約 664,685 件
https://w.atwiki.jp/onimomo/pages/708.html
javascript plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 ■ 英語学習アプリ「鬼桃語り」の攻略サイト■ 鬼桃語り攻略メニューへ戻る -漆黒ノ音ト霧 > 海を覆い尽くす霧・火 > 小さな荒ぶる者 タップ 発音 おにぎり -14 -14 Score 100 82 獲得小判 2052 2052 獲得経験値 491 778 宝桃 0 2 バトル① あかクラゲ、ちびあか子影、ちびうさきの子 バトル② 小あか鬼火、小赤葉たま バトル③ 赤うきこカメ×2、フェアリーフォーク 最終バトル 亥 ■ 英語学習アプリ「鬼桃語り」の攻略サイト■ 鬼桃語り攻略メニューへ戻る javascript plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7869.html
「あずさままー」 梓「はーい。」 「ういままー」 憂「あいちゃーん。あんまりお水に近寄ったらダメですよー。」 「うん!」 冬の冷たい潮風を物ともせず、砂浜を駆ける小さな姿。 梓「愛はホントにお母さん譲りのやんちゃさんだね。」 こちらに向かって、小さな手を一生懸命に振る愛に、憂が小走りに駆け寄りその小さな体を抱きよせる。 これは私達親子3人のある冬の日の物語。 程なくして、目的の場所である海辺の小さな食堂に辿り着く。 愛「おじーちゃん、おばーちゃん、こんにちは!」 出迎えた老夫婦は、毎年成長していく愛の姿に目を細めている。 梓「今年も御厚意に甘えさせて戴きに参りました。」 爺「こちらこそ、毎年来てくれて感謝していますよ。」 小さな愛の身体を愛しそうに抱き締めて、お婆さんが深い感慨を込めて告げる。 婆「愛ちゃんもこんな立派に大きく育って・・・。」 憂「春からは幼稚園の年長さんになります。」 婆「年々お母さんの・・・唯さんの面影が濃くなってきますね。」 憂「そうですね、私も時々幼かった頃の姉の姿と錯覚してしまいますね。」 愛「ういままないてるの?」 憂「あいちゃんには、そんな風に見えるのかな?」 愛「んーわかんない」 梓「ふふ、愛のそう言う不思議な感覚も正しくお母さん譲りだね。」 愛を憂に任せて、2階の部屋に向かう。 扉を開き、時間が停まったままのような毎年何一つ変わる事の無い室内へ足を踏み入れる、唯先輩がその最期の時を生きた部屋へと。 元から据え置かれていた家具を除けば、唯先輩の私物と呼べる物はほぼ皆無だったと言ってもいい。 僅かな衣類と、最小限の身の回り用品、そして深紅のギターだけが、唯先輩がここに居た証。 梓「唯先輩、今年もメンテに来ましたよ。」 用意してきたツールを取り出し、私は年に一度の仕事に取り掛かる。 機械的に作業を進めながら、様々な記憶が脳裏を過ぎる。 大学進学を機に一人暮らしを始めた唯先輩が、突如私達の前から姿を消したあの夏の日。 自暴自棄に陥りそうになる憂を守るためだけに生きた秋の日。 警察による失踪人探索が、唯先輩の死という最悪の形で決着をみた冬の日。 そして、唯先輩がこの世界に残した最大の希望、それは産み月に満たない小さな命を、まるで己の全て捧げたかの様に最期の瞬間に産み落とした新たなる命。 今は愛と呼ばれる、唯先輩の忘れ形見にして、私と憂の最愛の娘。 愛「あずさままー」 階段を登ってきた愛が、私の背中に小さな身体を預けてくる。 梓「もうすぐ終わるから、お行儀良く待てるかな、愛?」 愛「うん」 私の隣りに座り興味津々な目で、産みの母の形見のレスポールを見る愛。 梓「愛もギターを弾きたい?」 愛「うん!ままみたいにひきたい!」 この「まま」は果たして誰を指しているのか… 産みの母を見た事が無い愛が、知っている訳が無いのを承知で疑問に思ってしまう。 梓「よし、完了。」 その声を待っていたかのように、愛が私に促す。 愛「ままのおうたひいて!」 これも不思議な話だけど、愛は生まれる前に聞いたという歌を「ままのおうた」と呼んで、よく口ずさんでいる。 梓「それじゃ、愛のリクエストにお答えしようかな。」 私は海を見渡す窓辺に腰掛け、弦を爪弾く。 愛を身籠もった唯先輩は、この食堂に住み込みで働きながら、夜になるとここに腰掛けギー太を爪弾いていたらしい。 きっと今の私の様に…。 私の爪弾きに合わせるかの様に、部屋に入ってきた憂が歌う。 憂♪筆ペンfu-fu 震えるfu-fu 初めて君へのwritten-time 正直助かるよ、歌は苦手だから。 憂♪君の笑顔想像して~ 私達の歌を聞いていた愛が突然立ち上がると、押し入れを開けてなにやら中を探している。 そこには何も無かったけど? 暫くすると、愛は一通の大きめの茶封筒を持って出て来た。 愛「ままのおてがみだよ」 私と憂は歌を止めて、愛の手にするモノを見つめる。 愛「はい、ういまま」 憂「あ、ありがとう、あいちゃん。」 震える手で受け取った憂が中を調べると、入っていたのは何枚ものハガキと一冊のノート。 私達はハガキの宛名を一枚一枚確認する。 律先輩、澪先輩、ムギ先輩、さわこ先生、両親 そして、憂と私 それぞれの私信は読まずに、自分達へのハガキに目を通す。 そこに書かれていたのは、ありきたりな季節の挨拶と、謝罪の言葉、そして幸せに暮らしているという近況報告。 憂と二人でノートに目を通す。 いくつかの作詞と共に残されていたのは、唯先輩の日記のようなモノ。 真剣に恋をした事。 愛する人を病で失った事。 二人の愛の結晶を身籠もった事。 誰にも迷惑をかけたくない為に生まれた街を出た事。 この食堂での老夫婦と過ごした幸せな時間の事。 そして…生まれてくる子供の名前を「愛」と名付けようと思っている事。 窓辺を見ると、愛が小さな身体にギー太を抱えて、弦を爪弾く真似をしながら歌っていた。 愛♪きみがいないとなんにもできないよ きみのごはんがたべたいよー 参ったな…唯先輩、あなたはどうしてこんなに…。 私と憂はただ黙って泣いた…だって、なにも言葉はいらないから。 それを見た愛が目にイッパイの涙を浮かべて、私達の元へと駆け寄る。 愛「ういまま、あずさまま、なかないで」 私達3人は初めて一緒に泣いた。 唯先輩、あなたの娘は…愛は元気に育っていますよ。 私達3人は部屋を後にすると、食堂の老夫婦とお別れの挨拶を交わした。 婆「愛ちゃん、また来てね。」 愛「うん!」 爺「ギターは持って行かなくていいんですか?」 憂「はい、身勝手なお願いですがもう少しあの部屋に置いてあげて下さい。」 爺「私達は構いませんよ。唯さんは私達にとっても娘同然ですから。」 憂「本当にありがとうございます。」 梓「愛がもう少し大きくなってあのギターを弾けるようになったら…その時まで、お願いします。」 冬にしては、穏やかな波の砂浜を3人で手をつないで歩く。 見上げると、唯先輩が、私が、憂が、そして愛が見たあの窓辺。 また来年訪れた時もきっと変わらない風景。 唯先輩、私達は幸せに暮らしていますよ。 お し ま い 14
https://w.atwiki.jp/onimomo/pages/605.html
javascript plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 ■ 英語学習アプリ「鬼桃語り」の攻略サイト■ 鬼桃語り攻略メニューへ戻る -闇深キ洞穴ノ島 (裏) > 裏・光の神 > 裏・小さな猛闘 タップ 発音 おにぎり -13 -13 Score 100 82 獲得小判 8055 8056 獲得経験値 2691 4267 宝桃 バトル① あかクラゲ、あおクラゲ、みどクラゲ、きいクラゲ、やみクラゲ バトル② みどエビ、あかエビ、きいエビ バトル③ きいクラゲ、黄鬼金魚、あおクラゲ 最終バトル きいオニおばけ、寅、小黄葉たま ドロップ ■ 英語学習アプリ「鬼桃語り」の攻略サイト■ 鬼桃語り攻略メニューへ戻る javascript plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
https://w.atwiki.jp/okano_industry/pages/60.html
部品構造 大部品 小さな集合住宅 RD 5 評価値 3部品 住宅の建物 部品 複数の部屋 部品 内装の特徴 部品 公共設備 部品 管理体制 部品定義 部品 住宅の建物 建てやすい構造と建材で作られた建物で高級さは漂わない。最低限の強度と、それなりの断熱力、防音性を持っている。主に1~2階建ての小規模な集合住宅である。 部品 複数の部屋 同じ間取となっている複数の部屋がある構造で、各部屋に住民が住む形態である。各部屋数は様々であるが一般的に1、2部屋である。建物の出入口が一つである構造のものと、各部屋それぞれにドアがある構造のものとがある。 部品 内装の特徴 各部屋に水道、電気、燃料が引かれている物がほとんどである。それぞれの部屋にキッチンとトイレを持ち、シャワールームやバスルームといった設備を備えている。その他電話線やテレビアンテナ線が引かれている物が一般的である。 部品 公共設備 住宅によっては公共のエントランスがあったり、集団ポストや地域掲示板、ごみ収集場所などの公共設備を持つ。 部品 管理体制 一般的には月極めなどの期間契約での賃貸形式をとり、管理人や大家が建物の保全を行う業務を行い、場合によっては管理業者に委託されることもある。 提出書式 大部品 小さな集合住宅 RD 5 評価値 3 -部品 住宅の建物 -部品 複数の部屋 -部品 内装の特徴 -部品 公共設備 -部品 管理体制 部品 住宅の建物 建てやすい構造と建材で作られた建物で高級さは漂わない。最低限の強度と、それなりの断熱力、防音性を持っている。主に1~2階建ての小規模な集合住宅である。 部品 複数の部屋 同じ間取となっている複数の部屋がある構造で、各部屋に住民が住む形態である。各部屋数は様々であるが一般的に1、2部屋である。建物の出入口が一つである構造のものと、各部屋それぞれにドアがある構造のものとがある。 部品 内装の特徴 各部屋に水道、電気、燃料が引かれている物がほとんどである。それぞれの部屋にキッチンとトイレを持ち、シャワールームやバスルームといった設備を備えている。その他電話線やテレビアンテナ線が引かれている物が一般的である。 部品 公共設備 住宅によっては公共のエントランスがあったり、集団ポストや地域掲示板、ごみ収集場所などの公共設備を持つ。 部品 管理体制 一般的には月極めなどの期間契約での賃貸形式をとり、管理人や大家が建物の保全を行う業務を行い、場合によっては管理業者に委託されることもある。 インポート用定義データ [ { "title" "小さな集合住宅", "part_type" "group", "children" [ { "title" "住宅の建物", "description" "建てやすい構造と建材で作られた建物で高級さは漂わない。最低限の強度と、それなりの断熱力、防音性を持っている。主に1~2階建ての小規模な集合住宅である。", "part_type" "part" }, { "title" "複数の部屋", "description" "同じ間取となっている複数の部屋がある構造で、各部屋に住民が住む形態である。各部屋数は様々であるが一般的に1、2部屋である。建物の出入口が一つである構造のものと、各部屋それぞれにドアがある構造のものとがある。", "part_type" "part" }, { "title" "内装の特徴", "description" "各部屋に水道、電気、燃料が引かれている物がほとんどである。それぞれの部屋にキッチンとトイレを持ち、シャワールームやバスルームといった設備を備えている。その他電話線やテレビアンテナ線が引かれている物が一般的である。", "part_type" "part" }, { "title" "公共設備", "description" "住宅によっては公共のエントランスがあったり、集団ポストや地域掲示板、ごみ収集場所などの公共設備を持つ。", "part_type" "part" }, { "title" "管理体制", "description" "一般的には月極めなどの期間契約での賃貸形式をとり、管理人や大家が建物の保全を行う業務を行い、場合によっては管理業者に委託されることもある。", "part_type" "part" } ], "expanded" false } ]
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/585.html
すごくシンプルな話。 ありふれていて、きっと誰もが心の中に持っていて、その温もりを知っている灯のこと。 「いー天気ね」 そう言いながら、かがみは長い髪を大きな風に揺らした。 舞い上がった優しい彼女の匂いに、少しだけ私は、目を丸くする。 ―小さな恋の話― 三年生になって一ヶ月が過ぎたばかりの、五月の放課後。 ほんの少し前まで満開の花を咲かせていた桜の梢には、すっかり新緑の葉が生い茂っていて。 太陽は暖かく、空はぴんと真っ青に晴れていて、窓を開けると草の匂いでいっぱいの風が吹き込んできていた。 そんな日の放課後。 つかさとみゆきはそれぞれの用事でいそいそと先に帰ってしまって、取り残された私とかがみは顔を見合わせた。 かがみの空みたいな瞳は、「帰るのが勿体無いよね」と言っていた。かがみの瞳に映る私が、それに応えて大きく微笑った。 屋上へ行ってみようよ、と私は言った。 そうね、とかがみは言ってまんざらでもなさそうな顔をしたので、私は先立って歩き出した。 「屋上っていかにも青春って感じジャン?」 そう言って振り返り、いつものように笑ってみせる。 そうすると、かがみはいつものように目を細めてみせる。 「わからないでもないような気もするけれど……わからんな」 「それって結局どっちなのさ?」 「わからん」 連れない反応に「冷たいよー、かがみん~」と言って私が背中に飛びつくと、かがみは「ええい、うっとおしい!」と振り払うような仕草をした。 でも本気で振り払ってるわけじゃないんだ。 だって、かがみだって笑ってるもん。 それからきっと、私も笑ってる。 この話の、本当の始まりは、私にもよくわからない。 だって、私はかがみのことが始めから大好きだったから。大好きな大好きなともだちだったから。 その気持ちに、『ともだち』とは違う熱が帯びてるってことに気がついたのは、随分経ってからだった。 それは、もうそれがどうしようもなく大きくなってから。鈍い私でも間違えようが無いくらいに。 まだ二年生の頃。ストーブの匂いがしていたから、多分冬。 いつも通り四人で、机を合わせて、話しながらご飯を食べてた。 それはいつも通りのお昼の光景。私の口にはいつも通りのチョココロネの味。 全部、いつも通りだったはずなのにね。 なのに、空から羽が舞い降りてくるみたいに、突然私の中に灯ったんだ。 『私ってもしかして――かがみのことが』 そう思ったその瞬間、タイミングよく、目の前に座っていたかがみが笑った。 目が、釘付けになった。 屈託無く笑うかがみの笑顔に、私は、もう間違えようがないくらいハートに火がついてることを知った。 女の子だから、とか、友達じゃん、とか。 その時に、そういうこと考えてるスキマは無かった。 だって、目の前でつかさやみゆきさんと笑うかがみは、それはもう確実に可愛かったんだよ。 普段は行かない屋上に向かって、ふざけ合いながら私とかがみは階段を登った。 ハートの火を自覚してからは、かがみといる時間のすべてが嬉しくて仕方がなくなった。 ふたりきりだと尚更。きっとかがみは気付いてないけれど、私の気持ちはいつもより明らかにハイになる。 だからついついふざけすぎて、かがみの雷を食らっちゃうこともあるんだけれど。 私より二歩早く屋上の入り口の前に立ったかがみは、鉄のノブに手をかけてその扉を開け放った。 「おわっ」 そしたらいきなり、びゅう、と音を立てて強い風が吹き込んできて、かがみが声を上げた。 私はと言えば、かがみの舞い上がったスカートに慌てて視線を逸らした。 でもバッチリ見たけれど。 水色のストライプ。 「風がきもちいー」 屋上に出たかがみは伸びをしながらそう言った。 「うん、とてもイイ風だよね。風ぐっじょぶ」 私が力強く言うと、かがみは不思議そうな顔をした。子猫みたいに無防備に首を傾げてる。 だから教えてあげることにした。 「水色のストライプ」 そう言って、「くふふ」と口元に手を当てて笑った。 かがみは何のことかすぐには分からなかったようで「えっ?」って顔をしていたけれど、きっかり三秒後に顔を真っ赤にして、今更スカートの裾を押さえた。 「見たのか!? 見たのか!?」 「風のイタズラですよ。いや~、かがみって意外と可愛いぱんつはいてん…」 鞄が飛んで来て、私の顔面にクリーンヒットした。 五月の太陽が、私たちの身体を真っ直ぐ突き抜けるように、ぴかぴかに真新しい光を降らせる。 私とかがみは柵に寄りかかって、下界を見下ろした。 グラウンドで運動部の生徒たちが声を出しながら走り回っているのが見えた。 それから、学校の周りに広がる田んぼの畦道の緑色。 街の影は遠く、そのさらに遠くに山の稜線。 風が吹くたびに、薄荷の匂いが鼻を掠めた。 空はとても青い。 「……屋上って案外人、いないのね」 何となく降りていた沈黙を、かがみののんびりとした声が緩やかに砕く。 「そうだねー」 ふたりきりだよね、とは言わなかった。言ってもしょうがないから。 代わりにいつのも軽口。 「世間で見る屋上の青春度合いを考えたら、満員御礼でもおかしくないのにネ」 「いやそんな屋上おかしいから。てかアンタの言うその『世間』は、アニメやゲームや漫画の中のことだろ」 「まねー」 「全く……」 かがみは呆れたように頬杖をつく。 柵に足をかけて遊んでいた私は、その横顔をこっそり覗き見た。 かがみって、きれいな顎のラインしてるなあ。 私はかがみを見るのが好きだ。 そのピンとした姿勢とか歩き方とか。全体的に凛としてるのに、歩くと揺れるツインテールが尻尾みたいで可愛いくて。 モノゴトをきっぱりと言う喋り方も好きだ。キッツいときもあるけれど、かがみのそれは打ち水みたいで心地がいい。 それから、当人はツリ目なのをちょっと気にしてるけれど。 私は、かがみの眼がすごく好きだ。 パッと見は、ちょっと厳しそうに見えるんだけれど。 かがみって、瞳がすごく優しいんだ。 それはかがみのことが好きな人なら、誰もが知ってることだけれど。 でもそれ以外の人は気付かない。 かがみを大好きだと思ってる人にだけ、その瞳が教えてくれる。 かがみが、とても優しい女の子だっていうこと。 「何考えてるの?」 唐突に顔を覗き込まれて、私は変な声を上げてしまった。 「ふぇ!? えっと、ツンデレのすばらしさ? とか?」 あながち間違ってないよね。 「何それ」と、かがみは首を傾げた。まあ、当然かナ。 かがみはまた頬杖をついた。気付いてるかどうかわからないけれど、これはかがみの癖だ。そしてそれは彼女によく似合う。 「空中見て黙りこんでたから、何かと思ったわよ」 「んーとね、ほら、あんまりいい天気だからね」 と、とりあえず返してみたものものの、あんまり考えていなかったので言葉の続きが浮かばない。 さっきの、かがみの顔が急接近してきた時から、心臓の辺りがうるさくなってて。 「いい天気だから、なによ?」 かがみの突っ込みは容赦ない。 むぅ。かがみの所為なのに。 「いい天気、だからさあ……」 だから、猫口を作って、言ってやることにした。 「かがみが可愛いなって」 「はあ!?」 すぐにかがみは真っ赤になって裏返った声を上げた。 本当に期待を裏切らないなあ。 「全然関係ないじゃない!」 「関係あるよ~」 あ、語尾が少し震えた。 今のかがみにバレなかったよね? 大丈夫だよね。 冗談交じりでも、本音を言うのはスリル満点。 私は外を見る振りをして視線を外す。 「だって、いいお天気で、気持ちいい風が吹いてて、二人で景色見てて……」 柵の外の世界に向かって両手を広げ、大きく声を飛ばした。 「かがみが可愛いんだよ? 関係あるよネ!」 「全然関係ねーよ」 はい、その通りだネ。 ナイス突っ込みだ。 期待通りの突っ込みにウンウン頷いていると、隣のかがみが、はぁ、と溜め息を吐いたのが聞こえた。 その溜め息の音がいつもの『うんざり』と言うより、何だか切ない感じに聞こえたから。 私はかがみに顔を向けた。 かがみは空を見てた。 ちょっと物憂げな顔で。なんだかそれが妙に女の子っぽくて。 見とれてしまった。 屋上の柵に上体を載せるように寄りかかりながら、私はかがみをじっと見た。 私のすぐ横の柵の上に、かがみの手がある。 白くて、綺麗な指。 ハートの火が揺れた。 ……手、繋ぎたいな。 手を伸ばしたら、変に思われるかな? かがみのことだから、きっと振り払って怒るんだろうな。 そしたら、きっとかがみが真っ赤になって照れるところが見られるんだろうけれど。 …振り払われるのは、ヤだな。 そもそも、かがみって同性とか、どうなんだろ。 聞いたことないけれど、やっぱ無理かな。 わかんないな。 普段はくっついたりしても、悪い顔してないけれど。 でもそれは『ともだち』だからだよね。 『好き』なんて言ったら、かがみ、困っちゃうよね。 そう考えたら何だか鼻の奥がつんとしたから、慌てて遠くの景色を見た。 太陽は少し傾き始めてきているようで、遠くの街の輪郭がきらきらしてるのが見えた。 「こなた?」 かがみの声。 「んー」 まだちょっと鼻がつんとしてたから、視線を固定したまま生返事をした。 かがみの声が続く。 いつもより、少し優しい音で。 「どうかした?」 こんなときにばっかり鋭くならないでよ。 「……いつもは鈍感のくせに」 「え?」 「んーん、なんでもないヨ」 私はわざとかがみに聞こえないような小さな声で呟いてから、大仰な仕草で手を振った。 それから、にまっと猫口を作って、いつもと同じように笑ってみせた。 「ならいいけれど」 いつも通りに戻った私に、かがみは少しだけ緩んだ声を返す。 そして、思い出したように話を始めた。 「そうそう、昨日ね、つかさがさ――」 私は目を閉じた。 かがみの声は、空気に波紋を作る。 私にしか見えない波紋。 目を閉じると見える。かがみの声で。 優しさの輪郭が、浮かび上がる。 それはきっと誰もが知ってる灯のこと。 本当にシンプルで、ありふれた話。 私は、かがみのことが好きだ。 「――ってさ。本当、やんなっちゃうわよねー」 隣にいるかがみが笑う。すごく楽しそうに笑う。 その笑顔に胸が温かくなるのを感じる。 ハートの火が揺れてる。 結局、手は握れない。 でもふたりで話して、目を細めて笑うかがみに、笑顔を返すだけで、それだけで十分胸がいっぱいだった。 ――でも、いつかそれだけじゃ、満足できなくなる日が来るのかもしれない。 そんな予感がする。 そしたら、私は手を伸ばしちゃうのかな。 『ともだち』じゃイヤだって、私は言っちゃうのかな。 そしたら、かがみはどんな顔するだろう。 その時――それでも――かがみは隣にいてくれるかな。 「本当に、いー天気ね」 そう言いながら、かがみは長い髪を大きな風に揺らす。 舞い上がった優しい彼女の匂いに、少しだけ私は、目を丸くした。 レイニー・レイニーへ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-28 15 49 08) カワユスなぁ -- 名無しさん (2010-11-15 22 38 45) 二人ともカワイイ (*´Д`) -- ハルヒ@ (2008-06-12 19 07 44) 続き見たいなぁww -- 名無しさん (2008-05-15 23 11 25) 切なくてイイ! -- 名無しさん (2008-05-12 19 26 36) 実にシンプル だがそれがいい。GJ!! -- 名無しさん (2008-05-11 22 09 40)
https://w.atwiki.jp/toruneko3/pages/55.html
1.拾い集め 賢者のほら穴や仙人のほら穴及びクリア後のダンジョンで拾ったり、魔物の巣の鍵部屋で入手する方法。 効率悪し。 2.モノカ法 邪悪な風穴の12~14階でモノカの杖を使うとGか小さなメダルになるのでこれを使って集める方法。 モノカの杖はロサに貰うかいけにえのほら穴で集めることになる。 20本手に入れてパルプンテと組み合わせれば高速で大量に集めることができる。 3.発掘法 宝物庫で発掘するだけ。 ひとくいばこも多いのでニフラムの巻物を用意しておきたい。 4.ストーリー編 何度もストーリーをクリアし、集めた小さなメダルを交換所で受け渡す方法。 ちからの種と同時に集めると良い。
https://w.atwiki.jp/warawanu/pages/30.html
クラインの四元群 何ということもない2個の巡回群の直積である。当然,可換群である。 K=C2×C2 四元数群 位数8の非可換冪零群てあり,k=ijとするとi2=j2=k2=ijkとなり,四元数環の単元の乗法群と同型である。クラインの四元群とは異なる。 Q=(i, j | i4, i2j2, i3jij) 正二十面体群 位数60の単純群であり,交替群A5に同型である。 I={s2,t3,(st)5} 位数24の群 対称群S4を除き,位数24の群は正規なシロー2部分群か正規なシロー3部分群を持つ。 ∵ Gを位数24の群とし,Gのシロー2部分群とシロー3部分群が共に正規でないと仮定する。シローの定理により,Gは4個のシロー3部分群を持つ。Nを任意のシロー3部分群の正規化群とし,Nによる剰余類の集合G/N={xN | x∈G}へのGの自然な作用を調べる。その作用の核KはGの正規部分群であるから,|K|=3であればGが正規なシロー3部分群を持つことになる。また,|K|=2であればG/Kが正規なシロー2部分群がシロー3部分群を持ち,Gも正規なシロー部分群を持つことになる。KはNの部分群であるから,他に可能なのは|K|=1しかない。4個の元からなる集合にGが忠実に作用するからGからS4への単射があり,位数を比べれば全単射であり,GはS4に同型である。 位数60の単純群 最小位数の非可換単純群であり,交替群A5に同型,若しくはリー型の有限群PSL2(5)に同型である。 位数60の単純群は一意である。 位数168の単純群 位数60の次に小さい非可換単純群である。 位数168の単純群は一意である。 バーンサイドの定理の特殊形 ◇ pとqを素数と,p qとする。位数pqの群のシローq群は正規である。 ∵ Gを位数pqの群とする。Gのシローq部分群の個数はpの約数であるから,qを法にして1に合同となるには1になるしかない。シローq部分群が唯一であるから,それは正規部分群である。 ◇ pとqとrを素数とし,p q rとする。位数pqrの群のシローr部分群は正規である。 ∵ Gを反例とする。Gはpq個のシローr部分群を持つ。位数rの元がpq(r−1)個になるからシローq部分群がr個にはなりえず,Gのシローq部分群Qは正規である。 G/Qのシローr部分群は上に示したように正規であるから,Gは位数prの正規部分群Hを持つ。 Hのシローr部分群は正規である。正規なシロー部分群は特性部分群であり,正規部分群の特性部分群は正規部分群であるから,Gは正規なシローr部分群を持つ。即ち,Gは反例になりえない。 ◇ pとqを素数とする。位数p2qの群は単純群でない。 ∵ Gを位数p2qの群とし,npをGのシローp部分群の数とする。 npは素数qの約数であるから,Gが単純群であればnq q=np pである。 かつ,nqはp2の約数であるから,nq=p2である。 従い,Gのp2(q−1)個の元が位数qであり,残る元がp2個のみであるからnp=1になる。 ◇ pとqを素数とする。位数pkqの群は自明でない正規部分群を持つ。 ∵ Gを反例とする。Gはq個のシローp部分群を持つ。 D=S∩Tが最大になるように2個のシローp部分群SとTを選ぶ。 |D|=1であれば位数pの元がq(pa−1)個になり,シローq部分群が唯一に定まる。従い,|D|≠1である。 NをDの正規化群とする。Nがp群であれば,Nを含むシローp部分群Pがあり,P∩S≥N∩S Dである。この不等号はSがp群であるから真に不等号である。従い,P=SでなければDの選択に反する。しかし,Tについても同様であるからS=P=Tとなり,これもSとTの選択に反する。従い,Nはp群ではない。 QをNのシローq部分群とする。G=SQであるから任意のg∈Gはx∈Sとy∈Qの積の形に書け,Sxy=Sy Dy=DであるからSの共役は必ずDを含む。Sの全ての共役の共通部分がGの正規部分群になるから,Gは反例になりえない。 ◇ pとqを素数とする。位数p3qの群は正規なシローp部分群か正規なシローq部分群を持つ。但し,対称群S4を例外とする。 ∵ Gを反例とし,Gのシローp部分群の個数をnpと書く。npは素数qの約数であるからnq q=np pである。かつ,nqはp3の約数であるから,nq=p3かnq=p2かである。 nq=p3であれば,位数qの元がp3(q−1)個になり,シローp部分群が唯一に定まるからGが反例にならない。nq=p2であれば,p2=mq+1となるmがある。p2−1=(p+1)(p−1)=mqであるが,初めに示したようにq pであり,かつ,pとqが共に素数であるからp+1=q=3しかない。 ◇ pとqを素数とし,p qとする。位数p2q2の群のシローp部分群は正規である。但し,p2q2=36は例外である。 ∵ Gを反例とし,Gのシローp部分群の個数をnpと書く。シローの定理によりp np=q nq=p2である。 シローp部分群Pが正規であれば任意のシローq部分群Qが補群になる。然し,p=2,q=3の場合を除き,Pの自己同型群の位数がqの倍数にならず,PとQは直積をなす。即ち,Qも正規である。 D=S∩Tが最大になるようにシローq部分群SとTを選ぶ。 |D|=1であれば p2(q2−1)+q(p−1)+1≤|G| −p2+qp−q+1=(q−p−1)(p−1)≤0 これを満たすのはp=2,q=3に限られる。 |D|≠1であればDの正規化群をNとする。 Nの位数はpq2以上である。 射影特殊線型群 有限体Fq上,n次元の特殊線型群の中心による商をPSLn(q)と書く。 リー代数の記号を用いてAn−1(q)と書くこともあるが,交替群の記号とは無関係である。 低次元のものについては偶然の同型関係がある。 PSL2(2)≃S3 PSL2(3)≃A4 PSL2(4)≃PSL2(5)≃A5 PSL2(7)≃PSL3(2), order 168 PSL2(9)≃A6
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/3459.html
86 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 07 43 23 ID ??? はい、マイ鳥取の姫PLからマジ社会戦された俺が通りますよっと 最近は嫌に優しくなってきて気持ち悪いんだが‥‥‥ 95 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 10 55 13 ID ??? じゃあ、うちの鳥取の小さな姫PLの話 俺が入ってるサークルには姫プレイばっかりする女PLがいる。で、前に俺がGMの時に軽くプレイをいさめたらその日から軽く周りのサークルの人に根回ししてサークルから除名されそうになった。 どうやら常習犯らしくてサークルの人がスルーしてくれてたら、今度はうちの高校に根も葉もない噂が回るように社会戦仕掛けてきやがった。 それが、この前の春に久しぶりに兄貴が帰って来てサークルに参加してから対応が変わったのよ。 ちなみにその兄貴、家出たときは普通のTRPGオタクだったんだけど今はそれなりにかっこ良くなってた。 それで、その兄貴が参加した時の次の回からサークル中の姫PLが天敵みたいに俺に接してきたのが嘘みたいにフレンドリーになっててビビったわけ。 で、気になってサークルの人と会って話したら、曰くその姫PLさんがうちの兄貴を気に入ったらしいんだけど、今のとこサークル内で兄貴の携帯の番号を知ってるのは俺だけだったから俺を持ち上げて、兄貴とのツテにしようと考えたらしい。 そんなうちの姫の現在進行形の空回りな話 99 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 11 42 30 ID ??? 95を読んで思い出した、女性絡みの話。 参加していたサークルの代表に彼女がいて、その人も一緒にゲームしてたんだ。 やがて、代表と彼女は別れて、彼女はサークルも抜けた。 代表はそれからしばらくして別の人と付き合い始めたのだが、その新しい彼女というのが俺の同級生。 狭い地域のことなので、新しい彼女のことは間もなく元カノの耳にも入ったと思われるが、 何がどう伝わったものか、俺が新カノである友達を代表に紹介したがために、元カノと別れる原因になったと思い込まれ、 俺はその元凶として色々と陰口を叩かれたらしい。自分の耳に直接それらが入ってくることはなかったが。 代表と新カノが面識を持ったのは別れた後だし、そもそも二人をくっつける意図がなかった(新カノをゲームに誘っただけ) びっくりしたし、何故そんなことで俺が悪口言われるのかと気持ち悪かった。 105 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 13 40 19 ID ??? そして “兄”と“サークル”と“自分の席”を護るための 99の孤独な戦いが始まった 106 名前:105[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 13 41 56 ID ??? 105 99さんは違うな、間違えた 書き直し そして “兄”と“サークル”と“自分の席”を護るための 95の孤独な戦いが始まった スレ185
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/552.html
小さな龍と猫の姫 三話 眼が覚めて、ぼんやりとしたまま目の前にあるものを意識した。 蒼玉色の瞳に、淡い紫の髪。恐ろしいほどに整った女性の顔。 孔龍は、幾度か瞬きをして自分の頭が回転し始めるのを待った。全身がまだ、まどろみに包まれたように気だるい。ぼんやりと、上にある顔を見上げていると、女がにっこりと笑った。 「おはよう、異邦人君。私の言葉が通じるかな?」 問いかける言葉は、男性的な響きをしていた。なのに声音は鈴を転がしたような澄んだもの。 「……」 孔龍は、目覚めのぼんやりとした感覚を頭から振り落とすように頷いた。「十全だ」と頷く姿は、どこをどう見ても年頃の少女――それも極めて美しい――にしか見えない。 描いたような細く優美な眉に、宝石のような青い瞳。微かな紫色の混ざった長い銀髪は、纏めることもなく流すままにしている。彼女が身じろぎをするたび、髪の末端が優雅に踊った。身に纏っているのは肩の開いた黒い衣服。喪に服すような色なのに、そこかしこにあしらわれた布飾りや、露出した肩の白さが、その衣服を高貴なものに見せている。線の細い身体はしかし起伏に富み、芸術的なほど。この少女は美の神にどれほど愛されたのか。神がいるのなら、是非とも聞いてみたいと孔龍は思う。天井から注ぐ穏やかな光が、彼女の髪に染み入って、輝くかのようだった。 孔龍は爪先から順に見上げるように少女の身体を見た。天辺を見たとき、目に入るのは髪飾りではなく小さな猫の耳だった。それが美しい髪飾りであったのならば、孔龍はこの館こそが桃源郷なのかと疑ったことだろう。 「寝起きで呆けているのだね。まあ、無理もないか。ゆっくりと思考を整理していいよ、どうせ時間は唸るほどにあるから」 そう、その美しさに、その口調であった。 笑う時の屈託のなさといい、見れば見るほど、外見と口調と仕草の乖離具合が凄まじいことになっている。 「……しかし驚いたな、本当にヒトだ。ステラとシノがなにやらこそこそと話をしていたからまさかとは思ったが」 シノ、という名前が耳に入った瞬間、孔龍の頭の中で記憶が泡沫のように浮かび上がってきた。 この何処とも知れぬ場所で人の形をした狼と出会い、それを鉄拳で沈め、己もまた眠りに落ち――覚醒したかと思えば、人生初の―― 「うあああああああッ!」 「に゛ゃっ?!」 孔龍はバネ仕掛けのおもちゃのように飛び起き、頭よ砕けろとばかりに両手で自分の側頭部を掻き潰した。頭を抱えるなんて柔らかい表現では到底足りないほどだ、と自分でも思う。 頭の中に蘇るのは生々しい女の肌の感覚と、幾度となく自分の肩を、頬を、唇をまさぐった吐息の熱さである。 ――功夫の足りなさを理由に上げるまでもない。師父の耳に入ったら自殺する前に殺される。 桃色の記憶を思い出しては顔を火のように赤くし、その度、師父の笑顔と握り固めた拳を幻視して真っ青になる。身を左右にねじり苦悩する孔龍の前で、少女が握った手を口元に当てた。 「あー……こほん」 はっと我に返り、咳払いをした少女に目を向ける。少女は何やら頬に手をやり、困った風に呟く。視線はじっと一点を向いていた。 「扇情的というか、情熱的というか。私とて女の端くれなのだけれど、それは襲って欲しいんだという解釈をして大丈夫なのかな」 少女が若干、目線を下に注ぎながらゆっくりとした口調で問いかける。その目線を目で追って、孔龍はまたも頬に血が集まるのを感じた。相も変わらず自分は一糸纏わぬ服装で、暴れたせいで乱れた布団から、身体のとある一部分が張り切り顔を見せている。 「め、滅相もない! 大変な失礼を……申し訳ありませんッ!」 必死な謝罪を交えながら、孔龍はいつの間にやらベッドサイドに用意されていた自分の功夫服と下着の類を引っつかんで引き寄せ、そのまま布団を引っかぶる。暗い中で下着に足を通し頭を通しと悪戦苦闘していると、小さな笑い声が布団越しに届いた。 「そう急いで着込まれると、なんとも背徳的な気分になるよ。慌てずにしていいし、別に私は失礼だとも思っていない。……というかだね、失礼というのなら、私の前で思い切り急いで服を着ていることのほうが、どちらかというと失礼な気がするんだ」 「……戯れを申されないでください、ご婦人」 服装をできる限り整えてから、孔龍は布団を捲って顔を出した。まだ頬の赤みが引かない気がして、幾度か自分の顔をぴしゃぴしゃと打つ。 「嘘じゃないよ、素直な観想を言っただけさ。筋肉の乗り具合がいいし、まだまだ発育しそうだって期待ができる見事な身体だったからね。本能の時点で素敵だなと思ってしまうよ」 相も変わらず男性的な口調だが、少しずつイメージとの乖離が収まってきたと孔龍は思う。この物言いが、この少女の常態なのであろう。それは確かに奇態だが、堪えきれぬほどの違和感があるわけではない。 孔龍は唇を固く閉じて俯いた。どういう顔をすればいいか、よくわからない。 ――それと、扇情的な台詞に慣れるかどうかは、また別の話なのだが。 「でも残念、私はシノに先を越されてしまったみたいだね。匂いがする」 再三はっきりと口に出される名前に、肩を跳ねさせた。それを見たのか、彼女の頭に乗った猫の耳が幾度か動く。過剰反応ともいえる孔龍の仕草に、少女は息を漏らすようにして笑った。 「……腹芸が苦手なのだね、キミは。生きて行き辛そうだ。そういう素直なところ、私は嫌いではないけど」 やれやれ、という風に肩を竦める少女を前に、顔を手で押さえてうつむく以外にない。金色の髪と雅な微笑を思い出さないように首を振ると、孔龍はゆっくりと顔を上げた。 未だに混乱している。正直な話をすれば、何が何だかわからないのだ。誰もが自分を珍獣扱い、二言目には奴隷扱い。訊かなければならないことは山のようにあった。消え入りたいくらいの羞恥を押しのけて、孔龍は唇を開く。 「シノ……殿の話は堪忍していただけませんか。それよりも、伺いたいことが数個」 「いいよ。言ってみるといい」 少女は静かにベッドに腰を下ろし、髪を指先で弄びながら返してくる。 言葉に甘えることにして、孔龍は胡坐を掻くようにしてベッドの上に座りなおした。 「ありがとうございます。……私は孔龍、鄭孔龍(テイ・コンロン)と申します。先ずは貴女の御名前から伺いたく存じます」 孔龍が折り目正しく告げると、少女はそれで初めて、思い出した、という風に手を打った。 「そうだった。そういえば、まだ名乗ってもいないのだったね」 ベッドから軽やかに立ち上がり、三歩、優美な足取りで歩く。それから彼女は、芝居がかった仕草で振り返り、衣服の裾を軽く摘んで礼をした。 その作法には見覚えがなかったが、それでも礼法に則ったものなのだろうと思える、気品ある所作である。 「もしかしたらステラやシノから聞いているかもしれないが。私はリア=アーセンクォルト。この館、〝幽霊屋敷〟(ホーンテッドハウス)の主だよ。以後、よろしく」 微笑がまた眩いばかりで、孔龍は思わず次の質問を突き出すのを忘れて、まぶしそうに目を細めた。胸の片隅が常にざわめいている気がして、孔龍は服の左胸の布地を軽く握った。 「私は寛大でも優しくもないけれど、キミに右と左を教えてあげることくらいはできる。質問を続けて」 促すリアの言葉に、孔龍は胸のうちを落ち着かせるように軽く呼吸をした。一拍置いて話し出す。 「はい。……まず、ここは一体どこなのでしょう。私は都へ行く道を歩いていたはずなのですが、いつの間にか違う道に迷い込んでしまっていたようなのです。帝都へ繋がる道の方向も加えて教えてくだされば、と思うのですが」 躊躇わず核心を問う言葉に、リアは少しだけ困った顔をしてから、髪をくるくると指に巻きつけた。そのまま手をぱたりと下に下ろすと、絹糸のような髪が抵抗なくほどけて流れる。 少しだけ言いにくそうに、彼女は言った。 「最寄の一番大きい街には――ここからなら南に歩けば二日もせずに辿り付けるだろうね。けれども、恐らくそれはキミの求める〝帝都〟ではない。何故なら、キミが求めている街は、この世界には存在しないからだ」 少女は毅然とした風を保とうとしているが、その目には言い知れぬ憐憫が漂う。彼女の頭の天辺で、耳もしょげ返ったように垂れていた。 「……あの。おっしゃる意味がわからないのですが」 放たれた唐突な言葉を飲み込むことが出来ず、孔龍は言葉を噛み砕こうとしながら、更なる説明を求めた。 ――否、判っていたことだったのかもしれない。急な失調、魑魅魍魎とすら疑えそうな人の形をした獣。魔的な魅力を持つ妖女の頭の天辺には耳が小さく揺れていて、そして今、顔を合わせて語る美しい少女の頭にも、髪飾りではなく獣の耳がある。 この世界は何かがおかしい。 自分はとっくに気付いていたはずなのだ。 「……キミが自分の世界をなんと呼ぶかは知らない。けれど、ここはキミがいた世界ではないんだ。キミは、キミの世界のほんの僅かな気まぐれに巻き込まれて、この世界へ落ちてきてしまったんだよ。――窓の外をご覧」 少女は淡々と語る。ふわりと、羽が息に吹かれたような軽やかさで立ち上がると、彼女は窓際へ進んで、大窓を隠す布を左右へ広げた。手招く姿に、コンロンもまた、誘われるように続く。 外はすっかりと暗くなり、虫の鳴く音さえもなく、ただ風にそよいで揺れる木々の音だけが大気を震わせている。 リアが顎をしゃくるようにして、空を示した。よく晴れた夕闇の空、群青色を青白く切り取る月が浮かんでいる。 孔龍は、その瞬間に、自分が何処とも知れぬ場所へ迷い込んだのだと理解せざるを得なくなった。 「――月が……二つ……?」 空に浮かび玲瓏たる光を放つあの天体が、さながら影絵の怪物の眼のようであった。目を擦れど、何度瞬けど、その光が消えて失せることはない。 空は遠く、言葉を叫んでも届きそうにない。届いたとして、一体何を訴えればいいのだろう。 「ようこそ最果てへ、コンロン。キミはキミの世界から零れ〝落ち〟て、この世界に来たんだ。これがどういった現象なのかは、私の浅学も相俟って説明は出来ないが……」 沈黙する孔龍を前に、少女は初めて彼の名前を呼んだ。孔龍は言葉もなく、天を見仰ぐ。 ……十年、十年だ。 齢、七より修行に継ぐ修行を重ねてきた。過酷な修行をそれでも耐え抜き、師父をして『己の五十年を十年に縮める様を見た』と言わしめた。彼が最後の最後にくれた最高の褒め言葉を、永久に忘れまいと思ったものだ。 同門のものがあまりの辛苦に逃げ出し、耐え切れずに死す中でも、孔龍は耐えてきた。耐え、いつかは師に追いつく日が来ると頑なに自らを鍛え続けた。その十年の結果が、過去二十年の中で唯一たる皆伝者の称号である。 あの師父に師事できたこと、その技を全て継いだこと、それが自らの最初で最後の誇りだと、今この瞬間も信じている。 後はこの磨き抜かれた技を用いて、帝都で名を立て、吼意仁慈拳の強さを知らしめる。それこそが自分の存在意義だと心の底から信じていた。 それなのに。 その根底が、今覆されようとしている。 孔龍は、力の抜けそうな右手で、自分の左胸を引き裂かんばかりに掴んだ。そうしていないと、震え出してしまいそうだった。 「……ッ、行かなくては」 「……どこに?」 曖昧な表情をして、リアが首をかしげる。孔龍は焦りと、心の内側を焦がすような苛立ちに、語気も強く言った。 「帝都です!! 帝都に向かい、皇帝陛下の御前で武闘を披露するのです! 私が認められれば、師父が認められたことになる! 吼意仁慈拳を世に知らしめ、門下を多く取り、この拳を不動のものとする! それを成さねば、私は……僕はッ……!!」 孔龍は血も吐き出さんばかりに声を詰めた。もはや言葉を取り繕うことさえ出来ぬ。 齢十七の浅く短き生といえど、それでもあの門出の朝は、誰からも望まれず生まれた農村の子が描いた夢が結実しようとしていた朝だったのだ。 それを、――それを簡単に無にしてしまうというのか。運命という暴虐は。 「キミのいた場所のことは、わからない」 いっそ冷たいほどの語調で、少女は呟いた。 「けれども、たった一つだけ言えることがあるよ。私の知る限り、自分のいた場所に還ったヒトは存在しない。――つまりは」 決定的な崩壊の音が、一瞬後に発されようとしている。 孔龍とて、阿呆ではない。吼意仁慈拳は、その道を修めんとする者に、肉体の鍛錬とともに、自らを律する心の訓練、そして万象の理を理解するための叡智を学ぶことを課す。 次に何を言われるのかは判った。 だが、彼女の唇を塞いだとて、この現実が変わるわけがないのだ。 少女は言葉を切り、躊躇うようにしてから、とどめの一言を放った。 「キミも、恐らくは、元の世界に還ることは叶わないだろう」 視界が揺れた。 質量のある音声をぶつけられたような心地。失意が心を染め上げ、膝が体重を支えることを放棄した。空では欠けた月が笑っている。孔龍は床に膝を突き、自失したように呟いた。 「……悪い夢でも見ているのでしょうか。これは、夢なのでしょうか」 夢であって欲しいと、願う。 だが、少女はいくらか強い語気で、ぴしゃりと言った。 「夢ではないよ、現実だ。現に私がここにいる」 細い指が、うつむく孔龍の頬に触れる。気力の全てが失せたような孔龍の表情に、リアは悼むような顔をする。 「キミにはどこか――その、帝都という、行くべき場所があって、果たすべき使命があったんだろう。私はまだ若いから、キミのその使命の価値や、今の心境を推し量ることは出来ない」 孔龍の力ない手に、リアの指先が絡む。そのまま引き寄せ、孔龍の手を胸元に掻き抱いた。夜気に冷えかけた手を包む、柔らかなぬくもり。微かに伝わる鼓動が、少年の手に染み込む。 「……ここだって悪いところじゃないとか――そんなことを言うつもりはない。キミの人生を、判ったような顔をして聞き漁るつもりもない。けれど、多分、少しだけならキミの力になれると思う。……こんなことを言っても、今の君には届かないかもしれないが」 「……」 孔龍は黙したまま、少女の言葉を聴いた。切々と語る口調は、嘘を言っているようには到底思えない。 頭の中がぐしゃぐしゃだった。乱雑に紙に引いた線のように、思考が纏まらない。叩きつけられた現実の重さは、孔龍から正常な思考能力を奪う。 いけない、と思った。 自暴自棄になったときは、人と接してはいけない。心無い言葉を浴びせて、苛立ちを紛らわそうとするからだ。 働いた最後の思考にしたがって、孔龍は押し殺した声で言った。 「……暫く、一人にしていただけませんか」 「構わないよ。私も、今のキミとまともな話ができるとは思ってない。今夜はこのまま休むといい。外に蹴り出したりはしないよ。短い会話だったけれど、私はキミのことが嫌いではないから」 少女は孔龍の手を、そっと離した。身を引くようにして立ち上がる。紫水晶の光を帯びる髪が、儚げに揺れた。 「落ち着くころに話をしよう。キミを傷つけるものはここにはない」 見上げた先にあるのは、自分を見下ろす、吸い込まれそうなほど青い瞳。少女は憐憫を孕んだ微かな笑顔を形作ると、ぽつりと零した。 「私はキミを歓迎するよ。私に出来ることなら、なんだって手伝おう。――お父様がかつて、旅人にそうしたように。――ではね」 ひらひらとした服の裾を翻し、少女が扉へと歩く。毅然としたその立ち居振る舞いは、忘我の境地に立った孔龍から見てさえもなお、輝いていた。 恨み言を吐く理性と、この突然の闖入者に礼を尽くす彼女に何か言葉をかけようとする意識とが鬩ぎ合って、孔龍は言葉を詰める。喉を震わそうとしたそのときには、彼女の姿は扉の向こうへと消えていた。 ――窓の外を見上げる。 二つの月は漆黒の獣の瞳のよう。爛々と輝き、全てを今にも飲み込みそうだった。 ――師父、僕はこれからどうしたらいいのでしょう。 厳しい顔をした、自らの師の姿を思い浮かべる。自ら道を切り開けと、あの人ならば言うのだろう。けれども、今の自分に何ができるというのだ。惑う内心を繕うことすらできず、精一杯の言葉をかけてくれたものまで遠ざけて、ただ一人部屋の隅、窓の傍の暗がりに沈んでいる。 「――……」 孔龍は窓際にへたり込んだまま、月を見上げていた。 夜が更け、二つの月がゆっくりと沈みはじめるまで、ずっと。
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/563.html
小さな龍と猫の姫 三話 眼が覚めて、ぼんやりとしたまま目の前にあるものを意識した。 蒼玉色の瞳に、淡い紫の髪。恐ろしいほどに整った女性の顔。 孔龍は、幾度か瞬きをして自分の頭が回転し始めるのを待った。全身がまだ、まどろみに包まれたように気だるい。ぼんやりと、上にある顔を見上げていると、女がにっこりと笑った。 「おはよう、異邦人君。私の言葉が通じるかな?」 問いかける言葉は、男性的な響きをしていた。なのに声音は鈴を転がしたような澄んだもの。 「……」 孔龍は、目覚めのぼんやりとした感覚を頭から振り落とすように頷いた。「十全だ」と頷く姿は、どこをどう見ても年頃の少女――それも極めて美しい――にしか見えない。 描いたような細く優美な眉に、宝石のような青い瞳。微かな紫色の混ざった長い銀髪は、纏めることもなく流すままにしている。彼女が身じろぎをするたび、髪の末端が優雅に踊った。身に纏っているのは肩の開いた黒い衣服。喪に服すような色なのに、そこかしこにあしらわれた布飾りや、露出した肩の白さが、その衣服を高貴なものに見せている。線の細い身体はしかし起伏に富み、芸術的なほど。この少女は美の神にどれほど愛されたのか。神がいるのなら、是非とも聞いてみたいと孔龍は思う。天井から注ぐ穏やかな光が、彼女の髪に染み入って、輝くかのようだった。 孔龍は爪先から順に見上げるように少女の身体を見た。天辺を見たとき、目に入るのは髪飾りではなく小さな猫の耳だった。それが美しい髪飾りであったのならば、孔龍はこの館こそが桃源郷なのかと疑ったことだろう。 「寝起きで呆けているのだね。まあ、無理もないか。ゆっくりと思考を整理していいよ、どうせ時間は唸るほどにあるから」 そう、その美しさに、その口調であった。 笑う時の屈託のなさといい、見れば見るほど、外見と口調と仕草の乖離具合が凄まじいことになっている。 「……しかし驚いたな、本当にヒトだ。ステラとシノがなにやらこそこそと話をしていたからまさかとは思ったが」 シノ、という名前が耳に入った瞬間、孔龍の頭の中で記憶が泡沫のように浮かび上がってきた。 この何処とも知れぬ場所で人の形をした狼と出会い、それを鉄拳で沈め、己もまた眠りに落ち――覚醒したかと思えば、人生初の―― 「うあああああああッ!」 「に゛ゃっ?!」 孔龍はバネ仕掛けのおもちゃのように飛び起き、頭よ砕けろとばかりに両手で自分の側頭部を掻き潰した。頭を抱えるなんて柔らかい表現では到底足りないほどだ、と自分でも思う。 頭の中に蘇るのは生々しい女の肌の感覚と、幾度となく自分の肩を、頬を、唇をまさぐった吐息の熱さである。 ――功夫の足りなさを理由に上げるまでもない。師父の耳に入ったら自殺する前に殺される。 桃色の記憶を思い出しては顔を火のように赤くし、その度、師父の笑顔と握り固めた拳を幻視して真っ青になる。身を左右にねじり苦悩する孔龍の前で、少女が握った手を口元に当てた。 「あー……こほん」 はっと我に返り、咳払いをした少女に目を向ける。少女は何やら頬に手をやり、困った風に呟く。視線はじっと一点を向いていた。 「扇情的というか、情熱的というか。私とて女の端くれなのだけれど、それは襲って欲しいんだという解釈をして大丈夫なのかな」 少女が若干、目線を下に注ぎながらゆっくりとした口調で問いかける。その目線を目で追って、孔龍はまたも頬に血が集まるのを感じた。相も変わらず自分は一糸纏わぬ服装で、暴れたせいで乱れた布団から、身体のとある一部分が張り切り顔を見せている。 「め、滅相もない! 大変な失礼を……申し訳ありませんッ!」 必死な謝罪を交えながら、孔龍はいつの間にやらベッドサイドに用意されていた自分の功夫服と下着の類を引っつかんで引き寄せ、そのまま布団を引っかぶる。暗い中で下着に足を通し頭を通しと悪戦苦闘していると、小さな笑い声が布団越しに届いた。 「そう急いで着込まれると、なんとも背徳的な気分になるよ。慌てずにしていいし、別に私は失礼だとも思っていない。……というかだね、失礼というのなら、私の前で思い切り急いで服を着ていることのほうが、どちらかというと失礼な気がするんだ」 「……戯れを申されないでください、ご婦人」 服装をできる限り整えてから、孔龍は布団を捲って顔を出した。まだ頬の赤みが引かない気がして、幾度か自分の顔をぴしゃぴしゃと打つ。 「嘘じゃないよ、素直な観想を言っただけさ。筋肉の乗り具合がいいし、まだまだ発育しそうだって期待ができる見事な身体だったからね。本能の時点で素敵だなと思ってしまうよ」 相も変わらず男性的な口調だが、少しずつイメージとの乖離が収まってきたと孔龍は思う。この物言いが、この少女の常態なのであろう。それは確かに奇態だが、堪えきれぬほどの違和感があるわけではない。 孔龍は唇を固く閉じて俯いた。どういう顔をすればいいか、よくわからない。 ――それと、扇情的な台詞に慣れるかどうかは、また別の話なのだが。 「でも残念、私はシノに先を越されてしまったみたいだね。匂いがする」 再三はっきりと口に出される名前に、肩を跳ねさせた。それを見たのか、彼女の頭に乗った猫の耳が幾度か動く。過剰反応ともいえる孔龍の仕草に、少女は息を漏らすようにして笑った。 「……腹芸が苦手なのだね、キミは。生きて行き辛そうだ。そういう素直なところ、私は嫌いではないけど」 やれやれ、という風に肩を竦める少女を前に、顔を手で押さえてうつむく以外にない。金色の髪と雅な微笑を思い出さないように首を振ると、孔龍はゆっくりと顔を上げた。 未だに混乱している。正直な話をすれば、何が何だかわからないのだ。誰もが自分を珍獣扱い、二言目には奴隷扱い。訊かなければならないことは山のようにあった。消え入りたいくらいの羞恥を押しのけて、孔龍は唇を開く。 「シノ……殿の話は堪忍していただけませんか。それよりも、伺いたいことが数個」 「いいよ。言ってみるといい」 少女は静かにベッドに腰を下ろし、髪を指先で弄びながら返してくる。 言葉に甘えることにして、孔龍は胡坐を掻くようにしてベッドの上に座りなおした。 「ありがとうございます。……私は孔龍、鄭孔龍(テイ・コンロン)と申します。先ずは貴女の御名前から伺いたく存じます」 孔龍が折り目正しく告げると、少女はそれで初めて、思い出した、という風に手を打った。 「そうだった。そういえば、まだ名乗ってもいないのだったね」 ベッドから軽やかに立ち上がり、三歩、優美な足取りで歩く。それから彼女は、芝居がかった仕草で振り返り、衣服の裾を軽く摘んで礼をした。 その作法には見覚えがなかったが、それでも礼法に則ったものなのだろうと思える、気品ある所作である。 「もしかしたらステラやシノから聞いているかもしれないが。私はリア=アーセンクォルト。この館、〝幽霊屋敷〟(ホーンテッドハウス)の主だよ。以後、よろしく」 微笑がまた眩いばかりで、孔龍は思わず次の質問を突き出すのを忘れて、まぶしそうに目を細めた。胸の片隅が常にざわめいている気がして、孔龍は服の左胸の布地を軽く握った。 「私は寛大でも優しくもないけれど、キミに右と左を教えてあげることくらいはできる。質問を続けて」 促すリアの言葉に、孔龍は胸のうちを落ち着かせるように軽く呼吸をした。一拍置いて話し出す。 「はい。……まず、ここは一体どこなのでしょう。私は都へ行く道を歩いていたはずなのですが、いつの間にか違う道に迷い込んでしまっていたようなのです。帝都へ繋がる道の方向も加えて教えてくだされば、と思うのですが」 躊躇わず核心を問う言葉に、リアは少しだけ困った顔をしてから、髪をくるくると指に巻きつけた。そのまま手をぱたりと下に下ろすと、絹糸のような髪が抵抗なくほどけて流れる。 少しだけ言いにくそうに、彼女は言った。 「最寄の一番大きい街には――ここからなら南に歩けば二日もせずに辿り付けるだろうね。けれども、恐らくそれはキミの求める〝帝都〟ではない。何故なら、キミが求めている街は、この世界には存在しないからだ」 少女は毅然とした風を保とうとしているが、その目には言い知れぬ憐憫が漂う。彼女の頭の天辺で、耳もしょげ返ったように垂れていた。 「……あの。おっしゃる意味がわからないのですが」 放たれた唐突な言葉を飲み込むことが出来ず、孔龍は言葉を噛み砕こうとしながら、更なる説明を求めた。 ――否、判っていたことだったのかもしれない。急な失調、魑魅魍魎とすら疑えそうな人の形をした獣。魔的な魅力を持つ妖女の頭の天辺には耳が小さく揺れていて、そして今、顔を合わせて語る美しい少女の頭にも、髪飾りではなく獣の耳がある。 この世界は何かがおかしい。 自分はとっくに気付いていたはずなのだ。 「……キミが自分の世界をなんと呼ぶかは知らない。けれど、ここはキミがいた世界ではないんだ。キミは、キミの世界のほんの僅かな気まぐれに巻き込まれて、この世界へ落ちてきてしまったんだよ。――窓の外をご覧」 少女は淡々と語る。ふわりと、羽が息に吹かれたような軽やかさで立ち上がると、彼女は窓際へ進んで、大窓を隠す布を左右へ広げた。手招く姿に、コンロンもまた、誘われるように続く。 外はすっかりと暗くなり、虫の鳴く音さえもなく、ただ風にそよいで揺れる木々の音だけが大気を震わせている。 リアが顎をしゃくるようにして、空を示した。よく晴れた夕闇の空、群青色を青白く切り取る月が浮かんでいる。 孔龍は、その瞬間に、自分が何処とも知れぬ場所へ迷い込んだのだと理解せざるを得なくなった。 「――月が……二つ……?」 空に浮かび玲瓏たる光を放つあの天体が、さながら影絵の怪物の眼のようであった。目を擦れど、何度瞬けど、その光が消えて失せることはない。 空は遠く、言葉を叫んでも届きそうにない。届いたとして、一体何を訴えればいいのだろう。 「ようこそ最果てへ、コンロン。キミはキミの世界から零れ〝落ち〟て、この世界に来たんだ。これがどういった現象なのかは、私の浅学も相俟って説明は出来ないが……」 沈黙する孔龍を前に、少女は初めて彼の名前を呼んだ。孔龍は言葉もなく、天を見仰ぐ。 ……十年、十年だ。 齢、七より修行に継ぐ修行を重ねてきた。過酷な修行をそれでも耐え抜き、師父をして『己の五十年を十年に縮める様を見た』と言わしめた。彼が最後の最後にくれた最高の褒め言葉を、永久に忘れまいと思ったものだ。 同門のものがあまりの辛苦に逃げ出し、耐え切れずに死す中でも、孔龍は耐えてきた。耐え、いつかは師に追いつく日が来ると頑なに自らを鍛え続けた。その十年の結果が、過去二十年の中で唯一たる皆伝者の称号である。 あの師父に師事できたこと、その技を全て継いだこと、それが自らの最初で最後の誇りだと、今この瞬間も信じている。 後はこの磨き抜かれた技を用いて、帝都で名を立て、吼意仁慈拳の強さを知らしめる。それこそが自分の存在意義だと心の底から信じていた。 それなのに。 その根底が、今覆されようとしている。 孔龍は、力の抜けそうな右手で、自分の左胸を引き裂かんばかりに掴んだ。そうしていないと、震え出してしまいそうだった。 「……ッ、行かなくては」 「……どこに?」 曖昧な表情をして、リアが首をかしげる。孔龍は焦りと、心の内側を焦がすような苛立ちに、語気も強く言った。 「帝都です!! 帝都に向かい、皇帝陛下の御前で武闘を披露するのです! 私が認められれば、師父が認められたことになる! 吼意仁慈拳を世に知らしめ、門下を多く取り、この拳を不動のものとする! それを成さねば、私は……僕はッ……!!」 孔龍は血も吐き出さんばかりに声を詰めた。もはや言葉を取り繕うことさえ出来ぬ。 齢十七の浅く短き生といえど、それでもあの門出の朝は、誰からも望まれず生まれた農村の子が描いた夢が結実しようとしていた朝だったのだ。 それを、――それを簡単に無にしてしまうというのか。運命という暴虐は。 「キミのいた場所のことは、わからない」 いっそ冷たいほどの語調で、少女は呟いた。 「けれども、たった一つだけ言えることがあるよ。私の知る限り、自分のいた場所に還ったヒトは存在しない。――つまりは」 決定的な崩壊の音が、一瞬後に発されようとしている。 孔龍とて、阿呆ではない。吼意仁慈拳は、その道を修めんとする者に、肉体の鍛錬とともに、自らを律する心の訓練、そして万象の理を理解するための叡智を学ぶことを課す。 次に何を言われるのかは判った。 だが、彼女の唇を塞いだとて、この現実が変わるわけがないのだ。 少女は言葉を切り、躊躇うようにしてから、とどめの一言を放った。 「キミも、恐らくは、元の世界に還ることは叶わないだろう」 視界が揺れた。 質量のある音声をぶつけられたような心地。失意が心を染め上げ、膝が体重を支えることを放棄した。空では欠けた月が笑っている。孔龍は床に膝を突き、自失したように呟いた。 「……悪い夢でも見ているのでしょうか。これは、夢なのでしょうか」 夢であって欲しいと、願う。 だが、少女はいくらか強い語気で、ぴしゃりと言った。 「夢ではないよ、現実だ。現に私がここにいる」 細い指が、うつむく孔龍の頬に触れる。気力の全てが失せたような孔龍の表情に、リアは悼むような顔をする。 「キミにはどこか――その、帝都という、行くべき場所があって、果たすべき使命があったんだろう。私はまだ若いから、キミのその使命の価値や、今の心境を推し量ることは出来ない」 孔龍の力ない手に、リアの指先が絡む。そのまま引き寄せ、孔龍の手を胸元に掻き抱いた。夜気に冷えかけた手を包む、柔らかなぬくもり。微かに伝わる鼓動が、少年の手に染み込む。 「……ここだって悪いところじゃないとか――そんなことを言うつもりはない。キミの人生を、判ったような顔をして聞き漁るつもりもない。けれど、多分、少しだけならキミの力になれると思う。……こんなことを言っても、今の君には届かないかもしれないが」 「……」 孔龍は黙したまま、少女の言葉を聴いた。切々と語る口調は、嘘を言っているようには到底思えない。 頭の中がぐしゃぐしゃだった。乱雑に紙に引いた線のように、思考が纏まらない。叩きつけられた現実の重さは、孔龍から正常な思考能力を奪う。 いけない、と思った。 自暴自棄になったときは、人と接してはいけない。心無い言葉を浴びせて、苛立ちを紛らわそうとするからだ。 働いた最後の思考にしたがって、孔龍は押し殺した声で言った。 「……暫く、一人にしていただけませんか」 「構わないよ。私も、今のキミとまともな話ができるとは思ってない。今夜はこのまま休むといい。外に蹴り出したりはしないよ。短い会話だったけれど、私はキミのことが嫌いではないから」 少女は孔龍の手を、そっと離した。身を引くようにして立ち上がる。紫水晶の光を帯びる髪が、儚げに揺れた。 「落ち着くころに話をしよう。キミを傷つけるものはここにはない」 見上げた先にあるのは、自分を見下ろす、吸い込まれそうなほど青い瞳。少女は憐憫を孕んだ微かな笑顔を形作ると、ぽつりと零した。 「私はキミを歓迎するよ。私に出来ることなら、なんだって手伝おう。――お父様がかつて、旅人にそうしたように。――ではね」 ひらひらとした服の裾を翻し、少女が扉へと歩く。毅然としたその立ち居振る舞いは、忘我の境地に立った孔龍から見てさえもなお、輝いていた。 恨み言を吐く理性と、この突然の闖入者に礼を尽くす彼女に何か言葉をかけようとする意識とが鬩ぎ合って、孔龍は言葉を詰める。喉を震わそうとしたそのときには、彼女の姿は扉の向こうへと消えていた。 ――窓の外を見上げる。 二つの月は漆黒の獣の瞳のよう。爛々と輝き、全てを今にも飲み込みそうだった。 ――師父、僕はこれからどうしたらいいのでしょう。 厳しい顔をした、自らの師の姿を思い浮かべる。自ら道を切り開けと、あの人ならば言うのだろう。けれども、今の自分に何ができるというのだ。惑う内心を繕うことすらできず、精一杯の言葉をかけてくれたものまで遠ざけて、ただ一人部屋の隅、窓の傍の暗がりに沈んでいる。 「――……」 孔龍は窓際にへたり込んだまま、月を見上げていた。 夜が更け、二つの月がゆっくりと沈みはじめるまで、ずっと。