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目次 特性 武功基本 充電石 ブレイク 戦闘準備 開幕から 防御と抵抗防御武功 抵抗武功 状態異常武功 特性 1段目 連鎖狙撃の再使用時間が減少する高速投影。 2段目 機関銃射撃(V)を強化する機関銃強化。 3段目 再使用時間が短い相転移。 2回使用できる亀裂跳躍。 4段目 同期化の累積を早める目標分析。 5段目 光子砲撃(V)を強化する高速爆撃。 または軌道爆撃(LB)を強化する精密爆撃。 武功 基本 投影銃撃士は拳銃モードと投影モードを持ちます。 拳銃モードで同期化を累積させ、投影モードで同期化を消費して強力な武功を使用します。 拳銃モードでは分光弾(RB)の連続使用が中心です。 使用時に同期化率が累積し、100累積で同期化が1累積します。 分光弾(RB)使用時に確率で同期化射撃(F)を使用することができます。 3回使用することができ、1回目と2回目は大量の同期化率が累積し、3回目は同期化が1累積します。 また再使用時間がありますが連続射撃(4)使用時にも同期化が1累積します。 同期化は最大5累積させることが出来ます。 連続射撃(4) 分光弾(RB)xn→同期化射撃(F)x3 投影モード(Tab)を使用することで投影モードに転換されます。 投影モード中はパッシブ効果「共鳴」により功力と抗魔攻撃力が向上し、専用の武功を使用することが出来ます。 投影モード(Tab)の後、真っ先に使用するのが腕輪と秘功牌のトリガーとなる位相切断(C)です。 拳銃モードでも使用できる武功ですが強化対象となる武功は投影モードの武功のみです。 位相切断(C)に次いで優先順位が高いのが連鎖狙撃(4)です。 使用には同期化2累積が必要ですが、ダメージが大きいのに加え、15秒間の捕捉効果が発生し攻撃力と功力ダメージ率が増加し、神功牌によってクリティカルダメージ率も50%増加します。 また使用時に幻影残留が累積します。 同期化1累積を消費する機関銃射撃(V)は投影銃撃士のメイン火力となる武功です。 連続使用でダメージが増加し、3回目から最大ダメージとなります。 命中時に過充電が累積し、これによりこの後使用する分光砲(X)が強化されます。 分光砲(Z)は同期化なしで使用できる武功で、これ自体のダメージが大きいのに加え過充電の累積ごとに追加ダメージが発生します。 使用時に拳銃モードに転換されるので、投影モードの最後に使用します。 また連鎖狙撃(4)と同様に使用時に幻影残留が累積します。 幻影残留が2累積時は、通常は移動不可で長いモーションが発生する連鎖狙撃(4)と分光砲(Z)をノーモーションで使用できます。 スキル回しの安定化、DPSの向上そのどちらにも効果がある重要な要素なので、時には分光砲(Z)だけを使用して幻影残留2累積を維持する場合もあります。 同期化5累積→投影モード(Tab) 位相切断(C)→連鎖狙撃(4)→屈折光線(F)→機関銃射撃(V)x3→分光砲(Z) または 位相切断(C)→機関銃射撃(V)x5→分光砲(Z) 充電石 充電石(Q)は再使用時間が1分と長いものの、10秒間にわたって0.3秒毎に同期化が1累積します。 これにより長時間投影モードで攻撃を行うことが出来ます。 また充電石(Q)の領域内では状態異常に抵抗でき、派生でダメージが大きい軌道爆撃(LB)を使用できるなど強力な武功です。 充電石(Q)は使用時に投影モードに転換されます。 位相切断(C)と連鎖狙撃(Z)で各種バフを獲得し軌道爆撃(LB)から機関銃射撃(V)を連続使用します。 最後に過充電が十分に累積した分光砲(X)でしめます。 充電石(Q)→位相切断(C)→連鎖狙撃(4)→屈折光線(F) 軌道爆撃(LB)→機関銃射撃(V)xn→分光砲(Z) ブレイク 投影モードで使用できる狙撃(3)でブレイクを蓄積させることが出来ます。 再使用時間1分、木偶人基準で40%蓄積します。 十分多い部類ですが、他の系列と比較するとやや少ない蓄積量です。 またブレイク状態の対象に使用できる内功破裂(1)でブレイク状態を2秒間延長させることができます。 この効果は最大2累積(4秒延長)させることが出来ます。 投影モード(Tab)→狙撃(3) ブレイク→内功破裂(1) 戦闘準備 戦闘準備(Z)を使用すると、同期化5累積と戦鋼線5個が生成されると同時に、すべての武功の再使用時間が初期化されます。 ここでいう「すべての武功」には再使用時間初期化不可の必殺(Tab)や内功破裂(1)なども含まれます。 初期化した充電石(Q)を使用すると、降神/降臨や天命の再使用時間とずれが生じます。 これらと合わせて使用する場合はタイミングを計る必要があります。 内功破裂(1)は再使用時間初期化不可ですが、戦闘準備(Z)を使用することで初期化することができ、自分一人でも最大累積させることが出来ます。 ブレイク→内功破裂(1)→戦闘準備(Z)→内功破裂(1) 開幕から 神功牌により光子砲撃(V)でも同期化が累積するので、これと連続射撃(4)から連鎖狙撃(4)を使用します。 そこから充電石(Q)を使用し、軌道爆(LB)と機関銃射撃(V)に繋げ分光砲(Z)でしめます。 これで幻影残留が2累積するので以後の連鎖狙撃(4)と分光砲(Z)を硬直なしで使用することが出来ます。 この後は分光弾(RB)、同期化射撃(F)、連続射撃(4)で同期化を累積させて投影モードに繋げますが、連鎖狙撃(4)の再使用時間に注意を払い充電石(Q)、光子砲撃(V)とセットで使用するようにします。 待ちすぎて幻影残留が途切れてもいけないので、その部分は判断が必要になります。 光子砲撃(V)→連続射撃(4)→位相切断(C)→連鎖狙撃(4)→屈折光線(F) 充電石(Q)→軌道爆撃(LB)→機関銃射撃(V)xn→分光砲(Z) ↓ 連続射撃(4) 分光弾(RB)xn→同期化射撃(F)x3 ↓ 同期化5累積→光子砲撃(V)→投影モード(Tab) 位相切断(C)→連鎖狙撃(4)→機関銃射撃(V)x7→分光砲(Z) または 同期化5累積→投影モード(Tab) 位相切断(C)→機関銃射撃(V)x5→分光砲(Z) 防御と抵抗 防御武功 防御武功として反応射撃(1)と位相壁(1)を持ち、拳銃モードと投影モードで変化があります。 拳銃モードでは反撃の反応射撃(1)。 再使用時間6秒で受付時間1秒。 少々扱いにくいですが、成功時1秒間の抵抗が付与されます。 拳銃モードでは遮断の位相壁(1)。 再使用時間5秒で受付時間3秒。 受付時間が3秒に伸びるので防御武功で受け止めるギミックには便利です。 これらは再使用時間が個別に設定されています。 拳銃モードと投影モードを切り替えることで続けて使用することもできます。 抵抗武功 前方疾駆(E) 前方に移動する武功で使用中はダメージ及び状態異常に抵抗。 移動距離はカメラを下に向けると短くなり、上に向けると長くなります。 投影モードでは瞬間移動(E)再使用時間中に使用可能です。 瞬間移動(E) 投影モードで使用可能。 単体で使用すると前方に移動し方向キーと組み合わせると入力した方向に移動し、使用中はダメージ及び状態異常に抵抗。 特性により移動距離や使用回数が変化します。 回避射撃(SS) 後方に移動する武功で使用時1.5秒間ダメージ及び状態異常に抵抗。 内力障壁(X) 5秒間5回ダメージ及び状態異常に抵抗。 充電石(Q) 領域内では状態異常に抵抗。 状態異常武功 気絶 爆発射撃(2)で対象を気絶させることが出来ます。 爆発射撃(2) ダウン 反応射撃(1)と位相壁(1)から派生で使用できる連携爆発(F)と回避射撃(SS)で対象をダウンさせることが出来ます。 連携爆発(F)の仕様には戦鋼線が必要なので注意して下さい。 併用することで単独ダウン合わせ技も可能です。 反応射撃(1)→連携爆発(F) 位相壁(1)→連携爆発(F) 回避射撃(SS) 反応射撃(SS)→連携爆発(F)→回避射撃(SS) 位相壁(1)→連携爆発(F)→回避射撃(SS)
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【名称】 ブラッドマリー改 【搭乗者】 螢、暁 テラ 【動力】 エーテルリアクター (エーテルを触媒とした反応炉。 銀木犀に積まれていた空間圧縮システムを維持できるレベルの超高出力) 量子波動エンジン×3 (駆動用に急遽取り付けた増設エンジン) 【機能】 エーテルジェットドライヴ (エーテル流を圧搾して噴射する推進機構) イナーシャルコントローラー (慣性の完全制御により常識外の挙動を行う事を可能にしたシステム) 演算ユニット (火星極冠遺跡に在った、時空転移時の次元座標の演算を行うシステム) クロスゲートドライブ (時空の交差線(クロスゲート)を手繰り寄せ、転移を行うシステム) 小型内部空間圧縮システム (1立方kmの巨大な空間を100立方m相当の領域に圧縮するシステム。エネルギー消費削減型) 自動修復用小型マシン群 (整備員などの負担を和らげる為に螢が製作した物。一人の整備員が十人分の仕事が出来るようになる) 【武装】 ブラッドレーザー (艦の円盤部分から無数の高出力レーザーを発射する武装) アンチプロトンキャノン (船体中央下部に設置された反陽子砲。改修によってそのままでも使用可能に) 光子魚雷 (ヱルトリウムに搭載されたものと同等) 【解説】 ブラッドマリーに大幅な改修を加えた機動戦艦。 轟沈しかける銀木犀から持てる限りの資材やら機器が持ち出されて積み込まれている。 改修の最終段階として三機の量子波動エンジンと光子魚雷発射管、そしてエーテルジェットドライヴの搭載された後部ユニットを連結、最早元のブラッドマリーとは別物とも居える外見になってしまっている。 なお、その外見はどう控えめに見てもエンタープライズ(後期型)そのものである。 螢とテラを含めた必要最低限の人員以外の全員が引き上げる際に、空間圧縮システムの規模の縮小と幾つかの新機能の設置が行われた。 【艦内施設】 カタパルト……3基。 格納庫……1番から24番まで存在。銀木犀の頃よりも縮小されている。 1番~5番は各人の専用機用。 6番~9番は勇者ロボや八卦ロボなどの特機のパーツ。 10番~12番までの格納庫にはUC系及びCE系のモビルスーツ・モビルアーマーのパーツ。 13番~18番までの格納庫にはオルキヌス=オルカ等のパーソナルトルーパー系のパーツ。 19番~26番までの格納庫にはその他もろもろの汎用物資) 科学&魔導技術研究棟(螢のラボラトリー含む) 艦内都市(乗員用の生活区域) 医療研究センター(巨大病院級。様々な医療技術を研究している) 艦内大展望大浴場(最大入浴可能数、延べ百人)
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ぽたぽたと、少しずつではあるが血は傷口から溢れていく。 先程シェリーは見知らぬ男子高校生の襲撃を受けたものの、これを撃退した。 だがその時負った傷を治療する道具も知識も、シェリーは持ち合わせてはいなかった。 「ハァ…つ、疲れましたわ……」 元より体を動かす事はあまり好きではなかったシェリーだったが、なんとか南へ南へと歩いていた。 そして歩き続けた彼女の目の前に広がっていたものは、大きな湖だった。 シェリーは重い脚をなんとか動かすと、湖のほとりにある小屋までたどり着き、ドアを開けた。 そして、そこでシェリーの意識は闇に閉ざされた。 滝口優一郎は困惑していた。 自分はプログラムに巻き込まれていたのは覚えている。 クラスメイトの旗上忠勝と共に行動していたのも、相馬光子に出会ったのも覚えている。 そこで相馬光子と言葉を交わし、見張りを旗上と交代し仮眠をとって…… 眼を覚ますと、そこは見知らぬ大広間。 そしてそこでまたもや、殺し合いをしてもらう、と見ず知らずのメガネの男に言われて、それに反抗した桃色の髪の女の人の首輪が爆発した。 そしてあれよあれよと言う間に目の前が真っ暗になり―― 気づいたら今度は見たこともない掘立小屋の中にいた。 考えれば考えるほど、何もかもが分からない。 滝口優一郎という少年に、今の状況を理解しろというのは酷な話だった。 そうして滝口がまとまらない思考を繰り広げている時、ドアが開かれた。 滝口の目の前に現れたその少女は、滝口に気付くこと無く、ばったりと倒れた。 「…はっ?」 「あ、気がついた?」 シェリーが目を覚ますと、そこには見た事のない少年が心配そうな顔でいた。 いつの間にか、傷を負っていた自分の右腕には不格好ながら包帯が巻かれていた。 さっきまで感じていた痛みも、結構引いている。 「…あなたは誰ですの?」 「僕は滝口優一郎。城岩中学校の生徒だよ……大丈夫、僕は殺し合いに乗ってないから。」 当初はシェリーも警戒していたのだが、目の前の滝口という少年は本当に殺し合いに乗っているとは思えなかった。 彼のデイバックから出てきたのはごく普通の救急箱――治療に使ったのだろうか、一部包帯や薬が足りなかった――と、週刊少年ジャンプという分厚い漫画雑誌だった。 なるほど、これで殺し合いに乗ると言うのも無茶がある。 「で、滝口?あなたは何故私を助けたんですの?」 「なんでって……僕は殺し合いには乗っていないし、君は怪我をしていた。それに僕の支給品がこの救急箱だったってことは…助けないわけにはいかないよ。」 「……」 滝口の言葉の一つ一つに、嘘や偽りは一切なかった。 それだけではない。 滝口の言葉の端々、表情、シェリーの傷に施された処置から、シェリーは滝口優一郎という少年の優しさを感じていた。 だがそれは同時に、甘くもある。 この場は殺し合いの場なのだ。 シェリーは先程、見ず知らずの男子高校生に襲われた。 幸い武器があったため撃退には成功したのだが、それゆえに慎重に動いていたのは確かだった。 そんな際に出会った、滝口優一郎という少年。 彼の優しさは、シェリーの心を打っていた。 「シェリーちゃん?」 「…な、なんですの?」 「傷が痛むの?」 シェリーの顔を覗き込む、心配そうな表情にシェリーはふ、と小さく微笑んだ。 「…まだちょっと動くのは大変ですけど、大丈夫ですわ。心配してくれてありがとう。」 「いや…そんな」 小動物のように眼をそらした滝口を、シェリーは一瞬可愛いと思ってしまった。 ――そうだ。 シェリーの頭に一つの考えが、浮かんだ。 「滝口、ところであなたはこれからどうするつもりなのですの?」 「え……えっと、どうしようかなあ。」 「もしすることが決まっていないのでしたら、私と一緒にお父様を探して頂けません?」 「お父…様?」 滝口も、口ではどうしようかと言ったものの、実際本心では七原や杉村と言った信頼のおける友人や、言葉をかわしたクラスメイトである相馬光子を探したいと思っていた。 だが、目の前のけがをした少女の頼みを断ることは滝口にはできなかった。 「…うん、分かったシェリーちゃん。一緒にお父さんを探そう。」 「ありがとう!それじゃあ…」 そう言い立ち上がろうとしたシェリーだったが、やはりまだ血を失って間もない彼女は立ちくらみを起こしよろけた。 それを滝口は慌てて支えてしまっていた。 「あ、そ、その……」 「……」 滝口の顔が熟したトマトのように赤く染まっていく。 その様に、シェリーは軽く微笑むと、そっと滝口の手をとった。 「…おんぶして頂けません?」 姫は騎士を伴い、父を探す。 父はどこにいるのか、騎士は頼れるのか、全ては姫には分からない。 だが、姫は迷わない。 父の作ろうとしている『楽園』へと向かうために。 小さな姫と、彼女に見込まれた騎士は、戦場を歩く。 【E-6湖/1日目午前】 【シェルトラン・ボルティアーノ@カオスウォーズ】 [状態]:左腕に軽い銃創(応急処置済み)、SP消費(小)、滝口におんぶされている。 [装備]:ハッピースタッフ@カオスウォーズ [道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み、武器になりそうなものはありませんでした。) [思考]1:お父様はどこですの? 2:滝口に興味。 【滝口優一郎@BATTLE ROYALE】 [状態]:健康、胸がどきどき、シェリーをおんぶしている。 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、救急箱@忍たま乱太郎、週刊少年ジャンプ@銀魂 [思考]1:シェリーのお父さんを探す。 2:本当は七原、杉村、相馬光子を探したい。 3:い、意外とやわらかい…… 【支給品情報】 【救急箱@忍たま乱太郎】 滝口優一郎に支給。 保健室に常備されているごく普通の救急箱だが、時代が時代なので現代チックな薬とかはそんなにないと思われる。 【週刊少年ジャンプ@銀魂】 滝口優一郎に支給。 坂田銀時の愛読している漫画雑誌。 結構分厚い。 032 アイオブザハリケーン 投下順 034 『愛』という名の『覚悟』 032 アイオブザハリケーン 時系列順 034 『愛』という名の『覚悟』 014 恋する男の子は盲目で恋人を思うともう止まらないの シェルトラン・ボルティアーノ [[]] GAME START 滝口優一郎 [[]]
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錯綜する思春期のパラベラム(前編) ◆j1I31zelYA 殺さないですむ、殺されないですむ、そんな世界がほしかった。 誰かが死ぬのも、誰かを殺すかもしれないのも、悲しくて辛いことだったし、 それに、七森中の誰かが死ぬのも、誰かを殺すのも、見たくなかったから。 それなのに。 ちっぽけな杉浦綾乃が頭を悩ませている間にも、人はどんどん死んでいった。 その場にいるだけで、とってもいい子だと感じ取れた後輩も。 それに、いちばん死んでほしくなかったアイツも。 立ち直らないといけない。 前を向いて、しゃんとしないといけない。 分かっているのに、心は大きな穴があいたような心地のまま。 空洞になったあたりを支配する凍える風のような痛みは、ちっとも止んでくれなかった。 小さな嗚咽を漏らしては、意思の力でどうにか泣き止む。 そんな努力を何度か繰り返した頃に、植木がおずおずと話しかけてきた。 「あのさ、綾乃。辛いならなんでも話、聞くぞ?」 「話……?」 「ああ……我慢するよりは、ぶちまけた方が楽になるかもしれないだろ? それに、オレだって自分以外の人が答えを持ってるって教わったばっかりだからな」 その言葉を聞いて、己の胸に手をあててみた。 たしかに胸にわだかまる、モヤモヤとした形にならない想いの存在はある。 これを洗いざらいぶちまけていけば、少しはモヤモヤもおさまるだろうか。 もっと、子どものように駄々をこねてしまってもいいのだろうか。 たとえば。 もう、ごらく部の四人がそろった姿を見られないこと。 ごらく部の四人と生徒会の四人とで、海に行ったりカラオケに行ったり、一緒に遊んだりができなくなったこと。 いや、そんな特別な休日のことだけじゃない。 『プリントの提出ができていない』とか、適当な理由をつくって会いに行くのもできなくなってしまったこと。 もっと素直になりたいとか、もっと緊張せずに自然に話せるようになりたいとか、そんな目標をかかげて過ごす毎日がなくなったこと。 何気なく言われた『可愛い』だとか『また一緒に遊ぼう』という言葉に対して赤面することさえも、できなくなってしまったこと。 最近オープンしたおしゃれなカフェに、好きなひとを誘いたいというささやかな夢が、叶わなくなったこと―― ――はた、と気づいてしまった。 想いを洗いざらいぶちまけるということは、つまり。 (『女の子どうし』って、やっぱりおかしい、の、かな……?) 『さっき放送で呼ばれた女の子のことが好きでした』と暴露することに他ならないわけで。 こんな時に何を気にしているんだと呆れられても、仕方がない。 しかし、しかしだ。 綾乃はただ仲良くなりたいと必死だっただけで、親友の千歳にさえ『そういう感情』だとはっきり認めたことはない。 それを男の子に向かって『カミングアウト』する。 ……想像するだけで、顔が発熱して倒れそうになった。 いや、落ちこんで悲しんでたはずなのに何を考えているんだと、冷静になろうとする。 だいじょうぶ、植木くんって『そういうもの』を偏見の目で見る人じゃ無さそうだし。 あ、でも菊地さんに知られたら引かれるかも、それは嫌だな。 というか、これって仮にも『告白』になる? そんな、心の準備が ……って、だから、今はそういうことを気に病む時間じゃないんだって! (ダメ……い、いったん落ちつこう。……うん、落ちついてから、話そう) 「ごめんなさい。ちょっと……一人で考えさせてもらっていいかしら。整理できたら、ちゃんと話すから」 「お、おう。無理しなくていいぞ。何かあったら呼ぶんだぞ」 急に顔を紅潮させたことで、植木はうろんな目を向けてきた。 それでもどうにか、手近な民家の裏手に回りこみ、一人の時間を確保する。 すぅはぁ深呼吸を繰り返して、赤面した頬の熱をどうにか追い払った。 落ち着け、落ち着けと念じる。 (ハァ。なんであんなに動転してるのよ……別にアイツはそんなんじゃなくて。 『もっと仲良くなりたい』なんて、友達でも普通に考えることじゃないの) そう、いくら綾乃が京子のことを想って一喜一憂していたからといって、 付き合いは一緒に遊ぶ友達同士のそれでしかなかった。 (友達同士……?) ふと、その言葉が引っかかった。 忘れていたことを、思い出そうとする時のような引っかかり方だった。 友達同士。 友達。 友情。 (あ……………) 友情日記。 思い出し、口がぽかんと間抜けな形に開く。 最後にチェックしたのは、いつだったろう。 現在いるエリアに入ったあたりで放送が流れて。 名前が呼ばれたショックで頭がいっぱいになって、未来予知を確認する余裕なんてなかった。 つまり、だから、すっかり、忘れていた。 (これを見れば……まだ、生きている人たちのことも、分かるのかな?) ふるえる手で肩から荷物をおろし、ディパックから携帯電話を取り出そうとしていく。 心臓が、さっきとは別種の動揺から動悸を早くしていく。 何度かボタン操作を押し間違えながら、やっと予知画面にたどりつく。 自身の周囲9エリアにいる『友達』のことを教えてくれる未来日記。 そこに映し出されていた予知は―― ◆ 「初春カザリって言ったっけ……アンタはこれから、どうしたいの?」 二人の少女が、てくてくと日差しの弱まりはじめた路上を歩いていた。 「白井さんに会いたい、です……いいえ、会わなきゃ、いけないんです」 先導するように歩くアスカ・ラングレーに対して、後ろを歩く初春飾利は答える。 ようやく泣き止んだのか、さっきまでの涙声とは異なるしっかりした声だった。 「白井クロコ……ミコトから聞いたことある名前ね。 そいつと合流して、殺し合いをぶっ潰そうってわけ?」 「それも、あります。でも、まずは御坂さんのことを伝えなきゃいけないから。 白井さんは、御坂さんのことを本当に慕ってましたから……」 アスカはちらりと後ろを向き、初春を一瞥した。 言葉こそしっかりしているものの、その顔は法廷に立つ罪人のように悄然としている。 友人のいないアスカにも、その心情ぐらいは想像できた。 友達の敬愛していた人を、殺してしまったのだから。 御坂ミコト当人が許したからといって、その友人たちが何も感じないはずがない。 どんな顔をして会えばいいのか分からないとうなだれたくもなるだろう。 「ほかにも、謝らなきゃいけない人がいっぱいいます。 始めに殺してしまった、桑原さんの知り合いも。 それから、あの爆発で亡くなってしまった人たちのお友達にも……」 言葉を重ねるにつれて、初春の声がどんどん弱くなっていく。 そんな懺悔を断ち切るように、アスカは苛々として言った。 「まったく……。どうして日本人は、何かあったら真っ先に謝ろうって考えるのかしら。 そりゃあアンタを恨んでるヤツはいるかもしれないけど、被害者の身内に謝罪してまわったりしたら時間がいくらあっても足りないじゃない。 ついででいいのよ。そんなものは」 「つ、ついでですか?」 やったことを考えれば罪悪感を感じる方が当然だけれど、ずっと暗くなっていればいいってものじゃないだろう。 アスカ・ラングレーは、初春カザリを救う役目を引き継いだのだから。 「いい? たとえ今後、アンタを責めたてる連中が現れたとしても。 アンタに救われてほしいと思ってたヤツが少なくとも二人いたわけよ。そこんとこ、覚えときなさい」 「は、はいっ」 「なんなら、そのクロコってヤツに、ミコトがキレイさっぱり許してたって証言してもいいわよ。 当人同士で解決してるのにグチグチ言うなってね」 第三者としての義務を果たすことを宣言すると、初春はまだ困惑しながらも、表情をゆるめた。 「式波さん……いい人なんですね」 「はぁ? どうしてこの会話の流れでそうなるの?」 吉川チナツといい御坂ミコトといい、どうしてこうも人を善意で解釈するのだろうか。 アスカは依然として、自分の生還が第一であるはずなのに。 「あ、そうだ。ついでって言えば、話しておいた方がいいかも」 たった今になって思い出したかのように、初春が声をあげた。 デイパックのポケットから、メモ書きのようなものを取り出し、アスカに見せる。 「殺し合いに乗ってた時に、三人の男の人を襲って未遂に終わったことがあったんですけど。 目が覚めたら、この手紙が手元に置いてあったんです……」 筆跡の主は、冒頭で秋瀬或と自己紹介していた。 手紙に書かれていたのは、おおむね予想できることに、殺し合い反対派が殺し合いに乗った人間を説得する類の文章だった。 「でも、やけに詳しいわね、こいつ……」 自分は今までにこれこれこういった参加者に出会っており、彼らの総合戦力その他を考えても、君ひとりが皆殺しを狙って行動するのは無理がある。 また、主催者のやり口を考えても優勝者の願いが叶う保証はうんたらかんたらと、やったら断定的に『殺し合いに乗ること』が絶望に直結していることを論証していた。 自分はこれから殺し合いに乗っている危険人物と接触しに行くから同行させることはできないけれど、 この忠告に少しでも信憑性を感じてくれたら思いとどまってほしい……と言ったような言葉で、手紙は締めくくられていた。 「わたしは優勝を狙ってたわけじゃありませんから、殺し合いに乗ったら破滅すると言われても、止まれませんでしたけど……」 「普通は、『優勝しないけど殺し合いに乗る』って人間の方が少数派だろうしね」 文章で説得するだけしておいて放置するというのは無責任にも見えるが、 その『危険人物に会いに行く』という話が本当ならば、そいつと戦っている最中に『学校のようなこと』が勃発するリスクは恐れるだろう。 文章そのものは胡散臭いのに、情報の持ち合わせが多いことを匂わせる語り口から、 『接触する価値はあるかもしれない』と思わせるところが、無性にしゃくだった。 「その後の放送で呼ばれなかったってことは、まだ生きてるのね……。 とにかく、人を探すにしたってアテは無いのよね? なら、いったんデパートに戻るわよ。ミツコには病院のことが成功しても失敗しても戻るって言っちゃったから」 「はい! よ、よろしくお願いします」 ぴしっとかしこまったような一礼が返ってきた。 緊張しているというよりは、むしろこちらの態度の方が素なのだろう。 本当に、根拠もなく人を信用する輩が多くて困る。 ◆ 吉川ちなつ。 あまり杉浦綾乃と一対一で話したことはなかったけれど、『いつもの8人』で遊ぶ時にはいつもそこにいた。 そして、歳納京子の可愛がっていた、大事な大事な後輩。 そして、後輩である大室櫻子と古谷向日葵の、大事な大事なお友達。 その吉川ちなつが、すぐ隣のエリアにいたという。 友情日記の予知が提示されていた時間は、放送の直後だった。 『F-5デパート近くの路上で、吉川さんが放送を聞いて落ち込んでいる』 その、十数分後。 『吉川さんたちは、銃声を聞いて学校の方に向かったわ。私たちも早く合流しないと……!』 さらに、その数分後。 『大変! 学校の校庭で爆発が起こって、吉川さんも巻き込まれてしまった』 その、数分後。 『吉川さんが、アスカ・ラングレーさんを爆発からかばって死んでしまった』 ほんの、数分前のことだった。 目の前が、真っ暗になったようだった。 違う、違う、有り得ない、こんなの嘘だ。 だって、さっき歳納京子と赤座さんが死んだって言われたばっかりじゃないか。 それに、それに。 日記を見ることさえしないで立ち止まっている間に、 知り合いの死が実況されていたなんて、知らなかった。 手遅れ。 頭を思いっきり殴られたような衝撃が貫いて、ぐらぐらと足元までもを揺らす。 『友情日記』の予知はさらに続いていたけれど。指が震えて、画面をスクロールすることさえ覚束なかった。 「私の、せいなの……?」 予知にちなつのことが書かれてから、彼女が死ぬまでには充分な時間があった。 もし予知を見て駆けつけ、爆発のことを教えていれば、こんな結果はふせげていたはずだ。 言い訳しようと思えば、いくらでもできる。 歳納京子たちが死んだという話を聞いて、呆然としていたんだから仕方がないとか。 植木だって、探偵日記を見ることを忘れていたとか。 しかし、事実は変わらない。 命を救おうと思えば救うことができたのに、杉浦綾乃は無視した。 何もせずにへたりこんでいた間に、目と鼻の先で、後輩が助けを求めていた。 「吉川さん……」 ふらふらとした足が、その場から離れる一歩目を踏み出した。 行かなくちゃと、思った。 ちゃんと確かめないと、まだ死んだと決まったわけじゃない。 急いで、吉川さんの安否を確かめないと。 未来予知が本当に当たると言われたって信じられないし。 そうだ、図書館の時は、植木くんが死ぬという予知が変わったじゃないか。 急いだら、まだ間に合うかもしれない。 私のせいでごらく部の人たちが死ぬなんて、あっちゃいけない。 私が、ごらく部の人を見殺しにしたなんて――。 そんな思いが歩く速さを加速させ、気が付けば走り出していた。 なりふり構わず、学校を目指して。 ◆ 「さすがに、行き過ぎじゃないの?」 「……だよなぁ。もうE-6に入るかってところだし」 住宅街と言うには家もまばらになり、遠方を見ても地平線ではなく水平線がのぞきはじめる。 陽が傾いて影も長くなってきた寂しい道で、二人の男女が立ち止まった。 「もう。こんなことなら、秋瀬からレーダーを返してもらったらよかったじゃない」 「つってもなぁ、向こうは向こうで駆けつけるのにレーダーが要るみてぇだったし。 御手洗があの短時間で進路変更するとは思わなかったからよ」 本来ならば、浦飯幽助も秋瀬とともに、彼の探し人を助けに向かう予定だった。 どうやらその探し人は、凶悪な少女に命を狙われているらしいとのことだったので。 だがしかし、状況は動く。 浦飯から秋瀬へと貸し出していた携帯電話探知レーダーに、『御手洗清志』という少年の名前が映ったのだ。 しかも、ちょっと進路変更をすれば駆けつけられる位置に。 他にも何人かの名前は映ったけれど、浦飯にとってはその少年が、分かりやすく危険度の高い人物だった。 この殺し合いに呼ばれる直前まで、桑原から『水兵(シーマン)』という能力について聞かされていたのだから。 しかも、急がなければ一緒にいる『相馬光子』という少女が襲われてしまうかもしれない。 しかし、行けども行けども出くわさないまま、気が付けばエリアを丸ひとつ越えようとしている現状がここにある。 御手洗が唐突に気まぐれを起こして、進路を変更したと考えるほかなかった。 「その秋瀬のこともさ……本当に良かったの? 『雪輝』のことを何にも知らないのに、『何があっても殺さないし、なるべく助けてやる』なんて安請け合いしちゃって」 秋瀬或が助けにいきたいと告げた、雪輝という少年。 その名前を、浦飯幽助は知っていた。 あの前原圭一から、天野雪輝は危険人物だと言い含められている。 主催者の手先かもしれないとさえ聞いている。 それでも、浦飯はあっさりと頷いた。 詳しい事情を説明する暇もない短いやり取りの中で。 雪輝君は殺し合いに乗っていないから、信用してほしいと言われて。 そして、今もあっけらかんとして答える。 「オレが殺してでも止めるって思ってたのは、螢子の時の二の舞にしたくなかったからだ。 べつに知り合いが『殺さないでくれ』って言ってきたヤツまで、進んで殺したりしねぇよ」 言われてみれば浦飯らしいかもと、常盤は思う。 もとより、浦飯が『手に負えない危険人物は殺す』と言い出したのだって、『雪村螢子に間に合わなかった』という後悔からだろう。 だとすれば、『雪村螢子のためなんて未練で動いても彼女は喜ばない』と諭された今になっては、殺すことにだって躊躇っているのかもしれない。 (アタシは……どうしたいんだろう) なあなあで、浦飯と行動を共にしている。 浦飯は危険人物の討伐に連れていくことを躊躇したけれど、女の子を一人にするのもまた危険だと考えたらしい。 すっかり仲間か何かのように接してくる。 でも、いずれ愛の悪行を知る誰かと出会ったりすれば、この関係は破綻するだろう。 それでも浦飯と行動することを選んだのは、一人でいるよりはまだ安心だからなのか。 (男と一緒にいた方が安心できる? ……この、アタシが?) 自分で、自分の考えたことに驚いた。 それは、常盤愛にとって絶対にありえないことだったから。 でも、苦しくないことは事実だった。 男と同じ空間にいただけでいつも感じる不安じみた多大なストレスを、浦飯からはもう感じていない。 すでに嫌というほど、傷つけたり傷つけられたりしたせいかもしれない。 そのことがまた、愛の胸を痛ませた。 男性に信頼とも共感ともつかないモノを持ってしまった以上、これまでにしてきたことを罪だと感じずにはいられなかった。 「しょうがないなぁ……だったら、アタシの奥の手を使ってみてもいいよ」 「奥の手ぇ? そんなものがあったのかよ」 「ほら、『逆ナン日記』。これを使えば、どんな男に会うかが分かっちゃうんだ」 切り札だったはずの未来日記さえ、明かしてしまう。 どうせ自分はロクなことにならないのだから、貸しを作っておくぐらいは悪くないという捨て鉢さもあった。 ――アンタは天使なんかじゃない。ただの人殺しの、死にぞこないだ。 神崎麗美から言われたことは、もう否定できない。 「『未来日記』か……数分単位で予知を出すなんて、どのあたりが『日記』なんだ?」 「同感だけど、御手洗清志ってヤツも『男』だしね。まだこのあたりにいるなら、出会うかどうか分かるかもしれないでしょ?」 「なるほどな! じゃあさっそく頼むぜ」 笑顔で頼まれて、愛は予知画面を呼び出す。 しかし、出会いの予知に映し出されたのは御手洗とは似ても似つかぬ『男』であり、二人はそろってがっかりすることになった。 頭頂部のとんがった髪の毛に、こずるそうな表情。 どことなく猿を思わせる、そんな人相の少年だった。 名前欄には、宗屋ヒデヨシと書かれている。 ◆ 「ちくしょぉ……綾乃おぉぉぉぉ! どこだぁぁぁぁぁ!?」 走りながら首を左右に振って、杉浦綾乃の姿を探す。 時おりは脇道や民家にはいったりして、あの長いポニーテールが揺れていないか目をこらす。 見つからない。 一刻も早く、見つけ出さなければいけない。 植木が一人になることを許したばっかりに、綾乃はいなくなってしまった。 別れる直前だって、熱でもあるのか不自然なぐらい顔を真っ赤にしていたのだ。 哀しみのあまり、様子がおかしくなった可能性ぐらい考えてあげないといけなかった。 (どうする……いったん戻って別の道を探すか? いや、綾乃が菊地の後を追ったかもしれないなら、学校に先回りしてた方がいいか?) 植木たちのいた場所から学校へ至る道のりには、ふたつの選択肢があった。 ひとつは西を回り込むようにして向かい、一つは北を回り込むようにして向かう道だった。 前者は先行している菊地が通った道だから少しは安全だろうとして後者から捜そうとしたのだけれど、それが裏目に出たらしかった。 こんな時に、居場所を探知するレーダーでもあればすぐに見つけられるのに。 そんなことを考えて歯噛みをする。 しかし、思い出した。 「そうだ! 『探偵日記』があったんだ!」 探偵日記は、同じエリアにいる未来日記所有者の行動を予知してくれる。 そして杉浦綾乃もまた『友情日記』の所有者になっている。 もし綾乃が植木のいる道を通ったならば、きっと反応してくれるだろう。 植木はばたばたとディパックから携帯電話を探し出し、もどかしく予知画面に切り替えた。 そこに映し出されていた予知は―― ◆ 仲間を置いて、走り出してしまった。 息の乱れと焦燥が、後悔にすり替わるのはすぐのことだった。 しかも一心不乱に走ってきたから、道を間違えていた。 駆け抜けて飛び出したのは、デパートの正面入り口だった。 綾乃はふらふらとデパートの壁に手をつき、ひぅとかすれた息を吐き出す。 植木は今ごろ、きっと慌てふためいているだろう。 菊地だってもう戻ってきて、植木と一緒に心配しているかもしれない。 「私のすることって、こんなことばっかり……」 仲間に何も言わずに単独行動をするなんて、明らかに間違っていることだ。 そんな行動に出てしまったのは、『取り返しのつかないことをしてしまった』という罪の意識から。 仲間と向き合うことさえ、無意識のところでは怯えていた。 「戻ろう……そうしなきゃ。ちゃんとアスカさんのことも教えて、三人で学校に――」 手の甲で額をつたう汗をぬぐい、前髪の隙間から目を刺してくる日差しに顔をそむける。 「あの、いいかしら」 「ひゃぅっ!?」 そんなタイミングで、呼び止められた。 小柄で愛らしい印象の少女と、パーマがかった髪にパーカーの服を着た少年が、少し離れた場所に立っている。 初対面の相手だとか、不意打ちだったとか警戒だとか、そんな理由で固まってしまう綾乃へと、少女の方が近づいてくる。 同性の綾乃から見ても愛くるしいと思ってしまうような、完璧な造形美を持つ少女だった。 「その制服……もしかして、吉川さんのお友達なの?」 まさに、渦中の知り合いのことを持ち出された。 「え……吉川さんを、知ってるんですか?」 「ええ、さっきの放送の少し前まで、何人かの仲間と一緒に行動していたの。 それぞれにすることができたから、今はこうして別行動をとっているんだけどね」 ふわふわのツインテールをした、守ってあげたくなる雰囲気の子よね、と。 共通する話題を見つけられて嬉しがるように、綾乃との出会いを素直に喜んでいた。 「あっ、名乗るのが遅れてごめんなさいね。 あたしは相馬光子っていうの。こっちの男の子は御手洗清志くん」 そうか。 この人は、その吉川さんが死んだことを、まだ知らないんだ。 そう思ったことが、引き金になった。 警戒していた心が緩む。涙腺が熱くなる。 「っごめんなさい、吉川さん……私の、せいでっ」 伝えなければと思うのに、涙とか認識してしまった現実とかでいっぱいいっぱいになって、上手く言葉にならない。 いきなり泣き出した綾乃に対して、それでも相馬は優しかった。 なだめるように、「大丈夫、大丈夫だから」と落ち着かせてくれる。 「何があったのかはしらないけど、ゆっくりで構わないわ。 まずは中に入って、話しましょう?」 「…………はい」 きっとこの人と一緒にいた間は、吉川さんも安心だったのだろうなと思った。 事情を説明する前に植木たちのところに戻りたいと要望したのだけれど、相馬は男性である御手洗くんに呼びに行ってもらった方がいいと申し出た。 御手洗も気安いことのように、ひとっ走りしてくると言っていなくなる。 彼女らの話によれば、もともとデパートを離れようとしていたところを、走り過ぎる綾乃を見つけて引き返してくれたらしい。 使いに走らせるようで申し訳なかったけれど、綾乃も相馬にちなつのことを伝えたいと思っていたので、その提案を受け入れた。 「そう……それなら、少なくとも式波さんは無事なのね?」 「はい……殺し合いに、乗ってたはずだって聞いたんですけど……」 「そうねぇ……言われてみれば、思い当たるフシがあったかもしれないわ。 私たちの中で一番強い御坂さんを、やけに邪魔者扱いしていたし」 「じゃあ、殺し合いに乗ってた人をかばって、吉川さんは……」 「私たちと会う前に改心した可能性もあるから、断定はできないわ」 ちなつを見殺しにしたことについて、相馬はちっとも綾乃を責めなかった。 私だって、放送で大切な人が呼ばれたりしたら同じことになったはずだからと言って。 「むしろ、杉浦さんの方が私より辛かったはずよ。この殺し合いに呼ばれる前からの、友達だったんでしょう?」 「どうして、そんなに優しいんですか……」 だから、なのだろう。 時間がたつにつれて、懺悔の時間は、心のうちを吐き出す時間になっていた。 「私は……人を殺さないで済む方法を知りたかったんです。 それは、自分が死ぬのも嫌だけど、友達が殺されたり、殺すところを見たくなかったから。 でも、そんなことを言っておいて……友達が殺されるのに、何もできなかった」 初めて会った人に、こんなことを言ったって仕方がない。 分かっているのに、慈愛にみちた相馬光子の優しい目が続きを促すから、綾乃の言葉は止まらなくなっていた。 「どうして、なんでしょう。 私だって、ごらく部のみんなだって、 菊地さんも植木くんも碇くんも式波さんも綾波さんも越前くんも御手洗さんも相馬さんも、 その友達の人たちだって! 殺し合いたくなかったはずなのに。そんなことしたくないって思ってるのに。 どうして、人を殺さないでいるだけの、簡単なことが叶わないんですか……」 決まっている。 殺さなければ殺されると、脅されているから。 理解できるのに、認めたくない。 認めてしまっても、『じゃあどうすればいい』と問われて答えられないから。 「杉浦さん。自分を追いつめてまで考えることはないのよ」 相馬が幼な子を慰めるように、綾乃の頭をなでた。 慈母のような笑みを浮かべて、告げる。 「だってそんな方法、無いんだもの」/「だってそんな方法、無いんだから」 「え……?」 眼前にあるのは、恐ろしいまでに完璧な笑みを貼りつけた相馬光子。 そして、背後からは、植木たちを呼びに行ったはずの御手洗の声。 ぞくりと寒気を感じ取り、振り向いて、さらに戦慄する。 「ありがとう。もう貰えるだけの情報は貰えたわ」 そこには、綾乃の背丈より大きい“水の化け物”がいた。 ハリウッド映画のポスターなんかでしか見かけないような、ミュータントだかエイリアンだかと形容される二足歩行の生き物が、綾乃の近くまで忍び寄っていた。 御手洗が、ぺたんと座った綾乃を冷たい眼で見下ろしながら、その化け物を従えていた。 「だからさよなら」 どぱぁっと、津波のように化け物が覆いかぶさってきた。 水が、水が、水が、水が、水が。 奇妙な粘性のある液体に、全身を叩かれた。 全身が一瞬で濡れて、またたくまに“水”の中へと取り込まれる。 鼻から、口から、容赦なく水が流入する。 水の侵入と同時に鼻孔をじーんとする痛みが貫いて、前後不覚に陥りかける。 口から浄水フィルターのように大量のあぶくがガボガボと漏れた。 溺れる。 なんで。 どうして。 相馬さんたちが。 恐慌から一心不乱に手足を掻いて、水の外へ出ようともがく。 それなのに、のばした手は水の外へと突き抜けない。 粘性のある壁に阻まれるように、水の境界は断絶されていた。 絶望が、綾乃の心を染める。 凝らした視界の向こうには、微笑んだままの相馬光子が立っていた。 「だって杉浦さん。人を殺すのなんか、簡単じゃない」 水に阻まれているのに、相馬たちの声は不思議なほどによく通った。 「あなたは方法さえ見つかれば殺し合いは止まると思っているようだけれど、 他に方法があったって人を殺す人間はいるのよ? だから、止める方法があったって無いのと同じ。 これってなんて言うのかしらね……逆説? 演繹? あたし、勉強は苦手だから分からないや」 「しいて言えば、『反証』に当たるだろうね」 今度は後ろから、御手洗が楽しそうな声を出した。 酸欠から真っ赤なアラートが激しく点滅する頭で、二人の言葉はガンガンと反響する。 「光子の言う通りだよ。人間は醜い。 君は僕らがただ殺したくて殺し合いに乗っているなんて、想像もしていなかったんだろう? 僕らに限ったことじゃないよ。ちょっとしたきっかけがあれば、人間は簡単に殺人を肯定するようになる。 現に、もう半数以上が死んでいるじゃないか。今さら、『殺さないですむ方法』なんて手遅れさ」 手遅れ。 胸がズキリと痛む。 そう、手遅れには違いない。 歳納京子も赤座あかりも、吉川ちなつも死んでしまったのだから。 そして、綾乃も――。 (わたしの……してきたことって…………) 「そうね、悪意をどうにかする方法があるなら、私だって『こんな』になる前に誰か助けてくれたはずだわ。 べつにあの国に限ったことじゃなくて、どういう世界にもいるはずよ。 レイプされる小さな女の子とか、悪い道に誘われる中学生とか。 良かったわね。たまたま汚いものを見ないで育つことができて」 その言葉は、まるで『私たちは何も悪いことしていないのに』と嘆くことさえ否定しているかのようで。 水ごしによって輪郭のゆらゆら歪んだ相馬の姿が、もはや幽鬼か何かのように見えた。 酸欠が激しくなるにつれて、視界はさらにぼやける。 水を掻く手の力さえ、喪ってゆくのが分かる。 「やっぱり溺死させるのは面倒だね。時間がかかる」 「でも、刺し殺したり殴り殺したりすると、争った跡や返り血が残るかもしれないもの。 一長一短ってところかしら……」 そんなやり取りが聴覚に届いたけれど、もはや意味を認識する力はなかった。 (ごめんなさい、植木くん……こんな終わり方でごめんなさい、菊地さん……) なぜか。 死んだら歳納京子に会えるのかな、という思いより。 こんなところで菊地とお別れするのは悲しい、という思いが勝っていた―― (もっと、色んな、話、して、みたかっ――) ――ガァン、と鈍い音が、なくしかけていた聴覚を揺らした。 ◆ 「ぐあっ……!!」 鈍い音とともに、ピンポン玉ほどの小石が御手洗の右目を直撃した。 いかに“水兵(シーマン)”が強力でも、御手洗自身は生身の中学生にすぎない。 耐えきれず膝をつき、その手で目元をおさえる。 「御手洗くん!?」 御手洗がうずくまり、光子の視線がそちらを向いた隙をついて。 長髪をなびかせる人影が、矢のように迫った。 非常口の方角から、だ、だ、だ、と大股で接近し、相馬光子の背後をとり、捕える。 「まったく……ちょっと危機感のあるだけのお人好しかと思ってたら、とんだ役者だったようね」 「光子!」 式波・アスカ・ラングレーが、相馬光子を羽交い絞めにしてとらえ、喉元にはどこにでも売っているような包丁をあてがっていた。 光子の首を絞める左腕の手先には、御手洗の右目を撃ったパチンコが握られている。 「ほら、ミツコが大事なら、さっさとそこのそいつを解放しなさいよ。 一応、借りを作ってるヤツの知り合いみたいだから、見殺すわけにもいかないのよね」 光子のきゃしゃな首に包丁の先端を食い込ませると、御手洗は苦々しく舌打ちをした。 “水兵”が吐き出すようにして杉浦綾乃を領域外に放出する。 どさりとアスカたちの近くに転がった綾乃はしばらくその身を震えさせていたが、やがて激しく咳きこみながら水を吐き出した。 アスカはほっとしたように息を吐き、さらに命令する。 「それじゃあ、次はその変な水の化け物を始末してもらおうかしら」 「……残念だな。そいつは一度出したら元には戻せないんだ」 「嘘ね。こんな目立つものを戻せないなら、一般人を殺す為だけにホイホイ出したりしないはずよ」 「じゃあ、そのポニーテールの子は見逃してやるから、拘束だけは解いてくれないかな。 君だって、その子への借りを返したいってだけで、殺し合い自体には乗っていたんじゃなかったっけ? 今の僕たちは信頼度が皆無だろうけど、残り人数を効率よく減らす為にも、今ぐらいは見逃してくれたっていいんじゃないかな」 「同類扱いしないでくれる? 機をうかがってれば、殺し合いに乗ったヤツは醜いとか、誰も助けてくれないとか、人のことまでひと括りにして。 殺し合いに乗ったヤツが、みんな殺したくて殺してると思ってんじゃないわよ。 それに、『とっさに体が動いた』とか言って助けてくれるヤツだっているのよ」 げほげほと咳きこむ少女が、はっとしたような顔をアスカへと向けた。 血がしたたる右目をおさえたまま歯ぎしりをする御手洗を見て、アスカはほっと安堵する。 包丁が光子の喉を切り裂くまで、たいした予備動作はかからない。 使役された水がアスカや綾乃を襲うより早いだろう。だから、どうにかなりそうだ。 そんな余裕から、慢心を持ったことは否めなかった。 「……光子に言われたとおり、保険をかけておいてよかったよ」 背後に、立たれる気配。 もう一匹の“水兵(シーマン)”が触手じみた腕を伸ばし、包丁に絡みついた。 「なっ……!?」 “水”の内部と外部は断絶されている。 いくら刃が光子の喉元にあっても、水の“領域(テリトリー)”はぴったりと包丁だけを絡め取り、光子を刃から解放した。 「この……くっ!?」 とっさに、包丁を手放してしまうアスカ。その隙に光子は、安全地帯である御手洗のそばへと逃げる。 攻撃し放題になった“水兵”が逆の腕を振り上げ、アスカの腹部にめりこませた。 「ぐっ……がっ……あ゛っ……!」 胴体を貫く連続的な打撃が、体を宙へと持ち上げる。 下から突きあげるような拳がアスカを軽く吹き飛ばし、数メートル向こうのレジテーブルに叩きつけた。 「……っ……げほっ」 腹部をおさえてうずくまるアスカを見おろして、光子は大きく息を吐いた。 「デパートにいた時から、どうにも煮え切らないところのある子だとは思ってたけど……こんな無茶をするなんてね。 吉川さんに庇われて、そんなに感動したのかしら」 「けほっ…………ようい、しゅうとう、なのね」 「前にもこういうイベントを経験したことがあってね。 修羅場の真っ最中に横やりを入れられたことがあったから、学習したのよ」 「おい、それはさっきの放送で悼んでた、滝口ってヤツのことか?」 「あら。御手洗くん、妬いてるの?」 仲睦まじそうな会話が交わされる間にも、“水兵”は腕の先端を槍のように尖らせ、アスカにとどめをさすべく迫っていた。 「ほけん、ね…………それは」 アスカは水の怪物を見上げ、しかし臆さず笑ってみせる。 「……こっちも、だっちゅーの!」 びゅん、とディパック状の何かが床に投げ出された。 次の瞬間に、破裂。 パンパンパンパンパンパンと、盛大な着火音がデパートの床を埋め尽くした。 発生するのは黒煙。白煙。あざやかな花火。 足元を火花を散らして駆けまわる、ネズミ花火に似た何か。 火災報知器のベルの音と、スプリンクラーからの放水。 様々な種類の火煙と水煙が、全員の視界を曇らせた。 (後編)
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キャンペーントレーラ&ハンドアウト 概要:電脳冒〇記ウェブ〇イバー モノ。 電脳世界ネタのシナリオをやりたかった。 PvPを組み込んだシナリオが多め 登場PC: PC1 ピーター・ランパート PC2 甕星 啓明(ミカボシ ヒロアキ) PC3 ディエス・セローノ PC4 ロバート・ネイバーフッド 登場NPC: ミスターX ミサ・セラノス イルマ・ナツミ サイモン アバター ネメシスⅡ シャルロッテ・ファン スィエン・セローノ 各話リスト: ep01 時空の世界 ~World of Tachyon~ 了 ep02 暗黒物質の大地 了 ep03 光子の空 了 ep04 エーテルの海 了 ep05 ラプラスの箱庭 前編 途 ep06 ラプラスの箱庭 後編 未
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■スペース三国志■ IMO-10宇宙爆雷 帝国謹製の光子爆弾 萌えキャラ風の目と口の付いた爆弾でAIも搭載 発射後数分で自立稼動をはじめ、好き勝手に動く 小惑星に隠れて敵艦隊に接近し「ああ、あれが運命の目標(カレ)なのね、わたしどうしよう」等 ともすれば恋する少女のような非常に怪しい行動を多数行う ちなみにそれらの独り言は相当な帯域に送信されて爆音で周囲に聞こえまくる これがジャミングに近い効果を持ち、当の発信源も爆弾なのでなかなか始末が悪い 尚何かに接触、恋に悩んで引き返そうとした時は即座に爆発し半径50㌔圏内をほぼ消滅させる
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【種別】 施設名 【初出】 三巻 【解説】 常盤台中学の学生寮は学舎の園の内と外に一つずつあり、それぞれ内部寮・外部寮とされている。 原作小説や漫画などで頻繁に登場する、御坂美琴と白井黒子が住まう寮は外部寮の方である。 当然ながら、どちらも女子寮である。 【常盤台中学外部寮】 第七学区に存在する。常盤台中学学生寮前というバス停も存在する。 近代的な街並みの中にドカンと建てられた石造り三階建ての洋館じみた建物。 庭はなく歩道沿いに建っている。 外観を見た上条は、 古めかしくは見せているが最新式のセキュリティ満載なんだろうと当たりをつけていた。 玄関を入るとホールで、階段と左右に向かう廊下があり、全体に貴族の邸宅のような雰囲気になっている。 部屋自体はホテルのような感じになっているようだ。 アニメとある科学の超電磁砲19話や同作二期のとある科学の超電磁砲Sでは、 図書館と言っても差し支えのない規模の図書室や、ステージを組める程の専用庭の存在も確認された。 御坂美琴と白井黒子はここに入寮している。 二人はルームメイトで部屋番号は二〇八号室。 黒子は美琴の本来のルームメイトではなく、別の同居人が居たのだが、 美琴と敵対する立場にあったようで、 黒子曰くあくまでも合法的に出て行ってもらったらしい。 ちなみに土御門舞夏も学校の実習でこの寮にはよく出入りしている。 帆風潤子もここの寮生であることがアストラル・バディ第2話で明かされた。 寮の朝の生活リズムは、 午前七時:起床、以後三十分以内に身だしなみを見苦しくない程度に整える。 午前七時三十分:食堂へ集合、点呼を取ってから午前八時までに食事を完了させる。 というもの。 また、寮則により、寮内での能力の使用は堅く禁じられているらしく、大っぴらに能力を使用してしまうと、 鬼の寮監がやって来て、レベル4だろうが、レベル5であっても、恐ろしい目に遭うようだ。 夏頃には「常盤台中学女子寮盛夏祭」という行事も催される。 【常盤台中学学舎の園内部寮】 学舎の園の内にあり、婚后光子が転入の際に美琴に案内してもらっていた。 食蜂操祈も学舎の園内部の方の寮に入っている。 これには万一の場合に備え、強大な能力を持つ二人の超能力者を別々に管理することで、二人が協力して行動することを防ぐ狙いがある模様。 【所属寮が判明している学生】 常盤台中学学舎の園内部寮 婚后光子 食蜂操祈 常盤台中学外部寮 帆風潤子 御坂美琴 白井黒子
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スレイヴ/S.L.A.V.E. Sensorimotor Linkage Acting Voluntary Enlargement body/感覚運動系と結合し代行する随意制御型拡張躯体。 機刷鎧のさらに先にあるもの。魔術を持つ──というより敵性魔術への対抗手段を必要とする幽接文明が、一定の水準のロボット工学や神経工学、制御工学等を得た時、必然として発生する兵器体系。 神経接続によって駆動し、もって『人体』としての個体圏域の恩恵を得る、巨大ヒト型機動兵器。有人兵器にして融人兵器。 定義論としては、上記の条件を満たすあらゆる兵器が、その技術水準や形態に関わらず、スレイヴたりうる。 人型種族が用いる人型機動兵器も、タコ型種族が用いるタコ型機動兵器も、流体種族が用いる、本来の肉体部より高性能な混ぜ物も。 歩兵の延長としての陸上兵器でも、亜光速の機動速度を持つ恒星間兵器であっても、扱えるエネルギースケールに億倍の開きがあろうとも、そのすべてが等しくスレイヴとなる。 (が、とりあえず本編で出そうなのは光速のn%が速度単位のハイパーインフレ、かつおおむね人型の形状ばかり、になりそう) (スピンオフ、別の文明圏でフルメタのラムダ・ドライバ持ちASぐらいに落ち着いた性能のスレイヴも出したい) 利点は、主に三つ。 すなわち前述の個体圏域、加えて一定の技術水準以上の場合は、誘導量子神経系とSSSC。 暗能子 アイテロン 斥力として働き宇宙を押し広げる第五相互作用、暗能力 アイテール を量子化したゲージ粒子。 (元ネタ:中国語でダークエネルギーを示す暗能量。厳密には暗+能量なので『暗能』を切り出すのは変だが字面重視で) 元子 アペイロン 五つの相互作用が分化する以前、最初期の宇宙にあった原初的なエネルギー。 光子、ウィークボゾン、グルーオン、重力子、暗能子のいずれのゲージ粒子にも分化しうる。 幾度の相転移ののち、既に安定しきった現在の宇宙においては、もっぱら再分化機関 リプログラミング・リアクター からのみ、産出される。 再分化機関 リプログラミング・リアクター 【作中時系列の高位文明圏】において広く使用される、ゲージボゾン双変機構。 炉心たる乱折面型位相欠陥 クラムプルド・テクスチャー と、その安定器と遮蔽器を兼ねるブランケット、最終的な相互作用を決定づける誘導量子神経系から構成される。 炉心の人工位相欠陥は、プランクエネルギーを湛えた超高熱・超高圧の原初宇宙の欠片に等しく、その内部の物理法則ではあらゆるゲージ粒子が区別されない。 この封じ込められた、極小の原初宇宙にゲージ粒子を撃ち込み(扱いやすさから、大抵は光子が使われる)、還元された元子を回収。 通常空間に復帰した元子の寿命はミリ秒足らずだが、その崩壊/相転移の指向性やタイミングを制御することで、任意の実/仮想ゲージ粒子に再分化させ、ゲージ場を自在に変形させることが可能となる。それはつまり、あらゆる基本相互作用を理論上は制御できる、ということ。 しかし理論上は〝何でも可能〟であっても、実用的には出力や精度等の限界は常に存在するため、〝再分化機関でしか出来ないこと〟に用途を絞って運用される。 具体的には、まず第一に、仮想重力子および仮想暗能子の生成と配置による時空曲率の制御、及びその応用による超光速航法など。 第二に、自身を構成する素粒子間の相互作用のコントロールによる、極めて高度な物性制御が挙げられる。 再分化の誘導は純粋な量子力学上の作用によっても可能だが、(作中の技術水準の)スレイヴは、フレームや装甲の大半に〝増設された中枢神経〟としての機能を持たせることで銀枝を根付かせ、その確率偏向を転用することで極めて高効率・高精度な再分化制御を行っている。個体圏域に次ぐ、融人兵器の明確な強み。 (一般的な霊渉力学的な干渉、銀枝/銀紋は、あくまで自身の神経系に対してのミクロな干渉しか行えない。体外に対するマクロ作用も原理上は可能であるが、魔術を持つすべての文明種族はその条件を満たさない) (基本的に、多くの再分化機関は、ゲージ粒子だけではなくバリオン・レプトンの再分化能も有し、これによりモノポールエンジンと同様の動力源としての機能も兼ねている。燃料質量を光子に変え、光子を元子に変えているかたち。 が、最初期の試作品や、小型モデルなどは、自前の質量転換能力を有さず、機関外部からの光子供給に依存して稼働するようなケースもある) なお再分化機関が破壊された場合、安定器を失った位相欠陥が蒸発。 通常真空に相転移する過程で、内包していたエネルギーを吐き出し爆発するが、人工位相欠陥を人工位相欠陥たらしめるのはエネルギーの総量ではなく密度であるため、爆発の規模自体は(再分化機関を生産できる文明レベルからすれば)さして大きくない。最初から加害を目的として造られた兵器の方が上。 製造手段 核となる人工位相欠陥は、限りなく光速に近い速度に加速された複数の素粒子を衝突させ、瞬間的にプランクエネルギーを叩き出すことで生産される。 そのために必要となる粒子加速器 コライダー は、最低でも惑星並み、大きければ恒星公転軌道並みの巨大さを持つこととなり、その建造難度と代替不可能性から、これが恒星間文明において、もっとも技術的に価値あるものの一つとなる。 すなわち恒星間戦争においては真っ先に狙われる、ということで、 ゆえに本丸、本拠地、司令部となる機動天体に内蔵される(あるいは加速器をコアとして、装甲や移動能力、防衛装備や居住施設を取り付ける)ケースも多い。 また再分化機関の製造において、もっとも有用な技術とは、再分化機関そのものである。 既製の再分化機関の活用によって、再分化機関(及び、他の高度技術品)の新造の難度は著しく低減する。 よって『最初の一基』が極めて巨大な壁となり、再分化機関『以前』と『以降』の文明には、決して越えられない技術格差が生じることとなる。 恒星間文明における産業革命とも。 元焔 再分化機関搭載兵器から放出される、煌めく焔のような光学エフェクト。 相互作用の極めて薄い元子を100%制御下におくことは原理的に不可能であり、必ず一定量が制御を外れて機体を透過。機体外にてあらゆる種類のゲージ粒子へと確率的に崩壊していくが、 重力子と暗能子は閉弦束縛されなければ弱すぎ、グルーオンやウィークボゾンは作用範囲が狭すぎて、外部から巨視的に観測ができるのは『光子に化けた元子』の、焔のような輝きのみである。 再分化機関それ自体の特性や、機体の誘導量子神経系の回路設計等の複数の要因によって、その光学スペクトルには個性が生じる。 重力電磁転壊炉 ジェムブレイカー Gravity-ElectroMagnetic convertible quantum-Breaker 本来、極低確率でしか起こらない、量子破壊による光子と重力子、電磁/重力の相互変換を、安定して発生させる機構。 とはいえ、もっと単純な機構で可能な電磁的操作を、わざわざ重力越しに行う必要は皆無なため、実際にはもっぱら電磁→重力の方向でしか使われない。 (元ネタ↓ とはいえこれが可逆か、実際効率どんなもんかはよくわからんけど、まあハードSFではないので…… https //physics.aps.org/articles/v13/s33) 再分化機関より安上がりかつ小さく作れるものの、出力や効率、汎用性の面で劣る。主機に再分化機関を、補助にこちらを搭載する混合運用も多い。 ジェムブレイカーによって生成された重力子は、一定確率で元の光子へと崩壊。この〝先祖返り〟により、ジェムブレイカーが生み出す人工重力場には、あたかも宝石の破片のような視覚効果が伴うことになる。 元子高速誘導定義炉/RAID レイド Rapid Apeiron Inducing Definer 元子の再分化を制御する誘導量子神経系のうち、特に精密かつ機動的な操作を可能とするもの。 欠点として非RAIDの恒常変換系に比べて変換の容量上限が低く、また即応性を確保するために、常に元子の供給に余力、〝遊び〟を作る必要がある。 通常空間中においてミリ秒未満の寿命しか持たず保存が効かない、という元子の特性上、結果的に使われなかった元子は、元焔として排出する他ない。 最速の反応速度を持たせるために、極めて随意的・反射的な感覚にコントロールを頼っている都合上、意識の焦点を合わせやすい部位に。つまり人型スレイヴにおいては主に掌部に、配置される。 閉弦束縛 ディスクロージング 技術 時空曲率制御技術を支える、重力および暗能力の、事実上の増幅技術。 閉弦束縛無しには、時空曲率制御のエネルギー効率は極めて劣悪なものとなり、とても実用には供さない。 前提として、重力および暗能力は、他三種の基礎相互作用に比べ、極めて“弱い”力である。 この“弱い”が意味するパワースケールの開きは、実に10の数十乗倍。人間が直感的にイメージできる強弱や大小の限界を、遥かに上回っている。 なぜ、これほどまでに“弱い”のか? それは閉弦である重力子 グラビトン と暗能子 アイテロン だけが、次元の束縛を受けず、高次元方向へと常時、流失しているためである。我々が日ごろ体感できる重力というのは、本来あるべき重力の大半が余剰次元へと流れた後の、僅かに残った絞りカスに過ぎない。 閉弦束縛 ディスクロージング 技術は、その流失を抑制する。通常ならば余剰次元に逃げ隠れてしまう閉弦 closed-string を、三次元ブレーンに一時的に固着させて暴き出す disclose 。 結果として、閉弦束縛は重力および暗能力を増幅する──より正確な原理としては『減衰が無効化』され、その作用領域内では10の数十乗倍、他の相互作用と同等の強度までパワースケールが拡張される。これにより、実用的なエネルギー効率での、時空曲率制御が可能となるのである。 ちなみにこの重力・暗能作用の増幅は、再分化機関やジェムブレイカーによる人工的な時空曲率制御だけでなく、自然の重力場等に対しても同様に作用する。 そのため惑星や恒星を閉弦束縛場で覆うだけで、『本来あるべき自身の重力で』重力崩壊を起こすことになる。 無因果型共時性連関通信/Superluminal Strange Synchronicity Communication 超光速通信。規格化されたテレパシー。 たとえるなら、遠く離れた二点で同時にサイコロを振って、同じ目が出た時。 それを『情報が伝わった』と見做せるか? といえば見做せない。情報が伝わっていないのだから、光より早く『同じ結果』を離れた二者が得ても問題ない。 では、二回振って二回とも同じなら? 三回振って三回とも同じであれば? 百回振って、百回とも同じであれば? ──というのが、物理世界の因果律を破らないまま、SSSCが光速を超えて情報を共有できる理屈である。無論、そのような奇跡的偶然は、思考実験の中では起こり得ても実際の確率としては、まず起こらない。 が、幽接生物の神経系が引き起こす『奇跡的偶然』には、このような奇怪な一致も含まれる。 つまり、いまだ正体のわからない【魂】、光速限界を持たない非物理系を通って情報が伝達されており、物理世界の各幽接ノードで起こっているのは量子の確立ゆらぎに付け入っての表出に過ぎない、というのが本質。 根本的なSSSCの原理は分かっていないものの、経験論の蓄積として、純物理的な通信で可能な情報の送受信は、おおむねSSSC上で可能となっている。 しかし大規模で複雑、常設的なネットワークを築くのには向かず、必要な時、必要な相手とのみ繋ぐのが基本。 SSSCによる超光速での情報共有をストレートに行えることも、融人兵器の強みのひとつ。 慣性質量制御 そのまま。ヒッグス機構に割り込むことで実現する。 実のところ、一般的な物質の質量において、ヒッグス場が素粒子一つ一つに与える質量は比率としてわずかであり、その大半は素粒子『間』の結合・束縛エネルギーによるものである。 そのため質量を増やす分にはシンプルにヒッグス機構を強めるのみで問題ないが、ヒッグス機構を弱めたところで減らせる質量には限界がある。 そのため慣性質量の低減は、『質量を減らす』のではなく、『負の慣性質量を付与する』ことで正質量と相殺し、結果的にゼロに近付けている。 穿天航法 ペネテレーン・ドライブ 重力波浪 グラビティ・ハロー 時空に孔を穿ち、負のエネルギーを注ぎ込んで保持される穿天路は、極めて不安定な時空構造である。 重力波浪とは、この穿天路の繊細な均衡を崩して圧壊に導き、穿天航法による空間転移を阻害するための、人工的に発振される重力的ノイズを指す。 名前の由来は、荒れ立つ重力の波浪が、あたかも後光 ハロー のように揺らぎながら広がる点から。 穿天航法以外の超光速航法に対する、重力波浪の有効性 重力波浪は、基本的に穿天航法に対する阻害能力を主眼においてノイズ波形が設計され、また実際に運用される。 これは穿天航法が超光速航法のなかで圧倒的なメジャーを占めているため。 しかし、では穿天航法以外のマイナーな超光速航法に対しては重力波浪は無力か? といえば、そんなことはまったくない。 そもそもあらゆる超光速航法は、それが超光速航法である限り、必ず、極めて精緻な時空間の操作を不可欠とする。例外はない。 そのため、その操作対象をかき乱す重力波浪は、多少の阻害強度の差はあれ、既知のすべての超光速航法に対して有効である。 混天儀 ケイオスフィア 重力波浪の、継続的・恒常的な発振能力を備えた施設や設備を指す言葉。天をかき混ぜ、波立たせるもの。 超光速航法を用いた空間転移は、文明中枢への直接的な強襲を可能とする。悪意を持つ異種文明に座標を知られた次の瞬間には、首都に反物質の塊が転送されても、不思議ではない。 恒星間戦争においては、超光速航法それ自体が、戦術兵器の質や量の差など遥かに凌駕する、戦略的脅威である。 よって超光速航法への対抗技術としての混天儀、重力波浪による広域転移封じは、恒星間文明にとって安全保障上の『必需品』である。 自身の超光速航法の利用も制限される点や、発振される重力波浪がそのまま存在シグナルとなってしまう点など、デメリットもあるものの、背に腹は代えられない。 なお、デメリットの後者、発振される重力波浪によって自らの存在と座標を露わにしてしまう問題に関しては、ひとつ、解法が存在する。 木を隠すなら森の中。すなわち、自己複製型の混天儀の無差別・無作為拡散である。 静天路 セレーン 混天儀の転移阻害に対する、さらなる対抗技術。 混天の中において、静謐なる(serene)天路(celeste lane)を拓くもの。 転移ノード 陰陽 ブラック・サン ブラックホールを高次元方向に拡張することで造られた、人工的な高次元ブラックホール解(ブラック・オブジェクト)のこと。 基礎研究ではマイクロブラックホールを、技術実証や試作の段階では天体質量ブラックホールを用いた陰陽も製作されているものの、この質量規模では得られる出力が生産難度に対して見合っておらず、実用的とは言いがたい。 恒星間戦争における、戦略的『実用品』としての陰陽は、もっぱら中間質量ブラックホールを素体としたものである。当然、その建造と維持には、文字通りに天文学的なリソースを要求され、これを賄える勢力は広大な既観測宇宙の中でも数えるほどしか存在しない。最大最強の文明複合体である【名称未定】でさえ、保有する(実用的な質量の)陰陽は、十に満たない。 理論上は中間質量ブラックホールに留まらず、銀河中心、超巨大質量ブラックホールの陰陽化も可能と推測されているが、現実的には、その実現に必要なリソースは、現存する全文明のリソースの総和を遥かに上回っている。 機能としては、常に莫大な重力ノイズを発振しており、これが超広域・超高強度の混天儀としても作用する。が、陰陽の持つポテンシャルは、たかが『非常に強力な混天儀』には収まらない。 そもそも、 キャリゲート艦 主観偏移 パララクス 航法 前駆放射 いかに優れたレーザー発振器・粒子加速器であってもエネルギー損失はゼロではなく、 発振や加速の過程では、必ず投入エネルギーの一部が電磁パルスやニュートリノ、重力波等の放出という形で失われる。 この、撃ち出す過程で漏出する────言い換えれば、DEW発射の直前に放射されるエネルギーを、〝前駆放射〟と呼ぶ。その強度はおおむねエネルギーの総量に比例し、かつその比率は小さい。対人級のDEWであれば、前駆放射は検出不能なほど微弱なものでしかない。 が、高位文明製のスレイヴの戦闘において用いられる(≒有効打となりえる)DEWの出力は、最低でも数ペタジュール級。最大では数百エクサジュールに達するものすら存在する。 この域の投入エネルギー量であれば、その極一部の漏出でしかない前駆放射も十分に観測可能な強度を得る。結果、DEWが『発射された』ではなく『発射される』ことを、前駆放射の観測で一瞬だけ先んじて知覚可能。 光速や亜光速のDEWをスレイヴが回避・防御可能な理由がこれ。超光速通信であるSSSCと合わせて使えば、事前に察知可能な猶予時間はより伸びる。 端的にいえば、目標内部に高エネルギー反応! がお互い筒抜けの状態ということ。威力が高い攻撃ほど、前駆放射もまた鮮明であり、ゆえに対応されやすくなる。 ただし現在の戦場ではチャージに時間を掛ける(=時間あたりの投入エネルギー量を減らす)ことで、ギリギリまで前駆放射を低減させつつ高威力砲撃を放てる狙撃型や、 『あたかも前駆放射のような、単なる低エネルギー発振』で敵の防御リソースを空費させる空砲型、味方の火砲の前駆放射を掻き消すようノイズを流す擾乱型などが双方に存在し、前駆放射を巡った戦術も一筋縄ではいかない。 加えて、射撃/砲撃のみならず、近接戦闘にも、前駆放射は関わってくる。 スレイヴの機動速度は光速のn%を基本単位とし、その肢の末端速度は亜光速に達する。慣性質量が限りなく低減されていてもなお、そこには莫大な運動エネルギーが発生する/莫大なエネルギーが注ぎ込まれている。 そしていかに優れた推進器やアクチュエーターであってもエネルギー損失はゼロではなく、動作の『入り』の時点で────あらゆる一挙手一投足に、僅かながら前駆放射が発生してしまう。 その『基本動作に応じて発生する前駆放射』は射撃/砲撃のそれに比べて遥かに微弱で、飛び道具の距離では観測はほぼ不能。しかし近接戦闘の間合では、お互いに感じ取れてしまう。つまり戦術の俎上に乗る。 さながら生身の武術家が、敵手の視線のブレや筋肉の引き攣り、呼吸と脈のリズム。そうしたわずかな前兆を読み・また己のそれを欺瞞するがごとくに、 スレイヴ同士の近接戦闘では、前駆放射という動作の前兆を読み合い・騙し合い・詰まし合う、亜光速域の駆け引きが発生することとなる。 以上、およそいかなる交戦距離であっても、前駆放射が影響しない機動戦闘など存在しない。 スレイヴにとって、前駆放射を〝見る〟ためのセンサー感度は、単純なエネルギー出力や攻撃力、機動力や防御力に並んで、重要な能力値である。 バースター兵器 指向性エネルギー兵器のうち、発射機構の耐久性と耐用性を犠牲にしたものを指す言葉。 端的に言うなれば、一発撃つたびに銃身が熔け崩れて砲身が吹き飛ぶ、加速器や発振器というより『指向性をもって爆発する爆弾』である。 ある意味では、原始的な火薬銃器に回帰している、とも言える。 デメリットは、そのまま。耐久・耐用を軽視したものでは一発撃つごとに発射機構の修復・再生プロセスに時間を要し、 無視したものは完全な使い切り。連射は不能であり、こと継戦能力と経済性においては、標準的なDEWに大きく劣る。 ではメリットは? 主に挙げられるのは、三つ。一つは単純な出力。二つ目は一基あたりの生産コスト。 そして最後が、速射性ではない『即射性』である。 光速・亜光速のDEWに対し、スレイヴが対処可能な最大の理由は、前駆放射の観測である。 扱うエネルギーの総量が莫大であるがために、DEW発射直前の、割合では極僅かな電磁パルスやニュートリノの漏出すら、前兆として観測可能な強度を得てしまう。 高エネルギーな砲撃であれば、発生する前駆放射が鮮明となり、敵に対処されやすく、 一方でエネルギー量を減らせば前駆放射は読まれにくくなるものの、当てたところで有効打になりえない。 このジレンマに対する一つの解が、『チャージ時間を長く取り、時間あたりの投入エネルギー量を減らすことで、前駆放射をギリギリまで低減させ、観測されないようにする』スナイパー型であり、バースター兵器はその対極。 『どれだけ鮮明な前駆放射が発生・観測されようが、実射とのタイムラグが限りなく小さければ対処は不能』という、いわばクイック型である。通常の加速器や発振器では、砲身への負荷や制御の問題から、発射プロセス全体の所要時間の短縮にはどうしても限界があるが、 ただ点火して起爆するだけの、指向性の爆弾たるバースター兵器にはその制約は存在しない。敵手のDEWの種別や距離などにも左右されるが、条件がよければ『敵砲の前駆放射を見てから〝後の先〟を取る』ことすら可能となる。 火面兵器 指向性エネルギー兵器の分類、というより撃ち分け可能なモードの一つ。 細く絞り込む火線兵器は当てれば確実に有効打になるが命中させにくく、 三次元的に拡散させる火錐兵器は、比較的当てることは容易いものの、どうしてもエネルギー密度が低くなってしまう。 火面兵器は、その中間。 扇状、平面的に拡散させることで、それなりの攻撃範囲=命中性を確保しつつ、 同距離・同総エネルギー量という条件において、火錐兵器より遥かに高いエネルギー密度を実現する。 相転移砲 指向性エネルギー兵器の一種。 弾道始端、発射された瞬間には弾体が観測できず、その次の瞬間から射線上の虚空より光子の塊が溢れ出す。以降、駆け抜けた距離に比例してどんどんと光子が、総エネルギーが増えていく── と、見かけ上は『射線を走れば走るほど威力が上がるレーザー』のような、極めて異質な挙動を取る。 してその弾体は、原初粒子たる元子 アペイロン 。 撃ち出した観測不可能な元子の塊が、随時観測可能な光子へと崩壊していくことで、 あたかも『射線を走れば走るほど威力が増していくレーザー』のように見えている、というのが実態である。発射した元子すべてが光子に変われば、ただのレーザー兵器と相違ない。そして相転移砲にとって崩壊後の光子とは副産物でしかなく、その加害能力の本質は、まさに崩壊の瞬間。 ほとんど相互作用をしない、という性質によって敵の障壁も装甲もすり抜けた元子が、 まさに敵の内側で、相互作用を持つ光子に相転移することによる、防御不能の内部破壊こそが本領である。 観測不能・不干渉な状態に置かれていたエネルギーが可干渉状態にシフトすることによって、 理論上は敵の内側を直に灼きうる、という点では、マイクロブラックホール兵器にも近しいが、 MBHの蒸発『点』を、対基地・対要塞・対天体などならともかく、同スケールの機動兵器が描く軌道に直撃させることは不可能といっていい。戦術兵器としてのMBHは、ホーキング輻射によるガンマ線の爆風で広い範囲を浅く焼く、いわば榴弾としての運用がもっぱらである。 一方、『線』、あるいは『面』、あるいは『錐』状に、漸近的に崩壊座標を伸ばす相転移砲は、MBHに比べてはるかに座標を『合わせ』やすい。単位体積あたりの実体化エネルギー量自体は弱くとも、繊細な内部を直に攻撃できるならそれで十分。 なおデメリットは、現宇宙唯一の元子供給源である再分化機関と直結する必要がある点と、ほとんど相互作用をしない元子を、元子のまま高密度圧縮・加速・発射するために、非常に複雑で高度なプロセスを踏む必要がある点。 他のDEWの十倍以上の時間、きわめて独特な前駆放射を垂れ流し続けるため、相転移砲を撃つ前に、敵の通常のDEWによって蜂の巣にされてしまうことも。 重力波兵器 指向性エネルギー兵器の一種。 自然界ではありえない短波長・超高強度の重力波動によって、瞬間的に巨大な潮汐力を発生させ、万物を引き裂きあるいは圧壊させる。 重力波であるために非常に高い透過性を持ち、防御が難しい、という点では、相転移砲とニッチが被っているが、重力波兵器の方が相転移砲よりも生産も制御も容易で、射撃プロセス全体に掛かる所要時間も大きく勝る。 しかし相転移砲より制御は容易い=必要な演算リソースは少ないが、要求エネルギーの燃費は悪く、同じ時空曲率制御により防御・軽減され、かつあくまで力学的・機械的な負荷を掛けるに過ぎないため、素の強度&慣性質量低減で耐えられる可能性もある。一長一短。 レギオン/L.E.G.I.O.N. Legion of External Ganglia Individual-Overextend Network/体外神経節群による個体過拡張ネットワークの軍勢、の再帰的頭字語。 つまりファンネル。ビット兵器。 単なる補助子機・無人機などはレギオンとは呼ばれず、拡張を超えて本体から物理的に分離した端末に、なお銀枝が宿り続けて。 つまり一つの魂が、物理的に分かたれた複数の神経系と並列接続し、擬似的な群体化を果たして初めて、レギオンたりうる。 レギオンユニットの一つ一つが個体圏域を纏い、誘導量子神経系により元子の再分化を十全に制御し、かつSSSCによる超光速での連携を可能とする、という点でスレイヴ『部隊』と同等でありながら、 すべて『一人』であるために複数人では不可能な域の、完璧に統御された連携をこなせる、という非常に強力なシステムだが、適合者が大きく限られる。 このレギオン適性は脳機能ではなく、未だ原理も所在も掴めない【魂】にほぼ完全に依存しているため、人工的な強化なども難しい。 惑星規模居住構造体 テラストラクチャ 広義では、巨大居住構造体 メガストラクチャ の中でも、並外れて巨大なもの全てを指す。 狭義では、広義に加えて、その内部に完全な生態系を有している、という条件が追加される。 メガをも遥かに上回る巨大さゆえのtera テラ と惑星規模であるためのterra テラ のWミーニング。 広義と狭義の違いは、『惑星規模』を単なる大きさとして見るか、それとも生態系の器という機能をも含む、と見るかの違いである。
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ドラグナー3型(光子バズーカ) 耐久力:600 コスト:450 盾なし 変形なし 通常射撃:レールガン 威力は低いものの、連射力が高い。 弾はわりと多め。 格闘:対レーダーミサイル 射程は長くダウンさせやすい、 それに加えて誘導性も高いが威力はあまりあてにはならない。 弾はかなり少なく、二発。 特殊格闘:ジャミング 一定時間、相手のロックオンを阻止する。 姿は見えるが、ミラージュコロイドと比べるとだいぶ持続する。
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TOG/005 C “護り抜く者”アスベル/剣士 男性 パートナー “格闘術士”ソフィ/光子格闘 女性 レベル 1 攻撃力 2000 防御力 4000 【今度は俺が、なんとしてもソフィを救わないと】《原素》《ヒーロー》 【永】〔手札〕 このカードは自分のリングの名前に“ソフィ”を含むカードのパートナーとしても扱う。(このカードでリングのカードをパートナーブロックできる) 作品 『テイルズ オブ グレイセス エフ』