約 2,764 件
https://w.atwiki.jp/orisutatournament/pages/42.html
第04回トーナメント:予選② No.4492 【スタンド名】 ドッグ・マン・スター 【本体】 脚蛮 醤(ギャバン ジャン) 【能力】 マーキングしたもの同士を同期させる オリスタ図鑑 No.4492 No.4837 【スタンド名】 エンヴィ・キャットウォーク 【本体】 六 美樹(ムツ ミキ) 【能力】 殴ったものを「小物」にする オリスタ図鑑 No.4837 ドッグ・マン・スター vs エンヴィ・キャットウォーク 【STAGE:森】◆aQVFw6W.SA 森の開けた場所。 光の差し込むその場所で、黒いセーラー服に身を包んだ『エンヴィ・キャットウォーク』のスタンド使い「六 美樹(むつ みき)」は佇んでいた。 「フフっ……随分と遅い登場ね、アナタが対戦相手かしら」 優男風の金髪男が、木陰から無言で現れる。 「……」 無言ではあるが、明確に美樹に対して敵意を向けている。若いながら、カリスマ性にも似た風格が漂わせるその男は、『ドッグ・マン・スター』のスタンド使い「脚蛮 醤(ぎゃばん じゃん)」 「『ドッグ・マン・スター』……」 「無粋ね……」 醤は冷淡なテンションからスタンド名を吐き出してスタンドを発現させ、それに対応するように美樹も自身のスタンドを発現。 「!!」 先手を取ったのは美樹。 とてつもない小柄なスタンド像からは想像できないほどのパワーとスピードで、『E・キャットウォーク』は醤へと殴りかかる。 いくらポーカーフェイスを気取っていようと、完全に女性的な可愛らしいスタンドに気を取られて油断した。だが…… 「受け切れないとでも思ったか」 『ドッグ・マン・スター』もまた、それに勝るとも劣らぬスピードとパワーを有している。面喰って躱せなかっただけであり、決して受け止めきれない破壊力ではない。 「フフっ……そうね。でも躱すのが「唯一の正解」よ」 「何ィッ!?」 ?! 醤は「思わず口走ってしまった」その言葉に驚いた。他でもない自分の口から出てきたその言葉は、普段自分が全く使わないであろう言葉だ。 彼は決してクールな性格なのではない。単に口下手なので会話が持たないだけ。 「北斗の拳」でケンシロウによって「あべし」だとか言わされるチョイ役が放つであろう言葉。 「フフっ……最初は「思考」で抵抗できる。でもそのうちに完全に「染まる」わよ」 美樹は醤に背を向けて、木々をかき分けてどんどん森の奥へと姿を消した。 「待ちやがれブッ殺すぞッ!」 ここまで異常な状態は、明らかに、すでにスタンド攻撃を受けている証拠でもあった(詳細こそ分からないが)。 そこからすぐ、何の考えもなしに美樹の追跡を始めてしまったのがさらに事態を悪化させる。 木々がどんどん深くなったのだ。小柄な美樹にとっては、身を隠す場所など大量に存在する。そんな場所である。 「チクショウ……」 これは恐らく、美樹の術中にハマってはいなくとも零していただろうと痛感する。スタンド能力的にも、策略的にも、罠にハマってしまったのだ。 「フフっ……」 不敵な笑みを浮かべながら、木の陰へ木の陰へと跳び移り続け、醤とも距離をとる。わざとらしく木の葉を踏みまくって特定されやすいように音を立て、醤を誘っている。 「フフっ……あの人の名前何かしら。結局聞けてないわ」 「醤……「脚蛮醤」だ」 当然、醤によってすぐに特定される。あまり距離を取れていないから当然と言えば当然。 『エンヴィ・キャットウォーク』の射程距離は短い上に、あまり離れ過ぎると「相手を小物にする」能力はいっぺんに解除されてしまう。 つかず離れずが条件なのだ。だからこそ美樹は決着を急ぐのだ。表情こそ余裕を崩してはいないが、内心では彼女もあせっていたのだ。 「テメエの能力は分かんねえがよぉ~ 俺の能力は「同期」だ」 能力を自らバラす。これは「噛ませ犬」的な立ち位置のキャラクターがする行動だ。そう言うやつはきっと自分が優位であると認識したいしさせたい、その人物の人間性がさもしい証拠だ。 「だからこんなことだってできる」 醤は、懐から取り出した「石」を『ドッグ・マン・スター』の拳で破壊した。 「…………?」 粉々に砕け散る「石」の表面に、「あるもの」が刻まれていたのを、美樹は一瞬だけ目にした。 次の瞬間、美樹の着ていた制服の袖が、「砕け散った」のだ。 「な……ああああ???!!!」 これにはさすがに美樹も冷静さを失いかけたが、それでも持ち直す。 「…………! だから何だって言うの。勝負はこ……」 美樹が言い終わる前に、醤はその「外道なる拳」でラッシュを放っていた。彼女に対して露骨に嫌がらせを行うような、壮絶なラッシュ。 「くそ……! 『エンヴィ・キャットウォークッ!』」 『NEKOPUUUUNNCH!!!!』 美樹の対応は決して後手に回った物ではない。小柄ながらもパワフルなステータスで以てしてその拳を捌き切ったのだ。 「躱すのが「唯一の性格」なんだろっ?」 「え……」 醤の懐からは、さっきと同様に「あるもの」―――「★マーク」が刻まれていた。 それら全てが、『エンヴィ・キャットウォーク』を経由してフィードバックし、制服全体に刻まれた。 全力で撃ち続ければ確実に、そんなことせずとも仕留められただろうが、それを醤はしなかった。 もちろん、紳士的に配慮したわけでは当然ない。彼女の服をひんむいてあられもない姿にしようとしているのだからそれは絶対ない。 人を殺す度胸はなく、かと言って人を貶めるのに快感を覚える、そんな『小物』のするようなことを、ただやっただけだ。 「『え……エンヴィ・キャットウォークッ!』 か……解除」 遅かった。 醤は、『小物』が『小物』であることを尊重するように、美樹の服をざっくざくと細切れにしてゆく。 さらに悪かったのが、ちゃんと『E・キャットウォーク』が解除されたこと。それによって醤は、もとの無口な青年に戻った事であった。 マジ泣きする美樹に上着を掛けて、そのあられもない姿を見ないようにして、迎えよ早く来いと醤が心の中で思っていたのは言うまでもない。 ★★★ 勝者 ★★★ No.4492 【スタンド名】 ドッグ・マン・スター 【本体】 脚蛮 醤(ギャバン ジャン) 【能力】 マーキングしたもの同士を同期させる オリスタ図鑑 No.4492 < 第04回:予選③ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ トーナメントとは? ] [ オリスタwiki ]
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/130.html
act.2 急所目がけて狙った剣は深々と体内に入り込み正面から心臓を射ぬいていた。 龍の巨体が崩れ落ちる。 足元が衝撃でぐらりと震動した。 動かない龍を見て女は息を吐く。緊張が解けたからだろう。 全身がゆるやかに弛緩していく。 剣の光は消え去り虚脱感が腕の先から広がっていった。 「……」 女に刻まれているのは龍殺しの刻印。 刻印とは先天的に刻まれた呪いであり、その呪いの副次的に能力が発生するものである。 女の相手が龍ならば、死ぬことはありえない。所有者が意識し刻印に触れるだけで、刻印の力は解放される。 女の場合、それは「龍を絶対的に殺す」というものであり、龍種に対して女は無敵である。 先程のように光を剣に宿せば龍の鱗がどんなに硬くとも貫通し、心臓を貫く。反対に龍の攻撃は女の前において無力と化す。 故にそれは呪いであった。 「隊長お~!シアナ隊長お!!」 間の抜けた男の声に振り向く。 見知った顔だった。女――シアナの部下、イザークである。 彼もまたシアナと同じ甲冑を着こみ、剣を手にしていた。 ただシアナほど得物の扱いに慣れていないのか、何処となく動きがぎこちない。 倒れている龍の骸に気付いて、イザークは顔を青くした。 「うっ、そ、そいつ……!」 「死んだわ」 「そ、そうですよね。今にも動き出しそうな面構えしてますけど……もう大丈夫なんですよね。 隊長がやってくれたんですから」 「そうね。こいつは死んだから。 でも――起き上がるかもしれないわね、龍の中にはそういう馬鹿げた種類のがいるから。 一度迎えた死すら治癒するような奴がね。 心臓を仕留めたのに再び動き出すなんてざらよ」 イザークは大袈裟な仕草で、「ひぃい……」と怯えながら後退する。 「そっ、それ本当ですか!!!」 滑稽なくらいに顔を歪ませるイザーク。相当龍が恐ろしいのだろう。 「冗談よ、こいつはもう起き上がったりしないわ」 無表情で全く笑えない冗談を口にするシアナに、 イザークは安堵とも呆れともつかないため息を吐き出した。 隊長、冗談キツイっす、と零しながら。 もうひとつ脅しをかけてやれば泣き出すのではないかと、シアナは暗に思った。 「それよりこれくらいで驚いてて騎士が務まると思うの。 もっと常日頃から毅然としてなさい」 「そんなあ。無茶言わないで下さいよ~隊長が毅然とし過ぎてるんですよ。 それより、一人くらい僕みたいのがいた方がいいと思うんですよね。 ほら騎士隊って男ばっかでむさ苦しいし、なんかいつもピリピリしてるじゃないですか。 僕って自分で言うのもなんですけど、癒しの才能があると思うんですよ。 殺伐とした中にひと時の笑顔と和みをもたらしまーすなんて!ああ、それで売り出していこうかな。 貴重ですよね僕みたいなキャラは」 「……」 今度はシアナがため息を吐く番だった。 つくづく変わった男だ。 イザーク・シュトラール。 フレンズベル国内でも名の知られる大貴族シュトラール家の嫡男。 ……であるにも関わらず、位を自ら捨ててわざわざ騎士に志願したという変わり者である。 国に多額の寄付を行っているシュトラール家の一人息子とあっては、騎士隊も入隊を拒むわけにもいかず、 イザークは騎士隊の中でもかなり上位のランクの騎士隊に配属された。 ――それがシアナを隊長とし、彼女が率いるフレンズベル第三騎士隊である。 フレンズベルに軍事機関や兵士は存在しない。 代わりに二十四ある騎士隊が全ての争事に関して国から一任されている。 その為、騎士隊はフレンズベルの象徴ともいえるべき存在であり、国の防衛を担っていた。 単純に軍事力、防衛力として換算するならば、他国と肩を並べるか、一歩先ん出た火力を保持している。 それは一重に騎士隊が皆、優秀精鋭であること(たまにいるイザークのような存在を抜きにして) そしてフレンズベルが周囲を森林、湖水に囲まれており、地形的に攻め難い場所にあることなどがあげられた。 騎士隊の仕事は国に代わり、戦や危険事を代行すること。例えば先程のような龍退治もそれに含まれる。 ランクが上位にある騎士隊ほど、より危険な仕事を任されることになるのだ。 ちなみに龍退治のレベルは換算してS+であり、通常ならば一番上のクラスの騎士隊が引き受けるのが通例である。 にも関わらず、シアナの第三騎士隊が仕事を任された理由はただひとつ、それは龍殺しのシアナがいるからに他ならなかった。 シアナは若干、十八歳。 この年齢で第三騎士隊長を、しかも女性が務めるのは極めて異例である。 シアナが騎士隊に入団して、およそ二年。その間に数々の功績を討ち立て、隊長の位に収まったのだが、 その中の一番の功績は、龍殺しであった。 龍の巣が森の内部に存在しており、森に入れば頻繁に姿を見せるのだが、フレンズベルでは人間と龍が友好的ということは決してない。 龍はフレンズベルでは畏るるべき悪魔であり、そして怪物と同義語である。 遠い昔、龍と人間が壮絶に争った戦いがフレンズベルでは何度かあり、それは未だに人間と龍の間に深い遺恨を残していた。 その忌まわしい龍を、何十人とかかって倒せない敵――をたった一人で打ち倒していくその姿は、 いつからか――シアナの刻印の事を知らない者でさえ「龍殺しの騎士」と形容することになる。 龍殺しは偉業、奇跡のなせる技であり、それを容易く何回も行うからこそシアナは女性で、 若い身空でありながら特例措置として ここまで出世することが出来たのだ。 ……龍を殺す女。他の騎士隊の中にはシアナを化け物と呼んで畏怖する者もいる。 その女を目の前にして、あっけらかんとお茶らけた事を口にするイザークは果たして豪胆なのか、ただの空気を読めない馬鹿なのか ……多分後者だな、とシアナは失礼な推測を試みた。 見た目は優男で、まるっきり貴族のボンボンという雰囲気が抜けきっていないし、 武術の腕に関しては良いところCである。 精神面に関しては――さっきの例がいい具合だ。いつもあんな感じで怯えてばかりおり全く場慣れしない。 シアナの部下としては失格もいいところである。これは、もっと鍛えなくては――。 「イザーク。帰ったら鍛錬しなさい。私がじきじきに稽古をつけてあげるわ。スペシャルコースをね」 「ええっ。す、すぺしゃる……?!!」 「そ。いつもの三倍よ」 「いっ、いつもの三倍っ……!?」 いつものメニューも死にそうなくらいきついものであるのに、あれの三倍!? イザークは死したる自分をありありと想像した。 「隊長っ!!すみませんごめんなさい!!それだけはどうか!!ご慈悲を!!」 焦りすぎて言葉になっていない。
https://w.atwiki.jp/tsvip/pages/1360.html
・赤羽根 真司(26) 雑居ビルの一室に構える探偵事務所を経営する若い探偵。 事務所の所長という立場にあるが、従業員はゼロ。 荒っぽい口調と下品な会話センスで誤解されがちだが、冷静で、鋭い観察眼と頭の回転の早さを持ち合わせており、探偵としてのスキルや知識は一通り備わっているが、世相には疎い。 普段からハードボイルドを気取っていて、黒い帽子と安物のコートを一年を通して一張羅として愛用している。 趣味はパチンコだが収支はズタボロで常に金欠病。 ヘビースモーカーで、愛用の煙草は赤ラーク。 赤羽根 名佳(なのか)(??) 素性が一切謎の黒髪の少女。 自分に関する記憶が一切なく、自分の名前も覚えていない。一人称が"オレ"なことから、ごく最近異性化疾患が発病した患者だと赤羽根から推測される。 名前も覚えていないため、仮称として一週間の間、赤羽根の被保護に入るという意味合いで"赤羽根 なのか"と名乗る。 年齢差が微妙な為、兄妹だと名乗るが、見掛けだけだと親子に近い。 歯に衣着せぬ性格で赤羽根を手玉に取ったりする一面も。 赤羽根曰く"黙っていれば美人"と言わしめる容姿の持ち主。 神代 宗(??) 15~16歳の性交渉未経験者の男子が発病する"異性化疾患"。それを管理する"異性化疾患対策委員会"の委員長代理を務める男性(委員長は現在空席となっている)。 赤羽根 名佳の名付け人でもってある。 政財界の名家の出身であるが、過去に医師職に従事し、数年の間"委員会"の資料係を経由して現在の職に就く、という官僚にしては珍しい経歴を持つ。 委員会の長代理として、探偵に仕事を依頼することがしばしばあり、赤羽根と接点を持つようになった。 年齢は赤羽根より年上の筈だが、それにそぐわない甘い風貌を持ち、女子高生である坂城 るいを私設秘書に置いていることから、赤羽根からは"イケメンロリコン"や"坊ちゃん"の蔑称を付けられている。 軟弱な優男のように見える容姿とは裏腹に、実戦空手の段位を取得しており、赤羽根曰く"マジ喧嘩になったら殺される"程の腕前。 坂城 るい(16) 委員会の長、神代 宗の私設秘書を務める女子高生。青いリボンで結った短めのポニーテールがトレードマーク。 人懐っこい可愛らしい笑顔に騙されてがちだが、彼女も異性化疾患の元男。 その柔らかい物腰と見た目とは裏腹に強気で、強情な性格をしており、大人とも渡り合う話術の才を持つ。 それ故に神代を除く他の委員会役員と対立することもしばしば。 空手道場を営む"御堂家"に下宿しており、本人も空手を習っている。 自分と重なるせいか、異性化疾患に冒された人間を見ると色々と世話を焼きたがる傾向がある。名佳もその例外ではない。 神代曰く、"経験を積めば委員会の長を任せられる器"だとのこと。 御堂 初紀(16) 坂城 るいが下宿している御堂家の一人娘。彼女も突発性の異性化疾患に冒された元男。セミロングの艶やかな髪と細身のスタイル、そして母親譲りの整った顔立ちで、実家の営む空手道場の看板娘の一人として貢献している。 るいよりも空手歴は長く、体躯に恵まれないものの、その脚線美から放たれる足技は大の大人でもノックダウンさせる破壊力を持つ。 良くも悪くも常識人で、周囲に対して挑戦的な態度を執ってしまうるいを窘める場面もしばしば。 神代とも個人的な面識があり"宗にい"と彼を呼称する。 ある少年を巡って、るいと争っているらしいが、意外と悶着は少ない。 最近の悩みは母親が趣味で縫うコスプレまがいの衣服のマネキン役にされてしまうこと。 前田 陸(16) 神代が"とある切欠"で知り合った、異性化疾患に対する抗体(16歳の誕生日を過ぎても男で居られる)を持つ少年。 まだらな茶髪と、人を寄せ付けない切れ長の目がトレードマーク。 坂城 るい、御堂 初紀と同じ学校に通っており、互いに交遊がある。 バイクの免許を取得しており、レーサー顔負けの運転技能を持つが、現在はとある理由でバイクに乗ることを自粛している。 義理堅く、短気で実直な性格。 自らをバカだと自称しているが単純に知識に疎いだけで、直感力と観察眼は赤羽根に勝るとも劣らない。 宮前 芽依(24) 県警捜査一課に属するキャリア組の新米女刑事。 嫌煙家で、腐れ縁である赤羽根とは全くソリが合わず、現在は自他共に認める天敵で、顔を合わせる度にトラブルが巻き起こると署内では専らの噂。 警察官としては体格にも顔付きにも恵まれて居らず、赤羽根と並ぶと親子と間違われたことも。 赤羽根には"合法ロリ警官"、略して"ゴロリン"との蔑称を付けられているが、その見た目と相反して射撃の腕前は一級品。 真っ直ぐな性格なせいか必要悪や理不尽に対して容赦がなく、権力に屈することを嫌うため、赤羽根だけでなく本来なら敵対すべきではない筈の神代も毛嫌いしている。 事件が発生した際、現場付近に居た赤羽根と名佳の二人に疑いを持つ。 拝島 啓次(??) 祐子の上司である捜査一課の刑事。名前も啓次。フランクな性格で、赤羽根が苦手とする警察機関の中での唯一の理解者。 現場の叩き上げで、仕事に関しては厳格で、相手が身内でも容赦がなく課内では"鬼の拝島"の名で通っている。 愛煙家でフィリップモリスを吸っており、職場で芽依に睨まれているが気にする様子はないらしい。赤羽根とは探偵業を始める前からの付き合いであるが、その理由を知るものは警察署内でも少ない。 佐伯 琴夜(16) 赤羽根 名佳よりも一足早く、坂城 るい、御堂 初紀らの在学する高校に転入してきた少女。 同世代の女子と比べて頭一つ分くらい背が高く、スレンダーな体格とミディアムボブの髪型、間延びした喋り方が特徴。 自分の気に入ったものは人物、風景を問わずに携帯カメラに収める癖があり、撮影時のテンションは周囲の人間を引かせてしまうほどである。 皆塚 真那(16) 前田 陸、赤羽根 名佳と同じクラスに在籍する女子。クラスの女子グループのリーダー的な存在で、その発言力はかなり強い。 過去に陸、初紀と一悶着あったらしいが、その事実にクラス内で触れることはタブーとなっているらしい。
https://w.atwiki.jp/rozenrock/pages/11.html
つんつん。 誰かが後ろから金糸雀の肩をつついた。 「ふぇ?」 振り向くと、 そこには薔薇水晶が立っていた。 ジャーン!ジャーン!ジャーン! 「げぇっ、ばらばら!」 「・・・・・・」 色素の薄い髪と瞳。その瞳も片方を眼帯で覆った彼女は、思わず敗走中に伏兵の襲撃を受けた武将のような驚き方をしてしまった金糸雀をただじぃっと見下ろしている。 (わ・・・・・・忘れてたかしらー!!) そうだった。薔薇水晶の存在を――我ながらちょっとひどいと思った――忘れていた! 切羽詰った緊急事態の緊張が金糸雀を視野狭窄に陥らせたのだ。そうに違いない。そういうことにしておこう。 彼女もいつもの面子の一人だというのに、自分としたことが・・・・・・。 この個人的な謝罪の心が届くかしらばらばらー、と思いつつ金糸雀は薔薇水晶を見上げる。 ゴメンかしら金糸雀「・・・・・・」 沈黙を守る薔薇水晶「・・・・・・」 と、ところで何の用なのかしら?金糸雀「・・・・・・」 薔薇水晶は瞬きもせずようすを見ている「・・・・・・」 なす術なく石像と化した金糸雀「・・・・・・」 華麗なる彫像と化した薔薇水晶「・・・・・・」 ・・・・・・い、息が詰まる・・・・・・・。 (・・・・・・呼んだのは向こうの方だったかしら?) 向こうからやってきて、一向に口を開く様子が無いのはどういうわけか。 いや薔薇水晶はいつもこんな調子だったか。 しかしちょうど頼るべき最後の一人が目の前に来てくれたのだ。先にこちらの用件を聞いてもらおう。と言うかそうしないと間が保たない。 恐る恐る声をかけてみる。 「あの、ばらばら?ちょっといいかしら」 と金糸雀が口を開いた刹那、 「宿題・・・・・・」 「え?」 ここでようやく薔薇水晶が声を発した。細い糸のような囁きとともに、持っていたものをこちらに差し出す。 「こ、これは・・・・・・」 それはまさに今、薔薇水晶に見せてもらおうとしていた数学の課題プリントであった。 完璧に全問、式と答えが記入してある。 「もしかして・・・・・・み、見せてくれるのかしら・・・・・・?」 こっくり、と頷く薔薇水晶。 「あ・・・・・・ありがとうかしらぁぁぁぁ~~~!!!」 なんということだろう。自分など頼るべき友人リストから一時的にとはいえ薔薇水晶の存在を忘れていたというのに、この子はさっきの自分と真紅のやりとりを見て、わざわざ課題を貸しに来てくれたのだ。何てよく気のつく子なのだろう。翠星石は薔薇水晶の消しゴムのカスでも煎じて飲むといい。 「このご恩は忘れないわよぅ。金糸雀は今、猛烈に感動しているかしらー!」 金糸雀は薔薇水晶の手をとってぶんぶんと友情の握手をかわした。薔薇水晶への感謝と、危機を切り抜けた安堵で涙さえ出てくる。 カナリアンシェイクハンド(金糸雀流握手)のあまりの勢いに体ごと揺さぶられつつも、一方薔薇水晶はいつもと変わらぬ無表情のまま、金糸雀に助言を与える。 「式を・・・・・・少し変えたりして・・・・・・丸写しは・・・・・・いけません・・・・・・・」 「わかったかしら。諸葛先生はその辺厳しいからかしら!」 びしぃっ!と親指を立てる金糸雀を見て、薔薇水晶はゆっくりと頷くと自分の席、水銀燈の右斜め後ろの机へと戻っていった。 金糸雀にはその後姿に後光がさして見えた。白い翼と頭上に輪っかも見える。 Illust 1 ◆6tDSZ/8cEU 氏 感謝と感激でもはや涙を滂沱と流しながら祈りのかたちに指を組んでいると、席に戻る途中で地上の天使はふと立ち止まり、こちらを振りかえった。 何故かうつむいていてその表情がよく見えないが、こちらを見てはいるようだ。 「ぅう?どーじだがじら、ばらばら(どーしたかしら、ばらばら)」 涙がまだ止まらないため鼻声で問いかける金糸雀。 その問いにしばし逡巡した様子を見せた薔薇水晶だったが、決意を固めたのか顔を上げてぽつりと、呟く。 「『ばらばら』・・・・・・は・・・・・・」 しかしその時、教室の扉が勢いよく開いて薔薇水晶の声はかき消された。 「やあ、みんなおはよう!さあ席について・・・・・・」 入ってきたのは、髪の短い優男風の外見。梅岡先生だった。 我らが担任の登場に、思い思いの行動をとっていた生徒たちがにわかに自分たちの席へと戻って行く。ホームルームが始まるのだ。 薔薇水晶も、しばらくは困り顔でこちらを見ていたが、仕方なく自分の席へと戻っていった。 「ばらばら・・・・・・何を言おうとしたのかしら・・・・・・?」 薔薇水晶の言葉が聞こえなかった金糸雀は、首をひねりつつも、 「とりあえず今は・・・・・・早くこいつを仕上げるかしら・・・・・・!」 今は目の前のプリントにとりかかることにした。薔薇水晶にはまた後で話を聞けばいい。 ※ こうして金糸雀は、ホームルームの間ひたすら内職をして一時間目の危機を乗り切った。 無事課題を提出して席に戻る金糸雀を見ていた薔薇水晶は、金糸雀からのウインクをその片方だけの瞳で受け取ると、うつむいて誰にも聞こえないような小声で呟いた。 「せめて・・・・・・雛苺のように・・・・・・『ばらしー』なら・・・・・・『ばらばら』は・・・・・・なんだか・・・・・・死体みたい・・・・・・だから・・・・・・」 するとその囁きの気配を感じ取ったのか、左斜め前に座る水銀燈が薔薇水晶を振り返って、訊ねた。 「薔薇水晶ぉ・・・・・・何か言ったぁ?」 突然水銀燈から声をかけられたことに、薔薇水晶の心臓の鼓動は一気に跳ね上がった。 顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。しかしなんとか平静を装い、静かに首を振って、どうにか返答を口にする。 「なんでも・・・・・・ありません・・・・・・お姉さま・・・・・・」 薔薇水晶の縮こまった様子と、その返答の「お姉さま」の部分に、少しだけ眉根を寄せて水銀燈は複雑な表情を浮かべる。 薔薇水晶は顔を伏せていて見ていなかったが、いわく困惑するような、わずかに哀しそうな表情。 しかしそれも一瞬のことだった。水銀燈はついと視線を窓の外へやると、いかにも興味なさげに言う。 「あらそぉ・・・・・・なら、いいんだけどぉ・・・・・・」 それっきり一時間目の間は、水銀燈がこちらを振り向く様子は無かった。 しかし薔薇水晶にはむしろその方がありがたかった。 一時間目の間、薔薇水晶の頬はりんごのように赤くなったままだったからである。 お姉さま――。 うっとりとした様子――彼女の表情の変化を見極められる者がいたとすればだが――でため息をつく薔薇水晶をよそに、時間は過ぎ去り、休み時間。 人知れず悩ましき乙女の、慈悲あるいは恩恵を受けた金糸雀はと言えば、 「あ、『ばらばら』ー!さっきはありがとーかしらー!!」 さっき薔薇水晶が何か言いかけたことなどすっかり忘れていた。 「・・・・・・いえ・・・・・・」 薔薇水晶も、しばらくの間は訂正する気になれなかった。 (2)へ戻る/長編SS保管庫へ/(4)へ続く
https://w.atwiki.jp/kokuto_4th/pages/20.html
スピルデン皇国の人々 皇都スピルデンの人々 山猫キャラバン +... マーシー(ヴァーナ,32歳,女) 表の顔 裏設定 山猫キャラバン社長5年前スピルデン皇国外からやってきてスピルデンの政策を利用し、一代で山猫キャラバンを築き上げる。非常に金に汚い「さっさと公務を受けて会社に金を運んできな!」 元マジェラニカ大陸ヴァールカー地方の豪族政争により、お家取り潰しとなり、エリンディル大陸へと逃げ延びスピルデンへと流れ着いた。彼女の目標は金を稼ぎ、家を再興することである。「私の家を守ろうとしてくれてた者達の想いに答えられるのならば、私がどう思われようと構いはしない」 アビィ(ヒューリン,27歳,男) 表の顔 裏設定 山猫キャラバンの事務を一手に引き受ける人物第1話でPC達がスピルデンに到着したときに山猫キャラバンで出迎えた人物よくマーシーに怒られているへらへらとした優男「しゃ、社長!ごめんなさい、その件はもう少し時間が!」「ご公務に励んでください、冒険者さん。山猫キャラバンは成果主義なのでがっぽがっぽですよー」 マジェラニカ地方の暗殺組織[蛇]の高等暗殺者マーシーを旗印に家を再興されることを恐れた豪族よりマーシー暗殺の指令を受けるも、彼女の生き方に惹かれ、離反しマーシーを支えることになる。殺しの技は普段は封じているが、マーシーの身の危険を取り除くためならば使用は躊躇わない。眼光の鋭さを隠すためにつけている眼鏡は本来の力を発揮する際には外す。[蛇]の団員の離反を封じるための毒を抑える為の解毒剤の量が残り少ないため自分の死後、マーシーを支えるものを育成することに力を入れている。「知らなくて良い事を知った。死ぬには十分な理由だろう?」「姫、貴女の夢を見届けられず先に逝く事をお許しください」 ギルド[デストロイヤーズ]第1話でPC達と共にスピルデンへやってきた冒険者達パンナ=コッタ(フィルボル,23歳,男,両手剣使い,ウォーロード)両手剣に全てを捧げたウォーロード巨人剣プレグライを自在に振り回せるよう絶賛筋トレ中3匹の陸ガニに積んだ大量のクリスタルブレイドで敵とギルドの財布を薙ぎ払う超高火力戦士 ガイン(ヒューリン,19歳,男,両手刀使い,ウォーロード)両手刀に命を懸けるウォーロード魔導剣としてカスタマイズされた彼の両手刀は視界に入るもの全てを薙ぎ払う暴風と化す高火力戦士 ウォークラウド(ドゥアン,39歳,男,両手刀使い,ウォーロード)両手刀に魂を捧げたウォーロード魔導剣としてカスタマイズされた彼の両手刀は視界に入るもの全てを薙ぎ払う暴風と化す高火力戦士 シャミィ(ヴァーナ,18歳,女,両手剣使い,ウォーロード)両手剣を愛するウォーロード突撃と粉砕の二言でどこまでも進んでいく超高火力戦士 ギュスターヴ(ネヴァーフ,43歳,男,両手斧使い,ウォーロード)両手斧と共に産まれたと豪語するウォーロード眼前の敵をただ粉砕し続ける超高火力戦士 セニア(ヒューリン,21歳,女,両手槍使い,ウォーロード)両手槍の収集が生甲斐のウォーロードスピルデンに珍しい槍があると聞き、ギルドごと移るように勧めた全てを穿ち続ける超高火力戦士 プトリ=トゥリリ(フィルボル,31歳,男,短剣使い,エクスプローラー)危険な冒険を乗り越えることが楽しみのエクスプローラー仲間との冒険も楽しいが、力押しになるので時々他のPTに入って開錠やらの腕を錆びつかせないようにしている高火力エクスプローラー リーシャ(ヴァーナ,22歳,女,魔導銃使い,スカウト)銃声をこよなく愛するスカウト両手に携えた魔導銃で敵を撃ち続ける超高火力スカウト アルフ(エルダナーン,62歳,男,両手棍使い,ウィザード)不幸なウィザードアラクネとヒールを使い普通のPTよりやや多い前衛を補助する超火力ウィザード の9人構成のチーム 今日もウィザードは胃薬片手に脳筋共のお守りをアラクネとヒールで行う。 触れると敵は蒸発する ギルド[トータルガード] 第1話でPC達と共にスピルデンへやってきた冒険者達 ナイト パラディン エクスプローラー スカウト ソーサラー プリースト の6人構成のチーム 堅実に戦い、地味に勝ち残ろうがモットー 短期決戦は嫌いです ギルド[酒の従者]第1話でタバサに絡む可能性を持っていた酔っ払い4人組酒を飲んでいるか都の防衛に出ているかのどちらかである。 ギルド[暁の弾丸]ハグ貴族御用達のギルド[暁の弾丸]所属のプリーストにして、熊に基本的熊権を与えるために奔走する愛熊家。世界を世紀末覇者から救ったりした彼も今は何故か傭兵稼業。PL達のギルドの熊の撃破数が一定数に達すると・・・? ベアハグの使い魔(クマ)背中にチャックがついている グンサー(ヒューリン,35歳,男)山猫キャラバンに協力する軍学者 皇都にいる人々 +... 皇都護衛軍 +... 天将:レオダリオン(エルダナーン,84歳,男)両手剣を自在に扱う皇都護衛軍のまとめ役 土将:ガレイズ(ドゥアン,42歳,男)巨躯をいかした豪快な戦い方をする格闘家 風将 ナジュ(ヒューリン,21歳,女)巨大な長弓を操る狩人 水将 フィミィ(ヴァーナ,14歳,女)片手棍を手にする撲殺ヒーラー 炎将 ジョード(ヒューリン,24歳,男)大斧を手に大暴れするアタッカー 少年騎士団 +... オルダート=アシャー(エルダナーン,13歳,男)スピルデンを想い青竜騎士団を設立した少年。他者からは、構成メンバーから少年騎士団としか呼ばれていないのを不服に思っている。 トッティ=ミストル(エルダナーン,,男) 皇都外にいる人々 辺境軍 +... 北域守護軍アルフォニミル=アシャー(エルダナーン,79歳,男)北域守護軍の総大将アシャー家当主 東方遠征軍 西方神聖軍 南域守護軍 監視哨の守人 +... アーク(ヒューリン,19歳,男)不滅隊の一員霧の森中央部での作戦監督官 プラム(ヒューリン,21歳,女)不滅隊の一員霧の森西部での作戦監督官ルート(ヒューリン,15歳,男)不滅隊の一員オリハルコン鉱脈調査作戦の監督官 ハンティングベアー(ドゥアン,68歳,男)不滅隊の一員ペリキアでの作戦監督官 クララ(フィルボル,29歳,女)コナカタ風穴での作戦監督官 神聖ヴァンスター帝国 バクーニン家の人々 +... 名前 続柄 性別 年齢 クラス ネオザリア 父 男 62歳 ナイト ヤスミール 母 女 61歳 パラディン ニーシェ 長男 男 39歳 ナイト ラシュマス 次男 男 38歳 ウォーロード フェミテ 長女 女 36歳 パラディン ルーヴァ 次女 女 34歳 パラディン ミシェア 三女 女 34歳 ナイト グレンネ 四女 女 34歳 プリースト ヒナリー 五女 女 34歳 ソーサラー エルビオン 三男 男 33歳 パラディン アンデシア 六女 女 32歳 ウィザード ミシェア 七女 女 32歳 ウィザード フェルドロット 四男 男 31歳 ウォーロード マロクディール 五男 男 31歳 ウィザード エンゲルハルト 六男 男 30歳 ソーサラー ポゾロワ 八女 女 29歳 ソーサラー ローテ 九女 女 29歳 プリースト ブリジッド 十女 女 29歳 プリースト ヒルダ 十一女 女 28歳 ウォーロード 所在不明 忍軍 +... 風魔黒右衛門 通称黒の風魔 ナガレ 通称雪花のナガレ 月風 通称幻影の月風 時雨 通称時狂の時雨 ウォレット 通称アーマードウォレット 細石 通称青の細石
https://w.atwiki.jp/negirowa2/pages/37.html
小っちゃな次期当主と大きなご令嬢 「………」 式守伊吹(32番)は不機嫌だった。 それは突然こんなところに連れてきたうえ殺し合いを強要した主催者への怒りだったり、口答えした少女が粉微塵に爆砕された時に不覚にも震え上がって何も出来なかった自分への憤りだったり、伊吹のマジックワンドであるビサイムが無いうえ強力な結界の所為で魔法の行使が出来ないことへの苛立ちだったり………… 理由を挙げると切りがないのだが、実のところ一番伊吹を不機嫌にさせているのは今の状況だった。 「沙耶と信哉はいったい何処におるのだ? 肝心なときにおらんのではどうにもならんではないか!! ……ええぃ、この際すももでも良い。神坂春姫でも……まあ許そう。とにかく誰かおらんのか!?」 普段の伊吹ならまず出ない言葉が口を突いて出るほど彼女は困惑していた。 こう見えても世界有数の魔法使いの名家、式守家の次期当主である彼女。魔法戦ならたとえ一人であっても戦い、勝ち抜ける自信はあったが、その魔法が制限された状態での戦闘、それも何でもアリの殺しあいとなると話が変わってくる。 このようなサバイバルに適しているとはお世辞にも言い難い伊吹にとって唯一の頼みの綱といえば支給品の武器だが、これも伊吹にとっては頭痛モノだった。 「くそっ、あの言峰とかいう輩、私にこんなモノを押しつけおって!」 忌々しげに伊吹が睨み付けるディバックの中には黒光りする一丁の回転式拳銃――コルト・パイソンがあった。 普通の人間なら大当たりだと歓喜するところだが、銃器の取り扱いが大の苦手(ゲームセンターのガン・アクションものですら散々だった)な 伊吹にとってはこれ以上やっかいなモノは他になかった。 おまけに銃に疎い伊吹は知らなかったが、このコルト・パイソンはかなり威力が強い銃で、非力な伊吹ではまともに撃てるかどうかも危うい代物だったのだ。 銃を見た瞬間、拒絶反応を起こし、ディバックに押し込んだから良かったものの、もしふざけて片手撃ちなど試していたなら確実に手首を痛めていただろう。 いつのまにか危機を回避していたことなど露知らず、伊吹はずんずんと森の中を進んでいた。 余りにも常識はずれな事態やら、気の知れた従者や知り合いのこと、いま自分を苦しめている悪路、使えない上に重い支給品、その他もろもろに気をとられていた所為だろう、普段の彼女なら気付いたであろうそれに伊吹は気が付いていなかった。 「むぅ、これでは埒があかん、ここは一か八か探知魔法でも試してみるか…」 結界が張られているのは重々承知していたが、試してみる価値はある。 そう思った伊吹が、探知魔法を発動させようと意識を集中させたその直後だった。 突如として視界が黒いカーテンのようなモノに覆われたかと思うと、背後から伸びてきた腕が、胸元に回り込んできた。 (捕まる!?) そう思った時にはもう手遅れで、その時には既に回り込んできた腕に伊吹の身体は締めあげられていた。 「なっ!? なっ、何奴だ!? いきなり何を……は、離せぇ~!!」 突然の襲撃に慌てふためきつつもどうにか脱出をしようと反撃を試みる伊吹。 だがしかし、余程の体格差があるのか抱き上げられた伊吹の足は地面から離れており、手足をいくらじたばたさせても虚しく空をきるだけで何の効果もなかった。 「離せと言うのが分からんのか!? この無礼者めっ!? は~な~せぇ~!!!! けほっ、けほっ…」 とうとう叫びすぎてむせ込む始末。万策つきたか…などと伊吹が思ったその時、背後から申し訳なさそうな声が聞こえてきた。 「ごめんなさい、なんだか可愛らしい娘が一人で歩いているのを見えたから、ついいつもの癖で抱き締めたくなっちゃって…」 声と共に締め付けが緩み、黒いカーテン(よく見ると髪の毛だった)も解ける様に引いていった。 ようやく開放された伊吹が呼吸を落ち着かせながら振り返ると、長身の女性――十条紫苑(33番)が、つい今しがた自分を締め付けた者とは思えぬほどたおやかな笑みを浮べてそこに立っていた。 話を少し前に戻す。 「さて、これからどうしましょうか?」 支給品を渡された紫苑が聖堂を出てからまず考えたのは、ごくごく普通な考えだった。 知り合いが出てくるまで、この辺りでじっとしているか、それともここから離れるか…… 聖堂の中で見ていた限りでは呼ばれる順は五十音順だったから、同じさ行の周防院奏や菅原君枝辺りとならすぐにでも合流できるだろう。 「奏ちゃん…」 特に目に入れても痛くないほど可愛がっている奏とはすぐにでも合流してあげたい。そしてぎゅっと抱きしめ――いや、守ってあげたい。 しかし、今は殺し合いの真っ最中、奏たちをまっている間、誰かに襲われないという保障も無い。 それに加えて紫苑は病弱な身、奏たちと上手く合流できたとしても、発作など起こした日には逆にお荷物になりかねない。 瑞穂と合流できたなら話も変わってくるのだろうが、五十音順では瑞穂が出てくるのは大分後になるので期待できそうも無い。 「仕方ありませんね、少し離れたところで様子を見ることにしましょう」 結局考え抜いた挙句、紫苑は聖堂から離れることにした。 間もなく紫苑は濃緑の森の中でやけに目立つ銀髪の可愛らしい少女を見つけ、その少女――式守伊吹の寿命を削ることになった一歩を踏み出したというわけである。 時間:1日目・午後3時00分】 【場所:森の中】 式守伊吹 【装備:コルト・パイソン(.357マグナム弾6/6発)】 【所持品:予備弾丸(.357マグナム弾)×24、支給品一式】 【状態:健康、かなりびっくり】 【思考】 1・誰だ?というか今のは一体…… 2・沙耶や信哉たちと合流。 3・この際すももたちでも構わん! 十条紫苑 【所持品:支給品一式(ランダムアイテム不明)】 【状態:おボクさまモード(解除されつつある)】 【思考】 1・可愛らしい娘ですね。 2・奏ちゃんが気になります。 3・瑞穂さんたちと早く合流したい。 【武器詳細】 コルト・パイソン 1956年にコルト社が開発した.357口径の大型リボルバー。仕上げのよさから「リボルバーのロールスロイス」とも呼ばれる。 S W M19(コンバット・マグナム)より命中精度が高いように思われているが実際にはベンチテストでの差は無く、弾速が低い分ロングレンジを苦手とする。 弾速が低くバレル下にウェイトを持つため反動はいくぶん軽い。 分かりやすく言うと『シティーハンター』の主人公が使っているあの銃。 時系列順で読む 前話 運命の時 次話 ヘタレ少年! デコメガネ少女に会う 投下順で読む 前話 元暗殺者とたまと優男 次話 天の杯をもう一度 前登場 名前 次登場 GameStart 式守伊吹 魂響 GameStart 十条紫苑 魂響
https://w.atwiki.jp/ova-v/pages/317.html
概要 Vikhan (イラスト:怨是さん) 階級 小尉 パイロット名 ヴィハン 所属 STCC直営AC部隊 職業 STCC隊員 性別 男性 身長 174cm 年齢 27歳 設定使用条件 フリー 「こちらS-32ヴィハン。目標を確認。潰します」「ここで退きますか。敵前逃亡とは、貴方は役立たずの屑ですか?」「僕がやりますよ。平和のために、そのためにここにいるんです」 STCCに所属し、主に超過兵装(オーバードウェポン)関連の任務を精力的にこなす『ヴィハン』のコードネームを持つ隊員。 かつてはバンガードに所属していたが、過剰な破壊をもたらす超過兵装は平和のために排除すべき危険な因子であると判断し、STCCへと移ってきた人物。基本的には自身の役割をしっかりと認識はしているが、超過兵装に関しては強引な手法をとろうとし、暴走することも多い。理想として平和を心から求め、その一歩として『責任無き力の暴走』を根絶すべきと考えている。 金髪のおかっぱ頭で、銀縁の眼鏡をかける。軍人らしからぬ穏やかな雰囲気を持つ優男であり、普段から微笑みを絶やさないが、ひとたび口を開けば丁寧な口調で罵詈雑言と毒舌の嵐が飛び出す独善的な性格破綻者。押してダメならさらに押して解決しようとする非常に強引な節がある。デスメタルを大音量で聞きながらの優雅な(?)ティータイムを日課とし、紅茶に関しては非常に五月蠅い。 補足(クリックで展開 本名『ベネディクト・ボールドウィン(Benedict Boldwin)』。傭兵出身者の多いSTCC直営AC部隊の中では、数少ない軍属であった身である。傭兵として活動したことも無いが、古参のミグラントであるボールドウィンの一族の出身であり、幼少時から家業に携わっていたため、ミグラントや傭兵の文化、情勢等には非常に明るい。幼少時より傭兵に携わって『責任無き力の暴走』を目の当たりにし、それに根絶するために軍属の道を選んだとされる。 参考セリフ集(クリックで表示) ■作戦開始「始まりますね。潰しに行きましょう」「超過兵装は無いですね。サポートに回ります」 ■作戦成功「平和に一歩近づけばいいですね」「我らが勝利に乾杯を」 ■敵AC出現「超過兵装……、絶対に潰します」「なんですか? 誰か知りませんが潰します」 ■友軍被弾「その程度は損傷のうちに入りません。突撃します」「この程度で撤退? 敵前逃亡ですか? 」 ■友軍大破「機体大破は仕方ありません。目障りですので、退いてください」「意外と役立たずですね」 ■被弾「この程度では退きませんよ」「まだ、まだ、いける。潰しにいける」 ■撤退「僕が敵前逃亡……。認めるか、みとめるか!」「許しません。次は潰します」 ■敵機撃破「潰しました。次は? 」「この程度ですか、駄犬ですね」 ■友軍誤射「また? わざとじゃないんですか? 貴方から先に潰しますよ? 」「貴方はド素人ですか? 能無しですね」 ■誤射「僕の前に立たないでもらえます? 」「申し訳ありません。――それ以上文句を言うなら貴方を潰します」 ■領域離脱「逃がしません。潰します」「敵前逃亡ですか。腰抜けですね」 搭乗AC PEACE MAKER (C)1997-2012 FromSoftware, Inc. All rights reserved. 機体説明 機体名 ピースメイカー 機体タイプ 高機動高防御中量二脚 武装 レーザーブレードガトリングガン追加弾倉ジェネレータージャマー×2(バトルライフル) リコン 浮遊型 ショルダー 左肩格納 備考 武装変更の場合あり 撃破報酬 ‐Au ASSEMBLE CATEGORY PART R ARM UNIT AM/LBA-251 L ARM UNIT AM/GGA-206 SHOULDER UNIT FUJINAMI mdl.1 OVERD WEPON - R HANGER UNIT Au-TA82(ARAGANE mdl.1) R HANGER UNIT Au-TA82 HEAD HD-210 CORE Co-D-S44 ARMS Ar-P-C23★ LEGS L03 Frequency FCS FA-108 GENERATOR GA-319 BOOSTER Bo-C-L13 RECON UNIT Re-X-A13 対オーバードウェポン用にアセンブルされた中量二脚AC。ポジションとしてはジェネレータージャマーによるオーバードウェポンの起動妨害とけん制射撃を行うサポート機であるのだが、機を見てはレーザーブレードやブーストチャージによる突撃を仕掛け、直接破壊を試みることが非常に多い。ジャマーの重要性が低いミッションでは、火力不足を補うためにジャマーをバトルライフルに換装して出撃するケースもあるが、結局は突撃を仕掛ける。 関連 関連人物、所感 【Team Member】 ダフニス - 理解できる上官「平和を求めましょう」 ガズニ - 信用できるほうの副官「判断は信用してませんけどね」 ベルマレイ - 信用できないほうの副官「腕だけは信用してますけどね」 ドゥンケル - 尊敬できる上官「是非お供させてください。"平和"のためになら潰してしまいましょう」 ホファヴァルト - 信頼は出来る上官だが「多少の犠牲程度は仕方ないと思いますけどね」 カルスキ・オフチャル - 役に立つ同僚「良い情報があればすぐに教えてください。潰しに行きますから」 ゴルスカヤ - 対空の専門家として信頼できる上官「空を潰すことはお任せします」 ベノム・チワワ - 期待の新人「平和を脅かす負け犬のクズどもを一欠片の存在すら残らないように、地獄の果てまで突き落とし蹂躙し撃破し殲滅し処刑し壊滅させFuckし叩き潰してしまいましょう」 【Hate】 オーバードウェポン - 不要「平和のために全て潰します」 D・クロケット - 過去に指揮下に入ったことがあり、『武力の肯定』には共感できるが「貴方のように暴走する者が超過兵装を使うべきではない」 アルコフリバス・ナジエ - まさに責任無き力の暴走そのもの「詳細は知りませんが、責任を持てるほどしっかりしてませんね? 」 大佐 - 混迷の根源であり、いきすぎた力の所持者「個が責任を持てる範疇を明らかに超えていますが、自覚はおありでしょうか? 」 ルルア・シーベント - 次の争いのために争いを行う駄犬「貴方のような駄犬とは協力したくありません」 【Family】 妹 - 性格のねじ曲がった守銭奴の実妹。そういえば、軍に入ってから連絡も取ってない「傲慢でサディスティックで最悪の妹です」 狂犬観察日記(登場作品) オーダーミッションNo.023【アリーナ変則試合乱入】CASE1 オーダーミッションNo.049【超巨大建造物強行調査】 CASE1 オーダーミッションNo.033【大型機動兵機破壊】CASE2 (怨是さん) 投稿者:ug 登録タグ: STCC AC ug バンガード 中量二脚 男性
https://w.atwiki.jp/senka/pages/49.html
作者:2スレ7氏 光の差し込まない牢の中にいる。 埃っぽい空気が揺れている。 石材で囲われた部屋に、シーツだけが清潔なベッドが置き捨てられている。 レイチェルは冷たく冷えたシーツの上にぽつねんと座っていた。焦燥が胸を焦がし、 音の死に絶えた囚人生活に気が狂いそうになる。ギザロフに囚われてから、もう三日が 経っていた。 怖かった。どうしてこんな目に遭わなければならないのかわからない。ギザロフ元帥 といえば、レーゲンブルク連邦王国軍部の最高責任者だというのに、どうしてこのよう な非道をするのだろう。私のような小娘に何の価値があるのか。村を略奪し、賢者の水 晶を奪っただけでは足りないというのだろうか。 魔力キャパシティーの高い人間は、ギザロフのように魔道研究を嗜む人物にとっては 格好の素体である。レイチェルの身体に秘められた素質はギザロフ元帥の目を引くには 十分すぎるものだった。しかし、そのようなことがレイチェルにわかるはずもない。今 まで弟と兄がわりの村の若者と共に三人で、つつましくも楽しく暮らしていただけなの だ。村が戦火に包まれてから、何もかも変わってしまった。知らないことは罪だと言っ た人がいた。本当にそうなのだろうか。自分のような無力な小娘は、偉い人に何をされ ても文句を言うことさえできないのか。 (お兄ちゃん…………!) 生きているのだろうか。死んでさえいなければまた会えるが、今はとにかく声がきき たい。抱きしめて欲しい。もう大丈夫だと、その腕で抱きしめながら保証して欲しい。 兄が言うことなら何だって信じられた。今だって、その扉を開けて、大丈夫、助けに来 たよって、すぐに、 「出ろ。逃げようとはするなよ」 と、声をかけられて、息を呑んだ。光にまぶたを貫かれて目を眇める。そして扉をじ っと見つめると、若い男が入ってくるのがわかった。兄よりも少し上だろうか。薄手の 上からでも盛り上がった筋肉が、手に持った赤い灯火の輝きに照らされていっそうに鮮 やかに見える。 「クルーガーだ。名乗れ」 「レ、レイチェル、です…………」 唾を飲み込んだ。恐怖のあまり、失神してしまいそうだった。二十代前半に見えるこ の優男は、村のどの男性よりも優雅で洗練された容姿の持ち主だったが、それが逆に恐 ろしい。 よく見ると、本当に綺麗な男だった。兄のほうがずっと男性として好ましいとレイチ ェルは思うが、このような場で出会ったのでなければ、甘い空想に浸ることもできそう なぐらいの人だった。闇の中で伸ばされた手がレイチェルの白い袖を掴んだ。ぞくりと 、冷気が指先から伝わってきたような気がして、レイチェルは身体を強張らせた。 「来い」 「ま、まって」 ギリリ、と、掴まれた腕に絞るような力が込められた。レイチェルは苦痛にうめいた が、男はやはり冷たい目を向けただけだった。しゃべるなと言外に言われたので、泣く 泣く男の後を追うのだが、あまりにも早足なので耐え切れなくなって、 「は、離して。逃げないから、ついていくから!」 「…………」 と言うと、腕に込められた力が失われた。クルーガーと名乗った男は、それっきりレ イチェルを振り返ることもなく、淡々と前を歩き出した。 泣き叫びたいほどに恐ろしかったが、混乱はなかった。クルーガーの意思表示は簡潔 にして明瞭であった。レイチェルは黙って彼の後に続いた。しかし、無言で歩いている と足までが重くなった。会話を交わす余地などなさそうだったので、レイチェルは今い る場所を観察した。 薄暗い廊下のあちこちに、書物や道具が置いてある。不思議な光沢の盾、それ自体が 光を放っている青い水晶、無造作に積み上げられた魔道書、指輪、ろうそく、ハンカチ ーフ、弦楽器、金属で出来た動物の置物。ここは粗大ゴミの集積地なのだろうか。それ らの多くは、ものすごく価値がありそうもあり、ガラクタのようでもあって、知識のな いレイチェルの目には全く区別がつかない。芸術的な造形を施された品だけが、かろう じて目に止まるぐらいだ。 急に開けた場所に出て、レイチェルは瞠目した。見たこともないぐらいに豪華な屋敷 の、その居住区部分に出たことに気がついたからだった。村長の屋敷などは比べ物にな らないほどのすごさだった。人の目に触れることを意識している場所なのは間違いない らしく、豪奢な刺繍のほどこされた絨毯がまっすぐに敷かれ、磨きぬかれた窓ガラスが 幾重にも並び、天井に吊るされたシャンデリアの群れがまぶしいほどに輝いている。レ イチェルは元帥というものが雲の上にある概念であるということを本当の意味で理解し た。ただ、驚いている暇はなかった。樫材で作られた扉の前に立って真鍮製のドアノブ を回したクルーガーは、さっさと部屋に入り、レイチェルのために道を開けた。レイチ ェルが部屋に入ると、すぐに後ろに回ってその扉を閉めてしまった。 「…………」 一目、その部屋を見たレイチェルは、これから自分の身に何が起こるのかを理解して 青ざめた。 部屋には女の子達がいた。 自分と同じぐらいの、可愛い女の子だった。 それが、三人の服を脱がされた男達に、組み敷かれていた。 「…………うっ…………あ、ああ…………」 でっぷりと肥えた男の腹が、波打つように揺れている。その上に乗せられた少女は、 にごった瞳のまま両手で男のものを握り、ゆらゆらと腰を動かしていた。髪はボロボロ で汗まみれだった。破り捨てられた衣服が、部屋の隅に打ち捨てられていた。 「な、なんで、こんなこと…………」 ショックの余りカカシになって立ちすくんでいるレイチェルの声を聞いて、三人の男 達がいっせいに振り返った。 目をむいてレイチェルのことを凝視して、下卑た笑みを浮かべながら欲望に満ちたあ ざけりをぶつけてくる。 「お、新しい子じゃん! ラッキー!」 「うわ……すっげえ上玉だぜ」 「クルーガー様! こいつ、やっていいんですね! モノにしていいんですよね!?」 「……がっつきすぎだっつーの。クルーガー様、どうかご命令を」 この場にいる中で上位にあるらしい優男に対してレイチェルはすがるような目を向け たが、クルーガーはその視線に何の反応も返さず、犯されている少女に歩み寄って肩に 上着をかぶせた。 「…………この女は、もう十分だな」 「へへっ、一晩中、かわるがわるで回しやしたから、もうボロボロですぜ」 「ご苦労だった。今ならば魔眼のかかりもいいだろう」 「クルーガー様、そいつ、そいつの身の上についても教えてくださいよ。やっぱセック スは、深くわかりあってるほうが燃えるつーか」 「ぎゃはは、おめーだけだ、そんなつまんねえこと気にすんのは」 「そうそう、女は身体と顔だけで十分だっつーの」 「うるせえな。この貴族のガキとか、すっげえ最初えらそうに抵抗したじゃねえか。や っぱ絶対服従させてると、こう、立場を思い知らせてやる瞬間がすげえいいんだよ」 「あー、それ、ちょっとわかるぜ」 「ひゃはは! たしかに高慢ちきなあの女の鼻をへし折るのは最高だったよなあ!!」 大きな声で下劣極まりない会話を交わす男達を見ても、クルーガーは特に非難するこ ともなかった。 レイチェルは恐ろしくて声も出ない。 これから自分がどんなことをされるのか、わかりすぎるほどにわかって、気が遠くな る。 「身の上か」 精液まみれになっていた少女を抱えるようにして立たせたクルーガーは、少し考えて からこう言った。 「…………その女は、特に変わったところはない。普通の村娘だ。ただ…………強いて いえば、将来的には非常に利用価値のある魔術師に成長することだろう」 「おおー、魔術師の卵ってやつですか!」 「いいっすね!」 「名前はレイチェルだ。それから」 ヒュン、と、男達の眼前に剣を突きつけて、クルーガーは全身から殺気を立ち上らせ た。 三人の顔がいっせいに固まった。 うわついた雰囲気が消え去り、男達は気圧されたように上半身をのけぞらせ、おびえ たような視線を向けている。 「この女を、どんな風に扱ってもかまわんが、うっかり殺してしまった奴には死んでも らう。全員だ。お前達全員の連帯責任として、殺す。お前達の前任が、調子に乗ってど んな風な最後を遂げたのかはもう教えたはずだな?」 「……は、はい」 「わかっています」 「クルーガー様の仰せのままに……」 気を呑まれて蒼白になった顔でうなずいた三人を均等に眺めた後、クルーガーは少女 の手を引いて、部屋の外へと去っていった。 レイチェルは動けなかった。 外へと続く扉が開いたその時も、真っ白な服の袖を握り締めて、自分を抱きしめなが ら震えていることしかできなかった。 「…………い、行ったよな」 「へ、へへ」 「レイチェルちゃん、これから、お楽しみタイムですよー」 まだ少し緊張している男達の顔が、それでもにやにやと笑いながらにじり寄ってきた。 「や、やめてください」 震える声で助けを求めたが、あっという間に壁へと押し付けられ、腕や足を固定され て身動き一つできなくなる。 「腰、細いねー。さわってもいい?」 「いやっ! い、いやです……やめて…………」 「リボンも可愛いよ」 「そうそう、まず、帽子は脱いじゃいましょうねー」 「……っ! 触らないで…………お願い、助けて…………」 男達の太い腕が、握れてしまえそうなほどに細いレイチェルの手足にまとわりついて くる。 指が唇の中に入ってきた。 涙がこぼれるのにもかまわずに首を振るが、あっという間に頭を抑えつけられる。 「ふふ、この腰布もはずしちゃおうね」 「胸のリボンもほどこうか」 「ほら、万歳しろよ、ケープ取ってやるからさ」 骨ばった指が、真っ白な腕をもみしだく。 足首も。 太ももも。 服の上から、スカートに手を突っ込まれて、あるいは襟元から指を入れられて、痛い ほどに愛撫される。 「…………あ、あああっ! うっ、やぁ! ふっ、ふぁっ…………う、あ、ああっ!!!」 「へへ、レイチェルちゃん、これはどうだい」 「あぁぁぁぁ!! やぁっ、やぁぁぁ!!」 男の指が、レイチェルの内部へと進入した。まだ汚れをしらない膣に、おぞましいほ どの異物感が走る。 「…………なあ、キスしよう」 「っ! ん…………んんーっ! むっ、むぁっ……ん、んんー!!」 「ああ、白い首、すげえいいにおいがする…………たまんねえ」 「へへへ……唇もやわらけえしな」」 「…………お、俺、こいつの髪コキやってもいいよな? 見たことないぐらいに綺麗な 金髪だぜ、これ」 「いいけど、ぶっかけはもうちょっと待てよ」 「さあ、レイチェルちゃんの膣をいじってあげようかー」 「あぐっ……ひっ!! は、はっ、ふうっあ! や、う、あああああああっ!!」 遠慮をしらない指が、身体の奥をかき回す。 清らかで温かな粘膜に、ひとりよがりな傷が次々と残されていく。 腰に力を入れて必死で逃れようとするが、右足と腕を完全に抱え込まれているので、 まるで抵抗できない。 性器と排泄器官に指を押し込まれ、表皮をもてあそばれ、時間をかけて愛撫されてい く。 「やだっ! もう…………いやあああああああああああっ!!」 痛みにも似た感触に、レイチェルは悲鳴を上げた。 顔は羞恥で、既に真っ赤に染まっている。 耳までが赤くなって、涙がとめどなく溢れてくる。 太ももや腹に、滝のような汗が浮いてきた。それが男達の手によって潰されて、熱を 伴った身体に塗りつけられていく。 レイチェルは、身体が震えるのを感じた。 「やだ…………やだあああああっ!!」 くびれた白い腹が、太い腕によって揉みくちゃにされている。 衣服を剥ぎ取られ、むき出しになったへそを、ざらざらした舌で舐められる。 太ももにも舌が這っている。 その感触の一つ一つに、レイチェルは頭をかきまわされ、混乱する。 白い肢体が意思とは無関係に桜色に上気して、かつて味わったことのないような汚ら わしい快楽が脳天を突き抜けていく。 「へへ、やっぱこいつ、薬が効いてるぜ」 「食事でちょっとずつだから、あんまり効かないはずなんだけどなぁ」 「この部屋にも催淫の魔方陣がしいてあるらしいしな。まあ、こいつ自身が好きものっ てのもあるんじゃねえか?」 「はは、ちげえねえや」 「ぅ…………あっ、あああっ!! ち、違うっ!! わ、私は……ほんとに、い、いや あああああっ!!」 股間から愛液が溢れてくる。 悲しいほどの快楽が、身体をまさぐっている腕や指から強制的にもたらされてしまう。 レイチェルは恐ろしかった。 それまでの自分が壊れてしまいそうで、必死で手を振り回して、愛する人の名を呼ん だ。 「お兄ちゃん! お…………お、お兄ちゃんっ!! 助けて! 助けてよおおおっ!!」 「へへ……お兄ちゃんは、間に合わねえよ」 「あー、やべ、こいつ、すげえ可愛いぜ」 「お、おい。もういいだろ。十分濡れたし、俺に入れさせてくれよ」 「ばーか、順番は守れ」 「あのお嬢の時はお前が一番乗りしたじゃねえか」 「だ、だってよぉ。こんな上玉が来るって知ってりゃあ…………お、俺だって」 「いいから、順番は順番だ。ほら、おめーはケツを使えよ。こいつの腰、すっげえ細い し、どっちでも十分楽しめるぜ」 「わ、わかった」 腰を抱えられ、足を広げられる。 脇の下から腕を入れられ、上半身を完全に制圧されてしまう。 汗の浮き出る脇を舐められ、乳首を舌で転がされ、てらてら光る陰部を舐め取られる おぞましさに、レイチェルは目を閉じて、唇をかみ締めて耐えていた。 しかし、それも長くは続かなかった。 グロテスクな男性器が、レイチェルの秘所と菊座の二穴にあてがわれる。 そして、ずぶずぶと、肉をかきわけるようにして、男性器が身体に沈めれた。 ゆっくりと、二箇所同時に身体を犯されていく感覚に、レイチェルは拒絶の声を張り 上げた。 「う、うそ…………や、やだっ!! やだやだっ! ふっ、あ、ああ……ああああああ ああああああっ!!!」 脂肪が波打つようにうなっている腹が、レイチェルの膣に向かって押し込まれていく。 肉襞を切り裂くような感触が、身体の奥底まで響いてくる。 後ろからは、排泄器官をえぐっている性器が、どんどんと直腸に押し出されていった。 「うっ、あっ、っ……ひああああああっ…………うあああああああああ!!」 必死で酸素を求める口から、涎がどんどんと垂れてくる。 腕に力が入らない。 痛みをやわらげるためのわずかな動きさえ、もうレイチェルにはかなわない。 突き上げられ、出し入れされ、蹂躙され、腰を揺らし、声だけで抵抗を続けていたの も、ほんのわずかな間だけ。 可憐な口には男の性器を入れられて、声を出すこともできず、三人同時の奉仕を強要 されてしまう。 レイチェルの顔が、悲しみと苦しみにゆがんでいる。 大粒の涙をたたえた瞳は、もう、焦点をあわせていなかった。 どくどくと精子を膣や直腸や口内に注ぎ込まれても、ただ身体を少し揺らして、耐え ていくしかない。 レイチェルは、無慈悲な時間の中で。 兄や弟の顔が、掌からこぼれるように消えていくのを、ぼんやりと感じていた。
https://w.atwiki.jp/theurgy/pages/157.html
警告:このSSは「テウルギア」の設定が完全に構築される前に作成された、プロトタイプSSです。最終的な世界観・設定とは齟齬がある可能性をご了承ください。 賢者の密儀、栄華の代償; -01- written by LINSTANT0000 暖炉で燃える薪に温められる、落ち着いた内装の執務室。赤絨毯の上に据え付けられた飴色の執務机に向かう、一人の男がいた。 どこかふてぶてしさを感じさせる態度の、口の端を歪めた灰髪紫瞳の優男。年は50を出ているか、というところに見える。机の上には、つい先ほどまで紫煙を上げていたであろう葉巻がクリスタルの灰皿にねじ込まれており、その脇には琥珀色の液体がはいったグラスが汗をかいていた。 彼は、サイドテーブルに積まれた分厚い報告書を流し読みしては、ボックスに放り投げるか、机に置かれた羽ペンでサインして、紙で余計なインクを吸い上げては乾燥台に置いていく。 どれだけの時間がたったのだろうか、執務机を埋め尽くしていた無数の書類を何らかの形で片付け、男は立ち上がりながら背伸びをする。 同時に、ビキッ、と聞こえてはいけない音がした。 「ン”ン”~ッ!?」 その瞬間、腰に走った激痛に男は奇声を上げた。 「あ、あぅっ!?こ、これはいけないなぁっ!?」 両手を高く上げ、座面からからわずかに起き上がった中途半端な体制で、男は身動きすることができなくなっていた。 ―――動いたらたぶん死ぬね。 その奇妙な体制からほんの少しでもずれると、その後の地獄を予告するように腰が悲鳴を上げた。 中途半端な姿勢が、筋肉に大きな負担をかけていく。その姿勢を維持するのは、長いデスクワークと運動不足に侵された男の体には不可能なことだった。 ―――あー、ちょっと肩と背中と足の筋肉がプルプルしてきた! 肉体が発する微妙な揺らぎが、腰からの痛みを誘発する。 このまま耐えていても、たぶん筋肉が限界を超えれば激痛の底に沈むことになる。それは避けたい。 以前、あまりの痛さに転げまわり、追加ダメージで病院に搬送される羽目になった身としては、避けたい事柄だ。 かなりの痛みに襲われるかもしれない。それでも背もたれによりかかって筋肉をほぐしていく方が、総合的にはダメージが少ない。 ―――ならばここは覚悟を決めて、一息に! 「ふぐぉっ!?なんのぉ、これしきぃ!」 こわ張った筋肉を全力で稼働させ、椅子に腰かける。その衝撃が背骨を伝い、腰が跳ねた。その痛みに耐えつつ、無理矢理にでも背もたれによりかかり、筋肉を伸ばしていく。 「ぐ、ぐぐぐ!」 強い痛みに襲われ、じわりじわりと周期的に襲ってくる波を耐え抜く。 寄せては返す痛みの波との闘いは、いつまでも続くと思われた。しかし、次第に波は引いていき、いつの間にか収まっていた。 額から噴き出た脂汗を懐のハンカチで押さえ、一息つく。 男はこれまでの書類仕事よりも、たった数分間の腰痛との闘いの方で体力と気力を消耗していた。 「あ”あぁぁぁ。慣れないね、この痛みには。」 いまだに鈍い痛みを返す腰を、手のひらで優しくさする。 この痛みとは、忌々しくも呪われた椅子に座る羽目になって以来、妻と同じ程度の古い付き合いだ。 しばらくさすり、痛みが完全に収まったころ、執務室の扉が遠慮がちにノックされる。 ―――この遠慮がちで重さの無いノックは、我が愛しの娘だね。 「お父様、入ってもよろしいですか?」 「入りなさい。」 愛娘の問いに、是と答えると、二人の人影が執務室に入り込む。 「こんばんわ、あなた。お疲れなのではなくて?」 「こんばんわ、お父様。あまり根を詰めては、お体に障ります。」 窓を模したスクリーンから投影される月明かりに照らされた二人の淑女が、男に夜の挨拶をする。 一人は豪奢な黄金の髪をかき上げる、完成された大人の女。我が半身たる麗しの妻。彼女は出会ってから30年以上、変わったところが見られない。いや、胸はさらに大きくなったかもしれないが。 もう一人は月明かりに煌く純銀の髪をまとめた、月光に溶けて消えそうな、幼く儚げな少女。我が至宝足る愛娘。可哀そうなことに彼女もまたここ数年全く成長していない。 二人とも、どこか不機嫌そうな、心配そうな表情を浮かべていた。 ―――どうやら、愛すべき家族に心配をかけてしまったらしい。 「心配してくれてありがとう、もう仕事は終わったのだよ。」 椅子から立ち上がり、机を迂回して二人を抱きしめる。 「ん、ならいいのです。」 「ところで貴方、明日はお休みでしたわね?」 「そうだが、どうかしたのかい?」 腕の中から上がる、妻の問いにこたえる。はて、何かあったのだろうか。 首をひねっていると、娘が大きな声を上げた。 「わ、私聞きたい事があります!」 「なんだい?」 「お父様のご両親について、何も知らないことに気づいたの。私の知らない人たちを、知りたくて。」 声が小さくなっていく娘の頭をなでながら、ふと思い至る。 「そういえば、リューダには話したことがなかったのか。」 「私があなたのご両親について知ったのが、結婚する寸前だったのよ?この子に言ってるわけがないでしょう。」 そういえば、それ以降誰かに話した記憶もない。 「あまり面白い話でもないしね。」 退屈なだけだろう。あの時代、この場所ではどこにでもあったことだ。 「あら、私は好きでしたけれど。」 「そうかい?」 妻がそういうのだから、何かしら人を引き付ける要素があるのだろう。当事者の私にはわからないが。 「もぅ!私が聞いているんですよ!」 妻とイチャイチャしていると、娘がお冠だった。 「はは、すまない。ソファに座って待っていなさい。」 「ハイ!」 もう一度頭をなでると、彼女の顔に笑顔が戻る。むくれているのかわいいが、やはりこの子には笑顔が一番似合うと思うのだよ。 執務机に置いていたいくつかの写真立てから、一番小さなものを取り上げる。 そこに写っているのは、巨大な銃を背負い寒冷地装備に身を包んだ赤髪で髭もじゃの大男。そんな男に寄りそう、中等部くらいの銀髪の娘。そして、もこもこした防寒着に埋もれ、大男の腕に抱かれた薄い金髪の幼い男の子。 この写真を見るたびに私の胸が軋みを上げる。 忘れてはならない。 この写真こそが、私の原点であり、悔恨の根なのだから。 2話
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/852.html
第34話 真相 1482年 8月2日 サンディエゴ西300マイル沖 午前9時 戦艦ワシントンは、寮艦サウスダコタと共にサンディエゴを出港後、時速12ノットのスピードで ヴィルフレイングに向かいつつあった。 サンディエゴを出港してから1日足らず。アメリカの大地は、既に水平線の彼方に消えていた。 「兄さんや親父、妹、おふくろとも、しばらくは会えないな。」 ワシントンの甲板上で、リューエンリ・アイツベルン大佐は淡々とした口調でそう呟いた。 年は36を数えるが、顔立ちは大人にしてはどこか子供のようにあどけなく、口元に生やしている立派な コールマン髭がなければそのまま大学生としてもやっていけそうなほどである。 身長は180センチで、体格は海軍軍人らしくがっしりしている。それなのに、肌は白い。 彼は、元々フィンランドに住んでおり、昔は名のあった貴族であったが、アメリカに移住時には没落貴族となっていた。 10歳のころ、リューエンリは家族や使用人と共にアメリカバージニア州、ノーフォークに移住し、 そこで薬局を開いて新たな生活を送った。 今では彼の兄が継いだ薬局の経営は軌道に乗り、ニューヨークに支店を出そうという話も出ている。 兄が薬局、妹3人が自動車会社や航空会社に務めたに対して、リューエンリは18歳に海軍兵学校に入学し、今に至る。 やあ参謀長、どこか具合でも悪いのかね?」 後ろから声を掛けられた。振り向こうとすると、傍らにとある人物が現れた。 「あっ、リー司令。」 「家族の事でも気になるのかな。」 第5戦艦戦隊司令官である、ウイリス・リー少将は微笑みながら彼に語りかける。 外見はどこぞの大学教授のように見え、痩せ気味である。 遠くから見れば、アイツベルン大佐とリー少将は学校の教え子と先生の関係に見えるだろう。 「まあ、少しばかり。」 「少しばかりか。正直だな。」 リー少将はそう呟きながら、ずれかけた制帽を被り直した。 「だが、気になるのは他にあるのではないかね?例えば、慣れぬ仕事を任された事に対する不安、とか。」 「ハハハ、見透かされていましたか。」 アイツベルン大佐は苦笑しながらリーに言い返す。 「分かるさ。顔に書いてある。まあ、無理も無いな。」 リー少将は彼の肩を叩きながら言った。 「いきなり戦艦部隊の参謀長という大役を任されたのだから、仕方ない。」 アイツベルン大佐は、リー少将によって第5戦艦戦隊参謀長に抜擢されたが、その前は軽巡洋艦セント・ルイスの艦長だった。 リューエンリは兵学校で砲術を専攻し、卒業後は地上勤務と洋上勤務を均等にこなしていた。 洋上勤務では、卒業後に戦艦ペンシルヴァニアに乗り組み、その後は駆逐艦ジョンDフォード、重巡洋艦ペンサコラ、 ソルト・レイクシティ、軽巡洋艦ラーレイ、メンフィスに乗り組み、1940年10月から軽巡洋艦セント・ルイス艦長に就任した。 卒業以来、様々な事を学んだリューエンリは、初めての艦長となったセント・ルイス勤務時に乗員をよく鍛え抜き、 その結果は11月12日の海戦で現れた。 その時はセント・ルイスも大破同然の被害を受けたが、敵巡洋艦1隻をウィチタと共同で撃破し、2隻を単独で撃沈破するという 獅子奮迅の戦いぶりを見せている。 修理を終えた後、セント・ルイスは第23任務部隊に復帰し、リンク・ショック作戦では、終盤に マオンド軍のワイバーン5機の急降下爆撃を受けたが、卓越した舵さばきで全弾回避している。 地道ながらも実績を重ねたリューエンリは、ノーフォークに帰港後、突然第5戦艦戦隊の参謀長に抜擢され、 7月20日には戦艦ワシントンに乗り組んで、戦隊司令部の一員となった。 傍目から見れば、一介の巡洋艦乗りが、主力の座から落ちたとは言え、強力な戦艦で編成される戦隊の司令部要員に選ばれるのは 見事な栄転と言える。 しかし、本人の気持ちはどこか晴れなかった。 「戦艦という艦種は、自分も砲術を志す身ですから憧れではありましたが、主に巡洋艦に乗っていた身としては、 しっかり状況を把握できるか?これからも他の幕僚の意見をきちんと理解できるか?とか、色々不安です。」 「確かに。勝手が違うからな。だが、私から見れば、君はじきに慣れると思う。若いながらも、君の技量は 他に引けを取らんし、部下の使い方も上手い。セント・ルイスがいい見本だ。あの艦の連中は君に鍛えられたお陰で、 大西洋艦隊所属の巡洋艦の中でも優秀な乗員が乗っていると、あちこちから言われているぞ。 その事からも、君はこの戦隊でも充分にやっていける。」 「はっ、恐縮であります。」 リューエンリは体を固くして頷いた。 リー少将は、アメリカ海軍の中でもレーダー射撃の権威として広く知られているが、人に対しての評価は 容赦が無い事でも知られている。 あいつが良いのならば良いと判断するが、使えぬ奴ならその者の内心を深く抉るような言葉も平然と言う。 そのリー少将が、自分を良い方向に評価している事に、リューエンリは身が引き締まるような思いになった。 「私もプロだが、君もプロなのだ。そう固くならず、リラックスしながら仕事をしよう。 仕事は楽しくないとやっとれんからな。」 リーはそう言って、笑い声を上げた。 「ところで参謀長、この間の視察の際にみたあの艦、君はどう思うかね?」 リー少将はひとしきり笑った後、リューエンリに聞いてきた。 「あの艦ですか。」 リューエンリはそう呟きながら、1週間前に行った視察を思い出した。 その日、リー少将とアイツベルン大佐はニューヨーク造船所に視察に赴いた。 造船所は、建造中の空母、戦艦等の新鋭艦が何隻かあった。 その中の1隻に彼らは注目した。 建造ドックにあった大型艦は、船体部分が7割型完成しており、今年中には船体は完成し、来年1月までには 進水式を終え、6月に完成、43年9月か10月頃には2番艦と共に艦隊に編入できる、とドックの責任者は言っていた。 ドックの大型艦を見せられた後、2人は造船所の事務室に入り、そこで様々な話を交わした。 そんな中、とある艦の話題に移った時、彼らは2つの模型を見せられた。 「この模型は、こっちが前案で建造した場合の完成模型、こっちが改定案で建造した場合の完成模型です。」 造船所の所長はそう言って2つの模型を並べた。その模型は、大型巡洋艦案のアラスカと、巡洋戦艦案のアラスカだった。 その姿からして、2つの模型の形はどこか違っていた。 例えば、大型巡洋勘案では、長い割にほっそりとしていた船体が、巡洋戦艦案では狭い幅が幾らか太くなり、 全体的にバランスが整っている。 主砲は前案より大きなものになり、所長は旧式戦艦と打ち合っても互角以上の戦いを見せると太鼓判を押した。 次に、5インチ連装両用砲の配置で、前案ではクリーブランド級、ボルチモア級のように前部艦橋、後部艦橋の前に 連装両用砲が配置されていた。 巡洋戦艦案では、前案の配置を廃し、左右両舷に4基ずつの連装砲を配置した。 又、艦橋はアイオワ級戦艦に採用されたものとほぼ同じものを使い、前案で指摘された艦橋の視界の悪化が改善された。 航空兵装に関しては、思い切って全廃し、空いたスペースに対空火器を増やす事に決まった。 巡洋戦艦案では、連装両用砲の配置は、ほぼ新鋭戦艦に準ずる形となり、全体的なイメージでは、 艦橋が大きく様変わりしたことで、アイオワ級戦艦の縮小艦にも見えた。 この模型を見た時、リューエンリは思わず見とれてしまっていた。 「いい艦です。姿形は野暮ったい船ばかりを作る合衆国の軍艦にしてはかなり綺麗ですし、砲力は巡洋戦艦にしては申し分なく、 おまけにスピードも速い。問題のほうは後々出てくるでしょうが、模型を見た時は、チャンスがあれば一度は乗ってみたいと 思いました。」 「同感だ。前案に比べれば、より洗練された感があったな。もしかしたら、君のような巡洋艦乗りには合うかもしれないぞ。」 リー少将は笑みを浮かべながら彼に言う。 「君も知っていると思うが、巡洋戦艦というものはな、元々は巡洋艦の特性も持ち、戦艦の特性も持つ艦種なのだ。 だが、余りにも欲張りな艦種だから失敗も多かった。しかし、あの造船所に行ってからアラスカ級こそ、巡洋戦艦という 艦種の完成した形なのだと、私は思ったのだ。攻・防・走があれほどバランス良く整った巡洋戦艦は、 恐らくアラスカ級ぐらいだろう。」 「なるほど。そうなると、ますますあの艦に乗ってみたくなりました。」 リューエンリは笑みを浮かべながらそう言ったが、内心としてはそう簡単には願いは叶わないと思っていた。 「だが、その前に我が戦隊で頑張ってもらわねばな。これから君に期待しているぞ、ミスター・アイツベルン。」 リー少将は微笑みながら、彼の背中を叩いた。それにリューエンリは身を引き締め、 「ご期待に添えるよう、微力を尽くします。」 と、改めて決意した。 1482年 8月7日 アメリカ合衆国サンディエゴ 午後12時 キンメル大将は、久しぶりに南大陸特使派遣団のリーダーであるレイリー・グリンゲルと再会した。 ドアから現れたグリンゲルを見るなり、キンメルは表情を緩めながら出迎えた。 「やあ、久しぶりだね。」 「こちらこそ、キンメル提督。」 キンメルは執務室にあるソファーにグリンゲルを座らせ、彼は向かい側に座った。 「3ヶ月ぶりか。」 「ええ。前回は5月に会いましたから、そうなりますね。」 「早いものだな。所で、今日はどのような用件があって、来たのだね?」 「ええ、南大陸の現状報告を伝えに来ました。」 レイリーは表情を引き締めてから、キンメルに報告を始めた。 7月23日、首都を占領されながらも、残存軍が粘っていたヴェリンス共和国が、シホールアンルの 大攻勢によって残っていた領土を完全に占領され、敵の支配勢力がミスリアルの国境までに迫った。 ミスリアル側は、このままシホールアンル軍が勢いに乗じて越境攻撃を仕掛けてくると思ったが、 予想に反して進撃はストップし、シホールアンルはミスリアルと睨み合う形で膠着状態となった。 7月29日にはカレアント公国の被占領地で住民の暴動があったものの、シホールアンル軍はこれに 2個師団を投入して鎮圧し、スパイ情報によると500人が殺害され、1000人が連行されたという。 一方でアメリカ軍もここ数日で手痛い損害を受けていた。 7月30日には、シホールアンル軍の後方兵站基地を空襲していたB-25の編隊が、突然現れたワイバーンの大群に 襲撃され、作戦に参加した30機のP-38と70機のB-25のうち、P-38が6機、B-25が10機未帰還に なるという大損害を受けた。 8月3日にはB-17の編隊にもワイバーンの大群が突如として現われ、60機のB-17のうち、 実に8機が未帰還となり、7機が使用不能になる損害を受けた。 航空戦では、シホールアンル側はアメリカ側を意外と苦しめており、第3航空軍では近々、 戦闘機のみで編成した攻撃隊を持って、敵戦闘ワイバーンの撃滅に乗り出す腹である。 「しかし、カレアント公国は航空戦のみで、地上戦は小さな小競り合い以外に起きていない。 シホールアンル海軍も鳴りを潜めている。正直言って、我が太平洋艦隊司令部でも敵が何を考えているか 分からずじまいだよ。」 キンメルは苦笑しながら、レイリーに言った。 「それは私もです。」 「ミスリアル王国には、そちらの皇女殿下が指揮する情報機関があるようだが、そちらからは 何か最新情報は入っていないかな?」 「いえ、特に目立った情報はありません。シホールアンル側は相変わらず、前線に大軍を貼り付けたまま、 こちらの反撃に備えているのみです。」 「うーむ・・・・・・ここ最近は、敵側のほうでも増援部隊を後方に待機させているし、航空兵力も 続々と送られて来ている。陸軍航空隊も、以前のように楽に戦いを進められなくなってきている。」 「シホールアンルも学んでいます。強い敵に対してはどう対応すれば倒せるか、常に学習しています。 そして、対処法を見出せば彼らは一段と強くなります。」 キンメルは顔をしかめながら、その言葉に頷いた。 「全体的にはこちらが優勢。しかし、目を凝らせば所々でシホールアンルは差を埋めつつある、と言う事か・・・・・ アイゼンハワー将軍もきっと、悩んでいるに違いない。」 「バルランド王国では、一部で反撃に移るべきとの意見が上がっているようです。」 「それはいかん。」 キンメルがはっとなってレイリーに言い放つ。 「確かに、シホールアンル側は前進をストップさせているが、敵の出方が分からん以上、こちらから打って出るべきではない。 太平洋艦隊も、南西太平洋軍も、敵に装備こそ勝るが、数は多いとはいえない。太平洋艦隊は続々と新鋭戦艦や新型艦が 配備されているが、主役たる正規空母は、はっきり言ってこれで充分とは言えぬ。南西太平洋軍にしても、今配備中の 増援3個師団を合わせてまだ6個師団分の地上軍しかいない。航空兵力も充分じゃない。そんな中、こちらから 打って出ようというのは危ない。」 「私も同意見です。シホールアンルは、カレアントに80万の大軍を貼り付けており、ワイバーンの数も、以前よりも 増大しています。それに対して、南大陸連合軍は数こそありますが、装備は劣っています。アメリカ軍の援護があるにしても、 反撃作戦を行えば、これまで以上の犠牲を払うのは明確である、と私は確信します。」 「参ったものだ。連合のリーダーであるバルランドがそのようでは、太平洋艦隊、いや、我が合衆国は困るな。 せめて、来年の8月、遅くても10月あたりまでは大規模な反攻作戦は待ったほうがいい。来年になれば、 ワイバーンを圧倒しうる航空機も、陸軍の装備も充実する。海軍も、新鋭空母を艦隊に編入して、敵の反撃に備えられる。」 現在、キンメルの指揮する太平洋艦隊の主力は、旧式戦艦4隻、新鋭戦艦3隻、正規空母4隻である。 この他に配備されたばかりの新鋭巡洋艦や在来の巡洋艦、駆逐艦等を合わせればかなりの規模になる。 今後、派遣されてくるであろう大西洋艦隊の3空母を加えれば戦力は飛躍的に向上する。 しかし、敵シホールアンル軍も、竜母を6隻保有し、つい1週間前には2隻の小型竜母が艦隊に加わった との未確認情報があり、原状は予断を許さない。 今後、続々と就役してくるであろう敵の新鋭竜母に対抗すべく、アメリカはエセックス級正規空母、 インディペンデンス級軽空母の建造を急ピッチで進めており、43年の夏にはエセックス級空母3隻と インディペンデンス級軽空母2隻が艦隊に配備される見通しだ。 10月になれば新たにエセックス級空母2隻にインディペンデンス級軽空母2隻が配備される予定だから、 シホールアンル軍に対する備えは万全になるだろう。 「来年になれば、新鋭艦が続々と配備されるが、今年一杯は現状の戦力でやりくりしないといけない。」 「ではキンメル提督。」 レイリーがずいと、前に身を乗り出してキンメルを見つめた。 「もし、シホールアンルが全力で攻めてきた場合、現有勢力で撃退できると思いますか?」 「もちろんだ。」 キンメルは自身ありげに即答した。 「敵を叩きのめして、追い返す事は可能だ。だが、」 束の間、キンメルの目が鋭く光った。 「敵も死に物狂いで来るだろう。陸でも海でも、シホールアンルはこれまで以上に戦い抜くだろう。 特に、海軍は厳しい戦いを強いられるだろう。憎らしい事に、敵もいい海軍を装備している。 南大陸では、我が合衆国を無敵、無敵と騒ぎ立てているようだが、あまり過剰な期待はせぬ事だ。 これは、大統領閣下の意見でもある。」 彼は、冷淡な口調でレイリーに言う。 「分かりました。」 レイリーは抑揚の無い口調で返事した。 「話を変えるが、君の携わっている例の物はどうなっているかな?」 「正直、難しいですね。」 レイリーは頭を掻きながら言う。 「今までやった事の無い仕事ですから、未だに慣れないものです。」 「もう1人のお連れさんはどうしたかな?」 「ああ、ルィールですか。彼女は今ロスアラモスですよ。アインシュタイン博士と一緒に研究中です。 私も、この後ロスアラモスに戻って缶詰になるんですが。」 そう言ってから、レイリーは苦笑を浮かべる。 「君たちには苦労かけるな。相手の魔法通信を傍受できる無線機開発というのは、かなり難儀な事だろう。 難しい仕事ばかりやっているから、夢の中でも研究してるのではないかな?」 「あいにく、夢の中では普通ですよ。」 キンメルも微笑んでから、コップの水を一息に飲んだ。 「普通か。まっ、夢の中ぐらいはたっぷり遊びたいものだな。おっ、そういえば・・・」 キンメルはしばしの間、視線を宙に浮かせてから言った。 「不思議な夢を見た覚えがあるな。たしかいつだったかな。」 「不思議な夢・・・・・ですか?」 レイリーは無表情でキンメルに聞く。 「そうだ。去年の後半、確か、アメリカがこの世界に呼ばれた時だったかな。」 キンメルの表情が、どことなく複雑なものになっていく。 「私もハッキリとは分からないのだが、夢の内容はこうだ。どこかの廃屋で、目の前に男が立っているんだ。 どこにでもいそうな女たらし、といったイメージのある優男だな。で、私はなぜか女の視線で男を見ていた。」 「女の視線ですか。」 「そうだ。で、女は泣きながら優男を罵倒していたよ。その優男がまた訳の分からぬ事を言うのだよ。 こっちに来いとか、鍵は1人で勝手に逃げないとかな。」 キンメルがおぼろげな記憶を頼りに言い続けていたその時、レイリーは背中に電撃が走ったような錯覚に見舞われた。 (鍵!?) レイリーは、務めて平静を装うが、内心ではなぜこのキンメル提督がその話を知っているのかと、激しく動揺していた。 「で、女は泣くことをやめたと見るや、今度は怒り出して男に襲い掛かった。夢はそこで終わりだ。 どうも馬鹿にリアルだったものでな。ん?どうしたのかな?」 キンメルは、レイリーの表情がやや暗い事に気が付いた。 「い、いえ。何もありません。」 すぐに、元のレイリーに戻った。どうやら、気のせいであろう。 「そうか。ならいい。しかし、あのようなリアルな夢は今までに見たことが無かったな。まっ、それはともかく。 我が太平洋艦隊としては、当分は受身のままだな。バルランドの馬鹿貴族共は、私達を腰抜けと抜かすかも知れんが。」 キンメルの言葉に、レイリーは苦笑しながら頷く。 その一方で、彼の脳裏には、あの日の出来事が思い浮かんだ。 その日、外は雨だった。 今から2年以上前、シホールアンルの勢力圏は、北大陸の大半を覆い、北大陸の南に矛先を転じようとしていた。 北大陸の南に位置する町、ルイヒナスは、迫り来るであろうシホールアンルの脅威に、住民の誰もが怯えていた。 そんな中、レイリー達は、郊外の山奥でとある少女を待っていた。 「来るのかな。」 ルィールが、冬の冷たい雨に打たれながらも、平然とした口調でレイリーに聞いた。 「さあ、分からんね。先方の指示に従って、ここまで来たんだが。」 レイリーは淡々とした口調でルィールに返した。 その時、 「来てくれたのね。」 しわがれた女の声が聞こえた。背後から聞こえた声に、2人は後ろを振り向いた。 そこには、女性がいた。肩まで下ろした緑色の髪。全体的にはスタイルも整っており、男が見れば 誰もが抱きしめたくなるような、そんな儚さがあった。 しかし、その大きな紫色の目は、覇気が無い。厳しく言えば、目が死んでいた。 「あなたたちに、これを渡します。」 その女性は、懐から布袋を取り出し、レイリーに渡した。 それから、女は手短にだが、自分がこうなったいきさつを彼らに話した。 「シホールアンルの野望の塊が、そこに入っている。 南大陸でも有数の魔法使いならば、きっと分かるはず。」 そう言って、女性は踵を返し、立ち去ろうとした。 「待ってくれ!」 レイリーは立ち去ろうとした女を呼び止める。 「君の、名前は?」 「・・・・・・・・・・・」 女はしばらく黙ったが、やがて、呻くように言葉を吐き出す。 「鍵・・・よ。赦されざる、魔の鍵よ。それが、私の名前。」 あれから2年以上経った。 シホールアンルは、表向きは南北大陸の統一を旗印に、南大陸に攻め入ってきたが、本音は鍵が北大陸にいなかったために、南大陸に捜査範囲を広げるために軍を進めてきたのだ。 しかし、勢いのあったシホールアンルも、アメリカという強敵の出現で勢いを削がれている。 「当分はこのままだ。敵さんが出てくれば、我々は全兵力を持って叩き潰し、シホールアンルの無知蒙昧な 理想は実現不能であると、改めて教えるだけさ。」 そう言って、キンメルは微笑む。 「分かりました。」 レイリーは頷きながら言った。その後は、とりとめのない話を30分ほど続けた。 レイリーが執務室を去った時から、いや、その前からキンメルは何かに疑問を思っていた。 「彼は、いつもと様子がおかしかったな。」 彼は腕を組みながら、先ほどの談話を思い出した。 話の最中に、レイリーはほんの一瞬だけだが、表情を変えた。 まるで、隠し事を暴かれた幸無き罪人のように。 「どうして・・・・・・・」 キンメルは考え込んだが、答えは浮かばない。 「いや、やめておこう。友人を疑うのは恥だな。」 彼はそう呟いて、思考を止めた。 「さて、遅いが昼食でも取ろうかな。それにしても、シホールアンルの奴らは、うたい文句はなかなか立派だな。 まっ、あれだけ優秀な装備があれば、適当に理由を言い繕って他の地域を併合しようと思うのも無理は無いのだろう。」 キンメルは苦笑しつつも、そう呟いた時、自分の言ったある一語が気にかかった。 「適当な理由・・・・・・適当な理由・・・・・・」 彼は5分ほど黙考したあと、再び歩み始めて執務室から出て行く。 「南太平洋部隊司令部と、連絡を取ってみようか。」 彼はドアを閉めながら、小さい声でそう言った。