上げる。 「その杖ね、使い方が分からなかったのよ どうやら普通に杖として使うことが出来ないみたいでね で、メイジを呼び寄せて・・・使い方を盗んで殺すつもりだったんだけど やっぱダメねぇ」 「ガキなんかに期待したわたしがバカだったわ」と言って、フーケは今度こそ慈悲のかけらもない眼で3人を見下ろした。そして。 「じゃ、死になさい」 言うや否やゴーレムの鉄腕を振り下ろす! 「股下!」 タバサがとっさに叫んで駆け出す。キュルケとルイズがそれに続き、石人形の初撃は虚しく宙を打った。 柱のようにそびえる両の足の間をくぐると、後方でシルフィードが待機していた。 タバサはあの状況に流されることなく、使い魔に冷静な指示を送っていたらしい。 ルイズは改めて、このタバサという少女の実力を痛感した。 先頭を走っていたタバサが飛び乗り、それとほぼ同時にキュルケが飛び乗る。 「ルイズ」 タバサが最後尾だったルイズを促した。しかし―― ピタッ、と。ルイズは止まった。キッと後ろを振り向き、杖を握る。 「ちょ、ちょっとルイズ!何してるのよ!!」 キュルケが慌てて声をかけた。しかしルイズは振り返ることなく言う。 「あいつを倒すのよ!ゴーレムには歯が立たなくても フーケに直接魔法を命中させれば倒せるわ!」 キュルケは愕然とした。本気だこのバカは。 「何を言ってるのよルイズッ!!あの巨人の攻撃をかいくぐってフーケ本体に魔法を命中させるだなんて、そんな芸当私だって難しいわよ!! ここで逃げても誰もあなたをバカにしたりはしないわ!意地を張る必要はないのよ!ねえ!!早く乗りなさいルイズ!!頼むから早く乗ってッ!!」 キュルケは必死で訴える。ゴーレムはどんどんこちらに迫って来ている。 ルイズはカタカタと震えているが、それでも振り返らない。 「ルイズ!!」 タバサが珍しく語気を荒げる。ゴーレムはついにルイズを射程距離に捉えた。 「行って!」 ルイズが怒鳴る。キュルケも怒鳴る。タバサまで怒鳴った。そんな彼女らの状況など気にも留めず、ゴーレムが無慈悲に拳を振り下ろす! 「行きなさいよ!!」 と最後に大きく叫んで、ルイズは駆け出した。先ほどのタバサと同じ戦法で股の下をくぐる。タバサは一瞬苦虫を噛み潰したような顔を見せると、 「行って!」 シルフィードに指令を下す。間一髪、風竜はゴーレムの一撃を避けて飛び立った。 ルイズはゴーレムから距離を取って走る。射程範囲の外にいるうちに作戦を練ることにした。 ――プライドを、捨てる ルイズの考えた作戦は、それだけだった。長い詠唱で呪文を発動させても爆発するだけ。 何をやろうが爆発するなら、最短のコモン・マジックで魔法を乱発する! この速度の速さだけが、自分がフーケに勝っているものであるとルイズは理解していた。 今大事なのはプライドじゃない。そんなものを失うより、ギアッチョを失うほうがよっぽど辛い。よっぽど怖い。よっぽど、悲しい。 ルイズはごくりと唾を嚥下して、ふるふると首を振った。そうだ、それに比べればゴーレムなんて全然怖くない。バッと顔を上げると、ルイズは杖を握りしめてゴーレムへと駆け出した! 「一番最初に死にたいのはあんたかい!」 フーケの指示で、ゴーレムは三度腕を振り下ろす。ルイズはまたも足をくぐり抜けてそれを回避し、そして振り向きざま魔法を放った! 「ロック!」 ドウン!とゴーレムの背中で空気が爆ぜる。失敗だ。ルイズはすぐに気持ちを切り替え、振り向きつつあるゴーレムの足を前面からくぐり、ゴーレムの背面向けてもう一度ロックを唱えた。 今度はゴーレムの腰で爆発が起きる。失敗。 ――落ち着け・・・冷静に照準を合わせるのよルイズ・・・! うるさいぐらいに音を響かせる心臓を片手で抑えて、ルイズはまた足をくぐりに走る。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。 振り向く。放つ。失敗―― 「ちょろちょろとしつこい鼠だね!いつまでも同じ手が通用すると思うんじゃあないよ!」 しびれを切らしたフーケが、続けて下をくぐろうとしたルイズにヒザを落とす! 「きゃああっ!!」 直撃コースだった。無駄だと知りつつ、ルイズは頭を庇う。 ドッグォオン!! ・・・足が落ちてこない。何故?ルイズがゴーレムを見上げると、その頭からは白煙が上がっていた。 「フレイム・ボールのお味はいかがかしら!?」 ウインドドラゴンから身を乗り出して、キュルケが杖を構えている。 「もうちょっと濃いほうが好みだわねッ!」 フーケが叫ぶと、全然堪えた様子にないゴーレムがシルフィード目掛けて腕を繰り出す!器用に避け続ける風竜の上で、 「出来る・・・ことを するッ!!」 ギアッチョに言われたことを反芻し、2発、3発と火弾を放つ。その言葉にタバサもコクリと頷き、得意技のウィンディ・アイシクルを撃ち放った。 空から降り注ぐ炎と氷の雨はゴーレムの体にこそ穴を穿たないが、 その肩に立っているフーケは生身なのである。ゴーレムは両腕でフーケを庇い、その場に棒立ちになった! 一番危険なポジションであるゴーレムの真正面にいたルイズだが、 ――チャンスは今しかないわッ!! 素早く深呼吸をして、すっとフーケを見上げる。グッと杖を突き出して、全精神を集中させる。冷静に、照準を合わせる。わずか眼をつむり――開く。 「・・・・・・ロック!!」 ドッガァァアアァッ!!! 「命中した・・・!!」 爆炎は、フーケの立っている位置、そのド真ん中で炸裂した。 「・・・やった・・・!わたしでも勝てた・・・ッ!!」 ルイズは嬉しさで泣き出しそうだった。ゼロのルイズが、土くれのフーケに打ち勝った・・・! しかし――煙が晴れるにつれ、ルイズの感動は徐々に絶望へとその色を変えた。 煙が晴れたそこでは―― 岩で作った盾の影で、フーケが微笑みながらルイズを見下ろしていた。 「・・・そんな・・・」 ルイズが後じさる。 「あんたの速射に対して・・・いつまでも無策でいるわけがないでしょう?」 フーケが汗を垂らしながら笑う。ギアッチョ達に差し向けたゴーレムとこっちのゴーレム、そしてこの岩の盾で、フーケの力はかなり消耗されていた。 「一旦身を潜めるしかないかねぇ・・・顔を見られちまったのは残念だけど」 ふぅ、と溜息を一つついて、 「だが、こいつをあんたに食らわせる余力ぐらいは残ってるよッ!!」 フーケはギン!とルイズを睨んだ。 バゴァッ!! ゴーレムの胸から岩塊が一つ、眼にも留まらぬ速さで飛来し―― ルイズの左足がはじけた。 ギアッチョとギーシュは、木々の隙間にフーケの大ゴーレムの姿を認めた。 「・・・ヤ ヤバいよ、ギアッチョ!!」 フーケの騎士達から逃げ回りながら、ギーシュが叫ぶ。 「・・・くッ、こいつら僕のワルキューレより強い・・・!」 フーケのゴーレムに、ワルキューレは一体また一体と破壊されていた。 「やかましいぜマンモーニ!無駄口叩いても始まらねぇッ!!」 ギアッチョはその逆、一体、次、その次とゴーレムの首を刎ね飛ばしている。 ギーシュのワルキューレは残り五体。それに対して、フーケのゴーレムは同じ五体を数える。 「もう少し逃げ回ってな・・・ とっととカタをつけるッ!!」 袈裟斬りに振り下ろされた剣をかわし、そのままぐるりと回りこむようにしてゴーレムの後ろに回る。 一瞬の動きで腕を引き、ゴーレムの首を斬り飛ばした。 逃げ惑いながらもギアッチョの腕前に感心していたギーシュだったが、 「あ・・・ッ!?」 あることに気付き、心臓が跳ね上がった。 「ギッ・・・、ギアッチョぉおおぉ!!」 「やかましいって言ったろーがマンモーニ!!」 「それどころじゃあないッ!見るんだシルフィードを!!『ルイズがどこにも乗っていない』!!」 「何・・・だとォオォ!?」 ギアッチョはバッと飛び下がると、上空に視線を移した。確かに、ルイズの姿はどこにも見当たらない。 「――あのバカ野郎 まさか地上で・・・」 他の可能性を考える。見えてないだけでは?いや、それはない。 風竜がどんな体勢になってもルイズの姿は見当たらない。一人でこっちに向かっている? これもないだろう。罠が張られているかもしれないところにむざむざルイズを行かせるようなことをする奴らじゃあないはずだ。 妙な意地を張って地上で戦っている?これが一番ありえそうだ。ルイズはプライドが高い。 己の貴族としてのプライドの為なら、命を捨てる覚悟で戦いに挑むこともあるかもしれない。 そして最後の可能性。ルイズは、もう既に―― ギアッチョはギリっと歯を噛んだ。考えている場合ではない。自分がすべき事は一秒でも早くルイズの元へ駆けつけることだ。 ――ホワイト・アルバムを全開にするか? ギアッチョはこの場を一気に打開する方法を考える。 ――いや、それはマズい オレのホワイト・アルバムは刀やスーツを作る精密さはあるが、敵だけを選んで凍らせるといった器用さはない・・・ッ ギアッチョの顔が苦悩に歪む。そんなギアッチョを見て、ギーシュは一瞬・・・ほんの一瞬考え込み、 そして。 「・・・う・・・うぉぉおおおぉッ!!ワルキューレッ!!僕を軸にッ!矢じりのように並べェェェッ!!」 ワルキューレに号令を発した!ギアッチョはイラついた顔でギーシュを見る。 「何やってるんだてめー・・・黙って逃げてろってのがわかんねーのか!!」 しかしギーシュは壮絶な意思を持った瞳でギアッチョを睨み返す! 「行けギアッチョ!!ここは僕が食い止めるッ!!」 「正気で言ってんのかマンモーニッ!!てめーじゃ勝てねえのは分かってるだろうがッ!!」 「いいから行くんだッ!!」 ギーシュは怒鳴る。 「ここだ・・・!ここで、『覚悟』を決めるッ!!僕はここで、『覚悟』を身につけるッ!!」 ギアッチョはギーシュを見た。ギーシュの眼に、迷いや怯えはない。侮りも思い込みも、恐怖も後悔もない。ギーシュは今、ここで覚悟を知ってやると『覚悟』していた。 「・・・『覚悟』とは 犠牲の心じゃあねえッ! それだけは覚えておけッ!!」 自分を殺した男の言った言葉を、ギアッチョは今ギーシュに伝える。 そして言うが早いか、ギアッチョは後ろも見ずに駆け出していった。 ギーシュは彼に満足げに眼を遣ると、すぐにフーケのゴーレムに眼を戻した。 「いくよワルキューレ・・・『覚悟』を決めろッ!!」 ギーシュはそう叫ぶと、心の中でワルキューレに指示を出す。矢じりの隊形のまま、ワルキューレは右端のゴーレムに突っ込んだ! 先頭のワルキューレの斬撃をかわし、ゴーレムがワルキューレを真っ二つに切り裂く。 しかしギーシュはそれを見越していた。先頭のワルキューレがやられる前、既にその右後ろに陣取った二体目が、先頭のワルキューレの首に向かって剣を振るいはじめていた! 唐竹割りにされた自らのワルキューレの首を更に自分のワルキューレで薙ぎ、そのままフーケのゴーレムの首も刎ね飛ばす! 間髪いれず左側から襲ってくる二体目のゴーレムに、ギーシュの左前に構えていたワルキューレが突きを受けて倒れ――その影から、ワルキューレの槍を拾ったギーシュがゴーレムの首を突き飛ばした! 「肉を斬らせて――骨を断つ・・・か」 ギーシュはようやく気付いた。自分が負けていたのは、力の差があったからだけではない。 朝、オスマン達の前で仲間に頼らないと誓ったにも関わらず、ギーシュは知らず知らずのうちにギアッチョにべったり頼っていた。 自分のワルキューレが倒れるところは見たくない。ある程度の安全圏からサポートしていれば、ギアッチョがケリをつけてくれる。 そんな甘っちょろい考えが、ワルキューレの動きを、攻撃を、判断を、ハンパに鈍らせていたからだ。 それが理解出来たならば、例え相手がトライアングルとはいえ、完全遠隔操作のゴーレムなどに負けるわけがないッ! ギーシュは片手に槍を構えて、高らかに宣言する。 「これで僕のワルキューレは三体・・・お前達は二体だッ!! 僕は逃げない・・・お前達を恐れない そして侮りもしない!! 我が名はギーシュ・ド・グラモン!我が友ルイズの為、そして我が道の師、ギアッチョの為ッ!!今この場で、お前達を斬り伏せることを『覚悟』するッ!!」 自分で槍を握ったことなどないにも関わらず――その姿は雄雄しく、そして気高かった。 ギアッチョは走る。走りながら、何故自分はここまで必死になっているのかと考えた。 たった数週間前に知り合ったばかりのガキのために、何故オレは血管がブチ切れそうな勢いで走っているんだろうか。 ギアッチョは考える。オレが生きていた頃なら、こんなことはありえない。 こんなどっちつかずで下手をすれば両方を失ってしまうような判断はしないはずだ。 ――いや。そうじゃない。生きていた時の判断とは、つまり暗殺者としての判断ということだ。 そういうことじゃない。ハルケギニアにいるオレは、トリステインにいるオレは暗殺者じゃあない。使い魔だ。 「使い魔のギアッチョさんよォォ・・・おめーは何故走ってるんだ・・・?」 解らなかった。あらゆる感情の摩滅した世界で生きてきたギアッチョには、自分の心など解るはずもなかった。だが、理由は解らなくても一つだけ 理解していることがある。 あいつを死なせたくない、自分はそう思っている。それだけは解った。だから。それだけをともし火に、ギアッチョは走る。 デルフリンガーもまた焦っていた。こんな嫌な予感は何年ぶりだろう。 守ると誓ったばかりなのに。ルイズを守ると約束したばかりなのに―― 今朝までロクに会話も交わしたことがなかった娘だった。だがそれがどうした?そんなことは関係ないしどうでもいい。 自分はルイズを守りたいと思った。だから誓った。ならば自分はデルフリンガーの名にかけて誓いを果たす。それだけだ。 ・・・なのにどうして自分には足がついていないのか。デルフが今日ほど己を呪った日はなかった。 雑草の生い茂る地面ではホワイト・アルバムでスケートなど出来ない。 鬼のような形相で森を駆け抜け、小屋を中心に広がる空き地が目前に迫ったその時、ギアッチョとデルフリンガーがそこに見たものは、 「――バカな・・・」 左の足首を吹っ飛ばされて地面に倒れるルイズと、それを今まさに踏み潰さんとする巨大な岩の足だった。 何もおかしいことはない。十分予想していた状況だった。しかしギアッチョはそう言わずにはおれなかった。 そしてそれは、デルフリンガーも同じことだった。 「・・・嘘だろ・・・」 ギアッチョは足を止めない。茂みを掻き分け、空地に飛び込み、ルイズに向かって走り続ける。しかしその頭は、悲しいほど冷静に状況を計算をしていた。 ルイズまでの距離、25メートル。到達所要時間、約3.4秒。 ゴーレムの右足がルイズを踏み潰すまでの時間、2秒未満。 絶望だった。 「うおおぉおあああああああああああああ!!!!」 ギアッチョが絶叫する。いくら叫んだところで、いくら怒ったところで、もう辿り着けない。間に合わない。ルイズは――救えない。 何が最強のスタンドだ。絶対零度は全てを止める?じゃあやってみろよッ!!今ここで!!この距離で!!2秒以内にあいつを止めてみろよッ!! 怒りと無力さと絶望に駆られて、ギアッチョはただ叫ぶことしか出来なかった。 ――たとえ天が落ちてこようが・・・ デルフリンガーもまた、絶望していた。今朝誓ったことを、5時間も経たないうちに破ってしまう。 そしてその場を自分はただ眺めているだけ ――これほど滑稽なことがあるだろうか?デルフリンガーはただの剣だ。目の前で何が起ころうと、彼は常にただ見ていることしか、 この身が、砕け散ろうが―― 「――あ、ああ・・・ああぁああぁあああああああ!!!」 稲妻に打たれたように、デルフリンガーは思い出した。こいつは俺の『使い手』だと。そして、それだけで十分だった。 「ダンナッ!!俺を抜けェェェ!!!」 喋る魔剣は絶叫する。 「イカレてんのかてめーは・・・ッ!!少し黙って」 「いいから早く抜けェエェェェーーーーーーーーッ!!!!!」 鬼神の如きデルフリンガーの絶叫にギアッチョは尋常ではない『意思』を見出し――柄に手をかけ、一気に引き抜き。 ドンッ!!! その瞬間、ギアッチョは消えた。いや、正しくは眼にも留まらぬ速さに『加速』した。 ギアッチョを見ていたものがただ出来ることは、一定の間隔で土煙を巻き上げて弾ける地面で彼の向かった方向を把握することだけだった。 ギアッチョとデルフリンガーは一瞬にして距離を詰め、ルイズを突き飛ばし、 ズン!! 彼女の身代わりになった。 今、何が起きた? 誰もが状況を上手く認識出来ず、場は沈黙に包まれた。 ルイズが助かり、ギアッチョが死んだ。最初にそれに気付いたのは、キュルケとタバサだった。 ゴーレムがその手でフーケを庇っている限り、彼女達にゴーレムを止める手段はなく ――ルイズが踏み潰されるその一瞬、キュルケ達に出来たことは彼女の名を叫ぶことだけだった。 しかし巨大な岩塊がルイズに打ち下ろされる寸前、誰かがその下に飛び込みルイズを弾き飛ばした。誰か?誰かって何だ。 ギアッチョ以外に誰がいるんだ。 キュルケは、そしてタバサはまさに茫然自失だった。死んだのはルイズではない。 得体の知れない平民の使い魔だ。ルイズは生きている・・・。喜ぶべきじゃないか。 頭ではそう思っているのに、キュルケは震えが止まらなかった。 隣のタバサはいつもと同じく何も喋りはしないが、その瞳は信じられないものを見たかのように見開かれていた。 次に事態を理解したのは土くれのフーケである。 無詠唱で魔法を使うメイジという一番の危険人物が死んだことに気付き、フーケはヨハネの首を貰い受けたサロメのように笑い狂った。 ちょこまかとうるさい落ちこぼれを殺して逃げるつもりが、死んだのは何をしでかすか解らない異端の平民だったのである。 信じられない幸運にフーケは狂喜した。 何かに突き飛ばされて呆然とへたり込んでいたルイズは、その哄笑で ようやく理解した。自分を突き飛ばしたギアッチョが、身代わりになって死んだ ということを。 「・・・・・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・」 ルイズは長い時間をかけて、やっと一言言葉を吐き出した。 「嘘だよね・・・ギアッチョ・・・・・・」 ルイズの声は震えていた。ゴーレムのことなど完全に忘れてギアッチョの 『いた』場所へと歩き出そうとするが、立ち上がろうとした瞬間につんのめり 無様に倒れる。ルイズは自分の左足が吹っ飛ばされたことを思い出し、 だがそれでも一歩ずつ這って行く。ギアッチョがこんなことで死ぬわけない。 きっと生きている。すぐに足を壊して出てくる―― しかし少女の淡い期待は、地面に滲む鮮血によって脆くも打ち砕かれた。 ゴーレムの足に接していた場所から流れているそれは紛れも無く ギアッチョの血液であることを悟り、ルイズはその場に崩れ落ちた。 「返事してよ・・・・・・ねえ」 ルイズは消え入りそうな声で問いかける。 「生きてるんでしょ・・・悪い冗談はやめてよ・・・」 しかしギアッチョのいた場所からは何も返ってはこない。聞こえるのは、 壊れたように鳴り続けるフーケの笑い声だけだった。 「・・・そんな・・・・・・ギアッチョ・・・・・・・・・デルフ・・・」 自分が。自分が殺した。その事実に、ルイズは涙すら出なかった。 そろそろ殺すか、とフーケは思った。 今にも死にそうに打ちのめされているルイズを見て若干の憐憫が沸かないでもなかったが、無理やりバカ笑いをしてそれを打ち消した。 自分の正体を知った者を生かしておくわけにはいかない。 ルイズを殺し、こいつの左足を打ち抜いた岩塊で風竜の翼を貫く。 あとは二人を踏み潰すだけだ。 「悪いわねお嬢ちゃん・・・あの世で仲良くしなさいなッ!!」 グッ!! 「・・・・・・・・・?」 ルイズを蹴り飛ばそうとしたゴーレムの右足が、動かない。 いや、正確には――地面から離れない。 「・・・な・・・によ これ・・・・・・」 おのがゴーレムの足を見下ろして、フーケは戦慄する。ギアッチョを踏み潰した右足が、氷によって完全に地面に固定されていた。 そしてその氷の中から声が響く。彼女にとっては地獄の底から響く声、そして『彼女達』にとっては百年間も待ちわびていたように思える声だった。 「・・・・・・ギリギリだ・・・ ええ・・・?クソ・・・ ギリギリ・・・発動出来たぜ・・・」 その声にフーケの心臓は凍りつく! 「そして・・・発動しちまったからにはよォォォ~~~・・・・・・てめーは絶対に逃がさねェッ!!」 何をする気か知らないが・・・これはマズいッ!!そう思ったフーケだったが、ゴーレムの足は大地と同化しているかのように動かない。 そして―― 「ホワイト・アルバム・・・ジェントリー・ウィープスッ!!!」 ビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキィッ!!! 裏切り者を断罪する、氷結地獄コキュートス。まるでそこから響いてくるような声が、彼の姿無き半身を呼び起こす!岩人形の右足を覆う氷は電光石火の如く脛を、膝を、腰を駆け上り、右足から頭に至るまで、その全てが完全に凍りついた! 「なんなのよ・・・なんなのよこれェェェ!!」 無詠唱、という単語が彼女の脳裏によみがえった。彼女はうわごとのように繰り返す。 「こんなの・・・こんなの私達の魔法じゃない・・・!!」 しかしそんな彼女の怯えなど一顧だにすることなく、ギアッチョは無慈悲に宣言する。 「・・・ブチ・・・・・・割れな・・・・・・!!」 バガシャアアアアアァッ!! 千里に響く轟音と共に、ゴーレムの体が端から崩落を始める! 「ま・・・マズい・・・!!逃げないとッ!!」 フーケは慌ててレビテーションを唱えるが、その体は毫末も上昇することはなかった。 「な・・・なんで・・・・・・ハッ!?」 フーケはようやく気付いた。自分の足が、氷によって完全にゴーレムと固定されていることに。 そして彼女にもはや「火」を使う力は残っておらず―― 彼女は己のゴーレムの破片と共に、惨めに、そして無残に墜落した。 フーケの凍りついた両足は完全に割れて分断されていたが、レビテーションで逃げることも出来ないようにギアッチョはホワイト・アルバムで容赦なく地面と固定させた。もっとも、フーケはその時点で完全に意識を失っていたが。 とにかくそうしておいて、ギアッチョはルイズの元へ駆け寄る。 「ギアッチョ・・・!!」 ルイズはおのが使い魔の姿をはっきりと確認し、そこでようやく――そして どうしようもなく、ぼろぼろと涙をこぼした。ギアッチョはすたすたとルイズに近寄る。 言いたいことは色々あるが、とにかく一発ブン殴ってやるつもりで手を上げた。が。 がばっ!と血まみれの自分に抱きついてただごめんなさいと繰り返す少女をブン殴ることは、流石のギアッチョにも出来なかった。 振り上げた手をゆっくりと下ろすと、彼はとりあえず溜息をついた。
https://w.atwiki.jp/itmsanime/pages/871.html
【作品名】ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 OP 【曲名】Treasure 【歌手】ICHIKO 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□? 【作品名】ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 ED 【曲名】永遠を探したい 【歌手】ルイズ(釘宮理恵) 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□ 【作品名】ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 OP 【曲名】LOVE イマジネーション 【歌手】ICHIKO 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□ 【作品名】ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 ED 【曲名】Two Moons 【歌手】ルイズ(釘宮理恵) 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□
https://w.atwiki.jp/comic8/pages/1328.html
ゼロの使い魔をお気に入りに追加 情報1課 <ゼロの使い魔> #bf 外部リンク課 <ゼロの使い魔> ウィキペディア(Wikipedia) - ゼロの使い魔 Amazon.co.jp ウィジェット 保存課 <ゼロの使い魔> 使い方 サイト名 URL 情報2課 <ゼロの使い魔> #blogsearch2 成分解析課 <ゼロの使い魔> ゼロの使い魔の98%はツンデレで出来ています。ゼロの使い魔の1%は知識で出来ています。ゼロの使い魔の1%は白インクで出来ています。 報道課 <ゼロの使い魔> 「シキザクラ」東海オンエアとしみつ&虫眼鏡、アニメで描かれる岡崎の見慣れた風景に「あの暴れん坊チキンまで? なんでここまで再現するの!?(笑)」 - コミックナタリー 特集・インタビュー - コミックナタリー 『らき☆すた』『涼宮ハルヒの憂鬱』などアニメ見放題も「ニコニコプレミアムDAY」初開催 - ドワンゴジェイピーnews 【訃報】アニメ「EDENS ZERO」監督の鈴木勇士さん死去 - GIGAZINE 「あんたのためじゃないんだからね!」が脳内再生された声優さんは?竹達彩奈、釘宮理恵、宮村優子…“ツンデレ”キャラ演者に熱烈支持!(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 声優「釘宮理恵」さんが演じたテレビアニメキャラ人気ランキングTOP34! 第1位は『銀魂』の神楽! 【2021年最新調査結果】(1/5) | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ Kindleストアで『狼と香辛料』1~17巻が5,276円など! 人気ライトノベル合本版がセール中 - 窓の杜 岸田教団&THE明星ロケッツ 岸田の「オタク無分別禁止論」 第一夜 ライトノベルについて - http //spice.eplus.jp/ 『のんのん』『よう実』『リゼロ』…コミックアライブ人気作の1巻が無料で読める! - 電撃オンライン 一番メンバー愛が強そうな魔法少女アニメランキング (2021年6月23日) - エキサイトニュース 声優・釘宮理恵さん、『銀魂』『呪術廻戦』『鋼の錬金術師』『ゼロの使い魔』『アイドルマスター』など代表作に選ばれたのは? − アニメキャラクター代表作まとめ(2021 年版) - アニメイトタイムズ 魔法使いのキャラクターコスプレ特集! 『この素晴らしい世界に祝福を!』めぐみん、『ゼロから始める魔法の書』ゼロ、『ゼロの使い魔』ルイズなど - アニメイトタイムズ Kindleストアでライトノベル 一気読みフェアを開催中 KADOKAWAのラノベ合本版が安い! - 窓の杜 『ゼロの使い魔』『シャイニング・ハーツ』『DEAD OR ALIVE』『けいおん!』など水着キャラクターのコスプレ特集! - アニメイトタイムズ KADOKAWAの漫画・ラノベが最大70%オフの「秋カド 2020」が開催中 hontoでは25%オフのクーポンと併用可能 - - ITmedia ヘルスケア 【ゼロの使い魔 3期】声優情報と作品概要・あらすじ紹介|ゼロの使い魔〜三美姫の輪舞〜 - AppMedia(アップメディア) 『ゼロの使い魔』などのMF文庫J作品が今なら読み放題! - 電撃オンライン KADOKAWAアニメのOP映像100本公開、第1弾に「ゼロの使い魔」「このすば」など(動画あり) - コミックナタリー 『ゼロの使い魔』『ぼくたちのリメイク』などMF文庫Jのライトノベルが無料公開中 - 電撃オンライン アニメ『モンスター娘のお医者さん』2020年放送 監督は『ゼロの使い魔』の岩崎良明 (2019年11月14日) - エキサイトニュース あの物語の始まりから、15年……! 〈ゼロの使い魔 15th Anniversary トリステイン魔法学院 学院祭〉が有楽町マルイにて開催! - PR TIMES 「ぼくたちは勉強ができない」TVアニメ化決定! 監督は「ゼロの使い魔」の岩崎良明 - アニメ!アニメ!Anime Anime 人生で最も大切な日を迎えた姿でフィギュアに!『ゼロの使い魔』ルイズが美しいウェディングドレスを身にまとい登場! - 電撃ホビーウェブ 「天空のクラフトフリート」、3/16(金)より「MF文庫J×天クラ」コラボキャンペーン第一弾を開催! - PR TIMES 『ゼロの使い魔』全シリーズを収録したコンプリートBD BOXの商品画像と、ルイズの新録ボイスによるTVCMを公開! - アニメイトタイムズ 「ゼロの使い魔」Blu-ray BOX、ルイズの新規収録ボイスによる発売告知CM - マイナビニュース 【独占】『アンジュ』דMF文庫J”コラボに『ゼロの使い魔』より登場するルイズを先行公開! | スマホゲーム情報ならファミ通App - ファミ通App TVシリーズ全50話収録の「ゼロの使い魔 Memorial Complete Blu-ray BOX」、描き下… - アキバ総研 「ゼロの使い魔」、コンプリートBlu-ray BOXの描き下ろしイラストを公開 - マイナビニュース 「ゼロの使い魔」、コンプリートBlu-ray BOXの発売日が2018年3月28日に決定 - マイナビニュース 『ゼロの使い魔』Memorial Complete Blu-ray BOXが2018年3月28日に発売決定! TVアニメシリーズ全4期〔全50話〕を完全収録 - アニメイトタイムズ 『ゼロの使い魔』Memorial Complete Blu-ray BOXが発売決定! TVアニメ4シーズン(全50話)を収録 - アニメイトタイムズ 【ワンフェス夏】「ゼロの使い魔」ルイズがウェディングドレス姿でフィギュア化決定 (2017年7月30日) - エキサイトニュース ORATTA、『戦国アスカZERO』がライトノベル『ゼロの使い魔』とのコラボイベントを実施 期間中はガチャからコラボキャラクターが登場! | gamebiz - SocialGameInfo 「戦国アスカZERO」で「ゼロの使い魔」とのコラボ企画がスタート - 4Gamer.net 「この上なくゼロ魔らしい終わり方だった」2月に完結を迎えた『ゼロの使い魔』シリーズ、電子書籍フェア開催! - ダ・ヴィンチニュース 『ゼロの使い魔』×『神撃のバハムート』コラボイベント第2弾開催! ルイスやサイトの限定コラボカードやイベントステージが登場 - アニメイトタイムズ 「神撃のバハムート」×「ゼロの使い魔」オリジナルストーリーも楽しめるコラボイベント第2弾が開催!|ゲーム情報サイト Gamer - Gamer 『ゼロの使い魔』完結記念! 3月25日から都内2ヶ所でイラスト展覧会開催決定 - 超! アニメディア 『ゼロの使い魔』完結記念イラスト展が都内で3月25日より開催 - 財経新聞 『ゼロの使い魔』完結記念! 2017年3月25日より、都内2箇所でイラスト展覧会開催決定――!! - PR TIMES 祝・最終22巻発売! ライトノベル「ゼロの使い魔」の完結記念展&兎塚エイジさんのサイン会が開催決定 - - ねとらぼ 「神撃のバハムート」ルイズとサイトのぷちキャラも登場!「ゼロの使い魔」との第2弾コラボイベントが3月に開催|ゲーム情報サイト Gamer - Gamer シリーズ完結巻、『ゼロの使い魔22』発売目前! 全国23駅での特大ポスター展開に、TVCM放送情報、画集カバーイラストの公開も! - PR TIMES 「ゼロの使い魔」イラストを500点以上収録した画集が登場 3月25日リリース - アニメ!アニメ!Anime Anime 『ゼロの使い魔』最終22巻発売 兎塚エイジがこれまで描いた過去イラストを全て収録した画集も発売決定 - http //spice.eplus.jp/ 『ゼロの使い魔』最終巻がいよいよ2017年2月24日に発売! 発売を記念した兎塚エイジさんの画集やイラスト展の開催も決定 - アニメイトタイムズ 故・ヤマグチノボルのラノベ「ゼロの使い魔」が13年の時を経てついに完結! 320ページ超の画集も発売 - - ねとらぼ 「多くは言わん。ただただ感無量」ライトノベルの金字塔『ゼロの使い魔』遂に最終22巻発売決定! - ダ・ヴィンチニュース ルイズ(CV:釘宮理恵)再び!全編朗読のオーディオブック版「ゼロの使い魔」配信開始 - iNSIDE 「ゼロの使い魔」最終巻2017年2月発売 釘宮理恵の朗読するオーディオブック版が配信 - アニメ!アニメ!Anime Anime 釘宮理恵さんによるルイズが再び!?『ゼロの使い魔』を始めとするライトノベルのオーディオブックが配信スタート - アニメイトタイムズ 『ゼロの使い魔』×『ブレス オブ ファイア 6』コラボが実施中! ルイズ&タバサがフェローとして活躍するPVも公開 - ファミ通.com 「ブレス オブ ファイア 6」×「ゼロの使い魔」のコラボ決定! ボイスを新収録した「ルイズ」や「タバサ」が手に入る! - GAME Watch 『ブレス オブ ファイア 6』と『ゼロの使い魔』のコラボが決定! 専用ボイス付の「ルイズ」と「タバサ」が登場 - Game Deets 「ゼロの使い魔」続巻刊行が決定 ヤマグチノボルが残したプロットから制作 - アニメ!アニメ!Anime Anime 未完のヒットラノベ『ゼロの使い魔』が続巻刊行決定……作者の遺したプロットもとに | RBB TODAY - RBB Today 『ゼロの使い魔』続巻刊行決定「完結までのプロットが遺されていた」 - ORICON STYLE MF文庫J、『ゼロの使い魔』作者・ヤマグチノボル氏一周忌追悼ページ公開 - おたくま経済新聞 「ゼロの使い魔」ヤマグチノボルさん死去 - ITmedia 「ゼロの使い魔」作者のヤマグチノボルさん死去 - - ねとらぼ 「ゼロの使い魔」作者・ヤマグチノボルさんが死去 41歳 - シネマトゥデイ [iPad, iPhone] ゼロの使い魔 App ツンデレ魔女ルイズに惚れてハルキゲニアへ行こう! - AppBank HJ、「ゼロの使い魔」より「ルイズ ゴスパンク Ver.」の限定版を抽選販売 - マイナビニュース 「ゼロの使い魔F」カフェ、ルイズや才人のメニューが登場 - マイナビニュース 注目アニメ紹介:「ゼロの使い魔F」 ツンデレ少女と少年の冒険劇が最終章 原作者も制作参加 - まんたんウェブ TVアニメ『ゼロの使い魔F』、第1話の場面カットを紹介! イベント詳細も決定 - マイナビニュース ゼロの使い魔:シリーズ完結編をテレビアニメ化 10月から傑作選も放送へ - まんたんウェブ 「ゼロの使い魔」1~3期が3カ月連続でBD-BOX化 - AV Watch 「ゼロの使い魔」作者がガン、公式メッセージをサイトに掲載中 - GIGAZINE 『ゼロの使い魔』「日常ツンデレ会話 募集」に原作者が応募した - iNSIDE PS2『ゼロの使い魔夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲』が11月29日発売 - 電撃オンライン 情報3課 <ゼロの使い魔> #technorati マンガとは マンガの33%は厳しさで出来ています。マンガの30%はカルシウムで出来ています。マンガの25%は元気玉で出来ています。マンガの9%は毒物で出来ています。マンガの1%は月の光で出来ています。マンガの1%は毒電波で出来ています。マンガの1%は魂の炎で出来ています。 28589.jpg?_ex=300x300 s=2 r=1 ヨスガノソラ 春日野 穹 -すくみず 楽天売れ筋ランキング レディースファッション・靴 メンズファッション・靴 バッグ・小物・ブランド雑貨 インナー・下着・ナイトウエア ジュエリー・腕時計 食品 スイーツ 水・ソフトドリンク ビール・洋酒 日本酒・焼酎 パソコン・周辺機器 家電・AV・カメラ インテリア・寝具・収納 キッチン・日用品雑貨・文具 ダイエット・健康 医薬品・コンタクト・介護 美容・コスメ・香水 スポーツ・アウトドア 花・ガーデン・DIY おもちゃ・ホビー・ゲーム CD・DVD・楽器 車用品・バイク用品 ペット・ペットグッズ キッズ・ベビー・マタニティ 本・雑誌・コミック ゴルフ総合 ページ先頭へ ゼロの使い魔 このサイトについて 当サイトは漫画のタイトル毎にインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ページをブックマークしておけば、ほぼ毎日その漫画のタイトルに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/648.html
馬に乗ること3時間、ルイズとギアッチョはトリステインの城下町に到着した。ここ ハルケギニアに召喚されてから初めて見る学院外の景色だったが、ギアッチョは 今それどころではなかった。生まれて初めて乗馬を経験した彼は腰が痛くて仕方が なかったのだ。 「そっちの世界に馬はいないの?」 ルイズが不思議そうに尋ねる。 「いねーこたねーが・・・都市部で馬を乗り物にしてたのは遥か昔の話だ」 ギアッチョが腰を揉みほぐしながら答えるが、ルイズはますます不思議な顔を するだけだった。 「まぁ覚えてりゃあそのうち話してやる それよりよォォ~~ 剣ってなどこに 売ってんだ?」 「ちょっと待って・・・ええと こっちだわ」 ルイズが地図を片手に先導し、ようやく周囲に眼を向ける余裕が出てきたギアッチョは その後ろを観光気分でついて行く。何しろ見れば見るほどメルヘンやファンタジー以外の 何物でもない世界である。幅の狭い石敷きの道や路傍で物を声を張り上げて売る商人達、そして彼らの服装などはまるで中世にワープしたかのようだ。しかし中世欧州と似て 非なるその建築様式が、ここがヨーロッパではないことを物語っていた。 「魔法といい使い魔といい、メローネあたりは大喜びしそうだな」などと考えたところで、 ギアッチョは自分が既にこの世界に馴染んでしまっていることに気付いた。 リゾットはどうしているのだろう。見事ボスを倒し、自分達の仇を取ってくれたのだろうか。 それとも――考えたくないことだが、先に散った仲間達の元へ行ってしまったのだろうか。 このハルケギニアと同じように時間が流れているのならば、きっともうどちらかの結果が 出ているだろう。 ホルマジオからギアッチョに至る犠牲で、彼らが得る事の出来たボスの情報はほぼ 皆無だった。いくらリゾットでも、そんな状態でボスを見つけ出して殺せるものだろうか。 相当分の悪い賭けであることを、ギアッチョは認めざるを得なかった。 ――どの道・・・ ギアッチョは考える。どの道、もう結果は出ているのだ。自分はそれを知らされていない だけ・・・。 「クソッ!!」 眼に映るものを手当たり次第ブチ壊してやりたい気分だった。当面はイタリアに戻る 方法が見つからない以上、こんなことは考えるべきではなかったのだろう。だがもう遅い。 一度考えてしまえば、その思考を抹消することなどなかなか出来はしない。特に―― 激情に火が点いてしまった場合は。 ――結末も知らされないままによォォーーー・・・ どうしてオレだけがこんな異世界で のうのうと生き長らえているってんだッ!ああ!?どうしてだ!!どうしてオレは生きて いる!?手を伸ばすことも叶わねぇ、行く末を見届けることすら出来やしねえッ!! 何故オレがッ!!ええッ!?どうしてオレだけがッ!!何の為に!!何の意味が あってオレは惨めに生きている!?誰か答えろよッ!!ええオイッ!! 一体何に怒りをぶつければいいのか、それすらも解らないまま――、ギアッチョは 溢れ出しそうな怒りを必死に押しとどめていた。 「・・・ギアッチョ ・・・・・・どうしたの?」 その声にハッと我を取り戻したギアッチョが顔を上げると、ルイズが僅かな戸惑いをその 顔に浮かべて自分を見ていた。 「・・・・・・なんでもねぇ」 思わずルイズに当たりそうになったが、彼女とて意図して自分を呼び出したわけでは ない。数秒の沈黙の後――ギアッチョは何とかそれだけ言葉を絞り出した。 いつもと様子が違うギアッチョに、ルイズは当惑していた。ギアッチョを召喚してまだ 数日だが、この男がキレた所はもう嫌というほど眼にしていた。そしてその全く 嬉しくない経験から理解していたことだが、ギアッチョはブチキレる時にTPOを わきまえることはない。食堂だろうが教室だろうが、キレると思ったらその時スデに 行動は終わっているのがギアッチョなのである。シエスタから聞くところによると、 既に厨房でも一度爆発したらしい。傍若無人を地で行く男であった。 そのギアッチョが怒りをこらえている。ルイズでなくても戸惑いは当然だろう。 レンズの奥に隠れてギアッチョの表情は判らなかったが、ルイズには彼が無言の うちに発している悲壮な怒りが痛々しいほどに伝わってきた。 ――・・・ギアッチョ 私のただ一人の使い魔 ただ一人の味方・・・ ルイズはギアッチョの力になってやりたかった。圧勝とは言え体を張って自分を 助けてくれたギアッチョに、せめて心で報いたかった。しかしルイズの心の盾は 堅固不壊を極めている。自分の為に本気で怒ってくれたギアッチョに、ルイズは ただ一言の礼を言うことすら出来なかった。そして今もまた、ルイズの盾は 忠実に職務を果たしている。ギアッチョに報いたいというルイズの思いは、自らの 盾に阻まれて――彼女の心の内に、ただ虚しく跳ね返った。 こうして、怒りを内に溜め込んでいるギアッチョと自己嫌悪に陥っているルイズは 二人して陰鬱な空気を纏ったまま武器屋へと到着した。 貴族が入店したと見るやドスの効いた声で潔白の主張を始める店主に「客よ」と 告げて、ルイズは剣の物色を始める。 「・・・ギアッチョ、あんたはどれがいいの?」 使用者であるギアッチョの意向無しに話は進まないので、ルイズは意を決して 話しかけた。 「・・・剣なんぞに馴染みはねーんだ どれがいいかと聞かれてもよォォ」 同じ事を考えているであろうギアッチョは、そう答えて適当な剣を手に取る。 「――リゾットの野郎がいりゃあ・・・いいアドバイスをくれただろうな」 刀身に視線を落とすと彼はそう呟いた。 リゾット・・・何度かギアッチョが話した彼のリーダー。怒りや悲しみがないまぜに なった声でその名を呟くギアッチョに、ルイズは何かを言ってやりたくて・・・ だけど言葉すらも浮かんではこなかった。 「帰りな素人さんどもよ!」 ルイズの代わりに静寂を破ったのは、人ではなかった。二人が声の主を 探していると、再び聞えたその声はギアッチョの目の前から発されていた。 「剣なんぞに馴染みはねーだァ?そんな野郎が一人前に剣を担ごうなんざ 100年はえェ!とっとと帰って棒っ切れでも振ってな!」 「・・・何? どこにいるのよ」 ルイズがキョロキョロとあたりを見回していると、ギアッチョがグィッ!と一本の 剣を持ち上げた。 「・・・インテリジェンスソード?」 ルイズは珍しそうに持ち上げられた剣を眺めている。 「は、いかにもそいつは意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ こらデル公!お客様に失礼な口叩いてんじゃあねえ!」 店主の怒声をデル公と呼ばれた剣は軽く受け流す。 「おうおう兄ちゃんよ!トーシロが気安く俺に触ってんじゃあねーぜ!放しな!」 なおも続く魔剣の罵声もどこ吹く風で、ギアッチョは感情をなくした眼で「彼」を じっと見つめている。 「聞いてんのか兄ちゃん!放せっつってんだよ!ナマスにされてーかッ!」 なんという口の悪さだろう。ルイズは呆れて剣を見ている。そしてギアッチョも 感情の伺えない眼でデル公を見ている。 「・・・おい、てめー口が利けねーのかぁ!?黙ってねーで何とか言いな!!」 ギアッチョは見ている。死神のような眼で、喋る魔剣を。 「・・・・・・ちょ、ちょっと何で黙ってんだよ・・・喋ってくれよ頼むから ねぇ」 ギアッチョは不気味に見つめている。彼の寡黙さにビビりだした剣を。 「・・・あのー・・・ 丁度いいストレスの発散相手が出来たって眼に見えるんですが ・・・僕の気のせいでしょーかねぇ・・・アハハハハ・・・」 そして完全に萎縮してしまったインテリジェンスソードを見つめる男の唇が、 初めて動きを見せ―― トリステイン城下ブルドンネ街の裏路地に、デル公の悲鳴が響き渡った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1113.html
「お待たせ」 着地したシルフィードからぴょんと飛び降りて、キュルケは開口一番そう言った。 「お待たせじゃないわよ!何であんたがここにいるわけ!?おまけにタバサまで・・・あっ、あとギーシュも」 「『あっ』てなんだい『あっ』て」と呟くギーシュには眼もくれず、ルイズはキュルケに詰め寄る。 「助けに来てあげたんじゃないの 今朝廊下からあなた達が『姫さま』だの『任務』だの話してるのが聞こえてきたのよ 面白そうだからついてきたってわけ」 キュルケは本当に心底面白そうな顔でそう言った。 「あのねキュルケ、これお忍びなの 会話を聞いてたのならそれくらい察しなさいよ」 ルイズは呆れ顔で指弾するが、 「なんだ、そうだったの?言ってくれなきゃ分からないじゃない」 キュルケはそうしれっと言ってのけると、折り重なって倒れている男達に眼を向ける。 「ところでこいつら何なの?そこの素敵なアナタ、魔法衛士隊とやらの隊長なんでしょう?この国ではグリフォンはグリフォン隊の象徴だって言うじゃない いくら大人数とはいえ、そんな人間を物取り目的で襲うものかしら?」 「ふむ しかしこの任務は姫殿下が私とルイズだけに内密で依頼したものだ 情報が漏れるとは考えにくいが・・・」 ワルドが顎髭をいじりながら応答する。それを聞いて、「ハイハイッ!」とギーシュが元気に手を上げた。 「はいギーシュ君」 キュルケがどうでもよさげに相手をする。 「こういうときこそ尋問じゃないか 僕に任せてくれたまえ」 一度やってみたかったんだなどと言いながら、ギーシュはまだ意識のある男の前に腰を落とす。身振り手振りを交えながら二言三言何かを話すと、ふんふんと頷いて立ち上がった。 「皆!彼らはただの物取りだって言ってるフんッ!!」 キュルケの掌底が綺麗に決まった瞬間であった。 「な、なんてことするんだねキュルケ!舌を噛んだらどうするつもりだよ全く・・・」 頭から倒れたギーシュは顎と後頭部をさすりながら立ち上がった。実にタフな男である。そんな彼をキュルケは屠殺場の豚を見るような眼で一瞥して言う。 「今のは尋問じゃなくてただの質問じゃない このバカ王子」 「バッ・・・!?」 「もういいからどきなさい 私がやるから――」 そう言いかけたキュルケを、横合いから突き出た一本の手が遮る。いいストレス解消を見つけたギアッチョだった。 「尋問ならよォォ~~、オレに任せな・・・ もっとも、拷問にならねえ保障はねぇがよォォォォ」 捜し求めていた玩具を見つけた喜びに、ギアッチョの顔がかつてないほど凶悪に歪む。その慈悲の欠片もない形相に、キュルケ達どころか今から尋問を受ける男達までもが震え上がった。 「・・・ああそう・・・・・・じゃあお任せするわ・・・ ・・・ほどほどにね・・・」 心の中で男達に合掌しながらキュルケは後じさった。ギアッチョはゆっくりと男達に近寄り、肩越しに振り返ってギーシュを見る。 「てめーも見るか?後学の為によォォォ~~」 ギーシュは首をブンブンと取れそうな程に振って遠慮の意を表した。 ギアッチョはフンと鼻を鳴らして笑うと、 「それじゃあてめーらは後ろを向いてな 女子供にゃ少々刺激が強いからよォ~」 実に楽しそうにそう言った。 光の速さで後ろを向いたギーシュに続いてルイズとキュルケが身体の向きを反転させる。その直後、彼女達の耳に微かに何か軽快な音楽のような幻聴が響き、数秒の後それを掻き消して、 「ウんがァアアアアーーーー!!」 という絶叫が轟いた。 「終わったぜ」 というギアッチョの声で恐る恐る振り向くと、彼の後ろでは数人の男達がピクピクと痙攣しながらのびていた。 よかった五体満足だ、と敵の安否を気遣ってからルイズ達はギアッチョの狼藉を見ていた二人に眼を向ける。ワルドの顔は微妙に血の気が引いていた。 口の端は妙な形に引き攣っている。タバサに視線を移すと、彼女はいつもの人形のような無表情のまま固まっていた。 デルフリンガーは小刻みに震えながら、もっとも恐ろしい者の片鱗を味わったなどとぶつぶつ呟いている。 そしてギアッチョは、信じられないことにまだ暴れ足りないといったような顔で首の骨をコキコキと鳴らしていた。「白い仮面をつけた貴族の男に雇われたらしいぜ」とあっさり手に入れた情報を話しているが、もう誰も彼の声など聞こえていなかった。 ギアッチョを除いた全員がそれこそホワイト・アルバムを喰らったかのように凍っていたが、やがてワルドがなんとか我を取り戻す。 「・・・さ、さあ皆 はやく宿まで行ってしまおうじゃないか ほら、もうここから見えてるよ」 彼はどうにかそう言葉を絞り出し、そこから彼らの泊まる『女神の杵』亭まで皆殆ど口をきかずに歩き続けた。なんとかルイズと話題を作ろうとして、 「・・・確かに凄い使い魔だね・・・彼は・・・」 と言ってみるが、ルイズは「あはは・・・は・・・」とただ乾いた笑いを返すだけだった。 宿の扉をくぐって、ルイズ達はようやく我を取り戻した。ぷはぁ、と息を吹き出して「なんかどっと疲れたわ・・・」とキュルケが言い、それを引き金にルイズ達の身体からは次々と力が抜けていった。ぽつぽつと会話が始まり、彼女達はようやくいつもの空気を取り戻す。 ギーシュが周りを見渡すと、タバサは懐から本を取り出し、キュルケはあくびをし、ルイズはギアッチョに怒鳴り始めた。「君、凄いね」という視線をルイズに送ってから、同じく緊張が解けたギーシュはへらへらと笑いながら軽口を叩く。 「しかし疲れたね どうにも運動不足らしい・・・これだけ歩いただけで足が棒になったよ」 それが、いけなかった。 「・・・てめー・・・今なんつった・・・?」 「え?」 ルイズの怒鳴り声など全く耳に入っていないかのような動きで、ギアッチョはギーシュに眼を向ける。 ワルドを除く全員の脳裏に一瞬である一つの予感がよぎり、「疲れたってのは分かる・・・・・・スゲーよく分かる てめーらは移動に魔法を使いまくっとるからな・・・」 それは三秒で的中した。 「だが『足が棒になる』ってのはどういうことだァァ~~~ッ!?人の足が棒に変わるかっつーのよォォォッ!!ナメやがってこの言葉ァ超イラつくぜぇ~~~ッ!!棒になったらその場で倒れちまうじゃあねーか!なれるもんならなってみやがれってんだ! チクショーーーッ!!」 事態を把握した三人娘の心は一つだった。ルイズが宿の扉を空け、キュルケがギーシュを押してギアッチョにぶつけ、そしてタバサがウインド・ブレイクで二人纏めて宿屋の外へ吹っ飛ばした。 地面に転がったまま絶望的な表情でこっちを見るギーシュから全力で眼を逸らして、ルイズは「ごめん」と一言呟くが早いかバタンと音を立てて扉を閉めた。 「えええええ!?ちょっ、何やってんの!?冗談だよね!冗談だよね!!」 ギーシュは弾かれたように跳ね起きると、ぶつかるほどの勢いで扉へ駆け寄った。 「ギーシュ!あなたの犠牲、わたし達は敬意を表するッ!!」 「か、『鍵が閉まっているッ』!!いやいや何言ってんのキュルケ!!開けてーー!! お願いだから開けてーーー!!ていうか助け・・・」 必死の形相でそう叫びながらギーシュはドンドンと扉を叩くが、あえなく時間切れとなる。ガシィ!!と後ろから肩を掴まれて、彼は恐怖の叫びを上げた。 「どういうことだ!どういうことだよッ!!クソッ!!棒になるってどういうことだッ!! ナメやがって!クソックソッ!!聞いてんのかてめー!!ええ!?クソッ!クソッ!!」 「ヒィィィイ!!どうして僕ばっかりがァアァアアァァ!!」 扉を通してギーシュの断末魔が宿屋に響き、ルイズ達は瞳を閉じて彼に黙祷を捧げた。 ワルドは普通にドン引きだった。 ボロ切れと化したギーシュを引きずってギアッチョが戻って来たので、一行はまずは一階の酒場で一服することにした。 ギーシュの恨みがましい視線を受けながら彼女達はしばらく歓談していたが、 「さて、僕は『桟橋』へ乗船の交渉に行ってこよう 君達はゆっくり食事でもしていてくれ」 頃合を見てワルドが立ち上がった。マントを翻して彼が扉の向こうへ消えるのを見届けてから、 「イヤッホォォォウ!やっと食事にありつける!」 ギーシュは両手を上げて吼えた。実に現金な男である。とは言え、彼が機嫌を治してくれたことは有り難かった。 ウェイトレスが持ってきたメニューを覗き込んで、ルイズ達はあーだこーだと言い合いながら料理を決めてゆく。一通り注文する ものを決め終えて、ルイズは隣に座るギアッチョを見た。 「ギアッチョ あんたはどれにするの?」 「ああ?前に言ったろーが 言葉は喋れても文字は読めねーんだよ」 「あ・・・そうだったわね あんまり流暢に喋るからすっかり忘れてたわえーと、まずこれが・・・」 ルイズはひょいと身体をギアッチョのほうに傾けると、メニューの文字を指差してギアッチョの顔を見上げながらあれこれ説明をする。 ギーシュはそんな二人をなんとはなしに見ていたが、ふと面白いことを考えて隣のキュルケを見た。 丁度同じことを考えていたらしい彼女と眼が合うと、二人して悪戯っぽくにやりと笑う。ルイズは未だにメニューの説明中で、 「うーん・・・あとはこれとか美味しいわよ 牛肉と卵を・・・」 などと言っている。ギーシュは「君!君!」と会話に強引に割り込むと、 「これこれ、凄くオススメなんだけどどうかな!はしばみ草のサラダなんだけど――」 輝かんばかりににこやかな顔でサラダを勧めた。 「ちょ、ちょっとギーシュ!あんたまだ懲りないの!?」 何かを察したルイズがそれを止めようとするが、いつの間に呼んだのかそばに来ていたウェイトレスに、既にキュルケが最高のコンビネーションで注文を終えていた。 ドン、とテーブルに料理が並ぶ。色とりどりのそれらの中に、はしばみ草のサラダはあった。 所狭しと置かれている料理に手もつけず、ギーシュとキュルケは何かに期待しているような眼でギアッチョを見ている。 同じく彼を見ているタバサの瞳にはうっすらと興味の色が伺える。 そして彼のご主人様は、何かを心配するような顔でギアッチョとギーシュ達を見比べていた。 ――・・・何なんだこいつら・・・ 四色四対の瞳が全て自分を注視しているのである。正直言って気持ち悪い。 理由は分からないが、とにかくこいつらは自分がこのはしばみ草のサラダとやらを食べることに期待しているらしい。 得体の知れない期待に一つ溜息をつくと、ギアッチョはサラダに手を伸ばした。 はしばみ草。それは地球にはない独特の苦味を持つ植物である。その名状しがたい苦味の為に、好んで食べる者は少ない。 以前ルイズの父が誤ってそれを食べ、ブフォッという音を立てて見事に口から吹き出したことがあった。 厳格な父の有り得ない姿とその後の怒りように、ルイズははしばみ草のことを強烈に覚えていた。 はしばみ草がギアッチョの口に合えばいいが、そうでなければギーシュとキュルケはこの食事が最後の晩餐になるかも知れない。 ルイズはそんなわけで彼らの命の心配をしているのだが、当の二人は悪戯心と復讐心で後のことなど一切考えていなかった。 そんな彼女達の心も知らず、ギアッチョはあっさりとはしばみ草をフォークで突き刺す。 彼は無表情のままそれを口に放り込み、そして無表情のまま咀嚼し、ついに無表情のまま嚥下した。 ――な・・・なんて男だ!顔色一つ変えないぞッ!? はしばみ草を胃に送り込んで尚表情を変えないギアッチョに、ギーシュとキュルケは眼を見開く。 タバサは少しだけ嬉しそうな顔を見せ、ルイズは胸をなでおろした。 ギアッチョは無表情のままスッとフォークを置き、静かに席を立つと、4メイルほど離れた場所にある部屋へ静かに入って行く。 トイレだった。 そのままギアッチョは一分経っても戻らず、二分が過ぎても戻らず――そこまできて、ギーシュとキュルケはようやく嫌な予感がし始めた。 「・・・ね、ねえキュルケ・・・ これってひょっとして凄くヤバいんじゃないかな・・・?」 「・・・わたしもそんな気がしてきたわ・・・・・・」 不気味に静まり返るトイレが、芽生え始めた彼らの恐怖を加速する。 「どっ、どどどどどうしよう!!」 キュルケはガタガタと震え始めるギーシュの襟首を掴んで、 「ええい逃げるわよッ!!」 一目散に外へ逃げようとする、が。 「えっ!?」 「なっ!?」 二人の足は、その場から一歩も動かすことが出来なかった。 「ぼッ、僕達の足がァァァ!!」 「こ・・・『氷で固定されている』ッ!!」 二人の足は容赦なく凍結されていた。そして炎の魔法でそれを溶かす間もなく、氷よりも冷たい双眸に灼熱の怒気を纏わせて、ギアッチョが姿を現した。 「・・・や、やあお帰りギアッチョ・・・ はしばみ草のお味は ど、どうだったかな?」 一縷の望みを掛けて、ギーシュは蒼白な顔に無理やり笑みを浮かべて尋ねる。 「ああ・・・実に美味かったぜ 意識が飛ぶほどな・・・」 そう言ってギアッチョはニヤリというよりはニタリと表現するべき笑みを返した。 はしばみ草のあまりの美味さに一瞬のうちに阿頼耶識を潜り普遍的無意識を越え銀の鍵の門を通ってオオス=ナルガイを旅し未知なるカダスに至ったギアッチョの意識が現実世界に戻ってまず思ったことは、「よし、こいつら殺す」ということだった。 その後の展開は語るまでもないだろう。 こうしてラ・ロシェールが誇る高級旅館『女神の杵』亭は、昼は変な男が宿前で暴れ、夜は二人分の悲鳴が轟き、深夜は氷付けになった男がベランダに放置される恐ろしい宿として数ヶ月の間その評判を落とすことになったのである。 「一つ、聞き忘れていたことがあった」 薄汚い酒場で、仮面の男は土くれのフーケと会話をしていた。 「・・・なんだい」 男に一瞥をくれてから、フーケは煩そうに髪をかきあげる。 「貴様を倒したのは、あの得体の知れない平民の使い魔だったな」 「それがどうしたんだい」 その質問に、フーケの顔はいよいよ不機嫌さを増す。 「奴の力を教えろ」 有無を言わさぬ口調で仮面の男が命令する。しかしフーケはどこ吹く風で嘲笑うと、 「嫌だね」 と一言そう言った。フーケは脱獄と引き換えに自分達への協力を約束させられている。 しかしその実、それは「従わなければ殺す」という約束とは名ばかりの脅迫であった。己の目的の為の道具として扱われることに、フーケは強い不快感を抱いている。 「貴様・・・死にたいのか?」 「フン、やれるもんならやってみるがいいさ あたしだって土くれのフーケと呼ばれた女・・・こんな姿でも、あんたを無事で済ませるつもりはないよ さて、それであんたはそうして消耗した状態で任務に挑むつもりかい?」 フーケはニヤリと笑った。仮面の男は決して失敗出来ない任務を負っている。 無駄な消耗など出来るはずがなかった。 「――くだらん知恵が働くようだな」 そう吐き捨てて、男は出口へと歩き出す。 「一つだけ教えてあげるわ」 その背中に、フーケは勝ち誇った笑みを浮かべて言葉を投げつける。 「あいつは『ガンダールヴ』よ」 「・・・何だと」 唐突に登場した「伝説の使い魔」を表す言葉に、仮面の男はフーケに振り返るが、しかし彼女はもはや何も言う気はないといった仕草で手を振る。男はそんなフーケを忌々しげにねめつけると、二度と振り向かずに歩き去った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1059.html
峡谷の山道に作られた小さな港町、ラ・ロシェール。その酒場は今、内戦状態のアルビオンから帰って来た傭兵達で溢れ返っていた。 「がっははははは!アルビオンの王さまももうおしまいだな!」 「いやはや・・・『共和制』ってヤツが始まる世界なのかも知れないな」 「そんじゃあ『共和制』に乾杯だ!」 そう言って野卑な声で笑う彼らが組していたのは、アルビオンの王党派だった。 雇い主の敗北が決定的になった瞬間、彼らは王党派に見切りをつけてあっさり逃げ帰ってきた。別段恥じる行為ではない。金の為に傭兵をやっているのだから、敗軍に付き合って全滅するほど馬鹿らしいことはないということである。 ひとしきり乾杯が終わった時、軋んだ音を立ててはね扉が開いた。フードを目深に被った女が車輪のついた椅子に座っており、白い仮面で顔を隠した貴族の男がそれを押しながら入ってくる。 真円に可能な限り近づけようと苦心した跡が見てとれるその車輪はしかし急ごしらえの為に満足な丸さを持てず、回転する度に耳障りな音を立てて車体を揺らした。女はローブに隠れる己の足を見下ろし、忌々しげに舌打ちする。 「不便ったらありゃしないね・・・この車椅子とやらは」 「そう言うな、お前の為に急いで作らせたものなのだからな」 仮面の男はそう言って車椅子を止めると、珍しいものを見て固まっている傭兵達に向き直った。 「貴様ら、傭兵だな」 その言葉と同時に、返事も確認せずに金貨の詰まった袋をドンとテーブルに置く。 「先ほどの会話からすると、貴様らは王党派に組していたようだが?」 あっけに取られていた傭兵達は、その一言で我に返った。 「・・・先月まではね」 「でも、負けるようなやつぁ主人じゃねえや」 そう言って傭兵達はげらげらと笑う。口を半月に歪めて、仮面の男も笑った。 「金は言い値を払う だが俺は甘っちょろい王さまじゃない・・・逃げたら、殺す」 「ワルド・・・ちょっとペースが速くない?」 抱かれるような格好でワルドの前に跨るルイズが言う。ワルドがそうしてくれと言ったせいもあって、雑談を交わすうちにルイズの口調は昔の丁寧な言い方から今の口調に変わっていた。 「ギアッチョは疲れてるわ 馬に乗り慣れていないの」 その言葉にワルドは後方を見遣る。血走った眼で馬を駆るギアッチョの身体からは漆黒の怒気が漂っていた。今にも馬を絞め殺さんばかりの勢いである。 「・・・何やら怒っているようにしか見えないが」 「疲れた結果よ!あいつは怒りやすいんだから」 ふむ、と言ってワルドはその立派な口髭を片手でいじる。 「ラ・ロシェールの港町まで止まらずに行くつもりだったんだが・・・」 「何言ってるの、普通は馬で二日はかかる距離なのよ」 「へばったら置いていけばいいさ」 当然のように言うワルドに、「ダメよ!」とルイズが反論する。 「どうして?」 「使い魔を置いていくなんてメイジのすることじゃないわ それにギアッチョは凄く強いんだから!」 ワルドはそれを聞いてふっと笑う。 「やけに彼の肩を持つね・・・ひょっとして君の恋人なのかい?」 「なっ・・・!」 その言葉にルイズの顔が真っ赤に染まり、 「そそ、そんなわけないじゃない!ああもう、姫さまもあなたもどうしてそんなことを言うのかしら」 なんだか顔を見られるのが恥ずかしくなって、ルイズは綺麗な髪を揺らして俯いた。 「そうか、ならよかった 婚約者に恋人がいるなんて聞いたらショックで死んでしまうからね」 そう言いながらも、ワルドの顔は笑っている。 「こ、婚約なんて親が決めたことじゃない」 「おや?ルイズ、僕の小さなルイズ!君は僕のことが嫌いになったのかい?」 昔と同じおどけた口調でそういうワルドに、「もう小さくないもの」とルイズは頬をふくらませた。 「・・・ところで、彼はそんなに強いのかな?」 「勿論よ 私の自慢の使い魔なんだから! 詳しくは話せないけど・・・」 ワルドの質問に自慢げにそう答えるルイズを見て、ワルドは何かを考える顔をした。 疲労と怒りをこらえながら、ギアッチョは馬を駆る。朝からもう二回も馬を交換していた。 さっきからルイズが何回か心配そうにこちらを見ていたが、ギアッチョは休憩させてくれなどと言うつもりは微塵もない。 そんな情けないことはギアッチョのプライドが受け入れなかった。十四歳――とギアッチョは思っている――の子供にこんなことで心配されたという事実がその意地を更に強固にしている。 ――ナメんじゃねーぞヒゲ野郎・・・ついて行ってやろうじゃあねーか ええ?オイ 口から呼気と共に殺気を吐き出しながら、ギアッチョはそう呟いた。 このまま放っておけば自分に累が及びそうだったので、デルフリンガーは彼の怒りを逸らすべく口を開く。 「あ、あのですねーダンナ・・・」 「ああ!?」 「ヒィィすいません!」 熊も射殺さんばかりのギアッチョの眼光にデルフリンガーは一瞬で押し黙ったが、気持ち悪いから途中で止めるなというギアッチョのもっともな発言を受けて恐る恐る話題を再開した。 「い、いやー・・・ルイズの婚約者らしいッスねぇあのヒゲ男」 「そうだな」 「そ、そうだなって・・・なんかないんスか?結婚ですよ結婚」 ギアッチョの意識をなんとか婚姻の話題に持って行こうとしたデルフだったが、彼の「ああ?」という一言で全てを諦めた。 何度も馬を変えて昼夜を問わず飛ばし、ギアッチョ達はその日のうちに――といっても夜中だが――なんとかラ・ロシェールの入り口まで辿り着いた。 「・・・なんだァァ?ここのどこが港町なんだオイ?」 ギアッチョは周りを見渡して言う。四方八方を岩に囲まれた、まごうこと無き山道であった。 月明かりに照らされて、先のほうに岩を穿って作られた建物が立ち並んでいるのが見える。まだ走らせる気かと、いい加減ギアッチョの怒りが限界に達しつつあった。 「ああ、ダンナはしらねーのか アルビオンってのは」 と喋る魔剣が口を開いた瞬間、崖の上から彼ら目掛けて燃え盛る松明が次々と投げ込まれ、 「うおおッ!」 戦闘の訓練をされていないギアッチョの馬は、驚きの余り暴れ狂ってギアッチョを振り落とした。 よく耐えたと言うべきか。一昼夜を休み無く走らされた挙句に馬上から振り落とされて、ギアッチョの怒りは頂点に達した。 デルフリンガーを引っつかんで鞘から乱暴に抜き出し、崖上に姿を現した男達を猛禽のような眼で睨んで怒鳴る。 「一人残らず凍結して左から順にブチ割ってやるッ!!!ホワイト・アルバ――」 しかし彼の咆哮は予想だにしない咆哮からの攻撃で中断され、彼の口からは代わりにもがッ!!というくぐもった声が響いた。 「どういうつもりだクソガキッ!!」 己の口に押し当てられた手を引き剥がしてギアッチョが怒鳴る。ギアッチョに飛びついて彼の攻撃を中断させたのは、他でもない彼のご主人様であった。 「それはこっちのセリフよ!」 ギアッチョに負けじとルイズが怒鳴る。 「見たとこ夜盗か山賊の類じゃない!こんなところで堂々とスタンドをお披露目してどうするのよッ!」 「ンなこたぁもうどうでもいいんだよッ!!離れてろチビ!!一人残らずブッ殺してやらねーと気が済まねぇッ!!」 ブッ殺したなら使ってもいいッ!とペッシに説教しているプロシュートの姿が浮かんだが、ギアッチョはいっそ爽やかなほど自然にそれをスルーした。 「だっ、誰がチビよこのバカ眼鏡!あと1年もしたらもっともっと大きくなるんだから!」 どこが?と言いたかったデルフリンガーだったが、二人の剣幕に巻き込まれると五体満足では済みそうになかったので黙っておくことにする。 「とにかく!」とルイズは小声になって怒鳴る。 「ワルドはわたしの婚約者だけど、同時に王宮に仕えてるってことを忘れないでよ! そんなことしないとは思うけど・・・万が一王宮にあんたのスタンドのことがバレたらどうなるか分かったもんじゃないんだから!」 「そうなってもよォォォ~~~~ 全員凍らせて逃げりゃあいいだろうが!!キュルケだのタバサの国によォォォォ!とにかく邪魔するんじゃあねえ!!そこをどけッ!!」 「何無茶苦茶言ってるのよ!あんたの責任は私にも及んでくるんだからね!! 勝手な行動は許さないんだから!!」 再び大音量で怒鳴る二人を不思議そうな眼で眺めながら、ワルドは小型の竜巻で飛んでくる矢を弾き逸らす。そうしておいて、ワルドは攻撃の為の詠唱を始めた。 このままではワルドに全部持っていかれてしまうと気付き、ギアッチョはちょっとルイズを眠らせてしまおうかと考えたが―― ばさりというどこか覚えのある羽音が聞こえ、ギアッチョ達は上を見上げた。 直後男達の悲鳴が聞こえ、それと同時に彼らは次々に崖下に転落する。 「あれ・・・シルフィード!?」 ルイズ達の驚きにきゅいきゅいという声で答え、シルフィードとその上に乗った三人――キュルケとタバサ、それにギーシュが降りてきた。