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唯「だから澪ちゃんの方が好きだもんねー」ぎゅう 澪「お、おいおい。あんまりくっつくなよ……」どきどき 唯「澪ちゃんだーい好き」すりすり 澪「わ、私も唯は好きだけど、そういうのは……」 梓「むー!」 律「ムギ、今日は少し遅れてくるって」 唯「じゃあそれまでお茶は待とうか」 澪「いや、こういう時こそ練しゅ」 梓「じゃあ今日は私がお茶淹れます!」どーん 澪「あれー?」 唯「いーよ、絶対ムギちゃんが淹れたお茶のがおいしいし」 梓「そんなのやってみないとわからないじゃないですか!」 唯「それに最初にお茶淹れてくれたのはムギちゃんだしね、二番煎じだよ」 梓「む、むー!」 律「なるほど、これがホントの二番煎じか!お茶だけに!」 唯「あはは、りっちゃんおもしろーい!」けらけら 律「唯を最初に軽音部に誘ったのは、私だったよな?」 唯「そうだよねー、りっちゃん本当にありがとね!」 律「いやいやー」てれてれ 梓「……む、むぅ……」 律「おっと、もう帰りの時間だ」 紬「今日は時が流れるのが早いわねぇ」 澪「まだ練習してないのにー」とほほ 唯「今日のばんごはんはなーにかなー?」わくわく 梓(……そうだ!) 梓「唯先輩!今度私がごはんごちそうします!」 唯「えー?いいよ。憂のごはんがあるもん」 梓「なんなら憂と二人で食べにきて下さい!」 唯「そもそもあずにゃん料理なんてできたっけ?」 梓「うっ」 唯「バレンタインのチョコ、憂にだいぶ手伝ってもらったらしいじゃん」 梓「そ、それは……」 唯「だいたいあずにゃんが料理しても、憂のマネっこじゃーん」 梓「……」 唯「結局あずにゃんって、なにで一番なのかな?」 梓「……む」 唯「ん?」 梓「むー!むー!」じだんだ 澪「梓?」 梓「いいもん!いいもん!今に唯先輩を見返してやるもん!」とたとたとた 澪「……」 紬「……」 律「……何事?」 ガチャバタン! 梓ママ「お帰りなさい。あら、どうしたの?」 梓「……」 梓ママ「何かあったの?」 梓「……うして」じわー 梓ママ「?」 梓「どうして私を一年早く産んでくれなかったの!?おかーさん!」 梓ママ「え?」 梓「そーすりゃ!私が誘って!私がお茶淹れて!私がギター教えたのに!」ポロポロ 梓ママ「何が言いたいのかわからない」 梓「二番煎じなんていやだもん!絶対にやだもん!」だっ 梓ママ「……若いって大変ねぇ」 梓のお部屋! 梓「……っく、ひっく……」ぐじゅ 梓「……どうしたらいいんだろ?」 梓「勉強は無理だし、スタイルは……認めたくないけど論外だし」 梓「何をしたら、唯先輩の一番になれるんだろ?」 梓「……そうだ!」 梓「運動だ!」 梓「運動だったら一番になれるよ!」ふんす 梓「そしたら……」 ♪ 唯「あずにゃん!あーずにゃーん!」 梓「ユイドリアン!ユイドリアーン!」 唯「あはははは」 梓「あはははは」 ♪ 梓「……えへへ」にこー 【翌朝 AM5 00】 ぴぴぴぴ ぴぴぴぴ カチッ 梓「……よし」 梓「一個、二個……」 梓「……うん、六個くらいあればいいよね」 梓「うー、やっぱりなんか気持ち悪いー」 梓「……えいっ!」がぶっ 梓「生卵ってキくはずだよね……うぇ」 梓「出発!」 梓「えっほ、えっほ」 梓「朝の空気って、冷たくておいしいな」 梓「……もっと早くに、ジョギング始めてりゃ、よかった」ぜえ 梓「♪ごなーふらーい……」ぜえぜえ 【AM7 00】 梓ママ「……ふあぁーあ」のびー 梓ママ「……ん?」 梓「ていてい」ぺちぺち 梓ママ「……何してるの?」 梓「運動だよ!」ぺちぺち 梓ママ「……それ、今晩の豚カツ用なんだけど……」 梓「おかまいなく!」ぺちぺち 三十分後! 梓ママ「行ってらっしゃーい」 梓「……行ってきまーす」よろ 梓「……眠いし足痛いし手も痛い……」 梓「おまけになんか頭も痛いよー」よろよろ 梓「……っくち」 … 憂「おはよー梓ちゃん」 梓「ふんっ」 憂「あ、梓ちゃん?」 梓「……憂もライバルなんだからね」 憂「意味わからないよぅ」うるうる 梓「……今に唯先輩を、見返してやるんだから」よろよろ 授業中! 先生「えー、であるからしてー、つまり」 ぎゅるりるりるー 先生「……」 クラス一同「……」 純「……何今の?」 梓「……」カアァ 梓(やばいよ、めちゃくちゃお腹痛いよ……) 梓(朝飲んだ生卵が痛んでたのかな?) 梓(トイレ行きたい……けど恥ずかし) ぎゅるりるー ガタッ 梓「先生!トイレ行ってきます!」 梓(うわああぁーん!) 一方…… 唯「♪おトイレおトイレ……ありゃ」 唯「珍しいね、この時間に使われてるなんて」 唯「授業中におトイレなんて、精神がたるんどるよ!まったく!」ぷんぷん ギイィ…… 唯「……あ」 梓「……あ」 唯「あずにゃん?」 梓「……ゆ、ゆいせんぱ……」 唯「どうしちゃったのさ、こんなにげっそりしちゃって」 梓「……ほっといてください、今に唯先輩のこと、みかえ……して……」 がくっ 唯「あずにゃん!?しっかりして、あずにゃああああん!」 …… 梓「……ん」ぱちっ 梓「あれ、ここは……」 唯「目、覚めた?」 梓「唯先輩!?どうして!……っていうか、ここは?」 唯「保健室だよ。あずにゃん、熱あったよ。風邪かな?」 梓「そっか、私、トイレで倒れて……」 唯「あずにゃんのお母さんには、もう連絡行ってるから大丈夫」にこっ 梓「……どうしてですか」 唯「んー?」 梓「どうして私なんかのために……授業までサボって」 唯「私“なんか”?」 梓「だって!私なんて何やっても唯先輩の一番になれなくて!今日もこんな失敗して!」 梓「私なんて、いつも、唯先輩に偉そうにしてても!本当は何にも、なんにも……できなくて……」ポロ 唯「あずにゃん……」 梓「私なんか……わたしなんか……うっ、うっ……」ポロポロ 唯「……」 梓「……うっ……ひっく……」ポロポロ ぎゅ 梓「……唯先輩」ぐす 唯「おバカだなー、あずにゃんは」なでなで 梓「……そうですよね、バカですよね……」ぐじゅ 唯「ちがうよー。私はあずにゃんが間違ってるって言いたいんだよ」 梓「え?」 唯「あずにゃんもね、私にとっては大切な一番だよ」 梓「え、だって私……ギターもお茶も一番じゃないもん」 唯「そんなの関係ないよ」 唯「あずにゃんはね、私にとって一番かわいい子なんだ。抱きつくとあったかい子なんだ」 梓「……そんなのうれしくないです!」ぐすっ 唯「それじゃあ、ダメなのかな?」 唯「私はうれしいんだけどなー?」 梓「……」 唯「昨日はね、これが言いたくて意地悪しちゃったんだ。でもあずにゃんたら、さっさと帰っちゃうから」 梓「……なんですか、それ」 唯「あずにゃん、ごめんね。ホントにホントにごめんね」 梓「もう、絶対に許してあげません!」ぷいっ 唯「えぇー!?許してつかぁさぁい!」めそ 梓「……くすっ」 ガチャッ 律「おいーっす!梓無事かー!?」 澪「こら、保健室では静かにしろ!」ぺしっ 唯「あ~。みんな来てくれたんだ~」 律「あったり前よ!後輩のピンチだからな!」 紬「迎えがくるまで、お茶にしましょう」にこにこ 澪「梓、体の調子はどう?」 梓「ええ、もう大丈夫です!」にこー 律「お、なんか嬉しそうだな?」 梓「♪」 唯「?」 めでたしめでたし 戻る 2 ←※作者別(澪と唯)
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魔法少女リリカルなのはStrikerS 第8話 【願い、ふたりで】 スバル「私達は、ずっと一緒にやってきた。辛い時も苦しい時も楽しい時も… 支えあって、助け合って…一緒に戦ってきた。大好きな友達!っていうと怒るけど、 私にとっては夢への道を一緒に進む、大切なパートナー。失敗も躓きも後悔も一緒に背負う。 だから、一緒に立ちあがろう?魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 なのは「えっと…。報告は以上かな。現場検証は調査班がやってくれてるけど、皆も協力してあげてね。 しばらく待機して何もないようなら、撤退だから」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 なのは「で。ティアナは……。ちょっと、私とお散歩しよっか?」 ティアナ「あっ……はい…」 なのは「失敗しちゃったみたいだね」 ティアナ「すみません。…一発…それちゃって…」 なのは「私は現場にいなかったしヴィータ副隊長に叱られて、もうちゃんと反省してると思うから、 改めて叱ったりはしないけど」 なのは「ティアナは時々、一生懸命すぎるんだよね。それでちょっと、やんちゃしちゃうんだ」 なのは「でもね。ティアナは一人で戦ってるわけじゃないんだよ。 集団戦での、私やティアナのポジションは前後左右、全部が味方なんだから」 ティアナ「……!!」 なのは「その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて同じことを二度と繰り返さないって…約束できる?」 ティアナ「はい」 なのは「うん。…なら、私からはそれだけ」 なのは「約束したからね」 ティアナ「……はい」 キャロ「えっと…シャーリーさん?」 シャーリー「はいな~?」 キャロ「フェイトさんと一緒にいらっしゃる方、考古学者のユーノ先生って伺ったんですが」 シャーリー「そう!ユーノ・スクライア先生。時空管理局のデータベース、 無限書庫の司書長にして古代遺跡の発掘や研究で業績を上げてる考古学者。 局員待遇の民間学者さんっていうのが、一番しっくりくるかな~。なのはさん、フェイトさんの幼馴染なんだって」 キャロ「はぁ~」 ユーノ「そう…。ジュエルシードが…」 フェイト「うん…」 フェイト「局の保管庫から地方の施設に貸し出してて…そこで盗まれちゃったみたい」 フェイト「まあ、引き続き追跡調査はしてるし、私がこのまま六課で事件を追っていけば… きっと、たどり着くはずだから」 ユーノ「フェイトが追ってる、スカリエッティ…」 フェイト「うん……でも、ジュエルシードをみて、懐かしい気持ちも出てきたんだ。 寂しいさよならもあったけど、私にとっては、いろんなことの始まりのきっかけでもあったから」 なのは「今日は…偶然なのかな?」 ヴェロッサ「僕も何か手伝えたらいいんだけどね」 はやて「アコース査察官も遅刻とサボリは常習やけど、基本的には忙しいやん」 ヴェロッサ「ひどいや」 ヴィータに「ちょっといいか?」 ヴィータ「訓練中から時々気になってたんだよ、ティアナのこと」 なのは「うん」 ヴィータ「強くなりたいなんてのは若い魔道師なら皆そうだし、無茶も多少はするもんだけど、 時々ちょっと度を超えてる。あいつ…ここに来る前、何かあったのか?」 なのは「うん……」 キャロ「ティアさんの…お兄さん?」 スバル「うん。…執務官志望の、魔道師だったんだけど。ご両親を事故で亡くしてからは、 お兄さんが一人でティアを育ててくれたんだって。だけど…任務中に…」 キャロ「亡くなっちゃったんですか?」 スバル「ティアがまだ…10歳の時にね」 なのは「ティアナのお兄さん、ディータ・ランスター。当時の階級は一等空尉。所属は首都航空隊。享年21歳」 ヴィータ「結構なエリートだな」 フェイト「そう…。エリートだったから、なんだよね。ディータ一等空尉が亡くなったときの任務。 逃走中の違法魔道師に手傷は負わせたんだけど、取り逃がしちゃってて…」 なのは「まぁ、地上の陸士部隊に協力を仰いだおかげで、犯人はその日のうちに取り押さえられたそうなんだけど」 フェイト「その件についてね、心無い上司がちょっとひどいコメントをして…一時期、問題になったの」 ヴィータ「コメントって……なんて?」 スバル「犯人を追い詰めながらも逃すなんて、首都航空隊の魔道師としてあるまじき失態で、 たとえ死んでも取り押さえるべきだった…とか。もっと直球に、任務を失敗するような役立たずはうんぬん…とか」 なのは「ティアナはその時、まだ10歳。たった一人の肉親を失くして、 しかもその最後の仕事が無意味で役にたたなかったって言われて…。 きっともの凄く傷ついて、悲しんで…」 スバル「だからティアは、証明するんだって。お兄さんが教えてくれた魔法は、 役立たずじゃない。どんな場所でも、どんな任務でもこなせるって。それで…残された夢を、 お兄さんが叶えられないで終わっちゃった執務官になるって夢を、叶えるんだって。 ティアがあんなに一生懸命で必死なのは、そのせいなんだよ」 スバル「で、ティアが考えてることって?」 ティアナ「短期間で、とりあえず戦力をアップさせる方法。うまくできれば、 あんたとのコンビネーションの幅もぐっと広がるし、エリオやキャロのフォローももっとできる」 なのは「じゃあ、引き続き個人スキルね。基礎の繰り返しになるけど、ここはしっかり頑張ろう!」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 スバル「なのはさん…。優しいから」 フェイト「私も手伝おうと思ったんだけど」 ヴィータ「今はスターズの番」 フェイト「ほんとは、スターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね」 ヴィータ「あー。なのはもここんとこ訓練密度こい~からな。少し休ませねぇと」 フェイト「なのは。部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ。訓練メニュー作ったり、 ビデオで皆の陣形をチェックしたり…」 エリオ「なのはさん。訓練中も、いつもボクたちのことを見ててくれるんですよね」 キャロ「ほんとに。ずっと…」 なのは「私の本気はこんなもんじゃないの」 なのは「こぉらスバル。駄目だよ。そんな危ない軌道!」 スバル「すいません!でも、ちゃんと防ぎますから!」 フェイト「なのはっ!!」 なのは「おかしいな。…二人とも、どうしちゃったのかな?」 「がんばってるのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ。 練習のときだけ言うこと聞いてる振りで、本番でこんな危険な無茶するんなら、練習の意味…ないじゃない」 なのは「ちゃんとさ…。練習どおりやろうよ。ねぇ。私の言ってること…私の訓練…。そんなに間違ってる?」 ティアナ「私は!もう、誰も傷つけたくないから!失くしたくないから!だから…っ、強くなりたいんです!!」 なのは「少し……頭冷やそうか」 なのは「じっとして。よく見てなさい」 なのは「伝えたいことがある。勇気の意味と一番最初に、守るべきもの。 次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS…第9話、たいせつなこと。 皆がいつか、自分の空をゆく日まで…」
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唯「ごめんねあずにゃん!!」 梓「うわああああ唯先輩!?」 唯「あずにゃん、ちょっと驚き方酷くない?」 梓「いや、だって、これから学校いってきまーすって家のドア開けたら県外の大学に行ってるはずの先輩が土下座してるんですから」 唯「土下座してるのによく私だってわかったね」 梓「そういうツッコミはいいです」 唯「えーあずにゃんのけちー」 梓「っていうかなんとなくわかるでしょう。で、何してるんですか? 大学はどうしたんですか? 何をしに来たんですか?」 唯「ごめんねあずにゃん!!」 梓「……何がですか?」 唯「あずにゃんの誕生日忘れてたの! ごめん!」 梓「あ、ああ、そういうことですか……って、私の誕生日明日ですから謝らなくても大丈夫ですよ? 顔を上げてください」 唯「ううん、そうじゃなくて」 梓「? あ、昨日思い出したから誕生日プレゼントが間に合わない、とかですか? 大丈夫ですよ、気持ちだけでも充分うれしいですから」 唯「ううん、思い出したのは先月なんだけどね」 梓「早っ! それ忘れてたって言いませんよ!?」 唯「っていうか、ほら、私達同じ月だし。「そういえば私の誕生日来月だっけ」って気づいたら、後は、ほら」 梓「確かに、自分の誕生日が近いなーって気づくことは必然的に相手の誕生日が近いってことにも気づきますよね」 唯「でしょー?」 梓「……だったらホントに何も謝ることないじゃないですか」 唯「ううん、それでもあずにゃんの誕生日は私にとって忘れ物だったんだよ」 梓「……? は、はぁ」 唯「あ、よくわかってないでしょ」 梓「唯先輩の表現と考え方は時々異次元に行きますから」 唯「スケールが大きいってことだね!」 梓「それでいいですよ」 唯「えっと、何の話だったっけ。そうだそうだ、忘れ物を取りに行く時って大抵誰かに謝るじゃん」 梓「一緒に帰ってる友達に「あっ、ごめん!忘れ物した!」とかですか?」 唯「あと深夜の学校の守衛さんに「すいません鍵貸してください!」とか」 梓「そんな夜に出歩くと危ないですよ?」 唯「まあマンガの知識なんだけどねー」 梓「そんなことだろうと思いました」 唯「だからあずにゃんにも謝っておくの!」 梓「でもこの場合、私に謝っちゃうと忘れ物そのものに謝ってるような感じになりません? 教室に置き忘れた勉強道具とか、部室に忘れた何かとか」 唯「教室に置き忘れたお弁当箱とか……」 梓「……怖っ」 唯「ま、まあ実際のところはそういう細かいこと考えてなかったんだけどね! ごめんねから入ったほうが話を聞いてもらえるかと思って!」 梓「そんなことだろうと思いました」 唯「なんかあずにゃんがクールだよ」 梓「最近めっきり冷えますからね」 唯「くっついていい?」 梓「「思い出したのは先月」のあたりからずっとくっついてるじゃないですか」 唯「あったかいねー」 梓「……そうですね」 唯「でさ、忘れ物の話なんだけど」 梓「あ、まだ続くんですか」 唯「これからが本題でーす」 梓「……はあ」 唯「あのさ、あずにゃん、忘れ物って『いつまで』忘れ物なんだと思う?」 梓「……どういう意味ですか?」 唯「だってさ、あずにゃんが謝らなくていいよって言ってくれたみたいにさ、思い出した瞬間にはもう『忘れ』物じゃないよね?」 梓「……唯先輩のくせに理屈っぽいですね」 唯「人生の中で一番口が達者な時期の大学生ですから!」 梓「そんな格言ありましたっけ?」 唯「わかんない!てきとう!」 梓「全然達者に動いてませんね、口」 唯「最近寒いから……」 梓「そうですねぇ」 唯「……で、いつまでが忘れ物だと思う?」 梓「うーん」 唯「たとえばあずにゃんが忘れ物を思い出して引き返したとします。テッテケテー」 梓「なんか始まった」 唯「その瞬間からあずにゃんの頭の中は忘れてたそれのことでいっぱいです。もう忘れようがないくらいに」 梓「そうですね」 唯「あずにゃんはちっちゃい身体で一生懸命走ります。可愛いですねぇ〜」 梓「はあ」 唯「でも忘れ物のことばっかり気にして走ってたあずにゃんは曲がり角でイケメンさんとぶつかってしまいます」 梓「あらまあ。それはすいません」 唯「でもイケメンだと思ったその人は実は未来の私でした。普通に女の人でした」 梓「へえ」 唯「あずにゃんは思います、「唯先輩が将来こんな美人になるなら今のうちに唾つけておこう」と」 梓「思いませんから」 唯「こうしてあずにゃんは恋に落ちました」 梓「聞いてます?」 唯「ごめんね、忘れ物の話をしてたはずなのに落し物の話になっちゃったよ」 梓「うまいこと言ったつもりかもしれませんけどそうでもないですからね?」 唯「で、いつまでが忘れ物だと思う?」 梓「今の例え話は何だったんですか」 唯「ごめんね、台本書いてくるべきだったね」 梓「……まあ、忙しい大学生にそこまでさせるつもりもないですからいいですけど」 唯「あずにゃんやさしー」 梓「……やっぱり、忘れ物は手に取るまで忘れ物なんじゃないですか。普通の答えで申し訳ないですけど」 唯「家に帰るまでが遠足、みたいな?」 梓「そんな感じです。忘れてる間は『忘れてる物』で、思い出してからは『忘れてた物』で、手に取るまではどっちも略して『忘れ物』なんですよ、きっと」 唯「おお〜、あずにゃん口が上手いねぇ」 梓「……それ、褒め言葉ですか?」 唯「え?もちろん」 梓「……そうですか」 唯「でもやっぱり手に取るまでが忘れ物だよねー、安心できないもんねぇ」 梓「そうですね」 唯「というわけで、最初のあずにゃんの質問に対する答えもそれなんだよ」 梓「へ? 私なんて言いましたっけ?」 唯「何しに来たの、って言ったじゃん。私も忘れ物を手に取りたくて来たんだよ。ねっ、あずにゃーん」 梓「…………ちょっと、抱きつき強すぎです」 唯「えへへ、ごめんごめん。というわけで、私も安心できたしそろそろ大学に戻ろうかな」 梓「えっ!? 今から戻るんですか!?」 唯「大丈夫だよ、また明日来るから。みんなと一緒に誕生日プレゼントを持って、ね!」 梓「いや、そうじゃなくて、そんな急に……じゃなくて、時間!」 唯「あずにゃんもそろそろ行かないと遅刻でしょ?」 梓「あっ、あぅ、確かに……ギリギリですけど」 唯「私はイザとなったら代返してもらうし!大学生だからね!」 梓「……憂には言っておきますね」 唯「ああん、そんなぁ」 梓「……でも、ありがとうございます。明日も来てくれるんですよね、待ってますから」 唯「うん、着いたらメールするからね。じゃあねあずにゃん、また明日!」 梓「はい、また明日です!」 おわり あずにゃん誕生日前日おめでとう! 戻る
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84 :名無しさん@HOME:2008/05/20(火) 09 11 19 O 大学生だったコトメが卒業して帰って来てた。 良ウトメで丁度良い距離感で良い関係だったけど コトメが距離ナシちゃんだった。 コトメは私と同い年だけど、性格・見た目正反対。 共通点を探す方が難しいくらいなのに 身内なのもあってかよく絡んでくるように。 最初は息子が寝てる間に居間でゲーム(ぷよぷよ)を してたのを見られてから。 『私ちゃんもゲームやるんだw』 って言って部屋から違うゲームの本をいっぱい持ってきた。 夫のゲームをなんとなくやっただけだし 男の人を落とすゲーム?なんてこれぽっちも興味がない。 いくらそう伝えても、見事スルーされ ゲームの本→ゲームの漫画→ゲームの中の人がホモの漫画まで持って来て語る語る。 夫やウトメが〆てもめげない。 毎回義実家行く度続き、子供の前でまでホモの本だすからdqn返し。 コトメが席立った隙に息子と一緒に大事な漫画を落書き帳にした。 コトメ半泣きだったけど 『私も今落書きブームなんで。 紙見ると我慢できないんです。 大事なものは部屋から出さないで下さいね。』 と無表情でいったら黙ってうなずいてたから 分かってくれたと思う。 なんかプレミアついてるとか言ってたけどシラネ。 うちの子のサイン付いて価値も上がったんじゃないですか? 86 :名無しさん@HOME:2008/05/20(火) 09 20 16 0 84 腐女子か~! 一人で楽しむ分には、個人の自由だから別に構わないが、 なぜか腐女子はBL布教活動に必死だよね。 現実は腐女子が思うほどホモなんていない。 2丁目でも行って現実を見て来い(本で見るほど美しくない) 88 :名無しさん@HOME:2008/05/20(火) 09 24 00 0 84 GJ! 腐女子ってマジで「ホモが嫌いな女子なんていません!」と 思ってるのかと疑うときがあるw 95 :84:2008/05/20(火) 10 06 06 O コトメは地元で出版関係に就いたって聞いたけど あまり深くは知らなくて。 なつかれたのではなく布教活動だったんですね。 念のためしばらく義実家行く時はクレヨン持参します! 次のお話→89
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梓「なっ何もしてませんよ!」 唯「ふ~ん、言えないんだ」 澪「言えないような事してたもんな~」クスクス 紬「……」 梓「えっ……あの……」 唯「実はね、むぎちゃんに隠しカメラ仕掛けてもらってたんだ~」 紬「……ごめんなさい」 梓「え…」 唯「え?って言うことは何かをしてたって事だよね?」 梓「…」 梓「何もしてないです!」 澪「梓…」 梓「澪先輩なら信じてくれますよね?」 澪「…全部知ってるから」 澪「何言っても無駄だよ」 唯「キャー澪ちゃんこわいー!」ケラケラ 澪「ムギ、ビデオを」 紬「わかったわ」 ガチャ 唯「あずにゃん始まるよ!」 ふわふわ時間ふわふわ時間♪ 皆ー今日は私あずにゃんの為に来てくれてありがとう!ワーワー 梓「な゛…//////」 唯「あずにゃんって結構痛い子なんだね」 唯「独り言でこんな事言ってるとか」 梓「」 じゃあ次の曲は、私が作詞作曲した新曲です! ワーワー あずにゃんにゃん~♪あずにゃんにゃん~♪ 唯「あずにゃんにゃんって何?」クスクス 澪「何か…体が痒くなる曲だな…」ウズウズ 梓「(いっその事殺して…)」 あずにゃんの・・・あずにゃんの・・・あずにゃんのLIVE GYMにようこそおおおぉぉぉ!!! ワーワー 唯「ぷぷっ」クスクス 澪「鳥肌が…」ザワァーッ 梓「(もう消えたい…)」 唯「こんな子にはお仕置きが必要だね!」ニコッ 梓「ふぇっ!?」 唯「澪ちゃん!ムギちゃん!」 澪・紬「ラジャ」がしっ 梓「え!?は、離して下さい!」 唯「怯えなくても大丈夫だよあずにゃん…痛くしないから」ニコニコ 梓「(目が怖いです…)」 あずにゃんの為に武道館に来てくれてありがとー! キャピッ 唯「ねぇねぇ『キャピッ』ってなぁに?」クスクス 澪「ちょっと眩暈がしてきた」フラッ 梓「(私空気私空気)」 澪「そろそろ律も来るし、部長であるあいつにも最初から見せてやろう」クスクス 梓「ひっ」 唯「んじゃ私は憂と純ちゃんと和ちゃん連れてくる」 梓「くぅ…」 ガチャッ 梓「」ビクッ 紬「さわ子先生連れてきたわ」 唯「ムギちゃんナイスッ!」グッ さわ子「なになに?面白いもの見れるそうじゃない」ニヤニヤ 梓「(私透明私透明)」 数分後 律「さあ、みんな集まったところであずにゃんショーとやらを見せとくれ」ワクワク 和憂純「?」 和「梓ちゃんがどうかしたの?唯」 唯「まあまあ、和ちゃんも黙ってこれ見てよ」 澪「せっかくだから生で梓にやって貰わないか?」 梓「え゙っ」 さわ子「良いわね!」 唯「澪ちゃん頭良い!」ビシッ 律「唯…頭は関係ないと思う…」 唯「へ?」 純「梓ちゃん、あずにゃんショーって何なの?」 梓「さささ………さあ?何だろうね」 唯「あーずーにゃん(リモコン握る)」ニコッ 梓「ひっ」ビクッ 梓「わ………わた……」 梓「わた……私何だか急に三毛猫病に懸かったみたいだから今日の部活は早退します」 さわ子「待ちなっ!」 梓「ひぐっ」 さわ子「素直に観念しな」 和「…何だか変な事に巻き込まれたみたいね」 純「…何なんだろうこの人達」 憂「すみません、またお姉ちゃんが変な事を」 梓「(ああ…私終わった…)」 律「さあ、あずにゃんショーの始まり始まり」 パチパチパチパチ 紬「録画録音写真準備OK」 梓「(もうどうにでもなれっ)」 梓「あ……あずにゃんタイム始まるよっ!」 ふわふわ時間ふわふわ時間♪ 皆ー今日は私あずにゃんの為に来てくれてありがとう! 和憂純「はひ?」 梓「(…さようなら私)」 唯「ねぇねぇ新曲は?」 律「なにぃーっ!梓新曲出来てるのか?」 唯「とーっても素敵な歌詞なんだよ!」 唯「ねっ!あずにゃん♪」 梓「(ああ…霧になりたい)」 梓「つ…次の曲は、私が作詞作曲した新曲です!」 あずにゃんにゃん~♪あずにゃんにゃん~♪ 憂「」 純「あ…梓」 和「何だか見てはいけないものを見てしまったわ」 梓「(走馬灯が見えてきたよ)」 梓「あずにゃんの・・・あずにゃんの・・・あずにゃんのLIVE GYMにようこそおおおぉぉぉ!!!」 ワーワー 和「ぷるぷるぷる」ククククク 憂純「(…明日からどう接しよう)」 さわ子「あっはっはっはっは」 さわ子「ははははははははは」 さわ「ヒャハハハハハハハハ」 律「…さわちゃんの笑い声怖いよ」 梓「(吾が輩は猫である吾が輩は猫である)」 梓「あずにゃんの為に武道館に来てくれてありがとー!」 キャピッ 萌え萌えかい? ha~ha あずにゃんnight ha~ha 和「英ちゃんだよね…コレ」 憂「(何で私来ちゃったんだろ)」 純「(梓…良く頑張った)」 梓「(あずにゃん2号ばいばい)」 3時間後 またあずにゃんの時間に会いにきてねっ 萌え萌えキュン 一同「」 和「な、何というかお疲れさま梓ちゃん」 純「頑張った!良く頑張ったよ梓っ!」 憂「(きっと梓ちゃんは憑かれてるんだよ…うん!)」 さわ子「久々に爆笑したわ、あー面白かった」 律「ははは……さ…さあ皆お茶にしないか?」 澪「そそそ、そうだな長時間で疲れただろうし」 紬「分かったわ、今から準備するわね」 唯「ムギちゃん今日のおやつなあに?」 紬「今日は〇△のケーキよ」 純「私知ってます、あそこのケーキって物凄く高いんですよ」 ワイワイガヤガヤ 和「今度、私で良ければ相談に乗るからあんまり抱え込まないようにね」 憂「来週の日曜日ボーカルスクール探すの手伝うよ」 梓「」ドヨーン 梓「(萌え尽きちまったぜ…真っ白に)」 完 戻る
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愛し 「最近アンタ、オレのこと見ないよね」 夕食を終えたあとの、なんの気なしの会話を装って、そんな風に口が動いた。 チャトラがずっと聞きたかったけれど、言い出せなかった一言だった。 言って、テーブルを挟んで斜め向かいに座る相手をじっと見据えた。見つめた、だなんてやさしい見かたはしてやるつもりはない。チャトラの心境的には、睨んだぐらいの意気込みはあったはずだけれど、目の前の相手と違ってあいにく凄みがない。せいぜい見据えた、がいいところだろう。 ――そうかな。 相変わらず涼しい顔をして、心の動きを顔に出さないエスタッド皇帝は、頬杖を突いて窓の外へ目をやった。曖昧にうすく頬をくずしたようにも見えたけれど、微笑んだわけではなくて誤魔化しているだけだということをチャトラは知っている。 ああまただ、と思う。 今アンタは目を逸らしたよ。 そうして、いったいどうしたことなのだろうと思った。もしかすると、知らないうちに皇帝の機嫌を損ねるようなことをしているのだろうかと思った。 チャトラは下町生まれの下町育ちだ。お世辞にも「育ちが良い」とは言えない暮らしをしてきたし、自分でもその自覚はある。 であったから、皇宮のいわゆる建前だの、行儀だの、礼儀だのと言った格式ばったことはほとんど知らなかったし、皇宮に来て一年と少し経つけれど、身に付いたとも思っていない。 覚える気もあまりなかった。 それで良いのだと思っている。 もちろん、侍従長であるとか三補佐や評議会の重鎮といった「生まれ育ちの良い」人間が、自分のことを快く思っていないことも承知している。気付けないほど鈍くないし、気付いてそのまま放っておくほどチャトラは無神経でもない。 これでも皇宮に来たての頃は、郷に入ればなんとやらで、形式を一通り覚えようとしたのだ。たとえこれが皇宮で一番質素と言われようと、下町育ちにしては十分すぎるほどに贅沢を尽くした仕事着に着替え、建物の上から下まで目眩がするほどの模様や摸細工に囲まれて過ごし、その上「宮廷礼儀」とやらを習うことは、チャトラにしてみれば半分以上冗談と言おうか苦痛と言おうか、精神修行に近いものではあったけれど、自分の言動が相手に不快を与えるのならば、それはできる範囲で改めるべきだ。 そう思う。 だのに、習おうとしたとたんに皇帝の機嫌が悪くなった。 咎めたわけではない。あからさまに不快を表したわけでもない。ただ、むっとするとしか表現のしようがないような、不機嫌な雰囲気に陥ったことは確かだ。 「意味が判らん」 その時のチャトラの正直な気持ちである。 詳しく尋ねても応えてくれない。いつもの通りである。不満があるならはっきりと口にしたらいいのにと癇癪も起こしかけた。 その中で、のらりくらりとぼやかす皇帝の口振りから、どうも「宮廷礼儀」を自分が身に付けることを歓迎しているようではないと言うことだけは察した。そのままが面白いのだとそんな風に言っていたようにも思う。 であったから、その後は他の誰が渋い顔をしてもチャトラは極力気にしないできたし、それで良いのだとひとまず結論付けた。 だいじなことは言い方や腰の折りかた、頭の角度ではないと思えたからだ。 これが各国の要人、来賓貴賓の類と接する職務であるなら、やはり自分は態度を改めるべきだ。 けれどチャトラは別段エスタッドの公の場に顔を突っ込むつもりもなかった。皇帝自身もそれを望んではいないだろうと思っている。 と言うより、望まれたところで全く役に立たないと思う。 飛びぬけて知恵が働くわけでもない。多くの兵書を読んでいる訳でもない。実戦経験もない。剣を持たされたところで、及び腰で周りの人間の邪魔をするのがせいぜいだろう。 もちろん、武技の才能がなくとも、皇帝の周りに侍る人間はいる。 書の美しいもの。すばらしく見栄えがするもの。おどけた身振り手振りで皇帝の気晴らしを促す背足らずの道化。笛を吹くもの。弦をつま弾くもの。また、その管楽に合わせて即興で詩をうたえるもの。 そのどれもチャトラにはできない。もとより才能だと思っているので、真似ようとしたこともない。 チャトラが自慢できるものはと言えば、せいぜい掏摸の手先の器用さか、泣いた赤ん坊をあやす経験くらいのもので、この場合皇宮で全く必要とされていなかった。 その、皇宮に於いてまったく取り柄のないチャトラを、遠く離れた町から興味本位で連れてきてぽんと投げ入れたのがエスタッド皇である。 「おもしろそうだったから」 というのがその理由だったらしいが、聞いて呆気にとられた自分の気持ちも、せめて誰でもいいので、一人ぐらいには理解してほしいと思うチャトラだ。 タダ飯を食らうことには納得がいかなかった。自分は皇帝に飼われた犬や猫ではない。 「拾った」 そう言う風に皇帝は言うことが多いけれど、掏摸といえどもきちんと一人で生き延びていたわけで、捨てられていない。別に拾ってほしいと頼んだわけでもない。どちらかと言うと、 「無理やり連れてこられた」 が正解だと思う。当の皇帝はそう思っていないようだけれども。 そうして、何か仕事をくれと言ったチャトラに、皇帝の身の回りの世話と言う、聞いて何とはなしに意味合いが通じるものの、その実何をやっているのかと聞かれると説明に困る仕事を言い渡された。 つまり雑用だ。 皇帝は居住区画へ戻ってくると、自分ではほとんど何もしない。着替えの手伝いから浴場での背流し、居室の掃除、身の回りのものの洗濯、紅茶を淹れたり部屋の火を熾したり、一つ一つはたいした量ではなくとも雑用は意外と多い。それでも、寒さに凍える夜を迎えたり、食べるものにも困ってあたりに生えている草を煮て食べるような、そんな暮らしをしたことのあるチャトラにとっては、生ぬるい湯につかっているような生活だ。そのうちふやけるかもしれないと思う。 そんな、ふやけた雰囲気にひたっている間に、自分は皇帝が何か気分を害するようなことをしたのだろうか。 よく判らないな、と思った。なにしろころころと男の気分は変わったので。 けれど思えば、もうしばらくチャトラは皇帝と目を合わせていない。 自分が男を眺める時は、皇帝はどこか違う方向を眺めている。きっと意図的なものだ。 言いたいことがあるならきちんと口に出して言えよ。 皇宮に来てからもう何度目か判らない愚痴を、心の中で呟いて、なぁ、とチャトラは男に呼びかける。 (オレ、アンタになにかした?) 風に髪をなぶらせ、外を眺めている皇帝は何も言わない。 「……つまりどういうことなんだ?」 何の気なしに訪れた衛兵詰め所に知った顔を見つけて、腰を落ち着けることにしたチャトラだ。たまには愚痴りたい気分になることだってある。相手はラズと言う名のまだ若い騎士。一年前にチャトラが冬山で凍りかけた時にたまたま知り合った。年長者の多い皇宮の中では、割と目立つ若さである。 立ち位置で言うなら、皇帝直属の護衛であるディクスの、直下の部下のさらに下に就く。皇宮勤めであるのだから、一定以上の家柄ではあるのだろうが、爵位はそう高くはない。とは言え、「あの」ミルキィユの部隊に加わっていたこともあるのだから、才覚は決して悪くはなかった。鬼将軍とも呼ばれる彼女の行軍についてゆけずに脱落した、親の七光り、勲章、肩書きだけの人間がどれほどいたかという話である。 皇宮勤めにありがちな、裏の裏を読ませないような物言いもなく、真っ直ぐな気性がチャトラと意気投合した理由だろうか。そのあたりはよく判らない。人間同士が「気が合う」のに、理由は必要ないのかもしれない。直感的なものだ。 「あのひと、雰囲気変わったろ」 「皇帝陛下?」 「そう」 「ああ……どうなのかな、俺はあまりお側に寄ることもないから」 困ったように頬を掻いて、飲むか、と温めた麦酒を差し出された。冷える夜にはありがたい。礼を言ってチャトラは受け取った。 衛兵詰所というものが皇宮には東西南北四方の他にもいくつかあって、交代時間であるとか夜勤までまだしばらくの間があるものが、たむろっている。丁度ラズが準夜勤を終えたところに出くわしたのだった。他にも数人、談笑するものもあれば、黙って机に向かい見張りの報告書を仕上げるもの、軽食を急いで詰め込むもの、寝台のある上の階への梯子を上るものもいた。 万が一、皇都決戦ともなれば、彼らも職業軍人である以上武器を取って戦うのではあるけれど、通常の勤務は、皇都や皇宮の見回りであるとか見張り塔へ登っての監視。つまりは治安維持が主な役割で、その点前線に立ち駐屯地で八割野宿の、ダインたち騎士団とはまた少し空気が違う。 殺気だっていない分、とっつきやすいと言えるのかもしれない。 ある程度の緊張感はもちろん大事ではあろうけれど、治安を守る衛兵らが必要以上にぴりぴりと緊張していては、守られる側の都民であるとか皇宮に生活する人間が逆に安心できないというものである。 皇宮のあちこちへちょこちょこ顔を出すチャトラは、衛兵の中ではずいぶん顔なじみで、彼女が椅子に腰かけラズと壁にもたれて座っていても、対して誰も目にとめない。こうした雑多な雰囲気と、自分を特別視しない衛兵たちであるとか下働きの女たちがチャトラは好きだった。 好きと言うよりは、肩の力が抜けるというのかもしれない。 「たまに、回廊の辺りを散策されているのを拝見することはあるけど、そうそう近くに寄れないな」 「そっか」 麦酒をすすって膝を抱えるチャトラに、重ねてラズが尋ねる。 「どんなふうに変わったと思うんだ」 「……なんだろうな。見た目って言うより、なんか雰囲気が」 「雰囲気な」 「前からぼんやりしてて何考えてるのかよく判んねェ時があったけど、そのぼんやりしている時間が長いって言うか。なんか、オレのこと見てるけど見てないって言うか」 「見ていない?」 公務全部ブン投げて、お前と一緒に二日間一緒にいたのに? 不思議そうに言われて逆にチャトラが目を剝いた。どういう意味だと問う。 「チャトラがこっち戻ってきた日」 「祭りのあった日だよな」 「そう。生誕祭な。あの日、陛下、続きの式典だとか祝宴だとか、次の日の公務とか全部放棄して、部屋にお前と閉じこもってたって聞いたぞ」 ああ、やっぱりブン投げていたのか。 あの時ちらとだけ思った考えが当たっていたことが判ってチャトラは小さく溜息を吐いた。式典も宴も放り投げられて、担当者の涙目の姿が目に浮かぶ。くたびれていた自分は、何も考えず二日間眠ってしまったけれど、やっぱり外では大変なことになっていたらしい。 というか、目覚めてからしばらくも、もしかすると本気で二日間、扉の外も含めて廊下に人の気配がしなかった。来るなとかなりきつく言いつけたのかもしれない。 「よっぽど水入らずで過ごされたいのだなと、若くてヒマな俺は、若干あらぬ邪推をしたわけで」 一瞬好奇の入り混じった目で眺められて、は、とチャトラの喉から息が漏れた。 「ちょっとまて。邪推って何だよ?」 「そりゃお前、男と女が同じ部屋で二人きり、『きのうはお楽しみのようでしたね』ってヤツだろ」 「いや、ない」 ニヤニヤと意味深に笑われて否定した。 ラズは、皇帝が必要以上にチャトラを気に入っていることを知っていたし、チャトラ自身が皇帝を悪く思っていないことも知っている。実は皇宮の中でも、チャトラが皇帝の居室に寝起きしていることを知っている人間は、ごく一部に限られた。これは警護のためであるとか、チャトラの身の回りに危険が及ばないようにすると言った判断ではなくて、単にセヴィニア補佐官による、 「聞こえが悪い」 の一言で緘口されていたにすぎないのだけれど。 「オレ、ねてただけだし」 「寝てたって、」 「本気で、普通に、睡眠の方の。二日間」 「それだけ?」 「それだけ」 うん、と頷くと本当の本当に?と尚もラズが尋ねてくる。 「ご期待にそえなくて残念だけど、本当の本当になんもヤらかしてねェよ」 ああそうだ、と話しながらチャトラは思う。あの時から皇帝は少しおかしかった。彼女に触れるのを恐れるように手前で指をおろし、視線を逸らした。 そうして二日間、眠っている自分を見ていたのだと言った。 消えてしまうかもしれないと。 消えてしまうと言うのは一体どう言う意味なんだろうと思う。目の前から姿を消すと言った意味の?それとも、文字通り掻き消えるとでも思っているのだろうか。 幽霊や幻でもあるまいし、そう思ってからもしかすると皇帝はまさに「そう言う」目で自分を見ているのではないかと言うことにチャトラは気が付いた。 ……生きてるって思ってないんだ。 「そういえば、お前、こんなところでアブラ売ってて平気なの」 一息に麦酒を飲み干したラズが、膝を抱えたまま、ぼんやりと床を眺めているチャトラをちらと眺めて、そう言う。 「迷惑だった?」 「いや。俺はもう宿舎に帰って寝るだけだし、明日は半日非番だから、いくら夜更かししたってかまわないけどさ。この時間だと皇帝陛下が部屋にお戻りになられているんじゃあないのか」 部屋にいなくて平気なのかと、心配してくれたらしい。チャトラはあいまいに笑った。 「……しばらく、いない」 「え?」 「皇帝。一週間前の夜に発作起こして倒れて、医務室に運ばれたまま帰ってこない」 笑ったはずの頬が、明らかにこわばる感触が自分でもよく判った。 隣に座ったラズが、体を起こして覗き込んでくるのが判る。ニヤついた顔を引き締めてチャトラ、と彼女の名を呼んだ。 「よろしく、ないのか?」 「……わかんない。でも、ちょっと調子悪いだけだったら、自分の部屋でグダグダしてるから、運ばれたってことはあんまりよくないんだと思う」 言いながら指先が冷えてくるのが判った。 「そんなに顔色悪いようなカンジじゃなかったんだよ。メシはほとんど食べてなかったけど、別に珍しいことじゃないし、だけど部屋に戻る途中でいきなり倒れて」 皇帝よりも数歩先を進んでいたチャトラは、少し遅れて気が付いた。振り向いても、一瞬何が起こったのか判らなかった。皇帝の側へ膝を着き、呼びかけ様子を窺う護衛の騎士の姿を眺めて、ああ男は倒れたのだなと理解した。 床の上にうずくまる男を目にして、ぞっとする背筋の感覚と共に慌てて駆け寄り、息を呑む。 小刻みに震わせた体。喉を詰まらせたような吃音に似ている呼吸。上着を握った手の甲にまでびっしりと脂汗が浮いていて、触れるどころか声をかけることすら躊躇われた。 おろおろとし、騎士と同じように皇帝の傍らに膝を着きかけ、ここでは彼らの邪魔になるのではないかと立ち上り、やがて駆けつけた医師団が手早く処置を施してゆくのを壁際に下がって眺めながら、一言も声を発することなくただ黙ってチャトラは眺めていた。 皇帝の体は抱え上げられ、こわれものを取り扱うようにひどく丁寧に数人がかりで運ばれ、それも黙ってチャトラは見送った。 まだ皇宮に残って仕事をしていたらしいアウグスタ三補佐官が急ぎ足にやって来て、護衛していた騎士と何人かの従者、それとチャトラに向かって、今のことは公表するまで他言無用、と言い置いて、きた時と同じように去って行った。 黙りこくって見送った。 故意に黙っていたと言うよりは、言葉が出なかったと言う方が正しかったのだけれど、 「ああ……『たごんむよう』って、誰にも言っちゃいけないんだっけ。まずいな、オレ今アンタに言っちゃった」 「チャトラ」 「殴られるかな。アウグスタのオッサンだったら見逃してくれそうだけど、ラズ誰にも言わないでくれると助かるな」 「チャトラ」 この莫迦。怒ったようにラズが呟いて、それから乱暴にチャトラの両肩をごしごしと両手で擦る。 「お前、なんで最初にそっちを言わないんだ」 「……いやだって『たごんむよう』ってそういうことだろ」 「あのなぁ。一人で部屋にいるのが怖いから、お前ここに来たんだろ。陛下の雰囲気が変わったとかどうのじゃあなくて、不安でどうしていいのか判らないって、なんで言わない」 「だってよ」 もう一度無理に笑おうとした頬は、上手く上がってくれなかった。俯いた鼻の奥がつんと痛くなる。ごしごしと擦られた肩が、そこだけ温かかった。 「オレ、すげぇ心配だったけど、どうしていいか判らなくて」 「ああ」 「具合悪いのは知ってたけど、一緒にいるときでそこまでひどい発作起こしたの見たことなくて」 「ああ」 「大丈夫なのかって聞きたかったけど、聞いてもし良くないって言われたらって思ったら、どうしても聞けなくて」 「ああ」 「姉ちゃんみたいに、……姉ちゃんみたいに、動かなくて冷たくなっちゃったらどうし、」 さらに俯く。それ以上は言葉が出なかった。声を出したら、みっともない泣き声になってしまう。 それは嫌だった。 空を眺める。 チャトラの仕事である、「皇帝の身の回りの世話」の世話する当の本人がいなくても、昼間は探せばいくらでも仕事はあった。手伝いに奔走し、くたくたに疲れてそれでも目が冴えて眠れない。 広い寝台で何度も寝返りを打って、どうしても眠れないのであきらめた。 起き上がり部屋を出る。 扉の外に常駐する護衛も、今はその守る主がいないので、空席だ。皇帝が不在なだけで、居住区画はどうにも空ろな感じがする。 部屋を出て皇宮内の落ち着ける場所を探してうろついた。 裏庭の檜に上ったけれど落ち着かない。居住区から後宮へつながる、通路の大きな壺の後ろもいけなかった。厨房横の、木箱の間に座り込んでも駄目。馬房の藁の上も、洗濯場の衣類の山の中も、植物園の温室も尻座りが悪い。どこも、皇宮で見つけたチャトラの気にいった場所だったはずなのに、すうすうと空っ風が通っているような気がするのだ。 中央の見張り塔に上ってみたかったけれど、あいにくあの場所は、皇帝の許可がなければ塔へ通じる扉は開かない。 どこへ行っても落ち着かないのであれば、もうどこでもよいような気がして、半分ふてくされた気分で練兵場へ転がった。練兵場は砂地だ。特に何を敷いた訳でもなく寝転がったのだから、細かな砂粒の感触と共にごつ、と頭が地面にぶつかった。 砂は夜気にすっかり凍っている。 見上げれば満天の星で、よく目を凝らすと冬の空気に薄くぼんやりとした赤や白や青の星が、ちらちらとまたたいている。 チャトラの呼気が真っ白になって空へ上った。 つられて仰け反った瞼に、遠くの皇宮の明かりがしみる。夜は必要以上にあちらこちらで松明が焚かれた。一体どのくらいの油を使っているものか、それこそ燈火の芯を細く紙縒って節約するような暮らしをしていたチャトラにとって、火種ひとつだけでも十分に贅沢である。 大の字に転がる練兵場に訪れるものは誰もいなくて、時折巡回の衛兵の影がちらちらと松明に揺れるばかりだ。 とても静かだった。 「オレ、なんかしたのかなー……」 ここは誰も聞かない。誰にも聞こえない。だからそっとぼやいてみる。 星はたくさん見えたけれど、月は見えなかった。もうすぐつごもりであるから、見えても明け方になってしまうのだろうけれど。 そう言えば、よく空を見たなとチャトラは思った。 皇都から離れていた間の町の暮らしのことである。 皇都から離れて見る空は、どういうわけかやっぱり広くて、しばらくはその広さが嬉しくて日に何度も空を見上げた。 そのうち、広い空にも慣れて、ただぼんやりと過ごしたいときに空を眺めるようになった。 ぼんやりとするうちに、もしかしたら男もこの空を眺めていないかと思うようになった。同じ空を見ていたらいいのにな。 離れていたことに変わりはないけれど。 どうでもいいことを思い出しながら星を眺めていると、寒さで視界がぼやけた。冷えた眼球を守るために涙が滲んだだけ。自己防衛の生理機能。だというのに、チャトラは急いで目を擦った。自分が、泣きぐずっているように思えたので。 男が見たかった。 こんなに胸が痛くなるような気持は知らない。一方通行の片思いでもあるまいし、どうして空を眺めて涙目にならなければいけないのだろうかと悔しく思う。 あらぬ邪推をしたのだとラズが言った。そうだろう。自分だって、好きあっているらしい男女がひとつの部屋から出てこなければ、同じような妄想をする。ニヤニヤしながら「お楽しみのようですね」の一言も言いたくなるだろう。 (アンタ、どうしてオレのこと見ないの) すっかり冷たくなった腰を上げてぱんぱんと尻を叩き、それから唐突に皇帝に会いに行こうとチャトラは思った。 こんな真夜中で、面会の約束の一つも取り付けていない状況で、会わせてもらえないことは十分判っていたけれど。 皇宮内から行くのは端から諦めた。あちらは、「正式な」許可の取り付けがなければ、何ひとつ自由にならない場所だ。チャトラが頼めるとすれば三補佐官か侍従長のどちらかになるが、夜中である。どちらも休んでいる。朝まで待っても良かったけれど、今見たいと思った。 練兵場から、皇帝が運び込まれていった医務室までは割と近い。窓から少し離れて、枝ぶりの丁度良い木が生えていたような気もする。 登れば、部屋の中が覗けるかもしれない。 きっともう眠っているだろうけれど、それでもいいと思った。 近付いた窓は上から見下ろすよりも下から見上げる方が高い。手ごろな木があったはずだとチャトラは辺りを見回した。 植えられていた木は思っていたよりも窓から遠かった。もっと近くに植えられていたような気がしたけれど、中から眺めた光景とずいぶんこれも違う。もっとも、医務室に連れ込まれたのは、破落戸(ごろつき)の棍棒で頭を割られかけた一度きりで、記憶と違うのも仕様がないことなのかもしれない。 昼寝をするのにちょうどいい高さの木は、今は冬枯れによって葉を全て落としていて、ごつごつとした木肌の感触だけが生々しい。とっかかりにつま先を入れながら器用に上って、どきどきとしながらチャトラは部屋の中を覗き込もうとした。 「何をしている」 だのに、覗き込みかけたチャトラの背後から聞こえた声は容赦なく冷徹で、ざっと神経の高ぶりが醒めるとともに、次いでうんざりとした気分が襲ってきた。 どうしてこんなタイミングでコイツがでてくるのだろう。絶妙と言うなら絶妙すぎる。最悪だった。 「射殺されたくなければすぐに降りろ。待たぬぞ」 「……なんでアンタがここにいるんだよ……」 「それは私の方が聞きたいが。何故こんな真夜中にここにいる」 部屋でおとなしく休むことすらできないのか、軽蔑された口調は相変わらずで、しぶしぶチャトラは木からずり落ちた。 補佐官の一人セヴィニアである。チャトラとの相性は絶望的である。言葉の齟齬だとか見解の相違などではなくて、根本的にウマがあわないのだ。 どうしたって目に入るだけでイラつく人種、というものも世の中にはいるのだ。 「娘」 「なんだよ」 「死にたくないなら、次からは無用心に窓から中を覗く行為はやめることだ。衛兵が見咎めたら問答無用で射るぞ」 「……悪かったよ」 反論する気力も今はない。ただ男の顔が見たいと思っただけなのに、見られないどころかこうして最悪な相手と対面して説教を食らっている。言っていることはいちいちごもともだけれど、なんだか悲しくなった。 「……部屋に戻るよ。それでいいんだろ」 「できれば部屋に戻らず、そのまま皇宮を出て行ってくれるとありがたいが」 「容赦なく最低だなアンタ」 「お前に手加減したところで何の恩得もあるまい」 ついてこい、と言外に促され、どこへ向かうか判らないが仕方なくチャトラはセヴィニアの後を追った。逆らえばきっと容赦なく平手の一発も飛んでくる。相手を殴ることにためらいを感じていない人種。 そう言う人間もいるのだ。 「アンタ、こんな時間まで仕事してたのか?」 黙って彼の後ろを付いて行ってもよかったのだけれど、黙っていると落ち込んだ気分がますます落ち込んでいきそうだった。ウマの合わない人間と、話をしたところで頭に来るだけだと言うことはチャトラにも十分判っていたけれど、黙っているよりはマシだと思った。 怒りの方が原動力にもなる。 「……答える義理もないが。緊急事態であるからな。皇帝補佐官とはもともとそうしたものだ」 「アウグスタのオッサンも?」 「アウグスタ公とは、交代で陛下の御部屋に詰めている。一人欠けて……手間も増えた。煩わしい」 「……ノイエさんって、どうなったの」 「聞いていないのか」 ちら、と肩越しに初めてセヴィニアがチャトラを振り返った。うん、と素直に頷くとでは語ることは何もないと返される。 「なんだよそれ」 「陛下が仰られておらぬことを、私の口から告げる訳にもゆくまい」 「聞いても教えてくれねェし。さぁとか忘れたとか」 「……莫迦なことをしたものだ」 吐き棄てるように呟いて、セヴィニアはまた前を向く。その莫迦なことをしたと言う言葉が、自分にではなくノイエに向けてはなったのだと言うことに気が付いて、おやと思った。セヴィニアは存外ノイエを気に入っていたのかもしれない。 いつも穏やかに微笑みながら、どこか寂しそうだったひと。 自分のことを好きだと抱きしめてきたひと。 脅すつもりはなかったのだと言葉と矛盾した刃をかざしながら、すまないと謝ったひと。 「補佐の地位は剥奪されておらぬ。無事に生きている。ただ、都へ戻るのは遠い先になると思うが」 「そっか。……生きてんのか。だったらよかった」 「殺されかけたのだろうに」 詳しい安否を教えてくれる気はないらしい。それでも生きていると聞いただけでどこかほっとした。無事に、と付け足したことがセヴィニアの最大限の親切心かもしれない。 ほっとしたチャトラが気になったのか、不審そうな声音でセヴィニアが尋ねた。 「うん、まぁ、そうなんだけどな」 言われてみればそうかもしれない。 「でも嫌いじゃなかった」 どこかで元気でいてくれるといいと思った。 「陛下に関してもそうだろう。……もしかして、お前は我々の常識から大きく外れた性癖か何かを持しているのか?」 「は?」 「なぜ逃げぬ」 「なんでってどういう、」 言われた意味が判らなくてチャトラは数度まじろいだ。 何しろセヴィニアの言葉は、皇宮特有の「まわりくどい」言い方が多くて、何を指し示して言われているのか、判らないことがある。 「……ダイン卿がお前を引き取った時に事情はあらかた聞いた」 本気で首を捻ったチャトラを見て、またぽつりと肩越しにセヴィニアは言葉を漏らす。 「服毒し、死にかけたお前が皇都を去るのは当然の流れだと思えた。止める気もなかったが、再び戻ってくる神経が理解できん」 「……ああ、まぁ、たしかに……そうだよな……」 苦しいことも痛いこともチャトラは嫌いだ。縛られ、刺されて、明らかにおかしかった人間をただじっと見ていることしかできなかった、自分のみじめさは忘れない。 あの時と同じように皇帝が変貌していってしまったらやはり怖いし、本音を言えば逃げたい。 「そんなに陛下の気を惹きたいのなら」 「え?」 「そんなに陛下の気を惹きたいのならば、紅の一つでも挿せ。しなを作り、後宮に居を構え、媚を売ると良い」 「アンタ、オレが口紅塗ってヒラヒラした服着て色っぽいポーズとって、それ似合うと本気で思ってんの」 「おぞましいな」 「じゃあ言うなよクソ」 からかわれたわけではなく割と本気でぞっとしたらしい。頭を振ったセヴィニアにむっとして、チャトラは舌打ちをする。 舌打ちしたまま、不意に足を止めたセヴィニアの背に、鼻からぶつかりそうになって慌ててつんのめった。 「……っきなり止まんなよ!」 「喋るな。動くな。いっさいの音を立てるな。できることなら呼吸もするな」 腹を立てかけたチャトラへ一切の反論を許さない確固とした口調で、セヴィニアが指を突き立てる。 先を制されて一瞬ひるんだチャトラをそのまま目でさらに押さえて、そうして空気を揺らすことすら怖れるように、セヴィニアは細く扉を開けた。 「なん」 なんなんだよ。 言いかけたチャトラはひょいと開かれた扉の隙間から中を覗き込み、そのまま声を失う。 細く開けられた扉の隙間から見えた、部屋の内部。 明り取りのために炎を絞られて設えられた燭台の僅かな明かりに照らされて、エスタッド皇の姿が垣間見えた。 やわらかな羽枕に埋もれて目を閉じ、死んだように動かない。けれど息を殺してじっと見ているチャトラは、男の胸板が静かに上下していることを見止めた。 (アンタ、いた) 細く開けられた扉は、開けたセヴィニアの手によって同じように手早く閉じられて、それ以上中を伺うことはできなかったけれど、 「二日前に容体が落ち着かれた」 「……うん」 「まだしばらく部屋にお戻りにはなられないとは思うが、このまま安定されるだろうと言うのが医師団の意見だ」 「……うん」 「十分だろう。見たのならとっとと部屋へ戻れ。余計な場所へ顔を出すな」 「……うん。ありがと」 熱くなった瞼をチャトラはこする。 仕事を増やすな。 決して親切心から皇帝を見せたわけではないだろう。釘を刺して去っていくセヴィニア相手に、出来れば何か気の利いた憎まれ口の一つでも叩ければ上等だったのだけれど、それ以上言葉は出なかった。 言われた通り真っ直ぐ部屋へ戻る。 戻った皇帝の居室に、いつも男が付けている練り香水のにおいがした。嗅いでチャトラはなんだか胸がいっぱいになった。 (20111006) --------------------------------------
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エタイ初登録:第338回 魚のことわざ (2007/10/9 〜 2007/10/16) エタイ初登録時スコア:409pt エタイ腕試し最高記録:505pt (第355回 バレンタインデイ)
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<キュンキュンメガネ~ぶっちゃけ期待していたのは俺だけじゃないはず~> P 「何 故 だ !?」 シン「……いきなり不機嫌なのはどういうことですか」 P 「君はこれを見て何も思わないのかい!?」 シン「これって……この前出したアクセサリーじゃないですか」 P 「そう! これを付けるだけでとかちなオコサマ組もほんのり知性を感じさせる風貌に! 真が付ければ美少年的色気がさらに倍プッシュで女性ファン入れ食いのウハウハなこの『キュ ンキュンメガネ』! 11個セットで200ゲイ……マイクロソフトポイントと大変お求め安くなって おります」 シン「……あからさまな突っ込み待ちにはもう何も言いませんけど、とりあえず真が今日の仕事 ドタキャンした理由はわかりました」 P 「そんなことはどうでもいい!」 シン「いやどうでもよくないだろ!?」 P 「君はなんで今日社長が休んだのか知ってるかい?」 シン「え? いや知りませんけど……っていうか朝と夜くらいしか会わないんで休んでること事態 今知りましたけど」 P 「ショックを受けて倒れたんだよ」 シン「ショックって……大丈夫なんですか? 原因は?」 P 「なんとか一命は取り留めたよ。原因は、話せば長くなるんだが……」 シン「…………?」 P 「律子がメガネ外してくれなかったんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」 シン「一言だろそれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! っていうかどうでもいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 ――ガチャリ 律子「おはようございまーす!」 P 「どうでもいい!? 君だってパジャマの奇跡は知ってるだろ!? おさげが解禁されたら どう考えても次はメガネ外ししかないじゃないか!」 シン「ンなのは勝手にアンタらが期待してただけのことだろ!?」 律子「あのー……?」 P 「だって律子だぞ!? それにメガネだろ!? いくらなんでもメガネの二乗はありえないって 誰だって考えるさ! だというのに! だというのになんで頭にかけてダブルメガネなんだ!?」 シン「……サングラスのときだってそのパターンだったじゃないですか」 P 「夢見たっていいじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ――ザァッ……! シン「あ、灰になった」 律子「……ホント、どうしようもないわねこのプロデューサー殿は」 シン「あ、律子さん来てたんですか」 律子「ちょっと前からね……まったく、メガネ外したらマニアック受けしないってあれだけ説明しても分から ないなんて」 シン「でも一度くらい外してもいいんじゃないですか? 俺は結構いいと思いますけど」 律子「う……面と向かって言われるとむずかゆくなるわね。でもさすがにここまでずっと付けてると抵抗が あるのよねぇ。それに、私だって素顔見せる人は選びたいし」 シン「ふ~ん、そういうものなんですか」 律子「…………」 シン「? 何ですか?」 律子「はぁ、なんでもない。ほらほら! 仕事あるんでしょ? キリキリ働く!」(バンッ!) シン「痛っ!……わかりましたよ。それじゃ雪歩迎えに行ってきます」 律子「うむ、いってらっしゃーい!」 シン(……なんなんだこのテンションは) 律子「はぁ、なんであそこでスッとメガネを外せないかなぁ。まだまだ私も若いってことかしらねぇ……」 目次へ
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明日へ 「メイ、早く…っ!乗り遅れるぞ。」 [ギルバートはメイの手をしっかり握り、砂浜に向かって走り出した。私はギルに遅れをとらないように足を動かした。私の走る遅さに悪戯っぽく笑みを浮かべると、ギルは無言で私を背負った。] ギル、いいよ。走れるよ。 [メイはギルバートの背の上で必死にもがいた。] 「暴れるなよな。転ばないように背負ってるのに、落ちたら洒落にならない。」 [ギルバートは一瞬歩を止めると、メイの頬にそっと口づけした。私は恥ずかしさの余り、ギルバートの背の上に居る事を忘れてた。ギルバートは優しく微笑むと、再び走り出した。私は彼に寄り掛かりながら、いつもより高い視点で目に入ってくる景色を眺めていた。鮮やかな緑色の葉をつけ、空に向かって生える木々は、柔らかな風を感じていた。] この島ともお別れなんだね…。 [メイはそっと呟く――物寂しげな表情で。私の表情を見ずとも、声の調子から心を感じとったギルバートは、少し息を切らせながら口を開いた。] 「そうだな…。でも、俺は淋しくないぜ。メイと一緒だからな。」 [深い森を抜け綺麗な砂が広がる地に辿り着くと、ギルバートは歩を緩めてメイを下ろした。そして私を真っ直ぐみつめながら言葉を続けた。] 「メイ、俺はお前を愛してる。俺についてきてくれるか…?」 [メイはギルバートの言葉に黙って頷くと、小さく笑みを浮かべながら彼の頬に口づけをした。彼は私を抱きしめると、今度は私の唇に優しく口づけした。そして、手を差し延べる――] 「行こう、メイ。」 [メイはギルバートの手をしっかり握り、救助船へと向かった。それは今日…陽が昇ってる頃、この島に辿り着いた。何故、この島に辿り着いたのか…それは誰にも分からなかった。救助隊員はギルバートとメイを船内に誘導すると二人に名を聞いた。ギルバートは先に自分の名を伝えると、私の顔を優しくみつめた。私は彼をみつめ返した後、救助隊員にこう伝えた。] 私は、メイ… メイ・バルバロッサ―――と。 [ギルバートはメイを強く抱きしめた。月明かりが二人を照らす。] ねぇ、ギル。 これからどこに行くの…? 「さぁな。どこへ行こうと、俺たちは離れないよ。ずっと…ずっと一緒だ。」 [二人はその後、一言も言葉を交わさなかった。互いの温もりが、何よりの言葉だったから…。 私たちは一面に広がる海を眺めていた。この先にあるもの―――それは楽園だろう。私たちは、明日へ向かって歩き出したのだった。]
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「メディアが伝えた決定的瞬間! 関口宏の報道30時間テレビ」(メディアがつたえたけっていてきしゅんかん せきぐちひろしのほうどうさんじゅうじかんテレビ)は、1993年12月30日から1994年1月1日までTBS・JNN系列で放送された長時間特別テレビ番組である。 総合司会 関口宏 主なコーナー 以下は、放送順に表示。 オープニング テレビ報道40年の歴史を紹介し、関口が出演者を紹介 視聴率/13.9% 報道スクープ決定版 93「すべてはカメラの前で起こった!」 内容 1993年の日本及び世界の動きを捉えた衝撃映像をもとに1年を振り返る この年の政治ドラマは「細川首相の連立政権誕生」を放送。 このコーナー司会者及び出演者 (1)司会者 関口宏、三雲孝江 (2)出演者(ゲスト) 北野たけし、和田アキ子他 視聴率/18.9% スクープを飾ったカメラマンたち 内容 TBS及JNN系列局記者、カメラマンのスクープの歴史を回顧 このコーナー司会者及び出演者 (1)司会者 関口宏、三雲孝江 (2)出演者(ゲスト) 石田純一、はらたいら、中尾ミエ 視聴率/18.5% スポーツメディアスペシャル第一部 内容 スポーツの名場面、衝撃映像を一挙公開 (1)司会者 久和ひとみ、栗山英樹 (2)出演者(ゲスト) 峰竜太、ラサール石井、松下由紀他 視聴率/13.1% 全国高校ラグビー大会2回戦ハイライト 視聴率/3.5% スポーツメディアスペシャル第二部 内容 長嶋茂雄列伝、オリンピック開会式の歴史、メダリスト秘話等 (1)司会者 久和ひとみ、栗山英樹 (2)出演者(ゲスト) 峰竜太、ラサール石井、松下由紀他 視聴率/2.6% 完全保存版!フォークロックで綴る青春 蔵出し 映像 内容 青春時代の名曲をプレーバック、歌にたくした思いと、世相の移り変わりを探る。 コーナーの最後に財津が「青春の影」を熱唱 (1)司会者 有村かおり (2)出演者(ゲスト) 財津和夫、林家こぶ平、藤田朋子他 視聴率/1.4%(27 45〜29 00)2.2%(5 00〜5 45) 森田正光のお天気はじめて物語 天気予報の歴史を再現映像を交えながら森田が紹介。 TBSテレビで制作・放送した天気予報番組「お天気ママさん」「8時の空」「空飛ぶお天気スタジオ」などの秘蔵映像を紹介。 (1)司会者 森田正光、阿川佐和子 (2)出演者(ゲスト) 田中星児、あかはゆき、宇江佐りえ他 視聴率/2.0% メディア最前線「ワイドショーの全貌」 内容:ワイドショーを報道の目線で分析する。 宮沢りえ破局と皇太子妃内定が続いた日の、ワイドショーの舞台裏 視聴率/11.0% 列島縦断中継 全国お金物語 内容 日本のお金 をテーマに、JNN系列局が、全国各地から中継。 (1)司会者 関口宏 (2)出演者(ゲスト) 渡辺正行、早坂好恵他 歴史・瞬間を伝えた実況リポート 内容 TBS及JNN系列局記者、アナウンサーの実況リポートを回顧 テレビ自民党戦国史 内容 自民党政権の歴史を「田中角栄政権」、「大平・福田赳夫の確執」、「中曽根康弘政権」、「戦後50年体制の崩壊」の4部構成で検証した。 秘蔵VTRで語る レコード大賞34年の証言 内容 日本レコード大賞の歴史をたどる。 第35回 輝く!日本レコード大賞 皇太子妃誕生物語・美智子さま愛と悲しみの34年 内容 皇室の1年、皇后美智子、皇太子妃雅子、秋篠宮妃紀子の1年を振り返る。 また美智子の結婚から今日までを振り返ったドキュメントも放送した。 (1)司会者 石坂浩二 (2)出演者(ゲスト) 若尾文子、竹下景子他 グランドフィナーレ 1993年の大晦日風景および、中継をまじえて、1993年を振り返った。 30時間耐久企画 ほとんど東京からのVTRで振り返る構成だったので、39時間テレビのように全国規模の企画はなかった。 主なエピソード及びハプニング 制作スタッフは、前年の「39時間テレビ」の反省を踏まえ、この番組を放送するにあたって、視聴率の面で以下の目標を掲げていた。 12/30のプライムタイムは15%以上。 大晦日の朝の時間帯では、日本テレビ「ズームイン!!朝」の視聴率を上回る。 大晦日「紅白」の裏は2桁(10%以上)を獲得する。 30時間平均の視聴率は2桁をキープすること。 結果、3項目目の「紅白の裏は2桁」は達成できなかったが、大晦日午後の「テレビ自民党戦国史」が15.8%という高い視聴率を記録した他、大晦日の朝から夜(レコード大賞)まで、常時10%越えを記録し、30時間(正式放送時間は29時間30分)の平均視聴率は10.6%と、前年の39時間テレビの平均視聴率よりも3%以上上昇した。 関連項目 日本の長時間特別番組一覧