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前話 京太郎「(俺は何をやってるんだろ…)」 京太郎がそう思うのは、染谷邸の浴室の中だった。 薄紅色の上品なタイルで覆われたそこは決して綺麗にされている。 家の外観からは想像も出来ないくらいにしっかりとしているそれは、普段から掃除されている証だろう。 水垢一つ残っていないその空間の中で、京太郎は裸になりながら、身を縮こまらせていた。 京太郎「(いや…俺にだって分かってるんだ。これが一番だって事くらい)」 実家に帰れば着替えがあるまこと違い、彼に着替えはない。 その身体を多少拭いたところで服が吸い込んだ水分が体温を奪っていくだろう。 それを防ぐ為にもとっととそれを脱ぎ去って、風呂で身体を温めるべきなのは理解できていた。 しかし、異性である先輩が日常的に利用している浴室だと思うとどうにも場違い感は拭えない。 そうやって先を譲ってくれたまこに押し切られた事も含めて、どうしてこうなってしまったとついつい思ってしまうくらいに。 京太郎「(とりあえず…さっさと上がらないと)」 勿論、まこは既に身体を拭いて、着替えている事だろう。 だが、それで失った体温がすぐさま戻ってくるかというと決してそうではない。 彼女もまたびしょ濡れになっていた以上、出来るだけ早くシャワーを浴びたいだろう。 そう理解しながら京太郎はぎこちなく、シャワーコックをひねり、温水の雨を降らせた。 京太郎「(あー…温かい…)」 それに身体がジュッと熱くなっていくのを感じながら、京太郎は筋肉を緩ませる。 どうやら自分の身体は思っていた以上に冷え込み、温かさを求めていたらしい。 それが一気に充足へと傾く感覚に、ついついため息を漏らしてしまう。 出来れば、ずっとこのままで居たいと思うほどの心地良さに、しかし、何時までも浸っている訳にはいかない。 そう自分を戒めた京太郎はシャワーを止め、シャンプーで髪を洗い始める。 京太郎「(まぁ…髪は良いんだけれどさ…)」 程よく泡だった髪を再び温水で洗い流した京太郎。 その前に現れるのは青とオレンジの2つのスポンジであった。 明らかに別の用途に使われているであろうそれに京太郎は逡巡を覚える。 勿論、それは彼がどちらを使って良いかが分からなかったからだ。 京太郎「(…このどちらかを先輩が使っているんだよな…)」 恐らくその二つは女性と男性とで使い分けされているものなのだろう。 しかし、その色からはどちらがどちらなのかまったく想像がつかない。 一般的に青と言えば男性用のイメージではあるが、決して女性が使わないという訳ではないのだから。 オレンジもまた中性的な色で、男女どちらが使っていても決しておかしくはない。 京太郎「(い、いや…勿論、変な意味じゃない。意味じゃないんだけどさ!)」 しかし、普段はサバサバとした先輩に停留所でドキリとしてしまった所為だろうか。 そのどちらかをまこが日常的に使っていると思うと、妙にドキドキしてしまう。 それと同時に京太郎の脳裏に浮かんでくるのは、それで珠の肌を磨いているまこの姿だ。 まるで尊敬する先輩を自分で穢すようなその想像に自己嫌悪を浮かべながらも、京太郎の頭からそれが消える事はない。 まこ「湯加減はどうじゃ?」 京太郎「うわぁ!?」 だからこそ、唐突に扉越しに話しかけられたまこの言葉に、京太郎はオーバーなリアクションを返してしまう。 浴室内に響くそれはキンキンと京太郎の耳を慣らし、微かな不快感を沸き上がらせた。 しかし、それさえも気にならないくらい、今の京太郎は狼狽し、そして混乱している。 もしかして、自分の妄想のことがバレてしまったのではないだろうか。 そんなあり得ない想像すら沸き上がらせ、京太郎はその身を硬く強張らせる。 まこ「どうした?」 京太郎「い、いや、なんでもないです」 そんな京太郎の感情など露ほども知らないまこは曇りガラスがはめ込まれた扉の前でそっと首を傾げた。 幼い頃から雀荘にかようあけすけな年頃の男性 ―― 所謂、おっさんに接してきた彼女はある程度、シモネタに強い。 しかし、その半面、彼女は青少年と呼ばれる年頃の男性に対して、接した経験が殆どないのだ。 自然、思春期の男子特有のドキドキ感を理解する事は出来ず、その思考は虚しくから回る。 まこ「(まぁ、他人の家の風呂って言うのは緊張するもんじゃしな)」 そう結論づけながら、まこはそっと扉の横にパネルに目を向けた。 そこには彼女の父好みの高めの温度が設定されている。 まこもまたそれに慣れているとは言え、もしかしたら京太郎には辛い熱さかもしれない。 まこ「もうちょっと温めの方がええか?」 京太郎「いや…実はまだ浸かってなくて…」 まこ「なんじゃ。遠慮しとるんか?」 京太郎「ま…まぁ…それもあると言いますか…」 そう思ったまこの疑問に、京太郎は要領を得ない言葉で返す。 まさか二つのスポンジのどちらかをまこが使っているか分からないから手が止まっているだなんて言えないのだ。 しかし、ここでまこが来てくれたのは、千載一遇の好機である。 湧き上がる羞恥心にヘタレそうになる自分にそう言い聞かせながら、京太郎はゆっくりと口を開いた。 京太郎「えっと、つかぬ事をお聞きしますが…」 まこ「ん?」 京太郎「俺はどっちのスポンジを使えば良いんでしょう…?」 まこ「あっ」 京太郎の言葉にようやくまこは彼の躊躇いの理由を知った。 そう言えば伝えていなかったと今更ながらに思いながら、まこは肩を落とす。 それは勿論、性差に関してあまりにも疎い自分に対して、自嘲を覚えたからである。 結果、京太郎にかかさなくても良い恥までかかせてしまった。 そんな後悔に浸ろうとする心を感じながら、まこはそっと首を振るう。 まこ「(そういうのが自信がないってゆわれる所以なんじゃ)」 勿論、後悔を忘れてはいけない。 しかし、失敗に一々、自嘲を覚えていればその分、歩みは遅くなってしまう。 折角、変わるように頑張ると言ったばかりなのに、こんな事ではいけない。 そう自分を戒めながら自嘲を振り払ったまこは、彼に応えるべく口を開いた。 まこ「オレンジの方を使えばええ」 京太郎「うっす。了解です」 そう応える京太郎の声には安堵が強く現れていた。 本格的に分からなければ最終手段として自分の手を使うつもりだったが、それはいい気分ではない。 正直、ヌルヌルした自分の手が身体を這いまわると想像しただけで、妙な吐き気を覚えるくらいだ。 そんな彼にとって、スポンジの使用許可が降りた事はかなり有難い。 まこ「後、ぼちぼち浸かってええぞ」 京太郎「いや、でも…」 まこ「風邪でも引かれたら大変じゃしな」 しかし、次いで放たれたまこの言葉に京太郎はありがたすぎて遠慮を覚えてしまう。 勿論、シャワー程度では冷えた身体は温まり切らず、湯船にゆっくりと浸かりたいと思っているのは事実だ。 だが、自分の後ろにはまだまこが身体を冷やして待っているのである。 それを知りながらも、一人だけじっくりと浴槽に使っている訳にはいかない。 元々、ここはまこの家の浴室だという事もあって早めに明け渡したいというのが京太郎の本音であた。 まこ「後、着替えここに置いとくぞ」 京太郎「あ…ちょ…っ!」 そんな彼の返事を聞かず、まこはそっと脱衣所のカゴに着替えを置いた。 父のパジャマから拝借したそれは比較的がっちりとしている京太郎の体格でも大丈夫だろう。 まぁ、大丈夫でなければ、また次のヤツを見繕って来れば良い。 そう判断しながら、まこはそっと京太郎の服を掴み、洗濯機へと放り込む。 まこ「元の服は乾燥に回すしもうちょい待っとれ」 京太郎「え……?」 そのまま手慣れた様子で脱水を選択するまこの言葉に、京太郎は驚きの声を返す。 何せ、それは自分の服を、まこが手にとった証なのだから。 勿論、そこにはさっきまで自分が履いていたトランクスも入っているだろう。 異性の先輩に下着を見られたというショックは、健全な男子高校生にとってはあまりにも大きすぎるものだった。 まこ「じゃ、ゆっくりな」 そう言って脱衣所から出て行く彼女には狼狽はない。 忙しい両親に変わって洗濯をする事も多い彼女にとって、それはただの布なのだ。 父親のものと何も変わらず、普通に洗濯槽へと入れる事が出来たのである。 勿論、まったく意識していない訳ではないが、それは京太郎のものよりも遥かに弱いものであった。 京太郎「うあー…」 そんな彼女とは対照的に、ショックから立ち直った京太郎の心は羞恥心で一杯だった。 一体、これからどんな顔をしてまこに会えば良いのか分からないくらいである。 勿論、まこが平常運転であった以上、変に意識してしまう方がおかしいのだろう。 だが、胸に湧き上がるそれらはどうしても彼の意識をかき乱し、顔を赤く染めるのだ。 京太郎「(とりあえず…とっとと身体を洗おう…)」 このまま上がってしまったら、折角、用意してくれた着替えまで汚してしまう事になる。 そちらへと京太郎は意識を動かしながら、ゆっくりとスポンジで身体を洗っていく。 しかし、その最中も、下着を見られた恥ずかしさが胸をつき、時々、腕が止まってしまう。 結果、彼が身体を洗い終え、浴槽に身を浸した頃には普段の数倍もの時間が経過していた。 京太郎「はぁ…あぁ…」 そんな彼にとって幸いだったのは、熱めに沸かされた風呂が身体に良く効いた事だろう。 シャワーのそれとは比べ物にならないほど身体があたたまるその感覚に彼は羞恥心を忘れる事が出来た。 そのまま浴槽に背を預けながら、天井を見上げた彼は、ほぅと熱いため息を吐く。 倦怠感混じりのそれお湯の熱さに身体から疲労が抜けている証だろう。 それにまこに一つ感謝の感情を抱きながら、京太郎は内心で100を数え始めた。 京太郎「はぁ…さっぱりした」 風呂から上がった頃には、京太郎の身体はもう十分温まっていた。 ポカポカと熱が肌の下で蠢き、心地よさがジィンと広がっている。 ついさっきまで震えそうなほど冷えていたとは思えない温まった身体を、京太郎は丁寧に拭いていく。 勿論、下手に時間を掛けた以上、今すぐ出て行ってまこと後退してやりたいが、彼は着替えを貸してもらう側なのだ。 下手に濡らして汚す訳にはいかないと逸る気持ちを抑えながら、京太郎は身体から水気をタオルへと移す。 京太郎「(で…着替えは…多分、これか)」 そうやって身体を拭き終わった京太郎の視界に映ったのは群青色の甚平であった。 これからの時期にはぴったりなそれは見るからに涼しげで、どことなく情緒のようなものを感じさせる。 腕を通してみたが、体格もそれほど違いはなく、鏡の中の自分は特に違和感のないものであった。 これからの時期だと意外と部屋着として甚平を使うのも良いかもしれない。 そんな事を思いながら、京太郎はそっと脱衣所の扉を開き、まこが待ってくれているであろうリビングへと足を踏み入れた。 京太郎「すみません。お待たせしました」 まこ「おう。あがったか」 京太郎がリビングに入った時、彼女はキッチンで鍋をかき回している最中だった。 しかし、まだ夕食を作るのには時間が早く、まことて今すぐ風呂に入りたい状況のはずである。 料理の準備ならばまだしも、そうやって鍋をかき回すほど本格的なものは作れないはずだ。 一体、何をしているのだろうと首を傾げながら、京太郎がそちらへと近づく。 まこ「ん?なんじゃ。気になるんか」 京太郎「えぇ…まぁ…」 まこ「ふふ…じゃあ、好きな方を選ばええ」 京太郎「…選ぶ?」 そう言いながらまこの手元を覗きこんだ彼の視界に二つのパックが目に入る。 ぐつぐつと煮えたぎるお湯の中で微かに動くそこにはキノコ雑炊という文字と、卵雑炊という商品名が書いてあった。 どうやら、まこは夕食を作っていた訳ではなく、お互いの身体を温める為の間食を用意してくれていたらしい。 気遣いの仕方に隙がない彼女に京太郎は感心とも感謝とも言い切れない感情を抱いた瞬間、まこがそっと彼の脇を通り過ぎる。 まこ「時間も時間じゃし、腹も減っとるじゃろ」 京太郎「あ…はい」 実際、京太郎の身体はそれなりに食べ物に飢えていた。 スイーツパラダイスでお腹一杯にはなったものの、冷えた身体を温めるには新しくカロリーが必要であったのである。 勿論、夕食もあるので本格的に食べる訳にはいかないが、ちょっとだけ口寂しい。 それを満たすには目の前の雑炊のレトルトはまさに最適と言っても良いものだった。 まこ「それじゃわしゃぁ風呂に入ってくるが…覗くなよ?」 京太郎「覗きませんよ」 さっきはドキドキしたものの、京太郎にとってまこは異性である以前に先輩だ。 その上、先に風呂を譲ってもらったり、食事まで準備してもらったりと良くしてもらっているのである。 そんな彼女の入浴を覗くだなんて、恩をアダで返すような真似は出来ない。 それこそ不遜であるという感情さえ抱きながら、京太郎は首を横へと振った。 まこ「なんじゃ残念」 京太郎「えっ?」 しかし、そんな京太郎に帰ってきたのはまこの意外な言葉であった。 まるで自分が覗いて欲しいと言うようなそれに彼の胸はドキリと跳ねる。 彼の意識がどうであれば、既にその身体はまこの事を異性として認識し始めているのだ。 その艶やかな髪に水気を乗せて、唇を尖らせるその姿に妙な期待と興奮を覚えてしまう。 まこ「それを弱みに一生こき使ってやれると思うたのに」 京太郎「俺は今、絶対に染谷先輩が入浴してる場所には近づかないと心に決めました」 だが、その期待はまこの言葉であっさりと霧散し、散り散りになってしまう。 それを肌で感じながら、京太郎はそっと肩を落とした。 勿論、それが冗談であるという事くらい、意識は理解していたのである。 だが、それでも根が青少年である彼はほんの少しだけ期待していたのだ。 そんな純情を弄ぶようなまこのそれに徒労感めいたものを感じてしまう。 まこ「(ま…まぁ…そうなるわなぁ…)」 そんな彼にクスリと笑いながら、彼女の内心は複雑なものだった。 勿論、京太郎に覗いて欲しくてそんな事を言った訳じゃない。 それは単純にいつも通りのやりとりがしたくて放った言葉なのだ。 しかし、それでもまったく狼狽を浮かべない彼に肩すかしめいたものを感じてしまう。 それは何だかんだ言いながらも、自分が女性として意識されている事をまこが望んでいたからだ。 まこ「(仕方ない。だって、わしゃあ…こんなんじゃしな)」 その感情はまだ決して大きなものではない。 寧ろ、それ本来が持つイメージとは裏腹に、まこの感情は小さく、まだ根を張り始めたばかりだ。 しかし、今日一日で、京太郎という後輩のイメージを見つめなおした彼女にとって、それは決して無視出来るものではない。 彼もまた自分と同じように意識してくれたら良いと、まこはそんな風に思い始めていたのだ。 まこ「とにかく…行ってくる。雑炊は好きな方を適当に皿に移して食べてええ」 京太郎「分かりました。ありがとうございます」 そんな感情から逃げるように、まこはそう言いながら背を向ける。 その背に御礼の言葉を放つ後輩に手を振りながら、彼女は脱衣所へと逃げ込んだ。 瞬間、そっと肩を落とす理由に、まこは未だ気づいては居ない。 さっきの自分が胸中に浮かべたそれもからかいがいのない後輩に対するものだと思い込んでいる。 しかし、彼女の心は明確に変化し、その色を変え始めていた。 まこ「(意外と…甚平似合っとったなぁ…)」 その手で自分のパジャマを脱ぎながら、まこが脳裏に京太郎の姿を真っ先に思い浮かべるのもそれが理由だ。 金髪で軽そうな外見をしているのに、群青色のそれは意外なくらい彼の顔立ちに合っている。 彼自身の体格が良く、また肉付きもしっかりしているという事も無関係ではないのだろう。 薄布から見える引き締まった身体は、彼には希薄な男性的雰囲気を強めていた。 その上、普段よりも少しは真面目そうに見えるのだから、見慣れているまこの目から見ても格好良く思える。 まこ「(それに比べてわしは…)」 パジャマを脱ぎ去ったまこはそっと洗面台の鏡と向き合った。 そこに居たのはすっきりとした顔立ちの美少女である。 そのスタイルも細身でありながら、意外と出るところは出ていた。 勿論、巨乳というほどではないにせよ、標準くらいはあるだろう。 普段から実家の手伝いをして動き回っているそのウェストはキュっと括れ、腰に向けて緩やかなカーブを描いていた。 決して女性的ではないにせよ、女性らしい身体つき。 けれど、まこはそれを認める事がどうしても出来なかった。 まこ「(なーんも面白味のない…)」 女性としては間違いなく及第点をつけられる自身の身体。 だが、それを素直に受け止める事が出来ないのは身近に久や和と言った魅力あふれる同性がいるからだろう。 久のように蠱惑的な足や、和のように豊満なバストを持っていない自分がまこはどうにも劣って見えるのだ。 勿論、そんなものなどなくてもまこの身体は高いレベルで完成されており、男に欲情を与える事だろう。 だが、そうやって裸を見せる相手などいない彼女にとって、それはまったく未知のものであるのだ。 まこ「(とりあえず…入るか)」 何時までも自分とにらめっこしている訳にはいかない。 そうやって見つめ合っている間に自分の身体が魅力的になるならまだしもそんな事はないのだから。 それに飄々としているものの、まこの身体は未だ冷えているままなのだ。 べたついた感覚もまだ肌に残っているし、さっさとシャワーを浴びたい。 そんな欲求に従って、まこは浴室の扉を開き、中へと一歩踏み出した。 京太郎「んー…旨ぇ…」 そんなまこの様子など欠片も知らない京太郎は一人リビングで座り、雑炊へと舌鼓を打つ。 丁度良い感じに出汁が効いたそれは、温まった身体をさらに温めてくれるものだった。 お陰でじっとりと肌に汗が浮かぶが、それは決して不愉快ではない。 実際、彼はその感覚に怯む事はなく、一皿分の雑炊をあっという間に完食して見せた。 京太郎「(まぁ…問題は…だな)」 それをシンクへと運び、手慣れた様子で洗いながら京太郎は考える。 既に雑炊を平らげてしまった以上、彼にはもうやる事がないのだ。 勿論、リビングにはテレビがあり、それをつけていても、きっとまこは許してくれるだろう。 だが、先輩の実家で一人テレビをつけてそれに没頭出来ないくらいには、京太郎はまこに敬愛の感情を抱いていた。 京太郎「(つっても…何をやるよ)」 京太郎たちが走って抱えてきた荷物は、既にまこの手によって水気を拭き取られ、大事そうに置いてある。 コンビニで買ったレインコートも玄関に干され、きちんと処理されていた。 自分が風呂でゆっくりとしている間に、するべき事を終えてくれたその手際の良さに京太郎は幾度となく助けられている。 しかし、今だけはそれが恨めしくなるくらい、彼にはやる事がなかった。 京太郎「(つか…今、先輩が風呂に入っているんだよな…)」 とは言え、そうやってやる事がなくなると、京太郎はそんな邪な考えを浮かべてしまう。 幾ら彼が彼女に敬意を抱いていると言っても、それはあくまでも意識レベルでの事だ。 若い本能に忠実な身体は既にまこの事を異性として認識しているのである。 自然、美少女と言っても過言ではない先輩がすぐそこで風呂に入っているというシチュエーションにドキドキしたものを感じてしまうのだ。 京太郎「(だぁ~!そういうの止めろよ…!節操ねぇんだから!!)」 そんな自分に自己嫌悪を感じるのは、京太郎には既に特別な女性がいるからだろう。 原村和というこれまた一流の美少女に、彼は懸想をし続けていた。 勿論、そういったものに疎い和にはまったく気付かれず、また部活仲間以上には意識されていない。 だが、それでも京太郎にとって和の存在は特別で、不可侵であったのだ。 そんな彼女ならばともかく、自分に良くしてくれている先輩に邪な想像を向ける自分が何とも愚かで節操なしに思えて仕方がないのである。 京太郎「(まぁ…確かに先輩は可愛いけれどさ)」 まこが思っているよりも京太郎は遥かに彼女の事を意識している。 可憐と言う訳でもなく美しいという訳でもないが、それでもまこは魅力的だ。 気心の知れた気安い関係の中、時折、恥じらいを浮かべるその姿にはギャップさえも感じる。 正直、それに庇護欲を擽られた事は、今日だけで何回もあった。 普段が頼り甲斐のある先輩であるだけに余計に顕著に感じられるそれに京太郎がどれだけドギマギしていたかまこは知らない。 京太郎「(それに…さっきのパジャマ姿も可愛かったな…)」 まこが身につけていたのは薄桃色に無地のパジャマであった。 殆ど飾り気のないそれは、サバサバしている彼女らしいと思えるものである。 だが、薄桃色という女の子らしいその色は、まこの姿を数割増しで可愛らしく見せていた。 普段は奥底に鎮めている女の子らしさを引き出すそのチョイスに、京太郎はつい可愛いと言ってしまいそうになったくらいである。 京太郎「(だー!違う!違うんだからな!!)」 再び自分の意識がおかしな方向へと流れつつあるのを悟った京太郎は言い聞かせるようにして胸中でそう叫ぶ。 しかし、それは虚しく彼の中で響き渡り、なんら変革のキッカケにはならない。 どれだけ彼が認めまいとしても、彼は少しずつまこの事を意識し始めているのだ。 それはまだ和に対するそれよりも遥かに小さいものだが、着実に京太郎はまこの事を異性として認識し始めている。 まこ「あがったぞー」 京太郎「うへぇあ!?」 瞬間、聞こえてきた声に京太郎はビクリと肩を跳ねさせた。 そのままバッと脱衣所へと入り口を見れば、そこにはさっきと同じまこの姿がある。 しかし、その顔は何処かさっぱりと気持ち良さそうなものへと変わっていた。 何より、その肌は急速に温まった所為か紅潮を浮かべ、何とも言えない艶やかさを演出している。 まこ「なんじゃ。人気投票一位になれそうな声をあげて」 京太郎「な、何でもないです!!」 そのまま首を傾げるまこの首元は何とも緩い状態であった。 風呂で温まった所為か、数段開いているそこはもう少しで谷間が見えてしまいそうである。 肌が紅潮し、髪が濡れる湯上がりの状態だけでも青少年にとっては目に毒なのに、何とも緩いその胸元。 そこから急いで目を背けながらも、京太郎の記憶にその光景は既に記録されてしまっていた。 京太郎「(そ、それに…なんでブラつけてないんだよ…!!)」 勿論、ついさっきまでまこも一応、ブラはしていた。 しかし、風呂あがりの熱い状況に一々、そんなものはしていたらすぐに痒みを覚え、汗疹が出来てしまう。 それを防ぐ為に、まこは普段から風呂から上がってすぐにはブラをつけないようにしていた。 そんな習慣そのままに出てきてしまった彼女のパジャマには今、微かにその突起が浮かび上がっている。 まこ「ん?」 そんな京太郎の様子にまこはそっと首を傾げた。 ついさっきまでまったく自分を意識していなかったはずの後輩の姿が何となく引っかかるのである。 しかし、まさか自分がブラを忘れて乳首を浮かばせている所為で、京太郎が恥ずかしがっているだなんて彼女は露ほどにも思わない。 これまで異性の前で風呂から上がってきた事のない彼女にとってそれはあくまで何時もの事であったのだ。 京太郎「せ、先輩…その…」 まこが一体、どういう意図を持っているのか京太郎には分からなかった。 また自分をからかっているのかもしれないし、まったく意識されていないだけなのかもしれない。 しかし、それでも今の無防備すぎるまこの状態は決して看過して良いものではないだろう。 少なくとも自分にとってそれが刺激的過ぎる事くらいは伝えなければいけない。 そう思って京太郎は口を開くものの、そこから言葉が出てくる事は中々、なかった。 京太郎「う…あ…その…」 まこ「???」 そのまま口ごもる京太郎の前で、まこはそっと首を傾げた。 瞬間、京太郎の視界の端で、プルンと柔らかな何かが揺れるのが見える。 まこの細身な身体の胸元で自己主張をしたそれは、勿論、彼女の乳房だろう。 そう思っただけで顔を真っ赤に染めてしまう初心な京太郎は大きく深呼吸をしながら、ゆっくりと口を開いた。 京太郎「あ、あの…う、浮いてるんですけど…」 まこ「…え?」 その言葉に、まこがピシリと硬直するのは、彼女がそれを完全に誤解したからだ。 浮いているという言葉でまこが真っ先に連想するのは、自分の格好の事だったのである。 精一杯の少女趣味とオシャレを兼ねて、買ったそのパジャマが似合っていない。 恐らく京太郎はそう言いたいのだろうと判断したまこの顔が引きつり、気分が昏く落ち込んでいく。 まこ「そ、そんなに浮いとるんか…?」 京太郎「い、いや…そこまではっきりしてる訳じゃないですけど…でも、見れば分かるなって…」 そして勿論、そんなまこの誤解を京太郎は知らない。 自分が主語を抜いてしまった所為で、勘違いをさせてしまった可能性など彼には考える余裕などないのだ。 見た目は遊んでいるように見えて、その実、京太郎は初心で、性的な経験も一切ないのだから。 そんな彼にとって異性の乳首が浮き上がっていると伝えるだけで頭が一杯になってしまうのである。 まこ「そ、そうか…大丈夫だと思うとったんじゃが…」 京太郎「え…い、いや、それは(俺が)きついっすよ」 まこ「ぐっ…」 そんな遠慮のない後輩の言葉がまこの言葉に突き刺さる。 精一杯の趣味を満たそうとしたその格好を根本から否定するそれに思わずよろめいてしまいそうになった。 それを歯を食いしばる事で堪えながら、まこは大きく深呼吸する。 いきなりの新事実にショックを受けているのは確かだが、それはこのままにはしておけない。 どうせならば問題解決の為にもう一歩踏み込もうと、まこはゆっくりと口を開いた。 まこ「じゃあ…どういうのがええんじゃ?」 京太郎「え?」 まこ「…どういうんだったらわしに似合うと思う?」 そう京太郎に尋ねるまこは既に冷静ではなかった。 何とか狼狽を表に出す事は堪えているものの、その内心はショックと恥ずかしさで滅茶苦茶だったのである。 だからこそ、彼女は普段であれば、絶対に聞かないであろう言葉を口にしてしまう。 ともすれば八つ当たりにも取られかねない詰問であり、また論理的ではないものだと言う事に動揺した彼女は気づいていなかった。 京太郎「え、えぇっと…」 しかし、そんな彼女の問いを、京太郎はまた大きく取り違える。 頭の中がブラの有無で一杯になった彼にとって、彼女がブラの事を尋ねていると勘違いしたのだ。 とは言え、男である彼がまこに対して何かアドバイス出来るはずがない。 そう言ったものとは縁遠い人生を送ってきた彼にとって、オススメのブラなんて言えるはずがなかった。 京太郎「さ、サイズさえ合っていれば大丈夫なんじゃないですかね…?」 まこ「さ、サイズが合っとらんのか…?」 京太郎「合っていないどころか…無いっていうか…」 まこ「ぐふ…」 後輩のその言葉を自分のセンスを貶めている言葉だと理解したまこの口からついに苦悶の声が漏れる。 そのままガクリと崩れ落ちる膝が、彼女のダメージを何より如実に物語っている。 しかし、京太郎にはそれが一体、どういう事なのかまったく理解出来なかった。 彼からすれば、まこのブラがない事を指摘しただけなのだから。 恥ずかしがるならともかく、こんなにもショックを受ける姿を見るだなんて想像してもいなかったのである。 京太郎「だ、大丈夫ですか染谷先輩!?」 まこ「う、うん…大丈夫。大丈夫じゃ…」 そんな後輩の気遣うような言葉に、まこは何とか自分を取り繕う。 しかし、その内心は、最早、泣きそうなもので溢れていた。 もしかしたらさっきのワンピースも内心、似合っていないと思われていたのかもしれない。 いや、それ以前に久をはじめとする友人たちにも迷惑をかけ続けていたのではないだろうか。 過去に遡ってまで後悔を覚える彼女の目尻がじわっと滲み始めた。 京太郎「(え…えぇぇぇぇ!?)」 勿論、それに一番の困惑を覚えるのは京太郎だ。 まさかブラがないという事が泣くほどショックを受けるだなんて一体、どういう事なのだろう。 それに違和感を感じながらも、彼の意識は目の前で瞳を潤ませるまこの方へと引きずられていった。 今にも泣き出しそうな彼女に一体、何を言えば良ってあげれば良いのか。 混乱する頭の中で必死でその答えを求めた京太郎はある言葉へと辿り着く。 京太郎「だ、大丈夫ですよ!そういう趣味もありますよね!!」 まこ「ふ…ふぇぇ…」 結果、それがまこへのトドメとなった。 ギリギリであった涙腺を一気に爆破するそれにまこは子どものような声をあげながら涙を漏らす。 それを手の甲でグジグジと拭う彼女に、京太郎はさらなる困惑を驚きを覚えた。 そうやって露出する趣味まで肯定したのに一体、どうすればよかったのか。 胸を突くような良心の痛みと後悔にそう思いながら、京太郎は再び言葉を探す。 まこ「う…うぅぅ…」 京太郎「(どうすりゃ良いんだよおおおぉぉ!)」 けれど、何を言ってもまこを追い詰める言葉にしか今の京太郎には思えない。 そもそも彼女がどうしてそこまでショックを受けているのかさえ彼には理解出来ていないままなのだ。 そんな彼に出来る事と言えば、泣きじゃくるまこが落ち着くのを狼狽しながら待つ事だけ。 それに無力感を感じながらも、下手をすればまた追い詰めるだけなのかもしれないと思うと何も出来なかった。 まこ「ふ…ぅ…すまん…見苦しいところを見せた…」 京太郎「いえ…」 数分後、まこも落ち着きを取り戻し、そうやって言葉を紡ぐ事が出来た。 しかし、それで全てが元通りになるかと言えば、決してそうではない。 二人の間には気まずい雰囲気が流れ、何ともぎこちない状態になっている。 お互いに自分が悪いと思い込んでいる二人はチラチラと相手の事を伺いながらも何も言えない。 一体、どう話を切り出すべきなのか、それともさっきの事は完全に忘れてしまうべきなのか。 困惑の中、その選択さえ出来ない二人は、牽制するようにお互いに視線を贈り合う。 まこ「(う…ぅぅ…き、京太郎の前で泣いてしまうだなんて…)」 そんな中、まこが思い浮かべるのは、さっきの自分の失態の事だった。 自分のセンスを全否定されたとは言え、あそこで泣いてしまうのはあまりにも子どもっぽ過ぎる。 それは微かに芽生えた気になる異性としての意識がそうさせたのだが、彼女はまだそれには気づいていない。 それほど自分がショックを受けた理由に、余裕のない彼女が思い至る事は出来ないのだ。 まこ「(と、とりあえず…何とかリカバリーせんと…)」 勿論、泣き顔を見せた程度で、自分の事を舐めるような後輩ではないとまこは知っている。 こうして休日に時間を割いてまで尽くしてくれる彼の敬意はそんなものでは薄れないだろう。 だが、それは自分の中のプライドが無事であるという事は決して=ではないのだ。 このままでは自分はもう二度と先輩として京太郎に接する事が出来なくなってしまう。 それだけは防がなければいけないと、まこは必死に言葉を探した。 まこ「そ、その…な。さっきの事なんじゃが…」 京太郎「え、えぇ…」 まこ「えっと…ごめんな。わしはええと思うとったんじゃが…迷惑かけてたみたいで」 ポツリポツリと漏らすその言葉に、京太郎はズキリと胸が傷んだ。 確かに狼狽したのは事実ではあるが、迷惑だなんて事はない。 精々、驚きと気まずさを覚えただけで、何か傷ついた訳でもないのだから。 それよりも過剰に反応し、まこを泣かせてしまった自分の方が遥かに迷惑だっただろう。 そう思いながら、京太郎は首を横に振り、口を開いた。 京太郎「いや…良いんですよ。俺も意識し過ぎていました」 そうやってまこが下着で出てきたのも、全ては自分を異性として意識していない証拠だ。 それを何だかんだと真っ赤になって指摘し、意識してしまった自分がこの騒動の元凶なのである。 全ては自分がまこの趣味を許容出来る程度の器か、意識しないくらい強固な理性があれば済む話だった。 そう結論づける京太郎は自嘲気味に肩を落とし、まこをじっと見据える。 京太郎「考えても見ればここは染谷先輩の実家ですし…下着身につけないのくらい普通ですよね」 まこ「へ…?」 ようやく京太郎から漏れでた事の核心を突く言葉。 それにまこが間抜けな声をあげて、再びその身体を硬直させる。 まるで身体を動かす力全てを思考へと回すようなその身体の中で、彼女の脳がフル稼働した。 麻雀をしている時と大差ないほどにニューロンを活性化させるそれは数秒後、視線を下へと向けさせる。 まこ「~~~~~っ!!!!!」カァァァ 瞬間、首元から真っ赤に染まったまこはバッと自分の胸元を隠した。 今更、そんな事をしても遅いと理解しながらも、彼女の身体は反射的に動いていたのである。 しかし、それと同時に湧き上がる羞恥の波が、彼女の心へと打ち寄せ、ただでさえ少ない平静さを失わせた。 結果、理性という留め具を外した彼女を身悶えさせる羞恥心は誤解させた京太郎への怒りへと変わり、その左手を振り上げさせる。 まこ「さ…最初から…!」 京太郎「…え?」 まこ「最初からそう言わんか馬鹿ぁああっ!」 京太郎「たわばっ!」 そのままビタンと叩きつけられた一撃に京太郎の首がグルンと回る。 瞬間漏れ出す悲鳴のような声を聞いても、まこの心は収まらない。 怒りと羞恥心は未だ彼女の胸を突き、心を揺さぶり続けているままなのだ。 まこ「(あぁぁ!もう!もうっ!!)」 勿論、まことて分かっている。 確かに京太郎は言葉足らずではあったが、誤解した自分にも責任があるという事を。 寧ろ、事態をややこしくしたのが自分であるという認識も彼女の中にはあったのである。 だが、それでも泣き顔とパジャマから浮き上がる乳首を見られてしまったという羞恥心が、それらを全て遮っていた。 まこ「う…うぅぅ…」 しかし、それだって何時までも続かない。 時間が経つ毎に少しずつ冷静さを取り戻したまこは、ゆっくりとその唇からうめき声をあげる。 そのままチラチラと京太郎を見つめる目には自責と自戒のものが強く浮かんでいた。 そして、それは彼の頬にピッタリと張り付いた真っ赤なモミジを見る度に、さらに強くなっていく。 京太郎「あー…なんか…すみません」 まこ「い、いや…京太郎は何も悪ぅないじゃろ…わ、悪いのはわしじゃ」 そんな彼女に謝罪の言葉を漏らす京太郎にまこはそっと首を振った。 ようやく口に出来たその言葉に、彼女はほんの少しだけ心が軽くなったのを感じる。 しかし、そうやって非を認めたところで、自分のやった事が帳消しになる訳ではない。 そう思う彼女の中では未だ、自責の感情が湧き上がり、その表情を落ち込ませていた。 まこ「勝手に誤解して…泣いて…張り手まで…本当にすまん…」 京太郎「あー…」 そのままシュンと肩を落とすまこは再びその顔に泣きそうなものを浮かべ始めていた。 どうやら、先輩は本気でさっきの事を後悔しているらしい。 それを感じさせる姿に京太郎は必死になって言葉を探した。 今度こそ、まこを元気づけられるような…そんなものがどこかにあるはず。 そう必死に脳細胞を活性化させる彼に、一つの答えが見つかった。 京太郎「…それじゃお詫びとして麻雀教えてくれません?」 まこ「え?」 京太郎のその言葉に、まこがそっと顔をあげた。 それは勿論、この場には決して相応しくはない言葉だったからである。 そんなもの先輩として言われずともやるつもりだったのだから。 少なくともお詫びとして求められるそれは相応しくはない。 そう思う彼女の前で京太郎はそっとテーブルの上の袋を掴んだ。 京太郎「どうせ服が乾くまで暇ですし…それに丁度、教本もあるじゃないですか」 まこ「あ…」 そう言ってウィンクする彼に、まこはそれが気遣いである事を知った。 何とも不器用で遠回しなそれに彼女の表情も少しだけ綻ぶ。 勿論、気分そのものが上向いた訳ではないが、彼からお詫びを求められた事で幾らか気も楽になったのだろう。 そんな風に自己分析が出来た頃には、彼女は悩んでいた自分が馬鹿らしくなり、そっと笑みを浮かべた。 まこ「…はは。まったく…馬鹿」 京太郎「いやぁ…割りと常日頃から実感しております」 まこの言葉に後頭部を掻くのは、こうした失敗が初めてではないからだ。 幸いにもアルバイト中にやらかした事はないものの、日常から細かいケアレスミスと言うのは多い。 それが分かっているのに中々、直せない自分に自嘲を覚えながら、京太郎はそっと目を背ける。 まこ「まぁ…折角のお詫びなんじゃし…ビシバシ行くぞ」 京太郎「お、お手柔らかにおねがいしますね…?」 まこは先輩としてほぼ理想的な要素を兼ね備えたタイプだ。 物事は順序立てて教えるし、後輩の質問には嫌な顔一つせずに答えてくれる。 失敗した時のフォローも上手く、ただ叱るだけの後処理はしない。 だが、それは決して、彼女がスパルタでない事を意味しないのだ。 本気になったまこがどれだけ厳しいかとバイト中に嫌というほど知っている彼は思わず表情を強張らせる。 まこ「それじゃ…着替えてくるからちょっと待っとれ」 京太郎「うっす」 そのまま自分に背を向けるまこに京太郎はそっと肩を落とした。 その仕草には特に違和感はなく、彼女がそれほど深く自分を責めている訳ではない事が分かる。 少なくともさっきのように泣き出すような事はないようだ。 それに一つ安堵した瞬間、まこの顔がそっと振り向き、その唇をゆっくりと動かす。 まこ「あ…後…あ、有難う…な」 京太郎「え…あ…」 そのままポツリと言葉を漏らしながら去っていく先輩に京太郎は何も言えなかった。 それは勿論、逃げ去るように脱衣所へと戻るまこの動きがあまりにも早かったからではない。 微かに振り向いたまこの顔が気恥ずかしさで紅潮するそれにドキリとし、そして見惚れていたからである。 京太郎「(…やっばいよなぁ…)」 停留所で雨宿りしていた時とは明らかに毛色を変えつつある自分の感情。 それをここで自覚した京太郎はそっと肩を落とした。 しかし、やばいと思いながらも、彼の頬は明らかににやけている。 実際、去り際の彼女は良い物を見れたと思うくらいに可愛らしく、そして魅力的だったのだ。 未だ彼の脳裏に焼き付くその姿は彼の表情筋を緩ませ続け… ―― ―― 数十分後、それを与えたまこ自身の手によって、それは苦悶のものへと変えられたのだった。 前話
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今でもその日の事は昨日の事のように思い出せる。 酷い豪雨の日だった。その記録的な降水は周囲を走る車の音すらかき消して、その一帯を雨の音で埋め尽くす程だった。 外に出た人が傘もなしでは目を開いて歩くことすら適わないと言う。 そんな日にとある病院の中で雨に負けない程大きな声を産声をあげたものがいた。 分娩台の上で母親は、泣きじゃくる赤子を抱える。 生まれたばかりの子供は弱い力で母に触れ、己の存在を示すかのように泣き叫んだ。 それは生まれてきた事に対する歓喜の叫びとも生きることへの恐怖への嘆きとも取れる声だった。 母は赤子を落とさないように包むようにして抱える。 少しでも力を緩めたら落としてしまいそうに思えたからだ。 「大丈夫、大丈夫だよ」 痛みを与えず、安心出来るように自らの子の生を祝福する。 赤子は落ち着き、泣くのをやめる。 その姿を見て私は思ったなんと赤子とは弱いものだろうか…。 ほんの小さな悪意、それからも身を守る手段を持たない。誰かが守ってあげなければ、すぐにでも生まれたばかりの命は尽きてしまうのだ。 少し落ち着きを取り戻し眠りに付く自分の子を見て母は愛おしく思った。 これが罪の始まり…。 愛する事が子のためだと信じた贖いきれない罪の始まり。 私達はあの目の存在を知らないから生きていられる。 あの目の存在を知ってしまったらきっと私達は生きている事ができなくなる。 何故、私はあの目を見てしまったのだろう。何故、私は目を調べようとしてしまったのだろう。 目だ、目がこちらを見ている。目が…目が…。 史竹幸三郎『遺書』最後の1文。 CR 5章 『その日は雨が降っていた』 -1- 第三の騎士 「S-22メインシステムスタンバイモードからアクティブモードに移行。再度システムチェック。」 秋常譲二はS-22ドライリッター胴部にある人が一人やっと入れるほどの狭い操縦ブロックの中でそうメインシステムに向けて音声入力を行う。 譲二のつけるゴーグルに走る文字列はS-22の各部に問題がない事を報告する。 それを確認した後、一息を吐いた後スピーカーから男の声が出力される。 「こちらCMBU司令部からドライリッターへ、聞こえているか?秋常譲二?」 「こちらドライリッター、聞こえている。機体のチェックも終了、問題はない、もうじきシステムも完全に再起動する筈だ。」 「そうかそれは僥倖だ、さて、作戦を始める前にセレーネ女史から君に直接激励の言伝をしたいと承っているのだが受けてくれるのかね?」 「セレーネが?」 譲二は顔をしかめた。 そして、少し考えた後諦めたように言う。 「作戦前だ。手短に頼むと伝えてくれ。」 「了解した、今つなぐ。」 電子的な雑音が発生し、その後、スピーカーから先ほどとは違う女性の声が盛れる。 「あーあー、聞こえてる?聞こえてるかな?譲二?」 「ああ、聞こえてるよ、セレーネ、今作戦前だが何のようだ?」 ぶっきら棒に答える譲二にセレーネ・リア・ファルシルは少し関しそうな声色で、 「何のようだ?ってそれはないんじゃないかね、仮にも君のフィアンセである事の私に向かって…。」 むくれたようにして言うセレーネに譲二はため息を吐く。 「別にあんたとそういう約束をした覚えはない。そういう話をしたいなら、帰ってからで充分だろう?」 「そうすると君はすぐ逃げるじゃないか、今が千載一遇のチャンスなのだよ。」 「――――セレーネ。」 頭に手を当てて咎めるようにして言う譲二。 それに対して笑うセレーネ。 「すまなかった、少し弄ってみたくなったんだ。それでは本題に入ろうか…。」 「作戦開始10分前だ、手短に頼む。」 「秋常譲二、君はこの1戦にどれほどの意味があるのか正しく理解しているかね?」 そう問いかけるセレーネに譲二は黙り込んだ。 「沈黙もまた答えだ。そう、この作戦の失敗は許されない。何故ならば、この1戦がこれから人類が奴らUHと戦えるかどうかの試金石となる戦いだからだ。我々は奴らに勝つ為に採算を度外視して今君の乗っているS-22ドライリッターを作り上げた。その機体にはありとあらゆる最新鋭の技術がつぎ込まれており、それがもしあの鋼獣に対処できないのであれば、もはや我々は両手をあげて奴らに投降すること他ない。もはや我々にはあのイレギュラーな黒い機体すらないのだ。」 「――――っ。」 黒い機体その言葉に譲二は苦いものが口に広がるのを感じた。 脳裏をかすめるのは漆黒の巨体に正体不明の紅の光を纏う悪魔のような鋼機だった。 それはそれまで鋼獣に対抗できる唯一であり、そして譲二からしてみれば羨望の対象だった。 「ただ勝つためだけでは駄目だ、これならば人類は奴らに対抗出来るそう思わせる説得力のある勝ち方を選ばなけばならない。いいか?今君の両肩に乗っているものは重い。」 「―――――ああ、わかってる。」 強く噛みしめるようにして頷く。 レバーを握る手に力が入る。 それに呼応するようにしてS-22ドライリッターの起動が完了する。 「だから、圧勝したまえ、君とドライリッターならば出来る筈だ。時間だ行け、英雄よ!」 譲二のゴーグルに文字列が表示される。 それにはこう書かれていた。 Anlock S-22 Takeoff. 大きな金属音が鳴り、機体は宙に放り出された。 ゴーグルがS-22のアイカメラから捕らえた映像を映す。 そこに瞳で全貌を捉えれるほど小さくなった木々や、山々、建築物などが見える。 風切音が鳴り、視界に移る風景は徐々に拡大されていく。そうS-22ドライリッターは高度1万m上空から機体ごと放り出されたのである。 譲二は落下位置の微調整をするために機体の重心を操作する。 今回の作戦では敵鋼獣が3機いるド真ん中に降下し一機で強襲をかける事になっていた。 緊張か、譲二はレバーを何度も握り直すようにしていじっていた。 一瞬の判断が全てを決めるその場へとまた足を踏み入れる。 そのことに少しの恐怖と少しの感慨が譲二にはあった。 高度が下がり、風景が狭く鮮明になる。 落下予定地点の高原では大きな火花と煙がのぼっているのを確認出来た。 敵鋼獣は犬型が3機、CMBUが率いる鋼機部隊と交戦しているのだ。 手に持ったアサルトライフルを鋼獣に向けて打つ鋼機達。 だが、その攻撃の全ては鋼獣の装甲ナノイーターで無力化され、無残にも1機、また1機とその凶牙に貫かれて破壊されていく。 その光景を目の当たりにして譲二から感じていた恐怖がなくなり別の感情が浮かび上がる。 燃え上がるような熱、全てを焼きつくす炎、人の最も強き原動力、怒りだった。 S-22ドライリッターはパラシュートを傘下させて交戦区域へと乱入する為に減速する。 そしてその真白色の機体は降下予定地に降下する。 譲二はレバー上部のアタッチメントを開きその中にあるスイッチを押した。 機体内でアラームが鳴り響く。 ――――ディールダイン炉加圧開始――全オーバーラインの接続――全駆動系供給150%――制限時間を15秒に設定 ――――『Polar Acceleration Mechanism』起動 S-22ドライリッターの額に3つ目の瞳を開き、肩部と胸部が展開する。 3体の内1体が鋼獣は急に戦場に現れた白い鋼機に気付き、すぐにその牙をもって征そうと走る。 1体がその鋭利な牙でドライリッターの鋼の体を貫こうと飛びかかる。 ドライリッターは腰にあった電装刀を抜き、それに立ち向かった。 交錯する2機、お互いが背中越しに静止する。 どちらにもダメージらしいダメージは見られずお互いの攻撃は当たらなかったかのように見えた。 鋼獣は振り返り、ドライリッターに再び攻撃をしかけようとする。 その時、鋼獣に異常が起こった。 鋼獣の視界が90度ひっくり返り、その鋼の巨体が思うように動かなくなる。 鋼獣は何が起こったのか理解できず困惑する。 それもその筈である。鋼獣の体は横一文字に切断され、上半分が大地に突き刺さるようにして落ちていたのだから…。 譲二はすぐさま残る2機の鋼獣の位置を確認する。 1機は自分に気づき迫り、1機は戦闘中であった味方の鋼機に襲いかかろうとしている。 襲われている鋼機は既に右腕と左脚を欠損しており、とても戦える状況ではない。 しかし、それを助けにいこうとすれば敵に背後を取られる事になりこちらの不利は否めない。 自身の生存を優先するならば、今迫る敵を排除した後、襲われている仲間を助けにいくとするのが正しい判断だろう。 もっとも、仲間を助けられる確率は格段に下がるのは自明の理だった。 それを認識し、 「――――決まってる!」 そう自分を鼓舞するように叫び、譲二は行動を即決する。 PAMの残り時間10秒。 ドライリッターは迫り来る敵に背を向け走り、アサルトライフルの銃口を向ける。 友軍機に牙を突き立てようとする鋼獣の顔面に弾丸の嵐が叩きつけられる。 物理攻撃を食らう特殊装甲ナノイーターがあるがゆえに鋼獣には銃弾による攻撃の効果は薄い。 だが、ドライリッターの左手に持つアサルトライフルは通常の鋼機用のものより口径が大きく、かつ対ナノイーター用の特殊弾である。 それは鋼獣に致命的な打撃を与えるほどのものではないが、その衝撃は確実に襲い姿勢を崩させた。 その間にドライリッターは接敵、即座に右手に持つ電装刀で一閃、真っ二つに叩き斬った。 PAMの残り時間4秒。 だが、それと同時に背後から飛びかかる最後の一匹。 救援に回ったがために、先手を奪われる。鋼獣の牙が迫る。 もはや振り向く時間すらない。ならばこそ、譲二は針の穴に糸を通すような集中力で、肘を後方に打ち付けた。 肘が鋼獣の顎と衝突し、その衝撃で鋼獣は吹き飛ばされた。 PAM残り時間2秒。 既に一息ほどの時間しか残っていない中でドライリッターは身を翻し疾風の如く駆ける。 鋼獣は倒れた体を起き上がらせながら敵を見る。 しかし、立ち上がった時既に眼前にギロチンを振り下ろす処刑人のようにドライリッターが電装刀を上段に構え立っていた。 そしてギロチンの刃が振り下ろされる。 鋼獣はその頭部から縦に真っ二つに切断された。 戦闘終了。 それと同時にPAMの時間が切れ、ドライリッターの全身の冷却装置が起動し上記が各部から吹き出す。 譲二はまだ隠れている敵がいないか索敵を行った後、自分の近くで倒れている鋼機に通信をつなぐ。 「―――生きているか?」 「あ、あぁ…。」 そう声が帰ってくる事を聞いて一息吐いた。 「あ、あんたは一体、それにその機体は鋼機なのか?」 「ああ、自分は、CMBU特務部隊所属の者だ。この機体はS-22ドライリッター。」 「S-22!じゃあ、噂の対鋼獣戦用の鋼機がついに完成したのか!」 驚きと少しの喜びを孕んだ声で半壊した鋼機の操縦者が言う。 鋼機は鋼獣に単騎で勝つことは出来ない。それは今、鋼獣と戦う兵士達にとっては絶対の常識であり、絶望であった。 その絶望を単騎で複数の鋼獣を破壊する事で覆した者がいる。その事実を飲み込み、つい声に喜びと期待の色が出ているかのようだった。 「ああ、そうだな。」 その歓喜の思いを消させないように譲二は笑顔を作って返事をする。 事実この成果は脅威の成果といえる。未発表ながら鋼獣を鋼機が倒すという偉業は既にイーグル鋼機部隊の隊長を務めるシャーリー・時峰の手によってなされているが、それは機体がボロボロになる状況で九死に一生を得ての勝利だった。 だが、今回は違う。単騎で完膚なきまでに敵を圧倒したのだ。 この事実は絶望にくれていた人々の心に大きな希望を宿すだろう。だが、それを成し、本来誇るべきである筈の秋常譲二の表情は晴れない。 頭に思い浮かぶのは一つの戦景だった。 あの最強とも思えた不可思議な鋼機リベジオンを圧倒した白い機体。 UHの首領格とも目されるその機体が起こした超常の数々は衛星映像で譲二も確認した。 その後で、何度も譲二はドライリッターであの機体で挑むシミュレーションを行った。 結果、得られたのは0%という可能性のない数字だけ…。 「ちくしょうっ…。」 誰にも聞こえないほど小さな声で譲二は感情を吐き出す。 結局、例え今人類が鋼獣に対抗する力を得たとしてもあれ1機でその微かな勝機の全てが覆されてしまう。 歓喜に盛り上がり兵たちが凱歌をあげる戦場の中で譲二は一人だけ己の無力さを呪った。 ―2― 混迷の世界 世界政府鋼獣対策本部会議室。 統制庁3階にある会議室の中で円卓を囲むようにして座る人間が5名。 イーグル総司令、秋常貞夫。 その副官である琴峰雫。 イーグル鋼機部隊隊長を務めるシャーリー時峰。 第六機関の長にしてCMBU顧問を務めるセレーネ・リア・ファルシル。 その秘書であるネミリア・バルサス。 イーグルの中心を締める3人を機関長特権を使ってセレーネ・リア・ファルシルが呼び出したのである。 「まずは希望はつながったと見るべきなのかね。」 円卓中央にあるディスプレイには人類の反撃の狼煙ともいえる戦果の光景が映し出されている。 それを見て眉を潜めて言うのは『イーグル』司令である秋常貞夫だった。 彼の率いる『イーグル』は鋼獣と先頭に戦った最大の組織であり、鋼機で数機の鋼獣を破壊した実績がある組織だ。 「不本意そうですね。司令。ご子息のご活躍というのはやはり複雑なのでしょうか?」 その様子を眺めて貞夫の副官である琴峰雫は言う。 貞夫は何か言いたそうに顔を上げるが顎に手を当てて、押し黙った。 「あら、あなた達親子って仲がこじれてるの?」 来賓の一人である第六機関の長でありCMBUの責任者であるセレーネ・リア・ファルシルはくすりと笑う。 未来予知じみた先見の明で第六機関統括区域の全てを立て直した『鉄の処女』が興味深そうに貞夫を見つめる。 「なに、ただの一家庭の事情ですよ、この会議には関係がない。」 貞夫はそう極めて静かにそういった。 その事については語りたくないというニュアンス、それを受け取ってセレーネは頷いた。 「ま、大した問題ではないですか。それに今私達が抱えている問題の方がずっと大きな問題だ。そしてイーグルの方々を今回お招きしたのはその問題について語り合いたいと思ったからですし。」 「抱えている問題?」 シャーリー・時峰は首をかしげる。 彼女は非公開ながらS-21のカスタム機で鋼機を2機破壊するという偉業を成し遂げた兵士である。 現在世界最強の鋼機乗りとしてかの『味方殺し』グレイブ・スクワーマーと双璧をなす者として見られるようになっている。 「ええ、そうです。我々は確かに鋼獣に対する力を得ました。S-22ドライリッターの量産体制が整えば今いる鋼獣との戦闘の勝率は格段に跳ね上がります。」 「S-22か…PAMだったか?ディールダイン炉を大きく加圧する事によってディールダインのエネルギー増幅の効率を上昇させ、それによって生まれたエネルギーを機体全体に循環させスペックを通常の1.5倍ほどに引き上げるシステム。」 「流石、シャーリー・時峰。よくご存知で…。」 「なに、私もCMBU製の鋼機に乗っているんだ。噂ぐらいは聞くさ。確かにあれを使っている時の機体の動きは異常だなまるで鋼獣のようだったよ。だが、あのシステム恐らくは問題がある。」 そう考察するようにディスプレイの中で回収されるドライリッターを見ながらシャーリーは言う。 ドライリッターの各部から蒸気のようなものが吹き出していた。 「ええ、確かにPolar Acceleraion Mechanismには問題があります。エネルギー増幅作用がある物質ディールダインに圧力を加えるとエネルギー増幅効率が跳ね上がる事は4年ほど前から判明していました。」 「では何故実用にこれほどの時間を?」 尋ねる雫。4年ほど前に完成していたのならば、S-21アインツヴァインが開発されていた時点で導入する事が出来たのではないか? そういった疑問が雫の脳裏に走る。 「ええ、問題はこのディールダインは圧がかかるとエネルギーを増幅しすぎるという点が問題だったんです。」 「しすぎる?」 「ええ、おおよそ70倍ほどになります。」 「70!?」 予想以上の数字に声を上げる貞夫。 「ネミリア彼らに資料を配ってくれ…。」 ネミリアと呼ばれたセレーネの秘書官にあたる女性が円卓から立ち上がり、周りの人間に資料を配る。 面々は資料に目を通しはじめた。 「今、お渡ししたのはS-22のスペックの要点をまとめたものだ。なにか質問はありますでしょうか?」 そう尋ねられ、シャーリーは考えこむようにしている。 「ふむ、このオーバーラインと呼ばれる物に加圧時だけディールダイン炉と直結させてエネルギーを循環させると…。しかし、これは…。」 「ああ、稼働し続ければ機体が持たん。」 「機体がもたないというのはどういう意味かね?」 「文字通りの意味だ、秋常司令。臨界点を超えるエネルギーを出し続ければ機体はすぐに爆発する。」 「だが、さっきの戦闘では――――」 「ああ、そうだ。さっきの戦闘では機体が爆発しなかった、それが肝なんだ。S-22はPAMを使うために開発された鋼機でな、基本的なカタログスペックはS-21と比較して頂いてもそれほど大きな差はない。だが、我々が開発したオーバーラインと呼ばれる特殊なラインを通し機体の全身に巡らせる事で臨界点に突入するまでの時間を遅らせる事が出来る。そして臨界点に突入するまでの間、鋼機は鋼獣に匹敵するスペックを有する事になる。それがPAMの概要だよ。」 「時間はどの程度?」 尋ねたのはシャーリーだった。 鋼機を扱う者として興味深くあったのだろう。 「おおよそ15秒。それ以上は危険だと実験結果が出ているのでな、緊急停止プログラムが作動するようになっている。その後に機体に緊急冷却をかけている為、オーバーラインの冷却終了までおおよそ5分その間PAMは使えない。また、オーバーラインへの負担も大きくてな、2回使用すればオーバーライン自体を交換しなければならない。」 「ふむ。」 頷き思案にふけるシャーリー。 リスクは高い、欠点も多い、だがこの機体は鋼獣に対抗するにたる戦力になるのも確かだ。 この機体があれば鋼獣を倒す事は出来るのかもしれない。 だが、ここで誰もの脳裏をよぎる一つの事実があり、その場の全員が沈痛な面持ちでいた。 「S-22の完成によって鋼獣に対抗する手段は得た、だがしかし、あの白い鋼機に勝つことは出来るのだろうか?きっと皆さんはそう考えていらっしゃるのでしょう?」 セレーネは笑っていう。 「ええ、そうですね、あれは我々にとって絶望的な光景でした。まさに――――」 「――――さっさと本題に入らないか?セレーネ・リア・ファルシル。」 セレーネの言葉を遮ったのは貞夫だった。 「本題?」 「ああ、そうだ『鉄の処女』よ、裏のメンバーの一人であるお前がこの状況を想定していなかったわけがないだろう?」 そう告げる。 『裏』、この世界を裏から動かす5人の黒幕。セレーネをその内の一人だと貞夫は言ったのだ。 セレーネは唇に一刺し指を当てて笑う。 「あら、何のことでしょう?」 その言葉に琴峰雫は呆れたように肩をすくめた。 「そもそもその猿芝居を続ける必要があるかすら疑問なのですが、我々が掴んでいる『裏』のメンバー5名の通称は『現実主義者』、『皮肉屋』、『貴婦人』、『道化師』、そして『鉄の処女』。あのですね…もうちょっと正体を隠す努力をした方がいいと思いますよ、あなた。」 その突っ込みに会議室に静寂が訪れる。 そして少しの時間がたった後、くつくつとしたセレーネの声小さく漏れ始める。 「ふふ、あはは、あはははは、よくわかったわね!この私が『裏』の一員だなんて!」 そう先ほどまでの冷静かつ厳格な物言いはなりを潜め、やたらとテンションの高い声でセレーネが言う。 その光景に貞夫とシャーリーは引きつった顔で見つめた。 「いえ、だからあなた隠す気あんまりなかったでしょ…。」 「だって、隠す必要ないんだもの、裏の名簿なんて裏の人間の誰かが横流ししない限り漏れないものだったし…。ま、正体バレてる前提で呼び出したんだけどね。」 快活に答えるセレーネ。 「キャラが違うぞ、こいつ…。」 貞夫はセレーネに聞こえないように雫に耳打ちする。 「あー、一応、私には人を率いてる立場があるからね、あれ、肩凝るのよ結構。ふふ、私が役者としてデビューすればすぐに実力派役者として大成する自信があるわ…流石私、やっぱり私凄い、とっても凄い。」 「うざ…。」 雫は率直な感想を漏らした。 「あー酷いうざいだなんて、そんなの自覚してるけど!でもうざいだなんて酷い!いいもん、私には譲二くんがいるもん!それだけで満足だもん!アイラブ譲二。」 「何を言っている…。」 「え、譲二くんラブという事だけですよ、その為に色々下準備をね…。」 「――――貴様ら、あいつを利用して何をするつもりだ!!」 激昂する貞夫。その眼からは殺意が放たれ、胸から銃を取り出してその銃口をセレーネに向けた。 「司令!」 慌てて静止の言葉をかける雫とシャーリー。 しかし、それに構わず引き金に指をかける貞夫。 「言え!そもそもおかしいと思っていたんだ。あいつのトラウマを考えれば、S-22の操縦者として選ばれる筈などないと…だが、何故かあいつが選ばれた。兵士として欠陥のあるあいつが…その理由はなんだ?『鉄の処女』?」 「あら、冷めてるって聞いてたけど、お父さんの方はなんだかんだで息子の事を心配してるのね。ちょっと良かったなーなんだかんだで親子の不仲って悲しいじゃない?私には両親がいなかったけど、だからこそ、そういう家族愛っていうのに憧れちゃうのよね。」 「答えろ!!」 自分の命が握られているという事実に構わず変わらず笑顔を浮かべるセレーネ。 通常、銃口を向けられた人間というのは何らかの緊張が表情に出るものである。 だが、セレーネにはそれがない。 まるで自分がそれでは死なないとでも思っているかのように…。 「先に1つだけ誤解を解いておきたいんだけど、私達『裏』は別に全員で何かを成そうとしているわけじゃないの。」 「どういう意味だ…。」 「つまりは『裏』っていうのはそれぞれ別の目的の持った烏合の衆だという事よ。それが偶然、目的に到達するまでの道中が途中まで一緒だったから、一緒に協力しあっていたというだけ…。でも、この間のメタトロニウス・アークの覚醒で、ついに私達の道は別れてしまった。実質的な話を言えばもうあなた達の言う『裏』という組織は解体されたも同然ということよ。」 「譲二を巻き込んだのは、そのうちの一人の思惑だと言いたいのか?」 「そ、ま、私なんだけどね。私が見たいのは英雄の誕生。昔からね、私は英雄って存在に憧れていたの…窮地に陥った人々の前に颯爽と現れて悪を挫いていく存在。そんなものが見てみたかった。けれど実際そういう人間を探してみると案外いないものなのよ。ある意味、時峰九条はそうとも言える人間なのかもしれないけど、まーあいつは見ての通りしわくちゃのババアだしねぇ?やっぱりちょっとは顔にもコダワリたかったのよ。」 「それで譲二を選んだということか!」 「そうね、彼は壊れているわ。傷ついていく人が、見ず知らずの者であろうと誰かが死んでしまう事が許せない。例えそれが間違っていると知っていても誰かを助けるために行動をしてしまう。兵士としては欠陥品もいいところね。けどだからこそ彼は英雄の資格がある。」 「英雄?この状況で確かに鋼獣を倒せばあいつは英雄ともてはやされるかもしれん…だがあの白い機体を倒せなければ、結局それも意味がないだろう。」 「そう、そうなのよ。結局の問題はね…。私も黒峰咲があそこまでやるなんて想定外だった。『ダグザの大釜』はね、至宝の中でも最も扱いが難しい至宝なの…なんでも作ることが出来るという事はそれだけ人の脳与える負荷も大きいのよ。あー至宝って言ってもわからないんだっけ、あのなんか不可思議な現象を起こすものね。あなた達と協力関係であった黒峰潤也も使っていた奴。」 貞夫達はリベジオンと呼ばれた機体が持つ黒槍を思い出す。 あの黒槍で突かれたものはありとあらゆるものが塵と化す。 そのメカニズムはまるで解明できずまるで超常現象のようだと思えていた。 「今回、あなた方を呼び出したのはこのままだと秋常譲二は英雄になる事ができなくなってしまう。私のシナリオではS-22だけでもこの逆境に対抗できる筈だったのよ…。でも出来なくなった。だからあなた方を呼び出したの…私の正体を知っているだろうあなた方を…。」 そう真剣に語るセレーナに貞夫は反吐が出そうな気持ちになった。 他の2人も同様だろう。 おそらくは『裏』がいくら関与しているこの事態に自分では収拾がつかなくなったからイーグルにコンタクトを取りに来たと彼女は言っているのだ。 唾棄すべき事である。 (だが、しかし―――) そう貞夫は考え銃をおろし、怒りを沈めるようにして一呼吸した。 「あなたは今人類が置かれているこの状況を人類側にいい形で終わらせたい、そう考えているのだな?」 「理解が出来る人で助かるわ、脳みそまで筋肉な人間だとここで話はご破算だったから…。」 「あなた方は私達に何をさせたい?」 「そうね、その前に一人ゲストを読んでもいいかしら、私よりも胡散臭い男だけど私よりも現状に詳しいわ…。」 「ゲスト?」 怪訝そうにする雫とシャーリー。 「どうぞ、入って…。」 その声と共に扉のノブが回り戸が開く…。 そして、その中から現れたのはこの場にいる一同の全員が知っている顔の男だった。 蓄えられた顎鬚に伸びきった長髪、だらけた着こなしのTシャツに塞がった片目。 面識はない、しかし、この世界に生きるものならばそのほとんどがその顔を知っている。 「初めましてかな?秋常貞夫、シャーリー・時峰、琴峰雫。私の名前は木崎剣之助、人は私のことを―――」 男は笑顔で誇示するように言う。 「―――『現実主義者』または、スーパーニート木崎と呼ぶ!!!」 部屋にいた全員に悪寒が走った。 ―3― 空がない日、染みる痛み 電子音が一定の周期で鳴っている。 ゆっくりとそれでいて断続的に聞こえるその音は寝台で寝ている男を不快にさせた。 「……くそ」 寝台で寝ている男、黒峰潤也は電子音の不快さに舌打ちして寝返りをうつ。 頭になにかがぶつかる痛み。金属の冷たさと硬さが軽い痛みとなって潤也に響く。 寝返りをうった時にベットの柵に頭をぶつけたようだ。 「くそ…。」 瞳が闇しか映さなくなってから既に何日目だろうか…。 外が夜なのか昼なのか視認できなくなった時点で、既に時間の感覚などほとんどなくて、メトロノームのようになる電子音だけが時が進んでいるのを潤也に示している。 右手を握る。 歯車が回るような音だけなるが、右腕の感覚はない。 試しに腹に手のひらを触るようにしてみたら、腹に冷たい感覚した。 搬送された病院で付けられた義手の感覚。 思うように動いてはくれているようだが、感覚が無いため違和感が強い。 試しに体を立てようとする潤也。 全身からきしむような痛みが走り、その激痛に顔を歪めた。 「あらあら、まだ無理はするもんじゃないよ。」 戸が開く音と共に誰かの声が潤也に聞こえた。 その声は聞き親しんだというわけではないが、ここ数日よく聞いてきた声だ。 「ばあさん…か…。」 声の主、時峰九条は潤也の元に近づきまだ生身である左手を握る。 潤也の左手をしわだらけだが、温かい手が包んだ。 「そうさ、あんたの味方の九条婆ちゃんだよ。」 「いつからあんたは味方になった…。」 力なく毒づく潤也。 時峰九条、おおよそ2週間、潤也たちのお目付け役としてイーグルから派遣されてきた老婆だ。 枯れていて今にも折れ曲がってしまいそうな老婆だが、その実、世界最強の名を欲しいままにする程の武芸者でもあり、イーグルの副司令の立場にあるらしい。 実際、人造人間であり、人を超えた能力を持つ藍が手も足も出なかったと藍本人から潤也は聞いている。 「あたしゃ、いつだってつらい目にあってる子の味方さ。ほら、あたしお婆ちゃんだからね、お節介なのさ。」 そういって九条は笑う。 その悪気のない言葉に潤也は感じていた苛立ちが萎える。 怒鳴ろうとした自分が馬鹿らしくなったのだ。 「そうかい…それで何のようだ?」 そうぶっきらぼうに聞く潤也。 九条は驚いたようにし目を開いて 「何って、勿論お見舞いだよ、それなりに付き合いがある仲だしねぇ…。」 「二週間ばかりでそんな大きい縁はなかっただろう?」 「何を悲しい事を言うんだい、偶然どこかで出会って話してみたら意気投合してメールアドレスを交換する事だってだろう?縁は時間じゃないのさ。」 「だからって、そもそも俺はあんたと仲良くやってたつもりは無かったんだがな…。」 事実、潤也はイーグルから監視役でついてきた九条を何度か置き去りにしてその場から去った事がある。 その度に、九条は次の目的地に先回りしてたどり着いていたのだが…。 「あたしが仲良くやってたと思ってたんだから仲良くやってたんだよ。」 「酷い暴論だな、それ。」 「あら、世の中言ったもん勝ちだっていうよ?」 「ああ、わかったよ。それで見舞いにきた?ならこの様だよ。全身ボロボロで目もまともに見えない。右腕に関しては吹っ飛んじまって、今じゃ機械仕掛けの腕にたよる始末だ。」 潤也はそう投げやりに言う。 「ああ、その事で1つあんたには謝らないといけないと思った事がある。」 「謝る?」 「あんたの右腕をふっ飛ばしたのはこのあたしだ。」 「――――っ。」 予想していなかった言葉に詰まる。 「あんたの右腕に貞夫から送られた発信機とか言われていた腕輪があっただろう?まあ、あんたも察してたとは思うがあれは発信機だけじゃなくてね、もしもあんたが人類の敵に回った時に使う為の爆弾も仕込まれてたんだ。そしてそれの起爆装置をあたしは渡されていた有事の時に起爆できるようにね。」 「―――それで暴走状態にあった俺を殺すために起爆したというわけか…。」 「いーや、それは違うよ、それなら致死に至らしめるような爆弾を仕込むさ、あんたが付けられたのは綺麗に右腕だけを吹っ飛ばす爆弾さ、正気を失ってありとあらゆる薬物投与も効かないあんたを操縦を不能にする。つまりは完全にあんたが怨念に取り込まれた時にあんたをこちらの世界に引き戻す為のジョーカーだったというわけさ。」 「―――なるほど、俺が今こうやってあんたとまともに話してられるのはあんた達のおかげって事か…。」 黒峰咲との戦い。あの戦いで勝つために確かに潤也は怨念に取り込ませて戦うという選択をした。 本来ならばその時点で黒峰潤也は黒峰潤也という人格を失い怨念の代弁者と化していた筈である。 しかし、それをすんでのところで右腕を吹き飛ばすという荒業で発する痛みが黒峰潤也を正気に戻したのである。 結果、黒峰潤也は黒峰潤也としての自我を持った状態で今ここにいる。 (けど、どうせなら―――) ふと潤也の頭に暗い考えがよぎる。 九条はそれを察して、 「なんだい、どうせなら自分を殺してくれればよかったのに…あれで死ねたらよかったのに…なんて思っているのかい?」 潤也は口には出さなかった思いを言い当てられ表情を曇らせた。 「まったく、坊やはわかりやすいんだよ。なんだい、あんた死にたかったのかい?」 「さあな、ただ、もう疲れていたのは確かだ…。」 「疲れていた?」 「ああ、あくる日もあくる日も怨念共に精神を蝕まれながら戦い続けてきた。いつか黒峰咲を倒してあいつを止められる。そう信じて色んな苦痛にも耐えてきた。」 「そうだろうね。」 「地獄だったよ…。家族の仇を取るために戦っていたら実はその原因が妹だって知らされて、妹が訳の分からない理想で世界を滅ぼそうとしていて、それを止めないといけなくて…自分を咲に対する呪詛と憎悪で固めて戦ったんだ。そうしなければならないと思ったから…。」 もはや戦う力を失ったからだろうか、潤也は今まで誰にも言うことがなかった思いが口から漏れだしているのに苦笑した。 そして今までせき止めていた思いは防波堤を壊し、止まらずに流れ出る。 「辛かったんだ。苦しかったんだ。なんで俺があいつを殺さないといけない。なんで俺だけしかその力を持っていない。誰かに変わって欲しかった。例えそれが正しい事だとしても俺に咲を殺すなんて宿行背負いたくなんてなかった。納得なんて出来ない。けれどやらなきゃいけない。だから必死に必死に必死に憎んで、あいつを憎む自分を作り上げて戦ったんだ。」 「だから死にたかった?責任を全て放棄したかった?」 「ああ、生きてる限り、あいつが人殺しを続ける限り俺はあいつに相対しなきゃいけない。そして、どうも俺はそれから目と耳を閉じる事も出来ない人間だったんだよ。だから終わりを望んでいた。誰かにこの戦いから解放して欲しかった。」 その声は悲痛という他なかった。黒峰潤也は元々ただの一般人だ。両親は軍事研究者であったが、潤也は両親が何をしていたかなんて、アテルラナにハナバラで知らされるまで知らなかった。 だが、その真実を知らされた時、潤也は変わらざるを得なかった。 世界の為などといった大義で戦う事は出来ない。 大義で戦うという事は、圧倒的多数の世界を守るという事だ。 それはつまり、怨念達につけ込まれる隙になる。ゆえにあくまでたった一人の意志で戦う強い覚悟が必要だった。 その為に選んだ手段が復讐。両親を殺した事実、それを持って咲を両親の仇だと見定めて潤也は復讐者として己を塗り固めたのである。 だが、黒峰潤也という人間の本質は、多大な期待を抱いてそれに応える英雄でもなければ、ありとあらゆるものを蹂躙し、支配する魔王でもない。 「俺は弱いんだよ。そうやって自分を塗り固めていないとすぐにも覚悟が瓦解してしまいそうで、婆さんみたいに強くもないし、藍に尊敬されるような人間でもない。軽蔑するかい?」 そう自分を責めるようにして左腕を右手の義手で握る。その頬には涙が垂れている。 老婆はその義手を握って腕から離して 「そんなわけないじゃないか。坊やがやってきた事は想像を絶するようなことばかりだ。それに耐えて今まで戦って生きている。そんなあんたをどうして軽蔑するっていうのさ…。」 老婆は優しく諭すように潤也にいう。 「―――。」 黙る潤也。 「不満そうだね、けれどこれは本心だよ、坊や。いいかい?この世の誰が責めようと、この時峰九条は必ずあんたの味方でいてあげるよ。たとえ世界を敵に回したってあたしはあんたの味方でいてあげる。けどね―――」 続けようとする言葉に詰まる九条。 これから続ける言葉を続けていいものだろうかと悩む。 九条は病室の窓から外を見た。 外は土砂降りの雨で、窓に雨が滝を作っている。 老婆のその光景を見て胸中にくるのはなにか…。 老婆は自分の指をかざすように見て、意を決するようにして口を開く。 「あんたは1つだけ聞いておかないといけない事がある。」 「―――何をだ…。」 尋ねる潤也。 「あんたにまだ戦う気があるのかっていう事さ…。」 そう静かに九条は言った。 少しの静寂が部屋を支配する。 「――――――言うんだ…」 潤也は俯いて小さな声でぼそりと続けて言う。 「なんで、そんな事を言うんだ…。あんたは…あんたは!俺に一体何を期待しているっていうんだよ!」 「何も期待しちゃいないさ、ただ、どうしたいのかそれだけを知っておきたくね。」 「もう、目は見えない!片手だってなくした!肝心のリベジオンは修復不能な状態まで破壊されて、唯一の対抗手段だった至宝までもを奪われた!!!!あんたは!あんたは俺の何処に戦う力が残っていると思っているんだ!!!」 怒りを露わにして叫ぶ潤也。それに九条は冷静に答える。 「ないだろうね。誰がどうみたって戦える体じゃないし、戦う力だってない。けどね、坊や。それでも戦うという事を諦めるか諦めないかを決めるのはあんただけなんだよ。」 「俺は頑張った…頑張ったんだ!!こんな体になるまで頑張ったんだ…これ以上、俺に何をしろっていうんだ…。そもそも俺は本当は黒峰咲(あいつ)を殺すなんて事したくないんだ!!!」 「そうだね、頑張ったさ。ここで折れたってあたしゃあんたを軽蔑しない。あんたはそれだけの事をしてきたと思うからね。けれどあんたは本当にここで折れてしまっていいのかい?それであんたは本当に納得がいくのかい?」 「いかなかったからなんだって言うんだ!さっきも言ったしあんたも認めただろう、俺はもう戦える力が残っていない。戦う事なんてできない。そんな俺に一体どうしろっていうんだ!」 そう叫ぶ潤也に老婆は優しく諭すようにいう。 「坊やそれは違うよ。あんたは戦う力を確かに失った。けれどあんたは戦う事自体は失っていない。いいかい、坊や、よく聞きな。人はね、どれだけ追い詰められようといつだって戦うことはだけは出来るんだ。それが勝てるか負けるかなんて話は外に置いておいてね。確かにあんたは戦う力を失った、けれどそれで本当に戦う事自体を諦めるのかい?そうあたしは聞いているんだよ。」 「そんなの――――詭弁だ。」 「そうかもね、でもあんたはこれを今決めないとどっちに転ぼうと必ず後悔する事になる。他の人に任せて世界の行く末をその暗闇の中で待ち続けるのもいい。それとも暗闇の中を自分の足で下唇を噛み締めながら歩いてがむしゃらに前を進んでもいい。どちらをいっても地獄だろうさ、だけれどここに停滞し続けるよりはずっといい。だからあんたはそれでも戦うのか戦わないのかそれだけは決めておかないといけない。」 「そんなの―――――」 続けようとする言葉が出ない。 答えなんて決まっている。そう思う潤也だったが、そこから言葉を続ける事ができなかった。 九条はそれを見つめた後、少し悲しそうに笑って席を立つ。 「また聞きにくるよ、今度会う時にまで決めておいてくれ。」 「ばあさん、俺は―――」 そう続けようとした矢先に扉がしまる音が聞こえた。 既に老婆この部屋を発った事を意味する。 「くそっ!!!」 潤也は右手でベットを八つ当たりに殴りつける。痛みは帰ってこない。 それに言葉に出来ないものを感じ頭を抱える。 「くそ…。」 そう力なくいう潤也の頬に一筋の雫が流れていた。
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語り部:ベアトリス・マクスウェル エーテル能力―― 星から排出され、有機無機の関係無く、全ての物質に内包される未知のエネルギー。通称エーテル。 そのエーテルを自らの意思で自在に操って、殺して、壊して、踏み躙る事だけに特化した異能の力。 力を持たない人間……無能力者は私達、エーテル能力者を恐れる。 そして、力の低い低級能力者は力の強い、上級能力者を妬む。 誰もが恐れ、羨む異能の力……こんな力が宿ったせいで、私の全てが狂った。狂わされた。 この力は未来を切り開く力なんかじゃない……ただ絶望と、死を広げるだけの狂った力。 こんな能力があるせいで、何もかも全部、みんな、みんな、私の前からいなくなってしまった。 パパ、ママ、庭師のライコフ、メイドのアリエッタ、コックのサントス、ペットのロッソ、親友のリズ。 命以外の全てを失ったあの日から三年―― ただ死んでいないだけの無意味な命を守るために、私は私以外の他人を踏み躙り続けて来た。 今日も、明日も、明後日も、来週も、来月も、来年も、死神の鎌が私の首に振り落とされる日が来るまでずっと、きっと…… だって仕方が無い。理不尽に抗う術は無く、反抗する力も無いんだから、殺されないように殺すしか無い。 私のせいで、大好きだったあの人たちはみんな死んじゃった。死んじゃった人たちのためにも私は死ねない。 ――ソレハ、ゼンブウソ――タダノ、イイワケ――ワタシハ、シヌノガコワイ――シニタクナイ―― 嗚呼、何て私は醜いんだろう。何て私は情けないんだろう。何で――私は弱いんだろう。 帝国なんか怖いだけで思い入れなんて無いし、共和国に怨みがあるわけじゃない。 地球人類の統一なんてどうでも良い。幸せだった、あの日を返して。 ――お願いします。返して下さい。 帰ってこない穏やかで幸せな日々――それを奪い取る側の立場になったくせに返してだなんて都合の良い話。 自分勝手で何が悪い? 望んで何が悪い? 自分勝手な事を考えても、望んでもどうせ手に入るわけが無い。 せめて、心の中で都合の良い未来を妄想して何が悪い? 悪くない。悪いはずがない。 悪いのだとしたら、どうすれば良い? 無謀にも抗えば良いの? それとも死ねば良いの? ――ふざけるな。フザケルナ。フザケルナフザケルナフザケルナ―― 自分がやっている事が悪い事くらい最初から分かっている。 だけど、抗えるものなら抗っている。抗えなんて簡単に言わないで。 じゃあ、死ねって? 死ぬのが怖いって何度も同じ事を言わせないで欲しい。 怖いから、優しい妄想を思い浮かべるしか残されていないんだから、それに縋って良い筈。 みんな同じ。みんな同じように奪われて、同じように絶望したのに……何で、あの人はみんなと同じじゃないんだろう? 人間狩りに襲われて、目の前で親しい人を多くの人を殺されて、圧倒的な力で抑え付けられたのに何で折れないの? 何で反抗しようとするの? 何で戦えるの? その身に宿るエーテル量は私と同程度、戦いに関しては素人で私よりもずっと弱い。 なのに私の事を同情してくれた、理解しようとしてくれた。私と違う。 エーテルナイトの存在すら知らなかった癖に陸戦騎を奪い取って、簡単に起動させた。 そんな能力者を見た事も無ければ、聞いた事も無い。私たちと全然、違う。 無駄なのになんで? なんで違うの? ――嗚呼、どっちにしても私に殺されるから、なんでなのか聞く事も出来ないのは少し残念。 あの人が差し伸べてくれた手は救いだったのかも知れない。 なのに、それを振り払ってまで、妄想の世界に救いを求めている自分の弱さが嫌になる。 誰か、この世界から私を助け出して……私に気付いて……私はずっと此処で泣いている……! 機神幻想Endless 第二話 エーテルナイト スクレイル帝国本土から遥か南方の広大な海に浮かぶ、七つの小島。通称セブンス。 文明と、時代と共に三国が引き起こした戦争からさえも置き去りにされた楽園。 だが、その楽園も一世紀遅れで惨劇の時を迎えた。 女、子供、老人、病人、怪我人の区別無く、命ある者は全て惨殺され、まるで絨毯の様にその残骸を大地に広げていた。 どれが誰の残骸なのかも定かで無い程の死界。気が狂いそうになるような惨状に人々の無念がセブンスの大空を茜色に覆い尽くした。 そして、この世の地獄と化したセブンスに四つの醜悪なオブジェクトが屹立していた。 セブンスのエーテル能力者と“交渉”するために派遣された人型機動兵器。 スクレイル帝国の主力兵器、エーテルナイト。その一号機、陸戦騎である。 尤も、四機の内一機はセブンスのエーテル能力者、閼伽王によって奪取されている。 最早、交渉の余地など何処にも無く、後は誰が死んでセブンスの土になるか、誰が生きてセブンスから出て行くかを決める為に殺し合うだけだ。 帝国兵が駆る三機の陸戦騎は脚部のローラージェットからエーテル光を放ち、砂塵を巻き上げながら油断無く、閼伽王を包囲した。 エーテルナイト乗り――エーテルライダーとしての経験は素人同然だが、帝国兵達は閼伽王に対して一切の油断も無く、侮りもしない。 本来、陸戦騎のカラーリングはカーキ色だが、閼伽王が奪取した陸戦騎は乳白色に染まっている。 特別仕様に塗装したのでは無い――ある意味、それでも間違ってはいないが、塗料を使って色を変えたのでは無い。 エーテルナイトにエーテルを使用するという性質上、力の強い能力者が搭乗すると、搭乗者のエーテルの色に染まる事がある。 乳白色に染まった閼伽王の陸戦騎。その白濁の色こそが閼伽王のエーテルの色であり、強い力を持つ能力者であるという事を示している。 能力者としての力量は閼伽王の方が遥かに上。その厳然たる事実が彼等から慢心を完全に奪い取っていた。 だが、愛機と共に幾多の死地を踏破して来た実績、三対一という数の利が彼等の表情から悲観の色を打ち消していた。 それに閼伽王が優れた能力者であるとは言え、その能力をエーテルナイトに生かせられるか如何かは別の問題だ。 相手を侮らず、油断せず、慢心せず。さりとて、恐れ過ぎる事無く、三人の帝国兵は一撃必殺の機を虎視眈々と狙う。 竜巻の様な高速旋回。迫り来る津波の様に間合いを詰めたかと思えば、何の行動を起こす事も無く、引き潮の様に間合いを広げる。 間合いの定まらない、その動きは包囲した者に疑心と、焦りを呼び、集中力を磨耗させ、精神力を削り取る。 ――その筈だった。 「こっちは既に右の頬を殴り飛ばされてんだ! 兆倍にして返してやんよォッ!!」 猛る怒りで、冷静な思考力を失った閼伽王に、帝国兵達の動きなど意識に無い。 閼伽王にあるのは、平穏を乱した輩が不愉快で仕方が無い。だから、ブチのめす。徹底的にブチのめす。ただ只管、ブチのめす。 精々、その程度の事しか無く、相手の意図など気付きもしない。 三機の陸戦騎が間合いを詰めた瞬間、閼伽王は白濁のエーテルを背に、弾丸の如く帝国兵の陸戦騎へと肉迫した。 警戒も、躊躇も、恐れも、迷いも無く、抜刀すらせずに拳一つ構えて、砂塵を巻き上げながら一直線に駆け抜ける。 彼等はその様を見て、閼伽王の事を一つの事しか考えていないが故に、迷いも恐れも無い。だからこそ質が悪いと評した。 そして、その評価は概ね正解。と言うよりも、今の閼伽王に余計な思考を差し挟む事が出来るだけの余裕は残されていない。 コクピットと一体化したエーテルジェネレーターが、閼伽王に流れるエーテルを喰らい尽くさんと貪欲に奪い取る。 陸戦騎を操る際に消耗するエーテル量は普段能力を使う時の比では無く、まるで血液ごと抜き取られていく様な虚脱感が全身に圧し掛かって来る。 だからこそ―― 「秒殺されちまいなァッ!!」 咆哮と共に力強い足取りで大地を蹴り抜き、閼伽王は迅雷の如く勢いで正面の陸戦騎に追走する。 それを迎え撃つ帝国兵は閼伽王の陸戦騎に向き直り、腰部にマウントされた強化セラミックソードを引き抜き、斜に構えて攻撃に備えた。 更に閼伽王の背後に回った二機の陸戦騎が強化セラミックソードから水飛沫の様なエーテル光を迸らせ、閼伽王を両断せんと駆け抜けた。 それでも、閼伽王は背後から迫り来る二振りの斬撃を意に介する事無く地を蹴った。 そして、閼伽王の拳が正面に捉えた陸戦騎に炸裂すると共に、頭部への縦一文字、腰部に横一文字、二つの剣閃が閼伽王に喰らい付いた。 閼伽王が放った乳白色のエーテル光を纏った拳打は盾代わりに構えられていた強化セラミックソードを圧し折り 閼伽王に放たれた剣閃は拳同様、装甲表面を満遍なく覆う乳白色のエーテル光に阻まれ、かすり傷一つ付ける事が出来ないでいた。 エーテルナイトは搭乗するエーテル能力者の能力を増幅し、その性能を何倍にも発揮するという性質を持っている。 そして、エーテル能力はより強いエーテルによって打ち滅ぼされる。それがルールであり、摂理である。 それまでに彼等がやってきた数の暴力を質の理不尽で捻じ伏せるというものを、そっくりそのまま閼伽王に返されたのである。 「くぅぅぅたぁぁばれぇぇぇぇぇぇぇッ!!」 帝国兵の硬直は一瞬。だが、その刹那の瞬間を無限に拡張するのがエーテル能力者という存在だ。 刹那の瞬間が無限ならば、最早、目の前の障害などただの案山子でしか無く、案山子を相手に技や構えなど無用、純粋な力が一つあれば事足りる。 閼伽王は逆手に引き抜いたセラミックソードを目の前の案山子の股間から斬り上げた。 閼伽王の怒りが込められた烈火の如き苛烈な一撃は、エーテル震となって空間を蹂躙し周囲を轟音で包み込んだ。 エーテル震が鳴り止むと同時に閼伽王の一撃で、へしゃげた強化セラミックソードごと一刀両断にされた陸戦騎が地面に崩れ落ちた。 その断面は滅茶苦茶に湾曲し、切り裂かれたと言うより力任せに捻じ切ったような有様ではあるものの 電光石火の早業は陸戦騎に乗る帝国兵に断末魔の声すら上げるどころか、自らの死を知覚する暇すら与えていない。 「まずは一機……ッ!?」 閼伽王が意気揚々と声を張り上げると共に分断された陸戦騎から分断された陸戦騎から爆轟が巻き起こり、密着状態にあった閼伽王を弾き飛ばした。 生命や物質が崩壊する際に発生するエーテルの突風――エーテルバーストと呼ばれる現象である。 本来ならば周囲に影響を及ぼす事は無く、エーテル能力者ですら意識を傾けなければ知覚するのも困難なのだが エーテルナイトの力で増幅されたエーテル能力と同様、エーテルバーストもまた増幅され、爆轟となって閼伽王を襲い掛かったのである。 閼伽王にとっては災難だが、帝国兵にとっては状況を打破する千載一遇の好機。 そして、エーテルナイトが破壊された際に発生する強烈なエーテルバーストの事を熟知している帝国兵達は 既に安全圏に離脱し左手に空間が歪曲する程の高密度のエーテルを収束していた。 エーテルを纏った陸戦騎の左手首の手甲がスライドし、排煙と共にエーテル発生装置の姿が露になる。 そして、発生装置から三叉槍の様な刀身が形成され、空を引き裂く甲高い音と共に閼伽王に向けて放たれた。 「ッざけてんじゃねぇぞ!!」 やぶ蚊の様に飛び交う二つの飛刃を紙一重の所で身を捩って避けると、鋭く尖ったエーテルの刀身は墓標の様に大地に深々と突き立ち、その動きを止めた。 だが、閼伽王が一息吐いたのも一瞬。 武装名、エーテル制御式ショットランサー。 エーテルによって形成された刀身を持ち、エーテルによって制御される無線遠隔攻撃装置である。 その名が示す通り、エーテルによって形成された不可視の腕に地面から引き抜かれ、再び、勢いを取り戻して閼伽王に襲い掛かる。 立ち上がる暇も無く、地面を転がりながら乳白色の装甲を泥で汚しながら、必死に逃げ惑う閼伽王を嘲笑うかの様にエーテルによって制御されたランサーは 常に最高速度を維持しながら、慣性を無視した軌道で獲物を狙う蛇の如く閼伽王を確実に追い詰めていく。 「しゃらくせェッ!!」 逃げ続けていては埒が開かないと、フラストレーションを溜め込んだ閼伽王は、怒声と共に背中のバネを使って宙を舞う。 その瞬間、ショットランサーの軌道が変わり、閼伽王を刺し貫かんと二条の閃光が空を走った。 そして、閼伽王が装甲全体を補強すると同時に二本のショットランサーが陸戦騎の両肩に突き刺さる。 閼伽王は生唾を飲み込むと同時に機体全体に回したエーテルを両肩に収束し、損傷を最低限に押さえ込むんだ――というのが閼伽王の目論みだった。 だが、閼伽王がエーテルを操作するよりも早く、両肩を捉えたショットランサーは間抜けな音を立てて地面を転がった。 「ああ?」 決死の覚悟とは裏腹にあまりにも間の抜けた結果に閼伽王は肩透かしを食らったような表情を浮かべる。 不発か? 否――帝国兵が企てた計略は、ほぼ完成していると言っても良い。 ただ閼伽王の意識をショットランサーに向ける。それも可能な限り長く。それが彼等の目的だった。 陸戦騎が弾き飛ばされる程のエーテルバーストに驚き戸惑った閼伽王が、愚直な怒りさえも忘れた事を帝国兵達は見逃さなかった。 そこで思考を乱した閼伽王に感知されるだけの膨大な量のエーテルを収束し、その警戒心を煽る。 案の定、閼伽王は膨大なエーテルの収束直後に放たれたショットランサーが一撃必殺の威力を持つエーテル兵器であると誤認した。 だが、事前行動とは裏腹にショットランサーに込められたエーテルは、発動に必要な最低限度の極僅かなエーテルのみ。 クラス分けされる程に差がエーテル能力者を相手に、不利を覆すのは並大抵の事では無い。 ましてやセラミックソードの直撃にも耐え得る閼伽王を相手に、ショットランサーでは威力不足であるのは彼等にとっても承知の上の事だった。 それでも、彼等に撤退の二文字は無い。何故なら、その不利を覆すだけの威力を持った兵器が陸戦騎に装備されているからである。 エーテルキャノン――搭乗する能力者のエーテルを物理的な破壊衝動に変換し撃ち出す、陸戦騎に装備された唯一のエーテル兵器である。 能力者の力量に大きく影響される上、発射準備にかなりの時間を要し、能力者に与える負担も決して無視出来ない程の物だが 大きな代償と引き換えに、大半の戦闘兵器を一撃で消滅させて有り余る圧倒的な火力を誇り、正しく切り札という形容が相応しい兵器である。 そして、帝国兵の思惑通り、閼伽王が長々とショットランサーに気を取られていた隙に、悠々とエーテルキャノンの発射準備を終える事が出来ていた。 陸戦騎の左腕に収束されていた膨大なエーテルはエーテルキャノンの砲口に飲み込まれ、二機の陸戦騎の姿を陽炎の様に揺らめかせた。 次の瞬間、無音の光芒が二条の閃光となって閼伽王の心臓を喰らい尽くそうと獣の様に宙を駆ける。 刹那――視界がセピア色に染まり、閼伽王は流れる時間が遅くなっていくのを感じた。 (どうせ殺るなら一思いに一気に殺りやがれってんだ……!) 時間の流れが遅く感じられても、自分の動きが早くなったわけでは無い。 ゆっくり――ただ只管、ゆっくりと眼前に迫り来るエーテルキャノンの弾光に閼伽王は内心で悪態を吐いて、破壊衝動の波に呑み込まれた。 だが、帝国兵の表情に喜色の色は無く、エーテルキャノンの再チャージを開始する。 エーテルナイト同士の戦いが始めてという事もそうだが、力が増幅された上位能力者との差が大きく広がっている事を嫌という程思い知らされた直後である。 既に彼等の頭の中では、今の攻撃で閼伽王を撃破出来ていなかった場合の対応策が頭の中で練られ始めていた。 そもそも、撃破出来ていない事はエーテルバーストが発生していない事からも明らかであった。 良くて虫の息。最悪の場合、無傷で反撃の機を伺っているという可能性も充分すぎる程に考えられる。 もしも、これで閼伽王が無傷だとしたら、必殺の機会を逃した彼等に勝ち目は無くなったと言っても良い。 今の一撃が彼等に出せる最大の一撃で、何をどう足掻いても先程以上の威力を出す事も、奇襲を仕掛けるのも困難だ。 何の脈絡も無く、唐突にBクラスのエーテル能力者にクラスアップすれば話は別だが、そんなに都合の良い話は滅多に無い。 そして、恐れていた最悪の事態が起ころうとする兆しが見え始め、彼等は思わず息を呑んだ。 セブンス全体を覆い尽くす程の急激なエーテルの高まり。大地から立ち上る、乳白色のエーテル光。 これが閼伽王から放たれているエーテルである事は把握出来るものの、閼伽王の気配は愚か、陸戦騎の姿すら何処にも見えない。 エーテルの出所を探ろうにも閼伽王のエーテルはセブンス全体に満遍なく、均一に広がっており、何処にでも居るような錯覚を起こしそうな程であった。 一回り近く年下の上官に縋り付きたくなる様な気弱な感情を必死に押し殺し、二体の陸戦騎は無言で背中合わせに立って全周囲を警戒する。 だが、一度自覚した恐怖を容易く払拭出来る筈も無く、背後から閼伽王が剣を振り被っているのではと根拠の無い疑心を抱く始末だった。 恐怖を自覚出来る程度には冷静なのだと自身を言い聞かせ、押し潰されかけた自らの意思を奮い立たせようとするが、その思考こそが恐怖に屈した事を意味する。 現に恐怖に破れたが故に彼等のすぐ傍で息を潜めている閼伽王に気付く事が出来ないでいたのだから。 「間一髪って奴かぁ? マジで死ぬかと思ったぜ……流石に年がら年中戦争やってる兵隊サンは場慣れしてやがんぜ」 閼伽王は陸戦騎のコクピットの中で冷や汗を拭う様な仕草をして深い溜息を吐いた。 「けど、使い方は把握した! 一方的にぶん殴られんのは終わりだ、な?」 必要以上にエーテルを膨張させ、帝国兵の恐怖心と、警戒心を煽り、検討違いの方向を警戒させる。 そして、湧き水の様に溢れるエーテルで砲弾を鋳造し、思考の海に浮かぶ砲身へと装填し、錆付いた撃鉄を火花と共に引き落とす。 照準を合わせる必要は無い。三者の距離は殆ど零距離。外しようが無い。 「ブッ飛べェェェェェェェッ!!」 閼伽王の咆哮と共に二機の陸戦騎の足元に亀裂が走り、その破片を押し上げるように乳白色の巨大な光芒が天を貫いた。 そして、光の昇天に呑み込まれた二機の陸戦騎が爆散し、大規模のエーテルバーストを引き起こした。 「畑弄りに能力を使っていたのが、こんな所で役に立つたぁな……世の中、何が役に立つか分かりゃしねぇな」 閼伽王は得意気な口振りで、地中から飛び出し、地表へと降り立った。 エーテルキャノンに飲み込まれる瞬間、閼伽王は足元の地面を溶かし、地下へと逃れ、帝国兵の足元という絶好の射撃ポジションを確保していたのだった。 セブンスに流れ着いて三年。途切れる事無く、能力を使ってセブンスの畑を耕してきた閼伽王にとって地質を操る程度、造作も無い。 それでも、気を抜ける様な状況では無い。セブンスに降り立ったエーテルナイトは四機。そして、始末した帝国の能力者は四名。 そして、セブンスに訪れたエーテル能力者は五名、後一人。セブンスの人間狩りを指揮するエーテル能力者―― 「ベアトリス……何処に行った……?」 一方、ベアトリスはアルトールの小屋から一歩も動かずに閼伽王の戦いを眺めていた。 同格の力を持つとは言え、つい先程、エーテルナイトの存在を知ったような物知らずが陸戦騎を帝国兵から奪取し 何の訓練も受けていないにも関わらず、容易く、陸戦騎を起動させ三人の帝国兵を撃破。 「そんな捕縛対象、見た事も聞いた事も無い……アイツが共和国に渡ったら、帝国は困った事になる……」 少数で戦火を広げ、戦渦を巻き起こし、戦果を得る力を持つ、エーテルナイトの台頭により帝国は圧倒的な力を身につける事が出来た。 それに対する共和国は技術力で帝国に遅れを取っているものの、潤沢な資源、物資、物量だけで帝国と拮抗出来るだけの力を持ち合わせている。 初期量産型の陸戦騎など帝国にとって人間狩りの部隊に宛がうか、廃棄処分して再利用する程度の価値しか無い。 だが、閼伽王が陸戦騎を手土産に共和国へと流れ、大量生産などされでもしたら帝国には打つ手が無くなる。 ベアトリスにとって帝国がどうなろうと知った事では無いが、そうなった場合、彼女に科せられる処遇は――ベアトリスは考えたくも無いと首を振った。 「おいで……」 その小さな呟きに応え、空の彼方から風を越え、雲を突き抜け、天空を自在に舞う第二の騎士がベアトリスの前に降り立った。 姫君に頭を垂れる騎士の様に肩膝を付いて、ベアトリスの搭乗を待つエーテルナイトは細身のシルエットをしており、陸戦騎の様な質実剛健さは無い。 だが、搭載されたエーテルジェネレーターは、陸戦騎に搭載されている物よりも遥かに大容量で、エーテルの循環効率に優れている。 更に血管の様に張り巡らされたオリファルコンの含有量は、陸戦騎の二十パーセント増で、搭乗する能力者のエーテルを余す事無く生かすことが出来る。 Bクラス以上のエーテル能力者の中でも、一際優れたエーテルライダーに支給されるエース専用エーテルナイト―― 「行くよ、空戦騎」 ベアトリスがコクピットに乗り込み、自身のエーテルを流し込み循環させると迷彩模様の空戦騎の装甲が深緑に染まり、額の単眼が深緑の光を放った。 背中のドラム缶の様な形状の二基のブースターから深緑のエーテル光を迸らせ、その名が示す通り空へと飛翔する。 そして、左腕に携えた長槍、強化セラミックランスを構え、閼伽王へと落雷の様に肉迫する。 「そのエーテルはベアトリスか!?」 雷光の如く勢いで急接近するエーテルを察知した閼伽王は、振り向き様に叫びながら剣を水平に振り抜いた。 間一髪――背後から陸戦騎を貫かんとしていた長槍は閼伽王の剣に阻まれ、火花を散らしながら陸戦騎の左肩を掠めた。 硬直する両者。閼伽王はベアトリスが二の手を使うよりも早く、更に一歩深く踏み込みながら、一刀両断にせんと縦一文字に剣を振り落とす。 「やっぱり、騎士の能力者を相手に格闘戦は不利……」 ベアトリスは臆するわけでも無ければ、口惜しげにするわけでも無く、淡々と述べながら残像を残して、斬撃の間合いから逃れる。 「逃がすかよッ!!」 閼伽王の叫び声と共に浮遊していたショットランサーが疾風を切り裂き、空戦騎に襲い掛かる。 「でも、騎士の能力者が魔弾の能力者に飛び道具を使うのは無謀――」 空戦騎の右腕に構えられたエーテルライフルに深緑のエーテル光が収束され、ショットランサーを飲み込んで尚、陸戦騎を穿たんと疾駆する。 「チッ……騎士だの、魔弾だの意味分かんねぇっての!」 閼伽王は吼えながら脚部のローラージェットから、乳白色のエーテル光を吹かしながら、空戦騎の銃撃を避け続ける。 怒鳴ってみせたは良いが、閼伽王の内心は焦りの色が見え初めていた。空戦騎の機動力は陸戦騎を遥かに圧倒している。 その上、空に逃げられたら陸戦騎には追撃の手段が乏しいのにも関わらず、空戦騎のエーテルライフルのチャージ時間は無いに等しい。 「対抗する手段はコイツだけか……」 左肩のエーテルキャノン。陸戦騎を一撃で葬り去る程の威力を持つが、チャージに時間がかかり過ぎる。 エーテルライフルを避け続けながら、チャージを完了させる事が出来るのだろうか? 両者の能力者としての力は同程度。一撃で仕留められる程、容易い相手なのか? 「まあ……知った事じゃねぇよなァッ!!」 一々、考えていては知恵熱を起こして脳が壊死してしまう。そして、閼伽王は自分の頭で考えても結果に繋がらない事を自覚している。 だからこそ、取り合えずやってみれば良い。なる様になるだろうという短絡思考で、迷う事無く動き出す事が出来る男なのだ。 閼伽王はローラージェットから出鱈目な軌跡を描きながら、空戦騎から断続的に放たれる銃弾を避け、エーテルキャノンのチャージを開始する。 「初めてでよく粘る……でも、もうこれまで」 「勝手に決め付けてんじゃねぇ! 俺はお前等なんざとは違うんだよォッ!!」 「そうだね……本当にそう思う。能力もだけど心も強い。此処まで歯向かえる能力者と出会えたのは初めて。 でもね、私も死ぬのが嫌だから……私が生きるために死んで……私から逃げる事が出来ても、もう道は無い」 「勝手に決め付けて、勝手に諦めて、勝手に帝国なんぞに負けてんじゃねぇ! 死ぬのが嫌なら歯ァ食い縛って死に損なえ! 先に道がねぇんなら、テメェで切り開け! テメェに宿ったエーテル能力は何だ! ただの貧乏くじか! テメェより弱い奴を殺す力か! それとも何か! テメェより強い奴に尻尾ふる力かよ! そんな奴等を相手に誰が逃げるかよッ!!」 「五月蝿い! 何も知らないくせに……!」 「自分の事を知らせようともしねぇ他人の事なんざ知るか! 辛いんだったらなぁ! 辛いから助けてくれって腹の底から叫んでみせろ! 勝手に絶望して、勝手に塞ぎこんで、勝手に自己完結してんじぇねよ、馬鹿餓鬼が! 心を殺さなくたってなぁ! 道なんざいくらでも選べんだよッ!」 そして、閼伽王は陸戦騎のローラージェットを停止させ、その動きを止める。 左肩のエーテルキャノンの砲口には乳白色のエーテル光が球状に収束され発射されるその時を今か、今かと待っている。 「ベアトリス。これで最後だ。俺は進むべき道を見つけた。お前はどうする?」 ベアトリスは閼伽王の問いかけに対し、エーテルライフルを下ろして応えた。 「私に同情してくれるって、私の言う事なら何でも聞くって言ってくれて……私の事を理解しようとしてくれてありがとう。 今も私を救い出そうとしてくれてありがとう……私と同じ立場なのに……本当に嬉しかった……」 「ベアトリス……」 ベアトリスの空戦騎が纏うエーテルが苛烈な物から穏やかな物へと変わり、閼伽王の表情が柔らかくなる。 「でも、ごめん」 ベアトリスのエーテルは穏やかでありながら、静かに研ぎ澄まされた殺気へと変貌し、ライフルの銃口には空間が歪んで見える程の高密度のエーテルが収束されていた。 「これが私の選んだ道……後には引けない。だから……さようなら」 ベアトリスにとって閼伽王の言葉はあまりにも甘美な猛毒の様なものだった。後一つ、小さく些細な切欠があれば帝国を棄ててしまいそうになる程の。 だから、ベアトリスは張り裂けそうになる想いを殺意で押し退け、言の葉を銃弾に変えて、閼伽王と共に行く道を撃ち貫いた。 「馬鹿餓鬼が……!」 閼伽王はこれ以上の説得は無意味だと悟り、空戦騎から放たれる光弾を飲み込む程の巨大な光芒を放った。 「本当にごめん……そして、騎士の能力者が、飛び道具で魔弾の能力者に戦いを挑むのは無謀だと言った」 光芒と光弾が衝突する寸前、光弾はその軌道を変え、光芒を縫う様に駆け抜け、陸戦騎のエーテルキャノンを破壊する。 そして、空戦騎へと迫る光芒にベアトリスは眉一つ動かさずにエーテルライフルを構え、光弾では無く、光芒を放つ。 空戦騎から放たれた光の柱はエーテルキャノンの光芒ごと、一瞬にして閼伽王の陸戦騎を飲み込んだ。 巨大なクレーターを穿たれ、セブンスから平穏な日々を謳歌していた島民達の痕跡が消滅し クレーターの中心地では、装甲を欠落させ、満身創痍の体となった陸戦騎が膝から崩れ落ちた。 とは言え、行動不能に陥っただけで閼伽王自身の死には程遠く、ベアトリスは感心の中に苛立ちを含ませた。 だが、それも此処までだ。ベアトリスは躊躇う事無く、エーテルライフルの銃口を陸戦騎のエーテルジェネレーターに向ける。 「バイバイ……嫌いじゃなかったと思うよ」 そして、ベアトリスが無感情にトリガーを引こうとした、その瞬間――空戦騎の右肩が爆発を起こした。 「エーテル攻撃……!」 陸戦騎が戦闘不能に陥った今、ベアトリスの空戦騎にエーテル攻撃を仕掛けられる相手は限られている。 と言うよりも空戦騎に攻撃を仕掛ける命知らずなど一陣営しか存在しない。 「共和国の戦闘航空機……今なら勝てると思ってるんだ……随分と甘く見られている」 ベアトリスが戦いに身を投じるようになって三年。閼伽王の様な敵と戦うのは初めてだったが、空を覆い尽す共和国の部隊と対峙してみて分かった事がある。 「他人の命なんて軽いくらいで丁度良い……」 自分を理解しようとして、必死に声をかけてくる閼伽王を撃った時の気分は最悪以外の何物でも無く、後ろめたさしか残らなかった。 だと言うのに、自分に殺気を向ける共和国の兵に向けて放つエーテルライフルのトリガーは何と軽い事か。 「だから……殺してあげる」 四機の陸戦騎を失った上に捕縛対象の閼伽王は死んだも同然。せめて、共和国の一部隊くらいは滅ぼしておかなければ割に合わない。 ベアトリスの呟きと共に空戦騎からエーテル光が放たれ、空を深緑に染めると同時に共和国の戦闘航空機――ズィーダーは一斉にエーテルキャノンを発射する。 刹那――ベアトリスはエーテルキャノンの弾道、弾速を読み取り、迫り来る弾幕に真正面から飛び込んだ。 そして、砲撃の軌跡が空戦騎の肩や脇、腰の隙間を、紙一重の所で通り抜けていくのを尻目に航空機部隊の中心に躍り出た。 一斉に散開しようとする戦闘航空機の中から、僅かに逃げ遅れた者がセラミックランスをコクピットの中に叩き込まれ、ズィーダーの中で木端微塵に弾け飛んだ。 更に空戦騎は錐揉みしながらエーテルライフルのトリガーを引き、放射線状に光芒を放ち、敵部隊の半数を撃墜し、速度重視の弾丸を鋳造し三連射。 何と無く逃げ足が遅い気がする――曖昧な判断基準で選ばれた敵は必死に回避運動を取ろうとするが、光弾はその軌道を自在に変え、猟犬の様に追い立てる。 そして、光弾を振り抜き、雲を抜けた瞬間、ズィーダーのキャノピーに差す陽光が、暗い影に覆われて途切れ――パイロットの意識は途切れた。 「この程度で私に挑むなんて、とんだ馬鹿……」 ベアトリスの表情から疲労の色は隠せないが、ズィーダーのエーテルキャノンでは脅威足りえるには程遠い。 エーテル兵器とは言え、エーテルジェネレーターで増幅されていなければ、通常兵器に毛が生えた程度の性能しか無いのだから。 それでも、共和国の兵士達は健気にもエーテルキャノンで必死に応戦しようとする。 ――強いエーテル能力は、より強いエーテル能力によって捻じ伏せられる 一斉に逸れた筈のエーテルキャノンの軌跡が鞭の様に撓りながら突如と軌道を変え、豪雨の様に空戦騎に降り注いだ。 閼伽王を撃った事による動揺、能力と性能差のある相手への慢心がベアトリスを窮地に追い込んだ。 「何……!?」 微弱なエーテルの中にその姿を隠していた禍々しいエーテルが急速に膨張し、深緑の空を白濁に染めていく。 だが、閼伽王は未だ陸戦騎と共に沈黙を保ったまま。閼伽王と同じエーテルの色を持ち、尚且つ、ベアトリスのエーテルを侵食する程の力の持ち主―― 「ドゥアーッハッハッハッハッハーイ!! どうよ、帝国の小鳥ちゃんよぉぉぉぉお!!」 「……気持ち悪。濃い、暑苦しい、汗臭い」 実際に顔を合わせたわけでは無く、ただの印象でしか無いが、その印象は概ね正解と言えた。 小麦色に焼けた肌は鍛え抜かれた筋肉で脂ギッシュにテカリを放っており、ズィーダーのコクピットの中で缶詰の様に抑え付けられている。 そして、顔はバナナの様に長く弧を描くように反っており、顎は二つに割れ、顔の半分程もあるのでは無かろうかという程の巨大な口に図太い眉毛。 鶏の鶏冠の様に立派にそそり立つ金髪のモヒカンはズィーダーのキャノピーで押し潰されていた。 これをベアトリスの言葉で簡潔に一言でまとめると―― 「不快」 「人の事を気持ち悪いだの不快だのとよぉぉぉお!! このAクラス能力者ワーグナルド・ミッテルシュナウダー様を舐めてんのかあああん!?」 「名前もウザいし、そもそも、聞いてない」 不快とは言え、Aクラスのエーテル能力者である事には変わりは無い。 そして、その実力はエーテルジェネレーターで能力を増幅していないにも関わらず、仲間の弾丸を操作し、空戦騎を追い詰めた事から察するに余る。 だが、それ以上に―― 「顔見てないけど、顔が生理的に無理」 ベアトリスは空戦騎のエーテルジェネレーターからスパークが迸っているのも無視して、侮蔑の言葉と共にエーテルライフルをマシンガンの様に連射した。 ワーグナルドは少女の声で自身を徹底的に否定され悲しみに暮れている所に銃弾を打ち込まれ、慌てて回避に転じる。 「あんまり手間ぁかけさせるなよォ? 大人しくソイツを渡せば、上には従順だったって報告出来るんでなァ!」 「こうも同じだと本当に嫌になる……」 つい先程の自分を焼き増したようなワーグナルドの言葉にベアトリスは不快感を露にした。 こんな不快な男と同じ言葉を発していた事に――閼伽王は今の自分と同じ気持ちになっていたのかと思うと―― 「……本当に不快」 「いい加減に黙れやァァァァァアア!! お前の言葉は地味に傷付くんだよォ!! そういう事を言っちゃダメって、ママから言われなかったんかぁ!? ああん!? 十八歳未満お断りなお仕置でもされたいんか、アアン!? 寧ろ、ヤんぞゴルアアアアッ!!」 「下衆」 ワーグナルドの怒鳴り声を一言で一蹴し、ライフルの銃口に収束したエーテルを散弾の様に拡散し、弾幕の網でワーグナルドを封じ込める。 「共和国のAクラス能力者ならミスの埋め合わせに丁度良い……私が生き残るために死んで……それに不快」 「まァだ言うか、この雌ガキャアッ!!」 空戦騎のライフルの銃口に深緑のエーテルが、ズィーダーのキャノンの銃口に乳白色のエーテルが収束され、まさに一触即発の状況。 そんな最中、空戦騎のコクピット内に新たな命令が届き、その命令内容にベアトリスは驚いた様な表情を浮かべた。 「現作戦及び、戦闘行動を破棄並びに中断。即時撤退命令……Sグレードの最優先命令……どう言う事……?」 だが、ベアトリスが疑問を差し挟む余地は何処にも無い。 どんな状況下にあろうとセブンスに放置されている四機の陸戦騎の残骸を放置してでも所属基地へと戻れ。それが、ベアトリスに下された命令である。 「エーテルナイトを棄ててでも戻って来い……帝国にとって私はまだ利用価値がある……まだ……生きていられる……」 「なァにをブツブツ言ってやがる!! ぶっっっっっ殺すぞぉぉぉぉああ!!」 「勝手に殺して、死んでいれば良い……下衆に付き合っていられない……」 ベアトリスは空戦騎を反転させ、空間が捻じ曲がりかねない程のエーテル震を巻き起こして、空の彼方へと飛び去った。 「暴言吐くだけ吐いて逃げんのか!? おおい!!」 ワーグナルドが叫び終わった頃には既に空戦騎の姿は芥子粒程の光点になるまで遠ざかっている。 追いかけようにも単機で帝国本土付近の海へと接近する程、無謀な男でも無い。 気を取り直したかの様な表情で、セブンスに穿たれた巨大なクレーターの中心地に横たわる陸戦騎を睥睨した。 「陸戦騎四機分の残骸に死に損ないのBクラスが一人か……」 セブンスのエーテル能力者、閼伽王の存在に気付いていたのは共和国も同じだったが、立地の都合上、帝国を出し抜くのは不可能だった。 其処でワーグナルドは、この事態を静観しつつも、彼の権限で動かせる兵力をベアトリス達に勘付かれない地点に配置させていた。 そして、セブンスで始まった戦闘は彼にとって非常に好都合なものだった。 閼伽王の手によって三機の陸戦騎が撃破され、閼伽王の陸戦騎も比較的綺麗な状態で撃破された。 彼等にとって一番厄介だった空戦騎と、ベアトリスは閼伽王との戦闘でエーテルを消耗し、精神状況も決して良好では無い所まで追い詰められていた。 残った陸戦騎の能力者も消耗状態。貴重なエーテルナイトのサンプルを手に入れる潜在一隅のチャンスが到来したというわけだ。 「空戦騎も欲しかったんだが……まあ、一先ずは成功だなぁーハッハッハッハァッ!!」 誰も為し得る事の出来なかったエーテルナイトの鹵獲。与えられる恩賞は如何程の物かを想像して、込上げる笑いを堪える事無く、大空に大きな笑い声を鳴り響かせた。 一方、帝国では―― 下士官の軍服に身を包んだ若い帝国兵が基地司令の執務室で、虚空に映し出された共和国の将官の立体映像と向かい合っていた。 「其方にエーテルナイトのサンプルと、野良を送った……G計画の進捗はどうなっている?」 「陸戦騎の鹵獲という切欠を得た今、長く見積もっても二ヶ月といった所だ」 「取り合えず、十機程完成させたら此方を襲わせろ。性能を確認しておきたい」 「了解した……相変わらず、随分な暴れようだな?」 帝国の下士官の背後には、帝国の将官や下士官達の骸が折り重なり、壁や天井には、おびただしい量の鮮血が飛び散り、あるいは滴り落ちていた。 「芝居に夢中になり過ぎる癖があってな。偶には塵を塵扱いしておかなければ、本当の自分を忘れそうになるのでな」 「……二ヶ月以内にGによる強襲を仕掛ける。そのつもりでいろ」 帝国の下士官は悪びれた様子も無く、おどけた態度で肩を竦めていると共和国の将官は呆れた口振りで通信を終了した。 「き……貴様……共和国のスパイか……!」 その一部始終を見ていた帝国兵が骸の山から這い出て、呼吸の乱れた荒い声を上げた。 自身の物か、それとも、他人の物かも分からないおびただしい量の血液に全身を染め上げた、その姿は地獄から現れた亡者の様にも見える。 「おやおや……すまんな」 スパイの容疑をかけられた帝国の下士官は、その様が無性に愉快だったらしく、目を細めて、口角を吊り上げ―― ――殺し忘れていた そして、紅い血肉が弾け飛び、新たに鮮やかな紅が執務室を塗り潰した。 【次回予告】 ヴィルゲスト共和国本土に運び込まれる四機の陸戦騎の残骸と、閼伽王。 遂に共和国はエーテルナイトの開発に大きな一歩を踏み出し、帝国に対し反撃の狼煙を上げた。 その最中、閼伽王は時代の影で、人を喰らう異形の群れと戦う学徒――君嶋悠との出会いを果たす。 機神幻想Endless 第三話 覚醒者 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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登録日:2020/01/10 Fri 00 11 30 更新日:2024/01/15 Mon 09 00 53NEW! 所要時間:約 14 分で読めます ▽タグ一覧 STAR_WARS SW ×ハグス将軍 アーミテイジ・ハックス イケメン エリート オールバック コート スター・ウォーズ スピード出世 ドーナル・グリーソン ハックス将軍 ファースト・オーダー プライドの塊 ヘタレ 二世 参謀 司令官 報われぬ人生 将校 将軍 小物 小物界の大物 川本克彦 幹部 愛すべき小物 愛猫家(?) 憎めない悪役 案外有能 残念なイケメン 終身名誉小物将軍 続三部作 苦労人 赤毛 軍人 転落人生 野心家 銀河帝国 「今日こそが共和国最後の日となる」 映画『STAR WARS』シリーズに登場する人物。 アーミテイジ・ハックスというフルネームが一応設定されてはいるものの、公式サイトのキャラクター紹介、スタッフロール、関連商品などでは基本的に「ハックス将軍(原語版ではGeneral Hux)」と表記される。(*1) 俳優:ドーナル・グリーソン(『ハリー・ポッター』シリーズのビル・ウィーズリー役、『ピーターラビット』シリーズのトーマス・マクレガー役など) 吹き替え声優:川本克彦(『『無限戦記ポトリス』のドラゴンブルー役、NARUTO-ナルト-疾風伝』のデイダラ役、『NHK高校講座「ビジネス基礎」』のナレーションなど) ●目次 【人物】 【過去】 【本編での動向】EP7 フォースの覚醒 EP8 最後のジェダイ EP9 スカイウォーカーの夜明け 【EP9没案】 【人物】 「貴様らの運命は定まった…銀河の塵と消え失せるのだ!」 銀河帝国の残党が結成した軍事組織ファースト・オーダーにて最高指導者スノークに仕える将軍。 軍服の上に黒いロングコートを身に纏った痩身の男性であり、ファースト・オーダー最高司令部の指揮官を務めている。 敵対するレジスタンスからの通信に対して降伏は一切認めないことを宣言するなど、冷酷非情な性格の持ち主。プライドが高く、芝居がかった尊大な言い回しを好む一面を併せ持つ。 組織の中での立ち位置としては、旧帝国時代の総督ウィルハフ・ターキンに近い。 もっとも皇帝やダース・ヴェイダーといった錚錚たる面々にすら一目置かれるほど、優秀な司令官・政治家として老成していた彼に比べると、やはり若さ故の未熟さか精神的な余裕の無さが散見される。 またターキンがヴェイダーよりも上の地位に就いていたのに対して、ハックス将軍はカイロ・レンとほぼ同等の位である。 レンからは実戦経験の浅さを理由に見下されており、ハックスもまた彼の存在を不快に思っている。年齢的にはハックスの方が数歳年上らしい。 日頃から主君スノークの評価と寵愛、即ち次期最高指導者の座を巡って、手柄の奪い合いや互いの失敗の告げ口などといった小競り合いを繰り広げ、非常に折り合いが悪い。 スノークも「何故あのような小物を重用するのか不思議に思っているであろう?奴の弱さは上手く操ればよく切れる道具となる」などと陰で彼が将軍の器ではないことを嘲笑し、時には遠距離からフォースによる体罰をも辞さない少々ぞんざいな扱いをしている他、(*2) レジスタンスの者からさえも作戦のためとはいえ散々扱き下ろされたりと、作中では敵味方問わず多方面から軽んじられている節が見受けられる。 しかしながら、彼が収集した情報や立案した作戦によってレジスタンスが幾度も窮地に追い込まれているのもまた事実であり、更にストームトルーパーの育成にも彼が採用した訓練メソッドが大きな貢献を果たしているため、一概に全くの無能とも言い切れない。 前述のスノーク評も裏を返せば、扱い方次第で能力を発揮すると認められているとも言えるし、スノークがハックスの働きぶりを褒めそやす場面も度々見られる。 とはいえレジスタンスを追い詰める度に後一歩の所で出し抜かれている背景にはレジスタンス側の奮闘や仲間の不手際だけでなく、彼自身の判断の甘さも少なからず関係しているのは否めず、ハックスが将軍として周囲からの評価をあまり得られないのも致し方ない部分はあるが。 なお大変どうでも良いことだが、2016年2月、ルーカスフィルムの社員であるパブロ・ヒダルゴ氏が、ハックス将軍はミリセントと名付けた猫を飼っているとSNSで公言した。 これが正式な設定なのか単なるジョークなのかは不明。いずれにせよ彼は自分でもこのネタが気に入ったのか、自アカウントのアイコンを一時期ミリセントと思しき猫を抱いたハックスの画像にしていたりする。 …そもそもスター・ウォーズの世界って普通の猫いるのかな? 【過去】 「良いリーダーというものは、チームの一員でありつつも、周りと馴れ合ってはいけないのだ」 彼の本編に至るまでの来歴は正史(カノン)の小説である『アフターマス』三部作、『ファズマ』、『フォースの覚醒前夜 ~ポー・レイ・フィン~』などで語られている。(*3) アーミテイジ・ハックスは、帝国将校の父と使用人の母との間に婚外子として生まれた。 父ブレンドル・ハックスは息子に対しては一片の愛情も抱いておらず、紙のように貧弱で役立たずだと侮蔑していた。その一方で、仕込めば化けるだけのポテンシャルはあるかもしれないとも思っていたようだが、それは息子への期待というよりも軍人としての見解だったものと思われる。 アーミテイジの幼少期、帝国は歴史的大敗を喫して凋落。彼と父は苦難の末、銀河系の未知領域へと逃げ延びる。 そしてブレンドルを始めとする帝国の元上級幹部ら数人が中心となって、徐々に勢力を拡大した。この一派が後にファースト・オーダーとなるのである。 幼きハックスは、帝国時代に父親の上官だったガリアス・ラックス提督の指導を受ける内、他者を支配するという行為に歪んだ悦びを見出すようになっていった。 さながら自身の抱く心の弱さを打ち消そうとするかの如く、人を思うがまま操って攻撃を行うことに快感を覚え始める。 そのまま大人へと成長してファースト・オーダーを構成する一幹部になった彼は、利害が一致したキャプテン・ファズマの謀略に加担して、自分の父親を死に追いやってしまう。 直接手を下したわけではないにせよ、奇しくも後のカイロ・レンと同様の所業を働いたわけであるが、レンが父親を手にかけることに迷いを抱き、殺めた後も後悔を捨て切れなかったのとは対照的に、ハックスは一切心が揺れることは無かった。 まあ生まれた頃から自分と母を虐待同然に冷遇してきた相手に情が湧かないのも無理はない。結果的にその父親と同じく支配欲に飢えた人間に成り果ててしまったのは何と皮肉なことか。 程なくしてハックスは、トップの思惑も相まって、亡き父の跡を継ぐような形で将軍の座を見事射止める。 将軍に就任して以降は、かつて帝国アカデミーの教官でもあった父が考案した訓練法をベースにしている教育プログラムを採用して、ファズマと共にストームトルーパーの洗脳・増強に尽力した。 昔の帝国と違って公然と徴兵することが出来ないので、兵士の数が少ない分、一人一人の質を高めていく必要があったようだ。 ちなみに彼はトルーパーの育成に当たって、ファースト・オーダーのために戦うことこそが正義であると頭に叩き込ませるという目的の下、訓練生達に毎日2回、自分の演説の映像を強制的に見せていることも発覚する。 単なる罰ゲームとしか思えない実に恐ろしい洗脳手法だと言えよう。 若くして順調に出世を重ねていくハックス将軍。 だが、そんな彼の覇道にも一筋の影が差す。最高指導者スノークが幾年か前より懇意にしていた男が、ついに自分と同格の地位に割り込んで来たのだ。 その男こそがカイロ・レンなのであった。 【本編での動向】 EP7 フォースの覚醒 シークエル・トリロジーの第一弾に当たる本作でシリーズ初登場を果たした。 「あんたの部下では心許ない」 「私のやり方に異論があるのか?」 カイロ・レンと共同でルーク・スカイウォーカーの居場所が記された地図の回収任務を担当することになる。 部下のフィンことFN−2187が裏切ったことで、ストームトルーパーの教育と管理の体制についてレンから皮肉を浴びせられ、ハックスも仕返しとばかりに彼のミスをスノークにばらすなど、この頃から二人の関係の悪さは垣間見えていた。 レイとフィンが地図のデータを持ったBB-8を連れて、ストームトルーパー達の追跡をかわした事実を重く見たハックスは、新共和国がレジスタンスに援助してルーク・スカイウォーカーを発見してしまう前に、新開発の破壊兵器スターキラーを使用して共和国を潰す許可をスノークに求める。 斯(か)くして彼は何千という兵士達が見守る中、至高の新兵器を御披露目する歴史的なセレモニーで大演説を行った。 このどこかナチス感のあるスピーチは、俳優のグリーソン氏および吹き替え声優の川本氏、両者の鬼気迫る熱演が光るので、ぜひ英語版と日本語吹き替え版の両方をご覧頂きたい。 演説全文 「…今日こそが共和国最後の日となる。秩序無き混乱の時代と決別する記念すべき日だ。 今この瞬間ここから遠く離れた星系で、新共和国は厳正に中立を守るなどと綺麗事を言いながら、その裏でレジスタンスに肩入れしている。 諸君が作ったこの恐るべき兵器───この究極の兵器が元老院に最期をもたらす…忌々しいレジスタンスにも。 生き残った星は全てファースト・オーダーの前にひれ伏すのだ…」 「そして今日この日が…共和国最後の日として長く記憶される!」 「発射!!」 ハックス将軍の号令と共にスターキラーは巨大なレーザー光線を放った。 恍惚とした表情を浮かべて光の槍を見上げる彼の視線の遥か先で、幾つもの惑星が塵と化してゆく。 このたった一撃で新共和国の首都があるホズニアン・プライム星系は壊滅。そして一瞬の間に数え切れないほどの命が失われた。 ところで、これまた物凄くどうでも良い話なのだが、演説直後ストームトルーパー達が一斉に片腕を振り上げて賛同の意を示すシーンでは、何故か一人だけ全身を使って元気良くガッツポーズを決めているお調子者がいるので、もし機会があれば探してあげよう。 その後、カイロ・レンが惑星タコダナでレイを捕縛することに成功するも、フォースに目覚めた彼女には地図の情報を吐かせることは出来ず、レンがBB-8を回収していなかったこともあって、ファースト・オーダーは苦境に立たされる。 しかしハックスは、レジスタンスの基地がイリーニウム星系の惑星ディカーに存在することを独自に突き止めており、スターキラーで狙うことをスノークに進言して準備を開始。 「兵器の充填を始めろ!」 一方ファズマは、スターキラー基地に忍び込んだハン・ソロ達に脅迫されて、スターキラー基地を守る防衛シールドを無理矢理解除させられていた。 防衛シールドの解除でレジスタンスの戦闘機部隊が襲撃。ハックスは基地の防衛に当たる。 スターキラーのレーザーが発射されるまで後ほんの数秒という所で、レジスタンスの破壊作戦は成功し、基地は惑星ごと崩壊していく。 敗北を悟ったハックスは基地内部の中央コントロール・センターで、雪原に倒れているカイロ・レンを拾って帰投するようスノークから命を受け、基地を離脱したのだった。 この時、彼はオペレーターから「将軍が逃げ出した」と言われてしまっていたが、一応弁護しておくと、引き際を弁えてスノークに今後の方針を速やかに尋ねようと退室したのは理に適った行動であると言える。 確かに避難を指示せず一人で部屋を飛び出したら部下からそう見られても仕方ないけど。 まあ森の中で死にかけているレンを救出するほどの時間的余裕はあったので、おそらく全員脱出は完了したことであろう。 EP8 最後のジェダイ 今回はかなり序盤から登場する。 「聞こえてないのか?」 「ハーグース〜」 「聞こえてた」 スターキラー基地は破壊されてしまったものの、前作の時点でレジスタンス基地の所在地は判明しているため、艦隊を率いて惑星ディカーへと向かう。自身は旗艦のファイナライザーの艦橋に陣取って、追撃作戦の司令塔に徹する模様だ。 基地から既に逃走していたレジスタンスの船を追いかけると、レジスタンス中佐にしてエースパイロットのポー・ダメロンがファースト・オーダーに交信を求めてきた。 ここからハグス将軍ハックス将軍は劇中で小物キャラとして大っぴらに扱われるようになる。ぶっちゃけ前作ラストの時点で既に小物臭さは微かに見え始めていたが。 ポーはハックスを好き放題イジり倒した後、爆撃部隊を率いて奇襲を仕掛ける。 彼らが多大な犠牲を払って決死の覚悟で攻め立ててきたこともあり、ファースト・オーダーの軍艦ドレッドノートを陥落させられる由々しき事態に。加えて、レジスタンスの勢力がハイパースペースに飛び込んで、どこか宇宙の遠くに逃げ仰せる始末。 「ハックス将軍!」 当然これほどの失態を最高指導者スノークが許すはずもなく、ハックスの前にホログラム体として臨場。言い訳しようとする彼を容赦無く遠距離からフォースで床に捻じ伏せ、そのまま大勢の部下が見ている前で引きずり回した。 だが、文字通り例え転んでもただで起きるハックス将軍ではない。何とか身を起こしながら既に敵の尻尾は掴んであると返答する。 「決して逃しはしません…最高指導者」 彼はレジスタンスに振り切られた時に備え、部下を使ってレジスタンスの艦艇をハイパースペース・トラッカーで捕捉していた。これは相手が仮にハイパースペース・ジャンプを使ったとしても航行先を計算して特定出来るという優れ物。 このシステムは元々、帝国時代にターキン総督が創設した研究チームによって提唱された機構であり、EP4の前日譚『ローグ・ワン A STAR WARS STORY』では、主人公のジン・アーソが惑星スカリフのデータ保管庫でデス・スターの設計図を探している時、これの資料を口頭で読み上げるシーンが確認出来る。 あれから約30年余りの年月が経過して、未だ理論段階で留まっていた研究を引き継いだハックスのエンジニアチームが実用化に成功したとのこと。しかも次作では量産型のTIEファイターもこの装置を搭載して、ミレニアム・ファルコンを延々と追跡してくるのだから恐ろしい。 「レン、レジスタンスは射程外に出た。この距離では援護出来ない。艦隊に引き返せ!」 愛機のTIEサイレンサーを乗りこなし、中隊を引き連れて獅子奮迅の働きを見せていたカイロ・レンに、遊撃を一旦中止して戻ってくるようハックスはメッセージを送る。 自分を補佐する僚機が通信から即刻両方撃ち落とされてしまったこともあって、彼の言う通り分が悪いと察したのか、レンは不服そうに唸りつつも渋々その言葉に従った。 次いでハックスは戦略を変更。 逃げに転じて速力が高い敵艦に追い付けず攻撃を当てられないとしても、構わず背後から撃ち続けることで、逃がさないという姿勢をレジスタンスに示威するよう指示を出した。 このまま攻撃を避けるためにスピードを出し続ければ、先にレジスタンスの方が燃料切れを起こして身動きが取れなくなると読んで、持久戦に持ち込んだのだ。 「では息の根を止めてやれ」 ハックスの思惑通り、医療船アノダインを始めとするレジスタンスの艦隊は長時間の高速航走に耐えられず自滅していき、敵機は残す所、母船ラダス一隻のみになろうとしていた。 更に諸々の騒動を経て、レジスタンスが小型の輸送船に乗り移って惑星クレイト(*4)に逃げ込もうとしていることを知った彼は、攻撃目標をラダスから輸送船へと移行。瞬く間に次々とキャノンで沈めていった。 仲間を乗せた輸送船が何機も撃墜されているのを見過ごせなかったアミリン・ホルド提督はラダスを駆って、最高指導者スノークが乗る母艦のメガ級スター・デストロイヤーに船を向ける。 ハックスはこれを標的から目を逸らすための囮だと判断して、変わらず輸送船を狙い続けたが、それが大きな誤りだった。 「あのクルーザーを撃沈しろ!」 彼女の真意に気付いた頃には時すでに遅し。ホルド提督の命と引き換えのハイパードライブ特攻でメガ級スター・デストロイヤー(とその他随伴していた多数のリサージェント級スター・デストロイヤー)は大きなダメージを受けた。 事態の収拾を付けるため玉座の間を訪れたハックスは、そこで既に事切れていたスノークの亡骸を目の当たりにする。 傍らに気絶したカイロ・レンも横たわっているのを見て、銃を取り出して彼を始末しようとするが、その時不運にもレンが飛び起きてしまう。 ハックスは銃を隠し、何食わぬ顔で何故スノークが死んでいるのか問い質した。レンも澄ました顔で自らが討ち取った主の死をレイの仕業だと偽証する。 スノークが死んだ今、二人の関心はただ一つ… 「全兵力をレジスタンスの基地へ。一気に片を付ける」 「誰に向かって口を利いている?私の軍を指揮するつもりか?最高指導者が死んだ今支配者はもう居ない!」 「最高指導者は…私だ!」 「最高指導者…万歳……」 長きに渡る主権争いは一瞬で決着が付いた。 直接的な戦闘に関しては一般人の域を出ないハックス将軍がカイロ・レンに逆らえるはずもなく、フォース・チョーク(首絞め)で屈服させられ、彼に従うこととなる。 もしハックスが単にレンの寝込みを襲ったのなら、気配で目を覚ましてルークと同じ轍を踏んでしまった可能性が高かったことだろう。だが、メガ級スター・デストロイヤーが崩落した衝撃で体を強く打ち付けられたレンは先程まで完全に意識を失っており、言わば千載一遇の好機だったのだ。 ハックスが後もう少し早く駆け付けてさえいれば、最高指導者の椅子はもしかしたら… そのままファースト・オーダーは、レジスタンスが潜伏している惑星クレイトに進軍を開始する。レンとハックスはユプシロン級コマンド・シャトルに乗って部下達に指示を送った。 「ハックス将軍、前進だ。捕虜は無用。皆殺しにせよ」 レジスタンスを追い詰めた時、そこにルークが登場。AT-M6ウォーカー部隊による一斉射撃を浴びせるも傷一つ付けられなかったため、レンが降りてライトセーバーで雌雄を決することに。 ハックスはこれをルークの罠だと見抜き、今は誘いに乗らずに目的を優先すべきだと異を唱えようとするが、聞き入れられず殴打されてしまった。 その上「私が良しと言うまで軍を動かすな」と言い残して戦場に舞い降りたので、ハックス達には後ろから二人の戦いを見守ることしか出来ない。もっとも彼は殴り飛ばされた時にすっかり伸びていたので、眼前の光景を眺める余裕があったのかさえも疑わしいが。 その間にレジスタンスの生き残りは秘密の通路から抜け出し、レイとチューバッカの操るミレニアム・ファルコンに搭乗して宇宙へ飛び去って行った。 これハックスの言う通りにしてたら一人と一匹(?)を除いて敵を殲滅することが出来てたのでは? レンが相対していたのが、ルークがフォースの力で生み出した幻影だと判明したことを受けて、ファースト・オーダーの一行は基地の内部へと侵攻する。 もぬけの殻となっていた基地の中、カイロ・レンの入った部屋に視線を送るハックス将軍…その目は深い憎悪に満ちた物であった。 EP9 スカイウォーカーの夜明け あれから約1年ほどの月日が流れた。 「ハックス将軍、俺の新しいマスクが気になるのか?」 「いえ…お似合いです」 カイロ・レンがファースト・オーダーの最高指導者として権威を振るう一方、ハックス将軍は見る影もなく落ちぶれていた。 組織の今後の方針、及び組織の情報を漏らしているスパイについて話し合う会議が劇中で開かれたが、席次からしてハックスの地位はもはや他のファースト・オーダーの幹部達と大差無い扱いだった。前作、前々作に渡って3度も敵方に自軍への大打撃を許してしまったためか、単なるレンの嫌がらせかは定かではない。 ハックスは、帝国時代に長年にわたり軍の将校を務めた経験を持つというエンリック・プライドという名の元帥の下に左遷され、軍の指揮権も彼に奪われていた。 ハックス役のドーナル・グリーソン氏は本作のパンフレット内で今作のハックスを取り巻く涙ぐましい状況について次のように語っている。 「彼は、ナンバーワンになることに生活のすべてを捧げてきた男という印象があるからね。そんな男にとって、それに満たないことはすべてが失望に繋がるんだ」 「カイロ・レンにとって、ハックスはもはや眼中にない。カイロ・レンは、ハックスを、失うよりは簡単というだけの理由で、ただ側に置いているんだよ」 悪党ながら何とも世知辛いことだ… レンの修復したマスクにお世辞を並べたり、発言中にフォースで喋れないようにレンに口を押さえられたり、連行中のチューバッカに耳元で吠えられて固まったり、相変わらず何かと残念な描かれ方をしているハックスだったが… 最新作の重大なネタバレ ポー、フィン、チューバッカの3人はファースト・オーダーのスター・デストロイヤーに潜入中、ストームトルーパーの部隊に捕まり、処刑されることになった。そこにハックスが現れ、「自分が彼らを始末する」と部下のストームトルーパーから銃を受け取る。 ハックスの持つ銃が火を吹き、倒れたのは何と部下のトルーパー達だった。 I am the spy! 「 私がスパイだ! 」 そう…ハックス将軍こそがファースト・オーダーを裏切って密かにレジスタンスに情報を漏らしていたスパイだったのだ。 何故仮にもファースト・オーダーで将軍にまで上り詰めたハックスが組織を裏切ったのか?それはカイロ・レンが負ける姿を見たいからという実に彼らしい理由であった。 銀河の支配者になる道を鎖されたことにより、ハックスの抱いていた野心はレン個人に対する私怨へと変わっていったのだろう。彼は小物なりに意地を見せようとしたに違いない。 というか戦闘方面は全くからっきしなように思えたハックスなのだが、至近距離で不意を突いたとはいえ、3名のストームトルーパーの急所を瞬く間に撃ち抜くって意外に凄いのでは… それからハックスは偽装工作のため自分の腕を撃つようフィンに言ったが、彼は無情にもそれを無視して足を撃ち抜いた。 ハックスは多くの罪無き人々の命を奪った人物であり、フィンからしたらストームトルーパー達に非人道的な行いを強いてきた張本人の一人でもあるので、その言葉に従えないのも無理からぬ話だったと言えよう。(*5) 彼らを解き放ち、撃たれた箇所に包帯を巻いて杖をつきながら、侵入者達が逃げ出して手傷を負わせられたとプライド元帥に報告する。 しかし元帥は迷わず、そして何の躊躇も無くハックスを射殺した。ハックスがスパイであることなど彼には完全にお見通しだったようだ。 今まで散々レジスタンスを苦しめてきた宿敵の一人とは思えないほどの呆気ない最期となった。 結局のところ彼が寝返った理由は出世争いに敗れた腹いせ以外の何物でもなく、別に改心したわけでも善の心に目覚めたわけでもなかったので、当然といえば当然の末路だったのかもしれない。 命乞いする暇すらなく死を迎えたハックスは、その瞬間に一体何を思ったのか… 残念ながら本編におけるハックス将軍の出番は 以上で全て終了となる。 彼はカイロ・レンに一泡吹かせるため組織を裏切って命を落とした。 けれどもレンは最終的には、復活して新たな首魁と相成ったパルパティーン並びにファイナル・オーダーを裏切りレイと共闘したわけだ。 よってハックスがポー達を逃がした行為は、別にレンにとってマイナスにはならないどころか、むしろ間接的にはプラスにすらなっているのだ。 言ってしまえばハックスは完全に無駄死だったということになる。それを知らないままこの世を去ることが出来たというのがせめてもの救いか。 最高指導者として銀河に君臨する野望を叶えられず、憎き仇に一矢報いることすら能わず… 確かに小心な冷血漢ではあったかもしれないが、燃え盛る野心を胸に抱き、常に全力で生きてきた男が描き上げた人生の結末としてはあまりにも虚しい。 …ただ紆余曲折を経て、彼の怨敵だったカイロ・レンはレイを救うために死亡し、スカイウォーカーの直系の血筋は完全に絶えることになった。 更には指揮官の座を乗っ取った挙げ句、彼自身の命を奪った上官のプライド元帥もまた失意のままスター・デストロイヤーの爆炎に呑まれるという凄惨たる終焉を迎えたので、ある意味結果だけ見れば満足だったのではなかろうか? 何だかんだ巡り巡って、ハックスの行動は本人も意図せぬ形で憎む相手を揃って道連れにしたのである。 シークエル・トリロジー完結後、ハックス将軍を最後まで演じ切ったグリーソン氏は、「BANGショービズ」というイギリスのニュース提供会社による独占インタビューにて、 ハックスのフィギュアをコレクションしていることを明かした。当人曰くそんなに数は出回っていないらしいが。 また、グリーソン氏はスター・ウォーズファンの集いに参加することについても前向きな姿勢を見せているそうで、今後も彼のハックス将軍に対する思い入れを拝聴出来る機会があると期待したい所。 【EP9没案】 本作の原案としてクレジットされているコリン・トレボロウ監督と脚本家デレク・コノリー氏の両名は、 当初『Duel of the Fates』(直訳すると『運命の闘い』)という副題で、実際に公開された『スカイウォーカーの夜明け』とは全く異なる物語のEP9を制作する予定だったことが公表された。 2020年1月にYouTubeでリークされた脚本及びコンセプトアートが話題となり、自身のTwitterでファンから質問を受けたトレボロウ監督も本物だと認めた次第である。 ストーリーが大幅に変わっているのに伴って、ハックス将軍を待ち受ける顛末も丸っきり違うので、彼を中心に大凡の展開を記載する。 興味のある方は下記を閲覧されたし。 『Duel of the Fates』草案 物語は惑星クレイトでの攻防より年月を経てファースト・オーダーが銀河のほぼ全域の征服を完了した時点から始まる。 組織の本拠地は、かつての銀河帝国と同様に惑星コルサントに置かれており、ハックスは「最高議長」として頂点に鎮座している。 最高指導者の座に就いたカイロ・レンはというと、更なる強大な力を体得するため、今は亡き皇帝シーヴ・パルパティーンの遺言を紐解いて邂逅を果たしたトア・バリューム(*6)の導きを頼りに単独で銀河を巡っていたので、 実質的にハックスがスノーク亡き後のファースト・オーダーを牛耳っているような状態だという。 そして彼は、フォースを操る力を自分も手に入れることに執着するようになったばかりか、どこぞの別の将軍よろしくライトセーバーの収集家になっていた。このフォースへの渇望は、おそらくEP8でレンに辛酸を嘗めさせられたのが発端だと思われる。 捕らえたレジスタンスの者達を尋問すべくレンのようにフォースを使おうとするも、当然全く何も起こらず、捕虜達にすら失笑されるなど、やはり少々冴えない役回りの模様。 他方、スパイの処刑に当たってライトセーバーをギロチンのような形で用いる残虐な一面を見せていたり、助力を求めたレンから信念の無さを指摘されたことで一念発起するという意外な場面も見られた。 苦闘の末レジスタンスは、ファースト・オーダーの工場からスター・デストロイヤーを始めとする様々な兵器や武器を奪った後、 フィン達の懸命な努力によって自身の在り方に苦悩するストームトルーパー達を味方に付けることに成功し、虐げられていた下層市民達も交えて反乱を起こす。 ハックスは残存兵力を投入して、これに応戦する。直にファースト・オーダーが優勢となるが、そこでランド・カルリジアン率いる援軍がレジスタンスに加勢したことで形勢逆転。 レイとカイロ・レンがモーティス(*7)の森で決着を付けようとしていた、ちょうどその頃、追い詰められて観念したハックスは、集めていた1本のライトセーバーで自ら命を断つという壮絶な最期を遂げるのだった。 …以上がリークされたEP9の初期案である。 大人の事情で実現には至らなかったものの、もしかしたらありえたかもしれないハックス将軍のもう一つの未来と言えるのではないだろうか。 コンセプトアートでは、議長室に一人、崩壊する惑星コルサントの都市を背にして、己の胸に真紅の刃(*8)を突き立てる因果応報なれど、どこか切ないハックスの姿が映し出されていた。 ごく短期間ながら銀河の支配者に近しい存在となれた世界のハックス将軍も、最後まで心なしか憐れでありながら、しかし全力で己が野望に生きる男であったようだ。 「気を付けろレン。個人的な興味を指導者の追記・修正より優先させるな」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 7の終盤でスノークのホログラム室に駆け込んで来る時の走り方が小物丸出しで見る度ジワる。俳優さんの演技力すげえ -- 名無しさん (2020-01-10 00 28 34) まあ偉そうに顎で使ってきてたプライド将軍には最終的に一矢報いられたと言えなくもない -- 名無しさん (2020-01-10 00 31 11) 歴代の敵幹部だとガンレイやクレニック長官に負けず劣らず見てて色々不憫になってくる。もちろん3人とも悪事働いてるから因果応報だけど -- 名無しさん (2020-01-10 00 50 20) 新作での地位と犬死ぶり見てると7終盤で基地ごと爆死するか8終盤でカイロレンに締め殺されてた方がまだ幸せだったかもしれんな。 -- 名無しさん (2020-01-10 01 54 26) SWは完全に死亡確認されない限り胴体真っ二つにされても話の都合のために生還してたことになるし、「腹を撃たれて倒れてフェードアウト」程度じゃ死んだとは信じられない…時系列上の続編でサイボーグ化して生きてても驚かない -- 名無しさん (2020-01-10 01 58 12) ↑生きてたら生きてたで結局レンに仕返ししようとしてやったことが何も意味無かったって知るわけだから結局ビミョーな気が… -- 名無しさん (2020-01-10 02 03 47) ↑↑一応ライトセイバーで斬られた場合出血しないんだから当たり所によっちゃ死なないからモールに関しちゃ筋は通ると思ったんだけどなあ -- 名無しさん (2020-01-10 07 37 09) カイロハックスファズマが悪役として中途半端だったせいでわかりやすい悪役のプライドを登場させたって感じだよな EP9 そういった安直さが非難の的だったりする -- 名無しさん (2020-01-10 07 38 44) スターキラー基地の演説シーンはナチのプロパガンダとして知られる『意志の勝利』をモデルにしたらしい。 -- 名無しさん (2020-01-10 07 52 29) EP7,EP8共にカイロやファズマより遥かに真面目に仕事してたな。結局失敗に終わるのはあれだけど -- 名無しさん (2020-01-10 08 39 49) 旧三部作で言えば、ターキンにもピエットにもなれなかった微妙な中間管理職といったところか -- 名無しさん (2020-01-10 08 44 19) ↑4ハックスにはプライド元帥を上手く陥れて指揮権を奪い返すくらいは意地見せて欲しかったな、最後まで元帥はぽっと出過ぎて愛着湧かなかったし。 -- 名無しさん (2020-01-10 08 55 25) ファーストオーダーの人材不足は異常 -- 名無しさん (2020-01-10 16 52 33) このネタキャラっぷりそんな嫌いじゃない -- 名無しさん (2020-01-10 16 59 49) 本人は絶対に納得行かないだろうけど年齢と経験考えると本来は9の時みたいなポジションで経験積んでって、10年後20年後に司令官になるくらいが妥当だったよね -- 名無しさん (2020-01-10 17 15 05) ↑×3そもそもスノークに次ぐ地位にいるのが若造2人(俺よりは年上だけど)ってのが全く意味不明だった -- 名無しさん (2020-01-10 18 12 15) ↑設定的にはカイロ:数少ないダークサイドの使い手だからハックス:父親のを改良してより効率的なストームトルーパーの育成法を開発したからとなっている。そもそも古い将軍は反乱軍に敗北してるわけだから若いので固めるというのは分からないでもない。 -- 名無しさん (2020-01-10 19 18 21) ↑結局最終的に帝国時代の老人たちに主権を奪われたのは皮肉だな。 -- 名無しさん (2020-01-10 20 26 40) 未熟なカイロ・レンと若造のハックスしか人がいなかったって辺りがファーストオーダーの人材不足を感じさせる、残党なんだから仕方ないが…それでもレンは戦闘能力と操縦技術は頭一つ抜けてたしハックスも指揮は悪くはなかった -- 名無しさん (2020-01-10 20 43 07) 一時期ハックスも実はターキンの孫という設定で、祖父に憧れてるけど未熟だから中々祖父ほど上手く行かない〜みたいなキャラかと勝手に思ってた -- 名無しさん (2020-01-10 21 30 33) ある意味ベン・ソロ闇墜ちによる被害者 -- 名無しさん (2020-01-10 23 10 02) もしかして古参の有能な人材はファイナル・オーダーが先に引き抜きしてたからファースト・オーダーがあの人材不足っぷりだったのでは?(名推理) -- 名無しさん (2020-01-11 01 32 39) レンくんもハグス将軍も育てれば将来有望な人材ではあったんだけどなぁ -- 名無しさん (2020-01-11 01 44 27) 全盛期の帝国だとベイダーですら実質3番手で他の幹部から面と向かってボロクソ言われるような立場だったのにな(フォースで黙らせたけど) -- 名無しさん (2020-01-11 09 11 30) 「反乱者たち」ではカラスがベイダーに初めて会った時、誰だこいつ?みたいな反応してたからそこまで知られてなかったというのもあるんだろうけどね…… -- 名無しさん (2020-01-11 09 22 07) 死後はウィーズリー家の長男として生まれ変わって美人な奥さんもらってるぞ -- 名無しさん (2020-01-11 22 50 01) ほいほい艦隊くれるような連中を信用できるかよという至極真っ当な意見を言ったのに粛清された幹部の人は可哀想だった -- 名無しさん (2020-01-11 23 14 14) ↑あ、あれはカイロくんが幹部さんをリラックスさせてあげようとフォースで高い高いしただけだから…。 -- 名無しさん (2020-01-11 23 19 28) ↑2ハックスに裏切られたのもそうだが、ベン・ソロになった直後にレンプルナイツ(雑造語)が驚く風もなく淡々と襲い掛かってきたあたり、本当に元から人望ゼロだったのが分かって涙出た。あの調子じゃ仕方ないけど -- 名無しさん (2020-01-11 23 33 52) ベイダーは粛清するにしても無能だったりフォースを侮辱したりで理由はあったからな。レン君は正論言われて反論できないから実力行使って感じで小物感が... -- 名無しさん (2020-01-11 23 58 27) 最後のジェダイに出てきたトラッカーは追跡装置というより、敵船がハイパースペースに突入する直前の航跡を詳細に記録してそこからジャンプ先を算出する装置じゃなかったっけ -- 名無しさん (2020-01-12 00 09 24) ↑ごめん。確かに省略しすぎて誤解させる書き方だった。だから補足説明入れて書き直した。 -- 名無しさん (2020-01-12 01 40 18) 正直レンより好き。未熟ながらも芯が通ってるからかな。 -- 名無しさん (2020-01-12 01 54 11) 実質的に多くの星とそこに住む人々を宇宙の藻屑にしたのにどこか憎めないミスターKOMONO -- 名無しさん (2020-01-12 08 23 16) 非正史のレジェンズでも良いからモールみたいにしぶとく生き延びてて欲しい。 -- 名無しさん (2020-01-12 19 14 22) 小物界の中では将来性こそ秘めているものの結局大物には慣れなさそうな器。 -- 名無しさん (2020-01-15 00 17 38) 死んだと見せかけつつ地球のド田舎に逃げ延びて鬼畜うさぎとバトルする日々を送ってるんだろ?知ってる -- 名無しさん (2020-01-18 02 33 47) デマの可能性もあるがトレボロウ監督の原案したスカイウォーカーの夜明けだとハックスがコルサントを支配する予定だったらしい。そこに主人公サイドがスターデストロイヤーをハイジャックして奇襲仕掛けるんだと。 -- 名無しさん (2020-01-18 18 52 59) ↑9会議で「奴らは見返り求めてないんですか?」って聞いてきた幹部にカイロがキレてたのは見返りがレイ殺害だからかと思ってたわ。惑星キジーミごと例のスカベンジャー女ぶっ殺しましょう!って提案してたハックスのことも黙らせてたし -- 名無しさん (2020-01-20 01 14 09) ↑に続いて連投失礼。まあどっちにしろ痛い所突かれて実力行使ってのは変わらんけど -- 名無しさん (2020-01-20 01 14 58) スノークの部屋でカイロレンの始末に成功して最高指導者ハックスになってたらその後銀河はどうなってたんだろうか? -- 名無しさん (2020-01-27 21 45 05) 裏切る動機自体は納得行ったけど死に方が雑過ぎと感じたな…EP9初期案見た後だと尚の事。そりゃそこまで重要なキャラではないからと言われたらそこまでだが… -- 名無しさん (2020-02-13 23 23 15) ネタキャラとしても悪役としても中途半端なんだよな。完全にギャグに振り切ってくれたらこっちもそういうキャラとして見れたのに -- 名無しさん (2020-02-14 21 01 39) ↑英語の読み間違いの部分もあるかもしれないが、降板前の監督のリーク原案見る限りだと、情けない小物なりに最後の最後まで死にもの狂いで足掻いて根性見せるっていう今までのSW本編にはあまり無かったようなボスキャラになる余地がハックスにあったみたいでそこは心残りなんだよな。実際に公開されたEP9のシナリオを否定するわけではないが -- 名無しさん (2020-02-14 21 28 32) あの退場ぶりだと密かに生存して微妙な悪巧みしてるというダース・モールさんルートも充分ありうる。 -- 名無しさん (2020-02-15 05 59 22) 二度続けてすまない。↑↑泥臭く抵抗した後の死亡シーンで没脚本に"He lost the star wars"って下線付きで強調されてまで記載されてたの笑ったわ。レンくんに信念が無いと指摘されて決意を改める場面もあるみたいだし敵側の準主役みたいな扱いじゃんって。 -- 名無しさん (2020-02-15 06 03 44) むしろ速攻看破して処刑したプライド元帥に「なにこの人(帝国軍人なのに)有能!」って感激した(笑) -- 名無しさん (2020-04-18 02 58 14) このキャラを特別好きなわけでもなかったが、実は生きててこの後裏でプライド将軍相手に悪あがきしたりするのではないかと期待するほどには愛着があったようだ -- 名無しさん (2020-04-20 16 20 15) 生存して続編でチョイ役で出てくれたら個人的に嬉しい。 -- 名無しさん (2020-12-28 09 40 11) ↑9まあクレイトの戦いで足引っ張るレンがいないから、無事レジスタンスをほぼ根絶やしにしてファーストオーダーが天下取るんだろうけど、ハックスにそれほど人望があるとは思えないし、数年か下手したら数ヶ月で部下の裏切りに遭ってそう -- 名無しさん (2021-01-22 13 06 38) 絶妙な小物感がでてるキャラクター性は普通に好きだった。それでいて無能ではないという。アクバー提督やラックスのような有能な指揮官の元で経験を積んでたらどうなってたのか妄想させられる。 -- 名無しさん (2022-06-28 23 46 19) 今になって思えば当初想定されていたトレボロウ案のEP9のハックスの活躍を見てみたい気もしなくはない。 -- 名無しさん (2023-04-20 10 16 47) 名前 コメント
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ドルジの笑顔に癒されました -- (名無しさん) 2008-12-26 10 52 31 * ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※ ※ ☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ * * ※ ☆ ※ =⊂⊃=⊂⊃= ※ ☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※☆ ☆※ ※ ☆ ※ * 優勝きたお!! * ※. ヤルオ━━━(__人__)━━━オヤ !!!!※ * * ※ ☆ ※ ※☆ | | .☆※ ※☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※☆ヽ_/☆※ ※☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※ ※ ☆ ※ * * ※ ☆ ※ ※ ☆ ※ * 仮設寸評地 (行数オーバーの為以前のを消すか、此処を潰すか、行数減らすか検討中) +第14回寸評 , 第14回ペナント、セ・リーグ2位 89勝51敗0分 勝率.635 もう駄目かもしれない。千載一遇のチャンスを逃した。まぁ出来れば全盛期の強敵達を倒したい選手が多いだろうから 強くて良かった。 前回寸評とここまで同じ(゚∀゚) 広島を含めセ4球団にきっちり対応出来たが、王者中日に負け越した。 前半首位で折り返したが、最後にその差が出たのだろう。 投手から。 キン肉まんマン選手は衰えを感じるやいなやベンチで堂々と禁止薬物を使用、先発が二人しか居なかった時からの同僚Dammit選手が止めに入るが 逆水平チョップ→掴み→赤川選手のロッカーへ投げ→意味の無い喧嘩キックで活躍中の若手バットオ選手のロッカー破壊→赤川ロッカーに食い込んだDammit選手へ薬を含んだ毒霧攻撃→禁止薬物をデスギモト選手のロッカーへ という完璧なコンボを決め例年通りの高勝率をマーク。 成人漫画家の砂画伯を敬愛するDammit選手も衰えと闘いながらシーズンを過ごす。シーズン序盤、同僚肉マンまん選手に暴行を受けて一時は現役を危ぶまれたが、その時掛けられた薬により例年通りのタフなピッチングでシーズンを過ごす。「アイツ…もしかしてわざと…」こう呟きながらシーズンを終えた。 デスギモト選手も衰退期の影響で登板回数が減ったが彼のピッチングスタイルから予想した通りの好成績をあげた。理由を尋ねた所、「神様が僕に勇気というプレゼントをくれたのさ」と発言。禁止薬物を使ったのは間違いないだろう。素晴らしいピッチングだった。 世界のエース赤川選手は序盤好調でAS豪遊後不調というパターンに近かったものの、セを代表するに相応しい防御率・勝率・奪三振数をあげた。 シーズン序盤に壊れたロッカーを泣きながら修理する姿がチームメイトに目撃されている。何故かバットオ選手のロッカーも直してあげたらしい。 超新星バットオ選手は正直たまたまじゃないかと思われた1年目の成績を更に伸ばして誰もが驚くようなピッチングを披露した。 ただ、問題が無いわけでもない。ロッカールームにて野獣の様な瞳で同僚を見詰める彼の影響か、最近選手達はバスタオルを巻いて着替えをする様になり総練習時間が減少、ツインターボ選手に至ってはシーズン途中で調子を崩す事態に。 ベテランの域に入りつつあるwMr.チアソンは序盤に入団当初期待していた通りのピッチング、一皮剥けたかと思いきや終盤に中継ぎ負担増の影響から失速。来期も辛い査定となりそうで、オバマ新政権に移行しても世界経済の状況はまったく改善しないと予測される。 勝利の方程式、逃亡者ツインターボ号は1年目に近い成績で不調のシーズンとなった。原因はバットオ選手とも言われているが実の所は蹄鉄である。 彼の素晴らしいスタートダッシュは装蹄師の隆幸さんによって支えられていた。だがその隆幸さんがシーズン中一時危篤状態となり、磨り減った古い蹄鉄使用を余儀なくされたツインターボ号はそのままズルズルと後退していった。その後隆幸さんは無事回復して来期からはしっかりサポート出来るとの事…良かった。 横浜三人娘の聖天使猫姫様は今シーズンも期待された通りの勝利を呼び込むピッチング。後半に他の中継ぎ陣同様疲れが出たものの前年同様に今期の序盤で見せた輝きは今後を期待させるに十分な材料だろう。個人的に来期が非常に期待出来る投手だ。 シーズン同様投手陣のとりを勤めるくるーん選手は前半パーフェクトリリーフを披露し無傷のまま折り返した。NOTクルンゴww。シーズン記録男の力を遺憾なく発揮、ASにも出場し子供達にクルンゴwwwをお披露目、シーズン後半も圧巻の守護神振りで最多救援を獲得。衰退期などこの男には関係無いのか… 野手。 銭のカリスマだったその昔、歌舞伎町で愛すら買えると信じきっていた若者東出君だが 中年になった最近では銭じゃ買えなかった愛を得る為女性に優しく接する様になった。だが打率という名の女性からは見捨てられたシーズンに。 落ち込んでいた彼に誰かが言った。「鳥がなぜあの美しい空を飛べるか知ってるかい?」 東出君は答えた「金ーっ、金ッ!金ーーーッ」 東出君に語り掛けた男は泣きながら、優しく諭す様にこう言った。「それはね…自分が飛べると信じて疑わないからだ。俺は飛べる。あの高い高い空を。 自分を信じられなくなった瞬間、鳥は地に堕ち、美しかったあの空へ帰る事は出来なくなるだろう…」 その言葉を聞いた東出君が叫んだ。「来期、特能買う!!」 アルルちゃんには似合わない衰退期という状態に入った今シーズン、アルルちゃんをいつも助けてくれた魔術師(彼氏?)により闘気をGET! 序盤は.340以上をマークしASにも出場、シーズン終了時も.326という素晴らしい打率、45盗塁で見事2回目の盗塁王に。衰退期を見事撃破!したアルルちゃんなのであった。アルルちゃんが嬉しいとチームみんな嬉しい( ^ω^) ざんげちゃんごめんなさい。休日に遠出なんて似つかわしくない行動して更新遅れてごめんなさい。日本一遠くてごめんあさい…もっとつねって!バットオ選手が!バットオ選手がアッー! 成績面をば。衰退期入っても三振数が少ないままだなんて…神秘的過ぎます。盗塁数も中々。マシンガンを支え続けてくれるハマの神様(巨匠)に感謝。 シーズン中WBCに追加召集されるんじゃないかとドキドキ過した大介だが、チーム本塁打シーズン記録を持つハマの4番に(リアルでも有り得るで)相応しい成績で序盤は例年通り驚愕の成績、近年の傾向どおり後半やや落ちたが、そんなところが投手の赤川選手に似ている。そしてタイトルゲット出来る凄さも似ているw余裕の打点王GET!!本塁打はおしかった…最近、製作者が巨人の中井大介本人なんじゃないかという噂が立っている。 ヤシガニ作画すらこよなく愛す四方選手だが今期はアニメの不作っぷりに激怒してその研ぎ澄まされた集中力を野球に注ぎ込んだ。 すると、入団当初からこの男はタイトルを取るんじゃないかと予測していた通りの活躍。3割30本100打点をクリアしポテンシャルの高さを再び示した。打率に至っては隠れ特能マシンガンマニアを発動し.340という驚異的な数字を叩き出した。年俸も随分伸びると予測される彼だがAT-Xの値上げに難色を示しており、金銭に関しても横浜色に染まってしまった選手である。 正直バルパンの成績を期待せず大して気にもしていなかった今期。バルパンサー君は頑張ったよ!横浜初期の様にチヤホヤして欲しいみたいだよ! でもエラー数多いのは残念過ぎる。もっと頑張れバルパンサー!死力を振り絞るんだ! 昨シーズン「そんなスローな南斗聖拳では俺は殺せん」と6さいちゃんに言われ意気消沈したまま今期に臨んだジャギ君、凡打をしてベンチに戻って来る度、小声で「俺は北斗神拳の伝承者ジャギ様よぅ…」と呟く事が多くなった。結局は中々の成績を納めシーズンを終えた彼だがそのスジの関係者筋によると、ジャギ君とバットオ選手が入っていたシャワールームから「そんなものを刺されると…」という呻き声が聞こえてきたらしい… フランス国内でヴァンダム主演の映画が放送される度、笑い者にされているらしいヴァンダムの子供に同情した6さいちゃんは極限まで高めたマッスルの次に打撃の技術力を鍛え始めた。ヴァンダム体型を維持している自分が活躍する事で少しでもヴァンダムの地位向上に貢献しようという32歳の6さいちゃんらしい行動に出たのだ。だが6さいちゃんはフランス国内での野球知名度を知らない様である…今も幼児用パンツを穿く6さいちゃんに敬礼!!打点ランキングの常連にもなってきた。 若返られた事実も日常風景に溶け込んできたたら神は弱冠苦しんでおられる。みんなのタラレバパワーが落ちてきた事が原因だ。近年は定位置に居た頃より実現可能な位置に付けるも、「~だったら」「~れば」という感情が湧き上がらないほどの強さを見せ付けられ敗退。 こんな時こそハマを支え続けるたら神は力を発揮しようと焦っておられる。我らの為に…なんと健気な神様であろうか。 皆に小さな希望が生まれ、タラレバパワーが少しづつ強くなった時、たら神は大成長を遂げるであろう… たった一度でいい…日本一に成れます様に…(-人-) 80勝じゃ無理ならば90勝、100勝してやるつもりで来期を戦おう。 このチームにはその可能性がある筈だ。 前回寸評とここまで同じ(゚∀゚) ひゃ・・・ひゃ・・・ひゃくしょう 今期駄目だった場合は今のベテラン選手の代での日本一は諦めた方が良いように思える。可能性が無いわけじゃないとは思うが 同時に一つの考え方として、4位以下に移籍した場合は能力がアップする可能性、ダウンはしません。とある様に ベテラン達は他チームへ行き能力アップを図って選手生命を延ばす方向も考えられる。 衰退期に入ったが通算の記録が掛かってる選手は尚更その方が良い様にも感じる・・・ 勿論横浜に残ってくれたら手厚く葬ろうww あばば球界を自由に渡り歩く際、日本一になって 前回1位の球団から前回4位以下の球団に移籍した場合は能力がアップします。ダウンはしません。 という絶対状況の方が選手達に優しい状況ではあるが…。 とにかく来期は今迄と同じく強い敵がいるほど燃える精神 を滾らせよう +第15回寸評 , 第15回ペナント、セ・リーグ4位 67勝70敗3分 勝率.489 久々の定位置GET (゜∀´)bグッ 乱戦模様となった第15回、中日・広島・阪神が激闘を繰り広げた。 そして最後に抜け出したのは広島だった。おめでとう。 我が横浜も頑張ったが一時期の勢いはもう無かった。 だが慣れ親しんだ位置だ、ゆっくりしようw 投手から。 肉まんマン・ザ・グレート選手は衰え知らずで15勝を上げた。近年に入り勝率が高いのも相変わらずだ。 Dammit選手、赤川選手同様200勝が達成出来る勢い。だが法廷での争いは苦戦を強いられている模様。 Dammit選手は10勝10敗と若い頃の肉まんマン選手に似た成績で若さをアピール。今期は横浜の先発が誰だろうと当てて来られる傾向にあったが、王者や阪神を完投で返り討ちにする場面を見た。試合終了後に肉まんマン選手と密談している様子がチームメイトによって目撃されている。 修理屋赤川選手は弱冠衰えを感じさせたものの、防御率・勝利数・奪三振ともに一流と呼べる成績だった。 だが新たに手に入れた特能低め○に対して、かつてのダイソン社長同様に疑問を抱き始めた彼だった… 先発に再デビューをしたMr.チアソンは序盤に彼自身が体験した悪夢を彷彿とさせる状況に。 だが成長した彼は前期終盤完封を含める2勝をあげ、後半は勝ち数を伸ばし防御率も改善させた。 移籍予定であるが新天地で大きくなって(特に年俸面を)逞しい姿を我々に見せて欲しい。 花言葉が大好きなバットオ選手も前期苦しんだ。3年目に入り手の内を読まれたのか重いスローボールも打ち込まれる場面が目立った。 悩んだ彼は恋女房のジャギ君に相談。夜な夜な大事なミーティングを重ね後半はバットオ選手らしいピッチングを取り戻した。 蹄鉄師も復帰し完全に復調すると思われたツインターボ選手だったが意気込みすぎてシーズン前からスタートダッシュ その結果栗東でのトレーニングに失敗しスタミナ不足ぎみのシーズンを送った。足場は整っているのでスタートさえ決めれば来期以降安心だろう。 今シーズン、球団と「ネトゲは一日5時間まで」という約束を交わした聖天使猫姫様は球速の伸びも著しく、順調と呼べるシーズンを送ったように思う。だが他の投手達が若い頃に見せる爆発的なシーズンというものはまだ経験していないだろう。その点を踏まえた上で例年の成績を見てみると高い期待を抱いてしまう投手である。 今期から久し振りの中継ぎに回ってもらったデスギモト兼任投手は緩い変化球中心の老獪なピッチングで打者を翻弄。 中継ぎの格として大貢献してくれた。最近ではデス杉本投手と呼ばれても振り向かず、デキ杉君と呼ぶと照れながら振り返る。 守護神くるーん選手にとって、またしても登板機会の少ない試合が多くなった。シーズン終盤まで20に満たないセーブ数(17くらい)だったが 残り10試合ほどで立て続けにセーブを記録、23セーブを記録した。来期こそ、通算記録も期待されるくるーん選手に良い場面で数多く回し 何発もの綺麗な花火を眺めたいと願う吉宗だった。 野手。 今年AHを買って挑んだスピードマイスター東出君、盗塁王はおしくも届かなかったものの全盛期を思い出させる走り 打率も向上させ良い働きをしてくれた。銭闘力の火が衰えていない事に加え、追加特能での可能性を十分残している状態だ。 アルルちゃんも数字上の年齢は中年に差し掛かっているがw変わらず元気な姿を見せてくれた。アルル・ナジャちゃんという名前が 以前から記憶の何かを刺激し続けていたのだが、最近判明した。専用MSはアール・ジャジャで決まりだろう。昨年盗塁王を取ったアルルちゃんだがアルルちゃん平均と言える28個の盗塁を記録し、来シーズンもまだまだ狙えそうである。 ざんげちゃん凄過ぎwww.372でぶっちぎりの首位打者。低迷する横浜を明るく照らしてくれた。打点も100打点をクリアし最も輝いた打者と言っていいだろう。一時期敬遠されたミート多様を装着するという先見性の高さも光る。さすが神様の一人だ。 バルパンサー君が頑張った。泣いた。笑った。そろそろ反動でグッと成績が落ちそうな気がする。 大田泰示が気になってしょうがない中井大介選手は今期も本塁打2位、打点2位といつもと変わらぬナイスラッガー。 スラッガーであり続ける彼は通算記録をどこまで伸ばせるのか非常に楽しみな存在だ。 「不規則に再放送中」本放送の時最終回だけ見逃したのだ。 うろ覚えのみなみけおかえりOPを口ずさんではわからない部分でハニカム四方二三矢選手は選手近影からもわかるように似合いそうなぬこ口習得に励んでいる。研ぎ澄まされた集中力をぬこ口固定に振り向け過ぎてバッティングセンスの塊だった彼としては不調のシーズンを過した。 視聴する番組とぬこ口も定まってきた彼は来期に異次元の集中力を見せてくれるに違いない。 6さいちゃんは今期もHR30本近く100打点近い数字を残し他所に行ったら即主軸の活躍をしてくれている。ユニフォームが試合中に破れる事もしばしば。是非とも場外HRをかっ飛ばす6さい児を見たいのだが、その為にも来期は主軸で爆発的な数字を残して欲しい。 他の衰退者に比べ爆発的な勢いで老化を進行させているジャギ君だが、ベテラン的には疲れるであろう終盤に大活躍していた。 ランナーが溜った所での一発が多いのは若い頃と同じだ。NARUTO的な老化を防ぐ方法はないものだろうか…と考えてるらしい。 野手で肉体が一番若いたら神は大打者への進化を加速させている。今シーズンそれを強く感じたので、新たな肉体との相性の良さに一安心しておられるだろう。良かった。横浜が定位置に沈みタラレバを求める力が増したのも要因の一つだろう… まさかの日本一があったりしちゃったりなんかしますように…(-人-) 久し振りに借金生活となった今期はみんなも辛かっただろう。 だがしかし、チャンスは必ず訪れる と思い込んでみよう。 ほ~ら、少しワクワクしてきた?グヘヘ… とりあえず数年は茶を飲みながらまったり横浜になろう。 何か意味の無い事を呟くように吐き捨ててれば不思議ゾーンが完成するはずだ。 別の意味で恐れられる球団になるのもいいかもしれない。 +第16回寸評 日本シリーズ , 第16回ペナント、セ・リーグ優勝 94勝44敗2分 勝率.681 横浜優勝が、、、、、キタ―――(゚∀゚)―――!! 久々の定位置が続くんじゃないかと思ってたが、まさかの優勝。 選手達が最後の力を振り絞ったようだ。 そして日シリでは悲願の初日本一に輝いた!! 投手から。 セ界超人肉まんマン選手 防率3.10 13勝7敗 どんな薬を打ってるのか想像し難いほどの成績。被本塁打の少なさはセ界一だろう。対中日戦でも完封勝利する等超人を冠するに相応しい活躍。 最近は有名MLB選手とも交流があるらしくDammit選手に英語を教わっているらしい。 Dammit選手 防率3.42 14勝7敗 今シーズンは久し振りに200イニング近くを投げ、防御率・勝率共に全盛期を思い出させるピッチング。衰退期に入ってる筈なのにスペックが衰えない。制球・スタミナ・変化球のキレ、これらを見てると年齢が解らなくなる。だが今期、とうとう肉まんマン選手とは法廷仲間に…2本柱の力が法廷で通用するのか気になるところ。 赤川選手 防率2.84 16勝5敗 ロッカールームの番人赤川選手は悪魔超人肉まんマンの誘惑を頑なに拒否。日夜ロッカールームを見張り仲間達が陥れられるのを防いでいる。 全ての成績がセ界TOPクラスだが、中でも奪三率・与四死率は群を抜いている。奪三振王はおしくも届かなかった。 バットオ選手 防率3.93 10勝4敗 威圧感一本にてベテラン揃いのあばば球界で初年度からここまでやれているバットオ選手。相当な威圧感なんだろう。どんな威圧感なのか? ただの威圧感ではないはずだ。いやある意味、タダノ威圧感なんだろう。投球回数もどんどん伸びてきている、スローカーブという最近では人気の無い球種でどこまでの選手に成長するのか楽しみである。阪神戦での完封試合が凄かった。 がんばれ中継労働課選手 防率2.24 16勝3敗 今シーズン、広島からの移籍で横浜に加わった前年度優勝経験者。まずその速球に驚いた。その剛速球とH系変化球を駆使しつつ、速球中心の投球術を展開する。力で捻じ伏せるタイプの王道を行くPだ。序盤に相手チームがエースをぶつけて来たが1対0の完封勝ちを納めた時は痺れたw 最優秀防御率・最多勝を獲得。ASMVPも獲得。追加情報:投手MVP、ベストナイン獲得。 ツインターボ選手 防率3.98 10勝4敗2S まさに馬車馬の働きをしてくれた。いや、馬車の馬は勤まらない性格であろう事は解っている。最後まで勝ち進めたのはツインターボ選手の名前のおかげだろう。勿論成績面でも大貢献してくれたw以前の好調さを取り戻した原因の一つとしてブリンカーがある。まったり逃げる事が出来た彼は終盤焦る事無く冷静なPをしてくれた。勝利の方程式Pだ。 聖天使猫姫選手 防率4.34 8勝9敗8S 中継ぎとして登板後くるーん選手の状態が悪い時などそのままロングリリーフ。横浜の終盤をツインターボ選手とは別の形で支えてくれた。 今シーズン負け数はやや多くなったが、クイック○のみでこの好成績を収めている彼女に感謝。 くるーん選手 防率5.60 0勝2敗30S クルンゴwwwあばば球界歴代記録に並ぶ4度目の最多セーブをGET!!!防御率は寂しい数字となったが失敗はたったの2回。30もの試合で勝利を確定させ、強豪犇くセ・リーグでの優勝を支えてくれた。やはり接戦となる試合は阪神・中日との試合が多かっただけに30という数字以上の重みがある。 とにかくうちの先発達は5人共、大事なシーズン後半に完封勝ちが多かった。阪神や中日、広島相手に次から次と完封試合を記録して、疲労がピークにきてた中継ぎ陣を甦らせた。これがとても大きかった。中継ぎ陣が今シーズン好調さを取り戻してくれたのも優勝の要因だ。くるーん選手は劇的なクルンゴwwで和ませてくれた。そしてリーグ優勝を決めた時、マウンドを締めくくったのも彼だ。 野手。 財布が寒くなったが成績がHOTになった東出君w不動の1番として支え続けてくれた彼が1番に居る時に優勝出来たのはほんと嬉しい。 盗塁数はさすがに減って来てしまったものの、盗塁と鉄壁の堅守と200本安打以上の打撃で大貢献してくれた。まだ伸びしろが有りそうな彼、是非ともトイチで金銭融資したい。 アルルちゃんやったお!!応援し続けてくれたアルルちゃんに優勝をプレゼント出来たぜ!!!!!まぁアルルちゃん自身が大貢献してくれてるおかげなんだけどw今期も4割近い出塁率で中軸各打者に良い形で繋いでくれた。横浜不動の二遊間コンビ東出君、アルルちゃんが相手チームに切り込んで行ってくれた事がとても大きい。失策は鉄壁アルルちゃんにしては寂しい数字となったが一番難しい遊撃手なので仕方ない。カワユス大賞もあげるで!!!死球の多さに激怒した我々は来期相手チーム主軸へのスナイポを開始する。東出君の死球の少なさも気になるがwたら神の0は当然だろう。 ざんげちゃんスゴスwww2年連続首位打者にはおしくも届かなかったが.352という脅威の打率。またしても100打点クリア!!! 三振についてのコメントは本人に厭きられてるかも知れないが触れざるおえない少なさ!年俸大幅アップを要求する。 ざんげちゃんごめんなさい朝に時間を合わす為でもあったけど飲んで帰ってきたら朝までそのままバタンキューしてました…もっとパワフルな人間を目指します。駄目人間でごめんなさい。 バルパンサー君が駆けた。守った。大地を走った。みんなにナデナデして欲しかったからみたいだ。 みんなと共に大洋戦隊を名乗る事が出来そうだ。 人気劇団中井大介かずんど選手はドラフトに現れた大田も気にする事無くストイックに日々の練習に取り組み、チーム内で最多の本塁打をマーク。 清原と同じく格闘家デビューすら噂される彼だが、まだまだ超一流の成績を叩き出す。巨人から移籍して来て現在一塁を守る大介選手が、リアル横浜が優勝した際一塁を守っていた駒田とかぶる。赤ちゃん問題はかぶらないで欲しい。 前回寸評で予想した通り驚異的な集中力を披露してマシンガンを形作ってくれた四方二三矢選手。やはり以前の不調は新番組が始まる時期的な問題だったのだ。3割30本100打点には打点のみ足りなかったが脅威の死球数も記録しチーム内で最高出塁率をマーク。当たる寸前までボールを見てしまう集中力が原因との噂。とにかく四方選手達が来てからマシンガンは形作られた。その事を改めて認識させる活躍だった。 6さいちゃんは近年の本塁打・打点数からすると寂しい数字となったがしっかりと貢献してくれた。これだけ強力な打者がラインナップに含まれて居なければ優勝は絶対になかった。特能の影響もあってか試合終盤に活躍してくれた事が本当に大きい。イギリスのスピード社に頼んで絶対破れない虹色パンツを贈呈したい。 ジャギ君が一踏ん張りしてくれた。送球○も手に入れ土台をしっかり支えてくれた。打率・本塁打・打点もジャギ君が頭角を現した頃に近い数字を残し、北斗神拳伝承者であるプライドを示した。やはりこの男の踏ん張りがあったから優勝出来たのだ。プライベート面での充実も彼を支えたようだ。バットオ選手に感謝せねば…。老化を防ぐ秘孔は未だ見付からずw 去年祈願した願いをたら神が叶えてくれた!肉体的にも。まだ成長途中のたら神であられるが、現在の肉体で出来る最大限の努力をしてくださった。 何より大きかったのが精神面での支えだ。新たに二つ目の神社が横浜駅構内に作られるほど神力を高められているたら神がここに来てのまさかの優勝の為に必要な最後の一押しをしてくださったのは間違いない。 ありがたや~、ありがたや~…(-人-) 衰えてなお高いチーム打率.302、チーム本塁打200本以上、どこからでも取れる得点力 ライバル球団も強かったが、勝つべくして勝てたといってよい数字だろう。チームのみんなには誇ってもらいたい。 予想してた人もいるかも知れないが、自分的にはまさかのリーグ優勝となった今期。 チームのみんなが頑張ってくれた。シーズン終わってのゲーム差からすると完勝と呼べるが、チーム打率・チーム防御率・チーム得点率は 阪神・中日・横浜と3チーム変わらなかった。その他の数字だと負けていたりする。 このゲーム差を作れたのは頑張るベテラン、成長する若手、新たに加わった仲間、これら歯車の噛み合わせが一番良かったのが横浜なのだろう。 We Are 3 Time Champion!!! ドカハマ・日本シリーズ編 7度のリーグ優勝を誇るパの強豪4TATEしそこね天との日本シリーズに。 前年の広島が1勝4敗で破れた相手なので苦戦を予想したが、我が横浜が4勝1敗で破り見事日本一ぃぃぃぃいいいいい!!!!!!! シリーズ開始前、調子マークも軒並み悪く疲れの見えた先発陣も頑張ったが、シリーズでかなり登板した中継ぎ陣が名無し以外無失点という脅威の成績。 ツインターボ選手、聖天使猫姫様とパーフェクトリリーフを披露したクルンゴ、中継ぎ陣と抑えが今回のシリーズで日本一を呼び寄せた。 打撃陣ではバルパンサー、東出君、ジャギ君と仲良く調子を落とす中(それでも東出君とジャギ君はHRを放った。バルパンwwm9(^Д^)プギャー )四方選手と6さいちゃんが爆発。四方選手は.421とハイアベレージ、6さいちゃんは5HR10打点と脅威の大活躍でシリーズ女児に。 そして、日本シリーズの最後を締め括ったのはリーグ優勝決定時と同じく守護神クルンゴだった。 終わってみて思う、やはりセの上位球団の強さの中で揉まれた事が3回目の日本シリーズで役に立ったのだろう。 とにかく誰一人欠けても(村上裕紀選手も含む)なれなかった形での日本一。 最高の形じゃないだろうか? パで大活躍している修行中のタコちゃんも加わって欲しかったが喜んでくれているだろう。 優勝した今回ベストナインは少なかったが、がんばれ中継労働課選手が見事第16回投手MVPに輝いた!!!! とにかく今は初日本一を色々と妄想交えながら楽しんで欲しいw +… 「・・・ショボイ花火gifだなぁ」 +第17回寸評 , 第17回ペナント、セ・リーグ 2位 80勝58敗2分 勝率.579 去年の優勝で満足感を得た中(仏の状態とでも言おうか)で闘った今期、 ピークを過ぎてる選手達が主な我が横浜はかなりの善戦をした。 順位の遍歴を振り返って見ると2位の数が多い事に気付く。 本当に強豪チームと言えるのだろう。 投手から。 バットオ選手の勧めで秘密裏にロッカールームへ監視カメラを設置した赤川選手。夜を徹しての番人作業から解放されたが 記録した映像をバットオ選手に提供する事には疑問を感じている様子。セ界のエースが最多勝と最高勝率を獲得。 最優秀防御率と最多奪三振も狙える位置につけていた。投球回数も200イニングオーバー。流石である。 前年度投手MVPで優勝に大貢献してくれたがんばれ中継労働課選手。今シーズンは防御率・勝ち星共に不調となったが十分に一流と言える成績を収めた。弱冠下がったとは言え158kmと剛速球は未だ健在だ。被本塁打の少なさも目立った。彼なら晩年に入っても十分速球派として通用するだろう。 肉まんマン太郎Ⅱ世選手は今期も二桁勝利。生キャラメルに刺激を受けた肉まんマン選手は新たな事業を起こし生肉マンなるものを発売。 徹底したコスト削減を目指し、原材料から食品の加工・製造まで全て中国国内で行い驚きの安さで市場を席巻しようと目論んでいる。 若さを取り戻してから肌の張りに並々ならぬ自信を窺わせるDammit選手は防御率・勝率・投球回数共に素晴らしい成績を残した。 あの肉まんマン選手から(ドーピング検査に引っ掛かる事を)心配されるほど、薬の量を増やしているようだ。だが大臀筋を上下に揺さぶる彼は気にする素振りも見せない。 冬の味覚寒ブリトレーニングも絶好調なバットオ選手。防御率を落としたものの、堂々とした投球を披露。今シーズンも大きく勝ち越し 先発ローテも定着して来た。腰周りも大きくなってきている。 最近になってはまったBFシリーズの影響で被弾すると「衛生兵!衛生兵!」と叫び出す等、成長著しい聖天使猫姫様。 今期はASにも選ばれ毎年順調に成績を上げてきている。そろそろ先発も十分行けるんじゃないだろうか。 毎週末競馬場に足を運んでは予想屋のおじさんの講釈を聞き、本も紙も買わずにパドックへ向うツインターボ号。 パドックでは若い牝馬達の肢体をジロジロと眺めては帰るを繰り返す。ダイワスカーレットとウオッカを口説き落とすのが夢らしい・・・ 今期から新しく加わった、幼いその体に犬やクマ達との古傷を持つ戦士柴犬ちゃんは他の投手達同様1シーズン目らしい成績を収めた。 だが勝利数・負け数・セーブ数と新人としては合格点以上である。他チームの選手に対してではなく何故か広島のボール犬ミッキーに対抗心を燃やしてしまう柴犬ちゃんなのだった。 最後は絶対的守護神くるーん。今期も失敗がたったの二度。防御率も全盛期を思い出させ、33のセーブ数をあげ最多救援を獲得!! 着々と歴代セーブ数を伸ばす。最多救援回数は歴代単独TOPに。この記録を安全圏まで伸ばす事が出来るか!? 野手。 実は盗塁の一試合野手記録を持っているが誰にも気付かれなかったのでその事に触れるタイミングを逃しているマスターズ大好き東出君だが リードオフマンとして誇れる数字、3割200本をクリアし盗塁も30代を記録した。年の数だけ走りたかったらしい。 横浜投手陣による相手主軸へのスナイポ作戦で圧倒的に死球の数を減らしたアルルちゃん。またも3割以上をマークし、打棒も容姿も衰えを見せない。 失策も大幅に減らし、鉄壁アルルちゃんを取り戻した。205安打とチーム最多安打だった事も驚くべき若さの証明。 近年首位打者争いをしていたざんげちゃんは今期のタイトル争いからは一歩後退。打点もやや寂しい数字となった。 だがそれもざんげちゃん基準の話で、.310、本塁打19本という数字は一流の成績。これから衰退期とどう闘って行くのか気になるところだ。 前半戦、横浜投手陣による相手主軸へのスナイポ作戦で圧倒的に死球の数を増やした四方二三矢選手。今期4番に座った。同じ髪型である鉄腕バーディー02 DECODE、ナタルの境遇に涙しつつも懸命にチームに尽くしてくれた。 打率は近年のざんげちゃんに匹敵する.351をマーク、27本・102打点、全てランキングベスト10に名を連ねた。四方選手が常に狙える3割30本100打点に本塁打だけ及ばなかったが脅威の打率はそれ以上の成績と言える。野手でのチームMVPだ! 衰えてなお本塁打の分は打率を伸ばし、100打点近い成績をあげるチーム大介選手。だが彼の目指せる位置に行く為には爆発的な数字を残す事が必須である。原監督の顔を思い出して今一度爆発するんだ大介!!! 日本一を達成してアッと言う間に成績を年齢相応に落としつつあるバルパンサー君。他の選手同様に今一度奮起してもらいたい。 このままでは横浜の地蔵と化してしまう。 今期はクリーンナップも期待された6さいちゃん。打率・打点は十二分な成績をあげたが、本塁打が6さいちゃんにとっては寂しい数字となった。 だが今一度パンツの紐を絞め直してうまく維持していけば500本塁打以上は確実に見えてくると思う。そして外野で一番難しいセンターの守備も十分合格点だ。 ASにも選ばれてウキウキ気分の高齢ジャギ君。去年に引き続き衰えた能力値でかなりの好成績を収めた。 連夜の秘孔突きが効果を出している様だ。見事7度目のベストナインを獲得、捕手としてセ界をリードする。夜も野球も老いてなお盛んなのだ。 たら神をチーム内たらればパワーの衰えが直撃。やや寂しい数字となられたが、まだ6年目の肉体。予想では来期小爆発を起こされそうな気がする。 守備も無難にこなされ衰えるチーム内で益々存在感が増してこられた。打順も変化していくだろう。来期もチームが良い位置に付けますように…優勝も含めて…(-人-) 着々とWBCの足音が大きくなっているこの頃。みなさんはどうお過ごしでしょうか? さすがに本塁打・得点率と下がってきた我があばベイ。 だがその力は依然優勝を狙える位置に横浜を導く。 定位置が懐かしく感じられる。 +第18回寸評 , 第18回ペナント、セ・リーグ3位(Aクラァス~) 69勝67敗4分 勝率.507 前半線は全体的には打線は湿り老化の影響が強く出たかと感じられたが 後半にみんな復調、脅威の打線を取り戻しチーム本塁打に関しては両リーグ合わせて横浜だけ突出した 217本塁打という結果を残した。 投手陣に関してもベテランが良く頑張ってくれた。その中には全盛期並の成績となった選手もいた。 投手から。 赤川選手は毎年狙える位置につけていた最多奪三振を獲得!!防御率も2.52という赤川選手らしい数字となった。シーズン前半で200勝達成!! ロッカールームで記録した映像を提供するという作業も板についてきて、成績も相まって横浜の番人として貫禄十分である。 横浜に来てから10年間大貢献し続けてくれた赤川選手。オフに移籍する事が決まっているが、横浜の選手全員が自信満々で送り出せる選手の一人だ。 横浜・セ界のエースがどんなPを披露するのか楽しみであり、誇らしくもある。チームメイトとして応援し続けたい。 油も乗って輝く豊満なお肉が美味しそうなバットオ選手。重い球(タマ)を手に入れポエムも絶好調状態でシーズンインしたが 成績が思ってた様に振るわず、ポエムも重い球についての嘆きが大半を占めた。そんな彼に優しく声を掛けたのはやはりジャギ君だった… 外見とスペックが依然として若いままのDammit選手。200勝達成にはあと少し足りなかったが、今期も十分な成績を残せた彼には時間の問題だろう。 業界通によると彼が執筆した大臀筋についての筋肉論文がある業界で話題になっているとのこと。薬についても熱く語っているようだ… 花畑肉まんマンよしたけ選手は全盛期の様な脅威の勝率!17勝をあげ最多勝まで勝ち星一つ分だった。イニングも200に迫るもので もしかすると彼にとっての全盛期は今なんじゃないか?と思えるほどの成績。新事業の生肉マンに関しても売り上げが好調でウハウハの彼、 まだ確かな情報ではないが噂によると何かしらの問題が起きたらしい… 今シーズンから先発ローテ入りした聖天使猫姫様はやや苦しんだものの防御率は中継ぎの頃と変わらぬ数字を出した。 先発で十分やっていける段階に入っているのだろう。城内にて姫がしっかり成長してくれたおかげで、来期以降期待出来る先発が加わった!めざせ速球派右腕!! ツインターボ号はASにも出場して中継ぎエースに相応しい成績をあげた。順調な成長で先発にもクローザーにも向かえる位置にいる。 逃げ馬的にはどっちがいいのだろうか?チームが逃げ切るという点では抑え、本人が逃げ切るという点では先発かw 柴犬ちゃんは2年目らしい成績をあげ順調な成長。負けが少ない点が先行きの明るさを示している。このまま中継ぎで順調に育てば 先発に転向した時十分通用する選手になるだろう。成犬になれば子供も沢山作ってくれるだろう。その時横浜は投手王国になる、間違いない。 河童128君はブルペンでずっと「きゅー、きゅー」言っていた。キュウリをあげると満面の笑みでマウンドへ向かってくれる。 驚く事に肩を作る時間は必要ない。ブルペンへ連絡を入れるとスタッフがキュウリを与える、すると肩を振り回しながらマウンドへ。着いた頃には肩が出来上がっている。 抑えのくるーん選手は大味な試合が多く(強豪には負け、他のチームに勝つ時は大勝)登板機会が少なかった。 成功率自体は相変わらず素晴らしい。少ない失敗も若い頃より芸術性が増している。人に感動を与える領域まで昇華しているのだ。 野手。 アルルちゃんはもう何年も連続で絶好調!.333をマークし、横浜で最も良い打率を残した。 打率は晩年の方が上昇傾向を示すというファンタジックな選手に成る事が出来たアルルちゃん。横浜をほんと支えてくれている。 ざんげちゃんは年齢を感じさせる結果になるかと思われた前半からきっちり修正を行い高い出塁率を維持してくれた。 横浜で唯一ベストナインにも選ばれ、ハマの意地を示してくれた。ざんげちゃんゴメンナサイ、18になる家雄猫がそろそろやばそうです。介護してても寿命か、と意外と平然としている私を罵って下さい。ァアッ!もっと踏ん付けて!! 四方二三矢選手はいつの間にか終わっていた魔法遣いに大切なこと・夏のソラの存在感に愕然としつつシーズンへ。 彼の全盛期からするとやはり多少は年齢を感じさせる結果となったが、他の横浜選手達より弱冠若い彼は単純に調子が絶好調ではなかったというだけだろう。他の主軸打者より数年長くやれる彼はその点でも心強い。 童夢くんを崇拝するミラクジャイアン中井大介選手は100打点も越え32本の本塁打も放ちその得点力は衰えていない。 だがまだ上を望みたい選手だ。歴代記録に横浜・中井大介として輝く数字を刻み込んで欲しい!衰退に立ち向かえ、大介!! ジャギ君は衰えを隠せないのではなく、衰えを隠さない。ヘルメットを被り顔を隠してはいるものの衰えは隠さない。 連れ立ってトイレに行く際もやたら前を隠しながら事をなすのだが、衰えは隠さない。実に漢らしい漢である。どこまで衰えるのか個人的に凄く興味が湧いているw 最近6さいちゃん山賊団を立ち上げた豪傑6さいちゃんは本塁打のペースをアップ、37本の花火を打ち上げチーム最多を記録した。横浜のチーム本塁打を引っ張ってくれた。 打点も6さいちゃん平均の100打点近くをあげ、主軸として大貢献してくれた。難しいかも知れないが打率を下げてでも本塁打のタイトルを取って欲しい選手だ。 バルパンサー君は前半老人だったが、後半おじさんになった。年俸下がらなければパワーヒッターを買えるので余力を絞りきって欲しい。 たら神は伸び悩み期間に入ってしまった。が、ここが最後の壁だ。乗り切れば神が借りるに相応しい体となられるであろう。 もはや言うまでも無いが、前半暗黒だった横浜がAクラスに入れたのは・・・これ以上は書かなくても皆解っているだろう… 来期もチームが良い位置に付けますように…日本一も含めて…(-人-) 東出君弐式は打率は新人らしい成績を残し、新人である事をアピール。一方で本塁打を二桁に乗せダイヤの原石をアピール。サードとは言え1年目から内野で堅守を示し一軍に相応しい選手である事をアピール。年齢面で若さをアピール。計算されつくした成績で見事新人王をGET!!! どんな選手になるのか予想がつき難い面白い選手になっているw 防御率に関しては若手・中堅の調子の悪さが弱冠出たが十分なチーム防御率となった。 いつもTOP争いをしていたチーム打率は阪神・中日に遅れを取ったものの、得点率・本塁打はリーグTOPとなり まだまだやれるという事を証明した。球団創設以来最下位がない横浜が後半奮起した影響もあるだろうか。 狙える時は狙ってというスタンスだが、日本一を目指した頃の様にギラギラした季節がまた来るかもしれない。 その時の為に若手は成長を、ベテランは延命を心掛けよう。 やっぱBクラスTOPの4位以外は気分悪かったね。5位6位は出来れば避けたいと改めて強く感じた。 第20回寸評会場へ ↓ ログまたログへ <連打は小さい頃に鍛えたから無問題ぃぃぃいいいい!!!!> 二大テクニシャン(高橋名人・加藤鷹) 現在、paint_bbsプラグインはご利用いただけません。 あばベイおめでとう!チアソンはソフバンで防御率2点台を出すも減俸で嘆いてるよ! -- (タコ@修行中) 2009-01-24 16 57 21 タコちゃん有難う!!昨シーズンはソフトバンクでの好調さに一安心してたが・・Mr.・・・(つД`) -- (薔薇男) 2009-01-25 11 37 11
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「とりあえずこのチーターローションは妾が貰うぞ。この速さで剣を叩きつけられれば大抵の者は沈められるじゃろ」 「まっ...いや、いい。それは君が使ってくれドロテア」 もう少し話し合ってから、と思ったディオだが、リスクを鑑みて敢えて譲った。 僅かな時間とはいえ、身体能力が上がるのは確かに魅力的だ。使うだけ損のない当たり寄りの支給品だろう。相手がメリュジーヌのような化け物でなければだが。 ハッキリ言って、チータークラスの足の速さを手に入れたところでメリュジーヌから逃げ切れるとは思えない。最初は良くても効果が切れた直後に捕まって終わりだ。ならば、相手の行動を妨害できる光の護符剣とバシルーラの杖を組み合わせた方が効果的だろう。 磁力の指輪は絶対にイヤだ。1番なハズレアイテムだ。ただの路上のケンカならいざ知らず、あの化け物どものような連中相手に使えば即座に殺されるだけだ。 「私がこっちを貰いますね」 キウルを丸め込んで磁力の指輪を渡そうと口を開く前に、彼は率先して指輪を手にする。 「キウル...」 「私だって武士の端くれです。危険を引き受けるのは当然ですよ」 「すまない...僕の無力さのせいできみにまで負担を強いてしまって...」 わざとらしく涙声になってキウルの同情を引くディオとそれを宥めるキウル。 そんな視界の片隅で行われる茶番劇を横目に、ドロテアはさっさと施設内の探索の役割分担を振り分けると、モクバを連れて首輪の解析に使えそうな道具を探しに向かう。 それが、彼ら四人が揃っていた最後の時間だった。 モクバと幾分か話し合った後、ドロテアとモクバもまた別行動に。 首輪の分析に使えそうな道具が無いことにやきもきしていたまさにその時だった。 ーーーWRYYYYYYYYYY!!!!!! 突如、響いた叫び声にドロテアは咄嗟に窓辺に身を寄せ、外を確認する。 そこには、杖の光を己に当てて叫ぶディオと光の剣の障壁に阻まれたメリュジーヌともう1人の姿があった。 ーーーもう来たのか! ドロテアの背筋からドッと冷や汗が吹き出す。危惧していたことが起きた。こちらの札が揃い切っていない時の強者による襲撃。口のまわるディオがあのザマな以上、交渉が失敗したのは目に見えてわかることだ。 ディオが光の護符剣で残した僅かな時間を、逃げ出した彼への糾弾ではなく己が生き延びる策を練るのに費やす。 チーターローションを使って1人さっさと逃げ出す。これが1番手っ取り早い。ただこの場を生き延びるだけならばだが。問題はその先だ。 マーダー側にとっても、キウルはともかくモクバは有用な人材である。彼だけは知識や技術を提供する代わりに生き残る芽は残っている。ここでモクバを切り捨てて逃亡すれば、敵の手に落ちたモクバにこちらが切り捨てられる可能性がある。そもそも、マーダー側からしても対主催側からしても速攻で使える味方を切り離す者を信頼できるはずもなく。そのまま孤立してしまえばもうどうしようもなくなる。無策の逃亡は、結局、ほんの僅かな時間稼ぎにしかならないだろう。 (奴らをここで仕留められるのが1番じゃが...!) 先も懸念した通り、こちらには攻撃力があまりにも足りない。決定打が無ければ敵を殺すことなどできず、残って戦うなど論外である。 (キウルを囮に妾とモクバで逃げる!これしかあるまい!) 結局、消去法でその手段を選ぶしかなかった。それで何秒稼げるかはわからなかったが、ダメ元でやるしかなかった。 ドロテアはキウルのもとへ向かい、メリュジーヌが現れたことを告げると、キウルは汗を滲ませつつ即座に磁力の指輪を嵌めるとメリュジーヌ達のもとへと向かおうとする。 (曲がりなりにも戦場育ちなだけあって手間が省けるわ) キウルがこれまで無力感に苛まれていたのは側から見ているだけでもわかった。だから、こういう場面では積極的に前線に出ようとするのも織り込み済みだ。 ドロテアはキウルに上っ面の感謝を述べると、そのまま部屋を出てモクバのもとへーーー向かう前に、その足がピタリと止まる。 (いや、待て...この施設、支給品、条件が揃えば...) ドロテアの目に留まったソレは、キウルが集めていたこの施設ならではのモノ。 その数を、現状を顧みて、彼女の脳内でパズルのようにピースが重なっていく。光の護符剣の解除時間まで余裕はない。 その最中、ドロテアの悪魔の頭脳が新たな解を導き出す。 「キウルや」 覚悟を決め出て行こうとするキウルを呼び止め、ドロテアは己の虎の子であるチーターローションを手に笑いかける。 「どうせ死ぬつもりならーーーひとつ、賭けてみんか」 ☆ 空を翔るブルーアイズを追う者はいない。キウルがあの二人を引きつけてくれているお陰だ。 「奴ら釣れんかったか。煽りが足りなかったかの」 「...ほんとにこうするしかないのかよ」 あくまでも冷静に現状を分析するドロテアとは異なり、モクバの面持ちは暗い。これからの己の行動はキウルを見捨てるのと同義であるからだ。 モクバはキウルとここまで長く同行したわけではないが、それでもドロテアやディオのような悪人ではない優しい少年であることだけはよく理解していた。戦場経験者とはいえ、グレーテルのようなイカれてしまった子供でもなく、もう少し関わる機会があれば普通に友達になれるようなそんな少年だった。それを自分はこれから見捨てるのだ。誰のせいでもなく、自分の意思でだ。 「ブルーアイズなら勝てるなどと思い上がるなよ。奴らとまともにやりあえばこんなもの紙切れ同然じゃ。もしもあそこに向かえばそれこそ奴は無駄死に。お前も、そして妾達と同盟を組んだ者たちも皆死ぬことになる」 「わかってる...わかってるんだよ、ちくしょお...!」 モクバはドロテアのことを信頼などしていない。しかし、だからといって彼女の言葉を頭ごなしに否定するほど愚かではない。 モクバ達の現状の最大戦力はこのブルーアイズホワイトドラゴンだ。 攻撃力3000。確かに、パワーだけならデュエルモンスターズ内でも上位のカードである。しかしこの殺し合いにおいてはそうではない。 先のクロエとグレーテルとの戦いにおいて繰り出した翻弄するエルフの剣士から測った数値として、彼女達の攻撃力が、エルフの剣士の効果対象である1900だったとする。どういう基準で実在の人物の数値化をしているかはわからないが、クロエとブルーアイズの攻撃力は1100の差しかない。果たして、この数値の間にメリュジーヌは収まっているのだろうか?希望はかなり薄いと見ていいだろう。 モクバとドロテアは実際にメリュジーヌの戦いを僅かだが見ている。あれほど厄介だった悟空を軽く吹き飛ばしたメリュジーヌと少し工夫を凝らしただけでかなり追い詰めることができたクロエとグレーテル、彼女達の差が1100しかないとは到底思えなかった。 しかもこれはあくまでも最低値。クロエ達の攻撃力がそれより上だとしたら、ますますブルーアイズの攻撃力3000などたいしたアテにならない。 モクバがキウルの覚悟に報いるには、ここで加勢に向かうことは許されないのだ。 「腹を括れモクバ。これは奴も承知の上じゃ。もう二度と同じ間違いを犯してはならん」 ドロテアの言葉で脳裏をよぎるのは、カツオと永沢、二人の少年の顔。 彼らは自分の選択ミスにより命を落としたーーー少なくとも、カツオに関しては間違いなく自分の失態だ。もう間違えてはいけない。感情に流されてはいけない。 「ごめん...キウル。本当に、ごめん...!」 断腸の思いで。涙すら滲ませながら、モクバはブルーアイズに指示を出した。 ☆ 先手必勝。 屋上にまで降り立ったメリュジーヌは、言葉を交わすまでもなくキウルに突貫。そんな彼女にも、キウルは冷静に矢を射る。高速で迫る相手にも構わず、その狙いは正確無比に眉間へと向かう。メリュジーヌは減速すらせずに、剣の腹で矢を受ける。振りかぶりもせず、ただ傾けただけで矢は彼方へと飛んでいき、瞬く間にキウルへと距離を詰める。 そのまま最小限の動きで横薙ぎにスッと振る。まるでそよ風のように、しかしその殺傷力だけはそのままに。彼女が知るキウルであれば、この時点で弓を斬られ、その奥の胸板も斬られていただろう。しかし、キウルは彼女の想定よりも速かった。メリュジーヌが距離を詰め切るのとほぼ同時、彼が後方に駆け出せば詰めた距離が再び空けられる。 (いまは攻撃が出来た...やはり彼の仕業だったか) ドロテア達の時とは違い、キウルに攻撃するときはなんら違和感なく剣を触れた。このことから、メリュジーヌはキウルの使っている支給品の正体を大まかに察する。相手の攻撃を一手に引き受けるものだと。 (それに港で会った時よりも速くなっているようだけれど...問題ない) 確かにキウルの速度は想定外だったものの、手に負えない速さではない。1人で戦っても、すぐに捉えられる範疇だ。彼を始末してからモクバ達を追いかければ充分に間に合う。 その傍で、シャルティアはキウルをじっと見つめ魅了の魔眼を行使する。 別に2人がかりでなくても負けはあり得ないし、彼を殺すだけなら容易いのだが、せっかくならあの攻撃を止めさせられる不快な能力の正体を知っておきたいと思ったのだ。 (む...魅了はあいつには効かないでありんすか) しかし、キウルの動きは全く鈍らず。 シャルティアは知らないことだが、キウルの身には生まれつき「土神」の加護が宿っている。その力により、シャルティアの制限された程度の魔眼には抵抗できる耐性が備わっていた。 (まあいいでありんしょ。まずは血を吸って、眷族にして聞き出せばいい。知りたいのはメリュジーヌも一緒でしょうし) シャルティアは上位転移の魔法でキウルの背後にまわり、その首筋に噛みつこうとする。牙が触れる刹那、キウルの足が地を蹴り、シャルティアの牙が空を切る。 戦場で培ってきた直感が、シャルティアの悪意を感じ取ったのだ。 シャルティアから離れた直後、キウルは上空へ向かって何度も矢を発射。最高到達点に達した矢は軌道を変え地に向けて降り注ぐ。着地点は、メリュジーヌとシャルティア。 「器用なことをするね」 変則的にも関わらず、正確にこちらへ降り注ぐ矢を見ながらひとりごちる。 2人が上空からの矢を各々の得物で弾いていると、その隙をつきキウルは直線に矢を放つ。常人ならば逃げられない連撃だが、しかしこの二人の前では無力同然。 二人は各々の武器を手に頭上の矢に対処しつつ、迫り来る矢を軽々と弾き落とす。 無論、キウルとてその程度は予測済み。彼の狙いは二人の打倒ではなく時間稼ぎだ。二人が矢に対処している間にチーターローションの脚力を以って階段へと向かい建物内へと高速で駆け込む。 「えっちらおっちら必死になってかわいいでありんすねえ。果てさて何秒待つことやら」 シャルティアとメリュジーヌは共にキウルの後を追って階段を降りていく。 二人が階下へ降りた途端、弓矢が飛来してくる。 「えーっと、確か基本は...このヤロー☆って思って振ればいいんでありんすね」 シャルティアがステッキを軽く一振りすると、光線が発射され矢は軽々と弾き落とされる。 キウルはその結果を見ることもなく奥へと駆けて行く。 「君の狙いはわかっている。彼らが逃げる時間を少しでも稼ぎたいんだろう?悪いが付き合うつもりはない」 メリュジーヌの足が地から離れた瞬間、その身体が高速でキウルへと迫る。なんの仕掛けもない純粋な速さ。ただそれだけで射程距離にまで侵入する。 再び高速で走るキウルだが、しかし距離が開くことはない。どころか、徐々に縮まって行く始末だ。 「そおれもう一丁このヤロー☆」 接近するメリュジーヌの刺突とその背後より迫る光弾に、身を捩り紙一重で掠るだけに留める。だが、体勢が不安定になれば躱せる攻撃も躱せなくなるのは道理で。メリュジーヌの左の拳がキウルの腹を打てば、凄まじい痛みと圧迫感が襲いかかり、その勢いのまま吹き飛ばされる。 「がっ...!」 吹き飛ばされる中でもキウルは歯を食いしばり弓矢を放つ。完全に体勢が崩れた状態から正確に狙いを定められるのはさすがに長年の経験の賜物と言えよう。だが、妖精騎士はそれだけで一矢報いれるほど甘くない。 メリュジーヌは眼前にまで迫る矢を紙一重で掴み放り捨てる。 「くっ」 痛みに耐えつつも起き上がり、再び距離を取ろうとするキウル。 「ッ!」 だがその足はすぐに止まる。その視線の先にはニコリと微笑むシャルティア。彼女は既に上位転移の魔法で逃亡ルートに先回りしていたのだ。 キウルの身体が硬直したその瞬間、シャルティアの蹴りがキウルの腹部に突き刺さる。 メキメキと音を立てて骨が軋み、内臓が悲鳴をあげ、再びキウルの身体が宙を舞う。 壁に激突し、倒れるキウルの顔を踏みつけシャルティアは嗜虐的に笑う。 「ひーふーみーの...かかった時間は二十秒くらいでありんすかねえ」 ゆっくり頭から足を離したかと思えば、すぐさま手の甲を踏みつけ、わざとらしくグリグリと動かす。 「ぐあっ...!」 「ん~?もっと泣いてくれてもいいんでありんすよ?こんなふう、にっ!」 シャルティアが踵で右小指を強く踏みつけると、ベキリという音と共に小枝のように折れる。 「ッーーーー!!」 声にならない悲鳴がキウルの口から漏れる。 更に加えて、ステッキからの光弾で両脚の腱を焼き切り、身動きすら取れなくする。 「ぐっ、あああああぁぁぁぁぁ!!」 堪らず涙目になり悲鳴を上げるキウル。 そんな彼を、シャルティアは嗤いながら見下ろす。 「あっはぁ!脆い脆い!獣耳が生えてようが所詮は下等種族でありんすねえ」 「...やりすぎだよシャルティア」 あまりにも凄惨な光景にさしものメリュジーヌも苦言を呈さずにはいられない。メリュジーヌは殺し合いに乗っているとはいえ、決して敵を苦しませたい訳ではない。このような拷問に時間を割く趣味はないのだ。 「お~怖い怖い。よかったでありんすねえ、坊や。あの子のおかげで苦しまなくてすみそうで」 シャルティアとしてもこんなことでメリュジーヌから不況を買いやり合うような真似はしたくない。ドロテア達から受けた屈辱も多少は晴れたのだ。ここはさっさと目的の血を摂取するべきだ。 消沈するキウルの上体を起こし、シャルティアの牙がその首筋へと近づいていく。 ーーーこの瞬間、冷静に場を見ていたメリュジーヌだけが気づいていた。指を折られ、足を動けなくされ、激痛に苛まれいままさに死が迫ろうとしている最中。彼の目には未だに光が宿っていたことに。 (なんだ...何を見ている...?) メリュジーヌはそんなキウルに違和感を抱く。いま、この状況において彼は自分たちを見ていない。見ているのは、そのもっと奥。 ☆ 中央司令部から遠く離れた上空で。 モクバが涙と共に叫ぶ。ドロテアが邪悪に口角を釣り上げる。 「やれブルーアイズ!滅びのバーストストリーム!!!」 モクバの号令と共に、青眼の白竜はその口から超高密度の熱線、滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)を中央司令部目掛けて吐き出した。 ☆ メリュジーヌが気づいた時には既に遅かった。 光と共に中央司令部に巨大な熱線が着弾し、爆発。 壁が破壊され、全体が揺らぎ、熱風が遅い来る。 直撃を外したか、千載一遇のチャンスを逃す間抜けどもが。そうシャルティアが思った瞬間だった。 キウルは全てを受け入れたかのように穏やかに笑みを浮かべ。 更なる爆発が、司令部全体に襲いかかった。 ☆ 土壇場で思いついたドロテアの策はこうだ。まずはキウルの磁力の指輪で敵の注目を集める。二人を引きつけられた段階で指輪を外させ、チーターローションで逃げに徹して時間を稼ぐ。 そして三人の視界外からブルーアイズの滅びのバーストストリームで中央司令部を狙い撃つ。無論、それで倒せるとは思っていない。所詮は攻撃力3000のモンスターの技だ。大した戦果は望めないだろう。だからここで第二の矢を使う。 中央司令部に備え付けられていた大量の爆弾や火薬を。 そう、ドロテアは滅びのバーストストリームを着火剤として、爆弾を起爆させたのだ。 爆弾を集めていたのは一階の出口付近。モクバが撃ち込んだのはその位置だ。 施設内を探索されればその不自然さはすぐに割れたはずだ。だからこそ、二人は最初、敢えて姿を晒し自分たちに注目を集めていたのだ。 ちなみに、キウルに指輪を外させたのは、着けたままではドロテア達の攻撃もキウルに集約されてしまうからだ。メリュジーヌ達に攻撃を当てた時は『キウルに攻撃をしている』という程で剣や尻尾を振りまわし当てていたが、今回は正確に当てるために磁力の指輪は邪魔だったのだ。 この作戦の最大の難関は爆発の威力だ。いくら爆薬が纏められているとはいえ、どの程度の爆発が起きるかは実際に試してみないとわからない。そもそも、乃亜が爆薬を武器ではなくただのインテリアとして設置していれば爆発すら起きなくてもおかしくはなかった。 本来なら試す必要があったのだが、生憎とそこまでの時間は到底なく。 なにもかもがぶっつけ本番の賭けだった。 結果、無事に爆発を起こせた彼らはいま。 「あああああ!!あああああああ!!!」 爆風に巻かれて空を横断していた。 爆発は想定外の強さだった。 ブルーアイズが咄嗟に爆風の直撃から庇ったものの、その威力までは殺しきれず。結果、ブルーアイズに包まれる形でモクバとドロテアは彼方へと吹き飛ばされていた。 (こっ、これだからやりたくなかったんじゃあ!!) もともと、メインプランとしてはキウルに1人、こちらで東側に向かいつつ一人を引き付ける予定だった。そして時間と距離を稼いだ上での爆撃をかますつもりだった。 ところが、敵は最初からキウルを集中的に狙ったため、予定を前倒しせざるを得なかった。結果、自分たちも爆風の煽りを喰らうハメになったのだ。 「ブルーアイズ、体勢を立て直せ!」 モクバの指示に従い必死にバサバサと翼をはためかせ、体勢を立て直そうとするブルーアイズ。しかし、吹き飛ばされた勢いは完全には止まらず。 そして遂に地上への墜落のカウントダウンが始まる。 「ええい、一か八か、錬金術師の力見せてくれるわ!」 ドロテアは己の指を噛み、微かに流れた血でブルーアイズの身体に簡易的な陣を描く。本来の世界線ならば、レオーネ相手に使用した陣だ。 「ブルーアイズの一部と引き換えに、来い!」 ドロテアの錬金術は特定の物質を媒介に異界より異形を召喚できる。本来の世界線では、危険種の一部を媒介に闇の中から怪物を引き出していたが、当然、強大すぎるものを出すのは乃亜による制限を受けているため、この土壇場においても出せるものはたかが知れている。 ブルーアイズホワイトドラゴン。光属性の攻撃力3000のモンスターの一部を媒介に産み出されるものは、ドロテア自身にもわからない光のガチャ。 陣から生み出されたのは、怪物ではなく一枚のカード。それを認めた瞬間、モクバの目が見張られ、咄嗟に手を伸ばし叫ぶ。 「来い!ホーリー・エルフ!!」 召喚されたのは、誰かに祈りを捧げる青色のエルフ。彼女はモクバ達が地面に激突する瞬間、モクバとドロテアの間に挟まり僅かながらのクッションとなる。 ドン、と地響きのような衝撃がモクバとドロテアに走る。全身に広がる激痛。揺れまわる視界と脳髄。 ただの肉一枚ならばそのまま押し潰されて終わりだったろう。だが、ホーリー・エルフの守備力は2000とブルーアイズに次げるほどに高い。 彼女とブルーアイズの守備力も合わさって、即死は免れた。 「う……」 ドロテアは薄れそうになる意識を振り絞り、もぞもぞとブルーアイズとホーリー・エルフの中から這い出る。 左腕が酷く痛むだけでなく動かない。どうやら打ちどころが悪く、いまの衝撃で折れたようだ。 「つぅ...連中に絡まれて生きておるだけ儲けものかの...生きとるか、モクバ」 ドロテアの呼びかけに、モクバもまたモゾモゾと倒れ伏すホーリー・エルフとブルーアイズの中から這い出てくる。 「な、なんとかな...助けてくれてありがとう、ホーリー・エルフ、ブルーアイズ」 流血しながらも、ホーリー・エルフは慈愛の微笑みを浮かべており、程なくしてブルーアイズと共にその姿を消した。 「死んだのか?」 「いや、エルフの剣士みたいに破壊される前にカードに戻した。しばらく使えなくなるけど破壊されるよりは...あっ」 ブルーアイズとホーリーエルフのカードを手に取ったモクバは気がつく。 ブルーアイズホワイトドラゴンの攻撃力3000守備力2500の表記が、攻撃力2200守備力500に変わっていたのが。 (なるほど、錬金術と組み合わせればモンスターカードの攻撃力と守備力と引き換えに新たなカードを生み出せるのか。これならブルーアイズを切り崩していけばどんどん新しいカードが...ッ!) その考えに至った途端、己の背筋に怖気が走る。いま、自分は平然とブルーアイズを贄とすることを考えつつあった。 カツオ。永沢。そしてキウル。次々と仲間を喪っていくことで、勝つために手段を選ばないのに慣れつつあるのを実感する。 (兄サマ...俺...おれ...) 完璧超人と思える海馬瀬人も、一時期はそう言う時もあったし、今でもその片鱗は残しているように思える。けれど、いまの自分は、兄とも、遊戯達とも違い、保身のために他者の犠牲を良しとするドロテアとさしたる違いはないのではないかと思えて仕方ない。 「...生き残らなくちゃ」 己に言い聞かせるように呟く。 例え、他のみんなならもっと上手くやれたと己の選択肢を嫌悪しようとも。それでもモクバは生きることを選んでしまった。仲間を切り捨て先に進む選択肢を選んでしまった。 傷だらけの心を引きずりながら、ドロテアに連れられるまま、モクバはその足を進める他なかった。 ☆ 「ぅ...」 瓦礫に囲まれ、炎が揺らめき、むせかえるような灼熱の中、キウルは目を覚ました。 作戦は成功した。キウルの生死に関わらず、三十秒後に滅びのバーストストリームで爆弾を誘爆させ、施設ごと爆発させる。 当然、その爆撃に巻き込まれていれば無事でいられるはずもない。 ならばなぜ、自分はさしたる怪我もなくこうして生きている? ーーーその答えを示すように、眼前から一陣の風が吹く。 「ぁ...」 突風と共に砂塵と焔を吹き飛ばし、姿を現したのは、穢れ一つなき鎧騎士の背中。 威風堂々としたその背中は、本来の背丈よりもただ大きく見えた。 そんな背中を見て、キウルは敗北の悲観よりも、ただただ『美しい』と思わずにはいられなかった。 「きみはこうなることを知っていたんだね」 振り返り、問いかけられる。 そんな彼女にキウルは嘘偽りなく答えることにした。武士としてその強さに敬意を払いたくなったのだ。 「...ええ。私では貴女たちに敵わないのはわかりきっていました。だから、こんな小賢しい手を使うしかありませんでした」 「小賢しい、か。自らの命を賭けて立ち回った者を指す言葉じゃないね」 「...でも、貴女には何一つ敵わなかった。ここまでくると清々しいくらいですよ」 キウルは瓦礫に背を投げると、そのまま脱力しもたれかかる。もう何の抵抗をする気力もなかった。これほどの戦士と戦えたのだから、悔いは無いと。 「どうして、そんな晴れた顔ができるんだい?」 そんなキウルを見て、メリュジーヌは疑問が口をついた。 「君たちの前にも参加者を殺した。彼らもずっと真っ直ぐだった。理由はわからないけど、彼らからは短い時間ながらも深い信頼が見て取れた。...失礼かもしれないが、君たちはどうにもそう見えなかった」 もしもサトシと梨花がこの状況に陥っていたら、囮に使った者ごと爆殺を狙うような真似はしないだろう。 生き残るためなら相手を切り捨てられる程度の関係だ。 「なのに、どうしてきみは彼女たちの為に命を捨てた?なぜ、僕たちに殺されると判っていても穏やかでいられる?」 だからこそメリュジーヌに取ってキウルの行動には疑問しかない。 彼とて、会ったばかりの人間に死ねと言われて死ぬほど愚かではないはずだ。 それに、サトシも真っ直ぐではあったけれど、自分を救えなかったことに対しては悔いているように見えた。 キウルは違う。 信頼を置けない者の為に命を賭け、これから先も殺戮を繰り返すであろう自分を止めようと訴えかけもしない。 それがメリュジーヌには不思議でならなかった。 「...そうですね。確かに私たちの間に信頼とかは無かったかもしれません。ディオさんは先に離脱してしまいましたし、ドロテアさんとモクバさんとは関わった時間も少ないですから。でも、三人で死ぬよりは一人が犠牲になって済むならそれでいいでしょう?」 「遺した後に不安はないのかい」 「ありますよ。けど、『やるだけやってダメだったら笑って誤魔化せばいい』...私の尊敬する人ならそうすると思ったので」 キウルとでなんでもかんでと信じるほど純粋なだけではない。綺麗なだけの人間なんていないのは、多くのヒトを見てきて学んでいる。 しかし、曲がりなりにも一国を背負う者ならば、それを見捨てて終わらせる訳にはいかない。遺した結果、どうなるかを頭ごなしに決めつけてはいけない。故に、彼は犠牲を最小限に済ませる方法を取っただけだ。 そして、メリュジーヌを言葉で止めようとはそもそも考えつかなかった。 既に一度説得しようとしてダメだったのだ。ならば、今さら心変わりができる類のものではないのだろう。 國への忠義と未来を重んじた結果、生き残る道も汚名を被らずに済んだ道もありながらも、最後まで自分たちと対立し続けたライコウのように。 ただ自分と彼女の道は交わることは無いのだと、キウルは骨の髄まで理解していた。 「...僕はこれから君を殺す」 メリュジーヌは剣の鋒をキウルに向け、ひとりごちる。 「紙一重だった。もしも爆発が時間差の無差別ではなく、一点集中型であれば。魔力で身体を防御するのが遅れていたら、無事では済まなかっただろう」 先の展開の確認をただ口に出しているだけだ。 「この会場でここまで肝を冷やしたのはこれが初めてだ」 だから、これはひとりごと。 サトシ達のように救おうと手を伸ばしてくるのではなく。例え守るモノを間違えていた道化だったとしても、ただ純粋に自分の強さと向き合ってくれた戦士へ。そして、たった一人しか愛せなかった自分とは違い、会って間もない人間にまで命を賭けられた幼き武士への敬意を言葉にしているだけだ。 「強かったよ、きみ」 その言葉に、キウルの頬から温かいものが零れ落ちる。 死への恐怖ではない。 誉高かった。これほどまでの戦士に認められたことが。これほどまでの強者に、対等な戦士として扱ってもらえたことが。 自分は間も無くこの剣に斬られて死ぬ。 「...ありがとうございます」 なのに、その心境はこれ以上なく穏やかなものだった。 「なに勝手に爽やかに終わらせようとしてんだクソ共」 メリュジーヌの剣に割って入るように、槍が投擲されキウルの胸を貫く。 「がっ...!」 苦悶の表情を浮かべるキウルのもとに、これみよがしにカツカツと地を鳴らす靴の音が近づく。 「...生きてたんだ」 「ええまあ。ご覧の有様でありんすがねえ」 シャルティア・ブラッドフォールン。その半身は焼けつき、魔法少女としての衣装もボロボロとなった彼女もまた、健在だった。 大爆発が起きる寸前、彼女は上位転移の魔法で建物の外へと退避。しかし、直撃こそはかわしたものの、その爆風まではかわしきれず。結果、その美しい顔の半分は火傷で爛れ、見る影もないほど醜く焼けていた。 「あぁお許しくださいペペロンチーノ様...あなた様から賜ったこの身体をこのような目に...それもこれもテメェがなぁ!!」 ただでさえ虫の息だったキウルの首元にシャルティアはその鋭利な牙を突き立て凄まじい勢いで吸血する。すると、苦悶に表情を歪めるキウルとは対照的に、シャルティアに刻まれた火傷がみるみるうちに治っていく。 「っ、ああああぁぁぁっ!!」 「...ふん、まあ、怪我もMPも回復したし、血の美味さに免じて、死体を魚の餌にするのだけは勘弁してやらぁ」 「ぁ...ぅ...」 ガクリと首を垂れ、力尽きるキウル。武士として満たされた最期になるはずだった少年の顔は、苦悶の形に歪められたまま、あえなくその生を終えた。 「さて、ついでにこいつも試させてもらいましょう」 シャルティアはランドセルから取り出した数珠をキウルの死体に向ける。すると、その珠の一つがぱかりと開き、キウルの死体を収納した。 「おー、ちゃんと入った」 「なんだい、それは」 「古代遺物、死亡遊戯。所有者が殺した者を珠に封じ込め、キョンシーとして使役することができる...らしいでありんすよ。こんなふうに」 シャルティアが数珠を振ると、再びキウルの身体が現れる。ただし、頭には『死壱』と札の貼られた中華帽が被せられ、その肌は死人同然に青色に変色していたが。 「なるほどこんな感じかーーーうん、悪くないでありんす」 動く屍と化したキウルに対してもシャルティアは物怖じしない。もとより彼女は死体愛好癖(ネクロフィリア)かつ、両刀(バイセクシャル)。メリュジーヌほどではないにせよ、キウルもまた美少年であった為、シャルティアのお眼鏡に叶ったのだった。 (これでゆくゆくはメリュジーヌを殺せば...ふふっ) MPも必要とせず死体を保管できるこれは自分にとってかなりの優良品だ。乃亜もたまにはいいことをする、とほくそ笑む。 「さてと。とにもかくにも、これでお互いのテストは合格ってこといいでありんすか?」 「...そうだね」 本当のことを言うと、お互いにまだ実力は見せきっていない。しかし、あのテストにおいて重要なのは組むに値する実力を有しているかどうかだ。あの爆発を互いにフォロー無しに乗り切ったーーーそれがお互いに落とし所としてちょうどよかった。 「これからどうするでありんすか?さっきの金髪を追うか、それともガキ二人を追うか」 シャルティアはキウルの死体を再び珠に収納しながら問いかける。 「いつまでも二人で行動する必要もないだろう。好きな方に行くといい」 「そっ。なら私は先に飛んでった金髪の方へ向かわせてもらうでありんす」 「わかった」 背を向け去っていくシャルティアを見つめながら、メリュジーヌが思うは、キウルのこと。 彼は自身の選択を小賢しい真似と忌避していた。 しかし、手段を選ばなかったことで本来は成し得ないはずの成果を残してみせた。 それは沙都子と同じことで。本来ならば開始数分で命を散らしていた彼女は、今もこうして暗躍し続けている。 手段を選ばなければ。非情になってしまえば。力のある者ならば尚更成せることは増えるだろう。 殺し合いに乗ったのだ。既に外道の道に進んでいる身だ。 ーーー本当は、分かってるんじゃないのか?こんな事をしても…誰も救われないって 君の大切な人も、メリュジーヌ、君自身も ーーー希望や……奇跡って言うのは、意外としぶといものなのですよ。 ーーー『やるだけやってダメだったら笑って誤魔化せばいい』...私の尊敬する人ならそうすると思ったので なのに、サトシ達やキウル達の言葉がこびりついて離れない。まるで自分にはない輝きに縋るように。彼らのような、後に遺せる者達を羨むように。 「...お笑い種だな。これじゃあどっちが強いかわかったものじゃない」 キウルは自分を強い人だと敬意を評してくれたが、他者に、一つの愛に依存することしかできない自分のどこが強いというのか。 「さて...」 気を取り直し、これからの方針を考える。もしも、ドロテア達が向かった先に本当に孫悟飯がいれば、もはや彼との激突は避けられないだろう。それでも構わないが、口も頭もまわる沙都子も一緒ならうまく対処できるだろうか。 (このまま彼らを追うか、それとも一度沙都子と合流するか...さて、どうしようかな) 【キウル@うたわれるもの 二人の白皇 死亡・キョンシー化】 【F-6/1日目/午前/中央司令部跡】 ※中央司令部は爆発で瓦礫の山になりました ※磁力の指輪@遊戯王デュエルモンスターズ、チーターローション@ドラえもんは燃え尽きました 【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】 [状態]:ダメージ(小)、自暴自棄(極大)、イライラ、ルサルカに対する憎悪 [装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』、M61ガトリングガン@ Fate/Grand Order [道具]:基本支給品×3、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王DM、 デザートイーグル@Dies irae、『治療の神ディアン・ケト』@遊戯王DM、Zリング@ポケットモンスター(アニメ) [思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。 0:沙都子と合流するか、このまま追いかけるか 1:孫悟飯と戦わなけばいけないかもね 2:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。 3:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。 4:ルサルカは生きていれば殺す。 5:カオス…すまない。 6:絶望王に対して……。 [備考] ※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。 ※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。 ※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。 【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】 [状態]:怒り(中、いくらか収まった)、MP消費(吸血によりほぼ回復)、 スキル使用不能、プリズマシャルティアに変身中。 [装備]:スポイトランス@オーバーロード、カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 、古代遺物『死亡遊戯』。 [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1 [思考・状況]基本方針:優勝する 0: 先に飛んで行った金髪(ディオ)を追いかける。 1:真紅の全身鎧を見つけ出し奪還する。 2:黒髪のガキ(悟飯)はブチ殺したい、が…自滅してくれるならそれはそれで愉快。 3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。 4:武装を取り戻し次第、エルフ、イリヤ、悟飯に借りを返す。 5:メリュジーヌの容姿はかなりタイプ。 6:可能であれば眷属を作りたい。 [備考] ※アインズ戦直後からの参戦です。 ※魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。 ※その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。 ※スキルの使用可能回数の上限に達しました、通常時に戻るまで12時間程時間が必要です。 ※日番谷と情報交換しましたが、聞かされたのは交戦したシュライバーと美遊のことのみです。 ※マジカルルビーと(強制的)に契約を交わしました。 ※死亡遊戯には現在キウルのキョンシーが入っています。 【古代遺物『死亡遊戯』@アンデッドアンラック】 シャルティアの支給品。 所有者が殺した者を珠に封じ込めキョンシーとして使役できる。キョンシーと化した者は ①所有者を守る ②所有者の命令は絶対に従う の2つのルールを課せられる。 所有者が死亡または変更された場合、封じられていたキョンシーは消滅し、空の状態に戻る 【チーターローション@ドラえもん】 ドロテアの最後の支給品。 ローション型の道具で、これを足に塗ると、第三者からは姿を確認出来ないほど素早く走れるようになる。 持久力は使用者本人に依存する。 【磁力の指輪@遊戯王デュエルモンスターズ】 闇の支給品。 装備者の攻撃力と守備力を500ポイントずつ下げる。相手は装備者以外に攻撃できなくなる。このロワにおいては装備者の存在や場所を大まかにでも意識した瞬間に発動していた。 【H-7/1日目/午前】 【ドロテア@アカメが斬る!】 [状態]左腕骨折、全身にダメージ(大)、疲労(中) [装備]血液徴収アブゾディック、魂砕き(ソウルクラッシュ)@ロードス島伝説 [道具]基本支給品 セト神のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険、城ヶ崎姫子の首輪、永沢君男の首輪 「水」@カードキャプターさくら(夕方まで使用不可)、変幻自在ガイアファンデーション@アカメが斬る! グリフィンドールの剣@ハリーポッターシリ-ズ、チョッパーの医療セット@ONE PIECE [思考・状況] 基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。 0:孫悟飯を探し出してメリュジーヌとぶつける 1:とりあえず適当な人間を三人殺して首輪を得るが、モクバとの範疇を超えぬ程度にしておく。 2:写影と桃華は凄腕の魔法使いが着いておるのか……うーむ 3:海馬モクバと協力。意外と強かな奴よ。利用価値は十分あるじゃろう。 4:海馬コーポレーションへと向かう。 5:キウルの血ウマっ! [備考] ※参戦時期は11巻。 ※若返らせる能力(セト神)を、藤木茂の能力では無く、支給品によるものと推察しています。 ※若返らせる能力(セト神)の大まかな性能を把握しました。 ※カードデータからウィルスを送り込むプランをモクバと共有しています。 【海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ】 [状態]:疲労(絶大)、ダメージ(大)、全身に掠り傷、俊國(無惨)に対する警戒、自分の所為でカツオと永沢が死んだという自責の念(大)、キウルを囮に使った罪悪感(絶大) [装備]:青眼の白龍(午前より24時間使用不可)&翻弄するエルフの剣士(昼まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ 、ホーリー・エルフ(午後まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ 雷神憤怒アドラメレク(片手のみ、もう片方はランドセルの中)@アカメが斬る! [道具]:基本支給品、小型ボウガン(装填済み) ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×10 [思考・状況]基本方針:乃亜を止める。人の心を取り戻させる。 0 キウル...ごめん... 1:東側に向かい、孫悟飯という参加者と接触する。 2:殺し合いに乗ってない奴を探すはずが、ちょっと最初からやばいのを仲間にしちまった気がする 3:ドロテアと協力。俺一人でどれだけ抑えられるか分からないが。 4:海馬コーポレーションへ向かう。 5:俊國(無惨)とも協力体制を取る。可能な限り、立場も守るよう立ち回る。 6:カードのデータを利用しシステムにウィルスを仕掛ける。その為にカードも解析したい。 7:グレーテルを説得したいが...ドロテアの言う通り、諦めるべきだろうか? [備考] ※参戦時期は少なくともバトルシティ編終了以降です。 ※電脳空間を仮説としつつも、一姫との情報交換でここが電脳世界を再現した現実である可能性も考慮しています。 ※殺し合いを管理するシステムはKCのシステムから流用されたものではと考えています。 ※アドラメレクの籠手が重いのと攻撃の反動の重さから、モクバは両手で構えてようやく籠手を一つ使用できます。 その為、籠手一つ分しか雷を操れず、性能は半分以下程度しか発揮できません。 ※ディオ達との再合流場所はホテルで第二回放送時(12時)に合流となります。 無惨もそれを知っています。 【ホーリー・エルフ@遊戯王デュエルモンスターズ】 ドロテアがブルーアイズの一部を使い、錬金術で生み出した。 かよわいエルフだが、聖なる力で身を守りとても守備が高い。 【ドロテアの錬金術について】 どうやら、デュエルモンスターズのカードに使用すると、その攻撃力や守備力相応のモンスターカードを錬金できるようだ。 101 神を継ぐ男 投下順に読む 103 割り切れないのなら、括弧で括って俺を足せ 時系列順に読む 094 A ridiculous farce-お行儀の悪い面も見せてよ- ドロテア 116 セイラム魔女裁判 海馬モクバ 099 DRAGON FLY メリュジーヌ 112 狂気と惨劇の舞台へ シャルティア・ブラッドフォールン 111 竜虎相討つ! 094 A ridiculous farce-お行儀の悪い面も見せてよ- キウル GAME OVER
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『予定されていたすべての準決勝が終了いたしました!見事決勝進出を果たした新人アイドルは以下の六名となっております! 優勝の発表予定は〇月△日を予定しております!新たな新人アイドルの頂点の栄光は誰に輝くのか、乞うご期待! ── ── ── ── ── 七草にちか』 W.I.N.G.公式アカウント、と銘打たれたアイコンの下に並ぶ名前の、その一番下に書かれた自分の名前を、どこか他人ごとのように見つめる。 ぼうっと眺めていたその文字列は、最新の投稿を知らせる通知によって押し流されて。 『七草にちかのW.I.N.G.決勝進出が決定しました!ここまで来れたのは偏に皆様の応援のお陰です。精一杯頑張りますので、最後まで応援よろしくお願いします!(スタッフ)』 その文字列を数秒見つめた後で、目を逸らすように画面をスワイプする。 流れてくるのは、雑多な文字列。アイドルをはじめとした様々なアカウントから毎日のように流れ出る、他愛もない情報の奔流。 『@WING_official 〇〇ちゃん残った!楽しみ!』『【新譜発売のお知らせ】今月の注目はストレイライトのサードシングル──』『明日は課題やらなきゃ!それと──』『@nichica_SHHis 頑張れー!』『警視庁の公式発表によれば、最近の東京都内における治安悪化の対策に向けた新たな警察部隊の編成を──』『@WING_official 八雲なみの子?』『【プロダクト】斑鳩ルカが出演するトーク番組のオリジナル商品が──』『@Sonoda_chocolate チョコちゃんかわいい!』『高校だるい』『今日のしあわせ~は──』『アンティーカLP現地二日目きた!!!!!!!』『動画上げました!【2X・夏】プチプラのススメ【これからのトレンド】』『今日も一日──』『渋谷区の建設中のビルにおいて事故が発生し一名が亡くなる事件が──』『SNSサービス・ツイスタでも注目を浴びる──』『八雲なみ歌詞bot』『@nichica_SHHis 283はやっぱり凄いけど、まだ研究生扱いなのはなんでなんだろ』『割引クーポン配布中!今なら新商品が──』『@WING_official 283の子残ったのか』『【定期ツイート】イルミネちゃん一生推す』『皆で喫茶店。季節限定うま。』『ever cheeryのポーチゲット! #まな #神まな』 好きなもの。同業者の情報。いつも使っているクーポン。お洒落。 年頃の少女にほんの少し偶像の世界が織り混ざった羅列を見るのは、嫌いではない。元から──ここに来る前からの、変わらない日常のルーチン。 ──ただ。 『やば……生で見ちゃったかもしれん』 ──ならばこそ、そこに混じる不純物は、この日常が非日常であると認識させる。 「──うわ」 つらつらと眺めていたタイムラインに、辛うじて輪郭が分かる程度のぶれた写真と共に「彼」の名前が現れたのを見て、七草にちかは思わず声を挙げた。 下手をしたら自分どころか、同じ事務所に所属する人気アイドルすらも余裕で抜き去りそうなインプレッションの数に、流石に辟易とする。 『すっごい人気者じゃないですか。凄いですね、英雄って』 『それはあえて姿を表したものですので。ですが、この地でも不肖の私をこうして皆様に愛していただけるのは有難い限りです』 そう虚空に問いかけてみれば、律儀にも返事が帰ってきた。 まさかこんな急に話しかけても分からないだろう、と高を括っていた分、その几帳面さがにちかの癇に障った。 ──彼を召喚してから、こうした念話での会話は幾らかしているものの、彼と対面して直に話したことは召喚した瞬間を含めても片手で足りるほどしかない。 それは彼自身が非常に特異なサーヴァントであり、召喚された時点でその真名が会場内のほぼ全域に知れ渡るからこその措置である、と説明はされたものの、自分のようなものはともかく事務所の他アイドルなどすらも超える程の扱いをされているのを見ると まして、彼が本来戦争など起こらない筈の現代日本において『英雄』として扱われ、あまつさえ各種行政機関やメディアにすら取り扱われるスター的存在。 事務所の仲間──社長やプロデューサー、美琴さんなども当然に知っていて、その影響は芸能界にすら届いているというのだから凄まじいものだ。 『サーヴァントって、目立っちゃダメなんじゃないんですか?』 『他のサーヴァントであれば、ですが。私は些か特異な身でして』 嫌味のようなニュアンスを込めても、凛々しい声はひらりとその癇癪をかわして耳障りのいい言葉を返してくる。 念話ですら涼やかで凛として通る声だ。アイドルの囁きと言われても反論が出ないであろうその声で呼ばれれば、さぞかし振り向く人も多いだろう。 『それにしても、このご時世に英雄って……お姉ちゃんまで、信じてるなんて』 『少なくとも、この東京においても秩序を守る英雄として任せられていることは、ひとかどの英雄として光栄なことではありますね。この身には過ぎた栄光とも思えますが』 それが当たり障りのない謙遜である、ということに、理由もわからぬ苛立ちが募る。 英雄。輝かしい──否、この会場の誰よりも輝かしい存在である彼が、丁寧に過ぎるというのも一つではある。 そして、それを、よりによって自分のような人間に召喚させた運命が──聖杯とやらの采配が、とにかく腹立たしかった。 『──さぞかし、立派な英雄だったんですね、ロスクレイさんって!』 困っているか。それとも呆れているか。あるいは侮蔑されているだろうか。 こうして叫ぶしかできない愚かな少女を、絶対なる英雄は、どのように見ているのだろうか。 『──私なんて、どうやって立てばいいかすら──』 言おうとして、続かなくなる。 分からない。怖い。 処理できていない感情が、形を成すことすらできず滓となって積もる。 『……マスター。マスターの仕事について、門外漢の私から伝えられることはないでしょう』 ──聞きたくなんてない。 英雄としての言葉。我が儘な少女をあやすような美辞麗句と、どこまでも輝かしい栄光に彩られた言葉。 そんな言葉は惨めになるだけで、そしてそんなこと──自分が惨めなことなど、とうに知っているのだから。 『その上で、私が敢えて言うのであれば』 けれど、そんな思いとは裏腹に。 絶対なる英雄は、その、どこまでも涼やかで凛とした声で。 『マスター、あなたは、そのアイドルという仕事を──どのように思っていますか?』 ──七草にちかにとっての、核心を突いた。 『──それは──』 迷いなく、答えられた筈の問い。 七草にちかにとってのアイドル。その顔貌。 それは間違いなく、たった一つしかない。 だから、それを答えればいい。 その筈だった。 ──そうなの? 白盤と手書きの文字。 12インチのいつかの叫び。 何に問いかけるでもない問いかけ。 いつも聞いているあの曲の、哀しそうな── 『──ッ』 『……マスター』 答えられない。 存在した筈の答えの場所に、今は空虚が収まっている。 その欠落を、伽藍の洞への恐怖を誤魔化すように、耳を塞ぐ。 『……もう、いいです。私、寝ますから』 『……それが良いでしょう。貴方も大事な出番が控えているのですから、貴方はそちらで貴方のするべきことを。 此方は、私が為すべき事を為します。お任せくだ──』 最後まで聞かないまま、念話を打ち切る。 どこまでも、丁寧にこちらの身を案じてくる彼の言葉は、なるほど正しく英雄のそれだ。 英雄として完成されているように聞こえる彼の言葉を、聞いていたくはなかった。 「……」 もう一度、SNSに目を通す。 タイムラインを遡れば、先程見たW.I.N.Gの告知ツイートが目に入る。 聖杯戦争という会場で、本来の世界からは歪んでいて──しかし、自分が立ち向かわなければならない舞台だけは、律義にもこの世界でも行われようとしている。 それを目にする度に、自分は思う。 ──どうして、私はステージに立っている? 笑う為の戦いだと、彼は言った。 これで終わらない為に──終わったとしても悔いのないように、笑えるようにする為のものなのだと。 ──なのに。 私はもう、どうやって笑えばいいのか分からない。 私の笑顔が模倣していた彼女の笑顔が、紛い物だったのかもしれないと、疑念を抱いてから。 私が履こうとしていた靴そのものが歪んでいた可能性など、考えたことすらなかったから。 「──なみちゃんが」 もし、このSNS全盛期の今、生きていたら。 あるいは彼女も、こんな風に一挙一動に反応が飛び交っていたのだろうか。 その光景を夢想して──八雲なみの情報が、音楽が、唄声が流れ出るインターネットの海を夢に見て。 ──そうなの? それを見て、私も無邪気に喜んでいたのだろう。 けれどそこに、私は何を見出していたのだろうか。 彼女がもしその光景を見たら、彼女は、笑えていたのだろうか。 ──なみちゃんは、幸せだったのか。 答えは出ない。 二十年も前に、その問いは放たれて。 私にとっても、もしかしたら彼女にとっても、答えが返ってくることはなくて。 ──あるいは。 「……あなたは、どうなんですか。ロスクレイさん」 彼に聞けば、分かるのだろうか。 彼を模倣すれば、あるいは、誰かに希望を持たせる偶像の在り方を知れるのだろうか。 ──あるいは。 ──彼すらも、そうなのだろうか。 ──その英雄の仮面の裏に、もしかしたら──ただの、人間としての素顔が── 「……ばかみたい」 ──時は、僅かに遡る。 SNSに彼の姿が投稿されてから、僅かにもしない頃──絶対なるロスクレイは、その撮影地点に程近い工事現場に佇んでいた。 周囲に人影は見当たらない。人を見たのは、数本前の通りで路駐して眠っているタクシーの運転手が最後だ。 およそ彼の華々しい容貌とは似合わぬ暗闇の中で、彼は一人棒立ちになる。 「──さて」 同時に、これまで着ていたスーツが一瞬のうちに鎧甲冑へと変わる。 世間に見せている「英雄」としての姿を、誰もいない場所で表す。それは紛れもなく──彼が、「本来東京都に存在するはずのない英雄」であることを知っている存在と相対する為。 「誘い込んだ、か──だがまあ、英雄として賞賛に値するぞ。絶対なるロスクレイ」 ──果たして。ロスクレイの前で、それは現れる。 霊体化を解いたサーヴァント──真名も知らぬセイバーが、獰猛な笑みを浮かべてロスクレイを見据えていた。 セイバーの主従は、元よりロスクレイを──目立つ位置にいる英雄を、仕留める為に行動を起こしていた。 彼が今この近辺にいることを、マスターの持つ端末からSNSを通して認識できたことは、彼等にとっては僥倖といえただろう。 「本戦が始まればいざ知らず、予選ともなれば必要以上に騒ぎを大きくする必要もない。ご理解戴けていたなら──」 「今更、御託はいい。これ以上の言葉は不要だ」 ロスクレイの言葉を切って捨て、セイバーは無造作に剣を抜く。 同時にロスクレイも、鞘から剣を抜き放ち、正眼に構えてセイバーを見据えた。 数秒、空間に静寂が下り──瞬間、裂帛の闘気が空気を割いたかと思えば──次の瞬間には、セイバーはロスクレイへと深く踏み込んでいた。 「──貴様の剣を見せろ、ロスクレイ!」 一合。互いの剣と剣が衝突し、一瞬の火花が暗い闇の中の工事現場を照らす。 セイバーの質量と膂力を乗せた一撃が、一瞬のうちにロスクレイへと迫っていた。 辛うじて踏みとどまるも、徐々に押されつつあるロスクレイは、鍔迫り合いから脱却する為に姿勢を下げる。 「【──からトウキョウの土へ】──」 瞬時に、相対するセイバーの足元の地面が胎動する。 距離を取ったのはこの為か、と理解すると同時に、今度はロスクレイが吶喊する。 一歩引きながら剣の腹で受け、次いでセイバーが繰り出したのは小ぶりな突き。点の攻撃でこそあれど、その一閃は確かにロスクレイの致命を見据えている。 辛うじて間に合ったロスクレイの防御が、その道を阻み──しかし、その剣には不可逆の罅がひた走る。 「この程度か──!」 剣が無ければ、ロスクレイも只の木偶と同じ。精々が先の魔術程度であれば、殺すのは容易い。 しかし、その想像を裏切るようにして、セイバーの剣を剣閃が遮る。 見れば、そこには新たな剣を手にしたロスクレイ。どこから、と思えば、セイバーがつい先程立っていた地面に、不可思議な隆起の痕がある。 ──最初から、この為の工術。足場を狂わせたのも、あくまで副産物に過ぎない。 (最初の一撃で、既に剣を捨てることを決意していたか) その判断力の素早さに、内心でほう、と舌を巻く。 事実、セイバーの渾身の踏み込みを受けた時点で、並みの無銘の剣ならば折れることもあろう。ロスクレイともあろうものが無銘を使っていることは意外でこそあったが、新たなる剣を持っているというのであれば納得もできる。 (ならば、もう一度──) 瞬時に踏み込み、再び先と同じ最速、渾身の剣閃。 だが、同じ手は決して絶対なるロスクレイへの決め手には成りえない。 流麗な受け流しの一手が、剣にかかる負担を最小限へと抑えながら、セイバーの剣の行先を誘導する。 そのまま追撃を加えんと振り被るロスクレイに、しかしセイバーもされるがままになることはない。 下段にて凌ぐセイバーと、上段より打ち下ろすロスクレイ。二度、三度と繰り返されたその剣戟から這い出るようにして、セイバーが 「【──土へ。形代に映れ。宝石の──】【──虹の回廊。隠れし天地を回せ──】」 「くっ──」 その隙を突くようにして、意識外からふわりと剣が浮かび上がる。 詞術──工術によって作られた剣が、力述──浮遊したかと思えば、セイバーの一閃を受け止めていた。 ロスクレイに届くことなく阻まれた剣閃をセイバーが訝しむ暇もなく、襲い掛かるはロスクレイの鮮やかにして正しき弧を描く一閃。 紙一重で回避したセイバーの目の前を、僅かに寸断された己の毛先がひらりと舞った。 「……なるほど。正当なる、故に強かな剣の使い手。またその術式。共に備えている──実に素晴らしい。英雄と呼ばれるだけはある、といったところか」 「お褒めに預かり、光栄の限りです」 セイバーの美辞麗句は、決して皮肉ではない。 少なくともただの白兵戦において、ロスクレイは達人の域にいる。その剣そのものを宝具とする程の神域には在らずとも、王城剣術の基礎を徹底して磨き上げたその剣技は只人のレベルを遥かに凌駕している。 純粋な決闘──それにおいて、なるほど、ロスクレイは英雄として担ぎあげられるに相応しきサーヴァントと言えるだろう。 「ならば、その正当な剣術と魔術を以てして、或いは貴様の持つ秘技を以てして──」 ならばこそ。 その奥にある神髄こそを、断つ。 「コレを受けてみせろよ、ロスクレイ」 瞬間。 空間の魔力が滞留したかと思えば、セイバーの剣に、四肢に、それが流れ込んでいく。 傍目に見ても、明らかに異質だと分かる魔力量。サーヴァント同士であれば、 濃密なマナの質量に淀んだ大気が、ロスクレイとセイバーを包む。 あくまで構えを崩さぬロスクレイに、セイバーは再び獰猛な笑みを向け── 「──お前ら!こんなところで何をやっている!」 不意に、声が聞こえた。 振り返りこそしないが、ちらりと意識を向ければ、そこにいるのは警察官と思しき服装をした二人組。 武器を携え戦闘している此方を警戒したか、既に携行しているのであろう銃器を構え、こちらに照準を向けている。 工事現場の警備員か、はたまた警察か──奥まったといっても、この都市では見つかる可能性があるということか。 「不純物が──」 面倒だと思いつつも、今は無視する。 神秘の秘匿がこの聖杯戦争で処理されるかどうかは知らないが、もし知られても見られたことを消すのはセイバーにとってそう難しいことではない。 そもそも、神秘のこもっていない弾丸など英霊にとっては些事。自分が傷を負う恐れなどない。 ならば、この一合を放った後。その後でも遅くはない。 故に、セイバーは己が剣の切っ先をロスクレイよりぶらすことは無く。 神速の踏み込みと共に、剣に込めた魔力をブーストして、一気に距離を── ──何かがおかしい。 先ぶれはあった。感じていた。 この場所に来た瞬間から、何かの違和感を、ずっと。 一見して、入りにくいだけで何の変哲もない空き地だ。周辺に人が集まるような場所ではなく、さりとて彼等のような部外者が駆けつけることが不自然な程離れている訳でもない。 だからこそ絶対なるロスクレイは、こうして工事現場に入った。自分を察知してのこと。自然な行動だ。マスターが何処にいるのかは不在だが、誰もいない場所で打ち合うのは市民を守る為の彼の行動として当然のことである。自分がそうしたように。 違和感はない。 何も。 無いはずだ。 けれど。 何だ。 何かを感じる。 それは例えば、この工事現場の上空から微かに聞こえ続けている、僅かなプロペラの音。 それは例えば、本来この時間帯なら片付けられていないとおかしいような重機の影。 それは例えば、此方を見るやすぐに銃を抜き構えていた、警官たちの用意の早さ。 それは例えば、宝具を使おうとした今この瞬間を狙いすましたかのような乱入。 一つ一つは、あるいは偶然かもしれない。 けれど──この刹那、彼は確かにその偶然が、必然である可能性を考えた。 それは英霊としての直感。 彼自身が養ってきた戦場での勘が、それらを繋げろと叫ぶ。 目を向ける。 一見、英霊には通じようがないであろう銃。──本当に? 闇にとうに慣れた視界が捉える。 それは普段、日本国の法令で警官が携えているものとは明らかに異質なもの。 アサルトライフルという種類の、突撃小銃。 ──ぷしゅ、ぷしゅ、ぷしゅう。 サイレンサーで消音された銃声が、一切の躊躇なく己だけに放たれたことを認識して──瞬間、セイバーの体は全力で跳ねた。 銃撃を避けることができたのは、偏に彼の英霊が瞬発力に秀でていたからに他ならない。 辛うじて銃撃を避けたセイバーが、再び構えを直そうとして、──終わらない。 「【──土の源。片目より出でよ。閃け】」 詞術の追撃。 これまで全く見せていなかった雷の詞術が、筋肉の硬直を起こしてセイバーの動きを制限する。 その中で、一直線に吶喊してくるロスクレイ。 狙う先は自分。恐らくは霊核を狙った、神速の突き。 だが、まだだ。まだ対応できる。 貯め込んだ魔力は、未だ拡散せずに宝具として解き放たれる時を待っていた。 小細工が漁夫の利を狙ったものか、それともロスクレイの仕込みかは知らないが──今この瞬間斬ってしまえば、それも終わる。 ロスクレイが此方に辿り着く前に、宝具を開放する。この差であれば、まだ自分の方が早く、ロスクレイの霊核を穿つことができる。 それを理解し、セイバーが口の端を歪めた、その刹那。 ──ぱしゅ、と。 先程聞いた音が、先程とは違う場所から響いたと思えば。 繋がっていることを認識していた魔力パスが、途切れていた。 今にも放たれようとしてした宝具の為の魔力にラグが起こり、セイバーが一瞬の膠着に陥る。 「貴様」 それは、即ち。 「ロスクレイ」 セイバーのマスターが、死亡したということ。 それも──今の状況下においては、間違いなく、ロスクレイ自身の策略によって。 最早疑う余地はない。 これは、仕込みだ。 英霊を狙うことを可能とした弾丸、乱入のタイミング、ロスクレイ自身が謀ったことを示して此方の注意を引く策略、凡て掌の上。 この場所に入った瞬間から──あるいは、彼がロスクレイを標的と定めた、その瞬間から。 ロスクレイは、この一瞬の為の、仕込みを── 「──ロスクレェェェェェイ!!!!!!!」 激昂する。 剣の道を汚した男を。 英雄と名乗り、栄光を浴びながら、その実、対等な筈の争いに不純物を混ぜ込んだ男を。 怒りのままに、保持した宝具を解禁する、その刹那。 「──これが、私の宝具です」 ロスクレイの、理想的なまでに研ぎ澄まされた一振りの剣撃が──霊核より先に、剣を持つ手を切り落とす。 それを支えるのは、詞術によって形作られた大地の足場。 開放先を失った魔力を持て余した次の刹那に──ロスクレイが放った返す刃は、やはり完璧な軌道をなぞるように。 セイバーの霊格を、その胴体ごと逆袈裟に斬り払っていた。 「──ロスクレイです。戦闘は終わりました。霊器の消滅まで確認しています。マスターについては──」 ──警察組織への連絡。サーモグラフィ―を搭載したドローンによるマスターの位置把握。事前に潜入していた工作班。詞術士の適切な詞術発動の為の随所の監視カメラ。 この工事現場そのものが、絶対なるロスクレイの策謀の下にあった。 細工によってロスクレイ自身に集中させ、セイバーの警戒がロスクレイへと集中した時点で──銃撃に気付いたマスターが此方を見ることを警戒し、これを殺害する。 一歩間違えば宝具開放に間に合わない危険な策ではあるものの、マスター・サーヴァントに気付かれないように仕込むという点においてはリスクを抱え込まなければいけない必然性が存在した。 『了解した。こっちでも追って処理する。今のところ、予選のうちにあんたで大物食いしようって奴はこいつで最後だ。しばらくは落ち着くだろうさ。本来は、マスターを日常のうちに暗殺するのが一番楽ではあるんだがねえ』 「確かに最良ではありますが、霊体化しているサーヴァントの不意を突くのはリスクが大きい。把握しているだけでも最良と言えるでしょう」 『まあな。それに、こっちで監視してるマスター候補で結託できそうな奴等についても幾つか当ては作ってある──勿論、こっちの細かい事情まで伏せて付き合ってくれそうな奴等をだがな』 「感謝します」 それからも幾らかの連絡事項を交わしながら、この奥まった工事現場に入る為の唯一の経路を戻る。 路地から人気のない道に出れば、そこには先程から変わらず路上駐車しているタクシーが一つ。 誰もいない場所で職務怠慢をしている──傍目からはそう見えていたであろう、先の警察を装った特殊部隊に連絡を取った運転手の待つタクシーに乗り込む。運転手──正確にはそれを装った公安所属の男は、ロスクレイの無事を確認すると何も言わずに車を出した。 後部座席で緊張を僅かに解きながら、ロスクレイは通話を終えた自らの端末に目を落とした。 (この端末…スマートフォンというらしいこれを弄ることにも、大分慣れた、か) 通信手段としての優位性の高さから、過去に客人が持ち込んだラヂオと比べても非常に隠匿性・伝達性・通信速度が高いスマートフォンは、彼の戦い方からすれば欠かせないものだ。 特に、SNSやメディアといった露出──神秘の秘匿を盾に暴く、あるいはマスターを追う手段等様々な工作に用いることができるこれは、他のサーヴァントには恐らく存在しようのない手段だ。己自身の不正について暴かれうる諸刃の剣にならぬよう、関係各所への根回しも既に済ませている。 (……これも、その一手) 部下に撮影させ、当たり障りのないプライベートアカウントを装ってロスクレイ自身の所在を喧伝させたSNSの投稿を見る。 あえておびき出す形で露出したのも意図的──打倒ロスクレイを掲げた主従が、複数の対ロスクレイ派閥と結託する前に隙を見せる。千載一遇の好機に乗ってくるかどうかまでは賭けだったが、予選序盤から積極的に動いていた好戦性に十分な担保はあったといえる。 とはいえ、やはりサーヴァント相手は決して並みならぬ戦いになることは避けて通れぬ道。 幸い、嘗ての六合上覧に顔を並べたような修羅と相見えることこそまだないが、そういった規格外の強者と戦うことになる機会もあるいは存在し得る。 また、今回のような相手でも、事前に宝具を防ぐことができなければ何もできずに倒れていた可能性も十分にある。 (……となれば、有力な他参加者との同盟を結ぶことも必要な手段となりうる、か) 幸い、ロスクレイ自身が聖杯にかける望みが必然性を伴わない──即ち、『聖杯を譲る』という最大の選択肢を筆頭に、少なくないカードを交渉手段として切ることができる。 ロスクレイがこの聖杯戦争において最低限叶えなければいけないのは、マスターの安全な帰還のみ。 そうであるならば、利用するべきは── 『すっごい人気者じゃないですか。凄いですね、英雄って』 ──七草にちかからの念話が来たのは、そんな時だった。 「……マスター」 念話を終えて、ロスクレイは嘆息する。 今のところ、召喚時を除いて彼女との直接接触はほぼしていない。ロスクレイの持つ単独行動スキルと、宝具による「絶対なるロスクレイ」としてのこの世界における立場の確立。その社会的地盤がある以上、ロスクレイとにちかの関わりは令呪という一点以外にほぼ存在しない。 そして、この聖杯戦争においては、かつての六合上覧のようにマスターとサーヴァント揃ってこそ参戦が認められる。人理の影法師として、守るべき人も襲い来る危機もないこの土地におけるロスクレイの所在はともかくとしても、自分を失った後にちかがどうなるかは決して保証できない。 そしてそうであるならば、絶対なるロスクレイが最も恐れるべきことは──自分のアキレス腱であるとして、にちかが命を狙われ、殺されること。 だからこそ、接触は最小限に──イスカと接していた時のように、細心の注意を払いながら。対面の機会は、極力絞るしかない。 ──だが。 忘れられない。忘れようもない。 召喚された時に見た、七草にちかの表情を。 まだ年若く、両親の庇護も欠けている中で、『アイドル』なるものを志している、と彼女は言っていた。 当世の知識を与えられただけのロスクレイからすれば、そこに賭ける情熱や意志を正しく推し量ることは決して簡単ではない。 それでも、分かることはある。 ロスクレイが培った、あるいは彼自身が持つ一つの才能。 観察と思考──彼を英雄たらしめた最初の能力は、彼女の表情の中に。 その情熱を、意志を支えていた「何か」が、消えてしまっていたことを。 スマートフォンを開き、ホーム画面に置いた一つのアイコン。 七草にちかのホームページへのリンクとなっているそれを開けば、そこには彼女が半年以上かけて受けてきた数々の仕事の実績が出てくる。中には、動画サイトに投稿された映像を見るものもあって。 そこに映っている七草にちかの姿は、確かに輝いているように見える。 けれど、分かる。朧気に。 それが何かの模倣である──『演技』であること。 絶対なるロスクレイが──『英雄』の『演技』をし続けたからこそ、分かること。 ──ある男を思い出す。 幼き頃の自分に、英雄としての立ち居振舞いを教え──勿論、当人もそんなつもりは無かっただろうが──結果的に、英雄ロスクレイが生まれるきっかけを作った男。 自分はいずれ主演男優になるのだと嘯いて、けれど結局ただの服膺のナルタとして死んでいった男のこと。 ──もう一つのページに飛ぶ。 七草にちかの、最も大きな「次の仕事」。 そのエントリーの為にこれまでの仕事があったと言っても過言ではない、新人アイドルとしての集大成。 『wingファイナリスト一覧』 『七草にちか』 彼女が挑まなければならない、彼女にとっての、戦場。 ──ある戦を思い出す。 自分がどうしようもなく矮小で、戦から逃げてしまいたいと思うような臆病者だと思い知ったあの日。 自分に英雄の器がないと知り、さりとてただの一兵卒として死にたくないと願ったあの戦場。 それでも尚──己自身の観察と思考で、栄誉ならぬ勝利を掴んだあの竜殺しの日。 英雄としての在り方を、英雄という演目を、演じ切ると誓ったあの日。 ──ああ。 彼女は、きっと分かっている。 彼女の心の中にある偶像が、この世に存在しないことに。 偶像などなく、そこにはただの少女が──取るに足りない一人の人間がいるしかないということに。 故にこそ、ロスクレイは祈る。 その虚像の果て、それでも信じたい何かを、彼女が見出すことを。 あるいは、その為に絶対の偶像が必要ならば──ロスクレイは、彼女に恥じぬ英雄でいることを誓おう。 嘗てと同じように、この英雄としての演目を終幕まで演じ切り、彼女にその作法を授けよう。 そして、あるいは。 七草にちかが、その砕けた虚像を踏み砕き、彼女自身が体現するべき信ずるものを見つけた時は。 彼女にとっての真業を見出した、その時は。 偶像になれないと嗤いながら、なお偶像を望み、その果てに偶像を見失ったもの。 英雄などないと嘆きながら、なお英雄を背負い、その果てに英雄を形作ったもの。 私が/誰かが仰ぎ見た虚像の中で。 ただの少女は道に迷う/ただの青年は道を進む。 願われし偶像と只人の境界──その地平に、何があるか未だ知らぬまま。 それは形振りすら構わぬ、憧憬への飽くなき執念を持つ。 それは己が欠落を嗤い、羨望を以て自己を形成する歪みを孕む。 それは嘗ての偶像の声ならぬ哀哭を、無意識のうちに内面化している。 いつかの歓びと哀しみに魅せられた、ただの、それ故に特別な少女である。 人間(ミニア)。偶像(アイドル)。 哀しき── 【クラス】 ヒーロー 【真名】 絶対なるロスクレイ@異修羅 【パラメーター】 筋力:B 耐久:B+ 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:EX (宝具『絶対なるロスクレイ』により、何等かの方法でマスター・他のサーヴァントなどがパラメータを観測した場合は筋力:A、魔力:Aと表示される) 【クラススキル】 対英雄:EX 英雄を相手にした際、そのパラメータをダウンさせるスキル。 彼の持つ対英雄スキルは稀有なこのスキルの中でも異質なものであり、彼と敵対しないものから「絶対なるロスクレイは正しい側に立っている人間である」と認識され、常に彼こそが英雄だと認識される。 それは翻って──何者であれ、彼と対峙したものは英雄に倒されるべき邪悪に成り果てるということである。 【保有スキル】 絶対なるカリスマ:A+++ 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。 中でもロスクレイのカリスマは、最初から敵対の意思がない場合、その行動と意志を見たものにもれなく「絶対なるロスクレイは正しく英雄である」という認識を付与する。本来ならただのAランクですら呪いとも称される通常のカリスマを更に超越し、それは半ば狂気染みた「絶対の英雄」への信仰の域にも達し得る。 単独行動:A マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。依り代や要石、魔力供給がない事による、現世に留まれない「世界からの強制力」を緩和させるスキル。 ロスクレイの場合、彼自身が勇者を選抜する黄都二十九官でありながら己を勇者として擁立した逸話が元となってこのスキルを取得しており、彼自身が疑似的にマスターとしての社会的地位を獲得していることでマスターに縛られない行動を可能とする。 鋼鉄の決意:A 痛覚の全遮断、超高速移動にさえ耐えうる超人的な心身などが効果となる。複合スキルであり、勇猛スキルと冷静沈着スキルの効果も含む。 ロスクレイの場合、それが『英雄』に求められる振る舞いである場合ありとあらゆる苦痛を無視して『英雄』として振舞うことを可能とする。 人間観察(演技):B 人々を観察し、理解する技術。 ロスクレイの持つ人間観察は、己自身が「英雄を演じる」という在り方にルーツを持つことから、演技をしている人間の姿を見抜くことに秀でている。 【宝具】 『絶対なるロスクレイ』 ランク:EX 種別:対社会宝具 レンジ:なし 最大補足:14,000,000人 絶対の証明。個人が持つ社会的な権能の結晶。 絶対なるロスクレイが召喚されたと同時に、彼が生前活躍した竜殺しや六合上覧の逸話などによる『絶対なるロスクレイは人間にして最強の英雄である』という概念が構築される。 それは、彼自身の本来のパラメータを偽ると共に、生前構築し彼を英雄たらしめた社会的な工作能力が当聖杯戦争の開催地において再現されることを意味する。 具体的には、ロスクレイ自身が『英雄』として聖杯戦争の舞台における行政システムの重鎮に居座ると同時に、彼の周囲や彼が手回しできる民間の各会社に存在することとなる。これにより、ロスクレイは戦闘における詞術支援をはじめとした物理的支援、そして何より聖杯戦争中における様々な面での根回し・社会的制約を彼の権力の届く限り発動することができる。 また、生前彼に詞術で力を貸していた詞術士も召喚され、戦闘においては工術による剣の召喚や生術による各種術式などのサポートも可能となる。 今回の東京都においては召喚された仕官は多くが東京都政の重鎮として認識されていると共に、警察・マスメディアをはじめとする各種組織の中にもそれによる彼のシンパ、あるいは彼とその協力者によって詞術の強化が施された武装を持つ人々が存在している。 寸分違わず、聖杯戦争の行われる現代社会において、国家そのものを味方とした社会動物の持ちうる凡ての力を託された人工英雄としての逸話を体現する宝具である。 ──代償として、この宝具は彼自身の知名度と存在ありきであるため、彼が現界した時点で聖杯戦争の舞台中にマスター・サーヴァント・NPC問わず「絶対なるロスクレイが存在している」という情報が開示される。聖杯戦争の参加者にとっては、ロスクレイはセイバーのサーヴァントとして認識され、一部ステータスにも変化がある。 【weapon】 剣 彼の支援者が工術で紡いだ無銘の剣。彼がラジオ・携帯端末等で連絡を取っている詞術士が都度作成する。 その剣技は間違いなく英雄のそれであり、正当な王城剣術に基づいた正しき剣である。 詞術士 彼が抱える子飼いの詞術士。戦闘中においては、ロスクレイがマントの裏に仕込んだ通信端末から詞術を発動し彼を様々な点から援護する。 その他、あらゆる社会的権力 対抗勢力が存在しない限り、東京という現代社会を意のままに操る、英雄という立ち位置そのものが持つ政治力。 【人物背景】 『本物の魔王』が死亡した後、魔王を殺した勇者を決める戦いにおいて立候補した『最強』の一人。 黄都を収める二十九官の一人であり、民からは竜すらも単独で殺した英雄として篤く信頼されている。 しかし、彼自身はあくまで人間としての域を出た存在ではない。彼を英雄たらしめているのは、その政治力と智謀によって勝利を必然とする社会的なあらゆる支援であり── 『英雄であれ』という民の祈りを反映した、人工英雄である。 【サーヴァントとしての願い】 聖杯は不要。強いて言うなら、故郷のとある少女を救うことと、マスターの安全な帰還。 【マスター】 七草にちか@アイドルマスターシャイニーカラーズ 【マスターとしての願い】 元の世界に帰る。『八雲なみ』に──? 【能力・技能】 『アイドル』 283プロダクションのアイドル研究生。活動歴は八ヵ月近くだが、その間に少なくともファンを10万人以上獲得するだけの人気はある。 ダンスの能力や知識など、常人の200%とも言われた努力の賜物であるパフォーマンス目をつけるところもある一方で──その表現には、知識が先行しすぎた不必要なステップ等も存在しており、見る人によっては歪さを感じさせるかもしれない。 【人物背景】 283プロダクションの研究生として(紆余曲折がありながらも)アイドルデビューを果たした少女。姉であり当該事務所のアルバイトでもある七草はづきから、新人アイドルのグランプリである『WING』優勝を条件にアイドル研究生としてデビューを開始した。 その性格は平凡な少女として等身大なものであり、理論よりも感情で物事を考え、見栄を張って意地になり、追い詰められれば視野狭窄に陥るような一面を持つ。 また、自己評価の低さから、アイドル活動でも元から尊敬していたアイドルである「八雲なみ」の再現を試みることでアイドルとしての自己を確立しようとしていた。 ──その憧憬の対象であった八雲なみが、本当に笑顔であったかどうか、アイドルを楽しんでいたのかどうか──それを疑い、見失った時点から、彼女はこの聖杯戦争に招かれている。 【方針】 ひとまずは元の世界に戻ることを考える──?wingは──? 【備考】 七草にちかシナリオ、W.I.N.G準決勝勝利後~決勝本番前からの参戦です。 W.I.N.G決勝は聖杯戦争本戦中に行われるものとします。
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憧憬ライアニズム Epigram ◆gsq46R5/OE 守護る、という台詞とは裏腹の行動だった。 何故なら彼の剣の矛先は、もはや神威にすら向いていない。 裂帛の気合を以って振り上げた刀身で、銀髪の侍を両断しにかかる。 無論、一度は紅桜と打ち合い、勝利したことのある銀時だ。 たったの一撃で戦闘不能ということはなく、彼もまた、自らの剣でそれを受け止めてみせる。 しかしその顔に、苦いものが浮いているのもまた確かであった。 「相っ変わらず、食欲旺盛なことで……!」 悪態をつきながら、銀時が無毀なる湖光を大きく振るった。 こうなっては、もう自力で正気を取り戻すのは難しい。 紅桜を早急に破壊し、本部の体に根付いた電魄の影響を取り払う必要がある。 ただし、それで本部以蔵の命が助かるかと言われれば、銀時には断言できない。 彼は医者ではないのだから当たり前という話ではなく、傍目から見ても本部の状態は酷いのだ。 このまま戦い続けようが、紅桜を破壊して正気に戻そうが、未来は同じなのではないか。 そんな不吉な想像が頭を過ぎったとして、誰に責められようか。 彼の脇腹は歪に抉られて常に血を零しており、顔は鼻が折られ、出血で真っ赤に染まっている。 顔面への打撃で顔の骨や、下手をすれば額の骨にまで亀裂や損壊が及んでいてもおかしくない。 見えている肌の部分は内出血している箇所が多く、ドス黒く変色している場所まである。 服の上からでは確認できないが、内臓もそれは酷い有様だった。 潰れていないものの方が少ないような、知識のある人物が見たなら思わず顔を背けたくなるような状態が広がっている。 「ほら、言わんこっちゃない」 失笑して、本部を嘲るのは神威だ。 彼は言った。そんな妖刀(もの)に頼れば死ぬぞ、と。 本部は言った。気が狂っても、俺は全てを守護る、と。 その結果がこれだ。 本部以蔵は紅桜を結局は制御しきれず、搭載された人工知能によって自我を崩壊させた。 守護る、と言いながら、本来守護るべき対象であるはずの侍に刃を向ける姿は滑稽でさえある。 彼がどう足掻こうと、永くは保たない。理性の次は、命が、だ。 しかし、それは当然の結果だったのかもしれない。 彼が力を授かった相手は、人にあって人にあらぬ魔元帥ジル・ド・レイ。 悪魔マルチネというもう一つの顔を持つ、悪意の化身。 悪魔と取引をした人間が、その生涯を幸福に終えた試しはない。 「オオオオオオオオッッ」 斬撃を振り落とし、なおも銀時を潰さんとする本部。 ただ、彼の標的は、銀時一人に絞られた訳でもないようだった。 銀時が紅桜の重い剣戟を止めるや否や、本部は突然身を翻し、後ろの神威を薙ぎ払う。 それをガードした日傘の中棒に、遂に一筋の亀裂が入った。 威力が、また上がっている。今はもう、人斬り似蔵が振るった時のそれを完全に超えていた。 「っと」 只でさえ回避に慎重にならねばならなかった紅桜の攻撃が、より苛烈化している。 少なくとも乱戦の中で相手取りたくはない、ハリケーンか何かを思わせる猛威だった。 「も、本部、さん」 宇治松千夜。 本部がかつて、人の心を無くすなとそう言った少女の声は、羅刹と化した本部には届かない。 譫言のように守護る、守護ると口走りながら、妖しく光る刀を振り回すばかりだ。 「……どいつもこいつも、好き放題暴れやがって……」 呆れたように口にしつつ本部と剣閃を交わし合う銀時だったが、その背筋には冷や汗が流れていた。 端的に言って、状況が悪すぎる。 以前紅桜を破壊した時には、周りに仲間が居た。 仲間の助力があってこそ、自分は窮地を脱することが出来、紅桜の破壊に至ったのだ。 今、銀時が頼れるのはファバロのみ。 そのファバロだが、彼に接近戦へ混ざれというのは死ねと言っているのと同じようなものだ。 ビームサーベルを保有している話は聞いていたが、余程優れた実力者でもない限り、この乱戦に飛び込むのは無謀と言う他ない。 かと言ってミシンガンの銃撃も、理性を完全に飛ばしている本部には殆ど意味を成していないのが現状であった。 そして、何よりも都合が悪いのは…… 「づ、ぐぉ――……ッ」 神威という、特大クラスの厄ネタがそこに混ざっていることだ。 本部との打ち合いの隙を縫って得物の間合いまで侵入を果たした神威が、銀時の腹のど真ん中に得物の強烈な刺突を喰らわせる。 本部の暴走という突然の事態すら、この男はまるで意に介している様子がない。 単なる享楽ではなく確固たる目的を見据え行動し始めた彼に、遊びと呼べるものは皆無。 ――だが、彼の目下再優先の獲物と認定されているのはどうやら、銀時の方であるらしい。 神威は、警戒しているのだ。 銀時の中に垣間見えた、理解し難いものの存在を。 侍という不確定要素に溢れ過ぎた相手から先に排除して、事を有利に運ぼうとしている。 つまり時にこの戦場は、乱戦の体さえ崩壊させるのだ。 時に坂田銀時、本部以蔵、神威の戦いから、坂田銀時と本部以蔵、神威の戦いへと変わる。 それがあくまでも人間の体しか持たない銀時にとっては、最悪レベルに都合が悪い。 「俺が――守護らねばならんッッッ!!!」 口角泡を飛ばして叫び散らしながら、本部は狂ったように、いや真実狂って銀時に猛攻を仕掛ける。 受け止める腕がビリビリと、嫌な痺れを訴え始めているのが分かった。 神造兵装・無毀なる湖光は確かに紅桜以上の業物だが、武器が壊れないからと言って、永遠に防御を続けられる訳じゃない。 担い手の体が先に音を上げれば、どんなに優れた剣も刀もただの棒きれだ。 銀時は力強く無毀なる湖光の柄を握り締め、死ぬ気で妖刀の剣戟と相対し、僅かな隙を見つけて攻勢に移り―― 「守護(まも)るなんて大層なこと抜かすなら、まずは手前の脳味噌守って見せろォォォォ!!!!」 力強く、雄々しく吼えた。 一際激しく火花が散り、銀髪の侍は突き進む。 羅刹さながらの鬼気迫る様相を呈し戦う本部に対し、その姿はさながら、白き夜叉のようだった。 ゆるやかに崩壊の進んでいく闘技場の中、少女達は動けずにいた。 絢瀬絵里も、宇治松千夜も、概ね平穏と言っていい日々を送ってきた人間である。 千夜の方は、特にそうだ。 絵里はスクールアイドルの活動をしてこそいたが、あくまでもそれは暴力の絡まない範疇での非日常だった。 煙草や酒をやらず、ドラッグなど以ての外の健全な身体と精神。 日だまりの中を生きる少女達にとって、目の前で繰り広げられる戦いは、あまりにも刺激が強すぎた。 ――単にそう言うと、語弊がある。 少なくとも絵里は一度、本能字学園で似たような激戦を目にしたことがあった。 その場には神威も居り、彼がどのような戦いをするのかは、ある程度知っていた。 千夜だって、周りで大勢の人間が死んでいくのを間近で見せられ続けてきた身だ。 いいことでは間違いなくないだろうが、常人に比べて、こういった光景への耐性は付いていても何ら不思議ではない。 ならば自分達の置かれた状況の危険さをいち早く理解し、後のことを託して脱出しようと考えるのが普通だ。 なのに彼女達がそれを出来なかったのには、理由がある。 神威。 自分の妹をその手で貫き殺した、殺戮者。 彼が発露させ、今も全方位に放っている濃厚過ぎる殺意。 本能字学園の一件で見せていた、笑顔に乗せたものとはまた違う――覚悟を決めた者の殺意。 二人は、それにあてられてしまったのだ。 神威は宇宙海賊の一員であり、銀時と同等、下手をすればそれ以上の数の死線を潜っている。 殺した人数、倒した敵ならば、確実に彼よりも多い。 いわば、殺しと破壊のプロとでも言うべき男だ。 その彼が、本気で見せた殺意。 それは、少女達を恐怖で動けなくさせるには十分過ぎた。 千夜に至っては失禁までさせるほどの、効果があった。 神威は、女子供を殺さないという美学を持つ。 しかし今の彼に、そういうものは期待できないだろう。 仮に彼が銀時と本部を殺して生き残ったなら、その手は間違いなく、絵里と千夜に及ぶ。 漠然としたものではなく、確たる目的を得た殺しに、美学は要らない。 だから逃げなければと思っているのに、足が動かない。腰が抜けている。 (……情けない) ぎり、と奥歯を軋ませたのは絵里だ。 自分は、また何も出来ずにいる。 この場を離れるという最善手すら、選べずにいる。 そんな自分の弱さが情けなくて情けなくて、絵里の中に自己嫌悪の情が吹き上がってくる。 今、自分に出来ることは――祈ること。 銀時の勝利を祈る以外に、何も出来ない。 ふと、隣の千夜に視線を向ける。 彼女も、同じような顔をしていた。 まるで自分を鏡に写したようだと、妙なことさえ思ってしまう。 「本部さん……どうして……」 本部以蔵。 絵里達は可能性の段階とはいえ、彼を危険人物なのではないかと疑った。 千夜の言動と、銀時と協力して戦う姿を見てすぐに勘違いだったと分かったが、今の本部はまさに、危険人物としか言いようのない有様だ。 不気味に触手を蠢かせて、何やら叫びながら刀を暴力的に振るっている。 ――あの刀が、どうやら彼を変えてしまった元凶らしい。 俗に言うところの、妖刀というやつなのだろう。 漫画や映画、出来の悪い怪談以外でそんな言葉を使う時が来るとは思っていなかったが。 「……悲観しちゃダメよ、千夜ちゃん」 「でも……!」 「大丈夫。……銀さんを、信じよう」 坂田銀時は強い。 普段は頼りないが、やる時はやってくれる人だ。 彼ならば、この絶望的な状況をどうにか出来るかもしれない。 絵里達には信じられないような"もしも"を、実現させてくれるかもしれない。 今は、そう信じることしか出来なかった。 「絵里さん……っ!?」 突然のことだった。 千夜が目を見開いて、何かを言おうとした。 どうしたの、と続けたかった言葉は、声にならなかった。 「よけて――!!」 ぐぎっ。 鈍い音が、した。 「あッ……ぐ……ぅぅう…………ッ」 千夜の目の前で、絵里は肩を抑えて蹲る。 その傍らには、今しがた降り注いだ、瓦礫の塊が転がっていた。 崩落の始まった闘技場の中、今も緩やかにではあるが、天井だったものが落ちてきている。 絵里は運悪く、その一個に直撃してしまったのだ。 肩に命中した瓦礫は、彼女の命を奪いこそしなかったが、その華奢な肩を砕くには十分な重さを孕んでいた。 もしも頭や首に当たっていたなら、間違いなく絵里は死んでいただろう。 「えっ、絵里さん! 大丈夫ですか、すぐに手当てを……!!」 手当てを、と口で言うのは簡単だが、肩口の骨折は処置が難しい。 これが腕ならば、千夜も本や日常生活で得た知識でどうにか出来たろう。 しかし肩の骨折となると、不幸にも千夜には知識がなかった。 (ど、どうしよう……とりあえず患部を見て――) 「…………あれ……?」 意外にも。 その時、怪訝な声を出したのは、絵里の方だった。 「もしかして他にどこか……!?」 「ううん……違うわ。痛みが……少しずつだけど、和らいでいくような」 不思議に思った絵里は自分の制服を捲り、患部と布地が擦れる痛みに顔を顰めながら、自分の痛めた傷を確認する。 すると確かに痛ましく内出血しており、肌の表面は衝撃で皮が剥けていた。 しかしその皮が、よく見ると少しずつ、少しずつ再生している。 少しずつと言っても、自然回復のそれに比べれば何倍、下手をすれば何十倍の速度だ。 絵里はそんな特異体質になった覚えはなかったが、思えば、心当たりはある。 思い返すのは、此処に来る間のことだ。 電車の中で盛大にすっ転び、頭にたんこぶを作ってしまった自分。 なのにそのたんこぶは気付くと既に消えており、形跡すら残ってはいなかった。 銀時に言われなければ、そもそも怪我をしたことにすら気付かなかったろう。 この現象に、関係がないとは思えない。 絵里は慌てて自分の所持している黄金の鞘を、地面に置いてみる。 すると途端に、傷口の治癒は止まった。 再び手に取ると、また回復が始まる。 「すごい……」 千夜が月並みな感想しか吐けなかったのも、無理はない。 この調子で回復が進んでいけば、恐らく完全治癒に十分と要すまい。 ……これがあれば、きっと助けられる命がある。 絵里は、そう確信した。 この戦いで銀時がどれだけ負傷して戻ってきても、これさえあれば、彼を癒やすことが出来る。 自分にも、できることが、ある! 果てがないように見えた絶望の中で、拾い上げた一抹の希望。 絵里はそれを抱いて、再び戦場に目を移す。 表情が凍った。 離れた戦場ではなく、すぐ近くに。 絵里と千夜の正面、二メートルもないような間合いに。 妖刀を携えた、羅刹が立っていた。 只でさえ廃墟じみた有様を晒している闘技場は、本部の狂乱以降更にその度合を増した。 どこがリングでどこが観客席なのか分からなくなったのは早い内で、今となってはだだっ広いホールのような外観になりつつある。 事情を知らない者が見たなら、何をどうしたら二本の剣と一個の生身でこんな惨状を作り出せるのかと、首を傾げたくもなるだろう。 一人の酔狂な男が作り上げた戦いの殿堂は変わり果て、そこに立つ者もグラップラーではない。 武器の使用が平然と横行したこの戦いをかの徳川老人が見たなら、どんな顔をしただろうか。 或いは唯一徒手で戦い続ける神威の勇猛ぶりに、惚れ込みでもしたかもしれない。 銀時、本部、神威が交わした攻め手の数は既に二百を超えていた。 そんな激戦の中ですら、致命傷を見事に躱しつつ立ち回る侍と夜兎は流石。 いつ朽ち果ててもおかしくない容体に更に傷を重ねて、それでも倒れることなく刃を振るい続ける守護者の様は狂気を感じさせる。 本部の戦い方は、銀時に言わせれば壮大な自滅だ。 暴れれば暴れるほど傷が開き、生命力が減っていくにつれて彼を蝕む電魄は猛る。 事実彼の衣服は血の池で泳いできたのかというほど赤く染まり、元の色が判別できないほどになっていた。 正気の彼が見せていた余裕や風格は、今やどこにもない。 その姿はやはり、坂田銀時がかつて戦った紅桜の使い手――岡田似蔵の暴走した姿に酷似していた。今の本部は、あの時の似蔵と同じ顔をしている。 彼に紅桜を渡した張本人がこの場に居たなら、大笑さえしたかもしれない。 自分の磨き上げた技は全て使えなくなり、守護者の意思すらも失い。 妖刀に搭載された仮初の知能に体を掌握されて、彼が嫌悪しただろう、守護者の対極の姿を晒すことを余儀なくされている。 「アンタ、それでいいのか……!」 銀時の説得など、届いている筈がない。 銀時は知っているのだ。この妖刀の恐ろしさを、一度は経験している。 非情に聞こえるかもしれないが、本部はもう駄目だろう。 紅桜を破壊したとして、この体で長生き出来るとはとても思えない――詰み、だ。 老いた体から放たれるとは思えない剛力を受け止めると、腕が比喩でも何でもなく軋む。 あまり長く競り合えば、剣越しに腕を圧し折られるのではないか。 冗談のような話。悪夢のような、話だった。 鍔迫り合いを続ける二人の隙を貰ったとばかりに、神威の凶手が双方を抉らんとする。 それはラリアットのような姿勢で叩き込むすれ違いざまの一撃だったが、大の男二人を紙風船のように吹き飛ばす打力を宿していた。 柔道家らしい見事な受け身から速やかに復帰した本部は、止めを刺さんと走り迫る神威に咆哮しながら刀を振り抜く。 その衝撃のみで神威の歩みは一瞬止まり、そこを見逃さぬと踏み込んだ銀時が一閃。 防御することまで織り込み済みの攻撃は、それを証明するように、止められた瞬間に神威の下顎を蹴り上げ、彼を吹き飛ばした。 標的を失った本部以蔵は銀時に対し突進――するが、その左目に、人体には不似合いなものが生えた。 「やっと当たりやがった……!!」 ――それは、ファバロ・レオーネの放ったミシン針だった。 さしもの本部も、目を潰されるほどの痛みを与えられれば、理性がないとはいえ身動ぎの一つもする。 銀時は心の中でファバロに礼を述べながら、お得意の刺突を本部の右腕に叩き込むべく突き出す。 反応の追い付いた本部は紅桜で防ぐが大きく後退を強いられ、地面をその靴底で擦りながら数メートルほど逆戻りをする羽目となった。 今のは絶好の好機だった。にも関わらず狙いを外した自分に、銀時は苛立ちを禁じ得ない。 その苛立ちに冷水をぶっかけたのは、弾丸のような速度で空中からやって来た神威。 それに気付いて振り返った時には、紅桜のような反則技に頼っていない銀時では遅すぎた。 拙い、認識した刹那、アッパーカットの要領で着弾した拳が侍の体躯を大きく吹き飛ばした。 「――――ッッッ」 呻き声すら出てこない、強烈な衝撃だった。 神威とこうして本格的に矛を交えるのは始めてだったが、本部があれほどの重傷を負うのも頷ける。 たった一撃でこれなのだ。連打(ラッシュ)などされた日には、人間の貧弱な肉体程度、あっという間にボロ屑と化す。 それを避けるべく、ほぼ反射的に無毀なる湖光を頭の上へと構える銀時。 動作を完了するのと全く同じタイミングで、神威の踵が刀身を打ち据えていた。 神威が足を離すのを確認して再度剣を構えて、彼が打つ全ての拳を、足技を、壊れるということを知らない名剣で悉く凌いでいく。 「な……!?」 神威だけに気を取られている訳にもいかない。 視線を本部に一瞬移した瞬間、銀時は自分の目を疑った。 ――本部以蔵が、宇治松千夜と絢瀬絵里の前に、立っているのだ。 あれほど自分達を斬ることに執着していたあの男が、今は此方に目もくれていない。 予想外の事態に直ぐに飛び出そうとする銀時だったが、それは失敗だった。 「余裕だね、この状況でよそ見なんて」 ガードの緩んだ隙間を的確に通過して、拳が銀時の頭を殴った。 瞼の裏に色とりどりの火花が散って、瓦礫で凸凹になった闘技場の床をごろごろと転がる。 その無様な姿ごと踏み潰さんと落ちてくる靴裏を刀身で止めることが出来たのは、殆ど偶然の産物と言っていい。 どうにか力づくでそれを押し返し、二、三度打ち合ってから、銀時は脇目も振らずに絵里達の方へと急ぐ。 坂田銀時は本部以蔵という男の人となりを、僅かな風聞でしか知らない。 実際に会うまでは危険人物の可能性すら抱いていたのだから、当然だろう。 彼の殺し合いにおける行動方針は、全ての参加者の守護。 挫折し、失敗し、土に塗れながらも、その根幹だけは変わっていない。 紅桜に飲まれた彼の中に残留したのは、よりにもよってその『平等性』だった。 守護るという概念すら理解できているか怪しい有様で、全ての守護を謳いながら全てを斬る。 かの人斬りよりも、余程辻斬りらしい在りようとなっているのは、この上ない皮肉であった。 「止まれ……!!」 本部が、ゆっくりとその刀を持ち上げる。 銀時の脳裏に、蘇る光景がある。 それはかつて、恩師をその手で斬った記憶。 あの時の自分の姿を、第三者の視点から見ているような錯覚が彼を支配する。 背後から追うのは、神威。 殺意に満ちた日傘が、烈しく大気を震わせながら押し迫る。 銀時は振り返りざまに、それを迎え撃つしかない。 無視するには、彼の攻撃はあまりにも剣呑過ぎるからだ。 「邪魔、すんじゃ……ねェェェェェェ!!!!」 しかし幸運の女神は、此処に来て銀時へ微笑んだ。 これまで酷使され続けてきた日傘の方に、遂に限界が訪れたのだ。 みしぃという音が聞こえた次の瞬間、強靭さを売りとする夜兎の日傘が、その半ばほどからへし折れて宙を舞う。 千載一遇の機を、銀時は今度は逃さなかった。 逆袈裟に振り上げた一閃で、神威の胴を斬る。 渾身の、入りだった。 目を見開いて、神威が仰向けに倒れ込む。 ……倒した。そう言っていいと、銀時は判断する。 そして再び足を動かして、火急の現場へと全力で、走る。 既に、刃は上がっていた。 死神の鎌首は、擡げられていた。 「止め――」 ◆ 幽鬼のような顔色で、本部以蔵はそこにいた。 素人目にも分かる、ボロボロの状態。 小汚い男などと、今の彼に悪罵を叩く者はもはや誰も居まい。 狂気に取り憑かれ、妖刀を携え。 かつて守護ると誓ったものに刃を振り上げるその姿は、まさに異様なものだった。 こんな光景を笑い飛ばせる者が居るとしたら、そいつはきっと悪魔に違いない。 ざっ、と更に一歩を踏み出す。 既に刀を振り上げているのに、そんな行動を取る理由は一つだ。 すなわち、確実に仕留めるため。 絶対に紅桜の刃を通し、目の前の二人を斬(まも)るため。 一念鬼神に通ずの諺ではないが、まさしく彼は今、自分の掲げた信念に基づき狂していた。 絢瀬絵里も、宇治松千夜も。 どちらも、正真正銘ただのか弱い少女だ。 全て遠き理想郷、聖剣の鞘という反則級の物品を持っているとはいえ、首を刎ねられればそれまで。 狂気の妖刀、紅桜に取り憑かれた男が、この間合いで仕留め損ねるとは考え難い。 頼みの綱の銀時は、……まだ、遠い。 そして窮鼠が猫を噛む可能性も、ゼロだ。 絵里と千夜が全力でその体に縋り付いても、恐らくは無駄。 武道家として鍛え上げられた体を持つ本部にしてみれば、まさしく子鼠の抵抗に等しい。 軽々と振り払い、彼はそれからひとりずつ斬り伏せるだろう。 死の時間が数秒延びるだけでしかない。 千夜が所持しているベレッタ拳銃を抜き、それで本部の頭を撃ち抜きでもすれば話は違うかもしれないが、彼女にそれを要求するのは酷というもの。ただ一度、間接的に人の命を奪ったことがあるだけの少女に、恩人を平静を保って射殺するなど出来る訳がない。 あれこれ躊躇っている隙に、本部はやはり、二人を斬る筈だ。 「守護る……! 俺は……! すべてを……!!」 絵里は、千夜を引っ張ってどうにか逃げようとする。 それが叶っていないのは、本部に彼女達が恐怖しているからではない。 千夜が、動こうとしないからだ。 彼女はただ刀を振り上げ、狂った譫言を漏らす本部を涙すら流しながら見つめているだけ。 その理由は、絵里には分からない。 分かるはずもないのだ、本部と共に過ごした訳でもない彼女には。 千夜と本部は、長い時間共に行動してきた。 悲劇を共にし、挙句の果てには命すらも彼に救われた。 共通の話題などあるはずもない自分の話を黙って聞いてくれた、そのだけで、千夜は安心することが出来た。 随分久しぶりに、その心をリラックスさせることが出来たのだ。 「……もう、やめて」 絞り出すような言葉が、彼女の小さな口から漏れる。 「もう、やめてください。……これ以上、そんな姿で戦わないで」 これまでの戦いでボロボロになった、その体のことを言っているのではない。 自分の信念すらも忘れて、化け物のように刀を振るう、今の本部以蔵の姿のことを、千夜は指していた。 それはある意味で、彼に最も相応しい姿。 命の取捨選択をして人道を踏み外し、修羅道に入った鬼の成れの果てとして、おあつらえ向きの姿だった。 千夜も、彼が鬼になったことを知っている。何故なら本部が自分でそう言っていた。 俺の、鬼となった人間の、たった一つの望みだ。 その言葉を、千夜は忘れていない。 これはきっと、報いなのだろう。 人に生まれておきながら鬼になる禁忌を犯した守護者への、当然の報いなのだろう。 それでも、千夜は今の彼の姿を見たくなかった。 こんな顔をして、こんな姿で戦う本部以蔵を、見たくなかった。 「やめてよ、本部さん……もう、これ以上……!」 ぐおん。 本部は大きく紅桜を振りかぶる。 絵里は、もう駄目だと確信した。 思わず、反射的に体が目を瞑ってしまう。 目を開いた時にはきっと、千夜は本部に叩き切られている。 その姿を幻視して、絵里は震えた。 歯の根が合わない音を鳴らしながら、涙を流した。 千夜も、目を瞑る。 元々此処ぞという時には臆病な彼女だ。 格好良く目を開けたまま、啖呵を切るなんて出来やしない。 しかし千夜は、その口を動かしていた。 伝えるべきことがあると思ったから。 恩人に、仲間に、伝えねばならない『お願い』があると思ったから、彼女は止まらない。 「――――人間(ひと)の心を、失くさないで!!」 その言葉を聞いた途端。 振り下ろされていた刀身が、千夜の頭の数ミリメートル手前で停止した。 一瞬、闘技場の中に流れる時間が止まった。 えっ、と千夜、そして絵里の瞳が驚きに見開かれる。 妖刀に侵食され、自我を殆ど失っていた本部以蔵。 その彼が、千夜の頭を叩き斬る本当の寸前で、自ら刃を止めたのだ。 千夜は本部の顔を見る。彼は、苦しんだ顔をしていた。 自らの体を操らんとする意思と戦っているようにも見える。 本部以蔵は、命を選別した。 範馬刃牙という男を相手に、やってはならないことをした。 そうして鬼となった彼は、だからこそ、千夜には自分のようになるなと言ったつもりだった。 しかし当の千夜は、彼のことを鬼だなんて、思ってはいなかったのだ。 刃牙を殺した当初であれば、いざ知らず。 短いながらも暖かな時間を共にした今では、そんなことは露ほども思っていない。 鬼が、人を安心させるだろうか。 度重なる悲劇で摩耗していた心に、暖かさをくれるだろうか。 誰が何と言おうとそれは否だと、千夜はそう断言できる。 宇治松千夜の中では、本部以蔵は鬼でも羅刹でもない。 『人間(ひと)』だ。彼は、ひとなのだ。千夜の中では、今も。 そして少女の作った隙は、間に合うはずのなかった奇跡を、間に合わせる。 端からは銀色の軌跡が煌めいた程度の認識しか出来ないような、神速の斬撃。 銀髪の侍が、か弱い二人のもとへ到達していた。 「……ガキに此処まで言われてんだぞ、このクソホームレス野郎」 一撃目で、紅桜の刀身を上へ弾き上げる。 間髪入れず放つ二撃目が狙うのは、本部の首でも心臓でもない。 その身体に巣食う妖刀――『紅桜』そのもの! 「男なら……とっとと目ェ覚ませ」 再び、銀色が煌めいた。 一閃――紅桜の刀身に、亀裂が走る。 本部が目を見開いた。 銀時は歯を食い縛り、紅桜をそのまま砕かんと力を込める。 一秒に遠く満たない時間で行われる攻防は、しかし悪夢の終わりには成り得ない。 「ま……だ、だッッ!!」 本部の右腕と同化した異形の触手が、銀時の身体を絡め取ったのだ。 何としてでも刃を砕かせまいと、電魄の猛攻が彼を締め上げる。 骨の軋む感覚に銀時は呻くが、それでも彼の思考は一つ。 紅桜を砕くこと。 本部以蔵を、狂気から解放すること。 それだけのために、侍は全霊を尽くす。 だが、やはり足りない。 締め上げられ、拘束されている身では、如何に白夜叉といえどもやれることに限界がある。 「う……ぐ、ぐおおおおおおおおッッッ――!!!!」 咆哮するは、本部。 痛め付けている側の彼が、誰より大きく絶叫している。 亀裂を刻まれた紅桜が、その意思をこれまでにないほど大きく動かしている証拠だ。 しかし同時にその姿は、本部以蔵という人間の個我が、紅桜の狂気に抗っているようでもある。 「ち、が……う……!!」 そして事実、その通りだった。 羅刹の顔に、『鬼』が――いや。 『人間(もとべいぞう)』が、戻ってくる。 今まさに彼の中では、意思の鬩ぎ合いが起こっている真っ只中なのだろう。 「おれ、は……まも、る…………! 全ての、参加者を……!!」 「本部さん!!」 「この、もと、べの、守護は……こんな、ことじゃ、ねェ……!!」 本部は、打ち克ちつつある。 しかし悲しきかな、銀時を戒める触手の力が緩む気配はない。 どれだけ強い鋼の意志で戦おうが、身体の自由を奪い返せなくては意味がない。 このまま銀時が圧死すれば、神威が倒れている今、本部を止める者は何処にもいない。 そのことは、自我を取り戻しつつある本部にも分かった。 だから、なのか。 彼は一転、苦しみの感情を顔から消して、深く息を吐き、もう一度吸い込む。 そして、顔だけを千夜の方に向けた。 「……嬢ちゃん。嬢ちゃんは確か、ベレッタを持っていたな」 えっ。そんな気の抜けた声を千夜はこぼす。 確かに、千夜は支給品としてベレッタ92という銃を所持していた。 予備弾倉も残っている為、取り出しさえすればいつでも使うことが出来る状態だ。 だが、何故この状況で本部はそんなことを言うのだろう。 ……とぼけることは、もはや出来なかった。千夜はそこまで、察しの悪い少女ではなかった。 理解してしまう。彼の言わんとすることを。 直感してしまう。自分のせねばならないことを。 「で、でもっ」 「一度しか言わねぇ……いや、言えねぇだろう。だから、よく聞いてくれ」 「もとべさ――」 千夜の悲痛な声を遮って、本部以蔵は言う。 「そいつで、俺を撃ってくれ」 出来ませんと、千夜は叫んだ。 泣きながらの、ほとんど吼えた、と言ってもいいような叫び。 だが本部は、自分の口にした懇願を撤回しない。 彼は頭の冴えた男だ。 だから最適解がすぐに分かった。 この場で、千夜と絵里と、銀時が生存する手段は一つ。 紅桜と一体化している本部以蔵自身を殺害する。 それ以外に、ない。 「心配しなくてもいい。俺ぁ、死ぬのは怖くねぇ…… それよりも俺が俺でなくなり、守護るべきものをぶった斬っちまう方がずっと怖ぇのさ」 「でも――」 「頼む。やってくれ、千夜の嬢ちゃん」 本部が死を怖くないと言ったのは、虚勢でも何でもない。 誰も彼もを守護り、生かそうと願った男にしてみれば、自分が自分でなくなり、無差別殺人を犯す辻斬りと化す方が余程恐ろしかった。 無念はある。悔恨もある。 それでも、此処を生き延びて更に醜態を晒すよりは、ずっと幸福な最期だ。 無念も悔恨も、少なくて済む。 だからやってくれと、本部は言う。 酷な頼みだと理解はしている。その上で、本部以蔵は少女に頼んでいる。 「う、あ、ううう」 泣きながら、千夜は自分の黒カードから、ベレッタ92を取り出した。 かつて人を撃った時の感覚が、嫌でも蘇ってくる。 無我夢中だったあの時よりも、ずっと銃は重い。 引き金は不動にすら思える。 これを引けと、本部は言う。 そして自分を撃てと、彼は言うのだ。 宇治松千夜に、願うのだ。 それ以外、この場を収める術はない。 「……やっぱり、わたし――!!」 「千夜ちゃん……!!」 その肩に手を置いたのは、絵里だ。 絵里は本部と千夜のことを、何も知らない。 正真正銘部外者と言っていい人物だが、それでも、分かることはある。 本部以蔵という男にとって一番幸福な終わりが、宇治松千夜に殺されることなのだ。 守護る、守護ると彼は狂いながらも口にしていた。 彼はきっと、守護者のまま死にたいはずだ。 千夜に、代わってとは言えなかった。 本部は、彼女に頼んだのだから。 ならばその生命を終わらせていいのは、千夜しかいない。 「……名前も知らねぇ嬢ちゃん。千夜のことは、頼んだぜ」 引き金に、指が掛かる。 息は荒く、視界は明滅を繰り返している。 震える肩を、絵里が抑えた。 狙いを定める。 ――頭に。 漫画や小説の知識で、銃で狙うなら頭だということは知っていた。 「……ありがとよ」 引き金が、そうして引き切られる。 守護者は、守った者に。 鬼が助けた人の子に、撃ち殺されて生涯を終える。 発射された弾丸が本部以蔵の眉間を撃ち抜く最後の一瞬、本部以蔵が発した言葉。 「俺を人間と言ってくれて、ありがとう」 それは確かに、千夜の耳に届いた。 絵里の耳にも、銀時の耳にも。 笑顔を浮かべたまま、本部以蔵の脳漿が飛び散った。 紅桜の触手が緩み、銀時が解放される。 彼は裂帛の気合を込めた叫びをあげながら、紅桜を文字通り、叩き折った。 ……彼の生き様は、確かに道化だったかもしれない。 しかしそれでも、本部以蔵が笑わせたのは悪魔だけじゃない。 宇治松千夜という一人の少女に、ほんの束の間でも笑顔を与えた。 それだけで、彼という道化が生きていたことには、きっと意味がある。 妖刀・紅桜――もとい。 対戦艦用機械機動兵器・紅桜――完全破壊。 『守護者』本部以蔵――――殉死。 【本部以蔵@グラップラー刃牙 死亡】 ◆ 「よっし……!」 響いた銃声。 ファバロ・レオーネもまた、その光景を見ていた。 宇治松千夜が持つ銃の口から黒いものが吐き出され、本部以蔵の頭から赤いものが散った。 銀時や神威の口ぶりから察するに、あの老人を凶行に駆り立てていたのは彼が振るっていた刀。 それが砕け散る瞬間も、ファバロはしかとその目で見た。 殆ど見ず知らずの他人である本部の死に様に、ファバロの心は大して動かない。 それ以上に、理性なく暴れ回る本部の脱落がありがたかった。 ファバロはお人好しだが、博愛主義者ではない。 彼にとって本部以蔵は妖刀に取り憑かれた狂戦士であり、それ以上でも以下でもないのだ。 当然そんなことを声高に宣おうものなら彼女らとの対立は避けられないだろうし、その辺りの分別は彼もしっかりつけているのだったが。 ファバロの場合、本部から特に離れた場所へ陣取っていたのが幸いした。 ミシンガン程度の威力では、ああやって目にでも当てない限り動きを止められない相手。 もしも突撃されていたら、間違いなく只では済まなかった筈だ。 そんな事情もあって、ファバロのこの戦いにおける位置は殆ど蚊帳の外と言っていい。 だが、それでいいのだ。 少なくともファバロはそう思っている。 これは別に、彼が自分の命が惜しいから、というわけではない。 ……半分くらいは、確かにそういう理由もあるかもしれないが。 (マジに化け物同士の戦いだぜ、こんなのよ…… 余計な出しゃばりで首突っ込んでおっ死ぬよりかは、こういう方が俺には合ってんだ) ファバロが常日頃より行っている賞金稼ぎとは訳が違う。 彼の戦ってきた賞金首の中には厄介な力なり何なりを持つ者も当然居たが、強いとは言っても、所詮はたかが知れている。 一介の賞金稼ぎ風情が狩れた程度の相手だ、当然である。 神威のような本物の超人を相手取った経験はないし、悪魔と戦った時にだって、正攻法では結局勝利できなかった。 ファバロ・レオーネという男は、つまり賢いのだ。 良くも悪くも、割り切っている。 「――ま、あの神威とかいう化け物も倒したんだ。とりあえずこれで――」 或いは。 「あ?」 それが、いけなかったのかもしれない。 彼は、賢すぎた。 だから見つかってしまう。蚊帳の外とは言い換えれば、最も分かりやすい場所。 事態の渦中にこそないものの、逆に言えば、同じように事態の渦中にいない者からすれば、これほど目立つ者もない。 「ふざけッ――」 彼が『そのこと』に気付いた時、既に神威(バケモノ)は立ち上がり、蚊帳の外の賞金稼ぎを見つめていた。 剛、という音を聞く。 それが、ファバロの知覚した、最後の感覚だった。 緑子が、叫んでいる。 ファバロの名前を呼んでいる。 ファバロは、答えない。 その首は、あらぬ方向に曲がっていた。 灯火の消えたその瞳に写るは――『あの時』の神楽と同じ目をした、彼女の兄の笑顔。 【ファバロ・レオーネ@神撃のバハムート GENESIS 死亡】 時系列順で読む Back 憧憬ライアニズム Adenium Next 憧憬ライアニズム Sprinter 投下順で読む Back 憧憬ライアニズム Adenium Next 憧憬ライアニズム Sprinter 170 憧憬ライアニズム Adenium 坂田銀時 170 憧憬ライアニズム Sprinter 170 憧憬ライアニズム Adenium 絢瀬絵里 170 憧憬ライアニズム Sprinter 170 憧憬ライアニズム Adenium 宇治松千夜 170 憧憬ライアニズム Sprinter 170 憧憬ライアニズム Adenium ファバロ・レオーネ GAME OVER 170 憧憬ライアニズム Adenium 本部以蔵 GAME OVER 170 憧憬ライアニズム Adenium 神威 170 憧憬ライアニズム Sprinter
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』18 荒涼たる岩場とゆっくりプレイスを隔てるマジックミラーは、 一日のうち一度、三十分程度のわずかな時間だけ透明なガラスになった。 ゆっくりプレイスの中では、Y飾りのゆっくり達が、 山ほどのあまあまと遊具で、存分にゆっくりを堪能していた。 楽しげな話し声や室内の音楽も聞こえてくる。 「れいむもいれてねええ!!ゆっくりしたああいい!!」 「おなかすいたあああぁぁ!!あまあま!!あまあまわけてぇぇ!!」 「おでがいじばず!!おでがいじばずうう!!めぐんでぐだざいいいぃ!!」 ガラス越しに群れのゆっくり達は懇願したが、 聞き入れられないどころか、嘲笑と罵倒をもって応えられた。 懇願のうちに三十分は過ぎ去り、壁は再び鏡に戻る。 例え侮蔑と悪意を向けられていてさえ、 極上の美ゆっくりであるY飾りのゆっくり達の姿そのものが、 群れのゆっくり達にとってはゆっくりできるものだった。 壁が鏡に戻る瞬間、 ゆっくりプレイスは内部の音も含めてすべてこちら側と遮断される。 群れのゆっくり達はその時、眼前の鏡に移る自分たちの、 痩せて汚れた、涙に濡れるみすぼらしい姿を見せつけられた。 ゆっくり達はそんな自分を嫌悪し、みじめな気分になり、 なるべく鏡と離れ、岩場の真ん中で日がな一日泣きじゃくった。 どこを向いても、目に映るのはぶざまで醜い自分たちだった。 互いの姿が醜く思え、口を開けば愚痴や喧嘩ばかりだった。 家族と一緒にいても、何をしても、 脳裏にあのゆっくりプレイスが常にちらつく状態では全くゆっくりできなかった。 今となっては、あの三十分だけが唯一の楽しみだった。 あの美しいY飾りのゆっくり達を見てゆっくりしたい。 ゆっくり達は毎日それだけを楽しみに待っていた。 一週間近く何も口にせず、ゆっくり達はほぼ餓死寸前だったが、 食欲よりもむしろ、その渇望のほうが強かった。 一週間が過ぎたその日に、変化が起こった。 群れのゆっくり達が透明なガラスに張り付いてゆっくりプレイスを眺めているとき、 突然Y飾りのゆっくり達が騒ぎはじめた。 「ゆっ!!にんげんさんがきてくれたよ!!」 「ゆゆゆっ!!いそいでおむかえするよ!!」 ゆっくりプレイスの中に人間が入ってきていた。 大人のメスだ。 たちまちのうちにゆっくり達がプレイスの床で整列し、 人間を前にしてはきはきと挨拶をした。 「にんげんさん!きょうもきてくれてありがとうございます!!」 「「「「ありがとうございます!!」」」 「にんげんさんのおかげでゆっくりできます!!」 「「「「ゆっくりできます!!」」」」 お姉さんがそれに答えた。 「はいはい、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりおめぐみありがとうございます!! ゆっくりさせていただきます!!」 異常な光景だった。 あんなにゆっくりできるY飾り達が、ゴミクズの人間に挨拶をしている。 群れは戸惑う。特に親れいむ達には理解不能だった。 とはいえ、群れのゆっくり達はそれを千載一遇のチャンスと捉えた。 人間に命令すれば、中に入れてもらえるのではないか。 なにしろ、可愛いゆっくりをゆっくりさせることは他種の幸せなのだ。 断られることは考えられない。 「ゆっくりしていってね!!」 親れいむは大サービスで挨拶をしてやった。 まずは可愛い姿を見せてやり、メロメロにしておくのだ。 人間とY飾り達の視線が一斉にこちらに集まった。 そして、Y飾り達が叫び始めた。 「ゆっくりできるわけないでしょおおお!?」 「なにがゆっくりしていってなのおおお!? おまえらがいるとゆっくりできないんだよ!!」 「おまえらににんげんさんをゆっくりさせられるとおもってるのおおお!? うすぎたないごみくずがおもいあがらないでねえええ!!!」 「ゆゆゆゆ………!?」 れいむ達は狼狽した。 たとえY飾りに比べれば醜かろうと、まがりなりにもゆっくり。 人間が自分たちを見てゆっくりするのは確実だろうと思っていた。 当のお姉さんも、苦笑まじりにこちらを見ているだけで挨拶には答えない。 しかし、ゆっくり達はこのチャンスにしがみつき、 お姉さんに向かって食事を要求し始めた。 「おねえさん!!かわいいれいむのためにあまあまをもってきてね!!」 「まりささまはおなかがぺこぺこなんだぜ!!はやくするんだぜええ!!」 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!かわいそうだとおもわないの!?」 「ゆがあああああああああぁぁぁ!!!」 吼えたのはY飾り達だった。 ぎょっとして硬直しているうちに、Y飾り達は猛烈な勢いで扉に殺到し、 扉を開いてこちらになだれ込んできた。 「いいかげんにしろごみくずどもおおおぉぉぉ!!!」 Y飾りのまりさが、群れのゆっくりに体当たりを見舞った。 通常のゆっくりよりもはるかに強烈な衝撃に、 喰らったまりさが歯をまき散らしながら大きく吹き飛ぶ。 「にんげんさんにそんなくちをきいていいとおもってるのかああぁぁ!!」 「このごみくずどもが!!にんげんさんにっ!!あんなことを!!あんなことを!!」 「なにがしんぐるまざーなの!?ごみくず!!もういちどいってみろおぉぉ!!」 「ゆびぇええええええええーーーーーーっ!!?」 Y飾り達のリンチが群れのゆっくり達を蹂躙した。 吹き飛ばされ、踏みしだかれ、噛みつかれる。 巧みに致命傷を与えることだけは回避しているようだが、群れのゆっくり達はも激痛に泣き喚いた。 「やべで!!やべで!!ぼうやべでぐだざいいいいい!!!」 「ゆっぐりでぎないいいいい!!ゆっぐりざぜでええええ!!!」 「ごべんなざい!!ごべんなざい!!あやばりばずがらゆるじでぐだざいいい!!!」 親まりさが叫ぶと、Y飾り達は暴力の手を止めて問い詰めた。 「なにがごめんなさいなの!?はっきりいってね!!」 「ゆっぐ、ゆっぐ………うずぎだないごみぐずでごべんなざい………」 「ちがうでしょおおおぉぉぉ!!!」 「ゆびぇえええぇぇぇ!!」 再び体当たりを受け、親まりさが転がされる。 「おまえらごみくずなんかが!!にんげんさんにためぐちをきいたからだよ!!」 「ゆ、ゆ……?」 「あまあまをもってきてねだって!? なんでおまえらなんかににんげんさんがあまあまをもってきてあげなきゃいけないの!?」 「ゆ、ゆ、ゆっくり……れいむはゆっくりできるから……にんげんさんが……」 「だまれええええぇぇぇ!!」 「ゆぎゅっ!!?」 今度は口を挟んだ親れいむが舞わされた。 「もういちどいってみろおおぉぉ!! にんげんさんが!!おまえみたいな!!うすぎたないごみくずをみて!! ゆっくりするわけないでしょおおおぉぉ!!? ぶじょくしたな!!にんげんさんをぶじょくしたな!!あやまれ!!あやまれえぇ!!」 ばしばしと踏みつけられ、親れいむが泣き叫ぶ。 「ごべんなざい!!ごべんなざい!!ぼういいばぜん!!ごべんなざいい!!」 「なにがごめんなさいなの!?」 「にんげんさんをぶじょくしましたああぁぁ!!」 「もういちどきくよ!! だれがおまえをみてゆっくりするの!?そんないきものがどこにいるの!!?」 「いばぜん!!いばぜえええん!! でいぶをみでゆっぐりずるいぎぼのはいばぜえええええぇん!!」 「やっとわかったね!!ごみくず!! ごみくずなりにゆっくりはんせいしてね!!」 ぺっ、と唾を吐きかけてYまりさはようやく身を引いた。 ぼろきれのように横たわり、親れいむは泣きじゃくる。 Yまりさは群れのゆっくり達に向きなおって叫んだ。 「おまえらもゆっくりりかいしてね!! おまえらはだれもゆっくりなんかさせられない、きたないやくたたずのごみくずなんだよ!! とくに、とくに、にんげんさんをゆっくりさせられるなんておもわないでねえぇぇ!!! ゆっくりわかったの!?へんじしろおおぉ!!!」 「ばいいいいいぃぃ!!わがりばじだあああああ!!!」 涙を流し震えおののきながら、ゆっくり達が答える。 「ごみくずはそこでのたれじんでいってね!!」 「まりさ、もういいわ」 「ゆっ!!ゆっくりわかりました!!」 Yまりさを制止したのはお姉さんだった。 ガラス壁の向こうからお姉さんは言った。 「その子たちにも食べ物をあげましょう」 「ゆゆっ!?でも、こんなごみくずたちにごはんさんはもったいないとおもいます!!」 「いいのよ」 「ゆっくりわかりました!!」 プレイス内の大皿から菓子を集め、大皿に盛っていくY飾りのゆっくり達。 充分な量の菓子が盛られたところで、お姉さんが皿を手に取った。 「ゆゆっ!?まりさたちがはこびます!!」 「ごみくずどもににんげんさんからあげるなんておそれおおいです!!」 「いいの。さ、どいて」 「ゆっくりごめんなさい!!」 そうして、皿を運んでくるお姉さん。 その様子を見て、群れのゆっくり達は飛び跳ねた。 「ゆっ!!ありがとうにんげんさん!! はやくあまあまおいていってね!!」 「おれいにおうたをうたってあげるよ!! あまあまちょうだい!!あまあま!!」 一刻も早く菓子を受け取ろうと、扉のほうに集まっていく。 親れいむも、痛む体と空腹を引きずりながらそちらへ向かっていった。 やがて、扉を開いてお姉さんが現れた。 「はいはい、がっつかないの」 その瞬間、親れいむの中枢餡を衝撃が貫いた。 恐ろしく空腹だったが、もはや菓子などは眼中になかった。 わけがわからない。 わからないが、とにかく、このお姉さんにすりすりしたくて仕方がなかった。 このおねえさんはゆっくりできる。 親れいむの本能が、それを告げていた。それもこれまでにないほど強烈に。 菓子皿が地面に置かれたが、 親れいむは脇目もふらずにお姉さんに向かっていった。 「お、おねえさん!!すーりすーり!!れいむとすーりすーりしてね!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 先ほどYまりさにされた制裁も忘れ、人間にすり寄っていく。 見ると、群れの他のゆっくり達も同じようにお姉さんの方に向かっていた。 遅れてはならじと、親れいむは必死に這いずっていく。 しかしお姉さんは首を振り、立ち上がった。 「だめだめ。ゆっくりできないわね」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおぉぉぉ!!?」 群れの中から絶叫が響く。 「だーめ。みんな汚いもの。じゃあねー」 「ま!まって!!おねえざん!!すーりすーりしでえぇ!!」 「ずーりずーりじだああいいいい!!おねえざん!!もどっでぎでええええ!!」 「おねえざああああん!!おねえざああああんん!!おでがいいいいいぃ!!!」 「ゆっぐじじで!!ゆっぐじじでよおおおおぉぉぉ!!!」 飛び跳ね、追いすがり、懇願する群れに背を向け、 お姉さんは足早に扉の内側に引っこんで扉を閉めてしまった。 ゆっくりプレイス内では、 Y飾りのゆっくり達が、存分にお姉さんの腕や足にすりすりをしている。 どれもが恍惚の表情を浮かべ、このうえなくゆっくりしていた。 これまでで一番強い、身を焦がす羨望に親れいむは身悶えする。 ゆっくりしたい。 食欲とも性欲とも違う、そのどれよりも遥かに強い衝動。 気も狂わんばかりのその衝動に突き動かされ、 置かれた菓子の皿には目もくれず、Y飾り達の怒鳴り声にもひるまず、 親れいむ達はガラス壁に体当たりし、壁の向こうのお姉さんに懇願し続けた。 壁が再び鏡に戻ってしまうまでそれは続いた。 「………なんだこれ」 「ね、すごいでしょ」 「信じられない。あれだけ腹をすかしたゆっくりが、食事も忘れて人間にすり寄るなんて。 食欲がほぼ最優先で、人間を見下している生き物が……どういうわけなんだ?」 「問題。ゆっくりが一番ゆっくりできる状態って、なんだと思う?」 「………俺に聞かれてもわからないが、甘いものを食べてるときか?」 「ブー。解答。お母さんの中にいるとき」 「口の中に入って……いや、母胎か!」 「そういうこと。生まれる前、母親の子宮の中にいるときが一番ゆっくりしてるの。 人間と同じで、生まれた後はほとんど忘れちゃうようだけど、 胎内にいる間のゆっくり波は、生まれた後にどんな事をしてもまず到達できない数値なんだな」 「ゆっくり波?」 「脳波のゆっくりバージョンで、ゆっくり具合を数値化してみたのね。 で、研究してみた結果、にんっしんっしているゆっくりの子宮内の液体が鍵だとわかったの。 胎ゆっくりが浮かぶ海、人間でいう羊水ね。便宜上、「ゆー水」と名付けました」 「ゆーすい……」 「そのゆー水を大量に摂取し凝縮して、香水にしてみたわけ。 それを肌にふりかければ、人間だろうとブタだろうとれみりゃだろうと、あらゆるゆっくりがすり寄るようになるよ」 「そりゃまた。つくづく単純な生き物だな」 「コレが開発できた時点で、 ゆっくりに関するほとんどの問題は解決できたようなもんね。 あとはじっくり手間をかけていくだけってわけ」 鏡を前にしてゆっくりプレイスと遮断された群れは、 意気消沈の体で、それでも菓子を盛った皿に這いずっていった。 「むーしゃむーしゃ……しあわせー……」 「うっめ……これめっちゃうっめ……」 一週間ぶりの、それも初めて食べるほどの美味だったが、 その量は群れに対してとても充分とはいえなかったし、 何より、先ほどの人間にすげなくあしらわれたのが、なぜか無性に辛かった。 あの人間に褒めてほしい。可愛がってほしい。 餡子の底から湧き起こる、説明しようのない本能が思考を苛む。 その日の夜、岩場に身を横たえて眠りながら、 親れいむは夢を見た。 遠い遠い記憶。 すでに忘れかけていた、魂のゆっくり。 自分たちゆっくりが毎日本能的に追い求めている、 すべてが全く満たされた夢のような時が、 かつてたしかにあったのだ。 夢の中で、親れいむは、 大きく温かく優しい母親の頬にすーりすーりをしていた。 起きると、親れいむは泣いていた。 周囲には、同じように泣いているゆっくり達が多くいた。 同じ夢を見たのだろう。 互いに言葉を交わすでもなく、再び一方の鏡を凝視する。 あの三十分がその日も訪れ、群れのゆっくり達はガラス壁にしがみついた。 一同はY飾り達の暴力を恐れ、声をあげずに張り付いているだけだったが、 やがて人間の姿が現れると、無意識に鳴き声を上げた。 「ゆうぅ~~……ゆぅぅう……」 「ゆっくり……ゆっくりしたいぃ……」 しかし、その日やってきた人間は別のお姉さんだった。 親れいむ達は落胆したが、 扉が開かれ、菓子皿を手にそのお姉さんが現れると、 再び電流のような渇望に打たれ、お姉さんにすり寄ろうとした。 そしてまた拒絶される。 「ゆっくり!!ゆっくりしたああいいいい!!!」 「おでがい!!おでがい!!でいぶをゆっぐりざぜで!!ずーりずーりじでぇぇ!!」 「なんでぼじばず!!ずごじだげでいいんでず!!なーでなーでじでぐだざいいいい!!」 「ああやだやだ、汚い汚い」 泣きながら這いずってにじり寄るゆっくり達を振り切って、 お姉さんはさっさとゆっくりプレイスに戻って扉を閉めてしまう。 「ゆっぐじざぜでえええええええぇぇぇ!!!」 再び一週間が過ぎた。 わずかなあまあまで日々を食いつなぎ、 今日こそは、今日こそはと、毎日違うお姉さんに懇願する。 ゆっくり達はやつれ果て、疲れきっていた。 毎日泣きはらし、目の下には深い隈ができている。 最初は群れで固まっていたが、今ではそれぞれが勝手に動き、 会話をしようともしない。 薄汚れた互いの姿を見てもみじめになるばかりだった。 「今、あのゆっくり達は、 ゆー水の効果で人間に母親を見てるわけ」 「まさかそんな事ができるとは思わなかったな」 「母親に捨てられた子供ほどみじめなものはないよ。 アメリカのほうじゃたまに見かけたけど、ひどいもん。 お母さんに拒絶されるというのは、トラウマになるぐらい辛いことみたいだね」 「君も、もう少しお母さんを大事にしてやればいいだろう」 「そうだねー。週末には帰ろうかな。 じゃ、そろそろ次いこっか。ここからが面白いよー♪」 「おねえさんとすーりすーりしたいの?」 その日、外に出てきたY飾りのまりさが聞いてきた。 ゆっくり達が沸き返り、絶叫する。 「ゆ!!したいい!!ずーりずーりじだいいいぃぃ!!!」 「ばりざをおでがいじばず!!ずーりずーりじだいいいいい」 「ゆっぐりいいいい!!ゆっぐりいいいいいいい!!!」 「いまはだめだよ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉぉ!!?」 泣きわめくゆっくり達に、Yまりさが毅然として答えた。 「うすよごれたやくたたずのごみくずが、 にんげんさんにさわるなんておそれおおいんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ううううう!!ゆううううううう!!!」 「でも、やくたたずだけど、がんばればあっちにいれてあげてもいいよ!! おねえさんともすーりすーりできるよ!!」 「ゆ!!がんばる!!がんばりばずうううううぅぅぅ!!!」 初めて目の前にぶら下がる希望に、ゆっくり達は眼を輝かせた。 「そのためには、「しんっこうっ」のみちにはいるんだよ!」 「ゆ?」 「しんっこうってなに?」 「「ゆっくりきょう」にはいって、 にんげんさんのやくにたつゆっくりになれるようにしゅぎょうすることだよ! そのためにはたくさんおぼえなきゃいけないよ!!しゅぎょうはつらいよ!! つらいけど、がんばればおねえさんとすーりすーりできるよ!!」 「ゆゆゆゆ!!よくわからないけど、ありすはしんっこうっするわ!!」 「まりさもしんっこうっするんだぜ!!すーりすーりするのぜ!!」 群れのゆっくり達から次々と声があがる。 「しんっこうっのみちにはいるには、きまりごとをいっぱいおぼえなきゃいけないよ!! それをおぼえたら、このばっじをあげるよ!!」 Yまりさが取り出したのは、 自分が頭につけているのと同じY字型の飾りだった。 「このばっじをつければ、ゆっくりきょうのいちいんだよ! ゆっくりぷれいすにいれてあげるからね!!」 歓声をあげる群れに、Yまりさは一冊の本を取り出して言った。 「それじゃ、これからゆっくりきょうのおきてをおしえるからゆっくりおぼえてね!!」 「ゆゆぅ!!ゆっくりおぼえるよぉ!!」 「すーりすーり♪すーりすーり♪」 「ゆっくりはゆっくりできません!!」 「ゆっ?」 不思議そうに小首をかしげるゆっくり達に、Yまりさは怒鳴った。 「ゆっくりふくしょうしてね!! ゆっくりはゆっくりできません!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉ!!?ゆっくりできるよぉ!?」 「ゆっくりだまってね!! さからうならゆっくりきょうにははいれないよ!! おねえさんにすーりすーりしてもらえないよ!!」 「ゆゆうぅぅ!?」 「ふくしょうしてね!! ゆっくりはゆっくりできません!!」 「「「ゆ……ゆっくりはゆっくりできません!!」」」 お姉さんに触りたい一心で群れは復唱する。 「このよのすべてのいきものは、 どんないきものでもゆっくりできます!!」 「「「ゆっくりできます!!」」」 「けれど、ゆっくりだけはゆっくりできません!!」 「ゆゆゆぅぅぅ!?」 「ふくしょうしてね!!」 「「「ゆっくりだけはゆっくりできませんん!!」」」 「ゆっくりは、なんのやくにもたたないごみくずです!!」 「「「……ごみくずですぅ!!」」」 「このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです!!」 「「「にんげんさんです!!」」」 ちがうでしょおおおおぉぉぉ!!? 親れいむはそう叫びたくて仕方がなかった。 しかし、以前にY飾り達にリンチを受けた体験を思い出し、 逆らうのは思いとどまった。 何より、あのお姉さんたちがゆっくりできるのは確かだった。 掟は続く。 「やさしいにんげんさんは、 ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます!!」 「「「みちびいてくれます!!」」」 「ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして、 にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと!!」 「「「いうことをきくこと!!」」」 「そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます!! それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです!!」 「「「ゆいいつのほうほうです!!」」」 最後に、Yまりさは一際声を張り上げて締めた。 「にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです!!!」 「「「ゆっくりのゆっくりです!!!」」」 「きょうおしえるのはこれだけだよ!!ゆっくりおぼえていってね!!」 「ゆ、ゆ、おかしいわ!」 不平を鳴らしたのは参謀役のぱちゅりーだった。 「なにがおかしいの?」 Yまりさがじりじりと詰め寄りながら聞き返す。 ぶるぶると震えながら、ぱちゅりーはそれでも答えた。 「ゆ、ゆ、でも、でも、にんげんさんはひどいことをするわ! おやさいさんをひとりじめしたり……」 「おやさいさんはにんげんさんがそだててるんだよぉ!!!」 凄い剣幕でYまりさが怒鳴った。 「にんげんさんのおやさいをたべたの!?」 「ぱ、ぱちゅりーはたべてないわ……」 「ほんとう!?たべてたらこのばでつぶしてるよ!!」 その剣幕におののき、 群れの中の、畑に侵入した前科のあるゆっくりも黙り込んでしまう。 「にんげんさんがそだてたおやさいをぬすむゆっくりはゆっくりできないよ!!」 「お、おやさいはかってにはえて……」 「ぱちゅりぃぃぃ!!そんなこともしらないでもりのけんじゃなのおおぉ!?」 涙を一筋こぼし、ぱちゅりーは口をつぐむ。 子めーりんに負けて以来、ぱちゅりーは自分の知識に全く自信が持てなくなっていた。 「ゆゆぅ……でも……」 群れの中から、れいむ種の反論がさらに出てくる。 これほど自信を失い、これほど強い相手を前にしても、 人間が一番ゆっくりでき、ゆっくりはその奴隷になるべきだという理屈は、 ゆっくり達にとって到底すんなり受け入れられるものではなかった。 「おうたをうたってあげても、 にんげんさんはおれいをしてくれなかったよ……」 「おうたぁ!?」 Yまりさが向きなおって怒鳴る。 「おうたって、まさかあれのこと!? ゆーゆーうめいてるだけの、あのひどいざつおんのこと!?」 「…………!!」 群れのれいむの脳裏に、テストの時の屈辱が甦る。 「そんなものをにんげんさんにきかせたのおおぉぉ!!? そのせいでにんげんさんはゆっくりできなかったんだよ!! おれいってなんなのおぉ!?ごみくず!!おまえがおわびするんだよ!!」 「……ゆ、ゆ………ごべんなざいぃ……」 反論したれいむは泣きながらうなだれた。 その後も弱々しい反論が群れから発せられたが、 そのどれもが、Yまりさの激しい叱責で切って捨てられた。 「にんげんさんがよこどりするうぅぅ!!? ぜんぶにんげんさんのものなんだよ!! このせかいのなかで、ごみくずのものなんかどこにもないんだよおぉ!! にんげんさんがおめぐみしてくれるものだけがゆっくりのものだよ!!」 「ゆぐぐぐぐぅぅ………」 「わかったらおきてをおぼえてね!! ゆっくりはゆっくりできません!!」 「「「ゆっくりはゆっくりできませええん!!」」」 その日は、その掟を何度も何度も復唱させられた。 それでも最後まで暗記できた者はいなかった。 暗記できるまで練習するよう命じると、 本を投げてよこし、Yまりさはゆっくりプレイスに帰っていった。 その大きくて薄い本には、先ほどの掟が簡単なひらがなで書いてあった。 字の読めるゆっくりがそれを手に取り、 群れといっしょに音読しはじめた。 ゆっくりの本能に抗うその掟は到底受け入れ難いものだったが、 お姉さんとすりすりしたい、ただその事のために、 他にやることもない無聊も手伝い、ゆっくり達は掟を繰り返し続けた。 無心でそれを繰り返していれば、少なくとも現状のみじめさを忘れることはできた。 ゆっくりはゆっくりできません このよのすべてのいきものは どんないきものでもゆっくりできます けれど、ゆっくりだけはゆっくりできません ゆっくりは、なんのやくにもたたないごみくずです このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです やさしいにんげんさんは ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです 一番覚えのよかった一匹のまりさ種が、丸一日かかって暗記した。 翌日、Yまりさの前で、そのまりさは掟を暗唱した。 「ゆ!!ごみくずなりによくおぼえたね!!」 「まりさはがんばったんだぜ!!すーりすーりするんだぜ!!」 「このぐらいでみとめられるとおもわないでねえぇぇ!!」 怒鳴られ、委縮するまりさ。 しかしその時、人間の声がかかってきた。 扉を開けてやってきたのはお姉さんだった。 お姉さんはまりさを見下ろして笑った。 「よく覚えたわね。偉いわよ、まりさ」 「ゆゆゆゆううぅぅ!!!」 感極まってぶるぶると震え、目をきらきら輝かせるまりさ。 「ご褒美をあげるわ。ほら、撫でてあげる」 「ゆ!!おねえさん!!すーりすーり!!すーりすーりしてええぇぇ!!!」 まりさの薄汚れた頬にお姉さんの手が触れ、優しく撫ぜた。 「ゆっ……………くりいいぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~………!!!」 あひる口で涙と涎を垂らし、頬を紅潮させて震えながらうれちーちーを漏らすまりさ。 恐らくは生涯最高にゆっくりできているだろうその表情が、群れの羨望をかきたてる。 「はい、おしまい」 「ゆゆうううぅぅぅ!!?もっと!!もっとすーりすーりいぃぃ!!」 「だーめ。もっと頑張ったらまたやってあげるわね」 そのまま立ち上がり、お姉さんは扉の向こうへ消えていってしまった。 群れは泣きながら追いすがり、すーりすーりを懇願したが、 Yまりさの怒鳴り声に追い返された。 あのまりさだけが、いまだに余韻にひたってうれちーちーを漏らし続けていた。 何日もかかって群れのゆっくり達は最初の掟を覚え、 お姉さんからご褒美のすーりすーりを受けて、その快感に魅せられた。 掟はそれだけではなく、 それから数多くの掟を教えられた。 にんげんさんにさからってはいけません ゆっくりはみにくいいきものです てとあしがないのはみっともないことです ゆっくりはよわいいきものです にんげんさんがまもってくれるおかげでいきていけます ゆっくりはよくぶかい、あさましいいきものです にんげんさんにしどうしてもらいましょう 反発したいもの、意味がよく掴めないものが多かったが、 お姉さんのご褒美をもらいたいというそのためだけに、 群れのゆっくり達は必死に覚え続けた。 通常のゆっくりでは、それらのすべてを暗記することは不可能だったが、 それでも掟は少しずつゆっくり達の無意識に浸透していった。 たとえ心で反発していても、口に出して音読しているうちに抵抗が薄れていく。 なにより、あのすーりすーりへの燃えるような渇望が、 ゆっくり達から思考能力を奪っていた。 「このせかいは、かみさまがつくったんだよ。 いぬさんもおはなさんももりさんもうみさんも、ぜんぶかみさまがつくったんだよ。 かみさまはさいごに、じぶんににせたいきものをつくって、 このせかいをかんりするやくめをあたえたんだよ。 それがにんげんさんだよ」 Yまりさは群れに講義していた。 「かみさまはいろんないきものさんをつくったけど、 つくったものには、わるいところがすこしずつあったよ。 そのわるいところを、かみさまはていねいにとりのぞいたよ。 いろんないきものさんのわるいところを、ちぎってまとめてすてたんだけど、 そのわるいくずがあつまって、ひとつのいきものになっちゃったよ。 それがゆっくりだよ」 群れの中から、かすかに嗚咽が漏れてくる。 その頃になると、群れのゆっくり達は素直にYまりさの教えに耳を傾けていた。 「にんげんさんは、ぜんちぜんのうのそんざいなんだよ。 にんげんさんにはなにもかもわかってるし、 ゆっくりたちがなにをしてるか、ぜんぶおみとおしなんだよ」 ゆうぅぅ、という嘆息が群れから上がった。 「ゆっくりがゆっくりできているかどうかは、 にんげんさんがぜんぶおしえてくれるよ。 まよったときは、にんげんさんにおしえてもらってね。 ゆっくりできることをしていたら、にんげんさんはゆるしてくれるし、 ゆっくりできないことをしていたら、にんげんさんがばつをあたえてくれるよ」 Yまりさは一旦言葉を切り、群れを見回した。 そして頷きながら続ける。 「それはとてもありがたいことなんだよ。 ばつをあたえてもらえば、ゆっくりははんせいできるよ。 そうすればもっとゆっくりできるようになれるよ。 でも、にんげんさんのばつで、ゆっくりがころされることもあるよ」 再び言葉を切り、間を置いてからYまりさは強い口調で続けた。 「それも、すごくありがたいことだよ!! ゆっくりできないゆっくりは、 ころしてもらうことで、もうだれにもめいわくをかけずにすむよ。 そして、にんげんさんのばつをあたえてもらってしぬことで、 じごくへいかずにすむんだよ!」 「ゆゆっ?」 「じごくってなに?」 群れの中から質問が上がり、Yまりさはそれに答えた。 「じごくっていうのは、とってもとってもゆっくりできないところだよ。 にんげんさんのためにはたらいたゆっくりは、 えいえんにゆっくりしたあと、おそらへいくよ。 だけど、わるいことをしたゆっくりは、 おそらへいけないで、じごくへいくんだよ。 じごくでは、ずっとずっと、いたくてくるしくてゆっくりできないことをされるよ。 じごくにおちたゆっくりは、にどとしねないよ。 えいえんに、ずっと、ずっと、ずっとずっとくるしみつづけるんだよ。 えいえんにくるしくて、えいえんにゆっくりできないんだよ」 「ゆゆゆうううううぅぅぅぅ!!!」 群れのゆっくり達が恐怖の叫びを上げる。 Yまりさは満足げに見回して続けた。 「みんな、じごくへいきたい?」 「いぎだぐないでずううぅぅ!!」 「いやあぁぁ!!じごくいやああぁぁ!!」 「そうだよね。だから、ゆっくりできるゆっくりにならなきゃいけないよ。 にんげんさんのいうことをよくきいて、にんげんさんのためにはたらこうね。 そうすれば、おそらでゆっくりできるようになるよ。 それに、わるいことをしたとしても、 にんげんさんにばつをあたえてもらってしねば、 わるいことはゆるしてもらえて、やっぱりおそらでゆっくりできるよ。 みんな、よくおぼえてね!!にんげんさんにかんしゃしようね!!」 「はいいぃぃ!!」 「…………そんなに面白いか?自分でやっといて」 「あははははは、あははは、ははは、あっははははははは!」 「まさか宗教なんてものを持ち出すとはな」 「あははは、あのね、人間だってそうだけど、群れをまとめるには宗教が一番なの。 神様に天使、自分たちより上の存在が決めたルールならみんな素直に従うでしょ。 でも人間の場合、問題は、神様も天使もいないこと。 だから信仰心に頼るしかなくて、結局ルールとしては不安定になるよね。 でも、ゆっくりには、本物がいるんだからね。 人間がなってやればいいんだからさ、その、天使に、ぷはっ! あは、あはははは、天使だって、あっはははは、ひい」 「君が笑っているのはゆっくりか?」 「ははははははは、あは、あは、うひっひっひ、あはははは」 「それとも人間のほうか?」 毎日、群れのゆっくり達はY飾り達の講義を受けた。 他にやることもない状況下、 皆が「ゆっくり教」の教えを理解し、覚えることに全霊をかたむけた。 定期的に、お姉さんの立ち会いのもとにテストが行われた。 暗記を要求されたのは一番最初の掟だけで、 それだけは毎回テストの最初に暗唱させられたが、 それ以外の教えについては、一問一答の形で試された。 ゆっくりできないこと、人間に対してやってはいけないこと、 様々な設問を受け、群れのゆっくり達が答える。 素早く答えられたものには、お姉さんがすーりすーりをしてくれた。 ゆっくりプレイス内のガラス近くに、外側に向けて大画面のテレビジョンが設置され、 ガラス越しにビデオを見せられた。 そのビデオを通して、ゆっくり達は毎日ゆっくりの悪行を見せつけられた。 人家に侵入し、中のものをひっくり返して汚すゆっくり達。 街中で人々にあまあまを要求するゆっくり達。 歌を歌い、おひねりを要求するゆっくり達。 ゴミ箱をあさり、通路にゴミをまき散らすゆっくり達。 そうしたゆっくり達の騒音や通行妨害に迷惑をこうむる者たちの声が、 市民、公務員、飼いゆっくり、さまざまな立場から語られる。 農家で野菜の栽培を生業とする人々が映され、 農業にかかる膨大な手間が詳細にわたって解説される。 その営みの苦労、それを乗り越えてもたらされる収穫の喜びに、 群れのゆっくり達が感動を覚え始めた頃、 「おやさいはかってにはえてくるんだよ!」を合言葉に畑に侵入するゆっくりが映される。 ゆっくりによって荒らされる畑、その害に苦しむ農家の声がたっぷりと流れる。 「とかいはなあい」と称して、飼いれいむを強姦する野良ありす。 犯し殺されたれいむの家族、そして飼い主の悲しむ姿が延々と映される。 レイパーありすの強姦から、人間の手当によって運よく生き延びた大勢のゆっくりが、 レイパーに対する恨みつらみと憎悪を激しい口調で並べ立てる。 ドスまりさが人間の村を訪れ、「きょうてい」を要求する映像。 ドススパークを盾に一方的な不平等条約を結ばされ、 村の糧を奪われて汲々とする村人たちの苦しみが、 特別貧乏な一家の子供たちを中心に描かれる。 自分たちがそれまで思ってもみなかった視点から描かれるゆっくり像に、 多くのゆっくり達が悔悟に苦しみ、自省の涙にくれた。 自分たちのことを憎々しげに語る大勢の人々の声は、自尊心を錐のように貫いた。 特に、ありす種の打ちひしがれようは激しかった。 レイパー被害のビデオを見せられたありす達は、 静かな、しかし激しい涙にくれ、その日は一睡もしなかった。 それ以後どこか卑屈になり、こそこそと群れの後ろのほうに隠れるようになった。 「ずいぶんと素直なんだな。ゆっくりに罪悪感があったのか」 「ゆー水で人間に依存させてるのが大きいんだけどね。 あのね、はっきり言うけどさ、ゆっくりって平和主義なんだよ。 人間から見れば唯我独尊の極致に見えるけど、 自分たちの可愛さで他の生き物をゆっくりさせてあげてるって本気で思ってるの。 レイパーにしたって、「とかいはなあい」で相手が幸せになるって本気で信じてる。 つまり、無償の愛で周囲に奉仕しているつもりでいるんだよ、ゆっくり達は。 実情はどうあれ、平和を愛するという点では人間以上みたいだよ」 「俺の子供を殺したのも平和を愛するからだっていうのか?」 「それ飛躍。あの十三匹はゲス素材を限界までつけ上がらせた個体で、 例としては極端すぎるね、根っこは同じだけど。 でもまあ、ゆっくりが一番偉いっていう自尊心の強さ、ふてぶてしさは、 自分たちが世界に奉仕しているという誇りに支えられてるわけね。 多いよね、人間にも。そういう人」 「まあ……そうだな」 「というわけで、そこを崩してやる。 理屈で言い聞かせたって、普通ゆっくりの頭じゃすんなりとは理解できないから、 物量作戦で、とにかく大勢の声を浴びせてやります。 ゆっくりを嫌っている、迷惑を被っている人たちを、映像として突きつけてやる。 その事実を突きつけられれば、ゆっくりのアイデンティティはガタガタってわけね。 自尊心を壊されたゆっくりは悲惨だよ~」 群れのゆっくり達は、いよいよ口数が少なくなり、 ゆっくり教の教えを復習する以外は、 うなだれ、うつろな暗い目でただただ地面を見つめて暮らすようになった。 自分たちが他の生き物たちをゆっくりさせている。 そう思えばこそ、ゆっくり達は堂々と生き、ゆっくりしてこれていた。 しかし、害獣として疎まれ憎まれている現状を知らされた今、 世界のどこに行っても憎まれ追い返され、迫害されるという不安感に苛まれた。 これまで、愛されているという確信のもとにゆっくりしてきたゆっくり達にとって、 世界中に憎悪されるというストレスはきりきりと精神を苛んだ。 そんなゆっくり達がしがみついたのは、ゆっくり教の教義だった。 最初の頃は、暴力を振るわれるのが怖さに、 そしてお姉さんにすーりすーりしてもらうために機械的に従っていたが、 いまでは心底からゆっくり教の教えを求め、理解しようとしていた。 打ち崩されたゆっくりの誇りと存在意義を、教義は新たに与えてくれた。 このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです やさしいにんげんさんは ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです 「しかし、ずいぶんと手間をかけるんだな」 「ん。た~っぷりとね。最低一年はかけたいね」 「俺が当初予定した計画より、だいぶ回りくどくなったようだ」 「これはね、圭一さん。もう圭一さん個人の復讐じゃないよ。 このゆっくり達への制裁でもない。 あたしたちが今やってるのは、 現在から未来にいたるまでの、全てのゆっくりの洗脳なんだからね。 じっくり丁寧にやらなくっちゃなのよ」 続く
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【クーデター発生】国籍法一部改正で日本終了 1~3 http //jp.youtube.com/user/SakuraSoTV の【日本炎上】アニメもネットも終了?国籍法一部改正のクーデター?! ttp //jp.youtube.com/watch?v=WfLfutS9PKw ttp //jp.youtube.com/watch?v=VIyqySjcYtY ttp //jp.youtube.com/watch?v=E0E58EsYw6g 18日(火)13時に本会議採決が行われることが決定された。 しかし、委員会で採択されてない法案が、いきなり本会議で採決されるのは2・26事件以来のクーデターと言える出来事だと言う。 14日(金)、突然国籍法改正法案が委員会に提出され、採択される予定だったが、一般質問が出て保留になった。 つまり参加した河野太郎をはじめとする国会議員は全員採択するつもりでいた。 通常は採択されるまで国会で審議されることはないが、委員会を無視して国会で審議することになった。 麻生首相が不在の間に、影の支配者(池田大作)が法律を制定しようとしている。 麻生首相がアメリカに発った途端に、国籍法が改正される。 国会議員は自分の選挙準備に一生懸命で 公務員はばら撒きの準備に忙しくて手が回らない時に、日本を転覆させる法案提出。 この手口はアメリカの銀行法が作られたときと同じ。 クリスマス休みで誰もいないときに残った数人が勝手に採決した。 この法律は、日本国籍を持つたった一人が何百人もの外国人に日本国籍を与えることができると言うもの。 2兆円ばら撒きより先にこれが施行されると、中国人・インド人40億人に対して一人1万2千円を支払うことになるかもしれない。 2兆円の予定が80兆円になるわけです。 しかもそれは1回のばら撒きに限った話。 日本国籍を持つので、それが子供なら生活保護を受けることができる。 学校教育も日本の税金で受けられる。 日本人は、国民より多くの人間をただで養ってやらなければならなくなるかもしれない。 日本で生活保護の支給対象になる子を外国から仕入れ続ければ、一生生活保護を受け続けられる。 その子が大人になれば同じことを繰り返し、ねずみ算的に増殖し、日本人の遺伝子は駆逐される。 しかも日本は人身売買の世界一の加害国として国連から軍事介入を受けることになるかもしれない。 2005年4月7日(木)放送 偽装認知 ~不法滞在 新たな手口~ 急増する外国人犯罪。去年は過去最悪の4万7千件を超えた。 その6割近くが不法滞在者による犯行である。そんな中、主に 中国人犯罪者の間で、「偽装認知」という不法滞在の新たな手 口が広まっている。中国人同士の子供を、謝礼と引き替えに日 本人に「認知」させ、子供に偽の日本国籍を取得させることで、 母親自身も不法滞在から合法滞在に変えさせる手口である。プ ライバシーや人権擁護の観点から、現状では当事者が秘密の暴 露をしない限り、「認知」の真偽は、入管や警察当局にも、殆 ど見破ることが出来ない。今回NHKでは、独自の取材からそ の巧妙な手口を解き明かし、福建省や日本に急増している偽の 日本国籍を持った子供の実態を交えながら、日本の特殊な制度 の盲点と今後の対応策を探っていく。 (NO.2062) スタジオ出演 : 橋口 和人 (NHK社会部・記者) http //www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2005/0504-1.html 1/4 【日中】偽装認知 ~不法滞在 新たな手口~犯罪組織の温床[04/07] http //www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2005/0504-1.html http //news18.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1112890173/ 偽装認知 ~不法滞在 新たな手口~ 主に中国人犯罪者の間で、「偽装認知」という不法滞在の新たな 手口が広まっている。中国人同士の子供を、謝礼と引き替えに日 本人に「認知」させ、子供に偽の日本国籍を取得させることで、 母親自身も不法滞在から合法滞在に変えさせる手口である。プラ イバシーや人権擁護の観点から、現状では当事者が秘密の暴露を しない限り、「認知」の真偽は、入管や警察当局にも、殆ど見破 ることが出来ない。(放送予告文より) 以下、主な放送内容要約。(記者φの文章です。) 胎児認知という方法で、日本人の父親として届け出でる。 自治体は、認知届けをその場で受理。 母親(中国人)は子供の養育を理由に、在留特別許可を得る。 医療費、児童手当を受給。 その後、日本国籍取得を目指す。 中国人犯罪組織では、すでに常識となっている。 2/4 中国人同士の子に日本籍 出産直前、日本人と偽装結婚 2008年10月27日(月)03 02 中国人の女が、同居する中国人の男との間にもうけた男児を出産する直前、日本人の男と 偽装結婚し、生まれてきた男児に日本国籍を取得させていたことが警視庁の調べでわかった。 同庁は、子供に日本国籍を与えることで、自分も日本で働き続けるのが目的だったとみている。 男児は現在、中国で暮らしている。中国の事情に詳しい同庁の捜査員は「同じような経緯で 日本国籍を得た子供が中国国内に確認されている。具体的な数はわからないが多数だ」と 証言する。今回、明らかになったケースは氷山の一角とみられ、偽装結婚をめぐる新たな 問題が明らかになった形だ。 http //news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2008102601690.html 偽の婚姻届で子に日本国籍取得 中国人女が出産直前に 2008年10月27日(月)10 58 日本人の男と偽装結婚したとして逮捕された中国人の女が、子供を出産する直前に 偽の婚姻届を出し、中国人の男との間にできた子供に日本国籍を取得させていたことが 27日、警視庁組織犯罪対策1課の調べで分かった。同課は子供に日本国籍を取得させ ることで、日本で滞在や就労を続ける目的だったとみている。同課によると、女は 大学生の姜欣欣被告(27)。長野県の男との偽の婚姻届を出したとして、今年9月に 逮捕された。 http //news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2008102701000190.html?C=S 3/4 不法滞在、新たな手口 中国人胎児を偽装認知 埼玉2人逮捕 日本人に謝礼30万円 URL http //headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040806-00000000-san-soci 日本人の男に胎児を認知してもらい、生まれてきた子供に日本国籍を取って 自分も日本での長期滞在資格を取得しようとした中国人の女が、公正証書 原本不実記載・同行使の疑いで埼玉県警に逮捕されていたことが五日、 分かった。日本滞在資格を得るための新たな手口で、同県警によると、 このような摘発は全国で初めて。県警は背後に中国人犯罪組織が関与して いる可能性もあるとみて、二人を仲介した中国人の男の行方を追っている。 県警国際捜査課と鴻巣署に逮捕されたのは、東京都北区の無職、中国籍、 林玲容疑者(二七)と、胎児を認知した埼玉県新座市の無職、田中和人 容疑者(五七)。 調べによると、林容疑者は約五年前に来日し、不法滞在期間に入っていた 昨年、同居していた中国人男性の子供を妊娠。昨年十月、田中容疑者と一緒 に埼玉・川口市役所を訪れて、胎児を田中容疑者の子供と装って虚偽の 認知届を提出した疑い。 両容疑者は東京都新宿区の自称貿易商の中国人の男(五三)の仲介で知り 合い、田中容疑者は胎児を認知後、林容疑者から謝礼として三十万円を受け 取った。両容疑者は容疑を認めているという。 自称貿易商の中国人は中国に逃亡したとみられるが、同県警はこの中国人が 胎児の偽装認知を十件以上仲介したとみて全容解明を進めている。 http //news17.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1091754858/ 4/4 偽装国籍取得 謝礼の相場100万円 胎児認知 5、6年前から横行 http //www.sankei.co.jp/news/morning/07na1002.htm 中国人らによる偽装国籍取得事件で、同じ中国人との間にできた胎児を 日本人男性に認知してもらい、中国人女性が「日本人の母親」となる日本 滞在資格の不法取得の手口は五、六年前から横行し、日本人男性への謝礼 の相場が百万円に上ることが六日、関係者の証言で分かった。 埼玉県警の調べや関係者によると、日本人男性を使った胎児認知は、 偽装国籍取得に向けた第一段階。女性は出産後、日本国籍を取得した 子供と一緒に入国管理局に出頭し、「日本人(子供)の親権者」として 在留特別許可を求める嘆願書を提出。嘆願書が受け入れられると、女性に 長期滞在許可がおり、数回の更新を経て五年後に永住ビザへの道が開ける。 永住ビザ取得後、中国人男性(実の父親)と結婚すれば、中国人男性が 「永住者の配偶者」として在留特別許可を求める嘆願書を提出できる。 子供が小学校に入るころには、家族そろって、“合法的に日本で暮らせる” という。これらの手続きは、行政書士に頼ることが多く、東京都内の複数 の行政書士によると、中国人がからんだこの手の認知手続き代行依頼は 五、六年前からあった。胎児を認知する日本人男性への謝礼の相場は百万円。 「埼玉での事件の謝礼が三十万円だったのは、手続き途中で摘発されたから だろう」(行政書士)という。 http //news13.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1091833595/ 1/2 【社会】国籍法改正案審議入り 不正認知横行の懸念も 独逸で悪用例 未婚の日本人の父と外国人の母の間に生まれ、出生後に認知された子の 日本国籍取得要件から「婚姻」を外す国籍法改正案は14日、衆院法務委員会で 趣旨説明が行われ、審議入りした。自民、民主両党は同法案を30日の会期末までに 成立させる方針で合意し、18日の衆院法務委で可決後、同日の本会議で賛成多数で 衆院を通過する見通しだ。だが、偽装認知などダークビジネスの温床になるとの 懸念が出ている。 「最高裁に現状は違憲だといわれたから改正案を出した。それでどうなるかは、 法律が施行されないと分からない。犯罪者はいろんな方法を考えるから…」 政府筋はこう述べ、法案の危うさを暗に認める。 現行国籍法は、未婚の日本人男性と外国人女性の間に生まれた子供(婚外子、20歳未満) が出生前に認知されなかった場合、国籍取得には「出生後の認知」と「父母の婚姻」を 要件としている。ところが今年6月、この婚姻要件が最高裁判決で違憲とされ、 「違憲状態を一刻も早く解消したい」(森英介法相)として改正案がつくられた。 改正案は、両親が結婚していなくても出生後に父親が認知すれば、届け出によって 日本国籍を取得できるようにした。また、虚偽の届け出には罰則(1年以下の懲役または 20万円以下の罰金)を新設した。 改正案は今月4日に閣議決定されたが、次期衆院選の準備に忙しかった衆院議員らに とって、「ほとんどの人が法案の中身を知らない」(自民党議員)まま手続きが進んだ という。(続く) ▽産経ニュース http //sankei.jp.msn.com/politics/situation/081115/stt0811150054000-n1.htm ▽関連ニュース(NHKニュース) http //www.nhk.or.jp/news/k10015336431000.html 2/2 【社会】国籍法改正案審議入り 不正認知横行の懸念も 独逸で悪用例 しかし、最近、保守系議員らから「生活に困った日本人男性と、子供に 日本国籍を取得させたい外国人女性を対象とした不正認知の斡旋(あっせん) ビジネスが横行する」「罰則が緩い」-との批判が強まってきた。 自民党の国会議員32人は14日、衆院の山本幸三法務委員長らに対し、 「国民の不安が払拭(ふっしょく)されるまで、徹底的な審議を求める」として 慎重審議を申し入れた。また超党派の有志議員らも、17日に国会内で緊急集会を 開き、同法案の問題点を検証することを決めた。 国会図書館によるとドイツでは1998年、父親の認知と母親の同意だけで 国籍を取得できるようにしたが、これが悪用された。滞在許可期限が切れた 外国人女性が、ドイツ国籍のホームレスにカネを払い、自分の子供を認知してもらって ドイツ国籍を取得させ、それにより、自分のドイツ滞在も可能にする-などの事例が みられた。 このため今年3月、父子間に社会的・家族的関係がないのに認知によって子や母親の 入国・滞在が認められているケースに限り、認知無効を求める権利が、管轄官庁に 与えられた。 (おわり) 【政治】 国籍法改正案、有志議員が慎重審議の申し入れ 国籍法改正案への懸念の広がりを受け、自民党の赤池誠章衆院議員ら 有志議員32人は14日、衆院の山本幸三法務委員長らに対し、「国民の 不安が払拭(ふっしょく)されるまで、徹底的な審議を求める」など として慎重審議を申し入れた。また超党派の有志議員らも、17日に 国会内で緊急集会を開き、同法案の問題点を検証することを決めた。 http //headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081114-00000605-san-pol 1/2 「はは!またメールしてください~かよw国籍法改悪?俺には関係ね~っつーの!」 何時ものように2chでネトウヨの書き込みを見て笑っていた。 私はそんな事おきるわけ無いって漠然ながら思ってたし、疑う事も無かった だけどまさかこんな事に・・・ 中国に乗っ取られたイタリア、これが日本の未来です。 ↓ http //www.1101.com/francorossi/2007-04-17.html 「フランコさんのイタリア通信。アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。」の20070417 これからのミラノ、これからの中国。 4月12日の朝のことでした、ミラノの街の一画で、10枚ほどの赤い旗が風にはためき、 道路には100人ほどの中国系の人々が、警察と闘いを繰広げていました。 いつもと同じ朝のはずなのに、道の真ん中では車がひっくり返っており、 こん棒と盾を装備した警察隊がそこに居ました。まるで、イタリアに対しての、いやミラノに対する 民衆の蜂起が起こっているかのような混沌が、そこにありました。 ミラノはイタリアで一番の産業都市であり、この国の商業的なモーターとも言える存在です。 そして世界の他の大都市同様に、ミラノにも「チャイナタウン」があります。 中国移民たちが管理運営している一画で、彼らは最近10年ほどのうちに、商店や住居アパート、 革製品の小さな工場、靴の製造所、レストランなどを買い取っていきました。 10年前まで、ミラノ市民は中国系の人々を快く受け入れていました。 その後、中国からの荒々しいまでの移民がありました。 かれらは100人、1000人と大挙して、それぞれに兄弟姉妹や、 あらゆる「親戚」を連れて到着しました。 こうするうちに、ミラノにおける中国語は、イタリア語の次に多く使われる言語となっていました。 金銭を生み出すあらゆる現場には、連盟や結社ができるものです。 お互いの有利を計り、守りあう仲間ですね。 中国系移民の中小企業も結束しました。 まもなく多くのイタリア人が、彼らを「上海マフィア」と呼ぶようになりました。 2/2 4月12日の朝、警察は、中国人の商人たちが イタリアの法律を守っているかどうかを確かめるために、 書類や税金の支払いを調べようとしていました。 多くの違法がみつかりました。そして警察が商人や店主らに罰金を科せようとした時、 ミラノのチャイナタウンの中心地であるパオロ・サルピ通りのアパートから、 何百人もの中国人たちが何の前ぶれも無く突然姿を現したそうです。 警察官たちは取り囲まれ、数人の中国人が道路を塞ぐために車をひっくり返し、それから騒乱が始まりました。 ミラノでは、イタリア人と外国人の間でこうした騒乱が起きたことは、今までありません。 警察はこん棒を使い始め、ひとりの中国人女性が殴られて取り押さえられると、 中国人たちの反応は荒っぽさを極めました。 中国の赤い旗が10枚ほどひるがえり、この騒ぎによって、 チャイナタウン全体とその周辺の交通が、数時間にわたってマヒしました。 夕方ごろ、中国の領事が介入し、彼はイタリア警察が乱暴を働いたとして 公式に非難しましたが、それに続けて、中国人たちに、家なり店なり、 バッグや靴を作る仕事場なりに、戻るように頼みました。 ミラノは最近、アフリカやイスラム系の人びとの暴動を恐れていたのですが、 そうではないところから騒動が起きてしまいました。 この先10年ほどで、中国は世界一の大国になるかもしれません。 勢力が増すに従って、こうした騒動の可能性も増えていくのが 人間社会の常だとして、それを心配するイタリア人も多くいます。 世界情勢は刻々と変化しており、ミラノという大都市が、 それに無縁でいられるとは思えませんから。 今回の出来事を見て、「これからのミラノ」が、もう始まっているのかなと、ぼくは思ったのでした。 1/2 既に、偽装結婚を使った「日本国籍付与ビジネス」がある。 DNA 鑑定と扶養義務がなければ、日本国籍を無尽蔵に作り出せる。 偽装パスポートを作るコストなど、不要だ。 最も恐ろしいのは、在日や不法滞在者と違い 参政権をもった奴らが増えるのだということ。 事実上、外国人参政権を認めるようなものだと俺は思っている。 (1)は血縁関係で合法でもそれ以降のネズミ算式には変わらない。 20歳までの子供を認知可能。 (1) 日本人 金子が「俺の子です」と言えば、その子は日本人になる。 (2) 母親 黄 には在留許可。 (3) 8ヵ月後には母親 黄 も日本人。 (4) 日本人になった母親 黄と、中国人男 陳が結婚。 (5) 中国人男 陳に在留許可。 (6) 8ヵ月後には日本人。 (7) そして、母親 黄 と 父親 陳 が離婚。母親 黄は、生活保護 (8) 独身になった 陳は★「中国にいる本当の自分の大勢の子供を認知する」★→(1)に戻る ↓ 中国マフィアの新しいビジネス (1) 日本人 陳が「俺の子です」と言えば、その子は日本人になる。 偽装認知で中国人ら逮捕 在留資格の取得図る ttp //www.47news.jp/CN/200408/CN2004080601001312.html 県警によると、在留資格のために胎児認知を利用した手口の摘発は全国初。ともに 容疑を認めているという。 調べでは、林容疑者は不法残留していた昨年、 中国人男性(35)の子供を妊娠。子供の日本国籍を取得し自分も在留資格を得るため、 昨年10月28日、田中容疑者と埼玉県川口市役所を訪れ、同容疑者の子供と偽り胎児 認知届を提出した疑い。 さらに生まれた男児の出生届を提出し今年2月2日、 田中容疑者の子供として千葉県習志野市役所で戸籍に虚偽の記載をさせた疑い。 2/2 ① 不法滞在者_____不法滞在者 | 胎児←認知←日本人 ↓ 胎児が日本人に認知されることによって日本国籍になる ② 不法滞在者_____子供が日本国籍なので在留特別許可者になる | 日本国籍の胎児 ③ 配偶者が在留特別許可者なので在留特別許可者になる_____在留特別許可者 | 日本国籍の胎児 ④ 日本国籍の不法滞在者_____日本国籍の不法滞在者 | 日本国籍の胎児 ⑤ 日本人_____日本人 | 日本人 17日に採択される可能性のある国籍法改正案は日本国籍を20万で販売する悪法 国籍法改正案は在日のためにも、日本人のためにもならない 【用語解説】国籍法 国籍法は日本国籍の取得、喪失などについて定めた法律で、日本人と外国人の間の子供 について(1)出生前に父母が結婚(2)母が日本人(3)未婚の日本人の父が出生前に 認知-の条件で、国籍取得を認めている。一方、最高裁大法廷は今年6月4日、「父母の 結婚」を国籍取得要件とした国籍法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反する合理 的理由のない差別だとして違憲とする初判断を示した。15人の裁判官のうち9人の多数 意見で、3人が違憲状態にあるとの意見を示し、合憲と判断したのは3人だった。 ●国籍法改正案とは? D N A 鑑 定 な し に、男親が「俺の子です」と認知さえすれば、 外国人の子供が誰でも日本国籍を取れてしまうようになるザル法案。しかも、罰則は超緩い。 ●成立すると起こりうる問題 DNA鑑定不要→偽装認知が簡単 / 母親と結婚していない人でも認知可能→1人の日本人男性で何百人もの認知が可能 その結果… ・人身売買・児童買春など悪質なビジネスが横行 ・偽装で取得した子供の日本国籍を盾に続々と外国人親族が日本に大挙 →外国人スラム街が誕生し、治安が悪化。いずれ日本のことを外国人に決定されるようになる。 ・巨額の血税が、偽装認知で生活保護の権利を得た外国人親族のために公然と使われる など多数 ●これから何をすればいいのか? 【電凸、メール凸、FAX】 ・法務委員や議員の先生方に本改正案に反対の意を伝える。FAXの方が形に残るのでオススメ。 ・内容はザル法の指摘、罰則規定が軽すぎることなどの問題点などを自分なりにまとめて主張。 【周知活動】 ・チラシ…配る、許可を得て貼る・置く、「うっかり」置いてくる チラシはwikiの右メニューにあるので、そこから印刷。プリンタがない人もコンビニで印刷できるサービスあり ・とにかく知り合いに口頭やメールで教える ・ブログやmixiなどで呼びかける など 緊急拡散『国籍法改正案抗議行動』最終要請先は【太郎会】会員へ(水間政憲) 2008-11-16 13 28 40 皆様、お疲れさまです。ニコニコ動画「国籍法抗議」のチャンネル桜の番組が、 1日で2万数千アクセスになりダントツの一位になっているそうです。 まだ日本は終わらない。終わらせない。FAX発送が一段落した皆様へ、強力な最終要請先を提示します。 今日(16日)18時以降は、議員が次々上京しますので議員会館へ発送して下さい。 最後の押さえは、麻生首相を実現した国会議員の会が「太郎会」です。 その会が、17日夜にあります。これは「天の采配」か。 わかっている会員を列記しますので、全国から集中的に要請して下さい。 また、要請書を「太郎会」に持参して、麻生首相と森法務大臣に見て貰えるように、お願いして下さい。 各数千通になれば『山』も動きます。 17日『太郎会』出席予定議員一覧。 麻生首相、鳩山邦夫総務大臣(福岡6)、森英介法務大臣(千葉11)、西川京子(福岡8)、 戸井田とおる(兵庫11)、馬渡龍治(比・東海「愛知3」)、園浦健太郎(千葉5)、山口俊一(徳島2)、鍵田忠兵衛(比・近畿)、 武藤容治(岐阜3)、永岡佳子(比・北関東)、以上です。 不思議なことを一つ、衆院法務委員会自民党筆頭理事は、自分のブログで「元中核派」だったと明らかにした塩崎恭久議員でした。ジャーナリスト水間政憲。転載フリー http //blog.goo.ne.jp/toidahimeji/e/8c13d9fae7c26b2b24bc71c5b19e35dd#comment-list 1/6 ■FAQ■ Q 一体全体何が変わるのですか?今までだって偽装はあったのでは? A. これまでは、胎児認知のみでした。したがって、偽装するにも妊婦の存在が不可欠。手間が かかり現実的ではありません。しかも、妊娠ですから、10か月に1回しかできないです。 しかし、改正法では、20歳未満の外国人なら、多重債務者とかホームレスに認知届を書いて 貰うだけで、簡単に日本国籍が取得できます(届出のみ)。 Q. 偽装は厳しく取り締まる、って擁護派の人は言ってるけど? A. 不可能です。日本の認知制度は、「意思主義」。つまり、「真実、自分の子でないと知って いるが、子として育てたい」というのを広く認めます(判例)。父親に認知の意思があるときにDNA鑑定 や、性的関係の存在は不要です。したがって、多重債務者やホームレスが「中国のかわいそな 子を認知して自分の子とした」といえば、偽装でも何でもなく、合法です。取り締まりようがあり ません。 Q. 認知されて国籍取れるのは子供だけでしょ?すぐに実害はないのでは? A. 未成年なので、19歳11月までなら、国籍取得可能となります。世の中には戸籍制度の無い国も たくさんあります。「アフリカの新興国から来ました。戸籍制度はありませんが、老け顔ですが自分は 19歳11月です」と言い張れば、国籍取得可能です。 Q. で、外国人が流入して何が困るの?犯罪が増えるってだけ? A. 国籍取得と同時に参政権が付与されます。この法律が通れば、「自称19歳11月」で入国 した人は、翌月から投票できます(立候補できるのは2013年から)。つまり、次の総選挙から 新日本人が投票することになる訳です。認知は意思主義ですから、血統上日本人と全く つながってない元・外国人が日本の国政を左右することになります。次の総選挙からです。すぐです。 Q. 極めて悪質なケースは厳しく審査するはずなのでは? A. 日本の認知は意思主義(判例「)ですので、取締はほとんど不可能です。また、国籍法に 明文で「届出時点で国籍取得」とありますので、事後審査をいくらしても無駄です。届出した 瞬間に国籍が付与されます。仮に悪質であるとされても摘発されるのはホームレスの父のみで 一度付与された国籍を剥奪することはできません。 2/6 ■まとめ1■ 現行の国籍法(最高裁で違憲とされるまで)では、認知で国籍を取得できたのは、胎児認知のみ したがって 真実妊娠した女性が居て(現行法でも本当に自分の子かまでは問われなかったが) 妊娠期間中に日本人男性が認知届を出す のが要件。偽装できないこともないが、かなり手間。女性雇うにせよ、10か月に1回 しか使えないし だが、この法案が通れば 19歳11か月までの外国人なら誰でも (さらに、戸籍の無い国なら、「老け顔だが、19歳11か月だ」と言い張れば) 多重債務者かホームレスに認知届書いてもらえば、 日本国籍が得られるようになる。 日本の認知は「意思主義」なので、真実血縁関係がなくとも(母親との性的関係なくとも) この認知は合法かつ有効です。 3/6 ■まとめ2: ポイントは「参政権」■ (生活保護とか犯罪増加とは大した論点ではない) 母数の大きさ、地理的な距離からしても中国人からの国籍取得が多数になると思われる。 中国農村部の貧困は、中国政府としても、日本国籍を取得し、日本の予算で生活保護 を受けられることを強く望んでいる。中国には戸籍制度はあるが、全員に「19歳11か月」の 年齢公証を交付して日本に送り出すことは容易かつ低コスト。この政策をやらないはずがない。 そして、国籍取得と同時に■参政権■も得られるから、数年のうちに、国会の多数派は、元・中国人 になり、日中併合条約締結もなされること必至 中国政府も「米国の経済力・国際政治力が弱っている今こそ千載一遇のチャンス」と考えているはず おそらく、日本列島は、2013年には、中国の自治区扱いになると予想される ■まとめ3: 認知ビジネスで日本人が儲けるのは無理■ ブローカーは、多重債務者とかホームレス使って低コスト(おそらく無償)で 認知届を大量に作らせる。新宿中央公園、早朝の新宿駅を1周すれば わかるが、既に戸籍があると思われる新ホームレス(失業サラリーマン系 ホームレス)が一斉にいなくなってます。 さらに、日本人が関与するのは、最初の1回だけ 日本国籍取得すればその元外人も日本人になるから、あとはネズミ算的hに 認知できる おまいらの儲け話にはならない。ましてやおまいらがモテモテになることもあり得ない 4/6 ■まとめ4:「厳しく審査する」というのは悪質なガセです■ 現行3条は「届出」のみで届出さえすればその時に国籍取得となると明記 どこにも事前審査するなど書かれてません (改正法は、このうち、「婚姻」「嫡出子たる身分取得」を削除するもの) 第三条 父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で二十歳 未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の 出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民で あるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出 ることによつて、日本の国籍を取得することができる。 2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。 5条(帰化)は、許可制で、法務大臣の自由裁量。認知の場合、こちらに近い 制度にすべきなのに、改正案はそうなってない。審査できるのは許可制の場合のみ 第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。 第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。 ■まとめ5: 日本の認知制度には偽装概念は無い■ そもそも認知に偽装概念は無い 日本の認知制度は血統主義ではなく「意思主義」 「真実自分の子ではない(たとえば二股女性とつきあってた別の男性の子)と 知っているが、それでもかまわない。自分の子にしたい」というのを広く認めるのが 判例・通説(血統主義・真実主義は学説でもほとんど皆無) 最高裁判例→平成18年07月07日 最高裁判所第二小法廷 認知による国籍取得を認めてしまうと、偽装もへったくれもない。父の意思のみで決まる 意思主義の認知制度と、血統主義の国籍法理念とは水と油の関係 5/6 ■まとめ6: 今後想定される展開■ ここまでは、既定路線↓ 2008年 国籍法改正施行。施行と同時に毎日数十万人単位で認知。 父親と名乗るホームレス・多重債務者が区役所に押しかける。認知は意思主義のため取締り断念。 中国人満載のフェリーで続々来日。乗員全員が「19歳11か月」という(自称)。新日本人となる 2009年 解散総選挙。この時点で「新日本人」は戸籍上20歳なので、まだ立候補はできないが 新日本人の投票率高く、親中派の候補が大勝。法案に反対した議員は全員落選 2013年 総選挙。新日本人25歳。ほぼすべての選挙区で新日本人(元中国人)の候補者が立つ この時点で、新日本人6000万人。日本の有権者の約40%が新日本人 従前からの日本人の投票率が低いため及び小選挙区は1票でも上回れば全取りなので、 新日本人圧勝。衆議院の2/3は新日本人となる。首班指名で、首相以下、全閣僚が 元中国人となる 首班指名の翌日、首相、訪中。日本国首相と中国主席、「日中併合条約」調印 直ちに衆議院で批准。審議なし強行採決。その後、参議院で否決されるも、 憲法61条により、条約は批准 首相、国連に「日本国民の自由意思で日本という国家は消滅した」と通知した後 内閣総辞職。日中併合条約に基づき、日本列島、正式に中国領土となる。 中国政府、日本列島を「大和民族自治区」として、東京に総督府を設置、国家中央 委員会で指名された者が総督として配置される。日本の各省庁は、東京総督府の 下部組織となる 警察及び自衛隊は全員解雇。大和民族自治区の治安は中国軍が担当する。 天皇、英国王室を頼って、欧州に亡命 正直申し上げて、もう詰んでます。18日裁決は、党議拘束かかるだろうし 東京総督府体制で生き残りたけりゃ、今から北京語勉強するしかない。 6/6 【Advanced FAQ】 Q. 日本の官僚は世界一優秀なはずです。もし ■まとめ6■ のような事態が予想されるなら、 なぜ、それを阻止しようとしないのですか? (同趣旨Q : ■FAQ■ のとおりなら法務官僚の国会答弁はすべて虚偽ということになります。 なぜこのような嘘をつくのでしょうか?) A. ご指摘のとおり、官僚は聡明であり、「2013年には日中併合条約により、自分たちは、北京 から派遣される東京総督府の指導部の下に編入される」ということを折り込み済みです。 このため、彼らから「反逆罪」とならないよう、慎重に行動しています。目先の利く彼らは、今ごろ せっせと北京語の練習をしていることでしょう。そのための努力はおしまない人たちです。 Q. なぜ、幹部クラスの国会議員や、■マスコミ■が全く動かないのでしょうか? A. 上記Q A参照。彼らも2013年以降、東京総督府体制での生き残りに必死です。 ■マスコミ■については、2013年以降、周波数割当権が北京政府に移行されるので、それを見越して、 反中国的な発言はもはやできません ■追補: マスコミが動かない理由■ マスコミ上層部など、目先の利く連中は、もう【2013年体制】を折り込み済みだから もはや、①与野党全部合意、②党議拘束かかるし。詰んでる、との認識 Q. では、この法案制定に反対している議員たちはどうなるのですか? A. 2013年の総選挙(間違いなく新日本人が政権を取り、日中併合条約が締結される)以降、 東京総督府の下で設立される人民裁判所にかけられ(政治犯は、弁護人抜きで、証拠調べ 無し、即日判決。なお、中国政治犯法廷では、検察官と刑事裁判官は一体)、即日判決 公開処刑になると思われます。 Q. 我々一般人はどうしたらよいのでしょうか?■まとめ6■ の世になって上手に世の中を渡っていく自身がありません。 A. 現在の中国でも全員が不幸のどん底にある訳ではありません。希望をもちましょう! おそらく、①言論の自由、②思想信条の自由、③居住移転の自由、④職業選択の自由は、2013年 以降、否定されます。 しかし、中国の政治体制は、「人治主義」であって、ルールを絶対にする「法治主義」ではありません。 北京から派遣されてくる、東京総督府幹部の「覚えめでたく」しておくこと(まさに、官僚や、多くの議員 がやってること!)が重要です。 ■まとめ4の補足: 受理受理詐欺にご用心■ 前々々スレあたりから「届出制でも法務省は受理しなければ良い」とか言ってる工作員がいますが、 これは明らかなガセです。 最高裁判決は明確に (引用開始) 同法が、日本国民である父から出生後に認知された非嫡出子についてのみ父母が婚姻しない限り 日本国籍の取得を認めないとしている点は、今日においては、立法目的との合理的関連性の認め られる範囲を著しく超える手段を採用し、その結果、不合理な差別を生じさせているものといわざる を得ない。 以上によれば、日本国籍の取得に関する前記の区別は、遅くとも03年に原告が法相あてに国籍 取得届を提出した当時には、立法府に与えられた裁量権を考慮してもなおその立法目的との間に おいて合理的関連性を欠くものとなっており、合理的な理由のない差別となっていたといわざるを得ず、 国籍法3条1項の規定が前記区別を生じさせていることは、前記時点において憲法14条1項に 違反するもの したがって、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知された子は、 父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた同項所定の要件が満たされるときは、 同項に基づいて日本国籍を取得することが認められるというべきであるから、原告は、法相あての国籍 ■取得届を提出■したことによって、日本国籍を取得したものと解するのが相当である。 ttp //www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/kokusekihouikenn.htm (引用終わり) 「提出時点で、国籍取得」(そもそも争われたのは受理されなかった事案)です。 受理受理詐欺にだまされてはいけません。また、真実の父子(DNA鑑定など)であること、も要件にしてません ■委員会にかけない理由■ 433 名前:名無しさん@九周年[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 10 36 22 ID IB36FLRf0 本会議強行突破したのは法務委員会でDNA鑑定をつけることを 付帯条項にされるのを嫌ったから New!■建設的提案■ 改正に反対している人なんてひとりもいない。単純に届出制やめてて、「事前審査による許認可」を 明記するだけのこと(立法技術に疎い人は「DNA鑑定義務化」とか言ってるが同じ趣旨)。 最高裁では、14条(平等原則)が争われた訳であって、両方とも平等に許認可制にすれば、 違憲状態は避けられる。激変緩和措置も含めて (1)準正(嫡出子)の場合も、認知(非嫡出子)の場合も許認可制にする (2)準正(嫡出子)の場合、■実質的に■従前より不利にならないよう、できるだけ即日 で許可ないし認可をを出すよう、権限を法務局レベルにおろす(専決) (3)これに対して、認知の場合は、やや審査を慎重にやる。準正とは差がついてしまうが、 あくまで不正を排除するための合理的な区別なので、行政としてやむなし、と考える とすればいいだけのこと。誰も困らない