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ここに作品タイトル等を記入 更新日:2021/05/18 Tue 23 19 13 タグ一覧 セブンスカラー 満点の星空が広がる黒と群青の夜空をピンクの光が妖しく照らしていた。 そしてその光の出所に目をやると、吸い込まれそうな程漆黒の穴がピンクの光を放ちながら現れていた。 さらにその近くでは火花が散り、光が飛び交っていた。 「あらあら、どこから嗅ぎ付けたのかしら。お鼻がいいこと。」 笑みを浮かべながら敵に向かって光線を放つピンクのドレスを纏う貴婦人のような緑色の十字の目をもつ怪物、スピカはさらに攻撃の手を強める。 「たぁあ!」 気合い一閃。スピカと対峙する恐竜の意匠が施された紫色のドレス、“ティラノカラー”の龍香はスピカの放った光線を“タイラントアックス”で弾く。 《スピカの奴、何をしようとしてやがる!》 龍香の頭についている恐竜の頭蓋骨のようなヘアアクセ、カノープスが叫ぶ。一方で白い戦闘スーツ“デイブレイク・ネメシス”を纏った雪花と烏のようなマスクをつけた黒鳥はスピカが放った人形達を相手にしているため、中々龍香への救援に駆け付けに行くことが出来ない。 「ホント、どうなってんのよアレ!」 「分からん!だが、止めねばロクな事にならんのは目に見えている!」 黒鳥は叫ぶと翼を広げ、それを刃のように硬質化すると振り回して人形達を切り裂く。雪花もそれに続いてチェンソー型大剣“マタンⅡ”で人形を斬り伏せる。 「ふふ、そろそろ、ね。」 スピカは微笑むと、何処からか赤い珠を取り出す。そしてそれに念を送ろうとした瞬間脳裏に声が聞こえてくる。 《スピカ。どういうつもりですか。》 「あら、プロウフ。」 念を送ったプロウフにスピカが返事をすると、プロウフは続ける。 《私のリソースの一部が欲しいといったかと思えば今度は時空間に穴を開ける。あなたは何をしようとしているのです?》 「安心して、プロウフ。貴方達に危害を加えないわ。この計画は、ね。」 《答えになっていませんよスピカ。もし真意を明かさないなら。》 スピカはプロウフのその言葉にふと、上の方を見ると、切り立った崖の上の方に数体の影が見えた。 蠍の怪物、弓矢を構えた怪物、魚のような怪物、アンタレス、ルクバト、アルレシャが並んでいた。 《力ずくで止めさせて頂きます。》 「流石プロウフ。手が早いわね。けど。」 スピカはそう言うと赤い珠を天高く掲げる。すると赤い珠はより一層強い赤い輝きを放ち、後ろの穴が周りの物体を吸い込み始める。 「な、何!?」 あまりの吸引力に全員は立っていられず、思わず膝をついてしまう。 「す、吸い込まれる!?」 全員が何とか吸い込まれないように四つん這いに耐えている中、スピカは笑いながらその穴の中へと吸い込まれてしまう。 「うっ、に、が、すかーっ!」 それを見た龍香はスピカの狙いはこの穴の奥にあると睨み、立ち上がると思い切り飛び上がり、スピカに続くように穴へと吸い込まれる。 「ちょっ、龍香!」 雪花が叫ぶが、時既に遅く龍香は穴の中へと完全に吸い込まれてしまう。 「きゃあああああ!?」 《どああああああ!?》 龍香とカノープスは叫びながらその穴へと消えてしまう。それと同時に穴も完全に閉じ、光も消える。 「龍香・・・。」 呆然とする二人。 だがそんな二人を物陰からみる一つの影があった。 「・・・」 か・・・うか!・・・ゅうか! 何処からか声が聞こえる。私、どうなったんだっけ?と龍香はぼんやりとモヤがかかる頭で今までのことを思いだそうとする。 龍香!おい!しっかりしろ! その間にも自分を呼ぶ声は大きくなる。なんだったら身体を揺さぶられる感覚もする。揺さぶられることで徐々に意識がモヤから浮上し、しっかりしてくる。 そうだ。確かスピカとか言うシードゥスが逃げ込んだ時空の穴にスピカを追いかけるために入ったんだった。 そして龍香は重たい瞼を開け、目を覚ます。 「目が覚めたか!」 そして目に映し出されたのは、自分を抱える恐竜の骸骨を全身の至る所に張り合わせたような外見の紫色の怪物だった。 「うっ、ぎゃああああああ!!?し、シードゥス!?」 龍香はビックリして飛び上がると一気に離れて距離を取る。そして頭についてあるだろうカノープスに触れて魔龍少女へと変身しようとするが、頭を触って気づく。 そう、カノープスがいない。 「あ、あれ?カノープス!?」 「おい!龍香!俺だ俺!カノープスだ!」 カノープスがいないことに慌てる龍香に目の前の怪物が自身を指差して名乗る。パニックになっていた龍香だが、目の前の怪物から聞こえる声に聞き覚えがあることに気づく。 「えっ、その声・・・ホントにカノープス!?えっ!?でもなんで身体があるの!?」 「お前が驚くのも無理ない。俺も正直ビックリしてる。だが、もしかしたらこの空間のせいかもな。」 カノープスが龍香に周りを見るように顎を前に出す。言われた通り周りの光景を見て、龍香から思わず声が漏れる。 「何これ・・・」 そこは摩訶不思議な空間だった。龍香の身長の何倍もはあろうかというホールケーキやチョコレートが塗りたくられた棒が乱雑に生え、クッキーが道路のように敷かれている様はさながら子供が想像するお菓子の国、と言った感じだがそこから漂う妖しげな雰囲気はどう考えても楽しい場所とは程遠いように思えた。 「訳の分からん空間だ。どうやら俺達はとんでもない空間に飛ばされたらしいな。」 「う、うん。・・・これからどうしようか?」 取り敢えずスピカを逃がさない一心で突っ込んだため、具体的なことを考えていなかった龍香はカノープスに尋ねる。 「取り敢えずスピカの野郎を探しだしてぶっ飛ばす。多分だが、アイツの行動を見るに奴がもっている赤い珠がここを行き来する鍵になる・・・と思う。」 カノープスの推測は龍香も正しいように思えた。スピカがあの赤い珠を掲げるとあの穴はそれに反応するように吸い込み始めた。つまり、あの珠が鍵であると龍香も感じた。 「とにかくここから移動するぞ。」 カノープスが立ち上がり、龍香と歩きだそうとした時だった。いきなり周りの地面がポコポコッと盛り上がったかと思うと地面から白いヤドカリのような見た目の怪物が現れる。違和感をあげるとすれば龍香の腰ほどに背丈が大きく、そして殼がアポロチョコのようになっていることか。 「龍香!」 カノープスは直ぐ様龍香とヤドカリの間に立つ。目の前のヤドカリはハサミをカチカチと鳴らしながらこちらに向かって来ている。どう見ても仲良く出来そうな相手ではない。 「カノープス!変身は・・・!」 「してやりてぇとこだが今は無理だ!今の俺はお前に“安全”に変身する力を与えてやる程器用じゃねぇ!」 その間にもジリジリとヤドカリは迫ってくる。意を決してカノープスが飛びかかられる前に打って出ようとしたその瞬間。 「とぉーッ!」 上から気合い一閃の叫び声と共に何かが降ってくる。そしてそれは落下の勢いそのままヤドカリに痛烈な蹴りを叩き込んだ。 その鋭い一撃はヤドカリの殼を破ってその身体にめり込んでおり、いかにその一撃が痛烈であったかを悠々と物語っていた。 降ってきたのは頭から犬のような耳と、黒い髪をポニーテールにした快活そうな表情の少女だった。 「ハァッ!」 そして少女はそのまま蹴りを入れたヤドカリを足蹴にして他のヤドカリに膝蹴りを叩き込む。 ヤドカリ達は瞬く間に二匹もやられたことに驚いたのか、そそくさと逃げようと地面を掘るが、それより先に女児の拳や蹴りが叩き込まれ、あっという間に全員が地面に転がる。 「つ、強い・・・」 そして、少女はふぅと一息つくと今度は物凄い速さでカノープスに裏拳をかましてぶっ飛ばす。 「ぶべらぁ!?」 「か、カノープス!!」 ぶっ飛ばされたカノープスと龍香の間に入るように少女はポジションを取る。龍香に背を向けながら少女は龍香に言う。 「君、大丈夫!?怖かったと思うけど私が来たからにはもう安心だよ!」 「え、いや。」 「見たことないモンスターだけど、この私に見つかったのが運の尽き!成敗してやるだよ!」 どうやらこの娘は龍香がカノープスに襲われていたと勘違いしているらしい。まぁ確かにカノープスの凶悪な見てくれはどう見積もってもヒーローには見えない。 けど、誤解は解かなくてはならない。 龍香は自鼻を鳴らす少女におずおずと申し出る。 「あ、あの。実は」 「ん?」 龍香が見てくれは凶悪だが、私の味方である旨を伝えると少女は きょとんと眼を見開き、二人を交互に見て・・・凄い勢いで頭を下げる。 「ご、ごめんだよー!!見た目がもうスッゴい凶悪だから敵だと思っちゃって・・・!」 「し、仕方ないですよ。正義の味方って面構えじゃないですし。」 「悪かったな。凶悪な面構えで。」 ぶたれた頬を擦りながらカノープスは龍香の方へ歩いてくる。猛烈な勢いでかっ飛ばされた割にピンピンしていることから、大したダメージにはならなかったらしい。 「それにしても・・・君達見ない顔だけど、何処から来たのだよ?迷い込んじゃった感じ?」 「え」 その質問に龍香は固まる。どう答えようか。と言うかむしろここが何処なのかこっちが聞きたい・・・そんな風に思っていると。 「察しの通り俺達は迷い込んじまってな。ここが何処なのか・・・そして出来れば帰る方法を知りたい。」 「あっ、やっぱり迷い込んじゃった感じ?」 カノープスが少女に答える。 (ちょ、ちょっとカノープス!) (別に間違っちゃないだろ。それに、アイツの口振りから誰かが迷い込むのは珍しくもないみたいだしな。帰れる方法は知っとくに越したことはない。) なんて二人で小声でこそこそ話しているが、少女は特に気にした様子もなく二人に背を向けて歩き出すと手をこまねいてついてくるようジェスチャーする。 それに従い二人は少女と共に歩き出す。 「取り敢えず力になれそうな人の所へと案内してあげるだよ!あ、私の名前はだよロリ犬!そして」 だよロリ犬と名乗った少女は手を広げてお菓子が広がる一見楽しそうに見えて不気味な雰囲気を放つ空間で、手を広げて言う。 「ようこそ。“オウマがトキ”へ。」 「ふぅ、こんな所かしら。」 とある一角。お菓子や、良くわからないキラキラしたものが森のように生い茂る地帯でスピカは一息つく。 だがスピカの回り一帯は焦げ跡と破壊痕が色濃く刻まれ、これまたお菓子と動物を組み合わせたような怪物が転がっている。 そして目の前ではスピカお手製の人形達が陣地を形成すべく動いている。 スピカはフッと微笑むと後ろの人物へと振り返る。 「それにしても、助かったわ。貴方がいたお陰で拠点の目処が立って、その上拠点作成まで手伝ってもらっちゃったし。」 スピカが振り返った先にいた少女の肩に手を置いて労いの言葉をかける。その少女は長く、そして炎のように赤い髪をしており、その肌は陶磁器のように白くまるで人間味を感じさせない美しさを際立たせている。だが、普段であれば誰もが息を飲むような美しい顔は今、眉間に皺をよせて不機嫌を露わにしている。 「別に。アンタが協力してくれたらその赤い球を返してくれるって言うから手伝っているだけだし。」 「あら、つれないのね。」 少女・・・アルタイルが睨み付けるも、スピカは飄々とそれを受け流すと何処から取り出した赤い球をしげしげと見つめる。 「ま、これは私の好奇心を満たす“新しい世界”に行くための切符のようなものだから、使い終わったら返すわ。」 「そう・・・それで、一つ聞きたいんだけど。」 「何かしら。」 「それ。何処で手に入れたの。」 アルタイルがスピカに尋ねる。たが、その瞳には何処か有無を言わせないような鋭い眼光が見えた。 「フフっ。知りたい?まぁ、教えてあげるのも良いけど・・・」 だが、スピカは一切怯む様子はなく、それどころか逆にアルタイルの瞳を覗き込むように顔を近づける。 その十字の光を湛える仮面のような顔に近づかれ思わずアルタイルはギョッとなるが、スピカはそのまま自身の口元に指を近づけて悪戯っぽく囁く。 「次のお願いを聞いてくれたら教えてあげる♥️」 「着いたのだよー!」 だよロリ犬に案内されるままに二人はどでかい喫茶店の前まで案内される。目的地にたどり着いただよロリ犬が二人の方を振り返ると、そこには頭を抱えて唸る二人の姿が。 「どしたのだよ?疲れたのだよ?」 「いや、だよロリ犬さんに教えて貰ったここの説明が・・・」 「俺が言うのもなんだがなんて理不尽で意味不明な世界なんだ・・・。」 カノープスが額を押さえながら唸る。 だよロリ犬が話すにはここは異世界で、あらゆる次元に通じる夢のような世界。たからか時々人が迷い込んでくることがあるそう。 しかもさっき自分達がいたのはなんでも敵も風景も全てがお菓子で出来ているリビングスイーツなる空間らしく、たまに迷い込む人を助けるためにだよロリ犬はパトロールをしているんだとか。 「訳が分からん。その一言に尽きる。」 「アハハ!大丈夫!正直私も良く分かってない!」 「大丈夫なのかな・・・」 「まぁまぁ!考えても分かんないこと考えたってしょうがないだけだよ!」 だよロリ犬は笑いながらそう言うとガチャリとドアを開けて中へと進む。 開けると同時にカランコロンと鈴の音が店内に鳴り響く。 店の中は普段よく見るモダン形式のカウンターや、洋風のソファが置いてある一般的によく知られている喫茶店のような内装…なのだが、周りの壁が虹色のサイケデリックな色合いに彩られ、龍香とカノープスの視界にある種の暴力的な風景を叩き込んでくる。 「お、おう…」 「いらっしゃいませー!!」 二人が面食らっていると奥の方から元気の良い声と共に一人の少女が出てくる。 あどけなさと元気の良い快活さを感じさせる笑顔を浮かべながら白と黒が入り雑じったショートヘアーの女の子が現れる。 只一般人と違うところで言えば頭と背から黒と白の翼を生やし、足が猛禽類のソレになっていることか。 「あれ?“よそ”からのお客さん?」 その少女は龍香達に目を向ける。 「にしちゃあ随分と厳ついね、君。」 「…俺そんなに厳つい?」 少女の言葉にカノープスが龍香に尋ねる。カノープスの表情は恐竜の頭蓋骨を張り付けたようなかなり厳つい顔をしており、怖いか怖くないかで言うともう無茶苦茶怖い。 「うん、厳つい。」 「そっかぁ…。」 ションボリするカノープス。少女が二人をマジマジと見つめていると、また奥の方から別の少女達が出てくる。 しかも今度は肌の色が赤だったりピンクだったり、カラフルな上に見た感じ質感は滑らかでまるで水飴のようだった。 自分達に近そうで、遠い存在。そんな少女達に二人はさらに身構える。だが、その少女達の内一人、ピンク色の元気そうな少女が口を開く。 「あれー?アンコちゃん、お客さん?随分と久し振りだねー!」 「プラム。案内してあげなさい。」 水色の物静かそうな少女が、ピンクの少女、プラムに案内するように促す。 「い、いや。私達は。」 「私と同じピンクの髪で可愛いね!私はプラム!よろしくね!んで、水色のがフロートお姉ちゃん!そして黒と白の子がアンコちゃんだよ!」 「う、うん。」 「ここは良いとこだよ!メニューも沢山あるから気軽に頼んでね!」 「うん。ありがとう。けど、今私達が知りたいのは」 二人が喫茶店に用があるのではなく、元の世界に帰る方法を知りたい、そう言おうとした瞬間だった。 またもやカランコロンと鈴の音が鳴る。こんな所に客が来るのか、という気持ちとどんな客か見てみたい、という好奇心から二人が振り返るとそこには赤い一つ目の女性の体つきをした人形が数体現れる。 「お、またお客さんとは珍しいだよ。」 事情を知らないだよロリ犬がそんな人形達を見てもの珍しそうな顔をする。 だが、事情を知っている龍香とカノープスの二人の顔色は一気に変わる。 「みんな避け」 龍香が叫ぶより早く人形が槍を取り出し龍香に向けて突き出す。だが、その槍は龍香に届くより先にカノープスに蹴り飛ばされて明後日の方向に突き刺さる。 そしてカノープスは槍を突き出した人形の顔面を思い切り殴って吹っ飛ばす。 「龍香!下がってろ!」 カノープスはそう叫ぶと龍香の前に立つ。一拍遅れて、突然目の前で起こった狼藉にプラムが悲鳴をあげる。 「な、何!?何なの!?」 「!」 色鮮やかな飴色の少女達が騒ぐ中、完全に戦いの火蓋は切って落とされ、人形達が堰を切ったようにカノープス達に襲い掛かる。 「やっぱ俺達が狙いか!」 カノープスが身構え、迎撃しようとするとそれより先にだよロリ犬が動き、人形の一体を蹴り飛ばす。 「だよロリ犬さん!」 「なんだか知らないけど!力になるよ!」 だが残る数体がカノープスに襲い掛かる。人形の攻撃に対し、カノープスは腕や足で弾くと人形の一体を掴んで思い切り振り回して別の人形に叩きつける。 「はっ、ブランクはあるがお前らごときこの俺の敵じゃねェ!」 カノープスは次々と襲い掛かる人形達を蹴散らす。その様子を後ろから龍香が見ていると、ドンと何かに当たる。 何に当たったのかと後ろを振り返るとそこにはいつの間にか回り込んでいた人形の姿が。 「やっ」 心の何処かで間に合わない、と思いつつも龍香が逃げようとしようとした時だった。 「えいっ!」 パコンと間の抜けた音がする。見れば先程の黒と白の翼の少女がフライパンで人形の後頭部を殴り付けていた。 だがその間の抜けた音に反して中々の威力だったらしく人形が怯む。 「こっちこっち!」 声がする方を見ると龍香に対して先程のピンク色の少女が物陰に隠れており、こちらに手招きをする。 龍香はちらと人形を一瞥した後手招きに従って駆け出す。 「カノープス!」 「!」 龍香の叫び声にカノープスが反応する。カノープスは大きく跳躍すると龍香達の方へと着地し、フライパンの一撃で怯んだ人形の顔面を掴むとカウンターの机に思い切り叩きつける。人形がカウンターにめり込んだと同時にペキャッと何かが砕ける音がし、それと同時に人形の動きが停止する。 「お、お店がァーッ!?」 水色の少女、フロートが悲鳴をあげる。よく見ればカノープスは相当暴れたのか無惨に破壊された机や椅子がその辺に転がっている。 「大丈夫か!?」 カノープスが叫ぶ。龍香はカノープスに向けて手で大きく丸を作る。 それを確認したカノープスが龍香達に近寄ろうとした瞬間。上空、天井を突き破って炎が龍香達とカノープスの間に降り注ぐ。 そして爆発が起こり、皆が吹き飛ばされる。 「うぉう!」 「うわぁ!?」 皆が爆発によって怯む中、爆発の中心に人影が見える。 それは炎の中心にいながらも全く気にした様子もなく、それどころか炎を手から吹き出して辺りを見回している。 そして炎が吹き消え、中から燃えるように赤い髪の毛が特徴的な目付きの鋭い少女が現れる。 「…チッ。人形は大半が潰れてる。何が役に立つ、よ。」 少女は倒れる人形達を一瞥し、周りを見渡す。そして龍香と少女の目が合う。 「え」 少女は龍香を見て、怪訝な顔をする。 「あれ・・・あんたどっかで」 だが少女が言葉を続けるより先に突然現れただよロリ犬が少女に蹴りをかます。その威力は凄まじく、蹴りが直撃した少女の頭が吹っ飛ばされる。 「う、あ、あ?」 「先手必勝!!」 突然ぶちかまされた光景にだよロリ犬以外が絶句するが、頭を吹っ飛ばされた少女に変化が起こる。 吹っ飛ばされた頭があった場所に炎が集まる。そして炎が頭のように形作り、次の瞬間には完全に元通りに修復される。 「な、治った!?」 どうやら少女ほ先程の強烈な一撃を喰らったにもかかわらず、眉をひそめるだけの様子を見る辺り攻撃が全く効いていないらしい。 一瞬だよロリ犬は驚くが、すぐに持ち直して攻撃を仕掛ける。 「うぉおおおおお!!」 繰り出された攻撃は全て少女に炸裂し、身体の何割かが吹き飛ぶが、それもすぐに炎が集まり修復される。 「・・・無駄だよ。私にその攻撃は一切通じない。」 少女はそう呟くと手をだよロリ犬に翳す。 「それに・・・ちょっと目障りだよ。」 「ッ!危な」 次の瞬間翳した手から炎が噴き出す。その炎は凄まじくだよロリ犬は大きく吹き飛ばされる。 そして炎が止むと少女は炎の翼をはためかせる鳥のような怪物へと変貌する。 「ッ!?あの子は?」 その姿に龍香は見覚えがあった。そうその少女はかつて龍香達と敵対した怪物だった。しかも龍香最強形態“アトロシアス”を持ってしても追い込まれた程の強敵である。 龍香はすぐにカノープスに目配せをする。カノープスもあの怪物には“アトロシアス”で無ければ勝てない、と思っていたのか少し渋るが龍香に手を伸ばす。 「いいか。龍香。正直今は力の調整が難しい。だから・・・俺がマズイと判断したら即引いてくれ。いいか?」 「うん!行くよカノープス!」 カノープスが光輝く。そして巨大な光を放つ恐竜になると、龍香をパクリと丸飲みにする。 「の、飲み込まれたーッ!?」 突然の出来事にプラムが叫ぶ。そして恐竜が砕けると同時に恐竜の頭蓋骨のような装甲が散りばめられた紫色のドレスを纏った龍香、“ティラノカラー”に変身した彼女は紫色の刃が煌めく剣、“タイラントブレイド”を構えると少女に向かって突っ込んでいく。 龍香の接近に気づいた怪物はすぐさま炎の剣を生成して龍香の振るった一撃を受け止める。 「ッ、お前は」 「貴方は止める!」 二人の視線が交錯し、つばぜり合いをしながら互いに睨み合う。さらなる戦いの火蓋が切って落とされた。 「くっそ。アイツらがどうなったのかまだ分かんないの!?」 日が沈みかけた黄昏時の道中で雪花が叫ぶ。昨夜の一件から“新月”メンバーは龍香の行方捜索に躍起になっているが、影も形もその痕跡すら見つからない。 「少し落ち着け。皆必死に頑張っているんだから。」 黒鳥が苛立って憤る雪花を宥める。 「そうよ。騒いで見つかったら苦労はないわ。」 黒髪に朱が混じった鋭い目付きの少女赤羽が嘆息する。その言葉に雪花のこめかみに青筋が浮かぶ。 あぁもう、と黒鳥が二人が激突する前にこの場を納めようとした時だった。 「そこのお前ら!待つのだ!」 後ろから声がかけられる。その声に三人が振り返るとそこには白い翼が特徴的で、顔に何処か幼さが残る怪物がいた。 だが、そいつは赤羽には見覚えがあった。 「・・・お前は」 「あの女の子を助けたいなら・・・力を貸すのだ。」 そう。かつて赤羽と龍香と戦い、何だかんだで一時協力したこともある・・・アルビレオがそこにいた。 To be continued・・・ 関連作品 (続編や派生作品が有れば、なければ項目ごと削除でもおk)
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(ここに機体名称を入力) 更新日:2019/11/03 Sun 08 41 11 タグ一覧 ↓ビジュアル等があれば以下に挿入して下さい imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ここに画像のURL) (ここに機体名称を入力)は烈日灼光ソルブレイリオンに登場する特機である。 概要 機体識別コード/別名/通称 身長 m 重量 t 動力 (以下は機体に関する説明等あれば好きにご入力下さい) 武装
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イブキ-青島 伊吹- 「みんな、授業始まるよ!席について!」 「私の趣味はガーデニング!あなたの趣味は?」 「えっ、あの漫画読んでるの!?ちょっと1時間ぐらい語らない???」 創作注意事項 創作では好きに出しちゃって大丈夫です カラー・服装アレンジ自由です ネタもパロディもOK! 目次 概要人物像 容貌・服装 趣味 女児符号女児符号:『常緑』 加速符号:『全緑全開』 概要 愛称 イブキちゃん 本名 青島 伊吹(あおしま いぶき) 年齢:11歳 誕生日:5月4日(みどりの日) 身長:147cm 一人称:私 二人称:あなた(~~ちゃん) 好きな物:フルーツ・野菜全般、花や木、少年漫画(主にバトルもの) 嫌いな物 害虫 二つ名:ボタニストの新芽 人物像 きゅーばんちゃん、ひゆきちゃんと仲の良い子。 真面目でしっかりとした委員長タイプ。 みんなをまとめるのが上手で、さながら先生以上に先生のようだと評される。 しかし、その一方で密かに少年漫画好きという一面もあり、スイッチが入ると別人のように語り出すらしい。 容貌・服装 (カラー参考) 青緑の髪と目に、赤縁のメガネ。 服装は大人っぽい恰好が多め。 お気に入りはアンクレットと葉っぱ模様のシャツ。 趣味 ガーデニング。家が花屋であり、手伝いをしていたら趣味でも始めるようになった。 女児符号 女児符号:『常緑』 「我、今ここに命ず。大地よ、命の息吹とともに青く萌えさかれ!『常緑』!!」 読みは「エヴァーグリーン」。 地面に活力を送り込み、植物の成長を促進させる。 力を強く込めることで、本来の植物としての限界を超えた成長も可能である。 本人の活力を消費するので、過剰使用は心身の疲労を招く。 符号使用の際は「詠唱」を行うが、本当は必要なく、読んでいる少年漫画の真似っこだとか・・・。 加速符号:『全緑全開』 読みは「システム・オールグリーン」。 現在調査中。
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(猫丸先輩と私) 更新日:2020/03/27 Fri 22 47 08 タグ一覧 ソルブレイリオン リリムムとよその子SS 天使と悪魔は同じ空を見上げられるか 「げぇぇ!今日の給食キノコのスープ?!」 校庭で悲鳴をあげたのは、給食の献立を握りしめた猫珠丸菜先輩だ。 「せんぱーい!おはよう!」 「あ、うん。おはようリリちゃん」 私が挨拶してもこんな感じ、相当ショックなんだろうなぁ。 「先輩、キノコ嫌いだもんね」 「え、なんで知ってるの?」 「さっき大きな声で叫んでたよ?」 「え、私そんなに大きな声出してた?」 猫丸先輩は慌てて口を押さえた。 「あはは!もう遅いって!オムライスも出るから、それでプラマイゼロにしようよ!」 「うん、まぁそっかぁ」 でも苦手なんだよなぁとぶつぶつ言うのを聞きながら、私達は下駄箱の方まで向かったのだった。 「りーり!」 「一緒に帰ろ!」 下校中の私の背中を叩いたのは、仲の良い友達のメリー・メイソンと毛利萌だった。 「あ、メメ!モモ!いいよ♪」 私達は取り留めの無い話をしながら帰り道を歩く。 「そういや、今日はミミいなかったねぇ」 とメメ 「心配だね、風邪かな?」 とモモ 「え、そうなの?そう言えば今日見なかった……お見舞いに行こうかな?」 ミミと言うのは、私の近所にすんでいる女の子だ。賢くて色んな事を教えてくれるお姉さんのような存在だ。 メメとモモが、顔を見合わせて笑った気がした。 「じゃあ行こう、今すぐ行こう」 「え、でもランドセル置いてからの方が……」 「そんなのいいんだよ!早く行かなきゃいけないんだから!」 ぐいぐい迫ってくる二人。なんだかいつもと違う……怖い。 そのとき、道を曲がる女の子が目に入った。 「あ、ごめん。用事を思い出したから!さきにいってて!」 メメとモモが何か後ろで叫んでいるが、私は聞こえないフリをして駆け出した。 「はぇ~そんな事があったんだ」 追い付いてきた私の事情を聞いた猫丸先輩は、分かったような分かってないような声で言った。 「なんだかいつもの二人じゃないみたいで、怖かったよ……」 「なんか事情があったのかもね……?まあその二人の事あんまり知らないけど」 猫丸先輩は私の足に合わせて歩いてくれた。気遣ってもらえて、なんだか凄く嬉しい。 「ん?」 猫丸先輩が突然立ち止まり、それを見た私も立ち止まった。 「どうしたーーー」 「しっ!」 私は戸惑いながら猫丸先輩を見ていると、突然大地が振るえた。 「やっば!」 猫丸さんは慌てて私の手をとると、物陰に隠れた。 私は目を丸くした。さっきまで何もなかったのに、遠くに大きなロボットみたいなのが見える。 「な、何が起きたの?!あれは?!」 「あれは……」 猫丸さんは声を押さえて答えてくれた。 「あれは特鬼だ」 「特鬼?」 「うん、まさかこんな所にまで来るなんて……」 と、あの優しくて面白い猫丸さんが物凄い真剣な顔をして言うので、頼もしさと恐怖を感じた。 と、そのとき、この場にいない人の声が耳に届いた。 『猫丸ちゃん聞こえる?こちらソルブレイド』 「あ、旭先輩?!」 私は驚いて声をあげた。声の主が、猫丸先輩の友達の、旭先輩の声だったからだ。 『え?誰?……もしかしてリリ?猫丸ちゃんは?』 「私もいるよ、ライジングちゃん。どうあいつ倒せそう?」 『あ、うん。大丈夫。私もソーラも絶好調なんだから!』 ライジング先輩はそう言った瞬間、強い風が吹いた。 上を見上げると、大きな大きなロボットが私の上空を飛んでいた。 「えぇぇぇぇぇぇぇ!何あれ?!何あれ?!」 あまりの非日常に、私は大声を上げてしまった。 「あはは、最初はそうなるよね」 謎に現れたロボットが、これまた謎に現れたソルブレイドなるロボットに倒されるのを見つめながら、猫丸先輩は呟いていた。
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ろくばん-慶光院 六- 「わたしは・・・ろくばん・・・」 「たんさんすい・・・飲みたい・・・」 創作注意事項 創作では好きに出しちゃって大丈夫です カラー・服装アレンジ自由です!キラキラは無いので注意! ネタもパロディもOK! 目次 概要人物像 容貌・服装 女児符号女児符号 『六遊病』 ボイス動画 概要 愛称 ろくばんちゃん 本名(?) 慶光院 六(けいこういん りく) 年齢(?):11歳(推定) 身長:141cm 一人称:わたし 二人称:きみ(~~ちゃん) 好きな物:画像編集、炭酸水 二つ名:夢からの使者、裏九(りく) 人物像 いわゆる「アナザーきゅーばんちゃん」。 きゅーばんちゃんが居眠りしていた時に見た「自分が2人に分身してコマ撮りの撮影と編集を分担する夢」から抜け出して現世に現れた。 無口、無表情だが無害。オリジナル同様好奇心が強いが、気になったものはまじまじと見つめるのが好き。 夢の中で生まれた存在なので名前は無かったが、きゅーばんちゃんに「ろくばんちゃん」こと「慶光院 六」と名付けられた。 喫茶店「オウマがトキ」でバーテンダーを務めている。 好物は炭酸水で、これをくれた人にはよく懐く。本人曰くこれがある限り無限に生きられるらしい。 容貌・服装 (リニューアル版) 目の色・髪の色・服の色はきゅーばんちゃんをそのまま反転したカラー。 目にキラキラが無く、無表情。 リニューアル版より、リボンの形状が変わり、服にダメージ加工が入った。本人曰くオシャレのつもりらしい。 女児符号 女児符号 『六遊病』 「女児符号・・・発動・・・六遊病」 読みは「ムユウビョウ」。 高速移動能力とその残像による影分身を可能とする。 ボイス動画
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女児ズ短編小説・玲亜編 『虹翔る片翼』 誰も居ない教室の隅、掃除用具ロッカーの中。 隙間からうっすら差し込む光のお陰で、辛うじて目の前のものは見える。 「.........はぁ........はぁ...........」 「...............ん......ぅぅ.......」 二人分の吐息が重なり合い、ロッカーの中で微かに反響する。お互い堪えてはいるものの、狭苦しさと隠しきれない緊張感のせいで、呼吸は次第に荒さを増していく。 「ね、ねえ初ちゃん...........やっぱり、私出た方が良いかな..........?」 「だ、大丈夫、これくらい平気だよ........」 私と玲亜は今、お互いに抱き合うような形で狭いロッカーの中に居る。何故こんな状況になってしまったのか...話せば少し長くなるけれど、一度時間を遡るとしよう。 ................................. .................................................... 「よう、今日もかくれんぼしよーぜ!」 きっかけはみっちゃんの一言だった。最近、放課後に学校内だけを使ったかくれんぼが私達の間で流行っている。 「良いねー!玲亜ちゃんと初ちゃんも一緒にやろ!」 「ふふ、良いよ。初ちゃんは?」 「うん、この前は用事で参加出来なかったし入れて貰おうかな。」 みっちゃん、旭、丸菜、月那、最近よく話すようになった蟹乃 群鮫さん、そして玲亜と私。今日は7人でかくれんぼすることになった。 「「「ジャンケンポン!」」」 「あっ、ウチが鬼やな!よーし、3秒で全員見つけたるわ!」 「いやどんなスキルだよそれ。」 鬼になった群鮫さんが30秒数えている間に、私達は隠れ場所を探し始めた。 「何処が良いかな..........あっ」 私は、教室にある掃除用具ロッカーに目をつけた。ちょうど人一人分が入れるスペースはあるし、身を隠すにはもってこいの場所だ。 「よし.........」 ロッカーの扉を閉め、息を潜める。外から微かに聞こえるカウントは既に半分を切っていた。他の誰かが教室に入ってくる様子もなく、これは簡単にやり過ごせるんじゃないかと内心ほっとしながら鬼を待つ。 「26、27、28..........」 そろそろ始まる、そう思った時。 ガラッ!と勢い良く教室のドアを開ける音がした。 「誰か、来る....?」 小さな足音が、どんどんこちらに近づいてくる。そして、足音が止まると同時に、私が中に居るロッカーのドアが思い切り開け放たれた。 「あっ!」 「えっ」 足音の主は玲亜だった。ロッカーに隠れようとしたのだろう、私という先客が居たせいで、玲亜はその場で固まってしまう。 「30!もーうえーえかー?」 群鮫さんの声がした。その瞬間、私は思わず玲亜の身体を抱き寄せてロッカーに連れ込み、再びドアを閉めた。そして、自分でも何をしているか分からないまま、「もう良いよ!」とだけ叫ぶ。 「...........っ、危なかった.............」 「....い....ちゃ........苦し.........」 「あっ、ごめん!」 苦しげな玲亜の声に、慌てて抱きしめる力を緩め小声でそう謝ると、自分がたった今何をしでかしたのか、そして自分達が今置かれている状況にやっと理解が追いついた。 「あ...........こ、これ....って.............」 力を緩めたとはいえ、狭いロッカーの中で私は玲亜を抱きしめていた。玲亜も玲亜で、咄嗟に私の服を掴んだのか、しっかりと握った手を離していない。 「...........っ!」 状況が分かった途端、私は自分の頬が熱を帯びていくのを感じた。いやいや、いくら何でもこれはマズい。仲の良い同級生と、狭い空間で抱き合うなんて。 「ご......ごめん.........私................」 「...............」 玲亜は何も答えない。しまった、絶対引かれた.......最悪だ..................そう思っていると。 「......ありがと.......初ちゃん................」 辛うじて聞き取れるくらいの小声で、玲亜はそう言った。ふと玲亜の顔を見ると、玲亜も顔を赤くして俯いている。恥ずかしそうながらも、嫌そうな様子ではなかった。 「...........ちょっとだけ、我慢出来る......?」 「うん.................」 こうして、私と玲亜はそのままロッカーに二人で隠れ続けることになったというわけだ。 ...................................................... ................................. 「鬼、来ないね........」 「あはは、こういう時に限ってなかなか見つけて貰えないよね.....」 私にしがみつきながら、玲亜が困ったように笑う。こうして近くで見ていると、玲亜って綺麗な顔してるんだな........なんて、思わず呑気な事を考えてしまう。 「ほんと、ごめん.......私のせいで」 「ううん、先に居たのは初ちゃんでしょ?私こそごめんねだよ。」 「そんな、玲亜は全然.........」 刻一刻と時間が過ぎていく。それでも、この教室に鬼が探しに来る気配は全くない。 「.......苦しくない?」 「ん....もう慣れた。それに....」 私より少し背が低い玲亜は、上目遣いで私の顔を見つめてきた。 「初ちゃんが守ってくれてる感じがして、ちょっと安心してる。」 「........っ................」 また顔が熱くなる。一体何処でそんな台詞覚えてくるんだろう。私はそんな柄じゃないよ.... 「ねえ初ちゃん?」 「な、何?」 「もし.....このまま、誰も来なくて.......ずーっと二人で此処に居ることになっちゃったら、どうする...........?」 「えっ....................と.........その.............」 予想もしていなかった質問に、私は言葉を詰まらせてしまう。すると、先に玲亜の方から口を開いてきた。 「私はね、初ちゃんが一緒なら平気かなって。」 「私が......一緒なら.........?」 「こんな狭い場所で、もしたった一人だったら.....誰にも見つけて貰えないんじゃないかって、不安で泣いちゃうかもしれない。けど........初ちゃんと一緒なら、何となく安心するんだよね。」 少しだけ、玲亜が私を抱きしめる力が強くなった。嫌なら離したって良いのに、ロッカーに入ってから玲亜はずっとこの状態だ。 「私....そんなに大した人じゃないんだけどな.......」 「そんなの関係ないよ。初ちゃん、後から来た私のことこうして匿ってくれたし.....他の皆に、私がこうやって抱きついてたことをからかったりもしないタイプでしょ?」 「か、からかうなんてそんな、私がやっちゃったことだし......!」 「しーっ、ちょっと声おっきいよ。」 「あっ....ご、ごめん.........」 緊張で上擦ってしまった声を、何とか抑え込む。玲亜はクスクスと笑い、私を落ち着かせようと背中をとんとんと叩いてくれた。 「........私ね、こう見えて結構自分一人で抱え込んじゃうタイプなんだ。周りに心配かけたくなくて、それで自分の中に溜め込みすぎちゃう、みたいな.......」 そういえばそうだった。前にクラスがピンチに陥った時も、確かに玲亜は皆の前で決して落ち込んだり弱音を吐いたりする様子は見せなかった。 「皆と居る時は平気なんだけどね.....一人になると、溜め込んだものが一気に溢れてくるんだ。誰にも吐き出せなかった不安とか、不満とか........それで最後は、ネガティブな考え方に陥っちゃうことが多くてね...........」 「.......................」 そうだったんだ.......いつも落ち着いている玲亜も、私が知らないところではそんな苦しみをずっと抱えていたんだ。こんなに仲が良いのに、全然気付けなかった。 「誰かに相談すれば良いのに、って思うでしょ?私ってばそれがなかなか出来ないんだよね。どんな返答されるか不安で......」 「.....分かるよ、その気持ち。親身になって聞いてくれる人ばかりじゃないからね。」 「うん.......クラスの皆のことは信用したいけど、それでも......ね。....でも」 玲亜は再び、私の方に顔を向ける。 「でも、初ちゃんの前でならこうやって話せるんだ。何でかは分からないけど.....不思議と、安心するっていうか。どんなに不安な状況でも、初ちゃんと一緒なら落ち着ける。だから、今も平気で居られるんだよ。」 「.....................!」 私も、玲亜の顔を見つめ返す。玲亜の大きな茶色の瞳が、薄明かりに照らされて僅かに潤んでいる。表情だけなら微笑んでいるように見えるけど、それが精一杯の作り笑顔なことくらいすぐ分かる。玲亜は今も、何かに苦しんでいる.....私はそう悟った。 これで良いのか? 苦しんでいる友達が目の前に居るのに。 今にも泣き出しそうなのに。 ただ見ているだけで、それで良いのか? 「きゅ、急にごめんね、変なこと聞いて。ちょっと....最近溜まってたからさ。こんな状況にでもならないと話せな.....わぷっ!」 気がつくと、私も玲亜をさっきより強めに抱きしめていた。玲亜の頭に手を添え、絞り出すような声で囁きかける。 「もっと...........話して良いよ。」 「え........?」 「玲亜の苦しみも、悲しみも..........私が全部受け止める。君にとって、私が信頼出来る存在なら.......私も、それに応えるから。」 これ以上、玲亜の辛い顔を見たくない。悲しい思いもしてほしくない。 だから。 「だから...............もう我慢しないで...................玲亜が壊れちゃったら、私.......耐えられないよ........................」 私に力があるのなら。 自分の友達にとって、本音を打ち明けられる存在で居られるのなら。 私は、玲亜の心の支えになってあげたい。翼が片方しかなくたって良い、その翼で玲亜を孤独から救ってあげたいんだ。 「初.......ちゃん...................」 玲亜も、私の身体を抱きしめ返した。何度も「ありがとう」と繰り返すその声は、次第に涙声に変わっていく。 「泣いて良いよ..........いっぱい泣いて......また笑顔を見せて.......................」 私も目が熱くなる。けど、此処で泣いたら駄目だ。玲亜を笑顔にする為に、私が笑顔にならなくちゃ。 教室に響く時計の秒針の音と、玲亜のすすり泣く声が重なる。私はその音を聞きながら、かくれんぼしていることも忘れて玲亜を慰め続けていた。 ............................ ............... どれくらい時間が経っただろう。しばらく泣いていた玲亜は、再び顔を上げて此方を見つめてきた。 「...........ありがとう、すっきりしたよ。だいぶ気持ちが軽くなった気がする。」 「良かった........もし辛いこととかがあったら、またいつでも相談してね。」 「うん、ありがとう初ちゃん。信頼してるよ....♪」 玲亜はすっかりいつもの笑顔に戻っていた。私も安心して、抱きしめていた腕をゆっくり解いていく。 「....って、かくれんぼの途中だったよね。結局誰も来なかったけど........」 「一回出てみる?これだけ長い間見つからずにいたんだし、ほぼ私達の勝ちでしょ。」 「そうだね、流石にそろそろ......あっ」 そう言いながら、私がロッカーを開けると。 「え、な........えっ?」 いつの間にか、群鮫さん達全員がロッカーの前で大集合していた。 「ちょ、ちょっと!いつから居たの?」 玲亜が私の後ろから顔を出してそう言うと、涙で顔をびしょびしょに濡らした群鮫さんがハンカチを片手に答えた。 「ぐずっ、いやな、探しにきたはええねんけど表から二人の話が丸聞こえでな、開けるに開けれへんくってずっと聞いてたんや.....」 「うぅ.....ごめんね玲亜ちゃん、あたし達玲亜ちゃんの気持ちも知らないで..........」 旭も泣きべそをかきながら、玲亜にぎゅーっと抱きついてきた。 「そ、そんな、気にしないで.....というか全部丸聞こえだったんだ.....そっちの方が恥ずかしい..........」 「そうだよ、てっきり探しに来ないのかと思ってた......はぁ.............」 ようやく緊張感が解けたせいか、私は近くの椅子に座りこんでしまった。 「.......おい、初。」 そんな私を、みっちゃんが横目でジトッと見つめてくる。 「な、何?」 「......玲亜に言ったこと、嘘じゃねえんだよな。」 「勿論..........嘘なんか言わないよ。」 「だったら、頼んだぞ。あいつは初を選んだんだ、もしヘマしたらぶっ飛ばすからな。」 「....うん、分かってる。みっちゃんにとっても、玲亜は大切な友達だもんね。」 「......うっせ」 ぶっきらぼうに答えながら後ろを向き、みっちゃんは鼻を擦った。ちょっとだけ泣いていたのかもしれない。 「とりあえず、今回のかくれんぼは初ちゃんと玲亜ちゃんの勝ちだね!」 「くっそー、ええ話さえなければウチが勝ってたのになぁ。」 「あはは、また明日もやろうよ。今度は私も鬼やってみたいな。」 そんな話をしつつ帰る準備をしていると、再び玲亜が近づいてきてこっそり囁いた。 「今日はありがと、初ちゃん。かっこよかったよ♪」 その瞬間、私はまたぼふっと顔が熱くなった。鏡を見ないでも分かるくらい赤くなった顔を皆に見られないよう、私は足早に教室を出た。 「あっ、初ちゃん待ってよー!」 「おい置いてくなって!」 もう夕方なのに、随分と賑やかな廊下。皆と一緒に追いついてきた玲亜の笑顔に、私も照れながら笑顔を返してみせた。 FIN.
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女児ズ短編小説・アリア編 『黄昏時の図書室で』 チャイムが鳴ると同時にホームルームが終わり、皆それぞれ帰る準備を始めた。 「初ちゃーん、一緒に帰ろー?」 旭が私を呼ぶ。だけど、私は首を横に振った。 「ごめん、今日はもう少し居残るつもりだから先に帰ってて良いよ。」 「そっか、じゃあまた明日!」 「うん、また明日ね。バイバイ。」 走り去る旭に手を振り、私は鞄を背負って図書室に向かう。 今日は、お母さんが仕事で帰りが遅い。だから家に帰っても私一人で、正直寂し....じゃなくて、退屈だから図書室で時間を潰そうと考えていた。此処なら、他の人が居るお陰で私一人にはならないし。 「って言っても、読みたい本とか特にないけどね.....宿題でもしようかな、っと。」 机の上にノートと教科書を広げ、私は宿題を始めた。 図書室は好きだ。理由はその日によって違うけど、一人になりたいと思った時はいつも此処に来る。気持ちを落ち着かせたり、自分を見つめ直したり.....大袈裟な言い方だけど、私にとっては人生の休憩所みたいな場所でもある。 「................」 時計の秒針が動く音と、本のページをめくる音、そしてノートに文字を書き込む鉛筆の音。それ以外は聞こえない静かな空間で、私は黙々と宿題を進めていた。 ............................... .............. 「....終わった。」 ノートを閉じ、私は小さく呟いた。 外を見ると、空はすっかりオレンジ色に染まっている。そろそろお母さんも帰ってくるだろうし、私も帰ろう。 「......ん?」 鞄を持って立ち上がると、隣の机で誰かが本を読んでいるのに気づいた。青色の長い髪、何処か物憂げそうな赤い瞳、スラッとした長い足..... クラスメイトの本木朋 アリアさんだ。 「.......アリアさん。」 読書の邪魔したら悪いかなと思いつつも、小声で呼びかけてみる。すると、アリアさんは2秒程間を開けて此方に視線を向けた。 「............音羽さん。」 「今日も本読んでるの?」 「....うん、私の数少ない楽しみだから.....」 アリアさんは読書家だ。教室でもよく難しそうな小説を読んでいて、他の人と話しているところはあまり見たことがない。机の上には、何冊も分厚い本が置いてある。 「......これ、全部読んだの?」 「.........ううん、まだ。これを読み終わってから。」 そう言って、アリアさんは読んでいた本の表紙を私に見せる。その本すらも、まだ半分も読めていない様子だった。 「時間をかけて読む方が好きだから......多分、今日は他の本読めないかも。」 「今読んでるその本はどうするつもり?」 「借りる。私も、そろそろ帰ろうと思っていたから。」 本にしおりを挟んで閉じ、アリアさんはゆっくりと立ち上がる。そして、机に取り置きしていた本を片付け始めた。 「私も手伝うよ。」 「....良いの?」 「うん、その方が効率的でしょ?」 「........ありがとう。」 いつも無表情なアリアさんが、少しだけ戸惑っているように見えた。 「あっ、ごめん。余計なお世話....だったかな?」 「......ううん、全然.....」 アリアさんは足早に本棚に向かい、元あった場所に本を片付けた。私もアリアさんに聞きながら本を片付けていく。 「この本棚にあるの、難しい本ばっかりだね。」 「難しい.....かな。私はいつも読んでるから、何も思わないけど.....この本とか、もう5回目だし。」 「そうなんだ。.......アリアさんは凄いな....」 「......別に、難しい本が読めるから凄いってわけじゃないと思うけど......」 「それもあるけど....何ていうか」 私はアリアさんの目を見つめ、少しだけ口元を緩めながら言った。 「自分の好きなことに熱中出来るって、凄いことだと思う。同じ本を何度も読んだり、難しい本を難しいって思わなくなるくらい沢山読んだり......さっきだって、あんなに集中して読んでたし。それって、アリアさんが自分の好きなことに一生懸命夢中になってるってことでしょ?」 「.............」 アリアさんは少し驚いて、そして僅かに頬を赤くした。 「.......初めて。」 「え?」 「私のこと.....そこまで評価する人。」 「あっ、ご、ごめん!偉そうだったよね!何様目線で話してるんだろ私.....」 「そうじゃないの、その.......私みたいな暗い人の良いところを見つけて、あんなに一生懸命話してくれる人なんて.......居なかったから........」 「..............」 私はアリアさんの手を取り、今度はもっと明るく笑って見せた。 「だったら、私がもっと沢山見つけるよ。アリアさんの良いところ。今話したこと以外にも、きっとまだまだあるはずだから。」 「え........?」 「私も嬉しいんだ、普段あんまり話さない人とか、ちょっと気が合わないなって人の良いところを見つけられた時って。それを見つけたことがきっかけで、前より仲良くなれることもあるかもしれないしね。」 「.....................音羽さん........」 「初って呼んで良いよ。私もこれからはアリアって呼ぶ。アリアと友達になって、アリアの良いところをもっと見つけたい。....どうかな?」 アリアは目線を僅かに逸らし、また少し戸惑う。けど、またすぐに目線を合わせ、ゆっくりと頷いた。 「.....私、も.........初さんの良いところ、見つけたい......初さんと、仲良くなりたい.......」 「.......うん!これからもっと仲良くなろうね、アリア!」 私の言葉に、アリアは嬉しそうに笑う。今まで見たこともない笑顔。アリアって、こんなに笑顔が素敵なんだ。また一つ、良いところを見つけた。 「二人とも、そろそろ閉めるわよ。」 図書室の管理を担当する先生が、私達にそう呼びかけてきた。 「帰ろ、アリア。」 「......うん。その....また、明日。」 「こちらこそ、また明日♪」 明日はもっと、明後日はそれよりも沢山、アリアとお話出来たら良いな。 そう思いながら、私はアリアと一緒に図書室を後にした。 FIN.
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!! 私ひとりきりになった、青空学園。 空は、不気味なほどに晴れ渡っている。 地面が、揺れる。 いいえ、これは……この世界そのものが、 揺れている……! 「……いよいよ、と言ったところかしら」 私と猫は、何よりも重要な事を伝えずに、 彼女たちを送り出してしまった。 それは……確証がなかったから、 というのもある。 Dr.マッドの持つ禁忌符号の力は、 もはや私達の想像もつかないレベルに到達している可能性があったから。 そして、何よりも。 余りにも、残酷すぎたからだ。 無垢で純粋な1人の少女に、 「世界のために自ら命を絶ってくれ」 なんて、言えるわけがない。 例え、その代償に世界が滅びてしまう としても。 私達には、言えるはずがなかった。 「……はもはもちゃん………………」 この夢の世界を作り出したのは、Dr.マッド。 それは間違いない。 だけど、この世界の中心にいるのは 彼女ではない。 Dr.マッドが、これほどまでに夢の世界を作る事に執念を燃やすようになった、理由。 それが、はもはもちゃんだった。 詳細は、「かつてどこかの世界線でDr.マッドが経験した事」だから、分かりようもない。 それでも、私達は直感で感じていた。 明らかに、この世界には意図的に作られた作為……歪みがある。 物語で表現するなら、所謂「主人公」。 この世界には、最初から主人公がいたのだ。 主人公が立てた作戦は紆余曲折はあれど必ず成功し、主人公の戦いは苦戦はしても必ず勝利する。「そういうもの」なのだ。 ……これが創作物ならば、 「そういうもの」として納得できたかも知れない。 でも、ここは現実だ。 例え夢の世界であっても、数ある現実のひとつのはずなのだ。 なのに、「彼女」はまるで主人公のように、様々な苦難を乗り越えてきた。まるで主人公のように、様々な戦いの中心にいた。 はもはもちゃんこそ、この世界を存続させるための要石。彼女がいる限り、Dr.マッドを倒す事も、世界の上書きを止める事もできないだろう。 ……この世界を崩壊させるには、彼女の死が必要不可欠なのだ。 しかも、単なる死では、「物語上必要なピンチ」にしかならず、Dr.の禁忌符号によって復活させられてしまう可能性がある。 つまりは。 Dr.マッドが想定すらしていない死。 本来、はもはもちゃんが絶対にするはずがない、死に方。 ………………自殺を、しなくてはならない、という事だ。 ……私達は、酷い保護者だった。 考えてみれば、彼女達には辛い思いばかりさせてしまった。 外敵から守ってきたと言えば聞こえはいいけれど……彼女達を狭い結界の中に閉じ込め、 食料も碌に与えてあげる事もできず、教えた事と言えば戦い方くらいだ。 ……これではまるで、牢獄ではないか。 「牢獄、良いじゃないか。 この世界にはもう、ここ以外にまともな場所など残ってはいない。誰も文句など言わないだろうさ」 「……あなた…………閉じ込めておいたのに、抜け出したのね」 星降 純乃。 私から見れば今でも可愛い子供だけれど、 猫の仇でもある。 ……どうせあいつの事だから死んではいないだろうけど。 「なぜ彼女達を送り出した? 私は止めようとした。お前達はただ、彼女達をむざむざ死にに行かせたようなものなんだぞ!どの道Dr.マッドの計画は止められない。 ならば、私達はここで安寧の時を過ごしていれば、それで良かったじゃないか!!」 「…………そうね。あなたの考えは正しいわ。 私も猫も、あの子達がDr.を止められるとは 思っていなかった。だけど、それでも…… 信じてみたかったの。 あの子達が持つ、可能性を」 「可能性?それは何か? はもはもちゃんが、全てを察して、自殺してくれるかもって可能性の話をしているのか!?ふざけるな!!!お前達が余計な事をしなければ、全て上手く行ったんだ!! 私は、ここでの暮らしが本当に気に入っていたんだ。 ……そうさ、私は全てを知った上でここに来た。最初はどんなものか見てやろう、くらいの気持ちだったさ。だが……ここの空気は、他のどこよりも、穏やかだったんだ。 子供達も、本当に楽しそうに笑っていた。 こんな絶望的な状況で、だ。 ここは…………救いだった。絶望しか知らない、教えられていない私にとって、本当に救いだったんだ!!」 純乃ちゃんの独白は、嘘など微塵も感じない本気のものだった。 「……やっぱり、あなたはDr.に『造られた』女の子だったのね」 「あぁそうさ。私達はいわば『舞台装置』。 物語をうまく回すための、歯車でしかない。 そんな事は承知の上だ。だが、それでも。 私達はこの世界に生を受けた。 それならばこの生を謳歌したいと思う事は、 間違っているのか!?せっかく見つけた安寧の場所を壊したくないと思う事は…………! 間違いなどでは、なかったはずなのに……」 純乃ちゃんは、がくりと膝から崩れ落ちた。 あぁ、私達は…………なんて、酷い保護者だったのだろう。 子供達の純粋な幸せを願うのなら。 見たこともない「現実の世界」の事なんて忘れて、この夢の世界が現実と入れ替わる事を、受け入れれば良かったのだ。 だけど、私達はそうしなかった。 世界を救うという大義名分を掲げて、 子供達を、救いのない戦いへと追いやった。 死地へと、送り出してしまった。 「ふ……ふふふ……」 そうだ。滅ぶべきは、私達だったんだ。 私は、私は…………何を、しているんだ。 「あははははははは!!! あはははははははははははは!!!」 涙も、出てこない。 愚かな自分と、アイツなりに子供達の事を真剣に考えていた猫がしでかした事は。 子供達を、見殺しにしただけじゃないか。 揺れが、激しくなる。 ギギギ……ガコン!!! 校舎の屋上に設置してあった巨大な貯水タンクの固定が外れ、こちらに向かって落下してくる。 かつての自分なら、こんなものに潰されても すぐに復活できた。だけど、力が衰えた今の私は……恐らく蘇る事はできないだろう。 最期の時を迎えるために、目を閉じる。 愚かな自分への罰は、 これでも軽すぎるくらいだ。 …………………………。 ………………? 「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ!」 ふと目を開けると、膝をついたまま、 手をこちらにかざした純乃ちゃんがいた。 「何を、しているんだ……お前!!」 「なに、って……純乃ちゃん、 あなたこそ…………。タンクを異界に飛ばして、私を助けてくれたの……?」 「目の前で、救える命を見殺しにするほど、 私はっ……非道ではないつもりだ……!」 息も切れ切れに、純乃ちゃんはこちらを見据える。 お前はどうだ、と言いたげな様子だ。 「私、は…………」 「今からでも間に合うかも知れない。 私は子供達を助けに行く。 Dr.マッドに叛旗を翻すことになるとしても」 「くっくっくっ、良いのぉ良いのぉ。 雨降って地固まる、というやつじゃな。 わざわざタンクを落とした甲斐があったというものよ」 「……なっ!?お前、は…………!!」 第9章(前編)へ