約 24,220 件
https://w.atwiki.jp/next_osaka/pages/2.html
トップページ コンテンツ 情報収集 最新ニュース 最新ブログ記事 アーカイブ ニュースアーカイブ その他情報アーカイブ 都市開発上の課題・懸念事項 課題・懸念事項 都市開発・都市景観 超高層ビル 大型開発 インフラ整備 都市戦略 地方自治 次世代産業 学術研究都市 大阪のデータ 大阪の基本情報 大阪の画像・動画 画像 動画 リンク集 再開発関連ブログ 掲示板 公的機関 法人 wiki関連 @wiki @wikiご利用ガイド 更新履歴 取得中です。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/205.html
総括所見:イスラエル(OPAC・2010年) 第1回(2002年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/ISR/CO/1(2010年3月4日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月19日に開かれた第1475回会合(CRC/C/SR.1475参照)においてイスラエルの第1回報告書(CRC/C/OPAC/ISR/1)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/ISR/Q/1/Add.1)を歓迎するものである。委員会は、国防総省の代表を含む多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話により、子どもの権利一般に対するイスラエルのより広範なコミットメントの一環である選択議定書の実施に光が当てられたことを評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、〔条約に関する〕締約国の第1回報告書に関して2002年10月4日に採択された従前の総括所見(CRC/C/15/Add.195)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 4.委員会は、国際法における国家責任にしたがい、かつ現在蔓延している状況のもとで、条約および選択議定書の規定は、とくに締約国の公的機関または代理者が行なう行為のうち条約に掲げられた権利の享受に影響を与えるすべての行為との関連で、パレスチナ被占領地域の子どもの利益のために適用されることをあらためて繰り返す。委員会は、「パレスチナ被占領地域における壁の建設の法的帰結」に関する勧告的意見において国際司法裁判所が立証したように、人権法および人道法は同時に適用されることを強調するとともに、選択議定書が人道法に明示的に言及していることを想起するものである。 5.委員会は、選択議定書の全面的実施について締約国が有している困難に留意する。委員会は、恐怖の雰囲気が根強く残っていること、および、一部にテロ攻撃を行なう者もいるパレスチナ人武装集団によって、子どもを含むイスラエル人の民間人が意図的かつ無差別に標的とされかつ殺害されていることを認識するものである。同時に委員会は、パレスチナ領域の違法な占領、民間人地域の爆撃、超司法的殺害、イスラエル国防軍による均衡性を欠いた武力行使、住宅の解体、〔ならびに、〕教育、保健ケア、清潔な水および就労へのアクセスの否定をもたらす壁の建設および移動制限が行なわれており、そのいずれもがパレスチナ人の子どもに深刻な影響を及ぼしていることを認識する。委員会は、パレスチナ人に対する日常的な屈辱的行為によって暴力の連鎖が助長され続けていることを、あらためて指摘するものである。 I.積極的側面 6.委員会は、最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約を締約国が批准したこと(2005年3月15日)に、積極的側面として留意する。 7.委員会は、徴募されまたは武力紛争で使用された庇護希望者である子どもに対し、武力紛争において子ども兵士として使用されたことを理由に難民としての地位が認められている旨の、締約国から提供された情報を歓迎する。 II.実施に関する一般的措置 差別の禁止 8.委員会は、イスラエルの法律において、イスラエルの子ども(18歳〔未満〕)とパレスチナ被占領地域の子ども(軍令第132号によれば16歳〔未満〕)との間で子どもの定義に関する差別が引き続き設けられていることを懸念する。 9.委員会は、締約国が、軍令第132号のうち子どもの定義に関わる規定を廃止するとともに、これとの関係で国内法が条約に一致することを確保するべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 生命、生存および発達に対する権利 10.委員会は、締約国の管轄内で行なわれている、子どもの生命、生存および発達に対する権利の侵害について懸念を覚える。委員会は、イスラエル人の子どもも影響されていることには留意しながらも、パレスチナ人の子どもが不均衡に脆弱な立場に置かれていることを懸念するものである。委員会は、2008年12月および2009年1月の「鋳造鉛」(Cast Lead)作戦の際、均衡性を欠いた暴力、文民の区別の欠如ならびに人道上および医療上の援助の妨害を理由としてガザの子どもがこうむった深刻な人権侵害(これらについては、とくにガザ紛争に関する国連事実調査団によって記録されており、その報告は総会(A/HRC/RES/S-12/1)および人権理事会(A/HRC/RES/S-12/1)の支持を受けている)について、重大な懸念を表明する。さらに委員会は、パレスチナ被占領地域、レバノン南部およびシリア領ゴラン高原被占領地域の一部に敷設された締約国由来の対人地雷によって、子どもの生命が脅かされていることを懸念するものである。 11.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 武力紛争における民間人の保護についての最低基準を定めた人道法(戦時における文民の保護に関する1949年のジュネーブ条約を含む)に掲げられた均衡性および区別の基本的原則を遵守するため、速やかな措置をとること。 (b) パレスチナ人の子どもの生命に対する権利に特別な注意を払うこと。委員会は、締約国に対し、緊急に封鎖を解除し、かつ住宅、学校および病院の再建を支援するよう勧告するものである。 (c) 子どもに直接間接の影響を及ぼす勧告にとくに注意を払いながら、ガザ紛争に関する国連事実調査団の勧告にしたがうこと。 (d) パレスチナ被占領地域、レバノン南部およびシリア領ゴラン高原被占領地域の対人地雷をすべて除去するとともに、必要に応じてそのための国際協力を求めること。 普及および意識啓発 12.委員会は、締約国がとった措置に関する情報には留意しながらも、選択議定書に関する一般公衆の意識が低いままであることを懸念する。 13.委員会は、選択議定書第6条2項に照らし、締約国が、選択議定書の原則および規定が一般公衆に対してならびにイスラエル人およびパレスチナ人双方の子どもの間で広く普及されることを確保するよう、勧告する。 研修 14.委員会は、関連の専門職種、とくに軍隊、警察および少年司法関係者が選択議定書の規定に関する十分な研修を受けていないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、軍隊構成員を対象とした、選択議定書の規定に関する具体的研修をともなう人権研修を強化するよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、子どもとともに活動する関連の専門家集団、とくに検察官、弁護士、裁判官、法執行官、ソーシャルワーカー、医療専門家、教員、メディア専門家ならびに地方および地区官吏を対象とした、選択議定書の規定に関する意識啓発、教育および研修のプログラムを発展させるよう勧告するものである。 締約国は、次回の報告書でこの点に関する情報を提供するよう慫慂される。 データ 16.委員会は、パレスチナ被占領地域の子どもの状況についていかなる情報も提供しないという対応が締約国によって繰り返されたことを遺憾に思う。委員会はさらに、武装集団に所属している子どもおよび治安犯罪について告発されかつ訴追された子どもの人数に関するデータが存在しないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国に対し、条約に基づく次回定期報告書において関連の情報を提供し、かつパレスチナ被占領地域についてのデータもそこに記載するよう、促す。 III.防止 義務的徴募 18.委員会は、対話の過程で締約国から提供された、18歳未満の者が敵対行為に直接参加することはできない旨の情報に留意しながらも、締約国が、18歳未満の者を義務的徴募の対象として指定することにより、選択議定書第2条を全面的に遵守していないことを依然として懸念する。委員会は、締約国から提供された、18歳未満の者が戦闘部隊に徴募されることもありうるという情報について、懸念を覚えるものである。 19.委員会は、締約国が、法律を改正し、かつ義務的徴募に関する政策が選択議定書の規定と一致することを確保するよう、勧告する。 志願入隊 20.委員会は、志願入隊に関する最低年齢が17歳であり、かつこれらの志願兵を武装任務に配置することは認められていないことに留意する。 21.委員会は、選択議定書の締約国の大多数が子どもの志願入隊を許可していないことに留意する。したがって委員会は、締約国に対し、全般的により高い法的基準による子どもの保護を促進する目的で、軍隊への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げるよう、奨励するものである。 軍事教育 22.委員会は、生徒に対して入隊志願および従軍戦闘任務の志望をあからさまに奨励するプログラムのような、軍役とタルムード学習とを結合させたプログラム(hesder yeshivas)のカリキュラムが、条約第29条に掲げられた教育の目的および人権の価値観に反することを懸念する。 23.委員会は、いかなる軍事教育においても人権の価値観および条約第29条が考慮されるべきこと、および、このようなプログラムの教育内容が教育省によって定期的に監視されるべきことを、勧告する。さらに委員会は、締約国が、すべての生徒(軍事・宗教学習を受けている生徒も含む)が独立の苦情申立て機構にアクセスできることを確保するよう、勧告するものである。 人間の盾および密告者としての子どもの使用 24.委員会は、パレスチナ人の子どもが人間の盾および諜報目的の密告者として使用される慣行が根強く残っていることを深く懸念する。さらに委員会は、締約国が、Adalah et al. v. Commander of the Central Region et al.事件におけるイスラエル最高裁判所判決(HCJ 3799/02、2005年6月23日付判決)の遵守状況に関する情報を提供しないことを遺憾に思うものである。イスラエル軍がパレスチナ人の子どもを人間の盾として使用している(2008年12月および2009年1月の「鋳造鉛」作戦時の使用を含む)ことを示す報告にかんがみ、委員会は、対話の過程で締約国から提供された、捜査が開始された旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、このような捜査が遅れており、かつその成果に関する情報が存在しないことを懸念するものである。 25.委員会は、締約国に対し、人道法の厳格な遵守を確保し、Adalah et al. v. Commander of the Central Region et al.事件のイスラエル最高裁判所判決にしたがい、かつ国防軍役法第5746号(1986年)をしかるべき形で改正するよう、促す。さらに委員会は、締約国に対し、このような犯罪の報告について迅速かつ公正な捜査を行なうとともに、責任者が適正に訴追され、かつ適当な刑罰による制裁を受けることを確保するよう、促すものである。 平和教育 26.委員会は、イスラエルの学校において平和教育を推進するための努力に関して締約国から提供された情報に留意するものの、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域で平和教育が著しく限定的であることを懸念する。委員会は、パレスチナ被占領地域で教育にアクセスできないことを懸念するものである。さらに委員会は、教育において推進されている価値観と、とくにイスラエルの教育制度が過度に軍事化されていることおよび学校カリキュラムの一部として必修の軍事科目が含まれていることとの対照を懸念する。 27.委員会は、締約国が、教育カリキュラムが条約第29条に一致することを確保するよう勧告するとともに、イスラエルおよびパレスチナ双方の学校制度に平和教育を体系的に導入するよう奨励する。この目的のため、委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮するよう奨励するものである。委員会は、イスラエルおよびパレスチナ双方の子どもたちを集めて、平和教育を推進するための合同の取り組みを行なうよう奨励する。 IV.禁止および関連の事項 立法 28.委員会は、イスラエル刑法で定められた違法な軍事活動についての規定には留意しながらも、選択議定書で対象とされている犯罪が具体的に含まれているわけではないことを懸念する。 29.子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 刑法を改正し、子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用に関する選択議定書の規定の違反を明示的に犯罪化する規定を導入するとともに、敵対行為への直接参加の定義を定めること。 (b) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定にしたがうことを確保すること。 域外裁判権 30.委員会は、締約国は15歳未満の子どもの強制的徴集または志願に基づく編入の戦争犯罪について域外裁判権を執行することができる旨の、締約国の発言に留意する。しかしながら委員会は、このような裁判権を行使できる具体的な法的根拠が存在しないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪に関する域外裁判権を設定する目的で国内法を見直すよう、勧告する。 32.委員会は、締約国が、国際社会ですでに広く支持されている以下の国際文書の批准を検討するよう勧告する。 (a) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(1977年)。 (b) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書II)(1977年)。 (c) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)。 (d) 国際刑事裁判所ローマ規程(1998年)。 (e) クラスター弾に関する条約(2008年)。 V.保護、回復および再統合 テロリスト容疑による子どもの訴追 33.委員会は、パレスチナ被占領地域における子どもの逮捕および尋問の慣行に関わって2002年に行なわれた勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ62および63)に締約国がしたがっていないことを、深刻に懸念する。委員会は、軍令(具体的には第378号および第1591号)の規定が少年司法の運営および公正な裁判を受ける権利に関する国際基準に違反し続けていることに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、少年司法に関する基準を軍事裁判所内で編入しようとする試みについての情報に、懸念とともに留意する。 34.委員会は、2005年から2009年にかけて2000人以上の子ども(12歳という低年齢の子どももいる)が治安犯罪の容疑をかけられ、告発されないまま最長8日間勾留され、かつ軍事裁判所によって訴追されていることに、重大な懸念を覚える。委員会は、治安犯罪の容疑をかけられた子どもが非人道的かつ品位を傷つける環境において長期の独居拘禁および虐待の対象とされていること、弁護人による代理および通訳による援助が不十分であること、ならびに、親族がイスラエルへの入国を拒否されるために家族による面会が不可能であることを、とくに懸念するものである。委員会は、子どもが最長6か月の期間で繰り返し更新できる行政拘禁命令の対象にされている旨の情報があることを憂慮する。最後に委員会は、これらの件について締約国から提供された情報が不十分であることを遺憾に思うものである。 35.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 2002年に勧告されたとおり、軍令第378号および第1591号を廃止すること。 (b) 子どもに対する刑事手続を軍事裁判所でけっして進めず、かつ子どもを行政拘禁の対象としないこと。 (c) 少年司法に関する基準が管轄内のすべての子どもに適用されること、および、いかなる裁判も、公正な裁判に関する最低基準にしたがい、速やかにかつ公平に実施されることを保障すること。 (d) テロ対策を進めるなかでの人権および基本的自由の促進および保護に関する特別報告者から勧告されたとおり(A/HRC/6/17/Add.4、パラ55)、テロ犯罪のいかなる定義も国際的な基準および規範に一致することを確保すること。 36.委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの拘禁は最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保すること。年齢に関して疑義がある場合、若年者は子どもと推定されるべきである。 (b) 治安犯罪を行なったとして罪を問われた子どもの拘禁が、その年齢および脆弱性にしたがった適切な環境で行なわれることを確保すること。 (c) 親または近親者に子どもの拘禁場所を通知し、かつ接触を認めること。 (d) すべての子どもに対し、十分な、無償のかつ独立した法的助言の援助を提供すること。 (e) 子どもに対し、自己の拘禁の定期的かつ公平な再審査を保障すること。 (f) 拘禁された子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。拘禁された子どもの残酷な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いの報告は、速やかにかつ公平なやり方で調査されるべきである。 (g) 教育プログラムおよびレクリエーション活動、ならびに、拘禁されたすべての子どもの社会的再統合のための措置を提供すること。 (h) 少年司法制度で働くすべての専門家を対象として、条約、選択議定書、他の関連の国際基準、および、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号についての研修を行なうこと。 身体的および心理的回復のための援助 37.委員会は、イスラエル人の子どもの身体的および心理的回復について提供された情報に留意するものの、パレスチナ人の子どもに対して利用可能とされているこのような措置についての情報がないことを遺憾に思う。とくに委員会は、「鋳造鉛」作戦によってガザの子どもがこうむった心理的影響、および、これらの子どものための援助の欠如を深刻に憂慮するものである。委員会はさらに、対人地雷の被害を受けた子どものリハビリテーションのために十分なプログラムが設けられていないことを懸念する。 38.イスラエル国防軍が民間人に対して行なった均衡性を欠く攻撃の結果として子どもが心理的トラウマを負っていることにかんがみ、委員会は、締約国に対し、イスラエル人であるかパレスチナ人であるかを問わず、影響を受けたすべての子どもの身体的および心理的回復のための援助を提供する責任を担うよう、促す。さらに委員会は、締約国が、対人地雷の被害者である子どもをとくに対象とするプログラムを支援するよう、勧告するものである。 VI.国際的な援助および協力 国際協力 39.委員会は、締約国が安全保障理事会決議1612(2005年)を支持する旨の情報を歓迎するとともに、締約国が、安全保障理事会決議1612(2005年)および1882(2009年)を自国の管轄内で効果的に実施する目的で、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力をさらに強化するよう勧告する。 武器輸出 40.委員会は、イスラエルが相当の武器輸出国であることを認めるとともに、2007年に採択された法律(イスラエル安全保障貿易管理法第5767-2007号)により、このような物資の輸出が、子どもの権利の尊重を考慮したアセスメントにしたがって規制されている旨の締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されている国への武器輸出が明示的に禁じられていないことを懸念するものである。 41.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地である武器の販売を法律で明示的に禁止するよう、勧告する。 VII.フォローアップおよび普及 42.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、教育省、内閣およびクネセト〔議会〕に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 43.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般および子どもたちが広く入手できるようにすることを勧告する。委員会は、締約国が、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域の双方でこれらの勧告が普及されることを確保するよう、具体的に要請するものである。 VIII.次回報告書 44.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書(提出期限:2008年11月1日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年10月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/14.html
子どもの権利委員会:総括所見:日本(第3回)〔後編〕 (子どもの権利員会:総括所見:日本(第3回)〔前編〕より続く) 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 50.日本社会で家族の価値が不朽の重要性を獲得していることは承知しつつ、委員会は、親子関係の悪化にともなって子どもの情緒的および心理的ウェルビーイングに否定的影響が生じており、子どもの施設措置という結果さえ生じていることを示す報告があることを懸念する。委員会は、これらの問題が、高齢者と乳幼児のケアとの間で生じる緊張、ならびに、貧困がとくにひとり親世帯に及ぼす影響に加え、学校における競争、仕事と家庭生活の両立不可能性等の要因から生じている可能性があることに留意する。 51.委員会は、締約国が家族を支援しかつ強化するための措置を導入するよう勧告する。そのための手段としては、子育ての責任を履行する家族の能力を確保する目的で男女双方を対象として仕事と家庭生活との適切なバランスを促進すること、親子関係を強化すること、および、子どもの権利に関する意識啓発を図ることなどがあげられる。委員会はさらに、社会サービス機関が、子どもの施設措置を防止するためにも、不利な立場に置かれた子どもおよび家族に優先的に対応し、かつ適切な金銭的、社会的および心理的支援を提供するよう勧告する。 親のケアを受けていない子ども 52.委員会は、親のケアを受けていない子どもを対象とする、家族を基盤とした代替的養護に関する政策が存在しないこと、家族から引き離されて養護の対象とされる子どもの人数が増えていること、小集団の家庭型養護を提供しようとする努力にも関わらず多くの施設の水準が不十分であること、および、代替的養護施設において子どもの虐待が広く行なわれているという報告があることに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会は、遺憾ながら広く実施はされていないものの、苦情申立て手続が設けられたことに留意する。委員会は、里親が義務的研修を受け、かつ増額された手当を受給していることを歓迎するが、一部類型の里親が金銭的支援を受けていないことを懸念する。 53.委員会は、第18条に照らし、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)子どもの養護を、里親家庭、または居住型養護における小集団編成のような家庭的環境のもとで提供すること。 (b)里親養護を含む代替的養護現場の質を定期的に監視し、かつ、あらゆる養護現場による適切な最低基準の遵守を確保するための措置をとること。 (c)代替的養護現場における児童虐待を調査し、かつその責任者を訴追するとともに、虐待の被害者が苦情申立て手続、カウンセリング、医療的ケアその他の適切な回復援助にアクセスできることを確保すること。 (d)金銭的支援がすべての里親に提供されるようにすること。 (e)「子どもの代替的養護に関する国連指針」(国連総会決議A/RES/64/142参照)〔厚生労働省仮訳(PDF)〕を考慮すること。 養子縁組 54.委員会は、養親またはその配偶者の直系卑属である子どもの養子縁組が司法機関による監督または家庭裁判所の許可を受けずに行なえることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、国外で養子とされた子どもの登録機関が存在しないことを含め、国際養子縁組が十分に監督されていないことを懸念する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)すべての養子縁組が司法機関による許可の対象とされ、かつ子どもの最善の利益にしたがって行なわれること、および、養子とされたすべての子どもの登録機関が維持されることを確保するための措置をとり、かつこれを効果的に実施すること。 (b)国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(1993年)の批准を検討すること。 児童虐待およびネグレクト 56.委員会は、虐待防止のための機構を定めかつ執行する、児童虐待防止法および児童福祉法の改正等の措置を歓迎する。しかしながら委員会は、民法上の「親権」概念によって「包括的支配」を行なう権利が与えられていることおよび親が過大な期待を持つことにより、子どもが家庭で暴力を受けるおそれが生じていることを依然として懸念する。委員会は、児童虐待の発生件数が増え続けていることに、懸念とともに留意する。 57.委員会は、締約国が、以下のものを含む措置をとることにより、児童虐待の問題に対応する現在の努力を強化するよう勧告する。 (a)虐待およびネグレクトの否定的影響に関する公衆教育プログラム、ならびに家族発達プログラムを含む防止プログラムを実施し、かつ、積極的な、非暴力的形態のしつけを促進すること。 (b)家庭および学校で虐待の被害を受けた子どもに十分な保護を提供すること。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項)) 障がいのある子ども 58.委員会は、締約国が、障がいのある子どもを支援し、学校における交流学習を含む社会参加を促進し、かつその自立を発達させることを目的として、法律の採択ならびにサービスおよび施設の設置を進めてきたことに留意する。委員会は、根深い差別がいまなお存在すること、および、障がいのある子どものための措置が注意深く監視されていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、必要な設備および便益を用意するための政治的意思および財源が欠けていることにより、障がいのある子どもによる教育へのアクセスが引き続き制約されていることにも留意する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)障がいのあるすべての子どもを全面的に保護するために法律の改正および採択を行なうとともに、進展を注意深く記録し、かつ実施における欠点を明らかにする監視システムを確立すること。 (b)障がいのある子どもの生活の質を高め、その基本的ニーズを満たし、かつそのインクルージョンおよび参加を確保することに焦点を当てた、コミュニティを基盤とするサービスを提供すること。 (c)存在している差別的態度と闘い、かつ障がいのある子どもの権利および特別なニーズについて公衆の感受性を高めること、障がいのある子どもの社会へのインクルージョンを奨励すること、ならびに、意見を聴かれる子どもおよびその親の権利の尊重を促進することを目的とした、意識啓発キャンペーンを実施すること。 (d)障がいのある子どものためのプログラムおよびサービスに対して十分な人的資源および財源を提供するため、あらゆる努力を行なうこと。 (e)障がいのある子どものインクルーシブ教育のために必要な便益を学校に備えるとともに、障がいのある子どもが希望する学校を選択し、またはその最善の利益にしたがって普通学校と特別支援学校との間で移行できることを確保すること。 (f)障がいのある子どものためにおよびそのような子どもとともに活動している非政府組織(NGO)に対し、援助を提供すること。 (g)教職員、ソーシャルワーカーならびに保健・医療・治療・養護従事者など、障がいのある子どもとともに活動している専門的職員を対象とした研修を行なうこと。 (h)これとの関連で、障がいのある人の機会均等化に関する国連基準規則(国連総会決議48/96)および障がいのある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 (i)障がいのある人の権利に関する条約(署名済み)およびその選択議定書(2006年)を批准すること。 メンタルヘルス 60.委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。委員会はまた、発達障がい者支援センターにおける注意欠陥・多動性障がい(ADHD)の相談数が増えていることにも留意する。委員会は、ADHDの治療に関する調査研究および医療専門家の研修が開始されたことを歓迎するが、この現象が主として薬物によって治療されるべき生理的障がいと見なされていること、および、社会的決定要因が正当に考慮されていないことを懸念する。 61.委員会は、締約国が、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングの問題に、あらゆる環境における効果的支援を確保する学際的アプローチを通じて対応するための効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、ADHDの診断数の推移を監視するとともに、この分野における調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにも勧告する。 保健サービス 62.委員会は、行動面に関わる学校の期待を満たさない子どもが児童相談所に送致されることに、懸念とともに注目する。委員会は、専門的処遇の水準(意見を聴かれる子どもの権利の実施および子どもの最善の利益の考慮を含む)に関する情報が存在しないことを懸念するとともに、成果の体系的評価が利用されていないことを遺憾に思う。 63.委員会は、締約国が、児童相談所システムおよびその作業方法に関する独立の調査(リハビリテーションの成果に関する評価も含む)を委託し、かつ、このレビューの結果に関する情報を次回の定期報告書に含めるよう勧告する。 HIV/AIDS 64.委員会は、HIV/AIDSその他の性感染症の感染率が上昇していること、および、これらの健康問題に関する思春期の青少年向けの教育が限定されていることに懸念を表明する。 65.委員会は、締約国が、学校カリキュラムにリプロダクティブ・ヘルス〔性と生殖に関わる健康〕教育が含まれることを確保し、かつ思春期の青少年に対して自己のリプロダクティブ・ライツ〔性と生殖に関わる権利〕に関する情報(10代の妊娠およびHIV/AIDSを含む性感染症の予防に関するものを含む)を全面的に提供するとともに、思春期の健康および発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、HIV/AIDSその他の性感染症の予防のためのすべてのプログラムに思春期の青少年が容易にアクセスできることを確保するよう勧告する。 十分な生活水準に対する権利 66.対話の際、委員会は、すべての子どもを対象とする改善された子ども手当制度が2010年4月から施行された旨の情報を提供されたが、この新たな措置が、貧困下で暮らしている人口の割合(15%)を、生活保護法およびひとり親家庭(とくに女性が世帯主である世帯)を援助するためのその他の措置のような現在適用されている措置よりも効果的に低下させることにつながるかどうか評価するためのデータは、利用可能とされていない。委員会は、財政政策および経済政策(労働規制緩和および民営化戦略等)が、賃金削減、女性と男性の賃金格差ならびに子どものケアおよび教育のための支出の増加により、親およびとくにシングルマザーに影響を与えている可能性があることを懸念する。 67.委員会は、締約国が子どもの貧困を根絶するために適切な資源を配分するよう勧告する。そのための手段には、貧困の複雑な決定要因、発達に対する子どもの権利およびすべての家族(ひとり親家族を含む)に対して確保されるべき生活水準を考慮に入れながら、貧困削減戦略を策定することも含まれる。委員会はまた、締約国に対し、親は子育ての責任を負っているために労働の規制緩和および流動化のような経済戦略に対処する能力が制約されていることを考慮に入れるとともに、金銭的その他の支援の提供によって、子どものウェルビーイングおよび発達にとって必要な家族生活を保障することができているかどうか、注意深く監視するよう促す。 子どもの扶養料の回復 68.子どもの扶養料の回復を図ることを目的とした民事執行法の制定(2004年)には留意しつつ、委員会は、別居または離婚した親(出国した者を含む)の多く(ほとんどは父親)が扶養義務を果たしていないこと、および、未払いの扶養料を回復するための現行手続が十分ではないことを懸念する。 69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)婚姻しているか否かに関わらず、両方の親がその子どもの扶養に公平に貢献すること、および、いずれかの親が義務を履行しない場合に扶養義務が効果的に回復されることを確保する、現行の法律および措置の実施を強化すること。 (b)新たな機構(すなわち、債務不履行の親の扶養義務を履行し、かつ、その後、適切な場合には民事上または刑事上の法律を通じて未払金を回収する国家基金)を設立し、扶養料の支払いがこの機構を通じて回復されることを確保すること。 (c)親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ第34号条約(1996年)を批准すること。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 70.委員会は、日本の学校制度によって学業面で例外的なほど優秀な成果が達成されてきたことを認めるが、学校および大学への入学を求めて競争する子どもの人数が減少しているにも関わらず過度の競争に関する苦情の声があがり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、このような高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障がい、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。 71.委員会は、学業面での優秀な成果と子ども中心の能力促進とを結合させ、かつ、極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、締約国が学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮するよう奨励される。委員会はまた、締約国が、子ども同士のいじめと闘う努力を強化し、かつそのような措置の策定に子どもたちの意見を取り入れるよう勧告する。 72.委員会は、中国系、北朝鮮系その他の出身の子どもを対象とした学校に対する補助金が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような学校の卒業生が日本の大学の入学試験を受けられない場合があることも懸念する。 73.委員会は、締約国に対し、外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する。締約国は、ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討するよう奨励される。 日本政府のコメント 「各種学校」として認可されている外国人学校のほとんどは、実際には自治体による補助を受けている。さらに、これらの学校の卒業生が日本の大学入学試験を受験する資格がない場合がある旨の委員会の懸念については、中等学校を修了した者または同等の学力を有する者は、国籍に関わらず、誰でも大学入学試験の受験資格を有する。外国人学校の卒業生に関しては、以下の基準を満たす者は誰でも大学入学試験の受験資格を有するところである。 1)母国によって高等学校相当の課程を有する旨認定されている日本の外国人学校を卒業した者。 2)国際的な評価団体の認定を受けた外国人学校の12年の課程を修了した者。 3)大学が行う個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者に相当する以上の学力を有していると認められた者。 したがって、委員会の懸念は誤解に基づくものである。 74.委員会は、日本の歴史教科書においては歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていないという情報があることを懸念する。 75.委員会は、締約国が、検定教科書においてアジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示されることを確保するよう勧告する。 日本政府のコメント 小中高校で使用される教科書に適用される教科書検定制度において、政府は歴史または歴史的事件に関する一定の見方を決定する立場にはない。民間企業が制作・編集する教科書の欠陥(明らかな誤りや著しく均衡を書いた記述など)を、審査時における客観的な学問的知見その他の適切な資料に照らして指摘するのは、政府関係者ではない研究者等から構成される教科書用図書検定調査審議会である。審査は、とくに他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを目的とする教育基本法と、近隣のアジア諸国との間の国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされているべきである旨の指針を掲げる、〔文部科学〕省の教科用図書検定指針である。したがって、日本の歴史教科書が、歴史的事件に関して日本の解釈のみを反映しているため、他国の児童との相互理解を強化していないという委員会の懸念は当を得ていない。 日本政府は、歴史教育の適正な実施を通じ、日本と世界に関する理解を深め、近隣諸国を含む他国との相互理解および相互信頼を強化しようと努めているところである。 遊び、余暇および文化的活動 76.委員会は、締約国が休息、余暇および文化的活動に対する子どもの権利を想起するよう求めるとともに、公共の場所、学校、子ども施設および家庭における子どもの遊び時間その他の自主的活動を促進しかつ容易にする取り組みを支援するよう勧告する。 8.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)および(d)、第30条ならびに第32~36条) 保護者のいない難民の子ども 77.委員会は、犯罪活動の疑いが存在しない場合でさえ庇護希望者の子どもを収容する慣行が広く行なわれていること、および、保護者のいない庇護希望者の子どもをケアする機構が確立されていないことに懸念を表明する。 日本政府のコメント 「犯罪行為の疑いがない場合でも庇護申請児童を収容する慣行が広く行われていること」に対する委員会の懸念については、犯罪的活動に数えられる退去強制事由もなく庇護申請児童が収容されることは考えにくい。また、「慣行が広く行われている」という点については、これらの児童の収容はやむを得ない場合に限られている。したがって、委員会の懸念は事実誤認に基づくものである。 78.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)庇護希望者の子どもの収容を防止し、このような子どもの入管収容施設からの即時釈放を確保し、かつ、このような子どもに宿泊所、適切なケアおよび教育へのアクセスを提供するため、正式な機構の確立等を通じて即時的措置をとること。 (b)公正かつ子どもに配慮した難民認定手続のもと、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保しながら、保護者のいない子どもの庇護申請の処理を迅速に進めるとともに、後見人および法定代理人を任命し、かつ親その他の近親者の所在を追跡すること。 (c)国連難民高等弁務官(UNHCR)の「子どもの最善の利益の公式な決定に関するガイドライン」および「難民の保護およびケアに関するガイドライン」を考慮しながら、難民保護の分野における国際基準を尊重すること。 人身取引 79.委員会は、人身取引を刑法上の犯罪と定めた刑法改正(2005年7月施行)および2009年の「人身取引対策行動計画」を歓迎する。しかしながら委員会は、同行動計画のために用意された資源、調整および監視のための機関、ならびに、人身取引対策がとくに子どもに与える影響についての情報が存在しないことに留意する。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)とくに子どもの人身取引に対応するための措置の効果的監視を確保すること。 (b)人身取引の被害者に対し、身体的および心理的回復のための援助が提供されることを確保すること。 (c)行動計画の実施に関する情報を提供すること。 (d)国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、とくに女性および子どもの取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。 性的搾取 81.委員会は、締約国の第2回定期報告書の審査後にも留意された、買春によるものも含む子どもの性的搾取件数が増えていることに対する懸念をあらためて繰り返す。 82.委員会は、子どもの性的搾取の事件を捜査しかつ加害者を起訴するとともに、性的搾取の被害者に対してカウンセリングその他の回復援助を提供する努力を締約国が強化するよう勧告する。 少年司法の運営 83.委員会は、2000年の少年法改正においてどちらかといえば懲罰的なアプローチが採用され、罪を犯した少年の権利および司法上の保障が制限されてきた旨の、締約国の第2回報告書(CRC/C/104/Add.2)の検討を受けて2004年2月に表明した前回の懸念(CRC/C/15/Add.231)をあらためて繰り返す。とりわけ、刑事責任年齢〔刑事処分年齢〕が16歳から14歳に引き下げられたことにより、教育的措置がとられる可能性が低くなり、14~16歳の多くの子どもが矯正施設への収容の対象とされている。また、重罪を犯した16歳以上の子どもは刑事裁判所に送致される可能性があり、審判前の身体拘束〔観護措置〕期間は4週間から8週間に延長され、かつ、非職業裁判官制度である裁判員制度は、専門機関である少年〔家庭〕裁判所による、罪を犯した子どもの処遇の障害となっている。 日本政府のコメント パラ83の「起訴前勾留」(pretrial detention)は、パラ84ないし85(g)にいう「起訴前勾留」とは明らかに異なる概念であるので、「観護措置」(protective detention)に訂正されるべきである。 84.委員会はさらに、成人刑事裁判所に送致される少年の人数が顕著に増加していることを懸念するとともに、法に抵触した子どもに認められている手続的保障(弁護士にアクセスする権利を含む)が制度的に実施されていないため、とくに自白の強要および不法な捜査実務が行なわれていることを遺憾に思う。委員会はまた、少年矯正施設における被収容者への暴力が高い水準で行なわれていること、および、少年が審判前に成人と勾留される可能性があることも懸念する。 85.委員会は、締約国に対し、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法制度を条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む少年司法分野のその他の国連基準と全面的に一致させる目的で、少年司法制度の運用を再検討するよう促す。とりわけ委員会は、締約国がとくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a)子どもが刑事司法制度と接触することにつながる社会的条件を解消するために家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置をとるとともに、その後のスティグマを回避するためにあらゆる可能な措置をとること。 (b)刑事責任〔刑事処分〕に関する最低年齢との関連で法律を見直し、従前の16歳に引き上げることを検討すること。 (c)刑事責任年齢に達していない子どもが刑法犯として扱われまたは矯正施設に送られないこと、および、法に抵触した子どもが常に少年司法制度において対応され、専門裁判所以外の裁判所で成人として審理されないことを確保するとともに、このような趣旨で裁判員制度を見直すことを検討すること。 (d)現行の法律扶助制度の拡大等により、すべての子どもが手続のあらゆる段階で法的その他の援助を提供されることを確保すること。 (e)可能な場合には常に、保護観察、調停、地域奉仕命令または自由剥奪刑の執行停止のような、自由の剥奪に代わる措置を実施すること。 (f)(審判前および審判後の)自由の剥奪が最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間で適用されること、および、自由の剥奪がその中止の観点から定期的に再審査されることを確保すること。 (g)自由を奪われた子どもが、審判前の身体拘束の時期も含め、成人とともに収容されず、かつ教育にアクセスできることを確保すること。 (i)〔(h)〕少年司法制度に関わるすべての専門家が関連の国際基準に関する研修を受けることを確保すること。 マイノリティまたは先住民族の集団に属する子ども 86.アイヌ民族の状況を改善するために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、アイヌ、コリアン、部落その他のマイノリティの子どもが引き続き社会的および経済的周縁化を経験していることを懸念する。 87.委員会は、締約国に対し、民族的マイノリティに属する子どもへの差別を生活のあらゆる分野で解消し、かつ、条約に基づいて提供されるすべてのサービスおよび援助に対し、このような子どもが平等にアクセスできることを確保するため、あらゆる必要な立法上その他の措置をとるよう促す。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 88.委員会は、とくに、これらの勧告を高等〔最高〕裁判所、内閣および国会の構成員ならびに適用可能な場合には地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する意識を促進する目的で、第3回定期報告書、締約国が提出した文書回答およびこの総括所見を、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもたちが、インターネット等も通じ、日本の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 日本政府のコメント 第3回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。 次回報告書 90.委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合報告書を2016年5月21日までに提出するように求める。報告書は120ページを超えるべきではなく(CRC/C/118参照)、かつこの総括所見の実施に関する情報が記載されるべきである。 91.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。 更新履歴:ページ作成(2010年6月17日)。/パラ72「子どもを対象とした補助金」を「子どもを対象とした学校に対する補助金」に修正。(同)/パラ57(e)「障害の子ども」を「障害のある子ども」に、パラ84「手続的保障(弁護士にアクセスする権利を含む)が制度的に実施されているため」を「……実施されていないため」に修正。(6月21日)。/関連パラグラフに日本政府のコメントを追加(2011年10月4日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/42.html
総括所見:韓国(第1回・1996年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)/第5回・第6回(2019年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.51(1996年2月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページを参照。 1.委員会は、1996年1月18日および19日に開かれた第266回、第267回および第268回会合において大韓民国の第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、同国に対し、ハイレベルかつ学際的な代表団を通じて委員会とのオープンかつ実りのある対話に携わってくれたことへの謝意を表する。委員会は、諸問題一覧表に記載された質問への回答として代表団が提出した文書による情報、および、委員会との対話の後に同国が提供した追加的情報を歓迎する。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が同国の国内法体系において直接適用可能であること、および、裁判所における援用も可能であることに、満足感とともに留意する。 4.委員会は、同国が子どものための国内行動計画を作成したこと、同行動計画を第7次社会経済開発5か年計画(1992年~1996年)に編入したこと、および、国内子どもの権利委員会を最近設置したことを歓迎する。 5.委員会は、政府が教育を「社会的および経済的発展の原動力」と考え、重要視していることに、満足感とともに留意する。 6.委員会は、また、文書回答に表れ、かつ、対話の過程で代表団によっても確認されたように、同国が条約に付した留保の撤回の可能性を検討することに関する開かれた態度も歓迎する。委員会は、民法の改正が、親の一方または双方から分離された子どもが定期的に親双方との個人的な関係および直接の接触を保つ権利を盛りこむ目的で進められていることに、心強い思いを感ずるものである。委員会は、また、代表団が述べたように、そのような措置によって同国が条約第9条3項に関する留保を撤回することができるようになることにも、心強い思いを感ずるものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、現在の政治的および経済的移行期において韓国が直面している困難に留意する。急速な経済成長を確保しようという努力には、必ずしも、経済的、社会的および文化的権利を適切なレベルで実現することが伴ってこなかった。このことは、とくに、悪化する貧困によって影響を受ける、最も不利な立場にあるグループに属する子どもたちについて言える。同国が最近になってようやく軍事支配から脱したことも、子どもの基本的権利および自由の享受に否定的影響を与えてきた。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、同国が第9条3項、第21条(a)および第40条2項(b)(v)に付した留保は、子どもの最善の利益の原則および子どもの意見の尊重の原則を始めとする条約の原則および規定と両立するかどうかという点について、疑念を生ぜしめるものだという見解をとるものである。 9.委員会は、恒久的かつ効果的な調整および監視のための仕組みを確保するために充分な措置がとられていないことに、懸念を表明する。委員会は、また、達成された進歩を評価し、かつ、政策が子どもたちに与える影響、とりわけ最も傷つきやすいグループの子どもたちに関する影響を評価するために、条約が対象とするすべての領域について、信頼できる量的かつ質的なデータを集めるために充分な措置がとられていないことにも留意する。 10.委員会は、条約の原則および規定が子どもおよび大人の間で広く知られるようにするために充分な措置がとられていないことに、懸念を表明する。教師、ソーシャルワーカー、裁判官、法執行官、心理学者および保健従事者を始めとする、子どもとともにおよび子どものために働くさまざまな専門職グループに対して、条約の内容に関する研修が行なわれていないことも、遺憾の意とともに留意されるところである。 11.条約第4条の実施に関して、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利が、利用可能な資源を最大限に用いることによって実施されるようにするために充分な措置がとられていないことに、懸念とともに留意する。これとの関連で、子どもの社会的および人間的発達の領域、および、最も傷つきやすいグループの子どもたちのニーズに対して、充分な関心が払われてこなかった。 12.委員会は、また、条約の基本的原則、とりわけ第2条、第3条および第12条の規定が、立法、政策および事業計画に充分に反映されてこなかったことも懸念する。報告が認めている通り、子どもを単に「小さな大人または未成熟な大人」とする考え方および取扱い方が同国では支配的であるが、そのような状態を変える目的でとられた、条約の基本的価値観に関する意識を創り出すための措置は、充分なものではない。委員会は、少女(最低婚姻年齢に関する態度を含む)、障害児および婚外子に影響を与える差別的な態度がいまだに存続していることに、懸念とともに留意する。 13.委員会は、家族が子どもの権利の保護に関する責任を引き受ける上で、充分な援助が提供されていないことに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、国籍、表現、思想、良心および宗教への自由ならびに結社および平和的な集会の自由への権利など、子どもの市民的権利および基本的自由の効果的な実施を確保するために、法的措置を始めとする措置が充分にとられていないことに懸念を表明する。 15.委員会は、養子縁組の領域および養子縁組の解消の際に一般的にとられている方式に関する同国のアプローチは、子どもの最善の利益が最高の考慮事項となるべきであるという原則および21条の法的保護との関連を始めとして、条約との整合性に関して疑念を生ぜしめるものであるという見解をとるものである。これとの関連で、委員会は、養子縁組が、信頼のおけるあらゆる関連情報に基づき、かつ、子どもを含むあらゆる関係者が情報を得た上での同意を与えた上で、権限ある機関によって認可されるようにするための措置が不充分であることを、とりわけ懸念する。国際養子縁組が高い割合で行なわれていることも、委員会の懸念するところである。子ども虐待および家庭内暴力に関しては、委員会は、防止のための政策および充分な通報の仕組みがないことを懸念する。このほか、子どもが遺棄されていること、子どもが筆頭者である家族が高い割合で発生していること、および、親および教員によって広く教育的措置と見なされている体罰がいまだに存続していることも、委員会にとっての主要な懸念事項である。 16.委員会は、教育制度において、条約第29条に反映されている教育の目的が充分考慮されていないことを懸念する。教育制度が高度に競争主義的な性格を有していることは、子どもの能力および才能を最大限可能なまで発達させること、および、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることを阻害する危険がある。 17.子ども労働の状況を防止するために、法改正領域における措置も含めて充分な措置がとられていないことにも、懸念が表明されるところである。これとの関連で、義務教育修了年齢および最低雇用年齢との間に乖離があることが、とくに懸念されかつ留意されるところである。 18.委員会は、また、現行の少年司法制度に関して、かつ、その制度が第37条、39条および40条を始めとする条約との整合性を欠いていることについて、懸念する。 E.提案および勧告 19.委員会は、政府に対し、第9条3項、第21条(a)および第40条(b)(v)への留保を、撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励する。 20.委員会は、政府が、第42条に照らし、条約の原則および規定に対する支持を促進し、かつ、それらに関する意識および理解を創り出すことを目的とした取組みを強化するよう、勧告する。委員会は、政府が、とくに少女、障害児および婚外子に対していまだに差別的な態度が存続しているという問題に効果的に取り組むために公的なキャンペーンを進展させること、および、こうしたグループに属する子どもたちの地位および保護を向上させるために積極的な措置をとることを提案する。 21.委員会は、また、同国が、教員、ソーシャルワーカー、裁判官、法執行官、保健関係者および条約によって対象とされている領域におけるデータ収集の確保を担当している職員を始めとして、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家グループに対し、条約に関する研修活動を確保するよう奨励する。国連人権教育の10年の精神を踏まえ、委員会は、さらに、同国に対し、子どもの権利を学校のカリキュラムに盛りこむことを考慮するよう奨励する。 22.委員会は、政府に対し、国内法と、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)を始めとする条約の規定および原則が全面的に一致するようにするため、取組みを継続するよう奨励する。委員会は、とりわけ、以下のことを目的とする法的措置がとられるよう勧告する──第2条に照らし、女子と男子の最低婚姻年齢を同一にすること、第23条に照らし、すべての障害児の基本的権利、とくに教育への権利を確保すること、婚外子に対するいかなる差別も廃絶すること、韓国人の母親に生まれた子どもが無国籍になる危険性を、いかなる場合にも防止すること、いかなる形態の体罰をもはっきりと禁止すること、および、最低雇用年齢を、義務教育年齢に合わせる方向で引き上げること。国内外の養子縁組の分野については、委員会は、同国に対し、条約の原則および規定との全面的な整合性を確保するため包括的な法改正を行なうこと、および、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討することを、奨励する。 23.委員会は、全国レベルおよび地方レベルの双方において、かつ、都市部においても非都市部においても、条約の実施の調整および監視を行なうための恒久的かつ学際的な仕組みを発展させるよう勧告する。委員会は、同国に対し、子どものためのオンブズパーソンまたはそれに相当する苦情申立ておよび監視のための仕組みを設立することを、さらに検討するよう奨励する。委員会は、さらに、非政府組織とのより密接な協力を促進するよう奨励する。 24.委員会は、また、条約が対象としているすべての領域に取組み、かつ、達成された進歩を評価することを目的として、最も傷つきやすいグループに属する子どもたちの状況を正当に考慮しながら、データ収集システムを改善し、かつ、諸要素によって分解された適切な指標を特定するようにも勧告する。 25.委員会は、大韓民国政府が、条約第4条の全面的な実施に特別な関心を払い、かつ、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のために、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な措置をとるよう強く勧告する。差別の禁止および子どもの最善の利益の原則に照らし、最も不利な立場に置かれたグループの子どもたちの状況に、特別な関心が払われるべきである。 26.委員会は、家族、学校および社会生活に対する子どもたちの参加、ならびに、意見、表現および結社の自由を始めとする基本的自由の効果的な享受を促進するため、さらなる努力が行なわれるべきだと考えるものである。基本的自由については、法律に規定されたものであって、民主的社会において必要な制限のみを課すことができる。 27.委員会は、同国に対し、とくに条約第18条および27条に照らし、家族が子どもの養育および発達に関する責任を果たせるようにするための援助を確保するため、さらなる措置をとるよう奨励する。子どもの遺棄の防止、ならびに、子どもを筆頭者とする家庭の発生の防止およびそのような家庭への適切な援助に、特別な関心が払われるべきである。 28.子ども虐待および家庭内暴力の領域について、委員会は、同国が、そのような状況を防止し、かつ、そのような暴力によって影響を受けた子どもを保護しかつ適切な身体的回復および社会復帰を確保するため、さらなる措置をとるよう勧告する。発見、実情の把握および照会が早期に行なわれるようにするための制度の設置が考慮されるべきである。 29.委員会は、同国に対し、条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的として、教育政策を再検討するよう奨励する。 30.児童労働の領域について、委員会は、同国に対し、関連の立法および運用に条約、とくに第32条を全面的に反映させることを目的として、適切な措置をとるよう奨励する。委員会は、最低雇用年齢に関するILO第138号条約の批准を考慮するよう勧告し、かつ、同国が、ILOとの協議のもとでそのような活動の継続を考慮するよう奨励する。 31.委員会は、同国が、条約、とくに第37条、39条および40条、ならびに、「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のようなこの分野の他の国連基準の精神を踏まえて、少年司法制度の包括的な改革の実施を構想するよう勧告する。その際、自由の剥奪が最後の手段として、かつ、最も短い期間のみ用いられるべきものとして見なされること、自由を奪われた子どもの権利の保護、法の適正手続、および、司法の全面的独立および公正に、とくに関心が払われるべきである。関連の国際基準に関する研修プログラムが、少年司法制度に携わるすべての専門職向けに組織されるべきである。委員会は、大韓民国政府が、〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法局に対し、少年司法の運用の領域に関して国際的援助を求めることを考慮するよう提案したい。 32.委員会は、同国が提出した報告、その審査の議事要録および委員会の総括所見を、同国内でできるだけ広く普及するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月14日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/67.html
総括所見:ベトナム(第2回・2003年) 第1回(1993年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.200(2003年3月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月22日に開かれた第848回および第849回会合(CRC/C/SR.848 and 849参照)において、2000年5月10日に提出されたベトナムの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.20)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがった締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、事前質問事項(CRC/C/Q/VIE/2)に対する文書回答および最新の締約国報告書が時宜を得たやり方で提出されたことを歓迎するものである(これらの文書は詳細かつ豊かな情報を含んでおり、ベトナムにおける子どもの状況に関する理解をより明確なものとしてくれた)。委員会は、ハイレベルな部門横断型の代表団の出席が、締約国代表団との間に持たれた建設的対話に貢献してくれたことに、評価の意とともに留意する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子ども参加を支援しおよび促進し、ならびに子どもの権利政策の調整および実施を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。とくに委員会は、1994年の政令第118/CP号の制定により、子どもの保護、ケアおよび教育に関わる活動を監視しおよび調整する中央機関として子どもの保護およびケアのためのベトナム委員会(CPCC)(その後、2002年8月5日に人口・家族・子ども全国委員会に吸収された)が設置されたことに留意するものである。委員会はまた、CPCCおよび統計局によって具体的な子どもの権利指標が開発されたこと、第2次子どものための国家行動計画(2001~2010年)が編成されたこと、ならびに、飢餓撲滅、貧困削減および雇用〔創出〕に関する国家目標計画(2001~2005年)および売買春防止計画(2001~2005年)のような他のさまざまな特別プログラムが策定されたことも、歓迎する。 4.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を2001年9月〔12月〕に批准し、かつ、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を2000年12月に批准したことを、歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、市場経済への移行により経済成長が高まった一方で、たとえば保健サービスおよび教育サービスに関する世帯の金銭的負担が増えたことにより、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施に悪影響も生じていることを認知する。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.4)の検討を受けて行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.3)の一部、とくに経済改革が脆弱な立場に置かれた集団に及ぼす悪影響の緩和(パラ7)、少年司法制度改革(パラ8)および民族的マイノリティ間での条約の普及(パラ9)に関するものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ全面的に実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 8.委員会は、国内法令および政令の多くの改正に留意しながらも、国内法が条約の規定および原則にまだ全面的に一致していないことを依然として懸念する。 9.委員会は、締約国に対し、国内法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するための努力を、とくに少年司法の分野で引き続き強化するよう奨励する。 調整および国家的行動計画 10.委員会は、140の地方組織を有し、かつ条約の実施に関わるさまざまな部門横断型の活動を調整する明確な権限を与えられた人口・家族・子ども全国委員会の存在に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、これらの機関間ならびに子どもの問題に関わるさまざまな行動計画およびプログラムの間で重複が生じる可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、人口・家族・子ども全国委員会に配分される人的資源の水準が不十分であることにも懸念とともに留意する。 11.委員会は、人口・家族・子ども全国委員会が、条約、子どものための国家行動計画(2001~2010年)ならびに子どもに関わる他のすべての国家的計画およびプログラムを実施するために活動しているすべての機関を効果的に調整しおよび監視できるよう、締約国が同委員会に対して十分な資源を配分するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、可能なときは調整活動の調和を図り、かつ調整システムを可能なかぎり透明化するようにも勧告するものである。 独立の監視 12.委員会は、人口・家族・子ども全国委員会の一部として査察制度が存在し、苦情を受理しかつ施設を不定期に訪問できることに留意する。この種の監視制度も重要ではあるものの、この制度は、国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(CRC/GC/2002/2)でその概要を示した、子どもの権利の促進および保護のための独立した監視機関であるとは思われない。 13.独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号で委員会が行なった勧告を考慮し、委員会は、締約国に対し、十分な人的資源および財源を提供され、かつ子どもが容易にアクセスできる、子どもの権利の促進および保護を監視するための独立したかつ効果的な機構を設置するよう奨励する。委員会は、締約国が、子どもオンブズマンを設置する試験的プロジェクトの開始を検討するよう勧告するものである。 資源配分 14.委員会は、子どものための資源配分が、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であることに、懸念とともに留意する。とくに、遠隔地および山間部における保健インフラおよび教育の発展に対しては不十分な資源しか配分されていない。 15.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもおよび遠隔地または山間部で暮らす子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって条約第4条を全面的に実施することに対し、特段の注意を払うよう勧告する。とくに、締約国は、ソーシャルワーク、子どもの保護およびカウンセリングの分野における熟練した人的資源の育成に配分される資源を増加させるべきである。 データ収集 16.委員会は、データ収集を向上させるために締約国が行なっている努力には留意しつつ、事前質問事項に対する文書回答で締約国が述べているように、児童労働または障害のある子どもに関するデータ収集システムが存在せず、かつ児童虐待に関して入手可能なデータが包括的でないことを懸念する。 17.委員会は、締約国がデータ収集システムを拡大して子どもの経済的搾取および児童虐待に関する統計も含めるとともに、必要であればこの点に関してILOの技術的援助を求めるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のためにあらゆるデータおよび指標を活用するよう勧告するものである。 市民社会との協力 18.委員会は、条約の実施に関する締約国と国際非政府組織(NGO)との協力が増えつつあることは歓迎しながらも、NGOが行なう活動の調整が十分な有効性を発揮していないことを懸念する。 19.委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、このような協力をより効果的に活用する目的で、透明性を高め、かつ条約実施に関して国際NGOとともに行なわれている活動の調整を促進するよう勧告する。 普及 20.委員会は、締約国の活動にも関わらず、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識しまたは理解していないことを懸念する。 21.子どもの権利に関する情報を普及するためにNGOおよび国際組織が行なっている活動には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定ならびに条約の実施に関する自国の報告書を広く知らせるという、第42条および第44条に基づく自国の義務を想起するよう求める。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する研修を実施するための努力を引き続き行なうこと。 (b) 民族的マイノリティ集団の構成員への条約の普及に特段の注意を払うとともに、可能なときは常に、条約全文が地域言語に翻訳されることを確保すること。 2.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、条約第2条に列挙されたすべての事由に基づく差別が国内法で具体的に禁じられていないことに、懸念とともに留意する。とくに、障害のある子どもに対する差別が明示的に禁じられていない。さらに、民族的マイノリティに関する開発指標がより低い水準を示していることは、具体的にはこのようなマイノリティによる保健および教育へのアクセスに関して、一定水準の社会的および制度的差別が存在することを明らかにしているように思われる。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内法が条約第2条のすべての規定に全面的に対応すること、および、とくに障害を理由とする子どもへの差別が法律で明示的に禁じられることを確保する目的で、国内法を改正すること。 (b) 保健ケアおよび教育のアクセス可能性および質に関する、地域間および民族的マイノリティ間の格差を解消するための努力を強化すること。 (c) 民族的マイノリティの子どもがどの程度差別を受けているかを明らかにし、かつそのような差別の根本的原因に対応するための政策およびプログラムを発展させるため、民族的コミュニティの指導者と連携しながら研究を実施すること。 24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を次回の定期報告書に記載すること、および、その際、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号を考慮することを、要請する。 子どもの最善の利益 25.委員会は、子どもの最善の利益のために行動することが政府の優先課題とされているとはいえ、最善の利益の原則が子どもに関わるすべての法律に明示的に掲げられているわけではないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、条約第3条にしたがい、「子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される」ことを確保するために法律を見直し、かつ適当なときは改正するよう勧告する。 生命に対する権利 27.委員会は、交通事故のような事故または自然災害によって負傷し、障害を負いまたは死亡する子どもの人数が多いことを懸念する。 28.締約国の努力、とくに事故抑制のための国家行動計画(2000年)には留意しながらも、委員会は、締約国が、事故による死亡の規模および原因に関する調査を実施するとともに、とくに親、子どもおよび公衆一般を対象とした意識啓発キャンペーンおよび教育プログラムを通じ、事故関連の死亡を減らすための努力を強化するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重がいまなお制限されていることを懸念する。加えて、行政上および司法上の手続においても、たとえば離婚に関する審判の場合に、子どもの意見を考慮に入れることが常に求められているわけではない。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに親、教員、政府行政職員、司法機関および社会一般を対象として、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を考慮されかつ参加する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを実施すること。 (b) 子どもが、自己に影響を与えるすべての裁判手続および行政手続において意見を表明し、かつ子どもに関わるこれらの意見を考慮される権利を認められることを保障するための立法措置をとること。 (c) 条約第12条にしたがい、裁判所およびすべての行政機関で、自己に影響をあたえるすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子ども参加を促進しかつそのための便宜を図ること。 3.市民的権利および自由 名前および国籍 31.この点に関わって締約国が行なっている多くの努力は歓迎しながらも、委員会は、いまなおすべての子どもが出生時に登録されているわけではなく、かつ、とりわけ、親が必ずしも出生登録の必要性を認識していない遠隔地および山間部で暮らす子どもの出生登録に問題が生じていることを、懸念する。 32.委員会は、締約国が、農村部および山間部で暮らす子どもに特段の注意を払いながら、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 不当な取扱いおよび暴力 33.委員会は、締約国の子どもがさまざまな形態の暴力および不当な取扱い(児童虐待およびネグレクトを含む)ならびに体罰を受けていることを懸念する。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待およびネグレクトの苦情を受理し、監視しおよび調査しならびに必要なときは子どもに配慮したやり方で事件を訴追するための全国的システムを設置するため、法改正を含むあらゆる適当な措置をとること。 (b) 法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象として、児童虐待に関する苦情に子どもに配慮したやり方で対応する方法についての研修を実施すること。 (c) 暴力の被害を受けた子どもおよび犯罪の目撃者である子どもにカウンセリングおよび援助を提供するための、適切な人的資源および財源を備えたアクセスしやすい全国的システムを設置すること。 (d) 問題の規模を適正に評価し、かつそれに対応するための政策およびプログラムを立案する目的で、虐待およびネグレクトの加害者および被害者に関する、ジェンダーおよび年齢によって細分化されたデータを収集するための機構を確立すること。 (e) 家庭、学校およびその他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すること。 (f) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施し、かつ、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 4.家庭環境および代替的養護 35.委員会は、締約国報告書で認められているように、離婚を含む家族の解体が増加しており、法律に触れる子どもならびに路上で暮らす子どもおよび薬物を濫用する子どもの人数の増加を助長していることに、深い懸念とともに留意する。委員会はさらに、富裕家庭と貧困家庭の格差が拡大しつつあること、および、貧困により子どもが搾取および虐待を受けるおそれが高まっていることを懸念するものである。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 包括的な家族政策を策定するための努力を強化すること。 (b) カウンセリングおよび援助を提供するための専門職化されたソーシャルワーカー制度をコミュニティにおいて確立することにより、脆弱な立場に置かれた家族への社会的援助および支援を向上させること。 (c) とくに農村部および遠隔地を対象とする開発計画および貧困削減計画の枠内で、経済的に不利な立場に置かれた家族への金銭的支援の増額を検討すること。 養子縁組 37.委員会は、国際養子縁組の件数が多いことを懸念する。これは、この形態の養子縁組が必ずしも最後の手段とされていないことを示唆するものである。委員会はまた、一部の国際養子縁組において国際基準が遵守されていないという報告があることにも、懸念とともに留意する。 38.委員会は、締約国が、養子縁組に関する国内法令を執行するための努力を継続しおよび強化するとともに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年、第33号)を批准するよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 39.委員会は、締約国における予防接種実施率がきわめて高いことに評価の意とともに留意する。妊産婦死亡率は減少しつつあるものの、委員会は、妊産婦死亡率、乳児死亡率および5歳児未満児死亡率が高いままであること、ならびに、子どもの栄養不良率が高いこと、妊婦の貧血が頻繁に生じていること、および、子どもを生後6か月間は母乳のみで育てる女性の割合が低いことを懸念するものである。全体的に、主として産前ケアのためのサービスおよびクリニックにアクセスできないことを理由として、産前ケアが不十分であるように思われる。加えて、委員会は、締約国でチフスおよびコレラが再出現していることに、懸念とともに留意する。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに農村部において全国栄養戦略の実施を強化すること。 (b) 母親ならびに村のヘルスワーカーおよび伝統的助産師を対象として、生後6カ月間は乳児に母乳のみを与えることを奨励し、かつその利点について教育するための措置をとるとともに、たとえば国家的販売促進規則を策定することを通じ、乳児用調製粉乳の配布を制限するための措置をとること。 (c) 地区保健センターおよびコミューン保健ステーションが利用可能な資源を増やすとともに、これらの施設がとくに妊産婦保健および新生児ケアのための十分な人的および物的資源を有することを確保すること。 (d) 感染症、具体的にはチフスおよびコレラの蔓延を予防するためにあらゆる適当な措置をとること。 環境衛生 41.委員会は、環境衛生上の条件が劣悪であること、とくに、とりわけ農村部および山間部において安全な飲料水および衛生設備にアクセスできる住民の割合が低いこと、および、オレンジ剤その他の枯葉剤の影響が残っていることを懸念する。 42.委員会は、締約国が、農村地域および山間地域で上水設備および衛生設備を建設しかつ拡大することに優先的に取り組むとともに、脆弱な立場に置かれたすべての集団が安全な飲料水および衛生設備に平等にアクセスできることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、国際協力も活用しながら、枯葉剤等の環境汚染が子どもに与える有害な影響を予防しかつこれと闘うための努力を継続するようにも勧告するものである。 障害のある子ども 43.委員会は、障害のある子どものうち学校に通っていない子ども、職業訓練または就労準備にアクセスできない子どもおよびリハビリテーション・サービスへのアクセスが限られている子どもの割合がとくに農村部において高いことを、非常に懸念する。 44.委員会は、締約国が、障害のある子どもに関する委員会の一般的討議(1997年)の勧告および障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの教育上および職業訓練上のニーズならびにリハビリテーションその他の社会サービスへのアクセスについて評価する目的で、障害のある子ども(現在通学していない子どもも含む)の人数についての包括的調査を実施すること。 (b) 経済的に不利な立場に置かれた障害のある子どもに対し、リハビリテーションのためのサービスおよび装備へのアクセスを確保するために金銭的援助を提供すること。 (c) 公共の建物および場所(学校およびレクリエーション施設を含む)に対する障害のある子どもの物理的アクセスを改善するための現行プログラムを拡大し、かつ初等前、初等、中等および高等教育段階における統合教育プログラムの数を増やすこと。 HIV/AIDS 45.委員会は、HIV/AIDSが蔓延しつつあり、かつ、子どもが自ら感染したことまたはこの疾病のために親を失った可能性があることのいずれかを理由として子どもにますます影響を与えていることを懸念する。 46.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと人権に関する指針(E/CN.4/1997/37添付文書I)を考慮に入れ、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)という条約の4つの一般原則をとくに重視しながら、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合すること。 (b) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもの施設措置を回避するため、あらゆる効果的な措置をとること。 (c) とくに公衆教育キャンペーンを通じて、HIV/AIDSとともに生きる子どもに対するスティグマおよび差別を防止するための効果的な措置をとること。 6.教育 47.初等学校段階での完全就学を達成しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、都市部と農村部または山間部との間で教育へのアクセスおよび教育の質に相当の乖離があること、および、学校制度がいまなお十分な訓練を受けた教員および教材の不足に苦しんでいることを懸念する。加えて、委員会は、初等前教育における就学率が低いこと、第1学年で留年する児童が多いこと、および、男女間で幼稚園就園率に相当の格差があることを懸念するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに女子についておよび農村部において初等前教育への就学率を高め、かつすべての子どもに対して良質かつ無償の初等教育に対する権利を確保するため、あらゆる適当な措置をとること。 (b) とくに農村部において、経済的に不利な立場におかれた家庭の生徒に提供される金銭的援助をあらゆる段階(初等前段階を含む)で増やすこと。 (c) あらゆる民族的マイノリティ集団出身の教員の採用人数および養成人数を増やすとともに、遠隔地および山間部で働く教員に対して引き続きインセンティブを与えること。 (d) 授業およびカリキュラムの質を向上させるための現行プログラムならびに学校インフラの建設および発展において、農村部ならびに遠隔地および山間部に優先順位を付与すること。 7.特別な保護措置 性的搾取および人身取引 49.委員会は、セックスワーカーの相当の割合が18歳未満であることに懸念とともに留意する。さらに委員会は、子どもの人身取引が相当の問題であることを締約国が認めていながらも、公式に報告される事件数がきわめて少ないことを懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的搾取および人身取引の防止に関する国内的および準地域的な戦略およびプログラムを引き続き強化するとともに、これらの戦略およびプログラムにおいて、それぞれ1996年および2001年に開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で表明されたコミットメントが考慮されることを確保すること。 (b) 子どもに配慮したやり方で効果的に苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。 (c) 人身取引、性的虐待および搾取の被害を受けたすべての者が、スティグマの付与につながらない、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 経済的搾取 51.委員会は、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、農業部門ならびに金鉱山、伐採作業、サービス部門その他の民間部門企業において子どもの経済的搾取が依然として広範に行なわれていることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、路上で生活しかつ働く子どもの人数が多いことも懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約を批准しかつ実施すること。 (b) NGO、コミュニティ団体、法執行官、労働監察官およびILO児童労働撤廃国際計画と連携しながら、農村部および都市部の双方を対象とする包括的な児童労働監視システムを発展させかつ実施すること。 (c) 「困難な状況にある子どものための国家行動計画」(1999~2002年)を引き続き強化するとともに、前回勧告したとおり、子どもが路上で生活しかつ働く理由について、この現象の根本的原因に効果的に対処するための戦略を策定する目的で研究を行なうこと。 少年司法 53.委員会は、少年司法の分野で行なわれた1999年の刑法改正に留意する。しかしながら委員会は、増加している青少年犯罪に少年司法制度が効果的に対応できておらず、かつ、罪を犯した青少年の更生および再統合のためのサービスが不十分であることを懸念するものである。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 少年司法に関する個別の法典の採択および少年裁判所制度の設置を検討すること。 (c) 少年拘禁センターの環境を改善するとともに、自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。 (d) 更生および再統合のための適切なサービスを提供するシステムを迅速に発展させるとともに、罪を犯した青少年にこのようなサービスを提供するソーシャルワーク専門職の人数を増やすこと。 (e) 法律に違反したとして申し立てられたすべての子どもが弁護士による援助その他の適当な援助を受けることを確保すること。 (f) とくに国連人権高等弁務官事務所および「少年司法に関する技術的助言および援助についての国連調整パネル」の他の構成機関に対し、この分野における技術的援助を要請すること。 8.文書の普及 55.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.次回報告書 56.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月1日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう促す。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月9日)。
https://w.atwiki.jp/jijipedia/pages/82.html
インフレって何? インフレってなんで起きているの? インフレの影響は? 関連ニュース 焦点:利下げに賭けるエルドアン大統領、インフレ進行で総選挙へ - ロイター ダウ平均は反落 インフレ、利上げ期待の中でIT・ハイテク株に調整売りが強まる=米国株概況 - ニュース・コラム - Y!ファイナンス - Yahoo!ファイナンス 日本のサブスクにインフレの波 近づく欧米標準 - 日本経済新聞 FRB、インフレリスクを一段と注視すべき=IMF(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ECBクノット氏、高インフレ続けば23年の利上げ排除せず-FD(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース OECDインフレ加速でも中銀は引締め急ぐなと指摘 - 東洋経済オンライン インドネシア中銀、政策変更シグナルは前もって発信=総裁(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 英サービスPMI改定値、11月は58.5に低下 インフレ圧力急増 - ロイター 「相続税制がもたらす市場の歪み」ほか 「米国のインフレは今後も続くか」(週刊東洋経済) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 企業物価の上昇で日本もインフレに突入するか | 消費者に対する値上げの難しさも - 週刊東洋経済プラス 【債券市場】日本でも強まる金利予測材料としてのインフレ率の重要度 - ニュース・コラム - Y!ファイナンス - Yahoo!ファイナンス UPDATE 1-オミクロン株、米インフレ高進のリスク─クリーブランド連銀総裁=FT - ロイター 米国債トレーダーのインフレ期待大幅後退-新変異株とFRBシフトで - ブルームバーグ 米金融当局はインフレとの闘いで立ち遅れ-PIMCO最高投資責任者(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレは続く? ヒントは自転車メーカーに - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 止まる気配のない物価上昇、インフレの長期化を食い止めるべき=韓国報道(WoW!Korea) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ロンドン株式市場=反落、インフレとオミクロン株への懸念で - ロイター ブラジルGDP、第3四半期0.1%減 干ばつとインフレ響く(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレ高進は「一過性」、フィンランド中銀総裁が改めて主張(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米議会 インフレめぐる論戦激化 記録的な物価上昇続く - NHK NEWS WEB ゴールドプラザ天王寺あべの店リニューアル!! 【インフレ効果!!買取店集客倍増!?】 - PR TIMES 【経済#word】#グリーンフレーション 「脱炭素化」がインフレの原因 - 産経ニュース 賃金上がらぬ“悪いインフレ”で「2%物価目標」達成目前。原油高が日銀に出口を用意した=斎藤満 - まぐまぐニュース! 米FRB経済報告 経済活動緩やかに拡大 インフレ長引くリスクも - NHK NEWS WEB 新型コロナ影響克服でインフレ圧力軽減へ=米大統領 - ロイター インフレは常に米国の左派を罰する - JBpress インフレ高進の欧米とは別世界、日本企業はなぜ価格転嫁できなくなったのか - ダイヤモンド・オンライン 米国救済計画、インフレ高進への寄与「小さい」=財務長官(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース OECD、インフレが主要リスクと指摘 世界成長の減速予想(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース オミクロン効果でインフレ継続、FRB議長発言で株価下落 - Forbes JAPAN 日本が直面する「ドル不足問題」、インフレ・円安で今後も深刻化するワケ(ビジネス+IT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース FRB当局者、インフレの高止まりに満足せず=クラリダ副議長(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレ対策で人気の不動産投資、マクロ経済モデルが示す「下振れリスク」 - ダイヤモンド・オンライン ショルツ次期独首相、インフレが緩和しないなら「何らかの行動必要」 - ブルームバーグ インフレ高進リスク高まった、「一過性」削除の時期=FRB議長 - ロイター [FT]インフレ無風のアジア コロナ対策、米欧より緩やか - 日本経済新聞 ユーロ圏インフレ率、過去最高の4.9%-全エコノミストの予想上回る - ブルームバーグ 米1ドルショップが初の値上げ 25%高、インフレを象徴 - 産経ニュース 好況の米アトランタ、インフレ加速目立つ-コロナ移住の動きも影響か - ブルームバーグ オミクロン株出現、世界の中銀にインフレ巡る新たな頭痛の種に - ブルームバーグ イエレン氏から米インフレについて説明、初の会談で-鈴木財務相 - ブルームバーグ 習近平ですら吹っ飛ぶインフレの脅威…2022年、世界「大乱」に立ち向かう7つのポイント(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース バブル懸念、株分散で備え 「インフレ、一時的でない」 - 日本経済新聞 ECBデコス氏、インフレ圧力は中期的には抑制された水準に戻る(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ECB、ピークインフレ率予想引き上げへ-中期的見通しは引き下げか(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ECBのインフレ介入、今のところ不要-パネッタ理事(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 世界経済を揺るがすインフレと中国リスク - 日本経済新聞 日本にも海外インフレ波及、物価上昇圧力強まる - 東洋経済オンライン バイデン氏、米金融当局とインフレについて協議-今後の人事にも言及(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース お手頃ランチに忍び寄る「インフレ」 一杯の豚バラ丼から見えた日本経済の苦境(Yahoo!ニュース オリジナル 特集) - Yahoo!ニュース 高インフレでジリ貧のアメリカ人、政府に追加の現金給付を求める(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米国株はインフレ懸念に耐えられる?2022年S&P500はいくら? - トウシル インフレ下で利下げ、トルコリラが暴落 政治介入との批判(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米FRB “インフレ圧力続けば早期の利上げも” - NHK NEWS WEB 音声で学ぶインフレ 日本でも22年から値上げ本格化? - 日本経済新聞 キャシー・ウッド氏、インフレよりデフレが大きなリスクと再度主張(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 独景気回復が「一服」、高インフレは継続=連銀月報(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米インフレ、来年後半に落ち着く見通し-イエレン財務長官(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 10月のインフレ率も3%超、年率で52.1%上昇(アルゼンチン) | ビジネス短信 - ジェトロ(日本貿易振興機構) インフレ率の高止まりを懸念 英中銀総裁=新聞(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米国株に忍び寄るインフレ 不気味な品薄と人手不足(サンデー毎日×週刊エコノミストOnline) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース アメリカのインフレは一体どれくらい深刻なのか(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレ対策?「何も買わない」グループ人気 - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 ポストコロナのインフレ論 「機械化デフレ」を見落とすな(週刊東洋経済) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 世界の一部地域でインフレ根強くなる恐れ、警戒必要=IMF報道官(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 英金融界、インフレ加速は一時的か否かで議論白熱(上)(増谷栄一) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース FRB、早く「インフレ退治」に動け:日経ビジネス電子版 - 日経ビジネスオンライン インフレに苦慮するFRBとデフレ脱却を目指す日銀、来年以降は円一人負けに?(MONEY PLUS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレ率は上向いても…「安く買いたたかれる日本」の没落で迎える寒い冬 - 文春オンライン 米インフレ持続、市場に募る警戒 「22年半ばまで高水準」(写真=ロイター) - 日本経済新聞 米国株反落、インフレ警戒でリスクオフ-円上昇 - ブルームバーグ インフレの足音 30年間のディスインフレが終焉 物価上昇時の投資戦略の検討を(サンデー毎日×週刊エコノミストOnline) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレ発リスクオフは杞憂(石金淳) - 日本経済新聞 高インフレや人材獲得競争続く見通し-グローバル企業トップ - ブルームバーグ 世界でインフレへの恐怖が高まる中、日本だけが0%台の物価維持するわけは(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 豪中銀、インフレリスク上向くが忍耐の用意-23年利上げには含み - ブルームバーグ FRB当局者、インフレ高進の消費者への影響を懸念 制御必要も - ロイター イエレン財務長官、新型コロナ収束させることがインフレ減速の鍵 - ブルームバーグ インフレ新・3大リスクの同時発生に備えよ、中印人口増加、脱炭素、米中対立… - ダイヤモンド・オンライン カシュカリ総裁、米金融当局はインフレに過剰反応するべきではない(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米インフレ、原因は金融政策かサプライチェーンか(CoinDesk Japan) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 加速するユーロ圏インフレ、各国間格差は債務危機以来の広がり - ブルームバーグ 米消費者マインドは予想外の低下、10年ぶり低水準-インフレ懸念 - ブルームバーグ 1年ぶり高水準!インフレ止まらず!金、プラチナ高騰 -物価の上昇圧力の高まり- - PR TIMES どうなるインフレ? 流動性相場はまだまだ続く - ITmedia ビジネスオンライン インフレと向き合う(中)中銀、読めぬ「真の需要」 - 日本経済新聞 ガソリンも肉も値上げ、インフレについて知っておきたい10のこと - 日経ビジネスオンライン 世界的なインフレ懸念で浮上する債券ファンドの投資妙味、アジアのアクティブ型に投資家の関心高まる(モーニングスター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース アメリカがインフレ 31年ぶり高水準に コロナ・金融緩和・原油高 - www.fnn.jp アメリカ消費者物価 約31年ぶり高い上昇率 世界でインフレ圧力 - NHK NEWS WEB 円相場 114円台に値下がり 米インフレ懸念強まり円売り広がる - NHK NEWS WEB 米の5年期待インフレ率、3.13%と過去最高-CPIで早期利上げ観測 - ブルームバーグ 世界中のモノが値上がり、インフレ時に投資家が考えるべき企業への影響とは(MONEY PLUS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 名前に「インフレ」が含まれるETFが軒並み買われる-4兆円が流入 - ブルームバーグ 米国株式市場=続落、CPI受けインフレ長期化巡る懸念 - ロイター インフレ懸念が最大の懸念に、コロナに代わり=FRB金融安定報告(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース インフレは来年収束、成長維持し債務減らす必要=ユーロ圏財務相会合 - ロイター 「インフレ加速、変わる投資の常識」動画で解説 - 日本経済新聞 「供給不足でインフレ」懸念 世界景気冷やすリスクも(写真=AP) - 日本経済新聞 ジョージ総裁、「辛抱強くなれる」の説得力薄れた-インフレ圧力で - ブルームバーグ
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/177.html
総括所見:フィンランド(第4回・2011年) 第1回(1993年)/第2回(2000年)/第3回(2005年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/FIN/CO/4(2011年8月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年6月9日に開かれた第1628回および第1629回会合(CRC/C/SR.1628-1629参照)においてフィンランドの第4回定期報告書(CRC/C/FIN/4)を検討し、2011年6月17日に開かれた第1639回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第4回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/FIN/Q/4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するものの、締約国が、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく定期報告書をまだ提出していないことを遺憾に思う(訳注)。委員会は、議会オンブズマン、子どもオンブズマンおよび非政府組織のような関係者の意見が締約国報告書に含まれていることに、前向きな対応として留意するものである。委員会は、締約国における子どもの状況についての理解の向上を可能にしてくれた、開かれたかつ前向きな対話を評価する。 (訳注)武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書については2005年に第1回報告書の審査が行なわれている。同選択議定書のその後の実施状況に関する情報が第4回定期報告書に記載されていなかったという趣旨か。 II.締約国がとったフォローアップ措置および達成した進展 3.委員会は、以下のもののような条約実施のためにとられた立法上の措置の採択を含め、報告対象期間中に多くの前向きな発展が見られたことを歓迎する。 (a) 子ども福祉法(2007/417)(2008年)およびその改正(2010年)。 (b) 児童ポルノ頒布防止措置法(1068/2006)(2007年)。 (c) 青年法(2006/72)(2006年)およびその改正(2011年)。 (d) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約施行法(2011年)。 (e) 保健ケア法(1326/2010)(2010年)。 (f) 基礎教育法の改正(2010年)。 (g) 母子保健サービス、学校保健ケアおよび生徒保健ケアならびに子どもおよび若者のための予防的口腔保健ケアに関する政令(380/2009)(2009年)およびその改正(338/2011)(2011年)。 4.委員会はまた、以下のものを含む国際文書の批准/これへの加入も歓迎する。 (a) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ第34号条約(2010年)。 (b) 無国籍の削減に関する1961年条約(2008年)。 (c) 国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年)。 (d) サイバー犯罪に関する欧州評議会条約(2007年)。 5.委員会はまた、以下のものを含む政策およびプログラムの採択も歓迎する。 (a) 子どもの体罰を減少させるための国家行動計画(2010~2015年)。 (b) 子ども・若者政策発展プログラム(2007~2011年)。 (c) 社会福祉および保健ケアに関する国家発展プログラム(2008~2011年)。 (d) 国家ロマ政策(2009年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条(6項)) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第3回定期報告書の検討(2005年)後に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.272)に対する対応が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの懸念および勧告がこの総括所見でも繰り返されていることに留意するものである。 7.委員会は、締約国に対し、第3回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち十分に実施されていないもの(民族的マイノリティの子どもおよび移民の子どもに対する差別、子どもの意見の尊重、子どもの庇護希望者の権利、子どもの脱施設化ならびに思春期の健康に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.委員会は、条約の実施に関連する憲法的、法的および規範的枠組みを強化するために締約国がとった立法上の措置に留意しつつ、条約および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の適用範囲を全面的に網羅する統合的な立法上の枠組みが存在しないことを、依然として懸念する。 9.委員会は、締約国が、法律および行政規則が条約および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の原則および規定に全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、条約上のすべての権利を包含する統合的法律の起草を検討するよう、勧告する。 調整 10.子どもの福祉、とくに社会サービス、保健サービスおよび子どもがいる家族の所得保障の発展については社会保健省が責任を負っていることには留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関するプログラムおよび政策の豊富さを考慮すれば、同省は――同省の責任が子どもの権利の一部の分野のみに限定されていることから――国、広域行政圏および自治体のレベルならびに関連のあらゆる機関間における条約実施の全般的調整を担当する、十分な調整機構としては機能できない可能性があることを、依然として懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、あらゆるレベルおよび関連のあらゆる機関間で子どもの権利政策の実施を調整する効果的な機構を設置するための措置をとることを確保するよう、求める。その際、締約国は、当該機構に対し、国、広域行政圏および自治体のレベルで包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、促されるところである。 国家的行動計画 12.委員会は、「子ども・若者政策発展プログラム」および「子ども、若者および家族のウェルビーイングのための政策プログラム」を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、条約を全面的かつ効果的に実施するための、権利を基盤とする包括的な政策および調和のとれた計画をまだ採択していないことを、遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国が、条約の全面的実施のための包括的な政策および行動計画を策定するよう、勧告する。このような政策および計画の立案に際しては、総会第27回特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビュー(2007年)に対して適切な注意が払われるべきである。委員会はさらに、行動計画には、すべての権利を実施し、かつすべての子どもによるすべての権利の享受に関する進展を効果的に監視するための、具体的な、期限の定められた、かつ測定可能な目標および達成目標が掲げられるべきことを、勧告する。行動計画については、その実施のために必要な財源、人的資源および技術的資源の適切な配分を確保するため、諸部門、国および自治体の諸戦略および予算との連携が図られるべきである。 独立の監視 14.委員会は、議会オンブズマンと子どもオンブズマンとの間で権限が分担されており、議会オンブズマンは子どもの権利侵害に関する苦情(子ども自身からのものを含む)を受理できる一方、子どもオンブズマンは子ども政策の監視を担当していることに留意する。しかしながら委員会は、子どもは議会オンブズマンの苦情申立て手続について承知しておらず、またはその活動方法について理解していない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマン事務所に提供される資源が不十分であることも懸念する。 15.委員会は、締約国が、国内諸機構の異なる苦情申立て手続に関する一般公衆(とくに子ども)の意識啓発を図るとともに、議会オンブズマンと子どもオンブズマン間の協力を増進させるよう、勧告する。委員会はまた、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)への注意を喚起しつつ、締約国に対し、その独立性、有効性およびアクセス可能性を保障するために必要な人的資源、財源および技術的資源がこの国内機構に対して提供されることを確保するようにも求めるものである。 資源配分 16.委員会は、自治体が公共サービスの提供およびその資金に関して広範な自治権を享受していることに留意するとともに、このために、子どもおよび青少年のためのサービスに対する一部自治体の資源配分が不十分となり、子どもに対する資源配分に地域的格差が生じる可能性があることを、懸念する。締約国が条約に基づいて負う、自国の管轄下にある子どもの権利を充足する義務に照らし、委員会は、国レベルで包括的な評価、記録および監督が行なわれておらず、そのため国レベルで力のない統制システムしか存在しないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 各自治体が利用可能な資源を考慮に入れながら、自治体に対し、子どもの権利の実施を確保するためにとくに配分される十分な資源を提供すること。 (b) 適切な水準の配分を確保しながら、子どものニーズを満たすために各自治体ごとに配分される予算額の効果的監視を確立すること。 (c) 子どものための予算配分額を監視する目的で子ども予算(子どもの権利の視点に立った予算追跡)を導入するとともに、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 18.委員会は、脆弱な状況に置かれた子ども(貧困の影響を受けている子ども、障害のある子ども、マイノリティ/移民の子どもおよび代替的養護に措置されている子どもを含む)の生活条件に関して入手可能なデータが不十分であることを懸念する。委員会はまた、子どもに対する虐待、ネグレクトおよび暴力ならびにこれらの子どもに対して提供されているサービスについての統計が限定的であることも懸念するものである。 19.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関する統計のシステムおよび分析を強化するとともに、貧困、暴力、障害のある子ども、マイノリティ/移民の子どもおよび家庭を奪われた子どもについての政策およびプログラムの参考となるデータが収集されかつ活用されることを確保するよう、促す。委員会は、締約国が、とくに年齢、性別および民族的背景ごとに細分化された、18歳未満のすべての者および条約が対象とするすべての領域に関するデータを領域全体で体系的に収集しかつ分析するための能力を、引き続き強化するよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 20.委員会は、政府の「子ども、若者および家族のウェルビーイングのための政策プログラム」の目的のひとつに採用された、条約の普及および関連の研修に関する情報ならびに条約20周年記念キャンペーンに関する情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、親および子どもとともに働く専門家を含む一般公衆の間で条約に関する意識の水準が低いことを、依然として懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、子ども、親および子どもとともに働く専門家を含む一般公衆の間で条約ならびに条約に基づく国内法および他の関連の国際文書に関する知識を高めるための努力を増強するよう、勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(とくに法執行官、教員、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカーおよびあらゆる形態の代替的養護で働く者)を対象とする十分かつ体系的な研修の強化も勧告するものである。 国際協力 22.委員会は、締約国が、2010年に国内総所得(GNI)の0.56%を国際援助に充てたこと、および、対GNI比0.7%という国際合意目標を2015年までに達成すると決意していることに、留意する。委員会は、締約国に対し、2015年までに対GNI比0.7%という国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する者である。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するようにも奨励する。委員会は、締約国が、その際、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案するものである。 子どもの権利と企業セクター 23.委員会は、フィンランドに本社を置く企業による児童労働の直接的または間接的使用が禁じられておらず、かつ、児童労働を用いて製造された製品の輸入または販売について企業に制限が課されていないことを遺憾に思う。委員会はまた、子どもの栄養状態に影響を与え、かつ小児期の肥満およびその他の健康上の悪影響を助長する不健康な食品の販売宣伝を制限する法的規制が存在しないことも、懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、国外で事業を行なうフィンランド企業およびフィンランドに本社を置く多国籍企業のサプライチェーンを効果的に監視するための制度を設けることにより、これらの企業による児童労働の使用を禁ずるための枠組みを定めるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの健康に悪影響を与える不健康な食品の販売宣伝を制限することも勧告するものである。委員会は、締約国が、とくに国連「ビジネスと人権枠組み」にしたがい、企業セクターが、とりわけ子どもの権利との関連で、企業の社会的責任に関する国際的および国内的基準を遵守することを確保するための規則を採択しかつ実施するよう、勧告する。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された当該枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、反差別法の改正、とくにその適用範囲の拡大のために締約国が努力していること、および、処遇均等オンブズマン事務所を設置する計画があることに留意する。しかしながら委員会は、障害のある子ども、子どもの移民および難民ならびにロマの子どものような民族的マイノリティの子どもに対する差別が蔓延していることを依然として懸念するものである。委員会はまた、ロマの社会的排除および構造的差別が、ロマの子どもの有害物質濫用の増加、精神保健上の問題および劣悪な生活水準につながっていることも懸念する。 26.委員会は、締約国に対し、障害のある子ども、子どもの移民および難民ならびに民族的マイノリティの子どもに対するあらゆる形態の差別と闘う努力を強化するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、とくにメディアおよび教育制度を通じ、差別の防止および根絶を高い公的優先課題と位置づけるよう勧告するものである。締約国はとくに、国家ロマ政策にしたがい、ロマに対する民族差別およびその社会的排除と闘うためにとられる措置を強化し、かつ、すべてのロマの子どもに対して十分な生活水準を確保するべきである。委員会は、締約国が、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載するよう勧告する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、子ども福祉法(2007年)に、福祉措置に関する子どものニーズの評価における子どもの最善の利益概念が含まれていることを歓迎するものの、締約国の他の法律には子どもの最善の利益に対する包括的言及がないこと、および、子どもに影響を与える決定においてこの原則が十分に理解されまたは考慮されていないことを遺憾に思う。 28.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、子どもおよび青少年の参加に関する欧州評議会の政策レビューに、締約国が試行国として参加していることを歓迎する。委員会はまた、子ども福祉法に基づき、子どもがその年齢に関わらず意見を聴かれる権利を有していることも歓迎するものである。しかしながら委員会は、行政手続法によれば自己に影響を与える事柄について個別に意見を聴かれる権利を有するのは15歳以上の子どもだけであること、外国人法上、12歳未満の子どもは原則として意見を聴かれていないように思われること、および、監護事案において子どもが十分に意見を聴かれていないことを、懸念する。委員会はまた、意見を聴かれる障害児の権利が適正に実現されていないことも懸念するものである。委員会はさらに、12歳に達した子どもを法廷外で聴聞するための代替的方法が十分に活用されていないこと、および、このような子どもが口頭審理への出席を強制される場合があることを、懸念する。 30.委員会は、締約国が、国内法で定められた年齢制限を廃止し、18歳未満のすべての子どもが、その子どもの成熟度にしたがい、自己に影響を与える司法上および行政上の手続(監護事案を含む)において適正に意見を聴かれることを確保するよう、勧告する。子どもは、子どもの最善の利益の原則を考慮に入れ、子どもにやさしい方法で意見を聴かれるべきである。障害のある子どもを含む子どもの意見は、その子どもの年齢および成熟度にしたがい、正当に重視されるべきである。これ(訳注)には、とくに、公開法廷ではなく秘密が守られる条件下で子どもの意見を聴くこと、および、ビデオ/オーディオ機器を活用することが含まれる場合がある。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するものである。 (訳注)子どもにやさしい方法による意見聴取を指すと思われる。 C.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 31.委員会は、有害物質濫用に関連した問題を有する親と暮らしている子どもが多いこと、および、子どもとともに働く専門家がとくにこれらの子どもに対して十分な注意を払っておらず、かつこれらの子どもに対応するための実務的知識をしばしば有していないことを、懸念する。委員会はまた、監護紛争がきわめて長く続くことに対する前回の懸念(CRC/C/15/Add.272、パラ26)もあらためて表明するものである。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 資源を増加させ、家族カウンセリングおよび親教育を提供する社会サービスを強化するとともに、子どもとともに働くすべての専門家(ソーシャルワーカーおよび保健ケア専門家を含む)の研修を行なうこと。 (b) とくに有害物質濫用に関連した問題を有する家族との関連で、防止サービスならびに早期支援介入措置を強化すること。 (c) 離婚を考えている親のための家族調停サービスを増進させるとともに、子どもの監護をめぐる紛争が、子どもの最善の利益を考慮しながら適切な期間内に解決されることを確保すること。 家庭環境を奪われた子ども 33.子ども福祉法が、とくに子どもの養護受け入れおよび緊急措置に関するいっそう厳密な規定を置き、かつ代替的養護は第一次的には小規模かつ家庭的な単位で提供されるよう求めていることは歓迎しながらも、委員会は、実際には施設に措置される子どもの人数(連続しての措置を含む)が増えていること、里親養護への措置件数が不十分であること、ならびに、代替的養護への措置、養護計画、および措置決定の定期的再審査に関する基準を定めた全国的な統一基準が存在しないこと、および、代替的養護施設の監督および監視が不十分であることを、懸念する。委員会はまた、親のケアを受けていない子ども(施設の子どもを含む)のための効果的な苦情申立て手続が存在しないことも懸念するものである。委員会はさらに、施設の子どもが必ずしも普通教育に統合されておらず、かつ必要な精神保健サービスを必ずしも受けていないことを懸念する。さらに委員会は、子どもが実の家族との再統合を目的とする代替的養護を受けている間、実の家族に対して支援が行なわれていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 代替的養護を必要とする子どもが施設ではなく家庭的養護および里親家庭養護に措置されることを確保するための努力を強化するとともに、とくに里親養護および里親の支援のための資源を増加させることにより、公的養護を受けている子どもの連続的措置を回避するための措置をとること。 (b) 代替的養護の現場で子どもとともに働くすべての専門家(里親および監督担当者を含む)に対し、研修を行なうこと。 (c) 代替的養護の対象とされる子どものアセスメントおよび措置、養護計画、および措置決定の定期的再審査に関する全国的な統一基準を定めるとともに、里親ホームまたは施設に措置された子どもの状況が十分な監督および監視の対象とされることを確保すること。 (d) 親のケアを受けていない子どもを対象とした、効果的な、よく周知された、独立したかつ公平な苦情申立て機構が整備されることを確保するために必要な措置をとること。 (e) 施設の子どもが普通教育に統合され、かつ必要に応じて精神保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (f) 可能なときは、代替的養護を受けている子どもがやがて実の家族と再統合できるようにする目的で、実の家族に対して支援を提供すること。 委員会は、締約国に対し、子どもの代替的養護に関する指針〔PDF〕を考慮するよう勧告するものである。 体罰 35.委員会は、子どもの体罰を解消するための国家行動計画(2010~2015年) を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに家庭において体罰が引き続き容認されかつ用いられていることを、依然として懸念するものである。 36.委員会は、締約国が、とくにおとなおよび子どもの組織的な意識啓発、適切な、積極的かつ非暴力的な形態のしつけの促進、および、――特別な支援を必要とする子どもの親および子育て実践に関して困難を有している親に特別な注意を払いながらの――継続的な監視を通じ、あらゆる場面における体罰を禁じた法律の全面的実施を確保するよう、勧告する。 児童虐待およびネグレクト 37.委員会は、児童虐待およびネグレクトに関わる事案またはこれに関する政府の政策について締約国から情報が提供されなかったことを遺憾に思う。 38.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮しながら、さまざまな形態の児童虐待およびネグレクトの発生件数および蔓延率ならびに児童虐待およびネグレクトを防止するための国の政策に関する研究を実施するとともに、次回の定期報告書でこの点に関するいっそう詳しい情報を提供するよう、勧告する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 39.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所および世界保健機関(WHO)、ならびに、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所および国連薬物犯罪事務所を含む他の関連の機関ならびに非政府組織(NGO)パートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 40.障害のある人の個別ニーズに基づいた援助を強調する障害者サービス援助法改正(2009年)、および障害政策プログラム(2010~2015年)は歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どものための保健ケア・サービスの供給が一部自治体で不十分であること、および、この点について締約国が財政的コミットメントを示していないことを、依然として懸念する。委員会はまた、物理的環境および公共交通機関における障壁のために障害のある子どもが移動を制限されており、したがって障害のある生徒の隔離水準が高いことも懸念するものである。さらに委員会は、教員が障害のある子どもとともに働く十分な訓練を受けておらず、かつ、障害児がいる家族が、その子どものリハビリテーションを支援するための十分、良質かつ先端的な支援または教育的指導を受けていないことを懸念する。 41.条約第23条〔および〕障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 良質な保健ケア・サービス、公共建築物および交通機関にアクセスし、かつ普通学校で教育を受ける障害児の平等な権利を保障する、ホリスティックな法律上および政策上の枠組みを確立すること。 (b) 障害のある子どものために十分な数のパーソナル・アシスタント、通訳サービスおよび移送サービスを確保すること。 (c) 障害および特別なニーズを有する子どもを教育する、教員の能力を向上させること。 (d) 障害児がいる家族に対して教育的指導を提供することにより、これらの家族を支援すること。 (e) 障害のある人の権利に関する条約の批准手続をさらに迅速に進めること。 健康および保健サービス 42.委員会は、子どもおよび若者を対象とした健康診断および健康教育を導入した保健ケア法の採択(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、学校に常駐する医療職員(子どもに心理カウンセリングを提供する職員も含む)が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、有害物質濫用の問題を有する妊婦が治療へのアクセスに関して困難を抱えていること、および、有害物質を濫用する母親のもとに生まれた子どもの発達に対して締約国が十分な注意を向けていないことも、懸念する。 43.委員会は、締約国が、学校に医療職員(子どもに心理カウンセリングを提供する心理学者を含む)が常駐するようにすることを勧告する。委員会はまた、締約国が、有害物質濫用の問題を有する妊婦が時宜を得た良質な医療上の援助および治療を受け、かつ、そのような母親のもとに生まれた子どもに対して援助および支援が提供されることを確保するようにも、勧告するものである。 精神保健 44.委員会は、抑うつ率が高いことおよび自殺件数が多いこと(近年起きた2件の学校発砲事件を含む)、ならびに、子どものための精神保健サービスが不十分であることを懸念する。委員会はまた、注意欠陥・多動性障害および注意欠陥性障害の診断を受けた子どもに対する精神刺激薬の処方が減少していないことも、懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものための精神保健サービスを強化し、かつ必要な検査および治療へのアクセスを保障するとともに、自殺防止措置を増強すること。 (b) 子どもに対する精神刺激薬の処方を監視するとともに、注意欠陥・多動性障害および注意欠陥性障害の診断を受けた子どもならびにその親および教員が、より広範な心理的、教育的および社会的措置および治療にアクセスできるようにするための取り組みを行なうこと。 (c) 子どもが行なう可能性のある精神刺激薬の濫用を監視する目的で、物質の種別および年齢にしたがって細分化されたデータの収集および分析の実施を検討すること。 母乳育児 46.委員会は、母乳育児推進のためのフィンランド国家行動計画が2009年に採択され、かつ母乳育児推進フォローアップ部会によってその監視が行なわれていることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の母乳育児率が、上昇したとはいえ低いままであることを依然として懸念するものである。委員会はまた、現在、母乳育児に関する情報の大多数はオンラインでのみ入手可能であり、母親が他の手段を通じて母乳育児情報にアクセスできないこと、ならびに、母乳育児の重要性に関する意識および教育が欠けていることも、懸念する。 47.委員会は、締約国が、母乳育児の重要性および人工栄養のリスクについての資料にアクセスできるようにし、かつこれらの点に関して公衆の教育および意識啓発を図ることにより、母乳育児を促進するための努力を強化するよう、勧告する。 思春期の健康 48.委員会は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスの促進に関する行動計画(2007~2011年)が策定されたこと、および、国家公衆衛生機関内に子ども・青少年健康局が創設されたこと(2007年)を歓迎する。しかしながら委員会は、青少年によるアルコールおよびタバコの濫用の水準が高いことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、アルコールおよびタバコの悪影響に関する意識啓発を図ることによって青少年がアルコール、タバコおよび有害物質を濫用しないようにし、かつ、子どもおよび青少年の健康的なライフスタイルおよび消費パターンに対する貢献を確保する目的でマスメディアの関与を得るための措置を強化するよう、勧告する。 生活水準 50.委員会は、在宅保育手当および私的保育手当に関する法律の改正(2010年)により、在宅保育手当が増額され、自営業者の受給資格が拡大され、かつ父性休暇期間が延長されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、貧困下で暮らす子どもおよび有子家族(とくに3歳未満の子どもがいる家族)の数が過去10年間で倍以上になり、かつ、子ども手当および親手当が事実上減額されてきたことを、依然として懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた家族(若年家族、ひとり親および多子家族の子どもをを含む)を支援し、かつ十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障するための努力を強化するよう、求める。委員会はまた、子どもの貧困に対する効果的対応がとられるようにする目的で、締約国が、子どもの貧困に関するデータの包括的な収集および分析のために必要な措置をとることも、勧告するものである。 E.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 52.委員会は、脆弱な状況に置かれたさまざまな集団の子ども(ロマの子どもを含む)が教育制度において直面している困難(不登校率の高さ、低成績、特別教育学級に措置される子どもの多さおよび中退率の高さを含む)について懸念を覚える。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもおよびその家族に対してよりよい支援を提供する目的で、さまざまな文化および子どもが直面している困難に関する教員の知識を増進させ、かつ、学校におけるロマ人の専門家(とくに特別ニーズ補助教員)の採用を増やすこと。 (b) 教員の養成および研修ならびに学校カリキュラムにマイノリティの権利を含めること。 (c) 子どものフィンランド語活用能力および社会的スキルを向上させ、ならびに、学校への移行をいっそう容易にし、かつ学校におけるつまづきおよび中退を防止する目的で、子どもが保育プログラムに出席していない親に対し、子どもを乳幼児期発達プログラムに参加させるよう奨励する対象を増やすこと。 54.子どものいじめを防止するためのプロジェクトが設けられたことは歓迎しながらも、委員会は、女子に対するセクシュアルハラスメントおよびジェンダーを理由とするいやがらせが広く行なわれており、かつ、インターネット上のいじめおよび携帯電話によるいじめを含むいじめが行なわれている旨の報告があることを、依然として懸念する。委員会は、学習に関する強化支援または特別支援を導入した基礎教育法改正(2010年)を歓迎しつつも、締約国の子どもの優秀な学業成績にも関わらず、多数の子どもが学校に満足していないことを依然として懸念するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態のいじめおよびいやがらせと闘うためにとられる措置(教員および学校で働くすべての職員ならびに生徒の、学校における多様性を受け入れる能力を向上させ、かつその紛争解決スキルを向上させることなど)を増進させること。 (b) 学校における子どものウェルビーイング(意見を考慮される権利を含む)にいっそうの注意を払うとともに、学校に対する子どもの不満の原因に関する調査を実施すること。 (c) 前掲の勧告の実施に際し、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮すること。 乳幼児期のケアおよび教育 56.委員会は、専門家が不在であること、職員ひとりあたりの子どもの人数が多いこと、および、最低基準が定められていないために保育/就学前教育の質が低いとされていることなど、乳幼児期の教育に欠点があることを懸念する。小学1年生および2年生に対して朝および午後の活動が用意されていることは歓迎しながらも、委員会は、そのような活動の提供が自治体に対して要求されていないため、親が仕事と家庭生活のバランスをとりにくくなっていることを懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、乳幼児期に関するすべての規定をまとめた、乳幼児期のケアおよび教育に関する新たな一般的法律を起草するよう、勧告する。当該法律は、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(2005年)を考慮に入れ、かつ欧州委員会「乳幼児期の教育およびケアに関する報告書:われらがすべての子どもに対し、明日の世界のための最善のスタートを」(COM (2011 66)、2011年2月17日)に基づいて、子どもの権利の視点を強化するものであるべきである。委員会はさらに、とくに、集団の規模が限定され、かつ「保育の継続性」関係がよりよい形で保障されるように保育職員の増員および職員対子ども比の改善を図ることによって、乳幼児期教育プログラムの実施率および質を向上させるよう、勧告する。 F.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 性的搾取 58.委員会は、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約施行法(2011年)および児童ポルノ頒布制限措置法(2007年)の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、デジタルメディア(インターネット)における子どもの性的虐待およびセクシュアルハラスメントについての研究が行なわれていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准手続に時間がかかっていることも遺憾に思う。 59.委員会は、締約国が、デジタルメディア(とくにインターネット)における性的虐待およびセクシュアルハラスメントの規模について研究するとともに、デジタルメディアにおける暴力を摘発し、加害者を処罰し、かつこれと闘うために必要な法律上、行政上および政策上の措置をとるための体制を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくにインターネット上の子どもの性的搾取と闘う目的で十分な資源を配分しかつ政府の行動および調整を増進させるとともに、防止、被害を受けた子どもの回復および再統合のためのプログラムおよび政策が、1996年および2001年の「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」(それぞれストックホルムおよび横浜)ならびに2008年の「第3回子どもおよび青少年の性的搾取に反対する世界会議」(リオデジャネイロ)で採択された成果文書にしたがったものとなることを確保するようにも、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准をいっそう速やかに進めるよう、促す。 子どもの庇護希望者および難民 60.委員会は、庇護政策および難民政策において子どもの最善の利益の原則を考慮する2006年移住政策プログラム、および、保護者のいない子どもの家族再統合について定め、かつ医学的診断による年齢鑑別手続を法律による規制の対象とした外国人法改正(2010年)に留意する。しかしながら委員会は、締約国で庇護を求める子どもを収容する慣行について依然として懸念を覚えるものである。さらに委員会は、16歳以上の庇護希望者が受入れセンターの成人棟に収容されること、および、保護者のいない未成年者のための精神保健サービス、治療ケアおよび精神医学的ケアが不十分であることを、懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)に照らし、庇護希望者の年齢について疑問があるときは灰色の利益を認めて当該庇護希望者を子どもとして扱うとともに、庇護希望者が年齢鑑別結果について異議を申し立てられるようにすること。 (b) 16歳以上の庇護希望者を受入れセンターの成人棟に収容しないようにするとともに、保護者のいない未成年者に対して十分な精神保健サービス、治療ケアおよび精神医学的ケアを提供すること。 (c) 子どもの庇護希望者の収容が、それに代わる措置を適用することができない場合に、最後の手段として、可能なもっとも短い期間で行なわれることを確保すること。 ヘルプライン 62.委員会は、締約国が、電話およびインターネットを用いた子どものためのヘルプラインに対する恒久的かつ十分な資金を確保するとともに、欧州連合「子どもの権利に関する報告書」にしたがって116 000の欧州統一番号を実施するよう、勧告する。委員会はまた、子どもヘルプラインが子どもの保護のための基本的手段であり、かつ子どもに対する暴力の防止および摘発に向けた手段であることを、締約国が認めるようにも勧告するものである。 先住民族集団およびマイノリティ集団に属する子ども 63.委員会は、ロマ・マイノリティおよびサーミ先住民族集団に属する子どもがロマニ語およびサーミ語による保健サービス(精神保健サービス、治療ケアまたは精神医学的ケアを含む)を受けていないことを懸念する。委員会はまた、ロマニ語およびサーミ語による教育サービスおよびレクリエーション活動の水準が不十分であること、ならびに、サーミ語によるこのようなサービスおよび活動がその主要居住地域に限定されていることも、懸念するものである。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国の計画およびプログラムへの、ロマおよびサーミの子どもの権利の統合状況を監視しかつ評価すること。 (b) ロマおよびサーミの子どもが、自己の言語による、文化的に配慮された教育および保健ケア・サービス(サーミのホームランド外に住んでいるサーミの子どものためのものを含む)に対する権利を有することを確保すること。 (c) とくに学校カリキュラム、教員の養成および研修、教員向け資料の作成およびサーミの子ども向けのメディア・コンテンツの提供に関して、スウェーデンおよびノルウェーの政府といっそう緊密に協力すること。 (d) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を考慮すること。 (e) 独立国における先住民族および種族民に関するILO第169号条約(1989年)を批准すること。 G.国際人権文書の批准 65.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ加盟国となっていない中核的国連人権文書、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、拷問等禁止条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 H.フォローアップおよび普及 フォローアップ 66.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 67.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 I.次回報告書 68.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年7月19日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 69.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/154.html
総括所見:オーストラリア(第2~3回・2005年) 第1回(1997年)/第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.268(2005年10月20日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月13日に開かれた第1054回および第1055回会合(CRC/C/SR.1054 and 1055参照) においてオーストラリアの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/129/Add.4)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回・第3回統合定期報告書の提出、および、事前質問事項に対する時宜を得た回答を歓迎する。これにより、委員会は締約国における子どもの状況に関する理解を向上させることができた。委員会はさらに、部門横断型のかつハイレベルな代表団との建設的かつ開かれた対話を評価するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。 (a) 家族・コミュニティサービス省の設置および「家族・コミュニティ強化戦略」イニシアティブの開始。 (b) 家族、若者および子どもに影響を与える政策、プログラムおよびサービスに関する連邦、州および準州の政府間の調整の向上を図る全国機関「ファミリーズ・オーストラリア」の設置。 (c) 子どもの性的搾取に対抗する国家行動計画「明日の子どもたち」(2000年)。 (d) 人身取引根絶のための国家行動計画(2003年10月)。 (e) オーストラリアにおける人権保護のための新たな国家的枠組みの運用開始(2004年12月23日)。 4.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎したい。 (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1998年8月25日)。 (b) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約(2003年4月29日)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年7月1日)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.31)を1997年に検討した際に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.79)のほとんどについて対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念および勧告(とくに先住民族の子どもがいまなお直面している特別な諸問題、体罰、若者のホームレス化の蔓延、入管収容下にある子ども、少年司法、および、少年司法制度の対象とされる先住民族の子どもの割合が不相応に高いことに関するもの)への対応が不十分でありまたは部分的であることに留意するものである。 6.委員会は、締約国に対し、第1回報告書の総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものについていっそう効果的なフォローアップを行ない、かつ第2回・第3回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告について具体的かつ効果的なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 7.委員会は、第37条(c)に付された締約国の留保は不必要であるとの見解に立つ。当該留保の背景にある論理と条約第37条(c)との間に矛盾はなんら存在しないように思われるためである。実際のところ、締約国がその留保において表明している懸念については、 自由を奪われたすべての子どもが、「子どもの最善の利益に従えば成人から分離すべきでないと判断される場合を除き」成人から分離されるものとし、かつ「通信および面会によって家族との接触を保つ権利を有する」と定めた第37条(c)によって十分に配慮されている。 8.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が留保の全面的撤回に向けた努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 立法および実施 9.委員会は、条約との適合性を確保する目的で、締約国が現行法および新法を注意深く吟味していることを評価する。しかしながら委員会は、裁判所が法律の不確定なまたは曖昧な点を解決する一助とするために条約を検討しかつ考慮することは可能であるのに対し、国内法の一致しない規定を無効とする目的で司法機関が条約を活用することはできないことを、依然として懸念するものである。 10.委員会は、締約国が、国内法および国内実務を条約の原則および規定と一致させ、かつ、子どもの権利が侵害された際に効果的救済措置が常に利用可能とされることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。 国家的行動計画 11.委員会は、2005年末までに「乳幼児期のための国家的アジェンダ」を策定することを任務とする特別委員会を家族・コミュニティサービス省が設置したこと、および、最近改訂された「国家行動計画」に留意するものの、子どもに影響を与える可能性がある人権問題に具体的に対応する、子どものための包括的政策が国レベルで定められていないことを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国に対し、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(2005年)も考慮しながら「乳幼児期のための国家的アジェンダ」の策定を完了させるとともに、その全面的実施のために必要な予算を提供するよう、奨励する。同時に委員会は、締約国が、子どもに関する総会特別会期(2002年5月)で採択された文書「子どもにふさわしい世界」に掲げられた宣言および行動計画を考慮に入れながら、子どものための「国家行動計画」を策定しかつ効果的に実施するよう、勧告するものである。この計画は、すべての州および準州で条約を適切に実施することを可能とする、具体的な目標、戦略および保障された資源を有することが求められる。 調整 13.委員会は、州および準州の政府が子どもに関する政策の調整および監視機構を強化してきたことに留意する。しかしながら委員会は、2002年に設けられた子ども・若者問題担当大臣の地位が、2004年後半に子ども・若者問題担当政務官(家族・コミュニティサービス大臣の下位)に格下げされたことを懸念するものである。 14.委員会は、子ども・若者問題担当政務官が子どものための法律および政策を国全体で発展させ、調整しかつ監視できるよう、締約国が、同政務官に対して十分な権限ならびに人的および財政的支援を与えるよう勧告する。 独立の監視 15.委員会は、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州およびタスマニア州で子どもコミッショナー職が創設されたこと、および、連邦レベルで人権・機会均等委員会(HREOC)が存在していることを歓迎する。子どもの権利の分野におけるHREOCのきわめて貴重な活動は認知しながらも、委員会は、子どもの権利をとくに担当する委員がHREOCに存在しないこと、および、この10年間でその資金が相当に削減されてきたためにその人員ならびに個別の苦情申立て、公的調査および政策活動に効果的に対応する能力に深刻な影響が生じてきたことを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、HREOCに対して十分な人的資源および財源を提供することにより、HREOCが独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがって子どもの権利の実施を独立の立場からかつ効果的に監視できることを確保するよう、勧告する。加えて、締約国は、諸州および諸準州のオンブズマン事務所内に、子どもに関わる問題に対応する特別部局を創設することも可能である。 子どものための資源 17.委員会は、子どものケアおよびウェルビーイングに関わる多くの分野で予算配分額が増加しているにもかかわらず、先住民族の子どもおよび脆弱な立場に置かれた他の集団が引き続きその生活水準、健康および教育の面で相当な向上を必要としていることに留意する。 18.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに先住民族の子どものように不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。 データ収集 19.オーストラリア統計局が現在、データの範囲および質を向上させるために子どもおよび若者について利用可能な情報の再検討を行なっている旨の情報は歓迎しながらも、委員会は、とくに特別な保護および脆弱な立場に置かれた集団の分野でデータ収集に欠落があることに留意する。 20.委員会は、締約国が、とくに特別な保護を必要としている子どもの集団別の細分化が可能になるような方法で条約のあらゆる分野に関するデータが収集されることを確保するため、既存のデータ収集機構を強化するよう勧告する。 研修/条約の普及 21.委員会は、オンライン政府戦略および国家人権教育委員会の設置等を通じて条約に関する意識を促進するために同国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 22.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を普及し、かつ、とくに子どもたち自身および親の間で条約に関する公衆の意識を高めるための努力を継続するよう、勧告する。 23.委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団、とくに法執行官ならびに必要に応じて議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者その他の専門家を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置をとるための努力を強化することも勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 24.委員会は、人種的、民族的および宗教的差別に対抗して行なわれている取り組みには留意しながらも、とくに基礎的サービスの提供およびアクセス可能性の面でアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもに影響を与えている差別的格差の存在に特段の懸念を覚える。さらに委員会は、とくに一部集団の子ども(子どもの庇護希望者、ならびに、アラブ人およびイスラム教徒を含む民族的および(または)国民的マイノリティに属する子どもなど)に対する差別的態度およびスティグマが存在し続けていることを懸念するものである。これとの関連で、委員会はまた、テロ対策法の執行が一部集団の子どもに副作用を与える可能性があることも懸念する。 25.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する事実上の差別および差別的態度を防止しかつ撤廃するための行政上および司法上の措置を定められた期間内に強化するとともに、テロ対策法の執行に際し、条約に掲げられた権利が全面的に尊重されることを確保することも、勧告するものである。 26.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する条約第29条1項についての委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、この原則が、多くの法律および政策に掲げられている一方で、たとえば代替的養護の分野における法律および政策の実施段階で常に反映されているわけではないことを懸念する。 28.委員会は、締約国が、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則の効果的実施を、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて確保するための努力を強化するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、条約第12条を全面的に実施するために締約国が行なっている努力には留意するものの、子どもに影響を与える司法上および行政上の手続において子どもの意見が常に十分に考慮されているわけではないことを懸念する。さらに、全国若者ラウンドテーブルの存在には留意しながらも、委員会は、ラウンドテーブルへの子どもの参加が実際には限られていること(参加者の平均年齢は2004年には20歳であった)、および、ラウンドテーブルにおいて地域的均衡がとれているとは限らないことに、懸念を表明するものである。 30.委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明する子どもの権利が家族法改正で明示的に定められるべきことを勧告する。さらに委員会は、子どもをとくに対象とするラウンドテーブルを設置し、かつ、公平な地理的分布の原則にしたがって参加者を選ぶよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 アイデンティティの保全 31.委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの分離についてHREOCが1997年に実施した全国調査(「彼らを家庭に」)において、先住民が過去の政策によってそのアイデンティティ、名前、文化、言語および家族を奪われたことが認められたことに留意する。これとの関連で、委員会は、家族の再統合を援助し、かつ先住民が自己の家族を追跡するうえで役に立つ記録へのアクセスを改善するために締約国が行なっている努力を歓迎するものである。 32.委員会は、締約国に対し、1997年のHREOCの報告書「彼らを家庭に」の勧告を全面的に実施するための活動を可能なかぎり継続しかつ強化するとともに、自己のアイデンティティ、名前、文化、言語および家族関係に対するアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの権利が全面的に尊重されることを確保するよう、奨励する。 適切な情報へのアクセス 33.この点に関する締約国の措置(児童ポルノおよび児童虐待関連資料にアクセスし、これを送信しおよび利用可能とするためのインターネットの使用を対象とする新たな罪名を設けた電気通信犯罪その他の措置法(2004年)、および刑法改正(自殺関連資料犯罪)法(2005年)を含む)は歓迎しながらも、委員会はなお、子どもがとくにインターネットを通じた暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされていることについて懸念を表明する。 34.委員会は、締約国が、モバイル・テクノロジー、ビデオムービー、ゲームその他の技術(インターネットを含む)を通じて暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされることから子どもを効果的に保護するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの福祉にとって有害な情報および資料に関する子どもおよび親双方の意識を高める目的でモバイル・テクノロジー、メディア広告およびインターネットを活用するためのプログラムおよび戦略を策定するよう、提案するものである。締約国はまた、メディアの有害な情報にさらされることから子どもを保護し、かつ子ども向けの情報の質を向上させる目的で、ジャーナリストおよびメディアとの協定を発展させるようにも奨励される。 体罰 35.委員会は、家庭における体罰が、「合理的な懲戒」という名目および州法におけるその他の同様の規定に基づいてオーストラリア全域で合法とされていることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、ほとんどの州および準州で政府立学校および一部の私立学校における体罰は禁止されたものの、多くの民間教育施設において、かつサウスオーストラリア州およびノーザンテリトリーでは政府立学校および市立学校の双方において、いまなお体罰が合法とされていることを懸念するものである。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭における体罰、ならびに、すべての州および準州の公立学校および私立学校、拘禁センターならびにあらゆる代替的養護の現場における体罰を禁止するために適当な措置をとること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識を高めつつ、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに子どもの権利の尊重を促進することを目的とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを、子どもの関与を得ながら強化すること。 4.家庭環境および代替的養護 親のケアを受けていない子どもの代替的養護 37.委員会は、近年、家庭外養護の対象とされる子どもの人数が相当に増加していること、および、家庭外養護の対象とされている先住民族の子どもが人口比に照らして不相応に多いことに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 代替的養護に措置される子どもの安定性および安全性が確保されていないこと。 (b) 子どもがその家族との接触を維持するのが困難であること。 (c) 医療ケア(たとえば身体保健、歯科保健および精神保健のサービス)が不十分であること。 38.委員会は、家庭外養護に措置される子どもの人数を減少させる目的で、締約国が、たとえばもっとも脆弱な立場に置かれた家族を明確に対象とすることにより、現行の家庭支援プログラムを強化するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) たとえば、里親養護の対象とされている子どもによる、十分な医療ケアへの平等なアクセスを向上させることにより、里親養護のための支援を強化すること。 (b) 里親養護の監督を強化するとともに、子どもを実の家族と再結合させる目的でこの種の措置が定期的に再審査されるようにすること。 (c) 里親養護の対象とされている子どもが実の家族との接触を維持することを促進し、かつそのための便宜を図ること。 39.委員会はまた、締約国が、とくに先住民族の家族を対象とする支援を強化することにより、家庭外措置の対象とされる相当数の先住民族の子どもの人数を減少させるため、定められた期間内に最大限の努力を行なうことも勧告する。委員会はさらに、締約国が、「先住民族の子どもの措置に関する原則」を全面的に実施するとともに、代替的養護を必要とする先住民族の子どものための適当な解決策を先住民の家族内で見出すため、先住民族のコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化するよう、勧告するものである。 親が収監されている子ども 40.「受刑者とその家族」プログラムをはじめ、この問題に対応するために行なわれている努力には留意しながらも、委員会は、親のいずれかが収監されている子どもが相当数にのぼり、かつ、この集団における先住民族の子どもの人数が人口比に照らして相当程度不相応に多いという情報があることを、懸念する。 41.委員会は、締約国が、これらの子どもに十分な支援(カウンセリングを含む)を提供しかつ、子どもの最善の利益に反しない場合には常に収監されている親との接触の便宜を図るための措置を継続しかつ強化するよう、勧告する。 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い 42.この問題に対応する締約国の活動および措置(先住民族コミュニティにおける家庭内暴力を減少させようとする2つのプログラムを含む)には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、児童虐待がオーストラリアの社会にとって依然として主要な問題のひとつであり、子どもの身体的および精神的健康ならびに教育上および就労上の機会に影響を及ぼしているという締約国の懸念を共有する。委員会はさらに、子どもが高水準のドメスティックバイオレンスにさらされていることを懸念するものである。 43.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待および子どもに対する暴力を防止しかつこれと闘うための措置を引き続きとるとともに、児童虐待の発生の通報を奨励するための措置を強化すること。 (b) 通報された虐待および暴力の事案について十分な捜査および訴追を行なうこと。 (c) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (d) 虐待の被害を受けた子どもに対して十分な保護を提供すること。 (e) 周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭における暴力の根本的原因に対応するための措置を強化すること。 44.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の研究および政府に送付された関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年6月14~16日にタイで開かれた東アジア・太平洋地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 45.障害のある子どもの権利に対応する締約国の取り組みには留意しながらも、委員会は、とくに先住民族の障害児、障害児の代替的養護および遠隔地または農村部に住んでいる障害児に関するデータとの関連で、障害児に関する情報が不足していることを懸念する。委員会はまた、政府の作業部会が、いわゆる「意思決定」障害のある子どもの不妊手術の問題に対応しようとしていることにも留意するものである。 46.障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、現在行なっている努力を積極的に継続し、かつ以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 障害のある子どもに関するデータの収集について国レベルで一貫したアプローチをとること。 (b) 障害のある子どもが生活のあらゆる分野に完全に参加する均等な機会を有することを確保するとともに、公衆の否定的な態度を変革するための公衆意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) とくに地方レベルで必要な専門的資源(すなわち障害の専門家)および財源を利用可能とするためいっそうの努力を行なうとともに、コミュニティ基盤型のリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しかつ拡大すること。 (d) 「教育に関する障害基準」を実施するとともに、教育面で不利な立場に置かれている生徒(障害のある生徒を含む)の識字能力、計算能力その他の学習成績を向上させることを目的とした重要な重点対象プログラムである「識字能力、計算能力および特別な学習上のニーズ・プログラム」に対して十分な支援を行なうこと。 (e) 障害の有無に関わらず子どもの不妊手術を禁止するとともに、望まない妊娠を防止するその他の措置(たとえば適当なときは避妊薬の注射)を促進しかつ実施すること。 健康および保健ケアサービスへのアクセス 47.委員会は、体重過多および肥満の予防、母乳育児の促進ならびに怪我の予防および管理との関連で締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、全国的に栄養過多、体重過多および肥満が問題になっているのに対して先住民族の子どもの間では栄養不良および低栄養が生じていることを、依然として懸念するものである。さらに、先住民族の乳児死亡率がここ数年低下していることを示唆する研究にも関わらず、委員会は、先住民族の子どもと先住民族でない子どもとの間に健康状態の格差があり、かつ、農村部および遠隔地に住んでいる子どもが保健ケアに平等にアクセスできていないことを、依然として懸念する。 48.委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた集団に属する子ども(とりわけ先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子ども)にとくに注意を払いながら、すべての子どもが保健サービスに対する同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、先住民族の子どもと先住民族でない子どもとの栄養状態の格差を克服するため、定められた期間内に十分な措置をとるよう勧告するものである。 49.委員会はまた、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることを懸念する。 50.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療(精神刺激薬が子どもの身体的および心理的ウェルビーイングに与える悪影響の可能性も含む)についてさらなる調査研究を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。 思春期の健康 51.委員会は、若者の自殺を減少させるために締約国が近年行なっているさまざまな努力を歓迎するものの、若者の自殺率がとくに先住民族の子どもおよびホームレスの青少年の間でいまなお高く、かつ、精神保健上の問題および有害物質濫用が増加していることを依然として懸念する。 52.委員会は、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)に照らし、締約国に対し、とくに精神保健サービス(有害物質濫用の予防およびこれへの対応を含む)に焦点を当てながら、若者の自殺防止のための努力を継続しかつ強化するよう、奨励する。 HIV/AIDS 53.委員会は、HIV/AIDSが子どもに対して及ぼしている脅威と闘うために締約国が行なっている努力(AIDS、セクシュアルヘルスおよび肝炎に関する新設の大臣諮問委員会を含む)に留意しつつも、AIDSと診断される先住民族の人数がこの4年間で2倍以上増えたことを示す最近の報告について懸念を覚える。 54.委員会は、締約国が、HIV/AIDSの問題を引き続き注意深く検討するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針を考慮に入れながら、HIV/AIDSの拡散を防止するための努力を継続すること。 (b) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもに対する差別を軽減する目的で、青少年(とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する青少年)および住民一般の間でHIV/AIDSに関する意識を高めるためのキャンペーンおよびプログラムを確立することにより、締約国が行なっている努力を強化すること。 (c) 先住民族コミュニティに適合させた、文化的配慮のあるセーフセックス・キャンペーン等も通じ、先住民族の間でAIDSの診断数が顕著に増えている状況に緊急に対応すること。 生活水準 55.委員会は、先住民族の住宅およびインフラについて連邦政府が行なっている相当の支出、および、好ましい取り組みである「コミュニティ住宅・インフラ整備プログラム」には評価の意とともに留意するものの、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地に住んでいる子どもの生活水準がいまなお不十分であることについての懸念をあらためて表明する。 56.委員会はまた、締約国が公式な貧困線の定義を定めていないことにも留意するとともに、劣悪な生活条件が子どものウェルビーイングおよび発達に及ぼす影響について十分な考慮が行なわれていないことを懸念する。 57.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、負担可能な住宅の選択肢を提供するための努力を強化するとともに、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地に住んでいる子どもの生活水準を引き上げるためにあらゆる可能な措置をとるよう、勧告する。 58.委員会はさらに、締約国が、経済的苦境が子どもの健康的発達に与える悪影響を緩和するための措置を発展させる目的で、経済的苦境が子どもに及ぼしている影響に対応し、かつこれに関する体系的調査を行なうよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 59.この分野で締約国が行なっている努力(「職業・教育・訓練中保育プログラム」を含む)は認知しながらも、委員会は、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地に住んでいる子どもが教育との関連で深刻な困難に直面していること、ならびに、とくにこれらの子どもの成績が他の子どもよりも低いことおよびその中退率が高いことを、引き続き懸念する。 60.委員会は、全国「安全な学校」枠組みおよびウェブサイト「いじめ。絶対ダメ!」のような、学校におけるいじめと闘うためにとられた措置は歓迎するものの、広く蔓延しているこの慣行が、これに関係する子ども(とくにその心理的健康、学業成績および社会的発達)に及ぼす影響についての締約国の懸念を共有する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(すなわち先住民族の子ども、ホームレスの子ども、遠隔地に住んでいる子ども、障害のある子ども等)との関連で条約第28条および第29条が全面的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 学校が醸成する子ども同士の関係についていっそう深く知るために生徒、職員および親を対象とする定期的調査を行なう等の手段により、学校におけるいじめの現象と闘うための適切な措置を引き続きとること。 (c) 公教育政策および学校カリキュラムのあらゆる側面に完全参加および平等の原則が反映されることを確保し、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつこのような子どもに対して必要な援助を提供すること。 7.特別な保護措置 入管収容下にある子ども 62.委員会は、子どもの拘禁は最後の手段としてのみ行なうという原則を受け入れた最近の1958年移民法改正(2005年7月29日施行)を心強く思うとともに、子どものいる家族はすべて入管収容施設からコミュニティ収容体制への移行の対象となる旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、オーストラリアの領域に不法に存在する子どもがいまなお自動的に――形態の如何を問わず――行政収容の対象とされ、その状況のアセスメントが行なわれるまで放免されないことを、依然として懸念するものである。とくに、委員会は以下のことを深刻に懸念する。 (a) 行政収容が必ずしも最後の手段として用いられておらず、かつもっとも短い適切な期間で終了していないこと。 (b) 入管収容の環境がきわめて劣悪であり、子どもの精神的および身体的健康ならびに全般的発達に有害な影響を与えていること。 (c) 収容環境を独立の立場から監視する正規のシステムが設けられていないこと。 63.委員会はさらに、一時保護査証を付与された子ども(いかなる渡航書類も持たずに同国に到着した子ども)が家族再統合の権利を有しておらず、かつ社会保障、保健サービスおよび教育へのアクセスも制限されていることを懸念する。 64.委員会は、締約国が、HREOCの報告書「最後の手段?」に掲げられた勧告を実施するとともに、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮しながら、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準と全面的に一致させるよう、勧告する。とくに締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 出入国管理との関係で子どもが自動的に収容されることのないこと、および、収容が最後の手段としてかつもっとも短い適切な期間でのみ用いられることを確保すること。 (b) 出入国管理との関係で子どもが収容されてから48時間以内に、当該子どもを収容する真の必要があるかどうかについて裁判所または独立の審判機関の評価を求めること。 (c) 入管収容が必要でありかつ子どもの最善の利益にかなっていると見なされるときは、当該収容の対象とされる子どもが置かれる環境を相当に改善し、かつ国際基準に一致させること。 (d) 出入国管理との関係で収容された子どもの収容の定期的再審査を保障すること。 (e) 子どもまたはその家族構成員が一時保護査証または一時人道査証を保持している場合に家族再統合を認めることを検討すること。 (f) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見/支援制度の速やかな創設を検討すること。 (g) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加盟を検討すること。 ホームレスの子ども 65.若者のホームレス化の問題について、国家ホームレス戦略および「絆の再生」プログラム等の手段により締約国が真剣に検討している旨の情報は歓迎しながらも、委員会は、教育上および人間上の問題に影響を受ける可能性もいっそう高まり、かつ有害物質濫用および性的搾取にさらされる度合いも高くなるホームレスの子どもの状況について、懸念を表明したい。 66.委員会は、締約国が、とくに住居、健康および教育との関連で、ホームレスの子どもの緊急のニーズおよび権利に対応するための努力を強化するよう勧告する。さらに、締約国は、ホームレスの子どもに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用から回復しかつ社会的に再統合できるようにするための十分なサービスを提供するとともに、実行可能なときは家族との再統合を促進するべきである。 性的搾取および人身取引 67.「人身取引根絶のための国家行動計画」の採択(2003年10月)、および、とくに人身取引および児童ポルノを犯罪化した2005年の刑法改正など、人身取引および強制売春の防止との関連における若干の前向きな進展は歓迎しながらも、委員会は、オーストラリアが、性産業において人身取引の対象とされる女性および女子の目的地国であり続けていることを懸念する。 68.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員着は、締約国が、性的搾取および人身取引と闘うための行動計画の効果的実施に向けた努力を強化するとともに、とくに子どもとの関連で問題の性質および規模を評価するための包括的研究を実施するよう、勧告する。 69.締約国はまた、オーストラリアが加盟している国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の加盟国となるようにも奨励される。 有害物質濫用 70.委員会は、とくに先住民族コミュニティで行なわれている有害物質の濫用、および、とくにオーストラリア中部の遠隔地で暮らしているコミュニティの間で行なわれている、リスクの高いガソリン吸引行為について懸念を覚える。 71.委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもの意識啓発にとくに焦点を当てながら、有害物質濫用の問題を継続的に監視するよう奨励する。締約国はまた、薬物および有害物質を濫用する子どもを対象とする、無償のかつ容易にアクセス可能な薬物濫用治療および社会的再統合サービスを発展させるようにも奨励されるところである。 少年司法の運営 72.多くの州および準州で利用可能な少年の第バージョンの選択肢、および、先住民族であるオーストラリア人の収監率を削減するための戦略など、少年司法の分野で締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、法律に抵触する先住民族の子どもの割合が人口比に照らして不相応に高いという締約国の懸念を共有する。 73.さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 14歳までは刑事責任を有しないと推定される(コモンロー上の責任無能力)とはいえ、刑事責任年齢(10歳)が低すぎること。 (b) 精神疾患および(または)知的障害を有する子どもが過剰に少年司法制度の対象とされていること。 (c) クイーンズランド州において、法律に抵触した17歳の子どもが特定の事件において成人として審理される可能性があること。 (d) 18歳未満の者を対象とする義務的量刑法(いわゆる「三振アウト法」)が、ウェスタンオーストラリア州刑法にいまなお存在すること。 (e) 一部の州および準州の地方立法で、たむろしている子どもおよび若者の警察による排除が認められていること。 74.委員会は、締約国が、条約(とくに第37条、第40条および第39条)、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む、少年司法の分野における他の関連の国連基準、ならびに、少年司法に関する一般的討議の際に行なわれた委員会の勧告(CRC/C/46、パラ203-238参照)に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告する。これとの関連で、委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げることを検討すること。 (b) 法律に抵触した18歳未満の者が、最後の手段としてでなければ自由を剥奪されず、かつ、成人と分離しないことが子どもの最善の利益にかなうと見なされる場合を除いて成人と別に拘禁されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 先住民族の子どもが過剰に刑事司法制度の対象とされている状況を緊急に是正すること。 (d) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者に、司法手続によらずに対応すること。 (e) 子どもの拘禁環境を改善し、かつ国際基準に一致させること。 (f) ウェスタンオーストラリア州の刑法体系における義務的量刑を廃止するための措置をとること。 (g) クイーンズランド州において、17歳の子どもを成人司法制度の対象から除外すること。 (h) 若者が一部の場所に集まることに関連している可能性がある問題に、必ずしも警察による対応および(または)犯罪化によらずに対応するとともに、この点に関わる法律の見直しを検討すること。 先住民族集団に属する子ども 75.先住民族保育支援プログラムをはじめ、締約国の公的機関がとった多数の措置にも関わらず、委員会は、とくに健康、教育、居住、雇用および生活水準との関連で、先住民族であるオーストラリア人が置かれている全般的状況について依然として懸念を覚える。 76.委員会は、先住民族問題に関する政府および政府機関への主要な政策諮問機関であったアボリジナル・トレス諸島民委員会(ATSIC)が廃止され、これに代わって大臣特別委員会が設置されたことに留意する。 77.委員会は、締約国が、先住民族の子どもが文化的に適切なサービス(社会サービス、保健サービスおよび教育を含む)に平等にアクセスできることを確保するための政策およびプログラムを――先住民族コミュニティと協議しながら――引き続き発展させかつ実施するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、ATSICの廃止が先住民族の子どもの最善の利益にかなっているかどうかを評価する目的で、先住民族問題の運営に関する新体制の評価が早期に行なわれるべきことを勧告するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 78.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の批准が間近であり、かつ武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准するための措置がとられた旨、対話の際に締約国が保証したことを歓迎する。 79.委員会は、締約国が、可能なもっとも早い時期に子どもの権利条約の両選択議定書の当事国となることを勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 80.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会の構成員、議会ならびに州および準州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 81.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 82.委員会は、締約国に対し、第4回定期報告書(この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照))を2008年1月15日までに提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年1月30日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/112.html
総括所見:フランス(第3~4回・2009年) 第1回(1994年)/第2回(2004年)/第5回(2016年)OPAC(2007年)/OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/FRA/CO/4 and CRC/C/FRA/CO/4/Corr.1(2009年6月11日) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年5月26日に開かれた第1401回および第1402回会合(CRC/C/SR.1401-1402参照)においてフランスの第3回・第4回定期報告書(CRC/C/FRA/4)を検討し、2009年6月12日に開かれた第1425回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回定期報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/FRA/Q/4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、締約国が海外県および海外領土についての情報を提供したことにも留意するものの、この情報が付属文書として提出され、かつ定期報告書の形式および内容に関する一般指針にしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会は、ハイレベルでかつ複数の部門から構成された代表団の出席および同代表団が行なった開かれたかつ積極的な対話により、締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことを評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する両選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPSC/FRA/CO/1およびCRC/C/OPAC/FRA/CO/1に収載)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下のもののような、条約の実施に関連する積極的進展に評価の意とともに留意する。 (a) 別居の手続の簡素化および迅速化を図ること、とくに期間を短縮しかつ子どもがこれらの手続にさらされる状態を低減させることを目的とした、離婚の改革に関する2004年5月26日の法律第2004-439号。 (b) 2004年12月30日の法律第2004-1486号に基づく、差別との闘いおよび平等促進のための高等機関(Haute Autorite de Lutte contre les Discriminations et pour l'Egalite、HALDE)の設置。 (c) 障害のある人の権利および機会の平等ならびにインクルージョンおよび参加に関する2005年2月11日の法律第2005-102号。 (d) 養子縁組の改革に関する2005年7月4日の法律第2005-744号。 (e) 嫡出子および私生児としての出生の概念を廃止する、親子関係決定の改革に関する2005年7月4日のオルドナンス第2005-759号。 (f) ドメスティック・バイオレンスおよび子どもに対する暴力の防止および処罰を強化し、かつ女子の法定最低婚姻年齢を18歳に引き上げる、2006年4月4日の法律第2006-399号。 (g) 出生の地位に関わらず子ども同士を平等にする、相続および贈与に関する2006年6月23日の法律第2006-728号。 (h) 住居に対する執行可能な権利を創設する2007年3月5日の法律第2007-290号。 (i) 成人の法的保護に関する2007年3月5日の法律第2007-308号。 (j) 以下のことを目的とする、子ども保護の改革に関する2007年3月5日の法律第2007-293号。(i) 意見を聴かれる子どもの権利を強化すること。 (ii) 子どもの家族の構成員、医療サービスおよび社会サービスならびに議員による子どもオンブズパーソン(Defenseure des enfants)制度の利用を可能にすること。 (iii) 県に子ども保護担当窓口を創設すること。 (k) 16~26歳の若者を対象とする一貫した政策の策定を担当する、青年高等弁務官の設置(2009年1月16日)。 5.委員会はさらに、フランスが以下の国際条約に加盟したことを歓迎する。 (a) 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(2008年9月23日)。 (b) 死刑の廃止を目的とする、市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(2007年10月2日)。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第2回定期報告書の検討時に委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに条約に対する留保および宣言、権利の主体としての子ども観の編入、刑事責任に関する最低年齢、出生登録、家族再統合、国際養子縁組、体罰、保護者のいない未成年者および少年司法に関するもの(CRC/C/15/Add.240)への対応が不十分であることを、遺憾に思う。 7.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしか、十分にまたはまったく実施されていないものに対応するためにあらゆる努力を行なうとともに、この総括所見に掲げられた勧告について次回の定期報告書で十分なフォローアップを行なうよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、権利の主体としての子ども観をすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに編入することも促すものである。 留保および宣言 8.委員会は、条約第30条に関わる留保ならびに条約第6条および第40条に関わる2つの宣言を撤回するべきであるという委員会の前回の勧告について、締約国が引き続き国内法上の事情を主張していることを遺憾に思う。 9.委員会は、マイノリティ集団に属する子どもについての立場を再検討し、かつ条約第30条に付した留保ならびに条約第6条および第40条に関する両方の留保の撤回を検討するべきであるという、締約国に対する勧告をあらためて繰り返す。 立法 10.条約の直接適用可能性に関する破棄院(Cour de Cassation)の判例が国務院(Conseil d'Etat)の判例にあわせて変更されたことは歓迎しながらも、委員会は、このような直接効力を有すると認められている規定の数が限定されていることを懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約全体が締約国全域で直接適用可能とされること、ならびに、あらゆる段階の行政上および司法上の手続において、条約のすべての規定を個人が法的根拠として援用することおよび裁判官が適用できることを確保するための措置を引き続きとるよう、勧告する。 調整 12.委員会は、家族に関する省庁間特別委員会がこれまでの家族省から労働・社会関係・家族・都市問題省に移管されたこと、子ども保護の実施の窓口としての各県の県議会議長の権限が強化されたこと、および、16~26歳の若者を対象とする青年高等弁務が設置されたことなど、子ども保護に関する行動の調整に関していくつかの改革が行なわれたことに留意する。しかしながら委員会は、国レベルと県レベル(海外領土および海外県も含む)との間で調整が行なわれていないことを依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもの権利を担当する議会委員会が設置されていないことも懸念する。 13.委員会は、条約および2つの選択議定書の実施に関して格差または差別が生じるいかなる可能性も減少させかつ解消する目的で、国レベルと県レベル(海外領土および海外県も含む)との間で条約および2つの選択議定書の実施を全般的に調整するための機関を設置すること、ならびに、この調整機関のために十分な人的資源および財源を配分することおよび明確な権限を定めることを締約国に対して促した前回の勧告(CRC/C/15/Add.240、パラ9)を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、両方のレベル〔国および県〕の議会に子どもの権利についての委員会を設置することも勧告するものである。 国家的戦略および行動計画 14.委員会は、条約の枠組みに基づきかつ政府の最上級レベルで支持された、子どものための包括的な国家的戦略およびその実施のための関連の国家的行動計画が定められていないことに懸念を表明する。委員会はさらに、このことにより、年次計画の策定の際ならびに政府による全般的計画および予算編成において子どもの権利が考慮されない結果が生じている可能性があることを懸念するものである。 15.委員会は、締約国に対し、子どもに関する包括的な国家的戦略を策定することを目的として、政治的諸勢力、専門家、市民社会および子どもとの広範な対話を行なうよう奨励する。この戦略においては、すべての子どもに対する普遍的な権利の平等な保障、および、もっとも脆弱な立場に置かれた子ども(とくに海外県および海外領土に住んでいる子ども)のための特別な保護措置の双方が対象とされるべきである。この行動計画においては、子どもに関する国連総会特別会期(2002年5月)で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビュー(2007年)を考慮することが求められる。委員会はまた、達成された進展を定期的に評価し、かつ存在する可能性がある欠点を明らかにする目的で、締約国が、行動計画の全面的実施のための十分な予算配分ならびにフォローアップおよび評価の機構を確保することも勧告するものである。 独立の監視 16.委員会は、2つの機関、すなわち子どもオンブズパーソン(Defenseure des enfants)および国家人権諮問委員会(Commission Nationale Consultative des Droits de l'Homme、CNCDH)が、子どもの権利の実施の監視において重要な役割を果たしていることを歓迎する。委員会は、条約の実施に関して子どもオンブズパーソンが行なっている広範な活動(個別の苦情申立て機構を含む)および子どもの権利に関わる法律についてCNCDHが果たしている助言の役割をに留意するものである。しかしながら委員会は、これらの独立した監視機関が法案に関する恒常的協議の対象とされていないことを遺憾に思う。 17.委員会は、締約国が、条約の全面的実施のために独立した監視機関が果たす補完的役割の促進を確保するとともに、とくに個別の苦情申立て機構との関連で子どもオンブズパーソンの役割を増強させることに関してさらなる進展を達成し、かつ、当該機関に対し、その任務を効果的に遂行するのに十分な財源および人的資源を提供するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、法案に関して両機関と恒常的に協議するよう奨励するものである。これとの関連で、委員会は、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割についての委員会の一般的意見2号(2002年)に対して締約国の注意を喚起する。 資源配分 18.委員会は、近年、教育の分野等で子どもに関する支出が増加していることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、このような増加では、貧困を根絶し、かつとくに住居に対する権利および学校における医療サービスに関連する不平等に対処するためには不十分であることを懸念するものである。一貫した予算分析および子どもの権利影響評価が行なわれていないため、国全体でどの程度の支出が子どもに配分されており、かつ子どもに影響を及ぼす政策および法律の効果的実施にこれがどの程度役立っているのかを明らかにすることが困難になっている。さらに、委員会は、さまざまな県(海外県および海外領土を含む)における資源配分の格差について国家人権諮問委員会が表明した懸念を共有するものである。 19.委員会は、締約国が、条約第4条にしたがい、管轄区域全域(海外県および海外領土を含む)における貧困の根絶および不平等の削減にとくに焦点を当てながら、利用可能な資源を子どもの権利の実施のために最大限に配分するよう勧告する。このような取り組みにおいて、締約国は、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」をテーマとして行なわれた2007年9月21日の一般的討議後に委員会が行なった勧告を考慮するべきである。委員会はさらに、予算配分額が政策上の発展および法律の実施のために十分かどうかを評価するため、締約国が、子どもの権利の視点からの予算追跡を導入し、かつ子どもの権利影響評価を定期的に実施するよう勧告する。 データ収集 20.委員会は、危険な状況にある子どもについての情報を収集する中央データ収集・監視センター、すなわち危機にさらされる子ども時代に関する国家監視機関(Observatoire National de l'Enfance en Danger、ONED)が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、さまざまな部門からデータを収集するプロセス、ならびに、データ提供機関間で調和が図られたデータを評価しかつ記録する統一的手法の有無について、依然として懸念を覚えるものである。委員会はさらに、収集された情報にデータの提供機関および処理機関がアクセスできる条件、とくに個人データの使用に関する包括的な政策の欠如について懸念を覚える。 21.委員会は、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価するための基盤として、ならびに、子どもおよびその家族のための総合的かつ包括的な政策を立案する一助とし、かつ条約および2つの選択議定書の促進および実施を容易にする目的で、条約および2つの選択議定書が対象とするすべての分野に関して細分化されたデータを収集しかつ分析するための、統一的かつ全国的なシステムを設置するよう勧告する。委員会はさらに、締約項に対し、情報の悪用を防止するため、データベースには個人の特定が不可能な個人情報のみを入力し、かつ収集されたデータの活用を法律で規制するよう、勧告するものである。 条約の普及、研修および意識啓発 22.委員会は、子どもともにまたは子どものために働く専門家を対象として、危険な状況にある子どもにとくに焦点を当てながら、条約の原則および規定に関する義務的研修を実施するために締約国が最近行なった努力を歓迎する。委員会はまた、学校カリキュラムに人権を含む公民教育単元が含まれていることにも留意するものである。にもかかわらず、委員会は、条約に関する子どもおよびおとなの知識水準が低いことを懸念する。 23.委員会は、条約および2つの選択議定書のすべての規定が、締約国全域で、おとなによっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを確保するための努力を、締約国がさらに強化するよう勧告する。 市民社会との協力 24.政府と市民社会(非政府組織を含む)との関係を確立するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、報告書の作成および条約の実施に関わる非政府組織との協力が依然として不十分であることを懸念する。 25.委員会は、締約国が、子どもの権利の促進および実施(政策および協力プロジェクトの策定への参加を含む)ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成における、市民社会(NGOおよび子ども団体を含む)との積極的かつ体系的な協力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、地方レベルで市民社会を支援し、かつその独立性を尊重するよう奨励するものである。 国際協力 26.委員会は、国際協力および二国間協力の分野で締約国が行なっている貢献および子どもの権利関連のさまざまな活動に、評価の意とともに留意する。 27.委員会は、締約国に対し、とくに国内総生産(GDP)の0.7%を国際開発援助に充てるという国連の目標を達成するための努力を行なうことにより、国際協力の分野における活動を引き続き強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約および2つの選択議定書の締約国である他の国々との二国間協力において、当該国について委員会が採択した総括所見および勧告を正当に考慮するよう奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)後に委員会が行なった勧告を考慮するよう慫慂する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 28.委員会は、法律第2004-1486号に基づく、差別との闘いおよび平等促進のための高等機関(Haute Autorite de Lutte contre les Discriminations et pour l'Egalite、HALDE)の設置を歓迎する。これは、国民的出身、障害、健康、年齢、ジェンダー、家族および婚姻に関わる地位、労働組合活動、性的指向、宗教的信条、身体的外見、姓ならびに遺伝的特徴を理由とする差別の問題を是正するために、個人の苦情を受理しかつ職権で行動する権限を有する機関である。委員会はまた、嫡出子および私生児としての出生の概念を廃止するオルドナンス第2005-759号、および、相続および贈与に関して子どもの出生の地位に関わらず平等化を図る法律第2006-728号の採択を通じ、出生の事情に関わらず子ども同士の平等を確立するために締約国が行なった努力にも、評価の意とともに留意する。委員会はまた、フランス国籍を有しない子どもおよび「大家族」の親を対象とする金銭給付についての差別が廃止されたこと、および、破棄院が、フランスに子どもとともに合法的に在留している外国人家族は子ども手当の全面的受給資格を有すると決定したことにも、留意するものである(ただし、委員会は当該決定が実施されていないことを遺憾に思う)。委員会はさらに、締約国が、海外領土のマヨット島において、相続の問題に関して性別または嫡出性を理由とする子ども間の差別を禁じたことを評価する。 29.委員会は、締約国に対し、差別との闘いおよび平等促進におけるHALDEの役割をさらに支援するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、フランス国籍を有しない家族が子ども手当を受給する権利についての破棄院の決定を実施することも促すものである。 30.人種主義、反ユダヤ主義および外国人嫌悪に対抗するための活動が学校カリキュラムに含まれていることは歓迎しながらも、委員会は、とくに海外県および海外領土に住んでいる子ども、子どもの庇護希望者および難民、ならびに、ロマ、トラベラー("gens du voyage")および宗教的マイノリティのようなマイノリティ集団に属する子どもとの関係で、かつとりわけ経済的および社会的権利の分野で差別が根強く残っており、社会の進歩、正義および差別の禁止が阻害されていることに懸念を表明する。委員会はさらに、移民申請者のDNA検査および退去強制の割当数について定めた、出入国管理、統合および庇護に関する新法が、移住者の子どもに対する差別の雰囲気の喚起を助長するおそれがあることに、懸念を表明するものである。 31.委員会は、締約国に対し、経済的および社会的権利の分野における、かつ人種、出自、皮膚の色、名前、民族的もしくは社会的出身、名前〔重複は原文ママ〕またはその他の事由を理由とする差別からの全面的保護を確保するよう、促す。委員会は、締約国に対し、地域的格差を解消するための努力を引き続き行なうとともに、外国人の子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもに対する根強い差別を防止しおよびこれと闘い、ならびに社会の進歩、正義および平等の雰囲気をつくり出すための措置をとるよう、促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、社会のあらゆる部門における子どもに対する差別の事案について効果的対処が行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 32.委員会はまた、一部の集団の子ども、とくに、ロマの子どもおよび障害児、マイノリティに属する子どもならびに郊外(banlieues)に住む子どものような脆弱な立場におかれた子どもおよび貧困下で暮らしている子どもに対し、メディアおよび学校等においてスティグマが付与されていることも懸念する。このことは、これらの子ども、とくに青少年に対する不寛容の一般的雰囲気および公衆の否定的態度につながるとともに、しばしば、これらの子どもの権利がさらに侵害される根本的原因になるおそれがある。委員会はさらに、子ども、とくに青少年に対し、警察が全般的に否定的態度をとっていることを懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、メディアおよび学校も含む社会において子ども(とくに青少年)が不寛容の対象とされ、かつ不適切な性格付けを行なわれることに対処し、かつ、警察が子どもおよび青少年に対して前向きかつ建設的な態度をとることを促進するための措置をとるよう、勧告する。 34.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号を考慮に入れながらフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての情報が、報告書に記載されていないことに留意する。委員会は、前述の具体的情報を、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する具体的情報とともに、次回の定期報告書で提供するよう要請するものである。 子どもの最善の利益 35.委員会は、破棄院(Cour de Cassation)が2005年に国務院(Conseil d'Etat)の判例にあわせて判例変更を行ない、条約第3条1項の直接適用可能性を認めたことに留意する。委員会はまた、子どものケアおよび子どもの保護、離婚、相続ならびに贈与に関する法律に子どもの最善の利益の原則が統合されたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、政府による一部の行動および決定が子どもの最善の利益に及ぼす影響の評価が不足しており、かつ、実務においてこの原則の適用のあり方に関する理解に根強い食い違いがあることを、依然として懸念する。さらに、この原則が立法機関によって実行に移されることは、自治体、地域圏および国のいずれのレベルでも、ほとんどない。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがい、政府のすべての行動およびあらゆる法規定に関する決定において、かつ、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて十分に指針とされることを確保するため、とくに具体的な手続規則を通じてあらゆる適当な措置をとること。 (b) この原則の適用に関する格差が最小限に留まることを確保すること。 (c) 何が「最善の利益」であるかについての締約国自身の理解――ひいては締約国の指針の内容――をさらに増進させる目的で、子どもの最善の利益が政府による行動および決定ならびに市民社会による行動および決定に及ぼしている影響を評価するとともに、意思決定に携わるすべての者(裁判官、公務員、立法機関等)を対象とする研修を行なうこと。 生命、生存および発達に対する権利 37.拘禁所における子どもの自殺を防止するための新たなアセスメント手段を作成したワーキンググループの設置は歓迎しながらも、委員会は、2008年に拘禁下における子どもの死亡が複数生じたこと、および、これらの子どもの間で自傷行動が多く蔓延していることを、深刻に懸念する。 38.委員会は、締約国が、防止措置の有効性を再検討すること等も含め、生命に対する子どもの権利を保護するために利用可能なあらゆる資源を活用するよう勧告する。締約国はまた、養護中または拘禁中のいずれであるかに関わらず、子どもが関わるいかなる不慮の死亡または重傷についても体系的な、独立したかつ公の検証を導入し、かつ、防止措置を増進させるためにその結果を活用するべきである。 子どもの意見の尊重 39.委員会は、親の権威、相続、後見および養子縁組に関するあらゆる手続において意見を聴かれる子どもの権利を認めた、2007年3月5日の法律第2007-293号の修正を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、この権利の行使の条件として子ども自身の要請を挙げていることにより、実際上の差別および不一致が生じる可能性があるという懸念をあらためて表明するものである。さらに、委員会は、子ども議会の存在を歓迎するものの、子ども議会の勧告が考慮されることはほとんどないことを遺憾に思う。 40.委員会は、条約第12条にしたがい、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年)後に委員会が採択した勧告を考慮に入れながら、締約国が、意味のある子ども参加(メディアへの参加も含む)の機会を増加させる目的で、子どもに関わるあらゆる手続において意見を聴かれる権利が、親、教員、校長、行政、裁判所、子どもたち自身および社会一般に対して広く普及されることを確保するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもに直接の影響を及ぼす法改正が行なわれるあらゆる場合に子ども議会の意見および勧告を正当に重視するとともに、このような機関を県および自治体のレベルで創設する取り組みを奨励するよう、促すものである。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) (訳者注)3が欠落しているのは原文ママ。 出生登録 〈海外県および海外領土における出生登録〉 41.委員会は、すべての出生が登録されなければならないことを定め、かつ民事的地位審査委員会(Commission de revision de l'etat civil)による手続の強化を奨励する、マヨット島に関する2006年7月24日の法律第2006-911号の制定に留意する。委員会はさらに、仏領ギアナのマロニ川およびオヤポク川沿いに住んでいる子どものアクセス可能性に関して制約があることを認知するものである。 42.委員会は、締約国の領域におけるすべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続するよう、勧告する。委員会はさらに、仏領ギアナにおけるすべての子どもの出生登録を確保するための努力を強化するよう締約国に対して促した前回の勧告を、あらためて繰り返すものである。 〈国内における出生登録〉 43.委員会は、自己の出自に対する子どものアクセスを促進することに関してとられた措置、とくに親子関係決定の改革に関するオルドナンス第2005-759号の採択、および、個人の出自へのアクセスに関する国家評議会(Conseil National pour l’acces aux origines personnelles、CNAOP)が果たしている新たな役割について締約国から提供された情報に留意する。にもかかわらず、委員会は、新たな照会に関する待機期間が長いことに懸念を表明するものである。委員会はまた、母親が、希望する場合には自己の身元を秘匿し、かつ自己の出自を知る子どもの権利に反対することができることにより、子どもがその権利の一部を奪われていることも、依然として懸念する。 44.委員会は、条約第7条に掲げられているとおり、かつ差別の禁止(第2条)および子どもの最善の利益(第3条)の原則に照らし、自己の生物学上の両親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に執行するためあらゆる適当な措置をとるべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国に対し、新たな照会が時宜を得たやり方で扱われることを確保するよう勧告するものである。 思想、良心および宗教の自由 45.委員会は、締約国が、「公立の初等学校および中等学校において、生徒が自己の信仰する宗教を直截に明らかにする標章または服装」を着用することを禁じた2004年3月15日の法律第2004-228号の影響を緩和するための措置(国の公教育制度における調停官の設置を含む)に留意する。にもかかわらず、委員会は、このような禁止は教育に対するいかなる女子の権利の否定にも、締約国の社会のあらゆる側面への女子のインクルージョンの否定にもつながるべきではないという女性差別撤廃委員会の総括所見(CEDAW/C/FRA/CO/6、パラ20)、および、ライシテという公共の文化を尊重するためにこのような一般的な宗教的標章の着用を禁ずる必要はないように思われると指摘する、自由権規約委員会が採択した総括所見(CCPR/C/FRA/CO/4、パラ23)を支持するものである。 46.委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利(自己の宗教を公の場および私的な場において表明する権利を含む)についての条約第14条の保障が擁護され、かつ、思想、良心または宗教を理由とする差別を回避するために特段の注意が払われるべきであることを勧告する。 結社および平和的集会の自由 47.委員会は、子どもにとってとくに苦痛である高周波超音波発生装置、ならびにフラッシュボール発射装置およびテイザー銃が、子どもに対するその使用について治安部隊に十分な訓令が与えられないまま用いられていることにより、子どもの結社の自由が制限されていることを懸念する。 48.委員会はさらに、年少の子どもが結社の自由に関して差別されており、かつ、団体の代表職および会計職への子どもの選任が禁じられていることに、懸念を表明するものである。 49.委員会は、締約国が、高周波超音波発生装置およびフラッシュボール発射装置その他の有害な機器の使用を再検討し、または禁止するよう勧告する。これらの機器は、結社および集会の自由に対する子どもの権利を侵害する可能性があるためである(これらの権利を享受できることは子どもの発達にとって必要不可欠であり、条約第15条に掲げられた、非常に限定された制約以外は課すことができない)。委員会はさらに、すべての年齢の子どもを対象として、結社の自由に関する規則の調和を図るための措置をとるよう勧告する。 プライバシーの保護 50.委員会は、子どもの個人データが長期間にわたって収集、保存および使用されるデータベースの増加に、懸念とともに留意する。このことは、プライバシーに対する子どもおよびその家族の権利への干渉となる可能性がある。「第一次生徒データベース」(Base eleves 1er degre)に関して、委員会は、締約国が、当初含まれていた要配慮データをこのデータベースから削除したことに、評価の意とともに留意する。しかしながら、教育制度にとってのその有用性および目的が明確に定められていないことに鑑み、委員会は、このデータベースが他の目的(非行や非正規移民である子どもの摘発など)に使用されるおそれがあること、および、他の行政データベースとの相互接続を防止するための法的保護措置が不十分であることを、懸念するものである。委員会はさらに、親が、子どもの登録について反対できず、しばしば登録の通知も受けず、かつ子どもの就学をためらう可能性があることを懸念する。 51.自由権規約委員会が行なった勧告(CCPR/C/FRA/CO/4)を想起しながら、委員会は、締約国に対し、配慮を要する個人データの収集、保存および使用が条約第16条に基づく義務と一致する形で行なわれることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。締約国は、とくに以下のことを確保するべきである。 (a) コンピューター、データバンクその他の装置における個人情報の収集および保有が、公的機関によるか私人または民間機関によるかに関わらず法律によって規制され、かつその目的が明確に定められること。 (b) 当該情報が、その受領、処理および使用を法律で認められていない者の手に渡ることがないようにするための効果的措置がとられること。 (c) 自国の管轄下にある子どもおよび親に対し、自己に関するデータにアクセスする権利、および、情報が誤っており、またはその意思に反して収集され、もしくはコンピュータ化、記録および自由に関する法律第78-17号の規定に反して処理された場合に当該情報の訂正または消去を求める権利が認められること。 適切な情報へのアクセス 52.委員会は、締約国で、インターネットの利用を親が管理できるソフトウェア、および、インターネットの利用のリスクに関する意識啓発キャンペーン(携帯電話におけるものも含む)が導入されたことに留意する。しかしながら委員会は、暴力的かつ(または)ポルノ的な内容をともなう文書、電子媒体および視聴覚媒体(ビデオゲームを含む)へのアクセスが可能であることを懸念するものである。 53.委員会は、締約国に対し、有害な情報へのアクセス(電子媒体および視聴覚媒体を通じてこれらの情報にさらされることも含む)から子どもを保護するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、子どもにとって有害なビデオゲームおよびネットゲームを含む文書、電子媒体および視聴覚媒体へのアクセス可能性を管理するため、効果的措置がとられるべきことを勧告するものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 54.委員会は、2007年10月30日に自由剥奪施設総監(Controleur general des lieux de privation de liberte)が設置されたことに留意するとともに、締約国が、子どもの拘禁環境に関する情報を報告書に記載したことを歓迎する。しかしながら委員会は、公務員が拘禁施設で子どもに対する不当な取扱いを行なっているという訴えがあることを懸念し、かつ、この問題に関する情報が締約国報告書に見当たらないことを遺憾に思うものである。委員会はさらに、法執行官(とくに警察官)が子どもに対して過度な有形力の行使を行なった事案の報告数が多いこと、および、訴追および有罪判決に至った事案の数が少ないことに、懸念を表明する。 55.委員会は、締約国が、拘禁されたすべての子どもの処遇に関する効果的な監視システムを確立し、かつ、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の訴えが迅速かつ適正に捜査されることならびに加害者が訴追されおよび処罰されることを確保するよう、勧告する。締約国はさらに、子どもの人権に関する法執行官の意識を高め、かつそのための研修を強化するべきである。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 56.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。とくに、委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告する。(i) 子どもに対するあらゆる暴力を禁止すること。 (ii) 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv) 国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、かつ実施すること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) 次回の定期報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。 体罰 57.フランス刑法であらゆる形態の体罰が禁じられているという締約国の主張には留意しながらも、委員会は、とくに家庭における体罰および学校における体罰が、とりわけ海外県および海外領土で依然として広範に行なわれており、かつ、子どもに対する体罰を明示的に禁ずる具体的規定がいまなお見当たらないという懸念をあらためて表明する。 58.前回の勧告を繰り返しながら、かつ委員会の一般的意見8号(2006年)にしたがい、委員会は、締約国が、あらゆる場面(家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場を含む)における体罰を明示的に禁止し、この点に関する意識啓発を図り、かつ、条約第28条2項にしたがい、暴力を用いない教育の価値を促進するよう、勧告する。このような取り組みに関して、委員会はさらに、締約国が、自国も支持の署名を行なった、あらゆる形態の体罰の全面的禁止を達成することを目的とした欧州評議会のキャンペーンをフォローアップするよう、勧告するものである。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 59.委員会は、多くの家族、およびとくに貧困、十分な住居の欠如または別離によって危機的状況下にある家族が、子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を受けていないことを懸念する。 60.委員会は、締約国が、とくに貧困、十分な住居の欠如または別離によって危機的状況下にある家族を対象として、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を与えるための努力を強化するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 61.委員会は、裁判所が命ずる個別的措置(分離を含む)の数について懸念を表明する。委員会はさらに、子どもがその家族との接触および面会の機会を持てていないこと、家族の居宅と施設養護が行なわれる場所の距離が離れていること、ならびに、代替的養護の決定の際に子どもの意見および最善の利益が十分に考慮されていないことに、懸念を表明するものである。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親の低所得の結果として子どもが代替的養護に措置されないようにすること。 (b) すべての措置において子どもの意見を考慮するとともに、子どもがアクセスしやすい苦情申立て機構を子どもが全国で利用できるようにすること。 (c) 面接交渉手続の開始を促進するとともに、親およびきょうだいから分離されたすべての子ども(長期の入所型養護を受けている子どもを含む)を対象として定期的接触を維持すること。 (d) 親のケアを受けていない子どもに対し、その最善の利益を積極的に擁護する代理人が任命されることを確保すること。 (e) 親のケアを受けていない子どもに関する一般的討議(2005年9月16日)で出された委員会の勧告を考慮すること。 養子縁組 63.委員会は、養子縁組の分野における法改正、および省庁間養子縁組委員会の設置(2009年1月30日)に留意する。しかしながら委員会は、国際養子縁組の過半数が、もっぱら、国際養子縁組についての子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を批准していない出身国との間で行なわれていること(3分の2)、および、認証機関を通じてではなく個人的経路を通じて行なわれる国際養子縁組の割合が高いことについての懸念を想起するものである。委員会はまた、国際養子縁組が大使館および領事館によって促進されていること(これらの機関とともに活動するボランティアの使用を含む)により、認証機関の活動が阻害される可能性があることも懸念する。委員会はさらに、仏領ポリネシアおよびニューカレドニアにおいて、2歳未満の子どもの国内養子縁組について権限のある公的機関による許可が行なわれていないことを、依然として懸念するものである。 64.前回の勧告をあらためて繰り返し、かつ条約第21条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が以下のことを確保するよう勧告する。 (a) 国際養子縁組の事案への対応が、条約および国際養子縁組についての子の保護および協力に関する1999年のハーグ条約の原則および規定に全面的にしたがって、認証機関によって行なわれること。 (b) 条約の基準および1993年ハーグ条約の基準に準じた二国間協定が、当該ハーグ条約を批准していない国との間で締結されること。 (c) 仏領ポリネシアおよびニューカレドニアにおける国内養子縁組について、権限のある公的機関による許可が義務とされること。 65.委員会はまた、社会サービス機関が家族による遺棄の宣言を獲得することを条件として、親によるネグレクトの状況下で子どもの国内養子縁組を可能にする、締約国の新養子縁組法案にも懸念を表明する。委員会は、この法案が成立すれば、これらの子ども(とくに低所得家庭および貧困下で暮らしている家庭の子ども)が家庭環境から完全に分離されるおそれが生じる可能性があることを、とりわけ懸念するものである。 66.委員会は、この養子縁組法案において、家族から分離されない子どもの権利(第9条)および条約の4つの一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)が真剣に考慮されるべきことを勧告する。さらに、同法案は条約第21条の規定を全面的に遵守するべきである。 虐待およびネグレクト 67.ONEDの設置および子ども保護に関する2007年3月5日の法律第2007-293号の採択に代表される進展は歓迎しながらも、委員会は、児童虐待およびネグレクトの件数が増えていること、子どもが自宅から失踪する事件数が多いこと、ならびに、子ども保護に関する法律が実施されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもが司法にアクセスできていないことを懸念するものである。 68.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子ども保護法の実施のために必要な予算資源を配分するとともに、とくに、諸措置が国レベルで(海外県および海外領土も含む)調整されることを確保すること。 (b) 第19条で考慮の対象とされている暴力、性的虐待、ネグレクト、不当な取扱いまたは搾取(家庭、施設養護その他の養護におけるものも含む)の事案数および規模を監視するための機構を設置すること。 (c) 虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもによる司法へのアクセスを強化すること。 (d) 子どもとともに働く専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療専門家、警察官および司法関係者を含む)が、子どもに対するドメスティック・バイオレンス、虐待およびネグレクトが疑われる事案について通報しおよび適切な行動(保護措置を含む)をとる自己の義務に関する研修を受けることを確保すること。 (e) 新子ども保護法に関する意識啓発キャンペーンのためにメディアを活用するとともに、全般的措置として、子どもおよび女性、とくに女子および脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対するあらゆる形態の暴力を拒絶する雰囲気をつくり出すこと。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 69.委員会は、条約第23条にしたがい、教育および就学に対する障害のある子どもの平等な権利を掲げた、2005年2月11日の法律第2005-102号の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、実際には週に数時間しか学校に出席しない障害児が多いことを懸念するものである。専門の援助者(auxiliaires de vie〔学校生活補助員〕)の配置数が追加されたことは歓迎しながらも、委員会は、契約上の取決めが不安定であることおよび研修の機会が不十分であることに懸念を表明する。委員会はさらに、とくに重複障害のある子どものための専門的ケアに関してならびに余暇および文化的活動へのアクセスに関して若干の欠陥があり、かつマヨット島およびウォリス・フツナ諸島で体制が整備されていないことにより、前述の法律の実施が阻害されていることに留意するものである。 70.障害のある人の権利に関する条約および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教育へのアクセスを保障した法律ならびに障害のある子どものためのプログラムおよび専門的援助が効果的に実施されることを確保し、かつ、条約に基づく障害児の権利の全面的享受を締約国全域(海外県および海外領土を含む)で確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 早期発見・介入プログラムを発展させること。 (c) (準)医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーなど、障害のある子どもとともに働く専門的職員に対して研修を行ないかつ安定した立場を保障すること。 (d) 障害のある子どもの社会へのインクルージョンに関する、ジェンダーについて適切に配慮された包括的な国家的戦略を策定すること。 (e) 障害のある子どもの社会へのインクルージョンを奨励し、かつ差別および施設措置を防止するような、障害児の権利および特別なニーズに関する意識啓発キャンペーンを行なうこと。 健康および保健サービス 71.委員会は、県レベルで子どもおよび母親のための保健ケア・サービスを強化し、かつ6歳、9歳、12歳および15歳の子どもの健康診断を義務づけることによって保健サービスへのアクセスの不平等に対処しようとする締約国の努力には留意しながらも、さまざまな地域圏間および不利な立場に置かれた背景を有する子ども間の不平等が依然として問題であることを懸念する。委員会はさらに、とくに義務的健診を実行するうえで資格のある医療従事者が不足しておりかつ資源の配分が不十分であることに、懸念を表明するものである。 72.委員会はまた、栄養不良、結核、HIV/AIDSのような重大な健康問題への対応に関して仏領ギアナの子ども保健ケアに欠陥があること、および、マヨット島において社会保障制度とのつながりがない子どもが保健ケアにアクセスできないことにも、懸念を表明する。 73.委員会は、保健サービスへのアクセスに関する不平等について、すべての県および地域圏全体で調整のとれたアプローチを通じた対応が行なわれるべきこと、および、締約国が医療従事者の不足を是正することを勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、海外県および海外領土における子ども保健ケアの欠陥を根絶するよう促すものである。 母乳育児 74.委員会は、母乳育児の促進および支援に関して締約国で近年達成された進展は評価しながらも、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の実施が引き続き不十分であること、および、母乳代替品の攻撃的宣伝が依然として一般的に行なわれていることを懸念する。 75.委員会は、締約国が「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施するよう勧告する。締約国はまた、赤ちゃんにやさしい病院をさらに促進し、かつ保育者研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。 思春期の健康 76.委員会は、青少年センターなど、青少年の精神保健のためのプログラムおよびサービス発展させようとする締約国の努力にも関わらず、青少年のウェルビーイングの水準が低いこと(摂食障害および依存症、性感染症(STD)のリスクに対する曝露ならびに自殺および自殺未遂のような問題を含む)を懸念する。委員会はさらに、締約国(海外県および海外領土を含む)で青少年による有害物質の濫用が発生していることを懸念するものである。 77.委員会は、締約国が、以下のような措置をとることも含め、青少年の精神保健および青少年による有害物質濫用の問題への対処を締約国全域で継続するよう、勧告する。 (a) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスがすべての法域(海外県および海外領土を含む)の青少年にとってアクセスしやすくかつ配慮されたものであることを確保しながら、強化すること。 (b) 焦点の明確な防止措置を提供するため、これらの問題の根本的原因を研究すること。 (c) 有毒物質に関する正確かつ客観的な情報を子どもに提供するとともに、その使用をやめまたは依存から脱しようとしている子どもに支援を提供すること。 生活水準 78.委員会は、2020年までに子どもの貧困に終止符を打つという政府の決意、および、国家家族手当基金(Caisse nationale des allocations familiales)に対する追加資源の配分を歓迎する。しかしながら委員会は、貧困下で暮らしている子どもが多いこと、および、移民の背景を有する子どもが貧困下で暮らしている割合の方が相当に高いことを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、マイノリティ問題に関する独立専門家が同国主要都市の郊外(banlieues)にある最貧困地区を訪問した際に明らかにした、差別および排除が原因でこれらの郊外に明らかに貧困が集中している旨の所見(A/HRC/7/23/Add.2、パラ42)を想起する。標準以下の住宅の現象に対応するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、執行可能な新たな居住権(droit opposable au logement)の実施が遅れていること、およびその実施のための予算配分が不十分であることに、懸念を表明するものである。 79.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 目標達成のための測定可能な指標を確立することも含め、2020年までに子どもの貧困に終止符を打つという目標を達成するための法律を採択し、かつ十分に実施すること。 (b) この法律およびフォローアップの措置においては、支援をもっとも必要としている子どもおよびその家族(移民の背景を有する子どもも含む)を優先させること。 (c) 十分な予算資源を配分する等の手段により、執行可能な居住権(droit opposable au logement)の速やかな実施を確保すること。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 80.委員会は、条約に掲げられた目標を保障するために締約国が教育分野で行なっている多大な努力に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 学校中退率および留年率が高いこと、ならびに、2006年3月31日の新法で、子どもが学校に出席しないことについて親(経済的困窮に直面している親も含む)が処罰の対象とされていること。 (b) 経済的に困窮している親とともに生活している子どもの学校における成績に関して、相当の不平等が根強く残っていること。一部集団の子ども、とくに障害のある子ども、トラベラーの子ども、ロマの子ども、子どもの庇護希望者、さまざまな理由(疾病、家族の扶養義務など)で中退した子どもおよび学校に通っていない子どもならびに10代の母親は、普通学校または代替的教育施設のいずれにおいてであれ、就学し、または教育を継続しもしくは再開するうえで問題に遭遇している。 (c) 労働市場に参入するための教育上および職業上の支援が不十分であることにより、若者の失業が増加していること。 81.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの社会的背景が学校における成績に及ぼす影響を軽減するための努力を継続しかつ強化すること。 (b) 親を処罰することなく、中退率および留年率を下降させるための努力を強化すること。 (c) 修了資格を得ることなく学校を離れた子どものための職業教育および職業訓練を拡大することにより、これらの子どもが、就労の機会を増進させるための能力およびスキルを獲得できるようにすること。 (d) 不利な立場にあり、周縁化されており、かつ学校から離れているあらゆる集団の子どもに対して〔権利の〕全面的享受を確保する、真にインクルーシブな教育に対するすべての子どもの権利を確保する目的で、相当の追加的資源を投入すること。 (e) 懲戒措置としての退学または停学を最後の手段としてのみ用いるようにし、停退学の件数を減少させ、かつ、学校との紛争を抱えた子どもを援助するため学校にソーシャルワーカーおよび教育心理学者を配置すること。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 82.委員会は、文化または芸術に関わる課題活動を行なっている子どもが、報告によればわずかしかいないことに着目する。委員会はまた、近年生じている遊び場の着実な減少により、子どもが公共のオープンスペースで集まらざるを得ない状況に押しやられる効果が生じるおそれがあることを懸念するものである。 このような行動は、集合住宅の廊下で行なわれた場合には、国内治安に関する2003年3月18日の法律にしたがって処罰される可能性がある。 83.委員会は、締約国が、子どもが休息し余暇を持つ権利、子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動を行なう権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するよう勧告する。締約国は、障害のある子どもを含む子どもに対し、遊ぶ権利および余暇活動に対する権利を行使するための十分かつアクセスしやすい遊び場空間を提供することに、特段の注意を払うべきである。 8.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民ならびに保護者のいない子ども 84.保護者のいない子どもに関するワーキンググループが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、フランスの空港の待機区域に措置された保護者のいない子どもが直面している状況について深い懸念を覚える。さらに、委員会は、措置決定に対する異議申立てができないこと、特別管理人の選任に関する法的要件が系統的に適用されていないこと、および、搾取の被害をとりわけ受けやすいこれらの子どもが利用可能な心理的援助が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもがしばしば、その条件についての適正な評価を行なわれることなく、搾取の危険に直面する国に送還されていることにも懸念を表明する。 85.委員会はまた、保護者のいない未成年者が制度的に社会サービス、教育および語学学校の諸制度の対象とされておらず、かつ、締約国の領域に受け入れられた保護者のいない子どもに対して明確な法的地位が与えられていないことにも、懸念を表明する。 86.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号を考慮しながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 待機区域への措置決定に対して異議を申し立てられるようにするため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 国内法で求められているとおり、特別管理人を系統的に選任すること。 (c) 保護者のいない子どもが十分な心理的援助にアクセスしかつこれを利用できることを確保するとともに、とくに待機区域へのアクセスを厳格に監視することを通じ、待機区域の子どもが搾取から〔保護されることを〕確保すること。 (d) 子どもの最善の利益を正当に考慮し、国際的保護を必要とする子どもおよびふたたび人身取引の対象とされるおそれがある子どもが、このような危険が存在する国に送還されないことを確保すること。 87.委員会はさらに、人の年齢を決定するために骨検査を用いることについて生命科学および健康の倫理に関する国家諮問委員会が否定的評価を行なっているにも関わらず、締約国が引き続きこの手法を用いていることを懸念する。 88.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、現在用いられている骨検査による決定法よりも正確であることが証明されている最近の年齢決定法を導入するよう、促す。 89.委員会は、認定難民の家族再統合手続にかかる期間に問題があることを締約国が認めていることには留意するものの、当該手続に関する包括的情報がないこと、当該手続の期間が長いこと、および、子どもが家族再統合に対する権利をフランス到着時に主張できる可能性が限られていることに対する懸念を、あらためて表明する。委員会はさらに、親の退去強制を理由とする家族の分離の報告があること、および、出入国管理、統合および庇護に関する2007年11月21日の法律第2007-1631号で、認定難民に対し、家族再統合に関するいっそう厳しい基準(DNA検査および言語能力を含む)が課されたことに、懸念を表明するものである。 90.委員会はまた、国際法および条約で承認されているカファラの制度が締約国では家族再統合の文脈において適用されていないこと、および、子どもがカファラ上の親と暮らすためにフランスに入国するのを妨げたフランス地方当局の決定は私生活および家族生活に対する権利の侵害であると判断した2004年3月24日の国務院(Conseil d'Etat)判決が実施されていないことも、懸念する。 91.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 認定難民の家族再統合手続にかかる期間を相当に短縮するための努力を引き続き行なうこと。 (b) 親子関係を確定する手段としてのDNA検査の実施によって家族再統合に新たな障壁が生じないこと、および、このような手法を使用する際には、十分な情報に基づく申請者の事前の同意が常に条件とされることを確保するため、あらゆる適当な措置をとること。 (c) 家族再統合の文脈においてカファラの制度を承認し、かつ2004年3月24日の国務院(Conseil d'Etat)判決を実施すること。 性的搾取、売買、取引および誘拐 92.委員会は、性的搾取その他の搾取を目的として人身取引された子どもの出身国の一部と協力協定が取り決められたことに留意する。しかしながら委員会は、人身取引を含む搾取の対象とされる子ども、および、窃盗、物乞いおよび売買春の目的でフランスに入国しまたはフランスを通過する子どもが多いことに、懸念を表明するものである。 93.委員会は、締約国が、性的搾取その他の搾取を目的とする子どもの人身取引と闘うためにさらなる措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、これらの問題と闘うための十分な措置を決定する目的で、締約国が、子どもの性的搾取および売買(海外県および海外領土におけるものも含む)の規模に関するデータを収集するための努力を強化するよう、勧告するものである。 少年司法の運営 94.委員会は、非行の防止に関する包括的な国家政策が存在しないことならびに少年司法制度に財源および人的資源が配分されていないことを懸念する。委員会は、とくに、成人および少年の累犯との闘いを強化し、かつ子どもを成人として審理できるようにする2007年8月10日の法律第2007-1198号との関連で、教育的措置よりも抑圧的措置を優先させる傾向にある、この分野における立法および実務についての懸念をあらためて表明するものである。委員会は、暴力的および(または)性的性質の重罪を行なった容疑がある16~18歳の少年犯罪者の事件について以下のような取扱いが行なわれていることを、とりわけ懸念する。 (a) 〔未成年者に関する〕刑罰減軽の原則(principe de l'attenuation de la peine pour mineurs)を、十分な理由を付した裁判官の決定により、初犯者についても退けることができること。 (b) 16~18歳の再犯者については当該原則が適用されず、具体的理由を付した裁判官の決定によらなければ当該原則の適用を回復させることができないこと。 (c) 累犯事件について、最低期間以上の収監刑が義務的に適用されること。 95.委員会は、とくに、成人拘禁施設の子ども収容区画に代えることを目的とした13~16歳の子ども向けの閉鎖型監督センター(centres educatifs fermes)および未成年者向けの行刑施設(etablissements penitentiaires pour mineurs)の数が相当に増えたこととの関連で、若干の積極的変化が見られることに着目する。しかしながら委員会は、自由の剥奪件数が多いこと、および、成人拘禁施設に子ども収容区画が存在し続けていることに懸念を表明するものである。 96.委員会はさらに、組織犯罪およびテロの容疑をかけられている16~18歳の子どもを、手続的保障を全面的に遵守することなく96時間まで警察の留置(garde a vue)下に置くことを認めた、2004年3月9日の法律第2004-204号改正について懸念を表明する。 97.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮しながら、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 子どもが刑事司法制度と接触することにつながる社会的条件の解消の一助とする目的で、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化するとともに、スティグマを回避するためにあらゆる可能な措置をとること。 (b) 刑事司法制度に対する財源、人的資源その他の資源の十分な配分を増加させかつ確保すること。 (c) 警察における留置(garde a vue)および未決勾留を含む拘禁は、最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間で用いること。 (d) 拘禁が行なわれるときは、法律および国際基準を遵守して行なわれることを確保すること。 (e) 16~18歳の子どもについて、16歳未満の子どもと異なる取扱いを行なわないようにすること。 (f) ダイバージョン、調停、保護観察、カウンセリングおよび地域奉仕活動のような、自由の剥奪に代わる再統合措置の活用を拡大するとともに、この点に関する家族およびコミュニティの役割を強化すること。 (g) 法律に触れた18歳未満の者が無償の法的援助および独立した効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (h) 刑事司法制度に関わって働いているすべての専門家を対象とする、関連の国際基準に関する研修プログラムを改善すること。 98.委員会はまた、締約国が刑事責任に関する最低年齢を定めていないことを依然として懸念する。 99.委員会は、締約国が、条約第40条3項(a)およびとくに子どもオンブズパーソンが行なった勧告にしたがって、13歳を下回らず、かつ子どもの分別能力を要件とする、刑事責任に関する最低年齢を定めるよう勧告する。 犯罪の証人および被害者の保護 100.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 マイノリティおよび先住民族に属する子ども 101.委員会は、締約国報告書の付属文書IIに掲げられた、文化的、宗教的および言語的多様性を促進するために締約国がとった措置に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約第30条に付した留保についての締約国の立場にも留意するとともに、法律の前における平等では、事実上の差別に直面している可能性があるマイノリティ集団ならびに海外県および海外領土の先住民族による平等な権利の享受を確保するためには不十分であるおそれがある旨の懸念を、あらためて表明するものである。委員会はさらに、マイノリティ集団に属する子ども、とくにトラベラーおよびロマの子どもに伝えられる文化的知識の正当性が確認されていないこと、および、とくに経済的、社会的および文化的権利(十分な住居および生活水準、教育ならびに健康に対する権利を含む)との関連でこれらの子どもが差別に直面していることに、懸念を表明する。 102.委員会は、マイノリティ集団ならびに海外県および海外領土の先住民族が権利の平等な享受を享受し、かつ、子どもが自己の集団の文化的知識の正当性を差別なく確認できることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、マイノリティ集団に属する子どもに対する、とくに経済的および社会的権利に関するあらゆる差別を撤廃するための措置をとるよう、勧告するものである。 9.国際人権文書の批准 103.委員会は、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(2008年9月23日)および拷問等禁止条約の選択議定書(2008年11月11日)が批准されたことを歓迎する。 104.委員会は、締約国が、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書ならびにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約の批准のための手続をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう、促すものである。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 105.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会ならびに中央政府および地方分権政府の関連省庁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 106.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが関連の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 107.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2012年9月までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。 108.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された「国際人権条約に基づく報告についての統一指針(共通コア・ドキュメントおよび条約別文書についての指針を含む)」(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年11月1日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/243.html
総括所見:カナダ(第3~4回・2012年) 第1回(1995年)/第2回(2003年)OPAC(2008年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/CAN/CO/3-4(2012年12月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年9月26日および27日に開かれた第1742回および第1743回会合(CRC/C/SR.1742 and 1743参照)においてカナダの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CAN/3-4)を検討し、2012年10月5日に開かれた第1754回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の状況に関する理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CAN/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/XCAN/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/CAN/CO/1、2006年)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/CO/OPSC/CAN/CO/1、2012年)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことを遺憾に思うものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。 (a) 市民権法改正法(2009年4月17日施行)。 (b) 人身取引をとくに対象とする起訴罪名を創設する、2005年の刑法(人身取引)改正法案C-49号(2005年11月25日)。 5.委員会はまた、障害のある人の権利に関する条約が批准されたこと(2010年3月)も歓迎する。 6.委員会は、以下の制度上および政策上の措置に、積極的対応として留意する。 (a) 人身取引と闘うための国家行動計画(2012年6月)。 (b) ホームレス問題協業戦略(HPS、2007年4月)。 (c) 子どものための国家行動計画「子どもにふさわしいカナダ」(2004年4月発表)。 (d) インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年5月発表)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.締約国の第1回報告書に関する委員会の2003年の総括所見(CRC/C/15/Add.215、2003年)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見の勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(とくに留保、立法、調整、データ収集、独立の監視、差別の禁止、体罰、家庭環境、養子縁組、経済的搾取および少年司法の運営に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 9.条約第37条(c)に付した留保の撤回に向けて締約国が行なっている努力は肯定的に認知しながらも、委員会は、条約第37条(c)に付した留保の速やかな撤回を求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ7、2003年)をあらためて強く繰り返す。 立法 10.条約の実施に関わる多数の立法措置は歓迎しながらも、委員会は、国内法において条約のすべての適用範囲を包括的に網羅する法律が存在しないことを、依然として懸念する。この文脈において、委員会はさらに、締約国の連邦制および二元的法体系にかんがみ、このような総括的国内法が存在しないことによって締約国全域における子どもの権利の実施に断片化および不一致が生じているために、同様の状況にある子どもが、どの州または準州に在住しているかによって、自己の権利の充足に関する格差を受けていることに留意するものである。 11.委員会は、締約国が、条約およびその選択議定書の規定を全面的に編入した包括的な法的枠組みを締約国の全領域(州および準州を含む)で定めることを可能にする、憲法上の適切な経路を見出すとともに、その一貫した適用のための明確な指針を提示するよう、勧告する。 包括的な政策および戦略 12.委員会は、子どものための国家行動計画「子どもにふさわしいカナダ」が2004年に採択されたことに留意するものの、当該計画が、委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.215、パラ13、2003年)で勧告されたように、一般的な目的以上の明確な責任分担、明確な優先順位、到達目標および予定、資源配分ならびに体系的監視について定めていないこと、および、当該計画について、その影響を評価しかつ次の措置の指針とするための評価が実施されていないことを、懸念する。 13.委員会は、締約国が、連邦、州および準州の各段階の政府を対象とする包括的な実施の枠組みを提示し、条約の全般的実現に関する優先順位、到達目標およびそれぞれの責任について適宜定め、かつ、州および準州がこれにしたがって独自の具体的な計画および戦略を採択できるようにする、国家的な戦略を採択するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、この包括的な戦略ならびに関連する州および準州の計画の実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告するものである。この文脈において、委員会は、締約国に対し、すべての州および準州による進展報告書の提出および審査を可能とする、調整のとれた監視機構を設置するよう奨励する。委員会はまた、子どもおよび市民社会との協議も勧告するものである。 調整 14.いずれもあらゆる段階の政府から代表が出席している教育担当大臣協議会および学校保健合同コンソーシアムならびにその他の部門別調整機関の活動には積極的対応として留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する省庁間作業部会(2007年)の任務とされている、条約の実施の全般的調整が実際には有効に行なわれていないことを依然として懸念する。さらに委員会は、締約国が連邦制をとっていることから生じる課題に留意するとともに、全般的調整が行なわれていないため、締約国の州および準州全体を通じて条約の実施に関する相当の格差が生じていることを懸念するものである。 15.委員会は、諸部門全体を通じてならびにすべての州および準州の間で子どもの権利に関する行動を効果的に調整するための能力および権限ならびに人的資源、技術的資源および財源を備えた、条約実施のための調整機関および国家的戦略(前掲13で勧告)を確立するべきである旨の、締約国に対する勧告をあらためて強く繰り返す。さらに委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する省庁間作業部会をしかるべく強化することを検討し、もって条約の全般的実施における調整、一貫性および公平性を確保するよう奨励するものである。委員会はまた、すべてのマイノリティ集団を含む市民社会および子どもに対し、調整機関の一翼を担うよう慫慂することも勧告する。 資源配分 16.締約国が世界でもっとも豊かな経済国のひとつであり、かつ相当量の資源を子ども関連のプログラムに投資していることを心に留めつつ、委員会は、締約国が、国および州/準州段階の予算の策定および配分に関して子どもに特化したアプローチを用いていないことから、子どもに対する投資の効果および予算的観点からの条約の全般的適用状況を明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが実務上不可能となっていることに、留意する。さらに委員会は、締約国報告書に種々のプログラムおよびその全般的予算に関する情報が掲げられている一方で、このような投資の効果に関する情報が欠如していることにも留意するものである。 17.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が、国、州および準州の段階で子どものニーズを十分に考慮し、関連の部門および機関において子どもに明確な配分を行ない、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、条約の実施に充てられる資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構を設置するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえばアボリジナル、アフリカ系カナダ人その他のマイノリティの子どもおよび障害のある子ども)を対象とした戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保するよう、勧告する。 国際協力 18.委員会は、カナダ国際開発援助〔国際開発庁〕(CIDA)のプログラムを通じて実施されている国際協力を歓迎するとともに、とくに、締約国の援助の約30%が保健、教育および人口〔分野〕に向けられていることを評価する。しかしながら委員会は、2010-2011年度のODA〔政府開発援助〕がGNI〔国民総所得〕の0.33%であり、かつ今後も減少すると予測されていることから、ODAの割合が、OECD/DAC〔経済協力開発機構/開発援助委員会〕の平均よりもさらに低くなり、かつモントレー・コンセンサスで勧告された割合も下回るであろうことに、懸念とともに留意するものである。 19.委員会は、締約国に対し、援助プログラムにおいて子どもに焦点を当てるとともに、援助に関して勧告されている目標(対GNI比0.7%)を達成するため資金拠出水準を高めるよう、奨励する。 データ収集 20.委員会は、条約の全分野を網羅した全国的かつ包括的なデータ収集システムの確立に向けた進展が限られていることに、懸念とともに留意する。委員会は、データ収集のための複雑な諸システムにおいて、州および準州によって異なる定義、概念、アプローチおよび体制が活用されていることから、条約の実施を強化するための進展の評価が困難になっていることに留意するものである。とくに委員会は、締約国報告書に、代替的養護施設に措置されている14~18歳の子どもの人数に関するデータが記載されていないことに留意する。 21.委員会は、全国的かつ包括的なデータ収集システムを設置するとともに、子どもの権利の実現に関して達成された進展を一貫したやり方で評価し、かつ条約の実施の強化を目的とした政策およびプログラムの立案の一助とするための基礎として、収集されたデータを分析するように求めた、締約国に対する勧告をあらためて繰り返す。すべての子どもの状況の分析を容易にするため、データは年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。より具体的に、委員会は、さまざまなレベルにおける政策決定およびプログラムの参考とするため、特別な脆弱状況に置かれた子どもに関する適切なデータを収集しかつ分析するよう、勧告する。 独立の監視 22.カナダのほとんどの州に子どもオンブズマンが設置されていることには留意しながらも、委員会は、連邦レベルで独立の子どもオンブズマンが設置されていないことについての懸念(CRC/C/15/Add.215、パラ14、2003年)をあらためて表明する。さらに委員会は、これらの機関の権限が限定されていること、および、すべての子どもが苦情申立て手続について承知しているわけではない可能性があることを懸念するものである。カナダ人権委員会が連邦レベルで活動しており、かつ苦情を受理する権限を有していることには留意しながらも、委員会は、同委員会が受け付けるのは差別を理由とする苦情のみであり、したがって、条約に基づくすべての権利の侵害について意味のある救済措置を求める可能性がすべての子どもに保障されているわけではないことを、遺憾に思う。 23.委員会は、すべての子どもの権利の包括的かつ体系的な監視を連邦レベルで確保する目的で、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがって連邦子どもオンブズマンを設置するために必要な措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、それぞれの州および準州ですでに設置されている子どもオンブズマンについて子どもの意識啓発を図るよう、奨励するものである。委員会はまた、一般的意見2号(2002年)に対して注意を喚起しつつ、締約国に対し、独立性および有効性を確保するために必要な人的資源、財源および技術的資源がこの国家的機構〔連邦子どもオンブズマン〕に対して提供されることを確保するようにも求める。 普及および意識啓発 24.委員会は、とくに非政府組織の努力を支援することによって条約に関する意識および理解を促進するために締約国が行なっている努力を評価する。にもかかわらず、委員会は、子ども、子どもとともに働く専門家、親および一般公衆の間で条約に関する意識および知識が限られたままであることを懸念するものである。委員会は、条約に関する情報を組織的に普及し、かつ学校制度に子どもの権利教育を統合するための努力がほとんど行なわれていないことを、とりわけ懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、条約を組織的に普及しかつ促進するためにいっそう積極的な措置をとり、公衆一般、子どもとともにまたは子どものために働く専門家および子どもの意識啓発を図るよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、とりわけインターネットおよびウェブへのアクセスを無料で提供する事業者が締約国で広範に利用できる状況を生かした子どもの権利に関するカリキュラム・リソースの開発および活用、ならびに、子どもの権利に関する知識およびその行使を学校におけるカリキュラム、方針および実践に統合する教育上の取組みを拡大するよう、促すものである。 研修 26.出入国管理官および政府の弁護士等の専門家を対象として実施されている、条約に関する若干の研修についての情報にも関わらず、委員会は、子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家を対象とした、子どもの権利および条約に関する体系的研修が行なわれていないことを懸念する。とくに委員会は、法執行官、検察官、裁判官および弁護士等の少年司法関係者が条約に関する知識を欠いており、かつ条約についての研修を受けていないことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国に対し、すべての専門家(政府職員、司法機関、ならびに、保健サービスおよび社会サービスにおいて子どもとともに働く専門家を含む)を対象として子どもの権利に関する研修を実施するための統合的戦略を策定するよう、促す。委員会は、締約国に対し、このような研修プログラムの開発に際して、立法および公共政策、プログラム策定、アドボカシーならびに意思決定プロセスおよび説明責任の確保における条約の活用についての研修に焦点を当てるよう、促すものである。 子どもの権利と企業セクター 28.委員会は、カナダで登記している多国籍企業であってその活動がカナダ領域外の先住民族の権利に悪影響を及ぼしている企業、とくにガス会社、石油会社および鉱業会社に関する措置を締約国がとっていない旨の、人種差別撤廃委員会が表明した懸念(CERD/C/CAN/CO/19-20、パラ14)に賛同する。委員会は、締約国に、国外で行なわれた人権侵害および環境侵害について締約国出身のすべての企業および法人の責任を問うための規制枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。 29.委員会は、締約国が、とくに子どもの権利との関連で、かつ2008年6月18日の人権理事会決議8/7(パラ4(d))および2011年6月16日の同決議14/7(パラ6(f))に照らし、企業セクターが人権、労働、環境その他の問題に関わる国際的および国内的基準を遵守することを確保するための規則を確立しかつ実施するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下のことを確保するよう勧告するものである。 (a) とくにカナダ領域外で操業するガス会社、鉱業会社および石油会社を対象とした、その活動が人権に影響を及ぼしまたは環境その他の問題に関する基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための、明確な規制枠組みが確立されること。 (b) 国内外の企業による、環境および健康ならびに人権に関する国際的および国内的基準の実施が監視され、かつ、違反が行なわれた場合に、子どもに対する影響にとくに焦点を当てながら、適切な制裁および救済措置が実施されること。 (c) 環境上および健康上の汚染ならびに自社の活動が人権に及ぼす影響に対応するための企業の計画について評価および企業との協議が行なわれ、かつ当該計画が公衆に開示されること。 (d) その際、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国連・ビジネスと人権枠組みを考慮すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 30.委員会は、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護から利益を得られているわけではないこと(とくに、一部の州および準州において成人として裁判の対象とされる可能性がある子ども、および、一部の州および準州において性的搾取から適切に保護されていない16~18歳の子ども)を懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、子どもの定義に関する国内のすべての規定が条約第1条と全面的に一致することを確保する(とくに、18歳未満のすべての子どもが成人として裁判の対象とされえないようにし、かつ、性的搾取の被害を受けた18歳未満のすべての子どもが適切な保護を受けることを確保する)よう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 32.「ストップ人種主義」全国ビデオ・コンテストなど、差別に対応し、かつ異文化間の理解を促進しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、民族、ジェンダー、社会経済的背景、国民的出身その他の事由に基づく差別が引き続き蔓延していることを懸念する。とくに委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもが刑事司法制度および家庭外養護において相当過剰に対象とされていること。 (b) 脆弱な状況に置かれた子ども(マイノリティの子ども、移民および障害のある子どもを含む)が、基礎的サービスへのアクセスに関する深刻かつ広範な差別に直面していること。 (c) とくに、脆弱な状況に置かれた女子が不相応なほどの影響を受けていることに照らし、周縁化されたコミュニティおよび不利な立場に置かれたコミュニティの状況の改善を目的としたプログラム(貧困または暴力事件と闘うためのプログラム等)の策定および実施においてジェンダーの視点が欠けていること。 (d) アボリジナルの子どもを対象とした児童福祉サービスに対し、アボリジナルではない子どもに対する場合よりも少ない財源しか提供されていないという会計検査院長の知見を受けて、なんらの措置もとられていないこと。 (e) 社会的移転制度その他の社会手当/税控除によって直接間接に経済的差別が生じていること(州および準州に対し、国家子ども手当制度に基づく子ども手当の支給額を、福祉措置を受けている親が受給する社会援助の額から控除することが認められていることなど)。 33.委員会は、締約国が、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての情報を、次回の定期報告書に記載するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもが刑事司法制度および家庭外養護において過剰に対象とされている状況に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 脆弱な状況に直面しているすべての子ども(民族的マイノリティ、障害のある子ども、移民その他の子どもを含む)によるサービスへのアクセスに関する格差に対応すること。 (c) いかなるプログラムまたは景気刺激策(とくに暴力との闘い、貧困およびその他の脆弱性の是正に関するプログラム)の策定および実施においてもジェンダーの視点が編入されることを確保すること。 (d) アボリジナルの子どもが政府によるすべてのサービスに全面的にアクセスでき、かつ差別なく諸資源を受領できることを法律上も実践上も確保するため、即時的措置をとること。 (e) 女性、子ども、高齢者、障害のある人々、アボリジナル、アフリカ系カナダ人およびその他のマイノリティの構成員に特段の注意を払いながら、社会的移転制度その他の社会手当/税控除制度の支給額削減が社会福祉に依拠している人々の生活水準に及ぼす直接間接の影響について詳細な評価を実施すること。 子どもの最善の利益 34.委員会は、子どもの最善の利益の原則が広く知られておらず、〔かつ、〕あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、この原則が適切に統合されておらず、かつ一貫して適用されていないことを懸念する。とくに委員会は、庇護希望者、難民および(または)入管収容に関わる状況において、子どもの最善の利益が適切に適用されていないことを懸念するものである。 35.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励されるところである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。 子どもの意見の尊重 36.委員会は、すべての子どもが監護事件において意見を聴かれる権利を有する旨判示した、締約国のユーコン準州最高裁判所の決定(2010年)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、法律、政策および環境に関わる問題ならびに子どもに影響を与える行政プロセスへの、意味がありかつエンパワーメントに基づく子ども参加を促進するための機構が不十分であることを懸念するものである。 37.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、条約第12条にしたがい、意見を聴かれる子どもの権利の実施を引き続き確保するよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、家庭、コミュニティおよび学校において、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するとともに、望ましい実践を発展させかつ共有するよう勧告するものである。具体的に、委員会は、子どもに関わるすべての公的意思決定手続(監護事件、児童福祉に関する決定、刑事司法、出入国管理および環境〔に関わるもの〕を含む)について子どもの意見を要件のひとつとするよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる権利が侵害された場合に子どもが苦情を申し立てられ、かつ不服申立て続きにアクセスできることを確保することも、促すものである。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 38.締約国において出生登録がほぼ完全に行なわれていることには肯定的に留意しながらも、委員会は、とくに親が婚姻していない場合に、政府機関が出生証明書の原本から父の氏名を不法に削除したために、一部の子どもがそのアイデンティティを剥奪されてきたことを深刻に懸念する。 39.委員会は、締約国が、出生登録が不法に修正されまたは親の氏名が削除されてきた州および準州において法律および実務を見直すよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、当該出生証明書に記載されていた氏名が回復されることを確保するとともに、これを達成するために必要であれば法改正を行なうよう、促すものである。 国籍および市民権 40.2009年4月の市民権法改正の積極的側面は歓迎しながらも、委員会は、改正法の一部規定で、カナダ人を親として国外で出生した子どものカナダ市民権の取得について相当の制限が課されていることを懸念する。委員会は、このような制約が、事情によっては無国籍につながる可能性があることを懸念するものである。さらに委員会は、政府職員または軍の要員を親として国外で出生した子どもはカナダ市民権の取得に関するかかる制限を免除されていることを懸念する。 41.委員会は、締約国が、カナダ人を親として国外で出生した子どものカナダ市民権取得に関する制限を廃止する目的で、市民権法改正法の規定のうち条約と一致しないものを見直すよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、無国籍者の地位に関する1954年の条約の批准を検討することも促すものである。 アイデンティティの保全 42.委員会は、著しく過剰に児童福祉制度の対象とされている脆弱な状況に置かれた子ども(アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもを含む)が、しばしば、その家族およびコミュニティとのつながり、ならびに、自己の文化および遺産に関する教育が行なわれていないためにその文化とのつながりを喪失していることを懸念する。委員会はまた、連邦法上、アボリジナルの男性はアボリジナルとしての地位を2世代に承継させる法的な資格を有しているのに対し、アボリジナルの女性はアボリジナルとしての地位をその孫に承継させる権利を有していないことも、懸念するものである。 43.委員会は、締約国に対し、すべての子どものアイデンティティの保全が全面的に尊重されることを確保するとともに、児童福祉制度の対象とされているアボリジナルの子どもが自己のアイデンティティを保全できることを確保するために効果的な措置をとるよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、マイノリティおよび先住民族に属する子どもの権利(名前、文化および言語等)に根拠を与え、かつ、児童福祉制度の対象とされている多数の子どもが自己の文化的背景についての教育を受けることおよびそのアイデンティティを失わないことを確保するための、立法上および行政上の措置をとるよう促すものである。委員会はまた、女性および男性がアボリジナルとしての地位を孫に承継させる平等な法的権利を有することを確保するため、締約国が法律を改正することも勧告する。 E.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)、第34条および第39条) 体罰 44.委員会は、刑法第43条に基づき、締約国において体罰が法律で容認されていることに重大な懸念を覚える。さらに委員会は、カナダ子ども・若者・法律財団対カナダ事件における最高裁判所の決定(2004年)が、体罰が正当化されるのは「矯正を目的とする軽度の力の行使であって一時的かつ軽微な性質のもの」の場合のみであると判示しながら同法を支持したことに、遺憾の意とともに留意するものである。さらに委員会は、体罰の合法化が他の形態の暴力につながる可能性があることを懸念する。 45.委員会は、子どものしつけにおける「合理的な力」の使用を認めている現行規定を削除するために刑法第43条を廃止するとともに、家庭、学校および子どもが措置される可能性のある他の施設における、あらゆる年齢層の子どもに対するあらゆる形態の暴力を、いかに軽いものであっても明示的に禁止するよう、促す。加えて委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りつつ、かつ子どもたちの関与を得ながら、親、公衆、子どもおよび専門家を対象とした、代替的形態のしつけおよび規律に関する意識啓発を強化しおよび拡大し、ならびに子どもの権利の尊重を促進すること。 (b) 子どもとともに働くすべての専門家(裁判官、法執行官、保健専門家、社会福祉および児童福祉の専門家ならびに教育専門家を含む)を対象として、子どもに対する暴力のあらゆる事案の速やかな発見、対応および通報のための研修が行なわれることを確保すること。 虐待およびネグレクト 46.「家族間暴力防止プログラム」のような取り組みには留意しながらも、委員会は、「カナダ児童虐待・ネグレクト通報事件研究2008」で明らかにされたように、子どもに対する暴力および不当な取扱いが高い水準で行なわれていることを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) すべての子どもに対する暴力を防止するための国家的な包括的戦略が策定されていないこと。 (b) 脆弱な状況に置かれた女性および女子(アボリジナル、アフリカ系カナダ人および障害のある女性および女子を含む)がとくに影響を受けていること。 (c) 家族間暴力の事案への介入(禁止命令を含む)の件数が少ないこと。 (d) 被害を受けた子どもおよび加害者のためのカウンセリングが行なわれておらず、かつ、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもの再統合のためのプログラムが不十分であること。 47.委員会は、締約国が委員会の一般的意見13号(2001年)を考慮するよう勧告するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) すべての子どもに対するすべての形態の暴力を防止するための国家的戦略を策定しかつ実施するとともに、この戦略に対して必要な資源を配分し、かつ監視機構の設置を確保すること。 (b) アボリジナルの女性および女子に対して暴力が高い水準で行なわれていることを助長する要因が十分に理解され、かつ国および州/準州の計画で対応されることを確保すること。 (c) 暴力の被害を受けたすべての子どもに対し、是正および保護のための即時的手段(保護命令または禁止命令を含む)が提供されることを確保すること。 (d) ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもに対し、家族再統合と同時に効果的なフォローアップ支援を確保するための機構を設けること。 性的搾取および虐待 48.委員会は、インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略が2004年に発表されたこと、および、締約国がこのプログラムの実施に相当量の資源を配分していることに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、締約国が、インターネット上の子どもの性的搾取と闘うための法執行機関の調整に対し、相当の政治的意思を示してきたことに肯定的に留意するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国がこれまで、児童買春および子どもの制定虐待のような他の形態の性的搾取に対応するための十分な措置をとってこなかったことを懸念する。委員会はまた、子どもの性的搾取の防止に注意が向けられていないこと、ならびに、子どもの性的搾取に関する捜査および訴追の件数が少なく、かつ有罪判決を言い渡された者に対する刑が不十分であることも、懸念するものである。とくに委員会は、児童買春の被害を受けたアボリジナルの女子が行方不明になりまたは殺害された事件があること、および、これらの事件について十全な調査が行なわれず、かつ加害者が処罰されないままになっていることに、重大な懸念を覚える。 49.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 現行の政府の戦略およびプログラムを拡大し、すべての形態の性的搾取をその対象とすること。 (b) 児童買春事件に関する法執行機関の捜査実務を調整しかつ強化するための行動計画を策定するとともに、女子が行方不明となっているすべての事件について捜査が行なわれ、かつ法律の及ぶ最大限の範囲で訴追されることを精力的に確保すること。 (c) 刑罰が犯罪にふさわしいものとなることを確保するため、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の犯罪について有罪判決を言い渡された者に対して量刑の要件を科すこと。 (d) 性的搾取〔および〕虐待について有罪判決を受けた者を対象とするプログラム(更生プログラム、および、元加害者を追跡する連邦レベルの監視制度を含む)を確立すること。 有害慣行 50.委員会は、とくに移民コミュニティおよび一部の宗教的コミュニティ(ブリティッシュコロンビア州バウンティフルの複婚コミュニティなど)において、強制的な児童婚からの保護が不十分であることを懸念する。 51.委員会は、締約国が、法定年齢に満たない段階での強制婚からすべての子どもを保護し、かつ法律による複婚の禁止を執行するために、立法措置、ならびに、捜査および法執行を重点的に向上させることを含む、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 52.子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を想起し、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対処するための国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力が有するジェンダーの側面に特段の注意を払うこと。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および関連の国連機関と協力すること。 F.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 53.委員会は、とくに立法上および制度上の改革を通じて家族の支援を向上させようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、不利な立場に置かれた一部のコミュニティの家族、とくに貧困を理由として危機的状況に置かれている家族が、子どもの養育責任を果たすにあたって十分な援助を得られていないことを懸念する。とくに委員会は、妊娠した女子および10代の母親のうち学校を中退する者の数が多く、そのためその子どもがいっそう貧しい状況に置かれることを懸念するものである。 54.委員会は、締約国が、地方レベルでの時宜を得た対応(子育てカウンセリングが必要な親に対するサービス、および、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ住民の場合には親としての役割を果たせるようにするための文化的に適切なサービスを含む)をとることにより、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を提供するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、妊娠した女子および10代の母親に教育の機会を提供することにより、これらの女子が教育を修了できるようにするよう奨励するものである。 家庭環境を奪われた子ども 55.委員会は、代替的養護の対象とされている子どもが多いこと、および、ネグレクトもしくは金銭的困難または障害の場合の最初の手段として子どもが家族から頻繁に分離されていることを、深く懸念する。委員会はまた、締約国の代替的養護制度の不十分さおよびそこで行なわれている人権侵害についても深刻に懸念するものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 措置の理由について貧弱な調査しか行なわれず、かつこのような理由が十分に定義されていないことを理由とする、子どもの不適切な措置。 (b) 健康、教育、ウェルビーイングおよび発達の面で、養護を受けている若者にとっての成果が一般住民層の場合よりも芳しくないこと。 (c) 養護を受けている子どもの虐待およびネグレクト。 (d) 18歳に達して養護を離れる子どもに対して提供される、準備のための支援が不十分であること。 (e) 養育担当者のスクリーニング、研修、支援およびアセスメントが不十分であること。 (f) アボリジナルおよびアフリカけカナダ人の子どもがしばしばコミュニティ外に措置されていること。 56.委員会は、締約国に対し、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助および支援サービス(親向けの教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラムを通じてのものも含む)を提供することによって子どもがその家庭環境から分離されることを回避し、かつ施設で生活する子どもの人数を減らす目的で、即時的な防止措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう求めるものである。 (a) 施設養護を受けている子ども1人ひとりの措置の必要性について、常に、権限のある学際的な専門家チームによって審査が行なわれること、ならびに、最初の措置決定は最短の期間について行なわれ、かつ当該決定が民事裁判所による司法審査の対象とされることおよびその後も条約にしたがって再審査されることを確保すること。 (b) 保育ワーカーおよび家庭外養護の養育担当者の選抜、研修および支援に関する基準を策定するとともに、これらの養育者の定期的評価を確保すること。 (c) 養護を受けている子どもに対し、保健ケアおよび教育への平等なアクセスを確保すること。 (d) ネグレクトおよび虐待の事案を通報し、かつ加害者に対して相応の制裁を与えるための、アクセスしやすく、効果的な、かつ子どもにやさしい機構を設置すること。 (e) 移行の計画に早い段階から関与できるようにし、かつ離脱後にも援助を利用できるようにすることにより、若者に対し、養護を離れる前に十分な準備の機会および支援を提供すること。 (f) 代替的養護を必要とするマイノリティ・コミュニティの子どものための適当な解決策(たとえば親族養育等)を見出すため、すべてのマイノリティのコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化すること。 養子縁組 57.委員会は、子どもには双方の生物学的親の身元を知る権利があると判示した、オンタリオ対マーチランド(Ontario v. Marchland)事件における最近の裁判所の決定に、積極的なものとして留意する。しかしながら委員会は、養子縁組に関する国内の法律、政策および実務がそれぞれの州および準州によって定められており、かつ法域間で相当に異なっていること、ならびに、その結果、カナダが国レベルの養子縁組法、養護を受けている子どもまたは養子縁組に関する国家的基準および国家的データベースを有しておらず、また養子縁組の結果に関する既知の調査もほとんどないことを、懸念するものである。委員会はまた、養子縁組情報開示法について、前回の総括所見(CRC/C/25/Add.215、パラ31)で勧告されたとおり、出生に関する情報を養子が入手できることを確保するための改正が行なわれていないことも懸念する。委員会はまた、国際養子縁組に関する情報が締約国〔報告書〕で提供されなかったことも遺憾に思うものである。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の遵守を確保するための法律を、必要なときは連邦、州および準州のレベルにおけるものも含めて採択すること。 (b) 養子の生年月日および出生場所ならびにその実親に関する情報が保全されることを確保するため、遅滞なく法改正を行なうこと。 (c) 次回の定期報告書において、国内養子縁組および国際養子縁組に関する詳細な情報および細分化されたデータを提供すること。 G.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 59.委員会は、障害のある人の権利に関する条約の批准(2010年)を歓迎する。締約国内の障害児のインクルージョンについて進展があったことは認めながらも、委員会は、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 締約国によってPALS(参加・活動制限調査)が最後に実施されたのが2006年であり、その後、これに代わるものとして障害のある子どもに関するデータを収集するための他のいかなる努力も、いまのところ行なわれていないこと。その結果、障害のある子どもにとってのインクルージョンおよび平等なアクセスに関する政策の基礎とすべき、2006年以降の総合的なまたは細分化されたデータが存在しなくなっている。 (b) インクルーシブ教育へのアクセスに関して締約国の諸州・準州間で大きな格差があり、いくつかの州および準州では教育がほとんど分離学校で行なわれていること。 (c) 障害のある子どもの養育負担が世帯収入および親の就労にしばしば悪影響を与えていること、ならびに、一部の子どもが必要な支援およびサービスにアクセスできていないこと。 (d) 障害のある子どもは障害のない子どもに比べて暴力および搾取の被害を2倍以上受けやすいこと、ならびに、人口全体の殺人率は全般的に低下しているにもかかわらず、障害のある人々に対する殺人および子殺しの割合は上昇しているように思われること。 60.委員会は、締約国が障害のある人の権利に関する条約の規定を実施するよう勧告するとともに、委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、締約国に対して以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国ならびにそのすべての州および準州が障害のある子ども全員を対象とするインクルーシブな政策および機会均等を確立することを可能とする、障害のある子どもに関する総合的なかつ細分化されたデータの収集システムを、可能なかぎり早期に確立すること。 (b) 障害のあるすべての子どもがすべての州および準州でインクルーシブ教育にアクセスでき、かつ、障害のある子どものみを対象とする分離学校への出席を強要されないことを確保すること。 (c) 金銭的制約がサービスへのアクセスの妨げとならず、かつ世帯収入および親の就労が悪影響を受けないことを確保するため、障害のある子どもおよびその家族に対してあらゆる必要な支援およびサービスが提供されることを確保すること。 (d) 障害のある子どもをあらゆる形態の暴力から保護するため、あらゆる必要な措置をとること。 母乳育児 61.カナダ産前栄養プログラム(CPNP)のようなプログラムは歓迎しながらも、委員会はなお、締約国において(とくに不利な状況に置かれた女性の間で)母乳育児率が低いこと、および、これに対応した、締約国のすべての母親の間で母乳育児を奨励することを援助するプログラムが設けられていないことを、懸念する。委員会はまた、締約国が、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採用したにもかかわらず、同国際基準の諸条項を自国の規制枠組みに統合していないこと、および、その結果、人工乳企業による同基準および関連の世界保健機関決議の違反が常態となっているにもかかわらず処罰の対象になっていないことも、遺憾に思うものである。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「乳幼児の栄養に関する世界戦略」で勧告されているとおり、乳児の出生後6か月間の完全母乳育児および2年以上の継続的母乳育児を促進し、かつすべての母親がこれに成功できるようにするためのプログラムを確立すること。 (b) 母乳育児の促進を強化し、かつ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を執行するとともに、違反を調査しかつ制裁を科すための適切な措置をとること。 健康 63.委員会は、締約国内において、良質な保健ケアに無償でかつ広範にアクセスできることに、積極的側面として留意する。しかしながら委員会は、締約国で子どもの肥満の発生率が高いことに懸念とともに留意し、かつ、ファストフードその他の健康的でない食品の製造および販売促進が(とくに子どもを対象とするものに関して)規制されていないことを懸念するものである。 64.委員会は、締約国が、とくに子どもの間で健康的なライフスタイル(運動を含む)を促進し、かつファストフードおよび健康的でない食品の製造および広告(とくに子どもを対象とするもの)の規制管理の強化を確保することにより、子どもの肥満の発生に取り組むよう勧告する。 精神保健 65.委員会は、締約国が、5年の期間にわたって「アボリジナル青年自殺防止国家戦略」を実施するために相当の資源を提供したことに、評価の意とともに留意する。このようなプログラムにもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国全体で、とくにアボリジナル・コミュニティに属する若者の間で、若者の自殺率が引き続き高いこと。 (b) 行動上の問題を有していると診断される子どもの割合がますます高くなっていること、および、根本的原因を明示的に検討し、または親および子どもに対して投薬に代わる支援および治療法を提供することなく、子どもに薬が過剰に投与されていること。この文脈において、開業医向けの教育資源および資金拠出制度が「応急的解決策」に偏っていることは委員会にとって懸念の対象である。 (c) 保健従事者から提供される十分な情報に基づいた子どもおよび親のインフォームド・コンセントが侵害されていること。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 早期発見にとくに注意を払いながら、子どもの自殺を防止するための介入の質を強化しおよび拡大し、ならびに、全学校における、秘密が守られる心理サービスおよびカウンセリング・サービス(家庭におけるソーシャルワーク支援を含む)へのアクセスを拡大すること。 (b) 子どもに対する精神刺激薬の過剰な使用についての専門家による監視システムを確立するとともに、行動上および心理上の介入へのアクセスを向上させつつ、根本的原因を理解し、かつ診断の正確性を改善するための措置をとること。 (c) 子どもに対する向精神薬の使用に関連した保健従事者によるインフォームド・コンセント実践の監視および監査を目的とする監視機構を、各州および準州の保健省下に設置することを検討すること。 生活水準 67.締約国の大多数の子どもの基礎的ニーズが満たされていることは評価しながらも、委員会は、所得の不平等が広く存在しかつ拡大していること、および、2000年までに子どもの貧困に終止符を打つという議会の決意にもかかわらず、子どもの貧困に包括的に取り組むための国家的戦略が策定されていないことを、懸念する。委員会は、子どもを対象とする、税制上の優遇措置および社会的移転の配分が不公平であることをとりわけ懸念するものである。さらに委員会は、アボリジナルの子ども、アフリカ系カナダ人の子どもおよびその他のマイノリティの子どもに対する福祉サービスの提供が、質およびアクセス可能性の点で他の子どもに提供されるサービスと同等ではなく、かつこのような子どものニーズを満たすのに十分ではないことを懸念する。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) より幅広い国家貧困削減戦略の一環として子どもの貧困を解消するための、国家的な、調整のとれた戦略を策定しかつ実施すること。当該計画には、子どもの貧困削減に関する年次数値目標も含まれるべきである。 (b) 税制上の優遇措置および社会的移転の影響を評価し、かつ、もっとも被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子どもが優先されることを確保すること。 (c) アボリジナル、アフリカ系カナダ人その他のマイノリティの子どもに提供される、福祉サービスを含む資金その他の支援(福祉サービスを含む)〔訳者注/重複は原文ママ〕が、質およびアクセス可能性の点で締約国の他の子どもに提供されるサービスと同等であり、かつこれらの子どものニーズを満たすのに十分であることを確保すること。 H.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 69.脆弱な状況に置かれた子どもの教育上の成果を向上させるために締約国が行なっているさまざまな取り組みは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもを対象とする基礎的な公的学校サービスの一環として必要とされる教材および活動について、義務教育段階で利用料を払う必要があること。 (b) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもの中退率が高いこと。 (c) 学校において、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもに対し、停退学および警察への付託のような懲戒措置が不適切にかつ過剰に用いられていること、ならびに、これらの集団が適応指導学校(alternative school)に過剰に措置されていること。 (d) 主としてマイノリティの子どもおよび障害のある子どもを対象とする分離学校が多数設置されており、これが差別につながっていること。 (e) 学校でいじめが広範に発生していること。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育で利用料を払う必要がないようにするための措置をとること。 (b) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人のコミュニティとのパートナーシップに基づき、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもの中退率が高い問題に取り組むための国家的戦略を策定すること。 (c) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもを対象とした懲戒措置としての停退学および警察への付託を防止しかつ回避すること、ならびに、これらの子どもが適応指導学校に転籍されることを防止すること(同時に、問題に対応するために必要なスキルおよび知識が専門家に対して提供されることを確保すること)を目的とした措置をとること。 (d) 分離および差別を防止するため、マイノリティの子どもおよび障害のある子どもが教育環境に統合されることを確保すること。 (e) あらゆる形態のいじめおよびいやがらせと闘うための措置(教員および学校で働くすべての職員ならびに生徒が学校およびケアのための施設において多様性を受け入れる能力を向上させること等)ならびに子ども、親および専門家の紛争解決スキルを向上させるための措置を増進させること。 乳幼児期のケアおよび教育 71.委員会は、締約国が相当の資源を有しているにもかかわらず、乳幼児期の発達の向上ならびに負担可能かつアクセス可能な乳幼児期のケアおよびサービスに資金が拠出されていないことを懸念する。委員会はまた、保育費用が高いこと、子どもが利用可能な空きがないこと、〔ならびに、〕すべての保育職員を対象とする統一的な研修要件および良質なケアの基準が設けられていないことも、懸念するものである。委員会は、4歳未満の子どもを対象とする乳幼児期のケアおよび教育が引き続き不十分であることに留意する。さらに委員会は、締約国における乳幼児期のケアおよび教育の大部分が民間の利益追求機関によって提供されており、その結果、ほとんどの家族にとってそのサービスが手の届かないものとなっていることを懸念するものである。 72.委員会の一般的意見7号(2005年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、以下の措置をとること等により、乳幼児期のケアおよび教育の質および範囲をさらに向上させるよう勧告する。 (a) このようなケアが、子どもの全般的発達および親の能力の強化を包摂するホリスティックなやり方で提供されることを確保する目的で、0~3歳の子どもに対するこのようなケアの提供に優先的に取り組むこと。 (b) 国営施設か民間施設のいずれによるものであるかに関わらず、無償のまたは手が届く範囲の乳幼児期ケアの提供を考慮することにより、乳幼児期のケアおよび教育の、すべての子どもにとっての利用可能性を高めること。 (c) 保育職員の研修およびその労働条件の向上に関する最低要件を確立すること。 (d) 乳幼児期により脆弱な状況に置かれている子どもに焦点を当てながら、乳幼児期の政策およびプログラム(子どものためのすべての給付および移転を含む)に対して現在行なわれている支出についての公正な影響分析を明らかにするための研究を実施すること。 I.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 73.委員会は、経済移民に関する締約国の進歩的政策を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、最近、非正規移民であることを理由する16~18歳の子どもの収容を認める「カナダ移民制度保護法」という名称の法律が成立したこと(2012年6月)に重大な懸念を覚えるものである。さらに委員会は、締約国が、前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ47、2003年)にもかかわらず、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもについての国家的政策を採択していないことを遺憾に思うとともに、出入国管理および難民保護法が、保護者のいる子どもおよび保護者のいない子どもを区別しておらず、かつ子どもの最善の利益を考慮していないことを懸念する。委員会はまた、子どもの庇護希望者の収容が、子どもの最善の利益を考慮することなく頻繁に行なわれていることも深く懸念するものである。さらに、保護者のいない子どもについては代理人が任命されることは認知しながらも、委員会は、子どもに対して後見人が常に提供されるわけではないことに、懸念とともに留意する。加えて、委員会は、ロマおよびその他の移民の子どもがしばしば、不安定な地位のまま、長期間(数年に及ぶことさえある)、退去強制に関する決定待ちの状態に置かれることを懸念するものである。 74.委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準に全面的に一致させるよう促すとともに、前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ47、2003年)をあらためて繰り返す。締約国は、その際、〔出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い〕に関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮するよう促されるところである。加えて、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 庇護希望者、難民および(または)非正規移民である子どもを収容する政策を再検討するとともに、収容が、子どもの最善の利益にしたがって例外的な事情がある場合にのみ行なわれ、かつ司法審査の対象とされることを確保すること。 (b) 法律および手続において、すべての出入国管理手続および庇護手続で子どもの最善の利益が第一次的考慮事項として活用されること、ならびに、最善の利益の判断が、このような手続を十分に適用してきた専門家によって一貫して行なわれることを確保すること。 (c) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見人制度を速やかに設置すること。 (d) 子どもが決定を長期間待たなくてもよいようにするため、子どもの庇護希望者の事案の処理が迅速に進められることを確保すること。 (e) 国連難民高等弁務官「国際的保護に関するガイドライン第8号:1951年条約第1条A(2)および第1条Fに基づく子どもの庇護申請」の実施を検討すること。委員会は、この勧告を実施する際、締約国が、庇護希望者、難民および(または)入管被収容者である子どものための政策および手続において子どもの最善の利益の原則が正当な優越性を与えられること、ならびに、出入国管理機関が子どもの最善の利益の原則および手続についての研修を受けることを確保する必要があることを、強調する。 武力紛争下の子ども 75.対話の際に代表団から口頭で提供された回答には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書の実施に関する、第8条第2項にしたがったフォローアップの情報がなかったことに深刻な遺憾の意を覚える。委員会は、志願兵の採用手続において最年長者を優先させ、かつ志願入隊年齢の引き上げを検討するよう求めた前回の総括所見の勧告(CRC/OPAC/CAN/C0/1、パラ9、2006年)にもかかわらず、締約国がこの旨の措置を検討してこなかったことに、深い懸念を表明するものである。委員会は、加えて、新兵募集プログラムが実際にはアボリジナルの若者を積極的対象としている可能性があり、かつ高校の敷地内で実施されていることに懸念を表明する。 76.委員会は、前回の勧告(CRC/OPAC/CAN/C0/1)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、子どもの権利委員会に対する次回の定期報告書に、武力紛争への子どもの関与に関する選択条約〔条約の選択議定書〕の実施およびフォローアップ〔に関する情報〕を記載するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、志願入隊年齢を18歳に引き上げることを検討し、かつ、それまでの間は志願兵の採用手続において最年長者を優先させるよう、勧告するものである。委員会はさらに、アボリジナルの子どもまたは脆弱な状況にある他のいかなる子どもも新兵募集の積極的対象とされるべきではないこと、および、締約国が高校の敷地におけるこれらのプログラムの実施を再考すべきことを勧告する。 77.委員会は、最近になってウマル・カドル(Omar Kadr)が締約国の保護下に戻されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、ウマル・カドルが、元子ども兵として、条約に基づく諸権利および適切な処遇を与えられてきていないことを懸念するものである。とくに委員会は、ウマル・カドルが、グアンタナモで抑留されていた際の不当な取扱いを含む重大な人権侵害を経験し(このことはカナダ最高裁判所も認めている)、かつ、このような侵害に対する適切な補償および救済を与えられていないことを懸念する。 78.委員会は、締約国に対し、軍隊または武装集団に関係した子どもに関するパリ原則および指針にしたがったリハビリテーション・プログラムを速やかにウマル・カドルに対して提供するとともに、ウマル・カドルに対し、カナダ最高裁判所によって同人が経験したと判示された人権侵害に関する十分な救済が提供されることを確保するよう、促す。 経済的搾取(児童労働を含む) 79.委員会は、児童労働および子どもの搾取について締約国報告書で情報が提供されなかったことを遺憾に思い、かつ、児童労働に関するデータがすべての州および準州で体系的に収集されているわけではないことに懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国に、州および準州における最低就労年齢を定めた連邦法がないことも懸念するものである。委員会はまた、一部の州および準州で、16歳〔以上〕の子どもが特定の態様の危険な労働に就くことが認められていることにも懸念を表明する。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育〔修了〕年齢と一致する16歳を全国的な最低就労年齢として定めること。 (b) 18歳未満の子どもが危険なかつ安全性を欠いた労働環境から十分に保護されることを確保するため、州および準州の法律を調和させること。 (c) 子どもの権利の保護に関する公的説明責任を履行するひとつの形態として、危険な児童労働および労働条件の発生件数に関する、年齢、性別、地理的所在および社会経済的背景の別に細分化された体系的なデータ収集のための統一的機構を設置するための措置をとること。 (d) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)の批准を検討すること。 売買、人身取引および誘拐 81.委員会は、子どもの人身取引について有罪判決を受けた者に対して必要的に最低限の刑を言い渡すよう要求する法案C-268号が成立したこと(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、人身取引の被害を受けた子どもを特定したうえで保護する法執行機関の能力が弱いこと、および、この点に関する捜査および訴追の件数が少ないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの人身取引のほとんどが複雑な事件であるため、法執行官および検察官が捜査のための明確な指針を有しておらず、かつ最善の告発のしかたについて必ずしも承知していないことも懸念する。 82.委員会は、締約国に対し、人身取引の被害を受けたすべての子どもを保護し、かつ現行法の執行を向上させる目的で、法執行官および検察官を対象として体系的かつ十分な研修を行なうよう促す。委員会は、このような研修に、こどもの人身取引を犯罪化した刑法の適用箇所に関する意識啓発、捜査手続に関する最善の実務のあり方、および、被害を受けた子どもを保護する方法についての具体的指示が含まれるべきことを勧告するものである。 ヘルプライン 83.委員会は、子どもを対象とするフリーダイヤルのヘルプラインが存在することに積極的側面として留意する。このヘルプラインは、抑うつ、性的搾取および学校におけるいじめの事案について心理社会的支援を求める、締約国の相当数の子どもによって利用されているように思われる。しかしながら委員会は、締約国が、このようなヘルプラインが効果的に機能するようにするために限られた資源しか提供していないことを懸念するものである。 84.委員会は、締約国に対し、当該ヘルプラインを維持し、かつ当該ヘルプラインが締約国全域で24時間のサービスを提供することを確保するため、このヘルプラインに対して財政的および技術的支援を提供するよう促す。 少年司法の運営 85.委員会は、法案C-10号(2012年の安全な街路および地域法)が成人矯正施設への子どもの収監を禁じていることに、積極的側面として留意する。にもかかわらず、委員会は、おおむね条約に一致している2003年青年刑事司法法が法案C-10号の採択によって実質的に改正されたこと、および、後者が子どもに対して過度に懲罰的であって十分に修復的な性質のものではないことを深く懸念するものである。委員会はまた、法案C-110号が条約の規定にしたがうことを確保するための子どもの権利評価が実施されず、またはそのための機構が設置されなかったことも遺憾に思う。とくに、委員会は以下の懸念を表明するものである。 (a) 締約国が、刑事責任に関する最低年齢を引き上げるための措置(CRC/C/15/Add.215、パラ57、2003年)を何らとらなかったこと。 (b) 18歳未満の子どもが諸事情または罪名の重大性との関連で成人として審理されていること。 (c) 拘禁の利用が増えていることによって、プライバシーの保護が縮減し、かつ、ダイバージョンのような司法手続によらない措置の利用の減少につながっていること。 (d) 逮捕段階の子どもおよび拘禁されている子どもに対し、法執行官および拘禁センター職員によって過度な有形力の行使(テーザー銃の使用を含む)が行なわれていること。 (e) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者が過剰に拘禁されており、たとえば、アボリジナルの若者は高校を卒業するよりも刑事司法制度に関わりを持つようになる可能性が高いことを示す統計もあること。 (f) 10代の女子が男女混合の青年刑務所に措置され、かつ監視を担当する看守の性別も問われないため、女子が性的いやがらせおよび性的暴行の発生にさらされるおそれが高まっていること。 86.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約(法案C-10号(2012年の安全な街路および地域法)を含む〔原文ママ〕)、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。 (b) 18歳未満のいかなる者も、諸事情またはその罪名の重大性に関わらず、成人として審理されないことを確保すること。 (c) 司法手続によらない措置(ダイバージョン等)の利用を増やすことによって拘禁に代わる手段を発展させるとともに、少年司法制度の対象となっている子どものプライバシーの保護を確保すること。 (d) 逮捕された子どもおよび拘禁されている子どもに対する拘束および有形力の行使についての、すべての法執行官および拘禁施設職員が使用すべき指針を策定すること(テーザー銃の使用の廃止を含む)。 (e) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者が組織的かつ過剰に刑事司法制度の対象とされていることについて詳細な研究を実施するとともに、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者の有罪率および収監率に関する格差の解消に向けた効果的な行動計画(すべての法曹、刑務所で働く専門家および法執行に従事する専門家を対象とした条約に関する研修のような活動を含む)を策定すること。 (f) 性暴力および性的搾取のおそれからの女子の保護を向上させるため、女子が男子とは別に収容されること、および、女子の監視は女性看守が行なうことを確保すること。 J.国際人権文書の批准 87.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)および家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)を批准するよう促すものである。 K.地域機関および国際機関との協力 88.委員会は、締約国が、締約国および他の米州機構(OAS)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けてOASと協力するよう勧告する。 L.フォローアップおよび普及 89.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および準州の当局の長に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 90.委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国による第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 M.次回報告書 91.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年7月11日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 92.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月3日)。