約 24,208 件
https://w.atwiki.jp/crimsonstarroad/pages/29.html
債権の種類と勘定科目 貸倒見積高を計算する際には、債権を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等の三種に区分する。 しかし、勘定科目は、一般債権、貸倒懸念債権は元の勘定科目(売掛金、受取手形)を使用し、破産更生債権は「破産更生債権等」勘定を用いる。また、「破産更生再検討」は貸借対照表においては固定資産の部、投資その他の資産に表示する。 また、手形の不渡については、「不渡手形」勘定で処理することもある。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/95.html
総括所見:カンボジア(第2~3回・2011年) 第1回(2000年)OPAC(2015年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/KHM/CO/2-3(2011年8月1日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年6月3日に開かれた第1620回および第1621回会合(CRC/C/SR.1620 and 1621)においてカンボジアの第2回・第3回統合報告書(CRC/C/KHM/2-3)を検討し、2011年6月17日に開かれた第1639回会合(CRC/C/SR.1639参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第2回・第3回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/KHM/Q/2/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルのかつ多部門にまたがった代表団との積極的対話により、締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことも歓迎するものである。 II.締約国がとったフォローアップ措置および達成した進展 3.委員会は、以下の法律等が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 国際養子縁組に関する法律(2009年12月)。 (b) 障害のある人の権利の促進および保護に関する法律(2009年7月)。 (c) 人身取引および性的搾取の抑止に関する法律(2008年2月)。 (d) 教育法(2007年12月)。 (e) ドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律(2005年10月)。 (f) 社会保障法(2002年)および社会保護戦略(2010年4月)。 4.委員会はまた、締約国が以下の国際人権条約を批准したことも歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2004年7月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年5月)。 (c) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2010年10月)。 (d) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2007年4月)。 (e) 腐敗の防止に関する国際連合条約(2007年9月)。 (f) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2007年7月)。 (g) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(2006年3月)。 (h) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2005年9月)。 (i) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年4月)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の抑止を主導する国家委員会(2009年創設)。 (b) 教育戦略計画(2009~2013年)。 (c) 両親のいない子ども、HIVの影響を受けている子どもおよび脆弱な立場に置かれたその他の子どものための国家行動計画(2008~2010年)。 (d) 障害児教育政策(2008年)。 (e) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画(2008~2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.128)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念および勧告の一部への対応が不十分にまたは部分的にしか行なわれていないことを遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないまたは十分に実施されていないもの、とくに差別の禁止、障害のある子ども、思春期の健康および少年司法に関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.裁判所はカンボジア法の解釈および事件に関する決定の際に条約を考慮しなければならないとする憲法評議会決定第092/003/2007号は歓迎しながらも、委員会は、条約の規定が裁判所および行政機関によって援用されまたは直接執行されるのは稀であることを懸念する。委員会はまた、子どもに関連する法律が多数採択されていること、および、双方向的な対話の際、締約国が包括的な子ども保護法を策定中であることが明らかにされたことにも留意する。しかしながら委員会は、法律を実施するための十分な機構が存在しないために、子ども関連の法律の実施が弱いままであることを懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、国内法秩序において条約の原則および規定が全面的に適用できることを確保するため、あらゆる適当な措置(国、州および自治体のレベルで子ども関連法を適用するための十分な機構、枠組みおよび制度を設置することも含む)をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この点に関わる進展および条約に掲げられた権利を実施するために国内裁判所または行政機関が行なった決定について報告することも要請するものである。委員会はさらに、締約国に対し、条約のすべての原則および規定を網羅した包括的な子ども保護法の制定を迅速に進め、かつ、現在起草されている少年司法法がこの法律に全面的に編入されることを確保するよう、促す。 調整 10.委員会は、カンボジア国家子ども評議会(CNCC)が固有の予算を有し、かつ国以下のレベルでも体制の構築を図る旨を定めた王令によってCNCCの地位が強化されたことに、積極的な面として留意する。しかしながら委員会は、条約の実施との関連で調整の役割を果たすために必要な人的資源、技術的資源および財源をCNCCがいまだに有しておらず、かつ、子どもの権利に関わる問題をCNCCに照会しまたは付託する義務がいかなる政府省庁にも課されていないことを懸念するものである。 11.委員会は、CNCCに対してより実質的な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう求めた締約国への勧告(CRC/C/15/Add.128、パラ11)をあらためて繰り返す。締約国はまた、締約国に対し、条約の実施に関する効果的調整を確保し、CNCCと政府省庁との関係を明確化し、かつ州、地区およびコミューンのレベルでCNCCの体制の迅速な構築を図るようにも促すものである。 国家的行動計画 12.委員会は、締約国において子どもに関するさまざまな部門別行動計画が存在することには留意しながらも、条約実施のための包括的な国家的戦略または行動計画が存在しないことを懸念する。 13.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策および戦略を策定しかつ実施するとともに、さまざまな部門別行動計画を包含し、かつ条約のすべての分野を網羅した子どものための国家的行動計画、または当該戦略を実施するための他の同様の枠組みを採択するよう、勧告する。委員会はまた、当該戦略を国家戦略開発計画(2009~2013年)および社会的保護戦略と緊密に関連づけ、かつ当該戦略に対して十分な資源を配分することも勧告するものである。委員会は、このような政策および諸計画の立案に際しては、2002年国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビュー(2007年)、ならびに、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年)に対して適切な注意を払うよう、勧告する。 独立の監視 14.委員会は、条約の実施を監視することおよび当該実施における進展を評価することならびに自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情を受理しかつこれに対応することを目的とする、パリ原則に一致した独立機構の設置に向けた進展が限られていることを懸念する。 15.委員会は、子ども担当部局を有する国内人権機関の一部としてまたは別個の機構としてパリ原則にしたがった独立の機構を設置するよう締約国に求めた呼びかけ(CRC/C/15/Add.128、パラ14)を、あらためて繰り返す。当該機構は、子どもがアクセスしやすく、子どもの権利の充足状況を監視し、子どもの権利侵害の苦情に子どもにやさしい方法でかつ迅速に対応し、かつそのような侵害に対して救済を提供するようなものであるべきである。委員会は、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)に対して締約国の注意を喚起する。 資源配分 16.委員会は、国家戦略開発計画(2009~2013年)に子どもに関する主要な優先事項が掲げられているとはいえ、子どもの保護および社会福祉に対しては限られた人的資源、技術的資源および財源しか充てられておらず、現行サービスのほとんどは開発パートナーの資金によって運営されていることに留意する。委員会はまた、締約国における相当の経済成長にも関わらず、2007年以降、社会部門に充てられる予算は他の分野の半分しか増加しておらず、かつ教育に充てられる予算はGDPの1%にすぎないことも懸念するものである。委員会はさらに、2010年3月に汚職防止法が採択されたにも関わらず、締約国において汚職が依然蔓延しており、子どもの権利の実施の増進につながりうる資源が流用され続けていることに、深刻な懸念とともに留意する。 17.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 条約第4条にしたがい、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに教育を含む(ただしこれに限られない)社会部門に配分される予算を増額すること。 (b) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (c) 可能であれば、資源配分の実効性を監視しかつ評価する成果基準予算を開始するべきであるという国連の勧告にしたがうとともに、必要なときはこの目的のため国際協力を求めること。 (d) 予算上のニーズに関する包括的評価を実施し、かつ、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対処する分野への明確な配分額を定めること。 (e) とくに子どもとの対話を通じ、かつ地方当局の適正な説明責任の面で、透明かつ参加型の予算策定を確保すること。 (f) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子どもに関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (g) 汚職と闘い、ならびに汚職を効果的に摘発し、捜査しおよび訴追する制度的能力を強化するための即時的措置をとること。 (h) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 18.委員会は、とくに人身取引の被害を受けた子どもおよび代替的養護環境にある子どもに関するデータベースを発展させるために行なわれた相当の努力について、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の領域、とくに障害のある子どもについて十分な情報が収集されておらず、かつデータ収集機構が依然としてまとまりを欠いていることを懸念するものである。委員会はさらに、条約のすべての領域を網羅する体系的かつ包括的な細分化されたデータベースの設置を確保するための、関連省庁間の調整が不十分であることを懸念する。 19.委員会は、締約国に対し、包括的なデータ収集システムを設置するとともに、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価し、かつ条約実施のための政策およびプログラムの立案に役立てるための基盤として、収集されたデータを分析するよう奨励する。すべての子どもの状況の分析を容易にするため、データは年齢別、性別、居住地別、民族別および社会経済的背景別に細分化されるべきである。委員会は、締約国に対し、ユニセフを含む関連の国際機関の技術的援助を求めるよう奨励する。 普及および意識啓発 20.委員会は、締約国のすべての州の学校長および副校長を対象として行なわれた子どもの権利に関する職業訓練も含め、子どもの権利条約に関する情報を普及するために締約国がとった積極的措置に、評価の意とともに留意する。 21.委員会は、締約国が、全国で条約を普及し、子どもたち自身および親を含む公衆の意識を高め、かつ条約の原則および規定に関する情報を普及する努力を強化するよう、勧告する。 研修 22.子どもとともにおよび子どものために働く一定の職種の専門家を対象として行なわれた研修についての情報には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、このような研修が依然として不十分であり、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、ならびに、条約に関する意識が依然として限られている法執行機関を対象としていないことを懸念する。 23.委員会は、締約国が、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、公務員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカーなど)を対象として、条約の原則および規定に関する体系的かつ良質な教育プログラムおよび研修プログラムを実施する努力を強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、とくに人権高等弁務官事務所(OHCHR)およびユニセフの技術的援助を求めるよう奨励するものである。 市民社会との協力 24.委員会は、締約国の人権擁護活動従事者、とくに住居に対する家族および子どもの権利を擁護する人々に対する脅迫、嫌がらせ、物理的攻撃および逮捕について、深い懸念を表明する。委員会はまた、子どもの権利の分野で活動している非政府組織が、意識啓発、子どもの権利の促進ならびに子どもに対するケアおよび保護の提供に関して重要な役割を果たしているのに、子どもに関する政策、法律および戦略の策定からしばしば排除されたままであることにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、反対意見を表明した人々に対して名誉毀損および虚偽情報に関する法律が広く利用されていること、および、結社および非政府組織(NGO)法案が採択されれば締約国における人権擁護活動従事者の活動が著しく制限されるであろうことを、懸念するものである。 25.委員会は、締約国に対し、人権擁護活動従事者およびその活動を正当に尊重し、市民社会との信頼および協力の雰囲気を回復させ、かつ、子どもに関わる政策、計画およびプログラムの企画、実施、監視および評価についてコミュニティならびに市民社会組織および子ども団体の組織的関与を得るために、具体的措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、脅迫および嫌がらせの報告事例が迅速に捜査されることを確保するようにも促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、この点についてカンボジアの人権状況に関する特別報告者が行なった勧告(A/HRC/15/46、パラ95)を実施するよう促す。 子どもの権利と企業セクター 26.委員会は、経済成長ならびに国内投資および海外投資の増加を背景として、締約国が、衣料産業のような公式経済において企業活動が子どもの権利に与える影響を規制するため、積極的措置をとってきたことに留意する。しかしながら委員会は、国内外の企業の活動が子どもに与える可能性のある悪影響を防止するための、企業の社会的責任および環境面での責任に関する規制枠組みがまだ設けられていないことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、地元および国外の企業による国内法の遵守状況を領域全体で引き続き注意深く監視するとともに、国連・ビジネスと人権枠組みにしたがい、企業セクターが、とくに子どもの権利との関連で、企業の社会的責任および環境面での責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規則を策定しかつ実施するよう、勧告する。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された国連・ビジネスと人権枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 28.委員会は、農村部に住んでいる子どもの権利の享受に関して不平等および格差の水準が増していることに懸念を表明する。東北諸州の民族的マイノリティに属する子どもおよび南西諸州の子どもは、保健、教育および福祉へのアクセスに関してとくに不利な状況に置かれている。委員会はまた、女性および女子を伝統的役割に縛りつける、ジェンダーに基づくステレオタイプが根強く残っていることも懸念する。これとの関連で、委員会は、社会における女子および女性の役割は劣等であるという見方を正当化するチュバップ・スレイ(女性の行動規範)がいまなお締約国の学校で教えられていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、子どもによる権利の享受の関して存在している格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、周縁化されたおよび不利な立場に置かれた集団に属する子どもへの差別と闘うために必要な措置をとるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、女子差別に具体的に終止符を打ち、かつ、社会における女性および女子の劣等な役割を固定化させる、ジェンダーに基づく支配的な態度、慣行および規範を撤廃するようにも促すものである。 子どもの最善の利益 30.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則を国内法に編入する点についての進展を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益が締約国の政策およびプログラムにおいてどのように考慮されているかに関する具体的情報がないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 32.委員会は、溺死が子どもの死因の筆頭であること、および、これに続く死因が子どもの恒久的障害の原因の筆頭でもある交通事故であることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、地雷および不発弾によって子どもが殺傷され続けているにも関わらず、地雷意識教育のための資金が相当に減額されたことも深く懸念するものである。 33.委員会は、締約国に対し、子ども、親、教員および公衆一般の安全意識を高めるための公的キャンペーンを行なうことによって溺死および交通事故を防止するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、地雷除去および地雷に関する意識啓発のためのプログラムを継続しかつ強化すること等の手段によって地雷から子どもを保護するため、あらゆる必要な措置をとるようにも促すものである。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、締約国報告書の作成および「人身取引および商業的性的搾取に関する国家行動計画(2005~2013年)」の起草の過程で子どもたちとの多数の協議が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、自己に影響を与える意思決定手続において意見を表明する子どもの権利を制約する伝統的態度が締約国で根強く残っており、かつ、子どもの参加を促進する政策および支援機構が締約国に存在しないことを懸念するものである。 35.委員会は、締約国に対し、意見を聴かれる子どもの権利を実施するために適当な措置をとる自国の義務を想起するよう求めるとともに、公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力して行なわれるキャンペーンを含む)を通じて、意見を聴かれる子どもの権利の全面的実現を阻害する、子どもに関する否定的な態度および見方と積極的に闘うよう促す。委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年、CRC/C/GC/12)に対して締約国の注意を喚起するものである。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 36.委員会は、民事的地位に関する2000年12月の閣僚会議令第103号によって出生登録が義務的なものとされたこと、および、無償の出生登録を全国的に確保することに関して締約国が相当の成果を達成したことを歓迎する。しかしながら委員会は、非正規移民の子どもには出生を登録される資格がないこと、および、ベトナム系の家族が子どもの出生証明書を取得しようとした際に拒否されることが多いことを懸念するものである。 37.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、親の法的地位または出自に関わらず、すべての者に対して無償の出生登録を保障するよう促す。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いおよび処罰 38.委員会は、薬物依存の子どもおよび青少年、精神障害のある子どもおよび路上の状況にある子どもが、広範に行なわれている殴打、鞭打ち、および、これらの子どもの一部が強制的に措置された薬物リハビリテーション・センターおよび青年センターにおける電気ショックを含む拷問および不当な取扱いの対象にされているという訴えについて、深い懸念を表明する。 39.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 薬物治療リハビリテーション・センターであれ、社会的更生センターであれ、または政府が運営する他のいずれかのタイプのセンターであれ、いかなる形態の恣意的拘禁の対象とされている子どもも遅滞なく釈放されることを確保すること。 (b) これらのセンターにおける子どもの不当な取扱いおよび拷問の訴えが迅速に捜査され、かつ加害者が裁判にかけられることを確保すること。 (c) 拷問禁止委員会からすでに勧告されているとおり(CAT/C/KHM/CO/2、パラ20)、法執行官に対する苦情を受理し、かつ被害者に救済を提供する、子どもに配慮した独立機構を設置すること。 体罰 40.締約国が体罰禁止のためのさまざまな法律を採択してきたことには留意しながらも、委員会は、民法第1045条で「親権を有する者が必要な限度で個人的に懲戒を行なう」ことが認められていること、および、ドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律第8条で、しつけを目的とする子どもの体罰が黙示的に認められていることを懸念する。委員会は、体罰が、親および教員によって、文化的に受け入れられたしつけおよび規律のひとつの形態であるとしばしば見なされており、かつ締約国で広く行なわれていることを、懸念するものである。 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの体罰を認めている、民法第1045条およびドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律の規定を削除すること。 (b) 家庭を含むあらゆる場面における子どもの体罰を明示的に禁ずる法律を制定すること。 (c) 体罰を禁ずる法律が効果的に実施され、かつ、子どもに対する暴力の責任者に対し、法的手続が組織的に開始されることを確保すること。 (d) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響に関する公衆教育キャンペーン、意識啓発キャンペーンおよび社会的動員キャンペーンを導入するとともに、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育ておよび教育を促進すること。 (e) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を参照すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 42.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、ユニセフ、OHCHRおよび世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくにILO、ユネスコ、UNHCR、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、およびNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 43.委員会は、貧困家庭に対するサービス提供プログラムおよび国家家族相談政策委員会の設置を通じ、家族を基盤とするケアに焦点が当てられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、親から配慮、注意および温かさを向けられていないと申告する子どもの割合が高いことを懸念するものである。 44.委員会は、締約国が、条約第18条に照らし、国内外の組織と協力しながら既存の親向けの相談サービスを強化するとともに、たとえば乳幼児期のケア、親の指導および親の共同責任に関する親向けの研修を通じて、家族に関する教育および意識をさらに発展させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもに適切な配慮および注意を向けるために支援措置を必要としている家族をフォローアップするための子ども保護システムを構築することも、勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 45.子どもの代替的養護政策(2006年)および子どもの代替的養護に関する最低基準(2008年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、この政策を実施するためのプラーカス(省令)がまだ採択されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、2005年から2008年にかけて締約国の孤児院にいる子どもの人数が65%増加したこと、および、入所型養護が依然として最善の選択肢と見なされていることにも、深刻な懸念を表明するものである。委員会はまた、以下の以下の点についても懸念を覚える。 (a) 施設に措置された子どもの3分の1は、親の一方がまだ存在すること。 (b) 入所型養護施設の登録および監視が依然として不適切であること。 (c) 予算の配分が不十分であり、かつ十分な訓練を受けた児童養護ワーカーが存在しないため、締約国の政策および指針の効果的実施が妨げられていること。 46.委員会は、締約国に対し、子どもの代替的養護政策に関するプラーカスを速やかに採択するとともに、同政策および子どもの代替的養護に関する最低基準の全面的実施のために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、求める。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 児童福祉センターへの措置を回避するため、相談およびコミュニティを基盤とするプログラムを通じて子どもにとって最善の環境としての家族を促進し、かつ子どもの世話をできるよう親のエンパワーメントを図るために、効果的措置をとること。 (b) 家族を強化しかつ支援するための政策等も通じ、養護施設で生活する子どもの人数を減らすための包括的入所基準および戦略を策定するとともに、子どもの施設措置が最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。 (c) 施設に措置された子どもが家族に再統合できるようにするための機構を実施すること。 (d) 児童養護ワーカーを追加採用するとともに、これらのワーカーが、家庭型代替的養護措置を監視するための十分な訓練および報酬を受けることを確保すること。 (e) 「子どもの代替的養護に関する国連指針」(国連総会決議A/RES/64/142付属文書)〔PDF〕を考慮すること。 養子縁組 47.委員会は、2009年国際養子縁組法、および国際養子縁組当局の設置を歓迎する。しかしながら委員会は、法律の実施規則がまだ採択されていないこと、および、違法な国際養子縁組が国営施設職員の関与を得ていまなお行なわれているとの報告があり、かつこれらの訴えについて適正な調査がまったく行なわれていないことを懸念するものである。 48委員会はまた〔ママ〕、締約国に対し、国際養子縁組法を実施するためのプラーカスを遅滞なく採択するようにも促す。委員会はまた、締約国に対し、国際養子縁組に関して厳格な透明性およびフォローアップ管理を確保するとともに、違法な養子縁組および養子縁組目的の子どもの売買に関与した者を訴追することも促すものである。 虐待およびネグレクト 49.委員会は、女性および子どもに対するドメスティック・バイオレンス(性暴力を含む)が締約国において依然として深刻な問題であることに、深い懸念を表明する。2005年10月にドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律が採択されたことには留意しながらも、委員会は、コミューンおよび村の官吏に対してドメスティック・バイオレンスの被害者を保護するために行動する権限を付与するプラーカスがまだ発布されていないこと、および、子ども保護システムが締約国に存在しないことを、懸念するものである。委員会はさらに、ドメスティック・バイオレンスおよびジェンダーに基づく暴力が引き続き社会的に受け入れられており、かつ法執行機関によって広く容認されていることを懸念する。 50.委員会は、締約国に対し、ドメスティック・バイオレンスと闘うために即時的および効果的措置をとること、とくに以下の措置をとることを促す。 (a) ドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律の全面的実施のため、コミューンおよび村の官吏に対してドメスティック・バイオレンスの被害者を保護するために行動する権限を付与するプラーカスの速やかな採択を含む、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 児童虐待の通報、そのような通報への対応ならびにさらなる暴力を防止するための支援措置その他の措置の策定のためのシステムを含む子ども保護システムを設置するとともに、特定の地方当局に対して当該システムに関する明確な責任を担わせること。 (c) 子どもの性的虐待を含むドメスティック・バイオレンスについての信頼できるデータを収集し、かつ、子どもに対する暴力の問題の根本的原因および規模に関する研究を行なうこと。 (d) 被害者、とくに女性および女子による通報を妨げる公衆の態度および伝統を変革する目的で、ドメスティック・バイオレンスの問題に関するキャンペーンを含む全国的な意識啓発プログラムの調整を行なうこと。 (e) プライバシーに対する権利を含む子どもの権利の保障を正当に考慮しながら、子どもに配慮した司法手続を通じてドメスティック・バイオレンスの事案を捜査し、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 E.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害のある人の権利の促進および保護に関する法律(2009年7月)および2008年障害児教育政策の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点を懸念するものである。 (a) 障害のある子どもおよび障害の種別に関する正確なかつ細分化された統計データが存在しないこと。 (b) 締約国が障害の早期スクリーニング、発見、早期介入および予防のためのシステムを有していないこと。 (c) 障害のある子ども、とくに遠隔地(たとえば北東諸州)に住んでいる子どもおよび精神障害のある子どもが、依然として社会で著しく周縁化され、自分自身の家族からも拒絶され、かつ、とくに保健サービスおよび教育サービスへのアクセスの点で非常に差別されていること。 (d) 障害のある子どものためのサービスのほとんどがNGOによって提供されていること。 52.委員会は、締約国に対し、とくに必要な人的資源、技術的資源および財源を配分することによって、障害のある人の権利の促進および保護に関する法律および2008年障害児教育政策の効果的実施を確保するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 年齢、性別、障害の種別、地理的所在、民族および社会経済的背景によって細分化された、障害のある子どもに関する包括的データを収集するとともに、障害の原因を分析し、かつ障害の予防および障害のある子どもの援助のための政策およびプログラムを策定する際に当該データを活用すること。 (b) 障害の早期スクリーニング、発見、早期介入および予防に関する政策を採択すること。 (c) 障害のある子どものための基礎的サービスが国の責任で提供されることを確保すること。 (d) とくに農村部において、より多くの保健専門家を養成し、かつ障害のある子どもに保健サービスを提供する移動診療所を実施すること。 (e) メディア、市民社会組織およびコミュニティの指導者の援助を得ながら、障害のある子どもの権利に関する意識を高め、かつこれらの子どもに対する差別と闘うためのプログラムを実施すること。 (f) 普通教育および特別教育の質を向上させるとともに、さまざまな障害種別に適合した非公式教育プログラムおよび包括的かつ定期的な教員研修をさらに発展させること。 (g) 障害のある人の権利に関する国際条約を批准すること。 (h) 障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 健康および保健サービス 53.保健制度を発展させるために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、とくに遠隔地において保健サービスの利用可能性、アクセス可能性、質および実際の利用が限られていること、熟練の保健従事者が広範に不足していること、ならびに、保健ケアへのアクセスおよびその利用について農村部と都市部の間に根強い不平等が存在することを、懸念する。委員会はまた、以下の点についても特段の懸念を表明するものである。 (a) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率が依然として高いこと。 (b) 締約国の5歳未満児の半数が低体重であること。 (c) 下痢および肺炎のような予防可能かつ治療可能な疾病により、締約国で毎日推定100名の子どもが死亡していること。 (d) 路上の状況にある子どもを含む貧しい子どもを対象とする、無償の医療サービスが存在しないこと。 (e) 締約国で子ども向けの精神保健サービスが深刻に不足していること。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての州を通じて無償のプライマリーヘルスケア・サービスへのアクセスを拡大するとともに、都市部および農村部双方の人々の利益となるようなやり方でこれらのサービスを提供するため、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (b) 産前および分娩時のケアを改善することも含め、新生児および乳幼児ならびに妊婦の死亡率を削減するための努力を強化すること。 (c) 5歳未満児の栄養不良の問題に包括的に対処するために緊急の措置をとること。 (d) 予防可能な子どもの健康問題(ヨウ素欠乏症、マラリア、下痢、急性呼吸器疾患、はしかおよび髄膜炎を含む)に対処するために緊急の行動をとること。 (e) WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、重度の精神保健上の問題を有する子どもおよび青少年を対象とした外来および入院による精神保健サービスを含む)を備えた、包括的かつ全国的な子どもの精神保健政策を策定すること。 (f) この点に関してとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めること。 思春期の健康 55.委員会は、有害物質濫用の問題(アルコール、タバコおよび薬物を含む)を有する青少年の割合が高いことに、深刻な懸念を表明する。青少年に関するその他の懸念は、職場における事故および負傷、HIV、性感染症およびリプロダクティブヘルスに関する問題に関わるものである。委員会は、これらの問題に対処し、かつ委員会の前回の勧告を実施するためにとられた措置が限られていることを懸念する。委員会はさらに、2009年には自殺が青少年の死因の筆頭であったことを深く懸念するものである。 56.委員会は、思春期の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブヘルス教育を強化するための基盤として、思春期の健康問題(精神保健を含む)の規模を判断するための包括的かつ学際的な研究を行なうべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/15/Add.128、パラ53)をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 青少年を対象とする、青少年にやさしくかつジェンダーに配慮したカウンセリング・サービスならびにケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させる努力を強化すること。 (b) 薬物を使用する子どもの依存脱却、解毒、治療、リハビリテーションおよび再統合のための介入が国際人権基準にしたがって行なわれることを確保するとともに、この目的のため、コミュニティを基盤とする薬物治療リハビリテーション・プログラムを発展させること。 (c) 若者の自殺およびその原因に関する詳細な研究を行なうとともに、この情報を活用して、ソーシャルワーカー、教員、ヘルスワーカーその他の関連の専門家と協力しながら、若者の自殺に関する国家的行動計画を策定しかつ実施すること。 (d) 思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)から指針を得ること。 HIV/AIDS 57.委員会は、締約国でHIV感染率が相当に下降したことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、HIV予防のための努力が、子どもをHIVの危険性にさらす複合的な脆弱性に積極的に対処するためには依然として不十分であることを懸念するものである。委員会はまた、HIV/AIDS関連プログラムのために配分される資源の水準が低下しており、かつ、HIVに関わる年間支出のうち締約国が負担しているのは9%に過ぎないことも懸念する。委員会はさらに、HIVに感染して家族から拒否された子どもに対し、教育の継続、生存、カウンセリング、里親養護ならびに虐待および搾取からの保護のための社会福祉上の支援が十分に提供されていないことを懸念するものである。 58.委員会は、締約国に対し、HIV予防統制国家戦略計画の全面的実施のために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、とくに公衆教育キャンペーンを通じ、HIV/AIDSとともに生きている子どもに対するスティグマおよび差別を防止するために必要な措置をとるよう、促す。委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針に対して締約国の注意を喚起するものである。 生活水準 59.貧困層および脆弱な立場に置かれた人々の関する国家戦略(NSPS)の採択には留意しながらも、委員会は、この10年間に見られた相当のかつ持続的な経済成長にも関わらず、この成長の利益が公平に配分されていないことを懸念する。人口の3分の1はいまなお貧困線以下の生活を送っており、かつ農村人口の5分の1しか衛生設備にアクセスできていないためである。委員会はまた、現行の社会的セーフティネットの取り組み(たとえば奨学金および労働の対価としての食料)の実施が断片的であり、かつその地理的対象範囲が限定されていることも懸念する。 60.委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場におかれた家族、とくに農村部に住んでいる家族に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障する努力を強化するよう、促す。 子どもおよび家族の立退き強制 61.土地収用法(2010年2月)および一時的定住に関する通達(2010年5月)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、権力の立場にある人々によって行なわれた土地の強奪および立退き強制の結果、数千の家族および子ども、とくに都市部の貧困家族、小規模農家および先住民族コミュニティがその土地を奪われ続けていることに、深い懸念を表明する。 62.委員会は、締約国に対し、土地所有権の合法性に関する決定が行なわれるまで、全国的に立退き強制を一時禁止するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、民間の活動および開発活動を理由とする立退き強制の結果、家族および子どもがホームレスとならないことを確保することも促すものである。委員会はさらに、締約国が、カンボジアの人権状況に関する特別報告者が土地および生計手段へのアクセスに関して行なった勧告(A/HRC/4/36およびA/HRC/7/42)を全面的に実施するよう勧告する。 母親とともに収監されている子ども 63.委員会は、母親とともに収監されている子ども、とくに、子どもの身体的、精神的および情緒的福祉にとって有害な条件のもと、過密状態にあるプノンペンのCC2刑務所ならびにタクマオ、コンポンチャムおよびコンポンチュナンの刑務所で暮らしている子どもについて、深刻な懸念を表明する。委員会は、子どもが食料および安全な飲料水を与えられておらず、母親が自分自身の配給食を子どもと分け合うことが期待されていること、および、子どもが、適切な換気設備のない監房に、著しく暑い環境のもと、結核のような感染症に罹患した者からも必ずしも隔離されないまま収容されていることが多いことを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、母親とともに収監されている子どもによる保健サービスへのアクセスが限られており、かついかなる形態の教育およびレクリエーション活動にもほぼまったくアクセスできていないことも懸念する。委員会はさらに、看守および他の受刑者による子どもの身体的虐待の事案について深刻に懸念するものである。 64.委員会は、締約国に対し、刑務所で暮らしている子どもおよびその母親の権利が尊重されることを確保するよう促す。委員会は、締約国に対し、母親およびその子どもに対して食料および保健サービスが提供され、かつ子どもが教育およびレクリエーション活動にアクセスできることを確保するため即時的措置をとるよう、促すものである。委員会はまた、締約国に対し、あらゆる形態の虐待から子どもを保護し、刑務所職員および他の収容者による子どもの虐待の報告をすべて調査し、かつ子どもに対する虐待の加害者に対して適切な懲戒措置をとるため、あらゆる必要な措置をとることも促す。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 65.委員会は、初等中等学校の就学率を高め、国全体で教育への公正なアクセスを確保し、かつジェンダー格差を縮小することに関して締約国が達成した目覚ましい進展に、満足感とともに留意する。委員会はまた、「万人のための教育」イニシアティブの実施に対する締約国のコミットメントも歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国で教育がいまなお義務ではないこと、GDPの1.9%しか教育に支出されていないこと、および、教育支出が2007年以降減少していることに懸念を表明する。委員会はまた、以下の点についても懸念を表明するものである。 (a) 障害のある子ども、民族的マイノリティ出身の子どもおよび先住民族の子どもが教育へのアクセスの面で著しく差別されていること。 (b) マイノリティ人口が多いラタナキリ州およびモンドルキリ州のような一部地域で、就学関連指標がとりわけ低いこと。 (c) 締約国で、とりわけ農村部において、学校インフラ(とくにトイレおよび飲料水のような便益ならびに生徒のための教材等)が不十分であること。 (d) 締約国は、教員に対する追加費用の支払いの問題について対応がとられていることを対話の過程で明らかにしたものの、教員の給与が依然として低いこと。締約国で行なわれている汚職の全般的水準により、試験を受ける生徒を合格させるために教員が金銭を受け取る可能性が生じている。 (e) 中退率、欠席率および留年率が依然として明らかに高くかつ上昇しており、かつ女子が男子よりもはるかにその影響を受けていること。 (f) 教育省による定期的監視を受けずに運営されている私立学校の数が増えていること。 (g) 教育の質、カリキュラムの適切性および遠隔地に対する教育サービスの提供が依然として課題となっていること。 (h) 就学前教育その他の乳幼児期の発達のための機会が、ほとんどの子ども、とくに都市部以外の子どもにとって基本的に手の届かないままであること。 (i) 職業教育に関する情報が締約国報告書に記載されていないこと。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 基礎教育を義務的なものとすること。 (b) 締約国全域で十分な学校施設を拡大し、建設しかつ再建する目的で教育部門に一層の資源を配分するとともに、障害のある子どもおよびすべてのマイノリティ出身の子どもを歓迎する真にインクルーシブな教育制度を創設すること。 (c) 教育制度におけるあらゆる形態の汚職を押しとどめるために必要な措置をとること。 (d) ラタナキリ州およびモンドルキリ州のようなマイノリティ人口が多い地域にとくに注意を払いながら、中退率および留年率に対処するためにいっそうの努力を行なうこと。 (e) 社会的動員キャンペーンを通じて教育に対する女子の権利を促進するために積極的措置をとるとともに、十分な訓練を受けた女性教員の人数を増やし、かつその安全を確保すること。 (f) クメール語の話者ではない者を対象とする二言語教育をさらに拡大すること。 (g) カリキュラムの改訂、双方向的学習手法の活用および訓練を受けた教員の雇用を通じ、教育の質の向上を促進すること。 (h) ホリスティックな乳幼児期発達教育プログラム(コミュニティを基盤とするプログラムを含む)をさらに発展させ、かつ、低所得家庭および農村部に住んでいる家庭の子どももこれらのプログラムにアクセスできることを確保すること。 (i) 青少年および早期に学校を離れた者に対し、職業教育を提供すること。 (j) 教育の目的に関する一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)を考慮すること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第30条、第32~36条) 経済的搾取(児童労働を含む) 67.最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画の採択、ならびに、ミレニアム開発目標に基づいて2015年までに働く子どもの人数を8%にまで削減することおよび2016年までに最悪の形態の児童労働に完全に終止符を打つことに対する締約国のコミットメントには留意しながらも、委員会は、締約国で150万人以上の子どもが経済活動を行なっており、かつおよそ25万人の子どもが最悪の形態の児童労働に従事していることに、懸念を表明する。委員会はまた、数千人の子どもが、とくに首都プノンペンにおいて、家事労働者として奴隷類似の条件下で働いていることも深刻に懸念するものである。 68.委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとることを通じて、児童労働法を全面的に執行しかつ最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画を実施するよう、促す。 (a) 児童労働を禁ずる国内法を強化すること。 (b) これとの関連で、子どもの家事労働者が置かれた権利を侵害されやすい状況に国際基準にしたがって対処することに優先的に取り組むこと。 (c) 労働査察官を増員し、かつ、不法な児童労働を利用した者に罰金および刑事制裁が科されることを確保すること。 (d) 法執行官、検察官および裁判官を対象とする義務的研修を開催すること。 (e) 働いていた子どもの回復および教育機会へのアクセスをジェンダーに配慮したやり方で促進するため、適当な措置をとること。 路上の状況にある子ども 69.委員会は、路上の状況にある子どもの問題に対処し、かつこれらの子どもに十分な援助を提供するための具体的な機構および資源が存在しないことに、懸念を表明する。委員会は、2008年初頭に行なわれたもののような、警察が実施する「路上一掃」作戦についてとりわけ懸念するものである。これらの作戦の期間中、路上の状況にある多くの子どもが、社会問題省プノンペン局が運営する2か所の更生センター(コー・ロムドールおよびプレイ・スプー)に送致され、不法に監禁され、かつさまざまな虐待を受け、なかには死亡に至った事例(自殺によるものも含む)も存在する。 70.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 路上の状況にある子どもを保護し、これらの子どもが回復および再統合のためのサービスを提供されることを確保し、かつ、これらの子どもを家族と再結合させることを目的とした、家族およびコミュニティを基盤とする介入策を優先的に実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 「路上一掃作戦」の実行および路上の状況にある子どもの犯罪者扱いを中止するとともに、これらの子どもの状況に、その権利および尊厳を尊重する方法で対処すること。 (c) コー・ロムドールおよびプレイ・スプーの両センターにおける子どもの拘禁および虐待について独立した立場からの調査を開始し、かつ、これらの調査の成果に関する包括的情報を次回の定期報告書で提供すること。 性的搾取および虐待 71.委員会は、締約国で数千人の子どもが搾取により売春をさせられており、かつ子どもの強姦が締約国で増加していること、ならびに、性的虐待および搾取のほとんどが締約国の国民によって行なわれていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、児童セックス・ツーリズムが近年増加していること、および、憂慮すべき割合の子どもがとくにインターネットを通じて性暴力およびポルノグラフィーにさらされていることも、深刻に懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) とくに、法執行機関が奨励する、性的虐待事件における示談および賠償の慣行が広く行なわれていることを理由として、子どもの性的虐待および搾取の加害者がめったに訴追されないこと。 (b) 性犯罪者に対して、かつ未成年の女子が性的に搾取されている売春宿その他の性的施設の経営者に対してとられる措置が限られていること。 (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものための心理社会的リハビリテーション・サービスおよびシェルターがもっぱら首都に集中しており、かつもっぱら非政府組織によって運営されていること。 72.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対して性犯罪を行なった者がしかるべき形で裁判にかけられ、かつ適当な処罰による制裁を受けることを確保する目的で、性的搾取および虐待を犯罪化した法律を実施するための努力を強化すること。 (b) セックス・ツーリズムを可能にし、その便宜を図りまたはこれを悪化させる個人および事業者を非難し、かつこれらの個人および事業者に対して積極的措置をとること。 (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものためのシェルターを設置し、かつリハビリテーション、回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 子どもの売買および人身取引 73.委員会は、子どもの人身取引と闘うために締約国がとった多数の措置、とくに、中央および州のレベルに人身取引対策・少年問題局が設置されたことおよび人身取引警察班が創設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および強制労働目的の人身取引の対象とされ続けていることを懸念するものである。委員会はまた、人身取引を行なった者の訴追件数および有罪判決数が少ないことについて経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会が2009年に表明した懸念(E/C.12/KHM/CO/1、パラ26)も共有する。 74.委員会は、とくに犯罪者を訴追しかつ有罪とし、人身取引を防止するためのプログラムおよび広報キャンペーンを支援し、法執行官、検察官および裁判官を対象として人身取引禁止法制に関する義務的研修を実施し、かつ、被害者を対象とする医学的、心理的および法的支援の提供を増強することにより、締約国が、性的搾取および強制労働を目的とした人(とくに女性および子ども)の売買および取引と闘うための努力を強化するよう、勧告する。 難民および庇護希望者 75.2009年に20名のウイグル人庇護希望者(子ども2名を含む)が中国に強制送還されたことについて、とくに拷問禁止委員会によって表明された懸念(CAT/C/KHM/CO/2、パラ24)を共有しつつ、委員会は、締約国に対し、国際難民法および国際人権法(条約を含む)にしたがってノン・ルフールマンの原則を遵守するよう促す。 少年司法の運営 76.委員会は、新刑事訴訟法(2007年)および刑法(2009年)第1編によって警察による子どもの留置および子どもの審判前勾留に制限が課されたこと、ならびに、刑事責任に関する最低年齢が14歳と定められたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子ども裁判所または子どもの権利を専門とする裁判官もしくは検察官が存在しないこと、子どもが裁判所によって成人として刑を言い渡されることが多いこと、および、子どもが一般的に成人刑務所に収容されていることを懸念するものである。委員会は、さらに以下の懸念を表明する。 (a) 重罪事件における加重事由法(2001年)が、2名以上の犯罪者によって行なわれた窃盗について刑を加重することとしており、量刑に関しておとなとこどもを区別していないこと。 (b) 圧倒的多数の子どもが審判開始まで弁護士と接見していないこと。 (c) 近年、拘禁される子どもの人数が憂慮すべき増加を見せており、かつ、法律が選択肢を定めているにも関わらず、拘禁に代わる手段がめったに利用されていないこと。 (d) 刑務所への子どもの収容のおよそ半数が審判前勾留であり、かつ2か月の法定期限を超えている例が多いこと。 (e) 子どもが収容されている拘禁センターで一般的な生活環境が劣悪であり、かつ悪化していること。 (f) 拘禁された子どもが教育または職業訓練にまったくまたはほとんどアクセスできず、かつカウンセリング・サービス(薬物依存およびアルコール依存に関するものも含む)およびレクリエーション活動へのアクセスも限られていること。 (g) 刑務所に収容された子どもの状況の監視が深刻に制限されていること。 (h) 更生プログラムが存在せず、かつ、法律に関わることになった子どもに対応する、特別訓練を受けた職員およびソーシャルワーカーの人数も限られていること。 77.委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告する。とくに、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 国の全域で専門の少年裁判所を設置すること。 (b) いかなる子どもも、法律に関わることになったまたは法律に触れた際、とくに逮捕および捜査の段階において、虐待および拷問の対象とされないことを確保すること。 (c) 被害を受けた子どもおよび罪を問われた子どもの双方に対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、十分な法的その他の援助を提供すること。 (d) 自由を奪われまたは更生センターもしくは拘禁施設に措置された子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。 (e) いずれかの形態で自由を奪われた子どもに対し、措置決定の再審査を受ける権利を認めること。 (f) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (g) UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOも参加する「少年司法に関する機関横断パネル」に対し、少年司法および警察の研修の分野でさらなる技術的援助を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 78.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 ベトナム系の子ども 79.委員会は、ベトナム系の子どもがいまなお市民として認められていないことにより、このような子どもが、身分証明書類にアクセスできないまま劣悪なかつ隔離された環境で生活しており、かつ人身取引および搾取の被害を非常に受けやすい状況に置かれていることを、懸念する。委員会は、ベトナム系の女子および若い女性の社会経済的地位が低いことにより、その3分の1が売春のために売られているという報告があることを、とくに懸念するものである。 80.委員会は、締約国に対し、ベトナム系の子どもが差別を受けていることを認めるとともに、これらの子どもが置かれた状況に対処し、かつこれらの子どもが出生登録、身分証明書類、公教育および保健ケア・サービスに効果的にアクセスできることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、ベトナム系の子どもに対する差別を終わらせ、かつ当該コミュニティに属する女性および女子の性的搾取および虐待を防止するためにとられた措置に関する情報を、次回の定期報告書で提供するよう促すものである。 H.国際人権文書の批准 81.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約の両選択議定書に関する第1回報告書を速やかに提出するよう求める。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、障害のある人の権利に関する条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を含むすべての中核的人権文書に加入することも、奨励するものである。 I.地域機関および国際機関との協力 82.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、ASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。 J.フォローアップおよび普及 83.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会および州評議会の構成員ならびに適用可能なときは他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 84.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 85.委員会は、締約国に対し、次回の第4回~第6回統合報告書を2018年5月13日までに提出するよう慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月8日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/99.html
総括所見:モンゴル(第2回・2005年) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.264(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月26日に開かれた第1040回および第1041回会合(CRC/C/SR.1040 and 1041参照)においてモンゴルの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書を歓迎するものの、その提出が遅かったことおよび当該報告書が報告ガイドラインに全面的にしたがっていないことを遺憾に思う。委員会はまた、有用な統計データその他の詳細な情報が記載され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/MNG/2)に対する文書回答の提出も歓迎するものである。委員会はさらに、率直な対話の過程で追加的情報の提供のためハイレベルな代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のもののような、子どもの権利の保護および促進を目的とする法律が採択されたことに留意する。 (a) 子どもの特別な保護に関する行動のための法的枠組みを定めた子どもの権利保護法の採択(1996年)。 (b) とくに両親を失って法定後見人のいない子どもおよび障害のある子どものための社会手当の種別および適用範囲について定めた社会福祉法の採択(1998年)。 (c) とくに子どもに対する専門的医療ケアの提供について定めた保健法の採択(1998年)。 (d) とくに未成年者の雇用およびその労働条件について規制する労働法の採択(1999年)。 (e) とくに親の責任ならびに養子縁組、監護および養育費に関する規則について定めた家族法の採択(1999年)。 (f) モンゴル国家人権委員会法の採択(2000年)および同委員会の設置。 (g) 少年が行なった犯罪ならびに子ども、家族および社会に対して行なわれた犯罪について独立の条項を導入した刑事訴訟法改正(2002年)。 (h) ドメスティック・バイオレンスと闘いおよびこれを防止することならびに被害者(被害を受けた子どもを含む)の人権を保護することを目的とする、ドメスティック・バイオレンス禁止法の採択(2004年)。 4.モンゴルにおける子どもの権利および地位に関して、委員会は、数次のテーマ年(1997年の子ども年、1998年の若者年、2000年の子どもの発達年、2001年の障害市民支援年など)を宣言しかつ全国子どもサミット(2004年)を開催することにより、この問題の重要性を強調しようとする締約国の継続的努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもの社会サービスのための予算配分を増加させるための締約国の努力にも、満足感とともに留意するものである。 5.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎する。 (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(2000年4月)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(1999年)(2001年2月)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年1月)。 (d) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2002年3月)。 (e) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)(2002年12月)。 (f) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2003年6月)。 (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2004年10月)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、1991年にモンゴルで始まった経済的移行が相対的に迅速であり、かつモンゴル社会に広範な影響をもたらしてきたことに留意する。経済的不安定、失業および貧困の増加は、家族、とくに子どもが多い家族および遠隔地に住んでいる家族に影響を及ぼしてきた。 委員会は、土地面積が広大であり、かつ人口密度がきわめて低いという、締約国の特有の性質に留意するものである。加えて、委員会は、1999年から2001年にかけての例外的に困難な気候条件(厳しい冬および雪害ならびに夏季の旱魃と冬季の著しい寒さおよび吹雪の組み合わせ)も多くの経済的および社会的困難を発生させてきたことを認知する。これらの要因は締約国の全般的発展に悪影響を及ぼし、とくに最遠隔地の数千人の子どもの生活に影響を与えてきた。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.32)の検討後に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.48)について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに農村部における男子の学校中退およびこれらの子どもが児童労働に関与することの防止(パラ23)、農村部の子どもによる基礎的サービス(保健、教育および社会的養護)へのアクセスの強化(パラ23)、障害児による基礎的サービスへのアクセスの国全体での強化(パラ23)、子どもの難民の権利の促進および保護(パラ26)、中央および地方のレベルにおける資源の賢明な配分(パラ27)ならびに法律に触れた子どもの権利(パラ29)に関するものについては、十分な対応が行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 9.委員会は、子どもの権利の保護を強化するためにとられたさまざまな立法措置を含む、締約国における包括的な法改正を歓迎する。国内法の分野で締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、実施措置の数が不十分であることによって法律と実践が乖離する傾向にあることを懸念するものである。加えて、委員会は、国内法に矛盾する規定が若干ある(たとえば、義務教育〔修了〕年齢が17歳であるのに対し、労働法は14歳および15歳の子どもが週30時間を上限として働くことを認めている)ことから、子どもが十分な保護を受けられないままになっていることを懸念する。 10.委員会は、締約国が、最近採択された法律を含む国内法の効果的実施のため、十分な財源および人的資源の提供を含むあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの保護に関して存在する可能性がある乖離を特定するため、国内法の見直しを行なうことも勧告するものである。 調整および国家的行動計画 11.委員会は、子どもの発達に関する国家行動計画(1990~2000年)の実施において獲得された積極的成果に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、締約国が採択した第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)、および、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」のフォローアップに対する締約国のコミットメントも歓迎するものである。委員会は、2004年9月に採択された国家子ども局の新しい体制および戦略に留意するものの、部門横断型のおよび国以下のレベルにおける調整を促進するための包括的な戦略計画が存在せず、かつ、国家子ども局の新しいアプローチに関する、あらゆるレベルの機関を対象とした研修が限られていることを、懸念する。 12.委員会は、締約国が、第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)の全面的および効果的実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供し、かつ、同計画の実施のために権利を基盤とする、開かれた、協議に基づく参加型のプロセスを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、条約の実施に関わるあらゆるレベルでの調整を目的とした包括的な戦略計画を策定し、国家子ども局の新しいアプローチに応じた十分な情報提供および研修を行ない、かつ、国家子ども局の調整活動について次回の報告書で委員会に情報を提供するよう、勧告するものである。 独立の監視 13.委員会は、国家人権委員会が2001年に設置されたこと、および、とくに、3名の委員のうち1名に子どもの権利に関する権限を委ねると決定されたことを歓迎する。委員会はまた、現在、別個の子どもオンブズパーソンの設置が検討されていることにも留意するものである。 14.独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会が十分な人的資源、財源および技術的資源を提供されること、ならびに、条約の実施における国および地方のレベルでの進展を監視しおよび評価しならびに子どもからの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応する便益を有することを確保するよう、促す。委員会は、締約国が、別個の子どもオンブズパーソンの設置の検討に関わって進められている議論を加速させるよう提案するものである。さらに、委員会は、締約国が、グッド・ガバナンスのための戦略を策定しかつ汚職と闘うために適当な措置をとるよう勧告する。 資源配分 15.委員会は、子どもの福祉のための予算策定および国内資源の動員に関する20/20イニシアティブを実施することにより、締約国が、子どもの社会サービス、保健および教育への資源配分を優先させていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための予算配分額が、子どもの権利の促進および保護に関する国および地方のニーズに応えるにはいまなお不十分であることに、懸念を表明する。委員会は、子どもに提供されるサービスに関する農村部と都市部間の格差について、とりわけ懸念するものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利の実現のために配分される予算の割合を増やすとともに、この流れにおいて、権利の享受に関する農村部と都市部間の差別を解消する目的で、農村部の小規模コミュニティおよび遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら十分な人的資源の提供(国際協力を通じてのものも含む)を確保し、かつ子ども政策の実施が優先されることを保障すること。 (b) 国際金融機関および国連機関ならびに二国間ドナーと引き続き協力すること。 データ収集 17.委員会は、モンゴルの経済移行期により統計システムの相当な変更が必要となったことを認知する。委員会は、とくに第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)のための基準データを提供する「子ども発達調査2000」のような、統計の編纂における締約国の努力に、評価の意とともに留意するものである。締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、データ収集が十分に発展しておらず、かつ条約が対象とするすべての分野に関して細分化されたものとなっていないことに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とりわけ脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、農村部に住んでいる子ども、移住者の子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、ストリートチルドレン、法律に触れた子どもおよびマイノリティに属する子どもなど)をとくに重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ条約のすべての分野を網羅する目的で、国家的統計システムにおける体系的データ収集を引き続き発展させること。 (b) すべてのデータおよび指標が、条約を効果的に実施するための政策、プログラムおよびプロジェクトを立案し、監視しかつ評価する目的で活用されることを確保すること。 (c) これらの統計を公表し、かつ統計情報を公衆が広く利用できるようにするための革新的方法を追求すること。 (d) この点に関してとくに国連児童基金(ユニセフ)と引き続き連携すること。 条約の普及 19.とくにモンゴル子ども全国フォーラム(1998年および2001年)、子どもの問題に焦点を当てたテーマ年ならびに定期的な研修活動を通じ、条約の原則および規定に関する情報を普及するために行なわれた努力を歓迎しつつ、委員会は、これらの措置が望ましい程度の効果を発揮していないことに懸念を表明する。条約が社会のすべてのレベルで普及されているわけではなく、かつ、とくに農村部においておよびマイノリティの間で地域格差が存在する。 20.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が、国際機関および非政府組織と連携しながら実施されてきたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの措置をさらに強化し、かつ継続的、包括的かつ体系的に実施する必要があるとの見解に立つものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに地方レベルでおよびマイノリティの間でならびにメディアを通じて条約を促進するための、より創造的かつ子どもにやさしい手法を発展させること。 (b) 条約、その原則および規定を学校カリキュラムに含めること。 (c) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員、学校および施設の管理者ならびにソーシャルワーカーおよびジャーナリストなど)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を実施するための努力を引き続き強化すること。 (d) とくにユニセフ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)および国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の技術的援助を引き続き求めること。 2.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、モンゴル憲法(1992年)および子どもの権利保護法(1996年)の制定のような、子どもに対する差別の禁止の原則を促進するためにとられた措置を評価する。これらはいずれも、モンゴル法の適用においてすべての子どもが平等の地位にあることを保障するものである。しかしながら委員会は、障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、ストリートチルドレン、農村部に住んでいる子どもおよび農村部から移住して公式に登録されることなく首都で生活している子どもが、とくに十分な社会サービスおよび保健サービスならびに教育上の便益のアクセスに関して、根強い事実上の差別に直面していることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる事由による、および脆弱な立場に置かれたあらゆる集団の子どもに対する事実上の差別を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するとともに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを対象とする社会サービス保健サービスならびに平等な教育機会を優先させるよう、勧告するものである。 24.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明しかつ社会に参加する子どもの権利の促進および尊重のために締約国がとった行動に、大いなる評価の意とともに留意する。締約国がそのためにとった手段には、一連のミニ国連会議、ミニ議会およびミニ政府(1998年および1999年)、モンゴルの子ども全国フォーラム(1998年および2001年)ならびに全国子どもサミット(2004年)の開催、ならびに、モンゴルの10代の権利に対応しようとする試みが含まれる。しかしながら委員会は、締約国における伝統的態度により、家庭、学校およびコミュニティ一般で自由に意見を表明する子どもの権利が制約されている可能性があることを、依然として懸念するものである。 26.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が、すべての子ども、とくに女子の意見の尊重を促進するとともに、家庭、学校その他の施設における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加の便宜を図るための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案および裁判所の決定ならびにプログラムの実施および子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。 3.市民的権利および自由 出生登録 27.委員会は、出生後直ちに登録される子どもの権利の実施における欠陥についての懸念をあらためて表明する。委員会は、新生児の登録に際して課される手数料が、貧困家庭にとっては金銭的障壁となる場合があり、かつ出生登録を妨げないまでも遅らせる傾向があることに、特段の懸念とともに留意するものである。加えて、出生登録の遅延は追加の手数料の対象となる。 28.委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地まで対象とするための移動出生登録班および意識啓発キャンペーンの導入等も通じ、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を実施するよう、勧告する。 体罰 29.委員会は、子どもの体罰がモンゴルで依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭において、かつ学校その他の施設のような体罰が公式には禁じられている場所においても、いまなお行なわれていることを懸念する。委員会はさらに、モンゴル法が家庭における体罰を明示的に禁じていないことにも、懸念とともに留意するものである。 30.委員会は、締約国に対し、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の慣行を防止しかつこれと闘うとともに、家庭における体罰を法律で明示的に禁止するよう、促す。委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革する目的で、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを子どもの関与を得ながら導入するとともに、この点に関する非政府機関との協力を強化するよう、勧告するものである。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 31.委員会は、ひとり親が世帯主である家族の数が増えており、かつこのような家族が社会経済的困難に直面していること、および、一般的に父親は限られた限度でしか親責任を担っていない場合が多いことを懸念する。 32.委員会は、締約国が、ひとり親家族およびとくに困難な状況下で暮らしている家族に注意を払いながら、親および家族に対して可能なかぎり必要な金銭的その他の支援を提供するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。子どもの養育および発達については双方の親が責任を有するという原則に関して、委員会は、共同親責任の考え方を支えかつ促進する法律、政策および教育プログラムを発展させるよう締約国に対して促した、女性差別撤廃委員会が2001年に採択した勧告(A/56/38、パラ269-270)を支持するものである。 家庭環境を奪われた子ども 33.委員会は、自宅を逃げ出して児童養護センターに措置された子どもを含む、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていることを懸念する。家族法第25条9項を参照しつつ、委員会は、措置手続が条約の原則および規定に全面的に一致していないとの見解に立つものである。 34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境から子どもを分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすための防止措置を直ちにとること。 (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的権威者グループによるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査がさらなる再審査の対象とされることを確保すること。 (c) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって伝統的な里親養護制度を発展させ、かつ家族を基盤とするその他の形態の代替的養護を発展させるための努力を強化すること。 (d) 親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラム等も通じ、親および法定保護者が子どもの養育責任を遂行するにあたって適切な援助および支援サービスを提供すること。 養子縁組 35.委員会は、養子縁組に関する家族法の規定の制定(1999年)、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准(2000年)および「モンゴル国籍の子どもを養子縁組のために外国人市民に与えること」に関する規則の採択を含め、国内養子縁組および国際養子縁組の双方を規制するために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の古くからの伝統、および国際養子縁組の相対的少なさに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の国内法がまだ条約の原則および規定に全面的に一致していないことを、依然として懸念する。 36.委員会は、締約国が、里親養護および養子縁組の手続が条約の原則および規定に全面的に一致する形で、かつ資格および権限のある、効率的かつ学際的な人材および機関によって処理されることを確保するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 37.締約国が、子どもに対する虐待および暴力の甚大な規模および否定的影響を認識しており、かつ防止のための措置をとってきたことは認知しながらも、委員会は、この問題が根強く残っていることを依然として懸念する。委員会は、子どもを近親姦から保護するための法的枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。 38.家庭および学校における子どもへの暴力(CRC/C/111参照)ならびに子どもに対する国家の暴力(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに2004年5月に採択されたドメスティック・バイオレンス禁止法を実施することにより、家庭における家族間暴力(身体的か精神的かは問わず、かつ女性に対する暴力を含む)に対応しおよびこれを予防し、ならびに子どもがこの種の暴力から全面的に保護されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 家族間暴力の現象および社会一般における暴力を防止しかつ減少させる目的で、子どもに対する暴力の問題の根本的原因および規模に関する研究を行なうこと。 (c) 近親姦から子どもを保護するための法的枠組みを確立すること、通報機構に対する子どもおよびおとなのアクセスを向上させること、3ケタの電話番号で24時間開設されているフリーダイヤルの電話ヘルプラインを全面的に支援すること、ならびに、事案の捜査および有責者の訴追の件数を増やすこと等も通じ、子どもの性的虐待を終わらせるための措置をとること。 (d) 被害者、とくに女性および女子の通報を妨げる公衆の態度および伝統を変革することを目的として、家族間暴力の問題に関する公衆の意識啓発を図るとともに、この分野で活動している非政府組織(全国暴力反対センターなど)との協力を強化すること。 (e) 子どもにやさしい司法手続を通じて家族間暴力および性的虐待の事案を捜査するとともに、プライバシーに対する子どもの権利の保障を正当に考慮しながら、加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 (f) 子どもに対する性的虐待および暴力の被害を受けた子どもおよび加害者がカウンセリングならびに回復および再統合に関連するその他のサービスに十分にアクセスできるようにするため、児童精神科医、心理学者、ソーシャルワーカーその他の専門家の不足に対応すること。 保育サービス 39.委員会は、保育施設および就学前施設のようなサービスで利用可能な定員が不十分であるように思われ、かつこの点に関して顕著な地域格差があることを懸念する。 40.条約第18条3項に照らし、委員会は、締約国が、地域間の平等に特段の注意を払いながら、保育施設および就学前施設の定員を増加させるために即時的措置をとるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 41.委員会は、障害のある子どもの状況について重大な懸念を表明するとともに、これらの子どもに対する差別を遺憾に思う。障害のある子どものためのサービスの大多数が都市部に存在することには留意しながらも、委員会は、国の農村部に住んでいる障害児およびこれらの子どもが直面している困難な社会経済的境遇について、とくに懸念を覚えるものである。障害のある人の権利について定めた法律および1999年に採択された障害市民状況改善国家計画には留意しながらも、委員会は、障害のある子どもを支援する効果的な政策、基礎k的サービスおよび調整が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもが物理的環境にアクセスできるようにするための法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、社会サービスおよび保健サービスにも教育サービスにも十分にアクセスできていない障害児が多いことにも、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、障害のある子どもに関する十分な統計データが存在しないこと、および、障害のある子どもへの偏見が存在することに懸念を表明するものである。 42.委員会は、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する基準規則および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らして以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を主導しかつ計画するとともに、当該計画を実施するために必要な財源および人的資源を配分すること。 (b) 国の農村部に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分なかつ細分化された統計データを収集するとともに、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際に当該データを活用すること。 (c) 障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、ならびに生活のあらゆる分野に障害のある子どもが完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (d) 障害のある子どもを可能なかぎり主流の学校制度に包摂するためにあらゆる必要な措置とり、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (e) 障害のある子どもが物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにするための措置をとること。 (f) 公衆の否定的態度を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する、モンゴル社会に深く根づいた障害児に対する偏見を理由とする〔不十分な〕意識を高めること。 健康および保健サービス 43.プライマリーヘルスケアを向上させるための締約国の努力、とくに全国予防接種計画(1993~2000年)の実施が成功した結果としての感染症(はしか、髄膜炎および下痢など)の予防には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスへのアクセスの面で地域格差があること、妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率がともに高く、かつこの点に関して地域的差異があること、ならびに、子どもの間で栄養不良が蔓延している状況があることを懸念する。委員会は、完全母乳育児率が下降していること、および、締約国がまだ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択していないことに、懸念とともに留意するものである。医薬品の使用および作用に関する知識が貧弱であり、かつ負担可能な小児薬へのアクセスが限られていることは、若干の深刻な懸念の理由となる。委員会は、同国において衛生状態が劣悪であること、環境汚染の問題が生じていること、および清潔かつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが、保健サービスおよび社会サービスにきわめて限られた形でしかアクセスできていないことを、懸念する。 44.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう強く勧告する。 (a) 同国のすべての地域の子ども(同国の最遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保するため、保健部門に対して財源および人的資源を優先的に配分すること。 (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを改善し、かつ妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率を相当に削減するための努力を継続すること。 (c) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択するとともに、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を奨励すること。 (d) 農村部の子どもに特段の注意を払いながら、たとえば学校栄養プログラムを通じて子どもの栄養状態を向上させること。 (e) 子どものさまざまな健康状態の予防および治療に用いられる安全かつ負担可能な薬への平等なアクセスを確保するとともに、医薬品の使用および作用に関する意識を高めること。 (f) 同国のすべての地域で安全かつ清潔な飲料水および衛生設備へのアクセスを確保し、かつ環境汚染の影響から子どもを保護すること。 (g) 同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが保健サービスおよび社会サービスに平等にアクセスできることを促進するため、これらの子どもの健康状況に注意を払うこと。 思春期の健康 45.委員会は、「生徒と青少年の健康に関する国家リプロダクティブ計画」および「健康推進学校」キャンペーンを実施することにより、学校で思春期の健康および健康教育を促進するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、定期的身体検査が行なわれていないことおよび学校の児童生徒の健康に関する統計データが存在しないことを含め、学校保健サービスの数が限られていることを懸念するものである。加えて、委員会は、喫煙、アルコール消費および薬物濫用のような、生活様式の要因に関連した非感染性疾患に関わる思春期の健康に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。 46.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育等も通じて思春期の健康を促進し、かつ学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)を導入する努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、学校に通っていない青少年に対して健康に関する同一の教育、情報およびサービスが提供されることを確保するよう、勧告するものである。青少年の喫煙、アルコール消費および薬物濫用を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告する。 HIV/AIDS 47.委員会は、同国のHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、とくにHIV/AIDS対応国家戦略、公衆衛生国家政策、国家リプロダクティブヘルス計画、HIV/AIDS予防法および国家感染症計画を実施することにより、HIV/AIDSおよび性感染症(STI)を予防するために締約国が行なった努力を心強く思う。締約国がとった前向きな措置にも関わらず、委員会は、若いセックスワーカーが増えていることのような、これらの若者をHIVに感染しやすくするリスク要因が存在することに、懸念を表明するものである。 48.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、HIV/AIDSの流行を予防するための努力を強化し、かつ、青少年、とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する青少年の間で引き続きHIV/AIDSに関する意識啓発を図るよう、勧告する。 生活水準 49.委員会は、締約国の貧困率が根強く高いままであることを深く懸念する。委員会は、農村部からの移住の増加の結果、貧困がいっそう都市化されつつあり、かつ、このような変化によって、路上で生活する子どものような一連の新たな社会問題が生み出されていることに留意するものである。とくに、最低限の所得しか得ていない家庭で暮らしている子どもと対象とした「希望のお金」手当制度の採択(2004年)、ならびに、貧困削減のための計画、プログラムおよびプロジェクトを実施するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、十分な生活水準(十分な住居その他の基礎的サービスを含む)に対する権利を享受していない子どもが同国の都市部においても農村部においても多いことについての懸念を、あらためて表明する。 50.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、支援および物的援助を必要としている経済的に不利な立場におかれた家族に特段の注意を払いながら、貧困削減のための国家的計画およびプログラムを引き続き優先的課題として実施するとともに、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 51.1995年に採択された改正教育法を実施することにより、教育水準を向上させ、かつ教育へのアクセスを保障しようとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに同国の農村部の子どもが教育へのアクセスおよび通学への面で依然として困難に遭遇していることを懸念する。とくに農村部において、初等学校相当年齢の未就学児が多いこと(就学面のジェンダー格差および地域格差も含む)、非識字率が上昇していることおよび学校中退率が高いことは、深刻な懸念の理由となるものである。 52.委員会は、牧民家族に属する子どもおよび農村部に住んでいる男子の間で、学校を中退し、かつ児童労働に従事するようになるおそれがより高いことについての懸念をあらためて表明する。委員会は、学校で徴収される追加費用が多くの子どもにとって金銭的障壁となっており、かつ教育への平等なアクセスの否定につながっていることに、特段の懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、子どもが学校で暴力を受ける事件が報告されていること、および学校の便益に欠陥があること(教室の定員数が不十分であることおよび教科書の質が低いことを含む)を懸念する。委員会は、学校寮を建設しかつ改修しようとする締約国の努力には留意するものの、その環境が劣悪であることおよび子どもの受け入れ能力が限られていることを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、以下の目的で十分な財源および人的資源を配分するための措置を直ちにとるよう勧告する。 (a) 同国全域のすべての子どもが、ジェンダーによるいかなる区別もいかなる金銭的障壁もなく良質な教育に平等にアクセスできることを漸進的に確保するとともに、子どもが教育に容易にアクセスできるようにする目的で、子どもの居住地にある学校の地位を回復させることも検討すること。 (b) 初等中等教育における就学率をいかなる地域格差もなく高めることを目的とした措置を強化し、かつ、すべての子どもが教育を修了する平等な機会を有することを確保すること。 (c) とくに農村部の子どもの学校中退率を低下させるための効果的措置を採択しかつ実施する努力を強化すること。 (d) 非識字率の上昇に対応するための追加的措置をとること。 (e) 中等学校段階における、かつ一度も学校に通ったことのないまたは修了前に中退した青少年を対象とした、職業訓練のための便益を拡大すること。 (f) 教員に対して適切な研修を行なうことにより、教授法の質を高めること。 (g) 学校を新設し、かつ、学校における暖房設備および電気設備、教科書の質および学校寮の環境を改善すること等の手段により、学校の便益を向上させること。 (h) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権一般およびとくに子どもの権利を引き続き学校カリキュラムに盛りこむとともに、安全かつ非暴力的な学校環境を促進すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 54.委員会は、都市に住んでいる子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であること、ならびに、子どものために建設された遊び場の多くがこの10年間で解体されたことに、懸念とともに留意する。 55.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、遊びに従事する子どもの権利に注意を払うとともに、都市に住む子供のために安全な遊び場を設計しかつ建設すること等により、この権利の実施のために十分な人的資源および財源を配分することによって、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を強化するよう、勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 56.委員会は、ノン・ルフールマンの原則を尊重し、かつ持続可能な解決策の追求を援助することにより、子どもの難民、とくに朝鮮民主主義人民共和国から来た子どもの難民を保護するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、モンゴルで難民としての地位を求める子どもが、条約上の権利の享受に関して適切な保護および援助を必ずしも受けていないことを、懸念するものである。 57.条約第22条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入し、庇護に関する特別法(これにはとくに子どもの庇護希望者、とりわけ保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの保護および処遇に関する規定が含まれるべきである)を策定し、かつ、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約に加入するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.48、パラ26参照)をあらためて繰り返す。 経済的搾取 58.委員会は、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)を2002年に、かつ最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約(1999年)を2001年に批准したこと、就労の最低年齢を16歳と定めた労働法の規定を採択したこと(1999年)、未成年者の雇用が禁じられる職場の一覧を採択したこと(1999年)、ならびに、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)との了解覚書に調印したこと(1999年)およびIPECの活動に参加していることのような、児童労働の搾取から保護される子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 59.締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、モンゴルにおいて働く子どもの割合が高いこと、および、児童労働の搾取からさまざまな悪影響(学校中退、および有害かつ危険な労働による健康への悪影響を含む)が生じていることを懸念する。子どもの家事労働者および農村労働者、ならびに、金鉱および炭鉱において非常に有害な条件下で働いている子どもの人数が多いことは、深刻な懸念の理由となるものである。 60.さらに、委員会は、伝統的スポーツから、子どもの虐待および搾取につながる特徴を備えた妙味のあるビジネスへと相当に変貌した伝統的競馬において、有害な状況下における子どもの参加および搾取がますます行なわれるようになっていることを懸念する。とくに、委員会は、ときには8歳という幼さの子どもが参加させられており、かつこのような参加が重傷のみならず死亡にさえつながりうることを懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、以下の目的のために即時的かつ効果的な措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利条約第32条ならびに締約国が批准したILO第138号条約(1973年)および第182号条約(1999年)を実施し、かつILO第146号勧告および第190号勧告を考慮することにより、有害なまたは危険な労働で子どもを雇用することの禁止および児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の効果的防止を含む児童労働関連の規定の全面的実施を確保すること。 (b) 訓練を受けた労働査察官を増員することにより、同国における児童労働の監視を向上させること。 (c) 働く子どもが良質な教育(職業教育および非公式教育を含む)にアクセスでき、かつ、教育ならびに休息、余暇およびレクリエーション活動に対する権利を享受するための十分な休暇および休憩時間を与えられることを確保すること。 (d) 児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の搾取から生じるさまざまな種類の悪影響に関する、とくに子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうことにより、児童労働に関する公衆の態度に影響を及ぼすこと。 (e) 競馬産業における子どもの搾取の性質および規模を評価するための包括的研究を実施し、かつ、労働法に定められた最低年齢にしたがい、これらのレースで16歳未満の子どもを騎手として雇用することを明示的に禁止することによって、伝統的競馬における子ども騎手の問題に対応すること。 (f) ILO/IPECの援助を引き続き求めること。 ストリートチルドレン 62.委員会は、締約国報告書でストリートチルドレンの状況に関する十分な情報が提供されなかったことを遺憾に思う。路上で生活している子どものためのセンターが開設されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、非常に厳しい条件下で生活するストリートチルドレンの人数が増えていること、および、この現象をもたらす原因がしばしば虐待的な家庭状況であることを懸念するものである。1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」によれば、家出をした子どもは最長1週間収容される可能性がある。委員会は、締約国の国内法がこの点に関して条約の原則および規定に全面的に一致しないままであることを懸念するものである。さらに、委員会は、ストリートチルドレンに対する公衆の否定的態度および偏見がその困難な状況を悪化させていることに、懸念とともに留意する。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ストリートチルドレンの状況に対応するため、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら包括的な国家的戦略を採択するとともに、これらの子どもに十分な援助(身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および再統合のためのサービス、ならびにこれらの子どもの全面的発達を支えるための職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供すること。 (b) 1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」の実施に関して、家出した子どもの収容は行なわないことを方針とするとともに、条約の規定と全面的に両立する、収容に代わる選択肢を追求すること。 (c) この現象を防止する目的で、この現象の根本的原因および規模ならびにストリートチルドレンの個人的特徴を明らかにするための行動志向型研究を行なうとともに、ストリートチルドレンに対し、そのニーズに適合したサービスを提供し、かつ家族と再統合する機会も提供すること。 (d) 路上で生活している子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。 (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 性的搾取および人身取引 64.委員会は、売春に従事する子どもの人数が増えていることを深く懸念する。モンゴルにおいて子どもの人身取引が比較的新しい人権問題であることには留意しながらも、委員会は、子どもの性的搾取および人身取引を増加させる可能性があるいくつかのリスク要因(根強い貧困、高い失業率、家出につながる困難な家庭事情および観光業の成長を含む)について懸念を覚えるものである。 65.性的その他の搾取を目的とする子どもの人身売買を防止しかつこれと闘うため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的搾取および人身取引(子どもをこのような搾取のおそれにさらす根本的原因および要因を含む)を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定しかつ採択すること。 (b) 人身取引事件を発見しおよび捜査し、人身取引の問題に関する理解を向上させ、ならびに加害者が訴追されることを確保するための努力および法律を強化すること。 (c) それぞれ1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名し、かつこれを批准すること。 少年司法の運営 66.委員会は、法律に触れた子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なった努力に留意する。これには、「子どもの犯罪および子どもに対する犯罪の防止に関する国家計画」を1999年に採択したこと(刑事警察局子ども課の再編により子ども犯罪防止部を設置したことを含む)、および、18歳未満の者に特別な法的手続を保障する刑法の規定を2002年に採択したことが含まれる。しかしながら委員会は、18歳未満の者を長期間の未決勾留の対象とし、かつ初犯の少年による軽罪に対して収監刑を科すことが実務として確立されていることを、深く懸念するものである。委員会はまた、法律に触れた18歳未満の者に対し、適切な法律扶助および法的援助へのアクセスが提供されていないことも懸念する。18歳未満の者の拘禁および収監の環境を改善するためにとられた若干の積極的措置にも関わらず、委員会は、これらの施設における子どもの生活環境が依然として劣悪であることに、懸念とともに留意する。 67.委員会は、18歳未満の男子がウランバートルに設けられた別個の少年刑務所で刑に服しているのに対し、女子はいまなお成人女性と同じ刑務所で刑に服していることに留意する。委員会は、刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者を対象とする社会的再統合のためのサービスが少数であることを懸念するものである。少年司法の運営に関する国内法について、委員会は、保護観察により釈放された18歳未満の者が困難に直面していることに懸念を表明する。さらに、委員会は、裁判所が依然として、子どもに配慮し、かつ条約の規定に敏感となる訓練を十分に受けているとは言えない状態にあることを懸念するものである。 68.少年司法に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/46、パラ203-238)に照らし、委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国はとくに以下の措置をとるべきである。 (a) 少年司法の運営に関する包括的な国家的プログラム(同国のすべてのアイマグ(県)を網羅する、適切な訓練を受けた専門職員を擁した少年裁判所の設置を含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 18歳未満の者の自由剥奪の期間を法律で制限すること。 (c) 18歳未満の者の未決勾留が真に最後の手段としてもっとも短い期間で用いられるよう、その期間を法律で制限するとともに、その決定が可能なかぎり早期に裁判官によって行なわれ、その結果審査されることを確保すること。 (d) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、18歳未満の者の自由の剥奪に代わる措置の使用を奨励すること。 (e) 自由の剥奪が避けられず、最後の手段として用いられる場合について、逮捕の手続および拘禁の環境を改善すること。 (f) 18歳未満の者が適切な法律扶助および弁護人ならびに独立の、子どもに配慮した効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (g) 少年司法の運営を担当する者に対して関連の国際基準に関する研修を行なうとともに、法律に触れた子どもを援助するため刑務所にソーシャルワーカーの職を設けることを検討すること。 (h) 刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者の全面的発達を支えるため、両者に対して教育の機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)ならびに回復および社会的再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。 (i) とくにOHCHR、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的協力および援助を求めること。 マイノリティに属する子ども 69.委員会は、報告書に情報が存在しなかったことにより、カザフ人およびツァータン人のようなマイノリティに属する子どもに関する、条約第30条で保障されている権利についての締約国の義務の遵守状況を審査することがほとんどできなかったことを遺憾に思う。委員会は、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して、このような子どもの人権の享受が制約されていることを懸念するものである。 70.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、マイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。委員会は、国民的または民族的、宗教的および言語的マイノリティに属する子どもについての条約第30条の実施に関して、締約国が次回の定期報告書で具体的かつ詳細な情報を提供するよう、要請するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 71.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年7月に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2004年10月に批准されたことを歓迎する。 72.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 73.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは県の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 74.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 75.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月1日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/91.html
総括所見:インド(第2回・2004年) 第1回(2000年)/第3回・第4回(2014年)OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.228(2004年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年1月21日に開かれた第932回および第933回会合(CRC/C/SR.932 and 933参照)においてインドの第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.5)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがった締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/IND/2)に対する文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、締約国における子どもの状況についてより明確な理解が得られたことにも留意するものである。委員会は、条約の実施に直接関与するハイレベルな代表団の出席により、締約国における子どもの権利についての理解を向上させることができたことを認知する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、条約の実施のために連邦および州のレベルで行なわれた多くの活動、とくに以下の活動を歓迎する。 (a) 6~14歳のすべての子どもを対象とする無償の義務教育について定めた憲法(第86次改正)法(2002年)の採択。 (b) 受胎前・出生前診断技術(性選択禁止)法(1994年)の2003年改正の採択。 (c) 子どもの権利に対して重要な影響を及ぼす、女性の自助グループ結成のための全国プログラムの開始。 (d) 初等学校へのアクセスの拡大。 (e) データのより包括的な収集。これにより、女子および非特権化された社会集団の子どものより平等な参加および教育に関して若干の進展が達成されたことが明らかになった。 (f) フリーダイヤルの「チャイルドライン」の開設。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、非常に多数の人口および高い人口増加率が条約の実施を妨げる主要な要因であることを認知する。加えて、極度の貧困、大規模な社会的不平等および根強く残るきわめて差別的な態度、ならびに自然災害の影響が、条約に基づいて締約国が負っているすべての義務を履行するうえで深刻な困難となっている。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.10)の検討後に委員会が表明した意見および行なった勧告(CRC/C/15/Add.115)の一部、とくにパラ13(法律の実施)、15(調整)、17および19(監視)、29,31および33(差別の禁止)、37(出生登録)、39~41(拷問)、45(暴力)、47(障害のある子ども)、49および51(基礎保健)、53および55(生活水準)、57~60(教育)、64(武力紛争)、66~71(児童労働)ならびに80~82(少年司法の運営)に掲げられたものが十分に対応されていないことを、遺憾に思う。 6.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 第32条に関する宣言 7.条約第32条を漸進的に実施するために締約国がとった多数の措置に照らし、委員会は、この宣言の必要性について深刻な疑問を覚える。 8.前回の勧告(CRC/C/15/ADD.115、パラ66)にしたがい、かつウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第32条に関して行なった宣言を撤回するよう促す。 立法 9.委員会は、条約が裁判所で援用可能であり、かつ最高裁判所が条約に基づくさまざまな決定を採択してきたことを歓迎する。しかしながら委員会は、国内法、ならびにとくに家族問題を規律する宗教法および属人法が条約の規定および原則にまだ全面的に一致していないことを、依然として懸念するものである。 10.前回の勧告(前掲、パラ11)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の規定および原則が締約国全域で実施されることを確保する目的で、連邦および州の双方のレベルで、現行の立法上その他の措置(宗教法および属人法を含む)を注意深く吟味すること。 (b) 国内法の実施および幅広い普及を確保すること。 資源 11.一部の社会サービスのための予算配分額を増加させるためにとられた努力には留意しながらも、委員会は、教育のための予算配分額の増加が遅く、かつ他の社会サービスに配分される資金が停滞しまたは減少さえしていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「利用可能な資源を最大限に用いて」子どもの権利を実現するために配分される予算の割合を増加させること、ならびに、これとの関連で、適切な人的資源の供給(国際協力を通じてのものも含む)を確保すること、および、子どもに提供される社会サービスに関わる政策の実施が優先事項とされ続けることを保障することを目的として、あらゆる努力を行なうこと。 (b) 予算配分額が子どもの権利の実施に及ぼす影響を評価する方法を開発するとともに、この点に関わる情報を収集しかつ普及すること。 調整 13.委員会は、女性・子ども発達局が子どもの権利条約の実施に関わるすべての活動の調整を担当する機関であること、および、全国的な調整機構が2000年1月に設置されたものの、2000年9月に一度会合を開いたにすぎないことに留意する。しかしながら委員会は、条約の実施を担当するさまざまな機関間の調整を、連邦および州のレベルでならびに連邦政府と州との間で強化することがなお必要とされているという見解に立つものである。 14.委員会は、とくに実施プロセスの効率性を向上させることおよび当該プロセスの結果として差別が生じるいかなる可能性も低減させまたは解消することを目的として、締約国が、条約の効果的実施を連邦レベルで、連邦レベルと州レベルの間でかつ州の間で調整するための国家的機構を強化するよう勧告する。 国家的行動計画/国家子ども憲章 15.委員会は、1974年の「子どものための国家政策」および1992年の「子どものための国家行動計画」の存在に留意するとともに、国家政策に代わる「国家子ども憲章」についての議論および子どものための新たな行動計画の起草が進められていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、国家子ども憲章が子どもの権利基盤アプローチを採用しておらず、かつ条約のすべての権利および原則を明示的に盛りこんでいないことを懸念するものである。 16.委員会は、条約のすべての分野を網羅し、ミレニアム開発目標を盛りこみ、かつ「子どもにふさわしい世界」を反映した新たな子どものための行動計画を、関連するすべてのパートナー(市民社会を含む)と協議しながら採択すること、その全面的実施のために必要な人的資源および財源を配分すること、ならびに調整および監視のための機構を整備することを目的として、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、国家子ども憲章を迅速に採択するとともに、同憲章が子どもの権利基盤アプローチを採用し、かつ条約のすべての権利および原則を網羅するようにするよう、勧告するものである。 独立の監視体制 17.委員会は、国家人権委員会の存在に留意するとともに、国家子どもの委員会法案(2003年)が2003年12月10日に議会に提出されたことを歓迎する。 18.前回の勧告(前掲、パラ19)に照らし、委員会は、連邦および州のレベルにおける条約の実施の進展を監視しかつ評価するため、締約国が、国内機関の地位に関するパリ原則(総会決議48/134)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがい、子どものための独立した国家委員会を可能なかぎり迅速に設置するよう勧告する。 NGOとの協力 19.委員会は、サービス提供の分野におけるNGOとの協力および条約に関連するさまざまなプログラムの準備へのNGOの関与に留意するものの、この協力が体系的なものではないことおよびNGO活動の監督が行なわれていないことを懸念する。 20.委員会は、条約の規定の実施においてNGOがパートナーとして果たす重要な役割を強調するとともに、前回の勧告(前掲、パラ23)にしたがい、締約国が、連邦、州および地方における条約の実施のあらゆる段階(政策立案を含む)ならびに今後の定期報告書の起草に、より体系的かつ調整のとれたやり方でNGOの関与を得るよう勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割 」というテーマで2002年に行なわれた一般的討議の勧告(CRC/C/121、パラ630)を考慮に入れるとともに、とくにサービス提供者の登録および認可のシステムを改善することにより、サービス提供に従事する民間機関の監督を向上させるよう勧告するものである。 データ収集 21.委員会は、とくに子どもに関わるあらゆる問題に対処する計画およびプログラムについての予算の配分額および推移に関するデータを収集する新しいシステムを通じてデータ収集を改善するために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の領域についてのデータが不十分であることを依然として懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢、社会的地位(指定カーストおよび指定部族または宗教的コミュニティ)ならびに都市部および農村部の別に細分化されたデータおよび指標の収集システムを発展させるとともに、これを公的に利用可能とするよう勧告する。当該システムは、とりわけ脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅するべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための政策およびプログラムの立案にこれらの指標およびデータを活用するよう奨励する。委員会は、締約国が、とくにユニセフ、UNDPおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 研修および普及 23.委員会は、前回の総括所見の普及およびさまざまな意識啓発キャンペーンを歓迎するものの、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働いているすべての専門家集団が条約およびそこに体現された権利基盤アプローチについて十分な認識を有していないことを、依然として懸念する。 24.前回の勧告(前掲、パラ25)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会的動員を通じて子どもの権利に関する社会の感受性を強化するため、条約の原則および規定を普及する努力を強化し、かつこれらの努力を体系的なものとすること。 (b) 条約の実施を阻害する慣習および伝統を根絶するためのプログラムに、議員ならびにコミュニティの指導者および宗教的指導者の体系的関与を得るとともに、非識字の人々および遠隔地の人々を対象とするコミュニケーションのために創造的措置をとること。 (c) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに裁判官、弁護士、法執行官、公務員、自治体および地方の職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象として、条約の規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。 (d) 初等段階および中等段階の学校カリキュラムならびに教員養成カリキュラムで、子どもの権利を含む人権教育をさらに促進すること。 (e) とくにOHCHR、ユネスコおよびユニセフの技術的援助を求めること。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 25.条約第2条に照らし、委員会は、女子、一部の州、農村部およびスラムで生活している子ども、ならびに、一部のカーストおよび部族集団ならびに先住民族集団に属している子どもによる条約上の権利の享受の水準が著しく異なることを深く懸念する。 26.委員会は、もっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象としたプログラムのための予算配分額を増加させることも含む政策の見直しおよび方向転換を通じて社会的不平等に対応するため、あらゆるレベルで調和のとれた努力を行なうとともに、とくにユニセフの技術的援助を求めるよう、勧告する。 27.委員会は、指定カーストおよび指定部族ならびにその他の部族集団に属する子どもに対し、根強くかつ相当な社会的差別が行なわれていることを深く懸念する。このような差別は、とくに、1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法の違反が多いこと、このような違反が裁判所によって扱われる件数が少ないこと、および、同法に定められた特別裁判所を設置していない州が過半数にのぼることに反映されている。 28.委員会は、締約国が、憲法第17条および条約第2条にしたがって、「不可触性」の差別的慣行を廃止し、カーストおよび部族を動機とした虐待を防止し、かつそのような慣行または虐待に責任のある国または民間の行為者を訴追するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに、憲法第46条にしたがい、締約国は、とくにこのような集団の地位を高めかつこのような集団を保護するための特別措置を実施するよう奨励されるところである。委員会は、1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法、1995年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)規則および1993年清掃肉体労働者雇用法の全面的実施を勧告する。委員会は、締約国に対し、社会の態度を変革する目的で、とくに宗教的指導者の関与を得ながらカーストに基づく差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを遂行する努力を、引き続き行なうよう奨励するものである。 29.委員会は、女子に関する国家行動計画および行動綱領を歓迎するものの、女子に対する差別的な社会の態度および有害な伝統的慣行が根強く残っていることを深く懸念する。これには、低い就学率および高い中退率、若年婚および強制婚のほか、婚姻、離婚、乳児の監護および後見ならびに相続のような分野でジェンダーに基づく不平等を固定化させている、宗教に基づく民事的地位法が含まれる。 30.委員会は、締約国に対し、女子に関する国家行動計画を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう促すとともに、保護法を執行するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、とくに家庭におけるジェンダー差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを遂行する努力を継続することも奨励するものである。女子をいまなお差別する伝統的な慣行および態度を根絶する努力を支援する目的で、政治的指導者、宗教的指導者およびコミュニティの指導者を動員することが求められる。 31.女子および脆弱な立場に置かれた集団(指定カーストおよび指定部族に属する子どもなど)による権利の享受を向上させるための特別一時プログラムその他の活動は歓迎しながらも、委員会は、これらの集団と同様の状況にあるその他の子どもが同一の利益を享受していない可能性があることに懸念を表明する。 32.委員会は、現在行なわれているおよび今後行なわれるすべての特別一時プログラムについて、その成功を評価し、かつその継続、拡大および普及が正当な理由を見出す目的で、具体的な目標および予定表を定めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、性別、カーストもしくは部族、または正当化できない差別に至る可能性がある他のいずれかの特徴に基づくのではなく子どものニーズおよび権利に基づいた教育上その他の諸給付を配分するための特別プログラムの策定を開始するよう、勧告するものである。 33.委員会は、受胎前・出生前診断技術(性選択禁止)法(1994年)の2003年改正に留意するものの、0~6歳の年齢層の男女比がこの10年間で悪化したことを依然として深く懸念する。 34.ジェンダー差別に関する勧告(パラ30)に加え、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 受胎前・出生前診断技術(性選択禁止)法(1994年)の実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 親、コミュニティ、法執行官等の参加を得た大規模な意識啓発キャンペーンをさらに発展させるとともに、選択的中絶および女子の嬰児殺しの慣行を終わらせるために制裁を科すことも含むあらゆる必要な措置をとること。 (c) 経済政策および社会政策に関するプログラムを計画する際にジェンダー影響研究を行なうこと。 35.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置のうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 36.委員会は、いくつかの州および地区において子どもの評議会、団体およびプロジェクトを設置することにより子ども参加を増進させようとする取り組みを歓迎するものの、子ども、とくに女子に対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、施設およびコミュニティ運営のレベルにおける子どもの意見の尊重がいまなお限定されていることを依然として懸念する。委員会はさらに、子どもの権利および福祉に影響を及ぼす民事上の手続における子ども参加を保障した法規定が実質的に存在しないことに、遺憾の意とともに留意するものである。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設ならびに司法上および行政上の手続における子ども(とくに女子)の意見の尊重を促進するとともに、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加の便宜を図ること。 (b) 親、教員、政府の行政職員、司法関係者、子どもたち自身および社会一般に対し、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利についての教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどの程度考慮されているかについて、それが関連の政策およびプログラムに与えた影響も含めて定期的に検討すること。 3.市民的権利および自由 出生登録 38.委員会は、締約国における出生登録制度を再検討する意思があること(CRC/C/93/Add.5、パラ281)を歓迎するものの、子どもの約46%が出生時に登録されていないことを依然として深刻に懸念する。 39.前回の勧告(CRC/C/15/Add.115、パラ37)にしたがい、委員会は、締約国が、計画どおり2010年までに(CRC/C/93/Add.5、パラ284)すべての出生が時宜を得た形で登録されることを確保するためにいっそうの努力を行なうとともに、農村部において登録に関わる研修および意識啓発の措置をとるよう勧告する。委員会は、移動登録所ならびに学校および保健施設における登録係の設置のような措置を奨励するとともに、締約国がとくにユニセフおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 国籍に対する権利 40.委員会は、インドに在留するパキスタン人難民およびモハジールの子ども(それぞれラージャスターン州およびアーンドラ・プラデーシュ州に在留)が無国籍であることを懸念する。 41.委員会は、締約国が、条約第7条にしたがってこれらの子どもに国籍を与えるための措置をとるよう勧告する。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を受けない権利 42.委員会は、拘禁施設における子どもの不当な取扱い、拷問および性的虐待の報告が多数存在し、かつ、法執行官による子どもの殺害の主張があることを懸念する。 43.前回の勧告(CRC/C/15/Add.115、パラ39-41)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 拷問および他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約を批准すること。 (b) 逮捕、尋問および警察での勾留中ならびに拘禁センターにおける不当な取扱いに関する法執行官に対しての苦情を受理する、子どもに配慮した機構を設置すること。 (c) 苦情を子どもに配慮したやり方で捜査しかつ訴追すること。 (d) 子どもの人権に関して法執行官を研修する努力を強化すること。 (e) 第39条に照らし、拷問および(または)不当な取扱いの被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するため、あらゆる適当な措置をとること。 体罰 44.委員会は、2000年12月にニューデリー高等裁判所が行なった、その管轄内にある学校における体罰の禁止についての決定に留意するものの、他の州の学校のほか、家庭または子どものためのその他の施設における体罰が禁じられておらず、かついまなお社会で受け入れられていることを依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設における体罰を禁止するとともに、体罰に代わる子どものしつけおよび規律の方法について家族、教員ならびに子どもともにおよび(または)子どものために働くその他の専門家を教育するための教育キャンペーンを行なうよう、強く勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 46.母親が子どもの自然な保護者であることは父親の場合と変わらないという最高裁判所の判決(Githa Hariharan v. Bank of India事件、1999年2月18日)には留意しながらも、委員会は、法律上、子どもに関する主たる責任はいまなお父親が有していることに懸念を表明する。 47.条約第18条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもの養育および発達については双方の親が共通の責任を有するという原則が承認されかつ実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 養子縁組 48.委員会は、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約が最近批准され、かつ国内養子縁組が重視されていることを歓迎するものの、締約国に養子縁組に関する統一の法律および手続が存在しないこと、ならびに、関係する子どもの権利の尊重を監視し、かつ締約国内外の養子縁組をフォローアップするための効果的な措置がとられていないことについての懸念をあらためて表明する。委員会はさらに、認証を受けていない機関が行なう養子縁組の登録および管理が行なわれていないことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内養子縁組に関する法的枠組みを見直すとともに、新たに批准した1993年ハーグ条約を実施するためにあらゆる必要な措置(中央当局による新たな指針の採択を含む)をとること。 (b) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の関連規定の適用を全領域に拡大すること。 (c) 条約第21条を反映した厳格な規則にしたがい、あらゆる宗教の子どもについて養子縁組が可能であることを確保すること。 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い 50.委員会は、締約国において子どもの暴力、虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトが広く蔓延しており、かつこの問題と闘うための効果的措置がとられていないことを懸念する。委員会はさらに、性的虐待に関する法律が時代にそぐわなくなっていることを懸念するものである。 51.条約第19条に照らし、かつ前回の勧告(前掲、パラ45)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および施設におけるあらゆる形態の身体的および精神的暴力(子どもの性的虐待を含む)を禁止するため、新たな立法上の措置をとり、かつ時代にそぐわない法律を改正すること。 (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンその他の適当な措置を実行すること。 (c) 苦情を受理し、監視しかつ調査する効果的な手続および機構(必要なときは介入も含む)を設置すること。 (d) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事案を捜査しかつ訴追すること。 (e) 被害者のケア、回復および再統合のための便益を提供すること。 (f) 学際的かつ部門横断型のアプローチを用いながら、不当な取扱いの発見、通報および処理について、親、教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官、保健専門家および子どもたち自身を訓練すること。 (g) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 5.基礎保健および福祉 52.委員会は、保健問題に対処するための第9次および第10次5か年計画の間に開始された多数の国家的計画およびプログラムに留意する。にもかかわらず、委員会は、無償のかつ良質なプライマリーヘルスケアが利用できずかつ(または)アクセス不可能であること、専門家による付添いのない自宅出産が急増していることもあって妊産婦死亡率が悪化していること、予防接種率が低いこと、低出生体重児の数が多いこと、発育不全、削痩または低体重の子どもが多いこと、微量栄養素欠乏症が蔓延していること、ならびに、母乳のみの育児および適切な乳児食の導入の割合が低いことを、依然として深刻に懸念するものである。委員会はさらに、一部の州で環境汚染(具体的にはヒ素および鉛による汚染)が広がっていること、ならびに、安全な飲料水および十分な衛生設備にアクセスできない住民の割合が高いことに懸念を表明する。最後に、委員会は、訓練を受けておらず資格を有していない者が伝統医療および近代医療を実践していることに懸念を表明する。 53.委員会は、締約国が、子どもの健康状況を改善するための効果的政策およびプログラム策定の努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、すべての子どもが無償のかつ良質なプライマリーヘルスケアにアクセスできることを確保すること、伝統医療および近代医療の実践を規制しかつ監視すること、母乳育児を含む健康的な栄養習慣を促進すること、予防接種率を向上させること、安全な飲料水および十分な衛生設備へのアクセスを増進させること、ならびに、環境汚染の問題に効果的に対処することも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、子どもの健康改善を目的とした、とくにWHOおよびユニセフとの協力および援助の追加的集団を追求するよう奨励する。 HIV/AIDS 54.委員会は、新規感染の根絶を2007年までに達成することを目的とする「国家AIDS予防統制政策」(2001年)が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、子どもおよびおとなに対して抗レトロウィルス薬を無償で提供するという決定も歓迎するものの、HIV/AIDSに感染しかつ(または)その影響を受ける子どもの人数が増加していることを依然として懸念するものである。委員会はさらに、これらの子どもが社会および教育制度で差別を経験していることについて懸念を表明する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号を考慮に入れながら、HIV/AIDSを予防するための努力を強化すること。 (b) 母子感染を予防するための措置を、とくに妊産婦死亡を削減するための活動と組み合わせかつ調整することによって強化するとともに、親、教員その他の者のHIV/AIDS関連の死亡が、家族生活に対する子どものアクセスの減少、養子縁組、情緒的ケアおよび教育の面で子どもに及ぼす影響に対処するための十分な措置をとること。 (c) とくにHIV/AIDSに感染しかつ(または)その影響を受けている子どもに対する差別を少なくする目的で、HIV/AIDSに関する思春期の子ども(とくに、脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども)および住民一般の意識を高めるための努力を強化すること。 (d) とくに国連エイズ合同計画のさらなる技術的援助を求めること。 障害のある子ども 56.委員会は、障害者(機会均等、権利保護および完全参加)法(1995年)の存在および2001年国勢調査における障害の考慮には留意するものの、統計データおよび障害児に関する包括的政策が存在せず、かつ差別がいまなお広く存在することを依然として懸念する。また、障害のある子どものための便益およびサービスが限られていること、障害のある子どもとともに働く訓練を受けた教員の人数が限られていること、ならびに、教育制度および社会一般への障害児のインクルージョンを促進するための努力が不十分であることに対しても、懸念が表明されるところである。委員会はまた、障害のある子どものための特別教育プログラムに配分される資源が不十分であることにも、懸念とともに留意する。 57.前回の勧告(前掲、パラ47)にしたがい、かつ障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもに関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らし、締約国は以下の措置をとるよう勧告される。 (a) 障害のある子どもに関する包括的政策を確立すること。 (b) 障害のある子どもに関する十分なかつ細分化された統計データを収集するための効果的措置をとるとともに、障害を予防しかつ障害児を援助するための政策およびプログラムを発展させる際に当該データを活用すること。 (c) 障害の予防および共生のための早期発見プログラムを発展させる努力を強化すること。 (d) 障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ可能なかぎり障害児を普通学校制度に包摂すること。 (e) とくに障害のある子ども(精神保健上の問題を有する子どもも含む)の権利および特別なニーズに関する公衆および親の感受性を強化するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 (f) 職業訓練を含む特別教育および障害のある子どもの家族に対する支援のための資源(財源および人的資源の双方)を増加させること。 (g) とくにWHOに対し、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員(教員を含む)の養成および研修のための技術的協力を求めること。 有害な伝統的慣行 58.委員会は、ダウリーおよびデーヴァダーシーに関わる事件のような有害な伝統的慣行の存在を深く懸念する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ダウリー禁止法(1961年)ならびにカルナータカ州デーヴァダーシー(人身奉納禁止)法(1982年)および同規則(1982年)を執行すること。 (b) 男女の子どもの健康、生存および発達にとって有害なあらゆる種類の伝統的慣行を禁止しかつ根絶するため、立法上のおよび意識啓発のための措置をとること。 (c) とくに農村部に伝統的態度を変革し、かつ有害な慣行を抑制する目的で、コミュニティの指導者、実務家および一般公衆の参加を得ながら、感受性強化のためのプログラムを強化すること。 60.委員会は、女子の若年婚および強制婚の割合がきわめて高く、女子の健康、教育および社会的発達に悪影響が生じうることを懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童婚禁止法(1929年)を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 若年婚および強制婚を防止する目的で、NGOおよびコミュニティの指導者と協力しながら教育プログラムおよび意識啓発プログラムを強化すること。 (c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、精神保健サービスならびに青少年に配慮したカウンセリング・サービスを強化するとともに、これらのサービスを青少年がアクセスできるようにすること。 十分な生活水準 62.国民総生産の増加にも関わらず、委員会は、締約国において貧困が広く存在しており、かつ、十分な生活水準に対する権利(清潔な飲料水、十分な住居およびトイレへのアクセスを含む)を享受していない子どもがいまなお多いことを懸念する。委員会はさらに、生活条件の向上を意図しつつ、子どもをその居住地から分離し、子どものニーズに対応する用意の整っていないことが多い新たな環境へ移転させる、避難およびリハビリテーションのためのプロジェクトの悪影響について懸念を覚えるものである。 63.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた家族に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するための努力を強化するよう、勧告する。前回の勧告(前掲、パラ53)に照らし、委員会はさらに、締約国が、強制的な居住地移動、避難およびその他のタイプの非自発的な人口移動のいかなる発生も防止するよう、勧告するものである。 6.教育、余暇および文化的活動 64.委員会は、6~14歳のすべての子どもを対象とする無償の義務教育について定めた憲法(第86次改正)法(2002年)の採択、女子の就学者数を増加させるために締約国が行なっている継続的努力、および給食計画を歓迎する。就学率の上昇には留意しながらも、委員会は、6000万人の子どもが初等学校に通学していないことを深刻に懸念するものである。委員会はさらに、低下しているとはいえ非識字の水準が高く、かつ、教育へのアクセス、初等学校および中等学校への出席ならびに中退率の面で男女間に著しい格差があることを、懸念する。委員会はまた、これらの率に関わる著しい格差が、異なる州の間、農村部と都市部との間ならびに富裕層と貧困層および不利な立場に置かれた集団との間にも存在することも懸念するものである。委員会はさらに、訓練を受けた教員、学校および教室の数が不十分であり、かつ関連の学習教材が存在しないことによって教育の質に影響が生じていることを懸念する。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第29条1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目的を達成するために教育制度を改善するとともに、子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムに導入すること。 (b) 都市部、農村部およびもっとも開発が遅れている地域のすべての女子および男子ならびに指定カーストおよび指定部族に属する子どもが教育機会に平等にアクセスできることを漸進的に確保するための努力を強化すること。 (c) 乳幼児期教育の重要性に関する意識を高め、かつ乳幼児期教育を教育の一般的枠組みに導入すること。 (d) 学校生活のあらゆるレベルにおける子どもの参加を奨励すること。 (e) 教育の質を向上させ、かつ、中退率を下降させること等も通じて教育運営における効率性の向上を確保するため、必要な措置をとること。 (f) 資格のある教員の雇用人数を増やし、かつ、これらの教員に対してより多くの研修機会を提供すること。 (g) 教員の欠勤を抑制するためにあらゆる必要な措置をとること。 (h) 学校のインフラを向上させること。 (i) ユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 7.特別な保護措置 66.委員会は、少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)第32条1項(iii)にしたがい、かつNGOの力強くきわめて重要な関与を得ながら、政府の支援も受けて約50の都市/地区にフリーダイヤルの「チャイルドライン」が設置されたことを歓迎するものの、これらの「チャイルドライン」を同国のすべての地区に設置するペースが遅いことを懸念する。委員会はさらに、既存のサービスの能力不足のため、これらの「チャイルドライン」を経由して子どもが援助および支援を求める通話に対し、必ずしも十分な対応が行なわれていないことを懸念するものである。 67.委員会は、締約国が、締約国のすべての地区にフリーダイヤルの「チャイルドライン」を設置しかつ強化するために必要な人的および金銭的支援を提供するとともに、委員会に対する次回報告書の提出日を目標期日として定めるよう勧告する。さらに、委員会は、援助を求めて子どもから(または子どもに代わる者から)かかってくる通話に既存のサービス(とくにNGO)が十分な対応を行なえるよう支援し、かつ必要なときは新たなサービスを設置するために、必要な措置をとるよう勧告するものである。 武力紛争 68.委員会は、紛争地域、とくにジャンムー・カシミール州および東北部諸州における状況が子ども、とくに生命、生存および発達に対する子どもの権利(条約第6条)に深刻な影響を与えていることを懸念する。委員会は、子どもがこのような紛争に関与し、かつその犠牲になっているという報告があることにきわめて深刻な懸念を表明するものである。 69.条約第38条および第39条に照らし、委員会は、締約国が、武力紛争の影響を受けている子どもの保護、ケアならびに身体的および心理社会的リハビリテーションを目的とした人権法および人道法の尊重を、とくに子どもによる敵対行為へのあらゆる参加との関連で確保するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもに対して権利侵害が行なわれた場合に公正かつ徹底的な調査が行なわれ、かつ責任者が迅速に訴追されること、ならびに被害者に対して公正かつ十分な補償を行なうことを確保するよう、求めるものである。 子どもの難民 70.インドは、難民および庇護希望者の受け入れに関する締約国の寛容な政策を歓迎するものの、これらの集団に関する法律が存在しないことを依然として懸念する。 71.条約第22条に照らし、委員会は、締約国が、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書への加入を検討するとともに、身体的安全、保健、教育および社会福祉の分野等で子どもの難民および庇護希望者の十分な保護を確保し、かつ家族の再統合を促進するための包括的立法を採択するよう、勧告する。 経済的搾取(児童労働を含む) 72.委員会は、第10次国家児童労働事業計画に留意するものの、経済的搾取に関与させられている子どもが多数にのぼり、かつ、その多くは、とくにインフォーマル部門において、家内制企業において、家事労働者としておよび農業において、危険な条件下で(債務労働者としての労働も含む)働いていることを著しく懸念する。委員会はさらに、雇用に関する最低年齢基準がほとんど執行されておらず、かつ、使用者が法律を遵守することを確保するための適切な処罰および制裁が科されていないことを非常に懸念するものである。 73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1986年児童労働(禁止および規制)法、1976年債務労働(制度廃止)法および1993年清掃肉体労働者雇用・乾燥式便所建設(禁止)法の全面的実施を確保すること。 (b) 1986年児童労働法を改正し、家内制企業ならびに政府の学校および訓練センターが子どもの雇用の禁止から除外されないようにすること。 (c) 児童労働防止のための、コミュニティを基盤とするプログラムを促進すること。 (d) 就労のための最低年齢に関するILO第138号条約ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約を批准すること。 (e) 労働上の危険に関して公衆一般、とくに親および子どもの意識を高め、かつ、使用者団体、労働者団体および市民組織、労働監察官および法執行官のような政府職員ならびにその他の関連の専門家を関与させかつ訓練するための努力を強化すること。 (f) ILO/IPECと引き続き連携すること。 子どもの性的搾取/子どもの人身取引 74.委員会は、南アジア地域協力連合(SAARC)・売買春目的の女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する条約が批准されたこと、女性および子どもの人身取引および商業的性的搾取と闘うための行動計画が採択されたこと、とくに性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもおよび女性の人数に関するデータを収集するための研究が開始されたこと、および、「目的地および送り出し地において商業的性的搾取目的の子どもの人身取引と闘うための試行プロジェクト」が行なわれていることを歓迎するものの、1986年不道徳取引防止法で人身取引が定義されておらず、かつその適用範囲が性的搾取に限定されていることを依然として懸念する。加えて、委員会は、買春およびポルノグラフィーを含む性的搾取の被害を受ける子どもが増えていることに懸念を表明するものである。また、このような虐待および搾取の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのプログラムが不十分であることに対しても、懸念が表明される。 75.条約第34条および第35条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 不道徳取引防止法の適用範囲をあらゆる形態の子どもの人身取引に拡大し、かつ、人身取引の対象とされた子どもが常に被害者として取り扱われることを確保すること。 (b) 子どもの人身取引および商業的性的搾取の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (c) 国家行動計画を実施するために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供すること。 (d) 学際的および部門横断型のアプローチを採用するとともに、子どもの性的搾取および人身取引を防止しかつこれと闘うための措置(とくに親を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育プログラムを含む)をとること。 (e) 加害者が裁判にかけられることを確保すること。 (f) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがって、人身取引の被害を受けた子どもが家族と再統合することを促進し、かつ性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して十分なケアおよび再統合のためのプログラムを提供する政策を強化すること。 (g) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 (h) これらの問題に関する活動を行なっている非政府組織と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 ストリートチルドレン 76.委員会は、ストリートチルドレンに関する統合プログラムの存在を歓迎するものの、とくに締約国の構造的状況ならびに防止および家族支援のための積極的政策およびプログラムの欠如を理由として、締約国でストリートチルドレンの人数が増えていることを依然として懸念する。 77.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ストリートチルドレン、とくに女子を保護し、かつ、とくに家族に対する援助ならびに十分な住居の提供および教育へのアクセスの保障を通じてこの現象を防止しかつ低減させることを目的として、ストリートチルドレンが多数にのぼりかつ増加している問題に対処するためのストリートチルドレンに関する統合プログラムを強化しかつ拡大すること。 (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支援するため、必要なときは公式の身分署名書類も提供しつつ、これらの子どもが十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。 (c) 身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用の被害を受けた子どもが、回復および再統合のためのサービス、警察による逮捕および不当な取扱いからの保護、ならびに、家族およびコミュニティとの和解のための効果的サービスを提供されることを確保すること。 (d) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 少年司法の運営 78.委員会は、少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の制定に留意するものの、刑事責任に関する最低年齢が当該新法で定められておらず、かつ刑法に見られる最低年齢(7歳)がなお有効であることを依然として懸念する。委員会はさらに、最高裁判所が、犯罪が行なわれた日は容疑者が少年であるかどうかの判断には無関係であると決定したこと(CRC/C/93/Add.5, box 8.7)を懸念するものである。委員会はさらに、新法を執行するための機構がほとんどの州で設置されておらず、かつ新法がジャンムー・カシミール州には適用されてないことを懸念する。加えて、委員会は、自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられていないことに懸念を表明するものである。最後に、委員会は、テロリズム防止法(2002年)が特別裁判所による子どもの訴追を認めており、かつこれらの事件で用いられる手続が条約第37条、第40条および第39条を尊重していないことを、深く懸念する。 79.委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致する少年司法制度を実施するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 80.加えて、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)を改正し、刑法で定められているものよりも高くかつ国際的に受け入れられている規範を反映した刑事責任に関する最低年齢を定めるとともに、当該年齢を犯罪が行なわれたときの年齢と見なすこと。 (b) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の適用をジャンムー・カシミール州に拡大すること。 (c) テロリズム防止法(2002年)を改正し、子どもへの適用に際しては条約第37条、第40条および第39条その他の関連条項が全面的に尊重されるようにすること。 (d) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の全面的実施のために必要な州における執行機構を緊急に設置するため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) 少年司法制度に関与するすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムを強化すること。 (f) 更生および再統合のためのプログラムを強化すること。 (g) 自由の剥奪は最後の手段としてのみ用いること。 (h) とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討すること。 マイノリティ/先住民族の子ども 81.委員会は、マイノリティ(未開部族集団を含む)に属する子どもの状況とともに、これらの子どもが保健ケア、予防接種および教育を含む社会サービスに限られた形でしかアクセスできていないこと、および、これらの子どもの、生命および生存に対する権利、自己の文化を共有する権利ならびに差別から保護される権利が侵害されていることについて、懸念を覚える。 82.パラ29の勧告に加え、かつ先住民族の子どもの権利に関する一般的討議の際に行なった勧告(CRC/C/133、パラ624)にしたがい、委員会は、締約国が、未開部族集団の発展に関して労働福祉常任委員会が行なった勧告(2002年)を実施し、かつ(または)これについて必要なフォローアップを行なうよう勧告する。 8.選択議定書 83.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう奨励する。 9.文書の普及 84.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。委員会は、締約国がこの点に関する国際協力を要請するよう勧告する。 10.報告書の定期的提出 85.委員会が採択し、かつ会期別報告書(CRC/C/114およびCRC/C/124参照)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国が、条約で定められた第4回報告書の提出期限(2010年1月10日)の18か月前である2008年7月10日までに次回の報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は、第3回および第4回報告書を統合したものとなろう。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月2日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/1734.html
douter は現代フランス語では「疑う、怪しむ」などの意味。中期フランス語では「ためらう」(hésiter)、「懸念する、恐れる」(craindre, redouter)、「敬う」(respecter)などの意味もあった(*1)。 名詞形は doute で、「恐れ、懸念」「疑い」などの意味。 登場箇所 douter 詩百篇第3巻57番 予兆詩第99番(旧89番) doute 詩百篇第3巻55番 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/166.html
総括所見:シンガポール(第1回・2003年) 第2回・第3回(2011年)OPAC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.220(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月26日に開かれた第908回および第909回会合(CRC/C/SR.908 and 909参照)においてシンガポールの第1回報告書(CRC/C/51/Add.8)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解をいっそう明確にしてくれた、包括的かつ優れた形式および内容の第1回報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/SIN/1)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、率直な対話について、および、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応について、歓迎の意を表するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、締約国の子どもの生活水準が高く、かつ、とくに質の高い保健サービスおよび教育サービスならびに住居を広く利用できるようにすることによって、子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施するために相当の努力が行なわれていることに、評価の意とともに留意する。 4.委員会は、2003年に義務教育法が採択されたことを歓迎する。 5.委員会は、締約国が、親および子どもの双方を対象とする、子どもの権利に関する意識啓発資料(子どもにやさしいパンフレットおよびリーフレットを含む)を作成しかつ普及していることに、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 宣言および留保 6.委員会は、締約国が条約への加入時に行なった、第12条~17条、第19条および第39条に関する宣言ならびに第7条、第9条、第10条、第22条、第28条および第32条に対する留保について懸念を覚える。 7.世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国が条約に関する宣言および条約に対して付した留保を撤回するよう勧告する。 立法 8.実のところ、条約の原則および規定のほとんどが実際に実施されていることは認めながらも、委員会は、国内法に条約のすべての原則および規定が全面的に反映されているわけではないことを、依然として懸念する。 9.委員会は、締約国が、法律の包括的見直しを行なうとともに、国内法が条約の原則および規定と一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 調整 10.委員会は、条約の実施の監督について責任を負う、子どもの権利条約に関する省庁間委員会が設置されたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どものためのすべての政策およびプログラムの調整が省庁間委員会の所掌事項に含まれておらず、かつ、そのような常設の調整機構が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、締約国が子どものための国家的行動計画を策定していないことも、遺憾に思う。 11.委員会は、締約国が、条約に関する省庁間委員会の所掌事項および職務を拡大して子どものためのすべての政策およびプログラムの調整を含めるとともに、条約の全面的実施を目的とし、かつ子どもに関する国連総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」を考慮した、子どものための国家的行動計画の策定に着手するよう、勧告する。 独立の監視 12.委員会は、子どもからのものも含む苦情申立てに効果的に対応しようとする、政府および個々の省庁の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、条約の実施における進展を定期的に監視しかつ評価することを所掌し、かつ、条約が対象とするすべての分野に関する、子どもからのものも含む個別の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた独立機構が存在しないことを懸念するものである。 13.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがって、十分な人的資源および財源を与えられおよび子どもが容易にアクセスでき、ならびに、条約の実施を監視し、子どもに配慮した迅速なやり方で子どもからの苦情に対応し、および条約上の権利の侵害に対する救済措置を提供する、独立のかつ効果的な機構を設置するよう、奨励する。 子どものための資源 14.委員会は、国家予算の相当の割合が保健および教育に充てられていることに、評価の意とともに留意する。それでも委員会は、子どものための社会サービスに配分される資源が、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であり、かつ、同様の経済発展水準にある他の国々の予算配分に匹敵していないことを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、以下の対応をとることにより、条約第4条の全面的に実施に特段の注意を払うよう勧告する。 (a) 「利用可能な資源を最大限に用いることにより」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させること。 (b) 支出の影響を評価する目的で、かつさまざまな部門で子どもに提供されているサービスの費用、アクセス可能性、質および実効性の観点からも、公共部門、民間部門およびNGO部門において子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定すること。 データ収集 16.委員会は、報告書および事前質問事項に対する文書回答において締約国から提供された相当量の統計データを歓迎する。同時に委員会は、条約の実施に関する総合的成果指標および質的データが存在しないことに関する締約国の懸念を共有するものである。 17.委員会は、締約国が、子どもに関する量的および質的データを収集しかつ分析するための中央機構を設置するとともに、子どもに関する総合的成果指標を開発するための努力を強化するよう、勧告する。 普及および研修 18.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識していないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般公衆およびとくに子どもを対象とした、子どもの権利に関する公的意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教職員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。 国際協力 20.東南アジア諸国連合内で締約国が行なっている国際協力には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、国内総生産の0.7%を政府開発援助に配分するという国際連合の数値目標を実施するよう奨励する。 2.子どもの定義 21.委員会は、子ども・若者法が16歳未満の者にしか適用されないこと、ならびに、刑事責任に関する最低年齢(7歳)および就業に関する最低年齢(12歳)が低すぎることを懸念する。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子ども若者法の適用を拡大し、18歳未満のすべての者を対象とすること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (c) 就業に関する最低年齢を、義務的学校教育の終了年齢である15歳まで引き上げること。 3.一般原則 差別の禁止 23.委員会は、差別の禁止の原則が市民に限定されていること、女性または障害のある人に対する差別が憲法で明示的に禁じられていないこと、および、女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する社会的差別が根強く残っていることを、懸念する。 24.委員会は、締約国が、法律の改正によりジェンダーまたは障害に基づく差別を禁止するともに、締約国にいるすべての者に対してそれが適用されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに公的な教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを通じ、とくに女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する社会的差別と闘うためにあらゆる必要な積極的措置をとるよう、勧告するものである。 25.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することを要請する。 子どもの最善の利益 26.委員会は、子どもに関わるあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならないという原則が、国および地方のレベルにおける締約国の法律、政策およびプログラムに全面的には反映されていないことを、懸念する。 27.委員会は、締約国が、法律および行政上の措置を再検討することにより、条約第3条が正当に反映されること、および、行政上、政策上、司法上その他の決定が行なわれる際にこの原則が考慮されることを確保するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを懸念する。 29.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために子ども・若者法が改正されることを確保するとともに、裁判所、行政機関および学校が、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見を尊重することを促進するため、立法を含む効果的措置をとること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつそれが政策およびプログラムならびに子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうこと。 4.市民的権利および自由 30.委員会は、締約国の出入国管理法および市民権法の諸要素が条約第2条および第7条と全面的には一致していないことを懸念する。とくに委員会は、シンガポール籍の母と外国籍の父との間に国外で生まれた子どもが自動的にシンガポール市民権を取得するわけではないこと、および、このような場合に母が「登録による市民権」の申請を義務づけられていることを、懸念するものである。 31.委員会は、市民権法および出入国管理法において、国籍およびアイデンティティに対する子どもの権利が差別なく、可能なかぎり尊重されることを確保する目的で、締約国がこれらの法律を見直しかつ必要な改正を行なうよう勧告する。 体罰 32.委員会は、体罰が、家庭、学校および施設においてならびに罪を犯した男子少年を対象とする罰のひとつの形態として法律で認められていることに、懸念とともに留意する。 33.委員会は、締約国が法律を改正し、家庭、学校、施設および少年司法制度における体罰を禁止するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、体罰が子どもに及ぼす否定的影響に関する、対象を明確にした公的意識啓発キャンペーンを実施するとともに、教職員ならびに施設および少年拘禁所で働く職員を対象として、体罰に代わる手段としての非暴力的形態の規律に関する研修を行なうよう、勧告するものである。 5.家庭環境および代替的養護 親の責任 34.委員会は、家族および子どもに対してカウンセリングおよび援助を提供し、かつ、親子間の困難を、裁判所に訴えることなく子どもの最善の利益に一致したやり方で解決しようとする締約国の努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、親には自分の子どもが「親の手に負えない」として申立てを行なうことが可能であり、かつ、法律によれば、当該申立てによって子どもが非行少年施設に措置されることもありうるために、このような状況に置かれた子どもが法律上全面的に保護されていないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもが家にひとりで残されていることに関する締約国の懸念も共有する。 35.委員会は、締約国が、危険な状況に置かれた家族に支援およびカウンセリングを提供するための努力を継続するとともに、子どもが「親の手に負えない」という理由で親が子どもに対する裁判手続を開始することをできないようにしつつ、困難な状況に置かれた子どもの全面的保護を確保する目的で、法改正を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、働く親を支援し、かつ子どもが家にひとりで残されることを防止するための措置を拡大するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 36.委員会は、虐待の苦情申立てに対応し、かつ被害者およびその家族を援助する目的で、児童虐待保護班および家族保護部などの機構が創設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、過少通報が依然として問題となっており、かつ、ソーシャルワーカー、教員および医療従事者に対し、児童虐待が疑われる事案の通報が法律で求められていないことを懸念するものである。 37.委員会は、とくに、児童虐待が疑われる事案を適当な公的機関に通報するようソーシャルワーカー、教員および医療従事者に対して求める立法上の措置をとることを通じ、締約国が、子どもの不当な取扱いおよび虐待の事案の通報を奨励するための措置を強化するよう、勧告する。 6.基礎保健および福祉 38.委員会は、子どもに関する保健指標が非常に優れた水準に達しており、かつ、前掲パラ3で留意したように質の高い保健サービスが広く利用可能とされていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、完全母乳育児率が相対的に低いこと、および、若者の自殺率が上昇していることを依然として懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の採択および実施、赤ちゃんにやさしい病院としての病院の認証取得ならびに母性休暇の延長を通じ、乳児が生後6か月は母乳のみで育てられることを促進するための努力を強化すること。 (b) 思春期保健サービス、とくにカウンセリングサービスおよび自殺防止プログラムを強化すること。 障害のある子ども 40.特別教育サービスが締約国で広く利用可能とされていることには留意しながらも、委員会は、障害のある子どもが教育制度に全面的には統合されておらず、かつ、障害のある子どもおよびそのニーズに関する量的および質的データが存在しないことを、懸念する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法(2003年)の適用を拡大し、特別学校および障害のあるすべての子どもを対象に含めること。 (b) とくにカリキュラムおよび教育学的サービスを向上させることを通じ、障害のある子どもの、普通教育および社会一般へのいっそうの統合および参加を促進すること。 (c) 障害のある子どもおよびその具体的ニーズに関する量的および質的データを収集するとともに、このような子どもを対象とする適切なプログラムおよび政策の策定のためにこれらのデータを活用すること。 7.教育、余暇および文化的活動 42.前掲パラ4で留意したように、委員会は、2003年に義務教育法が採択されたこと、および、締約国において質の高い教育サービスが広く利用可能とされていることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の管轄内にあるすべての子どもが義務教育法の対象とされ、または無償の初等学校にアクセスできているわけではないことを懸念するものである。委員会はまた、教育制度の高度に競争主義的な性質によって子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあることも、懸念する。最後に、委員会は、学童保育所が提供するサービスの質の監視について懸念を覚えるものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国内のすべての子ども(定住者以外の者も含む)を対象に含めるとともに、すべての子どもの通学を確保するため同法の実施を監視すること。 (b) 締約国のすべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保し、かつ、低所得層の家族が就学前教育にアクセスできることを確保すること。 (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の競争主義を軽減するための効果的措置をとるとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力を強化すること。 (d) 学童保育所および始業前および放課後にケアを提供するその他の機関の質が包括的に監視されることを確保するための措置をとること。 (e) カリキュラムの一環として人権教育を含めること。 8.特別な保護措置 少年司法 44.委員会は、刑事責任に関する最低年齢が低すぎること、法律に抵触した18歳未満のすべての者が特別な保護の対象とされているわけではないこと、および、罪を犯した少年を懲戒するために体罰および独居拘禁が用いられていることを、懸念する。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (c) 子ども・若者法を改正し、罪を犯した18歳未満のすべての者の特別な保護を確保すること。 (d) 罪を犯した少年を対象とするすべての拘禁施設(警察署を含む)で、体罰(むち打ちを含む)および独居拘禁の使用を禁止すること。 (e) とくに少年の拘禁および更生のための役務に関わる少年司法制度改革に際し、とくに国連人権高等弁務官事務所の技術的援助を求めること。 9.選択議定書 46.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准していないことに留意する。 47.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 48. 最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 49.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2007年11月3日、すなわち第3回報告書の提出期限までに、単一の統合報告書として第2回および第3回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月8日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/276.html
総括所見:フランス(第5回・2016年) 第1回(1994年)/第2回(2004年)/第3回・第4回(2009年)OPAC(2007年)/OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) とくにパラ75~76との関連で、国連のプレスリリース "Calais camp French and UK Governments fell well short of their child rights obligations – UN experts"(2016年11月2日付)も参照。 CRC/C/FRA/CO/5(2016年2月23日)/第71会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年1月13日および14日に開かれた第2063回および第2065回会合(CRC/C/SR.2063 and 2065参照)においてフランスの第5回定期報告書(CRC/C/FRA/5)を検討し、2016年1月19日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104参照)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/FRA/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。 (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2016年)。 (b) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書(2015年)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年)。 (d) 人身取引に反対する行動に関する欧州評議会条約(2008年)。 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a) 保健制度の現代化に関する法律(2015年12月17日に国民議会で採決)。 (b) 真のジェンダー平等に関する2014年8月の法律第2014-873号。 (c) 公立学校改革の編成および計画に関する2013年7月の法律第2013-595号。 (d) 搾取のさまざまな形態(子どもを関与させるものを含む)をよりよい形で把握できるようにするために人身取引の再定義を行なった、2013年8月の法律第2013-711号。 (e) 危険な状態にある子どものモニタリングのための情報の転送に関する2012年3月の法律第2012-301号。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 首相府内に家族・子ども・高齢者高等評議会が創設されたこと(2015年12月28日)。 (b) 教育制度における女子・男子および女性・男性の平等に関する省庁間合意(2013~2018年)。 (c) 子どもの保護に関する総合行動計画(2015~2017年)。 (d) 人身取引との闘いに関する国家行動計画(2015~2016年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国が、前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1)のうち部分的もしくは不十分にしか実施されていないものまたはまったく実施されていないもの(体罰、刑事責任年齢、少年司法制度および保護者のいない移住者の子どもに関するものなど)に対応するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するとともに、とくに、締約国が、第30条に付した留保ならびに第6条および第40条に関連する2つの解釈宣言を撤回していないことを遺憾に思う。 立法 7.委員会は、条約の規定のごくわずかしか自動執行力を認められておらず、かつ、条約の原則および権利が国内法に適正に含められていないことを懸念する。 8.委員会は、締約国が、条約のすべての規定が締約国の領域全体で適用可能とされること、および、あらゆる段階の国内裁判所において個人が条約を援用できることを確保するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ11参照)をあらためて繰り返す。 包括的な政策および戦略 9.委員会は、条約上のすべての権利の実施に関する包括的かつ持続可能な政策の策定における進展が不十分であること、および、締約国ですでに定められているさまざまな子ども関連戦略において測定可能な達成目標が設けられていないことを懸念する。 10.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的政策を、子どもたちおよび市民社会組織と協議しながら、かつ増大しつつある格差への対応を重視して、策定しかつ実施するための努力を継続するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、実施のための諸要素(測定可能な達成目標、時間枠ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を含む)を立案しかつ実施することも勧告するものである。 調整 11.委員会は、家族・子ども・高齢者高等評議会の創設を歓迎するものの、海外県および海外領土における条約の実施に格差があることならびに調整能力に欠陥があることを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国が、調整機構に対し、条約の実施に関連するすべての活動を、全部門を通じてならびに国、地域圏および地方のレベル(海外県および海外領土を含む)で調整するための明確な権限ならびに十分な権限および資源が与えられることを確保するよう、勧告する。 資源配分 13.子どもについて多額の公共投資が行なわれているにもかかわらず、委員会は、とくに周縁的状況に置かれている子どもならびに海外県および海外領土(とくにマヨット島)について、締約国における一部の資源の配分に不平等があることを懸念する。委員会は、一貫した予算分析の実施に関して進展がないことを依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものニーズを十分に考慮に入れ、かつ、関連の部門および省庁における子どもへの明確な予算配分、具体的な指標および追跡システムを備えた予算編成プロセスを確立すること。 (b) 社会部門、ならびに、ロマの子ども、子どもの庇護希望者および難民を含む子どもの移住者ならびにマヨットその他の海外県および海外領土の子どもなど不利な立場に置かれた子どもについて配分される予算を増額すること。 (c) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の効率性、十分性および公平性が効果的に監視されかつ評価されることを確保すること。 データ収集 15.締約国によって文書回答で提供された情報には留意しながらも、委員会は、条約の多くの分野について信頼のできる細分化されたデータが依然として利用できないこと、および、公的統計が依然として断片化されておりかつ不十分であることを懸念する。 16.委員会は、条約のあらゆる分野を網羅したデータ収集システムを向上させるよう求めた、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ21参照)をあらためて繰り返す。さらに委員会は、さまざまな行政機関によって収集されたデータおよび指標が、条約の効果的実施および子どもによる権利の享受を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のために用いられるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、統計的情報の定義、収集および普及の際、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators a guide to measurement and implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れるよう勧告する。 独立の監視 17.委員会は、権利擁護官のもとに設けられた子ども擁護官の資源および可視性が不十分であること、ならびに、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼす法案について子ども擁護官と組織的に協議しておらず、かつその報告および勧告を十分にフォローアップしていないことを懸念する。 18.委員会は、締約国が、子ども擁護官の可視性およびその任務遂行能力を高めるため、子どもに特化した十分な資源を確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子ども擁護官および国家人権諮問委員会と恒常的に協議することも奨励するものである。 普及、意識啓発および研修 19.条約の普及ならびに条約に関する意識啓発および研修のために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、子ども、一般層および公的機関が条約およびその内容についてほとんど知識を有していないことを依然として懸念する。委員会はまた、ほとんどの子どもは自己の権利について十全に教えられていないことも懸念するものである。 20.委員会は、締約国が、条約に関する意識啓発プログラムを学校で必修とし、教員がその点について十分な訓練を受けることを確保し、かつ、全国的な啓発キャンペーンを組織的に遂行するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもたちに対しておよび子どものためにまたは子どもとともに働くすべての者に対して条約を可能なかぎり広く普及することも勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 21.委員会は、フランスの多国籍企業のなかには、外国子会社を対象として、企業の社会的責任に関する実践を自発的に行なっている企業もあることに留意する。しかしながら委員会は、締約国の管轄または管理の下で行動する企業の活動を、締約国の領域の外で展開される活動において子どもの権利の尊重を確保する目的で規制するためにとられた措置および構想されている措置についての情報が不十分であることを懸念するものである。委員会は、とくに、フランス企業の子会社が子どもの権利侵害を直接助長してきた事案(カンボジアにおけるゴム会社が行なってきた活動を含む)について懸念する。 22.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国の管轄または管理の下で行動する産業を対象として、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 企業が国際基準(人権、環境および健康に関するものを含む)を効果的に実施すること、相当の注意(デュー・ディリジェンス)を確保するためのプロセスが要件とされること、ならびに、実施状況を監視し、かつ、違反があった場合には常に適切な制裁を科しかつ救済措置を提供するための効果的な手段が存在することを確保すること。 (c) フランス企業または海外で操業するその子会社によるこれらの義務の履行について逸脱の可能性が認められる場合、徹底的な調査を行なうこと。 B.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 23.委員会は、差別と闘うために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、性別、ジェンダーアイデンティティ、障害、国民的出身、社会的および経済的出自その他の事由を理由とする差別が根強く残っていることを懸念するものである。委員会はさらに、ロマの子どもに対する人種差別およびスティグマが根強く残っていることに懸念を表明する。委員会はまた、「平等のABCD」に代わって採択された平等のための行動計画が、子どもたちの関与を得ないまま策定され、子どもがとくに対象とされておらず、かつ測定可能な目標および時間枠を欠いていることも懸念するものである。 24.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、平等、寛容および相互尊重の文化を醸成し、根強く残る差別を防止しかつこれと闘い、かつ、社会のあらゆる部門における、子どもに対するあらゆる差別事案について効果的な対応がとられることを確保するための努力を強化するよう、促す(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ31参照)。委員会はまた、締約国が、ジェンダーに基づくステレオタイプに異議を申し立てるための努力(測定可能な目標および時間枠を備え、かつ、あらゆる教育段階の子どもをとくに対象とした、平等のための行動計画の枠組みのなかで行なわれるものを含む)を強化するとともに、教育者を対象とする関連の研修を義務的なものとすることも、勧告するものである。 子どもの最善の利益 25.委員会は、子どもの最善の利益の原則が憲法的水準へと引き上げられ、かつ、破棄院(Cour de Cassation)および国務院(Conseil d Etat)がこの点に関して共通の立場を採用したことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、この権利が実務に十分に統合されておらず、かつ、政府法案および公共投資の影響を評価するために事前の評価研究の実施を要求する等の手段により、政府が行なうすべての対応および決定において必ずしも適切な評価および判断が行なわれていないことを懸念するものである。 26.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、子どもの権利影響研究等も通じて、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を締約国が強化するよう、勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 27.委員会は、公式な統計がないこと、および、締約国では1日あたり2人の子どもが家族間暴力の結果として死亡している可能性がある旨の報告が存在することを深く懸念する。委員会はまた、自己の子どものいずれかまたは複数に対する重大犯罪(殺人を含む)について有罪判決を受け、かつ生き残っている子どもにとって引き続き危険な存在となっている親が関わる事件において、締約国が、子どもの最善の利益よりも家族のつながりの維持を優先させて、そのような親が親としての権利を維持できるようにしていることにより、生命、生存および発達に対する他の〔殺害されなかった〕子どもの権利を危険にさらしていることも、深く懸念するものである。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 不当な取扱いによる子どもの死亡事件について理解しかつ対応するために締約国が行なってきた多数の取り組み(診断評価を含む)に照らし、この現象を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) すべての裁判官を対象として、自己の子どものいずれかまたは複数に対する何らかの重大犯罪について有罪判決を受けた親が関わる事件において親の責任の取消しの問題を系統立てて提起しなければならない旨の要件を定めるとともに、これらの決定においては子どもの最善の利益が他のいかなる考慮事項よりも優先されなければならないことを法律で明確にすること。 子どもの意見の尊重 29.子どもの意見が尊重されることを確保するために締約国が行なっている継続的努力は歓迎しながらも、委員会は、関連するあらゆる生活の文脈において組織的に子どもの意見の尊重を確保しかつ実施する点でほとんど進展が見られないことを依然として懸念する。委員会は、法的手続における子どもの聴聞について書面による申請が条件とされていること、および、申請書の書き方が十分ではないという理由で裁判官がそのような申請を却下していることを懸念するものである。委員会はさらに、被害を受けやすい状況または周縁化された状況に置かれている子ども(行政収容の対象とされている子どもおよび障害のある子どもなど)が、自己に関わる事柄についてしばしば協議の対象とされていないことを懸念するものである。 30.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、とくに司法上および行政上の手続および決定において、すべての子ども(被害を受けやすい状況または周縁化された状況に置かれている子どもを含む)が意見を聴かれる子どもの権利を全面的に享受することを確保するよう勧告する。委員会は、締約国が、子どもの参加、ソーシャルワーカーおよび行政機関または裁判所を対象とした研修ならびに専門家(弁護士、特別管理人またはソーシャルワーカー)による支援の提供のためのシステムおよび(または)手続を確立するよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの意見が聴かれるようにするための有効な回路を発展させ、かつ子どもたちに対してそのような回路についての十分な情報を提供すること。 (b) 被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれている子どもにとくに注意を払いながら、家庭、コミュニティおよび学校におけるすべての子どもの参加を促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施すること。 C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録/国籍 31.委員会は、代理母のもとに生まれた子どもの法的承認および登録に関する2015年7月3日の破棄院決定、および、このような子どもに国籍を付与する旨の2015年12月12日の国務院決定を歓迎する。しかしながら委員会は、国籍証明書の発給に関して登録所の対応が一貫していないことを懸念するものである。委員会はまた、海外県および海外領土のアメリンディアン系住民およびブシナンゲ系住民に属する子どもの登録が不十分であることも懸念する。 32.委員会は、締約国が、登録所間の対応の不一致に対処するとともに、1997年の欧州国籍条約および国家承継に関連する無国籍の防止に関する2009年の欧州評議会条約を批准するよう勧告する。委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、新生児の登録期間の延長を検討すること等も通じて、海外県および海外領土、とくに仏領ギアナにおけるすべての子どもの出生登録を確保するための努力を強化するよう促すものである(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ42参照)。 親を知る権利および親によって養育される権利 33.委員会は、自己の生物学的親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に執行するためにあらゆる適切な措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもが可能なかぎりおよび適切な時期に自己の親について知ることができるよう、親に関するすべての情報の登録および整理保存のために必要な措置をとるよう促す(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ44参照)。委員会はまた、締約国が、身元の開示について生物学的母親の同意が必要である旨の要件の削除を検討するとともに、親が秘密出産を選択することにつながる根本的原因に対処するための努力を強化することも、勧告するものである。 表現、結社および平和的集会の自由 34.委員会は、16歳未満の子どもについて、表現、結社および平和的集会の自由に対する権利が法律で制限され続けていることを懸念する。 35.委員会は、前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ49参照)をあらためて繰り返し、締約国が、条約で定められているとおり、すべての年齢の子どもに対して表現、結社および平和的集会の自由に対する権利を保障するための措置(法的措置を含む)をとるよう勧告する。 プライバシーに対する権利 36.委員会は、子どもの個人データが長期間にわたって収集、保存および使用されるデータベースが多数存在しており、かつ、教育当局が、子どもおよびその親に対し、個人データの登録に反対し、または当該データにアクセスし、これを修正しもしくは抹消する権利について十分な告知が行なわれていないことを、依然として懸念する。 37.委員会は、締約国がデータベースに入力する個人情報は当該個人が特定されないものに限るべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ21〔51の誤り〕参照)。委員会はまた、個人データの登録に反対し、または当該データにアクセスし、これを修正しもしくは抹消する権利について子どもおよびその親が適正に告知されるように必要な措置をとることも勧告するものである。 適切な情報へのアクセス 38.メディアおよびデジタルネットワーク上の有害な情報から子供を保護するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、にもかかわらず、子ども(とくに女子)を過剰に性的対象化したイメージがメディアにおいて根強く用いられていることを懸念する。委員会は、不適切なメディアおよびデジタルコンテンツから子どもを保護するための規制の枠組みがいまのところ設けられていないこと、ならびに、テレビ、インターネットおよびスマートフォン上の不適切な情報に対する子どものアクセスを規制するための多くの機能(親による管理機能など)が実際には有効ではないことを、懸念するものである。 39.デジタルメディアと子どもの権利に関する2014年の一般的討議の結論に照らし、かつ適切な情報にアクセスする子どもの権利を全面的に踏まえながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) メディアもしくは製品の販売促進における、またはその他の目的による、子どもを性的対象化したイメージの使用を禁止する規制を実施するとともに、子どもによる不適切なデジタル情報へのアクセスを管理するために効果的な措置をとること。 (b) デジタルメディアおよび情報通信技術の活用に関わる機会およびリスクについて子ども、親および一般公衆の感度を高めるための意識啓発プログラム、広報プログラムおよび教育プログラムを強化すること。 D.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 40.委員会は、施設において障害のある子どもの不当な取扱いの事案が起きていること、および、そのような施設の独立した監視が不十分であることを懸念する。委員会はとくに、不当な取扱いを通告した職員が名誉毀損で告発されて有罪判決を受けた例もある旨の報告がある一方、加害者が裁判にかけられることは、ビデオで録画された証拠があるにもかかわらず稀であることを懸念するものである。委員会はさらに、不当な取扱いに相当する「パッキング」法(子どもを濡れた冷たいシーツでくるむこと)が法的に禁じられておらず、かつ、自閉症スペクトラム障害の子どもに対していまなお用いられているという報告があることを懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、施設の子どもに対する不当な取扱いの根本的原因を理解し、かつその防止および対策を図るための取り組みを強化するとともに、締約国が以下の措置をとるよう促す。 (a) 独立の立場からの施設の査察を定期的かつ効果的に行なうことのできる監督機構を設置すること。 (b) 不当な取扱いのいかなる訴えについても徹底的かつ迅速に調査し、加害者を裁判にかけ、かつ、被害を受けた子どもに対してケア、回復、再統合および補償のための支援を行なうこと。 (c) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報のためのシステムおよびサービス(不当な取扱いの事案を告発するための秘密が守られる回路、および、とくに子ども、その家族および職員を対象とした、報復からの保護を含む)を創設すること。 (d) 子どもの「パッキング」および不当な取扱いに相当する他のすべての刊行を法的に禁止すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 42.委員会は、あらゆる形態の暴力を受けるおそれのある子どもの特定およびモニタリングを向上させるために行なわれている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国において、子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応する包括的戦略が定められていないこと、ならびに、家族間暴力およびジェンダーを理由とする暴力が多数生じており、かつその数が増えていることを懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 暴力の被害者または証人である子どもについての標準化された指針、対応要綱および付託機構が存在していないこと、ならびに、子どもとともに働く公的職員を対象とした、とくに子どもに対する暴力が疑われる事案を発見し、通報し、かつ対応しまたは付託するための調整および研修が不十分であること。 (b) 家族間暴力の被害を受けた子どもをシェルターで保護する体制および被害を受けた子どもに医療心理学的援助を提供する体制が不十分であり、かつ、この点について領域全体で大きな格差が存在すること。 (c) 子どもの権利、とくに暴力(いやがらせおよびいじめを含む)から保護される権利に関して学校で行なわれる意識啓発の取組みが不十分であること。 (d) テレビおよび一部の興行(闘牛など)において暴力にさらされる子どもの身体的および精神的ウェルビーイングおよび発達。 43.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)および「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を想起しながら、委員会は、締約国が、子どもの保護に関する全般的政策の枠内で、子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対抗していくための包括的戦略を速やかに採択するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 子どもに対する暴力(不当な取扱い、性的虐待およびネグレクト、家族間暴力、いやがらせならびにいじめを含む)のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置すること。 (b) 暴力の被害者または証人である子どもについての適切な指針、対応要綱および付託機構を発展させるとともに、これらが締約国全域で一貫して適用されることを確保すること。 (c) 子どもの権利に関する啓発および社会的スキルの発達ならびに年齢にふさわしい戦略を通じ、自分自身および仲間を暴力から守れるようにするための子どものエンパワーメントを図ること。 (d) 子どもたちの関与を得ながら、意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。 (e) 暴力の被害を受けたすべての子どもが保護シェルターならびに回復および社会的再統合のためのサービスにアクセスできることを確保すること。 (f) 闘牛および関連の興行に子どもがアクセスすることを禁止する等の手段により、子どものウェルビーイングに悪影響を与える暴力的な伝統および慣行を変革するための努力を強化すること。 体罰 44.委員会は、あらゆる場面(家庭、学校、子どもの養育現場および代替的養護を含む)における体罰を明示的に禁止するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ58参照)をあらためて繰り返す。体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもに対するいかなる暴力も正当化しえないこと、および、体罰は暴力のひとつの形態であり、常に品位を傷つけるものであって防止可能であることを想起するよう求めるとともに、締約国に対し、公衆啓発キャンペーン等も通じて、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進するよう促すものである。 中央アフリカ共和国における性的虐待 45.委員会は、中央アフリカ共和国においてフランス兵が子どもに対する性的虐待を行なったという訴えがあることを深刻に懸念するとともに、予備的捜査がいまなお進行中であることに留意する。委員会は、これらの犯罪の被害者および証人である子どもを保護するための措置は不必要と考えられる旨の締約国の回答(CRC/C/FRA/Q/5/Add.1、パラ173)を遺憾に思うものである。 46.委員会は、締約国が、中央アフリカ共和国においてフランス兵が行なったとされる子どもの性的虐待および性的搾取の訴えについて迅速かつ効果的が捜査が実施され、かつ加害者が訴追されることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、被害を受けた子どものケアおよび支援に関連する措置(心理社会的支援、金銭的補償またはその他の賠償を含む)に関与するよう促すものである。委員会は、締約国が、子どもの権利が尊重されかつ保護されることを確保するための防止措置を強化するよう勧告する。 有害慣行 47.女性性器切除の根絶に関して締約国で見られた進展には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、年若い多くの女子がいまなお危険な状況に置かれていること、および、この現象が復活する可能性もあることを懸念する。委員会はまた、インターセックスの子どもに対する、医学的に不必要かつ不可逆的な手術その他の治療が常態化していることも懸念するものである。 48.有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号を想起しながら、委員会は、締約国が、危険な状況に置かれている子どもをより容易に特定し、かつその人権侵害を防止できるよう、これらの有害慣行がどの程度実践されているか理解する目的でデータを収集するよう勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国における女性性器切除に関して、危険な状況に置かれている女子、医療専門家、ソーシャルワーカー、警察官、憲兵および判事の意識を高めること。 (b) インターセックスの子どもに関する権利基盤型の保健ケア対応要綱を策定しかつ実施することにより、子どもおよびその親がすべての選択肢について適切に告知されること、自己の治療およびケアに関する意思決定に子どもが最大限可能な範囲で関与すること、および、いかなる子どもも不必要な手術または治療の対象とされないことを確保すること。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項) 家庭環境 49.委員会は、締約国が依然として、子どもの権利には概念的にそぐわない「親の権威」の文言を用いていることを懸念する。委員会はまた、子どもの保護の改革に関する2007年3月5日の法律第2007-293号の実施が遅れていることもあって、子どもの身体的虐待が2008年以降増えていること、ならびに、子どもの保護に関わる一連の制度の結びつきが弱いために、子どもが家族間暴力を受けるおそれおよび家庭で保護されない状態となるおそれのあるままに置かれる事案が生じていることも、懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利に即する形で、「親の権威」の文言を「親の責任」または同様の文言に代えることを検討すること。 (b) 関係者間の意思疎通、分野横断的アプローチおよび調整を促進することにより、子どもの保護に関わる政策の国および地方レベルにおける運用を改善するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 防止、危険な状況に置かれている子どもの特定およびケアのための介入の質との関連も含めて、あらゆる段階の公的機関による、2007年3月5日の法律第2007-293号の全面的実施を確保すること。 家族再統合 51.委員会は、2014年7月10日に欧州人権裁判所が言い渡した、家族生活の尊重に対する権利を遵守しなかったことを理由として締約国を敗訴させた3つの判決について懸念する。これらの判決は、査証の発給に関する意思決定手続において、要件とされている柔軟性、迅速性および有効性の保障が満たされたことが実証されなかったと認定したものである。 52.委員会は、締約国が、家族再統合の分野において、条約の原則および規定にしたがった、かつ上述の保障を充足させる実務を確立するために必要な法的その他の措置をとるよう勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 53.委員会は、1人ひとりの子どもに合った措置を行なうために設けられている養護の選択肢が実務で稀にしか用いられていないことを懸念するとともに、司法命令によって家族から分離される子どもの人数が増えており、貧困下で暮らしている家族の子どもにとくに影響が生じていることも懸念する。委員会はさらに、児童養護および代替的養護に措置された子どもが家族と接触しかつ面会する機会をほとんど持てていないこと、家族の住居と施設養護の場所が離れていること、ならびに、代替的養護に関する決定が児童福祉機関(ASE)によって行なわれる際、子どもの意見および子どもの最善の利益が十分に考慮されていないことを懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) 児童福祉機関の施設に障害のある子どもが過剰に措置されていること。 (b) 法律上の遺棄ではなく事実上の遺棄によりそのような施設に措置されている子どもの状況および地位。 (c) 措置に関する決定が、自己の身の回りの状況、里親養育者および環境に対して子どもが慣れ親しんでいる状況の継続性を確保するという視点のないまま行なわれていること。 (d) 16歳以上の子どもに対して提供される、大人としての生活に入るための準備を整えられるようにするための機会および援助が不十分であること。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 可能な場合には常に家庭を基盤とする子どもの養護を支援しかつ促進するとともに、家族とともに暮らせない子どもを対象とした里親養育制度を確立し、とくに、脱施設措置のプロセスを加速するために障害のある子どものための里親養育を奨励すること。 (b) 子どもを代替的養護に措置すべきか否かの判断に関して、子どものニーズ、意見および最善の利益を基盤とする十分な保障措置および明確な基準を確保すること。 (c) 地理的近接性ならびに子どもが慣れ親しんだ身の回りの状況、里親養育者および環境を正当に考慮しながら、代替的養護に措置された子どもが可能なかぎり親との接触を維持できることを確保すること。 (d) 遺棄により児童福祉機関に付託された子どもの法的状況および地位を明確にすること。 (e) 施設に入所した子ども(成人年齢に近づきつつある子どもを含む)のリハビリテーションおよび社会的再統合を最大限可能な範囲で促進する目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護機関に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 養子縁組 55.委員会は、締約国におけるカファラ制度の法的効果について定めた通達が2014年10月22日に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 仏領ポリネシアおよびニューカレドニアにおいて、承認を受けた斡旋機関もなく、かつ当事者である家族または子どものためにの真の保障もまったくないままに行なわれ続けている、「子どもの持ち回り」(child circulation)として知られる伝統的養子縁組についての情報がないこと。 (b) 年齢、きょうだい、障害または疾病のために特有のニーズを有する子どもの養子縁組にあたり、養親およびその他の家族構成員に対して提供される支援が不十分であること。 (c) 国際養子縁組についての子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の加盟国ではない出身国または当該条約の保障措置を遵守しない出身国が関わる国際養子縁組の数が多いこと。 56.委員会は、締約国が、養子縁組については子どもの最善の利益の至高性の原則が厳格に遵守されることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) この現象に関する理解および対応を向上させる目的で、国内養子縁組および国際養子縁組に関する細分化された統計データおよび関連情報を体系的かつ継続的に収集すること。 (b) 仏領ポリネシアおよびニューカレドニアにおける「子どもの持ち回り」の慣行に関する情報を次回の定期報告書で提供するとともに、新たな事案が生じないようにするための措置をとること。 (c) 1993年ハーグ条約に定められたすべての保障措置が、たとえ当該相手国が同条約の加盟国ではない場合でも満たされることを確保するとともに、同条約を批准していない国との間で、子どもの権利条約および1993年ハーグ条約の基準を確認する二国間協定を締結すること。 (d) 養親およびその家族に対し、養子縁組に関わる十分な専門的支援が提供されることを確保すること。 F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 57.委員会は、障害のある子どものインクルージョンを強化するために締約国が行なっている努力を認識する。しかしながら委員会は、すべての子どもを対象としたインクルーシブ教育に関する2005年2月11日の法律第2005-102号及び2013年7月8日の法律第2013-595号の実施が速やかに進められておらずかつ不平等であること、および、障害のある子どもが病院または医療社会施設ではなく普通学校に出席することを確保するうえでの進展が遅々としていること、ならびに、海外県および海外領土はこの点に関していっそう悪い状況にあることを懸念するものである。委員会はまた、3歳という低年齢の子どもについても普通学校内の特別編成制度が法律で定められていること、障害のある一部の子どもが施設に措置されていること、障害のある一部の子どもがいまなお隔離学校に在籍していること、ならびに、配慮および支援がないために学校を中退する障害のある子どもがいることも懸念する。委員会はさらに以下のことを懸念するものである。 (a) 教育へのアクセスにおいて、レクリエーション活動および課外活動等の際の他者との平等に関して、学校施設においてならびに職業訓練の際に、障害のある子ども、とくに複合障害のある子どもに対する差別が根強く行なわれていること。 (b) 受ける資格のある必要な支援(学校における十分な時間数の援助を含む)の受給および維持に関して家族が重大な障壁に直面していること。 (c) 学校職員を対象とした研修および支援が不十分であること、資格を有する専門援助者の人数が不十分であること、ならびに、アクセシブルでありかつ適合性を備えた学校カリキュラム、教材、評価資料および教室の数が乏しいこと。 58.障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)を想起しながら、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤型アプローチを有効な形でかつ遅滞なく採用し、インクルーシブ教育に対するすべての子どもの権利を承認し、かつ、特別施設およびあらゆる段階の隔離学級への子どもの措置よりもインクルーシブ教育が優先されることを確保するよう、促す。委員会は、具体的には締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 障害のある子どものための適切な戦略およびプログラムの立案を促進するため、障害のある子どもに関するデータ収集体制を整備し、かつ効率的な早期発見システムを発展させること。 (b) 適切な支援を促進し、かつ当該支援へのアクセスを確保するための措置をとること。 (c) すべての教員および教育専門家を対象として、インクルーシブ教育および個別支援の提供、インクルーシブかつアクセシブルな環境の創設ならびに1人ひとりの子どもの具体的状況に対する正当な注意の払い方についての研修を実施すること。 (d) 障害のある子どもを含むすべての子どもがそのニーズおよび事情に対応するためのもっとも適切な計画によって支援されるようにするための十分な資源配分を確保すること。 (e) 障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘うための意識啓発キャンペーンを実施すること。 自閉症の子ども 59.委員会は、3次にわたる自閉症対応計画にもかかわらず、自閉症の子どもが広範な権利侵害を受け続けていることを懸念する。委員会は、自閉症の子どもの大多数が普通学校における教育にアクセスできておらず、または、インクルージョンを支援する特別な訓練を受けた職員もいないまま、正規の教育よりも短い限られた教育しか受けていないことを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 高等保健機関が2012年に行なった勧告の実施が義務的ではなく、自閉症の子どもに対していまなお有効性を欠く精神分析学的療法、過剰投薬ならびに精神病院および精神医学施設(隣国にあるものを含む)への措置が行なわれていること。 (b) 国際的に認められた療法の訓練を受けた専門家ならびに発達および教育のためのプログラムの数が少なく、かつ健康保険制度の対象とされていないこと。 (c) 自分の子どもの施設措置に反対する親が威圧および脅迫の対象とされることがあり、かつ一部の事案では子どもの監護権を喪失して、子どもが強制的に施設措置または行政収容の対象とされていること。 60.委員会は、締約国に対し、自閉症の子どもの権利(とくにインクルーシブ教育に対する権利)が尊重されること、高等保健機関が2012年の行なった勧告が自閉症の子どもとともに働く専門家に対して法的拘束力を有するものとされること、ならびに、高等保健機関の勧告に一致する療法および教育プログラムのみが認可および費用弁済の対象とされることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、自閉症の子どもが強制的な施設措置または行政収容の対象とされないこと、および、親が自分の子どもの施設措置を拒否した際にこれ以上報復を受けないことも確保するべきである。 健康および保健サービス 61.子どもの健康が2013年に定められた国家保健ケア戦略の優先課題のひとつに位置づけられていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、学校および母子福祉保護センター等において、とくに海外県および海外領土、スラム街ならびに難民キャンプにおいて、資源が十分ではないこと、専門の児童保健要員が存在しないことならびにサービスおよび体制が全般的に悪化していることを懸念する。委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもの夜間入院の際、親の付き添いが自動的に認められるわけではないこと。 (b) 完全母乳育児率が低く、かつ、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の実施が不完全であること。 (c) 海外県および海外領土(とくにマヨット島)において、新生児死亡率および若年妊娠率が依然として過度に高い水準にあること。 (d) 海外県、とくに仏領ギアナおよびマヨット島において、HIV/AIDSおよび結核を含む予防可能な感染症の発生率が高いこと。 (e) 有効な在留許可を得ていない子どもの移住者が、保健サービスに対する権利の行使に際して依然として困難を経験していること。 62.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、とくに学校および母子福祉保護センターにおける資源ならびに医療スタッフ、サービスおよび体制の欠陥に緊急に対処し、かつ、子ども、とくに海外県および海外領土、スラム街ならびに難民キャンプの子どもの特有のニーズを考慮するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 入院について定めた条件を子どもの権利の視点から再検討し、子どもが入院中に親によって付き添われかつケアされることを認めること。 (b) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施し、かつ完全母乳育児の慣行をさらに促進すること(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ75参照)。 (c) 海外県および海外領土(とくにマヨット島)における、子どもおよび母親のための保健ケアサービスへのアクセスに関して存在する格差を縮小するための努力を強化すること。 (d) とくに仏領ギアナおよびマヨット島において、HIV/AIDSを含む予防可能な疾病に対処するための、目的を明確化したプログラムを実施すること。 (e) 保護者のいない外国出身の子どもおよび有効な在留許可を持たない子どもの移住者を含むすべての子どもが基礎的保健ケアにアクセスできることを確保するため、必要な資源を増やすこと。 精神保健 63.国家自殺対策行動計画(2011~2014年)の評価結果に掲げられた一部の勧告(青少年センターの開設など)を実施している県があることは歓迎しながらも、委員会は、子ども専門の精神科医、心理学者および精神科看護師の人数が不十分であり、かつその配置も不平等であること、外来サービスに関わる予算削減および外来サービスの閉鎖が生じており、これがしばしば入院につながっていること、子どもがそのニーズに適合しない成人用施設でケアされていること、ならびに、精神病院で子どもに対する過剰投薬が行なわれていることを懸念する。委員会はさらに、子どもの精神保健障害および心理社会的障害の発生率が高く、かつ年齢とともに上昇していて、主として15歳以上の子どもに影響が生じていることを懸念するものである。 64.委員会は、国家自殺対策行動計画(2011~2014年)の勧告を全面的かつ持続的に実施することを奨励する。委員会は、締約国が、児童精神科ケアへのアクセスにおける不平等を全国的に縮小する目的で、専門の精神保健サービスのために利用可能とされる人的資源および財源を増やすよう勧告するものである。委員会は、締約国が、児童精神医学に関連する問題についての医療関係者の研修を増やすとともに、子どもの治療が資格のある専門家によって、かつ子どものために設けられて施設で行なわれることを保障するよう、勧告する。 思春期の健康 65.15歳以上の子どもが避妊手段を無償でかつ秘密裡に入手できるようにした2013年のデクレの採択には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、人工妊娠中絶件数が多いことを懸念する。 66.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、思春期の子どものセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的な政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する教育が学校カリキュラムの必修科目とされ、かつ、若年妊娠の予防に特段の注意を払いながら、思春期の女子および男子をとくに対象として実施されることを確保するよう、勧告する。 薬物および有害物質の濫用 67.薬物および依存行動と闘うための計画など、依存に対処するために締約国が行なっている取り組みは歓迎しながらも、委員会は、前期中等教育の期間全体を通じ、タバコおよびアルコールの使用ならびに大麻の実験的使用の発生率が高まっていることを懸念する。 68.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用(タバコおよびアルコールの濫用を含む)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。 生活水準 69.委員会は、複数年度にまたがる貧困削減・社会的包摂計画が採択されたことを歓迎するものの、貧困下で暮らしている20%の子どもたちの状況およびホームレスの子どもの多さについて懸念する。委員会は、貧困下で暮らしていて経済危機の影響を受けている子どもおよび家族(とくに、ひとり親が世帯主である家庭の子どもおよびスラム街または「要配慮都市域」(sensitive urban areas)で暮らしている子ども、ならびに、何年にもわたって「緊急宿泊所」で生活している子ども)の状況が悪化していることを、とりわけ懸念するものである。海外県および海外領土における格差に対処するために締約国が最近行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、にもかかわらず、締約国の領域全体における社会的不平等の持続および拡大、海外県および海外領土(とくに仏領ギアナおよびマヨット島)における子どもによる権利の享受の空白を少なくしていく際の進展の遅さ、ならびに、子どもの移住者(とくに保護者のいない子どもの移住者)が置かれている状況に、特段の懸念をもって留意する。委員会はまた、ロマの子どもおよびその家族が、代替的な移住先を用意されることおよび通告を受けることもなく、強制立退きの対象とされる事案があることも懸念するものである。 70.委員会は、締約国が、子どもの貧困の根絶を国家的優先課題のひとつに位置づけ、かつ、支援をもっとも必要としている子どもおよび家族(とくに、貧困下で暮らしていて経済危機の影響を受けている子どもおよび家族、ひとり親が世帯主である家庭の子どもおよびスラム街または「要配慮都市域」で暮らしている子ども、海外県および海外領土の子どもならびに保護者のいない子どもの移住者)を支援するプログラムに対して必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、強制立退きに関わる自国の国際法上の義務を尊重することも促し、かつ、ロマの子どもおよびその家族の包摂に向けた努力を奨励するものである。 G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 71.委員会は、6万人分の教員の空席を2017年までに埋めることに優先的に取り組む旨の締約国の決定を歓迎する。しかしながら委員会は、近年、8万人分の教員の席が空白になったこと、訓練を受けていない代替要員が採用されていること、および、一部の学校で生徒・教員比がきわめて高いことを懸念するものである。委員会はまた、締約国では子どもの社会経済的出自が学業成績に関して相当に決定的な役割を果たしていること、および、学校に対する資源の配分が自治体によってさまざまで格差が生じていることも懸念する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 特定のカテゴリーに属する子ども、とくに障害のある子ども、スラム街で暮らしている子ども、(とくにマヨット島の)保護者のいない子どもの移住者および法律に抵触した子どもが、教育、学校関連の活動および施設の利用の開始、継続または再開に関して困難に直面していること。 (b) ロマの子ども、保護者のいない子どもの移住者および不安定な居住環境下で暮らしている子どもを含む一部の子どもが、通常学校への就学または給食へのアクセスに関して多くの困難に直面しており、かつ、自治体によってそれを認められない事案も生じていること。 (c) 早期に、かつ資格を取得しないまま学校を中退する子どもの多さを減少させることに関する進展が遅いこと。 (d) 教育専門家を対象として実施されている研修が質量ともに不十分であること。 (e) 学校における特別援助ネットワークが徐々になくなりつつあり、とくに学習障害のある子どもに影響が生じていること。 (f) 生徒間の暴力および広範ないじめが常態化しており、かつ、教育専門家がこれを防止しかつこれに対処する能力を欠いていること。 72.委員会は、締約国が、子どもの社会的背景が学校における成績に及ぼす影響を少なくする目的で教育改革を強化するとともに、教育に対する権利をすべての子どもに確保する目的で資格のある教員が十分に用意されることを保障するための追加的措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 退学率および留年率を削減するための措置、ならびに、修了証を取得せずに学校を離れた子どもを対象として、教育を再開しかつ能力およびライフスキルを獲得できるようにする職業教育および職業訓練を拡大するための措置を、引き続き強化すること。 (b) すべての子どもに対し、教育に対する権利を差別なく確保すること。 (c) 継続研修プログラム等を通じて、教員の資格を高めるための措置をとること。 (d) 学校における特別援助ネットワークを再確立し、かつ適切な形で資金を拠出すること。 (e) いじめの事案の防止および取扱いに関する方針および手段を学校で採択すること、ならびに、暴力およびいじめの発見、防止およびこれへの対応に関して学校職員を対象とした適切な研修を実施すること等の方法を通じ、学校におけるいじめおよび暴力に対応するための努力を強化すること。 H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民ならびに保護者のいない子ども 73.委員会は、特別な保護および援助のための措置にアクセスすることのできない、締約国における保護者のいない子どもの移住者の状況について懸念を覚える。委員会は、締約国が、すべての初期評価手続およびその後の対応において、子どもの最善の利益を指導的原則として十分に考慮していないことを懸念するものである。委員会は、とくに17歳の子どもにとって、子どもの保護のための体制ならびに弁護士による代理、心理的支援、社会的援助および教育へのアクセスに関して困難が生じていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、保護者のいない子どもの移住者に提供されるサービスの公平な配分に関する2013年5月31日の通達に定められた手続が、2015年1月の国務院(Conseil d Etat)決定によって部分的に無効とされた結果、子どものケアおよび保護の質が不十分なものとなり、かつ、一部の自治体がそのような保護の提供を拒否する事態が生じていることも懸念するものである。委員会は、2014年に、品位を傷つける環境下で、かつ裁判官にアクセスできないまま、ほとんどはマヨット島において行政収容の対象とされた子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、以下のことについても懸念するものである。 (a) 空港の待機区画またはホテルおよびその他の行政収容施設(locaux de retention administrative)に自動的に収容されている、保護者のいない子どもの移住者の状況。これらの子どもは時として成人とともに収容されており、かつ、特別管理人と話すらできないまま退去強制の対象にされているという報告もある。 (b) 子どもの年齢鑑別のための骨検査への過度な依存が見られ、かつ、子どもの同意が実際には求められない場合もあること。 74.委員会は、締約国が、保護者のいない子どもの移住者への専門的かつ子どもに特化した支援、保護、弁護士による代理、社会的援助ならびに教育および職業訓練に対して、自国の管轄地域全体を通じて十分な人的資源、技術的資源および財源を保障するとともに、この点に関して法執行官の能力構築を図るよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 自由の剥奪に代わる適切な選択肢を見出し、かつ子どもを適切な宿泊施設に措置するための努力を強化することを通じ、待機区域における子どもの収容を回避するために必要な措置(法的措置を含む)をとるとともに、ノンルフールマン(追放・送還禁止)の義務を全面的に尊重すること。 (b) 子どもの年齢鑑別の主たる手法として骨検査を用いることをやめ、これに代えて、より正確であることが証明されている他の手法を活用すること。 75.委員会は、今後2年にわたって子どもを含むシリア難民を多数受け入れるという締約国の公約を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国北部(カレーおよびグランドシントなど)の難民キャンプで子どもおよびその家族が不安定な状況に置かれていること、当局が子どもの登録を拒否していること、ならびに、これらの子どもおよび家族に適切なかつ事情に応じた保護を提供するための場所およびサービスに対して十分な資源が配分されていないことを懸念するものである。 76.委員会は、締約国に対し、国際法上の義務にしたがって子どもの保護について第一義的責任を負っていることを想起するよう求めるとともに、登録、人間的な生活水準および十分な保健ケアサービスに対するすべての子ども(難民キャンプで暮らしている子どもを含む)の権利を確保するよう、促す。 武力紛争における子ども 77.委員会は、国以外の武装集団ならびに過激な宗教的および思想的運動による子どもの徴募を防止するために締約国が行なっている努力(暴力的過激主義化およびジハーディストのネットワークと闘うための国家計画を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の子どもおよび若者が、とくにインターネットを通じて洗脳されてそのような運動およびネットワークに合流し続けていることを懸念するものである。 78.委員会は、締約国が、国以外の武装集団ならびに過激な宗教的および思想的運動による子どもの徴募を防止し、かつ、とくに、締約国の子どもおよび若者の間で生じているこの現象およびその根本的原因について理解するための措置を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもおよび若者ならびにより幅広いコミュニティーの関与を確保しながら、アウトリーチおよびエンパワーメントのためのプログラムに投入する資源配分を増加させるよう、勧告するものである。 売買、取引および誘拐 79.人身取引との闘いに関する国家行動計画(2014~2016年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同計画が期限のある測定可能な基準を有しておらず、かつまだ運用されていないことを懸念する。とくに委員会は、援助を求めようとする子どもにとって管轄地域全体で縦割り的な対応および不平等が生じていることに加え、以下のことを懸念するものである。 (a) 有罪判決に至る事案がきわめて少数であること。 (b) 子どもの最善の利益に基づいて人身取引の被害を受けた子どもを正しく特定するための措置が不十分であること、および、未成年であることの推定が、子どもが非行行為を余儀なくされた事案も含めて、常に尊重されているわけではないこと。 (c) 手続全体を通じて通訳者または特別管理人にアクセスできるようにする義務が履行されていないこと。 (d) 人身売買および人身取引の被害を受けた子どものケアが不十分であること。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引との闘いに関する国家行動計画を効果的に実施するために必要な資源を用意すること。 (b) 人身取引に反対する行動に関する欧州評議会条約に一致する形で、人身取引の被害を受けた子どもに関する子どもの保護のための基準が国際基準を満たすことを確保すること。 (c) 人身取引の事案が法律当局によって高い優先順位を与えられ、かつ迅速な捜査が行なわれることを確保すること。 (d) 人身売買および人身取引の被害を受けた子ども(非行行為を余儀なくされた子どもを含む)に対し、適切な援助および保護が与えられることを確保すること。 少年司法の運営 81.委員会は、法律第2014-896号において、予定されていた子どもについての最低刑が撤廃されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を定め、かつ16歳以上の子どもを(暴力的な過激主義的活動に関与した場合を含めて)成人として扱わないようにするべきである旨の前回の勧告の実施が進展していないこと。 (b) 成人拘禁施設の一部区画に子どもを拘禁する実務および女子を成人女性とともに拘禁する実務が廃止されていないこと。〔訳者注/この項の訳はフランス語版による〕 (c) 厳重監督センターのような、拘禁場所に代わる施設の収容能力が不足していること。 (d) 厳重監督センターにおいて、良質な教育、保健ケアおよび精神医学的ケアの提供に関して、訓練を受けた職員および設備が不十分であること。 (e) 特別管理人の役割の理解およびその配置状況が管轄地域全体で著しく異なっており、とくに海外県および海外領土で困難が生じていること。 82.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約その他の関連の基準に全面的に一致させるよう促すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 13歳を下回らず、かつ子どもの分別能力を要件とする、刑事責任に関する最低年齢を定めること(CRC/C/FRA/CO/4 and Corr.1、パラ99参照)。 (b) 16歳以上の子どもを成人として扱わないようにすること。 (c) 拘禁が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられることを実務上確保し、これに代えて可能な場合には常に代替的措置を促進するとともに、拘禁が避けられない場合には、子ども(とくに女子)が成人とともに収容されず、かつ教育および保健サービスにアクセスできるよう、法律および国際基準に一致する形で行なわれることを確保すること。 (d) 十分な人的資源、技術的資源および財源、ならびに、適切な訓練を受けた、必要に応じて対応が可能な特別管理人を備えた、特別な少年法廷施設および手続を確立すること。 (e) 子どもとともにおよび子どものために働く職員(厳重監督センターの職員を含む)の、良質な教育、保健ケアおよび精神医学的ケアを提供する能力の構築を図るとともに、刑事司法制度に従事するすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムを継続すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 83.犯罪の被害を受けた子どもをシェルターで保護しかつ支援するために行なわれている努力は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 司法手続のさまざまな段階における、被害を受けた子どもの保護が一貫していないこと。 (b) 犯罪の目撃者である子どもに対し、被害者である子どもと同一の手続的保障が与えられていないこと。 (c) 実際上、被害を受けた子どもに対する被告人の接近または接触が禁じられていないこと。 (d) 被害を受けた子どもを特定し、かつ、子どもに対して即時的な保護措置ならびに手続の最中および手続後の心理社会的ケアを提供するための機構が不十分であること。 (e) 事情聴取のビデオ録画が有効に活用されておらず、不十分な施設において専門的訓練を受けていない職員によって使用されるのが通例であること。 84.委員会は、締約国が、管轄地域全体を通じて専門的体制および保護措置の一貫性を強め、かつ、犯罪の目撃者である子どもに対し、被害者である子どもと同一の手続的保障が与えられることを確保するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被告人による被害者への接近または接触を禁止する規定が実施されることを保障するとともに、被害者を二次被害、報復または脅迫から保護するための資源を配分すること。 (b) 子どもが、適切な訓練を受けた職員により、即時的な保護ならびに医学的および心理的ケアを受けることを確保すること。 (c) 被害を受けた子どもの事情聴取が、ビデオ録画および熟練の職員の活用等を通じ、当該目的のために設計されかつ適合させられた施設で行なわれるようにするために、法的措置を含む必要な措置をとること。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 85.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書について委員会が2007年に行なった勧告の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 客として児童買春に関与することは犯罪とされているが、客が常に訴追されるわけではないこと。 (b) 性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもが、証拠不十分により事件が棄却されるために、裁判官による聴聞を受けず、または買春の被害者として承認されないこと。 (c) 子どもの強姦が、刑法ではひとつの罪名とされているものの、性的攻撃として再分類されることが多いこと。 86.委員会は、締約国に対し、前回の勧告、とくに、国内法が選択議定書第2条および第3条にしたがうことの確保(CRC/C/OPSC/FRA/CO/1、パラ19参照)、選択議定書に掲げられたすべての犯罪についての裁判権の確立(パラ21)、回復のための援助および被害賠償を提供された被害者の人数に関する細分化されたデータの体系的収集(パラ23(a))、被害を受けた子どものための十分なサービス(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)の確保およびこの点に関する市民社会組織との連携(パラ23(b))、被害を受けた子どもの保護に対応するすべての関係者を対象とする体系的かつ継続的な研修の確立(パラ23(c))、ならびに、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることの確保(パラ23(d))に関連するものを実施するよう求める。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 児童買春に関与した客について捜査、訴追および有罪の宣告を行なうこと。 (b) 被害を受けたすべての子どもが適切なかつ安定した法的、社会的、教育的および医学的援助を受けることを確保するために、十分な社会教育的支援体制を確立する措置を含む措置をとること。 (c) 子どもに対して行なわれた強姦事件を犯罪として訴追すること。 I.国際人権文書の批准 87.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 J.地域機関との協力 88.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 89.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 90.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回定期報告書を2021年3月5日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 91.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年1月4日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/117.html
総括所見:韓国(第3~4回・2011年) 第1回(1996年)/第2回(2003年)/第5回・第6回(2019年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/KOR/CO/3-4(2011年10月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページを参照。 1.委員会は、2011年9月21日に開かれた第1644回および第1645回会合(CRC/C/SR.1644およびCRC/C/SR.1645参照)において大韓民国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/KOR/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合(CRC/C/SR.1668参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがって提出された締約国の第3回・第4回統合報告書、および事前質問事項(CRC/C/KOR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書の分析的および自己批判的性質を評価するものである。委員会はさらに、締約国の部門横断型代表団との建設的対話を評価する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 養子縁組特例法の改正(2011年8月)。 (b) 民法の改正(2011年9月)。 (c) 初等中等教育法施行令の改正(2011年3月施行)。 (d) 自殺防止および生命尊重文化の創造に関する法律の制定(2011年)。 (e) 家事訴訟法の改正(2010年3月)。 (f) 障害児福祉支援法の制定(2011年)。 (g) 児童福祉法の改正(2011年)。 (h) 多文化家族支援法の改正(2011年)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの加入も歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(CRPD)(2008年12月11日)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約の選択議定書(2006年10月18日)。 5.委員会はまた、以下の制度的および政策的措置も歓迎する。 (a) 第2次学校暴力防止・対策5か年計画の策定(2010年)。〔(b)以降が存在しないのは原文ママ〕 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第2回報告書(CRC/C/70/Add.14)の検討後に行なわれた懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.197)ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)の第1回報告書に関する懸念表明および勧告の一部に対応するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念表明および勧告に、不十分にしかまたはまったく対応されていないものがあることを遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないもの、とくに、韓国国家人権委員会内に子どもの権利に関する小委員会を設けること、体罰を包括的に禁止すること、および、教育政策が子どもに与えている高水準のストレスを軽減する目的で当該政策を見直すことに関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 8.委員会は、条約第9条3項に付した留保を政府が2008年10月に撤回したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、条約第21条(a)(養子縁組が、最高の考慮事項としての子どもの最善の利益を正当に顧慮しながら権限のある機関による審査の対象とされることの確保)および第40条2項(b)(v)(締約国の刑法に違反したとして申し立てられまたは罪を問われたすべての子どもが、当該決定について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立のかつ公平な機関または司法機関によって再審理される権利を有することの確保)に対する留保を維持していることを遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国が、条約の全面的実施の妨げとなっている、第21条(a)および第40条2項(b)(v)に対する留保の撤回を検討するよう、勧告する。 立法 10.委員会は、締約国の憲法で、国内法における条約の直接適用可能性が認められていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約の一般的規定を実施するための国内規則が不十分であること、および、締約国の裁判所による条約の直接適用がきわめて稀にしか行なわれないことを懸念するものである。委員会はさらに、法律による妊娠中絶の禁止(狭く定められた例外的状況の場合を除く)において妊娠した青少年の最善の利益が十分に考慮されておらず、妊娠した青少年が直面する困難を悪化させる状況が生じかねないことを懸念する。このような困難には、危険をともなう違法な中絶を利用し、ならびに(または)学業の中断を余儀なくされおよび(もしくは)子どもを養子縁組のために手放さざるを得なくなるおそれにさらされることが含まれる。 11.委員会は、締約国が、自国の司法決定において条約のすべての規定が十分に適用されることを確保するための措置(さらなる関連の立法を検討することも含む)よう勧告する。委員会はさらに、締約国が、妊娠中絶に関する法律において、思春期のシングルマザーが安全な妊娠中絶へのアクセスを認められ、かつ違法な中絶および子どもの養子縁組の強制から十分に保護されることを確保する等の手段によって子どもの最善の利益の原則が全面的に遵守されることを確保する目的で、当該法律を見直すことも勧告するものである。 調整 12.委員会は、とくに締約国の子ども政策調整委員会(CPCC)が2008年以降機能しておらず、かつ子どもおよび若者に関する締約国の政策が個別の省庁(それぞれ保健福祉部および女性家族部)によって実施されていて政策の断片化が生じていることにより、締約国による条約の実施における調整が後退していることを懸念する。青少年政策政府間評議会が設置されたことには留意しながらも、委員会は、青少年政策の調整を向上させる必要があることを依然として懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) CPCCを再建しおよび強化し、または、より好ましい方策として、必要な権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を有する適当な機関を設置すること。 (b) さまざまな省庁(保健福祉部および女性家族部を含む)間ならびに関連の国家機関、広域行政圏機関および自治体機関間において子どもの権利に関わる職務および関係が明確にされることを確保するとともに、その際、条約実施のために締約国が行なっているすべての活動を効果的に調整すること。 国家的行動計画 14.委員会は、2007年5月に国家人権政策基本計画(2007~2011年)が採択されたことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約のすべての分野を網羅した、包括的な、かつ権利を基盤とする子どものための国家的行動計画が存在しないことを、依然として懸念するものである。さらに委員会は、現行計画の期間満了後にその後継計画となる国家行動計画が策定されていないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、関連のパートナーとの協議および協力に基づき、条約のすべての分野を網羅した、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源の提供ならびに監視機構の設置を可能にする、子どものための国家的行動計画を採択しかつ実施するよう勧告する。これに加え、委員会は、締約国に対し、2011年後の期間に関する後継国家行動計画の作成作業を、市民社会および子どもたちと透明かつ徹底的な協議を行ないながら速やかに開始するよう、促すものである。委員会は、締約国がその際、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビューを考慮するよう勧告する。 独立の監視 16.委員会は、韓国子どもの権利モニタリング・センター(KMCCR)およびそれに付随して現場で活動する子どもの権利オンブズパーソンが設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点も含め、同制度が、国レベルで条約の実施を監視するための独立した機能的機構を有していないことを懸念するものである。 (a) KMCCRが法律上の地位を有しておらず、かつ保健福祉部の統制下にある予算科目の対象とされていること。 (b) KMCCRおよび子どもの権利オンブズパーソン制度に対し、子どもの権利侵害を能動的に監視しまたは調査し、かつ苦情を受理する権限が認められていないこと。 (c) KMCCRの権限が締約国による年次業績評価の結果次第とされており、そのためその独立性および継続性に影響が生じる可能性があること。 委員会はさらに、国家人権委員会の規模が2009年3月に21%縮小されたこと、および、委員会のこれまでの勧告にも関わらず、依然として子どもの権利に関する専門部署が設けられていないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、KMCCRに明確な権限を与える目的でその法律上の地位をはっきり定めるとともに、条約違反を効果的に監視しかつ調査するセンターおよびオンブズパーソン双方の効果的運営を確保する目的で、十分な、かつ独立した人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、韓国国家人権委員会の独立性および継続性ならびに子どもの権利に関する専門化のための適当な条件を整備するよう、促すものである。 資源配分 18.委員会は、社会部門の実施のために配分される財源の増加(2008年より16.5%増)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の進んだ経済発展状況を踏まえれば、現行の財源配分額が利用可能な資源に占める割合は依然として低いことに、深い懸念とともに留意するものである。2009年の経済開発協力機構(OECD)家族データベースによれば、大韓民国は加盟国26か国のなかで最下位に位置している。委員会はさらに、条約実施のためにさまざまな自治体当局が利用可能な資源の水準に相当の格差があることを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 進んだ経済発展状況にあわせて、かつOECDの水準との関連で財源配分水準をいっそう緊密に調整する目的で、条約実施のために配分される財源の水準を再検討しかつ高めること。 (b) 子どもの権利の十分な実現を確保し、かつ居住する自治体および(または)地域が異なる子どもの間の格差を防止する目的で、中央および自治体のレベルにおける財源配分額を子どもの権利の視点から評価すること。この目的のため、部門別および自治体別の予算ニーズに関する包括的アセスメントを実施するとともに、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対応する分野に対し、安定した配分が行なわれるようにすること。 (c) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (d) 可能であれば、資源配分の実効性を監視しかつ評価する成果基準予算を開始するべきであるという国連の勧告にしたがうこと。 (e) とくに子どもたちとの公的な対話を通じ、透明な、かつ参加型の予算策定を確保すること。 (f) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある、不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえば難民または移住労働者の子ども)に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (g) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 20.委員会は、締約国において、データ収集の取り組みが方法論的に一貫しておらず、かつ条約が対象とする諸分野についての細分化されたデータが存在しないことを懸念する。委員会はまた、子どもの相対的貧困および極度の貧困を削減しようとするさまざまな政策およびプログラムにも関わらず、締約国において貧困下で生活している子どもについてのデータが存在せず、かつ、貧困削減を支援する地方政府の予算および能力についての格差を縮小するための措置がとられていないことも、懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、条約のすべての分野を網羅し、かつ、とくに民族、ジェンダー、年齢、地理的所在および社会経済的背景を考慮した細分化されたデータを包括的に収集するための一貫したシステムを確立するよう、強く奨励する。委員会はさらに、締約国が、データで判断可能な諸傾向に関する学際的研究を実施するよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 22.人権に関する内容が締約国の学校シラバスに部分的に含まれたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、子ども、一般公衆および子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で条約に関する意識の水準が低いことを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国が、とくに以下の手段によって意識を向上させるための追加的措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利および人権に関する教育を学校カリキュラムにさらに含めること。 (b) 子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家集団を対象として、条約に関する十分な研修が行なわれることを確保すること。 (c) 一般公衆の間で条約に関する意識を高めるための措置を強化すること。 国際協力 24.締約国が国際援助への拠出額を徐々に増やしてきたことは認めながらも、委員会は、国際援助に対する締約国の配分額が国民総生産(GNP)に占める割合はおよそ0.13%に留まっており、締約国が2015年までに達成することを誓約した、対GNP比0.7%という国際合意目標よりも相当に低いことに留意する。 25.委員会は、締約国に対し、2015年までに対GNP比0.7%という国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するようにも奨励するものである。委員会は、締約国が、その際、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案する。 子どもの権利と企業セクター 26.委員会は、世界でもっとも活力ある経済国のひとつである締約国の企業セクターが、企業の社会的責任(現在のところ、もっぱら環境問題に焦点を当てているように思われる)への関心を高めていることを歓迎する。締約国の法律の諸側面においてとくに労働基準および最低賃金への対応が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、企業活動が人権に及ぼす悪影響の防止および緩和について定める包括的な立法上の枠組みが、締約国の領域における企業活動についても国外における企業活動についても存在しないことに、留意するものである。委員会はさらに、とくに以下の点に懸念とともに留意する。 (a) 締約国が、子どもの強制労働を用いているという報告があることを理由に国際労働機関(ILO)(および欧州議会)の調査対象とされている国々から製品を輸入しており、したがって重大な子どもの権利侵害に加担していること。 (b) 締約国出身の企業が、さまざまな国で、とくに水および居住に対する権利に悪影響を及ぼす可能性がある土地賃借契約を締結しまたは締結しようとしているという報告があること。 (c) 締約国が締結したまたは締結の承認を待っている自由貿易協定の交渉に先立ち、何らの人権影響評価も行なわれていないように思われること。 27.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年の人権理事会決議8/7および新たな作業部会に対してこの問題のフォローアップを要請した2011年6月11日の同決議17/4(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 韓国に本社を置く企業に対して、国内および国外におけるその活動(当該企業のサプライチェーンまたは関連業者のいずれによって行なわれるものかは問わない)から生じる人権への悪影響を防止しかつ緩和するための措置をとるよう求める立法上の枠組みを定めることにより、効果的な企業責任モデルの採用をさらに促進すること。子どもの権利に関わる指標および変数を報告に含めることが促進されるべきであり、かつ、事業が子どもの権利に及ぼす影響の具体的アセスメントが要求されるべきである。 (b) 子どもの強制労働を用いて製造された製品の輸入を防止する目的で製品の搬入を監視するとともに、自国の市場に持ちこまれる製品が児童労働と無縁であることを要件とする目的で貿易協定および国内法を活用すること。 (c) 自国の企業が国外事業を行なう際に子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとるとともに、先住民族に影響を及ぼす事業について、自由なかつ十分な情報に基づく事前の同意を得るプロセス、または人権/子どもの権利に関する影響評価を実施している外国政府と協力すること。 (d) 自由貿易協定の交渉および締結に先立ち、子どもの権利を含む人権についての評価が実施され、かつ人権侵害を防止するための措置がとられることを確保すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 28.委員会は、締約国の反差別法案が国会で検討されることなく2007年10月に廃案となったこと、および、立法上の差別の定義に、性的指向および国籍に基づく差別の明示的禁止が掲げられていないことを遺憾に思う。さらに委員会は、締約国で根強く残り続けている複合的形態の差別について懸念するものである。このような差別には、多文化的背景もしくは移住者としての背景を有する子どもまたは朝鮮民主主義人民共和国出身の子ども、子どもの難民、障害のある子ども、および、シングルマザー、とくに思春期のシングルマザー(国による支援措置からの除外に関するものも含む)に対する差別が含まれる。 29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 条約第2条に全面的に一致する法律を採択する目的で、反差別法を速やかに制定すること。 (b) 脆弱な状況またはマイノリティの状況に置かれた子どもに対する差別的態度を根絶しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび公衆教育キャンペーンを含むあらゆる必要な措置をとること。 (c) 思春期のシングルマザーを含むシングルマザーに対し、十分な支援を提供すること。 生命、生存および発達に対する権利 30.委員会は、自殺防止基本計画(2004年)等を通じ、若者および子どもの自殺に対応するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、大韓民国における自殺率が深刻なほど高いことを、依然として深く懸念するものである。 31.委員会は、締約国に対し、調査研究の結果を具体的な政策、制度的措置および行政措置を実施する際の指針として活用する目的で、関係する子どもの家庭および教育制度の双方における子どもの自殺リスク要因についての調査研究を実施するよう、促す。委員会はさらに、このような政策および措置には十分な防止措置およびフォローアップ手続の整備が含まれるべきであり、かつ、これらの措置および手続を支えるため、ソーシャルワーカー、および、関係するすべての子どもを対象とする心理相談サービスが十分に提供されるべきであることを、勧告するものである。 子どもの最善の利益 32.委員会は、子どもに関わる締約国の法律で子どもの最善の利益の原則に対する明示的言及が見られず、かつ、司法上および行政上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいてこの原則が頻繁に適用されていないことを、懸念する。 33.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 子どもの意見の尊重 34.子どもおよび若者の意見表明のために締約国が組織する会議が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の法的手続においても社会的態度の文脈においても、子どもに影響を与える決定についての子ども(とくに15歳未満の子ども)の意見が考慮されていないことを依然として懸念するものである。 35.委員会は、子どもが自己に影響を与えるあらゆる決定において意見を表明し、かつその意見を考慮される権利を有することを確保するための法改正を検討するよう勧告するとともに、条約第12条にしたがって締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために児童福祉法が改正されることを確保するとともに、裁判所および行政機関(学校および教育制度の懲戒手続も含む)において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見の尊重を促進し、かつ意見を聴かれる子どもの権利の便宜を図るために、立法等も通じて効果的措置をとること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ意見を聴かれる子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて、定期的検討を行なうこと。 (d) 意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 36.委員会は、締約国における現行の法律および実務が、実親による子どもの完全出生登録をあらゆる状況下で保障するには不十分であることを懸念する。とくに委員会は、出生登録を養親または公的権限を有する者が行なえるため、思春期のシングルマザーが関わる状況等において、適切な司法的監督のないまま事実上の養子縁組が行なわれる結果につながっていることを懸念するものである。委員会はさらに、難民、庇護希望者または非正規移民の状況にある者にとって、出生登録が実際上または一貫した形では利用可能となっていないことを懸念する。 37.条約第7条にしたがい、委員会は、締約国に対し、親の法的地位および(または)出自に関わらず、すべての子どもに対して出生登録が利用可能とされることを確保するための措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、その際、登録において子どもの実親が正確に記載されていることを確保しかつ確認するよう促すものである。 思想、良心および宗教の自由 38.締約国が学校における義務的宗教教育を禁じたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、実際には、宗教機関が運営する私立学校において生徒(当該学校に自発的に入学したわけではない可能性がある生徒を含む)の宗教の自由が引き続き制限されていることを懸念する。委員会はまた、現行の取り組みにおいて、宗教的多様性に資する雰囲気が十分に促進されておらず、または特定宗教の子どもが有する具体的なニーズもしくは制約(食事面の要件に関わるものを含む)が十分に考慮されていないことも懸念するものである。 39.委員会は、条約第14条3項にしたがい、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が実際上およびあらゆる場面で全面的に尊重されることを確保するため、締約国がさらなる措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、このような措置が、特定の宗教の具体的な要件または制約(食事面の要件に関わるものを含む)に対して正当な考慮および配慮が払われる、宗教的多様性の認識に資する雰囲気を促進する目的でとられるべきことを、勧告するものである。 表現、結社および平和的集会の自由 40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.197、パラ37)にも関わらず、学校が生徒の政治的活動を引き続き禁止していることに懸念を表明する。さらに委員会は、学校運営委員会が生徒の参加を除外しており、かつ、学校に行っていない都市部および農村部の子どもにとって表現および結社の自由に対する権利を行使する機会が制限されていることを懸念するものである。 41.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、条約第12~17条に照らし、締約国に対して、学校内外の意思決定プロセスおよび政治的活動への子どもの積極的参加を促進し、かつすべての子どもが結社および表現の自由を全面的に享受することを確保する目的で、法律、教育部が発する指針および校則を改正するよう求める。これには、生徒が (i) 学校環境におけるものも含む政治的活動に参加しまたはこれを行ない、かつ、(ii) 学校運営委員会に意味のある形で参加できるようにすることに関連した措置も含まれる。 体罰 42.委員会は、家庭、学校および代替的養護の状況において体罰が引き続き蔓延していることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.197、パラ38)をあらためて表明する。 43.委員会は、以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 関連の法律および規則を改正し、家庭、学校その他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すべきであるという、国家人権委員会の勧告を実施すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、学校および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけ(学校における体罰に代わる手段としての試験的グリーン・マイレージ制度を含む)を促進すること。 (c) 体罰の被害を受けた子どもが当該事件を通報できるようにするための機構を確立すること。 子どもに対する暴力(虐待およびネグレクトを含む) 44.委員会は、締約国において子どもの身体的および心理的虐待ならびにネグレクトの発生件数が増加していること、および、このような虐待を通報する法的義務が狭く定められていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、学校におけるいじめの発生率および深刻さが増していることも懸念するものである。さらに、地方の子ども保護機関が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、その数が依然として限られており、かつ財源および人的資源が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような虐待および(または)ネグレクトの被害者に対する、トラウマ後の対応およびリハビリテーションのための支援の提供が不十分であることにも、懸念とともに留意するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待およびネグレクト(学校におけるいじめに関わるものも含む)を通報する法的義務について、通報者の安全およびプライバシーを正当に考慮しながらこのような通報が行なわれるようにするための十分な機構を整備することにより、当該義務を強化しかつ拡大すること。 (b) 地方レベルも含めて保護機関を増設するとともに、これらの機関に対し、その効果的職務遂行(虐待および(または)ネグレクトの被害者に対し、トラウマ後の対応およびリハビリテーションのための十分な支援を提供することも含む)を保障するために必要な、十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されるようにすること。 (c) あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する子どもの権利委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮すること。 46.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくにILO、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境を奪われた子ども 47.委員会は、養護を必要としている子どもに家庭的養護を提供するための努力を締約国が行なっていること、および、そのような養護を提供するための追加的施設が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、そのような代替的養護施設の評価において当該施設の運営管理しか対象とされず、養護の質、専門家の技能および訓練ならびに提供される処遇については評価されないことに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、そのような施設における虐待またはネグレクトの事例に対応するための苦情申立て機構に関する情報が存在しないことを懸念する。委員会はまた、親との接触を失った子供を追跡するシステムが設置されていないことも懸念するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第25条にしたがい、代替的養護を提供する官民の施設における養護の質、関連の専門家の定期的研修(子どもの権利に関する研修を含む)および子どもに提供される処遇の態様についての体系的な定期的審査を確保すること。 (b) 代替的養護の現場における児童虐待についての苦情の受理、捜査および訴追のための機構を確保するとともに、虐待の被害者が苦情申立て手続、カウンセリング、医療ケアおよび回復のための他の適当な援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 代替的養護を受けている子どもに対し、親との接触を確立しかつ(または)維持するための十分な支援を提供すること。 (d) 2009年11月20日に採択され、総会決議64/142に掲げられた「子どもの代替的養護に関する指針」〔PDF〕を全面的に考慮すること。 養子縁組 49.締約国が養子縁組特例法および民法を改正したことにより、当該改正の施行とともに、養子縁組について家庭裁判所の承認決定が求められるようになることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、当該法が施行されるまでの暫定期間中の子どもの養子縁組について懸念を覚える。委員会はまた、以下の点も依然として懸念するものである。 (a) 養子縁組についての規制の監督を行なう明確な権限を与えられた中央当局が設置されておらず、かつ、締約国の権限ある機関が国際養子縁組手続に介入する義務を成文化した法律が定められていないこと。 (b) 養子となる子どもが13歳未満の場合には子どもの意見が聴かれないこと。 (c) 思春期のシングルマザーのもとに生まれた子どもの圧倒的多数が養子縁組のために手放されていること、および、思春期のシングルマザーの親または法定保護者に対し、当該シングルマザーの同意なく子どもを養子縁組のために解放する権限が認められていること。 (d) 養子縁組後に利用可能なサービス、とくに国際養子縁組の対象とされた子どものためのサービスがほとんど存在しないこと(このような養子が自己の生物学的出自に関する情報を求める場合に直面する言語上の困難への対応に関するサービスも含む)。 (e) 締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約に依然として加盟していないこと。 50.委員会は、前掲法の施行前に行なわれる養子縁組について同等の十分な保護が提供されることを確保するために必要な措置を、締約国が迅速にとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法律を子どもの権利条約の原則および規定、とくに第21条に全面的に一致させるべく法改正を行なう目的で国際養子縁組制度のさらなる見直しを行なうとともに、具体的には以下の措置をとるようにも促すものである。 (a) 韓国中央養子縁組資料本部がハーグ条約第6条にしたがってその役割および職務を効果的に遂行できるようにするための明確な権限(養子縁組後のサービスの提供に関わるものも含む)を定めるとともに、そのための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。養子縁組後のサービスの提供にあたっては、国際養子縁組の対象とされ、かつ韓国語に堪能ではない可能性がある者が当該便益に実際的にアクセスできることの確保に対し、正当な考慮を払うことが求められる。 (b) 養子縁組手続において、子どもの意見がその年齢および成熟度を顧慮しながら正当に重視され、かつ子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保すること。 (c) 養子縁組のために子どもを解放することについて思春期のシングルマザーの同意を義務づけるとともに、これらのシングルマザーに対し、当該同意が事実上のまたは現実の強迫により得られることのないことを保障する環境が提供されることを確保すること。 (d) すべての養子縁組(国際的文脈で行なわれるものを含む)が、明確な権限を与えられ、かつ司法的監督および規制を行なう十分な能力を有する中央当局による認可の対象とされることを確保するための措置を実施すること。 (e) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を検討すること。 E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害児福祉支援法、同法に基づく障害児リハビリテーション・プログラム、および障害児家庭子育て支援プログラムを歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どものための政府の援助が低所得世帯にしか提供されず、かつ理学療法および職業訓練は対象としていないことを懸念するものである。委員会はさらに、教育を受けるにあたって障害のある子ども(とくに女子)が困難に直面していること、特別教育の教員および監督者の利用可能性が限られていること、ならびに、障害のある子どもの大多数は、障害のない子どもから隔離された特別学校または特別教室で教育を受けていることを、懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、2006年に採択された障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(CRC/C/GC/9)を考慮するとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のあるすべての子どもに対して適当な援助を提供すること。 (b) 障害のある子どもがその教育上のニーズについて十全な対応を受けられることを確保する目的で、障害のある子どもによる教育へのアクセスを促進するとともに、特別教育教員を増員するための措置をとり、かつ、教員および学校監督者に対して十分な研修を行なう措置をさらに強化すること。 (c) とくに十分な予算および人員による裏づけを図ることにより、障害者等に対する特殊教育法案〔ママ〕をより効果的に実施すること。 (d) 可能なときは常に、障害のある子どもに対してインクルーシブ教育が提供されることを確保すること。 健康および保健サービス 53.委員会は、締約国の保健予算が増額されたこと、および、健康保険の整備のために特別予算が配分されたことを歓迎する。委員会はまた、低所得世帯を対象とする医療扶助プログラム、喫煙に反対する公的キャンペーン、ならびに乳幼児の集団検診および予防接種を強化するための努力も歓迎するものである。しかしながら委員会は、このような増額にも関わらず、締約国の保健予算が総予算に占める割合が低いままであることを依然として懸念する。さらに委員会は、大規模な医療センターとそれよりも小さな地方病院との間で、小児保健および緊急ケアの利用可能性および質に格差があることを懸念する。 54.委員会は、保健に配分される資金を相当水準まで増加させるとともに、低所得家庭が費用負担なしに保健制度にアクセスできるよう公的ケア施設制度を確立するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/15/Add.197、パラ49(a))をあらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、小規模および中規模の地方病院に提供される、領域全体で小児医療ケアおよび緊急ケアを提供するための財源、技術的資源および人的資源を増加させる措置をとるよう勧告するものである。 精神保健 55.委員会は、とくに精神保健サービス・センターを全国32か所に設置することによって子どもの精神保健を向上させようとしている締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの精神保健の状況が全般的に悪化しており、かつ、子ども(とくに女子)の抑うつ発生率および自殺率が上昇していることを懸念するものである。委員会はまた、自殺の早期発見・予防を促進するための診断ツールが実施されていることにも留意しながらも、当該診断ツールがプライバシーに対する子どもの権利に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。 56.委員会は、締約国が、子どもの抑うつおよび自殺の根本的原因に関する詳細な研究に基づいた子どもの精神保健ケア政策を策定するための措置をとるとともに、とくに女子の自殺行動の効果的防止を確保する目的で、包括的なサービス・システム(精神保健の促進および予防活動ならびに外来および入院による精神保健サービスを含む)の開発に投資するよう、勧告する。その際、委員会は締約国に対し、このような状況に置かれた子どもの施設措置を可能なかぎり最大限に回避するよう奨励するものである。さらに、自殺の発見および防止のための診断ツールの応用について、委員会は、締約国が、プライバシーに対する子どもの権利および子どもが十分な協議の対象とされる権利を十分に尊重するようなやり方で当該診断ツールが応用されることを確保するための十分な保護措置を確立するよう、勧告する。これらの勧告の実施について、委員会はまた、精神保健アプローチに加え、または適切なときは精神保健アプローチに代わるアプローチとして、自殺に関連する社会的および家族的要因を検討することの重要性も強調するものである。 思春期の健康 57.委員会は、子ども向け菓子等の製造、加工、輸入、頒布または販売を行なっている企業が子ども向けテレビ番組の放送中に高カロリー・低栄養の食品のコマーシャルを流すことを、韓国食品医薬品安全庁長が禁止できることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、小児肥満、および不健康な栄養摂取から生じるその他の健康問題を有する子どもが多いことを懸念するものである。委員会はさらに、韓国における子どもおよび青少年の喫煙率および飲酒率が上昇し続けており、かつインターネット依存症が深刻な問題となっていることを懸念する。 58.さらに委員会は、必修の性教育プログラムを行なおうとする取り組みにも関わらず、実際には、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する体系的かつ正確な教育が依然として学校で行なわれていないことに、懸念とともに留意する。このような文脈において、委員会はまた、青少年の無計画妊娠率が高いこと、および、そのような状況に置かれた青少年の中絶率がこれに対応して高いことも、深く懸念するものである。 59.委員会は、締約国に対し、マスメディアの関与等も得ながら、タバコ、アルコールおよびインターネット依存症の健康上のリスクに関する意識を高めるための広報教育キャンペーンを強化するよう、促す。その際、締約国は、そのようなキャンペーンが、青少年が置かれている具体的状況を考慮しおよびこれに対応し、ならびに、健康的なライフスタイルを送りおよびバランスのとれた消費パターンを実践する青少年の能力構築に寄与することを確保するとともに、子どもの健康に悪影響を及ぼす不健康な食品の販売促進を規制するために追加的措置をとるよう、奨励されるところである。委員会はまた、締約国が、学校カリキュラムにおける性教育プログラムが体系的かつ信頼のできるやり方で実施されることを確保するための措置をとるようにも勧告する。 社会保障および生活水準 60.委員会は、憲法第34条3項、4項および5項にしたがって女性、高齢者および若者の福祉を向上させるための締約国の取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、憲法が子どもの福祉を向上させる義務について定めていないことを懸念するものである。 61.委員会は、締約国に対し、子どもの福祉に対して十分な水準の資金を具体的にかつ義務的に配分することについての規定を置くために法改正を検討するよう、促す。締約国は、貧困を削減し、かつすべての子どもの生活水準を向上させるためのプログラムにおいて平等性および公平性を確保するべきである。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 62.生徒のストレスを軽減するために締約国が行なっている努力、および、子どもが遊び、かつレクリエーション活動および文化的活動を行なえることを確保するためのプログラムの採用にも関わらず、委員会は、締約国の教育制度において、深刻なほど競争的な状況がいまなお蔓延していることを懸念する。委員会はまた、課外で行なわれる民間の追加的指導を子どもが広く受けている結果、子どもが深刻かつ不相応なストレスを受けており、かつその身体的および精神的健康に悪影響が生じていることも懸念するものである。さらに委員会は、このような民間の指導の金銭的負担のためにすでに存在する社会経済的非対称性が悪化していること、および、これによって余暇および文化的活動に対する子どもの権利の十分な充足が阻害されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、とくに外国系の子どもに対するいじめの深刻さおよび頻度が増しており、かつ、そのようないじめの実行に携帯電話およびインターネットが利用されていることも懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第29条、および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を正当に考慮しながら、現行教育制度および関連の試験についての評価を行なうこと。 (b) 民間の課外教育に対する幅広い依存の根本的原因およびその結果として生ずる高等教育へのアクセスの不平等に対応する目的で、公教育制度を強化するための努力を倍加すること。 (c) 条約第31条にしたがい、十分な余暇、文化的活動およびレクリエーション活動を享受する子どもの権利を確保すること。 (d) 学校へのアクセスの平等の達成に関わる具体的成果についての情報を体系的に収集し、かつ締約国の次回定期報告書に当該情報を記載すること。 (e) 外国系の子どもにとくに注意を払いながら、いじめと闘うためにとられる措置を強化するとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保すること。このような措置においては、教室または校庭の外で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 64.委員会は、締約国の法律が、同国の領域で生まれた子どもの難民および庇護希望者の民事上の地位の証明書類について定めていないこと、および、庇護希望者および人道上の理由による在留資格保有者の子どもが置かれているこのような脆弱な状況が、その親が労働市場へのアクセスを制限されており、かつ生計手段の援助を受けられないために悪化していることを、懸念する。委員会はまた、難民の社会的統合を援助するプログラムが存在しないこと(学校への受け入れが親の出入国管理法上の地位を条件としているため、難民および庇護希望者の子どもの教育へのアクセスが制限されていることを含む)も懸念するものである。委員会はさらに、難民または庇護希望者と直接接する職員に対して提供される、難民の権利に関する教育プログラムまたは研修の機会が設けられていないことを懸念する。 65.委員会は、締約国に対し、自国の領域内で生まれたすべての子ども(難民および庇護希望者の子どもを含む)の登録を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、庇護希望者および人道上の理由による在留資格保有者の家族に対して十分な金銭的および社会的援助を提供するとともに、そのような状況にある子どもが締約国の国民と同様に教育にアクセスできることを確保するよう、奨励するものである。 さらに委員会は、締約国に対し、公務員、とくに難民または庇護希望者と接する公務員に対して難民の権利に関する特別研修を行なうよう促す。 66.さらに委員会は、子どもの難民および庇護希望者ならびに保護者のいない子どもが、締約国の出入国管理法に基づいて収容される可能性があることを深く懸念する。委員会はさらに、そのような収容が行なわれる場合は子どもにとって不適切な施設で行なわれ、かつ、当該収容(送還命令の執行待機中の場合については法定期間制限が定められていない)の定期的かつ時宜を得た再審査を確保する規定が存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。 67.委員会は、締約国に対し、難民、庇護を希望中または保護者のいない状況にある子どもの収容を行なわないよう促す。送還が行なわれる場合、委員会は、締約国に対し、そのような状況に置かれた子どもが、可能なかぎり最大限にこのような子どもの権利に配慮しかつそれを尊重する施設に収容され、かつ時宜を得た定期的再審査および明確に定められた期間制限の対象とされることを確保するよう、促すものである。 移民の状況にある子ども 68.委員会は、韓国における生活への外国人の統合を促進する在韓外国人〔処遇基本〕法(2007年)、および、不法移民の子どもの入学および転校を認める初等中等教育法施行令の改正(2008年)が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、移住者の子どもの学校出席率がいまなお低いことを依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもが小学校および中学校に出席することを確保するよう親に要求する締約国の法律が、同国の国民でない親に対しては適用されないことを懸念する。 69.委員会は、締約国が、移住者の子ども(不法移民の子どもも含む)が教育にアクセスしかつ実際に教育を受けることを確保するための政策および戦略を策定しかつ採択するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する〔国際〕条約を批准し、かつ国内法をその規定に一致させることも奨励するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 70.委員会は、子どもを搾取から保護するための未成年労働者保護総合対策(2005年)が確立されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下の点について懸念を覚えるものである。 (a) 働く子どもの人数が増えていること。 (b) 子どもを雇用している雇用主が、労働基準法で定められた未成年労働者のための基準をしばしば満たしていないこと(夜間労働および最低賃金以下の労働に従事させられている15歳以上の子どもとの関連も含む)。 (c) 賃金の支払われない待機時間のような不正規な労働慣行を規制する法規定が不十分であること。 (d) 労働監察が不十分であること。 (e) 言葉によるおよび性的な虐待および暴力が広く発生していることにより、働く子どもの問題がさらに悪化していること。 (f) 興行従事者および性の対象として雇われる子どもの人数が増えていること。 71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが働くことにつながる根底的な社会経済的要因に対処するための措置をとること。 (b) 18歳未満の者の労働条件に関して定められた基準が、夜間労働の禁止の効果的執行および最低賃金の支払いとの関連も含めて厳格に執行されることを確保すること。 (c) 不正規な労働慣行を規制する追加的な法規定を制定すること。 (d) 労働監察を改善することにより、労働環境のあらゆる側面が包括的に監視されることを確保すること。 (e) 労働環境における暴力およびセクシュアルハラスメントに対応しかつこれを防止するための効果的措置をとり、かつ、このような問題が発生した場合に責任の追及およびリハビリテーションの保障を行なうための効果的機構が利用できるようにすること。 性的搾取 72.委員会は、性的搾取からの青少年の保護に関する法律が2008年に改正されたことにより、子どもの性的搾取に関するデータの定期的収集が定められ、かつ、被害者に対し、一時的および緊急の生活支援、法律上および医療上の援助ならびに職業訓練を提供するとされたことを歓迎する。委員会はまた、虐待の被害者を対象とし、かつ性的搾取の被害を受けた子どもにカウンセリング、保護および治療を提供する「ひまわり児童センター」および「ワンストップ・サポートセンター」が設置されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下の点について依然として懸念を覚える。 (a) 締約国において子どもに対する性暴力が劇的に増加しており、かつポルノの消費率が高いこと。 (b) 子どもの性的搾取の訴追率が低いこと。 (c) 男性および男子のためのまたは外国語による被害者リハビリテーション・サービスが存在しないこと。 (d) このような虐待の発生率が高まっているにも関わらず、防止および被害者支援に対する予算配分額が削減されていること。 73.委員会は、締約国が、国内法を条約第35条ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第2条および第3条と一致させるために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対する性暴力を防止するために適当な措置をとること。 (b) いかなる手段によるかを問わず、子どもを性的搾取の目的で提供し、引き渡しまたは受け取ることを構成するすべての行為を犯罪化する等の手段により、子どもの性的搾取を効果的に訴追するためにさらなる努力を行なうこと。 (c) 子どもを対象とする性犯罪の加害者に対する制裁が、犯罪の重大性にふさわしいものとなり、かつ刑事司法制度において行なわれることを確保すること。 (d) いかなる形でも刑事責任を免除することなく、性犯罪者を行なった者を更生させるための努力を継続すること。 (e) 人身取引および性的搾取の被害者の出身国としてもっとも一般的な国々を考慮に入れながら、多言語方式によるものも含むリハビリテーション・サービスを、女子のみならず男子に対しても提供すること。 人身取引 74.委員会は、性売買防止総合計画の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の法律であらゆる形態の人身取引が処罰の対象とされているにも関わらず、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および強制労働を目的とした人身取引の対象とされ続けていることを懸念するものである。委員会は、人身取引を行なった者の訴追率および有罪判決率が低いことをとりわけ懸念する。 75.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、取引および誘拐の加害者に対して自己の犯罪の責任をとらせるための十分な措置がとられることを確保するよう、促す。さらに委員会は、締約国が、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准を検討するよう、勧告するものである。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書 76.委員会は、議定書第2条および第3条に掲げられたすべての犯罪が締約国の立法で十分に網羅されていない旨の懸念(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ30)をあらためて表明する。さらに委員会は、前掲(パラ35)のとおり第三者による子どもの出生登録を防止するための措置がとられていないことにより、これらの子どもが売買の対象とされる結果が生じうることを懸念するものである。委員会はまた、議定書第3条1項に掲げられた犯罪について、当該犯罪が自国の国民もしくは自国の領域に常居所を有する者によって国外で行なわれる場合または被害者が大韓民国の国民である場合に裁判権を設定するためにとられた措置に関して、締約国から何らの情報も提供されなかった旨の懸念(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ38)もあらためて表明する。 77.委員会は、以下の措置をとるよう求めた勧告をあらためて繰り返す。 (a) 国内法が選択議定書第2条および第3条と全面的に一致することを確保するために必要な措置をとること。 (b) 選択議定書第4条2項に照らし、選択議定書に掲げられた犯罪について、当該犯罪が自国の国民もしくは自国の領域に常居所を有する者によって国外で行なわれる場合または被害者が大韓民国の国民である場合に域外裁判権を設定するため、必要な立法措置をとること(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ39)。 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書 78.委員会は、18歳未満の者を義務的に徴募しまたは敵対行為に参加させることを犯罪とする具体的規定がない旨の懸念をあらためて表明する(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ12)。 79.委員会は、締約国に対して以下の措置をとるよう求めた勧告をあらためて繰り返す。 (a) 子どもの徴募および敵対行為への子どもの関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律により明示的に禁ずること。 (b) すべての法律が選択議定書の規定と全面的に調和させられることを確保すること(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ13)。 (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ13)。 少年司法の運営 80.委員会は、締約国において非行率が引き続き上昇しており、かつ少年犯罪率が高いこと(このような犯罪者の再犯率が高いことも含む)を懸念する。委員会はまた、このような変化に対する政府の対策が、子どもがこのような状況に置かれる根本的原因に対応するのではなく、主として懲罰的措置の強化に焦点を当てるようなやり方(罪を犯した子どもの社会への再統合を目的とした効果的措置をとるのではなく、成人が収容されている拘禁施設にこのような子どもを措置することも含む)でしか行なわれていないことにも、懸念とともに留意するものである。さらに、少年担当検察官が任命されたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、少年司法に関する専門性を効果的に高められるような状況が提供されていないため、これらの検察官がこの役割を十分に果たせていないことを懸念する。 81.委員会は、締約国に対し、少年犯罪および高い再犯率に効果的に対抗するための十分な措置をとるよう求める。したがって委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告するものである。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国全域で、十分な人的資源、技術的資源および財源を有する専門の少年裁判所を設置すること。 (b) 刑法に違反したとして申し立てられた子どもに対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、十分な法的その他の援助を提供すること。 (c) 自由を奪われまたは更生センターもしくは拘禁施設に措置された子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。 (d) 自由を奪われた子どもが措置に関する決定について定期的再審査を受ける権利を確保すること。 (e) 拘禁が最後の手段として用いられることを確保するとともに、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、自由の剥奪に代わる措置を促進すること。 (f) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 82. 売春防止および被害者保護等に関する法律において、16歳未満の子どもの被害者または証人に対してビデオ録画による陳述が認められているにも関わらず、性犯罪の被害を受けた子どもに関する事情聴取手続および法的手続は、以下の理由から依然として不十分である。 (a) 職員が録画に習熟していないため、被害者および証人が証言を繰り返さなければならないことが多い。 (b) 裁判所がビデオの有効性を認めないことが多い。 (c) 被害者および証人が、十分な配慮がなされているとはいえない条件下で反対尋問を受けなければならないことが多い。 (d) 被害者の同意を得ることなく、犯罪者との和解が要請される場合がある。 (e) 被害者のプライバシーを保護するための十分な措置がとられていない。 (f) 被害者が、警察官および医療従事者のような職員から真剣に受けとめられないことが多い。 (g) 被害者に対応する医師または法執行官による、被害者に対する言葉の虐待の例が報告されている。 83. 委員会は、締約国が、子どもにやさしい手続規則をさらに発展させ、かつ、被害を受けた子どもが、そのプライバシーおよび尊厳をいっそう尊重されながら取り扱われることを確保するよう勧告するとともに、締約国に対し、十分な法律上の規定および規則を通じて、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されること、および、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮することを確保するよう、勧告する。 H.国際人権文書の批准 84.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を含むすべての中核的人権文書に加入するよう、奨励する。 I.地域機関および国際機関との協力 85.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 J.フォローアップおよび普及 86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会、広域行政圏機関および適用可能なときは他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 87.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 88.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年6月19日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月25日)。/国連の正式文書を参照しつつ、先行未編集版に基づく訳を修正(2012年5月7日)。パラ50(c)で養子縁組に関するシングルマザーの同意が「必須」から「義務的」とされた点、パラ61で「公平性および公正性」が「平等および公平性」とされた点以外は基本的に技術的修正のみ。/前編・後編を統合(10月20日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2015年12月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/136.html
総括所見:ウクライナ(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2007年)/OPAC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.191(2002年10月9日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年9月26日に開かれた第821回および第822回会合(CRC/C/SR.821 and 822参照)においてウクライナの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.11)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第2回定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/UKR/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国代表団との建設的かつ有益な対話に留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、個人の人権および自由を法的に承認した新憲法の採択(1996年6月)を歓迎する。 4.委員会は、事前質問事項に対する文書回答に挙げられた、低所得家庭のための国家社会扶助法(第1768-III号、2000年6月)、子どものころから障害がある者および障害のある子どものための国家社会扶助法(第2109-III号、2000年11月16日)、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国住宅法改正法(第1525-III号、2000年3月12日)、児童福祉法(第2402-III号、2001年4月26日)、移民法(第2491-III号、2001年6月7日)、難民法(第2557-III号、2001年6月21日)、ウクライナ市民権法(第2235-III号、2001年1月18日)、子ども・若者ソーシャルワーク法(第2558-III号、2001年6月21日)、ドメスティックバイオレンス防止法(第2789-III号、2001年11月15日)(とくに学校、施設および家庭における体罰を禁止)、刑法(2001年9月1日)、就学前教育法(2001年6月11日)、課外教育法(2001年6月22日)、子どものいる家庭のための国家扶助法改正法(2002年1月1日)、家族法(2002年1月10日)などの新法の制定を歓迎する。 5.委員会は、国際労働機関・最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)の批准を歓迎する。委員会はさらに、1996年の「教育について」の法律の導入および1997年の「職業訓練および技術訓練について」の法律の採択による教育制度の改革、ならびに、学校カリキュラムへの人権の導入、子どもの状況に関する年次報告書ならびに国営のテレビおよびラジオにおける子どもの権利に関する番組を歓迎するものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、締約国が、子どものいる家庭に影響を及ぼす生活水準の悪化、高い失業率および貧困につながってきた長期の経済的移行期のさなかにあり、委員会がその第1回報告書を検討したときと同じ重大な経済的および社会的問題の多くに引き続き対処していることに、留意する。さらに委員会は、チェルノブイリ原子力発電所事故の悪影響およびHIV/AIDSの汎発流行の有害な影響が根強く残っており、住民一般に対してならびにとくに子どもの健康および発達に対して影響を及ぼしていることに、留意するものである。 D.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.10)の検討を受けて採択された総括所見で表明された懸念および行なわれた勧告の一部(CRC/C/15/Add.42、パラ8、17、18、20、22、25、26、29および30)への対応が不十分であることを、遺憾に思う。委員会は、この文書で同じ懸念表明および勧告が行なわれていることに留意するものである。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまた全面的に実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法および実施 9.委員会は、条約に関する法律が宣言的な性質のものとみなされており、したがって全面的に実施されていないことを懸念する。委員会はまた、報告対象期間後に制定された法律についてごくわずかな情報しか受領できなかったため、これらの法律が権利を基盤とするアプローチに立っており、かつ条約に一致しているかどうか評価することが困難であったことも懸念するものである。 10.委員会は、条約に掲げられた権利との全面的一致を確保し、かつ条約に関連するすべての法律の実施機構を強化する目的で、締約国が法律を見直し、必要に応じて改正しかつ更新するよう、勧告する。 国家的行動計画および調整 11.委員会は、国家プログラム「ウクライナの子どもたち」を含む国家青少年政策、国家家族・青少年問題委員会(中央および地方の行政レベルにおける家族、女性および子どもの権利についての国家的政策の実施ならびに中央当局と国連児童基金(ユニセフ)その他の国際機関間の協力の調整を担当)および省庁間子ども福祉委員会(条約、子どもの生存、保護および発達に関する世界宣言および国家プログラム「ウクライナの子どもたち」を実施するための措置の調整を担当)について受領された情報に、留意する。 12.しかしながら委員会は、国家青少年政策が、社会扶助、保健ケア、教育、代替的養護および子どもの保護〔のみ〕を対象としていること、および、権利牙なプロ―チを欠いており、かつ条約に掲げられたすべての権利を包含していないことを、依然として懸念する。委員会はさらに、条約上のすべての権利を実施するための取り組みが明確な形で調整されていないことを懸念するものである(前掲パラ18)。 13.委員会は、国家的行動計画が権利を基盤とし、かつ条約のすべての規定および原則を網羅するべきことを勧告する。 14.委員会は、締約国が、中央および地方の公的機関間で活動を効果的に調整し、かつ非政府組織(NGO)および市民社会のその他の部門と協力する等の手段により、国および地方のレベルで条約の実施を調整する単一の常設機関を設置し、またはそのような機関を指定するよう、勧告する。 独立の監視体制 15.ウクライナ最高会議人権コミッショナーが任命されたことには留意しながらも、委員会は、同コミッショナーの委任事項で、条約の実施における進展の定期的監視および評価について定められていないことを依然として懸念する。委員会はさらに、同コミッショナー事務所に、とくに条約で保障された権利の侵害に関する個別の苦情に対応するための機構が含まれていないことを懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、既存の体制内で子どもの権利についてとくに責任を負うコミッショナーを任命するか、子どもによる苦情申立てに子どもに配慮したやり方で対応することにとくに責任を負う、子どもの権利担当の特別部課を設置するかのいずれかの措置をとるよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号を参照するよう求めるものである。 子どものための資源 17.委員会は、締約国が保健および教育に優先順位を与えていること、および、情報によれば2000~2001年度予算が増額されたことに留意する。しかしながら委員会は、社会サービス、保健および教育のための資源水準が全体として低いことにより、サービスの質およびアクセス可能性に悪影響が生じ、そのことがとくに貧困下で暮らす有子家庭に影響を及ぼしていることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、「ウクライナの子どもたち」プログラムに十分な資金が拠出されていないことも懸念する。委員会はさらに、再調整プログラムが、社会サービスの計画および予算策定において適切な対処が行なわれない場合には子どもに不相応な悪影響を与える可能性があることを、懸念するものである。 18.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国が、以下の措置をとることによって条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう、勧告する。 (a) 条約の実施のための予算をさらに増額し続けるとともに、社会サービスの提供および財政の地方分権化を考慮しながら、利用可能な資源を最大限に用いることによる子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分、とくに社会的に周縁化された集団への予算配分を優先させること。 (b) 貧困削減戦略(2001年)を実施するための努力を強化すること。 (c) 「ウクライナの子どもたち」を含む子どものための国家的プログラムおよび政策を全面的に実施するための十分な資源を確保すること。 (d) 支出の影響を評価する目的で、かつさまざまな部門で子どもに提供されているサービスの費用、アクセス可能性、質および実効性の観点からも、官民の制度または組織を通じて子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定すること。 データ収集 19.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域、ならびに、ひとり親家族の子ども、離婚した父母の子ども、遺棄された子どもおよび施設に措置された子どもを含むあらゆる集団の子どもの関するデータおよび指標を体系的かつ包括的に集積することのできる、調整および監視のための効果的な機構を発展させるべきである旨の、締約国に対する前回の勧告が十全にフォローアップされていないことを遺憾に思う(前掲パラ10)。 20.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての領域を編入し、かつ、特別な保護を必要とする子どもをとくに重視しながら18歳未満のすべての子どもを網羅する、細分化されたデータの体系的収集に優先的に取り組むよう、勧告する。締約国はまた、条約の実施に関して達成された進展を効果的に監視しおよび評価しならびに子どもに影響を与える政策の効果を評価するための指標も開発するべきである。これとの関係で、委員会は、締約国がユニセフの技術的援助を求めるよう、勧告する。 研修/条約の普及 21.委員会は、前回の勧告(前掲パラ21)にしたがい、条約の普及ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修のために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、条約の原則および規定に関する広範な意識および理解を生み出すための措置を、継続的および体系的なやり方でさらに強化しかつ実施する必要があるという見解に立つものである。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団(議員、裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員、学校管理者および必要に応じて他の専門家)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続しかつ強化すること。 (b) とくに地方レベルで条約を促進するための、いっそう創造的な手法(絵本およびポスターのような視聴覚補助手段およびメディアの活用も含む)を引き続き発展させること。 NGOとの協力 23.委員会は、政府とNGOとの協力の増加にともない、政府と市民社会との関係が改善していることを歓迎する。しかしながら委員会は、権利基盤アプローチにしたがった条約の実施に市民社会の関与を得るための努力が不十分であることを、依然として懸念するものである。 24.委員会は、市民的権利および自由に関するものも含む条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、NGOとのいっそうの協力を促進し、かつ、とくに、条約の実施のあらゆる段階を通じ、子どもとともにおよび子どものために活動するNGO(とくに権利を基盤とする団体)および市民社会のその他の部門のいっそう制度的な関与を得ることを検討するべきである旨の、前回の勧告(前掲パラ18)をあらためて繰り返す。 2.子どもの定義 25.委員会は、前回の勧告(前掲パラ17)にも関わらず、男子(18歳)および女子(17歳)の最低婚姻年齢に関して格差が残っていることを懸念する。委員会はまた、性的同意に関する法定最低年齢が明確に定められていないことも懸念するものである。 26.委員会は、締約国が、女子の最低婚姻年齢を18歳に引き上げることにより男女間の婚姻年齢格差を是正するべきである旨の、前回の勧告をあらためて繰り返す。委員会はまた、親の同意なく医療上の助言およびカウンセリングを求めることのできる法定最低年齢を引き下げ、かつ性的同意に関する明確な法定最低年齢を定めることも勧告するものである。 3.一般原則 27.委員会は、差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存および発達、ならびに、年齢および成熟度にしたがって子どもの意見を尊重される権利の原則が、国および地方のレベルにおける締約国の法律、政策およびプログラムに全面的には反映されていないことを懸念する。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関わるあらゆる関連の法律に適切な形で統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のすべての決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいてこれらの原則を適用すること。 (c) あらゆるレベルの計画および政策立案、ならびに、社会保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関によるあらゆる行動においてこれらの原則を適用すること。 差別の禁止 29.委員会は、差別の禁止の原則が、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、農村部で暮らしている子ども、施設の子ども、障害のある子ども、ロマの子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもを対象として、とくに保健ケア、社会福祉および教育との関連で全面的には実施されていないことを、依然として懸念する。 30.委員会は、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、農村部で暮らしている子ども、施設の子ども、障害のある子ども、ロマの子どものような国民的マイノリティに属する子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもの状況を監視するよう、勧告する。このような監視の結果に基づき、とくに教育および保健ケアへのアクセスに関するものを含むあらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる、包括的かつ積極的な戦略が策定されるべきである。 31.委員会は、とくに、脆弱な立場に置かれた前掲の集団に属する子どもへの差別的な態度または偏見の悪化を防止するための措置がとられるべきである旨の、前回の勧告(前掲パラ22)をあらためて繰り返す。 32.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 33.委員会は、締約国による子ども議会の創設を歓迎するものの、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校およびコミュニティのレベルにおける子どもの意見の尊重がいまなお制限されていることを、依然として懸念する。委員会はさらに、子どもの監護権をめぐる手続ならびに代替的養護(里親養護または施設養護その他の形態の代替的養護など)に関わる決定も含め、司法上または行政上の決定の文脈において、子どもの意見がその年齢および成熟度にしたがって十分に考慮されていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭および学校ならびに司法上および行政上の手続において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関する子どもの意見の尊重および子どもの参加を促進し、かつその便宜を図ること。 (b) 子どもの参加権および意見を考慮される子どもの権利について、とくに親、教員、政府の行政職員、司法関係者、子どもたち自身および社会一般に対して教育的情報を提供すること。 (c) 委員会はさらに、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策およびプログラムの実施ならびに子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて定期的検討を行なうよう、勧告する。 4.市民的権利および自由 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 35.委員会は、2001年刑法における拷問の定義が、国の職員による拷問(心理的拷問を含む)の行為を明示的に含んでいないため、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約における拷問の定義と両立しないことを懸念する。刑法は、拷問によって得られた証拠の証拠能力が否定されることも宣言していない。 36.委員会はまた、子ども、とくにロマの子どもが法執行官による不当な取扱いおよび拷問を受けているという訴えが続いており、かつ、これらの訴えについて独立の公的機関による効果的捜査が行なわれていないことも懸念する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 拷問を定義した法律を改正し、条約第37条(a)に一致させること。 (b) 子どもの拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰の訴えに対応すること。 (c) 拷問を使用して得られた証拠に証拠能力が認められないことを確保すること。 (d) 子どもの権利条約にも関連する、自由権規約委員会および拷問禁止委員会の勧告がフォローアップされることを確保するための措置をとること。 (e) マイノリティ、とくにロマに属する子どもに対する警察官の暴力に終止符を打ち、かつ、そのようないやがらせ行為に対する不処罰が蔓延している状態に対抗するための即時的措置をとること。 (f) あらゆる形態の拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を禁止するため、あらゆる立法上の措置をとること。 (g) 被害者のケア、回復、再統合および補償のための支援を提供すること。 5.家庭環境および代替的養護 家庭環境 38.委員会は、締約国報告書に記されているように、高い離婚率、ひとり親家庭の増加および親によるネグレクトの事案を含む家族の解体現象が悪化しつつあることに、深い懸念とともに留意する。委員会はさらに、貧困線以下の生活を送る家族の割合が上昇していることを懸念するとともに、子どもの養育責任を果たすにあたって両親を援助するシステムを強化するために締約国がさらなる措置をとるべきである旨の前回の勧告(前掲パラ25)がフォローアップされていないことを、遺憾に思うものである。さらに、家族に対する金銭的援助が減少している。 39.委員会は、親のケアを受けられない状態に置かれた子どもの人数が増加していることに深刻な懸念を表明するとともに、脆弱な立場に置かれた家族を援助するための包括的戦略を策定するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(前掲パラ26)がフォローアップされていないことを遺憾に思う。 40.第18条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 安定した家庭環境に対する子どもの権利を保護するための努力を強化するとともに、これとの関連で、包括的な新子ども法を通じ、子どもが効果的に保護され、かつ、窮乏するすべての子どもおよび親が金銭的援助にアクセスできることを確保すること。 (b) 最近起草された、社会保障手当制度の再編成を目的とする社会扶助法案について措置を講じること。 (c) 子どもと親の前向きな関係を促進するため、助言および教育を通じた家族への社会的援助および支援を向上させること。 (d) ソーシャルワーカーに対して十分な研修を行なうこと。 (e) 非行、犯罪および薬物依存のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。 (f) 貧困削減戦略2001に基づく、貧困下で暮らす有子家庭に対する金銭的支援の、国、広域行政圏および地方のレベルにおける増額を検討すること。 体罰 41.委員会は、新たなドメスティックバイオレンスからの保護法(2001年)を歓迎するものの、同法がまだ実施されていないことを依然として懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭における子どもの不当な取扱い、虐待およびネグレクトの性質および規模を評価するための研究を実施し、かつこれらに対応するための政策およびプログラムを立案すること。 (b) 不当な取扱いおよびあらゆる形態の家族間暴力(体罰を含む)の苦情を受理し、監視しおよび調査し(必要なときは介入の手段によることも含む)ならびにこれらの事案を捜査しおよび訴追するための、効果的な手続および機構を設置すること。その際、虐待を受けた子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保すること。 (c) 子どもに対するあらゆる種類の暴力の発見、通報およびこれに対する対応について、教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家の研修を行なうこと。 (d) 子どもに対する暴力についての一般的討議の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/100、パラ688およびCRC/C/111、パラ701-745)を考慮すること。 (e) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公的教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段としての、積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進すること。 扶養料の回復 43.委員会は、ひとり親に対する国の援助が不十分であること、および、子どもの扶養料を回復するための制度が非効率であり、ときには数年に及ぶ支払いの遅延を許していることを、懸念する。 44.委員会は、締約国が、扶養料の支払い責任を負う親からそれを徴集するためのいっそう積極的な、時宜を得たかつ効果的な政策を実施しかつ監視する機構を設置するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども/代替的養護 45.委員会は、教育省および保健住宅省が代替的養護施設の担当であることに留意する。 46.委員会は、困難な状況にある子どもに援助を提供する目的で施設措置による対応が顕著に利用されていること、および、18歳に達するまで長年にわたって施設で養護される子どもが、施設退所後に自立生活を送るのに必要な教育上および職業上のスキルを獲得していないことを、懸念する。委員会はまた、一部の施設における養護の質の低さおよびこれらの施設の環境についても懸念を表明するものである。 47.委員会は、里親養護その他の形態の家族を基盤とする代替的養護が十分に発展しかつ利用可能とされていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもが自己の措置に関する懸念および苦情を伝達する効果的機構を有していないことを懸念するものである。 48.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会福祉制度内で代替的養護を担当する機構を、国、広域行政圏および地方のレベルで設置しまたは強化することを検討すること。 (b) 子どもの遺棄を防止しまたは削減するため、戦略の策定および意識啓発活動の発展を含む効果的措置をとること。 (c) 里親養護、家庭型里親ホームその他の家族を基盤とする代替的養護を増やしおよび強化し、ならびにそれに応じて代替的養護の一形態としての施設養護を減らすための効果的措置をとること。 (d) 子どもの施設措置は最後の手段および一時的措置としてのみ行なうこと。 (e) 条約第3条3項にしたがい、施設の環境を改善するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもの参加を高めること。 (f) ソーシャルワーカーを含む施設職員に対して支援を提供しかつ研修を行なうこと。 (g) 養護の水準を引き続き監視するとともに、条約第25条に照らし、措置の定期的再審査を確立すること。 (h) 施設養護を離れた子どもに対し、フォローアップおよび再統合のための十分な支援およびサービスを提供すること。 養子縁組 49.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を検討するべきである旨の前回の勧告がまだフォローアップされていないことを、遺憾に思う(前掲パラ28)。委員会は、養子ができるかぎりその実親の身元を知る権利を有していないことを懸念するものである。 50.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を批准するべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。条約第3条および第7条に照らし、委員会は、締約国が、すべての養子が可能なかぎりその親の身元に関する情報を入手できるようにするため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 6.基礎保健および福祉 51.委員会は、保健ケアサービスの質およびアクセス可能性が深刻に下降していることを深く懸念する。委員会はさらに、家を離れた子どもが医療援助にアクセスできないこと、子どもの有病率が上昇していること、妊産婦死亡率が高いこと、障害児の人数が増えていること、および、とくに低所得世帯の子どもの間でヨウ素欠乏症および栄養上の問題が多数発生していることを、懸念するものである。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとることを緊急に勧告する。 (a) すべての子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもがプライマリーヘルスケアにアクセスできることを確保すること。 (b) 乳幼児期の発達に対する統合的かつ多層的アプローチを確保するため、健康および栄養に焦点を当てた国レベルの政策を策定すること。 (c) とくにユニセフおよびWHOとの活動を引き続き行ない、かつその技術的援助を求めること。 障害のある子ども 53.委員会は、障害のある子どもの劣悪な状況が広がっていること、および、1993~1997年の期間に障害児の人数が増えたことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子どもの施設措置が慣行となっていること。 (b) 障害児を対象とする、国によるカウンセリングおよび心理的ケアが存在しないこと。 (c) 障害児のいる家族に対する国の支援が行なわれていないこと。 (d) 障害のある子どもが社会的差別に直面していること。 (e) 入所ホームに配分される資源が相当に減少していること。 (f) とくに教育制度との関連で、日常生活のさまざまな分野への障害児のインクルージョンおよびこれらの分野への障害児によるアクセスが限定されていること。 54.条約第23条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 子どもの障害の原因およびその予防方法を明らかにするための研究を行なうこと。 (b) 障害のある子どもの状況および権利に関する意識を高めるための公的キャンペーンを実施すること。 (c) 障害のあるすべての子ども、とくに農村部で生活している子どものためのプログラムおよび便益に対して必要な資源を配分するとともに、このような子どもが家族とともに自宅で生活できるようにするための、コミュニティを基盤とするプログラムを強化すること。 (d) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/86付属文書)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に照らし、教員に対して特別研修を行ない、かつ学校をいっそうアクセスしやすいものとする等の手段もとりながら、障害児の普通教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励すること。 環境保健 55.委員会は、締約国が、チェルノブイリ原発事故の影響をもっとも受けている地域から家族を移動させた旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国報告書に記されているように、チェルノブイリ原発事故の結果として子どもの健康(および妊婦の健康)に有害な影響を与える主要な要因が残っていること、大気および食料品の化学汚染物質の水準が高いことならびに騒音公害の水準が高いことを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、チェルノブイリ原発事故が健康面および心理社会面でもたらした長期的影響に対して十分な注意が向けられていないことに留意する。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) チェルノブイリ原発事故の影響を受けている子どもに提供される専門的保健ケアを、その心理社会的側面も含めて引き続き向上させること。 (b) 放射能汚染関連疾患の発見および予防のための努力を強化すること。 (c) とくにこの分野における国連の取り組みを支援することを通じ、住民の援助に対する長期的開発アプローチにいっそう焦点を当てること。 (d) 環境および食料品の汚染を含む環境悪化が子どもたちに及ぼす有害な影響を防止しかつこれと闘うため、国際協力を求めることも含むあらゆる適当な措置をとること。 思春期の健康およびHIV/AIDS 57.思春期の健康に関して、委員会は、薬物、アルコールおよび喫煙に依存する子どもおよび青少年の人数が増えていることを懸念する。委員会は、医療上のカウンセリングおよび助言に親の同意なしでアクセスできないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、10代の妊娠中絶件数が多数行なわれており、これが妊産婦の死亡の主要な原因になっていることも懸念する。 58.HIV/AIDSの分野における締約国の努力には留意しながらも、委員会は以下のことを依然として懸念する。 (a) 若者のHIV/AIDS感染者数が増加していること。 (b) HIV/AIDSが、これに感染しまたはその影響を受けている子どもの、条約の一般原則を含む文化的、経済的、政治的、社会的および市民的権利(とくに差別の禁止、保健ケア、教育、食料および居住ならびに情報および表現の自由)にきわめて深刻な影響を与えていること。 (c) 締約国のHIV/AIDS予防プログラムの効率性を管理し、監視し、実施しおよび評価する効果的な国レベルの制度が設けられておらず、かつ、HIVとともに生きる人々および家族のためのケア、治療、医療サービスおよび社会的援助について規制する統一基準が定められていないこと。 (d) HIV/AIDS感染者、とくに青少年に対して提供されるカウンセリングサービスが不十分であること。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) アルコールの濫用、喫煙および薬物依存の増加に対応し、かつ、子どもの発達しつつある能力を考慮に入れながら、青少年が親の同意を得ずに医療上のカウンセリングおよび助言にアクセスできるようにするために、必要な措置をとること。 (b) 青少年が、リプロダクティブヘルスおよび思春期の健康に関わるその他の問題(精神保健を含む)についての教育にアクセスできおよびこのような教育を提供されること、ならびに、子どもに配慮した、秘密が守られるカウンセリングサービスを提供されることを確保すること。 (c) 思春期の健康に関わる問題(性感染症およびHIV/AIDSの悪影響を含む)の規模および性質を評価するために包括的かつ学際的な研究を行なうとともに、これを、青少年の全面的参加を得ながら、思春期の健康に関わる政策およびプログラムの立案の基盤として活用すること。 (d) HIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37付属文書I)を活用する等の手段により、かつ、差別から保護される子どもの権利ならびに健康、教育、食料および住居に対する子どもの権利ならびに情報および表現の自由に対する権利をとくに参照しながら、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもならびにその家族のためのHIV/AIDS政策および戦略の策定および実施に、子どもの権利の尊重を統合すること。 (e) HIV/AIDS予防のための努力を強化するとともに、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮すること。 (f) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕および国連開発計画に対してさらなる技術的協力を求めること。 7.教育、余暇および文化的活動 60.委員会は、学齢のすべての子どもを対象とする義務的中等教育の提供を確保することのような目的を含む「教育について」の法律の導入により、教育制度を改善するために締約国が行なっている努力を歓迎する。委員会はまた、高等教育に関する国家的基準が採択されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) 制度の財政管理が非効率的であり、かつ透明でないこと。 (b) 教育費用の上昇により、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子どもによるアクセスが制約されてきたこと。 (c) 就学前教育施設数の減少により、就学前教育への子どものアクセスが制約されていること。 (d) 中等教育および職業教育における中退率が上昇しつつあること。 (e) 教育施設の数および利用可能な教育の質に関して重要な地域格差があり、農村部がとりわけ不利な立場に置かれていること、および、ロマのような少数の国民的マイノリティの子どもが、自己の言語によるものも含む良質な教育を受けていないこと。 (f) 教育改革が、必要な事前準備および教員の研修をともなわずに実施されていること。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 農村部のコミュニティの子ども、ロマの子ども、クリミア・タタール人の子どもおよびその他のマイノリティの子どもならびに不利な立場に置かれた背景を有する子どもに特段の注意を向けながら、締約国のすべての子どもを対象として、無償の初等教育が利用できることおよび良質な教育(子ども自身の言語によるものを含む)にアクセスできることを確保すること。 (b) 就学前教育施設の数を増やすために必要な措置をとること。 (c) この目的のための適切な資源の提供等も通じ、義務教育に関する法律が執行されることを確保すること。 (d) 教育改革が十分な準備を経て実施され、かつ改革を実施するための支援(特別資金および教員研修を含む)が提供されることを確保するとともに、新たなプログラムの良質な評価のための手続を確立すること。 (e) 条約第29条1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目標を達成するため、全国で教育の質を向上させるとともに、子どもの権利を含む人権の教育が学校カリキュラムに含まれることを確保すること。 8.特別な保護措置 子どもの難民および国内避難民 62.委員会は、2001年難民法が制定されたことは歓迎しつつも、以下のことを依然として懸念する。 (a) 締約国報告書に記されているとおり、子どもの難民の一部(とくに年長の子ども)が学校に通っておらず、そのためこのような子どもが教育を受けることを妨げられ、かつウクライナ社会で孤立することにつながっていること。 (b) 登録手続および難民認定手続が2001年8月以来停止しており、新難民法の実施が保留となっていること。 (c) 入国地点で拘束され、かつ国境警備施設に収容されている不法移民(子どもを含む)に対して提供される栄養面および医療面のケアが不十分であること。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国報告書で示唆されているとおり、保護者のいない子どもの難民の具体的なニーズおよび状況に対応するための手続を策定すること。 (b) 2001年難民法を実施すること。 (c) 子どもの庇護希望者、難民および不法移民が教育および保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 国境警備施設に収容されている子どもに対し、栄養面および医療面の十分なケアを確保すること。 (e) 無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約に加入すること。 経済的搾取 64.委員会は、とくに子どもに関わる労働法の遵守を監視することに責任を負う労働社会政策省が1996年に創設されたことには留意しながらも、とくに危険な労働および強制労働との関連でウクライナ労働法が十分に執行されていないこと、および、多数の子どもがとくにインフォーマル部門で働いている旨の報告があることを、依然として懸念する。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童労働を防止しかつこれと闘うための国家的行動計画を採択しかつ実施する目的で、児童労働の原因および規模に関する全国調査を行なうこと。 (b) すべての子どもを、経済的搾取から、かつ危険があり、その教育を妨げ、またはその健康もしくは身体的、心理的、精神的、道徳的もしくは社会的発達にとって有害となるおそれのあるいずれかの労働に就くことから保護するための努力を継続すること。 性的搾取および人身取引 66.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもがセックス産業にますます関与するようになっていること。 (b) 女性および子どもの人身取引を防止する国家行動計画が実施されていないこと。 (c) 性的その他の形態の搾取を目的とする子ども(とくに女子)の人身取引が大規模に行なわれていること、および、性的同意に関する法定最低年齢が明確に定められていないこと。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの人身取引、児童買春その他の形態の子どもの性的搾取と闘うための行動を起こすこと。 (b) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントを考慮に入れながら、子どもの性的搾取および商業的搾取に反対する国家的行動計画を実施すること。 (c) とくに女性および子どもの人身取引を防止する新たな国家行動計画を通じて女性および子どもの人身取引と闘うための努力を継続しかつ強化するとともに、このプログラムに、その効果的実施を保障するのに十分な資源が提供されることを確保すること。 (d) 被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムを確立すること。 (e) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 ストリートチルドレン 68.委員会は以下のことをとくに懸念する。 (a) ストリートチルドレンの人数が増えており、かつ、この状況に対応するため少年問題担当機関が実施している政策およびプログラムが容認不可能なものであること。 (b) 「授業」、「ストリートチルドレン」、「列車の駅」および「休日」のような予防的特別一斉摘発が行なわれていること、および、遺棄および犯罪防止のための社会的援助という名目でこれらの子どもに関する情報の特別データベースが維持されていること。 (c) ストリートチルドレンが、とくに性的虐待、暴力(警察による暴力を含む)、搾取、教育へのアクセスの欠如、有害物質濫用、性感染症、HIV/AIDSおよび栄養不良の被害を受けやすい状態に置かれていること。 69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ストリートチルドレンの全面的発達を支援するため、これらの子どもに対して十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保すること。 (b) ストリートチルドレンに対し、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するサービスが提供されることを確保すること。 (c) この現象の範囲および原因を評価するための研究を行なうとともに、これらの子どもの最善の利益にかなう形でかつその参加を得ながらこの現象を防止しかつ減少させることを目的とする、ストリートチルドレンが多数にのぼりかつ増加している問題に対応するための包括的戦略の策定を検討すること。 (d) 少年問題担当機関ではなく青少年社会福祉機関の制度内でストリートチルドレンの状況に対応することを検討すること。 少年司法の運営 70.委員会は、子どもに関わる社会的保護および犯罪防止を担当する「少年問題担当機関および特別少年施設について」の法律が1995年に採択されたこと、および、少年警察班が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 専門の少年裁判所および少年裁判官が、国内法にこれらの機関について定めた法律上の規定があるにも関わらず存在せず、かつ、この分野で働く法曹、ソーシャルワーカー、コミュニティ教育者および監督官の人数が限られていること。 (b) 被拘禁者の家族が拘禁について長時間告知されないこと、裁判官の前に引致されるまでの拘禁時間が長いこと(72時間)および未決勾留が長期にわたること(18か月)。 (c) 11~18歳の子どもが特別省の管轄下にある少年接受/分散センターで隔離して措置されており、かつ、これらのセンターおよび子どもが自由を剥奪されるすべての施設の環境が劣悪であること。 (d) 矯正施設その他の施設で提供される教育および指導が不十分であり、かつ、社会的および心理的更生のためのサービスが提供されていないこと。 71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1995年に行なわれた、少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(CRC/C/69参照)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 未決拘禁を含む拘禁は、最後の手段としてのみ、可能なかぎり短くかつ法律で定められた期間を超えない範囲で用いること。 (c) 第39条に照らし、少年司法制度に関わることになった子どもの回復および社会的再統合を促進するための適当な措置(再統合を促進するための十分な教育および認証を含む)をとること。 (d) 「少年司法に関する技術的助言および援助についての国連調整パネル」を通じ、とくに国連高等人権弁務官事務所、国連国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの援助を求めること。 刑法 72.委員会は、2001年刑法に関する包括的情報が全般的に欠けていることを懸念する。しかしながら委員会は、文書回答で受領した情報によれば、秩序紊乱行為が社会にとっての危険を構成する重罪と定められており、これによって行動上の問題が犯罪化されていることを、とりわけ懸念するものである。委員会はさらに、2001年刑法に基づいて未成年者に重罰が科されることを懸念する。 73.委員会は、締約国が、14~16歳の子どもの刑事責任の範囲を最小限に留める目的で重罪の分類を見直すよう勧告する。委員会はさらに、条約第37条、第39条および第40条に照らし、子どもに対する処罰が、条約第40条1項に掲げられた少年司法の目標の実現に資するものとなり、かつ少なくとも求刑法に基づく処罰よりも厳しくなることがないよう、締約国が2001年刑法を見直すよう勧告するものである。 マイノリティ集団に属する子ども 74.委員会は、ロマの状況の改善を目的とした試行プログラムがいくつかの州で行なわれているにも関わらず、ロマがいまなお広範な差別の被害を受けており、それによって教育、健康および社会福祉に対する子どもの権利が阻害される事例も生じていることを、懸念する。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会一般ならびにとくに保健、教育その他の社会サービスを提供する公的機関および専門家の間に存在する、ロマに対する否定的態度に対処することを目的としたキャンペーンを、すべての段階およびすべての州で開始すること。 (b) ロマのすべての子どもを主流の教育に統合することおよびロマの子どもの特別教室への隔離を禁止することを目的とし、かつ、ロマの子どもがそのコミュニティにおける第一学習言語を学ぶための就学前プログラムを含んだ計画を策定しかつ実施すること。 (c) ウクライナ社会でロマに対する理解、寛容および尊重を促進するため、すべての学校を対象とした、ロマの歴史および文化を含むカリキュラム参考資料を開発すること。 9.選択議定書 76.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両議定書に締約国が署名したことを歓迎するとともに、締約国に対し、両議定書を批准するよう奨励する。 10.報告書の普及 77.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる行政段階および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 78.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的報告書の提出に関して困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、第4回報告書の提出期限である2008年9月26日までに提出するよう慫慂するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/214.html
総括所見:イタリア(第2回・2003年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.198(2003年3月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月16日に開かれた第840回および第841回会合(CRC/C/SR. 840 and 841参照)において、2001年3月21日に提出されたイタリアの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.13)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合(CRC/C/SR.862参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがった、付属文書をともなう第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、報告書の批判的性格およびその作成に至るまでの参加型プロセスを歓迎するものである。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/ITA/2)への文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、締約国における子どもの状況に関していっそう明確な理解を得られたことにも留意する。委員会はまた、締約国代表団との間に持たれた前向きな対話にも留意するとともに、条約の実施に直接従事するハイレベルかつ大規模な代表団の出席により、締約国における子どもの権利に関する理解を向上させられたことを認知するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の2つの選択議定書が批准されたこと。 (b) 子どもに関する特別議会委員会および国家子ども・青少年監視機関(法律第451/97号)が設置されたこと。 (c) 国家子ども・青少年資料分析センターが設置され、子どもに関する印象的な量のデータおよび調査研究を収集してウェブサイトで利用可能としていること。 (d) 子どもおよび青少年の権利および機会の促進について取り上げ、国家子ども・青少年基金の設置について定める規定を掲げた法律第285/97号が採択されたこと。 (e) 子どもに被害を与える買春、ポルノおよびセックスツーリズムの搾取を禁じた法律第269/98号が採択されたこと。 (f) 女性性器切除反対キャンペーンが展開されていること。 (g) 障害のある子どもが普通学校に広く包摂されていること。 (h) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が批准されたこと。 (i) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約が批准されたこと。 C.主要な懸念事項および勧告 前回の総括所見 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.18)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.41)の一部、とくに、パラ13~15および22に掲げられた、条約の実施の調整、差別の禁止および子どもの不当な取扱いに関するものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書でもあらためて繰り返されているところである。 5.委員会は、締約国に対し、まだ実施されていない前回の勧告およびこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 1.実施に関する一般的措置 立法 6.委員会は、多くの実体的法律が採択されてきたこと、および、その一部で条約に言及されていることに留意する。加えて委員会は、検討中の法案(少年司法および教育に関するものを含む)について締約国から提供された情報を歓迎するものである。 7.委員会は、締約国が、引き続き法律を厳密に見直すとともに、国および地方の法律が、権利を基盤とし、条約を含む国際基準に一致し、かつ効果的に実施されることを確保するよう、勧告する。 資源 8.委員会は、若い世代の育成は投資分野のひとつであるという展望を提示した、「子ども・青少年問題に関するイタリアの協力の指針」が採択されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が、条約第4条で定められているとおり「利用可能な資源を最大限に用いて」実施されていないことを、依然として懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、子どもおよびその家族に配分される資源を引き続き可能なかぎり増加させるとともに、子どもに支出される予算の割合を分析し、優先課題を特定し、かつ「利用可能な資源を最大限に用いて」資源を配分する目的で、締約国全域のあらゆる部門別予算および総予算の分析を行なうよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外務省の国際開発援助協力によって行なわれる活動にこの原則を適用することも勧告するものである。 調整 10.委員会は、子どもに関わる政策およびプログラムを国、州および地方のレベルで調整する国家子ども・青少年監視機関(法律第451/97号)が設置されたことを歓迎する。加えて委員会は、この国家的監視機関が、子どもに関わる優先順位の設定および子どもに関わるすべての行動の調整を目的として2年ごとに子どものための国家的行動計画を起草する責任を負っていることに、評価の意とともに留意するものである。委員会はさらに、国と州の間で諸活動を調整し、かつ州および国のレベルにおける政策の実施を監視することを目的として、国・州会議(Conferenza Stato-Regioni)の定期的会合が開かれていることに留意する。委員会は、このような調整が十分ではないこと、および、いくつかの具体的問題に関する調整がこの国家的監視機関の外で行なわれていることを懸念するものである。委員会はまた、非政府組織(NGO)との調整が構造化された形で行なわれていないことも懸念する。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 前回勧告した(CRC/C/15/Add.41、パラ13)ように、子どもの促進および保護のための政策の実施に関する、国、州および地方のレベルにおける政府機関内および政府機関間の効果的調整(とくに国家監視機関および国・州会議によるもの)を強化すること。 (b) とくに地方レベルで、子どもの権利のために活動しているNGOとのいっそう緊密かつ積極的な協力が行なわれることを確保すること。 (c) 国家監視機関の活動に対する子ども参加を奨励すること。 国家的行動計画 12.委員会は、子どものための新たな行動計画に関する討議が議会で行なわれる予定であること、および、締約国が、子どもに関する国際連合総会特別会期(UNGASS)の成果文書である「子どもにふさわしい世界」を実施するための別の計画を策定する可能性について検討していることに、留意する。委員会は、これらの2つの計画の間で不一致が生じる可能性があることを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家行動計画を採択するため、その検討を速やかに進めること。 (b) 国家行動計画と、UNGASS成果文書を実施するための計画との調和を確保すること。 (c) 子どもに関して達成された進展の効果的な監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の効果的評価を行なうこと。 独立の監視体制 14.委員会は、4つの州に子ども時代護民官事務所が設置され、かつ国の子ども護民官を設置するための努力(とくに議会上程中の法案を含む)が行なわれていることに留意するものの、州および地方のレベルで子ども個人の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、条約の実施を監視するための独立した中央機構が存在しないことを、依然として懸念する。 15.委員会は、締約国が、条約の実施を監視しかつ当該実施における進展を評価するため、独立した国内人権機関の一部として(独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号参照)、かつ人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(「パリ原則」、国連総会決議48/134付属文書)にしたがって、可能であれば国レベルの独立した子どもオンブズマンを設置するための努力を完了させるよう、勧告する。当該オンブズマンは、子どもがアクセスしやすく、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限を与えられ、かつ、これらの苦情に効果的に対応する態勢を備えたものであるべきである。委員会はさらに、国および州の機関の間で適切な連携を発展させるよう勧告する。 データ収集 16.委員会は、とくに国家子ども・青少年資料分析センターの設置を通じてデータ収集を向上させるために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が対象とする一部領域についてのデータが不十分であることを依然として懸念するものである。委員会はまた、データ収集がいまなお家族中心アプローチに基づいて行なわれており、子どもが自律した人間としてとらえられるアプローチが採用されていないことも、懸念する。委員会はさらに、データ収集を担当するさまざまな機関およびさまざまな州の間で一貫性が欠如していることを懸念するものである。 17.前回の勧告(前掲パラ14)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた集団(障害のある子ども、ロマの子ども、移住者家族に属する子ども、保護者に付き添われないままイタリアに入国した子ども、暴力の被害を受けた子どもならびに経済的および社会的に不利な立場に置かれた世帯の子どもを含む)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを体系的に収集しかつ分析するための機構を強化すること。 (b) 条約の実施および監視のための政策およびプログラムを立案しかつ評価するにあたって、これらの指標およびデータを有効に活用すること。 (c) 国および州の双方のレベルで、さまざまな機関によるデータ収集プロセスの一貫性を確保すること。 研修/条約の普及 18.委員会は、とくに国家子ども・青少年資料分析センターを通じて条約普及のための努力が行なわれていること、および、とくに、公民教育に子どもの権利が含まれていることに評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、普及、意識啓発および専門家の研修に関わる活動が常に体系的かつ対象の明確なやり方で行なわれているわけではないことを、依然として懸念するものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラムを強化しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止 20.委員会は、締約国で差別に関するいくつかの監視機関が設置されたこと、および、法律第40/98号(出入国規則および外国人の状況に関する規則)に差別についての規定が掲げられていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、マイノリティに対する人種主義的事件、公的発言におけるヘイトスピーチの使用、および、とくに保健、社会福祉、教育および居住の分野で貧しい子ども、ロマの子ども、イタリア人以外の子ども(保護者のいない未成年者を含む)および障害児が経験している、経済的および社会的権利の享受における格差について懸念を覚えるものである。 21.条約第2条およびその他の関連条項ならびに前回の勧告(前掲、パラ17および18)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンのようなあらゆる適当な措置をとるとともに、人種差別撤廃委員会の勧告(A/56/18、パラ298および320)を実施すること。 (b) 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連の不寛容のいかなる行為も犯罪とし、かつこれらの行為に対して適当な刑事制裁を科すための努力を強化すること。 (c) 子どもによる権利の享受における既存の格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、この評価に基づき、積極的措置を通じて差別を防止しかつ解消するための必要な措置をとること。 (d) 地方自治体への権限委譲プロセスにより、子どもが属する州の豊かさに基づく子ども間の格差の解消が増進されることを確保すること。 (e) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもへの資源および社会サービスを引き続き優先させ、かつその対象を明確化すること。 (f) 拘禁されている外国人の子どもの状況を速やかに研究し、これらの子どもの全面的権利(とくに教育に対する権利)を差別なく確保し、かつ社会への統合に対するこれらの子どもの権利を確保すること。 22.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」(2001年)で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち条約に関わるものについて、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書で記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 23.委員会は、憲法裁判所が子どもの最善の利益の原則を憲法上の原則と位置づけたことを歓迎するものの、締約国の政策およびプログラムの実施において子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が全面的には適用されておらずかつ適正に統合されていないことを依然として懸念する。 24.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則がすべての法律および予算ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、条約第12条に掲げられた一般原則が実際上全面的には適用されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利が、子どもに影響を与える手続(とくに親の別居、離婚、養子縁組もしくは里親養護の事案)または教育において不十分にしか保障されていないことを懸念するものである。 26.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 裁判所における手続および行政上の手続を規律する立法において、自己の意見を形成する能力のある子どもがその見解を表明する権利を認められ、かつ当該見解が正当に重視されることが確保されるべきこと。 (b) 脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般におけるすべての子どもの参加権がとくに重視されるべきこと。 (c) この原則の実施に関する、公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきこと。 3.市民的権利および自由 アイデンティティに対する権利 27.委員会は、養子が、成年に達した後にかつその子どもの最善の利益であることが証明された場合でさえ自己の実親の素性を知ることができないことを懸念する。委員会はさらに、婚外子が、母および(または)父によって認知されなければ、法律上は母も父も有しないことになるのを懸念するものである。 28.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子であるか、いずれの親からも認知されていない婚外子であるかに関わらず、自己の親の素性を知る子どもの権利が尊重されることを可能なかぎり確保すること。 (b) (マルクス対ベルギー(Marckx v. Belgium)事件における欧州人権裁判所の決定および「母親は常に確定している」(mater semper certa est)という原則にしたがって)婚外子が出生時から法的に母を有することを確保し、かつ(「安易な」子どもの遺棄を防止する方法として)父によるこれらの子どもの認知を奨励する目的で、法律を緊急に見直しかつ改正すること。 (c) 婚外子の法的地位に関する欧州条約を批准すること。 思想の自由 29.委員会は、締約国報告書(パラ147)で述べられているように、子ども、とくに小学生の子どもが、主としてカトリックの信仰を取り上げている宗教の授業を欠席した場合に周縁化されるおそれがあることを、懸念する。加えて委員会は、親、とくに外国出身の親が、宗教の授業が義務的なものではないことを常に理解しているわけではないことを懸念するものである。 30.条約第2条、第14条および第29条に照らし、委員会は、締約国が、親(とくに外国出身の親)が関連の書式に記入する際、カトリックの信仰に基づく授業は義務的ではないことを確実に理解するようにすることを勧告する。 拷問および不当な取扱い 31.委員会は、法執行官が子どもに対する不当な取扱いを行なっているという訴えがあること、および、とくに外国人およびロマの子どもに対する虐待が蔓延していることを、深く懸念する。 32.前回の勧告(前掲パラ20)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の犯罪を刑法に編入すること。 (b) 逮捕、尋問および警察留置の際にならびに拘禁センターにおいて行なわれる不当な取扱いについての法執行官に対する苦情を受理するための、子どもに配慮した機構を設置すること。 (c) 警察および憲兵隊ならびに拘禁センターの専門家を対象として、子どもの人権に関する体系的研修を実施すること。 4.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 33.委員会は、養子縁組および里親養護に関する法律第184/83号(法律第149/2001号による改正法)が締約国全域で広く実施されていないこと、および、いまもなお里親養護よりも施設に措置される子どものほうが多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、社会的保護の目的で施設に措置され、かつ時として罪を犯した少年とともに施設に措置される子どもが多いことにも、懸念を表明するものである。加えて委員会は、国家子ども・青少年資料分析センターによる1998年の研究によれば、施設入所期間がきわめて長くなる場合があること、家族との接触が常に保障されるわけではないこと、および、これらの施設のうち19.5%は適正な認可を受けていないことを、懸念する。 34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律第184/83号の実施を確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 防止措置として、親の教育およびカウンセリングならびにコミュニティを基盤とするプログラム等を通じ、子どもの養育責任に関して家族を援助するための社会的な援助および支援を向上させること。 (c) 里親養護、家庭的里親ホームおよび家族を基盤とする他の代替的養護のような、施設措置に代わる諸形態を発展させるために効果的措置をとるとともに、子どもの施設措置は最後の手段としてのみ行なうこと。 (d) 独立機関による施設の定期的査察を確保すること。 (e) 養護を受けている子どもからの苦情を受理しかつこれに対応する効果的機構を設置し、養護の水準を監視し、かつ、条約第25条に照らし、措置の定期的審査を確立すること。 養子縁組 35.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を締約国が批准したことを歓迎するものの、関係する認可斡旋機関によって国内養子縁組の手続および費用が異なることを依然として懸念する。 36.条約第21条に照らし、委員会は、締約国が、以下のことのために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国全域の認可斡旋機関の間で国内養子縁組の手続および費用を調和させること。 (b) 前掲ハーグ条約を批准していない(送り出し)国との間で二国間協定を締結すること。 暴力、虐待およびネグレクト 37.委員会は、子どもの不当な取扱い、虐待および性的搾取に関する行動の調整のための国家委員会が設置されたこと、および、総合的戦略が採択されたことを歓迎する。加えて委員会は、性暴力に関する法律第66/96号およびドメスティックバイオレンスに関する法律第154/2001号が制定されたことを歓迎するものの、子どもの虐待および(または)ネグレクトに関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを、依然として懸念するものである。さらに委員会は、子どもに対する暴力に関して法律に年齢制限が定められており、14歳または16歳(加害者との関係による)以上の子どもは同一の保護から利益を受けられないことを、懸念する。 38.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) このような慣行の規模、範囲および性質を評価する目的で、子ども、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する、とくに家庭および学校で行なわれる暴力、不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)についての研究を実施すること。 (b) 子どもの虐待を防止しかつこれと闘う目的で、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを発展させること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力からの特別な保護について設けられている年齢制限に関する法律を改正すること。 (d) 現行諸制度の活動に関する評価を実施し、かつこれらのタイプの事案に関与する専門家に対して研修を行なうこと。 (e) 被害を受けた子ども(そのプライバシー権も含む)の保護の向上を確保する目的で、ドメスティックバイオレンスならびに家庭における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査手続および司法手続を通じて効果的に調査すること。 5.基礎保健および福祉 基礎保健 39.委員会は、「病院における子どもの権利憲章」の採択を歓迎するとともに、交通事故による子どもの死亡件数およびHIV/AIDSに感染した子どもの人数が劇的に減少したことに留意する。しかしながら委員会は、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもが保健サービスの利用にためらいを覚えていることを懸念するものである。 40.委員会は、締約国が、すべての子どもを対象として保健サービスへのアクセスを促進し、かつ、すべての子どもが利用可能な保健サービスを求めるように親に対して奨励するための積極的措置をとるよう、勧告する。 思春期の健康 41.委員会は、青少年の間で心理的障害(とくに摂食障害)が広く蔓延していること、および、青少年(とくに外国系の青少年)の中絶件数が相対的に多いことを、懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスが思春期の子どもにとってアクセスしやすく、かつこれらの子どもに配慮したものであることを確保しながら強化するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、青少年の心理的障害の原因および背景に関する研究を実施すること。 (b) とくに性教育を含む健康教育を学校カリキュラムの一部とし、かつ避妊手段の利用に関する情報キャンペーンを強化することによって10代の妊娠率を削減するために、さらなる必要な措置をとること。 6.教育 43.委員会は、義務教育期間を8年から10年に延長する法律第9/99号が採択され、かつ教員の養成および研修を改善するためのさまざまなプログラムが実施されていることを歓迎するものの、後期中等教育における中退率が高く、かつ、子どもの文化的および社会経済的背景ならびにジェンダー(女子のほうが男子よりも中等教育修了証書を取得する人数が多い)、障害および民族的出身のようなその他の要因によって子どもの教育上の成果に差異があることを、依然として懸念する。加えて委員会は、学校でいじめが蔓延していること、および、教育において子どもの意見が考慮されていないことを懸念するものである。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 後期中等教育における中退率を削減するための努力を強化すること。 (b) 女子および男子の間ならびに異なる社会的、経済的または文化的集団の子どもの間に見られる教育上の達成についての不平等を解消し、かつすべての子どもに良質な教育を保障するために、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 学校におけるいじめその他の形態の暴力を防止するための十分な機構および体制を、子どもたちの参加を得ながら設置するための措置をとるとともに、これらの戦略の策定および実施に子どもたちを含めること。 (d) 締約国全域の法律において、条約第12条が反映され、かつ、自己の教育に関するあらゆる事柄(学校規律を含む)について意見を表明しかつそれを正当に重視される子どもたちの権利が尊重されることを確保すること。 7.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 45.委員会は、外国人の子ども保護委員会が設置されたこと、および、出入国管理に関する法律第40/98号で、保健へのアクセスに関わって条約への具体的言及が見られることを歓迎する。しかしながら委員会は、保護者のいない未成年者を受け入れる十分な態勢が整えられていないこと、さまざまな州で保護者のいない未成年者に対応する手続の調和が図られていないこと、法律第189/2002号の新たな規定で資格外移民の拘禁が認められていること、政令第113/99号の実施によって十分なフォローアップが行なわれない送還が増加していること、および、未成年者の在留許可に関して2000年に変化が生じたことを、依然として懸念するものである。 46. 条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ、子どもが庇護を希望しているか否かにかかわらず、委員会は、締約国が子どもに関して以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および(または)性的搾取の被害を受けた者に特別な注意を払いながら、保護者のいない未成年者のための特別受け入れセンターを十分な数だけ設置するための努力を強化すること。 (b) これらのセンターにおける滞在が可能なもっとも短い期間に留められ、かつ、受け入れセンターでの滞在中および滞在後に教育および保健へのアクセスが保障されることを確保すること。 (c) 締約国全域で保護者のいない未成年者に対応するための、子どもの最善の利益にかなう調和化された手続を可能なかぎり早期に採択すること。 (d) 子どもの最善の利益にかなう場合には援助をともなう送還が構想され、かつこのような子どもについてフォローアップが保障されることを確保すること。 経済的搾取 47.委員会は、締約国における児童労働について国立統計研究所が最近発表した報告書に留意するとともに、この現象が締約国で広く蔓延していることに懸念を表明する。 48.委員会は、締約国が、最近の研究に基づき、とくに意識啓発活動および関連する要因の発見を通じて児童労働を防止しかつこれを解消することを目的とする、具体的かつ対象の明確な目標を掲げた包括的戦略を策定するよう、勧告する。 性的搾取および人身取引 49.委員会は、子どもを対象とする買春、ポルノおよびセックスツーリズムの搾取を禁じた法律第269/98号が採択され、かつ、「児童虐待ならびに性的目的の未成年者および女性の人身取引に対抗する政府の行動についての省庁間調整委員会」が設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において性的目的で人身取引の対象とされる子どもが多いことを、依然として懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1996年および2001年の〔子どもの〕商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがい、性的目的の子どもの人身取引を防止しかつこれと闘うための努力を強化すること。 (b) 法律第269/68〔ママ〕号の実施状況を、とくに同法が性的搾取の「需要側」の問題を扱っている点について監視すること。 (c) この分野の政策およびプログラムに対し、十分な資源(人的資源および財源の双方)が配分されることを確保すること。 少年司法の運営 51.委員会は、少年司法制度の改革が行なわれようとしていることに留意する。委員会は、少年司法制度において外国系の子どもおよびロマの子どもに対する差別が行なわれていること、子どもの拘禁環境を監視する独立の体制が設けられていないこと、ならびに、少年司法制度関係者の研修が不十分であることを、懸念するものである。 52.委員会は、締約国が、少年司法制度の改革に際し、条約の規定および原則、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準を全面的に統合するよう、勧告する。 53.とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 外国系の子どもおよびロマの子どもに対する差別を防止しかつ解消するため、意識啓発キャンペーンおよび関係者の十分な研修によるものも含むあらゆる必要な措置をとること。 (b) 未成年者を対象とする受け入れセンターおよび刑事施設への、公平な独立機関による定期的訪問を認めるとともに、自由を奪われたすべての子どもが、独立の、子どもに配慮したかつアクセスしやすい苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (c) 少年司法の運営に責任を負う者を対象として、子どもの権利に関する研修を実施すること。 マイノリティ集団に属する子ども 54.ロマの子どもの状況を向上させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが困難な社会的状況にあり、かつこれらの子どもによる教育および保健サービスへのアクセスが不十分であることを、依然として懸念する。加えて委員会は、この集団の子どもに対し、時として締約国の職員からも差別が行なわれていることを、深く懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、社会的排除および差別を防止し、かつロマの子どもがその権利(教育および保健ケアへのアクセスを含む)を全面的に享受できるようにするための包括的かつ積極的な政策およびプログラムを、ロマのNGOと協力しながら発展させるよう勧告する。 8.報告書の普及 56. 最後に委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した定期報告書を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、委員会が提起した事前質問事項に対する文書回答、関連の議事要録および報告書について委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.次回報告書 57.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2008年10月4日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。