約 19,734 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4570.html
前ページ次ページゼロな提督 ハルケギニアを、今日も朝日が照らし出す。 いつもと同じようにゆっくり顔を出す太陽。森には早起きな鳥たちの歌声。朝靄は木の 葉の上で雫へと変わっていく。生々流転する世の理は変わらならい。 だが、『歴史は繰り返す』という言葉はあるが、実際には一日たりとも同じ事をしていな い人間達。今日も今日とていつもと違う事をしようと頑張っていた。 特にトリステイン上空では頑張りすぎてる人たちがいた。 第22話 嵐の前後 ウルの月、第四週ティワズ、イングの曜日。 ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世と、トリステイン王女アンリエッタの結婚式は、ゲル マニアの首府、ヴィンドボナで行われる運びであった。式の日取りは、来月…、三日後の ニューイの月の一日に行われる。 そして本日、トリステイン艦隊旗艦の『メルカトール』号は新生アルビオン政府の客を 迎えるために、艦隊を率いてラ・ロシェールの上空に停泊していた。 後甲板では、艦隊司令長官のラ・ラメー伯爵が、国賓を迎えるために正装して居住まい を正している。その隣には、艦長のフェヴィスが口ひげをいじっていた。 アルビオン艦隊は、約束の刻限をとうに過ぎている。 「やつらは遅いではないか、艦長」 イライラしたような様子で、ラ・ラメーは呟いた。 「自らの王を手にかけたアルビオンの犬共は、犬共なりに着飾っているのでしょうな」 そうアルビオン嫌いの艦長が呟くと、鐘楼に登った見張りの水平が、大声で艦隊の接近 を告げた。 「右上方より、艦隊!」 なるほどそちらを見やると、雲と見まごうばかりの巨艦を戦闘に、アルビオン艦隊が静 静と降下してくるところであった。 「ふむ、あれがアルビオンの『ロイヤル・ソヴリン』級か…」 感極まった声で、ラ・ラメーが呟いた。あの艦隊が、姫と皇帝の結婚式に出席する大使 を乗せているはずであった。 アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号の後甲板で、艦長のボーウッドは、左舷の向こ うのトリステイン艦隊を見つめていた。隣では、艦隊司令長官及び貴族議会議員である政 治家サー・ジョンストンの姿が見える。 「艦長…」 心配そうな声で、ジョンストンは傍らのボーウッドに話しかけた。 「サー?」 「例の仕込みは、どうなっているかね?」 「ああ、あれでしたら…」 つまらなそうに答えるボーウッドは、無意識に『ホバート』号へと視線を向けた。 艦隊最後尾の旧型艦『ホバート』号内部では、準備に忙しかった。 乗組員達が脱出用ボートに『フライ』をかけ、総員脱出の準備をしている。艦の各所で 火薬樽への点火も用意されていた。 「連中がこちらの礼砲に答えるのに合わせ、自爆と脱出が行えます。その後、速やかに砲 撃戦へと移行します…予定通りなら、ですが」 「…そうだね。当初の予定通りに行くなら、だがね」 二人は左舷下方に列をなすトリステイン艦隊を見やる。 事前の情報通り、トリステインの艦艇数はアルビオン艦隊の半分しかない。最新鋭の巨 艦『レキシントン』号に比べれば、どれも旧型で小さく、大砲の射程も短い。 彼等の当初の予定は、トリステイン艦隊の答砲と共に『ホバート』号を自爆させ、トリ ステイン側の実弾による砲撃を自作自演すること。これを口実としてトリステインへ奇襲 をかける、というものだ 両艦隊は高度を揃え、並走する形になった。 「とにかく、まずは旗流信号を送りましょう」 ボーウッドの言葉を控えた士官が復唱し、マストに旗流信号が掲げられる。 ほどなくして、『メルカトール』号のマストにも旗流信号が掲げられた。 『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス。トリステイン艦隊司令長官』 特に独創性も怪しい点もない、普通の返信だ。 ボーウッドは緊張した面持ちで次の指示を出した。 「よし、礼砲だ!準備でき次第、撃ち方始め!」 どん! どん! どん! とアルビオン艦隊から大砲が放たれた。 空砲ではあるが、巨艦『レキシントン』号が撃っただけで、辺りの空気が震える。 しばらくして、空の向こうから、轟音が轟いてきた。 トリステイン艦隊の答砲は、『レキシントン』号後甲板にも聞こえている。 『ホバート』号乗員は火種に火をつけた。 だが、サー・ジョンストンもボーウッドも、何も言わなかった。 トリステイン艦隊へ奇襲をかけるなら、砲撃戦を準備しなければならない。だが、二人 とも、その命は下さなかった。艦隊最後尾の『ホバート』号は既に火の手が上がってる。 計画では、そのまま艦内の火薬にも火を放ち、自沈するはずだ。 しかし他のアルビオン艦は、全く動かなかった。火をあげている当の『ホバート』号で すら、火薬庫に火を放っていなかった。 「艦長…今のは?」 クロムウェルの腰巾着と陰口を叩かれる政治家は、信じられないという様子だ。 「答砲、ですな」 ボーウッドは、落ち着いていた。 だがその冷静さが質問者の神経に障った。 「答砲なのは分かっている!だが、今のは…」 「ええ、14発分の音でしたな。左舷に並ぶトリステイン艦隊は、7発しか撃っていない にも関わらず」 「だから、そんなことは分かってるんだ!しかし、最上級の貴族でも11発しか撃たない んだ!しかも、後半七発の音は…」 「我らアルビオン艦隊の、右舷上方から、でしたな」 艦長はヒョイと右側を見た。 艦隊司令長官も、ギギギ…と音を立てるかのようにぎこちなく右へ向く。 アルビオン艦隊右舷、上空の雲の中から、戦列艦が降下してきていた。 艦列中、一番大きな艦の舷側大砲から7本の煙が上がっている。答砲7発分だ。 数はトリステイン艦隊とほぼ同数。 いまだ黒い煙が消えきらない艦のマストに旗流信号が掲げられる。 ボーウッドは、その内容を淡々と読み上げた。 「貴艦隊の来訪を心より歓迎す。ゲルマニア艦隊司令長官」 更に続けてもう一本の旗流信号も掲げられた。 「貴艦隊最後尾艦より火災発生。事故と確認。当方、救助の準備在り」 ゲルマニア艦隊の甲板上では、確かに救命ボートが準備されていた。 だが同時に、全艦艇の舷側は砲口が開かれ、大砲がアルビオン艦隊に向けられていた。 左舷ではいつのまにか、トリステイン艦隊も同じく砲門を向けている。 アルビオン艦隊司令長官は、力が抜けたかのように椅子へドスッと腰掛けた。 「ゲルマニア艦隊が…同盟国だが、条約締結したばかり…しかも他国領土内を堂々と…。 やはり、読まれていたな」 「そのようですな、作戦は失敗です。『ホバート』号へ消火指示を出します。『救助不要、 自力消火可能』とだけ返答しておきましょう。それで納得するはずです」 ボーウッドは全くの事務的な態度で周囲の士官に作戦中止と消火命令を下した。 ゲルマニア艦隊旗艦の後甲板では、角付き鉄兜にカイゼル髯の貴族が、悔しそうにアル ビオン艦隊を睨んでいる。 「くそ…我らが答砲などしなければ、あのまま奴等は砲撃戦に入ったろうに!アルビオン 艦隊を壊滅させる千載一遇のチャンスを、むざむざと!」 隣に立つ恰幅の良い貴族も忌々しげに同意した。 「全くですな!いくら婚儀を血で穢すわけにはいかないとはいえ…口惜しい。命令ではや むを得ないですが…!」 二人とも拳を握りしめ、逃がした大戦果と手に入れ得たはずの立身出世を力の限りに惜 しんだ。 右舷上方より降下してきたゲルマニア艦隊はアルビオン艦隊の右側に高度を揃えて並走 を始めた。 その様子に、ボーウッド艦長は嬉しげに頷く。 「事前に『トリステインが奇襲を見抜いている』という情報が来て無ければ、我らは両艦 隊に挟撃され敗北していました。作戦は失敗ですが、同時に全滅の危機も回避しました」 腰巾着の艦隊司令長官は肩を落として、だが重責から解放されて安心したように何度も 頷く。 「そして我が国は、『卑劣な条約破りの国』という悪名を轟かさずに済んだのです」 アルビオン親善艦隊は左のトリステイン艦隊と右のゲルマニア艦隊に挟まれるようにし て、朝日に照らされたラ・ロシェール港、丘の上にある世界樹の枯れ木へと降下を開始し た。 ヤンの献策に始まり、マチルダのもたらした情報により備えられた迎撃体勢。そしてワ ルドからの情報漏洩による奇襲作戦中止。 平民と泥棒と裏切り者により今日のハルケギニアは平和を守られた、という事実が歴史 書に載る事はない。 その頃、トリステイン学院でも朝日が校舎を照らしている。 だが、ほとんどの者は既に起床していた。学院で働く下男やメイド、コック達が日の出 前から起きているのはいつものこと。加えて今日は学生も教師も多くが起き出している。 明日の朝には学院の多くの貴族達が婚礼の儀へ出席するためヴィンドボナへ出立する。だ から朝から準備に余念がない。 驚くべき事にルイズの使い魔も、デルフリンガーに起こされる前に目が覚めていた。た だし、グータラ執事が勤勉に目覚めたとか、年をとったので朝が早くなったとか言う理由 ではなかったが。 「あのさ…ルイズ?」 ヤンに名を呼ばれても、ルイズはすやすやと寝息を立てていた。 「こら、ルイズ」 プニプニとほっぺたをつついてみる。だけど彼女は、むぅ~…と不満げな声を漏らして ますます丸まってしまう。 ヤンは主の左耳をキュ~ッと引っ張った。 「 ・ ・ ・・・、…?…ちょっと、ヤン。何してんのよ」 ようやく目覚めたルイズが、目の前の執事に文句をつける。 「それはこっちのセリフだよ。何故に君が僕の布団の中にいるんだい?」 ヤンは呆れて見ていた。自分の布団の中で丸まっている主を。 ついさっき、寝ていた自分から掛け布団を奪い取ってくれた少女を。 ヤンはルイズのベッドの横に布団を敷いて寝ていた。布団といっても厚手の毛布を二枚 敷いただけだが。もちろん昨夜も布団をかぶって眠りについた。ルイズだってベッドで寝 ていた。 が、何故か今朝は掛け布団を失い、クシャミと共に寒い思いで目が覚めた。自分の布団 はどこに行ったかと左を見れば、ルイズが自分の布団の中で、小さく丸まり寝ている。幸 せそうな顔をヤンに向けて、彼の左腕を枕にして。 そして今、二人はおでこがひっつきそうな距離で向かい合っていた。 鳶色の目をパチクリさせて、え~っと…と呟く。だが答えは出てこない。 「…何故かしら?」 「目撃者に聞いてみようか」 ちらりと壁に立てかけられたデルフリンガーを見る。ヒョコッと鞘から飛び出して、朝 日に刃を煌めかせた。 「俺っちも声かけたんだけどよ。トイレから戻ってきてヤンの布団に入り込んで、そのま まグーグー寝ちまって、全然起きなかったんだよ」 ふ~ん、という感じで聞いていたルイズは、目の前のヤンに視線を戻す。 「で、そのまま寝てたら、寝ぼけて布団をとっちゃったみたいね」 「そのようだね。じゃ、返してくれるかい?」 「もちろん。どーぞ」 といってルイズはヤンの体に、ふぁさっと掛け布団をかけ直した。半分だけ。 残り半分は、相変わらず自分が被ったままだ。 おまけに身体をヤンにすり寄せてくる。 「おいおい、ルイズ…」 「起きるのも面倒だもん。もうちょっとくらい良いでしょ?」 「ダーメ。またマチルダに怒られたら困るからね」 ヤンは左腕をヒョイと引き抜く。とたんにルイズの頭がポテッと落ちた。 むっくりと上半身を起こし、両腕を天に向けてウーンと伸びをする。 「ぶー。ケチんぼ」 ちょっと頬を膨らませたルイズも渋々布団から顔を出す。 二人が起き出したのを見て、デルフリンガーも元気にカチカチつばを鳴らした。 「ま、そろそろ起きとけよ!今日はノンビリ寝てられねーんだろ?」 「そういえばそうだったわね。んじゃ、起きましょっか!」 掛け布団を跳ね飛ばし、ルイズは元気に飛び上がった。 一気に脱ぎはなったネグリジェもフワフワと宙に舞う。 二人が寮塔を出ると、学院玄関に何台かの馬車が並んでいるのが見えた。御者や執事や メイド風の人たちが、大きなバッグやトランクを積み込んでいる。 食堂ではいつものように朝食の準備が進んでいた。ただ違うのは、早朝にもかかわらず 食堂周囲に貴族達が姿を見せていた事だろう。そして何人かは新調したドレスやマントを 身にまとい、盛んに自慢し合い褒めあっていた。 「みんな明日にはヴィンドボナへ出発なんだね」 ヤンの言葉に背中の長剣もツバを鳴らす。 「まったく、よっぽど楽しみなんだなぁ。こんな朝から一張羅を着て歩き回るたぁよ!」 ルイズはヤレヤレという感じで肩をすくめる。 「当然でしょ?姫さまの婚儀に出席出来るのは貴族の誉れよ。それに出席出来る学院の生 徒は、みんな名のある貴族だもの。気合いも入るわよ」 「ゲルマニア旅行も出来るしねぇ!」 そういうヤンも、みるからにワクワクしている。ゲルマニアを見れるのを遠足前の子供 のように楽しみにしていた。 「そーゆー事!特に私とヤンはゲルマニアの偵察も兼ねてるんだからね!浮かれてんじゃ ないわよ!?」 「おいおい娘ッコよぉ。そんな任務は受けてねーだろ?」 「何言ってンの!このルイズ様ともあろうものが、お気楽に旅行なんか・・・」 そんな話をしながら、二人と長剣は食堂に入っていった。 二人が朝食から戻ってくると、荷物を持ったキュルケが向かいの部屋から出てくるとこ ろだった。 朝食から戻ってきた二人を見つけ、にこやかに笑顔を向けた。 「あっらー、珍しく二人とも早いじゃないのぉ」 「お早う、キュルケ…もしかして、もう出発するの?」 ルイズはキュルケの旅装と大荷物に目を向ける。 「ええ。トリステイン貴族は結婚式に出るだけだから、お姫さまと一緒にいくでしょうけ ど、あたしはもともとゲルマニア貴族だもの。一度実家に顔を出してからになるわ」 「ああ、なるほどね」 納得と頷くルイズの横で、ヤンが周囲を見回した。デルフリンガーがヒョコッと鞘から 飛び出す。 「ん~、ヤンよ。誰か探してるのか?」 「いや、タバサさんを見ないな、と思ってね」 扉に鍵をかけ、荷物に『レビテーション』をかけながらキュルケが答えた。 「ああタバサなら、またどこかいっちゃったわよ。じゃ、ヴィンドボナで会いましょ!」 「オーケー、またねー」「はい、それでは良い旅を」「ねーちゃん、またなー」 キュルケはヤンに投げキッスをして、荷物をフワフワ浮かしながら出て行った。 本塔最上階、学院長室ではロングビルがメモを読み上げていた。 「・・・というわけでして、明日からは一週間、学院は休校となります。式の予定は以下 の通りです。 学院生徒と教員は今日夕方から明日早朝にかけて、順次出発します。迎えの馬車は学院 正門外に停留所を設けておきましたので、そちらに誘導して停めて頂くよう下男達には伝 えてあります。 明日の昼前、大聖堂にて大司教が出立の儀を執り行います。まず陛下が城で詔を述べた 後、サン・レミ聖堂まで行進。そこで大司教が旅の安全と婚儀の祝福を、アンリエッタ姫 とベアトリス殿下へ捧げられます。聖堂や城のホールも席に限りがありますので、これに 出席するのは要人のみですわ。 その後、トリスタニアを馬車にてパレードです。主立った貴族も連れての大行列ですわ ね。三日間のヴィンドボナまでの道中、ずっとお祭り騒ぎが続く事でしょう。 最後に、ヴィンドボナにて正式な婚儀が執り行われます。この婚儀が終わり次第、オー ルド・オスマン始め学院生徒はほとんどが学院に戻ります。ミス・ツェルプストーは実家 によるので遅れるとの事です」 「ん、では荷物の準備をお願いするぞい」 「承知致しました。では出発前に、こちらの書類全部にサインをしておいてください」 ロングビルは書類の束を机の上に置いた。 デスクでは学院長が髯を撫でながら秘書の報告と予定を聞いていた。 杖を取り出し書類の上を滑らせ、魔法でサインをしていく。 どすっ 突然ロングビルの足下から鈍い音が響いた。とたんにハツカネズミがちゅうちゅうと悲 鳴を上げて逃げていく。 「相変わらずですわね、学院長」 秘書は物腰柔らかく、床にめり込みそうなヒールをゆっくり元の位置に戻した。 オスマン氏は溜め息をついた。深く、苦悩が刻まれた溜め息であった。 「下着を覗かれたくらいでカッカしなさんな。はぁ~、昔はお尻を撫でても怒らなかった のにのぉ」 「昔は昔です。今、私の下着を見たりお尻を撫でたりして良いのは、ヤンだけです」 どこまでも冷静な声で、ミス・ロングビルが言った。 オスマン氏の口からは、あうあうと無様な声なき声が漏れる。 そして、やっとのことで言葉が紡がれた。 「人妻も、ええのぉ」 ロングビルは、無表情なまま机を回り込み、オスマンの横立ち、すぅ…と足を肩幅に開 いて腰を落とす。 バキッ! 「それでは、私は学院長の荷物を揃えて参ります。早く起きて全部の書類にサインして下 さいな」 ロングビルは稲妻のごとき右正拳突きを食らい机に突っ伏したオスマンを残し、学院長 室を出て行った。 アルヴィーズの食堂での朝食が終わり、後片付けも終わろうかという頃、洗った食器を 棚に戻し終えたシエスタがマルトーの前に駆けてきた。 「それじゃ、そろそろミス・ヴァリエールの方に行ってきますね」 「おー、ご苦労さん。いつも悪いなぁ、もう学院のメイドじゃねえのに」 「いいんですよ。お昼にはまた来ますから」 ペコッと頭を下げて厨房を出ようとしたシエスタの腕を、後ろからほかのメイドが捕ま えた。 「キャッ・・・て、ローラ。いきなり何よ」 「ちょっと!こっち来て、こっち!」 そういってローラは金髪を揺らしながらスズリの広場へ彼女を引っ張っていった。 スズリの広場、女子使用人宿舎裏では、他のメイド数名が待っていた。 「あらやだ、ドミニックにカミーユも。こんな所でどうしたの?」 「どうしたの、じゃないわよ!」 そう叫ぶや、メイド達はシエスタを取り囲む。突然のきな臭い雰囲気に、そばかすが魅 力的な頬に思わず汗が流れてしまう。 ローラが腰に手を当てて、シエスタにズズィと詰め寄った。 「シエスタ、あんた、あの秘書のこと、聞いたぁ?」 「…秘書のことって、もしかして、ミス・ロングビルとヤンさんとの事?」 「そーよ!あの人、アルビオンから帰ってきたら、もう、ヤンさんの女房気取りよ!信じ られないわ、シエスタを差し置いて!」 ローラは腕組みして、顔を赤くしてプンプン怒り出す。 そして他のメイド達も、口々に学院長秘書と使い間執事の関係について噂話を並べ立て 始める。 「今朝、学院長室の前で聞いちゃったのよ。ミス・ロングビルが『私のお尻を撫でていい のはヤンだけ』って言ってるの!」 「ほんとに信じられないわよ!淑女の慎みとやらはどこ行ったのかしらね!?」 「ヤンさんもヤンさんよ!あれだけシエスタの世話になったくせに、恩知らずにもほどが あるわ!」 「やっぱり、あれかしら?ミス・ロングビルって上品ぶってるだけで、ホントは、人に言 えない様な…」 「きっとそうよ!でなきゃ、あのセクハラじじいの秘書なんかやってるハズないもの!」 メイド達の噂話と恋話とどまるところを知らない。 どこの世界でも他人の恋愛事は最高の娯楽。オマケに三角関係、可愛いメイドと美しき メイジが一人の男性を奪い合うという、ある種禁断のストーリー。しかも見た目の平凡さ とは裏腹に、異国から召喚されて二ヶ月足らずで富豪になり、枢機卿の覚えも目出度き平 民の高級軍人を。 そして若い女の子達が、こんな面白そうな話を聞き逃すはずもない。 寄宿舎の中にいたり、食堂から戻ってきたメイド達が、次々と使用人宿舎裏へ呼び寄せ られたかのようにワラワラと集まってくる。一体、彼等の耳はどんな性能を有しているの かと不思議になるくらいだ。 「ほーっんとヤンさんって、ああ見えて女にだらしないのよね~」 「そーよそ-よ!シエスタの気持ち、分かってるクセに。ちょっと美人に言い寄られたく らいでさぁ」 「確かにミス・ロングビルが美人なのは認めるけど、メイジと平民よ!?弄ばれてるって 分かんないかねぇ。いずれ飽きられて、呪いでもかけられてポイッとゴミみたいに捨てら れちゃうわ」 「真面目そうに見えても、所詮は男よ。いやむしろ、真面目だからこそコロッと騙される のだわ!」 メイド達は、話の中心にいたはずのシエスタをほったらかして、てんで勝手に憶測を飛 ばしあい、ウンウンと頷いている。 そこで急に一人のメイドが声を上げた。 「あ、そーいえば、アルビオンから帰ってきてからのミス・ヴァリエール!見たかい、あ の有様!」 その言葉に、女性達はさらに目の色を変えて食い付きだす。 「あー!見たわよ見たわよ!もう、ヤンにベッタリじゃないの!堂々と手を繋いで歩いて たわ。信じられないわよ、他の貴族達まで目をひんむいてたわ」 「まさか、ヤンって、そっち系の趣味が…」 「いや、それは違うんじゃないかなぁ?ほら、ミス・ヴァリエールっていつも『ゼロ』て 呼ばれて他の貴族にバカにされてたじゃないか。いっつも一人だったし。 ヤンが召喚されたばかりの頃、食堂でつるし上げ喰らってたじゃない。もう他の貴族が 信じられないんじゃないかな」 「あー、分かる分かる!独りぼっちで寂しかった所に、いきなり優しい男がくれば、もう イチコロよね?ゼロってバカにしたりしないし」 「え~?でもぉ~?あれってどっちかと言うとぉ、パパに甘える意地っ張りで寂しン坊な 娘って感じじゃない?」 「甘い!しょせん男は狼、ヤンだって見た目は抜けてても中身は同じさ」 「そーそー!あんなペッタンコなちびっ子でも、いつも一緒にいれば、情も移っちゃうわ よ! そして双月が照らす部屋の中、楽しくおしゃべりしていた二人は急に黙り込む。 見つめ合う男と少女、ピンクの髪が妖しく揺れる。 男の息づかいが少しずつ早く、荒くなり、少女は何かに引き寄せられるように男の傍へ と…」 カミーユが語るピンクの妄想に、周りのメイド達もグググ…と前のめりになって頭を寄 せ合う。だんだんと小声になる艶っぽい話を聞き逃すまいと、皆押し黙り固唾を飲んで聞 き入っている。 「もう!みんな何言ってるのよ!いい加減にしてよ!」 話の中心人物でありながら、話の輪から放り出されたシエスタが強引に割って入った。 が、そのくらいで話を止めるほど同僚達は甘くなかった。 「何言ってるのよ!これはあんたにとっても重要な話なのよ!?」 「そーよ!このまんまじゃヤンさん盗られちゃうんだから!あんた、それでいいの!?」 「三角関係ならまだしも、四角関係だなんて!面白すぎ…じゃない、シエスタはライバル が多すぎるって話なんだから」 逆に詰め寄られて、シエスタはタジタジ。 このままでは延々と『メイドと執事の純愛に横槍を入れる秘書』『一人の男性を奪い合う 3人の女』という、トリスタニアのタニアリージュ・ロワイヤル座辺りで上演されていそ うな筋書きに付き合わされてしまう。 彼女は適当な理由を付けて、この場を退散する事にした。 「もう!付き合ってられないわ。私はこれからミス・ヴァリエールの所でゲルマニア行の 準備をしなきゃいけないんだから」 といってプイと背を向けた。 シエスタの言葉に、ローラがふと考え込む。 「ねぇ、あんたって今はヴァリエール家のメイドだから、ヤンさん達と一緒にゲルマニア へ行くのよね?」 「そうよ!その準備で今日は忙しいの!」 と言って寮塔へ向け、スタスタ歩き出す 彼女の背後からは「頑張りなよー!部屋でヤンに押し倒してもらいなさいよー!」とか、 「ゲルマニア行きの間がチャンス!あの秘書さんがいない間にアタックよ!」とか、声援 というか応援というか、勝手な期待と要望が飛んでくる。 寮塔へ向かいつつ、シエスタの口から独り言が漏れる。 「…言われるまでもないんだから!ゲルマニアでは見てなさいよ、今度はあたしのターン よ!!」 右拳が固く握りしめられていた。 その頃、最近のメイド達の話題を独占する人物となっていたヤンは、珍しく図書館では なく教室にいた。教室の後ろに立ち、コルベールの魔法の授業を見学している。火の色と 温度の相関関係について語るコルベールの話を興味深そうに聞いている。魔法も使えない のに授業に出ている平民の姿に、生徒たちもチラチラと好奇と不快が入り混じる視線を向 ける。 太った少年がルイズの背中をチョンチョンとつついた。 「おい、おいルイズ」 「何よ、マリコヌル」 ヒソヒソ囁くガラガラ声に、ルイズはジロッと肩越しに振り向く。 「あの平民、なんで授業に来てるんだ?」 「魔法の勉強をしに来てるのよ」 「だから、なんでだよ。平民なのに」 「決まってるじゃない。魔法について詳しく知らなきゃならないからよ」 「魔法も使えないのにか?」 二人の囁き声に、周囲の生徒達も聞き耳を立て始める。 「あたし達、枢機卿に軍略を示したり、お姫様の相談に乗るんだもの。父さまなんかヤン をヴァリエール家のお抱え学者にしようかってくらいよ」 「なっ!その噂、マジだったのかよ」 思わず驚きの声を上げてしまうマリコルヌ。周りの生徒もさわさわとざわめきはじめて しまう。 「マジよ。だからヤンも戦争とかで使う魔法は詳しく学ばなきゃいけないの。特に火の魔 法は」 コンコンコン コルベールが杖で机を叩いた。 「もしもし、ミス・ヴァリエールにミスタ・グランドプレ。他の生徒も授業中は静かに願 います」 頭髪の薄い教師に名指しされ、二人とも慌てて口を閉じる。 さらにコルベールは教室の生徒達に向けて語り出した。 「それと、ここは学校です。学問を修めたいという者を拒むような事はあってはなりませ ん。それが平民であっても、です。学びたい、知識を得たいと望む事は実に貴重で尊い事 です。それがいかなる知識であろうとも、決して無駄になる事はないのです。 ですから、ミスタ・ヤンが魔法を学びたいと言うのであれば、私は心から歓迎いたしま すぞ」 コルベールに真剣で誠実な目を向けられ、ヤンは深々と礼をした。 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4580.html
前ページ次ページゼロな提督 「そうか、アルビオンの艦で、火災が…」 トリステインの真の支配者とも噂され、鳥の骨と呼ばれるマザリーニ枢機卿が城の廊下 を歩いている。彼の後方からは何人もの小姓や侍女、それに騎士がついてきている。 魔法衛士隊の制服の上にマンティコアの大きな刺繍が縫い込まれた黒いマントをまとっ た騎士が報告を続けた。 「その後、両艦隊が挟み込み砲口を開くと『救助不要、自力消火可能』とだけ返答があっ たとのことです」 「ふむ、砲門を向けられた事には何も言わず、か」 「はい。潔く奇襲作戦は中止したようです。ですが軍内部からは、みすみす勝利の好機を 逃したと不満の声が聞こえます」 騎士は羽根飾りの付いた帽子を手にしながら、不服げに問いかける。羽根飾りが付く帽 子は隊長職を示すものだ。 ぞろぞろと部下を引き連れた枢機卿は、しばし黙って廊下を歩き続ける。 廊下の壁や柱には様々なレリーフが施されている。一定の間隔で薔薇を模した金の燭台 が並び、アーチを描く天井には妖精や幻獣をモチーフにした絵画が描き込まれている。絵 画の周りを縁取る額縁を模したレリーフすらも微細で華麗な彫刻だ。 冷たく磨き上げられた石の廊下を沢山の足音が進んでいく。 青地の上に鍍金したブロンズで装飾された壷が置かれたコンソール(壁に取り付けられ た机)の前で、枢機卿は足を止めた。 「ゼッサール、お主はどう思う?」 厳めしい髭面の男は、大きな体躯をちょっと縮めて考えを述べた。 「恐れながら、戦争を回避すべきという点は猊下と同意見です。 確かにゲルマニアとの同盟はなりましたが、それでもようやく艦艇数は同数。合同演習 も経ていない現状では連携も拙く、艦もアルビオンの最新鋭艦『ロイヤル・ソヴリン』級 に比べれば小型旧式」 枢機卿は壷に生けられた百合を愛でつつ、黙って騎士の言葉に耳を傾ける。 ゼッサールは話を続けた。 「確かに敵の奇襲に対し、さらに奇襲を仕掛ける事が出来れば、大打撃を与えた事は疑い ありません。ですが、我らもただでは済みませぬ。相応の被害は避けられぬでしょう」 「そうだな…まぁ、軍事的にはそんな所だ」 「また、小官としても姫殿下の婚儀を血に染めるような事は望みません。この点について は軍の主戦派でも意見が一致しています」 「そうか、それならよい。報告後苦労だった」 騎士は大きな体を90度近くまで折り曲げて礼をした。 マザリーニは窓から外をのぞく。 窓の向こうには朝日に照らされた城下町が見える。さすがに街の喧騒は届いてこない。 だが既に多くの人が大通りや中央広場に繰り出しているのが遠目にも分かる。 通りは色とりどりの布と花で飾られ、塔の上には一つ残らず旗が翻り、気の早い連中が 撒いた紙吹雪が風に乗って街の上を舞っている。 視線を下に向けて城内を見れば、グリフォン隊はじめ全騎士隊が、汚れ一つ無いマント を纏って行進の準備をしている。城の侍女達も走り回り、ヴィンドボナまでのパレード準 備に大わらわだ。四頭のユニコーンに引かれるアンリエッタ姫専用馬車も輝かんばかりに 磨き上げられ、朝日にキラキラと輝いている。 その時、廊下の向こうから、一人の衛士が丸められた羊皮紙を片手に駆けてきた。 「失礼します!立った今、ウィンプフェン領より早馬にて緊急報告がなされました!」 「ほう、何事か?」 枢機卿の堂々とした声に敬礼で答え、衛士は羊皮紙を伸ばして内容を高らかに読み上げ た。だが、その報告を読み上げるうちに、衛士の声はどんどん小さく自信のないものへと 変わっていった。 「今朝未明、ウィンプフェン領北西にて謎の落下物が多数発見されました!それは…え? えと、…焼け焦げた、巨大な金属の壷や樽…の様なもの、とあります。その表面には解読 不能な文字と、意味不明の絵が多数記され、それらは恐らく一つの物体がバラバラにされ て壊れたものと推測される、との事です。 あまりに巨大かつ信じがたい程の重量物のため、多数のメイジが『レビテーション』を 使用しても移動させる事は不能。ただ、それらをつなぎ合わせた場合、全長100メイル程 の金属製の筒のようなものになる、と想像される…。 枢機卿におかれましては、急ぎアカデミーによる調査を依頼したき所存。 …報告、以上であります!」 衛士は報告を終え、一礼した。 報告を聞いていた枢機卿とゼッサールは首を捻る。 「猊下、一体何なのでしょう?」 「ふむ、分からんな…ウィンプフェンには、婚儀が終了次第アカデミーより調査隊を派遣 するので現場を保存せよ、と伝えよ」 「はっ!承知致しました!」 衛士はもと来た方へ走っていった。 「何かは分からんが、まぁ、婚儀の後だ」 隊長は小さく頷いた。 マザリーニは窓の外へ視線を戻し、もうすぐ始まる婚礼パレードの準備が進む外の風景 を見渡す。 「戦争は誰も幸せにせぬ」 やせ細り老け込んだ男の小さな呟きは、周囲に控える誰の耳にも届かなかった。 第23話 ロイヤル・ウェディング 城の正門前、豪奢な馬車が次々やって来て、重々しく着飾った人々を吐き出していた。 ルイズ達が乗る馬車も赤絨毯の前に停車した。 「ふぅ~、やっと着いたわ」 ルイズは手足をうにぃ~っと伸ばす。 「さ、それでは参りましょう!」 シエスタはルイズのドレスや髪飾りを手早く整える。 「いやぁ、緊張するなぁ。ルイズのお母さんにお姉さん達か、失礼の無いよう気をつけな いとね」 ヤンの言葉にデルフリンガーがツバをカチカチ鳴らす。 「まったくだぜ!おめーはちょっと抜けてる所あるからな、ピシッとしなよ!」 「そーね、デルの言うとおりだわ。気をつけなさいよ!」 「ふわぁ~い」 ヤンも着慣れぬ燕尾服に窮屈な思いをしつつデルフリンガーと荷物を手にする。 三人と長剣一本が馬車を降りると、赤絨毯の両脇にはズラリと衛兵が整列していた。 赤絨毯の向こう、城の中には華麗なドレスや煌びやかな宝石で着飾る婦人達が見える。 それをエスコートするのは豪華なマントをまとう美髯の紳士達だ。 衛兵達の後方で何十人もの楽団がクラシック調の音楽を奏で、来訪者を迎えている。 見上げれば城も、城壁には国旗が掲げられ、色とりどりの花が飾られ、そこかしこから 楽士の奏でる陽気なメロディが聞こえてくる。 朝靄が立ちこめる早朝、城から来た迎えの馬車に乗り込んだ一行。 同じくトリスタニアへ向かう人々の群れや、彼等を目当てにした露天商や、街道を警備 する兵士達を横目に見つつ、ようやく城へ到着した。何しろ国中から見物人の平民達や婚 儀に参加する貴族達と豪商の馬車が城と城下町へ向かう。警備もハンパではなく、街道は 大混雑だ。 道中ヤン達は「んもー!早く着かないと式典に遅れちゃうじゃない!」とカリカリする ルイズをなだめっぱなしだった。 そんなルイズのお守りからようやく解放されたヤンは、ルイズの後ろをついてフカフカ の絨毯を踏みしめて城の中へと歩いていく。 大きく頑丈そうな扉をくぐり城の中へ入ると、豪奢で優美な紳士淑女の方々が上品に歓 談していた。よく見ると魔法学院の生徒や教師もちらほらと見える。ヤンは壷や絵など、 城内の飾り付けに目が釘付けだ。 扉をくぐった正面玄関ホールの壁には、天井から大きな絵が幾つも下げられていた。 「…?」 天井から下げられている絵をジッと見るが、何か妙な感じがする。沢山の花で飾られた 額縁に入った絵なのだが、何かおかしい。現実味がない。 物珍しげに周囲へ目を奪われてるヤンに、ルイズが眉をしかめて振り返る。 「ちょっと、ヤン。何キョロキョロしてるの?」 「え?あ、うん。あの絵なんだけど、額縁が…あれ?」 ヤンの背の長剣がピョコッと飛び出た。 「おいおい、何言ってンだよ。ありゃ額に入った絵じゃねーよ。タペストリーだ」 「え?」 ヤンは足を止め、天井から下げられ壁を飾っている絵をよく見てみる。 それは馬に乗って猟場を進む騎士と貴婦人の絵で、その絵の周囲には額縁があり、額縁 周囲を花が飾っている…という絵が描かれた特大タペストリーだった。よく見ればその他 の天井から下がる絵も同じくタペストリー。 「へぇ~、絵と額縁と飾りの花束までが一つの絵なんだ」 「ええ、面白いでしょ?」 急に右から声をかけられた。 ヤンが横を見ると、ピンクの長い髪に鳶色の瞳を持つ女性がとろけそうな微笑みを浮か べている。 「あれはフィヨー・ド・サン=マルタスの『猟場の伯爵夫人』、その横が『アモールの武 器を取り上げるレクジンスカ』。ここに下げられているのは全部で一つの連作なのよ」 「ちいねえさま!」 喜びに顔を輝かせたルイズが女性の胸に飛び込んだ。 ルイズそっくりながら、穏やかで優しい雰囲気と丸みを帯びた大人の女性の空気をまと う女性がキャッキャとはしゃぎながらルイズを抱きしめる。 しばし抱き合っていた二人だが、ようやく女性がルイズを離しヤンとシエスタを見た。 「まぁまぁ二人とも、みっともない所をお見せしましたわ」 そしてヤンに寄ってくる。 ヤンは胸に手を当て恭しく礼をした。シエスタもメイド服のスカートをつまむ。 「初めまして、カトレアお嬢様。私はヤン・ウェンリーと申します」 「お初にお目にかかります。シエスタと申します。先日ミス・ヴァリエールにメイドとし て雇用されました」 自己紹介をされたカトレアもスカートの裾をつまんで礼をした。貴族が平民に礼をする という行為に、二人はギョッとしてしまう。 「初めまして。私はルイズの姉のカトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ ラ・フォンティーヌです。妹がお世話になっておりますわ」 「フォンティーヌ?」 ヴァリエールじゃないの?と、ヤンの頭上にクエスチョンマークが飛び出た気がする。 ちょっと失礼な使い魔のリアクションにもカトレアはニッコリ笑って答えた。 「私は魔法もろくに使えないほど病弱で、ヴァリエール領からも出た事が無いの。領地を 出たのは今回が初めてよ。父さまは、そんな私を不憫に思って領地を分け与えて下さった の。 だから正確にはヴァリエール家じゃなくて、フォンティーヌ家の当主になりますわ」 「それは、知らぬ事とはいえ失礼しました」 ルイズとは似ても似つかぬ穏和で寛容かつ謙虚な対応に、ヤンは心から恐縮して頭を下 げた。 カトレアは頭を下げるヤンに歩み寄り、優しく手を取った。 「そんなにかしこまらないで下さいな、先生」 「せん…せい?」 ヤンも、横で聞いてるルイズもシエスタもキョトンとしてしまった。 「あの、ちいねえさま。ヤンは先生じゃないんだけど」 カトレアはコロコロと楽しげに笑う。 「あらあら!もう話は広まっていますよ。ルイズが使い魔を呼ぼうとして、うっかり異国 の元帥にして軍最高司令官を教師兼軍師として召喚したって」 「げ、元帥って…」 ルイズとヤンは冷や汗をかいていた。シエスタはヤンの顔を黙ってジッと見る。 ルイズは、噂に尾ひれ背びれがついたわねぇ…と呆れて。 ヤンは、何故バレたんだ?自分の正確な地位や階級は誰も知らないはずなのに、もしか してつい最近、他にも『迷い人』が現れたのか!?、と。 ヤンの階級は元帥。宇宙暦799年に同盟軍史上最年少の元帥に昇進している。地位は、 最終的にはエル・ファシル独立政府の革命軍司令官でありイゼルローン要塞司令官であり イゼルローン駐留艦隊司令官。同盟軍所属時代は第13艦隊司令官であり、1艦隊の司令 官に過ぎない時期もあった。軍の正式な最高司令官になったのは、エル・ファシル独立政 府に所属して以降で宇宙暦799年の12月(文民統治の形式上、エル・ファシル政府主席 ロムスキー氏が軍事委員長という上官の地位にあったが)。 ちなみにハルケギニアでの現在の暦は宇宙歴換算だと、宇宙暦800年の8月辺り。もっ とも、召喚による時空転移時に時間軸がずれた可能性もあるので、正確なところはヤンに は分からないが。 つまり、ヤンが元帥であり軍最高司令官だと分かるには、少なくとも宇宙暦799年以降 にハルケギニアへ転移してこなければならない。 そんな期待と不安が入り交じるヤンの脳裏に、続けて別の女性からの声が届いた。 「あなたは先日、父さまに二つ名を名乗ったわね?『2秒スピーチ』と」 その棘のある女性の声に、ヤンは聞き覚えがあった。ルイズも緩んでいた頬が一瞬で引 き締まる。 「え、エレオノール姉さまも。お久しぶりです」 「久しぶりね、元気そうで何よりだわ」 そこには理知的かつ厳しそうな瞳に公爵と同じブロンドを持つ長身の女性、エレオノー ルが歩いてきていた。 縮こまりながらも挨拶をするルイズに、エレオノールは一瞥をくれるのみ。 そしてメガネ越しに鋭い視線をヤンへ投げつける。 その刺すような目に、ヤンも腰がひけそうになるが、なんとかこらえて頭を下げる。 「お久しぶりにございます、エレオノール様。…確かに私は公爵に、かつて私が『2秒ス ピーチのヤン』と呼ばれていた、と語りましたが、それが、な、に…か?」 ヤンは質問をしながら、自分が余計な事を言ってしまった事に気が付いた。二つ名が『2 秒スピーチ』とは、どういう事か。 まず、スピーチをしなければならない公的地位にある。 2秒でスピーチが終わるなんて通常有り得ない、非常識だから二つ名になる。 規律を重んじる軍で、しかも政府や軍の式典で、非常識なスピーチは普通できない。 非常識な事が出来るのは、当人を軍規や法規をもって諫める人物がいないということ。 つまり階級も地位も最高位か、それに匹敵する実力が必要。 そして、この二つ名は嘘やジョークにしては迂遠過ぎる。真実の可能性が高い。 規律ゼロの私兵集団の首領とかには見えない。それだけはない。荒くれ者を束ねるどこ ろか、逆に締め上げられそうだ。 エレオノールがビシィッとヤンを指さした。 「…つまり!あなたは『ふりーぷらねっつ』とか言う国の、軍最高司令官ね!階級も最高 位の元帥!!」 ルイズとシエスタは一瞬呼吸が止まる。そしてヤンを見上げる。 小さな主のグータラ執事は、見ていて目を覆いたくなるくらいオタオタしていた。 「まぁまぁ。凄いんですねぇ」 カトレアは朗らかに手を叩いていた。 「おでれーたな!マジなのかよ、ヤン!」 長剣は鞘から飛び出さんばかりの勢いで飛び出した。 油を絞られるガマのようにダラダラと汗を流したあげく、ガックリと肩を落とした。こ こまでの狼狽を見られてしまっては、白状したのと同じだと諦めるしかなかった。 「そ、そんな大層なモノじゃあ、無いんです…負け戦が続いて、国も滅んで、不正規隊と いうか独立愚連隊というか、敗残兵を連れて逃げ回ってただけですから」 それでもヤンは、必死に『真実』を語る。 ハルケギニアでは『平民が最高司令官』なんて信じてもらえないと思っていた。第一、 故郷に帰れなくなってしまったが、ようやく軍から身を引いて平和な生活が出来そうでも あった。せめてこのまま平穏な生活を続けたかった。うっかり再び軍に放り込まれては、 たまったものではない。 第一、負け戦だったのは本当だ。といっても、敗北が決定してから指揮権を譲渡された り、ヤンが戦術的に勝利したが政府が戦略的に敗北した、という様な話なのだが。 そんなヤンの内心を知ってか知らずか、エレオノールは腕組みしてウンウン頷いた。 「当然だわ。その若さで、しかも覇気の欠片もない鈍そうな平民が指揮するとあっては、 負けて当然でしょう。『ふりーぷらねっつ』とやらも、大した国では無かったんでしょう ね」 かなり酷い事を言われたヤンだが、怒るどころか「ええ、まぁそうなんです」と、情け なく愛想笑い。その様にルイズもシエスタもデルフリンガーも「なーんだぁ」「うーん、 やっぱりそうですよね?」「はは、まぁそーだろーよ!」と呆れてしまった。カトレアだ けは変わらぬ笑顔でヤンを見つめている。 「さて、そんな余談はよいのです。父さまも母さまもお待ちですわ。行きますわよ!」 毅然とした態度で先導するエレオノールに連れられ、一同は城の奥へ向かった。 そんなルイズ達を城の入り口から見つめている二対の青い瞳がある。 警備の兵士が青い瞳と青いドレスの二人組の所へ駆けてきて敬礼する。 「失礼致しました!ガリアからの大使と確認できましたので、お通り下さい!」 青いショートヘアの少女と青く長い髪の女性は城の中へと入っていた。 敬礼した兵士に、別の衛士が胡散臭げに小声で声をかける。 「おい、なんだい?あの二人組」 「ガリアの大使。ちゃんと招待状持ってた」 「…あれが?どうみてもお上りさんの田舎者と、その妹だよな」 「でも、あの青い髪はガリア王家の特徴だ」 そんな怪訝な視線を背中に受けつつ、青く長い髪の女性はキョロキョロとせわしなく周 囲を見回り、ウロウロしようとしたところを妹らしき人物に杖で叩かれていた。 国中の貴族とその配下達でごった返す城の中、ヴァリエール家には控え室が用意されて いた。勢揃いしたヴァリエール家の面々を前に、執事のジェロームが式典の予定を説明し ていた。 「・・・でして、これより正面ホールにて陛下が全貴族に対し詔が賜られます。 その後姫殿下はベアトリス殿下と共に、馬車にてブルドンネ街を通りまして、中央広場 のサン・レミ聖堂へ向かわれます。 聖堂で大司教より道中の安全祈願と婚礼への祝福を受けましてから、ゲルマニアへと向 かわれます」 上座の肘掛け椅子に鎮座する公爵と公爵夫人、そして三姉妹が和やかな空気の中で執事 の話を聞いていた。シエスタとヤンは他の執事や召使い達と共に壁際で立っている。白の 鎖編みで刺繍された青い布地と、金の装飾がなされた立派な肘掛け椅子に座る公爵夫妻。 その威厳は相当なものだ。他者を常に傅かせてきた支配者階級のオーラを全身に纏ってい る。 特に公爵夫人のオーラが苛烈だ。 炯々とした光を湛える鋭い眼光を持つ、四十過ぎの女性。髪は桃色だが、纏うオーラの 色は桃色からはほど遠い。金色か、焼け付くような熱を帯びた白だろう。エレオノールを 遙かに上回る威圧感を放っている。 とはいえ、目出度い婚儀を前にして、さすがに夫妻の表情は柔らかかった。水辺で戯れ る白鳥がデザインされた銀のワインクーラーで冷やされたワインをグラスに注がれ、ゆっ たりとくつろいでいる。 「さて、式典の席の事だが」 公爵が低いバリトンの声を響かせた。 「残念ながら、トリステインの全貴族が出席出来るような広さは、城の大ホールにも聖堂 にもない。なので出席者は厳選せよとのお達しだ。それとカトレアは身体の事もあるし、 エレオノールはアカデミーの仕事がある。領地も空にはできん」 カトレアは僅かに頷く。エレオノールはクイとメガネをかけ直す。 「このため、大ホールにはエレオノールとカトレアが出席せよ。その後エレオノールはカ トレアを屋敷へ送れ。後はアカデミーに戻るがよい」 「承知致しました」「エレオノール姉さま、お願いしますね」 年上の姉二人はすぃっと頭を下げる。 公爵は顔を見合わせる姉二人から、視線をルイズへ移す。 「聖堂へはわしとカリーヌ、それにルイズが出席する。その後はヴィンドボナまで馬車の 旅だ」 「分かりました。ゲルマニア旅行、楽しみですわ!」 はしゃぐルイズはカリーヌの峻烈な眼光に射抜かれ、即座にしゅん…となった。 次いで婦人の眼光はヤンを射抜く。 ヤンは一瞬で手に平に汗をかいてしまった。 「ウェンリー、とやら」 「は、はい」 背筋にも冷たい汗が流れるのを感じる。 「そなたのもたらしたダイヤの斧、見事な逸品でした」 「恐れ入ります…そういえば、アカデミーに送られてからはどうなりましたか?」 その言葉に、エレオノールが胸を張った。 ヤンの横に立つシエスタの目は、その胸が詰め物だと見抜いてしまったが、そんな事は 長女の知らぬ事。 「もちろんダイヤの取り外しに成功しましたわ!まったく、『ブレイド』ですら切れぬの で苦労したわ。一ヶ月かけて、極微小の『錬金』で接合部を切り離しました。 彫金師に送った後の事は良く知らないのだけれど、確かティアラにしたとか」 自慢げに語るエレオノールだったが、あれが実際に血にまみれた斧だと知ってるヤンに とっては複雑な想いだ。そんなものを頭上に戴いて不吉じゃないかなぁ、と。しかもその 血は麻薬で汚染された地球教徒のもののはず。 「まだ何か聞きたげだな?」 ヤンの様子に公爵が不審を感じたらしい。さて、まさか今頃になって血濡れのティアラ です…とも言えない。別の事を聞く事にした。 「あ、いえ、実はアルビオンの親善艦隊はどうなったのか、と…」 「ふむ、それか。それなら・・・」 公爵は皆に先日のラ・ロシェール上空での一件を語った。内容は枢機卿が受けたものと 同様。 ヤンもルイズも真剣に話を聞く。 聞き終えたルイズは誇らしげに胸を張った。 「どうやら本当に奇襲をかけようとしていたようですね!礼砲で艦が撃沈だなんて、自作 自演にしても程度が低すぎるわ!」 ヴァリエール家の人々も、まったくですわね、お手柄ねぇルイズ、等にそれぞれの感想 を述べ合う。 そんな中、ヤンだけは顎に手を当てて考え込んでいた。 「あ…いえ、待って下さい」 末娘のお手柄を率直に褒めていた公爵夫妻も姉たちも、他のメイドや執事もヤンへ視線 を集中させた。 「彼等は、砲口を向けられた事について何も言わなかったんですね?その点を逆に非礼だ と咎める事も出来たのに」 「うむ。奇襲作戦を中止する以上、奴等は単なる親善艦隊であり大使一行だ。外交関係を こじらせないため当然の事と思うがな」 公爵の判断は、枢機卿と同一のものだ。特に不審な点はないように思える、と公爵婦人 も三姉妹も考えていた。 だが、ヤンはますます考え込んでしまう。 奇襲作戦のために不可侵条約締結を謀る連中。貴族ではないため名誉に拘らず、故に策 謀を躊躇わぬクロムウェル…。かの新皇帝の人となりから見て、僅かな矛盾を感じてしま う。 「素直、過ぎませんか?」 「素直、過ぎる…とは?」 ヤンの質問に、公爵は質問で返した。 「はい。まるで、奇襲作戦を見抜かれている事が前提かのように、あっさりと手際よく作 戦を中止させています。そのわりに艦には火を放ってます。まるで、中途半端にこちらの 情報を得ていたかのようです」 「口を慎み給え」 ヤンを窘めたのは、ジェロームだった。 「君が言ってるのは、トリステイン城内に裏切り者がいる…という事だね?」 「はい」 何のためらいもなく肯定したヤンに、ジェロームの方がたじろいだ。 「し、新参者としての謙虚さが欠けるようだ。恐れ多くも城内に王家へ弓引く者がいるな どと。しかも、単なる憶測ではないか!」 「ジェローム。あなたも口が過ぎますよ」 今度は公爵夫人がジェロームをたしなめた。恐縮して一礼する古執事から、飄々とした 態度を崩さない新執事へ視線を移す。 「ウェンリーよ。あなたもゆえなく他者を貶めるがごとき言葉、慎みなさい」 「失礼致しました」 ヤンも深々と頭を下げる。 だが、今度は公爵が髯を撫でながら考え込み始めた。 「ふむ…かのレコン・キスタは国境を越えた繋がりを持つ。始祖への信仰心から、いつま で経っても『聖地奪還』に動かぬ王家に業を煮やした貴族や僧侶が…という事は十分考え られる事だ。 それに、貴族の地位を剥奪され平民に堕とされたメイジや、家名が低く領地も無い故に 日々の糧にも事欠く下級貴族はトリステインにとて多い。金に目がくらんでも不思議はな い」 ルイズもヤンもシエスタも、聖地奪還という言葉に眉をしかめる。聖地が厄災の元だと 知っているものの、それを公にする事も出来ないもどかしさを感じてしまう。 「まぁ、とはいえ、誰が裏切り者かまでは分からぬであろう?」 「はい、残念ながら。 それに諜報活動は政戦両略の基本です。城内かどうかはともかく、トリステイン国内に もゲルマニアにもアルビオンの間者や協力者がいる事は当然でしょう」 「そうだな。 それに、既に危機は去ったのだ。もはや同盟はなり、ラ・ロシェールにはトリステイン とゲルマニアの両艦隊がいる。両艦隊はゲルマニアへ行き、合同艦隊パレードをヴィンド ボナ上空で繰り広げる予定だ。 アルビオン艦隊も大使のサー・ジョンストンを降ろして、すぐにアルビオンへ帰ってい る。その大使とて、艦隊司令長官及び貴族議会議員の政治家ではあるが、貴族一人に警護 数名。伝令用の風竜を一騎連れているくらいだ。 この状況で、奴等に打つ手はなかろう。当面は我が国は安泰だ」 「そうですね…確かに、純軍事的にはアルビオンは手詰まりです。建国して間もなく、国 内も外交も急ぎ安定させねばならない時期ですから、しばらく軍事侵攻はないでしょう。 ですが、次の策略を既に考えてあるから、礼砲による撃沈という演技をあっさり諦めた ということも考えられなくはないです」 次の手、と口にしたヤンにはさしたる意味は無かったかもしれない。単に可能性の問題 としてあげたのだろう。 が、ヴァリエール家の人々はそれぞれに多様な反応を示した。 カトレアは「あらあら、先生は心配性な人ですねぇ」と少し困った顔をする。 エレオノールは「ふん、よく舌のまわる狐だこと!」と露骨に嫌悪を現した。 公爵夫人は黙ってヤンを見つめている。射抜くような眼光はそのままに。 ルイズはちょっと頬を膨らませる。目出度い婚儀の席で余計な事言わないでよ、という 感じだ。 公爵は一言、「続けよ」と命じた。 ヤンが小さく一礼し、さらに話を続けようとしたところ、部屋の扉がノックされた。城 の侍女が「失礼します。時間ですので、正面玄関ホールへお越し下さい」と告げる。 公爵はゆっくりと優雅に立ち上がった。 「ふむ。興味深い話ではあったが、もう時間がない。ウェンリーよ、念のために聞くが、 おまえの懸念は切迫したものか?」 「いえ。可能性としては極めて低いものです」 「ならば、またにせよ。ともかく、姫殿下の婚儀だ!皆、粗相のないようにな!」 一同は公爵の号令を受け、貴族の威厳と風格をもって部屋をあとにした。 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/5950.html
763: 昭和玩具の人 :2019/10/29(火) 22 19 49 HOST p1304131-ipngn11701hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp 艦娘“ふじ”の誕生により、それまで以上に世界中から注目される、打撃護衛艦「ふじ」。 いまだ公試中の身であり、旭日旗ではなく君島重工の旗を掲げる本艦は、現在神崎島に表敬訪問していた。 銀河連合日本×神崎島ネタ ふじ艦長の憂鬱 その3 「いやあ、前代未聞ですね。艦長」 「そうだな。まさか就役前に他国へ表敬訪問するなんて」 神崎島最大の軍港が一望できる艦橋右舷側のデッキで、潮風を浴びながら私と副長はホストシップを務める軽巡洋艦「矢矧」を眺めていた。 かつて「大和」と共に天一号作戦に参加し、勇戦虚しく道半ばで沈んだ艦が多少姿を変えているものの、目の前に存在している。近年宇宙人が来訪したり、突然島が現れたり、艦が人になったり、話題が尽きない毎日である。 「それにしても「矢矧」ですか。一度お話してみたいです」 「うん? 副長はもしかして“ゲーム”をしているのか?」 「ええ、サービス開始直後から。「矢矧」が実装されたとき、思わず一目惚れしてしまいましてねぇ」 照れ臭そうに頭をかく副長。若く痩せ型で長身、顔も整っていることから女性自衛官達からも人気があるのだが、どうやら“オタク”だったらしい(いや、悪い意味ではない。そういう私も艦船模型を作っては妻に怒られている身だ)。 「おいおい、君には妻も子供もいるだろうが」 「ああ、ご心配なく。妻も“提督”ですから。因みに彼女は「飛龍」が嫁です。“ケッコンカッコカリ”するときは、山口提督の写真に挨拶していましたよ」 「あ、そう」 中々、愉快な奥方である。 「艦長、間もなく来られるそうです」 「ああ、わかった。今行く」 隊員がやってきて、来訪者が来ることを告げられる。この後私は“ふじ”と共に神崎提督主催の歓迎パーティに出席することになっている。そのお迎えが来たのだ。 「艦長がうらやましい。自分も行きたかったです」 「これも公務だよ。それに艦娘の皆さんは全員神崎提督の奥方だ」 「それを言わないでくださいよ・・・」 どうやら副長は事実を知ってへこんだ一人だったようだ(後で知ったが、奥方も盛大にへこんだらしい)。 神崎島に上陸し、会場に到着した私と“ふじ”。そこには既に多くの艦娘達が集まっていた。 「か、艦長さん。凄いです。偉大な先輩方がこんなにたくさん・・・」 「落ち着け“ふじ”。別に取って食われるわけじゃないんだから」 ガチガチに緊張している“ふじ”。無理もない。可愛らしい容姿をしているが、先の大戦で勇戦した歴戦の艦達なのだから。 「ほら、君も海自の一員としてここにいるんだ。堂々としていればいい―――手と足、同じ方が一緒に出ているぞ」 「え? あ、す、すみません」 入口で既にこんな状況である。果たして大丈夫だろうか? これは艦長としてしっかりサポートしてやらないと、と気を引き締める。 ―――なんというか、まるで発表会に臨む娘を応援する父親の気分だった。 764: 昭和玩具の人 :2019/10/29(火) 22 20 45 HOST p1304131-ipngn11701hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp 「―――どうやら、無事に交流できているようですね」 「ええ、まだ緊張が取れてはいないようですが」 視線の先にいる“ふじ”はたくさんの艦娘達に囲まれ、談笑している。少々ぎこちない表情ではあるものの、特に問題はないだろう。 ―――問題があるとすれば、むしろ私の方だ。なぜなら隣にいるのはこの島のトップである神崎博之提督である。自分より若く見えるが、別の世界では深海棲艦を鎮めた実績すらある歴戦の軍人だ。 「申し訳ない。本当なら「ふじ」全乗員をお招きすべきなのでしょうが・・・」 「いえ、今回の主役は艦娘達ですから。我々はまた今度、公式に訪問した際にでも」 「そう言っていただけると助かります」 そう、今回就役前にもかかわらず神崎島に訪問となったのは、“ふじ”と神崎島所属の艦娘達と交流するため。公式には「ふじ」の装備確認に伴う寄港となっているが、そちらはあくまでおまけだった。 私はふと、“ふじ”に話かけている艦娘達の左手薬指に光る指輪に目を向ける。先ほど副長が言っていた“ケッコンカッコカリ”という証だが、神崎提督は全員を妻として迎えていると聞いている。 「そう言えば神崎提督」 「なんでしょうか?」 私は周囲に誰もいないことを確認すると、声を潜める。 「その・・・誠に失礼ながら、艦娘との結婚とは、その・・・」 「三浦艦長は“ふじ”が気になっていると?」 「滅相もない。私は妻子がいる身ですし、“ふじ”は娘みたいに思っています。決して恋愛感情では―――」 「そうでしょうね。いや、失礼」 神崎提督が笑っているのを見るに、どうやらからかわれたらしい。思わず憮然とした表情をしてしまったが、不躾な質問をしたのは私の方だ。これでお互い様ということなのだろう。 「―――そうですね。私達の場合はまだ深海棲艦達が暴れる世界で出会い、お互い生き抜くために手を組んだわけですが・・・まあつり橋効果と言いますか、共依存と言いますか。そんな感じで外堀を埋められましてね」 中々大変ですよ。と言う神崎提督は苦笑するが、まんざらでもないとその顔は語っていた。 「そうでしたか。 ―――いえ、その、私は艦長なのであなたとは立場が違うのですが、これから“ふじ”とどのように接していけばよいかと考えておりまして」 「ああ、なるほど」 そう、実をいうと、“ふじ”は他の艦娘と違い、立場が明確ではない。 神崎島の艦娘達はそれぞれ自艦の艦長となっているが、「ふじ」の艦長は私であり、“ふじ”ではない。上層部では神崎島と同じく“ふじ”を艦長にすべきではという声もあるのだが、“艦長”というポストをなくすなという声もあり(これからも艦娘が誕生するか不明瞭であることも大きい)、今だ“ふじ”の立場は不明瞭なのだ。 「ふじ」と共に任務に就くのか、それとも特別な部隊を編成するのか―――海自では、未だ答えが出ていなかった。 「ふむ、そうですね」 色々海自の事情も知っているのだろう、真面目な表情で考える神崎提督。 「―――変に気負わず、ありのまま接すればよろしいと思いますよ」 「えっ―――」 帰ってきた答えに、思わず呆ける。 「恐らく“ふじ”もそういったことを理解していると思います。組織というものは必要ではありますが、時に融通の利かないものです。でも、そのことを理解して、最善の道を選んでくれると信じたから、彼女はあなた方海自の前に現れたんだと私は思うんです。だから変に気負うことはありませんよ」 「あ―――」 それはまさに、あの夜の飛行甲板で感じたことそのもの。“ふじ”は我々を信じてくれていると理解した時と同じ答えだった。 「―――どうやら、既に答えはあったようですね。それなら大丈夫です。海自を、自分を信じていけばいいだけです」 「はい、ありがとうございます。改めて気付かされました」 私は歴戦の提督に対し、ありったけの敬意を込めた敬礼をした――― 「そういえば彼女達、一体何を話して―――」 ふと、私達は会話の内容が気になり、聞き耳を立てる。 「“ふじ”さん。明日工廠で装備開発していただけませんか? あなたが行えば簡単に現代装備が作れるかもしれないので。あ、あと最近ウチでレールガンを試作してみたんですけど、使ってみません? ここの娘達だと発電量が全然足らなくて」 「―――ねえねえ! 私も戦艦になれるかな? だって護衛艦って実質駆逐艦なんでしょ! 私も三五六ミリ連装砲を積みたい!」 「ふむ、君はヘリを搭載していないのか。それなら瑞雲をプレゼントしよう。瑞雲はいいぞ。哨戒ヘリより速いからな」 「え、え、ええと・・・」 なかなか濃い面子に囲まれ、“ふじ”はうろたえていた。 「・・・ちょっと助けに行ってきます」 「・・・本当に済まない、うちの娘達が」 765: 昭和玩具の人 :2019/10/29(火) 22 23 27 HOST p1304131-ipngn11701hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp 以上、神埼島の艦娘達との交流についてのお話でした。 次回、ようやく就役する予定です。 766: 昭和玩具の人 :2019/10/29(火) 22 24 49 HOST p1304131-ipngn11701hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp 題名を変更し忘れておりました 銀河連合日本×神崎島ネタ ふじ艦長の憂鬱 その3 としておいてください
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/5600.html
725: yukikaze :2019/02/10(日) 21 59 11 HOST 174.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp ちょっと簡単にSS投下。題名は『ある提督の憂鬱』 世界線は豊臣夢幻会です。 2隻のイラストリアス級がそろって転舵していく光景は、遠目からみれば勇壮そのものであった。 日米の空母と比べると聊か小ぶりであるものの、空母の船体と飛行甲板の間を一体化させたその姿は精悍そのものであり、英国海軍の新鋭空母に相応しき威容を見せていた。 もっとも、『ある事実』を知っている者達からすれば、この姿は『勇壮』ではなく『滑稽』と称したかもしれない。 何しろ、1944年初頭であるにもかかわらず、英国海軍が保有している正規空母は、この2隻だけしか存在せず、しかも艦載機に至っては、自国製ですらないという有様であったのだ。 そしてその事実を誰よりも理解しているのは、この英国海軍唯一の機動部隊と言っていい、『フォースH』の将兵達であった。 「栄えある先陣と言えば聞こえがいいが・・・」 フォースHの旗艦であるキングジョージ五世の司令官室において、艦隊司令官であるサマーヴィル中将は、つい先日渡されたばかりの作戦司令書をテーブルに放り投げながら、溜息をつきつつ呟いた。 「それ以外には使えんと判断したという訳だ。アメリカ人も日本人も」 何とも腹立たしい事ではあった。 世界の七つの海を支配した英国海軍が、分家のドラ息子や極東の黄色人種に侮蔑をされるという事実は、英国と英国海軍を愛しているサマーヴィルにとって、怒りのあまり手袋を相手の顔面に叩きつけるレベルの侮辱であったのだが、同時に、彼の怜悧な頭脳は、日米海軍の判断を是とするより他ないという諦めに達していた。 まずアメリカ海軍であるが、戦力としては最も巨大な代物であった。 正規空母3隻、もしくは正規空母2隻+軽空母1隻を軸とする空母機動部隊、これを6つも保持していたのである。 艦載機数は1,300機近くに達しており、その雲霞のごとき大群が押し寄せた場合、相手方がどうなるかは言うまでもない。 無論、その6つの部隊を固めるのも、第二次大戦が始まってから就役した新鋭艦だらけであり、まさに現代のアルマダと言ってよかった。 次に日本海軍であるが、これは規模的にはアメリカ海軍よりも劣っていた。 正規空母2隻+軽空母2隻を軸とする空母機動部隊が1個に、1個水上艦隊。額面だけ見れば取るに足らない存在と言えた。 だが、その内実は『化物』と呼んで差し支えなかった。 何しろ空母艦載機こそ240機程度であったがその全てがジェット艦載機で統一されており、まともにぶつかったが最後、鎧袖一触で相手を蹴散らすだけの実力を誇っていたのである。 しかも全ての艦が、英米よりも進んだレーダーやFCSを装備しており、夜戦を日本海軍に挑むのは自殺行為とみなされていた。 では英国海軍の実力はどうであったのか。 見も蓋もない事をいってしまえば『戦力整備を完全に間違えた』といって良い代物であった。 フォースHの戦力はと言えば、新鋭戦艦5隻にイラストリアス級2隻という布陣であった。 主砲こそ、これまで英国海軍が使用してきた15インチ砲の改良版でしかなかったものの、安定して30ノット出せる速力と、アドミラル級を上回る防御力 を有したキングジョージ5世級は、確かに英国海軍が建造した戦艦の中では最高峰に位置する艦ではあった。 だが、それはあくまで『英国海軍が建造した戦艦の中では最高峰』でしかなくおまけに同艦が就役した1942年から1943年後半において、同艦が必要とされる局面はついぞ発生することはなかった。 共産海軍最大の戦艦であった『ルイ・オーギュスト・ブランキ』『パリ・コミューン』(ともにドイツから賠償艦としてせしめたバイエルン級)が、 1942年初頭に、トゥーロンの軍港ごと日本海軍によって消し飛ばされた時点で、共産海軍が有する大型艦艇は、計画書の中以外には存在しなかったからだ。 それでも、同艦が計画通り5隻就役したのは、未だ旗幟鮮明を明らかにしていないイタリア海軍への対策と、断片的な情報から、着々と就役しつつあるとされるソ連の大艦隊への対抗というのが、英国の公式見解であった。 726: yukikaze :2019/02/10(日) 21 59 48 HOST 174.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp 「公式では・・・な」 サマーヴィルは、渋い紅茶を飲み干すような気分で、あの時のことを思いだしていた。 あの時期、ほぼ完成していたキングジョージ5世とプリンス・オブ・ウェールズについては、戦艦のままで完成させるのは仕方なかったであろう。 艤装が進んでいた3番艦のデューク・オブ・ヨークまでならば、まだ認めてもよかったであろう。 だが、進水した直後で、ろくに艤装がされていなかったジェリコーとビーティまでもを建造続行したのは完全な失策と言えた。 後知恵と言われるかもしれないが、この2隻の建造を停止乃至は中止する代わりに、浮いた予算でアメリカから空母をレンタルするか、あるいは陸軍や 空軍に予算を振り分けていた方が遥かにマシであっただろう。 実際、英海軍の中には、アメリカ空母のレンタルや、ジェリコーとビーティーの空母への改装案を主張する者もいた。 だが、英国海軍は戦艦建造を強行した。 その理由は極めて単純で、英国海軍の戦艦派の声が強かったからにつきた。 第一次大戦の休戦後、英国は様々な紛争に介入せざるを得なかったのだがその時に、最も安価にプレゼンス効果を発揮したのは戦艦であった。 世界最大の戦艦であったアドミラル級が、悠然と紛争領域の海域に展開する様は、確かに一定の抑止効果を発揮していたし、そうであるが故に英国海軍においては『戦艦』という存在を絶対視する人間が多かったのである。(無論、英国海軍だけでなく政治家や国民もだが) ある意味、これまでの最適解に順応しすぎたが故の末路と言えるであろう。 そしてそのツケを払わされるのは現場の将兵であった。 「せめてイラストリアス級が後2隻あれば・・・。いや、アークロイヤルが沈んでさえいなければ・・・」 繰り言であることは分かっているが、サマーヴィルはそう思わざるを得なかった。 イラストリアス級空母4隻、あるいはイラストリアス級空母2隻とアークロイヤルがいれば、まだ空母を主戦力として使えたかも知れなかった。 イラストリアス級の定数は30機程度であるが、あくまでそれは定数であり、飛行甲板に駐機させておけば、40機後半までは運用可であった。 その場合、前者だと180機程度は使えるし、後者であっても150機程度は運用できた。 勿論、日米海軍と比べると過小ではあったものの、空母戦力として無視されることはなかったであろう。 しかし現実は非情であった。 イラストリアス級は、イギリスの装甲板製造能力の問題と予算の観点から、キングジョージ5世級を優先してしまったがために、当初、1937年に建造予定であったイラストリアス級の3番艦と4番艦は、1940年にずれ込んでしまい、しかも日本海軍の艦載機を導入することになったために、設計が2転3転してしまったことで最終的には「戦争に間に合わない」という理由で計画が破棄されてしまっていた。 アークロイヤルについても、対潜警戒の不備によりドイツの潜水艦によって撃沈されており、影も形もなかった。 しかもドイツの急降下爆撃機の能力が派手に宣言されてしまったことと、イラストリアス級がそれを防いだことへの宣伝もあって、英国海軍部内においても、飛行甲板への低防御への忌避感が形成されており、戦時急造用の軽空母の設計すら禄に出来ていない有様であった。(防御に関しては妥協する代わりに、1年半以内の就役とジェット運用を重要視した瑞鳳型とは雲泥の差であった。) 結果的に、英国海軍の戦力は「新型戦艦5隻、新型空母2隻」だけであり、それを最大限生かすとするならば「空母戦力で艦隊の防空をしつつ、水上艦艇での艦砲射撃」以外取りようがなかった。 英国側としては最後の足掻きとして、フォースHと、アメリカ側の比較的旧式艦で構成された(それでもレキシントン級2隻、ヨークタウン級3隻、ワスプという陣容であったが)2個空母機動部隊とを統合して、英米合同艦隊として英国側が指揮するというプランも立てたのだが、アメリカ側から「何故大兵力を有する部隊が、僅少な部隊の指揮を受けなければならないのか」という当然のツッコミの前に消し飛ぶことになった。(なお、イギリス嫌いで有名なキング海軍作戦本部長の言葉はさらに辛辣であり『下手くその指揮に何故従わないといかん』であった。) サマーヴィルは天を見上げざるを得なかった。 かつては七つの海を制覇していた偉大なる世界帝国は、もはや一人で戦うどころか他国の使い走りにならざるをえないまでに凋落したという事実に。 「どこで間違えたというのだ・・・我らは」 そう呟く彼の問いに答える者はいなかった。 727: yukikaze :2019/02/10(日) 22 08 32 HOST 174.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp 短いですが投下終了。 多分、全てのイギリス軍人や政治家は思っていそうです<どこで間違えたのだ? 以前も出しましたが、この時期のイギリス軍の凋落は悲惨としか言いようがなく 陸軍 主力戦車は、日本に頭を下げて37式中戦車のライセンス生産。 大砲についても、アメリカ陸軍の兵器の供与比率が多く、自前の兵器と言えば小銃と機関銃、それに短機関銃。 空軍 スピッドファイヤが烈風にボロクソに敗れ去ってしまい、結果的に主力戦闘機が烈風。軽爆撃機が流星という有様。 (だって後継機として争ったのタイフーンですぜ) まあマーリンエンジンを、モスキート&ランカスターにぶっこめたのでまだマシと言えばマシだったのですが。 海軍 上の二つよりはマシとはいえ、艦載機は烈風と流星に。 なお、戦備計画完全に間違えてしまい、水上艦艇としては有力だけど対空能力が寒い状態であり、日米両国から「ねえ? 戦訓理解している?」と、壮絶にdisられることに。 なお、英国が切り札としていた電探技術は、日本側から「旧式電探でカードになると本気で思ってんのか」と、全くカードにならないことを突きつけられ止めにレッドセルまで暴露されてしまって、完全に日本から見下されることになります。 (まあチャーチルのやらかしが大きいのだが)
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/19465.html
戦略家にして大提督(タクティカル・アドミラル)「ナノ・ブレーム」 VR 火/水文明 (7) 進化クリーチャー:スプラッシュ・クイーン/デジタイザーズ 11000 ■マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。 ■マナ武装5:相手の呪文の効果または相手のクリーチャーの能力によって、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、自分のマナゾーンに水のカードが5枚以上あれば、墓地に置くかわりに自分のバトルゾーンに置いてもよい。 ■デッキ進化-自分の山札の上から1枚目を表向きにする。そのカードがクリーチャーであれば、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。そのカードがクリーチャー以外であれば、このクリーチャーを自分の手札に戻す。 ■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から5枚を表向きにする。その中にあるすべてのレイドボスとレイダースを自分の手札に加え、残りを好きな順序で山札の一番下に戻す。 ■W・ブレイカー 作者:宇和島 フレーバーテキスト あのプレイヤー、俺たちの獲物である巨大なボスを手懐けているぞ。どういうことだ…!?———聖遊者 ドッチハッチ 収録 DMTend-06 「サイバーランド戦記 第2章 プレミアム・ストーム」 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/633.html
874 :名無しの紳士提督:2015/01/28(水) 23 57 26 ID el/0ce56 怖い話……、当たり前のように怖い事なんて周りにある。石ころとか海藻みたいにたくさんある。 だけど、一番怖いのは……その怖い何かが自分には関係ないと勘違いしていること。 当たり前だけど……人が死ぬように私たちも沈む。それを私は理解していなかった。 あるいはそれを知らなければ……、もしくは見なければ、悲しいだけ……、だったかも……。 沈む深雪を見て……、おかしくなった。 部屋に引きこもり……、何も食べず、何も飲まず。あるいは緩やかな死が私を迎えに来てはくれないかと願うように。 頑張り方などとうに忘れ……、姉妹もあまりに部屋の扉を叩かなくなっても……、あの人は私を訪ねて来た。 大丈夫か? 何をもって大丈夫というのだろう。 配給、貯まってるぞ? 取りにいける程、厚顔に思われていたのだろうか。 アイス貰って来た、溶ける前に開けてくれないか? そんなものいらない。 ただ当たり前のように姉妹で出撃して……私から沈みたかった。 痛いのは嫌だけど……、今切り裂かれている心より痛い事はないだろうから。 お前を笑わせに来たと彼が言った時、私はついにキレた。 冗談じゃない……、帰ってくれ……そんな気持ち。あるいは解体して下さいと望もうかと。 扉を開け、見えたその顔は幾分やつれたように見えた。 その時、私は気づいた。ああ……、人間は私たちは負けるのだと。 本土から離れたこの泊地が切り捨てられるのも遠くはないだろう。 良かった。 だけど、だから……なんと言えば良いのだろうか……私の頬を暖かい何かが流れた。 吹雪が沈んだと教えられた時も……流れなかったのに。 酷く怖くなった。 一人消えていくのが……、身勝手と知りながら怖くなった。 だから、 彼を押し倒した。私と……繋がって貰えるようにと。 その日からずっと、ずっと彼を犯した。 彼のものが……小さくなると抱き合い、朝か夕方かも分からない時間に大きくなるとまた繋がった。 彼も疲れていたのだろう。私にされるがまま……、部屋から逃げようともしない。 だから……、今日もまた同じ日が始まる。何でもない日…… 裸で抱き合い……、したくなれば繋がり……、寝たくなれば寝るそんな日が。 今日も私は引きこもる。あるいは死が二人を分かつまで、ずっと……ずっと。 この地が焼き尽くされても、一緒に居よ……ね? これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/poke_ss/pages/1901.html
9ページ目 女「一応巡洋艦を頼んで、資材も少し多めに手配したけど……」 女「後は艤装が出来るのを待って、その後また本土からその適合者が来るのを待つだけね」 漣「でも一時間以上かかるって言ってましたから、期待できますよ、ご主人様」 女「そうね。きっと軽巡だわ」 誰が出来た?(那珂ちゃん以外) 16 Re 【艦これ】漣「提督が基地に着任しました」( No.16 ) 日時: 2014/08/10 18 25 名前: ああ 北上様 次へ トップへ
https://w.atwiki.jp/imaska/pages/322.html
■ニューギニア近海海戦(天海提督の決断)背景 交戦戦力(日本軍の沈没艦は駆逐艦を含めた戦闘艦艇全てを、それ以外の日本軍艦艇は巡洋艦以上を表示) 損害 戦闘経過 艦隊戦 交戦戦力(日本軍の沈没艦は駆逐艦を含めた戦闘艦艇全てを、それ以外の日本軍艦艇は巡洋艦以上を表示) 損害 戦闘経過 エピソード 参考文献 ■ニューギニア近海海戦(天海提督の決断) 背景 1月27日、「スラバヤ沖に敵艦隊襲来」との報を受けた帝國海軍大本営は第9水雷艦隊と第1機動艦隊をスラバヤ沖に派遣する事を決定。第9水雷艦隊はブルネイから、第1機動艦隊はトラックから敵艦隊を挟撃する形で行動を開始した。 しかし28日早朝、敵艦隊はスラバヤへの上陸支援をせずにパリックパパン沖に転進。第9水雷艦隊は転進した敵艦隊の追撃に入った。 同日午前、マカッサル基地より発進した偵察機がパリックパパン基地沖合で敵艦隊を発見。それが駆逐艦19、輸送船26と言う弱小艦隊であった事、艦船数が第1次トラック沖海戦の米海軍残存艦隊と全く同数であった事から第1機動艦隊司令部はこれを囮と判断。 時を同じくして、第1機動艦隊偵察機がビアク島沖で戦艦4、巡洋艦6を基幹とする大規模な艦隊を発見。直ちに第1機動艦隊は航空隊を発艦させた。 交戦戦力(日本軍の沈没艦は駆逐艦を含めた戦闘艦艇全てを、それ以外の日本軍艦艇は巡洋艦以上を表示) +日本軍 第1機動艦隊(艦隊旗艦軽空母『瑞鳳』 艦隊司令如月千早中将) 航空隊計326機 +米国軍 第3艦隊(艦隊司令H・E・キンメル大将) 戦艦4 巡洋艦6 駆逐艦21 輸送船31 損害 +日本軍 航空機4機 +米国軍 沈没 戦艦4 巡洋艦4 駆逐艦13 輸送船20 損傷(中破以上) 巡洋艦2 戦闘経過 第1機動艦隊第1次攻撃隊326機が1月28日16時米軍第3艦隊を空襲。航空兵力を持たない第3艦隊は持ちうる限りの対空砲火で対抗したが、片端から艦船を沈められると言う結果になってしまった。 この第1次攻撃で戦艦『テネシー』『カリフォルニア』『アイダホ』巡洋艦2隻 駆逐艦4隻 輸送船8隻が沈められ、旗艦戦艦『ミシシッピ』も大破する。 翌29日早朝、第2次攻撃隊323機が再空襲。戦艦『ミシシッピ』巡洋艦2隻 駆逐艦9隻 輸送船12隻が撃沈され、第3艦隊は大破した巡洋艦2隻 駆逐艦8隻のみになってしまった。 艦隊戦 第3艦隊司令部は撤退を具申するが、第3艦隊司令H・E・キンメル大将は退こうとしても午後、もしくは明朝に第3次攻撃隊が襲来して来て1隻残らず水葬になるだけだとしてこれを却下。第1機動艦隊に突撃を開始する。 翌1月29日、第1機動艦隊はビアク沖で第3艦隊と接敵、砲撃戦を開始した。 交戦戦力(日本軍の沈没艦は駆逐艦を含めた戦闘艦艇全てを、それ以外の日本軍艦艇は巡洋艦以上を表示) +日本軍 第1機動艦隊(艦隊旗艦軽空母『瑞鳳』 艦隊司令如月千早中将) 空母6(正規空母『瑞鶴』『翔鶴』『飛龍』『蒼龍』軽空母『瑞鳳』『龍驤』) 戦艦5(戦艦『大和』『金剛』『榛名』『比叡』『霧島』) 巡洋艦8(重巡『熊野』『鈴谷』『最上』『三隈』『那智』『足柄』『妙高』『羽黒』) 駆逐艦5 輸送船24 +米国軍 第3艦隊(艦隊司令H・E・キンメル大将) 巡洋艦2 駆逐艦8 輸送船11 損害 +日本軍 なし +米国軍 沈没 巡洋艦2 駆逐艦8 輸送船7 戦闘経過 突入して来た米軍第3艦隊に、第1機動艦隊如月千早中将は「初弾観測急斉射トナセ」を下令。僅か数分の砲撃で第3艦隊を雷撃戦位置に占位させる事無く撃滅した。 この海戦において第3艦隊司令キンメル大将は座上した駆逐艦で戦死している。 エピソード 間合いを空ければ十分第3次攻撃隊で撃滅が可能であったのにも関わらず、如月中将がそれを行わず艦隊戦を行った背景には、米軍第3艦隊司令キンメル大将が大鑑巨砲主義者であった事からせめてもの手向けとして『大和』金剛級4隻の一斉砲撃に於いて葬る事を選んだとされている。 参考文献 Wikipedia マレー沖海戦 天海提督の決断 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/5596.html
535: 635 :2019/02/14(木) 07 17 11 HOST p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp 銀河連合日本×神崎島 小ネタ10 「柏木よ。」 「はい。」 「これをポール・アレン氏の団体と艦これ運営に。」 「分かりました。」 彼の方が書かれた書を受け取る柏木、『比叡此処にあり』と書かれている 「彼の方から艦これ運営にと…。」 「ちょ!?」 「どうすりゃいいのこれ!?」 柏木、職人妖精により最高級の表装がなされた掛け軸を菊花紋入の桐の箱に入れ艦これ運営に持ち込む 「ハイ出来マシタヨ。」 「フェルさん着付け出来たんだ。こんな可愛い着物ありがと!高かったんじゃない?」 「フェルは鳳翔さんから一通り習っているらしいからなあ。」 「この着物はワタシの手作りだから高くないデスヨ。鳳翔サンや経理学校で裁縫は一通り学びマシタカラ。」 「「マジすか!?」」 柏木本家にて柏木の姪の着付けをするフェルさん 「なんでこんなことをドイツでする?これではドイツ経済が寒くなって人が住めなくなる。不況の冬が来るぞ。」 「首相は既に少し錯乱している!」 「あんな(A・D・M級戦艦)の飾りです。首相にはそれが分からんのですよ!」 戦艦建造決定時の荒れたドイツ議会 「なああいつ家族と一緒に神崎島に亡命したらしいぞ。」 「えっ!?イギリスへの異動じゃなかったの!?」 「神崎島で戦車技術者やってるそうだ。後、ここだけの話だがラインメタルからも少なくない技術者が渡ったらしいぞ」 某ドイツ重機メーカーでの会話 工員A「主砲の生産が追いつかない…。」 工員B「製造コストと政府の提示する金額が釣り合わねえ。」 上司「そんな君達に素晴らしい情報だ。」 工員A&B「「??」」 上司「この主砲の製造と平行してこれをベースにゲルリッヒ砲の開発と生産の指示が出された。生産量はそれぞれ今までの二倍以上だ。」(濁った瞳) 別の上司「あ、後ついでにより大きい砲の製造の指示も出たから」 工員&上司「「「……もういやこんな国!!」」」 大量の主砲の生産に加え更に化物砲の製造を命じられた軍事メーカー かつての戦車大国の栄光はどこへ?中国戦車採用か? ドイツ海軍イタリア製艦砲に代えて韓国製艦砲導入を決定。イタリアは知的財産を侵害していると抗議 軍事ニュースサイトの記事 陸自地対艦ミサイル部隊を再編、大型超音速対艦巡航ミサイルを南西諸島、対馬に配備 とある新聞記事 「劣化ウラン弾は放射線被曝のリスクがあります!韓国軍は導入を取り止めるべきです!」 「そうです!先生は韓国と関係が深いのですから韓国に働きかけるべきです!」 「心配には及びません。韓国の劣化ウラン弾はきれいな劣化ウラン弾だから被爆リクスはありませんから働きかける必要はありません!」 「「そんなわけ、ねーだろ!」」 関係の深い政治家に劣化ウラン弾導入をする韓国への働きかけを求める被爆者団体 536: 635 :2019/02/14(木) 07 18 08 HOST p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp 「対艦巡航滑空魚雷とは一体?(汗)」 「駆逐艦用46cm無反動砲だと(汗)」 「なぜヴァズラーにフロートを?(汗)」 「フフフ、恐れ入りマシタカ!」 ヤル研と別方面でぶっ飛んできた鎮守府工廠イゼイラ設計局 「ねんがんの戦術機をてにいれたぞ!」 「殺してでもうばいとる。」 「な、なにをするきさまらー!」 ヤル研へ搬入されたXMMU-1 「このXHSSM-1にスクラムジェット乗せてみようぜ。」 「いやここはハイブリッドロケットをだな。」 宇宙開発クラスタは新しい実験道具を手に入れたようです。 「ふふふ、新型ロケットが出来たで!」 「こ、紅蘭、大丈夫なのかい?」 「大神はんも心配性やな。ほなスイッチオン!」 とある中華系技術者の会話、辞世の言葉は「発明は爆発」だったという(死んでない) 「沖縄戦で住民を死に追いやった旧日本軍の軍人がいる神崎島の住民が沖縄に来るのは相応しくない。」 沖縄県知事の発言 『軍国主義者は帰れ!!』 『日本に戦争の亡霊はいらない!!』 「神崎島に来なかった友人の慰霊すらさせてくれないのか…。」 対馬丸記念館と小桜の塔を訪れた疎開のため対馬丸に乗船していた妖精 「きゃあ!」 「戦争犯罪者はとっとと帰れ!友人をここで失ったこのおばあさんにも失礼だろ!!」 「貴方達には人の心というものがないのですか!?」 「おばあさんそいつ戦争犯罪者だぞ?」 「この人は私と同じひめゆり学徒隊で亡くなった方ですよ!!献花をするのすら許さないのですか!?」 ひめゆりの塔にて市民団体に激昂する元ひめゆり学徒隊の婦人 「神崎提督より沖縄県での神崎島住民への嫌がらせや暴行について抗議があり政府として厳正は対処をすると返答しました。」 「〇〇新聞ですが神崎島の妖精達は元軍人であり、集団自決を強いたり、住民を殺害したのだから沖縄の当然の権利でないでしょうか?」 「暴行は犯罪行為であり、貴方はそれを肯定するのですか?」 「いえ、そういう訳でなく沖縄県民の総意としての反応でしょうがないことだと。」 「そもそも今回沖縄本島を訪れたのは対馬丸の乗員や同船で疎開中だった学童、ひめゆり学徒隊の女学生、沖縄戦の犠牲となった一般人の妖精しかいないとのことです。」 官房長官の記者会見にて 昨今の神崎島住民への犯罪行為等を鑑みて神崎島歌劇団沖縄公演の中止を決定致しました。 歌劇団HPの告知 537: 635 :2019/02/14(木) 07 19 14 HOST p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp 「我々共産連盟はヨシフ・スターリン氏の擁立を決定しました!!」 日本の野党の会見 「何故私が彼らの仲間になる必要があるのかね?そもそも共産主義は祖国を守るための武力を否定していない。彼らの共産主義は私の知る共産主義ではないな。」 筆髭おじさんの会見 「総理!日本が戦略級兵器である戦艦を保有することは憲法違反です!」 「そもそもNBC兵器の様な大量破壊兵器でもなく、射程も中距離、大陸間弾道ミサイルより低い戦艦の何処が戦略級兵器なのでしょう?」 国会での野党質問に答える二藤部総理 「金剛型戦艦の主砲でもユーラシア大陸を全射程に収め、人工衛星を撃墜可能です。また四国を消し飛ばせる様な兵器も搭載している筈です!」 「あの、その情報はどこから?」 「これらのゲームからです!!」 二藤部総理に○鉄の咆哮、エースコンバッ○、メタルギアソリッ○を見せてドヤ顔する野党議員 名前:名無しの提督 投稿日: 速報、野党戦艦を戦略兵器と主張ソースはゲーム 名前:名無しの提督 投稿日: エエエ… 名前:名無しの提督 投稿日: とうとう狂ったか? 名前:名無しの提督 投稿日: 金剛型が磁気火薬複合加速式対地対空砲を装備して波動砲も搭載か胸が熱いな 名前:名無しの提督 投稿日: 宇宙戦艦ヤマトリアル実装クルー? 名前:名無しの提督 投稿日: テレビも解説者が波動砲搭載は戦略兵器の制限違反にあたるとか言ってるww 名前:名無しの提督 投稿日: NHKニュースで真面目に波動砲とストーンヘンジとメタルギアについて解説されてて草生えるww 名前:名無しの提督 投稿日: 世界はどこへ行くんじゃろか? 名前:名無しの提督 投稿日: なお政治資金でゲームを買って国会の会議室でやってた模様 名前:名無しの提督 投稿日: 工エエェェ(´д`)ェェエエ工エエ ネットの掲示板の反応 「マサトサーン!トラクター動かすから退いて下サーイ!」 「リーダー!このミミズでけえ!」 「本当やね!土が良い証拠や!」 大和が管理する大和農園で農作業中の面々フェルさんのお目当てはお礼のカレー用野菜 「柏木よアイドルとはあの様な者を指すのか?」 「流石に彼らぐらいなものではないですかね(汗)」 農作業着を着た彼の方と柏木 538: 635 :2019/02/14(木) 07 20 56 HOST p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp 以上です。 転載がご自由にどうぞ。 フェルさんと柏木の汎用性が高すぎる問題。
https://w.atwiki.jp/kuizu/pages/3296.html
ていとく-なつやす- 自作 最初の販売は2013年8月11日のコミックマーケット84・2日目。 以後何度か再販を繰り返すもののいずれも即完売となっている、 大人気ブラウザゲーム『艦隊これくしょん』の企画・開発主要メンバーが運営するサークル 「C2機関」が発刊したスタッフ本は何? (2013年9月11日 華丸散髪 ) タグ:ゲーム Quizwiki 索引 さ~と