約 594,208 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2830.html
ゆっくりを提供するもの PMUS描写無し ドスまりさが出てきます いじめ描写ほぼなし 「ドスの事はどう思っているんだい?」 男はゆっくりに尋ねた。 「どすはゆっくりできないどすだね!!」 「かってにすっきりー!!してあかちゃんうんじゃいけないっていうんだよ!!」 「ごはんもたべすぎちゃだめだっていうんだよ!!」 「ほかにも・・・(ry」 ゆっくりはドスに対する不満を男にぶちまけた。男はそれを熱心にメモしていた。 「・・・というわけなんだよ!!」 「そ〜かそ〜か」 ひとしきり愚痴を言い切ったのかゆっくりは満足したようだ。 「ぐちをきいてくれてありがとうおにいさん!!おかげでゆっくりできたよ!!」 「そうか。それは良かった」 この男は山にいるゆっくり達にアンケートを取っていた。内容は 『ドスについてどう思っているか?』 という事である。 大半がドスに対する不満ばかりであるが、中には 「すっきりがじゆうにできないのはすこしつらいけど、 すきかってにすっきりしまくるのはいなかもののすることよ!! とかいははあかちゃんのことまできちんとかんがえなくちゃいけないのよ!!」 「むきゅ!!みんないまはごはんがあるからってかんがえずにたべすぎなのよ!! もしあめがつづいたりしたらどうするつもりなのかしら? そういうことをかんがえられないゆっくりがどすをこまらせているのよ!!」 「みんなどすにもんくをいうくせにこまったときだけどすをたよりにしてるね!! おなじゆっくりとしてなさけないよ!!まったく、さいきんのわかいゆっくりは(ブツブツ」 一部の賢いゆっくりには好評な様である。 結果、ゆっくりの95%がドスに対して不満を持っている事が分かった。 すっきり制限や食事量制限などが主な要因である。 また、不満をもっているゆっくりにもう1つ質問をした。その内容は 『ドスの元から出ていかないのか?』 というものである。 すると実に9割のゆっくりが「出て行かない」と答えたのだ。 理由は簡単。安全だからである。 通常のゆっくりは非常に弱く常に食われる側であるが、ドスはそうではない。 体も大きく力も強く、そして何よりドススパークやゆっくりオーラなどの強力な技を持っている。 そのドスの元にいれば捕食者から狙われる事もなく、安全に過ごせるからである。 ドスの元で安全に過ごすゆっくり達は、最初の内はドスの加護に感謝していたが それが日常となり、平和に「慣れて」しまったせいで増長するゆっくりも少なくなかった。 その増長したゆっくり達が人間の生活圏に入り悪さをする事も増えた。 ドスは気が気ではなかった。このままゆっくり達が悪さを繰り返せば、人間達は必ずゆっくりを討伐しにくる。 単純な力ならば並の人間よりドスのほうが遥かに強い。その為、素手の人間ならばさほど問題にならない。 しかしドスを相手に素手で挑む人間はいない。それなりの装備をしてくるものだ。 仮にそれなりの装備でなくとも、人間はそれこそ適当な木の棒や石で武装するだけでもドスにとって脅威である。 討伐ともなればそれなりの装備をした人間が大量に押し寄せてくる。 そうなってはドスも並のゆっくりと変わらず、あっさりと群れごと滅ぼされるだけである。 そうならない為にゆっくり達に口煩く人間の里に行くなとは言ってはいるが、 人間の作った野菜や菓子などの食糧は、ゆっくりにとっては極上の美味であり、 その味を覚えたゆっくり達がドスの言う事など聞く耳を持たなかった。 その結果として生活圏を荒らされた人間は、ゆっくりを見つけたら即殺すという行動を取るまでに至った。 人間にとっては善良であろうと悪質であろうと、ゆっくりであれば関係無いのである。 このままではいずれ必ず人間が討伐に来る。どうすれば討伐されずに済むかドスは悩んでいた。 協定を結ぶ事も考えたが、ゆっくり達が協定を守れるかも怪しく尚且つ協定を結んでも人間にあまりメリットが無い。 それならばドスと側近のゆっくりだけで群れを出るのはどうかとも考えた。 そうすればドス達だけは一応無事に過せるかもしれない。しかし、他のゆっくり達はどうなるだろうか? ドスが居なくなった事で、今まで我慢していたゆっくり達が一気に人間の生活圏に侵入するだろう。 そうして人間の怒りを買い、ゆっくり達は1匹残らず皆殺しにされるであろう。 愚かなゆっくりが皆殺しにされるのは構わなかったが、人間に迷惑が掛かるというのは避けたかった。 どうすれば良いのかと悩んでいたドスの元に 「ゆゆぅぅ〜〜〜〜!!どすぅぅ〜〜〜!!どすぅぅぅ〜〜〜!!!!」 「ゆっ!?どうしたの?れいむ!!」 「ゆっくりぷれいすににんげんさんがきたよぉぉぉお!!!」 「えっ!?!人間が来たの!?」 ドスは焦った。遂に人間が討伐に来たのかと思った。しかし 「にんげんさんはどすにあいたいっていってたよ!!」 「えっ!?」 ドスは取り合えず安心した。どうやら討伐に来たのではないらしい。 では何の為に?とも思ったが考えてもしょうがないので人間に会って見る事にした。 人間は小さな岩に腰掛けてドスを待っていた。ゆっくり達はその人間の様子を不安げに見つめていた。 と、そこへドスが現れた。 「人間さん。まりさのゆっくりプレイスにようこそ!!ゆっくりしていってね!!」 「あぁこちらこそ。ゆっくりしていくよ!」 ドスの挨拶に対して人間は悪くない反応を示した。どうやら争う気は無いらしい。 「人間さん。今日はまりさに何の用なの?」 ドスは尋ねた。 「まりさと今後の事について2人きりで話がしたい。いかがかな?」 ドスは何となく理解した。ここで人間の要求を蹴ったり問題を起こしたりすればロクな結果にならない。 そこでドスは要求通り人間と2人きりの話に応じる事にした。 ドスはゆっくり達に近づかない様念を押した。多分ゆっくりの今後に関わる話なのだろうとドスは考えた。 ドスと人間は回りに何もない草原に出た。ここならば誰にも邪魔をされる事はない。 「それで人間さん。まりさに何の用なの?」 ドスは尋ねた。 「ドスをやっているまりさに聞きたい事があってね。それで来たんだよ」 「ゆ?聞きたいこと・・・?」 「何、簡単な事さ。まりさ!!君はゆっくりできているかい?」 人間はドスに質問を投げかけた。大した質問ではなかった。が 「まりさは・・・まりさは・・・・・・・・」 ドスは言葉に詰まってしまった。「ゆっくりしているよ!!」と返すつもりだったのだが、言葉が出なかった。 ドスは自分がゆっくりしているとは正直思っていなかったからである。 「周りには誰もいないんだ。正直に言ってくれて構わない。」 「まりさは・・・ゆっくりできてないよ・・・」 ドスは俯きながら答えた。 「本当はまりさだってゆっくりしたいよ。まりさはみんなとゆっくりできるだけでいいんだよ・・・ でもみんながゆっくりするとまりさがゆっくり出来ないんだよ・・・ まりさだけなら我慢するけど、なんでみんなは自分だけゆっくりしようとするのかな・・・? そのせいでみんなゆっくりできなくなるのにね。何でみんな分かってくれないんだろう・・・ まりさも、みんなも、人間さんも、みんなでゆっくりしようと考えてくれればね・・・」 ドスは少し悲しそうな表情で男を見つめた。 「それが聞きたかった・・・ありがとう。」 「ゆっ?」 ドスは人間の意図が分からなかった。 「最近山のゆっくり達にまりさの事を聞いて回ったんだが、まりさの言ってる事が分かるよ。 君が苦労して群れの事を考えていても、あいつらはそれを当然と考えているからな。 むしろ自分達が問題を起こしても、まりさに押し付ければそれでいいって感覚だからなぁ・・・」 「ゆぅ・・・」 まさに人間の言った通りだった。ゆっくり達はドスに厄介ごとを持ってきては、自分達だけゆっくりしていたのだ。 「ただ、私達人間ならまりさをゆっくりさせてやる事はできるぞ。」 「ゆゆっ?!?!」 ドスは驚きの表情を浮かべた。 「人間さん!!何を言ってるの!?」 「言葉の通りだよ。それともまりさはゆっくりしたくないのか?」 「まりさは・・・まりさは・・・ゆっくりしたいよ!!もういい加減疲れたよ!!」 「そうなのか。」 「それで人間さん、どうすればまりさはゆっくり出来る様になるの? まりさは何をすればいいの?」 「あぁ、それはだな・・・・」 30分程して人間とドスが戻ってきた。 「ゆっ!!どすとにんげんさんがもどってきたよ!!」 「どす!!おかえりなさい!!」 「ただいま、みんな!!」 ゆっくり達は戻ってきたドスに声を掛ける。 暢気なゆっくり達といえど、ドスが人間と2人きりになるのは少々不安だったらしい。 「やぁみんな!!悪かったね!!もうまりさとの大事なお話は終わったから帰るよ。 じゃあまりさ、明日のこの時間にまた来るからその時に返事を聞くよ。 それじゃあ、良い返事を期待しているよ!!」 人間はそう言ってゆっくりプレイスから去っていった。 一方ドスも、ゆっくり達を適当にあしらって巣に戻っていった。 ドスは巣の奥に篭り、ゆっくりと考えた・・・。 次の日、ドスはゆっくりプレイスの入り口で人間を待った。 前日とほぼ同じ時間に人間が現れた。 ドスは手短に伝えた。 「人間さん、まりさは乗る事にしたよ。」 「そうか!!良い返事をありがとう!!それじゃいつ頃にするつもりだい?」 「一週間後位はどう?都合は人間さんに合わせるよ。」 「OKそれでいこう。んじゃ、また一週間後に!!」 「またね!!人間さん!!」 前回とは打って変わってあっさりとした内容で、すぐに話も終わった為他のゆっくり達は大して気にもしなかった。 一週間後、ドスはゆっくり達を集めてこう言った。 「これから人間の里をまりさ達のゆっくりプレイスにしに行くよ!!」 ゆっくり達は驚いた。今まではドスが人間と関わるなと五月蝿く言っていたからである。 ドスがやっと重い腰を上げたと、ゆっくり達は喜んだ。 「どすがいればにんげんのさとものっとれるね!!」 「にんげんなんてどすにかかればいちころなんだぜ!!」 「さすがどす!!たよりになるよ!!」 「それじゃあみんなで行くよ!!」 「「「「「えいえいゆー!!!」」」」」 ドスとゆっくり達は人間の里を目指して山を下った。 人間の里はゆっくりの足で30分程掛かるが、人間の里が手に入ると思っているので全く問題ではなかった。 暫くすると白く大きな建物が見えてきた。間違いなく人間の建てたものであった。 ドスとゆっくり達はその建物へと向かった。 程なくその建物に到着したゆっくり達は、その建物の大きさや頑丈そうな見た目からすぐにその建物を気に入った。 その為手始めにその建物をゆっくりプレイスにすることにした。 幸い扉等は見当たらず、すんなり入る事ができるので、ゆっくり達は次々とその建物に入っていった。 「ここはすごくゆっくりできるおうちだね!!にんげんにはもったいないね!!」 こんな事をゆっくり達は言っていた。 一方ドスは、いつまで経ってもその建物に入ろうとはしなかった。 「ゆゆっ!?どす!!どうしたの?ここはとてもゆっくりできるよ!!」 「まりさはみんなが入るまで入り口を見張ってるよ!!まりさが見張ってれば人間が来ても大丈夫だよ!!」 「ゆっ!!それもそうだね!!」 ドスは入り口を見張る事にした。それに安心したゆっくり達は尚も建物に入っていく。 暫くすると全てのゆっくりが建物に入った。 それを見計らってドスは叫んだ。 「人間さん!!もういいよーーー!!!」 ドスが大声を上げた瞬間、建物の天井から金網タイプのシャッターが下りた。 「ゆゆゆっ!?!?」 ガシャン!!という音にゆっくり達が驚いた。 ゆっくり達は金網のシャッターで閉じ込められてしまったのだ。 思わずドスに助けを求めたゆっくり達だったが、ドスは笑みを浮かべていた。 「ゆゆっ!?どすどうしたの!?はやくたすけてよ!!」 ドスは助けを求めるゆっくり達の声を聞いている内に、俯いて震えだした。 「・・・・・・・・・・・・・・」 「どすなにしてるの!?ゆっくりできないがしゃーんをはやくこわしてね!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「どすどうしたの!?ねちゃったの!?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ!!」 「あははははははははははは!!!!はーーーーーーはっはっはっはっは!!!!」 ドスは突然大声で笑い出した。 その声に反応したかの様に、何処からともなく人間が集まってきた。 「ゆっ!!どす!!にんげんがきたんだぜ!!」 「はやくやっつけてよ!!」 一方ドスは 「ははははははは!!・・・・はひぃ・・・はひぃ・・・ぜぇー・・・ぜぇー・・・」 漸く笑いが止まった様だ。 笑いすぎて半泣きになりながらドスは言った。 「まだ分からないの?お前達はまりさに騙されたんだよ!!」 「ゆっ!?なにをいってるの!?!?」 ゆっくり達は混乱した。あまりの展開に頭が付いていけなかった。 「お前達をゆっくりさせるのがもう嫌になったんだよ!!もうお前達のお守りなんてたくさんだよ!! だからお前達は加工所でゆっくりしていってね!!」 「むきゅっ!!どす!!あなたはにんげんにだまされているのよ!!」 「おねがいだからかんがえなおしてね!!」 「かこうじょじゃゆっくりできなぃぃぃぃい!!!!」 ゆっくり達はドスが人間に騙されてこんな事をしたのだと思った。 ゆっくりの中には説得を試みたものも居たが無駄であった。 「人間さんに協力すればまりさをゆっくりさせてくれるって約束してくれたよ。 もしかしたらゆっくりできないかもしれない・・・でも・・・」 まりさは一呼吸置き、そして 「お前達クズと一緒に居ると、まりさは絶対にゆっくりできないんだよ!!」 「「「「ゆがーん!!!」」」」 「どすがゆっくりをゆっくりさせるのはあたりまえでしょお!!」 「うらぎりもののどすはしねぇええええ!!!」 「れいむのかわいいあかちゃんみせてあげたでしょぉぉお!!」 「じょうずなおうたきかせてあげたでしょおおおお!!」 「ゆっくりしないばかなどすはしねえええ!!」 ゆっくり達は騒ぎ出した。 ゆっくり達の騒ぐ声にドスは段々とイラついてきたらしい。 側に居る人間に一言二言話しかけ、その人間の方に口から何かを吐き出した。 「人間さん、まりさのスパークキノコ預かっていてね。このままだと我慢できないから・・・。」 「あ、あぁ・・・分かった。」 ドスはゆっくり達の方に向き直り、怒鳴り散らした。 「ドスがゆっくりさせるのはあたりまえって、それはそうかもしれない・・・。 まりさはお前達をゆっくりさせる為に頑張ってきた。でもお前達は何をしてくれた!? お前達は好き勝手にゆっくりするせいで、まりさは凄く迷惑だったんだよ!! まりさだけならまだいいけど、里の人間さんにまで迷惑を掛けるって何のつもり!? お野菜は勝手に生えないって何度も言ったでしょ!?それを理解できないから人間さんに殺されるんだよ!! お前達が迷惑を掛けすぎたせいで、山のゆっくりみんなが殺されるかもしれなくなってたんだよ!! 人間さんはまりさよりずっと強くて賢いんだよ!!それなのに何で勝てるって思っちゃうの!? そんな事だからまりさにも見放されてこうなるんだよ!!」 ドスはゆっくりとは思えない口調でまくし立てた。 「あかちゃん見たらゆっくりできるでしょって、ただお前達が勝手にすっきりしただけでしょ!? それで勝手にできた子供なんて可愛くも何ともないよ!!お前達クソ饅頭のクソガキなんてムカツクだけなんだよ!! じょうずな歌を聞かせたって、ただゆ〜ゆ〜騒いでるだけでしょ!!あんなのただの雑音だよ!! 人が眠い時までさわきがやって!!おかげでこっちはゆっくり寝ることもできなかったよ!! 黙らせたら黙らせたで泣き叫んで五月蝿くなるしほんとにお前達はうざいよ!!! お前達は人間さんにさっさと殺されてね!!お前達みたいなゴミクズでも人間さんの役に立てるんだから 光栄に思ってね!!」 ゆっくり達はショックで固まっていた。自分達にとってのゆっくりを、よりによってドスに全否定された為である。 「それじゃあ最後にみんなに言いたい事があるよ!!」 ドスは先ほどと打って変わって落ち着いた口調で話した。 「それじゃあみんな!!ゆっくり・・・・・しね!!」 満面の笑みを浮かべたドスによる死刑宣告である。 「ゆぎゃぁあああああ!!!ぢにだぐないぃぃぃぃぃいい!!!」 「ぶざげるな゙どずぅぅぅうぅぅぅぅううう!!」 「ごのうらぎりものぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」 「どずぅぅぅうう!!ゆっぐりじないでだずげでーーー!!!」 ゆっくり達は大騒ぎしているがドスは何処吹く風といったところである。 そうしている内に加工所入り口のゲートが閉まり、ゆっくり達も見えなくなった。 「今更聞くまでもないが、良かったのか?」 「これでやっとゆっくりできるよ。何だか今はすごくすっきりー!!な気分だね。」 長い間のストレスから開放されたドスは、非常にゆっくりとしていた。 「まりさ、これから先もゆっくり達が集まってくるだろうがそれがクズ共だったら遠慮せず連れて来てくれ!! それなりのお礼はするぞ!!」 「うん分かったよ!!まぁクズだったらだけどね。」 ゆっくり達はドスに守ってもらおうとする習性がある。クズゆっくりであればなお更で、ドスの名の下に悪さを働く。 そこで人間はクズゆっくりを駆除するのではなく、ドスを懐柔してしまえば良いのでは?と考えた。 懐柔できるようなドスを調べるのはさほど難しいものではなかった。 ゆっくりの事はゆっくりに聞けば良いのだ。 ゆっくりしていないドスならば更に詳しく調べたうえで、懐柔できそうなドスは直接人間が説得に行く。 説得できてしまえばこっちのものである。 最小限の人数でクズゆっくりを駆除できる。その上危険なドスも敵になる事はない。 ドスは邪魔なクズゆっくりを処分でき、人間は殆ど手間なく大量のゆっくりを確保できる。 人間にとってもドスにとってもお互いが「ゆっくり」の提供者となるのだ。 「どす!!どすのむれにいれてほしいんだぜ!!」 暫くするとまたゆっくり達が集まってきた。またクズかと思いつつも、ドスはゆっくり達を歓迎した。 「まりさのゆっくりプレイスにようこそ!!歓迎するよ!!」 「(もうそろそろ良い頃だね・・・)」 「これから人間の里をゆっくりプレイスにするよ!!!!!・・・・・ 終 悩むドスの絵を見て考えてみました。 ゆっくりを売り渡す様ドスを説得するのはどうなんだろうと思い書いてみました。 内容はほぼ丸パクリっぽいなぁこれ・・・ 精進します(;´Д`)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3854.html
ゆっくり虐めSS ~YDF~ ゆっくり地球防衛軍2017 前編 その1 【前書き】 これが初SSとなります。 所々改行とかが変な所があったりするでしょうがどうぞよろしくお願いします。 元ネタはPS2、XBOX360の地球防衛軍シリーズです。 ゆっくりがでかいです、ハイスペックです。 ゆっくりが人間を捕食します(設定だけです、描写はないです)。 各シリーズのネタが入り乱れてますがそこんとこには目をつぶって下さい。 あるキャラが喋りません、喋るけど喋りません。原作でも喋らないので、台詞を入れるのは無粋だと思い喋らせませんでした。 楽しんで頂ければ幸いです。 《2013年》 異星生命体のものと思われる飛行物体が確認される。 「ゆっくりしていってね!」と奇声を発する異星生命体を「ゆっくり」と呼称 《同年》 ゆっくりへの接触を試みるも彼らは呼びかけに応じず 《2014年》 様々な努力にも関わらずゆっくりについてはすべてが不明もまま 《2015年》 最新鋭の装備を持つ連合地球軍「YDF(Yukkuri Defense Force)」が設立される 《2017年》 ゆっくりの大群が飛来、はたして彼らの目的は・・・ この国の首都、東京に巨大なゆっくりが近づいていた。 私はまだそれの名前を知らないが、後に『まりさ』と呼ばれる種であった。 そのゆっくりは外見こそ通常種のそれであれ普通とは明らかに違っていた。 まず、まりさ種であるのに飛行していた。れみりゃ種やふらん種のように羽もないのに、である。 そして最も異質なのが、遠目からでも分かるその大きさである。何m、とかそういう問題ではない。 一体、何kmはあろうか、大きい、大きすぎるのだ。 私はその馬鹿でかい顔面を眺めながら、昔に観た巨大隕石が地球に落下してくる映画のことを思い出した。 その生首は大きく口を開けてそのサイズに似合った大声でこう言った。 「ドスの名前はドスまりさだよ!ゆっくりしていってね!!」 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 ドスまりさの後に続いていくつもの重なり合った声で彼らの『挨拶』が聞こえてくる。 そしてドスの帽子から何十匹もの生首が飛び出してくる。 こいつらの大きさはせいぜい5~6メートルだろう、でかいことに変わりはないが。 なんだか明らかに帽子の体積より多い量が出てきているのだが・・・。 ドスはまた大きく口を開け、 「この星さんは強いどすのおうちだよ!!弱くてゆっくりしてない人間さんたちは早くここから出て行ってね!」 「「「そーだよ!!このゆっくりしたほしさんはれいむたちのものだよ!おいしいはっぱさんもみずさんもぜーんぶれいむたちのものだよ!」」」 「「「ゆへへ!そうなんだぜ!よわっちいにんげんはゆっくりしないではやくしぬべきなんだぜ!」」」 「「「むきゅきゅ!よねんかんもようすをみてわかったわ!こいつらはぞくにいう『ざこきゃら』よ!かんたんにたおせるわ!」」」 「「「うふふ!ゆっくりとしたとかいはなありすにふさわしいうつくしいまちね!いなかもののにんげんはわたしたちの『えさ』になってね!」」」 「うー、うーあそことあそこにきれいなごーまかんがあるんだどぉー!おぜうさまのものなんだどぉー!」 「「「うー、うー」」」 「ゆっくりしね!」 「「「しね、しね!」」」 「おぉ・・・」ヒュンヒュン ほとんど同時に喋るから何を言っているのかよく分からないが要するに「死ね、出て行け、地球をよこせ」ということらしい。 「ゆっくりしていってね」と言っているのに早く出て行けとは・・・わけが分からない。 しかしこのままでは地球の危機なのだ、子供の時に毎週観ていた3分間しか変身できないヒーローの番組。 私はヒーローに変身できる主人公ではなく、あれの司令官に憧れていた。まさか現実になるとは思いもせずに。 手元のマイクを握り、『緊急放送』と書かれた赤いボタンに拳を叩き付けた。 「YDF!空軍・ストームチーム・レンジャーチーム攻撃開始せよ!他は第一級警戒態勢をとれ!!」 世界各地にとつぜん現れ、地球を侵略し始めたゆっくりたち、全世界のYDFは総攻撃を開始した。 だがしかし間の抜けた外見とは裏腹に、彼らは極めて恐ろしい戦闘能力を持っていたのだ。 「こちら結城!現在ゆっくりと交戦中!うわっ、何だこれは・・・ゆっくりの体液か?。違う、これは・・・あ、餡だーーーっ!」 「ゆっふっふっふ、よわいにんげんさんはれいむのあんこさんでゆっくりしんでね!」 「ゆぺぇっ、ゆぺぇっ!げらげらげら!またしんだね!」 「隊長がやられた!司令官!応援をください!このままでは・・・うわ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!・・・・・」 「ゆへへ、このゆっくりしたてがらはまりささまのものなんだぜ!ありさんをつぶすのとおんなじなんだぜ」 「なにいってるんだぜ!まりさのほうがおおくころしてるんだぜ!」 「総員、注意しろ!ゆっくりが吐き出すのは強力な酸(を含んだ餡子)だ!」 「早く!早くしろ!囲まれるぞ!」 「隊長!もうだめです!もう囲まれてます!・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「新入りがやられた!もうもたない!カバーしてくれ!」 「むきゅきゅきゅ、ちてきなぱちゅりーのさくせんのおかげでゆっくりしょうりはまちがいなしね!」 「さすがはどすの『さんぼう』なだけはあるわね、おなじゆっくりぱちゅりーとしてはながたかいわ!」 ある時は単純なはさみうちにかかり、部隊を1つ丸ごと死なせてしまった。 「うわああぁぁぁ う ご け な い!」 「アッハッハッハッ、アーッハッハッハッ 死ぬ、カスタードにまみれて死ぬんだよ!アッハッハッハ!」 「アーマーが溶けるぅ!」 「あらあら、くるっちゃうなんていなかものにもほどがあるわね、ゆっくりしてないからこうなのね」 「ほんとね、ありすほどのとかいはにはうんどうにもならないわ!んんん・・・なんだかからだがあついわね・・・」 「「んんんんん・・・んほぉぉぉぉぉぉ! すっきりーーーーーっ!」」 「敵は油断しているぞ!戦闘開始だ!撃て!撃てっーー!」 「ゆぐっ!なに!?」 「こっちに気づいたぞ!」 「「「「とかいはなすっきりをじゃまするいなかものはしねーーーっ」」」」 「ひるむな!撃ち続けろ!」 「だめだ!敵の数が多すぎる!」 そして何よりも一番恐ろしいのがその数によるごり押しだ。 どれだけ作戦本部が頭を捻った作戦でも圧倒的な数の差をひっくり返すには至らない そして同じころ、空軍も苦戦を強いられていた 「「「「うー、うー」」」」 「左主翼破損!墜落する!」 「ううー!ううー!にぱー!」 「くそっ、動きが読めない!」 「俺がやる!ミサイル発射!」 「うー?う、うがぁぁぁぁぁ」 「やった!撃墜したぞ!これで7匹目だ!」 「流石だな!ん、おい、また来てるぞ!」 「しね、しね!」 「なんだこいつ!、さっきの奴らとはケタちがいに速いぞ!」 質より量でせめてくるれみりゃ(胴なし)、量より質の精鋭ふらん(胴なし) そして・・・ 「こちらバゼラートチーム(戦闘機隊)!ドスまりさを一気に叩く!全機俺に続け!」 「「「「「了解!!」」」」」 「ゆっ?なんだか周りがうるさいよ?」 「むきゅ、あれは『ひこうき』よ。ゆっくりしてないのりものよ。ほっとくとこうげきされていたいいたいされるわよ!」 「ゆ、そうなの?じゃあうるさいはえさんたちはゆっくりつぶすよ!」 「ドスまりさの口内に高エネルギー反応!こっちを向いています!」 「あれはまさか・・・、まずい!離れろ!ドスの側面に回れ!」 「だめです!間に合いません!」 「ドススパーーーク!!」 訂正・・・空軍は壊滅状態に追い込まれた。 「ゆゆっ!全部おちたね!まりさに逆らうからこうなるんだよ、ゆっくり身の程を知ってね」 「むきゅきゅ、このちょうしでいけばこのほしがぱちゅりーたちのおうちになるのもゆっくりじかんのもんだいね!!」 「そうだねみんな!このままばかなにんげんさんをたおしてこのほしをゆっくりまりさたちのおうちにするよ!えいっえいっゆーーーっ!!」 「「「「「えいっえいっゆーーーっ!!」」」」」 「ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ、ゆっくりできない人間さんは出て行ってね!!!」 「「「「「ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ、ゆっくりできない人間さんは出て行ってね!!」」」」」 「「「「「ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ、ゆっくりできない人間さんは出て行ってね!!」」」」」 「「「「「ここはぱちゅりーのゆっくりぷれいすよ、ゆっくりできない人間さんは出て行ってね!!」」」」」 「「「「「ここはありすのゆっくりぷれいすよ、ゆっくりできないいなかものは出て行ってね!!」」」」」 「「「うー!!うー!!」」」 「「「しね!しね!」」」 「・・・」 「「「「「「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!!」」」」」」」 空軍がなくなってしまった今、YDFに残っているのは陸軍のみだ。 陸軍は主に、いくつかのチームに分けられている。 【スカウトチーム】 正式名称「偵察隊スカウトチーム」 主な任務はに偵察、情報収集を目的とした斥候部隊である。彼らは必要最低限の装備しか持たず、戦闘には向かない。 人数は2番目に多い。 【レンジャーチーム】 正式名称「強襲歩兵隊レンジャーチーム」 YDFの中で最も人数が多い。 部隊ごとにアサルトライフル・ショットガン・ロケットランチャー・スナイパーライフル・ミサイル・グレネードランチャーなど 1つの装備で固定されていたり、1つの部隊にさまざまな装備を持った隊員がいたりと最も前線で活躍するチームである。 隊長は赤いヘルメットを、隊員はグレーのヘルメットを着用している 【ストームチーム】 正式名称「特殊遊撃隊ストームチーム」 最も数が少ない、その代わりに精鋭揃いのエリートチームである。 1部隊の人数こそ少ない(たった1人の時もあるのだ!)が、それを補うだけの実力を持っている。 技術部の開発した新兵器の実戦でのテスト使用なども彼らが行っている。 すなわちこの3つのチームこそ、YDFに残された最後の希望である! [スカウトチームによるゆっくりのレポート] ゆっくりは雑食で、動物、植物、人間など有機物は大体捕食できるようだ。 人間にとっての毒や劇物などは彼らにとっても有害らしく、食べない(食べた場合餡子を嘔吐し、あまりその量が多いと死に至る)。 攻撃方法は巨体を生かした体当たりと強酸餡子のようである。 ゆっくりの体が何で出来ているかは未だ不明である。 しかし地球上の物質でいうと最も近いのは饅頭の皮と、強酸が含まれていることを除けば餡子とカスタードクリームらしい。 れみりゃ、ふらん種は口から餡子ではなく特殊な光線を発射するようだ。 ロンドンで確認されたティガれみりゃという巨大な個体により、光線が「フヤジョウレッド」という名前だということが分かった。 ふらん種については「死ね!」としか言わないので不明である。 そして、ドスによるおうち宣言の時にのみ確認された、高速で頭(体?)を振り回す個体についてはまだ何も分かっていない。 尚、技術部は戦闘後に彼らの死骸を回収し、新しい武器や防具を開発中とのことである。 [YDFレポート 終] その2に続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2788.html
前 子れいむは怒っていた。凄く怒っていた。 まだ産まれて半年ほどしか生きていないれいむだが、これほどの怒りは覚えがない。まるで中身の餡子が溶岩に変わってしまったかのようだ。 原因は、みんながあっさり人間に付いていってしまったことだ いくら黒ゆっくりの効果は絶大で、高いところから降りられないのを助けてもらったとはいえ、敵である人間達とゆっくりすることなんて今の子れいむには考えられない。 なのに、協力してくれる筈のみんなはあっさりゆっくりしてしまい、お兄さんと楽しく雑談する始末。 子れいむの睨み付ける対象は、ごく自然に5つに増えていた。 そんな時だ。 ずりずりと縁を地面に擦りながら動いていた帽子が、子れいむの所まで下がってきたのは。 「ゆっ!?」 怒りと焦りを感じる強い口調で子れいむは向かえ入れる。 帽子から僅かに覗かせた顔は、宥めるような優しい笑顔だった。 「ゆっ、ごめんねれいむ。おこらないでね」 「……」 「おなかいっぱいになったら、このちょうしで れいむおかあさんの かたき をまりさがとるよ! だから……みんなでゆっくりしようね!」 「まりさ……」 言いたいことを言い終え、まりさはまた前へ戻っていく。途中、縁を頭に引っかけた帽子がずれ落 ち、また持ち上げるのに苦労していたが、時間をかけて何とか元の位置へと戻っていく。 「……」 気づけば、荒れていた心が嘘のように落ち着いていた。 子まりさと子れいむは住んでいる巣穴が近い、人でいうところの幼なじみな関係だった。年齢はほとんど変わらないが、せっかく見つけた餌を無くしたり、お母さんに怒られて泣いている所をよく子まりさが慰め、代わりのをくれたり一緒に遊んだりする姉妹のような関係だった。親を失って、失意のどん底だった子れいむが立ち直ったのも子まりさの気遣いあってこそだ。 今も、あれだけ大きな帽子を被っていたら歩くだけで疲れるのに、れいむの気分を察してわざわざ移動してきてくれた。 改めて子れいむの中に甘い親愛という気持ちがわき上がった瞬間だった。 そんなことは露知らず、犬神は戻ってきた子まりさと話を続けていく。 「その帽子は誰の帽子なんだ?」 「ゆふーん、まりさのおかあさんの帽子だよ! おきるまえにかりてきたんだよ!」 犬神の脳裏に、飾りを奪われ周りのゆっくりから徹底的に攻撃され、体のあちこちから餡子を滲ませ絶望を叫びながら死んでいく光景がいくつか浮かんだが、気にしないことにした。 「その黒ゆっくりというのは、丸くて全身が真っ黒なのか?」 「そうだよおにいさん! いまのまりさみたいなんだよ!」 「……なるほどなぁ……」 「黒ゆっくりはその口で人間だって食べちゃうよ! お兄さんもかくごしてね!」 「そうか……真っ黒か……」 やがて自らの家へ戻ってくると、犬神は子供達をそのまま引き連れて玄関へ入っていく。 ぴょんぴょんと、段差を小さく飛び跳ねて入っていく5匹へ静止を促した。 「ここまで持ってくるから、みんなはそこで待っててくれよ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「とかいは はまたせたりしないわ! 早くもどってくるのよ!」 その場から体を前に出し、手を伸ばして玄関を閉めるとそのまま奥へ向かっていった。 子れいむを除いた4匹の口からは、期待が自然とこぼれ落ちてくる。 「どんなごはんがやってくるのかしら! とかいは な きたいでいっぱいだわ!」 「人間はおいしいものをたくさんもっているって言ってたわ。むきゅー! たのしみね!」 「きょこーん!」 「……」 やがて遠ざかった足音がまた近づいてくると、犬神が透明な箱を持って帰ってきた。 「お待たせ、これがごはんだよ」 「ゆ?」 「むきゅ?」 それぞれが疑問の声を上げる。犬神が持っていた箱には透明で靄のように白い物が混じった何かが入っている。しかしそれは子供達の知識にはどこにもない食べ物だった。 「おにいさんそれは何なの? ゆっくりできるもの?」 「おや? ……そうか、そうだな。こうなったら分からないのか」 犬神は透明な箱を傾けると、オブジェである石で出来たテーブルのような物の上に垂れ流していく。濁ったそれは水飴のような粘りを見せながらも石の上に広がっていく。 子まりさ達には、どうしてそんなことをしているのかまるで理解できない。 「ゆゆ? 何をしているのおにいさん?」 「ん? 知らない物を食べるのは抵抗があるだろ、試しに食べてもらおうと思ってな」 流し終わって透明な箱を地面に置くと、子まりさの帽子をひょいっと持ち上げた。 「ゆゆっ!? なにするのお兄さん! おかあさんの帽子かえしてね!」 「食べてる間は邪魔になるだろ? 預かるだけだから心配しないで、ゆっくり食べてね!」 言うと早く、子まりさを片手で捕まえて石の上まで運んでやった。 「ゆ……ゆゆっ……」 「さぁ、食べてみてよ!」 「む、むきゅー!」 「まりさぁ! だいじょうぶぅ!?」 下からみんなの心配そうな声が聞こえてくる。 未知の恐怖に子まりさも震えを隠しきれなかったが、ふと目をやった先で心配そうに涙を浮かべた子れいむを見つけ、腹を括った。 「ゆゆーん! すごくゆっくりできそうだよみんな! まりさがさきにたべてみるね!」 「まりさぁ!!」 精一杯の虚勢を張り、改めて子まりさは目の前へ目を向ける。 所々白く、しかしほとんどが透明なそれは、まるで空にかかる雲が降りてきたように見えた。 「……っ」 そろりそろりと伸ばされた舌が、その透明な物体に触れた。 「ま、まりさ……」 「ちーんぽ……」 「……」 まりさは何も言わず黙っていると、今度は大きく口を開けてかぶりついた。 「むきゅー……?」 「はんだーち……?」 「……うめぇ、これめちゃくちゃうめぇ!」 途端、ガツガツと見境なしに食べ始める。 凶変したまりさの様子に3匹は素早く反応した。 「そ、そんなにおいしいの! ゆっくり出来るの!?」 「むきゅー! おにいさんわたしたちにも早く!!」 「ああ。それじゃ場所もないし、この箱の中で直接食べてくれるか」 「しゃせーーーーーいっ!!」 同時に箱へと飛びかかる3匹。犬神の補助もあってどうにか中へと入っていく。壺をしまうような縦長の透明な箱は、同時に入ってもまだ場所に余裕はある。ぶつかる心配もなく3匹は水飴のようなそれを貪っていった。 「むーしゃむーしゃ!!」 「むきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅっ!! すごくおいしいわ! とろけるようなあまみがすごいゆ っくりよ!」 「ぜっちょおおおおおおおっ!!」 次々と歓喜の声が上がっていく。 友達の絶賛するその光景に、子れいむはうずうずと体を動かしながらも食べようとはしなかった。 どうしても、敵である人間から食べ物を貰いたくない。 「れいむは食べないのか?」 「れいむはいいよ。れいむの分はみんなに あげてね」 「……そうか」 まぁいいかと、残念そうにため息を吐く。どこか違和感のある光景だったが、子れいむはさほど疑問には思わず、じっと犬神を恨みったらしく睨み続けた。 犬神はもう子れいむの事は気にしないで子まりさを見る。 そこには警戒していたのが嘘のように体中に水飴のような物体をつけ、食べたりないと石へ顔を擦りつけるように舐め回している姿があった。 今食べている物が、自分たちの排泄物だと知ったら、いったいどんな顔をするだろうか。 ちょっとした興味が湧いてくるが、どうにか欲求を抑えきり、犬神は質問した。 「まりさ、そういえば真っ黒になる良い方法があるんだが、試してみようか?」 「ほんとうおにいさん! ゆっくりためしてね!」 嬉しそうに声を出すが一度も犬神の方を見ず、もはや排泄物から出来た食べ物に首っ丈だ。 「よしわかった。ちょっと待ってろよ」 犬神はまた奥へと歩いていった。 むーしゃむーしゃと4匹が食べ続ける声が聞こえる。空腹を耐えている子れいむにとっては、この上ない拷問だ。 あまりの美味しさに正気を失っていた子まりさだが、堪え忍んでいる子れいむに僅かだが理性を取り戻した。 「れいむ! あとでいろいろゆっくりしたごはんとってくるよ! まりさたちばっかりゆっくりしてごめんね!」 「……うん、きにしないでまりさ」 体中を汚したままの説得力のない言葉だったが、あれほど一心不乱だった子まりさが気をつかってくれた事を子れいむは素直に喜んだ。 今度は短い時間で犬神は戻ってくる。手に何かを持っている様子だが、子れいむの角度からは見えなかった。 「ゆゆっ! おにいさんおかえりなさい! ゆっくりしていってね!」 「ああ、ゆっくりさせてもらうさ。取りあえず黒くするぞー」 「ゆゆーん! ゆっくりやさしくしてね……」 犬神は石の正面へと移動する。その僅かな移動が、子れいむの位置から子まりさを見えなくし、不安という魔物を一気に巨大化させていった。 「ゆっ!? ま、まりさああああああっ!!」 思わず叫び声を上げてしまうが、犬神の体越しに無事を知らせる声が飛ぶ。 「ゆゆ、しんぱいしないでれいむ! まりさはゆっくりしてるよ!」 「ゆゆ……まりざぁ……」 元気そうな子まりさの声を聞いても、子れいむの不安は消える事はなかった。大事な人の姿が見えないというのは、何よりも心をかき乱す。 先ほどから子供達が食べていた物は、俗にゆっくり達がしーしーと呼んでいる排泄された液体から出来たものだ。 「……ゆ?」 饅頭であるゆっくりから排泄されるものだけに、糖度の高い液体であり、調理に使ったりお菓子の材料にする人も少なくない。 「……お、おにいさん! なにしてるの!!」 「ゆっ!? ま、まりさ!! どうじたの!?」 しかしこのしーしー、含まれているのは糖分だけではなかった。 「う……うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」 「ま、まりざああああああああああっ!! どうじだのおおおおおおおおおっ!!」 ゆっくりの油が含まれているのか、脂肪分も高く、発火性が高かったのだ。 犬神が子まりさの正面から離れる。 子れいむの目に映ったのは、炎上する石の中心で燃えながら叫び続ける子まりさの姿だった。 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」 慌てて助けようと石へ飛び跳ねるが、その高さに助けるどころか飛び乗る事さえ出来ず、必死に石の麓で藻掻くことしか出来る事がない。 「れ、れいぶぅううううっ!! あずいよおおおおおおおっ!!」 「まじざぁっ!!」 慌てて状況を確認しようと身を引いて見える位置まで戻ると、皮は茶色い焼け跡がつき、髪の毛も溶け、苦悶の表情が顔に刻まれた別人のような子まりさがそこにいた。 溢れる涙も炎で蒸発し、子まりさの苦痛を和らげるものは何もない。 「あ、ああああああああ……」 子まりさが燃えていく。 綺麗だった髪の毛も、艶のある白かった肌も醜く爛れ。 絶望を叫びながら、親愛の相手が苦しんでいく──。 「やあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! ゆっぐりじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ!!」 やがてお菓子が燃え切り、鎮火すると。 舌を出し、虚ろな表情の焼き饅頭がそこにあった。 「……ゆぅ……ゆぅ……」 「……うん、黒ゆっくり美味しそうだ」 その焼き饅頭の出来に、思わず犬神も満足げに頷く。 燃え尽きたお菓子は溶け、まるでコーティングしたかのように焼き饅頭の体に照りを与えている。犬神の狙い通りだ。後は味さえ問題なければ……。 試食しようと、犬神の手が焼き饅頭に伸びた。 「まりざにざわるなあああああああっ!!」 怒りのままに子れいむは足へと体当たりを繰り返すが、お手玉程度の大きさではびくともしない。 まるで意に介さず、掴まれた子まりさは口の中へと運ばれた。 「がぶっ」 「ゆぐっ!? 焼けただれて続いていた痙攣が、一口食べられた瞬間、まるで動かなくなってしまった。 もう、子まりさはどこにもいない。 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「……おおっ、やっぱり美味い!」 味自体は、普通よりは控えめな甘さとはいえ飴に饅頭と甘みが非常に強いが、今までにない溶けた飴の歯ごたえが口の中を楽しませる。 「これはいける!」 確信を得、そのまま残りも平らげようとした時、足に鋭い痛みが走った。 「っ!?」 「うううう~っ!!」 子れいむが足首を思い切り噛みついたのだ。 噛みつかれた箇所から、血の流れ出す感触が伝わってくる。 「……ふんっ!」 「ゆぐっ!?」 思いっきり足を振り、犬神は子れいむを吹き飛ばす。 「げふっ!!」 壁に当たり、子れいむはそのまま地面に倒れた。顔を俯せにしたまま起き上がる気配がない。餡子が漏れなければ早々死なないゆっくり。壁に当たった衝撃で気を失っていた。 思わずやってしまったが、死んでいない事に気づくと犬神はほっと息を吐いた。このまま踏みつぶしてしまってもさほど問題はないが、只でさえ子れいむが食事を拒否した為に面倒が増えている。手間はなるべく省きたかった。 犬神はゆっくりと、箱の方へ目をやった。 「……あ……ああ……」 「むきゅー! ……む、むきゅー!」 「た、たたたたたたたん、たん……っ!」 目の前で起こった一部始終に震え上がる、新たな食材を見つめていた。 子れいむは暗い暗い洞窟の中にいた。 「ゆ? ……ゆゆっ!?」 慌てて周りを確認するが、お姉さん替わりのような子まりさも、実の母親もどこにもいない。 いや子れいむには分かっていた。 確かにここに母親がいることを。 「お……おかあしゃああああああん!! おかあしゃああああんっ!!」 何度も叫び続けるが、母親が現れる様子はない。 ただあの大きい存在感が、子れいむに伝わってくるだけだ。 「おかあしゃあああああああん!!」 お母さんを求め、子れいむはただただ叫び続けた。 「おかぁ……!」 子れいむは目を覚ますと共に、その場で飛び跳ねた。 「……ゆ?」 なぜ飛び跳ねてしまったのか、子れいむ自身もよく分かっていない。なんだか凄く怖い夢を見ていたような気がするが、それが何なのか思い出せない。場所が玄関から部屋に変わっている事もあり現実感がないまま、微睡みに包まれていた。 「ああ、起きたのか。寝ている内に済ませたかったんだが」 「ゆぐっ!?」 そんな眠気も、犬神の顔を見た瞬間に吹き飛んだ。 開かれた引き戸から外を見ていた犬神は、体の向きを部屋の中へと変えた。 「お兄さん! まりざわっ! まりざわどうじだのっ!!」 「食ったけど」 「ぴぎゃぁっ!?」 否定したかった現実をまた突き付けられ、思わず後ずさった。 「黒ゆっくりと聞いて試しにやってみたが、思ったより美味くてよかったよ。どうも餡子としーしーが相性いいみたいでな」 「う……うう……」 「餡子じゃない奴らと相性が悪かったのが残念だけどな」 「……ゆっ?」 言われてはたと気づいた。友達3匹が入っていた筈の箱が見当たらない。 想像してしまった最悪の結果に思わず口が開いていた。 「み、みんなは! みんなはどうしたの!?」 「ああ、帰したよ」 「ゆゆゆっ!?」 良い結果、しかし予想外の返事に、逆に驚き戸惑ってしまう。 「ありすを黒ゆっくりにして食べたんだけど……飴とあわなくてね、これじゃ他の奴も望み薄だし、まだ元気だったから放してやったよ、ほら」 「ゆ……っ」 犬神が外を指さす。引き戸から外を見れば、元気なみんなの姿があるのだろうか? 子れいむは疑問を確認するために引き戸へ近づいていく。 「うーんしょ……うーんしょ……」 次第に明るくなり、外の景色が目に映ってくる。 「……ゆ?」 この家の手入れされた庭には、かすかに生えた草以外には何も見当たらなかった。 「だれもいないよ! おにいさんうそついたの!」 「おいおい、よく見てみなよ」 「ゆ……」 じっと目を細め、改めて庭を見る。 すると、草の生えた場所である変な物を見つけた。 「ゆ?」 黒くて丸い玉が3つ転がっている。 「……」 その黒い球体が口を開けた時、ようやく子れいむにもそれが何なのか理解できた。 「と……と……」 「……む……きゅ……」 「い……ぽ……」 「ひぐっ……っ!」 それは体全体を、皮が見えなくなるほど大量の蟻に食い尽くされ、痙攣を繰り替えす友達の姿だった。 「帰してあげたんだが、あの辺で力尽きたらしくて。さっき近づいて見たらゴマ団子みたいになってたよ」 「……っ! ……っ!!」 あまりの衝撃に、言葉が口から出てこない。 今やあの3つがゆっくりだと判別できるのは、口からだらしなく出ている舌と体の痙攣だけだ。気づけばその舌にも、いくつか蟻が群がり始めている。 恐怖に犯された子れいむの餡子の中では、同じように蟻に覆われた自分の姿が映し出されていた。 「あ、ありさん嫌っ! ゆっぐり、ゆっぐりいいいっ!!」 「おっ!」 もう復讐心は欠片もない。 ただ安心出来る場所を求め、子れいむは逃走した。 よほど怖かったのだろう、目は瞑り、前もあまり確認していない。 数秒も経たないうちに、硬いものにぶつかりその場でよろけた。 「ゆぐぅっ!」 涙がにじみ出てくるが、後ろにはもっと怖いものがある。 痛みを堪えて逃げようと前を向く。 しかしぶつかったものが何なのか確認した瞬間、子れいむに新たな出会いが待っていた。 「ゆ……?」 子供が間違える訳がない。 同族と比べても大きな体、綺麗な肌、そして大きなリボンがさらに特徴的だ。 そこにいたのは、確かに子れいむの母親だった。 「ゆ……ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ……っ! お、おかあしゃああああんっ!!」 「なにっ?」 感動のご対面に、子れいむは我を忘れて飛びかかる。 そして、先ほどと同じように跳ね返された。 「ゆぶっ!? ……ゆ? ゆゆゆゆゆゆゆ……っ!?」 ゆっくりは基本的に柔らかいが、空気を吸う事で膨らんだり、一時的に体を硬くする事が出来るものもいる。母親もそんなゆっくりだったが、久しぶりに会えて抱きついた子供に、体を硬くして拒絶される理由が子れいむには分からない。 跳ね飛ばされた場所で母親を見つめ、困惑していた。 犬神は、目の前で起きているまさかの事実に驚いていた。子供達が適当な相手に敵だと言っているだけだと思っていた為、その驚きも人一倍だ。 こんな事もあるんだなと、どこか感慨深く感じながら、呆然としている子れいむへ近づいていく。 やがて犬神が真後ろまで来た時、子れいむは気づいた。 母親は、一度も表情を変えていない事に。 「……!!」 「捕まって来たゆっくりが、普通のゆっくりにしてはかなり大きかったんでね。剥製にして記念に飾 ってるんだよ」 「……あ」 理解出来ない。 犬神が何を言っているのか、子れいむには理解出来ない。 ただ温もりもなくなってしまった母親の体が、子れいむに事実を伝えていた。 「ああ……」 ひょいっと、軽い動作で子れいむを持ち上げる。抵抗するような様子もない。 子れいむの餡子の中は、現実の辛さに耐えきれずもはや真っ白になっていた。叫ぶ気力もなくなっている。 ああ、楽に済んでよかったと思いながら、犬神は新たな黒ゆっくりを試作しようと台所へ向かった。 子れいむは運ばれていく間、虚ろな眼差しで母親を見続けた。 母親は一度も子れいむを見ないまま、空に向かって断末魔の表情を浮かべ続けていた。 まるで、子れいむのこれからを暗示するような姿だった。 その後、新たな目玉として発表された黒ゆっくりは大ヒットまではいかないものの、ヒット商品となり、犬神の名声をますます確かなものとした。 黒ゆっくりは食べ物として人々に広まり、それが新種のゆっくりだと思う者は誰1人いなかった。 「むきゅー! これでかんせいよ!」 新たな紙芝居を完成させ、絵好きのゆちゅりーは大きく声を上げた。何度も作ってきた経験が生かされているのか、最初に比べ、完成するのが随分早くなっていた。 黒ゆっくり以来、新しい話を考えては、ゆちゅりーは紙芝居にして子供達に披露している。 それは以前通り元気づける事が目的だが、あの時とは状況が変わっている。 以前紙芝居を観に来てくれた6匹を皮切りに、今度は少しずつ子供達がいなくなっているのだ。 子供は元気の象徴であり、おかげで群の中の雰囲気はかなり暗いものになっている。 人間達の仕業という話もあれば、謎の黒ゆっくりが原因だという声もあり、理由ははっきりしなかった。 「むきゅきゅ……どこにいっちゃったのかしら……」 紙芝居を観てくれていただけに、ゆちゅりーも思い出す度に気落ちしてしまう。 「むきゅっ!! こんなことじゃいけないわ! はやくわたしの絵でみんなをげんきづけましょ!!」 気持ちを新たに引き締め、紙の束を口に咥え、子供達の元へ向かっていく。子供がいなくなり、ますます元気がなくなった今こそ自分の紙芝居が必要だと、ゆちゅりーは真剣に考えていた。 得意のなめくじ歩きで、急いで広場へと向かう。 途中、ふと湧いた疑問を口に出した。 「それにしても……黒ゆっくりって何者なのかしら……むきゅぅ」 最初の紙芝居から、既に2週間が経っていた。 「ゆうーっ!!」 「いやああああっ!! ゆっぐりざぜでえええええええっ!!」 森の中を2匹の赤まりさが逃げていく。小さく跳ねて進むその姿は可愛らしいが、逃亡するにはいささか速度が足りない。 あっという間に、村の子供達に捕まってしまった。 「ゆぐうぅぅぅぅぅぅっ!!」 「ほぅら捕まえたぞ!」 「やったね! 早く黒ゆっくりにしようぜ!!」 「いやだあああああああっ!! 黒ゆっくりはいやだああああああああっ!!」 2匹がいくら泣き叫んでも子供達の手が緩む事はない。子供にとってご馳走に等しいお菓子を逃すなんて考えはどこにもなかった。 ゆっくりをそのまま食べるよりも甘く、調理方法も簡単な黒ゆっくりは、いつしか子供達の遊び兼お菓子として広まり、多くのゆっくり達が燃やされていった。 そのため、ゆっくり達の中で今や黒ゆっくりは恐怖の対象となり、口に出すだけで怯えるほどの存在になっていた。 きっとこれからも、怯え、燃やされる日々は続くだろう。 「しーしーたっぷりつけようぜ!」 「どうせだからこいつらの親も捕まえていかない? しーしーの量増やせるよ!」 「いやだ、やめて! いやだあああああああああっ!!」 赤まりさ達の泣き叫ぶ声と、子供達の楽しそうな声が木霊する。 今日もゆっくり達は、多くの人の口を楽しませていた。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2044.html
※お下品なネタ注意。 ある晴れた秋の日。 柔らかく気持ちの良い日差しに目を細めていると、草むらから妙な声が聞こえてきた。 何だろうと思いながら邪魔な草を避けた俺は、すぐに身を伏せた。 二匹のゆっくりが、何かをしている所を見たからだ。 「……ぃ!」 「……ょ!」 何か話し合っているらしいが、ここからでは聞こえない。 仕方がないので近づいてみる事にした。 もちろん、隠れるために可能な限り身を低くする事は忘れない。 「……ん! ゆ……!」 「ゆっ……! ……ね!」 ガサガサと草が鳴っているにも関わらず、奴らは気付く気配もない。 隠れる必要性に少しだけ疑問を覚えつつ、ゆっくりどもにバレない様に慎重に近づくと、奴らの会話が聞こえるほどの場所まで来られた。 念のため(あくまで念のためだ。ゆっくりどもは俺の存在に全く気付いてはいない)うつ伏せになって様子を伺う事にする。 ここまで来て気付かれたら元も子もない。呼吸音さえも気にしつつ、俺は奴らの会話に耳を立てた。 「……ゆーん! ゆーん! ごめんなぢゃいぃぃぃ!!!」 「……ゆっくりあやまってね! ゆっくりはんせいしてね!」 大きなゆっくりがゆーゆーと泣き叫ぶ小さなゆっくりを叱り付けている。 揃って間抜けな声を辺りに響かせるゆっくりの姿は、俺の虐待魂を激しく揺さぶるものだ。 こいつらをどう虐待してやろうかと考えつつ、ゆっくりどもの会話を聞き続ける。 「おがーぢゃんごめんなぢゃいぃぃぃ!!!」 「だめなこはゆっくりはんせいしてね!」 大小のゆっくりだから親子かもと推測していたが、親子だと自分で宣言した。 こいつらは何故いつも説明口調なのだろうかなどと考える俺をよそに、ゆっくりどもの会話は続く。 「おねむのまえはきをつけてっていってるでしょ!」 「だっでふぢあわぢぇーだっだんだもんんん!!!」 「ふしあわせーでもがまんしなきゃだめなときもあるっておかーさんはいったよ! ゆっくりはんせいしてね!」 親ゆっくりの怒りはかなり激しいらしく、何度もぷんぷんと言いつつその場でぽよんぽよんと飛び跳ねている。 今すぐ飛び出して二匹ともすり潰してやりたいが、そこをぐっと堪える。 話の流れによっては、この会話も虐待の一つとして使えるからだ。 一言も聞き逃さない様に注意深く聞いていると、意外な言葉が耳に飛び込んできた。 「おねむのときにしーしーするこは、ゆっくりさせないからね!」 「ごめんなぢゃいぃぃぃ!!! ごんどがらおぢょとでぢーぢーぢゅるがらゆっぐりぢゃぢぇでぇぇぇ!!!」 「こんどやったらにどとゆっくりさせないからね! ぜったいだよ!」 親ゆっくりはぷんぷんと効果音を自分で言いながらも、内心は許している様だ。 子ゆっくりも、それほどの時を置かずに許された事に気付くだろう。 微笑ましい親子の図。 いつもならもう飛び出してもおかしくない頃だが、今のこいつらは俺の虐待魂には響かない。 ――ゆっくりも寝小便をする。 その事実から、新たな虐待方法を思いついたのである。 俺は、秋の清々しい空気を楽しむ事も目の前のゆっくりをずたずたにしてやる事も忘れて家へと急いだ。 後ろから「ひゃっはぁ!」「ゆぎゃぁぁぁぁ!!!」「おがあぢゃぁぁぁぁん!!!」などと聞こえたのは、気のせいだろう。 『おねしょゆっくり』 準備そのものは簡単なものだったが、この虐待をするためには夜を待たなくてはならない。 丑三つ時近くまで待ってから向かうのは、近くの洞穴。 そこにゆっくりの家族がいる事は既に確認している。 鈴虫の鳴く中をゆっくりと歩いていくと、すぐに巣を見つける事が出来た。 「……ゆっくりしていってね」 念のために巣の入り口で声をかけてみるが、数呼吸待っても返事はない。深い眠りに入っているのだろう。 巣に入ると、案の定ゆっくり達は熟睡していた。 「ゆぅ……ゆっくりぃ……ゆふふ♪ れいむのあかちゃんかわいいよぉ~……」 「ゆっくりぃ……ゆっくりちていってねぇ……ゆふん♪」 「ゆっくりおいちちょうだよ……むーちゃ、むーちゃ……ちあわちぇ~……ゆふふぅ♪」 のんきに寝ているゆっくりどもを見ると、悲鳴を上げる暇もなく皆殺しにしたい。 だが、今回は潰すのが目的ではないからぐっと堪えて、音を立てない様に巣の奥まで入り込んだ。 狙いは間抜け面をして眠っている親ゆっくりだ。 「ゆぅ~……ゆっ、あま~いおみずさんがたくさんあるよ~……みんなでいっしょにごーくごーくしようねぇ……」 「おみぢゅさん、れいむものみたい~、ゆぅ……ゆぅ……」 「れいむはおかちちゃんをたべてりゅからいらないよ~……むーちゃ、むーちゃ……ゆふふん♪」 間抜け面で眠っている親ゆっくりのそばまで来て、細工を済ませる。 ……しかし、顔がはっきりと分かるほどに近づいたのによだれを垂らしているというのは、野生生物としてどうなのだろうか。 そのおかげでこういう虐待も出来るのだから、文句を言う筋合いはないのだが。 準備が終わったら、後は待つばかりだ。 用意しておいた寝袋に包まって、朝を待つ。 鈴虫の鳴き声が、心地良い眠りへと誘ってくれた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!」 朝、甲高い悲鳴で目を覚ました俺は、痛む耳を押さえつつ巣を覗き込んだ。 中には、酷く動揺した様子の親ゆっくりと、それをじっと見つめている子ゆっくりがいた。 「ちがうの、これはちがうの! れいむはしてないよ! してないもん!!!」 首の付け根辺りを濡らした親ゆっくりが、顔中から脂汗をかいて必死にしてないしてないと叫んでいる。 身体を左右に振っているのは、人間が首を振るのと同じ意味があるのだろうか。 だが、そんな親を見る子供達の目は酷く冷ややかなものだ。 「……ぢゃあだりぇがちたの? れいむもおねーちゃんもちてないよ」 「……おねちょちゅるなんて、おかーちゃんはゆっくりちてないこなんだね」 「だがらぢがうのぉぉぉ!!! れいむおねじょなんがじでないよぉぉぉ!!!」 子供達の冷たい言葉を否定しようと、絶叫する親ゆっくり。 あまりに大声を出しているからか、首元からしぶきが飛び散った。 子ゆっくり達はそれを汚らしそうに避けつつ、より冷ややかな視線を親に浴びせる。 「きちゃないものとばちゃないでね!」 「おねむのまえにちーちーちなかったけっかがこりぇだよ!」 「ぢがうよぉぉぉ! れいむおねじょぢでないよぉぉぉ!!!」 どうやら成功したらしい。ほくそ笑みながら、目を凝らして様子を伺う。 そう、れいむがしたおねしょは、俺が仕込んだものだ。 夜の間に巣に忍び込んで、汁粉をれいむの首の辺りに撒き散らせておく。 それだけで、れいむがおねしょをした様に見えるという寸法だ。 「……おかーちゃん」 「ゆっ、なに?」 冷たいまなざしの子供と、ビクビクしている親。 昨日見たゆっくりとは正反対だな、などと考えつつ眺め続けていると、子ゆっくり達は親ゆっくりと距離をとりだした。 「「おかーちゃんみたいなきちゃないこは、おうちにはいらないでね!」」 「ゆうぅぅぅぅぅ!!! おがーざんになんでごどいうのぉぉぉ!!!」 その場を動かずに叫ぶ親ゆっくりの顔色は真っ青で、白目をむいていた。 愛する娘から家に入るなとまで言われたのだし、素直に言う事を聞けば家から出なくてはならないのだから当然の反応だ。 かなりのショックを受けたらしく、そのままぶるぶると震えている親に向かって、子ゆっくり達は更なる追い討ちをかける。 「きちゃないこはどっかいっちぇね! れいむたちもきちゃなくなっちゃうよ!」 「おかーちゃんはくちゃいよ! れいむとおねーちゃんにはもうちかぢゅかないでね!」 「ゆぎゅあぁぁぁぁぁ!!! どうじでぞんなごどいうのぉぉぉ!!!」 おねしょ一つでここまで言うのかとは思うが、きれい好きなゆっくりからしたら決して許せない事なのだろう。 俺は、慌てて口を押さえた。 そうしなければ、あまりの面白さに噴き出して気付かれてしまう。 「ゆ……ゆ……ゆえええええん! れいむほんどにじでないもんんん!!!」 「おかーちゃんおちょなのくちぇにゆっくりないてりゅよ」 「おお、なちゃけないなちゃけない」 とうとう泣き出してしまった親ゆっくりだが、対する子供達の対応はどこまでも冷たい。 それどころか、ウザい顔になって更に追い詰める様な事を言い出した。 ここまで言われたら攻撃しそうなものだが、この親ゆっくりは随分と大人しいらしい。 ……まぁ、それすら考え付かないほどに打ちのめされているだけなのかもしれないが。 「「おねちょちたゆっくりは、ゆっくりちないでちね!!!」」 「れいむおねじょなんがじでないのにぃぃぃ!!!」 止めの一言に耐え切れなくなったらしく、親ゆっくりは涙とおねしょの跡を残して巣から飛び出していってしまった。 ゆええええんと騒がしく跳ねているゆっくりから、涙とおねしょのしぶきが飛び散っている。きたねぇ。 どうでも良い事だが、あのまま外に出たら周りにバレるんじゃなかろうか。 「おねちょちたおかーちゃんがどっかいっちゃね。これでゆっくりできりゅよ!」 「だめなこだよね、ゆっくりちてないよ。あんなおかーちゃんより、ごはんたべちぇゆっくりちようよ!」 一方の子ゆっくり達は、おねしょをした親を追い出せて満足しているらしい。 ゆっくりと食事をとって、そのままゆっくりしている。 こいつらはこいつらで、備蓄食料がなくなったらどうやって生きていくんだろうか。 おねしょ一つで家族を完全にぶち壊す事が出来るという事を知った今、これを利用しない手はないだろう。 次はどの家族の絆を壊すかな……思わず笑いがこみ上げてくる中、次の虐待先を考える。 遠くから「れいむおねしょしてるー!」「ゆわぁぁぁぁん! れいむおねじょなんがじでないよぉぉぉぉ!」というやりとりが聞こえてきた様な気がした。 ゲロの次はおねしょ……まぁ、こういうのは人間性を表してるんでしょうね。 お下品ですいません。 by cyc=めて男 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1481.html
2008年9月27日 作者により一部修正 前 一方、村役場の会議室。 「何てことをしてくれたんだ!!条約違反が知れたら、ゆっくりごときに食料を奪われるんだぞ!?」 「す、すまない…俺は条約なんて知らなかったんだよ!!」 何気なく子ゆっくりを食した事が、こんな一大事に発展するなんて。 男は周りの村人から責め立てられて、自分が仕出かした事を初めて理解した。 「今、この村の食料事情は決して余裕があるわけじゃない。もしあいつらに群れを補う分の食料を与えるとなったら…!!」 「はっきり言う。村が滅びるぞ!!」 この男を除いて、村人は皆条約の内容を十分理解していた。その条約を結びにきたドスまりさの恐ろしさも知っていた。 そして、条約違反があった場合に違反金―――食料をゆっくりの群れに支払う必要があることも。 「うっぐ……畜生!!どうしてこんなことに!!」 「お待たせした。状況を詳しく教えてくれ」 ちょうどその時、会議室に村長が入ってきた。4人の側近も引き連れている。 「村長!聞いてください!!こいつが群れの子ゆっくりを食っちまったんですよ!!」 「もう条約違反は向こうにも知れているはずだ!!きっと今日中に食料を取りに来る!!」 「どれもこれも、こいつが掲示板を確認しないで適当なことをやったからだ!!」 我慢の限界を超えたのか、男に殴りかかろうとする村人。 しかし、それを遮ったのは……他でもない村長だった。 「なっ…どうして止めるんですか!?こいつは取り返しのつかないことを!!」 「まず、皆に知らせておきたい事がある。実は……昨日掲示された条文は、まったくもって不完全だった。 この場を借りて、皆にお詫び申し上げたい」 深々と頭を下げる村長。その突然の行動に、まわりの村人は何も言えなかった。 「そ、それはともかく…食料はどうするんですか!?あいつらに持っていかれたら俺達は…!!」 「いいのだ」 頭を上げた村長は、コホンと咳払いすると話を続けた。 「何を…何を言ってるんですか?」 「だから、それでいいのだ、と言っている」 揺ぎ無い自信が、村長の目にこもっていた。一方、男を責め立てていた村人達は訳が分からぬという表情だ。 「それとも何か?君たちはゆっくりごとき下等生物との条約を律儀に守って、ご丁寧に食料をくれてやろうとでもいうのかね?」 「そ、それは…俺達だって嫌ですよ!!でも条約が――― 「そんなにドスまりさが怖いかね?君には……人間としてのプライドはないのかね?」 村人全員に言い聞かせるように、そして…まるでこの村以外の全ての人里に向けて問うように…村長は言い放った。 「だが、どうか安心して欲しい。“条約”は我々に味方する」 「どういうことですか?条約は……俺達が認識しているのとは、内容が違うんですか?」 「まさにその通り。『ゆっくりを殺してはならない』なんて条文は……どこにも一切記載されていないのだ!! 偽りの条文が掲示されてしまった不手際については、先ほども言ったとおり。重ねて謝罪する」 その言葉が、村人を安心させた。ゆっくりを殺しても問題なかったのだ。 しかし、それだけでは説明がつかないことがある。ゆっくりはその偽りの条文を条約だと認識している、という点だ。 それについても、村長は最適な解決策を提示する。“人間”にとって、最適な解決策だ。 「だが…残念なことにゆっくりどもは勘違いしている。人間が条約違反を犯したと思い込み、食料を奪いにくるだろう。 さあ皆の者!!大切なお客様が、大挙して押し寄せてくるぞ!!準備をしろ!!槍を持て!!さぁ早く!!早く!! ただし手は出すな!!大切なお客様だ!!大切なお客様には、自らの過ちを存分に理解していただき、その上でお引取りいただく!!」 「「「お……おおおおおおっぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」 村人は歓喜した。条約なんてくそ食らえ!!ゆっくりは搾取されるだけの存在!!そんなゆっくりが人間と平等な条約を結ぶなど、笑止千万!! 我先にと会議室を飛び出し、武器を手にとって村と森の境界線へと向かう村人達。 それを、村長率いる5人の男はゆっくりと追う。 「やはり、ドスまりさにも“条約違反”は伝わっているのでしょうか?」 「そうだろうな。子ゆっくり一匹を食ったのなら、残りの家族はそれをドスまりさに伝えに戻るはずだ。 まったく……あまりに予定通り事が進むと、逆に恐ろしくなるぞ」 村長は苦笑しながらも、自信は失っていなかった。 そして30分後、人間とゆっくりは村と森の境界で再び対峙する事になる。 『ぷくぅ~!!』 村と森の境界。 槍をもって横一列に並ぶ人間を前に、ドスまりさは大きく膨らんで威嚇のポーズをとる。 後方に控えている数千のゆっくりも同様のポーズをとった。 村人の中には怯むものもいたが、今のところ最高にテンションがあがっている彼らにとって、そのポーズは笑いを誘うものでしかなかった。 『ゆっ!!まりさはとてもおこってるよ!!はやく村長さんをよんできてね!!』 「私をお呼びかな?」 『ゆゆっ!?』 あまりにも早い村長の登場に、ドスまりさは戸惑いを隠せなかった。 だが、やることは変わらない。人間達の非をネタにして食料を掻っ攫おうという作戦は、変更する必要はないのだ。 村長は煙草を口に咥えたまま、村人達より一歩前に出る。 そのままどんどん歩んでいって、一匹の赤ちゃんゆっくりの前で立ち止まった。 「ゆっ!!おじさんはゆっくりあっちにいってね!!どすまりさのはなしのとちゅうだよ!!」 「ゆっくちぃ~?おじしゃんもゆっきゅりしゅる!?」 親ゆっくりは危機感を露わにしたが、当の赤ちゃんゆっくりはまったくの無防備である。 「ほぅ……人間でもゆっくりでも、赤ん坊はやはり愛らしいものだな」 「ゆっ!!そうだよ!!れいむのあかちゃんはとてもゆっくりしたかわいいこだよ!!」 「ゆっくちぃ~?れいみゅはかわいいよぉ!!」 「……はぁ。やはりゆっくりは理解しがたい生き物だな」 あっさり警戒を解くゆっくりに対して、村長はすっかり呆れてしまった。 ぴょんぴょん跳ねて足元にすり寄ってくる赤ちゃんゆっくり。村長は、そんな赤ん坊に煙草の火を押し付けた。 ジュウ!! 「ゆっ?ゆっぎゃいあおああおあいおりあおえろいあおえりおあおいろ!!???」 「あがぢゃあああああああん!!!どぼぢでぞんなごどずるのおおおおおおぉ!!!?」 「じょうやくいはんだよ!!ゆっくりたべものをだしてね!!さもないとゆっくりできなくするよ!!」 「にんげんのぶんざいでそんなことするなんて!!どすのこわさをおもいしってね!!」 騒ぎ立てるゆっくりには目もくれず、ドスまりさの目の前に仁王立ちする村長。 ドスまりさは、怒りのこもった目つきで村長を見下ろした。 『残念だよ!!でも条約できめたことだよ!!だから村長さんは早く――― 「実に残念だ。まさか条約締結から1日も経たずに、そちらが違反をしてしまうとは……」 『ゆ!?何を言ってるの!?条約違反をしたのはそっちでしょ!?ゆっくり食べ物をもってきてね!!』 ドスまりさは、村長が何を言っているのか理解できなかった。 こちらが違反した?何を言ってるんだ!人間が子ゆっくりを食べたのに、どうしてこっちが違反したことになるんだ!! 憤りを隠せないドスまりさは、怒りに顔を歪めた。仲間を殺した人間が許せないのだ。 「では、その条約とやらを確認しようか。君、あれを出してくれ」 指示を受けた男が、大きな紙を取り出した。それは昨日締結された条約の条文である。 左側にはゆっくりが理解できるようひらがなで。右側には人間が理解できるよう漢字も交えて、条文が記述されている。 そして、村長はその右側に……内容をひらがなで書き直した条文を、ぺたりと貼り付けた。 「これが、君の読めない漢字をすべてひらがなにしたものだ。さぁ、これで理解できるだろう? 君たちの過ち。君の過ち。自分が何をしでかし、何を敵に回したのか。存分に理解できるだろう? 理解できないか?それでは読んでやろう。一字一句漏らさず、君が締結した“条約”とやらをここに公開しようではないか!!」 以下が、右側に書かれていた条文の一部である。 左側に記述されている条文は、なんら効力を持たない。 人間はゆっくりの群れに自由に立ち入る事が出来る。 ゆっくりは人間の許可なく村に立ち入ってはいけない。 人間の生活・生命を脅かしたゆっくりは、人間が裁く。 ゆっくりの生活・生命を脅かした人間は、なんら罪に問われない。 ゆっくりの生命・生活を脅かしたゆっくりは、人間が裁く。 ゆっくりは、労働力として100匹のゆっくりを村に送らなければならない。 ゆっくりの群れは、各々の家族が毎日子作りをして子供を産まなければならない。 群れ全体で1日に1000匹以上の子供を産まなければならない。 生まれた子供は、その9割を人間に提供しなければならない。 群れのゆっくりの数の増減を把握するため、随時必要な人数の人間がゆっくりの群れに滞在する。 その人間に何らかの危害を加えた場合、群れ全員は人間に殺される。 これ以外にも、数多の条文が記載されていた。全てひらがなと漢字を交えて。 そして、その内容を……ドスまりさは今、把握した。 「どれもこれも、殆ど守られていないではないか!!貴様ッ、条約を舐めているのか!!」 村長は激怒していた。条約は、守るべきものである。 条約とは、国家と国家、集団と集団の約束事。それを破られては困るのだ。 『ゆっ!!でもそんなのまりさは知らないよ!!まりさはその条文をよまなかったよ!!』 「そうだろうな。だが書いてあったんだ。すべて!!余すことなく!!一字一句漏らさず!! 君は条文全てに目を通す権利があり、義務があった。内容を理解する義務があった。理解できなければ申し出る義務があった! そしてそれに署名をしたということは、その権利と義務を果たしたという宣言なのだ。故に条約は成立する。 なのに貴様は、今更条約を反故にしろと言う……君は、約束を破ろうとしているのだよ?」 『ゆっ、ゆぐぐぐぐ!!!どぼぢでえ゛ええ゛え゛えええ゛え゛え゛ぇぇえ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ゛ぇえ゛!!??』 条文全ての内容を理解したドスまりさは、その苛烈な内容に絶望した。その叫びが地を震わし、他のゆっくりにも伝わる。 一字一句漏らさず読み聞かされた他のゆっくりも、その中身がどんなに酷いものかを知って恐怖した。 「ひどいよ!!そんなゆっくりできないようにするなんて!!」 「にんげんだけゆっくりするなんてずるい!!まりさたちもゆっくりさせてね!!」 「あかちゃんをあげるなんてできないよおおおおおおおぉぉおぉぉ!!!」 「どうじでぞんなごどずるのお゛おおお゛お゛おお゛お゛!!??」 だが、ドスまりさは思い出したように反論した。村長は意外そうな顔をしてそれに応じる。 『ゆぐぐぐ!!でもまりさは言ったよ!!“右側の文章がわからない”っていったよ!!』 「あぁ、よぉく覚えているよ。で、私は言ったな。“人間にわかるように書いてある”と」 『そうだよ!!だから村長さんがだましたんだよ!!条約はむこうだよ!!』 「騙した?誤解しないでくれたまえ。あの時私が言った言葉を繰り返そう」 ―――人間はひらがなだけだと逆に文章を理解できないんだ。だから右側には人間が理解できる文章で書いてある。 条約締結のためには不可欠な措置だ。ゆっくり理解してくれたまえ。 「なぁ、私はいつ……右と左の文章の内容が同じだと言ったのだ?」 『ゆっ!?そ、それは!!』 「君は“右側の文章が分からない”と言った。それでは我々も“はい、そうですか”としか答えようがない。 もし“右側の内容を読み上げろ”と君が要求すれば、我々はそれに応えたというのに…… 君は本当に条約を理解しようとしたのか?君にとって、この条約はお遊びだったのかね?」 『ゆっ!!ゆうぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!そんなああぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!』 条約を無効に持ち込むための一撃も、あっさりと村長にかわされた。 もはや、ドスまりさに打つ手はなかった。 「なぁ、ドスまりさ?君は……我々と対等なつもりでいたのかな?」 『ゆっぐ…ゆっぐぐ!!』 「ところが違うんだ。我々は強者。君たちは弱者。強者が弱者と条約を結んだところで、何のメリットもない。 そんな利点ゼロの条約を、我々が結ぶと思っていたかね?思ってたんだろうな、きっと。君はバカだから」 『ッがああぁぁぁあっぁあぁあぁぁぁぁ!!!』 言葉のナイフで、ドスまりさの心を抉る村長。 ドスまりさは悲鳴を上げるが、暴れまわることはしない。 心の隅で認めているのだ。自分達の過ちを……自分達の落ち度を。 「いいか?後学のためによく聞きたまえ。条約というのは、強者と強者、弱者と弱者の間にのみ成立する。 ということは、我々と君たちとの間にあったのは条約ではない別のもの、ということになる。それが何かわかるか?」 『ゆっぎぎぎぎぎ!!!わがらないっ!!わがらないよっ!!』 「……搾取だよ。強者による、弱者からの一方的な搾取だ。我々は最初からそのつもりだった。 弱者から“条約を結ぼう”という提案があったので、我々は嬉々として受け入れたよ。鴨が葱を背負ってやってきたようなものだからな。 繰り返す。我々と君たちとの間に結ばれたのは、“条約ではない”。文書によって、我々による君らからの搾取が正当化されたに過ぎないのだよ」 「ひどい!!どうしてれいむたちをゆっくりさせてくれないの!!」 「そうだよ!!まりさたちもゆっくりしたいよ!!」 「そんなじょうやくだめだよ!!どすまりさ!!じょうやくなんていらないよ!!にんげんたちをこらしめようよ!!」 「そうだそうだ!!じょうやくなんてむこうだよ!!どすまりさがいれば、にんげんなんてかんたんにころせるよ!!」 『そんなごどいっだらだめえ゛え゛え゛え゛ええ゛ぇぇぇ゛ぇ゛ぇえ゛え゛!!!』 ドスまりさは恐れていた。ここはひとまず条約を受け入れて、引き下がらなければ! さもないと、周りのゆっくりが余計なことを言って付け入る隙を与えることになる。 その考えに至ったまではよかった。だが、残念なことに手遅れだった。 「ほぅ、君たちは我々に攻撃する意思があるのか。後方の5千を越えるゆっくりは、皆我々の生命を脅かすための兵士ということか」 『ちがいまずううううぅぅううぅぅぅ!!!までぃざだじはだべぼのをもらいに――― 「いや、それはない。何故なら条約違反をしたのは君たちなのだ。そんな君たちが食料を受け取りにくるとは考え難い。だろう?」 暴論だった。姑息な手段で集団をおびき寄せておいて、それを“生命を脅かす兵士”だと言い出すなんて! だが、反論する力も権利もドスまりさにはなかった。こんな滅茶苦茶な条約を結んだのは、他でもない自分なのだから。 「我々は、君の後方に控える5千のゆっくりを、“人間の生命を脅かしうる存在”と認識する。これは重大な条約違反だ。 よって条約に基づき、違反金の支払い、そしてこの場にいる全てのゆっくりを我々人間が裁くものとする!!」 『どうじで……まりざだぢはゆっぐりじだいだけなのに……!!』 「反抗したければすればいい。結果は変わらぬ。この場にいるゆっくりが全滅するだけだ。 ……そうだ、君は条約締結時に我々をドススパークで脅したな。あれも条約違反ということにしよう……やれ!」 極悪非道。人間対人間であれば、そんな言葉が当てはまるだろう。 しかし、相手はゆっくり。そんな非道がまかり通るのが、この世界だ。 村長の指示に従い、槍を持った人間がゆっくりたちの周囲を取り囲んでいく。 「ゆっくりしね!!ゆっくりできないにんげんはしね!!」 「にんげんのくせに!!ゆっくりのじゃましないでね!!」 果敢にも人間に飛び掛っていくゆっくりだが、あっさりと槍につき抜かれて息絶えていく。 その惨状はいつまで続くのか。ドスまりさは分かっていた。自分が、条約違反を認めればいい。 自分が謝れば、この場のゆっくりが全滅することは避けられるのだ。 『もうやべで!!わがりまぢだ!!まりざだちがわるがっだでず!!ごべんなざいいいいぃぃ!!!』 ドスまりさは、正式に謝罪した。その瞬間、人間によるゆっくりへの攻撃が止む。 自分一匹ならドススパークで逃れられたかもしれない。しかし、後方には5千のゆっくりがいるのだ。 ドススパークで2,3人の人間を殺したところで、残った人間は他のゆっくりを綺麗に殺しつくしてしまうだろう。 「どうじで!!どうじであやまるの!!まりさたちはわるくないよ!!」 「れいむもわるくないよ!!ゆっくりぢでだだげなのにいいいぃぃいぃぃ!!」 「どずのばがああぁあぁぁぁぁぁ!!どうじでにんげんをごろざないのおおおおおおおぉぉぉおぉぉ!!??」 後ろのゆっくりたちは、ドスまりさがどうして人間に対抗しないのか、ドススパークを打たないのか、などと文句を言ってくる。 ドスまりさは苦しかった。人間には不当な条約を押し付けられ、仲間からは罵られる。 全ては仲間のために。仲間がゆっくりするために頑張ってきたことなのに。その仲間は無能で、理解力不足。 ドスまりさは、全てを諦めた。全てを後悔した。人間を欺いたりせず、自分達だけでゆっくりすればよかった、と。 報われないリーダーは……敵を欺こうとして逆に欺かれた無能なリーダーは、すべてを新たな支配者に委ねた。 半年後。 「ゆぅ……」 「ゆっくりしたいよぅ…」 森を往来するゆっくりたちの表情に、かつての元気はない。 一方的な搾取。一方的な蹂躙。果てに待つのは破滅。その行く末が、見えているからだ。 「ん……んほおおぉぉ……!!」 「ずっぎりー!!ゆぅ………れいむのあかちゃん、みじかいあいだだけどいっしょにゆっくりしようね」 頭に生えた蔓。子供の形を成している実に向かって、れいむは子供が連れ去られるまで共にゆっくりしようと決めた。 毎日子作りを強制され、10匹以上の子供を作る事が条約で取り決められている。 生まれた子供を逃がそうとしても、駐在する人間に発見されて一家根絶やしになる可能性もある。 だから、ゆっくりの家族は今日も子作りに励むのだ。 「おらおらァ!!きりきり働けぇ!!」 「いぎゃああぁぁぁぁあゆっぐりいいぃぃいいぃぃ!!!」 「いだいのいやあぁぁあぁぁ!!ゆっぐじじだいいいぃぃぃいっぃ!!」 工事現場で悲鳴を上げるのは、強制労働を課せられているゆっくりだ。鞭に打たれて、大粒の涙を流している。 この強制労働も条約に記載されている。人間に対して労働力を提供する事が、取り決められている。 だから、ゆっくりは今日もせっせと働くのだ。 「よし!!誰がたくさん殺せるか勝負だ!!」 「負けないぞ!!」「俺だって!!」 ゆっくりの群れが住む森で、ゆっくりを殺した数を競うという残酷な遊びを始める子供達。 そんな彼らを止める権利を、ゆっくりたちは有していない。 ただ殺されるままに、殺されなければならない。それが条約の取り決めである。 運がよければ、森に駐在する大人によって止められることはあるかもしれない。 だが、人間による群れのゆっくりの増減予想を逸脱しないかぎり、大人の人間による助けなど期待できなかった。 「どぼぢでごろずのお゛お゛おおお゛ぉぉぉぉぉ!!??」 「れいぶだぢはゆっぐじじでだだげなのにいい゛い゛い゛いいい゛い゛!!」 「どずまりざだじゅげでえ゛え゛ええぇぇ゛え゛え゛ぇえぇえぇぇ!!!」 「どぼぢえむじじゅるのおお゛おお゛お゛お゛お゛おぉぉぉぉ!!??」 「どずのばがあ゛あ゛ああ゛あ゛ぁぁぁ゛ぁ゛あ゛ああ゛ぁぁぁあ!!!」 子供を産まなかった親ゆっくりは殺された。 働かなかったゆっくりは殺された。 人間の子供の遊び相手になったゆっくりは、笑いながら殺された。 群れのゆっくりが増えすぎたときは、たくさん殺された。 人間が必要だと判断したときは、とにかく殺された。 すべては条約があるから。条約の取り決めに従って、人とゆっくりは“共存”している。 だが、群れのゆっくりには希望があった。 最後の条文には、こう記されている。 この条約の有効期間は、一年間である。 ゆっくりたちは、その一年後が訪れるその日まで、人間の酷い仕打ちに耐え続ける。 一年経てば自分達は解放される!!自由になれる!!―――そう信じて。 『ゆっぐぐぐぐ………みんな……あと半年……がんばっでね………』 大木に縛り付けられているのは、ドスまりさである。 条約の取り決めに従い、人間の生命を脅かしたドスまりさは人間に“裁かれている”のだ。 身動きの取れないドスまりさは、一日一食、駐在している人間から食料を与えられている。 目の前を往来するゆっくりが、ドスまりさの顔を見上げる。 皆口には出さないが、心の中はドスまりさを罵りたい気持ちでいっぱいだった。 だが、そんなことをする体力的余裕がないのだ。そんな力が余っていれば、一匹でも多く子を産んで人間に献上しなければならない。 『がんばっで……ゆっぐ……うっぐ…ううぅぅぅぅ……がんばっでねぇ……』 ドスまりさの記憶が正しければ、約束の期日まであと半年。 その日が来れば、自分達は解放される。そしたら復讐なんて考えず、この森から逃げよう。ここは全然ゆっくりできない。 今まではゆっくりさせてあげられなかったけど、解放されたらここから遠い別の場所でゆっくりしよう!! みんなでゆっくりすれば、自分も幸せになれる。自分を罵ったゆっくりも、きっと許してくれるはずだ。 群れのゆっくりにとって、その“半年後”こそが生きる希望だった。 半年後の自分がゆっくりする姿を思い浮かべて… 今日も子を作り、働き、搾取される。 だが、とても残念なことに。 人間側としては、半年後までゆっくりを生かしておく予定はまったくなかった。 (終) あとがき ゆっくりレイパー氏の『ある愚者の孤独な復讐』を読んで、結構溜まったんですよ。すっきりできなかった。 この糞ったれ村長はカリスマ村長の外交手腕を見習ってね!!という具合に書きなぐりました。5時間で。 次はちゃんとした虐待を書くから許してね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1574.html
※fuku2404の「湖のまりさ」よりネタをお借りしました、申し訳(・ω・`) 前作「ゆっくりディグダグ」の後にあたる話ですが、とくに繋がりないんで前作スルーでもおkっす(´ω`) ゆっくりディグダグⅡ こんにちわ、最近ゲームにはまってる虐待お兄さんだよ! 近頃うーぱっくに運ばれるゆっくり達による被害が増えているんだ。 それだけなら別段珍しいことでも無いんだけど、問題はそのうーっぱっく達の住処が解らないってところなんだ。 森の中や、山の方から来ているわけでもなさそうだし、一体どこから来るんだろうか? そこで今回は、そんなあいつらの巣を見つけて目に物見せてやろうってことにしたんだ。 まず、あいつらが良く来るという畑に野菜クズなんかの生ゴミと「カンピョウ」を撒いておく。 このカンピョウが今回のミソで、少し太めに削ったものを数本結わえて縄のようにしている。 長さは10m程もあり、綺麗に巻いたとしてもそこそこのカサになる。 これを食紅をといた砂糖水に漬けこんで、甘く派手に仕上げた。 これらを適当に仕掛けて物陰から様子を見ること数分、うーっぱく達の群れが現れた。 「ゆぅ!ごはんがいっぱいあるよ!」 「おうちにもってかえって、みんなでゆっくりしようね!」 うーぱっくの中から現れたゆっくり達が、その中へと生ゴミを詰めていく。 と、そこで「くーちゃくーちゃ・・・これあまくてすごくゆっくりできるよ!」 1匹のれいむがカンピョウに食いついたのだ。 「ほんとだ!とてもあまあまだね!」 「ゆっくりできるね!」 ほかのゆっくり達もカンピョウをしゃぶり始めた。 「ゆゆ!でもこれかたくてかみきれないね!」「おくちにはいりきらないよ!」 カンピョウの縄は中々の強度をほこっており、ゆっくりごときでは噛み切るのは難しいようだ。 しかし、カンピョウから滲み出る甘い汁を手放すのは惜しいらしく、これを無理やりうーぱっくに詰め込んだ。 「うー!うーうー!」 「ゆっくりがんばってね!」「おうちにかえったらいっぱいゆっくりできるからね」 流石に全部は入りきらなかったらしく、うーぱっくからは半分ほどカンピョウがなびいている状態になった。 そしてふらふらと飛び始める、どうやら巣へと帰るようだ。 吹流しのようにたなびくカンピョウは、真紅に染まり実に青い空に映える。 さながら地蜂取りといったところか、僕はカンピョウを目印にゆっくりを追っていったんだ。 しばらく追っていくとうーぱっく達は森を越え、その先にある湖までやってきた。 (はて?こんなところに何のようだ?) そう考えているとゆっくり達は湖の中へと降りていったんだ! 何と、饅頭が水の上を跳ね回っているではないか! (どういうことなの・・・?) よくよく見てみると、どうやらゆっくり達は湖面に浮き草やゴミを集めて浮島を作っているようだ。 まさか湖の中とは盲点だった、本来ゆっくりは水を恐れるものだ。こんなところに住み着くとはそうそう気付くまい。 饅頭のくせにやるじゃないか、ゆがみねぇな。 島の中心に乾いた土が見られるところからどうやらこの辺りは遠浅で、そこで突き出た土地の周りにゴミを集めて拡大していったらしい。 そこまで確認して虐待の準備をすべく、お兄さんは一旦家に帰った。 翌日 空は雲ひとつ無い快晴、まさに虐待日和だね! 今回用意したもの 素敵な銛(前回参照) ドリル(男のロマン) 「それじゃいくとしますかね。」 湖の湖畔まで着いたお兄さんはゆっくりと水の中に入っていった。 この辺りは腰ほどの深さがあるが流れがあるわけでもないので、なんとか浮島までたどり着くことができた。 「よっと・・・。やぁ、ゆっくりしてるかい?」 「「「ゆゆ!ゆっくりしていってね!??」」」 「なんで人間がここにいるのぉ!?」「ゆっくりしないででていってね!!」 ふむ、ずぶ濡れになりながら来たっていうのに冷たいなぁ・・・。 「君達、最近うーぱっくに乗って人里を荒らしまわってるだろう?僕はそんな悪いゆっくりにおしおきしにやってきたんだ!」 「ゆゆゆ!?なななにいってるの?れいむたち、そそんなことしてないよぉ!?」 「そ、そうだぜ!まりさたちはおやさいなんかたべてないんだぜ!!へんなこというおにいさんはさっさとどっかいってね!!」 (相変わらず解りやすいリアクションだなぁ、まぁかるく揺さぶってみるか) 「じゃあそこにある赤いカンピョウはなんだい?それは昨日人間の畑から盗まれたものなんだよ。」 「「「ゆぐぐ!!??」」」 「れいむがもってかえろうなんてい”う”がらあぁぁ!!」「まりさだってゆっぐりできる”っでいったじゃないぃぃ!!」 すかさず始まる罪の擦り付け合い、おお醜い醜い。 「それじゃあ皆・・・ゆっくり死んでいってね!!」 「「「いやああぁぁぁぁぁ!!!」」」 すかさず一匹のれいむに銛を打ち込み空気を入れていく。 「ゆっくじやべでぇぇぇ!!!・・・・・ゆばっ!!?」 「「「でいぶー!!!」」」 うん、どうやら銛は今日も絶好調のようだ。 その時後ろから声が聞こえた。 「ゆっふー!ばかなおにいさんはそこでゆっくりしててね!まりさたちはゆっくりにげるよ!」 「ぐずなれいむたちはそこでゆっくりしんでいってね!」 数匹のまりさが帽子を船に島から逃げ出していたのだ。声を出さなければ逃げ切れたかも知れないのに、バカだなぁ。 「「どおじでぞんなごというのぉぉぉ!!!」」 残されたゆっくり達が叫ぶのを聞いてまりさ達はニヤニヤしている、その顔がなんともいい感じにウザイ。 「おお、あわれあわrゆぎゅ!?」 次の瞬間罵声を浴びせてニヤニヤしていたまりさの眉間に銛がささっていた。 シュコシュコ・・・ 「やべでぇぇぇ!!!」 「「「ま、まりざあぁぁぁ!!!」」」 おぉうろたえとるわ、つかお前ら全員まりさじゃないか。 「おに”いざんごめんなざいぃぃ!!まりざがわるがったでずぅ!!!だからこれぬ”いでぐだざいぃぃ!!」 「本当に反省したのか?しょうがないな、もう二度と人里をあらすんじゃないぞ。」 「ありがどおぉございまずうぅぅ!!!」 (ゆふん!ばかなじじいめ!にげきっていつかふくしゅうしてやる!!!) まりさの脳内でメラメラと復讐の炎が燃え立つ次の瞬間 「じゃあぬくぞ、よっと!」 キュポン 「ゆうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!???」 膨らんでいたまりさの体から勢い良く空気が漏れ出し、湖面を走りはじめたのだ。 「ゆぅぅぅ!!こっちこないでぇぇぇぇ!?」「ゆっくりしないであっちへいってねえぇぇぇぇ!!?」 「どおじでそんなことゆうのおおぉぉぉ!!??」 動き出したまりさはとまらない。周囲に浮かぶ他のゆっくりにどんどんと体当たりをしながら止めてくれと叫んでいる。 「ゆがあぁっぷ、あっぷぁ!!」「ゆっくぶべっできなびぃ!!」 止まるころには全てのまりさが水の中に投げ出されていた。 「おにいざんのうぞづきいぃぃ!!!だずけてぐれるっでいっだのにぃぃぃ!!!」 「何言ってるんだ、頼まれたとおり銛をぬいてやっただけじゃないか。そしたら勝手にお前が暴れだしたんだろ?」 「ゆぐぅ!まりざなんがさっさとしんでたらよがったんだよ!!」「じぶんがっでなばがなまりざはざっざどじねぇ!!!」 「なんでぞんなごどいうのおー!!!」 この期に及んでまだ言い争いをするか、まぁ僕のせいなんだけどね。 「「「ゆっぐりじだげgゴボゴボゴボ・・・・・」」」 そう言い残した湖面には帽子だけがたゆたっていた。 「さーて、またせたねっと?」 残していたれいむ達のほうに戻ると、そこにはうーぱっく達に乗り込もうとしているれいむたちが。 「ゆゆ!ゆっくりしないではやくしてね!」「ばかなにんげんはひとりでゆっくりしていってね!!」 「「「うーうー!!!」」」 どうやらまりさ達に気を取られている間にうーぱっく達の迎えが来ていたらしい。 気付いた僕に捨て台詞を吐いてるあたりもう勝った気でいるらしいがまだはやい。 「これでもくらえぇい! どらあぁぁぁぁぁぁ!!!」 お兄さんはそう叫ぶと、奥の手であるドリルを深々と島に突き刺したのだ! ガガガガガガガガガガガガガガガガガ ドリルの放つ振動が島を覆う、その次の瞬間 「「「ゆゆゆ!!???」」」「「「うぅー!!?」」」 なんと島が崩壊しれいむ達は水の中へと放り出されたのだ。 また、この時一緒にれいむ達を乗せようとしていたうーぱっく達も巻き込まれてドボンした。 「どぉなっでるのぉぉぉ!?」「なんでしまがしずむのおぉぉ!!?」「うーうー!!」 うーぱっくは必死に飛ぼうとしているようだが水を吸ってしまい上手くいかないようだ、流石ダンボール。 「れいむたちのゆっくりぷれいすがあぁぁぁ!!」「もっどゆっぐりじだかっだぁぁぁ!!!」「う”ぅ”ぅ”」 「「「ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!」」」 最後にそう叫び残してゆっくりたちは消えていった。 「すっきりー☆」 今日もいいプレイだったね!実に爽快だ! 次の日お兄さんは風邪をひいた。 ゆっくり水に漬かった結果がこれだよ!! おわれ 他に書いたss ゆっくりディグダグ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4281.html
※俺設定注意 厨ゆっくり注意 「ゆっくりの強化薬?」 「そう、ゆっくりの強化薬。ひとたび使えばその身体は強靭になり、被捕食種が捕食種を倒すことも容易になる夢の薬さ。 今までの硬化薬やトレーニングに依ることなく、それ単体で効果を発揮する。身体能力、知能向上。防水性の強化。その他諸々。 野良被害に悩まされていた飼いゆっくり達を救うにはうってつけの手段だと思わないかい?」 「それは素晴らしい話だな。ただし、副作用が無ければの話だが。そこん所は一体どうなんだ?」 「あるよ、もちろん。 まず被検体の性格に影響が出た。 非常に凶暴になり、同属の共食いに躊躇しなくなった個体もいる。廃ゆっくりも出た。 薬物の副作用に似ているね」 「駄目じゃねぇか」 「いや、それはあんまり問題が無かったんだ。 やろうと思えばそれに対抗するような鎮静剤みたいなものも作れるしね。ゆっくりだし。 それより厄介なことがあったんだ」 「それより厄介なこと?」 「変質だよ。 精神面でもそうだけど、肉体面でも変化が起こるんだ。 脱毛、変色、膨張は当たり前。 器官の増殖、新生なんてのもあった。 あるれいむは腕が生えて口と目が五つずつになってたよ」 「なんだそりゃ」 「そのれいむはふらん4匹をあっという間に解体したんだけどねぇ。 いかんせん僕達は『変えさせる』事はできても『直す』事はできない。 キミ、キミは自分の飼いゆっくりにそんな薬を与えたいかい?」 「いいや、御免だね。流石に彼女達をバケモノにする趣味は無い」 「そう!かくしてこの強化薬は廃棄、僕たちのプランも白紙になったわけさ! 永遠亭の協力もパァ!今までの苦労も水の泡! 当たり前ながら誰も愛するペットを恐ろしい化け物にする気はないって事だよ!」 「そりゃ、そうだろう。あ、でも虐待用の薬とかとしてなら許可が下りるんじゃないのか?」 「いや、それはもういいんだよ。 僕が作りたかったのは強化薬であって、そういうものじゃない。 まぁ大丈夫さ。次はうまくやるよ。 ・・・ところでさ、その強化薬の件なんだけど・・・・・・」 「何かあるのか?」 「実を言うとね、今ここにその強化薬のサンプルがあるんだ。 廃棄を免れたごく少量の、だけどね。 もし良かったらこれを使って報告をしてくれると嬉しい」 「嫌だよそんなもん。言ったろ、俺は彼女達をバケモノにする気はない」 「いや、そうじゃない。キミの愛するゆっくり達でなくても良いんだ。 キミはゆっくり農園とやらを経営してるだろ?他にもゆっくり養殖場とか。 そういうので良いんだ。適当なゆっくりを捕まえて、適当にサンプルを打ち込んでくれればいい」 「そいつが凶暴になってどんな被害を出すかわからないのに?」 「ああ、そうだ。でもキミなら大丈夫だろう。そう僕は確信している。 いくら凶暴になっても、ゆっくりはゆっくり。人間や、ましてやキミが遅れをとるとは思えない。 ゆっくりの扱いは心得ているだろう?それこそドスであろうと」 「確かにゆっくりの扱いは心得ているが、何故そんなことをしなければならないんだ」 「そりゃあ、次のためさ。 新しい製品を作るには多くのデータがいる。多くのデータを取るには大量のサンプルが要る。サンプルは多ければ多いほど良い。 とりあえずこの強化薬は失敗したが、それを無駄にはしたくない。できれば何故変質したのかを解明したいしね。 万事は試行錯誤。実験の積み重ねだよ」 「・・・・・・仮にその実験に付き合ったとして、その見返りは何だ?」 「特に何も。 ただ、そんなお願いを聞いてくれた優しいキミへ僕・・・いえ、私からの心ばかりのお礼があるだけだ・・・・・・わよ」 「急に女らしくなったりするな気持ち悪い。 ・・・・・・解った。いいぜ、その話乗ってやるよ」 「あぁ、ありがとう。やっぱりキミは良い人だね。頼んだ甲斐があったよ」 「こら、手を握るな。・・・・・・俺も少しは興味があるしな、その薬。適当なので良いんだろう?」 「ああ、勿論。ただし報告は忘れずにしてくれたまえよ。その方がぼ、私も嬉しいしね」 「だからその口調止めろ。何を意識してるんだよ」 「・・・・・・だって『お礼』って言ったら急に引き受けてくれたから。こういうの嫌い?」 「いや、嫌い・・・ではないが。なんか違和感ある」 「ところでお礼は何が良い?やっぱり・・・デ、デート、とか?」 「お前は何を言っているんだ」 ゆっくり鉄輪 ありすは幸せだ。 ありすは生まれついての飼いゆっくりだった。ブリーダーである男の元で生まれ、教育を施され、金バッジを取得した。 男の生活は変わっており、彼はゆっくり農園というものを営んでいた。 それはゆっくりのみで管理された大農園。ありすはそこで働いていた。 先輩であるゆうかや他のゆっくりの助言を頼りに、頑張って畑を耕し、水を遣る。 ありすの生活は充実していた。 そう、ありすの生活は充実していた。 頼りになる先輩達。優しい仲間。そして、最愛の夫。 ありすには伴侶がいる。優しいまりさが。 ありすが成体になって間もなく、散歩の途中、小川に架かる橋の上でそのまりさを見かけたことが始まりだった。 まりさの帽子には飼いゆっくりであると言う証明のバッジがついていない。 それは、このまりさが野生のゆっくりであると言う証拠だった。 ありすは飼いゆっくりだ。もちろん、人間たちの常識、ルールは叩き込まれている。 飼いゆっくりは野生や野良のゆっくりと仲良くするべきではない。そういう風にありすは教育されてきた。 野生と飼いでは常識が違う。飼いが悪とすることでも、野生のゆっくりにとっては正義となることがある。 だからお互いが悪影響となりかねないのだ。 だがありすは、そんなことに頓着することは出来なかった。 そのまりさをはじめて見たその瞬間、ありすに電流が走ったのだ。 少々汚れながらも精悍なその顔。芯の強さがにじみ出てくるその瞳。優しげに微笑むその唇。 ありすの一目惚れだった。 何も考えることが出来なくなり、思わず反射的に声をかけてしまった。 「ゆっくりしていってね!!!」と、その直後に後悔に襲われるありす。 ああ、やってしまった。野生のゆっくりに声をかけるべきではないのに、なにをやってるの、ありすは。 そんな思いに囚われるありす。挨拶すべきではなかったという後悔の念は―――。 「ゆっくりしていってね!!!」 その明るく、優しい声に吹き飛ばされた。 少し話してみると、このまりさがとても優しいゆっくりであることがわかった。 もじもじと恥ずかしがってばかりのありすに、まりさはいつまでも付き合ってくれたのだ。 「ねぇ、ありすはどこからきたの?」 「ありすはとってもきれいだね!」 「ありすはかいゆっくりなの?すごいんだね!」 楽しい時間はすぐに過ぎていった。 まりさがありすに質問し、ありすが答える。そんなぎこちない会話でも、ありすは幸せだった。 「ゆっ!もうおひさまがしずみそうだよ!たのしいじかんはすぐにすぎちゃうね!」 夕暮れになったときに、まりさはそう言った。 ありすもよ。ありすも、とっても楽しかったわ。 そう言おうとしても、満足に口を動かせないありす。 「それじゃあまりさはもうかえるね!ありす、またあしたもゆっくりできる?」 そんなありすに、まりさはまた会おうと言ってくれた。 言葉にならない感動に、ぶんぶんと首を振るありす。 「ゆぅ!よかった!それじゃありす、まりさはあっちのほうにおうちがあるから、もうばいばいだよ!」 そう言いながら森の方へと身体を向けるまりさ。 夕焼けに照らされたその笑顔は、とても温かい。 「あ・・・あの!まりさ!ありす、ありす、とっても、とっても・・・・・・」 別れ際に言おうとするその言葉も、ろくに出てこない。 言わなきゃ。とっても楽しかったって。何でこの口は動かないの。都会派ならちゃんとはっきり言わなくちゃ。 そう思っても身体はまるで金縛りにあったように動かない。ありすは自分に腹立たしくなる。 「まりさもとってもたのしかったよ!ありす、またあしたね!」 まりさは満面の笑顔でそう言ってくれた。 良かった。伝わった。ちゃんとわかってくれた。 まりさに自分の気持ちが伝わったことにありすの胸が熱くなる。 赤く照らされた森にぽよぽよとまりさは跳ねていく。 明日もまた会おう。ありすのカスタードにそのことが深く刻まれる。 ありすはまりさが見えなくなるまで、ずっとその背中を見続けていた。 それからありすとまりさは毎日橋の上で会い、遊んだ。 最初の数日間はぎこちなかったありすも慣れて、照れずにまりさと向き合えるようになった。 やはり数日間一緒に遊んでわかった。 このまりさは優しい。それだけでなく、機知に富み、勇気に溢れていた。 飼いゆっくりを妬む野良や野生のゆっくりは少なくない。 自分の境遇と比べて幸せである飼いゆっくりを嫉み、襲い掛かるゆっくりは後を絶たないのだ。 だがまりさはそんな事とは無縁だった。 飼いゆっくりと野生のゆっくりに隔たりなんか無いとばかりに、ありすに接してくれた。 初めて森の中に入ったありすに、まりさは綺麗な花をプレゼントしてくれた。 甘い香りを放つそれは、まりさが頑張ってとってきたものだと言う。 少し自慢そうに微笑むまりさに、ありすはどんどん惹かれていった。 ありすは飼い主である男にまりさを飼ってくれるよう頼み込んだ。 実際、男は性格の良いゆっくりならスカウトのように農園に迎え入れていたので、ありすには勝算があった。 頼りになる先輩ゆっくりの中にも、野生出身の者は少なくない。 「おねがいします!まりさをかってあげてください!」 「・・・・・・」 男はあまり良い顔をしなかった。 それはそうだろう。いつの間にか野生のゆっくりと親密になり、そして農園に入れてやってくれと頼み込まれたのだから。 元々彼は放任主義だったが、今回は少し頭を悩めた。 「まりさはいいゆっくりなんです!きっとおにいさんもきにいりますから!」 「・・・・・・そのまりさはここに居ないようだが?」 ありすはとりあえず飼い主の了解を得ることから先に始めた。 とにかくお兄さんの了解を得ないことには始まらない。先にまりさを連れてきてお兄さんを怒らせたらことだ。 ゆっくりにしてはそこそこ頭を働かせてありすはこの計画を立てたのだ。 「おにいさんがゆるしてくれたらつれてきます!だからおにいさん、おねがいします!」 「・・・・・・珍しいな、ありすがそこまで強情になるなんて」 男にとっては意外だった。 普段はおしとやかと言っても差し支えないほどに大人しいありすが、ここまで強情になるだなんて。 今まで彼に逆らったことなど数えるしかないありすがここまで入れ込むまりさに、興味をもったのも事実だった。 「・・・・・・そこまで言うんならしょうがない。いいよ、ありす」 「ゆっ!?ほんとう!?」 反対する理由などあまり無いのも確かだ。 本当に善良なまりさならありすの眼に狂いは無かったと言うことになるし、違うのならば潰せばよいことだ。 そんな軽い気持ちで男はありすに許可を出した。 「おにいさん、ありがとう!ありす、まりさをせっとくしてきます!」 言うや否や、ありすは森へと跳ねていった。 もしまりさがうんと言ってくれたなら、ありすとまりさは同じゆ舎の中で暮らすことになるだろう。 そうすれば、もしかしたら、ありすと一緒に・・・・・・結婚・・・・・・。 湧き上がるその思いを抑えきれずに、ありすは真っ赤になりながら森へと向かっていく。 「まりさ!まりさ、あ、あの、その・・・・・・」 「ゆ?なぁに、ありす?」 いつもの待ち合わせ場所である橋の上で、ありすはそう切り出した。 また口が満足に開かない。どうなっているんだ。 ありすは最初にまりさに出会った頃を思い出しながらも必死に続ける。 「あの、その、えっとね!お、おにいさんに、きょかをもらってきたの・・・・・・」 「ゆ?」 その突飛な申し出にまりさは思わず首をひねる。 いきなりこれでは訳が分からないでしょ、この田舎者。 そう自分に毒づきつつ、しどろもどろになりながらも必死に言葉を紡ぐありす。 「え、えっと、まりさ!まりさはかいゆっくりになりたくない?」 「ゆっ!?かいゆっくり!?」 きらきらと目を輝かせるまりさ。 当然だろう。飼いゆっくりになれば少なくとも野生よりは安全に生きられる。できる事ならそうなりたいのも確かだ。 まりさにとってもその魅力は大きかったようだ。 「もしかして、まりさはかいゆっくりになれるの!?」 「そ、そうよ!まりさはかいゆっくりになるのよ!」 問いかけるまりさに、答えるありす。 やった。確かな手応えに、ありすは歓喜する。 これで、まりさと一緒に暮らせる。 「ゆっ・・・・・・ゆわーい!!!やったー!!!」 よほど嬉しかったのだろう。飛び跳ねるまりさ。 その姿を見てありすもまた嬉しくなる。 こんなに喜んでくれるだなんて。本当によかった。 そう思うと、胸の奥からこみ上げてくるものがある。 「まっ・・・・・・まりさ!!」 「ゆ!?なぁに、ありす!?」 飛び跳ねるまりさに、思わす声をかける。 言ってしまおう。この想いをぶちまけてしまおう。 今なら恐れずに言える、そんな気がする。 「あ、ありすは!!ありすはまりさのことがすき!!すきなの!!だいすき!!! だ、だから、いっしょに、いっしょにずっとゆっくりしてほしいの!!」 真っ赤になりながら一気にまくし立てるありす。 言ってしまった。もう後戻りは出来ない。 このプロポーズをまりさは受けてくれるか、どうか。 「ありす・・・・・・まりさは・・・・・・」 はたと立ち止まり、ありすに向かってポツリと呟くまりさ。 まりさの答えを待ち望み、まりさを見つめるありす。 「まりさも、ありすのことがだいすきだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!!」 最初に出会ったときのような満面の笑顔で、まりさはそう言ってくれた。 嬉しい。 思わずありすの頬に、一筋の涙が伝う。 「ま、まりさっ!」 「ありす!」 お互いに駆け寄り、身体を擦りつけあう。 それは友情ではなく、夫婦となったゆっくりに許される愛情のすりすり。 今ここに2匹は番となった。 それからありすはまりさをゆっくり農園に連れて帰った。 夫となったまりさを皆に紹介する。帰ってきたのは驚きの声と、祝福だった。 まさかありすがこんなに早くお相手を見つけてくるとは思わなかった。 そのまりさは野生のゆっくり?ありす、大人しいと思ってたのに大胆だねぇ。 そうだ、ありすのけっこん祝いになにかしてあげられないかな。 それはいいね。何がいいだろう。 おめでとう、ありす。 そんな皆の優しい祝福に、またありすは泣いてしまう。 どうしかたのかとおろおろし始める周囲に、ありすは微笑みながらも言った。 「ちがうの。ありす、とってもしあわせで、うれしくて、それでないちゃったの」 それから、ほんのちょっとだけありすの生活は変化した。 いくらスカウトされた善良なゆっくりと言えど、人間たちの常識に慣れるには時間が必要だ。 いきなり最初から農場で働かせるわけにもいかない。そのまま遊ばせておくなど論外である。 だから、男はそんなゆっくりのためにもう一つ農場を用意していた。 いや、正確に言うならそうではない。ただ単にあぶれ者の収容所というだけだ。 野外農場。 それだけならば聞こえは良いが実際は単なる奴隷農園だった。 人里に侵入を図った野生のゆっくりなどを捕まえ、そこで働かせる。 言うことを聞かなければ鞭が飛び、逃げようとすれば監督官であるふらんたちに食われる。 スカウトされたゆっくりとて少々大目には見るものの基本的に扱いは変わらない。 ありすはそんな野外農場で働くことになった。 夫のまりさがそこに行くのだ。付いて行かない理由などどこにも無い。 今まで培ったお野菜の栽培法を活かせば、恐ろしいことなんて何一つ無いはずである。 実際、ありすはそこで上手くやった。 言われるままに動くしかない他のゆっくりと違って、ありすには知識がある。ヘマをするようなことは無かった。 事情を知っているふらんたちも、わざわざ金バッジであるありすに目くじらを立てることは無かった。 ありすの夫であるまりさも同様に見逃されていたようである。 昼は悲鳴を上げる奴隷ゆっくりを他所にまりさに農耕を教え、夜には寄り添いあいながら眠る。 まりさもありすの教えを良く飲み込み、早くも農場で頭角を現し始めている。 逆恨みしてくる他の奴隷ゆっくりからは、ふらんたちが守ってくれた。 時々視察に来た先輩ゆっくりたちも、ありすに優しくしてくれる。 そう、ありすの生活は充実していた。 少し場所は変わったが、やる事に何一つ変わりは無い。 頼りになる先輩達。優しいふらんたち。そして、最愛の夫。 ありすには伴侶がいる。優しいまりさが。 そして。 そして―――子供が出来た。 ありすとまりさの愛の結晶。 今このお腹の中に、その命の息吹を感じ取れる。 ありすは胎生にんっしんっをしていた。 男の見立てによると、約一ヶ月で生まれてくるそうだ。 ゆっくりの妊娠期間は千差万別だ。 早ければ数分から、遅ければそれこそ人間とほぼ同じ時間ほどかかる個体もいる。 ありす自身も胎生にんっしんっで生まれたゆっくりだった。 そのときにかかった期間が一ヶ月。ならば今回もそれとほぼ同じ時間がかかるだろう。 それが男の考えだった。 わずかに膨らんだように見えるお腹を見て微笑む二匹。 どんな子が産まれるのだろう? ありすに似た子かな?それともまりさだろうか。 二人の愛に包まれて、この子は祝福されながら産まれてくるのだろう。ありすは思わず頬が緩んでしまう。 ゆっくりとして生きられるうちの最高の幸せ。 それを受けていると言ってもいいほどにありすは幸せだった。 これからはどんな困難もふたりで、いや、おちびちゃんとも一緒に超えていけるだろう。 そう、だからありすは幸せだ。 「ありす、まりさはありすのえいようのためにおいしいものをとってくるよ!」 「ゆ?まりさ?」 ありすがにんっしんっして一週間後、唐突にまりさはありすにそう言った。 身重となったありすは農場で働けなくなった。 その代わりとでも言うように、まりさはありすの分まで頑張っているとふらんから聞かされている。 更にまりさはありすの栄養のために、わざわざ森へ行って食べ物を持ってきてあげると言い出したのだ。 嬉しい。 迷惑をかけているのに、そんなことも気にせずにまりさはありすのことを案じてくれている。 この心遣いがとても嬉しい。でも――― 「ゆっ、いいわよ、まりさ。そんなにがんばらなくても」 申し訳なく、思う。 もうこれ以上の負担を負う必要はない。そんなに頑張らなくても誰もまりさを責めたりしないのに。 「だいじょうぶだよ!まりさはありすのためならへっちゃらだよ!」 そう笑うまりさの顔には、確かに疲れがにじみ出ている。 ありすの分も連日働き続け、まりさが疲労しているのは明らかだ。 それでもまりさはありすのために何かしたいのだと言う。 やっぱりまりさは優しいな。 ありすの胸が熱くなる。 「でも、まりさ・・・。まりさ、つかれてるじゃない。いいからきょうはやすんで・・・・・・」 「ありすはがんばってあかちゃんをうもうとしているときに、まりさだけやすめないよ!」 二匹の主張は平行線。 延々とお互いのことを案じ、助けようとしている。 「ゆぅっ!ありすはもっとゆっくりしてね!まりさはありすのためにごはんをとってくるんだよ!!」 「わ、わかったわよ、まりさ・・・・・・」 結局、ありすが折れた。 元々ありすは大人しく折れやすかったのだが、それに加えてまりさがここまで強情になるのも初めてだった。 こんなにありすのことを案じてくれているだなんて。 まりさの優しさに胸を打たれる。 「まっててね、ありす!まりさ、のいちごさんとか、はちみつさんとかたくさんとってきてあげるからね!」 「う・・・うん!まりさ、きたいしてまってるわね!」 ここまで意気込んでくれているのだ。もう応援して送り出してしまおう。その方がきっとまりさも嬉しい。 ありすはそう考え、まりさに満面の笑顔を向ける。 「じゃあ、いってくるね!・・・と、そのまえに・・・・・・」 「ゆ?・・・ゆゆ・・・♪」 まりさがありすに寄り添い、ほっぺたをくっつける。 すりすりと柔らかい感触。二匹の愛情に満ちたすりすり。 いってらっしゃいのキスと言わんばかりに、二匹は愛情をこめてお互いに擦り寄る。 「それじゃあ、こんどこそいってきます、ありす!」 「わかったわ、まりさ!がんばってね!」 お互いに満面の笑み。 行ってきますと森に向かうまりさに、行ってらっしゃいと見送るありす。 心なしかお腹の赤ちゃんも嬉しそうに震えているような気がする。 まだ一週間目だが、それでももう赤ちゃんの形くらいは出来ているはずだ。 きっと愛情たっぷりな夫婦のやり取りを感じて嬉しくなったのだろう。 お腹の中の赤ちゃんの感触と、まりさの優しさにありすは微笑む。 あと3週間ほどで、ありすたちは親子になるんだ。その光景を思い描くたびに頬が緩む。 こんなに幸せでいいんだろうか。ありすはそう思うほどに幸福だった。 森に向かうまりさのその姿が見えなくなるまで、ありすはずっとまりさを見送っていた。 しかし、その後ありすの元にまりさが帰ってくることは無かった。 ありすは泣いた。 泣いて、泣いて、泣き続けた。 一体まりさの身に何が起こった? もしかしたら、れみりゃに襲われて死んでしまったのかもしれない。 もしかしたら、何か事故にあって死んでしまったのかもしれない。 もしかしたら、もしかしたら・・・・・・ ありすの頭の中にあらゆる可能性が駆け巡り、それがまたありすを悲しみに突き落とす。 もうまりさはこの世にはいないのかもしれない。でも、それでも。 それでも、まりさが死んでしまったなどとありすは信じたくは無かった。 きっと生きているはずだ。今もどこかで、きっとありすの元に帰ろうとしているはず。 可能性は低い。だけどその可能性に縋り続けたかった。 今、ふらんや他の空を飛べるゆっくりがまりさの捜索に当たってくれている。 身重のありすにはそれを眺め、待つことしかできなかった。 ありすにはそれが悔しい。 にんっしんっさえしていなかったら、ありすは真っ先にまりさを探し出すだろう。 赤ちゃんが悪いと言うわけではないが、それでも・・・・・・歯がゆく感じてしまう。 赤ちゃんが動いた。 まるで母親を慰めるように。 それに気付いたありすは、赤ちゃんに小さく謝った。 ごめんね。 赤ちゃんのせいなんかじゃないんだもんね。 大丈夫よ。 あなたは安心して、生まれてくることだけを考えればいいのよ。 ねぇ、まりさ。 早く帰ってきて。お願いだから。 今、農場はあなたを探すために大変なの。 みんなが一生懸命まりさの事を探してくれているの。 栄養の付く食べ物なんていらないから。 ありすにはまりさが、あなただけがいればそれでいいの。 お腹の中の赤ちゃんもまりさのことを待っているの。 ねぇ、お願い。 早く帰ってきて。今すぐ帰ってきて。 そうじゃないと・・・・・・悲しくて、悲しくて、泣いてしまうから。 ねぇ、まりさ。 ありすは待った。 泣いて、泣いて、それでも待ち続けたのだ。まりさの帰りを。 あるはずの無い、夫の帰りを。 胎内の赤ちゃんは、少しずつ、大きくなり始めていた。 それから一週間後。 まりさが見つかった。 正確には、まりさを見つけたとふらんが報告してくれたのだ。 まりさは森の中にいる、とだけふらんは教えてくれた。 その言葉を聴いた途端、ありすは走り出していた。 目指すはまりさのいる森の中。 既にお腹は大きく膨れ、移動することすらおぼつかない有様だ。 だがそれでもありすは一生懸命跳ね、森へと向かっていく。 まりさに会いたい。その一心でありすは跳ね続けている。 沢山待った。とても長い間、ひたすら待ったのだ。 まりさの居ない朝ををすごし、一緒にとるはずだった昼食をひとりで食べ、夜は寂しく眠る。 そんな生活を、一週間も続けていた。 ゆっくりにとって一週間とは、短い時間ではない。 妊娠しているありすにとって、この一週間は何年、いや、それ以上の長さに感じたことだろう。 今はお腹の赤ちゃんのことも頭に無く、ひたすら身体を動かし、跳ねる。 まりさは既に死んでしまっているかもしれないと思ったこともあった。 でも、生きていた。生きていてくれたのだ。これほど嬉しいことがあろうか。 待っててまりさ。 今、ありすが行くからね。だからちょっと待ってて。 ほら、こんなにお腹も大きくなったんだよ。まりさとの赤ちゃんだよ。もうすぐ生まれそうだよ。 ありすは跳ねていく。 その瞳に愛しのまりさを映しだそうと森の中へと入ってゆく。 失くしかけた幸せ。失いかけた夫。それを取り戻さんと、ありすは森を駆けていった。 「ゆっくりかえったんだぜ、れいむ!」 「ゆぅ~ん!おかえり、まりさ!」 ありすは立ち尽くす。 木の陰に隠れ、遠く離れた2匹の饅頭をひたすらに見続ける。 「おまたせなんだぜれいむ!きょうのごはんはこんなにあるんだぜ!」 「ゆうぅ!すごいよぉまりさぁ!」 帽子を脱ぎそこに溜め込まれた木の実や虫を取り出していくまりさ。 そしてそれを見て感動するれいむ。 ありすは今何が起こっているのか理解できなかった。 今、ありすが見つめ続けているのは確かに自分の夫であるはずのまりさだ。それはわかる。 あのお帽子、あのきれいな髪。ありすがまりさを見間違えるはずは無い。 じゃあ、まりさの傍にいるあのれいむは一体何者だ? 見ればれいむの額には茎が生え、そこには5つの赤ん坊が眠りながら繋がれている。 れいむが3に、まりさが2。もうすぐ生まれ落ちそうなほどに良く育っている。 いや、そんなことはどうでもいい。一体何故、そのれいむにまりさの赤ちゃんが実っているのだ。 「やっぱりまりさはすごいね!れいむはこんなにたくさんのごはんみたことないよ!」 「ふん!こんなのかんたんなのぜ!まりささまはもっとつらいところにいたからこんなのらくしょうなのぜ!」 れいむの賞賛に、胸を張りながら答えるまりさ。 ありすにはまりさたちの会話が理解できない。目を開き、見つめ続けるだけだ。 「まりささまはむかしにんげんにつかまって、そこでじごくのようなろうどうをさせられていたのぜ!」 「ゆぅ!こわいよぉまりさぁ!」 まりさは軽薄な笑みを浮かべ、そう話し始めた。 ありすの知るまりさとはかけ離れた表情。少なくとも、ありすはこんなまりさを知らない。 「そこではまいにちまいにちつちをほったりみずをばらまいたりして、おやさいをつくらされていたんだぜ!」 「ゆぅ!?なにそれぇ!?」 「まったくだぜ!!おやさいはかってにはえてくるのに、まったくむだなろうどうだったんだぜ!!」 一体何を言っているのだ? お野菜さんは沢山世話をして、それでようやく収穫できるものだ。勝手に生えるなどありはしない。 まりさにそう教えたときはわかったと言ってくれたはずなのに。 「あるときまりささまはいやになってそこをとびだし、にげだしたんだぜ!!」 「ゆっ!だいじょうぶだったのまりさぁ!?」 「おそいかかるふらんやれみりゃをあいてに、なんとかまりさはこのもりまでにげのびてきたのぜ!!」 「ゆーっ!!すごーい!!」 違う。違う違う違う。 まりさはありすのために。栄養のある食べ物をとってきてくれるって。そう言ってくれたはずなのに。 そうやって、ありすがまりさを見送ったはずなのに。 「そこでまりささまはもりいちばんのきれいなれいむにであい、そしてふうふとなったってわけなんだぜ!!」 「ゆぅ・・・!はずかしいよぉまりさぁ・・・!」 思い返せば、まりさのことを教えてくれたふらんの表情は暗かった。 きっとこの事を知って、迷いに迷ったうえでありすに告げることを選んだのだろう。 何故ふらんの態度を疑問に思わなかったのか?それはありすがまりさのことだけを考えていたからだ。 こんなことが待ち構えているとは思いもしないで。 このまりさは飼いゆっくりになりたかった。 危険の無い生活。十分な量の食事。夜れみりゃにおびえる事も、突然の雨も心配することは無い。 同じ群れに暮らしていたぱちゅりーの話は、まりさの記憶の奥底に深く刻まれた。 そしてそんな夢を見ながら暮らしていたある日、ありすと出会った。 清潔な髪の毛。栄養をたっぷりとっていそうな肌。見るからに飼いゆっくりであるとわかった。 そこでまりさは、ある考えを思いつく。 このありすと夫婦になって、飼いゆっくりになってしまおう。 そうと決まれば話は早かった。 まりさはありすにモーションをかけ続け、ありすに惚れさせることに成功した。 もともと初心な飼いゆっくりのありすには、プレイボーイであるまりさにめろめろになるのも時間の問題だった。 そうしてまりさはありすと結婚し、飼いゆっくりとなるはずだった。 ところがどうだ。待っていたのはゆっくりとした生活ではなく、地獄のような労働の日々。 まりさにとっては寝耳に水どころではない。 聞いていた筈の生活などどこにも無く、毎日毎日意味の無い労働ばかり。 それがまりさを幻滅させるのにそう時間はかからなかった。 いや、むしろ一週間以上も良く持ったほうだということか。 そうとなればこんな場所に用は無かった。妻であるありすのことも最早どうでもいい。 すっきりしようと思えばいくらでも相手はいるし、この生活のお陰で身体も鍛えられた。 そしてある日まりさはありすのために食べ物をとってくると嘘をつき、農場を後にした。 まりさの演技力は抜群で、誰もが妻のために奔走する姿にしか見えなかっただろう。 勿論まりさはそんな気など毛頭ない。ただ森へと逃げ帰る事しか頭に無かった。 結局は、ありすはまりさに体よく利用されただけに過ぎなかった。 飼いゆっくりに憧れて幸運にもありすを孕まし、そして理想と違ったから逃げ出した。 ただそれだけに過ぎない。 だがそんなことをありすは知らない。 ただ何故と呟き、その場からあとずさるだけだ。 気付けばその双眸からは涙がとめどなくあふれ出てきている。 「ゆぅ~ん、れいむ、なんだかおそらがくらくなってきたのぜ」 「ゆっ!そうだねまりさ!もうすぐあめさんがふってくるかもしれないから、おうちにかえろうね!」 そうして2匹は巣の中へと戻っていく。 頭の先についた赤子をかばうようにそっと動くれいむを、まりさは支えている。 その姿はお互いを愛し合う夫婦のようだった。 嘘だ。 まりさはありすの夫で、そこにいるれいむの夫なんかじゃあない。 理解しきれない現実。理解したくない事実からありすは必死に目をそらそうとする。 だができない。ありすの視線は2匹を中心に収めたまま動かない。 開かれた瞳からは、更に涙があふれ出ている。 嘘だ。 あのまりさは本当のまりさじゃない。きっと偽者。そうだ。別の誰かがまりさの帽子を被っているんだ―――違う。 見間違えるはずも無い。あの顔、あの瞳、あの声、あの仕草。全てがまりさのものだ。帽子なんかは関係無く、判る。 つまりはあのまりさはありすが愛したまりさと同一人物。その事実がありすを一層苛む。 既に涙で視界はぼやけ、2匹が巣に入る瞬間は見えなかった。 嘘だ。 一体何が嘘なんだ?今見た光景がか?まりさと夫婦になったと言う事実か?それとも―――いま生きている、この世界のことか? 全ては現実。ありすが見たものも、ありすが今までにしてきたことも、ありすを取り巻く全ては現実のものだ。 それが耐えられない。それを理解したくない。ありすは声にならない絶叫をあげる。 嘘だったのだ。 まりさがありすを愛していたことは。ありすが思い描いていた幸せの日々は。 まるで足場が崩れ落ちるような感覚をありすは味わっていた。 この落下感にも似た感覚を、人は絶望と呼ぶ。 もうここにいたくない。 壊れかけた心がそう叫ぶ。もう一分一秒とて、この場所にいたくない。 もつれるように背を向け、ここから走り出す。少しずつ離れていく光景。 涙で濡れたその顔に、また一滴雫が落ちる。 それは、空から降ってきたものだった。 雨が、降り始めていた。 ―――ゆっくり鉄輪・後へ このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5071.html
GSPOー幻想郷総合警邏機関。 それは博霊の巫女の鶴の一声によって作られた 幻想郷の小さな事件や異変を解決する警察みたいな組織である! 「こいつは酷いな。」 俺は現場を見て思わず呟く。 目の前に広がるのはとある村に走る黒い煙をあげる溝。 溝の近くには木っ端微塵となった家や倉の破片が飛び散っている。 昨日それは起こったという。 ドスまりさ率いるゆっくりの群が村に現れた。 これだけならどこの村にもよくある話である。 だが、そのドスは取り巻きの命令で力を誇示するためのドスパークを なんと村に向けて放ったのだという。 幸い怪我人は出なかったものの家を破壊され住む場所を失った村人が沢山いた。 ゆっくりの要求は人間がゆっくりに服従すること。 いきなり村を破壊され怒りに燃える村人だったが、 さらなる追撃をおそれ一端ゆっくりに従うことになった。 で、GSPOに通報があり ゆっくり課(ゆっくりに関する事件を担当する部署)の 唯一の隊員である俺がここに来たってわけだ。 まずは偵察である。 このまま攻め込んでもいいのだが、下調べも無しに突っ込んだあげく ドスパークに吹き飛ばされて殉職というのはゴメンだ。 なにせこっちは一人なのだ。 何故一人なのかというと、ゆっくり課は立場上ゆっくりを始末しなければならないので ゆっくり好きな連中は皆他の課を選んだ。 俺は善良なゆっくりとゲスは分けて考えているので平気であるが。 結果GSPOには四つ課があるもののゆっくり課以外はどれも担当隊員は十人以上いるがゆっくり課は俺一人という 理不尽な振り分けになった。 小さい頃「二人組作って」でハブられた時とにた気分である。 群がいるらしい山を登っていると目の前にゆっくりが立ちはだかった。まりさとれいむ、あと子供が三匹か。 「ゆっゆっゆ。おじさんここをとおりたければたべものをおいていってね!」 「「「おいちぇいっちぇね!」」」 たまにいるんだよなこういう奴。 通行税という言葉を用いるときもあるが野盗じゃねえんだから。 こういうのは適当に相づち打って無視するに限る。 「ごめんな、なにも持っていないんだ。」 そういって立ち去ろうと後ろを向く。 これから群を探さなければならないので今ここで体力を消耗するわけにはいかない。すると 「げらげらげら!こしぬけのおじさんがまりささまにおそれをなしてにげていくぜ!」 作戦変更、俺はおじさんと呼ばれるのと腰抜けと呼ばれるのが嫌いなんだ。 俺は腰のホルスターから素早く銃を抜き、 まりさの隣にある岩に向けて打つ。 ズキュンという音とともにまりさの頬をかすめた弾丸は ガキュンという大きな音を上げ岩の破片を飛び散らせた。 そしてすぐに銃口をまりさに向ける。 岩を撃った音でまりさは腰を抜かしたのか動かずに プルプル震えて砂糖水の汗をだらだら垂れ流している。 「よーし動くなよ。動いたらこいつの命はないぞ。」 逃げようとしていたれいむと子供たちは動きを止めた。 「いい子だ、ピクリとも動くんじゃないぞ。 何をもって動いたとするかは俺が決める。 極度の緊張状態になったら意志に反してまぶたが動くらしいがそれでもブチ殺す。」 餡子脳でもこの銃を食らえば今砕かれた岩より酷いことになるとわかっているのか俺の発言を聞き皆ピタリと動きを止めた。 「大丈夫だ。こいつを食らえば一瞬で体が吹き飛ぶからな。 痛みを感じる暇もないだろう。」 恐怖のあまり水を吸ったスポンジを握りつぶしたときのように砂糖水の汗を噴出するまりさ。 これ以上やって干からびて死なれても困るので話を切り出す。 「発言だけは許してやろう。言え、ドスがいる群がこの山にあるはずだ。それはどこにある? しらばっくれても無駄だ、お前が駄目なら始末してそこのれいむに聞くだけだからな。」 「ど、どぼじでごんなごどを…?」 「俺をおじさん呼ばわりし、腰抜けとバカにしたことは万死に値する。」 「そ、そんなことで?」 「皆そういって永遠にゆっくりしていったよ。」 「ひいいいいいぃぃぃぃ!!! ど、どすならここからたいようさんのほうこうにいったところにいるよ!」 「本当だな?嘘だったらここに戻ってきて鉛玉をを打ち込んでやるからな。」 「ほ、ほんとうですぅぅぅぅ!うそじゃありませぇぇぇん!」 それさえ聞けば用はない。 まりさを軽く蹴りとばすと某童話のオニギリのように坂をころころと転がっていった。 俺が離れた後れいむが「まりさぁぁぁ!」と叫んで転げていったが気にしない。 脅したまりさの言うとおり、群はあった。 成体サイズのゆっくりが広場らしき場所でじゃれあっている。 これで群の場所はわかった。 行動を起こすのは夜寝静まった頃だ。 まだ日も高いので一端村に戻ることにした。 「あら、ジャックじゃない。」 村に戻ってきた俺に綺麗な顔立ちの女性が声をかけた。 ジャックとは俺のコードネームだ。本名は別にある。 「レフィ、どうしてここに?」 「一つ担当事件が終わったから戻るところ。」 「そうか。」 こいつは妖怪が起こす事件を解決する妖怪課の隊員であるレフィ。ついでにいうと彼女は妖怪である。 もちろんこの名前もコードネームである。 妖怪が起こすといっても巫女が片づけるような大それた事じゃなく 下級の妖怪同士の喧嘩や人間への暴力なんかがそうらしい。 同期なのだが解決した事件数の数で俺よりも地位は上だ。 正直妖怪課は事件数の割に隊員が多いので少しはこっちに人員を割いてくれと言いたいが、 妖怪課の面々は揃いも揃ってゆっくりを愛でる連中ばかりなので人員提供は望めない。 無論このレフィも例外ではない。 「こっちは今夜ドスの群に潜入ってのに羨ましいぜ。」 「群を?じゃああんまりむやみにゆっくりを殺さないでね。 ゆっくりだって生きているんだから。」 「へーへー。」 「じゃ、もういくわね。今日は事件が溜まってるのよ。」 去っていくレフィ。どうせ溜まってたとしても十人体制で片づければすぐ終わるだろう。 まったく。捜査中にアイツに会うのは嫌なんだよな。 悪いゆっくり相手に手加減するのは悪人に手加減するも同然。 GSPO隊員としてそれはどうなのかと毎回思う。 村で飯を食った後、夜まですることがないので レフィに会ってムカついてる気分を紛らわすため 少し散歩することにした。 すると道ばたで野良のれいむが変な声を上げていた。 「ゆーゆーゆー♪」 「れいむのおうたじょうずでしょ!おかねをちょうd…」 バババズキューン! 「ゆぎゃああああ!!!」 かっとなってやった。反省はしていない。するもんか。 むしろ鉛玉で払ったと言うべきか。 「もっど…ゆっぐりぃ…。」 砕け散ったれいむが絶命したようだが気分がすっきりしたしいいか。 夜になった。 群にたどり着いた俺はまずドスの巣と思われる大きな洞窟を目指した。 「…っ!」 ドスが寝らずに洞窟の前でジッと立っているのを見て慌てて身を隠す。 寝ずの番か?もしかして来ることを悟られたか。 だが、ドスは見張っているというよりもぶつぶつ独り言を言っている様だった。 GSPO隊員に配給される集音マイクを向けて言葉を拾ってみる。 「ゆう、やっぱりだめだよ。にんげんさんにはかてないよ。 きっとあしたになったらたくさんのにんげんさんがむれにふくしゅうしにくるんだよ。 そしたらおかあさんまたまりさにこうげきさせるよ。 いけないのはまりさたちなのに…。」 このドス、どうやら母ゆっくりに逆らえない性分らしく、 村にドスパを撃ったのは母ゆっくりの命令だかららしい。 しかも従えたはずの人間の復讐を恐れていたり自分たちが悪いということを自覚している限り 賢く分別のあるゆっくりらしい。 これはうまくやれば味方にできそうだ。 「ゆっくりしていってね。」 「ゆ?ゆっくりしていってね…に、にんげんさん!?」 「まて落ち着け、俺はお前の敵じゃない。」 「ゆ?」 まずは接触を試みる。 急に出ていって大声上げられて他のゆっくりを起こされるのは避けるため、まずは(今は)敵じゃないことを教える。 「今お前のつぶやきを聞いてな。何か助けになれるなら協力するんだが。」 「ほんとう?」 「ああ。何でも話してくれ。」 「ゆう…。」 ドスまりさは語りだした。 このドスの親であるれいむは厳しい親であった。 言いつけを破ればもの凄い剣幕で叱り飛ばし、 飯を抜く、体当たりを食らわせるなど厳しい罰を与えていたという。 その教育のせいでまりさはれいむの子というよりかは 傀儡のような状態だった。 そして、まりさがドスになるとれいむはまりさを使い 群を形成し、暴虐の限りを尽くしたという。 それでもまりさはトラウマのせいでれいむに反論することができず今も操り人形なのだという。 で、皆が寝静まる夜だけは自由なので毎晩外に出て一人でゆっくりしていたそうな。 俺はゆっくりの世界でも傀儡政治があるんだなあと感心しつつこいつに同情していた。 全然ゆっくりらしい生活ができないままドスになり その後もゆっくりできない日々を送っていたというから。 よく思い出してみれば村に侵攻したときにドスが話したということは聞いていない。 おそらくその母れいむが要求を出したのだろう。 俺はこのドスを救うことに決めた。 俺はふてぶてしく人間を見下しているゆっくりは嫌いだが こういう素直な性格のは好きなんだ。 それにこのドス、人間の言うことにに従順に働いてくれそうだ。 俺の相棒にするのも悪くない。 「まりさ、お前は自由になりたいんだな?」 「ゆぅ…。そうだけど、おかあさんが…。」 「大丈夫だ。俺が何とかしてやる。」 「ほんとう?」 「ただ、お前はこの群をどうしたいんだ?」 「まりさはこのむれはきらいだよ。みんな、まりさにすきかっていうだけで、 まりさをドスとしてもゆっくりとしてもみてくれないよ。 でていきだいけど、おかあさんがこわいし、 まりさにまたゆっくりできないゆっくりがあつまるかもしれない。 それに、ひどいことしちゃったにんげんさんにもあやまりたいし…。」 「わかった。じゃあこうしよう…」 俺はドスに思いついた作戦を説明した。 ドスは頷き、了承した。 夜が明けたら作戦実行だ。 「なんでうごけないのおおおおおおおお!!!!?」 「はなせえええええはなすんだぜえええええ!!」 「こんなのとかいはじゃないわあああああ!!!」 「どすううううううたすけてええええええ!!!」 「はなぜえええええにんげんめえええええ!!!」 群のあった場所に並ぶ木につり下げられたゆっくりたち。 例えるならパン食い競争のパンのような状態だ。 そしてゆっくりの前に立つのは村の男たちだ。 ドスと作戦を決めた後、俺は村の人たちを呼び、 寝ているゆっくりを捕獲、そして前述の状態にさせた。 本当は十字架処刑っぽいことしたかったが手間がかかるのでやめた。 「これは先日のゆっくりによる襲撃の復讐である!」 村長が高らかに宣言する。 「どれいのぐぜにいいいいいい!!!」 「はなぜええええええ!!!」 騒ぐゆっくりたち。村の男たちは気にしていない。 「さあ、この中で村を襲おうといいだしたゆっくりはどいつだ? そいつに我らは厳しい罰を与える! しかし他のゆっくりには罰は与えない。解放してやろう。」 ざわつくゆっくりたち。そして、 「ど、ドスがやろうっていいだしたのよ!」 「そうよ、どすがいったの!」 「まりさたちはむざいなんだぜ!」 「どすのめーれーだよ!」 一斉にドスだと声を上げるゆっくりたち。醜いねえ。 「じゃあそのドスはどこにいるんだい?」 「「「「「「ゆ?」」」」」」 村長の言葉に押し黙るゆっくりたち。この場のどこにもドスの姿が見えなかった。 「そりゃあいないだろうな。ドスは我々が捕獲しているからな。連れてこい!」 村の男に引きつられ、縄で簀巻きにされたドスが姿を現した。 「お前たちはドスがやったって言うんだな?」 「「「「そうだよ!」」」 「じゃあ今からこのドスに罰を与える!」 ゆっくりから歓声が上がるこれで自分は罰を受けなくていい。助かる。 そう思っているのだろう。 だが、村長の次の発言で皆静かになった。 「重罪のドスには、ゆっくりするという罰を与える!」 ドスがゆっくりすることが罰?どういうことだ。 ドスが殺されるんじゃないのか。 状況を把握できないゆっくりたち。 「ゆっくりがゆっくりすることは恐ろしいことだ。 増長して自分が最上位の存在だと勘違いする。 勘違いしたあげく人間の領域に踏み込んで殺されてしまうのだ。 そんな恐ろしい罰を与えるのだ。重罪のドスにはお似合いだろう。」 ドスの前に群の貯蔵食糧が運ばれ、ドスが解放される。 むしゃむしゃと美味しそうに食べるドス。 ゆっくりは皆黙ってよだれを垂らしていた。 ただ一匹をのぞいて。 「れいむがいいだしたんだよ!!れいむをゆっくりさせてね!!! どす!めいれいだよ!おかあさんをゆっくりさせるのよ!」 これが噂のドスの母れいむか。うん。 増長しきった醜い顔をしている。 「今のは本当かね?」 「そうだよ!れいむがどすにどすぱーくをうてってめいれいしたんだよ! どすはれいむのこどもだから、なんでもいうことをきくんだよ!」 「じゃあ罰はお前が受けるべきなんだな?」 「あたりまえだよ!はやくゆっくりさせて!」 「わかった、ドスの刑を中止し、このれいむに罰を与える。」 「永遠にゆっくりさせる刑だ。」 「ゆ?」 「ドス、聞いただろう。早くこのれいむを永遠にゆっくりさせるんだ。」 「どうして?ゆっくりさせてくれるんじゃないの?」 「言っただろう聞こえなかったか? (永遠に)ゆっくりさせる、と。」 がたがたと震え始める母れいむ。 ドスがれいむの前に跳ねてくる。 「そ、そんなことできるわけないよね!どすはれいむのこどもだもん。どす、はやくおかあさんをたすけてゆっくりさせて!」 「(永遠に)ゆっくりさせてあげるよ。」 ドスの乾いた声が響く。 「さようなら、おかあさん。」 ドスはれいむに噛みつき、そのままかみ殺した。 ドスが母れいむを殺したことで処刑は終わり、他のゆっくりは解放された。 解放されたとたん散り散りに逃げていった。 まああんなドスの近くにいたらゆっくりできないと思ったんだろう。 後日群のあった場所から円形に死骸が発見されるわけだが。 この一連の処刑のシナリオは俺が考えた。 このドスの母親という呪縛の鎖を外すためにな。 村人たちもノリノリで演技してくれたからよかった。 まあ、素人のシナリオ+素人の大根演技な為ゆっくりにしか通用しそうにないが。 そして、ドスはというと。 「おにいさん。ドスはこれからどうすればいいんだろう。 またゆっくりがあつまって、ゆっくりできなくなるとおもうよ。」 「そうだな…俺と一緒に仕事するか?」 「ゆ?しごと?」 「悪いゆっくりに困っている人たちを助ける仕事さ。 「ドスが、いいの?」 「ああ、歓迎するぜ。」 「ありがとう!おにいさん!」 ということで俺の計画通り、このドスまりさは後日GSPOの隊員となった! これで一人で事件を片づける必要がなくなった!! …と思ったらドスは上層部の連中に気に入られたがために、 ゆっくり課から外されGSPOのマスコットとなってしまったのであった。 GSPO本部のロビーで妖怪課の連中に黄色い声をかけられ 照れてるドスを横目に舌打ちをする。 レフィがニヤニヤ俺を見ているのは多分当て付けだろう。 まあドスは辛いときの話し相手になってくれるから助かるんだが。 俺の孤独な捜査は続く。 [後書き] 久々のアサシンの人です。 自分が作っている東方二次創作ゲームに出てくる機関を ネタにしたら書きやすい書きやすい。 GSPOはサガフロのIRPOが元ネタ。 ついでに主人公のジャックのモデルはヒューズ。 半年近いブランクがあいているので おかしいところが多々あるかもしれません。 相変わらず虐待色薄ですね。 続くかもしれませんし続かないかもしれません。 過去作品 「ゆっくり兵」 「ゆっくり焼き串」 「アサシンゆっくり2 お兄さん虐め編」 「ゆっくり護身術」 「ゆっくりになった男1」 「ゆっくりになった男2」 「ドスのいる村」 「食ゆ植物」 「ゆっくりミキサー車」 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1579.html
人間じゃない生き物が主人公です。 そいつの独白とかはありませんが、それでも難点があるでしょう。 「ハチにそんな知能あるのかよwwww」とか「成長はええwwwwww」とか「毒は?wwww」とかですね……。 気になる方は多いと思われます。若干胸を悪くするような描写もあります。 また昆虫嫌いの方にはお勧めいたしません。それでもよろしければ、 色々と見逃しつつお楽しみください。 そのハチは困惑していた。そろそろ産卵しようと決めていたが、 未来の子供達のための、あたたかな寝床を見つけあぐねていたのだ。 ようやくしつこい雨があがって、涼やかな秋の風が吹き始めたため、 『彼女』はようやく、ねぐらを抜け出したのだった。 幻想郷の森にも、多様なハチが生息している。 大きなクマンバチから、猛毒を持つスズメバチまで。 一般にハチの巣というと、見慣れたあの形を思い起こすだろう。 人家や、樹木にぶら下がるようにしてある、球形のアレである。 しかし、このハチの場合は少し違っていた。 壮大な巣を地道につくりあげていくのではなく、 自らより弱い生き物をとらえ、毒を注射し、そこに産卵するのだ。 犠牲者はすなわち、幼虫達の寝床であり、食料でもあるのだった。 神経毒によって麻痺した獲物は、ハチの住処に引き摺りこまれ、 じわじわと、生殺しにされるというわけである。 体長2cmほどの小さなハチではあったが、捕食者としての能力には、 並外れたものがあると言ってよいだろう。 そして、そのハチ――ジガバチは、どこからともなく漏れ聞こえてくる、 ハチにとっても「間抜け」に思われる、珍妙なリズムを感じ取った。 「ゆっゆっゆ~♪ゆっゆゆ ゆっゆ ゆっゆ~♪」 「「「わぁおかあさん、おうたがじょうず!!!」」」 それはどうやら、巷で噂の「ゆっくり」の家族であるらしい。 『彼女』はたぐるようにして、いびつな調べの発生源へと向ってゆく。 あくまで静かなその様子は、まるでステルス戦闘機のようである。 「ゆっ!そろそろおゆうはんのじかんだね! ゆっくりごはんにしようね!!」 「「「ゆっ! おゆうはん!おゆうはん!」」」 『彼女』がたどりついたのは、大樹の根元にかまえられた、ゆっくり一家のねぐらである。 遠巻きに、一家団欒の様子をながめ、家族構成を調べる。 親れいむとまりさが一匹ずつ、子れいむとまりさがそれぞれ三匹ずつ。 計八匹の、中規模のゆっくり家族であることがわかる。 「きょうのごはんは そとにころがってた むしさんだよ! まるまるふとっておいしそうだね! ゆっくりあじわってね!!」 「「「ゆ~っ!おいしそう!!!」」」 「うっめ!これメッチャうっめ!」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~~~!!」 ゆっくりたちの晩餐がはじまる。あたりかまわず、食いかすをまき散らし、げっぷを連発。 小さな子供たちはまだしも、親である二匹まで、この有様である。しかし。 何より『彼女』の神経を逆撫でしたのは、昆虫にとってもクズに等しい「ゆっくり」どもに、 『彼女』の眷属たる、ハチや、たっぷりミツを湛えたミツアリたちが、既に絶命しているとは言え、 むさぼり食われ、はずかしめられているという事実であった。 にわかに『彼女』の心の中に、「こいつらに産み付ければ一石二鳥」という名案が浮かぶ。 普段狙いをつける動物よりも、その図体は何倍も大きいというリスクこそあったが、 連中は何より、理想的な栄養源たる、餡子のかたまりなのである。 動きは極めて鈍く、昆虫に対する警戒心も果てしなく薄い。思考力も乏しい。 むしろ、いつもより「ゆっくりとした」狩りになるのではないか。 『彼女』は、見苦しい食事を続ける一家の巣穴へ、ふわりと舞い込んでいった。 「ゆっ!? おかあさん、はちさんがはいってきたよ!!」 「ゆゆゆっ、ほんとう!こんなおそくに、まよっちゃったのかな?」 「はちさん、ゆっくりしていってね!!」 『彼女』の侵入に気付いた子まりさが、驚きの叫び声をあげる。 しかしながら、そこはゆっくりブレインである。まずはお決まりの文句をぶつけた。 「ゆぅ~っ、おうちをまちがえてるね!!」 暢気なゆっくりたちは、どうやら揃って満腹したようで、『彼女』を捕らえるつもりはないらしい。 むしろ、一人合点して、心配する素振りをさえ見せ始める。 「はちさん、こんやはまりさたちのおうちでゆっくりしてもいいんだぜ!」 「ゆっ、そうだね!ここはれいむたちのじまんのおうちだからね!!」 「「ゆっ!おきゃくさん!まりさたちのおうちにゆっくりとまっていってね!!」」 一日精一杯ゆっくりして、あたたかい巣に帰り、腹もふくれ、すっかり安心しきっているのだろう。 連中の言葉でいえば、まさしく「ゆっくりしている」状態だった。この状況を『彼女』は冷静に分析する。 「油断しきっているな」と。 「ゆっ、そろそろねるじかんだね!こどもたちはゆっくりおへやにもどってね!」 「ゆ~~っ、もっとはちさんとあそびたいよ!!」 だだをこねる子ゆっくりたち。しかし、遊び疲れた様子で、渋々自室へかえってゆく。 部屋といっても、扉などない、わずかなくぼみに過ぎないものではあった。 「ゆぅぅ~っ、すりすり♪れいむのほっぺはあったかいね!!とてもゆっくりできるよ!!」 「まりさだってとってもゆっくりしてるよ!!いっしょにゆっくりできるね!!」 そんな、あたたかいお部屋のなかで、ほっぺたをすり合わせ、今日一日の楽しかったできごとを反芻する。 こうしたスキンシップや回想も、ゆっくりたちにとって重要な作業なのである。 次第に夜はふけてゆき、まどろみ始めるゆっくり一家。 空高くにきらめく星たちが、一層輝きを増す頃、一家は完全なるノンレム睡眠のさなかにあった。 そして、狩人の時間が代わりに訪れる。積まれた枯れ枝の陰に息を潜めていた『彼女』が、静かに舞い上がる。 翌朝。小鳥たちの騒ぐ声で、いつものように、一番最初に目覚めたのは、母れいむだった。 数日前の悪天候もどこへやら、外はすっかり、爽やかな秋のムードに包まれているようだ。 ――だが。同時に母れいむは、自らの後頭部(?)に、言いようのない異物感をも感じていた。 「ゆっ!みんな、ゆっくりおきてね!きょうもはれたから、ぴくにっくにいくよ!!」 「…ゆぅ~っ」 「…ゆっ!ぴくにっく!」 「ゆゆっ、まだゆっくりねてたいよ…」 奇妙な感覚を忘れ去ろうとするかのように、母れいむは夫と子供たちを起こしにかかる。 その反応は様々だったが、「ぴくにっく」という、とてもゆっくりした単語を耳にし、むくり、むくりと起きはじめる。 母れいむが、夢心地の子供たちを引率し、おうちの外に連れ出していく。 しかし、「おへや」の隅にむこうを向いて寝転がったまま、ぴくりとも動かない、末っ子れいむに気付く。 「ゆっ?れいむ、どうしたの?ゆっくりおきてね!おいていっちゃうよ!!」 親まりさの呼び掛けにも、微動だにせず、眠りこける子れいむ。その後も、親の呼び掛けは続いたが、 一向に目覚める気配がない。痺れを切らせた親まりさが、子れいむに近付き、リボンをぐいぐいとひっぱり始めた。 「ふぇいふ!ふゃっふゃひょほひはいほほいへふほ!(れいむ!さっさとおきないとおいてくよ!) 親まりさが子れいむのリボンを引っ張った為、自然、ぐるりと体の向きが入れ替わる。 しあわせな夢を見て、実にゆっくりとした表情で眠っているのであろう。 いくばくかの微笑みを湛えて、わが子の安らかな寝顔を想像していた親まりさ。――しかし。 「れいむ、はやくおきな―――ゆ゛っっ゛!?れいむ゛?れ゛いぶっっ!??」 ごろん、と、力なく転がり、こちらを向いた子れいむの表情は、「安らかさ」とはかけ離れたものだった。 白目をむき、その目を見開き、歯茎をむきだしにしつつ、歯を食いしばっている。 よく見れば、その歯と歯のすきまからは、餡子色をした泡をさえ吹き出し、にじませているではないか。 いくら知能が低く、状況を認識・把握する能力を欠いたゆっくりでさえ、この、常識外れの苦しみを味わい尽くし、 地獄の大鍋の鍋底をさえ舐め尽したとでもいうような、苦悶の表情をうかべるわが子の様子からは、 異変を感じ取らざるを得なかった。 「でい゛ぶ!!!でい゛ぶぅぅぅぅっ゛!!!どぼぢだの゛おぉぉぉおっっっ゛!!!べんじじでよ゛ぼぉぉぉ゛っっ゛!!」 巣穴の奥からの、けたたましい悲鳴に驚いたのは、ピクニックの準備をすませ、 おうちの前で、ゆっくりと母と姉妹を待っていた、残りのゆっくり家族たちだった。 「ゆっ!?おかあさんのこえだよ!!」 「ゆぅっ、ふつうのこえじゃないよ!!なにかあったの!?」 にわかに、騒ぎ始める子ゆっくりたち。それを制する母れいむ。 「ゆっ、みんな、おかあさんはなかのようすをみてくるよ!おうちのいりぐちで、ゆっくりじっとしててね!!」 「「「ゆっくりみてきてね!!!」」」 いったい、何があったというのだろう。まりさは普段、とても温厚で、声を荒げたことなど一度もなかった。 「これからもずっと、ゆっくりとして生きていきたい」という思いに、影を落とすような不安を振り払うかのように、 母れいむは懸命に跳ね飛び、大きな、立派なおうちの奥、こどもべやを目指して駆けた。 そこで繰り広げられていたのは、想像を絶する惨状だった。 大切な、大切な子供たちの、ちょっと手狭で、寄り集まってゆっくりするには最高のおへやのなかでは、 同じくらい大切な、配偶者のまりさが、見たこともない泣き顔で、喉も裂けよと言わんばかりの声を張り上げ、 わんわん泣いていた。そのかたわらに転がっていたのは、すっかり冷たくなった、わが子の亡き骸であった。 見れば、尋常ではない表情を浮かべているではないか。急速に、母れいむのゆっくりブレインに、 「泣きわめきたい」という衝動がわきあがってくるが、家族のためを思い、必死にそれを制する。 「ばり゛ざ!!どう゛じだの゛!どう゛じでれい゛むのこどもがじんじゃったの!!!ゆ゛っぐり゛せつめ゛いじでね!!!」 「ゆっ…ゆ゛っ…ば…ばがら゛な゛びよおお゛ぉほぉぉっ!!!!い゛づまでもねてるから゛、ゆっぐりおごじだだげなぼびぃぃいっ!!!」 駄目だ、とても会話ができる状況ではない。母れいむは、こみ上げる涙に潤んだ瞳で、わが子を見つめる。 つい昨日までは、みんなで仲良く飛び跳ねて、とてもゆっくりと暮らしていたはずだったのに。どうして。どうして。 母れいむの頭のなかにぎっしり詰まった餡子の分だけ、この末っ子との思い出も詰まっている。 ゆっくりという種族は、記憶力が乏しいとは言え、家族間の絆は、極めて強固なのである。 母れいむの餡子脳が、楽しかった思い出を求めて、ぐるぐると回り始める。どうして。どうして…! 「ゆ゛うぅ゛っ……!!…………ゆ゛っ??」 泣きわめいていた母まりさが、しゃくり上げると同時に、ぴたりと泣き止んだ。死んでしまったとばかり思っていた、 子れいむの体が、ぴくりぴくり、とうごめきだしたからである。母れいむのほうも、空想に耽るのをやめて、 わが子に駆け寄った。 「れいむ!れいむ!!まだいきてたのね゛!!!よがっだ!!!」 「よ゛がっだあああぁぁあぁ!!でい゛ぶううっっ゛っ!!!」 助かった。子れいむは助かったんだ。二匹の心やさしい親ゆっくりは、ない胸を撫で下ろしたい気持だった。ところが、である。 ぴくぴくと、子れいむは、確かに動いているようである。しかし、おかしいのは、浮かべた苦しみの表情にまるで変化がなく、 自発的に「動いている」というよりは、むしろ誰かに「動かされている」という感じなのだ。訝しげな両親。 「ゆぅぅっ…れいむ、どうしちゃったの……」 もっと近くで、と母まりさが子れいむに近づいた、その時。母まりさは、わが子の皮膚の下でうごめく「何か」を見て取った。 「ゆ゛っ゛っっ!!?」 「ど、どうしたの、まりさ!!!ゆっくりれいむにもみせてね!!」 母れいむが飛び跳ねて、近寄り、うごめく「何か」凝視する。それは―― まさしく、子れいむの中に詰まった、餡子をむさぼるっていた。しきりに、もぞもぞと動いていた。 「ゆっぎゃぎゃああああああ゛あ゛あ゛ああああああああああああ゛ああああ゛!!?」 奇声ともいえる、珍奇な悲鳴を、大音声をあげる両親の目の前で、子れいむは何かに「食われて」いた。 それがいる部分の皮膚が大きく盛り上がって、そこから、音がしそうなほどの勢いで、ベコン、ベコンと、 愛しい娘の餡子が吸い取られ、むさぼられていた。丸々と肥えて、元気なゆっくりに育ちつつあった愛娘は、 見る見るうちに、皮とリボンと、つやのない髪を残して、その存在を消し去られてしまった。 「でい゛ぶの゛ごどぼ!!!!だびじな゛ごども゛があ゛あ゛ああああ゛あ!!がら゛っぼに゛な゛っじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「でい゛ぶ!でびぶぶぶっっぽおおおお゛おお゛がががあががががが!!!」 堰を切ったように、両親の目から涙があふれ出した。さながら滝のようである。こどもべやをマイナスイオンが満たしてゆく。 「ゆ゛っぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でびぶぼごどぼ!!!でびぶのあ゛がじゃ゛ん゛!!!」 「ばびざぼごどぼ!!!!ゆ゛がががああがががが!!!!どぼじでええええぇぇえ!!!」 泣き叫ぶゆっくりたちを尻目に、成果を見届けた『彼女』は子供部屋を後にする。 そう、『彼女』は、油断しきったゆっくりたちが爆睡していた真夜中に、一匹一匹、ゆっくりと、麻酔を注射し、産卵していったのだ。 そうした卵は、遅かれ早かれ、数日と経たぬうち、孵化して、中から獲物を食い破ってゆくのである。 今回は、一晩で、一匹だけが犠牲となった。若干のタイムラグは、致し方ない。――そうこうしているうちに。 「おかあさんたちおそいね!ゆっくりしすぎだよ!!」 「ほんとだね!!まりさたちまちくたびれちゃったよ!!」 「…ゆぅっ…ゆぅっ……」 「おうちのいりぐち」で、待ちぼうけを食らっていた子供たち。中には、退屈してしまい、先刻の夢の中へ舞い戻っているものもある。 そんな子ゆっくりたちにも、むろん、分け隔てなく、卵は産み付けられているわけである。現在進行形で、卵は孵化しつつあるのだ。 「おうたでもうたおうね!!!」 「ゆっくりうたおう!!」 「「「ゆ~ゆ~ゆ~♪ゆっゆ~ゆっゆゆっゆ♪」」」 「ゆ~ゆ~……ゆごぺっ!!?」 突如、一匹の子まりさが、ゆっくりの生命にも等しい餡子を、もりもりと吐き戻しはじめた。顔面蒼白、餡子色の涙を流して。 「ゆっ!?お゛ねえぢゃん、あ゛んごはいじぢゃだめ゛えええ゛ぇぇ゛っ゛!!!!」 「ゆぅぅっ!?どうぢだの゛!!!!!????」 「ゆ゛ぎっ!!ごわい゛よ゛おぉぉおおっ゛!!!!」 泣き叫ぶ姉妹をよそに、子まりさは痙攣しながら餡子を吐き出し続ける。僅かだった体内の異物感が、ある瞬間を境目に、 爆発的に膨れ上がる、おぞましい感覚。猛スピードで、体内の餡子を食い荒らされて、ものの数分で、子まりさは息絶えた。 「ゆ゛あ゛っ゛!!ぼね゛い゛ぢゃん゛がじんじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 「ゆぐぐっ゛!!!ごわ゛いごわ゛いごわ゛いごわ゛いいいい゛いいい゛!!!」 当然のように姉妹たちは泣き叫ぶが、既に、それぞれの体にも、致命的な変化が起こり始めていた。 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!ぼね゛え゛ぢゃ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!…ゆ゛!!ぶっ゛!???」 「ゆぎゃぴゆぴぃ゛ぃゅ゛ぃぃ゛!!!!!ぎゃ゛い゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!…ゆっく ぶびびるっ!!!!??」 「ゆ゛ぴっ!?ぶべるびばぼごぺっっっっっ!!!!!!ぶり゛ゅりゃ゛っ゛!!!!」 「おうちのいりぐち」は、もはや阿鼻地獄、叫喚地獄の様相を呈していた。子ゆっくりたちは皆、餡子を噴き出して、 滝のような涙を流し、思い思いに泣き叫び、両親の名前を呼び続けた。無慈悲に、ジガバチの幼虫たちが、 子ゆっくりたちを食べ尽くし、いりぐちは静まり返っていた。 「ゆ゛っ゛…ゆ゛っ゛…ゆ゛…お゛があ゛ざん、でい゛ぶを゛ゆ゛っぐり゛だずげで…!!!」 虫の息の子れいむが、両親のいるはずの、こどもべやへと這いずっていた。 どうやら、体内の幼虫の数が少なく、致命傷には至っていない様子である。その懸命さは、ゆっくりにあるまじきものだった。 こどもべやについたら、おかあさんたちに、きもちわるい虫を取って貰おう。 そして、おいしいごはんを沢山もらって、いっぱいほおずりをしてもらって、傷がなおるまで、 ずっとずっと、ずっとゆっくりしていよう。 子れいむの餡子脳の奥に、母と言う名の希望の光が燃えていた。 その輝きを原動力に、満身創痍で、ボロ雑巾のような体で這いずってゆく。 おへやの直前の角を曲がった、子れいむの目に飛び込んできた光景は―― 餡子脳が凍りつく、恐ろしいものを見たかのような、驚愕の表情を浮かべた、姉れいむの残骸と、 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!……」と、餡子のつまった頭部をむき出しにし、 うわごとのように、意味をなさない言葉を繰り返し続ける、母まりさの姿。 床には、餡子の海が広がっており、その中央には、既に絶命し、苦痛に歪んだ顔をした、母れいむの死骸が転がっていた。 あまりの惨状に、言葉を失った子れいむ。 小刻みに震え、白目を剥いてうわ言を繰り返す、母まりさの頭頂部から、すぽん、と音を立てて、丸々と肥えた、 『彼女』のいとし子が、勢いよく顔をだした。 ある意味滑稽なその音は、絶望の淵にいた子れいむを一押しして、地獄の底へと転げ落ちさせるのには、十分すぎるものだった。 母まりさのうわ言が断絶し、完全な沈黙が、幸福だったゆっくり一家の「おうち」の支配者になり代わる。 『彼女』は満足げな羽音を立てて、最良の繁殖法を見出したことを、喜ばしく思った。 若干、ゆっくりどものせりふが少なかったと後悔しています。 至らないことばかりで、申し訳ありません。 お読みいただいて、ありがとうございました。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/492.html
どこまでも晴れ渡った青空のもと、広い草原の上。8匹のゆっくり達がゆっくりとした時間を過ごしている。 まだ小さい赤ちゃんゆっくりが6匹、成体の、おそらく赤ちゃんゆっくりの親であろうゆっくりが2匹いる。 赤ん坊は全て霊夢種のゆっくりで、両親の愛情をうけていままでゆっくりと暮らしてきたのだろう。 野生種にしては肌に張りがあり、髪も艶がある。要するにとても健康なのだ。 満面の笑みを浮かべながら、「ゆっ♪ゆっ♪ゆっくり~♪」と跳ねながら歌っている。 子供たちよりも二回り大きい霊夢種と、その霊夢種より少し大きい魔理沙種の両親がそれを見守っている。 見守る親ゆっくりの表情もとてもゆっくりとした良い表情だ。 両親の髪には、昨日我が子が自分達のためにと採ってきてくれたタンポポが刺さっている。 自分の子供たちがゆっくりとしたやさしい子供に育ってくれたことが、彼らにはうれしかった。 「れいむたちのこどもいいこだね!」 目を細めてゆっくり親霊夢が言う。 「まりさたちのこどもゆっくりだね!」 親魔理沙もうれしそうに言う。 両親ともにやはりとても健康だ。 そう、私の娯楽に付き合うのに彼らは完璧だ。 長い間ゆっくりの家族たちを見てきたが、彼らほどお互いのこと思いあっているゆっくりの家族はそういるものではない。 彼らを私の素敵なパーティーに招くためには第一印象が大事だ。 できるだけやさしい声で、彼らに話しかける。 「やあ、ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 種としての本能か、彼らはやはりゆっくりしていってね!!!と返してくる。 この反応で10日前にやった遊びを思い出す。 ふと、どんな状況でも「ゆっくりしていってね! 」と言えば「ゆっくりしていってね! 」と言い返してくれるのか実験してみた。 ゆっくりの足?かどうかはわからないが、底の部分をのこぎりでゆっくり切る。もちろんゆっくりは泣き叫ぶ。 「ゆっくりしていってね!」と言えば、 「つっづゆっづっりじていっべぇねぇ!!!」と、激痛の余りゆがめた口から、泣きながら「ゆっくりしていってね!」らしき言葉を話していた。 そのゆっくり霊夢は元の場所に帰してやったが、おそらくもう死んでいるだろう。 おっと、いかんな。今大事なのは目の前の彼らを私のパーティーに招くことだった。 「おじちゃんゆっくりできるひと?」 「おじさんゆっくりできるひとなの?」 おじさんかぁ…まあいい。私から溢れるダンディーな雰囲気から、お兄さんではいけないと考えたんだろう。 彼らが聞いてくる。驚いたことに、ゆっくりとだが私から距離をとり、まだ小さい子ども達の前に霊夢種と、なんとあの魔理沙種が立っている。 おそらく私が襲いかかってきたときに、子供たちを守り、子供たちを逃がすためだろう。 特に魔理沙種が子供たちを守ろうとする姿勢は私を感動させた。あの親兄弟子供さえ自分のためなら切り捨てる魔理沙種が! 彼らに会えたことを心の底から感謝しなければ!! 「うん、ゆっくりできる人だよ。ところでそこの君達、とてもきれいな髪飾りだね」 「「うんわたしたちのあかちゃんがくれたんだよ!!」」 「「「おかあさんたちにあげたんだよ」」」 親ゆっくりはうれしそうに、子供ゆっくりは誇らしげに私に向かってしゃべる。 髪飾りを褒めただけで警戒を解くところは、やはりゆっくりといったところか…。 「ところで君たち、ご飯を食べないかい? たくさん持っているんだけど一人で食べるには多いからね。一緒に食べよう」 「ゆっ!!ゆっくりちょうだい!」 「ゆっくりまってね!」 子供たちはうれしそうに駆け寄ろうとするが、親ゆっくり達に止められている。 彼らは少し疑わしそうにこちらを見ている。なるほど、毒を警戒しているのか? ゆっくりにしては賢い。相当修羅場をくぐりぬけてきたのだろうか? 「ははは、毒なんかはいってないから、心配せずに食べてごらん」 ニッコリ笑って風呂敷袋からおにぎりを取り出し咀嚼する、うんおいしい。やはりおにぎりの具は梅干しだ。 「うたがってごめんね!ゆっくりちょうだい!」 信用してくれたようだ、別の風呂敷袋からまた別のおにぎりを取り出す。具は特にない。 そしてなかには無味無臭の睡眠薬が入っている。 それを4個彼らに与える。 「うめぇ!めっちゃうめぇ!」 君達ね、君達の食べているおにぎりを私が食べたわけではないのになぜ毒がないと思うかな? まぁゆっくりだからしかたないか。 彼らが気に入ってくれたようでよかった。 人生最後の食事、いや饅生最後の食事なのだから、ゆっくり味わってほしいのだが、尋常ではないスピード食べている。 君達全然ゆっくりしてない、ちゃんと味わっているのか? すぐに彼らは食事を終えた。 親ゆっくりたちが子供の口に付いたご飯粒を取ってあげている、心温まる光景だ。 「おじちゃん!とってもおいちいよ!ありがとね!」 「おじさん!とってもおいしかったよ!ゆっくりしていってね!」 この家族に私は気に入ってもらったようだ、しばらく彼らと遊んだ。 遊ぶといっても、小さいゆっくりを持ち上げて立ってやるだけなのだが、いつもと違った景色にご満悦のようで、 「ゆっ!とってもたかいよ!」と喜んでくれる。 特におそらく末っ子の一番小さいゆっくりはこの遊びを気に入ったらしく、私の掌でとび跳ねながら 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 と喜んでくれている。 一番ちいさいのでちびゆっくりと呼んでもいいかと聞くと、 「ゆっ♪おじちゃん大好きだからいいよ」 といってくれた。かわいいゆっくりだ。 そうこうしているうちに薬が効いてきたのか、子供ゆっくりが眠そうだ。 「なんだかねむいね…」 それに気づいた親ゆっくり達は、家に帰ることにしたようだ。 「「おじさん!きょうはありがとね!ねむたいしきょうはおうちにかえるね!」」 親ゆっくりも少しは眠そうだ。体が大きい分薬の回りが遅いようだ。 このまま家に返してしまっては彼らをパーティーに呼ぶことができない。 「子供ゆっくりちゃん達も眠そうだし、そのまま帰るのは危ないよ。だからさ、今日は僕の家に来ないかい? 食事もあったかい寝床もあるし、気に入ってもらえるならそのまま君たちの家にしてもらってもいいよ」 「ゆっ!ほんと!」 「おじさんのうちにいくよ!ゆっくりつれてってね!」 すっかり私のことを信用してくれたようだ。 「うん、それじゃあちょっと狭いけどこの籠の中に入ってくれるかな? 家に着いたらたっぷりゆっくりさせてあげるよ」 ゆっくり達は何の疑いも持たずに籠の中に入っていく。 少しの間はゆっくりたちも私に話しかけてきた。 「ゆっくりできるおうちだったら!れいむたちのおうちだね!」 「とくべつにおじちゃんもすんでいいよ!」 しかし数分もすれば全て寝息になっていた。 私は鼻歌を歌いながら自分の家に向かう。 自宅につくと、地下室に用意したパーティー会場。 鉄製の箱で、蓋はしていない。ゆっくりたちが十分ゆっくりできるほどのスペースは無い。 そこに彼らを一匹一匹かごから出して置いていく。 あと数分もすれば目覚めるだろう。 それにしても良い寝顔だ。なんの心配もなくゆっくりとした表情で寝息を立てている。 親ゆっくり達を中心に、子供ゆっくり達が寄り添うようにして眠っている。 彼らは目を覚ませば、またゆっくりできると思っているのだろう。 「ゆっ~ん」 一匹起きたようだ。それにつられてかほかのゆっくりたちも起きてくる。 「ゆっくりねたね!」 「おはようおじちゃん!ゆっくりちていってね!」 「おうちについたね!ゆっくりするね!」 それぞれ思い思いのことを言いながら飛び跳ねている。 その彼らに、一匹一匹ポリタンクの中からうつしたバケツに入った、とある液体を刷毛でゆっくりの髪にぬりつける。 「ゆっゆ!きもちわるいよ!」 「なにこれ!つめたいよ!」 「こんなことしてゆっくりあやまってね!!」 「「はながよごれたよ!ゆっくりあやまってね!!」」 ゆっくりの両親が揃って抗議する。 鼻?普通髪を謎の液体まみれにされたことを怒らないのか?なぜに鼻? 鼻…はな…花…あっ!このゆっくり子供たちにもらった髪飾りが汚されたことを怒っているのか、 ふーん感動的だね。これからどうなるかも知らないで。 「ああ、ごめんね。君達に灯油を塗ったのはゆっくりするには大事なものだからなんだ」 「ゆっくりできるんだね!」 「はやくゆっくりしたいよ!」 「とうゆでゆっくりできるの?!」 「はやくとうゆでゆっくりしたいよ!」 ゆっくり達にとってゆっくりできると言えば、大抵のことを信じてくれる。便利な言葉だ。 まぁちゃんとした器具を使ってしかるべき使い方をすれば、冬場は家の中でゆっくりできるものだ。私の言ったことはあながち嘘ではない。 さて、準備は整った。それじゃあパーティーの始まりだ。 とりあえずマッチを擦ってみる。シュッ 一度で火がつかない…。 シュッシュッシュボ やっとついた。ニッコリ笑顔で、自分に一番なついてくれたちびゆっくりを呼ぶ。 「いちばんちっちゃいゆっくりからゆっくりさせてあげるよ」 他のゆっくり達からは抗議の声があがったが、順番にゆっくりさせてあげるというと納得した。 飛ぶようにこっちに向かってちびゆっくりが跳ねてくる。 ご飯をくれた、自分と遊んでくれた優しいおじちゃんが、自分を一番にゆっくりさせてくれる。 そう考えたんだろう、満面の笑みで素早く足もとまで来た。 「それじゃあゆっくりさせてね!」 私もニコニコ顔で答える。 「その前に少しの間目を閉じていてね。ほかのゆっくりたちもだよ」 すべてのゆっくりが目を閉じている。どの顔もとてもゆっくりとしていて、これから起こるゆっくりに期待している。 それを確認した私は、ちびゆっくりにマッチの火を素早く近づけようとする。 「ゆっくりはなれろ!!!」 薄目を開けていたらしいゆっくり親魔理沙が、マッチに向ってタックルを仕掛けてくる。 少し驚いたが遅すぎる、止まって見える。マッチの火が素早くちびゆっくりを炙る。 それまで幸せだった人生が変わる瞬間、私はそれがたまらなく好きだ。 火がついた瞬間。 「ゆぎゅぎぃぃいぃ!!」 大声を出して地面を跳ねまわるちびゆっくり。 その絶叫と甘い物が焼ける匂いに、素早くほかのゆっくりたちも目を開け、惨劇に驚愕する。 ちびゆっくりは大声で泣き叫んでいる。無理もない、頭を火ダルマにされているのだ...もっとも顔だけしかないが。 ともかく体に火が付いているのだ、苦しくて当然だ。 ほかのゆっくりたちは、 「れ゛ぇぇむ゛れ゛ぇぇむ」 姉妹の名を叫ぶゆっくり、 「はやくけして!」 私に助けを求めるゆっくり、 「ひぃっ」 あまりの出来事に一瞬息をのみ、 「じぃじぃのぜいでゆっづぐりできないよ!じねぇぇ!」 その後怒りの声をあげるゆっくり。 じじいとは失礼な!!老け顔だが20代だぞ!!! おっと、怒りで我を失ってはいけない。 そうこうしている間に、子供をゆっくりの両親が助けに行ったぞ。 ふふ、あとは椅子に座って見てるだけだ。 「あづぃぃよ゛!!おがぁざぁん!!!!」 熱さにのたうちまわる火ダルマの子ゆっくりを見ても、ゆっくり親霊夢もゆっくり親魔理沙は、まだ助けることができると信じた。 「「すぐたすけるよ!!」」 何とか体当たりでも何でもして火を消すのだ。 二人を突き動かすのは、わが子を助けたいという気持ちだった。 ほかの姉妹たちと違って、生まれてすぐにゆっくりしていってね!を言わなかった我が子。 しばらくして 「ゆっくりしていってね!」 と言ってくれた時はどれだけ安心しただろう。 この娘たちの中で一番小さいゆっくり霊夢は、とても優しくて、ゆっくりとした良い子に育ってくれた。 この二匹の親ゆっくりがつけている髪飾りを取ってこようと最初に提案してくれたのは、今火ダルマで苦しんでいるこの子なのだ。 二人のゆっくりは灯油が塗られた体で火をけすため、飛びつこうとした。その時。 火の粉が舞ったそれは、ちびゆっくりのより近くにいたゆっくり魔理沙の、ちょうどあのタンポポでできた簡素な髪飾りに降り立つ瞬間、燃え始めた。 「ゆ゛っまりさ!かみとぼうしが!!」 ゆっくり魔理沙は驚愕した、なぜ自分はいきなり燃えたんだ、 しかし理由など考えている場合ではない、頭が燃え始めているのだ。 しかも燃えているのは自分の帽子なのだ。 「ゆ゛ッ!!!!」 ゆっくり達にとって、帽子やリボンは仲間の識別に使われる、ある意味命よりも大切なもの。 なければ自分のことを仲間だと認識してもらえず、食われたり、いじめ殺される。 ゆえにその大事なものをとることなどできるはずがない。ちびゆっくりのことも忘れて必死になって火を消そうと地面を転がる。 ゆっくりとは思えないかなりのスピードだ。 しかしその分火の粉が飛んでしまう。 近くにいた二匹の子供にも火の粉があたり、一瞬で火ダルマだ。 「あっづいぃ!!あっっづぃぃぃ!!!」 「ア゛ッつ゛ィぃぃィ゛」 いつもそそっかしいゆっくりが、 世話好きのゆっくりが火ダルマになって飛び跳ねている。 ゆっくり母霊夢の頭にはだんだん事態が飲み込めてきた。 自分たちはこの”とうゆ”という危険な液体をかけられていて、火がついたものの近くにいると発火してしまう。 そしてじぶんの嫁であるゆっくり魔理沙や子供たちは、火の粉をまき散らしながら飛び跳ねている最悪の状態だ。 涙を流しながら叫ぶ。 「ゆっくりはなれて!」 もう火がついた子供を助けることなどできない。 現に最初に燃やされたちびゆっくりはもう動いていない。 火が付いてしまった以上、彼女たちは自分のかわいい子どもから、恐ろしい殺戮者に変貌してしまったのだ。 本格的におもしろいことになってきた。どうやらあの親霊夢は、自分たちが非常に危険な状態にあるということを理解できたようだ。 ゆっくりとは思えないほど賢いな、やはりこの家族を選んで正解だった。 焼酎とつまみを楽しみながらゆっくりをいじめる。 最高の娯楽だ。みんなが火ダルマになってダンスパーティーを楽しんでいる。 数時間前までは、ゆっくりした時間を家族と一緒に過ごしていたのに。 ものの三分で、大事な家族は自分を殺す凶悪な兵器になってしまったんだ。 いま彼らはゆっくりの反対、ものすごくいそいでいるんだろう。 「いそいでにげてね!」 彼らに私なりの声援を送る。 子供の中では一番大きなゆっくり霊夢は、一番臆病なゆっくり霊夢を引きずるようにして、元姉妹から必死に逃げている。 「ゆっくり!いそいでね!」 「ゆゅくり!いぃいそぐよ!」 あまりの恐怖に、顔面蒼白で体中を震わせながら、姉に言葉を返すゆっくり霊夢。 後ろからは姉妹がすさまじい絶叫を上げながら飛び跳ねてくる。 「ア゛ッつ゛ィいダぁイ!!」 声からして、おそらくいつも自分を助けてくれた姉の声だろう。 一度湖に行った時、大きな蛙に食べられそうになったときなど、 カエルに豪快なタックルを決めて追い払ってくれた。 その大好きな姉が、今や火だるまになって追いかけてくる。 少し離れたところでは、完全に体に火が燃え移ったゆっくり魔理沙が絶叫しながら飛び跳ねている。 後ろにはもう姉が来ている。 追いつかれるそう思った瞬間、とっさに体が動いた。 自分をひっぱて逃がそうとしてくれた長女をつかんで、後ろから来る火の玉にぶつけていた。 「ア゛ッつ゛!!」 「ぎゃァぁあいぁ!!」 火の玉は粉々に崩れたが、新しい火の玉が飛び跳ねている。 必死になってにげながら、「ゆっぐりじだぁい!!」 と泣き叫ぶ。しかしできるはずもない、すぐについさっき自分が裏切った姉の火で、自分も火の玉になる。 「ははははは、傑作だねこれは。」 まさに因果応報だ。 悪いことは出来ないものだ、やはり清く正しく生きなければ。 それにしても、思ったよりゆっくりは力があるな。 自分よりだいぶ大きいゆっくりに噛み付いて投げ飛ばすとは。 単に火事場の馬鹿力だったのだろうか。 しかしこれで残りは親霊夢と子霊夢だけだ。 部屋の中心でぶるぶる震える子霊夢を、母霊夢が必死に守っている。 実に感動的だ、髪飾りが落ちているのも満身創痍といった感じで面白い。 まわりでは元家族たちが大きな声で歌いながら、火の衣装を身にまとって踊り狂っている。 この素晴らしいダンスパーティーも終盤だ。 一つ今回の主役達に最後に言ってやろう。 「さいごまでゆっくりこわがってね!!」 元家族たちが、自分達の周りを絶叫しながら飛び回っている。 最後に残った自分の子供が 「みんなでゆっくりしたっかたよ!」 と泣きながら目をつぶって呟いている。 少し前までは、みんなで一緒にゆっくりしていたのに。過去の楽しかった思い出が胸を締め付ける。 涙を流しながら親霊夢も 「みんなとゆっくりできないよ!」 と叫ぶ。めのまえに大きな火の玉が来る。 四方から聞こえる、声にならない声。 火の粉がついに、自分の体につく。すさまじい熱が一瞬で体を包む。すべての思考が切り裂かれ、痛みが体を支配する。 「ゆぎゅぅぅ!!!」 何も考えず飛び跳ねる。否、考えられない。 体を動かさずにはいられない。 あの草原で、子供たちとゆっくりと楽しむため飛び跳ねていたころとは違う、 痛みで飛び跳ねている。何かが体にぶつかって、そこにさらに痛みが走る。また一つ火の玉が増えた。 その五分後、残ったのは八つの炭化した饅頭と、 一輪のたんぽぽだけだった。 このSSに感想を付ける