約 25,198 件
https://w.atwiki.jp/trivia-mike/pages/4059.html
天野明作、ジャンプ+で連載。 週刊少年ジャンプにて読み切り掲載だ。 用語集 探偵養成学校BLUE 鴨乃橋ロンが通っていた学校よ。 怠惰の床 ロンの自宅にある床。クッションが敷き詰めてあるんだ。 この床はトトと出会うまで推理できなかったロン自身の5年間失望と退屈の日々を知っている。 キャラクター 禁断探偵 鴨乃橋ロン 犯罪者の気持ちを汲み取り事件解決する鴨乃橋ロン 探偵さ。しかし探偵は訳あって廃業中であるんだ。だから元天才探偵さ。 探偵養成学校では、永遠に解けないと言われた殺人事件を解決し世界名だたる探偵を輩出してきた我が校始まって以来の快挙と言われ、 世に出たら世界中の未解決事件がなくなるんじゃないかと期待されていたとされているんだ。 犯人がわかり事件解決するっと犯人に暗示をかけ自殺を促すぞ。 そんなこともあってか探偵は半分封印しているんだ。 警視庁 捜査1課刑事 一式都々丸 見かけがツナみたいな通称トト。ポケットに5年くらい昔なロンの写真を入れている。 今のロンと比べると分子配列変わったと錯覚! 幽霊が見える特技があり、これに目をつけたロンはトトを活用して事件解決するう! なのに警官諸君の間では捜査一課のお荷物と噂されているんだ。 教官シュピナッツ・ファイア 探偵養成学校BLUE追跡学教官。 捜査1課 雨宮刑事 トトの上司にあたるらしい。 天才?脳神経外科医 卵先もふ 2021年4月末発売予定の2巻で登場。 週刊少年ジャンプ掲載時のキャラクター 大学生 木下立男(21) 週刊少年ジャンプ掲載時の殺人事件被害者。 鑑識によると死亡推定時刻は昨晩深夜3時 死因は窒息死! 遺体は砂場に埋められていて、遺体の側にはオレは山田テツに殺されたとダイニングメッセージが書かれていたぞ。 大学生 佐藤一 丸刈り頭な木下の友人。 大学生 山田テツ 木下を殺したとされる容疑者。 実は本当に木下殺しの犯人でアリバイ工作をしていた。 死亡推定時刻には1歩も家から出ていないため、あたかもアリバイがあるかのように見せかけたんだ。 埋める時間と殺す時間をズラせば殺害は可能だってこと。 映画鑑賞が始まる12時より早く木下を薬で眠らせ砂場に穴を掘り埋めた。 このとき木下の頭周りに空気入るスペースを確保し、さらに酸素を供給するためホースを地面から通した。 そして中央に穴のあいたブルーシートを被せ四隅を石の重りまで留めた。 この穴はとても重要で山田は穴のあいたブルーシートの上に砂を乗せた。 するとアリ地獄のように砂が中心に向かって少しづつ落ちていき、その砂は木下の頭周りを徐々に埋めていく。 そして木下は息ができなくなる。つまりあの墓は時限式の窒息装置だ。 しかしここで疑問が浮上、犯人がわざわざ自分が殺しただなんて書き残すわけないこと。 実はこれは木下が裏をかいたこと、完璧なアリバイがあったからこそ証言がうやむやになるまでに一刻も早く自分を調べさせ疑いを晴らしたかったのだ。 だかはあえて目立つように自分の名を書いたのだ。 穴のあいたブルーシートは木下を殺してからヒモで結んであったブルーシートを公園裏の自宅窓から回収してありどこかにしまってある。 ロン&トトに見破られた山田はやけくそにカミングアウトしはじめた。 殺害動機は自身の中学ん時から一筋だった女友達ミカに目前でイチャつきやがったから。 やけくそに動機を話し終えると犯人を殺す病のスイッチが入ったロンに洗脳され無意識に佐藤が持つ袋の瓶を取り出して割り自分を刺そうとした。 しかしトトのタックルで阻止されロンも山田も正気に戻る。
https://w.atwiki.jp/oiko2009/pages/321.html
日本推理作家協会編「Marvelous Mystery」(2010) MARVELOUS MYSTERY 至高のミステリー、ここにあり ミステリー傑作選 (講談社文庫) 評価 ★★★☆ ひとこと 「スペインの靴」以外はすべてシリーズものだとのこと。 単独で“ミステリー”として面白かったのは「スペインの靴」だった。乱歩的。 それ以外ではやはり横山秀夫が一歩抜きん出ているか。 分類 ミステリー(日本人作家) 短編 収録作品 横山秀夫「罪つくり」 桜庭一樹「脂肪遊戯」 門井慶喜「早朝ねはん」 三上洸「スペインの靴」 大崎梢「標野にて 君が袖振る」 薬丸岳「オムライス」 北森鴻「ラストマティーニ」 ネタバラシ作品(この本より先に読め!作品) ネタバラサレ作品(この本より先に読むな!作品) 気になる表現 人は誰だって、テメエでテメエの生きざまを決めてんだ 自分の一言で、他人様の人生を変えられるなんて自惚れは持つんじゃねぇ(p69) メモ What do it. 謎解きもさることながら、刑事の心の葛藤・人間ドラマも見どころ。★★★ What do it. どんどん太る女の子の話。 古い仏画をめぐる推理。どこかで聞いたことあるような展開。 極上の足を見つけた靴職人の話。乱歩的な雰囲気 ★★★ 老婦人が突如「あさきゆめみし」を購入して行方不明に。若干、少女小説的な展開。 why do it. 若干消化不良気味。 why do it. 老バーテンダーが店を閉める話。ミステリ色は少なめ。連作で読まないと物足りないかも。北森鴻「香菜里屋を知っていますか」にも収録。 参考 主人公(探偵役) 警察官 敷島一雄(倉石シリーズ) 中学生 矢井田賢一(田中紗沙羅シリーズ) 神永美有(美術コンサルタントシリーズ) 靴職人 奥野慎一 バイト書店員 多絵(成風堂書店事件メモシリーズ) 刑事 夏目信人(夏目シリーズ) マスター 工藤(香菜里屋シリーズ)
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/159.html
2011年9月3日 2011年10月15日:増補(詳細はページ最下部の「台湾ミステリ史 中編 更新履歴」参照) 『台湾ミステリ史 中編』(第四章)では、1977年から1990年代半ばまでの台湾ミステリ界の動向を紹介している。 島崎博氏は1977年を「実質的な台湾の推理小説元年」としており、1977年から1984年までを準備期、1984年から2000年までを第一期、2001年以降を第二期としている。 ※「台湾ミステリ史 前編」(19世紀末~1970年代)と「台湾ミステリ史 後編」(20世紀末~21世紀初頭)は未完成です。 目次 台湾の言語と文字に関するごく簡単な注釈 台湾ミステリ前史 (第一章~第三章 要約) 第四章 1970年代末~1990年代半ば: 林仏児(りん ふつじ)と『推理雑誌』の時代第一節 1977年: 松本清張『ゼロの焦点』の翻訳刊行 第二節 1984年: 台湾初の長編推理小説 林仏児(りん ふつじ)『島嶼(とうしょ)謀殺案』と『推理雑誌』創刊 第三節 1987年: 台湾における日本ミステリの第1次ブーム 第四節 1988年~1992年: 林仏児推理小説賞 参考文献 台湾ミステリ史 中編 更新履歴 台湾の言語と文字に関するごく簡単な注釈 台湾で刊行されている小説で使われているのは「台湾語」ではなく、日本で言うところの「中国語」である。たとえば、「台湾では日本の推理小説の台湾語版がたくさん刊行されている」といった言い方は誤りである。 中国で画数が省略された漢字が使われていることは、テレビのクイズ番組などでもたまに取り上げられるのでそれなりに知られていると思う(たとえば中国では、「学習」を「学习」と書く)。一方、台湾や香港ではそのような省略した漢字は使われておらず、日本で言うところの「旧字体」が今でも使われている(たとえば「学習」を「學習」と書く)。中国で使われている漢字は簡体字(かんたいじ)、台湾や香港で使われている漢字は繁体字(はんたいじ)と呼ばれる。 台湾ミステリ前史 (第一章~第三章 要約) 台湾の推理小説の歴史は、1898年に台湾の新聞『台湾新報』に連載された『艋舺(もうこう)謀殺事件』(日本語作品)(艋舺(もうこう)は台湾の地名、現在の萬華(ばんか)【注1】)及び、1909年に『漢文台湾日日新報』に連載された「恨海(こんかい)」(中国語作品)に始まり、必ずしもその数は多くなかったが、20世紀前半は日本語および中国語で創作探偵小説が発表されていた。この時期に台湾で探偵小説を発表した人物は、まず日本人から挙げると、江戸川乱歩がデビューしたのと同じ1923年に創作探偵小説を発表し始め、3年間で中短編計15編を発表した座光東平や、鉄道関連の職員だった福田昌夫、第二次世界大戦末期に長編探偵小説『船中の殺人』や《龍山寺の曹老人》シリーズを林熊生(りん ゆうせい)という台湾人風の名前で発表した台北帝国大学医学部教授の金関丈夫(かなせき たけお、1897-1983)らがいる。彼らは日本語で作品を執筆・発表しているので、これらは台湾ミステリ史の前史であるのと同時に、日本のミステリ史の一部分でもある。一方、中国語で探偵小説を執筆した台湾人作家としては、武侠小説を執筆しながら数編の探偵小説を発表した李逸涛(り いっとう、1876-1921)、モーリス・ルブランのルパン物『虎の牙』の翻案も行った魏清徳(ぎ せいとく、1871-1953)、小学生の椿孝一が算数の能力で警察を助けるという児童向け探偵小説を書いた謝雪漁(しゃ せつぎょ、1886-1964)らがいる。また、台湾人の医学博士・葉歩月(よう ほげつ、1907-1968)は、終戦後の1946年に2冊の日本語単行本、『探偵小説 白昼の殺人』と『科学小説 長生不老』を刊行している。 ほかにも、台湾にホームズがやって来て事件を解決するという作品(餘生「探偵小説 智闘」『台南新報』1923年、中国語)や、臍皮乱舞・大舌宇奈児・無理下大損・正気不女給というどこかで聞いたような名前の執筆陣によるリレー小説「連作怪奇探偵小説 木乃伊の口紅」(『台湾鉄道』1934年、日本語)【注2】など、興味深い作品が書かれている。 終戦後、1946年10月25日に新聞・雑誌での日本語の使用が禁止され、葉歩月のような日本語で執筆していた台湾人作家は発表の場を失ったが、上海や香港からは探偵雑誌が輸入され、主にアメリカのパルプマガジンから作品を翻訳していた『藍皮書(らんひしょ)』(1946年7月上海で創刊、1949年5月に休刊、1950年に香港で復刊)【注3】などが人気を博した。1949年、大陸で中華人民共和国が成立し国民党政府が台湾に移ってくると、海外からの出版物の輸入が難しくなり、台湾独自の探偵雑誌がいくつか創刊された。多くは長続きしなかったが、1951年に創刊され10年以上【注4】続いた『偵探雑誌(ていたんざっし)』【注5】のような雑誌もあった。この雑誌の作品は9割がパルプマガジンからの翻訳だったが、作品に作者名は付されず、訳もめちゃくちゃで低俗なものだったという。この時期は、散発的に台湾人作家によりスパイ小説などの推理小説の一種が発表されることはあったが、専門的に推理小説を執筆する作家は生まれなかった。 注1:萬華は2010年に邦訳が刊行された台湾の推理小説、寵物先生(ミスターペッツ)『虚擬街頭漂流記』の舞台でもある。 注2:それぞれ、江戸川乱歩、大下宇陀児、森下雨村、正木不如丘のもじりだろう。 注3:江戸川乱歩は1956年から1958年ごろにかけて、香港版『藍皮書』を定期購読している。 注4:「台湾における日本ミステリー出版事情」では「10年以上」となっているが、『2009 本格ミステリ・ベスト10』に掲載された同じ講演のまとめでは「20年以上」となっている。 注5:単に『偵探』と書かれる場合もある。また日本語の文献では、『探偵雑誌』とされている場合もある。 第四章 1970年代末~1990年代半ば: 林仏児(りん ふつじ)と『推理雑誌』の時代 【同時期の中国の推理小説については「中国ミステリ史 第四章(1970年代末~1990年代)」を参照のこと】 第一節 1977年: 松本清張『ゼロの焦点』の翻訳刊行 戦後、台湾では外国文学の翻訳が制限されていたが【注6】、1975年に蒋介石(Wikipedia)が死去すると、規制は少しずつ緩んでいった。そして1977年4月、林白出版社から松本清張『ゼロの焦点』が翻訳刊行される(台湾国家図書館のデータを見ると、同出版社からは1969年にも『ゼロの焦点』が翻訳出版されている。訳者は同じ)。林白出版社はその後、この『ゼロの焦点』を第1巻とする《松本清張選集》の刊行を1979年に開始。1980年(1979年?)には叢書「推理小説系列(シリーズ)」(推理小說系列)(~1994年、全115冊)を創刊し、清張以外の日本の推理小説も刊行していった。台湾で「推理小説(トゥイリー シアオスオ)」という外来語が定着し始めたのはこの時期である。1986年(1987年?)には別の会社も日本のミステリの翻訳出版に参入するが、それまでは日本ミステリの翻訳出版は林白出版の独占状態だった。林白出版社が1977年から1986年までに刊行した日本ミステリの翻訳本は約70冊である。島崎博氏は、林白出版社が『ゼロの焦点』を翻訳刊行した1977年を、「実質的な台湾の推理小説元年」だとしている(島崎博インタビュー4、p.1110)。 日本語では「探偵小説」という語は、「古き良き時代」のロマンにあふれた作品群をイメージさせるが、台湾では「偵探(ていたん)小説」という語には、パルプマガジン翻訳時代の低俗なイメージが付きまとうという。そのため、日本の雑誌『幻影城』で「探偵小説」という語を積極的に使った島崎博氏も、台湾では「偵探小説」という言葉は使っていない。 欧米の推理小説では、1978年に星光出版社がイアン・フレミングの007シリーズの作品を刊行。続いて、1981年に水牛出版社がフランクリン・ディクスン(Franklin W. Dixon)の少年向け推理小説・ハーディ兄弟シリーズを刊行。1982年(1983年?)には遠景出版社がクリスティー全集を刊行し、続いて1986年にはE・S・ガードナーのペリー・メイスンシリーズの刊行を始めた。クリスティー全集はよく売れたという。 注6:一方で児童向けの推理小説は出版されていた。1950年代には台湾の東方出版社(社長:林呈禄)から児童向けのホームズ全集、ルパン全集が刊行され、海賊版が数種類出るほどの人気を博していたという。また、同社は1960年代初頭にはクイーンやカー、アイリッシュ、ミルンらの推理小説も児童向けに刊行している。 日本の推理小説の受容に関するもう一つの証言 【2011年10月15日加筆】 以上で提示した台湾の推理小説元年に関する説明は島崎博氏の証言に基づくものである。1977年に台湾で刊行された松本清張『ゼロの焦点』が日本の推理小説の最初の翻訳単行本で、それ以降台湾では「推理小説」という語が次第に使われるようになっていったというもので、島崎氏は21世紀になってから各所で同じように説明している。ところが、ほかならぬ島崎氏自身がこれとは大きく異なる証言をしている文献がある。日本の雑誌『推理界』の1968年7月号に掲載された島崎氏の「台湾の推理小説」という記事である。この記事で島崎氏は以下のように述べている。 島崎博「台湾の推理小説」『推理界』1968年7月号 映画007が話題になってから、007が翻訳され、推理小説の出版はさかんになった。いままでホームズとルパンの二全集しかなかった翻訳ものも、007の外、クリスティ選集、スピレンの全作品など出版された。 日本作家の長編も、新聞の副刊(文芸欄)によく翻訳連載されるようになった。そのうち単行本になったのは、 白髪鬼(江戸川乱歩著、洪明訳) 地獄の傀儡(江戸川乱歩著、永思訳) 魔鬼の標誌(江戸川乱歩著、方圓客訳) 蜘蛛人(江戸川乱歩著、余蔭訳) 霧影魅影(角田喜久雄著、金美訳) 死神的地図(島田一男著、何年訳) 神秘之門(高木彬光著、摩斯訳) 魔弾的射手(高木彬光著、何年訳) 猫影踪謎(仁木悦子訳、許振江訳) 黒色的喜馬拉雅山(陳舜臣著、刘慕沙訳) などがあるが、訳名を見て、原作名を推理するのも楽しみである。 これを見ると、日本のミステリの単行本は松本清張『ゼロの焦点』以前にも刊行されていたことが分かる。クリスティや007シリーズなどの欧米ミステリの翻訳出版も、後の島崎氏の説明よりもずっと早くに行われていたようである。 またこの記事で島崎氏は、台湾では「偵探小説」という言い方をすると説明した後に、「「推理小説」が使われるようになったのは、最近のことで、これは日本の影響である」と述べているので、『ゼロの焦点』が翻訳される10年近く前の時点で、すでに台湾で「推理小説(トゥイリー シアオスオ)」という語が使われていたことが分かる。 この記事によれば1968年当時、台湾には『偵探』(『偵探雑誌』から改題)、『偵探之王』(『偵探小説専号』の後進)、『偵探世界』などの探偵雑誌があり、日本の作品も翻訳されていた。また、文芸誌『文壇』(1952年創刊)も手当たり次第に日本の新刊雑誌から推理小説を翻訳していたという。台湾における日本の推理小説の受容については、もう少し詳しく調べてみる必要がありそうだ。 同時期の他のアジア地域の動向 対岸の中華人民共和国では、1970年代末に文化大革命が終結すると翻訳ミステリブームが起こり、欧米の黄金時代の推理小説から日本の社会派推理小説、さらにはソ連や東欧諸国の推理小説まで各地の作品が翻訳刊行された。特に松本清張や森村誠一などの日本の社会派作品は人気を博した。 韓国では1977年、欧米ミステリの叢書《東西推理文庫》全126巻(日本語からの重訳)と、《河西推理選書》全36巻(江戸川乱歩『孤島の鬼』『陰獣』、横溝正史『本陣殺人事件』、松本清張『点と線』『ゼロの焦点』『砂の器』、森村誠一『高層の死角』『人間の証明』『野性の証明』などのほか、韓国オリジナル作品も含む→ラインナップ)の刊行が始まり、韓国ミステリ中興の祖である金聖鍾(キム・ソンジョン)の活躍も相まって、推理小説ブームが訪れた。この時期の東アジアでは、日本のみならず台湾・中国・韓国と各地で日本の社会派推理小説が読まれていたことになる。 日本では1975年から1979年にかけて、島崎博氏が編集長を務める探偵小説専門誌『幻影城』が刊行されていた。 第二節 1984年: 台湾初の長編推理小説 林仏児(りん ふつじ)『島嶼(とうしょ)謀殺案』と『推理雑誌』創刊 『ゼロの焦点』を翻訳刊行した林白出版社の創設者は、1960年代に詩人・純文学作家としてデビューし、いくつかの雑誌の編集者なども務めた林仏児(りん ふつじ、1941- )である。彼は1984年4月、同社から自身が執筆した推理小説『島嶼(とうしょ)謀殺案』を刊行する。この作品は、台湾初の長編推理小説だと言われている(異論もある、後述)。そして同年11月、林仏児は林白出版社の子会社として推理雑誌月刊社を立ち上げ、台湾ミステリの草創期に大きな役割を果たすことになる月刊の推理小説専門誌『推理雑誌』を創刊する(誌名は単に『推理』と書かれる場合もある)。 『推理雑誌』は、6割が日本ミステリ、2割が欧米ミステリ、残りが台湾オリジナルのミステリと評論というものだった。林仏児に『推理雑誌』を創刊するよう勧めたのは、1979年の『幻影城』休刊後、台湾に戻っていた島崎博氏である【注7】。 島崎博インタビュー1、p.330 『推理雑誌』は今年(二〇〇四年のこと)の十一月でちょうど創刊二十周年になるのですが。その社長というのが、呑み友達だったので、ぼくともう一人の友人が彼に勧めたんですよ。推理雑誌を出しなさいと。それ以前の台湾のミステリーは、『推理雑誌』の親会社の林白出版社からで年平均四冊しか出てなかったんです。この頃の事情は『毎日新聞』【注8】の方に書きました。 『推理雑誌』の創刊に当たって、ぼくがけしかけたんです。そうしたら、雑誌が創刊したときに勝手に顧問にされてしまいました。 なお、この時『推理雑誌』の顧問には島崎氏のほかに、香港の推理作家・SF作家の倪匡(げい きょう)【注9】や、のちに島田荘司推理小説賞の最終選考委員を務める文芸評論家の景翔らも名を連ねている。 『推理雑誌』に掲載された作品は基本的に無断翻訳だったが、林仏児が日本の推理作家側と連絡をとった場合もあるようである。山村正夫『推理文壇戦後史 4』【注9】(1989年)によると、『推理雑誌』第21号(1986年7月号)には仁木悦子が林仏児にあてた手紙(1986年5月19日付)の原文とその中国語訳が掲載されているという。仁木悦子の手紙は『推理文壇戦後史 4』にも転載されているが、その文面から判断するに、林仏児は1986年の5月頃またはその少し前に、世田谷の仁木悦子邸を訪れているらしい。仁木悦子は、「台湾で多くの読者の方に私の作品を読んでいただけるということは、こんなにうれしいことはございません」などと記している。 注7:島崎博氏は1979年12月5日、一時帰国のつもりで台湾に帰郷した。しかし、帰国の5日後に台湾で大規模な民主化要求デモ――美麗島(びれいとう)事件(Wikipedia)が起きると、島崎氏は事件とは無関係だったにも関わらず当局に目を付けられ、出国できなくなってしまった。この後、日本のミステリ界では島崎氏は「消息不明」とされる。1987年~1988年ごろに一度その消息が明らかになり連絡もついたが、しばらくするとまた連絡がとれなくなり、帰国後の島崎氏についての詳細が明らかになるには1979年から数えて実に約25年の歳月を待つ必要があった。 注8:島崎博「台湾 冬の時代経て、今、第2次ブーム 日本ミステリー小説事情」(『毎日新聞』2004年12月28日夕刊 6面) 注9:邦訳に『貓(ねこ) -NINE LIVES-』(徳間文庫、1991年、「衛斯理(ウェイスリー)」名義)がある。 注10:山村正夫『推理文壇戦後史 4』には、『推理雑誌』第23号(1986年9月号)に掲載された島崎博氏のインタビュー記事が抄訳されている。そこには島崎氏の言葉として「五十を過ぎた私には、二つの目標しかありません。一つは日本の推理小説を書くこと、もう一つは、台湾の現代文学史を書くこと」と書かれている。これを受けて山村正夫氏は、「氏の自説にもとづく日本の推理小説の創作を、ぜひ一日も早く読みたいものである」と書いているが、「日本の推理小説を書くこと」というのは『推理雑誌』の誤植であり、実際は「日本の推理小説史を書くこと」だったことが島崎博インタビュー3で明らかになっている。 林仏児の台湾ミステリ界への貢献 林仏児(林佛兒/りん ふつじ)は1941年12月10日生まれ。1960年代に詩人・純文学作家としてデビューし、雑誌の編集者を務めながら作品を発表した。1968年に林白出版社を創設(「林白」は彼の筆名の一つ)。1970年代から1980年代初めにかけては、同社から『北回歸線』(1980年)(2009年版)などの中間小説(最近はあまり聞かないが、純文学と大衆小説の中間的な作品を指す日本の用語)を刊行した。 林仏児が創設した林白出版社は、1977年に松本清張『ゼロの焦点』を刊行して以来、年に数冊のペースで日本ミステリの出版を続ける。1984年4月には、林仏児自身も推理小説『島嶼(とうしょ)謀殺案』を同社より刊行した。同年11月、島崎博らの勧めで『推理雑誌』を創刊、編集長となる。1985年から1986年にかけて同誌に社会派推理小説『美人(びじん)、珠簾(しゅれん)を捲(ま)き』(美人捲珠簾)を連載(単行本刊行は1987年5月)。先に『島嶼謀殺案』を台湾初の長編推理小説だと紹介したが、この『島嶼謀殺案』は中編程度の分量だとして、『美人、珠簾を捲き』の方を台湾初の長編推理小説だとする説もある(『島嶼謀殺案』を台湾初の長編推理小説としているのは島崎博氏、『美人、珠簾を捲き』を台湾初の長編推理小説としているのは台湾推理作家協会所属の評論家・杜鵑窩人(とけんわじん)氏)。1987年には『推理雑誌』誌上で自らの名を冠した林仏児推理文学賞を創設。1980年代末にはカナダに移住し、『推理雑誌』の編集の一線から退く(完全に関わりがなくなったわけではないようである)。1991年にはカナダ華文創作協会(加拿大華文寫作協會)を設立し初代会長になった。推理雑誌に発表した推理小説関連のエッセイ等は、『心緩緩航行』に収録されている。 2007年には、台湾ミステリの発展過程や、そこで林仏児が果たした役割などを論じた研究書『推理小說研究-兼論林佛兒推理小說』が刊行された。 (林仏児の経歴については、台北市文化局の林仏児紹介ページなどを参照した) 林仏児は日本ミステリの出版や『推理雑誌』の創刊、林仏児推理文学賞の開催などで台湾ミステリ界に大きな貢献をしたが、推理小説の創作は少なく、前述の長編2編以外には、短編「東澳之鷹」と「人猿之死」があるだけである。『島嶼謀殺案』と『美人、珠簾を捲き』は2009年末(2010年年初?)に復刊されており、前者には「東澳之鷹」と「人猿之死」も収録されている(『島嶼謀殺案』2009年版、『美人、珠簾を捲き』2009年版)。 島崎博氏は林仏児の推理小説4作品の中で、最後に書かれた『美人、珠簾を捲き』を最も高く評価している。この作品は、2001年には中国で第2回北京偵探推理文芸協会賞の長編賞を受賞している(「中国ミステリ史 第六章 第一節」参照)。 林仏児『美人、珠簾を捲き』(1985-1986)あらすじ台湾人の葉青森(よう せいしん、36歳)は、数年前に日本人の阿部一郎と組んで、台湾の特産品や衣服を輸出する事業を立ち上げた。2か月に1回は日本に出張するが、出張の際には必ず韓国を経由している。韓国では2年前に、レストランチェーンの株主の朴仁淑(パク・インスク)と知り合った。葉の母親は既に死去しており、葉は現在は、台湾の高級住宅街の大邸宅に妻と子供2人と、父親の葉丹青(よう たんせい)とともに暮らしている。葉が日本に出張している時、事件は起きる。葉の父の葉丹青が、台湾の自宅寝室で殺害されたのだ。そして、日本に出張していた葉も突如行方知れずになり、数日後に韓国の仁川(インチョン)港で死体となって発見される。なぜ父と子は、台湾と韓国で同時に殺害されることになったのか。そしてその後、葉丹青の行きつけの喫茶店の従業員女性が殺害される。葉親子の殺害事件との関係は……? 第三節 1987年: 台湾における日本ミステリの第1次ブーム 1977年の松本清張『ゼロの焦点』の出版以来、台湾における日本ミステリの出版は林白出版社の独占状態だったが、1986年(1987年?)には皇冠出版が日本ミステリの出版に参入する。そして1987年3月には、希代書版から島崎博氏が作品選定および序文・解説の執筆を担当した『日本十大推理名著全集』全10巻が一挙に刊行される。 日本十大推理名著全集江戸川乱歩『黒蜥蜴』 横溝正史『獄門島』 高木彬光『破戒裁判』 土屋隆夫『危険な童話』 松本清張『時間の習俗』 仁木悦子『林の中の家』 佐野洋『透明受胎』 笹沢佐保『空白の起点』 森村誠一『高層の死角』 夏樹静子『遠い約束』 島崎氏はこの全集の企画を引き受けるにあたって、「必ず10冊出す、解説を付ける、訳者紹介を付ける」という3つの条件を出版社に飲ませたという。この当時、台湾では翻訳小説に解説を付ける習慣はなかった。また、訳者紹介を付けたのは、訳者にも責任感をもってもらおうという考えからだった(1950年代~60年代のパルプマガジンの翻訳の頃は、訳者の名前は示されないのが普通だった)。 その後希代書版からは、同年から翌年にかけて、『日本名探推理系列』全10巻と『日本推理名著大展』全8巻が刊行される(ラインナップは、Wikipediaの島崎博氏の項目(リンク)で見られる)。この2つの叢書も島崎氏が手掛けたものである。 これらの日本ミステリの叢書の成功により、他の出版社も日本ミステリの出版に参入し、台湾における日本ミステリの第1次ブームが訪れる。この第1次ブームでは、2、3年間で約200冊の日本ミステリが翻訳刊行された。この時の人気作家のトップ3は、松本清張、西村京太郎、赤川次郎であった。主な叢書に、前述の林白出版社「推理小説系列(シリーズ)」のほか、皇冠出版社の「日本金榜名著」シリーズ(1987年~1992年、全80巻)などがある(こちらのサイトが全80巻のリストを掲載している)。 しかし、このころの台湾の単行本は200ページほどが一般的で、それ以上になると訳者や編集者が勝手に一部をカットしてしまっていた(島崎氏は、カットされないように自分の企画では短い作品を選んだという)。そのため、謎解き部分はあるのに事件の部分が省略されていたり、あるいは事件は描かれているのに謎解き部分がカットされていたりと、ひどい訳書が多々あった。また、翻訳自体にも問題があり、「江戸川乱歩」が「江戸川を散歩する」と訳されるようなこともあったという(島崎博インタビュー4、p.1110)。そのため次第に読者が離れていき、2~3年でブームは終わった。日本ミステリのブームが去ると、今まであまり人気のなかった欧米ミステリが次第に読者に受け入れられていく。1990年代は欧米ミステリは好調だったが、日本ミステリは年10冊ほど刊行の低迷期になった。 第四節 1988年~1992年: 林仏児推理小説賞 1987年には『推理雑誌』創刊3周年を記念して林仏児推理小説賞(林佛兒推理小說創作獎)が創設された。短編推理小説を募集するもので、年1回のペースで全4回行われた。主な受賞者に、思婷(してい)(第1回大賞)、余心楽(よ しんらく)(第2回大賞)、葉桑(よう そう)(第3回大賞)、藍霄(らんしょう/ランシャウ)(第2回第3席)らがいる(ここでは「第一名」(第一席)または「首奨」を「大賞」と呼んでおく)。なおこの賞は応募を未デビューの新人に限ってはいない。上記の4人も、受賞以前にすでに『推理雑誌』に別の作品が掲載されたことがあった。 毎年上位入賞するのはほぼ同じ面々だったため、第4回を持って終了となった。 大賞受賞者第1回(1988年)大賞受賞者 - 思婷(し てい/スー ティン/Si Ting)(1948 - )1948年4月1日、中国福建省生まれ。本名は陳文貴。1978年に香港に移住し映画やドラマの脚本家として活動。1986年、短編「神探」で『推理雑誌』に初登場。1988年、暗号を扱った短編「死刑今夜執行」で第1回林仏児推理小説賞の大賞を受賞。ほかに、「最後一課」で第2回第2席、「一貼靈」で第3回審査員特別賞。『推理雑誌』では1986年から1991年にかけて計6編の短編を発表した。1989年に台湾に移住。1998年以降は北京で暮らしている。1993年のテレビドラマ『包青天』(中国語版Wikipedia)の脚本などで高名で、時代劇の脚本の第一人者と呼ばれている。 第2回(1990年)大賞受賞者 - 余心楽(よ しんらく/ユー シンロー/余心樂/Yu Xinle)(1948 - ) 『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』(角川文庫、2001年8月)に短編「生死線上」(1990)が収録されている。1948年6月4日、台湾生まれ。本名は朱文輝。1975年よりスイスに居住。スイスのチューリッヒ大学卒業。1989年、「松鶴樓」で『推理雑誌』に初登場。1990年、スイスの快速列車を題材にしたアリバイ物「生死線上」で第2回林仏児推理小説賞の大賞を受賞。ほかに、「真理在選擇它的敵人」で第3回佳作。『推理雑誌』では1989年から2000年にかけて7短編と1長編(『命案的版本』、連載中断後2001年の単行本版で完結)を発表した。1992年に林白出版社より刊行した『推理之旅』は、台湾初の長編本格推理小説だと言われている。緻密に組み上げたロジカルな本格ミステリを得意とする。ほかの長編作品に、『命案的版本』(2001年刊行)がある。2008年には短編集『洗錢大獨家』(本名の朱文輝名義)を刊行した。 第3回(1991年)大賞受賞者 - 葉桑(よう そう/イエ サン/Ye Sang)多作で知られる推理作家。その浪漫的な筆致は連城三紀彦になぞらえられることもある。『推理雑誌』では1988年から2000年にかけて短編36編を発表している。1988年、「再一次的死亡」で第1回林仏児推理小説賞佳作。1990年、「遺忘的殺機」で第3回大賞を受賞。単行本に『愛情實驗室』(1991年)、『耶誕夜殺人遊戲』(1991年)、『遙遠的浮雕』(1992年)、『魔鬼季節』(1992年)、『顫抖的拋物線』(1993年)などがある。 連城三紀彦の影響を受けたということは本人もエッセイに書いている。葉桑にとって連城三紀彦の短編集『戻り川心中』(台湾では1985年に出版)は、「推理小説は一回読めば充分」という自分の思い込みを打ち破ってくれた作品集で、創作に行き詰まると何度も読み返し、その影響を受けた作品もいろいろ書いているという。また一方で、自分の創作の方向を決定づけたのは『推理雑誌』に掲載された夏樹静子や山村美紗、仁木悦子ら日本の女性推理作家の作品だったとも語っている。 連城三紀彦の短編集『戻り川心中』がこの上なく好きで、この短編集は、「推理小説は一回読めば充分」という自分の思い込みを打ち破ってくれた作品なのだという。創作に行き詰まると何度も読み返し、その影響を受けた作品もいろいろ書いているそうだ。(本人のエッセイより) 第4回(1992年)の大賞は荘仲亮(そう ちゅうりょう/ジュアン ジョンリアン/莊仲亮/Zhuang Zhongliang)の「M16A2與M16」だが、この作者はこの1作のみで消えてしまったようである。なお、第1回から第3回までは、受賞作(佳作含む)を集めた単行本がそれぞれ刊行されている(『林佛兒推理小說獎作品集1』、『林佛兒推理小說獎作品集2』、および第3回の受賞作を集めた『遺忘的殺機』)。 『推理雑誌』に登場したそれ以外の重要作家禄文(ろく ぶん/ルー ウェン/祿文/Lu Wen)1986年から1988年にかけて、『推理雑誌』で6編の短編ミステリを発表。その作品は、香港が舞台となっており、科学トリックの使用に特徴があった。台湾で女性の探偵を起用した初の作家でもある。この作家については、香港の華僑だということしか知られておらず、経歴もその後の消息も不明である。 藍霄(らん しょう/ラン シャウ/Lan Xiao)(1968 - )講談社のアジア本格リーグで長編『錯誤配置』(原著刊行2004年/邦訳2009年)が刊行されている。1967年6月4日、台湾の澎湖諸島に生まれる。まだ高校生だった1985年、『推理雑誌』に「屠刀」が掲載されデビュー。その後しばらく間が空くが、1990年、第2回林仏児推理小説賞の第3席となった第2短編「医院殺人」で復帰。『推理雑誌』では1996年までに計12短編を発表した。邦訳された長編『錯誤配置』は、1990年から藍霄が発表している秦博士シリーズの長編第1作。台湾ではほかに長編第2作『光與影 A Maze Murder Case(光と影)』(2005)、長編第3作『天人菊殺人事件』(2005)が刊行されている。 ネット上ではblueというハンドルネームを使っている。2004年には島崎博氏が台湾のミステリファンと交流する模様をサイトにアップし、島崎博氏が日本ミステリ界に「発見」される契機をつくった。2005年2月に台北で行われた国際ブックフェアでは、有栖川有栖・藍霄・島崎博氏の3人の座談会が行われた。 既晴(き せい/ジー チン/Ji Qing)(1975 - )1975年、台湾生まれ。1995年、『推理雑誌』に「考前計劃」が掲載されデビュー。『推理雑誌』では1997年までに計3短編を発表した。英米ミステリも日本ミステリも原文で読みこなし、評論家としても力を発揮。2001年には、台湾推理作家協会の前身となった台湾推理倶楽部を創設。人狼城推理文学賞を設けて新世代の推理作家を次々と発掘し、台湾ミステリ界に多大な貢献をした。代表作は、2000年に自費出版し、2004年に大手出版社より再刊された『魔法妄想症』。この作品は藍霄『錯誤配置』巻末の玉田誠氏の解説によれば、「悪魔の召喚によって死体が動き出すという、島田荘司の『眩暈』を彷彿とさせる幻想的な謎に、不可能犯罪趣味と魔術的装飾を凝らした長編小説」である。本格ミステリからホラーまで多彩な作風を見せる。ほかの著作に、『請把門鎖好』(2002年、第4回皇冠大衆小説賞受賞作)、『別進地下道』(2003)、『網路凶鄰』(2005)、『超能殺人基因』(2005)、『修羅火』(2006)、『病態』(2008)、『感應』(2010)、短編集『獻給愛情的犯罪』(2006)がある。 2005年には芦辺拓(と島崎博氏)、2006年には綾辻行人(と島崎博氏)、2007年には島田荘司とそれぞれ会談している。 以上の6人の作家は、『台灣推理作家協會傑作選 1』に掲載された巻頭解説で、台湾推理作家協会所属の評論家・杜鵑窩人(とけんわじん)氏が特に重要な作家として挙げている6人である。一方、同解説で杜鵑窩人氏は、必ずしも好ましくないものとして、「風俗派」推理小説の存在にも触れている。これは、社会派のあとにうまれたある推理小説群を指して日本で使われた「風俗派」という用語と同じ意味だと考えてよい。必ずしも謎解きなどの要素がメインになっていない作品群である。なお島崎博氏によれば、林仏児の作品も『美人、珠簾を捲き』以外は風俗派推理小説に分類される。 風俗派林崇漢(りん しゅうかん/リン チョンハン/Lin Chonghan)(1945- ):画家。推理小説の単行本は『收藏家的情人』(林白出版社、1986年)のみ。ほかに、『推理雑誌』で変格推理小説を7編発表。 杜文靖(と ぶんせい/ドゥー ウェンジン/Du Wenjing)(1947- ):新聞記者。サスペンスフルな風俗派推理小説で知られる。作品に、『情繭』(林白出版社、1986年)と『墜落的火球』(1987年)がある。 楊寧琍(よう ねいり/ヤン ニンリー/Yang Ningli)(1966- ):作品に、『童話之死』、『藝術謀殺案』、『要命的5日』、『鑽石之邀』、『心魂』、『失去觸角的蝴蝶』などがある。 葉建華(よう けんか/イエ ジエンホア/Ye Jianhua):作品は1999年刊行の『殺意的空中迴廊』(林白出版社)のみ。この作品は、日本の紀伊半島を舞台にした旅情推理もので、日本の警察が頭を悩ませているところに台湾から引退した刑事がやってきて事件を解決するというストーリーだという。 1980年代から1990年代にかけては、台湾では長編推理小説の創作はあまり多くなく、収穫と言えるものはさらに少なかった。既晴氏作成・杜鵑窩人氏監修の「台灣推理文學年表」では、重要作品として1984年から1997年まででは32作品が挙げられているが、そのうち長編作品は、林仏児『島嶼謀殺案』(1984)、『美人、珠簾を捲き』(1985-1986)、余心楽『推理之旅』(1992)の3作だけである(正確に言えば、もう1編、1994年のところで藍霄『天人菊殺人事件』が挙げられているが、この作品が出版されて一般の推理ファンの目に触れたのは2005年のことである)。 【台湾では1990年代後半になると、日本の社会派推理小説や『推理雑誌』ではなく、欧米ミステリあるいは漫画やドラマなどをきっかけにミステリ愛好者になる人が増え、ミステリの普及が進む。またインターネットの普及もあり、ミステリファンはネット上のサイトや掲示板に集い、情報交換をするようになる。そして2000年、台湾ミステリの第一期を終了させ、第二期の幕開けの契機となった「時報推理小説賞事件」が起きる。/『台湾ミステリ史 後編』(未作成)に続く】 参考文献 台湾ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 台湾ミステリ史 中編 更新履歴 2011年9月3日:公開 2011年10月15日:第四章第一節に「日本の推理小説の受容に関するもう一つの証言」を追加。 『台湾ミステリ史 前編』(19世紀末~1970年代) 『台湾ミステリ史 中編』(1970年代末~1990年代) ←今見ているページ 『台湾ミステリ史 後編』(1990年代末~21世紀初頭)(未公開) 『読書案内』
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/38890.html
登録日:2018/02/17 (土) 21 21 35 更新日:2024/09/16 Mon 16 47 25NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 YAIBAに非ず まさかの展開 クローン コナン史上最強の敵 コナン版ジュラシック・パーク ブラック企業 化石 博物館 博覧会 名探偵コナン 太田勝 学習漫画 小学館 恐竜 恐竜作品 推理ファイル 標本 漫画 灰原が出たら嘆きそうな漫画 窪田一裕 考古学 衝撃のラスト 遺伝子工学 「名探偵コナン 推理ファイル 恐竜の謎」とは文字通り「名探偵コナン」のベースとした所謂「学習漫画」の1つである。 作画は特別編でおなじみの太田勝&窪田一裕コンビが勤めている。 あの名作「名探偵コナン 推理ファイル 昆虫の謎」同様コナン達と一緒に恐竜について学べる漫画だが、ただの子供向け漫画と侮るなかれ、 本作でコナンは、あの怪盗キッドや黒の組織とはある意味で比べ物にならない敵と戦うことに……。 【あらすじ】 コナン達の町で世界最大の恐竜博覧会が開かれ、小五郎の元に警備の依頼が舞い込む。 偶然恐竜に詳しい女性と知り合った事で興味を持ったコナン達少年探偵団も博物館を訪ねる。 そして、博物館に忍び込んだ不審人物を捕らえたコナン達だったが、その正体は例の女性――新庄薫だった。 そんな中、館内で(劇場版ではおなじみ)爆発事件が起き、目玉である「テツシゲサウルス」の頭部の化石が盗まれてしまう。 そして真相を探るコナン達の前に、更に大きな謎が・……。 【登場人物】 ◆本編の登場人物 江戸川コナン いつものように化石盗難の謎に挑む。 だが、そんな彼の前に最大最強の敵が……。 吉田歩美 円谷光彦 小嶋元太 灰原哀 偶然見つけた謎の化石が原因で事件に巻き込まれる。 コナンと共に犯人に挑む勇敢な子供達。 毛利小五郎 大恐竜博の警備の依頼が舞い込み、張り切っていたが重要な場所に入れてもらえず憤っていた。 毛利蘭 父の付き添いでやってきた。残念ながら全く活躍シーンはなし。 まぁ「相手」が相手だけに空手が通用したかどうか……。 京極さんでも相手になるまい…在命動物で相手になるのはゾウと海生動物と有毒動物に限られるだろう ◆本作オリジナルキャラクター 徳山哲茂(とくやま てつしげ) 大恐竜博の主催者、テツシゲグループの総裁。 スキンヘッドに葉巻を咥えた、よく見かける裏で何かやっていそうな社長然とした風貌の男で、実際にこの人物の周りで金を巡った騒動が頻発しているらしい。 最大の恐竜に自分の名前をつけるのが夢であり、自身でで研究チームも組織しそれを実現。保険金もあちこちにかけており、小五郎は「保険金だまし取るために自分でやったかもしれない」と疑っていた。 だが最近博物館内を荒らされる事件が続発し、小五郎に警備を依頼した。 西東慶江(さいとう よしえ) テツシゲグループ秘書。 美人だが、徳山同様、何やら裏がありそうな女性。 五十嵐晃(いがらし あきら) テツシゲグループの古生物研究チームのチーフ。 白髪に髭、サングラスといかにもマッドサイエンティスト的な風貌の人物。 コナン達の持ってきた化石をレプリカだと判断し、預かる事にした。 新庄薫(しんじょう かおる) 化石に詳しい女性、毎晩博物館に忍び込み化石を弄っていた。 果たしてその理由とは…… テツシゲサウルス 本作オリジナルの恐竜……の全身骨格の化石。 全長46m、推定体重110tという鯨を除いた動物では到底考えられない大きさで、磁鉄鉱を含むため漆黒の輝きを放つ だが爆発事件のドサクサに紛れ頭部だけを盗まれてしまう、おまけに現場は警備の厳重な密室、 果たしてどうやって盗み出したのか……。 【舞台及び題材となった古生物】 大恐竜博 テツシゲグループ主催の世界一の恐竜博物館、数多くの化石が展示されている。 館内では電磁石で動く恐竜を模したリニアカーで移動することができる。 だが入場料は6000円と割高で、客が来るかどうか微妙。 バロサウルス 竜脚類の一種。 大恐竜博の目玉の一つだが、ワイヤーを切られだらけた姿にされる。 オヴィラプトル 世界一可哀そうな名前の恐竜。該当項目参照。 エオラプトル 世界最古の恐竜の一つ。 新庄が逃げ回る際、恐竜に怯える三畳紀の原始哺乳類を思い返したシーンで登場。 以下、ネタバレ注意 大恐竜博の真実 「こんなの恐竜博じゃないわ……『怪獣博』よ!!」 実は展示されている化石の多くはデタラメに骨をくっつけたりありえないポーズをとらされていた詐欺まがいの者だった。 バロサウルスのワイヤーを新庄が切ったのも、元々バロサウルスが直立するという(*1)ポーズを取らされていたから。 これは見栄えを重視した徳山の指示であり、あのテツシゲサウルスも頭部以外は全てレプリカで無理矢理巨大な新種に見せたものあった。 薫はそれが許せず夜な夜な博物館に侵入し、レプリカを盗み出していたのだ。 だがその中には謎の骨が混ざっていて……。 薫と五十嵐博士 テツシゲサウルスの発見者は薫の父であり、その時の事故で亡くなっていた。 そんな父の研究ノートを盗み出して失踪したのが五十嵐博士……その正体は薫の祖父だった。 息子であるはずの父のノートを盗み出して徳山の元でレプリカを作り続けていることが許せず疎遠になっていたが、五十嵐の方は薫と連絡を取りたがっていた模様。 そんな背景を知りながらコナン達は捜査を続け、ついにトリックと犯人の目星をつけるが、突如何者かに捕まり連れ去られてしまう。 連れてこられたと場所は南の孤島にある謎の研究施設で……。 「わしが興味あるのはでかい恐竜かかっこいい恐竜! そして金になる恐竜だけだ!!」 徳山哲茂 西東慶江 実は化石盗難事件は彼らのでっちあげた狂言であった。 コナンの推理によると、爆発を起こしたのは館内のスプリンクラーを作動させるため(*2)で、水溶性の接着剤でくっつけておいた頭部が落ち、リニアを動かす要領で磁鉄鉱の化石を操作し、そのまま排水溝から抜け出る仕組みになっていた。実際に他の職員は知らなかったらしくが「頭にだけ特殊な接着剤を使った」「この接着剤で風呂場のタイルや傘を修理しようとしたが、すぐ剥がれ落ちた」「犯行時リニアのコントロール室で電力を大幅に上げていた(*3)」「他にも犯行時、何かしら遠隔操作をしていたらしい」と情報を漏らしていた。また、この為に穴が一つだけ水が減っていた。 排水溝は小さかったが、頭部の化石は数多くのパーツで構成されており、流れているうちに接着剤が剥がれバラバラになるので十分排水溝に隠せた。 その目的は化石にかけた保険金である研究(*4)を完成させるためであり、小五郎をよんだのも事件にリアリティを持たせるためだったのだ。 博士の研究 徳山の強引な発掘で死んだ薫の父、五十嵐はそんな彼のノートを入手して彼の意思を継ぐことを決め、あえて徳山の手先となった。 同時に薫が行動を起こしていることを知り、ある生物の骨を盗ませ、自分とコンタクトを取るように仕向けていた。 そんな彼らをよそに徳山は目的の研究成果を見せる、 五十嵐の本業である遺伝子工学により生み出された、謎の骨の持ち主を―― まさしくあれは竜盤目獣脚類……。 ティラノサウルス コナン達の前に現れたのは何と本物のティラノサウルスのクローンだった。 灰原曰く、化石や琥珀からはDNAは採取できないとのことだが、実は薫の父のノートにはある場所が記されており、五十嵐がそれを信じ、北極圏のクレバスの奥深くへ行ってみるとそこで氷漬けでまるまる原型を保っていたティラノサウルスを発見。 そこから細胞を採取してテツシゲグループの施設でクローンを完成させた。 徳山は薫達を人質に五十嵐に恐竜のクローンを大量生産するように脅迫するが……。 だがティラノサウルスは徳山の予想を超える凶暴性とパワーを発揮、バズーカの直撃に耐えうる硬質ガラスを易々と砕き、彼と西東が乗った竜脚類型の車を餌と勘違いしたのか襲いかかってきた。 コナンと薫はスケボーに乗り囮となることで彼らを救い出す。 だが相手は地球の歴史上最強の肉食動物、そのパワーの前にはコナンの推理も阿笠博士の発明品も通じないと思われたが、コナンは上手くティラノサウルスを誘導して躓かせた。大きすぎて急に止まれず、足元に折った木の罠を仕掛けて転ばせて崖下へと落とす、そしてティラノサウルスは海中へと没したのだった。 その後、コナンの手引きで真相を知った警察に徳山と西東は逮捕、無論ティラノサウルスの事は信じてもらえなかった。そもそも信じてもらえてもどうしようもないし、下手したら復讐のためにそのティラノサウルスをけしかけようとする人が出てくるかもしれないが… そして薫と五十嵐は2人で新たな化石を探す旅に出ることを決意、コナン達に今度こそ本物の恐竜と遊べる公園を作ると約束するのだった。 そんな彼らを思い出しながら、ティラノサウルスは大海原を悠々と泳いでいるのだろうか、それとも落ちて死んだのか… だれか、誰か信じてくれ、 ティラノサウルスは本当にいるんだーーーーーー!! 追記・修正は恐竜と直に触れ合ってからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 昆虫の奴といい、子供向けのコナンは原作ではありえない展開するなwww -- 名無しさん (2018-02-17 21 23 30) 絶対無理だろうけど昆虫忍者と一緒にアニメでやってほしいわw -- 名無しさん (2018-02-17 21 25 05) なにこのジュラシックパーク -- 名無しさん (2018-02-17 21 40 04) 遂に来たかこれwwwエオラプトルはこのマンガで知った -- 名無しさん (2018-02-17 21 45 06) これすき -- 名無しさん (2018-02-17 21 54 10) これと昆虫の他の学習漫画のとんでもない展開とはいえば、神秘の力で新一に一時的に戻るやつもあったな… -- 名無しさん (2018-02-17 22 09 31) 氷漬けティラノがコナンで出てきた時の衝撃。この後に見た昆虫はそれ以上だったのが自分の感想なのにある意味びっくり -- 名無しさん (2018-02-17 22 22 42) もはやバキキャラや恐竜系戦隊連れてこいレベルだw -- 名無しさん (2018-02-17 22 47 30) 推理ものから恐竜パニックものに…w -- 名無しさん (2018-02-17 23 52 11) 史上最強の敵ってタグはちょっと違うかも 映画の組織のヘリの方が強いかと 飛べないから撃たれ放題だし しかしこいつが生きてるとしたら大ごとだよな・・・ -- 名無しさん (2018-02-18 00 49 48) ↑人類の謎でもラスボスが「見ろ! これがケダモノには無いホモサピエンスの力『火』と『武器』だ!」とかほざいて戦闘ヘリに乗ってたな… -- 名無しさん (2018-02-18 17 06 05) 秀吉「まさにブレイブな少年だな君は!」 -- 名無しさん (2018-02-18 19 36 41) ティラノサウルスが泳げるなら下手すりゃ本土上陸の危機も・・・ -- 名無しさん (2018-02-21 17 35 42) ちょっと図書館言ってコナンの学習本読んでくる。もしかしたらぶっとんだ作品あるかもw -- 名無しさん (2018-02-21 18 06 38) 米花町の事件もここまでくるとバッドマンも腰を抜かすなw -- 名無しさん (2018-10-16 12 40 59) 今日単行本読んだんだが、西東(秘書)『普通に走って』ティラノから逃げてるという衝撃。後、捕まる時のボロボロの彼女は一見の価値あり。 -- 名無しさん (2020-04-03 12 55 22) 不覚にも普通に走って逃げる西東秘書に笑ってしまったwww -- 名無しさん (2023-11-13 07 49 13) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/seigeki/pages/957.html
土曜サスペンス声劇場 ~血塗れの包丁と温泉女将 戻らない親子の絆 水と氷とが謎を解く? 奈良迷宮事件簿 素人探偵ジョーの推理場パート1~ そう、それが動機だった。 旦那さんは亭主関白、しかも大の里芋好きだ、マニアと言ってもいいくらいのこだわりようだった。 煮崩れした煮っ転がしを作ってしまったなんて知れてしまったら……あの旦那さんのことだ 里芋のザラザラした皮部分を背中とおでこに貼り付けるなどの変態行為をして奥さんをもてあそ……ゴッホン! 話がそれました、ともかくも、奥さんはそのおかずを隠そうとした。 とりあえず、目に付いたのはクーラーボックスだった それは家にたまたま遊びに来ていた、旦那さんの弟さん、あなたのものだった。 奥さんは煮崩れした里芋の煮っ転がしをそっとそこに隠し、チャックを閉めた。 7月の半ば、夏場も盛りでしたからね、冷蔵庫以外でおかずの収納場所は限られる。 しかし、弟さんはそのクーラーボックスに保冷財どころか氷も入れていなかったんです。おかしいですよね? あなたはそのすぐあと、夜釣りにでかけるために、わざわざこちらのお宅に泊りがけでいらしたというのに。 つまり、クーラーボックスは冷やしたくない何かを入れるために持ってきていた、奥さんはそれを見てしまった。 以上の推測から……真犯人は……あなたしかいない!! お隣りの山田くんのおばちゃん!!! あなたが犯人です!! …………あれ、違った?
https://w.atwiki.jp/seigeki/pages/958.html
月曜ザ・ワイド声劇場 ~見立て?それとも偶然か 雨に濡れた京美人は何を想う 琵琶湖に沈む人魚の怪、溺れる犯人 奈良迷宮事件簿 素人探偵ジョーの推理場パート2~ そうです、間違いありません。あのお店のママさんの源氏名は小さな雪と書いて”サユキ”さん。 ですが、一般的に”小さな雪”と書いたら、某ウィスキーをご一緒したい女優ナンバーワンの彼女、個人的には膝枕で耳掻きふーなんてされたらもう悪魔に命を売ったってかまわない、むしろ罵られ蹴られたって構わないとすら思える女性ナンバーワンの……ゴホン! ……そう、”コユキ”と読むのが普通です。 そして、もう一人。ここに重要な人物がいます。それはサチさん、あなたです。 あなたの名前は ”幸せ”の一字でサチ、そして苗字はハザマ。”狭い”のハザマで一字だ。 大変珍しい名前ですよね、ハザマ・サチさん。 つまり、そのトリックを行った誰かは、サチさんとママさんとを取り違えた! ハザマ・サチをサユキと読み違えたことによって!! 以上の推測から、真犯人は日本語、とみに漢字に疎い人物でしかありえません。 容疑者の中で唯一の外国人…………素人探偵ジョー!!! 私なのです!!! …………え? いえ、ちょっとしたジョークです。 場がこんなにピリピリしているんじゃいけないかなと思いまして えー? まっさかー、自首じゃありませんよー! あっはっは、びっくりしました? あれ? うわっ!? ちょっと、容疑者の皆さん、何を!? や、やめてください、まさか私を第2の被害者に……ぎゃああーーーー!! オンザロック用の氷が背中にーーー!!!!
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/8896.html
657 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 16 06 04.97 ID 1jylRkxn0 [3/9] 超常現象モノでシナリオは推理モノだった、という流れで昔を思い出した。 「学園ドタバタコメディ&PLは部活に応じた異能力持ち」のシステムと説明受けて参加したら、 ただのガチ推理モノだったことがある。 結局、シナリオはPLの異能力が全く役立たずで詰んで了。 反省会でサークルの年上であるGMからグチグチ文句言われてお通夜状態だった。 ちなみに自キャラは探偵同好会だかなんかで 相手の嘘を見破る異能力あり。相性よかったはずなのに…。 658 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 16 07 52.91 ID iPrOkUlF0 [2/3] 657 逆に、その能力があるのにGMはどうやって失敗に追い込めたのかが知りたい 659 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 16 36 56.93 ID gC2yKPmU0 [1/2] 困報告とは別の視点だが、PCに探索系用の能力付与して、推理物をやる/やらせるってのは、ある程度理に叶ってるなw PLの推理能力を補う材料として まあ元々のシナリオがどうしようもなかったら、どうにもならん訳だが 661 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 17 43 25.44 ID 1jylRkxn0 [4/9] 658 ごめん、ご近所の雪かきしてた。 後でもうちょっと詳しく書く。なんか思い出してきた。 667 名前:1/3[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 27 33.66 ID 1jylRkxn0 [5/9] 遅くなりました。 657の追加報告です。 思い出せる限り正確に書いたつもりです。 まず、システムは原作つきRPGで小説がいくつもあったようだ。 自分は初プレイのシステム。原作も全然知らない。 GMは原作・小説OK。PLのAは小説既読。PLは4、5人だったと思う。 ルールブックを読むと、舞台となる学校の建物や組織、部活、有名NPCのデータは満載だった。 ゲーム自体は、簡素なシステムでいわゆるノリで何でもできる、を売りにしている感じ。 これではプレイの感覚が掴めないので、前の週からGMやAに ゲームの雰囲気やら世界観やらを質問してイメージのすり合わせは行っていた。 「学園ドタバタコメディ&PLは部活に応じた異能力持ち」のシステム ↑これがすり合わせた結果の認識。例えば、高橋留美子の漫画的なものを想像すればいいんじゃない、ということで納得。 PCは事前作成で全員友人関係。 自分が迷推理・珍行動ばかりだが、証拠もないのになぜか犯人だけは当てられる(自称)名探偵の少年。 Aは新聞部で、詮索好きな扇動家で、情報収集、写真技術と装備、怪しいネタ元あり。 Bはたしか科学部で、科学知識と分析能力もちの女子。他のPCは記憶にない。 異能力は結構自由に応用できる感じだったが、事前の話し合いで、発動条件とだいたいの効果も決めた。 自分の場合、真意看破と犯人感知。 相手に〇〇は嘘ですねorあなたが犯人ですね、と突きつけると異能力を使用可能。 何かあるたびに、事件の臭いがする、犯人はお前だ、みたいな珍行動を挟んで場を笑わせられればいいと思ってた。 シナリオが推理モノだとはプレイまで知らなかった。 結果として推理シナリオへの対応力がついた構成になった(はずだったが)。 668 名前:2/3[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 31 47.76 ID 1jylRkxn0 [6/9] シナリオは依頼から始まった。 機密文書が盗まれた秘密裏に取り戻し犯人を見つけろ、と生徒会役員(風紀委員かも?)から命令。 まずは現場から調査スタート。 Aは写真を撮り、Bは遺留物の分析、自分は不自然な痕跡はないか捜索。 PCのコネを使って友人や部活、顧問に聞き込み、不審者目撃情報、各部の動き、パソコン通信など考えられる各方面に情報収集。 途中でキャラロールなんかを交えつつ各PCの持ち味を十分活用できていたように思う。 Aは有名NPCと顔つなぎができ、Bはクラスメートと会話したりして喜んでいた。学園ものらしい光景だった。 捜査を進めるうち、〇〇委員会だか下部組織の××部だかが接触をとってくる。 PCと会談したのは女仕官と兵隊みたいな人物。 自分は活躍する機会だと思った。 女仕官を迷探偵ロールで揺さぶりをかけて、もし解決への糸口が掴めたらおいしいぞ、と。これが失敗だった。 GM 「無礼な、と部下が自動小銃を向けたよ」 自分 「自動小銃?モデルガンかな?」 GM 「さあ?君には本物にしか見えないね。実際、この組織は本物所有だが」 自分 「(本物!?…演出用の小道具扱いかな) 本物だとして、もし撃たれたらギャグ演出で処理になりますか?」 GM 「実弾命中したら死ぬでしょ、普通」 自分 「え?」 GM 「判定の結果次第で負傷か無傷にもなるが。当然。 それからこの組織は薬物・毒物・尋問・拷問のスペシャリストだから」 自分 「…ここ学園でしたよね?」 GM 「そういうとこだし。敵認定されたら消されるよ」 血の気が引いた。そんな話は聞いていない。 我々はひたすら下手に出て××部にはお引き取りを願った。 打つ手が尽きた我々は、〇〇委員会だか××部だかの注意を惹きつけないように、聞き込みや情報収集の繰り返し。生徒会の協力を仰いだりもした。 自PCが接触できたNPCは全員とも、たとえ異能力を使っても「へえ、だからなに?」な冷たい反応ばかり。 Bの科学分析にも1回ごとにそれなりの時間がかかった。 結局、時間切れでバッドエンド。文書が第三者の手に渡ってしまい依頼主から失望したと説教。 669 名前:3/3[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 33 38.40 ID 1jylRkxn0 [7/9] シナリオ解法を要約すると 効率よく人員を活用して情報収集、適切なタイミングで適切な人物に接触、警察的な科学捜査で推理を進めれば、 秘密文書の隠し場所が判明する。異能力がなくても普通に解ける。 GMが想定した日数よりもかなり多めに時間を与えたし、遊びの行動を取りすぎだろとのこと。 まあ当初から推理ゲームと割り切って理詰めで動いてれば可能だっただろう。 反省会のGMが、 なんで初対面のNPCに非常識なことするかな… この学園内で〇〇委員会に逆らったらああなって当然だろ… ××部は裏切り者は闇に消されるので外部に絶対情報を漏らさない… 所詮同好会レベルの異能力じゃ部や委員会には普通通じない… 秘密文書の隠し場所のマップもせっかく作ったのに無駄になった…云々。 自分の学園ドタバタコメディ感を突き崩された一日だった。約20年経った今でも印象に残っている。 670 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 40 24.72 ID kDO60XN90 [2/2] 667 追加情報乙 委員会やクラブが軍事力まで持ってるというと……蓬莱学園って奴か? 671 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 42 29.45 ID P1GqnT9L0 [2/2] 時代的にも蓬莱学園だろうけど、原作未読の相手にこれは酷い 672 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 42 48.63 ID WH9ikuKWP 669 乙 離島にある超大規模学園のあれかな あの世界の常識を一般常識のように当たり前だろ?とか言っちゃうのはただの老害困だ 673 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 42 59.01 ID iPrOkUlF0 [3/3] 667 報告乙でした。 蓬莱学園の小説版を読んで、中二な部分にばかり影響受けたって感じがするなあ。 674 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 22 57 02.62 ID bgEmC0X50 [7/7] 667-669 乙 すりあわせた結果として、高橋留美子漫画みたいなものってなったんだよな……? GMは高橋留美子漫画を勘違いしすぎじゃね 675 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 23 05 24.35 ID CnSodBFi0 >蓬莱学園 ありゃどっちかってゆーと高橋留美子漫画というよりネギま!の学園都市みたいな感じじゃね?生徒の能力的にも。 んでPCは精々がとこモブ生徒レベル(主要キャラ=NPCには基本太刀打ちできない)。 676 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 23 11 25.87 ID 1jylRkxn0 [8/9] 670-673 そうそれだ。原作はPBMだった。蓬莱学園で正しいはず。 ボックスのルールを2、3セット使用してた。 674 参加者でイメージ共有できる既存作品を探した結果、 自分が「高橋留美子の漫画みたいな感じですか」と例を出して、そんな感じでいいだろう、と。 まさか、「うる星やつら(アニメ版押井担当回風味マシマシ)」だとは気付かなかった。 ちなみにその後、同じGMとAと他の面子で再びプレイをしている。 下手打った経験をバネにして参加したが、その時も苦い思いをしたなぁ…。 677 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 23 30 17.03 ID e1HtmiY20 [2/2] 667 乙なんだが、それ推理ゲームやのうてGMの脳内当てじゃね? 678 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 23 41 48.93 ID gC2yKPmU0 [2/2] 667 乙です 677 まあ、TRPGあるある話だな>推理・情報収集メインのシナリオがGMの脳内当てクイズ化 あれって作ってる方も悪意なしでそうなるんだよなぁ(実体験済み) 何度かやらかした末に、自分には無理だと悟ってから、もう二度とやらない……と心に決めたものの、似たような被害者・加害者は多そう 『基本的に推理なんて成功しない』と仮定した上で、ご褒美のオプションギミックルートとして設定するくらいが丁度良いよな 679 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 23 54 45.93 ID 1GcLSzWu0 669 乙ー。 GMには他にも突っ込みどころがあるけど、 >所詮同好会レベルの異能力じゃ部や委員会には普通通じない… そんなルールは無いなあ。 委員会もクラブも同好会も、ルール上の判定は同じ扱い。 学園内での権力とか借りれる装備とかが違うぐらいかな。 システムとしては割りとPCが好き勝手できるゲームなんだけどね。 それこそ学園ドタバタコメディもできるし、 シリアスに陰謀を暴くみたいなのも出来る。 結局、GMが脳内の蓬莱学園をちゃんと説明してないのが悪いな。 680 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/15(土) 23 57 55.61 ID 1jylRkxn0 [9/9] 脳内当てかなぁ…。 最初から世界観・ゲーム観を正しく把握していたなら解決できたな、悔しい…と当時は思ったんだよね。 これが経験のあるクトルゥフやRQで同じシナリオなら概ね上手くいけそう、みたいな。 だから、2回目のプレイでは別キャラ作成して別方面からアプローチをかけた。 GMは少女漫画が好みだったので、 古ーくからあるステレオタイプな馬に乗った王子様をモチーフに 乗馬クラブだか乗馬部所属のナイト的キャラを作った。 また、前回でそこが自動小銃を携行した私兵が徘徊している世界だと分かっていたので ナイトにはナイトらしく十字軍ふうの鎧兜と盾、十字剣を持たせて守りも固めた。 ゲームの数値的には銃に対応可能な範囲になっていたはず。 学園内で愛馬を召喚する能力も付与して機動力も上がった。 が、プレイ中はGMに放置されていた気がする。馬を世話して乗馬した記憶しかない。 結局、3回目以降もGMとAと他でセッションは続いてたようだが、私は声をかけられなかった。 代わりに、気の合うメンバーとクトゥルフやAD D、ガープス等で遊べたからまあ良かったかな。 681 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 00 01 28.30 ID 8KBmTHmB0 [1/3] 679 じゃあ記憶違いかな。 政治力とか財力とかだったかも、 結局見通しが甘い云々とか嫌味だったのには違いないんだけれど。 682 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 00 12 15.59 ID YoVZjm8t0 680 いやそれで脳内当てじゃなかったら何なんだ 683 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 00 17 10.45 ID lxwlXmSC0 [1/3] 680 その放置というのを聞くと、「PCが悪いから失敗した」というのは嘘で、 またぞろ無理矢理失敗させてドヤァしたい疑惑が出て来るなあ 684 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 00 31 27.54 ID 8KBmTHmB0 [2/3] いいように嬲られてたのかもな…。 GMとはとうの昔に縁が切れてるんで確かめようがないけれど。 Aとは今でも仲がいい。 当時のことは、ゲームやってたなぁくらいで全然覚えてないそうで、こっちはモヤモヤしてたんだが。 何にせよ。20年来の嫌なものを吐き出せてスッキリできたよ。長々とすまなかった。ありがとう。 685 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 00 40 27.17 ID rV+I831h0 というか、フツーにミステリーでコメディのコの字もねえじゃん コメディ風味にやる、っていうなら決め付けた時点でドタバタにすりゃいいし撃たれるっていうなら 世界観わかってる周囲が腕ひっつかんで逃げるところを撃たれる(当たらない)くらいの事すりゃ いいのに コメディ許さないようなそういうゲームじゃないだろ蓬莱学園って 蓬莱学園の世界観なんてマジなシリアスでも恋愛ドタバタでもありのなんでもアリだろうよ 軍事関係のマジ死人が出てる横でマッドサイエンティストが作ったロボに跳ね飛ばされて酷い目に あったって言いながら起き上がる世界なんだからさ んで、普通に本格推理モノやるっていうならそういうシナリオをやる、わりとマジだよっていうのを 先に伝えとくべきだよな 667-669乙ってかんじだなぁ ダメGMにあたったなマジで 686 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 01 41 32.03 ID jqxj9JDo0 この手の、 『ゲームの説明を隠蔽するのが大好きGM』 は、何処にでも発生するのであろうかw 『謎解き』と『ルール説明』を頭の中で混濁させてしまい、 ゲームを始めるためのルールなのに、なぜか隠したまま初めてしまい、PLが大迷惑を被るのよねぇ・・・ 687 名前:ゲーム好き名無しさん[] 投稿日:2014/02/16(日) 02 08 48.40 ID VK7NIQTZ0 [1/6] 蓬莱だったら行動宣言に応じた難易度(簡単値)をGMが算出して成功すれば、かなりの無茶でも押し通るってシステム なんかGMの脳内で勝手な理想補正が入っちゃってる感じだなぁ。 でもあの旧ルール版蓬莱って当時コンベとかだとその手の事故はかなりあったって聞いた やっぱり蓬莱学園って基本的にPBM版参加者のためのファンアイテムなんだろうな ↑の話をしてくれたGMはそれで色々学習したって言って、原作のディープな部分は薄め、 PC個性を生かす方向で自由にやらせてくれて自分達は楽しめたんだけど 703 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 10 27 38.01 ID S/kaULLi0 [1/3] 蓬莱学園で、昔の「自称正論再び」を思い出した。 ttp //www6.atwiki.jp/kt108stars/?cmd=word word=%E8%87%AA%E7%A7%B0%E6%AD%A3%E8%AB%96 type=normal page=%E8%87%AA%E7%A7%B0%E6%AD%A3%E8%AB%96%E5%86%8D%E3%81%B3 七不思議を解決するシナリオで、オカルト系PCの能力をインチキだとして完全に封じたって報告 705 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 10 51 59.38 ID N+lXCUya0 [1/4] 703 解説しているハッタリって、ふたなりの小太刀右京さん? あの人困スレも見てたのか。 706 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 10 52 46.84 ID nRjKXQGe0 [3/12] 705 ハッタリはこのスレの常連だった記憶が 708 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 10 57 55.56 ID 8KBmTHmB0 [3/3] 703 うわぁ、やめてくれ。 それ読んで、また嫌な記憶が蘇ってしまったよ。 667-669のGMともう一回蓬莱で遊んでいたんだった。 自分はその「自称正論再び」で報告されているPLとほぼ同じことした。 自キャラをオカルト・魔術系で作成して、魔術的な行使をしようとしたら 一度だけ、なんか魔術とかで退散させようとかしたんで、そのPCのオカルト知識は全部偽物と言ったら、なんか不満そうな顔しやがった。 GMの決定は絶対なのに、何不満そうな顔してやがるんだか。 オカルト知識持ってるからって魔法を使うって発想がそもそも非現実的。 こうなった。 有力キャラならまだしも自分のレベルでは魔術行使は不可能に決まってるだろと。 GMがムー読者だったり、矢追純一ネタとかでバカ話する面子だったから、自分は許容範囲のPCだと思ってたんだよな。 少年探偵やった時にも、 途中武器庫を見つけた時、そいつのPCは性格が「陰」なのにそこから銃を持っていこうとした。 陰の性格がそんな事するわけ無いじゃんか。ちったあ常識持てよと言いたい。 弾丸は装填しないでただの虚仮脅しにする、とかゴチャゴチャ屁理屈並べて粘ったけど、GM権限で却下とビシッと言ったらそれ以上何も言わなくなった。 これも同じような状況が思い当たる。 自分のことかって言うくらい合致する点が多いのでぞっとしたが http //www6.atwiki.jp/kt108stars/pages/779.html ↑これで別の卓だと知ってホッとした。 高校時代じゃなくて大学時代だから。 GMが定期購読してたドラゴンマガジンのコレクションを 読ませてもらった覚えもあるのでホント肝が冷える過去報告だわ…。 709 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/02/16(日) 11 30 01.44 ID S/kaULLi0 [2/3] 708 件の蓬莱シナリオはルールブック付属だかの公式シナリオだから、似たような案件もあるだろうね。 もっとも、自称正論GMまで同じとはね。 まあ結局、想定外の事態を極端に嫌って何が何でも排斥しようとするGMってことなんだろうね。 つまり程度の軽い吟遊だ。視野が狭いとも、狭量とも言える。 ただそれを正直に「GMの想定外だから禁止」言うと吟遊だとばれて評判に関わるんで、事前レギュにはない「魔法はインチキ」だの「性格:陰は銃を持てない」なんて後出しルールで禁止するんだろうね。 こういうPLの意外な作戦・解決策を処理できず弾圧するんなら、全部自分の思い通りになる小説でも書いてろって思うんだけどね。 現に俺はそうしてる。 スレ374
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/187.html
2012年5月2日 「スペインのミステリ小説」と聞いて多くの人が最初に思い浮かべるのは、最近ではおそらく、カルロス・ルイス・サフォン(1964- )の『風の影』(邦訳2006年)や『天使のゲーム』(邦訳2012年)ということになるだろう。2006年に邦訳された『風の影』は『IN☆POCKET』の文庫翻訳ミステリー・ベスト10で第1位、『週刊文春』のミステリーベスト10で第2位、『このミステリーがすごい!』で第4位と高評価を得た。あるいは、ホセ・カルロス・ソモサ(1959- )の『イデアの洞窟』(邦訳2004年)を思い浮かべる人もいるかもしれない。古代ギリシアでの殺人事件を描いたこの怪作は、『本格ミステリ・ベスト10』で第7位、『週刊文春』のミステリーベスト10で第9位という評価を得た。 このようなヒット作、高評価作もあるとはいえ、スペインミステリの邦訳はあまり多くない。早川書房の“ポケミス”ではフランスやドイツ、イタリア、ロシア(ソ連)の作品、さらにはポーランドや北欧の作品も刊行されているが、スペインの作品が刊行されたことはない。ただ、ポケミスではメキシコの作品が刊行されたことはある。メキシコはいうまでもなく、スペイン語圏の国である。ブラジルを除く中南米のほとんどの国ではスペイン語が公用語になっている、ということもわざわざ説明する必要はないだろう。 スペイン語を公用語とする中南米諸国のミステリでは、ギジェルモ・マルティネス(1962- )の『オックスフォード連続殺人』(邦訳2006年)やパブロ・デ・サンティス(1963- )の『世界名探偵倶楽部』(邦訳2009年)が日本の新本格ミステリを思わせるとして話題になった(たとえば、原書房『2010本格ミステリ・ベスト10』に掲載の「「海外本格」座談会 長編ミステリの曙からアジア・南米の異色〈新本格〉まで」などを参照のこと)。どちらもアルゼンチンの作品で、前者は『本格ミステリ・ベスト10』で第4位にランクインしている。アルゼンチンの作品ではほかに、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)とアドルフォ・ビオイ=カサーレス(1914-1999)が合作した古典ミステリ『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』(原著1942年/邦訳2000年)も『本格ミステリ・ベスト10』で第1位となっている。 ボルヘスといえば、2008年には扶桑社文庫で『ボルヘスと不死のオランウータン』というミステリが翻訳出版されている。これも中南米のミステリだが、作者はブラジルのルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ(1936- )で、つまりスペイン語ではなくポルトガル語で書かれた作品である。ボルヘスを探偵役に据えたこの衒学的ミステリは2008年度『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10の「翻訳家&評論家が選んだベスト10」で第7位にランクインした。ポルトガル語圏のミステリの邦訳もやはり少ない。ブラジルではほかにJ・ソアレス(1938- )の『シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件』(邦訳1998年)があるが、ポルトガルのミステリの邦訳というと、ルイス・ミゲル・ローシャ(1976- )の『P2』(邦訳2010年)ぐらいしか見当たらない。 注 このページの作成者はスペイン語・ポルトガル語は読めません。 このページは、スペイン語圏およびポルトガル語圏の推理小説について書かれた日本語および英語の文献を元に作成したものです。 邦訳のある作品は『水色』で示しました。 Index (1)スペインミステリ略史スペイン古典探偵小説の時代 戦後スペインのミステリ作家たち 現代スペインのミステリ作家たち (2)スペイン語を公用語とする中南米諸国のミステリアルゼンチン メキシコ キューバ その他 (3)スペイン語圏のミステリの祭典《セマナ・ネグラ》タイボ二世らによる国際推理作家協会の創設 世界中のミステリ小説の年間ベストを決定するハメット賞の構想 ミステリの祭典《セマナ・ネグラ》 (4)ポルトガル語圏のミステリポルトガル ブラジル 参考文献 関連リンク (1)スペインミステリ略史 スペイン古典探偵小説の時代 【この節は2012年9月28日に追加】 19世紀から20世紀前半にかけてのスペインの探偵小説に関する日本語の文献は見当たらない。パトリシア・ハート(Patricia Hart)の"The Spanish Sleuth The Detective in Spanish Fiction"(スペインの探偵 スペインのフィクションにおける探偵物)という本が1987年に出ており、17ページから25ページが"Detective Beginnings in Spain"(スペインの探偵物の始まり)となっているので、まずはそれに従ってスペインミステリの草創期を見てみよう(該当ページはGoogle Booksで閲覧可能)。なお、「G. J. Demko's Landscapes of Crime」という英文サイトでもG・J・デムコ氏がスペインのミステリ事情(Spanish Mysteries)を紹介しているが、明示されてはいないものの、デムコ氏もやはり"The Spanish Sleuth"を参考にしているようである。 "The Spanish Sleuth"によると、スペイン最初のミステリはペドロ・アントニオ・デ・アラルコン(Pedro Antonio de Alarcón、1833-1891、Wikipedia)が1853年に発表した「釘」(原題 El clavo)だとするのが通説だという。ポーの「モルグ街の殺人」が1841年なので、その12年後の作品ということになる。この作品は戦前に邦訳がある。 ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン「釘」『世界短篇小説大系 探偵家庭小説篇』近代社、1926年、谷口武訳 博文館 世界探偵小説全集第1巻『古典探偵小説集』、1930年、訳者不明 ← 当サイトで全文公開中 ペドロ・アントニオ・デ・アラルコンはこれ以外にも邦訳が何作品かあるが、その中に探偵小説があるかどうかは未調査。なお、「釘」(英題 The Nail)を表題作とする英訳短編集"The Nail and Other Stories"が1997年に出版されている。 "The Spanish Sleuth"の記述に従って続けると、イギリスで1887年にシャーロック・ホームズが誕生すると、探偵物の人気はスペインにも到達し、オリジナルの探偵物も書かれるようになる。1909年(1914年とも)にはホアキン・ベルダ(Joaquin Belda、1883-1935、スペイン語版Wikipedia)がスペイン最初の長編探偵小説ともいわれる『誰が撃った?』(¿Quién disparó?)を発表。探偵役を務めるのはガピ・ベルムデス(Gapy Bermúdez)で、そのワトソン役たる語り手は作者と同名のベルダ。ベルムデスは相手が煙草を吸わないことを見抜いたりといったホームズ的ふるまいをするそうだ。ただ、この作品は探偵小説そのものというよりは、探偵小説のパロディという側面が強いらしい。 そしてこの時期にスペインで探偵物を書いた作家にはエミリア・パルド・バサン(Emilia Pardo Bazán、1851-1921、スペイン語版Wikipedia)のようなスペインの高名な作家もいた。エミリア・パルド・バサンは1911年に短編(または中編?)の「血の滴」(La gota de sangre)という作品を発表している。これは、探偵小説好きのマドリッドの紳士イグナシオ・セルバ(Ignacio Selva)が、身近で起こった殺人事件での自分の無実を証明するため自ら素人探偵となって事件の捜査をするというストーリー。エミリア・パルド・バサンの作品は『スペイン幻想小説傑作集』(白水社、1992年)と『イワシの埋葬 スペイン短篇選集』(彩流社、1996年)に邦訳があるが、ミステリ作品かどうかは未確認である。 また、"The Spanish Sleuth"によれば、1916年にはエンリケ・ロペス・アラルコン(Enrique López Alarcón)とホセ・イグナシオ・デ・アルベルティ(José Ignacio de Alberti)が脚本を書いた演劇"Sebastián el Bufanda o el robo de la calle de Fortuny"(セバスティアン・エル・ブファンダ、フォルトゥニ通りの泥棒)が上演されている(1918年には出版もされた)。これはセバスティアンという宝石泥棒を主人公にした探偵物である。 その後、1920年代にはエミリオ・カレーレ(Emilio Carrere、1881-1947、スペイン語版Wikipedia)が探偵小説を発表。1930年代にはE・C・デルマル(E.C. Delmar)がバルセロナを舞台にした長編探偵小説を3編発表しており、1930年代から1940年代にかけてはベンセスラオ・フェルナンデス・フローレス(Wenceslao Fernández Flórez、1885-1964、スペイン語版Wikipedia)も探偵小説を発表したようだ。ベンセスラオ・フェルナンデス・フローレスの邦訳状況については、フヂモト・ナオキ氏の「ウィアード・インヴェンション~戦前期海外SF流入小史~050 スペイン編(その一) ベンセスラオ・フェルナンデス・フローレス/永田寛定訳「真夏の海魔」」(SFファングループTHATTA、オンライン・ファンジン『THATTA ONLINE』283号(2011年11月号))が詳しい。『スペイン幻想小説傑作集』(白水社、1992年)などに邦訳があるが、ミステリ作品の邦訳はなさそうである。 戦後スペインのミステリ作家たち ローベール・ドゥルーズ「スペインのミステリー小説」によれば、第二次世界大戦後のスペインで出版されていたミステリは英米作品の翻訳ばかりで、1953年にマリオ・ラクルース(Mario Lacruz、1929-2000、スペイン語版Wikipedia)が『無実』(El inocente)を発表するまで、スペイン国内に特筆すべき作品は生まれなかった。そして1970年代初頭になって、スペインのハードボイルド小説の父とされるマヌエル・バスケス・モンタルバン(Manuel Vázquez Montalbán、1939-2003、Wikipedia)が登場し、スペインのミステリ小説は本当の意味で開花することになったという。モンタルバンの《私立探偵カルバイヨ》シリーズの作品はフランス推理小説大賞(翻訳作品部門)やドイツ・ミステリ大賞(翻訳作品部門)、スウェーデン推理作家協会が優れた翻訳小説に送るマルティン・ベック賞などを受賞しており、スペイン国外でも評価が高い。日本では1980年代に《私立探偵カルバイヨ》シリーズの長編『楽園を求めた男』、『死の谷を歩む男』(以上2点、創元推理文庫)、『中央委員会殺人事件』(西和書林)の3作品が翻訳出版されている。 井上知「世界のミステリ雑誌 各国ミステリ雑誌大紹介 スペイン」によれば、スペインミステリ界の大御所といえば、《私立探偵カルバイヨ》シリーズのマヌエル・バスケス・モンタルバンと、1980年代から《メンデス警視》シリーズを発表しているフランシスコ・ゴンサレス・レデスマ(Francisco González Ledesma、1927-2015、スペイン語版Wikipedia)の二人だという。ゴンサレス・レデスマの作品は邦訳はないようだが、調べてみると2003年のスペイン語ハメット賞を受賞しており、ほかにフランス・ミステリ批評家賞を1993年と2007年の二度受賞していたりと、国境を越えて人気のある作家のようだ。 なお、バスケス・モンタルバンやゴンサレス・レデスマに先駆けてミステリを発表していた作家にガルシア・パボン(García Pavón、1919-1989、スペイン語版Wikipedia)がいる。田舎の警察署の名物署長プリニオを探偵役とするユーモアミステリを執筆した。邦訳のある『雨の七日間』(1984年、西和書林)はプリニオシリーズの1編である。 同時期にはほかにどんなミステリ作家がいたのだろうか。ドゥルーズ「スペインのミステリー小説」では、以下5人の推理作家が紹介されている。 ハウメ・フステール(Jaume Fuster、1945-1998、スペイン語版Wikipedia) ※スペイン語(カスティーリャ語)ではなくカタルーニャ語で執筆する作家? フアン・マドリード(Juan Madrid、1947- 、スペイン語版Wikipedia) エドゥアルド・メンドサ(Eduardo Mendoza Garriga、1943- 、スペイン語版Wikipedia) アンドレウ・マルティン(Andreu Martín、1949- 、スペイン語版Wikipedia)スペイン語ハメット賞を3度受賞(1989、1993、2001年) フアン・アントニオ・デ・ブラース(Juan Antonio de Blas、1942- 、スペイン語版Wikipedia) このうち、エドゥアルド・メンドサは『奇蹟の都市』(国書刊行会、1996年)が邦訳出版されているが、これはミステリではなさそうである。メンドサの未邦訳の「mad detective」シリーズは、捜査への協力を条件に精神病院から連れ出された名無しの「mad detective」が探偵役を務める、探偵小説とゴシック小説の雰囲気を併せ持ったパロディ的シリーズであるらしい。シリーズ第1作の"El misterio de la cripta embrujada"は1979年発表。その後、1982年に第2作、2001年にシリーズ第3作を発表。最新のシリーズ第4作"El enredo de la bolsa y la vida"は2012年に刊行された。 【2013年4月1日追記】翻訳ミステリー大賞シンジケートに掲載された柳原孝敦氏の連載エッセイ「黒、ただ一面の黒」の「第1回 なんだかおかしな黒:エドゥアルド・メンドサ」(2013/04/01)で、この名無しの探偵シリーズの第4作(2012)が紹介されている。柳原氏はシリーズ名を「名もなき探偵」シリーズとし、第1作のタイトルを『魔の地下納骨堂の謎』、第4作のタイトルを『銀行強盗と人生はややこしい』と訳している。 ドゥルーズ「スペインのミステリー小説」ではほかに、ガルシア、ドミンゲス、レヴェ((ママ))ルテという作家の名も挙げられているが、ファミリーネームしか示されていないので詳細は分からない。 現代スペインのミステリ作家たち 1990年代にはアルトゥーロ・ペレス・レベルテ(1951- )の作品の邦訳が始まった。 アルトゥーロ・ペレス・レベルテのミステリ作品の邦訳原著1990年:『フランドルの呪画(のろいえ)』(1995年、集英社/2001年、集英社文庫) 原著1993年:『呪(のろい)のデュマ倶楽部』(1996年、集英社) - 映画化に合わせて『ナインスゲート』に改題して文庫化(2000年、集英社文庫) 原著1995年:『サンタ・クルスの真珠』(2002年、集英社) 原著2002年:『ジブラルタルの女王』(上下巻)(2007年、二見文庫) 原著2006年:『戦場の画家』(2009年、集英社文庫) ペレス=レベルテはジャーナリスト出身の小説家。上に示した歴史ミステリ小説の邦訳のほか、少年向け歴史小説シリーズ《アラトリステ》の邦訳がある(《アラトリステ》邦訳版公式サイト)。『呪のデュマ倶楽部』は1999年にフィンランド・ミステリ協会賞(外国作家部門)を受賞している。 カルロス・ルイス・サフォン(1964- )が2001年に発表した『風の影』は2006年に集英社文庫で邦訳版が出ると、《『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10》第1位、《『週刊文春』ミステリーベスト10》第2位、『このミステリーがすごい!』第4位など高い評価を得た。2012年7月には同シリーズの第2弾『天使のゲーム』(集英社文庫)も邦訳されている(2012/07/20加筆)。こちらは《『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10》で第2位、『このミステリーがすごい!』で第9位、《『週刊文春』ミステリーベスト10》で第10位にランクインした。 ほかに21世紀に入ってからは、ホセ・カルロス・ソモサ(1959- )の『イデアの洞窟』(邦訳2004年、文藝春秋)やフリア・ナバロ(1953- )の『聖骸布血盟』(邦訳2005年、ランダムハウス講談社文庫)、フアン・ボニージャ(1966- )の『パズルの迷宮』(邦訳2005年、朝日出版社)、サンティアーゴ・パハーレス(1979- )の『螺旋』(邦訳2010年、ヴィレッジブックス)、『キャンバス』(邦訳2011年、ヴィレッジブックス)が出ている。ホセ・カルロス・ソモサは別の作品で2002年のスペイン語ハメット賞を受賞している。 また、フランシスコ・アヤラ『仔羊の頭』(邦訳2011年、現代企画室)に収録の短編「言伝(メンサヘ)」はミステリの手法を使った作品だという(参照:逢坂剛による書評「スペイン内戦の悲惨 鋭く描く」朝日新聞2011年5月29日)。 ここ数年、北欧ミステリが日本ミステリ界を席捲している。スペインやポルトガル、イタリア、ギリシャなどの南欧ミステリが日本ミステリ界を席捲する日は来るのだろうか。 未訳の作家たち スペインの最近のミステリ作家にはほかにどんな作家がいるのだろうか。『ミステリマガジン』の洋書案内〈世界篇〉コーナーは非英語圏のミステリを紹介するコーナーで、2008年1月号でコーナーが始まって以来、スペインのミステリ小説が3度紹介されている(「『ミステリマガジン』洋書案内〈世界篇〉で紹介された本とその邦訳状況」参照)。 2009年5月号:スサーナ・フォルテス『クアトロチェント』(2007年) 紹介者:宮崎真紀 2010年9月号:アンヘラ・バルベイ『詩人殺人事件』(2008年) 紹介者:井上知 2011年2月号:ドミンゴ・ビリャール『水の眼』(2006年) 紹介者:井上知 ※スペイン北西部で使用されているガリシア語で執筆する推理作家 この3人の作家のうち、ドミンゴ・ビリャールは別の作品が2011年の英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞の候補になっている。 アメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen s Mystery Magazine』には非英語圏の短編ミステリを英訳掲載する「Passport to Crime」コーナーがある(2003年6月号開始、毎号掲載)(日本からは法月綸太郎、光原百合、伊坂幸太郎、横山秀夫、長岡弘樹の作品が掲載されている)。全部は調べていないが、スペインの作家では以下の2人が見つかった(2005年1月号~2008年1月号は確認していない)。 2010年9・10月号:Marc R. Soto(1976- 、スペイン語版Wikipedia) 2012年3・4月号:Teresa Solana ※スペイン東部で使用されているカタルーニャ語で執筆する推理作家2012年3・4月号に掲載されたTeresa Solanaの"Still Life No. 41"は、2013年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)エドガー賞最優秀短編賞にノミネートされた(受賞作の発表は2013年5月2日)。 スペインのミステリ雑誌 井上知「世界のミステリ雑誌 各国ミステリ雑誌大紹介 スペイン」では2002年創刊のミステリ雑誌『PRÓTESIS』が紹介されている。ほぼ年に1回の発行で、2008年までに6冊刊行されているとこの記事では紹介されているが、グーグル検索と機械翻訳に頼って調べてみると今年の3月には7号が出たようで、かろうじて継続中のようである。なお、「こちら」がこの雑誌のWebサイトのようだ。また、同記事では季刊のWebマガジン『Revista .38』が2008年6月に創刊され、第2号まで刊行されていると紹介されている。誌名で検索するとすぐに「サイト」が見つかったが、どうやら2008年12月の第3号が最後になってしまったようである。 スペインの非スペイン語ミステリ ところで、スペインではいわゆる「スペイン語」だけが使用されているわけではない。スペイン語(カスティーリャ語)はスペイン全域の公用語となっているが、それ以外にも、スペイン語によく似た言語であるカタルーニャ語とガリシア語、そしてスペイン語とはまったく系統の異なる言語であるバスク語が地方の公用語となっている。そして今までに何度か言及したが、地方公用語であるカタルーニャ語やガリシア語でもミステリが書かれている(バスク語で書かれたミステリもおそらくあるだろう)。カタルーニャ語版Wikipediaには「カタルーニャの推理小説」(Novel·la detectivesca catalana)というページがあり、カタルーニャ語圏の推理小説の歴史がまとめられている。 カタルーニャ語で書くミステリ作家の作品の邦訳は、マリア・アントニア・オリベール(Maria Antònia Oliver、1946- 、カタルーニャ語版Wikipedia)の短編「どこにいるの、モニカ」(サラ・パレツキー編『ウーマンズ・アイ』下巻、ハヤカワ・ミステリ文庫、1992年)がある。この邦訳書での著者名表記はマリア・アントニア・オリヴァー。 (2)スペイン語を公用語とする中南米諸国のミステリ 中南米の多くの国ではスペイン語が公用語になっている。 早川書房の『ミステリマガジン』では、2012年2月号のアジアミステリ特集が好評だったことを受け、今度は南米やアフリカのミステリの特集を組むことも考えているという(2012年3月号の編集後記参照)。ぜひとも南米ミステリ特集号の実現を期待したいものである。 アルゼンチン アルゼンチンの推理小説への日本での言及は、おそらく『探偵作家クラブ会報』第27号(1949年8月)に掲載の記事、島田一男「世界の四隅」が最初だろう。この記事はアメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen s Mystery Magazine』の1948年8月号すなわち《世界のミステリ》特集号の内容を紹介するものである。当時『EQMM』で実施されていた短編ミステリ・コンテストでは応募作品の言語を英語に限定しておらず、第3回のコンテストではヨーロッパや南米、さらには日本や中国、フィリピンなど世界各地から応募原稿が集まった。この1948年8月号は第3回コンテストの入選作5作(オーストラリア、アルゼンチン、南アフリカ共和国、ポルトガル、フィリピン)および、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ベルギー、イタリア、ハンガリー、ソ連、チェコスロバキアの9か国の代表作品、計14作品を掲載している。入選作にはエラリー・クイーンによるその国のミステリ事情の紹介文が添えられており、島田一男はそれを抄訳しつつ、いくつかの国のミステリ事情を紹介している。以下にアルゼンチンについての箇所を引用する。 アルゼンチンでは探偵小説がかなり古い歴史を持っているようである。それは探偵小説というより怪奇小説乃至は幻想小説と称すべきものであるかも知れぬが、アルゼンチン文壇の一つの存在に、謎を中心とした文学が認められていることは事実である。 コンテストの入選者ジョルジ・ボルゲスの如きも、詩人であり評論家であり、更に探偵作家として既に十余年に亘る名声を維持している。彼は終始一貫迷路を題材にした探偵小説を書き、読者の拍手を浴びているということで、処女作は一九三三年の十一月発表した“迷路の神”【注】そしてコンテストに入選したのは“迷路の花園”――流石に十余年の筆は光り、一番面白く読まされた。 ここで名前が出てくるジョルジ・ボルゲスというのが、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Jorge Luis Borges、1899-1986、Wikipedia)のことであるのはいうまでもないだろう。第3回短編ミステリ・コンテストに入選したボルヘスの作品は、アンソニー・バウチャーの英訳で『EQMM』に掲載された。引用文中では入選作のタイトルは「迷路の花園」とされているが、今日では「八岐(やまた)の園」が一般的な訳である。 「八岐(やまた)の園」(1941)および、ボルヘスの代表的なミステリ作品である「死とコンパス」(1942)、そして推理小説仕立ての「裏切り者と英雄のテーマ」(1944)の3編は岩波文庫の『伝奇集』で読むことができる。ほかに推理小説仕立ての作品としては、「アベンハカーン・エル・ボハリーおのれの迷宮にて死す」、「エンマ・ツンツ」などがある。この2編は『不死の人』(土岐恒二訳、白水社)または『エル・アレフ』(木村榮一訳、平凡社)で読める。『不死の人』と『エル・アレフ』は表題作が違っているが、どちらも短編集"El Aleph"(1949)を訳したものである。 ボルヘスは推理小説の愛読者で、1943年と1952年には友人のアドルフォ・ビオイ=カサーレス(Adolfo Bioy Casares、1914-1999、スペイン語版Wikipedia)とともに『推理小説傑作選』を編んでいる。収録内容は「本棚の中の骸骨:藤原編集室通信」の「ボルヘス&ビオイ=カサーレス編 『傑作探偵小説集』」で紹介されている。 1942年、アルゼンチンで『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』(邦訳2000年)という短編ミステリ集が刊行されている。無実の罪で刑務所に捕らえられているドン・イシドロ・パロディを探偵役とする短編を6編収録したもので、著者の名義はH・ブストス=ドメック。当初は秘密にされていたが、これはボルヘスとビオイ=カサーレスの合作ペンネームで、ブストスはボルヘスの曽祖父の名前、ドメックはビオイ=カサーレスの曽祖父の名前だった。日本では長らく邦訳が待望されており、2000年についに邦訳が出ると、『本格ミステリ・ベスト10』で第1位という高い評価を得た。邦訳書の解説によると、ドン・イシドロ・パロディが登場する作品はほかに、二人がB・スアレス=リンチのペンネームで出版した中編小説『死のための計画』(1946年)があるそうだ。この作品も、「一応推理小説という形を取ってはいる」とのこと。二人の合作にはほかに、『ブストス=ドメックのクロニクル』(原著1967年/邦訳1977年、国書刊行会)などがある。 一方でビオイ=カサーレスには、妻のシルビーナ・オカンポ(Silvina Ocampo、1903-1993、スペイン語版Wikipedia)と合作した長編ミステリ『愛するものは憎む』(Los que aman, odian、1946年)などの作品もあるそうだ。この作品は邦訳はないが、『ミステリマガジン』2010年12月号の洋書案内〈世界篇〉で垂野創一郎氏がレビューを書いている。ビオイ=カサーレスの単著の邦訳には、『モレルの発明』や『脱獄計画』などがある。シルビーナ・オカンポも短編が何編か邦訳されている。 ボルヘスの親友であったマヌエル・ペイロウ(Manuel Peyrou、1902-1974、スペイン語版Wikipedia)も探偵物の短編集『眠れる刀』(La espada dormida、1945年)やサスペンス・スリラー『薔薇の雷鳴』(El estruendo de las rosas、1948年)を発表しているようだが、これらの作品の邦訳はない。ペイロウの作品の邦訳には、「ジュリエットと奇術師」(『魔術ミステリ傑作選』創元推理文庫、1979年)と、「わが身にほんとうに起こったこと」(『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』角川文庫、2001年 等)がある。 【注】一般的な邦題は「迷宮の神」。この作品は実在しない。ボルヘスは架空の人物の架空の作品に関する書評「ハーバート・クエインの作品の検討」を発表しているが、「迷宮の神」はその書評で言及されている作品で、ハーバート・クエインが1933年11月に発表したとされている推理小説である。クエインのデビュー作でもある。ボルヘスの処女作が「迷宮の神」だと紹介したのはエラリー・クイーンのジョークだったのだろうか。あるいは、応募短編に付した経歴にボルヘス自身がジョークを交えていたのかもしれない。 ボルヘス、ビオイ=カサーレス以後 ボルヘスやビオイ=カサーレス、ペイロウといったアルゼンチンミステリの草創期の作家たちののち、21世紀になるまでにどのような推理作家がいたのかは分からない。この時期のアルゼンチンのミステリ作品で邦訳されているのは、マルコ・デネービ(Marco Denevi、1922-1998、スペイン語版Wikipedia)が1960年に発表した『秘密の儀式』(Ceremonia secreta)ぐらいだろう。この作品は1968年にイギリスで製作されたスリラー映画『Secret Ceremony』の原作である。邦訳は1985年に西和書林から出ている。 21世紀のアルゼンチンミステリで邦訳のある作品には、ギジェルモ・マルティネス(Guillermo Martínez、1962- 、Wikipedia)の『オックスフォード連続殺人』(原著2003年/邦訳2006年)、『ルシアナ・Bの緩慢なる死』(原著2007年/邦訳2009年)、パブロ・デ・サンティス(Pablo De Santis、1963- 、Wikipedia)の『世界名探偵倶楽部』(原著2007年/邦訳2009年)がある。 最近では、「「アルゼンチン・ノワール」の旗手による異色作」という宣伝文句のカルロス・バルマセーダ(Carlos Balmaceda、1954-)『ブエノスアイレス食堂』(原著2005年/邦訳2011年、白水社)が刊行されている。カルロス・バルマセーダは初の長編作品『透視者の祈り』(未訳)で、スペイン語で書かれた新人の長編ミステリの年間最優秀作品に与えられるシルベリオ・カニャーダ記念賞を受賞している。 アメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen s Mystery Magazine』の「Passport to Crime」コーナーで最近英訳紹介されたアルゼンチンの作品には、ボルヘスの「死とコンパス」(2008年8月号[再録?])や、その作品へのオマージュであるChristian X. Ferdinandusの「The Center of the Web」(2008年6月号)がある。Christian X. Ferdinandusは、Christian MitelmanとFernando Sorrentino(英語版Wikipedia)が合作する際のペンネームである。また、「Passport to Crime」コーナーの短編を集めたアンソロジー『Passport to Crime』(2007年1月)にはアルゼンチンからはマルコ・デネービとIsaac Aisembergの作品が収録されている。 エドゥアルド・サチェリ(Eduardo Sacheri、1967- 、スペイン語版Wikipedia)の2005年の長編小説"La pregunta de sus ojos"は邦訳はないが、2009年に『瞳の奥の秘密』(El secreto de sus ojos)というタイトルで映画化されており、日本でも公開された。このミステリー映画はアカデミー賞の外国語映画賞を受賞している。 アルゼンチン文学のなかのミステリ 鼓直(つづみ ただし)氏の「今、アルゼンチン文学がおもしろい!」(New Spanish Books JP)によると、メンポ・ヒャルディネジ(Mempo Giardinelli、1947- 、スペイン語版Wikipedia)の『熱い月』(Luna caliente、1983年)やリカルド・ピグリア(Ricardo Piglia、1940- 、スペイン語版Wikipedia)の『現ナマは燃やせ』(Plata quemada、1997年)、マヌエル・プイグ(Manuel Puig、1932-1990、Wikipedia)の『ブエノスアイレス事件』は推理小説に属するといっていい作品だという。このうちリカルド・ピグリアは2011年のスペイン語ハメット賞を受賞している。 メキシコ メキシコのミステリの歴史については、佐藤勘治「メキシコ・ミステリ事情:タイボ二世成功の理由」(『ミステリマガジン』1999年3月号)が詳しい。それによれば、メキシコでは1940年代に欧米のミステリが紹介され、メキシコ人による推理小説も発表されるようになった。ロドルフォ・ウシグリ(Rodolfo Usigli、1905-1979、Wikipedia)の『犯罪のリハーサル』(Ensayo de un Crimen、1944年)はメキシコミステリ黎明期の代表作だという。この小説はルイス・ブニュエルが脚色し、『アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生』として映像化されているようだ。 その後、ラファエル・ベルナル(Rafael Bernal、1915-1972、スペイン語版Wikipedia)がアメリカのハードボイルド小説の影響を受けた作品を発表した。代表作の『モンゴルの陰謀』(El complot mongol、1969年)はメキシコシティの中国人居住区を舞台に、国の要請を受けたメキシコの調査員が中国の関係する国際的陰謀を追う作品だという。 1970年代になると、初めて商業的に成功をおさめるメキシコ人推理作家が現れる。それがパコ・イグナシオ・タイボ二世(Paco Ignacio Taibo II、1949- 、Wikipedia)である。タイボ二世の作品の邦訳は、《探偵ベラスコアラン・シェイン》シリーズの『三つの迷宮』(邦訳1994年、“ポケミス”で刊行された唯一のスペイン語圏ミステリ)と、ノンシリーズ作品の『影のドミノ・ゲーム』(邦訳1995年、創元推理文庫)がある。タイボ二世は国際推理作家協会の創設メンバーの一人で、二代目の会長にもなっている。国際推理作家協会については後述する。タイボ二世はスペイン語ハメット賞を3度受賞している(1988、1991、1994年)。 メキシコの作品では、セルヒオ・ピトル『愛のパレード』(邦訳2011年、現代企画室)の日本での宣伝文句が「ナンセンスな不条理、知的な諧謔に満ちた多声的(ポリフォニック)な、瞠目すべき〈疑似〉推理小説」とされている。 関連ページ(当サイト内)シャーロック・ホームズの異郷のライヴァルたち(6) ラテンアメリカ編(1)メキシコの怪盗紳士、マキシモ・ロルダン 関連リンク佐藤勘治「メキシコ・ミステリ事情:タイボ二世成功の理由」 「【毎週更新】月替わり翻訳者エッセイ 懐かしきもの(執筆者・田中一江) 第2回」(2012年1月23日、翻訳ミステリー大賞シンジケート) ※『影のドミノ・ゲーム』の翻訳のころを回想したエッセイ キューバ キューバのミステリの主な邦訳ベゴーニャ・ロペス(1923-1989)『死がお待ちかね』(邦訳1989年、文藝春秋) ダニエル・チャヴァリア(1933- )『バイク・ガールと野郎ども』(邦訳2002年、ハヤカワ・ミステリ文庫)この作者は1992年のスペイン語ハメット賞を受賞している。 アルナルド・コレア(1935- ) 『キューバ・コネクション』(邦訳2007年、文春文庫) ※著者が初めて英語で書いた作品 ホセ・ラトゥール(1940- )『追放者』(邦訳2001年、ハヤカワ・ミステリ文庫)、『ハバナ・ミッドナイト』(邦訳2003年、ハヤカワ・ミステリ文庫)『追放者』は著者が初めて英語で書いた作品。『ハバナ・ミッドナイト』も英語で書かれたもの。 『追放者』は1999年に英語で発表されたのち、2002年にスペイン語でも発表されている。このスペイン語版は2003年のスペイン語ハメット賞を受賞した。 レオナルド・パドゥーラ(1955- )『アディオス、ヘミングウェイ』(邦訳2007年、ランダムハウス講談社文庫)『アディオス、ヘミングウェイ』は刑事(元刑事)マリオ・コンデ・シリーズの第5作。このシリーズの第4作と第6作はそれぞれ1998年と2006年のスペイン語ハメット賞を受賞している。 キューバのミステリはある程度邦訳があるようだが、その歴史については分からない。ベゴーニャ・ロペス『死がお待ちかね』は文藝春秋が主催していたサントリーミステリー大賞の第7回の大賞受賞作である。この賞は日本語以外での応募も許可していたらしく、この作品はスペイン語で執筆された作品であるらしい。大賞を受賞し、1989年に邦訳出版された。 アルナルド・コレアは邦訳書『キューバ・コレクション』の巻末解説(北上次郎)によれば、「キューバ犯罪小説を勃興させた三人の作家のうちの一人とみなされている」とのことだが、ほかの二人が誰なのかは書かれていない。 レオナルド・パドゥーラに関しては、未訳のスペイン語作品を紹介するサイト「New Spanish Books」のこちらのページで、2011年発表の未訳作品『蛇の尾』(La cola de la serpiente)の詳細なあらすじ紹介を見ることができる。また、毎日新聞の「新世紀・世界文学ナビ スペイン語圏/16 レオナルド・パドゥーラ」でもこの作家が紹介されている。 アメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen s Mystery Magazine』の「Passport to Crime」コーナーで翻訳紹介されたキューバの作家には以下の2人がいる(2005年1月号~2008年1月号は確認していない)。 Luis Adrián Betancourt (2004年3・4月号、2009年3・4月号、2011年6月号) Rodolfo Pérez Valero (2008年3・4月号) このうち、Luis Adrián Betancourtの2004年3・4月号の作品「Guilty」はアンソロジー『Passport to Crime』(2007年1月)に収録された。Rodolfo Pérez Valero(ロドルフォ・ペレス・バレロ、スペイン語版Wikipedia)は国際推理作家協会の創設メンバーの一人である。 その他 ウルグアイの作家で熱烈なレイモンド・チャンドラー愛好家であるイベア・コンテリース(Hiber Conteris)の『マーロウ もう一つの事件』(原著1985年/邦訳1988年)が角川文庫より刊行されている。 また、2003年に邦訳されたコロンビアのホルヘ・フランコ(Jorge Franco、1962- 、スペイン語版Wikipedia)の『ロサリオの鋏』は、2000年のスペイン語ハメット賞受賞作である(邦訳書の著者紹介では「ハムレット国際小説賞」とされている)。この作者の作品の邦訳はほかに、『パライソ・トラベル』がある。 『ミステリマガジン』2011年9月号に、2010年にイギリスで翻訳出版された非英語圏ミステリの一覧が掲載されている(イギリスのミステリ情報サイトeurocrimeが調べたもの)。それによると、2010年にはイギリスでスペインのミステリは1冊も翻訳されていないが、中南米のミステリは4冊が翻訳出版されている(ちなみに、このリストに載っている日本の作品は吉田修一『悪人』のみである)。 アルゼンチン:パブロ・デ・サンティス『Voltaire's Calligrapher』 アルゼンチン:Ernesto Mallo『Needle in a Haystack』 ※2011年英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞候補作 チリ:ロベルト・ボラーニョ『The Skating Rink』 ※『通話』、『野生の探偵たち』、『2666』の邦訳あり ペルー:Santiago Roncagliolo『Red April』 ペルーの作家では、Alonso Cueto(スペイン語版Wikipedia)の作品が米国『EQMM』2010年5月号の「Passport to Crime」コーナーで英訳紹介されている。 (3)スペイン語圏のミステリの祭典《セマナ・ネグラ》 スペイン語圏のミステリの祭典である《セマナ・ネグラ》について説明するには、まず国際推理作家協会の創設に言及する必要がある。 タイボ二世らによる国際推理作家協会の創設 1986年、世界中のミステリ作家の親睦と翻訳出版の促進を目的とする国際推理作家協会が創設された。中心になったのは中南米やソ連のミステリ作家たちである。1987年2月末にメキシコで発足準備会議が開かれ、14か国のミステリ作家が参加。初代会長はソ連のユリアン・セミョーノフ、副会長(3人)はメキシコのパコ・イグナシオ・タイボ二世、アメリカのロジャー・L・サイモン、スペインのマヌエル・バスケス・モンタルバン【注】。主任書記はキューバのロドルフォ・ペレス・バレロ。理事はフランスのジャン=パトリック・マンシェット、イギリスのジュリアン・シモンズら。日本のミステリ作家では、『大いなる幻影』(The Master Key)と『猟人日記』(Lady Killer)の英訳が好評を博していた戸川昌子が協会側から打診を受け、日本代表理事となっている。 1987年6月にヤルタ(当時はソ連、現在はウクライナ)で行われた国際推理作家協会の第1回会議には、北米のアメリカ、カナダ、欧州のイギリス、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ポーランド、チェコスロバキア、ブルガリア、フィンランド、中南米のメキシコ、キューバ、アルゼンチン、グアテマラ、そして日本と開催国のソ連の計17か国のミステリ作家が集まった。日本代表の戸川昌子は日本推理作家協会の中島河太郎理事長(当時)のメッセージのロシア語訳を読みあげ、たくさんの拍手をもらったという。 国際推理作家協会の年1回の会議は今でも行われている。近年は日本からはミステリ評論家の松坂健氏が毎年参加しており、『ミステリマガジン』誌上にレポートを書いている(2007年12月号、2008年11月号、2009年10月号、2010年9月号、2011年9月号)。2011年の会議についての簡単なレポートは日本推理作家協会会報2011年8月号(リンク)にも掲載されている。2012年2月には東京での国際推理作家協会非公式ミーティングが予定されていたが、原発事故のため延期となった。 【注】木村二郎「国際犯罪作家協会(IACW)発足?」ではこの3人が副会長とされているが、オットー・ペンズラー「Crime Column #67 国際犯罪作家協会、チェス……」では副会長とされているのはタイボ二世とロジャー・L・サイモンの2人で、モンタルバンの名は挙げられていない。 世界中のミステリ小説の年間ベストを決定するハメット賞の構想 国際推理作家協会の創設時には、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語およびその他の言語で出版された長編ミステリの中から年間の最優秀作品を選出するダシール・ハメット賞が構想されていた(「その他の言語」の作品は推薦があれば候補にするとされた)。第1回の受賞作は1987年10月のフランクフルト国際ブックフェアで発表されるとされていたが、実際に発表されたのかどうかは分からない。仮にこのような賞を実現させようとしたらその苦労は並大抵のものではないだろう。現在、「ハメット賞」としては国際推理作家協会北米支部が主催するハメット賞が知られているが、これはいってみれば、当初構想されていたハメット賞の地区予選のようなものである。 日本ではハメット賞といえば普通、この国際推理作家協会北米支部のハメット賞のことを指すが、スペイン語作品を対象とするハメット賞も国際推理作家協会の主催で毎年実施されているようである(後述のミステリ大会《セマナ・ネグラ》で受賞作が発表される)。今までにパコ・イグナシオ・タイボ二世やダニエル・チャヴァリア、レオナルド・パドゥーラらが受賞している。国際推理作家協会北欧支部のスカンジナヴィア推理作家協会は、北欧5か国の長編ミステリから年間の最優秀作品を選出する「ガラスの鍵賞」を主催している。賞の名前に『ガラスの鍵』というハメットの作品タイトルが使われているのは、国際推理作家協会がその規定(リンク)で、それぞれの支部の賞はダシール・ハメットに関する名称にすることが望ましいとしているからである。 北米支部のハメット賞、スペイン語圏のハメット賞、北欧支部のガラスの鍵賞などの「地区予選」を勝ち抜いた作品で本選が実施される日が来るのかは分からない。 なお、国際推理作家協会が創設した賞にはハメット賞以外にアレクセイ・トルストイ賞とロドルフォ・ウォルシュ賞がある。アレクセイ・トルストイ(1883-1945、日本語版Wikipedia)はロシアの冒険小説・探偵小説・SF小説作家。その名を冠したアレクセイ・トルストイ賞はミステリの分野での功績を称える功労賞で、1987年6月のヤルタの会議で決定した第1回の受賞者はジョルジュ・シムノンだった。 ロドルフォ・ウォルシュ(Rodolfo Walsh、1927年生、スペイン語版Wikipedia)は全体主義政府の追及を受けて消息を絶ったアルゼンチンのジャーナリストで、ロドルフォ・ウォルシュ賞は調査報告を主眼とするノンフィクションに与えられるとされた。前述のヤルタの会議では候補作としてジョゼフ・ウォンボー『メキシコ国境の影』(邦訳1987年、早川書房)などが挙がったそうだが、その後受賞作が決定したのかは分からない。 ミステリの祭典《セマナ・ネグラ》 スペイン北部のヒホンという町では毎年夏にセマナ・ネグラ(Semana Negra de Gijón、ヒホンの黒週間)というミステリ大会が行われている【注】。このイベントはヒホン出身のメキシコの推理作家、パコ・イグナシオ・タイボ二世の発案により始まったもので、もとは国際推理作家協会の主催するイベントだったようだが、現在どういう位置づけになっているのかはよく分からない。現在はミステリに限らず、さまざまなジャンル小説のファンが集うイベントになっているようだ。10日間の会期にのべ100万人の参加者が集うヨーロッパでも有数のイベントだという。前述のスペイン語圏のミステリを対象とするハメット賞やシルベリオ・カニャーダ記念賞の受賞作の発表はこの大会中に行われる。 第1回大会は1988年6月29日から7月6日にかけて開催され、英語圏のミステリ作家も特別ゲストとして多数参加した。国際推理作家協会の理事会も同時に開催されている。 なお、『ブエノスアイレス食堂』の著者のカルロス・バルマセーダはアルゼンチン・ブエノスアイレス州の都市マル・デル・プラタでセマナ・ネグラの南米版とでもいうべきミステリ大会《黒玉フェスティバル》(Festival Azabache)を主催している。 【注】セマナ・ネグラは日本語では「ヒホン・ノワール週間」という訳語が使われる場合もある。スペイン語のネグラ(黒)はフランス語のノワール(黒)に対応し、ミステリ全般を指す形容詞としても使われる。 関連リンクセマナ・ネグラ公式サイト Semana Negra de Gijón - Wikipedia - セマナ・ネグラのスペイン語版Wikipedia記事 Premio Hammett - Wikipedia - セマナ・ネグラで受賞作が発表されるハメット賞のスペイン語版Wikipedia記事 シルベリオ・カニャーダ記念賞(Premio Memorial Silverio Cañada) ※この表は2013年3月16日に追加 年 受賞者 作品 国 2002 Sergio Álvarez La lectora コロンビア 2003 カルロス・バルマセーダ La plegaria del vidente アルゼンチン 2004 Juan Aparicio Belmonte Mala suerte スペイン 2005 Francisco Pérez Gandul Celda 211 スペイン 2006 Bernardo Fernández Tiempo de Alacranes メキシコ 2007 Ernesto Mallo La aguja en el pajar アルゼンチン 2008 Carlos Salem Camino de Ida アルゼンチン 2009 Rogelio Guedea Conducir un tráiler メキシコ Willy Uribe Sé que mi padre decía スペイン 2010 Gregorio Casamayor La sopa de Dios スペイン 2011 Javier Calvo Corona de flores スペイン 2012 Enrique Ferrari Que de lejos parecen moscas アルゼンチン ペペ・カルバイヨ賞(Premi Pepe Carvalho)※スペイン語ではなくカタルーニャ語表記 ※この賞については2013年5月10日に追加 マヌエル・バスケス・モンタルバンが生んだ私立探偵ペペ・カルバイヨの名を冠した賞。推理作家の生涯の業績に対して贈られる賞で、バルセロナのミステリ祭《BCNegra》で2006年より授与されている。《BCNegra》が始まったのは2005年。毎年2月開催。 第1回(2006年) Francisco González Ledesma (フランシスコ・ゴンサレス・レデスマ) スペイン 第2回(2007年) ヘニング・マンケル(Henning Mankell) スウェーデン 第3回(2008年) P・D・ジェイムズ(P. D. James) 英国 第4回(2009年) マイクル・コナリー(Michael Connelly) 米国 第5回(2010年) イアン・ランキン(Ian Rankin) 英国 第6回(2011年) Andreu Martín (アンドレウ・マルティン) スペイン 第7回(2012年) Petros Markaris (ペトロス・マルカリス) ギリシャ 第8回(2013年) マイ・シューヴァル(Maj Sjöwall) スウェーデン (年は贈呈の年を示す。受賞者の発表はその前年) 《BCNegra》公式サイト 2012年のプログラム ガルシア・パボン賞 ※この賞については2013年5月10日に追加 Premio de Narrativa Francisco García Pavón Premio de Novela Negra Francisco García Pavón Premio de Novela Francisco García Pavón de Tomelloso スペインのミステリ創作の先駆者であるガルシア・パボンの名を冠した長編ミステリの公募賞。ガルシア・パボンの出身地であるトメジョーソ市(Tomelloso)が主催。受賞作は出版される。賞金7500ユーロ(第16回)。毎年7月に受賞作が発表され、10月に発売される。第10回(2007年)からRey Learが出版。 第6回(2003年) José Luis Muñoz Lluvia de níquel 第7回(2004年) Raúl Argemí Patagonia Chu Chu 第8回(2005年) José Javier Abasolo Antes de que todo se derrumbe 第9回(2006年) Francisco Balbuena El oráculo de la tortuga 第10回(2007年) Paco Piquer Vento El caso del cadáver sonriente (出版社) 第11回(2008年) Robert Lozinski La ruleta chechena (出版社) 第12回(2009年) Mariano Sánchez Soler Nuestra propia sangre (出版社) 第13回(2010年) Manuel Nonídez Frío de muerte (出版社) 第14回(2011年) Alejandro M. Gallo Asesinato en el Kremlin (出版社) 第15回(2012年) 受賞作なし (4)ポルトガル語圏のミステリ このページのタイトルは「スペイン語圏・ポルトガル語圏推理小説略史」としたが、ポルトガル語圏のミステリに関する日本語文献はあまり見当たらない。 ポルトガル 島田一男「世界の四隅」(『探偵作家クラブ会報』第27号、1949年8月)は前述のとおり、島田一男がアメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen s Mystery Magazine』の1948年8月号すなわち《世界のミステリ》特集号の内容を紹介する記事である。この記事ではポルトガルのミステリ事情にも言及がある。 ポルトガルでは、ドロッシー・セイヤーズ、E・C・ベントレー、H・C・ベイリー、アンソニー・バークレイ、ディクソン・カー、オースチン・フリーマン、スタンレー・ガードナー、ダシエル・ハメットの名は全く知られていない。リスボンの或る出版業者が曽つて探偵小説の廉価選書を出版したが、これによって始((ママ))めてクイーンの“変装の家”、クリスチーの“メソポタミヤの殺人”、バン・ダインの“僧正殺人事件”が紹介された。 ところで、このポルトガルからコンテストの入選者が出た。ビクター・マニュエル・ポーラ・カルモという二十六才の美術家で、装飾美術で生計を営むかたわら、探偵小説に熱中し、この探偵小説不振の国で“短篇探偵小説の歴史”という評論集を出版している。もちろん売れる筈はなく、ポーラー((ママ))の言葉によれば“探偵小説では飯が食えない”そうである。八月号に掲載された彼の作品は“金槌と剣ととがった矢”というカー張りの密室物であるが、鏡を利用したトリックで非常に程度が低い。 EQMMに「金槌と剣ととがった矢」(The Maul, the Sword, and the Sharp Arrow)を投稿したポルトガルの青年ビクター・マニュエル・ポーラ・カルモがその後どうなったのか気になったのでネット上を適当に検索してみたが、おそらくはポルトガル語版Wikipediaに項目のあるVictor Palla(1922-2006)と同一人物だろう。機械翻訳で読んでみると、どうやらその後、美術界の大物になったようである。 日本版『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の創刊号(1956年7月号)によれば、当時『EQMM』は本国アメリカ版以外に、イギリス版、カナダ版、オーストラリア版、フランス版、イタリア版、スウェーデン版、そしてポルトガル版も出版されていたという。 ◆ポルトガル・ミステリ史 (この節、2013年6月17日追加) 探偵小説の黄金時代(the Golden Age of Detection)についての英文ファンサイトで、ポルトガルの本格ミステリの歴史についての記事「Portuguese GAD」を見つけたので、それに完全に依拠する形で、ポルトガルのミステリ史を紹介する。 それによれば、ポルトガルのミステリの歴史は19世紀半ば、フランスの新聞小説の大家ウージェーヌ・シュー(Eugène Sue、1804-1857)やそのフォロワーの強い影響下に始まった。19世紀のポルトガルが生んだ偉大な作家の一人であるカミーロ・カステーロ・ブランコ(Camilo Castelo Branco、1825-1890)もその影響を受けた作家の一人で、彼の作品は「探偵小説」とはいえないが、犯罪とその解決がよく扱われている。 (カミーロ・カステーロ・ブランコの作品の邦訳には『破滅の恋 ある家族の記憶』(小川尚克訳、彩流社、2011年10月)があるが、あらすじを読む限りではミステリの要素は見当たらない。) 19世紀の最後の30年にはポーやガボリオの作品がよく読まれたが、ポルトガル人による創作探偵小説は探偵小説のパロディの形を取ることが多かった。その最初期のものとしては、エッサ・デ・ケイロース(Eça de Queirós、1845-1900)が1870年に友人の作家でガボリオファンのラマーリョ・オルティガン(Ramalho Ortigão、1836-1915)との共著で新聞連載した『シントラ通りの謎』(O Mistério da Estrada de Sintra)がある。奇怪な殺人事件の顛末をつづった新聞編集者あての書簡を掲載する、という体(てい)で連載されたもので、最終回ですべてフィクションだったと明かされるまで読者はみな現実の事件を扱ったものだと信じていたという。 (エッサ・デ・ケイロースの邦訳単行本は『縛り首の丘』(中編2編収録)、『アマーロ神父の罪』、『逝く夏 プリモ・バジリオ』があるが、これらにはミステリ要素はなさそうである。なおボルヘスは随筆で、探偵小説の発展に寄与した作家としてウィルキー・コリンズやディケンズと並べてエッサ・デ・ケイロースを挙げている。) その後、ホームズシリーズの影響がポルトガルにも波及し、マリア・オネイル(Maria O Neill、1873-1932)がSilvestre子爵シリーズ、ロシャ・マルティンス(Rocha Martins、1879-1952)がChief Jacobシリーズを書いた。また1911年にスウェーデン系ポルトガル人のGustaf Bergströmがシャーロック・ホームズのパスティーシュを収録した本を出版している。 1920年代~30年代のポルトガルの「黄金時代」探偵小説は英米仏の模倣でほとんどはつまらないものだったが、レイナルド・フェレイラ(Reinaldo Ferreira、筆名Repórter X、1897-1935)だけは例外で、くだらない作品も書いたが、魅力的な不可能犯罪物や安楽椅子探偵物も残した。フェレイラの作品はどれも型破りで、コナン・ドイルとエドガー・ウォーレス、黄金期の探偵作家、そして史上最低のミステリ作家といわれるハリー・スティーヴン・キーラーを混ぜ合わせたような作風だという(もっとも、フェレイラは彼らの作品をほとんど読んでいないらしい)。 その後ポルトガルには、José da Natividade Gaspar(1904- ??)、Fernando Luso Soares(1924-2004、ポルトガル語版Wikipedia)、Artur Varatojo(1926-2006、ポルトガル語版Wikipedia)ら、まっとうな「黄金時代」探偵作家も生まれた。1950年に翻訳物を装って出版されたJames A. Marcus『Um crime branco』(White Murder)はエラリー・クイーン風の推理が展開される本格ミステリの傑作であるらしい。Marcusはその後さらに長編3作と短編集1冊を発表しているが、それらは第1作にはおよばないという。Marcusは80年代~90年代まで、イギリスの作家だと信じられていた。 ◆ポルトガル・ミステリの邦訳 2010年には新潮文庫より、ルイス・ミゲル・ローシャ(1976- 、ポルトガル語版Wikipedia)の『P2』が刊行されている。「『ダ・ヴィンチ・コード』をも凌ぐ迫力。ヴァチカン、そしてフリーメーソンを侵蝕する闇の勢力。世界が震撼した歴史的大事件の真実を暴く!」(新潮社公式サイトより)という作品である。『ミステリマガジン』2011年9月号には前述のとおり、2010年にイギリスで翻訳出版された非英語圏ミステリの一覧が掲載されている。ポルトガルの作品では、ルイス・ミゲル・ローシャの『The Holy Assassin』(別題 The Holy Bullet)がリストに載っている。 ブラジル ブラジルは南米で唯一、ポルトガル語を公用語とする国である。 ブラジルのミステリでは、J・ソアレス(1938- 、ポルトガル語版Wikipedia)の『シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件』(講談社、1998年)が邦訳出版されている。シャーロック・ホームズが19世紀末のリオデジャネイロに赴き、難事件に挑むというパロディ作品である。邦訳書の訳者あとがきによれば、J・ソアレスは俳優、コメディアン、脚本家、コラムニストなどの多数の肩書を持つ、ブラジルでは知らない人はいないほどの著名人であるという。この作品はソアレスが初めて書いた小説だが、1995年にブラジルで出版されると大反響を呼び、ヨーロッパ諸国でも大ベストセラーになった。日本ブラジル中央協会の会報『ブラジル特報』2012年1月号に掲載された岸和田仁「ジョー・ソアレスのベストセラー小説と1930年代のリオ」によれば、寡作ながらもその後もミステリを書き続けているようである。 ブラジルのミステリはほかに、ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ(1936- )の『ボルヘスと不死のオランウータン』(邦訳2008年、扶桑社)がある。 国安真奈「懐疑主義の罠 R・フォンセーカのノワール」では、ブラジルの作家フーベン・フォンセッカ(Rubem Fonseca、1925- 、ポルトガル語版Wikipedia)が紹介されている(検索してみると、「フーベン・フォンセーカ」、「フーベン・フォンセカ」、「ルーベン・フォンセカ」といった表記も使われている)。フォンセッカは1963年デビュー。この記事によればブラジルでは1964年の軍事クーデター以来、厳しい言論弾圧が20年間続いたが、フォンセッカはその弾圧下で「都会の暴力的な人間関係を文字にし続けてきた、おそらく唯一の作家」だという。『Ellery Queen s Mystery Magazine』の「Passport to Crime」コーナーではフーベン・フォンセッカの作品は少なくとも4回(2003年8月号、2004年8月号、2008年11月号、2012年1月号)英訳掲載されている。そのうち、2004年8月号に掲載された「Winning the Game」はアンソロジー『Passport to Crime』(2007年1月)に収録された。 フォンセッカ以外のブラジルの作家では、少なくとも以下の3人が「Passport to Crime」コーナーで英訳紹介されている。 Macéias Nunes(2009年5月号) Patrícia Melo(2011年3・4月号)(ポルトガル語版Wikipedia) Luís Martins(2011年12月号) ポルトガル語圏のミステリが日本に本格的に紹介される日は来るのだろうか。 関連ページ(当サイト内)シャーロック・ホームズの異郷のライヴァルたち(6) ラテンアメリカ編(2)ホームズ風の特徴を多数持っているというブラジルのドクター・レイテ 関連リンク在日本国ポルトガル大使館>日本語に訳されたポルトガル文学 駐日ブラジル大使館>文学と書籍紹介 - 「翻訳された主なブラジル文学」のリストが見られる 参考文献 スペイン語圏Patricia Hart "The Spanish Sleuth The Detective in Spanish Fiction"(1987年) ローベール・ドゥルーズ「スペインのミステリー小説」(ローベール・ドゥルーズ『世界ミステリー百科』JICC(ジック)出版局、1992年10月、pp.243-244) 井上知「世界のミステリ雑誌 各国ミステリ雑誌大紹介 スペイン」(『ハヤカワミステリマガジン』2009年1月号、pp.32-33) 島田一男「世界の四隅」(『探偵作家クラブ会報』第27号、1949年8月、pp.2-3) ※アルゼンチン 野谷文昭「[国別・地域別/未訳ミステリ紹介]ラテンアメリカ 虚構の上に構築された知的ゲームを楽しむ」(『翻訳の世界』1991年7月号、p.55) ※アルゼンチン 佐藤勘治「メキシコ・ミステリ事情:タイボ二世成功の理由」(『ミステリマガジン』1999年3月号【特集:世界のミステリ】、pp.42-43) ポルトガル語圏島田一男「世界の四隅」(『探偵作家クラブ会報』第27号、1949年8月、pp.2-3) ※ポルトガル 国安真奈「懐疑主義の罠 R・フォンセーカのノワール」(『ユリイカ』2000年12月臨時増刊号、pp.166-167、[コラム 世界のノワール ブラジル]) 国際推理作家協会および《セマナ・ネグラ》について木村二郎「国際犯罪作家協会(IACW)発足?」『ミステリマガジン』1987年6月号、p.108 インタビュー「戸川昌子氏に聞く ヤルタの国際犯罪作家会議に招かれて」(聴き手=ミステリマガジン)『ミステリマガジン』1987年9月号、pp.170-171 オットー・ペンズラー「Crime Column #67 国際犯罪作家協会、チェス……」『ミステリマガジン』1987年11月号、pp.104-106 戸川昌子「I・A・C・W(国際犯罪小説作家協会)のこと」『日本推理作家協会会報』1987年11月号 オットー・ペンズラー「Crime Column #78 ミステリ祭「黒い週間」」『ミステリマガジン』1988年10月号、pp.104-105 - 「セマナ・ネグラ(黒い週間)」について 関連リンク G. J. Demko s Landscapes of Crime Mysteries in Foreign Lands英文だが、スペイン、アルゼンチン、メキシコ、キューバ、ブラジルのミステリおよび「スペイン語圏のミステリ」についての解説がある。 スペイン語が読める方はセルバンテス文化センター本家ウェブサイトの「Novela policiaca」もご覧ください。 関連記事 南欧ミステリ邦訳一覧 スペイン語・ポルトガル語に翻訳された日本の推理小説/ミステリ 『ラテンアメリカ・ミステリ作家ガイド』で扱われている54人の作家の一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 ソ連/ロシア推理小説略史 オランダ推理小説略史 イタリア推理小説略史 チェコ推理小説略史 インド推理小説探求・受容史
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/201.html
2012年9月1日 最終更新:2018年11月6日(ページ末尾の「更新履歴」参照のこと) 1959年4月に創刊された東京創元社、《創元推理文庫》の非英語圏作品一覧。 (「非英語圏作品」だと日本の作品も含むことになるが、日本の作品はリスト化していない。創元推理文庫で刊行された海外ミステリの非英語圏作品の一覧である。) 関連ページ:ポケミス非英語圏作品一覧(早川書房、1953年9月創刊) Index 創元推理文庫/海外ミステリ/非英語圏・非フランス語圏作品一覧 創元推理文庫/海外ミステリ/フランス語圏作品一覧 創元推理文庫/海外ミステリアンソロジー/非英語圏作品一覧 おまけ1:創元推理文庫/ホラー&ファンタジイ/非英語圏作品一覧 おまけ2:創元SF文庫/非英語圏作品一覧 参考文献 更新履歴 創元推理文庫/海外ミステリ/非英語圏・非フランス語圏作品一覧 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 原題(年) 備考 ラテンアメリカ(特記なき場合、原語はスペイン語) パコ・イグナシオ・タイボ二世(メキシコ) 影のドミノ・ゲーム 田中一江 1995年1月 Mタ2-1 Sombra De La Sombra (1986) 英語からの重訳 スウェーデン(スウェーデン語) ヤーン・エクストレム 誕生パーティの17人 後藤安彦 1987年1月 Mエ1-1 Ättestupan (1975) ヘニング・マンケル 殺人者の顔 柳沢由実子 2001年1月 Mマ13-1 Mördare utan ansikte (1991) リガの犬たち 柳沢由実子 2003年4月 Mマ13-2 Hundarna i Riga (1992) 白い雌ライオン 柳沢由実子 2004年9月 Mマ13-3 Den vita lejoninnan (1993) 笑う男 柳沢由実子 2005年9月 Mマ13-4 Mannen som log (1994) 目くらましの道【上下巻】 柳沢由実子 2007年2月 Mマ13-5,6 Villospår (1995) 英国推理作家協会ゴールド・ダガー賞、フランス・ミステリ批評家賞 タンゴステップ【上下巻】 柳沢由実子 2008年5月 Mマ13-7,8 Danslärarens återkomst (2000) 五番目の女【上下巻】 柳沢由実子 2010年8月 Mマ13-9,10 Den femte kvinnan (1996) 背後の足音【上下巻】 柳沢由実子 2011年7月 Mマ13-11,12 Steget efter (1997) ファイアーウォール【上下巻】 柳沢由実子 2012年9月 Mマ13-13,14 Brandvägg (1998) 霜の降りる前に【上下巻】 柳沢由実子 2016年1月 Mマ13-15,16 北京から来た男【上下巻】 柳沢由実子 2016年8月 Mマ13-17,18 2014年刊行作品の文庫化 ピラミッド 柳沢由実子 2018年4月 Mマ13-19 モンス・カッレントフト 冬の生贄【上下巻】 久山葉子 2013年3月 Mカ11-1,2 Midvinterblod (2007) 天使の死んだ夏【上下巻】 久山葉子 2013年10月 Mカ11-3,4 Sommardöden (2008) 秋の城に死す【上下巻】 久山葉子 2015年12月 Mカ11-5,6 カーリン・イェルハルドセン お菓子の家 木村由利子 2013年6月 Mイ4-1 Pepparkakshuset (2008) パパ、ママ、あたし 木村由利子 2014年3月 Mイ4-2 Mamma, pappa, barn (2009) 子守唄 木村由利子 2015年6月 Mイ4-3 リザ・マークルンド ノーベルの遺志【上下巻】 久山葉子 2013年11月 Mマ26-1,2 Nobels testamente (2006) M・ヨート、H・ローセンフェルト 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2014年6月 Mヨ1-1,2 Det fördolda (2010) 模倣犯 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2015年1月 Mヨ1-3,4 白骨 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2017年6月 Mヨ1-5,6 少女 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2017年11月 Mヨ1-7,8 アンナ・ヤンソン 消えた少年 久山葉子 2014年10月 Mヤ2-1 死を歌う孤島 久山葉子 2015年3 Mヤ2-2 クリスティーナ・オルソン シンデレラたちの罪 ヘレンハルメ美穂 2015年8月 Mオ5-1 カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ 犯罪は老人のたしなみ 木村由利子 2016年9月 Mイ8-1 老人犯罪団の逆襲 木村由利子 2017年10月 Mイ8-2 シッラ ロルフ・ボリリンド 満潮【上下巻】 久山葉子 2016年10月 Mホ12-1,2 トーヴェ・アルステルダール 海岸の女たち 久山葉子 2017年4月 Mア18-1 レイフ・GW・ペーション 許されざる者 久山葉子 2018年2月 Mヘ19-1 デンマーク(デンマーク語) エルスベツ・イーホルム 赤ん坊は川を流れる 木村由利子 2015年2月 Mイ6-1 過去を殺した女 木村由利子 2016年6月 Mイ6-2 ノルウェー(ノルウェー語) アンネ・ホルト 凍える街 枇谷玲子 2014年12月 Mホ10-1 ホテル1222 枇谷玲子 2015年9月 Mホ10-2 カーリン・フォッスム 晴れた日の森に死す 成川裕子 2016年9月 Mフ36-1 アイスランド(アイスランド語) ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン フラテイの暗号 北川和代 2013年11月 Mイ5-1 Flateyjargáta (2002) アーナルデュル・インドリダソン 湿地 柳沢由実子 2015年5月 Mイ7-1 2012年刊行作品の文庫化 緑衣の女 柳沢由実子 2016年7月 Mイ7-2 2013年刊行作品の文庫化 声 柳沢由実子 2018年1月 Mイ7-3 2015年刊行作品の文庫化 フィンランド(フィンランド語) レーナ・レヘトライネン 雪の女 古市真由美 2013年1月 Mレ7-1 Luminainen (1996) 推理の糸口賞(1997年) 氷の娘 古市真由美 2013年9月 Mレ7-2 Kuolemanspiraali (1997) 要塞島の死 古市真由美 2014年5月 Mレ7-3 Tuulen puolella (1998) ドイツ語圏 アンネ・シャプレ(ドイツ) カルーソーという悲劇 平井吉夫 2007年5月 Mシ11-1 Caruso Singt Nicht Mehr (1997) ドイツ・ミステリ大賞受賞シリーズの第1作 ネレ・ノイハウス(ドイツ) 深い疵(きず) 酒寄進一 2012年6月 Mノ4-1 Tiefe Wunden (2009) シリーズ第3作 白雪姫には死んでもらう 酒寄進一 2013年5月 Mノ4-2 Schneewittchen muss sterben (2010) シリーズ第4作 悪女は自殺しない 酒寄進一 2015年6月 Mノ4-3 シリーズ第1作 死体は笑みを招く 酒寄進一 2016年10月 Mノ4-4 シリーズ第2作 穢れた風 酒寄進一 2017年10月 Mノ4-5 シリーズ第5作 悪しき狼 酒寄進一 2018年10月 Mノ4-6 シリーズ第6作 フォルカー・クッチャー(ドイツ) 濡れた魚【上下巻】 酒寄進一 2012年8月 Mク18-1,2 Der nasse Fisch (2007) 死者の声なき声【上下巻】 酒寄進一 2013年8月 Mク18-3,4 Der stumme Tod (2009) ゴールドスティン【上下巻】 酒寄進一 2014年7月 Mク18-5,6 Goldstein (2010) アンドレアス・グルーバー(オーストリア) 夏を殺す少女 酒寄進一 2013年2月 Mク19-1 Rachesommer (2010) 黒のクイーン 酒寄進一 2014年1月 Mク19-2 Schwarze Dame (2007) 月の夜は暗く 酒寄進一 2016年2月 Mク19-3 刺青の殺人者 酒寄進一 2017年4月 Mク19-4 バルドゥイン・グロラー(オーストリア) 探偵ダゴベルトの功績と冒険 垂野創一郎 2013年4月 Mク20-1 Detektiv Dagoberts Taten und Abenteuer シャーロック・ホームズの異郷のライヴァルたち(1) ドイツ語圏編 ヴォルフラム・フライシュハウアー(ドイツ) 消滅した国の刑事 北川和代 2013年6月 Mフ28-1 Torso (2011) シャルロッテ・リンク(ドイツ) 沈黙の果て【上下巻】 浅井晶子 2014年9月 Mリ7-1,2 Am Ende des Schweigens (2003) 失踪者【上下巻】 浅井晶子 2017年1月 Mリ7-3,4 ペトラ・ブッシュ(ドイツ) 漆黒の森 酒寄進一 2015年2月 Mフ31-1 フェルディナント・フォン・シーラッハ(ドイツ) 犯罪 酒寄進一 2015年4月 Mシ15-1 2011年刊行作品の文庫化 罪悪 酒寄進一 2016年2月 Mシ15-2 2012年刊行作品の文庫化 コリーニ事件 酒寄進一 2017年12月 Mシ15-3 2013年刊行作品の文庫化 禁忌 酒寄進一 2018年12月? 刊行予定。2015年刊行作品の文庫化 フレドゥン・キアンプール(ドイツ) 幽霊ピアニスト事件 酒寄進一 2015年9月 Mキ12-1 『この世の涯てまで、よろしく』改題文庫化 ニーナ・ブラジョーン(ドイツ) 獣の記憶 遠山明子 2015年10月 Mフ34-1 ライナー・レフラー(ドイツ) 人形遣い 事件分析官アーベル&クリスト 酒寄進一 2015年10月 Mレ8-1 ウルズラ・ポツナンスキ(オーストリア) 古城ゲーム 酒寄進一 2016年4月 Mホ11-1 ザーシャ・アランゴ(ドイツ) 悪徳小説家 浅井晶子 2016年7月 Mア16-1 シュテファン・スルペツキ(オーストリア) 探偵レミングの災難 北川和代 2017年7月 Mス15-1 天国通り殺人事件 北川和代 2018年7月 Mス15-2 アンドレアス・フェーア(ドイツ) 弁護士アイゼンベルク 酒寄進一 2018年4月 Mフ37-1 オランダ(オランダ語) ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク アムステルダムの異邦人 池央耿 1981年1月 Mウ17-1 Het lijk in de Haarlemmer Houttuinen (1975) 英題:Outsider in Amsterdam オカルト趣味の娼婦 池央耿 1981年5月 Mウ17-2 Buitelkruid (1976) 英題:Tumbleweed 大道商人の死 池央耿 1987年5月 Mウ17-3 De dood van een marktkoopman (1977) 英題:Death of a Hawker スペイン(特記なき場合、原語はスペイン語) マヌエル・バスケス・モンタルバン 楽園を求めた男 田部武光 1985年8月 Mモ4-1 Los Mares Del Sur (1979) フランス語からの重訳/フランス推理小説大賞、スウェーデン推理作家アカデミー賞 死の谷を歩む男 田部武光 1986年4月 Mモ4-2 La Soledad Del Manager (1977) フランス語からの重訳 R・リーバス、S・ホフマン 偽りの書簡 宮﨑真紀 2016年5月 Mリ8-1 マルク・パストル(カタルーニャ語作家) 悪女 白川貴子 2018年3月 Mハ24-1 ギリシャ(ギリシャ語) アンドニス・サマラキス きず 小池滋 1987年10月 Mサ2-1 Το λάθος (1965) フランス推理小説大賞(1970年) ブルガリア(ブルガリア語) アンドレイ・グリャシキ 007は三度死ぬ 深見弾 1985年8月 Mフ10-7 Срещу 07 (1966) 『ミステリマガジン』1967年2月号に『ザホフ対07』のタイトルで訳載(袋一平訳) ※注記したもの以外にも重訳の作品はあるかもしれない。 創元推理文庫/海外ミステリ/フランス語圏作品一覧 数え方にもよるが、以下では32人、164冊をリストアップしている(2017年11月発売のグザヴィエ=マリ・ボノ『狩人の手』までをカウント)。 冊数の多い作家ジェラール・ド・ヴィリエ … 50冊 カトリーヌ・アルレー … 25冊 モーリス・ルブラン … 23冊 ジョルジュ・シムノン … 12冊 ボワロ&ナルスジャック … 6冊 ミッシェル・ルブラン、セバスチアン・ジャプリゾ、フレッド・ヴァルガス … 各5冊 1990年代には創元推理文庫でフランス語圏の作品は1冊も出版されていない。(ちなみに、早川書房のポケミスでも1990年代にはフランス語圏のミステリは1冊しか出版されなかった) 創元推理文庫に収録されたのが早い作家から順に並べた。 2000年代以降に新訳が出たものについては【新訳】と示した。 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 備考 ガストン・ルルー 黄色い部屋の謎 宮崎嶺雄 1965年6月 Mル2-1 旧訳は水谷準訳(1959年5月) 黒衣婦人の香り 石川湧 1976年3月 Mル2-2 2008年の復刊フェアで新カバー化 ジョルジュ・シムノン(ベルギー) 男の首/黄色い犬 宮崎嶺雄 1969年5月 Mシ1-1 『男の首』(1959年9月)、『黄色い犬』(1959年9月)合本 13の秘密/第1号水門 大久保輝臣 1963年8月 Mシ1-2 『13の秘密』改題 ゲー・ムーランの踊子 他 安堂信也 1973年9月 Mシ1-3 『ゲー・ムーランの踊子』(1959年11月)、『三文酒場』(1960年8月)合本 猫―ねこ― 三輪秀彦 1985年1月 Mシ1-4 サン・フィアクル殺人事件 三輪秀彦 1960年4月 Mシ1-5 『サン・フィアクルの殺人』改題 怪盗レトン 木村庄三郎 1960年5月 Mシ1-6 オランダの犯罪 宗左近 1960年9月 Mシ1-7 アルザスの宿 原千代海 1960年11月 Mシ1-8 メグレ警部と国境の町 三輪秀彦 1961年1月 Mシ1-9 港の酒場で 木村庄三郎 1961年4月 Mシ1-10 死んだギャレ氏 宗左近 1961年7月 Mシ1-11 影絵のように 望月芳郎 1961年8月 Mシ1-12 ボワロ&ナルスジャック 女魔術師 江口清 1961年7月 Mホ2-1 技師は数字を愛しすぎた 大久保和郎 1960年3月 Mホ2-2 2012年4月【新版】 思い乱れて 大久保和郎 1959年10月 Mホ2-3 呪い 大久保和郎 1963年4月 Mホ2-4 仮面の男 井上勇 1964年7月 Mホ2-5 犠牲者たち 石川湧 1967年8月 Mホ2-6 カトリーヌ・アルレー わらの女 安堂信也 1964年8月 Mア5-1 大いなる幻影/死者の入江 安堂信也 1973年9月 Mア5-2 『大いなる幻影』(1968年11月)、『死者の入江』(1962年4月)合本 黄金の檻/泣くなメルフィー 安堂信也 1974年8月 Mア5-3 『黄金の檻』(1963年4月)、『泣くなメルフィー』(1964年12月)合本 死の匂い 望月芳郎 1963年10月 Mア5-4 目には目を 安堂信也 1961年1月 Mア5-5 二千万ドルと鰯一匹 安堂信也 1974年12月 Mア5-6 剣に生き、剣に斃れ 荒川浩充 1975年4月 Mア5-7 犯罪は王侯の楽しみ 安堂信也 1975年6月 Mア5-8 2014年の復刊フェアで新カバー・新解説 決闘は血を見てやめる 鈴木豊 1975年8月 Mア5-9 黒頭巾の孤島 安堂信也 1976年2月 Mア5-10 死ぬほどの馬鹿 安堂信也 1976年10月 Mア5-11 さよならメラニー 荒川浩充 1978年1月 Mア5-12 『またもや大いなる幻影』改題 砂の鎧 安堂信也 1979年6月 Mア5-13 地獄でなぜ悪い 安堂信也 1979年10月 Mア5-14 三つの顔 窪田般彌 1980年3月 Mア5-15 共犯同盟 小野萬吉 1980年10月 Mア5-16 死体銀行 加藤尚宏 1981年6月 Mア5-17 理想的な容疑者 荒川浩充 1981年12月 Mア5-18 2010年の復刊フェアで新カバー化/フランス冒険小説大賞(1981年) 白墨の男 安堂信也 1982年12月 Mア5-19 罠に落ちた女 安堂信也 1983年9月 Mア5-20 呪われた女 安堂信也 1984年4月 Mア5-21 21のアルレー 安堂信也 1985年6月 Mア5-22 死神に愛された男 安堂信也 1986年2月 Mア5-23 アラーム! 安堂信也 1987年3月 Mア5-24 疑惑の果て 安堂信也 1988年2月 Mア5-25 ミッシェル・ルブラン 殺人四重奏 鈴木豊 1961年4月 Mル3-1 旧訳は鈴木豊・河村正夫訳(1961年4月)/フランス推理小説大賞(1956年) 贋作/モンタージュ写真 望月芳郎・三輪秀彦 1972年12月 Mル3-2 *注1 未亡人 鈴木豊 1972年7月 Mル3-3 まちがえた番号/ストリッパーの死 鈴木豊 1973年4月 Mル3-4 ミッドウェイ水爆実験/自殺志願者 鈴木豊 1973年11月 Mル3-5 ノエル・カレフ 死刑台のエレベーター 宮崎嶺雄 1970年5月 Mカ2-1 2010年7月【新版】 その子を殺すな 宮崎嶺雄 1961年8月 Mカ2-2 パリ警視庁賞(1956年) ミラクル・キッド 宮崎嶺雄 1963年8月 Mカ2-3 『名も知れぬ牛の血』改題 フレッド・カサック 殺人交叉点 平岡敦【新訳】 2000年9月 Mカ8-1 フランス・ミステリ批評家賞 *注2 セバスチアン・ジャプリゾ シンデレラの罠 平岡敦【新訳】 2012年2月 Mシ2-1 旧訳は1964年11月、望月芳郎訳/フランス推理小説大賞(1963年) 寝台車の殺人者 望月芳郎 1966年10月 Mシ2-2 新車のなかの女 平岡敦【新訳】 2015年7月 Mシ2-3 旧訳は1968年10月、望月芳郎訳『新車の中の女』/英国推理作家協会 最優秀外国作品賞 殺意の夏 望月芳郎 1980年9月 Mシ2-4 スウェーデン推理作家アカデミー賞 長い日曜日 田部武光 2005年3月 Mシ2-5 モーリス・ルブラン 怪盗紳士リュパン 石川湧 1965年6月 Mル1-1 リュパン対ホームズ 石川湧 1965年7月 Mル1-2 水晶の栓 石川湧 1965年9月 Mル1-3 奇巌城 石川湧 1965年10月 Mル1-4 リュパンの告白 井上勇 1966年3月 Mル1-5 金三角 石川湧 1972年12月 Mル1-6 虎の牙 井上勇 1973年3月 Mル1-7 カリオストロ伯爵夫人 井上勇 1973年1月 Mル1-8 謎の家 井上勇 1973年7月 Mル1-9 緑の目の令嬢 石川湧 1973年1月 Mル1-10 二つの微笑を持つ女 井上勇 1972年11月 Mル1-11 『ふたつの微笑を持つ女』改題 バール・イ・ヴァ荘 石川湧 1973年8月 Mル1-12 特捜班ヴィクトール 井上勇 1973年10月 Mル1-13 赤い数珠 井上勇 1974年1月 Mル1-14 カリオストロの復讐 井上勇 1973年6月 Mル1-15 オルヌカン城の謎 井上勇 1973年5月 Mル1-16 ジェリコ公爵 井上勇 1974年4月 Mル1-17 リュパンの冒険 南洋一郎 1965年10月 Mル1-18 綱渡りのドロテ 三好郁朗 1986年12月 Mル1-19 ノー・マンズ・ランド 大友徳明 1987年7月 Mル1-20 三つの目 田部武光 1987年10月 Mル1-21 バルタザールの風変わりな毎日 三輪秀彦 1987年11月 Mル1-22 リュパン、最後の恋 高野優監訳池畑奈央子訳 2013年7月 Mル1-23 クロード・アヴリーヌ U路線の定期乗客 三輪秀彦 1977年6月 Mア13-1 ブロの二重の死 三輪秀彦 1983年6月 Mア13-2 ジェラール・ド・ヴィリエ SAS/セーシェル沖暗礁地帯 伊東守男 1978年12月 Mウ18-1 SAS/イスタンブール 潜水艦消失 伊東守男 1979年2月 Mウ18-2 SAS/イラン CIA対マルコ 大友徳明 1979年3月 Mウ18-3 SAS/ソマリア 人質奪回作戦 鈴木豊 1979年3月 Mウ18-4 SAS/ニューヨーク 大追跡 鈴木豊 1979年4月 Mウ18-5 SAS/日本連合赤軍の挑戦 鈴木豊 1979年6月 Mウ18-6 SAS/ヨルダン国王の危機 飯島宏 1979年8月 Mウ18-7 SAS/ブルンジ スパイ衛星墜落 小野萬吉 1979年9月 Mウ18-8 SAS/怒りのベルファスト 小野萬吉 1979年11月 Mウ18-9 SAS/鄧小平の密命 三輪秀彦 1979年11月 Mウ18-10 SAS/リオ マンガン鉱争奪戦 鈴木豊 1979年12月 Mウ18-11 SAS/シンガポール 華僑の秘密 飯島宏 1980年2月 Mウ18-12 SAS/ロンドン スパイ連合作戦 大友徳明 1980年2月 Mウ18-13 SAS/クワイ河の黄金 小野萬吉 1980年3月 Mウ18-14 SAS/ケネディ秘密文書 加藤尚宏 1980年4月 Mウ18-15 SAS/エチオピア皇帝の宝 鈴木豊 1980年5月 Mウ18-16 SAS/ローデシアの陰謀 飯島宏 1980年7月 Mウ18-17 SAS/ワルシャワ 同志を売る男 小野萬吉 1980年7月 Mウ18-18 SAS/カリブ海 ハリケーン作戦 田部武光 1980年8月 Mウ18-19 SAS/モンテビデオの天使 小野萬吉 1980年10月 Mウ18-20 SAS/インディアン狩り 小野萬吉 1980年10月 Mウ18-21 SAS/伯爵夫人の舞踏会 飯島宏 1980年12月 Mウ18-22 SAS/カンボジア式ルーレット 荒川浩充 1980年12月 Mウ18-23 SAS/バグダッドの黒豹 飯島宏 1981年2月 Mウ18-24 SAS/北極圏の逃亡者 小野萬吉 1981年3月 Mウ18-25 SAS/アンゴラ 独立前夜 小野萬吉 1981年4月 Mウ18-26 SAS/サイゴン サンライズ作戦 飯島宏 1981年4月 Mウ18-27 SAS/寄港地パゴ・パゴ 田部武光 1981年6月 Mウ18-28 SAS/香港 三人の未亡人 三輪秀彦 1981年7月 Mウ18-29 SAS/アメリカ 石油封鎖ショック 飯島宏 1981年7月 Mウ18-30 SAS/リスボン KGB秘密計画 秋本紀夫 1981年9月 Mウ18-31 SAS/バリ島の狂気 田部武光 1981年10月 Mウ18-32 SAS/ゲバラ万歳! 飯島宏 1981年10月 Mウ18-33 SAS/ザイール レッド・アイ・ミサイル 三輪秀彦 1981年11月 Mウ18-34 SAS/ラオス 黄金の三角地帯 田部武光 1981年12月 Mウ18-35 SAS/ハイチ 黒犬に化けた男 三輪秀彦 1982年1月 Mウ18-36 SAS/ニカラグアの十字軍 秋本紀夫 1982年2月 Mウ18-37 SAS/ボリビアのナチ狩り 三輪秀彦 1982年3月 Mウ18-38 SAS/ベイルートの連続殺人 田部武光 1982年4月 Mウ18-39 SAS/セイロン 舎利塔の秘宝 飯島宏 1982年5月 Mウ18-40 SAS/チェックポイント・チャーリー 佐藤到 1982年6月 Mウ18-41 SAS/ハワイ CIA危機一髪 飯島宏 1982年7月 Mウ18-42 SAS/ザンジバルのために死す 三輪秀彦 1982年9月 Mウ18-43 SAS/コロンビアの決闘 飯島宏 1982年10月 Mウ18-44 SAS/イスラエル 嘆きの壁の女 田部武光 1982年11月 Mウ18-45 SAS/サンチアゴ 冷たい手の男 荒川浩充 1982年12月 Mウ18-46 SAS/ハンガリー 我が祖国 飯島宏 1982年12月 Mウ18-47 SAS/アブダビ 王宮の陰謀 三輪秀彦 1983年2月 Mウ18-48 SAS/マルタを見て死ね 三輪秀彦 1983年3月 Mウ18-49 SAS/エル・サルバドル 殺人指令 田部武光 1983年4月 Mウ18-50 ピエール・マニャン アトレイデスの血 三輪秀彦 1981年4月 Mマ19-1 パリ警視庁賞(1978年) スタニスラス=アンドレ・ステーマン(ベルギー) 殺人者は21番地に住む 三輪秀彦 1983年12月 Mス4-1 六死人 三輪秀彦 1984年8月 Mス4-2 フランス冒険小説大賞(1931年) ギ・デ・カール 破戒法廷 三輪秀彦 1984年4月 Mテ3-1 ドミニク・フェルナンデス シニョール・ジョヴァンニ 田部武光 1984年7月 Mフ18-1 ブリス・ペルマン 穢れなき殺人者 荒川浩充 1984年9月 Mヘ5-1 顔のない告発者 荒川浩充 1985年5月 Mヘ5-2 モーリス・ドニュジエール 暗号名はフクロウ 小野萬吉 1985年4月 Mト8-1 パスカル・レネ 三回殺して、さようなら 田中淳一 1988年6月 Mレ6-1 ジャン=ジャック・フィシュテル 私家版 榊原晃三 2000年12月 Mフ14-1 フランス推理小説大賞(1994年) ジャン=クリストフ・グランジェ クリムゾン・リバー 平岡敦 2001年1月 Mク11-1 2018年11月【新版】 コウノトリの道 平岡敦 2003年7月 Mク11-2 狼の帝国 高岡真 2005年12月 Mク11-3 フレッド・ヴァルガス 死者を起こせ 藤田真利子 2002年6月 Mウ12-1 フランス・ミステリ批評家賞、英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞 青チョークの男 田中千春 2006年3月 Mウ12-2 英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞 論理は右手に 藤田真利子 2008年4月 Mウ12-3 裏返しの男 田中千春 2012年1月 Mウ12-4 フランス・ミステリ批評家賞 彼の個人的な運命 藤田真利子 2012年8月 Mウ12-5 モーリス・ルヴェル 夜鳥(よどり) 田中早苗 2003年2月 Mル4-1 ジャン=ピエール・ノーグレット ハイド氏の奇妙な犯罪 三好郁朗 2003年10月 Mノ2-1 カトリーヌ・キュッセ ジェーンに起きたこと 長谷川沙織 2004年7月 Mキ4-1 アンドレア・H・ジャップ 殺人者の放物線 藤田真利子 2006年8月 Mシ10-1 ジャン=クロード・イゾ 失われた夜の夜 高橋啓 2007年2月 Mイ3-1 トロフェ813受賞 ジャック・ルーボー 麗しのオルタンス 高橋啓 2009年1月 Mル5-1 誘拐されたオルタンス 高橋啓 2017年2月 Mル5-2 マルセル・F・ラントーム 騙し絵 平岡敦 2009年10月 Mラ6-1 ピエール・シニアック ウサギ料理は殺しの味 藤田宜永 2009年12月 Mシ12-1 カミ ルーフォック・オルメスの冒険 高野優 2016年5月 Mカ14-1 『ミステリーズ!』vol.77で特集 ジョエル・ディケール(スイス) ハリー・クバート事件【上下巻】 橘明美 2016年11月 Mテ15-1,2 2014年刊行作品の文庫化 グザヴィエ=マリ・ボノ 狩人の手 平岡敦 2017年11月 Mホ14-1 注1:ミッシェル・ルブラン『贋作/モンタージュ写真』(1972年12月) - 『不許複製』(1962年2月)と『モンタージュ写真』(1963年3月)の合本。『不許複製』は合本時に『贋作』に改題。 注2:フレッド・カサック『殺人交叉点』(2000年9月) - 1962年7月に創元推理文庫で『連鎖反応』(諏訪正訳)が単独で出版され、1979年には「殺人交差点」(荒川浩充訳)と「連鎖反応」(荒川浩充の新訳)を収録した『殺人交差点』が出版された。そして2000年9月には、収録2作を平岡敦が新訳した『殺人交叉点』が出版された。 創元推理文庫/海外ミステリアンソロジー/非英語圏作品一覧 江戸川乱歩編『世界短編傑作集』【全5巻】(1960年7月 - 1961年5月)第1巻 - アントン・チェホフ「安全マッチ」 - ロシア 第2巻 - モーリス・ルブラン「赤い絹の肩かけ」 - フランス 第2巻 - バルドゥイン・グロルラー「奇妙な跡」 - オーストリア(ドイツ語) エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』(1975年10月)W・ハイデンフェルト「月の光」 - 南アフリカ(1911年、ベルリン生まれ。執筆は英語だと思われる) フェレンツ・モルナール(名-姓)「最善の策」 - ハンガリー ミゲル・デ・セルバンテス「サンチョ・パンサの名探偵ぶり」 - スペイン アントン・チェーホフ「子守歌」 - ロシア アレクサンドル・デュマ「ナイフの男」 - フランス ギイ・ド・モーパッサン「復讐」 - フランス ギイ・ド・モーパッサン「正義の費用」 - フランス ヴォルテール「犬と馬」 - フランス オットー・ペンズラー編『魔術ミステリ傑作選』(1979年8月)マニュエル・ペイロウ「ジュリエットと奇術師」 - アルゼンチン(スペイン語) エドワード・D・ホウク(エドワード・D・ホック)編『最後のチャンス――年刊ミステリ傑作選 78』(1982年5月)ポール・セルー「犯人(ホシ)はシロ」 - フランス ピーター・ゴドフリ「殺人の治し方」 - 南アフリカ(執筆は英語だと思われる) ピーター・ヘイニング編『ディナーで殺人を』【上下巻】(1998年1月)上巻 - ガストン・ルルー「胸像たちの晩餐」 - フランス 上巻 - アルフォンス・ドーデー「三つの読唱ミサ」 - フランス 上巻 - アレクサンドル・プーシキン「葬儀屋」 - ロシア 下巻 - ジョルジュ・シムノン「競売の前夜」 - ベルギー(フランス語) おまけ1:創元推理文庫/ホラー&ファンタジイ/非英語圏作品一覧 1969年2月に創元推理文庫の「怪奇と冒険」部門としてスタート。1989年から「ホラー&ファンタジイ」部門という名称に。1991年まで使用されていた分類マークでは「帆船マーク」。 日本の作品は省略。 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 分類 備考 フランス語 アレクサンドル・デュマ(フランス) 黒いチューリップ 宗左近 1971年3月 Fテ1-1 歴史ロマン 王妃の首飾り【上下巻】 大久保和郎 1972年4・5月 Fテ1-2,3 歴史ロマン マルセル・エイメ(フランス) 第二の顔 生田耕作 1972年3月 Fエ3-1 幻想小説 ジョリス=カルル・ユイスマンス(フランス) 彼方 田辺貞之助 1975年3月 Fユ1-1 幻想文学 ガストン・ルルー(フランス) ガストン・ルルーの恐怖夜話 飯島宏 1983年10月 Fル1-1 ホラー オペラ座の怪人 三輪秀彦 1987年1月 Fル1-2 ホラー ジャン・レー(ベルギー) 新カンタベリー物語 篠田知和基 1986年4月 Fレ2-1 幻想小説 ロラン・トポル(フランス) カフェ・パニック 小林茂 1988年1月 Fト3-1 奇妙な味 トーマス・オーウェン(ベルギー) 黒い玉――十四の不気味な物語 加藤尚宏 2006年6月 Fオ2-1 ホラー 青い蛇――十六の不気味な物語 加藤尚宏 2007年5月 Fオ2-2 ホラー ドイツ語 H・H・エーヴェルス(ドイツ) プラークの大学生 前川道介 1985年9月 Fエ2-1 幻想小説 エーリヒ・ケストナー(ドイツ) 消え失せた密画 小松太郎 1970年2月 Fケ1-1 ユーモア 雪の中の三人男 小松太郎 1971年11月 Fケ1-2 ユーモア 一杯の珈琲から 小松太郎 1975年9月 Fケ1-3 ユーモア ケルスティン・ギア(ドイツ) 紅玉(ルビー)は終わりにして始まり 遠山明子 2015年11月 Fキ4-1 ファンタジイ カイ・マイヤー(ドイツ) 魔人の地 嵐の王1 酒寄進一・遠山明子 2015年12月 Fマ11-1 ファンタジイ 第三の願い 嵐の王2 酒寄進一・遠山明子 2016年4月 Fマ11-2 ファンタジイ 伝説の都 嵐の王3 酒寄進一・遠山明子 2016年7月 Fマ11-3 ファンタジイ ロシア語 イワン・エフレーモフ(ソ連) アレクサンドロスの王冠【上下巻】 飯田規和 1979年6・9月 Fエ4-1,2 ファンタジイ チェコ語 ヤン・ヴァイス(チェコ) 迷宮1000 深見弾 1987年8月 Fウ3-1 幻想小説 2016年の復刊フェアで新カバー化 ※分類は『東京創元社 文庫解説総目録』より 『怪奇小説傑作集 4 フランス編』(1969年6月、【新版】2006年7月)(東京創元社公式サイト 内容紹介) 『怪奇小説傑作集 5 ドイツ・ロシア編』(1969年5月、【新版】2006年8月)(東京創元社公式サイト 内容紹介) S・P・ソムトウ(タイ)『ヴァンパイア・ジャンクション』(2001年9月、金子浩訳)(Vampire Junction (1984)) - タイの作家が英語で執筆した作品。著者は別名、ソムトウ・スチャリトクル。 アンソロジー平井呈一編『恐怖の愉しみ』上巻(1985年5月) - エルクマン=シャトリアン「見えない眼」 - フランス アル・サラントニオ編『999 聖金曜日』(2000年2月) - ピーター・シュナイダー「紛う方なき愚行」 - ドイツ おまけ2:創元SF文庫/非英語圏作品一覧 1963年9月に創元推理文庫のSF部門としてスタート。1991年に「創元SF文庫」として独立した。ここでは創元推理文庫のSF部門の作品も一緒に扱う。 日本の作品は省略。 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 備考 フランス語 ジュール・ヴェルヌ(フランス) 月世界へ行く 江口清 1964年10月 SFウ1-1 地底旅行 窪田般彌 1968年11月 SFウ1-2 悪魔の発明 鈴木豊 1970年8月 SFウ1-3 オクス博士の幻想 窪田般彌 1970年11月 SFウ1-4 海底二万里 荒川浩充 1977年4月 SFウ1-5 動く人工島 三輪秀彦 1978年2月 SFウ1-6 八十日間世界一周 田辺貞之助 1976年3月 SFウ1-7 サハラ砂漠の秘密 石川湧 1972年3月 SFウ1-8 必死の逃亡者 石川湧 1972年6月 SFウ1-9 十五少年漂流記 荒川浩充 1993年8月 SFウ1-10 地軸変更計画 榊原晃三 2005年9月 SFウ1-11 ピエール・ブール(フランス) 猿の惑星 大久保輝臣 1968年7月 SFフ7-1 ジャック・ヴァレ(フランス) 異星人情報局 礒部剛喜 2003年5月 SFウ10-1 ドイツ語 ハインリッヒ・ハウザー(ドイツ) 巨人頭脳 松谷健二 1965年8月 SFハ18-1 K・H・シェール(ドイツ) 地底のエリート 松谷健二 1966年7月 SFシ1-1 地球人捕虜収容所 松谷健二 1968年3月 SFシ1-2 地球への追放者 松谷健二 1969年7月 SFシ1-3 宇宙船ピュルスの人々 松谷健二 1970年6月 SFシ1-4 テア・フォン・ハルボウ(ドイツ) メトロポリス 前川道介 1988年12月 SFハ16-1 FからSFに移動/2005年の復刊フェアで新カバー化/2018年の復刊フェアで復刊 ロシア語 アレクサンドル・ベリャーエフ(ソ連) ドウエル教授の首 原卓也 1969年1月 SFヘ3-1 2016年の復刊フェアで復刊 セルゲイ・スニェーゴフ(ソ連) 銀河の破壊者 深見弾 1983年12月 SFス4-1 ペルセウス座進攻 深見弾 1984年3月 SFス4-2 逆時間の環 深見弾 1985年3月 SFス4-3 チェコ語 カレル・チャペック(チェコ) 山椒魚戦争 松谷健二 1968年2月 SFチ1-1 『ロシア・ソビエトSF傑作集 上』(1979年3月) 『ロシア・ソビエトSF傑作集 下』(1979年4月) 『東欧SF傑作集 上』(1980年9月) 『東欧SF傑作集 下』(1980年11月) 文庫ではないが、2011年9月には東京創元社より『時間はだれも待ってくれない 21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集』(高野史緒編)が刊行されている(東京創元社公式サイト 内容紹介)。 アンソロジージュディス・メリル編『年刊SF傑作選 5』(1973年9月)ヨゼフ・ネスワドバ(ヨゼフ・ネスヴァードバ)「第三帝国最後の秘密兵器」 - チェコ ロマン・ギャリー(ロマン・ガリー)「退廃」 - フランス ホセ・マリア・ヒロネリャ「赤い卵」 - スペイン ジュディス・メリル編『年刊SF傑作選 6』(1975年3月)ホルヘ・ルイス・ボルヘス「円環の廃墟」 - アルゼンチン(スペイン語) スチュアート・デイヴィッド・シフ編『マッド・サイエンティスト』(1982年4月)ヴィリエ・ド・リラダン「ハルリドンヒル博士の英雄的行為」 - フランス 参考文献 高橋良平+東京創元社編集部編『東京創元社 文庫解説総目録』東京創元社、2010年12月2010年3月までの目録。それ以降の出版物については東京創元社公式サイトで調べた。 「Mシ1-1」のような方式の整理番号が付されるようになったのは1991年以降だが、この本ではそれ以前に刊行されたものについても整理番号が付されている。 更新履歴 2018年11月6日2014年7月で更新が途絶えていたが、2014年8月以降に刊行された海外ミステリの非英語圏作品50タイトルのデータを追加(2018年10月刊行分までのデータを反映/11月・12月の刊行予定もいくつか記載)。 ただし、原題および原著刊行年のデータは未記載。 リストに新たに追加した作品については、作品名をクリックすると東京創元社の書籍紹介ページが開くようにした。 関連記事 非英語圏ミステリ各種リスト ポケミス非英語圏作品一覧 ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 『ミステリマガジン』洋書案内〈世界篇〉で紹介された本とその邦訳状況 ヨーロッパの推理小説 - ヨーロッパの推理小説に関する日本語文献の一覧
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/152.html
2011年2月10日 『中国ミステリ史 第六章』では、現在(2011年)の中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリ事情を紹介している。 目次 第六章 現代の中国ミステリ界第一節 北京偵探推理文芸協会の活動 第二節 現代の中国ミステリ作家 第三節 賞・ランキング・雑誌・その他 おわりに 参考文献 第六章 現代の中国ミステリ界 第一節 北京偵探推理文芸協会の活動 先ほど、前述の中国のミステリ情報サイト「推理之門」を見ていたら、「今日は何の日?」コーナーで「船戸与一の67歳の誕生日」などといった情報とともに「韓国推理作家協会設立から28年」という情報が出ていて、そんな情報まで押さえているのかと驚いた(※ 2月8日)。日本の推理作家団体としては、1947年設立の日本推理作家協会と、2000年設立の本格ミステリ作家クラブがある。韓国には、1983年設立の韓国推理作家協会があり、中国語圏では、台湾に2001年設立の台湾推理作家協会がある。そして、中国でも21世紀になってからこの種の団体が設立されている。2004年設立の、北京偵探推理文芸協会である。(最初に「注」で書いたように、このページでは書籍・雑誌のタイトルや団体名に使われる「偵探」はそのまま「偵探」としている。日本語にあわせて「北京探偵推理文芸協会」と書くやり方ももちろんありうる) 公式サイト 公式ブログ (2009年4月を最後に更新がストップしている) 北京偵探推理文芸協会(北京侦探推理文艺协会、The Beijing Association of Detective and Deductive Literature)は2004年設立。行政(北京市)から正式な認可を受けて成立した中国で唯一の推理小説研究団体。前身は1992年に成立した中国通俗文芸研究会法制文芸委員会である。「法制文芸」は聞きなれない言葉だが、これは第三章で述べた「公安法制小説」と同じ意味である。中国では1949年以降、「推理小説」≒「警察官が、おおやけの安寧(=公安)のため、法と制度に基づいて犯罪を捜査する小説」だったため、日本でいう推理小説は「法制文芸」、「法制小説」などと呼ばれることも多かった。会長は作家の蘇叔陽(そ しゅくよう/スー シューヤン/苏叔阳)、常務副会長は推理小説研究者の于洪笙(う こうせい/ユー ホンション)、そのほかの副会長に三章で紹介した推理作家の藍瑪(らん ば/ラン マー)、理事に三章で紹介した推理作家の何家弘(か かこう/ホー ジアホン)らが名を連ねている。会員は推理作家や推理小説研究者、愛好家からなる。団体名には「北京」と付いているが、参加者は北京出身・在住者に限らない。 この団体は、1998年から3年に一回ほどのペースで、「全国偵探推理小説大賽」(全国侦探推理小说大赛)を行っている。 北京偵探推理文芸協会が主催する「全国偵探推理小説大賽」について 北京偵探推理文芸協会(およびその前身)が主催する「全国偵探推理小説大賽」は、単行本で刊行された作品や雑誌に掲載された作品、さらにはネット上で発表された作品も含め、既発表の作品の中から優秀作品を表彰する賞である。日本でいえば、「日本推理作家協会賞」に当たるものだと言えるだろう。 「全国侦探推理小说大赛」の「大赛」は、コンテスト、コンクール、コンペティションなどの意味なので、元の文字の並びを活かして日本語に訳すのなら、「全国偵探推理小説コンテスト」などとなる。李長声(2002)では、「全国探偵小説コンクール」と表記している。ただ、この訳語だと中国の賞だということが分かりにくいため、このページでは「全国侦探推理小说大赛」を北京偵探推理文芸協会賞と表記することにする。ダガー賞のことを「英国推理作家協会(CWA)賞」と呼んだり、エドガー賞のことを「アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞」と呼んだりするのと同じことなので、そんなに変わったやり方ではないと思う。 北京偵探推理文芸協会賞1998年 第1回結果 2001年 第2回結果 2004年 第3回結果 (2005年の授賞式開催時に、北京偵探推理文芸協会設立) 2007年 第4回結果 2010年 第5回 (選考中) 第1回では、【1】1950年から1996年の作品を対象とする部門と、【2】1996年8月から1998年8月までの作品を対象とする部門と、【3】1950年から1998年までの翻訳作品を対象とする部門があった。 【1】や【2】では、第1回から台湾や香港の作品(繁体字圏の作品)も受賞している。第2回では、新たに設けられた長編賞を、藍瑪(らん ば/ラン マー)の『凝視黒夜』とともに、台湾ミステリの始祖・林仏児(りん ふつじ、1941 - )の『美人捲珠簾』(美人卷珠帘)が同時受賞している。林仏児のこの作品は、台湾で1986年に発表されたものなので、おそらく簡体字版が刊行された際に賞の対象になったのだろう。また、第3回の長編賞は香港の推理作家・鄭炳南(てい へいなん)の『謀殺方程式』が受賞している。第4回は該当作なし。 1950年以降の約50年分の翻訳ミステリを対象とする第1回の翻訳部門(翻訳作品賞)は16作品が受賞しているが、その中にはドイルやクイーン、クリスティの作品とともに、日本の作品も3作品入っている。松本清張『点と線』(1979年、群衆出版社)、森村誠一『人間の証明』(1979年、中国電影出版社)、夏樹静子『蒸発』(1996年、群衆出版社)である。 第2回以降、翻訳作品賞は毎回1作品ずつ選ばれており、第2回は夏樹静子『Wの悲劇』(2000年6月、中国国際広播出版社)、第3回は『ジョセフィン・テイ推理全集』、第4回は米国の推理作家ケヴィン・ギルフォイルの『我らが影歩みし所』が受賞している。(作品を出版した出版社が受賞する) なお第4回では、同時に「世界華文創作ミステリ大賞」(世界华文侦探推理原创文学大赛)(公募の新人賞か?)の実施が当初はアナウンスされていたが、その後の情報が見つからないので、実際には実施されなかったようだ。 この賞の実施のほか、北京偵探推理文芸協会はブログの説明文によると「イギリスや日本の推理作家との交流や、国際推理作家協会への参加」などを行うと書いてある。サイトを見ると、フランスの推理作家やイギリスの推理作家との交流会の写真が掲載されているが、日本のミステリ界との交流はあったのだろうか? 第二節 現代の中国ミステリ作家 20世紀末から21世紀の中国ミステリを扱った「第五章」では、ネット上の創作ミステリ掲示板から主に本格ミステリを手掛ける新たな勢力が生まれてくる過程を紹介したが、21世紀に入ってそれ以外の作家がいなくなってしまったわけではない。たとえばすでに述べたが、第三章で紹介した推理作家の何家弘(か かこう/ホー ジアホン)は2001年以降、フランス語やイタリア語に著作が翻訳されるなどして、世界で評価が高まっている。また、上で紹介した北京偵探推理文芸協会賞の結果を見れば、『歳月・推理』以外にも雑誌はいくつもあり、またそこで、まだ紹介していないたくさんの推理作家が活躍していることが分かるだろう。 ここでは、汪政(2006年?)に従って、現代中国の推理作家を概観したい(やや古いが)。汪政氏は、ミステリを執筆する作家を二種に分けている。ジャンル小説としてのミステリを書く作家と、ミステリの構造を借りて文学を書く作家である(彼は前者を「本格派」、後者を「芸術派」と読んでいるが、「本格派」は現代日本でいう「本格」とは意味が異なり紛らわしいので、ここでは使用しない)。 ミステリー派(サスペンス、ホラーなども含む広義のミステリー)藍瑪(らん ば/ラン マー)、湯保華(とう ほか/タン バオフア)、葉永烈(よう えいれつ/イエ ヨンリエ)、鐘源(しょう げん/ジョン ユアン) 【新人】 蔡駿(さい しゅん/ツァイジュン)、鬼谷女(き こくじょ/グイ グーニュー)、哥舒意(か じょい/ゴー シューイー) 芸術派馬原(ば げん)、王朔(おう さく)、余華(ユイ ホア)、格非(かく ひ)、海岩(かい がん)、潘軍(はん ぐん)、方方(ほう ほう)、北村(ほく そん)、陳染(ちん りょう) 【新人】 麦家(ばくか)、田耳(てん じ)、須一瓜(す いっか) 上は、汪政氏がそれぞれの代表的な作家および新進気鋭の新人として名前を挙げている作家の一覧である。太字化しているのは、その中でも汪政氏が特に詳しく紹介している作家。これに、2006年創刊の『歳月・推理』で活躍を始めた一群を加えれば、現代中国のミステリ作家がある程度把握できるはずである(もっとも、「芸術派」の作家は「ミステリ作家」とは言えないかもしれないが)。 本格ミステリ派水天一色(すいてん いっしき)、馬天(ば てん/マー ティエン)、杜撰(ずさん)、御手洗熊猫(みたらい ぱんだ) 「ミステリー派」の代表的な作家として名が挙げられている4人については、すでに第三章で紹介した。新人として挙げられている蔡駿(さい しゅん/ツァイジュン、1978 - )は、『ハヤカワミステリマガジン』で一度少しだけ紹介されたことがある。それによると、「上海出身の若手作家」「二〇〇〇年に二十二歳でデビューして以来、高い人気を誇っている作家」「サイコ・サスペンスやホラーが得意で、作品は映画化・ドラマ化もされている」とのこと(2008年6月号、p.166)。同じく新人として挙げられている鬼谷女(き こくじょ/グイ グーニュー)と哥舒意(か しょい/ゴー シューイー)も、サスペンスやホラーを書く作家のようだ。 「芸術派」の代表者として名が挙げられている馬原(ば げん/マー ユアン/Ma Yuan/马原)は、中国で最初に推理小説とポストモダン文学の融合を図った作家で、トマス・ピンチョンやフリードリッヒ・デュレンマット、ソール・ベロー、フランスのヌーヴォー・ロマンなどの影響を受けていると見られるという。王朔(おう さく/ワン スオ)についてはすでに第三章で言及した。余華(ユイ ホア)はすでに何冊か邦訳が出ている作家だが、彼の短編「河辺的錯誤」(河边的错误)は、殺人事件の真相を追求する過程を描くミステリ物である一方で、典型的なポストモダン文学のテクストでもあるという。この作品は、20世紀の中国ミステリの傑作短篇を集めた前述のアンソロジーにも収録されている(第三章参照)。新人の田耳(てん じ/ティエン アル)は、「重畳影像」(重叠影像)が代表作。また、麦家(ばくか/マイ ジア)はデビュー時にその作風が既存の枠組みでは分類不能だと話題を呼んだ作家であり、純文学とジャンル文学をもっとも見事に融合させた作家だと評されている。 その他の現代中国ミステリ作家 天蠍小豬(2009)で挙げられている作家のうち、今までに名前が出ていない作家の一覧を示す。 江暁雯(こう ぎょうぶん、ジャン シャオウェン/江晓雯) 第1回島田荘司推理小説賞1次選考通過作の『紅楼夢殺人事件』(红楼梦杀人事件、2010)など。 文澤爾(ぶんたくじ/ウェンゼル/文泽尔) 「華文ミステリの第一奇書」と呼ばれる『荒野猟人』(荒野猎人、2010)など。 王稼駿(おう かしゅん、ワン ジアジュン/王稼骏) 雑誌『最推理』、『推理誌』(推理志)などで活躍。 普璞(ふ はく/プー プー) 雑誌『最推理』、『推理誌』(推理志)などで活躍。 台湾やベトナムでも著作が刊行されている。 鬼馬星(き ばせい/グイ マーシン/鬼马星) 第三節 賞・ランキング・雑誌・その他 天蠍小豬(2009)では、他国や地域との交流、賞の創設、ランキング企画の実施などが今後の中国ミステリ界の課題だとされている。 華文ミステリ界の賞・ランキング 非公募北京偵探推理文芸協会賞(1998年~/3年に1回) 前述。 公募華文推理大賞(2011年末まで募集、2012年4月に結果発表予定) 短編ミステリを募集。詳細は阿井幸作さんがブログ、またはニュースサイト「KINBRICKS NOW」で紹介していますのでそちらをご覧ください(もともとの賞の名前は「华文推理大奖赛」。阿井さんは「中国語推理小説グランプリ」と訳しています)。 また、台湾では短編ミステリを募集する台湾推理作家協会賞(2003年~/毎年)と、長編ミステリを募集する島田荘司推理小説賞(2009年~/隔年)があり、どちらも台湾のみならず、香港や大陸の作家からも応募がある。 ランキングについては詳しくは知らないが、阿井さんがブログで2008年末に『歳月・推理』で実施されたミステリランキングを紹介している(2008年 这十本小说了不起(日本語)(2008年12月31日))。 その他 雑誌・ムック第四章でくわしく説明した『歳月・推理』や『推理世界』のほか、『最推理』、『推理誌』(推理志)などがある。また、前述の蔡駿(さいしゅん/ツァイジュン)によるミステリムック『懸疑誌』(2007年)、『謎小説』(2009年~)などもある。 大学ミス研2008年9月15日、中国大学ミステリ研連合設立。ミステリ研9つが参加。 東アジアにおける近年のミステリ刊行状況 データの取り方が統一されていないが、参考までに、中国、台湾、韓国における2009年のミステリ刊行状況を示す。 中国 2009年1月から10月までの10か月間で、ミステリ小説の刊行点数は関連書も含め358。うち、中国の作品は102(広義ミステリ)。日本の作品は65(約18%)。 台湾 2009年1月から10月までの10か月間で、ミステリ小説の刊行点数は146。うち、台湾の作品は7。日本の作品は67(約46%)。欧米作品は72。 韓国 2008年12月から2009年11月までの12か月間で、ミステリ小説の刊行点数は294。うち、韓国の作品は38。日本の作品は98(約33%)。英語圏のものが125。その他が33。 (台湾、中国のデータは『本格ミステリー・ワールド2010』より。韓国のデータは『季刊ミステリ』26号(2009年冬号)より) おわりに 予想外に長くなってしまったが、以上でシャーロック・ホームズ受容から現代にいたるまでの中国ミステリ120年の歴史の紹介を終える。 日本では中国ミステリの知名度は低い。そんな中、なぜ中国ミステリに興味を持ったのかと質問されるかもしれないが、私が十代の終わりを迎えたころには日本の文芸誌『ファウスト』が台湾や韓国に進出したり、あるいはそれらの地域で日本の漫画・ライトノベル・ミステリが人気だということがすでに話題になっていて、ミステリファンの自分からすれば、それでは逆に台湾や韓国などアジア地域ではどんなオリジナルミステリが出ているのだろうという好奇心を持つのは非常に自然なことだった。taipeimonochromeさんの「taipeimonochrome ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂」を参考にしながら台湾ミステリを少しずつ読んでいた私が中国ミステリにも目を向けるようになったのは、早い時期から中国現代ミステリの紹介を行っていた阿井幸作さんのブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」で御手洗熊猫(みたらい ぱんだ)という作家の存在を知ったのがきっかけだった。 今まで日本では、「中国には推理小説はほとんどないらしい」ということがまことしやかに囁かれることが多かった。その原因はひとえに、「日本語でググってもほとんど情報が出てこない」ということに尽きると思う。この「中国ミステリ史」が、日本での中国ミステリの知名度アップに貢献できれば幸いである。今後、中国ミステリの日本語への翻訳、そしてアジアミステリ界の交流が進むことを願っている。 参考文献 中国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 『中国ミステリ史 第一章』(19世紀末~1910年代) 『中国ミステリ史 第二章』(1910年代~1940年代) 『中国ミステリ史 第三章』(1940年代末~1970年代) 『中国ミステリ史 第四章』(1970年代末~1990年代) 『中国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭) 『中国ミステリ史 第六章』(現代) ←今見ているページ