約 24,200 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/199.html
総括所見:シリア(第2回・2003年) 第1回(1997年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.212(2003年7月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.子どもの権利委員会は、2003年6月3日に開かれた第883回および第884回会合(CRC/C/SR.883 and 884参照)において、2000年8月15日に受領されたシリア・アラブ共和国の第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.2)を検討し、2003年6月6日に開かれた第889回会合(CRC/C/SR.889参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告書の時宜を得た提出を歓迎するとともに、報告書そのものは法律偏重的な性質のものであったとはいえ、当該報告書が報告ガイドラインにしたがっていることに留意する。委員会は、豊かな情報を含んだ文書回答の提出および補足報告書を評価するものである。委員会は、ハイレベルな、きわめて適任の部門横断型代表団の出席が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に寄与したことを評価する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約を含む諸国際文書の批准。 (b) 委員会はさらに、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の議会承認を歓迎する。 (c) 就業が認められるための最低年齢の、15歳への引き上げ。 (d) 義務教育〔修了〕年齢の、12歳から15歳への引き上げ。 (e) 子どもの問題に関する新たな機関(すなわち文化局、乳幼児教育局および特別教育局)の設置。 (f) とくに保健および教育の分野で、子どものための世界サミットの目標の多くが達成されたこと。 (g) 子ども期高等評議会の設置(1999年)。 (h) 国内法で条約が考慮されていること、すなわち、民事訴訟法および刑事訴訟法において、シリアが加盟する国際条約に反する規定は適用できないと明示的に述べられていること。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、占領下にあるシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する締約国の懸念を共有する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 前回の総括所見 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)の検討を受けて表明された勧告および行なわれた勧告(CRC/C/15/Add.70)の多く、とくに条約の原則の法律への統合、予算配分における子どもの権利の優先および子どもの不当な取扱いに関連するものへの対応が不十分であることを懸念する。委員会は、同じ懸念表明および勧告の多くがこの文書でも行なわれていることに留意するものである。 6.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 7.委員会は、第1回報告書が提示されて以降、留保に関して何の再検討も行なわれてこなかったことを遺憾に思う。報告書における締約国の理由説明に留意しつつ、委員会は、一般的留保の性質のために条約の規定の多くが無効にされる潜在的可能性がある旨の懸念をあらためて表明するとともに、条約の趣旨および目的との両立性に関わる懸念を提起するものである。とくに、第14条に関しては、当該留保は思想、良心および宗教の自由の侵害を生ぜしめるものであり、第20条および第21条に関しては、当該留保は不要である。委員会は、条約第20条3項において、代替的養護のひとつの形態としてカファラが明示的に承認されていることを指摘する。第21条は、養子縁組制度を「承認および(または)許容している」国に明示的に言及しており、締約国は養子縁組制度を承認していないのでこの規定は適用されない。 8.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号を考慮し、とくに第14条、第20条および第21条に関する留保を撤回の方向で精査するよう、勧告する。 立法 9.委員会は、締約国が、条約との関係で国内法を見直す旨の公約を行なっていることに留意する。委員会はさらに、子どもの権利との関連で最近さまざまな立法措置がとられかつ提案されていること(たとえば身分関係法の改正、および、義務教育法の違反に対する処罰の強化の追求)に留意するものの、これらの立法措置において、条約の実施に対する包括的な人権基盤アプローチが十分に反映されていないことを懸念するものである。さらに委員会は、身分関係の分野で、異なる宗教的コミュニティ(すなわちイスラム教徒、ドゥルーズ教徒、キリスト教徒およびユダヤ教徒)を規律する異なる法律(たとえば1953年民事関係法)が適用されており、そのために異なる裁判制度(たとえばシャリーア裁判所、madhabi裁判所およびruhj裁判所)が利用されていることから、子どもの権利の享受における差別につながる可能性があることを、懸念する。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自国の法律、行政規則および訴訟規則が条約を含む国際人権基準に一致することを確保するため、その包括的見直しをいっそう速やかに進めること。 (b) 宗教法の解釈を基本的人権と一致させるため、あらゆる可能な措置をとること。 (c) 法律が、十分に明瞭かつ正確であり、公表され、かつ公衆にとってアクセス可能であることを確保すること。 調整 11.委員会は、子ども期高等評議会(1999年の決定第1023号)が条約の実施の調整を担当していることに留意する。委員会は、HCC〔子ども期高等評議会〕が県段階に支部を設置する予定であり、かつHCCに対して独自の予算が提供される可能性がある旨の情報を歓迎するものである。委員会はさらに、2003年10月に新たな国家的行動計画が採択される予定である旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、現行の調整が不十分であることおよびHCCが独自の予算を有していないことを依然として懸念するものである。委員会は、中央および地方の行政段階における部門間の調整に欠陥があるため、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策を達成するのが困難になっている旨の懸念を、あらためて表明する。 12.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくにHCCに対して十分な人的資源および財源を提供することにより、HCCを、条約の実施を調整するための有効かつ効率的な機関とするための努力を継続しかつ強化するとともに、設置が予定されている支部とHCCとの間で良好な協力関係および調整を確保すること。 (b) 新たな国家的行動計画の全面的実施のために必要な支援(十分な人的資源、財源その他の資源を含む)を提供するとともに、当該計画が条約の実施に与えた影響を定期的に評価すること。 データ 13.委員会は、保健、栄養および教育の分野におけるデータ収集が改善されたことに留意するとともに、中東統計局内に子ども情報部が設置された旨の情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とする分野についての信頼できる統計データの不足および利用可能性について依然として懸念を覚えるものである。 14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する統計(遠隔地に住んでいる子ども、虐待の被害者、障害のある子ども、思春期の健康、罪を犯した少年等に関するデータも含む)を収集すること。 (b) 子ども情報部を強化するとともに、当該部局に対して十分な人的資源および財源を提供すること。 (c) とくにさまざまな政府省庁間で統計上の定義を調和させることにより、データの信頼性を向上させるための方法を検討すること。 (d) 引き続きユニセフの援助を求めること。 監視体制 15.委員会は、HCCが、調整機能に加え、少年裁判所所長(1998年の決定第134号)および司法委員会(1999年の決定第2108号)とともに実施の監視も担当していることに留意する。委員会は、これらの種々の機構間で調整が行なわれていないことを懸念するものである。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しおよび評価することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構が存在しないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、パリ原則および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しおよび評価するための独立した国内人権機関を設置するよう、勧告する。この機関は、十分な資源を有し、子どもがアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しおよび調査しならびにこれに効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。 資源配分 17.委員会は、条約が対象としている分野、とくに保健、教育および子どもの保護に対する予算配分が低額であることを依然として懸念する。このことは、子どもの経済的、社会的および文化的権利を「利用可能な資源を最大限に」用いて実施することに関わる条約第4条に対し、十分な注意が払われてこなかったことを示すものである。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 利用可能な資源を最大限に用いてすべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。 (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえば同国の北部および東北部に住んでいる子ども)を対象とする社会サービスへの予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。 (c) 予算配分額が子どもの権利の実施に与える影響を体系的に評価すること。 市民社会との協力 19.委員会は、政府が開発部門および福祉部門の国内団体ならびに国際機関と良好な協力関係にある旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、とくに市民的権利および自由の分野において、条約の実施に市民社会を積極的に関与させるための努力がほとんど行なわれてこなかったことを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施(市民的権利および自由との関連における実施も含む)の全段階を通じて子ども団体を含む市民社会の関与を得ることに対し、組織的アプローチをとること。 (b) NGOの参加を促進しかつ強化する一歩として、NGOを規制する法律(たとえば民間団体・機関法(1958年法律第93号))が条約第15条および結社の自由に関する他の国際基準に一致することを確保すること。 研修/条約の普及 21.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力、および、これらの努力の有効性を評価するための研究を歓迎する。これとの関連で、委員会は、子どもの市民的権利および自由との関連でもっとも意識が低いことに留意するものである。 22.委員会は、締約国に対し、引き続き以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもおよび親ならびに市民社会の間でならびにあらゆる行政部門および行政段階において(市民的権利および自由に注意を向けながら)条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字者であるまたは正規の教育を受けていない脆弱な立場に置かれた集団を対象とするための取り組みを含む)を拡大し、かつ継続的なものとすること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 (c) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの援助を求めること。 2.子どもの定義 23.委員会は、女子の最低婚姻年齢(17歳)を男子のそれ(18歳)まで引き上げる点についてなんらの進展も見られないことを遺憾に思う。この差異は差別的であり、かつ条約第2条に反するものである。委員会は、農村部における早期婚を引き続き懸念する。 24.委員会は、締約国が、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるために法律を改正し、かつ、とくに農村部でその法律を執行するためにいっそうの努力を行なうよう、勧告する。 3.一般原則 差別の禁止に対する権利 25.委員会は、条約第2条に反して、とくに以下の点に関して、子どもまたはその親もしくは法定保護者に対する直接間接の差別が根強く残っていることを懸念する。 (a) 女子、婚外子およびマイノリティに属する子ども。 (b) 保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関する農村部と都市部間の格差、および、とくに同国の北部および東北部が社会指標の面で後れをとっていること。 26.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に定められたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、必要なときは法律を制定しまたは廃止すること、格差削減プログラムを実施すること等の効果的措置をとること。 (b) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (c) 男女間の権利の平等に関する自由権規約委員会の一般的意見28号を正当に考慮すること。 (d) そのような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。 27. 委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 28.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に明示的に編入されておらず、かつ、実務上、常に考慮されているわけではないことを懸念する。たとえば委員会は、ある法案において、身分関係法第146条に定められた年齢の引き上げが提案されていることに留意するものである。委員会は、監護に関する判断が、どのような取決めが子どもの最善の利益にかなうかではなく年齢のような基準によって行なわれていることを、依然として懸念する。 29.委員会は、締約国が、条約第3条を立法および実務に全面的に編入するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、間もなく子ども議会が設置される予定である旨の情報を含め、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が制約される可能性があり、かつ、子どもが自己に影響を与える裁判手続および行政手続において制度的に意見を聴かれているわけではないことを、懸念するものである。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設および裁判所における子どもの意見の尊重ならびに自己に影響を与えるすべての事柄への子ども参加を引き続き促進し、かつそのための便宜を図ること。 (b) 十分な情報を得たうえでの子どもの意見および見解の表明を支援し、かつこれらの意見を考慮するためのスキル訓練プログラムを、親、教員、ソーシャルワーカーおよび地方官吏を対象として、コミュニティのなかで発展させること。 4.市民的権利および自由 国籍 32.委員会は、シリア国籍法(1969年法律第276号)第3条により、外国人と婚姻したシリア人女性の子どもに対しては、父がシリア人である場合とは異なって自動的に市民権が付与されないことを懸念する。さらに委員会は、シリアで出生した無国籍のクルド人親から生まれ、かつ出生時に他のいかなる国の国籍も有していない子どもが、条約第2条および第7条に反して、シリア国籍を付与されないままであり、かつ差別の対象とされていることを遺憾に思うものである。 33.委員会は、条約第2条および第7条において、締約国の管轄内のすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族的出身に関わらず、登録されかつ国籍を取得する権利を有するべきことが求められていることを、あらためて強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) いずれかの親の性別に基づいて差別することなく、国籍に対する子どもの権利を確保すること。 (b) シリアで出生したクルド人親の子どもに対してシリア国籍を取得する権利を保障するため、緊急の措置をとること。 (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。 表現、思想、良心および宗教〔ならびに〕結社および集会の自由、プライバシーに対する権利ならびに情報にアクセスする権利 34.委員会は、報告書において第1回報告書に掲載された情報を参照するよう求められているのは、これらの問題に関する条約第13条~17条の実施との関連でほとんどまたはまったく進展がなかったことの表れであることを懸念する。 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの権利に関する子どもたちの意識を高め、かつ日常的実践におけるこれらの権利の積極的活用を推進することによってこれらの権利の実施を積極的に促進するとともに、次回の報告書でこの点に関する進展を報告するよう、勧告する。 5.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 36.委員会は、家庭における子どもの不当な取扱いならびにドメスティックバイオレンスおよびそれが子どもに与える影響に関する研究および意識啓発に関して、締約国においてほとんど進展がなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、学校における体罰が法律で禁じられていないことを懸念するものである。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの不当な取扱いおよび虐待ならびにドメスティックバイオレンスの性質および規模を評価するための包括的研究を実施するとともに、この問題に対応するための政策およびプログラムを立案するために当該研究の結果を活用すること。 (b) 子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置(たとえば子どもの不当な取扱いの悪影響に関する教育的公衆キャンペーン、子育て教室)をとるとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) あらゆる形態の暴力(家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および性的虐待を含む)を禁止するための立法措置をとること。 (d) 苦情を受理し、監視しかつ調査する(必要なときは介入することも含む)ための、効果的かつ子どもに配慮した手続および機構を設置すること。その際、被害者が援助を求めることの妨げとなる社会文化的障壁への対応およびその克服に特段の注意を払うこと。 (e) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事案を捜査しかつ訴追すること。 (f) 被害者のケア、回復および再統合を行なうこと。 (g) 教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。 (h) とくにユニセフおよびWHOの援助を引き続き求めること。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 38.委員会は、障害者に関する法案が作成されつつあり、かつそこで障害者評議会の設置が提案されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、専門的なサービスおよび教育に対する障害のある子どものアクセスが全般的に不十分であり、かつ家族への支援が不十分であることを懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの障害の原因および規模を評価するための調査を実施すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および実務を見直すこと。 (c) 必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうこと。 (d) コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しかつ拡大するためにいっそうの努力を行なうこと。 (e) あらゆる形態の障害のある子どもを普通教育に包摂するためにいっそうの努力を行なうこと。 (f) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 保健 40.委員会は、小児期疾病統合管理戦略の採用、および、さまざまな取り組み(共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」など)に対する締約国の支援を歓迎するとともに、最近の複数指標クラスター調査で明らかにされた、児童保健および妊産婦保健における達成に留意する。しかしながら委員会は、以下のことをなお懸念するものである。 (a) 同国の保健センターのサービスの範囲および質が限定的であること。 (b) 訓練を受けた保健従事者の立ち会いがない出産が約14%にのぼっていること。 (c) ケアの質に関して官民の保健サービス間に相当の隔たりがあること、および、ほとんどの人は保険に加入していないために民間サービスにアクセスできないこと。 (d) 北部の母親のうち、経口保水療法を用いて子どもの下痢に正しく対応している親が25%にすぎないこと。 (e) ヨウ素添加塩を使用している世帯が約60%にすぎないこと。 (f) 農村部において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスが不十分であること。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公的プライマリーヘルスケアに対する締約国のコミットメントに相応した、人的資源および財源の十分な配分が行なわれ、かつ、とくに農村部のすべての子どもが保健ケアにアクセスできることを確保すること。 (b) 小児期疾病統合管理戦略を国全域で実施するための努力を引き続き行なうこと。 (c) 乳幼児期の家庭看護実践の向上を促進するためにいっそうの努力を行なうこと。 (d) 共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」を引き続き支援しかつ拡大すること。 (e) 引き続き、とくにユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。 思春期の健康 42.委員会は、HIV/AIDS啓発キャンペーンに対する締約国の支援を歓迎する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関して利用可能な、リプロダクティブヘルスおよび精神保健関連のカウンセリング・サービスが不十分であることを懸念するものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年が、リプロダクティブヘルスその他の思春期の健康に関わる問題に関する教育および子どもに配慮しかつ秘密が守られるカウンセリング・サービスにアクセスでき、かつこのような教育およびサービスを提供されることを確保すること。 (b) 学校制度において、思春期の健康教育の分野における努力を強化すること。 (c) HIV/AIDS啓発予防キャンペーンを継続しかつ強化すること。 (d) 引き続き、ユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。 7.教育 44.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 初等学校および中等学校を中退する児童生徒、とくに農村部の子どもおよび女子の割合が高いこと。 (b) 教科書および教材が足りない学校が多いこと。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 校舎の衛生設備の不十分さ、早期婚、通学にともなう間接費用および学校送迎の欠如といった問題に対応することにより、とくに農村部におけるおよび女子による初等中等段階での学校中退の問題を食いとめるための取り組みを強化すること。 (b) 学習教材および備品の供給を確保するために必要な資源配分のため、いっそうの努力を行なうこと。 46.委員会は、基礎教育の質向上を目的とした「グローバル教育イニシアティブ」が採択されたこと、および、カリキュラム改革に向けて若干の努力が行なわれてきたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、報告書で提示された教育の目的には条約第29条に掲げられた目的が十分に反映されていないこと、および、とくに以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 公教育制度が、分析的スキルの発達よりも暗記学習を引き続き重視しており、かつ子ども中心のものとはなっていないこと。 (b) 人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することが明示的にカリキュラムの一部とされていないこと。 47.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 批判的思考および問題解決スキルの発達の重要性を強調する、カリキュラムおよび教授法の改革プロセスを――子どもの全面的参加を得ながら――進めること。 (b) 教育において、子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることが指向されるようにすること。 (c) とくに人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することとの関連で、学校カリキュラムに人権教育(子どもの権利を含む)を含めること。これとの関連で宗教的指導者の動員が図られなければならない。 (d) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 8.特別な保護措置 難民および庇護希望者 48.委員会は、とくに保護者のいない未成年者、教育へのアクセスおよび出生登録の確保との関連で、締約国が難民の子どもに関して行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、難民の子どもの保護を確保するうえで重要な一歩となるUNHCRとの了解覚書に関する進展を歓迎するものである。しかしながら委員会は、庇護に関わる問題についての立法上または行政上の規定が存在しないことを懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第2条および第22条にしたがい、難民および庇護希望者である子どものすべての権利を確保するための効果的な措置を引き続きとること。 (b) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。 (c) 国際基準に合致した国内難民法を導入するための措置をとること。 (d) UNHCRとの協力を継続しかつ強化すること。 経済的搾取 50.委員会は、ILO第138号条約の批准を歓迎する。委員会はさらに、就労が認められるための最低年齢を15歳に引き上げることを目的とした1959年労働法の改正を歓迎するものである。しかしながら委員会は、14歳未満の子どものおよそ7%が労働者として雇用されていること、および、まさに多くの児童労働が集中しており、かつ多くの場合に危険な条件をともなうインフォーマル部門(すなわち家族経営事業、農業)での労働に従事している子どもには効果的な監察を含む労働法の規定が適用されないことを、依然として懸念する。さらに委員会は、1958年農業関係法の改正案においてこれらの懸念への対応が十分に行なわれていないことに留意するものである。 51.条約第32条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ILO第146号勧告を考慮し、十分な人的資源および財源ならびに研修の提供を通じて労働査察を強化し、かつ防止およびリハビリテーションのためのあらゆる必要な措置をとりながら、子どもの権利条約第32条およびILO第138号条約が法律上も実際上も実施されることを確保するための即時的かつ効果的な措置をとること。 (b) ILOおよびユニセフの援助を求めること。 少年司法の運営 52.委員会は、締約国が少年司法制度の改革プロセスを開始した旨の情報には留意するものの、この改正が子どもの権利を基盤とする包括的な計画ではないこと、および、現在、以下のもののようなさまざまな問題が存在していることを、依然として懸念する。 (a) 犯罪を行なった7~15歳の子どもが(必ずしも収監刑ではないとはいえ)刑を言い渡される可能性があること。 (b) 物乞いのような子どもの問題行動が地位犯罪として犯罪化されていること。 (c) 審判前勾留に対する厳格な制限が実際には遵守されていないように思われること。 (d) 身柄拘束刑に代わる措置の利用が稀にしか行なわれないこと。 (e) 少年を対象とする拘禁所の環境がしばしば過酷なものとなっていること。 (f) 条約で唱道されている、少年犯罪問題への対応((たとえば根本的な社会的要因への対応)に対するホリスティックなアプローチ(防止、特別手続およびダイバージョンを含む)が締約国によって十分に考慮されてこなかったこと。 53.委員会は、締約国が、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)およびこの分野における他の関連の国際基準(北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針など)を法律および実務に全面的に統合した少年司法制度を設置するための、包括的な国家的戦略を策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会は、締約国が、以下の目的のために特段の努力を行なうよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を15歳のまま維持するとともに、法律に抵触した15歳未満の子どもに対し、刑事司法制度を通じてではなく子ども保護手続を通じて対応するための措置をとること。 (b) 18歳未満の者が成人として審理されないことを確保すること。 (c) 自由の剥奪が、最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間で用いられ、かつ裁判所による認可の対象とされること、および、18歳未満の者が成人とともに収容されないことを確保すること。 (d) 子どもが法的援助および独立のかつ効果的な苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (e) 司法制度、政策および社会的支援体制の連携を強化すること。 (f) 子どもの社会的更生の分野で専門家の研修を行なうこと。 9.報告書の普及 54.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の統治機構および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 55.報告の定期性に関して委員会が採択した勧告(CRC/C/114 and CRC /C/124参照)に照らし、かつ締約国の第3回定期報告書の提出期限が第2回報告書の検討後2年以内であることに留意し、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、2009年2月13日(すなわち条約にしたがって定められた提出期限の18か月前)〔まで〕に提出するよう慫慂する。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。
https://w.atwiki.jp/goodgames/pages/762.html
The Open 仕様変更5 いわゆる芋蹴り設定を行った時だったと思いますが、 過去にゲーム展開の悪化に関する懸念について記載しました。 残念ながら懸念は現実のものになっているようで、 実質的には40名程度でプレイしているのと変わらない状況に なってしまっているようです。 あまり良い傾向ではないので何らかの対策が必要ですが、 何も制限しないか入場規制にするか。 または芋蹴り方式のまま、判定基準を大幅緩和するなど。 この場合は、期限付きBanの期間を大幅に延長するべきかもしれません。 現行は12時間ですが、例えば1週間など。 本日は予想外のアクシデントにより時間を失いましたので 近日中に再検討いたします。 ( - )
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/87.html
総括所見:インドネシア(第2回・2004年) 予備的所見(1993年)/第1回(1994年)/第3回・第4回(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.223(2004年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年1月13日に開かれた第920回および第921回会合(CRC/C/SR.920 and 921参照)において、2002年2月5日に提出されたインドネシアの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.23)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、提出が遅かったとはいえ締約国の第2回定期報告書が提出されたことおよび詳細な補足報告書が提出されたことを歓迎する。委員会はとくに、さまざまな分野の権利に関するほとんどのパラグラフに、達成された進展、締約国が直面している困難および今後5年間の優先事項に関する所見が記載されていることを評価するものである。委員会はさらに、締約国が大規模かつハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、率直な対話、ならびに議論の最中に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、報告書が参加型プロセスを通じて起草されたことを歓迎する。とくに、委員会は、非政府組織(NGO)および大学が関与したことならびに最終草案が公刊されたことを歓迎するものである。 4.委員会は、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(1998年批准)、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(1999年批准)、国際労働機関の最低年齢条約(1973年採択、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年採択、第182号)(それぞれ1999年および2000年に批准)のような多くの人権文書が批准されたこと、ならびに、憲法が改正されたこと(2002年)および人権の保護に関わる多くの法律が採択されたことを歓迎する。 5.委員会は、子どもの権利条約が翻訳されたことならびに相対的に広く公刊されかつ頒布されていることを心強く思う。 6.委員会は、民主化プロセスが進行中であり、かつ法律および政策に人権問題(子どもの人権を含む)が含まれていることをおおいに心強く思う。 7.委員会は、以下のような、子どもの権利および保護の促進を目的とした法律の採択およびさまざまな機構の設置を歓迎する。 (a) 2002年憲法に、子どもの権利を含む権利章典が盛りこまれたこと。 (b) 子どもの保護に関する2002年の法律第23号。 (c) 全国的教育制度に関する2003年の法律第20号。 (d) 「子どものための国家行動計画」。 (e) 子ども保護庁(1998年)。 (f) インドネシア子どもの保護委員会(Komisi Perlindungan Anak Indonesia)。 (g) 少年裁判所に関する1997年の法律第3号。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 8.委員会は、国内武力紛争、テロリズム、および、1万7000以上の島々から構成される締約国の地理的形態の特有の性質といった、締約国が直面する課題を認知する。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 9.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.10)の検討時に行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.25)の一部、とくに児童労働に関する国内法改正(パラ17)、子どもの権利の実施を監視する必要性(パラ19)、少年司法制度の包括的改革(パラ20)、子どものための十分な資源の配分(パラ21)、子どもに対するあらゆる形態の差別と闘うために必要とされる緊急の措置(パラ22)および子どもに対する暴力(失踪および恣意的拘禁を含む)を防止するために必要とされる措置(パラ24)に関わるものの実施が不十分であることを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 11.委員会は、子どもの保護に関する2002年の法律第23号によって、締約国が条約第1条、第14条、第16条、第17条、第21条、第22条および第29条に関して行なった留保が不必要になり、したがってすべての留保がほどなくして撤回されるであろう旨の情報を歓迎する。 12.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.25)にしたがい、かつ1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、すべての留保の撤回を優先的課題とし、かつそのために必要な手続的措置をとるよう勧告する。 立法 13.委員会は、現在行なわれている、民主義および人権(とくに子どもの権利)を基盤とする国家の基礎を整備するであろう重要な法改正を歓迎する。委員会はまた、条約の批准が議会法による裏づけを得ていないという、締約国が表明した懸念も共有するものである。 14.委員会は、締約国に対し、議会法によって条約の批准を裏づける可能性を検討するよう奨励する。 15.委員会はまた、締約国に対し、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約ならびに国際刑事裁判所ローマ規程のような他の人権文書の批准を検討し、かつ、その際は議会法による裏づけを得ることも奨励する。 地方分権化 16.締約国が進めている地方分権化のプロセスは歓迎しながらも、委員会は、それが人権および子どもの権利の保護に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。 17.委員会は、締約国が、州の法律および実務が条約に一致することを確保するための対応を行なうよう勧告する。 調整および国家的行動計画 18.委員会は、子どもに関する国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」を考慮した「子どものための国家行動計画」が起草されたことを歓迎するとともに、女性エンパワーメント省が条約および「子どものための国家行動計画」の実施を調整する担当機関とされたことに留意する。 19.委員会は、以下のことを勧告する。 (a) 「子どものための国家行動計画」が条約のあらゆる分野および規定を網羅し、かつ同行動計画の規定が州および地区のレベルのプログラムに編入されるようにすること。 (b) 女性エンパワーメント省が州および地区のレベルの初機構を調整すること。 (c) 調整機関にNGOのような他の関係主体の関与を得ること。 独立の監視 20.委員会は、インドネシア子どもの保護委員会(Komisi Perlindungan Anak Indonesia)および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会の設置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、国家人権委員会(Komnas HAM)の独立性および公平性の保障が不十分であることにより、同委員会がその任務を全面的に遂行することが妨げられるのみならず、国家子どもの保護委員会の活動も阻害される可能性があることを懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがい、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家人権委員会、国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会の間の調整を確保すること。 (b) とくに、調査を実施しならびに子ども(とりわけ紛争の影響を受けている子ども)からの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会に与えることにより、これらの機関が子どもにとってアクセス可能であることを確保すること。 (c) 国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会に対して十分な資源が提供されることを確保すること。 (d) 国家人権委員会(Komnas HAM)、国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会の独立性、客観性、実効性および公的説明責任を強化するために即時的措置をとるとともに、検事総長に対するこれらの機関の報告書が時宜を得たやり方で公表されることを確保すること。 データ収集 22.委員会は、とくに保育、教育、ネグレクトされている子ども、ストリートチルドレンおよび障害児に関するさまざまなデータが補足報告書で提供されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約が対象とするすべての領域に関する、細分化された質的および量的データの体系的かつ包括的収集を可能とする十分なデータ収集機構が締約国に存在しないことを、依然として懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約のすべての分野を網羅するため、データ収集システムを引き続き改良すること。 (b) すべてのデータおよび指標が、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保すること。 (c) これらの統計および情報を広く配布すること。 (d) この点に関して、とくにユニセフとの連携を継続すること。 条約の普及 24.委員会は、条約の原則および規定を幅広く広報誌、かつ子どもとともにまたは子どものために働くさまざまな専門家集団の研修を行なうために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。たとえば委員会は、2003年7月23日の全国子どもの日のテーマを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの措置をさらに強化し、かつ継続的、包括的および体系的に実施する必要があるとの見解に立つものである。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の普及および関連のすべての専門家を対象とした条約に関する研修についての措置を強化するとともに、当該措置を継続的かつ体系的に実施すること。 (b) 条約をすべての子ども、とくに民族的マイノリティに属する子どもに対して利用可能としかつ周知するために具体的措置をとること。 2.子どもの定義 26.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 委員会の前回の勧告にも関わらず、法定婚姻年齢(女子16歳・男子19歳)が依然として差別的であること。 (b) 15歳までに婚姻する子ども(とくに女子)の割合がきわめて高く、かつ、これらの子どもがこれによって成人とみなされ、すなわち条約の適用対象ではなくなること。 27.委員会は、法律が条約の原則および規定と一致することを確保するため、締約国が、さまざまな法律によって定められた、子どもに影響を及ぼす諸年齢制限を見直すよう勧告する。委員会はまた、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 性別を理由とするいかなる差別も残存しないこと、および、女子の婚姻年齢が男子のそれと同一であることを確保すること。 (b) 早期婚を防止するため、他のあらゆる必要な措置をとること。 (c) 早期婚から生じる害および危険性に関する意識啓発キャンペーンを行なうこと。 3.一般原則 28.委員会は、子どもの保護に関する2002年の法律第23号の第2条で条約の基本原則に言及されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、ならびに、連邦、州および地方のレベルならびに紛争の影響を受けている地域における子ども関連の政策およびプログラムに全面的に反映されていないことを、依然として懸念するものである。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関するあらゆる関連の法律に適切な形で統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のあらゆる決定ならびにすべての子どもに影響を及ぼすプログラム、サービスおよび復興活動においてこれらの原則を適用すること。 差別の禁止 30.委員会は、女子ならびに脆弱な立場に置かれた他の集団の子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、婚外子、紛争により避難民となった子どもおよびマイノリティの子どもに対する社会的差別が根強く残っていることに、懸念とともに留意する。 31.委員会は、締約国に対し、国内法における差別の禁止の原則の適用および条約第2条の遵守を全面的に保障する目的ですべての法律の詳細な見直しを行なうとともに、すべての事由に基づくおよび脆弱な立場に置かれたすべての集団に対する差別を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、促す。 32.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 33.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が、家族法に関する事柄(たとえば、法律上の監護権は子どもの最善の利益よりもむしろ子どもの年齢によって決定される)も含め、子どもに関わるすべての行動において第一義的に考慮されていないことを懸念する。 34.委員会は、条約第3条が法律および行政上の措置に適正に反映され、かつ領域内のすべての場所で実施されることを確保するため、締約国が法律および行政上の措置を見直すよう勧告する。 子どもの意見の尊重 35.委員会は、子どもが、条約第12条に反し、家庭、学校およびコミュニティにおいて、子どもに関わる事柄についてさえ、めったに意見を聴かれていないことを懸念する。 36.委員会は、「自己の見解をまとめる力のある」いかなる子どもも、自己に影響を与えるあらゆる行政上および司法上の手続における場合も含めて自由に意見を表明できるよう、締約国が、法律を改正して条約第12条を全面的に反映させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに地方レベルおよび伝統的コミュニティにおいて子どもの参加権に関する公衆の意識を高めるための全国的キャンペーンを発展させるとともに、家庭、学校ならびにケア制度、行政制度および司法制度における子どもの意見の尊重を奨励することも、勧告するものである。 4.市民的権利および自由 出生登録および国籍に対する権利 37.委員会は、出生証明書が政府によって無償で発行されると定めた、子どもの保護に関する2002年の法律第23号に掲げられた規定を歓迎する。しかしながら委員会は、出生登録率が低く、かつそれを高めるための具体的措置がほとんどとられていないことを依然として懸念するものである。 38.1999年人権法により国籍に対する子どもの権利が保障されていることには留意しながらも、委員会は、場合によって以下のような状況が生じ得ることを懸念する。 (a) 婚外子が父を知る権利を否定される可能性があること。 (b) 外国人の父を持つ子どもがインドネシアの市民権を否定される可能性があること。 39.委員会は、締約国が、出生登録に関する国および地方の法律をすべて改正するとともに、ユニセフその他の国際機関と協力すること等も通じ、2015年までに100%の出生登録を達成するための包括的戦略を実施するよう、勧告する。 40.委員会は、母系および父系の双方により市民権が継承されることを確保するため、締約国が、国籍に関する1958年の法律第62号を含む市民権法を改正するよう勧告する。 子どもに対する暴力 41.委員会は、学校、公共の場所、拘禁センターおよび家庭において暴力、虐待およびネグレクト(性的虐待も含む)の被害を受ける子どもの人数が多いことを懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの虐待およびネグレクト(性的虐待も含む)の問題に対処するために現在行なっている努力を拡大するとともに、苦情を受理し、監視しおよび調査し、ならびに、必要なときは、子どもに配慮した、かつ被害者のプライバシーを確保するやり方で事件を訴追するための、全国的システムが存在することを確保すること。 (b) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできること、ならびに、虐待の訴えを理由として家庭から分離された子どもに対して代替的な保護および養護が提供されること、および、施設措置が最後の手段としてのみかつ可能なかぎり短い期間で用いられることを確保すること。 (c) 子どもに対する暴力の加害者が適正に訴追されることを確保すること。 体罰 43.委員会は、家庭および学校における体罰が広がっており、文化的に受け入れられており、かついまなお合法的であることを深く懸念する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および子どものケアの現場を含むすべての場所で体罰を禁止するため、現行法を改正すること。 (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段としての積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 5.家庭環境および代替的養護 親の責任 45.委員会は、インドネシアのイスラム教徒に適用されるイスラム法にしたがい、離婚手続において、子どもの監護権に関わる決定が子どもの最善の利益よりもむしろ子どもの年齢に基づいて行なわれることを懸念する。委員会は同様に、子どもは実親が法律上の婚姻関係になければ法律上の父を持つことができないことを懸念するものである。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての決定が、条約第3条および第12条にしたがって子どもの最善の利益の原則に基づいて行なわれることを確保するため、子どもの監護に関する法律を見直すこと。 (b) 子どもの親子関係の確定を促進し、かつ、可能なかぎり実の両親を知りかつ実の両親によって育てられる子どもの権利を保障するため、あらゆる必要な措置をとること。 家族の再統合 47.委員会は、家族から分離された東ティモールの子どもに関する持続的解決の促進に関して締約国が表明した決意および締約国が行なっているいっそうの協力を歓迎する。しかしながら委員会は、1999年以降、これらの子どもたちの帰還がどちらかといえば限定されていることを依然として懸念するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親から分離されたすべての子どもが迅速かつ安全に東ティモールに帰還できることを確保するための措置を強化すること。 (b) この点に関するUNHCRとの連携を継続すること。 家庭環境を奪われた子ども 49.委員会は、施設に措置される子どもの多さおよび当該施設における生活環境、ならびに、親によって遺棄される子どもの増加について懸念を表明する。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活環境および提供されているサービスを含む)を評価するための包括的研究を行なうこと。 (b) とくにもっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供しかつ意識啓発キャンペーンを実施することによって子どもの施設措置を防止するためのプログラムおよび政策を発展させること。 (c) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族のもとに復帰できるようにするためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもの施設措置を最後の手段と見なすこと。 (d) 既存の施設に関する明確な基準を定め、かつ、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。 養子縁組 51.委員会は、現行養子縁組法制が、民族的出自の異なる集団間で差別を行なっており、濫用的慣行(子どもの人身取引を含む)に対して十分な保護措置を用意しておらず、かつ、子どもの最善の利益の原則を十分に考慮していないことを懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組に関する現行法が条約第2条および第3条に一致することを確保するため、その改正を行なうこと。 (b) 子どもの最善の利益の原則にしたがって子どもの養子縁組制度を効果的に監視しかつ監督するために必要な措置をとること。 (c) 国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約に加入すること。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 53.障害のある子どものための特別サービスおよびリハビリテーション・センターの発展は認知しながらも、委員会は、ごく少数の障害児しかこれらのサービスにアクセスできていないことを懸念する。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どものための政策およびプログラムの発展のため、十分に細分化された包括的なデータが収集されかつ活用されることを確保すること。 (b) 適切な保健ケア、教育サービスおよび雇用機会へのアクセスの観点からこれらの子どもの状況を見直すとともに、障害のある子どものためのサービスを強化し、その家族を支援し、かつこの分野における専門家の研修を行なうため十分な資源を配分すること。 (c) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96付属文書)および障害のある子どもに関する一般的討議の日に採択された委員会の勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に留意すること。 (d) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 保健および福祉 55.保健ケア部門に対する予算配分が改善されていることは認知しながらも、委員会は、妊産婦死亡率、子どもの栄養不良発生率、低出生体重児の割合ならびに感染症および蚊媒介性疾病(マラリアを含む)の有病率が高く、予防接種率が低く、かつ、とくに紛争の影響を受けている地域で安全な飲料水および衛生施設にアクセスできないことを、依然として懸念する。 56.委員会はさらに、健康問題および保健ケアに関する政策がばらばらであるため、子どもおよび青少年の健康に対する包括的アプローチの調整および実施が阻害されていることを懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 農村部および紛争の影響を受けている地域におけるものも含め、プライマリーヘルスケア、とくに母子保健に関するサービスおよび便益への完全なアクセスを確保すること。 (b) 飲料水および衛生サービスの提供に優先的に取り組むこと。 (c) 栄養不良、マラリアその他の蚊媒介性疾病を予防し、可能なかぎり多くの子どもおよび母親に予防接種を行ない、コンドームその他の避妊手段を国全体で入手できるようにし、かつ母乳育児を促進するために現在行なっている努力を強化するとともに、紛争の影響を受けているすべての地域にこれらのプログラムを拡大すること。 (d) 子どもおよび青少年を対象とするホリスティックかつ包括的な保健政策の策定を通じ、子どもおよび青少年の健康および発達に関してライフコース・アプローチがとられることを確保すること。 (e) この問題に関してとくにWHOの協力を求めること。 思春期の健康 58.委員会は、とくに思春期の健康、HIV/AIDS予防および家族計画の問題を取り扱うリプロダクティブヘルス委員会が1999年に設置されたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、これらが依然として思春期の子どもにとっての問題であり、かつ、若者向けに、リプロダクティブヘルスに関する相談およびサービスのためのシステムも、HIV/AIDSおよび性感染症(STI)に関する教育も整備されていないことを懸念するものである。委員会はさらに、青少年の喫煙者が多いことを懸念する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮しながら、思春期の健康に関する包括的な政策および計画を策定すること。 (b) リプロダクティブヘルス委員会の勧告の実施を強化すること。 (c) HIV/AIDSおよびSTIならびに性教育に関する公式・非公式の教育制度を確立するため、国の機関とNGOとの連携を促進すること。 (d) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもの権利を促進しかつ保護するため、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する改訂国際指針を考慮すること。 (e) すべての青少年を対象として、リプロダクティブヘルスに関する相談および情報ならびにサービスへのアクセスを確保すること。 (f) タバコの使用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を青少年に提供するとともに、タバコの広告を包括的に規制することにより、誤った有害な情報から青少年を保護すること。 7.教育、余暇および文化的活動 60.委員会は、教育に対する権利および教育への最低予算配分が憲法に盛りこまれていることを歓迎する。委員会はさらに、初等教育年限を6年から9年に引き上げ、かつ授業水準の向上を試みている、締約国が1994年に会した教育改革も心強く思うものである。委員会はさらに、貧困家庭出身の子どもに対して奨学金が授与されることも歓迎する。 61.しかしながら委員会は、以下のことを非常に懸念する。 (a) 教育が初等段階においてさえ無償ではなく、かつ高等教育の費用が多くの家庭にとって負担可能ではないこと。 (b) 中退率および留年率が高いこと。 (c) 婚姻した子どもおよび妊娠した10代は教育を継続しないのが一般的であること。 (d) 教員ひとりあたりの生徒数が多く、かつ教員の能力水準が低いこと。 (e) 学校における子どもへの暴力(生徒間のいじめおよび喧嘩を含む)の発生件数が多いこと、ならびに、学校の規律を規制しかつ学校における暴力および虐待から子どもを保護するための特別法が存在しないこと。 62.委員会は、マドラサ〔イスラム学校〕および寄宿学校における教育の質を監視するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、これらの学校で提供されている教育の幅が狭いことおよびそのカリキュラムの監督が行なわれていないことを懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 無償の完全初等教育を達成するための措置を強化すること。 (b) 都市部、農村部およびもっとも発展が遅れている地域の女子および男子がいかなる金銭的障壁もなく教育機会に平等にアクセスできることを、漸進的に確保すること。 (c) すべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにするための追加的措置を実施すること。 (d) 中退率、留年率および非識字率を低下させるための効果的措置をとること。 (e) 婚姻した子どもおよび妊娠した10代に対して教育機会を提供すること。 (f) 教員が十分な訓練を受けることを確保するための努力を追求すること。 (g) 子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムに導入するために適当な措置をとること。 (h) 学校における暴力を減少させるための措置をとること。 (i) 教育部門を向上させるため、ユネスコ、ユニセフ、アジア開発銀行および市民社会と引き続き協力すること。 64.委員会は、マドラサおよび寄宿学校が普通公教育とより両立したものとなることを確保し、かつ良質な教育を確保するためにより教育な監視システムを確立する目的で、締約国が、これらの学校における教育を合理化するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 8.特別な保護措置 子どもの難民 65.委員会は、難民キャンプで暮らしている子どもの難民および国内避難民の状況を非常に懸念する。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもの避難民および難民ならびにその家族が基礎的な保健サービスおよび教育サービスにアクセスでき、かつ、条約に掲げられた、このような子どものすべての権利(出生時に登録される権利を含む)が保護されることを確保するため、即時的措置をとること。 (b) 家族から分離されたすべての東ティモールの子どもが迅速かつ安全に東ティモールに帰還できることを確保するための措置を強化すること。 (c) 1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書、無国籍者の地位に関する条約ならびに無国籍の削減に関する条約に加入すること。 (d) とくにUNHCRとの連携を継続すること。 武力紛争の影響を受けている子ども(子ども兵士を含む) 67.委員会は、アチェ、西カリマンタン、中部スラウェシ、マルクおよびアンボンにおける死亡者の多さならびに1999年の東ティモール紛争における紛争による死亡者について憂慮する。委員会はさらに、武力紛争の影響を受けている子どもが依然としてとくに脆弱な立場に置かれた集団であること、および、これらの子どもの人権を(とくに紛争中に)侵害した加害者が稀にしか訴追されないことを懸念するものである。 68.委員会は、アチェにおける戒厳令が子どもの権利の保護および実施に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。 69.委員会は、とくにアチェおよびマルクならびに1999年までの東ティモールにおける子ども兵士の使用の報告について、深い懸念を覚える。 70.委員会はさらに、武力紛争の結果、非常に多数の子どもが避難民化していることに重大な懸念を覚える。 71.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの生活および権利に影響を及ぼす暴力、とくにアチェ、マルクおよび西パプアにおける暴力を防止しかつ終わらせるための措置をとること。 (b) アチェにおける戒厳令の適用が、いかなる状況においても、子どもの権利条約で保障された権利と矛盾しないことを確保すること。 (c) 国内外の援助機関および人道機関がとくにアチェにおいて子どもおよびその家族にアクセスできるよう便宜を図るための即時的措置をとること。 (d) 正規軍、準軍事集団および反政府集団が武力紛争において子どもを使用することを防止すること。 (e) 人権法および国際人道法の原則ならびにインドネシアが締約国となっている条約を誠実に遵守すること。 (f) 兵士としてもしくは性奴隷として子どもを使用しまたは子どものいずれかの権利を侵害する軍事作戦または準軍事活動を後援し、計画し、扇動し、これに資金を提供しまたは参加したすべての者(上級職員を含む)が、1999年の東ティモールで虐待を行なった者も含め、訴追されることを確保すること。 72.委員会は、締約国が、紛争の影響を受けてきた子どもの権利を実施するための包括的な政策およびプログラムを発展させるよう、勧告する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 紛争の影響を受けた子ども、とくに子どもの戦闘員、保護者のいないIDP〔国内避難民〕および難民、帰還民および密輸された子どもに、そのプライバシーも確保しつつ心理社会的支援および援助を提供する包括的システムを、NGOおよび国際機関と連携しながら発展させること。 (b) 紛争の影響を受けた子どもが、非公式の教育プログラムを提供すること等も通じ、かつ紛争の影響を受けた地域で校舎および学校施設の再建ならびに水、衛生設備および電気の供給を優先させること等により、教育制度に再統合できることを確保するために効果的措置をとること。 (c) いかなる軍隊または武装集団によるものであっても、軍事目的で子どもを徴募することおよび使用することを犯罪とすること。 (d) とくに難民としての離散状態および部族地域にあって脆弱な立場に置かれている子どものための就労機会および教育機会を増やすことも含め、軍隊等への入隊に代わる選択肢を提供すること。 薬物濫用 73.委員会は、薬物または麻薬を使用している子どもが多く、かつこれらの子どもが被害者ではなく犯罪者として扱われていることを懸念する。 74.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対し、有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供すること。 (b) 薬物および麻薬を使用する子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。 (c) 有害物質濫用の被害者である子どもを対象とする、回復および再統合のためのサービスを発展させること。 (d) WHOおよびユニセフの協力および援助を求めること。 少年司法 75.委員会は、少年司法に関する1997年の法律第3号の採択を歓迎する。 76.委員会は、たとえ軽罪であっても、かつ人権に関する1999年の法律第39号第66条4項の規定にも関わらず、収監刑を言い渡される子どもが非常に多いこと、ならびに、これらの子どもがしばしば成人とともに拘禁され、かつたとえ子ども用の拘禁センターであっても劣悪な条件下で拘禁されていることを、非常に懸念する。 77.委員会は、刑事責任に関する最低年齢(8歳)が非常に低いことについての深刻な懸念をあらためて表明する。 78.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 拘禁された子どもが成人から常に分離されること、および、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。 (c) 自由の剥奪が避けられない場合は、逮捕の手続および拘禁環境を向上させるとともに、法律に触れた子どもの事案を取り扱う特別部局を警察内に設置すること。 (d) 少年司法の運営に関する委員会の1995年の一般的討議にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(ii)-(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 ストリートチルドレン 79.委員会は、「ストリートチルドレンのための社会的セーフティネット・プログラム」および「バンドン・ラヤ・ストリートチルドレン解放プログラム」の導入を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、路上で生活している子どもが多いこと、および、このような子どもがとくに一斉摘発活動中に暴力を受けていることを懸念するものである。 80.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 国の機関がストリートチルドレンに対して行なう暴力、恣意的逮捕および拘禁を終わらせること。 (b) このような暴力の責任者を裁判にかけること。 (c) とくにストリートチルドレン(とりわけ家出をしている子ども)が公式の身分証明カードを入手できることを確保することにより、ストリートチルドレンの社会的再統合を容易にすること。 性的搾取 81.委員会は、「子どもの商業的性的搾取撤廃のための国家行動計画」の開始(2002年)を歓迎する。しかしながら委員会は、現行法が効果的保護を提供しておらず(たとえば性的同意の年齢制限が12歳に定められているのは低すぎる)、かつ、性的搾取の被害を受けた子どもが十分な保護および(または)回復のための援助をしばしば受けていないことを懸念するものである。委員会はまた、国家行動計画が州および地区のレベルでどのように実行されているのかに関する情報が存在しないことも懸念する。 82.委員会は、性的虐待および搾取の被害を受けた子どもがその行為の責任または罪を問われることはあり得ないという見解をあらためて表明したい。 83.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引、ポルノグラフィーおよび買春を含む性的搾取の被害を受けた子どもを十分に保護する法律(性的同意に関する最低年齢の相当の引き上げも含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 被害者のプライバシーを尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ加害者を訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。 (c) 回復のための援助を優先し、かつ被害者に対して教育および訓練ならびに心理社会的援助およびカウンセリングが提供されることを確保するとともに、家族のもとに帰ることができない被害者に対して十分な代替的解決策が用意され、かつ当該被害者の施設措置は最後の手段としてのみ行なわれることを確保すること。 (d) 「子どもの商業的性的搾取撤廃のための国家行動計画」に対してその実施のための適当な資源が配分され、かつ当該計画が州および地区のレベルで効果的に実行されることを確保すること。 経済的搾取 84.委員会は、「最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画」が策定され、かつ、締約国がそれぞれ1999年および2000年にILOの第138号条約および第182号条約を批准したことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、いまなおインフォーマル部門で、魚の水揚げ場で、工場で、家事労働者として、プランテーションで、製靴・食品・玩具産業で、採鉱・採石部門でならびに路上で働いている子どもが多いこと(その多くは15歳未満である)を、依然として懸念するものである。 85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家委員会が、インフォーマル部門で就労している子ども、とくに家事労働者、買春されている子どもおよびその他のタイプの搾取的労働に従事している子どもを対象としかつ保護することを確保すること。 (b) 「最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画」に対して十分な資源が配分され、かつその実施が適切に監視されることを確保すること。 86.委員会は、締約国が、とくに貧困根絶および教育へのアクセスを通じて子どもの経済的搾取の根本的原因に対処することにより、かつNGO、コミュニティ団体、法執行官、労働監察官およびILO/IPECと連携しながら包括的な児童労働監視システムを発展させることにより、児童労働を撤廃するための努力を引き続き行なうよう勧告する。 売買、取引および誘拐 87.委員会は、子どもの商業的性的搾取に反対する東アジア・太平洋地域の地域的コミットメントおよび行動計画(2001年)ならびに横浜グローバル・コミットメント(2001年)のような、関連の国際的および地域的合意に対する締約国の支持を歓迎する。委員会はさらに、子どもの商業的性的搾取の撤廃ならびに女性および子どもの人身取引の撤廃に関する両行動計画の開始(2002年)を歓迎するものである。 88.にもかかわらず、委員会は、締約国においてこの現象に関する意識が欠けていること、人身取引被害者の法的保護が不十分であること、および、売買、取引および誘拐を防止しかつこれらの行為から子どもを保護するための措置がほとんどとられていないことを懸念する。 89.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態の子どもの売買、取引および誘拐を網羅するためにデータ収集システムを改良するとともに、すべてのデータおよび指標が政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保すること。 (b) 人身取引の適切な定義を確立し、被害を受けた子どもの法的保護を増進させ、法執行を強化するための効果的措置をとり、かつ、子どもの売買、取引および誘拐に関するコミュニティの意識を高めるための努力を強化すること。 (c) 子どもの売買、取引および誘拐を防止するために近隣諸国と二国間および多国間の協定を締結するよう努めるとともに、子どもの保護および家族のもとへの安全な帰還の便宜を図ること。 (d) とくにユニセフおよびIOMの協力および援助を求めること。 マイノリティまたは民族的集団に属する子ども 90.委員会は、宗教および礼拝の自由に対するすべての者の権利を認めた1999年人権法の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、マイノリティまたは民族的集団に属する子どもの権利が同法で認められておらず、かつ、これらの子どもが教育、保健サービスおよび社会サービスにも十分にアクセスできていないことを、なお懸念するものである。 91.委員会は、コミュニティ社会福祉プログラムをさらに実施するとともに、民族的集団に属する子どもに特別に配慮しながらこのようなプログラムをさらに発展させるよう、勧告する。 9.条約の選択議定書 92.委員会は、締約国が条約の両選択議定書に署名したものの批准はしていないことに留意する。 93.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を可能なかぎり早期に批准するよう勧告する。 10.文書の普及 94.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 95.委員会は、締約国の報告の遅れを認識しつつ、条約第44条に定められた規則を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調したい。子どもの権利の実施における進展の定期的審査を担当する国連委員会がその機会を有することは、子どもたちの権利である。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、締約国が条約上の報告義務をふたたび全面的に遵守できるようになることを援助するため、締約国に対し、例外的に、条約に基づいて定められた第4回報告書の提出期限である2007年10月4日に次回報告書を提出するよう慫慂する。当該報告書は第3回および第4回定期報告書を統合したものとなろう。当該統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月28日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/202.html
総括所見:シリア(第3~4回・2011年) 第1回(1997年)/第2回(2003年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) 国連のプレスリリース〈UNITED NATIONS CHILD RIGHTS COMMITTEE APPALLED AT DELIBERATE TARGETING OF CHILDREN IN SYRIA〉(2012年5月31日付)も参照。 CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SYR/CO/3-4(2012年2月8日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年9月22日に開かれた第1646回および第1647回会合(CRC/C/SR.1646 and 1647参照)においてシリア・アラブ共和国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/SYR/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解の向上を可能とする、第3回・第4回統合定期報告書ならびに事前質問事項(CRC/C/SYR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答および締約国報告書に関する追加情報(CRC/C/SYR/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、同国で最近起きた事件にも関わらず予定通りに報告書を発表するために締約国が行なった努力を評価するものである。委員会はまた、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間にもたれた、建設的かつ双方向的な対話も評価する。 II.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の法令が採択されたことに留意する。 (a) 非常事態を解除する2011年4月21日の立法令第161号。 (b) シリア憲法および国際条約で保障された人権および基本的自由としての平和的デモ行進の組織に関する、2011年4月21日の立法令第54号。 (c) シリア国民たるクルド人の地位について定める2011年4月7日の立法令第49号。 (d) 強姦犯が被害者と婚姻したときはいかなる刑も免除すると定めていた刑法第508条を改正する、2011年1月3日の立法令第1号。 (e) 人身取引の禁止に関する2010年1月の立法令第3号。 (f) 民間部門における労働関係について定める2010年の法律第17号。 (g) 名誉犯罪を行なった者の刑の免除規定を削除する、2009年7月1日の立法令第37号。 (h) 締約国が条約第20条および第21条に付した留保を撤回する、2007年2月の立法令第12号。 (i) 特別なニーズを有する人に関する2004年7月の法律第34号。 4.委員会はまた、締約国が以下の国際人権条約を批准したことも歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(2009年)およびその選択議定書(2009年)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年)。 (d) 傭兵の募集、使用、資金供与および訓練を禁止する条約(2008年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 国家子ども保護計画(2005~2007年)。 (b) 2004年6月2日の首相令第2896号による国際人道法国家委員会の創設。 (c) 法律第42/2003号によるシリア家族問題委員会の創設。 III.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、締約国で2011年3月以降に生じ――そしていまなお生じ続け――、かつシリアの人民、とくに子どもたちに影響を与えている特異な事件が、条約で定められた、子どもが有するすべての権利の実施を妨げる主要な要因であるとの見解に立つものである。これとの関連で、委員会は、2011年3月の反乱開始以来行なわれてきた子どもの権利の重大な侵害(恣意的な逮捕および拘禁、デモの際の子どもの殺害、拷問ならびに不当な取扱いを含む)に関する、信頼でき、裏づけがありかつ一貫した報告をめぐって、最大限の懸念を表明する。委員会は、締約国に対し、国際人権法上の義務は継続していること、および、条約上の権利はいかなるときにもすべての子どもに適用されることを想起するよう、求めるものである。委員会はまた、締約国に対し、締約国は自国の住民を保護する第一次的責任を負っており、したがって、民間人に対する過度のおよび致死的な力の行使を停止し、かつ子どもに対するさらなる暴力(殺傷を含む)を防止するための即時的措置をとるべきであることを想起するようにも求める。 7.委員会は、占領下にあって子どもの権利が侵害されているシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する、締約国の重大な懸念を共有する。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 8.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.212)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念表明および勧告に、不十分にしかまたはまったく対応されていないものがあることを遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの、とくに、留保、立法、データ収集、市民社会との協力、差別の禁止、婚姻に関する法定最低年齢、ドメスティックバイオレンスおよび少年司法に関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップすることも促すものである。 留保 10.締約国が条約第20条および第21条に付した留保を撤回する根拠となる2007年2月の〔立法〕令第12号の採択は称賛しながらも、委員会は、締約国が、条約に対する一般的留保および第14条に対する留保を維持していることに、懸念とともに留意する。これらの留保は、条約の趣旨および目的と両立しない。 11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ8)を繰り返し、締約国に対し、条約に対する一般的留保および条約第14条に対する留保の撤回を検討するよう奨励する。 立法 12.子どもの権利法案に条約のすべての規定が統合される旨の締約国の説明には積極的側面として留意しながらも、委員会は、同法案が2006年以来採択待ちの状態であることに懸念を表明する。委員会はまた、法源が異なる法律、とくに制定法、慣習法および身分関係法が適用されていることにより、自国の法律を条約の原則および規定と調和させようとする締約国の努力が損なわれる可能性があることについての懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ9)も、あらためて表明するものである。委員会は、条約のすべての原則および規定がまだ国内法に編入されておらず、かつ、条約に反する法律、とくに女子および婚外子を差別する法律が依然として効力を有しているという、さらなる懸念を表明する。 13.委員会は、締約国に対し、子どもの権利法案を速やかに法律として成立させるとともに、当該法案が、条約のすべての原則および規定を編入し、かつ締約国の領域で暮らしているすべての子どもに適用されることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、現行国内法の枠組み(慣習法または身分関係法を含む)が条約と一致することを確保することも促すものである。この目的のため、委員会は、子ども法案が成立した際には条約と一致しないすべての法律より優位に立つものとされること、および、とくに女子および婚外子の権利に影響を与えている差別的規定が廃止されるべきことを勧告する。 調整 14.委員会は、条約の実施を調整する公的機関として2003年にシリア家族問題委員会が設置されたことを歓迎するとともに、設置以降、同委員会が実施してきた多数の研究および活動を称賛する。しかしながら委員会は、同委員会の権限および省庁および政府機関との関係について定めた明確な規定がないことを懸念するものである。委員会はまた、シリア家族問題委員会が他の14県にいかなる支所も有していないことも懸念する。 15.委員会は、締約国が、諸部門間および諸県間の調整を担当する上級機関としてのシリア家族問題委員会の権限をいっそう明確に定めることにより、同委員会を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、すべての県にシリア家族問題委員会の支所を設置するとともに、同委員会に対し、調整、監視および評価の役割を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源を提供するよう、勧告するものである。 国家的行動計画 16.委員会は、国家子ども保護計画(2005~2007年)以後、条約に関する包括的な実施戦略が2007年以来存在しないことを懸念する。委員会はまた、2005~2007年の計画の主要な活動の一部(国レベルで家族保護部局を設置することならびに子ども保護シェルターおよび子どもヘルプラインを創設することなど)がまだ実行されていないことも懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策および戦略を策定しかつ実施するとともに、子どもに関する関連の国家的行動計画、または、条約のあらゆる側面を網羅した、子どもの権利の実施のためのその他の同様の枠組みを採択するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、国家子ども保護計画(2005~2007年)のうち未実施のままとなっている行動を完了させ、かつ家族保護部局、子ども保護シェルターおよび子どもヘルプラインを設置するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励するものである。 独立の監視 18.委員会は、条約上の権利の充足における進展を恒常的に監視することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構の設置に向けた重要な進展が見られないことについての懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ15)をあらためて表明する。 19.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、締約国に対して、子ども担当部局を備えた国内人権機関の一部として、またはより望ましい形としては別個の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)として、条約上の権利の充足を監視することおよび自己の権利の侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしくかつ迅速なやり方で対応することを目的とした、適正な資源を与えられ、かつ領域全体で活動することのできる独立の機構を設置するよう、促す。 資源配分 20.委員会は、社会部門への資源配分の水準が低いこと、子どもに対する配分額についてほとんど情報が提供されなかったこと、および、資源の配分および効果を子どもの権利の視点から監視する能力が欠如していることを、依然として懸念する。委員会はまた、汚職を禁ずる立法規定および2010年に実施された全国的な汚職反対キャンペーンにも関わらず、汚職が締約国で依然として蔓延しており、かつ子どもの権利の実施の増進につながりうる資源が流用され続けていることも懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (b) 予算上のニーズに関する包括的評価を実施し、かつ、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対処する分野への明確な配分額を定めること。 (c) 条約第4条にしたがい、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに社会部門に配分される予算を増額すること。 (d) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(とくに2011年3月以降の動乱の被害者)に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (e) 汚職と闘い、ならびに汚職を効果的に摘発し、捜査しおよび訴追する制度的能力を強化するための即時的措置をとること。 (f) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年を受けた委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 22.委員会は、シリア家族問題委員会との協力のもと、中央統計局が2008年に子どもデータ部を創設したことに留意する。しかしながら委員会は、このデータ収集システムが全面的に稼働しているわけではなく、かつ、子どもに関する、信頼できかつ時宜を得た統計データが締約国で利用可能とされていないことを遺憾に思うものである。このことは、首尾一貫し、かつ証拠に基づいた子ども政策の策定に悪影響を及ぼす。 23.委員会は、締約国に対し、子どもデータ部が全面的に稼働し、かつ、子どもの権利の実現に関して達成された進展の分析を促進することおよび条約実施のための政策およびプログラムの立案に役立てることを目的とした、条約の全領域に関するデータ(とくに年齢別、性別、民族別、地理的所在別および社会経済的背景別に細分化されたもの)を収集することを確保するため、必要な措置をとるよう促す。締約国は、収集される情報に、脆弱な状況に置かれた子ども(女子、障害のある子ども、貧困下にある子どもおよび路上の状況にある子どもを含む)に関する最新のデータが含まれることを確保するべきである。委員会はさらに、締約国に対し、国のあらゆるデータベースに登録された子どものプライバシーを保護するための政策を策定しかつ実施するよう、促す。 普及および意識啓発 24.委員会は、条約を普及し、かつすべての段階の学校カリキュラムに条約の原則および規定を漸進的に含めるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに子どもとともにおよび子どものために働く専門家、メディア、親ならびに子どもたち自身の間で、条約に関する知識が依然として限られていることを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、公衆一般ならびにとくに子どもとともにおよび子どものために働く専門家、メディアならびに子どもたち自身の間で組織的に条約を普及しかつ促進するための努力を強化するよう、勧告する。 研修 26.子どもとともにおよび子どものために働く一部職種の専門家を対象として研修が行なわれていることおよび子どもの保護に関する高等教育学位が大学から付与されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、このような養成教育および研修が依然として不十分であり、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家ならびに法執行機関、ならびに、条約に関する意識が限られたままである軍隊および治安部隊ならびにジャーナリストが対象とされていないことを、懸念する。 27.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に基づいた教育および研修プログラムの質を向上させるための努力を強化するよう、勧告する。このような取り組みは、裁判官、弁護士、法執行官、軍隊および治安部隊、ジャーナリスト、公務員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員、保健ケア従事者(心理学者を含む)ならびにソーシャルワーカーなど、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団を対象として行なわれるべきである。委員会は、締約国に対し、とくに国連人権高等弁務官事務所および国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めるよう、奨励する。 市民社会との協力 28.委員会は、締約国が、とくに人権団体(子どもの権利について監視している団体を含む)の登録および認可を拒否することにより、その活動を引き続き制限していることに深い懸念を表明する。委員会は、人権活動を行なっている非政府組織の構成員が一貫して脅迫、いやがらせ、身体的攻撃および逮捕の対象とされていること、および、2011年3月の抗議行動勃発以降、多くの人権擁護者が拘禁されまたは失踪していることを、とりわけ懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、正当かつ平和的な人権擁護活動との関連で拘禁されているすべての人を即時釈放し、かつ、どのような状況に置かれているのか不明なままのすべての人権擁護者の所在を確認するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、人権擁護者(子どもの権利侵害を報告して締約国による適切な行動を求める人々を含む)およびその活動を促進しおよび正当に認知し、ならびに、非政府組織(NGO)が民主的社会の諸原則に一致する方法で安全にその役割を果たせることを確保するための具体的措置をとることも、促すものである。 B.子どもの定義(条約第1条) 30.委員会は、1957年身分関係法で定められた、男子の最低婚姻年齢(18歳)と女子のそれ(17歳)との格差に関する懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ23)をあらためて表明する。委員会はまた、身分関係法がさらに低い年齢の婚姻さえ認めていることも、深刻に懸念する。同法は、当事者である子どもが婚姻について前向きであり、「身体的に成熟」しており、かつ父または祖父の同意があるときは、裁判官に対し、男子の婚姻年齢を15歳まで、かつ女子の婚姻年齢を13歳まで、引き下げることを認めているためである。 31.委員会は、締約国に対し、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げて18歳とすることによって男女間の最低婚姻年齢の格差を是正するとともに、早期婚を容認する身分関係法の規定を廃止するよう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 32.委員会は、締約国において女子に対する法的および社会的差別が根強く残っていることに懸念を表明する。とくに委員会は、女子の相続権に関わる規定など、身分関係諸法に掲げられた差別的規定について懸念を覚えるものである。委員会はまた、差別的な態度およびジェンダー役割の定型的固定化を変革するために締約国がとってきた措置が不十分であることも懸念する。 33.委員会はまた、クルド人の子ども(とくに女子)、遠隔地に住んでいる子ども、施設養護を受けている子ども、婚外子および路上の状況にある子どもの差別についても懸念を表明する。 34.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女子を差別する法規定を廃止するとともに、女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/SYR/CO/1、パラ28および34)にしたがってジェンダー役割の定型的固定化と闘うための公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じ、社会的差別を撤廃するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 婚外子を差別するすべての法規定を改正すること。 (c) 差別にさらされている子ども(とくに不利な立場に置かれた前掲集団に属する子ども)の状況を注意深く監視するとともに、この監視の結果に基づき、これらの子どもに対するあらゆる形態の差別の撤廃を目的とする、具体的かつ対象の明確な措置(差別是正のための積極的社会措置を含む)を掲げた包括的な戦略を策定すること。 子どもの最善の利益 35.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に編入されているわけではなく、したがって立法上、行政上および司法上のすべての手続または子どもに関わる政策およびプログラムにおいて適用されているわけではない旨の懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ28)をあらためて表明する。 36.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 37.委員会は、同国で2011年3月に始まった抗議行動との関係で100名以上の子どもが殺害され、これよりもさらに多くの子どもが怪我をし、かつ、これらの子どもの死亡については締約国が(軍隊を通じて)直接かつもっぱら責任を負っている旨の、信頼でき、裏づけがありかつ一貫した情報について、最大限の懸念を表明する。委員会はまた、拷問の結果として拘禁中に死亡した子どもの事案が多数報告されていることも、深く懸念するものである。委員会は、抗議行動開始以降に行なわれた人権侵害を調査するため、検事総長を委員長とする特別司法委員会が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、この司法委員会がその任務を客観的に、公正にかつ透明なやり方で遂行するために必要な独立性を欠いていること、および、その調査結果がまだ公表されていないことに、懸念を表明するものである。 38.委員会は、締約国に対し、子どもの殺傷を防止するためのあらゆる必要な措置(軍隊および治安部隊に対する明確な命令を含む)を最優先課題としてとるよう、強く促す。委員会はまた、人権高等弁務官および事務総長の見解と軌を一にして、2011年3月以降行なわれた人権侵害に関する速やかな、独立した、効果的かつ透明な調査を求めるものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、人権理事会が2011年8月22日の決議S-17/1によって設置した国際調査委員会に全面的に協力し、かつ無制限のアクセス権を同委員会に対して与えるよう、促す。 子どもの意見の尊重 39.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を実施するためにさまざまな取り組みが行なわれていること、ならびに、とくに、締約国報告書の起草過程に子どもが包摂されたことおよびデリゾール県でパイロット事業として子ども議会が設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が引き続き制約されており、かつ、子どもが自己に影響を与える司法上および行政上の手続において意見を聴かれることを確保するために締約国がとった措置が不十分であるという懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ30)を、あらためて表明するものである。 40.一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国に対し、意見を聴かれる子どもの権利を全面的に実施するために適当な措置をとる自国の義務を想起するよう求める。委員会は、司法上および行政上のあらゆる手続においてこの権利が尊重されおよび実施することを確保し、ならびに、意見を聴かれる子どもの権利の価値に関する理解を子どもが出席するすべての施設および社会のあらゆるレベル(とくに家庭、コミュニティおよび学校のレベル)で増進する目的で、締約国が、おとなおよび子どもを対象とする意識啓発活動および研修を含む効果的措置をとるよう、勧告するものである。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 国籍 41.委員会は、シリア国民たるクルド人の地位について定める2011年4月7日の立法令第49号を歓迎する。しかしながら委員会は、この立法令の利益を得られるのは「外国人」(アジャーニブ)として登録されているクルド人のみであり、「マクトゥーミーン」として知られる無国籍のクルド人は利益を得られない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、外国人と婚姻したシリア人の子に対してシリア国籍の取得権を否定するシリア国籍法(1969年法律第276号)第3条の改正がいまなお議会による承認待ちの状態であることも、懸念する。 42.委員会は、締約国には、条約第2条および第7条にしたがい、締約国の領域内にあるすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族、社会的出身もしくは地位に関わらず登録されかつ国籍を取得する権利を有することを確保する責任があることを、想起する。したがって委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) シリアで出生したクルド人親のすべての子(マクトゥーミーンとして知られる無国籍のクルド人の子どもを含む)が速やかにシリア国籍を取得し、かつその権利を差別なく享受することを保障するため、即時的措置をとること。 (b) 外国人と婚姻したシリア人母の子が母の国籍を取得できるようにするため、国籍法の改正を進めること。 (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。 出生登録 43.委員会は、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するために締約国が行なった努力、とくに出生登録を義務化した2007年の身分関係法(1957年法律第376号)改正に、積極的側面として留意する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 身分関係法によれば、イスラム教徒の女性とイスラム教徒ではない男性との婚姻は効力を有しないものとされ、したがってこのような婚姻関係のもとで生まれた子の認知および登録が常に行なわれるわけではないこと。 (b) 婚外子は父との関係を確立することができず、このような状況が子の遺棄およびその後の施設措置にしばしばつながっていること。 (c) 強姦もしくは近親婚によって生まれた子または婚外子を登録したいと希望する母親は、子の懐胎の事情に関する調査を開始するため、警察による報告書を申請しなければならないとされていること。 (d) 遠隔地で生まれた子どもの出生登録に関して依然として問題が生じていること。 44.委員会は、締約国に対し、締約国で生まれたすべての子どもの効果的登録を、その出身に関わりなく、かついかなる差別もなく確保するための努力を強化するよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、身分関係法を改正し、宗教等が異なる夫婦間のすべての婚姻を全面的に承認し、かつ、婚外子および遠隔地の子どもの保護および適正な登録を目的としたあらゆる必要な措置をとるよう、促すものである。 思想、良心および宗教の自由 45.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号(1993年)を考慮し、条約第14条に関する留保を撤回の方向で、かつ子どもの思想、良心および宗教の自由のあらゆる形態の侵害を撤廃する目的で精査するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ8)を、あらためて繰り返す。 表現ならびに結社および平和的集会の自由 46.委員会は、表現の自由ならびに結社及び平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には尊重されていないこと、および、締約国が、デモ中の子どもの保護を親に依拠していることに懸念を表明する。委員会は、南部の街であるダルアで、校舎の壁にペンキで反政府的な落書きを行なったとして罪に問われた8~15歳の児童生徒の集団が2011年3月に逮捕されかつ隔離拘禁の対象とされたことを、とりわけ懸念するものである。 47.委員会は、締約国に対し、条約第13条および第15条にしたがい、表現ならびに結社および平和的集会に対する自由の、すべての者(親、教員および治安部隊を含む)による全面的かつ効果的実施を確保するために、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 適切な情報へのアクセス 48.委員会は、子どもが利用可能な書籍および新聞の欠乏により、適切な情報への子どもによるアクセスがしばしば制約されていることに懸念を表明する。メディアおよびインターネットを通じて伝えられる、暴力およびポルノグラフィー関連の有害な情報にさらされることから子どもを保護するために締約国が行なっている努力には積極的側面として留意しながらも、委員会は、メディアならびに文学作品および芸術作品に対して行なわれている政府の検閲が、適切な情報にアクセスする子どもの権利の制限を助長していることを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、とくに新聞、図書館、ラジオおよびテレビへのアクセスを増強することによって子どもの情報へのアクセスを向上させ、かつ子どもが有害な情報から保護されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもが、国境に関わりなく、口頭、手書きもしくは印刷、芸術の形態または子どもが選択する他のあらゆる方法により、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える権利を有することを確保するようにも促すものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 50.委員会は、抗議行動に関連して拘禁されている際に受けた拷問および四肢切断の結果、多くの子どもが死亡したと報告されていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、子どもがいまなお拘禁され、かつ拷問の危険にさらされていると報告されていることも懸念するものである。委員会は、司法の独立の欠如に関して拷問禁止委員会が表明した懸念(CAT/C/SYR/CO/1、パラ12)を共有するとともに、職務中に行なわれた人権侵害について責任を有する治安機関および情報機関を訴追から免除する立法令第14/1969号および第69/2008号が、やはり独立の調査を阻害し、かつ子どもの拘禁および拷問を継続させる助長要因となる可能性があることに、懸念とともに留意する。 51.委員会はまた、一部の学校が締約国の保安隊によって拘禁施設として使われているという一貫した報告があることにも、重大な懸念を表明する。 52.委員会は、締約国に対し、抗議行動に関連して2011年3月以降に恣意的な逮捕および拘禁の対象とされたすべての子どもを即時にかつ無条件で釈放し、学校を拘禁施設として用いるのをやめ、かつ、人道法および区別の原則の遵守を厳格に確保するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、立法令第14/1969号および第69/2008号を廃止し、子どもの恣意的拘禁および拷問の事案を透明、客観的かつ公正なやり方で調査し、かつ、これらの人権侵害の責任者を裁判にかけることも、促すものである。委員会はまた、締約国に対し、拷問の被害を受けた子どもに対してケア、心理社会的回復、再統合および補償のための対応を行なうことも促す。 体罰 53.学校における身体的暴力および言葉の暴力の使用を禁じた教育省通達は歓迎しながらも、委員会は、教員および親による体罰が、刑法および身分関係法第170条によって明示的に認められており、かつ家庭、学校および代替的養護の現場で広く用いられていることを、依然として懸念する。委員会はまた、代替的養護の現場および刑事施設における懲戒措置としての体罰が明示的に禁じられていないことも、懸念するものである。 54.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ37)を想起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 体罰を認めている身分関係法第170条および刑法の諸規定を廃止すること。 (b) 家庭、学校および代替的養護の現場ならびに刑事施設における体罰を、法律により、かつこれ以上遅延することなく、明解に禁止すること。 (c) 体罰を禁ずる法律が効果的に実施され、かつ、子どもの不当な取扱いに責任を負う者に対し、法的手続が組織的に開始されることを確保すること。 (d) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響(身体的および心理的影響の双方)に関する持続的な公衆教育キャンペーン、意識啓発キャンペーンおよび社会的動員キャンペーンを、子ども、家族、コミュニティおよび宗教的指導者の関与を得ながら導入するとともに、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育ておよび規律を促進すること。 (e) 暴力および他の形態の虐待に対する防止戦略の立案および実施において、子どもたちを含む社会全体の関与および参加を確保すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 55.委員会は、子どもの権利法案が採択されれば男女の子どもの監護年齢が18歳に定められる旨の、締約国の説明を歓迎する。しかしながら委員会は、2003年に改正された身分関係法にしたがい、離婚の際に母が監護権を保持できるのは、息子について13歳までかつ娘について15歳までにすぎないことを懸念するものである。委員会はまた、妻には扶養と引き換えに夫にしたがう義務があること、および、子を連れて国外に渡航したいと考える母は、子の父、または父がいない場合には子の父方の親族の承認を求めなければならないことも、懸念する。 56.委員会は、締約国に対し、母および父が子について平等を基礎とする責任を共有すること、および、女子に対する責任と男子に対する責任との間になんらの差異もないことを確保するために必要なあらゆる措置をとるよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、身分関係法の規定を改正して、女性が子の父または子の父方の親族の事前の承認を得ることなく子を連れて国外に移動する自由を認めるよう、促すものである。 家庭環境を奪われた子ども 57.委員会は、現在進められている、代替的養護のためのサービスおよび施設に関する評価を歓迎する。しかしながら委員会は、コミュニティを基盤とする選択肢が依然として著しく限られており、したがって施設措置が頻繁に活用されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、代替的養護施設が十分な訓練を受けた職員を欠いており、かつ労働社会問題省による監視も不十分であることも懸念する。さらに委員会は、親のわかっている孤児と親のわからない孤児が別々の養護施設に隔離されていること、および、孤児院に措置された子どもが養育懈怠、隔離その他の形態の不当な取扱いを受けている事案があることを、深刻に懸念するものである。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに農村部において、コミュニティを基盤とする代替的養護を発展させること。 (b) すべての代替的養護施設が登録され、かつ独立機関により監視されることを確保すること。 (c) 代替的養護の現場で働くすべての職員が十分な訓練を受けることを確保すること。 (d) 親のわかっている孤児と親のわからない孤児が別々の養護施設に隔離される状態を解消すること。 (e) 代替的養護施設への子どもの措置を定期的に再審査し、かつ子どもを自己の措置の再審査に全面的に参加させること。 (f) 施設措置された子どもが虐待または不当な取扱いを受けたすべての事案を調査すること。 (g) 婚外子の遺棄およびその後の施設措置を防止するため、婚外子に適用される法律を見直すこと。 (h) 子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月18日の総会決議64/142付属文書)を考慮すること。 子どもに対する暴力(虐待およびネグレクトを含む) 59.締約国がドメスティックバイオレンスに関する全国的監視機関および家族保護部を設置しようとしていることには留意しながらも、委員会は、国内法にいまなおドメスティックバイオレンスを犯罪とする具体的規定が設けられていないこと、および、家庭内で広く行なわれている虐待およびネグレクトと闘うための具体的措置が限定的であることを、懸念する。 60.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(リュブリャナ(スロベニア)、2005年7月5~7日)の成果および勧告を考慮し、ジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止(ドメスティックバイオレンスの明示的禁止を含む)を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 61.委員会は、特別なニーズを有する人に関する法律第34号(2004年)の公布、障害と闘うための国家計画(2008年)の採択、および、障害のある子どもの状況を向上させるために行なわれた多数の取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どものケアおよびリハビリテーションのためのサービスを提供しているのが主として市民社会組織であること、および、障害のある子どものためのプログラムおよび計画に対して締約国が配分している資源が不十分であることを、懸念するものである。 62.障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害のある子どもが条約上のすべての権利を享受することを確保するとともに、この目的のため、障害のある子どものためのプログラムおよび計画を全面的かつ効果的に実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、促す。委員会は、締約国が、いインクルーシブ教育の質の向上をとくに重視するとともに、非公式な教育プログラム、および、さまざまな障害種別に応じた包括的かつ定期的な教員研修をさらに発展させるよう、勧告するものである。 健康および保健サービス 63.委員会は、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率の削減における締約国の目覚ましい成果、および、母子保健ケア・サービスにすべての人がアクセスできるようにするために締約国が行なっている継続的努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことについて懸念を表明するものである。 (a) 保健サービスへのアクセスに関していまなお地理的格差が存在し、子どもの居住地域によってその健康状態に相当の偏差が生じていて、遠隔地に住んでいる子どもがとくに不利な立場に置かれていること。 (b) 国民総生産に占める保健支出の割合が3.2%を超えておらず、かつ保健に投じられるひとりあたり総支出が減少していること。 (c) 子ども専門病院の数が不十分であること。 (d) 重度の発育阻害状態にある子どもの割合が高いこと。 (e) 母乳育児率がきわめて低い水準にあること。 64.委員会は、締約国が、以下のことを目的とする努力を強化するよう勧告する。 (a) 遠隔地に住んでいる子どもを含むすべての子どもが良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保する目的で、とくにプライマリーヘルスケアを重視しながら、保健部門に配分される財源および人的資源を増加させること。 (b) 子ども専門のサービスを提供する病院を増設すること。 (c) 栄養に関わる教育および相談サービスの質を向上させるとともに、優先的介入の対象となる特定の地域、地区および子ども集団を決定すること。 (d) 国家的な母乳育児委員会を設置し、かつ母乳育児の実践に関するデータを体系的に収集するとともに、同時に、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が執行され、赤ちゃんにやさしい病院が推進され、かつ看護師の養成および研修に母乳育児が含まれることを確保すること。 (e) 引き続き、ユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的協力を求めること。 思春期の健康 65.委員会は、青少年の健康状態を向上させるために締約国が行なっている取り組み(とくに、青少年とともに働く保健従事者を対象として保健省が行なっている研修プログラム、および、デリズールにおける思春期保健センターの設立)を歓迎する。しかしながら委員会は、若者にやさしいリプロダクティブヘルス・サービスの利用可能性が限定されており、かつ、リプロダクティブヘルス、HIV/AIDSを含む性感染症ならびにタバコ、アルコールおよび薬物を消費することによる健康上の影響に関する青少年の知識が不十分であること、および、締約国における青少年の状況に関する情報および統計データが欠乏していることを、懸念するものである。 66.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照するよう求めるとともに、秘密が守られ、かつ若者にやさしい保健サービスの利用可能性を国全域で高め、リプロダクティブヘルス・サービスの利用可能性を増進させ、かつ、思春期の女子および男子を対象とした性教育およびリプロダクティブヘルス教育を促進するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、青少年の薬物濫用、アルコール依存症およびタバコの使用を防止するための努力を強化するよう、求めるものである。 有害慣行 67.委員会は、2009年7月1日の立法令第37号により、女性および女子に対して名誉犯罪を行なった者の刑の免除規定が削除されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、早期婚および強制婚が多数行なわれており、かつこの現象を抑制するための適切な措置がとられていないことを懸念するものである。 68.委員会は、締約国に対し、以下のことを目的とする即時的措置をとるよう促す。 (a) 名誉犯罪の加害者に対し、これらの犯罪の重大性にふさわしい制裁が与えられることを確保すること。 (b) 早期婚および強制婚を禁止するとともに、裁判官に対し、男子の婚姻年齢を15歳まで、かつ女子の婚姻年齢を13歳まで引き下げることを認めた身分関係法の規定を廃止すること。 (c) 早期婚および強制婚の有害な影響に関するすべての関係者(コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む)の感受性および識見を高めることにつながる意識啓発プログラムおよび教育プログラムを立ち上げ、かつ、ジェンダーに配慮した同様の指導用資料および教科書を開発すること。 (d) 早期婚および強制婚を解消するための具体的措置ならびに名誉犯罪の加害者に対して宣告された制裁についての包括的情報を、次回の定期報告書において提供すること。 生活水準 69.委員会は、もっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された家族を保護するために国家社会扶助基金が設置されたことには留意しながらも、貧困の構造的決定要因に対応するためのより持続的な戦略が採択されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、天然資源の劣悪な管理および劣化により、農村部から都市部への絶え間ない移住が生じ、かつ、相当の経済成長率にも関わらず締約国における貧困発生率の増加が助長されてきたことも、懸念するものである。委員会は、生活水準の地域格差とともに、乾燥地帯および亜乾燥地帯に住んでいる子どもおよび家族、遊牧民の子ども、ならびに、劣悪な質の空気および汚染された飲料水にさらされているスラム居住の子どもの貧困状況について、特段の懸念を覚える。 70.委員会は、締約国に対し、もっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された子どもの状況ならびに子どもの生活水準の地域格差の縮減に引き続き焦点を当てながら、貧困および周縁化の構造的決定要因に対応するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利を確保する目的で、天然資源(とくに水資源)の管理を向上させるために必要なあらゆる能力構築措置をとることも、促すものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 71.委員会は、就学、識字および初等教育におけるジェンダー格差解消の分野で多年にわたり達成されてきた相当の進展について、締約国を称賛する。委員会はまた、遠隔地で働く教員に対する奨励金、遠隔地および砂漠地帯の子どもにサービスを提供するための移動学校の導入、ならびに、難民である多数の子どもが教育にアクセスできるようにするための措置およびこれらの子どもを対象とした職業訓練も、歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 高校の中退率および留年率が高く、かつ、とくに早期婚および強制婚ならびに家事労働への女子の参加を理由として、女子のほうが男子よりもはるかに学校を中退する可能性が高いこと。 (b) 学校カリキュラムの質が低く、かつ子どもの生活および将来等との関連性も薄いこと。 (c) 無国籍であるクルド人の子どもが中等学校および大学への就学に際して困難に直面しており、かつ障害を有している場合にインクルーシブ教育を受けられないこと。 (d) 体罰および心理的暴力がいまなお子ども時代のしつけの手段とみなされており、かつ、教員および管理者が代替的形態のしつけおよび規律維持の手段の活用について十分な訓練を受けていないこと。 72.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、女子に影響を与えている不平等および学校への資源の配分との関連で、教育へのアクセスおよび教育に対する権利の全面的享受に関わる諸県間および諸地区間の格差を縮減するための努力を強化すること。 (b) 教育の質を向上させるとともに、学校における留年および未修了を助長する要因に対応するための具体的措置をとることにより、子どもが学校教育を修了することを確保すること。 (c) 中退者、とくに女子および遠隔地の子どもを対象とする適当な職業教育またはセカンドチャンス教育の体制を向上させること。 (d) クルド人の子どもが、障害、ジェンダーその他のいかなる事由に基づく差別もなく、インクルーシブ教育を含む教育に対する権利を効果的に享受できることを確保すること。 (e) 学校における体罰を解消するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、適切な公衆教育および専門家の研修を通じ、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態の規律維持を確保すること。 (f) 学校で子どもにやさしいアプローチを発展させるとともに、子ども、親およびコミュニティによる、意思決定および学校運営への効果的参加を確保すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 庇護希望者および難民である子ども 73.委員会は、難民である子どもが子どもにやさしいセンター、プライマリーヘルスケアおよび教育にアクセスできることを確保するために行なわれている継続的努力について、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、少なくとも7000名のパレスチナ難民(子どもを含む)が、治安部隊が2011年8月に行なったキャンプおよび周辺地域への激しい砲撃により、ラタキアのエルラメル地区に位置するキャンプから避難せざるを得ず、かつこれらの軍事作戦中に数名の難民が殺害された旨の、一貫したかつ裏づけのある報告について深い懸念を覚えるものである。 74.委員会はまた、庇護希望者および難民に関わる法律上および制度上の枠組みがいまなお設けられていないこと、および、難民である子どもおよびその家族が身分証明書類の入手に際して困難に遭遇しているために、場合により、これらの子どもおよびその家族が無国籍となりかつ(または)出身国に強制送還されていることも、懸念する。委員会は、加えて、難民である子どもが送還手続中に家族から分離された事案が報告されていることを懸念するものである。 75.委員会は、締約国に対し、難民キャンプ内外における軍事作戦を中止し、かつ人道機関が難民に全面的にアクセスできるようにするよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、難民および庇護希望者のための国内法の採択手続を加速させることも促すものである。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとることも促す。 (a) 難民である子どもおよびその家族が、その登録および身分証明書類の迅速な処理を保障されることを確保すること。 (b) 子どもまたはその家族構成員を国外追放その他の手段により出身国に強制送還することによって、外国人の子どもをその家族から分離しないようにすること。 (c) 1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。 (d) 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との協力を継続しかつ強化するとともに、子どもの庇護に関する2009年のUNHCR指針を参考にすること。 経済的搾取(児童労働を含む) 76.ディーセントワーク・パイロットプログラムおよびあらゆる形態の児童労働の撤廃のための国家的プログラムの存在には留意しながらも、委員会は、児童労働の現象がとくに農村部で増加していること、および、労働活動に従事するために学校を中退する子どもが増えていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 児童労働の発生状況に関する情報および最新の、細分化されたかつジェンダー別の統計データが利用可能とされていないこと。このことは、この現象に対応する締約国の能力に影響を与えている。 (b) 使用人として子どもを採用することを禁じた法律があるにも関わらず、シリア人の女子ならびに東南アジアおよび東アフリカ出身の女子が、ときには奴隷類似の条件下で家事使用人として働いており、かつ性暴力を含むあらゆる形態の搾取にさらされていること。 (c) 15歳以上の子どもについては危険な労働を行なうことが認められていること。 (d) 法律を執行し、かつ労働法の尊重状況を効果的に監視する労働監察官の能力が弱いままであること。 (e) 家業および農業部門で働く子どもが労働法制による保護の対象とされておらず、そのため搾取および教育に対する権利の否定にさらされることが多いこと。 77.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの経済的搾取を防止するためにいっそう積極的な措置をとること。そのための手段として、とくに、児童労働の力学を理解し、かつ児童労働の根本的原因および危険に全国的に対応する勧告の裏づけとする目的で、信頼のできる有効なデータを収集すること。 (b) 家事労働者として働く子どもが置かれた状況に遅滞なく対応するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、これらの子どもを搾取しかつ虐待する者を訴追すること。 (c) あらゆる部門における労働搾取から子どもを十分に保護し、かつ子どもが危険な労働を行なうことが認められないことを確保する目的で、労働法を改正すること。 (d) フォーマル部門およびインフォーマル部門の双方における児童労働法の実施を効果的に監視する労働監察官の能力を強化すること。 (e) 児童労働を撤廃するためのあらゆる努力に、子どもたちおよび子ども団体代表を含めること。 (f) 家族の生存のために働かなければならない子どもに対し、教育の機会を提供すること。 (g) 公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じて、児童労働の悪影響に関する意識啓発を図ること。 路上の状況にある子ども 78.委員会は、路上の状況にある多数の子どもが複合的形態の虐待および差別にさらされており、かつ、これらの子どもの状況に対応するための適当な、十分なかつ緊急の措置がとられていないことを、懸念する。 79.したがって委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 根本的原因について正確な理解を得る目的で、路上の状況にある子どもの境遇について体系的評価を行なうとともに、次回の報告書で委員会に対して情報を提供すること。 (b) この現象の発生を防止しかつ削減するため、当事者である子どもたちの積極的関与を得ながら包括的政策(そこでは根本的原因への対応が行なわれるべきである)を策定しかつ実施すること。 (c) NGOとの調整を図りながら、路上の状況にある子どもたちに対し、必要な保護、十分な保健ケア・サービス、教育その他の社会サービスを提供すること。 (d) 子どもたちに対し、自分の身を守る方法および搾取する者を告発する方法に関する十分な情報を提供すること。 (e) 家族との再統合が子どもの最善の利益にかなうときは、そのためのプログラムを支援すること。 性的搾取および虐待 80.委員会は、子どもの性的搾取について重い刑罰(刑法で定められた12年以上の収監刑を含む)が規定されていること、および、強姦犯が被害者と婚姻したときはいかなる刑も免除すると定めていた刑法第508条が2011年1月3日の立法令第1号によって廃止されたことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国に在留するイラク人女子で売春を強要される者の人数が増えていること、締約国がますます子どもセックスツーリズムの目的地国と成りつつあること、および、売買春に関与した子どもがしばしば犯罪者として扱われていることを、懸念するものである。 81.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 包括的な戦略を通じて性的虐待および搾取を防止しかつ終わらせるため、あらゆる必要な措置をとること。そのための手段として、とくに、加害者の訴追ならびに公開討論会の開催および公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)の実施を進めること。 (b) 性的虐待および搾取の被害者が犯罪者として扱われず、かつ回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 (c) とくにWHOおよびユニセフの援助を求めること。 売買および取引 82.委員会は、国連国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書が批准され(2009年)、人身取引の禁止に関する立法令第3号が公布され(2010年)、かつ、人身取引被害者のための2つのシェルターがダマスカスおよびアレッポに設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいた委員会の勧告(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1)の実施について締約国が達成した進展が限定的であることを懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) 新法で人身取引の明確な定義が定められておらず、かつ、人身取引の被害を受けた子どもの発見、事情聴取および付託に関する明確な手続が設けられていないこと。 (b) 選択議定書の規定にしたがって子どもの売買および児童ポルノを犯罪化する具体的規定が国内法に存在しないこと。 (c) 一時婚の慣行が根強く残っており、12歳という低年齢の女子までが金銭と引き換えに婚姻のために差し出されていること。 (d) 人身取引関連犯罪を捜査しおよび処罰し、人身取引が行なわれていることについて公衆に情報を提供し、ならびに法執行官を対象として人身取引対策研修を行なうために締約国が行なっている努力が限定的であること。 (e) 人身取引の被害を受けた子どもが売春容疑で告発され、かつ少年拘禁施設に送致されまたは人身取引元の国に送還される事案があること。 83.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいた委員会の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう、求める。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 人身取引対策法を改正して人身取引の定義および付託手続について明確な定めを置くとともに、法執行官を対象として、人身取引対策法に関する研修を体系的に行なうこと。 (b) 以前に勧告されたとおり(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1、パラ15(a))、選択議定書で対象とされているすべての犯罪を明示的に定義しかつ犯罪化する目的で刑法を改正すること。 (c) 一時婚が女子の身体的および精神的健康ならびに全般的ウェルビーイングに与える悪影響に関する子ども、家族およびコミュニティの意識を高める等の手段によって一時婚の問題に対応するとともに、このような婚姻を組織した者に対して法的手続がとられることを確保すること。 (d) 人身取引を防止するための、とくに情報交換を通じた、国際協力、地域間協力ならびに出身国、通過国および目的地国との二国間協力に関する努力を増強すること。 (e) 子どもの人身取引を行なった者を積極的に訴追しおよび処罰し、人身取引の被害を受けた子どもを保護し、ならびに、人身取引の被害を受けた子どもが今後は刑務所または非行少年を対象とする矯正センターに送致されないことを確保すること。 (f) 搾取および人身取引の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するための努力を強化すること。 (g) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての者を対象として、知識を高め、かつ子どもの人身取引の防止に役立ちうる研修および意識啓発プログラムが行なわれることを確保すること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づいたフォローアップ 84.委員会は、子どもの徴募および敵対行為への参加に関連した武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の違反を法律で明示的に禁止し、かつ国際刑事裁判所ローマ規程を批准するべきであるという委員会の勧告(CRC/C/OPAC/SYR/CO/1、パラ9(a)および(d))をあらためて繰り返す。 少年司法の運営 85.委員会は、締約国と国連開発計画との間で、少年司法制度の増進を目的とした「少年司法事業文書」が調印されたこと(2010年2月)に、積極的措置として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 2003年の立法令第52号によって7歳から10歳に引き上げられた刑事責任年齢が、依然として国際的に受け入れられる水準よりもはるかに低い水準に留まっていること。 (b) 少年法(1974年法律第18号)の適用対象が15歳未満の子どものみであること。 (c) 警察から不当な取扱いを受けた子ども、および、更生施設における収容中に強姦その他の形態の性的虐待にさらされた子ども(とくにバブムサラ少年更生施設に収容されている女子)の事例が一般的に報告されていること。 (d) 拘禁施設における子どもと成人との分離が必ずしも保障されていないこと。 (e) 条約の規定に関する法執行官および少年司法制度関係者の知識が依然として限られたままであること。 86.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針を含む他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)に全面的にしたがったものとするべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ53)をあらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢はいかなる場合でも12歳未満と定められるべきではないことを考慮しながら、刑事責任に関する法定年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 少年法(法律第18号)の保護をすべての子どもに拡大すること。 (c) いかなる子どもも、法律に関わることになりまたは法律に抵触した際に虐待および拷問の対象とされないことを、とくに逮捕および捜査の段階において確保すること。 (d) 子どもの拘禁が最後の手段としてのみかつ可能なかぎり短い期間で行なわれること、および、拘禁が法律を遵守して行なわれることを確保すること。 (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (f) 子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。 (g) いずれかの形態で自由を奪われた子どもに対し、措置決定の再審査を受ける権利を認めること。 (h) 専門の少年裁判所を国全域に拡大し、少年司法裁判官を養成し、かつ、警察隊、裁判官およびソーシャルワーカーを対象とする、少年司法制度および拘禁に代わる措置に関する技術的能力および知識を強化することを目的とした包括的な研修プログラムを発展させるための努力を強化すること。 (i) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(国連薬物犯罪事務所、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所およびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 87.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人。このような犯罪には、2011年3月の抗議行動以降に国および国以外の主体によって行なわれたものも含まれる)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 I.国際的および地域的人権文書の批准 88.委員会は、締約国に対し、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約および拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の各選択議定書を含む、すべての中核的人権文書に加入するよう奨励する。 J.フォローアップおよび普及 89.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 90.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 91.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2015年8月13日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 92. 委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/147.html
総括所見:デンマーク(第2回・2001年) 第1回(1995年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.151(2001年7月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2001年5月22日に開かれた第699回~第700回会合(CRC/C/SR.699 and 700参照)において、1998年9月15日に受領したデンマークの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.6)を検討し、2001年6月8日に開かれた第721回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、子どもの状況に関する理解をより明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/DEN/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書が、グリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載しておらず、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがっていなかったことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国との間に持たれた建設的かつ開かれた対話を心強く思うとともに、議論の際に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。委員会は、条約の実施に直接関与する代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利についていっそう十全な評価が行なえたことを認知するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全般的進展について締約国を称賛する。委員会の第1回総括所見および勧告(CRC/C/15/Add.33)を子どものための立法、政策およびプログラムに適用しようとした締約国の努力が留意されるところである。 4.委員会は、国際協力および開発援助の分野における締約国の傑出したコミットメントに、評価の意とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が、主として後発開発途上国への支援として、国内総生産の相当割合を対外援助に配分していることに留意するものである。 5.委員会は、保育施設の質を向上させるため、法律により導入され、かつ自治体および教育専門家と協力しながら行なわれている、子どものケアに関する取り組みを歓迎する。 6.委員会は、子どもに対して体罰を用いる親の権利が1997年に廃止されたことに、満足感とともに留意する。委員会は、この新法について親に情報を提供するために行なわれた全国規模の意識啓発キャンペーンについて、さらなる満足感を表明するものである。委員会は、キャンペーンのフォローアップとしてマイノリティ言語による資料を含める取り組みに留意する。 7.委員会は、国家子ども評議会が1998年に法律によって常設機関とされ、かつ、条約の原則および規定に照らして締約国における子どもの状況を独立の立場から評価する権限を与えられたことに、満足感とともに留意する。 8.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を1997年に批准したことに、満足感とともに留意する。批准によって養子縁組法の改正が必要となり、とくに自己の養子縁組への子どもの参加の拡大が確保されることとなった。委員会はさらに、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO条約(第182号)および就業が認められるための最低年齢に関するILO条約(第138号)を批准したことに留意する。 9.委員会は、締約国が最近、第2回デンマーク若者議会の開催の便宜を図ったことに留意するとともに、若者議員の決定および勧告を検討しかつ回付する内閣の取り組みを歓迎する。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 報告 10.委員会は、報告書が、グリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載しておらず、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがっていなかったことを遺憾に思う。 11.委員会は、次回の定期報告書がグリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載し、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがうことを確保するため、締約国があらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。 留保 12.委員会は、締約国が、手続法に関する常任委員会を通じ、条約第40条2項(b)(v)に対する留保を見直す手続を開始したことに留意する。 13.ウィーン世界人権会議のウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第40条2項(b)(v)に対する留保を撤回する目的で、当該留保の見直しの手続を完了させるよう奨励する。 立法 14.委員会は、法務大臣が、子どもの権利条約を含む中核的国際人権条約をデンマーク法に編入することに関わる利点および不利益について検討するための人権専門家委員会を設置したことに留意する。委員会は、専門家委員会の勧告がまだ完成していないことには留意しながらも、国内法における子どもの権利条約の法的地位について依然として懸念を覚えるものである。 15.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約を含む中核的国際人権文書を国内法に編入することを検討するよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、すべての国際人権文書を平等に重視するよう促すものである。締約国は、この問題に関する専門家委員会の勧告および政府の決定についての情報を次回の定期報告書に記載するよう、勧告される。 国際人権文書の批准 16.委員会は、締約国が現在、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加入の可能性を検討していることに留意する。 17.委員会は、締約国に対し、同条約に加入するよう奨励する。 調整 18.省庁間子ども委員会の委任事項が1997年に更新されたことには留意しながらも、委員会は、条約がまだ省庁間委員会の活動の枠組みとして定められていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子ども政策および子どもプログラムの一般的考慮事項に条約を明示的に含めるために締約国が行なった努力が不十分であることも懸念するものである。 19.委員会は、締約国に対し、条約を省庁間委員会の活動の枠組みとして定めることを検討するよう、奨励する。加えて、締約国は、子どもの権利条約に基づく、子どものための包括的戦略の策定を検討するよう奨励されるところである。 データ収集 20.委員会は、現行のデータ収集機構が、条約のすべての側面に関する細分化されたデータの収集を確保し、かつ、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の評価を効果的に行なうには不十分であることに、懸念とともに留意する。 21.委員会は、条約の実施に関して達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の評価を効果的に行なうため、締約国が、データ収集システムを強化しかつ指標を開発するよう、勧告する。データ収集システムが、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とりわけ脆弱な立場に置かれている子どもをとくに重視しながら18歳未満のすべての子どもを網羅することを確保するための努力が行なわれるべきである。 独立の苦情申立て機構 22.委員会は、締約国が、オンブズマン事務所および電話ホットライン等を通じ、自己の権利侵害に関する子どもの苦情申立てを促進するための多くの取り組みを設けてきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国内のすべての子どもにとってのこれらの苦情申立て機構のアクセス可能性および利用可能性について、依然として懸念を覚えるものである。 23.委員会は、子どもの権利侵害に関する苦情申立てに対応し、かつこのような侵害に対する救済を提供するための独立した苦情申立て機構がすべての子どもにとって容易にアクセスできかつ利用者にやさしいものとなることを確保するため、締約国があらゆる効果的措置をとるよう提案する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもによる苦情申立て機構の効果的利用を促進するための意識啓発の取り組みを強化するよう、奨励するものである。子どものために別個の苦情申立て機構を設けることへの消極的姿勢には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、国家子ども評議会の権限を強化して個別の事案および子どもからの苦情への対応を含めることを検討するか、オンブズマン事務所内に子どもの権利担当部署を設置するよう、奨励する。 条約およびその原則の普及 24.委員会は、学校においておよび子どもとともに働く専門家(教員、学校管理者および警察職員を含む)の間で、インターネット等も通じ、条約の原則および規定を普及するために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家が条約およびそこに掲げられた原則について十分な意識を有していないことを、依然として懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を体系的にかつ継続的に普及し、かつ、条約が学校カリキュラム、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く、社会のあらゆるレベルの専門家集団および行政機関の研修活動に体系的に編入されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 26.委員会は、とくに刑法改正ならびに民族的マイノリティと警察に関するパンフレットの作成および配布を通じ、差別の禁止を促進するために締約国がとった措置を認識する。しかしながら委員会は、一部集団の子ども、とくに民族的マイノリティに属する子ども、子どもの難民および庇護希望者、移住者家族に属する子ども、障害のある子どもならびに社会的および経済的に不利のある家族に属する子どもに対する事実上の差別および排外主義的感情が、教育制度におけるものも含めて引き続き懸念の対象となっていることに、留意するものである。 27.条約第2条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、とくに継続的な意識啓発キャンペーンを組織することにより、マイノリティ集団、とくに移住者家族に属する子ども、子どもの難民、障害のある子どもならびに社会的および経済的に不利のある家族に属する子どもに対する態度の変革ならびに事実上の差別および排外主義的感情の解消のための措置(民族平等委員会を通じての措置を含む)を強化するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 28.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が、締約国の政策およびプログラムの実施において全面的に適用されかつ適正に統合されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、しばしば親の権利のほうが子どもの最善の利益よりも重要だと考えられていることに留意するものである。 29.委員会は、子どものための法律、政策およびプログラムならびに子どもに関わるあらゆる司法上および行政上の決定における子どもの最善の利益の原則の実施を確保するため、締約国がさらなる努力を行なうよう勧告する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利について法律にさまざまな規定が置かれていること、および、この点に関わる法定最低年齢が12歳であることを認識する。しかしながら委員会は、条約第12条の実施が不十分であること、および、12歳未満の子どもは意見を聴かれる権利を有しないことを、依然として懸念するものである。 31.委員会は、裁判手続のみならず、子ども保護サービス、監護手続および子どもの施設措置に関するものを含むさまざまな行政上の決定においても条約第12条の効果的実施を確保するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。さらに、締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがって、かつ条約第12条に照らし、12歳未満の子どもの意見の尊重を効果的に促進しかつ奨励するよう促されるところである。 3.家庭環境および代替的養護 親の指導および責任 32.ひとり親を対象とする金銭的援助および特別援助のプログラム(自治体レベルのものを含む)が確立されたことには留意しながらも、委員会は、ひとり親家族に属する子どもが脆弱な状況に置かれていることを依然として懸念する。民族的マイノリティの家族に属する子どもの状況についても懸念が表明されるところである。 33.委員会は、締約国が、ひとり親家族および民族的マイノリティの家族を支援するプログラムおよび取り組みを強化するよう、勧告する。 家庭における児童虐待およびネグレクト 34.委員会は、性的虐待に関する省庁間作業部会の提案の実施を含め、子どもの虐待およびネグレクトに対応するためにとられたさまざまな措置に留意する。しかしながら委員会は、この現象の規模および実施されたさまざまな措置の効果に関する情報が存在しないことを依然として懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、児童虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトのあらゆる事案の通報および付託に関する効果的システム、とられたさまざまな措置の成果の定期的評価、ならびに、子どもにさらなるトラウマを負わせることを回避するための、十分な訓練を受けた専門家による、子どもにやさしい部門横断型の手続を確保するための法律を含む、包括的な政策を策定しかつ実施するよう、勧告する。 4.基礎保健および福祉 思春期の健康 36.締約国の努力には留意しながらも、委員会は、思春期の子どもが直面している健康上の問題、とくに、とりわけ10代の女子の間で多数発生している摂食障害、薬物、アルコールおよびタバコの濫用ならびに自殺について、依然として懸念する。 37.委員会は、締約国が、とくに若者の自信を強化し、かつ健康に悪影響を及ぼす可能性がある行動を防止するための予防教育、カウンセリングおよびリハビリテーション・プログラムを通じて、思春期の身体的および精神的健康に関わるこれらの懸念に対応するための努力を強化するよう、勧告する。 5.教育、余暇および文化的活動 施設における子どもへの暴力 38.この点に関して締約国が行なっている活動は認知しながらも、委員会は、学校におけるいじめの水準がやや高いこと、および、保育施設その他の施設における虐待(性的虐待を含む)からの子どもの保護が不十分であることを、依然として懸念する。 39.委員会は、締約国が、この点に関する国家子ども評議会の勧告を考慮に入れ、かつ子どもの参加を得ながら、学校における暴力およびいじめを防止しかつこれと闘うための措置を強化するよう、勧告する。さらに、締約国は、子どもに対する犯罪について有罪判決を受けた者が子どものためのケア施設その他の施設で働くことを防止するために必要な措置をとるよう、奨励されるところである。 6.特別な保護措置 少年司法の運営 40.少年司法の分野における締約国の努力には留意しながらも、委員会は、15~17歳の子どもが成人用の拘禁施設に収容され、かつ独居拘禁下に置かれる可能性があることを依然として懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、少年司法を規律する法律および政策が条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のようなこの分野における他の関連の国際基準に全面的に一致することを確保するため、当該法律および政策を見直すよう促す。条約第3条、第37条、第40条および第39条に照らし、委員会はさらに、子どもが拘禁施設で成人から分離され、かつ子どもが独居拘禁の対象とされないこと(これが子どもの最善の利益にかない、かつ裁判所による審査の対象とされる場合を除く)を確保するため、締約国があらゆる効果的措置をとるよう勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、法律に抵触した子どもの更生および再統合のためのプログラムを強化するよう、奨励する。 性的虐待および搾取 42.委員会は、性的虐待に関する情報収集システムを最近確立したことを含め、性的虐待および搾取を防止しかつこれと闘うための締約国が行なっている努力を認識する。委員会は、子どもの虐待および搾取に関する意識が欠けており、かつ児童ポルノに対応するための努力が不十分であることを懸念するものである。委員会はまた、虐待の被害を受けた子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家(警察官、弁護士およびソーシャルワーカーを含む)を対象とした研修の必要性があることにも留意する。 43.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、これらの現象を防止しかつこれと闘うための現行の政策および措置(ケアおよびリハビリテーションを含む)を強化するための努力を増強するよう、勧告する。委員会は、締約国が、虐待および搾取の被害を受けた子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家の研修を導入しかつ(または)強化するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告するものである。 44.委員会は、社会の規範および規則への適応の面で困難を経験している可能性がある15~17歳の子ども、とくに法律に抵触したこれらの子どものための支援を提供する法案が提案されたことに留意する。しかしながら委員会は、このような子どもの状況について依然として懸念を覚えるものである。 45.委員会は、締約国に対し、これらの子どもおよびその親に対して十分な支援を提供する努力を継続し、かつ必要なときは強化するよう、奨励する。 7.選択議定書の批准 46.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書に署名していることを認識する。 47.委員会は、締約国に対し、両選択議定書を可能なかぎり早期に批准するよう奨励する。 8.文書の普及 48.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/189.html
総括所見:モルディブ(第2~3回・2007年) 第1回(1998年)/第4回・第5回(2016年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MDV/CO/3(2007年7月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月23日に開かれた第1233回および第1234回会合(CRC/C/SR.1233 and 1234参照)においてモルディブの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/MDV/3)を検討し、6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回・第3回統合定期報告書および事前質問事項(CRC/C/MDV/Q/3/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3.ハイレベルな代表団の出席により、委員会は、条約の実施を直接担当する人々との率直かつ建設的な対話に携わることができた。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、子どもの権利の実施に積極的な影響を与える、締約国による以下の文書の批准/これへの加入を歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、ならびに、市民的および政治的権利に関する国際規約およびその選択議定書(2006年9月19日)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2006年3月13日)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(2004年4月20日)およびその選択議定書(2006年2月15日)。 (d) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ(2002年5月10日)ならびに武力紛争への子どもの関与(2004年12月29日)に関する子どもの権利条約の両選択議定書。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、締約国(26の環礁に分類される1190のサンゴ島から構成されている)の地形が有する特有の性質、および、多くの場合孤立していてサービス等の提供が困難である環礁に住む子どものために十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで締約国が直面している困難を認知する。 6.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波が引き起こした例外的な自然災害によって締約国の低海抜の島々が大部分壊滅したため、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活に影響が生じていることを認知する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.33 and 37)の検討後に行われたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.91)に対して立法措置および政策を通じて対応するため、締約国が行なった努力に留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに締約国の留保、条約の規定および原則を全面的に遵守するための国内法の調和化、障害のある子ども、婚外子および女子に対する差別、性的虐待を含む子どもの不当な取扱いの防止、栄養不良の蔓延、薬物濫用の問題ならびに少年司法の運営に関わるものについては、十分な対応が行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回・第3回統合報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国が子どもの権利に関わる関連のハーグ諸条約および国際労働機関(ILO)諸条約を批准しまたはこれらに加入することも、勧告するものである。 留保 9.委員会は、条約に対して付されている留保を撤回の方向で見直すよう、ジェンダー・家族省から司法省に対して要請が行なわれたことには関心をもって留意しながらも、条約第14条1項に対する締約国の留保が幅広いものであることを遺憾に思う。条約第21条に対する締約国の留保について、委員会は、締約国が留保において表明している懸念は、第21条が「養子縁組の制度を承認および(または)許容している」に明示的に言及していることによって十分に配慮されていることに留意するものである。 10.委員会は、条約第51条2項および前回の勧告(CRC/C/15/Add.91、パラ6および25参照)に照らし、締約国が、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画にしたがって留保を撤回するために留保の性質を見直すべきである旨を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、同様の留保を撤回し、または条約に対していかなる留保も付さなかった他のイスラム教諸国に示唆を求めるよう勧告するものである。 立法 11.委員会は、たとえば委員会が勧告したように(CRC/C/15/Add.91、パラ33)最低婚姻年齢を18歳と定めた家族法の施行(2001年7月)を確保することによって国内法を条約と一致させるために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約に掲げられた規定および原則を全面的に遵守するために子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正する必要があることについての懸念をあらためて表明するものである。 12.委員会は、締約国が、条約を国内法に編入するとともに、子どもに関わるすべての国内法および行政規則が権利を基盤としたものとなり、かつ条約、その選択議定書ならびに他の人権文書および人権基準の規定および原則と一致することを確保するための努力を引き続き再検討しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、「イスラム法の観点から見たモルディブ共和国におけるCRCの適用」に関する報告書でも勧告されているように子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正するための即時的措置をとるとともに、この法律ならびに子どもに関わるその他の法律および行政規則をもっとも効果的に実施するため、あらゆる必要な人的資源および財源を利用可能とするよう、勧告するものである。 13.刑事司法手続のあらゆる段階における子どもの被害者および証人の保護について、委員会は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)に対して締約国の注意を喚起する。 国家的行動計画 14.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の採択を歓迎するものの、この行動計画を実施するためにとられた具体的措置およびその採択以降に達成された進展に関する情報がないことを遺憾に思う。 15.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」をあらゆる段階で全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面において、子どもを含む市民社会の幅広い参加を確保することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回の定期報告書で提供するよう、要請する。 調整 16.条約の実施に関して、委員会は、再編されたジェンダー・家族省に対して調整の主たる任務が委ねられていること、および、さまざまな関係者および利用可能な諸サービス間の調整を強化する目的で子どもの保護に関する多部門型作業部会も設置されたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、諸環礁に子ども保護システム/センターを設置する計画があることにも留意するものである。 17.委員会は、締約国が、ジェンダー・家族省の再編を、その機能を強化する目的のみならず、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整および評価のための単一かつ部門横断型の機構を設置する目的でも活用するよう、勧告する。このような機関に対しては、調整機関としてのその役割を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源が与えられるべきである。委員会は、締約国が、条約の実施の調整および評価に際し、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家の関与を得るよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地方段階における調整を強化する目的で、十分な人的資源および財源を有する子ども保護システム/センターを諸環礁に設置するための努力を加速させるよう、勧告するものである。 独立の監視 18.委員会は、2003年にモルディブ人権委員会が設置されたこと、および、人権委員会法改正(2006年)によりその権限が強化されたことを歓迎する。委員会は、人権委員会が人権侵害の訴えに関する苦情を受理する権限を有していることに、評価の意とともに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、人権委員会が直面している課題(完全に独立した地位の獲得および一部職種の採用に関わる困難を含む)に懸念とともに留意する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) パリ原則(総会決議48/134付属文書)にしたがい、モルディブ人権委員会が、条約の実施を促進しおよび監視しならびに子どもを含む個人からの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応するための完全に独立した監視機構となることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。 (b) 人権委員会に対して十分な人的資源および財源が提供され、かつ、その関係者を対象とした、委員会の権限に関わる職務を遂行するための定期的な人権研修が行なわれることを確保すること。 (c) 人権委員会、とくに個人を対象としたその苦情申立て機構が子どもにとって容易にアクセスできるものであることを確保すること。 (d) 同委員会がパリ原則にいっそう一致すること、および、同委員会が国内人権機関国際調整委員会による認証を求めることを確保するため、とくに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の助言および援助を引き続き求めること。 20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を考慮するよう奨励する。 資源配分 21.委員会は、条約第4条に照らし、「利用可能な資源を最大限に用いて」子どものための予算資源の配分を行なうことに対して十分な注意が払われていないことを懸念する。委員会は、保健および福祉ならびに教育部門に対する締約国の最近の配分額が、割合としては減少していていることを遺憾に思うものである。 22.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものための予算配分額を監視し、かつ子どもの実際のニーズの充足に関する効率性の水準を定義する目的で、子どもの権利の視点から、とくに社会部門に関わる予算の包括的再検討を行なうよう奨励するものである。 データ収集 23.委員会は、「モルディブ・インフォ」の設立を歓迎するとともに、国連児童基金(ユニセフ)と連携しながら子どもの状況に関する情報を収集するためにジェンダー・家族省が行なっている努力、および、とくにマレにおけるデータ収集の相当の改善に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約で対象とされているすべての分野に関する全国的案データ収集システムが存在しないことから、とくに孤立した環礁に住む子どもとの関連で、十分な政策およびプログラムを採択し、かつ採択された政策の効果を評価する締約国の能力が制限されていることを、遺憾に思うものである。委員会は、十分な訓練を受けた要員が存在せず、かつ国の当局と児童福祉機関との調整が不十分であるためにデータ収集における進展が阻害されていることに、懸念とともに留意する。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約で対象とされているすべての分野についてのデータが収集され、かつ、当該データがたとえば年齢、性別ならびに都市部および遠隔地の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団(すなわち、十分なサービスが提供されていない地域に住んでいる子ども、障害のある子ども、婚外子、暴力、虐待および搾取の被害を受けた子ども、栄養不良の子ども、有害物質濫用の被害を受けた子ども、法律に抵触した子ども等)ごとに細分化されることを確保するため、子どもに関する全国的な中央データベースを設立し、かつ条約にしたがった指標を開発するための努力を強化すること。 (b) これらの指標および収集されたデータを、条約を実施するための政策およびプログラムの立案を促進する目的で活用すること。 (c) 関連の専門家集団を対象として、データ収集に関する研修を引き続き行なうとともに、国および地方のレベルで子どもの権利に関与するさまざまな政府機関および政府機構間の調整を強化すること。 (d) 現在進められているユニセフの国別協力プログラムに関して、ユニセフに対し、細分化されたデータの収集および管理を向上させるための技術的協力を引き続き求めること。 条約の普及/研修 25.委員会は、条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力(たとえば2005年のラマダーン月にクイズ番組形式で行なわれたもの)を心強く思う。しかしながら委員会は、子どもの市民的権利および自由ならびに国際人権基準一般の普及およびこれらに関する意識啓発を、体系的なかつ対象を明確にしたやり方で図るためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が第1回報告書および(または)委員会の総括所見を公刊せず、公衆一般の間で普及もしていないことを遺憾に思う。 26.委員会は、締約国が、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約に関する情報を体系的に普及するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。委員会は、締約国が、専門家を対象として、条約の規定および原則ならびに国際人権基準一般に関する、対象の明確な定期的研修を行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、メディアに対して子どもの権利についての情報を普及するよう奨励し、このようなやり方で子どもの権利に関する公衆一般の意識を促進することも勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの市民的権利および自由に注意を払いながら、モルディブのすべての子どもに対して条約を入手可能としかつ周知させるための具体的措置をとるとともに、この点に関してユニセフと引き続き協力するよう、勧告するものである。 非政府組織との協力 27.ジャーニー(薬物依存者の回復を目的としてコミュニティを基盤とするアフターケアおよび再発防止の取り組みを行なう、モルディブで初めてのNGO)に対する金銭的および技術的支援のような、政府機関と非政府組織との連携の例には留意しながらも、委員会は、非政府組織との協力をさらに促進しかつ強化すべきであることに留意する。 28.委員会は、市民的権利および自由との関連も含めて条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調し、非政府組織とのいっそう緊密な協力を奨励する。委員会は、締約国が、市民社会組織の設立を促進するとともに、条約実施のあらゆる段階を通じて、非政府組織(とくに権利を基盤とするもの)ならびに子どもともにおよび子どものために活動する市民社会のその他の部門の関与およびエンパワーメントをいっそう制度的に進めるよう、勧告するものである。 国際協力 29.委員会は、ジェンダー・家族省が家族および子どものために実施しているプログラムおよびプロジェクトの資金が、ほぼ完全にユニセフ、国連人口基金(UNFPA)、国連開発計画(UNDP)ならびにその他の国際的な政府間機関および非政府組織ならびに二国間パートナーによって拠出されていることに、留意する。 30.これとの関連で、委員会は、締約国が、国際的、地域的および二国間協力の枠組みにおける措置を引き続きとる一方、同時に、当該協力を通じ、条約実施のための制度的体制の強化に努めるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実施のために充てられる国際支援の金額および割合を年次ごとに明らかにするよう要請するものである。 2.子どもの定義(第1条) 31.締約国が子どもの定義に関する法定年齢および婚姻に関する最低法定年齢を16歳から18歳に引き上げたことには満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国の法律が、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関して条約その他の関連の国際基準と全面的には一致していないことを懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、子どもに関わるすべての分野について、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関わって、明確に定義された最低年齢を法律で定めるよう促す。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、婚外子が平等な権利を与えられておらず、かつ日常生活で事実上および法律上の差別に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの子どもが実父に関する情報への法的アクセスを否定されており、かつ、父の名を名乗ることも父方からの相続もできないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、現行の命名習慣によって婚外子にさらなるスティグマが付与されていることにも、懸念とともに留意する。 34.第2条にしたがい、委員会は、締約国が、その管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、とくに実父に関する情報へのアクセス、父親の姓に対する権利および父方からの相続に対する権利との関連で婚外子に対するいかなる差別も解消するため、締約国が法律を改正するよう勧告するものである。加えて委員会は、締約国に対し、婚外子のスティグマに終止符を打つために立法上、政策上および教育上の措置(感受性の強化および意識啓発を含む)を活用するよう奨励する。 35.男女平等の問題に対応するため、「モルディブ・ビジョン2020」等を通じて締約国が行なっている努力にも関わらず、委員会は、女性および男性の役割および責任に関する固定的態度が根強く残っていることにより、女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受がいまなお阻害されていることに、引き続き失望を覚える。とくに委員会は、一部の宗教的集団の間で女子を学校に行かせない傾向が強まっていることに、懸念とともに留意するものである。 36.委員会は、締約国が引き続き、女子が直面している諸問題に対応し、かつ女子および男子の平等に関するキャンペーンおよび住民の意識喚起を進めるよう、勧告する。委員会は、女子に対する差別を防止しおよび解消しならびにこの点についてコミュニティを指導するための努力を支えるうえで、地域の指導者、宗教的指導者その他の指導者がいっそう積極的な役割を果たすよう求めることを、提案するものである。委員会はまた、締約国が、とくに女性差別撤廃委員会から2007年1月に勧告されたように(CEDAW/C/MDV/CO/3、パラ17-18)学校における教科書および教材の開発を図ることによって、社会における女性の包摂的役割を促進することも、勧告する。 37.委員会は、障害のある子どもが直面している事実上の差別について依然として懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもによる社会サービスおよび保健ケアサービスへのアクセスが限定されており、かつこのような子どものためのインクルーシブな教育の機会がきわめて少ないことに、懸念とともに留意するものである。加えて委員会は、社会的スティグマが障害のある子どもの取扱いに影響を及ぼし続けており、かつ社会に参加するこのような子どもの能力を制限しているという締約国の懸念を共有する。 38.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しかつ禁止するとともに、法律第9/91号第5条および国内法のその他の関連規定を実施することによって、障害のある子どもが生活のあらゆる分野に全面的に参加する平等な機会を確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、あらゆる関連の政策立案および国家的計画に障害の諸側面を含めるよう勧告するものである。 39.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が行なった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 40.子どもの権利保護法(法律第9/91号)が条約第3条の精神を体現していることには留意しながらも、委員会は、国内の法律および政策においてこの原則に十分な注意が向けられておらず、かつ、子どもに関わる意思決定(たとえば監護に関する決定)においてこの原則が第一次的に考慮されてないことを、懸念する。委員会はまた、この原則の重要性に関する、政策立案者、立法者ならびに規定、規則および政策を執行する司法職員および行政職員の意識が低いことにも、懸念とともに留意するものである。 41.委員会は、締約国が、子どもに関わるすべての法律および実践に条約第3条を全面的に編入するとともに、子どもの最善の利益の原則の意味および実際の適用に関する意識啓発を図るよう、勧告する。委員会は、条約の主旨、すなわち子どもは自分自身の権利の主体であるという考え方が国内法に十分に反映され、かつ、子どもに関わるすべての意思決定(監護に関する決定を含む)において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、締約国が法律を批判的に見直すよう勧告するものである。 生命、生存および発達に対する権利 42.委員会は、婚外妊娠に対する強い社会的非難が不衛生な環境での妊娠中絶および嬰児殺の増加につながっていることを示唆する報告に、懸念とともに留意する。 43.委員会は、締約国が、条約第6条の全面的に実施に努めるとともに、婚外子の母親を支援する等の手段により、嬰児殺の防止および抑止ならびに婚外子である乳児を保護するための措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、婚外妊娠から生ずるいかなる悪影響も解消し、かつ社会の態度を変革する目的で、教育および意識啓発のプログラムを導入するよう勧告するものである。 子どもの意見の尊重 44.委員会は、少年司法の運営の際の議論に対するすべての当事者、とくに子どもの参加を促進する目的で締約国が家族会議を導入したこと、および、教育法案において、自己の教育に影響を与える決定への子どもの参加が奨励されていることに、評価の意とともに留意する。家族法(法律第4/2000号)において、子どもに対し、自己の権利に影響を及ぼす可能性があるいかなる手続においても意見を聴かれる権利が定められていることには留意しながらも、委員会は、法律と実務との間に乖離があることを懸念するものである。委員会は、司法手続において意見を聴かれる子どもの権利が基本的に監護事件に限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、モルディブにおける一般的慣行において子どもの表現の自由が奨励されていないことにも、懸念とともに留意するものである。 45.条約第12条に照らし、かつ、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対し、その権利に影響を及ぼす可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる行動(地方レベルにおけるものも含む)において意見を聴かれる権利をその子どもの年齢および成熟度にしたがって認める目的で、家族法(法律第4/2000号)の実施を強化するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励する目的で、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに教員およびソーシャルワーカー)ならびに市民社会(コミュニティの指導者、宗教的指導者および非政府組織を含む)の関与を得ながら、体系的なアプローチおよび政策の発展に努めること。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 46.出生登録データベースの設置および親の意識啓発等の手段により出生登録制度を改善しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、現行の出生登録制度が引き続き困難に遭遇していることに、懸念とともに留意する。 47.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が、とくに出生登録の必要性について世論を敏感にしかつ動員するための努力を強化することならびに出生登録データベースおよび出生登録担当者の研修を発展させることによって、出生登録制度を引き続き改善するよう勧告する。当面、出生を登録されていない子どもおよび公式の身分証明書類を持たない子どもに対しては、適正な登録がなされるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスが認められるべきである。 宗教の自由 48.委員会は、締約国の憲法およびその他の法律規定が宗教的一体性を基礎としており、イスラム教以外のいかなる宗教の実践も禁じられていることに留意する。宗教の自由に関する特別報告者が2006年8月にモルディブを訪問した際の知見(A/HRC/4/21/Add.3参照)および締約国が条約第14条に付した留保を参照しつつ、委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が全面的には尊重されかつ保護されていないことを懸念するものである。 49.条約第2条および第14条に照らし、委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進することにより、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するよう、勧告する。 結社および平和的集会の自由 50.委員会は、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを懸念する。 51.委員会は、締約国が、条約第15条にしたがい、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利の全面的実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもたちに対し、自らが主導して団体を結成することを奨励するよう、勧告する。 情報へのアクセス 52.委員会は、国内外の多様な情報源からの情報および資料へのアクセスが、締約国の子どもにとって限られていることを懸念する。委員会は、環礁に図書館が設けられていないため、読み物への子どものアクセスがきわめて制約されていることに、特段の懸念とともに留意するものである。 53.委員会は、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的福祉ならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスを向上させるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、オンライン媒体等も通じ、環礁に住んでいる子どもが子ども向けの書物および雑誌にアクセスできるようにすることを、勧告するものである。 54.委員会は、締約国が、メディアに対し、子どもの権利(子どものプライバシー権を含む)を尊重しながらよりよい報道を行ない、かつメディア番組への子どもたち自身の参加を促進する目的でいっそう多くの子ども向け作品を制作することを奨励するよう、勧告する。 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 55.委員会は、新刑法案第44条で家庭、学校および施設における子どもの体罰が合法化される旨の情報について懸念を覚える。委員会はまた、条約第37条(a)に反し、締約国の適用可能な法律のもとで、第二次性徴期に達した者は笞打ちの対象とされる可能性があることも、深刻に懸念するものである。 56.新刑法案の検討状況に照らし、委員会は、締約国に対し、18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の体罰(犯罪に対する刑としての体罰を含む)の対象ともされず、かつ、家庭、代替的養護の現場および少年施設、学校ならびに職場環境における、しつけおよび規律としての体罰が法律で禁止されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会は、子どもが有する、人間の尊厳および身体的不可侵性の尊重に対する平等なかつ不可譲の権利に直接抵触するこの慣行を解消するため、締約国が、積極的な教育プログラムおよび研修プログラムならびに意識啓発キャンペーンなど、他の適切な措置をとるよう勧告するものである。最後に委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)に対して締約国の注意を喚起する。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 親の責任 57.委員会は、たとえば離婚率の高さによって引き起こされている家庭の不安定さが、効果的な子育てに悪影響を及ぼしてきたことを懸念する。 58.締約国は、条約第18条に照らし、とりわけ、親の指導および父母の共同責任に関する親(とくにひとり親)向けの研修を含む支援の提供を通じ、家庭に関する教育および意識を発展させる努力を強化するよう奨励される。 代替的養護および施設養護 59.委員会は、子どもの養護および保護に責任を負う公私のすべての施設、サービスおよび便益に関する基準を定め、かつ子どもの最善の利益の原則を強調する、「モルディブにおける18歳未満の子どものための施設およびグループホームについての指針」の起草を歓迎する。委員会は、2004年にビリンギリで新たな子どもホームが設立されたこと、および、ジェンダー・家族省がモルディブにおける養子縁組および里親委託(カファラ)について検討する実現可能性評価を実施したことに、留意するものである。委員会は、親および保護者が金銭的扶養を行なえないこと、離婚、別居および再婚によって家族構造が変化しつつあること、ならびに、家庭で子どもの虐待およびネグレクトが生じていることなどを含むいくつかの理由により、代替的養護を必要とする子どもの人数が増えていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、発展中である締約国の代替的養護制度が、これらの子どものニーズに対応するうえで複合的な課題に直面していることにも、懸念とともに留意するものである。 60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが代替的養護に措置されることを防止するための、学際的アプローチに基づいた包括的政策(適切な法律、家族への金銭的援助および補足的サービス制度を含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 代替的養護(里親養護、入所型養護、その他の形態の代替的養護)への子どもの措置が、権限のある学際的専門家集団によって慎重に実施される、子どものニーズおよび最善の利益に関するアセスメントに基づいて行なわれることを確保すること。 (c) 恣意的な措置および裁量に基づく措置を避けるため、子どもを代替的養護に措置する旨の決定が、権限のある公的機関によってかつ法律に基づいて行なわれ、かつ司法審査の対象とされること、および、条約第25条にしたがって措置が定期的再審査の対象とされることを確保すること。 61.委員会は、条約で認められた諸権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払いながら、家族/コミュニティを基盤とする代替的養護のような伝統的里親養護制度を発展させるよう奨励する。最後に委員会は、親のケアを受けていない子どもに関する委員会の一般的討議(2005年9月)の際に採択された勧告(CRC/C/153、パラ636-689)に対して締約国の注意を喚起するものである。 暴力、虐待およびネグレクト、不当な取扱い 62.委員会は、締約国が子どもヘルプライン・サービスの設置を進めている旨の情報を歓迎する。委員会は、締約国における子どもに対する暴力、児童虐待(性的虐待を含む)および子どもの不当な取扱いの深刻な問題に対応するためにとられている措置が不十分であることを、遺憾に思うものである。委員会は、法的枠組みにおいて性的虐待からの全面的保護が提供されておらず、かつ挙証責任も被害者に転嫁されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、ドメスティックバイオレンスがモルディブ社会で広く容認されていること、および、モルディブ法で家庭における体罰が明示的に禁じられていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家が、子どもの虐待および不当な取扱いの事案を発見し、通報しかつ処理するための十分な訓練を受けていないこと、および、メディアが子どもの保護に関わる問題をセンセーショナルに取り上げ、被害者に付与されるスティグマおよび恥辱を悪化させていることに、懸念とともに留意する。 63.条約第19条その他の関連規定に照らし、かつ子どもと暴力に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/100、パラ866およびCRC/C/111、パラ701-745)を考慮に入れながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力(家庭における性的虐待を含む)を禁止する目的で、この問題の規模および性質ならびに子どもに対する暴力に対応するための法的措置の効果を評価する、家庭におけるドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待についての全国的研究を行なうこと。 (b) 「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の一環として、ドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待を防止しかつこれに対応するための包括的な国家的戦略を策定するとともに、態度の変革に寄与する十分な措置および政策をさらに採択すること。 (c) 親ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカーおよび裁判官など)を対象として、子どもの虐待および不当な取扱いの発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。 (d) 苦情を受理し、監視しおよび調査し(必要なときの介入を含む)、ならびに、虐待された子どもが法的手続で被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら不当な取扱いの事案を訴追するための、効果的な手続および機構を設置すること。 (e) 暴力および虐待の被害を受けたすべての子どもが、十分なケア、カウンセリング、ならびに回復および再統合のためのサービスをともなう援助にアクセスできることを確保すること。 (f) 暴力、虐待および不当な取扱いの被害を受けた子どもの報道にメディアが前向きな形で関与することを奨励しかつ促進するとともに、メディアが子どものプライバシー権を全面的に尊重することを確保すること。 (g) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 64.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南アジア地域協議(パキスタン、2005年5月19~21日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの関与を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) ユニセフ、OHCHRおよびWHOの技術的援助を求めることを検討すること。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 65.委員会は、若干の関係者とともに国家障害政策を起草するために締約国が行なっている努力を心強く思う。しかしながら委員会は、障害を発見し、かつ障害のある子どもに早期介入サービスを提供するための努力が締約国では十分でない可能性があることを、懸念するものである。委員会は、十分かつ適切なサービス、財源および訓練を受けた専門の人材が存在しないことが、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することに関わる重要な障壁であり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、利用可能なほとんどのサービスは標準化されておらず、かつ十分な監視および評価の対象ともされていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会は、普通教育に包摂されている障害児の人数がきわめて限られていることを遺憾に思う。加えて委員会は、回復のためのサービスを提供している市民社会組織が十分な人的資源、技術的資源および財源を有していないことに、懸念とともに留意するものである。 66.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する十分な統計データを収集するとともに、社会における障害者の機会均等を促進する、障害に関する包括的かつ具体的な国家的政策を策定するにあたってそのような細分化されたデータを活用すること。 (b) 障害のある子どもが、十分なかつ標準化された社会サービスおよび保健サービス(早期介入サービス、心理サービスおよびカウンセリング・サービスを含む)ならびに十分な物理的環境、情報およびコミュニケーションにアクセスできるようにすること。 (c) 障害のある子どものためのサービスの質を監視しかつ評価するとともに、利用可能なすべてのサービスについての意識啓発を図ること。 (d) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (e) 島のコミュニティが独自のリハビリテーション・プログラムおよび親支援グループを設置することを奨励しかつ援助する目的で、CARE協会その他の市民社会組織と連携しながらコミュニティ・リハビリテーション・プログラム(CBR)を支援しかつ拡大すること。 (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分に訓練されることを確保すること。 (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書に署名し、かつこれを批准すること。 (h) とくにユニセフおよびWHOとの技術的協力を追求すること。 健康および保健サービス 67.委員会は、拡大予防接種プログラムの成功を歓迎するとともに、5歳未満児死亡率および乳児死亡率の削減に関する締約国の進展に評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、マレと諸環礁間で削減率に相当の差があることに、懸念とともに留意するものである。ユニセフの支援を得てコミュニティ基盤型の栄養教育・発育監視システムが設けられていること、および、締約国が2015年までに低体重児の割合を半減させるというMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成できる可能性が高い見込みであることは歓迎しながらも、委員会は、モルディブにおける子どもの栄養不良率が高いことを懸念する。委員会は、締約国が、世界のどこよりも地中海貧血症(遺伝性の血液疾患)の発生率が高い国のひとつとして知られていることに留意する。加えて、妊産婦保健ケアの質および利用可能性、伝統的医療慣行の蔓延、感染症によって引き起こされる脅威、ならびに、多くの小島における必須医薬品の欠乏が、懸念の対象となるところである。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施する目的で、適当な資源が保健部門に配分されること、ならびに、締約国が子どもの健康状態を向上させるための包括的な政策およびプログラムを策定しかつ実施することを確保すること。 (b) とくに産前産後保健に関わる良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障することにより、乳児および5歳未満児の死亡を削減するための措置(助産婦および伝統的産婆の研修プログラムを含む)を引き続きとること。 (c) 健康的な摂食習慣の教育および促進を通じ、子どもの栄養状態を改善するための努力を強化すること。 (d) 国内全域の母子が良質なプライマリーヘルスサービスにいっそうかつ平等にアクセスできることを促進するとともに、とくにより小さな島々に住んでいる子どもが保健ケアおよびカウンセリングならびに必須医薬品にアクセスできることを確保する目的でコミュニティヘルスワーカーのネットワークを確立すること。 (e) 引き続き、地中海貧血症の子どもに十分な治療および保健サービス(移動保健班の活用等によるものも含む)を提供し、かつ、地中海貧血症の治療にかかる高額の負担をまかなえるよう家族その他の養育者に対して金銭的支援を提供すること。 (f) 引き続き、この問題に関してとくにWHOおよびユニセフと協力し、かつその技術的援助を求めること。 思春期の健康 69.全般的に、委員会は、締約国において青少年の性的な発達、行動、関係および態度に関する知識が限定されていることを懸念する。委員会は、望まない妊娠および早すぎる妊娠を防ぐ方法ならびに性感染症(STI)の予防方法に関する情報およびサービスについての知識およびこれへのアクセスが限られていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、親の同意を得ずに法律上および医療上の相談を行なうことができる年齢が18歳であることも遺憾に思う。 70.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年の性的な発達、行動、関係および態度も含む包括的な全国的若者研究を実施するとともに、この研究の結果に基づき、青少年に対し、そのプライバシーを尊重しながら、適合を図った、かつ若者に配慮した保健サービスおよびカウンセリングを提供すること。 (b) 学校および青少年が頻繁に訪れる他の適当な場所で青少年の健康を促進する(性教育およびリプロダクティブヘルス教育も含む)とともに、教員が性およびリプロダクティブヘルスに関わる問題について話し合うための十分な訓練を受けていることを確保すること。 HIV/AIDS 71.委員会は、包括的な「国家AIDS統制プログラム」が1987年に開始されたこと、および、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」において、とくに、乳児および青少年のHIV/AIDS感染件数を削減し、かつ、同世代による、とくに若者に向けたHIV/AIDS情報にアクセスできるようにすることが目指されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、HIV/AIDSおよびその予防に関する意識啓発のために締約国がイスラム問題最高評議会と共同で行なっている努力にも、評価の意とともに留意するものである。締約国におけるHIV/AIDS有病率が低いことには留意しながらも、委員会は、移動性の高さ(教育および就労の目的で国外に行くモルディブ人が多い)、薬物濫用の増加、国外観光旅行の成長および観光労働者の増加、ならびに、環礁における保健サービスへのアクセスの制約のような、既存のリスク要因について懸念を覚える。 72.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(注1)を考慮しながら、以下のを措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの罹病および拡散を防止するため、「国家AIDS統制プログラム」を実施するための努力を強化すること。そのための手段としては、たとえば、前述した既存のリスク要因のすべてに対応するため同プログラムを改訂すること、および、青少年に対し、学校および青少年が頻繁に訪れる他の場所において、HIV/AIDS、その感染経路、治療および予防措置に関する正確かつ包括的な情報を提供することなどが挙げられる。 (b) 子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保するとともに、子どもが、要請があるときは子どものプライバシーが全面的に尊重される、子どもに配慮した、かつ秘密が守られるHIV/AIDSカウンセリングにアクセスできることを確保すること。 (c) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めること。(注1)HR/PUB/06/9, United Nations publication (sales No. E.06.XIV.4)(オンラインで右記からも入手可能:http //www.ohchr.org/english/issues/hiv/docs/consolidated_guidelines.pdf) 生活水準 73.委員会は、モルディブにおける貧困削減のための締約国の努力が功を奏していることを心強く思うとともに、「ビジョン20/20」、第7次国家開発計画および第1次貧困削減戦略文書(PRSP)を含む、住民の生活水準を向上させるための国家的な諸戦略および諸計画が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、締約国が、世界銀行と連携しながら、貧困下で暮らしている子どものニーズに対応する社会的セーフティネット・プログラムを策定中であることにも留意するものである。しかしながら委員会は、所得水準の地域格差が大きく、北部環礁が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域であることを懸念する。委員会はまた、子どもの多い世帯が最貧層に属していること、および、多くのセーフティネット・プログラムが、しばしば臨時に実施されかつ戦略枠組みを欠いており、低所得家庭に保護を提供できていないことにも、留意するものである。 74.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、マレと諸環礁との間にある地域格差および北部環礁と南部環礁との間で増大しつつある格差に対応することにより、効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分すること。 (b) とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を実施しかつ監視する能力の増進を図ることにより、貧困下で暮らしている住民の生活水準に対応するための努力を強化すること。 (c) セーフティネット・プログラムに対する年間支出を増加させ、かつもっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象とするセーフティネット・プログラムを開発することにより、貧困下で暮らしている子どもおよび家族の支援を目的とした、使途指定による資金および具体的援助を提供するための努力を強化すること。 (d) 貧困下で暮らしている子どもに対し、社会サービス、保健サービス、教育および十分な住居へのアクセスが提供されることを確保すること。 (e) 貧困下で暮らしている子どもに対し、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減プログラムを計画しかつ実施する際に、意見を聴かれかつ意見を表明する機会を提供すること。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.委員会は、2004年12月のインド洋津波によってモルディブの数百の学校(学校用家具、校内設備および書籍を含む)が損壊したことを認知する。委員会は、国際社会、国連専門機関(とくにユニセフおよびユネスコ)、ドナー諸国、非政府組織および地方コミュニティと連携しながら、学校の再建および整備のために迅速な措置がとられたことについて、締約国を称賛するものである。 76.委員会は、人が住んでいるすべての島で無償の初等教育が利用可能とされており、かつ初等学校就学率および識字率が高いことに、満足感とともに留意する。締約国が法律で初等教育を義務化しようとしていることには留意しながらも、委員会は、この点に関わる立法プロセスに時間がかかっていることを遺憾に思うものである。委員会は、バウチャー・プログラムが実施されているにも関わらず、教科書および学校用制服の費用が低所得家庭にとって負担となっており、教育に対する子どもの平等なアクセスを危うくしていることに、懸念とともに留意する。中等教育に関して、委員会は、その利用可能性が限られており、かつ就学率がいまなお満足のできる水準に達していないことを懸念するものの、2010年までにすべての子どもが中等学校にアクセスできるようにするために締約国が行なっている努力を心強く思うものである。委員会は、職業教育が国家的優先課題のひとつに位置づけられており、かつ2006年から中等学校の選択科目として導入されたことに留意する。委員会は、学校で不適切な行動をした子どもが最後の手段として退学させられる可能性があることを、懸念するものである。 77.委員会は、学校教科書、カリキュラムおよび学校運営においてジェンダーに関わる先入観および固定観念が見られること、ならびに、適切な衛生設備(男女別のトイレを含む)が設けられていないことにより、教育、とくに中等学校への女子の完全参加が阻害されていることを懸念する。 78.条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を引き続き配分するよう、勧告する。 (a) 初等教育を義務化する目的で教育法の承認および制定を急ぐとともに、7年間の初等学校の枠を超えて義務教育を拡大することを検討すること。 (b) たとえば追加的費用をまかなうためのバウチャー・プログラムを強化することにより、すべての子どもがいかなる金銭的障害もなく平等に教育にアクセスできることを確保すること。 (c) 学校教科書からジェンダーに関わる先入観および固定観念を取り除き、かつすべての学校で女子用の衛生設備が整備されることを確保するとともに、学校管理者および学校職員を対象としてジェンダー研修も行なうこと。 (d) たとえば寄宿学校の設備を提供することにより、中等教育の利用可能性および中等教育就学率を高め、かつ中等教育へのアクセスを促進するための漸進的措置を引き続きとること。 (e) 中等学校段階における職業訓練の便益を拡大すること。 (f) 教育に対する子どもの権利を確保する目的で、退学以外の手段で子どもを懲戒する方法および手段を見出すこと。 (f)〔ママ〕 教育部門をさらに改善する目的で、とくにユネスコおよびユニセフとの協力を追求すること。 79.委員会は、ユニセフの乳幼児期発達プログラムに留意するとともに、子どもの約半数が初等前教育施設に就学していることに留意する。委員会は、マレと諸環礁との間に初等前教育へのアクセスに関する地域格差があること、初等前教育が非公式なものとして位置づけられていること、および、訓練を受けた教員が欠乏していることに関する締約国の懸念を共有するものである。 80.委員会は、締約国に対し、初等前学校教育の位置づけを公式なものとし、かつすべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにするよう、奨励する。委員会は、締約国が、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(CRC/C/GC/7)を考慮に入れることにより、就学前教育施設および早期の学習機会に関する親の意識および動機を高めるとともに、乳幼児期教育を促進し、発展させ、かつ調整する(教員の養成および研修を含む)ための全国的機構を設置するよう、勧告するものである。 教育の目的 81.「良質教育プログラム」、および、ユニセフによる教員リソースセンターの設置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、訓練を受けていない教員の割合が高いために教育の質に深刻な影響が生じていること、および、政府立学校とコミュニティ学校およびマレの学校と諸環礁の学校との間に地域格差があることに、懸念を表明する。委員会はまた、人権教育がカリキュラムの不可欠な一部とされていないことにも、懸念とともに留意するものである。 82.条約第29条に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教員を対象として適切な着任前研修および現職者研修を行なうことを通じ、マレおよびすべての諸環礁の政府立学校およびコミュニティ学校のいずれにおいても教育の質を向上させるための努力を、さらに強化すること。 (b) 教員に対してしかるべき生活賃金を確保するとともに、たとえばメディアを通じて教育職の世評を高めるように努めること。 (c) すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育、とくに子どもの権利に関する人権教育を含めること。 (d) とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織との技術的協力を引き続き追求すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 83.委員会は、子どものスポーツおよび文化的活動を推進するために青少年スポーツ省がとっている措置にも関わらず、子どもの遊び、休息および余暇が締約国において全体的には支持されていないことを懸念する。 84.条約第31条に照らし、委員会は、締約国に対し、休息、余暇および遊びに対する子どもの権利の実施(子どものための遊び場の創設を含む)に対していっそうの注意を払いかつ十分な資源(人的資源および財源の双方)を配分するよう、奨励する。委員会は、締約国が、親その他の養育者を対象として、子どもの遊びの奨励を目的とした、創造的遊びおよび探索的学習の価値に関する研修を行なうよう、勧告するものである。 8.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条および第30条) 経済的搾取(児童労働を含む) 85.委員会は、モルディブが国際労働機関(ILO)への加盟およびILO諸条約の批准を検討している旨の、締約国から提供された情報に留意する。14歳未満の子どもの雇用が一般的に禁じられている(法律第9/91号)ことに関わりなく、委員会は、児童労働の使用を防止し、かつ経済的搾取、とくに危険な労働から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。しかしながら委員会は、新たに作成された労働法案が2006年2月に議会に提出されたことに留意する。 86.経済的搾取から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことから、委員会は、職を求めてまたは家事労働者として働くために諸環礁からマレへやってくる子どもが多いことを深刻に懸念する。加えて委員会は、マレにおいて中等教育を提供する寄宿学校の数が不十分であることから、子どもが家庭に寄宿し、かつ部屋および食事の対価として家事を行なうことを余儀なくされていることに、懸念とともに留意するものである。 87.条約第32条その他の関連条項にしたがい、委員会は、締約国に対し、ILOに加盟し、かつ就業が認められるための最低年齢(第138号)ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動(第182号)に関する両ILO条約を批准するとともに、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 労働法の承認および制定を速やかに進めるとともに、労働法の規定が、条約の規定および原則ならびに最低就労年齢および労働条件に関する国際労働基準に全面的に一致することを確保すること。 (b) 新労働法の規定で、この〔児童労働の〕現象がより蔓延しているインフォーマル部門で働く子どもも対象とされることを確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないこと、および、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限が労働監察制度に与えられることを保障する目的で、労働監察制度を改善すること。 (d) 学業中の子どもがマレにおける家庭寄宿の対価として経済的な搾取および虐待の対象とされることを防止するため、子どもが適切かつ良質な寄宿学校および安全なかつ監視の対象とされる家庭寄宿にアクセスできるようにするとともに、マレ以外の他の環礁に寄宿学校施設を建設すること。 (e) ILO/IPEC〔児童労働撤廃国際計画〕の技術的援助を求めること。 麻薬および向精神薬の不法な使用 88.委員会は、モルディブにおいて薬物依存の問題が急速に拡大しつつあることを深刻に懸念する。委員会は、薬物を最初に使用する平均年齢は12歳であるものの、それより幼い子どもでさえ薬物の使用を開始していることがわかっていること、および、とくに、多くの子どもが最初に使用する薬物がヘロインであることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの薬物依存の問題に対し、子どもを被害者ではなく犯罪者として扱うことによって対応しようとする締約国のアプローチを遺憾に思う。委員会はまた、現在のところ、16歳未満の子どもがとくに関わる薬物濫用問題に対応する権限を国家麻薬統制局(NNCB)が有しておらず、かつ、麻薬および向精神薬を使用する子どものための、とくに子どもを対象とした回復・再統合サービスが存在しないことも、遺憾に思うものである。加えて、麻薬を使用する子どものハイリスクな性的行動、および、麻薬に関連した集団的暴力は、深刻な懸念の理由となる。 89.条約第33条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物を誤用する子どもへの、より子どもに配慮した回復志向のアプローチをとる目的で、麻薬および向精神薬に関する国内法を見直しかつ改訂すること。 (b) 麻薬の不法な使用から子どもを保護し、かつこのような物質の不法な取引における子どもの使用を防止するため、あらゆる適当な措置(行政上、社会上および教育上の措置を含む)をとること。 (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもに適合した、再統合および回復のための学際的なプログラムを緊急に導入すること。 (d) 子どもに伝えられる情報を強化するために家族およびコミュニティも包摂した、子どもをとくに対象とする防止プログラムを導入すること。 (e) 刑事的措置に限られるのではなく、青少年間の薬物に関連する集団的暴力および犯罪の根本的原因にも対応する包括的な戦略(周縁化された青少年を社会的に包摂するための政策も含む)を採択すること。 (f) とくに国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフおよびWHOの指導および技術的援助を求めること。 性的搾取 90.観光がモルディブにおける主要な収入源であることに照らし、委員会は、子どもが児童買春および児童ポルノを含む性的搾取の被害を受けやすくなる可能性があること、および、性的搾取を防止しかつ犯罪化するための法的枠組みが不十分であることを、懸念する。たとえば委員会は、ひとり暮らしをしている子どもまたはマレを訪問する子どもがさまざまな形態の搾取の被害を受けやすいことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、とくに国外居住労働者が関与している場合に、子どもの性的搾取に関する通報が不十分でありかつ選択的に行なわれていることにも留意する。委員会は、ポルノグラフィーの製造、頒布および所持が一般的に禁じられていることに留意するものの、児童ポルノを禁じた具体的な法規定が存在しないことを遺憾に思うものである。 91.委員会は、警察の家族・子ども保護部(FCPU)が子どもの性的搾取に関わるすべての事件に対応していることに評価の意とともに留意するものの、FCPUが置かれているのがマレに限られていること、および、環礁警察署では子どもの性的搾取、児童買春および児童ポルノの重大事犯を発見しかつこれに対応する資源が限られており、かつそのための訓練も不十分であることに、懸念とともに留意する。 92.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、適切な政策および措置(性的搾取の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することも含む)を立案しおよび実施し、ならびに、被害を受けた子どもの犯罪化を回避する、より焦点が絞られた方法で子どもの性的搾取を防止しおよびこれと闘う目的で、締約国が、子どもの性的商業的搾取に関する全国的研究を行なうよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、第1回(ストックホルム、1996年)および第2回(横浜、2001年)の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮するよう、奨励するものである。 93.委員会は、締約国が、地域におけるセックス・ツーリズムの増加のような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、旅行および観光における性的商業的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた行動規範の遵守を向上させる目的で、この点に関するモルディブ観光振興委員会(MTPB)および観光業者と引き続き連携するよう、勧告する。 94.委員会は、締約国が、全環礁の警察に対して十分な資源および訓練を提供することにより、性的搾取の事件を捜査するための努力を強化するよう勧告する。最後に委員会は、締約国に対し、インターネット上の児童ポルノについてのインターネット・サービス・プロバイダの義務に関する特別法の採択を検討するよう、奨励するものである。 搾取目的の子どもの人身取引 95.委員会は、子どもの人身取引はモルディブでは問題となっていないという見解を締約国が根強く維持していること、および、この点に関する防止措置(立法上の措置を含む)がとられていないことを遺憾に思う。 96.委員会は、締約国に対し、モルディブにおける子どもの人身取引の規模、性質および態様変化に関する調査研究を実施し、かつ包括的な統計データを提供するよう、促す。委員会はまた、締約国が、人の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に定められたあらゆる形態の人身取引を犯罪化する目的で、包括的な人身取引禁止法を制定することも勧告するものである。 少年司法の運営 97.委員会は、締約国が少年司法の運営の改革中である(少年司法法を起草する計画も含む)こと、ならびに、締約国が「家族会議」プログラムを導入したことおよび警察署内に家族・子ども保護部を設置したことに、留意する。委員会はまた、締約国が、ユニセフの支援を得て、アッドゥの少年裁判所および警察署に少年司法の運営に関するデータベースを設置し、さらに、収集されたデータをこれらのデータベース内で分類しかつ細分化していることにも留意するものである。委員会はまた、国家刑事司法行動計画(2004~2008年)にも留意する。 98.これらの前向きな措置がとられたにも関わらず、委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 少年司法の運営が、依然として、法律に抵触した子どもの更生および再統合のための措置を提供する修復的モデルではなく、処罰および拘禁の原則に基づいて行なわれていること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢(10歳)が依然として低すぎること。 (c) 7歳以上の子どもがハッド罪に問われる可能性があり、したがって死刑の対象とされる可能性があること。 (d) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰が合法とされていること。 (e) 家族会議プログラムが導入されたにも関わらず、自由の剥奪に代わる措置および刑の選択肢が用意されていないこと。 (f) 少年裁判所がマレにしか設けられておらず、かつ訓練を受けた少年裁判官がいないこと。 (g) 現行の少年司法規則が、刑事手続の際の子どもの聴聞について規定していないこと。 (h) 家族会議の結果または裁判所の決定に如何に関わらず、学校が、教育省の定めた規則を遵守する必要性から、法律に抵触した子どもを退学させることを余儀なくされていること。 (i) 子どもがドゥーニドゥ拘禁センターにおいてきわめて劣悪な環境で拘禁されていること。 99. 委員会は、締約国が、委員会が新たに採択した少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(CRC/C/GC/10)を考慮しながら、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 少年司法法を起草しかつ制定するための努力を加速させるとともに、この法律の規定が条約および少年司法の運営に関する他の国際基準の規定および原則と全面的に一致すること(刑事司法手続の際の子どもの聴聞も含む)を確保すること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保するため、地域奉仕命令、家族会議および修復的司法介入のような代替的措置の包括的システムを引き続き発展させかつ実施すること。 (c) 刑事責任に関する最低年齢を少なくとも12歳まで引き上げること。 (d) 18歳未満の者が行なったハッド罪について死刑を廃止すること。 (e) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰の使用を廃止すること。 (f) 十分な訓練を受けた専門家(専門の裁判官、検察官および警察官など)を擁する専門の少年裁判所を可能なかぎり設置するとともに、移動裁判所の設置を検討すること。 (g) 法律に抵触した子どもが教育にアクセスできるようにするため、教育省が定めた規則を見直すこと。 (h) 法律に抵触した子どもを対象とする拘禁施設および行刑施設の環境を改善するための効果的な措置をとるとともに、子どもに対し、成人とは別の拘禁施設を用意すること。 (i) 拘禁環境の独立した監視、および、苦情申立て、調査および執行のための効果的な機構へのアクセスを確保すること。 (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよび非政府組織も参加する国連・少年司法に関する機関横断パネルの技術的援助を求めること。 9.子どもの権利条約の選択議定書 100.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書が2004年6月以降、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書が2007年1月以降、期限を過ぎても未提出であることを想起するよう求める。委員会は、定期的なかつ時宜を得た報告実践の重要性を強調するものであり、したがって、これらの報告書を速やかに(可能であれば、審査プロセスを容易にするために同時に)提出するよう奨励する。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 101.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会および国民議会(マジリス)の構成員ならびに適用可能なときはすべての環礁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 102.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 103.委員会は、締約国に対し、2011年9月12日(すなわち第5回定期報告書の提出期限の18か月前)までに第4回・第5回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年多数の報告書を受領することを理由とする例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 104.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された、国際人権条約上の報告に関する統一指針(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、コア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月20日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/204.html
総括所見:イスラエル(第1回・2002年) 第2~4回(2013年)OPAC(2010年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.195(2002年10月9日)/第31会期s 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、10月2日に開かれた第829回および第830回会合(CRC/C/SR.829 and 830参照)において、2001年2月20日に受領されたイスラエルの第1回報告書(CRC/C/8/Add.44)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第1回報告書(期限を7年以上過ぎて提出されたもの)が報告ガイドラインにしたがっており、非常に詳細であり、分析的であり、かつ部分的に自己批判的であることに留意する。締約国がパレスチナ被占領地域における条約の実施に責任を負っていることにかんがみ、委員会は、パレスチナ被占領地域の子どもの状況についていかなる情報も存在しないことを深く遺憾に思うものである。委員会は、議論の前および最中に追加資料が提供され、かつ豊かな情報を記載した文書回答が提出されたことを評価する。委員会はまた、高い資質を有する部門横断型の代表団の存在が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に貢献したことも評価するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 子どもと法律に関するロトレビー委員会ならびに子どもの権利の増進を専門とする各種の議会委員会(子ども法委員会および子どもの地位増進委員会を含む)の設置および活動、ならびに、自治体レベルにおける子どもの地位地方委員会の設置。 (b) 立法が子どもの権利に及ぼす影響についての情報法(2002年)ならびに未成年である被害者の権利および子どもの法律扶助に関する法律を含む、進歩的な法律が制定されたこと。 (c) 家庭、学校その他の施設における体罰が禁じられたこと。 (d) 締約国における人権の促進および保護に市民社会が(公益訴訟等も通じて)積極的に関与しており、かつ裁判所が条約の条項に基づく多くの判決を言い渡していること。 (e) アラブ系イスラエル人の教育のための積極的差別是正措置プログラム。 (f) 窮乏する家庭(たとえばひとり親家庭)を支援するためのさまざまな措置。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.現在の暴力の状況を踏まえ、委員会は、条約を全面的に実施するうえで締約国が抱えている困難を認識する。双方に対してテロ行為が継続的に行なわれており、とくにパレスチナ人の自爆工作員によりイスラエル人の民間人(子どもを含む)が意図的かつ無差別に標的とされかつ殺害されている最中にあって、委員会は、根強く残る恐怖の雰囲気、および、平和にかつ安全に存在する締約国の権利を認識するものである。同時に委員会は、パレスチナ領域の違法な占領、民間人地域の爆撃、超司法的殺害、イスラエル国防軍による均衡性を欠いた武力行使、住宅の破壊、インフラの破壊、移動の制限およびパレスチナ人に対する日常的な屈辱的行為によって暴力の連鎖が助長され続けていることを、認識する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 5.委員会は、この地域の子どもたちにとっての平和的なかつ安定した未来は、国際人権法および国際人道法を基礎としてのみ達成できることを強調する。国際人権法および国際人道法を遵守することは、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域で暮らすすべての人々の平等な尊厳の尊重を保障するうえで、必要不可欠である。 立法 6.委員会は、子どもの権利の分野における新法の制定に留意する。しかしながら委員会は、これらの措置の実施が、不十分な予算配分を含む諸要因によって阻害されていることを懸念するものである。 7.委員会は、締約国が、現行法の効果的実施を確保しかつ強化するため、必要な資源(人的資源および財源)の配分を含むあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 8.委員会は、とくに子どもの権利の分野における新法(すなわち〔たとえば〕条約の実施に関する法律および平等を基礎とする良質な教育に対する権利についての法律)の提案を通じて子どもの権利促進キャンペーンを行なっている、さまざまな議会委員会のコミットメントを歓迎する。 9.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもの権利に関わる法律の迅速な公布およびその効果的実施を確保すること。 (b) 条約の規定および原則を編入した包括的な子ども法の採択を検討すること。 (c) 十分な資源の配分を通じて、これらの議会委員会の活動を引き続き支援すること。 10.委員会は、とくに属人法の分野における宗教法が条約の原則および規定に一致していない可能性があることを懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、宗教法の解釈を基本的人権と調和させるためにあらゆる可能な措置をとるよう奨励する。 調整 12.委員会は、条約の実施を調整する中央機構が存在しないために、包括的なかつ一貫した子どもの権利政策の達成が困難になっていることを懸念する。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国および地方の行政段階においてならびにこれらの段階間で部門を横断した調整および協力を進めるための中央機関を設置すること。 (b) 包括的であり、人権を基盤とし、かつ協議および参加を基調とする開かれたプロセスを通じて定められる、子どものための国家的行動計画(条約の実施を含む)の作成および実施を確保すること。 データ 14.委員会は、締約国から提供された包括的な統計集を歓迎するものの、条約の実施における進展の評価を可能とするデータの十分な分析が行なわれていないことを懸念するとともに、パレスチナ被占領地域に住んでいる子どもについてのデータがまったく提供されなかったことを遺憾に思う。 15.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約が対象とするすべての分野について、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(すなわち〔たとえば〕遠隔地に住んでいる子ども)およびパレスチナ被占領地域に住んでいる者を含む18歳未満のすべての者に関するデータを収集すること。 (b) 進展を評価し、かつ条約実施のための政策を立案する目的でこのデータを活用すること。 監視体制 16.苦情を申し立てるためのさまざまな回路(すなわち〔たとえば〕「オープンライン」、保健省オンブズマン等)が子どもに対して開かれていることには留意しながらも、委員会は、これらの機構の対応が、条約の効果的実施を確保する目的で十分に調整されていないことを懸念する。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しかつ評価する任務を委ねられた独立機構が設置されていないことを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 既存のさまざまな苦情申立て機構が条約の実施に効果的に貢献することを確保するため、これらの機構間の調整を向上させること。 (b) 人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しかつ評価するための独立した国内人権機関の設置を検討すること。当該機関は、十分な資源を提供され、子どもにとってアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮した方法で受理しおよび調査し、ならびにそれらの苦情に効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。 資源配分 18.委員会は、景気後退を背景として、社会支出に関する予算削減の提案が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利に悪影響を及ぼすであろうことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 利用可能な資源を最大限に用いることにより、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。 (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえばアラブ系イスラエル人の子ども、ベドウィン、外国人労働者の子ども)のための予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。 (c) 予算配分が子どもの権利の実施に及ぼす影響を制度的に評価すること。 市民社会との協力 20.現在蔓延している条件下においては、とくにパレスチナ被占領地域において、条約の規定の実施について市民社会および国際人道機関が重要な役割を果たすことを認識し、委員会は、市民社会および国際人道機関の取り組みに全面的に協力しかつその便宜を図るために締約国が行なっている努力が不十分であることを懸念する。 21.委員会は、締約国が、非政府組織および国際機関(国連機関を含む)との協力を強化するとともに、これらの組織が子どものための活動を遂行する際の要員の安全および対象となる子どもへのアクセスを保障するよう、勧告する。 研修/条約の広報 22.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力を歓迎するとともに、締約国全体で条約をいっそう幅広く普及する必要があることを代表団が認知したことに留意する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で、すべての公用語により、条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字でありまたは正規の教育を受けていない、脆弱な立場に置かれた集団を積極的に対象とするための取り組みも含む)を強化し、拡大しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方行政職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教職員ならびに保健従事者など)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.子どもの定義 24.委員会は、イスラエル法において、子どもの定義に関して、イスラエルの子ども(たとえば〔すなわち〕1962年の後見および行為能力法および青年(審判、処罰および処遇方法)法に基づき18歳未満の者)とパレスチナ被占領地域のパレスチナ人である子ども(すなわち軍令第132号に基づき16歳未満の者)との間に差別があることを懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、軍令第132号のうち子どもの定義に関わる規定を廃止するとともに、これとの関係で国内法が条約第1条および第2条に一致することを確保するよう、勧告する。 3.一般原則 差別の禁止に対する権利 26.委員会は、条約第2条に反して締約国で差別が根強く残っており、かつ差別の禁止が憲法上明示的に保障されていないことを懸念する。とりわけ委員会は、とくに宗教法の文脈における女子および女性への差別、宗教上の事由にもとづく差別、経済的、社会的および文化的権利(すなわち〔たとえば〕教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセス)をアラブ系イスラエル人、ベドウィン、エチオピア人その他のマイノリティ、障害のある子どもおよび外国人労働者の子どもが享受する際の不平等、および、被占領地域におけるパレスチナ人の子どもの権利および自由の享受における不平等を懸念するものである。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第2条にしたがい、すべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するための効果的措置(必要に応じて法律を制定しまたは廃止することも含む)をとること。 (b) 積極的差別是正措置の取り組みに関わる努力を強化すること。 (c) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うための、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) このような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。 (e) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(国連総会決議45/158付属文書)の批准を検討すること。 28.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 29.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が子どもに関わるすべての法律に編入されておらず、かつ、たとえばユダヤ律法裁判所による実務において常に考慮されているわけではないことを懸念する。 30.委員会は、締約国が、法律においても実務においても条約第3条が全面的に編入されるようにするための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 生命に対する権利 31.委員会は、現在の武力紛争の前および最中にすべての主体によって行なわれた、締約国におけるすべての子どもの殺傷を深く遺憾に思う。委員会は、子どもの発達を深刻な形で損なう、このような恐怖の雰囲気の影響について著しく懸念を覚えるものである。 32.委員会は、締約国および関連するすべての非国家的主体に対し、以下の措置をとるよう強く促す。 (a) 暴力を終わらせるために即時的かつあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもが徴募され、かつ紛争に参加しないことを確保するために即時的かつあらゆる必要な措置をとること。 (c) 子どもが殺害されたすべての事件を直ちにかつ効果的に調査するとともに、加害者を裁判に付すこと。 (d) これらの人権侵害の被害を受けた子どもに対し、十分な補償、回復および社会的再統合の可能性を与えるためにあらゆる必要な措置をとること。 33.最後に委員会は、締約国が、上記の勧告の実施に関する情報を第2回報告書に記載するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、クネセト〔イスラエル議会〕、学校およびコミュニティにおける討議ならびに裁判所(すなわち〔たとえば〕青年(ケアおよび監督)法および青年(審判、処罰および処遇方法)法)等において子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設、裁判所(ユダヤ律法裁判所を含む)および行政機関(すなわち〔たとえば〕決定措置委員会)における、子どもに影響を及ぼすすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子ども参加を引き続き促進すること。 (b) 子どもが十分な情報を得たうえで意見および見解を表明するのを援助し、かつこのような見解が考慮されるようにするため、親、教職員、ソーシャルワーカーおよび地方公務員を対象とした、コミュニティの現場で実施されるスキル訓練プログラムを開発すること。 4.市民的権利および自由 拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰からの保護 36.委員会は、逮捕および尋問中にならびに拘禁場所(すなわちマアレ・アドゥミム、アドライム、ベイト・エル、フワラ、ケドゥミン、サレムおよびグッシュ・エツィオンの各警察署ならびにテルザ、ラムレー、メギドおよびテルモンドのような刑務所)において、警察官がパレスチナ人の子どもに対して行なう非人道的なまたは品位を傷つける行為ならびに拷問および不当な取扱いの訴えおよび苦情があることを、深刻に懸念する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。 (a) 締約国にいるパレスチナ人その他の子どもの逮捕、尋問および拘禁に関与するすべての者が条約の原則および規定を全面的に遵守するようにするための訓令を定め、かつ厳格に執行すること。 (b) 警察官その他の政府職員によって拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰が行なわれたすべての事件を効果的に調査し、かつ加害者を裁判に付すこと。 (c) これらの人権侵害の被害者に十全な注意を払い、かつ十分な補償、回復および社会的再統合の機会を提供すること。 (d) 上記の勧告に実施に関する情報を次回報告書に記載すること。 5.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/放任/不当な取扱い 38.委員会は、家庭、学校および子どもをケアするその他の施設におけるあらゆる形態の暴力および虐待を防止しかつこれと闘うために締約国が行なっている多くの努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに包括的戦略および十分な資源が欠けていることを理由として、これらの努力の効果が限られているように思えることを懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および子どもをケアするその他の施設における暴力および虐待を防止しかつこれと闘うための、国レベルの包括的戦略(これにはとくに子どもの不当な取扱いおよび虐待の性質および規模を評価するための研究が含まれるべきである)を策定するとともに、これらの慣行に対処する政策およびプログラムを立案すること。 (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) 苦情の受理、監視および調査(必要な場合の介入も含む)を行なうための手続および機構を強化すること。 (d) 被害者のケア、回復および再統合を行なうための十分な資源を配分すること。 (e) 不当な取扱いの事案の特定、通報および処理について、教職員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健従事者を研修すること。 40.委員会は、里親家庭が提供するケアを向上させるために締約国が行なっている努力(たとえば研修および支援プログラム)に留意するものの、いまなお相対的に多くの子どもが施設ケアのもとで生活し続けていることを懸念する。 41.委員会は、締約国が、とくに里親家庭の数を増やすための公的プログラムの実施および十分な財源その他の資源の提供によって、里親養護システムをさらに強化するよう勧告する。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 42.委員会は、障害のある子どもの権利および特別なニーズに対応するために締約国が行なっているさまざまな努力に留意する。しかしながら委員会は、このようなニーズと提供されるサービスとのあいだに大きな乖離があること、および、ユダヤ人の子どもに提供されるサービスとアラブ系イスラエル人の子どもに提供されるものとの間に乖離があることを、依然として懸念するものである。 43.委員会は、締約国が、障害のある子どものニーズが充足され、かつ必要なサービスが提供されることを確保するための資源(人的資源および財源)を優先的にかつ対象が明確化された形で配分する努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、アラブ系イスラエル人の子どもがユダヤ人の子どもと同じ水準および質のサービスを受けることを確保するよう、勧告するものである。 保健 44.委員会は、とくにイスラエル国防軍が課した措置(道路の封鎖、外出禁止令および移動の制限ならびに経済および保健に関わるパレスチナのインフラの破壊を含む)の結果として、パレスチナ被占領地域の子どもの健康および保健サービスが深刻に悪化していることを深く懸念する。特に委員会は、これによって生じている遅延および保健従事者への干渉、基礎的医薬品の不足、ならびに、市場の崩壊および基礎食糧品の価格高騰による子どもの栄養不良について懸念を覚えるものである。 45.委員会は、締約国が、パレスチナ人のすべての子どもに対し、基礎的ニーズおよび健康のためのサービス(医薬品および医療従事者を含む)への安全なかつ無条件のアクセスを保障するよう、勧告する。 46.委員会は、国民健康保険法においてすべてのイスラエル市民が対象とされている旨の情報を歓迎するものの、ユダヤ系イスラエル人とアラブ系イスラエル人とのあいだに根強くかつ顕著な保健指標の格差が残っていることを、依然として懸念する。 47.委員会は、締約国に対し、利用可能な保健サービスの利益をすべての市民が平等に得られることを確保するため、資源の配分を強化しかつ増加させるよう勧告する。 十分な生活水準 48.委員会は、脆弱な立場に置かれた家庭(たとえばひとり親家庭)への支援を向上させるために締約国が行なっている活動には留意するものの、社会福祉予算が最近削減されたこと、および、とくに大家族、ひとり親家庭およびアラブ人家庭で暮らしている子どもの貧困率がきわめて高いことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、貧困根絶のための包括的戦略を策定しかつ実施するとともに、当該戦略に対して十分な財源および人的資源を提供するよう、勧告する。 50.委員会は、パレスチナ被占領地域において住宅およびインフラの大規模な破壊が行なわれていることを深く懸念する。これは、これらの地域の子どもにとって、十分な生活水準に対する権利の深刻な侵害である。 51.委員会は、国際人道法、とくに文民の保護に関するジュネーブ条約を参照しながら、締約国が、(文民と戦闘員との)区別の原則および(文民に対して過度な危害を及ぼす攻撃の)均衡性の原則を全面的に遵守するとともに、したがって住宅、上水道およびその他の公益設備を含む非軍事目標の破壊を回避するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような破壊の被害者に対し、住宅の再建のための支援および十分な補償を提供するよう勧告するものである。 7.教育 教育 52.委員会は、イスラエル国防軍が課した措置(道路の封鎖、外出禁止令および移動の制限ならびに学校インフラの破壊を含む)の結果として、パレスチナ被占領地域の子どもによる教育へのアクセスが深刻に悪化していることを懸念する。 53.委員会は、締約国が、条約にしたがい、パレスチナ人のすべての子どもが教育にアクセスできることを保障するよう、勧告する。その第一歩として、締約国は、パレスチナ被占領地域全域で開校時間中の移動の制限が解除されることを確保するべきである。 54.委員会は、教育予算が近年の支出削減から保護されている旨の情報を歓迎するものの、アラブ系イスラエル人層における教育への投資および教育の質がユダヤ人層におけるそれよりも相当に低いことを懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、積極的差別是正措置を継続しかつ強化するとともに、アラブ層の教育に配分される予算をさらに増加させるよう、勧告する。 56.委員会は、条約第29条に列挙された教育の目的(人権、寛容および性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの尊重の発展を含む)が、締約国全体を通じ、明示的にカリキュラムの一部とされているわけではないことを懸念する。 57.委員会は、締約国および関連のすべての非国家的主体(パレスチナ自治政府を含む)が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮にいれ、とくに人権、寛容および性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの尊重の発展との関連で、すべての初等中等学校のカリキュラムに子どもの権利を含む人権の教育を含めるよう、勧告する。この努力において、宗教的指導者の動員が図られなければならない。 8.特別な保護措置 武力紛争 58.委員会は、テロリズムが締約国の子どもの権利に及ぼす影響、および、軍事行動がパレスチナ被占領地域の子どもの権利に及ぼす影響について深刻な懸念を覚える。さらに委員会は、レバノン南部における地雷除去の取り組みとの関連で締約国の協力が不十分であること、および、同地域で行なわれたイスラエル国防軍の作戦の被害を受けた子どもに対して救済措置が提供されていないことを、懸念するものである。 59.委員会は、締約国およびその他の非国家的主体が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約に掲げられ、かつ国際人道法で保護される子どもの権利を全面的に尊重した、軍隊その他の要員を対象とする交戦規則を策定し、かつ厳格に執行すること。 (b) 武力紛争において子どもを使用することおよび(または)目標とすることを控えるとともに、条約第38条を全面的に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を可能なかぎり、遵守すること。 (c) レバノン南部における地雷除去の取り組みに全面的な支援および協力を提供するとともに、レバノン南部におけるイスラエル国防軍の行動により被害を受けた子どもが十分な補償、回復およびリハビリテーションの機会を得られるようにすること。 (d) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を批准し、かつ全面的に実施すること。 性的搾取 60.委員会は、未成年者の商業的性的搾取と闘うための省庁間・機関間委員会の設置、その活動およびこの分野におけるNGOの関与に留意する。しかしながら委員会は、これらの取り組みその他の努力の効果がいまのところ限られていることを懸念するものである。 61.委員会は、締約国に対し、とくに必要な財源その他の資源を提供することにより、未成年者の商業的性的搾取に対応するこれらの努力の有効性を高めるためのあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 少年司法の運営 62.委員会は以下のことを懸念する。 (a) イスラエルおよびパレスチナ被占領地域における子どもの定義に関してなど、子どもに関わる法律が異なる形で適用されていること。 (b) パレスチナ被占領地域における子どもの逮捕および尋問に関わる実務のあり方。 (c) 軍令第378号および第1500号、ならびに、長期にわたる子どもの独居拘禁を認めている可能性があり、かつ適正手続の保障、法的援助へのアクセスおよび家族の面会について規定していない他のすべての軍令。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の規定、とくに第37条、第39条および第40条が、北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針のようなこの分野における他の関連の国際基準とともに、少年司法制度の法律および実務に全面的に統合されることを確保すること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間でかつ裁判所の許可を受けて用いられること、および、18歳未満の者が成人と拘禁されないことを確保すること。 (c) 子どもが法律扶助および独立のかつ効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (d) 子どものリハビリテーションおよび社会的回復の分野について専門家の研修を行なうこと。 (e) 諸軍令の規定のうち、少年司法の運営に関する国際基準に違反するものをすべて廃止すること。 9.選択議定書 64.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう、奨励する。 10.報告書の普及 65.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、締約国のあらゆる行政段階においてかつ公衆一般(関心のある非政府組織を含む)のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 66.委員会が採択し、かつ委員会の第29会期報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、締約国による報告が相当に遅延していることを認識しながら、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的な報告を開始するうえで困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2008年11月1日までに、単一の統合報告書として第2回、第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年10月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/280.html
総括所見:インド(第3~4回・2014年) 第1回(2000年)/第2回OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IND/CO/3-4(2014年7月7日)/第66会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年6月2日および3日に開かれた第1885回および1886回会合(CRC/C/SR.1885 and 1886参照)においてインドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/IND/CO/3-4)を検討し、2014年6月13日に開かれた第1901回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、インドの第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/IND/Q/34/Add.1)の提出を歓迎する。これにより、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させることが可能となった。委員会は、他部門にまたがる締約国の代表団との間に持たれた前向きな対話について、大いなる評価の意を表する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 国家食料安全保障法(2013年9月10日)。 (b) 性犯罪からの子どもの保護法(2012年11月14日)。 (c) 無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年8月)。 4.委員会はまた、以下の文書が批准されたことにも評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2005年11月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2005年8月)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2007年10月)。 (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する条約、ならびに、同条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書ならびに陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2011年5月)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置がとられたことも歓迎する。 (a) 国家乳幼児期ケア・教育政策(2013年9月27日)。 (b) 国家子ども政策(2013年4月26日)。 6.委員会は、締約国が国際連合の諸特別手続による訪問を常時受け入れる意思を明らかにしたこと(2011年)に、積極的対応として留意する。 主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 7.第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(2004年、CRC/C/15/Add.228)をフォローアップするために締約国が行なってきた努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について全面的な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは部分的にしか実施されていないもの(とくに、差別の禁止、養子縁組、有害慣行、性的搾取、教育、保健、児童労働および少年司法の運営に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 第32条に関する宣言 9.委員会は、条約第32条に関する締約国の宣言は不必要である旨の見解をあらためて表明する。 10.委員会は、締約国に対し、委員会のこれまでの勧告(CRC/C/15/Add.115、パラ66およびCRC/C/15/Add.228、パラ8)にしたがい、条約第32条に関する宣言の撤回を検討するよう促す。 立法 11.委員会は、第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.5)の検討以降、締約国が、子どもの権利に関する立法上の枠組みを強化するために多くの連邦法を採択しまたは改正してきたことに留意する。しかしながら、立法ではいまなお条約の適用される範囲が完全に網羅されていない。委員会は、締約国の連邦体制内でさまざまなレベルの権限および権能が定められていることにより、子どもの権利に関する法律が異なるやり方で適用され、かつ、締約国全域で子どもの権利の実施に断片化および矛盾が生じていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が、連邦および州のレベルで、子どもの権利に関する立法上の枠組みが条約の原則および規定と一貫したかつ矛盾のないやり方で調和されることを確保するため、子どもに関連するすべての立法の再検討および改正を進めるよう勧告する。締約国は、締約国においてすべての法律がすべての子どもに同一のやり方で適用されることを確保するべきである。 包括的な政策および戦略 13.委員会は、2013年に国家子ども政策が採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 同政策を実施するための国家行動計画がまだ策定されていないこと。 (b) 州および県のレベルで進められている、国家子ども政策にのっとったそれぞれの行動計画の策定の進展に関する情報、および、同政策の効果的実施を確保するために配分される資源についての情報がないこと。 14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) あらゆるレベルにおける国家子ども政策の適用を可能にする要素を含んだ、国家行動計画ならびに州および県のレベルでの同様の計画の策定を優先的に進めること。 (b) 国家子ども政策を効果的に運用するための十分な人的資源、技術的資源および財源が時宜を得たやり方で配分されることを確保すること。 (c) 子どもおよび若者、親、非政府組織(NGO)および関心のあるその他の関連機関の積極的関与を促進し、かつその便宜を図ること。 調整 15.委員会は、締約国が、旧女性・子ども発達局を女性・子ども発達省に格上げして財源および人的資源も増やすことにより、その権限および調整の役割を強化したこと、および、国家子ども政策の実施の監視を任務とする国家調整行動グループを設置したことに留意する。しかしながら委員会は、これらの措置がまだ、子どもに関連する政策およびプログラムを実施するための、あらゆるレベルにおける省庁間の調整の改善につながっていないことを懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、条約の実施に関連するあらゆる活動を省庁間、連邦および州のレベルで調整する十分な権限を女性・子ども発達省が有すること、および、国家調整行動グループがあらゆるレベルで有効に機能することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。締約国は、同省および同グループの双方に対し、その効果的活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 資源配分 17.委員会は、計画策定および予算編成のプロセスを改善し、かつ子どものための制度およびプログラムに配分される予算を増額するために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、予算配分において子どもの保護のニーズが十分考慮されていないことを懸念するものである。委員会はまた、配分された資源の不適切な管理が生じており、かつそれが高水準の汚職によって悪化させられていること、ならびに、監視および評価のための効果的な制度が存在しないことも懸念する。 18.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議ならびに条約第2条、第3条、第4条および第6条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての社会部門、とくに教育、保護および子どもの保護に対する予算配分(連邦および州のレベルで子どものために用いるものとして使途指定される資源を含む)を相当に増額すること。 (b) 関連の部門および機関における子どものための明確な配分額を具体的に定め、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた、子どもの権利の視点を有する予算編成プロセスを確立すること。 (c) 連邦および州のレベルで条約の実施のために割り当てられる資源の配分の十分さ、有効性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。 (d) 汚職を防止しかつこれと闘うためにあらゆる必要な措置をとること。 データ収集 19.委員会は、15~18歳の子どもに関して利用可能なデータが乏しいこと、および、収集されるデータのタイプが制約されていて条約の全分野を網羅するものになっていないことを、とりわけ懸念する。 20.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、データ収集システムを速やかに改善するよう促す。すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)の状況についての分析を容易にするため、データは、条約の全分野を網羅し、かつ年齢、性別、地理的所在ならびに民族的、国民的および社会経済的背景別に細分化されるべきである。さらに委員会は、データおよび指標が関連省庁の間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。この文脈において、委員会はまた、締約国が、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)との技術的協力を強化することも勧告するものである。 独立の監視 21.委員会は、2007年に、とくに自己の権利侵害に関する子どもからの苦情を受理する権限を有する国家子どもの権利保護委員会が設置されたこと(州および連邦直轄地域における委員会の設置を含む)に留意する。しかしながら委員会は、パリ原則に全面的にのっとった委員会の委員の選任手続が定められていないこと、予算配分が不十分であること、独立機関として任務を遂行する自律性が欠けていること、および、このような委員会がまたすべての州に存在するわけではないことを、懸念するものである。 22.独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) パリ原則が全面的に遵守されることを確保するため、国家委員会およびあらゆるレベルに設置される他のすべての委員会の独立性を、資金、権限および不処罰特権の観点も含めて確保すること。委員会は、この目的のため、締約国が、国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)およびユニセフとの技術的協力を強化するよう勧告する。 (b) このような委員会を締約国全域で速やかに設置すること。 普及および意識啓発 23.委員会は、条約を普及し、かつ条約についての意識を高めるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、公衆一般およびとくに子どもたちの間で条約に関する意識が低いこと、ならびに、とられた措置の評価が実施されていないことを懸念するものである。 24.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.228、パラ24(a))をあらためて繰り返し、締約国に対し、公衆一般が子どもを権利の主体として認めることを確保する目的で、条約を普及するための努力、ならびに、意識啓発プログラムを通じて子どもの権利に関する公衆一般およびとくに子どもたちの感受性を高めるための努力を強化するよう促す。このような意識啓発プログラムには、メディアなどあらゆる形態の情報伝達手段、および、社会経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域における意識啓発のための対象を明確にした介入策が含まれるべきである。委員会はまた、締約国が、地方言語で作成された子どもにやさしい条約の訳が入手できることを確保するためにあらゆる必要な措置をとることも勧告する。 研修 25.委員会は、子どもの権利に関連する研修の実施および能力増進のために締約国が行なっている努力が不十分であり、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家の需要に対応しきれていないことを懸念する。 26.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.228、パラ24(c))をあらためて繰り返し、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(とくに法執行官、裁判官、検察官、教員、メディア、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカー、あらゆる形態の代替的養護に従事する職員および出入国管理機関)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を実施すること。これとの関連で、締約国は、とくに、意識啓発キャンペーンを実施し、具体的なマニュアルを開発し、能力構築ワークショップを実施し、かつ子どもの権利を学校カリキュラムに編入するべきである。 市民社会との協力 27.委員会は、さまざまな分野のサービス提供において締約国がNGOとの調整を図っていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、そのような協力が組織的なものではないこと、ならびに、締約国が、子どものためのサービスの提供を各州が契約したNGOに委託しているように思われること、および、しかし提供されるサービスの質の監視および評価は行なっていないことを、懸念するものである。 28.委員会は、締約国に対し、国が支援して行なわれる子どもの権利関連のすべての政策、計画およびプログラムの計画立案、実施、監視および評価に、コミュニティおよび市民社会(非政府組織および子ども団体を含む)の組織的関与を得るよう求める。委員会はまた、締約国が、NGOによって子どもに提供されるサービスの質および提供範囲を効果的に監視するための措置をとることも勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 29.委員会は、製造業関連企業の操業のために多数の子どもおよびその家族(とくにPOSCO社の製鉄所がある地域およびオディシャ州の港湾施設がある地域で暮らしている家族および子ども)が強制的に立ち退かされ、かつ先祖伝来の土地を失っていることを懸念する。委員会はまた、条約および国際人権基準が遵守されるようにするための保障措置についての情報がないことも懸念するものである。 30.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、および、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国際連合「保護・尊重・救済枠組み」に照らし、委員会は、締約国が、企業セクターが国際的および国内的な人権基準、労働基準、環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を遵守することを確保するための規則を定め、かつ実施するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 企業(とくに製造業関連企業)が国際的および国内的な環境基準および健康基準を効果的に実施することを確保し、これらの基準の実施状況を効果的に監視し、違反があった場合には適切な制裁を科すとともに被害者に救済を提供し、かつ、適切な国際的認証が追求されることを確保すること。 (c) 企業に対し、自己の企業活動により生ずる環境面、健康関連および人権面の影響ならびにこのような影響に対処するための計画についてのアセスメント、協議ならびにその全面的な公的開示を行なうよう、要求すること。 B.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 31.委員会は、さまざまな集団の子どもの間で、教育、保健ケア、安全な水および衛生設備ならびにその他の社会サービスへのアクセスに関して、また条約に掲げられた権利の享受に関して格差があることを懸念する。委員会はまた、指定カーストおよび指定部族の子ども、障害のある子ども、HIV/AIDSに感染・罹患している子どもならびに子どもの庇護希望者および難民に対する差別が根強く残っていることも懸念するものである。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 周縁化された状況および不利な立場の状況に置かれたすべてのカテゴリーの子どもに対するすべての形態の差別(複合的形態の差別を含む)に対処するための包括的な戦略を採択しかつ実施するとともに、社会的および文化的変革を促進する目的で、広範な関係者と連携し、かつ社会のあらゆる層の関与を得ながら当該戦略を実施していくための十分な人的資源、財源および技術的資源を確保すること。 (b) 周縁化された状況および不利な立場の状況に置かれた子ども(指定カーストおよび指定部族の子ども、障害のある子ども、HIV/AIDSに感染・罹患している子どもならびに子どもの庇護希望者および難民など)が、基礎的サービスにアクセスでき、かつ条約に基づく自己の権利を享受できることを確保するとともに、この目的のために十分なプログラムを採択し、かつその結果を評価すること。 33.委員会は、締約国において女子および女性に対する差別が蔓延しており、かつ、女子に対する差別を固定化する家父長制的な態度ならびに深く根づいたステレオタイプおよび慣行が根強く残っていることを深く懸念する。委員会はさらに、男子の優先および女子の不平等な地位を固定化する積年の伝統および文化的影響により、男女産み分けのための中絶、女子の嬰児殺および遺棄が依然として広く行なわれており、その結果、とくに女子に対する男子の比率が高まっていることを懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、条約の規定と一致せず、かつ女子に対する差別を固定化する根本的原因、社会的および制度的規範および慣行も考慮に入れるなどして、女子および女性に対する社会的、文化的および経済的差別を防止しかつこれと闘うために、包括的なアプローチの採択および効果的かつ組織的な行動を進めるよう促す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 第12次国家5か年開発計画にしたがい、男女比の達成目標(男子1000人に対して女子950人)の達成を確保するために緊急の措置をとること。 (b) 意識啓発、ならびに、女子差別につながる文化的規範および慣行を強化する諸要因への対処等の手段により、女子の嬰児殺および遺棄を防止するために法律上および政策上の即時的措置をとること。 (c) 男女産み分けのための中絶を防止するため、受胎前・出生前診断技術法の効果的実施を確保するとともに、規制のための機構を強化すること。 子どもの最善の利益 35.国家子ども政策(2013年)に、子どもに関連するすべての行政上および司法上の手続、政策ならびにプログラムにおける指導的原則として子どもの最善の利益の原則が編入されていることには留意しながらも、委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、子どもに影響を及ぼすすべての分野で、子どものためにおよび子どもとともに働いている専門家によって実際に一貫して適用されることを確保するためにとられた措置についての詳しい情報がないことを懸念する。 36.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するとともに、これらの手続および基準が、裁判所、行政機関および立法機関、官民の社会福祉施設ならびに伝統的指導者および宗教的指導者ならびに公衆一般に対して普及されることを確保すること。 (b) この点に関わる効果的な監視および評価のための手続を確立すること。 子どもの意見の尊重 37.委員会は、子どもの社会参加を増進させるために締約国が行なっている取り組み(「子どもレポーター」イニシアチブなど)、および、自己の権利およびウェルビーイングに影響を与える民事手続への子ども参加を増進させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、社会が一般的に子どもを権利の保有者と見ていないこと、ならびに、公的領域への子どもの参加、ならびに、家庭、学校、コミュニティおよび中央レベルで子どもが意見を聴かれる機会が不十分であることを懸念するものである。 38.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがって当該権利を強化するための措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を確立する等の手段により、関連の法的手続において意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 (b) 子どもにとってもっとも重要な問題を特定し、これらの問題に関する子どもの意見を聴き、自己の生活に影響を与える家庭の決定において子どもの意見がどの程度十分に聴かれているかを明らかにし、かつ、国および地方の意思決定において子どもが現にまたは潜在的に最大の影響力を行使しうる回路を見出すための調査研究を実施すること。 (c) 国家的政策の策定に関する公的協議(子どもに影響を与える問題に関する子どもたちとの協議を含む)を、高い水準のインク―ジョンおよび参加を前提としながら標準化するため、このような協議のためのツールキットを開発すること。 (d) 女子および被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いながら、家庭、コミュニティおよび学校(学校評議会機関を含む)において、すべての子どもが意味のある形でかつエンパワーメントされながら参加することを促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施するとともに、これらのプログラムおよび活動に関する定期的な事前事後の評価を確保すること。 C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録 39.委員会は、締約国全域で全体として出生登録率が低いことおよび出生登録率に格差があること、ならびに、すべての者の出生登録の重要性に関する関連当局および住民の意識が不十分であることに、懸念を表明する。委員会はまた、出生登録率と出生証明書の発給件数が一致していないことも懸念するものである。 40.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促す。 (a) 出生および死亡登録法(1969年)の改正を速やかに成立させ、出生登録を住民にとってアクセスしやすいものとし、かつ、出生の登録および出生証明書の速やかな発給の双方を保障すること。 (b) とくに農村地域で移動登録事務所を設置し、かつ、まだ登録されていない子どもおよび出生証明書を持たない子どもを全員登録することを目的としたキャンペーンを実施する等の手段により、出生登録率を高めるためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 定期的な大衆キャンペーンを通じ、出生登録の重要性に関する親および関連当局の意識を促進するとともに、出生登録の手続ならびに出生登録によって生じる権利および資格についての情報を提供すること。 アイデンティティに対する権利 41.委員会は、締約国の一部地域で、とくに条約第6条~9条および第19条に違反する、匿名のままの子どもの遺棄を可能とする「ゆりかご赤ちゃん受け入れセンター」が運営されていることを深く懸念する。 42.委員会は、締約国に対し、匿名のままの子どもの遺棄の慣行を終わらせ、かつ可能なかぎり早期に代替的選択肢の強化および促進を図るために、あらゆる必要な措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、家族計画サービス、十分なカウンセリングおよび計画していなかった妊娠に関する社会的支援を提供すること、ならびに、ジェンダーもしくは障害を理由とするまたは婚外子が受け入れられていないことによる乳児の遺棄を防止するための措置をとること等の手段により、乳児の遺棄の根本的原因に対処するための努力を強化するよう、促すものである。 国籍 43.委員会は、締約国とパキスタンとの国境地帯に位置する村落で生まれた子ども(カッチ・コミュニティに属する子どもなど)が無国籍になっていること、および、その結果、条約が対象とするすべての分野でその権利が制限されていることを懸念する。 44.委員会は、締約国に対し、条約第7条にしたがってこれらのコミュニティに属する子どもに国籍を与えるためにあらゆる必要な措置をとるとともに、無国籍者の地位に関する条約の批准を検討するよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 45.委員会は、締約国の憲法では宗教の自由に対する権利が保障されているものの、法律では、子どもが親と異なる宗教を選択することが認められていないことを懸念する。 46.委員会は、すべての子どもが親の宗教にかかわらず宗教の自由を享受する権利を確保するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 D.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 47.委員会は、すべての教育施設およびケア施設で体罰が法的に禁じられていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 教育施設における当該禁止規定が6~14歳の子どもについてしか適用されないこと。 (b) 施設以外のケア現場では体罰がいまなお合法的であること。 (c) しつけおよび規律の維持のための措置ならびに犯罪に対する刑としての体罰が締約国全域で禁止されているわけではないこと。 (d) 締約国の努力にもかかわらず、家庭、代替的養護の現場および学校現場ならびに行刑制度において体罰が引き続き広く用いられていること。 48.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満の子どもに対する、すべての場面におけるすべての形態の体罰を領域全体で明示的に禁止すること。 (b) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響(身体的影響および心理的影響の双方)に関する包括的かつ継続的な公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのプログラムを、子どもたち、家族、コミュニティならびに伝統的指導者および宗教的指導者の関与を得ながら導入すること。 (c) 子どもの不当な取扱いを行なった者に対して法的手続が組織的に開始されること、および、これらの者が適正に訴追されることを確保すること。 (d) 積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進すること。 (e) 既存の苦情申立て機構を、秘密が守られ、かつ子どもにやさしいものとなることを確保する目的で強化すること。 虐待およびネグレクト 49.委員会は、締約国において、家庭、代替的養護施設、学校およびコミュニティ等における子どもの暴力、虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトが広く蔓延していることへの多大なる懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.228、パラ50)。委員会は、以下のことを深刻に懸念するものである。 (a) 刑事(改正)法(2013年)上、15歳以上の既婚女子の性的虐待は犯罪とされておらず、性犯罪からの子どもの保護法(2012年)との整合性を欠いていること。 (b) 利用可能なデータによれば、締約国における強姦被害者の3人に1人が子どもであり、かつ、虐待者の50%が、子どもが知っている者または信頼および権威を有する立場にある者であること。 (c) 社会的スティグマへの恐れから、子どもの性的虐待の事案のほとんどが通報されておらず、かつ、通報された事案の訴追率に関する情報がないこと。 (d) 性的虐待の被害を受けた子どものための、子どもに配慮した治療および専門的検診サービスが不十分であること。 50.前回の勧告(CRC/C/15/Add.228、パラ51)にのっとり、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満の女子に対するあらゆる形態の性的虐待(婚姻間の強姦を含む)が全面的に犯罪化されることを確保すること。 (b) 身体的、性的および情緒的虐待を含む子どもの虐待を防止しかつこれと闘うことを目的とした包括的な戦略を、ジェンダーの側面を考慮に入れながら立案するため、子どもたちの関与を得ながら、意識啓発および教育を目的としたプログラムおよびキャンペーンをさらに強化しかつ促進すること。 (c) 性的虐待およびあらゆる場面(とくに学校)における体罰をとくに重視しながら、子どもに対する暴力のあらゆる事案に関する国家的データベースを設置するとともに、このような暴力の程度、原因および性質に関する包括的評価を行なうこと。 (d) 子どもの性的虐待のあらゆる事案が義務的に通報されることを確保するための機構、手続および指針を確立するとともに、加害者の適正な捜査、訴追および処罰を確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 子どもの性的虐待を防止し、かつ性的虐待被害者に対するスティグマに対処するための意識啓発活動を実施するとともに、アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい効果的な通報制度を整備すること。 有害慣行 51.委員会は、児童婚禁止法(2006年)が制定されたにもかかわらず、締約国において児童婚が広く蔓延していることを深く懸念する。委員会は、同法の全面的実施を妨げる障壁(社会的規範および伝統の蔓延、それぞれの宗教的コミュニティに適用される独自の最低婚姻年齢を定めた種々の人事法の存在、ならびに、同法に関する法執行官の意識の欠如)について懸念を覚えるものである。委員会はまた、ダウリーおよびデーヴァダーシーの慣行など、女子にとって害となるその他の有害慣行が蔓延していることも懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、同法が宗教上のさまざまな人事法に優越することを強調する等の手段により、児童婚禁止法(2006年)の効果的実施を確保するよう促す。委員会はまた、締約国が、女子の健康およびウェルビーイングにとって有害な児童婚を防止する目的で、態度の変革ならびにカウンセリングおよびリプロダクティブヘルス教育の開始を目的として意識啓発プログラムおよびキャンペーンを実施する等の手段により、ダウリーの要求、児童婚およびデーヴァダーシーの慣行と闘うために必要な措置をとることも勧告するものである。 ヘルプライン 53.委員会は、締約国が、チャイルドライン・インド財団と連携しながら子どものための24時間ヘルプラインを運営していることに留意する。しかしながら委員会は、当該ヘルプラインが国レベルですべての子どもにとってアクセスできるものになっていないことを懸念するものである。 54.委員会は、締約国が、国、州および県のレベルですべての子どもが24時間ヘルプラインを無償で利用できることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、ヘルプラインへのアクセス方法に関する子どもたちの意識を高め、サービスの効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供し、かつ、助言およびカウンセリング、付託サービスに関する情報ならびに必要な場合の救出活動を含むフィードバックを確保するよう、勧告するものである。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1および2)、第20条、第25条および第27条(4)) 家庭環境を奪われた子ども 55.親が乳幼児のケアを改善できるようにすることを意図した国家乳幼児期ケア・教育政策(2013年)は歓迎しながらも、委員会は、その実施がまだ開始されていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもの養育義務の履行にあたって親および家族を支援するための国家的な戦略およびプログラムが存在しないこと、ならびに、家族カウンセリングおよび子育て支援のためのプログラムが存在しないことにより、家庭における子どものネグレクト、不適切な取扱いおよび虐待のリスクが高まっていることを懸念するものである。委員会は、代替的養護制度を向上させようとする締約国の努力には留意するものの、締約国において、いまなお家庭を基盤とする養護ではなく施設措置が支配的であることを懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) ニーズを有している子ども、サービスを提供されている子どもおよび種々の形態の代替的養護を受けている子ども、親および親族養育者のための支援サービス、子どもの遺棄、ネグレクトおよび虐待ならびにとられた措置(立法措置を除く)についての細分化されたデータが存在しないこと。 (b) 里親および親族養育者のアセスメント、選抜、研修、報酬および監督、養護を受けている子どもに関する再審査手続、ならびに、子どもホームの認証、最低要件および監督ならびに公的養護を受けている子ども(国、民間、NGOまたは教会が運営する施設に措置されている子どもを含む)のための苦情申立て機構についての情報が存在しないこと。 56.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)を想起しつつ、委員会は、金銭的もしくは物質的貧困またはこのような貧困を直接の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離することの唯一の正当化事由とされるべきではないことを強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 親のための十分な支援サービスを確立するとともに、子育てのスキルに関する意識啓発プログラムおよび研修プログラム(体罰に代わる手段についてのものを含む)を採択しかつ実施すること。 (b) 子どもの施設措置を少なくする目的で、可能な場合には常に家庭を基盤とする養護を支援しかつ促進するとともに、代替的養護を受ける子どもの親族養育および里親養育の制度を確立すること。 (c) 子どもを代替的養護の対象とするべきか否かの判断に関する、子どものニーズおよび最善の利益を基礎とした十分な保障措置および明確な基準を確保すること。 (d) 里親養育および施設への子どもの措置が第三者により定期的に再審査されることを確保するとともに、子どもの不適切な取扱いおよび虐待に関する通報、監視および救済のためのアクセスしやすい回路を提供することなどにより、当該措置における養育の質を監視すること。 (e) 施設入所児のリハビリテーションおよび社会的再統合の質を可能なかぎり最大限に高める目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 養子縁組 57.委員会は、「子どもの養子縁組を規律する指針」(2011年)が出されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国において養子縁組が非公式に行なわれ続けており、かつ養子縁組手続の監督が行なわれていないこと。 (b) 養子縁組に関して異なる法律が効力を有しており、かつこれらの法律の間に矛盾があること、および、養子縁組行為の完結との関連で少年司法(子どもの養護および保護)改正法(2006年)に法的抜け穴があること。 (c) 民族的および宗教的つながりに関わらない、子どもおよび家族一般の養子縁組に関する法律がないこと。 (d) まだ適正に規制されていない代理出産の商業的利用が広く行なわれており、子どもの売買および子どもの権利侵害につながっていること。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組に関する法律を、子どもの権利条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に一致させる目的で見直すこと。 (b) 「子どもの養子縁組を規律する指針」(2011年)の効果的実施を確保し、直接または仲介者として養子縁組に対応しているすべての個人および機関の効果的な監視機構および認証制度を確立し、これらの個人および機関の数の制限を検討し、かつ、国内および国際養子縁組の手続がいかなる当事者にとっても金銭的利得をもたらさないことを確保すること。 (c) 養子縁組の過程全体を通じて子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされ、かつ、子どもの意見が、その年齢および成熟度を正当に考慮しながら、最大限可能な範囲で考慮に入れられることを確保すること。 (d) 生殖補助医療(規制)法案(2013年)およびそれに続くその他の法律に、代理出産の斡旋の定義、規制および監視について定めた規定が掲げられることを確保するとともに、不法な養子縁組を目的とする子どもの売買(代理出産の不適切な利用を含む)を犯罪化すること。締約国は、不法な養子縁組に関与したすべての者に対して対応がなされることを確保するべきである。 親が収監されている子ども 59.委員会は、6歳未満の子どもは刑務所で母親とともに暮らせること、および、締約国が最近、受刑者の子どもに金銭的援助を行なう制度を導入したことに留意する。しかしながら委員会は、親に刑を言い渡すときを含めて、子どもの最善の利益が常に考慮されているわけではないことを懸念するものである。 60.委員会は、親に刑を言い渡す際には子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきであること、および、親が子どもから分離されることにつながる刑は可能なかぎり回避されるべきであることを勧告する。委員会はまた、子どもが収監されている親とともに暮らすべきか否かを決定する際、締約国が、子どもの最善の利益を正当に考慮することも勧告するものである。その際、刑務所に関わる全般的環境および乳幼児期における親子の接触の特別な必要性に対する正当な配慮が全面的に考慮されるべきであり、かつ司法審査の選択肢も認めることが求められる。 F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3)および第33条) 障害のある子ども 61.委員会は、親による障害児の遺棄率が高いことを深く懸念する。委員会はさらに、障害のある子どもを対象としたプログラムの計画および実施に際して関連省庁間の調整が行なわれていないこと、および、障害のある子どもに対する締約国のアプローチにおいて、もっぱら施設ケアおよび医学的治療が中心に位置づけられていることを懸念するものである。 62.条約第23条および障害のある子どもの権利についての委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとるよう促すとともに、具体的には以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約のあらゆる規定および成果測定のための指標を統合した、障害のある子どものための国家的行動計画を策定するとともに、その実施に関して関連省庁間の効果的な調整を確保すること。 (b) 障害のある子どもの遺棄の防止を目的として、障害のある子どもの親を支援するために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (c) 障害のある子どもが条約に掲げられた権利(教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセスを含む)を全面的に享受できることを確保するために十分な措置をとること。 (d) 締約国全域で障害のある子どもに対する差別を防止しかつ解消することを目的として、障害のある子ども、公衆一般および特定の専門家集団を対象とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを実施すること。 健康および保健サービス 63.委員会は、締約国に、子どもの健康および保健サービスへの子どものアクセスを向上させるためのさまざまな政策およびプログラムが存在することに留意する。しかしながら委員会は、都市部と農村部との間に保健サービスの質および保健サービスへのアクセスに関する格差が根強く残っていること、ならびに、締約国が保健サービスの提供をますます民間セクターに依存するようになっていることを、深く懸念するものである。委員会はまた、住民にとって保健サービスの費用が高いこと、および、提供されるサービスの質の規制が行なわれていないことも懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 新生児死亡率が高く、かつ、締約国で毎年死亡している140万人の5歳未満児の50%が新生児であること。 (b) 締約国が行なっているさまざまな取り組みにもかかわらず妊産婦死亡率が高く、かつ、15~49歳の女性の55.3%が、子どもの出生時の低体重につながる貧血症を有していること。 (c) 子ども(とくに5歳未満児)の間で、妊産婦の栄養不良および貧血ならびに乳幼児に対する不十分な栄養の与え方と密接に関係している慢性的栄養不良(発育阻害)、消耗症(急性栄養不良)および低体重が高い水準で生じていること。 (d) 生後6月未満の子どものうち46%しか完全母乳育児の対象とされておらず、かつ生後1時間以内に母乳を与えられる子どもはわずか24%にすぎないこと。この状況は、調製粉乳が利用されていること、および、これに関連して乳児の健康状態に悪影響が生じていることをうかがわせるものである。 (e) 予防接種率の向上が芳しくなく、かつ、予防接種を完全に受けているのは子どもの21%にすぎないこと。 (f) 急性呼吸器感染症、下痢性疾患および熱病(マラリアに関連する熱病を含む)などの感染症が子どもの間で蔓延しており、いずれもが子どもの罹患および死亡の主たる原因となっていること。 (g) とくに農村部において安全な水、公衆衛生設備および個人衛生のための便益へのアクセスが不十分であり、これにともなって、屋外排泄が広く行なわれており、かつそのために子どもの健康に悪影響が生じていること(下痢性疾患による5歳未満児の死亡の約88%はこれらの要因に関連したものである)。 64.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健サービスへのアクセスおよび保健サービスの負担可能性を向上させるために民間セクターとのパートナーシップを確立し、かつ民間セクターが提供するサービスを規制する等の手段により、保健サービスへのアクセスおよび保健サービスの質に関して祖存在している格差に緊急に対処するための努力を強化すること。 (b) 子どもの健康状況を向上させるための、とくに急性呼吸器感染症、栄養不良および下痢性疾患の高い発生率に対応するための具体的な母子保健ケア政策、プログラムおよび制度に特段の注意を払いながら、保健部門に適切な資源が配分されることを確保すること。 (c) 子どもの低栄養と闘うための規定を含む国家食料安全保障法(2013年)の効果的実施を確保すること。 (d) 完全母乳育児の実践(出生時からの授乳を含む)、補完食の与え方(固形食による補完の有無を問わない)および母親のための微量栄養素補給支援を促進するための努力を増進させ、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」(WHO、1981年)の効果的実施およびその遵守を確保し、当該基準の違反を特定するために監視および通報のシステムを整備し、かつ、当該基準の違反が行なわれたあらゆる状況(調製粉乳の販売促進および配布に関与している民間企業による、調製粉乳のサンプルおよび宣伝資料の広報および配布を含む)に対して厳格な措置をとること。 (e) すべての子どもの完全予防接種を確保すること。 (f) 屋外排泄の慣行が有する健康上のリスクに関して公衆一般を対象とした意識啓発キャンペーンを実施し、とくに農村部および最貧困地域で安全な水および衛生設備へのアクセスを確保するための措置をとり、かつ、安全な水源の改善に投資すること。 (g) この点に関してとくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)との技術的協力を強化すること。 思春期の健康 65.委員会は、締約国が思春期のリプロダクティブ/セクシュアルヘルスに関する戦略を採択したことに留意する。しかしながら委員会は、国全体におけるその実施およびそれが思春期の子どもの健康に及ぼした影響についての情報が乏しいことを懸念するものである。委員会は、締約国において、思春期の女子がセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する情報およびサービス(現代的な避妊手段を含む)にアクセスできておらず、かつその結果として10代の妊娠率が高いこと、ならびに、女性の不妊手術および安全性を欠いた中絶が広く行なわれていることを、深刻に懸念する。 66.思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期のリプロダクティブ/セクシュアルヘルスに関する戦略が効果的に実施されること、ならびに、セクシュアル/リプロダクティブ教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (b) 思春期の女子および男子が、セクシュアル/リプロダクティブヘルスについての秘密が守られる情報およびサービス(現代的避妊法および女子のための合法的中絶など)に実際に効果的にアクセスできることを確保するための措置をとること。これとの関係で、締約国は、中絶に関する決定において妊娠している10代女子の意見が常に聴かれかつ尊重されることを保障するべきである。 (c) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置(ライフスキルへのアクセスおよび有害物質濫用の防止を含む)をとること。 HIV/AIDS 67.委員会は、「子どもとAIDSに関する政策枠組み」が2007年に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、手役国のHIV/AIDS感染者の相当数が子どもであること、および、これらの子どもに対する抗レトロウィルス薬の供給に関する情報がないことを懸念するものである。委員会はまた、出産前ケアサービスの対象範囲ならびにカウンセリングおよび検査へのアクセスが限られていることから、HIV陽性である多数の妊婦が特定されておらず、そのため子どもの感染リスクが高まっていることも懸念する。 68.HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2006年以来保留のままとなっているHIV/AIDS法案を採択するとともに、同法に、HIV/AIDSに感染した子どものニーズに条約にのっとって対応する具体的規定が掲げられることを確保すること。 (b) HIV/AIDSの母子感染を予防するためにとられている措置を維持するとともに、効果的な予防措置の実施を確保するためのロードマップ(行程表)を策定すること。 (c) 早期診断および早期の治療開始を確保するため、HIV/AIDSに感染した母親およびその乳児のフォローアップ治療を向上させること。 (d) 良質なかつ年齢にふさわしいHIV/AIDS関連およびセクシュアル/リプロダクティブヘルス関連の保健サービスへのアクセスを向上させること。 (e) HIVに感染した妊婦および子どもを対象とした、抗レトロウィルスによる治療および予防法へのアクセスおよびその提供範囲を向上させること。 (f) この目的のため、とくに国際連合合同エイズ計画(UNAIDS)およびユニセフとの技術的協力を強化すること。 生活水準 69.委員会は、締約国における国内総生産(GDP)の増大にもかかわらず、貧困線以下で生活している人々の割合が高いことを懸念する。委員会は、都市部および農村部のいずれにおいても子どもの貧困が蔓延していること、ならびに、子どもの生活水準に大きな格差があり、不利な立場および周縁化された状況に置かれた子どもがとりわけ脆弱な状態にあることを懸念するものである。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困と闘うためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) とくに、とりわけ貧困に陥りやすい状況にある子どもおよび家族のための社会的保護および対象特化型プログラムを通じて、子どもの生活水準に関する都市部/農村部の格差、社会的格差ならびにカーストおよび部族に基づく格差を解消するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 第12次国家5か年開発計画に掲げられている子どもの権利充足のための戦略および措置を強化する目的で、子どもの貧困の問題に焦点を当てた協議を、家族、子どもたちおよび子どもの権利に関わる市民社会組織との間で持つことを検討すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 71.委員会は、無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年)が採択されたこと、および、第1学年における子どもの就学率がほぼ100%に達していることを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに指定カーストおよび指定部族出身の子どもならびに女子の脱落率が高いことを懸念するものである。委員会はまた、通学していない子どもが多数にのぼること、第5学年における脱落率が高いこと、計算能力および識字能力が貧弱であること、教育の質が低いこと、ならびに、資格のある教員および教室が不足していることも懸念する。 72.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年)にのっとって学校開発計画を策定する等の手段により、連邦および州のレベルで同法を全面的に実施するための努力を強化すること。 (b) とくに州レベルおよび農村部において、教育の質を向上させ、かつ教員を対象として十分な研修を実施するために必要な措置をとること。 (c) 全国の学校カリキュラムに子どもの権利教育を導入すること。 (d) 周縁化された状況に置かれている子どもに対して教室の後ろに座るよう強要することなど、教育現場で行なわれているさまざまな差別的慣行に対応すること。 (e) 就学準備および乳幼児期教育プログラムの拡大を向上させること。 (f) 高い脱落率を下げるための具体的プログラムをさらに採択するとともに、通学していない子ども、児童労働者、不利な立場および周縁化された状況に置かれた子どもならびに女子が、教育に対する自己の権利を行使するにあたって支援および援助を与えられることを確保すること。 (g) 効果的な計画立案および対応のために、通学していない子どもを追跡するためのデータ情報システムを向上させ、質および学習の成果を測定し、かつ教育に関するデータと子どもの保護に関するデータの関連づけを図ること。 (h) 思春期の子どもによる中等教育へのアクセスを増進させるための措置をとるとともに、学校から脱落した子どもを対象とした、子どものスキル増進のための良質な職業訓練を促進すること。 73.委員会は、国以外の武装集団による学校施設への攻撃および治安部隊による学校の占拠について深刻な懸念を表明する。 74.委員会は、締約国に対し、あらゆる手段を用いて学校、教員および子どもを攻撃から保護するとともに、攻撃および暴力からの学校の保護を向上させるための措置の策定にコミュニティの関与を得るよう促す。委員会はまた、締約国に対し、治安部隊による学校の選挙を禁止し、かつ、必要に応じ、損した学校の再建および修理を緊急に進めることも促すものである。 乳幼児期の発達 75.国家乳幼児期ケア・教育政策が2013年9月に採択されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年)において乳幼児期のケアおよび教育の提供が要求されていないこと、および、前掲政策がまだ実施されていないことを懸念する。 76.委員会は、0~6歳のすべての子どもに対して普遍的なかつ質の高い乳幼児期教育およびケアサービスを確保する目的で、国家乳幼児期ケア・教育政策にのっとり、乳幼児期のケアおよび教育を、教育制度の一環として無償の義務教育に対する子どもの権利法に編入するとともに、すべてのレベルにおける同政策の実施のために十分な資源を配分するよう、勧告する。 H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 77.委員会は、難民が長期査証および就労許可を申請できるようにする決定ならびにヒンズー教徒およびシーク教徒の難民による市民権取得手続を簡略化する決定など、締約国がとったいくつかの措置を歓迎する。しかしながら委員会は、たとえば言語上の障壁のためにサービスへのアクセスに関して子どもの庇護希望者および難民が苦境に直面しており、子どもの庇護希望者および難民が、教職員および同級生による学校での差別および保健サービス施設での差別を受けており、かつ、差別的態度のために公共空間で遊ぶ権利を制限されているという報告があることを懸念するものである。委員会はさらに、ミャンマーから来たロヒンギャ人庇護希望者(子どもを含む)の、締約国への不法入国を理由とする収容が常態化していることを懸念する。 78.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保護を必要とする子ども、とくに保護者のいない子どもの難民および庇護希望者を特定しかつ援助する目的で、子どもの保護のために現在設けられている制度(子ども保護統合制度を含む)を強化すること。 (b) 子どもの難民および庇護希望者に対し、社会的障壁およびこれらの子どもに対する差別を解消するための措置をとる等の手段により、教育および保健ケアへのアクセスを保障すること。 (c) 収容されている子どもの難民および庇護希望者を放免し、かつこれらの子どもが国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)にアクセスできるようにすること、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに子どもの難民および庇護希望者が締約国への不法入国/締約国における不法滞在を理由として収容されないことを確保すること、ならびに、これらの子どもに対し、庇護を求める権利および庇護手続が完了するまで締約国に滞在する権利を付与すること。 (d) 子どもの難民および庇護希望者をUNHCRに付託するための適正な付託制度を内務省のもとに設置し、かつ、このような子どもの迅速な特定および付託を促進するための標準運用手続を策定すること。 (e) 難民の地位に関する1951年条約およびその1967年議定書への加入を検討すること。 宗教的マイノリティ、指定カーストおよび指定部族に属する子ども 79.委員会は、宗教的マイノリティ、指定カーストおよび指定部族の不平等に対処し、かつその生活条件ならびに教育、保健サービスおよび社会サービスへのアクセスを向上させるために締約国が行なっている取り組みにもかかわらず、これらの集団に属する多数の子どもが条約上の多くの権利を奪われ続けていることを、深刻に懸念する。 80.委員会は、締約国に対し、すべての子どもが、その宗教的背景にかかわらず、または子どもが指定カーストもしくは指定部族の出身か否かを問わず、条約に掲げられた全範囲の権利を享受できることを確保するための努力を強化するよう促す。 経済的搾取(児童労働を含む) 81.委員会は、締約国が行なった若干の努力にもかかわらず、危険な条件下における児童労働(採鉱業、家事労働者のようなインフォーマル部門での債務労働および農業におけるものなど)を含む経済的搾取に、いまなお多数の子どもが関与させられている旨の懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.228、パラ72)。 82.前回の勧告(CRC/C/15/Add. 228、パラ73)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童労働(禁止および規制)改正法案(2012年)を速やかに採択するとともに、児童労働に関与した個人に対する制裁を含む、あらゆる形態の児童労働の防止および根絶のための包括的戦略を策定すること。このような戦略には、児童労働(そのほとんどは家事労働のようなインフォーマル部門で生じているが、危険な労働にあたる採鉱場および採石場での労働でも生じている)の態様および手度に関するデータベースの設置も含むものとする。 (b) 国際労働機関(ILO)の、就労のための最低年齢に関する第138号条約、最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する第182号条約ならびに家事労働者の適切な仕事に関する第189号条約の批准を検討すること。 (c) これとの関連で、ILO・児童労働撤廃国際計画との技術的協力を発展させること。 路上の状況にある子ども 83.委員会は、締約国の「ストリートチルドレンのための統合プログラム」の利益を多くの子どもが享受してきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国において路上の状況にある子どもが多数にのぼることに鑑みて同プログラムの効果が限定的であること、および、これらの子どもの多くが被害者とみなされるのではなく犯罪者として扱われていることを、深く懸念するものである。 84.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 路上の状況にある子どもの現状に関する体系的な評価に基づき、かつこれらの子どもたち自身の積極的関与を得ながら、この現象を防止しかつ少なくする目的でその根本的原因に対処するための包括的政策を策定しかつ実施すること。 (b) 路上の状況にある子どもを犯罪者として扱わないようにすること。 (c) NGOとの調整を図りながら、路上の状況にある子どもに対して必要な保護(家庭環境、十分な保健ケアサービス、社会サービスおよび通学の便宜を含む)を提供するとともに、この目的のために必要な人的資源および財源を配分すること。 (d) 子どもの最善の利益に合致する場合、家族再統合プログラムを支援すること。 売買、取引および誘拐 85.委員会は、「人身取引の防止ならびに商業的性的搾取を目的とする人身取引の被害者の救出、リハビリテーション、再統合および補償に関する包括的計画」が2007年12月に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの国内人身取引が高い水準で行なわれていること、ならびに、締約国が、労働および性的搾取(セックスツーリズムおよび児童ポルノを含む)を目的とする子どもの人身取引の送り出し国、目的地国および通過国になっていることを懸念するものである。委員会は、締約国において、子どもが物乞い、婚姻および不法な養子縁組のために人身取引の対象とされているという報告があることを懸念する。委員会は、子どもの売買、取引および誘拐に対処するための効果的措置がとられていないこと、ならびに、これらの活動に関するデータがないことに懸念を表明するものである。 86.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの売買、取引および誘拐に関する包括的かつ体系的なデータ収集機構を設置するとともに、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段に注意を払いながら、当該データがとくに性別、年齢、国民的および民族的出身、州または自治地域、農村部または都市部における居住、先住民族としての地位および社会経済的地位別に細分化されることを確保すること。 (b) 国内人身取引および国際的人身取引の双方の危険性について親および子どもが認識できるようにするための意識啓発活動を実施すること。 (c) 二国間および多国間の協定を締結すること等も通じ、国の枠を超えてで子どもの人身取引と闘うための南アジア諸国との協力をさらに強化すること。 少年司法の運営 87.委員会は、締約国全域の660県のうち608県で少年司法委員会が設置されていること、および、刑事責任に関する最低年齢を18歳と定める少年司法規則が2007年に出されたことなど、少年司法制度を強化するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、刑事責任に関する最低年齢がいまなお刑法で7歳とされており、これによって少年司法規則の適用が排除されることを深刻に懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 少年司法規則(2007年)で、締約国が刑事責任に関する最低年齢の引き下げを計画していると述べられていること。 (b) 少年司法委員会で働く職員の、法律に抵触した子どもが関わる事件を扱うための知識、感受性および能力がきわめて限られており、かつ、これらの委員会が十分に監督されていないこと。 (c) 法律に抵触した子どもに関するデータを収集するための情報管理システム、処理が終了していない事件にかけられる時間、委員会の全般的運用(委員会が発する命令の性質および質を含む)ならびに特別少年警察部の役割および運用が不十分であること。 (d) 鑑別ホーム(調査が完了するための一時的受け入れを目的とするもの)および特別ホーム(刑を言い渡された子どもを対象とするもの)において、法律に抵触した子どもが年齢にふさわしい形で分離されておらず、かつ、法律に抵触した子どもが保護を必要とする子どもとともに収容される場合があること。 88.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を、条約(とくに第37条、第39条および第40条)、その他の関連基準および少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)と全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を18歳と定めた少年司法規則(2007年)を実施するとともに、国際的に受け入れられる水準に当該最低年齢を維持すること。 (b) 少年司法委員会に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を提供し、子どものための専門裁判官を指定し、かつ、これらの専門裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。 (c) 法律に抵触した子どもに対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、資格のある、独立した、無償のまたは補助がある弁護士およびその他の適切な専門家による援助が提供されることを確保すること。 (d) 必要なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (e) 拘禁が必要なときは、鑑別ホームおよび特別ホームにおいて年齢にふさわしい形での子どもの分離を確保するとともに、法律に抵触した子どもが保護を必要とする子どもまたは成人とともに収容されないこと、および、拘禁環境において国際基準が遵守されること(教育および保健サービスへのアクセスとの関連を含む)を確保すること。 (f) この目的のため、少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを活用するとともに、少年司法の分野で同パネルの構成機関の技術的援助を求めること。 I.国際人権文書の批准 89.委員会は、締約国が、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書など、まだ加盟国となっていない中核的人権文書を批准するよう勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 90.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合(ASEAN)・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 91.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第3回・第4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 L.次回報告書 92.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年7月15日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短くするよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による検討を目的とした報告書の翻訳は保障できない。 93.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された調和化報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)の共通コアドキュメントに関する要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。共通コアドキュメントの語数制限は、総会が決議68/268(パラ16)で定めたとおり、42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2017年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/253.html
総括所見:中国(第3~4回・2013年) 第1回(1996年)/第2回(2005年、香港・マカオを含む)英領香港(当時、1996年) OPSC(2005年)/OPAC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/CHN/CO/3-4(2013年10月29日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2013年9月26日および27日に開かれた第1833回~1835回会合(CRC/C/SR.1833-1835参照)において、中国領香港(CRC/C/CHN-HKG/2)および中国領マカオ(CRC/C/CHN-MAC/2)を含む中国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CHN/3-4 and Corr.1)を検討し、2013年10月4日に開かれた第1845回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、中国領香港および中国領マカオを含む中国の第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/CHN/Q/3-4/Add.1, CRC/C/CHN-HKG/2/Add.1 and CRC/C/CHN-MAC/2/Add.1)の提出により、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話について評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、中国本土で以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 中華人民共和国未成年者保護法の改正(2006年12月および2012年10月)。 (b) 罪を犯した少年を対象とする特別刑事手続についての章を付け加えた、2012年3月の刑事訴訟法改正。 (c) 社会保険法の採択(2010年10月)。 4.委員会は、以下の文書が批准されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2008年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約(2008年8月)。 5.委員会は、中国本土で以下の政策措置がとられたことを歓迎する。 (a) 人身取引対策行動計画(2013~2020年、2013年3月採択)。 (b) 中国児童発達綱要(2011~2020年、2011年7月採択)。 (c) 子どもにも焦点を当てた「国民経済と社会発展の第12次五か年計画綱要(2011~2015年)」。 III.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項)) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(2005年)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部が全面的に実施されてきたわけではないことに遺憾の意とともに留意する。 7.前回の勧告を想起しつつ、委員会は、締約国が、これらの勧告のうち実施されていないものまたは実施が不十分であるものに対応するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 生命に対するすべての子どもの固有の権利を促進しかつ保護する目的で、条約第6条に付した留保を直ちに撤回するとともに、条約第32条第2項(b)および第37条(c)に関する中国領香港の留保を撤回すること。 (b) 自国の管轄内にあるすべての地域で、条約の実施に関する現行のプログラム、政策及び活動を実施するために活動している諸機関および諸制度間の調整をさらに強化すること。 (c) 家庭、学校、施設および他のすべての環境(刑事施設を含む)における体罰を法律で明示的に禁止すること。 包括的な政策および戦略 8.委員会は、中国本土について2011年7月に中国児童発達綱要(2011~2020年、NPCD)が採択されたことには肯定的対応として留意しながらも、NPCDには具体的な指標、予定ならびに国、省および県のレベルで進展を監視するための制度が欠けており、一貫した実施が行なわれない可能性があることを懸念する。委員会はさらに、子どもに関する計画および政策(NPCDを含む)の評価に独立の専門家および非政府組織(NGO)が参加していないことを懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、省、自治州および県の行政段階におけるNPCDの実施の支援を目的とした包括的な戦略および枠組みを、優先課題として採択するよう勧告する。このような戦略および枠組みにおいては、主要な優先課題、目標、目的および活動を掲げ、それらについての具体的責任を関連の省庁に割り当て、かつ、主要な指標による監視および評価のための制度を設けるべきである。委員会は、締約国に対し、中国本土のすべての省、自治州および県によるNPCDの実施に関する進展報告書の提出および検討を可能にする、調整機構の設置を奨励する。委員会はさらに、締約国が、NPCDならびに子どもに関連するその他の政策および計画の監視および評価において、子どもおよび市民社会(独立の専門家を含む)との恒常的、広範かつ透明な協議を確保するよう勧告するものである。 10.委員会は、条約の実施のための包括的な行動計画を策定するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/CHN/CO/2、パラ15)にもかかわらず、中国領香港および中国領マカオにおいて、それぞれの管轄地域で子どもに影響を与えるすべての法律、政策、計画およびプログラムの指針としてホリスティックかつ統合的に機能する、子どもについての包括的な政策および戦略がいまなお定められていないことを遺憾に思う。 11.委員会は、中国領香港および中国領マカオが、それぞれ子どもに関する包括的政策を採択するとともに、当該政策に基づき、条約を実施するための明確な目的を備えた戦略および調整のとれた行動計画を策定し、かつ、その実施、監視および評価のための十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告する。 資源配分 12.委員会は、中国本土における地域間および都市部・農村部間の深刻な不平等および格差を縮小するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに農村部および中国本土西部においてこのような格差が根強く残っていること、ならびに、子どもの権利の実施のために地方政府に配分される資源が不十分であることを、深刻に懸念するものである。 13.委員会は、さらに以下のことを懸念する。 (a) 子どもの権利に関する政策および計画(とくにNPCD)への中央政府からの予算配分および資金拠出が不十分であり(保健および教育への配分額が国内総生産に占める割合はそれぞれ1.4%および4%)、かつ省以下の資源に依存していることから、公的資源の配分における著しい不平等が生じていること。 (b) 義務教育、母子保健ケア、保健インフラおよびサービスの質の確保などのきわめて重要な分野、ならびに、貧困下および不利な立場に置かれた家族のもとで暮らしている子どものための福祉サービスその他のサービス(障害のある子どものためのサービスを含む)を拡大するための計画が、引き続き資金不足の状態にあること。 (c) 中国領香港において、教育および社会福祉への資源配分が依然として不十分であり、かつ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(とくに民族的または言語的マイノリティの子ども、子どもの庇護希望者、貧困下で暮らしている子どもおよび障害のある子ども)を効果的に対象とするものになっていないこと。 14.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は以下のことを勧告する。 (a) 締約国が、中国本土における地域格差および都市部・農村部間の格差を縮小するための特別措置をとるとともに、子どもの権利ならびにニーズがある領域および懸念の対象である領域を十分に考慮するための、子どもの権利の視点を備えた予算策定手続を確立すること。 (b) 締約国が、子どもの権利の実施に関わる政策、計画および制度(とくにNPCDおよび保健、教育その他の主要な社会サービスの分野におけるもの)を実施するために中央政府から中国本土(とくに農村部および西部諸省)の省政府および地方政府に配分される予算を効果的に増額すること。締約国はまた、中国本土の省、自治州および県全域における資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構も設置するべきである。 (c) 積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえば民族的マイノリティの子ども、障害のある子どもおよび子どもの移住者)を対象とした戦略的予算科目を中国本土、中国領香港および中国領マカオで定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 データ収集 15.委員会は、本土において、条約が対象とするあらゆる分野についての信頼できる包括的な統計データに公衆が限られた形でしかアクセスできないことについての懸念(CRC/C/CHN/CO/2、パラ22)をあらためて表明する。委員会は、国家機密の保護に関する中国本土の法令のために、条約の効果的な実施および監視にとって決定的な細分化されたデータおよび重要な統計が、締約国においてしばしば利用不可能であることをとりわけ懸念するものである。 16.委員会は、子どもに関する情報(とくに子どもに対する暴力、嬰児殺、児童労働、少年司法、障害のある子どもおよび移住の影響を受けている子どもに関するもの)が体系的に収集され、公に利用可能とされ、ならびに、子どもの権利に関する政策および計画を策定するために議論の対象とされおよび活用されることを確保するため、締約国が、中国本土における秘密保護法令を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、締約国が、中国本土で、国家機密の指定に関する独立の再審査機構を設置するよう勧告するものである。 17.中国領マカオで若干の進展があったことには留意しながらも、委員会は、包括的なかつ信頼できるデータ収集システムがマカオにおいても中国領香港においてもいまなお整備されていないこと、子どもに関するデータが種々の部局間で散逸していること、および、条約の一部領域について18歳未満の子どもに関する細分化されたデータが存在しない旨の懸念をあらためて表明する。 18.委員会は、独立の立場から検証可能な子どもに関するデータを収集し、かつ、収集されたデータを、子どもの権利の実現に関して達成された進展の評価ならびに条約を実施するための政策およびプログラムの立案を目的として分析するために、中国領マカオおよび中国領香港において中央集権化されたデータ収集システムを確立するよう、強く勧告する。データは、すべての子どもの状況の分析を容易にするため、民族マイノリティの子ども、在留資格を有しているまたは有していない子どもの移住者、子どもの庇護希望者および難民ならびに障害のある子どもにとくに注意を払いながら、年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 独立の監視 19.委員会は、子どもの権利を監視する明確な任務を与えられた独立の国内人権機関が、締約国の管轄下にあるすべての地域で設置されていないことについての懸念を想起する。委員会はさらに、前回の勧告に反して、かつ独立の子ども委員会を設置するべきである旨の動議を立法会が2007年6月に提出したにもかかわらず、中国領香港がそのような委員会を設置するためのいかなる措置もとっていないことを懸念するものである。 20.委員会は、一般的意見2号への注意を促すとともに、締約国が、国および地方のレベルでの条約の実施における進展を体系的にかつ独立の立場から監視しおよび評価し、ならびに、子どもからの苦情に子どもに配慮した迅速なやり方で対応する目的で、パリ原則にしたがい、本土ならびに中国領香港および中国領マカオにおいて独立の国内人権機関を速やかに設置するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、子どもの権利を監視する明確な任務を与えられた子ども委員会または他の独立の人権機関を中国領香港に設置し、かつ当該機関に十分な財源、人的資源および技術的資源を提供するよう勧告するものである。 市民社会との協力 21.委員会は、人権擁護者に対して続けられている脅迫、警察のいやがらせ、強制的失踪および逮捕を理由として、NGOが障壁に直面しており、かつ、人権擁護者およびジャーナリストが、とくに中国本土における子どもの権利侵害について報告する余地が限られていることを、深く懸念する。委員会はさらに、2008年・四川地震の際の学校倒壊を理由とする子どもの死亡についての責任を追及していた親たちの場合のように、政府による家族(人権擁護者および反体制者の子どもを含む)の訴追ならびに子どもの権利を唱道する家族に対する報復およびいやがらせの報告があることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) ジャーナリスト、人権擁護者およびすべてのNGOが、いかなる種類の脅迫、いやがらせまたは反動も受けることなく、人権侵害の監視、調査および報告を行ない、かつ表現および意見の自由に対する権利を行使できるようにするための即時的措置をとること。 (b) 子どもの権利侵害についての責任を追及する家族および人権擁護者の子どもに対するあらゆる形態の脅迫および報復を緊急に終わらせること。 (c) 子どもの権利を追求する家族ならびに人権擁護者およびその家族に対する脅迫およびいやがらせの事案の報告が速やかにかつ独立の立場から調査され、かつ、当該人権侵害の責任者の責任が問われることを確保すること。 子どもの権利と企業セクター 23.委員会は、中国本土における鉛中毒の発生および蔓延により、とくに貧困地域および農村地域において、数十万人の子どもの間で恒久的な精神障害および身体障害が発生していることを深く懸念する。委員会は、影響を受けている子どもおよびその家族のための改善策がとられていないこと、治療および情報を求める者に対して脅迫が行なわれている旨の報告があること、および、影響を受けている子どもへの適切な治療の提供が拒否されている旨の報告があることを、とりわけ懸念するものである。 24.委員会は、委員会の一般的意見16号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、企業セクターが人権、労働、環境その他の問題に関わる国際的および国内的基準を(とくに子どもの権利との関連で)遵守することを確保する目的で、中国本土における規則の実施を強化するよう勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 鉛中毒が国全体でどの程度子どもおよびコミュニティに影響を与えているか判断するための、全国的かつ公にアクセス可能な評価を直ちに実施するとともに、慢性的な鉛への曝露およびその長期的影響に対処するための包括的な公衆衛生戦略を立案すること。 (b) 諸産業の活動が子どもの権利に影響を及ぼさないことおよび子どもに悪影響を与えないことを確保するため、締約国で操業している化学工場を含む諸産業の規制枠組みの実施を効果的に監視するとともに、違反が行なわれた場合に適切な制裁および救済が与えられることを確保すること。 (c) 自社の事業活動が環境面、健康関連および人権面で与えている影響ならびにこれらの影響に対処するための計画について評価、協議および全面的な公的開示を行なわなければならない旨の、すべての産業を対象とする監視要件を設けること。 (d) 環境規則を遵守しなかった疑いまたは情報もしくは医療ケアへのアクセスを妨げた疑いがある政府職員(地方職員を含む)を調査し、かつその責任を問うとともに、子どもおよびその家族が、効果的なかつ医学的に認められた治療および長期的救済措置(リハビリテーションサービスおよび補償を含む)に即時的かつ全面的にアクセスできることを確保すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、中国本土でチベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもの権利侵害および差別(宗教の自由、言語および文化に対する権利を含む)が継続していることを深く懸念する。委員会はさらに、障害のある子ども、移住労働者の子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびにHIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもに対する差別が、とくに教育、住居、保健ケアおよびその他の社会サービスとの関連で根強く残っていることを懸念するものである。 26.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、チベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもに不相応な影響を与えまたはこれらの子どもを差別している政策、慣行および保安措置を撤廃するため、中国本土において即時的措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国が、障害のある子ども、移住労働者の子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびにHIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもに対するあらゆる形態の差別(教育、保健サービスおよび社会サービスにおけるものを含む)を特定しかつ撤廃するよう、勧告するものである。 27.委員会は、中国本土において女子および女性に対する差別が蔓延していること、ならびに、家長制的態度が根強く残っており、かつ女子差別を固定化するステレオタイプおよび慣行が深く根ざしていることを懸念する。委員会はさらに、息子偏重および女子の不平等な地位、性別選択的中絶、女子の嬰児殺ならびに女子の遺棄を固定化する長年の伝統および文化的影響が広範に残っており、そのためとくに女性に対する男性の数の比率が高くなっていることを懸念するものである。 28.委員会は、締約国に対し、女子および女性に対する社会的、文化的および経済的差別(条約の規定に一致せず、かつ女子に対する差別を固定化する社会的および制度的規範および慣行を含む)と闘うための効果的かつ組織的措置をとる目的で、包括的アプローチを採用するよう促す。委員会はさらに、締約国が、女子差別である文化的規範および慣行を強化する諸要因に対処する等の手段によって性別選択的中絶、女子の嬰児殺および女子の遺棄を防止するため、即時的な法的措置、政策措置および意識啓発措置をとるよう勧告するものである。 29.委員会は、中国領香港において、障害のある子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住労働者の子どもであって在留資格を有していない者に対する差別が根強く残っていることについての懸念をあらためて表明する。委員会は、第2条の実際の実施に関する情報の提供を求めた委員会の要請に応えて中国領マカオが行なった正当化のための説明(とくに、差別に関連する苦情が管轄地域内で記録されたことはない旨の説明)について懸念を覚える。 30.委員会は、中国領香港が、障害のある子ども、移住労働者の子どもであって在留資格を有していない者ならびに子どもの難民および庇護希望者に対する差別と闘うための措置(意識啓発、差別的政策の特定および関連プログラムの時宜を得た実施を含む)、および、これらの子どもが保健、教育その他の社会サービスを含む基礎的サービスに平等にアクセスできることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。委員会は、中国領マカオに対し、正式な苦情申立てが行なわれていないことはその管轄地域で子どもが差別されていないことを意味するわけではないことを想起するよう促すとともに、差別に関する情報(とくに差別を受けやすい状況に置かれた子どもに関するもの)を積極的に求め、かつ、子どもに対するあらゆる形態の差別を撤廃するためにあらゆる立法上および政策上の措置を追求するよう、勧告する。 最善の利益 31.委員会は、中国本土、中国領香港および中国領マカオにおいて、子どもの最善の利益が、子どもに関連する主要な法律および政策に必ずしも全面的に反映されかつ編入されているわけではないことを懸念する。中国領香港では、子どもの最善の利益が、関連するすべての意思決定において最高の位置づけを有する必要的考慮事項となっている旨の説明(CRC/C/CHN-HKG/2、パラ105)は歓迎しながらも、委員会は、子どもの最善の利益について定めた一般的法律がないことを懸念するものである。 32.委員会は、中国領香港が、子どもの最善の利益を適用する旨の誓約を遵守すべきこと、および、締約国が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて子どもの最善の利益が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化すべきことを、勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 〈嬰児殺〉 33.委員会は、伝統的な男子偏重を変革し、かつ女子の価値に関する認識の高まりを促進するために中国本土で行なわれている「女子への配慮」キャンペーンに、肯定的措置として留意する。しかしながら委員会は、このようなプログラムにもかかわらず、とくに女子および障害のある子どもの嬰児殺が依然として蔓延していることを深刻に懸念するものである。この問題は、中国本土における1人っ子政策によって悪化している。 34.条約第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、とくに女子および障害のある子どもの嬰児殺と闘うための努力の一環として厳格な家族計画政策を改めることを検討し、かつ、生命に対するすべての子どもの譲りえない権利が保護されることを確保するよう、促す。委員会は、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 嬰児殺の根底にある諸要因(1人っ子政策を含む)に対応するため、包括的な法律上および政策上の措置をとること。 (b) 嬰児殺を禁ずる法律の、いっそう効果的なかつ一貫した適用および執行をすべての省および自治州で確保すること。 (c) すべての出生を数え上げ、確認しかつ登録する方法を向上させること。 〈チベット人の子どもの焼身自殺〉 35.委員会は、チベット人の子どもの焼身自殺がただならぬ水準で増加していること、および、締約国が、その奥底にある原因および長年にわたるチベット人の不満に対応することによってこのような生命の喪失を防止できていないことを、深く憂慮する。委員会はさらに、焼身自殺を「扇動」した罪に問われたチベット人の子どもの拘禁および収監ならびに被害者の家族に対するいやがらせおよび脅迫の報告があることを懸念するものである。このような対応は、事態を悪化させ、さらなる焼身自殺につながる可能性がある。 36.委員会は、締約国に対し、焼身自殺をやめさせ、かつ生命、生存および発達に対するチベット人のすべての子どもの固有の権利を保護するための努力の一環として、チベット自治区の子ども、宗教的指導者およびコミュニティの指導者と真摯な対話を行なうよう促す。委員会は、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) チベット自治区の子どもによる焼身自殺および抗議につながってきた政策およびプログラムの再評価および改革等の手段により、チベット人の子どもおよびその家族が有する、深く根ざした不満を解決するための緊急措置をとること。 (b) 焼身自殺を図って負傷したチベット人の子どもが無償の治療に全面的にアクセスできること、および、その容態が独立の立場から確認されかつ公に報告されることを確保すること。 (c) チベット人の子どもの逮捕および拘禁、ならびに、事態を悪化させる可能性がある保安措置の実施を差し控えるとともに、焼身自殺の「教唆」または「扇動」を理由として逮捕されまたは刑を言い渡された子どもが、法律扶助および公正な裁判に対する権利に全面的にアクセスできることを確保すること。 子どもの意見の尊重 37.子ども参加の場が複数設けられたことには留意しながらも、委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄についてのすべての子どもの意見の尊重および子ども参加を促進しかつその便宜を図るための効果的かつ広範な機構が、締約国の管轄内のすべての地域に存在するわけではないことを懸念する。 38.委員会は、締約国が、自己に影響を与えるすべての事柄(政策立案、裁判所の決定およびプログラムの実施を含む)についての子どもの意見の尊重および子ども参加を確保するための効果的な協議の機構を、中国本土、中国領香港および中国領マカオにおいて設置するよう勧告する。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録、名前および国籍 39.委員会は、中国本土の貧困地域および遠隔地における出生登録率、ならびに、女子、移住者である子ども、養子とされた子ども、および、その出生によって家族が地域で「認可」された家族規模の制限を上回ることとなった子どもの出生登録率が低いことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 出生登録に関する現行の家族計画政策(出生証明書の発給、ならびに、金銭的その他の形態の罰則および慣行の悪影響を含む)により、親または保護者による子どもの登録が著しく抑制されていること。 (b) 出生登録が登記される世帯登録簿(戸口)により、移住労働者の子どもの出生登録が阻害されていること。 (c) 出生証明書を取得するための行政上の要件の多さおよび登録手続の複雑さにより、出生登録を妨げる多くの障壁が生み出されていること。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親または保護者による子どもの出生の登録を抑制しているあらゆる形態の罰則および慣行を取り除くため、家族計画政策を改革すること。 (b) すべての子ども、とくに移住労働者の子どもの出生登録を確保するため、戸口制度を廃止すること。 (c) 手続に関連するすべての金銭的および行政的障壁を取り除き、かつ役務の向上を図ること(親または保護者による出生登録役務の利用可能性および当該役務へのアクセスを含む)によって、出生登録手続の簡素化、合理化および円滑化を図ること。 (d) 出生登録の重要性に関するコミュニティの感受性増進および公衆の意識啓発(政府省庁間および農村部におけるものを含む)を強化すること。 (e) これらの勧告を実施するため、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めること。 思想、良心および宗教の自由 41.委員会は、民族的および宗教的マイノリティに対して宗教的信条の自由が憲法で保障されているにもかかわらず、締約国が、さまざまな集団の子ども(チベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもを含む)の文化的および宗教的自由に対して厳しい制限を課す規則および政策を導入し続けていることを、深く懸念する。とりわけ、委員会は以下のことを深く憂慮するものである。 (a) 宗教および良心の自由に対する権利を行使しようとするチベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子どもが、逮捕、拘禁ならびに不当な取扱いおよび拷問の対象とされていることを示す報告が頻繁に行なわれていること。 (b) 自己の宗教を学習しかつ実践するチベット人の子どもの能力および自由を制約する制限が行なわれていること(チベットの僧院に対して課される、これらの僧院を厳重な管理および監視のもとに置く措置など)。 (c) 1995年に6歳で失踪したゲンドゥン・チューキ・ニマの状況、および、締約国が、若干の情報は提供したものの、いかなる独立の専門家に対しても、訪問調査によりその所在、権利の充足状況および安寧を確認することを認めていない事実。 42.条約第14条および締約国の憲法第36条に照らし、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/CHN/CO/2、パラ45)を想起し、委員会は、締約国が、民族区域自治法の全面的実施を確保すること、18歳未満の者に対して特定の公認宗教に限定されない思想、良心および宗教の自由に対する権利を効果的に保障すること、および、子どもがこの点に関わる権利を行使するにあたって、子どもの発達しつつある能力と一致する方法で指導を行なう親の権利および義務を尊重することを目的として、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 特定の集団の子ども(とくにチベット仏教徒およびウイグル人の子どもならびに法輪功を学習する家族の子ども)を対象とした刑罰および行政罰(労働を通じた再教育を含む)を廃止すること。 (b) いかなる年齢のチベット人の子どもに対しても宗教的活動に参加しまたは宗教教育を受けることを禁じるすべての措置および制限(僧院に課される措置を含む)を撤廃すること。 (c) 宗教的自由に対するウイグル人の子どもの権利を深刻に制限するすべての政策および立法規定(未成年者保護法実施細則第14条を含む)を改正すること。 (d) 独立の専門家がゲンドゥン・チューキ・ニマを訪問してその健康状態および生活状態を確認することを直ちに認めること。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 43.委員会は、宗教、結社および表現の自由に対する基本的権利を行使したことを理由として中国本土の特定の宗教的および民族的集団の子ども(とくにチベット人およびウイグル人の子どもならびに法輪功学習者の子ども)に対して、かつ拘禁されている子どもに対して、拷問および不当な取扱いが行なわれている旨の報告がしばしばあることを深く懸念する。 44.条約第37条(a)にしたがい、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促す。 (a) 子どもの拷問および不当な取扱いが行なわれたとされるすべての事件について直ちに独立の立場からの調査を実施し、かつこれらの事件について公に報告すること。 (b) 意思決定のすべての段階でこれらの慣行を命令し、黙認しまたは容易にしたすべての者が、裁判にかけられ、かつその犯罪の重大性にふさわしい刑罰をもって処罰されることを確保すること。 (c) 拷問および不当な取扱いの被害者となった子どもが救済および十分な賠償(身体的および心理的回復ならびに同じことが繰り返されないことの保証を含む)を得られることを確保すること。 性的搾取および性的虐待 45.委員会は、締約国の管轄内のあらゆる地域で、子どもに対する性的搾取および性的虐待(強姦を含む)が広く蔓延していることを深刻に懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 移住労働者の子ども(とくに、親から後に残されて中国本土で親戚等のケアに委ねられた子ども)が、性的搾取および性的虐待の被害をとくに受けやすい状況に置かれていること。 (b) 子どもに対するこのような犯罪の訴追率が低いこと、ならびに、非司法的解決(中国本土)および告発の取り下げ(中国領マカオ)が蔓延していることから、加害者が処罰されない結果が生じていること。 (c) 締約国の管轄内のあらゆる地域において、性的虐待についてならびにこのような事件への対応およびその通報の方法について子どもが知らないこと。 (d) 中国領香港において、性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもを特定しかつ支援するための手続が定められていないこと。 (e) 中国本土、中国領香港および中国領マカオの国内法上、性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもによる、司法、シェルター、医療サービス、心理カウンセリングおよび補償へのアクセスが限られていること。 46.委員会は以下のことを促す。 (a) 締約国に対して、本土において、移住労働者の子どもを性的搾取および性的虐待から保護するための努力、ならびに、性的虐待および性的搾取に関する法律が効果的に執行され、かつそのような犯罪の加害者が裁判にかけられてその犯罪にふさわしい制裁の対象とされることを確保するための努力を強化すること。 (b) 締約国に対して、女子および男子の性的搾取および性的虐待に関するデータ、加害者の捜査および処罰の件数に関するデータ、ならびに、被害者に対して与えられた救済および補償に関するデータを体系的に収集すること。 (c) 中国本土、中国領香港および中国領マカオに対して、苦情申立てを受理し、監視しかつ調査するための効果的なかつ子どもにやさしい手続および機構(子どもにとってアクセスしやすい無償のヘルプラインを含む)を設置するとともに、学校およびコミュニティにおける性暴力および性的虐待の通報を奨励する目的で、子ども(男子を含む)の間で意識啓発活動を行なうこと。 (d) 中国領香港に対して、刑事罪行条例で対象とされている性犯罪の包括的再検討を実施するとともに、インターネット上のあらゆる形態の児童ポルノおよび子どもの性的搾取を犯罪化する目的で法改正を行なうこと。中国領香港はまた、人身取引および性的搾取の被害を受けた子どもを特定しかつ支援するための効果的な政策および手続も確立するべきである。 (e) 中国領香港および中国領マカオに対して、それぞれ、性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもが有するシェルター関連のニーズ、健康上のニーズ、法的ニーズおよび心理社会的ニーズに、専門家を対象とする十分な研修等も通じて対応するための戦略を策定すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 47.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)を想起しつつ、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対応するための、包括的な国家的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するために必要な全事件の義務的通報およびフォローアップ措置を含む、国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力のジェンダーに関わる側面にとくに注意を払って対応すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国際連合機関と協力すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 48.委員会は、制約の多い戸口政策により、移住する親の多くが子どもを後に残していくという困難な選択に直面しており、その結果、中国本土の農村部において一方または双方の親がいないまま成長する子どもが5500万人にのぼっていることに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が、子どもの遺棄の根本的原因に対処するのではなく、後に残された子どもの施設措置(寄宿学校を含む)をしばしば促進する政策を引き続きとっていることに、懸念を表明するものである。 49.条約第9条にしたがい、委員会は、締約国に対し、家庭環境から子どもが分離されることを回避するために即時的措置をとるよう促す。そのための手段には、戸口制度を廃止すること、ならびに、親および法定保護者(働いている親を含む)が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助および支援サービスを提供することも含まれる。委員会はさらに、締約国が、中国本土における学校統合プログラムを改革し、かつ、子どもの施設措置ではなく家庭環境およびコミュニティを基盤とするケアを優先させるよう、勧告するものである。 50.委員会は、中国領香港の住民と婚姻し、かつ中国領香港の住民である子どもも有している中国本土出身の女性が、中国領香港の在留許可を取得できないことから定期的に中国本土に赴いて片道入境許可証を更新しなければならないこと、および、このような女性が中国領香港における就労資格または家族支援受給資格を有していないために、その子どもにとって不安定かつ脆弱な家族状況が生じていることを、懸念する。 51.第9条にしたがい、委員会は、中国領香港が、これらの母親に中国領香港の在留許可を付与する等の手段を通じて家族の再統合を促進するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 52.委員会は、中国本土において、主として締約国の家族計画政策ならびに障害のある子どもおよび女子に向けられた差別およびスティグマを理由として、子ども(とくに障害のある子どもおよび女子)の遺棄が広く行なわれていることを深刻に懸念する。さらに、資格のある児童福祉専門家を2020年までに増員することがNPCDで求められていることには留意しながらも、委員会は、NPCDその他の新たな政策が児童ホームの設置を唱道し、かつ、これらの施設に対し、親族による養育およびコミュニティを基盤とする養育よりも多くの資金を提供しようとしていることを懸念するものである。このことは、政府機関にとって、コミュニティを基盤とする代替的養護の選択肢を追求するのではなく、子どもを施設に措置することを選ぶよう促す、意図せざる誘引策になってしまう可能性がある。 53.委員会は、ケアへの子どもの措置を定期的に再審査するための手続が中国領香港で設けられておらず、かつ、必要な場合の親権停止に関する法律が制定されていないことを懸念する。委員会はまた、中国領香港において家族および子どもに提供されている専門家の支援およびケアが不十分であること、ならびに、家族の危機の状況において子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利が十分に考慮されていないことも、懸念するものである。委員会は、中国領香港および中国領マカオにおいて、家族によるケアを奪われた子どもが家庭を基盤とするケアではなく入所施設に措置されていることを懸念する。 54.委員会は、締約国に対し、女子および障害のある子どもの遺棄の根本的原因に対処するための努力の一環として、中国本土において、女子および障害のある子どもに関連して広がっているスティグマを解消し、かつ家族計画政策を改革するための即時的措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国の管轄内のあらゆる地域で、子どもの代替的養護に関するすべての決定において子どもの最善の利益が優先されるべきこと、および、コミュニティを基盤とする家庭的ケアが施設措置よりも好ましいとされるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が引き続き、政府の追加的資源の配分等も通じて、子どもとともに働く専門家を増員し、かつすべての専門家を対象として研修を実施するよう勧告する。 55.委員会は、中国領香港が、この分野における法改正および手続的改革についての法改正委員会の勧告を実施すべきこと、ならびに、中国領マカオが、資源およびサービス(家族カウンセリング、心理社会カウンセリングおよび親教育を含む)を増加させ、かつ子どもとともに働くすべての専門家の研修を実施すべきことを、勧告する。委員会はさらに、監護、居所、交流ならびに子どもの生命および発達に重要な影響を与えるその他の問題に関わるすべての決定において、最善の利益を第一次的に考慮され、かつ意見を聴かれる子どもの権利が全面的に考慮されるべきことを勧告するものである。 養子縁組 56.委員会は、同国が中国本土において不法な養子縁組と闘う努力を行なってきたことには留意しながらも、毎年数千人の子どもが誘拐、取引および売買(違法な養子縁組を目的とするものを含む)の対象とされていると推定されていることを、深く懸念する。委員会は、一部の家族計画担当官が、親の出産割当枠を超えて生まれた子どもを手放すよう親に強要し、かつ、国内養子縁組もしくは国際養子縁組または強制労働を目的としてその子どもを売りまたは地元の孤児院に措置しているという報告があることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、情報および公的統計(とくに、国内養子縁組および国際養子縁組を目的として養子縁組のために売られたとされる中国本土の子どもの人数ならびに捜査および訴追の対象とされた事件の件数に関するもの)が存在しないことも懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国の管轄内のあらゆる地域で、国内養子縁組および国際養子縁組のために設けられている現行の機構および手続を緊急に見直すとともに、養子縁組事案を担当する専門家が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に照らし、時宜を得たやり方で事案の評価、審査および処理を行なうために必要な専門性を十分に身につけていることを確保すること。 (b) 締約国の管轄内のあらゆる地域で、養子縁組手続の評価および審査のための透明かつ効果的な制度を創設すること。 (c) 中国本土における子どもの誘拐および不法な養子縁組(病院および「孤児院」からのものを含む)のあらゆる事案を捜査し、かつ、このような犯罪の加害者(関与した政府職員を含む)の責任が問われることを確保すること。 (d) 誘拐された子ども(養子縁組を目的とする誘拐を含む)の人数、および、救済され、かつ中国本土で家族およびコミュニティに再統合された子どもの人数を明らかにするために、中央データ収集システムを設置すること。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項)) 障害のある子ども 58.中国本土との関連で、委員会は、障害のある子どもの権利を促進するさまざまな政策が採択されたことに肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国が引き続き障害に対する医学的アプローチを採用していること、および、障害児のためのサービスがほとんど身体的「リハビリテーション」のための施設に集中していることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、以下のことを具体的に懸念する。 (a) 1人っ子政策の例外として、障害児がいる家族は第2子を持つことを認められる旨の、障害児に対するスティグマを助長する政策が継続されていること。 (b) 障害児に対するスティグマが広く蔓延しており、かつ、このような子どもが複合的形態の差別(教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセスの制限を含む)を経験していること。 (c) 障害児の人数に関する都市部・農村部間の格差が深刻であること、および、施設で生活している障害児の数がとくに農村部において多いこと。 (d) 締約国が、普通学校における障害児の教育にはほとんど資源を割かない一方で、分離された特別学校を積極的に発展させる政策をとっていること。委員会はさらに、障害児が普通学校への受入れを拒否され、学校を去るよう圧力をかけられ、または時として障害を理由に退学させられているという報告があることを懸念する。 59.委員会は、締約国のあらゆる地域で、障害を早期に発見するためのスクリーニング・プログラムが設けられていないことを懸念する。 60.中国領マカオとの関連で、委員会は、障害のある子どもが事実上の差別を経験しており、かつ、インクルーシブな教育および十分な訓練を受けたやる気のある教員に限られた形でしかアクセスできていないことを懸念する。委員会はさらに、中国領香港において障害児に関する細分化されたデータが存在せず、かつ、報告によれば、障害児が常態的に排除および差別(教員によるものを含む)ならびに他の子どもによるいじめの対象とされていることを懸念するものである。 61.一般的意見9号(2006年)を想起し、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるよう促すとともに、具体的には締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる関連の法律および政策(提案されている障害児教育規則を含む)において、障害児に対する事実上の差別となっているすべての規定を廃止し、かつ障害を理由とする差別をとくに禁止する規定を含めること。また、中国本土の障害児が、自己に影響を与えるあらゆるレベルの政策および計画の立案および実施に関与することを確保すること。 (b) 中国本土ならびに中国領香港および中国領マカオにおいて、障害に基づく差別のあらゆる事案を独立の立場から監視し、かつ、障害児の権利が侵害された事案において効果的救済を提供すること。 (c) 中国本土において施設を基盤とする障害児のケアを防止しかつ解消し、合理的な期間内に脱施設化を図るための即時的措置をとり、かつ、施設ケアに代わる手段として家族およびコミュニティを基盤とするケアおよびサービスを発展させること。 (d) 中国本土、中国領香港および中国領マカオにおいて障害の予防および早期発見のためのスクリーニング・サービスをさらに発展させ、かつ、適切なフォローアップおよび早期発達支援のためのプログラムを提供すること。 (e) 締約国のあらゆる地域で、障害のある生徒が普通〔教育〕制度に参入しかつ留まることを妨げるすべての障壁(物理的障壁を含む)を速やかに特定しかつ取り除くとともに、特別教育制度から得られた資源を普通学校におけるインクルーシブ教育の促進のために再配分すること。 (f) 人権、平和および寛容についての教育を行ない、教員を対象とする職業教育を実施し、かつ子どものための教室特別援助者を雇用する等の手段により、中国領香港の学校における障害児のいじめに取り組むための努力を強化すること。さらに、中国領香港は、障害児に関する細分化されたデータを体系的に収集し、かつ、障害児のための政策およびプログラムの立案において収集されたデータを活用するべきである。 (g) 締約国のあらゆる地域で障害児に対する事実上の差別を防止しかつ解消する目的で、障害児、公衆一般および特定の専門家集団を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを実施すること。 健康および保健サービス 62.委員会は、予防接種率が向上したこと、ならびに、中国本土における妊産婦死亡率および乳幼児死亡率が顕著に減少し、かつとくに農村部において病院内出産が増加したことを歓迎する。しかしながら委員会は、都市部と農村部の間で、移住者である子どもの間でならびに地域間および地域内で(とくに中国西部において)健康格差が根強く残っていることを深く懸念するものである。委員会はさらに、都市部と農村部の間で保健資源の配分が異なっており、かつ、遠隔地および貧困地域に住んでいる子どもならびに移住労働者の子どもを対象とする保健ケアの質に隔たりがあることを懸念する。 63.委員会は、締約国が、脆弱な状況にある子ども(とくに貧困下および農村部で暮らしている子どもならびに移住労働者の子ども)にとくに注意を払いながら、中国本土のすべての子どもが保健サービスへの同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受することを確保する目的で、健康面での成果および資源配分に関して存在する格差に緊急に対応するための努力を強化するよう勧告する。とくに委員会は、締約国が、保健インフラを改善し、かつ、農村部および貧困地域でプライマリーヘルスケア施設における緊急の産科ケアおよび新生児ケアならびに専門的技能を有する出産介助者の利用可能性およびアクセス可能性を向上させる等の手段により、中国本土における乳幼児および妊産婦の死亡を解消するためにあらゆる措置をとるよう、勧告するものである。 64.委員会は、安全を欠いた予防接種および輸血が中国本土全域の数千人の子どもに影響を与えており、HIV感染、重病または障害および死亡の原因となっていることを深く懸念する。委員会はさらに、死亡しまたは重大な影響を受けた子どもの家族がいかなる救済も受けていないこと、HIV/AIDSの母子感染が増加していること、および、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもが無償の治療および保健ケアを受けられないことを懸念するものである。委員会はまた、これらの事象に影響を受けている子どもの人数または中国本土におけるこれらの子どもの現状に関する公式統計が存在しないことにも留意する。 65.委員会はさらに、中国本土において完全母乳育児が減少していることおよび乳児用調製乳の汚染事件が発生していることを懸念する。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 食品および健康に関する安全基準(企業セクターを対象とするものも含む)について法律を改正しかつ規則の実施を強化するための努力を倍加するとともに、環境および健康に関する国際的および国内的基準に違反したいかなる官吏または企業に対しても適切な制裁が課され、かつ違反が行なわれた場合に救済が提供されることを確保すること。 (b) 影響を受けている子どもに関する体系的データを収集するとともに、すべての子どもおよびその家族が効果的な救済(無償の治療および十分な補償を含む)にアクセスできることを確保するためにあらゆる措置をとること。 (c) HIVに感染した子どもおよび孤児に対して無償の抗HIV薬、無償の学校教育および月額600元(95米ドル)の最低補助金を提供するという、委員会への文書回答で報告されている中央政府の政策を効果的に実施すること。 (d) 完全母乳育児および赤ちゃんにやさしい病院の設置を促進するとともに、人工乳児用調製乳の販売を適切に統制しながら「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を効果的に執行すること。 思春期の健康 67.委員会は、中国本土において、1人っ子政策の実施を背景として、地元の家族計画担当官により、とくに10代の女子を対象として強制的な不妊手術および妊娠中絶が行なわれている旨の報告があることを憂慮する。このような慣行は条約の基本的原則および規定に違反するものである。 68.委員会は、締約国が、中国本土の地方当局が10代の女子に対して行なった強制妊娠中絶および強制不妊手術のすべての事案を速やかにかつ独立の立場から調査して公に報告し、かつ、当該犯罪に責任を負うすべての官吏を訴追するよう勧告する。 69.委員会は、締約国において、思春期の健康の分野における意識が低く、かつサービスが不十分であることを懸念する。 70.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、思春期の健康に関する包括的サービスおよび心理社会的支援が広く提供されることを確保し、学校におけるセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスについての教育ならびに有害物質濫用の防止に関するライフスキル教育を提供する等の手段によって意識および知識を向上させ、かつ、学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアを含む)を導入するよう、勧告する。 精神保健 71.委員会は、中国本土および中国領香港において子どもが利用可能な精神保健サービスへのアクセスが限られていることおよび当該サービスを利用するための待機期間が長いことを、依然として懸念する。 72.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、思春期の子どものための予防的および治療的精神保健サービスを拡大するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/CHN/CO/2、パラ65〔パラ67〕)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、包括的な児童精神保健政策を採択し、かつ、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健の促進、カウンセリングおよび精神保健障害の予防が各政策の不可欠な特徴とされることを確保する〔よう勧告する〕。 生活水準 73.公共住宅の供給を増やすための中国領香港の計画は歓迎しながらも、委員会は、一部貧困地域の居住環境について懸念を覚える。さらに委員会は、中国本土および中国領香港において子どもの貧困が増加していること、ならびに、移住者の子ども、民族的マイノリティの子どもおよび庇護希望者である子どもが貧困層の間で不相応に代表されており、かつ貧困線以下の生活を送っていることを、懸念するものである。 74.委員会は、中国領香港に対し、公共住宅プログラムの実施をいっそう速やかに進めるよう促す。委員会はさらに、中国本土および中国領香港が、子どもの貧困を評価しかつこれに対応するための多元的な基準を採択するとともに、とくに、とりわけ貧困に陥りやすい状況に置かれた子どもおよび家族(移住者の子ども、民族的マイノリティの子どもおよび庇護希望者である子ども等)のための社会的保護および対象の明確なプログラムを通じ、子どもの生活水準の地域格差、民族格差および都市部・農村部間の格差を解消するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告するものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.委員会は、中国本土において教育との関連で締約国が達成した相当の成果(乳幼児期のケアおよび教育の拡大を含む)には留意しながらも、農村部に住んでいる子ども、ならびに、とくに民族的マイノリティ出身の子ども、庇護希望者および難民である子ども、母親が朝鮮民主主義人民共和国出身である子どもならびに移住労働者の子どもにとって、教育へのアクセスおよび教育の利用可能性の面での格差が増大していることを懸念する。これとの関連で、委員会は、国の学校制度にほとんどまたはまったくアクセスできない地域で移住者の子ども向けに運営されている私立学校に対し、官吏によるいやがらせおよび強制的閉鎖が行なわれている旨の報告があることを深刻に懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) 生徒の留年および在学継続に影響を与えている、中国本土全域における教育の質〔の低さ〕、および、とくに一部の南部諸省における後期中等学校中退率の高さ。 (b) 衛生面の不十分さ、学校インフラの劣悪さおよび学校における子どもの身体的安全。 (c) 二言語教育政策の文脈で母語およびマイノリティ言語の使用および学習を促進するための措置がとられていないこと、ならびに、中国の教育制度においてチベット人およびウイグル人の子どもならびに移住労働者の子どもに対する差別が行なわれていること。 (d) 中国領チベットの学校においてチベット語の使用および促進に関する複合的障壁が存在していること、ならびに、学校の閉鎖および教員の身柄拘束の報告があること。 (e) 総合大学その他の大学の入学要件に関する2013年の規則の第10条で規定されているように、教育機関への「邪教」の子どもの受入れが禁じられていることから、とくに法輪功学習者の子どもが大学教育を受けられないこと。 (f) 国全域における教育上のデータの質および使用可能性。 76.委員会は、締約国が、中国本土のすべての子ども(とくに移住労働者の子ども、民族的マイノリティ出身の子どもならびに難民および庇護希望者である子ども)を対象として良質な教育のアクセス可能性を確保するためのプログラムおよび政策を引き続き強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) あらゆる段階およびあらゆる地域で教育に対する十分な資金を確保するとともに、学校インフラ、教員の人数ならびに学校教材および教科書への子どものアクセスを改善すること。 (b) 移住労働者の子ども向けに運営されている私立学校に対するいやがらせおよび閉鎖を終わらせるとともに、難民および庇護希望者であるすべての子どもに対し、中国本土への到着および登録の後、教育が自動的に利用可能とされることを確保すること。 (c) 民族的マイノリティ言語の使用および促進を確保する目的で二言語政策を効果的に実施するとともに、地方および広域行政圏のレベルで、教育制度の意思決定プロセスへの民族的マイノリティ(チベット人およびウイグル人の子どもを含む)の参加を確保すること。 (d) チベット人の子どもが学校でチベット語を学習しかつ使用できることを深刻に制約するすべての制限(チベット学校の閉鎖を含む)を撤廃すること。締約国はまた、中国憲法で保障されているとおり、初等中等段階のすべての教育教材および学習教材が、民族的マイノリティ言語でも、かつ文化的に配慮した内容をもって利用可能とされることも確保するべきである。 (e) 総合大学その他の大学の入学要件に関する2013年の規則の第10条を直ちに廃止するとともに、すべての子どもが、その宗教、信条または良心にかかわらず、いかなる制約もなしに教育にアクセスできることを確保すること。 (f) 学校建設、安全および衛生ならびにすべての学校における十分な衛生設備へのアクセスを向上させるための努力を加速させること。 (g) データの質、細分化および分析を向上させる目的でいっそうの技術的資源、財源および人的資源の割当ならびに国際基準の導入を行なうとともに、データの質を高めるためにデータの利用可能性、透明性および教育の公的憲章を確保すること。 77.中国領香港について、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 学校におけるいじめおよび学校制度の競争的な性質により、子どもの間で不安または抑うつが生じており、かつ遊びおよび休息に対する子どもの権利が侵害されていること。 (b) 授業が中国語のみで利用可能とされており、かつ民族的マイノリティの子どもを対象として政府補助による「指定学校」制度が設けられていることから、公立学校制度において民族的マイノリティの子どもに対する事実上の差別および人種隔離が行なわれていること。 (c) 「越境児童」が地元の学校にアクセスできず、中国本土に毎日行き来して通学していること。 78.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校におけるいじめに生徒自身の参加も得ながら対処するための措置、および、教育制度の競争性を低減させ、かつ主体的な学習能力の促進ならびに遊びおよび余暇に対する子どもの権利の促進を図るための措置(教員の研修、学校におけるソーシャルワーカーおよび心理学者の増員ならびに親および保護者の感受性強化等の手段によるものを含む)をとること。 (b) 民族的マイノリティの子どもを対象とする「指定学校」を緊急に廃止するとともに、奨学金の提供または入学資格の緩和等も通じ、これらの子どもが普通学校における教育にアクセスできることを促進するための資源を再配分すること。 (c) 第二言語としての中国語による質の高い教育を確保しつつ、あらゆる教育段階で二言語教育に関する法律および政策を実施するための努力を強化すること。 (d) 中国領香港に住んでいるすべての子どもを対象として、地元の学校へのアクセスを確保すること。 79.中国領マカオについて、委員会は、子ども(とくに妊娠した青少年)の中等学校からの中退について懸念を覚える。 80.委員会は、中国領マカオが、とくに妊娠した青少年を対象とする学校出席・在学継続プログラムを改善し、かつ、生徒のやる気および在学継続を増進させる目的で良質な教育を促進するための努力を強化するよう、勧告する。 H.その他の特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 庇護希望者および難民である子ども 81.委員会は、「インドシナ難民問題の最終的解決のために努力する」旨の、締約国が2011年に行なった誓約を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 朝鮮民主主義人民共和国から中国本土に入国する子どもが、いまなお分類上は経済移民とみなされ、送還時に子どもに回復不可能な危害が生ずるおそれの有無について検討されないまま朝鮮民主主義人民共和国に送還されていること。 (b) 母親が朝鮮民主主義人民共和国出身である子どもが、母親が特定されて朝鮮民主主義人民共和国に強制送還されるという恐怖から戸口制度上の登録をされていないために、法律上のアイデンティティおよび基本的権利(とくに教育)へのアクセスを欠いていること。 (c) 締約国が、カチン人の庇護希望者(子どもを含む)を、その置かれた状況にもかかわらず難民として認定せず、2012年8月にミャンマーに強制送還したこと。 (d) 難民および庇護希望者であって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どものための特別な受入れ手続または受け入れ施設が存在せず、かつ、これらの子どもが保健ケア、特別なケアおよび保護にアクセスできていないこと。 82.委員会は、庇護希望者および難民である子どもに国の公立学校制度へのアクセスを認めるという中国領香港の決定に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、庇護希望者である子どもに対してその到着と同時に特別なケアおよび保護が与えられておらず、かつ、このような子どもならびに中国領香港に空路で到着した保護者のいない子どもおよび入国を拒否された子どもを少年拘禁施設に収容する行政実務が行なわれていることを、懸念するものである。 83.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ノン・ルフールマンの原則を尊重するとともに、保護者のいる子ども、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子ども(朝鮮民主主義人民共和国出身の子どもを含む)が、いかなる場合にも、回復不可能な危害を受けると信じるに足る相当の理由がある国へ送還されないこと、および、この原則が、区別なく、かつ国籍にかかわらず、すべての子どもおよびその家族に適用されることを確保しなければならないという、条約上の義務を想起すること。 (b) ミャンマー北部で続いている紛争に鑑み、カチン人である子どもの難民およびその家族に対して一時的保護が提供されることを確保すること。締約国はまた、国際連合難民高等弁務官事務所に対し、難民認定の実施を目的とする、雲南省への自由なかつ妨害のないアクセスも認めるべきである。 (c) 朝鮮民主主義人民共和国の公民(とくに子どもおよび中国人男性との間に子どもをもうけた女性)の逮捕および送還を停止するとともに、母親が朝鮮民主主義人民共和国出身である子どもが基本的権利(アイデンティティおよび教育に対する権利を含む)にアクセスできることを確保すること。 (d) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもである庇護希望者の特別なニーズおよび脆弱性に対応するための即時的取り組みを行なうとともに、これらの保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの特別なニーズについて適切な配慮を行ない、かつこれを充足させること。 84.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 庇護希望者および難民である子どもを収容する行政実務を停止すること。 (b) 庇護希望者および難民である子どもに対し、アクセス可能かつ十分な支援(特別なケア、保護ならびに十分な後見および法的代理を含む)が提供されることを確保すること。 (c) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同条約の議定書に加入すること。 経済的搾取(児童労働を含む) 85.委員会は、児童労働および子どもの搾取(犯罪集団による子どもの誘拐および売買を通じたものを含む)が広く存在することを示す報告が複数ある一方で、中国本土における児童労働についての具体的データが存在しないことを懸念する。委員会はさらに以下のことを懸念するものである。 (a) 労働を通じた再教育(RTL)プログラムおよび「労働学習学校」(工読学校)が一般的に行なわれており、かつ、これらのプログラムのもとで強制的かつ搾取的な児童労働が用いられていること。 (b) 子どもが危険な業務および最悪の形態の児童労働(とくに採鉱業、製造業およびレンガ産業)に広く関与していること、ならびに、危険な業務からの16~18歳の子どもの保護が不十分であること。 86.委員会は、締約国に対し、優先的課題としてRTLプログラムおよび「労働学習学校」プログラムの使用に終止符を打ち、かつ以下の措置をとるよう促す。 (a) 児童労働に関するデータ、危険な児童労働の件数に関するデータおよび労働条件に関するデータ(年齢別、男女別、地理的所在別および社会経済的背景別に細分化されたもの)を収集するとともに、このようなデータを公に利用可能とし、かつ、あらゆる形態の児童労働を防止しかつ撤廃するための効果的な措置を発展させる目的で当該データを活用すること。 (b) 子どもが行なっている危険な業務および最悪の形態の労働を特定し、かつ、負担の大きな業務における16~18歳の子どもの雇用を禁止すること。 (c) 労働に従事している16歳以上の子どもについて、そのような子どもの労働への従事が真正かつ自由な選択に基づくものであり、かつ条約および国際基準に基づく十分な保護措置に服することを、強制的労務調達に関与した者に制裁を適用すること等も通じて確保すること。 (d) 家事労働者の適切な仕事に関する国際労働機関第189号条約(2011年)の批准を検討すること。 売買、取引および誘拐(子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書のフォローアップを含む) 87.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく委員会の2005年の勧告(CRC/C/OPSC/CHN/CO/1)を十分に実施していないことを遺憾に思う。委員会はさらに、中国本土および中国領マカオにおいて、とくに労働および性的搾取を目的とする子どもの人身取引および搾取がますます蔓延していることを懸念するものである。委員会はまた、児童セックス・ツーリズムが中国領マカオにおいて依然として深刻な問題となっており、かつ、政府職員が人身取引および性的搾取関連の犯罪の共犯者となっている疑いがあることからこのような犯罪が処罰されない事態が生じていることも、懸念する。 88.委員会は、前回の勧告を想起するとともに、締約国に対し、1997年刑法を子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の規定と調和させるために必要な措置をとり、かつ、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 養子縁組を目的とする子どもの売買および取引にとくに注意を払いながら、選択議定書第3条第1項に掲げられているすべての犯罪が、当該犯罪が国内でもしくは国境を越えてまたは個人的にもしくは組織的に行なわれるかにかかわらず、全面的に刑法の対象とされることを確保すること。 (b) 選択議定書第4条第2項にしたがい、第3条第1項に掲げられている犯罪について域外裁判権を設定するとともに、国外で行なわれた犯罪を本土で訴追するための双方可罰性要件を廃止すること。 (c) 選択議定書第4条第2項にしたがい、選択議定書を、これらの犯罪に関する犯罪人引渡しの法的根拠と認めること。 89.委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 中国本土および中国領マカオにおいて危険な状況に置かれた子どもを特定し、問題の規模を評価し、かつ対象および目標が明確な政策およびプログラムを発展させる目的で、子どもの商業的性的搾取、児童セックス・ツーリズムならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因および規模についての調査を行なうこと。 (b) 政府職員が共犯者である旨の告発を厳格に捜査し、かつこれらの犯罪について当該政府職員を訴追することを通じて、中国領マカオにおける腐敗および不処罰の問題に、優先的課題として直ちに対処すること。 (c) 締約国のあらゆる管轄地域、とくに中国領マカオにおいて外国人ペドファイルの特定、捜査および訴追を強化するため、法律上および制度上のあらゆる必要な措置をとること。 90.委員会は、選択議定書の適用が中国領香港に拡張されていないことを遺憾に思う。 91.委員会は、中国領香港に対し、これ以上遅滞することなく選択議定書の適用拡張を可能にできるよう、必要なあらゆる準備作業を終了させるよう促す。 少年司法の運営 92.委員会は、中国本土の刑事訴訟法の改正、および、RTLプログラムの改革について現在行なわれている議論を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの行政拘禁(RTLおよび労働学習学校を含む)が引き続き適用されており、かつ、締約国が、条約機関および国際連合特別手続受任者により繰り返し表明されてきた懸念にもかかわらずこれらの実務に終止符を打っていないことを、深く懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。 (a) 締約国によれば、16歳以上の子どもが、法的保障措置または法的代理にいかなる形でもアクセスできないままRTL施設に収容される場合があり、かつ当該収容が最長18か月間継続しうること。 (b) 複数の報告が示すところによれば、子どもが誘拐され、かつ、その親とともにまたは親もしくは保護者が不在のまま、秘密拘禁施設(「裏監獄」を含む)に隔離収容されていること。 (c) 裏監獄の存在、ならびに、当該場所およびRTL施設における子どもの拷問および不当な取扱い(食事および睡眠を与えないことを含む)についての訴えを調査するために何らの措置もとられていないこと。 (d) 中国本土の刑事司法制度において、移住労働者の子どもが相当な過剰代表の状況にあること。 (e) 子ども(とくに、貧困下にある子どものように脆弱な状況に置かれている子ども)が、司法へのアクセスを妨げるいくつかの障壁(法律扶助へのアクセスが不十分であることおよび独立の法律扶助が存在しないことを含む)に直面していること。 93.委員会は、締約国が、すべての管轄地域において、条約(とくに第37条、第39条および第40条)、委員会の一般的意見10号(2007年)およびその他の関連の基準に全面的に一致する、修復および更生を旨とする少年司法制度を構築するための努力を強化するよう勧告する。中国本土について、委員会は、締約国に対し、いかなる子どもも不法にまたは恣意的にその自由を奪われないこと、および、いかなる措置においても子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう、促すものである。委員会はさらに、中国本土について、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの行政拘禁の広範な適用を認めている、制度化されたRTLおよび労働学習学校の制度を廃止すること。また、裏監獄等のすべての秘密拘禁施設を直ちに閉鎖する等の手段により、子どもの隔離拘禁の使用に終止符を打つこと。 (b) 逮捕された子どもおよび自由を奪われた子どもが、その逮捕および拘禁の合法性についての審理を受ける目的で逮捕から24時間以内に独立の司法機関に引致され、十分な、無償のかつ独立した法的援助を直ちに提供され、かつ、その親または近親者に連絡できることを確保すること。 (c) 裏監獄等の秘密拘禁施設の存在について、当該施設がどの公的機関のもとに設置されたかも含めて独立の立場から調査しかつ公に報告するとともに、裏監獄を含む秘密拘禁施設の運営責任者ならびに当該施設における子どもの拷問および不当な取扱いに関与した者を訴追すること。 (d) 刑事司法制度において移住労働者の子どもが不相応に代表されている問題に対処するため、緊急のかつ具体的な措置をとること。 (e) 子どもが法律扶助に対する権利を直接行使できることを確保するとともに、すべての子ども(移住労働者および民族的マイノリティの子どもならびに宗教的コミュニティ出身の子どものような、脆弱な状況に置かれた子どもを含む)にとっての法律扶助の質およびアクセス可能性を増進させることにより、司法へのアクセスにおける格差に対処すること。 94.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に容認可能な水準まで引き上げること。 (b) 拘禁(未決拘禁を含む)が、たとえきわめて重大な犯罪の事件であっても、最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、当該拘禁が取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (c) 可能な場合には常に拘禁に代わる措置(ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、社会奉仕活動または刑の執行猶予等)を促進するとともに、法律に抵触した子どものための社会的再統合プログラムを発展させること。 (d) 子どもが成人拘禁施設から直ちに退所させられることを確保するとともに、これらの子どもを、これらの子どもが人道的にかつ固有の尊厳を尊重して取り扱われ、家族と定期的接触を維持することができ、かつ教育および職業訓練を提供される、安全な、子どもに配慮した環境に措置すること。 95.委員会は、中国領マカオに対し、子どもの処罰を目的とする独居拘禁の使用を禁止しかつ廃止するとともに、独居拘禁の対象とされているすべての子どもを直ちにその対象から外すよう、促す。 犯罪の証人および被害者の保護 96.委員会は、子どもの被害者および証人を保護する措置を確保するための努力が不十分であり、かつ締約国の法律に適正に反映されていないことを遺憾に思う。 97.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針を全面的に考慮するよう、勧告する。 I.国際人権文書の批准 98.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 99.委員会は、締約国が、とくにASEAN・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 100.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 101.委員会はさらに、条約およびその選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 102.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回定期報告書をひとつの統合報告書として2019年3月31日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。2012年12月20日の総会決議67/167にしたがい、ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 103.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された調和化報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2014年9月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/173.html
総括所見:フィンランド(第1回・1996年) 第2回(2000年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.53(1996年2月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年1月23日および24日に開かれた第282~284回会合((CRC/C/SR.282-284)においてフィンランドの第1回報告書(CRC/C/8/Add.22)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1996年1月26日に開かれた第287回会合において。 A.序 2.委員会は、フィンランド政府に対し、委員会のガイドラインにしたがって作成された第1回報告書の提出および事前質問事項((CRC/C.11/WP.6)に対する文書回答の提出に関して評価の意を表する。委員会は、代表団が補足的情報を提供してくれたことおよび代表団が条約に関する問題に従事していることにより、委員会が締約国との率直かつ建設的な対話に携わることが可能になったことに、満足感とともに留意する。 B.積極的な側面 3.委員会は、政府が包括的な社会保障制度ならびに子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、とりわけ無料の保健ケア、無償教育、長期の母性休暇および広範な保育制度を提供していることに、満足感とともに留意する。 4.委員会は、条約の規定を全面的に実施し、かつ現在の景気後退が子どもたちに与える影響を最大限に減らすことにより締約国の管轄下にある子どもの権利を保護することを目的として、締約国が議会に国家子ども政策報告書を提出したことを歓迎する。 5.委員会は、法改正の領域で政府が行なっている努力に留意する。委員会は、1995年にフィンランド憲法が改正され、それ以降、人権および子どもの権利の基本原則が盛りこまれるようになったことを歓迎するものである。委員会は、子どもの権利オンブズパーソンの将来の任命に関して現在議会で行なわれている議論を歓迎する。委員会は、また、フィンランド刑法の改正に向けて現在努力が行なわれていることにも留意するものである。最後に、委員会は、環境問題が子どもたちの生活に与える影響に関して政府が最近行なった調査およびそれに関してとられた措置を歓迎する。 6.委員会はまた、政府が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准案件をフィンランド議会に提出したことも歓迎する。 7.委員会は、景気後退のため1990年以降開発援助への予算配分が一時的に減らされているとはいえ、国際協力の領域で締約国が行なってきた長期的努力に留意する。 8.最後に委員会は、委員会の委員との対話の議事要録および委員会の総括所見を議会で回覧したいという締約国の希望に留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、現在の構造的変化および景気後退の時期にあたってフィンランドが直面している困難に留意する。地方分権化および民営化方針、深刻な失業ならびに国家予算の削減が、フィンランドの子どもたち、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に影響を与えてきていることは疑いない。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、締約国に蔓延しており予算削減を生ぜしめている困難な経済状況、ならびに、地方分権化および民営化に向かう現在の傾向が子どもたちに与えている影響について、不安を感ずる。これとの関連で、委員会は、とくに、条約第3条および第4条に照らし、子どもたち、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団にに属する子どもたちを保護するために適切な措置がとられてきたかどうか、懸念するものである。 11.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための包括的政策を実施するにあたってさまざまな省庁間ならびに中央当局および地方当局(自治体)との間に効果的な調整機構を確立する必要性について、十分な関心が払われていないことを懸念する。 12.委員会は、統合された監視機構、とくに、社会のもっとも脆弱な立場に置かれた集団、とりわけひとり親家庭および貧困家庭ならびに障害児、難民およびマイノリティの子どもに対し、地方分権化されかつ場合によっては民営化された自治体の社会政策およびサービス(保健、教育および社会ケア)が効果的に提供されているかどうかを監督することができる機構が存在しないことを、懸念する。 13.委員会は、締約国の法律および政策において、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)がまだ全面的に考慮されていないことに、懸念を表明する。 14.委員会は、締約国において、子どもの権利約の包括的な広報および普及のための戦略が存在しないことを懸念する。委員会はまた、条約がまだ締約国に居住しているマイノリティが話しているすべての言語になっていないことについても不安を感ずるものである。 15.条約第2条および第3条に照らし、委員会は、フィンランド社会において外国人に対する否定的な態度が強化されつつあることを不安に感ずる。 16.委員会は、現在、締約国において、子どもの精神病の治療のための施設が不足していることを、不安に感ずる。この不足のため、精神病治療施設において、子どもが成人から分離されていない状況が生じている可能性がある。委員会はまた、青年の間で自殺が高率で発生していることおよび薬物濫用が増加していることも懸念するものである。 17.委員会は、再研修プログラムを通じてソーシャルワーカーの研修を向上させる必要性があることを懸念する。このような研修は、条約第3条および第12条に照らし、とくに子どもの参加権の全面的実施に関して必要である。委員会はまた、性的虐待およびドメスティックバイオレンスの領域で、発見および防止のための十分な措置がとられていないことも不安に感ずるものである。 18.委員会は、近年、学校中退が増加していることを懸念する。委員会はまた、条約第30条に照らし、マイノリティの子どもたちとともに働くことのできる教員が十分にいないことも不安に感ずるものである。 19.委員会は、児童ポルノの所持および売春を行なう子どもからの性的サービスの購入を禁ずるために、適切な措置、とりわけ法的措置がいまだにとられていないことを、深く懸念する。委員会はまた、子どもが利用可能なセックス・テレホンサービスが存在することも深刻に懸念するものである。 20.委員会は、労働法制が15~18歳の子どもを適切に保護していないことを懸念する。 E.提案および勧告 21.条約第4条に関して、かつ現在の困難な経済状況に関連して、委員会は、条約の諸原則、とくに差別の禁止および子どもの最善の利益に関わる第2条および第3条の原則に照らして、中央レベルおよび地方レベルの双方において、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現のために最大限可能なかぎり資源を配分することの重要性を強調する。 22.委員会は、締約国が、人権および子どもの権利に携わっているさまざまな政府機構間の調整を中央レベルおよび地方レベルの双方において強化し、かつ、部門ごとの活動および政策を調和させるための調整機関または機構の設置を検討するため、さらなる措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、委員会の勧告の実施に関する協力をはじめとして、非政府組織との協力を強化するようにも勧告するものである。 23.委員会は、すべての自治体のすべての子どもが基礎的社会サービスから等しく利益を受けられるようにするために、統合された監視制度または機構を設置するよう勧告する。たとえば子どものためのオンブズパーソンのような独立した監視機構の設置も、勧告されるところである。 24.委員会は、条約第42条に照らし、条約の規定および原則がおとなにも子どもにも同様に広く知られかつ理解されるようにするためには、さらなる努力が必要とされるという見解に立つものである。委員会は、条約を、締約国に住んでいるマイノリティが話すすべての言語に翻訳するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、条約第12条に照らして、子どもの参加権に関する公衆の意識を高める目的で体系的な取り組みをさらに進めるよう奨励したい。 25.外国人に対する否定的な感情および人種主義の増大を軽減するため、委員会は、締約国が、学校および一般社会における広報キャンペーンを含むあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。保護者のいない子どもであって難民認定を希望する子どもはすべて、フィンランド到着と同時に、どのような権利があるかをその子どもの言語で直ちに知らされるべきである。 26.委員会は、とくにソーシャルワーカーのほか、教員、法執行官および裁判官など、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家集団を対象とした、子どもの権利に関する定期的な研修および再研修プログラムを組織するとともに、人権および子どもの権利をその養成カリキュラムに盛りこむよう、勧告する。委員会はまた、性的虐待およびドメスティックバイオレンスの領域において、発見のための措置および防止政策に対してさらに組織的な関心を払うよう勧告するものである。 27.委員会は、精神病を有する子どもが成人と同じ施設に収容されることを防止するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、自殺および薬物濫用に関する理解を高め、かつこれらの現象に効果的に対処する適切な措置がとれるようにするため、これらの現象に関する追加的な調査を行なうことも提案するものである。 28.委員会は、締約国に対し、学校中退と闘うためにあらゆる必要な措置をとるよう奨励し、かつ、関連の当局に対し、締約国のあらゆる地域でマイノリティの子どものために十分な教員が確保されるようにするためにあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。委員会はまた、人権教育のための国連10年の精神を踏まえ、政府に対し、学校カリキュラムに子どもの権利を盛りこむことを検討するよう奨励するものである。 29.委員会は、刑法改正の過程において、児童ポルノの所持および売春を行なう子どもからの性的サービスの購入を違法とするよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国が、セックス・テレホンサービスにアクセスすることから子どもを保護し、かつ、誰にでも利用できるこうしたテレホンサービスを通じてペドファイルによって性的に搾取される危険から子どもを保護するために、あらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。最後に委員会は、性的虐待の事実を関連の当局に通報した専門家を保護するため、十分な措置をとるよう勧告する。 30.委員会は、締約国に対し、関連の国際基準、とくにILO第138号条約およびILO第146号勧告に照らして、15~18歳の子どもに関する労働法制を改正するよう奨励する。 31.委員会は、締約国に対し、締約国報告書、委員会における報告に関する議論の議事要録および報告の検討後に委員会が採択した総括所見を、広く普及するよう奨励する。委員会は、こうした文書に対して議会の関心を促し、かつ、そこに掲げられた行動のための提案および勧告が非政府組織との密接な協力によってフォローアップされるようにするよう、提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。