約 592,801 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1400.html
ある時から、ゆっくりの間でこんな噂が広まった。 『魔法の森の奥深くに おいしい花が美しく咲き乱れ 太陽は燦燦と降り注ぎ 小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 緑に溢れ夜もやさしい空気が安らかな眠りに誘う そこには争う者はおらず誰であろうともゆっくりできる そんなゆっくりプレイスがあるという その場所の名は 何度夜が来てもずっとゆっくりしていられる という意味を込めて 永夜緩居(えいやゆるい) と呼ばれていた』 この物語は永寛緩居を目指したゆっくり達の物語である。 「ぱちゅりー!ゆるいに行こうよ!」 「ゆー?ゆるい?」 聞きなれない言葉を聞いてまたまりさがみょんなことを思いついたことを察し ぱちゅりーは眉をひそめた。 全く、そのみょんな思いつきに毎回付き合わされる方の身にもなって欲しい と思うと共にこれまでのドタバタ劇を思い出し汗を垂らす。 まりさが蛇の抜け殻を使ってアクセサリーを作ろうと言い出して やっと見つけたと思った抜け殻が本物の蛇の時は本当にあぶなかった。 一応先手を打って断ってしまうことにした。 しかしぱちゅりーにはまりさが思いついてしまった時点でもう遅いことはこれまでの経験でわかっていた。 これから先、また病弱な体に鞭打ってまりさと色々やらかすことを考えながらぱちゅりーは嘆息した。 「むきゅー、ゆるいなんてよくわからないところいかないよ だって知らない場所じゃゆっくりできるかわからないもの」 「それがゆっくりできるんだよ! えーっとねまほうの森の奥ふかくに…」 まりさが必死に暗記した文章を音読しようと悪戦苦闘しているところを見つめながら ぱちゅりーには『ゆるい』がなんのことなのかがその冒頭の句から思い当たるものが脳裏を過ぎった。 「むきゅ、ひょっとして永夜緩居のこと?」 「ゆ!それだよ!そこにいけばずっとゆっくり出来るってみんないっていたよ!」 興奮気味に捲くし立てるまりさを前にしてぱちゅりーはさらに眉の皺を深く刻んだ。 永夜緩居は最近ゆっくり達の間で噂になっているゆっくりプレイスのことである。 そこに行けばあらゆるゆっくり出来ない事象から開放されてずっとゆっくりすることが出来るというのだ。 しかし実際に見てきたゆっくりは居ない。 ぱちゅりーはこの話を眉唾物の与太話だと思っている。 ぱちゅりーは流石に今回は断ろうかと思案する。 「ゆるいを見つければずーっとまりさとぱちゅりーでゆっくりぼうけんできるよ!」 しかし最高の笑顔でこちらの意見も全く聞かずにそう言い切ったのを聞いてぱちゅりーは自分が折れることにした。 断ってもまたまりさは別の冒険を捜してくるだろう。 探しに行って見つからなくてもまりさが飽きたら家に帰ってまた別の冒険が見つけてくる。 そして見つかっても結局冒険するというのだからどう転んでも冒険である。 どれを選んでも変わらないならまりさの好きなように任せよう。 実を言うとぱちゅりーはまりさとの冒険は嫌いじゃないのだ。 ただ気苦労も多いが。 気苦労のことを考えてぱちゅりーはまた嘆息すると冒険の準備に取り掛かることにした。 まりさがそこら中を聞き込みまわって得た情報をぱちゅりーが纏める事で 永夜緩居があると思しき場所はすぐに目星を付けることが出来た。 かなり大変な道中を歩む必要がありなるほどもしその先にゆっくりプレイスがあるのならば わざわざこの道中を再び歩んで戻ってくるゆっくりは居ないだろう。 永夜緩居見て戻ってきた者が居ないのもある程度納得がいった。 「ゆー、すごい冒険になりそうだねぱちゅりー」 まりさがぶるぶると武者震いをした。 これから始まる冒険を前に胸を躍らせ、瞳は吸い込まれてしまいそうなほどキラキラと輝いていた。 「ゆ、どうかしたのぱちゅりー?」 ぼーっとまりさの瞳を見つめていたぱちゅりーはまりさに逆に覗き込まれて声をかけられてはっとした。 「む、むきゅ!なんでもないよ!ぱちゅりーは冒険の計画を立てるからまりさはどっかその辺でゆっくりしててね!」 「ゆ!まりさも冒険の計画立てたいよ!」 「むきゅー、まりさは無茶な計画ばっかり立てるからまりさが計画を立てるよゆっくりできなくなるよ それでもいいの?」 「ゆゆゆ~それは困るよ、ゆっくり我慢してくるね」 伝家の宝刀、ゆっくりできない丸を抜かれまりさはすごすごと向こうの木の洞に退散していった。 本当は後で説明しなおすのも面倒だしまりさと一緒に計画を立てた方がよかったのだが 顔が真っ赤に火照っているところをぱちゅりーは見られたくなかった。 とにかく気を取り直して目的地へと向かえるコースは何個か考えられたがその中からもっとも安全な物を選び それにあわせた装備を考えなければならない。 今、自分に出来ることはしっかり計画を立ててこの冒険を最高の冒険にすることだ。 そうすればあのキラキラした素敵なまりさと一緒に居られる。 「むきゅ、ほかほかしてきた」 また顔が赤くなってるのに気づき、ぱちゅりーは困り果てた。 「むっきゅ、むっきゅ…!」 「ゆっくりがんばってね!」 ぱちゅりーはぱちゅりー種にしてはかなり体力のある方だった 若いことと普段からまりさにつれ回されているためである。 しかしごつごつした岩肌の斜面を上ることはゆっくりにとっては厳しい。 「むきゅ、むきゅぅぅぅ~」 体の底が擦り傷だらけになってぱちゅりーは根を上げたくなった。 しかしプライドがそれを許さない。 何故ならここでこんなの無理だと根を上げれば自分の計画が間違っていたことを認めることになるからである。 頭脳一つでゆっくり界を渡世するぱちゅりー種にとって自分の知識を基に考えた計画が間違っていたことを認めるのはこの上ない屈辱なのだ。 しかし体力は限界に近い。 出来れば休みたいのだが夜になる前にここを越えて、予定していた池の近くの木立でゆっくり出来るポイントを探さないと あまり遮蔽物のない危険な状態で夜をすごすことになる。 それは絶対に避けなくてはならない。 プライドと痛みと恐怖の間でぱちゅりーは心が押しつぶされそうになった。 その時、ふっ、と体が浮いたかと思うとぱちゅりーはまりさの上に乗せられていた。 「ゆっ、ゆいしょっ!」 まりさが器用にぱちゅりーの体の下に入ってぱちゅりーを持ち上げたのだ。 「む、むきゅ!?な、なにをする気なのまりさ!? ちゃ、ちゃんとじぶんで歩くからおろしてね!」 「まりさは丈夫だからこれくらい平気だよ! ぱちゅりーはそこでゆっくり休んでてね!」 そう言うとゆいしょっ、ゆいしょとぱちゅりーを背負ったまままりさは岩肌を進んでいった。 その後も何度か押し問答を続けたがぱちゅりーが自分の体力から考えて結局この方式が一番合理的だと理解し自分から折れた。 そのままぱちゅりーはゆっくりと体をまりさに預けた。 傷だらけの体の底がまりさのやわらかい体と髪に触れていると不思議と痛みが引いて、とてもゆっくりできた。 体をくっつけているとまりさの甘い餡子の香りと力強い揺れがぱちゅりーを眠りへといざなった。 「むきゅ…?」 ぱちゅりーが目を覚ますと、まりさが既に池の木立に洞を見つけてそこにぱちゅりーを寝かせて 明日の準備をしているところだった。 計画を立てたり知恵を使う部分はまりさはぱちゅりーに遠く及ばなかったが ことサバイバル能力と体を使ったことに関しては他のゆっくりにも負け知らずで こういう冒険では本当に頼りになるゆっくりだった。 ぱちゅりーもさっきのようにこのバイタリティに何度も助けられていた。 ぱちゅりーはまりさのそういう頼りになるところも好きだった。 「明日も早いよ!ぱちゅりーはゆっくり寝ててね!」 「むきゅ…」 そう言うとまりさはぺろぺろとぱちゅりーの傷口を舐めて癒した。 まりさの舌の心地よい温かみを感じながらぱちゅりーは再び眠りについた。 木立の洞に朝日が刺してぱちゅりーは目を覚ました。 「ゆっくりちていってね!」 「む、むきゅ?ゆっくりしていってね!」 聞きなれない子どもの声に困惑しながらぱちゅりーは寝ぼけ眼であたりを見回した。 「ゆっぴゅー!」 「ゆゆっ!やったね!おかえしだよ!」 「ゆー!ちべたいちべたい!」 見ると池の方で数匹の子ゆっくりとまりさが一緒になって水遊びをしていた。 「むっきゅー?」 どういうことかとぱちゅりーは首を傾げた。 つまり全身斜めに傾いた。 「朝ごはんだよ!ゆっくり戻ってきてね!」 今度は別のところから成人したれいむの声が聞こえてくる。 「む、むきゅぅ?なんなの、れいむ達はゆっくりできるゆっくりなの?」 ぱちゅりーはそう一人ごちた。 「あ、ぱちゅりーがおきたよ!まりさー!ぱちゅりーもいっしょにゆっくり朝ごはんたべるよー!」 大人れいむが木立の洞を見てまりさに向かってそう呼びかけた。 「むきゅ、つまり昨日からここで偶然れいむ達の家族と会ってそれでいっしょにおやすみしてたんだけど ぱちゅりーはねてたから気づかなかったってこと?」 「そうだよ!いっしょにゆっくりしてたよ!」 まりさが元気に答えた。 つまりはそういうことである。 このれいむ達の一家も永夜緩居を目指して旅をしていてまりさ達と出会ってこうして休息を共にしているのだ。 「むきゅ、そんなにいっぱい子どもがいるのにここまでこれるなんて…」 ぱちゅりーは感嘆した。 それがどれだけ大変なことかはここまで来たぱちゅりーが一番よくわかっている。 しかもここまで一人も脱落者を出さずにここに来たというのだ。 ぱちゅりーはれいむのその知恵と勇気に尊敬の念を禁じえなかった。 「れいむのおかあしゃんすごいでしょ!」 「すごいでちょ!」 子れいむ達は誇らしげに胸を張った。 「むきゅ~、ほんとにすごいよ どうやって来たのかぱちゅりーにも教えて欲しいよ」 「ゆ、れいむはお母さんだからね 子ども達のためにすごいがんばったんだよ」 「おかあしゃんがんばったよ!」 「がんばっちゃょ!」 「ゆゆ、何があってもれいむの赤ちゃんはれいむがまもってあげるからね」 そう言って子れいむ達にほお擦りされるれいむの表情はやさしく、そして暖かく輝いていたが ぱちゅりーにはその瞳にまりさとは違いどこか暗いものがその奥に潜んでいるように感じた。 「まりしゃおねーしゃんばいばい!またいっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくりちようね!」 「ちようね!」 「ゆ~!」 「うん!きっとみんなとゆるいで一緒にゆっくりするよ!」 まりさは名残惜しそうにゆっくり一家に向かってぴょんぴょんと跳ねて別れの挨拶をした。 子ども達にかなり懐かれていたので別れの寂しさも一際のようだ。 しかし永夜緩居を目指すのであればこんなところでゆっくりしていてはいけないのだ。 まりさとぱちゅりーは池で顔を洗うと、れいむ達とは別のルートで永夜緩居を目指し歩き出した。 永夜緩居への道のりは困難を極めたが二匹は知恵と勇気でもってその困難を乗り越えていった。 深くて棘の生えた茂みを葉っぱを体に巻いてなんとか通り抜け 流れの速い川に阻まれ物凄い遠回りをしてなんとか抜けられる程度の浅さの場所を見つけ 木の少ない場所で土砂降りの雨にあったのでなんとか穴を掘ってその上から草をかぶって凌いだり 鳥や犬や蛇にも何度も何度も襲われた。 それでも二匹はあらゆる危機を力をあわせて乗り切った。 ここに来るまでに二匹はもう体はぼろぼろ、自慢の帽子も傷だらけで汚れてしまっていた。 しかしその顔はとても晴れやかで達成感に溢れたゆっくりした表情をしていた。 そう、二匹は辿り着いたのだ。 永夜緩居へと。 「ゆ~~~~ゆっくりー!!!」 「むっきゅ~~~~~~ん!!!」 二匹はそのゆっくりとした雄大な風景を眺めて感動の余り声をあげた。 そこは噂にたがわぬおいしそうな花が美しく咲き乱れ お日様は燦燦と降り注ぎ小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 素晴らしくゆっくりして美しい場所だった。 「やったよぱちゅりー!これで一緒にずっとゆっくり出来るよ!」 まりさが喜びをあらわにしてぱちゅりーにほお擦りした。 ぱちゅりーもお返しにとほお擦りしかえす。 永夜緩居の全てが二人を祝福しているとその時の二匹は心から信じた。 ぐるぐるとみょんな音が美しい景色の中に響き渡る。 「ゆゆっ、おなかすいてきちゃった ゆっくりあのお花さんとってくるね!」 「ゆっくりもってきて~」 まりさが向こうに見える美しい花畑をさして走っていくのをぱちゅりーは見送った。 「ゆ~おいしそ~おもいっきりたべてゆっくりするよ!」 ぱちゅりーはまりさが花を食べようとするのをゆっくりした気持ちで眺めていた。 まりさは嬉しそうに花を口しようとした。 その刹那、花びらがまりさの唇を切り裂いた。 「ひぎゃあああああ!?」 「!?まりさ!どうしたの!?まりさ!!」 何が起こったのかわからずに混乱するまりさを花びらが何本も何本も鋭く突き刺さりズタズタにした。 「いだいいだいいだいいいいいいいいい!!!!」 「…!まりさ!それはお花じゃないよ!かまきりさんだよ! 早く逃げて!!」 ぱちゅりーはその豊富な知識からその花に大量に花に擬態した蟷螂が居ることを看破しまりさに向かってそのことを知らせた。 しかし混乱冷め遣らぬまりさは花蟷螂達の鎌に捕らえられ身動きもとれずにその強力な顎で皮を齧られていた。 「む、むきゅうううううう!まりさをもってかないでねえええええええええ!!!」 ぱちゅりーは一瞬逡巡したが決死の思いで花蟷螂達に向かって体当たりを敢行した。 「ゆ゛っ!」 まりさごと吹っ飛ばしながら花蟷螂がまりさの体から大分離れた。 しかし何匹かの花蟷螂が今度はぱちゅりーの体に鎌を付きたてた。 激痛がぱちゅりーを苛むがそれを表面上は意にも介さずまりさに声をかけた。 「はやくお花から離れてね!」 「ゆ゛、ゆ゛ぅぅぅ~~」 ぱちゅりーはキッと花畑の方をにらめつけた。 何十、何百という蟷螂のギョロリとした目がこちらを見ていた。 あり得ないはずであった。 こんなそれほど大きくない花畑にこれだけ花蟷螂が密集して生息してるなど通常ではあり得ない。 一体何故こんなにも蟷螂がたくさんいるのだろうか。 ぱちゅりーは疑問に囚われながらも傷ついたまりさを連れて花畑を離れた。 近くの林に逃げ込んだ二匹は 「いだいよ゛おおおお!!」 「むきゅ、もう大丈夫だよ、すぐゆっくりさせてあげるから我慢してね!」 まりさの体に取れて刺さったままの花蟷螂の鮮やかな鎌をぱちゅりーは口で器用に抜いてぺろりと傷口を舐めると持っていた葉っぱをそこに貼った。 傷口を触れられる痛みにまりさが悲鳴をあげ、それがぱちゅりー自身の傷にも響いた。 しかし今それを意に介している暇はない、一刻も早く治療を終わらせなければならない。 「むっきゅ…これでひとまず大丈夫、ゆっくりできるよ」 「ゆぅぅぅ…ありがとうぱちゅりー… それにしてもどうしてあんなにカマキリさんがお花畑にいるの?これじゃゆっくりできないよ!」 「むきゅん、ゆっくりできないからお花畑にはちかづかないようにしようね とにかくまずゆっくりやすめるおうちを探してそこからゆっくりここが本当に永夜緩居か調べるよ もしかしたら別の場所にきちゃったのかもしれないよ」 ぱちゅりーはすぐさま今後の計画を立てた。 こういうことは頭脳はの自分の出番であるという自負がある。 「ゆ!そんなことないよ!ここがぜったいにゆるいだよ!」 まりさはここが永夜緩居であると頑なに言う。 苦労して辿り着いたこの地が間違っていたということを認めたくないのだろう。 「むっきゅ、でもここはゆっくりできないよ!」 「ゆ、ゆ…それは…」 ぱちゅりーは確信を突いた。 ここが永夜緩居ならゆっくりできないはずがない。 だのに現に自分たちはカマキリに襲われて全くゆっくりできずにこうして逃げ出しているではないか。 ということは自分達が間違っているのか、そしてこれはまりさにとってそれより辛い話だが永夜緩居自体が存在しなかったかだ。 もし永夜緩居が存在しないと知ればまりさはぱちゅりーを巻き込んで危険な場所に連れてきてしまったことに責任を感じて自分を責めてしまうだろう。 だからぱちゅりーはそのことはあえて言わなかった。 場所自体が間違っていたとすれば情報を整理してこの場所だと考えたぱちゅりーにも責任があることになるからだ。 少し言い争いになるかもしれないがそれでもまりさが傷つくのは少しでも避けたかった。 この時はぱちゅりーもまりさも第三の可能性には気づかなかった。 永夜緩居が悪意を持って自分達を襲っていることに。 「とにかく今はきょてんになるゆっくりプレイスを探すよ!」 「ゆー…」 ぱちゅりーはなんとかまりさを説き伏せ、とにかく自分達の拠点を探すことに同意させた。 こういう場所探しはまりさが頼りになるはずなのだが どうにもうまくいかないことが続いて気落ちしているまりさでは役に立つかは疑問であった。 しかしまりさが立ち直るのを待っている暇はない。 早くしないとこの危険な場所で夜を迎えることになってしまう。 こうなれば自分ががんばるしかないとぱちゅりーは思った。 ぱちゅりーは精力的に夜を凌げそうな場所を探した。 まりさにははぐれないように後ろを付いてくればいいといっておいた。 まりさは言われたとおりに項垂れて、ぱちゅりーの後を追った。 とにかく今は自分が頑張らなければ共倒れだとぱちゅりーは気負った。 その気負いが隙を産む事になった。 「むきゅーん………むっきゅ!」 ぱちゅりーは木立の中にうまくすればゆっくり二匹は入れそうな木の洞を見つけ早速中を覗き込んだ。 本来ならばまず危険を確認してからゆっくり覗くところだが気負ったぱちゅりーにその余裕はなかった。 「むきゅぅ!?」 洞を覗き込んだぱちゅりーの顔に鋭い痛みが走る。 続いて鋭い何かがたくさん突き刺された。 「む゛ぎゅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 たまらず洞から顔を出すぱちゅりー。 まるでぱちゅりーの顔から生えてきたかのように伸びるそれをまりさはみた。 「ゆ゛!ぱぢゅりいいいいい!!!」 ぱちゅりーの顔に何十匹もの百足が噛み付いていた。 「む゛ぎゅううひいいいいいいいいい!!?!?!?」 ぱちゅりーの頭の中が痛みと恐怖と気持ち悪さでいっぱいになる。 「む゛ぎゅひ゛い゛いむ゛ぎゅどっでえええ!ごでどっでえええ!!!」 ぱちゅりーは痛くて気持ち悪くてわけもわからず必死に助けを求め声をあげた。 しかし声をあげたのがまずかった。 声を出すために開いた口に数匹の百足が飛び込んだ。 「む゛ぎゃぎぃぃぃいっぃいいいい!?」 口の中にズキリとした痛みが広がる。 舌に百足の何十本もある足が触れてモゾモゾと動いた。 「む゛ぉ゛ごお゛お゛お゛!!」 ぱちゅりーは吐き気を感じ咳き込んだ。 餡子が口から漏れるが百足はまだ体の半分以上が口の中に入ったままだ。 餡子まみれの百足がもぞもぞと動いた。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い このまま百足に少しずつ食べられて死んでいくんだと思いぱちゅりーの心の底に冷たいものが降りた。 その時、まりさが動いた。 「ぱちゅりーをはなしてねえええええええええええ!!!」 ぱちゅりーの顔に食いついた百足に喰らいついて引っ張ってぱちゅりーから引き離した。 「む゛ぎゅぃやぁあ゛あああ゛あ”!!!」 「我慢してね!絶対ゆっくりさせてあげるから我慢してねえええええええ!!!」 百足が離れる際刺さっていた牙がぱちゅりーの皮を引き裂いた。 痛みであがるぱちゅりーの悲鳴がまりさの胸にズキリズキリと突き刺さった。 まりさはこれがぱちゅりーのタメなんだと必死に言い聞かせながら作業を続けた。 「む゛ぎぃ!む゛ぎぃいい!い゛だいよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「我慢ぢでねえええええええええええええええええええええええええ!!!!」 絶叫して、まりさは最後の百足を引きちぎった。 「ぱちゅりー!早く逃げるよ!早く!」 「む…きゅ…」 再び百足に食いつかれる前に一刻も早くこの場を離れようとするまりさだったが ぱちゅりーは俯いて下を向いてこちらを向こうとしなかった。 「ゆ…動けないならまりさの上に乗ってね!」 そう言うとまりさは器用にぱちゅりーの下に入ってぱちゅりーを背負うと一目散に走り出した。 「まりさのせいでごめんねぱちゅりー…絶対にゆっくりできるとこまで連れて行くからね…!」 背中のぱちゅりーを励ましながらまりさは力強く走り続けた。 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2564.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 1226 庭のゆっくり/コメントログ」 後日談希望 -- 2010-06-06 14 21 38 ふつう -- 2010-06-27 10 26 23 もう少しこの親子の話を見てみたいな -- 2010-07-08 03 01 48 短すぎます!!! 凄く好きなシチュなんで最後まで見たいです! -- 2010-07-25 01 18 59 本当に短いけれど良いシチュです、出来れば続きを見てみたいですね -- 2010-07-25 01 56 14 飼いゆにしてもらえたのに文句言うとかゲス一家だな -- 2010-11-17 17 19 41 逃げるよりはマシな苦しみを与え続けるくらいの話を期待したんだけどな。 嬲るなら、もうすこしゲスさがないと。 -- 2011-07-14 20 25 30 ↓↓飼いゆ?どこがだよ、頭おかしいんじゃねーの? どう見たって捨てられゆっくりの虐待モノだろ? -- 2011-09-17 21 57 34 なんかいろいろと足りない 行かすにしても痛めつける死しても -- 2011-10-20 03 18 40 ↓↓本当に面倒くさい奴だな ジョークだろ -- 2016-02-29 07 47 28
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/695.html
『色つきゆっくりの結末』 今日は夏祭りだ。 ゆっくりを使った出店を開こうと朝から加工場に赴いて複数のゆっくりを買ってきた。 買ったのは飼育ルームで食品加工用に育てられていた子ゆっくり達。 箱入りゆっくりなので人の恐怖は知らないし、野生ゆっくりの食べる虫や雑草も「なにそれ、たべものじゃないよ」というお嬢様ぶりだ。 加工場も自分の出身地程度の認識しかなく、箱に詰められて俺に運ばれている時も他のゆっくりプレイスに行けるとしか思っていなかった。 「よし、みんな着いたぞー」 「ゆっくりしていくね!!!」 箱に詰めていたゆっくり達を工房の奥、柵で囲まれた場所に出していく。 ゆっくり達の顔はぎゅうぎゅう詰めから解放されてすっきりーな表情をしている。 三箱分のゆっくりを柵の中に放つと広めにとった柵の中も窮屈になってしまった。ゆっくり達から不満の声が上がる。 「これじゃゆっくりできないよ!」 「もっとひろいところがいいよ!」 「まえのおうちはもっとひろかったよ!!」 俺に向かって60匹近くのゆっくり達が口々に叫んでくる。煩いことこの上ない。 しかし明日の縁日で売り物にする以上この程度は我慢しなければならない。 「みんなゆっくり聞いてね」 「ゆっ!」「なに?」 「ごはんのじかん?」「ゆっくりたべさせてね!!」 加工場の職員にある程度の躾がされているようで俺の言葉を無視しなかった。 野生のゆっくりだったら「そんなことより~してね!」の文法でイライラさせてくれただろう。 「今からみんなの帽子とリボンを綺麗にしてあげるからね。一匹ずつりぼんと帽子を貸してね」 「ゆ!?」 「ぼうしはだめだよ!」 「りぼんもだめだよ!」 「ゆっくりできないよ!!」 さすがに自分の命ぐらい大事な飾りを始めて会った人に渡さないか。 アイデンティティーに関わるから同然と言えば同然だな。 「すぐに返すから大丈夫だよ。それに綺麗な帽子やリボンになったらすごくゆっくりできるよ」 「ゆ…でもいやだよ!」 「そんなことしなくてももともととかいはよ!」 「ゆっ! じゃあまりさのぼうしをかしてあげるよ!!」 「なにいってるのまりさ! ゆっくりできないよ!!」 「だいじょうぶだよ! にんげんはいつもゆっくりさせてくれてたもん!」 「ゆ…」 一匹のまりさの言うことに周りのゆっくり達は押し黙る。 確かに人間に嫌な事をされたことがないのだろう。 野生ゆっくりの嫌がる加工場での規則正しい生活もこのゆっくり達にとっては産まれたときからなので苦ではなかった。 「よし、じゃあまりさから綺麗にしてやるからな」 「ゆっくりきれいにしてね!!」 俺は柵の中から一番に帽子を貸してくれると言ったまりさを取りだすと帽子を借りた。 そしてすぐそこにある絵の具でまりさの帽子を黒から紫に染めていく。 帽子についてる白いリボンは染めないよう予め外してある。 「ゆ! まりさのぼうしになにやってるの!!」 「何って、綺麗にしてるんだよ」 「でもちがういろになってるよ!!」 「ははは、被せてあげるよ」 ご都合物理学によってすっかり紫色に塗り替わった帽子をまりさに返してあげた。 そして鏡で自分の姿を映してあげる。 「ゆっ!? まりさがきれいになったよ!」 「だろう? まりさには紫の帽子がよく似合うよ」 「うふふふふふ。きれいになっちゃった~」 ご満悦のまりさを柵の中に返すと他のゆっくりが紫帽子のまりさを羨望の視線を向けていた。 「ゆ~! いいなまりさ! すごくこせいてきだよ!」 「ゆっくりおしゃれだよ!!」 「な、なかなかとかいはね!」 「むきゅ~、ぱちゅもおしゃれしたいわ」 「うふふふふふ」 まりさは他のゆっくり達にも褒められて嬉しそうだ。 他のゆっくり達は俺の方に向きかえると一斉に綺麗にしてとお願いしてきた。 「ああ、いいとも。皆おしゃれにしてあげるからね」 早速次のゆっくりを柵から取り出して飾りを染めていく。 今日の夕方までにはこいつらの飾りを全部染めてやらないといけないので二匹目以降は黙々と作業を続けた。 ゆっくり達はゆっくり達で、綺麗になった仲間を褒めたり自分の姿に悦になったりしていた。 昼飯も食べずに頑張った結果、夕方までには全部のゆっくりの飾りを染め終えていた。 柵の中には黄色や緑、青に白。様々な色の飾りをしたゆっくり達がどこか誇らしげにゆっくりしていた。 そろそろ出店の準備をしなきゃいけないのでゆっくり達に話しかける。 「それじゃあ外にでかけようか。外の皆におしゃれな姿を見せに行こう」 俺の言葉にゆっくり達は瞳を輝かせた。 「ゆっくりみせにいくよ!!」 「そとのみんなにもきれいなすがたをみせようね!!」 「きっとしっとしちゃうわよね!!」 それにしてもこのゆっくり達ノリノリである。 それもそうだろう。オシャレは他に見せてこそオシャレだ。 ゆっくり達は自分の姿を自慢したくて仕方がないのだろう。 俺はそんなゆっくり達を最初入っていた箱に再び詰めると祭りの会場へと運んでいった。 祭りが始まる頃には俺の出店の準備もほとんど終わった。 最後に「色塗りゆっくり」の看板を取り付け、一匹200円の値札も柵に張り付ける。 後は広い透明な柵に飾りを染めたゆっくり達を放って準備完了だ。 工房の柵に比べてやや広い柵の中でゆっくり達は通りに向かってふんぞり返っていた。 「さぁみんなわたしたちをゆっくりみてね!!」 「おしゃれでうらやましいでしょ!! ゆっくりしっとしてね!!」 「とかいはのほんりょうはっきね!! もでるしょーよ!!」 「しこっていいのよ!!」 しかし目の通る人々は通りがかりに一目視線を向けるだけだ。 飾りの色が変わっただけのゆっくりを褒めるものなどいない。 「ゆっくりできないね!!」 「わたしたちのよさにわからないいなかものなのよ!」 「そうだね! せんすのいいひとはすくないんだね!!」 人をイラつかせるこいつらの言葉に店の前を通る人々は少なからずイラっとしていた。 こいつらを喋らせない方が良かったかな。 なんて考えだした頃、お客第一号が来てくれた。 「すいませ~ん、一匹欲しいんですけど」 「あーい。どのゆっくりが欲しいですか?」 「このれいむと、あとやっぱりまりさもセットで」 「二匹ですね。400円になります」 爽やかなお兄さんの指差したれいむとまりさをそれぞれ透明な箱に入れて渡した。 この様子を見たゆっくり達からは不平が上がる。 「ゆ! どこにつれていくの!!」 「いくらかわいいからってゆうかいしないでね!!」 「おにいさんたすけてあげてよ!!」 煩いゆっくり達に俺は優しく声をかける。 「皆はゆっくり出来る場所に連れて行かれるんだよ。オシャレなゆっくりだから連れて行かれるんだよ?」 その言葉を聞いて喜んだのはお兄さんに買われた二匹だ。 「ゆっ! じゃあれいむがいちばんのおしゃれだったんだね!」 「まりさもおしゃれだからつれていかれるよ!」 「「かわいくてごめんねー!!」」 そんな事をいいながら二匹は連れていかれた。 余談だが、あの二匹を買ったお兄さんの家はいつも餡子の香りがすることで有名だったりする。 残ったゆっくり達はここに来てようやくお互いにライバル心が芽生えたようだ。 「つぎはとかいはのありすがえらばれるにちがいないわ!」 「いいえ! しゅくじょのぱちゅよ!」 「ちがうよ! みんなのあいどる、れいむだよ!!」 「まりさをわすれてこまっちゃこまるぜ!!」 さっきまでは君も綺麗だね、いえいえ貴方こそ…の関係だったというのにね。 でもこっちの方がゆっくりらしくて良いね。 次のお客が来た。 近所の寺小屋に通う女学生だ。 「きゃー、か~わいい~!」 「飾りの色違いとかちょーやばいんですけど!」 「おじさーん、一匹ちょうだい!」 おじさんとはなんだと思いながら女学生の選んだゆっくり達を箱に入れて渡す。 選ばれたのはありすとまりさ、そしてぱちゅりーだ。女学生はそれぞれ自分の見た目に似たゆっくりを選んだようだった。 「やっぱりとかいはのありすがつぎにえらばれたわね!」 「むきゅ、いなかものはそこにいればいいのだわ」 「まりさをえらぶなんてめがたかいぜ!!」 「きゃ~、きも~い!」 「きもいのが許されるのはゆっくりまでだよね~」 「きゃははははは」 女学生らはきもいきもい言いながらゆっくり達を連れていった。 きっと明日には捨てるんだろうなぁ。 次のお客さんは見るからに怪しいお兄さんだった。 色つきゆっくり達を涎を垂らしながら眺めていた。ハァハァと息も荒い。 「あ、あの…どのゆっくりをご希望で?」 冷やかしだったらとっとと帰ってもらおう。 「れいむたんとまりさたん!」 「はぁ」 「どっちも三匹ずつね!」 「1200円になります」 ハァハァ可愛いよれいむ、可愛いよまりさなんて言いながら怪しいお兄さんは去って行った。 後にあのお兄さんが「ゆっくりは俺のオナホール」が信条の男だと聞いた。 買われていったゆっくりも可哀想に。さすがに同情せざるに得ない。 次は着物を着た少女が来た。 「あの。このお金で全部のゆっくりをくれませんか? お釣りはいりません」 確かにお釣りが出るほどのお金。それに全部のゆっくりが一気に売れる。 断る理由はないな。 「それとこの場で叩き潰してもいいですか?」 「…は?」 この目の前の少女はなんといった? 叩き潰す? いや、まさか。こんな可憐な美少女がまさかそんな。 「えっと、よく聞こえなかったからもう一度いいかな?」 「この場でゆっくりを叩き潰してぶちまけていいですよね?」 「すみません何匹かただであげるので帰ってください」 不満そうな顔をしたが半分近くの子を無料であげたら笑顔で去って行ってくれた。 危ないところだった。この子がアッキュンだったのか。 いくら売ったと言っても目の前で虐殺されるのは勘弁だ。 祭りにそんなの見たくないってのもあるし掃除が面倒だしね。 そんな感じで俺の用意したゆっくり達はほとんど連れていかれた。 れいむが一匹残ったが、もうお客もまばらなので諦めて店じまいをすることにした。 というか大半を無料であげて赤字なので残る一匹が売れようが売れまいがどうでもよかった。 「ゆっぅぅ…なんでだれもかってくれないのぉぉ!!! こんなにおしゃれなのにぃぃぃ」 最後のれいむはオシャレなゆっくりから消えると伝えた状況で残ったので泣き叫んでいた。 黒髪に灰色のリボンが余り映えなかったせいだろうなぁ。 色を染めた俺のせいでもあるのでれいむを自由にさせてやることにした。 泣きわめくれいむをゆっくりの住む森へと連れていく。 しかしリボンが灰色のままでは可哀想なので森に向かう前に工房に寄って 最初に売れたれいむと同じ色である黄色にリボンを染めてあげると泣きやんで喜んでくれた。 ゆっくりの森に着くとれいむを地面に置く。 ここなら他のゆっくりもいて存分にゆっくりできるしオシャレも褒めてもらえるだろう。 「さぁ、れいむ。今日からこの森で暮すんだ」 「ゆっゆぅ? ここどこ? ゆっくりできるの?」 「森だよ。他のゆっくりもいるからゆっくりできるはずさ」 「ゆ! れいむはここでくらすよ!!」 「ああ、それじゃあなれいむ」 「ゆ! おにいさんまたね!!」 れいむは元気よく森へと跳ねていった。 きっと幸せになれるさ。あーでも、加工所出身で狩りを知らないんだっけ。 ま、他のゆっくりに教えてもらえるだろう。 俺はれいむの姿が見えなくなるのを確認すると工房へと戻った。 色つきれいむは意気揚揚と森の中を駆け回った。 他のゆっくりはどこだろう。れいむの綺麗な黄色のリボンを見せて自慢してやろう。 そんなことを妄想しながら森を進むとすぐにゆっくりれいむの親子と遭遇した。 まずはいつもの挨拶をしよう。 「ゆっくりしていってね!!」 「「「「ゆっくりしていって…ね?」」」」 「ゆぅ?」 ゆっくり家族の挨拶が途中で詰まったので疑問符を浮かべる色つきれいむ。 「おねーちゃんりぼんへんだよ!!」 「れいむたちみたいにあかくないよ!!」 子れいむ達が色つきれいむの黄色いリボンを見て変だと叫んでくる。 ちがうよ、これがおしゃれなんだよ! と言おうとした時、母れいむが子れいむを背に隠した。 「あんなふりょうみたらだめだよ! ゆっくりできないよ!!」 「ふりょう! それじゃゆっくりできないね!」 「りぼんをそめるなんてとんでもないふりょうだね!!!」 「ちがうよ! ふりょうじゃないよ!! おしゃれなんだよ!?」 「おしゃれだってさ」「おお、ふりょうふりょう」 「かんちがいれいむはさっさとどっかいってね!!!」 「ゆぅぅ…」 体の大きい母れいむに睨みつかれると色つきれいむは何も言えず、涙を流してその場を離れた。 その後も会うゆっくり全てに不良扱いされた。 中には攻撃をしかけてくるものもいた。 色つきれいむは自分がこんなにオシャレなのになんで認められないのだろうと不思議でならなかった。 一緒にオシャレしてもらった仲間達はお互いにオシャレだと褒め合ったのに。 「ここのゆっくりがおくれているんだね! ゆっくりしすぎてくさってるんだよ!」 声に出して自分は間違ってないと自分に呼びかける。 そう、ありす風に言わせればここのゆっくりは田舎者なのだ、と。 そういえば最初のおうちのように綺麗な場所ではないし、そろそろ食事の時間だと思うのに誰も運んできてくれない。 「ゆ! おにいさんはいつになったらしょくじもってくるの! ゆっくりしすぎだよ!!」 食事はおにいさん持ってくるもの。 加工所で生まれ、何不自由ない生活を送ってきた箱入りゆっくりにとってそれは当たり前のこと。 それはこの初めて来た森でも同じだと色つきれいむは思っていた。 しかし誰も食事など持ってくるわけがない。 「ゆっ! もってこないならがまんするよ! ゆっくりねるからね!!」 いつまで待っても食事を持った人間が来ないとイライラしていた色つきれいむだったが、 森を走り回って疲れていたのかその場で眠りについた。 野生のゆっくりが見れば「ばかなの?」と思っただろう。 おうちではなく森の開けた場所で眠るなど自殺行為でしかないのだから。 しかし育つまでは安全な加工場飼育ルームで育った色つきれいむは"外敵"という存在を知らないのだ。 翌朝、運よく何にも襲われなかった色つきれいむは目を覚ました。 即座に色つきれいむを襲うのは空腹感。そういえば昨日から何も食べていない。 「おなかすいたよ!! おにいさんはまだこないの!!?」 場違いなことを言う色つきれいむもしばらくして、待っていても来ないことをようやく悟った。 「ゆっくりしょくじをさがすよ!」 色つきれいむは森を進む。 毛虫や蝶々、お花や木の実も通り過ぎて食べものを探す。 加工場で出されたのは餡子を加工した食べものがほとんどで、後は定期的に果物が出された。 そんなものが森にあるわけもないのだが色つきれいむはひたすら探す。 「ゆぅぅ…なんでどこにもたべものがないのぉ! これじゃゆっくりできないよ!!」 一時間後には疲れてもう動けない色つきれいむの姿があった。結局食べ物は見つけられなかった。 探す途中に他のゆっくりが食事しているのを見て近づいたが昨日と同じで追い出された。 「ゆぅ…ゆっくりできないゆっくりばかりだよ……ゆ?」 空腹でボーっとしていると目の前にゆらゆらと揺れ動く果物が見えた。 あれは確か桃だ。あれの美味しさは今でも鮮明に思い出せる。 「たべものみつけたよ! ももさんまってね!!」 色つきれいむの声に揺れ動く桃は一瞬止まり、今度は近づいてきた。 と同時にガサッと茂みから桃の付いた帽子を被るゆっくりが姿を見せた。 ゆっくりてんこだ。 「ゆっ? ゆっくりしていってね! あと、あたまのももをもらうね!」 「いじめてくれるの!?」 ゆっくりてんこは虐められるのが好きなゆっくりだ。ドMとも言う。 どうやら桃を奪おうとする色つきれいむが自分を苛めてくれるゆっくりだと認識したようだ。 「ゆっくりいじめてね! いっぱいいじめてね!!」 「ゆゆゆゆゆ!? すりよってこないでね!! ほしいのはももだけだよ!!」 「いろつきのおしゃれいむならいっぱいいじめてくれるよね!?」 「ゆゆゆゆー!! こないでぇぇぇ!!!」 色つきれいむはてんこを恐れて逃げようするが、体力が尽きていたのでまともに這いずることもできない。 跳ねることなどもってのほかだ。 てんこのいじめてね攻撃は逃げようとするれいむをよそに激しくなる。 「このきのえだでたたいてね!! ゆっくりさしてもいいよ!!」 「やめでぇぇぇ!! どっかいってえぇぇぇ!!!」 しかしてんこは聞き入れない。今度はそこらに落ちていた小石をれいむの前に置く。 「いしでぶってね!! すきにいじめてね!!」 「いやぁぁぁ!! だれかだすげでぇぇぇ!!」 色つきれいむの助けを求める声。 その声を聞きつけたゆっくりがいた。 「れいむぅぅぅぅぅ!! だすげにきだよぉぉぉぉ!!」 「あ、ありす!! たすけにきてくれたの!?」 「ええ! すっきりさせてあげるぅぅぅぅ!!!」 「…ゆっ?」 現れたのは動く性欲のゆっくりアリスだった。運が悪いことにそのありすは発情モードだった。 ありすはれいむに擦りよって交尾を始めようとする。 「とかいはのてくをあじわわせてあげるぅぅぅ!!」 「ゆやぁぁぁ!! きもちわるいよ! くっつかないでぇぇぇ!!」 「つんでれいむかわいいわ!! いろつきリボンもおしゃれぇぇぇ!!!」 「いまいわれてもうれしくないよぉぉぉぉ!!!」 ありすはれいむの頬をぺろぺろと絶妙な力加減で舐めまわす。 れいむは嫌がりながらも心地よさを感じてしまう。 しかし構ってちゃんのてんこがそれを黙って見ているわけがない。 「れいむ! てんこをちゃんといじめてね!!」 てんこはありすを押しのけてれいむの口に木の枝を咥えさせる。もちろん叩かれるために。 「ゆ! てんこはじゃましないでよね! れいむはありすがすっきりさせるの!!」 「れいむはてんこをいじめるんだよね!!」 ドSとドMに言い寄られる色つきれいむ。れいむはとにかくこの場から逃げたかった。 色つきリボンを褒めてくれるゆっくりと出会えたが、何か違う。 ただ単に褒めてもらって憧れの的になりたいだけだった。 「どうせならてんこをいじめてよね!」 「じゃあてんこですっきりするわよ!!」 いつの間にかてんことありすが熱く絡み合ったようだ。 逃げるなられいむが見えていない今のうちしかない。 色つきれいむは重い体を引きずるようにその場から逃げていく。 「ゆ、ゆぅ…もう、あるけないよ…」 てんことありすからは逃げることに成功したが、色つきれいむは腹ぺこで動けなくなった。 元々燃費の悪いゆっくりであるから、二食抜いただけでもかなり危険だ。 もう体が大きければ数日食べなくても平気だが色つきれいむはまだまだ子供で小さい。 「ゆぅ、ゆぅ…ゆっくりしたいよ……」 視界がぼやけてきた。このまま眠りについたらきっと目が覚めることはないだろう。 お馬鹿な色つきれいむでもそれは分かった。 でも世話してくれる人のいないこの森ではゆっくりできない。 色つきれいむが眠りに着こうとしたとき一匹のまりさが目の前に現れた。 「ゆ! れいむがたおれてるよ!!」 「ゆ…」 このまま死んでもいいやと思っていた色つきれいむの心に火が再び灯る。希望と言う名の灯。 「おなかすいてるの? ちょうどたべものあるからあげるよ!!」 「ゆ…あ、りがと…」 目の前に出されたのは丸々太った芋虫といくつかの木の実だ。 全然食べ物ではなかった。あくまで色つきれいむにとっては。 「ゆ、たべないの? つかれてるんだね! たべさせてあげるよ!」 まりさは親切に芋虫を口に咥えてれいむの口元へ持っていく。 まだ生きているそれが口に近づいてくるのを見て色つきれいむは全身に寒気が走る。 「だめだよ…! そんなきもちわるいのたべられない!」 「ゆ……? いもむしおいしいよ!!」 「ちゃんとしたたべものがほしいよ。あまいくだものがいいよ…」 色つきれいむの言葉を聞いたまりさの顔が途端に険しくなりだした。 「れいむはにんげんにかわれてたんだね! そんなゆっくりとはゆっくりできないよ!!」 「ゆ…?」 「それにリボンのいろもへんだよ! にんげんにちやほやされてたんだね!!」 「ゆ? ゆゆゆ?」 まりさの家族は人間に殺された。それも人間の飼っていたゆっくりれいむによってだ。 まりさは見た。人間の命令に従って笑顔で家族を殺すれいむを見た。その後は人間に褒められて喜んでいた。 それから人間に飼われるゆっくりに、飼われていたゆっくりに対しても敵意を向けるようになったのだ。 「ふつうのゆっくりはむしとかきのみをじぶんでとるんだよ! みんなひっしでいきてるんだよ!! もらうことしかしらないゆっくりはゆっくりしないでしね!!!」 「ゆげぇっ!!?」 まりさは怒りを込めて色つきれいむに体当たりすると唾をれいむに吐きかけてその場を去っていった。 「ゆぅぐ…いだ、ぃぃ…!」 れいむは体当たりされて吹きとんだ拍子に後頭部を切ってしまった。傷口からは餡子が流れ出ている。 だが、れいむにとって深刻なのは心の傷だった。 当たり前のことを言っただけなのになんでこんなことされたんだろう。 芋虫とかいう気持ち悪いものを食べさせようとしたまりさが悪いだけなのに。 「ゆっくりとはゆっくりできないよ……」 色つきれいむは優しいお兄さんのいるおうちへ帰りたいと強く思った。 だがそれが適うことは最初からなかった。 背中の傷に何かが這いまわる感触。口にも何かが入り込んでくる。 今のれいむに近寄ってくれるのはもはや自分を食べようとする虫や小動物のみだった。 「ゆっくり…したかったよ…」 れいむは体が死ぬ前に心が死んだ。 最後に残ったのは黄色いリボンだけだった。 終 by ゆっくりしたい人 祭りで終わるはずだったんですけどね。 書いているうちにあれもしたい、これもしたいで構想より冗長になりました。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/825.html
ゆっくりマウンテン 以前書いた『ゆっくり焼き土下座』から派生した話ですが、別に読んでなくても大丈夫です。多分。 虐待成分薄め。制裁成分高め? むしろ因果応報系。 終盤、一部パロディを含みます。 ↓それでもよろしければ、どうぞ。 ここは地獄の一丁目……ではなく、地獄でも端の端に位置する場所である。 そこに、死んだゆっくりの魂が集められる、ゆっくりマウンテンがある。 ゆっくり達はこの山を登ることで己の罪を清算し、再び蘇ることを許されるのだ。 ゆっくりマウンテン、山頂。 ここには大きな光の球が浮かんでいる。この中に飛び込むことで、ゆっくりは転生できるのだ。 「ゆっ! やっとついたよ!」 「がんばったねれいむ! らいせでも、まりさといっしょにいてね!」 「いっしょにゆっくりしていってね!」 生前からつがいであったれいむとまりさが、光の中に飛び込み、そして消えた。 罪の清算を終えた二匹は、再びゆっくりとして生まれ変わることを許されるであろう。 「ゆっくりしていってね!」 また他のゆっくりまりさが光に飛び込む。だがそのゆっくりの魂は他と違い、光の球よりさらに上方へ上っていく。 ゆっくりには滅多にいないことだが、生前、悪行より善行を多く積んだゆっくりは、ゆっくり以外に転生することを許されるのだ。 このまりさは来世では、ゆっくりよりもっとマシな畜獣として生まれ変わることだろう。 光に飛び込むゆっくり達には、疲労の表情もあるが、そのどれもが未来への希望へ満ち溢れている。 「らいせもゆっくりしていってね!」 そのとおりになるとは限らないが。 ゆっくりマウンテン、九合目。 この辺りともなれば、目前の安寧を目指し、ゆっくり達は最後の力を振り絞って山を駆け上がっていく。 「ゆっくりはやくのぼるよ!」 「もうすぐちょうじょうだよ! ずっとゆっくりできるよ!」 「みんながんばろうね!」 苦楽を共にした仲間を励ましあいながら、ゆっくり達はせっせと登っていく。 そんな中、一匹の幼いゆっくりまりさが他のゆっくりと共に駆けていた。 「ゆっくりうまれかわって、またみんなといっしょにゆっくりするよ!」 他のゆっくりの半分程度の大きさしかないというのに、しかしその速度は成体ゆっくりと全く同じだ。 ゆっくりマウンテンでは、全てのゆっくりの身体能力は同じになる。 生まれや育ちによって、死後の贖罪に差があってはならぬとの閻魔の配慮である。 どのゆっくりも、ひとたび跳躍すれば同じ距離だけ跳び、同じ分だけ疲労する。赤子でもドス級でもそれは変わらない。 よってこのゆっくりマウンテンを登るのに必要なのは、ただひたすら前に進もうとする意気である。 ゆっくりマウンテン、八合目。 だがどのような境遇であろうと、怠けるものというのは確実に存在する。 「もうすぐちょうじょうだね! でもあせらずゆっくりしようね!」 「ゆっくりしちぇいっちぇね!」 ここにいるのは、五匹のれいむの姉妹である。どれも幼く、うち二匹はまだ生まれたてである。 巣の中で育ち、自然の厳しさを知る前に死んでしまったこの姉妹は、どうにも甘えが抜けていないのだ。 頂上まで上れば転生できる、というのは分かる。だが五匹は、そうまで頑張る必要もないではないか、と思っていた。 ゆっくりマウンテンにいる魂たちは、日中と夜は空腹に苛まれるが、翌朝になれば満腹感を得、体力が回復するのだ。 他のゆっくりに襲われて殺されることもないため、ある意味、最高にゆっくりできる環境だとも言えよう。 そんな風に思っている姉妹達は、転生することより、ここでゆっくりすることを選んだ。 焦ることはない。ゆっくり登っていけばいい。それに、もう頂上は目の前なのだ。生き返りたくなったときに急げばいい──そう考えたのだ。 だが姉妹達は、まだ気づいていない。 ゆっくりマウンテンの地面は、実は時間経過と共に徐々に下がっていく。 全方向に伸びる、下りエスカレーターのようなものである。 その速度は実にゆっくりとしていて、およそ七日で一合分ほど降下する。 ゆっくりの速度なら一日一合は登れるから、真面目に登っていけばあまり気にする必要のないことではあるが── 「ゆ~……ゆ~……」 「みんなあんなにいそがなくてもいいのにね~」 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってよー!」 姉妹達がくつろぎ始めて、既に四日。 自分達がどんどん山頂から遠ざかっていることに気づくのに、あと何日かかるだろうか。 ゆっくりマウンテン、七合目。 「ぱちゅりー! がんばって!」 「むっきゅ、むっきゅ、むっきゅ……」 一所懸命に山肌を登るぱちゅりーを、それより少し上にいるありすが励ましていた。 ぱちゅりーの速度は、他のゆっくりに比べて明らかに遅い。 身体能力は横並びになっていても、しかし、生まれつき虚弱なぱちゅりーは、突然得た健常な肉体を使いこなせないのだ。 そのため、どうしても他のゆっくりに比べて遅れがちになってしまう。 こればかりは、いかに閻魔と言えどどうしようもなかった。ぱちゅりーという種そのものの業であるが故だ。 ありすの親友であったこのぱちゅりーにしても、それは同じだった。 「むきゅ~、わたしはからだのつかいかたをおぼえてからおいかけるから、ありすはさきにいってね」 だからそう言って、ありすを先に行かせようとしたのだが、ありすはそれを拒んだ。 説得の末、ありすはぱちゅりーより先に行くことを一度は受け入れたものの、結局十メートルほど進んだところで止まってしまった。 「ぱちゅりー! やっぱりぱちゅりーといっしょにいたいわ! ありすはぱちゅりーといっしょじゃなきゃだめなの!」 そう告げる友の笑顔に、ぱちゅりーは勇気付けられた。そして一刻も早く、ありすと一緒に生まれ変わりたいと思った。 ありすは、声を張ってぱちゅりーを応援している。ぱちゅりーもそれに応えようとしている。 ところで、そんなに友人が大事なら戻ってやればいいと思われるかもしれないが、しかしここにもこのゆっくりマウンテンのルールが存在している。 ゆっくり達は山を登ることはできても、下ることはできない。 何故ならば、ゆっくりが今いる高さが、ゆっくりの罪の少なさを測る指針そのものであるからだ。 登った分だけ罪を清算したことになるのだから、捨てた罪の場所に戻ることはもうできない。 だがもし、ゆっくりがこの山を下ることがあるとすれば── 「のろまなぱちゅりーはじゃまだよ! ゆっくりどいてね!」 「むきゅっ!?」 大急ぎで駆け上がるれいむが、進路上にいたぱちゅりーを突き飛ばした。 「ぱちゅりぃー!?」 ありすが叫ぶ。突き飛ばされたぱちゅりーが転び、山肌にその身体を投げ出す。 転がり落ちてしまう──そう見えたその瞬間、不思議なことが起こった。 「「「────────!!??」」」 ぐにゃりと空間が歪んだかと思うと、ぱちゅりーとれいむの位置関係が入れ替わった。 突き飛ばされたはずのぱちゅりーは平然と元の位置におり、逆にれいむが突き飛ばされたかのような格好になっている。 「ゆゆゆゆゆー!?」 何が起きたか理解できないまま、れいむは山肌を勢い良く転がり落ちていく。 ──ゆっくりがこの山を下ることがあるとすれば、それはこの山で新たに罪を重ねた場合のみ。 自分のことを優先し、犯さなくてもいい罪を犯したれいむは、その罪の分だけ山を転がり落ちていく。 ぱちゅりーとありすは唖然とした表情でそれを見送ったが、やがて気を取り直し、二人一緒に山を登り始めた。 ゆっくりマウンテン、六合目。 「ゆゆゆゆゆーーーーー!!!!」 先程のれいむが、まだ山を転がり落ちている。 「ぢぢぢぢぢぢぢんぼーーーー!!!」 「わからないよー! わからないよぉぉぉ!」 「「「「ゆ゛あ゛あああああああああああんん!!!」」」」 それとは対照的に──まるで落下の逆回しを見ているかのような速度で、山を登っていく集団があった。 二十匹ほどからなるこの集団は、かつて人里を襲い食物を奪ったゆっくり達である。 本来なら三合目からの登山を言い渡されるほどの罪であるが、しかし反省が認められ五合目からの登山となった。 その五合目に来たのが、今から六時間ほど前である。 ゆっくりが一日のうち、十二時間を行動し、十二時間を眠るのであれば、このゆっくり達はおよそ倍の速度で一合分を走破したことになる。 それだけ急がなければならない理由が、このゆっくり達にはあったのだ。 見れば六合目にいるゆっくり達は、どれも大体同じような顔をして、大急ぎで登っていっている。 「「「「「ゆっぐりでぎないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」 叫ぶ内容も、また同じであった。 ゆっくりマウンテン、五合目。 「ゆべっぶ!!」 れいむの転落も、ようやく終わった。 「ゆゆ、いたいよぉ……」 一体何が起きたのかれいむは理解できていなかったが、確かなのは、転生により時間がかかるということだけだった。 めげずに頂上を目指そうと顔を上げたとき、 「──ゆ?」 それが、いや、それらが目に入った。 「どうも」 「清く正しい」 「きめぇ丸です」 「ゆ゛ぅえ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」 れいむの絶叫に合わせて、きめぇ丸達の首がヒュンヒュンヒュンと風を切って動く。その光景に、れいむはさらに怖気を走らせる。 気づけばれいむは、十数匹のきめぇ丸の群れに取り囲まれていた。 「おお、このれいむは上から落ちてきたようですね」 「おお、無様無様。何か馬鹿なことをしでかしたんでしょうねぇ? ですよねぇ?」 「いやいや全く、ああ勿体ない勿体ない。自分から転生の機会を遠ざけるなんて、なんてお馬鹿さん」 「おお、お馬鹿お馬鹿」 普段なら激昂に値するであろう嘲笑にも、れいむはろくに反応を返せない。 今更説明することでもないが、ゆっくり達にとってきめぇ丸は天敵である。 そこにいるだけでゆっくりできない上に、自力では追い払えない程度には強い相手だからだ。 そのきめぇ丸に取り囲まれているこの状況は、れいむにとって果てしなく地獄だった。 最初三合目から登山をスタートしたれいむは、既に一度この地域を通り抜けているが、それでも恐怖が抜けるわけではない。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆっくりでぎないぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 いっそ哀れなほどに悲壮な叫び声を上げて、一目散にれいむは逃げ去った。 「フフフ、ゆっくりできないですか、ですよねー」 それを見て、きめぇ丸達は楽しそうにニヤニヤと笑う。 このゆっくりマウンテンにいる以上、きめぇ丸達も魂のみと化した存在である。 頂上に到達しなければ転生できないことにも代わりはない。 だというのにきめぇ丸達がこんなところにたむろしている理由は、ひとえに「ゆっくりできないゆっくりを見れるから」である。 ここは言わば、ゆっくりの煉獄である。ゆっくりは罪を贖うため、ゆっくりしている訳にはいかないのだ。 それは、ゆっくりをゆっくりさせないことを信条とするきめぇ丸達にとって、ある意味天国のような状況なのである。 そのため、わざわざ生き返ろうとするきめぇ丸は一匹もいない。 これは完全に閻魔の誤算であり、後ほど、知能の高いきめぇ丸については通常の生物と同様の裁きを行うように変更された。 しかし既にゆっくりマウンテンに放り込まれていたきめぇ丸については、もうどうしようもないのだ。 最近では、「これはこれで罰として機能しているから、別にいいか」と閻魔も思い始めているようである。 ゆっくりマウンテン、四合目。 ここから下は、上よりも地面に対するゆっくりの割合が高い。 というのも、性格の悪いゆっくりは他人を押しのけて上に行こうとするため、新たな罪が堆積し続け、いつまで経っても上に登れないのだ。 悪循環という言葉のいい例である。 「じゃおっ、じゃおっ、じゃおっ」 そんな中を、一匹のめーりんが登っている。 基本的に善良であるめーりんが、何故このような場所にいるのかと言えば、ここよりもっと上で他のゆっくりの手助けをしてしまったからだ。 ゆっくりマウンテンは、己の力のみで登らなくてはならない。 他者を助けるという行為は、一見すれば善行であるが、それは助けられた者から努力の機会を奪う『甘やかし』である。 そのため、最初七合目あたりにいためーりんは、まず五合目まで転げ落ちてしまった。 さらに五合目で、きめぇ丸に怯えるゆっくり達を見て、思わずきめぇ丸に体当たりを敢行してしまったのである。 それもまた罪とみなされ、めーりんは更なる転落を余儀なくされた。 しかしそんなめーりんを、体当たりされたきめぇ丸が哀れんだため、一合転落した辺りで止まることができた。 「じゃおっ、じゃおっ、じゃおっ」 めーりんはそんな境遇に落胆することなく、己の行いに後悔することもなく、ただひたすらに上を目指し続ける。 「ゆっ! くずめーりんがいるぜ!」 だがそんなめーりんを、まりさ・れいむ・ありす・ぱちゅりーの四匹が見咎めた。 「じゃおっ!?」 「おいくずめーりん! おまえなんかがこんなところでゆっくりしていていいわけはないんだぜ!」 「おちてにどともどってこないでね!」 「このいなかもの!」 「むっぎゅーん! ゆっくりしね!」 四匹がいっせいに跳びかかる。 「じゃおっ!? じゃお、じゃおー!」 めーりんは必死な顔で四匹を止めようとするが、四匹はそれをめーりんの怯えと受け取った。 そして、 「「「「ゆ????」」」」 四匹がめーりんに衝突したかに思えた瞬間、四匹は何故かひっくり返って岩肌に投げ出されていた。 「「「「ゆぅぅぅぅぅうぅぅうううーーーーーー!!!!????」」」」 自分が急ぐという理由でもなく、ただ気に喰わないからという理由でめーりんを排除しようとした四匹は、凄まじい勢いで転落していく。 この速度では、一合目付近まで落ちてしまうことは避けられないであろう。 「じゃおーん……」 めーりんは悲しげに啼いた。このようなこと、既に一度や二度ではすまないほど起きている。 七合目付近のゆっくりは既に改心していたり、この山の仕組みを理解している者が多いため、めーりんに余計な危害を加えたりしない。 だがこの四合目付近のゆっくりは、めーりんを見かけるたびに排除しようとし──そしてさらに落ちていくのだ。 無論、それはそのゆっくり達が悪いのだから、めーりんが気にするようなことではない。 だが自分がここにいることそれ自体が、ゆっくりに罪を重ねさせている原因であることもまた確かなのだ。 「じゃおっ、じゃおっ、じゃおっ……」 だからめーりんは、一刻も早くこの場を離れようと、山を登り続けるのだった。 ゆっくりマウンテン、三合目。 「みんな! ゆっくりがんばってのぼっていくよー!」 「ゆっ! どすについていくよ!」 「がんばろうね!」 ここには、ドスまりさとその周りにいるたくさんのゆっくりの姿を見ることができる。 雪崩によって全滅したある群れが、そのまま閻魔の裁きを受けることになったのだ。 しかしそこで、群れの一部が人里で盗みを働いていた事実が発覚する。 それにより、盗みを働いたゆっくりと、それを看過していたゆっくりは、この三合目まで落とされたのだ。 その事実を知らなかったその他のゆっくり達は、ドスの教えに従い人間に迷惑をかけることなく暮らしていたため、六合目からの登山を許された。 しかしドスまりさは、群れのリーダーでありながらその事実を知らなかったことを咎められ、三合目からの登山となった。 だがドスまりさはその裁きに納得していた。 生前導けなかった群れの仲間を、今ここで導くことが自らの責務と思えたのだ。 「みんな! がんばってね! またみんなでいっしょにゆっくりするよ!」 ドスまりさは皆を励ましながら、同じ速度で登っていく。 速度を落としているのではなく、ドスもまた同じ身体能力に揃えられているからである。 そのため傍目には、体躯に反してひどくのろまであるようにも見えた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ」 群れはそうして、同じ速度でゆっくりと山を登っていたのだが、 「ゆーっ! もうつかれたよ! うごけないよー!」 若いまりさが、地面に突っ伏して疲労を訴えた。 「ゆ! れいむもだよ! もうここでやすもうよ!」 「ゆっくりしようよー!」 それを見て、他の何匹かもまた同様の訴えを起こした。 無論、ただの我が儘である。体力が同じなら、動けなくなるタイミングも同じはずだからだ。 「ゆっ! だめだよ、がんばってのぼって! ちゃんと、みんなでいっしょにゆっくりしなきゃ!」 ドスは動かなくなったゆっくり達を励ますが、皆ふてくされたように動こうとしない。 動かないのは、主に盗みの実行犯や、まだ若く甘えの抜けないゆっくり達であった。 「ゆっ! そうだよ!」 そのうちの一匹が、何か閃いたように身体を起こした。 「どうしたの?」 「どすにのせていってもらえばいいんだよ!」 「ゆ゛っ!?」 うろたえたのはドスまりさである。しかし他の我が儘ゆっくり達はそれに賛同した。 「さすがれいむだよ! あたまいいね!」 「どす! ぼうしのうえにのせてね!」 「のせてね!」 「だだだだだだだめだよぉぉぉぉぉ!!!」 近づいてくるゆっくりから、ドスまりさは必死になって遠ざかる。 そんなことをしたら何が起きるか、歩きながらも周囲のゆっくりを観察していたため、理解しているのだ。 しかし我が儘ゆっくりはそれを知らない。 「どーして!? まえはいつものせてくれたじゃない!」 「けち! どすまりさのけーち!」 「もういいよ! かってにのるよ! ぷんぷん!」 「だめぇーーーー!!!」 ドスまりさの懇願も虚しく、ゆっくり達はいっせいにドスまりさの髪の毛に噛み付き、 「「「「「「ゆぁーーーーーー!!!???」」」」」」 当然のように弾き飛ばされ、山肌を転がっていった。 「だから……だめだっていったのに……」 落ちていく仲間を追いかけることもできず、ドスまりさは悲しげに呟いた。 残った他の仲間達も、同じ表情で見ている。 「むっきゅ、しかたないわ……あのこたちがわるいんだもの……」 「どすがきにすることじゃないよ。だいじょうぶだよ、みんなまたのぼってこれるよ」 「ありがとう……」 群れはしばらく、仲間が転がっていった方向を見ていたが、やがて一匹、また一匹と登山を再開した。 最後にドスまりさが登り始める。後ろ髪を引かれるように、何度も振り返りながら。 ゆっくりマウンテン、二合目。 この辺りともなると、より性格の悪いゆっくりの数が増えてくる。 この山に放り込まれるのは、まだ矯正の見込みがあると見なされたゆっくりばかりだ。 矯正の見込みがないとされたものは、こことは比べ物にならないくらい厳しい罰を受けている。 正しい心と行いを以て山を登るだけで転生できるというのは、ある意味破格の条件であろう。 だが山を下るに従って、悪辣なゆっくりの数は増えてくる。 生前は大きな罪を犯さないまま死んだとしても、それは機会がなかったからで、充分に悪辣なゆっくりというのもこの山には存在する。 ある意味、この山はゆっくりが二度目の生を送る場所なのである。 ただしここは、かつていた場所ほど思い通りにはならない場所なのだが。 「「「「「「ゆべべっ!!!」」」」」」 先程ドスまりさを頼ろうとしたゆっくり達が二合目まで落ちてくる。 「ゆぐぐ~、いたいよ~」 「ゆっぐりでぎながっだぁぁぁ!!!」 顔を打ち付けた痛みにそれぞれが泣き叫ぶ。魂だけでも痛みはあるのだ。 「それもこれも、どすがのせてくれなかったせいだよ!」 一匹のまりさが怒りもあらわにそう口にする。 それを皮切りに、他のゆっくり達もいっせいにかねてからの不満を口にした。 「そうだよ! どすのせいだよ!」 「だいたいまえから、れいむたちになんでもかんでもいいすぎだよ! あれじゃゆっくりできないよ!」 「どすがどしゃくずれにきづけなかったせいで、みんなしんじゃったんだよ!」 「やくたたずのくせにりーだーづらして、ひどいやつだったね!」 「あんなやつ、もういちどしんだほうがいいよ!」 地団太を踏みながら口々にドスまりさの陰口を言うゆっくり達であったが── 「「「「「「ドスまりさは、ゆっくりしね!!!!!!」」」」」」 有無を言わさず、再びゆっくり達は山肌から弾き飛ばされた。 ここでは、閻魔が罪と判断したあらゆる所業は成立しえない。 罪に対する処罰が即座に下り、結果、罪を重ね続けるゆっくりはいつまで経っても山を登りきることができない。 例えば、 「んほぉぉぉぉぉぉぉ!!! すっきりしようねぇ、まりさぁあああああああ!!!」 「やべでぇえええええええええええ!!!」 ここに、まりさをレイプしようとする一匹のありすがいる。 「いぐっ、いぐっ、ずっぎりしぢゃううぅぅぅううう!! ああー! すっき──り?」 「……ゆ?」 今まさにすっきりしようとしたその瞬間、ありすからは快楽の波が消え去り、さらに身体は宙に浮いていた。 そして腹の底から、すっきりできなかったがためのむず痒さがじわじわと這い上がってくる。 「どうじでずっぎりでぎないのぉぉぉぉおぉ!!!???」 姦淫の罪を犯そうとしたありすは、こうしてさらに山を下っていくこととなった。 「ゆっ! ばかなありすなんだぜ! このまりささまをおかそうなんてひゃくねんはやいんだぜ! そこでえいえんにゆっくりしていってね!」 そしてありすの悪口を言ったまりさも、また落ちていった。 ゆっくりマウンテン、一合目。 ここから下は、ゆっくりマウンテンでも一番の混沌と叫びにまみれた場所である。 下から来たれいむが、上のまりさを押しのけようとして落下し。 それを嘲笑うまりさもまた落ちていく。 懲りずに姦淫に耽ろうとするありすも落ちていく。 争うゆっくりを眺め、思わず憎まれ口を叩いたぱちゅりーも落ちていく。 前を行くちぇんに嫉妬して、尻尾に噛みついたみょんも落ちていく。 落ちてきたみょんを口に入れようとしたゆゆこも落ちていく。 寝てばかりいるれてぃは、あと一週間もすればゆゆこと同じ場所まで下っていくだろう。 そしてその行き着く先は── ゆっくりマウンテン、麓。 そこにあるのは平原などではなく、沸騰寸前まで熱されたお汁粉の湖だ。 「ゆびぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「あぢゅいよぉぉぉぉぉ!!!」 落ちてきたゆっくりが湖に落ち、叫びを上げる。 だが岸に近い場所に落ちたゆっくりはまだいい。なんとか自力で這い上がることができるからだ。 「んほあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 先程二合目から転がり落ちてきたありすは、勢いがつきすぎていたため、水面を跳ねるようにしてより遠い位置に落ちた。 これでは、山に戻ることさえままならない。 「あづいいいいいいい……!」 「だずげでぇええええ……」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 湖は、そんなゆっくり達で満たされている。 夕暮れ時となった今、もはや叫ぶ体力もろくに残っておらず、ゆっくり達はひたすら低い声で喘ぐばかりだ。 顔を上に向けて、茫洋とした表情でただ空を見つめるばかりだ。 だがそんなゆっくり達も、一時的に活力を取り戻す瞬間がある。 ギィ、ギィと船を漕ぐ音が、ゆっくり達の耳に届いた。 「ゆっくりだずげでぇええええええ!!!」 「ごごがらあげでぐだざいいいいい!!!」 「おねがいじばずぅぅぅぅうううう!!!」 口々に、船に向かってゆっくりは叫ぶ。 その小さな船に乗っているのは、櫂を咥えたゆっくりこまちと、どうやって保持しているのか、勺を持ったゆっくりえーきである。 ちなみにこのえーきとこまちも魂だけの存在だが、きめぇ丸と違い、ちゃんと地獄に雇われている身である。 ゆっくりのことはゆっくりに任すのが良いと判断されたためであった。 えーきは叫びに耳を貸さず、湖に浮かんでいるゆっくり達を順に眺めていく。 そして船が、一匹のれいむの前で止まる。 「だずげでぐだざい! おねがいじばずっ!」 「はんせいしたかー?」 「じまじだっ! れいぶがわるがっだでず! もうほがのゆっぐりのじゃまじだりじまぜんっ!」 「んー……」 えーきはしばらくれいむを眺め、そして、 「よいぞっ!」 勺を立てると、その動きに釣られるようにれいむの身体が湖から浮き上がる。 「ありがとぉぉぉお!!!」 れいむは感謝の言葉を述べながら、不思議な光に包まれて、山のほうに飛んでいった。 えーきはそれを見てにっこり頷き、またこまちに指示してお汁粉の湖を渡り始める。 「どうじでれいぶはだずげでぐれないのぉぉぉぉぉ!?」 「いがないでぇえええ!!! だずげでぐだざいいいいい!!!」 「やだぁああああああ!!!」 後ろから放たれる哀願の声にも、えーきは耳を貸さない。 この湖には、えーきとこまちが百八組放たれており、それぞれが閻魔から授かった仕事をこなしていた。 えーきには、閻魔の手によって、他のゆっくりの罪悪感を知る程度の能力が与えられている。 えーきとこまちの仕事は、こうして毎日お汁粉の湖を渡り、きちんと反省したゆっくりに再びチャンスを与えることだ。 なので反省していないゆっくりに欠ける情けなど微塵もないのである。 「どうじであんなれいぶをだずげでまりざはだずげでぐれないのぉぉぉぉ!!?? はやぐだずげろ、ごのばがああああああ!!!」 「…………」 同時に、罰を与える権能も僅かながら与えられている。 こまちの船が、醜い罵声を放ったまりさの前に横付けされる。 えーきはまりさを、何かを見定めているようにじっくり眺めている。 「なにみでるのっ!? はやぐだずげろっ!! だずげないならじねええええ!!」 見ているだけで一向に何も言わない二匹に、まりさは激昂する。 この湖に落ちて、もう二週間以上。既に限界だった。 「だずげろっ! ごのぐずっ! だざいぼうじなんががぶっでぢょうしのっでんじゃねぇえええええ!!!!」 真っ黒な憎悪を込めてまりさが叫んだところで、えーきは告げた。 「 堕とせ 」 その瞳に光はない。 こまちはすぐさま応じた。 咥えていた櫂を高らかに持ち上げると──勢いよくまりさに向かって振り下ろす。 「ゆべぇっ!」 まりさの顔がへこみ、身体が沈む。 それからも立て続けにこまちの櫂が炸裂する。 「ゆべっ! べびっ! びゅッ! びゅっ!」 身体が沈みきり、見えなくなったところで、こまちが櫂に船が傾くほどの力を込める。 しばらくお汁粉の表面はぶくぶくと泡立っていたが、やがてそれも絶えた。 こまちは無言で櫂を引き抜き、再び船を漕ぎ始める。 周囲は、しばし静寂に包まれていた。 ゆっくりマウンテン──マイナス十合目。 「ぶびゃっ!」 お汁粉の湖の底まで沈んだそのまりさは、何故か地面の上に落下した。 湖の下に水底はなく、広い空間が広がっていたのだ。 「ゆぎぎぎ!! あのくそえーき!! ここからもどったら、ゆっくりしかえししてやるぜ!!!」 憎悪も新たに、まりさは猛る。 だがはたと気づく。戻るといっても、ここはどこだ? ──その答えはすぐに与えられた。 「ぶぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 「ごぼぼぼぼぼぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 「ぎゃっべ、ごべっ、びぎゃっ、っぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!」 絶叫。 空間中に轟く絶望の咆哮。 身を強張らせたまりさが見たのは、そこかしこで繰り広げられるゆっくり達の大虐殺であった。 怖ろしい姿をした鬼達が、金棒や素手でゆっくりを潰して回っている。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」 まりさは思わず後ずさる。だがその背中が、何かにぶつかった。 振り返ると、それは大きな石臼だった。 「アそーれ、アそーれ、アぁどっこいしょー!」 その横では、鬼が巨大な杵を臼に向かって振り下ろしている。 「ゆーゆゆゆーびぇっ! ……ゆーんゆーゆっびゃ! ……ゆゆーゆゆーんぼっ!」 臼の中では、一匹のまりさがひたすら潰されている。 まりさは杵の一撃を受けるたびに餡子をぶちまけて絶命するが、しかし鬼が杵を振り上げるたびに再び蘇る。 潰されるまりさは、何かに取り憑かれたように歌い続けている。その瞳に正気の色はない。 「っこらしょー!」 「ゆんびゃっ!」 一際強く杵を振り下ろしたところで、鬼は一息ついた。 「ハァ、遣り甲斐のねぇ仕事だこと。なんの反応も返さないし。かといって他のも弱っちいしなぁ。 あーあ、人間殺す仕事に戻りてぇ。まだしも、あっちのほうが歯応えあるって話だよ」 ぼやきながらも、再び歌うまりさに向けて杵を振り下ろす仕事を始めようとして、 「ン?」 「あ、あ、あ、あ……」 臼の陰で震えている、別のゆっくりの姿に気づく。 「ンだ、新入りか。おぅい! 新しいのが来たぞー! そっち連れてけー!」 「あいよー!」 別の鬼が、まりさを回収するために足を向けたその直後、 「ゲットだぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆぅぅぅぅぅ!!」 スライディングで割り込んできた人間が、まりさを横から掻っ攫っていく。 「「げぇっ、虐待お兄さん!」」 呼んだ鬼と呼ばれた鬼の声が重なる。 まりさは、立ち上がった虐待お兄さんの顔の高さまで持ち上げられた。 にっこりと虐待お兄さんが笑う。助けてくれた。まりさは一瞬そう思った。 「ゆっくりしていっ」 「 少 林 寺 撲 殺 拳 ! ! ! 」 「でぶぇっ!!??」 直後、まりさは粉砕される。 まりさの意識が途絶え、しかし一秒後には再び元の身体を取り戻していた。 「ゆっ? ゆっ!?」 「フラッシュ・ピストン・マッハパンチ!!!」 「ゆぼぉっ!!!」 戸惑っていると、あまりの速さに十本に分裂した右ストレートが、全方向からまりさを叩き潰す。 「……っぶぁぁぁぁあ!!!??? どうなっでるのぉぉぉぉぉぉ!!!???」 「豪ォォォ熱!!! マシンガンパンチパンチパンチパンチパンチィィィーーーーーー!!!!」 「ぶぎゃべぎぼごばぎゃあああああ!!! ……あ゛あ゛あ゛あ゛!!! どうじでまりざじなないのぉぉぉぉぉ!!!」 「一・撃・必・倒!!! ディバィーンバスタァァァァァァァァ!!!」 「ぼびゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!???」 「T-LINKナッコォ!!!!」 「ちぇ・げばらっ!!」 「ファールコーンパーンチ!!!」 「どぼふ!!!」 「フタエノキワッミ!!! アーーーーーーー!!!」 「ぴぎゃあああああああああああ!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアア!!!!」 「ヤッダーバァァァァア!!!」 ボグシャア、とまりさが地面に落下し、しかし一秒で全ての傷が癒える。 「フゥ……ンッンー、久しぶりだからちょっと殺リすぎちゃったカナッ☆」 実にいい笑顔で汗を拭う虐待お兄さんであったが、たまらないのは鬼達である。 「テメェエエエエ!!! また地獄抜け出してきやがったなあああああ!!!」 「来るなっつってんだろ! 仕事邪魔すんなっつってんだろ!」 「大人しく転生してよぉ! 頼むから!」 生前、あまりに多くのゆっくり(万単位)を殺したお兄さんは、当然のように地獄に落とされたのだが、 「この程度! ゆっくりを虐められない苦しみに比べたら! なんでもないんだよォォォォォォォォォォォ!!!」 と言って、たびたび地獄を抜け出しては、ここ──『ゆっくり専用無間地獄』にやってくるのだ。 ここのゆっくり達は、正気を保ったまま一万回死ぬまで転生することはない。しかし逆に言えば、その間は殺したい放題なのである。 主に直接的手段によってゆっくりを虐待することを好みとしていたこのお兄さんには、まさに天国のような場所である。 が、鬼達にとってはたまったものではない。鬼にもノルマが課せられており、それを達成しなければこの場所を出ることはできないのだ。 ゆっくりの相手など、正直鬼にとっても願い下げなのである。 なので早々に終わらせて早く転属したいのだが、お兄さんに殺された分はカウントされないので、お兄さんがいるとその分転属が遅れるのだ。 「ウルセェ────────!!! ゆっくりがいなきゃどこだって地獄だあああああ!!!」 「逆ギレすんじゃねぇよ! 帰れよ! あと死ねよ!」 「いや殺すッ、ここで殺してやるッ!!! そしてさっさと転生しやがれぇええええええ!!!」 「やってみろ! ことゆっくりに関しては、俺は神にも勝てる自信があるッ!!!」 「ほざけ! ウォォォォォ!!!」 「ぬわりゃあああああああ!!!」 とうとうお兄さんと鬼達が乱闘を始めた。 その足元では、さっきのまりさが逃げ遅れた他のゆっくりと一緒に踏み潰されまくり、既に五十回ほど死んでいる。 「ゆっゆーんゆー、ゆゆっゆーんんー♪」 気の狂ったまりさの歌い声が、阿鼻叫喚の地獄に響いていた。 このようにして、地獄は今日も地獄絵図である。 なお虐待お兄さんは、後日正式に転生し、虐待鬼さんとして新たな生を得たとか得ないとか。 あとがき テラカオス この話は、焼き土下座のときにチラッと出した『ゆっくりマウンテン』の話です。 特に深く考えてたわけじゃなかったんですが、なんの気まぐれか書いてしまいました。 しかしこれ、虐待にも制裁にもなりえない話だなぁ…… 制裁というのは、罪に対して過剰・過激な罰が与えられるくらいが楽しいと勝手に思っています。 ちなみに九合目の子まりさ、六合目の逃げるゆっくりの群れ、無間地獄の歌うまりさは、多分皆さんが想像している通りのゆっくり達です。 あとこの虐待お兄さんの名前はきっとギャクターイ・アニメスキーとかそんなん。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1622.html
「ゆっくりしてぶっ!」 朝起きると部屋の中にゆっくりがいたので目覚ましを投げつけた。 時計の直撃を顔面に喰らった痛みに、ゆっくりれいむは床を転がり回っている。 「ゆっ、ゆっ、ゆっくりしてげっ!」 ベッドから身を起こし、今度はゆっくりに蹴りを入れる。 死なない程度に加減はしたが、相当の痛みだったのだろう。俺が着替える間中ゆっくりはのたうち回っていた。 「さてと。」 ゆっくりれいむの髪を掴んで俺の目の前にぶら下げる。 「痛いよ!お兄さん痛いよ!ゆっくりぶげっ!」 頬を引っぱたく。あの台詞は聞き飽きた。 「どうやって部屋に入った?」 「ゆっ、ゆっ。」 俺が大げさに右手を振りかざすと、ゆっくりは焦りの色も露わに説明した。 「あそこからゆっくり入ってきたよ!」 ゆっくりが向いた先を見ると、網戸が開いている。こいつらベランダからもやって来るのか。ここ五階だぞ。 こんな事が起こるようでは、もう窓も開けて寝られない。 玄関半開きも駄目、その上部の小窓も駄目。通気の悪い寝苦しい夜を過ごしたら、今度は窓も駄目と申すか。 俺はクーラーとか、文明の利器にべったりなのは嫌いなんだ。まあそろそろ涼しくなる頃だし我慢するか。 そんな事をつらつら考えていると、ゆっくりが話しかけてきた。 「お兄さんここはゆっくり出来ないよ。」 「そうか。」 「れいむはもうおうちに帰るよ。ゆっくり下ろしてね。」 「そうか。」 ゆっくりを掴んだままベランダに出る。雲一つ無い空。今日も暑くなりそうだ。 ベランダの下は道路を挟んで川が流れている。通勤者や通学者が通りを歩いている。 こういう事は人が居ないときにすべき。それがマナーというものだ。部屋に戻って煙草を取ってくる。 ベランダで煙草を吹かすが実に不味い。ゆっくりを掴んだ左手が重いからかもしれない。うろちょろされても目障りだから仕様がない。 ふと視線を眼下の道路から前方に移すと、対岸のマンションにもゆっくりを掴んだ者がいた。そこかしこのベランダに待機した人影がある。 あちらの道路は交通量が多いから、ああやってずっと待っているのだろう。 自分が言うのもなんだが、みんな行儀良くて結構な事だ。こいつもそれぐらいの心掛けがあれば長生き出来たかもしれないな。 「お兄さん。」 「なんだ。」 「ゆっくり下ろしてね。」 「もう少し待ってろ。」 「ゆっくり待ってるよ。でも早くしてね。」 「そうか。」 ゆっくりの相手をするときは適当に受け流すのが一番だ。こいつらとの会話に整合性を求めると病院の世話になりかねない。 しかしなんだってこいつらは、わざわざ人の家に入ってくるのかね。食い物ならその辺のゴミ漁りで十分だろう。 以前そういうゆっくりに質問してみたが、「ゆっくりしたいよ!」とか言うばかりでさっぱり分からん。 煙草の長さが半分になる頃、対岸の道路に一瞬の静寂が訪れた。歩行者もおらず、車も手前の信号で止まっている。 「ゆっくりー!?」 対岸からゆっくりの絶叫が響いてきた。向こうのマンションの、あちこちのベランダからゆっくりが川に投げ込まれている。 投げ出された何十ものゆっくりは、川の水面に叩き付けられ、半数が即死し、残りは何か小さな呻きを漏らしながら、川に流されていった。 中には勢い余って川を越してこちら側にまで届いたゆっくりもいる。道路に餡子が半扇状に飛び散っているが誰が片付けるんだあれ。 「ゆーっ!お空を飛んでるみたい!」 一匹のゆっくりまりさが泣き笑いの表情でコードレスバンジーをしている。 まあ実際に飛んでるわけだが、少し意味が違うかな。現実逃避の邪魔をするのも野暮な話だし、だいたいそんな時間もないわな。 「ぼしょん」という間抜けな音と共にまりさは水面に落ちた。沈み込んで、拉げた顔になって浮き上がってくる。 まりさは薄ら笑った顔でゆらゆらと川下に流されていった。 「お兄さん。」 「なんだ。」 ゆっくりれいむは俺にぶら下げられながらガタガタ震えている。 「なにあれ。」 「なにって、お前等を俺達のおうちから追い出してるんだよ。」 「あれじゃみんな死んじゃうよ?」 「死ぬだろうな。」 「ゆっくりしたいよ?」 「お前等が家に居ると俺達はゆっくり出来ないんだよ。」 「ゆっくり帰してほしいよ?」 「駄目だ。」 「もう来ないよ?」 「お前等は直ぐに忘れて戻ってくるからな。」 「お願いよ?ゆっくり下ろしてね。」 「どうやらこちらも頃合いのようだな。」 ゆっくりれいむの目には涙が溢れている。必死なんだろうが、口が半笑いではいまいち危機感が感じられないな。 煙草をサンダルで揉み消し、ゆっくりを右手に持ち替える。 「ゆっくり帰してね?もう来ないから許してね?」 「直ぐに帰してやるさ。来るとか、来ないとか、もうそういう事を考える必要は無い。」 「お願いね?お願いね?ゆっくりさせてね?ゆっくりさせてね?」 「短い付合いだったな。さよならだ。」 「ゆーっ!?」 俺は大きく振りかぶって、ゆっくりを川目掛けて投げつけた。 「もっとゆっぐりしたかったよおおおおお!」 目算を誤った。少し飛距離が足りなかったらしい。れいむは手前の地面に落ち、餡子を撒き散らして転がり川に飛び込んでいった。 落下角が斜面にうまく合ったようで、即死する程の衝撃は無かったようだ。 もっとも、即死を免れても苦しむ時間が長引くだけだ。惨い事をしてしまったかもしれない。 上階から別のゆっくりがポイポイと降り注ぐ中、俺は流れゆくゆっくりれいむに向かって呟いた。 「悪かったな。次の奴は楽に死ねるようにしてやるから。」 少し遅れて朝食を済ますと、俺は家を出て、会社に向かった。 家の前の道を駅へ向かって歩いていると、そこかしこの窓からゆっくりが放り出されている。 何でこいつ等は懲りずに人間に関わろうとするんだろう。「ゆっくり」は何を意味しているのだろう。 橋を渡りながら水面を見下ろすと、死んだもの、死にきれないもの、沢山のゆっくりが川を流れていた。 水質とか大丈夫なんだろうか。 川岸の水草にひっかかった一匹のゆっくりと目が合った。 そのゆっくりれいむは瀕死の、そのくせ半笑いの表情でこちらをじっと見詰めている。 確信は無いが、さっき投げたゆっくりのようだ。 そいつは暫くこちらを見ていたが、やがて諦めたかのようにゆっくり目を閉じた。 俺は川から視線を外して雲一つ無い空を見上げた。 今日も暑くなりそうだ。 by GTO このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1057.html
"ゆっくり落とし" ゆっくり消しゴムを指で弾き、相手のゆっくり消しゴムにぶつけて盤上から落とす遊び。 テーブルやイスがあれば、どこでも行える。ゆっくりは柔らかく弾力に富んだ体をしており、 しかも若干ながら自分で動いたり声を上げたりできるため、 普通の消しゴム落としよりも変化の多い展開が楽しめる。 基本的には何も無い台の上で行う単純な遊びなのだが、 盤面に障害物を置いたり、台を傾けたりといった方法でゲームを複雑にすることもできる。 また、大きなゆっくり(消しゴムとしては)を用意したり、消しゴム自体を改造したりする者もいる。 改造の例としては、すべりを良くしてスムーズに動けるよう :体の底の部分に紙を貼る :糊を塗って乾かす :ホッチキスの針を刺す といったものがあるが、攻撃を受けた時に弾き飛ばされ易くなってしまう諸刃の剣でもある。 逆に、飛ばされにくくするための工夫としては :勝負に使う前のゆっくりを予め何かに強くこすり付けて粘液を大量に分泌させ、 それを利用して盤面にゆっくりを貼り付けてしまう :ゆっくりは丸っこい体をしており、攻撃された時にそのまま転がって落ちてしまうことがあるため 型に詰めたり掌で押し潰したりして、体の形を転がり難くする といったものもある。 追記 このゲームは、ある意味プレイヤーとゆっくりの連携が重要となる。 ゆっくりは勝手に動くので、勝負に勝つためには「盤の端に近寄るな」などといった立ち回り方を 教え込むことが欠かせない。 ゆっくりには幼児程度の知能と学習能力しか無いが、 根気良く教え込めば次第に覚えていく。最初は基本的なことから教えていくとよい。 水の中に転がし落として沈めたりすると、すぐに盤から落ちることを嫌がるようになる。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/92.html
ある所に一匹のゆっくりちるのがいた。 そのちるのは珍しい事に花を育てていた。 ただ、そのちるのは他のゆっくりちるの同様馬鹿だった。 昔ゆっくりゆうかが育てていたのを見ていただけで、ちるの自身は花の育て方を全く知らなかったのだ。 花の育て方を知らないのに花を育てようとする、馬鹿と言わずなんというのだろうか。 当たり前だが、始めの内は何度も花を枯らした。 ある時は水をやりすぎて根を腐らせ、またある時は水をやらなさ過ぎて枯らしてしまった。 それでもちるのは諦めず、その度に何が悪かったのかを足りない頭で考えた。 今は亡きゆっくりゆうかの姿を思い返しながら、自分がゆうかと比べて何をしていないのかを何度も考えた。 そして、その努力が実を結び、ちるのは漸く初めて花を咲かせたのだ。 それはゆっくりゆうかの花畑と比べると、たった一輪の小さい小さい花だった。 あんなに頑張ったのに咲いたのは簡単に踏み潰せてしまう花だったが、ちるのは逆にやる気を燃やした。 他のゆっくりならば割りに合わないと考えるかもしれないのに、ゆっくりちるのは自分でも花を育てられるのだと考えたのだ。 これは、単純な頭を持つゆっくりちるのならではと言えるだろう。 そこから先は少しずつ、少しずつちるのは花の数を増やしていった。 ゆっくり時間をかけて、昔見たゆっくりゆうかの花畑を再現する為に。 花畑が大きくなると、それを邪魔する存在も増えてしまった。 他のゆっくりの存在である。 普通のゆっくりからすれば、草花は食料でしかない。 ちるのの育てた花を狙うゆっくりが現れるのも仕方ないと言えよう。 実際ちるのも、目の前でゆうかの花を食べようと襲撃するゆっくりを見たことが何度もある。 そして、その様な愚かなゆっくりは全てゆうかが倒している姿も見ていた。 だから、同じようにちるのもゆっくりを倒した。 ある時は噛み付いて凍らせ、ある時は後ろから奇襲をした。 襲撃してきたゆっくりを殺す方が楽ではあるが、そうなるとそのゆっくりが暮らすコミュニティを相手にせねばいかなくなる。 そう考えたちるのはゆっくりを殺さないように気をつけた。 返り討ちにすれば、いずれ来なくなる。そう考えた。 何度襲撃されても、生かしたまま追い返した。 何度も何度も… やがて、暑い陽射しが穏やかになり木々に色が付き始めた。 秋の到来である。 この時期になると他のゆっくりは越冬の為に餌集めに必死になる。 それはドスまりさの集落でも変わらない。 今も必死に動けるゆっくりは餌集めに全て出ている。 今この集落にいるのは小さい子供と相談役のぱちゅりーにありす、そしてドスまりさだ。 「食べ物はどれくらい集められた?」 相談役のぱちゅりーに声をかけるドスまりさ。 本当は、聞かなくても分かっているが聞かないと不安なのだろう… 「よくないわ… このままじゃみんなでふゆをこすのはむりね…」 「そう…」 ドスまりさは必死に考える… 皆で冬を越す方法を。 今このドスまりさのコミュニティでは食料が圧倒的に不足していた。 相談役のぱちゅとありすの最初の計算では、当初は越冬に十分な食料が集められてはいた。 それが足りなくなってしまった理由は、食料庫に使っていた洞窟が急な地震で瓦解してしまったのだ。 幸い生き埋めになったゆっくりはいなかったものの、食料が全て埋まってしまった。 すぐに掘り出そうとしたものの、外敵に盗られないようにと奥に置いていた為ゆっくりだけの力では掘り出せそうにない。 慌てて動けるゆっくりは餌集めを開始したが、ドスまりさを中心としたコミュニティは普通のゆっくりのコミュニティに比べると規模が段違いに大きい。 夏頃から準備を始めて間に合うようになるのだから、秋の今から始めても遅いのだ… ドスまりさはある決意をし、二人に話す。 「もし食べ物が足りなかったら… 皆でドスまりさを食べてね…」 自分の大きい体を食べてもらえば、今ある食料と合わせて皆は十分にゆっくりできる。 それならば自分が犠牲になればいい… ドスまりさはそう考えたのだ。 「むぎゅ!? だめよそんなの!!」 「そうよ!! みんなドスまりさがいたからいままでゆっくりできたのよ!!」 当然のように反対するぱちゅりーとありす。しかし、ドスまりさの決意は固い。 「二人ともありがとね… でも、冬で食べ物が足りなかったら皆ゆっくりできないから… だから、ドスまりさが犠牲になるしかないんだよ!!」 それから暫くの間三匹の口論が続く。 ドスまりさは自分の主張を変えず、二匹はそれに反対し続けた。 そんな不毛な議論が続く中、一匹のれいむが帰ってきた。 「みんな~ すごいのをみつけたよ!! これでたべものにはこまらないよ!!」 「「「ゆゅ!?」」」 三匹は一斉にれいむを見つめる。その姿はどこか誇らしげであった。 「れいむ、なにをみつけたの?」 ぱちゅりーが声をかける。れいむが言った『たべものにこまらない』というのが気になったからだ。 それはありすもドスまりさも同じである。れいむの言ってることが本当なら、皆でゆっくりすることができるのだから。 「あのねあのね!! すごいおはなばたけをみつけたんだよ!! あれだけあればみんなでふゆをこせるよ!!」 れいむが見つけたのはゆちるのの花畑である。ゆちるのの頑張りによって、とうとうゆうかのような大きい花畑になってきたのだ。 しかし、何度も言うがそれはゆっくりにとって食料でしかない。 しかも今このドスまりさのコミュニティは越冬の食料が足りなくて困っているのだ。 ドスまりさが出した答えは当然と言える… 「早く皆でご飯を集めにいくよ!! これで皆一緒にゆっくり冬を越せるよ!!」 ちるのは困惑していた… 突然現れたゆっくりの集団に。 今まで何度も襲撃されたとはいえ、数は精々五匹くらいだった。 それが、今は目の前に数え切れない程のゆっくりがいた。数は50匹程度なのだが、ゆちるのは2桁以上の数は数えることができないのである。 それでもゆちるのは諦めなかった。今まで通り相手に噛み付いて凍らせ、動けなくしたら別の獲物を狙う。 しかしやはり多勢に無勢。噛み付いている間に他のゆっくりに攻撃され、次第に皮は破れて動きも鈍くなっていく。 仕舞いにはドスまりさに踏まれてしまい、とうとう動けなくなってしまった。 ドスまりさは大きいゆっくりである。通常のゆっくりの大きさの何十倍もある。 その為ゆちるのが噛み付いても、ドスまりさを凍らせる事はできなかったのだ… 「皆早くどんどん運んでね!! 邪魔者はドスまりさが押さえておくよ!!」 ドスまりさはゆちるのを踏みながらゆっくり達に指示を出す。 この花畑に着いた時、ドスまりさは感動した。 れいむの言った通りそれは大きい花畑で、皆で十分ゆっくりできる量があったからだ。 独り占めしようとしたゆっくりちるのがいたが、それは今自分が押さえている。凍らされたゆっくりは今ありすとぱちゅりーの手で治療中だ。 ドスまりさはゆっくりの神様に感謝した。 これで誰も犠牲にしないでゆっくりできると… このちるのは皆がご飯を運んだら解放してあげるつもりだ。 邪魔もしてきたし、自分の仲間じゃないゆっくりとはいえ殺すのは可哀想と思ったからだ。 自分は優しいゆっくりなのだと、ドスまりさは優越感に浸っていた。 ドスまりさに踏まれているゆちるのは泣いていた。 二度と泣くまいと決めていたのに、泣いていた。 それは花畑を荒らされて悲しかったからではない、守ることができない無力な自分が悔しかったのだ… 自分の師であったゆっくりゆうかの花畑を、自分の手で再現できたのは本当に嬉しかった。 教えを請う事はもうできない。それでも、この花畑さえあればゆっくりゆうかが側にいる気がしたのだ。 それが、また奪われる事が悔しかった。 自分がこんな奴らに負けたせいで、花畑は荒らされてしまった。 相手は殺す気はないようだが、きっと味を占めてここで花を育てる限りきっと来るとちるのは感じていた。 ゆっくりゆうかがいたここで育てなければ意味がない、だけどここで花を育てる限りこいつらは必ず来るだろう。 どうすればいいのか答えを出せない馬鹿な自分に嘆き、ちるのは涙を流し続けた… 「皆つまみ食いしたら駄目だよ!! 早く運ぼうね!!」 勝手に花を食べようとしたゆっくりに注意しながら、ドスまりさは辺りを見回す。 花は無事に運ばれ、辺りは食べることのできない草しか残ってない。 「これでみんなゆっくりできるわね!!」 「ほんとうね!!」 近くにいたぱちゅりーもありすも嬉しそうに笑っている。誰も犠牲にせずにすむ事が嬉しいのだろう。 全てはゆっくりちるののお陰だ。これが食べ物を独り占めしていたお陰で皆が助かったのだから。 「皆ちょっと集まってね!!」 感謝の気持ちを伝える為に、皆を集めたドスまりさ。 「この子にお礼を言うよ!! この子が食べ物を集めてくれてたお陰で皆でゆっくりできるんだからね!!」 少し体を動かして踏んでいるゆちるのから退くドスまりさ。これからお礼を言うのだからいつまでも踏んでいるのは可哀想である。 踏み付けから解放されたゆちるのは羽を動かして近くにいたぱちゅりーに噛み付いた。 「むぎゅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 「ぱ、ぱちゅりー!!」 もう花畑はない… 守るものがなくなった今、自分に意味は無い。 ならどうするか… 最後まで足掻き、足掻いて、足掻き続けて殺される。それしかないとゆちるのは考えたのだ。 自分のできる最後の抵抗… いつ潰されても構わない… ただ、黙ってこいつらを見送ることだけはしたくなかった。 手加減も容赦もしない… 完全に凍らせて命を奪う… もう、手加減をするつもりはゆちるのになかった。 「さっさとはなしなさい!!」 飛び掛ってきたありすを凍らせたぱちゅりーをぶつけて潰す。ありすは悲鳴をあげる間も無く絶命した。 「やべでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ごないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「どぼじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 逃げ出すゆっくりにも容赦はしない。噛み付き、凍らせ、別のゆっくりにぶつける。 それだけで相手は簡単に死ぬし、生かすつもりもなかった。 今はただ、あのでかいのが動く前にできる限りこいつらを殺さなければいけない… 「やべでやべではなじでえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!! まりさはわるくないよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「れいぶがなにをじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「わがらないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! だずけでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 ドスまりさは何が起きているのか分からなかった… 自分たちがお礼をしようとしたら、あのゆっくりはいきなり側にいたぱちゅりーを殺したのだ… 分からない… 分からない… 分からない… 仲間の悲鳴が聞こえるが、なんで殺されなくてはいけないのかわからなかった… ただ、今は止めなければいけないということだけはわかった。 「やぁぁぁぁぁぁぁぁべぇぇぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」 今も尚仲間を殺すゆっくりを踏み潰すために、ドスまりさは高く飛ぶ。 しかし、素早いゆちるのは羽を動かしそれを避けまた別のゆっくりに噛み付く。 ドスまりさが着地した場所には凍らされたゆっくりがあり、衝撃に耐え切れず砕け散った。 「よぐもみんなぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」 何度も潰すために飛ぶドスまりさ、それを避けて別のゆっくりを凍らせるゆちるの。 たくさんいたゆっくりはドスまりさに砕かれて、とうとう花畑に残るゆっくりはゆちるのとドスまりさだけになった。 ゆちるのはもう自分が動くことができないと理解した。 元々傷ついていたのに無理やり動かし、冷気を吐いて多くのゆっくりを凍らせる。それはゆちるのの体力を根こそぎ奪ってしまったのだ。 後に残るはあのでかいゆっくりだけ… あれは自分の力では倒せないし、他のゆっくりは全員殺せたのだからゆちるのは満足していた。 あれに潰された後、自分はゆうかに会えるだろうか… 昔みたく馬鹿って言われるのだろうか… そんなことを楽しみに思ってる自分に苦笑しながらゆちるのは目を閉じた。 どうせ死ぬのなら、夢を見たまま死にたいと… 相手が目を瞑ったのを確認したドスまりさは自分のできる最大の跳躍を行った。 自分の身にも支障が出るかもしれないが、仲間を全て殺したあのゆっくりだけはどうしても赦せなかったのだ。 「じねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 自分の体の奥から、叫ぶドスまりさ。 最大の威力で相手を踏み潰そうとしたのだが、何者かに掴まれてしまい失敗した。 「はなぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 ガラガラの声で、自分を掴む相手に叫ぶドスまりさ。 しかし相手は短く「嫌よ」と言ってドスまりさを投げ飛ばす。 「なんでじゃばをずるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 ドスまりさは悔しかった… 自分は仲間を殺したそのゆっくりを潰したいだけなのに… 頭の良いぱちゅりー、相談相手になってくれたありす、いつも陽気で皆を和ませたれいむ。 みんな… 目の前にいるあのゆっくりが殺してしまった… 「だがらどいでよ!! まりざがかだぎをうづんだがら!!」 「勘違いしてるわよ。あの子が殺したのは最初のありすとぱちゅりーと数匹だけ、他の子は全部凍らせただけで貴方が全部砕いたんじゃない」 「うるざいうるざい!! いいがらどいでよ!! まりざはみんなのがだぎをうづんだがら!!」 「嫌ね、そもそもこの子の花を奪っていった貴方達が悪いんじゃない」 目の前の相手に自分を思いをぶつけるドスまりさ。だが、相手は理解してくれなかった。 「もういいよ!! いっじょにじねぇぇぇぇぇぇぇ!!」 ドスまりさは己の口内に力を溜める。特殊なキノコを燃料とした、光線を発射して邪魔者も一緒に消そうとしたのだ。 だが、相手は持っていた傘をこちらに向けると光の束を放ち、ドスまりさを飲み込んでそのままドスまりさは塵一つ残さず消滅した。 「偽者の偽者如きが、私に敵うわけわけないでしょ」 傘を閉じながら、風見幽香はそう呟いた。 後ろにいる眠ったゆちるのを腕に抱え、軽く撫でる。 「よく頑張ったわね… 偉いわよ」 そのまま空を飛び、幽香は自分の家を目指す。まずはこの子を治療が優先だ。 最近の風見幽香の趣味は『花を育てるゆっくりの保護』である。 ゆっくりにとって食料でしかない花を育てるという変り種が、近頃幽香のお気に入りなのだ。 今回も実はゆちるのが捕まっている頃から見ていたのだが、ギリギリまで手は出さないように幽香はしている。 ただ危なくなったら助けるのではなく、その子のしたい事をやらせてから助けるのだ。 こういう変り種は土壇場で力を発揮すると何度も見てきたので幽香にはわかるのだ。 現にこのゆちるのも、解放されると同時に相手のゆっくりに喰らい付いた。 どのような爆発をみせてくれるのか、それを見るのも幽香の楽しみの一つである。 ゆっくりちるのは夢の中でゆっくりゆうかに出会ったばかりの頃の事を思い出していた。 綺麗なお花畑の中で、7匹のゆっくりに勝ったゆっくりゆうか。 今日の自分は、あのゆうかのように動けただろうか? 夢の中で自問しながら、ゆっくりゆうかと同じお花の香りに包まれゆっくりちるのは幸せそうに眠るのだった… こんな駄文を最後まで読んでいただき本当にありがとうございます!! まさにお目汚し失礼!! wikiの感想フォームに感想書いてくださった方本当にありがとうございます!! 『作者名つけてくれるとありがたい…』との事ですが、勝手に付けちゃって下さい。お任せします。 今までに書いた作品並べます!! fuku1431.txt fuku1438.txt fuku1524.txt fuku1542.txt fuku1608.txt fuku1625.txt このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1212.html
ゆっくりいじめ系161 奇形ゆっくり2 「奇形ゆっくり3~ゆっくりバッジ~」 ある日の午後。 夏の強い日差しが、草原に降り注ぐ。 水分に弱いゆっくりたちは、どうやら渇きにも弱いらしく… 多くのゆっくりが木陰か川の畔でゆっくりしていた。 分厚い雲が移動して、木々に囲まれた広場に大きな影を作る。 さらに、そこへ涼しい風が流れ込むので、他の場所よりとても過ごしやすい場所となった。 そうだと分かったゆっくりたちは、広々としていてかつゆっくり出来る場所に次々と移動し始めた。 「ここならゆっくりできるね!!」 「みんなでゆっくりしようね!!」 「ここはみんなのゆっくりポイントだね!!」 雲の影の下でゆっくりし始めるゆっくりたち。 お花畑で追いかけっこしたり、蝶を捕まえて食べたり…思い思いにゆっくりしている。 僕が訪れたのは…そんな即席のゆっくりポイントでゆっくりたちがゆっくりし始めた、その時だった。 「やぁ、ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっ!?ゆっくりしていってね!!」」」 僕が大声で呼びかけると、周囲の大小合わせて約50匹のゆっくりは全員で挨拶を返してくれた。 うむ、いい声だ。本能に忠実で、実に健常なゆっくりである。 「おにーさん!!ゆっくりしていってね!!ここはれいむたちのゆっくりポイントだよ!!」 「へー、なかなかいいところを見つけたね!!お兄さんもゆっくりしていくよ!!」 座り込んで周りを見てみると、数十匹のゆっくりが僕の周りを取り囲んでゆっくりしている。 しばらくすると、僕のすぐ近くにいるゆっくりれいむが異変に気づいた。 「おにーさん!!そのおなかには、なにがはいってるの!?」 僕の膨らんだお腹を見つめて、不思議そうに首をかしげている。 おいおい、僕が来てから10分以上経ってやっと気づいたのか? しかも、気づいたのは僕の一番近くにいるれいむ一匹だけだ。 まぁいいか…とりあえず説明してやることにした。 「実はね……もうすぐお兄さんの赤ちゃんが生まれるんだよ!!」 「ゆゆ!?そうなの!?」 遠くまで聞こえるように説明してやったので、周囲のゆっくりがひしめき合いながら僕の周りに集まった。 どうやら新たな命の誕生となると、それが誰の子供であろうと気になるものらしい。 僕はお腹をさすりながら、皆に見えるように立ち上がった。 「おにーさんのあかちゃん!!ゆっくりいいこなってね!!」 「ゆっくりうまれてきてね!!うまれたらみんなでゆっくりしようね!!」 みんな子供思いのいい子だ。お兄さん嬉しくて涙が出てきちゃうっ…っていうのは嘘です。 人間の男が子供を生むことは無い、という一般的確定的事実を知らないのかよ。 きっと知らないんだろうな。ゆっくりはオスメスの区別なく子供を成すというから。 「あっ、もうすぐ生まれるよっ!」 苦しそうな声を出す僕。もちろん演技である。 「おにーさん!!ゆっくりがんばってね!!」 「あかちゃんもゆっくりがんばってね!!まりさたちがみてるからね!!」 「うまれたられいむがめんどうみてあげるよ!!ゆっくりかんしゃしてね!!」 興味深そうに、そして心配そうに僕のお腹を見つめながら、まわりのゆっくりたちは口々に励ましの言葉を かけてくる。 うーん…そろそろ頃合かな。と、僕は苦しそうにする演技を止めた。 「なーんちゃって!!う・そ・だ・よ!!」 「ゆ゛ゆ゛っ!?」 「お兄さんには赤ちゃんなんていませんよーだ!!」 突然の状況の変化についてこれないゆっくりたち。僕は思い切って、お腹の部分の服をめくり上げた。 「ゆっ!!」 ぼよん!! バレーボール大の、饅頭に毛が生えたような生き物が地面に落ちた。 実は、僕のお腹だと思われていたのは、一匹のゆっくりれいむだったのだ。 先ほどからずーっと、こいつは僕の服のお腹のところに押し込められていたのである。 「ゆううううぅぅぅぅぅ!!??」 周りのゆっくりたちは、混乱のあまりものも言えないという様子。 しかし、この程度でびっくりされては困る。これには、まだまだ“先”があるのだから。 「お、おにーさんのあかちゃん…なの?」 「だから違うって言ってるでしょ。この子は赤ちゃんじゃない、普通のれいむだよ」 そう言って、僕の脚の陰に隠れていたゆっくりれいむを、皆に見えるように前に押し出す。 この場から逃げようと精一杯の抵抗をして見せてくれたが、当然無意味だった。 周りのゆっくり全員に見える場所に、ゆっくりれいむは立たされることとなった。 「むっ!!むぐぐぐぐぐううぅぅぅぅぅ!!!!」 口に何かを含んでいるような、くぐもった声。いや、実際に含んでいるのである。 その中身を、僕は知っている。れいむ自身も知っている。 知っているからこそ、何があっても口の中身を外に出したくは無いのだ。 出してしまったが最後、れいむだけでなくその“中身”もゆっくりできなくなるのだから… 「ん?れいむ!!君は口の中に何か隠しているね?」 可能な限りの大声で、れいむに問う。周りのゆっくりへのアピールが目的であるのは言うまでもない。 「そうだね!!れいむのおくちがふくらんでるよ!!」 「なかになにがはいってるの!?ゆっくりそとにだしてね!!」 周囲からの呼びかけにもかかわらず、れいむは口の中身を出そうとしない。 早くこの場から立ち去りたいのだろう、涙目になっているが既に周囲はゆっくりの壁に囲まれているので ここから逃げ出すことは到底できない。 そして、僕は追い討ちをかけることにした。 「きっと食べ物に違いないよ!れいむは食いしん坊だもんね!!」 この言葉を聞いた瞬間、ゆっくりたちの目の色が変わった。 「ゆゆ!!たべもの!?れいむもたべたいよ!!ゆっくりおくちからだしてね!!」 「まりさもおなかすいたよ!!まりさもごはんたべたいよ!!」 「ぷんぷん!!ひとりじめはいけないんだよ!!みんなでいっしょにたべようね!!」 「むぐぐぅぅぅぅぅぅ!!!んぐぐぐぅぅぅ!!!!」 今にも飛び掛りそうな勢いのゆっくりたちに、れいむは必死に首を横に振っている。 うむ、あと一発背中を押してやればいいだろう。 「よし!皆でれいむの口からご飯を引っ張り出そう!そして皆で食べようね!」 「む゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅぅぅぅぅぅ!!!???」 「ゆっくりそうしよう!!」「ごはんをゆっくりだしてね!!」 数匹のゆっくりが、目にも溜まらぬ速さでれいむを取り囲んだ。 完全に退路を絶たれたれいむは、涙を流しながら口に力をこめている。 「ゆっくりかんねんしてね!!もうにげられないよ!!」 「ひとりじめはやめてね!!それはみんなのごはんだよ!!」 四方から重圧をかけて口を開かせる作戦に出たゆっくりたち。 実際にどうなるかと見ていたが、思いのほか効果的なようだ。 れいむは苦しそうにしながらも耐えているが、その口の隙間からは中身が覗いて見えている。 ここまでくれば、もう結果は見えたようなものだ。 「せーのっ!!それぇ!!」 「ゆ!?!ぶぎゃっ!?!?」 口の中身と共に、自分自身の餡子も吐き出してしまうれいむ。 四方からのゆっくりによる圧力に、れいむの身体が耐え切れなかったらしい。 ところどころ裂けた皮からも餡子を漏らし、びくびくと痙攣しているれいむ。 「ゆっぐぐぐっぎゅぎゅぎゅ……いやあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ…み゛な゛い゛でえ゛え゛え゛ぇ…!!」 悲痛な叫び声を上げるれいむ。その目の前にいるのは… れいむが吐き出して草原に投げ出された、れいむの子供12匹。 ただし、全員奇形である。 ありすと強制的に交尾させ、その後廃油や毒物を与えていった結果、生まれたものだ。 次に悲鳴を上げたのは、母れいむではなくその周りのゆっくりたちだった。 四方から押さえ込んでいたゆっくりたちは、喚きながら群れへと戻っていく。 「うわっ!!これごはんじゃな゛い゛よ゛!!ぎもぢわ゛る゛い゛!!さわっぢゃっだよ゛!!」 「ゆ……ぎる……づて……いね!!」 口が癒着していてうまく喋れない赤ちゃんれいむ。 その赤ちゃんにちょっと触れただけで、ゆっくりまりさは嫌悪感に声を荒げる。 「ばっちぃよ!!ばっちぃあかちゃんはむこうにいってね!!」 「ゆぎゃ!!れいみゅはうごけないよ!!おねがいだからやさしくちてね!!」 突き飛ばされて転がった赤ちゃんれいむは、生まれつき地面に接する部分が硬化していて、 自由に動くことができない。先天性なので決して治ることは無いだろう。 自力での移動が出来ないので、常に周囲に“丁寧に”助けを求める。 それが、動けない赤ちゃんれいむが誰に教えられるでもなく身に着けた知恵なのだが… 「おねがいだよ!!れいむにやさしくちてんむぶぎゅえ゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇ!!!!!」 「ばっちぃあかちゃんがいるとゆっくりできないよ!!だからゆっくりしんでね!!」 声は嫌悪感いっぱい、だがとても楽しそうな顔をして動けない赤ちゃんれいむの上で どしんどしんと跳ねるゆっくりれいむ。 弾むたびに飛び散る餡子が、先ほどの衝撃で動けずにいる母れいむの顔にかかる。 「れ゛い゛む゛のあがぢゃんにな゛に゛ずる゛の゛お゛お゛ぉぉぉ!!!??」 「ゆぎゃっ!!おがーしゃん!!だじげで!!れいむをだじゅげでぇぇぇぇ!!!」 「ゆっ…ゆっぐりだずげるがらまっででね!!」 全身を駆け巡る激痛に耐えながら、母れいむは這いずって赤ちゃんを助けに向かう。 ゆっくり…だが、確実に母れいむは赤ちゃんれいむへと近づいていく。 でも、その努力は報われなかった。 「だ…だじゅげ……ゆっぐりじだがったよ゛お゛お゛ぉぉぉ……!!」 この言葉を遺して、赤ちゃんは完全にペシャンコに潰れてしまった。 「どぼじで!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」 あと少しのところで、勢いよく餡子を撒き散らす赤ちゃんの身体。 赤ちゃんの衝撃的な最期を目の当たりにして、口から泡を吹きながら震える母れいむ。 そんな哀れな母れいむを尻目に、僕はポケットからバッジを取り出して、 赤ちゃんれいむの息の根を止めた優秀なゆっくりれいむにつけてやった。 胸を張って威張るゆっくりの姿が描かれている、イケイケ(笑)のナウい(笑)バッジだ。 「ゆ!?これなあに!?」 「今から説明するから待っててね」 と言い残して、僕は群れの真ん中に立った。 「みんな!!大事なことを言うから、ゆっくり理解してね!!」 「「「ゆっ!?」」」 パンパンと手を叩くと、群れの全員が僕に注目した。 「ここにはばっちぃ赤ちゃんがいるから、ゆっくり出来ないよね!!」 「そうだね!!きもちわるくてきたないあかちゃんがいるから、ゆっくりできないよ!!」 「そうだそうだ!!きたないあかちゃんはどっかいってね!!」 ふむ、掴みはOK。 「そうだよね!だから、皆で気持ち悪い赤ちゃんを殺しちゃおうね!!」 「ゆぎゅうううぅぅぅ!!?」 僕の発言に顔を真っ青にしたのは、母れいむと言葉を理解できる奇形赤ちゃんゆっくりたち。 一方奇形赤ちゃんの中には、耳が聞こえなかったり精神的におかしかったりという理由で、 言葉を理解できないやつもいるが……そいつらは今の状況すら理解できていない。 「やめで!!ぞんなごどいわないで!!」 抗議の声を上げる母れいむ。ショックの連続で身体が言うことを聞かないのか、まったく動けずにいる。 僕はそんなのお構いなしに説明を続けた。 「赤ちゃんを殺した子にはこのバッジをつけてあげるよ!!」 先ほどバッジをつけてやったれいむを高く掲げて、全員に見えるようにくるっと一回転する。 楽しく説明しているところに「おそらをとんでるみたい!」などと水を差しやがったが、 力をこめて指を食い込ませ、皮を2,3箇所破ったら黙ってくれた。 「バッジをもらった子には、あとでたくさんご飯をあげるからね!!頑張ってゆっくり殺してね!!」 パンっと一発強く手を叩く。 それを合図と認識したゆっくりたちは一斉に奇形赤ちゃんゆっくりたちに襲い掛かった。 「ゆっくりころすよ!!」「ゆっくりしんでね!!」 「いやあああぁぁぁぁぁぁ!!!やめでええええぇぇぇぇぇぇ!!!」 それは、一方的な虐殺だった。 「い゛だい゛!!み゛え゛な゛い゛よ゛!!だれがぞごにい゛る゛の゛!!? やめでやめで!!!みえないのごわ゛い゛!!だれがだじゅげでよおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっくりしね!!きたないあかちゃんはゆっくりしね!!めのないあかちゃんはゆっくりしね!」」 「れいむはばっじをもらうんだよ!!だからあかちゃんはさっさときえてね!!」 目のない赤ちゃんゆっくりを、寄ってたかって嬲り殺しにするゆっくりれいむたち。 「hgるうおおあおおああおあおあおあprごpれおぱぺろpgっろおえぽーーーー!!!!」 「やったね!!これでばっじをもらえるよ!!」 エイリアンのような風貌でエイリアンのような叫び声をあげる赤ちゃんれいむを、 真上からのプレス一撃で仕留めるゆっくりまりさ。 別の場所では、3匹の赤ちゃんれいむが横一列にくっついた奇形赤ちゃんが、虐殺から必死に逃げていた。 「あっちににげるよ!!」「こっちににげるよ!!」「むこうににげるよ!!」 ぐいーん!! 「「「ゆぎゅえ!!どぼちでじゃまずるのおおおぉぉぉ」」」 3匹の逃げる方向がてんでバラバラのため、3方向の力が打ち消しあった結果、 れいむ3兄弟はその場でジャンプをしただけにとどまった。 こんなチャンスを逃すほど、他のゆっくりたちはゆっくりしていない。 「ゆ!!こいつら3人くっついてるよ!!きもちわるいから、みんなできょうりょくしてころそうね!!」 「3人まとめてしんでね!!3人ころせばばっじが3つもらえるよ!!」 いや、僕はそんなこと言ってないけど… 「れいむはころさないでね!!れいむはゆっくりにげっ…ゆゆっ!?」 また別の場所では、虐殺から逃れるべく跳ねて逃げようとする赤ちゃんれいむの姿があった。 しかし、この赤ちゃんは餡子が偏っているために、重心が極端に上のほうにある。 だから… 「ゆぎゃ!!さかさまになっちゃったよ!!だれかゆっくりたすけてね!!」 跳ねたり転がったりしたら最後、上下が逆さまのまま安定してしまって自力では戻れなくなるのだ。 逆さまのまま身を左右に揺らして助けを求める奇形赤ちゃんれいむ。 だが、その声は皮肉にも食に飢えた虐殺者を呼び寄せる結果となってしまった。 「ゆっ!!こんなところにもばっちぃあかちゃんがいるよ!!」 「ほんとだ!!さかさまになっててきもちわるいね!!ゆっくりころそうね!!」 「ゆっぺぎゃああああ;あ;ぁぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじだがっだおおおぉぉぉぉ!!!!」 左右から挟み撃ちにされ、圧力に耐え切れず餡子をばら撒きながら絶命した。 それからも、奇形赤ちゃんに対する虐殺は続いた。 目が無いもの、口が無いもの、音が聞こえないもの、楕円球の形をしていて安定しないもの、 目と口の位置が逆のもの、髪の毛の代わりにリボンがたくさん生えているもの… 「もうやめでよ゛ね゛!!れ゛い゛む゛の゛あがぢゃん゛い゛じめ゛な゛い゛で!! あがぢゃんはれ゛い゛ぶがだずげであ゛げるがらね゛っ!!」 やっと体力を回復した母れいむが虐待を止めようとするが… 「ゆっ!!きたないあかちゃんをうんだおかーさんもきたないよ!!」 「そーだそーだ!!きたないあかちゃんをうんだ、きたないおかーさんもゆっくりしね!!」 「きたないおかーさんのせいでゆっくりできないよ!!あのよでゆっくりはんせいしてね!!」 体力が万全でない母れいむは、3匹の嬲り者にされてしまう。 3匹は交代で母れいむに体当たりを仕掛ける。まるでキャッチボールをしているようだ。 「ゆびゃっ!!やべっ!!どぎゅっ!!びぎゃっ!!みゅっぢゃあああああああああああああああ!!!」 皮が破れて饅頭本来の張りを失い、空気の抜けたボールのようになってしまった母れいむ。 母れいむがボールとして役に立たなくなったのを見て、3匹は別の子供を虐殺するべく去っていった。 「そこでゆっくりしんでね!!まりさたちはばっちぃあかちゃんをころしてあげるからね!!」 「やめでっ!!いがっ…ないでっ!!れいぶのっ…あがぢゃん゛!!ごろっ…ざっ…ないでっ!!」 形が崩れてしまった母れいむは、もはや自力で移動することも出来ない。 びくっと痙攣するたびに、全身の傷という傷から餡子をびゅっと吹き出した。 それでも絶命はしていない。母れいむの身体の中には、十分な量の餡子が残っているからだ。 目の前で殺されていく赤ちゃん達。 汚い汚い、気持ち悪い気持ち悪い、と罵られながら無残にも命を奪われていく。 降り注ぐ餡子を浴びて狂喜乱舞する野生のゆっくりたち。 そんなゆっくりたちの中で、特に活躍した12匹に…僕はバッチを与えた。 そして…奇形ゆっくりの悲鳴が聞こえなくなった。 言うまでも無く、それが意味するのはたったひとつの事実である。 僕は奇形ゆっくりの死体を集めさせ、餡子を吹き出しながら震えている母れいむの目の前に積み上げた。 合計12匹のゆっくりの残骸。 僕から見ればただの餡子の山だが、母れいむにとってはかけがえの無い子供たちの亡骸である。 「い、いまだすげであげるがらね゛!!まだまにあ゛う゛がらね゛!!ゆっぐりうごいでね゛!!」 傷が少し回復したのか、母れいむは焦点の定まらない目のまま亡骸の山へと這いずっていく。 奇形児しか産めない身体…そのせいなのか、母性は通常では考えられないほど強いようだ。 「だいじょうぶだよ゛!!みんなまだいぎでるよ゛!!だがらゆっぐりうごいでね゛!!」 餡子の山に自らの身体を擦り付ける母れいむ。 しかし、その山は決して動くことは無い。餡子の山が自力で動くわけが無いのだから。 一度消えた命は元に戻らない。皮をズタズタに切り裂かれて散ったゆっくりなら尚更だ。 「いますぐあんこをもどぜばなおるがらね゛!!はやぐげんぎになっでね゛!!」 そう言って餡子を口に含んで子供の皮に戻そうとするが…その皮が見当たらない。 当たり前だ、さっきの虐殺でほとんどの赤ちゃんの皮はバラバラに飛び散ったのだから。 一方周りのゆっくり達は、気が狂った母れいむなどまったく気にせずゆっくりしている。 「ゆ゛!!ゆっぐりしてないでてつだってよね゛!!はやぐじないどておぐれになるよ゛!!」 その言葉が、周りのゆっくりの怒りに触れたのだろう。 バッジをつけたゆっくりまりさが前に出て、母れいむを突き飛ばした。 「ゆぎゅ!!なにずるの゛!?あがぢゃんをだずげるんだがらじゃまじないで!!」 「きたなくてきもちわるいあかちゃんはみんなしんだよ!! みんなできょうりょくしてころしてあげたんだから、ゆっくりかんしゃしてね!!」 そう言って、ふふんと胸を張るまりさ。バッジがきらりと光った。 汚いゆっくりを殺して、ご飯までもらえる。一石二鳥だ、とでも思っているのだろう。 だが、その言葉は母れいむには届かなかった。 「ゆ゛!!みんなてつだっでぐれないけど、おがーざんがたずげであげるがらね゛!! げんぎになっだら゛いっじょにおうたをうたおうね゛!!おがーざんがおじえであげるがら゛!!」 身体を擦り付ける、その動作を止めた母れいむ。 僕はそんな母れいむにゆっくりと歩み寄る… 「いい゛?ごううたうんだよ゛!! ゆっゆっゆ゛~!!ゆ゛ゆ゛ゆっゆ~!ゆ゛ーゆーゆ゛ーゆっゆ゛ー!!ぶぎゅえっあ゛!!??」 耳障りな歌は途中で途絶えた。 僕の拳が母れいむを押しつぶし、盛大に餡子をばら撒いて絶命したからだ。 別に母れいむを哀れんだわけではない。ここまで壊れるともう楽しめないから、消しただけだ。 あと…母れいむの歌が聞くに堪えなかった、というのもある。歌唱力的な意味で。 「さて、バッジをつけてる人はお兄さんの周りに集まってね!!」 大声で呼びかけると、期待に胸を膨らませた12匹が一瞬で集まってきた。 散々待たされたけど、ついにご飯がもらえる。いったいどれだけ貰えるんだろう! 口には出さないが、表情にはそう書いてある。 でも、その期待は…残念ながら現実にはならないんだ。 「この12人は頑張って汚い赤ちゃんを殺した、とても………悪いゆっくりだよ!!」 「ゆゆっ!?なにをいってるの!?」「ゆっくりせつめいしてね!!」 うろたえるのは当然12匹のバッジをつけたゆっくりたちだ。 汚いゆっくりを頑張って殺したのだから、きっと褒められるに違いない…と思っていたのだろう。 混乱していて状況を理解できない周りのゆっくりに向けて、僕はさらに説明を続ける。 「バッジをつけたゆっくりはとても悪いゆっくりだよ!!そんなゆっくりとはゆっくりできないよね!!」 「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!どおじでぞんなごどいうのおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」 自分の存在意義を否定され、涙する12匹。 自力でバッジを取ろうとするが、しっかり固定されていてゆっくりの力では絶対に外せない。 周りのゆっくりは、僕の言葉に無言で耳を傾けている。 バッジをもらったゆっくりに対する嫉妬は、もう消えうせていた。 そして… 「“ニセモノ”のバッジをつけてる、この悪いゆっくりを皆で協力して殺してね!! 頑張って殺した人には、ホンモノの“バッジ”をあげるよ!!ご飯がたくさん食べられるよ!!」 「ゆっぐりいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「ばっじほしいよ!!わるいゆっくりはゆっくりしんでね!!」 「わるいゆっくりをころして、ばっじをもらうよ!!わるいまりさはゆっくりしね!!」 そして再び始まる、一方的な虐殺。 僕はゆっくりの殺し合いを、ゆっくりと眺めることにした。 「ゆっぐりじだがっだよお゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 あとがき 「ごはんたくさんあげるから、仲間を殺してね」 ってだけだとよっぽど空腹じゃない限り同属殺しはしないと思った! でも奇形ゆっくりと悪い(と思い込ませた)ゆっくりだと、ついつい殺しちゃうんだ! 自分がいいことをしてるっていう免罪符に似た思い込みがあるからね!! それにしても、これがぬるいと思っちゃう俺は末期だね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4603.html
「れいむのあかちゃんが生まれるよ!ゆっくり産まれてきてね!!」 「ゆゆ~ん!まりさとれいむのあかちゃん凄くゆっくりしてるね!」 実ゆっくりが震える。 ついに出産の時が来たのだ。 「生まれるよ!れいむの可愛い赤ちゃんがうまれるよ!」 「まりさの赤ちゃん!ゆっくりしてね!」 ポト。 最初に茎から落ちたのはれいむ種の赤ゆっくりだった。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」 パチっと目を開き大きな声で第一声を上げる赤れいむ。 そのゆっくりした姿に親れいむと親まりさは感動した。 「ゆゅーん!!れーみゅ ゆっくちうまりぇちぇ しゅごーくゆっきゅりしてるよ!」 楽しそうに跳ねる赤れいむ。 産まれてきた喜びを全身で表現しているのだ。 「ゆっくちちたら うんうんしゅるよ!ちゅっきりちゅるよ!」 ブリブリ。 ビチビチ。 ブショワー。 赤れいむからこんもりと山のように餡子が垂れる。 ついでに砂糖水も噴き出す。 「ゆがああああああ!?れいむのおチビちゃんが餡子を出しちゃったよ!?」 「餡子が出るとゆっくりできなくなるよ!おチビちゃんゆっくりしていってね!!」 その行動に親れいむと親まりさは大慌てになる。 しかし当の赤れいむは全く気にしていなかった。 「ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅっきりいいいいい!!!!もっちょ うんうんと ちーちーちて ちゅっきりちて ゆっきゅりだよ!!!」 ブリブリブリブリ………。 ブショー。 赤れいむは更に糞と尿をひねり出す。 「ゆあああ!!れいむの貴重なおチビちゃんがあああああ!!!」 「どぼじでぞんなごどじでるのおおおお!?」 「ちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっきりいいいい!!!」 ブリブリとシーシーは止まらない。 ついに赤れいむは皮だけになってしまった。 「もっちょ…………ちゅっき…り……ちちゃかっ………た……………」 それが赤れいむの最期の言葉だった。 その後生まれてきた赤ゆっくり達もみな糞尿を撒き散らして死んでいった。 「どぼじでれいむのおチビちゃんがああああ!!!?」 「なんでゆっぐりじでぐれないのおおおお!?」 皮だけになった10匹の赤ゆっくりを見ながら2匹の親ゆっくりは絶望した。 だが絶望はこの2匹で終わることはなかった。 世界中のゆっくりがその日を境に究極の進化を遂げたのだ。 汚物ゆっくりとしての最終進化だ。 産まれた瞬間から糞尿を撒き散らす究極の生命。 それから間もなくゆっくり種は絶滅した。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2929.html
徹夜明け筋肉痛のアレな状態で作った作品です… 虐待要素、ほぼ0 しかし虐スレ仕様のゆっくりが出ます。 無駄に長いです。 ザッピングあり。 最近のゆっくり2~最後の砦~ 「ゆ…ゆっぐぃ…ぢでいっでね…」 「…おう」 秋姉妹もレティの目覚めを察して山奥に引篭もろうとする頃、虐待志向でも愛護志向でもない、ごく普通のお兄さん宅の庭。 そこに単身入ってきた成体サイズのまりさは、明らかに衰弱していた。 まりさ種の特徴であり、自慢でもある黒い帽子はぼろぼろ。 まりさ自身も致命傷こそない物の、左目を失うなどの負傷を負っていた。 助けを求めてきたのだろうか、とお兄さんが腰を浮かせた時、まりさは胸、いや顎を逸らした。 「おに”ーざん…ここは…まりざのおうぢだよ…ゆっぐぃ…ゆっぐぃでていっでね…」 「…は?」 「だがら…なんどもいわぜないでね…ごこは、まりざのゆっぐぃぶれいずだよ…おじざんはででいっでね……」 「おぃおぃ、ちょっと待てよ」 お兄さんは流石に面食らった。 こんな棺おけに片足突っ込んだような饅頭にまで、おうち宣言を喰らうとは誰も想像するまい。 お兄さんの家は森に近く、これまでもゆっくりの襲撃を受ける事は少なくは無かったが、 その10割が家族連れか、健全かつゲスな奴か、そうでなくても皆健康体だった。 負傷したゆっくりも来る事はあったが、そういうものは皆捕食種に追われてとか、怪我を治して欲しくて来たとかだ。 「おじざんは…ゆっぐぃじだがったら、まりざをなおじでね…ぞれがら、ででいっでね…」 「いや、お前、ちょっと訊いていいか?」 「なに…ゆっぐぃじないでざっざどじでね…」 「お前、そんな状態で人の家乗っ取ろうっていうのか?そんな怪我じゃれみりゃにだって瞬殺されるだろ」 「…まりざは、づよいがらだいじょうぶだよ…れみりゃもにんげんも、いぢごろだよ…」 「…ありえねーよ」 お兄さんは思った。このまりさは正気を失っている、と。 この怪我だ。余程の事に見舞われて家族を失い、その精神的苦痛から逃れる為に理性を放棄してしまったのだろう。 「…なあ、まりさ。以前のお前がどれだけ強かったか知らんが、今のお前はただのぼろぼろの饅頭だ。」 「………」 「れみりゃにだって、まして人間相手に勝てる可能性は全く無い。」 「………」 「まりさ、お前は疲れているんだ。ほら、怪我を治してやるから、こっちに…」 「…わがっでるよ」 「?」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「…わがっでるよ」 「?」 手を差し伸べてきた目の前の人間さんが、不思議そうに首を傾げた。 そんな人間さんを、まりさは残された眼に涙を浮かべながら見上げた。 「わがっでるよ、ぞんなごと。まりざはよわいいぎものだっでごとぐらい」 「…まりさ?」 「まりざはむれでいぢばんづよがったよ。はつじょうしだありずがら、れいぶをまもっだごどだってあるよ… ぞれでも…でびりゃにはがなわながったよ…」 「………」 森の中にあったまりさの群れ。集落の場所は人里からも遠く、 長のぱちゅりーとそれを補佐するまりさの父である親まりさが皆に知識を伝えた。 すっきりのし過ぎで子を間引く事も、若い世代が長達に反発する事も無い、平和な群れだった。 まりさはその群れで一番の跳躍力と戦闘のセンスを持ち、喧嘩でも向かう所敵無しだった。 そんなまりさの番には、群れ一番の美ゆっくりのれいむ。 まりさはれいむをとても大事にして、集落の外れの丘に良く一緒に遊びに行った。 れいむの為に花冠を作ろうと離れていた時、偶然通りかかった流れのありすにれいむが襲われたりもした。 しかし、まりさはすぐに駆けつけて、ありすをこてんぱんにした。 まりさは自分の力に自信を持ち、それを誇りに思っていた。しかし… 「まりざはじっでるよ…でびりゃはづよいじ、おおぎぐなっだでびりゃはもっどづよい。 ぞれに、にんげんざんはそれよりももっどもっどづよいっで」 長のパチュリーは何時も言っていた。 にんげんはとてもつよい。つよくてかしこい。おおきなおうちをつくったり、たべものをかんたんにてにいれられる。 れみりゃはとてもつよい。そらをとんできて、かみついてくる。まりさでも、かてるあいてではない。 おおきなれみりゃはとてもつよい。てとあしをもっていて、なぐられたらみんなしんでしまう。 れみりゃに襲われて人間さんの家まで逃げたというちぇんが言っていた。 わかるよー。にんげんさんはいっぱつでれみりゃをたたきおとして、おいはらってくれたんだよー。 けがもなおしてくれたんだよー。ごはんはくれなかったけどねー。 まりさは聞いた事があった。 遠く離れた所で、「れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と叫ぶ声を。それはとても悲しげで、絶望に満ちていた。 駆けつけたまりさは、茂み越しに見た。 身体付きのれみりゃが、狩りに出ていた群れの仲間を守ろうとした、自分の父親から餡子を吸い上げていたのを。 まりさは戦った。父親を守ろうと。 そして、あっさりと返り討ちにあった。その手で叩かれただけで、まりさは痛みの余り餡子を吐き出す程の負傷を負った。 満腹になったのだろう、れみりゃは父まりさを皮だけにすると、そのまま飛び去った。 まりさは泣いた。何も出来なかった自分に不甲斐無さを覚えて。 長パチュリーは、気にする事は無い、勝てるはずが無いのだ、と言っていた。 その言葉は、父の死を受け入れきれないまりさの心を抉った。群れで一番というプライドなど、既に無かった。 「でびりゃはまりざのむれをおぞっで、みんなごろじゃっだよ… まりざはなにもできながっだよ…」 まりさは絶望した。集落を襲ってきた胴無しれみりゃ達に。 傷の癒えたまりさは、群れの仲間を一匹でも逃がそうと立ち向かった。 だが、れみりゃは一匹が翻弄する様に空からちょっかいをかけてくるばかり。 その間に仲間が襲われる。助けようと駆けつけると、動けなくなった仲間だけを残してれみりゃは逃げていく。 それが繰り返される。何時の間にか、残っていたのはまりさ、そして番のれいむだけだった。 れいむの頭には子の付いた蔓。赤ゆっくりは新鮮な餡子を親から与えられている為、とても美味しい。最後に残すつもりだったのだろう。 まりさは必死に戦った。だが、かなう相手ではない。自由の利かないれいむは、少しずつれみりゃに噛み千切られ、やがて力尽きた。 れいむの餡子を吸い尽くしたれみりゃ達は、赤子を弄る様に突付き回す。 初めて瞳を開けた赤子達は、れみりゃに弄られる絶望の中で食われていった。 まりさは他のれみりゃ達に左目を奪われ、帽子を噛み千切られ、散々に玩ばれ、 最後には逃げようとしたところを崖から転がり落ちてしまった。結果的には、このまりさが唯一の生存者だった。 「まりざばよわいよ…むれでいぢばんづよいげど、よわいゆっぐぃだよ…」 まりさは自問した。自分は何の為に生きてきたのか、と。 強い筈の自分、だが、負けてはいけない戦いで負け続けた。自分はれみりゃよりも弱いのだ。 幸せになるはずだった自分、だが、その幸せは全て失われた。群れも番のれいむも、もう居ない。 何の為に自分は存在するのか?自分は何なのか?ただのだめなゆっくりなのか? れみりゃの餌にされるだけの生き物なのか? ……そんなのは嫌だ、絶対に嫌だ。 まりさはとても偉いんだ、だからゆっくり出来るはずなんだ。 まりさが今ゆっくりできないのはおかしいんだ、だからゆっくりしに行くんだ。 どこに?…そうだ、人間さんのうちに行こう。そこでゆっくりするんだ…! 「でも…ぞれならなんでばりざだぢばうばれでぎだの!? ゆっぐぃされなぐなるだめにうばれでぎだの!?」 「まりさ…」 人間さんが、気の毒そうな視線を向けてくる。 その視線がとても苦痛だった。哀れみをかけられるのがとても嫌だった。死ぬほど嫌だった。 「ばりざはゆっぐぃずるんだ!でびりゃもにんげんざんもばりざをゆっぐぃざぜるんだ! ……そう、じんじなぎゃ、づらぐでいぎでいげないんだ!!」 「まりさ」 「ぞんなめでみるな!ゆっぐぃでぎないよ! もっどばりざをゆっぐぃざぜろ!!」 もうどうでも良かった。 まりさは無我夢中でお兄さんにぶつかって行った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ぞんなめでみるな!ゆっぐぃでぎないよ! もっどばりざをゆっぐぃざぜろ!!」 突然、まりさが体当たりしてきた。 ぼふん、と力ない音と衝撃を受け止める。最早まりさに、戦う力など微塵もないのだ。 「まりさ、もう止せ」 「ばがにずるな!ゆっぐぃでぎない!ゆっぐげぇ!?!?」 体当たりの衝撃で、まりさの左の眼窩から餡子が飛び出している。 更に、無理に身体を動かしたせいで餡子を吐いてしまった。 それでも、まりさは暴れるのを止めようとしない。 「ゆっぐぃずるんだ!ゆっぐぃざぜろ!!じじぃはざっざどででいげー!!!」 最早跳ねる事も這う事もできない。転がって、玩具をねだる子供のようにじたばたするばかり。 落ち着かせようとお兄さんが抱き上げるが、餡子と悲痛な叫びを吐き出しながら、もがき続けた。 治療しようと台所まで行こうとしたが、間に合う事は無かった。 まりさは最期に、一際多く餡子を吐き出して。 「もっど…ゆっぐぃ……じだがっだ…」 ゆっくりと息を引き取った。 その死に顔は、ゆっくりできているとは言い難い、凄惨な物だった。 「まりさ…」 お兄さんはその死に顔を複雑な顔で見ていた。 ゆっくり達は大抵、自分達がとても優れている、ゆっくりした生き物だと自負する事が多い。 他の生き物は皆、自分達がゆっくりする為にやってくるのだとも思っている。(捕食種やありすは例外として…だが) 子供のゆっくりは人間と同じ様に純真とされているが、親を攻撃する者があればかなう筈もないのにぶつかっていこうとする。 そして、大人になっていくにつれ増長していく。 だが。お兄さんは思った。 その不相応に高いプライドは、四肢も無く、多くの外敵に無力な自分に対する劣等感・コンプレックスを認めたくないがための、 精神を守る手段としての役割も持っているのではないか、と。 捕食種や野犬等の危険な外敵や、四肢を持ち、高速で移動する野生の動物達、そして人間。 皆、基本的スペックが違いすぎる。口でしか物を扱えず、ゆっくりとしか移動する事が出来ない。 餡子と言う、自然では異質な物質で出来ている為か、襲ってこない種も少なくなかったが、襲われれば殆どが餌食となった。 そして、生き残った者は己の無力感と恐怖に苛まされる。 そんな悲劇と苦痛の連鎖を、餡子に眠る記憶として遺伝されてきたゆっくり達は、 自分達が無力な存在である、と言う事を忘れたいが為に、過剰に増長し、思い込みを強めるのではないだろうか? 中には、本気で己が強いと思う者も多いだろう、むしろそれが大半だろう。 だが、初めから自分の分を弁えている者は、それでも自分を押し通す事で己の絶望と戦っているのではないか? お兄さんには、そんな風にしか思えなくなっていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 只管にポジティブで、能天気で、我侭な生き物、ゆっくり。 だが、その心の奥底には、深い闇が覆っている…の、かもしれない。 終 ああ、支離滅裂な気がする。 ゆっくりにもコンプレックスあるんじゃね?むしろコンプレックスの塊じゃね? そんな事を仕事中に構想して、戻ってから書き上げました。 他の作品にも早く手を付けたい…。 By ゆっくりらいぜーしょん(多分執筆中)の人 このSSに感想を付ける