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週刊山崎くん 週刊山崎くん 2023年10月~23年12月 @RKK熊本放送 + ... 共通事項 放送時間…水曜19 00~20 00 白岳、KMバイオロジクス 以外カラー表記 固定スポンサー 2023年10月11日 CC 0’15”…らくのうマザーズ 本編スポンサー 1’00”…本格米焼酎 白岳、千里殖産株式会社、福田屋 熊本和栗庵 0’30”…えがお、Yupiteru、メガネのヨネザワ、桜十字、KMバイオロジクス、現場市場 0’15”…日専連ファイナンス(PT)、新星(PT)、佛壇の古屋鋪(PT)
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久板卯之助君を偲ぶ 山崎今朝彌 久板君の事が何か書いてないかと山崎伯爵疳作集『弁護士大安売』を出して見たら、日比谷警察人権蹂躙訴状の項に告訴人久板卯之助、望月桂、告訴代理人山崎今朝彌、被告人日比谷警察署長警視、増田傳次郎外大勢、傷害罪の告訴として、コンナ一節があつた。 一、大正九年十二月十日は日本社会主義同盟の創立大会当日なりしを以て、頑迷乱暴市内に冠たる日比谷署は猥りに政府の意を忖度迎合し独り其功を専らにせんと欲し云云九日夜十一時頃被告等に取押へられ途中打たれ殴られ蹴られ踏まれて云云此際被告増田は自宅にて大杯を傾け僕婢妻妾を相手に大に天下を論じ形勢を語り独り悦に入りしならんか、告訴人等の新入を聞き直に出署、酒気満面望月の居城に侵入し云云十数名の巡査と共に約七八分間目茶苦茶に打擲殴打し別紙の如く負傷して遂に人事不省に陥りたり。 二、平素温厚柔和羊の如く神の如き告訴人久板は隣室に在て被告等の乱暴を目撃し、激憤の極血相を変へ怒髪悉く逆立して狂ひ出し、天地も崩れん計りの大音声にて、『増田!野郎殴つたな!!!』と絶叫したるに、増田は酔尚醒めず部下を引率して今度は久板の房に進入し、飽くまで抵抗する久板を死物狂にて廊下に引ずり出し多勢を恃んで遂に重傷を与へて気絶せしめ漸く抵抗を止め得たり。 三、若し本件が三井三菱にあらず富豪官憲にあらざるが故に之れを不問に附すとせば司法権の独立もあつたものにあらず、 <空白> 現に今回の被害者は皆直接自救、チツトにタツトを高調し告訴代理人を信用して法律の正義と裁判の公平とを信じたるは只本件の二人のみ、希くは一切の情実を排し涙を揮て法を執り告訴代理人をして先見の明を誇らしむるなからむ事を。 原稿一枚の約束がイヤに長くなつた。時と場合で仕方がない。服部濱治君は今でもアノ時の久板の怒り方を思ひ出せばコワクなると云つてる。久板君は何も言はなかつたが、見た人は皆、久板は確かにアノ時死ぬ覚悟であつたに相違ないと言つた。久板君がモシ凍死しなかつたとしても、其後の形勢と久板君の性質からすれば、久板君は地震前に三四度地震後に二三回は必らず死んだに相違ない、黙々として只喜び、簡単として只働き、求めず、貪らず、平和を愛して人と争はず、怒らず、恨まず、誇らず、威ばらず、饒舌らず、出シヤ張らず、只金鉄の如き強固の意思と、烈火の如く熱烈なる信念とを以て行動する久板君を偲ぶときは、僕は必らずホーラの小説に出てくる一テロリストと神様とを思ひ出す。久板君を知つてる誰もが、久板は久板の如く死し、高尾は高尾の如し、大杉は大杉の如く死んだと云ふ、僕も神様の久板君は成程神様の如く凍死したと思ふ。併し久板君は神様ばかりではなかつた。地震の際まで生き延びて居たとしても命からがら逃げ来る鮮人をカバはずに居られたらうか、殆んど狂乱して一層血相を変へ「不逞」鮮人を「虐殺」から救ふあの神の如きアナキストの如き顔形を見た「大和民族」が、どうして久板君を見逃さうか。高尾が死んだ、平澤が死んだ河合が死んだ、労働者が死んだ主義者が死んだ、女が死んだ子供が死んだ、久板君がナンでアンカンポンカンと死なずに居れようか。僕は久板君が久板君らしく死ななかつたことを遺憾に思ふ(十四、一、十一) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊りは修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『高尾平兵衛・久板卯之助追憶全集(民衆運動)』(ピー・アール社)第2巻第2号45頁(大正14年(1925年)2月1日発行)>
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週刊の終刊から三誌の合同まで 前金の始末から営業の広告まで 山崎今朝彌 本誌卅九号の出たのは三月十二日であつたから四十号は三月十九日に出るべきだつた、例によつて平澤計七君が土曜の十七日に編集に取りかかると、印刷所たる東京毎夕新聞社から突然四十号からの印刷を断わつてきた。寝耳に水に驚いて早速其不法不信を責めると、色々の弁解はあつたが要するに新に「本所新聞」を発行するに付き臨時物印刷部を廃止するから営業上止むを得ないといふのである。ナゼせめて一ケ月も前に断わつてくれないかと詰問すると、週報だけは従来の関係上特別に是非ヤツて上げたいと思つて今の今迄心配して居たのだから不悪と答へる。一萬円の損害請求で脅迫もして見たが、利目は二三日まつてくれが二三回続いて一週間を無意味に経過した計りであつた、トド東京毎日や大勢新聞を聞合せてくれた上堅く駄目と断わつてきた。 (以上1ページ) 二 抑々週報なるものは結局何の取柄もないが、一回たりと一日の間違もなく期日に必らず正確に出て、最も公平に最も迅速に労働界の出来事を労働階級の有利に報導するだけの取柄があつた。然るに突然同盟罷業して一回ならず二回まで休刊の余議なきに至らしめ、この金甌無欠の面体を毀けたに至つてはモウ我慢がならない、意地にも何処かで出して貰ふて、東京毎夕からはユツクリ充分の損害を取るに極めて、二六、大東京、議会新聞、帝国新報、東京夕刊等にも当つて見たが突然ではといふ理由で、日曜の記事を月曜に印刷して火曜の朝其日付で配達出来るといふ、都合のよい従来の週刊はドウしても何処でも出してくれなかつた。旬刊ならといふ処もあつたが今更旬刊も初まらない、此現在ではセミモンスやモンスりーとしては存在の価値を疑はずには居れない、千策も尽き萬策も果て愈々決心して週刊を一時終刊するにきめたは三月二十七日であつた。 三 週刊は出せない、旬刊も厭だ、半月刊や月刊で週報でもあるまいとなれば廃刊するより外はない、処が三月初めに出した集金郵便がソロソロ返つたり集つたりし出した。一体誌代は前金 (以上2ページ) だといふ事であつたが引継いだ帳簿を見ると何が何だかサツ張り判らない、紙上の社告では去年の十一月から集金郵便を出すぞ出すぞと大に脅迫して見たが、誰もビクともする者はなかつたし、又実は帳簿の整理が付かないので出せもしなかつた、二月頃漸く整理が出来、仕度をして了ふと三月一日から又郵便規則が変り二円以下の集金は罷り成らぬとなる、仕方がないから二円以下の分は書き直したり止めにしたり三十九号へ社告を出したりして読者の半分計りへ二円三円の集金を出したのだ。 ソコで前金は(一)黙つてる人へは新雑誌を送る(二)申込ある人へは現金を送り返す(三)後金切れの人からは都合のよい時貰ふ(四)何れにしても計算を明かにして貸借の金額を読者総てに通知をする、事とする、表紙に過不足とあるは其れだ。誤りがあつたら申出て貰らひたい。 四 「労働週報」は労働といふ名と、引受けるときのイキサツとに免じ、神経衰弱と繁忙とを加へ、僕の名を出さぬ事、社会主義新聞にしない事、が二大信仰であつた、ソしてソれ故今迄は名実共平澤君一人でやつて来たが、コレからは丸ツ切り僕一人でやる積りだ。 僕の今出してる雑誌は週報の外日刊社会運動通信、月刊社会運動通信、平民法律とある。 (以上3ページ) ------ 僕はこれまで、気楽と遠慮と妥協で一生を暮してきた。従つて人間が卑怯で卑屈でカラ意久地がなく、イツも頭から胸から腹の中まで気がツマつて、甚だしく衛生上害があつた。もう余生も余りないのに、余りバカバカしいと考へたから、これからは構ふ事はない、仕たい事をして言ひたい事を言ひたいと思ふ。就ては此雑誌も次号からは内容が外題と共に、丸つ切り変はるかも知れないから御承知を願ふ。・・・・・・山崎今朝彌。 ------ (以上4ページ) 社会運動通信とはこんなものである。 ~~~~~~ (一)所謂労働運動、社会運動、文化運動、革命運動等に関する正確機敏の報道通信を専門とする『日刊社会運動通信』と名くる直配達の日刊新聞を、大正十一年一月一日より発行します、就ては偏へに諸君の御声援御通信を懇願いたします。 (二)大正十一年一月より毎月一回十日に雑誌『月刊社会運動通信』を発行し専ら、社会運動に関係する個人若くは団体の消息を報道します、就ては何卒至急諸君若くは諸団体最近の消息御寄稿あらん事を切望いたします。 (三)御寄稿御通信は成るべく新聞若くは雑誌に其儘掲載出来る様御書き下されば此上もなき好都合と御礼申上げます。 (四)其他直接間接色々様々の御援助を御願ひ致します。 大正十年十二月 日 東京市芝区新桜田町十九番地(平民大学内) 社長兼小使 山崎今朝彌 (以上5ページ) 平民法律は左の通りのものである ~~~~~~ 「平民法律」は、平民大学直営の平民法律所が、法律逆用のため無料専門我儘御免にて実地取扱いたる、社会問題に関係ある法律事件を、通俗平凡、面白可笑しく解説する、平民法律所の機関誌なり。(大正八年改正広告) ~~~~~~ 併し今は又総ての雑誌に付て四頁の広告通りになつた。 依て次号迄には何とか良い名を考へて、三誌大合同の小さい月十銭かソコソコの一人雑誌とし(日刊社会運動は独立故別問題)前金購読者の外誰にでも送らないことにする。前金者でもない癖に無やみに送られたら、購読勧誘のためか、寄贈か交換か返礼か見舞代りと思つて下さい、其れに対しては苟くもビタ一文でも請求はしない、若し夫れ金を出すは厭だが雑誌は欲しいといふ人があるなら、喜んでイクラでも送る。週報を止めたと思へばドンナ気前でも出る。 六 序に左に営業広告をして置く尤も昔の紙型を使用するのだから今は違つてる処がある。 (以上6ページ) <平民法律所、上告専門所の広告。略。> (以上7ページ) 私は大審院で『全国の司法官は偉大なる低能児の化石なり』と喝破した為め第一、二審共重罪に処せられた被告を無罪とし、其効能を以て休暇四ケ月の恩命を蒙りましたが。が、病気も殆んど全快の域に達した今日、悠々閑々休養之れ事とするは却て恩旨にも背く事と思ひ、其間社会奉仕的道楽の意味を以て平民大学総長法律博士兼米国伯爵の資格で、誓て、熱心激烈に、取り敢へず 一、不当の値上明渡の要求に苦しむ借家人の為めに悪家主悪差配の征伐 二、不当の解雇首切り、轢き逃げ殺傷人権蹂躙等で損害を受けた貧乏人の為めに、悪富豪会社悪官吏の問責 三、天下の悪法違警罪即決例及び行政執行法即時廃止の期成 の実行に従事し及相談に応ずる事に極めました。 就ては平素私をヒーキせらるる貴下は何卒、筆に口に、別に費用のかからぬ方法を以て、之れを一人も多く世間の人に吹聴宣伝し、遂に私を忙殺するか若くは降参閉口せしむるよう御尽力あらんことを、暑中伺に代へて御願致します。 大正十一年七月 東京市芝区新桜田町十九(電話銀座二〇七七) 弁護士 山崎今朝彌 (以上8ページ) <東西連合事務所と題して、山崎らの法律事務所の広告。略。> (以上9ページ) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は『復刻版労働週報』(不二出版、1998年)199頁。底本の親本は『労働週報』(労働週報社)第40号1頁(大正12年(1923年)4月19日号)。>
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還暦当り年との声をきいて 弁護士 山崎今朝彌 第一条 愈々以て若返法の実施、但以下数条の従来の衛生第一(長生き)主義は益々其効力を有す 第二条 衛生主義は第一に世界一長生、予備的には日本一長生弁護士を目的とす、但次第本文の場合は此限りにあらず 第三条 悲惨の生活生ける屍又は耄碌ヨボヨボは衛生第一主義に属せず、耳舌字及初歩の神経痛は此限に非ず 第四条 政界商界動界交界法思想界ホン党界の日常茶番事は全て之を人生劇場の余興奉仕と見做し、採て以て衛生長生きの足しに適用す 第五条 一に衛生二に我儘三四が無くて五に職務、但職務我儘衛生の内 第六条 苟も衛生に害あるものは全部之を否認し、害なきものは損得無視、元英国皇帝其処退けの我儘も之を認む、但俯仰自身に恥ぢず更に衛生に害なきを要す。以上 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。踊り字は修正した。> <底本は、法律新聞社編『法律新聞[復刻版]』(不二出版)を用いた。底本の親本は『法律新聞』(法律新聞社)昭和21年(1946年)1月5日発行、4074号21頁。>
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急告 敢て全国の文士並に著作家諸君に謹告仕候。私事今回不図も出版狂某成金氏の庇護を蒙り幾分か貧乏文士後援の気味を差加へ、損害は総て拙者損、費用は一切当方持、利益は全部貴殿遣りにて平民叢書刊行相催し度聊か其計画考案中に有之候。就ては其内容体裁代価発行売捌時期其他一切の方法に付き御気付の御高見見当り候はば是非無代にて秘密御漏洩下され間敷哉幾重にも奉願上候。尤も小生は此際百円以下の範囲内に於て必らず一人又は数人に薄謝を懸賞するの権利を有し候。 尚御賛成の上御出品の光栄に浴するを得候はば豈独り国家の為のみならんと存じ不申候。 大正六年十月一日 山崎今朝彌 謹告 ■本誌購読料に関して間接に直接に、明白に暗黙に段々と承諾を得又は申込を受けた処へ本月からボツボツ集金郵便を出しますから御承知置きを願ひます。 ■送付を再三断つたのに未だ雑誌を送るは不都合なりとの小言を頂戴する事がありますが、拒絶に拘らず無断送付するのは広告の為めですから不悪御取留置を願ひます。 ■拒絶には態々葉書を失費して下さらずとも、只雑誌を突返し被下ば沢山であります。 ■本誌は自家広告の為配りたい処だけへ配りたい時だけ勝手に送らなんだり仕度いのですが、今更発送を差控へるは何んだか其人を余り重く見ぬ様に思はれはせぬかとの懸念もあり、又権利なくして、発行日が遅れてさへも文句を云ふ者もあり旁々、権利義務の関係、就中知人間に於て、頗る不明瞭故、此際断然其関係を明に致し度いと思ひます、御承知置を願ひます。 本誌責任者 山崎今朝彌 社告 ◎月刊『平民法律』を出す処でしたが、保証金の都合と第三種郵便物認可との都合で、今回は御覧の通り『生活の力』の臨時増刊『平民法律』で間に合せました。次号からは毎月一日月刊『平民法律』を間違なく出します。 ◎此の『平民法律』は偽物です、従て内容は皆自家用広告のみです、今後真正の『平民法律』は(一)外国種の翻訳物(二)平民の観たる法律、裁判の批評特に事実の批評(三)必ず平民の為になつて屹度玄人の参考にもなる事実の報告、論評等を載せ、之れを本誌の特色とします。尤も之れは私の理想です、理想通り実現する理屈もなく又私の主幹で五銭の雑誌が、何で立派なものが出来る『べら棒』もありません、此辺は宜敷御承知を願度い。 ◎代価は見本五銭一年分五十銭ですが送金は当分見合せて下さい、途中で止めでもすれば代は貰はぬ積りです、其代り必ず間接又は直接に口でなり、電話でなり、端書、手紙、伝言、電報(マサカ)等にて雑誌を送れと云ふ意思を表して下さい、諸君は人の心理が解せぬか知らぬが、発行者の身になれば注文を受ければ読んでても呉れるかと思ふて非常に嬉しいものです、強ち金のみの問題ではありません。 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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序文 明後日中に刷り上げるから今日中に序文を書き送れと、発行所よりの電話。今日は何うしても手が離されぬから明日の日光紅葉狩り(も一寸仰山だが)を止して、と、一日の猶予を願ひ、偖愈々今日となつて見ると。人は来る用事は出来る。オマケに、洋式生活改善の第一歩として、私案大掃除を思ひ立つた当日の事とて、僕はペンを持て、室をアチコチ逃げ廻り気も心も更に落付かず、イクラ考へても、良い甘い、変つた奇抜の名案が出て来ない。依て思ひ切つて極平凡で其代り極無難の凡例でも書いて序文の代りとする事に決めた。 一、書名は発行の仲介人たる堺利彦君のお好とあつて『弁護士大安売』と極まるらしい、僕は余り好まぬが、ト云ふて外に之れ以上の良い名が付けられなんだ。著者の肩書は、総裁、総長、博士、所長などと、余り不真面目にならぬ様アツサリ、山崎伯爵疳作集、上の方へ、平民大学昇格記念出版とでもして呉れと申込んでは置いた。 一、本書は大体第(一)編は自分の経歴に関するもの、第(二)編は広告文や欄外記事や埋草等を集めたもの、第(三)編は雑文集とでも謂ふべきか、第(四)編は裁判所に提出したる法律文書式実例と云つた様のもの、第(五)編は聊か真面目の法律研究論文、第(六)編は法曹月旦、第(七)編は他人が自分の事に就て書いたもの即ち付録的のものである。 一、本書は疑もなく文集ではあるが、決して売文集ではない。従て如何なる点より論じても詐欺取財や不当利得にはならない。がコレが金になる事や、人が買つて読む事など考へると自分乍ら赤面したくなつたり、抜取つたりしたくなる文が沢山あるが、今更仕方がないと云ふから其儘にして置いた。 一、書中、今読んで見ると自分ながら解からぬ所が沢山ある、他人が読んでは尚更解らぬ事と思ふ。その一ツの理由は、此文集は主として自分の編集した「平民法律」「東京法律」「月報」等の雑誌 に掲載した文を集めたのだが、編集者たる『無産社』の中曽根源和君が、只類別にのみ重きを置き(尤も類別にも可なり文句はあるが)時代と次第を全然無視して、大正三年ものと大正十年ものとを並べたり、甲の下段説明を乙の欄外説明と取り違へたり、した事にある。 一、文、其れ自体解かり難き処ある弁解としては。自分の雑誌に自分が書いたもの故、自然楽屋落が多い事、雑誌文故行数に制限された事、他人又は自分の文章を題として書いた文が多き事、保証金を積んだ雑誌だか積まぬ雑誌だか解からぬ様に書かなければならなかつた、事等を数へて置く。 一、此本は大に売れると云ふ八卦が出たとて本屋の主人大に意気込んでる由、ソレで僕も大に安心した。売れるも八卦のセイなら売れなんでも本のセイではない。併し僕も心から大に売れん事を希ふ。 大正十年十一月十三日高橋是清に大命降下の時 山崎今朝彌 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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解放時評合評会(十一月二十三日夜) 高橋亀吉、青野季吉、宮崎龍介、石川準十郎、中西伊之助、望月百合、高津正道、山内房吉、山崎今朝彌、推名速記 無産党の党費、富士紡の争議 ◇解放時事問題合評会は魔の会である。前回には責任者の岡君が倒れ今尚病床に皮肉を歎じ、今回は翌日速記者が電報で呼戻され家族が遂々死んだ。お蔭で今度も亦記事が載せられない。幸ひ望月女史の「党費問題合評会拝見記」と赤松君の横槍「川崎争議の厳重批判」があつたからソレへ少々注釈弁解を加へ以て責を塞ぐ。来年は--愈々鬼が笑い魔が怒つて誰か死なねばよいが。尚ほ魔の会には魔がサすものと見へ、二十三日が二十五日、午後五時正開が公開と新聞に誤報され、ブルドツクは廿五日警官に取巻かれ、熱心家は無駄足を踏ませられ誠に気の毒をして申訳がなかつた。 ○ ◇先づ自分の事だ。望月さんの、僕が云つたといふ安部さんの逸話は、安部さんが憤る処か年にも臆せず白髪を撫でて、徹夜若い人達の猥談を熱心に傾聴したといふだけの話だ。誤解のないよう茲に「敬意を表して」却て書く事にする。 ◇「所謂共産党」の陰謀談もあるはあつたが高津君も青野君も其話には仲間入りをしなかつた。しかし高橋君の追出方がヒドかつたと云ふ結論には同感だつたと記憶する。高橋君も強ち共産党の陰謀とは云はなかつたが、中西君が腕を捲り石川君か憤慨して話が発展し、高橋君も遂々、打角「解放」で無産階級道徳確立問題を提供した時余程書かふかと思つたが又考へ直して中止したが、今考へれば後悔するとか結局よかつたとか白状する段取になつたのだ。此外雑談に移り速記中止掲載禁止となつてからの事は洩らせない。 ○ ◇川崎の富士紡争議批判は其晩偶然其処に評議会のビラがあつたので突然議題となつた。議事は総同盟の要求は正当であるか、評議会が此際かかるビラを撒くは許さるべきか、と云ふ二段に別けて進行した。第一段は中西君一人で議論を闘はし、現今の繊維工場相手では萬止むを得まいと云ふ結論に達した。第二段は字句の末で僕が評議会の弁護を試みたか成立たず。石川君の中傷撹乱の外何物でもないビラだと云ふ論と、中西君の罷業の際の決死的敏感的心理状態論とが圧倒的大勢を制して、評議会のよいと云ふ者は一人もなかつた。併し、口々に総同盟も従来やつて来た手で、一旦地位を換ゆればやり兼ねまいと云ふ者も中々あつた。(山崎) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『解放』(解放社)第5巻1号別冊120頁(大正15年(1926年)1月1日発行)>
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普選実施と無産階級政治運動の究研 「一、議会運動の社会改造運動に於ける価値。 二、労働組合が中心となつて政党組織に着手する事の可否。 三、政党と労働組合との関係。 四、来年の総選挙までに政党が出来なかつた場合、其総選挙に対して労働組合は如何なる態度を採るべきか。」という問いに対する回答。 ○ 山崎今朝彌 一、水は毒にも薬に成ります、議会運動も社会改造に価値もあり、妨害にもなります。 二、東京の労働組合から此の質問があればソンナ事より組合の会合にセメテ平素の十分の一も出る様な運動をしたら如何ですと答へます。大阪の某組合からの質問なら、先生候補者にでも成り度いのだなと思ひます、総同盟でも外にまだ適切の仕事は無いでせうか。 三、性質上何かの関係あるものでないと思ひます。 四、組合として一致した行動を取り度い。比較的よい候補者なら棄権し度い。絶対よい候補なら一致して投票仕度い。 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとした。旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『復刻版進め』(不二出版、1989年)、底本の親本は、『進め』(進め社)第2年2号(大正13年(1924年)2月号)15頁>
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