約 483,719 件
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/11288.html
今日 - 合計 - ゼノサーガ エピソードI[力への意志]の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月12日 (金) 11時26分08秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/970.html
注意:本稿では『ゼノサーガ エピソードI 力への意志』と、そのリメイク版である『ゼノサーガ エピソードI リローデッド 力への意志』の両方を取り扱います。 ゼノサーガ エピソードI[力への意志] 【ぜのさーが えぴそーどわん ちからへのいし】 ゼノサーガ エピソードI リローディッド[力への意志] 【ぜのさーが えぴそーどわん りろーでぃっど ちからへのいし】 ジャンル RPG 対応機種 プレイステーション2 発売元 ナムコ 開発元 モノリスソフト 発売日 無印 2002年2月28日リローディッド 2003年11月20日 定価 通常版 8,190円限定版 13,440円リローディッド 5,040円(全て税込) レーティング CERO 15歳以上対象(*1) 廉価版 PlayStation 2 the Best2003年4月3日/3,129円(税込) 判定 なし ポイント 『ゼノギアス』譲りの濃厚な物語とBGMムービーが非常に多い ゼノシリーズ 概要 ストーリー 特徴 評価点 問題点 総評 余談 その後の展開 概要 『ゼノギアス』の製作者・高橋哲哉氏らを筆頭としたスクウェアスタッフがナムコからの出資を受けて立ち上げた会社「モノリスソフト」の処女作かつ『ゼノサーガ』3部作の第1作。 『ゼノギアス』シリーズで語られていなかった最古のエピソードである「エピソードI(*2)」の部分の設定を再構成し新しい物語としたものが本作である。 そのため、用語など似ている部分もあるがゼノギアスとは世界設定が異なるパラレルな関係となっており、直接的なつながりは無い。 高橋作品であることを示す「ゼノ」を冠した、「ギアス」と異なる新たな「サーガ(*3)」となる。 3部作のサブタイトル「力への意志」「善悪の彼岸」「ツァラトゥストラはかく語りき」はいずれも哲学者フリードリヒ・ニーチェの著書から取られており(*4)、作中にもニーチェの哲学的概念や関連する用語、名前が用いられている。 翌2003年には北米版の逆輸入版である『ゼノサーガ エピソードI リローディッド[力への意志]』が発売された。 音声は英語+日本語字幕のみだがコスチュームの追加、イベントシーンの鑑賞機能などの追加要素に加え、エピソードIIの特典映像が収録されたDVDも封入されている。 ストーリー 20XX年。ケニアのトゥルカナ湖で遺跡調査を行っていたMr.マスダと言う人物により、金色のプレート型をした物体「ゾハル」が発見される。 それから時は流れ、人類はある理由により地球圏を放棄せざるを得なくなる。 「枢機院」と呼ばれる管理機構の統治の下、星系間を空間歪曲航法によって結ぶ「U.M.N.(ウーヌス・ムンドゥス・ネットワーク)」や、発達した惑星開発技術を基盤として、約50万の惑星国家からなる「星団連邦」を形成し、宇宙を第二の故郷として繁栄していた。 一方、人類の故郷である地球は「Lost Jerusalem(ロストエルサレム)」と呼ばれる禁断の地として、既に場所はおろか、存在さえ忘れ去られようとしていた。 ゾハル発見から4000年の後、星団連邦は「巡礼船団<グノーシス>」と呼ばれる生物とも兵器ともつかぬ謎の敵対勢力と激しい戦いを繰り広げていた。 そんな中、ある事件で宇宙を漂っているゾハルを回収するため、連邦軍の巡洋艦「ヴォークリンデ」が当該宙域に赴く。 星団連邦に強い影響力を持つ巨大星間コングロマリット「ヴェクター・インダストリー」に所属する技術者シオン・ウヅキは、対グノーシス用戦闘アンドロイド「KOS-MOS(コスモス)」の起動実験のため、ヴォークリンデに搭乗していた。 ゾハル回収が完了したその10日後、ヴォークリンデは突如現れたグノーシスの群れに襲撃され、不十分な装備のために瞬く間に蹂躙されてしまう。 乗り込んできたグノーシスに掴まり、死を覚悟するシオンだったが、その命を救ったのは自律モードで自ら起動したKOS-MOSだった。 このエピソードIはシオンが自立し、自らの意志で行動を開始するまでの物語である。 特徴 宇宙を舞台としたSFRPG。いわゆる「スペースオペラ」の括りに入る作風であり、冒険の舞台も宇宙船や人工惑星、スペースコロニーなどとなっている。今作では最後まで惑星に降り立つ事は無く(*5)、エンディングで初めて惑星の大気圏内に入るという徹底ぶりである。 公式には、本シリーズは「宇宙創世から終焉までを描く一大叙事詩」であり、本作はその一部を取り上げたエピソードとしている。 イベントシーンはフルボイスのムービーで展開する。その合計量は時間にして7時間以上。 テレビアニメ1クール分を超える長大なムービーによってストーリーが描かれるため、RPGとしてのボリュームは控えめとなっている。 戦闘は『ゼノギアス』のランダムエンカウント制からシンボルエンカウント制に変更された。 戦闘システムはコマンドによる必殺技と、魔法にあたるエーテルを駆使するという、『ゼノギアス』をベースとしたものだが後述のように改変も加えられている。 逃走コマンドは無く、アイテム「エスケープボール」かエーテル「グッバイ」を使うことでのみ戦闘から離脱できる。手間が掛かるし有限であるが、雑魚戦なら必ず離脱する。また、序盤を過ぎればアイテムもエーテルも豊富に使えるようになる。 『ゼノギアス』のようなジャンプは不可能なのでダンジョン探索にアクション性はほぼ無いが、主人公の持つ端末の「破砕プラグイン」という機能を使うとマップ上のオブジェクトを破壊することができる。 オブジェクトを壊すと中からアイテムが出現することがある他、特定のオブジェクトを壊すと周囲に炎や電撃、毒を撒き散らすものもあり、敵シンボルの動きを止めたり戦闘を有利に運ぶ効果がある。 ダンジョン内の障害物はだけでなく貨物船のコンテナ、一般施設の植木や自販機など明らかに壊してはいけないようなものも壊し放題。マップを切り替えれば復活するので、基本的に怒られることも無い(*6)。 メニュー画面からU.M.Nにアクセスする事でメールチェックや用語集の参照ができる。 また、特殊なセーブポイントからはオンラインショップ、ミニゲーム、クリア済みダンジョンの再訪(*7)も実行可能。 セーブポイントは『ゼノギアス』で敵側の情報収集装置でもあったメモリーキューブに似ているが本作ではそのような設定はないので安心して使おう。 評価点 グラフィック PS2初期のゲームだが、通常時のグラフィックやムービーはかなり綺麗で今見ても見劣りしない出来。 キャラクター戦闘が2Dだった『ゼノギアス』と違い、本作はその戦闘も完全3Dになった。 戦闘システム 『ゼノギアス』と同じく、キャラクター戦闘とロボット戦闘の2種類に分かれており、キャラクター戦闘はボタンの組み合わせで発動する必殺技で戦うシステム。 『ゼノギアス』ではキャラクター戦闘で「必殺技を発動する過程で必要な通常攻撃にあまり意味が無い」という批判があった。 今作は□ボタンを「物理属性攻撃」に、△ボタンを「エーテル(魔法)属性攻撃」に分けており、敵は基本どちらかに強い耐性を持っていたり、空中の敵には物理攻撃不可と言った特性があるため、敵によって技を使い分けるようになっている。 必殺技の出し方も変わっている。キャラクターにはAP(アビリティポイント)が最大6ポイント、戦闘開始時は4ポイント設定されており、通常攻撃で2ポイント消費する。 必殺技を使うためには特定の攻撃2回+○ボタンの計6ポイント必要なため、戦闘開始時にいきなり必殺技は使えないようになった。また必殺技を使うためには、1ターンAPをためておく必要がある。 必殺技の強化により、攻撃1回+○ボタンの計4ポイントで1ターンで放てるようにカスタマイズすることも可能。 これによって『ゼノギアス』でのとっつきやすさも残しつつ洗練された。必殺技の演出も派手でとても爽快。 また、戦闘で獲得したポイントを用いて、必殺技やエーテルを強化したりアクセサリーから特殊効果を引き出すことが可能であり、戦闘のカスタマイズ性も高い。 キャラ固有のものを除き、取得したエーテルを他のキャラにも覚えさせることも可能。これにより、エーテル値が高いのに最初は補助ばかり覚えるKOS-MOSに早いうちから攻撃エーテルを覚えさせたり回復役にさせるなどと言った応用が可能。 シナリオ 『ゼノギアス』に続いて高橋哲哉・香(PN「嵯峨空哉」)夫妻が手掛けている。深い台詞回しやミステリアスで重厚なストーリーは非常に良くできている。 本シリーズは主人公である女性技術者「シオン・ウヅキ」と彼女が開発した戦闘アンドロイド「KOS-MOS」を中心に、謎の敵勢力「グノーシス」に人類が脅かされる中、様々な思惑や陰謀が交錯する混沌とした宇宙を描いている。幾重にも張り巡らされた伏線、大量の謎がプレイヤーを惹きつけて離さない。 元々連作を予定していたため、今作はキャラクターの印象付けや伏線を張ることに重点が置かれている。エンディングも次回作に続く終わり方になっており、次への期待を高める内容になっているため評価も高い。 ちなみに、「シオン・ウヅキ」が『ゼノ』シリーズ初の女性主人公である。 シナリオは次回に続くとは言え、本作最後に起こる事件にはしっかり決着を付け、クライマックスらしく大いに盛り上がるものになっている。主題歌と演出の良さも相俟って、観終わった後の満足度は高い。 シリアスなシーンばかりではなく、和やかな日常シーンや笑いを誘う演出もちりばめられているので、重くなり過ぎない作りにもなっている。 難解な上、専門用語が非常に多いストーリーだが、用語集も用意されているのである程度のフォローはされている。 その用語集にもネタ的なものが含まれていたりするので、読むだけでも楽しめる。 キャラクター パーティーメンバーを始めとした多くの人物は非常に個性的で、それぞれキャラが立っている。 中でも本シリーズの象徴的存在であるKOS-MOSが特に印象的。心を持たない「ただの兵器」を自称する通り、序盤は人命を軽視したショッキングなことをやらかしたり、任務のために民間船を力尽くで従わせるなどと言った無感情な行動が目立つ。その一方、ヒロイックなアクションやただの兵器では有り得ない奇跡を起こすと言った活躍シーンも多い。 他にもウェイトレスのように飲み物を配ったり力加減に気を付けて皿洗いに勤しむなどの可愛らしい姿や、稀に見せるしおらしい仕草など不思議な魅力も兼ね備えており、その神秘的な容姿も相俟って後に様々な作品に客演するほどの人気キャラとなる。 逆に主人公のシオンはKOS-MOSなどに比べると人気は今一つだが、次回作以降のようなヒステリックで自己中心的な面はほとんど見られず、社交的な技術者として描かれている。 『ゼノギアス』に登場したシタン・ウヅキの一文字違い、眼鏡という点から、設定に共通点はほぼ無いが『ゼノギアス』をプレイした人ならまず反応するであろうキャラである。必殺技にもシタンを想起させるものが一部存在する。 そして彼女の兄のジン・ウヅキはシタンを彷彿させる要素がより顕著になったキャラとなっている。ただし、本作での登場は僅かだが。 もちろん、他のパーティーキャラも濃い。謎が服を着て歩いているような不思議少年のケイオス、ある種の自殺願望者だがいざと言う時は頼れるサイボーグのジギー、ロリ担当で健気で人間に憧れる「レアリエン(合成人間)」のM.O.M.O.、後半からストーリーを引っ張っていく「ちび様」ことJr.と、誰一人として印象の薄いキャラはおらず、あらゆる面で個性を際立たせている。 パーティーキャラ以外もヘタレ担当のアレン、借金まみれのマシューズ船長、哀し過ぎる人生を送ってきたアンドリュー中佐など、個性的で印象の強いキャラばかり。 特に今回の主な敵役であるアルべド・ピアソラは個性的というよりも振り切れ過ぎて色々ギリギリである。演じる山寺宏一氏の狂気すら感じる熱演も相俟って語り草になる程。 ムービーの完成度 ほとんどのストーリー進行はムービーで行われるが、このムービーでは画面の奥のほうにいるキャラクターも何かしら動いていたりと棒立ちしているものが1人もおらず、完成度は高い。カメラワークなどの演出も優れており、これに惹かれたファンもいる。 大規模な宇宙艦隊戦、宇宙船の高速航行など大迫力のアクションシーンも多い。血飛沫の飛び散る過激な残虐シーンも存在するが、そう言った場面も克明に描くことでより世界観に没入させられるものとなっている。 動きの少ない会話シーンでもBGMやSEによる雰囲気、カメラワークの演出により見ていて飽きない。深い台詞回しも相まってプレイヤーを引き込んでくれる。 音楽 『ゼノギアス』から引き続き光田康典氏が作曲を担当。「ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団」を起用したクラシック音楽群は美しく、壮大なシナリオの雰囲気に見事にマッチしている。 また『ゼノギアス』に続き主題歌を歌唱したJoanne Hoggによるエンディングテーマ『kokoro(*8)』はオリコン洋楽チャート(*9)で1位を獲得するなど、非常に高い評価を得ている。 同歌手による挿入歌「Pain」も良曲であり、エンディングの最中に流れてはムービーをドラマチックに彩っている。 おまけ要素 自由度は高くは無くストーリー自体も短めだが、各種ミニゲームやサブイベント、セグメント(*10)と言ったおまけ要素も多数存在する。 ミニゲームはA.G.W.Sを使った対戦ゲーム「バトリング」(*11)。UFOキャッチャーの要領でドリルを操作し物を破壊していく「ドリルゲーム」や、スロットとポーカーが遊べる「カジノ」に加え、オリジナル性が高く凝った作りの「トレーディングカード」など、バリエーション豊かに用意されている。 一方通行のストーリーだが、クリアしたダンジョンにはシミュレーターと言う形で再度入ることが可能。取り逃した要素があっても安心。 ストーリー進行に応じてメールを受信する事があるのだが、中には特定の時期に特定のポイントを通過しないと受信できない隠しメールもある上に、正解の返信を行わないと続かないメールコンボも存在する。 NPCはストーリー進行、二度話しかける、特定キャラで話しかけるなどで台詞が変わる場合があり、地味に作り込まれている部分もある。 問題点 戦闘テンポ 敵味方共にモーションが遅く必殺技演出のキャンセルもできないため、テンポが悪くスピード感に欠ける。モーションが完全に終了してニュートラルに戻ってから次に移る仕様なのも、余計にテンポを悪くしている。 加えて、前述したようにカスタマイズ無しでは必殺技発動に2ターン掛かることなどもザコ戦のテンポを削いでいる。この点はカスタマイズで何とかなるのが救いだが。 また、全体的にザコ敵のHPが高く、戦闘が長引く場合が多いのがこの問題に拍車を掛けている。 この点は次回作で改善されるどころか、さらに悪化してしまっている。 ロボット関連 今回は『ゼノギアス』の「ギア」に相当する搭乗ロボットとして「A.G.W.S(エイグス)」が登場するが、その扱いは良いとは言えない。 『ゼノギアス』では生身とギアは戦闘力もスケールも桁が違うので、ほとんどのダンジョンやバトルはキャラ用、ギア用と区別され、それぞれを楽しめた。 対して本作はA.G.W.S専用ダンジョンや敵と言ったものは無い。ダンジョンもバトルも生身で挑むため、A.G.W.Sは戦闘の補助的役割でしかない。 『ゼノギアス』のギアバトルにあったような緊張感が無くなったので、劣化と見做すファンもいた。 ギアには燃料の概念があり、回復手段なども限られているため、常に緊張感のある戦闘が行えたが、A.G.W.Sには燃料の概念がなく、回復も専用アイテムで普通に可能である。 戦闘中はいつでも乗り換え可能だが、上述したように最序盤を過ぎれば生身で充分戦えるし、乗るだけで1ターン無駄に消費するのであまり乗る意味が無い。 最初のうちはキャラのレベルが低い所為もあって乗った方が楽という印象が強いが、ちゃんとパーツを新調しないとすぐに生身に追い抜かれ、役立たずのポンコツと化してしまう。乗る必要があるのは最初のダンジョンのボスくらいである。 資金は普通にプレイすると序盤から中盤は人間キャラ用の装備品やアイテム購入で手一杯。終盤にはかなり余るがA.G.W.S用の装備を揃えていくとなるとまったく足りない。 チューンナップに大金を掛けるくらいなら、それをキャラの装備用の資金のみに当てて地道にレベルアップした方が効率的である。 新たな機体を購入する事も可能だが非常に高価であり、最早趣味の領域。クリア目的でこれの為に金稼ぎに精を出すぐらいなら地道にレベr(ry ゼノギアスのギアは搭乗者の特徴を反映し、人間キャラ同様のコンボや必殺技で戦えたが、A.G.W.Sは汎用な剣や銃を単発で使うだけで面白味が無く、本当にただの兵器でしかない。 KOS-MOSとジギーのメカ勢2人はA.G.W.Sに乗れないという点も扱いの悪さに拍車を掛ける。 パーティーメンバーのうち、シオン、ケイオス、Jr.は最初からA.G.W.Sを所持しているが、M.O.M.O.は所持していないしストーリーで入手もしないので、購入するか乗り換えない限りA.G.W.Sに乗ることができない。 また、ギアや次回作以降の「E.S.」と違って、A.G.W.Sは設定上、ストーリーには全くと言っていいほど関わらない。「この世界に存在する戦闘兵器であって、一応主人公達も使える」程度の扱いである。 ムービーにはそれなりに登場するが、ゲーム中では主人公パーティが必ず乗る場面はほぼ皆無である。 ミニゲームのバトリングには本編でのA.G.W.Sの装備が反映され、カスタマイズが可能。バトリングの難易度は高めなのでクリアには大金を掛けて揃える必要があり、その点ではチューンナップに意義がある。 が、肝心のバトリングをクリアしても何も無い。他のミニゲームはクリアすると本編で使えるレア装備が手に入る(*12)ので、レア装備や何らかのオマケ要素が貰えると信じ大金と時間を掛けてクリアした者もいるだろうが、まるで罠である。 このように、ロボット方面の期待は肩透かしを食らう可能性が大である。 このためか、『ゼノサーガI・II』では乗れるロボットはEPIIのE.S.だけになり、A.G.W.Sは使用不可になった。 一方で、本編とは関係無いエルデカイザーに関しては妙な力の入れようである。 ムービーの長さと自由度の低さ 前述した通り、ムービーの合計時間は7時間以上に及ぶ。所謂ムービーゲーである。 ムービーは初回プレイからスキップできるが、ストーリー重視のゲームデザインである以上、スキップすると話に付いていけなくなる。 上記のようにほとんどシナリオ進行はムービーで行われるため、こう言ったゲームが苦手な人は厳しい。 上記とあわせ自由度も低い 基本的に自分で世界を冒険していくような自由度のあるゲームではなく、ムービーを追いかけていく形のゲームであるため、シナリオをあまり見ない層には薦められない。 ストーリー的にも、目的地に向かう途中に様々な事件に巻き込まれるタイプの話なので、そうそう思い通りには動き回れない。上述の通り、行動可能範囲内ではそれなりの自由は許されるが。 とはいえムービーのクオリティーが高いことやストーリーの良さもあり、ファンからはこのムービーゲー的な特徴は許容されてもいた。 しかし残念ながら無印版はその売りのムービーを見返す機能が無い。お気に入りのシーンがあれば直前でセーブデータを取っておくぐらいしかない。セーブデータは99個まで作れるが…。 リローディッドにはムービー鑑賞機能が追加されているが、英語音声なので本来のムービーを見たい場合はやはり都合が悪い。 RPGパート 次にどこへ行けばいいか指示はあるものの、その場所へはどこをどう行けばいいのかといった具体的な案内や説明が無いことが多いため、来たばかりのマップで詰まりやすい。 マップはわりと広いため自身で探索して覚えさせるためかもしれないが、広いわりに地図も無く(*13)、何かしらヒントに繋がるものが欲しかったところ。 最初のダンジョンクリア後に探索する「ヴォークリンデ」からして構造が複雑で、しかし主人公にとっては既に何日も滞在している艦なのでわざわざ道案内はしてくれず、初見ではまず迷う。 主人公達の拠点となる小型船「エルザ」も小型とは言っても貨物宇宙船だけあって結構広く、貨物スペースは入り組んでいるため、初探索時はカレーライスの盆を持ったまま(*14)しばらく彷徨う事になるだろう。届ける頃にはたぶん冷めている。 上記にあるようにKOS-MOSとジギーはA.G.W.Sに乗れないのだが、その代わりに使える特殊兵装の「バックパック」が使い物にならない。 ボタン一発で発動可能な必殺技といったものなのだが、使用にはAPをフルに使うため2ターンが必要で、発動条件が普通の必殺技と何ら変わらない。 それどころか普通の必殺技は通常技のコンボから発動するためその分威力が上乗せされ、強化することでさらに威力が増したり1ターン発動も可能になるのだが、バックパックは強化不能のため2ターン固定で、威力も別に強くはないし上げることも出来ない。 そして1戦闘に使える回数に制限があったり、EPが消費されるなど何から何まで通常必殺技の劣化でしかなく、使う意味すら無い。 隊列システムも微妙。キャラには前衛と後衛があり、後衛に配置すると一部敵が使う全体攻撃を除いて攻撃されないが、こちらも通常攻撃と必殺技が使用不能になり、ほぼサポート専用キャラになるというもの。 最序盤のM.O.M.O.が弱すぎるため使うくらいで、その後は特に使うような難易度では無くなる。一応、真後ろにキャラがいればノックバックを防ぐ効果があるが、それが有用なのも同じくM.O.M.O.加入直後のボス程度(*15)。 前衛の真後ろに後衛を配置することで発動する技等もあるが、1人をサポート専用にするより3人で攻撃した方が効率が良い。 また戦闘中にも変更が可能なので、ピンチになったら後ろに下げるといった戦法もアリかもしれないが、隊列変更には1ターンを消費する。わざわざ隊列を変えるより、その行動で回復した方がいいだろう。 BGM関連 光田氏のBGMは評価が高いのだが、実はマップ移動中は殆どBGMが流れない。 移動中でBGMが流れるシーンは敵襲時と終盤のダンジョンぐらい。数々の良曲はその殆どがムービー専用と言う訳である。 正確には全くの無音なのではなく環境音はしっかり聞こえ、宇宙船やコロニーの雰囲気は充分演出できている。しかしBGMが欲しい人には辛いのも事実。 バトルBGMが通常戦闘、ボス戦問わず同じ曲しか流れない。ムービーで盛り上げた上でボス戦に入ってもザコと同じ曲と言うのも盛り上がりに欠ける。 光田氏曰く、圧倒的な力を持つグノーシスとのノーマルバトルを、中ボス戦の扱いにして作曲したので、中ボス戦用の曲を書く必要はないと思ったという。また中ボス曲というRPGのお約束を崩したいという思いもあったらしい。 中ボス曲が無いことへの批判も想定内で、その分ノーマルバトルに力を入れたとのこと。その発言通り、戦闘曲の完成度は高く、臨場感も迫力も抜群である。 しかしゲームを通して戦闘で同じ曲しか流れない事を寂しいと思うのも事実であり、納得できるかは人による。実際、『ゼノ』シリーズにてこのような方式を採用しているのは本作だけであり、以降は他のRPGと同じく複数の戦闘曲が用意されるようになった。 なお、ラスボスだけは専用曲が用意されている。しかもどことなく『ゼノギアス』のラストバトル曲を想起させる曲調で、ファンならニヤりとさせられる。 ミニゲームも上記バトルBGMやネットワーク時のBGMの流用。ドリルゲームに至っては何故か無音で、モブの足音とドリルの音と破壊音だけが虚しく響く。 クリアデータの仕様 エンディングが終わると最後にクリアデータを作成できるようになるが、このクリアデータは次回作で読み込むためのものであり、本作ではロードができない。しかもそれに関するアナウンスも無い。 もし知らずに上書きセーブなどした日には、もう各種おまけ要素を楽しんだり、エンディングを再び観ると言ったことが一切できず、今までの苦労が水泡に帰すと言っても過言ではない。 このクリアデータが次回作にしっかり活かされるならまだ救いがあったかもしれないが、実際は次回作で特典のアイテムがいくつか貰えるだけである。割に合うとは言い難い。 この仕様が不評だった為か、次回作以降はクリアデータのロードが可能になり、ラストダンジョン突入前から再開するようになった。また、クリアデータのみ挑戦可能な隠しボスやダンジョンも登場するようになった。 その他 ストーリーの展開上、後半以降はほぼJr.が主人公と化しており、M.O.M.O.がヒロインのような立場になる展開もあって、本来の主人公であるシオンやキーパーソンのはずのKOS-MOSの影が薄くなっていく。 無論、全くの脇役になる訳ではないしここぞと言う時はしっかり目立つのだが、後半の展開自体がJr.とアルベドの因縁やM.O.M.O.に隠された秘密に集約していくため、どうにも蚊帳の外に置かれがち。エンディングでは完全にKOS-MOSが主役になっているのが救いだが。 このJr.を主人公とした流れは次回作のラストまで続いていく。 ストーリー展開上仕方ないとは言え、人間のボスに対して主人公達が負けるような流れが多い。 バトルではしっかり勝利を収めているのに、ムービーが始まるや否や主人公側だけが疲弊していたり負けたボスの方が勝ち誇ったりするシーンが多く、カタルシスに欠ける。 これ自体は他のRPGでも時折見受けられるが、本作の場合は続き物ということで決着が付けられない都合もあってか人間ボス戦は毎回このパターンと言っていい。 例えば序盤のグノーシスから逃走するシーンではバトルに参加していないアレンが銃撃戦を行なっていたり、逆にM.W.S.(*16)や体術でバリバリ戦っているシオンは丸腰で逃げていると思ったら急に銃を手にしたりと、バトルの描写とムービーの不一致も見受けられる。これは先にムービーだけ製作していた都合かもしれない(余談で後述)。 総評 ムービーの長さや難解なシナリオなど万人向けとは言い難いものの、『ゼノギアス』で培ったSF考証とストーリー構成はしっかりと活かされ、重厚なスペースオペラへと昇華された。 その世界観、ストーリー、演出は『ゼノギアス』を知らないユーザーをも魅了し、多くのファンを獲得した。 シナリオは今後のシリーズの発展を思わせるには充分な出来で、売上も40万本と新規タイトルとしては良好であり、海外でも良好な評価を獲得している。 余談 隠し要素として、ムービー付きで魔法少女への変身や、勇者シリーズを彷彿とさせる巨大ロボットの合体シークエンスを映す技などが存在し、大いにネタになった。 『ゼノギアス』の時点でも勇者ロボチックなGエレメンツという巨大ロボットが存在しており、その流れを汲むものと思われる。 各パーツの名称もGエレメンツの搭乗者だったエレメンツのメンバーに肖ったものであり(*17)、必殺技名も『ゼノギアス』をプレイした人ならすぐにピンと来るものになっている。 各パーツを単独で召喚してもそれなりに強いが、合体させるとゲームバランス崩壊級の強さになり、ゲーム中のほとんどの敵を一撃で倒せるようになる。それだけに召喚に必要なEPは多く、入手も情報無しでは難しめだが。 このロボットは次回作以降で亜種が隠しボスになったり、完結編では地味にストーリーに関わっていたりと、以降も存在感を発揮していく。 魔法少女への変身は2種類存在し、ムービーもそれぞれ全く別のものが用意されている。 こちらも特定のダンジョンの特定のポイントをM.O.M.O.操作時に調べるという入手方法で、操作キャラがM.O.M.O.でなければ調べるポイントすら表示されないので気付かない人は全く気付かない。 しかしそのインパクト故に認知度は高く、四コマアンソロジーでも関連ネタは豊富だった。 残念ながらどちらも『ゼノサーガI・II』には収録されなかった。 後年のインタビューで明かされたところによると、本作は製作期間の2年のうち、1年半はムービーだけ作り込み、ゲーム部分は最後の半年で一気に作ったという。 というのも、当時はモノリスソフトが設立されたばかりで組織作りと並行しての開発であり、新人だらけの会社だったために難航していたとのこと。 スクウェアのムービー室出身のスタッフが何人かいたのでムービーだけはいくらでも作れたが、グラフィックエンジンの完成はマスターアップの半年前であり、ゲーム部分はそこから作るしか無かった。RPGパートの不出来さはそこに原因があるようだ。 何故かムービーシーンでのパンチラがかなり多い。ミニスカのキャラならば、ほぼ見えるシーンが存在するレベル。そしてM.O.M.O.のパンチラは特に多い。 この頃のSONYはエロに厳しく、ポリゴンのアクションや格闘ゲームなどは許容されていたが、視点固定のムービー等ではまず見せないことが基本だった。何故ここまで露骨に見えるようにしているのか謎である。 ちなみに、ステータス画面のキャラCGを自由に視点変更出来る裏技があり、これを使えばパーティメンバーなら見放題である。 お叱りを受けたのかは不明だが、次作『EPII』ではパンチラは皆無になった。だが、続く『EPIII』はパンチラどころかパンモロや裸が出る。 本編中に人工ビーチでの海水浴シーンがあり、そこでシオン達の水着姿が描かれるのだが、装備品として入手できる水着を装備すると戦闘中にその時の水着姿になる。 単なるネタではなく水着自体にT.PT獲得量増加の効果があるため、キャラ強化の上でも水着で戦うのは有効だったりする。 しかしメカであるKOS-MOSとジギーは水着が装備できず、当然水着姿も用意されていない。 要望があったのかは謎だが、次回作ではこの2人も装備可能になった。 また、完結編ではクリア後にイベントパートでの姿を水着姿にするモードが解禁されるなど、水着関連には妙な力の入れ具合である。無論、後年の『ゼノブレイド』も然り。 パーティメンバーではないが、同シーンで見られるアレンの囚人服のような水着もよくネタになる。 今作には妙に個性的な隠しボスが2体存在し、どちらもいかにも次回作で再登場しそうなセリフを残していたが、残念ながら次回作以降はスタッフ入れ替えの所為か再登場は叶わなかった。『ゼノサーガI・II』にも登場していない。 特定のキャラに対して因縁めいた雰囲気を残していたが、結局謎のままになってしまった。 KOS-MOSの勝利台詞に「ルックス5%低下。シオン、洗浄して下さい」というものがある。 この「ルックス5%低下」とは視界が若干不良気味なので調整して欲しいという意味なのだが、その説明が無いため、文字通り「見た目が悪くなった」と受け取って「KOS-MOSはナルシスト」と解釈したプレイヤーも少なからずいた。 実際、四コマアンソロジーでもそう捉えたネタが幾つか描かれている。 シオン専用エーテルに敵からアイテムを盗む「クイーンキッス」というものが存在する。色仕掛けでアイテムを奪う技なのだろうが、何故か10%の確率で即死効果を持っている。これが意味することとは一体…。 尚、このクイーンキッスを含む一部エーテルはそのキャラ専用であり、譲渡はできない。無論、上記のロボット召喚や魔法少女への変身も然り(*18)。 EPII発売前に今作のファンディスク『ゼノサーガ フリークス』が発売された。 メインとなるテキストADV「ぜのコミ」は本編のパーティーメンバー+αを主人公としたドタバタコメディであり、登場人物の意外な顔が覗けたりする。本作のキャラ達を気に入った人なら楽しめるだろう。 ミニゲームとして『ことばのパズル もじぴったん』をゼノサーガ風にアレンジした「ことばのパズル ぜのぴったん」が収録されている。しかも同作のテーマ曲「ふたりのもじぴったん」の替え歌「ふたりのぜのぴったん」など、ボーカル曲がBGMに用意されている懲りよう(*19)。 他にはEPIのデータベース、『EPII』の体験版が収録されている。 今作を原作としたアニメ版が全12話で放送されている。 12話という原作ゲームのムービーよりも短い尺ゆえ、今作で好評だったエピソードの削除や変更点などは賛否両論だが、全体的に短い話数で上手くまとめている。 ちなみにこのアニメ版の脚本・シリーズ構成は、高橋氏の友人であり、後に『ゼノサーガI・II』や『ゼノブレイド』で脚本を勤める竹田裕一郎氏である。 漫画版も全3巻で連載された。 しかし、こちらはゲーム本編を簡略化して掲載したような内容で漫画ならではの面白みが薄く、ラストの一番の盛り上がり所もカットしてしまうなど、あまり良い出来とは言い難い。 上述したようにKOS-MOSは本シリーズ以外にも多くの作品に登場している。 『NAMCOxCAPCOM』『無限のフロンティア』『PROJECT X ZONE』と言ったモノリスソフト製お祭りゲーの常連であり、他にも『ヴィーナス ブレイブス』にもゲスト出演している。 また、『ソウルキャリバーIII』ではキャラクタークリエーションでKOS-MOSが作れるパーツが用意されている。 さらに『ゼノブレイド2』ではレアブレイド「KOS-MOS Re 」としてシリーズの垣根を越えた出演を果たした。 次作EPIIからキャラデザや服装が大きく変わるが、主人公のシオンはトレードマークの眼鏡とお下げ髪すら無くなりもはや別人に。 しかし上記アニメやDS版リメイク、『NAMCOxCAPCOM』などの客演では本作の姿が使われており、こちらの方が人気も高いため、シオンといえば本作のものがまずイメージされる。 近年では本作のHDリマスター計画が持ち上がったが、市場分析の結果収益性が見込めず、最終的にキャンセルされたと発表された。 当然、ファンからは落胆の声が上がったが、それを誤魔化さず正直に打ち明けた事には賞賛の声もあった。 その後の展開 2年後に続編が発売されたがスタッフが一新されており、その影響が悪い方向に出て一気にファン離れが起きてしまった。 その後、完結編発売前に本作と『EPII』をまとめたDS用リメイク作『ゼノサーガI・II』が発売された。 評判の悪いEPII部分は大きく改善されているのに対し、本作部分はあまり手は加えられていない。 一方、PS2版から削除された展開やダンジョンが多く、ハード性能の制約上、演出面も簡略化されているが、ゲームそのものはDS用に新規に作っており、ゲーム性そのものも大きく変わっているため、本作とは違った面白さもある。 ただ、本来の物語をフルに楽しむなら本作をプレイすることをお勧めする。
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/516.html
鉄壁の意志、揺るがぬ信念 ◆UcWYhusQhw 「スバルはん……」 あの爆発で生きてられるとはおもわへんかったけどやっぱり。 スバルはんに思う事は無いわけではあらへんけど死んだら終わりや。 もし生きとるんやったら手駒にと考えたんやけどそれまで。 うちはそこでスバルはんについて考える事を止めた。 今はそんな事より流れた放送の中身や。 禁止エリアについては今はそこまで関係あらへん。 気になるというなら……南部に固まってきたという事ぐらい。 南部に人でも固まっていたのだろうか。 まあそれよりも今気にすべきは死んだ人数や。 17人。 また随分と減った。 順調に進行してるって事や。 これは喜ぶ事なんやろうか。 いや、少なくとも今は違う。 人数が少なくなるという事は手駒になる奴も減るって事や。 そして強者が残る。 私が勝てないような強者が。 その為には協力者が必要なんや。 そうかなりの強者の。 弱者はいらへん、足手まといなだけや。 そんな足手まといは殺しとく、邪魔やし。 必要なのはただ一人、なつきだけや。 後はただの駒。 なつきの為に利用する駒でしかあらへん。 ゲームをする時には強い駒が多い方が楽にきまっとるさかいね。 そして目の前にいる男、ヴァッシュはん。 見た限りではかなりの強者。 あの卓越した銃器の扱いは見事の一言や。 それに奇抜な戦い方、あの槍使いを翻弄させるとは。 おちゃらけてるくせになかなかやりおる。 詰めが甘いがまあ、そこは妥協点であろう。 戦闘能力だけで見るとかなりの上物や。 ただ「戦闘能力」だけでいうとや。 彼の思想、理念は邪魔でしかあらへん。 何が誰も殺させないだって。 血迷い事だ。 現に2人も死んでおるやないか、うちのせいでやけど。 うちが行動する事によって彼の理念は常に邪魔しはるやろ。 足手まといを始末にするにしても絶対に否定しはる。 そして殺し合いに乗ってるものでさえ止める。 何がそこまで彼をはしらせるんやろ。 少し気になった。 まあそんな事は後でいい。 取り敢えず考えるべきはヴァッシュはんをどうするべきかや。 手駒として使うか、切り捨てるかや。 戦闘能力は別格。 しかしその考えは邪魔。 どないしましょ。 どっちもいい考えや。 慎重に決めんと…… そして うん、決めた。 うちはその考えの下にヴァッシュはんに近づく。 そう、うちが決めた答えは 「ヴァッシュはん……」 「なんだい……」 ヴァッシュはんはどこか沈んだようすで座っていた。 大事な人でも呼ばれたんかいな。 まあそんなのうちには関係あらへん。 だからうちは用件を告げる。 「手をくまあらへん? うちとヴァッシュはんでこの殺し合いをぶちこわすんや……もう、うち殺し合い、やになったんどすのん」 「……え?」 そううちが選んだのはヴァッシュはんを手駒としてつかう事。 ここで別れてヴァッシュはん以上の強い手駒が手に入るとは考えられへん。 むしろ、協力する人間すら少ないやろ。 その中でこんなお人好しはある意味で貴重や。 その理念が邪魔やけど、うちが間違って殺したという事でもいいし、陰で始末してもいい。 ようは自分の手を染めればいいのや。 そう考えれば絶好の手駒。 まさに最良の駒。 使い方を間違わなければこれ以上の無い手駒やさかい。 だからうちは彼を使う事に決めた。 「君とかい……」 「なんや……不満なの? うちはもう乗ってないのや。組む事に問題なんてあらへん」 そう、今のうちは乗ってない。 なつきの為、自分の力でやってみせるんや。 その為にあんたを手駒にした方がやりやすいさかいね。 なんか気乗りしないみたいけど味方につけてやるさかい。 「もう、人を殺したりはしないのかい?」 「そや……もうしない。絶対や……殺したんのは悪いと思ってる……なんか空しゅうて……せやから力を貸してほしいんや」 あたり前やけど嘘だ。 別にどないとも思ってへん。 ただ力、運が無かったから死んだだけや。 だってなつきの為やもん。 多少の犠牲なんて仕方ないやろ。 そしてこれからもかわらへん。 足手まといは始末するし邪魔する者も殺す。 他人の死なんかどないでもいい。 ただなつきがもう一度、うちの前に現れるだけでええんや。 だから罪の意識なんてある訳がない。 ヴァッシュはんには悪いけど。 その信念は一生わからへんわ。 せやけど今はヴァッシュはんの力を利用しなければならへん。 その戦闘能力を手に入れる為に。 その甘ったれた信念には反吐がでるけど今はのもう。 だからうちは簡単にも嘘を吐ける。 「そう……ヴァッシュはん言うとったやん……ラブ ピースって! うち、それに感動しましてなあ……放送を聞いた後に死者が多くて……辛くなった時その言葉に感銘受けましたんよ」 「……本当かい?」 そんな訳あらへん。 血反吐がでるくらい堪忍や。 ラブ ピースってなにいってるんだか。 気持ち悪いわ。 大の男がそんな言葉をいうなんて。 あーもう堪忍して欲しいわ。 でも仕方あらへん。 これもなつきの為。 気持ち悪い単語を言い続ける。 「そうや……ラブ ピースや! ラブ ピース! ヴァッシュはん」 うちは笑顔を作ってVサインを作ってヴァッシュはんの真似をする。 アホらし。 でも我慢や、我慢。 「解ってるくれるのかい……殺し合いがどんなに空しくて悲しいものか? 何も生まない事を。生きてるだけでも何とかなるって」 「せや。うち、わかったんよ、だからお願いや! ヴァッシュはん!」 懸命に訴えかける。 後一押しや。 もう落ちる寸前。 この男はやっぱお人好しや。 だからうちはヴァッシュはんの手を握り訴えかける。 少し声を震わせ感情的になっているように。 「ヴァッシュはん……お願いやから……」 最後の一押しをした。 これで、どや。 完璧な筈。 そう思った瞬間、頭に手をおかれ 「いやいや……せっかくの美人がだいなしだよぉ、笑いなよ……ほらラブアンーーードォピィーーーーーーース!」 へらへらした笑顔をこちらに向けた。 って事は成功したのさかい。 「ええのん? うちに協力しても」 「もちろんさ。君が殺し合いをしないならさぁ」 「当たり前やろ? そういったやん」 よし、強い手駒が入ったで。 暫くは怖いものは無い。 あとは上手くコントロールするだけや。 駒は使い方を間違えると悲惨やさかいに。 ふふ上々や。 ただその時にヴァッシュはんが見せたどこかさびしい笑顔がどこか頭に残りはる。 なつきの為に1歩進む事ができたで。 なつき、待ってれな。 「なら一緒に言いましょう、あれを!」 「あれ?」 あれってなんやろ? 凄く嫌な予感はしはる。 ヴァッシュはんの満面の笑みがごッつう嫌や。 薄気味悪いで。 そしてその言葉を発す。 「そう……もちろん! ラーーーーーーーブ、アーーーーンーーードォピィーーーーーーース! ほらシズルさんも!」 「え゛」 え゛。 堪忍してや。 そりゃあ必死に言った気もしはるやけどあれはあれで。 せやけど今言わんと信用得れへんし。 そんなキャラでもあらへん。 ヴァッシュはんの笑顔に腹立つ。 「さあ、シズルさんも!」 ええい、ままよ。 なつきの為。 なつきの為なんや。 堪忍や、絶対わらわんでえ、なつき。 仕方ないんや。 なつき。 きらわんとってなあ。 「さあ、一緒に!」 ああ、どうにでもなれ! 「「ラーーーーーーーブ、アーーーーンーーードォーーーーピィーーーーーーース!」」 言うてしもた。 なんかなつきが笑ってるようにも思えるわ。 ……忘れといてください。 もう未来永劫思い出したくないですわ。 それにもう永遠にやらんわ。 「さすがぁシズルさん! いいですねぇ……さあもう一度!」 「え゛」 その後何回もあった。 ……手駒にしはるの間違ったかもしれへん。 なつき……たのむから笑わんといてえ。 「ほな行きましょか。ヴァッシュはん」 「そうだね」 あの後、うちらは準備をし移動し始めた。 ヴァッシュはんも信用してくれとるし順調や。 なつき、見といてや。 絶対、あんたにあって見せるさかい。 そのためには犠牲をなんぼ払ってもかまへん。 例えなんぼ殺してもや。 ヴァッシュはんは手駒でしかいない。 思いっきりつかって使えなくならはったら始末しはるだけや。 そないして、なつきに辿り着いてみせる。 絶対や。 なつき、うちはなつきの為にあるから。 さかいに絶対なんぼな事でも会う。 そないそら絶対曲げることのあらへん鉄壁の意志。 さあ行きましょか。なつきの為に。 前にのしのしと進んでいくシズルさんをみる。 シズルさんが僕に言った。 絶対殺さないって。 でもそれ嘘だ。 きっと殺す事をやめないだろう。 だってシズルさん笑っていない。 顔は笑っていた。 でも目は、心は決して笑ってなんかない。 僕と対峙した時に何も変わらない冷たい心。 殺気さえ感じられた。 どんなにあの言葉を言おうとそれは変わらなかった。 じゃあ僕はそんなシズルさんに何もしないのか? 違う。 もう沢山だ。 目の前で人が死んでいってまた知り合った人まで死んでった。 ランサーさん、ドーラさん、戴宗さん。 そして僕が不甲斐ないばっかりに死んでしまったクアットロさん。 じゃあ僕は無力だと嘆くだけなのか? 絶対に違う! もう絶対誰も殺させない。 もう目の前で人が死ぬなんて事をみすみすと許すわけにいかない。 僕は何があってもそれは止めない。 だから僕は諦めない、最後まで。 シズルさんはきっと殺していくだろう、これからも。 僕をきっと利用しながらも。 なら、僕はシズルさんの傍でシズルさんを見てよう。 例え利用されてるとわかっていても。 シズルさんが誰かを殺そうとした時を全力で止める。 もう死ぬのをみるのは沢山。 そしてシズルさんにも死んでほしくない。 どんなに偽善とののしられても、馬鹿にされても僕は信念を変えない。 それが僕の生き方だから。 だってもし生き方をかえて戻れるかい? ナイブズやメリル達の元に。 それはできない。 きっと皆非難する。 この生き方がヴァッシュ・ザ・スタンピードそのものだから。 だからもう僕は止まらない。 死んでしまった皆の分まで。 どんな時まで信念を貫き通す。 そして帰ろう。 皆の元へ、笑顔で。 僕はどんな時でも変わらない、変わっちゃいけない。 だから僕は改めて誓う。 絶対誰も死なせない、例え罪を犯した者でも。 そう絶対だ。 ここが僕のリスタート。 もう止まる訳にはかない。 絶対に揺るがぬ信念をもって。 さあ、いこうか。 僕が信じるものの為に。 そして、 「よい所にきたな、雑種共……なにか、着る物と温かい食べ物はないか?……ハ、ハ、ハクション!」 目の前に体格のいい金髪の男がいた。ただしほぼ全裸。 しかも寒さに震え体を揺らしてる。 え、えーと。 たぶんシズルさんも同じ考えだろう。 乞食? 【F-5/北部/1日目/夜】 【藤乃静留@舞-HiME】 [状態]:疲労(中)、左足に打撲、左眼損傷(ほぼ失明状態、高度な治療を受ければあるいは…)、首筋に切傷、精神高揚 [装備]:雷泥のローラースケート@トライガン [道具]:支給品一式×4(食料二食分消費)、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、 巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING サングラス@カウボーイビバップ 、包丁、不死の酒(不完全版)@BACCANO バッカーノ! 棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)、大量の貴金属アクセサリ、ヴァッシュの手配書@トライガン、防水性の紙×10 偽・螺旋剣@Fate/stay night、暗視双眼鏡、不明支給品0~1個(槍・デバイスは無い) [思考]: 基本思考:螺旋王の力を手中に収め、なつきと共に永遠を生きる 0:乞食ですのん? 1:ヴァッシュを利用。 2:邪魔になる人間は殺す 3:足手まといは間引く 4:邪魔にならない人間を傘下に置く 【備考】 ※「堪忍な~」の直後辺りから参戦。 ※ビクトリームとおおまかに話し合った模様。少なくともお互いの世界についての情報は交換したようです。 ※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。 (どちらもC.C.の声優と同じ CV ゆかな) ※不死の酒(不完全版)には海水で濡れた説明書が貼りついています。字は滲んでて本文がよく読めない模様。 ※一応、殺し合いに乗らず脱出する方針に転換したので、ジャグジーに対する後ろめたさは、ほぼ無くなりました。 ※ヴァッシュが利用されている事に気付いてるのを知りません。 【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン】 [状態]:全身打撲、強い決意 [装備]:ナイブズの銃@トライガン(破損) [道具]:支給品一式 [思考・状況]基本:絶対に殺し合いを止めさせるし、誰も殺させない。 0:乞食? 1:静留に利用されてる振りをしつつ警戒する 2:静留が殺そうとした場合全力で止める。 3:ナイヴズの銃は出来るだけ使いたくない。 [備考] ※クロの持っていた情報をある程度把握しています(クロの世界、はやてとの約束について)。 ※第二放送を聞き逃しました。 ※ミリィのスタンガンは粉々に破壊されました。 ※隠し銃に弾丸は入っていません。どこかで補充しない限り使用不能です。 【ギルガメッシュ@Fate/stay night】 [状態]:疲労(大)、全身に裂傷(中)、全裸(腰布一枚)、悪寒 [装備]:なし [道具]:なし [思考] 基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】の入手。【王の財宝】の再入手。 0:……寒すぎる。 1:“螺旋王へ至る道”を模索。最終的にはアルベルトに逆襲を果たす。 2:異世界の情報、宝具、またはそれに順ずる道具を集める(エレメントに興味)。 3:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】 。 4:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。 5:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感) 6:慢心を捨てる――――? ※地図の端と上空に何か細工があると考えています。 ※腰布の詳細はご想像にお任せします。 時系列順で読む Back あなたに贈る物語(後編) Next グッドナイト、スイートハーツⅠ 投下順で読む Back マテリアル・パズル~神無~ Next グッドナイト、スイートハーツⅠ 202 Clann As Dog 藤乃静留 219 Omegaの視界 未解封のハコニハ 202 Clann As Dog ヴァッシュ・ザ・スタンピード 219 Omegaの視界 未解封のハコニハ 199 二人がここにいる不思議(後編) ギルガメッシュ 219 Omegaの視界 未解封のハコニハ
https://w.atwiki.jp/hazamarowa/pages/23.html
まどかを救う。それが彼女の最初の気持ち。 今となっては、たったひとつだけ最後に残った道しるべ。 ただそれだけの為に、何度も何度も、同じ時間を繰り返してきた。 何度も何度も、絶望を乗り越えてやり直してきた。 誰と敵対しようとも、誰と死別しようとも、誰に信じてもらえなくとも。 何度も何度も。 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度もーー。 いつも結末は変わらなかった。 まどかが死んでしまうという最悪の袋小路。 そこから引き返して違う道に進んでも、必ず袋小路は現れる。 どこで曲がっても、どこで真っ直ぐ進んでも、それが当たり前だとでも言うように。 抜け出せない、永遠の迷路。 袋小路はいつも絶望だけを叩き付けてくる。 それでも、彼女が大切だから。大切な友達だから、何度でも立ち上がる。 どんなに足が疲れようとも、どんなに心が折れかけようとも。 「ほむらちゃん、過去に戻れるって言ってたよね」 「だからね……お願いがあるの」 数えるのも気が遠くなるほどに同じ時間を繰り返しても、決して薄れることのない記憶があるから。 ーーキュウべえに騙される前の馬鹿な私を、助けてあげて……くれないかな。 だから、歩き続ける。 未だ果たせてない約束の為に。 「なん、で……?」 何度もやり直してきた時間の中で、ほむらは少しずつ立ち回りを変えてきた。 同じことをしてもまどかを救えないのだから、当然のことだ。 けれど、結末の他にも変わらないことはあった。 例えば佐倉杏子との対立であったり、美樹さやかの魔女化であったり。 必ずそれらが起こるわけではないが、何度も起きたことでもある。 いつしか驚くこともなく、淡々とそれらの事象に対応できるようになった程には、大同小異の時間を駆け抜けてきた。 けれど、けれど。 こんなことは知らない。 あまりにもイレギュラーな事態。 殺し合い? 首輪? パレス? そんなの知らない。今まで一度だって、こんなことは起きなかったのに。 「まどかと殺し合え? 冗談じゃないわ……!」 まどかもあの空間にいたのを見た。 ほむらの大切な友達。ほむらが戦い続ける、唯一にして最大の理由。 そんなまどかと殺し合うなど、これまでの時間を全て無に帰すも同然のこと。 言われるままに殺しに走るわけがーー (……いえ、待って) 自分自身はまどかを殺さなければならない道など選びとる気はない。 けれど、もし願いを叶えるという姫神の甘言に惑わされた者がいれば、もし殺戮を望む根っからの狂人がいれば。 そして、そんな者たちの凶刃が、魔法少女の契約をしていない、いたって普通の女子中学生の今のまどかに向かってしまえば。 どうなるかなど、分かりきっている。 (まどかを探して、なんとしてでも守らなきゃ……) 他の誰がどうなろうとも、まどかだけは守らなければならない。 これまでだって、何度も通り過ぎていった命があった。助けられなかった命があった。 それでも止まらずに駆け抜けてきたのだ。ただひとり、まどかの為に。 殺し合いだろうとなんだろうと、やることは変わらない。 決意と共に混乱が収まりつつある頭で、もうひとつ考えることがあった。 姫神葵というあの男。 性別からしても、魔法少女や魔女のような力など持っているはずがない存在。 にも関わらず、あれだけ多くの人数に干渉し、あまつさえ時間を操る力を持つほむらすらも気付かない内に連れてきてしまった。 そんなことができるということは、ほむらの聞いたことがない、未知の力でも持っているのではないか? 繰り返してきた時間の中で触れることがなかったその力を知ることができたら、近付くことができたら。 まどかを救う足掛かりにできるかもしれない。 例えこの殺し合いを生き抜いて見滝原に帰れたとしても、待ち受けるものは何ひとつ変わらないのだ。 まどかの強い力に目を付けているキュウべえと、最強の魔女ワルプルギスの夜。 これらに同時に抗える可能性やヒントがあるのなら、その道を模索しなければならない。 (この殺し合いを開く為に使われた力を紐解いて、魔法少女と魔女のサイクルよりもエネルギーを効率よく集められるようにできるなら) (その力が、ワルプルギスの夜をも倒せるほどのものだったなら) (まどかを救うことができるはず) 殺し合いを開く為に使われた力が目的に沿ったものである保証はない。 けれど、これまでの道になかった新たなしるべに、どうして手を伸ばさずにいられよう。 たったの1%に満たなくても、例えそれが自分の身を滅ぼす選択肢だとしても。 まどかの為なら、迷わず掴み取る。 優勝者の願いを叶えるという言葉は当てにしない。 報酬をちらつかせることで殺し合いに乗る者を増やすという、詭弁でしかない可能性も十分にあるのだ。 そもそもまどかを殺すわけにはいかないし、話が本当だとしてもほむらの途方もない歩みを知らないまどかを優勝させたところで、その先の結末はきっと変わらない。 ならどうするか。 「まどかを保護できたら……その後は、あの主催気取りとコンタクトを取る方法を考えなきゃ」 直接、姫神葵との接触を図る。 そして、魔法少女とは異なる力についての情報を引き出す。 この殺し合いには、恐らく別の目的があるだろう。 ただ人々の殺し合う姿を見て愉悦に浸りたいだけならば、まどかのように心優しい者や、姫神に反抗の声を上げた坂本という少年のように正義感の強い者などは呼ばず、血の気の多い人間ばかりを集めればいい。 何より、一度参加者を全員集めたにも関わらず、こうしてバラけさせる必要がない。 あくまで仮定ではあるが、当たっているならば、目的への協力と引き換えに彼の力の情報の引渡しを求める、などの取引を持ちかけることも可能のはず。 (待ってて、まどか。今度こそ、新しい道を拓けるかもしれない。あなたを救う道に辿り着けるかもしれない) ふと、潮の香りに気が付く。 目的がはっきりしたことで、ようやく周囲を見る余裕を取り戻せたようだ。今自分が立っているのは港らしい。 眼前に広がるのは、ただひたすらに伸びていく真っ暗な水平線。 か細い月明かりしか映さない。道しるべもない。縋れる藁すら浮かんでいない。 「……上等だわ」 出口の見えない迷路よりも抜け出すのが困難であろう、暗闇だけを湛えた海を見て呟いた。 ザックを開いて、地図を取り出す。 四方を全て海に囲まれているが、港があるのは1ヶ所のみ。現在地は西の端で間違いないだろう。 次に手に触れた銃を取り出し、角度を変えながら数度構えてみる。 何度か使ったことがあるものであるため、それなりに手に馴染む。これならまどかを守ることもできるだろう。 潮風がひとつ吹き、濡羽色を揺らす。 少し肌寒かったけれど、銃を握る手が震えることはなかった。 ねえ、まどか。 多くの人が巻き込まれてるのにあなた以外の命を見ていない私を、あなたはどう思うかな。 優しいあなたのことだもの、きっと咎めるでしょうね。 でもね、私はあなたを救う為だけにここまで来たの。 たったひとつのその想いが潰えた時、私はきっと私でいられなくなっちゃうから。 あなたを理由に魔女になるなんて、嫌だから。 そうなったら、あなたもきっと絶望するから。 だから。 私にあなたを守らせて。 【C-1/港/一日目 深夜】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:健康 [装備]:89式小銃@現実 [道具]:基本支給品 不明支給品(0~2) [思考・状況] 基本行動方針:まどかを保護し、主催側と接触する方法を探す 一.まずはまどかの安全を確保しないと。 【支給品紹介】 【89式小銃@現実】 アニメ本編でも暁美ほむらが使用したことのある銃。自衛隊などで制式採用されているものと言えば分かりやすいのではないだろうか。 Back← 004 →Next 003 永遠はここに 時系列順 005 異種間コミュニケーション(みんな人間ですけどね) 投下順 暁美ほむら 036 Nocte of desperatio
https://w.atwiki.jp/mihoyowikiunofficial/pages/47.html
目次 性能ステータス スキル1 日食 スキル2 月食 入手方法 説明 関連項目 性能 ステータス No. 名前 3064 暗闇の天狼 小分類 種類 ☆ 神格覚醒 拳銃・単発 北欧 6 属性 攻撃力 射速 残弾数 物理 2991 1.7 32
https://w.atwiki.jp/galgerowa/pages/427.html
贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) ◆0Ni2nXIjdw 「俺だってそうなんだよっ!!」 叫ぶしかなかった。俺だってアンタと同じなのだと知らせてやりたかった。 そうか、こいつは俺と同じなんだ。まったく同じなんだ。まるで鏡合わせのような存在、表裏一体とも言える姿なのだ。 だったら叫ぶしかない。この激情は全て吐き出してしまえ。 「この島で殺されたんだよ、俺の大切な人がっ!!」 つぐみ……今でも信じられねえよ。俺はお前に何一つしてやることができなかった。 自分の命よりも大切な人だった。今まで不幸だったなら、その百倍幸せにならないと嘘だって思ったんだ。 だけど、俺が不甲斐ないせいで殺された。殺したのは他の誰かじゃない、これは俺の罪だ。 「俺が死に物狂いで戦ってもダメだった! 目の前で仲間が殺されたっ! 俺は約束を護ることすら出来なかったっ!!」 俺が自分の意思で殺した咲耶。命を奪ったからには背負おうと思った。 一方的な約束だったが、結局護れなかった。千影は目の前で殺された。俺自身、その仇を討つことさえ出来なかった。 俺が弱かったからだ。アセリアにも辛い役目を押し付けた。もっと強ければよかった。 そして、なにより。 これだけは俺の中で大きな罪状となって胸に残る。これは楔だ……決して外れることのない、鉄の楔。 「俺を助けようと手を差し伸べてくれた奴を……俺は殺したんだ」 そうだ、その気持ちを忘れるな。この罪を永遠に刻み込め。 倉成武は、仲間である前原圭一を殺した。これは最悪の罪、恐らく生涯をかけて償わなければならない。 これを忘れない限り、心に留めている限り。俺は決して、間違わない。もう絶対に他人を疑ったりなどできない。 「なあ、俺とアンタはまったく同じだ。それなのにどうして道を違えてしまってるんだろうな」 「………………」 「アンタもこっち側に来れるはずだ。だって結局のところ、アンタは……『誰かのために憤ることが出来る奴』なんだから」 息を呑む音が聞こえた。 確かに馬鹿馬鹿しい話だ。この状況において説得なんて下策。 だけど、坂上智代はかつての俺と同じだと知った。知ってしまったからには……救ってやりたくなった。 だって嬉しかったんだ。 あれほど救いようのない状況。何度も諦めてしまいたくなる状況。それでもつぐみや圭一は手を伸ばしてくれた。 高嶺悠人を思い出す。アセリアが子供のように泣きじゃくる姿を思い出す。本来なら、俺は悠人と同じ立場に立っているはずだった。 きっと、智代の叫びに全てが集約されているんだろう。 人の話なんて聞かないに違いない。頑固そうな印象を受ける。俺の叫びなんて届かないのかも知れない。 だが、その定石全てを打ち落としてでも。 俺は救ってやりたいと思った。かつてのつぐみや圭一がしてくれたように、かつての俺に手を差し伸べてやりたかった。 「無理だ……」 ぽつり、智代が呟く。 俯いたままの顔はよく見えない。心で葛藤しているのか、それとも新たな激情を燃やしているのかは把握できない。 「無理なんだ……私はもう、戻れない……」 「無理なんかじゃねえ……勝手に諦めてんじゃねえよっ!!」 まだ戻れるはずだ。 人は襲っただろうが、殺した奴は勘違いの末の一人のみ。 力なく首を振る姿が痛々しい。それもまた、かつての俺がやったことだ。むしろ俺よりまだ戻れる。 手を差し伸べてやる。こいつはただ怒りを意志に変え、鉄の鎧に身を包んでいるだけ。 その強い意志が間違った方向へと進んでいるだけ。 ――――だから俺は、こいつの頑なな意志を完膚無きまでに砕いてやればいい。 「私はこの手で人を殺した! この意志で人を襲ったのだぞっ!? 今更戻れるものかっ!」 「俺もこの手で人を殺したよ、二人もっ!! それからしばらく疑心暗鬼に駆られて、無抵抗な奴だって殺そうともしたっ!!」 まだ間に合う。もうダメだ、なんて言わせない。 手を伸ばせ、と懇願する。俺は莫迦だから理論で説得することなんて出来ない。そんな器用な男じゃない。 俺に出来ることは、この感情を叩きつけてやることだけ。 智代が感情のままに暴れているのだと言うのなら。 俺もまた感情のままに言葉を叩きつけてやる。所詮、莫迦な俺にはそれしか出来ないし……それだけで十分すぎる。 「うるさい……」 それが奴の琴線を刺激したらしい。 苛立つような、憤るような声はまるで地獄の底から聞こえてきそうなほど、恐ろしい。 「うるさいっ……うるさい、うるさい、うるさいっ!! 善人ぶるな、この偽善者っ!!」 感情に感情を叩きつける。お互いが剥き出しの激情に流されたまま、俺たちは再び戦い始めた。 俺の手には『時詠』はなく、智代の手にも銃はない。互いのデイパックも遠い地面の向こう側。 即ち、俺たちはそれぞれ徒手空拳。なるほど、公平にも程があるというもんだ。 接近する。智代の蹴りは速い、そして重い。とても視認なんて出来ない。 関係ない。もう決めてやった。 俺が坂上智代を救う、と決めた以上……あらゆる障害なんて全部凌駕し尽くしてやる。 「私の覚悟は揺らがないっ!! そんな言葉で易々と収まるような怒りじゃないんだっ!!!」 「覚悟を履き違えてんじゃねぇよっ!!!」 神速の蹴撃を右手で受け止める。 腕は痺れたが、関係ない。そのまま俺は智代の胸倉を掴むと、顔を近寄らせて直接怒鳴りつけた。 「復讐に生きる覚悟だとっ!? 自己陶酔も大概にしておけよ、バカヤロウッ!!!」 智代の端正な顔が歪む。……と同時に、智代は跳躍。俺の顔面に回し蹴りを繰り出そうとする。 蹴りの角度を見定めて肘で受け止めた。ガツッ、という音で智代の顔が苦痛に歪む。 女を殴るのは趣味じゃないが、その顔面に拳を見舞う。さすがにそれは受け止められるが、俺は叫ぶ。 「そうやって誰も彼も殺すのか!? もしかしたらアンタの大切な人の友達だっているかもしれねえのにっ!? 皆殺しにして、優勝してどうするんだよ……っ……死んだ奴らに顔向けできるのかよ!? 言えるのか? 『私はあなたの仇を取るために、他の人たちを皆殺しにしてきました。褒めてください』……ってか!?」 「貴様ァァアアッ!!!」 怒りに任せた足蹴。単調で、何の細工もない乱暴な力。 とはいえ、それも神速を極めれば単純に最強だ。視認できない以上、軌道はさっきと違って読めない。 頭は確実にガードしつつ、そのまま一気に吹っ飛ばされた。その間も俺はただ叫ぶ。ただ伝える。 「言えねえだろ? 顔向けできねぇだろ!? なのに何でそんな道を選びやがったっ!! その道を誇れるか? 誰かに自慢できるか? 出来ねぇだろ、そんなことっ!! 自分でも許せねえって言ってたじゃねえかっ!!!」 もう一度、今度は俺の腕ごと粉砕せんと智代の足が迫る。 身を屈めて避けてやった。俺の声が智代に届いているかどうかは分からない。だが、激情に任せた大振り攻撃は迂闊だった。 そのまま懐に潜り込み、鳩尾に拳を叩き込んだ。 かは、と空気の漏れる音に手応えを感じたのも束の間、俺は側面から迫るローキックに対応できずに、蹴り飛ばされた。 「はあっ……はあっ……はっ……」 「かはっ……はっ、はっ、はっ……」 お互いに距離を取る。息は荒れ、全身が打ち身になったかのように痛い。 キュレイキャリアとここまでやり合えるなんて、とも思うがどうでもいい。今、俺が考えることは……この勘違い野郎をどうにかすることだけ。 ゆっくり、と。智代は息を大きく吐いて、そして語りかけてきた。 「なら……訊いてやる。お前は、私と同じ立場にいた、と言ってたな……」 「……ああ、かつてな」 頷いて、気づく。なるほどおもしれぇ、俺を論破しようってのか。 生憎と俺は今の自分には絶対の自信を持っている。間違ったことは言っていないと、そう思っている。 「そうか――――なら」 一呼吸、置く。 続いて呟かれた言葉は小さく、そしてか細いが……確かに俺の耳へと届けてきた。 「お前に『仲間』だのを語る資格なんてあるのか?」 「――――!」 その言葉で本当に呼吸が停止してしまった、と錯覚した。 心臓を握り潰されたかのような苦痛。 人の罪の意識の根幹を、あろうことか土足で踏みあがってきた。それもあまりにも乱暴な手段を持って。 「仲間、殺したんだろ?」 殺した。圭一をこの手で殺した。疑念に押し潰され、そうして仲間を自らの手で殺した。 血塗れの身体、真っ赤に染まった手が告げていた。 お前は大罪人だ、と。圭一は俺を決して許しはしないし、赦されたところで罪が消えるはずがないのだ、と。 「仲間、護れなかったんだろ?」 護れなかった。千影は俺の目の前で殺された。 約束は果たせなかった。それどころか襲った。それは過去の俺だが、決して消えない烙印のようなもの。 グサリ、グサリと言葉が刃となって俺を貫く。それは十字架に貼り付けられた罪人を刺す、槍のように。 「大切な人がそこに転がってるんだろ?」 そう、そして護りたい人を失った。 結局、俺は何も出来なかったのだ。悠人と戦ったときは嬉しかった。ずっとこうして仲間を護って戦いたかった。 だけど、結果的には何もしていない。何も為せていない。 「結局、お前は何を為せたんだ? お前みたいな奴が理想を謡えるほど、この島は優しく出来ていない。そんなの分かってるんだろ?」 この島は優しく出来ちゃいない、なんて今更すぎる。 無常じゃなければ、貴子はあんな酷い死に方をしなかった。アセリアが悠人を殺す、なんて酷いこともなかった。 そしてつぐみも、死ぬはずがない。理想を謡うつもりはないけど、それでもその言葉が心に重く圧し掛かる。 「訊かせてくれ、偽善者。……お前にそんなことを言う資格があるのか?」 そうだ、こいつの言うことは正しい。 圭一を殺しておきながら、何を戯けたことを言っているのか、と。 どんな偽善も詭弁も理想も決意も、それだけで許されるような免罪符にはなりえない。 奴の言うことは正しい。全く持って正論だ。認めざるを得ない。 「くだらねえことに固執するんだな」 そして、その全てを、一笑に付してやった。 「『資格』って何だ? お前の逃げ道か何かか?」 並大抵の言葉じゃ俺の意志は砕けない。 それを今ここで証明してやる。 少なくとも復讐に走って逃避してしまうような奴相手に、俺の意志が挫けるなんて有り得ない。 「仲間を殺した奴が、仲間を護っちゃいけねえなんて誰が決めたんだよ」 それを後悔している。 その罪を償いたい、清算したいと思ってる。 だけどそれについて、うじうじと悩むことはしちゃいけない。そんなことに時間を取れるほどの余裕なんてない。 「少なくとも『資格』だのなんだのを言い訳にした挙句に、あーだこーだのって後悔するなんて俺はゴメンだねっ!!」 苦虫を噛み潰した顔をする智代に、ニヤリと笑いつけてやる。 一度殺し合いに乗った奴が、もう戻れないなんて誰が決めるわけでもない。 智代はわなわなと肩を震わせている。最後の激突は近い、とお互いが感じているだろう。奴の叫びに俺の叫びを上乗せする。 「黙れ、偽善者っ!!」 「聞けよ、偽悪者っ!!」 同時に接近する。互いに無手、武器は己の肉体のみ。 智代の蹴りによる連撃を、両手両足を使って打ち落とす。俺の身体を全て使っての守備と、智代の右足ひとつによる攻撃。 それが全くの互角なのだから笑えない。いったい、どれほどの修練を積めばこれほど強くなれるのか。 「優勝してどうするんだ? 主催者のクソ野郎どもに尻尾ふるつもりじゃねえよな」 「当然だっ!!」 戦いの間際にも俺は叫ぶ。 この頑固者はただものじゃない。つくづく、融通の利かない連中に縁があると思った。 両者、混信をこめたハイキックが重なる。反動で俺も、智代も吹っ飛ばされたが、その間だって叫び続けた。 「参加者同様、皆殺しか? 首輪さえ外せば全員殺せるとでも思ってるのか? お前一人で全てが片付くとでも思ってるのか!?」 智代が走る。前にではなく、後ろに。 その先には俺が投擲した『時詠』が地面に刺さっている。渡せば恐らく、俺の敗北は決定したようなもの。 地面に落ちていたサバイバルナイフを掴み、『時詠』めがけて投げつける。 更なる追撃を恐れたのか、もう一度俺に向き直る。再度の接近と同時、智代が迎え撃つように繰り出した前蹴りを、左腕で受け止めた。 「だったら、どうした!?」 「お笑い種だ!」 それこそ不可能なのは目に見えている。 たった一人でどうにかなる、って思ってる時点で傲慢だ。それこそ、智代が言うように……そんなに優しい世界じゃない。 俺と互角、所詮その程度だ。アセリアよりも弱い。その時点でこいつの行き着く先は非業の死だ。 そんなことは看過してやれない。 過去の俺を救ってやりたい。ただ、かつての圭一と同じような気持ちに突き動かされて。 「うるさいっ……うるさいっ!! お前は、お前は何をしたいんだっ!!?」 突如、智代が姿勢を下げる。 いや、違う。武器を拾った。智代の腕に収まろうとしている黒い物体を見て、俺は顔をしかめてしまう。 S W M37。千影のデイパックに入っていた人殺しの銃。ここに来て、あいつに武器を渡す暇を与えてしまった。 自分も対抗する武器を探さなければ、とは思った。 だが、直感が伝える。そんな猶予はない。視線を足元に向ける暇すら、もう俺には与えられない。 だったら、できることはただ一つ。 真っ直ぐに、奴が銃を構えるよりも早く、俺が拳を奴に叩き込む。それしか、生き残る道はない。 「そんなの……」 奴よりも早く銃を叩き落す。 そんなこと、普通に考えたらできないかも知れない。 だけど違う、出来るとか出来ないの問題じゃなく、やるしかない。俺は智代に手を伸ばしたまま突撃した。 「お前を助けたいだけに決まってんだろうがあっ!!!」 この手を掴め。 きっと後悔なんてさせないから。 パァンッ!! 「が……は……?」 結局のところ。 突撃を選ぼうと、逃亡を選ぼうと結果は同じだった。俺は間に合わなかった。 たった、それだけのお話だった。 放たれた銃弾は滑り込むように疾走し、凶弾は俺の左胸へと吸い込まれていった。 「くっ……そっ……たれっ……!」 無意識に俺は手を伸ばす。 救うと決めたかつての自分に届け、と。この手を掴んでくれ、と。 智代は俺の手を取らなかった。ただ、どういうわけか酷く信じられないと言いたげな表情のまま、智代は銃を構えていた。 少女を助けようとした手は、掴まれることなく空を切る。 これはたったそれだけのお話だった。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「あっ……」 ゆっくりと倒れようとしているあの男が、スローモーションに見える。 この手で、この意志で殺そうとした。 そうして、私は撃った。ギリギリのタイミングだった。躊躇していれば、逆にやられていたかも知れない。 心臓が裏返りそうだった。 苦しい。心が軋むような痛みだった。これはただ、単純に人を殺したからでは決してない。 「ああ……っ……」 そうだ、この感覚は前にも経験したことがある。 あの男は、武は、私を殺そうとしていたわけじゃない。その事実はあの光景と重なる。 私は無我夢中に近い状態で、男の心臓を撃ち貫いた。それもまた、あの光景と同じだ。 『危ないところだったな』 私のトラウマ、精神的外傷。 私を助けようとしてくれた男を撃ち殺した。あのときの少年然り、目の前の男然り。 『お前を助けたいだけに決まってんだろうがあっ!!!』 ドサリ。 武が地面に倒れ伏す音。もう、取り返しのつかない合図。 構うことはないはず。私は全ての参加者の皆殺しを誓った。第一歩を遂行した、これはそれだけのこと、なのに。 銃を力なく下ろす。手に力が全く入らなくて、ポトリと地面に落としてしまった。 「あああああ……っ……!」 そうだ、これはあの時の焼き増しだ。 数え切れないほどの後悔と、炎のように燃え滾った復讐心を得た、あの時と。 だけど、あの時とは違うものがある。 手に入れたのは同じくらいの悔恨と……そして、冷水のように冷たい虚無感だけ。 人を殺しても、充実感なんて得られなかった。 甘美なものなんて何一つなかった。復讐を捜し求めた私は、いつしか復讐そのものを免罪符にしていた。 目的を履き違えて、私は今、何をした? 「わ、たしは……わたし、は……」 あの男や朝倉という少年は、私を救おうとしていた。 本当は心の何処かでは嬉しかった。だけど、その言葉に頷いちゃいけないと思ったんだ。 だって、私があいつらの無念を覚えていなければ、失われた想いは何処に行ってしまうというんだろう。 誰の言葉も受け入れない、と叫んだ。 自分の行動理念だけを信じた。信じていた。そのはずだ、そのはずなんだ。 それにこの怒りは私の唯一の原動力。それまで失ってはもう動けない。 だから、だから必死に否定して、拒絶して、その挙句に、こうしてあの少年のように殺してしまった。 「またっ……間違えた……のか?」 がくり、と膝を突いた。 心が冷え切ってしまっている。復讐の炎に、後悔の冷水を浴びせられたかのように。 手を伸ばされたのに、その手を振り払った。何度も、何度も間違え続けて、そしてようやく。 取り返しのつかない罪をもう一度犯して、やっと自分の行動に疑問を覚える時間が与えられたのだ、と気づいた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「倉……成……っ……」 銃声を最後に、優さんは顔を俯かせた。 私には優さんの表情は見えないけど、それでもその様子から漠然と理解することができた。 優さんの知り合いもこのゲームに参加させられている。私と同じように。 倉成武と小町つぐみ。 優さんがどうして鷹野の悪趣味に従っているのか、分からない。 あの人と契約しているわけでもないのに、どうして。そんなことを思ったが、今はどうでもいいことだった。 「優さん……」 「……ごめん、貴女も同じ目にあったのにね」 この言葉に全てが集約されている。 思わず、私がいることも忘れて泣き出しかけるほど、大切な人たちだったに違いない。 私だって四葉や咲耶ちゃんが死んだときは、一人になって泣き叫んだ。衛のときには涙が枯れ果てかけてた時だった。 「やっぱり……私は間違えてた……取り返しのつかない、間違いだった……」 「…………」 「倉成なら……つぐみなら……絶対に負けないって、そんな幻想抱いて、罪を重ねて……」 やっぱり、優さんは私と同じだった。 腹の底では何考えてるか分からなかったけど……やっと少し分かった、共感した。 この人は裁いてほしかったんだ。 自分の侵した罪、重ねた罪ってやつを断罪してほしかった。自分の好きな人たちに止めてほしかった。 それはきっと、私と同じ。 私は彼女に、優さんに……親近感にも近い何かを覚えた。 (…………あれ?) そういえば、違和感がある。 優さんの態度にじゃない。私と同じように全てを失った彼女のそれは、演技や腹芸なんかでは決してない。 そうじゃなくて、何かが足りない。決定的な何かが、まだない。 「え、あれ……?」 パソコンのキーボードに打ち込む。 おかしい。死亡者を告げるブザーが鳴らない。また佐藤良美のときのような誤作動か? 困惑しながらのエンターキー。そして調べ上げた答えは……未だ、倉成武の生体反応を示す文字。 まさか、と思ったその直後。 「間違ったなら、やり直せばいい」 盗聴器の向こう側から、絶対の意志に溢れた言葉が返ってきた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「間違ったなら、やり直せばいい」 「っ……!?」 耳を疑った。私は五感全てがおかしくなってしまったかと思った。 だって狙ったのは心臓だ。考えるまでもなく、即死のはず。 いくら素人の扱いで狙いが逸れたといっても、確かにこの目で胸を銃弾が貫く光景を確認した。致命傷のはずだ。 「罪を犯したのなら、償えばいい」 目を疑った。私は都合の良い幻覚を見ているのかと思った。 あの男は、武はゆっくりと身を起こす。 それは緩慢な動作だ。自然、胸に目が行った。左胸の部分に穴が開いた服、やはり間違いなく当たっているのに。 「ど……して……?」 「知らねえよ。お前がどんなに悩んで、苦しんでその道を選んだのか、ってのは」 違う、聞きたいことはそうじゃなくて。 いや、それ以前に私は何を聞こうとしているんだろう。分からない、何もかもが分からなくなった。 「どうして生きてるか、なんて問題じゃねえだろ。ただ、俺が言えるのは……」 「言える……のは?」 「今回は、取り返しのつく間違いでよかったな?」 ニカッと笑って見せられた。 分けが分からない。どうして胸を貫かれて生きているというのか。 どうして、殺そうとした相手に……笑いかけてやれるのか? まだ、手元には銃が残っている。 武はゆっくりと立ち上がり、私からそれを取り上げようとしていた。 抵抗するのは簡単だった。 ただ、抵抗しなかった。色々な疑問に思考が押し潰されてしまって、何もできなかった。 ◇ ◇ ◇ ◇ もう、大丈夫だろう。 俺は安堵のため息をつきながら、膝を突く智代を見下ろした。 没収した銃はそこら辺に捨てる。今は少し、こいつに考える時間をやらないと。 (ありがとう……) 正気に戻してくれた、あの巫女服の少女に感謝の意を。 もう俺には見ることはできないが、あいつがいなければ自分を見失っていたかも知れないから。 (ありがとう……ありがとう……) 智代を止めようと思ったのは、圭一たちの生き様を見てこれたから。 犯した罪は消えない。でも、償う気持ちは大事なはずだから。たとえ許されようと、許されまいと。 この罪が胸に刻まれている限り、決して間違いなんて、犯さないはずなんだから。 (本当に、ありがとう……) 目を閉じて黙祷した。 胸に空いた服の穴から、ガラスの破片がこぼれた。 どれだけの偶然かは分からない。だけど、過去に戻れない以上、必然以外の何者でもない。 つぐみのホログラムペンダント。 銃弾で貫かれたそれを左胸のポケットから取り出した。もう、原型すら留めていない。 だけど、心の底からありがとう。 つぐみが俺を護ってくれた。誰がなんて言おうと、これは俺にとって絶対の真実だ。 「教えてくれ……」 跪いたまま、智代がつぶやく。 きっと葛藤しているに違いない。ああ、なんだ、と小さく問いただした。 「私の怒りは……あいつらへの想いは……こんなことで消えてしまうほど、弱いものだったのか……?」 それは俺が答えられるものじゃなかった。 智代の怒りも悲しみも、死んでいった奴らへの想いも、智代だけのものだから。 俺は莫迦だから、うまいことは言えない。ただ、思ったことを口にする。 「それは、お前にしか分からん。だから、俺にはその質問には答えられん」 「……………………」 「だけど、な」 俺の言葉に智代が力なく、顔を上げる。 その瞳は迷いに揺れていた。支えがなければ吹き飛ばされてしまいそうな儚さがある。 「アンタの友達が止めてくれたんじゃないのか?」 「えっ……?」 「お前や俺が止めたんじゃない。お前が想ってやってる大切な人たちってのが……もう、やめろって叫んだんじゃないのか?」 こんな一途な奴が大切に想ってる奴らだ。 きっと気持ちのいい連中に違いない。そんな奴らが、智代にこんなことを望むはずがない。 それは間違いじゃないと想うから。 「これからは、そいつらが望んでいたことをやればいい」 「望んでいた……こと?」 「ああ。きっと、今までよりずっと……気分がいいと思うぞ」 ずっと、仲間を護って戦いたかった。 あの時の感動は俺の宝だ。そんな新しい大切なものを、智代にも手に入れてもらいたい。 こいつと俺はよく似ているから。 つぐみや圭一、美凪に千影、貴子や瑞穂やアセリア……様々な出逢いと別れを経験した。 どうにもならないことがあった。手遅れがあった。何度だって後悔した。 だけど今回は悠人のときのように、どうしようもなかったわけじゃない。だから救ってやりたかった、それだけだ。 「智代、手伝ってくれんか?」 俺は呆然とする智代に話しかけながら、移動する。 しばらく放っておいてしまった、大切な人。 いい加減、体を休ませてやらないとな。どんなに辛くても、苦しくても、悲しくても……俺がこの手で送ってやらないと。 「大切な人を、埋葬したいんだ」 智代はしばらく、沈黙を護っていた。 俺もまた、智代の返事をジッと待っていた。 観念したのか、それとも呆れてしまったのか……やがて、智代は小さく、首を縦に振ってくれた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「………………」 その言葉を、私は確かに聴いた。 罪は償えばいい。間違えたら、やり直したらいい、と。 あの人は私が好きだった真っ直ぐな頃のまま、見えない私を叱咤していた。 「優さん、今のさ……」 鈴凛の顔を見る。何か言いたそうな、でもどうしようか迷っている。そんな様子。 正直、言ってはなんだが私のほうが腹黒い。何しろ年季が違う。彼女の演技も、狙いも、目的も大体の予測はついている。 本当なら即座に司令に報告しなければならなかったんだけど。私は報告することなく、ここに来てしまった。 つぐみが死に、倉成の名前が出た途端、居ても立ってもいられなくなった。 武が死んだと錯覚したとき、全部終わってしまったような気がした。 そして武が生きていると分かったとき、そんな資格なんてあるはずないのに喜んでしまった。 『少なくとも『資格』だのなんだのを言い訳にした挙句に、あーだこーだのって後悔するなんて俺はゴメンだねっ!!』 そんな言葉が重い。 『間違ったなら、やり直せばいい』 私はそんなに強くいられない。 『罪を犯したなら、償えばいい』 この場に倉成はいないのに、実際に会って叱られた気がした。 頭がうまく働かないまま、席を立つ。 ふらふらと、それに近いくらい不安定な足取りで、私は逃げるように部屋を後にする。 「優さんっ!!」 呼び止めようとする鈴凛に、口元に手を当てる仕草を見せた。 それ以上のことを言ってはならないんだ、って。 「その盗聴器と銃はあげるわね。貴女は……そう、真面目に仕事してただけ」 「逃げるんだ……?」 「ええ、そうかもしれない。鈴凛……貴女が何を考えていようと、私を誘うのは止めなさい」 それは裏切りだ。私の意志は子供たちのために。 鈴凛が何をしているかは分かってる。そのための監視役なのだから。私自身が手を貸すことなんてできない。 桑古木はココのために自分を殺し、私も私の全てとも言える娘のために自分を殺した。 私だけが倉成の言葉に従って、彼を裏切ることはできない。かつての私を裏切ることもできない。 私たちはあのとき、二人で決めたのだ。 二人で地獄に落ちよう、と。たとえ何を犠牲にしようと、業火に身を焼かれ続けようと、決して裏切らない誓い。 睨み付ける鈴凛の視線を受け流し、私はその場から退出した。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「分からず屋……」 私はパソコンに仕込まれていた盗聴器を回収しながら、ポツリと呟いた。 優さんは本当に莫迦だ。頑固だ、呆れるほどに分からず屋だ。 倉成武は生きている。まだ間に合う。私のように姉妹を全部失ったわけじゃない。私のような悲しみは味わうことはない。 どうして、分かってくれないのかな。 さっきまで後悔していたのに。生きているのが分かった途端に、あの様だなんて。 本当に贅沢すぎる。羨ましい、妬ましい。ああ、もうっ……考えがまとまらない! (こうなったら……倉成武に直接、怒ってもらうしかないよね) 彼がこのLeMUに辿り着けるかどうかは分からない。 だけど、私のやることはただひとつ。数多くの参加者の脱出の手助けだ。 とりあえず、パソコンの拡張機能に今回の暗号について、参加者たちにリークすることに決めた。 私のやることは今までと変わらない、だから。 (覚悟してなよ、優さん……!) 私はもう一度、パソコンに向き直った。 本格的に脱出への策を講じるために。羽入から貰った情報を最大限に引き出すために。 【LeMU 地下二階『ツヴァイト・シュトック』第一研究室/二日目 昼】 【鈴凛@Sister Princess】 【装備:鈴凛のゴーグル@Sister Princess】 【所持品:ベレッタM1951(8/8)+1】 【状態:健康、強い決意、契約中】 【思考・行動】 1:参加者に暗号文の件を伝達する 【備考】 ※鈴凛の契約内容は"参加者が脱出できる最低限の可能性を残す"こと。 ただノートパソコンの機能拡張以外の接触は原則的には禁止されています。 ※参加者の能力はD-4 神社の奥に植えられている枯れない桜の力によって制限されています。 【田中優美清春香菜@Ever17 -the out of infinity-】 【装備:なし】 【所持品:なし】 【状態:健康、やるせない想い、決意】 【思考・行動】 1:ゲームを遂行する ◇ ◇ ◇ ◇ (つぐみ……) 華奢な身体、もうボロボロになってしまった大切な人を抱える。 どうしてか分からないけど、その顔はとても満ち足りた笑みを浮かべていた。 貴子のように立派な最期だったのだろうか。潔く散っていったのだろうか、そうだとしたら……やっぱり、バカヤロウ、だ。 もっと、生きていてほしかった。 本来、与えられるべきだった17年間の幸福を取り戻させてやりたかった。 「ん……?」 つぐみの手に何かが握られていたことに気づく。 まるで大切な宝物のように抱えられているそれが、俺のPDAだと気づいて、枯れたはずの涙が流れかけた。 こいつは最期の最後まで俺を求めた。それにこの傷を見れば分かる。決して、最後まで諦めなかったことを。頑張ってきたことを。 見たかよ、つぐみ。 俺もやってやったぞ。俺と同じような奴を救ってやることが出来た。 圭一の意志も、お前の意志もここに受け継いだ。それを証明してみせた。ようやく、初めの一歩を成し遂げたぞ。 「先に行ってろ、つぐみ……」 そういえば、つぐみに好きだという言葉を使ったことがなかったっけ。 俺も、つぐみも、互いのことを好きだの、愛してるだの、そういう言葉を相手に伝えることがなかった。 そんなことを確認しなくても、お互いを絶対的に信じてきた。愛してきたから。 捻くれた夫婦だったのかも知れない。素直じゃなかったかも知れない。 なら最後まで、俺たちは互いを信じ合った頃のまま、こうして一時のお別れをしよう。 しばらく逢える予定はない。やることは山積みで、託された使命も想いも盛りだくさん。数十年は待ってもらわないとな。 「また、待たせることになっちまう……悪いな」 冷たくなったつぐみの遺体を抱きしめ、そして智代と協力して掘った穴に埋葬した。 つぐみの手は胸の前で組ませ、手には二つのものを握らせた。俺のPDAと、つぐみのホログラムペンダント。 これが俺から出来る精一杯の手向け。守ってくれてありがとう、と。数え切れないほどの感謝を込めて。 「俺は、まだ死ねない」 そっと、つぐみに別れを告げた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「これから、どうする?」 「分からない……」 私は武の手伝いをした後は、そのまましゃがみ込んで事の成り行きを見守ることしか出来なかった。 武に問いかけられて、ようやく我に返ったほどの体たらくだ。 今まで復讐だけしか考えられなかった。それ以外のことを考えようとしても、何も出てこなかった。 生きる目的を失った、という表現は大げさだろうか。 復讐を諦めたつもりはない。ハクオロも土永も、この手で殺してやりたいと思う心はまだ燻っている。 「あいつらは……私に、何を望んでるんだろうな」 「……さあなぁ」 朋也も春原も、私がこの選択をしたことをどう思っているんだろうか。 あいつらは私にどうしてほしいと思っているんだろうか。 復讐はやめろ、って言ってくれるだろうか。頭が混乱している私には、その判断すらなかなか付かなかった。 「なんだ、お前の友達ってやつは……お前に人を殺すことを望むようなクズだったのか?」 「っ……み、見くびるなっ!!! 朋也も春原も、そんな奴らじゃないっ!!」 「じゃあ、それでいいじゃねえか」 あっさり、と。 私が悩んでも出せなかった答えを、こんなにも簡単に提示されてしまった。 まるで年長に諭されるような。いや、確かに見た目から言っても僅かに向こうが年長だとは思うが。 「お、まえ……年齢のサバ読んでるんじゃないだろうな……」 「…………こう見えても、年齢上はお前の倍以上だからな」 なにやら意味不明な言葉を呟いて、武はゴロンと横になる。 もう私なんて警戒していないと言わんばかりの無防備さ。私は思わず呆れてしまうが、殺す気なら前からそうしていただろうし。 「た……倉成」 「今度は何だよ?」 「私はまだ許せない。ハクオロも、土永もだ」 武と呼び捨てにするのが、どうしてか躊躇われて苗字で呼んだ。 あの卑劣な奴らを許す気にはなれない。それについても、答えがもらえるかもしれないと思った。 だけど、答えは素っ気無かった。ただ『それでいいんじゃないか』とだけ。 「許してやれとは言えねえよ……お前が、自分で納得できるまで、無理して許さなくていいんだ」 武はデイパックを開くと、いくつかの支給品を私に手渡してきた。 銃の弾と、なにやら情報をまとめた紙。 「なんか、それに詳しいことが書いてるらしいから、目を通しとけよ」 武はそれだけ言うと、ぐったりと横になったまま空を見上げたまま動かなくなった。 少しゆっくりと休みたいらしい。私は言われたとおり、紙を黙読し始める。 太陽は一番上に。じりじりと刺す日差しを身体に浴びながら、この島に来て久しぶりの安らぎを感じていた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 疲れたな。身体中がズキズキ痛む。 周囲には誰もいない。誰かが来る様子もない。ここなら安全だろう。 とにかく今は休養だ。放送まであと30分ってところだろう。それまで、疲れを取ってからホテルに行かないと。 (それにしても……) 元、殺し合いに乗ってしまっていた男と、たった今殺し合いを放棄した女。 周りには俺たちの認識は悪いようにしか見えない。 まあ、それも因果応報であるため何とも言えないが、ただ分かっていることがひとつだけ。 (前途多難、だよなぁ……) 苦笑したそのとき、一陣の風が吹いた。 涼しくて気持ちがよかった。つぐみたちが、俺の背中を押してくれるような、そんな心地よさを感じたまま。 俺の意識は睡魔に呑まれ、そのまま沈んでいくのだった。 【G-6 左上/二日目 昼】 【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】 【装備:永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-、貴子のリボン(右手首に巻きつけてる)】 【所持品1:支給品一式x14、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、バナナ(台湾産)(3房)】 【所持品2:C120入りのアンプル×6と注射器@ひぐらしのなく頃に、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、 大石のノート、情報を纏めた紙×4、ベネリM3(0/7)、12ゲージショットシェル85発、ゴルフクラブ】 【所持品3:S W M37エアーウェイト弾数5/5、コンバットナイフ、タロットカード@Sister Princess、出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭】 【所持品4 トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】 【所持品5:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾58発】 【所持品6:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房)、各種医薬品】 【所持品7:包丁、救急箱、エリーの人形@つよきす -Mighty Heart-、スクール水着@ひぐらしのなく頃に 祭、 顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)、永遠神剣第六位冥加の鞘@永遠のアセリア -この大地の果てで-】 【状態:肉体的疲労大、L5緩和、頭から出血(二時間で完治)、脇腹と肩に銃傷、腹部に重度の打撲、智代に蹴られたダメージ、女性ものの服着用】 【思考・行動】 基本方針:仲間と力を合わせ、ゲームを終わらせる 0:放送の時間まで身体を休める 1:智代と共にホテルに向かい、つぐみの仲間と合流する 2:合流後、廃坑南口に向かう 3:美凪や瑞穂たちを心配 4:自分で自分が許せるようになるまで、誰にも許されようとは思わない 5:L5対策として、必要に応じて日常を演じる 6:ちゃんとした服がほしい 【備考】 ※C120の投与とつぐみの説得により、L5は緩和されました。今はキュレイウィルスとC120で完全に押さえ込んでいる状態です。 定期的にアンプルを注射する必要があり、また強いストレスを感じると再び発祥する恐れがあります。キュレイの制限が解けるまでこの危険は付き纏います ※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。 ※キュレイにより僅かながらですが傷の治療が行われています。 ※永遠神剣第三位"時詠"は、黒く染まった『求め』の形状になっています。 ※千影のデイパックを回収しましたが、未だ詳しく中身は調べていません ※海の家のトロッコについて、知りました。 ※ipodに隠されたメッセージについて、知りました。 ※武が瑞穂達から聞いた情報は、トロッコとipodについてのみです。 【坂上智代@CLANNAD】 【装備 IMI デザートイーグル 10/10+1】 【所持品 支給品一式×3、 IMI デザートイーグル の予備マガジン7 サバイバルナイフ、トランシーバー×2、多機能ボイス レコーダー(ラジオ付き)、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、 九十七式自動砲 弾数7/7】 【所持品2:九十七式自動砲の予備弾91発、デザートイーグルの予備弾85発、情報を纏めた紙×2】 【状態 肉体的疲労大、血塗れ、左胸に軽度の打撲、右肩刺し傷(動かすと激しく痛む・応急処置済み)、左耳朶損失、右肩に酷い銃創】 【思考・行動】 基本方針:武と行動を共にする 0:情報をまとめた紙に目を通す 1:自分のこれからの目標を探し、実行する 【備考】 ※『声真似』の技能を使えるのが土永さんと断定しました。 ※土永さん=古手梨花と勘違いをしています。 ※トウカからトゥスクルとハクオロの人となりについてを聞いています。 ※ハクオロや土永さんを許したわけではありません。ただ、無闇に殺す気持ちは消失しました。 【ホログラムペンダント@Ever17 -the out of infinity-】破壊 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 投下順に読む 194 銀の意志、金の翼 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 時系列順に読む 195 覚醒、決意、そして……アサクラジュンイチ(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 倉成武 202 私たちに翼はない(Ⅰ) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 坂上智代 202 私たちに翼はない(Ⅰ) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 鈴凛 201 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 羽入 201 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編) 田中優美清春香菜
https://w.atwiki.jp/kakiterowa/pages/608.html
空はどこまでも黒く、大地はどこまでも白い新世界。そこで、2組6人の少女達がにらみ合う。 ネコミミスト、爆弾、ツキノン。散っていった幾多の魂を背負い、戦いに終止符を打つために全力を尽くす三人。 666、管理人、読み手。それぞれの目的のために、ラスボスとして立ちはだかる三人。 「さて……。」 666が、一歩前に出る。 「ここまで来て、語ることももはやあるまい。君たちが生き残るか、我々が生き残るか。 最後のバトルロワイアルを始めようじゃないか。」 666の言葉を受けて、おのおの戦闘態勢を取るネコミミストたち。 だがその気勢を削ぐように、ふいに666は「ああ」と気の抜けた声を漏らした。 「これは君たちに渡しておこう。ほら、受け取りたまえ。」 666が無造作に放り投げたものは、繋ぎ師の遺体。それを受け止めようと、ネコミミストは手を伸ばす。しかし……。 繋ぎ師の体がネコミミストの腕の中に収まる直前、666の放ったブラッディーダガーがその体を蜂の巣にした。 「何を……何をやっているんだ666ゥゥゥゥゥ!!」 「何を……? 挑発さ。」 白と金の鎧を繋ぎ師の血で染め、体を震わせながらネコミミストが叫ぶ。666はその叫びに、こともなげに応えた。 「あなたは……お前はどこまで罪を重ねれば気が済むんだァァァァァ!」 ネコミミストは、なおも叫ぶ。 その時、不思議なことが起こった。 「これは……!」 ネコミミストの目の前には、二つの珠が浮かんでいた。それこそ創世王の証、キングストーンである。 繋ぎ師の体に埋め込まれていたはずのそれが、突然飛び出してきたのだ。 とまどうネコミミストに向かって、キングストーンは宙を滑るように近づいていく。 そして、その体内に吸い込まれるように消えた。 「……!!」 ドクン、とひときわ強く心臓が脈打つ。ネコミミストの体内で、キングストーンが淡い光を放つ。 それに共鳴するかのように、彼女のデイパックからいくつかの支給品が飛び出した。 カブトゼクター、ハイパーゼクター、オーガドライバー、カイザギア、ベルデのデッキ、コーカサスゼクター。 いずれも仮面ライダーへの変身アイテムだ。 さらに爆弾の持っていた龍騎のデッキと、ツキノンが持っていたシザースのデッキまでそれぞれのデイパックから飛び出す。 出揃った変身アイテムは、次々とキングストーンに吸い込まれていった。 「うああああ……!」 急激に自分の体が作り替えられていく感覚に、ネコミミストは苦悶の声をあげる。 あまりの長さにしびれを切らした読み手が攻撃を仕掛けようとするが、それは666に止められた。 やがて、うめき声がおさまる。ネコミミストは目の前にいる三人の敵をキッと見据えると、力強い声で叫んだ。 「変身!!」 一瞬の発光。次の瞬間には、ネコミミストは新たな姿に生まれ変わっていた。 ベルトには二つのキングストーン。 白い素体の上に黄金の鎧を重ねたようなデザインのボディー。 右肩には黒龍、左肩には炎龍。 両腕には計八つの宝玉が埋め込まれ。 手にする武器は斬鉄剣の鋭さとドラゴンころしの破壊力を併せ持つ、十字架を模した剣。 背後には黒いマントをはためかせ。 顔つきはライダーでありながら、どこか強化外骨格を思わせる。 そして頭上には、ネコミミが燦然と輝いていた。 「天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ! 悪を倒せと私を呼ぶ! ズバッと参上、ズバッとぶっちぎり! 我こそは牙なき者の剣、仮面ライダーネコミミスト!!」 繋ぎ師からライダーロワの全てを託されて誕生した最終最強の仮面ライダー、仮面ライダーネコミミストは、高らかに名乗りをあげた。 「素晴らしい……。素晴らしいよネコミミスト! ゴルディオン・スバルだけでも最終回前のパワーアップとしては十分だというのに、さらにもう一段上に到達するとは!」 愛しき人の新たな姿を目の当たりにして、666は歓喜の声をあげる。 「余裕ですね、黒猫さん……。これであなたの勝率はさらに低くなったんですよ?」 「もとよりあなた達に勝利を味わわせるつもりもないが。」 ツキノンと爆弾が、じりじりと距離を詰める。だが、666は余裕の笑みを崩さない。 「悪いが……。私の相手はあくまでネコミミストだけだ。管理人!」 「ああ!」 666の合図で、管理人がスッと手を挙げる。その瞬間、その場に立っているのはネコミミストと666だけになった。 「これは……! 666! 二人をどこにやった!」 「どこにもやっていないよ。ツキノンも地図氏も、ついでに管理人と読み手も、すぐそばにいる。 だが、こちらからの干渉は不可能だ。紫の境界を操る能力と、ギガゾンビの亜空間破壊装置の合わせ技だよ。 我々は同じ次元にいるが、その間に次元の壁が出来ているためにお互い干渉できない。」 「なぜだ……。なぜそこまで私と戦うことにこだわる! そんなに私が憎いのか!」 ネコミミストの鋭い視線に射抜かれ、666はゆがんだ笑みを浮かべる。 「憎い? 見当外れもいいところだよ、ネコミミスト。」 「だったらなんで……!」 「それは私を倒して聞き出すんだな!」 「そうか……。ならば、ここで終わらせよう、666!」 「来い、ネコミミスト!」 長く辛い戦いのロードも、ここが終着。本当に最後の戦いが、これより始まる……。 ◇ ◇ ◇ 隔離された空間の中、ツキノンは読み手バクラと戦っていた。 「この終盤も終盤のクライマックスに新キャラ、しかもパロロワ関係者ですらない版権キャラが出張るなんて! 空気を読んでないにも程があるのです! さっさと退場しなさい!」 「ひゃははははははは!! てめえがひとのこと言えるのかよ! 最終決戦に入ってから正体判明したてめえがよ!」 ツキノンはGRトラペゾヘドロンを振るい、読み手は体術で応戦する。しかし、彼女たちはお互いにまだ一撃も有効打を与えられていなかった。 読み手は全てを読む能力を使い、ツキノンの攻撃を読む。対するツキノンはGRトラペゾヘドロンからニュータイプ並みと言われる言葉の直感を引き出し、攻撃を回避する。 戦いは何の進展もないまま、むなしく時間を消費していった。 (このままでは埒が開きませんね……。読まれても対処のしようがない攻撃で攻めなければ……。) そう考えたツキノンは、GRトラペゾヘドロンからショベルカーを取り出した。 「待てやコラァ! この最終決戦でネタに走ってんじゃねえ!」 「ネタではないのです! これぞギャルゲロワの伝家の宝刀!」 読み手のツッコミを一蹴し、ツキノンはショベルカーに乗り込んで突進する。 「冗談じゃねえぞ、まったく!」 悪態をつきながら、読み手はデザートイーグルを連射する。だが、弾丸は全てショベルカーに弾かれてしまった。 「無駄だ、読み手! この機械に銃は効かない!」 微塵も怯む様子を見せず、ツキノンは読み手を轢き殺さんと突進を続ける。 「ちくしょう! このバクラ様があんなネタ支給品に負けられるかよ!」 口では強がりつつも、読み手は焦っていた。シークレットトレイルは、666が管理人に与えてしまった。 自分が持つ唯一の武器はデザートイーグルだが、それが通用しないのはたった今証明済み。素手で戦うなんて選択肢は、自殺行為以外の何物でもない。 「何か、何か手はねえのか!」 (苦戦しているようですね、バクラ。) 苦悩する脳内に、突如として別の声が響く。 (何だ、K.Kか? まだ意識が消えてなかったのか……。悪いが、今はてめえの恨み言を聞いてる場合じゃねえんだよ!) (いや、恨み言なんて言う気はありませんよ。 確かに体を乗っ取られたことは屈辱ですが、君の乱入という大義名分があるおかげで、読み手の私が大手を振って物語に干渉できる。 多少とはいえ感謝の気持ちを抱いているぐらいです。) (ああ、そりゃどうも。それで、恨み言じゃねえなら今更何の用だ? 邪魔にしかならねえんだから、おとなしく寝てろ!) 全力で走り回りながら、バクラはK.Kに毒づく。 (バクラ、こんな言葉を知っていますか? 『一人一人では小さな火だが、二人合わされば炎となる!』。 元々弱い力しか持っていない私と、純粋な版権キャラであるがゆえにこの世界への適応係数が低い君。 そんな二人でも、力を合わせれば奇跡が起こせる!) (奇跡だあ? 悪いが、そんな不確かなもんを信じる気にはなれねえな。) (不確かではありません。私の読みによれば確実に起きるのです! かつて管理人は言いました。『書き手に想像力がある限り、どんな現象でも起こせるのです』と。 それは書き手と同じ方法で生み出された私もしかり! 読み手である私に書き手ほどの想像力はありませんが、その分はあなたに補ってもらえばいい!) (要するに、俺を利用するってことかよ……。胸くそ悪いぜ……。) (なら、このままショベルカーに轢き殺されますか?) (ちっ、手伝えばいいんだろ、手伝えばよ!) (ええ、そうです。では今すぐ、私が先読みしたフレーズを叫んでください。それは……。) K.Kからバクラへ、キーワードが伝えられる。すでにショベルカーは、目前まで迫っている。 躊躇している余裕はない。バクラはすぐさま、その言葉を大声で叫んだ。 「ファルコーーーーーーン!!」 言霊が、力を帯びる。読み手の前にオーラが吹き出し、それは一体のキャラとなった。 原作アニメでバクラが従えたモンスター、有翼賢者ファルコス…… 「ファルコン、キーック!」 では、もちろんなく。 「おい、誰だこのおっさんは。」 (F-ZEROのナンバー1レーサー、キャプテン・ファルコンです。ちなみに、任天堂ロワに出場しています。) 「なんで俺と縁もゆかりもねえレーサーが出てくるんだよ! アホかお前!」 (縁がないわけではありませんよ。ニコニコで『ファルコーーーーーーン!』を持ちネタにしているあなたと、ニコニコで多数のスマブラMADに登場しているキャプテン・ファルコン。 ほら、結構共通点有るじゃないですか。) 「ねえよ!」 読み手が一人漫才を繰り広げている間にも、キャプテン・ファルコンは律儀にショベルカーと戦っていた。 「YEAH!」 (くっ、このショベルカーと互角に渡り合うとは……。なかなかの強敵なのです!) 額に汗をにじませながらも、ツキノンは巧みにショベルカーを操作してファルコンと渡り合う。 しかし互角の戦いにしびれを切らしたファルコンは、早くも切り札を持ち出した。 彼がどこからともなく取り出したのは、スマブラのシンボルマークをそのまま立体化したようなボール。 それを、拳で砕く。次の瞬間、ファルコンの体は虹色のオーラに包まれた。 (これは……まずい!) ツキノンがそう思った時には、すでに手の打ちようはない。ファルコンの「さいごのきりふだ」は、すでに発動していた。 白一色だった世界が、何の前触れもなくサーキットに変わる。そして愛車「ブルーファルコン号」に乗り込んだファルコンが、ショベルカーに突進してきた。 「くああああああ!!」 気合いの声を振り絞りながら、アクセル全開で押し返そうとするツキノン。 しかし、徐々にブルーファルコン号のボディーがショベルカーにめり込んでいく。 (ギャルゲロワの全てが詰まったこのショベルカー……あんなただのレーシングカーに破壊されるわけにはいかないのです!!) 劣勢を覆すべく、ツキノンはショベルカーへ新たな念を送り込む。 彼女の意志に呼応し、変化していくショベルカーのショベル。やがてそれは、騎士王の剣となった。 「私は負けるわけにはいかない! 約束された勝利の重機<エクスショベルカー>!!」 聖剣から放たれた破壊の光が、ファルコンもろとも周囲の空間を蹂躙する。 「俺、撃墜!!」 断末魔の悲鳴を残し、ファルコンは跡形もなく消え去った。同時に、サーキットも元の白い世界に戻る。 「……って、それはあなたじゃなくてファルコの持ちネタでしょうが。」 「おいおい、そんなツッコミしてる場合かよ?」 その言葉でツキノンが我に返ると、目の前には銃口が存在していた。ブルーファルコン号の体当たりで生じたゆがみから、読み手がデザートイーグルを突っ込んでいるのだ。 (しまった! つい油断を……!) 「死にな!」 読み手が、引き金を引く。バリアーを張る時間はないと判断したツキノンは、必死で体をよじる。 しかし、狭い操縦席の中ではそう大きく動けるはずもない。即死こそ避けられたものの、 銃弾はツキノンの左肩を貫いた。 「うああっ!」 痛みで、ツキノンの集中力が途切れる。その影響によってショベルカーは形を保てなくなり、元のGRトラペゾヘドロンに戻った。 「くっ……!」 その手から離れてしまったGRトラペゾヘドロンを拾い直そうと、ツキノンは懸命に腕を伸ばす。 だがその小さな手は、読み手に思い切り踏みつけられた。 「あぐぅっ!」 「二度とあれに触らせやしねえよ。というか、今すぐ殺す。」 読み手は、ツキノンの手を踏んでいる足に今一度体重をかける。ベキベキといういやな音と共に、激痛がツキノンの手を襲った。 「くっ、このお!」 空いた左手から電撃を放つツキノン。しかしその攻撃を先読みしていた読み手は、その場から動くこともなく身をよじるだけで電撃をかわす。 「いいねえ、そういう悪あがきは。だがどんなにあがいても、てめえの死は変わらねえんだよ。」 ゆがんだ笑みを顔に貼り付けながら、読み手は銃口をツキノンの頭に密着させて引き金を引く。 その瞬間、確かに読み手は回避不可能な死の訪れを読んでいた。 ただし、自分のだが。 「ぐがっ!!」 奇声と共に、読み手の口から大量の血が飛び出す。その胸は、一本の槍に貫かれていた。 「ゲイ・ボルク……だとっ……!」 「そう、ランサーの宝具ゲイ・ボルク……。その力も、GRトラペゾヘドロンの中にはしっかり刻まれています。 いえ、そもそもGRトラペゾヘドロンの『芯』はゲイ・ボルクだったんです。 お気づきでしたか? マスターが死んだ時、彼が持っていたはずのゲイ・ボルクが消えていたことに。 ゲイ・ボルクはマスターの遺体と共に、GRトラペゾヘドロンの中に取り込まれていたんです。 オリジナルが中に存在していたからこそ、ゲイ・ボルクは100%以上の力を発揮して敵の心臓を貫く……。」 「……!」 読み手は、ゲイ・ボルクの消失に気づいていた。だが、気にも留めていなかった。 七氏の攻撃を受け、他の支給品と共に破壊されたものと思っていたのだ。 それを判断ミスと言ってしまうのは酷だろう。たとえ読み手でなくとも、普通はそう考えるだろうから。 「ふざけるな……! 100%以上だか……なんだか知らねえ……が、てめえは……槍を『投げて』ねえ! マンモスマンじゃ……あるまいし、槍が勝手に動いて……心臓ぶっ刺すわけ……。」 「いえ、確かに『投げました』。さっきの電撃でね。」 「…………! じゃあ、あれは……。」 「かわされることが前提、GRトラペゾヘドロンを動かして『投げる』ための攻撃です。」 「ちっ……!」 読み手の体が、ぐらりと崩れ落ちる。心臓を貫かれて、ここまでしゃべれていただけでも奇跡なのだ。 その光景に、ツキノンは何の疑問も抱かなかった。だが、それが彼女の命取りとなった。 「っ!」 突如、胸を襲う激痛。ツキノンは、反射的に痛みの発生源である自分の胸を見る。 そこには、重力に逆らって宙に浮く千年リングが突き刺さっていた。 「え……?」 (ひゃひゃひゃひゃ!! 何を馬鹿面晒してるんだよ!) 混乱するツキノンの脳に、直接声が響く。 (確かに、心臓を貫かれて読み手は死んだ。だがな、俺の魂が入ってるのはこの千年リングなんだよ! つまり、読み手をお前に殺されはしたが……。その代わりツキノン、てめえの体をもらうぜ!) 「うあああああ!!」 心の中に、別の存在が侵入してくる。筆舌に尽くしがたい感覚に、ツキノンは絶叫する。 「苦しめ、もっと苦しめ! この俺を虚仮にしたんだ、その分のつけはたっぷり払ってもらうぜぇ!」 今やバクラの声は脳に響くのではなく、ツキノンの口から発せられていた。バクラが、ツキノンの体のコントロールを得始めているのである。 「私から……離れろぉ……!」 必死で千年リングを引きはがそうとするツキノンだが、リングの針は彼女の体に深々と突き刺さり抜ける気配がない。 「無駄なんだよ! さっさとこの体、俺に明け渡しな!」 「冗談じゃ……ない……。敵に体を奪われる……くらいなら……!」 支配されつつある体を強引に動かし、ツキノンは読み手の死体に手を伸ばす。 いや、正確には死体に刺さったままのGRトラペゾヘドロンに、だ。 「てめえ、まさか自殺する気か! そうはさせねえ!」 バクラは、必死で手を戻そうとする。だが、まだツキノンの方が肉体への影響力が高い。 ゆっくりと伸ばされた左手は、槍の姿となったGRトラペゾヘドロンをつかむ。 その穂先を自分に向け、ツキノンは声を振り絞る。 「刺し穿つ……死棘の槍<ゲイ・ボルク>!」 言霊に反応し、GRトラペゾヘドロンがツキノンの心臓めがけて動く。一度その力が解放された以上、もう運命は変えられない。 ツキノンの心臓が貫かれるという「結果」は、すでに決定したのだから。だが、バクラはその運命に反逆する。 「マインド・パラサイトォォォ!」 手に握られた槍に、バクラは自分の魂のかけらを埋め込む。それだけで宝具を支配できるわけではない。 しかしその力にノイズを送り込むことで、すでに決められたはずの運命に揺さぶりをかける。 「そんな! 宝具の力が薄れていく! マ、マインドパラサイトにそんな効果なんてないはずなのです! あり得ません!」 「この世にあり得ないなんてことはあり得ないんだよ! 読み手の奴が言ってたぜ! 想像力さえあれば何でも出来るってな! 俺は自分が生き残る未来を想像し、創造する!」 GRトラペゾヘドロンの中を走るノイズが、さらに大きくなっていく。やがてそれは、目的を達することなく沈黙してしまった。 至高の槍に込められた呪いが、ただ一人の男の執念に敗れ去ったのである。 「ヒャハハハハハハ!! 勝った! 勝ったぜ! こんなちゃちなおもちゃ、千年アイテムの敵じゃねえんだよ! さあ、もう万策尽きただろう! おとなしくこの体を明け渡しやがれ!」 自分の勝利を確信し、バクラは笑う。しかしすぐに彼は、その喜びがつかの間のものであることを思い知らされた。 「フフ……。ここまであなたには何度も油断をつかれてきましたが……。今度は私が油断をつく番ですね。」 「何だと?」 ツキノンの発言に、バクラは不機嫌そうな声をあげる。 「私の抵抗はまだ終わっていない。そういうことです。」 静かに言いながら、ツキノンは左手を伸ばす。砕かれたはずのその手には、球状の物体が危なっかしいバランスで乗せられていた。 その物体の名は、ドラゴンオーブ。使い方次第で世界崩壊すら起こせる超A級危険物である。 「ありえねえ! すでにこの体を浸食している俺に気づかれず、デイパックから何か取り出すなんて出来るはずが……。」 「あり得ないなんてことはあり得ない。さっきあなたが言ったばかりなのです。さあ、また私を止められますか?」 「ちぃっ……! まあ、待て。まずは落ち着け。何も、そこまで俺を道連れにすることに執着しなくてもいいんじゃねえのか? 要は俺から解放されればいいわけだろ、お前は。」 「まあ、それはそうです。けど、千年リングはがっちり私の体に固定されて外れない。 無理にリングを破壊しようとすれば、結果として私にも深刻なダメージを及ぼしかねない。 だったら、最初から相討ちを狙った方が手っ取り早いでしょう?」 「何を後ろ向きなこと言ってやがる! 諦めんなよ! がんばれよ!」 自分を倒そうとしている相手を励ますという、シュールな行動に出るバクラ。彼も割と必死である。 若干パニック気味で、努力の方向が間違っている気がしなくもないが。 「じゃあ、おとなしく私の体から離れてくれますか?」 「それは出来ねえ相談だな。」 「じゃあ、やっぱり自爆ですね。」 「ああ、わかった。譲歩してやるよ。てめえの体は奪わねえ。その代わり、誰か他の奴のところに連れて行け。 今は他の連中と遮断されてるが、そのうち……。」 「寝ぼけないでください。他人を犠牲に生き延びるなんて、死んだギャルゲロワの皆さんに顔向けが出来ません。 そんな選択肢を選ぶくらいなら、やっぱり自爆ですよ。」 「ちっ、わかったよ。口で言ってわからねえなら、力ずくで言うこと聞かせてやらあ!」 話術による解決を諦めたバクラは、ツキノンの体を乗っ取ることに意識を集中する。 完全にツキノンの体を乗っ取ってしまえば、自爆される心配もない。 「させない! お前は私とここで死ぬんだぁぁぁぁぁ!」 ツキノンの手から、ドラゴンオーブが滑り落ちる。もちろん、その程度でオーブが暴発することはない。 その力を暴走させるために、ツキノンは読み手の体から抜いたGRトラペゾヘドロンを元の形に戻し、振り下ろす。 「やめろ!!」 必死に体のコントロールを奪おうとするバクラだが、ツキノンの体はバクラからの命令をいっさい受け付けない。 そのまま、GRトラペゾヘドロンはドラゴンオーブに叩きつけられる。 (本当に、これでよかったんでしょうか……?) 目前に迫る死を感じながら、ツキノンは思う。本当に、他の手段はなかったのかと。 GRトラペゾヘドロンの力を総動員すれば、自分の命はつなぎバクラだけを倒すことも可能だったのではないかと。 なのに自分は、自爆という後味の悪い手段を選んでしまった。 (ああ、そうか……。) ツキノンは、自分自身の真意に気づく。これまでに言ってきたことも、決して嘘ではない。 だがそれ以外にも、この道を選んだ理由はある。 「その方が、話の流れとして盛り上がるから」。 最終決戦で、敵の一人を道連れにして死ぬ。何とも熱い展開ではないか。 ましてや自分は参加者ではない。いちおう意思持ち支給品扱いだが、実際は途中参加者に近い。 最終決戦で犠牲になるのなら、正規の参加者よりは自分の方が角が立たない。 (あうあう……。結局私も、書き手の業からは逃れられなかったのですね……。) ドラゴンオーブから放たれる光に包まれながら、ツキノンはそんなことを考えていた。 数分後、そこにはツキノンもK.Kの死体も、千年リングも存在していなかった。 ただ奇妙なフォルムをした一本の剣だけが、静かに横たわっていた。 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok 投下順に読む 302 GAME OVER 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok 時系列順に読む 302 GAME OVER 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok 地球破壊爆弾No.V-7 302 GAME OVER 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok ツキノン 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok 衝撃のネコミミスト 302 GAME OVER 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok 派手好き地獄紳士666 302 GAME OVER 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok wiki管理人 302 GAME OVER 302 書き手ロワ大戦――Ragnarok 読み手(K.K.)
https://w.atwiki.jp/doliland/pages/320.html
発見場所 沈黙の修道院 (B3,6,9,12,15,18) 安心!!サクラ無し お宝図鑑
https://w.atwiki.jp/mihoyowikiunofficial/pages/1442.html
目次 性能ステータス スキル1 意志鑑定 スキル2 足の達者 入手方法 説明 関連項目 性能 ステータス No. 名前 839 ヘカテーの意志 HP 種類 ☆ 神格覚醒 5585 ギリシャ 6
https://w.atwiki.jp/jojobr2/pages/152.html
(さてさて、どうしたものかな……話に応じてくれればいいけれど) 今、遺跡の角に隠れている男の名はティッツァーノ。視線の先には1つの人影があった。 誰かに会ってみようと他の参加者を探してここまで来たが、いざ遭遇すると迷いを感じていた。 相手はゲームに乗った殺人者かもしれない。楽観的だった彼も、さすがに神経をとがらせていた。 (暗くてよく見えないが……首輪をつけているみたいだし、参加者だろう。 しかしあれは……老人?あんな人まで参加させられてるのか? いや、だからと言って油断はできないな。もしかすると強力なスタンド使いかもしれない……) しばらく観察していたが、相手が動く様子はない。何か独り言をしゃべっているようにも見えるが……? このままでは埒が明かない。ティッツァーノは意を決して、老人のほうに近づき自ら声をかけた。 「ああ、すみません……あなたも参加者ですよね?」 ゆっくりと、老人がこちらを向く。ここで刺激してはいけない。 「全く、ここは変なところですね……イタリアの遺跡ばかりだが、どう見てもこの町はイタリアではない。 さっきは大きな流れ星のようなものも見えましたし……あなたも見ましたか?」 ……なにも喋らない。ただ、胡散臭そうにこちらに視線を向けている。 警戒されてしまったのだろうか? 持っていた傘を地面に放った。両手を上にあげ、敵意がないことをアピールする。 「見ての通り、こちらには戦う意思はない。できればお互いに知っていることを話しておきた…………ッ!?」 突然の事態に、ティッツァーノは全く反応できなかった。 遠目では弱々しく見えた老人。そんな相手が、まるで若者のような俊敏さで飛びかかってきたのだから。 思い切り突き飛ばされて地面に転がるティッツァーノの上に、なおも老人ははい上がろうとしてくる。 「くっ!?ま、待ってくれッ!!俺は何も持ってないし、攻撃するつもりも……」 「ワシは復活するのじゃぁッ!40年!40年この時を待っていたのじゃ! そんなワシが『大凶』の方角にいる!?そんなはずはないッ!ワシは、ワシはッ……!」 こちらの言うことには耳も貸さず、意味不明なことを必死でわめく老人。 もはや話のできる相手ではない。ティッツァーノは渾身の力で老人を払いのけた。 「い、いやじゃアアアァァ!待ってくれ、ワシは……」 ガ オ ン ッ ! ! 石造りの遺跡に響き渡る不気味な音。 次の瞬間、老人の体は跡形も無く消えていた。 「……ッ!?」 とっさのことだったが、直感で危険を感じて後ろに飛び退くティッツァーノ。 (これは……まさか、スタンド攻撃かッ!?いったい、どこから……!?) 落ちている傘を拾い、剣道のように構えたままジリジリと後退する。 次に攻撃されるのは間違いなく『自分』だ。その攻撃を見極めようと右か、左かと周りを見回す。 (どこだ……?いったい、あの攻撃は、どこから……) 全神経を集中させるが、何一つ物音はしない。 ただ自分の鼓動だけが、やたらと大きく聞こえてくる。 訝しがりながらも、足音をたてないようすり足で後退する。 (……?消えた……のか……?) ゴクリと唾を飲み込み、傘を握る手を緩めかけた、その時 ドンッ ・・・・ 背中に感じたその感触は、明らかに石造りの壁ではなかった。 誰かが、いま、後ろにいる 「う、うわあああああああああああっ!」 その瞬間、夢中で傘を後ろに振り回した。バシッ、という音が響く。 「うぐぉぉぁっ!?」 男が声をあげて石畳の地面に倒れこむ。その背中に、なおも2度、3度と傘を振り下ろすティッツァーノ。 「ハァ、ハァッ……こ、このっ……」 「うがぁっ!い、痛えっ!痛えなチクショウッ!! くそ……ま、待て!俺は戦う気はない!話を……」 「ハァ、ハァ……ふざけるなっ!あの男を消したのはお前だろうっ!? それを、ハァッ……『戦う気はない』だと!?ふざけるのも……」 「ち……違う!あのジジイは誰かに消された! 俺のスタンドはそれを掘り起こして再現しただけなんだよ!!」 再び傘を振り下ろそうとした手が、ピタリと止まる。 「再現……だって?」 ★ ☆ ★ 10分後。そこには並んで腰をおろした二人の姿があった。 「なるほど……それで、そのスタンドの能力を確認していたと?」 少し離れたところで付近の様子を観察しているスタンドの方を見ながら聞いた。 「イテテ……ああ、何故だか『アンダー・ワールド』の能力が使えなかったからな…… そんであそこに行ったら地面を掘れたんで見ようとしてたら、急にあんたが来たんで、それで……」 「物陰に隠れてた……ってわけですか」 過去の出来事を地面から掘り起こせる、という能力がこの男のスタンドらしい。 すぐに連想したのは、ブチャラティチームのアバッキオ。確か似たようなスタンドを持っているはずだが…… 「ったく、人の話を聞こうともしねーで…… 大体、俺があのスタンド使いだったらどうするつもりだったんだ?」 全くだ。さっきまでの自分を思い出し、思わず笑ってしまう。 必死で傘を振りまわすその姿は、傍から見たらさぞかし滑稽だっただろう。 「それで……ええと、まだお互い名乗っていませんでしたね。 わたしはティッツァーノと言います。あなたは……?」 「ん……ああ、俺はヴェルサス。ドナテロ・ヴェルサスだ。」 「ヴェルサス……それで、何かわかったことは?さっきの老人は一体?」 ヴェルサスはため息をつく。 「それがよ……何故だか知らんが、掘れるのはここ1時間ぐらいのことだけみたいだ。 それに、どうも他人のスタンドは再現できないらしい。あのジジイも何かにしゃべりかけてたみたいだし、スタンド使いだとは思うが……」 「確認はできない、ということですね。なるほど……」 1時間ぐらい、というのはこのゲームが始まってからということだろうか。そんなことを考える。 しばらくの沈黙。やがて、ティッツァーノは一番聞きたかったことを口にしてみた。 「……それで、あなたはこれからどうするつもりなのですか?」 急に質問を振られて戸惑った様子を見せるヴェルサスだったが、すぐにいらだたしげにそれに答えた。 「どうって……決まってるだろ!?こんな馬鹿げたゲームで死ぬなんて御免だッ!! 俺はこれから幸せになるところなんだ!なんとしてでも脱出してみせるッ!」 口調が荒くなるヴェルサス。 (事情は知らないが、どうやらこの男も『まともな』人間、って訳ではなさそうだな…… しかし、それにしても……) 「えーと、あなたのことは何も知りませんが…… あなたも一度死んでここに来た人間……ですよね?」 「……」 「……」 再びの沈黙。 「ちょ、ちょっと待て!何言ってんだ!?俺が一度死んだ、だと!?」 動揺するヴェルサスと、むしろその様子に困惑するティッツァーノ。 「え?ええ……違うのですか? ここは地獄で、我々は死んだからここに来たものと思ってましたが……」 「ば、バカ野郎!!そんな訳……」 (ない……よな?だって俺は、病院の下の穴で徐倫達と戦っていて…… ええと……そうだ!あの神父のヤローのせいでしくっちまって、それで一か八かウェザー・リポートの記憶DISCを投げたんだ。 それから、俺は……ええと、それから……?) そこでプッツリと記憶が途切れている。 (まさかあの時、徐倫にやられた……? いや、ずいぶん離れていたし、それはないだろう。 じゃぁまさか、あのエセ神父が後ろから……?) 「……いーーーーーーや!絶っっ対違う!」 「はぁ……本当ですか?」 「な、なんだよその目はッ! だいたい、何でンなこと言い出したんだ!お前は何で死んだって言うんだよ!?自信あるんだろうな!?」 ムッとした様子でティッツァーノが答える。 「疑ってるんですか?スタンドとは言え、銃弾をあれだけ喰らって生きてられるわけありませんよ」 「な……銃弾だとぉ?おまえ、何でそんなことに……」 「話すと長くなるんですが……まぁ、ギャングの抗争、とだけ答えておきましょうかね……」 「……」 三度目の沈黙が訪れた。 ★ ☆ ★ 「なぁ、ところでよぉ……」 地図とにらめっこするティッツァーノに、ヴェルサスが声をかける。 「なんでしょう?」 「あんたのスタンド、まだ見せてもらってないぜ? こっちは名前も能力も教えたんだからな?、フェアにいこうぜ、フェアに」 能力を他人に教える。 スタンド使いにとって、それは一歩間違えれば死にも繋がりかねない行為である。 (いつもなら初対面の人間に能力を教えるなんてことはしないが、こんな状況では仕方がない。 今はこの男と助け合うしかなさそうだし、お互いに『信頼』することは大切だからな……) ヴェルサスの鼻先に、指でつまんだ自分のスタンドを差し出す。 「……なんだそりゃ?」 「『トーキング・ヘッド』。能力は相手に嘘をつかせることです。 もっとも、どうにかして相手の舌にくっつけないといけないんですが、ね……」 それを見て、頭を抱え込むヴェルサス。 「なんだよそりゃあ……そんなんでどうやって戦うんだよ…… 俺の『アンダー・ワールド』は弱くなってるし、どうしろってんだよチクショウ!」 ……ああ、戦力を求めていたのか。 残念ながら『トーキング・ヘッド』は戦闘型ではない。 あくまで戦うのは『クラッシュ』、それを『トーキング・ヘッド』がかく乱して援護する。それが今までのやり方だった。 「支給品は確認しましたか?何か武器が入っているかも」 「ああ、とっくに見たよ……地図と名簿と食いモンと、あと紙が何枚かだけだ……」 言いながら、自分のバッグを開いて見せる。ティッツァーノはその中から折りたたまれた紙を取り出した。 「これ!この紙ですよ、これを開くと中から支給品が出てくるんです」 「なっ……マジかよ!?オメー、そういうことは先に……」 言うが早いか、紙をひったくるように取って開くヴェルサス。すると、中から地味な色の布に包まれた箱が現れた。 「んっ……何だこりゃ?」布の結び目をほどき始める。 「気を付けてくださいね、何が入っているか……」「わ、分かってるよ……」 恐る恐る蓋を開ける。「ん?」「ああ?」 出てきたのは、どう見ても武器ではない。笹の葉に包まれた、肉料理だった。 ヴェルサスは一切れ取って、クンクンと臭いを嗅いでから口に入れる。 「……こりゃ牛肉だな。ローストビーフみてぇだが、食った事ねえ味だ。 あと、かすかに豆の味がする。良く知らんが、アジアとかそっちの国の料理…… って!武器が出てくるんじゃなかったのかよ!?」 「……武器が出てくる、とは言ってませんよ。 現にわたしのは傘とマンガ、有名人のサインでしたから」 深く溜息をつきつつ、蓋をしめて2枚目の紙を開けるヴェルサス。 ところが、次にでてきた物を見てその顔にはニヤリと笑みが浮かんだ。 「それは……拳銃?見たことない型ですが……」 「なんだぁ、知らねぇのか?こりゃぁテイザー銃だよ。 ポリ公が威嚇のときに使うやつだ。撃つと弾の代わりに針が飛んで相手を麻痺させる。 まぁ、拳銃型のスタンガンってことだ。『バットマン』でも使ってたぜ?」 ヴェルサスの話によると、これはあくまで犯人確保のために使う物らしい。 つまり、あたると数分間気絶させるほどの電流を流すが、殺すほどの威力はない。 また一発撃つと針がなくなるので、カートリッジを交換しないといけないという。 なかなか不便ではあるが、今の二人にとっては命綱と言っていいだろう。 「ヴェルサス、紙はこれだけですか?」 「ん?紙はこれだけ……ああ、そういやもう1枚あったかな、ほれ」 3枚目の紙を開けると、また何重にも折りたたまれた紙が出現する。 「ん、こりゃあ地図か?大きさが違うみてぇだが……地図ならもう持ってるっつーの、これもハズレかよ」 すっかり興味を無くした様子のヴェルサス。しかし、ティッツァーノはしばらく眺めた挙句、ニヤリと笑みを浮かべた。 「そうでもなさそうですよ、ヴェルサス……これを見てください」 そう言って、自分の地図を一緒に並べる。 「いいですか?こっちが2人に配られた地図……たぶん全員に支給されているのでしょう。 それで、こっちが今出てきた地図です。……なにか気づいたことは?」 「なにかって……最初のはベネチア運河があったり、タイガーバームガーデンがあったり、めちゃくちゃだぜ。 こっちのはただの地図だ。普通のな。」 「ええ、そうですね。これは『普通の』地図です。 ところがこの海岸線、それからこっちの湖の形を比べてください。」 「ん?海岸に湖……こりゃぁ、同じ形か?」 「ええ、そうなんです!縮尺が違うので、分かりにくいですがね。」 「なるほど……すると、こっちが正しい地図ってわけか。 そうだよな、こんなでたらめな町あるわけが……」 そう言いかけたのを、ティッツァーノは首を振って制止する。 「いいえ、違います。あっているのは、この最初の地図ですよ」 「なっ……何言ってんだよ!?誰がどう見たって、こっちの方が正しいだろ!?」 予想外の言葉に、いきり立つヴェルサス。 「そうなんですがね……いま我々がいるのはこの H-5 、ポンペイ遺跡です。 わたしはイタリアの人間ですから、ここに来たこともありますし、間違いないでしょう」 「で……でもよぉ、こっちのデカい地図には『杜王町三千分の一』ってあるぜ? この『モリーオーチョー』ってのは漢字だし、日本か中国か、そのへんの町だろ!?」 「……そうなんですよね。日本や中国に、イタリアの遺跡があるわけはありませんし。 となると、ここはやっぱり地獄……」 「だーーっ!だからそれはやめろっての!!」 どうにも話がかみ合わない二人。ここはいったいどこなのか。 ふと、ヴェルサスが一つの考えを口にした。 「なぁ、ティッツァーノ……もしかしたら、この町、ニセモノなんじゃねーか……?」 「ニセモノ?町全体が、ということですか?」 「ああ、ずっと考えたが、やっぱり地面に何にも『記憶』が無いってのはおかしい。 それに、本物の町だとしたらこんな地図はおかしいだろ?だから……」 「これは造られた町だというのですね?なるほど…… となると、あのアラキという男、随分強力なスタンド使いですね。」 「スタンド?スタンド使いなのか、あいつ?」 思わず笑い出すティッツァーノ。 「あなたが言い出したんでしょう?この町には『記憶』が無いって。 人工的に造ったのなら、造った時の『記憶』もあるんじゃないですか?」 「あ、そうか……」 納得した様子のヴェルサスを尻目に、ティッツァーノは名簿を取り出す。 「そうだとするとここは現実で、私たちは生きている、ということになります。 そしてアラキは『物のコピーを造る』スタンドの能力者で、ここは杜王町をベースに造られた町である、と。 ただ、疑問点もあります。どうやってこれだけの大人数を集めたのでしょうか? 名前から推測しただけでもアメリカ人、イギリス人、イタリア人……世界中から集められたようですが」 「え?うーん、それは……」 「それに今気づいたがこの名簿、国籍順でもABC順でもない……これは一体……? あ、それから……」 矢継ぎ早に疑問点を並びたてるが、ヴェルサスの方はそれに追いつけなくなったようで、 「おいおい、こんな地図と名簿だけでそんなの分かるかよッ! いま俺たちがやることは、アラキのヤローを倒してこの町から出る!そうだろ!?」 あっけに取られるティッツァーノだったが、すぐに笑いだした。 「ええ、そうですね……ここから出るにはあいつを倒さなければなりませんね。 ただ、我々2人だけでは無理でしょうから……ヴェルサス、この中に知り合いは?」 「ん……まぁ、いるっちゃぁいるが」 「その中で仲間は?協力してくれそうな人はいますか?」 「仲間……」 「……」 (徐倫にエルメェス……あいつらに助けを求めるか? い、いや無理だ!こんどこそ殺されかねねーぞ!! そしたら、プッチ神父に……?ふざけんなッ!あんなヤローと手を組むなんて……) 「……」 「いないんですね、分かりました……」 「う、うるせーなっ……いろいろ事情があるんだよ! お前は?なぁ、ギャングなら仲間の一人や二人くらい……」 ティッツァーノは悲しそうに首を振る。 「残念ですが……知っている人間は何人かいるんですがね。 あいにくわたしと敵対していた奴らばかりのようです。協力してくれそうにはないですね……」 (参加しているのはブチャラティチームと、リゾットらの暗殺チーム。 サーレーにディアボロというのは知らない名だが、おそらく下っ端の構成員だろう。 ボスの親衛隊は、わたし以外にチョコラータがいるが……奴は根っからの殺人者だ。 あの性格からして、既に嬉々として殺人を楽しんでいるだろう。会ったとしても殺されるのがオチだな……) 「お互い、知りあいをあたるのは無理そうですね…… しょうがない、他の人を探しましょう。できれば、このあたりの人間がいいのですが。」 そう言って、名簿の真ん中あたりの漢字で書かれた名前を指で囲む。 「ああ?なんかアテでもあるのか?」 「いえ、そういう訳では。ただ、イタリア人の我々組織の人間が大勢いて、イタリアの遺跡がある…… ということは、この日本人か中国人かは、この町の住民かもしれません。」 「ああ、そうか。何か知ってるかもな……」 その時ポツ、ポツと水滴が肩に落ちてきた。 二人が見上げた先には、厚い雲が今にも月を覆い隠そうとしていた。 「雨か……」 立ち上がり、傘を広げるティッツァーノ。 「じっとしていても濡れるだけですね……そろそろ行きましょうか。」 「そうだな……」 『アンダー・ワールド』を呼び戻し、差し出された傘の中に入る。 「とりあえず町の中心部に向かいましょう。その方が人は多いでしょうし」 「ああ、任せる。ったく、こんな所からはさっさと帰りたいぜ……」 ★ ☆ ★ スクアーロ。 あの時私の身に何が起こったのかは分かりませんが、とにかく私は生きているようです。 なぜあなたは呼ばれていないのか?なぜ、私を撃ったナランチャはいないのか? なぜ、私たちはここに呼ばれたのか?なぜ、殺しあいなどさせるのか? まだ分からないことだらけですが……私はここから脱出して見せます。 そしてその時にはスクアーロ、また二人でコンビを組んでくれますよね……? 【H-5 ポンペイの遺跡/一日目 黎明(2 05頃)】 【あてのないブラザーズ】 【ドナテロ・ヴェルサス】 【時間軸】:ウェザー・リポートのDISCを投げる直前 【状態】 :背中が痛む(怪我は無し)、荒木に怒り 【スタンド】:アンダー・ワールド 【装備】 :テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け、基本支給品 【思考・状況】 基本行動方針:絶対に死にたくない。 1.どんな事してでも生き残って、幸せを得る。 2.誰か(できればこの町の住人)に会って、仲間にする。 3.プッチ神父に会ったら、一泡吹かせてやりたい。 【備考】 ※ティッツァーノの『トーキング・ヘッド』の能力を知りました。 ※ティッツァーノ以外のマフィアについてはまだ聞いていません。 ※荒木のスタンドを「物体をコピーする」能力だと思っています。 ※荒木の能力により『アンダー・ワールド』には次の2点の制限がかかっています。 ・ゲーム開始以降の記憶しか掘ることはできません。 ・掘れるのはその場で起こった記憶だけです。離れた場所から掘り起こすことはできません。 ※『アンダー・ワールド』でスタンドを再現することはできません。 【ティッツァーノ】 【時間軸】:ナランチャのエアロスミスの弾丸を受けて、死ぬ直前。 【状態】 :健康 【スタンド】:トーキング・ヘッド 【装備】 :ブラックモアの傘、岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ(ピンクダークの少年、巻頭カラー)、基本支給品 【思考・状況】 基本行動方針:生きて町から出る。 1.アラキを倒し、生きて町から出る。 2.誰か(できればこの町の住人)に会って、協力を得る。 3.この名簿は一体?なぜ自分はここに呼ばれたんだ……? 【備考】 ※ヴェルサスの『アンダー・ワールド』の能力を知りました。 ※ヴェルサスの知り合いについてはまだ聞いていません。 ※荒木のスタンドを「物体をコピーする」能力だと思っています。 ※雨はウェザー・リポートが降らせているものです。 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 30 行き着く先は… ティッツァーノ 94 夜明けの間奏曲 30 行き着く先は… ドナテロ・ヴェルサス 94 夜明けの間奏曲