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「はぁ…はあ…、くっ…!」 俺は走っていた 息を切らしていた …… ああ…やっぱみんな揃ってやがる… …… …疲れた 「キョン…遅い!!罰金ッ!!」 高々に罰金宣告を放つ団長様。 「…俺がいつも最下位っていうロジックは変わらないわけだな…、」 「遅れてくるあんたが悪いんでしょ!?」 「まあまあ涼宮さん。彼も疲れてるようですし、このへんにしておきましょう。」 「そ、そうですよぉ。キョン君息まで切らしてるみたいですし…。」 古泉と朝比奈さんが仲介に入ってくれる。 「ふん、頑張ってきたことを認めたって、あんたがビリなことには変わりないんだからね!」 「…そんなことわかってるぜ。別に事実を否定しようとは思わん。だから、早く中へと入らして休ませろ…。」 そんなこんなで、俺たちは喫茶店へと入る。 椅子へと座る。 …… ふう… やっと一息つけたぜ。 「やはり、昨日の疲れはまだとれませんか?」 口を開く古泉。ハルヒはというと、長門や朝比奈さんと一緒にメニューを眺めている。 「当たり前だろう…そういうお前こそどうなんだ?内心はかなりきつかったりするんじゃないのか?」 「…確かに、きつくないと言ってしまえばウソになります。ですが、その疲労もあなたと比べれば 大したことありませんよ。あそこに残り、最後まで涼宮さんと一緒に戦い続けた…あなたと比べればね。」 「さ、あたしたちのは決まったわよ!男性陣もとっとと決めちゃいなさい!」 そう言ってメニュー表を渡すハルヒ。 「何に決めたんだ?あんま高価なもんは勘弁してくれよ、払うのは俺なんだからな。」 罰金とは即ち、全員分の食事をおごること…SOS団内ではそういうことになっている。 もっとも、それを毎回支払うのは俺なんだが…。 「あのね、あたしだってそこまで鬼じゃないわ。せめてもの慈悲として、一応1000円は 超えないようにしているもの。あたしが頼むのはね、そこに載ってる…これよこれ!」 「…このチョコレートパフェ、値段が800円なんだが…」 「つべこべ言わない!そんくらい払いなさい!そもそも、遅れてくるあんたが悪いんだから!」 何が、あたしは鬼じゃない…だよ…。それどころか、棍棒を装備した鬼といえる。 「…キョン君、財布が苦しいようでしたら、いつでも相談してきてください。 機関でそのへんはいくらでも工面できますから…。」 ハルヒに聞こえないよう小さく耳打ちする古泉…って、マジか!?それは非常に助かる… 「いつもいつも払ってもらってゴメンねキョン君…なるべく私安いのを頼むから…!」 そう言って朝比奈さんが指したのは…この店で最も安い120円のオレンジジュースであった。 「私も…朝比奈みくるに同じ。」 「奇遇ですね。僕もそれを頼もうと思ってたところなんですよ。」 長門、古泉が言う。 …つくづく、俺は良き仲間に恵まれたと思う。なんだかんだで3人とも俺に気を使ってくれている。 まったく、どこぞの天上天下女に… 一回みんなの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。 「え、えぇ!?みんなオレンジジュースにするわけ!?」 動揺するハルヒ。 「みたいだな。ちなみに、俺自身もそれを頼もうと思ってる。」 「あんたの注文なんか聞いてないわ!!」 そうですか… 「だってみんなオレンジジュースな中、あたしだけデザートっていうのもバカらしいじゃない!? しかも結構でかいから食べ終わるのに時間かかるし…!!あぁ…もう!!じゃあ、 あたしもオレンジジュースでいいわよ!!良かったわねキョン?みんな安い物選んでくれてさ!」 これは驚いた。なんと、俺たちは意図的ではないにしろ、あの涼宮ハルヒ自らの決断を… 覆してしまった!!歴史的瞬間とはこのことか!こんなの今までなかったことだぜ…? …なるほどなぁ、ようやくハルヒも人の痛みがわかる道徳人間へ進化したってわけだ。 「何ボケっとしてんの!?そうと決まれば、早くみんなの分注文しなさい!」 前言撤回。俺の勘違いだったらしい。 …… 「じゃ、いつものクジ引いてもらうわよ!」 SOS団恒例のクジ引きである。不思議探索にて二手に分かれる際、 その人員采配として、この手法が導入されている。 …… 皆、それぞれハルヒからクジを引く。 「おや、僕のには印はないようです。」 「私にもないです。」 「ん?俺もだな。」 ということは… 「え…!?じゃあ、あたしと有希!?」 「そういうこと。印があったのは私とあなただけ。」 …珍しいこともあるもんだ。まさか、組み合わせが俺・古泉・朝比奈さんとハルヒ・長門に分かれるとは。 「有希と二人っきりなんて、なかなか無い機会よね~今日はよろしくね有希!」 「こちらこそ。」 ジュースを飲み干し、会計を済ませた俺たち。そういうわけで俺たち5人は…不思議探索とやらに励むのであった。 「いつも通り、5時に駅前集合ね!」 そう言って、長門とともに商店街のほうへと歩いていくハルヒ。 「なるほど、涼宮さんたちはあちらに向かわれたようですね。我々はどうしましょうか?」 「そうだな、とりあえず俺は…落ち着いて話ができる場所に行きたいな。 朝比奈さんはどこか行きたいところはありますか?」 「いえ…特にないですよ。お二人の好きなところで結構です♪」 「そうですね…では、図書館にでも行きませんか?あそこでしたら静かに話をするには悪くない上、 暖房も聞いていますし…ちょうどいいのではないかと。さすがに、また喫茶店やファミレス等に入るのも… あなたたちには分が悪いでしょう?」 「いや、俺は別に…それでも構わんが。」 「でも、さっき私たちジュース飲んだばかりですよね。昼食だって家で既にとってますから…、お店に入っても、 特に進んで何かを頼む…というわけではないんですよね?でしたら、私も図書館がいいと思います。 話してばかりで何も頼まないようでしたら、お店の人に迷惑がかかるかもしれませんし…。」 …確かにその通りだ。朝比奈さんの指摘もなかなか鋭い。 「決まりですね。では、図書館へ向かうとしましょう。」 俺たちは歩き出した。 「それにしたってなぁ…ハルヒのヤツも、今日くらいは集合かけんでよかったのにな… いくら今日が日曜で不思議探索の日だからって…。ついさっき、12時間くらい前か? 俺たち…この世界の危機に立ち会ってたんだぜ!?」 「仕方ないですよ。涼宮さんは…神に纏わる一切のことを忘れてしまったのですから。 昨夜の一連の記憶がないんです…二日前から今日にかけての日々は涼宮さんの中で 【いつも通りの日常】として補完されているはず、つまり【無かった】ことにされているんです。 であれば、日曜恒例の不思議探索を、彼女が見逃すはずはありません。」 「…まあ、それもそうだよな…あいつ、覚えてないんだよな…。」 …… 「それにしたって、今朝お前に…家まで車で送ってもらったことに関しては、本当に感謝してるぜ。 脱力しきって動く気すらなかったからな…とても家まで自力じゃ帰れなかった。 それと…朝比奈さんもいろいろとありがとうございました。」 「感謝なんてとんでもない。当然のことをしたまでです。」 「そうですよ…私たちなんか、キョン君と涼宮さんが闘ってる間、何もできなかったんですから… むしろ、今か今かと二人を助ける時を待ってたくらいなんですから!」 「古泉…。朝比奈さん…。」 …古泉・朝比奈さん、そして長門の三人にしてみれば、これほど歯痒い思いもなかったかもしれない。 できることなら、神を消し去るそのときまで…俺やハルヒと一緒に闘い続けたかったはずだ。 「…それにしても、三人ともよく俺とハルヒが倒れてる場所がわかったな。」 「前例がありましたのでね、推測は容易かったです。」 「前例?」 「以前、あなたが涼宮さんと二人で閉鎖空間を彷徨われたことがありましたよね。 あそこから帰ってきたとき…気付けば、あなたはどこにいましたか?」 「どこにって…自分の部屋のベッドだな。お前にも前にそう話したはずだぜ。」 「そうですね。で、そのあなたの部屋とは…即ち、涼宮さんによって 閉鎖空間に呼ばれた際、あなたが現実世界にて最後にいた場所というわけです。」 「まあ…そういうことになるな。ベッドに入りこんで眠った直後、俺は閉鎖空間にいたわけだからな。」 「その理屈を今回の事例にも当てはめた…ただそれだけのことです。」 「…なんとなくわかったぜ。」 「今回涼宮さんが閉鎖空間を形成するに至った契機となったのは…長門さんが隣家を爆破した、 あの瞬間です。とは言っても、あくまでそれはキッカケにすぎません。決定打となったのは… 朝比奈さんが涼宮さんをかばい、敵からの攻撃を被弾した…あのときでしょうね。」 「わ…私ですか…?」 …血まみれになった朝比奈さんを思い出す。 …… 確かに、精神的ストレスとしては十分なものだったかもしれない。 「その時点での涼宮さん、及びあなたの立ち位置はどこでしたか? 涼宮さんの家の前でしたよね。それさえわかれば、後は何も言うことはないでしょう。」 「俺たちが現れる場所も、つまりはハルヒの家の前だと。」 「そういうことです。」 「…なるほど、簡単な理屈だな。それにしても朝比奈さん、昨日は無事帰れましたか?」 「それはもちろん!森さんがちゃんと私たちを送ってくれましたから!それにしても… 彼女の見事なハンドル捌きにはあこがれちゃいます!私もあんなカッコイイ女性になりたいです…。」 …新川さんの運転もやけに上手かったな。その証拠に、 ハルヒ宅から俺の家に着くまでの時間も…随分短かった気がする。…機関はツワモノ揃いだな。 …… ------------------------------------------------------------------------------ 闇だった 意識を失った俺を待っていたのは …闇だった …… 俺はどうなるんだろうか?このまま永遠に目を覚まさないのだろうか? …そんなことがあってたまるか…!俺は…生きてハルヒに会わなきゃいけないんだ…! …… 誰か…助けてくれ…っ! …… …? 何か声がする… 誰かが俺を呼んでいる …… 古泉…? 長門…? 朝比奈さん…? ……みんな…? 「ッ!!」 …… 「こ…ここは…?」 「!?目を覚ましたんですね!!」 「キョン君…!!無事で…何よりです…!」 「…本当に良かった…。」 …… 仲間たちの姿が…そこにはあった。 「俺は一体…」 「本当によくやってくれましたよあなたは…涼宮さんと一緒にね。」 「涼宮…。」 …… 「そうだ…ハルヒは!?」 すぐに立ち上がり、辺りを見渡す。なんと、横にハルヒが倒れているではないか。 …… ハルヒ…また会えたな…っ! 「おいハルヒ…大丈夫か!?ハル」 言いかけて口を閉じる。 …… 『明日にでもなれば…神だの第四世界だのそういうことを一切知らない、 ちょうど三日前の状態のあたしがいる…と思うわ。』 そうだ…。このハルヒは、昨日今日のこのことを覚えていない。神に纏わる全ての記憶を。 『ええ…残念だけど。でも、あたしはそれでいいと思う… 普通の、一人の少女として生きるのであれば、こんな記憶…邪魔以外の何物でもないもの。』 わかってるさ。そのほうが…ハルヒは幸せに生きられるもんな。 …とはいえ、それはそれで悲しいもんだ。もう、【あのハルヒ】には会えない…ってのは。 「涼宮さん、まだ起きないんですよね…。どうしましょう?」 「キョン君も起きたところですしね。呼びかけてみましょうか?」 「!待ってくれ古泉…!ハルヒは…このままにしておいてやれないだろうか?」 俺は…事ある事情を話した。 …… 「なるほど…言うなれば、涼宮さんは三日前の状態に戻った…というわけですね?」 「…ああ、そうだ。だから」 「言いたいことはわかりました。涼宮さんはこのままにしておきましょう… それもそのはず、前後の記憶がないのであれば 今ここで起こすわけにはいきませんからね。 『どうしてあたしはこんな外で寝ていたの?』、このような質問をされてしまっては 不都合なことこの上ないでしょうから。」 …さすが古泉。お前の理解力には脱帽だぜ。 「となれば…。朝比奈さん、長門さん 頼みがあります。」 「な、何でしょう!?」 「これから二人で涼宮さんを背負って…彼女の部屋、できれば寝床まで 連れて行ってもらえないでしょうか?少々きついとは思いますが…。」 「あ、そっか…目を覚ましたときにベッドの上にでもいれば、 涼宮さん自然な状態で起きられますもんね!私…頑張ります!!」 「了解した。涼宮ハルヒはきっと部屋まで連れて行く。」 「お、おい古泉!?ハルヒくらい俺一人で背負って行ってやるぞ!? 何も長門と朝比奈さんに頼まなくても…しかも、長門は未だ能力が使えないだけあって 体は生身の人間なんだ。いくら二人がかりとはいえ…それなりの負担にはなっちまうぞ!」 「だ、大丈夫ですよキョン君!すぐ着く距離ですから!」 …? …… そういえば 俺は…ここがどこかをよく把握してなかった。起きたばかりで、いささか余裕がなかったせいか? 隣には見慣れた家がある。いや、見慣れたとかそういう次元の問題ではない…か。 そりゃそうだ。なぜなら、それはさっきまで俺たちが一緒にいた家なんだからな。 …つまり、俺たち二人はハルヒの家の前で倒れていた…というわけだ。 「いや…、それでもだな…。」 「今は涼宮ハルヒのことは私たちに任せて、あなたは休息をとるべき。あなたは今、心身ともに衰弱している。」 「何言ってやがる長門?俺はこの通り…」 …どうしたというんだ?足に力が入らない…?気のせいか、体もふらふらする。 「キョン君…私からもお願いします、どうか今は休んでください! 自分では気付いてないのかもしれないけど…すっごく疲れきった顔してるんですから!」 何…!?今の俺の顔はそんなに酷いというのか。 「彼女たちもそう言ってくれてるんです。ここは素直に従ってくれませんか?」 「あ、ああ…わかった。じゃあ、ハルヒをよろしく頼みます…朝比奈さん、長門。」 「はいっ!任せてください!」 「では朝比奈さん、長門さん…涼宮さんを運び終えたら、しばらくの間、彼女の家で 待機してていただけませんか?こんな夜遅くに女性が一人外を出歩くのは…危険ですからね。 長門さんも今は普通の人間なわけですし。というわけで、これから森さんに電話を入れます。 彼女の車がここに来たら、それに乗り…家まで送っていってもらってくださいね。」 「古泉君…ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えます!」 「それと、すでに新川さんには電話を入れてあります。彼にはキョン君を送っていってもらいましょう。」 「古泉…すまんな。」 「いえいえ、こんなときのために機関の面々はいるようなものですから。」 「じゃあ、長門さんはこっちをお願いします!」 「了解した。」 ハルヒの肩を担ぎ、彼女の家へと入ってゆく二人。 「おや、もう来たみたいですね。」 ふと、道の横に黒塗りの車が停まっているのが見える。 「…いつ呼んだんだ?」 「3分前くらいでしょうか。あなたが目を覚ます直前くらいですね。」 …相変わらず仕事が速い新川さんである。 「さて、森さんにも電話を入れました…じきに彼女もココに来るでしょう。では、車に乗るとしましょうか。」 新川さんの車に同乗する俺と古泉。 「今日は本当にお疲れ様でした。帰ってゆっくりとお休みください。」 「…どうもです。新川さんも、夜遅くお勤めご苦労様です。」 「ははは、あなたの偉業と比べれば、私の働きなど足元にも及びませんよ。」 フロント席から俺に話しかける新川さん。 …… 「古泉…大丈夫か?そういうお前も随分疲れてるように見えるが…。」 「おや、そう見えますか?だとしても、弱音を吐くわけにはいきませんね。 これから僕は一連の事後処理に追われるわけですから。」 「これからって…まさか今からか??」 「ええ、そうです。」 「……」 時計を見る。今は午前の2時である…。 「新川さんの車で本部に帰ったら、ただちに仕事のスタートです。神は一体どうなったのか、 涼宮さんの能力の有無は…、調べるべきことは山ほどありますよ。」 …確かに、それは気になる。何よりも、神がどうなったかということが。 「…僕個人の勝手な推測で言わせてもらうと、神は消滅したのではないか?そう考えてます。現に今、 この世界に何も異変が起こっていない…それがその証拠かと。仮に時間を置いて世界を滅ぼすつもりで あったとしたら、地震や寒冷化などといった何らかの前兆が観測されてしかるべきはずですからね。」 「…そう信じたいものだな。」 「場所は、ここでよろしいですかな?」 気付けば俺の家の前まで来ていた。 「新川さん…ありがとうございました。そして古泉…大変とは思うが、どうかほどほどにな。」 「はい、心得ておきます。では、お休みなさい。」 「おう、またな。」 …さて、家に入るとするかな。…合いカギもってて助かった。 …… 部屋へと戻った俺は…ベッドに倒れ込んだ。…もはや何も考える気がしない。 気付くと俺は寝ていた。 …? 携帯が鳴っている。はて、目覚ましをセットした覚えはないのだが…。 …ああ、なるほど。電話か。窓からは日が射している…起きるには十分な時間帯、というわけか。 とはいえ、昨日あんなことがあったばかりだ…正直言うと、まだ寝ときたい。 …電話? …… まさか…ハルヒに何か!? 「もしもし、俺だ!」 「こぉ…んの…!!バカキョンッ!!今どこで何やってんのよッ!!?」 「おわ!?」 …驚くのも無理ないだろう…?まさかの本人ですか。 「は、ハルヒ…?何の用だ??」 「はぁ!?まさか忘れたとは言わせないわよ!?今日は不思議探索の日でしょうが!!」 「…今何と言った?不思議探索だと!?なぜ今日するんだ??」 「あんたがそこまでバカだったとはね…今日は日曜でしょう!?」 …確かに今日は日曜日だ。なるほど、いつもこの曜日、 俺たちSOS団は町へと出かけ、不思議探索なるものをしている。…だが 「昨日あんなことがあったばかりだろう?それでも今日するのか??」 「あんなことって何よ??いい加減夢の世界から覚めたらどう!?」 …しまった。そういや、ハルヒはこの三日間のことは…覚えてないんだっけか?? 「とにかく!!今すぐ駅前に来ること!!いいわね!?」 「…ちょっと待ってくれ。今すぐだと!?いくらなんでも急すぎやしないか??」 「何言ってんのよ!?今日の3時に駅前に集合ってメールしたじゃない!!」 「そ、そうだったのか??」 「まさかあんた、今起きたとかいうんじゃないでしょうね…?失笑通り越して笑えないわよ…。」 「わかったわかった!!今すぐ行くから!!じゃあな!!」 電話を切る俺。 …マジだ。メールが来てやがる。って、今3時かよ!?こんなに寝てたのか俺!? …… 幸いだったのは、俺が着ているこの服が外出着だったってことか。 もちろん、いつもなら寝間着なんだがな…昨日が昨日なだけにそのまま寝ちまった。 とりあえず、これなら財布・カバン・自転車のカギを身につけ、上着を羽織りゃすぐにでも直行できる。 身支度を終え、部屋を飛び出す俺 「あ、キョン君!やっと起きたんだね!」 廊下にて、妹に見つかる。 「私がどれだけ叫んでも、キョン君ぐっすりだったんだよ? でも今日は休日だから!さすがにドシンドシンするのは勘弁してあげたの!」 ドシンドシンとは…寝ている俺めがけ、トランポリンのごとくヒップドロップをかます 妹特有非人道的残虐アクションのことである。もっとも、妹にその気はないらしいが… って、俺は妹の叫び声でも起きなかったのか。どんだけ熟睡してたんだ? 「ちょっと疲れててな…起きるのがすっかり遅くなっちまった。とりあえず、俺は今から出かけてくるぞ。」 「ええー?今からお出かけ?あ、わかった!SOS団の人たちと何かするんだね?」 「…お見通しってわけか。ああ、そうだぜ。」 「行ってらっしゃ~い。あ、でもキョン君今日まだ何も食べてないじゃない?大丈夫~?」 しまった。そういや今日…俺はまだ何も食べていない。あれ?デジャヴが? …あー、昨日もそうだったか。そのせいで俺たちは…あの後マックへと行ったわけだ。 だが、今回はそうもいくまい。なぜなら、不思議探索をやるこの日に限って…しかも昼3時までに 昼食をとっていないなどというのは、ハルヒ的に考えられないからだ…! まあ、別にいいか。食べてる時間などないし…。それに、昼飯なら探索時にどこかで適当なもん買って 食えばいいだけだろう…。外に出た俺は自転車に跨ると、すぐさま駅へと向かった。…全速力でな。 …… 駅前の駐輪場に自転車を置いた俺は、すぐさまハルヒたちのもとへと走るのであった。 ------------------------------------------------------------------------------ …ちょっと回想してみたが。ホント、昨日今日と忙しい日々だった…。 …… おお、ちょうどいいところに店が。 「ちょっとコンビニ寄ってもいいか?」 「いいですよ。何か買うんですか?」 「ちょっと飯を…な。今日まだ何も食べてねえんだよ。」 「え、そうだったの!?それなら私、あんなこと言わなかったのに…。」 あんなこと…?ああ、あれか。 『でも、さっき私たちジュース飲んだばかりですよね。昼食だって家で既にとってますから…、お店に入っても、 特に進んで何かを頼む…というわけではないんですよね?でしたら、私も図書館がいいと思います。』 「いえいえ、いいんですよ朝比奈さん。古泉や朝比奈さんが何も頼まない横で俺一人だけ 何か食べるというのも…なんとも心苦しいですから。何より、二人が手持ち無沙汰でしょうしね。」 「別に私…そんなこと気にしませんよ?」 「ありがとうございます。でも、俺は飲食店に入ってまで大それた食事をとるつもりはないんですよ。 だから、軽い食事でOKなんです。」 「な、ならいいんですけど…。」 「では、我々はキョン君が食事をとり終わるまで暇を潰しておくとしましょう。 朝比奈さんは…何かコンビニで買うものはあったりしますか?」 「いえ…特にないですね。」 「なら、雑誌でも見ていきませんか?女性誌やファッション誌、漫画など… 未来から来た朝比奈さんには、この時代の雑誌はなかなか興味深いものと思われますよ。」 「!それもそうですね!面白そうです…!」 「というわけで…私たちは立ち読みでもしときますので、あなたはどうかごゆるりと。」 「すまんな古泉。」 とはいえ…あまりにマイペースすぎても2人に申し訳ないので、一応それなりのスピードで食させてもらうとする。 …… おにぎりと肉まんを買い、外に出た俺。 さて、食べるか…。 「ん?まさかこんなとこであんたと会うとは。」 「こんにちは。あ、それ肉まんですか?私はアンまんのほうが好きですね!」 …… いかん、うっかり手にしていたおにぎり&肉まんを落としそうになった。 「…どうしてお前らがここにいる…!?」 藤原と橘が、そこにいた。 「どうしてって…単にコンビニに飯を買いに来たってだけだ。」 「私も同じく!」 『単にコンビニに飯を買いに来たってだけだ。』 …こう言われては、俺もどうにも言い返せないではないか… なぜなら、コンビニに飯を買いに来ることはごく自然なことだからだ。当たり前だが。 「そうかよ…ならいいんだがな。それにしたって、俺は忘れたわけじゃねえぞ! よくも…朝比奈さんを血まみれにしてくれたな!?」 「ああ、あれか。あのことで僕たちに文句言われても困るんだがな。やったのは九曜だし。」 「もっとも、その九曜さんは今ここにはいませんけどね。」 「そういう問題じゃねえだろ!?九曜とか何とか関係ねえ、連帯責任だ!」 「うるさいやつだな…第一、九曜にそうさせたのはどこのどいつだ?」 「あれって言わば正当防衛みたいなものですからね。私たちが非難される所以はどこにも ありませんよ?誰かさんが家を爆破したりしなきゃ、こんなことにはならなかったんですから。」 …確かに、もとはと言えば、偽朝比奈さんに唆された俺が藤原一味を敵だと思い込んだことが 全ての発端か…そのせいで、長門や古泉は連中に対して先制攻撃に打って出ちまいやがった…。 「ま、どうせ異世界から来た朝比奈みくるにでも騙されてたってとこなんだろ?」 「……」 言い返せない。 「あらら、図星みたいですね。せっかく藤原君があなたに『朝比奈みくるには気を付けろ。』 って忠告したのにもかかわらずね。人の話はちゃんと聞かないとダメですよ?」 「?何のことだ?」 「え?藤原君が言ったの覚えてないんですか??」 …? 「それなんだがな、橘。実はそんときの記憶、こいつから消した。」 「ええーっ!?どうしてそんなことしちゃったんですか??」 「僕や九曜が暗躍してることを知られたらいろいろと面倒だろ?そう思って 消したんだよ。それにこいつ自身、結局僕の忠告に従わなかったしな。」 「そのときは従わなくても、途中で考えが変わったりしたかもしれないじゃないですか! 藤原君のせいで…キョン君が私たちを敵だと思い込んだようなものですよ…!? 結果として、私たちは朝比奈みくるを討てなかった!どうしてくれるんですか!?」 「おいおい落ちつけよ…いずれにしろ、目の前にいるこいつの働きのおかげで 世界は救われたんだから…結果オーライ。それでいいじゃないか。」 「そういう問題じゃないでしょ!?いつまでもそんなルーズな性格だと またいつか、同じようなミスをしちゃいますよ!?」 「わかったって…わかったから。すまんかった橘…」 「わかればいいんです。」 さっきからこの二人は… 一体何の話をしてるんだ??…俺にはわからない。 ただ、【怒る橘】と【それに頭を下げる藤原】との対比に驚愕したのは言うまでもない。 「そういうわけで、それじゃキョン君も仕方がないですよね。 今回は双方に落ち度があったと…そういうことにしておきます。」 どうやら、俺にも落ち度とやらがあったらしい。まあ…今となってはどうでもいいが。 「何はともあれ、昨日今日は本当にお疲れ様でした!キョン君。ほら、藤原君も言う!」 「…何で僕がこいつなんかに?今お前が言ったんだから、別にいいだろう。」 「よくないです!こんなときに意地張っちゃってどうするんですか!?だから藤原君は…」 「わかったわかった…言えばいいんだろ?…お疲れ様でした。」 「あ、ああ…。」 「さて、じゃあ私たちは買い物に行くとしましょうか。じゃあねキョン君!」 颯爽とコンビニの中へと入って行く橘と藤原。…まったく、嵐のような二人だったな。 何がどうだったのか…結局よくわからなかった。 …って、これはまずいんじゃないのか??もし…中で立ち読みしてる古泉と朝比奈さんが あの二人と鉢合わせでもしてしまえば…!!俺と違って事情を知らないだけに… 非常にややこしいことになるのは間違いない!!最悪の場合…喧嘩沙汰になるぞ!? …… 用事を済ませたのか、中から出てくる二人。 「それにしても、最近の藤原君はコンビニ食ばかりですよね…?気持ちはわかりますよ。作る手間が省ける分、 楽ですもんね。でも、それも程々にしておいたほうがいいかなーと。栄養が偏りますし。」 「何でお前なんかに心配されなきゃならない!?関係ないだろ!?」 「関係なくないです。また何か共同作業があったとき、体調でも崩されたらたまったもんじゃありませんから。」 「そういうお前はいいのか??自分だってコンビニで弁当買ってたじゃないか…。」 「私は た ま に だからいいんです。それに、私がコンビニを利用するときって たいていは雑誌やライブチケットの予約ですからね。今だってほら…予約してきました!」 「…EXILEのライブ…か。この時代の人間じゃない自分にはよくわからん…。」 「今すっごく人気のグループなんですよ!?一回藤原君も未来へ帰る前に聴いておくべきです。」 「はぁ…そうかよ。」 …… 「あれ?キョン君まだそこにいたんですか?」 「…何やってんだあんた?僕たちが中へ入ってから出て来るまでの間、 おにぎりの一つさえも食ってなかったのか?…呆れるな。」 「そうですね…肉まん冷えますよ?じゃあ、私たちはこれで。またねキョン君!」 「ふん、意味不明なやつ。よくあんたのような人間が世界を救えたもんだ。」 「何言ってんですか!?さっさと行きますよ??」 そう言い残し、去って行く藤原と橘。 …… 突っ込みたいことは山ほどあるんだが…今は自重するしかない。とりあえず外から中を眺めていたが… 結局、両者が互いに鉢合わせすることはなかった。運が良かったんだろうな…要因は2つ。 1つは古泉・朝比奈さんが立ち読みに夢中になっていた…ということ。 もう1つは藤原・橘の二人が雑誌コーナーに立ち寄らなかった…ということ。 この2つが掛け合わさり、見事に衝突は回避。めでたしめでたし…というわけだ。 …… いや、全然めでたしじゃない…無駄に時間をロスした分、一刻も早く食事に手をつけねばならない… 「食べ終わったようですね。」 「ああ…おかげ様で、ゆっくりと食べることができたぜ。」 「それはよかったです!私も私で、ゆっくりと雑誌を眺めることができました!」 「何を読んでたんですか?」 「ファッション誌をね。特に、可愛い衣服やアクセサリーなんかは… 見ててほしくなってきちゃいました!この時代の衣料品もなかなか興味深かったです…!」 「気に入ってもらえて嬉しいです。勧めた甲斐があったというものですよ。」 「そういう古泉は何を読んでたんだ?」 「芸能系の雑誌をちょっと。政治の裏金や特定企業・芸能事務所間の癒着及び秘密協定等… 普段なかなかお目にかかれない記事に白熱していた…といったところでしょうか?」 …なるほど。各々の性格を考慮すれば、二人が本に夢中になっていた…というのも頷ける。 「二人とも満足そうで何よりだぜ。」 「そうですね。…では、行くとしましょうか?」 図書館へ向け、再び俺たちは歩き出した。 …… …どうする?朝比奈さんに…あのことを聞いてみるか? 事態が落ち着いた今なら…もしかしたら答えてくれるかもしれん。 「朝比奈さん…ちょっといいですか?」 「?何でしょう?」 「長門から聞いたんですが、昨日朝比奈さんは…時間移動したそうですね?未来へと。」 「!」 「もし差し支えなければそのこと…教えてくれませんか?」 「……」 彼女は答えない。…やはり、何か触れてはいけないことを…俺は聞いてしまったのだろうか? 「あなたが答えないのは禁則事項のせい…というわけではないようですね。」 「…!」 古泉の言葉に…かすかではあるが動揺する朝比奈さん。 「もし禁則事項で話せないのであれば、すぐさまあなたは【禁則事項】という名の言葉を口から 発するはずですよ。未来人からすれば、それは永久不可侵に通じる絶対のルールであるはず。 現代の我々から言わせれば、ちょうど犯罪是非の境界線認識に近いものと言ったところでしょうか。 朝比奈さんのような実直誠実なお方がそれを破るとは考えにくい…だから、尚更言えるんです。 あなたが答えないのは…単に個人的な問題によるもの、とね。」 「……」 …… 操行してる間に、俺たちは図書館へと着いた。…とりあえず、3人で空いてるソファーに座る。 …空気が重い。 あんな質問、するべきじゃなかったのかもしれない…。俺は後悔の念に打ちひしがれていた。 事態が落ち着いた今なら…世界が救われた今なら答えてくれる…!そう安易に妄信していただけに… 「…話します。」 一瞬、空気が浄化されたような気がした。二度と口を利かない、 そんな雰囲気があっただけに…。彼女のこの一言に、俺は救われた。 「確かに、私はあのとき…未来へと帰っていました。それは事実です。」 …… 「…覚えてるかしら?二日前、私たちがファミレスに集まって話したことを。」 「?…はい。」 「私…あのときは本当にびっくりしちゃいました。涼宮さんの誕生が46億年前に遡ること、これまで幾つもの 世界が存在したということ、フォトオンベルトによりこれから世界が滅ぶこと…どれも信じがたい内容ばかりで、 正直長門さんから初めて聞かされたときは耳を疑いました…。そんなときであっても、 あたふたしてる私とは対照的に、古泉君は凄く冷静で…決して取り乱したりはしませんでした。」 「…朝比奈さん、それは違います。とても内心穏やかだったとは…言えませんね。 むしろ、発狂したいくらいでした。世界は近年になって構築された…この近年説が覆された。 僕を含む機関の面々がこれまで妄信してきた価値観が…根底からひっくり返された。 長門さんの話を【事実】として受け止めるには…あまりにハードルが高すぎましたよ。その証拠に、 キョン君は知ってるはずです。僕のあのときの…ファミレスでの説明はお世辞にも良いものとはいえなかった、 ということをね。当然です、僕自身混乱していたのですから。」 「…何を言ってるんだお前は??十分上手く説明してたように…俺には思えるぞ?」 「本当にそう思っていただいているのであれば、嬉しい限りですね。ですが、よく思い出せば わかるはずですよ。僕が…事あるごとに、しょっちゅう長門さんへ助けを求めていたことがね。」 「そりゃ、全体の説明量から言わせれば、長門の方が多かったかもしれんが…。」 「おわかりですか?朝比奈さん。あのときの僕は正常とはほぼかけ離れた状況にあった…ということが。」 「…古泉君の内心がそうだったとしても、それでも古泉君は…外面をちゃんと取り繕ってたじゃないですか! キョン君が今言ってたように私からしても、とても説明に不備があったようには思えませんでした…!」 ?朝比奈さんは…さっきから一体何を言おうとしてるんだ?今話してることが… 未来へと時間移動したこととどういう関係が?…それにしてもこんな会話、俺はどこかで聞いた気が…。 …… ------------------------------------------------------------------------------ 「ねえキョン君…私って本当にみんなの役に立ってるのかな…?」 …今日の朝比奈さんはどうしたんだ?何か気持ちが滅入るようなことでもあったのだろうか。 まさか、未来のほうで何かあったか?? 「そんなことないですよ朝比奈さん。あなたは十分俺たちの役に立ってます… いや、役に立つ立たないの問題じゃない。いて当然なんですよ。」 「……」 「何かあったんですか?俺でよければ話を聞きますが…。」 「…昨日の晩、私は力になれたかしら…?」 昨日の晩とは…俺たちがファミレスにいたときだ。 「世界が危機に瀕してる…そんなとんでもない状況なのに私は昨日あの席で… 長門さんや古泉君に説明を任せっぱなしで、自分自身は何一つ重要なことはできなかった…。」 ・ ・ ・ 「…朝比奈さん。」 「は、はい?」 「あなたには…長門や古泉には無い物があります。俺が二人の難解な説明を聞いて頭を悩ましているとき… 朝比奈さんが投げかけてくれた言葉の数々は、俺の疲れを随分と癒してくれましたよ。もしあなたがいなかったら… 二人の説明を本当に最後まで粘り強く聞けていたかは…、正直自信がありません。ですから、 本当に感謝してます。変に力まずにただ…自然体のままで。それで十分なんですよ。」 「キョン君…。そう言ってくれると嬉しいです…、でも私…」 …… 「いや、なんでもないです!…私を励ましてくれてありがとう。」 ------------------------------------------------------------------------------ …… おそらく彼女は昨日、ハルヒの家で俺に話したことと…全く同じことを言いたいのかもしれない。 「朝比奈さん…まだそんなこと言ってるんですか??昨日も、俺は言ったじゃないですか!? 朝比奈さんがいたからこそ、長門や古泉の説明を最後まで粘って聞くことができたって!」 「そっか…キョン君にはこのこと昨日話したもんね。二度も似たようなこと言っちゃってゴメンね? そんなつもり私もはなかったんだけど…ただ、【未来へと時間移動した】理由を言うには 今の話はとても欠かせないものだったから…。」 「…そうだったんですね。いえ、自分は全然気にしてませんよ。どうか、話を続けてください。」 「…ありがとうキョン君。」 …… 「ここまで遠回しな言い方をしてしまったけど…つまりね、私はみんなの役に立ちたかったの…! 長門さんや古泉君のような…目に見えるような働きを…、私は果たしたかった! いつも私だけ何もしないのは…もう嫌だったから…!」 「……」 「未来へ時間移動…その行動の契機となったのは、ファミレスで…長門さんが言ってましたよね? 涼宮さんが倒れた今回の騒動には…未来人が関与してるんじゃないかってことを…。」 『あの時間帯にて、私は微量ながら通常の自然条件においては発生し得ないほどの異常波数を伴う波動を 観測した。気になるのは、それが赤外線・可視光線・紫外線・X線・γ線等、いずれにも属さない 非地球的電磁波だったこと。これら一連の現象が人為的なものであると仮定するならば、現在の科学技術では 到底成し得ない高度な技術を駆使していることに他ならない。』 『…未来技術を応用しているのだとすれば、犯人が未来人であるという可能性は非常に高いと思われる。』 …確かに長門はそう言っていた。 「だから私は思ったの。もし犯人が…私と同じ未来人であるのなら、私にはその犯人の情報を つかむ義務がある…と。SOS団で唯一時間跳躍ができる人間が私なんです… もしかしたら、みんなが知りえない情報を私なら…未来で手に入れられるかもしれない! そしたら、涼宮さんの役にも立てるかもしれない!そんな強い思いが…私に生まれたの。」 …… 「だから、朝比奈さんはその情報を得るため、未来へと時間移動したんですね…?」 「…はい、その通りです。」 …… 「でも…現実は非情だった。私は…いろんな人に話を聞いた。幾多の幹部の方にも話を伺った。 それでも…私が求める情報を、誰も教えてはくれなかった。まるで…みんな私に何かを 隠してるかのように…ふふっ、こんなふうに考えちゃいけないのにね。私って…ダメだね。」 …いや、朝比奈さんの今の考えは、おそらく当たってる。 なぜなら、犯人の名前そのものが…【朝比奈みくる】その人だったからだ…。 いくら別世界の住人とはいえ、彼女が【朝比奈みくる】なる人物と全くの同じ姿・形・名前をもつ 人間であることは事実…上層部の連中からすれば、これほど躊躇してしまう存在もなかったかもしれない。 ましてや、世界の存亡にかかわる…現代で言う国家最高機密に指定されていてもおかしくない情報を 彼女に話すことなど言語道断 このような認識が幹部たちの間で成立していたとしても、何らおかしくはない。 「でも、私はあきらめなかった。何度も何度も上層部の方とコンタクトを取ろうともしたし、 電話をかけたりもした…そして、ようやく上司からある情報を聞けたの…。」 上司…大人朝比奈さんのことだ。 「その情報っていうのがね…藤原君たちに任せておけば大丈夫、というものだったの…。」 「……」 言葉に詰まる俺。 …… 結果的に、ヤツらが【朝比奈みくる】の暗殺に向けて暗躍していたのは…事実だったからだ。 「最初聞いたときは、私には何のことだか訳がわからなかった…それもそうよね?キョン君たちからすれば、 彼らは敵なんだもの…そんな彼らがいくら世界を救うとはいえ、その過程でキョン君や涼宮さんたちを助ける だなんて…私にはにわかには思えなかった。…結局、私が未来でつかめた情報はこれだけ。だから、 私にはなんとしてもこの情報の真偽を確かめる必要があった…。藤原君がこの世界に来てるということを知って、 ただちにこの時間へと遡行したわ。そして、彼に連絡をとった…」 ……ッ ようやく話が繋がった。 『…朝比奈みくるがここの時間軸に戻ってきた午後1時24分以降、 これまでに6回…ある未来人との電話での接触を確認している。』 『パーソナルネームで言うところの、藤原。』 …この長門の言葉はそういうことだったのか。 「でも…彼は私の質問に対して、まともな返答はしてくれなかった… 一応何度か連絡はとってみたんだけど…結局、私は何も情報を聞きださず仕舞いに終わった…。」 …… もしかしたら、藤原のヤツは朝比奈さんの【声】を警戒したのかもしれない。 標的である【朝比奈みくる】と全くの同一の声…彼女を相手にしなかったのはこのせいか…? 「…私がね、昨日涼宮さんの家で元気がなかったのも…さっきキョン君から時間移動のことについて 聞かれた際に沈んでいたのも…そのせいなんです!だって…そうでしょう…っ? 犯人が未来と関係あるっていうのなら…きっと未来で何かしらの情報がつかめると、そう思ってたのに! 今度こそ…みんなの役に立てると思ってたのに…。結局、時間跳躍した意味もなかった。 藤原君からも何も聞き出せなかった。私には…みんなと会わせる顔がなかったの…。」 彼女が涙声になっているのは言うまでもない。もしかしたら、泣いているのかもしれない。 …… まさか、彼女にこんな事情があったなんて…思いもしなかった。 ハルヒや自分のことで精一杯だった俺には…彼女の苦しみなんて気付きようもなかった。 ------------------------------------------------------------------------------ 「キョ…キョン…!!みくるちゃんが…!!みくるちゃんがあ!!!!」 「しゃべるな!!お前だってケガしてんだろ!!?」 「違う…!!あたしはケガなんてしてない!!…みくるちゃんが…あたしを…あたしをかばって…!!!!」 …… え? じゃあ、ハルヒの服にべったり付いているこの血は何だ? …… 全部…朝比奈さんの血…… …!? 「う…ぅ、ぅぅ……!」 悲痛な様で喘ぐ…彼女の姿がそこにあった 「朝比奈さん!!!!しっかりしてください!!!!…朝比奈さん!!!!」 「ょ…ょかった…すず…涼宮さんがぁぶ、無事で…!」 「朝比奈さん!!?」 「わた…し…やくにた…てたかな…ぁ…ぁ…!」 理解した 彼女は秒単位という時間の中で自らハルヒの盾となった あのとき奴の一番そばにいた…彼女は ------------------------------------------------------------------------------ 尚更、あのときの彼女の心情がわかる。幾度と奔走した挙句、成果を上げられなかった彼女は… あのとき死す覚悟だった。そこまで彼女は追い詰められていた。 そうでもしないと、自分でも納得のいかない段階まで来てたってのか…!!? …っ!! 「朝比奈さん!すみませんでした…!!」 急に立ち上がり、何事かと思えば…彼女に向け、土下座をする古泉。 もちろん、ここは図書館。館内のあらゆる一般人の視線を…ヤツは浴びることになった。 「ど、どうしたんですか古泉君!?何で…何で私に土下座なんか…!?」 「僕は…正直に、あなたに包み隠さず話さなければならないことがあります…!」 「…??」 「僕は…あなたを、一時的ながらも…疑っていたんですよ…。あなたを、犯人だと!」 「っ!」 「この局面においての未来への時間移動、我々の敵であるはずの藤原氏への電話連絡、未来技術応用による 涼宮さんの卒倒等…いくつもの状況証拠により、あなたを… 一時的にでも犯人だと、僕は疑ってしまった! 朝比奈さんに…そんな重い事情があるとも知らずに僕は…ひどいことを考えてしまった!! 最低ですよ本当に…。深く、深くお詫び申し上げます…。」 「……」 …… 「古泉君…顔を…、顔を上げてください…。」 「朝比奈さん…?」 「…確かに、それを聞いたときはショックでした。でも!それを言うなら私にも非があります…! だって…考えてもみれば、世界がどうなるかもわからないこの局面で…みんなに何の相談もせず、 勝手に時間移動をしてしまった。状況的に疑われても仕方ないことを…私はしてしまいました。 だから、責められるべきは迂闊で軽率な行動をしてしまった…私にあります。古泉君は…涼宮さんのことを、 みんなのことを一生懸命考えてた…!だから、一つでもあらゆる不安要素は潰しておきたかった! 仲間想いの優しい副団長さんだと…私はそう思いますよ…?」 「…許して…くれるんですか?」 「許すも何も…当たり前じゃないですか!私のほうこそ…ゴメンね。」 「朝比奈さん…!ありがとうございます…っ! …そうだ、朝比奈さん。」 「な、何でしょう??」 「僕はですね…その点においては、彼を…キョン君のことを尊敬しているのですよ。」 「お…俺…??」 急に自分の名前を出され、驚く俺。 「彼はですね…僕と長門さんが朝比奈さんの…、一連の状況証拠を並べている時に際してまでも 朝比奈さんの無実を訴えて止まなかった。朝比奈さんが無実だと…信じて止まなかった。それどころか、 そんな問題提起をする僕や長門さんに対して逆上しそうになったくらいでした。…それだけ彼は仲間のことを 心底信じていたというわけですね。ここまで純粋で素朴な人間は…なかなかいないでしょう。」 「キョン君が…私のためにそこまで…?!ありがとう…キョン君…。」 「ま、待ってください朝比奈さん!そんなこと言われる所以、自分にはありません… むしろ、謝りたいくらいなんですから…。もっと早く、もっと早く朝比奈さんのそういう事情に気付いていれば… 朝比奈さんがここまで精神的に追い詰められることもなかったかもしれない…。だから 謝ります、朝比奈さん。」 「……」 …… 「どうしてキョン君にしても古泉君にしても…みんなここまで謙虚なんですかね…? もうちょっと自分を持ち上げたっていいのに…。ふふっ、なんかおかしくなってきちゃいました♪」 「確かに…ちょっとおかしな状況かもしれませんね。僕も自然と笑いが…。」 「古泉よ、どうおかしいのか?お前の得意分野、解説でぜひ説明してくれ。」 「いやぁ…さすがに、こればかりは僕にも解説不能です。」 俺たちは笑いに包まれた。…さっきまでの重い雰囲気は、一体どこにいったんだろうか。 …… 良い仲間に恵まれて、本当に自分は幸せだな…。出過ぎたマネかもしれんが、 おそらく他の2人も似たようなことを考えてるのではないかと…。俺は強くそう感じていた。 いつまでも、こんな時間が続けばいいなと思った。 いや…どうも、そういう問題ではないらしい。さっきから周りの視線が…痛い。 どういうことなんだろうな?俺たちは、すっかり忘却してしまっていた…っ! 【ここは図書館だ。】 何でかい声で笑ってんだ…迷惑にも程があるだろう…? そういうわけで、俺たちは図書館を後にしたのさ。
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分裂の某シーン。 『涼宮ハルヒの驚愕』 ハルヒは一気に喋り終え、大きく深呼吸してから、そして奇異な目を俺の隣に向けた。 「それ、誰?」 「ああ、こいつは俺の……」 と、俺が言いかけた途中で、 「セフレ」 佐々木が勝手に回答を出した。 …ちょっとまて、今なんて言った? ハルヒの顔が形容しがたい驚愕めいた憤怒を交えた顔つきになってから 古泉のケータイのベルが鳴り始めたのは言うまでも無い。 ~DEAD END~
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今日もハルヒの声が聞こえる。 「風邪を引くなんて、気合いが足りないのよっ!」 おいおい、その台詞は医者の言う台詞じゃないぞ、ハルヒ。 「その程度の風邪で薬なんか要らないわっ!気合いで寝て治しなさい!」 もう少し、優しく言った方がいいんじゃないか? 「今の段階では、安静にして養生するのが一番です」って感じで。 「まあまあ、ああいう話し方こそ涼宮さんらしくていいんじゃないでしょうか?」 お前はいつまでハルヒの太鼓持ちをするつもりか? 俺が言っているのは「ハルヒらしさ」の問題じゃなくて、「医者らしさ」の問題だぞ? 「ははは、でも、あなたも随分医者らしくない感じですよ?」 確かにな。「キョン先生」はないだろう。院内放送でもそう呼ばれたぞ。いつまでこのあだ名がついて回ることやら。やれやれ。 説明しよう。 高校時代、ハルヒの特訓のおかげで成績を持ちなおすどころか、大飛躍させた俺は、何を考えたのか近くの医大になんか受かってしまった。なぜかハルヒも一緒だがな。 だが、一年先に卒業した、麗しのマイ・スウィートエンジェル・朝比奈さんは何故か看護学校に行っていた。 打ち合わせ不足が原因だろう。なにより、俺の成績が医学部に行けるほど上がるとは、俺自身も思わなかったしな。 朝比奈さんに「ひどいですぅ、、なんで教えてくれなかったんですかぁ?」と涙目で言われたときには、何とも言いようがなかったな。 で、朝比奈さんの方が先に卒業して看護婦として就職したわけだが、就職先が例の機関の病院とはな。古泉が手を回したのか。 俺たちもなにやらかにやらやらかしながら、どうにか医大を卒業し、医者になったわけだが、研修医としてつとめたのが、機関の病院だぜ?そのときのあいつの台詞を思い出すな。 「そちらの方が何かといいのではないですか? 我々にとっては涼宮さんの監視には非常に都合がいいわけですし、なにより、あなた自身が涼宮さんと.....」 これ以上言うな。大体お前の言いそうなことは想像できる。 と言うわけで、冒頭の台詞に戻るわけだ。 ちなみにハルヒも俺も長門も古泉も内科だ。ここまで合わせなくてもいいだろうとは思うがな。 ああ、言っておこう。朝比奈さんはハルヒの診察室付きだ。あのコンビで良く診療が出来るものだ。いや、心配なのは朝比奈さんのことじゃないぞ。ハルヒの方だ。 まあ、どじっこナースな朝比奈さんが今まで医療ミスを起こさずに来れたのも奇跡としか思えないがな。さて、ハルヒ大先生の診察室でも覗いてみるか。 「あ、キョン!丁度いいところに来たわ!」 ハルヒよ、 いいところ とはどういうことだ? 「ねえ、この病院の白衣ってイマイチじゃない!これじゃ、みくるちゃんの魅力も半減よ!?」 そんなこと言ってもしょうがないじゃないか。それが制服ってもんだろう。 「この馬鹿キョン! それだからあなたは医者になっても雑用係のままなのよ! いい?制服やルールって物は、都合が悪くなったら、変えてしまえばいいのよっ!」 で、もう一度聞こう。 いいところ ってなんだ? 「で、みくるちゃんのために新しいナース服を用意したのよ。キョン、よーく見なさいっ! みくるちゃん、入っていいわよ!」 「は、はーい.....」 正直、たまりません。 「ちょっとキョン!何いやらしい目で見てるのよ!」 やれやれ。おまえは見ろと言ってるのか見るなと言ってるのか、どっちなんだ? それより不思議なのはあの寡黙な長門さえも外来を担当していると言うことだ。何故か患者がすぐに良くなると言うのですごく人気だ。 医者としての知識は確かに長門が最優秀だ。しかし、あの宇宙的パワーで情報改変をしているのではないだろうか? ちょっと診察室を覗いてみようか。おや、診察中のようだ。 「胃の調子が悪いのですが...」 「あなたは胃癌。」 おい、長門!いきなり診断をつけるな!普通は胃カメラやらレントゲンやらで見つける物だぞ! 「......大丈夫。生体情報をスキャン。胃に早期の腫瘍を発見した。胃カメラを使わなくても分かる。」 いや、でも、検査をせずにいきなり病名を告げられるのはどうかと思うぞ? 「......そう。」 で、治療はどうするんだ。外科に頼んで手術の手配をしないとな。 「必要ない。腫瘍の情報結合を解除した。もう治っている。」 で、このぽかーんとした顔をしている患者をどうするんだ? 「記憶を修正。胃炎の薬を処方して帰ってもらう。」 やれやれ。宇宙的パワー全開だ。 古泉の野郎はあの0円スマイルでずいぶんと患者に人気がある。まあ、病院に来るのは年寄りばかりだから、婆さんに人気があると言ってもいいだろう。 「そういうあなたこそ優しくて人気があるのですよ?みなさん、慕ってくれているじゃないですか。」 うるさい。顔を近づけるな。そもそも慕ってくれていたって、俺の本名を知ってる患者は1割もいないんじゃないか? ピンポーン「内科のキョン先生、内科のキョン先生、病棟にご連絡ください」 やれやれ。仕方がない、仕事に戻るか。 ---end. 続かない。
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朝倉「キョン君、お久しぶり・・かな?」 キョン(うかつだった・・現実に長門がいるんだ。コイツが存在してたっておかしくはない) 朝倉「せっかく再会できたっていうのに、そんな怖い目で睨まないでほしいな。 ・・・私ね、ずっとキョン君のこと見てたのよ」 キョン「・・・・・」 朝倉「私の役目はね、キョン君。時空改変能力者に積極的に関与して、 できるだけ大きな情報爆発を起こさせることなの。中学のときから あなたのそばにいたのよ?」 キョン「・・・うそだろ?」 朝倉「もう忘れたの?ずっと同じクラスにいたのに。・・まあ忘れたくなるのも当然ね。 あなたをバカにしていた女子グループの中心的存在・・って言ったらわかる?」 キョン「・・!」 名前など思い出したくもないが、たしかにそんなヤツがいたな。巧妙に種をまいて クラスメイトをたきつけてオレをいじめさせていた女子が。目立たないように立ち回って いたようだがバレバレだった。まさか朝倉が化けていたとは思わなかったよ。 オレの精神を不安定にさせて閉鎖空間を増大させようってハラだったんだろうが。 朝倉「でね、高校ではどうやって干渉しようか考えていたら、涼宮さんに フラれたあなたは自ら大規模な閉鎖空間を生み出してくれたじゃない? 私にとっては好都合だったってわけ。それから私は閉鎖空間内部に入ったの。 情報爆発を起こすための仕掛けをいろいろ考えていたんだけどね・・」 キョン「長門に邪魔されたってわけか」 朝倉「そ。あのときの閉鎖空間はいままで観測されたことがなかった大きさでね、 世界中のTFEI端末が注目してたわ。潜入していた数も少なくないはずよ」 キョン「・・・」 朝倉「私たち情報生命体はね、こうやって現実で活動しようと思ったら 人間の体を借りなければならないの。エネルギーもかなり消耗するわ。 その点、閉鎖空間内部では制限がなくて自由に活動できたの」 キョン「閉鎖空間がなくなって残念だったな」 朝倉「まったくね。あなたが自分で閉鎖空間を消滅させたことを知って失望したわ」 キョン「そいつは悪いことをした。・・もう用はないんだろ?さっさと消えてくれ」 朝倉「そうはいかないの。あなた今日の昼過ぎから、現実世界で連続的に小規模な 情報爆発を起こしてたでしょ?さっきの倉庫内が一番大きかったみたいだけど」 キョン「それがどうした?もう打ち止めだ」 朝倉「んーん、あなたの体にはまだエネルギーが残ってるでしょ?もう一回やってくれないかな?」 キョン「どういうつもりだ?」 朝倉「言ったでしょ?私は能力者に積極的に関与して情報爆発を起こさせるって」 そういいながら、朝倉はおもむろに大型ナイフを取り出す。 朝倉「どうせほっといても能力は消滅しちゃうんだし、最後のローソクの瞬きに かけてみたくなったの。私思うんだけど、あなたを追い詰めたら さっきみたいに大規模な爆発を起こしてくれるんじゃない?」 キョン(・・まずいな) 朝倉「できれば部分的でも世界を改変しちゃうくらいのお願いね♪」 そういうと朝倉は、思った以上のスピードでオレに切りかかってきた。朝倉のナイフが オレの肩めがけて振り下ろされる。 キョン「・・くっ!」 オレは身をよじってかろうじてかわす。 キョン(・・だめだ。やはりさっきの力は使えない) 朝倉「殺しはしないから安心して。ちょっと痛いだけ」 たてつづけにナイフを横なぎに一閃させる。 キョン(まずい!) 朝倉「!」 朝倉のナイフは、いつのまにかオレの前に割り込んできた長門が素手で受け止めていた。 キョン「長門、離れろ!」 言いながらオレは朝倉のナイフを奪いにかかる。朝倉の手をつかみ、後ろにねじ上げようとした。 朝倉「女の子にひどいことするのね」 キョン(コイツ!・・なんて力を) 長門「やらせない」 キョン「だめだ長門!離れろ!・・お前も朝倉も今は生身なんだ」 長門「・・・」 キョン「今回のことはすべてオレに責任がある。傷つくのはもうオレ一人で十分だ」 キョン「ぐっ!!」 不意にみぞおちから鈍い痛みを感じた。 朝倉「やさしいのね。私のことまで気にしてくれるなんて。・・うん。 どうやらあなたよりも、長門さんを痛めつけたほうが効果的みたいね」 キョン(!!) 朝倉「長門さんなら殺してもいいわよね」 言いつつ朝倉は、長門にナイフをむける。 キョン「・・やめろ!朝倉」 朝倉「思えばあなたにはさんざん邪魔されてきたのよね。とっても目障りだったわ。 だから消えて。長門さん」 朝倉はそういうと、立て続けに長門に切りかかる。長門は間一髪、後方へ飛び下がって 朝倉の斬撃をかわした。 キョン(まずい!長門が不利だ!) 次々に襲い掛かる斬撃をかろうじてかわす長門。 長門「!」 無理な体勢がたたり、長門は足をもつれさせて後ろに倒れた。 朝倉「これでサヨナラね、長門さん」 キョン「やめろ!!朝倉っ!!!」 朝倉「死んで」 キョン「やめろーーーーッ!!!!」 長門の心臓にナイフが突き立てられようとしたそのとき、なにかが猛スピードで朝倉に突進してきた。 「うりゃあー!!」 何者かが朝倉に飛びかかった。蹴りを食らって派手に吹っ飛ぶ朝倉。 キョン「おい・・うそだろ・・・!!」 ハルヒ「こら!バカキョン!有希があぶないってときにボーっとしてんじゃないわよ!」 キョン「・・ハルヒ!!本当にお前なのか・・・」 朝倉「うっ・・涼宮ハルヒ!?どうやってここに!」 驚きながらも立ち上がり、ナイフをかまえ直す朝倉。 そのとき、朝倉の足元で赤い光弾がはじけた。 朝倉「くっ!!」 古泉「遅くなって申し訳ありません。・・朝倉さん、うちの団員にはもう指一本ふれさせませんよ」 キョン「古泉!!・・お前まで」 みくる「私もいますよ、キョン君」 キョン「・・朝比奈さんも・・・みんなどうして・・・」 長門「これがあなたの願い。あなたが実現させた」 キョン「長門・・みんな・・・」 キョン(ずっと会いたいと思ってたみんなが・・・夢にまで見たSOS団のみんなが・・・ ううっ・・・) ハルヒ「な、なにベソかいてんのよ・・私が団員のピンチを見過ごすはずがないでしょ!」 古泉「そういうことですよ」 みくる「わ、私も!キョン君や長門さんをいじめる人は許しませんっ!」 朝倉「驚いたわ・・!想像以上の情報爆発ね。一時的に閉鎖空間と現実が入れ替わるなんて・・・」 ハルヒ「もうアンタに勝ち目はないわ!あきらめて神妙にお縄を受けなさい!!」 朝倉「それはどうかな?」 その瞬間、景色が一転した。夕焼けに赤く染まっていたあたり一帯はみるみる灰色へと 色を変えていく。 朝倉「キョン君、望み通り情報爆発を起こしてくれてありがとね。おかげで私まで 本来の力が使えるの。すごいわ・・・このままいけば世界全体が改変されるんじゃ ないかしら」 長門「彼はそんなことを望んではいない」 朝倉「どうかな?今あなたたちを殺せば、キョン君はもっと大きな爆発を起こすんじゃないかしら?」 長門「・・させない」 古泉「僕達がそう簡単にやられるなどと思わないでほしいですね」 ハルヒ「そうよ!今こそSOS団の力を結集させて、アンタをギッタンギッタンの グッチョングッチョンにしてやるわ!あとで戒名をつけたげるから安心しなさい!!」 みくる「TPDDの使用許可が下りてます。わ、わたしだって戦いますよっ!」 朝倉「・・ふふっ、やってみる?」 朝倉「今日はとってもいい日だわ。まさかあなたたちに再会できるなんて・・ね。 あなたたちも、もっとよろこんでくれていいんじゃない?」 ハルヒ「おあいにく様。冗談にしても笑えないわね。アンタには二回も 有希とキョンがお世話になってんのよ!」 朝倉「あら、前はちっとも話してくれなかったあなたなのに。だいぶ性格が 明るくなったんじゃない?」 ハルヒ「・・フン」 古泉「申し訳ありませんが、あなたとお話している時間はないようです。そろそろ はじめさせてもらいますよ」 古泉はそう言うと、手のひらから赤い光弾を生み出した。 朝倉「今のわたしにあなたの力は通用しないわ」 古泉「どうでしょうか!」 古泉は光弾を軽く放り投げると、バレーのサーブの要領で朝倉に叩き込んだ。 朝倉「無駄なの!」 朝倉は腕を伸ばし、光弾を叩き落す。 みくる「・・!?みんな私にさわって!急いで下さい!!」 オレたちはいっせいに朝日奈さんの手をつかんだ。その瞬間、 ドーン!!!! 5人がいた場所に巨大な拳が振り下ろされた。 みくる「ひええ・・危なかったあ・・・」 オレたちは朝比奈さんの力で、少し離れた場所に姿を現した。 古泉「あれを!」 キョン「な・・!まさか!?」 ハルヒ「・・・!」 古泉「・・そうです。神人です」 朝倉「そっちの未来人さんは空間移動ができるのね。・・しかも事前に危険を 察知できてたみたい。すごいわ。その能力もキョン君のおかげなの?」 朝倉「それに古泉君・・だっけ?あなたあの巨人退治が専門なんでしょ? 私にも見せてほしいな」 古泉「長門さん、あれも朝倉涼子の能力ですか?」 長門「我々情報生命体は、通常あれだけの力をもたされていない。 ・・おそらく彼女は、統合情報思念体の一部をのっとっていると思われる。 巨人を生み出したのもその力」 古泉「なんとか対抗できないんですか?」 長門「この閉鎖空間が展開されたときに、統合情報思念体との接続が絶たれている。 現在、私の能力も制限されている」 古泉「・・わかりました。僕はあの神人をなんとかしましょう。長門さんは 朝比奈さん、涼宮さんと力を合わせて朝倉涼子を倒して下さい」 長門「そう」 古泉「それに、キョン君を頼みますよ。今の彼からはなんのエネルギーも感じない。 おそらく我々を呼び戻したことで力を使い果たしてしまったようです。 彼を守ってあげて下さい」 長門「・・もちろん」 神人がオレたちに気づき、再び拳を振り上げる。 古泉「頼みましたよ!」 古泉の体は赤い人型へと変化していき、やがて丸い光球に収縮していく キョン「古泉!」 赤い光球は神人に向かって飛んでいき、頭の部分を貫通した。しかし神人にダメージは ないようだ。光球は勢いを殺して、再び神人に突撃する。 朝倉「残りは私のお相手?どこまで頑張れるのかな?」 みくる「!!」 朝倉は両腕を伸ばしてオレたちを貫いたが、間一髪、再び朝比奈さんの空間移動で難を逃れた。 朝倉「逃げるばかりじゃ私に勝てないよ?」 長門「ЭΔσ$#бЮ・・朝倉涼子の情報連結を解除する」 朝倉「な!?あなた逃げたんじゃ・・・」 長門「空間移動したのは3人だけ」 長門はその場に伏せて朝倉の攻撃をかわし、その腕をつかんでいた。長門がつかんだ部分から 朝倉の腕が除々に分解されていく。 ハルヒ「やったわ!有希!!」 しかし、なぜか朝倉は顔に不敵な笑みを浮かべている。 キョン(一体何が・・・) ハルヒ「有希!後ろ!」 長門「・・!」 なんと、朝倉から新しく伸びた腕が後ろから長門に襲いかかった。 長門「・・くっ」 直撃はまぬがれたが、腕の一部が肩をえぐったらしく、長門はかなりの血を流している。 腕は方向を変えて再び長門に襲いかかる。 みくる「長門さーん!」 すんでのところで朝比奈さんが横に現れ、長門とともに消えた。 朝倉「同じ方法は通じないの。長門さん、前にあなたにやられてから、体を構成する 情報の一部分を切り離せるようにしたの。すごいでしょ?」 朝倉「でもなかなかいいチームワークじゃない。さすがはSOS団・・ といったところかしらね」 みくる「長門さん・・い、痛くないですかぁ~ 今止血を・・」 長門「大丈夫。・・ありがとう」 ハルヒ「有希!みくるちゃん!・・アンタ、よくもやってくれたわね!」 朝倉「次は涼宮さんが戦うの?あなたにそんな能力あったのかなあ?」 ハルヒ「・・・・」 ドーン!! そのとき、凄まじい音が響いてきた。神人が赤い光球をビルの壁に叩きつけたようだ。 音の方向を見ると・・古泉が今まさにとどめを刺されようとしていた。 キョン「ヤバい!アイツ元に戻ってる!朝比奈さん!!」 みくる「うん!」 朝比奈さんは神人がビルの壁にストレートを入れる寸前、古泉を救出した。 キョン「古泉!しっかりしろ!!」 古泉「なんとか意識は保っていますが・・・しかし、正直言って一人で神人を相手にするのは かなりの重労働です。朝比奈さんの助けがなければ今の一撃で終わっていました。 助かりましたよ」 みくる「そ、そのことなんですがぁ・・短期間に空間移動を多用しすぎて、TPDDの エネルギーが尽きかけてます・・どうしよう・・・」 長門「朝倉涼子、予測以上の能力・・」 ビルをひとしきり破壊した神人がこちらにふりむき、ゆっくりと近づいてきた。 朝倉「次の相手は涼宮さん?それともまた長門さんかな?」 朝倉が笑顔で近づいてくる。 キョン(絶対絶命ってヤツか・・・) しかし、なぜかこのとき不意に笑みがこぼれた。 キョン(そうだ。今は一人じゃない。長門や古泉や朝比奈さんが、そしてハルヒが そばにいるんだ) 状況に似つかわしくない感情ではあるが、オレはこのとき、SOS団のみんなと 一緒にいられることがむしょうにうれしかった。 朝倉「あれ?キョン君笑ってるの?恐怖で頭がおかしくなっちゃったの?」 キョン「おい古泉・・お前とのゲーム対決、何勝何敗だったっけ?」 古泉「覚えていませんね。僕が負け越していることはたしかでしょうが。 ・・・また対決したいですね、あの部室で」 キョン「ああ」 古泉「しかし、その前に少々アルバイトが残っているようです。今回はなかなか骨の折れる 仕事のようですが」 キョン「よかったらオレも紹介してくれないか?」 古泉「お断りします。最近は出動回数が大幅に減ってしまってね。 実入りが少ないんですよ」 キョン「それは残念だ」 オレは古泉に右手を差し出した。少し微笑んでオレの手を握る古泉。 二人が手を交わした瞬間、古泉の体が強く光った。 古泉「!?・・キョン君、この力は・・?」 キョン「ムナクソ悪い神人退治もこれで最後だろ。思いっきり暴れてこいよ」 古泉「・・わかりました。また後ほど」 古泉の体は、再び赤い光球に収縮していった。さきほどとは段違いの光を放っている。 8話
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γ-1 「もしもし」 山びこのように返ってきたその声は、ハルヒだった。 ハルヒが殊勝にも、「もしもし」なんていうのは珍しいな。 「あんた、風呂入ってるの?」 「ああ、そうだ。エロい想像なんかすんなよ」 「誰もそんな気色悪いことなんかしないわよ!」 「で、何の用だ?」 「あのさ……」 ハルヒは、ためらうように沈黙した。 いつも一方的に用件を言いつけるハルヒらしからぬ態度だ。 「……明日、暇?」 「ああ、特に何の予定もないが」 「じゃあ、いつものところに、9時に集合! 遅れたら罰金!」 ハルヒは、そう叫ぶと一方的に電話を切った。いつものハルヒだ。 さっきの間はいったいなんだったんだろうな? 俺はそれから2分ほど湯船につかってから、風呂を出た。 γ-2 寝巻きを着て部屋に入り、ベッドの上でシャミセンが枕にしていた携帯電話を取り上げてダイヤルする。 相手が出てくるまで、10秒ほどの時間がたった。 「古泉です。ああ、あなたですか。何の御用です?」 俺の用件ぐらい、察してると思ったんだがな。とぼけてるのか? 「今日のあいつら、ありゃ何者だ?」 「そのことなら、長門さんに訊いた方が早いでしょう。僕が話せるのは、橘京子を名乗る人物についてぐらいです」 「それでかまわん」 「彼女は、『機関』の敵対組織の幹部といったところですよ。まあ、敵対とはいっても血みどろの抗争を繰り広げているというわけでもないですが」 「なら、どんなふうに敵対してるってんだ?」 「彼女たちも僕たちも、そうは変わらないんですよ。似たような思想のもとで動いてますが、解釈が違うといいますかね。まあ、幸い、彼女はまだ話が通じる方です。組織の中では穏健派寄りのようですからね。あの朝比奈さん誘拐事件も、彼女の本意ではなかったと思いますよ」 ほう。お前が弁護に回るとはな。 「それはともかくとして、橘京子の動きは僕たちがおさえます。別口の未来人の方は、朝比奈さんに何とかしてもらいましょう」 まあな。朝比奈さん(大)だって、あのいけ好かない野郎に好き勝手させるつもりはないだろう。 「問題は、情報統合思念体製ではない人型端末です。何を考えてるのか、全く読めません。長門さんの手に余るようなことがあれば、厳しい状況ですね」 「長門だけに負担をかけるようなことはしないさ。俺たちでも何かできることはあるだろ」 「僕もできる限りのことはしますよ。でも、万能に近い宇宙存在に比べると、我々はどうしても不利です。こればかりは、いかんともしがたい」 それを覆す切り札がないわけではないがな。 だが、それは諸刃の刃だ。 「ところで、おまえのところにハルヒから連絡がなかったか?」 「いえ、何もありませんでしたが、何か?」 「いや、明日の朝9時に集合って一方的に通告されたんだが」 古泉のところに連絡がないとすれば、どうやら、明日ハルヒのもとに召喚されるのは、俺だけらしいな。 「ほう。デートのお誘いですか? これはこれは。羨ましい限りですね」 「んなわけないだろ。どうせ、俺をこき使うような企みがあるに違いないぜ」 「涼宮さんも、佐々木さんとの遭遇で、気持ちに変化が生じたのかもしれませんよ。奇妙な閉鎖空間については、先日お話ししたかと思いますが」 「あのハルヒに限って、それはありえんね」 「修羅場にならないことを祈りますよ。僕のアルバイトがさらに忙しくなるようなことは避けてほしいですね」 「勝手に言ってろ」 古泉との電話はそれで打ち切られた。 次は、長門だ。 今度は、ワンコールで出た。 「…………」 「俺だ。今日会ったあの宇宙人なんだが」 「彼女は、広域帯宇宙存在の端末機」 即答だった。 「俺たちを雪山で凍死させようとしやがった奴ってことで合ってるか?」 「そう」 「あの宇宙人とは、何らかの意思疎通はできたのか?」 「思考プロセスにアクセスできなかった。彼女の行動原理は不明」 「広域帯宇宙存在とやらの考えも分からんか」 「情報統合思念体は彼らの解析に全力を尽くしているが、成果は出ていない」 「そうか」 このあと、長門は、淡々とした口調でこう告げてきた。 「私は、情報統合思念体から、最大限の警戒態勢をとるよう命じられた」 長門の抑揚のない声が、異様なまでに重く感じられた。 γ-3 ハルヒにこき使われるに違いない明日に備えて寝ようとしたところを、妹が襲撃してきやがった。 しぶしぶ、妹の宿題につきあうこと1時間。 シャミセンと戯れ始めた妹を、シャミセンごと追い出すと、俺はようやく眠りについた。 γ-4 翌、日曜日。 妹のボディプレスで起こされた俺は、朝飯を食って、家を出た。 「遅い! 罰金!」 もはや規定事項となった団長殿の宣告も、今日ばかりは耳に入らなかった。 なぜなら、ハルヒの隣に意外な人物が立っていたからだ。 「なんで、おまえがここにいるんだ?」 ハルヒの隣には、佐々木の姿があった。 「酷いな、キョン。僕がここにいるのがそんなに不思議かい? まあ、驚くのは無理もないが、そんなに驚くことはないじゃないか。昨日、涼宮さんに電話で提案してみたのだよ。昨日会ったのも何か縁だろうから、いろいろと話し合いたいとね」 「あたしも聞きたいことがいろいろとあるし、快諾したってわけ」 ハルヒ。佐々木がお前の電話番号を知っていることを不思議に思わなかったのか? まあ、橘京子あたりが調べて佐々木に教えたんだろうけどな。 「事情は分かった。だが、なんで俺まで一緒なんだ? 話し合いたいことがあるなら、二人で話し合えばいいことだろ?」 「キョン、君は相変わらずだね。この調子じゃ、涼宮さんもだいぶ苦労してるんじゃないかな」 待て。なんでそんなセリフが出てくるんだ? この唯我独尊団長様に苦労させられてるのは、俺の方だぜ。 「フン。いつものところに行くわよ!」 なぜか不機嫌になったハルヒの号令のもと、俺たちはいつもの喫茶店に向かった。 ハルヒは、俺の財政事情には何の考慮も払わず、ガンガン注文を出しまくった。 話し合いというのは、何のことはない。 俺の中学時代と高校時代のことを互いに話すというものだった。 まずは、ハルヒが、佐々木に、高校時代の俺のことについて話した。 なんというか、話を聞いているうちに、俺は自分で自分をほめたくなってきたね。ハルヒにあれだけさんざん振り回されてきても、自我を保持している自分という存在を。 「キョン。君は、実に充実した学生生活を送っているようだね」 それが佐々木の感想だった。 なんだかんだいっても、充実していたというのは事実だろう。 だが、俺はこう答えた。 「ただ単にこき使われてるだけだ」 「くっくっ。まあ、そういうことにしておこうか」 次は、佐々木が、ハルヒに、中学時代の俺のことについて話した。 話を聞いているうちに、ハルヒの顔がどんどん不機嫌になっていく。 聞き終わったハルヒは、不機嫌な顔のままで、こう質問してきた。 「ふーん。で、二人はどういう関係だったわけ?」 「友人よ」 さらりとそういった佐々木を、ハルヒはじっとにらんでいた。 「あのなぁ、ハルヒ。確かに誤解する奴はごまんといたが、俺たちは友人だったんだ。やましいことなんて何もないぜ」 「友人以上ではなかったってこと?」 「それは違うわよ、涼宮さん。正確には、友人『以外』ではありえなかったというべきね。少なくても、キョンにとってはそうだったはず」 どこが違うんだ? 俺のその疑問には、誰も答えてはくれなかった。 「はぁ……」 ハルヒは、大げさに溜息をつきやがった。 「あんたが嘘をついてるなんて思わないわよ。でも、嘘じゃないなら、なおのこと呆れ果てるしかないわね。あんた、そのうち背中からナイフで刺されるわよ」 おいおい、物騒なこというなよ。 ナイフで刺されるのは、朝倉の件だけで充分だ。 「僕も同感だね」 佐々木まで賛同しやがった。 俺がいったい何をしたってんだ? 茶店代は当然のごとく俺の払いとなった。 総務省に俺を財政再建団体の指定するよう申請したい気分だ。俺の懐具合が再建するまでには、20年はかかるだろうね。 そのあと、三人で不思議探索となった。 傍から見れば、両手に花とでもいうべきなんだろうが、この二人じゃ、そんな風情じゃないわな。 そういえば、ハルヒとペアになるのは、あの日以来か。 結局のところ、俺はハルヒにさんざん振り回され、佐々木の小難しいセリフを聞き流しながら、一日をすごすハメになった。ついでにいうと、昼飯までおごらされた。 そして、駅前での別れ際。 俺がふと振り返ると、ハルヒと佐々木は二人でまだ何か話していた。 何を話しているかは聞こえなかった。 知りたいとも思わなかった。この時には。 γ-5 月曜日、朝。 昨日の疲れがとれず、俺は重い足取りで、あのハイキングコースを這い上がった。 学校に着いたころにはずっしりと疲れてしまい、早くも帰りたくなってきた。そんなことは、俺の後ろの席に陣取る団長様が許してくれるわけもないが。 ハルヒは、微妙にそわそわした感じだった。 また、何か企んでいるのだろうか? 俺が疲れるようなことでなければいいのだが。 疑問には思ったが、疲れた体がそれ以上考えることを拒否し、俺は午前中の授業のほとんどを睡眠という体力回復行為に費やした。 寝ている間に、何か長い夢を見たような気がしたのだが、目が覚めたときにはきれいさっぱり忘れていた。 昼休み。 なぜかハルヒが俺の前の席に陣取り、椅子をこちらに向けてドカッと座った。 俺の机の上に、弁当箱を置く。 「今日は弁当なのか?」 「そうよ。そんな気分だったから」 机の上には、俺の弁当箱とハルヒの弁当箱が並んでいる。 こうして、二人で向かい合って、弁当を食うハメとなった。 なにやら誤解を受けそうな光景だ。実際、クラスのうち何人かがこちらをちらちら見ながら、こそこそと話をしている。 ハルヒは、相変わらず健啖ぶりで、弁当を平らげていた。 「その唐揚げ、おいしそうね」 ハルヒは、そういうや否や、俺の弁当箱から、唐揚げを取り上げ、食いやがった。 「ひとのもん勝手にとるな」 「うっさいわね。しょうがないから、これをやるわよ」 ハルヒは、自分の弁当箱から玉子焼きを箸でつまむと、そのまま俺の口に突っ込んだ。 「むぐ」 クラスの女子から、キャーというささやき声が聞こえる。 とんだ羞恥プレイだな。 こりゃいったい何の罰ゲームだ? 「感想は?」 ハルヒが、挑むような目つきで訊いてきた。 「うまい」 実際、それはうまかった。 「当たり前でしょ! 団長様の手作りなんだからね!」 そういいながら、ハルヒの顔は上機嫌そのものだった。 だがな、ハルヒよ。 いくらお前が鋼の神経をしているとはいえ、こういう誤解を受けかねないような行為は避けるべきだと思うぞ。 まあ、誤解する奴はいくら説明してやったってその誤解を解くようなことはないんだけどな。 俺が中学3年生時代の経験で学んだことといえば、それぐらいのものだ。 その日の放課後、俺とハルヒはホームルームを終えた担任岡部が教卓を降りると同時に席をたち、とっとと教室を後にした。 いつものように部室に行くのかと思いきや、 「キョン、先に行っててくんない? あたしはちょっと寄るところがあるから」 ハルヒは鞄を肩掛けすると、投擲されたカーリングの石よりも滑らかな足取りで走り去った。 はて、何を企んでるんだろうね? そういや、あいつは、朝から妙にそわそわした感じだったな。 まあ、考えても仕方がないので、俺はそのまま部室に向かった。 γ-6 部室に入ると、既に長門と朝比奈さんと古泉がそろっていた。 「涼宮さんは?」 古泉がそう訊いてきたので、答えてやった。 「授業が終わったとたんにどっかにすっ飛んでいきやがったぜ」 「そうですか。何かサプライズな出来事を持ってきてくれるかもしれませんね」 「世界が終わるようなサプライズは勘弁してほしいぜ」 「まあ、それはないでしょう」 そこに、SOS団の聖天使兼妖精兼女神様である朝比奈さんがお茶を出してくれた。 「どうぞ」 「ありがとうございます」 「ところで、昨日はどうだったんですか?」 古泉がにやけ顔で訊いてきやがった。 いつもだったら無視しているところだが、あの佐々木の周りにはSOS団と敵対している超常野郎が集まっている。一応、古泉の見解も聞いてみたかった。 俺は昨日の出来事をはしょりながら説明してやった。 「おやおや。まさに両手に花ではありませんか?」 「あの二人じゃ、とてもじゃないがそんな気分にはなれなかったね」 「まったく、あなたという人は」 「それより、佐々木のやつは、あいつらに操られてるんじゃないだろうな?」 心配なのは、そこのところだ。 「それはないと思いますよ。昨日の一件は、佐々木さんの自由意思でしょう。問題は、その自由意思を利用しようとする輩が現れることです。先日もお話ししましたが、特に警戒すべきは周防九曜を名乗る個体です」 俺は、長門の方を見た。 「長門の意見はどうだ?」 長門は、分厚いハードカバーから視線を離さず、淡々と答えた。 「私も、古泉一樹の意見に同意する」 「そうか」 一応、もう一人のお方にも聞いておくか。 「朝比奈さん」 「はい?」 「二月に会った、あの未来人のことですが」 「ああ、はい。覚えてます」 「あいつらが企んでいることって何ですか? ハルヒの観察ってわけでもないらしいって感じなんですが」 「えーっと……あの人の目的は、そのぅ、あたしには教えられていません。でも、悪いことをするために来たんじゃないと思います」 うーん。自分を誘拐した犯人たちの仲間だというのに、不思議なことに、朝比奈さんはあの野郎には悪い印象は持ってないようだ。 仏様のように広い御心の持ち主なのは結構ですが、もうちょっと警戒心とかを持った方がいいと思いますよ。 それはともかく、とりあえず、警戒すべきは周防九曜を名乗る宇宙人もどきであるというのが、結論になりそうだな。 その話題は、そこで打ち切りになった。 「どうです、一勝負」 古泉が出してきたのは、囲碁かと思ったら、連珠とかいう古典ゲームらしい。 「五目並べのようなものです。覚えたら簡単ですよ」 俺は古泉の言うままに盤上に石を置きながら、実地でだいたいの遊び方を教わった。 朝比奈さんのお茶を片手に二、三試合するうち、たちまち俺は古泉に連戦連勝するようになる。 いつもどおりまったりと時間が過ぎていった。 それにしても、ハルヒは遅いな。 そう思った瞬間に、爆音とともに扉が開いた。 「ごめんごめん。待たせたわね!」 部室にいた団員全員の視線が、ハルヒに集ま……らなかった……。 団員の視線は、ハルヒの後ろに立っている人物に集中していた。 「みんな! 今日から入団した学外団員を紹介するわ! 佐々木さんよ!」 そこにいたのは、紛れもなく佐々木だった。 続き 涼宮ハルヒの驚愕γ(ガンマ)
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…なんだ、何が起こった?どうして俺は閉鎖空間にいるんだ?古泉お前のドッキリ企画か頼むから止めてくれ… ―古泉!?どこにいる古泉!?隠れても無駄だ出てこい! 『―彼ならここに招待しなかった。お前にしか用はないからな』 瞬間、空が震えた。今気付いたが、ハルヒが作り出した閉鎖空間よりも暗い。 そして、『彼』の声によるものだと気づくまで少々の時間を要した。 …どこにいるんだお前は!?古泉は?長門は?朝比奈さんは?どこだ!! 『彼らは元の世界で何も変わらず過ごしているよ。お前が居なくなって驚いているかも知れないがな』 …何で俺だけこの世界に呼び出した! 『お前は知っているのではないか?この世界がどのような世界なのか?』 この世界・・・この空間は、ハルヒが無意識下のストレスを発散させるために用意され、そして赤い玉をした超能力者に破壊されるかりそめの空間。ハルヒの不満が大きくなればなるほど拡大し、ついには元の世界と入れ替わってしまう可能性のある、言わば人間の細胞を蝕む癌細胞のようなもの。 俺はかつてこの空間に二度来たことがある。一度は癌細胞を消滅させるエスパーと、そしてもう一回、全て癌細胞に作り替えようとした他称神様と。 …癌細胞というのは聞こえが悪いか。 神様はノアの箱船に俺だけを乗せ、新天地を求めていたんだ。そして、俺の必死の説得により、神様は洪水を止め、元の世界に返してくれた。 『この世界は、自分が望む様に森羅万象を決定づけることができる。涼宮ハルヒの情報改変能力の一端を担っている。4年前、俺はこの能力を手に入れるため、涼宮ハルヒに接近した。だが、涼宮ハルヒは俺に感づいたのか、無意識のレベルで俺と接点が出来ないよう遠ざけていた。去年、この高校に入学するのに併せて俺はこの高校へ入学させた。入学当初は特に変化は見られなかったが、それから約二ヶ月後のある夜、突然情報噴出が止まってしまった。涼宮ハルヒの存在が消失していた。俺は涼宮ハルヒの能力を手に入れることが出来なくなったと思い、絶望した。幸運なことに数時間の時を経てその異常状態は元に戻っていた。俺は安心していた。そのときは。しかし、涼宮ハルヒから噴出される情報は月日が経つにつれて減少していた。またしても同じ目に遭ってしまう可能性があった。だがもう一度チャンスが訪れた。二ヶ月前より、涼宮ハルヒの情報噴出が復活の兆しを見せていた。この機会を逃せば、二度と手に入らないかも知れない。だから俺は涼宮ハルヒに接近した』 …こいつは4年も前からハルヒの存在を追いかけていたのか。ハルヒは無意識に気づいていたんだな。こいつがストーカーだと。 そして、情報云々の話が出てくるというとは、こいつは長門のパトロンの親類と言ったところだろうか? 『この世界の存在を教えてくれたのは、俺が拠所にしているこいつの有機生命体だ。その情報の痕跡が存在していた。有機生命体がもつ情報など、俺にとって些細な物であると考えていた。だが依代となった有機生命体がもっているそれは、涼宮ハルヒに影響を受けたと思われる情報の痕跡を宿していた。その情報より、涼宮ハルヒが進化の可能性を秘める情報を持つだけでなく、情報自身を有為無為に改変させることが分かった。これは俺にとっても有意義な情報であった。これであいつらに復習できると悟ったからだ』 …あいつら?誰だ?また新しいキャラクターが登場するのか?今度は異世界人か?いい加減勘弁してくれ。 『あいつらは俺の存在に嫉妬し、執拗なまでに追いかけ、俺の存在を、情報を構成する連結要素を崩壊させようとしていた。俺はこの星が存在する恒星集団にある、比較的大きな白色巨星に身を隠し、ひたすら耐えていた。どのくらいの時間が経ったのかは分からない。時間超平面を移動したところであいつらにはそれほど意味のない事だったしな。…俺は、無限とも思われる時間が過ぎたある瞬間、俺は情報爆発による情報噴出を確認した。俺はその目で情報噴流を確認したかったが、あいつらからの邪魔が入り、それが不可能になった。しかしその後、俺を招集するための情報が情報噴出源の極近くから確認された。その情報は、俺に対するあいつらからの追跡を完全に遮断していた。まるで俺のみを導くかのように。俺はその情報を元に、この惑星へと降り立ち、情報噴出源を捜索することにした。こいつの体に身を宿してな』 …なんとなく分かった。こいつはやはり長門と同じような存在。ただし敵対していた。 恐らく長門の親玉や、それに類推されるやつらに滅ぼされそうになったのだろう。 そして地球に逃げて、彼の体に憑依していた。長門の親玉達をやっつけるために、こいつの体に憑依したという訳か。 …ハルヒの能力を奪ってな。 『この世界ではあいつらも干渉することが出来ない。だから俺の存在を崩壊させる事が出来ない。だが、涼宮ハルヒの能力を完全に得ることは出来ないようだ。涼宮ハルヒからの抵抗が激しい。完全な物にするためには、『鍵』であるお前の力が必要だ』 …俺をどうするつもりだ!! 『俺はお前を崩壊させる気はない。お前という有機生命体を構成する情報を融合し、俺の一部にする。そうすることで、涼宮ハルヒの能力は完全に解放され、思うように力が行使できる。ただ、有機体は必要がないから排除するがな』 なるほど、つまり、俺は情報だけお前に取り込まれ、死んでしまうと言うことだろ? 『融合だ。お前の情報は残る』 だから、俺の意志やら決定、つまり、脳みその働きはなくなるんだろ? 『その通りだ。だが悲観することはない』 嫌だ。悲観だらけだ。俺の情報だけ取り出しても、俺という人間は存在は消えるし、人間の行動が出来なくなるのであれば、それは死と同じ事だ。 『…しかたあるまい。ならば無理にでもお前の情報を融合し、涼宮ハルヒの能力を解放させる』 そう言って、『彼』は具現化した。 ―あれは、神人!? 『彼』が具現化したと思われる神人は、しかし俺の知っている物とは微妙に異なっていた。 まず、色は鮮やかな海碧色ではなく、黒い、虚無の色をしていた。まるで、全てを否定するかのように。 『涼宮ハルヒの力を存分に発揮できないため、色々と制約がある。だが、お前を取り込むのには訳はない』 そういって、『神人』は右手を俺に向かって差し出してきた。とっさに俺は逃げ出していた。こいつとシェイクハンドをする気はさらさら無い。 ―あまり動きは早くないため、普通に走っていれば捕まらない。だが、俺には体力という限界値が設定されている。 このままだと、俺はいつか奴に取り込まれてしまう。 ―くそ!長門!古泉!どっちでもいいから早く助けに来てくれ!! 「………只今到着した」 あくまで淡々と、冷たく喋る声が、今回は心強く聞こえた。 ―無口少女と、清涼少年のカップルのご登場だ。 『貴様ら…どうしてここに!!』 「この空間での活動は、僕の専売特許でしてね。勝手に商売を始められて寡占するのはルール違反ですよ」 古泉は、俺と下らない世間話をするように『神人』に語りかけていた。 だが、いつもと様子が少し違う。元々この空間では古泉は赤い玉になって空を飛んだりしている。 しかし今回の古泉は、いつもの体に赤いオーラの様な物を薄く纏っているのみであり、さらに言うと若干ノイジーに霞んでいた。 長門は赤く発光はしていないが、ノイズがかかっているのは古泉と同様だ。 …長門。一体どうゆうことだ?これは? 「…古泉一樹の力と情報統合思念体の力を使って、この空間にアクセスした。涼宮ハルヒの不十分な力で確立しただけならば、古泉一樹の能力だけで容易に進入可能であった。しかし、彼は涼宮ハルヒの能力の他に、自分の能力、そして拠代となった人間の情報を行使してこの空間を具現化している。だから我々も、能力のスカラー合成、最適化を行ってこの空間にアクセスできるようにした。だが完全ではないため、ノイズがかかるなどの瑕疵が見られた。私も、古泉一樹の能力も、通常より著しく低下していると思われる」 長門の演説を久しぶりに聞いた気がする。こいつにも、蘊蓄を語りたい事と時間と場所があるのだろう。 「…この世界は、『彼』が作り出した閉鎖空間のため、涼宮さんが作り出したそれとは勝手が少々異なるようです。どちらにしろ、この世界を具現化している『彼』を倒さないと、この世界から戻ることは出来ないでしょう」 …できるのか? 「できなくはない。ただし保証はしかねる。この空間の不安定要素や彼の未確認不確定要素、私と古泉一樹の未知未到達な力場合成が原因にあげられる」 どのくらいの確率だ? 「悉皆不安定要素を排除し、優位な計算をした場合52%、不利な計算をした場合18%。ただし悉皆不安定要素の誤差が確定できないため、この数字に有効性を見出だすことができない」 要は俺たちの頑張り次第ってことか。 「そう。そして、この数字を無意味なものにしている一番の理由は、あなた」 俺が!? 「あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。彼の力を無効化するのも、最大限に引き出すのもあなた次第。この世界並びに元の世界の生殺与奪はあなたにあるといっても過言ではない。あなたが元の世界に帰ろうとする意思が強ければ強いほど、涼宮ハルヒにその想いは伝わる。その結果、不完全に力の融合を果たしている彼との亀裂が生じ、彼は涼宮ハルヒの力を保てなくなる」 …なるほど。長門が饒舌なことに驚きを隠せないが、いまはちゃんと話を聞く事に集中していた。 「…さて、お話はこの程度にしておきましょう。あまり長く話していると、『彼』は涼宮さんの能力と完全に融合を果たすかも知れません」 古泉の話に、ふと『彼』の姿を見ると、『彼』は『神人』の姿で暴れていた。 といっても、八つ当たり気味に何かにあたっているのではない。神人の力を抑え込もうとしているようだ。 その証拠だろうか、『彼』が生み出した神人の色が、やや青く、濃い藍色のような色になっていった。 「融合を完全なものにはさせません!」 古泉は赤いオーラをさらに発揮させ、『神人』に近付いていった。ノイジーな長門の高速詠唱が傍らで聞こえる。 「…今の古泉一樹の能力は、私の能力との連携に依って成り立っている。逆も然り。どちらかが倒れてしまえば、どちらの能力も機能しなくなる」 …この空間が、それ程イレギュラーと言うことか。 古泉は、いつか見たように『神人』の周りを回り、攻撃の様なものを加えていた。 だが『神人』のほうも黙ってはない。古泉に向かって攻撃をしていた。 ただ、いつぞやみた神人とは違い、あの『神人』は手を伸ばし、さらにその手の平に当たる部分から数十本の触手を伸ばし、古泉に襲いかかっていた。 古泉はそんな攻撃も楽々と回避、あるいは撃墜し、本体の方に攻撃をかけていた。 そして、右腕の半分以上を切り落としていた。切口からはどす黒い液体が流れ、地面に滴っていった。 …これは、特に俺の出番はないようだ。巻き添えを食らわないように離れた方が良いな。 古泉は立て続けに攻撃していた。そして、左手首も同様に切り落とし、頭の攻撃に向かっていた。 ―刹那、古泉は叩かれた。まるで人間が自分の周りを纏りつく虫をおいはらうように。 「古泉!」 「…大丈夫。生命活動に影響を与える様な怪我はしていない」 『神人』は右手で古泉を振り払っていた。先ほど古泉が切り落としたはずの右手で。 …長門!どう言うことだ!?右手が復活しているぞ!あいつは再生能力があるのか!? 「彼には涼宮ハルヒの能力を再生するような治癒能力は具わっていない。彼は特異的局地的に時間平面を移動させ、自分の情報構成要素を過去のものにし、あたかも右腕を復活させたかのようにした。…迂闊。忘れていた。彼は自身の極近辺の時間平面を局地的に任意変換することができる」 なんだそりゃ!いくら切り落としても、『彼』が元の姿に戻すことができるってわけじゃないか!そんなのを相手にどうするんだ! 「…彼のコアを破壊する必要がある」 その、コアってのはどこだ? 「あそこ」 長門が指差したのは、『神人』の胸のあたり、人間でいう心臓の辺りである。 よく見ると、『彼』の姿をした人間が埋め込まれている様に見える。あれを狙えば、『神人』を倒せるというわけか。 「…ただし問題がある。彼自身は基本的に二足歩行性有機生命体、所謂人間である。彼は巻き込まれただけ。構成要素はあなたや古泉一樹と同じ。そのため、コアを攻撃することにより、彼の有機体に損傷を与えることになる。有機生命体への肉体的損傷は、有機生命体の生命活動を脅かすこととなる」 あいつ自身は宇宙人が作ったインターフェイスではなく、普通の人間と言うことか。確かに、普通の人間を倒すのは忍びない。 …他に良い方法はないのか? 「時間移動をされる前に彼を巨人の中から抜き出し、情報結合を解除すればよい」 できるのか? 「――わからない…。でも、やる」 …長門が久しぶりに自分の意志を見せた気がする。…よし、長門、やっちまえ! 「……そう」 そう言って、長門は高速詠唱を開始した。古泉の周りに赤いオーラが復活する。赤い玉はまたしても『神人』に向かって攻撃していた。 「パターン0FC85-12D、回避、時間移動を確認。続いて12Eに移る」 長門の指令に対し、古泉は恐らく長門の指示とおりに動いていた。 …もう数えるのすら億劫なパターンの攻撃を繰り返していた。 裏から回り込み、コアを取り出す方法、手足をもぎ取り、動けなくする方法、触手を腕や足に絡ませる方法… 様々な攻撃を繰り返していたが、こちらの意図に気付いた時点で時間移動を開始し、自身を初期化していた。 そして、それは非常にまずい展開になっていた。『神人』は時間移動により体力も元に戻るらしく、攻撃の手は休まることを知らなかった。 だが、こちらの二人はあからさまに最初より動きが落ちている。人間の古泉はもちろん、長門ですら動きに陰りが見られ始めていた。 この空間では、長門すらプレッシャーをかけられているのか? ―ドンッ― 嫌な音が耳に響いた。 …古泉が、『神人』の触手に貫かれていた。 「古泉ぃぃ!!」 古泉は、力無く落下していった。俺は無我夢中に、あいつの元に走っていった。 「……うっ……これ……は……お恥ず………かし…………い…ところ………を…見ら……れ…まし…ゴフッ!………」 古泉!喋るな!じっとしていろ!!今手当てしてやる!!! 「危ない!逃げて!!」 長門の、今まで聞いたことのない悲鳴が聞こえた。後ろを向くと、触手が迫って来ていた! やばい!! ―俺は反射的に目を閉じていた。半ば諦めていた― ―ドンッ― 先程、古泉を貫いた時と同じ音がした。…死ぬ時って、痛みを感じないんだな… ん…痛くない?…というか、どこも怪我をしていない?じゃあ、今の音は… ―俺の網膜には、触手に貫かれた長門が映っていた― 「長門ぉー!!」 俺は長門の元へ駆けていった。触手は貫いていた長門を外し、『神人』の元に帰って行った。 「―長門!しっかりしろ!長門!!」 「……大丈夫。肉体…の…損傷は…対した事はない……。古泉一樹……程…大きな怪我を負っている……わけではない…でも…私達二人…が…相互に使用する……力の…大半……を…失った……コアを引き出す……のは…不可能…に近いレベル…にまで…減少した…」 …もういい!喋るな!おとなしくしろ! 「…問題ない…私の残った力で…古泉一樹と…私の…肉体再生…を…行う……ただ…力の大半…を失った…ため……時間が…掛かる……私は…あなたに…賭ける…先…にも…言ったが…あな…た……の…『元の世界に戻る』…という…願望が………涼宮…ハルヒ…の…元に…届けば…この……空間……は…崩壊…せざ……るを……得な…く…なる……彼女………の……力を……依り…代…に……して…いる……以上……彼…の……力……だけ……では……この……空間…は……存在……で…き…な…い……か…ら……」 …もう喋るな!!お前らは傷を治せ!『神人』に気付かれぬ様、死んだ振りをしてろ!あとは俺が何とかする!! 「……わかっ……た……」 そう言って、長門は目を閉じた。…全く息をしていないようにみえる。古泉もだ。 死んだのではなく、死んだ様に見せかけている仮死の状態なんだろう。あいつらが死ぬわけがない、そんなわけがないんだ。 ―さて、俺の番だ。俺は『神人』に向かって、歩き始めた― 「長門と古泉を倒してしまうとは、さすがだな。だが、俺が倒せるかな!?」 …俺は精一杯の虚勢をはり、悪の大魔王の様な台詞をはいた。……怖いなんてもんじゃない。 さっさと逃げ出したい。だが、古泉と長門をほっぽるわけにはいかない。 『お前の頼みの綱だった限定空間の破壊者、対有機生命体用端末はあんな状態だ。お前に何ができる?』 …できるさ。この空間を脱出した実績はあるもんでね。ここにはハルヒはいないが、あいつに俺の意志を伝える事ならできるだろう。 「おいハルヒ!聞いているか!俺だ!頼みがあるんだ!みんなをここから出してくれ!変な奴に付きまとわれているんだ!お前しか頼る奴がいないんだ!頼む!助けてくれ!」 俺は閉鎖空間の空に向かって叫んだ。 『…神頼みか。所詮は有機生命体。情報の不確定さが如実に現れているな』 何度とでも言え。 「ハルヒ、長門や古泉も怪我をしている。お願いだ。この世界を壊してくれ」 『無駄だ。お前が鍵であることは知っている。そして、そのような手を使う可能性もな。だからこの世界に外部からの繋りを遮断する遮蔽場を存在させた。お前の神頼みは神に聞こえはしない!』 「ハルヒ!頼む、俺たちがこの世界に取り残されてもいいのか!?聞いてくれ!ハルヒ!!」 『無駄だ。諦めろ』 『神人』から触手が伸びて来た。逃げるのは間に合わない! ―バシッ― ―瞬間、触手が千切れていた。 「…間に合いました。大丈夫ですか!?キョン君?」 ―そこに立っていたのは部室専用のお茶汲みメイド、俺の癒し的存在、朝比奈さんだった― 「朝…比奈…さん?なぜここに…!?」 「キョン君に言われて来たんです」 先ほどまでのスーツ姿ではなく、いつもの制服姿で朝比奈さんはそう答えた。 「…俺に?いつ?」 「…今のあなたから四日後のキョン君です」 『神人』は、触手を切られたことにだろうか、激しく悶絶していた。 「…なるほど、またあの時の様に、未来からの介在があったというわけですか」 「いえ、違います。キョン君の命令です」 「え…?でも、未来からの命令がないと動けないんじゃ?」 「そのとおりなんです。キョンくんに言われて、未来からの通信を見たら、『何があってもキョン君の命令に従え』という最優先強制コードが発令されていたんです。驚いてキョン君に相談したら、『今から言う時間―四日前の午後七時、鶴屋邸で行われた争奪戦の特設ステージに時間移動してください』と言われたんです。でも、TPDDの許可がないから無理って言ったんですけど、『大丈夫だから』って言われて。そしたら、本当に移動できたんです。本来は許可を得ないと、使用不可能なのに…。キョン君、どうしてですか?」 「俺にも分かりません。そして、どうしてこの空間に入ってきたんですか?そして、その力は何ですか?」 「それもわからないんです。キョン君が、『その時間の俺を助けてくれ。願えば力が出るはずです』って言われて。…時間移動して、この空間侵入した瞬間、キョン君が襲われてたの。助けなきゃ、って思ったら、いきなり触手が切れて……ごめんなさい」 「いえ、あなたのおかげで助かりました。ありがとうございます」 「こちらこそ…。キョン君を助けることができて嬉しいです」 とんでもない能力を身に着け、小未来から来た朝比奈さんは、こんな状況にも関わらず、笑顔で返してくれた。 『貴様!どうやってこの空間に侵入した!』 『彼』が叫んでいた。ご自慢の遮蔽空間を、あっさり三人に突破され、気が立っている様だ。 『貴様もあいつらの様に貫いてやる!』 『神人』は、朝比奈さん(みちる改)に触手を向けていた。その数、およそ百に近い。 だが、朝比奈さん(みちる改)が手を向けた瞬間、激しい音を立てて全てを撃墜していた。まるで長門の高速詠唱を利用しているかの如く。 「朝比奈さん、いつのまにこんな能力が…」 「私にも分かりませ~ん!」 泣きそうな顔で触手を迎撃していた。何故自分にこんなことができるのか、本当に困惑している様だ。 「キョン君、元の世界に戻る方法を実行してください!」 「朝比奈さん、あなたも知ってるんですか?元の世界に戻る方法を?」 「私には、あの巨人を倒すほどの力は無いみたいです!」 朝比奈さん(みちる改)は触手を撃墜しながら喋っていた。 「だから、キョン君、元の世界に戻れるよう涼宮さんにお願いしてください!」 「朝比奈さんもその方法が一番だと思うんですか?でも、先ほどやりましたが反応が無いんです」 「それは、キョン君の本心を見せてないからです!本気で願ってください!本来の世界でやり忘れていた事があるんじゃないんですか!!」 ―やり忘れていた事― …朝比奈さん(みちる改)の言葉で目が覚めた。俺はうわべばかりの願いをハルヒにしてたのか。だからハルヒは願いを叶えてくれなかった。 …わかった。本当に帰りたい、その理由をハルヒに伝える! 「ハルヒ!!」 俺は声を張り上げ、空に向かってハルヒに問い掛けた。 「俺はお前に言わなければいけない事があったんだ。だが、俺はそのことに気付くまでにかなり時間が掛かってしまったんだ」 『神人』の攻撃は朝比奈さんが抑えている。だが、休まる気配が無い。 「この争奪戦中、特に最終試練で、俺は言い様のない焦燥感と苛立ちが襲ってきたんだ。谷口に『俺が涼宮と付き合ってもいいんだな』と言われ、国木田に『涼宮さんには、僕よりお似合いの人がいる』と言われ、焦ったんだ。その時は何で焦ったか分からなかったんだ。どうしようも無いほど馬鹿だな、俺は。そして、古泉に悟られ、ようやくその気持ちに気付いたんだ」 『神人』と朝比奈さんは攻防を続けているが、俺はその音が聞こえてなかった。ハルヒに想いを伝えるのに必死だった。 「だから、最後の一人には、絶対負けたくなかったんだ。…しかし、負けてしまった。この時ほど、負けて悔しいと思った事は無かったよ。お前を他人に取られるのがこんなに気分が悪かったとは、自分が一番びっくりだ」 気のせいかもしれないが、『神人』の攻撃が少し収まった気がする。 「ハルヒ、俺は…お前が…」 そこで、俺は一端言葉を切ってしまった。 「キョン君、躊わないで!想いを伝えて!私何も聞こえてませんから!」 朝比奈さん(みちる改)の、聞こえているのに聞こえて無いと言う、フォローになってないフォローが飛んできた。 「―お願い…あなたの…意思が…総てを…握っている―」 「…僕に…教えてくれた事は…嘘だったんですか…?…お願いします…あなたの…想いを…涼宮さんに…」 ―みんなのためにも、俺のためにも― 『神人』からの攻撃が、一層激しくなる。 ―ハルヒが、俺たちを元の世界に戻してくれる様に― 「ううっ!」 朝比奈さん(みちる改)の顔が厳しくなる。 ―ハルヒに、伝える。俺の想いを― ―そして、俺は言った。 「―ハルヒ、この続きは、元の世界に戻ってからだ」 『………!!!』 三人が、声にならない声を上げていた。 「…キョン君…」 「………」 「…あな…たは…」 「…おいおい、勘違いするな。俺は言わないとは言ってない。この世界の中、ハルヒの夢の中で言っても仕方のないことなんだ。俺がハルヒに、面と向かって言わなければいけないんだ。現実世界の、本物のハルヒにな」 『………』 全員が、沈黙した。『神人』さえも。 「だから、俺たちを帰してくれ、ハルヒ。無事帰ってきたらお前に伝えたいんだ。俺の想いを」 ―刹那とも永遠とも思える時間が流れた。そして、閉鎖空間に亀裂が生じた― 『なにっ!この世界が崩壊し始めている!…そうはさせん!』 『神人』は、その崩壊を持ち堪えようと、自信の力を使用し、崩壊を修正し始めた。 「あなたの思い通りにはさせません!」 その時、復活した古泉が空を飛び、『神人』周囲を周り、攻撃していた。右腕、右脚、左肩…ことごとく切断していた。 『…!………!!』 「…時間移動はさせない。情報結合解除を申請する」 『!!うおああああ!!』 『神人』は煌めく砂のごとく、崩れ落ちていた。 『グァァァァ……ルァァァァ………ュァァ………………』 『神人』は、完全に砂となって消滅した。『彼』を残して。 ―瞬間、空が割れ、光が差し込んだ― ――俺が気を失っていたのはそんなに長くはなかったかもしれない。 横を見ると、長門、古泉、朝比奈さん(みちる改)も、同時に目を覚ましていた。 …やれやれ、助かったようだな。それに二人とも傷は大丈夫のようだな。 「ありがとうございます。あなたのおかげで、又もや世界は救われた様です」 …そんな大層なことはしてないつもりだったのだがな。そういえば長門、あいつの正体は、お前の親類か? 「…違う。あれは発展的異時間偏向改変種型情報集積体。その最後の生き残り」 …またわけの分からない名前が出てきやがった。 奴の特徴と、お前の親玉との関係を分かり易く教えてくれ。 「情報統合思念体と彼らは起源からして異なる。彼らは純粋な情報ではなく、時間軸の波動的振舞いから発生した情報の痕跡。彼らは時間平面を量子的に捉えるだけでなく、連続性のある波動的にも捕らえることができる。また、時間を平面だけでなく、積分してより高次の時間軸を容易に操作できる。それは、情報統合思念体でさえ困難な能力。情報統合思念体はその能力を危険なものとして調査していた。彼らが時間を操ることによって、宇宙の法則・情報を無に帰す可能性があったから。実際、彼らの中にそれを実行しようとするものが現れた。そのため、情報統合思念体は彼らの存在を危険なものと判断し、存在を消去しようと試みた。幾多の攻防の上、情報統合思念体は彼らを残り一体まで追い込んだ。この銀河の白色巨星―この惑星でデネブと呼ばれる恒星の辺りまで追い込んだのは分かっていたが、ずっと消息不明だった」 …追い込んだと思ったら、地球にまで逃げてきてたのか。 「…そう。彼の情報の痕跡を解析したところ、彼は四年前の7月7日、この惑星に降り立った。あなたが示した、あの模様によって」 げっ!俺が四年前のハルヒに命じられて書いたあの幾何学模様によって、本当に宇宙人を呼び込みやがったのか!あいつは! しかも織り姫と彦星を通り越して、百倍くらい遠いデネブに願いをかけるとは! 「あの日、あのメッセージに惹かれるまま、彼は周辺の民家に降り立ち、涼宮ハルヒに影響を受けたと思われる一人の少年に乗り移ってた。そして意識下位下までその存在を身を隠し、我々に気付かれない様にすると同時に、涼宮ハルヒの動向を観察していた。高校に入学してから涼宮ハルヒの情報噴出の増減が激しかったため、ついにコンタクトすることを選んだ。折しも人間の彼もまた同じ思いとなっていた」 …なるほど、それが彼なのか。その微妙な存在感をキャッチして、ハルヒはストーカーだと思ったわけか。 「人間の彼は、僕たち超能力者の候補の一人だったのでしょう。だから、涼宮さんに惹かれるものがあったのかも知れませんね。丁度、あなたの中学の時のご学友が、長門さんに惹かれたように」 …なるほどな。こいつもハルヒや宇宙人にひっかき回された、気の毒な奴だったんだ。 ところで、朝比奈さんのとんでもないパワーはどこから? 「朝比奈みくるから、彼らの情報の一部が集積されていることがわかった。恐らく、先程解除した情報結合の一部情報を朝比奈みくるに移設した模様」 「ひぇぇっ…!私そんなことされてたんですか…一体誰が…」 朝比奈さん(みちる改)が可愛い悲鳴を上げる。 「この情報は比較的共有性・類似性のある、時間平面理論を理解しているものに適用することができる。だが、器が有機生命体である以上、移設しても情報はやがて揮発してしまう。持って一週間。でもこの情報を今の時間の朝比奈みくるに移設する。恐らく、それが既定事項。…許可を」 長門は朝比奈さん(みちる改)を指差し、指示を仰いでいた。 「…わっ、わわわかわかわかりましたぁ!き、既定事項なら仕方ありましぇぇん!おね、お願いしますぅ」 半ば脅されているように了承する朝比奈さん(みちる改)。でも、なんで未来から時間移動の指示がなかったんだ? 「彼らは朝比奈みくる達が使う時間平面理論より、高次な理論を使用する。時間移動にジャミングをかけるのは容易い。人間が彼らと同じ理論を使用するためには、有機生命体であることを止めなければいけない」 なるほど、だから普通の未来人はTPDDを利用した時間移動ができず、俺の指示に従え、という命令を出したわけだ。恐らく、朝比奈さん(大)がな。 「…あなたの使命は終わったはず。…朝比奈みくるに帰還命令を」 そう言って、長門は俺に朝比奈さん(みちる改)の帰宅申請をした。…何で俺が? 「朝比奈みくるは、今、あなたの命令に絶対服従をしている。だからそれを解き、未来の時間に帰してやるべき」 そうだな。だが、絶対服従か…いい響きだ。別れる前にあんなことやこんなこ… …スマン、長門。冗談だ。だからそんな冷たい目で見ないでくれ。 「…そう」 コホン、では、朝比奈さん、あなたは元の世界に戻ってください。戻り次第命令を解除します。 「…わかりました。でも、何時がいいですか?」 前回は一分しか無くて大変だったから、今回は五分くらい見ましょう。あなたがあちらの世界から消えた、五分後でお願いします。 「…サー、イエッ、サー!」 朝比奈さん(みちる改)は、キュートな号令をあげた。もしかして、未来での上官の指示に対する返答は、あんな感じなのかもな。 …………。 …朝比奈さん(みちる改)は、人気のない、ステージの奥まったところで時間移動を行い、帰っていったようだ。 さて、ではこちらの朝比奈さん(みくる)に情報を埋め込むとしましょう。 俺がハルヒを寝かせた場所で、ハルヒと朝比奈さんは静かに寝息を立てていた。 ハルヒはともかく、朝比奈さんは起きていたはずだが…いや、何となく分かった。朝比奈さん(大)が気絶させたのだろう。 …既定事項とは言え、自分に変な能力が付随するってのに、大変だな、未来人は。 長門が高速詠唱を唱え、何やら手をあげ、円を描き、それを朝比奈さんに注入するような仕種を見せ、最後に、やっぱりというか、噛み付いていた。 ―そして一言、「終わった」 …それが合図だったかのように眠り姫二人が起き出した。 「…あれ!?みんな?え?争奪戦は??」 「…私、なんで寝てるんですか?涼宮さんを看病してたのはおぼえているんですが…」 俺は二人に説明をした。ハルヒの宣言に逆ギレした彼に、ハルヒと朝比奈さんが気絶させられ、俺と古泉が止めに入り、彼を説得した。 改心した彼は泣いて謝り、もう手出しをしないことを約束し、帰って行った。 ―どうだ?完璧だろう? しかしハルヒはジト目で、 「じゃあ鶴屋さんはどこ行ったのよ?」 しまったぁぁ!考えてなかった!! 俺の内心の焦りに、古泉が助け船を出してくれた。 「鶴屋さんは使用人、侍従その他の人と一緒に、避難してもらいました。長門さんは二人の看病をしてもらいました」 ……おい古泉、そんな出任せ言って大丈夫なのか? (大丈夫です。鶴屋さんは実際にそのとおりしてもらいましたから。あなたがこの世界から消えているうちにね) …なるほど、用意のいい奴だ。 「…古泉君が言うなら本当よね。わかったわ。キョン、信用してあげるから感謝しなさい!」 …なんで古泉は信頼して、俺は信用されないんだ。忌々しい。 ―その後、後片付けをして鶴屋さんにお礼を言って、帰ることになった。 俺はハルヒと帰る方向が同じで、途中迄暗い道ということもあり、一緒に帰ることになった。 『………………』 そして二人とも沈黙していた。…かなり気まずい空気である。 俺は閉鎖空間で言ったあの台詞と、続きの台詞を思いだしていた。 正直、恥ずかしい。その思いが、ハルヒへの会話を遮断していた。 「―ねぇ、キョン」 ハルヒが突然、声を掛けてきた、あぁ、な、なんだ? 「―何でもない」 ハルヒはそう答え、また黙ってしまった。―また沈黙。 やれやれ、どうするかな。いっそここで、あの続きを喋っちまうか?そう考え、俺は空を見上げた― 「おいハルヒ!」 「―っ!な、何!」 ハルヒは驚いた表情で俺を見ていた。 「上を見ろ」 「…え?…あ……すごい…綺麗…」 空の上には天の川が燦々と輝いていた。照明が少ない道を歩いているのが幸いした。 「あれがベガにアルタイル、そしてあっちがデネブだ」 「…あんた、以外と詳しいのね」 「まあな、この時期、親戚の子供たちに教えてやってるからな」 「ふーん…。…ねえキョン、あたしの願い、叶わなかったわね」 「願い?」 「あの七夕の願いよ」 「ああ…そうなるのか」 「でも、やっぱりいいわ。あたしはまだ彼氏なんていらないわ。今回みたいに、変な奴に付け回されることになると困るしね」 「…大丈夫だ。そうゆう時は俺が助けてやる」 「…え…うん…」 「…なあハルヒ。第二回争奪戦は何時開催だ?」 俺は唐突に話を変えた。 「…そうねえ…。やっぱり秋かしらね?スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋…何をするにしてもいい時期よ!いろんな試練を考えられるわ!あんたは今度は試験官兼警備員に昇格させてあげるわ!挙動不審なのがいたらあんたの権限で失格にしていいわ!」 「それは面白そうだが、丁重にお断りさせて頂く」 「何よ!あんたに否決権なん…」 「俺は、参加者として参戦する」 「え…?」 「参加者として参戦して、必ず優勝する。そして、お前に言うべきことあるんだ」 「…何…を……!?」 「…それはな………」 「…それは………?」 「それはな、優勝してからのお楽しみだ!」 「…!何よ!またからかったわね!」 「ははははっ、スマンスマン」 「……………さっき夢の中と同じじゃない………期待して損しちゃった………」 「何か言ったか?」 「え?何でもないわ。…わかったわ。参加者として参戦しなさい。…それからキョン、あんたにこれあげるわ」 ハルヒはそう言って、自分の袋から花束を取り出した。 「…これは…向日葵?」 「そう、向日葵よ。今日あんた頑張ってくれたから、そのお礼よ」 「どうしたんだ?この花?」 「あいつにもらった花よ。誕生花ばかり集めたんだって。でも誕生花って、色んな定義あるから一種類だけとは言い難いのよね。…正直、気持ち悪いから捨てたかったんだけど、花に罪はないしね。それに、あたしが花を受けとらなかったら、あんな野郎に育てられるのよ?それか捨てられるか。花が可哀相だわ。だから預かることにしたの」 「なるほどね。でも、何で向日葵だけなんだ?他にも色々あるじゃないか?」 「そっ…それは…その…あんたにでも育てられそうなのはこれくらいだからよ!それに今日の記念として家に飾っておけば、第二回争奪戦のやる気も湧いてくるでしょ?」 「…そうだな。…8月7日で思い出したよ。お前、もう一度七夕のお願いしてみろ。仙台の七夕祭りを始め、他の地方では今日やるんだ」 「そうなの?何で?」 「節句を月遅れでやる風習もあるんだよ。それに実は今日、旧暦の7月7日なんだ。七夕は本来旧暦で祝うものだ。もしかしたら今日の方が願いがかなうかもしれんぞ」 「……そうなんだ……」 ハルヒは暫く沈黙した後、 「…そうね。お願いしてみる!」 ハルヒは手を合わせ、星に願いごとをしていた。俺も同様に願いごとをした。 「…あんたは何を願ってたのよ?」 「…同じ内容さ」 「…また進学とか就職の願いなの?やっぱりあんたは俗物ね。もっと大きな願いを成就させてこそ、願いは意味があるものなのよ!」 ハルヒ得意の理論に、黙って頷く俺。 ―悪かったな。お前と同じ内容の願いでな― 心の中で、そう叫びつつ。 「…あんた、わかってるわね?」 願いごとを終えたハルヒが、俺に話しかけて来た。 「あんた今回のペナルティもあるし、自分で優勝予告を宣言したのよ。 団員としてあたしを盛り上げるためにも、あんた自信のためにも絶対優勝しなさい!そうでないと…」 ハルヒは、とびっきりの、そして、俺の一番お気に入りの表情である、あの100Wの笑みで俺に言った。 ―許さないわよ!― ※エピローグに続く
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ハルヒ「レジェンズを探しに行くわよ!キョン!」 キョン「一体なんだ、そのレジェンズとか言うやつは」 ハルヒ「まあ、レジェンズについて知りたかったらウィキペディアを見るといいわ!」 俺が確信を持って言えるのは夏休みの時、レジェンズ 甦る竜王伝説 というアニメが再放送されていたということだ。 妹はきゃあきゃあ言いながら見ていたが、ハルヒときたらわざわざいるはずもないウインドラゴンやらを探そうというのだ。 あのアニメがこの地区で再放送されなきゃ良かったと思った、わざわざ特番組むなよテレビ局。 ハルヒ「何ブツブツいってるの?言っとくけど、本物を見つけるまで探すのよ!」 キョン「やれやれ」 みくる「キョン君、れじぇんずってなんですかぁ?」 キョン「ああ、それはですね・・・」 俺は朝比奈さんにレジェンズをウィキペディアで教えてあげた、シロンやランシーンといった、レジェンズの画像も見せてあげた。 朝比奈さんはシロンとランシーンをみるなり、 みくる「ふぇぇぇ、過去にはこんなモンスターがいたんですかぁ?」 キョン「大丈夫ですよ、これは単なるおもちゃやアニメの中での話です」 みくる「ふぅ、よかったです」 ハルヒ「ちょっと!みくるちゃんにいないなんて言わないでよ!本物がいるかもしれないじゃない!」 いたらそれでいて永久にソウルドールの中で眠っていてもらいたいね。 古泉「でも、いないという可能性は否定できませんよ」 さらっとそういうことを言うな。 古泉「涼宮さんは願望を実現する能力があります、もし彼女がレジェンズがいて欲しいと願ったら・・・」 キョン「バカな、俺も子供のころ一時期レジェンズにハマったが、今じゃあんな物によく興味が沸いたな、と思ってるさ」 俺が古泉とこそこそ話しているのに気付かなかったのか、ハルヒはカバンから何やらゴソゴソと取りだしたのはなんとあのレジェンズを召喚する為の道具、タリスポッドだった、どこで見つけてきた、そんなもの。 ハルヒ「リサイクルショップで500円で買ってきたのよ、大丈夫よ、ちゃんと人数分あるから!」 どこが大丈夫なんだ。 ハルヒ「いい?レジェンズはソウルドールという結晶に封印されているのよ、たぶんそれは何処かに封印されていると思うから、次の土曜日に駅前に集合ね!」 俺は貰ったというより、押しつけられたと言ったほうがいいタリスポッドをカバンの一番奥に入れて、そのまま部室を後にしようとした、が、俺の制服の裾を、長門が引っ張っていた。 キョン「どうした?長門?」 長門「レジェンズは実在する」 キョン「ま、まさか、長門、お前最近ゲームにハマってきたからって、それはないだろう」 長門「いる」 俺は長門の、「いる」という言葉にビビった、確かに、長門は幾度もなく俺のピンチを救ってきた、こいつがいると言ったら、ホントにいるような気がしてならない。 キョン「まあ、探してみていないか調べるぞ」 長門「・・・・・・」 気のせいだろうか、長門の顔が少し寂しそうに見えた。 そして、土曜日がやってきた!・・・・・・来なくてもいいのに。 俺は約束通り駅前に集合した、案の定。 ハルヒ「遅い、罰金」 一番遅いのは俺だった、どうやったらこの三人より先に来れるのだろうか、それが知りたい。 そして、じゃんけんで班を決めた、俺はハルヒと一緒の班で、後の三人はその三人で班になった。 俺はハルヒに連れられ神社にやってきた、何故神社なんだ。 ハルヒ「ソウルドールって、案外簡単に落ちてる物じゃないのよ、こういう所に封印されている事が多いのよ」 この神社は何時からレジェンズ封印されているソウルドールの在りかになったのだ、ここはただの神社のはずだぞ。 そして、30分も探したが、神社にソウルドールは無かったようだ、当たり前だが、そんなもんが封印されてたら今頃誰かが取っていってるはずだ。 ハルヒ「おっかしいな」 石の上で跳ねながらそう言った。 キョン「諦めて帰ろうぜ」 ハルヒ「はぁ!?やる気あんの!?」 キョン「やる気とか、そういう問題じゃないだろう」 ハルヒ「せっかくタリスポッドを買ってきたのに」 キョン「俺・・・帰っていいか?」 ハルヒ「もう一か所だけ、探してないところを探してみる」 しょうがない、もう少し付き合ってやるか。 ハルヒに連れられて来たのは、神社の裏にあった小さな祠だった。まさかその祠の中を探すんじゃないだろうな。 ハルヒ「ここに無かったら来週もやってやるわ」 来週もやるのかよ。 ギィーと古臭そうな音がして、祠の扉はたやすく開いた。 ハルヒは嬉しそうに飛び上がり、 ハルヒ「見つけたわ!ソウルドールよ!」 俺はこんな所におもちゃを置いた奴を憎むね、誰かが隠して忘れただけだろ。 ハルヒ「はい、これはあんたにあげるわ、あたしは他のを探すわ」 こんなもんを押し付けられても俺は嬉しくもないぞ。 ハルヒと言おうと思った時、ハルヒが俺を殴った。 キョン「何をす」 ると言おうとした時、ナイフが後ろの木に刺さった、誰だ、こんな物騒な物を投げたのは。ともかく、ハルヒには今回だけは感謝しよう。 そこにいたのは、思いもよらない人物だった。 朝倉「おしいわね、もう少しでそのソウルドールはあたしの物だったのに」 死んだはずの朝倉涼子がそこにいた、いや待て、この状況は何だ? ハルヒ「キョン!絶対にそのソウルドールは渡さないでね!」 こんな物を欲しがるのに何故俺を殺そうとした、朝倉は甦った時に気が狂ったのか? 朝倉「そのレジェンズは貴女達にはもったいないわ、あたしが使う」 キョン(ダメだこいつ・・・早くなんとかしないと・・・) ハルヒ「キョン!あんたのタリスポッドでレジェンズを召喚しなさい!きっと勝てるわ!それと、召喚する時はリボーンと言って、戻す時はカムバックと言うのよ!」 召喚など出来るはずも無いと思ったが、一応やることにした、ハルヒのご機嫌を損ねたら閉鎖空間が出来てしまうからな。 キョン「リボーォォォン!」 俺は何も出てこないというオチを期待していたのだが、そうもいかなかったようだ。 キョン「!?」 ハルヒ「!?」 朝倉「な、なんですって・・・」 俺のタリスポッドから召喚されたのは、飛行帽を被り、宝石がついた手袋をはめた、純白の羽を持つドラゴン・・・。 ウインドラゴンのシロンだった。 続く
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編集する。 2021-12-08 18 57 18 (Wed) - 涼宮ハルヒ2期とは、涼宮ハルヒの憂鬱のアニメ2期。 あらすじ 登場人物 用語 リンク 出典、参考 あらすじ 登場人物 涼宮ハルヒの登場人物 用語 涼宮ハルヒの用語 リンク 編集する。 2021-12-08 18 57 18 (Wed) - 出典、参考
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涼宮ハルヒの大成ーSuper Blu-ray BOXー 初回生産限定版 発売日:12月18日 ・BOXはいとうのいぢ10周年記念描き下ろしイラストとジャケットイラストは京都アニメーション、描き下ろし! ・これまでのコンプリートBOXには収録されなかった映画「涼宮ハルヒの消失」、 ネット配信アニメ「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 にょろーんちゅるやさん」に加え 「涼宮ハルヒの激奏」のイベント映像も収録される完全BOX仕様!! ・第一期シリーズを5.1chバージョンとして音響を再構成! 2010年2月公開。涼宮ハルヒの憂鬱 2009 の続編。 http //www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/movie/index.html 総監督 石原立也 監督 武本康弘 原作・脚本協力 谷川流 脚本 志茂文彦 原作イラスト・キャラクター原案 いとうのいぢ キャラクターデザイン・超総作画監督 池田晶子 総作画監督 西屋太志 美術 田村せいき 美術監督補佐 細川直生 色彩設計 石田奈央美 色彩設計補佐 永安真由美 撮影監督 中上竜太 撮影監督補佐 浜田奈津美 設定 高橋博行 特殊効果 三浦理奈、津田幸恵 編集 重村建吾 音響監督 鶴岡陽太 音響効果 森川永子 録音 矢野さとし 録音助手 砂庭舞 音楽 神前暁、高田龍一、帆足圭吾、石濱翔、エリック・サティ オーケストレーション 多田彰文、松尾早人、浜口史郎 アニメーション制作 京都アニメーション 制作協力 アニメーションDo、Studio BLUE レイアウト監修 木上益治 コンテ 石原立也 武本康弘 高雄統子 演出 北之原孝将 米田光良 坂本一也 高雄統子 山田尚子 内海紘子 作画監督 植野千世子 秋竹斉一 池田和美 高橋真梨子 門脇未来 堀口悠紀子 高橋博行 ■関連タイトル 涼宮ハルヒの大成ーSuper Blu-ray BOXー 初回生産限定版 Blu-ray 涼宮ハルヒの消失 限定版 Amazon.co.jp限定スチールブック仕様/完全生産限定版 劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック 公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失 涼宮ハルヒイラストレーションズ 春・夏 ライブDVD 涼宮ハルヒの弦奏 原作・角川スニーカー文庫 涼宮ハルヒの消失
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俺は、ハルヒの事が好きだが、告白するなんぞ出来ない…… 何故なら、俺はツンデレだと自覚している。 それなのに、いつものように生活している…… 「涼宮ハルヒの憂鬱キョンとハルヒの絆」 今の季節は夏、俺は今、学校へ行ってる所である。 谷口「よぅ!キョン!」 声掛けるな、暑苦しい 谷口「何言ってんだ?クールな口調になってるぞ」 なってない、なってない 場所変わって、教室 入ると、ハルヒがいる かなり暇なようだ 「よぅ」 ハルヒ「あ、キョン、放課後ミーティングあるからね、遅れないように!」 「はいはい」 と、言う時に岡部が来た 放課後、俺はいそいそとSOS団部室へ行った。 入る前にノックして入るのが俺のルールだ みくる「は~い、どうぞ」 我らアイドル、朝比奈みくるの声である。 う~ん、可愛い声ですね! 入ると、朝比奈さんと古泉と長門……そして、ハルヒがいた。 古泉「こんにちは」 長門「……(ゴクリ」 みくる「こんにちは、キョン君」 ハルヒ「遅い!ミーティングするわよ!」 やれやれ……挨拶無しですか、ハルヒさん いつものようにミーティングをやり、終わった。 そして、長門が本閉じた時が帰る時間になるのだ。 帰ろうと思ったのだが…… ハルヒによって呼び出された。 ハルヒ「キョン、あんたは残って……話したい事あるの」と言われた。 このまま、帰ったら死刑にされるから仕方なく了解した。 今、部室には俺とハルヒだけだ 「……」 ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「…ねぇ、キョン」 「何だよ」 ハルヒ「…あたしの事どう思ってるの?」 「?俺がハルヒの事どう思ってるかってか?」 ハルヒ「…うん」 唐突過ぎて呆然してしまった。 俺が、ハルヒの事どう思ってるのかって? ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「……」 長い沈黙である。何分経ったが分からないぐらいだった……そして、俺は沈黙を破った 「…最初は変な奴かと思った」 ハルヒ「!?」 「しかし、俺は、お前と一緒にいると楽しいと分かった」 ハルヒ「……キョン」仕方ない、ここで告白しようか……言うんだ!俺よ! 「……ハルヒ、俺はお前の事……」 キィィィィ…… な、何だ!?この耳鳴りは!? ???「やっと、見つけたね」 この声……まさか!? ???「やっと、見つけたね」 「お前はまさか……」そう、俺を2回襲い、殺そうとした………それが 「朝倉涼子!」 朝倉「当たり、流石、キョン君ね…私の事を覚えてるなんで」 「何で…何でこんな所にいるんだ!」 朝倉「私は、キョン君と涼宮さんに会いたかったの」 ハルヒ「朝倉さん、あんた、カナダへ行ったんじゃあ……」 朝倉「お久しぶり、涼宮さん……残念だけど、カナダ行ってないし……それに」 と、部室が異空間に変わった。 朝倉「私は普通の人じゃないわ」 「!?」 おぃおぃ、マジか? 朝倉がナイフ取り出したぞ…… ハルヒ「あ、朝倉さん……」 ハルヒは、呆然してるな… ま、仕方ないだろ?誰でも信じたくない出来事で呆然するのは当たり前… じゃなくで、こういう状況はどうすんだ……気付いてくれよ、長門! 朝倉「ふふふ……どうするの?」 くっ、逃げるしかないか…… おぃ、ハル…… ハルヒ「これは、どういう事?ねぇ、キョン!」 ちっ、ハルヒが混乱に陥ってるな… 「ハルヒ!逃げるぞ!」 ハルヒ「キョン!」 俺は、ハルヒの手を捕まって部室から逃げた。 とにかく、稼ぐんだ!時間を稼ぐんだ!長門! 朝倉「逃がしはしないわ」 逃げる、逃げる、とにかく逃げる…… …おかしい、階段が見当たらんぞ……これがエンドレス廊下かぃ! 笑えないな 朝倉「そう、笑えないわ」 いつの間に!? 朝倉「今度こそ、あなたを殺して、ハルヒを目覚めて貰うわ」 くっ、ここでゲームオーバーか! 朝倉「死になさい」 朝倉のナイフを俺の方へ投げる… ???「……させはしない」 この声は! 「長門!」 長門「…遅れてゴメン」 朝倉「ふふふ、まだ現れたね、有希」 長門「あなたは、私が消したはず」 朝倉「私は諦めない主義なんでね」 長門「あなたは、前より強くなった」 前より強くなった!?と言う事は、前のようには出来ないって事か!? 長門「…そう」 冗談じゃねぇ!と言う事は、この異世界から脱出するしかないのかよ! 長門「…そう」 朝倉「脱出しても無駄、私が追っかけるわ」 長門「…一つ出来る事ある」 「それは、何だ?」 長門が言ったのは、次の事である。 朝倉を無へ帰る事 つまり朝倉と闇に包まれた世界へ行けってか…… 「で、それはまだなのか?」 長門「……もう完了した」 なるほど、長門ってなかなかの策士だ。 長門「出口を開ける」 と、長門が呪文を唱えて、何も無い空間から出口が現れた。 「行くぞ、ハルヒ」 ハルヒ「う、うん」 ハルヒを出口まで連れて行く時に、突然、キョンは腕を捕まれた 朝倉「させない」 キョン「な、放せ!」朝倉「暴れても無駄よ」 ハルヒ「キョン!」 くっ…………仕方ない… 「ハルヒ!長門!出口まで走れ!行くんだ!」 ハルヒ「で、でも!」「行くんだ!」 ハルヒ「……分かった、行こ、有希!」 と、ハルヒは、長門を連れて走った… そう、それでいい… 朝倉「何をする気?」「お前を、道連れしてやる!」 朝倉「ま、まさか!?」 周りの空間が闇に染まって来る ハルヒ「キョン!何してるの、早く!」 ハルヒ、長門…脱出したな… 長門「…キョン」 寂しがるな、長門… ハルヒ「キョン!ねぇ!」 ハルヒ…今までありがとな… 「っ!ハルヒ!お前は、俺の……」 ハルヒ「キョーンッ!」 ――恋人だ 異世界の扉が閉ざされ、元の部屋に変わった。 そして、キョンは行方不明に… キョンが消えた… あたしが好きだったキョンが消えた… 「有希!キョン救えるでしょ!」 長門「…救える確率は低い」 「そ、そんな!?」 長門「彼の事は、病気という理由しておく」 「……」 長門「…ゴメン、ゴメンなさい」 「!ゆ、有希…」 泣いてる…あんな無感情だった有希が無いてる 「あ、あんたは悪くないのよ…有希、いいの、自分で責めないで…」 長門「うん…でも、ゴメンなさい」 「いいの!二人で救う事だけ考えようよ……うっ、ううっ…」 長門「……」 お互い、抱き合って泣いた…神はあたし達を見守ってるだろうか… 次の日 岡部「えー、●●●は病気で欠席だ」 クラス一同「エェーーッ!?」 ……キョン キョンの机… キョンの置き勉… …キョン 「よぉ!」 「映画、成功しよう!」 「やれやれ…」 「SOS団の事頼むぜ」 「俺、実は…ポニーテール萌えなんだ」 「ハルヒ、それ似合ってるぞ」 「ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ……」 会いたい、キョンに会いたい… 阪中「どうしたの?ハルヒさん……泣いてるの?」 え、泣いてる? あたしが泣いてる…… 会いたい、キョンに… 授業が終わり、放課後になり ハルヒは部室へ行き、古泉やみくるに昨日の事を伝えた。 みくる「そ、そんな…キョン君が…」 古泉「キョンさんが行方不明に…」 二人も驚いてた。仕方ない事だったのよね…いえ、仕方なくない! 長門「ゴメンなさい」 「有希は悪くないのよ、全て…あの子が悪いのよ」 長門「……」 あたしは、信じてる…キョンは今どこにいるかを! それに… 「古泉君、みくるちゃん…あんた達は、やっぱり…」 古泉「…気付いてたのですか?」 みくる「そうです、私は未来人です」 そっか…有希が宇宙人だとすれば、この人達は…と思ってたけど… あの時、キョンが必死に言ってたのはこれだったのね… 「…古泉君、みくるちゃん、有希、あたしは何者なの?」 みくる「あなたは…時間を変える能力あります」 長門「こっちは、三年前…情報を爆発させたのは…あなた」 古泉「しかし、我々…『機関』では、あなたの事を「神」だと思ってる者がいます」 つまり、あたしは何者がはっきりしてないって事ね 古泉「恐らく、そうなります」 ん?と、言う事は 「あの時…そう、キョンとあたしがいた空間はもしかして?」 古泉「空間?巨人がいっぱい出て来た空間の方ですか?」 「うん、そう」 古泉「あれは、「閉鎖空間」と言われる空間なんですよ。あなたのイライラで発生した空間です… あの巨人は「神人」と呼ばれる者なのです。アレは、あなたの不機嫌で出来た者達…あなたは夢だと思ってますが、違います。」 「え!?じゃあ…アレは…夢じゃないって事?」 古泉「えぇ、そうなります」 な、ちょ…え!?うそ!?あのキスはゆ、夢じゃないの!? 古泉「何があったか知りませんか、夢ではなく現実です。あなたの不機嫌が爆発したら…ここは無くなる可能性あります」 え?あたしの不機嫌で世界が無くなる? 「それは、世界崩壊って事なの?」 古泉「…はい」 そんな!あたしは知らないまま生きてたと言う事なの… みくる「涼宮さん、あなたは知らないまま生きて欲しいと望んで来ました…まさか、この時に告白するとは思いませんでした …すみません」 「みくるちゃん…いいの、あたしは気にしてないわ」 長門「私はあなたを守る」 「ありがとう、有希…ありがとね…」 と言いながら、あたしは、ふと、窓の方へ見た… 橙色で染まってて美しかった。 キョン、今どこにいるの… ???「うっ…こは、ど…だ…さ…い…みん…会い…い…ハ……ハル……ルヒーっ!!」 ハッ!? …ゆ、夢か… あれから、一ヵ月後…あたしは元気になって通っている。 でも、家では元気じゃない… 泣いた日だってある… 「んー?何だったのかしら?あの夢…」 時々、声が途切れて、何で言ってるのか分からなかった… なのに、どこが…懐かしい感じがしたわ… 何だったのかしら? SOS団室 「やっほー、みくるちゃん!お茶!」 みくる「は、はい…ちょっと待って下さいね」 みくるちゃんのメイド姿を見ると、嫌な夢忘れられるわ… 古泉「こんにちはー、おや?ハルヒさん、今日も大丈夫ですね」 「あったり前よ!それに比べて、キョンなんか…あ…」 古泉「…すみません」 みくる「…お茶置いときますね」 「あ、うん…」 そっか、今はキョンいないんだ…あたしって、まだ思ってるんだな… 「……キョン…」 まだだ、あたしって弱くなったな…キョンがいたら、きっと笑ってしまうよね 長門「……」 古泉「おや?長門さん、顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」 長門「う、うん…」 みくる「本当に大丈夫なんですか?」 長門「大丈夫」 と言って、立ち上がった。 古泉「おや、帰るんですか?」 長門「…(ゴクリ」 と、有希は歩き出した途端 「…ぁ…」 ドサッ! 有希が倒れた… 「!…有希っ!有希!有希!」 みくる「有希さん!」 古泉「保険室へ行きましょう!」 保険室 「有希、どうしたのかしら?」 みくる「そうですね…」 シャッ カーテンを開く音だ。 古泉「先生から聞きましたが…長門さんは、寝不足に疲労が溜まってたんですよ」 「寝不足と…」 みくる「疲労?」 古泉「えぇ、そうです」 「な、何で…有希が?」 古泉「…ハルヒさん、心当たりありますか?」 心当たり?……まさか… 「ずっと、キョンを探してたの?」 古泉「……」 みくる「……」 有希…有希も、まだキョンの事を… 「有希…何で、何で…あたし達と相談しなかったのよ…ズルイわよ!あたしは、団長なんだからね!…うっ、うっううっ…」 みくる「ハルヒさん…」 古泉「……」 有希は、今も寝てる…優しい天使の様に …よし、決めた! 「皆!よく聞いて!」 古泉「はい?」 みくる「何ですか?」 「あたし達と一緒にキョンを探そう!きっと、どこかにいるわ!」 みくる「涼宮さん…」 古泉「これは、良い決心ですね…僕も探しましょう」 「皆、頑張ろうね!」 長門「私は…まだ諦めてない…私も探す」 と、有希は起きてた 「有希!ちゃんと寝ないとダメよ!」 長門「大丈夫…時間を早くした…もう平気」 有希… みくる「行きましょ!」 みくるちゃん… 古泉「僕も一生懸命、探しますよ」 古泉君… ???「ハルヒっ!」 「!…え?」 周りを見ると誰もいない… どういう事?あ! (???「ここは、どこだ…寒い…皆に会いたい…ハルヒ、ハルヒ、ハルヒーっ!」) あの夢、まさか…キョン!? 皆に、夢の事を話すと 古泉「夢の中にキョンさんか?」 みくる「まさか、キョン君は…今、そこにさ迷ってるって事?」 「かもしれないわ…キョンは多分…」 長門「その可能性ある」 古泉「……」 みくる「……」 「…有希、何とか出来ないの?」 長門「ある」 古泉「え?それは…まさか?」 みくる「どういう事ですか?」 「古泉君、何か分かったの?」 古泉「…閉鎖空間へ行き、欠けた場所あれば…そこが異空間の入り口です」 欠けた場所? 「はい、例えば…そこに壁があるとすれば、閉鎖空間では壁では無くなってる…と言う事です」 つまり、あった物が無いとすれば、そこが異空間への入り口って事ね 「で、どうやって行けるの?」 古泉「ご安心を、僕の出番ですから」 古泉「ここでいいでしょう」 ここは、校庭…何でこんな所に? 「って、ここで何か出来るの?」 古泉「はい…その前に、あなたに言いたい事あります」 「何?」 古泉「僕とみくるさんに、長門さんは行けません…何故なら、あの空間はあなたの物ですからね」 「……」 古泉「一人で探せますか?」 「探せるに決まってるでしょ!」 古泉「そう聞いて、安心しましたよ…さぁ、目を瞑ってください」 目を瞑る?取りあえず、言われた通りにやるしかないわね… 古泉「失礼ですか、手を貸しますよ?」 「うん」 一歩、二歩、三歩… 古泉「目を開けて下さい」 ……ここは、閉鎖空間ね 古泉「後は、頑張って下さいね」 と言い、古泉君は消えた… …さて、キョンはどこにいるのかしら 一年五組の教室… 保健室… 食堂… トイレ… 屋上… 体育館… 色々、探したけど…見つからなかった… 「ふー…ここにも無いわね…と言う事は…SOS団室だけか…」 SOS団室のある校舎へ行き、階段に登り、到着した。 ここなら…見つかるはず…お願い! と、あたしは思いながら開けた… 何にも無い… 「う、うそでしょ…どこにも無いわよ…」 ん?何か…何か変ね… ロッカー…コスプレ服…盤ゲーム…お茶入れ…ヤカン… あ、PCが無い… 「どういう事?」 よく調べると…PCがあった机の向こうに入り口あった… 「入り口から見れば無かったのに…後ろにあったなんで…」 そう、そこが異空間への入り口… 何だが、怖い…怖くで行けないよ…キョン…あたしは本当は気が弱いのよ…キョン… 「うっ…ううっ、ひっ…怖いよぉ…」 カダンッ! 「ひっ!……な、何?」 周りを見ると、床に何か落ちてた… 「…これは…」 よく見れば、キョンの鞄だった… キョンが行方不明になって以来、鞄をおばさんや妹ちゃんに返してなかったっけ… キョン… 「ん?鞄の下に何かある…」 と、鞄の下にある物を取って見ると… 一冊のノートだった… 「何で、こんな物か?…日記?」 ノートの表面にデカデカと「日記」と書かれてあった… とにかく、開いて見る ○月○日 変わった女がクラスにいた。そいつの名は涼宮ハルヒ。 しかし、可愛かったな…ポニーテールすれば物凄く可愛いよな ○月○日 ちょっと話し掛けてみた…すぐに終わっちまった… まったくよ、こんな可愛い子がいるのに勿体無くね? ○月○日 ハルヒを観察したら、分かった…こいつ、曜日ごとに髪型を変えてるな…うむ、面白い ○月○日 SOS団か…まぁ、仕方ないか… 間違った方向へ行かなきゃいいんだがね… キョン…こんな事を日記書いてたの? ○月○日 夢を見た…ハルヒとキスする夢を…うわぁ、恥ずかしい!フロイト先生が笑ってしまうぐらい恥ずかしい… でも、味が良かったな… キョン…嬉しかったの? キョン… 最後まで読もう… ふー…次のページへ行くかな… ベラ・・・ 「ん?これは…最近の」 ふと、手が止まった… ○月○日 ハルヒを見て思った…ハルヒは確かに可愛い。 怒る顔も可愛かった…だけど、ハルヒと一緒にいるだけで楽しい… だから、俺はつい嬉しくなる…ハルヒはハルヒらしく行動してくれると俺は安心する… めちゃくちゃな行動をするハルヒが好きだ。気が強いハルヒも好きだ。 俺は、素直に「好きだ」と言えない…それでも、愛してる… ハルヒ、気付いてくれるのだろうか… キョン…あたしの事をそう思ってたの!? 「キ、キョン…あぁ、会いたい!会いたいよ!…気が強いハルヒが好き?…でも、あたしは…本当は、気が弱いのよ!」 あたしは、泣いた…物凄く泣いた…会いたくでも気が弱いまま… (キョン「ハルヒ、お前は!俺の……」) !? (――恋人だ) キョンは、こう言ってたわ…あたしを恋人してくれたんだ…あたしは、頑張るよ!いつまでも気が弱いままじゃダメだよね…キョン、待ってて!) と、あたしは異空間へ入った。 暗い… 上と下が分からない… 寒い… キョン…どこにいるの… フワッ! あたしがいた暗かった異空間が、いきなり明るくなった。 「な、何なの?」 ここは、あたしが通ってた東中… そして、今いるのは、校門の辺り… 「…!!」 「……!」 校庭の辺りに声が聞こえる… あたしは、そこへ行って見た 「あ、あれは」 そう、あたしが見たのは…中学校頃のあたしと…ジョン・スミスだった。 どうやら、線引きをやってる最中だった。 どうやら、線引きが終わったようだ 「ねぇ、あんた。宇宙人、いると思う?」 「いるんじゃねーの」 「じゃあ、未来人は?」 「まあ、いてもおかしくはないな」 「超能力者なら?」 「配り歩くほどいるだろうよ」 「異世界人は?」 「それはまだ知り合ってないな」 「ふーん」 あの男…確か… 「ま、いっか」 「それ北高の制服だよね」 「まあな」 「あんた、名前は?」 「ジョン・スミス」 ジョン・スミス!?ジョン・スミス…まさか…キョン? そうか、キョンは3年前へ行ったんだ… キョン…あたしの知ってるジョン・スミスだったんだ… その後、昔のあたしとジョン・スミスが去った後、校庭へ行った。 そっか、これを書いたのは…キョンだったんだ… ありがとう、キョン… と、その時にあたしの後ろから光が放った。 「え?」 あたしは、振り向いた その光が人の姿に変わった…そして、光が消えた。 「え?あ…」 目の前にいた…あたしの会いたい人がいた… キョン「久しぶりだな、ハルヒ」 ハルヒ「キョン!」 あたしは思わずキョンへ駆け寄り、抱き付いた… 「会いたかったよ!キョン!」 キョン「スマンな、心配掛けて…」 いいの…キョンがいたから、謝らなくでいいの! 「キョン…」 キョン「…ここは、3年前の七夕だな」 「うん」 キョン「さっき、気付いたんだろ」 「うん!」 キョン「……」 ハルヒ「……」 お互い見つめ合ったまま、動かない… キョン「ハルヒ、ただいま」 ハルヒ「おかえり、キョン」 ???「あら?いい雰囲気ね」 !?あの人が来た!?学校の屋上? と、二人は学校の屋上を見る キョン「いい加減しろ…朝倉涼子!」 朝倉「あら、張り切ってるね?キョン君」 いきなり、キョンサイドへ切り替わりまーす! 朝倉「ふふふふ…どうするの?」 ハルヒ「キョン…」 あぁ、大丈夫だ!ハルヒ、俺が守ってやるさ 「朝倉!俺は思い出したぞ」 朝倉「何を?」 「長門から聞いた事ある。この異空間は自分の意思で物を変えれると聞いた! だが、それも条件あるんだろ?」 朝倉「あら、有希ってお喋りね」 「その条件はここの異空間とはピッタリらしいな?しかも、この異空間はコンピュータ世界だろ?」 朝倉「で、それがどうしたの?まさか、物を出すとか?」 「大当たりだ。普通の人でも出せるらしいよな?だったら!」 俺がイメージした通りに物が現れた…それは銃だった。 それを取って、素早く構えた。 「もぅ、お前の思い通りはさせねぇ!そして、お前を撃つ!」 朝倉「!?」 「……」 朝倉「ふふふふ、あーっはははは…この私に何か出来るというの?」 朝倉「ふふふふ…行くよ!」 と、朝倉の手からナイフが出て来た。 「くっ!」 銃で防御する俺 ハルヒ「キョン!」 「ハルヒ!お前は隠れてろ!」 ハルヒ「う、うん」 キン! 朝倉「ハルヒを逃してどうするのよ?キョン君!」 キン! 「ハルヒは俺が守る!朝倉、お前がやってる事は間違ってる!」 キンキン! 朝倉「それがどうしたのよ!私が間違ってる?それは無いわ」 キンッ! 鍔迫り合いする両者 「それは、お前のエゴだって…分かってるのか?」 朝倉「さぁ?分からないわ」 「ふざけんな!」 と、俺は弾き返した 朝倉「私は、ふざけてないわよ?」 朝倉「あなたがいる世界はつまんないでしょ?」 「つまらくはない、むしろ、楽しいさ」 朝倉「あら?我慢してるの?」 「…俺は、ハルヒがいる世界が好きだ…だが、お前が思うような世界は欲しくない」 朝倉「あら、ハルヒ、ハルヒって言うけど、そんなに好きなの?」 と、朝倉は「やれやれ」のボースをしてる。 「確かに、好きだ…あいつは気が強くでも、本当は気が弱いところがある…それでも守りたい…」 朝倉「ふーん…」 「ハルヒはハルヒだ、お前の思うようにはさせない!」 朝倉「でも、もう遅いよね…どの道、あなたが死ぬのだから」 「それはどうかな?」 朝倉「え?影?まさか!?」 朝倉は、月の方へ振り向いた 「遅かったな……長門!」 そう、月を背景して現れた 長門「情報結合の解除を申請する」 と長門が言うと、朝倉のナイフが消えた 朝倉「そ、そんなバカな…」 説明しよう!キョンは戦略を考えていたのである! 銃を出した後、長門の事を思い浮びながら戦ったと言う事だ! 時が来たら、それを実行したのがキョンの策…流石、策士は伊達じゃないぜ! 朝倉「くっ…」 朝倉は、少しよろめく 「朝倉!お前の負けだ!」 と、銃を構えた 朝倉「くっ!これが私の負けなのね…」 「朝倉!これで…終わりだぁっ!」 と、銃の引き金を引く バァン… 朝倉「あぁ…私の…ま…けね…」 朝倉は涙の泣かしながら、結晶化になり…消えた。 「…長門、ありがとな」 長門「…(ゴクリ」 …さて、ハルヒの所へ行くか… キョン…あんたの想いは分かったよ… あたしの想い…キョンの想いは繋がってたんだね… キョン「ハルヒ!」 「キョン!…戦いは終わったの?」 キョン「あぁ、終わったよ」 「……」 あれ?何で有希がここに? 長門「私は、ここから出る…後は、あなた期待」 と言って、消えた。 あぁ、CGが何かのプログラムかな? キョン「…ハルヒ、ここで言わせて貰う」 「何?キョン」 俺の想い…まだ変わってない…今なら言える! 「ハルヒ、お前の事好きだ!付き合ってくれ!」 キョンの想い…確かに受け取ったよ…あたしの想い受け取って… 「あたしも好きだよ!あんたじゃないと…ダメなんだからね…」 ハルヒ、確かにお前の想いは受け取ったよ… 「ありがとう、ハルヒ」 ハルヒ「こっちもありがとう、キョン」 「ねぇ、キョン」 「ん?何だ?ハルヒ」 「キ、キスしてくれない?」 「…あぁ、するよ」 と、お互いの唇が重なる ハルヒは可愛い。 キョンは優しい。 何かあろうと守ってみせる。 何かあっても守りたい。 そして、俺は…それぞれの想いを今、一つになる。 そして、あたしは…それぞれの想いを今、一つになるよ。 俺は、あたしは、愛されるより愛したい。 そして、生きて行きたい。 ――永遠に エピローグ あれから、一週間後…あたしは元気に通ってる。 キョンに会いたいから楽しみに通ってる。 俺は、ハルヒに会うため楽しみに通ってる。 色々あったけど…これで、恋人同士になるな… 「おぅ、ハルヒ」 「あ、キョン」 俺は守りたい奴がいるから… あたしは会いたい人がいるから… 「おはよう!」 「おはよう!」 俺たちは あたしたちは 強い絆を結ばれているから 完