約 502,642 件
https://w.atwiki.jp/shobominecraft/pages/34.html
探偵 所属陣営:村人陣営 探偵アイテムを駆使して人狼や妖狐を見つけ出し、勝利へ導く役職。 占いができる探偵の本が初期配布されるので毎ターン占いをしよう。 初期コイン:0枚 プレイのコツ 基本的な動き 探偵は任意のプレイヤーが人狼であるか否かを判断できる重要な役職です。 /s コマンドで探偵アイテムを購入し、人狼に対抗しましょう。 ゲーム開始時と投票タイム終了時に配布される探偵の本を用い、疑わしいプレイヤーを調査しましょう。 占い先は、ゲーム開始後から最初の投票タイムまでは人狼及び妖狐ではないプレイヤーの中からランダムで占われ、それ以降は自由に決めることができます。 プレイのポイント 探偵の仕事は人狼を見つけ出すことです。探偵の本を用いて人狼を特定しましょう。 探偵ショップのアイテムは、村人陣営の中でも最も強力なアイテム群です。 そのため、貴方の動きが直接陣営の勝敗に関わることでしょう。 貴方が初心者の場合 貴方が初心者なのに探偵になってしまった場合、臆せず自分視点の推理を落としていきましょう。 貴方が探偵アイテムから得る情報は全て正しい情報です。 買い物に迷った場合は、二日目にスポンジがおすすめです。 できる限り長く生き残りながらできる限り多くのプレイヤーを本で調査していきましょう。 本で調査する相手の選び方 常に残りの人外の種類と数を意識しながら調査する相手を選びましょう。 基本的にはグレー(どの探偵にも占われていない、役職COをしていない)の人から調査していきます。 寡黙は吊りで処理し、多弁は占いで色をつけたほうが村の進行を乗っ取られにくいでしょう。 基本的にはグレーを調査しますが、下記のようなケースでは対抗の探偵や対抗が調査した相手を調査するのもありでしょう。 潜伏狼が全滅/全判明している場合 配役に狂信者や背徳者が入っている場合 対抗に妖狐が出ている可能性が高く、呪殺を狙える場合 対抗が出てきた場合 探偵は確定させてしまうと人狼陣営にとって辛い役職なので、基本的には対抗の探偵が出現することでしょう。 対抗の役職が何なのかは常に考えながら推理していきましょう。 対抗が1人の場合は基本的に信用勝負になります。吊り先や調査先をよく考えながら村に真置きされるための推理をしましょう。 対抗が2人いる場合はローラーされることが増えます。今日の方針が探偵ローラーと決まっても、生きている間はできるだけ村のための推理をしていきましょう。 探偵で真確定する方法 探偵アイテムである鉄剣は、人狼か妖狐以外のプレイヤーに振ると、自分が死んでしまいます。 そのため、白確定のプレイヤーに自分から鉄剣を振りに行き、そのことを証言してもらうことで死をもって真証明ができます。 次の日以降の調査が出来ない上に、破綻した対抗探偵は暴れ始めるため、自分が吊られそうな日の投票時間ギリギリに行いましょう。 探偵アイテムである本は、妖狐を調査することで「呪殺」できます。 妖狐確定の相手を調査することで「呪殺」に成功した場合、探偵の真を確定できるでしょう。 気をつけること 自分の調査先の選び方や発言などを追求されることもあるかもしれません。 もし追求された場合も、落ち着いて自分の行動について説明しましょう。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1358.html
『安楽椅子探偵は魔法を使う』 レス番号 作品タイトル 作者 備考 第1話 『安楽椅子探偵は魔法を使う 1―――発端』 一路◆51rtpjrRzY 舞台は1900年代のイギリスの片田舎――と言っても、それは今読んでいる推理小説の話。ラブを待つ間、物語の世界に没頭して幸せな時間を過ごしていたせつなの元へ、何やら大変な様子のあの人がやって来て……。 第2話 『安楽椅子探偵は魔法を使う 2―――事件』 一路◆51rtpjrRzY ドーナツ・カフェで、美希が涙ながらに語った出来事。てっきりブッキーとの単なる喧嘩かと思いきや、そこには不可解な謎が隠されていて……。今、名探偵の手に、ある貴重な証拠が辿り着く!? 第3話 『安楽椅子探偵は魔法を使う 3―――究明』 一路◆51rtpjrRzY ワトソン役は美希。少々泣き過ぎで、人目を引くのが玉に瑕。でも問題ないわ。絡まった糸と一緒に、恋人たちの時間も元に戻して見せる。安楽椅子ならぬドーナツカフェの椅子に座って、せつなの推理が始まる! 第4話 『安楽椅子探偵は魔法を使う 4―――真相』 一路◆51rtpjrRzY 公園を立ち去る美希の後ろ姿を見送りながら、味わう推理の後味は、カオルちゃんの新作ドーナツにも似て……。真相に辿り着くことと、大切な仲間たちとの絆を守ること。もしあなたなら、どちらのために魔法を使う? そうね。私なら――。
https://w.atwiki.jp/mei_lockcole/pages/15.html
これまでの珍事件 2010年5月23日(例) ***なことがあった。とか。 2010年5月23日(例) ::::::::
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3533.html
俺の名は谷口。当年とって25歳の好青年であり、国道沿いのネオンが輝く繁華街から追い出された辛気臭さがいっぺんに集まったような、うらぶれた旧道沿いのアパートに事務所を構える私立探偵だ。 自分で言うのもなんだが、俺はけっこうこの界隈じゃ名の知れた探偵なんだ。 だがしかし、悲しいかな、名が知れているのと生活向きが良いのとはイコールじゃないのが世の中だ。これでもけっこう現実問題苦労しているんだぜ。 この物語は、そんなハードボイルド快男児・谷口がお送りする、愛と波乱と一大スペクタクルに溢れるハートウォーミング物語である。 なんてね。SFチックな小説の紹介コメント風に決めてみたい気分の時って誰にでもあるじゃん? 今の俺がちょうど、そういう気分だったわけさ。 ~~~~~ 俺はちゃぶ台の前にあぐらをかいて座り、粛々とした気持ちで茶をすすりながら腕を組んだ。座卓をはさんだ俺の対面には、うちの押し掛け助手、長門有希が無表情にちょこんと座っていた。 と言ってもこやつは年中、無表情マスクをかぶった宇宙戦士のような無愛想ヒューマンなので、これがフォーマット状態なのであると言っても差し障りない。 むしろ付き合いの長い俺から見れば、今の長門には淡々とした中にもキラリと光る意志の強さと頑固な意地が、ありありと見て取れる。 「………この券は、兄貴には渡せない」 目からビームを発射しそうなくらいすごみのある目線で、長門有希が俺ににらみを利かせてきた。ちなみにこやつは俺の舎弟だからして、俺のことを兄貴と呼んでいる。 だがしかし。俺とて数々の修羅場をくぐり抜けてきた勇者、谷口探偵である。こんな小生意気なクソガキにメンチ切られたからって、しっぽ巻いて引き下がるわけにはいかないのだ。 俺と長門の間には、一枚の宝くじ当選券がテーブルにピタリと貼り付いたように置かれている。 これは先日、長門に買い物をつきあってもらったささやかなお礼だと言って、朝倉涼子が俺に手渡した1枚の宝くじだ。 宝くじ1枚きりなわけだから、別に大した意味があるわけじゃない。感謝のオプション程度の物だ。 だから朝倉さんも俺も最初は300円当たればいい方だと思っていた宝くじ券だったのだが、そんな俺たちのごくごく一般的な中流階級者的予想を大きく裏切り、なんとも恐ろしいことにこの宝くじは、大当たりしてしまったのだ。 上位賞金額の何千万円や一億円と比べれば微々たる額でしかないが、当選金50万円は俺のような小市民にとってはうなるほどの大金だ。 だから、実際うなってしまったわけである。 朝倉さんに話しても 「それはあなたたちにあげた物だから、賞金はあなたたちの物よ」 と涙が出るほど寛大なお言葉をいただいたわけなのだが……しかし。ここで一つ問題になる点がある。 『賞金はあなたたちの物よ』 というくだり。そう。この賞金50万円は朝倉さんに言わせれば、俺、谷口と長門有希、両名の物だと言うのである。 これは当然の見解であろう。長門が朝倉さんの買い物につきあい、その報酬という名目で朝倉さんが俺に券をくれたのだ。チケットの前所有者の朝倉さんに言わせれば、この券は特定の個人にあげた物ではなく、谷口探偵事務所という団体に寄贈した物なのだ。 しかし、意志の齟齬といいましょうか。ここで朝倉涼子の言葉のとらえ方に、俺と長門の間で相違が発生したから事態がややこしくなってしまった。 いや、相違というよりも自分で相違だと思いたいだけなのかもしれない。 実は俺も長門も、この券が団体扱いでプレゼントされた物だなんて思っていない。この賞金は俺の物だ、いやいや私の物だと、俺たち2人は、照明弾の光にさらされたかのように、互いに賞金に目がくらんでしまったわけである。 こうして我が谷口探偵事務所内には、職員2名が50万円の権利を主張する、まさに金銭をめぐる骨肉の対立が発生してしまったわけである。 そう。このにらみ合いは、互いに一歩も引かないハードコア1本勝負場外乱闘24時なのだ。 「………これは、私が朝倉涼子の買い物を手伝ったことに対し、彼女が表明した感謝の形。この宝くじの所有権は私にある」 ゆるぎない信念を持っているのか、胸をはってそう言う長門。 だが経緯はどうあれ、これを直接受け取ったのは俺なんだ。俺経由でお前に渡して欲しいとは、朝倉さんは言わなかったぜ。 確かに、長門が朝倉さんの買い物につきあったから朝倉さんがこの宝くじを俺に手渡したわけだから、この当選券がここにある要因はお前にある。そこは認めよう。しかしだな。それとこれとは別問題なんだよ。 「………そんなことはない」 なぜなら、朝倉さんはこの宝くじを俺に渡す時にこう言ったんだよ。「長門さんが手伝ってくれたからとても楽しかったわ、ありがとう。それからこの宝くじ、あなたたちにあげるわ」 と。 長門への感謝はありがとう、の謝辞で伝え終えているんだよ。宝くじはそのオプション的な意味合いでくれた物なんだ。あくまで朝倉さんは 「あなたたち」 にあげると言ったんだからな。 あなたたちという言い回しは詰まるところ、俺たち谷口探偵事務所の2人にくれたということだろ? なら、事務所の代表者である俺が受け取って当然ではないか。 「………それはどう考えても詭弁。朝倉涼子は私への感謝の気持ちとしてこの券をくれた。なら、それは私個人が受け取るべき。 あなたたちという言い方をしたのは、券の受け渡しにあなたを介したからというだけであって、それ以上の意味はないはず。朝倉涼子の気持ちと宝くじの譲渡を切り離して考えようとする行為自体が兄貴の浅はかで卑劣な策略」 あのさっぱりした性格の朝倉さんが俺を介したからだけの理由であなたたち、だなんて言い方をするとは思えないね。本当にこの券を長門に渡したいと思っていたら、遠回しに言わずきっちり長門有希に渡してくれと言うはずだ。 あなたたちと言ったのは、その真意に谷口さんにも権利を半分あげるわねという思いが含まれていたからに他ならない。だからして、この券は2人のうち代表者である俺が受け取っておくという形に収めるのがベストなのだよ。 2人でこの宝くじを半分づつに切り取って均等配分、だなんてできないだろ? 「………待って。そもそも兄貴が代表者という論理がおかしい。確かにこの探偵事務所では兄貴が権利者だけれど、この件は事務所とは何の関係もない出来事。朝倉涼子が私に宝くじの券を渡そうとしたが、私が留守だったため便宜上、兄貴が一時的に預かっていたというだけの話。 これは私と朝倉涼子の、個人間の問題。それに変な言いがかりをつけて宝くじを横取りしようなんて、見苦しいにもほどがある。ヤクザ屋じゃあるまいし」 言いがかりとは人聞きが悪い。俺はなにも間違ったことは言っちゃいないぜ。 50万が当選した時に朝倉さんに連絡したときのことを思い出してみろ。彼女はなんて言った? 賞金はあなたたちの物よ、と言っただろう。あなたたち、とは誰のことだ? 複数形である以上、お前一人じゃないだろう。 便宜上だろうが何だろうが、そこに俺も含まれているのなら、やはり俺にも券を受け取る権利があるじゃないか。 「………それは兄貴の推論にすぎない。根拠のない論理を笠に乱暴な物言いをするのは感心しない」 2人に宝くじをくれたのなら、なぜ俺と長門は2人で山分けしないのか。朝倉涼子が2人に宝くじをくれたのなら、等分するのが一番良い方法じゃないか。と疑問に思っている人もいることだろう。 一言で言えば、つまりイヤなのだ。俺も長門も自分の手に、まるまる50万円をつかみ取りたいのだ。 だいたいだな。長門お前、実家が金持ちじゃないか。お前にとって50万なんて屁の一発でふっとぶような端下金だろ? でもな。俺みたいな困窮世帯の人間にとっちゃ、50万はそりゃもう血の出るような金額なわけよ。そこはホラ。あれだよ。 券をもらった過程がどうの権利がどうこう言ってないで、大きな心で日頃お世話になっている谷口さんにポンと一括ニコニコ現金払いで明け渡すくらいの気概があってもいいんじゃないか? 「………私は普段から兄貴の世話になっているつもりはない。家事から小間使いまでしてあげているのに、今までバイト料すら満足に支払ってもらった記憶がない。これはどう考えても労働基準法違反」 だから俺はお前を雇った覚えはないっての。そりゃ家事を手伝ってくれるのはありがたいが、勝手に住み込むように居着いたくせにバイト代払えなんて図々しい。ブルジョワ世帯の方々のセレブ思考は理解できませんな。 第一お前、将来探偵になりたいんだろ? だったら普段から師匠であり兄貴分である俺の立ち居振る舞い、一挙手一投足にいたるまでの動きを見て探偵のなんたるかを学び、習得し、技を盗みとっているはずだ。それはバイト代よりもずっと価値のあるものなんじゃないか? 「………私は兄貴が探偵らしいことをしている場面についぞ出くわしたことはない。だから探偵としての技なんて、一切合切勉強させてもらっていない。見せられるものといえば、海で船を壊して交番で土下座したり、 阪中のパンツを夜な夜な観察したりしているシーン等、実に反社会的な面ばかり」 そりゃお前がたまたま変なとこばかり見ているからだろう! だいたいさ、お前、ここに何をしにきてるわけ? 本読むだけなら家か図書館かトイレにでも籠もってろよ。 「………それと誤解があるようだからこの機会に言っておく。確かに私の父は上位所得者だけれど、それにイコールで私もたくさん資本をもっていると考えるのは大きな間違い。私個人は、平均的な一般高校生と同じくらいの額のお小遣いしかもらっていない」 だったらそのお小遣い内でやりくりしてなさい。キミは小遣いを全て使い果たしても家にいれば着る物食う物に困ることはないだろうが、俺は貯金がなくなったらたちまち路頭に迷って長門家に執事として雇われるしか道はなくなる身なんだぜ。 「………執事を雇うのはいいけど、兄貴だけはイヤだな……」 だからだな。お前が探偵の勉強を続けられるよう、この50万は俺が路頭に迷わないための生活資本として谷口さんに提供しておけよ。な? 将来のためだと思えば安いもんだし夢もある。ボランティアだということにしておけば、面接の時にも有利だぞ。 それに、ほら。あの目障りなキムチ大好き韓国人野郎がいなくなればまた客足も増えるから。そしたらお前のバイト代の件も考えてやるからさ。悪い話じゃないだろ? 「………やだ」 やだってお前……。これだけ条理を尽くして説得しても無駄なのか。 「………不条理この上ない」 不機嫌そうにそっぽ向いて頬をふくらませる長門有希。兄貴分の俺が投げやりになるのを我慢して話をしているというのに、この舎弟は……。 なにが不条理なものか。だいたいだな、お前50万も何に遣うんだ? 貯金するのか? 金融機関に貯金するくらいなら、身近で安心、谷口口座にしとけって。カードも通帳も印鑑も必要なし。いつでもどこでもお手軽な、谷口口座をよろしく! 「………そんなリスキーな投資は誰もしない」 ~~~~~ そこでいったん長門は席を外し、お茶をいれ直して台所から帰ってきた。急須の上に、ゆるゆると白い湯気が立ちのぼっている。 そうやってダメだダメだって言うけどな。じゃあお前は何か貯金以外に使用目的があるのかよ? さっきも何に遣うのか訊いたけど、貯金しておくとかいう理由ならマジで俺に譲ってくれよ。俺には、生活費の足しにするという止むに止まれぬハングリーな事情があるんだから。 「………ティーンネイジャー相手になにムキになっているの?」 うるせぇ。仕舞には、つまんで窓から放り投げるぞこの野郎。 「………私はこの50万円でタスマニアへ、ウォンバットを見に行って来る」 うはん、タスマニア州ときたもんだ!? 豪州へ動物を見にいきたいだって? 何がウォンバットだこのバカ! ウォンバット見学よりもタニグチさんの生活だろう!? どういう教育受けてきたんだよ!? もう理解できないやら情けないやらで憤慨する俺にかみつくような勢いで、長門は鼻息を荒くして控えめに反論してきた。かみつくような勢いで控えめに、というのが矛盾しているようだが、実際そうなのだから仕方ない。 「………この前アメリカへ行ってきたことで、私の貯金はほぼ尽きた。旅に出るためにはまたしばらくお金を貯めなければならないと思っていた。でももう限界。早くオーストラリアへ行きたい。 エアーズロックの頂上から遺灰をふりまくような迷惑でのぼせ上がった観光客ばかりが日本人でないことを世界に証明したい」 いや、お前が証明しなくても、そんなことするやついないから。 宝くじを挟んで座り、そろそろ2時間が経とうとしていた。部屋の中は中秋とは思えないほど湿気をふくんだ空気がよどんでいた。外からは、窓をうつ雨音が間断なく聞こえてくる。 淡々としてしっとりとした雰囲気の中で、俺と長門は滔々として訥々と、延々話しあっていた。 最初のうちは互いに50万円を得んがためにそれらしい理屈をこねて相手を説得しようと静かな炎を燃やしていたが、長時間の討論を重ねた今、もはやそれは討論というよりも我慢対決の様相を呈していた。 お互い、相手が賞金を得ようという下心がありありなのを100%見抜いているのだ。どんなに相手がもっともらしい言い分をしようとも、それは詭弁屁理屈にしか聞こえない。ただただ相手の言葉のアヤや揚げ足をとり合う血眼の戦いである。 人間の人生は長い。病気や事故などで途中退場をしないかぎり、男も女も悠に80年以上生きる時代だ。 そんな長い長い道のりの視点からしてみれば、はっきり言って50万円なんて屁の一発でふっとぶほどの端下金だ。自動販売機の釣り銭受けに入っていた10円玉みたいなもんだ。 しょせんは50万。年下のガキ相手になにムキになっているんだ俺は。やれやれ。大人気ない。 冷静に考えると、そんな思考も念頭に浮かび上がってくる。しかし俺は、そんなネガティブな思いを一発でふきとばす。 しょせん50万! されど50万! ああそうさ、俺は大人気ないさ。俺が小学校に進級した年にオギャーと生まれた長門有希相手に歯ぎしりして闘志を燃やす直情家さ! だがな。50万ってのはそうしてでも手に入れるだけの価値のある金額なんだよ! 金持ちケンカせずなんて言うが、そんなのクソくらえだ。ケンカしてこそ手に入るってものも人生にゃたくさんあるんだよ! ケンカしてプライド捨てて50万手に入るって言うんなら、俺は長門相手に土下座だってしてみせるね。 まあ土下座して50万譲ってくれる相手なら、最初から2時間もにらみ合いをすることもないのだが。 理不尽な取立て屋よろしく、「あんたの将来のために貯金しておくのよ!」 と子どものお年玉をとりあげる母親みたいなことを言いながらこの券を没収してもいっこうに構わないのだが、 それは確実に遺恨を残す。長門がそれで納得するわけないし、俺に対して悪い印象も与えてしまう。 金のためならプライドなんて道頓堀にでも平気で投げ捨てられる俺だが、やはり可能な限り年長者としての威厳というやつを失いたくはない。 金は得たいがなるべくプライドも捨てたくない。泥沼のジレンマ。 そう考えた末の作戦が、今の耐久スタンバイ対決なのである。 先に席を立った方が、負け。それが、この勝負のすべて。 別にどちらが先に言い出したわけではない。この空気は、沈黙する2人の間で自然と発生した暗黙の了解である。 短気を起こして先に立ち上がり、部屋を出た方が敗者。50万円の権利は相手に明け渡す。そういうルールだ。 いや、自然に発生した、というのは正しくないな。少なくともこの空気は、俺が計算して作り出したものなのだからな。 長門はおとなしく無口な性質だが、頑固な面がある。俺が不貞腐れたように黙り込んでいれば、こいつも同じく黙り込み、不貞腐れたように内心で俺に対して反発の怒りを燃やすに違いなかった。 だからこそ長門はムキになり、俺より先にこの場を離れるものかという子どもらしい妙な意固地さと負けん気を発揮し、俺の無言の挑発に乗ってきたのである。 なんという浅はかさ。なんという無謀。まさに悲しき子ども的思慮と言わざるをえない。 長門は自称探偵見習い。俺は本職の探偵。 押しかけ探偵見習いの長門は日々、我が家で寝転がって本を読んだり茶を飲んだりしている宿六的自称アルバイターである。一方、俺は必要とあらば1日でも2日でも張り込みをすることができるプロの探偵なのだ。 相手の行動をひたすら待つというこの勝負。どちらが有利なのかは改めて言うまでもないことだ。 だから俺は、この耐久勝負を長門に挑んだのである。無謀にも長門は、そうとも気づかず俺の術中にとびこんで来た。そこがチーズのぶら下がった鉄格子の中だとも知らずに。 俺は待つ。長門がしびれを切らして立席するのを、2日でも3日でも待ってやる。それで50万が手にはいるのなら安いもんだ。 俺は確信していた。この50万は、もうすでに俺の物なのだ。 長門ざまあwwww 「………兄貴が今なにを考えているか。当ててあげようか?」 不意に、勝利を確信し内心でほくそ笑む俺に対し長門が挑戦的なセリフを吐いてきた。なんだ、ここにきて心理戦にでも持ち思うという腹か? 無駄無駄! お前に俺の思考が分かるてんなら、ぜひとも拝聴しておきたいところだな。俺は一体、なにを考えていたのかな? 「………自分は本職の探偵だから、一般人に毛が生えた程度の長門有希になど負けるはずがない。そう思っていたんでしょ」 はて、そんなこと考えてたかな? どうだろうねえ。人間は刻々と変化をつづける生き物だからねえ。ひょっとしたらそう考えていた時期が、かつてあったかもしれないけれど忘れちゃったなあ。 「………ふっ」 俺のすっとぼけた返答に憮然とするかと思いきや、長門は予想に反して無表情のまま余裕ある鼻息をもらして俺に応じたのだった。 こいつ、なにを笑っているんだ。この勝負、俺の方が圧倒的に有利であると分かっているのなら、これほど余裕でいられるはずもないのに。ブラフをかましたってこの状況が一変するわけでもないから、俺を刺激したってなんの解決にもならないことは分かっているはずだ。 やけになって、最後の反抗に出たつもりなのか? ぬるい。あまりにもぬるすぎる。 その時だった。ほとんど不意打ちと言ってもいいだろう。それくらい絶妙のタイミングで、それはやってきた。やってきた、なんて生ぬるいもんじゃない。急襲をかけてきたとでも言うべきか。 俺の下腹部に鈍痛がはしる。こ、この猛烈な不快感は……便意? 「………ふふん」 小さく声をもらす長門。今の今になって、俺はようやく長門の強気の正体を知った。 その瞬間、頭からさっと血の気が引く。 机の上に茶の入った急須はあるが、湯飲みは俺の物だけしか無い。長門の前には湯飲みがない。つまりこの急須のお茶を飲んだのは俺だけということだ。 「………このお茶は、なつめぐ茶、番茶、どくだみ茶などを私が独自にブレンドした特性の茶。利尿効果は抜群。とても健康的」 ぬあああぁぁぁぁ、しまったあ!! こここの谷口さまともあろうお方が、こんな初歩的なトラップにミートインするとは!! なんたるイージーミス! 「………兄貴がこういう勝負にもちこもうとすることは予想できていた。私の方が一歩先を読んでいただけのこと」 えひん! 猛烈な催しが、ボクのピストル部分をノックする! 「………あまり我慢しない方がいい。一度暴れだした尿意が容易に収まらないことは、長い人生経験で知っているでしょう」 うぅぐう! ふぬああぁぁぁ! おおれおれおれ、俺は、貴様のような、卑劣な地獄の番犬ごときには敗北せぬぞぉ!! 日常生活ではありえないほど股関節をパンプアップした俺に、長門は無慈悲な冷たい笑みを向けるのだった。 「………もう一度言う。無理はしない方がいい」 俺は自分がじっとりと額に脂汗を浮かべ、青い顔でぷるぷる震える姿が簡単に想像できた。こんな格好で意地をはってもみっともないだけだ。長門は俺が席を立つのをほくそ笑みながら待っていることだろう。 くそ、悔しいが状況判断を誤り、自分を過信しすぎた俺のミステイクだ。この勝負は俺の完敗だ。 だが、俺にもまだ切り札はある。秘中の秘の奥義だからして、できれば一生涯封印しておきたい大技だが、こうなってしまってはしかたあるまい。 長門はさらに畳み掛けるように、兄貴分である俺を小馬鹿にしたような様子でお茶をすすめてくる。 「………もう一杯どう?」 ふ、ふふふ。それで勝ったつもりか、長門……。本当にこれで終わったと思っているのなら、笑止千万だぜ。 お前はうまいこと俺をブービートラップにはめたつもりだろう。確かにいい手だったよ。さすがの俺もこの展開は予想できなかった。だがな。ふふふ。これで谷口探偵を凌いだと勘違いするなよ! 俺にはまだ最終手段が残されているのだ! 「………この期におよんで何を。おとなしく負けを認めれば、お土産にウォンバットの木彫り人形くらい買ってきてあげたのに。そこまで言うのなら、兄貴の奥の手とやらを見せてもらう」 いいだろう。ひっひっふー、ひっひっふー……。後になって後悔するなよ。 俺は左手で股間のマグナムをおさえつけた状態で、ふるえる右手を勇ましくも持ち上げ、人差し指で長門をさした。 お前に負けるくらいなら、俺はこの場で 【禁則事項です】 をもらす!! 長門の動きと空気が、一瞬にしてかたまった。 うっとうめき声を漏らし、怪しげでありつつも悩ましげに身をひねると、弾かれたように長門がおろおろと動きだした。 「………そ、それは、人としてやっちゃいけないこと」 人としてやっちゃいけないこと? 馬鹿野郎! そんな常識論をふりかざすだけで探偵がやっていけるものか! お前も探偵を目指す若きエリートなら、それくらいのことは理解しろ! ミッション完遂のためならば、我が身やプライドなどどこへでも捨てちまえ! それが無理だというなら探偵見習いなんてやめちまえ! 俺の説法を受け、ショックを隠せない長門は息をつまらせて後ろへのけぞった。 いかん、だんだん自分がなにを言っているのかも分からなくなってきた……ここ、このままでは、はあはあ、本格的にやばい橋をわたってしまいかねないぜはあはあはあ。 そこで俺は、最後の手段として長門にネゴシエイトを敢行した。 この交渉が決裂すれば、俺は50万どころか人としての尊厳自体を失ってしまいかねない。しかしそれでも、俺は長門に戦いを挑んだのだった。 今の長門はそうとうメンタル面にダメージを受けているはず。ここでさらに追い討ちをかけては、開き直られる可能性があり危険だ。なら、今は妥協案を提出して両者引き分け条約締結を狙うのが上策にちがいない。 俺にも、もう、それほど余力はのこされていないわけで……… なあ、長門。ひとつお前に提案があるんだ。このままだと、俺もお前も、人としてなんだかとっても大切なものを失ってしまうような気がするだろう。俺だって本当は年甲斐もないことはしたくない。お前だってショッキングな衝撃シーンを目の当たりにしたいとは思わないだろう。 だから、ここらで手打ちといこうや。俺から提案がある。 今度の休みに、俺がお前を国内旅行に連れて行ってやる。オーストラリアのエアーズロックほどじゃないが、それでもなかなかに良い景観が臨める山にだ。 そこに行って、お前がまったくもって笑止なほどにつまらなかったと感じたなら、この50万はそっくりお前にくれてやる。だが、その旅行に満足したなら、この50万は俺の物。そういう取り決めでどうだ? 鬼気迫る形相でそう語る俺の気迫におされ、長門はしばらくの逡巡のあと、渋々という感じでうなづいた。 本当だな!? 本当にそれでいいんだな!? もし旅行が楽しかったのに、後になって 「つまらなかった」 とか嘘を言い出すんじゃないぞ、分かってるな!? 「………わかったから。わかったから、早くトイレに行ってきて。私は気が気でない」 絶対だな、絶対だぞ! としつこく念をおしながら、俺は前かがみで青い顔のままトイレに駆け込んだのだった。 ~~~~~ トイレの中で至福のときを味わいつつ、俺は考えていた。 ふふふふふ。あの場は長門も焦っていて冷静な思考をたもっていられなかっただろうが、やはりこの勝負は俺の勝ちだな。 長門は天性の旅好きだ。あのワタリバッタ人間が、未知の土地への旅行をつまらないと感じるわけがない。 とにかく俺は、長門のご機嫌をとるように計らい続けるのだ。さすれば長門は上機嫌で旅を満喫し、しれっとあの50万円を俺に手渡すにちがいない。 完璧な作戦ではないか。ぐふふと笑い、俺は心の中でぺろっと赤い舌を出した。 しかし。ああなんてこった。俺は気づいていなかったのだ。 この旅行が、あんな悲劇の幕開けになろうとは……。 ~つづく~
https://w.atwiki.jp/myturn/pages/67.html
名探偵の評価と相性のいい装備 名探偵の評価とおすすめ装備を紹介しています。レギュラーでの評価や一緒に使いたいヒーローも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 ▼名探偵の評価 ▼長所 ▼短所 ▼名探偵と相性がいい装備、ヒーロー 名探偵の評価 レギュラー アリーナ 使いやすさ 7点 4点 5点 名探偵の長所と短所 長所 思考のバイオリンでEXの潤滑剤になる 短所 プレイングが難しい 名探偵の総合評価 プレイングは難しいが、多くのヒーローとのシナジーがある良カード。使いこなせるとかなり強い 名探偵と相性がいい装備、キャラ 装備 エルフの双剣 手札でかさばるカードを整理しながら、効率よくEXを回すことが出来る キャラ ステータス レベル別ステータス アリーナでのステータス スキル構成 上へ
https://w.atwiki.jp/cthulhuworksmemo/pages/18.html
作品情報 作品形式 小説 作者 黒史郎 出版社 創土社 初版発行日 2023/2/13 関連作:災難探偵サイガ~名状できない怪事件~ ストーリー要約 宇宙一不運な探偵が、怪しい黒衣の集団の調査を中心に怪事件を捜査するオカルトミステリー。 クトゥルフ神話要素 レーベルは「クトゥルー・ミュトス・ファイルズ」だが、クトゥルフ神話要素は薄め。 ミルぽんの別れ際の台詞「いあいあー♪」。 登場人物に「テケリ」という人物がいて無貌であろうとしているなど本筋に無関係な小ネタ程度。 UMAや幽霊などクトゥルフ神話に関係のないオカルトネタは多数。
https://w.atwiki.jp/ishigamism_wiki/pages/40.html
作者:東野圭吾 初版:2000年X月X日 感想: 【1回目】 期間:2007年9月 日数: 探偵 東野圭吾
https://w.atwiki.jp/uminekokousatsu/pages/17.html
探偵権限とは 探偵の義務と権利 うみねこでは各Episodeで登場人物の内1人が探偵とされる。 探偵はゲーム盤のルールとして 行動に制限が加えられている(義務) 探偵権限が与えられている(権利) この2つを混同し「探偵権限により間違えるはずがない」として仮説を棄却する考察が多いが、探偵権限(権利)と行動制限(義務)は別に考えないといけない。 行動制限は「制限(義務)」なのでルール上、探偵が制限を破ることはできない。必ずルール通りに行動する。 探偵権限は「権限(権利)」なので探偵が権限を行使するかどうかは探偵に委ねられている。探偵は権限を使用しないこともできる。 ※実際に探偵権限を行使しなかったために見破られなかったトリックも存在する。(Episode5のヱリカの死体確認ミス等) ※ただし、探偵権限を行使したかどうかは注意が必要 なお、Episode1~4までは戦人が探偵である。 探偵に課せられた義務 以下はゲーム盤のルール上、探偵に課せられた義務であり探偵(及びゲームマスター)はこれを破ることができない。 ノックス十戒及びヴァンダイン20則より ノックス第2条 探偵方法に超自然能力の使用を禁ず ノックス第6条 探偵方法に偶然と第六感の使用を禁ず ノックス第7条 探偵が犯人であることを禁ず ノックス第8条 提示されない手がかりでの解決を禁ず ヴァンダイン第9則 探偵が複数あることを禁ず 物語中で赤字及びルールにより示された探偵(及びゲームマスター)の義務 探偵は犯人になれない(赤) 探偵は探偵方法として超自然能力、偶然、第六感の使用ができない。 探偵は嘘をつくことができない(客観視点の義務) 探偵は提示されていない手がかりで事件を解決してはならない 探偵は物語中1人しか存在できない ※重要※ 探偵は主観を偽れないのであって、間違った主観を持てないのではない。 探偵に与えられた権限 物語中で提示された探偵の権限 探偵は全ての現場を検証する権利を持つ 捜査のための探偵のあらゆる活動は妨害できない(正確には妨害があっても活動に支障がない) 探偵が検証した事実は正しい探偵は検死を誤らない 探偵は秘密の通路を見落とさない 探偵は検証により全ての手がかりを発見できる 探偵は事件解決に際し、集会の開催ができる ※重要※ 探偵は「検証した事実を間違わない」のであって、検証していない事実を誤認する場合はある。
https://w.atwiki.jp/tanteisan/pages/4.html
探偵に依頼する前には、事前にネットの情報を収集しておくことが大切です。 世の中には、数多くの探偵が存在します。 「良い探偵か?悪い探偵か?依頼してみなければわからない。」わけではありません。 普通に生活していれば、なかなか接点のない探偵業の情報は、ネットの情報を調べることで、 考えているよりもたくさん有益な情報が掲載されているはずです。 また、探偵トラブルに巻き込まれないためにも、様々な探偵関連サイトを参考にすることで、 「悪徳業者に騙されない」予防策になるはずです。 おすすめの探偵関連サイトを紹介したいと思います(バラエティサイトも含みます)。 探偵業法に関するページです。探偵に調査依頼を行う人を守るために作られた法律です。 探偵業を行う場合、この法律を守り、営業を行う必要があります。 依頼をする人も知っておくことで、悪徳な業者を見極め、探偵トラブルを避けることに役立つ情報です。 http //www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetuzuki/tantei/1gaiyo/tantei_gaiyo.htm 全国の探偵を地域ごと検索やカテゴリー別検索も可能。無料で調査見積りを出してもらうことも 出来る探偵情報・興信所情報サイトです。浮気調査自動見積もり計算機もあり、依頼する探偵を 探しだすだけでなく、探偵選びや離婚関連情報など、役立つ情報も数多く掲載されています。 http //www.tanteiguide.jp/ あなたはどんな名探偵?名探偵にはそれぞれ特徴があります。頭脳明晰だけど、人間関係を形成するのが大の苦手。 など、名前を入力することで、もしも名探偵だったらどんな特徴を持った名探偵になるのかを一瞬で判断できる、 もしも系バラエティサイトです。 http //usokomaker.com/meitantei/ 圧倒的な調査力と低料金に自信のある、Akai探偵事務所のサイトです。調査力が必要な浮気調査はもちろん、 機材力が必須だと言われる盗聴器発見調査にも定評あり。 探偵依頼を考えているのなら、探偵の選び方も掲載されているこのサイトをチェック。 http //www.akai-web.co.jp/ 探偵グッズの販売サイトです。探偵グッズは防犯にも役立ちます。 「最近なんだか盗聴されている気がする。」そんな不安を解消する、盗聴器発見商品や不審者や侵入犯対策に役立つ 屋外用・屋内用防犯カメラなど、探偵グッズが多数取り揃えられたショップサイトです。 http //store.shopping.yahoo.co.jp/bouhan-king/c3b5c4e5a5.html 離婚に関する総合サイトです。離婚を目的として浮気調査を依頼する場合、離婚のことを考え、参考にしたいサイトです。 離婚原因で多いのは、パートナーの浮気だけじゃない。離婚を知ることで、探偵の調査を上手に使うこともできますよ。 http //www.rikon.to/
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3012.html
(※ これは谷口探偵の事件簿のつづきです) 俺の名は谷口。探偵だった男だ。 探偵だった、と過去形の物言いをしているが、廃業したわけじゃい。休業しているだけだ。 休業と言っても元々、OPENとかCLOSEDとか時間帯によって使い分けているわけじゃないから厳密には開店も閉店もないのだが、本拠地である事務所から離れ、今は故郷へ里帰りしているから便宜上は休業としているわけだ。 故郷に帰ってきて郷里の風景を懐かしんでいたら、いきなり近所のジッチャに捕まった。なんでも人手が足りないから、若い衆に手伝ってもらいたいことがあるらしい。田舎は地域ぐるみのおつきあいがあるから、こういう時に断れないのが辛いところだ。 何をやらされるかと思ったら、山へ連れていかれた。うちは荒神様の年回りじゃないはずだが。 「谷口さんとこのせがれ、これ杜まで運んでくれや」 そう言ってジッチャは畑にうづ高く積まれた草っぽい物の小山を指さした。谷口さんのせがれって、俺も谷口さんなわけだが。 そんなこんなで、せっかく里に帰ってきたというのに俺は数日の間ジッチャにこき遣われて畑からとれたヒゲ根植物をひたすら運搬させられていた。 「人類みな兄弟。手と手を取り合って仲良くみんなで暮らしていきましょう」 と平和的に繁茂している地下茎の植物というやつは、なかなかどうして厄介なものだ。「ええやないか、ええやないか」 とみんなして地の下で強烈に仲良くくっついているから、この野郎この野郎、と力いっぱいひき剥がそうとしても取れやしない。しょうがないからそのまま抱えて運ぶのだが、根に土までからみついて総重量が10kgを超えていたりもするのだ。 そんな生活が3日も続いたものだから、筋肉痛と倦怠感ですっかりバテてダウンしてしまった。 なんのために俺は田舎へ帰ってきたんだろう。少なくとも修行鍛錬のためじゃないはずだが。 しかし少なくとも、そうやって体力を消耗して一つのことに集中している間だけは、あの日のことが忘れられてありがたかった。 ようやく全てのお役を完了して自宅の居間でごろごろしていた昼下がり。控えめなインターホンの音が鳴りひびいた。こんな昼間っから誰だろう。両親なら留守だぜ。 ああ、そういえばamazonでおしかりCDを注文してたんだった。きっとあれが届いたんだ。「このやろー、うちの畑あらすな~」ってやつ。 畑あらすな~ふふんふん、と鼻歌まじりに口ずさみながら玄関に降りると、そこには見知らぬ女の子が立っていた。誰だ、この子? ベリーショートの髪に少しふっくらとした少女っぽい輪郭。理知的な瞳、落ち着いた雰囲気。どっからどう見ても年頃の女の子だが、髪型のせいだろうか。ボーイッシュで男の子のような印象も受ける。 しかし、初対面のはずなのに、どこかで会ったことあるような気が……。う~む、思い出せない。どちら様だろう。おしかりCDを持ってきた配達屋には見えないんだが。 「あれ。谷口さんじゃないですか」 お久しぶりです、という声を聞いて、俺はハッと気づいた。 ひょっとしてお前、佐々木か? 客間に通した佐々木に茶を差し出し、俺は机をはさんでその対面に腰を落ち着けた。 「偶然ですね。ここへ来るのは初めてで土地勘がないから道を訊くためにインターホンを鳴らさせていただいたお宅が、まさか谷口さんの実家だったなんて」 佐々木はくっくっと、喉の奥でボブ・サップが餅をついているような独特の笑い声をもらした。 偶然はもういい。飽き飽きしてるんだ。それより、お前どうしたんだ? そんなに荷物抱えて。芸能界を引退したって話なら一時期、テレビや雑誌でもちきりの話題だったから知っているが。もしかして、人生を見つめ直すための一人旅でもしてるのか? 「それも面白そうですけど。残念ながら人生を考えるための道行きじゃないんですよ。内容は濃かったけれど、見つめ直すために立ち止まるほど長く生きているつもりはありません」 そう言って佐々木は麦茶のコップを手にして、曖昧に微笑んだ。なにか言いたげな様子だ、と思ったが、詮索はやめておいた。元アイドルのワケあり旅情に横槍いれるほど野暮じゃないつもりだ。それに佐々木が言いたくなれば、俺が尋ねなくても勝手に話すだろう。 そう言えばお前、外見変わったよな。前はもっと女の子女の子してたのに。 「芸能界は引退したし。これからは普通の一般人として暮らしていくつもりですから、自分なりにいろいろ変えてみたんですよ。髪も短くしたし、化粧もなし。この服だって、店の男性用コーナーで買ってきた安いシャツなんです。これで僕もまた一歩、普通の青年に近づいたということですね」 確かに俺も一目で佐々木だと分からなかったくらいだから、一般人の中にとけ込めているとは思うけれど、悪いがまだ男には見えないぞ。良くて中性的といったレベルだ。 「う~ん。難しいですね、男らしくなるというのは。僕はどうもそういった身なりについては無頓着で」 骨格や顔立ちなんかは先天的なものだから、整形でもしないと見た目を変えるのは無理だろう。手っ取り早く外見を変えたければ、無精ヒゲを生やしてみるとか……いや、あんまり似合わないかもしれないな。ヒゲ。 「僕、ヒゲが生えないんですよ。声も相変わらず低くならないし」 悩みの種なんですよね。と言って佐々木は麦茶を飲み干した。 人の悩みなんて、分からないものだな。俺にしてみれば佐々木のかわいらしい部分がモテそうで羨やましく思うんだが、佐々木本人にしてみれば、男なのに男として見られないというのはジェンダー的なコンプレックスなんだろう。あんまりこっちの話題には触れない方がいいかな。 そういえば、お前が芸能界一直線のころにマネージャーやってた、周防さん……だっけ? 彼女はどうしてるんだろうな。やっぱり、別のタレントのマネージャーを担当してるのかな。すごい個性的な人だったけど。 快活な笑いをあげながら俺は佐々木の湯のみに麦茶をもう一杯ついでやりつつ、相手の顔色をうかがった。 佐々木は、まるで携帯電話とテレビのリモコンを間違えて携帯ショップへ修理に持って行ってしまった時くらい落ち込んでいた。 おい、どうした佐々木。気は確かか? おーい? もしもし? さっちゃん? 「……実は、そのことで、僕はここへ来たんです」 佐々木は、キャビアの缶詰だと思って開けたら実はサバ缶でした的な落胆ぶりで、言葉を区切るようにそう呟いた。 「……谷口さんもご存じの通り、以前僕は芸能界を辞めるため、周囲の迷惑も考えずに強引な手段をとりました。今にして思えば正常な人間のすることではなかったと思えるのですが、あの時期は各方面からの重圧で、僕もそこまで頭が回っていませんでしたから」 ずいぶん前のことのように思えるが、今でもはっきり覚えている。こいつは芸能界を辞めるため、自分の部屋に自ら盗聴器を仕掛けて、悪質なストーカーに粘着されているように偽装したんだった。ストーカー絡みの話には俺もほろ苦い思い出があるから、あまり突っ込んだ話はしたくないんが。 「僕はあの後スケジュールを消化して、円満とはいかないまでも、はれてプロダクションを辞め、芸能界から離れることができました。それで僕はよかったんです。願いがかなったのですから。ただ、プロダクション側からしてみれば、納得ができない部分もあったんでしょう。自分で言うのもなんですが、会社が勢力を挙げて売り出していた人気アイドルの僕が突然辞めてしまったわけですから。上層部としても、なにかケジメ的なものが必要だと思ったんでしょうね。結局、いろいろあった後、僕があんな行動に出るのを未然に防げなかった責任があるとして、スケープゴートにされたのが」 当時マネージャーだった周防九曜ってわけか。 「そうです。表向きには自己都合による辞職となっていますが。僕が、あんなことをしなければ、周防をこんな目に遭わせなくて済んだのに。そう思うと、やりきれなくて。彼女の足取りをたどり、周防がこの町にいると聞いてやって来たというわけです」 え、あの姉さん、この町にいるの? 全然知らなかった。 「あくまで噂ですよ。彼女の実家がこの県にあるということは知ってましたから、その後の足跡を調べてみたんです。あまりあてにはなりませんが、この近くにいるんじゃないかと目星をつけて来たんです」 ふーん。お前も大変なんだな。 で、周防の姉さんに会ってどうするの? 四方山話をするだけなら電話でもメールでも事足りるだろうから、ご挨拶をするだけじゃないんだろ? 「どうする、とは具体的に考えていないのですが、とにかく謝りたいと思ってます。でも、携帯やメールも通じないし。それにこういうことはやはり直接会って、面とむかって言うべきだと思うんです」 気持ちは分かるが、周防としては困るんじゃないか? 別に佐々木が悪いわけでもないのに、ごめんって謝られても困惑するだけだと思うんだが。 ガキのケンカじゃないんだし。世の中にはそのままそっとしておいてあげた方が相手のためになるってこともあるんだぜ。 それからしばらく、佐々木は眉をひそめて考え込んでいた。 佐々木が真摯な顔を上げて答えを告げたのは、俺がトイレに立とうとした時だった。何もこんな時に答え出さなくても。もうちょっとタイミングずらせよ。 「それでも、僕は彼女に会いたい。会って話をしたんです」 そう言って佐々木が頭を下げるものだから、俺はトイレに行くのを我慢するハメになってしまった。冷たい麦茶飲んでポンポン冷えちゃったのに。 「お願いします、谷口さん。しょせん素人の僕が人の行方を追えるのはここまでが限界なんです。どうか、一緒に周防の居場所を探してくれませんか?」 まあ、とりあえず頭を上げろ。そこまで平身低頭しなくてもいいだろう。 「いいえ、谷口さんがやってくれると言うまで僕は頭を上げません。今は手持ちが少ないですが、後々必ず依頼料をお支払いします。だから、僕の依頼を請けてください!」 探偵に仕事頼みたいのは分かったけどさ。ちょっと待ってくれよ。俺トイレに行きたいんだ。 「我慢してください」 ムリクソ言うなよ。けっこうピンチなんだぞ。 それに今は里帰り中で、仕事の書類とか全部事務所に置いてきてるから、依頼手続きとかがすぐにできないんだ。今年から探偵業法が施行されて、公安委員会の目も厳しくなっちゃって。なあなあで仕事を請けられなくなったんだ。悪いけど。 「そこをなんとか、お願いできませんか?」 アフターサービスは請けてないし。仕事としては、ムリだな。 「……そうですか。無理を言って、すいませんでした」 がっくり肩を落とし、佐々木は座を立ち上がりかけた。 でも、探偵とか依頼とか、そういう社会のシガラミ的な損得勘定抜きにして、単純に友人の人探しのお手伝いという形なら何の問題もないぜ。 あっけにとられたような表情で、佐々木が上目遣いに俺を見る。 「それは、どういう……?」 どういうもこういうも。プライベートとして姉さん探すのを手伝ってやるって言ったんだよ。ちょうど暇してたところだしな。 「本当ですか?」 ウソついてもしかないだろう。同じ湯釜で煮られた仲じゃないか。遠慮するなよ。それに、本当にこの界隈にあの凶悪な目つきの元ジャーマネがいるんなら、すぐに見つけられそうだしな。 「ありがとうございます。本当にありがとうございます」 いいって。別に。気にするなよ。今の俺は私立探偵じゃない。休業中の探偵なんだ。 俺がそう言ってやると安心したのか、佐々木は安堵の息をもらして再び腰を落ち着けた。 「よかった。この見知らぬ土地で、偶然会えた谷口さんに断られたどうしていいか分からなかったところです」 困った時はお互い様だ。ま、すぐに見つかると思うから、今日はうちにでも泊まっていきな。 「そうさせてもらいます。ああ。なんだか安心したらトイレに行きたくなってきた。ちょっとトイレを借りてもいいですか?」 馬鹿野郎。俺が先にきまってるだろう。 おい居候。今帰ったぞ。 家の玄関を開けて帰還を告げると、奥からエプロンと三角巾をつけた佐々木が現れた。 「お帰りなさい、谷口さん。部屋の掃除、終わりましたよ」 うむ、ご苦労。しかし今時、三角巾かぶって掃除してる人もいないと思うんだが。 ところで佐々木。今日は良いニュースと悪いニュースがあるんだ。どっちを先に聞きたい? 「ニュースって、周防関係で、ですか?」 そう。周防九曜関係で。言ったろ? あの姉さんなら探すのは簡単だって。 「そうですか。それじゃあ、うん、そうだな……良いニュースから聞かせください」 OKブラザー。別に廊下に正座しなくてもいいから。立ったまま聞いていいぞ。いちいち仕草が女性っぽいな。 良いニュースは、周防が見つかったということだ。ボルホスの502 BIG BLOCKなんて怪物バイクに乗ってる人間は日本国内でも数えるほどしかいないからな。バイク屋を何店か聞き込みして回ったらすぐに見つかったよ。居場所もつきとめた。ちょっと遠くなるが、今からでも行ける場所だ。 「そうですか! さすが谷口さん。やっぱり彼女はこのあたりにいたんですね。それじゃあ早速行きましょう。僕は出かける準備をしますから、谷口さんは少し待っていてください。それほど時間はかかりませんから」 まあ待て。そう急ぐなよマイケル。言ったろ? ニュースはもう1つあるって。そう言って俺はエプロンを外しかけた佐々木を呼び止めた。 「悪いニュースですか……あまり聞きたくないですが、聞かせてください。まさか、周防が病気や怪我をして入院しているとか?」 いや、周防九曜は病気も怪我もなく健康そのものらしいんだが……。その、あれだよ。ほら、何て言うか、アレ。 「アレとかコレとか、代名詞ばかりじゃ分かりませんよ。健康でいるなら言うことはありませんが、伝えるべきことは明確にしてください」 そうだな。じゃあ単刀直入に分かりやすく一言で言うぞ。 「はい」 グレてるんだって。 「……は?」 だから、周防はグレてるんだって。非行に走ったってことだな。今は元気に暴走族やってるそうだ。 人間は誰しも、やさぐれるものである。子どもが親から十分な愛情を受けずに育つとその子は愛情を欲する心が反面的に噴出し、非行に走ったりするだろうし、いくら努力しても苦労が報われず他人から認められなかった人は 「どうせ俺なんて!」 と世間に絶望したりもするだろう。 他人から認めてもらいたい、自分の存在を知ってもらいたい、かまってもらいたい、そういった想いや願望が叶わず爆発すると、えてしてそれは歪んだ形で表出してしまうものだ。 飛ぶ鳥を落とす勢いの人気アイドルの敏腕マネージャーだった周防九曜も、仕事上のちょっとしたことで山の上から谷底へ転がり落ちてしまった。しかもそれが自分の力量及ばぬことに原因があるのではないとしたら、理不尽を感じて人生にイヤ気をさし、グレたとしても不思議ではない。 暴走族になってカタギの人たちに迷惑をかけているんだとしたら、それは社会的に許されることじゃないのだが、同じ人間としては大いに同情するね。というか今の俺も、ある意味では都落ちしてきた同じ穴の狢なのだ。彼女の行いを非難する気にはなれない。 俺と佐々木がビルの物陰からそっと首を出して様子をうかがっているとも知らず、周防は閉鎖されたコンビニの駐車場で、車のように巨大なバイクにもたれかかり缶コーヒーを飲んでいた。あの大きな頭と冗談抜きに他人を視殺できそうな切れ長の目は、周防九曜本人に間違いない。 周防の周囲には10人ほどのゴロツキっぽい男女が群れているが、あれがきっと噂の暴走族メンバーなのだろう。しかしどう見ても周防が暴走族の一員であるというよりも、周防が暴走族を率いているヘッドのように見えるのは気のせいだろうか。 「久しぶりに見たけど、周防、元気にしてたんだ。よかった」 元気ではあるんだがな……。彼女に関してはもうちょっと落ち込んでるくらいがちょうどよかったんじゃないか? とにかく、周防がこのあたりにいるということは判明したんだ。どっかそのへんのファミレスにでも行って、今後の方針について話し合おうじゃないか。まずは彼女の後をつけて、現住所を探るところから…… 「おーい、周防!」 って、うおおおぉぉぉぉぉぉい!? ちょ、佐々木さん!? なんで手ふって暴走族の群れにむかってるんスか!? うわ、すごい見られてる! あんた怖いもの知らずかよ!? もう少し自分を大切にしたほうがいいですぞ。 「あん? なんだお前。俺たちに何か用か、嬢ちゃん」 駅前で待ち合わせしていた恋人を見つけて笑顔で走って行く純情高校生くらい爽やかに駆けて行く佐々木に、一番手前にいたチンピラふうの出で立ちの男が詰め寄る。早速つかまっちゃったよ……。ああいいう手合いとは、あまり関わり合いたくなかったのに。でも、俺も行かないといけないんだよな。まったく、面倒くさい。あいつ、こんなに軽いキャラだったかな。 突然すいません、お楽しみの途中。俺たち、そっちの周防さんの知り合いで、ちょっと用があるもんで。 「何だテメェ。周防の姐さんに用だって?」 姐さんって……。ああ、でもあんまり違和感ないかも。貫禄あるしな。主にバイクと頭と目つきが。 周囲の目が痛い。暴走族の面々は、明らかに異物をいぶかしむ目で俺と佐々木を見ている。照れるからあんまし見ないでもらいたいんだが。 佐々木を引き止めたチンピラが、ヤンキー特有の威嚇の視線で佐々木をにらんでいる。それに対して佐々木はというと、何を思ったか 「初めまして、佐々木といいます」 と自己紹介を始めた模様。バカン。メンチきってる暴走族相手に自己紹介してどうするんだよ。今後ともよろしくとでも言うつもりか? まずいことに、危ないヘラヘラ笑いを浮かべつつ俺と佐々木の周りに集まり始める暴走族たち。因縁つけられたら最後だぞ、ヘタをうってくれるなよ佐々木。こうなったら、頼みの綱は周防だけだ。 「周防さん。こいつら周防さんの知り合いだなんて言ってますけど、マジっすか?」 何故かものすごい近い距離で俺の顔をのぞきこむ茶髪のチンピラ男。なんでこいうヤツらって、こんなに距離をつめてくるんだろう。人にはそれぞれコミュニケーションのテリトリー範囲があるんだから、一定距離よりは近づいてもらいたくないんだが。そんなに俺と親交を深めたいんなら、まずは交換日記から始めようじゃないか。 それにしてもこいつ息が臭いな。舌苔も青くなっている。内臓のどこかを悪くしているに違いない。こんなところで非行に走ってないで、病院へ行きなさい。 周防が無言で手を振ると、俺と佐々木を取り囲んでいた暴走族たちは打ち合わせていたようにさっと後ろへ下がっていく。よく教育してるじゃないか。 「────お久しぶりです……佐々木さん────谷口さん────」 「うん、久しぶり。周防も元気そうで何より」 以前会った時よりも段違いの威圧感を感じさせる周防に、佐々木はまったく動じることなく語りかける。この2人仲良かったもんな。きっと佐々木の中では、周防が暴走族の頭やっていようが児童相談所の相談員やっていようが、立場なんて関係ないんだろうな。 向かい合って見詰め合う2人を見ていると、佐々木が周防のことを信頼できる人物だと言っていたことを思い出した。 「────場所を……変えましょう。佐々木さんと2人きりで、話をしたい────」 低い声でそう言うと、周防九曜は佐々木を伴ってつぶれたコンビニの奥にひっこんでいった。 ……あれ、俺は? 2人の話とやらはすぐに終わるものだとばかり思っていたが、待てど暮らせど帰ってこない。結局2人が戻ってきたのは、俺がなんとか口先三寸二枚舌で暴走族のチンピラたちに取り入ったところだった。 暴走族たちの中にとけ込むのはさほど難しいことじゃなかった。周防の知り合いという路線で話を進めていったら、ほとんど警戒されることもなかったし。こういう連中はお友達意識がとても強いから、ちょっとしたきっかけがあって話が合うと思わせられれば、すんなり輪の中に入れるもんだ。 俺も今じゃすっかり谷ちゃんと呼ばれて親しまれている存在だ。誰が谷ちゃんだ。俺はYAWARAちゃんかよ。 「お待たせ」 そう言って、心なしか悄然とした様子で佐々木が俺の隣に戻ってきた。こんなに長い間、何を話してたんだろう。まあ久しぶりに会ったんだから積もる話もいろいろあっただろうが、谷ちゃんと呼ばれて愛玩されていた俺の身にもなってみろ。 そうこうしていると、BIG BLOCKの前に立った周防九曜が号令を発した。族の構成員たちが一斉にダラダラと緩慢に周防の方を向いた。胸を張って語れるような主義主張も持たない根無し草たちをまとめあげているんだ。大したカリスマだよ。 「────私は今日で……チームを抜ける────」 突然の周防の辞任発言に暴走族たちがざわざわと騒ぎ始めた。厭な予感がひしひしと感じられ、俺の脳みそもざわざわと騒ぎだした。 「おい、どういうことだよ谷ちゃん」 さっきまで友好的だった天然パーマくんが、敵意むき出しの不審声で俺を問いつめてきた。どういうつもりの周防の発言なのか、それは俺が一番知りたいよ。せっかく平穏無事にここから脱出できるよう話を進めてきたってのに、これじゃ台無しじゃないか。もしかして、また佐々木が変なこと言ったのか? もしかしなくても、佐々木のせい以外に考えられないんだが。 「暴走族はよくないよ。騒音や排気ガスで一般人に迷惑をかける。だから僕はやめるよう、説得したんだ。周防にこんなこと、させておくわけにはいかない」 良いか悪いかで言えば確かに宜しくはないが、好きでやってるんだから放っておいてやれよ。母ちゃんかよ、お前は。いや、どちらかと言うと父ちゃんか。 頭が痛くなってきた……。 険悪なムードの中、舗装の剥げかけた駐車場で族員たちが総出で周防の説得にあたっている。俺は目の据わったテンパくんに胸ぐらを掴まれて前へ後へ右に左とがっくんがっくん揺さぶられている。佐々木は俺の背に隠れて事の成り行きを見守るかまえだ。この野郎。 「おい谷ちゃん、聞こえてんのか!? どういうつもりかって訊いてんだよ。ああん!?」 ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は何も知らないんだ。マジで。これは俺にとっても不測の事態ってやつでだな。だからお互いアクシデントにみまわれた者同志、ひとまず落ち着こう。な? 「周防は僕の大切な友達なんだ。友達が間違った道に進んで行こうとしたら、身体を張ってでもそれをくい止めてあげるのが本当の友情でしょう」 なんという少年漫画的価値観の持ち主。良いこと言ってるつもりなのかも知れないが、どう考えても身体を張ってるのは俺オンリーじゃないか! ちょっと前と後を代われよ。お前が身体を張ってくれ。そして俺を助けてくれ。 「組抜けよ! 組抜けの儀式よ!」 周防のそばにいたケバい女性が金切り声を張り上げた。なんだよ、びっくりしたな。ヒステリックな声を上げやがって。 それより組抜けの儀式ってなんだ。いや、組抜けはいいとしても、儀式って? 「俺たち 『沙慈汰理亜栖Ⅲ』 を抜けようとする者は、組抜けの儀ってもんを受けないといけないんだ」 緊張の面持ちで、俺の胸ぐらをつかんでいたテンパくんが、やおら手を離した。 儀式って、何をするんだ? 最近のドライな若者に似つかわしくもない、厳つい言葉じゃないか。ヤクザじゃないんだから。 そしてチームの名前が、沙慈汰理亜栖Ⅲって……。ネーミングセンスもさることながら、Ⅲの意味が分からない。 「組抜けの儀では、チームを抜けようとする者とチームのリーダーがチキンレースで勝負して、見事リーダーに勝てたら脱退が認められるんだ」 ああ。あるある、そういう掟。ドラマとか小説の中の設定だけでだけど。 「しかしよ。今のチームリーダーである周防さんが抜けようとしているんだから、チキンレースの相手がいないぜ」 「そうだ。周防さんがリーダーなんだから、走りの相手がいなけりゃレースにならねえ」 暴走族の内部は、さらに混迷を極めて荒れていた。どうやら、誰がこの一大レースに出馬するかで議論が交わされているようだ。明言は避けているが、どうやら誰もレースには出たくないらしい。そらそうだよな。勝負に負けたら仲間たちから総スカンだもんな。 大事なレースができないとあっちゃ、ケジメがつかないからな。うんうん。その調子で大いにもめててくれ。この隙に俺たちは退散させていただきますんで。じゃ、そういうことで。 「あいつらにやらせればいいんじゃないか。周防さんの知り合いっていう、2人によう」 「そうだな。元々、あいつらが来たから、周防さんがチーム抜けるなんて言い始めたんだ。本来なら全員でリンチにしてやりてぇところだが、チキンレース受けるってんなら、行かして帰してやってもいいよな」 よからぬセリフが背後から聞こえ、イヤな汗を流しながら俺と佐々木はふり返る。聞こえないふりをきめこんでいたかったんだが……。 振り返ると、凶悪な目つきをしたミニ暴力団が、群でこっちを睨んでいた。 10人ほどの暴走族たちが、突き刺すような目線を俺に注いでいる。隣に諸悪の元凶である佐々木もいるのに、みんなこぞって俺を見ている。そりゃそうだ。どう見ても佐々木は小柄でボーイッシュな普通の女の子。こういう場合、見つめられるのは男っぽい男だと相場がきまっているもんだ。 「谷ちゃん、覚悟きめろや」 テンパの彼が俺の肩を叩いた。ダメだ。こいつら全員、本気だ。とてもじゃないが逃げられそうにない。 久しぶりの絶体絶命だ。背中に悪寒が走る。 わずかな期待をこめ、暴走族たちの壁のむこうにいる周防へアイコンタクトを送るが、どうやらおれのサインも彼女には届かなかったようだ。 「────私が勝てば……私はチームを抜ける────谷口さん……手加減は無用────」 しかも俺がチームのリーダー役かよ。 「もし手抜きなんてしてみろ。谷ちゃん、どうなるか分かってんだろうな?」 ああ、うん。分かった。分からないけど、たぶん分かったと思う。だからそんなに睨まないで。 もし俺が周防に負けたりしたら、怒り狂ったキレやすい最近の若者たちに集団暴行されかねないな……。なんでこんな憂き目に……。 「谷口さん。がんばってください。ここが正念場です!」 俺の背後にピッタリ隠れて佐々木がエールを送ってくる。誰のせいで正念場をむかえていると思ってるんだこの野郎……。 俺の代わりにこいつをギャングに差し出してトンヅラしたかったが、もうそんなエスケープが通じる状況でもないようだ。 なんで俺ばっかりこんな目に……。 ~つづく~