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属性 火属性 最大Lv 99 初期HP 5763 最大HP 8251 レアリティ ★6 タイプ ランサー 初期攻撃力 1629 最大攻撃力 2339 初期防御力 1622 最大防御力 2356 初期スピード 1455 最大スピード 2106 +HP上限 3090 最大HP上限 11341 +攻撃力上限 1170 最大攻撃力上限 3509 +防御力上限 1140 最大防御力上限 3496 +スピード上限 750 最大スピード上限 2856 リーダースキル 女神の精鋭 4属性以上の編成の時、全てのユニットの攻撃力を35%アップ フォーススキル1 デイブレイクフリート 火属性のn%攻撃を25~30回連続攻撃。低確率で攻撃力30%ダウン。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 21 21 22 22 23 24 24 25 26 27 ディレイターン 8ターン 効果持続ターン 2ターン フォーススキル2 英雄の歌 1ターンのみ味方単体の攻撃力とスピードをn%アップ。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 進化前 [約束の少女]アテナ 83 85 87 90 92 95 97 100 102 107 通常進化 - ディレイターン 3ターン 効果持続ターン 1ターン 幻獣契約1 [勝利の女神]アテナ 契約素材 [万物遮断の盾]アイギス(2) 幻獣契約2 [約束の女神]アテナ 契約素材 [黒衣の天使]フューネラス(2)[万物遮断の盾]アイギス[尖兵]トゥルグリシア[霊歌]スペクター 特殊能力 [強]アーチャーキラー/[強]パラディンキラー 契約使用先 - 入手方法 通常進化 備考 CV:高橋 李依・[火]アテナに新たな幻獣契約が登場!_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=1598 k=3 資料 *資料のステータス値は装備品をつけている可能性がある為、目安にして下さい。 コメント 名前
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美奈代騎と二宮騎の作戦は、正直、無駄に近いものとなっていることを、日米両軍で知っている者はいなかった。 中華帝国側、朱少将は、すでに米軍の残存部隊に対する攻撃は貴重な戦力の浪費と見なしており、「撤退するなら勝手にしろ」というスタンスだ。 すでに中華帝国側の米軍残存部隊への攻撃は停止している。 米軍も撤退の通信を受け取っており、負傷兵のTAC(タクティカル・エア・カーゴ)への移乗準備と、TAC(タクティカル・エア・カーゴ)に搭載出来ない兵器や機密文書の処理が進んでいる。 状況は悪くない。 日没まであと1時間。 夕日が眩しい。 金色に染まるジャングルの中、美奈代達はただ、“鈴谷(すずや)”の到着を待っていた。 「もう少しで長野大尉達も到着する」 二宮騎からそんな通信が入った。 すでに敵の攻撃はない。 敵の集結地点はここからかなり離れているし、その方面からの侵入はセンサーで感知出来る。 センサーに反応はない。 「この島ともこれでおさらばだな」 「米軍は、この島を放棄するんですか?」 「違う」 二宮は笑って言った。 「中華帝国は、このままなら降伏するよ」 「―――えっ?」 「連中の補給線を止めた上で小さく叩く。小出しに戦力を使わせれば連中の物資は底を突く」 「……」 「泉。補給線が切れるっていうのは、お前が想像しているより遙かに怖いことだぞ」 「―――はい」 補給線が断たれる恐怖。 そう言われても実戦経験の浅い美奈代には、どうしてもピンと来ない。 ただ、バカみたいに頷くだけだ。 「米軍はこれから制海権と制空権を奪取に動く。後は空から空爆で中華帝国を叩く。こうなればほとんど一方的な戦いになる」 「うまくいきますか?」 「行ってもらわねば―――」 ピーッ! 「熱源っ!」 「何っ!?」 ズンッ!! 二宮騎のMC(メサイアコントローラー)、青山唯中尉の警告。 二宮の驚いた声。 そして、二宮騎が吹き飛ぶ音。 それを美奈代はすぐには理解出来なかった。 目の前で半身を吹き飛ばされた二宮騎が、ゆっくりとジャングルの中に倒れようとしていた。 「泉准尉っ!」 美奈代より早く現実に立ち戻ったのは牧野中尉だ。 彼女の鋭い怒鳴り声が、茫然自失の美奈代を無理矢理に現実に引き戻した。 「―――な、なんですか!?今の!」 「大口径ML(マジックレーザー)の狙撃!」 牧野中尉は引きつった声で言った。 「ま……まさか」 「二宮教官は!」 「バイタル反応正常……せ……センサーに反応なし?そんなバカ……な」 牧野中尉の意識は、敵攻撃に備えたエネルギー感知モニターに集中していた。 ログを見ても、何の反応もない。 「魔法反応まで……ど……どうやって?」 「中尉っ!」 ギンッ! 美奈代の声と、鋭い戦闘機動で、牧野中尉は我に返った。 「て、敵は!」 「センサーに反応なしっ!」 「じゃあ、アレはなんですか!?」 牧野中尉が見たスクリーンに映し出される3騎のメサイア。 重装甲をまとった“歩く要塞”さながらの騎だった。 それは、牧野中尉が見たことのない騎だった。 即座にライブラリーが開かれるが、 「不明っ、該当騎なしっ!」 そう答えるしかなかった。 「い……一体!?」 美奈代達は知らない。 中華帝国側の参謀が言った“帝剣”。 否、それさえ違う。 目の前にいるのは――― 「おそらく、中華帝国側の試作メサイアです」 牧野中尉はそう結論づけた。 「エンジン出力、その他の反応、“帝刃(ていば)”や“赤兎(せきと)”とは比較になりません」 パワースペックは間違いなく“帝刃(ていば)”の倍では効かないだろう。 フレーム反応も最新型だろうことを示している。 あの厚さの重装甲が本物なら、実剣は通らない。 牧野中尉はデータがとれていることを確認しながら、背筋を震わせた。 「こ……こんなの量産されたら!」 厄介じゃ済まない! その声が上がる前に、3騎は動いた。 「准尉っ!後退を!」 牧野中尉は叫ぶ。 データがない敵と斬り結ぶことが如何に危険か知っている牧野中尉の判断は正しい。 だが、 「教官を見殺しにする気ですか!」 美奈代にとって、敵が何だろうと、ここで逃げることは出来なかった。 二宮教官を助ける。 それこそが、美奈代の全てだったのだ。 迫り来る敵は長い柄に斧を付けたハルバードを振りかざす。 対する美奈代騎は斬艦刀を抜刀。 戦いの火ぶたが切って落とされた。 「くそっ!」 鳴り響く警報 魔晶石エンジンから発する甲高い戦闘出力音 スクリーン一杯に迫る甲冑のバケモノ。 美奈代は倒れた二宮騎の前に立ちはだかると、斬艦刀を構えた。 距離はまだかなりある。 あれほどの重量級だ。接近するまでにはかなり間があるはずだ。 ダンッ! 大地を蹴って敵騎が動き出した。 「―――え?」 敵の装甲の厚さは一目瞭然だ。 楯攻撃(シールドやエッジ)の効く相手じゃない。 グリーンの角張った恐ろしく分厚い装甲が美奈代めがけて襲いかかってくる。 「速いっ!」 その動きに、美奈代は目を見開いた。 重装甲をものともしない素早い動きを見せる。象のような鈍重な外観からは全く想像が出来ない機動性だ。 「あの装甲で!?」 重装甲に高機動性ではシャレにもならない。 美奈代は必死に隙を見つけようとした。 装甲がいくら分厚いとはいえ、どこかに弱点があるはずだ。 ―――どこだ!? 美奈代は焦りながら視線を激しく移動させた。 正面から撃破出来そうな場所が思いつかない! ―――背後に回り込めば。 美奈代は、ふと、そう思った。 “装甲は、正面装甲が最も厚いが、後方や上面は得てして薄い” かつて、授業で聞いた言葉を思い出したのだ。 戦車かメサイアか、一体、何の装甲について語った言葉で、誰から言われた言葉かさえ思い出せないが、それでも、このタイミングでこの言葉を思い出したことを、美奈代は誰かに褒めて欲しかった。 美奈代は背面に回り込もうとSTRシステムに力を込め、即座にその無意味を悟った。 否、悟らされた。 ブンッ! 突然、敵騎の上半身で白い光が走った。 メサイアの腕ほどもある三角の円錐状の光が、肩や頭部に走る。 その光に本能的な危機を感じた美奈代は動きを止め、目を見開いた。 「な、何?」 「レーザースパイクです」 牧野中尉が言った。 「固定式の光剣と思ってください。タックルでも喰らったら串刺しです」 「―――くっ!」 背後から斬り込むことはやめた。 三騎であんなものにプレスされたらたまらない。 肩部装甲のレーザースパイクが装甲の動きに合わせて激しく揺れる。 不用意な接近は、自殺行為だと、その動きが教えてくれる。 ―――どうする? 接近のため、激しい動きを見せる敵騎を睨み付けていた美奈代が“そこ”に気づいたのは、そんな瞬間だった。 美奈代は結局、その三騎に何もしなかった。 牽制のためのML(マジックレーザー)攻撃さえしなかった。 三騎から見れば、今の美奈代騎は、突然、仲間が倒されて動揺している程度にしかみえないだろう。 だらりと下げられた長い剣もシールドも構えられてさえいない。 戦闘の意志さえ感じられない。 そんな姿で立ちつくすのが、今の美奈代騎だ。 当然、敵はそんな美奈代騎にかける情けなど持ち合わせていない。 殺されたくなければ、全てを殺せ。 それこそが、戦場における騎士の規範(ルール)だ。 三騎のメサイアを駆る騎士達は、自らの規範に従順過ぎるほどに従った。 それだけだ。 楔形陣形で迫り来る三騎。 前衛騎がハルバードを振り上げた。 槍に斧を付けた斧槍(おのやり) それがハルバードだ。 斧と槍双方として使え、「突き」「切り」「刺し」「払い」―――凡そ近接用武器に求められるほぼ全ての攻撃が出来る優れものだ。 その破壊力の源は、長い柄を操作することによる遠心力や慣性力―――そして操作する者のパワー。 メサイアのパワーを上手く遠心力に乗せることが出来た場合のハルバードの破壊力は、およそメサイアの扱う近接用武器の中では最強の部類に入るだろう。 まともに喰らえば、美奈代騎は真っ二つだ。 ピピピピピピ―――ッ!! センサーが脅威を感知し、操縦者である美奈代に警告を告げる。 長い柄を両手で握って振り上げつつ接近する敵騎を、美奈代は強ばった顔で見つめていた。 ―――チャンスは一度だ。 美奈代は自分に言い聞かせていた。 ―――しくじったら……終わりだ。 終わり。 つまりは―――死。 死ねば、全てが終わる。 そこまで考えるのが、今の美奈代にとっては精一杯だ。 目の前に迫る敵騎を前に焦る心を押さえつけるのがやっとなのだ。 「―――くっ!」 歯を食いしばった途端、 ブンッ!! 凄まじい音を立てながら、敵騎がハルバードを振り下ろした。 まともに喰らったら、メサイアは脳天からかち割られるだろうその攻撃だったが、 ガンッ!! その斧が捉えたのは、何の変哲もない大地。 メサイアの魔晶石エンジンが産み出す大出力を遠心力に変えて繰り出された一撃は、大地に深々をめりこみ、砕かれた大地が土砂となって舞い上がった。 ―――かわされた!! 前衛騎の騎士は、即座にハルバードを大地から引き抜こうとして―――出来なかった。 「!?」 ハルバードの斧の根本。 何かが押さえつけている。 必殺の一撃をかわしたメサイアの脚だとわかった次の瞬間、 グガンッ!! コクピットを凄まじいほどの振動が走った。 コクピットを形成していた様々な装備が吹き飛び、モニターや計器類が一斉に消えた。 振動が収まった時にはコクピットの中は暗闇となった。 手元でさえ見えない事態に、予備電源まで切れたことを悟った騎士が次に感じたのは、奇妙な重力感。 立っていることが出来なくなった自騎が倒れる感覚だった。 メサイアの弱点である喉部防護用可動式装甲と騎体の隙間に斬艦刀を突き刺された前衛騎は、頭部にあるMCL(メサイア・コントローラー・ルーム)と本体を結ぶ操縦系統を根こそぎ破壊されたことで動きを止めた。 人間でいえば、頸骨を切断されたのと同じ。メサイアといえ、ここを破壊されればどうしようもない。 ズズゥゥ……ンッ!! 奇妙な程ゆっくりと前衛騎が倒れる。 その光景に狼狽した後続騎達が一歩、後ずさった。 美奈代にはそう見えた、その次の瞬間――― ブンッ!! 突然、左騎の腕が光った。 「ぐっ!?」 騎体に激しい振動が走り、警報が一斉に鳴り響いた。 「さっきの一撃ですっ!」 牧野中尉が怒鳴った。 「シールド43%融解、左部異常加熱警報!」 「くっ!?」 騎体の状態を示すステータスモニターをちらりと見る。 騎体の左側が危険なほど加熱していることを示す赤色で点滅している。 「一体!?」 後衛の二騎のうち、美奈代から見て右騎が何かを構えているのに、美奈代が初めて気づいたのは、その時だった。 巨大な筒―――バズーカだ。 とっさの牽制用に撃ったんだろう至近弾だけでシールドが溶け、騎体は半身が焼けた。 一体、どれほどの高出力のML(マジックレーザー)が発射されたのか、美奈代はそんなことを考えている余裕さえなかった。 キュィィィッ 筒の中が光り出した。次は外さないだろう。 「えっ!」 美奈代騎が動いた時、美奈代が急速後退をかけてその攻撃を回避する機動をとると思っていた牧野中尉は、眼が点になった。 自分の乗っている騎体は後退したのではない。 前進したのだ。 「ちょっ!?」 ここで前進すれば、自分から的になりにいくようなものだ。 いくらなんでも、美奈代だってそれがわかっているはずだ。 それなのに―――? 唖然とする牧野中尉の目の前にバズーカを構えた敵騎が急速接近してくる。 よく考えられて配置された装甲は、幾重にも重なって鉄壁の防護とはどういう代物かを牧野中尉に教えてくれる。 この位置から喉部を狙うことはまず無理だ。 美奈代にどういう勝機―――いや、美奈代自身が正気なのかさえ、もうここまで来たらわからない。 そっと脱出装置の位置を確認した牧野中尉の耳に美奈代の声が響く。 「さくら、シールドパージっ!」 「はいっ!」 美奈代の声に、美奈代騎の左腕が大きく振られ、溶けたシールドが左騎めがけて飛んでいく。 右騎は、シールドを難なくかわした代わりとして、射撃のタイミングを失った。 そこが、美奈代の付け入るタイミングだ。 「そこっ!」 美奈代騎が右騎の懐に飛び込んだ。 ピーッ! ピピピッ! MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)にそんな音が響く。 スクリーンに映し出されるのは、敵の装甲だけ。 そのあちこちが光り始めていた。 牧野中尉は、敵騎の近接防御用のML(マジックレーザー)が発射態勢に入ったことがすぐにわかった。 ―――まずいっ! この至近距離からML(マジックレーザー)を喰らえば無事では済まない! 「准尉っ!後退を!」 たまらず牧野中尉が叫ぶ。 その目の前で、自分の乗る騎が奇妙な動きを見せた。 ザンッ! 大地に斬艦刀を突き刺した右腕が、右騎の腰回りを防御している巨大な装甲プレートの端を掴むと、一気に持ち上げたのだ。 ベギッ! 奇妙な音を残して装甲プレートの可動部を止めていたボルトが破断、装甲プレートが外れた。 装甲プレートに隠れていた右騎の股関節部が丸出しになった。 そこへ――― ガンッ! 再び斬艦刀を握った美奈代騎は、斬艦刀の切っ先を股関節に突き込んだ。 股関節から真上に突き入れられた斬艦刀は、熱せられたバターナイフがバターを易々と溶かし切るように、内部構造物を解かし、破壊した。 騎体の中からは、何かが連続して砕け、爆発する音が響く。 斬艦刀から手を放した美奈代は、とっさに右騎の腕からバズーカをもぎ取ると、撃破したばかりの、その騎体の背後に回った。 背後から襲いかかろうとしていた左騎が、右騎にハルバードを振り下ろそうとする。 右騎の背後から突き出されたバズーカの筒先が左騎の装甲とぶつかった瞬間――― 美奈代はバズーカのトリガーを引いた。 「泉准尉が撃破した正体不明の騎は」 作戦終了後、洋上に撤退した“鈴谷(すずや)”のハンガーで、美夜は二宮に言った。 その背後には、美奈代が撃破した三騎のメサイアの残骸が転がっている。 「中華帝国軍の最新鋭メサイア―――それも」 整備兵達が忙しく立ち回るのをチラリと見た美夜は続ける。 「王制党親衛軍の次期専用騎と見て間違いないわね」 こうして見ると、その装甲の分厚さは信じられないほどだ。 整備兵達が騎体のあちこちを調べているのを眺めながら、美夜は嬉しげに言った。 「この騎をこの程度の破壊で確保出来たことは、実に有益な事よ」 そして、苦い顔をしている二宮に言った。 「あんたの騎体中破は、部下の功績で不問にされるだろうし」 「……感謝、します」 二宮は、むすっとした顔で敬礼した。 その顔が余程気に入ったのか、美夜は嬉しげに微笑んだ。 「あんたの弟子にしておくにはもったいない素質ね。あの子」 「……」 「育てた甲斐があったんじゃない?」 「このことで」 二宮は言った。 「つけあがらなければ良いけど」 「大丈夫じゃない?」 “鈴谷(すずや)”帰艦時点のスコア16騎、陸戦艇1の戦果は、むしろ伝説の世界だ。 美奈代騎担当の整備兵達の足取りが明らかに軽いのがわかる。 「―――とはいいたいけど」 美夜は、ちらりと二宮を見た。 「あの子、抜擢されるかもよ?」 「抜擢?」 「内親王護衛隊(レイナガーズ)か、天皇護衛隊(オールドガーズ)」 「まさか!」 「なにがよ」 美夜はあきれ顔だ。 「宗像准尉だって、内親王護衛隊(レイナ・ガーズ)配属が内定していたんでしょう?それに、あなただって―――」 「おおいっ!艦長っ!」 ハンガーの隅々まで届くその大声を発したのは、坂城だった。 「あの騎体のことだが」 今、艦長室にいるのは、坂城とその部下のシゲ、美夜と副長の高木少佐。そして二宮と長野だけだ。 壁にもたれかかった姿勢で腕組みをする坂城の表情は、愛用のレイバンに隠れてわからない。 「エライことがわかった」 「エライこと?」 「電磁筋肉はアメリカ製のE&H社製の最新型。去年の冬、シンガポールの見本市でお披露目になったばかりの量産されていないヤツだ。ついでに電子機器の大半はドイツ製」 「……」 「……」 皆がポカンとした顔で坂城を見た。 撃破したのは中華帝国騎だ。 戦闘後、捕虜となった騎士とMC(メサイアコントローラー)は中華帝国人だ。 「どういうことです?」 長野が訊ねた。 「対立する国のパーツで組み上げた騎だというのですか?」 「そんなこと、俺が知るか」 坂城はにべもなく答えた。 「俺は技術屋で、政治屋や外務の役人じゃねぇ」 「……」 「といっても、俺からすればもっと厄介なことがある」 坂城はそう言うと、ポケットから何かを取り出すと、長野に放り投げた。 「外せたのは、それだけなんでな」 それを長野は両手でキャッチした。 銀色に輝く金属の塊。 サイズはタバコのフィルターくらいだ。 恐ろしく軽い。 「検査は中央に任せるつもりだ。“鈴谷(すずや)”の機材じゃ詳しいことはわからねぇ」 「これは?」 手の上で転がすように眺めていた長野が訊ねた。 「泉の嬢ちゃんがブッ倒した騎が掴んでいたエモノから外したのさ」 「獲物?あのバズーカですか?」 「ああ」 坂城は顎で合図すると、脇に控えていたシゲがテーブルに写真を数枚、ひろげた。 「長野大尉さんよ―――そいつが何で出来ているか、わかるか?」 「……アルミですか?」 二宮や美夜達も長野からその金属を受け取った。 「そうね……でも、アルミにしては感触が」 「詳しくないけど……セラミックかしら?」 「硬度からしてアルミでもセラミックより固てぇ」 「じゃぁ、なんです?」 「さぁな……学者先生にでも聞いてくれ」 壁から離れた坂城が、写真に広げられたテーブルに両手をついた。 「俺からすれば、泉の嬢ちゃんの最大の功績は、“こいつ”を捕獲したことだ」 テーブルの上に広げられた写真は、すべてあのバズーカの各部を撮影した物だ。 「単なる……」 長野は、そこまで言いかけて口を閉ざした。 実体弾ではなく、大口径高出力のML(マジックレーザー)砲だ。 それだけなら、長野は発言を止めなかったろう。 問題は、発射時にML(マジックレーザー)特有の反応は何もなく、メサイアのシールドを瞬時に融解させるほどの破壊力を持つ。 トドメとして、横にいる上官、二宮が感知するどころか、避けることさえ出来なかったことだ。 MC(メサイアコントローラー)二人が“攻撃はセンサーで拾えなかった”と主張しているし、ログもその通りだったことを示している。 ML(マジックレーザー)攻撃飛来を告げるセンサーが、ML(マジックレーザー)攻撃を検知出来なかった。 かすっただけで、対ML(マジックレーザー)コーティングが施された装甲が溶けた。 それは、看過出来る話ではない。 「これから話すことは、俺の仮説に過ぎねぇと思われるだろうが」 坂城は言った。 「こいつは人類の造った代物じゃねぇ」 「……は?」 二宮と美夜が目を点にした。 「どういう?」 「まず、こいつにはネジがねぇ」 二宮が見る限り、坂城は本気だ。 「それらしいモノぁあるんだが、バラし方がわからねぇ。もし、中華製だとしても、工業規格ってもんは今時世界共通だ」 「……」 「わざわざ、この砲のためだけに、特別な規格を造ったなんてこたぁありえねぇ」 「……よろしいですか?」 坂城とほぼ同い年の高木が言った。 「憲兵隊からの報告によれば、捕虜が興味深いというか、おかしなことを」 「ん?」 「あの兵器は、中華帝国でも知っている者はごく一部で、単に“筒”とだけ呼ばれていたそうです。捕虜達も数日前に初めて見たと」 「“筒”?」 「はい。装弾数6発。実は」 高木が首を傾げた。 「おかしい。というのは、ここからでして」 「言ってみろ」 「はい―――パイロットやMC(メサイアコントローラー)達が知っているのは、その砲の使い方……単に、トリガーを引くことだけなんです。しかも、彼らは、この兵器をML(マジックレーザー)を発射出来るバズーカ程度としか聞かされていません。使用後は梱包の上本国送り。なにより分解整備は禁止されていたそうです」 「……で、だ」 坂城はテーブルの上にあった写真の一枚を掴んだ。 筒の端に取り付けられていた金属製のプレートが写っていた。 「何て書いてあるかわかるかい?」 「ん?」 美夜が写真を受け取ったが、 「……?」 首を傾げるしかなかった。 「少なくとも、目にしたことのある表記じゃないわね」 「北京語、ハングル、アラビア語にサンスクリットまで調べたが、該当するモノぁねぇ」 「じゃあ?」 「……シゲ」 「へい」 脇に控えていたシゲが鍵の付いたアタッシュケースを開いた。 「……こいつは、アフリカの記念にもらっておいた代物だ」 アタッシュケースの中身は、半ば焼けこげた金属のプレートだった。 「これは?」 「魔族軍のメサイアの残骸さ」 「!?」 その一言に、二宮と長野の表情が強ばった。 「アフリカで擱座した魔族軍メサイアで、“鈴谷(すずや)”に収容されたのがあったろう?あの騎体から剥がれ落ちたプレートが、これだ」 坂城は写真とプレートを横に並べた。 「―――比べてくんな」 「……い」 何度も見た。 目が痛くなるほど見比べた。 そして、そういう結論にイヤでも達した。 「一体……これは」 長野が救いを求めるように上官達の顔を見た。 その表情は硬く強ばっている。 「……坂城整備班長」 美夜は殺気だった声で言った。 「情報に感謝する」 「プレートは返しておくさ」 坂城は言った。 「これから、イヤでも手にはいるだろうからな」 坂城がアタッシュケースから取り出し、写真の上に乗せたプレート。 写真とそのプレートをみれば、イヤでもわかるだろう。 一つは魔族の兵器からとったプレート。 もう一つは、中華帝国軍メサイアの兵器のプレート 接点はない。 あってはならない。 そのはずなのに。 「中国人っては、誰と商売しているんだ?」 二宮の皮肉を咎める者は、ここにいはなかった。 誰でも一目でわかること。 プレート同士の言語は―――共通していた。
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紆余曲折の末、“鈴谷(すずや)”がバーレーンに入ったのは、命令から実に3日目の昼すぎのことだ。 魔族軍の攻撃は一切なかった。 ただし、まるで“鈴谷(すずや)”と入れ替わるかのように、ラムリアース帝国軍をはじめ、各国がアフリカめがけて兵力を大量動員しているという情報が美夜達に届けられただけだ。 「暑い!」 手でパタパタと風を送ってみたものの、熱風しか来ないことを知ったさつきは、信じられない。という顔つきで空を仰ぎ見た。 「何よこれ……ここ、本当に地球?」 「言い過ぎだと思うが」 「美奈代は、暑くないの?」 「私も暑い」 「二宮教官も平野艦長も、これじゃあ外に出ないだろうしね」 「仕事で忙しいんだろう?」 「何言ってんのよ」 さつきは楽しげにポンッ。と、美奈代の肩を叩いた。 「この太陽の下、この暑さに“あの二人”が出てごらん?すぐにシミになって、メイクが崩れてそれはもう―――」 そこまで言いかけ、愕然とするさつきの前を通りかかったのは、その二人だった。 「―――ふむ」 甲板の上で女性士官が腕立て伏せをしている。 「この炎天下の下、真面目な士官だ」 エーランドはそうつぶやくと双眼鏡から目を離した。 「それにしても」 ベドウィンに変装したシグリッド大尉がその双眼鏡を受け取りながら言った。 「これは派手にやられましたな」 シグリッド大尉が言うのも無理はない。 船舶が停泊する港周辺の建物のいくつかが黒く焼けこげ、燃料タンクは原形さえ留めていない。何隻かの船が横転したり喫水線をはるかに越えて浸水し、甲板の残して水底に沈んでいる。 ここまで来るまでにも、その余波だろうか。市街地のあちこちが破壊されていた。 中華帝国の破壊工作の結果だ。 本当なら高台から港を見たかったエーランド達だが、銃を持った兵士達が高台や道のあちこちに立っているおかげで、下手な動きが出来ない。 半日がかりであちこち歩き回り、小高い丘にある繁華街の放置された古いビルの残骸から港が一望出来ることを、ようやく悟ったばかりだ。 このビルは火災にあったらしい。 焼けこげた建材や家具が散らばるビルの物陰に隠れているものの、人間で言うならば白人種に属するエーランドは、その豪奢な金髪を白い民族衣装で隠した。 「水中戦隊の仕業、ではないですな」 「人類の仕業だよ。アフリカ近海から太平洋に至るまで、派手に暴れた結果がコレだ」 「そいつは豪勢だ!」 シグリッド大尉は、その浅黒く日焼けした顔をくしゃくしゃに笑って双眼鏡をエーランドに戻した。 「我々も、どうせならそれ位、やってみたいもんですな!」 「―――しっ」 エーランドは小さく、しかし鋭くシグリッド大尉に言った。 「静かにしろ」 ビルの面した通り。 何か罵声のような大声が聞こえてくる。 すさまじいほどの罵声と銃声、そして悲鳴が聞こえてくる。 銃を手にした男達が集団で大通りを歩いている。 その真ん中にいるのは、黄色い肌をした男女だ。 首からは、エーランド達が読めない文字が書かれたプラカードらしいものをぶら下げている。 男女は10名近く。 皆、顔から血を流し、立っているのもやっとという有様の者も少なくない。 そんな彼等を、男達は殺気だった顔で小突いて歩かせている。 立ち止まろうものなら、容赦なく銃尻が叩き付けられ、蹴り飛ばされる。 殴られ、蹴られたくなければ歩くしかない。 エーランド達の目の前で、不意に倒れて動かなくなったのは、まだ服装からして若い女性だ。 ひげ面の男が、銃尻で頭を殴るが女はぴくりとも動かない。 男達が罵声を浴びせ、女を周囲から容赦なく蹴りつける。 それでも動かないとわかるや、体格のいい男がわざとらしい仕草で自動小銃を天に突き上げ、何事か大声で怒鳴ると、銃口を女に向けた。 鈍く乾いた銃声が数発、町中にこだました。 「少佐……あれは」 男達は、小銃弾で蜂の巣にされた女の死体の脚にかけたロープで引きずっていく。 「私刑だ」 エーランドは言った。 「おそらく、この街を攻撃した軍の仲間と思われているんだろう」 「じゃあ、あいつら」 エーランドは無言で手刀で首を切る仕草をした。 「うへぇ」 たまらない。という顔で、シグリッド大尉は舌を出して嘔吐の仕草で返すが、すぐに二人は仕事に戻った。 「とにかく、“鍵”の反応は間違いなく、あの飛行艦から出ている」 「“鍵”は、ここでは降ろさないんですね」 「本国は弓状列島と聞いている。そこまでは、あの船の中だろうな」 「どうします?」 「メースで急襲してとも思うが……」 唸るエーランドの視線の先。 米軍基地に並ぶのは、小豆色のメサイア達。 米軍の主力メサイア“グレイファントム”だ。 無骨なデザインの重装甲が与えられた重厚なフォルムをした巨大な鎧が、四方ににらみを利かせている。 グレイファントムが単なるメサイアだったら、エーランドもここまで躊躇しないだろう。 エーランドは、そっと双眼鏡を構え、グレイファントムを見た。 ざっと見るだけでその騎数は20騎近く。 そのすべてが武装して周辺を警戒している。 エーランドの双眼鏡に仕込まれた魔力分析装置が、その内の一騎を包む魔力反応を分析する。 装甲に張られた装甲魔法は大したことはない。 多くの騎が持つ速射砲も脅威ではない。 問題は、その手が掴む巨大な戦斧だ。 その無骨なまでの刃先には、攻撃系魔法がかかっている。 エルプス系魔法とは違う。 ダメージ増強系の魔法だ。 だが、その魔法の詳細が分からない。どんな効果があるのだろう? 人類のオリジナル魔法だとすれば、あまりにデータ不足だ。 「あの魔法がどの程度のものかわからないと……」 エーランドが危惧するのは、あの斬艦刀の破壊力を知っているからだ。 数十騎があの武器をもっていたら、わずか4騎で戦を仕掛けるのは愚の骨頂だ。 「リスクが高すぎる」 そう、結論づけるしかない。 「どうします?」 「メースでの下手な攪乱は、逆に連中を警戒させかねない」 すぐ近くで歓声と銃声が響き渡った。 「シグリッド。貴様の艦で、潜入工作に長けたは者は?」 「ウチは元々、そういうのが本業です」 「上等だ」 エーランドは嬉しそうに頷いた。 「今晩、かかるぞ」 バーレーンに入港してからというもの、美奈代達女性士官が、代わる代わる見に行く場所がある。 “鈴谷(すずや)”に接続された真水の供給装置だ。 “鈴谷(すずや)”の舷側につけられた取り込み口が開かれ、専用のクレーンに取り付けられたホースがそこに接続されている。 このホースが取り付けられている限り、真水タンクは一杯になるし、艦内では水が潤沢に使える。 美奈代達は、そのホースがつながっていることを確かめては、腕時計を見て仕事に戻る。 一体、何を楽しみにしているのか? 風呂だ。 “鈴谷(すずや)”の空いた居住ブロックには、整備兵がメサイアの廃棄パーツを流用して 作り上げたという伝説の大浴場がある。 大浴場を持つ軍艦なんて、実際“鈴谷(すずや)”くらいなものだろう。 そして、こういう階級組織では、一番最初に使えるのは、当然ながら最も階級の高い者となる。 一番風呂に意気揚々として入ったのは、美夜と二宮だ。 次にMC(メサイア・コントローラー)達と士官、そして下士官と兵達が順番に入ることになる。 女性の長風呂で消費される水量は半端ではない。 外部から水を入れて、常に湯を作らなければ、湯が不足するし、何より汚れて入れたものではなくなる。 美夜と二宮が二人で夕食前1時間、次にMC(メサイア・コントローラー)と女性士官と来て、例えパイロットだろうがなんだろうが、士官候補生でしかない美奈代達は、軍隊士官兵牛馬猫鼠油虫士官候補生のヒエラルキーの最下層に属する者として、当然ながら最後だ。 一度、湯を抜いて、みんなで掃除して、再び浴槽に湯が満たされたのは、夜の9時過ぎだ。 皆が脱衣所で服を脱いで、風呂に入れる喜びを語り合っている時、不意にドアが開いて当然という顔をして入ってきたのは、フィアだ。 皆に優雅な仕草で一礼し、美奈代を殺気立った目で睨み付けると、さっさと服を脱いで風呂場に消えた。 「……まだ、警戒されてるんですかねぇ」と、美晴は少し寂しげに言った。 「私、お昼一緒だったんですよ?」 「あの子、スゴい人気高いんだよねぇ」さつきは服を脱ぐ手を止めて言った。 「明るいし、礼儀正しいし、物腰優雅だし。ちょっといないタイプだよね」 「……おかげで染谷がロリコン扱いされているがな」 宗像は興味がないといわんばかりに服を脱ぐ手を止めない。 「“幻龍改(げんりゅうかい)”のSTRシステムに高圧電流を流そうとした整備兵がいたらしい」 「ロリータ染谷って、都築あたりが喜んで言いふらしていらるらしいよ?」 「あいつ、うらやましいだけじゃないのか?」 「それより……」 さつきは言った。 「貯まっていた下着、あの子の前で洗濯したくないんだけど……」 美奈代達は、パンパンに膨れあがった袋を前に、互いに顔を見合わせた。 裸のおつきあい。 それが、お風呂での日本人の礼儀。 真偽の疑わしいことを言って、さつきと美晴がフィアと戯れている。 “鈴谷(すずや)”乗組員の中では最も年齢的に近いせいもあるだろう。 フィアも楽しげに会話に参加している。 キャーキャーという、楽しげな黄色い声が大浴場に響く。 それと距離をとるのは、宗像と美奈代だ。 元々が長湯だという宗像は、ゆったりと湯船の中で見事すぎるスタイルをさらけ出している。 反面、お腹のあたりが気になる美奈代は、誰を見てもため息ばかりだ。 「あの子、はやく出てくれないかな」 「宗像……お前は本当に」 美奈代はあきれ顔で言った。 「興味のない女の子には恐ろしいくらい冷淡だな」 「……そういうものだろう?」 「そういうものか?」 「うむ」 二人の視線の先ではフィア達三人が背中を流しあっている。 「それにしても……」 白い陶磁器のような肌。折れそうなほど細く長い手足。くびれたウェスト。 そして、服の上からでは想像も出来ないほど豊かな双丘。 「……うっ」 そこまで見た美奈代は、その視線を自分の体に向け、そのまま浴槽の中に沈んだ。 結局、消灯時間が近いことを理由に、さつき達はフィアを浴場から追い出した。 親密になりたいが、それよりもたまった洗濯物をどうにかしたいという本音が勝ったのだ。 「では、失礼します。お休みなさい」 一礼して大浴場のドアを閉めようとしたフィアの手が、不意に止まった。 「あっ。瞬、ごめんなさい。待った?」 「―――まぁ、待て」 顔を真っ赤にして大浴場から飛び出そうとした美奈代を羽交い締めにして止めたのは宗像だ。 「洗濯物、どうするんだ?」 「……っ!」 「明日から履ける下着がなんだろう?」 事態が動いたのはそれからすぐのことだ。 皆が残り湯で洗濯物を洗っていた。 もう誰もいないと思い、こっそりと下着を洗いに来た女性士官や兵が、それぞれの洗い場に陣取り、風呂場は奇妙に賑わっていた。 とても男共には見せられないわねぇ。 誰かがおどけて笑いをとる。 そんなのどかな光景ではあった。 フィーッ! フィーッ! 不意にそんな音が艦内に響き渡ったのは、本当に消灯時間が間近になり、皆が風呂場から出なければならなくなった時だ。 もう、真夜中に近い時間だ。 少なくとも、美奈代達は、その音を聞いたことがなかった。 「何?」 洗い終えた洗濯物を袋に詰めようとしていた美奈代は、その手を止めた。 「侵入者警報です」 誰かが言った。 すると、それを証明するかのように、艦内放送が流れた。 「憲兵隊より警告!艦内に侵入者あり!各ブロックを緊急閉鎖、各員はマニュアル所定の対応をとれ。各憲兵隊員は自由発砲許可、各騎士は憲兵隊の指揮下にて対処せよ」 結局、侵入者は見つからず、徹底した調査の結果、艦内での破壊工作等は確認されなかった。 ただ一つ、犠牲者が出ただけだ。 山科教官だ。 一体何故、その場にいたのかわからないが、普段は閉鎖されている物資貯蔵Fブロックから外部に通じる“F45”緊急脱出用ハッチの間近にある隔壁に頭を潰される格好で死んでいた。 物資貯蔵Fブロックは、メサイアのパーツを保管するための区画であり、深夜、人がいるべき場所ではない。 それが問題になった。 憲兵隊が、各通路に仕掛けたセンサーの反応を確認した結果、侵入者が入り込んだのは、その“F45”緊急脱出用ハッチだと断定したのだ。 根拠は十分にある。 “F45”緊急脱出用ハッチの真下は5メートル程の高さで海面に接している。 不時着水時に艦内から脱出するために用意されたもので、普通は使用されることはない。 そのハッチ周辺から複数の海水に汚れた靴痕と、脱出用のハシゴを引っかけるフックに何かロープのようなモノで擦ったような痕が発見されたのだ。 さらに、ハッチの操作レバー付近に、拭き忘れたと思われる山科教官の指紋が残されていたことが決定打となった。 山科教官がハッチを操作し、外部からの侵入者を招き入れたとしか思えない。 しかし、その理由は? それを解き明かしたのも憲兵隊だった。 山科教官の部屋を徹底的に調べた結果、ベッドのフレームにガムテープで貼り付けることで隠されていたのは、白い錠剤の入った袋だった。 「簡易検査の結果、合成麻薬であることが確認されました」 憲兵隊長の鬼塚軍曹が独特の塩辛声で美夜に告げた。 美夜は、顔をしかめながらテーブルに置かれた錠剤を睨み付ける。 「……鬼塚軍曹」 「はっ?」 「全員の簡易検査を。反応が陽性だった者は構わないから営倉にぶち込め」 「了解であります」 「……頼む」 「……それと」 普段なら、命令があればすぐに動く鬼塚軍曹がその場に立っている。 軍人にとって憲兵は関わりたくない兵種の最たる連中だ。 鬼塚軍曹もそれがわかっており、仕事の用件を除いては、普段から誰とも関わろうとしない。 それはつまり、まだ話が終わっていないことを意味した。 「どうした?」 「米軍憲兵隊からの協力要請がありました。同行を願いたいのですが」 「同行?どこへだ」 「米軍憲兵隊本部です」 美夜と副長の高木は、鬼塚軍曹をつれてバーレーン米海軍基地内部にある憲兵隊本部の正面玄関をくぐった。 憲兵隊を率いるマーロウ大佐がオフィスで出迎えてくれたかと思うと、すぐに美夜達は地下にある死体安置室に連れて行かれた。 清潔感とは違う、言いようのない飾り気のない内装をした死体安置室。 ステンレス製の筒がいくつも壁に詰め込まれて並んでいる。 その一つ一つが、死体を保管するための冷凍ケースだと、さすがに美夜も知っていた。 「こちらです」 鬼塚軍曹同様の寡黙な人物で、鍛え抜かれたフットボール選手を連想させるいかつい体格の持ち主のマーロウ大佐は、部下に命じて、美夜達の前に台に乗せられた死体袋を6体、引き出した。 「死体を見たことは?」 「私は軍人です」 美夜の答えに納得したのか、マーロウ大佐はあごで部下に指示を出した。 部下は、無言で死体袋のジッパーを下げた。 「……うっ」 死体袋をのぞき込んだ美夜が思わずうめいたのも無理はない。 真っ白にふやけてた肉塊がそこにあった。 人間の頭部だが、ザクロのように裂けた頭から青白くなった脳漿がみてとれる。 胃液が逆流しなかったのは幸いだ。 「今朝、スズヤの近くの海で発見された―――黄色人種であることは間違いない」 マーロウ大佐の部下が、すぐに死体袋のジッパーを戻した。 「遺留品はこれです」 ストレッチャーが音もなく運ばれてきた。 銀色に輝くストレッチャーの上には、着衣だろうウェットスーツや酸素ボンベなどが並べられていた。 「さすがに身元を示すようなモノはなにもない。物好きがダイビングでもして、スクリューに巻き込まれでもしたか?普段ならそうとも考えたが」 マーロウ大佐が手にしたのは、酸素ボンベの脇に置かれていたゴム製のケース。 「状況が状況だ。しかも」 マーロウ大佐はゴム製のケースを開いた。 中からはゴルフボール大の黒いブロックがいくつも出てきた。 「こんなものをダイバーが持っているはずがない」 「……これは?」 マーロウ大佐は、慣れた手つきでブロックを指に挟んで美夜達に見せた。 「爆薬です―――他にも」 爆薬をストレッチャーに戻すと、さらに横に置いてあったモノを美夜達に見せた。 銃身をすっぽりと覆うサイレンサーのバケモノのような銃だった。 「64式消音短機関銃です」 「……その名前が来るということは」 「そうです」 マーロウ大佐は頷いた。 「昨晩、スズヤに侵入を試みたのは、中華帝国軍ということになるでしょうな」 「我々としても情報が欲しいのです。出航を差し止めることはしませんが、ご協力を」 マーロウ大佐にそうオフィスで告げられた後、 「艦長」 憲兵隊からの帰り道、高木が問いかけた。 「どうされますか?」 「司令部には報告する」 車に乗り込んだ美弥はそっけなくそう答えたが、 「だが……辻褄が合わん」と、腕組みをして唸りだした。 「……は?」 「考えてみろ、高木少佐」 美夜は言った。 「仮に山科がチンク共に買収された内通者だったとして、奴を用済みだと殺したのがチンク共だと見なしてもいい」 「だが……何故、奴らが殺されるんだ?誰に殺されたんだ?」 「そ……それは」 「山科?バカな。あいつは頭を潰されたんだぞ?いくらなんでも、頭を潰されてなお、相手を殺す?ありえた話ではない。何より」 「……」 「……銃ではない。あれは何か、鈍器に近い武器で殺された痕だった」 「では……相手は騎士」 「……鬼塚軍曹」 ハンドルを握る鬼塚軍曹に、美夜は訊ねた。 「聞き忘れていた」 「―――はっ」 「侵入者は、どこから逃走をはかった?」 「D区画と思われます」 「……思われる?」 「D区画での目撃情報を最後に、行方をくらませています」 「待ってくれ軍曹、D区画とは」 「……部隊には箝口令を敷いています」 鬼塚軍曹は、後ろを振り返ることもなく、まっすぐ前だけを見ながら答えた。 「佐官以上の高級将校向け居住区画。そこから海に逃れたとしか考えられません」 「なっ……」 「何しろ、ハッチを開かずに脱出するためには船窓が必要です。船窓があるのは、あの辺りだけです」 「しかし!」 高木は信じられないという顔で、鬼塚軍曹と美夜を交互に見るだけだ。 「現在、D区画を使用している佐官は一人だけです」 鬼塚軍曹は乱れることもなく言う。 「誰か、報告しましょうか?」 「いらない」 「……いかがなさいますか?」 しばらくの沈黙の後、美夜は言った。 「二人共」 「はっ」 「……はい」 「この件は、私に任せてもらいたい」 「……はっ」 「……憲兵には、難しい依頼ですな」 「個人的感情を交えるつもりはないが……今、彼女を失うことは、“鈴谷(すずや)”にとっては自滅を選ぶようなものだ」 「……戦時の特別判断としましょう」 鬼塚軍曹は言った。 その言葉には、美夜達も頷くしかなかった。 「“白百合の守護者”が銃殺台の露に消えたなんて話は、自分も聞きたくないですからな」
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「くそっ!」 鳴り響く警報 魔晶石エンジンから発する甲高い戦闘出力音 スクリーン一杯に迫る甲冑のバケモノ。 美奈代は倒れた二宮騎の前に立ちはだかると、斬艦刀を構えた。 距離はまだかなりある。 あれほどの重量級だ。接近するまでにはかなり間があるはずだ。 ダンッ! 大地を蹴って敵騎が動き出した。 「―――え?」 敵の装甲の厚さは一目瞭然だ。 楯攻撃(シールドやエッジ)の効く相手じゃない。 グリーンの角張った恐ろしく分厚い装甲が美奈代めがけて襲いかかってくる。 「速いっ!」 その動きに、美奈代は目を見開いた。 重装甲をものともしない素早い動きを見せる。象のような鈍重な外観からは全く想像が出来ない機動性だ。 「あの装甲で!?」 重装甲に高機動性ではシャレにもならない。 美奈代は必死に隙を見つけようとした。 装甲がいくら分厚いとはいえ、どこかに弱点があるはずだ。 ―――どこだ!? 美奈代は焦りながら視線を激しく移動させた。 正面から撃破出来そうな場所が思いつかない! ―――背後に回り込めば。 美奈代は、ふと、そう思った。 “装甲は、正面装甲が最も厚いが、後方や上面は得てして薄い” かつて、授業で聞いた言葉を思い出したのだ。 戦車かメサイアか、一体、何の装甲について語った言葉で、誰から言われた言葉かさえ思い出せないが、それでも、このタイミングでこの言葉を思い出したことを、美奈代は誰かに褒めて欲しかった。 美奈代は背面に回り込もうとSTRシステムに力を込め、即座にその無意味を悟った。 否、悟らされた。 ブンッ! 突然、敵騎の上半身で白い光が走った。 メサイアの腕ほどもある三角の円錐状の光が、肩や頭部に走る。 その光に本能的な危機を感じた美奈代は動きを止め、目を見開いた。 「な、何?」 「レーザースパイクです」 牧野中尉が言った。 「固定式の光剣と思ってください。タックルでも喰らったら串刺しです」 「―――くっ!」 背後から斬り込むことはやめた。 三騎であんなものにプレスされたらたまらない。 肩部装甲のレーザースパイクが装甲の動きに合わせて激しく揺れる。 不用意な接近は、自殺行為だと、その動きが教えてくれる。 ―――どうする? 接近のため、激しい動きを見せる敵騎を睨み付けていた美奈代が“そこ”に気づいたのは、そんな瞬間だった。 美奈代は結局、その三騎に何もしなかった。 牽制のためのML(マジックレーザー)攻撃さえしなかった。 三騎から見れば、今の美奈代騎は、突然、仲間が倒されて動揺している程度にしかみえないだろう。 だらりと下げられた長い剣もシールドも構えられてさえいない。 戦闘の意志さえ感じられない。 そんな姿で立ちつくすのが、今の美奈代騎だ。 当然、敵はそんな美奈代騎にかける情けなど持ち合わせていない。 殺されたくなければ、全てを殺せ。 それこそが、戦場における騎士の規範(ルール)だ。 三騎のメサイアを駆る騎士達は、自らの規範に従順過ぎるほどに従った。 それだけだ。 楔形陣形で迫り来る三騎。 前衛騎がハルバードを振り上げた。 槍に斧を付けた斧槍(おのやり) それがハルバードだ。 斧と槍双方として使え、「突き」「切り」「刺し」「払い」―――凡そ近接用武器に求められるほぼ全ての攻撃が出来る優れものだ。 その破壊力の源は、長い柄を操作することによる遠心力や慣性力―――そして操作する者のパワー。 メサイアのパワーを上手く遠心力に乗せることが出来た場合のハルバードの破壊力は、およそメサイアの扱う近接用武器の中では最強の部類に入るだろう。 まともに喰らえば、美奈代騎は真っ二つだ。 ピピピピピピ―――ッ!! センサーが脅威を感知し、操縦者である美奈代に警告を告げる。 長い柄を両手で握って振り上げつつ接近する敵騎を、美奈代は強ばった顔で見つめていた。 ―――チャンスは一度だ。 美奈代は自分に言い聞かせていた。 ―――しくじったら……終わりだ。 終わり。 つまりは―――死。 死ねば、全てが終わる。 そこまで考えるのが、今の美奈代にとっては精一杯だ。 目の前に迫る敵騎を前に焦る心を押さえつけるのがやっとなのだ。 「―――くっ!」 歯を食いしばった途端、 ブンッ!! 凄まじい音を立てながら、敵騎がハルバードを振り下ろした。 まともに喰らったら、メサイアは脳天からかち割られるだろうその攻撃だったが、 ガンッ!! その斧が捉えたのは、何の変哲もない大地。 メサイアの魔晶石エンジンが産み出す大出力を遠心力に変えて繰り出された一撃は、大地に深々をめりこみ、砕かれた大地が土砂となって舞い上がった。 ―――かわされた!! 前衛騎の騎士は、即座にハルバードを大地から引き抜こうとして―――出来なかった。 「!?」 ハルバードの斧の根本。 何かが押さえつけている。 必殺の一撃をかわしたメサイアの脚だとわかった次の瞬間、 グガンッ!! コクピットを凄まじいほどの振動が走った。 コクピットを形成していた様々な装備が吹き飛び、モニターや計器類が一斉に消えた。 振動が収まった時にはコクピットの中は暗闇となった。 手元でさえ見えない事態に、予備電源まで切れたことを悟った騎士が次に感じたのは、奇妙な重力感。 立っていることが出来なくなった自騎が倒れる感覚だった。 メサイアの弱点である喉部防護用可動式装甲と騎体の隙間に斬艦刀を突き刺された前衛騎は、頭部にあるMCL(メサイア・コントローラー・ルーム)と本体を結ぶ操縦系統を根こそぎ破壊されたことで動きを止めた。 人間でいえば、頸骨を切断されたのと同じ。メサイアといえ、ここを破壊されればどうしようもない。 ズズゥゥ……ンッ!! 奇妙な程ゆっくりと前衛騎が倒れる。 その光景に狼狽した後続騎達が一歩、後ずさった。 美奈代にはそう見えた、その次の瞬間――― ブンッ!! 突然、左騎の腕が光った。 「ぐっ!?」 騎体に激しい振動が走り、警報が一斉に鳴り響いた。 「さっきの一撃ですっ!」 牧野中尉が怒鳴った。 「シールド43%融解、左部異常加熱警報!」 「くっ!?」 騎体の状態を示すステータスモニターをちらりと見る。 騎体の左側が危険なほど加熱していることを示す赤色で点滅している。 「一体!?」 後衛の二騎のうち、美奈代から見て右騎が何かを構えているのに、美奈代が初めて気づいたのは、その時だった。 巨大な筒―――バズーカだ。 とっさの牽制用に撃ったんだろう至近弾だけでシールドが溶け、騎体は半身が焼けた。 一体、どれほどの高出力のML(マジックレーザー)が発射されたのか、美奈代はそんなことを考えている余裕さえなかった。 キュィィィッ 筒の中が光り出した。次は外さないだろう。 「えっ!」 美奈代騎が動いた時、美奈代が急速後退をかけてその攻撃を回避する機動をとると思っていた牧野中尉は、眼が点になった。 自分の乗っている騎体は後退したのではない。 前進したのだ。 「ちょっ!?」 ここで前進すれば、自分から的になりにいくようなものだ。 いくらなんでも、美奈代だってそれがわかっているはずだ。 それなのに―――? 唖然とする牧野中尉の目の前にバズーカを構えた敵騎が急速接近してくる。 よく考えられて配置された装甲は、幾重にも重なって鉄壁の防護とはどういう代物かを牧野中尉に教えてくれる。 この位置から喉部を狙うことはまず無理だ。 美奈代にどういう勝機―――いや、美奈代自身が正気なのかさえ、もうここまで来たらわからない。 そっと脱出装置の位置を確認した牧野中尉の耳に美奈代の声が響く。 「さくら、シールドパージっ!」 「はいっ!」 美奈代の声に、美奈代騎の左腕が大きく振られ、溶けたシールドが左騎めがけて飛んでいく。 右騎は、シールドを難なくかわした代わりとして、射撃のタイミングを失った。 そこが、美奈代の付け入るタイミングだ。 「そこっ!」 美奈代騎が右騎の懐に飛び込んだ。 ピーッ! ピピピッ! MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)にそんな音が響く。 スクリーンに映し出されるのは、敵の装甲だけ。 そのあちこちが光り始めていた。 牧野中尉は、敵騎の近接防御用のML(マジックレーザー)が発射態勢に入ったことがすぐにわかった。 ―――まずいっ! この至近距離からML(マジックレーザー)を喰らえば無事では済まない! 「准尉っ!後退を!」 たまらず牧野中尉が叫ぶ。 その目の前で、自分の乗る騎が奇妙な動きを見せた。 ザンッ! 大地に斬艦刀を突き刺した右腕が、右騎の腰回りを防御している巨大な装甲プレートの端を掴むと、一気に持ち上げたのだ。 ベギッ! 奇妙な音を残して装甲プレートの可動部を止めていたボルトが破断、装甲プレートが外れた。 装甲プレートに隠れていた右騎の股関節部が丸出しになった。 そこへ――― ガンッ! 再び斬艦刀を握った美奈代騎は、斬艦刀の切っ先を股関節に突き込んだ。 股関節から真上に突き入れられた斬艦刀は、熱せられたバターナイフがバターを易々と溶かし切るように、内部構造物を解かし、破壊した。 騎体の中からは、何かが連続して砕け、爆発する音が響く。 斬艦刀から手を放した美奈代は、とっさに右騎の腕からバズーカをもぎ取ると、撃破したばかりの、その騎体の背後に回った。 背後から襲いかかろうとしていた左騎が、右騎にハルバードを振り下ろそうとする。 右騎の背後から突き出されたバズーカの筒先が左騎の装甲とぶつかった瞬間――― 美奈代はバズーカのトリガーを引いた。
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さ行 名前 原作 出演物語数 西行寺幽々子 東方Project 1 サイタマ ワンパンマン 2 斎藤一 るろうに剣心 3 斎藤一(薄桜鬼) 薄桜鬼 ~新選組奇譚~ 1 サイバーエンドドラゴン 遊戯王GX 1 裁判長 逆転裁判 2 サイレント・マジシャン LV8 遊戯王 1 サヴァン Sound Horizon 1 サウザー 北斗の拳 3 サウロン 指輪物語 2 サウンドウェーブ トランスフォーマー 2 早乙女アルト マクロスフロンティア 2 境井仁 Ghost of Tsushima 2 榊遊矢 遊戯王ARC-V 3 サカキ ポケットモンスター 赤・緑・青・ピカチュウ 2 坂崎孝太郎 カイジシリーズ 1 坂田銀時 銀魂 3 鷺沢文香 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 ザクⅡ 機動戦士ガンダム 2 桜あかり ジュエルペットてぃんくる 1 桜井 女に惚れさす名言集 1 桜井小蒔 東京魔人學園伝奇 1 佐倉杏子 魔法少女まどか☆マギカ 1 桜小路ルナ 月に寄りそう乙女の作法・乙女理論とその周辺 2 桜田ジュン ローゼンメイデン 4 桜ノ宮苺香 ブレンド・S 1 サー・クロコダイル ONE PIECE 2 ザコプロくん 実況パワフルプロ野球 1 サザビー 機動戦士ガンダム逆襲のシャア 1 沙慈・クロスロード 機動戦士ガンダム00 1 蠍 アラクニド 1 サタンガンダム SDガンダム 1 ザップ・レンフロ 血界戦線 1 佐藤和真 この素晴らしい世界に祝福を! 1 里村紅葉 fortissimoシリーズ 1 真田明彦 ペルソナ3 1 真田昌幸 真田丸 1 ザナドゥ THE KING OF FIGHTERS 1 サーニャ・V・リトヴャク ストライクウィッチーズ 1 サバタ・ヴァンクリフ ジャバウォッキー 1 佐原 カイジシリーズ 1 サーバル けものフレンズ 7 サービスマン ボボボーボ・ボーボボ 1 サボテンダー ファイナルファンタジー 1 サボロー 企業・ご当地キャラクターその他 4 さまようよろい ドラゴンクエスト 2 サミュエル・アイザック バイオハザード 1 ザムザ ダイの大冒険 1 左門召介 左門くんはサモナー 1 沙羅 ジュエルペットてぃんくる 1 更識楯無 インフィニット・ストラトス 1 沙耶 沙耶の唄 2 佐山・御言 終わりのクロニクル 1 沢渡シンゴ 遊戯王ARC-V 3 沢渡真琴 Kanon 1 沢村栄純 ダイヤのA 1 沢村将馬 私立ジャスティス学園 1 サンシャイン キン肉マン 1 三世村正 装甲悪鬼村正 1 サンダウン・キッド ライブ・ア・ライブ 1 サンレッド 天体戦士サンレッド 1 シアン 魔界ガチャは今日も渋い 2 紫雲院素良 遊戯王ARC-Ⅴ 1 ジェガン 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 1 ジェシカ うちの奴隷が明るすぎる 1 シエスタ ゼロの使い魔 1 シェゾ・ウィグィィ ぷよぷよ 1 ジェットガルーダ 鳥人戦隊ジェットマン 1 ジェネラル カイザーナックル 1 ジェネラルシャドウ 仮面ライダーストロンガー 1 ジェノザウラー ゾイド 1 ジェノス ワンパンマン 1 ジェームズ・モリアーティ 名探偵コナン 2 ジェリド・メサ 機動戦士Ζガンダム 1アバター シェルビー・M・ペンウッド卿 HELLSING 1 ジェレミア・ゴットバルト コードギアス反逆のルルーシュ 1 シオ WaqWaq 1 ジ・オクトパス キン肉マンII世 1 潮田渚 暗殺教室 1 シオニー・レジス 第二次スーパーロボット大戦Z 3アバター 紫苑(黄忠) 恋姫無双 1 シオン・エルトナム・アトラシア メルディブラッド 1 命令者 ジガ 1 四季映姫・ヤマザナドゥ 東方Project 1 ジーク ゾイド 3 シグナム 魔法少女リリカルなのは 2アバター 時雨(艦これ) 艦隊これくしょん~艦これ~ 2 ジークリンデ・エレミア 魔法少女リリカルなのは 2 茂野吾郎 MAJOR 2 次元大介 ルパン三世 1 志々雄真実 るろうに剣心 2 獅白ぼたん バーチャルYouTuber 1 シスタークローネ 約束のネバーランド 1 シスターリリィ 2ch 1 枝垂ほたる だがしかし 2 シタン・ウヅキ ゼノギアス 1 シック・ヴァラクロロフェノル 回転むてん丸 1 シックス 魔人探偵脳噛ネウロ 3 祇堂鞠也 まりあほりっく 6 シドニー・マンソン 人造昆虫カブトボーグ 1 ジナコ・カリギリ Fate/EXTRA-CCC 1 シナモロール・ルロロマニック(シナモン) サンリオキャラクター 1 死神ディスト テイルズオブジアビス 2 死神博士 仮面ライダー 1 篠ノ之束 インフィニット・ストラトス 1 篠ノ之箒 インフィニット・ストラトス 4 東雲皐月 恋と選挙とチョコレート 3 東雲なの 日常 1 柴崎元治 ローゼンメイデン 1 柴田亜美 ドキばぐ 1 芝村舞 ガンパレードマーチ 1 ジプシー・デンジャー パシフィック・リム 1 渋谷凛 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 島風 艦隊これくしょん~艦これ~ 2 島津豊久 ドリフターズ 2 島村卯月 アイドルマスターシンデレラガールズ 10 しまむらくん 2ch 1 ジム 機動戦士ガンダム 7 ジム・キャノン MSV 1 ジム・スナイパー カスタム MSV 1 ジム・ライトアーマー MSV 1 地虫十兵衛 バジリスク~甲賀忍法帖~ 1 志村新八 銀魂 3 シャア・アズナブル 機動戦士ガンダム 3 ジャイロ・ツェペリ ジョジョの奇妙な冒険 1 小牟 ナムコクロスカプコン 1 ジャギ 北斗の拳 1 シャキーン ショボーン派生 1 灼岩 戦国妖狐 2 蛇崩乃音 キルラキル 1 ジャック・アトラス 遊戯王5D's 2 ジャック・ザ・リッパー Fate/Apocrypha 1 シャナ 灼眼のシャナ 2 ジャミトフ・ハイマン 機動戦士Zガンダム 1 射命丸文 東方プロジェクト 1 シャーロット・E ・イェーガー ストライクウィッチーズ 1 シャーロット・カタクリ ONE PIECE 1 シャーロット・リンリン(ビッグマム) ONE PIECE 1 シャンテ・アピニオン 魔法少女リリカルなのは 1 ジャンヌ・ダルク Fate/Apocrypha 2 ジャン・ピエール・ポルナレフ ジョジョの奇妙な冒険 1 ジャン・ミシェル・ロジェ 遊戯王ARC-V 1 ジュウシマツ住職 ダウンタウンのガキの使いあらへんで 1 主人公(デビサバ) 女神異聞録デビルサバイバー 1 シュヴァリエ・デオン Fate/GrandOrder 1 シュヴァルツバルト THE ビッグオー 1 シュヴィ ノーゲーム・ノーライフ 1 酒呑童子 Fate/Grand Order 1 シュドナイ 灼眼のシャナ 3 ジュライ アリアンロッドRPG 3 ジュラル星人 チャージマン研 1 純狐 東方project 1 城ヶ崎美嘉 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 少佐 ヘルシング 1 少女 ゲーセン異文化交流 1 少女(deemo) deemo 1 聖徳太子 ギャグマンガ日和 1 祥龍院隆子 ゲーミングお嬢様 1 ジョーカー DC Comics 2 諸葛亮孔明 横山三国志 2 食蜂操祈 とある魔術の禁書目録 1 ジョセフ・ジョースター ジョジョの奇妙な冒険 6 ジョナサン・ジョースター ジョジョの奇妙な冒険 2 ジョニー GUILTY GEAR 1 ジョニィ・ジョースター ジョジョの奇妙な冒険 2 ジョルノ・ジョバァーナ ジョジョの奇妙な冒険 1 白井黒子 とある魔術の禁書目録 3 白石紬 アイドルマスターミリオンライブ 2 白音若菜 逆転検事 1 白菊ほたる アイドルマスターシンデレラガールズ 6 白坂小梅 アイドルマスターシンデレラガールズ 1 不知火 艦隊これくしょん~艦これ~ 1 シリアス アズールレーン 2 シリカ ソードアートオンライン 1 シルヴィ 奴隷との生活 -Teaching Feeling- 2 ジル・ド・レェ Fate/Zero 1 シルバーカラス ニンジャスレイヤー 1 シレン 風来のシレン 1 白鐘直斗 ペルソナ4 1 ジン 名探偵コナン 2 シン・アスカ 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 2 「深淵歩き」アルトリウス DARK SOULS 6 深淵の監視者 DARK SOULS 1 シンカー ゾイド 1 ジン=ガニス ロクでなし魔術講師と禁忌教典 2 真紅 ローゼンメイデン 1 真ゲッター1 ゲッターロボ 1 真月零(ベクター) 遊戯王ZEXAL 1 シンシア・レーン OVERMANキングゲイナー 1 新条アカネ SSSS.GRIDMAN 1 神条紫杏 パワプロクンポケット 1 新城直衛 皇国の守護者 3 人造人間16号 ドラゴンボール 1 人造人間18号 ドラゴンボール 2 人造人間サイコショッカー 遊戯王 1 真ドラゴン 真! 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昨日 - 今日 - 15年戦争資料庫 ページ数3119一部公開 「南京事件」143枚の写真&読める判決、「ラーベの日記」を読みながらブログ『1937年秋冬コレクション』、産経iza 安禅不必須山水 iza!(復活)もどうぞ. また、ja2047 memorialとTohoho ピース ウォークも. ■当資料庫の御利用にさいしてのお願い メニュー欄から現場にたどり着けないときは、サイト内検索を御利用ください。複数のキーワードを使えば「and検索」ができます。 サイト内検索 and or New! 宇都宮けんじさんへの諌言書 New! 第13回-第14回 福島県県民健康管理調査検討委員会 甲状腺検査結果について New! 舩橋淳(映画作家) 今は平時でなく、戦時になりつつある~圧倒的な危機感という視点~ New! 都知事選候補者宇都宮氏と細川氏の記者会見 New! 東海村での未就学児甲状腺検査の結果(2013)と5歳女児肺転移甲状腺がんの症例(2009) 福島県外3県における甲状腺結節性疾患有所見率等調査成果報告書について 素線量に関するメモ 甲状腺がんの罹患率(発生率)10 万人あたり~国立がん研究センター「がん統計」より New! 5月30日のUNSCEAR報告書プレスリリース仮訳 橋下徹大阪市長の慰安婦妄言 【資料】遭難者はどちらも心臓に持病 作られた逮捕 10ミリシーベルトでも危険 ~ICRPは放射線被ばくの発がんリスクを1/10に過小評している・松崎道幸 5.8キツネにつままれた仙台高裁の判決(決定)を読み解き未来を提示する緊急の判決報告会(第1回目) ふくしま集団疎開裁判・仙台高裁2013-04-24決定 ふくしま集団疎開裁判・仙台高裁の判決 福島第1原発事故 市町村別、甲状腺検査結果を開示 【部内参考資料】東大早野教授らの「内部被曝はゼロ」報道誘導論文 集団疎開裁判の会リーフレット・改訂版 「鈴木眞一学会」のこと :県外3市の甲状腺検査結果(環境省) 国連人権理事会UPR日本報告を採択(死刑、代用監獄、「慰安婦」、フクシマ) 「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」からの緊急提言 子どもたちを被曝から守ろう! 集団疎開裁判の会リーフレット ⇒集団疎開裁判の会リーフレット・改訂版 甲状腺検査説明会20130210at二本松by鈴木眞一 チェルノブイリ小児甲状腺がんと事故時年齢 甲状腺がん新たに2人、第10回福島県県民健康管理検討委員会についての報道 年賀状に換えて 12.28日比谷屋内集会「『集団疎開裁判』と福島の今までとこれから」【配布資料】 「公衆の線量限度は年間1mSv」 国内法の記述ついて 甲状腺検査に関する緊急資料集 緊急資料集・10月末日=「甲状腺検査」説明会を前にして 「公開質問状について」スライドby ni0615 緊急資料集・11月10日 緊急資料集・速報11月11日 11月10日説明会@福島市・県側配布資料 【緊急資料11 月16 日】甲状腺検査・診断における「福島県立医大メソッド」について 福島県民健康管理調査の問題点index 甲状腺がんについての「公開質問状」:内部被曝研2012_10_15 毎日新聞スクープ_福島健康調査 「秘密会」で見解すり合わせ 内部被曝問題研究会が理事長声明を発しました 放影研の「原爆被爆者の死亡率に関する研究 LSS第14報」に関する資料 生井兵治さんの「放射線安全神話を撃つ」121024@明石町 IAEA特別歓迎用プラカード 「原発と共存する日本」から「原発事故と共存する日本」へ 奥村岳志さんの論考「IAEAと福島 管理人用for myself ICRPとIAEA文書の本棚 放射線審議会委員名簿 不測事態のシナリオ 資料:原発村OBによるNHKにたいする「抗議と要望」 ついに虚言もここまで来たか、中川恵一「チェルノブイリの教訓」週刊新潮12.1 人体影響・チェルノブイリなどからの知見 電力会社の秘密警察を務めたエネ庁と科学技術館~東京新聞2011.11.20 ホールボディ検査・計画と結果報告 ver_6南相馬市のWBC検査の結果は安心できるか.pdf 3月末に行われた児童の甲状腺検査について 山下俊一教授と日本財団 1Bqの摂取が与える預託線量Sv 公開された資料で判明報じられなかったプルトニウム「大量放出」の事実 ヨウ素131における「線量係数」一覧2011.8.21改訂しました 特設庫・放射能汚染とデマ汚染に抗す 長崎大・山下俊一教授の『語録』 小出裕章:たね撒きジャーナル 小出裕章:最新講演ビデオ 今中哲二:低線量放射線被曝とその発ガンリスク ICRPの2007年勧告:index 児玉龍彦氏の発言 田口汎 広島・長崎原爆被爆の原点に戻る index 笹本征男インタビュー占領下の原爆調査が意味するもの(上) 笹本征男インタビュー占領下の原爆調査が意味するもの(下) 7/8東大緊急討論会におけるレジュメ:島薗進「放射能の影響と戦後日本の医学」 twitterより:島薗進氏による中川保雄『放射線被曝の歴史』(1991年)の紹介 必読! 低線量被曝による「脳障害」「不妊」「糖尿病」などを警告するドイツ女医のインタビュー 黒鉄好のレイバーコラム「時事寸評」第10回:被曝地フクシマで進行する戦慄の事態~ついに刑事告発された御用学者・山下俊一らの大罪を問う! 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 いわゆる『防災指針』:「原子力施設等の防災対策について」原子力安全委員会 「環境放射線モニタリング指針」平成 20年 3月原子力安全委員会 放射能汚染とデマ汚染に関するメモ 阪神教育闘争・文献リスト Validation もろもろ ☆新防衛大綱考 ☆ウィキリークス情報 尖閣列島問題、河内謙策氏の論考をめぐって 河内謙策氏の反中国・尖閣闘争論 【参考資料】右派諸氏の尖閣紛争・戦争論 番外:映画『ザ・コーヴ』関連 デマビラ『朝鮮進駐軍』の話iza 「韓国併合」100年日韓知識人共同声明 2010年5月10日 全文 日韓歴史共同研究」 第二次報告本文リンクと関連資料を収集中です。 日中歴史共同研究」 第一次報告本文と関連資料を収集中です。 大田昌秀講演「沖縄戦と集団自決裁判について」 「ある神話の背景」の研究 「海上挺進第三戦隊陣中日誌」の研究 竹田宮と第84師団派遣中止 -自家用 《資料庫Menu》 読める控訴審判決「集団自決」 沖縄戦庫/沖縄戦資料index/沖縄戦ニュース/沖縄戦裁判 従軍慰安婦庫 在日由来&徴用と連行庫 満州事変庫 南京事件庫/ 「百人斬り競争」と南京事件 内容目次 日中戦争庫 太平洋戦争庫 BC級戦犯庫 昭和史庫/ 兵は凶器なり15年戦争と新聞メディア一覧 台湾の歴史・日台関係史 靖国問題庫 歴史共同研究庫 「偉そうな軍人さんは嘘をつく」庫 「警察官は制服を着ているとなぜ威張るのか」庫(未作成) 9.11陰謀論庫 資料探索庫 平和思考庫 贋声嘯聚 New! 歴史改竄デマビラ New! その他庫 番外庫 新資料庫 GAZA兵器と人間・資料庫@wiki izaブログ最新 izaエントリー・リスト 管理人へのメール Link---- ブライダル 不動産検索
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コラム10:戦争と記録遺産 p163 ■コラム10■戦争と記録遺産 「宇宙からエイリアンがやってきて,大きな磁石で地球を包むと,人類の文明は一瞬のうちに失われるよ」 これは,5年ほど前,沖縄関係の映画フィルム収集の件で複製会社に相談した際,S社長が私に言った言葉だ。 近年,同社が受注するドキュメンタリー・フィルムの製作は,安価で編集しやすいデジタルが主流で,昔のような35ミリのロール・フィルムはすっかり影を潜めてしまったそうだ。しかし,デジタル記録は,紙やロール・フィルムなどと違って,データの一部が少しでも壊れると記録を再生することができなくなることから,近年のデジタル化の傾向を人類の記録遺産の継承という点で嘆いていたのである。 「エイリアンと電磁波……?」その話を聞いて,映画『インディペンデンス・デー』のシーンを想い浮かべた私だったが,「しょせん,空想の世界……」と,その話はいつしか記憶の彼方へと消えていた。 ところが,先のイラク戦争で,はっとさせられるニュースが目に留まった。米軍が戦争の実戦で初めて「電磁波爆弾」を使用した可能性があるというのだ。この爆猟とは,目標に向けて発射されたミサイルから高エネルギーの電磁波を放射することによって,コンピュータや電話など電子・通信機器を使用不能にし,相手の指揮系統を麻碑させるというものだ。エイリアンこそ登場しないものの,S社長の言っていた電磁波攻撃が,現実のものとして存在することに驚いた。電磁波爆弾の効果が報道されたとおりであれば,パソコンなどに保存されたイラク政府の記録の多くが失われてしまったことだろう。 イラクと言えば,約5,500年前に最初の文字を発明し,人類の歴史を拓いたメソポタミアの地だ。かの地の人々は,神殿へ奉納する家畜や穀類などの種類や数をやわらかい粘土板に刻み,乾燥させて保存し,いわゆる人類最初の公文書も残している。ところが,今回の戦争では,各地の博物館が略奪に遭い,この粘土板を始めとする数十万点の考古学資料や展示品などが一瞬にして消え去ってしまった。 我々は一般的に,歴史とは先人が長年にわたって培ってきた,目には見えない何かで,それを引き継ぎ,積み重ねていくことはあっても,すでにある歴史を矢うことはない,と考えがちだ。しかし,実際には,記録が無くなれば歴史も存在しない。 核兵器や電磁波爆弾など,人類の遺産一瞬に消減させることのできる武器が存在する今日,それらによって「先史時代」に後戻りする可能性もないとは言えない。べトナム戦争以来の本格的な戦争である今回のイラク戦争は,人命のはかなさとともに歴史のはかなさをも思い知らされる戦争である。 〔2003年6月「アメリカ通信No.11」〕 書籍「アメリカ国立公文書館徹底ガイド」
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「戦争を知っていてよかった」 曽野綾子 新潮社2006.6.15 「新潮45」h15.1~17.3 戦争を知っていてよかった 世の中のすべてのことは―時には病苦でさえ―知らないより知っていた方が重厚な人間を創るものだが、戦後の日本には、あくまで知らない方がいい、という信念に囚われたものがたくさんあった。 病気はその一つで、これだけは確かに、人間を創るから病気にかかる方がいいという発想はどこにもない。 しかしそれ以外のことは、求めて悪い状態を体験することはないが、自然にそうなってしまった場合は、充分にその意味を評価する道が残されている。貧乏、親との死別、失恋、勤め先の倒産。どれもない方がいいが、そうなればなったで、その体験が別の人間を完成するきっかけになることが期待できる。 知らない方がいい、という信念の元に扱われた第一のものが戦争である。戦後、日本にはまともな軍事学も発達しなかった。孫子の言う「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」という知恵も定着しなかった。しかし今度アメリカのイラク侵攻を見ながら、私個人は戦争を死っていてよかった戦争を体験として知っていてどんなによかったか、としみじみ感謝したのである。 私は十三歳の時に大東亜戦争の終戦を迎えた。その前に、アメリカの爆撃を受けて、東京が焦土になる姿を見た。知人の青年たちが、戦場から二度と帰らなかった現実の無残さを知識としてではなく体験として知った。 空腹、栄養失調、個人的・社会的貧困、女子工員の生活、アメリカ軍の進駐、戦後復興の姿も私小説的に見た。体験が明確な記憶に組み込まれる年頃になっていて幸いであった。ここ数カ月の間に私はあらゆるマスコミやいわゆる「その道の通」の友人たちから、イラク侵攻に予想される裏話を聞かせてもらい、読み続けて来た。どれも政治や経済にうとい私にとっては、眼の覚めるような貴重な知識であった。しかし同時に私は戦争を体験したおかげで、戦争について言われるさまざまな話に迷わされなくて済んでいる面もあることを感じた。 たとえば民間人を巻き込まない戦争などというものがあり得るという言い方ほどおかしなものはない。アメリカが敵とするのはサダム・フセインとその息子たちの政権であって、戦争は一般人を巻き込むものではないとアメリカ側は開戦前から言い、民間人の犠牲者が出たことは国際世論でも大きな非難の理由になっている。その時私は密かに思ったものだ。それならアメリカはCIAの名において、サダムに対して向こう何十年でも執勘に刺客を放つ宣言をし、それを実行に移す方が、確実に民間人を巻き込まなくて済むというものではないか? 一九四五年当時でも、戦争はあらゆる民間人を巻き込んだ。広島・長崎は非戦闘員を当然傷つけることを予測した攻撃ではなかったか。先日、当時十歳前後だった「往年の子供たち」(今はかなり年をくったおじさん・おばさんたち)が数人集まって空襲の話をしたのだが、アメリカの油脂焼夷弾は、火のついた油の飛沫が建物や人間にべたりと貼りつくもので、人間は生きながら火達磨になったという。 私の知人は一九四五年の三月九日夜の東京大空襲で焼け出された翌朝、隅田川にかかる橋の一つを渡る時、無数の小さな雪のようなものが、風に乗ってさらさらと足元に流れて来るのを見た。初めは気がつかなかったが、やがてそれは人間原の骨片であることがわかった。その夜を含めて、東京では十万人以上もの民間人が焼死したのである。そうした結果をアメリカが予想できなかったはずはない。つまり今とは比べものにならないほどの素朴な構造の武器しかなかった時代から、戦争は常に巻き添えになって殺される人も出ることを意味していた。 もし戦争がピンポイントで、敵の大統領官邸や作戦司令部だけを完全に制圧できるものなら、そして民間人には少しも被害なしで済むなら、戦争はお互いに納得した「戦争のプロ」同士の、西部劇の一騎討ちと同じで、少しも悪いものではないではないか。戦争が悲惨なのは、戦う意志も方途も持たない民間人が必ず巻き込まれるからなのだ。だからイラクで子供が負傷するのも女性が殺されるのも、それは第一にその国の長であるサダムの責任であり、次に他国に侵攻したアメリカの責任である。 大東亜戦争の時、国民はすべて大本営発表という報道管制下に置かれていた。そこで知らされたのは、すべて敗北を隠した偽りの発表であったが、それは程度の差こそあれ宣伝戦というものとしては当然のことだと私は今でも思う。もし戦時の発表が冷静で自制的で正直に真実だけを伝えるものなら、この点でも戦争は悪くないものであろう。 戦争は戦いなのだから、欺瞞と威嚇が基礎なのだ。エリマキトカゲだって、敵を打ち負かそうとして、エリマキの部分(あれは本当は何の部分なのだろう)を広げる。現実以上に自分の力を大きく錯覚させるのが戦いの常道だ。戦いだけでなく、政治も外交も、この欺瞞なしにやれることではないだろう。だから戦争における欺瞞にいちいち怒ることはないのである。 それにしても大東亜戦争の頃、私たちは(子供だったせいもあるが)相手の国について何も知らなかった。私の夫は開戦の時、中学四年生だったが、同級生に船会社の経営者の息子がいた。宣戦布告の翌日、夫はこの友人からアメリカと日本の船舶保有量の統計を見せられて、この戦いは負けると思った、という。しかしそんな客観的判断の資料を与えられていた日本人は当時例外中の例外であった。 アメリカがバグダッドに侵攻する前に、民兵の服(私服)を着た初老に見える男が、銃を片手にテレビのカメラマンに向かって、「バグダッドは死守する、アメリカは必ず負ける」と根拠のない明るさで決意を述べていたが、私たちはまさに同じ顔をして日本には神風が吹くから必ず勝つのだ、と確信し、割烹着を着て愛国婦人会のたすきを掛けたおばさんたちも、イラクの民兵と同じことを喋っていたのだと思う。 しかし私はごく最近にいたるまで、アメリカには(日本と違って)優秀なアラビストがたくさんいて、かなり現実を知って開戦に持ち込んだ、と考えていたのである。もちろん知っていたから、その通りにするということではない。しかし少なくとも「自由社会の指導理念」「公的見解」「表面上の理由」としてアメリカが述べた侵攻の理由、サダム政権後のイラク、のイメージが、あまりにも単純で現実離れしたものであり、恐らくアラブ通の間では全く通用しないものだろうと思われることに、私は煩悶している。 アメリカは、最初から繰り返しイラク国民を残虐なサダム政権から解放し、イラク国民を民主化し、真の自由の尊さを教えるために戦っているのだ、としている。しかしもしまともなアラビストがこの計画に噛んでいたなら、このような見解が、イラクに住む人々の「習憤と体質」「好みと安定」を反映するものではないことを強調しただろうと思う。 二〇〇三年四月五日には、アメリカはバグダッド国際空港を一応制し、ジャーナリストたちの質問は急にサダム以後の人道支援・暫定政権をどうするか、ということに移行した。アメリカはクルドと結んで、クルド地区への侵攻をたやすくしたから、クルド人たちがアメリカ軍を歓迎して笑ったり踊ったりする光景も放映されたのである。 しかしクルドもしたたかな人々だ。クルドはサダムに一九八八年に化学兵器で約五千人とも言われる人々が虐殺された歴史を持っている。アメリカに近づいて来たのは、「敵の敵は味方」という最も普遍的で単純な力の原則に則っているだけだ。アメリカが必要なくなれば、「金の切れ目が縁の切れ目」である。これはアフガニスタンでもイラクでも同じことだ。 アフガニスタンの時に私が初めて知ったのは、あちこちに群雄割拠していた部族の長たちのことを英字新聞が「ワーロード」と表現したことだった。ワーロードは「揶揄的な意味での将軍」だということになっている。つまり一番適切な日本語の訳は清水次郎長のような「親分」である。 民主主義が存在し得ない土地では―その理由は後に述べる―部族支配がその代行をするのは、全世界で見られる自然な成り行きである。アラブ国家の中でも、例外的にエジプトなどのように地中海文化圏に属し、長い年月の間に西欧的国家経営の理念と現実とに触れた国は別として、多くのアラブ国家の民衆は、現在も民主主義ではないし、またそれを本気で目指してもいない。百年、二百年先の遠い未来はわからないが、数十年で民主的国家が形成されるとは到底思えない。彼らにその能力がないというのではない。日常生活の中でそうした政治形態は全くそぐわないからである。 戦後のアフガニスタンに、西側は多額の金を出したが、あの金は一体どういう形でどこへ行ったか。忘れっぽいマスコミはこの頃アフガニスタンの状況をほとんど報道してくれないから、私たちにはわからないのだが、アフガニスタンで俄にインフラの整備もよくなり、放牧民的生活の中に、日本やアメリカ型の文化生活が進んだという話は、私たちの耳にはあまり入って来ていない。もちろん一部の金は、学校建設、道路の復旧、医療設備の改善に使われたであろう。しかし大部分の金は、部族の族長たちに配られて儲けになったはずだ。誰もが配分には決して満足してはいないだろうが、何しろいい儲けにはなったのだから、今のところはじっとしている。 当時アメリカからカルザイという不思議な人物が突如として出て来た。恐らく彼はアメリカの利権の代表者としてひっぱり出されたのだろうと皆思っているが、とにかくあの時アメリカから最も多くの金を引き出せるのは、グッチのデザインによる「民族どてら」をこざかしく着ているという噂のカルザイ以外にいなかったのだから、と、現実主義者の親分たちは仕方なく呑んだのだと識者たちは見ている。親分たちの関心は、つまり自分たちの部族にいくら分け前が廻って来るか、ということだけだ。彼らは常に分け前を多くくれる人に付くから、その同盟の構図は流動的である。そして多くのヨーロッバの国々とアメリカとソ連は、そうした力関係の中で「旦那」になり続けることに、多かれ少なかれ失敗して来ているのである。 アメリカにとって、日本に民主主義が定着したということは、判断を大きく狂わせる元になったと私は思うことがある。それはアメリカが自分流の民主主義を、ほとんど実験的に他の国家に植えつけた外交政策の奇蹟的成功例だったのだ。理由は二つある。 第一に、日本には国民全体にもう数百年間にわたる基礎教育があった。幕末の頃の日本人の識字率は恐らく世界最高であったろう。 第二に、戦後の日本は、初めに火力、次に水力で、国中に安定した良質の電力を供給することに成功した。既に達成されていた初等教育のおかげで、日本では電力整備を達成することが、制度的にも技術的にも意識的にも可能になっていたのである。 一九三〇年代には既に多くの家にラジオがあった。ラジオを持っている人は御自慢で大きな音でそれを鳴らしたから、木と紙でできた日本の家屋からは容易にその音が漏れ、隣近所でラジオを持っていない人もそれを聞いてラジオの恩恵に浴した。当時のねじ式の時計は一日に五分くらいは平気で狂ったが、ラジオが正午の時報をポーンと鳴らせば、人々は律儀に時計の針をなおせた。こうした電力の普及が、戦後の日本の工業化、近代化、民主化を底辺から可能にした。一方、いつも私が言うことだが、安定した良質の電気が供給されていない土地には民主主義はあり得ないから、彼らは昔ながらの族長支配の下で暮らすことを守られていると感じて来たのである。 イラクには国の隅々にまでは電気がないから、人々は民主主義というものを知らないに等しいし、またその欲求もないだろう。民主主義がなければ、自動的に族長支配が機能し、族長によって人々は安全を守られている。 歴代の族長たちと比べて、サダムがどれほど「悪い支配者」だったか、私には充分な知識がない。しかしそもそも慈愛に満ち、部族民に湿情で接し、自分も部族民と苦楽を共にした族長などというものの存在はなかったはずだ。程度の差こそあれ、族長は常に収奪的圧政と時々わずかなお慈悲とを見せて支配して来たのだ。基本的にそうした社会形態以外、人々は馴染んでいないから、それ以外の政治形態は恐いし、嫌悪するのである。 私はそのことをインドで学んだ。三十年来私が働くことになった小さなNGOは、インドのイエズス会の神父たちにも経済的な支援をし、神父たちが不可触民の子供や青年たちの教育をする仕事を見て来た。神父たちはカトリック、不可触民はヒンドゥである。神父たちはしかしヒンドゥの生徒たちに、決してキリスト致をおしつけることはしなかった。彼らはただ子供たちをかわいがり、人間の尊厳を教えた。しかし私が驚いたのは、一番差別を受けている多くの不可触民が、特別な教育を受けている人は別として、決定的に差別が好きだということであった。これは不思議な情熱であった。彼らは、自分が最下層であると差別されることを、更に下の階層を設定し意識することで安定させていたのである。不可触民より下の部族というのは、私が見た限りでは、ヒンドゥ社会の外にある部族―例えばランバーディと呼ばれるジプシー、かつてアフリカからゴアに奴隷として連れて来られた肌の黒いシーディー、今でも森の奥深くに隠れて人を見ると逃げるゴーラ、遊牧して牛飼いをするガウリ、などという部族である。不可触民が、こうした人々を差別するのは、差別社会以外の形態を知らないので、同じような社会形態の中で同じようなやり方で矛盾を解消しようとするからである。 アフガニスタソもイラクも、民主主義などというものを知らないから、さし当りそんなものは要らない。サダムよりましな部族の支配者がくれば、それは望ましいが、どっちみち強力な支配者などというものは、多かれ少なかれ権力と財力をほしいままにして来たものだ。サダムを憎む人は多い。しかしその残忍さは理解し得るものだ。部族統治以外の政治形態を押しつける者は―ブッシュであろうと誰であろうと―もっと不愉快な存在なのである。自分にとっていいものを他人にもいいものとして押しつける。アメリカという国が、自国の行動の原理としてそれを口にする時、その説明の幼さに、私は辞易している。(二〇〇三・四・五)
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飛び込んでくる敵に対して、美奈代騎は、フェンシングの突き技と同じ要領で半身を前に出し、斬艦刀を片手で突き出した。 そして、斬艦刀の切っ先が敵騎の装甲にめり込んだのと同時に柄から手を離した。 突き技の衝撃で、斬艦刀を折らないためだったが、そのまま騎体を半回転させた所を敵騎はその勢いのまま駆け抜ける。 美奈代は、その背中めがけて容赦なくシールドのエッジを叩き付けた。 「―――ぐぅっ!?」 騎体パーツがバラバラに粉砕される中、騎体が地面に叩き付けられる衝撃に、エーランドは歯を食いしばって耐えた。 「こ、こんな―――」 騎体はもう動かない。 スクリーンはすべてブラックアウト。 操作系はどこかショートしたらしく煙が出ている。 「こんなデタラメな話があってたまるか!」 エーランドは、脱出装置を作動させた。 緊急救難信号が発信され、開閉操作が効かなくなったハッチが吹き飛ぶ。 密封されていたコクピットに太陽の光と空気が流れ込んでくる。 「―――ここまで私に恥を掻かせるとは!」 チュインッ!! 毒づきながらコクピットの外に出たエーランドの手元で何かが弾けたのはその瞬間だ。 「何だ!?」 手を思わず引っ込めた。 まだ爆発は起きていない。 だが、何かが弾けたのは確かだ。 「ん?」 パンッ! チュインッ! 何かが弾けた場所を確かめようとかがんだ所を、何かがかすっていった。 黒い、小さな塊だった。 それが、高速で自分めがけて飛んできた。 弾けたのはその塊だと、エーランドは理解した。 飛ばして来た相手を求め、周囲を見回したエーランドは、自分の騎が擱座した場所がどこかようやく理解した。 自分を撃破した敵騎の前、自分が倒した敵の真横だった。 仰向けに倒れたその騎の胸部装甲が開かれ、そこから上半身を出したパイロットが、こちらめがけて右腕を伸ばしている。 その手に掴んだモノが、どうやら金属の塊を打ち出す武器だ。 エーランドはそこまで理解すると、即座に行動に出た。 一息で、武器を持つ相手の所まで跳躍、その腕を掴んだのだ。 相手が、再びあの金属の塊を打ち出す余裕をエーランドは与えなかった。 右腕を掴んで、相手をねじ伏せたエーランドは、その時初めて相手が女性であることに気づいた。 「―――女?」 自分を睨み付けてくるのは、エーランドにとっては妙齢の女性。 その女性の口から何事か言葉が漏れる。 “離せ”とでも言っているんだろうが、エーランドにとってはどうでもよかった。 「まぁいい」 エーランドは喉で笑うと、相手の右腕を抑える腕に力を込めた。 グッ 「うっ!」 女は、うめき声を上げ、武器を掴む力を失う。 エーランドは、女から武器を取り上げ、そして言った。 「安心しろ。私は女は殺さん」 武器を取り上げられてもなお、戦う意志を瞳に浮かべる女に、エーランドは小さく吹き出した。 「夢見が悪いからな」 女がエーランドに飛びかかってきたのはその時だ。 だが、エーランドの一撃が女を襲う方が速かった。 みぞおちに入った一撃で女は力なくエーランドの腕の中に崩れ落ちる。 「―――活きのいい女だ」 クイッ。 みぞおちの痛みに必死になって耐える女のあごを掴んだエーランドは言った。 「また逢おう」 そして――― 「二宮教官っ!」 “征龍改(せいりゅうかい)”から降りた美奈代が駆け寄ってくる。 美奈代の手には自動小銃が握られていた。 「ご、ご無事ですか!?」 敵騎を擱座させた美奈代にとって誤算だったのは、敵騎のパイロットが二宮を人質にしたことだ。 なにがどうしたものか。 それとも魔族とはそういうやり方をするのかわからないが、二宮の最後の抵抗をねじ伏せた魔族は、二宮をその場にねじ伏せ、動きを止めた。 コクピットの中に入りこんだため、二人が何をしていたかはわからない。 ただ、二宮を巻き込む危険性が高すぎ、美奈代達は、何も出来なかったのは確かだ。 おそらく、時間にして数分とたっていないだろう。 その間、二宮を人質にとられた美奈代には恐ろしく長い時間が過ぎた気がした。 すべてを終わらせたのは、海からの攻撃。 重迫撃砲と思われる攻撃が連続して美奈代騎の周囲に落下する。 シールドを構え、防御姿勢をとる間に、海岸から突如、得体の知れないフォルムのメサイアが出現。 その手の中へと、魔族は消えていった。 美奈代がコクピットへ潜り込んで体勢を整え直すよりも速く、敵は海へと消えていった。 もし、敵が美奈代騎を狙っていたら、美奈代は確実に死んでいただろう。 「二宮教官っ!」 何故か呆然として口元を指で抑える二宮に呼びかけるが、二宮はまるで反応しない。 ただ、顔を赤くして、ぼんやりとしているだけだ。 「教官っ!?」 美奈代はその肩を激しくゆすった。 「……泉」 「はい!」 「……頼みがある」 「な、なんですか!?」 「……私が」 どこか焦点のあわない目をした二宮は、美奈代に言った。 「私が、あの魔族と何をしていたか、忘れてくれ」 「わ、忘れるもなにも……」 美奈代は困惑した顔で答えた。 「私、何も見えていませんよ!」 「そ……そうか」 二宮は安堵したという顔でため息をついた。 「それならいい」 「あの―――教官?」 「忘れろ」 二宮はそう言うと、コクピットに潜り込んだ。 唖然としてコクピット前に立つ美奈代に、コクピット内部から二宮が届いた。 その声は、軍人としての、そして教官としての声でしかなかった。 「泉―――ベルゲはどうなっているか?」 「人類の新型兵器……か」 カーメン大佐がスクリーンの向こう側でうなるような声を上げた。 「エルプス系魔法の応用技術であることは間違いありません」 エーランドの横に立つ女性士官が、書類片手に言った。 司令部から派遣されてきたマイナ技術大尉だ。 「物質の原子レベルでの結合を崩し、原子崩壊させることで物質そのものを破壊します。騎体の損傷痕に、エルプス系魔法独特の痕跡があることから明らかです」 「実体系武器では対抗出来なかったと?」 「武器がその役割を果たしません」 マイナ技術大尉は言った。 「エルプス系魔法の前で実体系兵器及び防御は一切無意味です」 「……そうか」 カーメン大佐は、数回、小さく頷くと言った。 「マイナ技術大尉を信じよう。エーランド少佐には悪いことをした」 「いえ」 エーランド少佐は、その外見故か、若干気障に見えるほど優雅に敬礼した。 「マイナ技術大尉がヒートサーベルを持ってきてくれました。同じ過ちは繰り返しません」 「当然だ」 「……」 数分後。 相次ぐメースの喪失をねちねちといびるカーメン大佐との通信を終え、瞑目して落ち込んだエーランドの横。 そこでは、マイナ技術大尉が表情を変えずにエーランドを見ていた。 人形のような美しく涼しげな容姿をしたマイナ技術大尉は、金髪の貴公子然としたエーランドの横に立つとちょっとした似合いだな。と、その様子を眺めていたシグリッド大尉は思った。 「?……ああ」 その視線に気づいたのか、エーランドはマイナ技術大尉に向き直った。 「すまなかったな。大尉」 無理に笑ってみたつもりだが、ぎこちないだろうとエーランドは自身でそう思った。 「いえ」 マイナ技術大尉は、愛想笑いを浮かべることさえなく、手にした書類をエーランドの前に突き出した。 「ツヴァイ4騎と、関連武装の受領書類です。確認の上、サインを願います」 エーランドは無言で書類を受け取る。 何故か一瞬、顔を引きつらせ、一番上の書類だけを自分のポケットにねじ込むと、二枚目にペンを走らせた。 「その……マイナ技術……大尉」 受け取った書類を確認したマイナ技術大尉は、引きつった顔を崩せずにいるエーランドに言った。 「騎体と部下を失ったことに関する始末書と進退伺いを3時間以内に提出してください。それと、一枚目に挟んでおいた、損害賠償と罰金の件ですが、お支払い方法はいかがなさいますか?」 エーランドは悲しげな顔をしながらも、精一杯胸を張って答えた。 「もちろん、漢(オトコ)らしく現金一括払いだ!」 「……低金利のクレジット会社、紹介しましょうか?」 「いらんっ!」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「残念なことになったわね」 「……そうね」 美夜と二宮の目の前で炎上を続けるのは、エーランドが放棄したメース、ツヴァイだ。 騎体の鹵獲(ろかく)を狙ったが、仕掛けられていた自爆装置が作動。 騎体は一瞬にして炎の中に消えた。 火葬を前に、敵騎の秘密がわかると期待していた面々には失望の色が走る。 「よっぽど私達に騎体を渡したくないみたいね」 「……そうね」 「……」 「……」 「……真理?」 「何?」 「敵と、何があったの?」 「……何も」 「……そんなにいい男だったんだ」 「何のこと?」 「今、顔に出たわよ?」 ●“鈴谷(すずや)”教官室 「ひでぇもんだ」 長野は、書類をデスクに放り投げると、コーヒーを飲もうと椅子から立ち上がった。 コーヒーメーカーの横に置かれたインスタントコーヒーの瓶を掴むと、中身を慎重に確かめた。 日本から持ってきたお気に入りのストックは、残り1本。 それでさえ、残りは瓶の半分にも満たない。 「……シャレにならねぇ」 「誤字脱字、ありましたか?」 長野のぼやきを聞いて声を上げたのは、長野の隣のデスクでパソコンを動かしていた美晴だった。 「いや?」 長野はコーヒーを淹れながら首を横に振った。 「損害が大きすぎると思っただけさ」 口ではそう言いながらも、長野が顔をしかめたのは、二宮がまとめた“伊吹”生存者に関する報告書を読んだからだ。 富士学校から派遣されたのは教官・候補生が31名、教員は12名とMC(メサイア・コントローラー)が19名となっている。 この数で、自前の“征龍改(せいりゅうかい)”6騎と、正規部隊から回されてきた“幻龍改(げんりゅうかい)”12騎を運用する。 さらに第二中隊から派遣され来た“幻龍改(げんりゅうかい)”6騎、騎士とMC(メサイア・コントローラー)、それぞれ6名ずつがこれに加わっていたが……。 「今や半分も残っていねぇとはな」 そう。 彼等の半数以上が“伊吹”と運命を共にしたことになる。 22騎存在した騎体に至っては10騎しか存在しない。 “伊吹”から引き出して修復した騎を加えて10騎なのだ。 長野は、生き残った騎体の割り当てに関する書類の作成を命じられていた。 “征龍(せいりゅう)”は元々第七分隊が使うことになっているし、今更使用者たる候補生の人選を変更して、セッティングを変えるくらいなら、第七分隊に使わせた方がいいと、長野は判断していた。 余談ではあるが、どうにもパソコンが苦手な長野は、柏美晴に代筆を依頼していた。 美晴に頼んだ理由は、長野曰く、彼女が候補生の中で最もキーボードの入力が速いと定評があることと、何よりMC(メサイア・コントローラー)に頼むと高くつきすぎるからだという。 それにしても……。 コーヒーカップに口を付けた長野は、二宮でさえ怒りを通り越してあきれたという出来事を思い出した。 “伊吹”で奇跡的に生還した3人組のことだ。 山科教官とその教え子2名。 第三分隊隊長の都築と副長の山崎だ。 何故生き残ったのか。 その報告は、長野でなくても顔をしかめるしかないものだった。 “伊吹”被弾の時。 候補生達は出撃騎搭乗者とそうでない者に分けられ、後者はブリーフィングルームで待機を命じられていた。 だが、そのいずれにも山科教官達の姿はなかった。 壮行会の際、山崎教官の深酒につきあわされた都築と山崎共々、二日酔いでドクターストップがかかっていたからだ。 素行不良で問題教官扱いされることが多かったとはいえ、そのおかげで彼らは命拾いしたことになる。 どういう皮肉か、長野にはわからない。 それに対して、さすがだと長野でさえ感服するのが、出撃部隊にいながら生還した第一分隊長の染谷だ。 染谷は“幻龍改(げんりゅうかい)”に搭乗し、池田大尉の背後、第一分隊二番騎につけてハンガーデッキで待機していたところで“伊吹”の被弾に遭遇した。 発艦準備中のフライトデッキ内部に飛び込んだ一撃は発艦待機中のメサイアを吹き飛ばし、メサイアが積載していた広域火焔掃射装置(スイーパーズフレイム)を破壊した。 広域火焔掃射装置(スイーパーズフレイム)から発生した消火困難な火災を含む爆発は、ハンガーデッキからフライトデッキへの進入経路までを一瞬のうちに、乗組員や騎士、そしてMC(メサイア・コントローラー)ごと破壊した。 元来、弾薬や可燃物には事欠かないハンガーデッキだ。 爆発は爆発を生み出した。 激しい衝撃により、染谷騎は他の騎が搭載していた弾薬の爆発に巻き込まれ擱座した。 他の教官や候補生達の騎も、ほぼ全騎が似たような状況、もしくは破損した騎の下敷きになって動かすことが出来ない有様だった。 メサイアに搭乗したままでは艦内から出ることが出来ないと判断した染谷は、教官である池田大尉に騎体放棄の許可を求めたが、池田大尉は染谷達にかまうことなく、自分だけ強引に“征龍改(せいりゅうかい)”で脱出を試みた。 結果は、池田大尉は妖魔の群れに襲われて死亡したのだが、反面、その後の染谷の行動は優等生の典型的模範例を示していた。 まず、MC(メサイア・コントローラー)と共に騎体を放棄し、ブリーフィングルームも含め、負傷者だらけとなったハンガーデッキを駆け回り、まだ動ける者達をまとめると、彼らと共に、負傷兵達を安全な場所へ移した。 デッキ内部にあふれたリキッドやオイルが引火すれば自分たちが危険になると判断したのも染谷が一番速かった。 ハンガーデッキに侵入した妖魔達から逃れるため、生存者と共に居住ブロックへ逃れ、たった一カ所のエアダクトを除き、すべての通気口と通路を閉鎖し、籠城の構えを指揮したのも染谷だった。 生存者達が、池田大尉のように逃げ出していれば妖魔達の餌食は避けられなかっただろう。 すべては染谷候補生の英雄的な決断力と行動力によると、二宮は報告書をまとめている。 長野も否定はしない。むしろ肯定的にとらえている。 そこまで考えて、長野は美晴に訊ねた。 「染谷候補生はどうしている?」 美晴はコーヒーを受け取りながら意味ありげな笑みを浮かべた。 「お忙しいと思いますけど?いろいろと」 「?」 ●“鈴谷(すずや)”第3層通路 グイッ! 「きゃっ!?」 ハンガーデッキからの帰り道。 候補生同士の打ち合わせを終えた美奈代は、部屋に戻る途中、突然、通路の角から飛び出した腕に手首を掴まれた。 何だと思うヒマさえなく、真っ暗な部屋に放り込まれた時には遅かった。 ガチャッ。という音を、背後で聞いた。 「なっ?」 振り返った美奈代が見たものは、ドアの前に立つ金髪の少女だった。 日本人ではマネ出来ない、その西洋人系特有の容姿。 “金色の妖精”という言葉が脳裏に浮かんだ。 そのあまりに美しい少女は、すでに艦内で知らない者はいない。 美奈代は、目の前の相手について、フィアという名前と、自分にとって個人的に好ましくない相手だという認識だけは持っていた。 「あの……」 「―――お願いってわけじゃないんだけど」 美奈代の言葉を遮るように、やや敵意をむき出しにた声で、フィアは言った。 正直、フィアの声を初めて聞いた美奈代は思わず後ずさった。 (こ……声まで可愛いなんて) 外見だけでなく、声まで愛らしいなんてあんまりだ。 美奈代は、女として自分が負けていることを、嫌でも自覚させられた。 神様、私、何かしましたか? 「……聞いているの?」 ドアを背に美奈代を睨みつけるフィアにそう言われ、神様に文句を言いに逝った美奈代は、現実に戻った。 「え?うえええっ!」 「……」 その素っ頓狂な声に、一瞬だけ怪訝そうな表情を浮かべたフィアは、美奈代に言った。 「これ以上」 その声色で、暗闇の中でも、美奈代にはわかった。 この子は、私を嫌っている。 でも―――どうして? フィアはそんな美奈代の心境に構うことなく言った。 「―――瞬(しゅん)に近づかないで」 瞬。 染谷瞬(そめや・しゅん)。 それは、美奈代にとって意中の男性の名だ。 「なっ?」 「瞬は私のものよ」 フィアは勝ち誇ったような、むしろ美奈代を哀れむような表情でドアノブに手をかけた。 「彼……優しくしてくれるの」 ●“鈴谷(すずや)”食堂 「そんなものは」 コーヒーを飲みながら美奈代の話を聞いていた宗像は、表情さえ変えずに言った。 「ハッタリだ」 「で、でも……」 美奈代は、染谷がフィアに気に入られていることを理由に、その身の回りの世話を命じられているのを知っている。 フィアを“語り石”に運ぶ際、フィアをコクピットで守っていたのが染谷だった。 あの戦いの中、自分のために必死になる染谷の姿に、フィアが惚れたというのが実情らしい。 「あの染谷にそんな甲斐性があるなら」 宗像は、落ち込む美奈代に手を伸ばし、その腹のあたりをなでた。 「お前の“ここ”は大変なことになっているぞ?」 「なっ!?」 「ふむ……すでに大変なことになっているな」 宗像が美奈代のお腹の肉をつまんでいる。 「レーション食べ過ぎたな。スカート、大丈夫か?」 「ち……ちょっと心配だ」 「全く」 美奈代の腹から手を離し、クックックッ……喉を鳴らして笑う宗像は、尊大なまでにゆったりと落ち着き払った様子で美奈代に言った。 言葉と態度に、不思議な威厳を感じる。 「お前の悩み事といえば、どうしてそう子供じみているんだ?」 「だ……だけど」 「恋のライバルからケンカ売られて?それだけで負けたとでも?」 「……」 「―――あの容姿だから、無理もないとは思うが」 「……そういえば、宗像は」 おや?と思った美奈代は宗像にたずねた。 「あの子には手を出そうとか、考えないのか?」 「外人は専門外だ」 宗像は言った。 「私は……そう、日本人形のような女の子は大好物だが、西洋人形はどうにもダメだ」 「……はぁ」 「菓子は和菓子に限る。日本人としてそう思うだろう?泉」 「……まぁ」 「……ずいぶんと生返事だな」 「和菓子と女の子を同列に語られても……返答に困る」 「全く……美意識のない奴だ」 その日の夕方。 “鍵”を乗せた飛行艦が針路を変えたという報告を、エーランドが受けたのは、食堂でのことだ。 トレイに乗った夕食を目の前に、エーランドは報告を聞いていた。 そのエーランドの前では、マイナ技術大尉がさっさと食事を始めている。 「予想針路は?」 船の生活で数少ない楽しみである食事をお預けされたエーランドは、厳しい士官としての表情を維持したまま、報告にきたムブナ中尉に訊ねる。 その間も、マイナ技術大尉の食事が止まることはない。 「情報では、ホルムズ海峡経由でドバイに入る予定でしたが」 「違うのか?」 「はい。ソコトラ島から北東へ針路をとっていたのですが、針路を真北にとりました」 「真北へ?」 マイナ技術大尉の持つフォークが、エーランドのトレイに伸び、チキンの照り焼きに突き刺さった。 「―――ぐっ!」 「何かお心当たりが?」 「いや―――続けてくれ」 「はっ。このままでは1時間後にアラビア半島に上陸します」 「敵の目的は何だ?」 マイナ技術大尉が、エーランドのトレイに伸びた。 「……実は」 ムブナ中尉が言いづらそうな表情になった。 マイナ技術大尉が、空になったトレイをエーランドの前に戻した。 「どうした?」 腹は減るが、それよりもエーランドの関心は、敵の動きにあった。 自分達が追跡していることを察知して針路を変えたというのか? ムブナ中尉は答えた。 「……実は、現在、インド洋に展開中の水中戦隊を含む全部隊に、一時的なインド洋から撤退及びアフリカ大陸への帰還命令が出ました」 「撤退?」 「はい」 ムブナ中尉は頷いた。 「理由はわかりませんが、人類が何か、大きな行動に出ると」 「何だそれは?」 「末端の我々にはわかりません」 「司令部は我々に何と?」 「人類側の電波情報に注意しつつ、追撃を続行しろ……と」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「いい加減にしてくださいっ!」 美夜を夕食に誘いに来た二宮は、艦橋に入った途端に飛んできた美夜の金切り声に思わず飛び上がった。 一体、何を怒られたのかわからず、目を点にする二宮の前で、艦長席から立ち上がった美夜が顔を真っ赤にしてスクリーンを睨み付けていた。 「毎回毎回、どうしてそんな無茶ばかり!」 「これは命令だ」 スクリーンの向こう側。 そこは、アラビア海から遠く離れた東京だ。 一体、顔面に筋肉を持っているのかさえ疑わしい仏頂面を浮かべるのは、作戦部の田辺部長だ。 彼の後ろには、東京の夜景が映されている。 何故、東京タワーなのかはわからないが、少なくとも近衛軍飛行艦隊司令部が、東京タワーに近い場所に存在しないことだけは、二宮も知っている。 その目の前で、背景が次々と変わる。 春の富士山が映える田子の浦と近衛軍にどんな関係があるのかは、さらに知らない。 お祭りの山車に近衛が関係しているとは思えない。 日本を遠く離れた飛行艦乗り達への精一杯の配慮。とでも言うつもりだろうが、二宮には、怪しい外国人が日本を騙るためにでっち上げた背景としか考えられない。 「“鈴谷(すずや)”は針路を変更し、アラビア半島を横断、バーレーンに向かえ」 「何故、ホルムズ海峡経由ではないのですか!」 美夜は顔を真っ赤にして怒鳴る。 「この“鈴谷(すずや)”の貧弱な武装で、ただでさえ政情不安定なアラビア半島を、活きて横断出来ると?“鈴谷(すずや)”に沈めというんですか!?」 「作戦部は“鈴谷(すずや)”に対し、隠密行動をとることを命じる」 「飛行艦に隠密行動なんてとれると本気で考えているのですか!?副司令を出してくださいっ!」 「副司令は会議中だ」 「今度はどこの料亭です!このままなら“鈴谷(すずや)”は―――」 「……アラビア海は明日から嵐だよ。平野艦長」 脅し文句を言いかけた美夜をとがめるように、田辺部長は言った。 「嵐?」 美夜は、田辺部長の映るメインモニター横の気象情報ディスプレーを見た。 「……サイクロンは」 「違う」 田辺部長は、その太い猪首を横に振った。 「嵐が吹くのだ」 「……は?」 「本来なら、バーレーンさえ……いや、バーレーンこそが危険なのかもしれない」 「……?」 怪訝そうな顔をする美夜に、作戦部の部長は続けた。 「しかし、すでに補給物資はバーレーンに納入されている。現地米軍基地で受領してもらうしかない。“鈴谷(すずや)”をどう動かすかは、それからだ」 「……一体?」 「これは一般回線だ。平野艦長」 田辺部長は、何かを振り切るような顔で、そして強い口調で美夜に言った。 「これは厳命である。“鈴谷(すずや)”はバーレーンの米軍基地ににて物資補給後、現地にて別名あるまで待機せよ」 「……」 「―――もう一度、言わせる気か?」 「わかりました」 美夜は敬礼した。 「“鈴谷(すずや)”はこれより変針、アラビア半島を横断し、バーレーン米軍基地へ向かいます」 「……幸運を祈る」 艦長席に乱暴に座ると、背もたれにもたれかかり、美夜は歯を食いしばる。その肩は小刻みに震えていた。 「一体……司令部は……何を……」
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ここで手違いが生じる。 李提督にとっては、海大校に対する指示で自分の任務が終わったと思いこんだこと。 肝心の海大校は、通信管制を無視した党から送り込まれてきた莫大な通信への返答に手一杯になったこと。 最悪なことに、艦隊から離れて独立遊撃隊として通商破壊にあたる別働隊から敵輸送船団発見の報告がこの時入ったことは、後々まで海大校を後悔させることになる。 遊撃隊の位置はソコトラ島の沖合。 アデン湾から侵入する敵艦隊の哨戒も兼ねている。 そこからの通報だ。 「ソコトラ島沖合、艦種不明。一隻はタンカーと思われる」 それが遊撃隊からの報告だ。 ただ、“本当”にタンカーならその腹の中の油が敵に堕ちることだけは避けたい。 幸い、タンカーは遊撃隊から発進した航空機の攻撃可能なポジションにいる。 遊撃隊の指揮権は、提督から自分に移っていることもある。 だから、大校は“別働隊に”命じた。 ―――航空隊は、各個に攻撃に移れ。 いつもの命令だ。 命じられた航空隊は、航空管制官の命令通りに戦うことになる。 本当に、いつものことなのだ。 それに、今の彼の敵は目の前の書類だ。 提督から命じられた報告や、党幹部を満足させるためだけに求められる現在状況の報告―――しかも、党の定めた形式と時間を厳守する必要のある―――頭の痛い敵だ。 だが――― 「本当にいいんですか?」 通信管制官の一人がしつこくそう聞いてくる。 提督の命令通り、日本軍接近の報告を、波風立てないように準備していた大校は、その管制官を見ることもなく怒鳴った。 「いいと言っているだろう!いつも通りだ!武器使用自由、全力で叩けっ!」 「り、了解―――大校の命令と判断します」 管制官は震える声で命じた。 「艦隊司令部より紅6へ、攻撃を許可する。対艦ミサイル使用自由」 「―――おい」 紅6 対艦ミサイル。 その名にひっかかった中佐は、文面を書く手を止めた。 嫌な予感どころ騒ぎではない。 しらずに、声が震えてしまう。 「貴様―――今、どこに命令を出した?」 「ですから」 管制官の顔を見て大校は青くなった。 それは、日本軍に向かった部隊と通信を続けていた管制官だった。 「攻撃命令を発しました。大校の命令で」 「馬鹿者ぉっ!」 紅6は日本軍に向かいかけ、管制官からの撤退命令に断固抗議しつづけていた空母航空隊のコールサイン。 対艦ミサイルは、言うまでもないだろう。 「間違いないな?」 隊長はジャミングのひどい通信記録を、部下に確認を命じつつ、自らも耳で確認した。 「艦隊司令部は、攻撃を許可しました」 「録音、しっかり保存しておけ?。―――日本軍を叩くっ!」 「了解っ!」 「ミサイル接近っ!数10っ!」 レーダー担当の木村が悲鳴に近い声をあげた。 「墜とせっ!」 “鈴谷(すずや)”に設置されているML(マジックレーザー)砲が火を噴いた。 抜けるような青空に、光が走った後に白煙の柱が生まれた。 「FGF、全展開しますかっ!?」 「まだ早いっ!ML(マジックレーザー)だけで十分だ。余計なエネルギーを消費するな!生きて帰れなくなるぞ!?」 「はいっ!」 「うわ……すごっ」 戦闘機が編隊を組んで接近する。 戦闘機を間近で初めて見たさつきはしきりに感心するだけだ。 チカチカチカチカッ! “鈴谷(すずや)”の舷側にあるランプが激しく点滅を開始したのはその時だ。 緑の点滅と赤と黄色の3色。 「何?」 「警告です」 教えてくれたのはさつき騎のMC(メサイアコントローラー)、愛沢中尉だ。 「国際法規定のFGF(フリーグラビティ・フィールド)警告です」 「何でそんなもの出すんです?」 「FGF(フリーグラビティ・フィールド)は目に見えません通常航行時には、接触しないように警告する必要があります」 「今、戦闘中ですよ?」 「これでぶつかったら、向こうが悪くなるんです」 「―――成る程」 「バカ者っ!」 同じ頃、海大校は李提督から大目玉を食らっていた。 「誰が攻撃しろと命じたっ!飛行隊には戦闘停止を命じろっ!飛行艦だ、メサイアを搭載してはずだぞ!?」 「間に合いませんっ!」 そんな口論に近い会話を続ける二人の後ろで、艦長が手に持つ金属の筒が火を噴いた。 迎撃されたミサイルが光と煙の球に変わった。 ズズン……ッ!! 遠くで爆発音が響く。 もう恐怖感すら感じない美夜は木村に訊ねた。 「都合、これで何発目だ?」 「48発目ですっ!」 「その数、四方八方から―――よく撃つ」 対艦ミサイルは決して安い代物ではない。 それを48発だ。 感心する以外にない。 いい加減、あきらめてくれないだろうか。 美夜は内心でそう願っていた。 だが――― 「艦長、二宮中佐からです」 「―――私……えっ!?」 美夜はインターホン越しに伝えられた情報に思わず驚いてしまった。 「今度は爆装してきたぁ!?」 空母“天津”の艦橋から運び出されたのは、李提督と海大校。 その頭部からは血を流し、力無く手足を伸ばしている。 死んでいるのだ。 「―――党は小日本と戦えと命じられた」 張艦長とその部下が銃を手に艦橋から送り出される二人の死体を見送る。 「その命令に従えない敗北主義者は、我が国には要らない」 艦橋の通路から放り出された死体が海に消えていく。 「Su-30飛行隊の収容急げ。対艦ミサイルが効かないなら、爆撃にて出撃しろ」 それから一時間後。 中華帝国軍の爆撃を試みた機すべてが空母に引き返してきた。 全機生還だ。 「畜生っ!」 パイロットの一人が、キャノピーを叩いて降りてきた。 「何てザマだっ!」 パイロットは、即座に機体の下、パイロンを取り付けているハードポイントを見た。 「―――くそっ!」 翼下の10個あるハードポイントは、一つ残らずきれいに破壊されていた。 「たった一通過だぞ!?それでこれかっ!?」 ガシャンッ! ハードポイントに、そのパイロットが触れようとした時だ。 コクピットの近くですごい音がした。 パイロットがその音に驚いて後ろを見ると、機体の破孔から金属の棒が1本地面に落下していた。 何だ? パイロットは、その金属の棒が何か、即座にはわからなかった。 「中尉―――よく無事でしたね」 駆け寄ってきた顔なじみの整備兵に気づき、彼はその金属の棒の正体を訊ねた。 整備兵は言った。 「機関砲の銃身ですよ。敵の攻撃が砲を撃ち抜いたんです」 「そんな馬鹿な!俺は敵艦に1万程度しか接近していないぞ!?そんなまぐれが!」 「まぐれじゃないですよ。自分は経験がありますけど……メサイアの攻撃ってのは、それくらい正確なんですよ。中尉」 「……」 「中尉、これが初陣でしたっけ?」 「……ああ」 「ならよかった。メサイア相手に生きて帰ることが出来ただけでもハクが付きますよ」 Su-30部隊が去った後は、静寂のみが支配する航海が続く。 ラピス島まではもうすぐだ。 「中華の脅威は去った……か?」 「私、しばらくラーメン食べたくない。中華って言葉見るだけで吐き気がする」 「同感だな」 「美奈代、いい機会だからダイエットしなよ」 「うるさいっ!それにしても」 美奈代はそれが疑問だった。 「こんな所に何で中華帝国軍が?」 「哨戒ですよ」 牧野中尉が答えた。 「敵が米軍の進出を怖れている証拠です。もしかしたら、我々を米軍と誤認したのかもしれません」 「―――ってことは?」 「“鈴谷(すずや)”の警戒レーダーは捜索範囲が狭いです」 牧野中尉の言葉に、コンソールを操作する音が混じる。 「ラピス島まで、我々の出番ですよ?」 「敵は一体?」 「ここまで来るなら敵は空母機動部隊。そのお腹にはとっておきの厄介者が入っているはずです」 「厄介者?」 「はい」 コンソールパネルを操作する牧野中尉は、ちらりと通信モニター上の美奈代を見た。 「このフネを地上から蒸発させることの出来る厄介者です」 「やっと落ち着くことが出来るな」 比較的平然とした様子の宗像は手すりに寄りかかった。 入港を開始した“鈴谷(すずや)”の背後では、米海軍空母“シャングリラ・テキサス”が補給艦から燃料を受け取っている。 米艦隊と帝国海軍の艦艇50隻。 海兵隊と陸軍部隊を含めれば10万近い兵力が、このラピス島に集結している中だ。 喧噪はあるものの、それでも十分のどかというべき空気が美奈代達を包む。 爆音を轟かせながら、“プレステ2”が“鈴谷(すずや)”上空をフライパスしていくのを、美奈代達は甲板でのんびりしながら見守るだけ。 海軍がEUに貸しを作る意味で派遣している飛行艇だ。 「―――ねぇ」 甲板に大の字に転がって、その様子をぼんやりと眺めていた美奈代がぽつりと言った 「“アレ”には、どうやったら乗れるかな」 「“アレ”?」 美奈代は無言で遠ざかっていく“プレステ2”を指さした。 「PS2ですか?」 「メサイア操縦資格じゃ無理かな」 「無理無理」 さつきは笑った。 「戦車兵に潜水艦操縦させるようなもんだよ」 「……そうか」 「ここが気に入っちゃったんでしょ」 「……うん」 美奈代は「うんっ」と伸びをした。 「青が一杯の―――なんて言うのかな?こんな広くて、どこまでも行けそうな……吸い込まれそうな―――上手く言えないけど、とにかくそんな世界……私は好きだ」 「この戦いが終わったら」 美晴は悪戯っぽく笑った。 「南方県の事務官にでも転属希望出したらどうです?パラオやグアムあたりで」 「―――悪くないけど」 美奈代は小さく笑った。 「あの飛行艇のパイロットを目指したいな」 「本気?」 さつきはあきれ顔だ。 「海軍のシゴキはきついよ?」 「私は―――」 美奈代は、もう遠ざかってしまった飛行艇が飛び去った方角を指さして、 「この“青い世界”を自由に飛べる、あの“飛行艇”っていうのに乗ってみたいだけだ」 「PS-2は綺麗なデザインですもんね」 美晴は笑った。 「それなら美奈代さん、民間のパイロット目指した方がいいですよ。PS-2の民間版は、八式飛行艇と一緒に、東亜航空の南方航路路線で就航してますし」 「……そうか」 そっちもあったか。 美奈代はそう思ったが、 「やめておけ」 そう言ったのは宗像だ。 「人の命は重いぞ。下手をすれば、重みで翼が折れる」 「それでも」 美奈代は海の向こうを指さした。 「ああいうのより、よっぽど私の趣味には合う」 「ジェットよりプロペラ―――デジタルよりアナログな泉にはお似合いだな」 宗像は笑って美奈代が指さした海の方を見た。 黒い点が10以上、こちらに向かってくる。 ぽつりぽつりと、黒い点は時間を経るごとに増えてくる。 「―――待て?」 「ん?」 「今日、発進した戦闘機があったか?」 「宗像ぁ、あるわけないじゃん」 さつきは首を横に振った。 「ラピス島は戦闘機離着陸出来ないもん」 「じゃあ、アレはなんだ?あれ、スホーイだぞ」 皆が立ち上がって海を見たその瞬間、 サイレンが鳴り響いた。 「高度を上げろっ!」 無線機に怒鳴るのは、中華帝国海軍空母“天津”攻撃隊長呉大尉だ。 迫り来る島と無数の船舶を前に、彼は歓喜するよりむしろ驚愕していた。 「こうも簡単に取らせるかっ!?」 米軍の機動部隊が集結している海域に、何の抵抗もなく入り込めたことが、呉大尉には信じられない。 「一体こりゃ?」 すでに爆撃の射程に入ったというのに、未だに対空砲さえ上がってこない。 まぁいい。 余計なことを考えるな。 俺達ゃ、爆弾を落とせばいいんだ。 それで帰ることが出来る。 つまり、これは天佑だ。 呉大尉は自分をそう言い聞かせた。 「いけっ!」 呉大尉は、パイロンに吊した爆弾を敵めがけて投下した。 ズズゥゥゥンッ! “鈴谷(すずや)”の上空をSu-30が通過する衝撃が走り、美奈代達は半ば吹き飛ばされて甲板に転がった。 「な、何っ!?」 後一歩で甲板から海に落ちるところだった美奈代は、驚いて空を見上げた。 「見てわからないのか?」 宗像だ。 「教えてやろう。これは空襲というのだ」 「いや、そういうことじゃなくて」 美奈代が驚いたのは、こんな事態でも平然としていられる宗像の神経であり、同時に――― 「宗像ぁっ!」 「なんだ?」 「どさくさに紛れて何してるっ!―――きゃんっ!」 「うむ―――85のBと見た」 抱きすくめる要領で、美奈代の胸をわしづかみにする非常識さだ。 「違うっ!」 美奈代はムキになって怒鳴った。 「これでもCはあるっ!」 「む?それは違う。絶対カップが合っていないはずだ」 「二人ともっ!」 反論しようと口を開いた美奈代を止めたのは美晴だ。 「現状、わかってますっ!?」 「すまん」 美奈代達が立ち上がろうとした途端――― ズンッ! 「きゃっ!?」 爆発音に、思わず美奈代は甲板に伏せた。 空母と“鈴谷(すずや)”の構造物が邪魔でわからないが、どこかに被害が生じたのは間違いない。 恐る恐る顔を上げた時、その視界に紅蓮の色を含んだ黒い柱が映る。 「やられたのは!?」 「あっち―――米軍の方っ!」 「何で反撃しないんだ!?」 「するのは私達ですよっ!」 「ちっ!総員搭乗っ!」 ―――ついていない。 米第9任務部隊司令官ジョージ・キャンベルは部下の肩を借りながら、内心でそう毒づいた。 さっきまで質素だが、きちんと整理整頓が行き届いていた感のあった室内は、惨憺たる有様だった。 窓ガラスは全て砕け、窓から侵入した爆風が調度品のすべてをひっくり返し、風に流れて入り込む煙が呼吸さえ困難にさせる。 何より、負傷したり、死んで床に転がる将校の死体は目も当てられない。 その光景を目の当たりにする自分もまた、体中に痛みが走る。 「提督―――ご無事で?」 副官のリー大佐がキャンベル提督の額にハンカチを当てながら訊ねる。 「大したことはない―――何が起きた?」 「中華帝国軍の奇襲です」 「……最悪だな」 キャンベル提督がそう思うのも無理はない。 この場に居合わせたのは、日英米三軍の司令部同士。緊急の会合中だった。 議題は――― ラピス島周辺における、レーダーの使用不能、通信障害が発生。 これだ。 原因に関する見解は一つ。 狩野粒子。 レーダー上と、通信における障害程度なら、粒子レベルは低い。 問題は、狩野粒子が何故、この海域で確認されたか。 ―――原因はともかく、現実の事態に対処すべきだ。 ―――両軍共に、哨戒機を上げ、警戒に徹する。 会合は、そんな軍人らしい現実主義的な結論で終わろうとしていた。 その時、こう言ったのが誰だったのか、キャンベル提督は思い出せない。 ―――狩野粒子を中華帝国軍が使ったものなら、笑えませんな。 ―――全くだ。一体、連中はどこから狩野粒子を手に入れたんだ? (笑えなかったな) キャンベル提督はため息一つ、頭を強く振ると、自力で立ち上がった。 「チンクも、絶妙なタイミングで仕掛けてきたな」 「提督」 副官の一人、ハスラー大佐がキャンベル提督に進言した。 「本気で、そうお考えですか?」 「ん?」 「魔族軍の侵略と呼応するが如きタイミングで近隣諸国へ武力侵攻。さらに、この狩野粒子を前にして……」 「君は―――」 「自分は断言します。連中は、魔族軍とつながっています!」 「根拠は?」 「根拠!?」 ハスラー大佐は、上官に怒鳴った。 「周りを見てくださいっ!これで十分でしょう!」 ハスラー大佐の指さした先には、このラピス島までの航海を、その苦楽を共にしてきた司令部のスタッフ達のなれの果てが転がっていた。 「チンク共がこんなことしなければ、こいつらは“こう”ならずに済んだ!第一、我が軍はまだ宣戦布告すらしていない!中立宣言国ですよ!?」 「……っ」 「中華帝国軍が接近するタイミングで、この辺一帯が狩野粒子に汚染された!中華帝国軍が散布したと宣言して世論が信じればそれでいいんですよ、提督っ!」 「……とりあえず」 提督は答えた。 「政治的な話はペンタゴンとホワイトハウスに委ねよう。私の権限は国と国民から任された艦隊の範囲に限定されている」 「全ては、提督の報告にかかっています―――ホワイトハウスが、世論が我々に報復を許すか否か」 「善処しよう」 「安全が確保されるまで、シェルターに入ってください。今、艦隊に戻るのは危険です」 「その前に艦隊に対空戦闘を命じろ。メサイア隊は全騎戦闘態勢」 そこまで言いかけたキャンベル提督の声を遮ったのは、日本から送り込まれてきた飛行艇部隊を束ねる有馬司令の怒鳴り声だ。 「対潜警戒怠るなっ!」 壁にかかっていた電話相手に、それまでの温厚さは微塵も感じることは出来ない。 「水中から来られたらアウトだぞ!それから、“鈴谷(すずや)”を上げろっ!空襲が終わったら送り狼をさせるんだ!」 日本語がわからないキャンベル提督には、彼が何と言っているかわからない。 ただ、 タイセン。 ケーカイ 職業柄、キャンベル提督が知っている数少ない日本語の語彙にその言葉があった。 アリマは対潜警戒を命じた。 何故? 狩野粒子。 その存在が念頭にあったキャンベル提督は、その理由に即座に思い当たった。 彼は部下への命令を追加した。 「全艦、ソナー警戒。対潜兵装は即時発射可能にしろ、何隻か、対潜任務のため環礁から出せ。最悪―――」 提督は空襲の続く窓の外を睨んだ。 「アトミック爆雷の使用を」 「し、しかしっ!」 「“あれ”の使用は、大統領から私に一任されている」 「潜水艦相手にですか?」 「ジャック。メサイア隊を攻撃に出せ。それから君」 キャンベル提督は狼狽する副官をあきれ顔で見た。 「それは、地中海で我が軍が、何にどんな目にあわされたか分かった上での発言か?」