約 128,334 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/730.html
トリッシュ。父親に命を奪われかけ、そして間接的ではあるがその父親を殺した少女 彼女は一人墓地に佇む。 彼女は死んだ母親の墓に全てが終わったことを告げ、立ち去るその時だった。 「なにこれ?」 彼女の行く手を遮るように現れた鏡のようなもの。それを見た彼女がまず考えたことは 「スタンドの攻撃?!」 彼女の父親はかつてイタリア全土に広がるギャングを率いており、それを倒したのは 彼女を救った組織の裏切者たちである。 現在はその仲間の一人がそのギャングのボスとなり君臨しているが、組織を手に入れてから日が浅く 未だ全てを手中にはしていなかった。 そして、自分たちがしたように組織を手に入ようとする裏切り者が動くには組織が混乱している 今が絶好の機会と言えた。 「スパイスガール!」 先手必勝とばかりに自身のスタンドを発現させ、鏡に向けて拳を叩き込む! だが、鏡に触れた瞬間!鏡の内側に引きずり込まれるように彼女のスタンドがめり込んでいった! 『トリッシュ!トッテモマズイヨーナ気ガシマス!』 「マズイようなじゃなくてマズイのよッ!」 鏡の内側に引きずり込まれようとするスパイス・ガールと手を繋ぎ、トリッシュは墓にしがみつく。 『頑張ッテトリッシュ!負ケナイデモウ少シッ!』 「最後まで、は…ってこんな時になに言ってんのよ!」 ギリギリと引っ張られトリッシュの腕に苦痛が走る。 「スパイス・ガール……」 『ドウシマシタ?!トリッシュ!』 「もうダメ、限界」 『OH MY GOD!』 その後、見知らぬ男にキスされた所までを夢で見たトリッシュが眼を覚まして初めて見たものは 中年のハゲと薔薇を胸に挿した男が自分の服を摘んで胸を覗き込んでいる光景だった。 「イヤアアアアアアア!!」 女性の叫び声で眼を覚ましたマリコルヌが初めて見たものは、天井に張り付けられた 教師のコルベールと級友のギーシュの姿だった。 そして次に見たものは物凄い形相で自分を見下ろす使い魔だった。 「ここどこ?アンタだれ?」 言葉に詰まり思わずマリコルヌは起き上がろうとして身体がベッドに張り付いていることに気付き、 使い魔の手に握られた釣り針と虫眼鏡を見て…それを見なかったことにして質問に答えた。 「ここはトリステイン魔法学院です。僕はマリコルヌと言います」 冷や汗を流しながら機械的な言葉使いでマリコルヌは答えると、それを見た使い魔が顔を近づけ その赤い舌でぺロっと汗を舐めあげた。 「この味は嘘を付いていない味ね」 「そうともここはトリステイン魔法学院!わかったら早く僕を降ろしたまえ!」 「君は使い魔として召喚されたんだ!いい加減に私を降ろしてくれ!」 「アンタたちには聞いてないわよ!」 二人に向けて使い魔が怒鳴り、ベッドの横の小物入れに置かれていた花瓶を天上に 張り付けられた二人に向けて投げつけ、それがギーシュの顔に直撃し彼は気絶した。 「で、アンタ敵?味方?」 「ええと、味方、です。ハイ」 その後、懇切丁寧かつ紳士的に状況を説明し何とか信じてもらえることに成功した。 質問に答えるたびにほっぺたを舐められ何度も気絶しそうになった。 「ふ~ん、信じられないけど嘘は付いてないみたいね」 「そう言うことなんだ!だから僕を降ろしたまえ!」 「あ~もう一つ聞くの忘れてたわ、これはアンタには答えられないわね」 使い魔がそう言ってどうやったかは判らないが、ベッドに張り付けられていた僕を立たせ 部屋の外に追い出した後、部屋の中からやたら軽快な音楽と二人の悲鳴が響き渡った。 「しばらくはアンタの世話になるしかない訳ね」 「そそ、そう言うことにな、なるね」 夜になりこれからのことを二人で話し合って、トリッシュは使い魔になることを承諾する。 「それで私はなにすれば言い訳?」 「ななナニって言われても…」 『ナニ』と言う言葉に反応する股間を押さえつつ、マリコルヌは考えた。 ハッキリ言って彼女を通常の使い魔と同列に扱うつもりは無かった。なにせ一目惚れである。 それに現在感覚の共有もできなく、秘薬の材料を探すことも彼女には無理だろう。 あとは身を守らせる事くらいだがそれは却下だ。好きな女の子を危険に晒すなどできない。 「と、とりあえず普通に生活してくれればいいよ。ウン」 「そう?ま、何かあったら言ってよ。ただで世話になるのもちょっとね」 恩には恩を、仇には仇を。トリッシュの脳裡に恩人の顔がよぎった。 「わ、判ったよ、もう遅いし後のことは明日にしよう」 「そうね、ところで私はどこで寝ればいいの?」 マリコルヌの部屋にはベッドが一つしかない。まさか二人一緒に寝るわけにもいかないと、 トリッシュはマリコルヌに尋ねた。 「いいよベッドを使ってもらって。ぼ、僕はここで寝るから」 そう言って毛布を被りマリコルヌは床に寝転ぶ。 「ちょ、ちょっと!普通逆じゃない?!私が床でアンタがベッドじゃないの?」 「僕なら平気さ!床で寝るの好きなんだ!」 そんな訳はないとトリッシュは思ったが、マリコルヌの好意に甘えることにした 「判ったわ、おやすみマリコルヌ」 「うん、おやすみ…そう言えば名前、聞いてなかった」 ふとマリコルヌはまだ自分の使い魔の名前を聞いてなかったことに気付いた。 「…トリッシュ。トリッシュ・ウナよ」 「うん、おやすみトリッシュ」 明かりが消え、暗闇の中でモゾモゾと動く気配をトリッシュは感じた。 やはり床では寝にくいようだ。 (スパイス・ガール) 『ワカリマシタ』 スパイス・ガールの手がマリコルヌの寝る床に触る。 (あれ?床ってこんなに柔らかかったっけ?) 急に柔らかくなった床に疑問を持ったが、疲れきっていたマリコルヌはすぐに寝てしまった。 (それにしても異世界か…とんでもない事になっちゃったわね。 でも、このマリコルヌって人が良い人でよかったわ。ちょっと挙動不審だけど) 元いた世界の仲間たちの事を思い浮かべながら、トリッシュの意識は暗闇へと落ちていった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/96.html
「着替えさせて」 わたしは、部屋の窓際で夜空を眺めてるプロシュートに声をかける 「1人で着替えられねえのか?」 こちらを見ずに、なめたことを言ってくれる 「着替えられるわよ!でも、あんた使い魔でしょ、なら言うこと聞きなさいよ」 「使い魔の仕事は主人の身を守る事だったよなあルイズ」 「ええ、言ったわよ」 「なら、守ってやる。それで文句ねえだろ」 何言ってるの、この男? 「無理よ、唯の平民がモンスターやメイジに敵うわけないわ」 「ルイズお前の敵は誰だ、無理かどうか証明してやろうじゃねえか」 ただの着替えがとんでもない事になってきた 敵?モンスターは此処にはいない、今わたしの敵は・・・ 「キュルケね、ツェエルプトーのキュルケ」 「そうか、じゃあキュルケを始末してやろう」 ・・・・・・はい? 「始末って、殺すってこと?」 嫌な予感がするけど聞いてみる 「そうだ、ウダウダ言うより手っ取りばやいだろ」 「だめよ、そんなことしちゃ!」 ヴァリエールとツェルプトーの両家は、殺し殺されてきたけど。今は、そんな事ない。 キュルケはギャフンと言わせたいけど。殺したいとは思わない。 「ヴァリエールとツェルプトーが抗争になる事を考えているのか?」 プロシュートがわたしの考えていることを読んだかの様に話しかけてくる 「それなら問題ない、暗殺するから両家の抗争には発展しねえ。」 わたしは自分の体が固まるのを感じた。この男、殺ると言ったら行動が完了する気がする わたしの身を守る、それを証明するためだけに・・・こいつ、唯の平民じゃないの 「あなた、殺し屋なの?」 恐る恐る聞いてみる 「そうだ」 即答・・・この男嘘はついていない 睡眠不足だわ。昨日、怖くて寝られなかった それでも、朝方には寝たんだけど 凄い怖い・・・嫌な・・・グロイ夢を見た 結局、わたしは一人で着替えをすることにした そうでもしないと、あの男がキュルケを殺そうとするから だけど、わたしは主人として、あの使い魔を躾けていかなくちゃいけない 椅子に腰掛けてるプロシュートに挨拶する 「おはよう」 「おはようルイズ」 お互い挨拶を交わす 「朝食よ、食堂に行くわ」 プロシュートは黙って後を付いてくる 「朝から、えらく豪華じゃねえか」 食堂の料理を見たプロシュートが上機嫌で感想を述べる 「あんたは、こっち」 わたしは床に置いてある皿を指差してやる ゴゴゴゴゴゴゴゴ 怒っている、見た目は冷静だが間違いなく、この使い魔は怒っている。 「どう言う事だ、ええルイズ」 突然わたしは、今朝見た夢を思い出した 暗殺者として邪魔者は、次々と始末してきた しかし、自分達の縄張りは、全然ウマミが無かった。 収入はボスからのささやかな報酬だけ 我慢できなくなった仲間がボスの正体を調べ始めた 行方不明になる仲間 大量の差出人不明の荷物 荷物を開けそれらを並べてみると 仲間の輪切り死体だった た、食べなくて良かった。間違いなく吐いてたわ。 思い出した夢、きっとこの使い魔の記憶だろう 裏社会の人間、わたし・・・この使い魔と上手くやっていけるのかしら 「聞いてんのか、ルイズ」 イラ付いた口調でプロシュートが声を掛けてくる 「食欲が無くなったわ、わたしの分食べていいから」 「どこに行くんだルイズ?」 表に出ようとした、わたしを呼び止める 「外の空気を吸ってくるわ、すぐ戻るから」 プロシュートは何も言わず朝食を食べ始めた わたしは、颯爽と表に出ると、誰もいない所にいき一人で泣いた
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/218.html
「あなたの口から説明はいらない、言い訳もいらない」 「何を言っているんだい、モンモランシー」 「感づいていないとでも思ったの? あなたの二股に」 「ギーシュ様? それってどういう…」 「あああ、これはだね、ケティ」 ヒュ!! バギァ 「あがんッ…あがッ、あがッ」 メシッ ブシャア ギーシュの頬にグーの手がめり込んだ 噴き出す鼻血ッ ぶざまにひっくり返ったギーシュに、モンモランシーは冷たい目つきだけを向けた 「言い訳はいらないと言ったでしょう そして…さよなら あなたはつくづく最低の男だったわ」 「え? ああっ」 ケティを引っ張っていくモンモランシー 彼女の口から事情をキッチリ説明してやるつもりなのだろう… とり残されたギーシュはざわつく観衆の中 注目の的になっていた 「なぁにが『ボクは薔薇だよ』、だよなあ」 「サイテーね」 「モンモランシー 最近、夜に出歩いてたのって もしかして…」 「自分で恋人の浮気調査とはなあ、フビンな」 「人を見る目ないんじゃないの アレとつきあう時点で」 「いやいや グラモンは武門の名家だぞ 一応」 「ウワサだと父親も色の道では剛の者だとか」 「なに? 五男とか五女とかまで作るの? …浮気で」 「それもフシギじゃないかもなあ アレを見てると」 笑われている…侮辱されているぞ ギーシュ・ド・グラモンッ それも自分のことだけならいざ知らず 家のことまで 本来ならケティとモンモランシー 二人の間のことだけですんだはずだったのに… それを、それを こんなッ ゆるせん キサマはゆるせん …キサマ、というのは…… ギーシュは周囲を見回し、やがて視線をひとつに固定させた あれは確かルイズの使い魔 平民とはとてもいえない謎パワーを持ったやつ そうだ、こいつが皆を連れてきたんだッ キサマ…きみさえいなければッ! 「…きみィ」 やつはスットボけてまわりをキョロキョロ見渡す そこまでぼくを愚弄するのか? 「あなたみたいよ」 「えぇ、オレ?」 キュルケに言われてやっと気がついた「フリ」か まあいい、耳をカッポじって聞いてもらおう 「キミのせいで二人のレディの心が傷つけられたじゃないか どうしてくれるんだい…えぇ?」 「オ、オレのせい…?」 「この礼儀知らずの平民が… こんな深夜に走り回って衆目を集めるとはよほどの野蛮人だな あまつさえモンモランシーをこんなところへ連れてくるとは」 「なんだ、おいっ、一方的にッ」 「いいかい? 知られたくない秘密を暴こうとする無粋なヤツはな… この世の汚物だ、いてはならないッ!!」 ビシィッ 薔薇を取り出し、口にくわえる 青銅のギーシュ 戦闘体勢ッ!! 「払わせてやるッ 彼女らの魂の尊厳、その代償を―――ッ」 「むっ、ムチャクチャ言ってんじゃねェーよ このスケコマシの坊ちゃんタレ! てめーのこと全部タナに上げやがってよぉぉ――」 「そうだそうだー」 「みっともないぞぉー ギーシューッ」 鼻血がタラリ… うるさいッ ひっこみなんぞつくものか こいつのせいって言ったらこいつのせいなんだからなッ 「決闘だッ」 さて仗助である こんなアホな言いがかりにつきあってやるつもりはモチロンなかった 次のセリフはこうだった 「勝手にやってろよ、一人でッ」 だがそれよりも先に口を開いたのは隣のルイズ 「な、なに勝手なこと言ってんのよ」 「キミは黙っていたまえ、ゼロのルイズッ」 「ゼロは関係ないでしょ ゼロは―――ッ 人の使い魔をキズものにされちゃ、黙ってられないわよッ」 この一言がテキメンに仗助の気を変えた もはや逃げ場がないということもあったのかもしれない ならばこれはせめてもの抵抗というわけだ 「決闘だな? …いいよ、受けてやる」 「おまえ、勝手にッ」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「だれがテメーの召使いになったよ?」 立ちふさがったルイズを仗助は軽く突き飛ばした 明確な拒絶の意を込めて また尻もちをついたルイズは少しぼんやりしたあと 涙をぽろぽろ流し始めた…心底、くやしそうな顔で だが仗助に言わせてみれば、かまってられるかボケ、だった その肥大しまくった自我とかなんとかをこの機会に叩き直しやがれ 本気でそう思った 「表に出たまえ」 「…ああ、どこでもいいぜ…」 ギーシュの後に続こうと歩き出し 泣くルイズの横を通り過ぎると 一緒にいた赤毛の女が呼び止めてきた 「ちょっと」 「なんスか…」 「あいつは『青銅』のギーシュ。 見栄っ張りの小心者だわね」 「…それが?」 「すでにあなたは手の内をさらしてるでしょ。 だから公平じゃないと思っただけ。 ま、受けた以上は勝ちなさいな。 負けたら死ぬと思ってね…」 仗助は軽くうなずいて、小走りでギーシュを追いかけた そのあとから聞こえてきた声は、よく聞き取れなかった… 「…あたしとしても、投資をムダにしたくないものねー さてと、タバサ、タバサ…あの子も呼びましょっと」 今は夜中である トリステイン魔法学院の教師にしてトライアングルメイジであるコルベールは いつもであれば自分の研究に没頭している時間帯であったが 三日前のあの事件から別な考え事に支配されていた…すなわち、ルイズの使い魔である (先例のない危険な存在が召喚されたと思った 生徒を守るためになら殺しもいとわぬつもりだった) 見た目は人間だが、あのおそるべき破壊力ッ 人間の頭と兜を融合させる奇っ怪な能力 そんなものがいきなり暴れ出したのだ あの時点での判断が間違っていたとは思わない…だが (その本質は万物を修復する『癒し』の力だったというのか…) 高レベルのメイジであれば、建物の修復程度はわけなくこなせる しかし、それと同じノリで 死に瀕した人間を一瞬で元通りに修復するわざなど 水系統のスクウェアメイジでもできるかどうか… ともあれ、その力でルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを救ったことに変わりはないのだ そして彼女は『多額の賠償金』を支払い、彼にコントラクト・サーヴァントを行った 今も昏々と眠り続けているだろうあの使い魔が目覚めたとき 自分は一体、彼をどのように扱うべきなのだろうか? 古い文献をあたって必死で類似例を探してみるが、今日も努力はムダだった 仕方ない、寝るか そう思って、ふと窓の外を見てみると 「…なんだ、生徒達…どうした?」 コルベールは魔法の杖を持ち、外に飛び出すことにした 二十人以上の野次馬が見守る中 仗助とギーシュの決闘は始まろうとしていた 「…月が、ふたつ…」 ゴシゴシ ゴシ 「…消えねぇ~~~ 空から消えねぇ~ ありえねぇッ」 「何をやっているんだねッ! 今さら怖じ気づいてもムダだからなッ」 空を見ながら必死で目をこすっていた仗助は 準備万端のギーシュに怒られた 「いや、よぉ~ 見ろよ空ッ 月がふたつってオカシイだろ――」 「勝負をはぐらかそうというのかい、卑怯者がッ もういい、勝手に始めさせてもらうッ」 「え…」 仗助の身体がフワリと浮かび上がった およそ6メートルくらいの高さだろうか? 下を見ると、ギーシュが薔薇を振っているのが目に入る 「こ、こいつは…」 「コモン・マジックのひとつ、レビテーションさ 魔法入門、基礎中の基礎だな そしてキミにはこれで充分ッ」 「うおおッ?」 浮かび上がったところから加速をつけて 一気に地面に叩きつけられる仗助 背中から落ち、肺の空気が全て追い出される 「うぐ、げほぁッ…」 建物の三階付近から落下しているのと、ほぼ同等ッ 並の人間が無事でおれるわけがない 「…さて、先手はぼくがいただいたわけだが 次はキミが来たまえ このままやられるのは無念だろう」 「だれ、が てめえに」 「ん…そういえばキミ、髪型はどうしたんだい? あの、なんというのか…『貧乏ったらしい鳥の巣』みたいな」 落下の衝撃のあまりうまく起きあがれない仗助に あろうことか、禁句を持ち出すギーシュ・ド・グラモンッ おそらくは、わかってやっているッ プッ…プッ… 「どこの田舎か知らないが…あんな頭をしている時点でお里が知れるってわけだねぇー もっとも! 見世物小屋にでも持っていけば喜ばれるかも…だがね」 プッチ~~ン 落下の痛みを怒りが凌駕ッ 仰向けの姿勢のまま飛び上がり、仗助は殴りかかるッ 「てっめぇ~~ ドララァァ―――ッ」 「怒ったな、あの時と同じようにキレて本気を出したな だけどムダだなぁ―――ッ!!」 見えない拳が到達するよりはるか遠い距離から ギーシュは再び薔薇…魔法の杖を振っていたッ 宙に浮き上がり 固定される仗助 届かない…何もできないッ 「そぉれ もう一回ッ」 ドゴォ 「ぐぇぇぇッ…!」 また落下 治ったばかりの身体がつぶれるように血を吹いた (あいつは『青銅』のギーシュ 見栄っ張りの…小心者 なるほど、いかにもな戦法ッスねぇ~~ だが、マジにどうする? 手も足も出ねぇよッ) また身体の浮かび上がる最中、ギーシュをするどく睨み付けた仗助だったが 今のところ、できることはそれだけだった
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/396.html
パーティはどうやら食堂の上のホールで行われるようでした 着飾ったルイズの美しさにそれまでゼロのルイズと呼んでからかっていた同級生たちまでもが 群がってダンスを申し込んできます ですがルイズはそれを全部丁重に断りどうにかこうにかバルコニーに逃げてきました バルコニーから見えた景色の中に自分の使い魔も含まれていました 「・・・あいつが来るわけないわよね」 なんとなくこういうきらびやかな舞台に来ることを自分の使い魔は嫌っているの 目立ちたくないだけなのかどうなのか知らないが来ないものを期待するほどバカでもない その使い魔はなにをするでもなく、ただ星を見ていた 使い魔の男はなにをするでもなく学院の庭で星を見ていました (・・・俺の野望) その使い魔、ディアボロは少しばかり構想にふけていました (俺はなぜ野望の成就を目指したのだったか) 単純な考えでした。彼は己の野望を追い求めていました ですがそれは失敗に終わり、地獄を経てこの世界に来たのです 不意に自分を打ち倒した金髪の青年の言葉を思い出しました 「生き残るのは…この世の「真実」だけだ… 真実から出た『誠の行動』は、決して滅びはしない…」 ならばこの世界での生は自らが真実に到達したからだろうか 「そしておまえの行動が真実から出たものなのか それともうわっ面だけの邪悪から出たものなのか」 そうだ。簡単な考えだったのだから答えだって簡単だった (俺は・・・ただ幸福になりたかっただけではなかったのか?) 星を見上げる使い魔は答えに到達しました 自らを帝王にするという野望はただの幻想だということにして 今の自分は幸福にあろうとそう考えました この先、この世界で死にGERがまた発動したのならこの答えは一時のものでしょう ですが今は 「主人ルイズに仕える使い魔であるとしよう ―――なんだ。俺は彼女に好意を抱いているのか」 いたって他人事のようにそう言いました 「きっとお前も同じなのだろうな。ドッピオ」 自らのもう一つの人格に話しかけるディアボロ、返答はありません 「・・・・・だが」 一つため息をついてディアボロは 「・・・俺は幸福にあるべきではないな」 きっと彼は暖かくあることを恐れているのでしょう 自らの娘が出来たところで野望を成就させようとした自分は殺そうとしました 自分は幸福にあろうとすることは許されない 暖かさを拒絶した自分にはもう訪れさせてはいけない ・・・そう。幸福を得ようとした代償に大量の他者の幸福と暖かさを奪ってきた自分にその権利は無い 「・・・だが、お前はちがう。 ドッピオ、お前には権利はある」 もう一度、もう一つの人格に話しかけます。もちろん返答はありません 「お前は主人格である俺に命令されただけだ。おまえ自身の意思は介入していない ―――もしも、俺が消えてお前が残ることがあるのなら」 お前だけでも幸せになれ、その言葉をディアボロは心の中に止めておきました 特にやる事も無く星を見ていたディアボロの横に 「なにしてるのよ?ディアボロ」 自らの主人が来ていました 「・・・何もしていない。だがよく私だと分かったな」 ふとした疑問を主人にぶつけました 意識変更による多少の肉体の変換はありますが基本的に殆どドッピオと変わらないはずです 「分かるわよ。雰囲気っていうか周りの空気っていうか・・勘で分かるのよ」 「そうか」 会話はそこでとまりました。ディアボロは話すことなんてありませんので基本はルイズからの返答のみです 「・・・ねえ」 ふとルイズに話しかけられました 「何だ?」 簡単な返答を返します 「・・・頑張って、頑張りぬいた人が最後に報われないっていうの、どう思う?」 「それは仕方の無いことだったのだろう。所詮、努力を重ねたところでそれが叶うかどうかなど未知数だ 努力は単に成功率を上げるためにする行動だ」 「・・じゃあアンタはどうなの?」 「それも同じだ・・・だがそれが他者から奪い作られた努力なら別だ」 「でもアンタはフーケを倒したっていうのに・・・何にもないなんて」 ディアボロは目の前の主がただ報われないのが嫌なだけということを理解しました そしてこう答えました 「使い魔なのだから賞賛されるのは主だろう。私にはそれで十分だ」 「でも・・!」 「あと賞賛するのであればドッピオにしてくれ ―――私にはその資格はない」 そういってディアボロは寮へ歩いていきました (それでも・・・アンタだけが報われないなんて) ルイズには彼の言葉への反発しか生まれませんでした 「絶対に・・・認めない。アンタだけが報われないなんて」 そう言ってその背中を追って行きました ですがその後を追って部屋に行ってもディアボロはもう眠っていました 「・・このくらいならいいわよね?」 彼以外、誰もいない部屋でつぶやき 「・・今回は助かったわ」 そのお礼の言葉をつぶやきました
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/247.html
几帳面な性格をしているために、先に聞いてきた向こうの質問に答えた形兆だったが、 こっちが答えたのだからあっちの方も答えるだろう。という彼の期待はあっさり破られた。 「ニジムラ ケイチョウ? 変な名前」 そう言ってはげ頭の中年の男の方に振り向き、何か話し始めた。 召喚のやり直しやらこれは神聖な儀式であるのでそれは出来ないなど、よく分からない事を話している。 まだ少し混乱している頭で自分はどうなっているのか、お前も自分の名前くらい言え、 などと言ってみたが無視された。 それにさっきから周りの奴らの笑い声が聞こえてくる。 どうなっているのか分からなくなり頭を抱える形兆だったが、そこであることに気づいた。 自分は生きている。 確かに自分はあの時死んだはずだ。それは確かなことだった。 だが自分は今生きている。これも確かなことである。 自分が生きているのか分からない、こんな状況は初めてだ。 「バッド・カンパニー!」 警戒してスタンドを出そうとする、だが何も起こらない。 自慢の軍隊が出て来ないのだ。アパッチや戦車はおろか、歩兵の一人も出て来ない。 やはり自分は死んだのだろうか?そうするとここは地獄か?だが地獄にしては綺麗な所だ。 不審に思いさっきよりも目を凝らして周りを見渡し事態を把握しようとする。が、 「あの平民なにを叫んだんだ?」 「イカレてるんじゃあないか?」 「ゼロのルイズの使い魔だしな」 不審に思われているのは自分だった。 周りを観察しながらこれがどういうことなのか考えているうちに 自分名前を聞いてきた桃色の髪の女がこっちにやってきた。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 そういって手に持っていた杖を振る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 「それがお前の名前か?」 「五つの力を司るペンタゴン」 「ペンタゴン?アメリカ国防総省のことか?」 「この者に祝福を与え」 「祝福?ありがとう、と言えばいいのか?」 「我の使い魔となせ」 「使い魔?魔法使いみたいなことを言うな?」 几帳面にルイズの言葉に反応を示す形兆。偶然だが半分は正解を言い当てている。 次は何を言われるんだ?そもそも何を言っているんだ? 少々混乱しながらも形兆がそんなことを考えていた次の瞬間! キスをされた。 完全に不意打ちをくらった形兆は驚き、ルイズから顔を離しさらに距離をとって身構える。 「何のつもりだ?ルイズ」 当然の疑問。だが、 「呼び捨てにするんじゃないわよ!ご主人様でしょ!」 (どうしてコイツはおれの話を全く聞かないんだ?そもそもご主人様って何だ?) 几帳面な分突発的な出来事に強くない形兆は混乱の度合いを強くする。 そして形兆が次のことを考えようとして、急にきた体の熱さに邪魔された。 「なにィ~~~スタンド攻撃かッ!?」 「騒がないで、『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」 「『使い魔のルーン』だと!?」 それで自分に何をしたのかを聞き出そうとした時、熱は無くなった。 (一体何なんだ?分からない事が多すぎるぞッ!?) 混乱だけが強くなっていく形兆に追い討ちを掛けたのは責任者らしき中年の男だった。 「フーム……珍しいルーンだな。 よしじゃあ今日は解散!みんな良くやった!」 そういってその男は『飛び』去っていく。周りにいた者もみな飛んで城のような建物の方へ行く。 それをみて形兆は 「一体どういうことだ?」 としか言えなかった。 もう何がなんだか分からなかったが、 あの中年の男の態度や使い魔という単語から自分に危害を加えることは無いだろうと判断し、 何故か未だに残っている自分の唇を奪った女に話しかけた。 説明しろ。と To Be Continued ↓↓
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2460.html
前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 康一が部屋に戻ると、まだご主人様(仮)は毛布を頭から被って丸まっていた。 何時に起こせ、とも言われていないのだが(というより時間が分からないが)、康一はとりあえずルイズを起こすことにした。 「ねぇ、君。起きなよ。」 毛布を揺さぶる。 だが、ルイズは「違うもん・・・食べないもん・・・使い魔食べないもん・・・」だのと寝言をつぶやきながら起きようとはしない。 「もう、しょうがないなぁ。ほら、いい天気だし、起きろってば!」 康一は無理矢理、がばっと毛布を剥ぎ取った。 息を呑んだ。 長い桃色の髪の毛が、ゆるやかなウェーブを描いてシーツに広がり、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。 その中で胎児のような格好で眠る少女は、急に毛布が奪われたせいだろう。雪のように白くて細い手足を更に縮こめて眉根を寄せた。 康一は何か見てはいけないものを見てしまった気がしてあわてて視線を逸らした。 「あ、朝だよ!起きなくていいの?」 康一が明後日を向いたまま声をかけると、それまで丸まっていた少女が、シーツの上でゆっくり伸びをして、起き上がった。 まだ寝ぼけたようにぼんやりとした表情で、あんた誰?と聞いた。 康一は呆れた。 「昨日君に無理矢理召還された広瀬康一だよ。もう忘れたの?」 ルイズはあー、そういえばそうだったわねー。とつぶやいて。それからようやく昨日の夜のことに思い至ったのだろう。 「あ、あのねー。昨日のことは・・・」 「分かってるって。でも、ぼくが何も持ってないことはわかっただろ?」 ルイズはまだ言い足りないようだったが、まぁいいわと自分を納得させたようだった。 そして自分の格好に気づく。 「わたし、あのまま寝ちゃったんだわ・・・」 ルイズは康一が気絶した後、どうしようどうしようと一通りおろおろしたあと、もうどうにでもなれ!とそのままベッドに飛び込んだのだった。 康一に毛布をかけることにまで気が回ったのはまさしく奇跡といえる。 ルイズはもう一度大きく伸びをして、それからブラウスのボタンに手をかけた。 ボタンをはずしていくほど、その奥の下着が垣間見えて行き、康一は悲鳴をあげた。 「ちょ、ちょっと!何でいきなり脱ぐんだよ!」 ルイズは、はぁ?と怪訝そうに言った。 「だって、昨日着たものをそのまま着てたら気持ち悪いじゃない。」 「ちがうよ!ぼくが見てないところで着替えてくれって言ってるんだ!」 「なんで?」 「なんで?って・・・乙女の恥じらい・・・とか。」 康一はぼそぼそとつぶやいた。 「あのねー。もう一回断っておくけど、あんたはわたしの使い魔なのよ?使い魔に見られたくらいでいちいち恥ずかしがってられると思ってんの?」 ルイズはブラウスを脱ぎ捨てたところで腰に手を当てた。 本当に恥ずかしくないらしい。 昨日あれだけあわてたのも、単に体面の問題だったようだ。 もう本当に男として見られてないというか、犬猫の扱いなのね・・・。 康一は改めてがっくりときた。 ルイズは肩を落とした康一をしばらく見ていたが、気にすることなく今度はスカートを脱ぎ始めた。 康一はあわてて背中を向けた。 そこにルイズから声がかかる。 「下着。」 「は?」 「気が利かないわねー。取ってっていってるの。」 「し、下着くらい自分で取ってくれッ!」 「あんた使い魔なんでしょー。それくらいやるのは当然じゃない。」 うぐっ!康一はさらに言い返そうとして言葉を飲み込んだ。 康一はこの世界の『使い魔』について何も知らない。 確かに自分は使い魔になることを承諾した。しかしまさかこんなことまでさせられるとは! 「(お姉ちゃんの下着だと思おう。お姉ちゃんの・・・)」 康一はいろいろと後悔したが、とりあえず言うとおりにすることにした。 背を向けた後ろで、するすると下着を外す音がする。 そりゃー、そうだ。新しい下着を着るには古い下着を脱がなくちゃいけないですよねー! 「(お姉ちゃんが着替えてるだけだ。お姉ちゃんが着替えてるだけ・・・)」 康一は心の中で繰り返して乗り切った。 「ブラウスとスカート。」 もう言い返す気力もない。同じくクローゼットをあさり、下着姿のルイズを見ないようにして手渡した。 「なにしてんの。あんたが着せるのよ。」 「な、なんだってー!?」 いい加減に我慢の限界だ! そりゃあ女の子の着替えに立ち会えてちょっと嬉しいのはあるが、この扱いはあんまりだ! 康一はルイズが下着姿なのにも構わず向き直った。 「平民の召使いがいるときは、貴族は自分で服なんて着ないの。知らないの?」 「ふざけるなっ!それくらい自分でやってくれ!ぼくをなんだと思ってるんだ!」 「使い魔でしょ?衣食住を世話するかわりに使い魔をやるんだったわよねー?」 ルイズは椅子に腰掛け、ふふん♪と足を組んだ。 「そ、それは・・・でもいくらなんでも・・・!」 「あんたを誰が養うと思ってんの?さぁ、早くしなさいってば。」 もうぐうの音もでない。 とほほ、な康一は出来るだけルイズのほうを見ないようにしてプリーツスカートを手に取った。 「さて・・・と。」 すっかり着替え終わったルイズは姿見で身だしなみを整えている。 一方の康一はすっかり尊厳を踏みにじられてげっそりとしていた。 「使い魔がこんな大変なものだなんて思わなかったよ・・・」 「何言ってるの。まだ、なーんにもしてないじゃない!」 ルイズは腰に手を当てた。 康一は今のうちに使い魔は何をすればいいのかを聞いておくことにした。 「他にぼくは何をすればいいわけ?」 着替えを手伝ったり雑用をしたりするだけなら、それはただの召使いな気がする。 「そうねぇ・・・」 ルイズはアゴに人差し指をあてて首をかしげた。 「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。」 「はぁ」 スタンドとスタンド使いのようなものだろうか。 康一もACT1の視界を借りることで、半径50m程度の偵察を行ったりすることがある。 「でも、無理ね。わたしあんたの見てるものとか聞いてるものがわかんないもん!」 それは正直助かるなぁ。と康一はほっとした。 そんなことになったらプライバシーもなにもあったもんじゃない。 「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば、秘薬とか薬草とか、鉱石とかね。」 でも・・・とルイズは続けた。 「あんたには無理そうね。頭そんなに良さそうにはみえないし。」 康一はムッとしたが、実際学校の成績がよかったわけでもなかったし、秘薬だのなんだのというのもさっぱりだったので何も言わなかった。 「そしてこれが一番大事なんだけど・・・使い魔は主人を守る存在なのよ!あんた、昨日ゴーレム・・・・えっと、『スタンド』だったっけ?それを出してたでしょ?ひょっとして強いの?その『スタンド』」 康一はうーん、と唸った。 康一は自分のスタンドを信頼してはいたが、強いか?と聞かれると返答に困った。 康一は今まで数々の戦いを経験してはいるが、実際1対1で戦って勝ったことはあまりない。 強敵との戦いではいつも誰かのサポート役だった。 『エコーズ(ACT1、2、3)』を他のスタンドと比べると、時間を止められる承太郎さんの『スタープラチナ』は最強すぎるので除外するとしても、 仗助くんの『クレイジー・D』のようなパワーとスピードもないし、億泰くんの『ザ・ハンド』のような一撃必殺の能力もない。 露伴先生の『ヘブンズ・ドアー』には何度戦っても勝てる気がしないし、あの殺人鬼吉良吉影の『キラークイーン』には相手にもならず一度殺されかけている。 そうして考えて行くと、真正面から戦ったら自分が知るスタンド使いのほとんどに、自分は勝てないだろうなぁ。と思う。 自分だけで勝てたのは由花子の『ラブ・デラックス』と玉美の『錠前』くらいだが、『ラブ・デラックス』ともう一回戦ったら手も足も出ない気がするし、玉美にいたっては、戦闘力では一般人と変わらない(玉美は康一よりもさらにチビだし!)。 康一が沈黙すると、ルイズは溜息をついた。 「まぁ・・・そもそもあんたにそんなのを求めるのがおかしいわよね・・・」 ルイズはまだなにやら考え込んでいる康一を眺めた。 第一印象は『チビ』だった。同年代の女の子の中でもかなり小さいほうに入るルイズ(153サント)と目線がほとんど同じなのだ。 多分実際の身長はルイズよりも少し高いとは思うのだが、そのキャラクターのせいなのか、自分より小さく感じる時すらある。 力も弱かったし、何か一芸に飛びぬけているようにも見えない。 そして何よりも、文句ばっかり言うくせに、頼りない性格。当てになるはずがない。 「わかったでしょ?あんたができそうなのって、掃除や洗濯みたいな雑用くらいしかないのよ。だから文句を言わずに働いてよね!」 でも君が思ってるよりは役に立つと思うんだけどなぁ・・・。康一は思ったが、たぶんそれを言い出しても余計に面倒なことになるだろうと思ったので黙っておくことにした。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/780.html
「それほんと?」 ルイズは疑わしげにジョニィを見つめながら言った。 あの後、ジョニィは授業の終わったルイズの部屋へ連れて行かれ、お互いの情報をある程度交換した。 ───もちろん『遺体』やスタンドの話はしなかったのだが。 彼女、ルイズが言うにはここはハルケギニアのトリステイン魔法学院で今いる場所はトリステイン魔法学院の寮内のルイズの部屋。 学院の生徒は二年生に進級する際、『使い魔』を召喚する。 自分はルイズにその『使い魔』として1890年のアメリカ・ミシガン湖畔から召喚されたらしい。 (なんか…すごい話だ…すごい出来た話で…でも…かなり頭がイカれてる…) いつぞやの地質学博士のときと同じようなことを思ったジョニィだったが さすがに空を飛ぶドラゴンやグリフォン、そして空に輝く二つの月を見て信じざるをえなかった。 (ここは本当に…僕がいた世界じゃないのか…?) 「僕が嘘をつくメリットが無い」 一方ルイズは目の前で夜食用のパンを食べる男にますます疑いの眼差しを向ける。 それもそうだ。 彼は昨日までアメリカという場所で世界中が注目する大陸横断レースに参加していたと言うのだ。 そんな国もレースも聞いたことがない。 この平民は自分を何も知らない貴族だと思って嘘をついているのだろうか。 「信じられないわ」 「僕だって信じられない」 「別の世界ってどういうこと?」 「魔法使いなんてイカレたことを言いだす人間は…変態地質学者くらいだと思う。月だって一つしかない」 そう言ってジョニィは窓から見える二つの月を指差す。 SBRレースでは何度も野宿を体験した。 もちろん雨や雪の日もあったが夜には美しい月が見える日も多かった。 そしてその月を一緒に見ていた友人のことを思い出す。 (もう夜になってしまった…ジャイロ…君は…大丈夫だろうか?) そう思うと急に心配になってきた。ゴールが近づくにつれて大統領の刺客の攻撃も執拗になっている。 黄金の回転で強化されたスタンドを持つ今、足手まといにはならないだろう。 「それで…君には悪いんだけど僕を元の世界に帰してほしい。使い魔は他を当たってくれ」 「無理よ。一度契約を結んだ使い魔を元の世界に戻す魔法なんて無いわ」 「なにそれ!?勝手に召喚しておいて無理ッ!?」 「無理なものは無理なのよ」 その言葉にジョニィはガックリとうなだれる。 このままでは遺体を集めることも回転の技術を学ぶことも出来ない。 だがこのままここにいるわけにもいかない。 (何が何でもレースに戻って大統領やDIOより先に遺体を全て集めたい…) そう考えれば…元の世界に戻る方法を探すのにこの学院という場所はベストだろう。 情報も入ってくるだろうし、文献を探せば帰る方法が見つかるかもしれない。 (立ち止まるわけにはいかない…ここで立ち止まれば僕の心は再び死ぬ) 「…わかった」 「え?」 「だから君の使い魔だっけ?なるよ…。でも帰る方法が見つかったら僕はすぐに帰らせてもらうぜ」 「口の利き方がなってないわ。『なんなりとお申しつけください、ご主人様』でしょ?」 「………」 頭にタスクで風穴開けてやろうかと、少し考えるジョニィであった。 「それで、使い魔って何するんだい?」 「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。…でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何も見えないもん」 「他は?」 「秘薬を見つけたり、あと、主人を敵から守るって役目もあるわ。これが一番重要なんだけど、あんたじゃ無理ね」 そう言ってルイズはジョニィの脚を見る。 直接聞いたわけではないがルイズもジョニィの脚が動かないことには気付いている。 魔法が使えない平民が戦闘中に動けないようでは戦うことなんて無理!とルイズは考えていた。 「だからあんたに出来そうなことをやらせてあげるわ。炊事、洗濯、その他雑用」 「まあ…いいさ」 その言葉を肯定と受け取ったルイズは小さく欠伸をした。 「さてと、しゃべったら眠くなっちゃったわ」 「で、僕はどこで寝ればいいんだ?」 ルイズが指差したのは床だった。 「野宿には慣れてるけど…僕は犬や猫じゃあないんだ」 「仕方ないでしょ。ベットは一つしかないんだから」 そう言うとルイズは一枚毛布を投げてよこした。 それから何にも言ってないのに勝手に衣服を脱ぎ始め… 「それ明日になったら洗濯しといて」 …そう言ってパンティやキャミソールを投げてよこした。 ───あなたならどうする?最高だった…… 「最高じゃあないッ!おまえ何してるんだルイズーーッ!!洗濯はともかく理由を言えーーーッ!!」 驚くジョニィをルイズはきょとんとして見る。 「寝るから着替えるのよ」 「き、君は男の前で着替えてもなんとも思わないのかッ!?」 「男?誰が?あんたは使い魔じゃない」 そう言ってルイズがぱちんと指を弾くと部屋のランプが消えた。 ジョニィはパンティやキャミソールを部屋の隅に押しやるとそのまま毛布を被った。 寝袋を取ってこようかとも考えたが馬舎まで行く気力も尽きた。 ───ジャイロ、君は女は禍を運んでくると言ってたけど…その通りだったよ… To Be Continued =>
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/310.html
日本時間で朝六時半、そのくらいの時間に自然に目を覚ます。 家族の分の朝食を作り、簡単な家事をするためにはこの時間が一番いいからだ。 一応セットしてあるがあまりお世話にならない目覚まし時計を止めようとして―――思い出した。 死んだこと、生き返ったかもしれないこと、ここが異世界であること、 ―――しなくてはならないことがあること。 『それ』をするための準備をして部屋を出る。近くに人はいない。 そして一階まで降り、人を探す。 うまい具合に一人見つけ、そいつに近づく。 あと五メートルほどの所でそいつがこっちに気づいた。女だった。驚いた顔をしている。 そしてあと二メートルくらい距離を縮める、女の顔が怯えているように見える。 「おはよう。イキナリですまないが洗濯の道具は何処にあるか教えてもらえるか?」 これ以上怯えさせないため、形兆はなるべく爽やかに挨拶をした。 「こちらにある道具なら自由使ってかまわないと思います」 「ありがとう。助かったよ」 「では、私はこれで」 そういって黒髪のメイド、シエスタは去っていく。 簡単な自己紹介で自分が使い魔であることを見抜かれた。 見抜かれたというよりは他に考えられなかっただけなのだろうが、そんなことはそうでもいい。 とにかくこれで洗濯ができる。形兆にあるのはそれだけだった。 シエスタに教えてもらった水汲み場に行く。 ここで洗濯をすれば良いと言われたからだ。 まず形兆は持ってきたタライに水をいれる。 次に洗濯板の片方を浸け、もう片方をおなかで固定するッ!これで板がぐらつくことはもう無いッ! 濡らした衣類を板の上に広げてッ、両手の手のひらの手首に近いところを使いッ!揉む様に洗うッ! コツは肩の力を抜き手首をなるべく軟らかく動かすことッ! そして何よりも重要なのはッ!何よりも重要なのは『汚れを落とすッ!』という強い意志をもつことッ! 億泰が服に付けたしょうゆとかのシミをよくこんな風に落としてやったな、 そんな事を思い出しながら時間は過ぎてゆく。 洗濯を終え清々しい気分で部屋に戻った形兆を出迎えたのは主人の怒りだった。 起きたばかりなのかまだ寝間着のままルイズは自分の使い魔を怒鳴りつける。 「どこに行ってたのよ!」 「水汲み場だ」 「何でそんなところに行ったのよ!」 「洗濯をしろ、といったのはそっちだが?」 「う……で、でも何で私を起こさないのよ!」 形兆に非は無い、それを知ったルイズは別のところに矛先を向けた。 「起こせ、とは言われてなかったぞ?」 「そうだけど……えーと、えーと、と、とにかく謝りなさい!」 わざわざ怒る理由を探した割には無茶な怒り方だった。 起きた時姿が見えなかったのがそんなに不安だったのだろうか。 別に形兆は悪くないのだから謝る必要は無いのだが、このままだとどんなことになるか分からない。 「謝らないとご飯抜きよ!」 謝る理由も意味もないのに謝れと言われ形兆にも怒りがでてきた…………だがしかしッ! (この場所であってはならないのは…『精神力』の消耗だ…くだらないストレス! それに伴う『体力』へのダメージ…!! おれはこの『異世界』で!!『やるべき目的』(帰る方法を探すこと)があるッ! 必ずやり遂げてやる…そのためには…!くだらない消耗があってはならないッ! いや…逆にもっと強くなってやるッ!) 「すまなかった。次から気をつける」 腰をキッチリ四十五度曲げ、謝った。 自分の使い魔がアッサリと謝ったことにルイズは驚く。 自分でもこれは理不尽なことだと薄々は思っていたのだが、主人としてのプライドがルイズを意固地にさせていた。 『形兆は謝らない』……『自分も後には引けない』つまり、堂々巡りの形になるな… ルイズはそう考えていた。 だが余計な消耗を嫌った形兆の謝罪によってそうはならなかった。 この話題を蒸し返されたら、また面倒なことになる。そう判断したルイズは次の命令をした。 「早く服を着せなさい」 「それも使い魔の仕事なのか?」 「そうよ。貴族は目の前に従者がいる時、自分で服を着たりしないのよ」 「そうか……」 正直言ってやりたくないことだったが、文句を言っても余計な消耗をするだけなのでさっさと服を着せた。 ルイズに服を着せ、二人で部屋を出ると、廊下にあるドアの一つから赤い髪の女が出てきた。 「おはよう、ルイズ」 「おはよう、キュルケ」 相手の名前以外は同じことを言っているのだが ルイズの方は何故だか分からないが不機嫌そうな、 キュルケとか言う女の方はお気に入りのおもちゃを見つけて、喜びを隠し切れない子供みたいな言い方だった。 「それがあなたの使い魔?」 「そうよ」 「へ~~~ぇ」 「何よ」 「ほんとに平民を使い魔にしたんだな~~~って関心してたのよ。流石は『ゼロのルイズ』ね」 「うるさいわね」 形兆はこの一言で二人の大体の関係を把握し、なるべく関らないことに決めた。 「そうそう私の使い魔をよく見せてなかったわね。来なさい、フレイム」 キュルケが自分の使い魔を呼ぶ。 そして現れたのは、赤くて大きい爬虫類だった。 「火トカゲよ。サラマンダーとも言うわね」 勝ち誇った声でサラマンダーを見せてくる。 形兆は火トカゲだとどこかの博士からもらえる三匹の内の一匹のイメージがあったため、 『こいつの種族はサラマンダー』と覚えた。ちなみに彼は聖剣の伝説のゲームはやっていなかった。 そしてキュルケは使い魔の自慢話を始める。 内容は尻尾の炎の事やそこから推測したサラマンダーの出身地、 それ(出身地)がブランドものであること、 好事家に見せたら値段なんかつかない事など、形兆にはよく分からないことを話し始めた。 分からないから適当に相槌を打っていれば良かったのだが 形兆はさっき関らないことを決めていたので何も言わなかった。 だから適当に聞き流してさっさと去ってしまえばそれで良かったのだが、 ルイズはそれをしなかった。つまり聞き流さなかったのだ。 それでもルイズは何も言い返さない、 そしてキュルケの話が終わり、キュルケがこの場を去った後に、 「なんなのよあの女はッ!」 盛大に怒りを音に変換した。 「まあそう大声を出すな、そのうちお前にも運が巡ってくるさ」 形兆がフォローをいれようとしても、 「あんたが原因でしょうがっ!」 やはり怒鳴られた。 「何であの女がサラマンダーで私はあんたなのよ!」 「それをおれに言われてもな」 「あ~~~くやし~~~」 「そういえば『ゼロのルイズ』ってのは何なんだ?」 これ以上ルイズの恨み言を聞く前に何とか話題を変えようといった言葉だが、これが良くない結果を生んだ。 「うるさ~~~~~いッ!」 火に油を注いでしまったのだ。 しばらくしてルイズの怒りがおさまったので、二人とも一階にある食堂に移動する。 食堂の中には三桁くらい座れそうなテーブルが三つ並んでいて、結構な人数がもう食事をしていた。 右のテーブルには茶色のマントの生徒、真ん中がルイズと同じ黒、そして左が紫である。 形兆はふと思ったことを聞く。 「マントの色は学年で決まっているのか?」 「そうよ、茶色が一年生で紫が三年生」 「黒が二年か」 「ええ、そうよ」 そしてルイズは立ち止まる。 つられて形兆も立ち止まり、 「早く椅子を引きなさいよ、気の利かない使い魔ね」 無言で椅子を引き、形兆も座ろうとして――― 「あんたは下よ」 と、ルイズに言われた。 下を見るとそこにあったのは皿に入った明らかに粗末なスープとパンだった。 「感謝しなさい。使い魔は外で食べるのに私のおかげで中で食べれるんだから」 形兆はプッツンしそうになったが、プッツンしても状況は何も変わらない、 それどころか悪くなるだろうことを考え、自分を抑えた。 いっそ脱走しようかとも考えたが、まだ情報が少ないためそれすら不可能と判断し、 情報を集めたらさっさと逃げること、後で食べられそうなキノコを探すことを決め、形だけの感謝を述べた。 To Be Continued ↓↓
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1135.html
中庭には眼鏡とキュルケがいた。勉強会でもしていたのか、眼鏡は本とノートを持っている。 「ちょっとルイズ。あなた使い魔に逃げられたらしいわね」 うわ……もう広まってるじゃないの。わたしをここから追い出そうっていう闇の勢力でもいるわけ? 「キーシュの使い魔は大活躍だったって聞いたけど。同じ平民でも随分違うものねぇ」 何よ、あんな爺さんがいいの? 見境なし! 淫乱! 色魔! 肉欲の権化! 「コントラクト・サーヴァントまでしておいて従わせることができないなんて」 あーもうやだやだ。こいつ無視無視。おっぱいおっぱいおっぱい。 「あなたらしいわ。さすがゼロのルイズ」 おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい。 「ねえ、あなたわたしの使い魔見なかった?」 眼鏡は首を横に振った。役に立たないわね。 「そっちのあなたは見なかった?」 「見てはいねェー……だがヨォ、ラッキープレイスはルイズの部屋って感じダぜェ」 おおお、このドラゴン口をきくんだ。主に似て物言いは無礼だけど素直に凄いわ。 「……今のは腹話術」 えええええっ、そ、そっちの方がスゴイッって! ここで腹話術を出すセンスはともかくとして、意外にユーモアあるのね、この眼鏡。 「ルイズ。あなたタバサのドラゴンが見えてるの?」 「見えてるのって……見えるに決まってるじゃない!」 どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんでしょうね、このおっぱい的存在は。 「アンタもスタンド使いになッたンだなァールイズ。ビックリだッツーの」 スゴイわねえ。唇なんて全然動いてないじゃない。この子にこんな芸があったなんて驚き。 ところでスタンド使いって何だろ? 無知を晒すみたいで恥ずかしいから聞かないけど。 あとでグェスにでも聞いてやるか。あいつ下らないこと詳しそうだし。 「いつまでそこにいるつもりだ?」 少女は伏せていた顔を上げた。話しかけられていたのかと思ったが、そうではないらしい。 普段の口調には、静かに抑えられた蔑みと上っ面以下の敬意が込められていた。 今の言葉からは、ある種の親しみが感じられた。同族への友好的感情といってもいい。けして少女には向けられることの無いものだ。 自分達以外の誰かがいる恐怖、唐突に動いた使い魔への困惑、場違いな嫉妬、それらが混化し、本人さえ理解しがたいものになり、少女は使い魔を見た。 使い魔の目は少女から逸れ、部屋の端へ向けられていた。何も無いはずの空間を凝視していた。 部屋の中には少女と使い魔しかいない。いくつかのパーツに分かれた使い魔が部屋のあちこちで蠢いている。 「顔くらい見せてもいいじゃあないか」 使い魔の口は動いていない。だが、声は聞こえる。 使い魔の声質に似ていたが、決定的に違う部分があった。 その声は空気を震わせることなく、頭の中へ直接割り込んでくる。 「私は君に従おう。君の目的は知らないが、なんとなく想像はつく。協力させてほしいだ」 口をきいているのは使い魔ではなかった。 少女はベッドから半身を起こし、悲鳴を飲み込んだ。右手で左腕を強く掴んだ。爪が食い込み、血が滲むほど力を入れた。 「主は君だ。私は従で充分だ」 使い魔の傍らに緑色の「何か」がいた。人ではない。人の形に似ていたが、絶対に人ではない。 下半身は醜く潰れ、肩や頭部からは無数の管が突き出ていた。 人形の全身にこびりついた緑色のカビが、少女の使い魔と関係があることを証明している。 目は二つあるが、人間の黒目にあたる部分は存在しない。全体が大雑把でいびつな造りをしていた。 「私には過程があればそれでいいんだ」 幻覚を見せられているのだろうか。握り締めた左腕が悲鳴を上げていたが、少女の耳には「何か」の声しか聞こえていない。 「君と戦おうとは思わん。それだけは分かってほしい」 緑色が薄れ、その声が遠くなっていく。少女はベッドから立ち上がった。この部屋にいたくない。 もつれる足で扉へ向かい、ノブに手をかけた。回そうとするが、汗で滑って上手く回せない。 「……お夜食、もらってくる……ね」 聞かれてもいない言い訳を口にした。 貴族嫌いの料理長に頭を下げるのも毎夜のことで、いまさら言葉にするようなことではなかったが、この異常な状況下、言い訳の一つも無しに部屋を出れば何をされるか分からない。 なんとかノブを捻り、扉を開け、外へ出ようとしたところで足を止めた。 少女の意思で止めたわけではない。足首に纏わりつく使い魔の指先を感じ、少女は足以外の動きも止めた。痛いほどに鼓動を速める心臓だけが、例外的に動き続けている。 「スカラファッジョ、あなた見えていましたね?」 千切れた左腕、ねじくれた右腕、胴体から生えた脊椎のような触手、どんなに気持ちが悪くとも払いのけることは許されない。 「ふむ……ふむ、ふむ」 右手で鼻をつままれ、左手に顎を押さえられた。口をこじ開けられ、使い魔が鼻を差し込んで匂いを嗅いでいる。 足が服の内側で這い回っている。そこに劣情は全く感じられず、それゆえ尚の事恐ろしい。 眼窩に指が差し込まれた。蚯蚓じみた長い中指が深く潜り、眼球の裏を撫でた。 震える足を気力で支え、倒れはしないように耐えていたが、使い魔の傍らに緑色の人形が現れた時点で少女の膝は恐怖に屈した。 緑色が腕を振り上げた。親指を内に握りこみ、それ以外の指は伸びた状態で揃えられている。 何をしようとしているのか理解したが、目を逸らすことはおろか、瞬き一つできない。 振り上げられた手が、何のてらいも無く、振り下ろされた。 見開かれた瞳から涙が一滴、それに合わせ、閉じることを忘れた口の端から唾液が糸を引いて床に落ちた。 「……違うな」 手刀が頭を割る直前で人形は消え失せた。だが、少女はへたり込んだまま動かない。 光彩を淀ませた瞳からは次々に涙が零れ落ち、口元は震えるだけで開くことも閉じることもない。 使い魔は少女に興味を失くしたのか、全ての体を元いた位置に戻し、活動を再開した。 ――スタンド使いを召喚した者にもスタンドが見えるのか? スタンド使い使い……ふん。 ――スカラファッジョか。たしか意味は……へっ、いい趣味してやがる。 どれほどだいそれた力を持っているとしても、種が割れていれば恐ろしくはない。 一瞬で壊れた物体を直そうが、光速を超えて時間を止めようが、いくらでもやりようはある。 策を練ることはけして不得意ではなかった。むしろ得意だった。 自分をより強い快楽へと導くための作戦を立てるため、じっくりと事を煮詰めるその時間は、時として実行時の愉悦を上回る。 だがそれも相手を理解していてこそだ。 仕事が終わってからの一杯をかかさない。 髪の毛をけなされればブチ切れる。 毎朝牛乳を飲んでいる。 母親が美人。 些細な情報でもかまわない。蟻の穴がきっかけで堤防が決壊することは珍しくない。 ――だが、野郎は……。 能力を尻毛の先ほども見せない。大切な物が分からない。主を人質にとも考えたが、現状を見る限り喜ばせるだけだろう。 水蒸気になって忍び寄る。雨に紛れて寝込みを襲う。闇雲に行動を起こすのは簡単だ。 だが相手の能力がこちらの意図を上回るものだったとしたら? 人間でないことは見た目で丸分かり。そんなわけの分からない生き物の体内に入っていいものなのか? 全て罠だったらどうする? 液体にさえダメージを与えるような力があったら? 何かに閉じ込める、全てを凍りつかせる、そんな能力だったら? すでに本体を認識されていたら? そのいずれか一つだけで全てが終わる。 ――しかも、このオレに気づいてやがった。 その上で気づいていることを教え、さらに余裕を崩さずこちらに呼びかけた。自分のスタンドを曝け出し、全てを明かしているポーズをとって話しかけてきた。 その態度、そして泡を食って逃げ出した自分自身に腹が立って仕方ない。 ――ケツ穴がいい気になりやがってるな。オレの前で調子に乗ってやがるな。 いい気になっているやつを許す趣味は無い。例外なく後悔させる。 近寄らずに消す手段は一つだけあった。そして、その手段はもうすぐこの学院へやってくる。 ――クヒヒッ、ヘハハハッ、フウウッヘヘヘヘ……ああ楽しみだァ。思うだけでも気分が晴れるぜェェェェ。 自分の強みは「情報」にある。下水の中、天井裏、排水溝、人が嫌がるあらゆる場所を這い回り、この学院を知ろうと努めた。 結果、表から裏までの全てが自分の中にある。部屋の中で本の表紙を眺めているだけの使い魔には手に入れられない情報を持っている。 食堂で大暴れした爺使い魔、ルイズの下着のローテーション、飽く事の無いキュルケの情事、ロングビルの裏仕事。 近いうちに開催されるであろう使い魔大品評会。 使い魔大品評会。 ――それまでは我慢してやるぜ。オレの性にゃ合わねェがよォ。 使い魔品評会は実にいい機会だ。実戦に近い模擬戦には事故がつき物。そうとくればやることは一つしかない。 一つ一つの挙措に隙が無いハゲ教師。裏で汚れ仕事をしているらしいチビ眼鏡。おかしな力でメイジを一蹴した糞爺。世界有数のメイジと噂される学院長。あとは自分以外のスタンド使いとその主人。 緑色を消し、これらの邪魔者もいなくなれば、この学院は自分の天下になる。 ここは一年ごとに新しい子供が自動供給される天国のような場所だ。誰にも譲ることはできない。 犯してやろう。切り取ってやろう。抉り出してやろう。打ち付けてやろう。ぶちまけてやろう。 中から苦痛と快楽を繰り返し与えてやろう。親友同士で楽しませてやろう。 魔法を使うのもいい。小利口な貴族連中では思いもつかないやり方を考えてやろう。 全ては使い魔大品評会だ。そこから始まる。そこから始める。 別にタバサの使い魔信じたわけじゃないけど……あ、あれ腹話術だったっけ。 別にタバサの言うこと信じたわけじゃないけど、自分の部屋に戻ってみることにした。 わたしはわたしなりに反省したけど、グェスだって反省しかもしれないしね。 部屋の中で正座して待ってるかもしれない。 ここまでポジティブに考えてるのに、渡り廊下でマリコルヌに遭遇するし。またよりによって。 ううう、普段人通りが無いところを選んで歩いてきたのに。 「……」 ん? からかわれることを覚悟してたのに、マリコルヌは元気なさげ。 いつもゼロゼロゼロしか言わない風邪ッぴきがおかしいわね。 どうしたんだろ。食堂の騒ぎが伝わってないのかな。だったらラッキー。 「どうしたのマリコルヌ。元気無いわね」 「いや……別に」 「わたしの使い魔見なかった?」 「……別に」 わたしに目を合わせず、腕にひっついた使い魔の蛙をジッと見ている。 これは怪しい。何か企んでいるようね。 どうやってわたしを陥れてやろうか、そんな雰囲気が漂ってるわ。 ふん、そっちがその気ならわたしだって受けてたってやるんだから。 「あのね。病気じゃないならもっと胸を張りなさい。人をからかってばかりいる不遜なあんたはどうしたの」 バァーンっと背中叩いてやった。マリコルヌはむせてるけど、わたしはちょっとだけスッとした。 マリコルヌは放って渡り廊下を後にする。あーあ、こんなことでしか憂さを晴らせない自分が情けない。 今のわたしって、この学院で一番不幸な女の子なんじゃないかしら。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1683.html
今は昔 一五六五年頃 王位継承を争った ふたりの女王がいた 一人は女王エリザベス一世 もうひとりは美貌の23歳メアリー・スチュアート ともにチューダー王家の血統を継ぐ親戚同士で タルカスと黒騎士ブラフォードはメアリーの忠実なる家来だった (中略) 二人は捕らえられた そして処刑されるその寸前聞かされたことは 「メアリーはすでに処刑した」 ふたりはこうして処刑された、強い恨みを残して処刑されたのだ タルカスは その筋肉が怒りのため硬直し首を切り落とすのに処刑人は 何本ものオノを折ったという ブラフォードは その長髪がどういうわけか 処刑人の足にからみつきにいくまでくい込んで 死んでいったという そしておよそ300年後吸血鬼ディオによりゾンビとして蘇ったブラフォードとタルカス しかしタルカスは一夜で今度はただのゾンビとして再び歴史の闇に消えた 一方ブラフォードは人の心を取り戻し 300年後の世界の友人ににpluck(勇気)の剣を託して眠った しかしブラフォードは女王のもとにではなく新たな主人のもとへと旅たつ事になった 使い魔は英雄 「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!神聖で美しく!そして強力な使い魔よ! 私は心より求め!訴えるわ !我が導きに答えなさい!」 青い空、緑の草原にすさまじい爆音が響いた 「やった!さすがルイズ!何も召還できてないぜ!」 波紋が吸血鬼に流れるような勢いで笑いが広がった 「ゼロの分際で高望みしすぎたんだ」 「さようなら!ルイズ君の事はわすれない!」 「退学ゥ!退学ゥ!」 「貴族として終了のお知らせ」 「ちょっとまて!な・・・何かいるぞッ!!!」 野次を飛ばしていた内の一人が叫んだ 「こ・・・これは・・・HE・・・I・・・MI・・・・N・・・・」 その時ルイズの周りでわかりやすく「プツン」と決定的何かが切れた音が響いたという 「ミスタ・コルベール!もう一度召還さs「NO(だめでございます)」 「(しかし成功には変わりない!今すぐ契約しにいかないと!)」 ルイズがそう思ったときにはすでに使い魔に向かって全力で走り出していた! ズギュウゥウウウン! 「UOOOOOOOOOOOO!!!!」 ブラフォードは激痛により目を覚ました 「(ここは何処だ・・・!た・・・太陽!俺はゾンビになって倒されてあの世に行ったはずでは・・・」 「お・・・おわりました!」 ガクガク震えながらもルイズは契約できたと伝えた 「ふむ・・・・珍しいルーンだな・・・」 とコルベールはスタープラチナもびっくりなスピードと精密動作で ブラフォードの手に刻まれたルーンを紙に写した 「さて教室へ戻ろうか」 コルベールがそう言おうとしたときには既にほぼ全員が帰っていた 「アンタ名前は?」 「俺の名は・・・ブラフォード・・・黒騎士ブラフォードだ・・・」