約 128,324 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1040.html
食堂はすでに閑散としていた。生徒たちの大半は教室を目指し、先ほどまでの喧騒もそれに伴い移動している。 「ご精が出るのう、お嬢さん」 トンペティに声をかけられたメイドは、 「ありがとうございます」 微笑み返し、少し頬を赤らめミキタカへも微笑みを投げかけた。ミキタカは静かに笑い返し、メイドの頬が一層濃い朱に染まる。 掃除中のメイドが離れていくのを目の端で追い、ミキタカは口を開いた。 「どうでした、老師」 「ふむ……」 手を開き、握り、また開き、握る。掌には幾本もの深い皺が刻まれ、それに倍する古い傷跡が走っていた。 「これは主の求めている答えではないかもしれんがの。ルイズ嬢は……なかなか面白い」 「面白い、とは?」 「うむ。パイプ、いいかね?」 「どうぞ」 深く吸い、吐く。鼻から、口から。 「ルイズ嬢から感じ取った生命エネルギーは男のものと女のもの、合わせて二種類。といっても一種類」 「それは興味深いですね」 「その通り」 紫煙をくゆらせ、より深く腰掛けなおした。 「強い絆。絶ち難き縁。恋や愛もあるが、それだけでは無かろう。ルイズ嬢の深い部分に食い込み、二つの生命エネルギーはもはや一つと呼ぶに相応しい。うらやましい話じゃ」 「多重人格のようなものですか?」 「違う。もっと根本の部分でつながっておる。双方がお互いを喜んで受け入れている。そうじゃの……自分の中にもう一人の使い魔がいる、とでも言えばいいか」 「使い魔ですか」 「陳腐な例えを使うとすれば『運命に逆らってでも離れたくなかった恋人たち』じゃな」 「なるほど。ルイズさんの内面にも何かしらの影響がありそうですね……」 顎に指を当て考える。鼻のピアスと耳のピアスを繋ぐ紐が指をくすぐり、こそばゆい。 「判断材料は増えましたが、これは色々な意味で複雑な問題です」 言葉とは裏腹に、口調ははずんでいた。トンペティも楽しそうに煙を吐いている。 「この問題は夜にでも考えるとして、今は実際的に動くとしましょう」 「別の男女のためかな?」 「義理が多いというのも大変です。正月に付き合いで子供とババ抜きする大人の気持ちです」 やはり、言葉と口調は裏腹だ。パイプを離そうとしないトンペティをそのままに、軽い足取りで厨房の入り口に向かった。 生徒達が食事をとった後でも料理人の仕事は終わらない。次の仕込み、洗い物、皆が皆休む暇なく動き続けていた。 「ちょっといいですか」 その場にいた全ての人間が手を止め、声の主を確認し、一人の例外もなく笑い、作業に戻った。 嘲りではない。声の主に対する「こいつは次に何をやってくれるんだ」という期待を覗かせている。 「マルトーさん。下のゴミ置き場に置いてあった大鍋をもらってもいいですか」 「なんだミキタカ、また何か面白いことでもしようってのか」 コック、メイドといった学院内で働く平民達はミキタカに好感を抱いていた。 貴族であっても偉ぶらず、他の貴族達を彼一流の諧謔で煙に巻く様は見ていて痛快だ。 支持者筆頭が押し出しの強いことで知られるコック長のマルトーであり、ミキタカの頼みであれば多少の無理をも通してくれた。 「いいえ。もう少し切実なことですよ」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/410.html
逆に考える使い魔-1 逆に考える使い魔-2 逆に考える使い魔-3 逆に考える使い魔-4 逆に考える使い魔-5 逆に考える使い魔-6 逆に考える使い魔-7 逆に考える使い魔-8 逆に考える使い魔-9 逆に考える使い魔-10
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/59.html
【種別】 使い魔 【解説】 始祖ブリミルが従えていたという四体の使い魔。 神の左手ガンダールヴ。神の右手ヴィンダールヴ。神の頭脳ミョズニトニルン。 現在確認されているのはこの三つのみ、もう一人は記すことさえはばかれるとのことで不明。
https://w.atwiki.jp/dol_tdos/pages/101.html
古い紅 国籍 : 職業 : 船 : レベル 冒険: 交易: 戦闘: 生産 調理 : 保管 : 縫製 : 鋳造 : 工芸 : 錬金術: 造船 : これが自慢 その他
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/150.html
究極の使い魔-1
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/351.html
++第二話 僕は使い魔②++ 時刻は夜。 二人はルイズの部屋に居た。 頼りないランプの明かりと、窓から差し込む月明かりだけが二人を照らしている。 「信じよう」 花京院はそう言った。 ここへ来るまでの道のりで、信じるに足るだけのものは見た。 ドラゴンや巨大なモグラや見たことも聞いたこともないような生物が山ほどいた。 途中で、杖を振って水を自在に操っていたり、土の形を変えたり、炎を出している人たちもいた。 そして、極めつけは空に輝く二つの月だ。 いくら信じたくなくても、これだけ証拠があれば信じるしかない。 「ここが地球じゃない別な世界だってことを信じよう」 もう一度、花京院は繰り返した。 ベッドに腰掛けているルイズは、“だから言ったでしょ。一回で理解しなさいよ、ばか”と言いたそうにため息をついて、花京院を見た。 「で、今度はそっちの証拠を見せて」 「そっちの証拠?」 「そう。あんたが別の世界にいたって証拠」 面倒そうに手をひらひらと振ってみせる。 しばらくの間花京院は考えたが、やがてある物を思いついてポケットを探った。 取り出したのは二つの小型の無線機だった。 エジプトでDIOの屋敷に乗り込む前に、ジョセフが渡してくれたものだ。一つは承太郎に渡すべきものだったが、結局渡せなかった。 彼らはDIOに勝てたんだろうか……? 渦巻く不安を心の底に隠す。彼らは強い。きっと大丈夫だ。 無線機の一つの電源を入れ、ルイズに渡す。 「なによこれ?」 怪訝な顔でそれを見つめるルイズ。 「それを耳に当てて」 「だからこれが一体何だって……きゃあ!」 悲鳴をあげてルイズは無線機を放り投げた。 無線機はベッドの上で弾み、枕元に落ちる。 「な、ななな、なによこれ! 今、あんたの声が!」 「僕の世界では無線機と呼んでいる。遠くに離れていても会話ができるんだ。これはこっちの世界にはないだろう?」 「これ何の系統の魔法で動いてるの? 風? それとも水?」 「科学だ」 「カガクって、何系統? 四系統とは違うの?」 きょとんとした顔でルイズは尋ねてくる。その様子では貴族とも魔法使いとも思えない。ただの子供だ。 「そもそも魔法じゃない。根本的に違うんだ。とにかく、信じてもらえたかい?」 「うーん。少し怪しいけど。まあいいわ、信じる」 「じゃあ早速元の世界に戻してくれないか? 一刻も早く戻らないと仲間が大変なことになるんだ」 「無理よ」 あっさりとルイズは否定した。 その返答に花京院は少し焦る。 「ど、どうして?」 「だって、あんたの世界と、こっちの世界を繋ぐ魔法なんてないもの」 「じゃあ、僕は何で来れたんだ?」 「わたしにわかるわけないじゃない」 投げやりに答えるルイズに、花京院は怒りを覚え始めた。 仲間が危険だっていうのに、なぜもっと真剣に考えてくれないんだ。早く仲間の元に戻りたい。そして共に戦いたい。 「じゃあ、何で僕はこの世界に来れたんだ!」 ほとんど怒鳴りつけるような口調になっていた。 「そんなの知らないわよ! ほんとのほんとに、そんな魔法なんてないの! 大体、別の世界なんて聞いたことないもの」 「勝手に召喚しておいてそれはないだろう!」 「召喚の魔法はハルケギニアの生き物を呼び出すのよ。普通は動物や幻獣なんだけどね。人間が召喚されるなんて始めて見たわ」 「じゃあ、その魔法をもう一度かけてくれ」 「どうして?」 「元に戻れるかもしれないだろう」 ルイズは一瞬悩むように眉間にしわを寄せたが、首を振った。 「無理よ。召喚の魔法、『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元に戻す呪文なんて存在しないのよ」 「とにかく試してみてくれ。成功するかもしれない」 「不可能。一度呼び出した使い魔が死ぬまで、唱えることもできないわ。それとも一回死んでみる?」 「いや、いい」 花京院はうなだれた拍子に、左手のルーンが目に留まった。 見たこともない模様だ。アルファベットでもない。この世界の文字なのだろうか。 「それはね、わたしの使い魔ですって印みたいなものよ」 ルイズは立ち上がると、腕を組んだ。 視線だけ動かして花京院はルイズを見た。 戻る方法がわからないなら探さなければならない。そのためにはこの世界での生活する場所が必要だ。彼女は真面目そうだし、言うことを聞いていれば衣食住は保障してくれるだろう。幸いにもここは学校のようだ。何かを探すのにも最適なはずだ。 花京院はゆっくりと目を閉じ、再び開いてから顔を上げた。 「……わかった。しばらくは君の使い魔になろう」 「いい心がけね」 「それで、使い魔って何をすればいいんだ?」 「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何も見えないもの」 「それで?」 「他にも秘薬を見つけたり、あと、主人を敵から守るって役目もあるわ。これが一番重要なんだけど、あんたじゃ無理ね」 実際は花京院には“スタンド能力”がある。花京院のスタンド、法皇の緑(ハイエロファントグリーン)は力こそ弱いが、射程距離が長く、エメラルドスプラッシュという技もある。並大抵の者には負けはしないだろう。 だが、反論する必要もないので、花京院はそのことについて何も言わなかった。 「だから、あんたには、洗濯、掃除、その他雑用をやってもらうわ」 「わかった。でも、帰る方法を見つけたらその時は帰らせてもらう」 「はいはい。そうしてくれるとありがたいわ。あんたが別の世界とやらに帰れば、わたしも次の使い魔を召喚できるもの」 言い終えて、ルイズはあくびをした。 「さてと、しゃべったら、眠くなっちゃったわ」 「僕はどこで寝ればいいんだ?」 ルイズは床を指差した。 「犬や猫じゃないんだが」 「しかたないでしょ。ベッドは一つしかないんだから」 ルイズはそれでも毛布を一枚投げてよこした。 それから、ブラウスのボタンを外し始めた。 「君は何をやってるんだ?」 「寝るから着替えるのよ」 「そういうのは見えないところでやってくれないか」 「なんで?」 理解不能というようにルイズは小首をかしげる。 その態度に呆れながら、花京院は訊いた。 「貴族っていうのは男に見られても平気なのかい?」 「男? 誰が? あんたはただの使い魔じゃない」 「なるほど」 「それじゃ、もう寝るわ」 ルイズが横になったので、花京院も床の上に横になった。 すると、ぱさっと何かが飛んできた。 「これは?」 「明日になったら洗濯しといて」 「……」 花京院は放り投げられた下着やキャミソールを指で摘み上げた。 それから短く息をついて、それらを部屋の隅に置いた。 毛布をかぶり、横になる。 床は固いし、冷たくなっていて、とても寝心地がいいとは言いがたい。 ふと、一つの疑問が頭によぎった。 ひょっとして、死んだ僕がここにいるってことは、アブドゥルさんやイギーもここにいるんだろうか? そうだといいんだが。 目を閉じ、お腹を撫でた。風穴を開けられたお腹には傷跡すら残っていない。 まるで、夢の中の出来事だったとでもいうように。 でも、本当に僕は死んだ。デス13に襲われたときのような夢ではない。現実だった。 不安が心に広がり始める。考えるときりがない。 ぶんぶんと頭を振って、花京院は頭から毛布をかぶった。 To be continued→
https://w.atwiki.jp/souhei_world/pages/248.html
「偽・機装兵 セファル」 [解説] 時は聖華暦780年代後半。 アルカディア帝国と自由都市同盟の国境で暴れ回った義賊の駆る、幻装兵と思しき機体。人型から四足獣型への変形機構を持ち、いかなる大地をも縦横無尽に駆ける。装甲は既存の機装兵の物を流用・改造した物であり、耐久性も充分な物となっている。 当機体はかなり特殊な経緯で発見され、特異さも相まって謎が多い。それ故、自由都市同盟の文化を以てしても禁忌と見なされている。 操手はアルテ・ラカタリナ・シアンという、アルカディア帝国狩りを専門とする義賊。 発見の経緯: 聖王国第41次魔獣域進軍の際に制圧したオートメーション工場において、戦利品として回収。発見当時は画像の物とは違った姿であり、画像のような姿になった理由は後述する。おそらくは実験機で、試し尽くした後に工場の動力となったのだろうと予測された。 気味悪がった聖王国の政治家により、自由都市同盟の正規軍に売り払われる。その後、売り払われた先の研究機関にて調査が開始された。 発見当時は魔獣形態を取っており、獣操機の起源的な幻装兵と位置づけられた。 しかし、人型形態のプログラムがサルベージされ、二種の混血種としての性質を持つ事が判明。さらに調べると故障したAIが見つかり、「機兵にして鋼魔獣」という実態までもが明らかになった。 幸い、この機体が工場内部から出ていた痕跡は無かった。積もっていた埃のサンプルに魔素年代分析をかけると、最古でも”始祖”内部より古い魔素を検出。つまり、聖華暦の以前から存在する事になる。よって一応の分類上は幻装兵なのだが、実際はそれよりも古い機体であると言えるのだ。 調査完了後のしばらくの放置の後、武力派によって機兵化改修が完了。が、議会の封印派によって封印が強行採決され、禁足地の遺跡に封印の後、禁忌として扱われた。飼おうとした犬を捨てるような、無責任というか何というか……。 以下は基本装備。 [テールブースター] 腰背部から伸びるパーツは展開が可能。2関節で可動し、先端には燃料式スラスターが搭載されている。 [レッグブースター] 脹脛に配置されている噴射型ブースター。赤いパーツの展開度合によって収束・拡散の調節が可能である。収束状態だと対装甲の破壊力を得るため、キックと同時に収束して噴射する事もある。 [手甲部クサビアーマー] 手の甲に配置された可変部位。地面に機体を固定する他、打突武器としての使用も出来る。 [ミスライトネイル(雷)] 雷属性のミスライト鋼を鋳造した、マニピュレータ先端に配置される格闘爪。単体でも帯電している。胸部の雷魔石を通して魔力を増幅する事で、より強力な電撃を飛ばす事も可能。 ビースト形態: 当機体に隠されていた機能……というより、こちらが先に発見された形態である。調査時に人型形態が判明した事によって、各形態に名前が付けられた。実装目的としては、荒地などの足場が不安定な地帯の走破が挙げられる。武器の類は一切使用不可になるため、前述のレッグブースター収束噴射で攻撃する場合が多い。 ---The another face--- かの者は、人に非ず。して、獣に非ず。 800年の眠りから覚めた悪魔の名は 【Barbatos】 ◆ここから反転!◆ 正体は、かのガンダムフレーム「バルバトス」─ ─でも何でもなく、一介の悪地突破型陸戦LEVである。機体名は一応『バルバトス』。 系統は第3世代終期のワンオフ物で、ロックオン対象以外の全権を譲渡する事も可能。 さらに第3世代と次世代、そして後の""古装兵""の原型機への架け橋として、 部分的に魔力行使機関が実装されていた。ごく最初期の物で、基礎動力は電力だった。 例として、地魔法を機械で強制行使し、潤滑油として鉱石油を錬成する部品が関節付近に存在する。 壊れたAIは当時残っていたアニメに登場した「三日月・オーガス」を模したソレであり、 つまりは『機動戦艦ナデシコ』における「天空ケン」のような存在をAI化したといえる。 (余談だが、その時代には『機動戦艦ナデシコ』の映像データも残っている) この機体を開発した技術者は相当なオタクだったらしく、後に開発したルシにも 同じ鉄血系の名前を付けていたのだとか…ぅゎ。 スキルとして顕現した""鉄火の魂""は、起死回生の状況下でAIが再起動を遂げ、 半自動操縦モードに移行しているのが真実である。 上記した通りロックオン対象はパイロットで選択出来る為、見境はある。 因みに当時の伝導装甲は、都市同盟議会の予算とするため、闇ルートに売り払われたとの噂。 …心残りだなぁ、この伝導装甲の設定。使ってもらえないかな? おーい、使ってくださいよ!ねえ!(カミーユ並感) ◆ここまで反転!◆
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2200.html
ゼロと使い魔の書-01 ゼロと使い魔の書-02 ゼロと使い魔の書-03 ゼロと使い魔の書-04 ゼロと使い魔の書-05 ゼロと使い魔の書-06 ゼロと使い魔の書-07 ゼロと使い魔の書-08
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/640.html
** 数日が過ぎると、生徒達のジョナサンへの印象は二つに割れていた。 一つは貴族に歯向かう不埒な平民、というもので、面と向かってジョナサンに勝負を挑んだり罵声を浴びせる者こそ いなかったものの、ルイズと一緒くたに厄介者を見る目を向けられるようにはなった。 もう一つは平民ながら天晴れ、という評で、周囲が驚いたことにギーシュはこの側に立っており、それどころか 「身分の差こそあれ僕達は友人だ、なぁジョジョ?」と公言して憚らなかった。 とはいえ彼自身の女癖の悪さは決闘後も一向に直る気配を見せなかったが。 一方で使用人、つまり学内の平民達からの評価も微妙なものだった。 「魔法が使える平民」「貴族を圧倒した平民」…つまり「評価はするが得体の知れない奴」というのが大勢の意見で、 その中で「貴族サマに一泡吹かせたってだけで俺ぁ痛快だ」と大笑した厨房長のマルトーと、先の決闘の一件で 危うい所を逃れたシエスタだけは、ジョナサンにとって数少ない味方となった。 ルイズにしてみればジョナサンは思った以上に「使える奴」だったが、いかんせん説教臭いのと偉そうなのが いちいちカンに触っていた。 餌付けで言う事を聞かせる方法が聞かない事を悟ると、ジョナサンが使用人の食卓で食事を摂ることを 渋々ながら承知し、その代わりにジョナサンに小間仕事を幾つかさせようとした。 ただ残念ながらジョナサンは生活能力がさほど高くない事がすぐ判明し、結局他の使い魔同様に主人であるルイズの 身辺警護が主な仕事となった。 ジョナサン自身はそのような評価を気にする事も無く、ルイズに付き添って学園生活を送っていた。 当然授業にも同行し、ジョナサンもハルケギニアの歴史・地理・文化についての知識を少しづつ学び始めたが、 いかんせん魔法学校という場所柄のため授業も魔法の原理と実践が主体であり、魔法が使えない身にすれば メイジを相手にした場合の策を考える時以外は無用の知識でしかなかった。 同時に元の世界に戻る方法をあちこち尋ねてはみていたが、そもそも使い魔と主人の契約は無条件の終身契約な上、 「異世界から来る」者がいる割に「異世界に行く」者は皆無と知り、最近ではかなり悲観的になっていた。 そして教師陣は… 「ハブショ」 鼻毛を抜いてくしゃみ一発。 トリステイン魔法学園学長オールド・オスマンのこの癖はコルベールにとって馴染めないものの一つだった。 「…なぁ、ワシの言った通りになったろォ~?」 「はぁ」 納得いっていない表情のコルベールはこれまた納得いっていない返答をする。 「あのグラモンん所のマセガキは口ばっかりなんじゃから…まあ石畳の傷だけで済んだんだから良しとせねばな。 秘宝を使って生徒の喧嘩を止めたりすれば後が面倒で困るしの」 「石畳は先日生徒に実習の名目で修理させました。ただやはり『何が石畳を切り裂いたのか』を知りたがってたとか」 「まあ言って信じる奴もおるまいて。見ていたこっちが信じられんのじゃから」 鼻毛を抜いてくしゃみ一発。 「ところで例の件、調べが付いたと聞いたが?」 「あ、はい…これを」 コルベールは小ぶりの古書を取り出し、付箋を挟んだ箇所を開く。 「これだけが一致しました」 「おっそろしく古い本だのぉ…しかも薄いし小さいし…良う見つけてきたもんじゃな」 「『始祖ブリミルの使い魔たち』。刊行年不明、子供向けの教材か絵本です。 文学の未整理棚にあったのをたまたま見つけてきました」 開いたページのルーンの一つを指差し、 「これです」 「『ガンダールヴ』…『始祖ブリミルの盾』か…」 「はい。ですが本の中にはこれ以上の記述はありません。ルーンだけです」 「繰り返すが、他の資料には載ってないんじゃな?」 「まず最初に『魔力文字大全』を調べましたが、該当するルーンはありませんでした」 「あれに載ってないとなれば本当に忘れられたか、それとも…」 オールド・オスマンの意地の悪い笑み。 「『歴史的に無かった事にする』ため消したか、じゃな」 「そんなバカバカしい…」 「自分に都合の良い歴史が欲しい連中はそれくらい平気でやるぞ。時間と手間は掛かるが確実な方法じゃ」 鼻毛を抜いてくしゃみ一発。 「こうなると確証が欲しいのぉ…彼が本当に『ガンダールヴ』たる者か、そしてその主が主たるにふさわしいか」 「では模擬戦でも?」 「そんなスッとろい事せんでもええわい。相手役なら適任がいるじゃろが」 「はあ…あまり関心しませんが…」 渋るコルベールを面白がるように見つめつつ水タバコの吸い口を引き寄せ、 「素破かと思うて泳がしてみたがそんな大したタマでなし、そろそろお引取り願う頃合じゃろうて。 それともなんじゃい、おぬしも色香にたぶらかされたか?ん?」 ほくそ笑みながら一口。 「そうではなくて万一を考えると…」 「ま、よしんば失敗しても何とかするわい…トリステイン魔法学園の名誉にかけて、な」。 笑いと共に煙を吐き出すオスマン。この癖もコルベールにとって馴染めないものの一つだった。 「さて、女狐を釣る餌じゃが…あれでいいかのう…」 その三日後、トリステイン魔法学園の宝物庫に怪盗「土くれのフーケ」が現れた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/558.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 通称、ゼロのルイズ。 彼女は今、部屋の窓から二つの月を眺めていた。 彼女は今一人だった。使い魔もいない。 やっとの事で呼び出した、平民のはずの使い魔。 名を、イルーゾォ。 鏡の中の使い魔 月を眺めていて彼の事を思い出すのは、彼がよく月を眺めていたからだろう。 月が一つしかない異世界から来たと言い張った男。生意気な使い魔。 口論の末に己が使い魔と認めさせても、彼は服従しなかった。 そのくらい未熟な自分でもわかると、いらだち混じりに爪を噛む。 イルーゾォがルイズに仕えた理由は二つ。 死んだ筈のイルーゾォを、召喚という魔法を通じてか生き返らせた事。 そして、彼のチームが全滅したであろう事。 彼が主張する「自分は死んだ」などという戯言をルイズは信じていない。 ルイズの前に、使い魔の証たるルーンをその手に刻んで確固として存在しているのだ。 はたして誰が信じられようか。 また彼のチームの全滅。 本当に異世界から召喚されたというのなら、いかなる手段を持って召喚された世界の事を知りえたというのか。 本人は夢で見たという。 夢? そんな物の何が信じられるというのだ! だがイルーゾォは言うのだ。 「オレの仲間は、もう、誰もいない」と。 「リゾット……プロシュート……ギアッチョ……メローネ…… ホルマジオ……ペッシ……ソルベ……ジェラート……」 彼の仲間達を口に乗せる。彼から直接聞いたわけではない。 ただうなされるイルーゾォの、その呟かれた中に込められた思いにいつしか覚えてしまっていた。 「すまない」と。「生き残ってしまって、すまない」と…… ルイズにはわからない。 肉親であれ友達であれ、離れてしまう事でその身を引き裂くほどに思えるほどの、それほどまで強いの繋がりを感じた事はないから。 「イルーゾォ……」 正直、うらやましいと思う。 それほどまでに思える仲間がいたのだから。 だから―――― 「無事、帰ってきなさいよ。ガリア王の暗殺なんて、できなくてもいいんだから……」 きっと、彼の仲間達は、敗北の中でそれでも誰か一人でも生きていて欲しかったと願って、そして偶然イルーゾォが呼び出されて。 夢を見たのもきっと、いつまでも自分達に縛られて欲しくなくて。 帰るよりも、新天地での新しい生活に専念して欲しくて。 だから吹っ切れさせるために自分達の末路を見せたのではと、ルイズは思っている。 その考えを、ルイズはイルーゾォに告げていない。 あくまでルイズの妄想であり、例え真実そうだとして、それが仲間を失った彼にとってはたしてどれだけの慰めになるものか。 だからルイズは待つ。 いつか傷口から血が止まり、この世界で生きる事を決意してくれる事を。 それが彼をこの世界に召喚したご主人様の務めであり、傷つきながらもなお、自分のために戦ってくれた誇りある使い魔に報いることだと信じているから。 正直な所、ルイズは己の使い魔の強さを知らない。 彼がその力の片鱗を見せたのは三度。 青銅のギーシュ、土くれのフーケ、そして、アルビオン王国に反旗を翻した貴族達。 青銅のギーシュの時はメイドのシェスタを助けるため。 今なお服従せずとも、助けられた恩を返すために惰性的に使い魔をやっていた当時のイルーゾォは、それ故にルイズの怒りをかった。 そのお仕置きとして食事を抜かされたイルーゾォに救いの手を差し伸べたのがメイドのシェスタだった。 食事を恵んでもらったお礼として彼女の手伝いをしていたイルーゾォは、ギーシュに絡まれたシェスタを助けるために決闘を受ける。 それは愚かな事だ。愚かな、筈だった。 気負うこともなく、ただ配膳のために使っていた磨かれた銀のお盆ただ一つを武器として決闘に挑み――勝利した。 いや、はたしてそれを通常の決闘の枠に組み入れていいものか。 ルイズにはいまだ理解できない。あの決闘を見ていた全ての者がそうだろう。 ヴェストリ広場に現れたイルーゾォは、お盆を武器と主張して、それをいぶかしむギーシュにお盆を見せて、そしてギーシュは消えた。 永遠に。ルイズ達の前から。その存在も死体すらも残さず。まるで悪魔にさらわれたかのように。 それ以来、ルイズをゼロと呼ぶ者も、イルーゾォを平民と馬鹿にする者もいなくなった。 何をしたかわからぬが故に、メイジ達のイルーゾォに対する恐怖は膨れ上がるばかりであった。 そしてそれはフーケの消失によって決定的となる。 見事学園の宝物庫より破壊の杖を盗み出したフーケ。 スクウェアクラスのメイジによる固定化の魔法。それを突破した強大なメイジ。 討伐に名乗りを上げたルイズ、キュルケ、タバサの三名をただの一人で手玉に取った彼女もまた、イルーゾォにあっさりと消された。 巨大なゴーレムは何の意味も成さず、ただ無残な土山を後に残すのみ。 戦いともいえぬ戦い。 その実力に目をつけたのはトリステイン王国王女アンリエッタ。 アルビオンに潜入し、ウェールズ皇太子にあてた手紙を取り戻して欲しいとの願いは相手がルイズであったからだとは承知している。 だがしかし、ルイズが強力な使い魔を持っていなければ、流石に敵地へと侵入してこいなどとは言わなかったろう。 その願いを押しとどめたのはイルーゾォ。 「要は、その反乱軍がいなくなりゃあ済む事だろ」 その言葉は、反乱軍の中心人物たちの集団失踪にて現実となる。 イルーゾォのもたらしたアルビオン反乱軍壊滅という圧倒的な戦果に、新たに目をつけたのはタバサであった。 その素性はガリア王国王弟オルレアン公の娘、シャルロット・エレーヌ・オルレアンである。 メイジの軍勢を容易く葬ったイルーゾォの強さに賭け、その素性を明かし協力を懇願したのだ。 ガリア王国国王ジョゼフとその使い魔の暗殺の、協力を。 受けたのはルイズ。彼女にはもはや己が使い魔の実力を疑う余地などなかった。 ならば政治的影響力を高めるためにもタバサの頼みは受けて置いて損はないと考えたのだ。 (今頃はもう、王城の中かな……) イルーゾォの力の正体。知りたくないと言えば嘘になるが、それでもルイズは訊こうとは思わなかった。 その時がくれば、きっと自分から話してくれる。そんな予感があったから。 だから彼女がする事といえば、ただ使い魔の帰還を信じて待ち続ける事だけだった。 ガリア王ジョゼフの使い魔、「神の頭脳」ミョズニトニルンたるシェフィールドは不機嫌だった。 主たるジョゼフがここの所、他の者に目移りしているのが面白くないのだ。 「神の盾」ガンダールヴと思しきとある少女の使い魔。 だが彼はその力を発揮することなく、まったく別の未知の力でもってジョゼフの計画を打ち砕いている。 それに興味を引かれたか、トリステイン王国に潜入させている密偵にはできる限りその男の情報を集めるように厳命する始末。 実に、腹立たしい。 久しぶりに直接顔をあわせたにもかかわらず、碌にかまってももらえずいらいらは頂点に達しようとしていた。 化粧でも落として寝ようと鏡を覗き込み、戦慄した。 そこには奇妙な、いっそ可愛らしいと言ってもよさそうな髪型の男。 だがその瞳は常人の物ではない。 他者の死を貪り喰らい生きてきた悪鬼の物。 それを頭が認識したかしないかの刹那で、シェフィールドは懐に忍ばせていたマジックアイテムを取り出しその力を開放しようとして―― ゴトッ 気付けば落としていた。 「――ッ!!」 男はまだ動かないが、その隣には先ほどは気付かなかったもう一人の人物がいた。 シャルロット・エレーヌ・オルレアン。おそらくは、このガリアで最も己を恨んでいる人物。 思わぬ相手の登場に動揺を押さえ込みながらも、シェフィールドは別のマジックアイテムを取り出そうとし、取り出せない。 相手はまだ動かない。別のマジックアイテムも試してみる。取り出せない。 仕方なく落ちたマジックアイテムに手を伸ばす。動かない。まるで床の一部であるかのように。固定されたかのように。 そこまでいって、ようようシェフィールドは顔色を変えて逃げ出そうとした。 シャルロット達がいるのは部屋の奥の方。故にドアの方に向けて駆け出す。二人はまだ動かない。 特に邪魔されることもなくドアにたどり着けた事に疑問を感じながらも、ドアを空けて部屋から出ようとする。動かない。 二人の足音が近づく。動かない。 ドアに体当たりをする。ビクともしない。足音が近づく。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。 足音が背後で止まった。絶望の色すら滲ませ、シェフィールドが振り向く。 そこにはもう、「神の頭脳」ミョズニトニルンはなく、ただの無力な一人の女がいた。 「貴女には、色々と聞くことがある」 感情を見せずに、静かにタバサが語る。 「大丈夫。誰も助けには来ないから。貴女に聞く時間はいくらでもあるから、安心して」 唇の端だけを歪めて浮かべる笑みは、死刑宣告にも似て―――― 床にへたり込んだシェフィールドは、股間が生温かく濡れていくのをどこか他人事のように自覚した。 その後の事について、特に語るべきことはない。 タバサは母親を癒す事ができたし、ガリア王ジョゼフは使い魔と共に行方不明になった。 次の王位にはタバサが就くかと思われたが若さを理由にこれを辞退。 しかし周囲の熱意もあり数年後の即位で話は纏まり、それまでは彼女の母親が席を暖めることとなる。 無論つい先日まで病人だった人物に政治などできる筈もなくあくまでタバサが就くまでの代理ではあったが、悲劇の女王として民衆の支持はなかなかのものであったという。 またジョゼフが所持していた土のルビーと始祖の香炉はルイズの元に届けられ、彼女の物になった。 これはタバサからの正式な贈り物とされ、ガリア王国の貴族達からも文句の出しようがなかったという。 ルイズはそれらを元に更なる虚無の魔法に目覚め、世界最強の魔法使いとして後世に名を残すことになる。 ――だが、彼女を最強の魔法使いとしたのは彼女自身の能力ではなく、いかなるメイジすらも密かに始末する最強の使い魔の存在であると、全ての歴史書には記されたという。 鏡の中の使い魔―――完―――