約 1,992,806 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/316.html
一般的意見23(2017年):出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの人権についての国家の義務 一般的意見一覧 CMW/C/GC/4-CRC/C/GC/23 配布:一般(2017年11月16日) 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの人権についての国家の義務に関する合同一般的意見: すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見4号(2017年) および子どもの権利委員会の一般的意見23号(2017年)〔注〕 注/この合同一般的意見は、国際的移住の文脈における子どもの人権についての一般的原則に関する合同一般的意見(すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号〔2017年〕および子どもの権利委員会の一般的意見22号〔2017年〕)とあわせて参照されるべきである。 【訳者注】煩雑さを避けるため、以下の訳では、「すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約」は移住労働者権利条約、「すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会」は移住労働者権利委員会と略称する。/なお、以下の目次は訳者が付け加えたものである。 I.はじめに(パラ1-2) II.自国の領域において国際的移住の文脈にある子どもの権利を保護する締約国の法的義務(パラ3-63)A.年齢(パラ3-4)) B.身体の自由に対する権利(移住労働者権利条約第16条および第17条;子どもの権利条約第37条)(パラ5-13) C.適正手続上の保障および司法へのアクセス(移住労働者権利条約第16条、第17条および第18条;子どもの権利条約第12条および第40条)(パラ14-19)) D.名前、アイデンティおよび国籍に対する権利(移住労働者権利条約第29条;子どもの権利条約第7条および第8条)(パラ20-26)1.出生登録(パラ20-22) 2.国籍に対する権利および無国籍とならないための保障措置(パラ23-26) E.家族生活(移住労働者権利条約第14条、第17条および第44条;子どもの権利条約第9条、第10条、第11条、第16条、第18条、第19条、第20条および第27条(4))(パラ27-38)1.分離の禁止(パラ28-31) 2.家族再統合(パラ32-38) F.あらゆる形態の暴力および虐待(搾取、児童労働および誘拐を含む)ならびに子どもの売買または取引からの保護(移住労働者権利条約第11条および第27条;子どもの権利条約第19条、第26条、第32条、第34条、第35条および第36条)(パラ39-44) G.経済的搾取(法定年齢未満の労働および危険な労働を含む)からの保護、雇用条件および社会保障に対する権利(移住労働者権利条約第25条、第27条、第52条、第53条、第54条および第55条;子どもの権利条約第26条および第32条)(パラ45-48) H.十分な生活水準に対する権利(移住労働者権利条約第45条;子どもの権利条約第27条)(パラ49-53) I.健康に対する権利(移住労働者権利条約第28条および第45条;子どもの権利条約第第23条、第24条および第39条)(パラ54-58) J.教育および職業訓練に対する権利(移住労働者権利条約第30条、第43条および第45条;子どもの権利条約第28条、第29条、第30条および第31条)(パラ59-63) III.国際協力(パラ64-65) IV.合同一般的意見の普及および報告(パラ66-68) I.はじめに 1.移住労働者権利条約と子どもの権利に関する条約には、子どもおよび移住者の人権の保護に一般的にも具体的にも関連する、法的拘束力のある一定の義務が掲げられている。いずれの条約にも、出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの権利に関連する具体的義務を定めた規定が複数掲げられているところである [1]。 [1] 子どもの権利条約の締約国は、第4条(権利の実施)を第2条(差別の禁止)とあわせて解釈することにより、自国の管轄内にあるすべての子どもに対する経済的、社会的および文化的権利〔の保障〕について、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、かつ、国際法にしたがって即時的に適用される義務を損なうことなくこれらの権利の全面的実現を漸進的に達成する目的で、措置をとる義務を負っている。子どもの権利委員会・一般的意見19号(子どもの権利実現のための公共予算編成、2016年)、パラ28-34参照。 2.この合同一般的意見は、国際的移住の文脈における子どもの人権についての一般的原則に関する合同一般的意見(すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号〔2017年〕および子どもの権利委員会の一般的意見22号〔2017年〕)と同時に採択されたものである。同一般的意見とこの一般的意見はいずれもそれ自体で独立した文書ではあるが、両者は相互に補完しあうものであり、あわせて参照しかつ実施することが求められる。これらの文書の起草過程では、2017年5月から7月にかけて、バンコク、ベイルート、ベルリン、ダカール、ジュネーブ、マドリードおよびメキシコシティにおいて、主要な関係者および専門家(子どもたちおよび移住者団体を含む)の代表の参加を得て一連の国際的・地域的協議も行なわれた。加えて、両委員会のもとには、2015年11月から2017年8月にかけて、世界のあらゆる地域の国々、国際連合機関および関係組織、市民社会組織、国内人権機関ならびにその他の関係者から80件以上の意見書が寄せられた。 II.自国の領域において国際的移住の文脈にある子どもの権利を保護する締約国の法的義務 A.年齢 3.子どもの権利条約に基づく子どもの定義は、18歳までの権利および保護を定めている。両委員会は、15~18歳の子どもの保護の水準がはるかに低くなる傾向にあり、かつ、この年齢層の子どもが成人として扱われ、または18歳に達するまで移住者資格が曖昧なまま放置されることもあることを懸念するものである。国は、15歳以上の子どもを含むすべての子どもに対し、かつその移住者資格にかかわらず、平等な水準の保護が提供されることを確保するよう促される。子どもの代替的養護に関する指針 [2] にしたがい、国は、子ども(とくに養護環境を離れる子ども)が18歳に近づくにつれてフォローアップ、支援および移行のための十分な措置を提供するべきである。そのための手段には、長期的な正規の移住者資格および教育修了のための合理的機会へのアクセス、人間にふさわしい仕事へのアクセスならびにこれらの子どもが暮らす社会への統合を確保することなどが含まれる [3]。子どもは、このような移行期間中に自立生活に向けて十分な準備をできるようにされるべきであり、また権限のある公的機関は個々の状況の十分なフォローアップを確保するべきである。両委員会は加えて、各国に対し、18歳を超えても保護措置および支援措置をとるよう奨励する。 [2] 国連総会決議64/142付属文書。 [3] 子どもの権利委員会「国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利についての一般的討議(2012年)の報告」、パラ68-69参照。www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2012/DGD2012ReportAndRecommendations.pdf より入手可。 4.十分な情報に基づく年齢の推定を行なうため、国は、専門の小児科医または発達のさまざまな側面を統一して理解することに熟達したその他の専門家が実施する、子どもの身体的および心理的発達の包括的評価を行なうべきである。このような評価は、子どもが理解する言語による子ども(および適当な場合には同伴している成人)の面接も含め、迅速な、子どもにやさしい、ジェンダーに配慮したかつ文化的に適切なやり方で行なうことが求められる。利用可能な文書は反証がないかぎり申請の文書と認められるべきであり、また子どもおよびその親または親族による陳述が検討されなければならない。評価の対象とされている者に対しては灰色の利益が認められるべきである。国は、とくに骨および歯の検査による分析に基づく医学的手法の使用を控えることが求められる(このような手法は、大きな誤差をともなう不正確な結果をもたらす場合があるとともに、外傷体験をともない、かつ不必要な法的手続につながる可能性もある)。国は、自国の認定について再審査または適切な独立機関への不服申立てが行なえることを確保するべきである。 B.身体の自由に対する権利(移住労働者権利条約第16条および第17条;子どもの権利条約第37条) 5.すべての子どもは、いかなるときにも、身体の自由および入管収容からの自由に対する基本的権利を有する [4]。子どもの権利委員会は、子ども自身またはその親の移住者資格を理由とするいかなる子どもの拘禁も子どもの権利の侵害であり、かつ子どもの最善の利益の原則に違反すると主張してきた [5]。このことに照らし、両委員会とも、子ども自身またはその親の移住者資格に関連した理由による子どもの収容はけっして行なわれるべきではないと主張してきたのであり、国は、子どもの入管収容を迅速かつ完全に中止しまたは根絶することが求められる。いかなる種類の子どもの入管収容も法律で禁止されるべきであり、かつ当該禁止規定が実務上も全面的に実施されるべきである。 [4] 子どもの権利条約第37条;移住労働者権利条約第16条および第17条;世界人権宣言第3条および第9条;市民的および政治的権利に関する国際規約第9条。 [5] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ78参照。また、自由を奪われたすべての者の裁判所における提訴の権利についての救済措置および手続に関する国際連合基本原則および指針(A/HRC/30/37付属文書)の、とくに原則21(パラ46)および指針21も参照。 6.入管収容とは、両委員会の理解によれば、子どもから自由を剥奪する行為の名称および理由または子どもが自由を奪われる施設もしくは場所の名称にかかわらず、子ども自身またはその親の移住者資格に関連した理由で子どもが自由を奪われるすべての場面をいう [6]。「移住者資格に関連した理由」とは、両委員会の理解によれば、両委員会がこれまで示してきた指針にのっとって非正規な入国または滞在に関わるものか否かにかかわらず、ある者の移住者資格もしくは在留資格またはその欠如をいう。 [6] 自由の剥奪は、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約の選択議定書第4条(2)において、「いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令によるあらゆる形態の拘禁もしくは収監または公的もしくは私的な身柄拘束環境への措置であって、対象とされた者がみずからの意思で離れることを許されないもの」と定義されている。自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則の規則11は、「本規則の適用上、以下の定義が用いられなければならない。…… (b) 自由の剥奪とは、いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令によるあらゆる形態の拘禁もしくは収監または公的もしくは私的な身柄拘束環境への措置であって、対象とされた者がみずからの意思で離れることを許されないものを指す」としている。 7.加えて、子どもの権利委員会と移住労働者権利委員会はいずれも、子どもは子ども自身またはその親の移住者資格を理由として犯罪者として扱われまたは懲罰的措置(収容など)の対象とされるべきではないと強調してきた [7]。非正規な入国および滞在は、それ自体、人身、財産または国の安全に対する犯罪ではない [8]。非正規な入国および滞在を犯罪化することは、非正規な移住を管理しかつ規制する締約国の正当な利益を超えており、かつ不必要な拘禁につながる。 [7] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ78参照。 [8] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号(非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利、2013年)、パラ24。 8.子どもの権利委員会は、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもとの関連で、子どもはその自由を奪われるべきではなく、かつ、子どもが保護者のいないもしくは養育者から分離された状態にあることまたはその移住者資格もしくは在留資格もしくはその欠如のみを理由として収容を正当化することはできない旨、2005年に指摘した [9]。 [9] 子どもの権利委員会・一般的意見6号(出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い、2005年)、パラ61参照。 9.両委員会は、いかなる自由の剥奪にも内在する有害性、および、入管収容が、たとえ子どもが短期間または家族とともに収容される場合であっても、子どもの身体的および精神的健康ならびに発達に及ぼす悪影響を強調する。拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰関する特別報告者は、「入管行政執行の文脈において……子ども自身またはその親の移住者資格を理由とする子どもの自由の剥奪は、けっして子どもの最善の利益に合致せず、必要性の要件を逸脱しており、かつ著しく比例性を欠いたものとなるとともに、移住者である子どもの残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いに相当する場合がある」と指摘している [10]。 [10] A/HRC/28/68、パラ80参照。 10.子どもの権利条約第37条(b)は、子どもの自由の剥奪は最後の手段としてかつもっとも短い適切な期間でのみ行なうことができるという一般的原則を定めている。しかし、非正規な入国または滞在に関わる法律違反は、いかなる状況下でも、犯罪の実行から生じるものと同様の結果はもたらさない [11]。したがって、最後の手段としての子どもの拘禁が認められていることは、少年刑事司法のような他の分野では適用できる場合があっても、出入国管理手続においては適用されない。このような場合の拘禁は、子どもの最善の利益の原則および発達に対する権利に抵触するためである。 [11] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号、パラ24参照。また、子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ78も参照。同趣旨の指摘として、恣意的拘禁に関する作業部会の報告書(A/HRC/13/30)、パラ58ならびに移住者の人権に関する特別報告者の報告書(A/HRC/20/24)、パラ31および38参照。 11.このような対応に代えて、国は、子どもが、その出入国管理上の地位についての解決が図られ、かつ子どもの最善の利益評価が行なわれている間および子どもが帰還するまでの間、収容をともなわない、コミュニティを基盤とする環境において家族構成員および(または)後見人とともに滞在できるようにする立法、政策および実務を通じ、子どもの最善の利益を、人身の自由および家族生活に対する子どもの権利とともに充足する解決策をとるべきである [12]。子どもに保護者がいない場合、このような子どもは、子どもの代替的養護に関する指針にしたがい、代替的な養護および居住場所の形態をとった、国による特別な保護および援助を受ける資格を有する [13]。子どもに保護者がいる場合、家族がともにいられるようにする必要性は、子どもの自由の剥奪を正当化する有効な理由とはならない。家族がともにいられるようにすることが子どもの最善の利益によって求められるときは、子どもから自由を剥奪してはならないという絶対的要件が子どもの親に対しても及ぶのであり、公的機関は、家族全体を対象として収容をともなわない措置を選択しなければならない [14]。 [12] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ79参照。 [13] 子どもの権利委員会・一般的意見6号、パラ39-40参照。 [14] A/HRC/20/24、パラ40、米州人権裁判所「移住の文脈にある子どもおよび(または)国際保護を必要とする子どもの権利および保障」(勧告的意見OC.21/14、2014年8月19日)、パラ159およびA/HRC/28/68、パラ80参照。 12.したがって、子どもおよび家族の入管収容は法律で禁じられるべきであり、かつ政策および実務においてその廃止が確保されるべきである。収容に充てられる資源は、子どもおよび該当する場合にはその家族に対応する権限のある子ども保護機関が実施する、収容をともなわない解決策に向けることが求められる。子どもおよび家族に対して用意される措置は、子どもまたは家族の自由を何らかの形で剥奪することをともなうものであるべきではなく、かつ、執行ではなくケアおよび保護の倫理に基づいたものであるべきである [15]。これらの措置は、子どもの最善の利益にのっとった事案の解決に焦点を当て、かつ、子どもの権利の包括的保護を確保することによって子どものホリスティックな発達を可能にするために必要なあらゆる物質的、社会的および情緒的条件を提供するようなものであることが求められる。独立の公的機関および市民社会組織が、これらの便益または措置を恒常的に監視できるようにされるべきである。子どもおよび家族は、何らかの入管収容が執行された場合には効果的救済措置にアクセスできるべきである。 [15] 子どもの代替的養護に関する指針参照。 13.両委員会の見解では、国際的移住の文脈にある子どもについては子どもの保護および福祉に関連する機関が第一次的責任を負うべきである。移住者である子どもが最初に出入国管理当局によって発見された場合、子どもの保護または福祉を担当する行政官が直ちに通告を受け、かつ保護、滞在場所その他のニーズに関わる子どものスクリーニングを担当することが求められる。保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもは、国/地方の代替的養護制度に措置するべきである(家庭的養護が利用可能な場合には子ども自身の家族とともに当該養護に、家庭が利用できない場合にはその他の形態のコミュニティ養護に、措置することが望ましい)。これらの決定は、子どもに配慮した適正手続の枠組み(意見を聴かれ、司法にアクセスし、かつ自由の剥奪につながりうるいかなる決定についても裁判官に対して異議を申し立てる子どもの権利を含む)の枠組みのなかで行なわれなければならず [16]、かつ、ジェンダー、障害、年齢、精神的健康、妊娠その他の状態に基づくものを含む子どもの脆弱性およびニーズを考慮したものであることが求められる。 [16] 自由を奪われたすべての者の裁判所における提訴の権利についての救済措置および手続に関する国際連合基本原則および指針の、とくに指針18参照(A/HRC/30/37、パラ100)。 C.適正手続上の保障および司法へのアクセス(移住労働者権利条約第16条、第17条および第18条;子どもの権利条約第12条および第40条) 14.司法へのアクセスはそれ自体が基本的権利であり、かつ他のすべての人権の保護および促進の前提条件であるので、国際的移住の文脈にある子どもが自己の権利を主張できるようエンパワーされるうえで何よりも重要である。締約国は、その責任として、司法への公正、実効的かつ迅速なアクセスを確保するための構造的および積極的介入を行なわなければならない。子どもの権利委員会は、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)で、実効的な救済のためには効果的かつ子どもに配慮した手続が必要であると指摘した。委員会はさらに、当該手続においては、行政上および司法上の手続が子どものニーズおよび発達に適合したものとなり、かつこのようなあらゆる手続において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、一定の具体的措置がとられることを保障するべきであるとしている。 15.両委員会は、国が、自国の法律、政策、措置および実務において、子どもおよび(または)その親の権利に影響を及ぼす、移住および庇護に関わるすべての行政手続および司法手続における子どもに配慮した適正手続が保障されることを確保するべきであるという見解に立つ。すべての子ども(親その他の法定保護者とともにいる子どもを含む)は権利を保有する個人として扱われるべきであり、その子ども特有のニーズが平等にかつ個別に考慮されなければならず、またその意見は適切に聴取されかつ正当に重視されなければならない。子どもは、すべての決定が子どもの最善の利益にのっとって行なわれることを保障するため、自分自身またはその親の状況に関する決定に対する行政上および司法上の救済措置にアクセスできなければならない [17]。子どもの権利に悪影響を及ぼす可能性のある移住/庇護手続(家族再統合手続を含む)における不当な遅延を回避するための措置がとられるべきである。子どもの最善の利益に反しないかぎり、いかなる適正手続上の保障も制限されないことを条件として、速やかな手続を奨励することが求められる。 [17] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ75参照。 16.子どもは、その権利が侵害された場合には、裁判所、行政審判所、または子どもが容易にアクセスできるより下層の他の機関(たとえば子ども保護施設および若者施設、学校ならびに国内人権機関)において苦情を申し立てることができるべきであり、かつ、子どもおよび移住問題について専門的知識を有する専門家の、子どもにやさしいやり方による助言および代理を受けられるべきである。国は、移住者、庇護希望者および難民である子どもに対して無償のかつ良質な法的助言および代理を提供すること(地方公的機関の養護を受けている保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに在留資格のない子どもが平等にアクセスできることを含む)についての指針を公的機関に示すための、統一的政策を確保することが求められる [18]。 [18] 人権理事会決議25/6。米州人権裁判所・勧告的意見OC.21/14(2014年8月19日)、パラ108-143も参照。 17.より具体的には、かつとくに最善の利益評価の文脈および最善の利益認定手続においては、子どもに対して以下の権利が保障されるべきである。 (a) 必要書類の有無にかかわらず領域にアクセスする権利、および、手続的保障を確保しながら子どもの権利の保護観点によるニーズ評価を担当する公的機関に付託される権利。 (b) 手続の存在、ならびに、出入国管理手続および庇護手続の文脈で行なわれた決定、その意味するところおよび不服申立ての可能性について告知される権利。 (c) 出入国管理手続を専門行政官または裁判官に行なわせる権利、および、面接が実施される場合、子どもとのコミュニケーションの訓練を受けた専門家による本人面接を実施させる権利。 (d) 手続のあらゆる段階で意見を聴かれかつ参加する権利、および、翻訳者および(または)通訳者による無償の援助を受ける権利。 (e) 領事官との連絡手段および領事官による援助に実効的にアクセスし、かつ子どもに配慮した、権利を基盤とする領事保護を受ける権利。 (f) 子どもの代理に関する訓練を受けかつ(または)経験を有する弁護士の援助を手続のあらゆる段階で受け、かつ代理人と自由に連絡する権利および無償の法的援助にアクセスする権利。 (g) 子どもが当事者である申請および手続を、手続のために十分な時間があることおよびあらゆる適正手続上の保障が維持されることを確保しつつ、優先的に取り扱わせる権利。 (h) 決定について、上訴裁判所または独立の公的機関に対し、執行停止効をともなう不服申立てを行なう権利。 (i) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもについて、その最善の利益の尊重を確保するための主要な手続的保障として機能する、資格のある後見人を可能なかぎり迅速に任命される権利 [19]。 (j) 手続全体を通じて、その後見人および法的助言者とともに、自己の権利に関する情報および自己に影響を与える可能性のあるすべての関連情報を含む情報を全面的に提供される権利。 [19] 子どもの権利委員会・一般的意見6号、パラ20-21および33-38参照。 18.両委員会は、移住者資格が不安定かつ不確かであることが子どものウェルビーイングに及ぼす悪影響を認識する。したがって両委員会は、国が、子どもがさまざまな根拠(在留期間など)によって自己の地位を正規化できるようにするための、明確なかつアクセスしやすい地位認定手続が存在することを確保するよう勧告するものである。 19.両委員会は、移住労働者権利条約第7条(a)、第23条および第65条(2)とあわせて子どもの権利条約を包括的に解釈することにより、子どもの権利の保護に向けた具体的措置(領事職員を対象として2つの条約およびその他の人権文書に関する継続的研修を実施すること、領事保護業務に関する標準業務要綱を推進することなど)を含む、効果的な領事保護政策の策定および実施が求められると理解するべきであるとの見解に立つ。 D.名前、アイデンティおよび国籍に対する権利(移住労働者権利条約第29条;子どもの権利条約第7条および第8条) 1.出生登録 20.出生登録が行なわれない場合、児童婚、人身取引、強制徴集および児童労働など、子どもの権利の享受に多くの悪影響が生じる可能性がある。出生登録はまた、子どもの人権侵害を行なった者に有罪判決を言い渡すうえでも役立つ可能性がある。登録されていない子どもは、非正規な移住状況にある親から生まれた場合、親の出身国における国籍の取得ならびに出生地における出生登録および国籍へのアクセスを妨げる障壁のために、無国籍となるおそれがとりわけ強い [20]。 [20] 無国籍者の地位に関する条約第1条によれば、無国籍者とは「いずれの国家によっても、その法の運用において国民と認められない者」をいう。 21.両委員会は、締約国に対し、すべての子どもが、子ども自身の移住者資格またはその親の移住者資格にかかわらず、出生時に直ちに登録され、かつ出生証明書を発行されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。出生登録を妨げる法律上および実務上の障壁は取り除かれるべきである。そのための手段には、保健サービス提供者または登録担当の公務員と出入国管理執行機関とのデータの共有を禁止すること、および、親に対して移住者資格に関する書類の提出を要求しないことなどが含まれる。期限後の出生登録を促進し、かつ期限後の登録に対する金銭的処罰を行なわないようにするための措置もとられるべきである。登録されていない子どもに対しても、保健ケア、保護、教育その他の社会サービスへの平等なアクセスを確保することが求められる。 22.子どもの身分証明書類が本人に代わって非正規に取得されたものであり、子どもが自己の身分証明書類の回復を要請する場合、締約国は、具体的には訂正された書類を発行し、かつ偽造が行なわれた場合の訴追を行なわないようにすることにより、子どもの最善の利益にのっとった柔軟な措置をとるよう奨励される。 2.国籍に対する権利および無国籍とならないための保障措置 23.子どもの権利条約第7条は、締約国は子どもの登録される権利、名前に対する権利、国籍を取得する権利および親を知りかつ親によって養育される権利の実施を確保しなければならないと規定することにより、無国籍の防止を強調している。同じ権利は、すべての移住労働者の子どもを対象として、移住労働者権利条約第29条にも掲げられている。 24.国は、自国の領域で出生したすべての子どもに国籍を付与する義務は負わないものの、すべての子どもが出生時に国籍を有していることを確保するため、国内的に、かつ他国とも協力しながら、すべての適切な措置をとるよう要求される。重要な措置のひとつは、自国の領域で出生した子どもに対し、国籍を付与しなければその子どもが無国籍となる場合に、出生時にまたは出生後可能なかぎり早期に国籍を付与することである。 25.子どもおよび(または)その親の人種、民族、宗教、ジェンダー、障害および移住者資格に関連するものを含む禁止事由に基づいて国籍の承継または取得についての差別を行なっている国籍法は、廃止されるべきである。さらに、あらゆる国籍法は、国籍に対するすべての子どもの権利が尊重され、保護されかつ充足されることを確保するため、滞在期間要件に関わる在留資格との関連も含めて非差別的な方法で実施することが求められる。 26.国は、自国の領域で出生した子どもに対し、国籍を付与しなければ無国籍となる状況下で国籍を付与するための措置を強化するべきである。母の国籍国の法律で子どもおよび(または)配偶者に国籍を付与する女性の権利が認められていない場合、子どもは無国籍のおそれに直面する可能性がある。同様に、婚姻に際して国籍を取得し、変更しまたは維持する女性の自律的権利が国籍法で保障されていない場合、国際的移住の状況にあって18歳未満で婚姻した女子は、無国籍となるおそれに直面し、または無国籍となることへの恐れのため人権侵害的婚姻から逃れられなくなる可能性がある。国は、女性差別である国籍法の改正のために即時的措置をとり、子どもおよび配偶者に国籍を付与する権利および国籍の取得、変更または維持に関わる権利を男女に平等に認めるべきである。 E.家族生活(移住労働者権利条約第14条、第17条および第44条;子どもの権利条約第9条、第10条、第11条、第16条、第18条、第19条、第20条および第27条(4)) 27.家族生活の保護に対する権利は、子どもの権利条約および移住労働者権利条約を含む国際的・地域的人権文書で認められている。したがってこの権利は、すべての子どもとの関連で、その在留資格または国籍上の地位にかかわらず、いかなる種類の差別もなく全面的に尊重され、保護されかつ充足されるべきである。国は、子どもの代替的養護に関する指針にしたがって主たる焦点として位置づけられるべきである家族の一体性(きょうだいを含む)の維持および分離の防止に関わる、自国の国際法上の義務を遵守することが求められる。家族環境に対する権利を保護しようとすれば、国は、家族の分離または家族生活に対する権利に対するその他の恣意的介入につながる可能性のある行動をとらないようにするだけではなく、家族の一体性を維持する(分離された家族構成員の再結合を含む)ための積極的措置もとらなければならないことが多い。子どもの権利委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)において、「親」〔訳者注/正しくは「家族」〕という文言は、生物学的親、養親もしくは里親、または適用可能なときは地方の慣習により定められている拡大家族もしくは共同体の構成員を含むものとして広義に解されなければならないと指摘している。 1.分離の禁止 28.移住者にとっての家族の一体性に対する権利は、国民ではない者の入域または自国の領域での滞在に関する決定を行なう際の国の正当な利益と交錯する場合がある。しかし、国際的移住の文脈にある子どもおよび家族は、そのプライバシーおよび家族生活に対する恣意的または不法な干渉の対象とされるべきではない [21]。ある家族構成員を締約国の領域から送還しもしくは退去させることによって家族を分離させること、またはその他の方法である家族構成員の入域もしくは領域での在留を許可しないことは、家族生活に対する恣意的または不法な干渉に相当する場合がある [22]。 [21] 自由権規約委員会・一般的意見15号(規約上の外国人の立場、1986年)、パラ7参照。 [22] 自由権規約委員会の、通報第2009/2010号(Ilyasov v. Kazakhstan 事件)における見解(2014年7月23日採択)、通報第2243/2013号(Husseini v. Denmark 事件)における見解(2014年10月24日採択)、通報第1875/2009号(M.G.C. v. Australia 事件)における見解(2015年3月26日採択)、通報第1937/2010号(Leghaei and others v. Australia 事件)における見解(2015年3月26日採択)および通報第2081/2011号(D.T. v. Canada 事件)における見解(2006年7月15日採択)。 29.両委員会は、入国または滞在関連の出入国管理法違反に基づく一方または双方の親の追放によって家族の一体性を破壊することは比例性を欠くという見解に立つ。家族生活の制限に固有の犠牲および子どもの生命および発達に対する影響が、出入国管理関連の不法行為を理由として領域を離れるよう親に強制することから得られる利益を下回ることはないからである [23]。移住者である子どもおよびその家族はまた、追放が家族生活および私生活に対する権利への恣意的干渉である場合にも保護されるべきである [24]。両委員会は、国が、非正規な状況下で子どもとともに在留している移住者を対象として、とくに子どもが目的地国で出生しておりもしくは長期間生活している場合または親の出身国への帰還が子どもの最善の利益に反する場合には、地位の正規化のための経路を用意するよう勧告する。親の追放が刑事犯罪を理由とするものである場合、比例性の原則ならびに人権に関わるその他の原則および基準も考慮しながら、その子どもの権利(自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利および意見を聴かれ、かつ意見を真剣に受けとめられる権利を含む)が確保されるべきである。 [23] 米州人権裁判所・勧告的意見OC.21/14(2014年8月19日)、パラ280参照。 [24] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号(2013年)、パラ50参照。 30.両委員会は、親による虐待およびネグレクト関連の懸念がないときに、子ども保護制度によって子どもが親から分離されて代替的養護に措置される場合があることを懸念する。金銭的もしくは物質的貧困またはこのような貧困を直接かつ唯一の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離すること、子どもを代替的養護に受け入れることまたは子どもの社会的再統合を妨げることの唯一の正当化事由とされることは、けっしてあるべきではない。これとの関連で、国は、親または子どもの移住者資格にかかわらず、社会給付および子ども手当その他の社会支援サービスを提供すること等の手段により、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を提供するべきである。 31.両委員会はまた、子どもの権利条約第18条に基づき、移住の文脈における家族環境への子どもの権利に対する包括的アプローチにおいて、親が子どもの発達に関わる義務を履行できるようにすることを目的とした措置が構想されるべきであるとの見解に立つ。子どもおよび(または)その親の非正規な移住者資格がこのような目標を阻害しかねないことを考慮し、国は、正規のかつ非差別的な移住経路を利用できるようにするとともに、子どもおよびその家族が、家族の結合、労働関係および社会統合等の事由を根拠として長期的な正規の移住者としての地位または在留許可にアクセスできるようにするための、恒久的なかつアクセスしやすい機構を設けるべきである [25]。 [25] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ91参照。また、移住労働者権利条約第69条も参照。 2.家族再統合 32.子どもの権利条約第10条に基づき、締約国は、家族再統合の申請が積極的、人道的および迅速な方法で取り扱われること(子どもと親の再統合の便宜を図ることも含む)を確保するものとされる。子どもとその親および(または)きょうだいとの関係が移住(親が子どもをともなわずに移住する場合または子どもが親および(または)きょうだいをともなわずに移住する場合)によって切断されている場合、家族再統合に関する決定において子どもの最善の利益を評価する際に、家族の一体性の保全について考慮するべきである [26]。 [26] 子どもの権利委員会・一般的意見14号(自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利、2013年)、パラ66。 33.国際的移住の文脈にある在留資格のない子どもについて、国は、期限、裁量権限および(または)行政手続における不透明さによって家族再統合に対する子どもの権利が阻害されるべきではないことにとりわけ配慮しながら、指針を策定しかつ実施しなければならない。 34.保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子ども(親の収容など出入国管理法の執行によって親から分離された子どもを含む)について、このような子どものために持続可能な、権利を基盤とする解決策(家族再統合の可能性を含む)を見出すための努力が、遅滞なく開始されかつ実施されるべきである。子どもの家族が目的地国、出身国または第三国にいる場合、通過国または目的地国の子ども保護・福祉機関は、できるかぎり早く家族構成員と連絡をとることが求められる。子どもが出身国、通過国および(または)目的地国にいる家族と再統合されるべきか否かの決定は、子どもの最善の利益が第一次的考慮事項として確認され、かつ家族再統合が考慮される、確固たる評価に基づいて行なわれるべきである。当該評価には、子どもがプロセスへの参加を保障される、持続可能な再統合計画も含めることが求められる。 35.出身国における家族再統合は、そのような帰還が子どもの人権侵害につながるであろう「合理的おそれ」がある場合には追求されるべきではない。出身国における家族再統合が子どもの最善の利益にかなうものではない場合または帰還を妨げる法的その他の障壁のために不可能である場合は、子どもの権利条約第9条および第10条に基づく義務が発動されるのであり、このような場合における、家族再統合に関する国の決定はこれらの義務によって規律されるべきである。親がその子どもと再統合できるようにし、かつ(または)子どもの最善の利益に基づいて親の地位を正規化するための措置を整備することが求められる。国は、子どもの最善の利益にのっとって家族再統合手続を迅速なやり方で終了させるため、このような手続を容易にするべきである。国は、家族再統合を確定する際、最善の利益認定手続を適用するよう勧告される。 36.目的地国が子どもとのおよび(または)その家族との再統合を拒否するときは、目的地国は、拒否の理由および不服申立てを行なう子どもの権利についての詳細な情報を、子どもに対し、子どもにやさしくかつ年齢にふさわしい方法で提供するべきである。 37.出身国に留まっている子どもは、目的地国にいる親および(または)年長のきょうだいと再統合しようとして、結果的に非正規なかつ安全ではない移住を行なってしまう場合がある。国は、子ども(出身国に留まっていて非正規に移住する可能性がある子どもを含む)が正規に移住できるようにするための、実効的なかつアクセスしやすい家族再統合手続を発展させるべきである。国は、移住者が分離を避けるために家族を正規に同伴できるようにする政策を策定するよう奨励される。手続においては、家族生活を促進し、かつ、いかなる制限も法律適合性、必要性および比例性を備えたものであることを確保することが追求されるべきである。この義務は第一次的には受入れ国および通過国が負うものだが、出身国も家族再統合を促進するための措置をとることが求められる。 38.両委員会は、財源が不十分であるために家族再統合に対する権利の行使がしばしば妨げられていること、および、十分な家族所得の証明がないことが再統合手続の障壁となりうることを認識する。国は、これらの子どもならびにその(両)親、きょうだいおよび該当する場合にはその他の親族に対し、十分な金銭的支援およびその他の社会サービスを提供するよう奨励される。 F.あらゆる形態の暴力および虐待(搾取、児童労働および誘拐を含む)ならびに子どもの売買または取引からの保護(移住労働者権利条約第11条および第27条;子どもの権利条約第19条、第26条、第32条、第34条、第35条および第36条) 39.国際的移住の文脈にある子ども、とくに在留資格のない子ども、無国籍の子ども、保護者のいない子どもまたは家族から分離された子どもは、移住のプロセス全体を通じ、出身国、通過国、目的地国および帰還先の国において、さまざまな形態の暴力(ネグレクト、虐待、誘拐および略奪、人身取引、性的搾取、経済的搾取、児童労働、物乞いまたは犯罪的活動および不法な活動への関与を含む)の被害を受けやすい立場に置かれる。このような子どもは、とくに非正規な形で渡航しまたは在留しているときに、国もしくは国以外の主体による暴力を経験し、または自分の親その他の者への暴力を目的するおそれがある。両委員会は、親責任および子どもの保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年10月19日のハーグ条約第6条に対し、各国の注意を喚起するものである。同条に基づき、締約国の司法当局または行政当局は、子どもの難民、および、自国で生じた騒乱のために国内避難民化し、かつその避難の結果として自国の領域にいる子どもとの関連で、子どもの人身または財産の保護のための措置をとる管轄権を有する。 40.両委員会はまた、制限的な移住政策または庇護政策(非正規な移住が犯罪とされていること、安全な、秩序だった、アクセスしやすくかつ負担可能な正規の移住経路が十分な形で存在しないことまたは十分な子ども保護制度が設けられていないことを含む)によって、移住者である子ども(保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもを含む)が、移住のための渡航の最中におよび目的地国において、暴力および虐待の被害をとりわけ受けやすい立場に置かれるようになっていることも認識する。 41.子どもの不法な移送および不返還ならびに最悪な形態の児童労働(あらゆる形態の奴隷制、商業的性的搾取、物乞いを含む不法な活動のための子どもの使用および危険な労働を含む)を防止しかつこれと闘い、かつ暴力および経済的搾取から子どもを保護するために、国があらゆる必要な措置をとることが不可欠である。両委員会は、子どもがジェンダー特有のリスクおよび脆弱性に直面しており、これらのリスクおよび脆弱性を特定して具体的に対処するべきであることを認識する。女子および男子(障害をもっている可能性がある子どもを含む)ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どもが、性的搾取および虐待を目的とする人身取引の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていることに対処するため、追加的措置がとられるべきである。 42.在留資格のない移住者である子ども、および、在留許可または就労許可に依存している親(これらの者は保証人/雇用主によって容易に在留資格のない立場にされうる)は、公共役務の提供者もしくはその他の公的職員または私人によって出入国管理当局に通報されるおそれに直面する。これにより、このような者は保護および司法へのアクセスを含む人権の享受を制限され、かつ暴力ならびに労働関連その他の態様の搾取および虐待の被害をいっそう受けやすい立場に置かれる [27]。このような状況は、非正規な地位にある移住者を暴力、虐待および搾取から保護することではなく収容することを優先させる政策の結果である場合もあり、これによって子どもは暴力を経験しまたは家族構成員に対する暴力を目的する立場にいっそう置かれやすくなる。とくに、子ども保護サービスと出入国管理の執行との間の実効的な遮断措置が確保されるべきである。 [27] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号、パラ2参照。 43.移住者である子どものうち、人身取引、売買その他の形態の性的搾取の兆候がある子どもまたはそのような行為もしくは児童婚の被害を受けるおそれがある可能性のある子どもについて、国は以下の措置をとるべきである。 売買、取引および虐待の被害者を見つけ出すための早期発見措置および付託のための機構を確立するとともに、この点について、ソーシャルワーカー、国境警察、弁護士、医療専門家および子どもと接触する他のすべてのスタッフを対象とする義務的研修を実施すること。 複数の異なる移住者資格が利用可能であるときは保護にもっとも寄与する資格(すなわち庇護資格または人道的理由による在留資格)が付与されるべきであり、かつ、このような地位の付与に関する決定は、子どもの最善の利益にしたがい、個別の事案ごとに行なわれるべきであること。 売買、取引またはその他の形態の性的搾取の被害を受けた移住者である子どもへの在留資格または援助の付与に際し、刑事手続の開始または法執行機関への協力が条件とされないことを確保すること。 44.さらに、国は、移住者である子どもがあらゆる形態の暴力および虐待から全面的かつ実効的に保護されることを確保するため、以下の行動をとるべきである。 これらの子どもが、あらゆる形態の奴隷制および商業的性的搾取ならびに不法な活動のための使用、または、その健康、安全もしくは道徳を危険にさらすあらゆる労働から保護されることを確保するための効果的措置をとること。そのための手段には、国際労働機関の関連の条約の締約国となることも含まれる。 これらの子どもを、その移住者資格にかかわらず、あらゆる形態の暴力および虐待から保護するための効果的措置をとること。 女子および男子ならびに障害のある子どもならびに性的搾取、労働搾取および他のあらゆる形態の搾取の潜在的被害者が置かれている、ジェンダーに固有の脆弱な状況を認識しかつこれに対応すること。 暴力、虐待または搾取の事案を警察に通報した移住者である子どもおよびその家族に対し、その移住者資格にかかわらず、包括的な保護、支援サービスおよび実効的な救済機構へのアクセス(心理社会的援助およびこれらの救済措置に関する情報を含む)を確保すること。子どもおよび親は、通報の結果として出入国管理の執行を受けるいかなるおそれもなく、被害者または目撃者として、警察その他の公的機関に対する通報を安全に行なうことができなければならない。 移住者である子どもの保護に関してコミュニティサービス機関および市民社会組織が果たしうる重要な役割を認識すること。 移住者である子どもに対するあらゆる形態の暴力、搾取および虐待の根本的原因への対応を目的とする包括的政策(その適正な実施のための十分な資源を含む)を策定すること。 G.経済的搾取(法定年齢未満の労働および危険な労働を含む)からの保護、雇用条件および社会保障に対する権利(移住労働者権利条約第25条、第27条、第52条、第53条、第54条および第55条;子どもの権利条約第26条および第32条) 45.就労が認められる最低年齢ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃に関連する国際労働基準を正当に尊重しつつ、法律上の就労年齢を超えた移住者である子どもが従事するすべての労働が搾取的でありまたは危険な条件下で行なわれるわけではない。両委員会は、各国に対し、就労年齢を超えた移住者である子どもは、その地位にかかわらず、報酬、その他の労働条件および雇用条件に関して国民である子どもと平等な取扱いを享受するべきであることを想起するよう求める。 46.国は、最低就労年齢および危険な労働との関連で移住者である子どもの雇用を規制しかつ保護するため、ジェンダーの側面を含むすべての適切な立法上および行政上の措置をとるべきである。移住者である子どもがさらされる特有のリスクに鑑み、国はまた、法律上も実務上も、子どもの権利条約および関連の国際基準の規定の効果的執行を保障するためのあらゆる必要な措置(適切な処罰を定めることも含む)が権限のある当局によってとられること、および、移住者である子どもが以下の取扱いを保障されることも確保するべきである。 国際的に受け入れられた基準にのっとり、公正な雇用条件および人間にふさわしい労働条件を享受すること。 子どもが労働できる時間および条件を規制する具体的な保護措置を享受すること。 子どもが労働に適していることを証明する定期的な医学的検診を受けること。 実効的な苦情申立て機構および労働権の保障と出入国管理の執行との間の遮断措置を確保する等の手段により、公的機関または私人による権利侵害があった場合に司法にアクセスできること。 47.社会保障に関して、移住者である子どもおよびその家族は、適用される国の法律ならびに適用される二国間条約および多国間条約で定められた要件を満たしているかぎり、国民に対して与えられるものと同一の取扱いを受ける権利が与えられなければならない。両委員会としては、国は、必要な場合、移住者である子どもおよびその家族に対し、その移住者資格にかかわらず、いかなる差別もなく緊急社会援助を提供するべきであると考える。 48.移住者の家族(移住者を親として生まれた子どもがいる家族を含む)について、両委員会は、子どもの養育および発達に対する親の責任(子どもの権利条約第5条および第18条)と、移住労働者権利条約の関連規定に基づく移住労働者の労働権とは相互に依存していることを強調する。したがって国は、移住者である親(非正規な状況にある者を含む)の職場における権利が全面的に尊重されることを確保するための措置を、可能なかぎりとるべきである。 H.十分な生活水準に対する権利(移住労働者権利条約第45条;子どもの権利条約第27条) 49.国は、国際的移住の文脈にある子どもが、その身体的、精神的、霊的および道徳的発達のために十分な生活水準を享受することを確保するべきである。子どもの権利条約第27条(3)で規定されているように、国は、国内条件にしたがいかつ自国の財源の及ぶ範囲で、この権利の実施のために、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための適切な措置をとらなければならず、かつ、必要な場合には、とくに栄養、衣服および住居との関連で物質的援助および支援プログラムを提供しなければならない。 50.締約国は、受入れ施設の水準に関する詳細な指針を策定し、子どもおよびその家族に対して十分な空間およびプライバシーを保障するべきである。国は、受入れ施設ならびに公式および非公式のキャンプのような一時滞在場所において十分な生活水準を確保するための措置をとり、これらの施設が子どもおよびその親(障害のある人、妊婦および授乳中の母親を含む)にとってアクセス可能であることを確保するよう求められる。国は、居住施設において子どもの日常的移動が不必要に制限されないこと(事実上の移動の制限を含む)を確保するべきである。 51.国は、移住者の物件賃貸を妨げる措置をとることにより、子どもの居住権に干渉するべきではない。移住者である子どもが、その地位にかかわらず、ホームレス向けシェルターにアクセスできることを確保するための措置がとられるべきである。 52.国は、公的または私的なサービス提供機関(公的または私的な住宅供給機関を含む)と出入国管理執行当局との間に遮断措置を設けるための手続および基準を発展させるべきである。同様に、国は、非正規移住者である子どもが居住権の行使を理由として犯罪者として扱われないこと、および、子どもによる居住権の行使の便宜を図った私人(家主および市民社会組織など)も犯罪者して扱われないことを確保するよう求められる。 53.子どもの権利条約は、締約国が、自国の管轄内にある子ども1人ひとりに対し、いかなる種類の差別もなく、条約に掲げられた権利を尊重しかつ確保しなければならないと規定している。これには、子どもまたはその親の移住者資格に基づいて行なわれる、子どもに対する差別も含まれる。したがって両委員会は、締約国に対し、経済的、社会的および文化的権利に公正にアクセスできるようにすることを促すものである。国は、移住者である子どもおよびその家族(非正規な状況にある者を含む)を差別し、またはこれらの者がサービスおよび給付(たとえば社会扶助)に効果的にアクセスすることを妨げる法律、政策および実務の迅速な改革を図るよう奨励される [28]。 [28] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ86参照。 I.健康に対する権利(移住労働者権利条約第28条および第45条;子どもの権利条約第第23条、第24条および第39条) 54.両委員会は、子どもの身体的および精神的健康が、貧困、失業、移住および住民の避難、暴力、差別ならびに周縁化のような構造的決定要因を含む、さまざまな要因によって影響されうることを認める。両委員会は、移住者および難民である子どもに、重度の感情的苦痛を経験する可能性があり、また特別な、かつしばしば緊急の精神保健上のニーズを有している可能性があることを認識するものである。したがって、子どもによるストレスの経験のあり方は大人とは異なることを認め、子どもは特有のケアおよび心理的支援にアクセスできるべきである。 55.移住者であるすべての子どもは、その移住者資格にかかわらず、国民と平等な保健ケアにアクセスできるべきである。これには、コミュニティまたは保健ケア施設で提供されるすべての保健サービス(予防サービスか治療サービスかを問わない)および精神的、身体的または心理社会的ケアが含まれる。国は、脆弱性を助長する重要な要因のひとつである差別の結果として子どもの健康が阻害されないことを確保する義務を負う。複合的形態の差別の影響にも対処するべきである [29]。サービスにアクセスしにくくなることによってもたらされるジェンダー特有の影響への対処に、注意を払うことが求められる [30]。加えて、移住者である子どもは、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのための、年齢にふさわしい情報およびサービスに全面的にアクセスできるようにされるべきである。 [29] 〔子どもの権利委員会・〕一般的意見15号(到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利、2013年)、パラ5および8参照。 [30] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ86参照。 56.各国は、健康権に対するホリスティックなアプローチを重視するよう奨励される。国家的な計画、政策および戦略において、移住者である子どもの健康上のニーズおよびこれらの子どもが直面している可能性のある脆弱な状況をとりあげるべきである。移住者である子どもは、在留許可症または庇護登録証の提示を要件とされることなく保健サービスにアクセスできることが求められる。サービスへのアクセスを妨げる行政上および金銭上の障壁は、身元および居住を証明する代替的手段(供述証拠など)を認める等の対応を通じ、取り除くべきである [31]。加えて、両委員会は、各国に対し、保健機関と出入国管理当局が患者のデータを共有すること、および、公的な保健施設でまたはその近くで出入国管理法制執行のための組織的活動を行なうことを禁止するよう促す。このような行動は、非正規な状況にある移住者である子どもまたは非正規な状況にある移住者を親として生まれた子どもの健康権を実質的に制限しまたは剥奪することになるためである [32]。これらの子どもの健康権を確保するため、実効的な遮断措置を設けることが求められる。 [31] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ86参照。 [32] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号、パラ74参照。 57.不十分な金銭的および法的保護は差別によってしばしば悪化する可能性があり、そのため、移住者である子どもは重篤になるまで治療の延期を余儀なくされる場合がある。迅速かつ広範な対応が必要とされる複雑な保健サービスにおいては、差別的なアプローチがとられることで移住者である子どもの健康に深刻な影響が生じ、かつその治療および回復の期間が相当に長引く可能性もあるため、これらの保健サービスを取り巻く諸問題の解決に注意が払われるべきである。保健専門家は、自分の患者に、また人権としての子どもの健康を擁護することに、まず専心することが求められる。 58.国籍または移住者資格を理由として健康に対する成人移住者の権利を制限することも、健康、生命および発達に対するその子どもの権利に影響を及ぼす可能性がある。したがって、子どもの権利に対する包括的アプローチには、移住者資格にかかわらずすべての移住労働者およびその家族の健康権を確保することに向けられた措置、および、保健分野の政策、プログラムおよび実務に対する異文化アプローチを確保するための措置が含まれるべきである。 J.教育および職業訓練に対する権利(移住労働者権利条約第30条、第43条および第45条;子どもの権利条約第28条、第29条、第30条および第31条) 59.国際的移住の文脈にあるすべての子どもは、地位の如何を問わず、その子どもが住んでいる国の国民との平等を基礎として、あらゆる段階およびあらゆる側面の教育(乳幼児期教育および職業訓練を含む)に全面的にアクセスできなければならない。この義務が意味するところにより、国は、移住者であるすべての子どもに対し、その移住者資格にかかわらず、良質のかつインクルーシブな教育への平等なアクセスを確保するよう求められる。移住者である子どもは、必要なときは代替的学習プログラムにアクセスできるべきであり、また試験に全面的に参加しかつ学習証明書を受領するべきである。 60.両委員会は、各国に対し、移住者である子ども(とくに在留資格のない子ども)の学校および教育機関への登録を妨げる規則および実務を改革するよう、強く促す。国はまた、教育機関と出入国管理当局とのあいだに実効的な遮断措置を設けるとともに、生徒のデータを共有すること、および、教育施設でまたはその近くで出入国管理法制執行のための組織的活動を行なうことを禁止するべきである。このような実務は、非正規な状況にある移住者である子どもまたは非正規な状況にある移住者を親として生まれた子どもの教育に対する権利を制限しまたは剥奪することになるためである。教育に対する子どもの権利を尊重するため、各国はまた、移住関連の手続中に中断が生じないようにすることにより、可能であれば子どもが学年の途中で移動しなくて済むようにするとともに、子どもが義務教育および継続教育を受けている場合、成年に達するまでに当該教育課程を修了するよう支援することも奨励される。上級段階の教育へのアクセスは義務的なものではないものの、差別の禁止の原則により、国には、子どもの移住者資格または他の差別禁止事由に基づいて差別することなく、すべての子どもに対して利用可能なサービスを提要する義務がある。 61.国は、スティグマまたは懲罰効果が生じることを回避するため、過去に取得した在学証明書を承認することおよび(または)子どもの知的能力その他の能力に基づいて新たな証明書を発行することにより、子どもが過去に受けた教育を承認するための十分な措置を整備するべきである。このことは、子どもが帰還する場合には出身国または第三国に対しても平等に当てはまる。 62.処遇の平等の原則により、国は、移住者である子どもに対するいかなる差別も解消するとともに、教育上の障壁を克服するための適切なかつジェンダーに配慮した対応をとらなければならない。すなわち、必要な場合には、追加的な言語教育 [33]、スタッフの加算およびその他の異文化支援を含む、いかなる種類の差別もない対象特化型の措置がとられなければならないということである。国は、移住者である子どもが教育にアクセスするための便宜を図り、かつ移住者である子どもの学校への統合を促進することに専念するスタッフを配置するよう奨励される。加えて、国は、移住者である子どもが効果的統合の手段としての新たな言語を学習することを確保するため、いかなる種類の教育的隔離も禁止しかつ防止するための措置をとるべきである。国の取り組みには、乳幼児期教育の提供および心理社会的支援も含めることが求められる。国はまた、公式および非公式な学習機会の提供、教員研修の実施およびライフスキル学級の設置も行なうべきである。 [33] 移住労働者権利条約第45条参照。 63.国は、移住者コミュニティと受入れコミュニティとの異文化間対話を醸成し、かつ、移住者である子どもに対する排外主義もしくはあらゆる態様の差別または関連の不寛容に対応しかつこれを防止するための具体的措置を発展させるべきである。加えて、教育カリキュラムに人権教育(差別の禁止に関する教育ならびに移住ならびに移住者の権利および子どもの権利に関する教育を含む)を統合することは、移住者の統合に長期的に影響しかねない排外主義的態度およびその他の形態の差別的態度の防止に貢献するだろう。 III.国際協力 64.両委員会は、人権を全面的に尊重し、かつ移住者である子どもの脆弱性を高めかねないアプローチを回避しながら安全な、秩序だったかつ正規の移住を確保する目的で、国際的移住の文脈にある子どもの人権の促進および保護における出身国、通過国、目的地国および帰還先の国の役割および責任を認めながら、国際的な、地域的なまたは二国間の協力および対話ならびに包括的なかつバランスのとれたアプローチを通じて国際的移住に対応していく必要があることを再確認する。とくに、子どもの権利条約、移住労働者権利条約、難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書ならびに親責任および子どもの保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年のハーグ条約にのっとった、国境を越えた事案対応手続が速やかに設置されるべきである。加えて、協力に、他国から子どもを含む多数の避難民を受け入れており、かつ援助を必要としている国々への金銭的および技術的援助ならびに第三国定住プログラムの強化を目的とする取り組みを含めることも考えられる。すべての実践は、国際人権法および国際難民法上の義務に全面的にのっとったものであるべきである。 65.この包括的なかつバランスのとれたアプローチが子どもの最善の利益と両立することを確保するため、国際的移住の文脈にある子どもの権利および処遇に影響を与えるいかなる国際協定、地域協定および二国間協定の策定においても、子どもの保護/福祉を担当する機関に主要な役割が与えられるべきである。家族再統合を容易にし、最善の利益評価・認定を実施し、かつ意見を聴かれる子どもの権利および適正手続上の保障を保証するため、二国間の取り組みならびに地域的および国際的な取り組みを奨励することが求められる。このような取り組みにおいては、通過国または目的地国で自己の権利に影響を受けた子どもが出身国に帰還しまたは第三国に行った後に司法にアクセスする必要が生じた場合に、国境を越えた状況下で司法にアクセスできることが確保されるべきである。加えて、国は、これらのプロセスへの子どもおよび市民社会組織(地域的政府間機関を含む)の参加を確保することが求められる。国はまた、子どもに関わる移住政策をこの合同一般的意見にのっとって実施するため、国際社会および国際連合機関(国連児童基金および国際移住機関を含む)の技術的援助も活用するべきである。 IV.合同一般的意見の普及および報告 66.締約国は、この合同一般的意見を、国、広域行政圏および地方のあらゆるレベルすべての関係者、とくに議会、政府機関(子どもの保護および移住を担当している機関および職員を含む)および司法機関に対して広く普及するべきである。この合同一般的意見は、すべての子ども、ならびに、子どものためにおよび子どもとともに働く者(すなわち裁判官、弁護士、警察その他の法執行機関、教員、保護者、ソーシャルワーカー、公立または私立の福祉施設およびシェルターの職員ならびに保健ケア提供者)を含むすべての関連の専門家および関係者、メディアならびに市民社会一般に対して周知することが求められる。 67.この合同一般的意見は関連の言語に翻訳されるべきであり、また子どもにやさしい/適切な版および障害のある人がアクセス可能な形式でも利用可能とされるべきである。この合同一般的意見を実施する最善の方法に関する優れた実践を共有するため、会議、セミナー、ワークショップその他のイベントを開催することが求められる。この合同一般的意見はまた、あらゆる関連の専門家およびとくに専門職員ならびに子どもの保護、移住および法執行を担当する機関および職員を対象とする正式な就任前研修および現職者研修にも編入されるべきであり、かつ、国および地方のあらゆる人権機関ならびに人権問題に取り組む他の市民社会組織に対しても利用可能とされるべきである。 68.締約国は、移住労働者権利条約第73条および子どもの権利条約第44条に基づく定期報告書に、この合同一般的意見を指針として実施した措置およびその結果に関する情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2018年5月11日)。/パラ14第1文「~何よりも重要性である」を「何よりも重要である」に、パラ15第3文「すべえの決定」を「すべての決定」に修正(2021年8月13日)。
https://w.atwiki.jp/kodomonomachi/pages/32.html
こどものまち「高砂」 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 幅4m長さ160mの商店街とその周辺を使い、「本物の商店街で巨大なお店屋さんごっこを」をキャッチフレーズにして実施。 地元を愛する心と自分の身依頼を愛する心に気がつくきっかけとして職業体験を組み込んだお店体験をおこなう。「子どもたちからでてきたアイディアを全力で大人がさぽーとするから!無理なことなんてないから!」って叫びながら、子どもたちとまちを作り上げていこうとしています。(まだ計画中なので・・・) という特徴を持つ。 歴史 第1回 2008年12月20日 高砂市高砂町 銀座商店街(予定) こども会議は10月11日よりスタート 今回がはじめての試みです。 仕事ブース 【みにゅちゅあな高砂で遊ぼう!】:仕事体験エリアと販売体験エリアに分かれて展開。特に商店街なのでお店を重視。 【学童の子どもの店】:開設以来、保護者主体のバザーにて、実際に現金やり取りで自分たちの作ったアクセサリーを販売という活動をそのままこどものまちに組み込んでみる。 【その他】 大人エリア、農業体験収穫祭持ちつき大会、協賛起業ブース。 ■「高砂発~世界」が特徴の高砂市のすごいものを写真にて紹介。 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 特定非営利活動法人高砂キッズ・スペース 高砂市レクリエーション協会 ほか 兵庫県高砂市にて、市内全域10箇所の小学校で12箇所の学童 保育所を管理運営を始め、ユニークな農業体験や伝承遊び教室、地元を好きになるキャンプ企画など青少年の健全育成事業、また 子育て世代に向けての情報発信として「親育ち」をテーマにしたセ ミナーや働く保護者に向けての心理相談などを手がけるNPO法 人。今回、市内の学童保育所ができて25周年という節目を記念し て、こどものまち事業を企画。 こどものまち「高砂」実行委員会 事務局: 〒676-0077 高砂市松陽1丁目5-20 ノノムラビル3F (特非)高砂キッズ・スペース内Tel/Fax 079-446-3635 http //www.kidsspace.jp/kodomonomati2008(現在作成中) 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●。
https://w.atwiki.jp/meteorit/pages/407.html
今年も子どもの日がやってまいりました。 子どもの日は、星鋼京、そして帝國の未来を担う子ども達が健やかに成長する事を祈願する為に設けられた日です。 それは、同時に子どもたちを守り育てる家庭に対して感謝と敬意を払うものでもあります。 子どもたちと子どもたちを守り育てる家庭は、帝國の礎であり、この日を通じてそれを守る大切さを改めて思う日として頂ければ、この上もありません。 この日を祝し、星鋼京政府より国内の子どもが居られるご家庭に対し、祝菓子を配布致します。 期間中はI=D編隊によるセレモニーや近衛兵によるパレード、介添人による職業体験、職人街での作成体験等楽しい企画も用意しております。 また、今年の近衛兵のパレードは王犬さまと元王犬さまの御三匹が馬車で先頭に立たれます。 ご家族にて足をお運びになられて、子どもたちの健やかなる成長を祈念して頂ければ、これに勝る喜びはありません。 なお今月は子どもの日にちなんで、藩王ご夫妻が1ヶ月かけられて各学校や孤児院をご訪問されるご予定です。 1.祝菓子の配布 星鋼京国内にて、未成年の子供がいる各家庭に祝菓子を配布する。 2.期間中の催事 子どもの日期間中、以下の催事を行う。 天球市・第0番区にて、RTR一般公開。 I=D編隊によるセレモニー。 王犬ヌル・ツーさま、元王犬のコガネマルさま、ヌルさまの馬車によるパレード。 近衛兵によるパレード。 ティアクライスの衛士・介添人による職業体験会。 天球市・第8番区にて、ティーカップやティースプーンなどの作成体験会。 3.期間中の警備 第0番区は特別警戒態勢で挑むこと。 特に第0番隊は増員も視野にいれておく。 王犬さまパレードの際は、第0番隊が直衛の警備に当たること。 文責 双海 環 確認 星鋼京藩王 セタ・ロスティフンケ・フシミ 子爵 また、本件に関して藩王よりのメッセージがあります。 ◆藩王のメッセージ 国民の皆様、セタ・ロスティフンケ・フシミです。 本日5月5日は子どもの日です。 世の全ての子は、多くの国にとって、掛け替えの無い宝であると、私は信じています。 そこに犬も猫も無く、ただ平等に愛し、慈しむ事ができたならば、どれほど素敵なことでしょうか。 私は、その理想――夢が、実現する日が来るよう、この国と共に歩いて行きたいと思います。 その為にも、この国の大人の方々。 ご家庭のみならず近隣周辺の子がいれば本日は常よりも尚、言葉を掛け、触れあい――つまり、愛を注いであげてください。 いずれ大人になった時、今日の良き日が思い出になる……そんな素敵な日になるよう、国民の大人の皆様もご協力をお願いします。 そして、この国と、帝國、そして共和国も含めた世の全ての子たちへ。 君たちが今日という日の主役です。 存分に思い出として残る日にしてください。 いつか、貴方たちが大人になった日のために。 星鋼京藩王 セタ・ロスティフンケ・フシミ 子爵 /*/ ◆金庫番向情報 質疑掲示板根拠URL:独自判断による消費 42:食料-1万t 42:資金-1億わんわん
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/333.html
欧州評議会:デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン 原文:英語 日本語仮訳:平野裕二(PDF)参考資料(概要)子ども・若者向けリーフレット(2020年)/デジタル時代の子育て:さまざまなシナリオ別のポジティブな子育て戦略(2020年) デジタル環境における子どものエンパワーメント、保護および支援に関する政策ガイダンス(2018年)/デジタル環境における子どもの権利に関する政策立案者向けハンドブック(2020年) デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドラインに関する加盟国への閣僚委員会勧告CM/Rec(2018)7 2018年7月4日の第1321回閣僚代理会合において閣僚委員会が採択。 前書き(略) 前文 デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン1.目的および適用範囲 2.基本的な原則および権利2.1 子どもの最善の利益 2.2 子どもの発達しつつある能力 2.3 差別の禁止に対する権利 2.4 意見を聴かれる権利 2.5 その他の関係者の関与を求める義務 3.デジタル環境における子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するための運用上の原則および措置3.1 デジタル環境へのアクセス 3.2 表現および情報の自由に対する権利 3.3 参加、遊ぶ権利および集会・結社の権利 3.4 プライバシーおよびデータ保護 3.5 教育に対する権利 3.6 保護および安全に対する権利 3.7 救済措置 4.国内的枠組み4.1.法的枠組み 4.2 政策上および制度上の枠組み 4.3 国内レベルでの協力および調整 5.国際的な協力および調整 前文 閣僚委員会は、欧州評議会規程第15条bの規定に基づき、 欧州評議会の目的が、とくに共通の政策および基準を促進することにより、加盟国が共通に継承する理想および原則の保護および実現を目的として加盟国間のいっそうの統合を達成することにあることを考慮し、 国際連合・子どもの権利に関する条約(UNCRC)、人権および基本的自由の保護のための欧州条約(ETS No.5)およびその議定書に掲げられた一連の人権をすべての子どもが遺漏なく享受することを確保するという加盟国のコミットメントと、技術が発展を続けるなかでこれらの権利が全面的に尊重され、保護されかつ充足されるべきであることを再確認し、 改正欧州社会憲章(ETS No.163)、個人データの自動処理に関わる個人の保護のための条約(ETS No.108)、サイバー犯罪条約(ETS No.185)およびコンピューターシステムを通じて行なわれる人種主義的および排外主義的性質の行為の犯罪化に関する同条約の追加議定書(ETS No.189)、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(CETS No.197)、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(CETS No.201)、ならびに女性に対する暴力およびドメスティックバイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約(CETS No.210)など、他の関連の国際条約および欧州地域条約において約束した義務およびコミットメントを顧慮し、かつこの分野における欧州評議会の閣僚委員会および議員総会の勧告、決議および宣言を考慮に入れ、 デジタル環境が複雑であり急速に発展しやすいものであること、および、デジタル環境がさまざまなやり方で子どもたちの生活を形成するとともに、そのウェルビーイングおよび人権の享有にとっての機会とリスクを生み出していることを認識し、 情報通信技術(ICTs)が子どもたちの生活において教育、社会化、表現およびインクルージョンのための重要な手段であると同時に、その利用が暴力、搾取および虐待を含むリスクの発生につながりうることを意識し、 欧州評議会・子どもの権利戦略(2016~2021年)でデジタル環境における子どもの権利が優先分野のひとつに挙げられていること、および、インターネット管理戦略(2016~2019年)で、インターネットはすべての者(子どもたちを含む)にとって差別なく安全な、危険のない、開かれた、かつ可能性の発揮につながる環境であるべきであるとされていることを念頭に置き、 子どもたちには、子どもおよびその他の者の権利および尊厳を尊重しながらデジタル環境を探索しかつ利用することに関して支援および指導を受ける権利があることを認識し、 デジタル環境における機会とリスクの相互依存性、および、子どもの権利が尊重され、保護されかつ充足されるように適切な措置が整備されるようにすることの必要性を考慮に入れた一貫した政策が子どもたちの参加を得て立案されることの確保に対して効果的に寄与することを決意し、 国は子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する第一次的責任を負っていることを強調するとともに、子どもが自己の権利を行使するにあたり、子どもの最善の利益および発達しつつある能力と一致する方法で適切な指示および指導を行なう親または養育者の権利、役割および責任を再確認し、 人権とビジネスに関する加盟国への閣僚委員会勧告CM/Rec(2016)3、企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての国際連合・子どもの権利委員会の一般的意見16号(2013年)、ビジネスと人権に関する国際連合指導原則(2011年)、サイバー犯罪対策における法執行機関とインターネットサービスプロバイダの協力に関する欧州評議会ガイドライン(欧州評議会・ユーロISPA)(2008年)およびオンラインゲームプロバイダのための人権ガイドライン(欧州評議会・ISFE)(2008年)、ならびに、ユニセフ、国連グローバルコンパクトおよびNGOであるセーブ・ザ・チルドレンが作成した子どもの権利とビジネス原則(2012年)で確認されているとおり、企業が人権(子どもの権利を含む)を尊重する責任を負っていることも認識し、 この分野における政策では公的措置および民間による措置ならびに法的措置および自発的措置の組み合わせが必要とされること、官民のあらゆる関係者がデジタル環境における子どもの権利を確保する責任を共有していること、および、これらの関係者の活動の調整が必要であることを意識し、 欧州評議会加盟国で協議の対象とされた子どもたちの意見および見解を考慮に入れ、 デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足を目的として包括的かつ戦略的アプローチを採用しようとする努力に関して各国および他の関係者を援助するために、国際連合・子どもの権利に関する条約および欧州評議会が確立した基準に根ざした、かつ子どもたちの意味のある参加によって裏づけられた指針を策定する必要があることを認識し、 加盟国政府に対し、以下のことを勧告する。 1.関係者の参加を得ながら、自国の法律、政策および実務が本勧告の付属文書に掲げられた勧告、原則およびさらなる指針と合致することを確保するためにその見直しを行ない、関連するすべての分野でその実施を促進し、かつとられた措置の実効性を定期的に評価すること。 2.本勧告(付属文書のガイドラインを含む)が翻訳され、かつ、子どもにやさしい方法でならびにアクセスしやすいコミュニケーション手段、方式および形式を通じて、権限のある公的機関および関係者(議会、公的専門機関および市民社会組織を含む)ならびに子どもたちの間で可能なかぎり広く普及されることを確保すること。 3.企業に対し、関連の国際的基準・指針および欧州の基準・指針を考慮に入れながら、デジタル環境における子どもの権利を尊重する責任を履行しかつ実施措置をとるよう要求し、かつ、国の関係機関、市民社会組織および子どもたちとの協力を奨励すること。 4.デジタル環境における子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する戦略およびプログラムの創設、実施およびモニタリングによって欧州評議会と協力するとともに、本勧告の実施に関連する戦略、行動計画、立法および望ましい実務の実例を定期的に共有すること。 5.少なくとも5年ごとにかつ適切な場合にはより頻繁な間隔で、閣僚委員会においてかつ関係者の参加を得ながら、本勧告およびその付属文書のガイドラインの実施について検討すること。 勧告CM/Rec(2018)7の付属文書 デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン 1.目的および適用範囲 拘束力を有する国際的文書・基準および欧州の文書・基準において、デジタル環境における子どもたちの人権および基本的自由を尊重し、保護しかつ充足する加盟国の義務が掲げられており、またはそのための基準が示されている。すべての子どもは、権利を有する個人として、オンラインでもオフラインでも自己の人権および基本的自由を行使できるべきである。 このガイドラインが意図するのは、欧州人権裁判所の判例に照らし、人権に関する国際社会および欧州の条約および基準に掲げられた諸権利を関係者が実施していく際の援助を提供することである。そこでは、とくに以下のことが追求されている。 a.デジタル環境における子どものすべての権利の実現を促進し、かつデジタル環境が子どもたちのウェルビーイングおよび人権の享有に影響を及ぼすさまざまなあり方に遺漏なく対処するための立法、政策その他の措置の策定に関して各国に指針を示す。 b.このガイドラインに掲げられた諸原則を反映する包括的、戦略的かつ調整のとれたアプローチの、各国による立案、実施およびモニタリングを促進する。 c.各国が、企業その他の関係者に対し、デジタル環境における子どもの権利を尊重する責任を果たすよう要求し、かつこれらの権利を支持しかつ促進することを奨励することを確保する。 d.デジタル環境における子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するための、協調のとれた行動および協力を国レベルおよび国際的レベルで確保する。 本文書の適用上、 「子ども」とは、18歳未満のすべての者をいう。 「デジタル環境」とは、インターネット、移動体通信および関連の技術および装置を含む情報通信技術(ICTs)ならびにデジタルなネットワーク、データベース、コンテンツおよびサービスを包含するものとして理解される。 2.基本的な原則および権利 以下に掲げる原則および権利は、このガイドラインのすべてのセクションに適用されるものとして理解されるべきである。 2.1 子どもの最善の利益 1.デジタル環境における子どもに関わるすべての行動において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。子どもの最善の利益を評価するにあたり、国は、保護に対する子どもの権利とその他の権利(とくに表現・情報の自由に対する権利および参加権)との均衡を図り、かつ可能な場合には常に調和させるためにあらゆる努力を払うべきである。 2.2 子どもの発達しつつある能力 2.子どもの能力は、出生から18歳に達するまで徐々に発達するものである。さらに、個々の子どもが何歳でどのような成熟度を備えるようになるかはそれぞれ異なる。国その他の関係者は、障害のある子どもまたは脆弱な状況に置かれた子どもを含む子どもたちの発達しつつある能力を認識するとともに、デジタル環境に関連するそれぞれのニーズに対応する政策および実務が採択されることを確保するべきである。このことは、たとえば、思春期の子どもの権利を充足するために採用される政策が、年少の子どものために採用される政策とは相当に異なる場合もあることを意味する。 2.3 差別の禁止に対する権利 3.子どもの権利は、いかなる事由に基づく差別もなく、すべての子どもに適用される。すべての権利は、子どもの年齢にかかわらず、かつ子どもまたはその親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生 [1] またはその他の地位にかかわりなく、いかなる種類の差別もなく付与されなければならない。 [1] 国際連合・子どもの権利に関する条約、第2条1項。 4.デジタル環境における1人ひとりの子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するための努力が行なわれるべきである一方で、デジタル環境には子どもの脆弱性を高める可能性と子どものエンパワーメント、保護および支援につながる可能性の両方があることを認識して、脆弱な状況に置かれた子どもを対象とする焦点化された措置が必要になる場合もある。 2.4 意見を聴かれる権利 5.子どもたちは、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己表現する権利を有しており、子どもたちの意見はその年齢および成熟度にしたがって正当に重視されるべきである。 6.国その他の関係者は、子どもたちに対し、子どもが理解でき、かつその成熟度および状況にふさわしいやり方で、子どもの権利(参加権を含む)に関する情報を提供するべきである。国その他の関係者は、子どもたちが、対面での参加を補完するものとしてICTsを通じて自己表現するための機会を増進させるよう求められる。子どもたちに対し、十分な支援を提供する機構およびサービス、ならびに、権利が侵害された場合の苦情申立て、救済または是正の手続に関する情報が提供されるべきである。このような情報は、親または養育者に対しても、子どもたちによる権利行使の支援を可能にする目的で、利用可能とすることが求められる。 7.さらに、国その他の関係者は、デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足を目的とする法律、政策、機構、実務、技術および資源の立案、実施および評価に意味のある形で参加するよう、積極的に子どもたちの関与を求めるべきである。 2.5 その他の関係者の関与を求める義務 8.関連の国際基準にしたがい、国は、自国の管轄内にあるすべての子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する第一次的義務を負うとともに、これらの義務を効果的に実施するため、あらゆる関係者、とくに教育制度および子どもの保護・ケアのための制度、公的機関および企業、市民社会の関係者ならびに子どもたち自身およびその親、法定保護者または子どもをケアしている他のすべての者の関与を求めなければならない。 9.国は、デジタル環境に関して、企業が、自国の管轄内で行なうすべての事業において、また適切なときは企業の住所が自国内にある場合に当該企業が国外で行なうすべての事業において、子どもの権利を尊重する責任を履行するよう要求するために必要と考えられる措置を適用するべきである。さらに、国は、企業が子どもの権利を理解しかつ尊重することを、他の関連の手段によって奨励しかつ支援するべきである。 3.デジタル環境における子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するための運用上の原則および措置 3.1 デジタル環境へのアクセス 10.デジタル環境へのアクセスおよびデジタル環境の利用は、子どもたちの権利および基本的自由の実現にとって、子どもたちの包摂、教育および参加にとって、かつ家族関係および社会的関係の維持にとって、重要である。子どもたちがデジタル環境にアクセスできない場合、または接続環境の貧弱さのためにこのようなアクセスが制限される場合には、自己の人権を全面的に行使する子どもたちの能力に影響が生じる可能性がある。 11.国は、すべての子どもが、子ども向けであることをとくに意図した装置、接続環境、サービスおよびコンテンツに十分に、負担可能な費用でかつ安全にアクセスできることを確保するため、適切な体制を整えるべきである。国は、専用の公的空間で可能な限度において、デジタル環境に無償でアクセスできるようにするための措置をとるよう求められる。 12.国は、教育現場および子どもを対象とする他のケアの現場でデジタル環境へのアクセスが提供されることを確保するべきである。脆弱な状況に置かれた子どもたち、とくに代替的養護のもとで生活している子ども、自由を奪われている子どもまたは親が自由を奪われている子ども、国際移住の状況下にある子ども、路上の状況にある子どもおよび村落部の子どもを対象として、具体的措置をとることが求められる。とくに、国は、オンラインサービスプロバイダに対し、自社のサービスが障害のある子どもにとってアクセシブルであることを確保するよう要求するべきである。 13.装置、サービスおよびコンテンツへの接続環境およびアクセスは、教育およびリテラシーのための適切な措置(ジェンダーによるステレオタイプ、または子どもたちによるアクセスおよび技術の利用を制限する可能性のある社会的規範に対処する措置を含む)をともなうものであるべきである。 14.国は、インターネットに接続可能な装置の利用に関連する利用規約またはオンラインのサービスもしくはコンテンツの提供に適用される利用規約が、アクセスしやすく、公正、透明かつ明瞭であり、子どもが用いる言語で提供され、かつ、関連する場合には明確な、子どもにやさしくかつ年齢にふさわしい言葉で策定されることを確保するべきである。 15.国は、子どもたちのための質の高い情報および教育的なデジタルコンテンツ/サービスの提供元の多元性を確保するべきである。商業的な利益またはフィルターによってデジタルコンテンツ/サービスへのアクセスおよびその利用が不当に制限されないよう、関連の(たとえば教育ツールの)公共調達手続においては子どもの権利を考慮に入れることが求められる。 3.2 表現および情報の自由に対する権利 16.デジタル環境には、表現の自由(あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える自由を含む)に対する子どもたちの権利の実現を支える相当の可能性が存在する。国は、自分たちにとって重要な事柄についていかなる意見、見解または表現も有し、かつ自ら選んだ媒体を通じてそれらの意見等を表明する子どもたちの権利を、国またはその他の関係者がその意見および見解を好ましいものとして受け取るかどうかにかかわらず、保障するための措置をとるべきである。 17.子どもたちは、デジタル環境における情報の創出および配布を行なう存在として、国により、とくに教育プログラムを通じて、他者(他の子どもたちを含む)の権利および尊厳を尊重しながらデジタル環境で表現の自由に対する権利を行使する方法について啓発されるべきである。このようなプログラムでは、とくに、表現の自由とその正当な制限(たとえば知的制限の尊重または憎悪および暴力の煽動の禁止を目的とするもの)のような側面について取り上げることが求められる。 18.国は、子どもたちが最大限に発達しかつ社会に参加することの支えとなる、子どもたちにとって社会的および文化的利益を有する多様で質の高いオンラインコンテンツ/サービスの提供を主導しかつ奨励するべきである。これには、子どもたちのためにとくに作成された、子どもたちにとって見つけやすくかつわかりやすく、子どもたちの言語で提供される、かつその年齢および成熟度に応じた、可能なかぎり量が多い、質の高いコンテンツを含めることが求められる。この文脈においては、子どもたちにとって有益なリソースのなかでもとくに、子どもの権利(デジタル環境におけるものを含む)、ニュース、健康およびセクシュアリティに関する情報がとりわけ重要である。国はとくに、子どもたちが、自分たちにとって有益である可能性が高い公共媒体および質の高いコンテンツの場所を特定しかつ探求することができることを確保するよう求められる。 19.国が媒体を用意している場合、ユーザーが作成したコンテンツの提供を奨励し、かつその他の参加のしくみを設けることにより、積極的形態のコミュニケーションに対する子どもたちの関与を求めるべきである。オンラインメディアへの子どもたちのアクセスならびにオンラインメディアにおける子どもたちの存在および描かれ方に対しても、注意を払うことが求められる。 20.デジタル環境における表現・情報の自由に対する子どもたちの権利のいかなる制限も、人権に関する国際社会および欧州の条約および基準を遵守するものであるべきである。国は、子どもたちが、設けられている制限(コンテンツのフィルタリングなど)についてその発達しつつある能力にふさわしいやり方で知らされること、ならびに、指導および適切な救済措置(苦情申立て、人権侵害の通報または援助およびカウンセリングの要請を行なう方法およびその宛先に関するものを含む)を提供されることを確保するよう、求められる。適切なときは、親または養育者もこのような制限および適切な救済措置について知らされるべきである。 3.3 参加、遊ぶ権利および集会・結社の権利 21.デジタル環境は、参加、遊びならびに平和的な集会および結社(オンラインでのコミュニケーション、ゲーム、ネットワーク形成および娯楽を通じてのものも含む)に対する子どもの権利にとっての、特有な機会を提供するものである。国は、他の関係者と協力しながら、オンラインおよびオフラインの双方で行なわれる、参加、包摂、デジタルシティズンシップおよびレジリエンスを醸成しうるこのような活動に子どもたちがアクセスできるようにすることが求められる。 22.年齢および成熟度にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動を行なう子どもたちの権利を認識し、国は、すべての子どもたちにとって社会的、市民的、芸術的、教育的およびレクリエーション的利益となるデジタルコンテンツ/サービスの制作および普及のための、さまざまなインセンティブ、投資機会、基準および技術的指針を提供するべきである。これには、子どもたちの発達しつつある能力にふさわしく、かつ脆弱な状況に置かれた子どもたちのニーズにとくに注意した、創造性、チームワークおよび問題解決などのスキルを刺激するインタラクティブなかつ遊びを基盤とするツールが含まれる。このようなツールの創案または制作に子どもたちが参加する場合、子どもたちの知的財産権を保護するための措置が設けられるべきである。 23.国は、子どもたちに対し、文書以外の形式によるものおよびソーシャルネットワーキングその他の媒体を通じてのものを含め、子どもたちの権利(とくに参加権)に関する、子どもの年齢および成熟度にふさわしい情報を提供するべきである。国はまた、子どもたちに対し、利用可能な機会と、そのような機会を活用する際に支援を得られる先についても知らせるよう求められる。 24.国は、子どもたちが、地方、国および国際社会における公共政策論議および政治的議論に効果的に参加できることを確保し、かつ、子どもたちの参加および集会・結社の権利の享受を促進して民主的シティズンシップのための能力および政治的意識を強化することを目的としたオンラインの市民的・社会的プラットフォームの発展を支援するための措置をとるべきである。国はまた、デジタル環境への子どもたちの参加が、子ども参加に関してすでに行なわれてきた優れた実践および利用可能な評価ツールを踏まえ、意味のある形で行なわれることも確保するよう求められる。 25.国は、平和的集会および結社に対する権利をデジタル環境で行使する子どもたちを、モニタリングおよび監視(国家当局が直接行なうものか民間セクターの主体と連携して行なうものかは問わない)から保護するための措置をとるべきである。このような措置が子どもたちによる権利の行使に干渉する場合、当該措置を、人権に関する国際社会および欧州の条約および基準に合致した、濫用を防止する条件および保障措置に服させることが求められる。とくに、このような措置は、アクセス可能で明確性、明瞭性および予見可能性を備えた法律によって定められ、正当な目的を追求し、民主的社会において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例したものであるとともに、効果的な救済を可能とするものであるべきである。 3.4 プライバシーおよびデータ保護 26.子どもたちは、デジタル環境での私生活および家族生活に対する権利を有している。これには、個人データの保護ならびに通信および私的なコミュニケーションの秘密の尊重が含まれる。 27.国は、プライバシーおよびデータ保護に対する子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足しなければならない。国は、関係者(とくに個人データの処理に当たる者だが、同世代の子ども、親または養育者および教育者も)が、プライバシーおよびデータ保護に対する子どもの権利について認識し、かつこの権利を尊重することを確保するべきである。 28.国その他の関係者は、子どもの年齢および成熟度を考慮に入れながら、子どもたちが、適切な場合には子どもの親、養育者、法定保護者または子どもに法的責任を負う他の者が子どもの発達しつつある能力に一致する方法で行なう指示および指導によって、プライバシーおよびデータ保護に対する自己の権利を行使尾する方法について認識することを確保するべきである。 29.個人データが子どもの利益になる形で処理される場合もあることを認識し、国は、子どもの個人データが、公正、合法的、正確かつ安全なやり方で、特定の目的のために、かつ、子どもおよび(または)その親、養育者もしくは法定代理人による自由な、明示的な、十分な情報に基づくかつ曖昧さの余地がない同意に基づいて、または法律によって定められた他の正当な根拠にしたがって、処理されることを確保するための措置をとるべきである。データの最小限化の原則を尊重することが求められる。すなわち、個人データの処理は、データ処理の目的との関連で過不足なく、関連性があり、かつ過度でない形で行なわれるべきである。 30.子どもに個人データの処理に対する同意能力があると判断される年齢を決定するための措置を国がとる場合、子どもたちの権利、意見、最善の利益および発達しつつある能力が考慮に入れられなければならない。この点については、データ収集慣行に関する子どもたちの実際の理解および技術的発展を考慮に入れながら、モニタリングと評価が行なわれるべきである。子どもが当該年齢に達しておらずに親の同意が必要とされる場合、国は、同意が子どもの親または法定代理人によって与えられることを確認するために合理的な努力が行なわれることを要求するよう求められる。 31.国は、予定されているデータ処理によって子どもの権利に生じる可能性がある影響についての評価が実施されること、および、データ処理のやり方がこれらの権利への干渉につながるリスクを防止しまたは最小化する形で決定されることを確保するべきである。 32.国は、機微なデータと判断される特別なカテゴリーのデータ(遺伝データ、子どもを一意的に特定する生体データ、有罪判決に関連する個人データ、ならびに、人種的もしくは民族的出自、政治的意見、宗教的その他の信念、精神的および身体的健康または性生活を明らかにする個人データなど)の処理が、あらゆる場合に、適切な保障措置が法律に掲げられている場合でなければ認められないことを確保するべきである。 33.国は、プライバシーに関するツール、設定および救済措置についての、アクセスが容易で、意味のある、子供にやさしくかつ年齢にふさわしい情報が子どもたちに対して利用可能とされることを確保するべきである。子どもおよび(または)その親もしくは養育者もしくは法定代理人に対しては、子どもの個人データがどのように処理されるかについてデータ管理者から通知することが求められる。これには、たとえば、データがどのように収集・保存・利用・開示されるかについての情報、自己のデータにアクセスし、当該データを訂正しもしくは消去しまたは当該データの処理に異議を申し立てる方法についての情報および自己の権利行使の方法についての情報が含まれるべきである。 34.国は、子どもおよび(または)その親、養育者もしくは法定保護者に対し、とくに個人データの処理が不法である場合またはその処理によって子どもの尊厳、安全またはプライバシーが損なわれる場合に、子どもの個人データの処理に対する同意を撤回し、当該データにアクセスし、かつ当該データを訂正させまたは消去させる権利が認められることを確保するべきである。 35.子どもの個人データの処理に関連して、国は、子どもの最善の利益を考慮に入れながら、プライバシー・バイ・デフォルトの設定およびプライバシー・バイ・デザインの措置を実施し、または関係者に対してその実施を要求するべきである。このような措置においては、プライバシーおよびデータ保護に対する権利のための強力なセーフガードを装置およびサービスに組みこむことが求められる。 36.インターネットに接続されたデバイスまたはスマートデバイス(玩具や衣服に組みこまれたものを含む)との関連で、国は、このような製品が主として子ども向けである場合または日常的に子どもによってもしくは子どもの近くで使用される可能性が高い場合にもデータ保護に関する原則、規則および権利が尊重されることを確保するため、特段の配慮を行なうべきである。 37.子どものプロファイリング(とくに子どもに関する決定を行なうことまたは子どもの個人的選好、行動および態度の分析もしくは予測を行なうことを目的として子どもに「人物像」を適用する、あらゆる形態の個人データの自動処理)は、法律で禁じられるべきである。例外的事情があるときは、国は、解除が子どもの最善の利益に合致する場合または優先されるべき公共の利益がある場合に、法律で適切な保障措置が定められていることを条件として、このような制限を解除することができる。 38.子どもたちは、デジタル環境でプライバシーへの恣意的または不法な干渉の対象とされてはならない。プライバシーに対する子どもたちの権利の制限につながる可能性がある措置は、法律にしたがってとられ、正当な目的を追求し、民主的社会において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例したものでなければならない。とくに監視または傍受の措置はこれらの条件を遵守したものでなければならず、また効果的な、独立のかつ公平な監督に服するべきである。 39.国は、法律上または実際上、子どもたちの匿名、仮名または暗号化技術の利用を禁止するべきではない。 3.5 教育に対する権利 40.国は、デジタル環境が提供する、教育に対する子どもたちの権利を実現するための機会に積極的に投資し、かつこのような機会を積極的に促進するべきである。教育の目標は、子どもの人格、才能および精神的・身体的能力を可能なかぎり最大限に発達させ、かつ子どもが自由な社会において責任ある生活を送るための準備を整えるところにある。このような目標を支えるために、デジタル環境の知識およびリソースが、包摂的な、かつ子どもたちの発達しつつある能力および脆弱な状況に置かれた子どもの特別な事情を考慮に入れたやり方で、すべての子どもたちに対して利用可能とされることは重要である。 デジタルリテラシー 41.国は、子どもたちがデジタル環境に賢く関与する能力および関連のリスクに対処するレジリエンスを有することを確保するため、メディアリテラシー、情報リテラシーおよびデジタルシティズンシップ教育を含むデジタルリテラシーの発達を促進するべきである。デジタルリテラシー教育は、子どもの発達しつつある能力を考慮に入れながら、もっとも低年齢からの基礎教育カリキュラムに含めることが求められる。 42.さまざまな子どもの権利を支えるため、デジタルリテラシー教育には、オンラインのさまざまなツールおよびリソースを活用する技術的または機能的能力、ならびに、コンテンツ制作関連のスキルおよびデジタル環境、その機会およびリスクに関する批判的理解が含まれるべきである。 43.子どもたちがインターネットを利用する現場、とくに学校ならびに子どもたちとともにおよび子どもたちのために活動する組織において、デジタルリテラシーが効果的に促進されるべきである。国はまた、子どもと家族にとってより安全で持続可能なデジタル環境を創造していくための不可欠な手段として、親に働きかけるために国が設けた機構を通じ、親または養育者のデジタルリテラシーを促進しかつ支えていくことも求められる。 44.フォーマルな学習およびインフォーマルな学習(家庭における学習を含む)を結びつけるためにデジタルネットワークを活用する教育政策に潜在的利点があることを認識したうえで、国は、このことによって、家庭にリソースを持たない子どもまたは入所施設で暮らしている子どもが不利な立場に置かれないことを確保するべきである。 45.社会地理的または社会経済的事情および時として居住場所の事情によりデジタル技術にほとんどまたはまったくアクセスできない子どものほか、デジタル技術にアクセスはできるものの利用していない子ども、脆弱性を理由としてデジタル技術を利用するスキルがなくまたはデジタル技術を十分に利用していない子ども(とくに障害のある子ども)についても、そのデジタルリテラシーを支えかつ促進するため、教育制度および文化制度を通じて国その他の関係者による特段の努力が行なわれるべきである。 46.国はまた、女子による情報通信技術の利用を増進させ、かつすべての子どもにとっての機会および成果の平等を促進するための努力も行なうべきである。 教育的プログラムおよびリソース 47.国は、デジタル環境における子どもたちの活動の役に立ち、かつ子どもたちのフォーマル教育、ノンフォーマル教育およびインフォーマル教育の支えとなる、十分かつ質の高い教育的リソース、物理的装置およびインフラが利用可能とされることを確保するべきである。これらのリソース等の開発および配布は、他の関係者と協力しながら行なうこともできる。このような条件整備は、デジタル環境に関わって高水準の教育を維持するために国その他の関係者が行なっている現在の望ましい実践および必要な行動にしたがって評価の対象とされるべきである。 48.国は、子どもたち、親または養育者ならびに子どもとともに働く教育者およびボランティアを対象とした教育・意識啓発の取り組みおよびプログラムならびにユーザーツールを、子どもたちの関与を得ながら発展させかつ強化するべきである。このようなプログラムには、防止措置、デジタル環境における権利と責任、人権侵害の発見および通報、救済措置ならびに利用可能な是正措置に関する知識を含めることが求められる。具体的には、このようなプログラムは、同意を与えること、自分自身と他者が有するその他の基本的権利を尊重すること、必要な場合に是正を求めること、ならびに、デジタル環境における自己の権利の保護および充足のために利用可能なツールと活用することが何を意味するかについて年齢および発達しつつある能力にふさわしい形で理解することを、子どもたちに教えるようなものであるべきである。さらに、このようなプログラムは、有害である可能性があるコンテンツ(暴力・自傷、成人のポルノ、子どもの性的虐待表現物、差別・人種主義、ヘイトスピーチなど)および行動(子どもを性的目的で勧誘する「グルーミング」、いじめまたはハラスメント、個人データの不法な処理、知的財産権の侵害など)について、かつ子どもに関する情報または子どもによってシェアされた情報が他の場面でおよび他の者によってさらに拡散されかねないことで生じる可能性のある影響について、子どもたちが理解して対処できるようにするものであることが求められる。 49.フォーマルおよびノンフォーマルな教育機関および文化機関(文書館、図書館、博物館、子ども・若者が主導する団体およびその他の学習用機関を含む)は、多種多様なデジタルのかつインタラクティブな学習リソースの開発および提供を進め、かつデジタル環境に関わる学習機会を最大限に活かせるようにする目的で機関の境界を越えて協力するよう、支援されかつ奨励されるべきである。 3.6 保護および安全に対する権利 50.新たな技術の発展を考慮に入れ、子どもたちは、デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力、搾取および虐待から保護される権利を有する。いかなる保護措置においても子どもの最善の利益および発達しつつある能力が考慮に入れられるべきであり、その他の権利の行使が不当に制限されるべきではない。 51.デジタル環境との関係で生じる可能性がある、子どもの健康的な発達およびウェルビーイングにとっての懸念領域は多数存在する。これには以下のものから生ずる危害のおそれが含まれるが、これに限られるものではない。 性的搾取・虐待、性的目的での勧誘(グルーミング)、犯罪の実行、過激主義的な政治的・宗教的運動への参加または人身取引目的でのオンラインでの子どもの募集(接触に関わるリスク) (とくに女性および子どもの)品位を傷つけかつステレオタイプ化された描写および過度な性的対象化、暴力および自傷(とくに自殺)の描写および美化、品位を貶める、差別的なもしくは人種主義的な表現またはそのような行為の擁護、広告、成人向けコンテンツ(コンテンツに関わるリスク) いじめ、ストーキングおよびその他の形態のハラスメント、同意を得ずに行なわれる性的画像の拡散、強要行為、ヘイトスピーチ、ハッキング、賭博、違法ダウンロードまたはその他の知的財産権侵害、商業的搾取(行為に関わるリスク) 過度な利用、睡眠不足および身体的危害(健康上のリスク) 以上の要素はいずれも、子どもの身体的、情緒的および心理的ウェルビーイングに悪影響を及ぼす可能性がある。 デジタル環境におけるリスクに対処するための措置 52.新たな技術が登場する速さを念頭に置き、国は、これらの技術が子どもたちの健康にもたらす可能性のある危害のいかなるリスクについても定期的な評価を実施する等の手段により、そのようなリスクの存在または程度に関してその時点で確かな科学的および技術的知識が存在しない場合でも、予防原則にのっとった措置をとるべきである。 53.国は、企業に対し、子どもたち向けのまたは子どもたちが利用する製品およびサービスの特徴および機能性の指導的原則として、セイフティ・バイ・デザイン、プライバシー・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デフォルトを実施するよう促進し、かつそのためのインセンティブを提供するべきである。 54.国は、デジタル環境における子どもにとってのリスクを緩和することを目的とするペアレンタルコントロールの、企業による開発、製作および定期的更新を奨励する際には、このようなコントロールが子どもの発達しつつある能力を考慮に入れながら開発・装備されること、および、このようなコントロールが差別的態度を強化せず、プライバシーに対する子どもの権利を侵害せず、かつ子どもの年齢および成熟度にしたがった情報に対する子どもの権利の否定につながらないことを確保するべきである。 保護および意識啓発の措置 55.乳児が時期尚早にデジタル環境にさらされることには、その特有の身体上、心理上、社会上および刺激上のニーズとの関連で限られた利益しかないことから、乳児をこのような曝露から保護するための具体的な措置および政策がとられるべきである。 56.国は、デジタル環境における製品、サービスおよびコンテンツであって特定の年齢に関わって法的に制限されているものから子どもたちが保護されることを確保するため、データの最小限化の原則に合致した手法を用いた、効果的な年齢確認システムの使用を要求するべきである。 57.国は、子どもたちがデジタル環境における商業的搾取(年齢にふさわしくない広告およびマーケティングにさらされることを含む)から保護されることを確保するための措置をとるべきである。これには、企業が子どもに向けた不公正な商業的実践を行なわないことを確保すること、子どもに向けたデジタル広告/マーケティングが、子どもたちがそのようなものとしてはっきり見分けられるようになっていることを要求すること、および、すべての関係者に対し、商業的目的での子どもの個人データの処理を制限するよう要求することが含まれる。 58.国は、子どもたちを有害なコンテンツから保護することおよび子どもたちが不法なオンライン活動に関与しないようにすることを目的とした意識啓発プログラムを開発するため、メディア(メディアの自由を正当に尊重することが求められる)、教育機関およびその他の関係者と協力するよう奨励される。 59.国は、企業その他の関係者に対し、デジタル環境におけるネットいじめ、ハラスメントおよび憎悪・暴力の煽動に対処する方針の策定および実施を奨励するための措置をとるべきである。このような方針には、容認できない行動に関する明確な情報、通報機構およびこのような行為に関与した子どもへの意味のある支援を含めることが求められる。 60.国は、防止および救済措置の両面に関して、デジタル環境におけるリスクへの対処方法に関する望ましい実践を共有するべきである。国は、相談、通報および苦情申立ての機構に関する公衆の意識啓発のための措置を整備するよう求められる。 子どもの性的虐待表現物に関する措置 61.子どもの性的虐待表現物に関わる監視は被害者に焦点を当てたものであるべきであり、そのような表現物に登場させられている子どもの特定、居所確認、保護およびこのような子どもに対するリハビリテーションサービスの提供が最優先されるべきである。 62.国は、性的搾取または性的虐待の対象とされている子どもの特定および居所確認ならびに加害者の逮捕のための行動を迅速化する目的で、自国の管轄内のサーバーで子どもの性的虐待表現物が提供されているか否かおよびどのように提供されているかを継続的に監視するとともに、法執行機関に対し、「ハッシュ」[2] データベースの構築を要求するべきである。 [2] 「ハッシュ」とは、デジタルファイル(子どもの性的虐待表現物であるものを含む)に割当てられる特有のデジタル指紋である。ハッシュによって大量のデータを迅速に分析することが可能になるため、子どもの性的虐待画像である可能性があるものを個別に確認する必要性がなくなる。ハッシュは画像そのものを表すものではなく、リバースエンジニアリングによって子どもの性的虐待表現物を制作することはできない。 63.国は、子どもに対する犯罪の加害者の特定を支援し、かつ刑事手続のために必要とされる証拠を収集するための援助(適切な場合には技術的支援および装備を含む)を法執行機関に提供する目的で、企業と連携するべきである。 64.利用可能な技術を念頭に置き、かつインターネット仲介業者の責任に関する諸原則および一般的監視義務の免責を損なうことなく、国は、企業に対し、自社のネットワークまたはオンラインサービスが、たとえば子どもの性的虐待表現物の製造、頒布、当該表現物へのアクセスの提供、当該表現物の広告もしくは保存またはその他の形態のオンラインでの子どもの虐待との関連で、子どもたちを害する可能性のあるやり方で犯罪その他の不法な目的のために濫用されないことを確保するため、合理的、比例的かつ効果的な措置をとるよう要求するべきである。 65.国は、関連する企業に対し、自社のネットワークが子どもの性的虐待表現物の保存または頒布のために悪用されないことを確保する目的でハッシュリストを適用するよう要求するべきである。 66.国は、企業その他の関係者が、国内サーバーで発見されたあらゆる子どもの性的搾取・性的虐待表現物についてのメタデータが利用できることを確保し、当該メタデータを法執行機関に提供し、これらの表現物を削除し、かつ、自社の管轄外のサーバーで発見された当該表現物については削除されるまでアクセスを制限するためにあらゆる必要な措置を迅速にとるよう、要求するべきである。 3.7 救済措置 67.加盟国は、デジタル環境において人権および基本的自由を侵害された場合に効果的救済を受ける子どもの権利を充足する、欧州人権条約(ETS No. 5)第6条および第13条ならびにその他の国際人権文書および欧州人権文書に基づく自国の義務の効果的実施を確保するべきである。そのためには、子どもたちおよびその親または法定代理人が苦情申立ておよび救済措置の請求を行なうことができる、利用可能な、よく知られた、アクセスしやすく、負担可能なかつ子どもにやさしい回路を用意しなければならない。効果的な救済措置としては、問題となる人権侵害によって、調査、説明、回答、訂正、手続、不法なコンテンツの即時削除、謝罪、回復、再接続および賠償などが考えられる。 68.子どもたちに対し、国内レベルで利用可能な救済措置に関する情報および助言が、その年齢および成熟度に応じた方法ならびに子どもたちが理解できかつジェンダーおよび文化に配慮した言葉で、提供されるべきである。設けられる機構および手続は、救済措置へのアクセスが迅速かつ子どもにやさしいものであり、かつ子どもに対して適切な是正措置を提供するようなものであることが求められる。 69.国は、裁判所へのアクセスまたは行政救済措置の司法審査その他の手続へのアクセスが、あらゆる場合に、子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針(2010年)に掲げられた原則に合致する形で利用可能とされることを確保するべきである。 70.国は、適切な場合、子どもおよび(または)その親または法定代理人に対し、子どもオンブズパーソンおよびその他の国内人権機関ならびにデータ保護機関によるものなどのような、救済を求めるための非司法的機構、行政的手段その他の手段も提供するべきである。デジタル環境における子どもの権利の侵害事件を取り扱うこれらの機構の利用可能性、十分性および実効性については、定期的な見直しの対象とすることが求められる。 71.国は、第一次的責任を負う主体として、企業がデジタル環境で行なう人権侵害から子どもたちを保護し、かつ子どもたちが効果的な救済措置にアクセスできることを確保するための適切な措置をとるべきである。そのための手段には以下のものが含まれる。 a.企業に対し、国連・ビジネスと人権に関する指導原則に掲げられた有効性に関する基準に合致する独自の救済・苦情申立て機構を設置するよう奨励するための政策および措置を実施すること。その際、国の司法的または非司法的機構への子どもによるアクセスがこれらの機構によって妨げられないことを確保すること。 b.企業に対し、救済・苦情申立て機構を通じて苦情を申し立てかつ是正を求める方法についての、アクセスしやすく、年齢にふさわしくかつ子どもの言語で利用できる情報の提供を奨励すること。 c.企業に対し、すべての者およびとくに子どもたちが、懸念を生じさせるあらゆる表現物または活動について通報するための容易にアクセスできる方法を自社のプラットフォーム上またはサービス内で提供するとともに、受理された通報への対応が効率的にかつ合理的な期間内に行なわれるようにすることを要求すること。 4.国内的枠組み 4.1.法的枠組み 72.デジタル環境に関連する法律および政策は、その起草段階で、その実施が子どもたちによる人権および基本的自由の享受に及ぼす可能性がある影響についての評価の対象とされるべきである。国は、デジタル環境における子どもの権利の全面的実現を支える法的枠組みを定期的に見直し、かつ必要なときは更新するよう求められる。 73.包括的な法的枠組みにおいて、デジタル環境に関わる防止措置および保護措置を定め、親および養育者に支援措置を提供し、あらゆる形態の暴力、搾取および虐待を禁止し、効果的な救済措置、回復およびリハビリテーションのためのサービスを盛りこみ、子どもおよびジェンダーに配慮した相談、通報および苦情申立ての機構を確立し、協議および参加のための子どもにやさしい機構を包含し、かつ、不処罰と闘うためのアカウンタビリティ確保の機構を設けるべきである。 74.国は、自国の法的枠組みが、デジタル環境で行なわれうる一連の不法行為を遺漏なく包含することを確保するべきである。このような枠組みは、新たな技術の登場に対応する余地を残しておくため、可能であれば特定の技術に限定されないやり方で策定することが求められる。このような枠組みには、犯罪の定義、自然人および法人の刑事上、民事上または行政上の責任および制裁、ならびに、子どもたちのサービスに関する規定が含まれるべきである。性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(CETS No.201)、サイバー犯罪条約(ETS No.185)ならびに子どもの売買、児童買春及び児童ポルノに関する国際連合・子どもの権利条約の選択議定書(2000年)および通報手続に関する同選択議定書(2011年)などの関連の文書を正当に考慮することが求められる。これらの文書は、刑法改正ならびに法的枠組みおよびサービスのより幅広い改正のための基準となりうるものであり、また効果的な立法上の枠組みの発展の参考にすることが可能である。 75.オンラインでさまざまな形態の子ども同士の暴力または虐待が発生した場合、国は、子どもの犯罪化を防止しつつ、適切かつ十分な予防的および修復的アプローチを可能なかぎり追求するべきである。 76.国は、子どもの個人データの処理に適用される法的枠組みを設けるとともに、そのような枠組みの全般的実効性を定期的に評価するべきである。個人データの自動処理に関わる個人の保護のための条約(ETS No.108)など、データ保護に関わる原則および権利に言及した関連の国際文書および欧州文書を正当に考慮することが求められる。 77.設けられる法的枠組みにおいては、独立のデータ保護機関が、子どもの個人データの不法な処理に関わって子どもおよび(または)その親もしくは養育者もしくは法定代理人から申し立てられた苦情に対処する権限を有する旨を定めるとともに、子どもが、自己の個人データが国内法の規定に反する形で処理された場合または子どもが同意を撤回する場合に当該データの訂正または消去を求めることができるようにする、効果的な機構を設置するべきである。官民の関係者に対しては、請求に応じてそのようなコンテンツを迅速に消去しまたは削除することが義務づけられるべきである。 78.国は、企業その他の関係者がその活動全体を通じてデジタル環境における子どもの権利を尊重する責任を履行するのに役立つ、明確かつ予見可能な法的環境および規制環境をつくり出すべきである。 79.国は、子どもまたはその法定代理人が、自己の権利の侵害または虐待の加害者に対して賠償を求められることを確保するべきである。適切な場合、被害を受けた子どもに補償を行なうための基金、または治療的その他の支援を提供するための措置もしくはプログラムの確立を考慮することが求められる。 国別コードトップレベルドメインのレジストリに関する具体的要件 80.契約または認可に基づき、ある組織が国別コードトップレベルドメインのレジストリ(登録機関)になることを認める際、国は、子どもの最善の利益を正当に顧慮しなければならない旨の明確な要件を含めるべきである。このような要件には、たとえば、当該レジストリの管轄内にあるいずれかのドメインで子どもの性的虐待表現物が入手できることを宣伝しまたは示唆するいかなるドメイン名の登録または使用も当該レジストリによって明確に禁じられること、および、この方針が執行されること(レジストリおよびレジストラ〔被登録者〕の双方による執行を含む)を確保するための機構を当該レジストリが設置することを含めるよう求められる。同じ要件が、分野別トップレベルドメインの登録にも適用されるべきである。 81.レジストラが、自ら登録されている国別コードドメイン内で、子どもを対象とするサイト/サービスまたは相当数の子どもが利用するサイト/サービスを開設しまたは更新することを提案する場合、国は、レジストリまたは他の権限ある公的機関が、レジストラに対し、子どもの保護のための適切な方針を整備するよう要求することを確保するべきである。そのための対応として、たとえば、レジストラも、サービスの提供またはサービスによって生成されるいずれかのデータの管理に関係してレジストラが雇用するいかなる者も、子どもの性的搾取もしくは性的虐待の行為または他の関連の犯罪について有罪判決を受けていないことを要件とすることなどが考えられる。 4.2 政策上および制度上の枠組み 全般的戦略および政策的一貫性 82.デジタル環境におけるさまざまな子どもの権利全体を通じた調整および政策的一環性の強化を達成するため、国は、国レベルの包括的な戦略的アプローチを確立するとともに、諸政策および諸措置が一貫しており、かつ相互に強化しあうものであることを確保するべきである。そのための対応としては、戦略もしくは行動計画を採択すること、または、デジタル環境における子どもの権利への具体的配慮を既存の行動計画、戦略および政策に統合的なやり方で組みこむことなどが考えられる。 83.国レベルの包括的な戦略的アプローチは、そこに掲げられた行動を実施する責任および権限を有する所管機関を特定し、現実的なかつ期限を明示した達成目標を掲げ、十分な人的資源および財源によって裏づけられ、かつ、現在の科学的知識、十分な資源を提供された継続的調査研究および優れた実践に基づいたものであるべきである。 84.国は、国家的戦略または行動計画の立案、起草、実施および評価に、子どもオンブズパーソンおよび他の独立の人権機関、教育関係者、データ保護機関、企業および市民社会(子どもおよび若者が主導する団体を含む)の関与を得るべきである。とくに国は、子どもたちが、十分な情報に基づく同意のもと、かつその発達しつつある能力にしたがって、これらのプロセスに貢献するための協議およびエンパワーメントの対象とされることを確保するよう求められる。子どもたちの意見が正当に重視されるべきである。子どもたちに対しては、その意見がどのように考慮され、かつ意思決定プロセスにどのような影響を与えたかについての情報を提供することが求められる。子どもたちの意味のある参加を確保するため、十分な資源が利用可能とされるべきである。 85.進捗状況、ならびに、国家的戦略または行動計画で予定されたすべてのレベルおよびすべての関係者による行動を評価するための手法が開発されるべきである。評価は、デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足に関して適切かつ効果的である政策および措置を特定する目的で、定期的に実施することが求められる。 86.国は、採択された戦略または行動計画およびその実施に関する情報を広く普及するために適切な措置をとるべきである。 部門別の政策 87.国は、子どもたちにとってすでに存在する機会およびリスクをマッピングし、新たに生じつつある傾向を特定し、かつ、デジタル環境で子どもたちのウェルビーイングを確保するための政策および資源の焦点化の指針とする目的で、政策および取り組みにおいて、デジタル環境における子どもたちの経験についての厳密なかつ最新の証拠が参考とされることを確保するべきである。 88.国は、子どもたち向けの有益なリソースを提供している教育的、文化的その他の組織に対し、これらのリソースを子ども、親および養育者がデジタル環境で利用できるようにすることの支援政策を立案しかつ実施するべきである。 89.国は、デジタル環境における子どもの権利に関連した基準および指針の作成、実施および執行に関する規制機関の責任を強化するべきである。 90.国は、自国の管轄内にある企業の間でその役割、責任および子どもの権利への影響ならびに関係者との協力に関する意識および支持を高めるため、政策、操業ガイドラインおよび(または)行動規範の作成を含む措置をとるべきである。 91.国は、子どもの保護のための国内的枠組みのなかで、デジタル環境について明示的に取り上げ、かつ子どもたちを含むすべての関係者が貢献する包括的な保護・安全政策を立案するべきである。このような政策では、暴力から子どもたちを保護するための統合的な国家的戦略に関する欧州評議会政策ガイドライン [3] のような現行の基準および指針を考慮することが求められる。 [3] Recommendation CM/Rec(2009)10 of the Committee of Ministers to member States on integrated national strategies for the protection of children from violence, Appendix 1. 92.国は、自国の法律または国際的に認められた一連の基準にしたがい、物理的に他国の管轄内にある子どもの性的虐待表現物への自国の市民によるアクセスを防止するための戦略を整備するべきである。 93.国は、自国の部門別政策、とくに保護・安全政策枠組みおよび関連の意識啓発措置の実施に、企業その他の関係者の関与を求めるべきである。 子どもの権利にとってのリスクおよび影響への対応 94.国は、企業その他の関係者に対し、デジタル環境における子どもの権利に自社が及ぼす影響を特定し、防止しかつ緩和する目的で、デューディリジェンス(相当の注意)を履行するよう要求するべきである。 95.国は、企業に対し、デジタル関連の技術、製品、サービスおよび方針との関連で定期的な子どもの権利リスク評価を行ない、かつそのようなリスクの管理および緩和のために合理的かつ比例的な措置をとっていることを実証するよう、要求するべきである。 96.国は、企業に対し、デジタル環境における機会の最大化およびリスクへの対処を目的とする子ども志向の産業政策、基準および行動規範を策定し、適用し、かつ定期的な見直しおよび評価を行なうよう、奨励するべきである。 97.オンラインサービスが子どもにとってふさわしいものかどうかを判断するための指針として、親、養育者その他の者は当該サービスの利用規約の文言に依拠する可能性があることを認識し、利用可能な技術を念頭に置き、かつインターネット仲介業者の責任を損なうことなく、国は、企業に対し、自社のサービス利用規約が執行されることを確保するために合理的、比例的かつ効果的な措置をとるよう要求するべきである。 制度的側面、機構およびサービス 98.国は、人権および子どもの権利の保障に責任を負う機関が、その任務の範囲内で、たとえばデジタルリテラシースキル、子どもたちにとって社会的、教育的および文化的利益があるデジタルコンテンツ/サービスの制作に関する質の高い基準、ならびに、協議および参加のための子どもにやさしい機構を促進することなどを通じ、デジタル環境に関連する子どもの権利に対応することを確保するべきである。 99.国は、デジタル環境に関連する人権侵害についての子どもおよびその親または法定代理人からの苦情に関して、全体を通じてプライバシーに対する子どもの権利を確保し、かつモニタリングおよびフォローアップについて定める子どもに配慮した手続を採用しながら受理、調査および対応を行なうことに責任を負う機関または機構が存在することを確保するべきである。 100.権限ある機関は、国家的な子どもの保護制度の中核的側面のひとつとして、アクセスしやすく、安全で、秘密が守られ、年齢にふさわしく、かつジェンダーに配慮した相談、通報および苦情申立ての機構(たとえば公的機関、ホットライン、子どもヘルプラインが運営するヘルプラインおよびゼロレーティング型チャットアプリならびにオンラインプラットフォームを通じた機構など)を設置するべきである。このような機構は、子ども支援サービスおよび法執行機関と適切に連携するとともに、適切なときは外部の関係者と緊密に協力しながら設置することが求められる。これには、子どもがデジタル環境における暴力、搾取および虐待について関連の公的機関に通報するための、安全な、子どもにやさしい無償の窓口の提供が含まれるべきである。このような機構は、秘密保持および匿名性に対する子どもまたはその親もしくは法定代理人の権利を確保することが求められる。 101.国は、電気通信企業に対し、フリーダイヤルの電話番号を提供することによって、子どもヘルプラインにかかってくる通話の料金を免除するよう奨励するべきである。 102.国は、不法性を疑われるオンライン上の表現物(とくに子どもの性的虐待表現物)の存在について、いかなる者でも匿名で通報できるようにするための効果的機構が存在することを確保するべきである。 103.国は、子どもの保護制度の一環として、デジタル環境で権利およびプライバシーを侵害されまたは暴力、性的搾取もしくは虐待を受けた子どもを対象とする十分なかつジェンダーに配慮した支援サービスおよび援助へのアクセスを確保し、かつこのようなサービスおよび援助を提供するべきである。これには、子どもの身体的および心理的回復および社会的再統合を確保し、かつ再被害化を防止するためのサービスが含まれる。 104.国は、デジタル環境における子どもを巻きこんだ性犯罪について有罪判決を受けた者に対して適切な性犯罪者治療プログラムが利用可能とされること、および、子どもを巻きこむ性犯罪(デジタル環境におけるものを含む)を行なう可能性について懸念するいかなる者に対してもサービスが利用可能とされることを確保するべきである。 投資、資源および研修 105.国は、学習を支援するため、学校におけるハードウェア、ソフトウェア、接続環境、十分な帯域幅および教員研修に投資するべきである。 106.国は、デジタル環境で自己の権利を行使するために必要なスキルおよびリテラシーの獲得に関して教育者が子どもたちを支援できるよう、着任時研修および現職者研修が教育者の認識の強化およびエンパワーメントにつながるものであることを確保するべきである。 107.国は、政策および措置によって、教育機関に対し、デジタルメディアにおける暴力および虐待に対抗して子どもたちに関わる防止措置および保護措置(学校におけるものを含む)をとるために必要な資源、訓練および支援が提供されることを確保するべきである。このような措置は、このような行為がエスカレートするのを防止し、このような行為の影響を受ける子どもおよびこのような行為に関与した子どもに適切な支援を提供し、是正措置につながり、かつレジリエンスを構築するようなやり方でとることが求められる。 108.国は、犯罪歴のある者が子どもとの関係で責任を負う立場にある職位に採用されまたは配置されることを防止しかつそのリスクを低減させる目的で、スクリーニング手続を実施し、かつ、子どもたちとともに働く職員またはボランティア(デジタル環境で活動する者を含む)を採用するすべての機関または雇用主に指針、助言および援助を提供するための十分な体制が整備されることを確保する措置をとるべきである。 109.国は、法執行に携わる職員、司法関係者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対して十分な資源を配分し、かつこれらの者を対象として着任時研修および継続研修を実施するべきである。このような研修は、デジタル環境における子どもの権利、子どもたちがオンラインで直面するリスク、子どもがオンライン上の危害、暴力、虐待および搾取の被害者である可能性を示す徴候の認識方法およびとるべき対応に関するスキルおよび知識を増進させるようなものであることが求められる。 110.国は、デジタル環境における子どもの権利の分野への子ども・若者参加を含む調査研究および知識開発に投資するべきである。調査研究は利害関係者から独立して実施されるべきであり、かつ、年齢、性別、社会経済的地位およびデジタル環境における子どもたちの脆弱性またはレジリエンスを高めるその他の要因によって子どもたちの経験を差異化できるよう十分に詳細なものであることが求められる。 4.3 国内レベルでの協力および調整 111.国は、すべての関係者の参考となり、かつ、それぞれの役割および職務に応じたやり方ですべての関係者の関与を得る、包括的かつ戦略的な、調整のとれたマルチステークホルダーアプローチを追求するべきである。このような関係者には、国、広域行政圏および地方の法執行機関その他の公的機関、教育機関、社会サービス機関、独立の人権機関、データ保護機関、子どものためにおよび子どもとともに働く専門家、市民社会(子ども・若者が主導する団体を含む)、企業、業界団体、研究者、家族ならびに子どもたちが含まれる。 112.国は、子どもの権利に影響を及ぼす可能性があるデジタル環境における発展の評価を目的とし、かつ意思決定プロセスに子どもたちを包摂する公的機関を指定しまたはそのような調整機構を創設するとともに、このような発展への対応が国家的政策で十分に行なわれることを確保するべきである。 113.国は、権限ある国家機関、独立の公的機関、市民社会および企業間の協力のための枠組み、手続およびプロセスを、それぞれの役割および責任、能力ならびに資源を考慮に入れながら確立するべきである。 114.国は、通信サービスのプラットフォームまたはプロバイダに対し、オンラインで行なわれる子ども同士の暴力その他の暴力に関する苦情に迅速かつ効果的に対応するとともに、国の機関と協力するよう要求するべきである。 115.国は、インターネットサービスプロバイダおよびソーシャルネットワークプロバイダのような企業に対し、法律でまたは司法機関もしくは他の権限ある公的機関によって定められた不法なコンテンツの防止および削除に関して積極的な役割を果たすよう、働きかけるべきである。 116.国は、デジタル環境の人権の側面を促進する際の主要な触媒としての市民社会関係者に対し、子どもたちのスキル、ウェルビーイングおよび関連の情報リテラシーならびに研修の取り組み(その他の関係者がとる行動を含む)のモニタリング、評価および促進を積極的に行ない、かつその知見および結果を普及するよう、奨励するべきである。 117.国は、表現・情報の自由およびメディアの自由に関する国際的基準および欧州基準を正当に顧慮しながら、すべての職業メディア媒体およびとくに公共サービスメディアに対し、デジタル環境における子どもの権利に関わる、子どもたち、親または養育者にとっての重要な情報源および参照元としての自己の役割に注意を払うよう、奨励するべきである。 5.国際的な協力および調整 118.各国は、デジタル環境における子どもの権利の促進および保護に関連する国際文書の批准および実施を奨励されるべきである。このような文書には、とくに、子どもの売買、児童買春及び児童ポルノに関する国際連合・子どもの権利条約の選択議定書(2000年)および通報手続に関する同選択議定書(2011年)、個人データの自動処理に関わる個人の保護のための条約(ETS No.108)、サイバー犯罪条約(ETS No.185)およびコンピューターシステムを通じて行なわれる人種主義的および排外主義的性質の行為の犯罪化に関する同条約の追加議定書(ETS No. 189)、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(CETS No.197)ならびに性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(CETS No.201)が含まれる。 119.各国は、デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のため、関連する国際的および地域的な文書および取決めを可能なかぎり幅広く適用することにより、相互に協力するべきである。とくに、各国は以下のことをするよう求められる。 a.援助を提供するための十分な法的根拠を整え、かつ、適切なときは、他国との効率的協力を可能にするための条約、取決めその他の機構を整備すること。 b.自国の権限ある機関が、情報その他の態様の援助の請求を効果的に伝達しかつ処理するための明確な経路または機構を迅速、建設的かつ効果的に利用できることを確保すること。 c.請求の優先度の判断および時宜を得た処理のための明確かつ効率的な手続を整えること。 d.援助の提供もしくは協力を禁止せず、または援助の提供もしくは協力に不合理なまたは不当な制限的条件を課さないこと。 120.各国は、デジタル環境における子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するための政策上および運用上の措置を改善する目的で行なわれる地域的および国際的な能力構築の努力(功を奏した教育・意識啓発ツールの共用および共有を含む)を支援するべきである。 121.各国は、子どもたちにとって何が適切であり何が不適切であるかを定義するコンテンツ分類およびアドバイザリーラベルの、各国間および関係者集団間での標準化を促進する目的で協力するべきである。 122.各国は、子どもの性的虐待表現物を扱うインターポール〔国際刑事警察機構〕のデータベースに自国の法執行機関が接続できるようにするための対応を速やかにとるべきである。 123.インターネットの管理に関してインターネット名称・番号割当法人(ICANN)が果たしているより幅広い役割を認識し、各国は、ICANNに対し、とくに子どもの性的虐待表現物または子どもに対する他のいずれかの犯罪を宣伝しまたは促進していることが自明であるウェブアドレスが特定されかつ削除されることまたはそのようなウェブアドレスの登録が許可されないことを確保することにより、子どもの権利を増進させまたは支持することにつながる方針の効果的実施を強く求めるよう、働きかけるべきである。 124.本ガイドラインの実施を促進するため、加盟国は、関連の政府間機関、国際ネットワークおよびその他の国際機関における協力を強化するべきである。 訳者注/この日本語仮訳は、国連NGO/NPO法人 子どもの権利条約総合研究所/東洋大学 福祉社会開発研究センター共催のオンライン公開シンポジウム「ICT(情報通信技術)と子どもの権利―韓国・台湾・日本の取り組み」(2020年12月6日)の資料として作成したものである。 更新履歴:ページ作成(2021年1月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/21.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:緊急事態下における子どもの教育への権利 一般的討議勧告一覧 (第49会期、2008年10月3日採択) 原文:英語〔ワード〕(日本語訳/平野裕二) III.勧告 [4] これらの勧告は、「緊急事態下における子どもの教育への権利」に関する一般的討議(2008年9月19日)への情報等の提供および当日の議論に基づいたものであり、これに尽きると主張するものではない。 23.委員会は、教育が他の基本的権利と分かちがたく結びついた奪うことのできない権利であり、緊急事態にあろうがなかろうがすべての子どもに保障されなければならないものであることを想起する。委員会は、この一般的討議の目的上、「緊急事態」(emergency situations)とは、人災または自然災害によって、子どもの生活、ケアおよび教育上の便益の通常の条件が短期間のうちに破壊されるあらゆる状況として定義されていることを想起するものである。緊急事態により被災した子どもたちは、世界でもっとも被害を受けやすくかつ周縁化された集団のひとつに数えられ、かつ就学していない子どもの集団としても最大のもののひとつを構成している。万人のための教育を現実のものとするためには、緊急事態下における子どもの教育への権利が尊重、保護および充足されなければならない。 24.委員会はさらに、緊急事態下における子どもの教育への権利が効果的に確保および実施されなければ、すべての子どもに初等教育の全課程を保障するという、2番目のミレニアム開発目標が達成されない見込みであることを強調する。 25.委員会は、教育への権利が緊急事態における優先事項であり、かつ人道救援対応の不可欠な構成要素のひとつであることを支持する、2008年の一般的討議を通底していた原則に同意する。 26.子どもの権利条約を批准した締約国は、その管轄内で子どもの権利を実施し、かつこれらの権利の世界的実施に貢献する義務を自ら引き受けた。委員会は、2008年の一般的討議の目的が、第28条および第29条に概略的に掲げられた教育への権利を尊重および保護する義務について、国その他の主体に対していっそう包括的な指針を提供することであることを想起する。したがって、以下の勧告は、締約国のみならず他の関連の主体にも宛てられたものである。これには、子どもの奪うことのできない権利(教育への権利を含む)が尊重、保護および充足されなければならない地域を実効支配している国以外の主体が含まれる。 27.委員会は、多くの組織、とくに「緊急事態下における教育のための機関間ネットワーク」(INEE)の傘下にある組織(とくにユニセフ、ユネスコ、国際救助隊〔IRC〕、国際赤十字・赤新月社委員会〔連盟〕、セーブ・ザ・チルドレンおよびワールド・ビジョンを含む)によって緊急事態下の子どもたちのために現地で実施されている貴重な取り組みおよびプログラムに、評価の意とともに留意する。 I.中核的義務 28.委員会は、緊急事態下における子どもの教育への権利の実施においては、条約第28条および第29条に掲げられた要件が制限なく満たされなければならないことを強調する。 29.委員会は、緊急事態下においては教育への権利を享受する子どものニーズが高まると考える。教育は、保護措置であると同時に、救援措置であり、かつ身体的、心理社会的および認知的保護を提供する救命措置だからである。教育は、正常性の感覚、安定感、構造性の感覚および未来への希望を与えることにより、紛争および災害の心理社会的影響の軽減につながる。したがって委員会は、緊急事態のあらゆる段階(緊急事態対策段階ならびに復興段階および緊急事態後段階を含む)を通じ、その管轄内にあるすべての子どもを対象として、いかなる差別もなく教育への権利を全面的に確保する自国の義務を全うするよう、締約国に対して求めるものである。委員会はまた、締約国、ドナーおよび救援機関に対し、教育を最初から人道救援対応の不可欠な要素のひとつに含めるよう求める。 30.条約の実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項)についての一般的意見第5号(2003年、CRC/GC/2003/5)で、委員会は、条約に掲げられた経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現および国際協力に関わるものも含む一般的実施措置を発展させる締約国の義務について、その概略を示した。「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の勧告では、漸進的実現とは、条約締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実現に向けて可能なかぎり迅速かつ効果的に進んでいくために的を絞った措置をとる即時的義務を課したものとして理解されるべきであると勧告した。委員会はまた、締約国には少なくとも、経済的、社会的および文化的権利の中核である最低限の内容を達成する義務があると考えていることも明らかにした。 31.委員会は、緊急事態下にあって教育への権利を充足させる責任は個々の国だけが背負わなければならないものではないことを、あらためて指摘する。いずれかの国が対応能力および(または)必要な資源を欠いているときは、他の国々、ドナー機関および国連機関を含む国際社会が、条約第4条第2項〔第2文〕にしたがい、教育への権利が普遍的に充足されることを確保するべきである。 32.委員会は、締約国、ドナー・コミュニティおよび人道機関に対し、緊急事態下で教育への権利を確保する努力を行なう際には、条約の4つの一般原則――差別の禁止に対する権利(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに意見を聴かれる権利(第12条)――を考慮に入れながら、権利基盤アプローチを適用するよう求める。 II.緊急事態下にあって教育にアクセスする子どもの権利を確保する国の義務――教育制度の継続/再建(第28条) 緊急事態対策 33.委員会は、条約第4条において、締約国は条約で認められた権利の実施のためのあらゆる適当な立法上、行政上その他の措置をとらなければならないと定められていることを想起しつつも、締約国に対し、緊急事態に耐える能力を高める目的で、国の教育制度、保護のための法的枠組みならびに保健サービスおよび基礎的社会サービスを強化するよう求める。 34.委員会は、すべての締約国、とくに自然災害に遭いやすい国または武力紛争の影響を受ける可能性が高い地域の国に対し、緊急事態下における教育への権利の保障のための体制整備に関する行動計画を作成するよう求める。これには、政府機関、市民社会、人道救援機関およびドナー間の調整担当窓口を教育省内に設けること、緊急事態が生じても教育への権利の充足を確保するための十分かつ持続的な資源を配分すること、カリキュラムを修正すること、緊急事態に対処できるよう教員を訓練すること、および、ボランティアを特定および訓練することが含まれるべきである。 緊急事態の最中 35.国際法に基づいて国が負っている民用施設(学校を含む)の保護義務に関して、委員会は、締約国に対し、学校が平和地帯でありかつ知的好奇心および普遍的人権の尊重が醸成される場であることを確保する義務、および、戦闘員による軍事的攻撃もしくは接収または徴募センターとしての利用から学校が保護されることを確保する義務を履行するよう促す。委員会は、締約国に対し、国際刑事裁判所ローマ規程第82条第2項(b)(ix)にしたがって学校への攻撃を戦争犯罪として犯罪化すること、ならびに、吹処罰を防止しかつこれと闘うことを促すものである。 36.委員会は、教育が周縁化された子どもも容易にアクセスできる真にインクルーシブなものであることを、締約国が確保するよう勧告する。このような子どもには、障害のある子ども、HIV/AIDSの影響を受けている子ども、難民および庇護希望者である子ども、国内避難民である子どもならびに乳幼児(乳幼児期発達教育プログラムを通じたアクセス)が含まれる。初等教育に留まらず、中等教育も、一般教育および職業教育ともに、子どもたちに対して利用可能とされるべきである。 37.委員会は、脆弱性および周縁化を悪化させる可能性がある緊急事態、人道援助および初期回復時の複雑なジェンダー力学によってジェンダーの平等がとりわけ課題となることを認め、締約国に対し、緊急事態の影響を受けたすべての男子および女子が安全、良質かつ妥当な教育に平等にアクセスできることを確保する目的で、ジェンダーの公正に配慮した政策およびプログラム介入を実施するよう促す。 38.委員会は、締約国、救援機関およびドナー・コミュニティに対し、その教育活動を調整しかつ責任の引き受けを促進する目的で、INEEの蓄積、とくに、緊急事態中に教育の提供に携わる可能性があるすべての主体に対して調和のとれた原則枠組みおよび行動方針を提示する「緊急事態、慢性的危機および初期復興における教育に関するINEE最低基準」(INEE最低基準) [5] を活用するよう勧奨する。委員会はまた、締約国、救援機関およびドナー・コミュニティに対し、常設委員会 [6] を支援するとともに、その蓄積ならびにIASC教育クラスタおよび(地元の人道団体および市民社会組織の能力構築を目的とした)「万人のための教育-ファスト・トラック・イニシアティブ移行基金」の蓄積を活用するようにも促すものである。委員会はまた、教育クラスタが、緊急事態下における教育ニーズを決定し、かつ調整のとれたやり方でこれに対応していくための適当な機構となるべきであるという、教育への権利に関する特別報告者の勧告 [7] をあらためて繰り返す。 [5] Report of the Special Rapporteur on the right to education, A/HRC/8/10, para.66. [6] 人道支援に関する常設委員会(Inter-Agency Standing Committee, IASC)は諸クラスタの主務機関をそれぞれ指定している。主務機関の任務は、特定の緊急事態に対応している国連機関および国連以外のパートナーの役割、責任および説明義務を明確にし、かつ受入れ国政府との意思疎通を合理化することである。(http //www.unicef.org/girlseducation/index_44882.html 参照) [7] Report of the Special Rapporteur on the right to education, A/HRC/8/10, para.84. 復興および緊急事態後 39.委員会は、締約国および他の関連の主体に対し、教育を和平協定および停戦協定の対象にするとともに、INEE最低基準を尊重する修了証明ならびに緊急事態中に受けた教育の認可および公的承認を付与することを通じて通常学校への円滑な移行を確保するよう、求める。 40.委員会は、受入れ国に対し、難民および庇護希望者である子どもが自己の言語で学ぶ権利および自己の文化について学ぶ権利を尊重するよう求める。委員会はさらに、国内避難の状況にあって避難民である子どもたちの言語が地元住民のそれと異なる場合、子どもたちの言語が考慮されなければならないことを強調するものである。 41.救援・復興機関ならびにドナーは、緊急事態下にある地域およびその周辺地域における教育の状況を考慮し、かつ、必要なときは、社会的緊張を防止する目的で、地元住民に対してもこの点に関わる援助を提供するよう促される。 III.緊急事態下において権利としての良質な教育を確保する義務:内容(第29条) 42.委員会は、社会的結束を高め、かつ紛争解決および平和構築を支える良質な教育の重要性を強調する。良質な教育はまた、国の脆弱性を緩和し得るとともに、社会の社会的、経済的および政治的安定を達成する役にも立ち得るものである。良質な教育は、誘拐、軍隊および(または)武装集団への子どもの徴募ならびに性的暴力およびジェンダーに基づく暴力を含む搾取および危害からの保護を提供することにより、生命を救うことにつながり得る。良質な教育はまた、衛生、地雷被害回避およびHIV/AIDS予防等の問題についての救命につながる情報を普及することにより、緊急事態を生き延びる知識およびスキルを提供することにもなる。 43.委員会は、一般的意見第1号で、条約に掲げられた教育の質、内容および価値観は平和な地域で生活している子どもにも関連するものの、「紛争または緊急事態の状況下で生活している子どもにとってはさらにいっそう重要となる」と述べていることを想起する。委員会は、教育の質については条約第29条1項が指針とされるべきであり、かつ、保護および救命の措置としての役割が果たされるようにするため、緊急事態下における教育に関して合意されたINEE最低基準が満たされなければならないことを強調するものである。 44.緊急事態下においては、良質な教育は子どもの具体的生活状況を反映するとともに、子ども中心であり、権利を基盤とし、保護の機能を果たし、適合させやすく、インクルーシブであり、かつ参加型のものであるべきである。 45.教育が憎悪を煽動してはならない。教育は、他者の権利の尊重および寛容を植えつけるものでなければならず、かつ、いかなる政治的または宗教的集団による偏見および一方的教化からも子どもを保護するものでなければならない。教育は、子どもの心理的または精神的状態に対応し、かつ、子どもが緊急事態、危険、脅威または操作的取り扱いに対処するのを援助しなければならない。教育は、子どもの文化、言語および伝統に対して敏感であるべきである。 46.学校から脱落した子どもたちのためのノンフォーマルまたはインフォーマルな教育(地域コミュニティの参加を通じて行なわれるものも含む)が支援および奨励されなければならない。委員会は、このような教育を、すでに公式の教育制度で学んでいない子どもたちの再編入を奨励する目的で、子どもたちのニーズに適合させるよう勧告する。 47.委員会は、子どもたちが良質な教育を受けることを確保するうえで教員が決定的に重要であることを想起する。最低基準を満たすため、教員は適切な訓練および監視の対象とされ、かつ必要な物資、支援および監督を受けなければならない。これとの関連で、教員が適切な報酬を受け取れるようにするための戦略がきわめて重要であり、担当公的機関が教員の雇用の効果的調整および監視を行なえない状況においてはこのことがとりわけ当てはまる。教員研修は、教員のスキルを向上させるとともに、緊急事態の最中に子どもたちを学校に留め、かつさらなるトラウマから保護する役割についての自信を備えさせる目的で、継続的プロセスとして実施されるべきである。 IV.子ども参加 48.委員会は、締約国その他の国際的パートナーが子ども参加を支援することによって、子どもたちが、自分たちが何を学ぶか(内容)およびどのように学ぶか(権利を基盤とした、子ども中心の積極的学習)に関して意見を表明できるようにし、かつ実際的意味を有する教育内容および積極的学習プロセスによってエンパワーされるようにすることを勧告する。委員会はさらに、子どもが学校から脱落しないようにするため、意見を聴かれる機会を子どもに与えるように勧告するものである。委員会は、よい学校とは子どもが敬意、活動、協力ならびに仲間、教員および親との関係を獲得できる学校であるという、ある子どもが表明した意見に賛同する。 49.委員会はさらに、子どもたちが、その親とともに、自分たちの状況および将来展望の分析への参加を奨励され、かつ参加できるようにされるべきことを勧告する。 50.委員会は、親と教員の組織、コミュニティ教育委員会およびこれに類するコミュニティの取り組みの創設および積極的関与を奨励する。 V.国際的援助および資金提供 51.締約国、国連機関、ドナーおよび救援機関は、教育を救援措置のひとつに採用し、かつそれを基礎救援援助の主要分野のひとつとして優先的に位置づけることによって、緊急事態下における子どもの教育への権利を確保するよう求められる。委員会は、すべての人道救援対応に当初から教育を含めることの決定的重要性をあらためて指摘するものである。 52.委員会は、締約国、国連機関、ドナーおよび救援機関に対し、緊急事態下における子どもの教育への権利を確保するため、人道救援対応のあらゆる段階でINEE最低基準が適用されることを確保するよう、あらためて促す。委員会はまた、〔人道支援に関する〕常設委員会に対する支援の重要性もあらためて指摘するものである。 53.委員会は、緊急事態下における子どもの教育への権利を全面的に実現するためには十分な人的資源および財源(国際協力によるものも含む)を配分することが重要であることを強調する。したがって委員会は、締約国、国連機関、ドナーおよび救援機関に対し、十分かつ継続的な資金を提供するとともに、緊急事態下における子どもの教育への権利を確保するための資金の獲得および適切な配分に関して国を援助するよう求めるものである。 VI.モニタリング 54.国レベル:すべての締約国は、この文書で概観した自国のコミットメントの実施を継続的にモニターするべきである。国際的レベル:国は、条約第44条の定めにしたがって条約の実施に関する報告を委員会に行なう際、これらの勧告の実施に向けて達成された進展も含めるべきである。 55.委員会はまた、締約国および国際的パートナーに対し、準備体制の向上を達成し、かつ緊急事態下における子どもの教育への権利の侵害の再発を回避する目的で、緊急事態が子どもの教育への権利に与える悪影響を最小限に留めることに関して得られた教訓を享有および普及するようにも奨励する。 56.委員会は、関連する場合には、条約および選択議定書の実施に関する締約国報告書に、INEE最低基準の実施に関する情報を含めることを勧告することも考慮する。 更新履歴:ページ作成(2011年4月24日)。
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/6079.html
autolink() SS/WE15-22 カード名:理屈と気持ち シャナ カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:8000 ソウル:1 特徴:《炎》?・《武器》? 【自】他のあなたの《炎》?のキャラがアタックした時、そのターン中、このカードのパワーを+1000。 ノーマル:私はこの今からでも、悠二と一緒に歩いて行ける! パラレル:絶対に拒まない! だから今すぐ私と行くって言いなさい!! レアリティ:C illust. 徐々に増えつつある、特定の特徴を持ったキャラのアタック時にパンプされるカード。 アタック順に制約が生まれるため並べすぎると効果を発揮しづらくなるが、コストを使わず単独でパワー10000に届くため使い勝手はいい。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/20.html
子どもの権利委員会・一般的意見10号:少年司法における子どもの権利(後編) 前編/中編 F.自由の剥奪(審判前の勾留および審判後の収容を含む) 78.条約第37条には、自由の剥奪の利用に関する主導的原則、自由を奪われたすべての子どもの手続的権利、ならびに、自由を奪われた子どもの取扱いおよび環境に関する規定が掲げられている。 基本原則 79.自由の剥奪の利用に関する主導的原則は次のとおりである。(a) 子どもの逮捕、拘禁または収監は、法律にしたがって行なうものとし、最後の手段として、かつもっとも短い適当な期間でのみ用いられる。(b) いかなる子どもも、不法にまたは恣意的にその自由を奪われない。 80.委員会は、多くの国で、子どもたちが数か月、またはそれどころか数年間、審判前の勾留による被害を受けていることに、懸念とともに留意する。これは条約第37条(b)の重大な違反である。自由の剥奪は最後の手段としてのみ用いるという、条約第37条(b)上の自国の義務を締約国が実現するためには、一連の実効的な代替的手段が利用可能とされなければならない(前掲IV章B参照)。これらの代替的手段の活用は、制裁対象となる子どもの「網を広げる」のではなく、審判前の勾留の利用も減らしていくことができるよう、注意深く構築されたものでなければならない。加えて、締約国は、審判前の勾留の利用を少なくするために十分な立法上その他の措置をとるべきである。処罰として審判前の勾留を利用することは、無罪推定原則の違反となる。とくに子どもの出廷を確保するために子どもを審判前の勾留下に置きまたは当該勾留を継続するべきか否か、および、子どもが自分自身または他の者にとって直ちに危険を及ぼすような状態であるか否かを判断するために必要な諸条件について、法律に明確な規定が置かれるべきである。審判前の勾留の期間は法律で制限し、かつ定期的再審査の対象とすることが求められる。 81.委員会は、子どもが可能なかぎり早期に、かつ必要な場合には一定の条件下で審判前の勾留から釈放され得ることを、締約国が確保するよう勧告する。審判前の勾留(その期間を含む)に関する決定は、権限ある、独立のかつ公正な機関または司法機関によって行なわれるべきであり、子どもに対しては弁護人その他の適切な者による援助が提供されるべきである。 手続的権利(第37条(d)) 82.自由を奪われたすべての子どもは、弁護人その他の者による適切な援助に速やかにアクセスする権利、ならびに、その自由の剥奪の合法性について裁判所または他の権限ある、独立のかつ公平な機関において争い、かつ当該訴えに対する迅速な決定を受ける権利を有する。 83.逮捕されて自由を奪われたすべての子どもは、当該自由剥奪(の継続)の合法性について審査するため、24時間以内に権限ある機関に引致されるべきである。委員会はまた、審判前の勾留の合法性が定期的に、望ましい頻度としては2週間ごとに再審査されることを、締約国が厳格な法規定によって確保するようにも勧告する。たとえば代替的措置を適用することによる子どもの条件付釈放が不可能な場合、当該子どもは、審判前の勾留が実行されてから30日以内に、罪を問われている犯罪について正式に告発され、かつ裁判所または他の権限ある、独立のかつ公平な機関の前に引致されるべきである。委員会は、裁判所による審理がしばしば複数回行なわれる慣行があることを踏まえ、締約国に対し、裁判所/少年裁判官または他の権限ある機関が、告発についての最終決定を、それが提出されてから6か月以内に行なうことを確保するために必要な法規定を導入するよう促す。 84.自由の剥奪の合法性について争う権利には、異議申立ての権利のみならず、自由の剥奪が(たとえば警察、検察官その他の権限ある機関による)行政決定である場合に、裁判所または他の権限ある、独立のかつ公正な機関もしくは司法機関にアクセスする権利も含まれる。迅速な決定を受ける権利とは、決定は可能なかぎり早期に、たとえば異議申立てが行なわれてから2週間以内に言い渡されなければならないことを意味する。 処遇および環境(第37条(c)) 85.自由を奪われたすべての子どもは、成人から分離されるものとされる。自由を奪われた子どもは、成人刑務所その他の成人用施設に措置されてはならない。成人刑務所に子どもを措置することがその基本的安全、福祉、および犯罪とは無縁の生活を維持しかつ再統合する将来の能力を損なうことについては、無数の証拠がある。成人から子どもを分離することに関する例外は、条約第37条(c)において「子どもの最善の利益にしたがえば成人から分離すべきではないと判断される場合を除き」という形で認められているが、この文言は狭義に解されるべきである。子どもの最善の利益は、締約国にとっての便宜を意味しない。締約国は、自由を奪われた子どもを対象とする独立の施設を設置するべきであり、これには明確に区別された子ども中心の職員、要員、政策および実務が含まれる。 86.このような規則があるからといって、子どもを対象とする施設に措置された子どもは、18歳を迎えるとただちに成人用施設に移送されなければならないというわけではない。子どもを対象とする施設に引き続き滞在することも、それがその子どもの最善の利益にかなっており、かつ施設にいる年少の子どもの最善の利益に反しない場合には、可能とされるべきである。 87.自由を奪われたすべての子どもは、通信および面会を通じて家族との接触を保つ権利を有する。面会の便宜を図るため、子どもは家族の居住地から可能なかぎり近い施設に措置されるべきである。このような接触の制限につながりうる例外的事情は、法律で明確に定められるべきであり、権限ある機関の裁量に委ねられるべきではない。 88.委員会は、国連総会が1990年12月14日の決議45/113で採択した、自由を奪われた少年の保護に関する国連指針に対して締約国が注意を向けるよう求める。委員会は、締約国に対し、関連するかぎりにおいて被収容者の処遇に関する最低基準規則も考慮に入れながら、これらの規則を全面的に実施するよう促すものである(北京規則の規則9も参照)。これとの関連で、委員会は、締約国がこれらの規則を国内法規に編入し、かつ、少年司法の運営に携わるすべての専門家、NGOおよびボランティアがその国または地域の言語でこれらの規則を利用できるようにするよう、勧告する。 89.委員会は、とくに、自由剥奪のあらゆる事案において次の原則および規則が遵守されなければならないことを強調したい。 子どもに対しては、居住型措置の目的である立ち直りに一致する物理的環境および居住設備が提供されるべきであるとともに、プライバシー、感覚刺激、仲間と交流する機会ならびにスポーツ、体操、芸術および余暇時間活動に参加する機会への子どものニーズに対して、正当な配慮がなされなければならない。 義務教育年齢にあるすべての子どもは、そのニーズおよび能力に適合し、かつ社会復帰の準備を目的とした教育に対する権利を有する。加えて、すべての子どもは、適当な場合には、将来の就業の備えになると思われる職種についての職業訓練を提供されるべきである。 すべての子どもは、拘禁/矯正施設への入所と同時に医師による診断を受ける権利を有し、かつ、施設に滞在する全期間を通じて十分な医療ケアを提供されなければならない。当該医療ケアは、可能な場合には、地域の保健施設および保健サービスによって提供されるべきである。 施設職員は、子どもがより幅広いコミュニティと接触することを促進し、かつそのための便宜を図るべきである。このような接触には、家族、友人その他の者または定評のある外部の団体の代表との連絡、ならびに、自宅および家族を訪問する機会が含まれる。 抑制または有形力は、子どもに自傷他害の直接のおそれがある場合にのみ、かつ、他のあらゆる統制手段が尽くされた場合にのみ、用いることができる。身体的、機械的および医学的抑制を含む抑制または有形力の使用は、医学および(または)心理学の専門家による緊密なかつ直接の管理下に置かれるべきである。処罰の手段として抑制または有形力を用いることがあってはならない。施設職員は適用される基準についての訓練を受けるべきであり、規則および基準に違反して抑制または有形力を用いた職員は適切な処罰の対象とされるべきである。 規律の維持のためのいかなる措置も、少年の固有の尊厳の支持および施設ケアの基本的目的に合致したものでなければならない。条約第37条に違反する規律の維持のための措置は、厳格に禁止されなければならない。このような措置には、体罰、暗室または閉鎖房への収容もしくは独居拘禁、または、対象とされる子どもの身体的または精神的健康もしくは福祉を害するおそれのある他のいずれかの処罰が含まれる。 すべての子どもに対し、内容について検閲を受けることなく、中央行政機関、司法機関または他の適当な独立機関に要望または苦情申立てを行ない、かつその返答について遅滞なく知らされる権利が認められるべきである。子どもは、これらの機構について知り、かつこれらの機構に容易にアクセスできる必要がある。 独立のかつ資格を有する査察官に対し、定期的に査察を行ない、かつ職権で事前通告なしの査察を行なう権限が与えられるべきである。査察官は、施設に措置されている子どもと、秘密が守られる環境下で話をすることをとくに重視するよう求められる。 V.少年司法の組織 90.これまでのパラグラフで述べてきた原則および権利の全面的実施を確保するためには、少年司法を運営するための実効的組織および包括的な少年司法制度の確立が必要である。条約第40条3項で述べられているように、締約国は、刑法に抵触した子どもに対して特別に適用される法律、手続、機関および施設の設置を促進しなければならない。 91.これらの法律および手続の基本的規定がどのようなものでなければならないかについては、この一般的意見で述べてきた。これ以上のおよびその他の規定については、締約国の裁量に委ねられる。これらの法律および手続の形式についても同様である。これらの法律および手続は、一般的な刑法および手続法に特別の章を置いて定めることもできるし、少年司法に関する独立の法律としてまとめることもできる。 92.包括的な少年司法制度においては、さらに、警察、司法機関、裁判制度、検察官事務所内に専門部署を設けること、ならびに、専門の弁護人または他の代理人が子どもに法的その他の適切な援助を提供することが必要とされる。 93.委員会は、締約国が、独立の部局としてまたは既存の地域/地区裁判所の一部としてのいずれであれ、少年裁判所を設置するよう勧告する。実際上の理由からこれがただちに実現可能でないときは、締約国は、少年司法事件を取り扱う専門の裁判官が任命されることを確保するべきである。 94.加えて、保護観察、カウンセリングまたは監督のような専門サービスが、たとえば通所型処遇センターならびに必要な場合には罪を犯した子どもの居住型ケアおよび処遇のための施設を含む専門施設とあわせて、設けられるべきである。このような少年司法制度においては、これらのあらゆる専門的な部局、サービスおよび施設による諸活動の効果的な調整を継続的に促進することが求められる。 95.非政府組織が、少年非行そのものの防止のみならず少年司法の運営においても重要な役割を果たすことができ、かつ現に果たしていることは、多くの締約国報告書から明らかである。したがって委員会は、締約国が、自国の包括的な少年司法政策の策定および実施においてこれらの組織の積極的関与を求めるとともに、これらの組織に対し、このような関与のために必要な資源を提供するよう勧告する。 VI.意識啓発および訓練 96.罪を犯した子どもはメディアで否定的な取り上げ方をされることが多く、これがこうした子どもたちに対する、かつしばしば子どもたち一般に対する、差別的および否定的なステレオタイプの形成を助長している。罪を犯した子どもを否定的に取り上げ、または犯罪者扱いすることは、しばしば少年非行の原因に関する誤った提示のしかたおよび(または)誤解にもとづいており、かつ、より厳しいアプローチ(たとえばゼロトレランス〔絶対的不寛容〕、3ストライク・アウト〔3度以上有罪と認定されれば例外なく収監刑〕、義務的量刑、成人裁判所における裁判および他の主として懲罰的性質の措置)を求める声に帰結するのが常である。少年非行の根本的原因およびこの社会問題に対する権利基盤アプローチに関して理解を深めるための積極的環境を創り出すことを目的として、締約国は、刑法に違反したと申し立てられている子どもに条約の精神および義務にしたがって対応する必要性および義務についての意識を高めるための教育的その他のキャンペーンを実施し、促進しかつ(または)支援するべきである。これとの関連で、締約国は、議会議員、NGOおよびメディアの積極的かつ前向きな関与を求めるとともに、刑法に抵触したことのあるまたは現に抵触している子どもに対する権利基盤アプローチについての理解の向上に関する、彼らの努力を支援することが求められる。子ども、とくに少年司法制度に関わった経験を有する子どもがこれらの意識啓発の努力に関与することは、不可欠である。 97.とくに法執行および司法機関に従事するあらゆる専門家が、条約の規定一般、とくにその日常業務に直接関わる規定の内容および意味について適切な訓練を受けることは、少年司法の運営の質にとってきわめて重要である。このような訓練は体系的かつ継続的に組織されるべきであり、関連する国内法および国際法の規定についての情報に限定されるべきではない。とくに、少年非行の社会的その他の原因、子どもの発達の心理的その他の側面(女子およびマイノリティまたは先住民族に属する子どもに対しては特別な注意を要する)、若者の世界の文化および傾向、集団活動の力学、ならびに、刑法に抵触した子どもを取り扱うために利用可能な措置、とくに司法手続によらない措置に関する情報(前掲IV章B参照)が含まれるべきである。 VII.データ収集、評価および調査研究 98.委員会は、とくに、子どもが行なった犯罪の件数および性質、審判前の勾留の利用件数および平均期間、司法手続以外の措置により取り扱われた(ダイバージョン)子どもの人数、有罪判決を受けた子どもの人数ならびにこれらの子どもに科された制裁の性質について、細分化された基礎的なデータさえ存在しないことを深く懸念する。委員会は、締約国に対し、少年司法の運営の実務に関する情報に関わるデータであって、条約の原則および規定に全面的にしたがいながら少年非行を効果的に防止しかつこれに対応することを目的とする政策およびプログラムの策定、実施および評価のために必要な細分化されたデータを、体系的に収集するよう促すものである。 99.委員会は、締約国が、少年非行の実務、とくにとられた措置(差別、再統合および累犯に関わるものを含む)についての定期的評価を実施するよう勧告する。これらの評価は、独立の学術機関によって行なわれることが望ましい。たとえば少年司法の運営における格差のうち差別に相当する可能性があるもの、および、効果的なダイバージョン・プログラムまたは新たに生じつつある少年非行活動のような少年非行分野における変遷に関する調査研究は、成功および懸念事項に関わる重要なポイントを指し示してくれよう。子ども、とくに少年司法制度のいずれかの局面に接したことのある子どもがこのような評価および調査研究に関与することは、重要である。これらの子どものプライバシーおよびその協力に関わる秘密は、全面的に尊重および保護されるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国が、調査研究への子どもの関与に関する既存の国際的指針を参照するよう求める。 更新履歴:ページ作成(2011年4月24日)。
https://w.atwiki.jp/kodomonomachi/pages/19.html
こどものまち(仙台) 「こどものまち」は、子ども未来フォーラムが2002年から継続して取り組んできました。仕事があそびで、あそびが仕事。「まち」には楽しい仕事=あそびがたくさんあります。働けばお給料がもらえます。お給料で買い物したり、ジュースを飲んだりできます。手づくり作品を持ってくれば、店長になってお店を開くことができま す。仕事= あそびを通じて、社会の仕組みを体験的に学ぶことができます。ひとりひとりが主役を演じる舞台になるでしょう。 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 子ども未来フォーラムは、「仙台市すこやか子育てプラン」の策定を受け1997年に活動が始まりました。仙台を拠点に、子どもに 向けた活動にかかわる大人たちがボランティアで集まり、仙台市と協同体制で実行委員会を組織し、10年間活動を継続してきました。11年目の2007度から、仙台市の負担金と事務局運営が 打ち切られたた め、活動は繰越金による自費運営となりました。 歴史 第1回 2002年10月26日・27日 せんだいメディアテーク 第2回 2003年10月18日・19日 せんだい演劇工房10BOX 第3回 2004年10月30日・31日 仙台市泉中央市民センター 第4回 2005年11月 5日・6日 せんだい演劇工房10BOX 第5回 2006年11月 5日 みどりの森幼稚園 第6回 2007年10月 7日 みどりの森幼稚園 第7回 2008年10月12日 みどりの森幼稚園 仕事ブース 当市のこどものまちの仕事ブースは●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という特徴を持つ。 例年用意される、または少数回でも特徴的に設置された仕事ブースは、次の通り。 市役所(管理局、観光局、フォーラム局)、 民芸品 炭火亭 宝くじや、 棋院 あそび神社 大地建設、 スクリーム研究所 ハッピーラッキーだじゃれ道場、 ケーキハウス アトリエ・フェルティ、 店長デビュー(手づくり作品を持ち込み自分の店をつくる) 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像ファイル名または画像URL) imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像ファイル名または画像URL) imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像ファイル名または画像URL) ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 〒 仙台市立町マイスクール児童館内 担当:永浜Tel 090-2997-4651(9月~11月ころのみ) kodomomirai@helen.ocn.ne.jp 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 こどものまち(仙台)2008年のイメージ写真 ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/34.html
欧州評議会・性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約(2) CoE 子どもの性的搾取・虐待条約(1)より続く 第7章-捜査、訴追および手続法 第30条-原則 1.各締約国は、捜査および刑事手続が子どもの最善の利益にしたがってかつ子どもの権利を尊重しながら進められることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 2.各締約国は、被害者に対する保護的アプローチをとるものとし、捜査および刑事手続によって子どもが経験したトラウマの悪化が生じないこと、および、適当な場合には刑事司法上の対応の後に援助が提供されることを確保する。 3.各締約国は、捜査および刑事手続が優先的に扱われ、かついかなる不当な遅延もなく進められることを確保する。 4.各締約国は、人権および基本的自由の保護に関する条約第6条に一致する形で、この章に基づいて適用される措置により被告人の権利および公正かつ公平な裁判の要件が害されないことを確保する。 5.各締約国は、国内法の基本的原則に一致する形で、次の目的のために必要な立法上その他の措置をとる。 適当な場合には秘密活動も可能とすることにより、この条約にしたがって定められた犯罪の効果的捜査および訴追を確保すること。 とくに、情報通信技術を通じて転送されたまたは利用可能とされた写真および視聴覚記録のような児童ポルノ資料を分析することにより、捜査班または捜査機関が、第20条にしたがって定められた犯罪の被害者を特定できるようにすること。 第31条-一般的保護措置 1.各締約国は、とくに次の対応をとることにより、捜査および刑事手続のあらゆる段階で被害者の権利および利益(証人としての特別なニーズも含む)を保護するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.被害者に対し、被害者の権利および被害者が利用可能なサービスに関する情報を提供するとともに、被害者が当該情報を受け取ることを希望しない場合を除き、被害者の申立てに対するフォローアップの状況、告訴の罪状、捜査または手続の一般的進展状況および当該捜査または手続における被害者の役割、ならびに、事件の結果に関する情報を提供すること。 b.少なくとも被害者およびその家族が危険な状況に置かれる可能性がある事件において、当該被害者等が、必要なときは、訴追されまたは有罪判決を受けた者が一時的にまたは最終的に釈放される時期について情報を得られることを確保すること。 c.被害者が、国内法の手続規則に一致する方法で、意見を聴かれ、証拠を提出し、かつ、その意見、ニーズおよび関心事が直接または仲介者を通じて表明および考慮されるための手段を選択できるようにすること。 d.被害者に対し、その権利および利益が適正に提示および考慮されるようにするための適切な支援サービスを提供すること。 e.被害者のプライバシー、素性および肖像を保護し、かつ、国内法にしたがって、被害者の素性の特定につながるいかなる情報も公に流布されることがないようにするための措置をとること。 f.脅迫、報復および被害の再発からの、被害者の安全ならびにその家族および被害者側証人の安全を確保できるようにすること。 g.裁判所および法執行機関の施設内で被害者および加害者が接触しないことを確保すること。ただし、権限ある公的機関が子どもの最善の利益にしたがって別段の決定を行なうときまたは捜査もしくは手続のために当該接触が必要とされるときは、このかぎりでない。 2.各締約国は、被害者が、権限ある公的機関と最初に接触したときから、関連に司法上および行政上の手続に関する情報にアクセスできることを確保する。 3.各締約国は、被害者が刑事手続の当事者としての地位を得る可能性があるときは、当該被害者が、正当な理由があるときは無償で、法律扶助にアクセスできることを確保する。 4.各締約国は、国内法によって被害者が刑事手続の当事者としての地位を得る可能性がある場合であって、親としての責任を有する者が、被害者との利益相反の結果、当該手続において子どもの代理人を務めることができないときは、司法機関が被害者の特別代理人を任命できるようにする。 5.各締約国は、立法上その他の措置により、国内法で定められた条件にしたがって、グループ、財団、団体、政府機関または非政府組織が、この条約にしたがって定められた犯罪に関わる刑事手続の間、被害者を、当該被害者の同意を得て援助しかつ(または)支援できるようにする。 6.各締約国は、この条の規定にしたがって被害者に与えられる情報が、当該被害者の年齢および成熟度に適合する方法で、かつ当該被害者が理解できる言語で提供されることを確保する。 第32条-手続の開始 各締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪の捜査または訴追について被害者による申告または告発が要件とされないこと、および、たとえ被害者がその陳述を撤回しても手続の継続が可能であることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第33条-時効 各締約国は、第18条、第19条第1項aおよびbならびに第21条第1項aおよびbにしたがって定められた犯罪に関わる手続開始の時効が、被害者が成年に達した後に有効に手続を開始することを可能にするのに十分な、かつ当該犯罪の重大さに相応する期間完成しないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第34条-捜査 1.各締約国は、捜査を担当する者、部署または機関が子どもの性的搾取および性的虐待との闘いの分野を専門とすることまたは担当者がこの目的のために訓練を受けることを確保するため、必要と考えられる措置をとる。当該部署または機関は、十分な資源を有するものとする。 2.各締約国は、被害者の実年齢が確定されないことを理由に刑事捜査の開始が妨げられないことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第35条-子どもの事情聴取 1.各締約国は、次のことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.子どもの事情聴取が、事実が権限ある公的機関に報告された後、不当に遅延することなく行なわれること。 b.必要なときは、子どもの事情聴取が、この目的のために設計されまたは改装された施設で行なわれること。 c.子どもの事情聴取が、この目的のために訓練を受けた専門家によって行なわれること。 d.可能でありかつ適当なときは、同一の者が子どものすべての事情聴取を行なうこと。 e.事情聴取の回数が、可能なかぎり、かつ刑事手続の目的のために真に必要とされる限度に抑えられること。 f.子どもの法定代理人または適当な場合には子どもが選択する成人の付き添いが認められること。ただし、理由のある決定により当該人物の付き添いが却下されたときはこのかぎりでない。 2.各締約国は、国内法で定められた規則にしたがい、被害者のすべての事情聴取または適当なときは子どもである証人の事情聴取をビデオに録画することができること、および、ビデオに録画されたこれらの事情聴取が裁判手続において証拠として認められることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 3.被害者の年齢が確定されておらず、かつ被害者が子どもであると考える理由があるときは、被害者の年齢の確認を待たず、1および2で定められた措置が適用される。 第36条-刑事裁判手続 1.各締約国は、子どもの権利ならびに子どもの性的搾取および性的虐待に関する訓練が、手続に関与するすべての者、とくに裁判官、検察官および弁護士のために利用可能とされることを確保するため、法曹の自律性に関する規則を正当に尊重しながら、必要な立法上その他の措置をとる。 2.各締約国は、国内法で定められた規則にしたがって次のことを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.裁判官が、公衆の出席を認めずに審理を行なう旨、命令できること。 b.とくに適当な通信技術を用いることを通じ、法廷における被害者の聴聞を、被害者が出廷せずに行なえること。 第8章-データの記録および保管 第37条-有罪判決を受けた性犯罪者に関する国内データの記録および保存 1.この条約にしたがって定められた犯罪の防止および訴追を目的として、各締約国は、国内法で定められた個人データの保護に関する関連規定ならびに他の適切な規則および保障にしたがい、この条約にしたがって定められた犯罪について有罪判決を受けた者の素性および遺伝的プロファイル(DNA)に関わる情報を収集しおよび保存するため、必要な立法上その他の措置をとる。 2.各締約国は、署名時または批准書、受託書、承認諸もしくは加入書の寄託時に、欧州評議会事務総長に対し、1の目的を担当する単一の国内公的機関の名称および住所を通告する。 3.各締約国は、1の情報を、国内法および関連の国際文書に定められた条件に一致する形で、他の締約国の権限ある公的機関に転送できることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第9章-国際協力 第38条-国際協力のための一般的原則および措置 1.締約国は、この条約の規定にしたがって、かつ適用可能な関連の国際文書および地域文書、統一法または互恵法を基礎とする取決めならびに国内法の適用を通じて、次の目的のため、可能なかぎり最大限に相互協力を行なう。 a.子どもの性的搾取および性的虐待の防止ならびにこれとの闘い。 b.被害者の保護および被害者への援助の提供。 c.この条約にしたがって定められた犯罪に関わる捜査または手続。 2.各締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪の被害者であって居住国以外の締約国の領域内で当該犯罪の被害を受けた者が、その居住国の権限ある機関に申告を行なえることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 3.条約がなければ刑事共助または犯罪人引渡しを行なうことはできない旨の条件を設けている締約国が、そのような条約を締結していない締約国から法律上の援助または犯罪人引渡しの要請を受けたときは、当該締約国は、この条約を、この条約にしたがって定められた犯罪に関わる刑事共助または犯罪人引渡しの根拠と見なすことができる。 4.各締約国は、適当なときは、子どもの性的搾取および性的虐待の防止ならびにこれとの闘いを、第三国のために提供される開発援助プログラムに統合するよう努める。 第10章-監視機構 第39条-締約国委員会 1.締約国委員会は、この条約の締約国の代表をもって構成する。 2.締約国委員会は、欧州評議会事務総長がこれを招集する。その第1回会合は、条約を批准した第10番目の加盟国についてこの条約が発効した後、1年以内に開催する。その後は、締約国の3分の1以上または事務総長の要請があるときはいつでも会合を行なう。 3.締約国委員会は、独自の手続規則を採択する。 第40条-その他の代表 1.欧州評議会議員会議、人権コミッショナー、欧州犯罪問題委員会(CDPC)および欧州評議会の他の関連の政府間委員会はそれぞれ、締約国委員会に出席する代表を任命する。 2.閣僚委員会は、欧州評議会の他の機関に対し、締約国委員会との協議の上、当該委員会に出席する代表を任命するよう慫慂することができる。 3.市民社会およびとくに非政府組織の代表は、欧州評議会の関連規則によって定められた手続にしたがい、締約国委員会にオブザーバーとして出席することを認められることができる。 4.1から3の規定にしたがって任命された代表は、締約国委員会の会合に参加する際、投票権を有しない。 第41条-締約国委員会の職務 1.締約国委員会は、この条約の実施を監視する。この条約の実施を評価するための手続は、締約国委員会の手続規則によって決定する。 2.締約国委員会は、子どもの性的搾取および性的虐待を防止しかつこれと闘う諸国家の能力を向上させるため、諸国家間における情報、経験および望ましい実践の収集、分析および交換を促進する。 3.締約国委員会はまた、適当なときは次のことも行なう。 a.この条約の効果的活用および実施を促進すること(いずれかの問題、および、この条約に基づいて行なわれたいずれかの宣言または留保の影響を明らかにすることも含む)。 b.この条約の適用に関わるいずれかの問題について意見を表明し、かつ、重要な法的、政策的または技術的発展に関する情報交換を促進すること。 4.締約国委員会は、この条にしたがって職務を遂行するにあたり、欧州評議会事務局の援助を受ける。 5.欧州犯罪問題委員会(CDPC)は、この条の1、2および3に掲げられた活動について定期的に情報の提供を受ける。 第11章-他の国際文書との関係 第42条-国際連合の子どもの権利に関する条約ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する同条約の選択議定書との関係 この条約は、国際連合の子どもの権利に関する条約ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する同条約の選択議定書の規定から生ずる権利および義務に影響を及ぼすものではない。この条約は、同条約および同議定書によって与えられる保護を増進させ、ならびに、そこに掲げられた基準を発展させかつ補完することを意図するものである。 第43条-その他の国際文書との関係 1.この条約は、この条約の締約国が現に締約国であるまたは締約国になるものとされる他の国際文書であって、この条約が規律する事柄についての規定を含んでおり、かつ性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもに対していっそうの保護および援助を確保するものの規定から生ずる権利および義務に影響を及ぼすものではない。 2.この条約の締約国は、この条約の規定を補足しもしくは強化しまたはこの条約に掲げられた原則の適用を促進する目的で、この条約で扱われている事柄について相互に二国間または多国間協定を締結することができる。 3.欧州連合の加盟国である締約国は、関係する特定の主題を規律しかつ特定の事案に適用可能な共同体もしくは欧州連合の規則が存在するときは、欧州連合加盟国間の相互関係において、共同体および欧州連合の規則を適用する。ただし、当該適用がこの条約の趣旨および目的を害せず、かつ他の締約国へのこの条約の全面的適用を妨げないことを条件とする。 第12章-条約改正 第44条-改正 1.締約国がこの条約について行なったいかなる改正の提案も、欧州評議会事務総長に送付され、事務総長により、欧州評議会加盟国、すべての署名国、すべての締約国、欧州共同体、第45条第1項の規定にしたがってこの条約への署名を慫慂されたすべての国および第46条第1項の規定にしたがってこの条約への加入を慫慂されたすべての国に送付される。 2.締約国が提案したいかなる改正案も欧州犯罪問題委員会(CDPC)に通告され、同委員会は、閣僚委員会に対し、当該改正案についての意見を提出する。 3.閣僚委員会は、当該改正案およびCDPCから提出された意見を検討するものとし、加盟国以外のこの条約の締約国と協議した後、当該改正を採択することができる。 4.この条の3の規定にしたがって閣僚委員会が採択した改正文は、受託のため、締約国に送付される。 5.この条の3の規定にしたがって採択されたいかなる改正も、すべての締約国が改正の受託を事務総長に通告した日の後1か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第13章-最終条項 第45条-署名および発効 1.この条約は、欧州評議会加盟国、制定に参加した非加盟国および欧州共同体による署名のために開放しておく。 2.この条約は、批准、加入または承認されなければならない。批准書、加入書または承認書は、欧州評議会事務総長に寄託する。 3.この条約は、少なくとも3か国の欧州評議会加盟国を含む5か国が、前項の規定にしたがって条約に拘束されることへの同意を表明した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 4.1に掲げられたいずれかの国または欧州共同体が、その後、条約に拘束されることへの同意を表明したときは、条約は、当該国または欧州共同体について、その批准書、加入書または承認書が寄託された日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第46条-条約への加入 1.この条約の発効後、欧州評議会閣僚委員会は、この条約の締約国との協議を行ないかつその全会一致の同意を得た後、欧州評議会の非加盟国であって条約の制定に参加しなかったいかなる国に対しても、欧州評議会規程第20条dに定められた過半数による決定をもって、かつ閣僚評議会に出席する資格を有する締約国の代表の全会一致の投票をもって、この条約に加入するよう慫慂することができる。 2.条約は、加入したいかなる国についても、欧州評議会事務総長に加入書が寄託された日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第47条-領域的適用 1.いかなる国も、署名時または批准書、受託書、承認書もしくは加入書の寄託時に、この条約が適用される単一のまたは複数の領域を特定することができる。 2.いかなる国も、その後のいかなる時点においても、欧州評議会事務総長に宛てた宣言によって、当該宣言で特定され、かつ国際的関係について自国が責任を負っているまたは自国が代わって保証を行なうことが認められている他のいかなる領域に対しても、この条約の適用範囲を拡大することができる。当該領域については、条約は、事務総長が当該宣言を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 3.1および2の規定に基づいて行なわれたいかなる宣言も、当該宣言で特定されたいかなる領域についても、事務総長に宛てた通告によって撤回することができる。撤回は、事務総長が当該通告を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第48条-留保 この条約のいかなる規定についても、留保を行なうことはできない。ただし、留保の例外が明示的に定められているときはこのかぎりでない。いかなる留保も、いずれの時点においても撤回することができる。 第49条-廃棄 1.いかなる締約国も、欧州評議会事務総長に宛てた通告を行なうことによって、いつでもこの条約を廃棄することができる。 2.当該廃棄は、事務総長が通告を受領した日の後3か月が経過した月の1日に効力を生ずる。 第50条-通告 欧州評議会事務総長は、欧州評議会加盟国、すべての署名国、すべての締約国、欧州共同体、第45条の規定にしたがってこの条約への署名を慫慂されたすべての国および第46条の規定にしたがってこの条約への加入を慫慂されたすべての国に対し、次の事項を通告する。 a.すべての署名。 b.すべての批准書、受託書、承認書または加入書の寄託。 c.第45条および第46条にしたがってこの条約が効力を生ずるすべての日付。 d.第44条にしたがって採択されたすべての改正および当該改正が効力を生ずる日付。 e.第48条に基づいて行なわれたすべての留保。 f.第49条の規定にしたがって行なわれたすべての廃棄。 g.この条約に関わる他のいずれかの行為、通告または連絡。 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。 本日2007年10月25日、英語およびフランス語により、両者をひとしく正文として、1つの文書としてランサローテにて採択。当該文書は、欧州評議会公文書保管所に寄託される。欧州評議会事務総長は、欧州評議会の各加盟国、この条約の制定に参加した非加盟国、欧州共同体およびこの条約への加入を慫慂されたすべての国に対し、認証謄本を送付する。 更新履歴:ページ作成(2011年7月28日)。/第33条(時効)で、時効の「消滅」としていた箇所を「完成」に修正(2024年6月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/317.html
一般的意見21(2017年):路上の状況にある子ども 一般的意見一覧 CRC/C/GC/21 配布:一般(2017年6月21日) 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) I.はじめに:「いままでと違う語り方」 II.全般的文脈 III.目的 IV.子どもの権利アプローチに基づくホリスティックな長期的戦略 V.路上の状況にある子どもに関連する条約の主要な規定 VI.普及および協力 I.はじめに:「いままでと違う語り方」 1.この一般的意見のための協議に応じてくれた路上の状況にある子どもたちは、尊重、尊厳および権利に対するニーズについて力強く口にした。自分たちの気持ちを表現するにあたり、子どもたちはとくに次のように語っている。「人間として尊重してください」「路上で暮らしたことが一度もない人たちに、私たちは普通の人たちのようにプライドのある人間なんだとわかってほしい」「僕たちを路上から追い立ててシェルターに入れればいいという話じゃない。地位を認めてくれという話なんです」「政府は、私たちが路上にいるべきではないと言うべきじゃない。路上にいてもいやがらせをするべきじゃない。私たちは受け入れられるべきなんです」「路上で暮らしているからといって、私たちが権利を持てないということにはなりません」「路上に出れば、影響が残る。そこから立ち去ろうと、そうでなかろうと」「助け、慈善、憐れみはほしくない。政府は、コミュニティと協働して僕たちに権利を与えるべきです。僕たちは慈善を求めているんじゃない。自分でやっていける人間になりたいんです」「(人々は)僕たちに、夢をかなえるために才能を活用するチャンスを与えてくれるべきです」「いままでと違う語り方をする機会をください」[1] [1] 引用した子どもたちの声はいずれも、この一般的意見のための協議で出されたものまたは提出された意見書に掲載されていたものである。それぞれ、バングラデシュの子どもたち(ダッカから提出された意見書)、ラテンアメリカの子どもたち(メキシコにおける協議)、ブラジルの15歳男子、インドの18歳男子・女子、コンゴ民主共和国の子ども・若者たち、ヨーロッパの子ども・若者たち(ブリュッセルにおける協議)、パキスタンの16歳男子、ブルンジの男子、ブラジルの18歳男子の声。 II.全般的文脈 趣旨 2.この一般的意見で、子どもの権利委員会は、路上の状況にある子どもに関する包括的かつ長期的な国家的戦略(ホリスティックな子どもの権利アプローチを活用し、かつ子どもの権利条約にのっとって防止および対応の両方を取り上げるもの)の策定についての有権的指針を提示する。条約はこれらの子どもに明示的に言及していないものの、条約のすべての規定は、条約の大部分の条項の違反を経験している、路上の状況にある子どもにも適用されるものである。 協議 3.7回の地域協議で、32か国の子ども・若者たち計327名が協議の対象とされた。市民社会を代表する人々が意見書提出の一般的呼びかけに応じてくれたほか、先行版草案は全締約国と共有された。 用語 4.これまで、路上の状況にある子どもを表すための用語として「ストリートチルドレン」(street children)、「路上にいる子ども」(children on the street)、「路上の子ども」(children of the street)、「家出した子ども」(runaway children)、「放逐された子ども」(throwaway children)、「路上で生活しかつ/または働いている子ども」(children living and/or working on the street)、「ホームレスの子ども」(homeless children)、「路上とつながっている子ども」(street-connected children)等が用いられてきた。この一般的意見では「路上の状況にある子ども」(children in street situations)を用い、(a) ひとりでいるか仲間または家族と一緒にいるかを問わず、路上に依存して生活しかつ/または働いている子ども、および、(b) より幅広い層の子どもであって、公共空間と強いつながりを形成しており、かつその日常生活およびアイデンティティにおいて路上がきわめて重要な役割を果たしている子どもを包含するものとする。このより幅広い層には、常時ではないものの周期的に路上で生活しかつ/または働いている子ども、および、路上で生活しまたは働いているわけではないものの、仲間、きょうだいまたは家族に同行する形で定期的に路上に出ていく子どもが含まれる。路上の状況にある子どもに関わって、「公共空間にいる」(being in public spaces)とは、路上または露店市場、公園、公共のコミュニティ空間、広場ならびにバスおよび鉄道の駅で相当の時間を過ごすことも含むものとして理解される。学校、病院またはこれに類する施設のような公共建築物は含まない。 主要な所見 5.路上の状況にある子どもとの関連では複数の異なるアプローチが用いられており、時にはそれらが組み合わされている。これには、子どもの権利アプローチ(子どもが権利の保有者として尊重され、かつ決定がしばしば子どもとともに行なわれるもの)、福祉アプローチ(子どもを客体または被害者として捉えて路上からの「救出」が図られ、かつ子どものための決定がその意見を真剣に考慮することなく行なわれるもの)および抑圧アプローチ(子どもが非行少年と捉えられるもの)等がある。福祉アプローチおよび抑圧アプローチは子どもが権利の保有者であることを考慮しておらず、かつ子どもを路上から強制的に排除することにつながるので、その権利をさらに侵害することになる。実際のところ、福祉アプローチおよび抑圧アプローチが子どもの最善の利益にかなうと主張しても、それが権利を基盤とするアプローチになるわけではない [2]。条約を適用するためには子どもの権利アプローチを用いることが不可欠である。 [2] 一般的意見13号(あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利、2011年)、パラ59および一般的意見14号(自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利、2013年)参照。 6.路上の状況にある子どもは均質な集団ではない。とくに年齢、性別、民族、先住民族としてのアイデンティティ、国籍、障害、性的指向およびジェンダーアイデンティティ/ジェンダー表現という観点からの特質は多様である。このような多様性は、さまざまな経験、リスクおよびニーズがあることを含意する。物理的にどのようにおよびどのぐらいの時間路上にいるかは子どもによって相当に異なっており、仲間、家族構成員、コミュニティの構成員、市民社会関係者および公的機関との関係の性質および規模も同様である。子どもたちの人間関係は、路上で生き抜くうえで役に立つ場合もあれば、その権利が暴力的に侵害される状況の固定化につながる場合もある。子どもたちは、公共空間において、仕事、社会化、レクリエーション/余暇、寝泊まりする場所の確保、睡眠、調理、洗濯および有害物質濫用または性的活動を含むさまざまな活動に従事している。子どもたちは、このような活動に自発的に従事することもあれば、現実的な選択肢がないために、または他の子どももしくは大人による威迫または強制を通じて、従事することもある。子どもたちは、このような活動を単独で行なうこともあれば、家族構成員 [3]、友人、知り合い、ギャングの構成員または子どもを食い物にしようとする仲間、年長の子どもおよび/もしくは大人とともに行なうこともある。 [3] 家族とともに路上の状況にある子どもについて、この一般的意見では主たる権利の保有者である子どもに焦点を当てる。路上の状況にある子どもが自分自身の子どもを持っている場合、各世代の子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。 7.データが体系的に収集されまたは細分化されていないことが多いため、何人の子どもが路上の状況にあるのかはわかっていない。推定数は、社会経済的、政治的、文化的その他の諸条件を反映した、用いられる定義によって変動する。データが存在しないためにこれらの子どもは不可視化されており、そのために政策が策定されず、または場当たり的な、一時的なもしくは短期的な措置しかとられない状況が生じている。その結果、子どもを路上に追いやり、かつ子どもが路上にいるときにも継続する複合的な権利侵害が根強く残ってしまう。この問題はすべての国に関わるものである。 8.子どもが路上の状況に置かれる現象の原因および広がりならびにこのような子どもの経験は、国の内部でも国によっても異なる。経済的地位、人種およびジェンダーに基づく不平等は、路上の状況にある子どもの出現および排除の構造的原因のひとつである。このような不平等は、物質的貧困、社会的保護の不十分さ、対象等が明確化されていない投資、腐敗、および、より貧しい人々が貧困から脱出する能力の弱体化または消失につながる財政(税・支出)政策によって悪化させられる。紛争、飢饉、伝染病の流行、自然災害もしくは強制立退きによって引き起こされる突然の不安定化、または避難もしくは強制移住につながる出来事により、構造的原因の影響がさらに加重される。その他の原因として挙げられるのは、家庭またはケアもしくは教育のための施設(宗教的施設を含む)における暴力、虐待、搾取およびネグレクト、養育者の死亡、子どもの遺棄(HIV/AIDSによるものを含む)[4]、養育者の失業、不安定な家庭状況、家庭の崩壊、複婚 [5]、教育からの排除、(子どもまたは家族の)有害物質濫用および精神的疾患、不寛容および差別(障害のある子ども、魔術を行なう者であると非難されている子ども、家族から拒絶された元子ども兵士、および、自己のセクシュアリティについて疑問を持ちまたはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスもしくはエイセクシュアル(無性愛)であると自認したために家族から追放された子どもに対するものを含む)、ならびに、児童婚および女性性器切除のような有害慣行 [6] に対する子どもの抵抗を受け入れられない家族の姿勢等がある。 [4] 一般的意見3号(HIV/AIDSと子どもの権利、2003年)、パラ7参照。 [5] 女性差別撤廃委員会の合同一般的勧告31号/子どもの権利委員会の合同一般的意見18号(有害慣行、2014年)、パラ25-28参照。 [6] 前掲パラ19-24。 III.目的 9.この一般的意見の目的は次のとおりである。 (a) 路上の状況にある子どものための戦略および取り組みに子どもの権利アプローチを適用するにあたって国が負う義務を明らかにすること。 (b) 子どもが権利侵害、および、生存および発達のために路上に依存しなければならない状態につながる選択肢の欠如を経験しなくてもすむようにし、かつ、すでに路上の状況にある子どもの権利を、一連のケアを確保しかつ子どもが自己の可能性を全面的に発達させられるよう援助しながら促進しかつ保護することを目的として、ホリスティックな子どもの権利アプローチを活用することに関する、国に対する包括的かつ有権的な指針を提示すること。 (c) 路上の状況にある子どもが権利の保有者および完全な市民として尊重されることを増進させるため、これらの子どもにとって条約の特定の条項がどのような意味を持っているのかを明らかにするとともに、子どもが有している路上とのつながりに関する理解を増進させること。 IV.子どもの権利アプローチに基づくホリスティックな長期的戦略 A.子どもの権利アプローチ 説明 10.子どもの権利アプローチにおいては、子どもの権利を実現するプロセスが最終的成果と同じぐらい重要になる。子どもの権利アプローチは、権利の保有者としての子どもの尊厳、生命、生存、ウェルビーイング、健康、発達、参加および差別禁止を確保するものである。 11.国連児童基金(UNICEF)によれば [7]、子どもの権利アプローチとは次のようなものである。 (a) 条約その他の国際人権文書で確立された子どもの権利の実現をさらに進める。 (b) 振舞い、行動、政策およびプログラムの指針として、条約その他の国際人権文書に定められた子どもの権利に関する基準および原則(とくに差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利、意見を聴かれかつ真剣に考慮される権利、ならびに、自己の権利の行使にあたり、子どもの発達しつつある能力にしたがって養育者、親およびコミュニティの構成員による指導を受ける子どもの権利)を活用する。 (c) 子どもが権利の保有者として自己の権利を主張する能力、および、義務の保有者が子どもに対して負っている自己の義務を履行する能力を構築する。 [7] UNICEF, Child Rights Education Toolkit Rooting Child Rights in Early Childhood Education, Primary and Secondary Schools (Geneva, 2014), p. 21 参照(https //www.unicef.org/crc/files/UNICEF_CRE_Toolkit_FINAL_web_version170414.pdf より入手可)。一般的意見13号、パラ59も参照。また、"Human Rights Based Approach to Development Cooperation" も参照(http //hrbaportal.org/the-human-rights-based-approach-to-development-cooperation-towards-a-common-understanding-among-un-agencies より入手可)。 路上の状況にある子どもにとっての重要性 12.委員会は、子どもの権利アプローチを採用する戦略および取り組みにおいては、段階または文脈にかかわらず、望ましい実践に関する主要な基準が充足されるものであると考える。路上の状況にある子どもは、自分たちの生活に対する大人の介入に不信感を抱いていることが多い。これらの子どもは、社会で大人から人権侵害的取扱いを受けてきたせいで、たとえ限られたものとはいえやっとのことで勝ちとった自律を放棄することにためらいを覚えるようになっている。この〔子どもの権利〕アプローチが重視するのは、これらの子どもが路上への依存に代わる手段を見出せるよう支援することを含む、子どもの自律の全面的尊重である。そこではこれらの子どものレジリエンスおよび対処能力が促進され、意思決定における主体性の強化と、社会経済的、政治的および文化的主体としてのエンパワーメントが図られる。このアプローチは、このような子どもがすでに有している強みと、自分自身の生存および発達ならびに仲間、家族およびコミュニティの生存および発達に対する積極的貢献に立脚するものである。このようなアプローチを適用することは、道徳的および法的要請であるのみならず、長期的な解決策を路上の状況にある子どもたちとともに特定しかつ実施していくための、もっとも持続可能なアプローチでもある。 B.国家的戦略 概要 13.条約上の義務を遵守するため、国は、路上の状況にある子どものためのホリスティックかつ長期的な戦略を採択し、かつ必要な予算配分を行なうよう促される。以下、諸分野を横断する問題およびプロセスを掲げた後、このような戦略で取り上げられるべきテーマ別の内容を扱う。路上の状況にある子どもたちが、自分たち自身の生活に関する専門家として、戦略の策定および実施に参加するよう求められる。国にとっての第一歩は、これらの子どもの権利を擁護する最善の方法を決定する目的で、自国にいるこれらの子どもに関する情報を収集することである。国は、ある分野(たとえば財政分野)の政策が他の分野(たとえば教育分野)にどのような影響を及ぼし、ひいては路上の状況にある子どもたちにどのような影響が生じるかを理解するため、分野横断的アプローチをとるよう求められる。国は、部門横断的な協力および国家間の協力を奨励するべきである。 立法および政策の見直し 14.国は、この一般的意見の勧告を反映させる目的で法律および政策をどのように改善できるかについて、評価を行なうべきである。国は、即時的効果をともなう対応として、子どもまたはその親もしくは家族が路上の状況にあることを理由として直接間接の差別を行なっている規定を削除し、子どもおよびその家族を路上または公共空間から一斉にまたは恣意的に退去させることを認めまたは支持するいかなる規定も廃止し、路上の状況にある子どもを犯罪者として扱いかつこれらの子どもに不均衡な影響を及ぼす罪名(物乞い、夜間外出禁止規定違反、徘徊、浮浪および家出等)を適宜廃止し、かつ、商業的性的搾取の被害者であることを理由に子どもを犯罪者として扱う罪名およびいわゆる道徳犯罪(婚姻外の性交渉等)を廃止するよう求められる。国は、子どもの権利アプローチに基づき、かつ路上の状況にある子どもについて具体的に取り上げる子ども保護法または子ども法を導入しまたは見直すべきである。このような法律は、権限付与のための政策、委任命令、運用手続、指針、サービス提供、監督および執行機構によって実施されるべきであり、またその制定にあたっては主要な関係者(路上の状況にある子どもたちを含む)と連携することが求められる。国として、法的権限を委ねられた専門家およびサービス機関による支援介入を容易にするために必要な状況下において、参加型調査に基づき、国内的関連性を有する政策およびこのような子どもの法的定義を定めなければならない場合もありえよう。ただし、法的定義を定める手続によって、権利侵害に対処するための行動が遅延させられるべきではない。 国の役割ならびに国以外の主体の責任、規制および調整 15.路上の状況にある子どものための戦略では、国および国以外の主体が認知されるべきである。第一次的義務を負う国の役割については後継Vで述べる。国は、親または養育者が、その能力および資力の範囲内でかつ子どもの発達しつつある能力を尊重しながら、子どもの最適な発達のために必要な生活条件を確保することを援助する義務を負う(第5条、第18条および第27条)。国はまた、補完的主体である市民社会組織が、子どもの権利アプローチに基づき、路上の状況にある子どものために個別化された専門的サービスを提供するにあたっても、資金提供、認可および規制を通じて支援を行なうべきである。企業セクターは子どもの権利に関わる責任を履行しなければならず、国はそのことを確保するよう求められる [8]。国と国以外の主体との調整が必要である。国には、国以外のサービス提供者が条約の規定にしたがって活動することを確保する法的義務がある [9]。 [8] 一般的意見16号(企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務、2013年)、パラ8参照。 [9] 一般的意見5号(子どもの権利条約の実施に関する一般的措置、2003年)、パラ42-44、同7号(乳幼児期における子どもの権利の実施、2005年)、パラ22、同9号(障害のある子どもの権利、2006年)、パラ25および同16号、パラ25参照。 複雑さへの対処 16.戦略では、構造的不平等から家族間暴力に至る複合的な原因を取り上げなければならない。また、即時的実施のための措置(子どもの一斉検挙または公共空間からの恣意的退去の強制を停止すること等)および漸進的に実施すべき措置(包括的な社会的保護等)も考慮する必要がある。法改正、政策転換およびサービス提供のあり方の変更を組み合わせることが必要になる可能性が高い。国は、子ども時代が終了して以降も人権を充足していくことへの決意を表明するよう求められる。国はとくに、代替的養護の環境および路上の状況にある子どもについて、支援およびサービスが突然停止されないようにするため、これらの子どもが18歳に達して成人期に移行する際のフォローアップのための機構を確保するべきである。 包括的な子ども保護制度 17.立法上および政策上の枠組みのなかで、子どもの権利アプローチを基盤とするホリスティックな子ども保護制度のために予算を拠出し、このような制度を発展させかつ強化することは、防止および対応のための戦略において必要とされる実際的措置の基礎である。このような国家的な子ども保護制度は、路上の状況にある子どもに手を差し伸べられるものでなければならず、かつこのような子どもが必要とする具体的サービスを全面的に編入したものであるべきである。このような制度は、あらゆる関連の状況を横断した一連のケア(防止、早期の支援介入、路上でのアウトリーチ、ヘルプライン、ドロップインセンター、デイケアセンター、一時入所ケア、家族再統合、里親養育、自立生活または他の短期的もしくは長期的な養育オプションを含む)を提供するものでなければならない。ただし、このような状況のすべてが、路上の状況にあるすべての子どもにとって妥当性を有するわけではない。たとえば、防止および早期の支援介入は、路上との強くかつ有害なつながりを発展させつつある初期段階の子どもにとっては優先的課題だが、路上の状況下で生まれた子どもにとっては妥当ではない。入所措置を経験していない子どももいる可能性がある一方、家族再統合が妥当または適切ではない子どもも存在する。戦略においては、子どもの権利アプローチがひとつひとつの状況に適用されることを明確にするべきである。子ども保護制度にアクセスする際の行政的負担および遅延は軽減することが求められる。情報は、子どもにやさしくかつアクセスしやすい形式で利用可能とされるべきであり、かつ、路上の状況にある子どもに対し、子ども保護制度を理解しかつうまく活用するための支援が提供されるべきである。 子どもと接触する人々の能力構築 18.国は、路上の状況にある子どもと直接間接に接触する可能性がある、政策立案、法執行、司法、教育、保健、ソーシャルワークおよび心理学等の分野のすべての専門家を対象とした、子どもの権利、子どもの保護および路上の状況にある子どもの地域的背景に関する良質かつ基礎的な着任前研修および現職者研修に投資を行なうべきである。このような研修は、国以外の主体の専門性を活用して実施することも考えられるほか、関連の養成機関のカリキュラムに統合することが求められる。指定された任務の一環として路上の状況にある子どもとともに働く専門家(たとえば路上を基盤とするソーシャルワーカーおよび警察の子ども保護専門部署等)に対しては、子どもの権利アプローチ、心理社会的支援および子どものエンパワーメントに関する綿密な付加的研修が必要である。「アウトリーチ・ウォーク」や「ストリート・ウォーク」は、現場研修の重要な手法に数えられる。基礎研修および専門研修には態度面および行動面の変革ならびに知識伝達およびスキル開発が含まれるべきであり、また部門を越えた協力および連携が奨励されるべきである。国および地方の政府は、危険な状況にある子どもがいる家族および路上の状況にある子どもの早期発見およびこれらの家族および子どもに対する支援の提供においてソーシャルワーカー(路上を基盤とするソーシャルワーカーを含む)が果たしているきわめて重要な役割を理解しかつ支援することが求められる。専門家には、運用手続、望ましい実践のあり方に関する指針、戦略的訓令、諸計画、達成基準および懲戒規則を参加型のやり方で策定する過程への関与が求められるべきであり、かつこれらを実際に実施するための支援が提供されるべきである。国は、路上の状況にある子どもと直接間接に接触する可能性があるその他の関係者(交通機関で働く人々、メディアの代表、コミュニティおよび精神的/宗教的指導者ならびに民間セクター関係者等)を対象とする感受性強化および研修を促進するよう求められる。これらの関係者は、「子どもの権利とビジネス原則」[10]を採択するよう奨励されるべきである。 [10] http //childrenandbusiness.org 参照。また一般的意見16号も参照。 サービス提供 19.国は、路上の状況にある子どもが保健および教育等の基礎的サービスならびに司法、文化、スポーツおよび情報にアクセスできることを保障するための措置をとるべきである。国は、地元の路上のつながりを熟知しており、かつ子どもが家族、地元のコミュニティサービスおよび一般社会とつながり直すことを援助できる、訓練を受けたソーシャルワーカーの関与を得た路上における専門的サービスのための対応が、自国の子ども保護制度においてとられることを確保するよう求められる。このことは、子どもが路上とのつながりを放棄しなければならないことを必ずしも意味するものではなく、むしろ支援介入においてはこれらの子どもの権利が保障されるべきである。防止、早期の支援介入および路上を基盤とする支援サービスは相互に強化しあう要素であり、効果的、長期的かつ効果的な戦略の枠組みのなかで一連のケアを提供することにつながる。第一次的に義務を負うのは国であるものの、市民社会の活動は、革新的かつ個別化されたサービス対応を発展させかつ提供していく国の努力を補完するものとなる可能性がある。 地方政府レベルでの実施 20.取り組みの成功は、地元の状況に関する詳細な理解および子どもに対する個別化された支援にかかっている。取り組みを拡大する際には、その過程で子どもたちを見失うことがないよう配慮されなければならない。国は、小規模かつ柔軟で、十分な予算を有しており、しばしば地域的専門性を持った市民社会組織が主導している、子どもの権利アプローチを基盤とした、地方レベルの、パートナーシップに基づく専門的支援介入を奨励しかつ支援するよう求められる。これらの支援介入は、地方政府が調整し、かつ国が全国的な子ども保護制度を通じて支援するべきである。これらの支援介入にとって、能力構築のための資源および組織運営スキルについては民間セクターからの、また科学的知見に基づいた意思決定を可能にする調査能力については学術研究機関からの、支援が役に立ちうる。子どもにやさしいまちおよびコミュニティは、路上の状況にある子どもを受容する雰囲気づくりに貢献し、かつこれらの子どものための社会的ネットワークおよびコミュニティを基盤とする保護制度の基礎となる。路上の状況にある子どもに対し、地方における、分権化されたボトムアップ型の計画プロセスに参加するための支援が提供されるべきである。 監視および説明責任の確保 21.法律、政策およびサービスの効果的実施は、透明でありかつしっかりと執行される、監視および説明責任の確保のための明確な機構にかかっている。国は、路上の状況にある子どもに焦点を当てながら公共政策を監視する、国および国以外の主体の連合組織、委員会または作業部会のような社会的説明責任の確保のための機構等への、路上の状況にある子どもの関与を支援するべきである。子どもの権利オンブズパーソン等の、条約の実施を促進しかつ監視するための独立した国内人権機関 [11] は、路上の状況にある子どもにとって容易にアクセスできるものでなければならない。 [11] 一般的意見2号(子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割、2002年)、パラ2および15参照。 司法および救済措置へのアクセス 22.路上の状況にある子どもであって人権侵害の被害者またはサバイバーである子どもには、実効的な法的その他の救済措置(弁護士による代理を含む)に対する権利がある。これには、子ども自身および(または)大人の代理人による個人の苦情申立てのための機構へのアクセス、ならびに、国および地方のレベルにおける司法的および非司法的救済機構(独立した人権機関を含む)へのアクセスが含まれる。国内的救済措置が尽くされたときは、適用される国際的人権機構(通報手続に関する条約の選択議定書によって設置された手続を含む)にアクセスできるようにされるべきである。被害回復のための措置としては、賠償、補償、リハビリテーション、謝罪および権利侵害の再発防止の保証などが考えられる [12]。 [12] www.ohchr.org/EN/ProfessionalInterest/Pages/RemedyAndReparation.aspx 参照。 データ収集および調査研究 23.国は、学術研究機関、市民社会および民間セクターと提携して、路上の状況にある子どもについてデータを収集しかつ細分化された情報を共有するための、体系的な、権利を尊重する参加型の機構を発展させるべきである。国は、このような情報の収集および利用がこれらの子どもにスティグマを付与しまたは害を及ぼすことがないようにしなければならない。路上の状況にある子どもについてのデータの収集は、子どもに関する国家的なデータ収集に統合されるべきであり、その際、国内データが世帯調査だけに依拠するのではなく、世帯環境の外で暮らしている子どもも対象とすることを確保するべきである。調査研究の目的および項目の設定、ならびに、情報の収集、政策立案の参考に供するための調査研究の分析および普及ならびに専門的支援介入の立案に、路上の状況にある子どもが参加することが求められる [13]。路上の状況は急速に変化するのであり、調査研究は、政策およびプログラムが更新されることを確保するために定期的に実施されなければならない。 [13] Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights (OHCHR), "A Human Rights-Based Approach To Data" 参照。www.ohchr.org/Documents/Issues/HRIndicators/GuidanceNoteonApproachtoData.pdf より入手可。 V.路上の状況にある子どもに関連する条約の主要な規定 概観 24.条約およびその選択議定書に掲げられたすべての権利は、すべての子どもにとってと同じように路上の状況にある子どもにとっても、相互関連性および不可分性を有している。この一般的意見は、委員会の他のすべての一般的意見とあわせて読まれるべきである。この一般的意見では、路上の状況にある子どもにとって特段の重要性があり、かつこれまで委員会による一般的意見の焦点とされてこなかった条項に焦点を当てる。たとえば、暴力、教育、少年司法および健康に関連する規定が重要なのは明らかだが、ここでは、すでに採択した一般的意見をどちらかといえば簡潔に参照する形でしか取り上げていない。他方、他のいくつかの条項については、路上の状況にある子どもにとっての意味合いおよび委員会がこれまで詳細に検討してこなかった経緯に鑑み、より詳しく吟味している。以下の条項の選択は、路上の状況にある子どもにとって社会的、経済的および文化的権利よりも市民的及び政治的権利が優越することを意味するものではない。 A.子どもの権利アプローチにおいて総括的関連性を有する条項 第2条:差別の禁止 社会的出身、財産、出生その他の地位を理由とする差別の禁止 25.国は、自国の管轄内にある子ども1人ひとりに対し、いかなる種類の差別もなく、条約に掲げられた権利を尊重しかつ確保しなければならない。しかし、子どもたちは差別を主要な原因のひとつとしてが路上の状況に身を置くことになっている。子どもたちは次に、路上とつながりを持っていることに基づいて、すなわちその社会的出身、財産、出生その他の地位を理由として差別されることになり、生涯にわたる悪影響を受けることになるのである。委員会は、条約第2条に基づく「その他の地位」を、子どもまたはその親その他の家族構成員が路上の状況にあることを含むものと解釈する。 制度的差別 [14] 26.差別は直接的である場合もあれば間接的である場合もある [15]。直接差別には、「ホームレス問題に対処する」ための不均衡な政策アプローチであって、物乞い、徘徊、浮浪、家出および生き残るための行動を防止するために抑圧的取り組みを行なうもの(たとえば地位犯罪の法定 [16]、路上浄化活動または「一斉検挙」ならびに警察による標的化された暴力、いやがらせおよび強要行為など)が含まれる。直接差別には、路上の状況にある子どもが窃盗または暴力の被害を申告した場合に警察が真剣に対応しようとしないこと、少年司法制度において差別的取扱いを受けること、ソーシャルワーカー、教員または保健ケア専門家が路上の状況にある子どもへの支援を拒むこと、ならびに、学校で仲間および教員によるいやがらせ、辱めおよびいじめを受けることも含まれる場合がある。間接差別には、たとえば料金の支払いまたは身分証明書の提示を要求することによって基礎的サービス(保健および教育など)からの排除をもたらす政策が含まれる。路上の状況にある子どもは、たとえ基礎的サービスから隔離されなくとも、そのような制度の内部で隔離される可能性がある。子どもは、たとえばジェンダー、性的指向およびジェンダーアイデンティティ/ジェンダー表現、障害、人種、民族、先住民族としての地位 [17]、出入国管理上の地位およびその他のマイノリティとしての地位(とくに、マイノリティ集団は路上の状況にある子どもたちのなかで人口比以上の比率を占めていることが多いため)を理由とする、複合的かつ交差的形態の差別に直面する場合もある。差別の対象とされる子どもは、暴力、虐待、搾取〔および〕HIVを含む性感染症の被害をいっそう受けやすい立場に置かれ、その健康および発達がさらなる危険にさらされる [18]。国は、差別の禁止に対する権利の保障とはあらゆる形態の差別を禁止する消極的義務に留まるものではなく、条約上の権利を享受する実効的な機会平等をすべての子どもに対して確保するための適切な積極的措置も要求するものであることを、想起するよう求められる。そのためには、実質的不平等の状態を是正するための積極的措置が必要である [19]。制度的差別は法律上および政策上の変化に敏感であり、したがってこれらの変化によって対処することができる。路上の状況にある子どもたちは、公衆による差別および否定的態度に直面していることを具体的な懸念として強調するとともに、それに対抗するための意識啓発措置および教育的措置を求めている。 [14] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見20号(経済的、社会的および文化的権利に関する差別の禁止、2009年)、パラ12参照。 [15] 前掲、パラ10参照。 [16] 一般的意見4号(条約の文脈における思春期の健康と発達、2003年)、パラ12および一般的意見10号(少年司法における子どもの権利、2007年)、パラ8-9参照。 [17] 一般的意見11号(先住民族の子どもとその条約上の権利、2009年)参照。 [18] 一般的意見4号、パラ6および同3号、パラ7参照。 [19] 一般的意見4号、パラ41参照。 差別の解消 27.差別は、国の憲法、法律および政策において路上の状況にあることを理由とする差別が行なわれないことを確保することによって形式的に、また路上の状況にある子どもたちに対し、根強い偏見に苦しんできて積極的差別是正措置を必要としている集団として十分な注意を払うことによって実質的に、解消されるべきである [20]。路上の状況にある子どもの事実上の平等を加速させまたは達成するために必要な一時的な特別措置は、差別とみなされるべきではない。国は、路上の状況にある子どもが法の下で平等であること、路上の状況にあることを理由とするすべての差別が禁止されること、差別およびいやがらせの扇動 [21] への対処が行なわれること、路上の状況にある子どもおよびその家族が財産を恣意的に奪われないこと、ならびに、夜間外出禁止規定が法律に適合した、比例性を有する、かつ非差別的なものであることを確保するべきである。国はまた、態度を積極的な方向で変革する目的で、路上の状況にある子どもの経験および権利に関する専門家、民間セクターおよび公衆の感化を図るよう求められる。国は、路上の状況にある子どもたちが主導しまたは関与する創造的な芸術プログラム、文化プログラムおよび(または)スポーツプログラムであって、目に見える相互の対話および交流を通じ、専門家、コミュニティ(他の子どもたちを含む)およびより幅広い社会とともに誤った考え方への対処および障壁の打破に役立つプログラムを支援するべきである。このようなプログラムとしては、路上のサーカス、演劇、音楽、アートおよびスポーツマッチなどが考えられる。国は、子どもの権利アプローチに基づいて感化およびスティグマ除去のためのメッセージならびにストーリーを普及させかつ増幅させる目的で、印刷媒体、放送媒体およびソーシャルメディアと協働するべきである。路上の状況にある子どもが行なう犯罪についての公衆の恐怖心は、メディアによって煽られた、現実に見合わないものであることが多い。メディアは、正確なデータおよび証拠を活用し、かつ、子どもの尊厳、身体的安全および心理的不可侵性を保障するための子どもの保護基準にしたがうよう、積極的に奨励されるべきである。 [20] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見20号、パラ8参照。 [21] 前掲、パラ7。 第3条(1):子どもの最善の利益 28.この権利に付随する義務は、路上の状況にある子どものホリスティックな身体的、心理的および道徳的不可侵性を保全し、かつその人間の尊厳を促進するための、子どもの権利アプローチの一環としての基本的義務である。これらの子どもはとりわけ脆弱な状況に置かれていることが明らかにされてきている。委員会がすでに指摘したように、特定の脆弱な状況に置かれた子どもの最善の利益は、同じ脆弱な状況に置かれたすべての子どもの最善の利益と同一にはならないであろう。子どもは一人ひとり独自の存在であり、かつ各状況はその子どもの独自性にしたがって評価されなければならないので、公的機関および意思決定担当者は、子ども一人ひとりが有する脆弱性の種類および度合いの違いを考慮に入れなければならない [22]。このような文脈においては、「脆弱」性は、路上の状況にある個々の子どもの回復力および自立との関連で考慮されるべきである。 [22] 一般的意見14号 、75-76参照。} 第6条(生命、生存および発達に対する権利 生命に対する権利 29.路上の状況にある子どもは、とくに国の関係者によって超法規的に殺害され、大人または仲間によって殺害され(いわゆる自警団的正義と関連する殺人を含む)、かつ犯罪者個人およびギャングと関係を持たされる/その標的にされるおそれがあるとともに、国がこのような犯罪を防止しない場合には、危険な形態の児童労働、交通事故 [23]、有害物質濫用、商業的性的搾取および安全ではない性的実践と関連した、生命を脅かされる可能性がある状況にさらされるおそれ、ならびに、十分な栄養、保健ケアおよび居住場所にアクセスできないために死亡するおそれもある。生命に対する権利は狭く解釈されるべきではない [24]。これは、自然死ではないまたは時期尚早な死を引き起こすことを意図したまたはそのような死を引き起こすことが予想される作為および不作為から自由であり、かつ尊厳のある生活を享受する、個々人の権利に関わるものである。1999年、路上の状況にある子ども3名および若者2名を警察が1990年に拷問しかつ殺害した事件について、米州人権裁判所は、生命の恣意的剥奪は殺人という不法行為に限定されるものではなく、尊厳をもって生きる権利の剥奪にも及ぶと判示した。生命に対する権利についてのこのような捉え方は、市民的および政治的権利のみならず経済的、社会的および文化的権利にも及ぶものである。もっとも脆弱な状況に置かれた人々――ストリートチルドレンの場合のように――を保護しなければならないということは、当然のことながら、生命に対する権利を、尊厳のある生活のための最低条件を包含する形で解釈することが必要になる [25]。 [23] 一般的意見4号、パラ21参照。 [24] 条約の準備作業では、第6条に基づく生命、生存および発達に対する諸権利は補完的なものであって相互に排他的なものではなく、かつ、同条は積極的義務を課すものであることが明らかになっている(E/CN.4/1988/28)。 [25] Villagran Morales et al v. Guatemala 事件における米州人権裁判所の共同意見(1999年11月19日)。www.corteidh.or.cr/docs/casos/articulos/seriec_63_ing.pdf より入手可。 30.委員会はすでに、絶対的貧困という条件下で育つことが子どもの生存および健康を脅かし、かつその基本的な生活の質を損なうものであることを強調している [26]。 [26] 一般的意見7号、パラ26参照。 生存および発達に対する権利 31.委員会は、各国が、「発達」を、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するホリスティックな概念として解釈するよう期待する。路上の状況にある子どもにとって、自己の生存および発達のために公共空間で選択できる活動および行動の幅は限られたものである。第6条に基づく国の義務により、子どもの行動および生活様式に対し、たとえそれが、特定のコミュニティまたは社会によって、特定の年齢層を対象とする支配的な文化的規範に基づいて容認されると判断された行動および生活様式に一致しないものであっても、慎重な注意を向けなければならない。プログラムは、路上の状況にある子どもたちの現実を認めるときに初めて効果的なものとなりうるのである [27]。介入においては、路上の状況にある個々の子どもたちを、これらの子どもが社会に最大限積極的に貢献できるようにしながら最適な形での発達を達成できるよう、支援することが求められる [28]。 [27] 一般的意見3号、パラ11参照。 [28] 一般的意見5号、パラ12参照。 尊厳のある生活の確保 32.国は、路上の状況にある子どもの尊厳ならびに生命、生存および発達に対するこれらの子どもの権利を尊重する義務(この目的のため、国家主導の暴力を行なわず、かつ生き残るための行動および地位犯罪を犯罪として扱わないようにすることが必要となる)、第三者が引き起こす危害から路上の状況にある子どもを保護する義務、ならびに、これらの子どもの発達を最大限可能なまで確保する目的で、子どもの権利アプローチに基づいてホリスティックな長期戦略を立案しかつ実施することにより、生命、生存および発達に対するこれらの子どもの権利を充足する義務を負う。国は、信頼のおける支援的な大人――家族構成員または国もしくは市民社会のソーシャルワーカー、心理学者、ストリートワーカーもしくはメンターなど――が路上の状況にある子どもを手助けするのを援助するべきである。国はまた、路上で死亡する子どものために尊厳および敬意を確保するため、葬儀に関する手続的および実際的な体制も整備することが求められる。 第12条(意見を聴かれる権利) [29] 33.路上の状況にある子どもたちは意見を聴かれることに関して特別な障壁に直面しており、委員会は、各国に対し、これらの障壁を克服するための積極的努力を行なうよう奨励する。国および政府間機関は、路上の状況にある子どもたちに対し、司法上および行政上の手続において意見を聴かれ、自分たち自身の取り組みを遂行し、かつ、コミュニティレベルおよび国レベルで政策およびプログラムの概念化、立案、実施、調整、監視、検証および広報に(メディア等も通じて)全面的に参加できるようにするための、支援的なかつ力を発揮できるような環境を提供するとともに、このような環境の提供に関して市民社会組織を支援するべきである。支援介入は、その対象である子どもたち自身が、これらの子どものために行なわれる決定の客体としてみなされるのではなく、ニーズの評価、解決策の立案、戦略の形成およびその遂行に積極的に関与するときに、これらの子どもにとってもっとも有益なものとなる。国はまた、防止および対応のための戦略を策定する際、家族およびコミュニティの構成員、専門家およびアドボケイトなどの関連する大人の意見にも耳を傾けるべきである。支援介入においては、路上の状況にある個々の子どもが、その発達しつつある能力にしたがって自己の権利を行使しかつスキル、回復力、責任および市民性を発展させられるよう支援することが求められる。国は、路上の状況にある子どもたちに対し、意味のある参加および集団的表現の空間を生み出すことにつながる子ども主導型の団体および取り組みを自分たち自身で形成するよう、支援および奨励を行なうべきである [30]。適当な場合、かつ適正な保護措置がとられるときは、路上の状況にある子どもたちが、スティグマおよび差別を軽減し、かつ他の子どもたちが最終的に路上の状況に至らないよう援助する目的で、自分たちの経験を共有することによる意識啓発を行なうことも考えられる。 [29] 一般的意見12号(意見を聴かれる子どもの権利、2009年)。 [30] 前掲、パラ128。 第4条(適切な措置) 34.締約国は、第4条に基づき、条約で認められた権利の実施のためにあらゆる適切な立法上、行政上その他の措置をとるものとされる。このことはすべての子どもに差別なく当てはまるのであり、その際、もっとも不利な立場に置かれた集団――路上の状況にある子どもがこれに含まれるのは明らかである――に特別の注意を払うことが求められる [31]。最低限の中核的義務として、すべての国は、何をおいても、1つひとつの社会的、経済的および文化的権利が最低限必要な水準で満たされることを確保しなければならない [32]。国は、このことが路上の状況にある子どもにも適用されることを確保するべきである。利用可能な資源が存在しないことは、それ自体では、国がこの中核的義務を遵守しないことについての有効な主張にはならない。委員会がすでに述べたように、子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない [33]。国は、経済危機の時期の後退的措置によって路上の状況にある子どもが影響を受けないことを確保するべきである。 [31] 一般的意見5号、パラ8参照。 [32] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見3号(締約国の義務の性質、1990年)、パラ10。 [33] 一般的意見19号(子どもの権利実現のための公共予算編成、2016年)、パラ31参照。 第5条(発達しつつある能力に一致した指示および指導) 35.国は、防止を強化するため、親、拡大家族、法定保護者およびコミュニティの構成員の、子どもにその年齢および成熟度にしたがって適切な指示および指導を行なう能力(その際、これらの者が子どもの意見を考慮に入れることを援助することも求められる)、子どもが発達できる安全かつ支援的な環境を提供する能力、および、子どもが主体的な権利の保有者であり、適切な指導および指示を与えられれば、発達するにしたがってこれらの権利をますます行使できる存在であると認識する能力の構築を図るべきである。委員会は、子どもの発達しつつある能力の原則について詳しく述べている――子どもの知識、経験および理解力が高まるにつれて、親または法定保護者は、指示および指導を注意喚起および助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならない [34]。路上の状況にある子どもに対しては、その人生経験を尊重する、とくに配慮した指示および指導が必要である。路上の状況にある子どもの大多数は家族との接触を維持しており、このような家族とのつながりを強化する効果的方法に関する科学的知見も増えつつある。路上の状況にある子どもが親、拡大家族または法定後見人との肯定的つながりをほとんどまたはまったく持っていないときは、第5条で言及されているようにコミュニティの構成員の役割がいっそうの重要性を帯びるのであり、これには、市民社会組織と関係する信頼できる大人からの支援も含まれると理解される。 [34] 一般的意見12号(意見を聴かれる子どもの権利、2009年)、パラ84および一般的意見14号、パラ44参照。 B.市民的権利および自由 第15条(結社および平和的集会の自由に対する権利) 概観 36.路上の状況にある子どもたちが生きている現実は、子ども時代に関する伝統的な定義または概念化には適合しない。これらの子どもたちは、他の子どもたちに比べ、公的空間と独特の関係を結んでいる。したがって、公的空間との関連で国が第15条に課す制限は、路上の状況にある子どもたちに不均衡な影響を及ぼす可能性がある。国は、これらの子どもが結社および平和的集会のために政治的および公的空間にアクセスすることが差別的なやり方で否定されないことを確保するべきである。 市民的および政治的空間 37.結社および平和的集会は、路上の状況にある子どもたちが、たとえば働く子どもの組合および子ども主導の団体を通じて権利を主張していくために必要不可欠である。しかし委員会は、総括所見のなかで、子どもたちが声をあげるための政治的空間が与えられていないことに関する懸念を恒常的に表明してきた。このような状況は、法律にしたがって団体登録を行なう際に必要となる場合がある信頼できる大人とのつながりを持たないことが多い路上の状況にある子どもたちにとって、とりわけ押しつけられやすい。路上の状況にある子どもたちは、結社および平和的集会のための取り組みを発展させていくための書類の記入および情報へのアクセスに関して支援を得られない場合がある。抗議または集会の参加人数を増やすため、路上の状況にある子どもたちに金が支払われることもありうる。これらの子どもは搾取の被害を受けやすい可能性があり、かつこのようなイベントに参加することの意味合いを理解していないこともあることから、保護と参加の権利との間でバランスをとる必要性に関する複雑な問題が生ずる。しかし、委員会が総括所見で表明してきたように、このことが、結社および平和的集会に対するこれらの子どもの権利を制限する言い訳として用いられるべきではない。第15条は、国に対し、路上の状況にある子どもたちが自己の参加権を行使し、かつ大人による吸収および操作に対抗できるようエンパワーすることを要求しているのである。 公的空間 38.市民的および政治的権利の文脈における結社および平和的集会に加えて、委員会は、路上の状況にある子どもたちが、生存および発達に関わる自分たちの権利(第6条)を満たすために、休息、遊びおよび余暇(第31条)[35] のために、ネットワークづくりおよび社会生活の組織化のために、かつこれらの子どもの生活全般の主要な特徴のひとつとして行なう、公の秩序を脅かすことなく公的空間で集まるための選択を尊重することの重要性を強調する。路上の状況にある子どもたちにとって、このような態様の集まりは生活の一部である。その生活は、食事、睡眠またはレクリエーションのような個別の活動に常に分解できるわけではない。路上の状況にない子どもたちにとっては、このような他者との協力的共存は主として家庭または学校のような場面で生ずるものである。路上の状況にある子どもたちにとっては、それは公的空間で生ずる。このような子どもたちは、結社の権利(ここでは、条約で保護されている他の諸権利とあいまって、「公的空間で他者と時間を過ごすこと」と解釈される)を行使できる安全な空間を持てなければならない。委員会は、第31条との関連で、公的空間における子どもたちへの寛容度が低下しつつあることを検討したことがある [36]。委員会は、この一般的意見で、寛容度の低下に関わるこれらの懸念を、第31条で対象とされているもの以外の目的で子どもたちが公的空間を使用することとの関連でも、あらためて表明するものである。 [35] 一般的意見17号(休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利、2013年)、パラ21参照。 [36] 前掲、パラ37参照。 第15条に対する制限 39.第15条(2)にしたがい、公の秩序との関連でとられる取締まりその他の措置が許容されるのは、当該措置が法律に基づいており、集団的評価ではなく個別の評価に基づいて実施され、比例性の原則を遵守し、かつもっとも侵害度の小さい選択肢である場合に限られる [37]。すなわち、路上の状況にある子どもに対するいやがらせ、暴力、一斉検挙および路上浄化活動(大規模な政治的、公的またはスポーツイベントを背景として行なわれるものを含む)、または結社および平和的集会に対するこれらの子どもの権利を制限しまたは当該権利に干渉するその他の介入策は、第15条(2)違反である。合法的に設置された働く子どもの組合もしくは路上の状況にある子どもたちが主導する団体を承認しないことおよび(または)路上の状況にある子どもが合理的アクセスの手段を有しない団体認可を要件とすることは、これらの子どもに対する差別であり、かつ第15条(2)に一致しない。 [37] 一般的意見6号(出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い、2005年)、パラ18参照。もともとは国境を越えた保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもとの関連で展開した解釈だが、委員会は、この一般的意見において、路上の状況にあるすべての子どもについてもこの解釈を適用する。 実施措置 40.国は、路上の状況にある子どもたちに対するいやがらせを行なうべきではなく、またこれらの子どもが公共空間において関係をとり結びかつ平和的に集会する場所から恣意的に退去させるべきではない。この権利を侵害する者に対しては制裁が科されるべきである。公の秩序に関わる状況に、路上の状況にある子どもの権利の尊重を擁護するようなやり方で対応する警察および治安部隊の能力構築のため、専門的研修が必要とされる [38]。地方政府の条例は、第15条(2)との一致を確保するために見直されるべきである。国は、子どもの権利教育およびライフスキルの育成を通じて路上の状況にある子どものエンパワーメントを図ること、関係者が、意思決定の際、結社および集会を通じて表明されるこれらの子どもの意見を受け入れる心構えを持つようにすること、ならびに、これらの子どもがコミュニティの他の子どもとともにレクリエーション、余暇、スポーツ、芸術活動および文化的活動に参加することを促進することなどの積極的な措置を支援するよう求められる。路上の状況にある子どもたちの結社および平和的集会が第15条に基づく保護を受けるために、これらの結社および集会が正式に登録されていることが法律上の要件とされるべきではない。 [38] 一般的意見13号、パラ44参照。 第7条(出生登録)および第8条(身元) 41.身元を証明する手段がないことは、教育、保健サービスのその他の社会サービス、司法、相続および家族再統合に関わる路上の状況にある子どもの権利の保護に悪影響を及ぼす。国は、最低限、あらゆる年齢のあらゆる子どもが無償の、アクセスしやすい、簡便かつ迅速な出生登録を利用できることを確保するよう求められる。路上の状況にある子どもに対し、法的身分証明書を取得するための積極的支援が提供されるべきである。国および地方政府は、市民社会の関係者/住所と関連づけられた非公式な身分証明書を提供することのような革新的かつ柔軟な解決策を認めることにより、子どもが当面、基礎的サービスおよび司法制度における保護にアクセスできることを可能にするよう求められる。路上の状況にある子どもは頻繁に移動することが多く、かつ物理的な身分証明書を、紛失し、毀損しまたは盗難されることなく安全に保持し続ける手段を有しないことから、これらの子どもが帳面している課題を克服するための革新的解決策が採用されるべきである。 第13条(表現の自由)および第17条(情報へのアクセス) 42.路上の状況にある子どもが自己の権利に関する情報にアクセスし、このような情報を求めかつ伝える権利は、これらの権利が理解され、かつ実際に実現されるようにするためにきわめて重要である。状況に特化したアクセスしやすい子どもの権利教育は、参加を妨げる障壁を克服し、これらの子どもの意見に耳が傾けられることを可能にするうえで役に立つだろう。路上の状況にある子どもは、(a) 国の役割および説明責任ならびに人権侵害に関わる救済のための苦情申立て機構、(b) 暴力からの保護、(c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルス(家族計画および性感染症予防を含む)、(d) 健康的なライフスタイル(食事および運動を含む)、(e) 安全なかつ敬意のある社会的および性的振舞い、(f) 事故の防止ならびに (g) アルコール、タバコ、薬物その他の有害物質の濫用の悪影響に関連する、正確な、質の高いかつ子どもにやさしい情報にアクセスできなければならない。 第16条(プライバシー、名誉および信用 43.路上の状況にある子どもは、公共空間で活動を行なわなければならないことを考えれば、プライバシーの制限を経験する場合がある。これらの子どもは、自らまたはその親もしくは家族が路上の状況にあることを理由とする差別により、第16条違反の被害をとりわけ受けやすい立場に置かれる。委員会は、強制立退きが条約第16条違反であることを認識するものであり、自由権規約委員会は、これまでに、これが市民的および政治的権利に関する国際規約第17条違反であることを認めてきた [39]。スティグマについて取り上げたパラ27の勧告および警察による非差別的なかつ敬意のある取扱いについて取り上げたパラ60の勧告は、名誉および信用との関連で指針となるものである。 [39] CCPR/CO/83/KEN, para.22 および CCPR/C/BGR/CO/3, para.24 参照。 C.家庭環境および代替的養護 第20条(家庭環境を奪われた子どものための特別な保護および援助に対する権利) 養護の態様 44.路上の状況にある子どもであって主たる養育者またはこれに代わる養育者がいない子どもについては、国が事実上の養育者であり、かつ、第20条に基づき、一時的または恒久的に家庭環境を奪われた子どもに対して代替的養護を確保する義務を負う [40]。養護の態様には、路上の状況にある子どもに対する実際的および精神的支援(子どもに対し、路上のつながりを放棄しかつ(または)代替的居住施設への移動を要求しまたは強制することなく、信頼できる大人のストリートワーカーまたは仲間同士のサポートを通じて行なわれるもの)、ドロップインセンターおよびコミュニティセンター/ソーシャルセンター、デイケアセンター、グループホームにおける一時的入所養護、里親養育、家族再統合ならびに自立生活または長期的な養護の選択肢(養子縁組を含むがこれに限られない)が含まれる。たとえば収容房または閉鎖施設における自由の剥奪は、保護の一形態にはけっして位置づけられない。 [40] 一般的意見13号、パラ33および35参照。 子どもの権利アプローチの適用 45.路上を離れて代替的養護に移行する過程で主体的行為者としての子どもを尊重しない介入策は、功を奏しない。子どもは、脱走した場合または措置が失敗した場合には、しばしば路上に復帰することになる。路上の状況にある子どもが馴染みのない地域に送られてほとんど知らない親族と暮らすことになった場合、措置はうまくいかない。国は、代替的選択肢の開発および提供に子どもの権利アプローチを適用することにより、子どもが自己の生存および(または)発達のために路上のつながりに依存せざるを得なくなることおよび自己の意思に反する措置を受け入れざるを得なくなることを回避することができよう。国は、立法、規則および政令を通じ、措置、養護計画の策定および見直しならびに家族の訪問に関わる決定において子どもの意見が求められかつ考慮されることを確保するべきである [41]。国は、施設措置を最後の手段に限定する、確立された国際的制限 [42] を尊重するとともに、子どもが不必要に代替的養護に措置されないことを確保し、かつ、代替的養護が行なわれる場合、子どもの権利および最善の利益に応じた適切な条件下で提供されることを確保するよう求められる [43]。国は、国および市民社会が運営するシェルターおよび施設が安全かつ良質であることを確保するべきである。路上の状況にある子ども自身と相談したうえで、家族構成員への措置がその子どもの最善の利益にかなうと判断される場合、両方の側で慎重な準備およびフォローアップが必要となる。路上と長期的措置との間にはしばしば移行段階が必要であり、この期間の長さは、子どもとともに、個別の事案ごとに決定しなければならない。代替的養護施設がないことを理由として子どもの収容目的で警察の留置房またはその他の拘禁房を使用することは、受け入れられない。 [41] 一般的意見12号、パラ54、同6号、パラ40および同7号、パラ36(b)参照。 [42] 一般的意見3号、パラ35参照。 [43] 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)。 第9条(親からの分離) 46.路上の状況にある子どもの多くは、路上でまたはそれ以外の場所で家族とともに暮らしており、かつ(または)家族とのつながりを維持しているのであって、このようなつながりを維持するための支援が提供されるべきである。国は、家族が路上で働いているまたは路上で暮らしていることのみを理由として、子どもをその家族から分離するべきではない。また、路上の状況にある子ども自身のもとに生まれた赤ん坊または子どもを分離するべきではない。金銭面および物質面での貧困、またはそのような貧困を直接のかつ唯一の理由として生じた状態のみを理由として、子どもを親の養育から離脱させることが正当化されることはけっしてあるべきではなく、このような貧困または状態は、家族に対して適切な支援を提供する必要性があることのサインと見なされるべきである [44]。長期的分離の防止策として、国は、親がたとえば季節的雇用のために年の一定の期間国外に出稼ぎに行く子どもを対象とする、一時的な、権利が尊重される養護の選択肢を支援することができる。 [44] 一般的意見14号、パラ62参照。 第3条(3)(ケアおよび保護のための機関、サービスおよび施設)および第25条(措置の定期的再審査) 47.ケアおよび保護に関わる権利が充足されなかったことの結果として子どもが路上の状況に至ることを防止する目的で、またすでに路上の状況にある子どもたちのために、国および国以外の主体によるサービスを設置し、維持し、かつその質を監視することは重要である。国は、良質で権利を尊重するサービスを提供するとともに、市民社会組織が同様のサービスを提供することを支援するよう求められる。路上の状況にある子どものために活動している国以外の機関、サービスおよび施設は、国による支援、資源の拠出、認証、規制および監視の対象とされるべきである。このようなサービスの従事者は、パラ18にしたがった研修を受けるよう求められる。 第18条(親の責任) 48.子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもを対象とする家族再統合プログラムを強化するためには、親および法定保護者への支援が不可欠である。国は、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与え、かつ、子どものケアのための機関、施設およびサービスの発展を確保する義務を負う。国は、不安定な状況にある家族に圧力を加える構造的な力を解消するための措置をとるべきである。対応すべき主要な問題としては、窮乏している地域において権利を基盤とするコミュニティ開発を向上させること、包括的な経済的および社会的セーフティネットを確立すること、安全かつ負担可能な保育所その他の専門的サービスを提供すること、ならびに、家族を対象として十分な住居および所得創出へのアクセスを改善することなどがある。構造的および政策的アプローチに加え、脆弱な状況にある家族には、十分な訓練を受けた専門家のファシリテーションによる、個別事案ごとの解決策が必要である。国は、子どもが路上の状況に至ることの増大につながる条件の世代間伝達の阻止につながることが証明されている、子どもの権利アプローチに基づく家族支援プログラムに投資し、かつその規模の拡大を図るよう求められる。国は、路上の状況に至るおそれのある子どもがいる家族を――スティグマを付与しないようなやり方で――優先させつつ、すべての親および養育者を対象として、子どもの権利および肯定的な子育てに関する、非選別的な教育を提供するための措置をとるべきである。このような教育には、子どもの権利(子どもの声に耳を傾け、かつ意思決定に子どもの意見を取り入れる方法を含む)、肯定的な子育て(肯定的なしつけのためのスキル、非暴力的紛争解決および愛着育児(アタッチメント・ペアレンティング)を含む)および乳幼児期の発達を含めることが求められる。パラ35および49も参照。 D.十分な生活水準 第27条(十分な生活水準に対する権利) 親、養育者および子どもに対する支援 49.第27条(3)にしたがい、国は、子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもの権利を充足するため、すべての子どもがその身体的、精神的、霊的および道徳的発達のために十分な生活水準を享受することを確保するべきである。国は、この権利の実施のために、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための適当な措置をとらなければならず、また必要な場合にはとくに栄養、衣服および住居に関して物的援助および支援プログラムを提供しなければならない。これらの規定は、国の裁量の余地を残さないものである。締約国の国内条件にしたがった、かつその財源内におけるこれらの規定の実施は第4条とあわせて解釈されるべきであり、すなわち、社会的、経済的および文化的権利に関する最低限の中核的義務を履行する国の義務をとくに顧慮しながら、締約国の利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要なときは国際協力の枠組みのなかで、進めることが求められる。物的援助という点では、路上の状況にある子どもが優先的ニーズとして挙げるのは、親および養育者に対する国の支援(とくに補助金をともなう十分な住居および所得創出に関連するもの)を通じて提供される、安全な生活場所、食料ならびに無償のかつアクセス可能な医療ケアおよび教育である。第27条(3)の解釈は、親および子どもの養育に責任を負う他の者を援助するための措置に限られるものではない。必要な場合に物的援助および支援プログラムを提供する義務は、子どもに直接提供される援助も意味するものとして解釈されるべきである。このことは、路上の状況にある子どもであって家族とのつながりが存在しない子どもまたは家族とのつながりに虐待がともなう子どもについて、とりわけ妥当する。サービスという形をとった子どもへの直接的な物的援助は、国が提供することもできるし、市民社会組織に対する国の支援を介して提供することも可能である。ひとり親家族および再構築家族にとっては、子どもの扶養料を確保するための国の措置がとりわけ重要となる(第27条(4)参照)。 十分な住居 50.住居に対する権利は、路上の状況にある子どもにとってとりわけ関連性が高い、第27条の重要な要素である。この権利は、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会によって、いずれかの場所で安全に、平和にかつ尊厳をもって生活する権利として広く解釈されてきた [45]。同委員会は、「十分」性の概念を住居との関連で考察する際には、保有の法的安定性、サービス、物資、便益およびインフラストラクチャーの利用可能性、負担可能性、居住適性、アクセス可能性、立地ならびに文化的相当性に注意を払う必要があることを明らかにしている [46]。また、子どもは強制立退きの実行によって不均衡な被害を受ける集団のひとつに数えられる [47]。強制立退き(非公式または不法な住居の解体によるものを含む)は、人生を子どもにとっていっそう不安定なものとすることによって、子どもが路上で寝泊まりすることを余儀なくさせ、かつさらなる権利侵害にさらす可能性がある。路上の状況にある子どもたちとの協議で目立ったテーマのひとつは、子どもたちが路上にいるほうがましだと感じるほどの、一部の国営「シェルター」の不十分さおよび不適切さならびにこれらの施設における高水準の暴力および安全性の欠如である。 [45] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見4号(十分な住居に対する権利、1991年)、パラ7参照。 [46] 前掲パラ8。 [47] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見7号(強制立退き、1997年)、パラ10参照。 実施措置 51.国は、子どもの保護を向上させ、かつ子どもが路上の状況に至る可能性を低減する手段のひとつとして、不安定な家族への圧力を弱めかつこれらの家族を強化する目的で、貧困および所得不平等の根本的原因に対応するための措置をとるべきである。このような措置には、経済的不平等を減少させる税制および支出政策を導入すること、公正な賃金をともなう雇用および所得創出のためのその他の機会を拡大すること、農村開発および都市開発のために貧困削減に寄与する政策を導入すること、子どもに焦点を当てた政策および予算策定を導入すること、移住が多いことがわかっている地域で子ども中心の貧困緩和プログラムを強化すること、ならびに、十分な社会保障および社会的保護を提供することが含まれる。具体的な例としては、欧州・北米諸国で活用されている子ども給付プログラムや、ラテンアメリカ諸国で導入され、かつアジア・アフリカ諸国で広く適用されている現金移転プログラムなどが挙げられる。国は、銀行口座を持っていない可能性があるもっとも周縁化された家族のもとにもこのようなプログラムが届くように努力するべきである。物的支援は、親および養育者に対して、かつ路上の状況にある子どもに直接提供する形でも、利用可能とされるべきであり、またこのような機構およびサービスは子どもの権利アプローチに基づいて立案しかつ実施することが求められる。住居に関しては、子どもが路上の状況に至ることを防止するために保有の安定性が必要不可欠である。これには、安全であり、かつ安全な飲料水、環境衛生および個人衛生のための便益へのアクセスをともなう十分な住居にアクセスできることが含まれる。子どもは、非公式または不法な住居で生活している子どもを含め、十分な代替的居住先を提供される前に強制立退きの対象とされるべきではない。国は、影響を受ける子どもに対して適切な対応を行なうことを要求される。立退きの悪影響を最小限に抑えるため、子どもの権利および人権に関する影響評価が開発事業およびインフラ整備事業の必須条件とされるべきである。 E.障害および健康 第23条(障害のある子ども) 52.障害のある子どもは、経済的および社会的要因を含むさまざまな理由で路上の状況に至るとともに、時として物乞いのために搾取されることがある。国は、このような搾取を防止しかつ明示的に犯罪化するためおよび加害者を裁判にかけるために必要な、あらゆる措置をとるべきである [48]。路上の状況にある子どもは、路上生活の諸側面(暴力、搾取および有害物質濫用など)の悪影響により障害が発達するおそれのある状況に置かれる可能性がある。また、路上の状況にある子どもは、知的障害および心理社会的障害により、搾取および虐待の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれうる。国は、障害のある子どもがサービス(インクルーシブな教育を含む)にアクセスすることを妨げる障壁を特定しかつ除去することを含む、特別な保護措置をとるべきである。 [48] 一般的意見9号、パラ76参照。 第24条(健康)[49] および第33条(薬物および有害物質の濫用 53.路上の環境は、心身の健康に関わる問題についての脆弱性を高める可能性がある [50]。課題として挙げられるのは、有害物質濫用、HIV [51] その他の性感染症への感染、妊娠、暴力(仲間によるものを含む)、希死念慮および自殺、規制対象外の医薬品を用いた自己流の治療ならびに感染症、汚染および交通事故への曝露の問題が生じる割合が不均衡に高いことなどである。委員会は、路上の状況にある子どもの具体的ニーズにあわせた健康教育および保健サービス(セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するものを含む)の必要性を強調する。このような教育およびサービスは、親しみが持ててかつ支援的であり、包括的であり、アクセスしやすく、無償であり、秘密が守られ、非審判的であり、差別を行なわず、これらの子どもによる自律的決定を尊重し、かつ親の同意を要件としないようなものであるべきである [52]。保健サービスは、物理的位置または社会的地位にかかわらずアクセスできることが求められる。路上の状況にある子どもは、普遍的な医療保障および社会的保護制度を通じた基礎的保健ケアサービスに無償でアクセスできるべきである。国は、路上の状況にある子どもを対象とする、有害物質濫用の予防、治療およびリハビリテーションのためのサービス(ハームリダクション〔危害軽減〕サービスを含む)ならびにトラウマ治療サービスおよび精神保健サービスの利用可能性を高めるよう求められる。これらのサービスを提供するスタッフには、子どもの権利および路上の状況にある子どもが置かれている特有の状況に関する研修を受けた専門家を配置するべきである。国は、有害物質濫用、性感染症およびHIVと闘ううえでとりわけ効果を発揮しうる、適切な支援を受けたピアエデュケーションを促進することもできる。路上の状況にある子どもを薬物売買への関与から保護するために、特段の注意が必要である。 [49] 一般的意見15号(到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利、2013年)参照。 [50] 一般的意見4号、パラ34参照。 [51] 一般的意見3号、パラ30参照。 [52] 前掲、パラ20-21、一般的意見4号、パラ11および26、ならびに、一般的意見15号、とくにパラ8、11および28参照。 F.教育、余暇および文化的活動 第28条(教育) 54.アクセスしやすい、無償の、安全な、関連性のある、かつ良質な教育は、子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもの権利を充足することのためにきわめて重要である。教育は、多くの子どもにとって、より広い社会との最後の接続点となっている。国は、路上の状況にある子どもが学校に留まれること、および、良質な教育に対するこれらの子どもの権利が全面的に充足されることを確保するため、親、養育者および家族への支援を含む十分な対応をとるべきである。教育上のさまざまな選択肢が必要であり、これには、市民社会とのパートナーシップに基づいて提供される、「セカンドチャンス教育」、遅れを取り戻すための学級、移動学校、職業訓練(市場調査と連結され、かつ長期的な所得創出支援によるフォローアップがあるもの)および公式な教育へとつながる経路などが含まれる。教員に対しては、子どもの権利および路上の状況にある子どもならびに子ども中心の参加型教授手法に関する研修が実施されるべきである。 第29条(教育の目的)[53] 55.路上の状況にある子どもを対象とする教育の目的は、第29条に合致し、かつ読み書き能力、計算能力、デジタルリテラシー、ライフスキル、子どもの権利教育、多様性への寛容および市民性教育を含んだものであるべきである。このような教育は、保護、発達および参加に対する子どもの権利の充足(子どもの自律の強化、ならびに、リスク状況の切り抜け方の向上を目的とする子どものエンパワーメントを含む)のために、子どもが路上の状況に至ることを防止するために、かつ路上の状況にある子どもにとって、死活的な重要性を有する。国は、学校カリキュラムを通じて、かつ学校に通っていない子どもも対象とするために非公式な教育および路上での教育を通じて、良質なかつ無償の子どもの権利教育およびライフスキル〔教育〕を、すべての子どもに対して普遍的に提供するための措置をとるべきである。 [53] 一般的意見1号(教育の目的、2001年)。 第31条(休息、遊びおよび余暇) 56.委員会は、休息、遊び、余暇ならびに芸術的および文化的活動への参加に対する権利を強調する。路上の状況にある子どもたちは、独自の創造性を発揮して路上のインフォーマルな環境を遊ぶ機会のために活用している [54]。国は、これらの子どもが、たとえば服装規則に関連して公園および遊び場から差別的なやり方で排除されないことを確保する [55] とともに、これらの子どもが創造性を発達させかつスポーツを実践することを援助するための措置(移動式のレクリエーション施設およびスポーツ施設による援助を含む)をとるべきである。 [54] 一般的意見17号〔パラ49〕。 [55] 前掲、パラ49。 G.子どもに対する暴力および特別な保護措置 第19条および第39条(あらゆる形態の暴力からの自由) [56] 57.あらゆる形態の――情緒的、身体的または性的な――暴力は、子どもが路上の状況に至ることの根本的原因のひとつであり、かつその結果のひとつである。路上の状況にある子どもたちの生活ではあらゆる種類の暴力が大規模に広がっており、そのことは子どもたち自身が強調する主要な懸念のひとつとなっている。路上の状況にある子どもを保護するために、具体的かつ即時的な緊急の措置がとられなければならない。一般的意見13号に掲げられたすべての勧告とあわせ、このような措置としては、体罰を含むあらゆる形態の暴力の禁止、家族およびコミュニティとの関係が切断される過程で脆弱な立場に置かれた子どもにアウトリーチするための機構、暴力、差別およびその他の形態の権利侵害を通報するための機構、および、国家的主体であるか非国家的主体であるか、個人であるか集団であるかを問わず暴力の加害者に責任を負わせるための機構などが挙げられる。一部の警察関係者ならびに組織犯罪および麻薬取引に関与している者など、これらの子どもからその安寧に対する脅威として通報された個人に対応するための、特別な機構を設置しなければならないこともあるかもしれない。 [56] 一般的意見3号、パラ19および36-37、同4号、パラ2および23、同8号(体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利、2006年)ならびに同13号。 第34~36条(性的虐待、性的搾取、人身取引その他の搾取) 58.路上の状況にある子どもは性的な暴力および搾取の被害をとりわけ受けやすい状況にあり、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書はこのような子どもにとってとりわけ関連性を有する。路上の状況にある子どもの具体的事情を理解する訓練を受けた専門家によって、ジェンダーに配慮した対応が行なわれるべきである。子どもは、性的搾取または労働搾取を目的とする人身取引を通じて路上の状況に至る場合があり、かつ(または)、路上の状況に至ったとたんに、そのような人身取引および身体部位のための人身取引ならびにその他の形態の搾取の被害を受けやすい状況に置かれる場合がある。 第32条(児童労働) 59.委員会は、各国に対し、路上の状況にある子どもを経済的搾取および最悪の形態の児童労働から保護するため、条約第32条(2)ならびに国際労働機関の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)の規定を実施するよう促す。児童労働に反対する行動は、子どもが教育に移行することを可能にし、かつ子どもおよびその家族に対して十分な生活水準を保障する支援の提供を含む、包括的措置から構成されるべきである。このような措置は、子どもの最善の利益を反映し、かつ当該措置が子どもの生存および発達にいかなる意図しない悪影響も生じさせないことを確保するため、路上の状況にある子どもおよび他の主要な関係者と連携しながら策定することが求められる。物乞いまたは無認可売買を犯罪化することは、結果として商業的性的搾取といった最悪の形態の生存行動をもたらしかねない。路上の状況にある子どもを対象とした、金銭のやりくりのスキルを発達させかつ収入を保護するための貯金制度は有益である。 第37条および第40条(少年司法) 60.路上の状況にある子どもは、標的とされ、犯罪者として扱われ、かつ最終的に少年司法制度または成人司法制度に関与することになる可能性がより高いほか、保釈金を負担できず、かつ身元引受人となる責任ある大人がいない場合もあるために、ダイバージョン、拘禁に代わる措置または修復的司法実践から利益を受けられる可能性はより低い。警察の違法行為――いやがらせ(子どもの所持金および私物を盗むこと、これらの子どもを一斉検挙すること、または、しばしば上官および(または)政治家の命令によってこれらの子どもを恣意的に移動させることを含む)、腐敗、強要(金銭または性交を求めるもの)および身体的、心理的または性的暴力など――は一般的に見られる権利侵害であり、国はこれらの行為を緊急に犯罪化するべきである。委員会は、路上の状況にある子どもを犯罪者扱いし、かつ強制的な施設措置につながる「寛容度ゼロ」政策の適用について懸念を覚える。国は、路上の状況にある子どもの処罰ではなく保護を重視しながら、コミュニティ志向の警察活動を支援するとともに、多文化的な警察機構を採用するべきである。国は、懲罰的ではない修復的な少年司法制度の文脈において、路上の状況にある子どもを含むすべての子どもに対してすべての権利を保障するよう求められる [57]。 [57] 一般的意見6号、パラ61ならびに一般的意見10号、パラ6、8-9および16参照。 第38条(武力紛争) 61.武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書は、路上の状況にある子どもが軍隊または武装集団への徴募の被害を受けやすい立場に置かれているがゆえに、関連性を有する。紛争の結果、子どもたちは、社会的ネットワークが破壊されること、家族がばらばらになること、コミュニティからの避難を余儀なくされること、または動員解除された子どもの戦闘員がコミュニティから拒絶されることを通じて路上の状況に至る可能性がある。防止との関連では、平和教育を含む子どもの権利教育および徴募防止のための取り組みが、路上の状況にある子どもたちに届くようにしなければならない。家族からの子どもの分離を積極的に抑制するために武力紛争の影響を最小限に抑える介入が必要であり、また家族追跡プログラムを優先的に実施するべきである。子どもを対象とする武装解除・動員解除・再統合プログラムにおいては、武力紛争への子どもの関与の原因および結果である路上とのつながりの力学を考慮することが求められる。 VI.普及および協力 普及 62.委員会は、各国が、政府、法制度および行政機関内で、かつ路上の状況にある子ども、親および養育者、職能団体、コミュニティ、民間セクターならびに市民社会に対して、この一般的意見を広く普及するよう勧告する。印刷媒体、インターネットおよび子どもたち自身のコミュニケーション手段(語り聞かせおよびピアエデュケーションなど)を含むあらゆる普及手段が活用されるべきである。そのためには、この一般的意見を関連の言語(手話、点字ならびに障害のある子どもおよび読み書きの水準が限られている子どもにとってわかりやすい形式を含む)に翻訳することが必要になろう。また、文化的に適切なかつ子どもにやさしい版および文字中心ではなく図版中心の版を利用可能とすること、ワークショップやセミナーを開催すること、一般的意見の意味合いおよびそれを最善の形で実施する方法について話し合うための年齢および障害に合わせた支援を行なうこと、ならびに、路上の状況にある子どものためにおよびこれらの子どもとともに働くすべての専門家の養成・研修に一般的意見を編入することも必要である。国はまた、路上の状況にある子どもについての情報を委員会への報告書に記載することも奨励される。 国際協力 63.委員会は、各国に対し、子どもが路上の状況に至ることの防止およびすでに路上の状況にある子どもの保護に関する国際的なコミットメント、協力および相互援助を強化するよう求める。これには、効果的であることがわかっている権利基盤型の実践の特定および共有、調査研究、政策、監視および能力構築が含まれる。協力のためには、各国、国際連合諸機関、地域機関、市民社会組織(子ども主導の団体および研究者団体を含む)、子どもたち、民間セクターおよび専門家グループの関与が必要である。委員会は、これらの主体に対し、防止および対応を目的とする良質な、科学的根拠に基づく支援介入策に関連した、継続的かつハイレベルな政策対話および調査研究を推進するよう奨励する。これには、国際社会、国内、広域行政権および地方の各レベルにおける対話が含まれる。このような協力においては、移住者、難民および庇護希望者ならびに国境を越えた人身取引の被害者/サバイバーとして国境を越える子どもの保護に対応しなければならないこともありうる。 更新履歴:ページ作成(2018年7月29日)。