約 24,181 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/302.html
総括所見:モルディブ(第4~5回・2016年) 第1回(1998年)/第2回・第3回OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MDV/CO/4-5(2016年3月14日)/第71会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年1月19日に開かれた第2077回および第2079回会合(CRC/C/SR.2077 and 2079参照) においてモルディブの第4回・第5回統合定期報告書(CRC/C/MDV/4-5)を検討し、2016年1月29日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況に関する理解の向上を可能にしくれた、締約国の第4回・第5回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/MDV/Q/4-5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(2010年4月)。 (b) 国際労働機関の強制労働条約(1930年、第29号)、強制労働廃止条約(1957年、第105号)、最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2013年1月)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2011年9月)。 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a) セクシュアルハラスメントおよび性的虐待防止法(2014年)。 (b) 性犯罪法(2014年)。 (c) 人身取引防止法(2013年)。 (d) 家族間暴力法(2012年)。 (e) 就学前教育施設法(2012年)。 (f) 障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)。 (g) 子どもの性的虐待の加害者に関する特別措置法(2009年)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 教育施設に通っている子どもを対象とした子ども保護政策の採択(2015年)。 (b) 「ひとりの子どもも取り残さない政策」の採択(2014年)。 (c) マレ(1か所)および諸環礁(4か所)におけるセーフホームの開設(2014年)。 (d) インクルーシブ教育政策の採択(2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 6. 委員会は、締約国が、2007年の総括所見(CRC/C/MDV/CO/3)で行なわれた勧告のうちまったくまたは十分に実施されていないもの、とくに留保(パラ10)、立法(パラ12)、包括的な政策および戦略(パラ15)、調整(パラ17)資源配分(パラ22)ならびに全国的データ収集システム(パラ23)に関するものに対応するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。 留保 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ10参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、条約第14条第1項および第21条に付した留保の撤回を検討するよう奨励する。 立法 8.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ12参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、条約との全面的一致(親の共有責任、家族からの子どもの分離、子どもの保護の調整および国外居住者の子どもの権利に関連する分野における一致を含む)を確保しながら、子ども法案を採択するための即時的措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 9.関連の政策(たとえばインクルーシブ教育および教育施設に通っている子どもの保護に関するもの)が最近採択されたことには留意しながらも、委員会は、締約国がまだ子どもに関する包括的政策を策定していないことを懸念する。 10.委員会は、締約国に対し、条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野を包含した、子どもに関する包括的政策を作成するとともに、当該政策に基づき、その適用のための諸要素を備え、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた戦略を策定するよう奨励する。当該戦略においては、子どもの権利に関わる国の諸機関の任務を明らかにし、かつ、監視および評価のための明確な枠組みを定めるべきである。 調整 11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ17参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、さまざまな部門を横断して、国および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を備えた適切な機関を、高い省庁間レベルに設置するよう促す。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運営のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 資源配分 12.社会部門における資源配分の増加は歓迎しながらも、委員会は、条約上の義務の実施のために配分される具体的な予算科目が設定されていないこと、ならびに、これらの義務を実施するための資源の配分を評価するための監視評価機構が設置されていないことを懸念する。 13.「子どもの権利のための資源配分:国の責任」に関する一般的討議(2007年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの予算上のニーズの包括的評価を実施し、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分し、かつ、とくに、子どもの権利に関連する指標に基づいて格差に対処すること。 (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。 データ収集 14.モルディブ子どもの保護データベースが2010年に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約の効果的実施のための政策、プログラムをおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用できる細分化されたデータの収集を可能とする目的としたデータベースの運用に対し、十分な予算資源が配分されていないことを懸念する。 15.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、データ収集システムを速やかに向上させるよう促す。このようなデータは、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれている子ども)の状況に関わる分析を促進する目的で、条約の全分野を網羅し、かつ、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。さらに、委員会は以下のことを勧告する。 (a) データおよび指標が関連省庁間で共有され、かつ、条約の効果的実施のための政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきこと。 (b) 締約国が、統計的情報の定義、収集および普及の際、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators a guide to measurement and implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れること。 (c) 締約国が、子どもの保護データベースの部門横断的共有および全面的運用に向けて予算資源を配分するとともに、国際連合児童基金(ユニセフ)および他の適切な機関との技術的協力を強化すること。 独立の監視 16.委員会は、子どもの権利侵害の苦情を受理し、監視しかつ調査する目的で、マレに子ども・家族保護サービスが、かつ19の環礁に家族・子どもサービスセンターが、設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、これらのセンターの人員および資金が不足していることを懸念するものである。委員会はさらに、15歳の女子の事案についてモルディブ人権委員会が調査報告書(2014年4月)を発表し、かつ人権理事会の普遍的定期審査手続に報告書が提出された(2014年)のち、モルディブ最高裁判所が、人権委員会が最高裁判所の権限を批判したことに対して職権による手続を開始したことを懸念する。委員会はまた、〔拷問等禁止条約の選択議定書に基づく〕国内防止機関としても行動する人権委員会の2016年予算が相当に削減されたことにより、その機能およびとくに少年拘禁施設を監視する能力に悪影響が生じていることも懸念するものである。 17.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、モルディブ人権委員会が国際連合機関と協力したことに対するすべての報復行為を直ちに停止するとともに、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)との全面的一致を確保するため、この監視機構の独立性(資金、任務および免責との関連を含む)を確保するよう促す。後者の点について、委員会は、締約国が、とくに国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ユニセフおよび国際連合開発計画の技術的協力を求めるよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 18.委員会は、締約国が、子どもの権利の問題に関するいくつかのテレビ番組およびラジオ番組等を通じて条約についての意識を高めるために行なっている努力、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く者を対象として研修セッションを実施するために行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 条約の公式な翻訳が作成されておらず、かつ締約国報告書を普及するために十分な努力が行なわれてこなかったこと。 (b) 条約についての知識が限られていることもあって、一般公衆の一部およびとくに子どもたちの間に、イスラム教と子どもの権利は「両立しない」という誤解が存在すること。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約を地方言語に公式に翻訳したものおよびそれを子どもにやさしく書き直したものを作成するともに、それらの翻訳ならびに締約国報告書および委員会の総括所見を広く普及すること。 (b) 条約の規定および原則に関する、対象を明確にした定期的な研修を専門家向けに実施するための努力、および、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約についての情報を体系的に普及するための努力を強化すること。 (c) 高等教育段階までの学校カリキュラムに条約についての教育を統合するとともに、ラジオおよびテレビでならびにインターネットを通じて条約の内容を恒常的に放送すること。 (d) イスラム教と子どもの権利が両立しないという点に関する公衆の誤解に対処するため、ユニセフおよび市民社会と協力しながら、対象を明確にした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を発展させること。 子どもの権利と企業セクター 20.委員会は、観光が締約国の経済の主たる柱となっており、かつ、ビーチ、サファリボートおよびゲストハウスという観光的環境において児童買春が行なわれていると報告されている一方で、締約国が、観光活動から生じる可能性のある子どもの権利侵害(とくに児童セックスツーリズム)から子どもを保護するための措置をまだとっていないことを懸念する。 21.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国の領域で操業しておりまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社(とくに観光産業関連企業)の法的責任を確保するための立法上(民事法、刑事法および行政法上)の枠組みを検討しかつ採択すること。 (b) 観光産業および公衆一般とともに児童セックスツーリズムに関する意識啓発キャンペーンを実施し、かつ、旅行代理店および他の観光産業関係者の間で観光名誉憲章および世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。 (c) 国境を越える性犯罪者の特定ができるように国際的情報交換協定を執行する等の手段により、児童セックスツーリズムの防止および撤廃のための多国間、地域間および二国間の取決めを通じて、児童セックスツーリズムに反対する取り組みへの国際的レベルでの協力を強化すること。 市民社会との協力 22.委員会は、人権擁護の活動をしている一部の非政府組織(NGO)が国の関係者による脅迫を受けているという報告があることを懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、人権擁護者は、その活動が子どもを含むすべての者の人権を促進するためにきわめて重要であるがゆえに特別な保護を受けるのにふさわしい存在であることを想起するよう求めるとともに、したがって締約国が、ジャーナリスト、人権擁護者およびあらゆるNGOが脅迫およびいやがらせを受けることなく表現および意見の自由に対する権利を行使できるようにするための即時的措置をとるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、対話の際に表明されたように、NGO,人権擁護者および市民社会活動家に対する脅迫およびいやがらせの通報が迅速にかつ独立の立場から調査され、かつそのような人権侵害を行なった者の責任が問われることを確保するようにも促すものである。委員会はさらに、締約国が、子どもに関連する法律、政策およびプログラムの策定、実施、監視および評価に際し、子どもの権利の分野で活動するすべてのNGOの関与を組織的に得るように勧告する。 B.子どもの定義(第1条) 24.委員会は、子どもの権利の保護に関する法律(法律第9/91号)第28条で、子どもが同法に定められたいかなる権利も享受できない3つの例外(婚姻契約を行なった子ども、親になった子どもおよび雇用されている子ども)が規定されていることを懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護に関する法律第28条を廃止するとともに、国内法において、18歳未満のすべての者に対し、いかなる例外もなく全面的かつ平等な保護が与えられることを確保すること。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 26.委員会は以下のことを懸念する。 (a) すべての市民の平等について定めた憲法第20条と、市民はイスラム教徒でなければならないとし、かつイスラム教徒でない者は市民権を取得することができないと定める第9条(b)との間に乖離があること。 (b) 女子に対する差別が法律上も実際上も続けられていること(家族法上、女子は父方の保護者の意思に服するものとされていること、および、相続権が否定されていることを含む)。 (c) 一部の政治家および宗教的指導者が、女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別を助長すると考えられる発言を行なってきたという報告があること。 (d) 婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子どもに対する差別が続けられていること(実の父親と法的関係を確立する権利および実の父親の姓を名乗る権利が否定されていること、ならびに、相続権が否定されていることを含む)。 (e) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが、社会でスティグマを付与されかつ周縁化されていること。 27.委員会は、締約国に対し、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どもに対するいかなる差別も撤廃するための法改正を行なうことも促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、政治家および宗教的指導者が女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別および暴力を助長する発言を行なったすべての事案について、捜査および処罰を行なうよう促す。委員会は、締約国に対し、立法上、政策上および教育上の措置(感受性強化および意識啓発を含む)を活用して、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どものスティグマに終止符を打つよう奨励するものである。 子どもの最善の利益 28.委員会は、子どもの最善の利益について、条約に一致しない慣習的および宗教的解釈が締約国で支配的となっており、そのため子どもの権利の深刻な侵害につながっていることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待を通報しないことが、子どものいわゆる「名誉」を守ることであり、したがって子どもの最善の利益にかなっていると考えられていることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 29.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、法律において、条約第3条と一致する形で子どもの最善の利益の原則を明示的に定義しかつ掲げるよう勧告する。これとの関連で、締約国は、公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励されるところである。締約国は、子どもの性的虐待の加害者を処罰しないことが子どもの最善の利益にかなっているという考え方につながる宗教的および慣習的解釈に異議を申し立てる意識啓発キャンペーンを実施するよう求められる。 生命、生存および発達に対する権利 30.委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚える。 (a) 少年裁判所が、3つの異なる事件(2013年の1件および2015年の2件)において5人の子どもに死刑を言い渡したこと。 (b) 報告によれば、死刑に直面している子どものほとんどはキサス(同害復讐法)に基づいて刑を言い渡されており、かつ、2015年11月30日の高等法院判決により、被害者の相続人全員がシャリーア法上のキサスに基づく刑罰が科されることを望んでおり、かつ有罪判決を受けた殺害犯に対して死刑を執行することを要求する場合には、大統領はもはや、故意の殺人罪について死刑を終身刑に減刑できないとされていること。 (c) 故殺の捜査および刑の執行に関する規則(2014年)により、7歳という低年齢の子どもに対し、故意の殺人罪について死刑を言い渡すことが認められていること。 (d) 現在、死刑法案として展開されようとしている死刑の実施に関する規則(2014年)により、死刑を言い渡された未成年者に対し、当該未成年者が18歳になれば死刑を執行することが認められていること。 (e) 死刑事件および鞭打ち事件についての自動的上訴を定めた2015年11月の通達が、全体としては肯定的なものである一方で、当該通達の利益を享受できる者の間で十分に普及されておらず、かつ、最高裁判所への上訴期間も60日から30日へと短縮していること。 31.委員会は、締約国に対し、以下の措置を最優先でとるよう促す。 (a) 18歳未満の者の死刑について定めた国内法のすべての規定を廃止すること。 (b) 18歳未満の者または犯罪実行時に18歳未満であった者に対して死刑が執行されないこと(フドゥード法上の犯罪およびキサス法に基づく事件についての刑を含む)を確保し、そのようなすべての死刑についてそれに代わる適切な制裁を科すとともに、殺人被害者遺族に働きかけてキサス法に基づく事件について宥恕を奨励すること。 子どもの意見の尊重 32.委員会は、社会福祉機関、裁判所および行政機関によって子どもの意見が聴かれることがめったになく、かつ、16歳未満の子どもまたは第二次性徴期を迎えていない子どもには裁判所における陳述が認められないことを懸念する。 33.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ45参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、地方レベルでも、かつ裁判所における陳述との関連でも、意見を聴かれる子どもの権利が、その子どもの権利に影響を与える可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる措置において、その年齢および成熟度にしたがって尊重されることを確保するよう促す。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 思想、良心および宗教の自由 34.委員会は、イスラム教徒でない者および無信仰の者に対する宗教的不寛容についての報告があること、ならびに、宗教的寛容を奨励する成人および子どもに対して暴力を行なった者が一般的に処罰されていないことを深刻に懸念する。委員会はまた、締約国で宗教的過激主義が勢力を増しており、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利に深刻な影響が生じているという報告があることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進する等の手段により、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ48〔49〕参照)を、あらためて繰り返す。締約国は、宗教の名のもとに暴力を行なった者が責任を問われることを確保するべきである。 結社および平和的集会の自由 36.最近、18の学校で人権クラブが設立されたことは歓迎しながらも、委員会は、結社法(1/2003)で、すべての子どもが団体の結成を禁じられていることを懸念する。 37.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ51参照)をあらためて繰り返すとともに、対話の際に表明されたように、締約国が、子どもが団体を結成できるようにするために結社法を改正し、子どもたちに団体の結成を奨励し、かつ、子どもに影響を与える政策および決定の立案に子どもたちが関与するための機会をつくりだすよう勧告する。 適切な情報へのアクセス 38.締約国の14~18歳の子どものほとんどがインターネットにアクセスできており、かつ、締約国が最近、子どもおよびその親を対象としてネットいじめおよびインターネット上の安全に関する意識啓発活動を開始したことには留意しながらも、委員会は、子どもが年齢にふさわしくない情報およびポルノグラフィーならびにネットいじめにさらされないことを確保するうえで、これらの措置が不十分であることを懸念する。 39.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ53-54参照)をあらためて繰り返し、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスをさらに向上させるとともに、子どもならびに親および教員を対象とした、インターネット上の安全に関する(かつ、とくにポルノグラフィーおよびネットいじめの問題について扱う)啓発プログラムを強化するよう勧告する。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 40.憲法第54条で拷問が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年、第4条および第5条)に基づき、第二次性徴期に達した子どもが、フドゥード法上の特定の犯罪を行なったことを理由として鞭打ちにより処罰される可能性があることを懸念する。委員会は、未成年者が引き続き鞭打ちの刑を執行されておりまたは鞭打ち刑を言い渡されていること、および、この刑罰の適用においてジェンダーの偏りがあること(大多数の事件で、婚姻外の性交を理由として有罪を言い渡された女性および女子しか鞭打ちの刑を言い渡されていない)を、深刻に懸念するものである。委員会はさらに、罪を犯した子どもに対し、同意に基づく同性間の関係を理由として終身刑、追放刑または鞭打ちの刑を言い渡すことも合法とされていることを懸念する。 41.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ56参照)をあらためて繰り返すとともに、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)を参照しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の拷問(体罰を含む)の対象にもされないこと、ならびに、しつけおよび規律維持の措置としての体罰が家庭、代替的養護環境、司法機関、学校および職場環境において法律で禁止されることを確保するために必要なあらゆる措置をとること。 (b) 未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年)を改正して鞭打ち刑を禁止すること。 (c) 18歳未満の者の終身刑を明示的に禁止すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 42.2012年に家族間暴力法が採択されたことおよび同法の規定に関する意識啓発のための活動が実施されていることは歓迎しながらも、委員会は、同法が、子どもの体罰を禁止していると解釈されていないことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもに対する暴力、虐待およびネグレクトが広く行なわれていること。 (b) 家族間暴力の事案の通報水準が低く、かつ、法執行官が、このような暴力はイスラム教において正当化されると考えて、行動をとることおよび家族間暴力の加害者を逮捕することをしばしば躊躇すること。 (c) 2012年法で必置とされているシェルターがまだ設置されていないこと、ならびに、家族・保護サービスセンターおよびセーフハウスが資金不足の状況にあり、かつ利用可能となっていないこと。 (d) とくにマレにおいてギャング関連の暴力がエスカレートしつつある一方で、ギャング関連の暴力および死亡ならびにギャング関連の活動への関与から子どもを保護するためにとられた措置が限られていること。 (e) 子どもたちが、2012年2月7日〔政権交代をめぐる軍事政変〕後に行なわれた抗議の際に暴力にさらされてきたこと。 (f) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが脅迫および公然たる脅しに直面していること。 43.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族間暴力法に基づき、体罰が曖昧さを残す余地なく禁じられることを確保すること。 (b) 必置とされているシェルターを設置し、保護サービスセンターおよびセーフハウスに十分な資金を提供し、家庭内で女子に対して行なわれる暴力について法執行官の十分な能力構築を図り、かつ意識啓発のための努力を通じて通報を増加させる等の手段により、2012年家族間暴力法の執行および実施を確保すること。 (c) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置するとともに、このような暴力の程度、原因および性質についての包括的評価を実施すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表からも2013年5月の訪問時に勧告されたように、子どもの保護に関わる問題を担当するすべての主要な部局および機関が一堂に会し、定期的に会合して、ジェンダー関連の暴力にも焦点を当てながら子どもに対する暴力および子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略(具体的な予算をともなう介入策を定めたもの)を立案するための、ハイレベルな討議の場を制度化すること。 (e) 統一された、調整のとれた、かつ包括的な子どもの保護制度を創設すること。 (f) 政治的抗議の際に子どもに対して暴力が振るわれることおよび子どもが暴力にさらされることを防止するために必要なあらゆる措置をとること。 (g) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに対する脅迫および脅しを防止すること。 性的搾取および性的虐待 44.委員会は、子どもの性的虐待への対応に関する特別措置法が2009年に制定されたこと、その後、有罪判決を受けた性犯罪者の登録簿を法律・ジェンダー省がネット上で公表したこと(2015年11月)、および、子どもの性的虐待の通報が増えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 法律で「性的虐待」の定義が定められていないこと、および、2009年法第14条で、既婚女子に対して夫が行なった性犯罪の事件については免訴が認められていること。 (b) 性的同意に関して法律で定められている最低年齢が低すぎる(13歳)こと。 (c) 子どもの性的虐待(とくに女子に対する虐待)が依然として広く行なわれており、かつその大部分が通報されていないこと、有罪判決率が著しく低いこと、および、加害者がしばしば早期に釈放されてコミュニティに戻っていること。 (d) 2009年法の効果的実施のために必要な二次立法(証拠法案など)の成案がまだ得られていないこと。 (e) 裁判官が、女性、女子およびセクシュアリティについて差別的な見方をしており、子どもの性的虐待の被害者に対して配慮のない態度を示しており、かつ、場合により、自らも過去に性犯罪で有罪判決を受けていた者もいると報告されていること。 (f) 婚外妊娠が、虐待の結果として妊娠した女子の場合も含め、性犯罪法により犯罪とされていること。 (g) 性的虐待を受けた子どもが密通の罪で鞭打ち刑を言い渡される事案が多数生じていること。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的同意に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 条約に一致する形で性的虐待を定義すること、および、いかなる形態のものであれ性的搾取を受けたすべての子どもが被害者として扱われ、刑事的制裁の対象とされないようにすることを目的として、法律を改正すること。 (c) すべての形態の性的虐待(婚姻内強姦を含む)が犯罪化され、かつ犯罪の重大性に相応した刑罰によって処罰されることを確保する目的で2009年法第14条を廃止するとともに、証拠法案を完成させかつ制定すること。 (d) 子どもの性的虐待および性的搾取のすべての事案の通報義務を確保するための機構、手続および指針を確立すること。 (e) 女子の性的虐待に関する裁判官の感受性の強化を図ることなども通じ、性的搾取および性的虐待の加害者が効果的に訴追され、かつ相応の制裁を科されることを確保すること。 (f) 性的搾取および性的虐待(近親姦を含む)の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施し、かつ、このような人権侵害についての、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ実効的な通報経路を確保すること。 (g) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策(十分なシェルターの提供を含む)の発展を強化すること。 有害慣行 46.委員会は、最低婚姻年齢は18歳であるものの、家族法第4条(b)に基づき、マレの家庭裁判所が、子どもが第二次性徴期に達しており、心身ともに健全であり、かつ生計維持の能力を有していることを条件として、より低い年齢での婚姻を許可できることを懸念する。締約国が、法定年齢に満たない段階での婚姻の影響に関する広報ポスターを配布し、かつ児童婚および女性性器切除の有害な影響に関するその他の意識啓発活動を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、締約国で児童婚が増えていると報告されていることを懸念するものである。委員会はさらに、女性性器切除からの保護が法律で明示的に定められていないこと、および、一部の宗教的指導者(フィクフ〔法学〕アカデミーの副学長を含む)が、女性性器切除を「イスラム教の好ましい慣行」として擁護しているとされることを懸念する。 47.有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号(2014年)に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国で行なわれている子どもに対する有害慣行に終止符を打つための積極的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 家族法第4条(a)で18歳と定められている最低婚姻年齢が遵守されることを確保すること。 (b) 女性性器切除を有害慣行として明示的に禁止する法律を制定するとともに、その有害な影響に関する意識啓発を図ることおよびこの慣行を促進する宗教的指導者の責任を問うこと等を通じてこれと闘うための措置をとること。 (c) 早期婚が女子の身体的および精神的健康ならびにウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを、世帯、地方当局、宗教的指導者、裁判官および検察官を対象として発展させること。 ヘルプライン 48.委員会は、被害者またはその家族が人権侵害事案を通報するために活用できる、法律・ジェンダー省が運用するヘルプライン(フリーダイヤルおよび24時間運用)が2009年に開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、このヘルプラインについて多数の苦情(その存在が知られていないこと、アクセスのための接続が脆弱であること、通話に対応するための訓練を受けた職員がいないことおよびフォローアップが行なわれないことに関する苦情を含む)が出されており、いずれもこのヘルプラインへの公衆の信頼を失わせる結果になっていることを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、子どもヘルプラインを運営するための標準業務手続を作成し、通話に対応する職員に対して十分な研修を実施し、かつ、人権侵害が疑われる事案を通報するためのヘルプラインの活用を積極的に奨励するよう勧告する。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20~21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境 50.委員会は、対話の際に強調されたように、締約国の離婚率が非常に高く、かつ上昇し続けていることを依然として懸念する。委員会はまた、働く母親が多数存在するにもかかわらず、締約国に保育施設がひとつしかないことも懸念するものである。委員会はさらに、子育て意識啓発プログラムおよびカップル相談サービスがないことを懸念する。 51.委員会は、高い離婚率の背景にある理由についての研究を締約国が実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、保育施設を整備するための努力、ならびに、とくに親としての指導および親の共同責任に関する親向けの支援(研修を含む)を提供することを通じて、家族教育および家族についての意識啓発を発展させるための努力を増進させるよう、奨励する。 家庭環境を奪われた子ども 52.委員会は、代替的養護施設で子どもに対して虐待、差別および暴力が行なわれていること、ならびに、2010年以降、子どもに入所養護を提供しまたは被害を受けた子どもに対して必要な治療およびサービスを提供することを任務とせず、そのために設置されたわけでもない施設である「特別なニーズを有する人々のためのホーム」に措置される子どもが着実に増えていることを、深刻に懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 現在のところ、代替的養護における子どもの措置、養護および再統合についても、代替的養護施設の職員の採用および行為の監督についても包括的な法的枠組みが定められておらず、かつ指針も策定されていないこと。 (b) 養護を離脱する子どもまたは青少年のための計画、政策または手続が存在しないこと。 (c) 伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させることについて、締約国が十分な考慮を行なっていないこと。 53.委員会は、締約国に対し、「特別なニーズを有する人々のためのホーム」から直ちに子どもを退所させ、同施設への子どもの措置をやめ、かつ、代替的養護施設内で子どもに対して行なわれたすべての虐待、差別および暴力事件を調査するよう促す。委員会はさらに、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ60参照)をあらためて繰り返しながら、締約国が、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日)を考慮に入れながら、子どもホームの最低基準に関する規則、国の監護に関する規則および里親養育に関する規則を速やかに採択するとともに、これらの規則を実際に実施するため、職員を対象として関連の研修を実施するよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、養護を離脱する子どもおよび青少年のためのプログラムを緊急に策定するとともに、伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させる可能性を、これ以上遅滞することなく模索することも勧告する。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23~24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 54.障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)およびインクルーシブ教育政策(2012年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同法が全面的に実施されているわけではないことを懸念する。委員会はまた、障害のある子どもに対してスティグマが付与されていること、障害のある子どもについての細分化されたデータがないこと、および、これらの子どもが保健サービスにアクセスできていないことも依然として懸念するものである。 55. 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとり、細分化された統計データに基づきながら障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を定め、かつ、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある人の保護および金銭援助法の全面的実施のために十分な資源を配分すること。 (b) 障害のあるすべての子どもが障害者登録簿に記載されることを確保するとともに、当該登録を妨げる、現在存在するいかなる金銭的その他の障壁も取り除くこと。 (c) インクルーシブ教育政策を実施し、かつ、インクルーシブ教育が特別施設および特別学級への子どもの措置よりも優先されることを確保するための努力を強化すること。 (d) 障害のある子どもが保健ケア(早期発見および早期介入のためのプログラムを含む)にアクセスできることを確保するための努力を強化すること。 (e) 政府職員、公衆および家族を対象として、障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘い、かつこのような子どもの肯定的イメージを促進するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 思春期の健康 56.委員会は、思春期の子どもにやさしい保健サービスを提供するための基準が最近策定され、かつ、この問題について、政策立案関係者および宗教的指導者を対象とした感受性強化のための会合が開かれてきたことに留意する。委員会はまた、教育省が、学校において、青少年の子どもを対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的なライフスキル教育パッケージを実施していること、および、意識のさらなる促進を図るために放送媒体が活用されていることにも留意するものである。委員会はさらに、妊娠した非婚の女子に対し、家族保護部によって支援および医療ケアが提供されていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 中絶が、配偶者の同意を要件としており、かつ特定の場合(重症型サラセミア、重症型鎌状赤血球症または多発性先天奇形の場合、母体の生命を救いまたはその身体的健康を保全する目的がある場合、近親者による強姦で妊娠した場合、および、身体的および精神的に妊娠および分娩に適さない子どもが強姦により妊娠した場合)にしか認められないこと。 (b) リプロダクティブヘルスのための保健ケアサービスにすべての者がアクセスできるわけではなく、かつ、婚姻外妊娠が社会的非難の対象であることおよび犯罪とされていることを理由として非婚の女子が種々の困難に直面しているために、不法で安全性を欠いた中絶がますます行なわれるようになっており、思春期の母親の生命および健康に対するリスクが高まっていること。 (c) 2006年に実施された全国規模の研究によれば、締約国の子どもおよび青少年の66%が精神保健関連の問題を抱えており、かつ、2009年の調査によれば、締約国の生徒の22.2%が調査前の12か月間に自殺未遂の計画を立てていたにもかかわらず、これまでのところ、子どもおよび青少年を対象とする専門の精神保健サービスが締約国で確立されていないこと。 57.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (b) あらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、配偶者の同意規定を削除する等の手段により、子どもが安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で、法律の見直しを行なうこと。また、中絶に関する決定において、妊娠した女子の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保すること。 (c) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。 (d) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。 (e) 子どもおよび青少年を対象として、精神保健のための専門的便益およびサービスを提供すること。 (f) 思春期の子どもの性的行動および精神保健についての微妙な問題に関して、宗教的指導者との内部的対話を促進すること。 薬物および有害物質の濫用 58.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 近年、思春期の子どもの間で薬物の消費が増加しており、一方で薬物を最初に使用した平均年齢が下がりつつあること。 (b) 現在のところ、薬物濫用の被害者である子どもをとくに対象としたサービスが締約国に存在しないこと、および、利用可能なサービスは需要を満たすのに不十分であって依然として有効なものになっていないこと。 (c) 子どもが薬物濫用について専門家による援助を得るためには親または保護者の同意が必要であるが、多くの親はスティグマを恐れて家庭で問題を解決しようとしていること。 (d) 離脱症候群を持って生まれる子どもの人数が増えていること。 59.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用(タバコおよびアルコールの濫用を含む)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処する努力を強化するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。有害物質濫用の被害者のための専門的リハビリテーションサービスの一環としての新生児部、リプロダクティブヘルスサービス部および家族保護部に対し、特段の注意が払われるべきである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 60.委員会は、2014年に法律第9/91号(子どもの権利保護法)が改正され、モルディブに住むすべての子ども(外国籍の子どもを含む)に対して無償教育を受ける権利が認められたことを歓迎する。委員会は、教育法案において第10学年(15歳)までの義務教育が導入されることになる旨の情報に留意するものの、同法案の可決が遅れていることを依然として懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 締約国が、乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を定めていないこと。 (b) 障害法(2010年)の規定にもかかわらず、障害のある子どもが、とくに環礁において実質的に中等教育にまったくアクセスできていないこと、および、普通学校へのインクルージョンの対象とされた子どもが教室内で深刻な差別に直面していること。 (c) 多くの女子が学校に行かなくなっていると報告されていること。 61.委員会は、締約国に対し、教育法案を、これ以上遅滞することなく、かつ条約と一致する形で採択するよう促す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を採択すること。 (b) 障害のある子どもを含むすべての子どもが、他の子どもと同様に教育に対する権利を享受できることを確保すること。 (c) 適切な政策および措置を立案しかつ実施する目的で、女子が学校に行かなくなる理由についての研究を実施すること。 教育の目的 62.対話の際に提供された、授業用資料の見直しが現在進められている旨の情報には留意しながらも、委員会は、第4学年以上を対象とする授業用資料のなかに、性差別的および排外主義的資料ならびに理解、平和および寛容を促進しないその他の要素が含まれているという報告があることを深刻に懸念する。 63.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、軽蔑的な内容ならびに性別および宗教的信条に基づく差別および暴力を呼びかける内容を含んだすべての資料を直ちに撤回するとともに、それに代えて、すべての人民間ならびに民族的、国民的および宗教的集団間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神を反映し、かつ人権およびすべての文明の尊重の発展を促進する教育資料および教育プログラムを導入するよう、促す。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 64.芸術および音楽は必修教育カリキュラムの一部に位置づけられており、したがって学校にはこれらの科目を中止する選択権はない旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、あらゆる形態の芸術的表現は「ハラム」〔禁止行為〕であるから禁止されているという宗教的宣伝の結果、芸術、音楽および演劇の授業が一部の学校で中止されたという報告があることを深刻に懸念する。 65.委員会は、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、中止された芸術、音楽および演劇の授業をすべて再開しかつ保護すること、および、子どもが余暇を享受し、かつ文化的伝統について学習するために設けられている手段を拡大することを促す。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)ならびに第38条、第39条および第40条) 経済的搾取(児童労働を含む) 66.委員会は、2008年雇用法において最低就労年齢が16歳とされていることに留意するものの、家族企業で働く子どもについては同法が適用されず、このような子どものための立法上の保障措置が存在しないことを懸念する。委員会はまた、同法において、健康、教育、安全または品行に有害な影響を及ぼす可能性があるいかなる業務においても18歳未満の子どもの雇用が禁じられていることに留意するものの、禁止対象である危険な活動がそれ以上に具体的に定められていないことを懸念するものである。委員会はさらに、同法を執行するために労働関係庁および労働監察制度が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、同庁の人員および資源が不足しており、監察が不十分であり、かつ、児童労働を認識しかつこれに対応することについての具体的訓練が監察官を対象として実施されていないために、執行が十分に行なわれていないことを懸念するものである。 67.委員会は、締約国が、家族企業で働く子どもの保護のための立法上の保障措置をとり、子どもに対して禁止される搾取的業務および危険な業務の包括的リストを採択し、労働監察官を対象として、児童労働を認識しかつこれに対応することについての必修の研修を実施し、かつ、労働監察を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してILO・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めることも勧告するものである。 少年司法の運営 68.委員会は、新たに採択された2014年9月の刑法に基づき、子どもの未成熟性は15歳未満の子どもについては正当な抗弁とみなされる(ただしフドゥード法上の犯罪については例外とされる)こと、および、刑法上の犯罪について有罪と認定された15~17歳の子どもに対する刑の執行は、その子どもが18歳に達するまで延期されるとされていることに留意する。委員会は、刑事責任年齢が低い(10歳)ままであることを深刻に懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 締約国の裁判官が、刑事責任の存在を認定するにあたり、法定最低年齢ではなく身体的第二次性徴期への到達を基準として用いる傾向にあること。 (b) 鞭打ちが、犯罪に対する刑罰として依然として合法とされていること。 (c) 拘禁された子どもおよび青少年が、成人拘禁施設において、別ではあるものの近接した房に収容されていること。 (d) 法律に抵触した子ども、未決拘禁中の子どもおよび収監された子どもが教育に対する権利を否定されていること。 (e) 少年裁判所がマレ以外に設置されておらず、すべての事件がマレに移送されなければならないこと。 69.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 18歳未満の子どもに対し、フドゥード法上の犯罪についての刑罰を適用しないこと。 (b) 刑事責任年齢を国際的に受け入れられる水準にまで引き上げること。 (c) 少年司法法を、その規定が条約の規定および原則ならびに少年司法の運営(刑事手続における子どもの審理を含む)に関する他の国際的基準を全面的に遵守したものとなることを確保しながら、これ以上遅滞することなく採択すること。 (d) 犯罪に対する刑罰としての鞭打ちを廃止すること。 (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (f) 拘禁が避けられない場合、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が、少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めるよう勧告する。 (g) 十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた少年裁判所専用の施設および手続を締約国全域で速やかに確立し、子どもに関する専門の裁判官を指定し、かつ、このような専門の裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 70.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPSC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会は、貧困および農村出身の背景を有する多くの子どもが児童買売春ならびに児童ポルノの製造および配布に従事しているという報告があることをとりわけ懸念するものである。 71.委員会は、締約国に対し、買売春およびポルノのために子どもを使用することを(たとえ加害者と被害者がシャリーア法に基づく婚姻関係にあっても)犯罪化し、たとえ威迫が行なわなれなくとも子どもの性的人身取引を犯罪化し、かつ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもがシャリーア法に基づく告発(ジナ〔婚外性行為等〕の罪による告発を含む)に直面させられないことを確保する等の手段により、刑法を選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるよう促す。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 72.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPAC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。複数の夫婦および家族全員が締約国からイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配領域に渡航したとされている旨の情報に照らし、委員会は、締約国が、急進主義化および狂信的犯罪集団への勧誘を防止するための措置をとっていないことを懸念するものである。 73.委員会は、締約国に対し、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることに関わる選択議定書の規定の違反を犯罪化するとともに、いっそうの過激主義化、急進主義化および「ジハード」集団への勧誘の問題の高まりに対処するための戦略を策定するよう、促す。 J.通報手続に関する選択議定書の批准 74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書および障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、ならびに、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書を批准するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 76.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第4回・第5回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 77.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2021年9月12日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 78.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月24日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/135.html
総括所見:ウクライナ(第1回・1995年) 第2回(2002年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2007年)/OPAC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.42(1995年11月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年11月2日および3日に開かれた第239回、第240回、第241回および第242回会合(CRC/C/SR.239-242)においてウクライナの第1回報告書(CRC/C/8/Add.10/Rev.1)を検討し、下記の所見を採択した(注)。 (注)1995年11月17日に開かれた第259回会合において。 A.序 2.委員会は、ウクライナ政府に対し、第1回報告書の提出および開かれたかつ実りのある対話に関して謝意を表する。委員会は、議論が率直かつ協力的な雰囲気で行なわれ、その中で、締約国の代表が、政策および事業の方向性のみならず、条約の実施の過程で直面した問題点についても明らかにしたことに、心強さを感ずるものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、現在の政治的移行期における子どもの状況に政府が関心を払っていることに留意する。 4.委員会は、子どもの問題および子どもの権利に関する問題に対処するための機構、とくに、「保健、母親および児童福祉に関する議会委員会」およびその下部機関ならびに地域支部、および、「女性、母親および子どもの問題に関する大統領委員会」の設置を歓迎する。 5.委員会は、子どもの権利の促進および保護を狙って法改正の分野で政府が行なっている重要な法改正の取組み、とくに、子どもの権利の導入を目的とした憲法改正、および、家族法ならびに刑法のような法律の改正の取組みに、評価の意とともに留意する。 6.委員会は、また、締約国で子どもの権利を効果的に実施することを狙った多くの国家的事業を政府が採択したこと、および、「保健、母親および児童福祉に関する議会委員会」の提唱によって子どもを支援する任意基金が設置されたことも歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、現在の政治的移行期にあって、かつ、社会的変化および深刻な経済危機にあってウクライナが直面している問題点に留意する。委員会は、また、移行期にある経済に関わる諸問題、および、貧困の増大および失業の増加にともなって多くの子どもの状況が悪化していることにも留意する。委員会は、締約国がチェルノブイリ原発事故の悪影響、とくに環境に対する悪影響および子どもを始めとする民衆の身体的および心理的健康に取り組むに当たって、大きな困難を経験していることを認識する。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、国内法、措置および事業が条約の規定および原則と全面的に両立するかどうかという点に関して、懸念を表明する。このことは、とくに、婚姻年齢が男女によって異なるという点も含めた差別の禁止の原則(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、および、自己に関わるすべての決定において意見を表明する子どもの権利(第12条)の諸原則に関していえるものである。委員会は、また、義務教育の修了年齢(15歳)および最低労働年齢(16歳)との間に立法上の格差があることにも留意する。 9.委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分が不充分であることを懸念する。 10.委員会は、調整および監視のための効果的な機構が必要であることに対して充分な関心が払われていないことを懸念する。このような機構は、条約が対象とするあらゆる領域、ならびに、ひとり親家族の子ども、離婚した父母の子ども、遺棄された子どもおよび施設に措置された子どもを含むあらゆる集団の子どもに関するデータおよび指標を体系的かつ包括的に集積することのできるものであるべきである。このような機構は、政府が懸念される領域を特定することを可能にし、かつ、それに取り組む戦略を決定する一助となるであろう。 11.委員会は、子ども、とくに新生児の遺棄率が高いこと、および、弱い立場に置かれている家族を援助するための包括的な戦略が存在しないことを心配する。このような状況は、不法な国際養子縁組または他の形態の子どもの人身売買につながる可能性がある。この流れで、委員会は、また、子どもの人身売買を禁止する法律がまったく存在しないこと、および、アイデンティティを保全する子どもの権利が法律によって保障されていないことも懸念する。 12.委員会は、子どもの健康状況、とくに、チェルノブイリ原発事故以後の子どもの健康状況、幼児死亡率が高いこと、予防保健よりも事後の治療の方が優先されているように思えること、母乳育児の普及率が低いこと、中絶の数が多いことならびに家族計画に関する保健、教育およびサービスが不充分であること、および、都市部と非都市部の間で保健システムに格差があることに、懸念を表明する。 13.委員会は、ソーシャルワークを導入したプログラムがウクライナに存在しないことを懸念する。とくに、委員会は、障害児の施設措置、処遇および保護に関する状況について懸念を表明するものである。施設措置に代わる選択肢は充分に考慮に入れられていない。障害児を家で育てている親に対する支援サービスも不充分である。 14.委員会は、学校または子どもが措置される可能性のある施設における子どもの不当な取扱いを効果的に防止し、かつ、それと闘うための適切な措置がとられていないことに遺憾の意を表明する。委員会は、また、家庭内における児童虐待および子どもへの暴力が大規模に存在すること、および、現行の法律およびサービスではこの点で充分な保護が与えられていないことに、深い懸念を抱くものである。子どもの性的搾取の問題も特段の関心を必要とする。 15.委員会は、子どもの権利条約に関して、全国的な広報および普及の戦略が存在しないことを懸念する。 16.少年司法の運営の分野における現在の状況は、委員会の懸念するところである。 E.提案および勧告 17.委員会は、ウクライナ政府に対し、法的枠組みの見直しを続行し、そのことによって、条約を全面的に反映し、ウクライナの管轄下にあるすべての子どもに関して子どもの権利が実現されるようにし、かつ、子どもの権利条約の規定および原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存ならびに発達への権利(第6条)、自己に関わるすべての決定において意見を表明する子どもの権利(第12条)の諸原則との全面的両立を確保するよう奨励する。委員会は、義務教育年齢および最低雇用年齢に関する法律を修正すること、および、婚姻年齢を男女とも同じにすることを提案する。 18.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策を発展させ、かつ、締約国における子どもの権利条約の実施状況を効果的に評価できるようにすることを目的として、全国および地方のいずれのレベルでも、子どもの権利に関わるさまざまな政府機関間の調整を強化するよう勧告する。 19.委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもに関するものを始めとして、条約が対象としているさまざまな領域について、子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を集めるよう勧告する。 20.委員会は、ウクライナ政府に対し、条約第4条を全面的に実施することに特段の関心を払うよう、かつ、中央、地域および地方のレベルで資源の公正な配分が行なわれるようにするよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、市場経済への移行期にあたって、入手可能な資源を最大限に用いることにより、かつ、子どもの最善の利益を踏まえて確保されるべきである。 21.委員会は、条約の規定および原則が大人によっても子どもによっても同様に広く知られ、かつ、理解されるようにするためには、条約を踏まえて、系統的かつ継続的な措置が必要であるとの見解をとるものである。ウクライナのマイノリティによって話されているすべての言語で子どもの権利条約が入手できるようにするべきであり、かつ、子どもとともに働いているすべての専門職集団(裁判官、教師、ソーシャルワーカー、法執行官など)に対して具体的な研修が行なわれるべきである。国連人権教育の10年を踏まえ、条約を学校のカリキュラムに導入することにも関心が払われるべきである。委員会は、締約国に対し、子どものためのオンブズマン、またはそれに類する苦情申立ておよび監視のための恒久的かつ独立の機構を設置することをさらに検討するよう奨励する。子どもの権利の促進に子ども自身が参加することは、とくに地域レベルではきわめて重要である。 22.条約第2条を踏まえ、マイノリティ集団に属している子ども、農村部で暮らしている子ども、ロマの子どもおよびHIV/エイズに感染している子どもに対する差別的な態度または偏見の悪化を防止するための措置がとられるべきである。 23.委員会は、とくに農村部において、プライマリーヘルスケア活動にもっと力点が置かれることを希望するものである。この活動には、家族教育、家族計画、性教育および母乳育児の利点などの問題を対象とした教育的プログラムの発展などが含まれることになろう。 24.委員会は、チェルノブイリ原発事故の悪影響に対処するための措置、とくに社会分野、健康分野および環境分野の措置に対する国際的な支援を奨励する。 25.委員会は、家族の重要な役割および両親の平等の責任に関する意識を発展させるために、さらなる取組みが必要であると考えるものである。子どもの養育責任を果たすにあたって両親を援助するシステムを強化するため、さらなる措置がとられるべきである。 26.子どもの遺棄および中絶の発生率が高いことを踏まえ、委員会は、締約国が、脆弱な立場に置かれている家族がその子どもを支える援助をするための戦略および政策を採択するよう勧告する。現行の社会保障制度および家族計画事業が充分かどうか、評価が行なわれるべきである。委員会は、また、地域の強化および人的資源の動員を目的として、ソーシャルワーカーの研修を行なうよう勧告する。 27.委員会は、締約国に対し、たとえば指導ならびに相談、里親託置および教育ならびに職業訓練プログラムを通じて、施設措置に代わる可能な選択肢を構想しかつ利用できるようにする方向で、施設の子どもの状況に取り組むよう奨励する。委員会は、また、施設に措置されている子どもの権利の実現を効果的に監視する機構の設置も勧告する。 28.子どもの人身売買に関して、委員会は、政府に対し、この不法な活動を明確に禁止し、かつ、アイデンティティを保持する子どもの権利が全面的に保障されるようにするよう奨励する。委員会は、また、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討するよう勧告するものである。 29.委員会はさらに、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰の明確な防止および禁止、および、家庭内の体罰の禁止が国内法に反映させるよう提案する。委員会はまた、過程の内外を問わず、虐待および残虐な扱いの苦情申立てを監視する手続および機構を発展させるようにも提案するものである。条約第39条を踏まえ、いかなる形態であれ放任、虐待、搾取、拷問または不当な取扱いの犠牲となった子どもの身体的ならびに心理的回復および社会的再統合が、子どもの健康、自尊心および尊厳を促進するような環境下で行なわれるようにするために、特別プログラムを創設することが求められる。 30.委員会は、締約国が、少年の矯正労働収容所の管轄を、内務省から、子どもの権利の促進および保護を確保するために最もふさわしいと考えられる機関に移す可能性を検討するよう勧告する。 31.少年司法の運営の分野では、委員会は、現在行なわれている法改正において子どもの権利条約、とくにその第37条、第39条ならびに第40条を全面的に考慮に入れること、および、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則など、この分野の他の関連国際国際基準を改正の指針とすることを勧告する。少年非行の防止、自由を奪われた子どもの権利の保護、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利ならびに法的保護の尊重、および、少年裁判官の全面的独立および公正に関して、特段の関心が払われるべきである。少年司法制度に関わるすべての専門職、とくに裁判官、法執行官、矯正施設職員およびソーシャルワーカーを対象に、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。 32.委員会は、締約国に対し、締約国報告、委員会における同報告の議論の議事要録、および、報告の検討の結果委員会が採択した総括所見を、広く普及するよう奨励する。委員会は、また、これらの文書に議会の注意を促し、かつ、そこに掲げられた行動のための提案および勧告をフォローアップするよう提案したい。これとの関連で、委員会は、非政府組織との協力を追求するよう提案する。 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。
https://w.atwiki.jp/syukensya1990/pages/332.html
有料道路の料金収受を行っていた公団。全国5箇所の国道を有料化して管理していたが、07年までに無料化開放が進められ解散した。80年にリゾート施設等につながり、交通量の多い道路を有料化したが、迂回路が混雑する問題や一方的に有料化を進めたことに反発する地方自治体の反発で3度に渡って料金の値下げが行われた。管理・維持は基本的に公団が行っていたが、一部は道路局に委託していた。 概要 所在地 〒000-0000 新都府水田区2丁目7-1 水田センタービルディング 総裁 横田 多度輔 副総裁 石川 元伸 内部組織 総務部 財務部 道路管理部 技術部 料金 当初は700円だったが反発から3度に渡って値下げが行われ、最終的には300円になった。 管轄道路 当初は交通量の多い道路の有料化を進める計画だったが迂回路の渋滞などの懸念から中止となり、リゾート施設などの観光地を結ぶ一部の道路のみになった。選ばれた道路のある地方自治体は、観光客の減少を懸念して反発したが、政府は強行し自治体によっては迂回路の整備を進め対抗した。
https://w.atwiki.jp/saltation/pages/385.html
#blognavi +転載+ 世界の食料事情が大きく悪化するのではないかとの懸念が広がっている。中国などの経済成長や発展途上国の人口増で食料需要がどんどん増えているうえ、環境問題や資源枯渇への懸念を背景に穀物をバイオ燃料に振り向ける動きが強まっているためだ。地球温暖化が食料生産に与える影響も心配で、食料自給率が低い日本は将来に向け安定供給のための戦略を迫られている。【位川一郎、ワシントン木村旬】 http //headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070503-00000032-mai-bus_all だから言ってるじゃん。 今、賞味期限がどうだの言ってられる状況じゃないんだってば。 以前書いた日記。(2月12日) どうして、あんな報道する前に、この報道をしないの。 新聞だってネットだってテレビだって ニュースなんて、全部斜めに読まないと、 真理は見えてこないもん。 http //www20.atwiki.jp/saltation/pages/131.html カテゴリ [期限切れどころじゃないでしょう] - trackback- 2007年05月04日 01 20 56 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/kokusekikai/pages/46.html
ニュースまとめサイト 新聞記事画像:jpg データが消えたニュースソース ニュースまとめサイト ニュースまとめサイト 「Not too late !」 ↑新聞等マスコミ・政党発信ニュース・議員等ブログ・関連記事 があります クリックしてください 新聞記事画像:jpg ※緑文字はコンビニプリント予約番号方法はこちら 新聞の内容を見るには、画像か日付をクリックしてください 産経新聞 11/22 朝刊記事54693342 「内容把握されぬまま国籍法は成立へ:改正案参院も審議入り」 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 産経新聞 11/21 朝刊記事53470229 「国籍法改正:不正排除へもっと議論を」 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 産経新聞 11/21 朝刊記事 5面】65533563 「国籍法改正案 閣僚も議員も内容把握せず 参院も審議入り」 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 産経新聞 11/20 朝刊記事13490998 「衆院通過「稚速」の声:偽装認知懸念、採決前退席も」 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 産経新聞11/19 朝刊記事 3面40283214 「国籍法改正案 参院通過 偽装認知 誘発の懸念 与野党から慎重論相次ぐ」 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 産経新聞 11/15 朝刊記事21958882 「国籍法改正案審議入り:不正認知横行の懸念も」 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 ※その他のニュースソースはこちら→ニュースまとめサイト「Not too late !」 データが消えたニュースソース 読売新聞 11/0818231662「国籍法案正案、今国会で成立へ・・・民主が賛成方針」 記事の当時のURL:http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081107-OYT1T00941.htm オリジナル記事ページのコピー(魚拓) imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/266.html
総括所見:スウェーデン(第5回・2015年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SWE/CO/5(2015年3月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2015年1月13日および14日に開かれた第1936回および第1938回会合(CRC/C/SR.1936 and 1938参照)においてスウェーデンの第5回定期報告書(CRC/C/SWE/5)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下に掲げる総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、スウェーデンの第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/SWE/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。 (a) スウェーデン社会サービス法および青年ケア(特別規定)法に対して加えられた立法上の修正(2013年1月)[1]。 (b) 子どもに対する性犯罪に関する法律の改正(2013年7月)[2]。 (c) 社会のより多くの層を含めるための法改正によって強化された、差別禁止法における年齢差別からの保護。 (d) 2011年7月の教育法。 [1] CRC/C/SWE/Q/5/Add.1、パラ108参照。 [2] 前掲パラ112参照。 4.委員会はまた、締約国による以下の条約の批准にも、評価の意とともに留意する。 (a) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2013年6月)。 (b) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約第34号(2012年9月)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器ならびにその部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書(2011年6月)。 (d) 人身取引と闘うための行動に関する欧州評議会条約(2010年5月)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 反ジプシー主義対抗委員会の創設(2014年3月)。 (b) 子どもの人身取引、搾取および性的虐待に反対する国家行動計画(2014~2015年)(2014年2月)。 (c) 性的指向、ジェンダーアイデンティティまたはジェンダーの表現にかかわらず平等な権利および機会を促進するための長期戦略(2013年12月)。 (d) PRIO精神的健康障害行動計画(2012年5月)。 (e) ロマ包摂戦略(2012~2032年)。 (f) 開発協力における民主主義および人権に関する方針(2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国が、締約国の第4回定期報告書の検討(2009年)時に行なわれた前回の勧告(CRC/C/SWE/CO/4)のうち実施されていないものまたは不十分にしか実施されていないもの、ならびに、とくに締約国における条約およびその選択議定書の法的地位(前掲パラ10参照)、子どもの庇護希望者および難民(CRC/C/SWE/CO/4、パラ61)ならびに児童ポルノを含む性的搾取(前掲パラ67参照)に関する勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 7.委員会は、条約が引き続きスウェーデン法として正式に承認されていないことに関する委員会の前回の懸念に対応するために締約国が行なった努力、および、とくに、法律その他の規則の適用において条約がどのように遵守されているかを分析するための調査が2013年3月に開始された旨の文書回答において提供された情報に、留意する。 8.委員会は、締約国に対し、2013年3月に開始された調査を速やかに進めることとともに、国内法を条約と全面的に一致させるためにあらゆる必要な措置をとること、および、国内法の規定が条約に抵触する際には条約が常に優先されるべきことを、促す。 資源配分 9.委員会は、国家予算に条約実施のための具体的世再配分額が含まれていないことに、懸念とともに留意する。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 委員会に対する次回の定期報告書において、条約の実施に関連する国家予算についての具体的情報を金額および割合で提供すること。 (b) 予算全体における子どものための資源の配分および使用を追跡するシステムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利基盤アプローチを採用すること。 (c) あらゆる部門における投資または予算削減との関連で「子どもの最善の利益」がどのように考慮されているかについての影響評価を実施するとともに、当該投資または予算削減が女子および男子の双方に与えている影響を測定すること。 調整 11.委員会は、市町村、県および広域行政圏における条約の実施に関して格差が残っており、子どものための支援およびサービスへのアクセスの不公平につながっていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が、広域行政圏および地方のレベルであらゆる権利への平等なアクセスを確保する明確な権限および権威をもったハイレベルな機構を設置するとともに、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう勧告する。 独立の監視 13.委員会は、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なっている多くの活動への評価をあらためて表明する(CRC/C/SWE/CO/4、パラ14参照)ものの、同事務所が子どもからのまたは子どもに代わって行なわれる個別の苦情を受理できないという懸念もあらためて繰り返す。 14.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、オンブズマンに対し、子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応すること、被害者のプライバシーおよび保護を保全することならびに被害者のためのモニタリング、フォローアップおよび確認活動を行なうことの権限および適切な資源を与えるため、あらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国がオンブズマンの独立性を強化することも勧告するものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 15.委員会は、包括的な差別禁止法、性的指向、ジェンダーアイデンティティまたはジェンダーの表現にかかわらず平等な権利および機会を促進するための長期戦略および反ジプシー主義対抗委員会を含め、さまざまな形態の差別に対応するうえで締約国が行なっている努力について締約国を称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 一部の集団の子ども、とくに不利な立場におかれた家庭および周縁化された家庭の子どもならびに移住者家庭の子ども(アフリカ人の子どもおよびアフリカ系スウェーデン人の子どもを含む)が引き続き差別に直面していること。 (b) 「人種」の語が新たな差別禁止法および統治法典から削除されたこと、および、人種差別撤廃委員会から以前指摘されたように(CERD/C/SWE/CO/19-21、パラ6および13)、人種的憎悪を助長しかつ煽動する団体を違法であると宣言しかつ禁止する明示的な法規定が存在しないこと。 (c) ロマの子どもが他の児童生徒から差別される事案があること。 (d) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダー(LGBT)の子どもがいじめ、脅迫および暴力を経験する事案があること。 16.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の差別と効果的に闘うための努力をいっそう進め、かつそのための措置を強化するとともに、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) とくに民族と関連した差別の禁止を執行するために法律を改正し、かつ、人種的憎悪を助長しかつ煽動する団体を違法であると宣言すること。 (b) 差別防止活動にとくに焦点を当てるとともに、必要なときは、被害を受けやすい状況にある子ども(周縁化された家庭および不利な立場に置かれた家庭の子ども、移住者としての背景を有する子ども、ロマの子どもおよびLGBTの子どもを含む)を保護するために積極的差別是正措置をとること。 (c) あらゆる形態の差別を解消するための意識啓発プログラム(青少年を含む子どもをとくに対象としたキャンペーンを含む)を実施すること。 子どもの最善の利益 17.自己の最善の利益を考慮される子どもの権利が一部の法律で取り上げられていることに評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに子どもが関わる庇護手続において、この権利が不十分にしか重視されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 子どもに関わるすべての措置について子どもの権利影響評価が義務化されていないこと。 (b) 最善の利益判定に関する関連の専門家の研修が不十分であること。 18.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の原則の意味および実務的適用に関する意識を高め、かつ条約第3条が立法および行政措置に適正に反映されることを確保するための措置を強化するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/SWE/CO/4、パラ28)をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 子どもおよびその権利の享受に影響を及ぼす政策、立法、規則、予算、国際協力その他の行政決定のいかなる提案についても、その影響を判断するために義務的な子どもの権利影響評価を行なうこと。 (b) 移民委員会および社会福祉機関のスタッフを対象として定期的研修を行なう等の手段により、子どもの最善の利益の原則が、とくに子どもが関わる庇護案件におけるあらゆる決定の基盤および指針とされることを確保するとともに、最善の利益判定に関する研修を強化すること。 子どもの意見の尊重 19.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を実施するために社会サービス法および教育法に基づいてとられた措置には積極的措置として留意しながらも、とくに監護、居所および面会交流ならびに社会サービス調査との関連でまたは庇護手続において、この権利が実際には不十分にしか実施されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、外国人法(第1章第11条)上、子どもが意見を聴かれるのはそれが不適切でない場合に限られていることも懸念するものである。 20.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化し、かつ、ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を確立する等の手段により、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、外国人法第1章第11条を修正し、不適切性の例外を廃止し、かつ、自己の影響を与える決定が行なわれる際に子どもが常に意見を聴かれることを確保するため、速やかに法的措置をとることも求めるものである。 生命、生存および発達に対する権利 21.委員会は、障害者権利委員会から以前指摘されたように(CRPD/C/SWE/CO/1、パラ29参照)、締約国において、障害のある人(子どもを含む)の自殺率がますます高まっていることを懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、障害のある子どもの自殺の原因を防止し、特定しかつこれに対処するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 適切な情報へのアクセス 23.「デジタルツーリスト」ツアー会議または毎年の「インターネット安全性強化デー」など、情報通信技術(ICT)の利用について子どもおよびその親に情報提供を行なうために締約国がとった措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、ICTの利用に関連するリスクについて、学校の児童生徒および親を対象として不十分な訓練しか行なわれていないことを懸念する。 24.デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議の勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものプライバシーを保護するための規則を策定する努力を強化するとともに、ICTの安全な利用(とくに、子どもが小児性虐待者、自己の福祉に有害な情報および資料への接触ならびにネットいじめから身を守るための方法)について、子ども、教員および家族を対象とした十分な訓練を行なうこと。 (b) ネットいじめが他の子どもに及ぼしうる深刻な影響について、子どもの間で意識啓発を行なうこと。 (c) ICT関連の子どもの権利侵害を監視しかつ訴追する機構を強化すること。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 25.委員会は、法律に抵触した子どもを留置刑務所および警察の留置房で独房拘禁の対象とする実務が行なわれており、かつ後者に拘禁される子どもが多数にのぼっていること、および、精神保健ケアの現場で障害のある子どもに強制的かつ非任意的な取扱いが行なわれていること(とくに、革の紐またはベルトによる最長2時間の拘束が利用されていることおよび隔離措置がとられていること)を、深刻に懸念する。 26.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) すべての子どもを独房拘禁から直ちに解放するとともに、あらゆる状況下で独房拘禁の利用を禁止するために法律を改正すること。 (b) 精神保健ケアの現場および他のいかなる施設においても革の紐またはベルトおよび隔離措置の利用を法的に禁止すること。 (c) あらゆるケア施設の子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできること、そのような施設の環境が定期的かつ効果的に監視されること、および、拘禁された子どもに対する残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いの報告が速やかにかつ公平に調査されることを確保すること。 (d) 医療スタッフおよび非医療スタッフを対象として、非暴力的かつ非強制的なケア方法についての研修を行なうこと。 (e) 警察の留置房に拘禁されている子どもについての警察の報告機構を統一すること。 虐待およびネグレクト 27.委員会は、家族間暴力と闘う全国調整官が2012年に任命されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに6歳までの子どもの児童虐待が相当に増加していることを懸念するとともに、そのような虐待の通報の数件しか訴追に至っていないことに失望するものである。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) とくに締約国の多くの場所で一連のケア制度が明確なものになっていないことを理由として、虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもが、リハビリテーションサービスおよび精神保健ケアにアクセスする際に困難を経験していること。 (b) 学校および施設の職員が虐待およびネグレクトの初期の徴候を認識する適正な訓練を受けておらず、このような状況によってごくわずかな事案しか社会サービスに通報されない事態が生じていること。 28.委員会は、締約国が、一貫したかつ調整のとれた子ども保護システムを創設し、かつ、子どもの虐待および子どもに対する暴力の事案の通報を奨励する目的で子どもの関与を得ながら意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化するとともに、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うための包括的戦略を策定し、かつ以下の措置をとるために、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 暴力および虐待の根本的原因に対処するための長期的プログラムを実施するため、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (b) 学校および施設の職員を対象として、子どもの不当な取扱いの徴候を発見しかつ認識する方法についての定期的かつ継続的な研修を行なうこと。 (c) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得ることならびにこれらの者に研修および支援を行なうこと等の手段により、家族間暴力、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対応することを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 (d) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事件の全国的データベースを設置し、かつ、このような暴力の規模、原因および性質についての包括的評価を行なうこと。 (e) 暴力および虐待を受けた子どもが十分な身体的および心理的ケアに十分な形でアクセスできることを確保すること。 性的搾取および虐待 29.委員会は、性的搾取および虐待に対して締約国が措置をとってきたこと、ならびに、とくに、子どもに対する重大な性的虐待の犯罪の範囲が拡大され、刑罰が強化され、かつ子どもの性的搾取に関する時効が延長されたことを評価する。しかしながら委員会は、締約国において児童買春および児童ポルノが根強く存在しており、かつ、子どもの性的搾取に関するデータ(性的目的で人身取引により締約国に連れてこられた子どもおよび締約国内で取引された子どもまたはスウェーデン国民により国外で性的虐待もしくは搾取を受けた子どもに関するデータを含む)が存在しないことを懸念するものである。 30.委員会は、締約国が、性的搾取および虐待を解消するための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 年齢別、男女別、民族的出身別、国民的出身別、地理的所在別および社会経済的地位別に細分化されたデータを体系的に収集するための機構を設置すること。 (b) 子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択されてきた成果文書にしたがい、防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策の発展を強化すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 31.委員会は、いじめと闘うために締約国がとっている措置は評価しながらも、いじめに関する学校行動計画がニーズ調査に基づいていることは稀であるとされること、他の児童生徒による何らかの形態のいやがらせ(ネットいじめを含む)を受ける児童生徒の人数が増えていること、および、ソーシャルメディアの国内対応窓口がネット上のいじめおよびいやがらせとの闘いに十分に関与していないことに、懸念とともに留意する。 32.委員会は、締約国が、あらゆる形態のいじめおよびいやがらせ(ネットいじめおよび携帯電話によるいじめを含む)と闘うための努力を強化し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ソーシャルメディアの国内対応窓口の関与を強化し、学校における多様性を受け入れる教員および学校で働くすべての専門家ならびに生徒の能力ならびに生徒の紛争解決スキルを向上させ、かつ、いじめの解消を目的とする取り組みに子どもの関与を得ること。 (b) すべての学校が、いじめおよびいやがらせに関連した経験に関する生徒、職員および親の定期的調査を実施し、かつ、いじめと闘うための行動計画をこれらの調査に基づいて策定することを確保すること。 ヘルプライン 33.委員会は、締約国の自治体の多くが資格のあるソーシャルワーカーをスタッフとする24時間のヘルプラインを開設していることに評価の意とともに留意しながらも、日中しかヘルプラインサービスを提供できていない自治体が相当数にのぼることに留意する。 34.委員会は、締約国に対し、全国的に24時間のサービスを提供する目的でヘルプラインへの人的資源、技術的資源および財源の配分を増やすよう奨励する。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20~21条、第25条および第27条(第4項)) 家庭環境を奪われた子ども 35.委員会は、子どもと収監された親との接触を促進するために締約国がとったさまざまな措置(一部の刑務所における面会用居住施設の設置を含む)を評価する。しかしながら委員会は、「近接性の原則」が義務的なものではなく考慮される種々の要素のひとつにすぎないことを懸念するものである。このことは、親と面会するために子どもが長距離を移動し、また家族によっては経済的制約のためにそのような移動を行なえないということを意味しうる。委員会はまた、一部の刑務所において、長距離を移動しなければならないことが面会期間を延長する正当な事由として自動的に認められていないことも懸念するものである。 36.委員会は、締約国が、親が刑務所にいる子どもが親との個人的関係および直接の接触を維持できるようにするためにあらゆる必要な措置をとるとともに、近接性の原則を制度的に適用するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、刑務所における子どもにやさしい面会施設を引き続き増やすことも奨励するものである。 37.委員会は、アフリカ系の人々に関する専門家作業グループが締約国への訪問後に以前指摘したように、アフリカ系スウェーデン人およびアフリカ人の家族生活への恣意的干渉の事例が報告されていることならびに社会福祉機関による子どもの分離が行なわれていることを懸念する。 38.委員会は、締約国が、家族からの子どもの分離に関する実務を全面的に規制するとともに、分離が、常に徹底した調査の対象とされ、子どもの最善の利益にしたがって行なわれ、かつ最後の手段として用いられることを確保するよう勧告する。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条) 障害のある子ども 39.一部の障害者を対象とする補助金およびサービスに関する法律第1993:387号の新たな規定で、障害のある子どもは自己に影響を与えるいかなる行動についても自己の意見を提示する機会を有すると定められていることは歓迎しながらも、委員会は、障害者権利委員会が強調したように(CRPD/C/SWE/CO/1、パラ19)、障害のある子どもが自己に関わる問題について制度的に意見を聴かれておらず、かつ自己の意見を表明する機会を有していないことを懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 障害のある子どもに対する犯罪について個別の統計が作成されていないこと、および、障害のある子どもが障害のない他の子どもよりも高い割合で暴力に晒されていること。 (b) インクルーシブ教育にアクセスできている子どもの人数は非常に多いものの、教育法において、学校は、障害のある子どもを受け入れることに「相当の組織的または財政的困難」をともなうときは、自治体が同等の代替的選択肢を提示できることを条件として、障害のある児童生徒の入学を認めないことができるとされていること。 (c) 教育法で、、障害のある子どもは「最低限の知識要件」を達成しなければならないと定められていること。 (d) 親を対象としておよび障害のある子どもと働く職員を対象として、これらの子どもの特別なニーズに関する十分な情報提供および訓練が行なわれていないこと。 40.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自己に関わるあらゆる事柄について協議の対象とされる障害児の権利について現在設けられている保障措置が効果的に実施されることを確保すること。 (b) 犯罪の被害を受けた障害児に関するデータを収集し、かつ次回の報告書でその知見に関する情報を委員会に提供すること、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究ならびにデータおよび統計の収集を行なうこと、ならびに、親を対象としたおよび子どもとともに働く職員を対象とした感受性強化および訓練ならびに一般公衆の意識啓発のための戦略および取り組みを強化すること。 (c) すべての子どもが差別なく学校にアクセスできることを確保するとともに、この目的のため、障害のある子どもの受入れについて一定の要素を条件としている教育法の規定を廃止し、かつ、いかなる学校も完全にインクルーシブな教育を阻害する組織的または財政的困難に直面しないことを確保するために十分な人的、技術的および財政的支援を行なうこと。 (d) 障害のあるすべての子どもがその個別の能力を踏まえて可能なかぎり最高の教育水準に達する機会およびあらゆる必要な支援を与えられることを確保するため、速やかに法的措置をとり、かつあらゆる必要な資源を配分すること。 (e) 障害のある子どもの特別なニーズを認識しかつこれに対応する方法についての、親および教員を対象とした意識啓発プログラムおよび教育プログラムを発展させること。 健康および保健サービス 41.子どもの庇護希望者を対象として公平な保健ケアが提供されていることは歓迎しながらも、委員会は、経済的背景が異なる子どもの身体的および精神的健康に相当の格差が存在し続けていることを懸念する。 42.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、不利な立場に置かれた集団および周縁化された集団の子どもの健康状態を向上させるための努力を強化し、かつ、健康に対するこれらの子どもの権利を差別なく保障するために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう、勧告する。 精神保健 43.委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) いわゆる学習障害または行動障害、とくに注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断される子どもの人数が相当に増加していること。 (b) 副作用を適正に考慮することなくアンフェタミンおよびアンフェタミン様精神刺激薬(ほとんどはメチルフェニデートの形態をとる)が処方される事案が増加しており、かつ、そのような薬を服用することによる依存症が生じていること。 44.委員会は、締約国に対し、ADHDおよびその他の行動上の特異性の診断ならびに診断された子どもを対象とする薬物治療の使用について独立した専門家による監視を行なうシステムを設置するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの精神保健上の問題の判定において使用されている診断手法について独立の調査研究を行なうこと。 (b) 子ども、その親および教員を対象とする適切なかつ科学的基盤を有する心理カウンセリングおよび専門的支援が、ADHDおよびその他の行動上の特異性に対応する際の薬物の処方よりも優先されることを確保すること。 45.委員会は、精神保健障害および心理社会的障害の発生率が若者の間で高い一方で、学校保健サービスに対し、これらの障害に時宜を得た適切なやり方で対応するための十分な資源が与えられていないこと、ならびに、学校心理学者および心理社会的支援システムにアクセスするために長期間待機しなければならないことを懸念する。 46.委員会は、障害者権利委員会から以前指摘されたように(CRPD/C/SWE/CO/1、パラ18参照)、締約国が、子どもが適切な心理社会上および精神保健上の支援ならびに精神医学的保健ケアに時宜を得たやり方でアクセスしかつ当該支援およびケアを受けられることを確保するため、学校保健サービスに対して利用可能とされる資源を増やすよう勧告する。 生活水準 47.委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 相対的に多数の子どもが貧困下で生活していること。 (b) 移住の状況下にある子どもが締約国の住民である子どもよりもいっそう経済的困難に服している一方、庇護希望者を対象とする日額手当の額が依然として低く、かつ1994年から変わらないままであること。 (c) 一般の子ども手当とは異なり、庇護希望者の家族を対象とする子ども手当は第3子以降減額されること。 (d) 2013年に、とくに家賃滞納の結果として、数百人の子どもが強制立退きの影響を受けたとされていること。 48.委員会は、締約国が、以下のことを目的とする戦略および措置を強化する目的で、人的資源、技術的資源および財源の配分を増やし、かつ貧困の根本的原因を検討するよう勧告する。 (a) 困窮している家族、とくにひとり親家族および困難な社会経済的その他の状況にある家族を支援するためのプログラムを強化しかつ増やすこと。 (b) 庇護希望者を対象とする日額手当を増額するとともに、2子以上の家族を対象として手当が減額されないことを確保するために速やかに法的措置をとること。 (c) 家族が移転または立退きを強制されないこと、および、十分な住居に対する子どもの権利が常に尊重されることを確保すること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 子どもの庇護希望者および難民 49.委員会は、子どもの庇護希望者がノンルフールマンの原則に違反して出身国に送り返される事案が報告されていることを懸念する。委員会はまた、以下のことにも懸念とともに留意するものである。 (a) 保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもが性的搾取および(または)性的虐待をとくに受けやすい状態に置かれていること、ならびに、保護者のいない子どもの失踪事案が毎年多数発生しており、かつその多くについて不十分な調査しか行なわれていないこと。 (b) 強制労働、児童婚、人身取引、女性性器切除または子ども兵士としての徴募の危険性など、子どもに固有の形態の迫害が、外国人法で庇護を得るための事由として明示的に挙げられていないこと。 (c) ネグレクトおよび(または)家族間暴力を理由として家庭外養護に措置された子どもが、外国人法にしたがい、親とともに退去強制の対象とされる可能性があること。 (d) 保護者のいない子どもの後見人に関する法律第3条で、子どもの後見人が「可能なかぎり早期に」任命されると規定されていて期限の定めがないことから、場合によっては後見人の任命まで子どもが数週間待たなければならないこともあること。 (e) 後見人が常に適正な訓練を受けているわけではなく、かつ、子どもと面会するときに常に通訳者をともなっているわけではないこと。 (f) 庇護申請の決定までに子どもが長期間待機しなければならない事案が報告されていること。 (g) 報告によれば、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもの多くに冬服、個人衛生用品または学校用品が支給されていないこと。 50.委員会は、締約国に対し、子どもが出身国に送還されることになっている場合にノンルフールマンの原則が常に尊重されることを確保するための措置を速やかにとるよう促す。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 保護者のいない子どもが失踪したあらゆる事案を調査するとともに、これらの子どもの保護を強化するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 外国人法の改正により、庇護を得るための事由として、強制労働、児童婚、人身取引、女性性器切除または子ども兵士としての徴募の被害を受ける危険性など子どもに固有の形態の迫害を明示的に含めること。 (c) いかなる子どもも、親または保護者による養育中に暴力および(または)虐待の被害を受けたという理由で分離された当の親または保護者とともに退去強制の対象とされないことを確保するとともに、そのような子どもに関わるいかなる決定についても最善の利益判定を実施すること。 (d) 保護者のいない子ども1人ひとりについて、十分な訓練を受け、かつ定期的かつ継続的な研修を受けている後見人が直ちに任命されること、子どもが自己の後見人と定期的に面会すること、および、言語上の問題があるときは子どもと後見人間の効果的コミュニケーションを可能とするために通訳者が任命されることを、法律で要件とすること。 (e) 庇護申請の処理を早めるとともに、庇護希望者であるすべての子どもに対し、基礎的必需品(とくに十分な衣服および個人衛生用品)ならびにあらゆる必要な学校用品が全面的に支給されることを確保すること。 移住の状況にある子ども 51.委員会は、「通過滞在」であるとみなされる子どもが教育へのアクセスに関して困難に直面していること、および、移住者としての背景を有する子どものほうが学校脱落率が高いことに、懸念とともに留意する。 52.委員会は、締約国が、「通過滞在」であるとみなされる子どもが教育への全面的アクセスを認められることを確保するために法律を改正し、そのような子どもの脱落率を効果的に減少させるためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、学校から脱落した子どもに学校への再アクセスの機会を提供するよう、勧告する。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ 53.委員会は、ジェノサイド、人道に対する犯罪および戦争犯罪についての刑事責任に関する法律(2014年7月)が採択され、15歳未満の子どもの徴募および武力紛争における使用が戦争犯罪とされたことを歓迎する。しかしながら委員会は、志願制防衛組織の全体防衛青年活動に参加する18歳未満の志願隊員が火器の訓練を行なうことを依然として懸念するものである。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されている国またはその可能性がある国にいかなる武器も輸出されないことを確保するために設けられている保障措置が不十分であること。 (b) 子どもの難民、庇護希望者および移住者であって国外で徴募されまたは敵対行為において使用された者に関する体系的なデータ収集を行なうための機構が設置されていないこと。 54.委員会は、締約国が、選択議定書の精神を全面的に尊重しかつあらゆる状況において子どもに全面的保護を提供する目的で、志願制防衛組織が行なう火器訓練に参加する志願隊員の最低年齢を16歳から18歳に引き上げるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/SWE/CO/1、パラ15)をあらためて繰り返す。委員会は、締約国が、18歳未満の者に火器訓練および軍隊式訓練を行なうすべての志願制防衛組織に対し、選択議定書および他の関連の国際基準に関する十分な情報提供および研修を行なうよう、あらためて勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地国である場合の武器(小火器および軽火器を含む)の輸出を完全に禁止すること。 (b) 自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移住者であって国外で徴募されまたは敵対行為において使用された者に関する体系的なデータ収集を行なうこと。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ 55.委員会は、子どもの人身取引、搾取および性的虐待に反対する国家行動計画(2014~2015年)ならびにストックホルム国境管理警察が策定した共通行動計画は歓迎しながらも、以下の懸念をあらためて繰り返す(CRC/C/OPSC/SWE/CO/1参照)。 (a) 締約国の法律で、選択議定書第1条、第2条および第3条に定められたすべての犯罪が具体的に定義されかつ禁じられているわけではないこと、および、選択議定書に含まれているすべての犯罪が締約国の刑法で対象とされているわけではないこと。 (b) 締約国の判例および法律が、15歳以上の子どもの被害者に対し、一貫して十分な保護を提供しているわけではないこと。 (c) 選択議定書が対象とする犯罪に関わるリスク要因の特定およびこれへの対処ならびにこのような違反の事案(外国人被害者が関わるものを含む)を通報しかつ処理する方法および機関についての知識が、子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で低いままであること。 (d) 選択議定書第2条(c)に関する締約国の宣言において、同条の「あらゆる表現」(any representation)という文言は児童ポルノの「視覚的表現」に関連するものとしてのみ解釈すると述べられていることにより、あらゆる形態の児童ポルノに対応するための選択議定書の全面的実施が阻害されること。 56.委員会は、締約国に対し、刑法を選択議定書の規定を全面的に一致させるためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。このような措置には以下のものが含まれる。 (a) 前回勧告されたように、選択議定書第1条、第2条および第3条に掲げられたすべての犯罪ならびにあらゆる形態の児童ポルノを犯罪化するとともに、性的搾取を犯罪の重大性にふさわしい制裁で処罰できるようにすること。 (b) 子どもの虐待の被害者全員(15歳以上の被害者を含む)に対して十分な法的保護を提供すること。 (c) 未成年者の性的行為の購入および性的目的での子どもの搾取は「子どもに対するそれほど重大ではない性犯罪」という評価を再検討するとともに、このような犯罪が領域外で行なわれた場合の犯罪人引渡しに関する双方可罰性要件を削除すること。 (d) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象として、選択議定書に関する体系的研修を実施すること。 (e) 選択議定書第2条(c)に関する宣言を撤回すること。 少年司法の運営 57.委員会は、法律に抵触した子どもの権利を保障するために行なわれている努力は認識しながらも、以下のことを懸念する。 (a) 拷問禁止委員会から以前指摘されたように(CAT/C/SWE/CO/6-7、パラ7)、自由を奪われた子どもが、自己の権利についておよび自己に課された制限の理由について常に告知されているわけではなく、かつ、自由の剥奪が開始された時点からすべての基本的な法的保障(弁護士にアクセスする権利、独立の医師による検診を受ける権利および親族または自ら選択した者に通知する権利など)を与えられているわけでもないこと。 (b) スウェーデン子どもオンブズマンの2013年版年次報告書で提起されたように、拘禁に代わる措置を見出すための十分な努力が行なわれないまま子どもが引き続き審判前拘禁の対象とされていること、および、審判前拘禁の対象とされている子どもの取扱いについて一般的かつ正式な定型的手順が定められていないこと。 (c) 審判前拘禁を含む自由の剥奪の期間が法律で帰省されていないこと。 (d) 教育へのアクセスに関して留置刑務所間で格差があること。 58.少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を引き続き条約および他の国際基準と全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 拘禁された子どもが、拘禁の理由および自己の権利(とくに弁護士に直ちにアクセスする権利、可能であれば自ら選んだ独立の医師による検診を受ける権利、ならびに、親族および適当なときは領事機関に通知する権利)について、その子どもが理解できる方法で直ちに説明されることを確保するとともに、法的助言者のいない状態で行なわれたいかなる陳述も法的手続において使用できないことも確保すること。 (b) 勾留および拘禁に代わる措置を促進するとともに、勾留および審判前拘禁を含む拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、当該拘禁が、その中止を視野に入れて裁判官によって定期的に再審査されることを確保すること。 (c) あらゆる場面における自由の剥奪の期間の上限をすべての関連法に編入すること。 (d) 拘禁されたすべての子どもが、教育に対する平等な制定法上の権利を有することを確保すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 59.委員会は、親密な関係における暴力その他の形態の虐待を目的した子どもが犯罪被害者としての地位を有していながらも、法的手続においては被害当事者としての地位を認められておらず、そのため自分自身の被害者弁護人を提供されず、後見人の許可なくして警察による聴取の対象となることができず、かつ賠償を受けるうえで困難に直面していることを懸念する。さらに委員会は、被害を受けた子どもが関与する多くの法的手続が長期化していることに、懸念とともに留意するものである。 60.委員会は、締約国が、刑事司法制度が子どもの被害者および証人を取り扱う際に子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを要求するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの被害者および証人に対し、法的手続全体を通じて、弁護士による代理、情報および損害賠償へのアクセスとあわせて適切な支援サービスを提供するとともに、法的手続上の被害当事者としての地位を認められる権利を子どもに与えること。 (b) 子どもの被害者が関与する手続の長期化を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 H.通報手続に関する選択議定書の批准 61.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに進める目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 I.国際人権文書の批准 62.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに進める目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約ならびに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 J.地域機関との協力 63.委員会は、欧州評議会および欧州連合との間で締約国が行なっている協力を評価するとともに、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利の実施に関して引き続き欧州評議会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 64.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 65.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2021年3月1日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 66.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての統一ガイドライン(2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された共通コアドキュメントおよび条約別文書に関するガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)および総会決議68/268(パラ16)を含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、42,400語を超えない範囲で最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2016年1月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/206.html
総括所見:オーストラリア(第4回・2012年) 第1回(1997年)/第2回・第3回(2005年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/AUS/CO/4(2012年8月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年6月4日および5日に開かれた第1707回および第1708回会合(CRC/C/SR.1707 and 1708参照)においてオーストラリアの第4回定期報告書(CRC/C/AUS/3-4〔ママ〕)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがって提出された締約国の第4回定期報告書(CRC/C/AUS/4)、および、委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/AUS/Q/4/Add.1)を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/AUS/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことを積極的対応として歓迎する。 (a) 締約国のすべての法律について、その可決前に、オーストラリアが加盟している7つの中核的国際人権文書で認められまたは宣言された人権および自由との両立性評価が行なわれなければならないと定めた、2011年・人権(議会精査)法(2011年)。 (b) 子どもが双方の親と意味のある関係を持つ権利を、これが安全である場合には引き続き促進する一方で、家族法制度における子どもの安全を優先させる、2011年・家族法改正(家族間暴力およびその他の措置)法(連邦法)。 (c) 乳幼児期の教育およびケアについて国レベルの質的枠組みを定めた、2010年・教育およびケアサービス国家法。 5.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの署名も歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年)。 (b) 拷問および他の〔残虐な、〕非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2009年)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2009年)。 (d) 障害のある人の権利に関する〔条約の〕選択議定書(2009年)。 (e) 女性に対する〔あらゆる形態の〕差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2008年)。 6.委員会はまた、以下の制度的措置および政策措置も歓迎する。 (a) 「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画(2010~2022年)」(2010年)。 (b) 「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み(2009~2020年)」(2009年)。 (c) 「国家乳幼児期発達戦略」(2009年)。 (d) 全国若者フォーラムの創設(2008年)。 (e) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもに関わる「盗まれた世代への国家的謝罪」(2008年)および「忘れられたオーストラリア人およびかつての子ども移民への、総理大臣による国家的謝罪」(2009年)。 (f) 「不利な立場に置かれた先住民族の格差縮小のための国家的統合戦略」(2008年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.前回の報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.268)を実施するための締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことを懸念する。 8.委員会は、締約国に対し、第2回・第3回統合定期報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないもの(とくに条約第37条(c)への留保、立法、調整、子どもの意見の尊重、結社の自由、体罰および少年司法の運営に関するもの)に効果的に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 9.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ8)にも関わらず、締約国が、条約第37条(c)に付された留保を撤回していないことを遺憾に思う。委員会は、当該留保の背景にある論理と条約第37条(c)の規定との間に矛盾はなんら存在しないように思われるため、第37条(c)に付された締約国の留保は不必要である旨の見解(CRC/C/15/Add.268、パラ7)を、あらためて繰り返すものである。委員会はさらに、締約国がその留保において表明している懸念については、 自由を奪われたすべての子どもが、「子どもの最善の利益に従えば成人から分離すべきでないと判断される場合を除き」成人から分離されるものとし、かつ子どもは「家族との接触を保つ権利を有する」と定めた第37条(c)によって十分に配慮されている旨の見解を、あらためて繰り返す。 10.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が留保の全面的撤回に向けた努力を継続しかつ強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ8)を、あらためて繰り返す。 立法 11.委員会は、条約の諸側面を実施するためのいくつかの法律を連邦および州のレベルで通過させる目的で締約国が行なってきた努力に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国の国内法において条約に全面的かつ直接の効力を与える包括的な子どもの権利法が国レベルでは引き続き存在しないこと、および、そのような法律を通過させた州が2つしかないことを、依然として懸念するものである。この文脈において、委員会はさらに、締約国が連邦制をとっていることから、このような法律が存在しない結果として領域全体における子どもの権利の実施に断片化および不整合が生じており、そのため、同様の状況に置かれた子どもが、どの州または準州に居住しているかによって権利の充足の度合いが異なるという事態に陥っていることに、留意する。 12.委員会は、締約国が、国内法および国内実務を条約の原則および規定と一致させ、かつ、子どもの権利が侵害された際に効果的救済措置が常に利用可能とされることを確保するための努力を強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ10)を、あらためて繰り返す。さらに委員会は、締約国が、条約および諸選択議定書の規定を全面的に編入し、かつ締約国の領域全域におけるこれらの規定の一貫した直接適用についての明確な指針を提示する、国レベルの包括的な子どもの権利法の制定を検討するよう勧告するものである。 調整 13.委員会は、2007年の政権交代後も、家族・住宅・コミュニティサービス・先住民族問題大臣が子どもの権利に関する国レベルの責任を引き続き負っている旨の、締約国の説明に留意する。しかしながら委員会は、連邦制によって、条約の一貫した実施のための活動の調整に関する実際的課題が生じており、その結果、締約国の州および準州における条約の実施に相当の格差がもたらされていることを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、条約の実施に責任を負う機関および省庁の政策および戦略の一貫性を領域全域で確保することについてオーストラリア連邦諸政府評議会に助言を提供する、十分な人的資源、技術的資源および財源を有する専門的な機関または機構の設置を検討するよう、勧告する。委員会はまた、家族・住宅・コミュニティサービス・先住民族問題省に対し、子どもの権利に関する調整責任を果たすための具体的権限、能力および資源が提供されるべきことも、勧告するものである。 国家的行動計画 15.「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画」、「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み(2009~2020年)」および「国家乳幼児期発達戦略」の採択には留意しながらも、委員会は、条約を全体として実施するための包括的な国家的行動計画が存在しないこと、および、これらの計画の実施を連携させる明確な機構が設けられていないことを、依然として懸念する。 16.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を全般的に実現するための、かつ州および準州が同様の計画または戦略を策定するための枠組みとなりうる包括的戦略を、子どもおよび市民社会と協議しながら策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、この包括的な戦略および行動計画の実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告するものである。 独立の監視 17.委員会は、締約国のすべての州および準州において子どもコミッショナーまたは独立の監視機関が設置されていることを評価する。委員会はまた、締約国が、国家子どもコミッショナー(NCC)の設置のための法律を提出したことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、NCCに対して当初配分される支援が、とくに子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情に対して十全かつ迅速な対応および救済を行なう実効的能力を与えられることとの関連で、その任務の全面的実現を確保するためには十分でないことを、懸念するものである。さらに委員会は、独立の立場から子どもの権利を監視する既存の機構および他の関連の制度に、アボリジナルおよびトレス諸島民の代表が十分に存在しないことを懸念する。 18.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)および条約第4条を考慮にいれながら、委員会は、国家子どもコミッショナーに対し、十分な人的資源、技術的資源および財源が提供され、かつ、子どもからまたは子どものために提出される苦情に子どもに配慮したやり方で迅速に対応することとの関連も含めて職務を効果的に遂行するために必要な免責が保障されることを確保するため、締約国が適切な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民のコミュニティで子どもの権利が効果的に監視されることを確保するため、締約国が、国および(または)州/準州のレベルでこれらのコミュニティの子どもの問題を担当する副コミッショナーを任命することを検討するよう、勧告するものである。 資源配分 19.締約国が世界でもっとも豊かな経済国のひとつであり、かつ相当量の資源を子ども関連のプログラムに投資していることを心に留めつつ、委員会は、締約国が、国および州/準州段階の予算の策定および配分に関して子どもに特化したアプローチを用いていないことから、子どもに対する投資の効果および予算的観点からの条約の全般的適用状況を明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが実務上不可能となっていることに、留意する。 20.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議の際に委員会が行なった勧告に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が、国、州および準州の段階で子どものニーズを十分に考慮し、関連の部門および機関において子どもに明確な配分を行ない、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、条約の実施に充てられる資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構を設置するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえばアボリジナルおよび(または)トレス諸島民系の子どもならびに障害のある子ども)を対象とした戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保するよう、勧告する。 データ収集 21.委員会は、条約の実施に関連するデータの収集を向上させるためにオーストラリア統計局が行なっている継続的活動、とくに、子どもの発達およびその背景に焦点を当てた「オーストラリアの子どもに関する縦断的研究」および「先住民族の子どもに関する縦断的研究」を歓迎する。委員会はまた、「オーストラリア乳幼児期発達指標」、および、政府の資金により障害のある人々に提供されているサービスについての全国的に比較可能なデータの対照など、データ収集に関して締約国が進めている取り組みにも、積極的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、これらのデータが、民族性、子どもの難民、移民および国内避難民、子どもの虐待およびネグレクトならびに性的搾取の被害を受けた子どもといった、条約の重要な分野について細分化も分析もされておらず、かつ乏しいかまたは入手不可能であることを、依然として懸念する。 22.委員会は、締約国が、とくに特別な保護を必要としている状況に置かれた子ども別の細分化が可能になるような方法で条約のあらゆる分野に関するデータが収集されることを確保するために既存のデータ収集機構を強化するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ20)をあらためて繰り返す。この点について、委員会は、このようなデータにおいて18歳未満のすべての子どもが対象とされ、かつ民族性、性別、障害、社会経済的地位および地理的所在に特段の注意が払われるべきことを、具体的に勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 23.委員会は、締約国が、自国の報告書および他の条約機関の報告書を司法長官のウェブサイトで利用可能とする取り組みを行なっていること、全国子ども・若者法律センターに資金を提供していること、および、全般的に人権教育を促進していることを、評価する。しかしながら委員会は、子ども、子どもとともにまたは子どものために働く専門家および一般公衆の間で条約に関する意識および知識が引き続き限られていることを、依然として懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、提案されている国家人権教育行動計画の中核的目標のひとつに、子どもの権利に関する公衆教育を含めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、学校カリキュラム、および、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を対象とする養成研修プログラムに、人権および条約に関する必修モジュールを含めることを検討するよう、勧告するものである。 国際協力 25.委員会は、締約国が、2016-2017年度の政府開発援助(ODA)の水準を現行の対国民総所得(GNI)比0.35%から0.5パーセントに引き上げる意図を有していることに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国の経済発展が先進的状況にあるにも関わらず、この水準が、GNPの0.7%をODAに支出するという国際合意目標よりも相当に低いことを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国が、すべてのODAプログラムが開発に対する人権基盤アプローチに一致することを求める具体的政策を定めていないことにも留意する。 26.委員会は、締約国に対し、持続可能な開発を確保し、かつすべての援助受領国が自国の人権法上の義務を履行できることを保障する目的で、可能な場合には子どもの権利に焦点を当てながら、開発援助に関するすべての政策およびプログラムについて一貫した人権アプローチをとるよう、促す。委員会は、締約国が、その際、援助プログラムに対する子どもの権利基盤アプローチを導入するとともに、当該援助受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう、提案するものである。さらに委員会は、締約国に対し、ODAに関する国際合意目標(対GNP比0.7%)を達成するためのロードマップの実施を加速するよう促す。 子どもの権利と企業セクター 27.委員会は、コンゴ民主共和国、フィリピン、インドネシアおよびフィジーなど、子どもが立退き強制、土地の収奪および殺害の被害を受けている国々での深刻な人権侵害にオーストラリアの鉱山会社が参加しかつ加担しているという報告について懸念を覚える。さらに委員会は、オーストラリア企業がタイで経営している漁業企業で国際基準に違反する児童労働および子どもの労働条件が見られるという報告について懸念を覚えるものである。さらに、オーストラリア鉱業協会による、持続可能な環境に関する自主的行動規範(「不朽の価値」)が存在することは認知しながらも、委員会は、オーストラリアの鉱山企業による直接間接の人権侵害を防止するうえで当該行動規範が不十分であることに、留意する。 28.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年4月7日の人権理事会決議8/7および2011年6月11日の人権理事会決議14/7(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 説明責任、透明性および人権侵害の防止を向上させる目的で、締約国の領域または海外で行なわれた人権(とくに子どもの権利)の侵害に関する、オーストラリア企業およびその子会社の法的責任を確保するための法的枠組み(民事法、刑事法および行政法)を検討しかつ修正するとともに、監視機構、調査体制およびこのような侵害の是正措置を確立すること。 (b) 子どもの権利の尊重、人権侵害の防止および人権侵害からの保護ならびに説明責任を確保する目的で、オーストラリア企業またはその子会社が活動している国々との協力を強化するための措置をとること。 (c) 子どもの権利侵害の発生を防止するための措置がとられることを確保する目的で、自由貿易協定の締結に先立って人権影響評価(子どもの権利影響評価を含む)が実施される慣行を確立するとともに、オーストラリア輸出信用機関が、海外投資を促進するための保険または保証を提供する前に、人権侵害のリスクに対処できるようにするための機構を設置すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.「オーストラリア国民――オーストラリアの多文化政策」および締約国の「反差別のための国家的パートナーシップおよび戦略」は歓迎しながらも、委員会は、人種差別全般が依然として問題となっていることに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 基礎的サービスの提供およびこのようなサービスへのアクセス可能性の観点から、ならびに、刑事司法制度および家庭外養護の対象とされることが相当過剰であることも含め、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもが深刻かつ広範な差別に直面していること。 (b) とくに子どもの保護、発達およびウェルビーイングの観点から「格差縮小」に掲げられた目標を推進するためのプログラムの有効性について、独立の評価が行なわれていないこと。 (c) 生徒の就学・出席促進措置として、学校を無断欠席している子どもの親について福祉給付金の懲罰的減額が認められていることも含め、締約国のノーザンテリトリー緊急対策法案(2007年)が懲罰的性質を有していること。 (d) アボリジナルおよびトレス諸島民に影響を与える政策立案、意思決定およびプログラム実施プロセスにおいて、当事者との協議および当事者参加が不十分であること。 (e) 性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別からの保護を提供する連邦法が存在しないこと。 30.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。委員会は、その際、締約国が、意識啓発その他の差別防止活動を、このような活動を学校カリキュラムに統合し、かつ必要なときは脆弱な状況に置かれた子ども(アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもならびに非アングロサクソン系オーストラリア人の子どもを含む)のための積極的差別是正措置をとること等も通じて強化するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもおよびその家族によるサービスへのアクセスの格差に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 「格差縮小」に掲げられた各目標の、とくに子どもの保護、発達およびウェルビーイングの観点からの策定、計画、実施および見直しについて報告するため、「アボリジナル・トレス諸島民運営グループ」の設置および当該グループに対する資源の提供を検討すること。 (c) ノーザンテリトリー緊急対策法案(NTERB)(2007年)、とくにそこに掲げられた生徒の就学・出席促進措置について、NTERB上の措置が均衡のとれた、かつ形式および効果の両面で非差別的なものとなることを確保する目的で、徹底した評価を実施すること。 (d) アボリジナルおよびトレス諸島民に影響を与える政策立案、意思決定およびプログラム実施プロセスへの、当事者の効果的かつ有意味な参加を確保すること。 (e) 性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別からの保護を提供する連邦法を制定すること。 子どもの最善の利益 31.委員会は、子どもの最善の利益の原則が広く知られておらず、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、この原則が適切に統合されておらず、かつ一貫して適用されていないことを懸念する。この文脈において、委員会は、庇護希望者、難民および(または)入管収容の状況下にある子どもの最善の利益の原則に関する理解およびその適用が不十分であることを、とくに懸念するものである。 32.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が広く知られ、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいてこの原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励されるところである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。委員会は、この勧告の実施にあたり、庇護希望者、難民および(または)入管収容〔の状況〕下にある子どもについての政策および手続において子どもの最善の利益が正当に優先されることを確保することに対し、締約国が特段の注意を払わなければならないことを強調するものである。 子どもの意見の尊重 33.委員会は、締約国が、政府、青少年部門および若者間のコミュニケーション回路としてオーストラリア若者フォーラムを設置したことを歓迎する。しかしながら委員会は、15歳未満の子どもおよび(または)アボリジナルまたはトレス諸島民系の子どもの意見を考慮するための場が引き続き不十分であることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、学校において、自己に影響を与える方針および意思決定への、意味がありかつエンパワーメントに基づいた子ども参加を促進するための機構が不十分であることを懸念する。さらに委員会は、締約国の1958年・移民法(連邦法)において、出入国管理官が、家族とともにやってきた子どもの事情聴取を家族とは別に行なうことを義務づける規定が設けられていないことを懸念するものである。 34.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、条約第12条にしたがい、意見を聴かれる子どもの権利の実施を引き続き確保するよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、あらゆる行政段階ならびに家庭、コミュニティおよび学校(生徒評議会を含む)において、脆弱な状況下にある子どもに特段の注意を払いながら、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するよう、勧告するものである。さらに委員会は、1958年・移民法において、移住プロセスのあらゆる段階で子ども(非正規移住の状況にある子どもを含む)の意見の尊重が保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 35.委員会は、出生登録との関連でアボリジナルが直面している困難について懸念を覚える。とくに委員会は、識字水準の低さ、出生登録の必要性および利点に関する理解の欠如ならびに公的機関が提供する支援の不十分さから生じる、出生登録を妨げる要因が解決されていないことを懸念するものである。委員会はさらに、出生証明書に事務管理費が課されることが、経済的に不利な状況にある人々にとって追加的障害となっていることに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国に対し、出生登録の重要性に関するアボリジナル住民の意識を高め、かつ非識字者による出生登録の便宜を図るための特別な支援を提供する等の手段により、オーストラリアで生まれたすべての子どもが出生時に登録され、かつ登録の障壁となる手続的要因を理由として不利な立場に置かれる子どもがひとりも出ないことを確保するために、出生登録プロセスを子細に見直すよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、出生証明書を子どもの出生時に無償で発行するよう促すものである。 アイデンティティの保全 37.委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民の多数の子どもが家庭およびコミュニティから分離され、かつ、とくにその文化的および言語的アイデンティティの保全を十分に促進しない養護の対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、親が締約国で市民権を放棄しまたは喪失した場合に子どもの市民権も取り消されうることに留意するものである。 38.委員会は、締約国が、自己のアイデンティティ、名前、文化、言語および家族関係に対するアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの権利の全面的尊重を確保する目的で、国連自由権規約委員会および先住民族の人権および基本的自由の状況に関する特別報告者等からも勧告されたとおり、「彼らを家庭に」報告書の勧告の実施における進展を検討するよう、勧告する。条約第8条に関して、委員会はさらに、締約国が、いかなる子どもも、その親の地位に関わらずいかなる根拠によっても市民権を剥奪されないことを確保するための措置をとるよう、勧告するものである。 結社の自由 39.委員会は、一部の州および準州の地方立法において、グループで平和的に集まっている子どもおよび若者の警察による排除が認められていることに関する前回の懸念(CRC/C/15/Add.268、パラ73(e))をあらためて表明する。 40.委員会は、締約国が、若者が一部の場所に集まることに関連している可能性がある問題に、警察による対応および(または)犯罪化以外の措置によって対応するとともに、この点に関わる法律の見直しを検討するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ74(h))をあらためて繰り返す。 プライバシーの保護 41.委員会は、オーストラリア情報コミッショナー事務所が、子どもの個人情報の取扱いにおけるオーストラリア・プライバシー法の適用についての指針を明らかにしたことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国で、子どものプライバシー権を保護する包括的法律が定められていないことを懸念するものである。さらに、1998年・プライバシー法(連邦法)に基づき、プライバシー権侵害についての苦情を聴取する権限がオーストラリア情報コミッショナー事務所に与えられていることには留意しながらも、委員会は、子どもに特化し、かつ子どもにやさしい機構が設けられていないこと、および、利用可能な機構は政府機関および政府職員ならびに大規模な民間組織に対する苦情に限られていることを、懸念する。委員会はまた、ウェスタンオーストラリア州およびノーザンテリトリーの法律で「反社会的行動」を行なった者(未成年者を含む)の個人的詳細の公表が認められていることも含め、刑事手続に関与した子どものプライバシー保護が不十分であることも、懸念するものである。さらに委員会は、保健サービス、とくにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するサービスを受けている子どものプライバシー権が確保されていないことを懸念する。 42.委員会は、締約国が、プライバシー権を掲げた包括的な国内法の制定を検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、プライバシー侵害に対する苦情を申し立てる子どもを対象とする、子どもに特化し、かつ子どもにやさしい機構を設置するとともに、刑事手続に関与した子どもの保護を強化することも促すものである。とくに委員会は、締約国に対し、2010年・禁止行為命令法(ウェスタンオーストラリア州)のような、罪を犯した子どもの詳細の公表を認めた法律を廃止するよう、促す。 体罰 43.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ36)にも関わらず、家庭ならびに一部の学校および代替的養護現場における体罰が、いわゆる「合理的な懲戒」という名目のもと、締約国全域で合法とされているままであることを遺憾に思う。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ36)をあらためて繰り返す。 (a) すべての州および準州において、家庭、公立および私立の学校、拘禁センターならびに代替的養護現場における体罰を明示的に禁止するため、あらゆる適切な措置をとること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りつつ、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに子どもの権利の尊重を促進することを目的とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを、子どもの関与を得ながら強化しかつ拡大すること。 45.加えて委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 「合理的な懲戒」が子どもの暴行の告発に対する抗弁として用いられないことを確保すること。 (b) 子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(法執行官、医療専門家、教育専門家を含む)を対象として、子どもに対する暴力のあらゆる事案の速やかな発見、対応および通報のための研修が行なわれることを確保すること。 (c) ドメスティックバイオレンスと体罰との間に存在する可能性がある関係についての、独立の立場からの研究の実施を検討すること。 子どもおよび女性に対する暴力 46.委員会は、同国において女性および子どもに対する高い水準の暴力が蔓延していることに重大な懸念を覚えるとともに、ドメスティックバイオレンス、合法的な体罰、いじめおよび社会におけるその他の形態の暴力の共存が相互に関連しあっており、状況の段階的拡大および悪化が助長されている固有の危険性があることに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) アボリジナルの女性および子どもがとくに影響を受けていること。 (b) 障害のある女性および女子の不妊手術が行なわれ続けていること。 (c) 被害を受けた子どもが家族と再統合した場合の監視システムが存在しないこと等の理由により、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもの再統合プログラムが依然として不十分であること。 (d) 家族構成員が暴力の加害者である事案および(または)女性が被害者ではなく加害者である事案に注意が向けられておらず、かつこのような事案に関する具体的手続も設けられていないこと。 (e) 学校、インターネットその他の状況で行なわれる子どもへの暴力に対応するためにとられている既存の措置について、定期的かつ体系的な評価が行なわれていないこと。 47.条約第19条および第37条(a)に基づく締約国の義務、ならびに、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を強調しながら、委員会は、締約国に対し、暴力を減少させるための一般的枠組みとして連邦法を策定するとともに、州および準州段階における同様のかつ補完的な法律の制定を促進するよう、促す。委員会はまた、締約国が、「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画(2010~2022年)」に基づく規定を実際に運用するため、以下のような措置を含む具体的行動計画を採択することも、勧告するものである。 (a) アボリジナルの女性および子どもの間で高水準の暴力が振るわれることを助長する要因が十分に理解され、かつ国および州/準州の計画でこれらの要因への対応がとられることを確保すること。 (b) 障害の影響を受けており、かつ同意ができない女性および女子の不妊手術を防止するための厳格な指針を策定しかつ執行すること。 (c) ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもに対し、家族再統合と同時に効果的なフォローアップ支援を確保するための機構を設けること。 (d) いずれかの親または他の家族構成員が加害者である事案についての代替的対応を発展させること。 (e) 具体的諸計画のなかで、かつ「オーストラリアの子ども保護のための国家枠組み」の3か年行動計画の一環として、学校における体罰およびいじめ、インターネットを通じての暴力ならびにその他の場面における暴力を含む暴力対策の実施状況を監視すること。 48.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)に関して、委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 49.家族に提供される支援を強化しようとする締約国の継続的努力は歓迎しながらも、委員会は、養護を受けている子どもの人数が増え続けていること、および、保育の利用可能性および質が依然として不十分であることを懸念する。 50.委員会は、締約国が、すべての家族タイプおよびすべての子どもを対象として現在とられている措置の有効性を体系的に評価するよう、勧告する。委員会は、その際、締約国が、とくに民族、ジェンダー、社会経済的地位および地理的所在の別に細分化されたデータを収集し、かつ、養護措置の対象とされる子どもの割合の減少および(または)上昇と、これらの子どもの家族に提供されている措置との相関を明らかにするよう、勧告するものである。委員会はさらに、このような評価の知見が、現行の家族支援プログラムを強化するための適切な措置(良質な保育施設が利用できかつ過度な負担を求められないこと、家族援助給付が十分であること、および、最近承認された有給親休暇の取得資格が妥当であることを確保することも含む)を締約国が実施する際の指針としても散られるべきことを、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 51.委員会は、家庭外養護措置の対象とされる子どもの人数が相当に増加しており(2005年から2010年にかけて約51%増)、かつ、子どもの養護措置につながる基準および決定を記録した全国的データが存在しないことを、深く懸念する。委員会はまた、締約国の家庭外養護制度の不十分さおよびそこで生じている人権侵害について広く報告されていることも、深刻に懸念するものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 子どもの不適切な措置。 (b) 養育担当者のスクリーニング、研修、支援およびアセスメントが不十分であること。 (c) 養護の選択肢の不足していること。家庭を基盤とする養育担当者への支援が貧弱であること、および、養護によって悪化する(または引き起こされる)精神保健上の問題が存在すること。 (d) 健康、教育、ウェルビーイングおよび発達の面で、養護を受けている若者にとっての成果が一般住民層の場合よりも芳しくないこと。 (e) 養護を受けている子どもの虐待およびネグレクト。 (f) 18歳に達して養護を離れる子どもに対して提供される、準備のための支援が不十分であること。 (g) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもがしばしばコミュニティ外に措置されていること、および、これとの関係で、アボリジナルの養育担当者を増員する必要があること。 52.委員会は、締約国に対し、子どもの虐待およびネグレクトが大規模に行なわれている根本的原因を検討するためにあらゆる必要な努力を行なうとともに、子どもが養護措置の対象とされる理由についての全般的データを、このような子どもの人数を減少させる目的で当該理由への対応を行なうために明らかにするよう、促す。委員会はさらに、締約国が、とくに、家庭外養護措置の対象とされる子どもの人数を減少させる目的でもっとも脆弱な立場に置かれた家族を明確にし、かつ必要なときは家庭を基盤とする養護を優先させることにより、現行の家庭支援プログラムを強化するための措置をとるべきである旨の前回の勧告を、締約国に対してあらためて繰り返すものである。さらに委員会は、締約国に対し、代替的養護に措置されている子どもの状況を向上させるために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供するとともに、以下の措置をとるよう、求める。 (a) 条約第25条で求められているとおり措置の定期的審査を行なうとともに、その際、子どもの不当な取扱いの兆候にとくに注意を払うこと。 (b) 保育ワーカーおよび家庭外養護の養育担当者の選抜、研修および支援に関する基準を策定するとともに、これらの養育者の定期的評価を確保すること。 (c) それぞれの子どもが有する個別のニーズに対して効果的対応が行なえることを確保するため、ソーシャルワーカーを増員すること。 (d) 養護を受けている子どもに対し、保健ケアおよび教育への平等なアクセスを確保すること。 (e) ネグレクトおよび虐待の事案を通報し、かつ加害者に対して相応の制裁を与えるための、アクセスしやすく、効果的な、かつ子どもにやさしい機構を設置すること。 (f) 移行の計画に早い段階から関与できるようにし、かつ離脱後にも援助を利用できるようにすることにより、若者に対し、養護を離れる前に十分な準備の機会および支援を提供すること。 (g) 「先住民族の子どもの措置に関する原則」を全面的に実施するとともに、代替的養護を必要とする先住民族の子どものための適当な解決策を先住民の家族内で見出すため、先住民族のコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化するべきである旨の、委員会の前回の勧告を遵守すること。 養子縁組 53.委員会は、締約国の8か所の法域のうち、養子縁組前の養子(12歳以上)の同意を要件としている法域が3か所のみであることを懸念する。さらに委員会は、養子縁組手続が子どもの最善の利益を最高の考慮事項として進められていないことを懸念するものである。 54.委員会は、同意および養子縁組手続における法定代理人へのアクセスに関する規定を全面的に実施し、かつ養子縁組手続における決定が子どもの最善の利益を最高の考慮事項として行なわれることを確保するという、〔子どもの権利〕条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に基づく義務を遵守する目的で、締約国が、すべての州および準州が必要に応じて養子縁組法を改正することを確保するための措置をとるよう、勧告する。 虐待およびネグレクト 55.委員会は、子どもが双方の親と意味のある関係を持つ権利を、これが安全である場合には引き続き促進する一方で、家族法制度における子どもの安全を優先させることとした、国レベルの家族法の改正を歓迎する。しかしながら委員会は、ドメスティックバイオレンスの発生率が引き続き高いこと、および、子どもとともにまたは子どものために働く専門家(医師その他の医療従事者および教員を含む)による虐待およびネグレクトの可能性がある事案を認識しかつこれに対応するために締約国がとっている研修アプローチが依然として不十分であることに、留意するものである。 56.委員会は、脆弱性が高まった状況にある家族に支援を提供し、かつ、家庭における子どもの虐待およびネグレクトならびに暴力を防止しまたは緩和するため、締約国が早期介入アプローチ(出産前の機関における介入も含む)を優先させるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような早期介入アプローチを補完する形で、スティグマをともなわない模範的実務方針およびプログラム(虐待の被害を受けた子どもが、子どもの保護に関わる意思決定のさまざまな段階で、集中的な家族支援サービス等も通じ、家族と前向きに再統合できることを優先させかつ支援するもの)の全国的検証を行なうよう、勧告するものである。 E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 57.委員会は、締約国が実施した、生産性委員会による障害者支援制度のアセスメント(2011年7月)を評価する。しかしながら委員会は、同委員会の知見に留意しつつ、現行の障害者支援制度は「十分な資金を得ておらず、不公正であり、断片化されていて非効率であるとともに、そこでは障害のある人々にほとんど選択権がなく、適切な支援に確実にアクセスできるという保障もなく、また障害のある子どもは、決定的に重要な時宜を得た早期介入サービス、人生の移行期の支援、および、家族または養育者の危機および崩壊を防止するための十分な支援をしばしば受けられていない」という懸念を共有するものである。さらに、締約国が5年をかけて障害児教育基準(2005年)を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、障害のある子どもの教育到達度と障害のない子どものそれとの間に相当の格差があることを依然として懸念する。この報告書〔総括所見〕ですでに述べた非治療的不妊手術に関する懸念をさらに敷衍させる形で、委員会は、そのような不妊手術を禁止する法律が定められていないことが差別的であり、かつ障害のある人の権利に関する条約第23条(c)に違反していることを、深刻に懸念するものである。さらに委員会は、締約国の法律において、障害を理由として移民申請を却下することが認められていることを懸念する。 58.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある子どもを、そのニーズに差別的ではない方法で効果的に対応するために速やかにかつ正確に特定する目的で、障害に関する明確な法律上の定義(学習障害、認知障害および精神障害に関するものを含む)を定めること。 (b) 障害のある子どもの養育に関する親のための支援措置を強化するとともに、そのような養護の措置が検討されるときは、当該検討が子どもの最善の利益の原則を全面的に顧慮しながら行なわれることを確保すること。 (c) 障害のある人の権利に関する条約にしたがった社会モデルアプローチを採用し、障害のある子どもが平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを阻害する態度面および環境面の障壁に対応するとともに、障害のある子どもとともにまたはこのような子どものために働くすべての専門家に対してしかるべき研修を行なうこと。 (d) とくに地方段階で必要な専門的資源(すなわち障害の専門家)および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうとともに、コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親支援グループを含む)を促進しかつ拡大すること。 (e) 障害のある子どもが教育に対する権利を行使できることを確保し、かつ、障害のある子どもを可能なかぎり最大限に普通教育制度に包摂する体制を整える(そのための手段には、資源に関わる現在の不備を具体的に明らかにするための障害児教育行動計画の策定を検討することも含む)とともに、障害のある子どもの教育上のニーズに対応するための措置の実施に関する、具体的日程をともなう明確な目標を定めること。 (f) 障害の有無に関わらず、すべての子どもの非治療的不妊手術を禁じる差別禁止法を制定するとともに、厳格に治療上の理由に基づく不妊手術が行なわれるときは、これが子ども(障害のある子どもを含む)の自由なかつ十分な情報に基づく同意の対象とされることを確保すること。 (g) 移民法および庇護法を含む締約国のすべての法律において、障害のある子どもが差別されず、かつ障害のある人の権利に関する条約第23条に基づく締約国の法的義務が遵守されることを確保すること。 健康および保健サービス 59.委員会は、締約国における子どもの健康水準が全般的に満足のいくものであることを評価する。しかしながら委員会は、農村部および遠隔地に住んでいる子ども、家庭外養護を受けている子どもならびに障害のある子どもの健康に関わる格差、ならびに、とくにアボリジナルの子どもと非アボリジナルの子どもとの間にある健康状態の相違について、懸念を覚えるものである。 60.委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた集団に属する子ども(とりわけ先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子ども)にとくに注意を払いながら、すべての子どもが保健サービスに対する同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ48)を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国に対し、保健面で現在存在する欠陥の重要な根本的原因である社会経済的不利益に対処するよう、促すものである。 61.さらに委員会は、締約国が、すべての保健専門家を対象とした、子どもの権利に関する義務的研修の実施を支援するべきであるという、健康への権利に関する特別報告者の勧告を検討するよう、勧告する。 母乳育児 62.委員会は、子どもが生後6か月になるまで完全母乳育児を続ける母親がおよそ15%にすぎないことを懸念する。2007-2008年度予算で母乳育児の教育および支援に特別資金を配分した締約国の取り組みは歓迎しながらも、委員会は、締約国で「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が効果的に執行されていないことを依然として懸念するものである。 63.委員会は、働く母親による産後6か月の完全母乳育児を支援するような改正を検討する目的で、締約国が、新たに定められた有給親休暇制度ならびに他の関連の立法上および行政上の措置を見直すよう、勧告する。委員会はまた、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」およびその後の関連決議を実施するための監視機構を設置することも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、「国家母乳育児戦略」に十分な資金を提供し、かつ、「国家母乳育児戦略」の実施において利害関係者としての産業代表の参加を得る慣行を取りやめることにより、母乳育児の促進、保護および支援に優先的に取り組むよう、勧告する。締約国はまた、「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブをさらに促進し、かつ看護師研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。 精神保健 64.委員会は、精神保健に対する締約国の資金拠出水準が依然として他の先進諸国よりも相当に低いことから、精神保健サービスを求める子どもおよび若者が、そのようなサービスへのアクセスの制限およびサービスを受ける際の相当の遅延にしばしば直面していることを、懸念する。この文脈において、委員会は、オーストラリア保健福祉研究所が2010年に刊行した保健研究で述べられている、劣悪な精神保健は子どもおよび若者にとっての健康問題の筆頭であり、かつ0~14歳の子ども(23%)および15~24歳の若者(50%)の疾病負荷を助長する最大の要因である旨の懸念を、共有するものである。さらに委員会は、締約国全域で、とりわけアボリジナルのコミュニティで若者の自殺率が高いことを懸念する。委員会は、締約国のウェスタンオーストラリア州が、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)の治療のために現在用いられている薬の有効性を調査する研究を実施したことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、現行の診断手続では、これらの障害に関連する潜在的な精神保健上の問題への対応が十分に行なわれない可能性があり、その結果、ADHDおよびADDと診断される子どもの相当な増加および(または)このように診断された子どもに対する精神刺激薬の誤処方が生じていること(これは深刻な懸念の対象である)を、依然として懸念するものである。 65.子どもおよび若者にやさしい精神保健上の支援およびサービスへのアクセスが重要であることを強調し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび若者の精神保健上の問題が高い割合で発生していることの直接間接の原因に対応するための措置をとることにより、オーストラリア保健福祉研究所の保健研究をフォローアップすること。その際、とりわけ有害物質濫用、暴力および代替的養護現場におけるケアの質の不十分さと関係する自殺およびその他の障害に、とくに焦点を当てること。 (b) 早期介入サービスの利用可能性および質を向上させること、教員、カウンセラー、保健専門家および子どもと働くその他の専門家の研修および職能開発を進めること、ならびに、親に対して支援を提供することのために、具体的資源を配分すること。 (c) 精神保健上の問題のリスクがとくに高い子どもおよびその家族を対象とする専門的保健サービスおよび重点対象戦略を発展させるとともに、このようなサービスを必要とするすべての者に対し、その年齢、性別、社会経済的背景、地理的出身および民族的出身等を正当に考慮しながらアクセス可能性を確保すること。 (d) 上記の勧告の計画および実施にあたり、これらの措置の策定について子どもおよび若者と協議すること。同時に、家族およびコミュニティの支援の向上を確保し、かつ関連のスティグマを削減する目的で、精神保健に関する意識啓発を進めること。 (e) 子どもに対する精神刺激薬の処方を注意深く監視するとともに、ADHDおよびADDと診断された子どもならびにその親および教員に対し、より幅広い心理的、教育的および社会的措置ならびに治療を提供するための取り組みを進めること。また、子どもが行なう可能性のある精神刺激薬の濫用を監視する目的で、物質のタイプおよび年齢にしたがって細分化されたデータの収集および分析を行なうこと。 HIV/AIDSならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルス 66.委員会は、締約国の若者の間で性感染症(STI)感染率が顕著に増加していること、および、セーフセックスを実行する若者の割合が低いと報告されており、かつHIV/AIDS以外のSTIに関する意識水準が低いことを、深く懸念する。委員会はさらに、アボリジナルの人々および社会経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域の人々のSTI感染率がはるかに高いことに、留意するものである。 67.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を強調しながら、委員会は、締約国が、青少年に対し、とくにHIVおよびこれに加えて他のSTIとの関連で性およびリプロダクティブヘルスに関する教育を提供するための努力を強化するとともに、とくにアボリジナルおよび社会経済的に不利な立場に置かれたコミュニティの間で、避妊手段、カウンセリングおよび秘密が守られる保健サービスのアクセス可能性を向上させるよう、勧告する。 生活水準 68.資格のある親(臨時雇用、パートタイム就労および季節就労の女性を含む)に対して18週間の有給親休暇を認める制度が最近承認されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、この制度が、多くの世帯にとって十分な所得ではない可能性がある全国最低賃金の水準に固定されており、かつ、完全母乳育児のために必要な6か月よりも短いことに、懸念とともに留意するものである。締約国において貧困線下で生活している人々の割合が、とくにアボリジナル住民、移民および庇護希望者ならびに障害のある人々の間では約12%であることにかんがみ、委員会は、さまざまな態様の補助金、税の控除および還付ならびに低所得家庭を対象とするその他の支援を含む一連の措置がとられていることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、これらの措置が、援助を必要としているすべての家庭にとって公平に利用可能なものとなっておらず、かつ、居住場所その他の差別につながる要因による区別なしに提供されているわけでもないことを、依然として懸念するものである。 69.委員会は、親(とくに母親)が、新生児のケアおよび母乳育児を行ないながらなお十分な生活費を得られるようにすることを確保するために有給親計画制度を注意深く監視するとともに、18週の有給期間経過後、乳幼児の良質なケアを維持し、かつ少なくとも生後6か月まで母乳育児を継続できるようにするための適切な便益を利用可能とするよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、貧困の決定要因に関する理解の向上を可能とするホリスティックな反貧困戦略を策定し、当該戦略を社会的および地理的に位置づけ、かつ、ジェンダー、年齢、出身、居住場所、教育水準およびこれに類する他の要因にしたがった具体的措置をとるべきである旨の、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の勧告(E/C.12/AUS/CO/4、パラ24)にも賛成するものである。 70.アボリジナル系オーストラリア人を対象とする住宅改修資金の追加、および、アボリジナル系オーストラリア人の社会経済的条件の向上を目的とする「格差縮小」戦略は歓迎しながらも、委員会は、締約国において子どもおよび若者のホームレスが多数発生しており、国が提供する社会宿泊施設も定員面で厳しい制約に直面していることを、深く懸念する。さらに委員会は、締約国が、さまざまな集団の特定のニーズを反映する、文化的に適切な住宅サービスを提供できていないことを懸念するものである。 71.委員会は、締約国が、子どもおよび若者のホームレスの問題に対応するための取り組みの再検討を迅速に行なうとともに、この問題に対応するための枠組みを、子どもおよび若者の具体的経験を正当に考慮しながら向上させかつさらに発展させるための指針として、この再検討の知見を活用するよう、勧告する。さらに、その際、締約国が、アボリジナルの子ども、新規来住コミュニティの子ども、養護から離脱しようとしている子どもならびに地方コミュニティおよび遠隔地の子どもを対象とする具体的戦略を策定することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、ホームレスとなるおそれがある子どもおよび若者のニーズに対する反応性を強化するため、教育、所得支援、保健制度、障害者サービス制度および雇用制度を含む社会サービスならびにこれらのサービス間の調整を向上させるよう、勧告する。 親が収監されている子ども 72.締約国が、裁判所に対し、言い渡す刑が有罪判決を受けた者の家族に及ぼす「蓋然的効果」を考慮するよう求める法律を有していることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、アボリジナル系オーストラリア人の収監率が人口比に照らして著しく過剰であること、ならびに、とりわけ深刻なこととしてアボリジナルの女性が過剰に収監されている結果、その子どもが、文化的に適切ではない代替的養護先に一時的にかつ不安定な形で措置される事態がしばしば生じていること、および、家族再統合率が低いことに、懸念とともに留意する。 73.「親が収監されている子どもの権利」に関する一般的討議(2011年)の際に行なわれた委員会の勧告を参照し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 危険な状況にある家族に支援サービスを提供することによって収監を防止し、かつ、子どもの収監および家族構成員からの分離を回避する目的でダイバージョンその他の代替的措置を活用するため、あらゆる司法上および行政上の体制を見直すこと。 (b) 犯罪の根本的原因に対処し、かつ危険な状況にある家族に対して防止サービスおよび早期介入サービスを提供することを促進する、重点対象プログラムの実施に対して資源および支援を提供すること。 (c) 子どもの最善の利益にかなうときは、子どもが収監されている期間全体を通じ、親子間の関係の維持に対して資源および支援を提供すること。 (d) 逮捕時にその場にいたかどうかに関わらず情報を知らされる子どもの権利を尊重しかつ充足するとともに、子どもからの情報または情報の共有の申請が、子どもの最善の利益を考慮し、かつ関係者にいかなる不利な結果ももたらさないようにしつつ、子どもにやさしいやり方で対応されることを確保する義務を履行すること。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 74.委員会は、締約国の「国家先住民族教育行動計画(2012~2014年)」および「先住民族の乳幼児期発達に関する国家的パートナーシップ協定」を歓迎する。しかしながら委員会は、先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもが教育へのアクセスに関して深刻な困難に直面しており、アボリジナルの生徒の識字水準、計算能力水準その他の達成水準がアボリジナル以外の生徒よりも相当に低いままであることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.268、パラ59)を、あらためて表明する。委員会はさらに、このような状況が、教育制度において、英語話者ではない子どものニーズに対応する十分な措置がとられていないことによって悪化していることを懸念するものである。そのため、このような子どもが不就学、出席不良および中退により陥りやすく、かつ中等段階教育を修了する可能性も低くなる状況が生じている。 75.委員会は、個々のアボリジナル教育戦略が、従前の政策の成功を基礎とし、かつアボリジナル・コミュニティ、教育部門、コミュニティ団体および専門家集団(ソーシャルワーカー、研究者、ヘルスワーカーおよび警察など)の連携に基づく長期的アプローチにのっとって進められることを確保するため、締約国が、「格差縮小」政策枠組みのなかで、州および準州の政府の効果的な調整および監督を行なうよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国および州の双方の段階で二言語教育モデルを保護しかつ促進するための、十分な人的資源、技術的資源および財源を確保するよう勧告するものである。 乳幼児期のケアおよび教育 76.委員会は、締約国の子どもの教育・ケア品質管理庁が乳幼児期の教育およびケアに関する「全国品質枠組み」の実施および監視を行なっていること歓迎する。しかしながら委員会は、4歳未満の子どもを対象とする乳幼児期のケアおよび教育が引き続き不十分であることに留意するものである。さらに委員会は、締約国における乳幼児期のケアおよび教育の大部分が民間の利益追求機関によって提供されており、その結果、ほとんどの家族にとってそのサービスが手の届かないものとなっていることを懸念する。委員会はさらに、このようなサービスを提供する主体がかなりの割合で民間機関であることから、「乳幼児期のケアおよび教育に関する全国品質枠組み」の適用および遵守が限定されていることを懸念するものである。 77.委員会は、締約国が、以下の措置をとること等により、乳幼児期のケアおよび教育の質および範囲をさらに向上させるよう勧告するものである。 (a) このようなケアが、子どもの全般的発達を包摂するホリスティックなやり方で提供されることを確保し、かつ親の能力を強化することも目的としながら、0~3歳の子どもに対するこのようなケアの提供に優先的に取り組むこと。 (b) 国営施設か民間施設のいずれによるものであるかに関わらず、無償のまたは手が届く範囲の乳幼児期ケアの提供を考慮することにより、乳幼児期のケアおよび教育の、すべての子どもにとっての利用可能性を高めること。 (c) 乳幼児期のケアおよび教育を提供するすべての主体が「乳幼児期のケアおよび教育に関する全国品質枠組み」にしたがうことを確保すること。 学校のいじめ 78.「全国学校安全枠組み」および「いじめ。絶対だめ!」プログラムなど、学校におけるいじめと闘うために締約国がとっている措置は歓迎しながらも、委員会は、いじめが引き続き広範に行なわれており、現行の枠組みではあらゆる形態のいじめに全面的に対応するうえで不十分であることが明らかになっていることを、依然として懸念する。 79.一般的意見13号を参照しつつ、委員会は、締約国が、とくに、すべての学校において教職員を対象とする教育的および社会教育学的手法を導入しかつ強化すること、親および子どもの関与を得ること、学校計画の適切な監視体制を確立すること、ならびに、いじめの事案を調査しかつこれに対応する能力を強化することによって、学校におけるいじめを防止しかつこれに対応するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 80.委員会は、入管収容施設に収容された子どもおよび脆弱な立場に置かれた家族を代替的形態の収容(コミュニティを基盤とする収容体制および入管通過収容を含む)に移行させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 締約国の移民法が、庇護希望者もしくは難民である子どもまたは非正規移住の状況にある子どもについて、期間制限がなく、かつ司法審査の対象とされない義務的収容を定めていること。 (b) 庇護手続および難民認定手続において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されておらず、かつ、考慮される場合にも、最善の利益の判断について十分な訓練を受けた専門家による対応が一貫してとられているわけではないこと。 (c) 保護者のいない未成年者の法的後見が、入管収容および難民認定ならびに査証申請についても責任を負っている移民・市民権大臣に委ねられる場合に、利益相反が生じるおそれが大きいこと。 (d) 2011年8月の高等法院決定(原告M70/2011 対 移民・市民権大臣事件)において、締約国がマレーシアとの「難民交換」を試みたことは、庇護希望者が保護の必要性評価のための効果的手続にアクセスできるようにし、庇護希望者に対して難民認定が行なわれるまでの保護を提供し、かつ、難民資格を認められた者について出身国への自主的帰還または第三国定住が行なわれるまでの保護を提供する国際法および国内法〔上の義務〕に違反すると判示されたにも関わらず、締約国が引き続き、庇護申請および難民申請をいわゆる「領域外処理」の対象とする政策を追求していること。 81.委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準に全面的に一致させるよう、促す。締約国は、その際、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮するよう、促されるところである。さらに委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ64)をあらためて繰り返す。これに加え、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 庇護希望者もしくは難民である子どもまたは非正規移住の状況にある子どもを収容する政策を再検討するとともに、入管収容が行なわれるときは、当該収容が期間制限および司法審査の対象とされることを確保すること。 (b) 移民および庇護に関する法律および手続において、すべての出入国管理手続および庇護手続で子どもの最善の利益が第一次的考慮事項とされることを確保するとともに、最善の利益の判断が、最善の利益認定手続について十分な訓練を受けた専門家によって一貫して行なわれることを確保すること。 (c) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見/支援制度を速やかに設置すること。 (d) 原告M70/2011 対 移民・市民権大臣事件における高等法院判決にしたがうとともに、とくに、庇護希望者に対する十分な法的保護を確保し、かつ、庇護申請のいわゆる「領域外処理」および「難民交換」の政策の試みを確定的に放棄すること。また、最善の利益の判断が行なわれることなくアフガニスタンに送還された子どもの苦境に関する報告書の評価を行なうこと。 さらに委員会は、締約国が、国連難民高等弁務官「国際的保護に関するガイドライン第8号:1951年条約第1条A(2)および第1条Fに基づく子どもの庇護申請」の実施および難民の地位に関する1967年議定書の批准を検討するよう、勧告する。 少年司法の運営 82.委員会は、以前の勧告にも関わらず、締約国の少年司法制度が国際基準に一致するためにはいまなお相当の改革が必要であることを遺憾に思う。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国によって、刑事責任に関する最低年齢を引き上げるための措置がなんらとられていないこと(CRC/C/15/Add.268、パラ74(a))。 (b) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者が、司法手続によらない適切な代替的措置を用いて対応されることを確保するための措置がなんらとられていないこと(CRC/C/15/Add.268、パラ74(d))。 (c) 18歳未満の者を対象とする義務的量刑法(いわゆる「三振アウト法」)が、ウェスタンオーストラリア州刑法にいまなお存在すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(f))。 (d) 締約国の州であるクイーンズランド州の刑事司法制度において、法律に抵触した17歳の子どもが全員が引き続き成人として審理されていること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(g))。 83.さらに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 17歳の者の大多数はより幅広い受刑者集団から分離されて収容されているとはいえ、成人矯正センターに収容される子どもの事例がいまなお存在すること。 (b) 締約国のカンバイ青年拘禁センターおよびビンベリ拘禁センターにおいて、子どもの被拘禁者の虐待が行なわれたという報告があること。 84.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。さらに委員会は、以下の措置をとるよう求めた前回の勧告をあらためて繰り返すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げることを検討すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(a))。 (b) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者に、司法手続によらずに対応すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(d))。 (c) ウェスタンオーストラリア州の刑法体系における義務的量刑を廃止するための措置をとること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(f))。また、ビクトリア州で同様の法律を制定することの断念を検討すること。 (d) クイーンズランド州において、17歳の子どもを成人司法制度の対象から除外すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(g))。 (e) 罪を犯したすべての子どもが独自の矯正センターに収容されることを確保するため、必要な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (f) 青年拘禁センターにおける虐待の事案を調査しかつこれに対応するための、アクセスしやすく効果的な機構を速やかに設置すること。 H.国際人権文書の批准 85.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書およびすべての中核的人権文書(強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、および、家事労働者に関する国際労働機関第189号条約を含む)に加入するよう、奨励する。 I.フォローアップおよび普及 86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会、広域行政機関および適用可能なときは地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 87.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 88.委員会は、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告の実施およびフォローアップに関する具体的情報を記載した第5回・第6回統合定期報告書を、2018年1月15日までに提出するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/322.html
総括所見:中華民国/台湾(第1回独自審査、2017年) 台湾・子どもの権利条約実施法 CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) 原文:英語 日本語訳:平野裕二(翻訳にあたっては台湾政府による中文訳も適宜参照した)〔日本語訳PDF〕 子どもの権利条約の実施についての中華民国/台湾の第1回報告書に関する総括所見 I.はじめに 1.2014年6月、中華民国(台湾)の立法院は、子どもの権利条約実施法(「実施法」)を可決した。同法は2014年11月20日に施行され、CRCの国内法上の調和化の枠組みを提供している。2016年4月22日、台湾の立法院はCRCの採択を支持する法案を可決し、これを受けて総統は2016年5月にCRCへの加入書に署名した。 2.行政院は、実施法にしたがって2016年11月に第1回国家報告書を発表し、その英語版は2017年3月に利用可能とされた。第1回国家報告書の審査を行なうため、台湾政府は、子どもの権利に関する国際的な独立専門家5名を招聘して独立審査委員会(「審査委員会」)を設置した。5名の専門家とは、ヤープ・ドゥック(委員長・オランダ)、ジュディス・カープ(イスラエル)、ナイジェル・カントウェル(英国/スイス)、ローラ・ランディ(北アイルランド)およびジョン・トービン(オーストラリア)である。 3.審査委員会は、2017年3月に審査委員会に提出された台湾の第1回報告書を検討した。審査委員会は、子ども団体および子どもたちのグループを含む市民社会組織から報告書を受領した。審査委員会は、2017年6月に台湾に対する事前質問事項を提出し、2017年9月に詳細な文書回答を受領した。審査委員会はまた、事前質問事項および事前質問事項に対する国の回答を受けて市民社会から提出された多数の追加報告書も受領した。 4.審査の一環として、2017年11月20日、審査委員会は子どもたちおよび市民社会のメンバーと非公開の会合を持った。審査委員会は、2017年11月21日および22日、政府代表団と公の対話を行なった。審査委員会は、2017年11月24日にこの総括所見を採択して発表した。 5.審査委員会は、CRCを実施するために台湾政府が行なっている真剣かつ誠実な努力を認知する。審査委員会は、関連するすべての省庁および政府機関の代表が出席した審査における政府との建設的対話に、大いなる謝意を表明するものである。市民社会およびとくに子どもの積極的参加も、審査プロセスにとって必要不可欠であった。 6.審査委員会は、審査委員会に実質的支援および後方支援を提供してくれたことについて、衛生福利部(およびとくにそのCRCチーム)に謝意を表明する。 II.国際人権条約の承認 7.審査委員会は、CRCのみならず次の国際人権条約も採択する旨の台湾の決定を歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約 (b) 市民的および政治的権利に関する国際規約 (c) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 (d) 障害のある人の権利に関する条約 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 立法 8.審査委員会は、CRCが留保なしに接受されたことおよびCRCの実施のための特別法が採択されたことに、評価の意とともに留意する。審査委員会は、政府が、国内法を条約の規定と調和させることを目的として国内法の見直しを継続するなかで、子どもの権利影響評価のプロセスを実行するよう勧告する。 9.審査委員会は、実施法を改正し、国内法の規定との抵触がある場合にはCRCの規定が優先されることを明示するよう勧告する。 10.審査委員会は、政府に対し、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関するCRCの両選択議定書を採択するよう奨励する。 包括的な国家的行動計画 11.審査委員会は、政府が、広域行政圏および地方の当局、市民社会組織、関連の専門家、子どもおよび親の関与を得ながら、CRCの実施のための国家的かつ包括的な行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。 調整 12.審査委員会は、子どもおよび若者の権利と福祉に関する政策の調整および促進を任務とする「子どもおよび若者の福祉および権利促進チーム」が設置されたことおよび行政院の「子どもおよび若者の福祉および権利の促進のための委員会」が設置されたことを歓迎する。審査委員会は、政府が、これらのチームおよびグループに対し、その任務を遂行するための十分な権限が与えられ、かつ十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう勧告する。 13.審査委員会は、立法院に子ども委員会を設置するよう勧告する。同委員会は、子どもおよびその人権に影響を与える立法提案の作成にあたり、子ども、関連の職能団体および市民社会と協議するべきである。 独立の監視 14.審査委員会は、台湾がまだ独立の国内人権機関(「NHRI」)を設置していないことに懸念とともに留意する。 15.審査委員会は、CRC委員会が一般的意見2号(2002年)で行なっている勧告にしたがい、子どもの権利を監視するための専門部署を有するNHRIまたは子どもオンブズマン事務所もしくは子どもの権利コミッショナーのいずれかを、遅滞なく設置するよう勧告する。このような機関はパリ原則を遵守するものであるべきであり、かつ、官民の部門に関連して子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情申立てを、子どもに配慮したやり方で、申立人のプライバシーおよび保護を確保しながら受理し、調査しかつ処理することができるべきである。 苦情申立て手続 16.審査委員会は、教育、社会福祉、保健および少年司法の現場で子どもに提供されている苦情申立ての機会についての情報に、評価の意とともに留意する。 17.審査委員会は、苦情申立ての機会および手続に関する情報をすべての子どもが受け取るべきであることを勧告する。政府は、これらの手続が子どもにやさしいものであること、子どもに対して十分な支援(適切なときは親または権限のあるNGOによる支援を含む)が提供されること、および、子どものプライバシーが保護されることを確保するべきである。さらに審査委員会は、政府が、苦情を申し立てた子どもおよび子どもに代わって苦情を申し立てた者を報復、脅迫または他の悪影響から保護するために必要な措置をとるよう勧告する。苦情申立て手続は独立の再審査に服さなければならない。 資源配分 18.審査委員会は、第1次子ども予算を提出したことについて政府を称賛する。審査委員会は、公共予算編成に関する子どもの権利委員会の一般的意見19号(2016年)にのっとり、政府が、公の対話(子どもたちとの対話を含む)を通じて透明なかつ参加型の予算編成を確保するとともに、資源の配分および使用の十分性、有効性および公平性を監視しかつ評価するための機構(地方当局レベルにおけるものを含む)を設置するよう勧告する。 データ収集 19.審査委員会は、家庭環境および代替的養護、保健および福祉、教育ならびに特別な保護措置などの分野における子どもの権利の実施に関わる統計情報の提供を評価する。 20.実施に関する一般的措置についての子どもの権利委員会の一般的意見5号に照らし、審査委員会は、政府が、データ収集システムをさらに改善するとともに、中央データ収集部署の設置を検討するよう勧告する。収集される情報は、条約のすべての分野を網羅し、かつ、ジェンダー、年齢、都市部/農村部の別ならびに先住民族的背景および民族的背景ごとに、ならびに、妥当かつ適切な場合には障害、国籍および性的指向ごとに、細分化されるべきである。 意識啓発および研修 21.審査委員会は、子どもの権利に関してさまざまな省庁が中央レベルで提供している研修および地方レベルで提供されている研修に留意する。しかしながら審査委員会は、研修の質および有効性に関する情報がないこと、および、焦点が主として公務員に当てられているように思われることを懸念するものである。 22.審査委員会は、政府が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療専門家、施設養護および里親養護の仕事をしている専門家ならびに子どものための特別な保護措置の分野で働いている専門家、警察、裁判官および検察官ならびに少年司法の分野で働いているその他の者など)を対象として、子どもの権利に関する研修を確保するよう勧告する。すべての研修において、CRCの一般原則(差別の禁止に対する権利、第1次的考慮事項としての子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利ならびに意見を聴かれる権利)および発達しつつある能力の原則に、特別な注意が向けられるべきである。すべての研修を継続的な監視および評価の対象とすることが求められる。親に対しても、学校、地方政府、福祉・保健サービスおよびメディアを通じて子どもの権利に関する情報が提供されるべきである。 市民社会および企業セクターとの協力 23.審査委員会は、政府と市民社会組織との肯定的関係および開かれた対話を称賛する。審査委員会は、台湾における子どもの権利の実現をさらに進めていく手段として、このような協力を奨励する。 24.企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についてのCRC委員会の一般的意見16号(2013年)を参照しつつ、審査委員会は、政府が、とくに子どもの就労および労働条件、メディア(ソーシャルメディアおよびインターネットを含む)ならびに環境保護の分野で企業セクターが子どもの権利を遵守することを確保するための規則を定めかつ実施するよう、勧告する。 B.子どもの定義 25.審査委員会は、台湾における成人年齢が20歳であることに留意する。審査委員会の任務は18歳未満の者に限定されている。しかしながら審査委員会は、台湾におけるCRCの実施が、18歳または19歳の若者に対する権利の適用可能性に関する不整合および混乱を生み出す可能性があることを強調したいと考えるものである。 26.審査委員会は、政府が、国際条約機関の勧告にしたがって最低婚姻年齢を男女ともに18歳と定めることにより、現行の最低婚姻年齢の調和を図る法律の制定を公約としていることに、評価の意とともに留意する。 C.一般原則 差別の禁止(第2条) 27.審査委員会は、とくに被害を受けやすい立場に置かれた子ども(先住民族の子ども、LGBTIの子ども、障害のある子どもおよび無国籍の子どもなど)に対する差別を防止し、かつこれらの子どもを差別から保護するためのさまざまな法的規定に関して提供された情報に、評価の意とともに留意する。しかしながら審査委員会は、これらの規定を確保し、かつ性別平等教育法の実施への抵抗に対処するための政策およびプログラムの有効性に関する情報がないことを懸念するものである。 28.審査委員会は、国が、子どもたち、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家および市民社会と継続的に協議しながら、引き続き、とくに被害を受けやすい立場に置かれた子どもの差別を受けない権利に関する意識啓発キャンペーンの促進および支援を図り、かつ、子どもの差別を禁じたさまざまな法的規定の全面的実施を確保するために必要な措置をとるよう勧告する。 第1次的考慮事項としての子どもの最善の利益(第3条第1項) 29.審査委員会は、子どもの保護に関連する立法および民法により、裁判所その他の公的機関による決定は子どもの最善の利益に基づいて行なわれなければならないとされていることに留意する。審査委員会は、政府が以下のことを確保するよう勧告するものである。 (a) この権利が、子どもの最善の利益に関する〔CRC〕委員会の一般的意見14号と一致する形で解釈されること。 (b) この権利が、立法上、行政上および司法上のあらゆる手続および決定ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすあらゆる政策、プログラムおよびプロジェクト(出入国管理および少年司法に関する法令を含む)において一貫したやり方で統合されかつ解釈されること。 生命、生存および発達に対する権利(第6条) 30.審査委員会は、子どもの自殺率および自殺未遂率の高さを国が認知していることに留意するとともに、国が、子どもおよび若者の自殺の原因を評価しかつこれに対処し、かつきわめて高い水準にある子どもの自殺を減らすために現在行なっている努力を拡大するよう勧告する。 意見を聴かれる子どもの権利(第12条) 31.審査委員会は、学校および地方政府の委員会の委員に子どもを含めるためにとられてきた措置を歓迎するとともに、とくに国民教育課程綱要審議会に子どもが含まれていることを称賛する。しかしながら審査委員会は、社会文化的態度により、子どもが家庭、学校およびより広いコミュニティにおいて自由かつ安全に意見を表明することが制約され続けていることに、懸念を表明するものである。 32.審査委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関するCRC委員会の一般的意見12号に対して政府の注意を喚起するとともに、政府が条約第12条にしたがってこの権利の実施を強化するための措置をとるよう勧告する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもたちにとってもっとも重要な問題およびこれらの問題に関する子どもたちの意見をあらゆる場面でもっともよい形で聴ける可能性がある方法を特定するための調査を実施すること。 (b) 家庭、学校およびコミュニティにおいてすべての子どもが意味のある形でかつエンパワーされながら参加することを促進するため、親、教員、ソーシャルワーカー、裁判官および子どもとともにまたは子どものために働くその他の者を対象とする研修プログラムおよび意識啓発活動を実施すること。 (c) 立法および政策立案の過程で子どもたちの意見が聴かれることを可能にする機構を設置することにより、国レベルでの子ども参加を強化すること。 (d) 子どもが意見を聴かれる自己の権利について情報を提供され、かつその権利を意味のある形で行使するための支援を受けられることを確保する等の手段により、関連の行政手続および法的手続において意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 D.市民的権利および自由 国籍を取得する権利(第7条第1項) 33.審査委員会は、養子とされていない無国籍の子どものうち中華民国(台湾)の国籍を取得できる子どもを増やすために政府が行なっている努力を歓迎する。審査委員会はとくに、子どもの母親が移住者であり、かつ父親が知れない場合に、母親が子どもを連れずに帰国したときに生ずる子どもの資格および地位関連の問題についての報告に留意するものである。審査委員会は、これらの子どもが無国籍のままにならず、または台湾の他の子どもが受ける資格を有しているいかなるサービスまたは給付も奪われないことを確保するため、政府があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 表現の自由に対する権利(第13条) 34.審査委員会は、大人が否定的態度を有していることおよび子どもが処罰への恐怖心を抱いているために、表現の自由に対する権利の行使が、とくに学校において実際には制限される場合があるという報告について懸念を覚える。審査委員会は、政府が、子どもがあらゆる場面で表現の自由に対する権利を享受できることを確保するとともに、たとえば学校内外における生徒新聞または生徒通信その他の刊行物の制作および配布を促進しかつ支援するよう勧告する。 結社の自由および平和的集会の自由に対する権利(第15条) 35.審査委員会は、20歳未満の子どもおよび若者が自分たち自身の結社を設立できず、かつ親または保護者の許可がなければ既存の結社の構成員にもなれないことに、懸念とともに留意する。このような立場は結社の自由に対する子どもの権利と両立せず、かつ子どもの発達しつつある能力を尊重していない。 36.審査委員会は、子どもが、その年齢、成熟度および発達しつつある能力にしたがって、いかなる差別もなく、結社の自由および平和的集会に対する権利(平和的抗議に対する権利を含む)を全面的に享受できることを確保するため、政府が必要な立法上その他の措置をとるよう勧告する。 プライバシーに対する権利(第16条) 37.審査委員会は、教員が、法律に定められた理由以外の理由で生徒の私物の検査を行ない、かつ秘密とされるべき子どもの情報を開示してきたという報告に、懸念とともに留意する。審査委員会は、プライバシーに対する権利へのこのような不法かつ恣意的な干渉から子どもを保護するため、政府があらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。教員に対しては、関連の規則に関する情報を提供し、かつこれらの規則に違反した場合には懲戒手続の対象とすることが求められる。 拷問または他の残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを受けない権利(第37条(a) 38.審査委員会はまた、矯正施設その他の入所施設における独居拘禁および抑制手段の使用についても懸念を表明する。審査委員会は、政府が、独居拘禁の使用および独居拘禁が行なわれる条件を規律する規則が条約第37条および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(「ハバナ規則」、パラ67)と全面的に一致することを確保するとともに、これらの規則が尊重されることを保証するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに審査委員会は、政府が、抑制手段の使用を規律する規則がハバナ規則に掲げられた基準(パラ63および64)に一致することを確保するため、当該規則の見直しを行なうよう勧告するものである。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1項および第2項、第20条、第21条、第25条ならびに第27条第4項) 家族支援 39.子どもの養育責任に関して金銭的その他の形で親を支援するためにさまざまな措置が用意されていることを歓迎しながらも、審査委員会は、ひとり親世帯(離婚後の世帯を含む)および低所得かつハイリスクの一部世帯が十分な支援にアクセスできていない可能性がある旨の報告に留意する。審査委員会は、政府に対し、このようなすべての世帯を包摂する目的で適切かつ必要な支援へのアクセスを拡大するため、あらゆる実現可能な措置をとるよう促す。 不法移送および不返還(第11条) 40.審査委員会は、子どもの不法移送の通報が義務的なものとされておらず、かつ通報件数は不法移送の被害者である子どもの人数の一部しか反映していない可能性があるという情報に留意する。さらに、法律上の規定はこのような移送を防止するのに不十分であるように思われる。 41.審査委員会は、台湾が、子どもの不法移送および(不)返還の事案に対応するための拘束力のある文書として、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)を採択するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子どもおよび代替的養護(第9条第1項および第20条) 42.審査委員会は、入所型養護の使用およびその運用のあり方について懸念を覚える。審査委員会は、親/家族から分離されているまたは分離されなければならない子どもの入所型養護施設への措置を削減するための措置を政府がとってきたことに留意する。審査委員会はまた、入所型養護を受けている子どもの人数が顕著に減少しつつある一方、入所型養護を行なう国以外の提供機関の数が増加し続けていることにも留意するものである。審査委員会は、認可、査察および監査のために現在設けられている制度のもとで、質の保障が効果的に行なわれていない可能性があることを懸念する。審査委員会の理解によれば、、私立施設に対して現在提供されている資源では、資格のある十分な人数の職員を採用しかつ雇用し続けることができない可能性がある。審査委員会は、過剰定員のために、家庭を基盤とする養育ではなく入所型養護施設に子どもを措置するインセンティブが生じる可能性があることを懸念するものである。審査委員会は、政府が、この過剰定員の理由を検討するとともに、子どもの代替的養護に関する国連指針に一致する、代替的養護を必要する子どものもっとも適切な措置を確保するようなやり方で資源を配分するよう勧告する。 43.審査委員会は、公式な親族養育を受ける子どもの割合を高めるという政府の目標を歓迎する。審査委員会は、政府が、親族養育者になれる可能性がある者についての資格および補助金に関わる負担の大きい一部の要件を緩和することによって、現在進んでいる親族養育の増加をどの程度促進できるか検討するよう提案するものである。 44.審査委員会はまた、里親養育(特別なニーズを有する子どもの養育に関連するものを含む)を促進する政府の政策、ならびに、このことが含意する里親養育者の研修および支援の強化も歓迎する。審査委員会は、政府がこの政策を継続しかつ強化するよう勧告するものである。 45.審査委員会は、政府が、子どもの代替的養護に関する国連指針にのっとり、とくに措置が必要になることを防止するために家族を支援しかつ強化すること、および、このような子どもを対象として家庭を基盤とする養育の利用を推進しかつ促進することによって代替的養護制度の脱施設化を図るための、包括的なかつ予算の見積もりをともなう戦略を作成するよう、勧告する。 46.さらに審査委員会は、代替的養護への子どもの措置があらゆる場合に家庭裁判所の決定に基づいて行なわれること、そのような措置の期間が法律で定められること、および、措置期間の延長は裁判所の決定によって、かつ法律の定める基準を満たす形で行なわれることを確保するため、政府が必要な立法措置をとるよう勧告する。審査委員会がとりわけ懸念するのは、措置が必要でありかつ子どもの最善の利益にのっとっているか否かの評価に裁判所がまったく関与することなく、親が自己の子どもの措置を手配できるようになっていることである。 47.審査委員会は、不当な取扱いを受けている子どもおよび差し迫った重大な危険に直面している子どもが72時間を上限とする保護的措置の対象とされうること、および、この措置が裁判所の決定により3か月間繰り返し延長できることに留意する。審査委員会は、公的機関が、子どもが家族のもとに復帰できない場合の長期処遇計画の作成を、緊急入所施設に2年間滞在した後でなければ要求されないことを懸念するものである。 48.審査委員会は、政府が、CRC第25条および子どもの代替的養護に関する国連指針にしたがい、代替的養護を受けている子どものあらゆる措置を定期的に再審査する効果的システムを確立するよう勧告する。緊急施設および入所型施設への措置の再審査に特別な注意を払い、当該措置が子どもの最善の利益に照らしていまなお必要であるか否か、および(または)、家庭を基盤とする形態の代替的養護に子どもを措置することが可能か否かを、最低でも毎年評価することが求められる。政府はまた、子どもがある代替的養護現場から他の現場へと頻繁に移動させられることを防止するために必要な措置もとるべきである。 49.最後に、子どもの代替的養護に関する国連指針にのっとり、審査委員会は、代替的養護制度から離脱する子どもを対象として、このような子ども(および該当する場合にはその家族)が養護から離脱するプロセスに向けて準備できるようにし、かつ、適切な期間、あらゆる必要なアフターケア支援を提供する、効果的かつ適正な政策およびプログラムを整備することの重要性を強調する。 国内・国際養子縁組(第21条) 50.審査委員会は、年間の国内養子縁組件数が国外における台湾の子どもの養子縁組件数よりも少ないことに留意するものの、近親間養子縁組および継親養子縁組の解消率が高いことに、懸念とともに留意する。審査委員会は、これらの解消の原因を分析すること、解消率を低下させるための是正措置をとること、および、当事者であるすべての子どもに適切な養育を確保するためにあらゆる必要な努力を行なうことを勧告するものである。審査委員会は、国内で養子縁組を行なおうとする者がしばしば特別なニーズを有する子ども(障害のある子どもおよび年長の子どもを含む)を引き取りたがらない場合があり、したがってこのような子どもにとっては国際養子縁組が唯一の解決策と見なされる場合があることを認識しながらも、政府に対し、意識啓発を図り、かつこのような子どもの国内養子縁組を促進するよう促す。 51.審査委員会は、政府による国際養子縁組手続の監督(民間養子縁組斡旋機関の認可および監視を含む)の水準および実効性について懸念を覚える。審査委員会は、台湾が、台湾からのおよび台湾への国際養子縁組の事案に対処するための拘束力のある文書として、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を採択するよう勧告するものである。 F.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 52.審査委員会は、子どもに対する暴力に対処する為に政府がとったさまざまな行動(とくに体罰およびいじめに関するもの)、および、ハイリスクの子どもおよび若者ならびに不利な立場に置かれた6歳未満の子どもにサービスを提供するプログラムを歓迎する。 53.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの活動その他の活動を継続しかつ強化するとともに、CRC委員会が一般的意見13号(2011年)で示した指針および勧告を考慮しながら、あらゆる場面(家庭を含む)におけるあらゆる形態の暴力を防止しかつこれらの暴力から子どもを保護するための、複数年次にわたる包括的な国家的行動計画を策定しかつ実施すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を2030年までに終わらせること(持続可能な開発目標の目標のひとつ(ターゲット16.2))に貢献する国および地方ならびにNGOの活動を含む同行動計画の実施のために、必要な人的資源および財源を提供すること。 54.審査委員会は、「学校でのいじめ防止指針」を歓迎するものの、その実施に関する具体的情報がないこと、ならびに、被害者その他の者による通報およびフォローアップ機構が実効性を欠いていることを懸念する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 監視および通報のための手続が実効的なものとなることを確保するため、子どもたちと協議しながらこれらの手続を見直すこと。 (b) いじめが被害者である子どもおよび学校共同体に与える悪影響についての、教員および生徒双方の理解および意識を増進させること。 (c) 安全な教室づくりのための教員の能力を強化するとともに、被害者および目撃者に対していじめの事案を通報するよう奨励すること。 (d) 被害者および加害者である子どもならびにいじめの影響を受けている可能性があるその他の子どもを対象として、実効的なカウンセリングおよび修復的実践を行なうこと。 55.ネットいじめとの関連で、審査委員会は、政府がプラットフォーム運営者に対し、防止およびネットいじめに関する苦情申立てのための適切なサービスおよび機構を発展させかつ強化することを促すよう勧告する。 56.審査委員会は、学校および施設で体罰が法律で禁止されている旨の情報を歓迎する。しかしながら、家庭における体罰は禁止されておらず、かつ学校における体罰の使用は続いている。 57.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) CRC委員会の一般的意見8号に一致する形で、家庭における体罰を明示的に禁止する規定を採択すること。 (b) 体罰ならびにその他の形態の品位を傷つける取扱いおよび屈辱的な取扱いの悪影響に関する意識啓発および教育キャンペーンを実施するとともに、肯定的行動を促進するための代替的手法に関する情報を提供すること。 (c) 公立・私立の学校および施設で働くすべての者が体罰を使用しないことを確保するため、あらゆる適切な措置をとること。 (d) 子どもに対する暴力が疑われるすべての事案を適切な機関に通報することの重要性について、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を教育すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1項~第3項および第33条) 障害のある子どもの権利(第23条) 58.審査委員会は、政府に対し、障碍者権利条約に関する審査委員会の勧告を実施するよう促す。審査委員会はさらに、政府が、障害のある子どもに関する正確なかつ細分化されたデータの収集を確保するとともに、以下のことを確保するための適切な措置をとるよう勧告するものである。 (a) これらの子どもが農村部で適切な学校教育にアクセスできること。 (b) これらの子どもが、学校教育の修了後、意味のある就労に移行できること。 (c) これらの子どもが、たとえば共融〔障害の有無等にかかわらずすべての子どもが利用できる〕遊び場の開発を通じ、遊び、余暇およびレクリエーションのための意味のある機会を享受できること。 (d) これらの子どもが、自分自身およびその家族のための適切な支援サービスを受けられること。 59.審査委員会は、入所型施設で暮らしている障害のある子どもの人数が多いことを懸念する。審査委員会は、政府が、コミュニティを基盤とする環境で暮らし、かつインクルーシブな普通学校にアクセスできる障害のある子どもの人数を増やすための5か年戦略を採択したことを歓迎するものである。 健康に対する権利(第24条) 60.審査委員会は、すべての子どもが、その能力にかかわらず、医学的治療を受けるために親の同意を得なければならないことを懸念する。このような立場は、十分な理解力を有する子どもは、親が同意を与えることに消極的な場合を含め、医学的治療に同意する能力を有していると説明する子どもの権利委員会の見解と一致しない。 61.審査委員会は、子どもの医学的治療のために必要とされる同意〔に関する規定〕がCRC、とくに第5条および第12条と一致することを確保するため、政府が関連の法律を改正するよう勧告する。審査委員会はまた、CRC委員会が一般的意見12号(パラ102)で行なっている、各国は同意権が子どもに移行する特定の年齢を定めた法律を採択するべきである旨の勧告の実施を政府が検討することも勧告するものである。 62.審査委員会は、子どもに対して専門的な精神保健サービスを提供するために政府が行なっている努力(地域メンタルヘルスクリニック、精神保健を専門とする専門家および子ども向けホットラインの提供を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、精神保健上の問題を経験する子どもの発生(とくに高い自殺率)および提供されるサービスの有効性について懸念を覚えるものである。 63.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 精神保健上の課題を有する子どもおよび若者の自殺に関するデータを引き続き収集すること。このようなデータは、可能かつ適切である場合には、課題の性質、年齢、ジェンダー、農村部/都市部の別、先住民族としての地位および性的指向ごとに細分化されるべきである。 (b) 子どもに提供されるサービスの有効性について、ヘルプラインにアクセスした子どもの付託率および付託の結果に関するデータも含めて監視および評価を行なうこと。 (c) 精神保健サービス(子どもにやさしい予防サービスを含む)が、健康に対する権利についてのCRC委員会の一般的意見15号に一致する形で利用可能性、アクセス可能性、需要可能性および適切な質を備えていることを確保すること。 (d) 子どものための精神保健サービスの開発、実施および監視に役立てるため、CRC第12条に一致する形で子どもたちの意見を積極的に求めること。 64.審査委員会は、子どもの肥満の問題に対処するために政府が行なってきた一連の取り組みを歓迎する。しかしながら審査委員会は、以下のことを勧告するものである。 (a) 政府がこのような取り組みの有効性の評価および監視を行なうこと。 (b) 学校で子どもの体重測定を実施する際、プライバシーに対する子どもの権利が保護され、かつ子どもに屈辱を与えないようなやり方で測定が行なわれることを確保するために慎重な配慮をすること。 65.審査委員会は、政府が、2011年以降、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育を子どもに提供するためのプログラムを漸進的に導入してきたことに留意する。審査委員会はまた、このプログラムの有効性および適切性についてさまざまなグループが相当の懸念を有していること、性感染症の発生率が高いこと、および、いまなお10代の妊娠が相当数発生していることにも留意するものである。 66.審査委員会は、政府が現行のプログラムを見直し、その有効性を向上させかつ適切性を確保するために何らかの修正が必要か否かを評価するよう勧告する。このような見直しにおいては、子どもおよび青少年、親のグループ、保健専門家および教育者を含むすべての関係者との協議が行なわれるべきである。 67.審査委員会はさらに、当該見直しにおいて、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する現行プログラムが以下の要件を満たしているか否かの評価を行なうよう勧告する。 (a) 社会権規約委員会がセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する一般的意見22号で行なった思春期の子どもに関する勧告、ならびに、CRC委員会が思春期の健康と発達(一般的意見4号)および思春期における子どもの権利の実施(一般的意見20号)についての一般的意見で行なった勧告に一致していること。 (b) 年齢相応であり、かつエビデンスに基づいていること。 (c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する、LGBTIを自認している子どもおよび障害のある子どもを含むすべての子どもの権利の保護が目的とされていること。 (d) CRC第12条に一致する形で、プログラムの立案、実施および評価において子どもたちの意見が取り入れられていること。 (e) 尊重しあう関係についての情報、および、性的活動を行なうようになる前に子どものエンパワーメントを図るための措置が含まれていること。 (f) 妊娠した女子に対し、適切な情報および支援サービスを提供していること。 (g) 親を対象として、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する子どもの権利を理解するための教育を実施していること。 68.審査委員会は、環境の質およびこれが自己の健康に及ぼす危害の可能性に関する懸念を子どもたちから聴取しており、政府が、環境が子どもたちの健康に及ぼす影響を監視するための措置をとるよう勧告する。審査委員会はまた、政府が、子どもの権利と環境に関する2016年の一般的討議を受けてCRC委員会が行なった勧告を考慮し、子どもたちが環境に関してまたは子どもの健康に関連するその他の事柄に関して政府に懸念を表明できるようにする制度または手続を発展させ、かつこれらの懸念に対して十分な立法上その他の行動で対応することも勧告するものである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 教育に対する権利(第28~29条) 格差の縮小 69.審査委員会は、6~15歳の義務教育において学費が無償とされていることを歓迎する。にもかかわらず、審査委員会は、私立の職業学校および高級中学校に通う生徒が、学費その他の学習費用および生活費を払うために融資の申請を行なわなければならない状況が拡大していることを懸念するものである。 70.審査委員会は、教育部(「MOE」)が、私立の職業学校および高級中学校の学費に関する全般的検討を行なうとともに、この点に関して、経済的に不利な立場に置かれた生徒を私立学校による過度な請求から保護するための審査制度を設けるよう、勧告する。審査委員会はさらに、政府が、債務の返済について困難を経験している生徒を援助するための適切なプログラムを導入するよう勧告するものである。 就学前教育施設 71.審査委員会は、公立および非営利の幼児園が不足しており、かつ、私立幼児園に子どもを入園させる親の金銭的負担が重いことを懸念する。委員会はまた、幼児教育保育法第7条を遵守できるようにするためには地方当局が追加の人的資源および財源を用意しなければならないことも懸念するものである。 72.審査委員会は、地方政府が公立幼児園を増設し、より多くの親が子どものための質の高い教育および保育にアクセスできるようにすることを援助するための「公的教育・保育サービス最大化事業(2017~2020年)」を歓迎する。 73.審査委員会は、政府に対し、公立幼児園の増設および訓練を受けた幼児園教員数の増加との関連で同事業の実施の有効性を評価し、かつ、離職率の高さに対処するためこれらの教員の賃金を改定するよう、奨励する。審査委員会は、政府が、公立幼児園の学費を無償化し、かつ私立幼児園の学費を負担可能なものとすることを目指すよう勧告するものである。 遠隔地および農村部における教育のための予算配分 74.審査委員会は、政府が遠隔地および農村部の子どもの教育に追加的資源を配分する決意を示していることを認知する。しかしながら審査委員会は、このような資源の配分が、これらの地域の子どもに対して質の高い教育を確保するうえでは必ずしも十分ではない可能性があることを依然として懸念するものである。審査委員会は、政府が、農村教育および遠隔地教育のために引き続き追加的資源を配分するとともに、子どもがCRC第28条および第29条に一致する形でどの程度教育に対する権利を享受できているか監視するための措置をとるよう、勧告する。 子どもの権利と公民教育 75.審査委員会は、人権およびとくに子どもの権利を、あらゆる形態のおよびあらゆる教育段階におけるカリキュラム(国民教育課程綱要を含む)の必修項目とすることを勧告する。審査委員会はさらに、年齢および能力を問わずすべての子どもを対象としたアクセスしやすい資料を制作すること、および、子どもの権利に関する知識および訓練を教員の必須要件とすることを勧告するものである。審査委員会はさらに、MOEが、公民教育および市民性教育における子どものエンパワーメント関連の活動を支援するよう勧告する。 校務に関する生徒代表の参加 76.審査委員会は、高級中等教育法が生徒の自治団体の創設について規定していることを認知するものの、同法が効果的に実施されていないことを懸念する。審査委員会は、MOEが、私立学校を含むあらゆる学校における、選挙または運営に学校職員が介入することのない生徒の自治団体の設立をモニタリングするよう勧告するものである。審査委員会はさらに、校務および生徒の教育上の関心について扱うすべての学校委員会に、自治団体の代表が実質的に参加するようにすることを勧告する。 カリキュラム指針改革 77.審査委員会は、試験がきわめて重視され、かつカリキュラムが柔軟性を欠いているために生徒が自分自身の教育上の関心を追求できる範囲が限定された状況下で生じている、高い学業成績を収めることへの圧力の結果、生徒に引き起こされているストレスについて懸念を覚える。審査委員会は、カリキュラムをより柔軟で、生徒の関心により合致した、かつ生徒にとってストレスがより少ないものとする目的でMOEが現在進めているカリキュラムの見直しを歓迎するものである。審査委員会は、MOEに対し、生徒の効果的参加を得ながらこの見直しのプロセスを継続するよう奨励する。 中退した生徒 78.審査委員会は、学校を中退した生徒を対象とするすべてのサービスが統合されているわけではないことを懸念する。審査委員会は、政府がこれらのサービスを統合し、かつ、このような生徒を支援するために十分な資源が配分されることを確保するよう勧告するものである。 懲戒措置 79.審査委員会は、学校が生徒の懲戒に関する独自の指針を作成できることに留意するとともに、このために子どもが連座罰のような恣意的かつ不法な懲戒措置の対象とされる可能性があることを懸念する。審査委員会は、政府が、子どもの権利と両立する懲戒措置の概要を示した通知を学校に対して発し、かつこれを公開するよう勧告するものである。 80.審査委員会は、学校で軍訓教官が雇用されていることを懸念し、このような慣行を可能なかぎり速やかに漸次廃止するよう勧告する。 体罰 81.審査委員会は、学校における体罰の禁止が十分な監視および執行の対象とされていないことを懸念する。審査委員会は、禁止規定の効果的実施を確保するためにMOEがあらゆる必要な措置をとり、かつこの措置を用いた教員に対して適切な制裁を科すことを勧告するものである。 不服申立て機構 82.審査委員会は、生徒の苦情申立てに関して現在設けられている不服申立て手続の実効性について懸念を覚える。審査委員会は、政府が、あらゆる学校(私立学校、輔育院、矯正学校および中途学校を含む)が行なった不法な管理上の決定または措置に関する個別の不服申立てに対応するための、秘密が守られかつ安全な通報手続を用意する独立の機構を設置するよう、勧告するものである。生徒は、そのような審理において意見を聴かれ、かつNGOによるものを含む独立の代理人をつけることを認められるべきである。 休息、遊びおよび余暇に対する子どもの権利(第31条) 83.審査委員会は、子どもが学校またはその他の学校外教育機関で非常に長い時間を過ごしていることを深く懸念する。審査委員会は、政府が、学業成績に関連して子どもに加えられる圧力を軽減することにつながるのではないかという思いから、国の試験制度改革を進めてきたことに留意するものである。 84.審査委員会は、学校が子どもに対して十分かつ定期的な自由時間を提供することを確保するため、学校の1日のあり方を見直しかつ規制するよう勧告する。さらに審査委員会は、政府が、十分な睡眠をとらないことならびに遊びおよび余暇にアクセスできないことが子どもの学習および発達ならびに身体的および精神的健康に及ぼす有害な影響について、親および教員を教育するための措置をとるよう勧告するものである。 85.審査委員会は、安全な遊び場の提供を通じ、都市環境において子どもが遊びの空間にいっそうアクセスできるようにするために政府が行なっている努力を称賛する。審査委員会は、政府が、障害のある子どもを含むすべての子どもが遊びにアクセスできること、および、子どもが自然環境のなかでこの権利を享受できることを確保するべきであることを強調するものである。休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)を参照しつつ、審査委員会は、政府および地方当局が、十分かつ持続可能な資源をともなった遊び・余暇政策を採択しかつ実施する等の手段により、休息および余暇に対する子どもの権利ならびに子どもがその年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に参加する権利を保障するための措置を実施するよう、勧告する。審査委員会は、政府が、コミュニティ、地方および国の各段階で、遊び政策ならびに遊びおよび余暇に関連する活動の企画、立案および監視において子どもたちの全面的関与を得るよう勧告するものである。 86.審査委員会は、先住民族の文化および言語を含む多様な文化についてすべての子どもが学べるようにするために行なわれている努力に留意する。審査委員会は、政府に対し、子ども、その家族およびマイノリティ・コミュニティと協議しながらこれらの活動を見直しかつ拡大するよう奨励するものである。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第34条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 先住民族の子ども(第30条) 87.審査委員会は、先住民族の子どもの権利を保護するために政府がとっている多数の措置および国家原住民族委員会が果たしている重要な役割を歓迎する。 88.審査委員会は、政府が、先住民族コミュニティ(当該コミュニティ出身の子どもを含む)と連携しながら、先住民族の子どもの権利を保護するための特別措置を引き続き実施し、監視しかつその有効性の評価を行なうよう勧告する。審査委員会はさらに、政府が以下の点に特別な注意を払うよう勧告するものである。 (a) 先住民族の子どもの乳児死亡率を削減するための措置。 (b) 先住民族の子どもが、適切な資格を有する教員により、自己の先住民族言語で教授を受けることができること。 (c) 先住民族の子どもが教育のため農村部から都市部に移転した際に提供される援助。 (d) 部族協同組合による就学前教育施設の設置を支援するための措置(十分な資源の配分、ならびに、そのような就学前教育施設の設置、職員配置および運営への先住民族コミュニティの関与を含む)。 (e) 先住民族コミュニティにおける慣習的な代替的養護体制の支援。 (f) 親を対象とする文化的に適切な教育および支援サービスの提供。 児童労働(第32条) 89.審査委員会は、低年齢の子どもを含む子どもが、しばしば長時間労働をともなう条件および(または)子どもの健康および発達にとって有害となる可能性がある条件のもとで働いているという報告に、懸念とともに留意する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 仕事の性質、年齢、ジェンダーおよび子どもの背景(先住民族出身、農村出身または都市部出身)別に細分化された、働いている子どもの人数についてのデータを収集すること。 (b) このような子どもの権利を保護するために適切な措置をとること。 薬物濫用(第33条) 90.審査委員会は、薬物濫用の防止のためにとられているさまざまな措置(地方における濫用防止センターの設置および「ドラッグにノーと言おう」プロジェクト、ならびに、薬物依存の子どもの治療のための医療施設の指定など)を歓迎する。しかしながら審査委員会は、これらの措置の有効性に関する情報がないことを懸念するものである。 91.審査委員会は、必要に応じてこれらの措置を調整しまたは強化する目的で、政府が、薬物使用者である子どもおよび青少年の関与を得ながら、これらの措置の実施およびその有効性に関する評価を定期的に実施するよう勧告する。加えて、審査委員会は、政府が薬物の使用を犯罪ではなく健康問題として扱うよう勧告するものである。 性的搾取および性的虐待(第34条) 92.審査委員会は、子どもおよび若者の性的搾取防止法が2015年に採択されたこと(2017年1月1日施行)、ならびに、子どもが巻きこまれる性売買の防止および性犯罪の捜査の強化を目的とした関連の諸計画が採択されたことを歓迎する。しかしながら審査委員会は、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもの緊急措置が長期間にわたって延長されうる一方、延長の根拠が明確でないことを懸念するものである。さらに審査委員会は、性的虐待の被害を受けた子どもが、司法(刑事)手続において、加害者とされる者にとって不利な証人となる場合に、人権に関する国際的な基準および勧告を全面的に遵守した保護が必ずしも提供されていないことを懸念する。 93.審査委員会は、政府が、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもの緊急措置の延長の根拠を法律で具体的に定めるとともに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第8条、および、子どもの犯罪被害者および証人に関わる事項における正義についての国連経済社会理事会決議2005/20の勧告に掲げられた規則を遵守する目的で、司法手続における証人としての子どもの被害者の保護に関する現行規定を見直し、かつ必要な場合には改正するよう、勧告する。 拘禁環境(第37条) 94.審査委員会は、子どもが自由を奪われている間に不当な取扱いを受けているという報告があることを懸念し、政府が以下のことを確保するための効果的な措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第37条および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則が全面的に遵守されること。 (b) 自由を奪われた子どもとともに働くすべての職員に対し、このような子どもの権利に関する情報が提供されること。 (c) 自由を奪われた子どもの不当な取扱いに関するすべての訴えが全面的に調査されること。 少年司法(第40条) 95.審査委員会は、少年非行の防止のために政府がとっている措置について、また少年事件処理法に基づいて優れた構造の少年司法制度が設置されていることについて、評価の意とともに留意する。しかしながら審査委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 少年事件処理法でさまざまな年齢制限および分類が用いられているため、7~12歳の子どもが少年(刑事)司法統計で扱われることにつながっていること、および、刑事責任に関する最低年齢(MACR)が14歳とされていることから12歳および13歳の子どもの扱いが明確ではないこと。 (b) 子どもの問題行動を地位犯罪として刑法に含めることにより、このような行動が犯罪化されていること。 (c) ほとんどの場合に法的援助が有償であるため、事実上、少年司法手続全体を通じ、刑法に抵触した子どもおよび少年に対して法的その他の援助が提供されていないこと。 96.少年司法における子どもの権利についてのCRC委員会の一般的意見10号に照らし、審査委員会は、政府が少年司法制度をCRCおよび他の関連の基準に全面的に一致させることを勧告する。とくに審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われまたは認定された14歳未満の子どもには、少年事件処理法ではなく子どもおよび若者の福祉および権利保障法に基づいて対応するとともに、その目的で必要な立法上その他の措置をとること。 (b) 地位犯罪を廃止するとともに、問題行動を有する子どもに対し、子どもおよび若者の福祉および権利保障法の文脈において必要な支援および保護を提供すること。 (c) 刑法に抵触した子どもに対し、法的手続の最初からおよび全体を通じ、資格のある者による独立の法的援助が提供されることを確保すること。 (d) 審判前拘禁が厳格に必要とされる期間を少しでも超えて続けられないことを確保する目的で、裁判所/裁判官による審判前拘禁の再審査が定期的に(2週間おきに行なうことが望ましい)行なわれなければならない旨、法律により定めること。 (e) 自由の剥奪をともなう刑が最後の手段であることを確保すること。 97.審査委員会は、少年司法制度内に修復的司法のための機構が設けられておらず、かつダイバージョンのための措置も限られていることに留意する。審査委員会は、政府が、修復的司法のための措置を導入する可能性を模索し、かつ、裁判手続の開始前にとられる真正なダイバージョンのための措置を促進するよう、勧告するものである。 J.普及 98.審査委員会は、第1回報告書、事前質問事項に対する文書回答およびこの総括所見を、同国の言語で広く利用可能とするよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2019年10月12日)。
https://w.atwiki.jp/rebelinc/pages/20.html
民間 事業戦略は敵対者を減らす効果が大きいため最序盤に必須。 インフラ設備は主に道路に出資することにより、建設、戦闘、情報、兵士の移動が早く なるため序盤に必須。 事業戦略(事業会議を除く)5つ以上出資した場合、仕事不足に関するの抗議活動 を発生しないために3つ(開発会議を除く)開発会議を取る必要がある。 本部近くに地域の懸念になっている場合は取得しよう。(ただし、遠隔地は後回しにしてもよい) 優先度 ★★★★★ 最序盤、もしくは序盤にほぼ必ず取得。 ★★★★☆ 序盤から中盤、もしくは地域の懸念になっている場合はほぼ必ず取得。 ★★★☆☆ 中盤から終盤、もしくは地域の懸念になっている場合は取得。 ★★☆☆☆ お金が余ったり、地域の懸念になっている場合は取得。 ★☆☆☆☆ 取得する必要なし!! 事業 医療 医療用品 優先度 ★★★★★ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 最序盤の取得におすすめ。 中心的な医療 優先度 ★★★★★ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 最序盤の取得におすすめ。 パーソナルヘルスプログラム 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 とても安くあまり汚職が増えないので中盤におすすめ。 医療サービスの拡大 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 とても安くあまり汚職が増えないので中盤におすすめ。 ポリオ根絶 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 とても安くあまり汚職が増えないので中盤におすすめ。 情報がない区域でも戦略を配備できる能力がある。 反乱軍に戦略が破壊されない。 結核根絶 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 とても安くあまり汚職が増えないので中盤におすすめ。 情報がない区域でも戦略を配備できる能力がある。 反乱軍に戦略が破壊されない。 教育 学校再生 優先度 ★★★★★ 敵対者間での支援レベルが特に増加。展開が早い。 識字率向上活動 優先度 ★★★★☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。展開が早い。 なぜかインフレが上昇しない。 学用品 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。展開が早い。 とても安くあまり汚職が増えないので中盤におすすめ。 学校拡大 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。展開が早い。 とても安くあまり汚職が増えないので中盤におすすめ。 反乱軍に戦略が破壊されない。 水道 水の供給 優先度 ★★★☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 医療と比べ汚職が増加しやすいのでそこまでおすすめしない。 水道が懸念になっていたら必ず取ろう。 水の供給拡大 優先度 ★★☆☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 医療と比べ汚職が増加しやすいのでそこまでおすすめしない。 基本的な公衆衛生 優先度 ★★☆☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 医療と比べ汚職が増加しやすいのでそこまでおすすめしない。 水道が懸念になっていたら必ず取ろう。 高度な公衆衛生 優先度 ★★☆☆☆ 敵対者間での支援レベルが特に増加。 医療と比べ汚職が増加しやすいのでそこまでおすすめしない。 仕事開発 職業訓練 優先度 ★★★★☆ 支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 土地の所有権 優先度 ★★★★☆ 支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 輸出代理店 優先度 ★★★★☆ 支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 家畜開発 優先度 ★★★☆☆ 特に農村地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 作物開発 優先度 ★☆☆☆☆ 特に農村地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 農業流通 優先度 ★☆☆☆☆ 特に農村地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 開発銀行 優先度 ★★★☆☆ 特に都市部地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 商業的サポート 優先度 ★☆☆☆☆ 特に都市部地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 産業支援 優先度 ★☆☆☆☆ 特に都市部地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 遠隔地助成金 優先度 ★★☆☆☆ 特に遠隔地地域での支援レベルが特に増加。敵対者の数が有効性を減少させる。 遠隔地のみ戦略が展開でき、戦略配備が7%上昇する。 インフラ設備 砂利道1 優先度 ★★☆☆☆ 兵士の移動時間を短縮し、建設、戦闘、戦略配備にボーナス 遠隔地で戦闘するのは後になるので、序盤は微妙。 遠隔地が多い場合は取得。 砂利道2 優先度 ★★☆☆☆ 兵士の移動時間を短縮し、建設、戦闘、戦略配備にボーナス 遠隔地で戦闘するのは後になるので、序盤は微妙。 遠隔地が多い場合は取得。 主要道路1 優先度 ★★★★☆ 兵士の移動時間を短縮し、建設、戦闘、戦略配備にボーナス 序盤は必須。 主要道路2 優先度 ★★★☆☆ 兵士の移動時間を短縮し、建設、戦闘、戦略配備にボーナス 中盤は必須。 高速道路1 優先度 ★★★★☆ 兵士の移動時間を短縮し、建設、戦闘、戦略配備にボーナス 序盤は必須。 高速道路2 優先度 ★☆☆☆☆ 兵士の移動時間を短縮し、建設、戦闘、戦略配備にボーナス 高速道路1だけでも十分早い。 電気1 優先度 ★★☆☆☆ 支援レベル増加する、戦略が配備された区域には 戦略配備が7%上昇する。 電気2 優先度 ★★☆☆☆ 支援レベル増加する、戦略が配備された区域には 戦略配備が13%上昇する。 電気通信1 優先度 ★★★☆☆ 支援レベル大幅増加する、より多くの区域で実施することで有効性が大幅に上昇 ただし汚職が大幅増加するので注意。 電気通信2 優先度 ★★☆☆☆ 支援レベル大幅増加する、より多くの区域で実施することで有効性が大幅に上昇 ただし汚職が大幅増加するので注意。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/311.html
総括所見:イラク(OPAC・2015年) 第1回(1998年)/第2~4回(2015年)OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/IRQ/CO/1(2015年3月5日)/第68会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1962回会合(CRC/C/SR.1962参照)においてイラクの第1回報告書(CRC/C/OPAC/IRQ/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/IRQ/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IRQ/CO/2-4)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/IRQ/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、締約国が、国際的な武力紛争における犠牲者の保護に関する、1949年8月12日のジュネーブ諸条約の追加議定書(第I議定書)を批准しかつこれに加入したこと(2010年4月)を歓迎する。 5.委員会は、軍隊への入隊に関する最低年齢は18歳とされており、かつ入隊は真に自発的な意思に基づくものでなければならない旨の、選択議定書の批准時に行なわれた宣言を歓迎する。 III.一般的実施措置 法的地位 6.委員会は、選択議定書が国内法にまだ十分に統合されていないことを遺憾に思う。 7.選択議定書第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書を国内法に全面的に編入するよう促す。 包括的な政策および戦略 8.委員会は、現在のところ、子どもの徴募および武力紛争における使用の増加に対処するためのいかなる包括的な政策および戦略も存在しないことを深刻に懸念する。 9.委員会は、締約国が、締約国で活動している武装集団による子どもの徴募および使用を停止させるための包括的なかつ期限を定めた政策および戦略を緊急に採択し、かつその実施を確保するよう勧告する。 調整 10.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と効果的に闘うための調整機構を迅速に設置するよう勧告する。 資源配分 11.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、選択議定書の普及および実施を目的とする具体的予算の配分を勧告する。 普及および意識啓発 12.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発のために締約国が行なっている努力には留意しながらも、議定書の原則および規定に関する意識が全体として低いことを遺憾に思う。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定を公衆一般に対しておよびとくに子どもに対して広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。 研修 14.委員会は、子どもの権利を含む人権についての研修が、国家人権研究所によって、政府職員、教員、児童生徒、人権活動家および非政府組織のメンバーを対象として実施されていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書に関する具体的研修が実施されていないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、子どもとともにおよび(または)子どものために働いているすべての関連の専門家(とくに軍関係者、国境管理および出入国管理関係者、ソーシャルワーカーならびに医療専門職)を対象とした、選択議定書の規定に関する義務的研修プログラムを組織化するよう勧告する。 データ 16.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、選択議定書に掲げられているすべての問題に関する具体的かつ詳細なデータベースの設置を勧告する。 学校および病院への攻撃 17.委員会は、学校、レクリエーション区域および病院がしばしばあえて攻撃の対象とされていることに、このうえない懸念とともに留意する。委員会はまた、いわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)による教員および保健従事者の処刑も憂慮するとともに、複数の異なる非国家的武装部隊が、この数年間、とくに農村部の学校を占拠していることに留意するものである。 18.委員会は、締約国に対し、学校も病院も国際人道法上の保護対象民用物であり、したがって区別の原則および均衡性の原則を享受すべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 児童生徒および教員、学校、レクリエーション区域ならびに病院の特別な保護を確保し、かつ、防止措置および攻撃の際の迅速対応システムを整備すること。 (b) 病院、学校およびレクリエーション区域への攻撃を速やかに犯罪化し、捜査しかつ訴追すること。 (c) 校舎および学校施設の再建を優先的に進めるとともに、軍事的占領によって損傷した学校インフラが迅速かつ完全に復旧されることを確保すること。 性暴力 19.委員会は、いわゆるISILによって子ども、とくにマイノリティの子どもに対して組織的な性暴力(とりわけ子どもの誘拐および性奴隷化)が行なわれていることを深く懸念する。 20.条約に基づく総括所見で行なった勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4、パラ46〔パラ45〕)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 性暴力の被害を受けた子どもに専門的医療ケアを提供し、性感染症(とくにHIV)のリスクを低減する目的で72時間以内に時宜を得た医療ケアを確保し、かつ、被害者が緊急避妊および中絶のためのサービスにアクセスできるようにすること。 (b) 性暴力の被害を受けた子どもに特別な心理的ケアを提供するとともに、その身体的および心理的回復ならびに再統合を確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 加害者の訴追および処罰を確保すること。 (d) 適切な国際連合機関の技術的援助を求めることを検討すること。 IV.防止 年齢鑑別手続 21.委員会は、締約国で(とくに農村部および遠隔地において)出生登録制度が弱体なままであるために、軍隊への採用時における年齢の判断が阻害される可能性があることを懸念する。 22.委員会は、締約国が、とくに、とりわけ遠隔地および農村部において病院に民事登録のための機構を設けることおよび移動登録班を設置しかつその利用を奨励することにより、子どもが出生後直ちに登録されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、出生証明書がない場合の新規採用兵の年齢の判断は、当該新規採用兵の尊厳を尊重する他の信頼できる手段(医師による検査を含む)によって行なわれることを確保するよう勧告するものである。 志願入隊 23.委員会は、国防省の統制下で活動している覚醒評議会に子どもが関与していることを示す報告について深い懸念を覚える。委員会はまた、未成年の子どもが、偽装された身分証明カードに基づいて同評議会によって採用され、かつバグダード外の地域に設けられた検問所の配置要員として利用されていること、および、この問題に対処するための措置が不十分であることも懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、18歳と定められた最低年齢が全面的に尊重されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、入隊が真に自発的に行なわれることを確保するための保障措置を整備するよう勧告する。とくに、締約国は、これまで覚醒評議会と関係していたすべての子どもを特定するために徹底的調査を実施するとともに、これらの子どもがその後解放され、かつ心理社会的リハビリテーションおよび職業的再統合のための十分な援助を提供されることを確保するべきである。 非国家的武装集団による徴募の防止 25.委員会は、武装集団による子どもの徴募を防止するためのいかなる保障措置もとられていないことを深く懸念する。委員会はまた、武力紛争への子どもの関与における主要な要因(とくに貧困ならびに教育および経済的機会の欠如ならびに一部の民族的および宗教的マイノリティに対する差別)に対処するための措置の不十分さが証明されてきたことも懸念するものである。 26.委員会は、締約国に対し、自国の領域にいるいかなる子どもも非国家的武装集団によって徴募されないことを確保するためにいっそう積極的な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの徴募および武力紛争への関与の根本的原因に対処するとともに、コミュニティが子どもの徴募の危険性について理解し、かつ子どもを保護する方法について理解することを確保するための公的広報キャンペーンを開始すること。 (b) 被害を受けやすい状況に置かれている子どもの徴募および再徴募の防止に特段の注意を払うとともに、とくに国境管理を効果的に実施し、かつ、子どもの帰還および子どもが再徴募されないことの確保を目的とするトルコとの国境を越えた協力および情報交換の枠組みを強化することにより、難民キャンプ内外における民間人の安全および保護を増進させること。 (c) とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)および国際連合児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることを検討すること。 人権教育および平和教育 27.委員会は、初等中等学校のカリキュラムに人権教育が含まれていることには評価の意とともに留意しながらも、学校カリキュラムに平和教育が設けられていないことに懸念を表明する。 28.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しながら、委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪にとくに言及しつつ、平和および寛容に関する教育を学校カリキュラムに体系的に含めるための努力を行なうよう勧告する。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 29.委員会は、武力紛争への子どもの関与がいまなお禁止されていないことを懸念する。委員会はまた、イラク高等法廷法(2005年法律第10号)第13条で、15歳未満の子どもを国の軍隊および非国家的武装集団に徴集しもしくは入隊させることまたは国の軍隊もしくは非国家的武装集団がこのような子どもを敵対行為への積極的参加者として使用することが戦争犯罪とされている一方で、当該規定が1968年7月17日から2003年5月1日までの期間に行なわれた犯罪にしか適用されないとされているため、その後に行なわれた犯罪には適用されないことも懸念するものである。 30.委員会は、締約国に対し、国の軍隊または非国家的武装集団による18歳未満の子どもの徴募および敵対行為における使用が締約国の法律で明示的に犯罪化され、かつ2003年5月1日以降に行なわれた犯罪の実行犯が裁判にかけられることを確保するため、迅速な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程の批准を検討し、かつ、現在進行している紛争状況に関わって同裁判所の裁判権の行使を受託することも勧告するものである。 非国家的武装集団による子どもの徴募および使用 31.委員会は、非国家的武装集団、とくにいわゆるISILおよびイラクのアルカーイダによって多数の子ども(とくに、子どもの難民、障害のある子ども、親を失った子ども、路上の状況にある子どもならびにトルコ国境経由で締約国に入国したシリア・アラブ共和国およびトルコその他の国の出身の子どもなど、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)が徴募されていることを深刻に懸念する。委員会は、以下のことについてこのうえない懸念を表明するものである。 (a) 子ども(障害のある子どもまたは家族によって武装集団に売られた子どもを含む)が自爆攻撃要員として使用されていること。 (b) 子どもが、空爆からISILの施設を保護するための人間の盾として使用されており、かつ、残忍な拷問行為および殺害行為の目撃をしばしば強要されていること。 (c) 子どもが、家族を支えるために密告者、検問所の要員または武装集団のための爆弾製造要員として使用されており、かつ、徴募されて誘拐の訓練を受けさせられる子どももいること。 (d) 12歳または13歳という低年齢の子どもが、いわゆるISILによってモスルで行なわれている軍事訓練を受けさせられていること、ならびに、報告によれば、いわゆるISILが子どもに対して個人の見張りおよび逮捕の任務も与えているとされること。 (e) シリア・アラブ共和国から逃げてきた子ども(とくに男子)に対し、帰還して自由シリア軍と戦うよう圧力がかけられていること。 (f) 政府の支援を受けた民兵によって子どもが徴募されていること。 32.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の子どもの徴募および武力紛争における使用を解消するためにすべての必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう強く促す。 (a) あらゆる形態の子どもの徴募または武力紛争における子どもの使用ならびにいかなる形態であれこのような徴募および使用を幇助する行為(誘拐または売買によるものを含む)が徹底的に捜査され、訴追されかつ処罰されることを確保すること。 (b) 子どもが人間の盾として使用されているいかなる施設も攻撃されないことを確保し、かつ、子どもをその他の形態の重大な人権侵害から保護すること。 (c) 安全保障理事会決議1539(2004年)、1612(2005年)および1882(2009年)を効果的に実施する目的で、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を強化すること。 (d) 適切な国際連合機関の技術的援助を求めることを検討すること。 VI.保護、回復および再統合 テロ容疑を理由とする子どもの拘禁 33.委員会は、多数の子どもが、テロ関連の容疑でまたはテロ犯罪容疑者とのつながりが報告されていることを理由に起訴されまたは有罪判決を言い渡され、かつ拘禁施設、警察署およびいわゆる「更生センター」に収容されていることを深刻に懸念する。委員会はまた、テロ容疑者の親族である子どもが違法に逮捕され、容疑がないままに収容され、またはテロ行為の隠蔽の罪を問われていることも懸念するものである。委員会は、以下のことに深刻な懸念とともに留意する。 (a) テロ容疑で拘禁されている子どもが、拘禁中に不当な取扱いおよび拷問に相当する行為を受けているとされ、かつきわめて劣悪な(基礎的インフラを欠き、衛生および換気が不十分であり、かつ食事、水および医療ケアの質も貧弱な)拘禁環境に直面していること、および、子ども(とくに女子)がしばしば成人とともに拘禁されていること。 (b) テロ関連の容疑をかけられた子どもが超法規的施設(たとえばイラク国家情報局が運営する施設)に拘禁されているという報告があること。 (c) 子どもが、18歳に達すると同時に死刑囚監房に移送されていること。 (d) 子どもの家族に対し、子どもの拘禁に関する通知が常に行なわれているわけではないこと。 (e) 子どもが収容されている拘禁施設への国際連合関係者によるアクセスが、許可されているとはいえ、当局によって課される煩雑な官僚的手続のために相当に阻害されていること。 (f) テロ容器で拘禁されている子どもが教育および適切な心理社会的援助または専門的援助にアクセスできていないこと。 34.委員会は、締約国に対し、テロ関連犯罪を理由として訴追された子どもが少年司法関連の基準にしたがって取り扱われること、および、いかなる審理も、犯罪が行なわれたとされる時点での子どもの年齢を考慮しながら、公正な裁判に関する国際基準にしたがい、迅速かつ公平なやり方で実施されることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 拘禁されている子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできること、拘禁されている子どもの残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いの通報が公平なやり方で迅速に捜査されること、および、加害者が裁判にかけられ、かつ有罪と認定されたときはその犯罪の重大性に相応する刑罰によって制裁を受けることを確保すること。 (b) 18歳未満の者が行なった犯罪に対し、死刑および終身刑がけっして適用されないことを確保すること。明確な証明によって年齢を確定できないときは、若年者は子どもと推定されるべきである。 (c) いあかなる子どもも超法規的施設に拘禁されないこと、および、子どもの拘禁が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保するとともに、拘禁に代わる措置を検討すること。 (d) 親または近親者に対して子どもの拘禁場所が通知されることを確保し、かつ、国際連合機関および市民社会が子どもの被拘禁者にアクセスするための便宜を図ること。 (e) 子どもの拘禁が人道的な環境のもと、成人から分離される形で行なわれること、ならびに、子どもが清潔な飲料水および衛生設備、質量ともに十分な栄養ならびに身体的および心理的回復、教育ならびに社会的再統合のための措置にアクセスできることを確保すること。 (f) 少年司法制度において働くすべての専門家を対象として、条約、その両選択議定書、他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)に関する研修を実施すること。 武装解除、動員解除および再統合 35.委員会は、相当数の子どもが依然として武装集団の支配下にあり、条約および両選択議定書に違反するさまざまな行為の対象とされていることに、もっとも重大な懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国に対し、誘拐された子どもおよび子どもの戦闘員全員の解放および動員解除を確保するよう促す。委員会は、締約国に対し、被害を受けやすい状況に置かれた子どもの特有のニーズをとりわけ考慮に入れた、援助、リハビリテーション、再統合および和解のための長期的かつ包括的なプログラムを、可能なかぎり早期に策定するよう求めるものである。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 37.委員会は、締約国が、武力紛争の被害者に対して心理的支援および社会的再統合のための援助を提供する目的で国際連合機関および市民社会と協力していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、現在のところ、武装集団によって徴募されまたは使用されていた子どもに対し、いかなる形態の援助または支援(その心理社会的および身体的回復または社会的リハビリテーションおよび再統合のためのものを含む)も提供されていないことを懸念するものである。委員会はまた、隣国のシリア・アラブ共和国で武力紛争が生じていること、および、締約国が、とくにドホーク、アルビールおよびスレイマニヤにおいて、子どもを含む相当数のシリア難民を受け入れていることに鑑み、武装集団による徴募もしくは敵対行為における使用または性的虐待の対象とされた可能性のある子どもの難民またはその対象とされるおそれがある子どもの難民に対してケアおよびサービスを提供するための措置および資源配分が不十分であることに、懸念とともに留意する。 38.委員会は、締約国に対し、徴募されもしくは武力紛争で使用された子どもまたは他のいずれかの形で武力紛争に関与させられた子どもが、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのあらゆる必要な援助を提供されることを確保するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 紛争の影響を受けている子ども(とくに子どもの戦闘員、女子、保護者のいない子どもの国内避難民ならびに難民、帰還民および地雷被害サバイバー)を対象とする心理社会的支援および援助のための包括的プログラムを、非政府組織、国際機関およびコミュニティと連携して、かつ、トラウマ性の戦争経験後にこれらの子どもが有する特別な回復上のニーズに対応しながら発展させること。 (b) これらのサービスが、紛争の影響を受けているすべての地域でアクセス可能とされることを確保すること。 (c) 子どもの難民および庇護希望者ならびに移住の状況にある子どもであって、武装集団によって国外で徴募および(もしくは)敵対行為における使用ならびに(または)性的虐待の対象とされた可能性がある子どもまたはその対象とされるおそれがある子どもを可能なもっとも早い段階で特定するための包括的機構を確立するとともに、国際連合の関連の機関および計画(UNHCRおよびユニセフを含む)の技術的援助を求めること。 (d) 非公式の教育プログラム等も通じて、かつ紛争の影響を受けた地域における校舎および学校施設の復旧ならびに水、衛生設備および電気の供給に優先的に取り組むことにより、徴募されまたは敵対行為で使用された子どもが教育制度に再統合できることを確保するための効果的措置をとること。 (e) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書を批准すること。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 39.委員会は、締約国に対し、子どもに対する重大な人権侵害に関する恒常的な情報の共有および当該人権侵害への対応を促進するため、子どもと武力紛争に関する高級レベル省庁間委員会を設置するよう奨励する。 40.委員会はまた、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施におけるユニセフその他の国際連合機関との協力の強化を模索するよう勧告する。 41.委員会は、締約国が以下の文書を批准するよう勧告する。 (a) 非国際的な武力紛争における犠牲者の保護に関する、1949年8月12日のジュネーブ諸条約の追加議定書(第II議定書)。 (b) 追加の特殊標章の採択に関する、1949年8月12日のジュネーブ諸条約の追加議定書(第III議定書)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器、その部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書。 VIII.フォローアップおよび普及 42.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁(国防相を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 43.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第1回報告書、締約国が提出した文書回答および委員会が採択した関連の総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.通報手続に関する選択議定書の批准 44.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 X.次回報告書 45.選択議定書第8条第2項および条約第44条にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年5月18日)。