約 1,992,800 件
https://w.atwiki.jp/kodomonomachi/pages/15.html
子どものまちとは、「架空のまちのなかで子どもが働いて、お給料としてそのまちで使える通貨をもらい、通貨を使ってまちのなかで遊ぶ」ものである。 「子どものまち」「子どもがつくるまち」「キッズタウン」など、いくつかの表記ゆれがある。 まちの名称には「ミニ」「タウン」がつく場所が多い(例:ミニいちかわ,とさっ子タウン)。名称に「子どものまち」等をつける場合もある。 子どものまちのはじまりはドイツにある「ミニ・ミュンヘン」であり、早期には千葉大学の木下勇先生が日本に紹介した。 日本で子どものまちが広まったのは、2000年に中村桃子さんがミニ・ミュンヘンに行き、中村さんの所属しているNPO団体(千葉県佐倉市)に開催を持ちかけたことがきっかけである。日本初の子どものまちは、実質、千葉県佐倉市の「ミニさくら」である。 参考:こどものまち(ウィキペディア)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/287.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの経済的搾取 一般的討議勧告一覧 (第4会期、1994年) 原文:英語 ※一般的討議が行なわれたのは第4会期だが、以下の勧告は第5会期に関する報告書に掲載されたものである。 日本語訳:平野裕二 子どもの経済的搾取に関する勧告 委員会は、第5会期において、とくに児童労働に関連する子どもの経済的搾取(家事労働、子どもの売買、児童買春および児童ポルノのようにインフォーマル部門におけるものを含む)についての一般的討議の際に検討された問題の重要性を認め、かつ委員会と国際連合機関、専門機関およびその他の権限ある機関(とくに非政府組織)との間で交わされた実りのある意見交換を踏まえ、その活動の枠組みのなかでこの現実に引き続き注意を払っていくとともに、この分野における一連の勧告を採択することを決定した。 はじめに 1.子どもの経済的搾取に関する一般的討議は、子どもの権利条約で強調されている、子どもの人権に対する重要なホリスティックアプローチを反映したものだった。この精神にのっとり、子どもの権利委員会は、すべての権利が相互に不可分でありかつ関連していて、そのひとつひとつが子どもの人間の尊厳にとって本質的なものであることを想起する。したがって、条約に掲げられたひとつひとつの権利を実施していく際には、経済的搾取から保護される権利の場合にそうであるように、子どもが有する他のすべての権利の実施およびそれらの権利の尊重を考慮するべきである。 2.委員会はさらに、締約国が、条約に基づき、条約で認められているすべての権利を、自国の管轄下にあるすべての子どもに対し、いかなる種類の差別もなく尊重しかつ確保すること(第2条)、その目的の達成のためにあらゆる適切な措置をとること(第4条)、および、とられるすべての行動において子どもの最善の利益を第一次的考慮事項と位置づけること(第3条)を約束していることを想起する。さらに、子どもに影響を及ぼすすべての事柄について、子どもの意見が正当に重視されるべきであり、かつ、子どもに対し、自己の生活に影響を及ぼすいかなる意思決定過程にも参加する機会が与えられるべきである(第12条)。 3.この一般的枠組みは、当然、子どもの経済的搾取の状況においても適用される。ここで条約は、他の場合と同様に、締約国に対し、十分な法的枠組みおよび必要な実施機構を条約の原則および規定に一致する形で確立することを通じた行動をとるよう求めているのである。 4.そのような措置は、経済的搾取の状況およびそれが子どもの生活に及ぼす有害な影響の防止を強化することにつながるであろうし、子どもの保護の制度の強化を目的としてとられるべきであるし、かつ、いかなる形態の経済的搾取の被害を受けた子どもについても、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を、子どもの健康、自尊心および尊厳を醸成する環境のなかで促進することにつながるであろう。 5.条約は、その報告制度(条約第2部参照)を通じ、締約国が条約の実施に関して達成された進展の定期的な評価を確保することの重要性も強調している。締約国は、このような監視活動により、自国の法律および政策を定期的に見直し、かつさらなる行動またはその他の行動が必要とされている分野に焦点を当てることができるようになる。そこで委員会は、子どもの状況の改善における報告制度の関連性を想起するとともに、各国、国際連合機関、専門機関および他の権限ある機関に対し、経済的搾取からの子どもの保護の枠組みのなかで以下の一連の勧告を検討するよう慫慂する。 (a) 委員会は、子どもの権利の分野で活動するすべての関連の主体による包括的かつ協調的な行動を通じて初めて、経済的に搾取されている子どもに関わる防止、保護およびリハビリテーションの政策を向上させ、かつその成功を確保することが可能になることを認識する。このような理由から、委員会は、国レベルおよび国際的レベルの双方における調整の重要性および必要性を強調するものである。(i) 委員会は、これとの関連で、政策を調整しかつ子どもの権利条約の実施を監視するための、経済的搾取からの保護の分野で具体的な権限を有する国家的機構の設置を勧告する。a. 国レベルで活動するさまざまな権限のある機関によって構成される(子どもの権利条約に関する国家委員会などの)このような調整機構は、条約の実施に対する総合的かつ学際的なアプローチを確保し、かつ発展する活動の効果的な相互作用および補完性を促進するのに適した立場にある。さらに、あらゆる関連の情報の収集を容易にし、現実の体系的かつ正確な評価を可能ならしめ、かつ子どもの権利の促進および保護のための新たな戦略(経済的搾取からの保護の分野におけるものを含む)の検討への道を開くこともできる。 6.このような調整機構は、協力を奨励すべき{調整非政府組織](労働者団体および使用者団体を含む)調整の活動にとっての重要な参照窓口にもなる。実際、世界人権会議でも認められたように、このような組織は、とくにアドボカシー、教育、研修またはリハビリテーションの分野――あらゆる形態の経済的搾取から子どもを保護するうえでもきわめて重要な分野――で、条約の効果的実施において重要な役割を担うのである。 (ii) 委員会は、子どもの権利条約が国際協力に必要不可欠な役割を与えていることを想起する。委員会はさらに、条約の実施を支えるために国際的な協力および連帯を促進する必要があること、および、国際連合システムにおいて子どもの権利が優先的課題として位置づけられるべきであることが、世界人権会議において認められたことを想起するものである。a. そこで委員会は、各国に対し、とくに二国間および地域間のレベルで、子どもの権利の促進のための協力および連帯を強化する方策を検討するよう奨励する。 b. 委員会はまた、関連の国際連合機関および専門機関、国際金融機関ならびに国際開発機関に対し、あらゆる形態の経済的搾取からの子どもの保護の分野におけるものも含む活動の調整および相互作用を増進させることも奨励する。 c. 委員会はさらに、国際連合機関および専門機関に対し、それぞれの権限にしたがい、子どもの人権および状況についての検討および監視を恒常的に行なうよう奨励する。この枠組みにおいて、委員会は、技術的な助言および援助のプログラムにとって、条約が示唆に富む法的枠組みとして決定的関連性を有していることを想起するとともに、委員会が、国際連合システム全体の行動における子どもの権利についての中心的機関として引き続き果たしていこうと考えている触媒としての役割を再確認するものである。 (b) 委員会は、経済的搾取の状況の防止を確保し、かつ経済的搾取の栄養を受けた子どもの保護およびリハビリテーションを図るために、情報および教育が不可欠な重要性を有することを強調する。(i) この枠組みにおいて、委員会は、締約国が、この条約の原則および規定を、適切かつ積極的な手段により、大人および子どもの双方に対して同様に広く知らせることを約束していることを想起する(第42条)。a. この目的のため、委員会は、締約国が、子どもが自己の権利(学習する権利、遊ぶ権利および休息をとる権利を含む)、自己が享受することのできる保護措置、および、経済的搾取の状況に置かれた場合に――健康にとって有害であり、調和のとれた発達を妨げ、教育を阻害し、または犯罪活動への関与につながる活動の場合などのように――直面するリスクについて認識できるようにすることを目的として、子どもをとくに対象とした、条約に関する幅広い広報キャンペーンを開始するよう勧告する。 b. 同様に、条約に関する意識啓発および理解の深化を図る目的、とくに子どもの尊厳の尊重を確保し、差別的な態度を防止し、かつ経済的搾取の状況からの子どもの効果的保護を達成する目的で、公衆一般を対象とする広報キャンペーン(家庭およびコミュニティのレベルにおけるものならびに労働者および使用者を対象とするものを含む)が構想されるべきである。子どもとともにまたは子どものために働く特別な専門家集団(教員、法執行官、裁判官およびソーシャルワーカーを含む)を対象とする研修も開催されるべきであり、このような研修は、子どもに対する差別ならびに周縁化およびスティグマを防止し、かつ子どもの視点を正当に考慮するよう奨励することに資するであろう。 c. これらのさまざまな活動は、政府機関および非政府機関と緊密に協力しながら発展させられるべきであり、かつ、そこではメディアが重要な役割を果たすことになろう。このような活動は、違法かつ秘密であることが多い経済的搾取の状況に光を当てること、ならびに、このような状況に対する公衆の無関心および冷淡さを克服することに資するはずである。このような活動は、さらに、現在存在する問題の規模を理解し、かつ、これらの問題に立ち向かっていくために必要な措置の採択を検討することも可能にしてくれるだろう。 (ii) 委員会は、子どもの経済的搾取の状況に対抗するための不可欠な防止手段のひとつである教育の重要性を強調する。そこで委員会は、とくに初等教育をすべての子どもに対して義務的かつ無償とすることにより、教育を正当に重視するよう勧告するものである。さらに、教育は、子どもの権利条約で認められているように、子どもの人格、才能および能力の全面的発達を確保するための決定的手段として、また十分な情報に基づく自由な選択を行なう平等な機会を享受しつつ、社会において責任ある生活を送るための準備をしながら子ども時代を経験するための機会を子どもに与える好機として、構想されるべきである。 委員会はまた、条約を、学校カリキュラムの枠組みのなかで、人権のための教育を意味のある形で例示したものとして、また子ども団体の設立または支持等も通じて学校生活および社会生活への子ども参加を奨励するためのインセンティブとして位置づけることも勧告する。合法的に就労している子どもの場合、条約第32条にも照らして、柔軟な教育制度が実施されるべきである。 (c) 経済的搾取からの子どもの保護の分野において、委員会は、子どもは家庭および社会における尊重および連帯の利益を与えられるべき人間存在であると考える。(i) 性的搾取または労働を通じての搾取の場合、委員会は、子どもは保健、教育および発達の観点から特別の保護の利益を与えられるべき被害者であると考える。 (ii) いかなる場合にも、以下の活動は厳格に禁じられなければならない。子どもの発達を脅かす活動または人間の価値および尊厳に反する活動。 残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い、子どもの売買または隷属状況をともなう活動。 子どもの調和のとれた身体的、精神的および霊的発達にとって危険もしくは有害である活動、または子どもの将来の教育および訓練を脅かしそうな活動。 とくに被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた社会的集団との関連で差別をともなう活動。 子どもの権利条約第32条第2項で言及されている最低年齢、および、とくにILOが勧告している最低年齢に満たないすべての活動。 薬物または禁制品の取引など、法律により処罰される犯罪行為のために子どもを使用するすべての活動。 (iii) 子どもの権利条約第32条にしたがい、すべての子どもは経済的搾取から保護される権利を有する。締約国は、子どもの最善の利益を考慮しながら、子どもがいかなる形態の搾取からも法的に保護されることを確保する目的で、基準の策定または現行法の改正を行なわなければならない。締約国は、あらゆる形態の就労(家庭内および農業部門における就労ならびにインフォーマルな就労を含む)を考慮しながら、子どもの保護の確保を目的としたあらゆる立法上、行政上その他の措置をとるよう慫慂される。 (iv) 締約国はまた、経済的搾取の結果、深刻な身体的および道徳的危険にさらされている子どものリハビリテーションを確保するための措置もとらなければならない。これらの子どもに対して必要な社会的および医学的援助を提供すること、ならびに、子どもの権利条約第39条に照らし、これらの子どものための社会的再統合プログラムを構想することが不可欠である。 付属文書IV:子どもの経済的搾取に関する一般的討議 国際連合・子どもの権利委員会は、国際連合諸機関および非政府組織の参加を得て、1993年10月4日、子どもの経済的搾取に関する一般的討議を開催した。委員会はその後、討議のフォローアップ方法を提案するための作業部会を任命した(CRC/C/20、パラ196参照)。作業部会のメンバーに任命されたのは、ルイス・A・バンバレン・ガステルメンディ氏、アキラ・ベレンバーゴ氏、トマス・ハマバーグ氏およびマルタ・サントス・パイス氏である。 勧告 1.一般的討議の記録の拡大版として一件書類がまとめられるべきである。そこには、1993年10月7日に委員会が採択した声明(前掲、付属文書VI)、1993年10月4日の討議の議事要録、委員会を代表して行なわれた発言の書面(前掲、付属文書V)、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する国際連合特別報告者が行なった発言の書面、および、この分野における現在の主要な政策文書(とくに、国際連合人権委員会が決議1993/79で採択した「児童労働の搾取を撤廃するための行動計画」および同人権委員会が決議1992/74で採択した「子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止のための行動計画」)を含めることが求められる。一件書類の作成および配布に際してはILOとの協力が希望されるところである。 2.これらの文書は、カバーレターを添えて、子どもの権利条約の全締約国、1993年10月7日の委員会の声明で挙げられている諸機関(世界銀行、IMF、UNDP、UNESCO、UNICEF、WHO、ILO、インターポール、および、NGOコミュニティの諸代表)およびこの分野で活動してる他のすべての権限ある機関に対して送付されるべきである。 3.WHOおよびIMFへの書簡では、経済改革プログラムにおける子どもの権利の保護について、両機関と委員会との討議を開催するべきである旨の提案をあらためて繰り返すことが求められる。 4.UNESCOへの書簡では、同機関が、今後の活動プログラムにおいて、学校教育を児童労働(子どもの性的搾取を含む)の効果的な代替的選択肢としていくことを重視するよう勧告することが求められる。 5.ILOへの書簡では、同機関が実施している有害な児童労働撤廃のためのプログラムの重要性、ならびに、最低年齢および就労条件に関するILOの基準(とくにILO第138号条約)の批准および効果的実施の重要性を強調することが求められる。 6.WHOへの書簡では、到達可能な最高水準の健康の享受ならびに疾病の治療および健康の回復のための便宜に対する子どもの権利の重要性を強調することが求められる。 7.すべての書簡で、子どもの権利条約およびこの分野で行なわれている関連のプログラム(児童労働の搾取の撤廃ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止を目的とする国際連合の両行動計画など)の重要性を強調することが求められる。 8.子どもの権利委員会は、子どもの権利の分野で活動する国際連合諸機関(子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する人権委員会特別報告者、ならびに、差別防止およびマイノリティ保護に関する小委員会および現代的形態の奴隷制に関する同小委員会の作業部会を含む)との効果的な交流および協力を確保することに対して委員会が付与している重要性を踏まえ、条約の実施に関する報告書の検討の枠組みのなかで締約国と行なったこの問題に関する議論について、これらの機関に恒常的に情報を提供していくことを決定する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月17日)。
https://w.atwiki.jp/kodomonomachi/pages/13.html
※2018/02/26追記 最新版を作成中です。こちらからご覧ください(別ウインドウで開きます) ▼各都道府県に飛ぶ 北海道/青森県/岩手県/秋田県/宮城県 栃木県/千葉県/埼玉県/東京都/神奈川県 富山県/長野県/静岡県/岐阜県/愛知県 滋賀県/三重県/京都府/大阪府/奈良県/兵庫県 島根県/広島県/高知県/福岡県 不明/番外編 北海道(2つ) ♪オホーツクMiNiタウン(北海道北見市 他) ♪こどものまち ミニさっぽろ(北海道札幌市) 青森県(2つ) ♪はちのへ こどものまち(青森県八戸市) ♪ミニ ひろさき(青森県弘前市) 岩手県(1つ) ♪ミニひろの(岩手県洋野町)秋田県(1つ) ♪しごとーーいあきた(秋田県八郎潟町)宮城県(3つ) ♪せんだいこどものまち(宮城県仙台市) ♪piccoliせんだい(宮城県仙台市) ♪こどものまち・いしのまき(宮城県石巻市) 栃木県(2つ) ♪あそびのまち(栃木県小山市) ♪ミニかぬま(栃木県鹿沼市) 千葉県(14つ) ♪こどものまちCBT(千葉県千葉市) ♪はなみがわCBTこどものまち(千葉県千葉市) ♪おゆみ野cafeこどものまち(千葉県千葉市緑区) ♪スマイル・グリーン・シティ(千葉県千葉市緑区) ♪わかば CBT こどものまち(千葉県千葉市若葉区) ♪吉岡こどもまちづくりプロジェクト(千葉県四街道市) ♪ミニ☆いちかわ(千葉県市川市) ♪ミニいちかわ(千葉県市川市) ♪キッズビジネスタウンいちかわ(千葉県市川市) ♪ミニさくら(千葉県佐倉市) ♪ピノキオマルシェ(千葉県柏市) ♪キッズタウンNARITA(千葉県成田市) ♪ミニまつど(千葉県松戸市) ♪ラーバンこどものまち(千葉県印西市) 埼玉県(11つ) ♪こどもがつくる街Coみなみ(埼玉県さいたま市南区) ♪ミニ北区(埼玉県さいたま市) ♪ミニ桜区(埼玉県さいたま市) ♪ミニ大宮(埼玉県さいたま市) ♪ミニ見沼区(埼玉県さいたま市) ♪ミニさいたま(埼玉県さいたま市) ♪ミニまつぶし(埼玉県松伏町) ♪ミニかわごえ(埼玉県川越市) ♪ミニあさか(埼玉県朝霞市) ♪子どものまち・ましがるつ(埼玉県鶴ヶ島市) ♪ミニそうか(埼玉県草加市) 東京都(8つ) ♪こどものまちをつくろう(東京都新宿区) ♪ミニたちかわ(東京都立川市) ♪ミニこがねい(東京都小金井市) ♪キッズタウンいたばし(東京都板橋区) ♪児童館・こどもシティ(東京都八王子市) ♪むさしのミニタウン(東京都武蔵野市) ♪日本橋キッズタウン ~わくわく!ワーク体験~(東京都中央区) ♪キッズハッピーよこ町(東京都台東区) 神奈川県(7つ) ♪ミニヨコハマシティ(神奈川県横浜市) ♪ミニたまゆり(神奈川県川崎市) ♪ミニひらつか(神奈川県平塚市) ♪エンジョイスマイルさがみ(神奈川県相模原市) ♪ミニさがみはら(神奈川県相模原市) ♪たなっちょタウン(神奈川県相模原市) ♪ミニあやせ(神奈川県綾瀬市) 富山県(1つ) ♪未来ぽ~ろ(富山県富山市) 長野県(2つ) ♪あそびのまちin松本(長野県松本市) ♪あそびのまちin東信(長野県真田町) 静岡県(5つ) ♪にじの子タウン(静岡県伊豆の国市) ♪ミニしずおか(静岡県静岡市) ♪こどもクリエイティブタウンま・あ・る(静岡県静岡市) ♪ミニはままつ(静岡県浜松市) ♪KIDS TOWN ぼくらのまちのはら(静岡県牧之原市) 岐阜県(5つ) ♪ぎふマーブルタウン(岐阜県岐阜エリア) ♪西野マーブルタウン(岐阜県西野エリア) ♪岐大祭マーブルタウン(岐阜県岐阜市) ♪羽鳥子どものまち(岐阜県羽鳥市) ♪かさまつ子どものまち「ミニかさ横丁」(岐阜県笠松町) 愛知県(21つ) ♪子ども商店街(愛知県安城市) ♪あいちマーブルタウン(愛知県三河エリア) ♪エコットキッズタウン(愛知県豊田市) ♪こどものまち・みずほ(愛知県名古屋市) ♪ピンポン横丁(愛知県名古屋市) ♪キッズタウンなかむら(愛知県名古屋市) ♪だがねランド(愛知県名古屋市) ♪なごや☆子どもCITY(愛知県名古屋市) ♪守山児童館『こどものまち』(愛知県名古屋市) ♪こどものまち☆たかおか(愛知県名古屋市) ♪こどものまち 前津児童館(愛知県名古屋市) ♪子どもCity in zoo(愛知県名古屋市) ♪こどものまち・デザイン ちくちく(愛知県名古屋市) ♪なごみん横丁(愛知県岡崎市) ♪マーブルタウン(愛知県岡崎市) ♪愛知学泉大学マーブルタウン(愛知県岡崎市) ♪こどものまち in ちた(愛知県知多市) ♪もりもりタウン(愛知県丹羽郡) ♪クローバーズタウン(愛知淑徳大学版マーブルタウン)(愛知県長久手市) ♪愛知学院大学マーブルタウン(愛知県日進市) ♪ドリームタウン(愛知県安城市) 滋賀県(1つ) ♪こどものまち おおつ(滋賀県大津市) 三重県(1つ) ♪こども四日市(三重県四日市市) 京都府(4つ) ♪ミニ京都(京都府京都市) ♪宇多野(京都市宇多野) ♪東山区民ふれあいこどものまち(京都府京都市) ♪チャキッズタウン(京都府京都市) 大阪府(8つ) ♪ミニ大阪(大阪府大阪市) ♪ミニ☆大阪(大阪府大阪市) ♪ミニ★シティ(大阪府大阪市) ♪KisdCity!天王寺(大阪府大阪市) ♪ミニすみのえ(大阪府大阪市) ♪ミニたいしょう(大阪府大阪市) ♪ミニひがし(大阪府堺市) ♪ミニさかい(大阪府堺市) 奈良県(1つ) ♪ミニまほろば(奈良県橿原市) 兵庫県(3つ) ♪ミニたからづか(兵庫県宝塚市) ♪こどものまち高砂(兵庫県高砂市) ♪こどものまち東播磨(兵庫県) 島根県(1つ) ♪海士人村(あまんちゅむら)(島根県海士町) 広島県(1つ) ♪広島キッズシティ(広島県広島市) 高知県(2つ) ♪とさっ子タウン(高知県高知市) ♪ミニ香北町(高知県香北町) 福岡県(2つ) ♪ミニふくおか(福岡県福岡市) ♪子ども金印ランド(福岡県志賀島) 不明(2つ) ♪ながれランド ♪ぷらざタウン 番外編(1つ) ♪リトルトーキョー(東京都江東区) 計 112 つの子どものまちが存在しています(2017/05/03現在)▲ページのトップへ
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/313.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの権利と環境 一般的討議勧告一覧 (第73会期、2016年) 原文:英語 日本語訳:平野裕二 報告書目次 1.はじめに 2.子どもの権利と環境の位置づけ関連性 時宜を得た討議 3.法的枠組みの外観人権と環境:変化しつつある風景 CRC〔子どもの権利条約〕と環境 子どもの環境権の定義 子どもの権利の文脈における「環境」の意味 4.子どもの権利と環境の関係の主要な要素4.1 環境危害からの子どもの権利の保護 健康的な環境の確保義務 環境保健に関わる課題 欠陥 持続的な環境の確保義務 課題 政策上の欠陥 子どもにやさしい遊び環境の確保 自然界とのつながりの確保 4.2 変革の主体としての子ども 環境情報へのアクセス欠陥 環境影響評価 環境教育環境の文脈における権利基盤型教育の要素 欠陥 環境に関わる事柄への参加意思決定の機会へのアクセスの欠如 障壁 司法へのアクセス原告適格 立証責任 時効 金銭的負担 4.3 横断的問題としての脆弱性および差別 5.責任および義務政府子どもの権利アプローチの欠如 協力および調整の欠如 能力構築および研修 企業セクターの役割企業セクターの規制 環境の文脈における子どもの権利についての相当の注意(デューディリジェンス) 委員会の役割 NGO、専門家および学界を含む他の関連の主体の役割 6.勧告 7.結論 6.勧告 各国が自国の政策およびプログラムで考慮すべき論点を特定するために子どもの権利に関する意識啓発および議論を行なうフォーラムとしてのDGD〔一般的討議の日〕の目的に照らし、かつ、環境との関係で子どもの権利をどのように保護していけばよいかについての指針を他の関連の主体に提示するため、委員会は以下の勧告に賛同するものである。以下の勧告は、第一次的に義務を負う主体である国に主として宛てられたものであるが、企業セクター、国際機関、市民社会および委員会自身を含む他のステークホルダーの役割も検討している。 国 一般的勧告 国は、子どもの権利の享受を妨げる環境危害から子どもを保護しなければならない。子どもの特有の脆弱性および社会における社会的地位は、政府および政策立案担当者に、このような危害から子どもを効果的に保護し、子どもの力量を強化し、子どもの意見および能力を考慮に入れ、かつ実効的なおよび時宜を得た救済措置にアクセスできるようにするために持続的な努力を行なう、いっそうの義務を課すものである。 国は、子どもたちが有する環境関連の権利を、現在および将来の世代の子どもたち全員がそれを享受しうるような持続可能なやり方で実現することにより、これらの権利を確保するべきである。 国は、すべての子どもが健康的かつ持続可能な環境および自然に平等にアクセスできることを確保しなければならない。国は、環境に関わる不公正の結果として生じている複合的な脆弱性要因にさらされている子ども(女子、障害のある子ども、貧しい子どもおよび先住民族集団またはマイノリティ集団に属する子どもを含む)の権利に対し、具体的に注意を払わなければならない。 国は、国外の子どもの権利に影響を及ぼす越境環境危害を引き起こしまたは助長することを防止するための措置をとるべきである。 立法および政策 国は、現在および将来の子どもたちの権利を十分に反映した持続可能な開発の道筋をとることを可能にするような法的および制度的環境を発展させるべきである。環境に関する国内の法律、政策および行動ならびに国際的取り決め(たとえば国ごとに決定する貢献〔Nationally Determined Contributions〕/国別緩和・適応計画など)においては、子どもの権利に関連する措置を明示的に含めることが求められる。翻って、子どもの権利に関する法律、政策および行動においては環境リスク要因を明示的に考慮するべきである。 国は、たとえば気候変動、生後早期の曝露または大規模開発プロジェクトのための保障措置に関わる関連の法律および政策の立案、実施および監視に際し、子どもの最善の利益を第一次的に考慮すべき問題として考慮するべきである。 企業セクターの規制 子どもの権利を保護するための十分な法的および制度的枠組みを採択する国の義務は、企業によって引き起こされる危害にも及ぶ。とりわけ、国は、企業に対し、その操業においておよびサプライチェーン全体を通じて、環境悪化が子どもの権利に及ぼす有害な影響との関連で相当の注意(デューディリジェンス)を払うことを求めるべきである。 環境の文脈におけるビジネスの影響を考慮に入れながら、ビジネスと人権に関する国家的行動計画に子どもの権利を統合するべきである。 国は、子どもの権利に合致した、よりクリーンな、より環境にやさしい企業実践への移行を支える政策および計画(たとえば都市再開発計画)を策定するよう奨励される。 国は、自ら範を示すとともに、大規模公共部門契約に入札する事業者に対し、自社の活動および傘下のサプライチェーンの活動が環境への影響との関連で子どもの権利に悪影響を及ぼさないことを確保するためにとろうとしている措置の開示を求めるよう奨励される。 実施および説明責任 国は、環境危害から子どもを保護することを目的とする規則を厳格に実施し、執行しかつ監視するとともに、この点に関わる監督機関を強化するべきである。国家的な人権監視機構は、健康的かつ持続可能な環境に関連する子どもの権利を考慮に入れることが求められる。 国は、環境危害から子どもの権利を保護するための部門横断型の行動をとるとともに、保健専門家、環境部門、教育部門、労働部門、都市計画部門、運輸部門、採取部門、エネルギー部門および農業部門を含む関係者間の協力および調整を増進させるべきである。 国は、関連の多国間環境協定および環境政策枠組みを実施する際、自国が負っている子どもの権利関連の義務を編入するべきである。これには、子どもに特化した運用プログラム、ツール、技術的援助および能力構築資料の開発も含めることが求められる。 国は、環境の文脈における子どもの権利の保護のために十分な資源を用意するべきである。 報告 国は、委員会に対する定期報告書に、環境危害が子どもの権利の全面的享受にもたらす影響、および、子どもの権利がそのような危害から保護されることを確保するためにとっている措置を盛りこむべきである。このことは、環境に関わる関連の国際的枠組みのもとで自国がとる行動の文脈で子どもの権利を考慮するために行なっている努力についての報告にも、適用することが求められる。 国はまた、UNFCCC〔国連・気候変動枠組条約〕〔の締約国会議〕に対する環境報告(たとえば国別報告書、適応措置報告など)、化学物質および廃棄物に関する国際的協定ならびに生物多様性条約およびSDG〔持続可能な開発目標〕に基づく環境関連のターゲットの実施に関する報告においても、子どもの権利を考慮するべきである。 健康的な環境の確保 国は、具体的な法律および効果的な企業規制を発展させること等を通じて子ども時代における環境危害への曝露を防止し、かつ治療のための保健ケアへのアクセスを確保するために効果的措置をとるべきである。締約国は、子どもの環境保健上のリスクが不確実である場合には予防的アプローチをとることが求められる。子どもにとって有害である可能性があるすべての毒性化学物質の規制に関して、諸国の国際協力が勧告されるところである。 国は、WHO〔世界保健機関〕その他の関連の国際機関が定めた環境保健関連の基準、指標、定義および年齢分類を実施するために――子どもの権利および最善の利益を指針としながら――いっそう積極的な措置をとるべきである。 国は、子どもの環境保健をモニタリングするための国家的計画を策定し、リスク評価を実施し、優先的懸念事項(被害を受けやすい状況に置かれた子どもを含む)を特定するとともに、これらの優先的懸念事項に対処するための措置(たとえば汚染された土地の時宜を得た除染)を策定しかつ実施するべきである。国は、保健専門家が、環境危害に関連する健康上の影響の診断および治療に関する研修を受けることを確保するよう求められる。 国は、働く子どもが環境リスク要因にさらされる危険な労働実務の禁止および解消を図り、より安全な代替的選択肢を促進し、かつ影響を受けている子どものモニタリングを確保するべきである。国は、生じたいかなる危害についても子どもが必要な治療および補償を受けることを確保するよう求められる。国はまた、安全な仕事に対する親(とくに生殖適齢の女性および女子)の権利も保護するべきである。 持続可能な環境の確保 国は、生物多様性、生態系サービス および天然資源の保護のための、国際的な基準および計画に合致したアプローチおよび戦略の採択および実施ならびに法的枠組みの確立を進めるとともに、現在および将来の世代の子どもたちが生命、生存および発達に対する権利、意見を聴かれる権利、健康、食料および水に対する権利、文化的生活に参加する権利、十分な生活水準、情報および教育に対する権利を行使できることを確保するべきである。とくに国は、世界的な気候変動との関係で子どもの権利を尊重しかつ保護する自国の義務を認識するよう求められる。このような保護のためには、利用可能な最善の科学的知見を指針としながら、温室効果ガスを緊急かつ果敢に削減することが必要である。 国は、すべての子どもおよびその家族ならびにコミュニティが、天然資源および健康的な環境の利益に対してならびに生態系に対して 公平にアクセスできることを確保するべきである。国は、自分たちの土地に対して緊密な物質的および文化的紐帯を有しており、かつ環境悪化の影響をもっとも受けやすいコミュニティ出身の子どもの権利を保護するため、いっそうの取り組みを行なうよう求められる。 子どもにやさしい遊び環境の確保 自治体の計画においては、自分たちのコミュニティで遊び、かつ主体性および自立性を発揮するすべての子どもの自由を増進させる環境にアクセスできるようにすることが優先的に取り組まれるべきである。これには、家族住宅街の道路または学校外で遊びに利用されている通りで自動車の通行よりも歩行者または自転車利用者が優先されるゾーンを創設すること、インクルーシブな公園および遊び場を設置すること、手入れされた緑地、空き地、「自然のままの空間」(wildlands)または自然にアクセスできるようにすること、ならびに、全般的な「歩きやすさ」(walkability)を高めることなどが含まれうる。さらに国は、子どもに関連すると一般的に認識されていない分野における規制を、すべての環境が遊びおよび子どもにとってやさしいものとなることの確保に向けて誘導していく必要性を考慮するべきである。 自然界とのつながりの確保 国は、環境保護、都市計画、保健、教育等の分野における政策、戦略および行動を通じて、子どもが、健康および発達に対する権利の基底的な決定要因のひとつである自然と相互作用できることを確保するための措置をとるべきである。 環境に関する情報および調査研究 国は、人権および自由の享受にとって中心的重要性を有する、環境リスクについて知る子どもおよびその親の権利を承認するとともに、子どもの権利と環境に関連する事柄についての十分なかつ年齢にふさわしい情報が利用できることおよびこのような情報にアクセスできることを確保するべきである。 国は、子ども時代における環境危害への曝露についての調査研究およびモニタリングのための努力を、すべての国で、かつとりわけ開発途上国およびハイリスク状況について、強化するべきである。これとの関係で、国はとくに以下の措置をとることが求められる。モニタリングおよび政策関連の調査研究において、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)が平等に代表されることを確保すること。国として、調査研究およびモニタリングに子どもおよび親の積極的関与を得るためのインクルーシブなプログラムを立案することが勧告される。 子どもの脆弱性および権利ならびに実際の生活条件(「曝露実態」)を考慮しながら、確固たる曝露関連データを収集すること。 環境危害と子どもの権利への影響との連関性を経時的に探究する縦断的研究、ならびに、発達の臨界時期における曝露を把握する、妊婦、乳幼児および子どもについてのその他の研究を実施すること。 子どもの権利と生物多様性、生態系または自然へのアクセスとの関連のような、十分に探究されていない論点に関する情報の生成および収集を進めること。 個人情報の保護を確保しつつ、子どもの健康および経時的発達を左右する環境上の要因および社会的要因に関連する情報の統合を促進すること。 影響評価 国は、環境に影響を及ぼす可能性が高い法律、政策、行動計画(戦略的環境評価)およびプロジェクト(環境影響評価)の事前評価に際し、子どもの権利を明示的に考慮するべきである。これには、子どもたちをステークホルダー集団として認めること、子どもの権利、リスクおよび脆弱性を十分に考慮すること、ならびに、現実の影響および潜在的影響に対応することが含まれる。 環境教育 国は、CRC第29条第1項(e)に掲げられているように、自然環境の尊重の発達を促進する義務を有する。この目的のため、国は、子どもの権利の促進および若い市民の教育を目的として、子どもたちの意見および提案を包摂した具体的政策を策定するべきである。教員の養成および研修のプログラムには、権利を基盤とする環境教育の意味するところを十分に反映させることが求められる。 国は、早期の段階から、すべての教育段階におけるCRC第29条第1項(e)の意味のある実施に取り組むべきである。これとの関連で、国は、野外活動およびフィールドトリップのような非公式な教育手段を考慮するとともに、関連するときは伝統的知識を包摂することが求められる。カリキュラムは、環境の急速な変化に対応できるよう、頻繁に改訂されるべきである。国は、子どもの学習プロセスのきわめて重要な要素のひとつとして、また市民的参加を構成する社会的実践の実習として、環境保護への子どもの直接の関与を促進するよう奨励される。 国は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のSDG4(ターゲット7)およびSDG13(ターゲットb)、UNFCCC第6条/パリ協定第12条(気候対策エンパワーメントのための行動)ならびに他のMEA〔相互環境協定〕に基づく教育上の措置(たとえば生物多様性に関する愛知ターゲット1)の実施および報告に際し、CRC第29条第1項(e)を考慮するべきである。 締約国は、定期審査の際、委員会に対し、自国の全国的教育制度においてCRC第29条第1項(e)を実施するためにどのような具体的措置をとっているかについての情報を提供するべきである。その際、国は、これらの措置によって、環境に関わる自己の権利および責任に関する子どもたちの意識がどのように高まり、環境管理倫理がどのように浸透し、子どもたちが環境保護の主体となるために必要なスキルがどのように伝達され、かつ、すべての生徒が主体的に関与する平等な機会がどのように促進されているかを明らかにするよう求められる。 環境関連の意思決定における表現の自由および参加 国は、環境問題の影響に関する議論に参加する機会がすべての子ども(低年齢の子どもを含む)に対して与えられることを確保し、かつ、あらゆる段階の環境政策立案に子どもたちの意味のある参加を組みこむべきである。 環境関連の参加ならびに子ども同士の共有および学習のための、子どもにやさしい具体的な場の設置を検討するべきである。たとえば、国は、子どもたちが、UNFCCC、CBD〔生物多様性条約〕等のCOP〔締約国会議〕における意思決定において意見を聴かれる権利を有するステークホルダーとして認められ、かつ、気候変動適応および緩和、災害リスク削減または自然保護に関連するプロジェクトの立案および実施に積極的に関与することを可能にする、革新的な機構を発展させることが求められる。 国は、環境権擁護活動家に対して自由な活動を可能にする安全な環境を提供するとともに、18歳未満の活動家に対してはいっそうの配慮義務を負うべきである。 環境関連の事柄における司法へのアクセス 国は、健康的な環境に対する裁判適用可能な権利および世代間衡平の原則を国内法に掲げるよう奨励される。 国は、子どもが、環境危害を理由とする権利侵害について司法および効果的な救済(汚染された土壌の浄化、未然防止措置および予防的措置、必要な医療的および心理的ケアならびに十分な補償を含む)にアクセスできることを確保するべきである。これとの関係で、国は、子どもに関わる環境危害についての苦情申立てを妨げる障壁を取り除くため、立証責任および証拠規則の調整を行なうべきである。 国は、大規模な環境被害の影響を受けるすべての子どもに救済を提供しうるが、影響を受けたすべての子どもが手続に直接関与することは要求されない、集団訴訟および公益訴訟の機構(環境事件に関するものを含む)を確立するべきである。 国は、NGOおよび子どもたちが、環境権侵害の影響を受ける子どもたちの利益のための法的手続において、かつ将来の世代を代表して、訴訟を提起しかつ介入する原告適格を認められることを確保するべきである。 国は、環境との関連で子どもの権利および利益を保護する法的代理が行なわれるようにするための、高い専門性および応答性を備えた司法部門の専門家、市民社会グループおよび法的機構を支援するべきである。国は、司法へのアクセスの向上を促進するため、環境裁判所の設置を検討するよう求められる。 国は、国外の環境上の影響(当該国と当該行為との間に合理的な結びつきがあるときは域外の私企業によるものを含む)によって権利を侵害された子どもおよびその家族に対して救済を提供する、効果的な司法的および非司法的機構へのアクセスを可能とするべきである。 国は、国内人権機関および(または)子どもオンブズパーソンに対し、子どもの権利の妨げとなる環境問題についての苦情を受理する権限を委ねるべきである。 国際機関 環境問題に関する活動を行なっている国際機関は、その政策および技術的援助において、国連システム全体(UNEP〔国連環境計画〕、ILO〔国際労働機関〕、WHO、UNFCCC、HLPF〔ハイレベル政治フォーラム〕およびUNDP〔国連開発計画〕を含む)を通じて子どもの権利の主流化を図るとともに、関連の主体間の協力および調整を増進させるべきである。 ユニセフに対しては、ユニセフ自身のプログラムおよび活動の主流に環境上の考慮を位置づけるための努力を強化すること、環境関連のプログラムおよび活動において子どもの権利の視点を主流化する適切な政策の形成に関して国内的、地域的および国際的レベルで諸国を援助すること、望ましい実践を支援しかつ強調すること、ならびに、委員会に対する国別報告書において、環境危害が子どもの権利に及ぼす影響についての情報を提出することが奨励される。 子どもの権利委員会 委員会は、環境問題に対する子どもの権利基盤アプローチの諸要素の定義の確立に関して締約国に確固たる指針を提示するとともに、子どもの権利と環境との関係に関する一般的意見の作成を検討するべきである。その際、委員会はとくに以下の対応をとることが求められる。子どもの権利条約に含意されている、健康的かつ持続可能な環境に対する子どもの権利について詳細な説明を行ない、かつ、自然とつながる子どもの能力の重要性を承認すること。 気候変動に関するパリ協定で子どもの権利および世代間衡平に明示的に言及されていることを考慮に入れ、気候変動と子どもの権利に関して国がどの程度の義務(緩和、適応、および、気候変動の結果として避難民化した子どもの権利に関する義務を含む)を明らかにすること。 教育の目的としておよび権利として自然環境の尊重を発達させることに関するCRC第29条第1項(e)を実施する方法について、締約国に対していっそう具体的な指針を提示すること。 子どもの権利と生態系の保護、生物多様性ならびに天然資源の管理および天然資源へのアクセスとの関係、ならびに、これらの政策に関わって国が負っている子どもの権利関連の義務を明らかにすること。 子ども時代における毒性物質および汚染への曝露の防止およびモニタリングならびに診断および治療、企業セクター(サプライチェーン全体を含む)の効果的規制ならびに過去の権利侵害についての説明責任を確保する方法について、明確な指針を提示すること。 情報および参加の権利ならびに環境危害からの保護のための救済を受ける権利を子どもがどのように行使できるべきかについて説明すること。 委員会は、毒性物質および汚染が子どもの権利に及ぼす影響について、このような有害な物質および廃棄物への曝露を防止する国の義務を認識し、かつ〔企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての〕一般的意見16号に立脚しながら、研究を主導することを検討するべきである。 委員会は、環境との関連で子どもの権利を強化するツールとしての影響評価の役割を検討するとともに、この点に関わる望ましい実践の共有を図るべきである。 委員会は、締約国との対話の際、子どもに焦点を当てた環境保護措置を実施するよう政府に対して系統的に求めるとともに、子どもの権利と環境についてとくに取り上げる節を総括所見に設けるべきである。 委員会は、CRC第31条を考慮して、子どもおよびその養育者が地域環境をどのように利用しているのか理解する目的で、子どもおよびその養育者の日常生活についてならびに居住条件および近隣地域の条件の影響についての調査研究を実施するよう、締約国に対して勧告するべきである。 委員会は、環境関連の法律、政策および行動に子どもの権利を統合していく方法についての望ましい実践を、いっそう締約国と共有していくべきである。たとえば委員会は、環境保護の文脈におけるCRC第12条の実現に関する最善の実践から得られた教訓を共有していくことが求められる。 委員会は、環境問題に関する総括所見を、SDGと、またUNFCCC、水俣条約ならびに化学物質および廃棄物に関するその他の国際協定、「仙台防災枠組2015-2030」ならびに生物多様性条約に基づく国の誓約と一貫して関連づけることにより、国が有するCRC上の義務および国による報告にこれらの枠組みを堅固に位置づけることを図るべきである。委員会は、環境保護の文脈で子どもの権利を充足するために必要な影響および措置についてならびに達成された進展についてモニタリングし、行動しかつ報告する諸国の意識および能力を高める目的で、CRCとこれらの国際的枠組みとの整合性を強化するよう求められる。 委員会は、子どもの権利と環境に関わる関連の法的決定を監督するべきである。さらに委員会は、環境危害の文脈における子どもの権利侵害についての、人権機関および委任権限受託機関(国連人権機構、人権理事会の特別手続およびNHRI〔国内人権機関〕など)による調査を奨励することが求められる。委員会はまた、環境危害の被害者である子どもが効果的救済にアクセスできることを確保するため、利用可能な国際的苦情申立て機構の活用も促進するべきである。 委員会は、とくにUNEP、UNFCCC、UNDPおよびWHOに働きかけて、子どもの権利と環境の統合の改善を確保するための援助を申し出るとともに、委員会の自身の活動において、環境問題に関わるこれらの機関の意見および情報を求めるべきである。委員会は、環境問題および持続可能な開発の問題に関して国際的に行なわれる討議および交渉に対し、関連機関への書面の提出およびこれらのプロセスに参加する国々への技術的ブリーフィング等を通じて、意見表明および情報提供を行なうよう求められる。 委員会は、大規模災害の影響および企業セクターの責任について取り上げることなどにより、子どもの権利と環境との関係に関する公衆の意識啓発を図るべきである。 市民社会組織 NGO、研究者および学術機関を含む市民社会は、環境の文脈における子どもの権利の理解および保護の向上を促進するための科学的知見(説得力のある事例研究を含む)を収集しかつ普及するべきである。さらに、CSO〔市民社会組織〕は、法律上および政策上の欠陥に関する情報、ならびに、子どもの権利と環境に関わる最善の実践の実例の収集を援助するよう奨励される。 市民社会は、委員会および他の人権機構に対し、環境危害が子どもの権利に及ぼす影響についていっそうの情報を提供するとともに、これらの問題に関する子どもたちの意見をそこに含めるべきである。 市民社会は、人権、環境、公衆衛生、都市計画、ビジネスおよび他の関連の問題に関わるコミュニティ内で、環境問題の子どもの権利に関わる側面についての認識を強化するために連携を強めるべきである。子どもの権利および環境についての活動を行なっている関連の主体間の望ましい協力例を、学習プロセスの参考とするために共有することが求められる。 子どもの権利団体は、環境に関わる今後の取決め、法律および政策についての交渉に参加することを含め、自己の方針、プログラムおよび活動に環境問題を統合するよう奨励される。環境団体は、その活動において子どもの権利を十分に顧慮するべきである。 7.結論(略) 更新履歴:ページ作成(2017年5月29日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/240.html
子どもの権利委員会・一般的意見16号:企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務 前編 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第62会期(2013年1月14日~2月1日) CRC/C/GC/16(2013年4月17日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.序論および目的(パラ1-7) II.範囲および適用(パラ8-11) III.条約の一般原則と企業活動との関連(パラ12-23)A.差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ13-14) B.子どもの最善の利益(第3条第1項)(パラ15-17) C.生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ18-20) D.意見を聴かれる子どもの権利(第12条)(パラ21-23) IV.国の義務の性質および範囲(パラ24-31)A.一般的義務(パラ24-25) B.尊重義務、保護義務および充足義務(パラ26-31) V.具体的文脈における国の義務(パラ32-52)A.子どもの権利の享受のためのサービス提供(パラ33-34) B.インフォーマル経済(パラ35-37) C.子どもの権利と企業の世界的操業(パラ38-46) D.国際機関(パラ47-48) E.緊急事態および紛争状況(パラ49-52) VI.実施の枠組み(パラ53-84) → 企業と子どもの権利 後編A.立法措置、規制措置および執行措置(パラ53-65) B.救済措置(パラ66-72) C.政策措置(パラ73-74) D.調整措置および監視措置(パラ75-81) E.連携措置および意識啓発措置(パラ82-84) VII.普及(パラ85-86) I.序論および目的 1.子どもの権利委員会は、経済および企業活動の性質のグローバル化、地方分権化の傾向の継続、ならびに、人権の享受に影響を与える国の機能の外部委託化および民営化といった要因により、この数十年の間に企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響が増大してきたことを認識する。企業活動は、たとえば技術的進歩、投資およびディーセントワークの創出を通じて子どもの権利の実現を強化する種々の方法によって社会および経済が前進するための、必要不可欠な原動力である。しかしながら、子どもの権利の実現は経済成長によって自動的にもたらされるものではなく、企業が子どもの権利に悪影響を及ぼすこともありうる。 2.国は、子どもの権利条約、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書ならびに武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書から派生する子どもの権利に対して企業の活動および操業が及ぼす影響について、種々の義務を有する。これらの義務は、子どもが、権利の保有者であると同時に、消費者として、合法的に就労している被用者として、将来の被用者および企業の指導者として、ならびに企業が操業しているコミュニティおよび環境の構成員として、企業活動の関係者でもあることを反映して、さまざまな問題を対象とするものである。この一般的意見は、これらの義務について明らかにするとともに、当該義務を果たすために国がとるべき措置の概略を示すことを目的としている。 3.この一般的意見の適用上、企業セクターとは、規模、部門、所在、所有関係および組織体制に関わらず、かつ国内企業か多国籍企業かの別を問わず、すべての企業を含むものとして定義される。この一般的意見ではまた、子どもの権利の享受にとってきわめて重要なサービスの提供に関して役割を果たしている非営利団体に関わる義務についても取り上げる。 4.国として、企業の活動および操業の文脈において子どもの権利を尊重し、保護しおよび充足するための十分な法的および制度的枠組みを定めることならびに権利侵害が生じた場合に救済措置を提供することが必要である。これとの関連で、国は以下のことを考慮するよう求められる。 (a) 子ども時代は他に代えがたい身体的、精神的、情緒的および霊的発達の時期であり、暴力、児童労働または安全性を欠いた製品もしくは環境上の危険にさらされること等の子どもの権利侵害は、生涯にわたる、とりかえしのつかない、かつ世代さえ超えて及ぶ影響を有する可能性がある。 (b) 子どもは政治的発言権を持たず、かつ関連の情報にアクセスできないことが多い。子どもは、自己の権利を実現させるうえで、自らはほとんど影響力を有しない統治制度に依拠している。そのため、自己の権利に影響を与える法律および政策についての決定において発言権を持つことは困難である。意思決定の過程で、国は企業関連の法律および政策が子どもに与える影響を十分に考慮しないことがある一方、逆に、企業セクターは、子どもの権利に関わりなく諸決定に強力な影響力を行使することが多い。 (c) 自己の権利が侵害された際に子どもが――裁判を通じてであれ、または他の機構を通じてであれ――救済を勝ちとることは一般的に困難であり、企業による権利侵害の場合にはその度合いがさらに高まる。子どもは、法的地位、救済機構に関する知識、経済力および十分な法的代理を欠いていることが多い。さらに、企業の世界的操業を背景として生じた権利侵害に対する救済を子どもが勝ちとることには特段の困難が存在する。 5.企業の活動および操業によって広範な子どもの権利が影響を受けうることに鑑み、この一般的意見では、条約およびその選択議定書の関連条文をすべて検討することはしない。この一般的意見は、これに代えて、企業活動が子どもの権利に及ぼす影響がもっとも顕著なものとなる可能性がある特定の文脈に焦点を当てつつ、各国に対し、企業セクターとの関連で条約を全体として実施するための枠組みを提示しようとするものである。ここでは、各国に対し、以下の取り組みを進めるための方法についての指針を提示することを目指す。 (a) 企業の活動および操業が子どもの権利に悪影響を与えないことを確保すること。 (b) 企業が子どもの権利を尊重できるようにする(自社の操業、製品またはサービスと関連している事業関係全体および自社の世界的操業全体において子どもの権利を尊重することも含む)ための有効かつ支援的な環境づくりを進めること。 (c) 民間当事者としてまたは国の代理機関として行為する企業によって権利を侵害された子どもが効果的な救済措置にアクセスできることを確保すること。 6.この一般的意見は、締約国報告書の審査に関する委員会の経験および民間セクターに関する一般的討議(2002年)[1] を踏まえたものである。また、子どもを含む多数の関係者との地域的および国際的協議ならびに2011年以降行なわれてきた公的協議も参考にしている。 [1] 子どもの権利委員会・第31会期報告書(CRC/C/121)付属文書II。 7.委員会は、企業と人権についてすでに定められ、かつ発展しつつある国内的および国際的な規範、基準および政策指針とこの一般的意見との関連性を心に留める。この一般的意見は、国際労働機関(ILO)が定めた最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する第182号条約(1999年)および就業が認められるための最低年齢に関する第138号条約(1973年)を含む国際条約と一致するものである。委員会は、人権理事会が採択した国際連合「保護・尊重・救済」枠組み報告書および「ビジネスと人権に関する指導原則」、ならびに、ILO「多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言」の関連性を認める。経済協力開発機構(OECD)・多国籍企業行動指針、グローバル・コンパクト、子どもに対する暴力に関する国連研究および「子どもの権利とビジネス原則」等の他の文書も、委員会にとって有用な参考文書となった。 II.範囲および適用 8.この一般的意見では、基本的に、条約およびその選択議定書に基づく各国の義務について取り上げる。この一般的意見の作成時点で、人権に関わる企業セクターの責任に関する、法的拘束力のある国際文書は存在しない。しかし委員会は、子どもの権利を尊重する義務および責任は、実際には国ならびに国が管理するサービスおよび制度に留まるものではなく、私人および企業にも適用されることを認めるものである。したがって、すべての企業は子どもの権利に関わる自社の責任を果たさなければならず、また国は企業がそのような責任を履行することを確保しなければならない。加えて、企業は、条約およびその選択議定書に基づく子どもへの義務を履行する国の能力を損なうべきではない。 9.委員会は、企業による自発的な企業責任履行行動(社会的投資、アドボカシーおよび公共政策への関与、自主的行動規範、社会貢献活動その他の集団的行動等)が子どもの権利の増進につながりうることを認知する。国は、子どもの権利を尊重しかつ支える企業文化づくりの手段としてこのような自発的な行動および取り組みを奨励するべきである。しかしながら、このような自発的な行動および取り組みは、条約およびその選択議定書に基づく義務にしたがって国が行動しかつ企業を規制すること、または企業が子どもの権利を尊重する自社の責任を遵守することにとって代わるものではないことが強調されなければならない。 10.重要なこととして想起しておかなければならないのは、条約およびその選択議定書は、国の内部の体制、分化および組織にかかわらず、国全体を関与させるものであるということである。さらに、権限の委譲および委任を通じた地方分権化は、自国の管轄内にあるすべての子どもに対する義務を履行する国の直接の責任を減殺するものではない。 11.この一般的意見では、まず、企業活動に関連する国の義務と条約の一般原則との関係について検討する。次に、子どもの権利と企業セクターに関わる国の義務の一般的性質および範囲を明らかにする。その後、子どもの権利に対する企業の活動および操業の影響がもっとも顕著な文脈(企業がサービス提供者である場合、子どもがインフォーマル経済の影響を受けている場合、国が国際機関に関与する場合、および、国による子どもの権利の保護が不十分な地域で企業が国外操業する場合を含む)における義務の範囲について検討する。最後に、実施および普及のための枠組みの概要を示してこの一般的意見の締めくくりとする。 III.条約の一般原則と企業活動との関連 12.子どもの権利は普遍的であり、不可分であり、相互依存的であり、かつ相互に関連している。委員会は、国が子どもの権利アプローチにのっとって行なう、企業の活動および操業に関するすべての決定および行動の根拠となる条約の4つの一般原則を明らかにしてきた [2]。 [2] 子どもの権利員会「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号」(2011年、Official Records of the General Assembly, Sixty-seventh Session, Supplement No. 41 (A/67/41), annex V)、パラ59参照。 A.差別の禁止に対する権利(第2条) 13.条約第2条は、各国に対し、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず、いかなる種類の差別もなしに」、自国の管轄内にある子ども1人ひとりの権利を尊重しかつ確保するよう求めている。国は、企業問題を扱うすべての法律、政策およびプログラムが、その内容または実施において、故意にであるか否かにかかわらず、子どもに対して差別的とならないことを確保しなければならない(たとえば、親もしくは養育者による雇用へのアクセス、または障害のある子どものための製品およびサービスへのアクセスについて扱うもの)。 14.国は、私的領域一般で差別を防止し、かつ差別が生じたときは救済措置を提供するよう要求される。国は、企業の活動および操業を背景として行なわれる子どもへの差別を特定するため、適切に細分化された統計データおよびその他の情報を収集するべきであり、また企業セクターにおける差別的慣行を監視しかつ調査するための機構が設置されるべきである。国はまた、差別から保護される権利に関する知識および理解を企業セクター(メディア・宣伝・広告部門を含む)内で促進することにより、企業がこの権利を尊重できるようにするための支援的環境をつくるための措置もとるよう求められる。企業の意識啓発および感受性強化は、すべての子ども、とくに被害を受けやすい状況に置かれた子どもに対する差別的態度への異議申立ておよびその根絶を目的として行なわれるべきである。 B.子どもの最善の利益(第3条第1項) 15.条約第3条第1項は、子どもに関わるすべての行動において、子どもの最善の利益が国家にとって第一義的な考慮事項とされなければならない旨、定めている。国は、子どもに直接間接に影響を与える企業の活動および操業についてのあらゆる立法上、行政上および司法上の手続においてこの原則を統合しかつ適用する義務を負う。たとえば、国は、企業の活動および操業のあり方を定める法律および政策(雇用、課税、腐敗、民営化、交通および他の一般的な経済問題、通商問題または財政問題に関するもの等)の策定において、子どもの最善の利益が中心的に位置づけられることを確保しなければならない。 16.第3条第1項はまた、子どもに対して何らかの形態の直接サービス(ケア、里親養護、保健、教育および拘禁施設の運営を含む)を提供することによって私的または公的な社会福祉機関として機能している企業にも直接に適用される。 17.条約およびその選択議定書は、子どもの最善の利益を評価しかつ判定するための枠組みを提示している。子どもの最善の利益を第一次的に考慮する義務は、競合しあう優先課題(短期的な経済的考慮と長期的な開発に関わる決定等)の比較衡量を国が行なう際、きわめて重要なものとなる。国は、子どもの最善の利益を考慮される権利が意思決定においてどのように尊重されたか(当該権利が他の考慮事項とどのように比較衡量されたかを含む)について説明できるようにするべきである [3]。 [3] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(子どもの権利条約第3条第1項)に関する一般的意見14号(2013年、近日発表)、パラ6参照。 C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) 18.条約第6条は、すべての子どもが生命に対する固有の権利を有すること、および、国は子どもの生存および発達を確保しなければならないことを認めている。委員会は、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)で表明した、「子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含する」「ホリスティックな概念」としての子どもの発達の理解 [4] を明らかにするものである。 [4] Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex XI、パラ12参照。 19.企業の活動および操業は、第6条の実現にさまざまな形で影響を与えうる。たとえば、企業活動によって生ずる環境の悪化および汚染は、健康、食料安全保障ならびに安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに対する子どもの権利を損なう可能性がある。投資家への土地の販売または貸与により、地元住民がその生存および文化的遺産と結びついた天然資源にアクセスできなくなる可能性もあり、このような状況においては先住民族の子どもの権利がとくに危険にさらされるおそれがある [5]。タバコおよびアルコールならびに飽和脂肪、トランス脂肪酸、糖分、塩分または添加物の多い食品および飲料のような製品の販売促進が子どもに対して行なわれれば、子どもの健康に長期的影響が生じる可能性がある [6]。企業の雇用慣行によっておとなが長時間労働を要求されれば、年長の子ども、とくに女子が親の家事および育児の義務を引き受けることになるおそれがあり、これは教育および遊びに対する子どもの権利に悪影響を及ぼしうる。加えて、子どもをひとりにしておくことまたは年長のきょうだいのケアに委ねることは、ケアの質および年少の子どもの健康に影響を生じさせる可能性がある。 [5] 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する一般的意見11号(2009年、Official Records of the General Assembly, Sixty-fifth Session, Supplement No. 41 (A/65/41), annex III)、パラ35。 [6] 到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利に関する一般的意見15号(2013年、近日発表)、パラ47参照。 20.企業セクターとの関連で第6条を実施するための措置は、状況に合わせて修正するとともに、広告・販売促進産業ならびに事業の環境面での影響の効果的規制および監視のような防止措置も含むものである必要があろう。子ども、とくに年少の子どものケアとの関係では、企業がたとえば家族にやさしい職場方針を導入することを通じて第6条を尊重できるようにするための環境づくりのため、その他の措置も必要とされよう。このような方針においては、おとなの労働時間があらゆる発達段階の子どもの生存および発達に与える影響が考慮されなければならず、かつ十分な有給育児休暇が含まれなければならない [7]。 [7] 乳幼児期における子どもの権利の実施に関する一般的意見7号(2005年、Official Records of the General Assembly, Sixty-first Session, Supplement No. 41 (A/61/41), annex III)の各所参照。 D.意見を聴かれる子どもの権利(第12条) 21.条約第12条は、自己に影響を与える事柄について自由に意見を表明するすべての子どもの権利、および、これにともない、その子どもの年齢および成熟度にしたがってこれらの意見を正当に重視される権利を定めている。国は、子どもに影響を与える可能性がある、企業に関連する国レベルおよび地方レベルの法律および政策を策定する際には――一般的意見12号 [8] にしたがって――常に子どもの意見を聴くべきである。国はとくに、マイノリティ集団および先住民族集団の子ども、障害のある人の権利に関する条約第4条第3項および第7条で述べられているとおり障害のある子ども [9] ならびに同様の脆弱状況にある子どものような、自己の意見を聴かせるにあたって困難に直面している子どもと協議することが求められる。企業の活動および操業の規制および監視に関わる政府機関(教育査察官および労働査察官等)は、影響を受ける子どもの意見を考慮するようにするべきである。国はまた、提案されている企業関連の政策、法律、規則、予算またはその他の行政決定について子どもの権利影響評価が実施される際にも子どもの意見を聴くことが求められる。 [8] 意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号(2009年、Official Records of the General Assembly, Sixty-fifth Session, Supplement No. 41 (A/65/41), annex IV)。 [9] 障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年、Official Records of the General Assembly, Sixty-third Session, Supplement No. 41 (A/63/41), annex III)、全般。 22.子どもは、「自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において……聴取される」具体的権利を有する(条約第12条第3項〔第2項〕)。これには、企業が引き起こしまたは助長した子どもの権利侵害に関わる司法手続ならびに調停および仲裁の機構も含まれる。一般的意見12号で指摘されているように、子どもは、このような手続に自発的に参加することを認められるべきであり、かつ、直接に、または意思決定プロセスのさまざまな側面に関する十分な知識および理解ならびに子どもとともに活動した経験を有する代理人もしくは適当な団体の援助を通じて間接的に、意見を聴かれる機会を与えられるべきである。 23.企業が、見込まれている企業プロジェクトの影響を受ける可能性があるコミュニティと協議する場合もあるかもしれない。そのような状況においては、企業が、子どもに影響を与える決定について子どもの意見を求めかつ考慮することが決定的に重要となりうる。国は、このようなプロセスはアクセスしやすく、インクルーシブであり、かつ子どもにとって意味のあるものでなければならず、また子どもの発達しつつある能力および子どもの最善の利益を常に考慮するものでなければならないことを強調した、具体的指針を企業に対して提示するべきである。参加は任意であるべきであり、かつ、子どもに対する差別のパターンに異議を申立てるのであってこのようなパターンを強化してしまうのではない、子どもにやさしい環境で進めることが求められる。可能なときは、子ども参加のファシリテーション能力を有する市民社会組織の関与を得るべきである。 IV.国の義務の性質および範囲 A.一般的義務 24.条約は、子どもの特別な地位に鑑みて国に対して特段の水準の義務を課す、子どものための一連の権利を規定している。子どもの権利の侵害は、それが子どもの発達に深刻かつ長期的な影響を及ぼすことが多いゆえに、とりわけ重大である。第4条は、条約上の権利を実施するためにあらゆる適当な立法上、行政上その他の措置をとり、かつ子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現に対して利用可能な資源を最大限に配分する国の義務を定めている。 25.国際人権法上、国には3つの態様の義務、すなわち人権を尊重し、保護し、かつ充足する義務が課されている [10]。これは結果義務および行為義務を包含するものである。国は、その機能を民間企業または非営利組織に委譲しまたは外部委託する場合にも、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務から免れることはない。したがって国は、子どもに影響を与える企業の活動および操業との関係で子どもの権利を尊重し、保護し、かつ充足しない場合には条約上の義務に違反することになる。これらの義務の範囲については以下でさらに詳しく検討し、また実施のために必要とされる枠組みについては第VI章で議論する。 [10] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会「教育への権利に関する一般的意見13号」(1999年、Official Records of the Economic and Social Council, 2000, Supplement No. 2 (E/2000/22), annex VI)、パラ46参照。 B.尊重義務、保護義務および充足義務 1.尊重義務 26.尊重する義務とは、国は子どもの権利のいかなる侵害も直接間接に助長し、幇助しまたは教唆するべきではないということである。さらに、国は、企業の活動および操業を背景とする場合も含め、すべての主体が子どもの権利を尊重することを確保する義務を負う。これを達成するため、企業に関連するすべての政策、法律または行政上の行為および意思決定は、透明であり、十分な情報を踏まえており、かつ子どもの権利に対する影響についての全面的かつ継続的な考慮を含むものであるべきである。 27.尊重する義務とはまた、国は、それ自体が企業の役割を担うときまたは民間企業と取引を行なうときに、子どもの権利の侵害に関与し、これを支援しまたは容認するべきではないということも含意する。たとえば、国は、公的機関による調達契約が、子どもの権利の尊重を誓約している入札者によって獲得されることを確保するための措置をとらなければならない。治安部隊を含む国の機関および制度は、第三者による子どもの権利の侵害に協力し、またはこれを容認するべきではない。さらに、国は、子どもの権利を侵害する企業活動に公的資金その他の資源を投資するべきではない。 2.保護義務 28.国は、条約およびその選択議定書で保障された諸権利が第三者によって侵害されることから保護する義務を負う。この義務は、企業セクターに関わる国の義務を検討する際、第一義的重要性を有するものである。この義務は、国が、企業が子どもの権利侵害を引き起こしまたは助長しないようにするためにあらゆる必要な、適当な、かつ合理的な措置をとらなければならないことを意味する。このような措置には、法令の制定、その監視および執行、ならびに、企業が子どもの権利にどのように影響を及ぼしうるかの枠組みを定めた政策の採択が含まれうる。国は、企業によって引き起こされまたは助長された子どもの権利侵害の調査、裁定および是正を行なわなければならない。したがって国は、企業によって引き起こされまたは助長された子どもの権利侵害について、当該侵害を防止しかつ是正するために必要な、適当なかつ合理的な措置をとらなかった場合またはその他の形で当該侵害に協力しもしくはこれを容認した場合には、責任を負う。 3.充足義務 29.充足する義務により、国は、子どもの権利の享受を容易にし、促進し、かつそのための条件整備を進めるために積極的行動をとるよう要求される。すなわち、国は、子どもに影響を与える企業活動に関して、第4条に一致する形で立法措置、行政措置、予算措置、司法上の措置、促進のための措置その他の措置をとらなければならない。このような措置は、条約およびその選択議定書の全面的実現にとっての最善の環境を確保するようなものであるべきである。この義務を履行するため、国は、企業が子どもの権利を尊重できるようにするための、安定した、かつ予測可能な法令上の環境を整備することが求められる。このような環境には、労働、雇用、健康および安全、環境、腐敗防止、土地の使用ならびに課税についての、条約およびその選択議定書を遵守した、明確な、かつ十分に執行される法律および基準が含まれる。また、雇用における機会および待遇の均等を図るための法律および政策、職業訓練およびディーセント・ワークを促進し、かつ生活水準を向上させるための措置、ならびに、中小企業の推進に資する政策も含まれる。国は、企業慣行のあり方を定めている政府省庁およびその他の国家的制度内で条約およびその選択議定書に関する知識および理解を促進し、かつ、子どもの権利を尊重する企業文化を醸成するための措置を整備するべきである。 4.救済措置および補償 30.国は、企業のような第三者によるものを含む子どもの権利侵害について、効果的な救済および補償を行なう義務を有する。委員会は、一般的意見5号において、権利が意味を持つためには、侵害を是正するための効果的救済措置が利用可能でなければならない [11] と述べている。条約は、いくつかの規定で、処罰、賠償、司法的対応、および、第三者によって引き起こされまたは助長された危害からの回復を促進するための措置を求めている [12]。この義務を履行するためには、子どもおよびその代理人によって知られており、迅速で真に利用可能かつアクセス可能であり、かつ受けた危害に対する十分な補償を提供する、子どもに配慮した――刑事上、民事上または行政上の――機構を設けることが必要である。子どもの権利に関連した監督権限を有する機関(労働、教育、保健および安全分野の査察官、環境審判所、徴税機関、国内人権機関ならびに企業部門における平等に焦点を当てる機関を含む)も、救済措置の提供にあたって役割を果たすことができる。これらの機関には、人権侵害の積極的な調査および監視が可能であり、かつ、子どもの権利を侵害した企業に対して行政上の制裁を課すことのできる規制権限を持っている場合もある。いずれにせよ、子どもは、独立のかつ公平な司法、または行政手続の司法的再審査を利用できるべきである。 [11] 一般的意見5号(2003年)、パラ24。国はまた、2005年の総会決議60/147によって採択された「国際人権法の重大な違反および国際人道法の深刻な違反の被害者が救済および補償を受ける権利に関する基本原則および指針」も考慮するべきである。 [12] たとえば子どもの権利条約第32条第2項、第19条および第39条参照。 31.補償の水準または形態を決定する際、諸機構においては、子どもは自己の権利の侵害の影響をおとなよりも受けやすい可能性があること、および、当該影響は不可逆的な、かつ生涯に及ぶ被害をもたらす可能性があることが考慮されるべきである。諸機構においては子どもの発達および能力の発展しつつある性質も考慮されるべきであり、また、補償は、子ども(たち)の継続的被害および将来の被害を限定するために時宜を得たものであることが求められる。たとえば、子どもが環境汚染の被害者であることが明らかになった場合、子どもの健康および発達に対するこれ以上の被害を防止し、かつ、すでに生じたあらゆる被害からの回復を図るための即時的措置が、関連するすべての当事者によってとられるべきである。国は、企業関連の主体が引き起こしまたは助長した虐待および暴力の被害者である子どもに対し、医学的および心理的援助、法的支援ならびにリハビリテーションのための措置を提供することが求められる。国はまた、たとえば関連の法律および政策の改正ならびにその適用(関係する企業関連の主体の訴追および当該主体に対する制裁を含む)を通じて、虐待が再び行なわれないことも保証するべきである。 V.具体的文脈における国の義務 32.企業の活動および操業は幅広い子どもの権利に影響を与えうる。しかしながら委員会は、企業の影響が顕著なものとなる可能性があり、かつ、国の法的および制度的枠組みが不十分であり、実効性を欠いており、または圧力を受けていることが多い具体的文脈として、以下の文脈を例示的に特定した。 A.子どもの権利の享受のためのサービス提供 33.企業および非営利団体は、子どもの権利の享受にとってきわめて重要なサービス(清潔な水、衛生設備、教育、交通、保健、代替的養護、エネルギー、警備および拘禁施設等)の提供および運営において役割を果たしうる。委員会は、このようなサービスの提供の形態について具体的に述べることはしないものの、国は、子どもの権利の充足に影響を与えるサービスを外部委託しまたは民営化した場合にも条約上の義務を免れるものではないことを強調しておくのは重要である。 34.国は、条約に掲げられた諸権利が損なわれないことを確保するため、サービス提供への民間セクターの関与を考慮した具体的措置をとらなければならない [13]。国は、条約に一致した基準を定め、かつこれを注意深く監視する義務を負う。これらの機関の監督、査察および監視が不十分な場合、子どもの権利の深刻な侵害(暴力、搾取およびネグレクト等)が生ずる可能性がある。国は、とくに差別からの保護の原則に基づき、このような体制においてサービスへの子どものアクセスが差別的基準によって脅かされないことを確保するとともに、すべてのサービス部門について、子どもが、独立の監視機関、苦情申立て機構、および、関連するときは侵害の際に効果的救済を提供できる司法的手段にアクセスできることを確保しなければならない。委員会は、国以外のすべてのサービス提供者が条約に一致する政策、プログラムおよび手続を整備しかつ適用することを確保するための、常設の監視機構または監視手続が設けられるべきことを勧告する [14]。 [13] 子どもの権利委員会・第31会期報告書(CRC/C/121)付属文書II。〔訳注/「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」に関する一般的討議の勧告〕 [14] 一般的意見5号、パラ44。 B.インフォーマル経済 35.インフォーマル経済は、多くの国で経済活動人口の重要な割合を巻きこんでおり、かつ国民総生産に著しく寄与している。しかしながら、子どもの権利は、権利を規制しかつ保護する法律上および制度上の枠組みの外で行なわれる企業活動によって特段の危険にさらされる可能性がある。たとえば、このような状況で製造されまたは取り扱われる製品(玩具、衣類または食品等)は、子どもにとって不健康かつ(または)危険なものとなりうる。また、小規模家内企業、農業部門および接客部門のような隠れたインフォーマル労働分野には相当数の子どもが集中していることが多い。このような労働ではしばしば、雇用上の地位が不安定であり、報酬が低く、不定期でありまたはまったくなく、健康上のリスクがあり、社会保障が欠けており、結社の自由が制限されており、かつ、差別および暴力または搾取からの保護が不十分である。このような労働によって子どもが学校に通えず、学業を行なえず、かつ十分に休息しかつ遊ぶことができないこともあり、これは条約第28条、第29条および第31条の違反となる可能性がある。さらに、インフォーマル経済で働く親または養育者は、生存保障水準の所得を得るために長時間労働をしなければならず、そのため自己の保護下にある子どものために親としての責任を果たしまたはケアを行なう機会が深刻に制限されることが多い。 36.国は、子どもの権利が明確に認識されかつ保護されることを可能にすべく、企業活動が、経済の規模または部門にかかわらず、あらゆる状況下で、適切な法律上および制度上の枠組みのなかで行なわれることを確保するための措置を整備するべきである。このような措置には、意識啓発、インフォーマル経済が子どもの権利に与える影響についての調査の実施およびデータ収集、働く親または養育者に十分な給与を支払うディーセント・ワークの創設の支援、土地の利用に関する明確かつ予測可能な法律の実施、低所得家庭に対する社会的保護の提供、ならびに、インフォーマル部門の企業に対する支援(とくに、技能研修、登録のための便益、効果的かつ柔軟な信用供与・銀行業務サービス、適切な課税体制および市場へのアクセスを提供することによるもの)が含まれうる。 37.国は、労働条件を規制し、かつ、経済的搾取、および、危険な労働または子どもの教育を妨げる労働もしくは子どもの健康にとってもしくは身体的、精神的、霊的、道徳的もしくは社会的発達にとって有害である労働から子どもを保護するための保護措置を確保しなければならない。このような労働は、他では見出されないというわけではないものの、インフォーマル経済および家内制経済において見出されることが多い。したがって、国は、就労に関する法定最低年齢および適切な労働条件に関する国際基準を執行し、教育および職業訓練に投資し、かつ子どもが満足のいく形で労働の世界に移行できるようにするための支援を提供する等の手段により、このような状況にある企業を対応の対象に含めるためのプログラムを立案しかつ実施することが要求される。国は、社会政策および子どもの保護政策の対象にすべての者、とくにインフォーマル経済下で働く家族が含まれることを確保するべきである。 C.子どもの権利と企業の世界的操業 38.企業は、子会社、契約業者、供給業者および合弁企業の複雑なネットワークを通じ、ますます世界的規模で操業するようになりつつある。これによって子どもの権利に生じる影響が、肯定的な影響であれ否定的な影響であれ、単一の企業体(親会社、子会社、契約業者、供給業者または他の企業体のいずれであるかを問わない)の作為または不作為の結果であることはめったにない。そうではなく、そこには異なる法域に置かれた複数の企業体間の結びつきまたは参加をともなっている可能性がある。たとえば、供給業者は児童労働の使用に関与しているかもしれず、子会社は土地からの立退き強制を行なっているかもしれず、契約業者またはライセンスを受けた事業者は子どもにとって有害な製品およびサービスの販売促進に関与しているかもしれない。このような状況にあっては、国が子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務を果たすことがとりわけ困難になる。それはとくに、企業は、たとえ活動の中心、登記および(または)本社をある国(本拠国)に置き、かつ他の国(受入れ国)で操業している単一の経済単位であっても、法的には異なる法域に置かれた別々の事業体であることが多いためである。 39.条約上、国は、自国の管轄内で子どもの権利を尊重しかつ確保する義務を負う。条約は国の管轄を「領域」に限定していない。委員会は以前、国際法にしたがい、各国に対し、自国の領域的境界を越えている可能性がある子どもの権利を保護するよう促した。委員会はまた、条約およびその選択議定書に基づく国の義務は、国の領域内にある子ども1人ひとりおよび国の管轄に服するすべての子どもに適用されることも強調してきた [15]。 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年、Official Records of the General Assembly, Sixty-first Session, Supplement No. 41 (A/61/41), annex II)、パラ12。 40.域外義務については、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書でも明示的に言及されている。第3条第1項は、各国が、最低限、選択議定書上の犯罪が、当該犯罪が国内でまたは国境を越えて行なわれるかを問わず、自国の刑法において全面的に対象とされることを確保しなければならないと定めている。子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第3条第4項に基づき、企業を含む法人についてもこれらの犯罪に関する責任(刑事上、民事上または行政上の責任のいずれであるかは問わない)が定められるべきである。このようなアプローチは、拷問、強制的失踪およびアパルトヘイトの共謀等の分野との関連で、当該権利侵害および共謀を構成する行為がどこで行なわれたかにかかわらず国民に対する刑事裁判権を設定する義務を各国に課している他の人権条約および人権文書とも一致する。 41.国は、自国の領域的境界を越えて子どもの権利の実現のための国際協力に関与する義務を負う。条約の前文および諸規定は、「すべての国、とくに発展途上国における子どもの生活条件改善のための国際協力の重要性」に一貫して言及しているところである [16]。一般的意見5号は、「条約の実施が世界の国々の協力にもとづく活動である」ことを強調している [17]。このように、条約に基づく子どもの権利の全面的実現は、部分的には各国がどのように相互作用するかによって変わってくるものでもある。さらに委員会は、条約がほぼ普遍的に批准されていることを強調する。したがって、条約の規定の実現は、企業の受入れ国および本拠国の双方が重要かつ平等な関心を向けるべき問題である。 [16] 子どもの権利条約第4条、第24条第4項、第28条第3項、第17条および第22条第2項、ならびに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第10条および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書第10条参照。 [17] 一般的意見5号、パラ60。 42.受入れ国は、自国の管轄内で子どもの権利を尊重し、保護し、かつ充足する第一次的責任を有する。受入れ国は、自国の国境内で操業する多国籍企業を含むすべての企業が、これらの企業が子どもの権利に悪影響を及ぼさず、かつ(または)外国法域における権利侵害を幇助しもしくは教唆しないことを確保する法律上および制度上の枠組みのなかで十分な規制の対象とされることを、確保しなければならない。 43.本拠国もまた、当該国と関係行為との間に合理的つながりがあることを条件として、企業が域外で行なう活動および操業との関連で子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する、条約およびその選択議定書に基づいて生ずる義務を負う。合理的つながりが存在するのは、企業が、当該国にその活動の中心を置いており、当該国で登記されもしくは当該国を本拠としており、または当該国に主要な事業場所がありもしくは当該国で実質的企業活動を行なっている場合である [18]。この義務を履行するための措置をとるにあたっては、国は、国際連合憲章もしくは一般国際法に違反し、または条約に基づく受入れ国の義務を縮小させてはならない。 [18] 経済的、社会的および文化的権利の領域における国家の域外義務に関するマーストリヒト原則(2012年)、パラ25参照。 44.国は、企業による域外的な権利侵害を受けた子どもおよびその家族に対し、自国と当該行為との間に合理的つながりが存在する場合に救済を提供するための効果的な司法的機構および非司法的機構にアクセスできるようにするべきである。さらに、国は、他の国における調査および手続執行について国際的な援助および協力を行なうことが求められる。 45.国外で操業している企業による子どもの権利侵害を防止するための措置には以下のものが含まれる。 (a) 公的資金その他の形態の公的支援(保険等)へのアクセスについて、自社の海外操業における子どもの権利へのいかなる悪影響も特定し、防止しまたは緩和するための手続を企業が実施していることを条件とすること。 (b) 公的資金その他の形態の公的支援の提供について決定するにあたり、子どもの権利に関する企業の過去の履歴を考慮すること。 (c) 企業に関して重要な役割を有している国の機関(輸出信用機関等)が、国外で操業する企業に支援を供与する前に、当該期間が支援するプロジェクトが子どもの権利に与える可能性のあるいかなる悪影響も特定し、防止しかつ緩和するための措置をとるとともに、当該機関は子どもの権利侵害を引き起こしまたは助長する可能性が高い活動を支援しない旨の規定を置くことを確保すること。 46.本拠国および受入れ国はともに、企業が自社の世界的操業全体を通じて子どもの権利を尊重できるようにするための制度上および法律上の枠組みを確立するべきである。本拠国は、条約およびその選択議定書の実施を担当する政府の機関が貿易および海外投資を担当する政府機関と効果的調整を行なえるよう、効果的機構が設けられることを確保するよう求められる。本拠国はまた、開発援助機関および貿易推進を担当する在外公館が、人権(子どもの権利を含む)に関する外国政府との二国間対話に企業関連の問題を統合できるよう、能力構築も図るべきである。OECD・多国籍企業行動指針の遵守を表明している国は、企業問題の文脈において子どもの権利の尊重を確保するための十分な資源、独立性および権限が自国の各国連絡窓口に与えられることを確保することにより、域外的に生じる問題についての仲裁および調整に関して当該窓口を支援するよう求められる。OECD各国連絡窓口のような機関が行なう勧告は十分に実施されるべきである。 D.国際機関 47.すべての国は、条約第4条に基づき、国際協力を通じて、かつ国際機関の構成員としての活動を通じて、条約上の権利の実現に直接協力するよう求められる。企業活動との関係では、このような国際機関には、世界銀行グループ、国際通貨基金および世界貿易機関のような国際開発・金融・貿易機関ならびに諸国が集団的に行動するその他の地域的機関が含まれる。国は、このような機関の構成員として行動する際には条約およびその選択議定書に基づく自国の義務を遵守しなければならず、また、国際機関からの融資または国際機関の政策が子どもの権利侵害につながる可能性が高いときは、当該融資を受け入れまたは国際機関から課される条件に合意するべきではない。国はまた、開発協力の分野でも自国の義務を保持するのであり、協力のための政策およびプログラムが条約およびその選択議定書に一致する形で立案されかつ実施されることを確保するべきである。 48.国際開発・金融・貿易機関に関与している国は、当該機関が、その意思決定および活動において、かつ企業セクターに関わる協定の締結または指針の策定を行なう際に、条約およびその選択議定書にしたがって行動することを確保するためにあらゆる合理的な行動および措置をとらなければならない。このような行動および措置は、児童労働の根絶にとどまらず、すべての子どもの権利の全面的実現を含むべきである。国際機関は、新たなプロジェクトにともなって子どもに危害が生じるリスクを評価し、かつ当該危害のリスクを低減するための基準および手続を定めることが求められる。これらの国際機関は、現行の国際基準にしたがって子どもの権利侵害を特定し、これに対応し、かつこれを是正するための手続および機構を整備するべきである(このような権利侵害が、当該機関と関係のあるまたは当該機関が資金を拠出した企業活動によって引き起こされ、またはそのような活動の結果として生じた場合を含む)。 E.緊急事態および紛争状況 49.紛争、災害または社会秩序もしくは法的秩序の崩壊を理由として保護のための制度が適正に機能しない状況下で企業が操業している場合、受入れ国および本拠国の双方にとって、子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務を履行するうえで特段の課題が生じる。条約およびその選択議定書は常に適用されるのであって、緊急事態時にその規定から逸脱することを認めた規定は存在しないことを強調しておくのが重要である。 50.このような状況では、企業によって児童労働が利用され(サプライチェーンおよび子会社における利用を含む)、子ども兵士が使用され、または腐敗および脱税が行なわれるおそれが高まる可能性がある。このようなおそれが高まることに鑑み、本拠国は、緊急事態および紛争の状況下で操業している企業に対し、子どもの権利に関する相当の注意(デュー・ディリジェンス)をその規模および活動に応じて厳格に払うよう要求するべきである。本拠国はまた、国境を越えて操業している企業によって生じる、子どもの権利に対する予見可能な具体的リスクに対応する法令を策定しかつ実施することも求められる。これには、自社の操業が子どもの権利の深刻な侵害を助長しないことを確保するためにとった措置の公表を要求すること、および、子どもが徴募されもしくは敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国を最終目的地とする場合に武器の販売もしくは移転または他の形態の軍事援助を禁止することも含まれよう。 51.本拠国は、紛争または緊急事態の影響を受けている地域で企業が操業しておりまたは操業を計画しているときは、当該企業に対し、その地域の子供の権利の状況に関する現在の、正確かつ包括的な情報を提供するべきである。このような指針においては、企業はそのような環境にあっても他の場合と同じように子どもの権利を尊重する責任を有する旨、強調することが求められる。子どもは紛争地において暴力(性的虐待または性的搾取、子どもの人身取引およびジェンダーを理由とする暴力を含む)の影響を受ける可能性があるのであって、国は、企業に対して指針を示す際にこのことを認識しておかなければならない。 52.企業が紛争の影響を受けている地域で操業する際には、条約の関連規定に基づいて受入れ国および本拠国が有している義務が強調されるべきである。第38条は国際人道法の規則の尊重を要求しており、第39条は適切な心理的回復および社会的再統合のための対応義務を国に対して課しており、かつ、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書には18歳未満の子どもの軍隊への帳簿に関する諸規定が掲げられている。紛争の影響を受けている地域で操業する際、企業は、民間警備保障会社を雇う場合があり、かつ、施設の保護またはその他の操業の過程で子どもに対する搾取および(または)暴力の使用といった権利侵害に関与する危険を冒す可能性がある。これを防止するため、本拠国および受入れ国ともに、このような会社が子どもを徴募しまたは敵対行為で使用することをとくに禁止し、子どもを暴力および搾取から保護するために効果的措置をとることを要求し、かつ、子どもの権利侵害についてこのような会社の要員の責任を問うための機構を設ける国内法を導入しかつ実施するべきである。 (企業と子どもの権利 後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2014年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/236.html
子どもの権利委員会・一般的意見14号:自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項) 前編 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第62会期(2013年1月14日~2月1日) CRC/C/GC/14(2013年5月29日/原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-9)A.子どもの最善の利益:権利、原則および手続規則(パラ1-7) B.構成(パラ8-9) II.目的(パラ10-12) III.締約国の義務の性質および範囲(パラ13-16) IV.法的分析および条約の一般原則との関係(パラ17-45)A.第3条第1項の文理分析(パラ17-40)1.「子どもにかかわるすべての活動において」(パラ17-24) 2.「公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によって」(パラ25-31) 3.「子どもの最善の利益」(パラ23-35) 4.「第一次的に考慮される」(36-40) B.子どもの最善の利益と条約の他の一般原則との関係(パラ41-45)1.子どもの最善の利益と差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ41) 2.子どもの最善の利益と生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ42) 3.子どもの最善の利益と意見を聴かれる権利(第12条)(パラ43-45) V.実施:子どもの最善の利益の評価および判定(パラ46-47) → 以下、子どもの最善の利益 後編A.最善の利益の評価および判定(パラ48-84)1.子どもの最善の利益を評価する際に考慮されるべき要素(パラ52-79) 2.最善の利益の評価における諸要素の比較衡量(パラ80-84) B.子どもの最善の利益の実施を保障するための手続的保護措置(パラ85-99) VI.普及(パラ100-101) 「子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。」 子どもの権利条約(第3条第1項) I.はじめに A.子どもの最善の利益:権利、原則および手続規則 1.子どもの権利条約第3条第1項は、子どもに対し、公的領域および私的領域の双方における自己に関わるすべての行動または決定において、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される権利を与えている。さらに、同規定は条約の基本的価値観のひとつを表明するものでもある。子どもの権利委員会(委員会)は、第3条第1項を、子どものすべての権利を解釈しかつ実施する際の、条約の4つの一般原則のひとつに位置づける [1] とともに、特定の文脈にふさわしい評価を必要とする動的な概念としてこれを適用している。 [1] 「子どもの権利条約の実施に関する一般的措置」に関する委員会の一般的意見5号(2003年)、パラ12、および「意見を聴かれる子どもの権利」に関する一般的意見12号(2009年)、パラ2。 2.「子どもの最善の利益」の概念は新しいものではない。それどころか、この概念は条約以前から存在するものであり、1959年の子どもの権利宣言(第2項)、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(第5条(b)および第16条第1項(d))、ならびに、諸地域文書ならびに多くの国内法および国際法にすでに掲げられていた。 3.条約は、他の条文でも子どもの最善の利益に明示的に言及している。第9条(親からの分離)、第10条(家族再統合)、第18条(親の責任)、第20条(家庭環境の剥奪および代替的養護)、第21条(養子縁組)、第37条(c)(勾留中における成人からの分離)、第40条第2項(b)(iii)(法律に抵触した子どもが関与する刑事上の問題についての法廷審理に親が立ち会うことを含む手続的保障)である。子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書(前文および第8条)ならびに通報手続に関する条約の選択議定書(前文ならびに第2条・第3条)でも、子どもの最善の利益に言及されている。 4.子どもの最善の利益の概念は、条約で認められているすべての権利の全面的かつ効果的な享受および子どものホリスティックな発達 [2] の双方を確保することを目的としたものである。委員会はすでに、「子どもの最善の利益に関するおとなの判断により、条約に基づく子どものすべての権利を尊重する義務が無効化されることはありえない」と指摘した [3]。委員会は、条約上の権利に優劣は存在しないことを想起するものである。条約に定められたすべての権利は「子どもの最善の利益」にのっとったものであり、いかなる権利も、子どもの最善の利益を消極的に解することによって損なうことはできない。 [2] 委員会は、締約国が、「子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含する」「ホリスティックな概念」として発達を解釈するよう期待している(一般的意見5号、パラ12)。 [3] 「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」に関する一般的意見13号(2011年)、パラ61。 5.子どもの最善の利益の概念を全面的に適用するためには、子どもの身体的、心理的、道徳的および霊的不可侵性を確保し、かつその人間としての尊厳を促進する目的で、すべての主体の関与を得ながら、権利基盤アプローチを発展させていくことが必要である。 6.委員会は、子どもの最善の利益が三層の概念であることを強調する。 (a) 実体的権利:争点となっている問題について決定を行なうためにさまざまな利益が考慮される際、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利であり、かつ、ひとりの子ども、特定のもしくは不特定の子どもの集団または子どもたち一般に関わる決定が行なわれるときは常にこの権利が実施されるという保障である。第3条第1項は、国家にとっての本質的義務を創設したものであり、直接適用(自動執行)が可能であり、かつ裁判所で援用できる。 (b) 基本的な法的解釈原理:ある法律上の規定に複数の解釈の余地がある場合、子どもの最善の利益にもっとも効果的にかなう解釈が選択されるべきである。条約およびその選択議定書に掲げられた権利が解釈の枠組みとなる。 (c) 手続規則:ひとりの子ども、特定の子どもの集団または子どもたち一般に関わる決定が行なわれるときは常に、意思決定プロセスに、当該決定が当事者である子ども(たち)に及ぼす可能性のある(肯定的または否定的な)影響についての評価が含まれなければならない。子どもの最善の利益を評価・判定するためには手続上の保障が必要である。さらに、ある決定を正当とする理由の説明において、この権利が明示的に考慮に入れられたことが示されなければならない。これとの関連で、締約国は、幅広い政策問題に関する決定であるか個別事案における決定であるかに関わらず、決定においてこの権利がどのように尊重されたか――すなわち、何が子どもの最善の利益にのっとった対応であると考えられたか、それはどのような基準に基づくものであるか、および、子どもの利益が他の考慮事項とどのように比較衡量されたか――を説明することが求められる。 7.この一般的意見において、「子どもの最善の利益」という表現は上述の3つの側面を網羅するものとする。 B.構成 8.この一般的意見が対象とする範囲は条約第3条第1項に限定されており、子どものウェルビーイングに関わる第3条第2項、ならびに、子どものための施設、サービスおよび便益が定められた基準を遵守すること、および、当該基準が遵守されるようにするための機構が整備されることを確保する締約国の義務に関する第3条第3項については対象としていない。 9.委員会は、この一般的意見の目的を述べ(第II章)、締約国の義務の性質および範囲を明らかにする(第III章)。また、条約の他の一般原則との関係を示しながら、第3条第1項の法的分析も提示する(第IV章)。第V章では、子どもの最善の利益の原則の実際上の実施についてもっぱら取り上げ、第VI章では一般的意見の普及に関する指針を提示する。 II.目的 10.この一般的意見は、条約の締約国が子どもの最善の利益を適用しかつ尊重することを確保しようとするものである。この一般的意見は、とくに個人としての子どもに関わる司法上および行政上の決定その他の行動における、また子どもたち一般または特定の手段としての子どもたちに関わる法律、政策、戦略、プログラム、計画、予算、立法上および予算上の発議ならびに指針――すなわちあらゆる実施措置――の採択のあらゆる段階における、正当な考慮の要件を明確にする。委員会は、この一般的意見が、子どもに関係するすべての者(親および養育者を含む)が行なう決定で指針とされることを期待するものである。 11.子どもの最善の利益は動的な概念であり、常に変化しつつあるさまざまな問題を包含するものである。この一般的意見は、子どもの最善の利益を評価・判定するための枠組みを提示するものであり、特定の時点における特定の状況下で何が子どもにとって最善かを明らかにしようと試みるものではない。 12.この一般的意見の主な目的は、自己の最善の利益を評価され、かつこれを第一義的な考慮事項として、または場合によっては最高の考慮事項として(後掲パラ38参照)扱われる子どもの権利についての理解およびその適用を強化するところにある。この一般的意見の全般的目的は、権利の保有者としての子どもの全面的尊重につながる、真の態度の変革を促進することである。より具体的には、これは以下のことに関連する。 (a) 政府がとるすべての実施措置の立案。 (b) ひとりのまたは複数の特定の子どもについて、司法機関もしくは行政機関または公共団体がその代表者を通じて行なう個別の決定。 (c) 子どもに関わるまたは子どもに影響を与えるサービスを提供する市民社会団体および民間セクター(営利組織および非営利組織を含む)が行なう決定。 (d) 子どもとともにおよび子どものために活動する者(親および養育者を含む)がとる行動についての指針。 III.締約国の義務の性質および範囲 13.各締約国は、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利を尊重しかつ実施しなければならず、またこの権利を全面的実施するためにあらゆる必要な、慎重なかつ具体的な措置をとる義務を負う。 14.第3条第1項は、締約国に対して3つの異なる態様の義務を課す枠組みを定めたものである。 (a) 公的機関がとるすべての行動、とくに子どもに直接間接に影響を与えるあらゆる実施措置、行政上および司法上の手続において、子どもの最善の利益が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保する義務。 (b) 子どもに関わるあらゆる司法上および行政上の決定ならびに政策および立法において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されたことが実証されることを確保する義務。これには、最善の利益がどのように検討・評価され、かつ決定においてどの程度重視されたかを説明することも含まれる。 (c) 民間セクター(サービス提供部門を含む)または子どもに関わるもしくは子どもに影響を与える決定を行なう他のいずれかの私的機関による決定または行動において、子どもの利益が評価され、かつ第一次的に考慮されることを確保する義務。 15.規定の遵守を確保するため、締約国は、条約第4条、第42条および第44条第6項にしたがって多くの実施措置をとり、かつ、あらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するべきである。このような措置には以下のものが含まれる。 (a) 国内法その他の法源を再検討し、かつ必要なときは改正することによって、第3条第1項を編入し、かつ、すべての国内法令、州または準州の立法、サービスを提供するまたは子どもに影響を与える民間機関または公的機関の活動を規制する規則、ならびに、あらゆるレベルにおける司法上および行政上の手続において、子どもの最善の利益を考慮する要件が、実体的権利としても手続規則としても反映されかつ実施することを確保すること。 (b) 国、広域行政圏および地方のレベルにおける政策の調整および実施において子どもの最善の利益を擁護すること。 (c) 自己に関連しまたは影響を与えるすべての実施措置、行政上および司法上の手続において、自己の最善の利益を適切に統合され、かつ一貫して適用される子どもの権利を全面的に実現するため、苦情申立て、救済または是正のための機構および手続を設置すること。 (d) 子どもの権利の実施を目的としたプログラムおよび措置のための国内資源の配分、ならびに、国際援助または開発援助を受けている活動において、子どもの最善の利益を擁護すること。 (e) データ収集を確立し、モニタリングしかつ評価する際に、子どもの最善の利益が明示的に説明されることを確保するとともに、必要なときは子どもの権利の問題に関する調査研究を支援すること。 (f) 子どもに直接間接に影響を与える決定を行なうすべての者(子どものためにおよび子どもとともに活動する専門家その他の者を含む)に対し、第3条第1項およびその実際の適用に関する情報および研修の機会を提供すること。 (g) 第3条第1項で保護されている権利の適用範囲が理解されるよう、子どもに対しては子どもが理解できる言葉で、ならびに子どもの家族および養育者に対して適切な情報を提供するとともに、子どもが自己の視点を表明し、かつ、子どもの意見が正当に重視されることを確保するために必要な条件を整備すること。 (h) 子どもが権利の保有者として認識されるようにするため、マスメディアおよびソーシャルネットワークならびに子どもたちの関与を得ながら行なう広報プログラムを通じ、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利の全面的実施を阻害するすべての否定的な態度および物の見方と闘うこと。 16.子どもの最善の利益を全面的に実施する際には、以下の要素が念頭に置かれるべきである。 (a) 子どもの権利の普遍性、不可分性、相互依存性および相互関連性。 (b) 子どもは権利の保有者であるという認識。 (c) 条約の世界的な性質および対象範囲。 (d) 条約上のすべての権利を尊重し、保護しかつ充足する締約国の義務。 (e) 経時的な子どもの発達に関わる行動の短期的、中期的および長期的影響。 IV.法的分析および条約の一般原則との関係 A.第3条第1項の文理分析 1.「子どもにかかわるすべての活動において」(In all actions concerning children) (a) 「すべての活動において」(in all actions) 17.第3条第1項は、子どもに関わるすべての決定および活動においてこの権利が保障されることを確保しようとするものである。すなわち、子ども(たち)に関連するすべての活動において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。「活動」という文言は、決定のみならず、すべての行ない、行為、提案、サービス、手続その他の措置を含む。 18.行動をとらないこと、すなわち不作為もまた「活動」である(たとえば、社会福祉機関が子どもをネグレクトまたは虐待から保護するための措置をとらなかった場合)。 (b) 「にかかわる」(concerning) 19.この法的義務は、子どもに直接間接に影響を与えるすべての決定および活動に適用される。したがって、「にかかわる」とは、第一に、ひとりの子ども、集団としての子どもたちまたは子どもたち一般に直接関わる措置および決定をいい、第二に、たとえ子ども(たち)が措置の直接の対象ではない場合でも、子ども個人、集団としての子どもたちまたは子どもたち一般に影響を及ぼすその他の措置をいう。委員会の一般的意見7号で述べたように、このような活動には、子どもを直接対象とするもの(たとえば保健、ケアまたは教育に関わるもの)のみならず、子どもたちおよび他の住民集団を対象とする活動(たとえば環境、住宅または交通機関に関わるもの)も含まれる。したがって、「にかかわる」という文言は非常に広義に理解されなければならない。 20.実際のところ、国が行なうすべての活動は何らかの形で子どもたちに影響を与えるものである。だからといって、国が行なうすべての活動に、子どもの最善の利益を評価・判定する完全かつ公式なプロセスが組みこまれる必要があるわけではない。しかし、ある決定が子ども(たち)に重要な影響を及ぼす場合には、子どもの最善の利益を考慮するために保護の水準を高め、かつ詳細な手続を設けるのが適当である。 したがって、子ども(たち)を直接の対象としない措置との関連では、「にかかわる」という文言の意義は、当該活動が子ども(たち)に与える影響を評価する目的で、個別事案の事情に照らして明らかにされなければならない。 (c) 「子ども」(children) 21.「子ども」とは、条約第1条および第2条にしたがい、いかなる種類の差別もなく、締約国の管轄内にある18歳未満のすべての者をいう。 22.第3条第1項は、個人としての子どもに適用され、締約国に対し、個別の決定において子どもの最善の利益を評価し、かつ第一次的に考慮する義務を課すものである。 23.ただし、「子ども」(children)という文言は、自己の最善の利益を正当に考慮される権利が、個人としての子どものみならず、子どもたち一般または集団としての子どもたちにも適用されることを含意している。したがって、国は、子どもたちに関わるすべての活動において、集団としての子どもたちまたは子どもたち一般の最善の利益を評価し、かつ第一次的に考慮する義務を有する。このことは、すべての実施措置についてとりわけ明らかである。委員会は、子どもの最善の利益は集団的権利としても個人的権利としてもとらえられていること、および、この権利を集団としての先住民族の子どもに適用する際にはこの権利が集団的文化権とどのように関連しているかについて検討する必要があることを強調する [4]。 「先住民族の子どもとその条約上の権利」に関する一般的意見11号(2009年)、パラ30。 24.だからといって、子ども個人に関わる決定において、その利益が子どもたち一般の利益と同一であると理解されなければならないというわけではない。むしろ、第3条第1項は、ある子どもの最善の利益は個別に評価されなければならないことを含意している。個人および集団としての子ども(たち)の最善の利益を明らかにするための手続については、後掲第V章で説明している。 2.「公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によって」(By public or private social welfare institutions, courts of law, administrative authorities or legislative bodies) 25.子どもの最善の利益を正当に考慮する国の義務は、子どもが関係するまたは子どもに関わるすべての公的および私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関ならびに立法機関を包含する包括的な義務である。第3条第1項では親については明示的に言及されていないものの、子どもの最善の利益は親の「基本的関心となる」(第18条第1項)。 (a) 「公的もしくは私的な社会福祉機関」(public or private social welfare institutions) 26.この文言は、狭義に解釈され、または厳密な意味での社会機関に限定して解されるべきではなく、その活動および決定が子どもおよびその権利の実現に影響を及ぼすすべての機関を意味するものとして理解されるべきである。このような機関には、経済的、社会的および文化的権利に関するもの(たとえばケア、保健、環境、教育、ビジネス、余暇・遊び等)だけではなく、市民的権利および自由に対応する機関(たとえば出生登録、あらゆる場面における暴力からの保護等)も含まれる。私的な社会福祉機関には、営利組織であるか非営利組織であるかに関わらず、子どもによる権利の享受にとって重要であるサービスの提供において役割を果たしており、かつ政府のサービス機関に代わって、または政府のサービス機関と並存する選択肢のひとつとして活動している民間セクター組織も含まれる。 (b) 「裁判所」(courts of law) 27.委員会は、「裁判所」とは、すべての場面におけるすべての司法手続――職業裁判官によるものか素人裁判官によるものかは問わない――および子どもに関わるすべての関連の手続をいうものであって、そこに限定はないことを強調する。これには、調停、仲裁および斡旋の手続も含まれる。 28.刑事事件においては、最善の利益の原則は、法律に抵触した(すなわち、法律を犯したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定された)子どもまたは法律と(被害者または証人として)関わりを持った子ども、および、法律に抵触した親の状況から影響を受けている子どもに適用される。委員会は、子どもの最善の利益を保護するとは、罪を犯した子どもに対応する際、刑事司法の伝統的目的(禁圧または応報等)に代えて立ち直りおよび修復的司法という目的が優先されなければならないということである旨、強調する [5]。 [5] 「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号(2007年)、パラ10。 29.民事事件においては、父子関係の確定、子どもの虐待またはネグレクト、家族再統合、施設入所等に関する事件で、子どもが直接または代理人を通じて自己の利益を擁護しようとする場合がある。子どもは、たとえば、養子縁組または離婚に関する手続、子どもの人生および発達に重要な影響を及ぼす監護権、居所、面会交流等の問題に関する決定、および、子どもの虐待またはネグレクトに関する手続において、裁判による影響を受ける場合もある。裁判所は、手続的性質のものであるか実体的性質のものであるかに関わらず、このようなすべての状況および決定において子どもの最善の利益が考慮されるようにしなければならず、かつ、子どもの最善の利益を効果的に考慮したことを実証しなければならない。 (c) 「行政機関」(administrative authorities) 30.委員会は、あらゆるレベルの行政機関が行なう決定の範囲はきわめて広く、とくに教育、ケア、保健、環境、生活条件、保護、庇護、出入国管理、国籍へのアクセスに関する決定を包含するものであることを強調する。これらの分野で行政機関が行なう個別の決定は、あらゆる実施措置の場合と同様、子どもの最善の利益によって評価され、かつ子どもの最善の利益を指針とするものでなければならない。 (d) 「立法機関」(legislative bodies) 31.締約国の義務が「立法機関」にも適用されるとされていることは、第3条第1項が、個人としての子どもだけではなく子どもたち一般にも関連するものであることをはっきりと示している。いかなる法令および集団的協定――子どもに影響を与える二国間・多国間の貿易条約または平和条約等――の採択も、子どもの最善の利益によって規律されるべきである。自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利は、子どもにとくに関わる法律のみならず、あらゆる関連の法律に明示的に含まれるべきである。この義務はまた予算の承認にも適用されるのであり、予算の準備および策定に際しては、それが子どもに配慮したものとなるようにするため、子どもの最善の利益の視点を採用することが必要になる。 3.「子どもの最善の利益」(The best interests of the child) 32.子どもの最善の利益の概念は複雑であり、その内容は個別事案ごとに判定されなければならない。立法者、裁判官、行政機関、社会機関または教育機関は、条約の他の規定に則して第3条第1項を解釈・実施してこそ、この概念を明確にし、かつ具体的に活用できるようになる。したがって、子どもの最善の利益の概念は柔軟性および適応性を有するものである。この概念は、当事者である子ども(たち)が置かれた特定の状況にしたがって、その個人的な背景、状況およびニーズを考慮に入れながら個別に調節・定義されるべきである。個別の決定については、子どもの最善の利益は、その特定の子どもが有する特定の事情に照らして評価・判定されなければならない。立法者による決定のような集団的決定については、子どもたち一般の最善の利益は、特定の集団および(または)子どもたち一般の事情に照らして評価・判定されなければならない。いずれの場合にも、評価および判定は、条約およびその選択議定書に掲げられた権利を全面的に尊重しながら進められるべきである。 33.子どもの最善の利益は、子ども(たち)に関わるすべての事柄に対して適用されるべきであり、かつ、条約または他の人権条約に掲げられた諸権利間で生じる可能性のあるいかなる矛盾を解決する際にも考慮されるべきである。子どもの最善の利益にのっとった、可能性のある解決策を特定することに注意が払われなければならない。このことは、国には、実施措置を採択する際、すべての子どもたち(脆弱な状況に置かれた子どもたちを含む)の最善の利益を明らかにする義務があることを含意するものである。 34.子どもの最善の利益の概念は柔軟なものであることから、個別の子どもの状況を敏感に受けとめ、かつ子どもの発達についての知識を発展させていくことが可能になる。しかし、都合のいいように使われる余地が残る場合もある。子どもの最善の利益の概念は、たとえば人種主義的政策を正当化しようとする政府および他の国家機関によって、監護権をめぐる紛争で自分自身の利益を擁護しようとする親によって、また面倒を引き受けられず、関連性または重要性がないとして子どもの最善の利益の評価を行なおうとしない専門家によって、濫用されてきた。 35.実施措置との関連では、あらゆる行政レベルにおける立法および政策策定ならびにサービス提供で子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するために、子どもたちおよびその権利の享受に影響を及ぼすいかなる法律、政策または予算配分の提案についてもその影響を予測するための子どもの権利影響事前評価(CRIA)、および、実施の実際の影響を評価するための子どもの権利影響事後評価という継続的プロセスが要求される [6]。 [6] 「子どもの権利条約の実施に関する一般的措置」に関する一般的意見5号(2003年)、パラ45。 4.「第一次的に考慮される」(Shall be a primary consideration) 36.子どもの最善の利益は、あらゆる実施措置の採択において第一次的に考慮されなければならない。「される」(shall be)という文言は国に対して強い法的義務を課すものであり、国は、いかなる活動においても、子どもの最善の利益が評価され、かつ第一次的考慮事項として適正に重視されるか否かについて裁量を行使できないということを意味する。 37.「第一次的に考慮される」事項という表現は、子どもの最善の利益は他のすべての考慮事項とは同列に考えられないということを意味する。この強い位置づけは、子どもが置かれている特別な状況(依存、成熟度、法的地位、および、多くの場合に意見表明の機会を奪われていること)によって正当化されるものである。子どもが自分自身の利益を強く主張できる可能性はおとなの場合よりも低く、子どもに影響を与える決定に関与する者は子どもの利益について明確に意識していなければならない。子どもの利益は、強調されなければ見過ごされる傾向にある。 38.養子縁組(第21条)については、最善の利益の権利はさらに強化されている。これは単に「第一次的に考慮される」事項(a primary consideration)ではなく、「最高の考慮事項」(the paramount consideration)なのである。実際、子どもの最善の利益は養子縁組についての決定を行なう際に決定的要素とされなければならないが、これは他の問題についての決定においても同様である。 39.ただし、第3条第1項は幅広い状況を対象とするものであるため、委員会は、その適用について一定の柔軟性を認める必要性を認識する。いったん評価・判定された子どもの最善の利益が、他の(たとえば他の子ども、公衆、親等の)利益または権利と相反するおそれもある。個別に考慮された子どもの最善の利益と、子どもたちの集団または子どもたち一般の最善の利益とが相反する可能性があるときは、すべての当事者の利益を慎重に比較衡量し、かつ適切な折衷策を見出すことによって、事案ごとの状況に応じて解決が図られなければならない。他者の権利が子どもの最善の利益と相反する場合も同様である。調和を図ることができないときは、公的機関および意思決定担当者はすべての関係者の権利の分析および比較衡量を行なわなければならない。その際、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利とは、子どもの利益が、単に複数の考慮事項のひとつとして扱われるのではなく、高い優先順位を与えられるということである点を念頭に置く必要がある。したがって、子どもにとって最善と思われる対応がより重視されなければならない。 40.子どもの最善の利益を「第一次的に」とらえるためには、あらゆる活動において子どもの利益がどのように位置づけられなければならないかについて意識し、かつ、あらゆる状況において(ただし、とくにある活動が関係する子どもに否定しようのない影響を与える場合に)これらの利益を積極的に優先させることが必要である。 B.子どもの最善の利益と条約の他の一般原則との関係 1.子どもの最善の利益と差別の禁止に対する権利(第2条) 41.差別の禁止に対する権利は、条約上の権利の享受に関するあらゆる形態の差別を禁止するという消極的な義務ではなく、条約上の権利を享受する効果的かつ平等な機会をすべての子どもに対して確保するため、国が適当な積極的措置をとることも求めるものである。そのためには、現実の不平等の状況を是正するための積極的措置が必要となる場合もある。 2.子どもの最善の利益と生命、生存および発達に対する権利(第6条) 42.国は、人間の尊厳を尊重し、かつすべての子どものホリスティックな発達を確保する環境をつくらなければならない。子どもの最善の利益の評価・判定にあたっては、国は、生命、生存および発達に対するその子どもの固有の権利が全面的に尊重されることを確保しなければならない。 3.子どもの最善の利益と意見を聴かれる権利(第12条) 43.子どもの最善の利益の評価には、子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明し、かつ表明された意見を正当に重視される子どもの権利の尊重が含まれなければならない。このことは、やはり第3条第1項と第12条との切っても切れない関係を強調した委員会の一般的意見12号でもはっきりと述べられている。これら2つの条項は補完的な役割を有しており、前者が子どもの最善の利益の実現を目指す一方で、後者は、子どもに影響を与えるすべての事柄(子どもの最善の利益の評価を含む)において子ども(たち)の意見を聴きかつ子ども(たち)を包摂するための方法論を提供している。第12条の要素が満たされなければ、第3条の正しい適用はありえない。同様に、第3条第1項は、自分たちの生活に影響を与えるすべての決定における子どもたちの必要不可欠な役割を促進することにより、第12条の機能性を強化している [7]。 一般的意見12号、パラ70-74。 44.子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利が問題になっている際には、子どもの発達しつつある能力(第5条)が考慮に入れられなければならない。委員会はすでに、子ども自身の知識、経験および理解力が高まるにつれて、親、法定保護者または子どもに責任を負うその他の者は、指示および指導を、子ども自身の気づきを促すための注意喚起およびその他の形態の助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならないことを明らかにした [8]。同様に、子どもが成熟するにつれて、その意見は、その子どもの最善の利益の評価においていっそう重視されるようにならなければならない。赤ちゃんおよび非常に幼い子どもも、たとえ年長の子どもと同じ方法で自己の意見を表明しまたは自己を主張することができない場合でも、自己の最善の利益を評価される、すべての子どもと同じ権利を有する。国は、このような子どもの最善の利益を評価するための適当な体制(適当なときは代理人を含む)を確保しなければならない。意見を表明できない子どもまたは意見を表明する意思のない子どもについても同様である。 前掲、パラ84。 45.委員会は、条約第12条第2項で、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても、直接にまたは代理人を通じて意見を聴かれる子どもの権利が定められていることを想起する(さらに詳しくは後掲第V章B参照)。 (子どもの最善の利益 後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2013年6月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/241.html
子どもの権利委員会・一般的意見16号:企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務 後編 (企業と子どもの権利 前編より続く) VI.実施の枠組み A.立法措置、規制措置および執行措置 1.法令 53.法令は、企業の活動および操業によって子どもの権利に悪影響が生じ、または子どもの権利が侵害されないことを確保するために必要不可欠な手段である。国は、第三者によって子どもの権利が実施されるようにし、かつ、企業が子どもの権利を尊重できるようにする明確かつ予測可能な法的環境および規制環境を提供する法律を定めるよう、求められる。企業が子どもの権利を侵害しないことを確保する目的で適切かつ合理的な立法措置および規制措置をとる義務を満たすために、国は、懸念の対象となる特定の企業部門を特定する目的でデータ、証拠および調査研究の結果を収集することが必要になろう。 54.第18条第3項にしたがい、国は、働く親および養育者が子どもに対する養育責任を果たすことを援助する雇用環境を企業内で創設するべきである。このような環境としては、家族にやさしい職場方針(育児休暇を含む)の導入、母乳育児の支援および推進、良質な保育サービスへのアクセス、十分な生活水準を維持するに足る賃金の支払い、職場における差別および暴力からの保護、ならびに、職場における安心および安全などがある。 55.非効率的な税制、腐敗、および、とくに国有企業への課税および法人課税から得られた政府歳入の不適切な管理は、条約第4条にしたがって子どもの権利を充足するために利用可能な資源の制限につながる可能性がある。贈収賄・腐敗対策関連文書 [19] に基づいてすでに負っている義務に加え、国は、透明性、説明責任および公正性を確保しながら、あらゆる財源から歳入フローを獲得しかつ管理するための効果的な法令を策定しかつ実施するべきである。 [19] OECD・国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約および(または)国連・腐敗防止条約など。 56.国は、子どもの経済的搾取および危険な労働が禁止されることを確保するために条約第32条を実施するべきである。国際基準にのっとった最低就労年齢を越えており、したがって被用者として合法的に働ける一方、なおも(たとえばその子どもの健康、安全または道徳的発達にとって危険がある労働から)保護される必要があり、かつ教育、発達およびレクリエーションに対するその子どもの権利が促進されかつ保護されることを確保されなければならない子どもも存在する [20]。国は、最低就労年齢を定め、労働時間および労働条件を適切に規制し、かつ、第32条を効果的に執行するための罰則を確立しなければならない。国は、労働監察および執行のための、十分に機能する制度および能力を整備しなければならない。国はまた、児童労働に関する基本的なILO条約 [21] を双方とも批准し、かつ国内法に編入するべきである。条約第39条に基づき、国は、いずれかの形態の暴力、ネグレクト、搾取または虐待(経済的搾取を含む)を経験した子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するためにあらゆる適当な措置をとらなければならない。 [20] 休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(第31条)に関する一般的意見17号(2013年、近日発表)参照。 [21] 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(1999年)および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)。 57.国はまた、子どもの権利、健康およびビジネスに関する国際的に合意された基準(世界保健機関の「タバコの規制に関する枠組み条約」ならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議を含む)の実施および執行も要求される。委員会は、製薬部門の活動および操業が子どもの健康に深い影響を及ぼすことを認識する。製薬会社は、既存の指針 [22] を考慮しながら、子どものための医薬品のアクセス、利用可能性、受け入れ可能性および質を高めるよう奨励されるべきである。さらに、知的財産権は医薬品の負担可能性を促進するようなやり方で適用されるべきである [23]。 [22] 医薬品へのアクセスに関する製薬会社のための人権指針(人権理事会決議15/22)。 [23] 一般的意見15号、パラ82;世界貿易機関「TRIPS協定と公衆衛生に関する宣言」(WT/MIN(01)/DEC/2)参照。 58.マスメディア産業(広告・宣伝産業を含む)は、子どもの権利に対して肯定的な影響も否定的な影響も及ぼしうる。条約第17条に基づき、国は、民間メディアを含むマスメディアに対し、子どもにとって社会的および文化的利益のある情報および資料(たとえば健康的なライフスタイルに関するもの)を普及するよう奨励する義務を負う。メディアは、情報および表現の自由に対する子どもの権利を認めつつも有害な情報(とくにポルノ的な資料、または暴力、差別および子どもの性的イメージを描写し若しくは強化する資料)から子どもを保護するため、適切に規制されなければならない。国は、マスメディアに対し、すべてのメディア報道において子どもの権利が全面的に尊重されること(暴力からの保護および差別を固定化させる描写からの保護を含む)を確保するための指針を発展させるよう、奨励するべきである。国は、視覚障害その他の機能障害を有する子どもにとってアクセス可能な形式で書籍その他の印刷物を複製することを認める、著作権上の例外を定めることが求められる。 59.子どもは、メディアを通じて伝達される宣伝および広告を真実であって偏りのないものと考える場合があり、したがって有害な製品を消費しかつ使用する可能性がある。広告および宣伝はまた、たとえば非現実的な身体イメージを描いている場合などに、子どもの自尊感情に対しても強力な影響力を持ちうる。国は、適切な規制を行なうこと、ならびに、企業に対し、行動規範を遵守し、かつ親および子どもが消費者として十分な情報に基づく決定を行なえるようにする明瞭かつ正確な製品表示および製品情報を用いるよう奨励することにより、宣伝および広告が子どもの権利に悪影響を与えないことを確保するべきである。 60.デジタルメディアは特段の懸念の対象である。多くの子どもは、インターネットの利用者であると同時に、ネットいじめ、ネットを通じての勧誘、人身取引またはインターネットを通じた性的な虐待および搾取のような暴力の被害者ともなりうるためである。企業はこのような犯罪行為に直接関与しているわけではないかもしれないが、その行動を通じてこれらの権利侵害に加担する可能性はある。たとえば、インターネット上で操業する旅行代理店によってセックス・ツーリズム活動の情報交換および計画が可能になるので、児童セックス・ツーリズムがこれらの代理店によって促進される可能性がある。児童ポルノは、インターネット企業およびクレジットカード業者によって間接的に促進されうる。国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の義務を履行するとともに、子どもがリスクに対応し、かつどこに助けを求めればよいか知ることができるよう、ウェブ関連の安全に関する、年齢にふさわしい情報を子どもに提供するべきである。国は、情報通信技術産業が子どもを暴力および不適切な資料から保護するための十分な措置を発展させかつ整備するよう、当該産業との調整を図るよう求められる。 2.執行措置 61.一般的に、子どもにとってもっとも重大な問題となるのは、企業を規制する法律が実施されず、または十分に執行されないことである。効果的な実施および執行を確保するために国が採用すべき措置としては、以下を含む多くのものがある。 (a) 子どもの権利に関連する基準(健康および安全、消費者の権利、教育、環境、労働ならびに広告および宣伝に関するもの等)の監督を担当する規制機関を強化することにより、これらの機関が、苦情申立てを監視しおよび調査しならびに子どもの権利侵害に対して救済を提供しおよび執行するための十分な権限および資源を保持するようにすること。 (b) 子どもの権利と企業に関する法令を、子どもおよび企業を含む関係者に対して普及すること。 (c) 条約および企業と子どもの権利に関するその議定書〔訳者注/「条約およびその選択議定書に掲げられた企業と子どもの権利に関する規定」の意か〕、国際人権基準および関連国内法が正しく適用されることを確保し、かつ国内判例の発展を促進する目的で、裁判官および他の行政官ならびに弁護士および法律扶助の提供に従事する者の研修を実施すること。 (d) 司法的または非司法的機構を通じた効果的な救済措置を提供し、かつ司法に効果的にアクセスできるようにすること。 3.子どもの権利と企業によるデュー・ディリジェンス/相当の注意 62.企業が子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとる義務を履行するため、国は、企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うよう要求するべきである。そうすることにより、企業として自社が子どもの権利に与える影響を特定し、防止しかつ緩和すること(当該企業の事業関係全体および自社の世界的操業全体においてこのような取り組みを行なうことも含む)が確保されよう [24]。操業の性質または操業の状況からして企業が子どもの権利侵害に関与しているおそれが強い場合、国は、より厳格なデュー・ディリジェンス手続および効果的な監視制度を要求するべきである。 [24] UNICEF, Save the Children and Global Compact, Children's Rights and Business Principles (2011) 参照。 63.子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスがより一般的な人権デュー・ディリジェンス手続に包含されている場合、条約およびその選択議定書の規定が決定に影響を与えるようにすることが不可欠である。人権侵害を防止しかつ(または)是正するためのいかなる行動計画および措置においても、子どもが受ける異なる影響について特別な考慮がなされなければならない。 64.国は、国有企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払い、かつ自社が子どもの権利に与えた影響についての報告書(定期報告を含む)を公に送達するよう要求することにより、範を示すべきである。国は、企業が子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを条件とした、輸出信用機関によるもののような支援およびサービス、開発金融および投資保険を公表することが求められる。 65.大企業は、子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスの一環として、子どもの権利への影響に対処するための自社の努力について公表することを奨励され、かつ適当なときは要求されるべきである。このような発表は、入手可能であり、有効であり、かつ諸企業間で比較可能なものであるべきであり、かつ、自社の活動によって子どもに対して引き起こされる可能性がある悪影響および現に生じた悪影響を緩和するために企業がとった措置を取り上げることが求められる。企業は、自社が製造しまたは商品化する製品およびサービスが、奴隷制または強制労働のような深刻な子どもの権利侵害をともなわないものであることを確保するためにとった措置を公表するよう要求されるべきである。報告が義務とされている場合、国は、コンプライアンスを確保するための検証・執行機構を整備することが求められる。国は、子どもの権利に関する望ましい取り組みについての基準を定め、かつそのような取り組みを認めるための手段を創設することにより、報告を支援することもできる。 B.救済措置 66.自己の権利侵害に対する効果的救済を求めるために司法制度にアクセスすることは、子どもにとって、企業が関与している場合にはしばしば困難である。子どもは法的地位を有しないことがあり、その場合には請求を行なえない。子どもおよびその家族は、自己の権利についてならびに救済を求めるために利用可能な機構および手続について知らないことが多く、または司法制度を信頼していない場合がある。国は、企業による刑事法、民事法または行政法の違反を必ずしも調査しないこともある。子どもと企業との間にはきわめて大きな力の不均衡があり、かつ、企業を相手取った訴訟にかかる費用が訴訟を不可能にするほど高いことおよび代理人弁護士を見つけるのが困難であることも多い。企業が関わる事案は法廷外で、かつ発展した判例法がないままに決着をつけられることがしばしばある。司法的先例が説得力を持つ法域の子どもおよびその家族は、結果をめぐる不確定さに鑑み、訴訟の遂行を放棄する可能性がより高い可能性がある。 67.企業の世界的操業を背景として生じた権利侵害について救済を得ることには、特段の困難が存在する。子会社等は保険に加入しておらず、または有限責任しか負っていないかもしれない。多国籍企業が別々の事業体に組織されていることにより、法的責任を明らかにして各事業体に帰することが困難である可能性もある。請求をまとめ、かつその正当性を主張する際に、異なる国々に存する情報および証拠へのアクセスが問題になることもありうる。国外の法域では法律扶助を受けることが困難な場合もあり、また域外請求を行なえないようにする目的でさまざまな法律上および手続上の障害が利用される可能性もある。 68.国は、子どもがいかなる種類の差別もなく効果的な司法機構に実際にアクセスできるよう、社会的、経済的および司法的障壁を取り除くことに焦点を当てるべきである。子どもおよびその代理人に対しては、たとえば学校カリキュラム、ユースセンターまたはコミュニティ基盤型プログラムを通じ、救済措置に関する情報が提供されるべきである。子どもおよびその代理人は独自に手続を開始することが認められるべきであり、かつ、武器の平等を確保するため、企業を相手取って訴訟を起こすにあたって法律扶助ならびに弁護士および法律扶助提供者の支援にアクセスできるべきである。集団訴訟および公益訴訟のような集団的苦情申立ての制度をまだ設けていない国は、企業の行為によって同じような影響を受けている多数の子どもにとっての裁判所へのアクセス可能性を高める手段として、これらの制度を導入するよう求められる。国は、たとえば言語もしくは障害を理由としてまたは年齢が低すぎるために司法へのアクセスを妨げる障壁に直面している子どもに対し、特別な援助を提供しなければならない場合もあろう。 69.年齢は、司法手続に全面的に参加する子どもの権利に対する障壁とされるべきではない。同様に、委員会の一般的意見12号にしたがい、民事手続および刑事手続に関与する子どもの被害者および証人のための特別な体制が発展させられるべきである。さらに、国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針 [25] を実施するよう求められる。秘密保持およびプライバシーが尊重されなければならず、かつ、子どもに対しては、その子どもの成熟度およびその子どもが有している可能性がある発話上、言語上またはコミュニケーション上の困難を正当に重視しながら、手続のあらゆる段階において、進捗状況に関する情報が常に提供されるべきである。 [25] 経済社会理事会決議2005/20により採択されたもの。 70.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書は、国が、企業を含む法人に対しても適用される刑事法を制定するよう要求している。国は、子どもの権利の深刻な侵害(強制労働等)に関わる事案における、企業を含む法人の刑事法上の責任――または同一の抑止効果を有する他の形態の法的責任――の採用を検討するべきである。国内裁判所に対しては、裁判権に関する受け入れられた規則にしたがい、これらの深刻な権利侵害についての裁判権が認められるべきである。 71.調停、斡旋および仲裁のような非司法的機構は、子どもと企業に関わる紛争解決のための有用な代替的選択肢となりうる。これらの機構は、司法的救済に対する権利を損なうことなく利用可能とされなければならない。このような機構は、それが条約およびその選択議定書に一致しており、かつ有効性、迅速性ならびに適正手続および公正性に関する国際的な原則および基準に一致していることを条件として、司法手続と並んで重要な役割を果たしうる。企業が設置する苦情受付機構は、柔軟な、かつ時宜を得た解決策を提供できる可能性があり、かつ、時には、企業の行為について提起された懸念をこのような機構を通じて解決することが子どもの最善の利益にかなうこともあるかもしれない。このような機構は、アクセス可能性、正当性、予見可能性、公平性、権利との両立性、透明性、継続的学習および対話を含む基準 [26] にしたがったものであるべきである。いずれにしても、裁判所、または行政上の救済措置その他の手続の司法審査にはアクセスできることが求められる。 [26] 人権と多国籍企業その他の企業の問題に関する事務総長特別代表(ジョン・ラギー)報告書「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」(A/HRC/17/31)、指導原則31。 72.国は、子ども個人もしくは子どもの集団またはその代理人として行動する他の者が、企業の活動および操業との関連で国が子どもの権利を十分に尊重し、保護しかつ充足しなかった場合の救済を得られるよう、国際的および地域的人権機構(通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む)へのアクセスを容易にするためにあらゆる努力を行なうべきである。 C.政策措置 73.国は、子どもの権利を理解し、かつ全面的に尊重する企業文化を奨励するべきである。この目的のため、国は、条約を実施するための国家的な政策枠組みの全般的文脈に子どもの権利と企業の問題を含めるよう求められる。国は、企業が自社の企業活動の文脈において、また国境を越えて操業している場合には国外での操業、製品またはサービスおよび活動と関連した事業関係において子どもの権利を尊重することに関する政府としての期待を明示的に明らかにした指針を策定するべきである。これには、企業のあらゆる活動および操業における暴力を絶対に許さない政策の実施を含めることが求められる。国は、必要なときは、企業の責任に関する関連の取り組みの参考例を明らかにし、かつこのような取り組みを支持するよう奨励するべきである。 74.多くの状況下で経済の大きな部分を占めているのは中小企業であり、国として、これらの企業に対し、不必要な経営上の負担を回避しながら子どもの権利を尊重しかつ国内法を遵守する方法についての、容易に利用可能であり、かつこれらの企業にふさわしい指針および支援を提供することがとりわけ重要である。国はまた、より規模の大きな企業に対し、自社のバリューチェーン全体で子どもの権利を強化するために中小企業への影響力を活用するよう奨励することも求められる。 D.調整措置および監視措置 1.調整 75.条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、政府省庁間で、かつ地方から広域行政圏および中央に至るまでの諸段階の政府間で、部門横断型の調整が効果的に行なわれなければならない [27]。一般的に、企業政策および企業実務に直接関与している省庁は、子どもの権利を直接担当している省庁とは別に活動している。国は、企業法および企業実務を形づくる政府機関および議員が子どもの権利に関わる国の義務を知っていることを確保しなければならない。これらの政府機関および議員は、法律および政策を策定する際ならびに経済、貿易および投資に関する協定を締結する際に条約の全面的遵守を確保する備えを整えられるよう、関連の情報、研修および支援を必要とすることがあろう。国内人権機関は、子どもの権利および企業に関わっている種々の政府部局の連携を図る触媒として、重要な役割を果たしうる。 一般的意見5号、パラ37。 2.監視 76.国は、企業によって行なわれまたは助長された条約およびその選択議定書の違反(企業の世界的操業のなかで行なわれまたは助長された違反を含む)を監視する義務を負う。このような監視は、たとえば、問題を特定しかつ政策の参考とするために活用できるデータを収集すること、人権侵害を調査すること、市民社会および国内人権機関と連携すること、ならびに、自社が子どもの権利に及ぼす影響に関する企業の報告を実績評価のために活用することによって企業に公的な説明責任を負わせることを通じて、達成可能である。とくに、国内人権機関は、たとえば違反に関する苦情の受理、調査および調停、大規模な権利侵害に関する公的調査の実施、紛争状況下での調停、ならびに、条約の遵守を確保するための法律の見直しに関与することができる。必要なときは、国は、国内人権機関の立法上の権限を拡大して子どもの権利と企業の問題を含めるべきである。 77.国は、条約およびその選択議定書を実施するための国家的な戦略および行動計策を策定する際、企業の活動および操業において子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するために必要な措置への明示的言及を含めるべきである。国はまた、企業の活動および操業における条約の実施の進展を監視することも確保するよう求められる。このような監視は、子どもの権利に関する事前および事後の影響評価を通じて内部的に達成することも、議会委員会、市民社会組織、職能団体および国内人権機関のような他の機関との連携を通じて達成することも可能である。監視の一環として、企業が自分たちの権利に及ぼす影響に関する意見を子どもに直接尋ねることが求められる。若者評議会および若者議会、ソーシャルメディア、学校評議会および子ども団体のような、協議のためのさまざまな機構を活用することが可能である。 3.子どもの権利影響評価 78.すべての行政段階における企業関連の法律および政策の策定および実施において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するためには、継続的な子どもの権利影響評価が必要である。これにより、子どもおよびその権利の享受に影響を与える、企業関連のいかなる政策、法令、予算またはその他の行政決定の提案についてもその影響を予測することが可能になる [28] とともに、法律、政策およびプログラムが子どもの権利に与える影響の継続的な監視および事後評価が補完されるはずである。 [28] 一般的意見5号、パラ45。 79.子どもの権利影響評価の実施にあたっては、さまざまな方法論および実践を開発することができる。これらの方法論および実践においては、最低限、条約およびその選択議定書の枠組み、ならびに、委員会が明らかにした関連の総括所見および一般的意見が活用されなければならない。国が、企業関連の政策、立法または行政実務に関してより幅広い影響評価を実施する際には、これらの評価において、条約およびその選択議定書の一般原則が基調とされ、かつ、検討中の措置が子どもたちに及ぼす種々の影響について特別な考慮が払われることを確保するべきである [29]。 [29] 一般的意見14号、パラ99。 80.子どもの権利影響評価は、特定の企業または部門の活動によって影響を受けるすべての子どもへの影響について検討するために活用できるが、措置が一部のカテゴリーの子どもに与える異なる影響についての評価を含めてもよい。影響評価そのものを、子ども、市民社会および専門家ならびに関連の政府機関、学術的調査研究および国内外で記録された経験から得られた知見に基づいて行なうこともできる。分析の結果として、変更、代替策および改善のための勧告が行なわれるべきであり、また当該分析結果は公に利用可能とされるべきである [30]。 [30] 前掲。 81.プロセスが公平かつ独立であることを確保するため、国は、部外者を指名して評価プロセスを主導させることを検討してもよい。このような対応には重要な利益をもたらしうるものの、国は、結果について最終的に責任を負う当事者として、評価を実施する部外者が有能、誠実かつ公平であることを確保しなければならない。 E.連携措置および意識啓発措置 82.条約上の義務を負うのは国である一方、実施の作業には、企業、市民社会および子どもたち自身を含む社会のあらゆる層の関与を得る必要がある。委員会は、国が、企業にはその操業場所を問わず子どもの権利を尊重する責任があることについて、子どもにやさしく、かつ年齢にふさわしい伝達手段等も通じて(たとえば金銭感覚に関する教育の提供を通じて)、すべての子ども、親および養育者に対して情報提供および教育を行なうための包括的戦略を採択しかつ実施するよう、勧告する。条約に関する教育、研修および意識啓発は、人権の保有者としての子どもの地位を強調し、条約のすべての規定の積極的尊重を奨励し、かつ、すべての子ども(ならびに、とくに、被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子ども)に対する差別的態度に異議を申立てかつこれを根絶する目的で、企業を対象としても行なわれるべきである。このような文脈において、メディアは、企業に関連する子どもの権利についての情報を子どもに提供し、かつ、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めるよう、奨励されるべきである。 83.委員会は、国内人権機関が、たとえば望ましい実践のあり方に関する企業向けの指針および方針を策定して普及することにより、条約の規定に関する企業の意識啓発に関与できることを強調する。 84.市民社会は、企業操業の文脈において独立の立場から子どもの権利を促進しかつ保護するうえで、きわめて重要な役割を有している。これには、企業を監視し、かつその説明責任を問うこと、子どもが司法および救済措置にアクセスできるよう支援すること、子どもの権利影響評価に貢献すること、ならびに、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めることが含まれる。国は、独立した市民社会組織、子どもおよび若者が主導する団体、学界、商工会議所、労働組合、消費者団体ならびに職能組織との効果的連携およびこれらの団体への効果的支援を含め、活発かつ鋭敏な市民社会のための条件を確保するべきである。国は、これらの団体およびその他の独立団体への干渉を控え、かつ、子どもの権利と企業に関する公的な政策およびプログラムへのこれらの団体の関与を促進するよう求められる。 VII.普及 85.委員会は、締約国が、議会に対してかつ政府全体で(企業の問題に取り組んでいる省庁および自治体/地方レベルの機関、ならびに、開発援助機関および在外公館など貿易および国外投資を担当する機関を含む)この一般的意見を広く普及するよう勧告する。この一般的意見は、国境を超えて操業している企業を含む企業ならびに中小企業およびインフォーマル部門の関係者に対しても、普及されるべきである。また、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家(裁判官、弁護士および法律扶助関係者、教職員、後見人、ソーシャルワーカー、公立および私立の福祉施設の職員を含む)ならびに子ども全員および市民社会に対しても、この一般的意見を配布しかつ周知することが求められる。そのためには、この一般的意見を関連の言語に翻訳すること、アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい翻案版を利用可能とすること、この一般的意見の意味合いおよび最善の実施方法について討議するためのワークショップおよびセミナーを開催すること、ならびに、関連するすべての専門家の養成および研修にこの一般的意見を編入することが必要となろう。 86.国は、委員会に対する定期的報告に、直面している課題、ならびに、企業の活動および操業との関係で子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するためにとった措置(国内的措置および適当な場合には国境を越えてとった措置の双方)についての情報を含めるべきである。 更新履歴:ページ作成(2014年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/288.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの権利の促進における家族の役割 一般的討議勧告一覧 (第7会期、1994年) 原文:英語(PDF) 日本語訳:平野裕二 F.子どもの権利の促進における家族の役割についての一般的討議 (略) 188.一般的討議のしめくくりにあたり、委員会はいくつかの予備的結論に達した。以下、要約する。 189.子どもの権利の促進における家族の役割についての一般的討議により、親の責任および権利、国が家族および個々の家族構成員に提供すべき支援および援助、ならびに、家族という全般的枠組みにおける子どもの状況ならびにその基本的権利および自由に関連する多様な問題について詳細に検討することができた。 1.家族とは何か 190.さまざまな発言に基づけば、単一の家族概念が存在すると主張することは困難なように思われる。家族は、経済的および社会的諸要因ならびに支配的な政治的、文化的または宗教的伝統の影響を通じて多様な形で形成されてきたのであり、当然のことながら異なる課題または生活条件に直面している。したがって、一部の種類の家族または家族状況(すなわち、核家族、拡大家族、生物学的家族、養子縁組家族またはひとり親家族)のみが国および社会からの援助および支援を受けるにふさわしいと考えることは受け入れられるだろうか。家族または家族生活が決定的な社会的価値を認められるのは特定の事情がある場合に限るなどと考えることは可能だろうか。そのような判断はどのような基準に基づいて行なわれるのか――法的基準か、政治的基準か、宗教的基準か、またはその他の基準か。実際には子どもの人間性の尊厳にとって本質的な諸権利を享受する機会が、特定の条件が満たされた場合にしか子どもに与えられないという見方に賛成することなど、可能だろうか。 191.こうしたさまざまな疑問は、差別の禁止の原則のきわめて重要な価値を、一般的討議の最前面に位置づけるものであるように思われる。 2.家族における子どもとはどのような存在か 192.伝統的に、子どもは、扶養される立場にある、不可視かつ受け身の家族構成員と捉えられてきた。子どもは最近になってようやく「目に見える存在」となり、さらに、意見を聴かれ、かつ尊重される空間を子どもに与えようとする運動も大きくなりつつある。対話、交渉、参加が、子どもたちのための共同行動の最前線に位置づけられるようになってきた。 193.そうなると家族が、子どもを含む個々の構成員の1人ひとりが民主主義を経験する第一段階のための理想的な枠組みとなる。これは夢にすぎないのだろうか、それともやりがいのある貴重な任務としても構想されるべきだろうか。 194.多くの課題が残されているのは周知のとおりである。経済的なもの、社会的なものまたは文化的なもののいずれであるかにかかわらず、家族をとりまく外的事情および家族のなかで生じている緊張に鑑み、子どもが家族のためにおよび家族といっしょに働くものであるとされる状況や、女子が、幼い段階から母親としての「役割」に備えるよう奨励されて、きょうだいの面倒を見ることおよびあらゆる家事について母親の代わりをすることが期待される状況等は、いまなおしばしば生じている。家族にはプライバシーがあるのだから、自動的に、親には「将来の市民を責任のあるやり方で育てること」について十分な情報に基づく正しい判断をする能力が備わっているという前提のもと、子どもが虐待、ネグレクトおよび身体的不可侵性に対する権利の無視の対象とされることも多い。 195.子どもの最善の利益という本質的原則を遵守し、かつ意識啓発、広報および教育のための積極的キャンペーンを活用することにより、子どもの尊厳に反し、子どもの調和のとれた発達にとって有害であり、または子どもによる基本的権利の効果的享受を妨げる、広く蔓延している偏見および文化的または宗教的伝統を変えていけるのではないかという希望が表明された。 3.家族のない子どもとはどのような存在か 196.討議では、家族がない場合の子どもの現実はどのようなものかという、「通常は忘れられている」問題も取り上げられた。このような場合に、保護の制度は改善されるだろうか。そもそも子どもの最善の利益が評価されることはあるのだろうか。何らかの形で子どもが参加する余地はあるのか。子どもの声に耳を傾けるものはいるだろうか。差別を防止し、かつこれと闘うことは可能だろうか。端的にいえば、基本的人権および自由の枠組みのなかで、このような子どもの状況に真剣に対応していくことはそもそもできるのだろうかということである。 197.これらのあらゆる疑問は、当然のことながら、国レベルでも、国際協力の枠組みのなかでも、さらなる掘り下げ、さらなる研究および討議ならびに具体的なプログラムおよび戦略の策定を進めていくことを奨励するものである。条約は、これらのあらゆる疑問についての共通の参照軸であり、かつ示唆を与えてくれる文書であることが再確認された。さらに、条約はすべての家族構成員の基本的権利を個別に検討し、かつその尊重を確保するためのもっとも適切な枠組みでもある。 198.子どもの権利は自律的に捉えられていくことになるだろうが、子どもの権利は、親および家族の他の構成員の権利が承認され、尊重されかつ促進される文脈においてこそ、とりわけ意味のあるものとなる。そしてこれこそが、家族そのものの地位および尊重を促進していく唯一の方法である。 199.委員会は、今回の討論が、この重要な問題に関する今後の検討および行動において触媒としての役割を果たすのではないかという希望を表明した。 200.子どもの権利条約の実施において委員会および他のすべてのパートナーによって今後確保されるべきフォローアップは、今回のテーマ別一般的討議の重要な結論をさらに発展させていくことに資することになろう。 201.行なわれた貢献および検討された現実の重要性に鑑み、委員会は、今回の一般的討議のフォローアップを確保すること、および、この目的のため、1995年1月に開催予定の第8会期で議論するワーキングペーパーを作成することを決定した。 更新履歴:ページ作成(2017年2月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/235.html
子どもの権利委員会・一般的意見14号:自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項) 後編 (子どもの最善の利益 前編より続く) V.実施:子どもの最善の利益の評価および判定 46.前述したとおり、「子どもの最善の利益」とは、特定の状況における子ども(たち)の利益のあらゆる要素の評価を基礎とした権利であり、原則であり、かつ手続規則である。特定の措置について決定するために子どもの最善の利益を評価・判定する際には、以下の段階を踏むことが求められる。 (a) 第一に、当該事案の特定の事実関係において、何が最善の利益評価に関連する要素であるかを見出し、その具体的内容を明らかにし、かつ、各要素が他の要素との関係でどの程度の重みを有するかについて判断する。 (b) 第二に、その際には法的保障およびこの権利の適切な適用を確保する手続にしたがう。 47.子どもの最善の利益の評価および判定は、決定を行なう必要がある場合に踏まれるべき2つの段階である。「最善の利益」評価は、特定の子ども個人または特定の子ども集団について、特定の状況において決定を行なうために必要なあらゆる要素を評価し、かつ比較衡量することから構成される。この評価は、意思決定担当者およびその部下――可能であれば学際的なチーム――によって実施されるものであり、その際には子どもの参加が要求される。「最善の利益判定」とは、最善の利益評価に基づいて子どもの最善の利益を判定するために行なわれる、厳格な手続上の保障をともなう正式な手続をいう。 A.最善の利益の評価および判定 48.子どもの最善の利益の評価は、それぞれの子どもまたは子どもたちの集団もしくは子どもたち一般の特有の事情に照らして個別事案ごとに行なわれるべき、独自の活動である。これらの事情には、当事者である子ども(たち)の個人的特質(とくに年齢、性別、成熟度、経験、マイノリティ集団への所属、身体障害、感覚障害または知的障害があること等)、ならびに、子ども(たち)が置かれている社会的および文化的文脈(親の有無、子どもが親といっしょに暮らしているか否か、子どもとその親または養育者との関係の質、安全に関わる環境、家族、拡大家族または養育者が利用できる良質な代替的手段の存在等)が関連する。 49.何が子どもの最善の利益にのっとった対応であるかの判定は、その子どもを他に比べるもののない存在としている特有の事情の評価から開始されるべきである。このことは、利用される要素と利用されない要素があることを含意するとともに、これらの要素の比較衡量がどのように行なわれるかにも影響を与える。子どもたち一般については、最善の利益の評価には同一の要素が用いられる。 50.委員会は、子どもの最善の利益の判定を行なわなければならないいかなる意思決定担当者による最善の利益評価にも含めることができる諸要素を、非網羅的にかつ序列を設けずにリスト化することが有益であると考える。リストに掲げられた諸要素が非網羅的な性質のものであるということは、これらの要素に限ることなく、子ども個人または子どもたちの集団の特有の事情に関連する他の要素を考慮することも可能だということである。リストに掲げられたすべての要素が考慮に入れられ、かつそれぞれの状況に照らして比較衡量されなければならない。このようなリストは、具体的な指針を示しつつも、柔軟なものであるべきである。 51.このような諸要素のリストの作成は、国または意思決定担当者が子どもに影響を与える具体的分野(家族法、養子縁組法および少年司法法等)の規制を行なう際の有益な指針を提示することになるであろうし、必要であれば、自国の法的伝統にしたがって適切と考えられる他の要素を追加することもできる。委員会は、リストに要素を追加する際には、子どもの最善の利益の最終的目的が、条約で認められた諸権利の完全かつ効果的な享受および子どものホリスティックな発達を確保するところに置かれるべきであることを指摘したい。したがって、条約に掲げられた諸権利に反する要素、または条約上の権利に反する効果を有するであろう要素は、何が子ども(たち)にとって最善かを評価するうえで妥当なものと見なすことができない。 1.子どもの最善の利益を評価する際に考慮されるべき要素 52.以上の予備的検討を踏まえ、委員会は、子どもの最善の利益について評価・判定する際、当該状況との関連性に応じて考慮されるべき要素は以下のとおりであると考える。 (a) 子どもの意見 53.条約第12条は、自己に影響を与えるすべての決定において自己の権利を表明する子どもの権利について定めている。子どもの意見を考慮に入れない、または子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視しないいかなる決定も、子ども(たち)が自己の最善の利益の判定に影響を及ぼす可能性を尊重していないことになる。 54.子どもが非常に幼く、または脆弱な状況に置かれている(たとえば障害を有している、マイノリティ集団に属している、移住者である等)からといって、子どもが自己の意見を表明する権利を剥奪され、または最善の利益の判定の際にその子どもの意見が重視される度合いが低くなるわけではない。このような状況に置かれた子どもが権利を平等に行使できることを保障するための具体的措置が、意思決定プロセスにおける役割を子ども自身に対して保障する個別の評価が行なわれ、かつ、必要なときは、自己の最善の利益の評価への全面的参加を確保するための合理的な配慮 [9] および支援が提供されることを条件として、採用されなければならない。 [9] 障害のある人の権利に関する条約第2条参照。「『合理的配慮』とは、……他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。」〔川島聡=長瀬修仮訳〕 (b) 子どものアイデンティティ 55.子どもたちは均質な集団ではないことから、その最善の利益を評価する際には多様性が考慮に入れられなければならない。子どものアイデンティティには、性別、性的指向、民族的出身、宗教および信条、文化的アイデンティティ、性格等が含まれる。子どもと若者は基礎的な普遍的ニーズを共有しているものの、これらのニーズがどのように表出するかは、広範な個人的、身体的、社会的および文化的側面(子どもおよび若者の発達しつつある能力を含む)次第である。自己のアイデンティティを保全する子どもの権利は条約によって保障されており(第8条)、子どもの最善の利益の評価においても尊重・考慮されなければならない。 56.たとえば子どものために養護施設または里親への委託を検討する際の宗教的および文化的アイデンティティについては、子どもの養育に継続性が望まれることについて、ならびに子どもの民族的、宗教的、文化的および言語的背景について正当な考慮を払うものとされており(第20条第3項)、意思決定担当者は、子どもの最善の利益についての評価・判定を行なう際、この具体的文脈を考慮に入れなければならない。子どもの最善の利益を正当に考慮するということは、子どもが、自国および出身家族の文化(および可能であれば言語)にアクセスでき、かつ、当該国の法律上の規則および専門職向けの規則にしたがい、自己の生物学的家族に関する情報にアクセスする機会を与えられることを含意する。 57.子どものアイデンティティの一部としての宗教的・文化的価値および伝統の維持が考慮されなければならないとはいえ、条約で定められた権利に一致せず、またはこれらの権利と両立しない慣行は、子どもの最善の利益にのっとったものではない。意思決定担当者および公的機関は、文化的アイデンティティを理由とすることによって、条約で保障された子ども(たち)の権利を否定する伝統および文化的価値を許容しまたは正当化することはできない。 (c) 家庭環境の保全および関係の維持 58.委員会は、子どもの最善の利益の評価および判定を、子どもが親から分離されることも考えられる(第9条、第18条および第20条)という文脈のなかで行なうことが不可欠であることを想起する。委員会はまた、前述の諸要素は具体的権利であり、子どもの最善の利益の判定における唯一の要素ではないことも強調するものである。 59.家族は社会の基礎的集団であり、かつ、その構成員、とくに子どもの成長およびウェルビーイングのための自然な環境である(条約前文)。家族生活に対する子どもの権利は条約に基づいて保護されている(第16条)。「家族」という文言は、生物学的親、養親もしくは里親、または適用可能なときは地方の慣習により定められている拡大家族もしくは共同体の構成員を含むものとして広義に解されなければならない(第5条)。 60.家族の分離を防止することおよび家族の一体性を保全することは、子どもの保護制度の重要な構成要素であり、「このような分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定する場合」を除いて「子どもが親の意思に反して親から分離されない」ことを要求する、第9条第1項で定められた権利を基礎としている。さらに、親の一方または双方から分離されている子どもは、「子どもの最善の利益に反しないかぎり、定期的に親双方との個人的関係および直接の接触を保つ」権利を有する(第9条第3項)。このことは、監護権を有するすべての者、法律上または慣習上の主たる養育者、里親、および、子どもが強い個人的関係を有する者にも適用される。 61.親からの分離が子どもに及ぼす影響の重大性を踏まえ、このような分離は、子どもが切迫した危害を経験する危険がある場合またはその他の必要な場合に、最後の手段としてのみ行なわれるべきである。分離は、より侵襲性の低い措置によって子どもを保護できるときは、行なわれるべきではない。国は、分離の手段をとる前に、親が親としての責任を担うことに関する支援を提供するとともに、子どもを保護するために分離が必要である場合を除き、子どもを養育する家族の能力を回復しまたは増進させるべきである。経済的理由は、子どもを親から分離させることの正当な理由とはなりえない。 62.子どもの代替的養護に関する指針 [10] は、子どもが不必要に代替的養護に措置されないこと、および、代替的養護が行なわれる場合、子どもの権利および最善の利益に応じた適切な条件下で提供されることを確保することを目的としている。とくに、「金銭面および物質面での貧困、またはそのような貧困を直接のかつ唯一の理由として生じた状態のみを理由として、子どもを親の養育から離脱させること……が正当化されることはけっしてあるべきではなく、このような貧困または状態は、家族に対して適切な支援を提供する必要性があることのサインと見なされるべきである」(パラ15)。 国連総会決議64/142付属文書。 63.同様に、子どもまたはその親の障害を理由として子どもを親から分離することもできない [11]。分離を検討することができるのは、家族の一体性を保全するために家族に提供される必要な援助では、子どものネグレクトもしくは遺棄のおそれまたは子どもの安全に対する危険を回避するのに十分に効果的ではない場合のみである。 [11] 障害のある人の権利に関する条約第23条第4項。 64.分離が行なわれる場合、国は、条約第9条に一致する形で、子どもおよびその家族の状況が、可能な場合には十分な訓練を受けた専門家から構成される学際的チームによって、適切な司法の関与も得ながら評価されたことを保障するとともに、他のいかなる選択肢によっても子どもの最善の利益を充足させることができないことを確保しなければならない。 65.分離が必要なときは、意思決定担当者は、子どもが、その子どもの最善の利益に反しないかぎり、親および家族(きょうだい、親族、および、子どもが強い個人的関係を有している者)とのつながりおよび関係を維持することを確保しなければならない。このような関係の質およびこのような関係を保持する必要性は、子どもが家庭外に措置される場合の、面会その他の接触の頻度および期間に関する決定において考慮されなければならない。 66.子どもと親との関係が移住(親が子どもをともなわずに移住する場合または子どもが親をともなわずに移住する場合)によって切断されている場合、家族再統合に関する決定において子どもの最善の利益を評価する際に、家族の一体性の保全について考慮することが求められる。 67.委員会は、親としての責任が共有されることは一般的に子どもの最善の利益にのっとったものであるという見解に立つ。ただし、親としての責任に関わる決定においては、何が特定の子どもにとっての最善の利益であるかが唯一の基準とされなければならない。法律により、親としての責任が一方または双方の親に自動的に委ねられるのであれば、これは子どもの最善の利益に反している。子どもの最善の利益を評価する際、裁判官は、事件に関連する他の要素とともに、双方の親との関係を保全する子どもの権利を考慮に入れなければならない。 68.委員会は、子どもの最善の利益の適用を促進し、かつ、親が異なる国々に住んでいる場合のその実施の保障について定めている、国際私法に関するハーグ会議諸条約 [12] の批准および実施を奨励する。 [12] これには、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する第28号条約(1980年)、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する第33号条約(1993年)、扶養義務に関する判決の承認および執行に関する第23号条約(1973年)、扶養義務の準拠法に関する第24号条約(1973年)が含まれる。 69.親または他の主たる養育者が犯罪を行なった場合、影響を受ける子ども(たち)に対してさまざまな刑が及ぼす可能性のある影響を全面的に考慮しながら、個別の事案ごとに、拘禁に代わる措置が利用可能とされかつ適用されるべきである [13]。 [13] 親が収監されている子どもに関する一般的討議の勧告参照。 70.家庭環境の保全には、子どもが有するより幅広い意味の紐帯を保全することも包含される。このような紐帯は、祖父母、おじ/おばのような拡大家族ならびに友人、学校およびより幅広い環境に適用され、親が別居して異なる場所で生活している場合にとくに関連してくる。 (d) 子どものケア、保護および安全 71.ひとりの子どもまたは子どもたち一般の最善の利益を評価・判定する際には、子どものウェルビーイングのために必要な保護およびケアを子どもに対して確保する国の義務(第3条第2項)が考慮されるべきである。「保護およびケア」の文言も広義に解されなければならない。その目的は、限定的なまたは消極的な文言(「子どもを危害から保護するため」等)では述べられておらず、むしろ子どもの「ウェルビーイング」および発達を確保するという包括的理想との関連で述べられているからである。広義の子どものウェルビーイングには、物質面、身体面、教育面および情緒面で子どもが有する基礎的なニーズならびに愛情および安全に関するニーズが含まれる。 72.情緒的ケアは子どもが有する基礎的なニーズのひとつである。親または他の主たる養育者が子どもの情緒的ニーズを充足しない場合、子どもが安定した愛着を発展させられるように措置がとられなければならない。子どもは非常に幼い段階でいずれかの養育者に対する愛着を形成する必要があるのであり、このような愛着は、それが十分なものである場合、子どもに安定した環境を与えるために長期間維持されなければならない。 73.子どもの最善の利益の評価には、子どもの安全、すなわち、あらゆる形態の身体的または精神的暴力、侵害または虐待(第19条)、セクシュアルハラスメント、仲間からの圧力、いじめ、品位を傷つける取扱い等からの保護 [14]、ならびに、性的搾取、経済的搾取その他の搾取、薬物、労働、武力紛争等からの保護(第32~39条)に対する子どもの権利も含まれなければならない。 [14] 「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」に関する一般的意見13号(2011年)。 74.意思決定に対して最善の利益アプローチを適用するということは、現時点での子どもの安全および不可侵性について評価するということである。ただし、予防原則により、決定が子どもの安全にとってもたらす将来の危険および危害ならびにその他の影響の可能性について評価することも要求される。 (e) 脆弱な状況 75.考慮すべき重要な要素のひとつは、子どもが置かれている脆弱な状況(障害があること、マイノリティ集団に属していること、難民または庇護希望者であること、虐待の被害者であること、路上の状況で暮らしていること等)である。脆弱な状況に置かれた子ども(たち)の最善の利益を判定する目的は、条約で定められたすべての権利の全面的享受と関連するだけではなく、これらの特定の状況(とくに、障害のある人の権利に関する条約、難民の地位に関する条約で対象とされている状況)に関わる他の人権規範とも関連するものであることが求められる。 76.特定の脆弱な状況に置かれた子どもの最善の利益は、同じ脆弱な状況に置かれたすべての子どもの最善の利益と同一にはならないであろう。子どもは一人ひとり独自の存在であり、かつ各状況はその子どもの独自性にしたがって評価されなければならないので、公的機関および意思決定担当者は、子ども一人ひとりが有する脆弱性の種類および度合いの違いを考慮に入れなければならない。子ども一人ひとりの出生時からの生育史が個別に評価されるべきであり、同時に、子どもの発達過程全体を通じ、学際的なチームによる定期的再審査が行なわれ、かつ合理的な配慮に関する勧告が実行されるべきである。 (f) 健康に対する子どもの権利 77.健康に対する子どもの権利(第24条)および子どもの健康状態は、子どもの最善の利益の評価において中心的重要性を有する。ただし、ある健康状態について複数の治療が考えられる場合、または治療の結果が不確実である場合には、考えられるあらゆる治療の利点が、考えられるあらゆるリスクおよび副作用との関連で比較衡量されなければならず、また子どもの意見がその年齢および成熟度に基づいて正当に重視されなければならない。これとの関連で、子どもは、当該状況についておよび自己の利益に関わるあらゆる関連の側面について理解できるように十分かつ適切な情報を提供されるべきであり、また可能なときは十分な情報を得たうえで同意を与えることが認められるべきである [15]。 [15] 「到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利」に関する一般的意見15号(2013年)、パラ31。 78.たとえば、思春期の子どもの健康について、委員会は、締約国には、すべての青少年が、健康に関わる適切な行動を選択できるようにするため、学校に行っているか否かを問わず、自己の健康および発達にとって必要不可欠な、十分な情報にアクセスできることを確保する義務があると述べた [16]。このような情報には、タバコ、アルコールその他の有害物質の使用および濫用、飲食、性および生殖に関する適切な情報、早期妊娠の危険性〔ならびに〕HIV/AIDSおよび性感染症の予防に関する情報が含まれるべきである。心理社会的障害を有する青少年は、可能なかぎり、自分が生活しているコミュニティで治療およびケアを受ける権利を有する。入院または入所施設への措置が必要なときは、決定を行なう前に、かつ子どもの意見を尊重しながら、子どもの最善の利益についての評価が行なわれなければならない。同様の考慮は年少の子どもについても当てはまる。子どもの健康および治療の可能性は、他の態様の重要な決定(たとえば人道的理由による在留許可の付与)との関連でも、最善の利益評価・判定の一部に位置づけられる場合がある。 [16] 「子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達」に関する一般的意見4号(2003年)。 (g) 教育に対する子どもの権利 79.乳幼児期の教育、非公式な教育および関連の活動を含む良質な教育に無償でアクセスできることは、子どもの最善の利益にのっとっている。特定の子どもまたは子どもたちの集団に関わる措置および活動についてのあらゆる決定は、教育に関わる子ども(たち)の最善の利益を尊重するものでなければならない。教育またはより良質な教育に対していっそう多くの子どもがアクセスできることを促進するため、締約国は、教育が、未来に対する投資であるのみならず、楽しい活動、尊重、参加および大志の充足のための機会でもあることを考慮に入れながら、十分な訓練を受けた教員および教育関連のさまざまな場面で働くその他の専門家を確保し、かつ子どもにやさしい環境ならびに適切な教授法および学習法を整備する必要がある。このような要求に対応し、かつ、いかなる種類の脆弱性であってもそれによる限界を克服する子どもの責任を増進させることは、子どもの最善の利益にのっとった対応となろう。 2.最善の利益の評価における諸要素の比較衡量 80.基礎的な最善の利益評価とは子どもの最善の利益に関連するすべての要素の一般的評価であり、各要素の重みは他の要素次第で変化することが強調されるべきである。すべての要素がすべての事案に関連するわけではなく、また事案が異なれば用いられる要素およびその用いられ方も変わってくる場合がある。各要素の内容は、決定の態様および具体的事情に応じ、子どもごとおよび事案ごとにさまざまであるのが当然であるし、全般的評価における各要素の重要性についても同様である。 81.最善の利益評価における諸要素は、特定の事案およびその事情について検討する際に相反する場合がある。たとえば、家庭環境を保全することは、親による暴力または虐待のおそれから子どもを保護する必要性と相反するかもしれない。このような状況においては、子ども(たち)の最善の利益にのっとった解決策を見出すため、諸要素の比較衡量を行なわなければならない。 82.さまざまな要素を比較衡量する際には、子どもの最善の利益の評価・判定を行なう目的が、条約およびその選択議定書で認められた諸権利の全面的かつ効果的な享受および子どものホリスティックな発達を確保するところにあることを念頭に置かなければならない。 83.状況によって、子どもに影響を及ぼす「保護」関連の要因(これは、たとえば権利の制約または制限を含意する場合がある)を、「エンパワーメント」(これは、権利を制限なく全面的に行使できることを含意する)のための措置との関連で評価しなければならないことがあるかもしれない。このような状況においては、諸要素の比較衡量にあたり、その子どもの年齢および成熟度が指針とされるべきである。子どもの成熟度を評価するためには、その子どもの身体的、情緒的、認知的および社会的発達を考慮に入れることが求められる。 84.最善の利益評価においては、子どもの能力が発達することを考慮しなければならない。したがって、意思決定担当者は、決定的かつ変更不可能な決定を行なうのではなく、しかるべき変更または調整が可能な措置を検討するべきである。そのためには、決定を行なう特定の時点における身体的、情緒的、教育的その他のニーズを評価するだけではなく、考えられる子どもの発達の道筋も考慮し、かつその道筋を短期的および長期的に分析することも求められる。この文脈で、決定においては、子どもの現状および将来の状況の継続性および安定性についても評価を行なうべきである。 B.子どもの最善の利益の実施を保障するための手続的保護措置 85.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が正しく実施されることを確保するためには、子どもにやさしい若干の手続的保護措置を設け、かつこれにしたがわなければならない。このように、子どもの最善の利益の概念は手続規則なのである(前掲パラ6(b)参照)。 86.子どもに関わる決定を行なう公的な機関および組織は、子どもの最善の利益を評価・判定する義務に一致する形で行動しなければならない一方、子どもに関わる決定を日常的に行なう者(たとえば親、保護者、教師等)は、この2段階の手続に厳格にしたがうことは期待されない。とはいえ、日常生活のなかで行なわれる決定も、子どもの最善の利益を尊重・反映するものでなければならない。 87.国は、子どもに影響を与える決定のために子どもの最善の利益についての評価および判定を行なうことを目的とした、手続上の厳格な保護措置をともなう正式な手続(結果を評価するための機構を含む)を整備しなければならない。国は、とくに子ども(たち)に直接影響する分野において立法者、裁判官または行政機関が行なうすべての決定を対象とする、透明かつ客観的な手続を策定しなければならない。 88.委員会は、国および子どもの最善の利益を評価・判定する立場にあるすべての者に対し、以下の保護措置および保障に特段の注意を払うよう慫慂する。 (a) 自己の意見を表明する子どもの権利 89.手続のきわめて重要な要素のひとつは、意味のある子ども参加を促進し、かつその最善の利益を特定するために子どもとコミュニケーションを図ることである。このようなコミュニケーションには、手続についてならびに考えられる持続可能な解決策およびサービスについて子どもに情報を提供すること、ならびに、子どもから情報を収集することおよび子どもの意見を求めることが含まれるべきである。 90.子どもが意見表明を希望しており、かつこの権利が代理人を通じて充足される場合、当該代理人の義務は、子どもの意見を正確に伝達することである。子どもの意見が代理人の意見と食い違う状況においては、必要に応じて子どもに別の代理人(たとえば訴訟後見人)を選任するよう、子どもが公的機関に対して求められるようにするための手続きが設けられるべきである。 91.集団としての子どもたちの最善の利益を評価・判定するための手続は、子ども個人に関する手続とは若干異なる。多数の子どもたちの利益が争点となっている場合、政府機関は、当該集団に直接間接に関わる措置の計画または立法上の決定を行なう際、すべてのカテゴリーの子どもたちが対象とされることを確保する目的で、当該集団の代表性を確保するやり方で抽出された子どもたちの意見を聴き、かつその意見を正当に考慮するための方法を見出さなければならない。その方法としては、子ども公聴会、子ども議会、子ども主体の団体、子ども組合その他の代表機関、学校における討議、ソーシャルネットワークサイト等、多数の例が存在する。 (b) 事実関係の確定 92.最善の利益評価のために必要なすべての要素をまとめるため、特定の事案に関連する事実関係および情報は、十分な訓練を受けた専門家によって取得されなければならない。これには、とくに、子どもに近い立場にある者、子どもと日常的に接触している他の者、特定の出来事の目撃者等から事情を聴取することが含まれることもある。収集された情報およびデータは、子ども(たち)の最善の利益評価において用いられる前に、検証・分析されなければならない。 (c) 時間知覚 93.時間の経過は、子どもとおとなとではその知覚の仕方が同一ではない。意思決定が遅滞しまたは長期化することは、子どもの発達にともない、子どもにとりわけ有害な影響を及ぼす。したがって、子どもに関わる手続または子どもに影響を及ぼす手続は、優先的処理の対象とされ、かつ可能なかぎり短い期間で完了することが望ましい。決定の時期は、可能なかぎり、それが自分にとってどのような利益となりうるかに関する子どもの認識に対応しているべきであり、また、行なわれた決定は、子どもの成長発達およびその意見表明能力の発達にしたがい、合理的な頻度で再検討されるべきである。ケア、治療、措置および子どもに関わるその他の措置に関するすべての決定は、その子どもの時間知覚ならびに発達しつつある能力および成長発達の観点から定期的に再審査されなければならない(第25条)。 (d) 資格のある専門家 94.子どもは多様な集団であり、一人ひとりが独自の特性を有しているのであって、そのニーズを十分に評価できるのは、子どもおよび青少年の発達に関わる事柄について専門性を有する専門家のみである。だからこそ、正式な評価手続は、とくに児童心理学、子どもの発達ならびに人間の発達および社会的発達に関わる他の関連の分野で訓練を受け、子どもとともに活動した経験があり、かつ入手した情報を客観的に考慮する専門家によって、親しみやすく安全な雰囲気のもとで進められるべきである。子どもの最善の利益を評価するにあたっては、可能なかぎり、学際的な専門家チームの関与が求められる。 95.解決策の諸選択肢から生ずる結果の評価は、子ども個人の特性および過去の経験を踏まえつつ、考えられる各解決策によって生ずる可能性のある結果についての一般的知識(すなわち法学、社会学、教育学、ソーシャルワーク、心理学、保健学等の分野における知識)に基づいて行なわれなければならない。 (e) 弁護士代理人 96.子どもの最善の利益が裁判所またはこれに類する機関によって公式に評価・判定される場合、適切な弁護士代理人が必要になろう。とくに、子どもの最善の利益判定が行なわれる行政上または司法上の手続に子どもが付託された事案であって、決定当事者間で争いが生じる可能性がある場合、後見人、または子どもに代わってその意見を伝える代理人に加えて、子どもの弁護士代理人が任命されるべきである。 (f) 法的理由の説明 97.自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利が尊重されたことを実証するため、子ども(たち)に関わるいかなる決定においても、立証、正当化および説明が行なわれなければならない。立証においては、その子どもに関わるすべての事実関係、最善の利益評価において関連性を有すると認定された諸要素、個別事案における諸要素の内容、および、子どもの最善の利益を判定するために行なわれた当該諸要素の比較衡量の経緯が明示的に明らかにされるべきである。子どもの意見と異なる決定が行なわれた場合、その理由を明確に示すことが求められる。例外的に、選択された解決策が子どもの最善の利益にのっとったものでない場合は、そのような結果にも関わる子どもの最善の利益が第一次的に考慮されたことを示すため、その根拠が明らかにされなければならない。他の考慮事項が子どもの最善の利益に優越すると一般的に述べるだけでは十分ではない。すべての考慮事項を当該事案との関連で明示的に明らかにし、かつ、当該事案においてそれらの考慮事項がいっそう重視された理由を説明しなければならない。理由の説明においては、子どもの最善の利益が他の考慮事項にまさるほど強力ではなかった理由も、信頼できるやり方で実証されなければならない。子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされなければならない状況(前掲パラ38参照)があることも考慮されなければならない。 (g) 決定を再審査しまたは修正するための機構 98.国は、子どもに関わる決定が子ども(たち)の最善の利益を評価・判定する適切な手続にしたがって行なわれなかったと思われる場合に、当該決定について異議を申し立て、または当該決定を修正するための機構を、自国の法体系内に設けるべきである。当該決定の再審査または当該決定に対する異議申立てを国レベルで行なえるようにすることが常に求められる。これらの機構は、子どもに対して知らされるべきであり、かつ、手続上の保護措置が尊重されなかった、事実関係が誤っていた、最善の利益評価が十分に行なわれなかった、または競合する考慮事項が重視されすぎたと考えられる場合に、子どもが直接または弁護士代理人を通じてアクセスできるようなものであるべきである。再審査を行なう機関は、これらのすべての側面を検討しなければならない。 (h) 子どもの権利影響評価(CRIA) 99.前述のとおり、あらゆる実施措置の採択も、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保する手続にしたがって行なわれるべきである。子どもの権利影響評価(CRIA)は、子どもおよび子どもの権利の享受に影響を与えるいかなる政策、法令、予算またはその他の行政決定の提案についてもその影響の予測を可能とするものであり、諸措置が子どもの権利に及ぼす影響の継続的な監視および評価を補完するものとして用いられるべきである [17]。CRIAは、子どもの権利に関するグッド・ガバナンスを確保するため、政府があらゆるレベルで進めるプロセスに、また可能なかぎり早い段階で政策その他の一般的措置の策定に、組みこまれなければならない。CRIAを実施する際には、さまざまな手法および実践を発展させることができる。これらの手法および実践においては、最低限、条約およびその選択議定書が枠組みとして用いられなければならず、また、とくに、評価に際して〔条約の〕一般原則が一貫して適用され、かつ検討中の措置が子どもたちに及ぼす種々の影響について特別な考慮が払われることを確保しなければならない。影響評価そのものを、子どもたち、市民社会および専門家ならびに関連の政府機関、学術的調査研究および国内外で記録された経験から得られた知見に基づいて行なうこともできる。分析の結果、変更、代替策および改善のための勧告が行なわれるべきであり、また当該分析結果は公に利用可能とされるべきである [18]。 [17] 「企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務」に関する一般的意見16号(2013年)、パラ78-81。 [18] 各国は、貿易協定および投資協定の人権影響評価に関する指導原則についての、食料への権利に関する特別報告者の報告書(A/HRC/19/59/Add.5)を参考にすることができる。 VI.普及 100.委員会は、各国が、この一般的意見を、議会、政府および司法機関に対し、国および地方のレベルで広く普及するよう勧告する。この一般的意見は、子どもたち――排除の状況に置かれている子どもたちを含む――、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(裁判官、弁護士、教師、後見人、ソーシャルワーカー、公立または私立の福祉施設の職員、保健職員、教師〔重複ママ〕等を含む)ならびに市民社会一般に対しても知らされるべきである。この目的のため、一般的意見を関連の言語に翻訳し、子どもにやさしい/ふさわしい本案版を利用可能とし、かつ、これを実施する最善の方法に関する模範的実践を共有するための会議、セミナー、ワークショップその他のイベントを開催することが求められる。関連のあらゆる専門家および専門職員を対象とする正式な着任前研修および現職者研究にも、この一般的意見が編入されるべきである。 101.国は、委員会に提出する定期報告書に、直面した課題に関する情報とともに、子ども個人に関わる司法上および行政上のあらゆる決定ならびにその他の活動において、また子どもたち一般または特定の集団としての子どもたちに関わる実施措置の採択のあらゆる段階において、子どもの最善の利益を適用しかつ尊重するためにとった措置についての情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2013年6月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/274.html
子どもの権利委員会・一般的意見20号:思春期における子どもの権利の実施(前編) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 CRC/C/GC/20(2016年12月6日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-6) II.目的(パラ7) III.思春期の子どもに焦点を当てることの正当性(パラ8-13) IV.条約の一般原則(パラ14-25)A.発達に対する権利(パラ15-20) B.差別の禁止(パラ21) C.最善の利益(パラ22) D.意見を聴かれる権利および参加権(パラ23-25) V.特別な注意を必要とする思春期の子ども(パラ26-36) VI.一般的実施措置(パラ37) VII.子どもの定義(パラ38-40) VIII.市民的権利および自由(パラ41-48) IX.子どもに対する暴力(パラ49) → 思春期の子どもの権利 後編 X.家庭環境および代替的養護(パラ50-55) XI.基礎保健および福祉(パラ56-67) XII.教育、余暇および文化的活動(パラ68-75) XIII.特別な保護措置(パラ76-88) XIV.国際協力(パラ89) XV.普及(パラ90) I.はじめに 1.子どもの権利条約は、子どもを18歳未満のすべての者(ただし、子どもに適用される法律の下でより早く成年に達した者を除く)と定義するとともに、国は、いかなる種類の差別もなく、自国の管轄内にある子ども1人ひとりに対し、条約に掲げられた権利を尊重しかつ確保するべきであると強調している。条約では18歳未満のすべての者の権利が認められているが、権利の実施にあたっては、子どもの発達状況および発達しつつある能力を考慮に入れることが求められる。思春期の子どもの権利の実現を確保するためにとられるアプローチは、より年少の子どもを対象としてとられるアプローチとは相当に異なるのである。 2.思春期は、機会、能力、大望、エネルギーおよび創造性の増進を特質とするライフステージであるが、あわせて相当の脆弱性をもその特質としている。思春期の子どもは変革の主体であり、かつ、その家族、コミュニティおよび国に前向きに貢献できる可能性を持った重要な資産および資源である。思春期の子どもは、世界的に、保健・教育キャンペーン、家族支援、ピアエデュケーション、コミュニティ開発の取り組み、参加型予算編成および創造的芸術を含む多くの領域で前向きな活動に従事しており、また平和、人権、環境の持続可能性および気候の公平性に向けた貢献を行なっている。思春期の子どもの多くはデジタル環境およびソーシャルメディア環境の最前線に立っているが、これらの環境は、思春期の子どもの教育、文化および社会的ネットワークにおいてますます中心的な役割を果たすようになっているとともに、政治参加および説明責任の監視という観点からも可能性を有している。 3.委員会の見たところ、思春期の子どもの可能性は、締約国が、これらの子どもが自己の権利を享受できるようにするために必要な措置を認識せずまたはこのような措置への投資を行なわないために、広く損なわれている。年齢、性別および障害によって細分化されたデータはほとんどの国で利用可能となっておらず、政策の参考とし、欠点を明らかにし、かつ思春期の子どものための適切な資源の配分を支えることができていない。子どもまたは若者を対象とする一般的な政策は、思春期の子どものさまざまな多様性に対応していないことが多く、これらの子どもの権利の実現を保障するためには不十分である。不作為および失敗のコストは高い。情緒的安定、健康、セクシュアリティ、教育、スキル、レジリエンスおよび権利の理解という観点から思春期に整えられた基礎は、個々の最適な発達にとってのみならず、現在および将来の社会的・経済的発展にとっても深甚な影響を及ぼすことになろう。 4.委員会は、この一般的意見において、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」も認識しながら、思春期において子どもの権利の実現を確保するために必要な措置についての指針を各国に提示する。ここで強調されるのは人権を基盤とするアプローチの重要性であり、これには、思春期の子どもの尊厳および主体性の承認・尊重、思春期の子どものエンパワーメント、市民性および自分自身の生活への積極的参加、最適な健康、ウェルビーイングおよび発達の促進、ならびに、思春期の子どもの権利を差別なく促進し、保護しかつ充足していくことに対する決意が含まれる。 5.委員会は、思春期の定義が容易ではないこと、および、個々の子どもが成熟に至る年齢もさまざまであることを認める。第二次性徴が表れる年齢は男女で異なっており、またさまざまな脳機能が成熟する時期も異なる。子ども期から成人期へと移行していく過程は文脈および環境の影響を受けるのであり、このことは、各国の国内法において思春期の子どもに対する文化的期待が著しく異なっており、大人の活動への参入についてもさまざまな基準が定められていること、および、国際機関も思春期を定義するために多様な年齢幅を採用していることに表れている。したがって、この一般的意見では思春期の定義は試みないこととし、データ収集における整合性を促進する目的で、子ども期のうち10歳から18歳の誕生日に至るまでの期間に焦点を当てる [1]。 [1] www.who.int/maternal_child_adolescent/topics/adolescence/dev/en/ 参照。 6.委員会は、委員会の一般的意見のいくつか、とくに思春期の健康と発達、HIV/AIDS、女性と子どもにとって有害な慣行の根絶、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに少年司法に関連するものが、思春期の子どもについて特段の共振性を有していることに留意する。委員会は、デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議を受けてまとめられた勧告が、思春期の子どもにとってとりわけ重要であることを強調するものである。この一般的意見は、思春期のすべての子どもとの関連で条約を全体としてどのように理解しかつ実施しなければならないかについての概要を示すために作成されたものであり、他の一般的意見および一般的討議の勧告を受けてまとめられた文書とあわせて理解することが求められる。 II.目的 7.この一般的意見の目的は次のとおりである。 (a) 各国に対し、思春期の子どもの権利の実現と一致する包括的な思春期の発達を促進するために必要な立法、政策およびサービスについての指針を示すこと。 (b) 思春期によって与えられる機会および思春期のあいだに直面する課題についての意識を高めること。 (c) 思春期の子どもの発達しつつある能力およびそれが思春期の子どもの権利の実現にとって有する意味合いについての理解および尊重の念を増進させること。 (d) 思春期の子どもをいっそう目に見える存在とし、かつ思春期の子どもについての意識を高めること、および、思春期の子どもが成長していく過程全体を通じてその権利を実現できるようにするために投資することの正当性を強化すること。 III.思春期の子どもに焦点を当てることの正当性 8.委員会は、思春期の子どもの権利の実現を促進し、前向きかつ漸進的な社会変革に対して思春期の子どもが行ないうる貢献を強化し、かつ、グローバル化および複雑さの度を増しつつある世界において、子ども期から成人期への移行の際に思春期の子どもが直面する課題を克服していくために思春期の子どもに焦点を当てることが強力な正当性を有することについて、締約国の注意を喚起する。 9.思春期の子どもは急速な発達局面に位置している。思春期における発達上の変化の重要性は、乳幼児期に生じる変化と同程度にはまだ広く理解されていない。思春期は、その後の人生のあり方を左右する、人間発達におけるかけがえのない段階であり、急速な脳の発達および身体的発育、認知能力の増進、第二次性徴および性的意識の開始ならびに新たな能力、強さおよびスキルの出現を特質としている。思春期の子どもは、依存の状態からいっそうの自律の状態へと移行していくなかで、社会における自己の役割に対する期待の増進および友人関係の重要性の高まりを経験する。 10.子どもは、生まれてから2度目の10年間を通過するなかで、自分自身の家族および文化史との複雑な相互作用に基づき、個人およびコミュニティとしての自分なりのアイデンティティの模索および形成を開始するとともに、しばしば言語、芸術および文化を通じて表明される新たな自己意識の生成を、個人としても、友人とのつながりを通じても、経験する。この過程は、多くの子どもにとって、デジタル環境との関わりをめぐって、かつデジタル環境による示唆および影響を相当に受けながら、進んでいくものである。アイデンティティの構築および表現の過程は、思春期の子どもにとってはとりわけ複雑なものとなる。思春期の子どもは、マイノリティ文化と主流文化とのあいだに隘路をつくり出すからである。 思春期をライフコースの一部として認識する 11.すべての子どもの最適な発達を子ども期全体を通じて確保するためには、人生の各期間がその後の段階に与える影響を認識する必要がある。思春期は、それ自体が子ども期における貴重な時期のひとつではあるが、ライフチャンスを高めるための移行および機会がともなうきわめて重要な時期でもある。乳幼児期の前向きな支援介入および経験は、乳幼児が思春期に到達していく際の最適な発達を促進することにつながる [2]。ただし、若者に対するいかなる投資も、思春期全体を通じた子どもの権利に対して十分な注意が向けられなければ無駄になってしまうおそれがある。さらに、思春期における前向きかつ支援的な機会は、乳幼児期にこうむった危害の影響の一部を相殺し、かつ、将来の被害を緩和するためのレジリエンスを構築する目的で活用することが可能である。そこで委員会は、ライフコースの視点の重要性を強調する。 [2] 乳幼児期における子どもの権利の実施に関する子どもの権利委員会の一般的意見7号(2005年)、パラ8参照。 環境の変化 12.思春期に達するということは、デジタル環境によって強化されまたは悪化させられたさまざまなリスク(有害物質の使用および有害物質への依存、暴力および虐待、性的もしくは経済的搾取、人身取引、移住、過激化またはギャングもしくは民兵への加入など)にさらされることを意味しうる。思春期の子どもが成人期へと近づくにつれて、地域的および国際的課題(貧困および不平等、差別、気候変動および環境悪化、都市化および移住、高齢化社会、学校での成績に関するプレッシャーならびに高まりつつある人道上および治安上の危機など)に取り組むための適切な教育および支援が必要となる。国際的移住が増加した結果、不均質性が高まった多民族社会で成長していくためには、理解、寛容および共生のための能力の強化も必要である。これらの課題を克服しまたは緩和し、思春期の子どもを排除しかつ周縁化させる機能を果たしている社会的動因に対応し、かつ、課題が多く変化しつつある社会環境、経済的環境およびデジタル環境に立ち向かっていくための備えを整える思春期の子どもの能力を強化するための措置に、投資していく必要がある。 健康上のリスクをともなう時期 13.思春期には他の年齢層に比べて死亡率が総体的に低いという一般的特質があるものの、思春期における死亡および疾病のリスクは現実のものであり、これには出産、安全性を欠いた中絶、交通事故、性感染症(HIVを含む)、個人間暴力による受傷、精神保健上の問題および自殺が含まれる。いずれも特定の行動と関連するものであり、部門を横断した連携が必要である。 IV.条約の一般原則 14.条約の一般原則は、実施過程のあるべき姿を映し出すレンズであり、かつ、思春期における子どもの権利の実現を保障するために必要な措置を判断する際の指針として機能するものである。 A.発達に対する権利 建設的かつホリスティックなアプローチ 15.委員会は、思春期およびこれに関連する特質を、子ども期の建設的な発達段階として評価することの重要性を強調する。委員会は、思春期の否定的なとらえ方が広がっているために、思春期の子どもの権利を保障し、かつその身体的、心理的、霊的、社会的、情緒的、認知的、文化的および経済的能力の発達を支援するための最適な環境を構築していくことを決意するのではなく、問題に焦点を当てた視野の狭い介入およびサービスが行なわれていることを遺憾に思うものである。 16.各国は、国以外の主体とともに、思春期の子どもたち自身と対話しかつこれらの子どもの関与を得ることを通じて、思春期の固有の価値が認知される環境を促進するとともに、思春期の子どもが豊かに成長すること、自己の新たに生じつつあるアイデンティティ、信条、セクシュアリティおよび機会を模索すること、リスクと安全とのバランスをとること、十分な情報に基づいて自由かつ前向きな決定および人生の選択を行なうための能力を構築していくことならびに成人期への移行をうまくやりとげることを援助するための措置を導入するべきである。これらの機会を阻害する障壁に対応しつつ、あらかじめ備わっている強さに立脚し、かつ思春期の子どもが自己および他者の人生に対して行ないうる貢献を認めるアプローチが必要とされる。 17.思春期の子どものレジリエンスおよび健康的発達を促進することがわかっている要因としては次のものがある――(a)人生における重要な大人との強い関係およびこのような大人からの支援、(b)参加および意思決定の機会、(c)問題解決および対処のスキル、(d)安全かつ健康的な地域環境、(e)個性の尊重ならびに(f)友情を構築しかつ維持する機会である。委員会は、思春期の子どもがこのような社会的資産を構築しかつ享受する機会を得ることにより、心身の健康の維持、リスクをともなう行動の回避、不運な出来事からの回復、学校における成功、寛容の実践、友情の構築およびリーダシップの発揮等の手段によって自己の権利に貢献する能力が高められることを強調する。 発達しつつある能力の尊重 18.条約第5条は、親の指示および指導が子どもの発達しつつある能力に一致する方法で行なわれることを要求している。委員会の定義によれば、発達しつつある能力とは、子どもが漸進的に能力および理解を身につけ、かつ、責任を引き受けかつ自己の権利を行使する主体性の水準を高めていく成熟と学習のプロセスを扱った、権利行使を可能にする原則 [3] である。委員会は、子ども自身の知識および理解力が高まるにつれて、親は指示および指導を注意喚起に、そして徐々に対等な立場での意見交換に変えていかなければならないと主張してきた [4]。 [3] 前掲、パラ17。 [4] 意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)、パラ84参照。 19.委員会は、高まりつつある水準の責任を行使する権利によって、保護を保障する国の義務 [5] が不要になるわけではないことを強調する。思春期の子どもは、家族またはその他の養育環境の保護から徐々に脱することにより、相対的な経験不足および権力の欠如とあいまって、権利侵害を受けやすい状態に置かれうる。委員会は、潜在的リスクの特定ならびに当該リスクを緩和するためのプログラムの策定および実施に思春期の子どもの関与を得ることが、より効果的な保護につながることを強調するものである。意見を聴かれる権利、権利侵害に異議を申し立てる権利および救済を求める権利を保障されることにより、思春期の子どもは自分自身の保護について漸進的に主体性を発揮できるようになる。 [5] たとえば条約第32~39条参照。 20.思春期の子どもの発達しつつある能力の尊重および適切な水準の保護とのあいだで適切なバランスをとろうと努める際には、意思決定に影響を及ぼすさまざまな要因を考慮するべきである。このような要因としては、関連するリスクの水準、搾取の可能性、思春期の子どもの発達に関する理解、能力および理解力は必ずしもすべての分野にわたって同一のペースで発達するわけではないという認識、ならびに、個人の経験および能力に関わる認識などがある。 B.差別の禁止 21.委員会は複数の形態の差別を特定してきたが、その多くは思春期において特有の意味合いを有しており、部署の枠を超えた分析および狙いを明確にしたホリスティックな措置を必要とするものである [6]。思春期そのものが差別の源となりうる。この時期、思春期の子どもは、そのような地位の直接的結果として、危険なもしくは好ましくない存在として扱われ、収容され、搾取されまたは暴力にさらされる場合があるのである。逆説的なことに、思春期の子どもは、能力を欠いており、自分の人生について決定を行なうことができない存在として扱われることも多い。委員会は、思春期のすべての男女のあらゆる権利が平等に尊重されかつ保護されること、および、あらゆる集団の思春期の子どもに対する、あらゆる理由に基づく直接間接の差別につながる条件を減少させまたは解消するために包括的かつ適切な積極的差別是正措置が導入されることを確保するよう、各国に促すものである [7]。各国は、異なる取扱いについての基準が合理性および客観性を有しており、かつ当該取扱いが条約に基づく正当な目的の達成を目指すものである場合には、すべての異なる取扱いが差別になるわけではない [8] ことを想起するよう求められる。 [6] www2.ohchr.org/english/issues/women/rapporteur/docs/15YearReviewofVAWMandate.pdf 参照。 [7] 条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)、パラ12参照。 [8] 差別の禁止に関する自由権規約委員会の一般的意見18号(1989年)、パラ147参照。 C.最善の利益 22.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利は実体的権利、法的解釈原理および手続規則であり、かつ個人としての子どもおよび集団としての子どもたちの双方に適用されるものである [9]。立法、政策、経済的および社会的計画策定、意思決定ならびに予算上の決定を含む条約のあらゆる実施措置は、子どもに関わるすべての活動において思春期の子どもを含む子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保する手続にしたがってとられるべきである。委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての子どもの権利委員会の一般的意見第14号(2013年)において、子どもの意見が、その発達しつつある能力と一致する方法で [10]、かつその子どもの特質を考慮に入れながら考慮されるべきであることを強調している。締約国は、思春期の子どもが理解力および成熟度を身につけるにつれてその意見が適切に重視されることを確保しなければならない。 [9] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての子どもの権利委員会の一般的意見14号(2013年)、パラ6参照。 [10] 一般的意見12号、パラ70-74および14号、パラ43-45参照。 D.意見を聴かれる権利および参加権 23.条約第12条にしたがい、締約国は、自己に関わるすべての事柄について、その年齢および成熟度にしたがって意見を表明する権利を思春期の子どもに保障し、かつ、たとえば教育、健康、セクシュアリティ、家族生活ならびに司法上および行政上の手続に関わる決定においてその権利が正当に重視されることを確保するための措置を導入するべきである。各国は、学校ならびにコミュニティ、地方、国および国際社会の各レベルで、思春期の子どもの生活に影響を与えるすべての関連の立法、政策、サービスおよびプログラムの策定、実施および監視に思春期の子どもが関与することを確保するよう求められる [11]。オンライン環境は、思春期の子どもの関与を強化しかつ拡大するための、新たに生じつつある重要な機会を提供してくれる。これらの措置にあわせて、思春期の子どもが申し立てる請求について判断する権限を有する、安全かつアクセスしやすい苦情申立ておよび救済のための機構が導入されるべきであり、かつ、費用援助をともなうまたは無償の法律サービスその他の適切な援助へのアクセスが保障されるべきである。 [11] 一般的意見12号、パラ27参照。 24.委員会は、政治的および市民的関与の手段としての参加の重要性を強調する。思春期の子どもたちは、このような参加を通じて自己の権利の実現のための交渉および主張を行ない、かつ国の説明責任を問うことができるのである。各国は、主体的な市民性の発達において有用である政治的参加の機会を増やすための政策を採用するよう求められる。思春期の子どもは、仲間とつながり、政治的プロセスに関与し、かつ、十分な情報に基づく決定および選択を行なうための主体性の感覚を高めることができるのであり、したがって、デジタルメディアを含むさまざまな手段による参加を可能にする手段である団体の結成について支援を受けられなければならない。国が投票年齢の18歳未満への引き下げを決定するときは、市民性教育および人権教育、ならびに、思春期の子どもの関与および参加を妨げる障壁の特定およびこれへの対応等の手段により、思春期の子どもが主体的市民としての自己の役割を理解し、認識しかつ充足することの支援となるような措置に投資するべきである。 25.委員会は、思春期の子どもが参加権を享有するためにはこの権利に関する大人の理解および意識が重要であることに留意し、国に対し、とくに親および養育者、思春期の子どもとともにおよびこれらの子どものために働く専門家ならびに政策立案および意思決定に携わる関係者を対象とした研修および意識啓発に投資するよう奨励する。思春期の子どもが自分自身の生活およびまわりの人々の生活に対していっそうの責任を引き受けられるようにするため、大人がメンター(良き導き手)およびファシリテーターになれるようにするための支援が必要である。 V.特別な注意を必要とする思春期の子ども 26.思春期の子どもの一部の集団は、差別および社会的排除を含む複合的な脆弱性および権利侵害の対象にとりわけされやすくなる場合がある。思春期の子どもに焦点を当てた立法、政策およびプログラムに関わってとられるすべての措置において、相互に交差しあう権利侵害およびそれが関係の思春期の子どもに及ぼす複合的悪影響が考慮に入れられるべきである。 女子 27.ジェンダーの不平等は思春期にいっそう著しくなる。女子に対する差別、不平等およびステレオタイプ化の表れ方が激しさを増すことが多く、それがいっそう深刻な女子の権利侵害(児童婚および強制婚、若年妊娠、女性性器切除、ジェンダーを理由とする身体的、精神的および性的暴力、虐待、搾取ならびに人身取引を含む)につながる [12]。女子の地位を低めている文化的規範のために、家庭に閉じこめられ、中等教育および高等教育にアクセスできず、レジャー、スポーツ、レクリエーションおよび所得創出活動の機会を限定され、文化的生活および芸術にアクセスできず、かつ、負担の大きな家事および子どもの世話の責任を負わされる可能性が高まりうる。多くの国で、健康および生活満足度の指標の水準は女子のほうが男子よりも低く報告されており、その差は年齢とともに徐々に広がっていく。 28.各国は、市民社会、女性および男性、伝統的指導者および宗教的指導者ならびに思春期の子どもたち自身を含むすべての関係者と協力しながら、女子に対する直接間接の差別に対処していく目的で、女子のエンパワーメントを促進するための積極的措置に投資し、家父長制的その他の有害なジェンダー規範およびステレオタイプ化を問い直し、かつ、法改正を進めていかなければならない。あらゆる法律、政策およびプログラムにおいて、男子との平等を基礎として女子の権利を保障するための明示的措置が必要とされる。 [12] A/HRC/26/22、パラ21参照。 男子 29.伝統的な男らしさの概念ならびに暴力および支配と結びつけられたジェンダー規範は、男子の権利を阻害することにつながりうる。これには、有害な通過儀礼を課されること、暴力にさらされること、ギャング、民兵〔または〕過激主義的グループへの加入を強制されることならびに人身取引の対象とされることなどが含まれる。男子が身体的および性的虐待ならびに搾取の被害を受けやすいことを否定すれば、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる情報、物資およびサービスに男子がアクセスしようとする際に広範かつ相当な障壁が生じ、結果として保護サービスが存在しないことにもなりうる。 30.委員会は、国に対し、このような権利侵害に対処するための措置を導入するよう促すとともに、男子に対する否定的な見方を問い直し、建設的な男らしさを促進し、マチズモに基づいた文化的価値観を克服し、かつ、男子が経験する虐待のジェンダーの側面がいっそう認識されることを促進するよう、奨励する。各国はまた、ジェンダー平等を達成するためにとられるすべての措置において、女子および女性のみならず男子および男性の関与も得ていくことの重要性も認識するべきである。 障害のある思春期の子ども 31.委員会は以前、障害のある多くの子どもが直面している広範な偏見、排除、社会的孤立および差別に光を当てた [13]。障害のある思春期の子どもは、多くの国で、思春期の他の子どもが利用できる機会から排除されているのが通例である。社会的、文化的および宗教的通過儀礼への参加を禁止されることもある。相当数の子どもが中等教育もしくは高等教育または職業訓練へのアクセスを否定されており、その結果、将来就労先を見つけ、かつ貧困に陥らないようにするために必要な社会的、教育的および経済的スキルを獲得できないでいる。障害のある思春期の子どもは、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる情報およびサービスへのアクセスを広く否定されるとともに、権利の直接の侵害であり、かつ拷問または陵虐にも相当する場合がある強制的な不妊手術または避妊手術の対象とされる場合もある [14]。障害のある思春期の子どもは、身体的および性的暴力ならびに児童婚もしくは強制婚の被害を不均衡なほど受けやすい状況に置かれており、かつ司法または救済措置へのアクセスを恒常的に否定されている [15]。 [13] 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)、パラ8-10参照。 [14] A/HRC/22/53 参照。 [15] A/66/230、パラ44-49参照。 32.締約国は、条約第23条および障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に掲げられた勧告と一致する方法で、このような障壁を克服し、障害のある思春期の子どもの権利の平等な尊重を保障し、その全面的インクルージョンを促進し、かつ思春期から成人期への効果的な移行を促進するための措置を導入するべきである。加えて、障害のある思春期の子どもに対し、自己に関わるすべての事柄への積極的参加を促進する目的で、支援を受けながら意思決定を行なう機会を提供することも求められる。 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子ども 33.レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもは、虐待および暴力を含む迫害、スティグマの付与、差別、いじめ、教育および訓練からの排除に直面し、かつ、家族および社会による支援を受けられず、またはセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わるサービスおよび情報にアクセスできないのが通例である [16]。極端な場合には、性的攻撃および強姦ならびに死にさえ直面している。これらの経験に関連する形で、自尊感情の低さならびにうつ病罹患率、自殺率およびホームレス率の高さが生じている。 [16] 子どもの権利委員会ならびにその他の国連人権機構および地域人権機構による2015年5月13日付の声明を参照。www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=15941 LangID=E より入手可能。 [17] 前掲。 34.委員会は、思春期のすべての子どもに、表現の自由に対する権利ならびに自己の身体的および心理的不可侵性、ジェンダーアイデンティティならびに高まりつつある自律性を尊重される権利があることを強調する。委員会は、性的指向の修正を試みるための「治療」と称されるもの、および、インターセックスである思春期の子どもに対する強制的な手術または治療が押しつけられていることを非難するものである。委員会は、各国に対し、そのような慣行を解消し、性的指向、ジェンダーアイデンティティまたはインターセックスであることを理由として個人を犯罪者として扱いまたは差別するすべての法律を廃止し、かつ、これらの理由による差別を禁止する法律を採択するよう、促す。各国はまた、公衆の意識啓発を図ることならびに安全および支援のための措置を実施することにより、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもをあらゆる形態の暴力、差別またはいじめから保護するための効果的行動もとるべきである。 マイノリティおよび先住民族である思春期の子ども 35.マイノリティおよび先住民族の集団の出身である思春期の子どもの文化、価値観および世界観に対する注意および敬意が十分でないことは、差別、社会的排除、周縁化および公共空間での包摂拒否につながりうる。これにより、マイノリティおよび先住民族である思春期の子どもは、貧困、社会的不公正、精神保健上の問題(不均衡なほど高い自殺率を含む)、学業成績の低迷および刑事司法制度における拘禁の多さの被害をいっそう受けやすくなる。 36.委員会は、締約国に対し、マイノリティおよび先住民族のコミュニティの出身である思春期の子どもが自己の文化的アイデンティティを享有し、かつ自己の文化の長所に立脚しながら家族生活およびコミュニティ生活に積極的に貢献していけるようにするため、思春期の女子の権利に特段の注意を払いながら、これらの子どもを支援するための措置を導入するよう促す。その際、各国は、先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)に掲げられた包括的な勧告に対応するべきである。 VI.一般的実施措置 37.条約の実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条第6項)についての一般的意見5号(2003年)および子どもの権利実現のための公共予算(第4条)についての一般的意見19号(2016年)にしたがい、委員会は、思春期における子どもの権利の実現のための枠組みを確立するために次の措置を実施する締約国の義務に対して注意を喚起する。次に掲げるものを含むこれらのすべての措置を策定するにあたっては、思春期の子どもたち自身の経験および視点を十全に認識し、かつ真剣に受けとめるべきである。 (a) 思春期の子どもが直面している権利侵害の根底にある構造的な社会的および経済的原因に対応し、かつ政府省庁全体で調整のとれたアプローチを確保するための、思春期の子どもにもっぱら焦点を当てた、かつ条約に根差した、包括的および分野横断的な国家的戦略。 (b) 立法、政策およびサービスにおいて思春期の子どもの権利が尊重されることを確保するための、実施状況の監視。 (c) 思春期の子どもたちの生活を可視化するための、少なくとも年齢、性別、障害、民族および社会経済的状況ごとに細分化されたデータの収集。委員会は、各国が、思春期の子どもの権利の実施における進展を監視するために用いる共通の指標について合意を形成するよう勧告する。 (d) 競合しあう優先的支出の均衡を図り、かつ十分性、有効性、効率性および平等の原則を遵守する際に思春期の子どもたちについて正当な検討が行なわれることを確保するための、透明な予算上のコミットメント。 (e) 思春期の子どもとともにおよびこのような子どものために働くすべての専門家を対象として実施する、子どもの発達しつつある能力にしたがいながら思春期の子どもとともに働くために必要な能力に焦点を当てた、条約および条約関連の義務に関する研修。 (f) とくに学校カリキュラム、メディア(デジタルメディアを含む)および広報資料を通じて行なう、子どもの権利およびその行使の方法についてのアクセスしやすい情報の普及。その際、周縁化された状況に置かれている思春期の子どもに積極的に情報を届けるため、特段の努力を行なうものとする。 VII.子どもの定義 38.条約はジェンダーに基づくいかなる差別も禁じているのであり、年齢制限は女子および男子にとって平等であるべきである。 39.各国は、自己の生活に影響を与える決定についていっそうの責任を引き受けていく思春期の子どもの権利を認める立法を見直しまたは導入するべきである。委員会は、各国が、保護に対する権利、最善の利益の原則および思春期の子どもの発達しつつある能力の尊重と一致する方法で、法律上の最低年齢制限を導入するよう勧告する。たとえば、年齢制限においては、保健サービスもしくは治療、養子縁組に対する同意、名前の変更または家庭裁判所への申立てに関わる決定を行なう権利を認めることが求められる。いずれにせよ、当該最低年齢に達していないいかなる子どもについても、十分な理解力を有していることを実証できる場合には、同意を与えまたは拒否する資格を認められる権利が承認されるべきである。何らかの治療または医療措置については、親または保護者の同意が要件とされているか否かにかかわらず、自発的なかつ十分な情報に基づく思春期の子どもの同意を得ることが求められる。思春期の子どもは、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる予防的なまたは急を要する物資およびサービスを求めかつこれにアクセスする能力を有するという法的推定を導入することも検討されるべきである。委員会は、思春期のすべての子どもが、希望する場合、年齢にかかわらず、親または保護者の同意がなくとも秘密裡に医療上の相談および助言にアクセスする権利を有することを強調する。これは医療上の同意を与える権利とは異なるものであり、いかなる年齢制限の対象にもされるべきではない [18]。 [18] 一般的意見12号、パラ101参照。 40.委員会は、締約国に対し、18歳に達していない者にはあらゆる形態の搾取および虐待から引き続き保護される資格があることを認める義務を想起するよう求める。委員会は、関連するリスクおよび危害の度合いに鑑み、婚姻、軍隊への徴募、危険なまたは搾取的な労働への関与ならびにアルコールおよびタバコの購入および消費については、最低年齢制限は18歳とされるべきであることを再確認する。締約国は、性的合意に関する法定年齢を決定する際には、保護と発達しつつある能力とのバランスをとらなければならないことを考慮して、受け入れ可能な最低年齢を定めるべきである。各国は、事実として同意に基づいている非搾取的な性的活動について、年齢の近い思春期の子どもを犯罪者として扱うべきではない。 VIII.市民的権利および自由 出生登録 41.出生登録が行なわれなければ、思春期において、基礎的サービスを受けられないこと、国籍を証明できずまたは身分証明書類を受け取れないこと、搾取または人身取引の危険性が高まること、刑事司法制度および出入国管理制度において必要な保障措置の対象とされないことならびに法定年齢に達しないうちから軍隊に編入されることなど、相当のかつ複雑な追加的問題が生じる可能性がある。出生時または出生直後に登録されなかった思春期の子どもに対しては、遅れての出生証明書および民事登録が無償で提供されるべきである。 表現の自由 42.条約第13条は、子どもが表現の自由に対する権利を有すること、および、当該権利の行使に対しては第13条第2項に定められた制限しか課せないことを確認している。思春期の子どもの発達しつつある能力にしたがって適切な指導を行なう親および養育者の義務は、表現の自由に対する思春期の子どもの権利の妨げとなるべきではない。思春期の子どもには、情報および考えを求め、受け、かつ伝える権利およびそれを普及するための手段(話し言葉、書き言葉および手話ならびに画像および芸術作品のような非言語的表現を含む)を利用する権利がある。表現手段には、たとえば、書籍、新聞、パンフレット、ポスター、横断幕、デジタルメディアおよび視聴覚メディアならびに服装および個人的スタイルが含まれる。 宗教の自由 43.委員会は、締約国に対し、条約第14条に付したいかなる留保も撤回するよう促す。同条は、子どもには宗教の自由に対する権利があることを強調するとともに、子どもに対し、その発達しつつある能力と一致する方法で指示を与える親および保護者の権利および義務を認めたもの(第5条も参照)である。すなわち、宗教の自由に対する権利を行使するのは親ではなく子どもであって、親の役割は、子どもが選択権の行使に関して思春期全体を通じてますます主体的な役割を果たしていくようになるにつれて、必然的に後退する。宗教の自由は、学校その他の施設において、宗教の授業への出席をめぐる選択との関連も含めて尊重されるべきであり、また宗教的信条を理由とする差別は禁じられるべきである [19]。 [19] たとえば、CRC/C/15/Add.194、パラ32および33ならびに CRC/C/15/Add.181、パラ29および30参照。 結社の自由 44.思春期の子どもは、同世代の友人と過ごす時間を増やしたいと考えており、かつそうする必要がある。これに関連する利点は、社会的なものだけに留まらず、人間関係、就労およびコミュニティ参加の成功の基礎となる能力への貢献でもある。こうした時間は、とくに情緒的リテラシー、所属感、紛争解決などのスキルならびにいっそうの信頼感および親密感を構築することにつながる。同世代の友人とのつながりは思春期の発達における基礎的要素であり、その価値は、学校および学習環境、レクリエーション活動および文化的活動ならびに社会的、市民的、宗教的および政治的関与のための機会において認められるべきである。 45.各国は、あらゆる形態の結社および平和的集会の自由に対する思春期の子どもの権利が、女子および男子の双方を対象とする安全な空間の提供等を通じ、条約第15条第2項に定められた制限と一致する方法で全面的に尊重されることを保障するべきである。思春期の子どもが、学校の内外で自分たちの結社、クラブ、団体、議会およびフォーラムを結成し、オンラインネットワークを形成し、政党に加入し、かつ自分たち自身の労働組合に加盟しまたはこれを結成することを、法的に承認することが求められる。人権擁護のために活動している思春期の子ども、とくにジェンダー固有の脅迫および暴力に直面することの多い女子を保護するための措置も導入されるべきである。 プライバシーおよび秘密保持 46.プライバシーに対する権利の重要性は、思春期においてますます高まる。委員会は、たとえば医療上の助言の秘密保持、施設における思春期の子どもの居所および私物、家庭またはその他の形態の養育環境における通信その他の意思疎通ならびに刑事手続に関与させられた子どもの身元等の暴露との関連で、プライバシー侵害についての懸念を繰り返し表明してきた [20]。プライバシーに対する権利はまた、思春期の子どもに対し、教育、保健ケア、子どものケアおよび保護のためのサービス機関ならびに司法制度が保持している自己についての記録にアクセスする権利を認めるものでもある。このような情報は、適正手続上の保障を遵守して、かつ当該情報の受領および使用を法律で認められている者に対してのみ、アクセス可能とされるべきである [21]。各国は、思春期の子どもたちとの対話を通じて、プライバシー侵害(デジタル環境への個人的関与および商業的その他の主体によるデータの利用に関連するものを含む)が生じた場合には確認を行なうことが求められる。各国はまた、思春期の子どものデータの秘密保持およびプライバシーの尊重を、その発達しつつある能力に一致する方法で強化しかつ確保するためにあらゆる適切な措置をとるべきである。 [20] United Nations Children's Fund (UNICEF), Implementation Handbook on the Convention on the Rights of the Child (2007), pp.203-211 参照(www.unicef.org/publications/files/Implementation_Handbook_for_the_Convention_on_the_Rights_of_the_Child_Part_1_of_3.pdf より入手可能)。 [21] プライバシーに対する権利についての自由権規約委員会の一般的意見16号(1988年)、パラ2-4参照。 情報に対する権利 47.情報へのアクセスにはあらゆる形態のメディアが包含されるが、デジタル環境に特段の注意を向ける必要がある。思春期の子どもはますますモバイル技術を利用するようになりつつあり、またデジタルメディアは思春期の子どもがコミュニケーションならびに情報の受け取り、作成および流布を行なう第一次的手段になっているためである。思春期の子どもはとくに、自己のアイデンティティの模索、学習、参加、意見の表明、遊び、交流、政治的関与および就労機会の発見を目的としてオンライン環境を利用している。加えて、インターネットは、健康関連の情報、保護のための支援ならびに助言先および相談先にオンラインでアクセスするための機会を提供してくれるものであり、各国は思春期の子どもたちとのコミュニケーションおよび交流の手段としてこれを活用することが可能である。関連の情報にアクセスできることは、平等に対して相当に前向きな効果を発揮しうる。メディアに関する一般的討議(1996年および2014年)の結果としてまとめられた勧告は、思春期の子どもたちにとってとりわけ重要である [22]。各国は、障害のある思春期の子どもを対象とするアクセシブルな形式の促進等も通じて、思春期のすべての子どもがさまざまな形態のメディアに差別なくアクセスできることを確保し、かつ、デジタル・シティズンシップ〔適切かつ責任あるテクノロジー利用の規範〕への平等なアクセスを支援しかつ促進するための措置をとるよう求められる。思春期の子どものデジタルリテラシー、情報・メディアリテラシーおよび社会的リテラシーのスキルの発達を確保するため、基礎教育カリキュラムの一環として訓練および支援が提供されるべきである [23]。 [22] 1996年の討議については www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2014/DGD_report.pdf を、2014年の討議については www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/Recommendations/Recommendations1996.pdf を参照。 [23] www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2014/DGD_report.pdf〔2014年の一般的討議勧告〕、パラ95参照。 48.デジタル環境は思春期の子どもをリスクにさらすことにもなりうる。オンライン上の詐欺、暴力およびヘイトスピーチ、女子ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもを対象とした性差別的発言、ネットいじめ、性的搾取、人身取引または児童ポルノを目的とする勧誘、過剰な性的対象化ならびに武装集団または過激主義集団による標的化などである。ただし、そのためにデジタル環境への思春期の子どもによるアクセスが制限されるべきではない。そうではなく、思春期の子どもの安全はホリスティックな戦略を通じて促進されるべきであり、これには、オンライン上のリスクおよび自分の安全を保つための戦略に関わるデジタルリテラシー、オンライン上の人権侵害に対処し、かつ不処罰の状況と闘うための立法および法執行機構の強化、ならびに、親をおよび子どもとともに働く専門家を対象とする研修などが含まれる。各国は、ピアメンタリング等も通じてオンライン上の安全を促進するための取り組みの立案および実施に際し、思春期の子どもたちの主体的関与を確保するよう促される。防止および保護に関するならびに援助および支援の利用しやすさに関する技術的解決策の開発への投資が必要である。各国は、デジタルメディアおよび情報通信技術を利用する際に諸リスクが子どもの権利の及ぼす影響を特定し、防止しかつ緩和する目的で、企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを要求するよう奨励される。 (思春期の子どもの権利 後編に続く) 更新履歴:ページ作成(2016年12月25日)。