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マクロスエースフロンティア 詳細 ミッション概要:マクロスエースフロンティアのNo.1となれ。 天候 時刻 制限時間 レベル 目標 機体固定 - - 20 00 8 敵を殲滅せよ なし 僚機 出撃可 敵機 初期配置 増援 敵エース 攻略ポイント エクストラの最終鬼門。 ガンバトシリーズでもお馴染みである、ゲーム中の全機体を相手にするミッション。 雑魚・エース・巨大敵の全てが登場する。 とにかく敵の数が多く、どうしても長期戦になってしまうため 腕に不安のある人はスキルを修理にすることをオススメする。 とはいえ、敵自体はそれほど強いわけではなく ある程度強化した機体ならば逃げ回りながらのミサイルでもクリアできてしまう。 ただし、この方法ではS以上のランクを狙いにくいのが欠点。 S以上を狙う場合はYF-21やVF-27などの強力な機体を使用し 敵エースをSPAで瞬殺するなど、積極的に攻めていく事が重要。 以下はSS取り方法の例 YF-21 バリアを展開してガンポッドとミサイルをばら撒く。 エース機はSPAで落とす。ヒット後にロックを切り替えることで複数機にヒットさせる。 バリアが破れたらすぐに再展開し、極力ダメージをくらわない様に。 VF-27 雑魚機でゲージを稼ぎ、エース相手にSPAを使用し格闘連打。 格闘ボーナス、コンボボーナスを稼げるので高ランクを取りやすい。 バトルフロンティア HPや防御、ミサイルをフルチューンしておく。 パートナーもバトルフロンティアに乗せ、スキルは修理。 あとはミサイルとSPAを撃っていくだけ。 HP残量に応じて、合間に適度に修理を発動させていくこと。 SV-51γ ノーラ機 とりあえずコンバットトレーニング辺りで稼いでフルチューン 以下常時バトロイド ロックオンした後は右上か左上を押しっぱなしにしながらミサイル ミサイル撃ち尽くしたらもう片方のミサイルに切り替え 敵を片付ける度にHPが減ってたら修理 これだけでSS 気化爆弾使う必要無し ランク PT以上でS 123000PT以上でSS アーマードVF限界突破でひたすらミサイル撃つだけでSSとれた -- k (2008-11-17 09 18 08) グラビルでSSにできました -- 名無しさん (2008-11-18 20 06 46) マクロスやバトルフロンティアの格闘とSPAで楽勝SSいけます! -- 名無しさん (2008-11-18 21 22 06) バトルフロンティアは格闘と修理だけでSSおk -- 蒼 (2008-11-18 21 54 02) VF-25Fでミサイルや格闘でssとれました。 -- 名無しさん (2008-11-18 22 04 00) VF-25Fで雑魚に適度に格闘しつつミサイルばら撒いてれば、HPギリギリでもSS取れるよー -- 名無しさん (2008-11-25 20 13 02) YF-21で格闘とガンポッド、デカブツはSPAでおそらく楽勝(1回目でできたから) -- 名無しさん (2008-12-29 21 51 32) VF27でひたすら光速化格闘したら137860SSとれました。限界突破する必要ありません。 -- 名無しさん (2009-01-05 10 11 59) 12075PTでSS取りました。 -- 名無しさん (2009-01-09 22 39 25) VF27で光速化格闘やっててSPA切れても格闘のみやってたら楽にSSとれた -- ルシフャー (2009-01-19 17 25 44) 今度はビームのみでSSとった(VF27) -- ルシフャー (2009-01-19 17 39 11) 限界内フルチューンYF-19で131310pt獲得。マイクロミサイルのマルチロックで雑魚、ネームドは格闘、大型はガンポッドでおk。スキルは念のために修理にしてたがあんまり使わなかった -- 名無しさん (2009-02-01 22 24 18) VF-1Jフルアーマーでミサイル乱射。スキルは修理がお勧め -- 何回目だろうか (2009-02-02 18 27 46) ボドルザーにはSPAで瞬殺できるはずだぉ。マクロスとBフロンティアはいうまでもない -- 何回目だろうか (2009-02-02 18 29 39) マクロス格闘のみで11分 -- 名無しさん (2009-03-25 12 46 06) エクストラミッション全てやってる時に機体が出てこようとした時、読み込みで少しラグが起きるのですが、皆さんもなりますか? -- アンブレラ (2009-04-04 12 53 25) VF-27のSPA格闘乱舞で余裕です 大型なんかは機関銃? ばら蒔けば全然おk このやり方で5分未満目指してますが5分50秒の壁が… -- アーニャ (2009-05-18 20 08 58) ちょwww, -- 名無しさん (2009-07-07 19 44 52) マクロスの格闘、ミサイル、SPAでSS出ました。 -- 名無しさん (2009-08-28 23 06 40) タイム伸ばしたいなら格闘よりガンポッド優先に使うといいですよ・・・w -- 名無しさん (2009-08-29 15 48 56) 速攻クリアならYF-21だ!突撃美! -- ガビグラ (2009-08-31 00 55 11) VF27フルチューンででかブツ以外格闘クリアで145450行けたよ -- john tanaka (2010-12-29 23 36 27) 名前 コメント
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マクロスなのは 第24話『教導』←この前の話 『マクロスなのは』第25話「先遣隊」 SMSはアクティブ・ソナー作戦が行われたその日の内に、フォールド空間の座標に向けて無人戦闘機(AIF-7F『ゴースト』)部隊を派遣した。 しかしその結果は残念なものだった。 そこには土台から外れたフォールドブースターが浮いていただけだったのだ。 その事実は関係者を大いに失望させたが、ゴーストの持ち帰ったフォールドブースターは驚くべきことを記録していた。 ブースターが外れる寸前に記録したのであろう、アルト達の緊急デフォールドした座標だ。 その知らせに一番狂喜したのはルカだった。 「やった!これでランカさん達を迎えに行けますよ!」 単体でフォールド空間に取り残された場合、生存は絶望的だった。なぜならそんなことをすれば最後、三次元の物体は時空エネルギーの圧力に耐えられず機体が即座に圧壊、自爆するからだ。 しかしデフォールドしているなら話は別だ。 大気圏の離脱及び突入。そして星間航行能力のあるVF-25の生存性(サバイバビリティ)があれば大抵何とかなるはずだった。 しかしその座標はフォールド断層内のサブ・スペースと呼ばれる使わない・・・・・・いや、使ってはいけないゲート位置だった。 この空間に開いたゲートは普段使うゲートとは違って、通常空間との相対位置に必ずしも一致しない。 つまり入って10秒でデフォールドしても隣の銀河だった。という事が起こり得る。そのため救助はフォールド空間を経由せねばならなそうだった。 ―――――しかし救助の準備に取り掛かったSMSに横やりが入った。 『ここから先は我々が行おう。ご苦労』 突然の通達。差出人は新・統合軍だった。 最近風当たりの悪い新・統合軍としては、目に見える成果が欲しかったのだろう。 〝救出〟という美味しいところだけ持っていく理不尽で一方的な申し出だったが、悔しいことにSMSは民間企業であり新・統合軍は大切なスポンサーだった。 そうして今度はその座標に救援の先遣隊として統合軍のゴーストが一機送られることになった。 そのゴーストはフォールドクォーツを応用した通信機が装備されており、これを中継器として向こう側とのリンクが確立できるはずだった。 (*) 新・統合軍 ステルスクルーザー艦内 統合指揮管制所 そこでは一人のオペレーターがフォールド空間に突入したゴーストのオペレートを行っていた。 (なんてことはない。いつもの飛行をすればいいんだ) そう彼は自分に言い聞かせるもののふと手元を見ると、いつも扱うタッチパネル式のコンソールパネルの上に額から垂れたのであろう汗が一滴滴っていた。 この空調の利く艦内で汗を滴らせていたとなると、よほど緊張しているらしいことを再認識せざるを得なかった。今自分のやっていることは全銀河に名を轟かす超時空シンデレラ、ランカ・リーの救出作戦に他ならないのだ。 この作戦を見事成功させた日には、昇進させてもらえるかもしれない。それに何よりの名誉だ。そうすればフロンティアで役立たずの烙印を押されている統合軍軍人の妻や子供として肩身の狭い思いをしてるだろう家族に大手を振って歩いてもらえる。 はっきり言って何度も軍には失望させられた。 (だがフロンティアを守るのも、そこに生きる人を救うのも我らが新統合軍だ!目先の金が目当ての民間軍事プロバイダなんかに任せておけるか!) ハイスクール時代の新・統合軍のパレードを見て、この道を自信を持って進んだあの頃の自分に間違いはないはずだ。 そうでなくとも変えて見せる。そのための力は今手許にある。世界最高峰の技術の粋を結集した「ゴースト」という力が。彼は今それを何不自由なく操作できる自分に感謝した。 事実、その技量は客観的に見ても称賛に値すべきものであった。彼のゴーストはフォールド空間の磁気嵐の中を有線で航行しているが、ある時は自身がスティックを握って誘導し、またある時は巧みな判断で磁気嵐を先読みしてゴーストの自律航法装置に指示を出した。 そうして長い航路の末、目的の座標へとたどり着いた。 ちらりとのぞいたステータス表はオールグリーン。ゴーストは無傷で辿りつけたようだ。 しかし安堵のため息など吐いている暇はない。まだ彼も、そして相棒(ゴースト)も仕事を終えていないのだ。 手元のパネルからゴーストに積んだスーパーフォールドブースターを活性化。フォールドゲートが開いた。 フォールド中継器作動確認。周囲にレーダー反応・・・・・・なし。エンジンリスタート。スーパーフォールドブースター最大出力。 「まもなくデフォールドします。3、2、1」 画面いっぱいにゲートが近づいて――――― 「どうした?」 突然砂嵐になった画面に何が起こったかわからない上官が詰め寄ってきた。 何が起こったのか分からないのは彼も同じだった。予定ではゲートをそのまま突破。後に中継器を介してあちら側とコンタクトするはずだったのだ。 ゴーストのステータス表はリンク途絶を表示し、緊急ビーコンの応答もなかった。 (ウソだろ?全部うまくいってたはずだろ!?) 操作ミス・・・・・・いや、無かったはずだ。 整備不良は・・・・・・三日前オーバーホールしたのにそれはないよな。 磁気嵐にやられた・・・・・・記録を見る限りそんな様子はない。 可能性は潰れていき、ついにはなくなってしまった。つまり、何もわからないのだ。だから彼にはありのままを伝えるしかなかった。 「それが・・・・・・リンクが切れました。原因不明です」 「なに!?」 その上官はともかく状況を確認するとゴーストの回収を最優先して、ゴーストまで伸びているはずのフォールドクォーツの粒子入りのワイヤーを手繰り寄せる。 しかしその先には何もなくて・・・・・・ 彼は改めて自分が失敗したのだということを思い知らされた。 (*) その頃マクロス・クォーターのバーでは一番美味しいところを持っていかれたため、調査隊の隊員達がクサっていた。 特に悔しいのはルカだ。 「酷すぎますよ統合軍は!後少しってところで良いだけところだけ持っていって─────!」 「まぁまぁ、ナナセちゃんには私が伝えるわ。『あなたの彼がランカちゃんを見つけた』って」 シェリルがグロッキーな彼をなだめる。ハタチ前なのに周囲に合わせてお酒を頼んだ彼だが、あれから三時間。まだ一度も口を着けていなかった。 (まったく、まだ子供なんだから) 口には出さなかった。 そこにオズマ少佐が血相変えてバーに飛び込んできた。 「隊長? どうしました?」 「統合軍の先遣隊のゴーストが消息を断ったらしい」 「「え!?」」 その場の一同が唖然とした。 (*) 先のバジュラとの闘争においてあまり目立たなかったゴーストだが、そのサバイバビリティと戦闘力は世界最高峰だ。 そう簡単に落とされぬよう戦略・戦術システムと対ハッキングプログラムは毎週のように更新され、各種探知機から武装まで毎年アップデートされている。 それが消息不明となると事態は深刻だった。 即座に合同捜査という運びとなり、再びSMSが表舞台に立つことになった。 (*) フォールド空間 そこには精密な調査をするためSMSから派遣されたルカ率いる調査隊と護衛のピクシー小隊が展開を始めようとしていた。 母艦となっているのは新・統合軍のノーザンプトン級ステルスフリゲートだ。 今回ゴーストの行方不明の理由もわからず、まだ表向き新・統合軍の管轄として扱われているため船だけ回したらしい。 (僕達の命の重さはこの船一隻分ってことか) ルカは艦長席に座って指揮を取るコンピューター頼りのお飾りペーパーエリートに視線を投げると、ため息をつく。 しかし彼は容姿はともかく大人だった。すぐに (僕達だけで行かせなかったことを評価すべきか) と思いなおすと、自らが座る艦のセンサー類が統合制御監視できる部所である科学・調査ステーションのコンソールパネルを弾いた。 艦に搭載された各種長距離センサーではゴーストが入ろうとしたフォールドゲートの座標に異常は見られない。また、レーダーにも反応はないようだった。 しかしゴーストが行方不明になったことは厳然とした事実であり、宙域に吹き荒れる磁気嵐がセンサーを妨害し、敵機が隠れている可能性も否定できない。 ルカは最新の観測データをこの船の格納庫で翼を休める己が愛機『RVF-25』に転送。その席を統合軍ではない、SMSから連れてきた調査隊の一人に任せると、格納庫に向かった。 (*) ノーザンプトン級ステルスフリゲートは〝フリゲート〟の名に違わず配備数が多く、基本設計は30年以上変わっていない。しかし高速性とステルス性に長け、現在もマイナーチェンジしながら継続して量産が続けられて、各移民船団の主力護衛艦艇として活躍する優秀な艦種である。 それを証明する例としては、過去にバロータ戦役において第37次超長距離移民船団(マクロス7船団)が行なった突入作戦『オペレーション・スターゲイザー』の際、この重要な作戦に母艦『スターゲイザー』として同型艦が使用されていることなどが挙げられる。 さて、この艦はひし形の艦体構造と直線的なフォルムによってパッシブ・ステルス性を向上させている。また、フリゲートと言えど全長は252.5メートルと第二次世界大戦の大和型(全長263メートル、基準排水量64000トン)に匹敵し、兵装は粒子加速(ビーム)砲や反応弾を含めた各種ミサイルなので火力では比較にならない。 しかし運用重量約1200トン(質量)とまさに駆逐艦クラスであり、その差から生み出される内部空間はバルキリー隊などの機動部隊を運用するに十分な広さを提供していた。 SMSのピクシー小隊を率いるクラン・クラン大尉も愛機クァドラン・レアと一緒に格納庫にいた。 彼女の傍らにはバジュラとの抗争時からピクシーの二番機を務めるネネ・ローラが同じようにクアドラン内で出撃待機に入っている。 クランはその首に掛かるペンダントを愛しい物のように〝ギュッ〟とその手に握った。 そのペンダントの先には彼女の愛した人の遺品がある。 その彼が〝見えすぎる目〟の矯正のために掛けていたそれはアルトにとってのVF-25Fというように、今となっては彼女に掛かった呪い(カース)だった。 彼は無防備だった自分を守るために何のためらいもなくその身を盾にして死んだ。 愛のため殉じる。 『そんな陳腐な言葉』と鼻で笑われるかもしれない。しかし彼は自らや大切な友人達を守りきれたことに安堵して散った。 そのためクランはこのペンダントから彼の分まで〝生きる〟という呪いにも似た使命を背負っていた。 (ミシェル、お前は私が戦うことを望んでいないかもしれない。だが、私はゼントランなんだ。お前の守った人達は私が守り続けてみせる!) クランは決意を新たにしながらRVF-25に搭乗を始めたルカを見やった。 (*) 『クラン大尉、僕の『アルゲス』の探知範囲から出ないでくださいよ』 「わかっている」 クランは応えると、ノイズの激しい自機搭載のレーダーから目を離した。 彼女らは今、例のデフォールド座標に向かっている。 SMSのクァドランに搭載された各種レーダーシステムは、新・統合軍より高性能のものを装備しているが、この磁気嵐の中では役に立たなかった。 一方ルカの搭乗するRVF-25の装備するイージスパックはレーダードーム『アルゲス』に代表される強力なレーダーシステムと大容量・超高速コンピューターを搭載。その索敵能力と管制能力はルカの技量も相まって本式のレーダー特化型護衛艦一隻分に匹敵し、航空隊の〝目〟として機能する。 現在ルカはその強力なレーダーシステムとコンピューターを駆使して磁気嵐を寸分の隙なく解析、ノイズを補正し、三機の中で唯一正確なレーダー情報を入手していた。 しかしデータリンク電波も撹乱されてしまうので、ルカから届く音声通信と自身の目だけが頼りだった。 『まもなくデフォールド座標です。ローラ少尉、ワープバブルの位相範囲を最大にしてください』 『・・・・・・はい』 ルカの指示に編隊の最後尾に位置するネネのスーパーフォールドブースターが全力稼働。時空エネルギーの圧力に対抗するために展開されるワープバブル徐々に大きくなり、デフォールド座標までをバブルで包んだ。 ネネはそのまま定点となり、ルカとクランは周囲を警戒しつつ前進。デフォールド座標の調査を開始する。 『─────走査完了。付近に機影なし。フォールドゲートを開きます』 ルカの声が届き、RVF-25の主翼にくくりつけられたフォールドブースターが光を発する。 目前の空間に亀裂が入り、フォールドゲートを形成した。 クランは油断なくゲートに向かってクァドランのガトリング砲を照準するが、ゲートは我関せずとばかりにそこにあるだけだ。 『・・・・・・大丈夫みたいですね』 「ああ」 どうやら取り越し苦労だったようだ。おそらくゴーストも統合軍のバカが操作を間違えて故障させてしまったのだろう。 (これだからデブラン(ちっこいの)の作る機械は─────) と自らの搭乗するゼネラル・ギャラクシー社再設計のクァドラン・レアを棚に置いてため息を着いた。 『それじゃこのままデフォールドします。クラン大尉は先導願います』 「わかった」 彼女は応え機体を前進させようとするが、寸前で左端の方で視界を遮る〝もの〟の存在に気づいた。 胸元に入れていたペンダントが飛び出し、漂っていたようだ。 クランは危ない、危ない。とペンダントトップについた眼鏡の入った容器を掴み胸元に戻す。だがその先にあった左舷を映すディスプレイに光を捉える。 クランの手は即座に動き、ルカのRVF-25を突き飛ばした。 『うわっ!』 ルカの悲鳴と共に、さっきまでバルキリーがいた場所を5メートルほどの光弾が貫いていった。 「ルカ!今のはなんだ!?」 通信を送りながらその物体に腕部のガトリング砲をぶち込む。しかしそれらの弾幕は空しく空を切った。 『現在走査中!─────ダメだ!レーダー反応なし!目標はステルス、もしくは何らかのエネルギー体です!引き続き解析します!』 「チィ!」 クランは機体を横滑りさせて迫る黄色い光球を回避する。ルカもバトロイドに可変してガンポッドを照準、掃射するが、レーダーに映らないので普段コンピューター補正頼りの彼には荷が重い。 そうしているうちに蛇行していた光球は突然180度速度ベクトルを変えると、ルカに突入を始めた。 「おのれ!ミシェル、私に力を!」 クランはその胸に鎮座するペンダントに願掛けすると、機体の出力リミッターと『キメリコラ特殊イナーシャ・ベクトルコントロールシステム』のリミッターをオーバーライド。 機体の主機が瞬間的な200%の稼働によって悲鳴のような高周波の唸りをあげ、まるでゴーストのように設計の限界性能を引き出して加速する。 華奢な彼女の体に人間には到底耐えられない数十Gという莫大な力が働くが、メルトランディである彼女は遺伝的にハイGに耐えられる。それに"守る"と決め、そのための翼を与えられている彼女にとってそれは些末な問題にすぎなかった。 その速度そのままにルカと光球の間に割って入った。設計限界からの瞬間停止によって限界を迎えた慣性制御システムが煙をあげて吹き飛ぶが、クランの瞳はまっすぐに迫ってくる光球から離れなかった。 「ハァァァ!」 腕部にフルドライブのPPBを展開、雄叫びと共にその光球に正拳の一撃を放った。 激突した両者から発生した莫大な時空エネルギーの余波が電流として発現。クァドランの巨体を流れる。 その過電流によって機載の電子機器が次々システムダウンを起こし、沈黙していく。 しかしクァドランはいい意味でシンプルな機体だった。 その基本設計は何千何万周期もこの広い宇宙で戦い続けた『クァドラン・ロー』という機体だ。 『クァドラン・レア』はそれをゼネラル・ギャラクシー社が再設計、現代戦に対応するため多数の電子機器を装備し、武装を改装したものだ。 ゼントラーディの兵器群はプロトカルチャー設計のもので、その耐久年数は人間製のものとは比較にならない。 さる筋の調べによるとピコメートル単位の誤差すらないらしい品質の高さも挙げられるが、その設計のシンプルさが物を言っていたのだ。 その基本設計を受け継いだクァドラン・レアは元々各種電子機器などなくても操縦者さえいれば戦闘稼働が可能なほどのタフな機体だった。 『お姉様!』 遠方でワープバブルを維持するネネの悲鳴が耳を打つが、通信機はそれを最後に沈黙する。 絶縁破壊を起こした電気配線がスパークして目の前にあった前部モニターを吹き飛ばす。 腕部のガトリング砲に異常事態。それを警告するモニターがなかったが、彼女の髪の光ファイバーを利用したインターフェースによってそれを知り得たクランは緊急システムでそれをパージする。直後電子機器のスパークで弾薬に引火したそれは大爆発した。 次々機能が死んでいくクァドランの中でクランは必死に機体を操り、光球を押し留める。 おそらくVF-25やVF-27ではすでに機体は操縦者を見捨てて機能停止していただろう。 しかし各部分ごとに独立したブロック(ユニット)型という名の構造。そして正副二重(つまり四重)に確保された操縦用回線はこの状態でも操縦者を見捨てまいとなけなしの力を振り絞る。それはもはや奇跡に近い稼働だった。 その甲斐あってようやく光球は転進、左舷方向に流れていく。 「嘗めるなぁ!」 気合い一発。クランは機体前部を相手に向けると、前部を向いたまま旋回能力が死んでいた『対艦用インパクト・キャノン』をカンで照準。引き金を引いた。 元のビーム砲から対バジュラ用のMDE重量子ビーム砲に換装されたこの火器はあやまたず光球を貫き、爆散させた。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」 荒い息づかいがヘルメットの中を反響する。 クランは機体を動かそうと操作するが、ピクリとも動かなかった。気づけば主機である背後の『キメリコラ/ゼネラル・ギャラクシー熱核コンバータFC-2055µ』も停止している。 どうやら愛機は本当におシャカになってしまったようだった。 (お疲れ様だ。良く頑張ってくれた) クランは敵を倒すという役目を果たして息絶えた愛機に告げると、非常用の爆裂ボルトに点火。コックピットハッチである前部装甲をパージすると、手を差し出すネネのクァドランに掴まってルカ共々母艦に帰還した。 (*) 「有人調査で判明したのは以下の通りです」 集めた調査隊員を前に、ルカは調査結果をスクリーンに投影しながら説明する。 調査隊を襲撃した光球は莫大な時空エネルギーの塊で、調査隊が磁気特性を持ち、レーダー波を発していたため自然と寄ってきたものであること。 レーダー波を吸収、結果アクティブ・レーダーで探知できないことからゴーストもおそらくこれに撃墜されたと思われることなどだ。 「─────しかし問題はこれだけではありません」 ルカはそう告げると、スクリーンに違う画像を展開する。 「これは・・・・・・次元断層シールド?」 調査隊の1人が驚愕に目を見開く。これは現代ではバジュラクイーンしか発生させたことがなく、次元断層によって位相空間内を外部の次元と隔てることで物理的な攻撃を完全に防ぐ現状では最強のシールドだ。 「はい。あの光球のエネルギー源を様々な調査結果をつき合わせて検討した結果〝フォールドゲートを自然発生の強力な次元断層シールド〟が塞いでいるという結論に達しました」 彼の説明によれば、光球がフォールドゲートを開いた時に初めて出現したことから関連性を調べてみると、開いたフォールドゲートの数値異常に気づいたという。 最初はサブスペースのゲートだからと気にしなかったが、どう考えてもエネルギーが莫大過ぎる。 そこでゲートを解析すると、どうやらアルト達が無理やりデフォールドした結果、次元連続体が寸断され莫大なエネルギーが流出。そこに溜まり、シールドを形成したらしい。 「またこれにより時空までも捻じ曲げられているらしく、波動的に変動して時間の進行速度が変化しているようです。計算上では現時点で、あちら側ではゆうに3カ月以上が経っているものと考えられます」 「それじゃランカはもう―――――!」 部下であるアルトはともかく、溺愛する妹の安否を第一に置いているらしいスカル小隊隊長は顔面を蒼白にして拳を握る。 20日やそこらならVF-25は問題なく稼働して星間航行できる程度の移動手段になるだろう。コールドスリープを使えば酸素も食料も何とかなる。しかしそれ以上となると機体はパイロットの整備だけでは維持できない。三カ月ともなれば宇宙はまず飛べまい。そうなると搭乗者達の生存率は飛躍的に低くなる。なぜなら全くわからない未開の場所で、人間にあった生存可能惑星が見つかる可能性は限りなくゼロに近い。 その事実は宇宙開拓者であった自分達がよく知っていた。 「いえ、オズマ隊長、その点は大丈夫です。あちら側には一定以上の生存可能惑星があるみたいなんです。時間の変動の正確な係数も接近した時収集したデータからランカさんのフォールドウェーブを解析してわかったものですし・・・・・・彼らはまだ、僕たちが迎えにくるのを待ってくれています」 自分達にとっては一週間も経っていない事柄だが、あちらにとっては三カ月以上。これだけ長いと捜索は打ち切られたと判断するはずだが、まだ生きて待っていてくれているという事実はオズマを含め調査隊隊員達を今まで以上に奮い立せた。 しかし――――― 「しかし現時点で二つの障害があります。ゲートを開くと溜まったエネルギーがフォールド空間に溢れ出して光球という形に発現、これが今回のように第一の障害となります。もっともこちらに関してはクラン大尉のようにバルキリーレベルの重量子ビームの直撃か金属性実体弾で消滅させたり反らすことができるでしょう。しかし第二の障害である断層シールドは現用の戦術反応弾頭、DE(ディメンション・イーター)弾頭を含めても突破は不可能です」 「ちょっと待て、それじゃアイツらを助けに行けないってのか!?」 希望が出てきたと思った矢先、絶望に落とされたことで調査隊の一人が感情も露に机を叩く。 「安心してくだい。手はあります」 「なん・・・・・・だと?」 ルカは不敵な笑みを浮かべるとそれを告げた。 「僕らには断層シールドを〝素〟で突破できるバジュラ達がいるじゃないですか」 調査隊員達は 「「その手があったか!」」 と喜ぶと、上げたり下げたりしてもったいぶったルカにオズマを筆頭とした者共からスリーパーホールドなどの〝手厚い歓迎〟が施された。 「・・・・・・バカどもが」 「そうですよね。これだから殿方は―――――ってお姉様!?」 「私も混ぜろぉ~!」 楽しそうに両腕を振り回しながら闘争の渦の中に突貫して行った大学の先輩で小隊長である青髪の少女にネネは (これはこれでありかも・・・・・・) と思ったそうな。 (*) 新・統合軍とバジュラクイーンを交えた協議の結果、先遣隊として個体番号1024号。通称「アイくん」、そしてブレラ中尉搭乗のVF-27『ルシファー』が選定された。 アイくんが選ばれた主な理由としては第一に赤色をした大きなバジュラ、つまり成虫バジュラであること。 そして第二に幼生の時にランカに育てられたため、個体としての知能が高く、クイーンからの誘導を切られても完全な自立行動が可能だったことなどが挙げられる。 またVF-27が行けるカラクリについては、これもまたルカの隠し球である。 実は例の断層シールドには通常兵器の単体による攻撃は通用しないが、強力な歌エネルギーのサウンドウェーブと強力な重量子ビームか、重量子反応砲の相乗効果で突破可能という結論が出ていたのだ。 そこで特定のサブスペースを探し出せる高性能センサーと重量子反応砲によって唯一あちらから能動的に帰還できるマクロス・クォーターを送り込むことを考えたのだが、ここで問題となったのは向こうとこちら側との時差であった。 最も近い時の時差でも10倍強。つまり仮にマクロス・クォーターが突入までに10秒かかってしまうと、先に突入した先端部分と後部との時差は100秒となって船体自体が引き裂かれる。 そこでSMS技術班は、フォールド空間内で外界と次元的位相を持って断絶させるフォールドのワープバブルをヒントに時差から内部空間を守る時空シールド(ディストーション・シールド)を考案した。 しかしそのための改修は数時間かかることが予想され、あちら側の時間軸で三~四カ月ほど掛かってしまう。 かと言って先遣隊であるアイくんには行った先での生活支援などできないことが多い。また、何かを随伴させようにも彼の突入方法はクォーターのようなシールドに守られた物でなく、重量子ビームで空いた穴に爪を掛けて無理やり広げ、飛び込むという荒い方法だ。 そこでその荒業時に耐え、かつアルト達の支援に対応できるであろうVF-27に白羽の矢が立ったのだった。 そして先のブリーフィングの六時間後には先遣隊の突入が真近に迫っていた。 (*) 惑星『フロンティア』の宙域ではアイくんを見送る艦艇が集っていた。 みなアイくんの所属部隊である民間軍事プロバイダ「惑星フロンティア防衛隊」の異種属混成艦隊だ。 嫌気から統合軍を飛び出した人間とゼントラーディの艦艇に加え、バジュラの空母級が実験的に一隻配備されている。規模は小さいが、半年前にさらに広域を担当する新・統合軍艦隊を突破したはぐれゼントラーディの五個艦隊を水際で一日以上足止めするという輝かしい戦歴を誇っており、その有用性を高く知らしめた現在SMS最大のライバル会社だ。 なお余談であるが、この事件は統合軍艦隊到着前にシェリルとランカを数万光年先からスーパーフォールドして輸送したSMSの介入で収束しており、新・統合軍の威厳をさらに貶め、彼らのいいとこなしの代名詞のような事件となっていた。 防衛隊主力バルキリーであるVF-171の編隊がアイくんをフォールドゲート前で待つSMSのマクロスクォーターまで送り届けると、その深緑の翼を翻しながら惑星軌道上の母艦へと戻っていく。 『帰ってこいよ!戦友!』 フォールド通信波に乗ってやってきたそのうちの一機のバルキリーパイロットの声に、最近覚えた片腕の指を一本だけ立てるという行為を返した。人間流に言うとサムズアップと言うそうで、パイロット達がやっていたのを真似てみたのだ。初めてこれをやった時にはフォールド翻訳機以外の意思疎通ができたと喜んでくれた。 それ以来険悪だった自分達と仲良くしてくれたように思う。おかげで人間とは自分の真似をされると嬉しいらしいことは〝我々全体で〟学習済みだ。 彼は今回の見送りなど破格の待遇は努力が認められて自分達、バジュラという生物もまた、人間やゼントラーディ逹にとっても戦友であり友人であると認められたからだと思っていた。 『これより未知の空間に旅立つ、アイ君に敬礼!』 アイくんにはまだ階級というものがよくわからなかったが〝この部隊のバジュラ・クイーン〟と認識する声がフォールド通信波で放たれる。 元フロンティア新・統合軍防衛艦隊司令、今の防衛隊の艦隊司令であるバックフライトの声だったそれは光を凌駕するスピードで各艦に波及して、一斉に敬礼を放たせた。もちろんバジュラ空母級の仲間達も学習を生かして敬礼の真似事をしていた。 アイくんは一度礼を言うように宙返りしてフォールドゲートへと突入していき、シェリル座乗のクォーターも続いていった。 (*) フォールド空間内サブスペース 予定座標 今も補強などの改装作業の進むクォーターのブリッジのステージでは、シェリルがステージ衣装に身を包み、たたずんでいた。 また飛行甲板には出現するだろう光球に対して射撃を行うマイクローン化したクラン大尉の搭乗するVF-25Gや多数の人型陸戦兵器(デストロイド)がずらりと配置され、壮観な光景を出現させていた。 そして───── 「全艦、準備完了」 ディスプレイに浮かび上がった合図にキャシーの声が花を添える。その知らせに艦の長たるワイルダーは凛と号令を発した。 「野郎ども!我らの姫君に必ず〝希望〟を送り届けるぞ!作戦開始!!」 ワイルダーの号令一下アイくんの体内フォールド機関を活性化。予定座標にフォールドゲートを開いた。 同時に飛行甲板の部隊が一斉に射撃を開始し、出現した光球の撹乱を開始した。 それに呼応するようにシェリルはマイクを握りしめると歌い始めた。 〈ここからは『射手座午後9時Don t be late』をBGMにすることを推奨します〉 吹き荒れる磁気嵐に対抗するため重力制御装置が全力稼働でクォーターの姿勢を制御する。 その人工重力によって重力が歪められるが、撃ち出される弾体は距離に反比例して直進していく。 そして甲板が一瞬火山みたいに光ったかと思えば、巨大な砲弾とミサイルが飛翔して行った。 VB-6『ケーニッヒ・モンスター』の32センチレールカノンから撃ち出されたDE(ディメンション・イーター)弾四発と、両腕に装備された六門の重対艦ミサイルだ。 四発の砲弾はフォールドゲートに熱いキス。真っ黒な異空間を作り出して、シールドを削った。 一方ミサイルに釣られた腹ペコ光球は反応弾頭に匹敵する爆発に呑まれ霧消した。 「第2ステージ開始!」 キャシーの指令にアイくんは背中に背負う甲羅から伸びた巨大な針にエネルギーを集束し始め、無防備になった彼に迫る光球をVF-27自慢の高機動で動き回り、展開した弾幕がその行く手を阻む。しかしそれのみではとても間に合わない。 「持ってけぇぇぇ!」 クランは叫びと共にVF-25Gの装備するSSL-9B ドラグノフ・アンチ・マテリアル・ライフルから55ミリ超高初速MDE弾を撃ち出し、流星のようにアイくんに迫った光球のことごとくを散らし、撃墜する。 また同時に砲弾とサウンドウエーブによって不安定になった次元断層シールドにアイくんの、ゼントラーディの2000メートル級戦艦をも一撃で沈める重量子ビームが放たれた。 着弾、そして大爆発。 だがそれを持ってしても穿たれた穴は1メートルに満たなかった。 しかもそれすら徐々に閉じていく。 「飛んでけぇ!」 クランの叫びが聞こえたのかアイくんは尾を振って突進。その穴に自らの針と手を突き入れ、力任せにこじ開けようとする。 シェリルは渾身の歌で、クラン達は弾幕でアイくんを援護する。 全員思いが届いたのかシールドのヒビが広がっていく。そしてガラスの割れるような音と共にシールドを無力化。VFー27がその間隙を縫ってゲートに突入。アイくんは一度こちらを返り見るようにして突入していった。 「ゲート消失!ブレラ中尉からの通信リンク待機中・・・・・・」 クォーターのブリッジにて通信・火器管制を務めるラム・ホアが耳にインカムを押し当てながら待つ。 VF-27に積んだ特殊なフォールド通信機ですぐさま通信リンクを確立、向こうの状況を送ってもらう手筈になっていたのだ。しかしその視線の先の時差修正タイムラインが一時間、ついには一日を超えても通信リンクが確立されることはなかった・・・・・・ to be continue ・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 新人たちに与えられた久しぶりの休日 しかしそれは嵐の前触れに過ぎなかった・・・・・・ そして動き出す敵の正体とは? 次回マクロスなのは第26話「メディカル・プライム」 偉大なるベルカに、栄光あれ! ―――――――――― シレンヤ氏
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マクロスなのは 第28話『撃墜』←この前の話 『マクロスなのは』第29話『アイくん』 ランカが悲しみの歌声を発したのと同時刻 クラナガン上空200キロメートル(衛星軌道上) 「アイくん」は困惑していた。 さっきまであんなに嬉しそうに歌っていた〝愛しい人〟が、今度は心から悲しみに満ちた歌を歌っている。腸内(バジュラ)ネットワークを通して感じる痛みに、アイくんは改めてヒトの心の痛みという物を認識した。 しかしアイくんも約1年前、フロンティア船団で起きたいわゆる『第2形態バジュラ暴徒化事件』のように、悲しみに任せて下界に広がるヒトの町を破壊しないだけの分別はあった。 でも何もしないのは嫌だった。そこで〝愛しい人〟がなぜ悲しんでいるかを思考する。喜びの歌と悲しみの歌との間にあった出来事は、極小の粒を粒子加速して目標を破壊せんとする稚拙な暴力機械である〝筒〟から出た〝線〟が、彼女の友人が乗る〝ひこうき〟に命中したことだ。直後ひこうきからは、大量のフォールド波の奔流が異空間に流れ出たが、それは関係ないだろう。 人間はよく殺し合いをするが、こと味方や友人といった人種がやられることに関して敏感だ。〝自分がいた集団(惑星フロンティア防衛隊)〟でも同僚がやられると、弔い合戦だなんだと勝手に集まってきて不必要なまでの大きな戦力でその敵をねじ伏せる。 バジュラは全体としてその感情について完璧に理解したわけではない。彼らにとっての友軍(バジュラ)がやられたことを人間に当てはめると、腕や足を失くしたという認識に近い。確かにそれなりには怒りや痛みを感じるが、結局代わりの効くものだ。 しかし、アイくんにはわからなくもないものであった。 これもまた〝自分がいた集団〟にいた時の話だ。翻訳機の開発以来、編隊長として見た目にほんの少し差別化を図っていた自分に、いつも声を掛けてきてくれる〝よく一緒に飛んでいた男(バルキリーパイロット)〟がいた。平時の彼の通信からは曰く〝ろっく・みゅーじっく〟なるものが流れており、哨戒任務中いつも 「いい曲だろ」 などど自慢されていた。 しかし彼は〝大きな好戦的人間の集団(はぐれゼントラーディ艦隊)〟との戦闘中に撃墜。亡くなってしまった。それ以来哨戒任務中などにその曲や彼の声が聞こえなくなったことは、自分にとって大きな驚きと喪失感を与えるに至っていた。 だからわかる。人間にとって仲間を失うことは、丸ごとひとつ、世界を失うことに等しいとても悲しいことなのだと。 長くなってしまったが、その友人の乗るひこうきが破壊され、同時に友人を失った事に彼女の悲しみの根源があり、筒を持ったヒトが悪らしい。結論の出たアイくんの行動は決まっていた。 『そのヒトを捕獲または殺傷する』 アイくんは戦闘用の〝特殊な電波〟をピンポイントでその地域に放射すると、赤いフォールド光の光跡を残しながら現場に急降下した。 (*) 早乙女アルト撃墜、死亡の知らせはほとんど伝播されなかった。なぜなら撃墜からすぐ、核兵器クラスの強力な電磁波ショック(EMP)とジャミングが放たれ、一帯ですべての民間の電子機器がオーバーロードし、通信がダウンしたためだ。─────これをアイくんがやったとは誰も認識できなかっただろう─────通信設備から機器まで全て民間のミッドチルダ電信電話株式会社(MTT)に依存していた管理局はひとたまりもなかった。 軍用機である六課の輸送ヘリ(JF-704式)、バルキリー、AWACSはこのような事態に対応するために、基盤レベルで対電子攻撃の対抗と強力な電子攻撃防御手段(ECCM)を行っているため、EMPでオーバーロードしたMTT製の通信機器(ほとんど全て)以外はノイズ程度でなんとかなった。ちなみに、デバイスは元々電子機器でないためまったく関係ない。 通信できないことで周囲が混乱する中、ヘリを狙撃した砲戦魔導士に対する管理局側のファーストストライクは、怒りからMMリアクター(小型魔力炉)の消耗を無視して行われたさくらの大威力砲撃だった。 「破邪剣正(はじゃけんせい)、桜火砲神(おうかほうしん)!」 詠唱破棄した集束砲は非殺傷設定で放たれ、敵へと殺到する。だがそれはミッド、ベルカ両魔法でも、オーバーテクノロジー系列でもない別系統のシールドによって弾かれてしまった。 効果がなかったと見るや、間髪入れずに破壊設定にした第2射の充填に入る。なのはのそれよりも淡い桜色を湛えたドラグノフ・ライフルの銃口。MMリアクターによって強化され、Sランク相当となったこの集束砲は撃てさえすれば、管理局の戦艦を串刺しにできるほどの出力を有していた。だがそれは〝撃てさえすれば〟である。 MMリアクターの異常加熱により、緊急閉鎖を知らせる警告音と表示がさくらの視界を瞬時に覆う。そして引き金を引く間もなく銃口に集束していた魔力球は閉鎖システムに流用され、その輝きを失ってしまった。 「こんなときに!」 敵はこちらのオーバーヒートを察したらしく、構えを解いて逃げていく。こちらが完全に追撃能力を失くしたと判断したのか、屈辱的なことに後姿丸出しで、である。逃走速度は超音速。通常のバルキリーではMMリアクターの閉鎖と修復に時間を取られて、とても追えないことを知っているようだ。だが――――― 「させない!!」 さくらは目前を覆っていたホロディスプレイの群れを腕の一閃で吹き飛ばすと、スラストレバーを目いっぱい押し出して追撃に入った。 元々Aランクのリンカーコアを保有する彼女は、機載のMMリアクターに頼らずとも、ある程度の戦闘が可能なのだ。 「止まりなさい!こちらは時空管理局です!あなた方を、市街地での危険魔法使用と、殺人〝未遂〟の罪で現行犯逮捕します!」 あれが未遂かはわからないが、どうしてもアルトが死んだとは認めたくなかった。しかし今、撃墜現場は残った天城に任せるしかない。 『また今度にしておきま~す!』 そう言いながら逃げる2人組。 焦りと怒りに燃えるさくらの瞳が、謎の赤い飛翔体を認識したのはその時だった。 「あれは・・・・・・?」 敵の召喚士の寄越した増援とも考えられたが、どうも違うようだ。そのバルキリーほどの大きさをもつ飛翔体は2本の腕から連射される青い曳光弾・・・・・・いや、ビームを逃げる2人組に放つ。ビームは少なくとも非殺傷設定ではないらしく、着弾したアスファルトを耕していく。 「ちょ、ちょっと─────!」 考えようによってはあの2人組よりヤバそうな攻撃に声も出ない。ただ1つ救いなのはここは郊外であり、道路には人影がなかった事だった。それに〝それ〟は〝決して〟建物には当てようとしなかった。 そうして目標を決めかねていると、2人組の逃走者は突然姿を消した。 「うそ!?」 通常レーダー、魔力レーダー、ジャミングのせいでノイズは酷いが共に反応なし。フォールド式の方は、ジャミングの影響かなぜか画面の全面がホワイトアウトしている。どちらにせよ行き先がわからない事実には変わりがない。 「そんな・・・・・・!」 思わず苦虫を噛んだように顔になった彼女だったが、赤い飛翔体には違ったようだ。 それは背中に担ぐ甲羅から生えた巨大な針がスパークしたかと思うと、ビームを射出した。ある世界では〝重量子ビーム〟と呼ばれるこの粒子ビームは、空中で弾ける。果たしてそこには例のシールドを展開した2人組がいた。外部マイクが1人の声を拾う。 『私の迷彩が破られるなんて・・・・・・』 実はこの時、アイくんは彼女の固有武装である〝シルバーケープ〟の光学迷彩を破ったわけではない。彼女が併用して発動させた魔力の隠密装置がいけなかったのだ。 この装置は〝フォールド波〟を応用して魔力の探知を不能にする。しかし代わりに大量のフォールド波を放ってしまうのだ。人間の使用するフォールド式レーダーでは相手側の放射量が大き過ぎてオーバーロード。一時的にホワイトアウトするはずだったので問題はなかった。しかしフォールド波を血とし、肉とするバジュラには関係ない。それどころか多すぎる放射は、よりアイくんの照準を確実なものにした。 また、ビーム出力を下げたのはアイくんの判断だ。でなければシールドなど関係なく貫通し、下界の町をも吹き飛ばしていただろう。しかし生身の人間がシールドを張るなど思っておらず、最低出力で撃ったことが仇となった。かといって出力を上げれば周囲への被害は避けられそうにない。 こうして両者が手詰まりになった所に、管理局側のセカンドストライクが入った。ヘリの急を聞いてこちらに向かっていた、なのはとフェイトが間に合ったのだ。 『トライデント、スマッシャァー!』 『ディバイン、バスタァー!』 同一直線上を対になって発砲された桜色と金色の魔力砲撃は誤たず、2人組のいた空間に着弾した。 「やったぁ!」 さくらが声を上げるが、なのはは否定する。 『違う、避けられた!』 続けてフェイトが補足する。 『直前で救援が入った。』 さくらは即座に上空で待機するAWACS『ホークアイ』に、頭部対空レーザー砲を照準。長距離レーザー通信で後を追うよう要請した。自ら探しに行かないのは、更なる懸案事項が隣に鎮座するからであった。 『・・・・・・それで、さくらちゃん。〝これ〟は何・・・・・・かな?』 なのはが油断なくデバイスを飛翔体に突きつけて、その隣を飛ぶ自分に問うた。 (*) 時系列は少し戻って三浦半島上空 そこでは勢いづいたガジェット・ゴースト連合に対してフロンティア基地航空隊の必死の迎撃が続いていた。 EMPで軌道上のAWACS及び、各機を繋ぐ統合戦術情報分配システム(JTIDS)のデータリンクを失い、乱戦になってしまっている。こうなると編隊規模ですら組織立った戦闘行動は行いにくい。参加者の誰もが相手よりよい位置に着こうと無秩序なベクトルで飛び回る空戦なら尚更である。 その乱戦の中をカナード翼も映える1機のVF-11S(指揮官機仕様)が飛翔していく。そこへ上方から飛来したゴーストがガンポッドから20mm弾を放ってくる。 「そんなとこにいやしねぇんだよ!」 ガウォークの足を展開したVF-11Sは急速に進行ベクトルを変えて回避する。未来位置を追いきれなかった敵機の火線が過ぎ去り、ゴースト自身もそのまま擦過していく。それを見届けたVF-11Sのパイロット、スコーピオン小隊隊長アーノルド・ライアン二等空尉は機体の〝足首〟を横に振って機体をハーフループさせる。続いてバトロイドに可変。狙い澄ましたガンポッドの狙撃は吸い込まれるようにゴーストの主機関に飛び込み、それを爆散させた。 バルキリー(人型可変戦闘機)という奇想天外な兵器が誕生したのは、SDF-01(初代マクロス)の本来の持ち主が巨人族である。と知れたことに端を発する。 当時、惑星間航行がやっとだった人類は慌てふためき、あらゆる局面に対応可能な装備の開発に着手した。こうして誕生したのが人型陸戦兵器(デストロイド)とバルキリーだ。デストロイドは大火力・重装甲に代表される『モンスター』やフロンティア船団で主に使われる『シャイアンⅡ』など歩兵や戦車をスケールアップしたようなオーソドックスな設計思想に基づいている。しかしバルキリーは、宇宙・大気圏内両用の軍用戦闘機から機動歩兵に変形することで多目的な任務に対応しようという野心的な兵器だった。 例えば敵陣地を制圧するにあたって、従来の方法だと、まず制空権確保のために航空機部隊が先行。対空火器や敵戦闘機を撃滅し、それから輸送機で陸戦部隊を派遣する。しかし広大な宇宙空間、さらには移動する要塞である敵母艦を制圧するにはこんな時間的余裕はない。 そこで考えた有識者達は 『ならば制空権を確保してヒマになった航空機部隊をそのまま陸戦部隊にすればよいではないか』 という結論に到達したのだ。 まったくもって無理難題に聞こえるこの結論だが、マクロスのもたらしたオーバーテクノロジーはそれをいともたやすく可能にし、開発から5年ほどで実戦に耐えうる人型可変戦闘機、『VF-0 フェニックス』や『SV-51』などを生み出した。だがこうして誕生したバルキリーは技術者や軍部が最初に想定していた以上の働きを見せた。 ライアンは即座にファイターに可変。現域を急速に退避する。すると数機のガジェットがノコノコやってきた。 (やっぱりな) バトロイドなどで減速するとガジェットは即座に集まってくる。おかげでバルキリーとは相性が良い。 彼はしたなめずりすると、鋭くUターン。慌てたガジェットが撃ってくるが、速度のついた回避運動する物体にそう簡単には当たらない。VF-11Sは密集するガジェットの中に突入する寸前にバトロイドに可変。その拳にPPBを纏わせ逃げ遅れたガジェット達を撃破していった。 数ヶ月前の演習ではシグナムとタイマンを張ったライアンにとって、これらの敵はまったく脅威足りえなかった。 そこへ、友軍からデバイスを介した短距離通信が入る。 『メイデイ!メイデイ!こちらイエロー3、ゴースト2機に付かれた!っくそ!誰か追い払ってくれ!』 ライアンの視界の端を1機のVF-1Aとゴースト数機がすり抜けていく。どうやらあれらしい。 「待ってろよイエロー3!」 ライアンは再びファイターに可変。友軍目掛けて邁進するゴーストに追いすがる。 (ったく、もっとガウォークを使えと教えただろうに!) ファイターでエンジン全開、がむしゃらに振り切ろうとする友軍にライアンは舌打ちする。 そう、バルキリーが手に入れた付与機能、それは変形である。空戦において形態を変えることによって得られる恩恵は計り知れない。大気圏内で変形することで急激なエアブレーキをかけることも可能であり、腕や足を大きく振って、その反作用で推進剤をなるべく使わずに旋回できる。また、魔導士のように武装をその腕に保持することで随時広い射角を得、足先の推進器を振り回すことで推進モーメントを変え、あらゆる方向への加速を可能にする。 その最たるものがファイターから腕と足だけを展開したガウォークという形態だ。 開発の過程おいて偶然発見されたこの形態は、一見不恰好にも見えるがその用途は十二分に広い。推進モーメントを下に集中する事によってホバリングしたり、前方に大きく足を振り出して急停止するなどのポピュラーな使い方だけではない。ある程度の速度を保ったままその腕に握る武装で全方位を射軸に収め、足を振ることで、空中においてファイターでもバトロイドでも得られないヘリのような高機動を実現することができる。 VF-0、VF-1と乗り継いだ撃墜王ロイ・フォッカーやマクシミリアン・ジーナスなど黎明期のエース達によってこの形態の運用方法は昇華され、バルキリーの代名詞とも呼ばれるに至っていた。 しかしライアンもアルトから同じような叱責を受けていたことを思い出し、『まぁ、最初はみんなこんなもんか』と経験不足な2期生に視線を送り、ゴーストを流し見た。そして瞬時に未来位置を予想すると、ガウォークでフィギュアスケートのように空を〝滑り〟、まるで魔法のように友軍とゴーストの間に割って入った。 「喰らえ!」 ガンポッドを斉射。2機の内1機の主翼に、赤い曳航を引く30mm弾が吸い込まれるように着弾して、制御不能に陥ってキリモミ落下していった。もう1機のゴーストがライアンを横切る。 「逃がさん!」 ライアンは両翼のMHMM(マイクロ・ハイ・マニューバ・ミサイル)を照準、連続発射する。都合6発ものMHMMが音速の5倍という圧倒的な速度で飛翔し、目標に接敵した。 包む爆煙。 「・・・・・・他愛ない」 彼は撃墜を確信して再び索敵に戻ろうとする。だが次の瞬間には地獄の蓋を開けたような凄まじい音と衝撃が機体を揺らし、次には爆音が轟いた。 「なん、なんだ!?」 機位が乱れてキリモミ落下を始めようとする機体を抑え込み、出力に任せて退避する。 多目的ディスプレイに表示される転換装甲のキャパシティは大幅に削られていた。 「いったい誰が!?」 後ろを振り返った彼の目に映ったのは、先ほど撃墜したと思ったゴーストだった。しかしよく見ると、ゴーストの追加装備であるガンポッドどころか外装されていたミサイルランチャーもなくなっている。どうやらこちらのミサイル回避のために装備を全てパージ。囮としたらしい。 「なんて思い切りのいいヤツなんだ!」 ライアンは思わず感嘆の声を上げた。その間もゴースト内蔵の20mm機関砲(以前は魔力素粒子ビーム機銃だったが、対ESA弾を装備するために換装された)とマイクロミサイルの嵐が彼を襲う。 彼は機体を操作してなんとか振り切るが、そいつは用意周到だった。回避した先にすでにミサイルが撃ち込まれていたのだ。対応する間もなく着弾。機体を再び激震が襲った。 (*) (なんだ。俺もやればできるじゃないか) こちらの攻撃を叩き込まれて満身創痍になった敵エース級バルキリーを眺めてユダ・システムである彼は満足した。 (小細工を使おうとするからいけなかったんだ。俺はユダ・システム、直接戦闘なら人間なんかに劣らん!) 彼は自信を取り戻し、それを見下ろした。 (*) 機体の被弾アラートがコックピットに鳴り響き、何かが焼けたような刺激臭も鼻をつく。目前の多目的ディスプレイなど〝本機は撃墜されました。脱出を推奨します〟と告げる始末だ。 しかしエンジンはなんとか稼働しているし、ライアンもその闘争心を失っていなかった。 彼は機体のシステムを再起動して正確な被害状況を把握し始める。 ガンポッド以外の武装は使用不能。レーダーはブラックアウト。『アクティブ・ステルスシステム』、『アクティブ・空力制御システム』、『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』などは軒並み沈黙していた。 しかし奇跡的にエンジンも変形機構も生きていた。 ライアンは顔を上げると、先ほどのゴーストを探す。それはまるでこちらを見下ろすような格好で無防備な機体の腹を見せていた。 (勝ち誇ってやがる・・・・・・) 本能的に彼はそのゴーストが無人機であるという先入観を捨て去った。無人機はそんな無駄な機動は行わないし、結果的にそれは正しかった。 ライアンは煙幕発生機(スモークディスチャージャー)から黒煙を吹き出させ、スラストレバーを絞って機体をふらふらと降下させた。すると彼の狙い通り故障で動きが遅くなったと見たゴーストは、ミサイルでなく機銃でトドメをさすために悠々と接近してきた。 「(かかった!)全ミサイルセーフティ解除!」 EXギアになったデバイスに命令を発して、ミサイルの信管を活性化させる。そしてゴーストの放った火線を、バトロイドに可変して紙一重で回避。そのままバトロイドの腕でパイロンに装備されていたミサイルランチャーを無理やり外して、ゴーストに投擲した。 「今だ!」 ライアンの指示と同時に遠隔操作によってランチャーに残っていたMHMMの全弾12発、都合大容量カートリッジ弾計96発が強制撃発。強力な魔力爆発が気流をかき乱し、敵ゴーストの機位を失わせた。 「当ったれぇ!」 ガンポッドが必殺の30mm弾をばらまく。照準器がイカれたため狙いはテキトーだ。 だがさっきのライアンのように勝利を確信した〝人〟は、敵の突然の反撃には脆いものだ。ゴーストはまるで人間のように驚いた挙動を見せると、逃げていった。 駆け付けた友軍機がそれを追撃していく。ライアンも追撃しようとスラストレバーを上げるが出力が上がらない。どうやら機体は本当に限界らしかった。彼は機体を降下させると、なけなしのエンジン噴射で三浦半島に着陸した。 「ふぅ・・・・・・」 思わず安堵のため息をつくが、機体の可変機構はバトロイドで固定されて、とても空戦には耐えられそうになかった。 (さてどうするか・・・・・・) そう考えながら後ろを見ると、大規模な黒煙が幾重も空に延びていた。それら黒煙の出どころは・・・・・・民家にしか見えなかった。 (畜生!これだから防衛戦は!) 吐き捨てる間にも彼の近くにゴーストが墜落。紅蓮の炎が無傷だった民家を包んだ。 「なんてこった!」 ある理由のため住民達は、家屋の内部から逃げていない可能性が高い。 そのままバトロイドで接近すると、外部マイクが声を拾った。 『お願い!─────を助けて!』 「何だって?」 ライアンはその民家の2階から、煙を避けるように叫ぶその少年をマニュピレーターで助け、コックピットに入れる。 「何だって?」 繰り返された質問に少年は必死に答えようとするが、泣き声になって聞き取れない。ライアンは彼を安心させるように抱くと、「大丈夫、大丈夫だから」と言い聞かせた。 そうしてようやく得られた情報は、あの民家の二階にいるこの子の母親が、倒れてきた家具に挟まれ脱出できないという事だった。 「わかった。大人しくしてろよ」 ライアンは少年を後部座席に座らせ、バックドラフトが起こらぬよう細心の注意を払いながら民家の壁を破壊する。しかし内部はすでに黒煙にまみれて、バルキリーからではそれより先が見えなかった。 「仕方ないか・・・・・・」 彼はキャノピーを開いてEXギアで内部に飛翔する。バリアジャケットとして機能するこのEXギアは気密が保たれており、この黒煙の中でも酸素マスクなしで入れた。 そして少年の情報を頼りに彼女を探すと、すぐにみつかった。しかしすでに大量の煙を吸い込んで意識不明だった。 「今助けるからな!」 EXギアのサーボモーターは彼の力を数倍にまで増幅し、その家具─────タンスを軽々持ち上げた。 (*) 「ありがとうお兄ちゃん!」 「ああ。次からはお前がお母さんを守ってやれよ」 「うん!」 元気よく頷く少年。その後ろでは担架に寝かされ人工呼吸器を付けられた母親が『ありがとうございます』と小さく頭を下げていた。そしてすぐさま後部ハッチが閉められた救急車は病院へと走っていった。 しかしライアンの活動は終わってなかった。後ろからかけられる声。それを発したのは災害出動していた陸士部隊局員だった。 「あのバルキリーはお前さんのか?」 陸士の指先が道路の真ん中で片膝を着いて沈黙するVF-11Sに向けられる。 「そうだ。すまない、邪魔だったか?」 「いや、重機が入れない場所があって手伝ってもらいたいんだ。大丈夫か?」 「了解した。誘導してくれ」 そう告げるとEXギアを介さない浮遊魔法で離床。続いてEXギアのエンジンで飛翔すると、頭部からコックピットに飛び込む。EXギア固定と同時にエンジンが始動し、ディスプレイとライトに光が灯っていく。 「基地に戻ったらオーバーホールの続きをしてやるから、もう少し頑張れよ」 彼の呼び掛けに応えるように、多目的ディスプレイに〝READY〟の文字が躍った。 (*) アルト撃墜後20分をピークに敵が撤退していく。 ヴァイスからAWACSからのレーザー通信によって戦闘が終わったとの知らせに、歌うのをやめ、ヘリのイスに座り込む。とても撃墜現場を返り見る勇気は出なかった。 コックピットから悲鳴が聞こえたのはその時だった。 「・・・・・・どうしました?」 しかしヴァイスには見たものをどう表現していいかわからないらしく 「すまない、来てくれ」 と返してきた。 (なんだろう・・・・・・) そうお思いつつも、重りでも付けられたのではないか?と思う程重い腰を上げ、キャビンからコックピットに向かった。そこで見たものは、なのはとフェイトによって幾重ものバインドで固められた成虫バジュラの姿だった。 「アイ、くん・・・・・・?」 何故だかわからないが、一瞬でわかった。そうわかるとデバイスを再起動し、マイクでなのは達に呼び掛ける。 「バジュラを、アイくんを放してあげて!」 フォールド波を介した声は即座になのは達の元に届く。なのはは拘束をフェイトに任せると、こちらへ飛翔してきた。 「ヴァイスさん、後ろのハッチを開けてください」 「お、おう」 ヴァイスの操作によって後部ハッチがモーターの軋み音とともに開いていき、吹き込んでくる冷たい強風に交じってなのはが乗りこんでくる。 「アイくんってリスみたいのじゃなかったの?それにバジュラって危ないんじゃ─────」 走り込んできたこちらになのははそう言い訳する。言い分を聞く限り、どうやら情報の伝達に齟齬があったようだ。 「アイくんは・・・・・・ううん、バジュラはね、そういう悪い生き物じゃないの!」 気が付くと必死にバジュラを、そしてアイくんを弁護していた。惑星フロンティア奪取作戦で、そして1年とアイくんと過ごした半年余りで知りえた〝バジュラ〟という生き物を。具体的にはアイくんはバジュラであり、手乗り小動物だったのは1年以上前の話であること。でもバジュラは決して好戦的な悪い生物ではなく、以前人間を襲ったのは誤解であり、自己防衛であったことなどなどだ。 (これ以上なにも失くしたくない!) その思いでいっぱいだった。 時空管理局には極端に保守的なところがある。一度危険と思うと、もうその判断はめったなことでは覆さない。例えば元夜天の書の主、八神はやても実は今でも完全には信用されてなかったりしている。 この世界に来て日も浅く、少しおこがましいと思うが、彼女がいない会議の席で何度か庇ってあちらの無理な命令を撥ねさせたり、こちらの要求を通させたりしていた。はやてもそれを知ってか知らずか、よくしてくれているので、お互い持ちつ持たれつなのだと思ってる。 管理局に青春を捧げる少女ですらそんな扱いなのに、アイくんは管理局にとっては質量兵器にしか映らないだろうし、その行動を理解してくれない可能性が大いにある。なにしろあのOT、OTM(オーバー・テクノロジー、オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス)を結集したようなギャラクシー船団を壊滅させた生き物なのだ。その噂は何人か来ているという第25未確認世界の住人から筒抜けだろうし、最悪殺処分、もしくは厳重に封印されてしまう。アイくんにそれに抵抗するななどとはとても言えない。となるとそれまでに管理局側に壊滅的打撃を与えるであろうことは自明なことだった。 アイくんだけでなく六課のみんななど、失いたくないものは無数にこの世界にもできてしまっていた。 真剣に安全を主張するこちらに根負けしたのか、なのはが頷く。 「・・・・・・わかった。でも念のためバインドは外せないよ」 「それは仕方ないかもしれませんね・・・・・・」 そしてなのはとフェイトの監修の元、ヴァイスに頼んでヘリを寄せてもらう。 「アイくん、私だよ!わかる!?」 渾身の声で呼びかけるが、腰に付けた命綱でお腹を押さえられて声はまともに出ないし、ヘリのローター音で自分の耳にすら届かない。しかしフォールド波を通して感じたのか、アイくんは唯一動く首をこちらへと動かして応えた。 直後、腸内(バジュラ)ネットワークを通じてアイくんの感情が流入してくる。それは「会えて嬉しい」という類いのものだった。 (よかった・・・・・・いつものアイくんだ) そんなかつての小動物に愛くるしさが込み上げ、その頭を撫でようと手を置いた。 驚くべき事態はその瞬間訪れた。 光る手首。 そこにつけられたブレスレット型のデバイス『アイモ』が勝手に稼働を始めたのだ。 「・・・・・・え?」 血を抜かれるような肌寒さを伴って魔力が強制的に引き抜かれ、自分の魔力光であるエメラルド色の光がアイくんを包み込んでいく。 「ちょ、ちょっと待って!どういうこと!?」 デバイスに問うが、デバイス側は念話によって『I can t answer.(解答不能)』の音声を繰り返すだけだった。 (*) エメラルド色の眩い光がアイくんを包み、その姿が完全に隠れてしまう。 一同固唾を飲んで見守る中、その光が突然四散した。しかしそこにいるはずのアイくんの姿はなく、金色と桜色のバインドが空中に空しく漂っているだけだった。 (消滅?) 誰もが息を呑んだが、本当は違った。 「・・・・・・ん、あれは─────」 フェイトが何か見つけたのか、超高速移動魔法を起動し急降下。そして「キューッ」と鳴く〝何か〟を、地面に落ちる寸前に抱き止めた。 「・・・・・・あら、あなたがアイくん?」 腕の中で丸くなった緑色した生物は、間違いなく、かつての手乗り小動物の姿だった。 ―――――――――― 次回予告 燃え上がる市街地 出てしまった死傷者 救助活動に参加したスバルは何を思うのか? そして八神はやては、なぜ戦線に参加しなかったのか? 次回マクロスなのは第30話『アースラ』 「本艦をバルキリー隊の移動航空母艦として運用する!」 ―――――――――― シレンヤ氏
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マクロスなのは 第2話『襲撃』その2←この前の話 『マクロスなのは』第3話「設立、機動六課」 あの襲撃事件は重傷者3名、軽傷者18名を出すに止まった。幸いなことに負傷したのは全て管理局局員と学校の警備員で、子供達に被害はなかった。 そして襲撃してきた魔導兵器は、クラナガンに張り巡らされたレーダー網によると突如上空に出現したものらしいが、それ以上詳しいことはわかっていない。 しかしマスコミは結果的に死者が出ていないせいかその報道は控えめになった。代わりに死者2名に抑えたテロ事件での地上部隊の必死の働きをクローズアップし、公務員である地上部隊が労働三権を行使するという違法な労働争議を打ち消していた。 また、首相は地上部隊の予算を増やすと公言した日から2日目に遂に英断。緊急措置として企業団からの出資を受け入れることとした。しかし企業団側に主導権を握られないよう契約は10年以上に渡る長期で、原則としてそれまで脱退、出資渋りは認められず、額も会社の規模によって一律に決まる。 そして仮に契約終了後更新しない時はGDP(国内総生産)を削ってでも必要予算を増やす法案を通すと公言。直後の世論調査も大勢が「管理局に使うのなら自分達の生活に還元される」とこれを援護する。こうしてこの先、更新を渋って管理局を脅そうとする企業を牽制した。 これら条件は企業側にとても厳しい内容ではあったが、それでも時空管理局は今回のテロ事件のこともあってさらに魅力的なイメージアップの商品に見え、その長い歴史は彼らに十分な信頼感を与えた。 こうして4日目にはGDPにして2%にも上る莫大な出資金が地上部隊に注ぎ込まれ、組まれていた予算と出資との合計でこれまでの予算の3倍強(概算要求の1.5倍)となったことに、今まで苦渋をなめてきた地上部隊財務課は狂喜したという。 余談だが予算の使途はできうる限り公開することになっていて、担当者はまず、 給与水準の向上 老朽化のひどい駐屯地などの施設の改修費 装備のアップグレード版の開発費 ミッドチルダ全体をカバーする探知用魔力レーダーの設置費 などに中心的に充ててミッドチルダの防衛体制強化を図ると説明した。 (*) アルト達がこの世界に来てから7日目 海上を埋め立てて作られた敷地。そこには新しく建てられた立派な隊舎があった。しかし隊舎の正門にある表札にはまだ何も掛けられていない。 そしてその反対側にある広場では、今まさに産声を上げようとしている部隊の設立式が行われていた。 4月という季節柄風は温かく、太陽の下行われている設立式は順調に進んでいた。 そこに彼らの、まだ若い部隊長が壇上に上がった。 「本部隊の総部隊長、八神はやてです。・・・・・・平和と、法の守護者『時空管理局』として事件に立ち向かい、人々を守っていくことが、私達の使命であり、なすべき事です」 一言一言かみしめるように続ける。 「この部隊は管理局の、対応が遅く、練度の低い地上部隊を支援するために設立されるテスト部隊です。そのためこの部隊は1年でその役目を終えますが、現状の管理局システムの修正など残す物は多いでしょう。また、テストといっても―――――」 彼女の視線が舞台を前に整列している部隊員達に注がれる。 「実績と実力に溢れた指揮官陣。若く可能性に溢れたフォワード陣。それぞれ優れた専門技術の持ち主のメカニックやバックヤードスタッフ。全員が一丸となって事件に立ち向かっていけると、信じています」 その口調、瞳に迷いはなく、彼女の寄せる信頼の大きさを物語っていた。 「私はこの部隊での1年を、実りのある1年にする所存です。ですから報道機関、管理局の庇護の下に生活する市民の皆さんの、温かいご理解と、ご協力をよろしくお願いします」 報道関係者がときたま焚くフラッシュを無いもののようにスルーし、地上部隊の制服(茶色を基調とした正装。新人から佐官まで幅広く使われる)を着た少女、八神はやて二等陸佐はそう締めくくり、仮設の舞台を降りた。 その後彼女は、部隊隊長の席に腰を降ろすと、次の予定のために部下達を準備に走らせる。その間報道関係者達の質問に応じる事となった。 「部隊長であるあなたや、分隊を指揮する隊長が若すぎるとの批判がありますが、これについて・・・・・・」 「これからの管理局を背負っていくのは若者です。また本部隊設立の目的の1つが管理局システムの刷新にあります。そのためには若者の、柔軟な発想に基づく部隊運用が求められるからだと、私は考えます」 「あなたを含めて隊長陣が全員オーバーSランク魔導士。副隊長でニアSランクですが、管理局の規定にある『1部隊の持ちうる魔導士ランクの限界』についてはどうなっているんですか?」 「私を含め、隊長格位には能力限定用のリミッターが設定されております。例えば高町なのは一等空尉の通常のリンカーコア出力はクラスS+ですが、リミッターにより2、5ランクダウンのクラスAAにまで出力を落としてAランク魔導士として登録・運用します。しかし、どうしても必要な時のみ解除する権限を与えられています」 その後も質疑と回答は続き、時間の関係で次を最後としたところ、こんな質問が出た。 「では、新設された部隊の名称を」 その質問に、はやては我が意を得たりとにっこり微笑むと――――― 「本部隊の名称は・・・・・・あちらをご覧ください!」 一斉にはやての指し示す方向に数十台のカメラか振り向く。その瞬間彼らの目前十数メートルを航空機が察過していった。 「あれはバルキリー!」 報道関係者の1人が興奮気味に言う。 そう、そこを飛ぶは、純白に赤黒ラインを施したVF-25。バルキリーの名は報道された際に広まった通称だ。 バルキリーが雲一つない晴天の青空の下を一筋の白いスモークを残して飛行する中、地上より発進した桜色と黄金色の2色の光の筋がそれを猛追、編隊飛行に入る。そして大きく旋回して会場上を通過したと思った瞬間、先頭を飛んでいたバルキリーが突然ガウォークに可変。減速とロール回転をしながら高度を落としていく。2色の光もそれに続く。 そしてバルキリーは海上に到達すると、その上をまるでアイススケーターのように2色の光と共に滑っていく。その軌跡は渦を巻くように形成され、中心まで描ききったバルキリーはファイターへの可変によって瞬時に機首を上に向けて、2色の軌跡と共に急上昇。 そこでバルキリーは突如パイロンに搭載した増槽のような円筒形の箱から小さなミサイルらしきものを乱射した。 その行為は、 「質量兵器!?」 と驚き、反射的に頭を抑える者。またはミサイル達の青白い軌跡が織り成す美しさに魅せられ、見惚れてしまう者とを生み出した。 ミサイルは回避機動という名の乱舞をしつつ上昇していく。そしてある高度で桜色の光線が下から照射されてミサイル達を薙ぎ、それらを一斉に爆発させた。 そこには花火のように文字が浮かび上がっている。 〝機動六課〟と。 「これが管理局の新部隊『機動六課』や」 はやての不敵な声が、辺りに響き渡った。 (*) 15分後 はやてが『時空管理局 本局 機動六課』と書かれた表札を正門に掛けたりするなど式らしいものを終わらせると、隊舎に併設して突貫工事で作った500メートルの海上滑走路で待機していたバルキリーが離陸して会場へとガウォーク形態で降りてきた。 カメラマン達は何事かと、片付け始めていたカメラを再び引っ張り出す。 そこに追い討ちをかけるようにアナウンスが流れる。 『これより、機動六課のイメージソング「アイモO.C.~機動六課バージョン~」の視聴会を行います。歌うは時空管理局期待の歌手、ミス、ランカ・リー!』 その瞬間報道関係者達は色めきだった。 ランカは暴徒鎮圧ライブ以来姿を見せたことはなく、名前は報道されたが、1週間で半ば伝説となっていたからだ。 そこで、ガウォークで着地したバルキリーの前にホロディスプレイで大きなテロップが流れる。 『魔法を行使している方はただちに使用をやめてください。ご協力お願いします。byランカ・リー』 とある。 なぜそうしなければならないかを彼らは知らなかったが、彼女の頼みとあっては聞かないわけにもいかない。彼らは飛行魔法の解除などしっかり従った。 全ての魔法行為が止まったことを確認したのか曲が流れ出す。そしてそれに合わせるようにキャノピーが開いてゆく・・・・・・ <ここはアイモOCをBGMにするとより楽しめます。(多分・・・・・・)> 〝アイモ アイモ ネーデル ルーシェ!―――――〟 果たしてそこには地上部隊の制服を着たランカが歌っていた。しかし、フラッシュどころかシャッターすら全く炊かれない。誰もがそれに聞き惚れ、茫然自失となっているのだ。その中を彼女の力強く澄んだ歌声が沁みわたる。 〝進め! 機動六課 誇り高き名を抱いて 飛べ! 機動六課 眠れる力呼び覚ませ〟 その歌はライトニング(いかづち)を携え、スターズ(りゅうせい)が舞う。そんな幻想的な光景を聞く者に抱かさせたという。 (*) 2時間後 マスコミがいなくなり、六課の隊舎ではささやかな設立記念パーティーが行われていた。 「今日はみんなのおかげでマスコミの人たちに目にもの見せてやれた。ありがとうな。今日はよく食べて英気をやしなってや!」 八神はやて二等陸佐はいつもの柔らかい関西弁を操る〝はやて〟にもどり、楽しそうに飲み食いする部下達を見守っている。自分が入ると階級のせいで気まずくなることがわかっているからだろう。まったく強い少女だ。 その頃彼女から 「みんなに挨拶しておきな。これからは同じ釜の飯を食べる戦友になるんやから」 と言われていたアルトとランカは、今最も人の集まっている食堂に来ていた。 (*) 食堂 そこは広く、平時には食券を買うのであろう自動券売機が並んでいた。 今日は特別にバイキング形式であるため、皿を手に 「どれもおいしそうだね・・・・・・」 と困ったように笑うランカと共に食べ物を探していると、肩に誰かが運んでいたらしい皿が軽くぶつかった。 「あ、ごめんなさい」 「大丈夫だ。なんてことはない」 そう言いながら振り返ると、そこにいたのはフェイトだった。 「ああ、アルト君か。ランカちゃんは久しぶり」 フェイトがいつもの調子で挨拶してきた。 しかし俺の(おそらくランカも)視線は両手に乗せられた大量の食べ物に固定させてしまっていた。 (おいおいこりゃ、とても1人じゃ食べられないぞ・・・・・・コイツ、こう見えてこんなに食うのか・・・・・・) と思う視線に気付いたのだろう。彼女は頬を赤らめると、 「あ、いや、これは・・・・・・エリオ、キャロ」 「「はーい!」」 遠くで2人分の返事が聞こえる。どうやら、あの2人のためらしい。育ち盛りの子供がこちらに、やってくる。 フェイトは2人に 「気をつけてね」 などと注意しつつ、両手の皿を分けて渡した。 そこで何かを我慢できなくなったのかランカが問う。 「あ、あのぅ、フェイトさん」 「ん?」 「・・・・・・お子さんですか?」 その問いにフェイトは一瞬キョトンとした顔を見せると、笑みを浮かべて応えた。 「ふふ、そうとも言うのかな。この2人は私の保護している子でね。今度ライトニング分隊の3と4を務めるエリオ君とキャロです」 ライトニング分隊とは、先ほどイメージソングで歌われたが、もう1つのスターズ分隊とともに前線を務める分隊の事だ。ちなみに、六課にはもう2つ分隊があり、その名をフロンティア分隊とロングアーチ分隊という。 フロンティア分隊は当初の予定になかったアルトとランカが属する分隊だ。フロンティア1にはアルトが、2にはランカが相当する。任務はVF(ヴァリアブル・ファイター)という汎用性の高い特殊な機体とランカがいるため超広域に渡り、必要なら宇宙や海中おも守備範囲としていた。 そしてロングアーチ分隊ははやてなどが属し、その名の示す通り縁の下の力持ちとしてこの隊舎にある指揮管制所で現場指揮の補助などを行う。 話は戻るが、エリオと呼ばれた方は、赤い髪をした利発そうで中性的な顔立ちをした男の子。キャロと呼ばれた方は、少し気の弱そうなピンクの髪をした女の子だった。 2人はそろって 「「こんにちは」」 と、可愛く頭を下げた。 その後席へと向かっていったフェイト達だが、そこからこんな会話が聞こえてくる。 「でもフェイトさん、いくらなんでもこんなに持ってこなくても・・・・・・」 「ダメよ。育ち盛りなんだから好き嫌いなくたくさん食べないと大きくなれません」 振り返ってみると、切々(せつせつ)とたくさん食べることの重要性を語るフェイトの姿があった。 「それにしたって―――――」 「多すぎだよね」 そう繋いできたランカに 「ああ、まったくだ」 と苦笑して答えた。フェイトの過保護(?)という新たな一面を見た2人は再び食探しの旅を続行した。 (*) 「あ、アルト君、ランカちゃんは久しぶりだね~」 フェイト達と別れてすぐ会ったのはなのはだ。彼女の手にも皿がのっており、こちらは慎ましい和食中心だ。 なのはやフェイト達とはこの1週間、先ほどのアクロバットの打ち合わせなどで毎日のように会っていたが、ランカは時空管理局本部でいろんな検査などをやっていたようで、俺ですら通信以外で彼女と話したのはようやく今日で、分かれてから6日ぶりであった。 彼女に挨拶を返すと、なのはとランカは話に夢中になっていった。 「さっきの歌良かったよぉ~」 「ありがとうございます!」 「六課バージョンらしいけど、元はどうだったの?」 「元は、〝機動六課〟の所に、私のいた船団の名前だった〝フロンティア〟ってのが入るんです」 「フロンティアかぁ・・・・・・昔見てたドラマに『宇宙、それは最後のフロンティア』ってナレーションで始まるのがあったなぁ」 「あれ?それってまさか『宇宙戦艦エンタープライズ号が―――――』って続きませんでしたか?」 「え!?うん、そうだよ。やっぱり『ス〇ートレック ネクストジェネレーション』って名前?」 「はい!やっぱり劇場版のエンタープライズEのデザインが感動ものです!」 「うんうん、わかるわかる!スラッとしたフォルムがなんとも言えないかっこよさだよね!・・・・・・でも私はどちらかというとヴォイジャー派かな・・・・・・」 と、そんなこんなでどんどん話が進む。 マニアの会話は、得てしてノコノコと知らない者が入っていける空間ではない。 この時も同様であり、いわゆる〝スタトレファン〟や〝トレッキー〟と呼ばれる人種ではないアルトには何の話かさっぱりなので、やんわりと戦線を離脱した。 すると、少し離れた所で呼び止められた。 「おまえが早乙女アルトか?」 「ああ、そうだが・・・・・・」 聞こえてきた誰何(すいか)に肯定しつつ振り向くと、そこには特徴的なピンクの髪をポニーテールにした20歳ぐらいの女性がいた。 しかし彼女にはその歳ぐらいならば少しはあるはずの頼りなさが全く感じられない。逆に何かを守るという意志の光が強く灯っている。そして全身からにじみ出るオーラはまごう事なき武人のものだった。 「主はやてから話は聞いている。先日の襲撃の時は、対応の遅くなった管理局の代わりに初等学校を守ってくれ、感謝している」 彼女はコクリと頭を下げた。しかし、その動作のどこにも隙がない。例え今この会場の全員が、彼女を倒そうと襲いかかっても失敗するだろう。そんな雰囲気を醸し出していた。 「いや、あの時俺は偶然あそこにいて、偶然それに対応できるだけの装備があっただけだ」 「では、その巡り合わせにも感謝せねばな」 そう言うと彼女は不敵に微笑んだ。 「自己紹介がまだだったな。私はシグナムだ。この部隊ではライトニング分隊の副隊長を務めさせてもらう。だが同時に特別機動隊(地上部隊上層部直轄の対テロ特殊作戦部隊)空戦部隊の隊長だからあまり六課には顔を出せないだろう」 残念だ。と肩を落とす。 「なんで残念なんだ?」 問うと彼女は不思議そうな顔をした。 「なんだ?お前は〝こちら側〟の人間ではないのか?」 彼女は待機状態のデバイスを仮起動させる。すらりと伸びたそれは剣の形をしていた。 どうやら彼女はこちらを同業者と思っていたようだ。確かにアルトは 「役者は演じる全ての事に精通していなければならない」 という父の教えから剣技だろうが料理だろうが並みの稽古はしてこなかった。どうやらそれはプロの目から見てもその道の者に見えるようだ。 「確かにそうだが・・・・・・」 「ではまたいつか手合わせ願おう」 烈火の将シグナムはそう言い残すと食堂から出ていった。 (*) その後、医務室で医師を務めるシャマルやスターズ分隊のヴィータと笑撃的(?)な出会いをするがここでは割愛させていただこう。 (*) 「よぅ、アルト。今日のアクロバット、なかなか決まってたぞ」 そうビール片手に陽気に声を掛けてきたのは、人が単独で飛べるこの世界にあって同じく〝パイロット〟という役職を持つ人物、ヴァイス・グランセニック陸曹だった。 「あ、ああ・・・・・・」 アクロバットでの〝あること〟が原因でその返事がおざなりになってしまうが、そこでヴァイスの後ろをついてきた少女の姿が映る。 すると視線に気づいたのか、彼女がこちらに向き直った。 「こんにちは。機動六課ロングアーチ分隊の索敵とレーダーを担当するアルト・クラエッタ二等陸士です。よろしくお願いしますね」 ペコリとお辞儀するクラエッタと名乗る少女。しかしヴァイスは突然彼女の頭をひっつかむと髪を掻き回し始めた。 「このやろ、な~にしおらしくしてんだよ」 そうやって彼はひとしきり 「やめてくださいよヴァイス先輩~!髪がぼさぼさになっちゃいますよぉ~!!」 といやがる彼女で遊ぶと、こちらに向き直って言う。 「コイツな、7歳ぐらいまで自分が男だって思ってたんだぜ」 「あー!ヴァイス先輩それは『秘密に』って―――――!」 「すぐに化けの皮剥がれるだろ?ほらこの前の書店で痴漢に遭った時だって―――――」 「あー!それ以上言わないでぇーーーーー!!」 「―――――コイツ「この痴漢野郎!」って叫びながらそいつに〝大外刈り〟かけたんだぜ。しかもスカートのままで」 「キャーッ、もうお嫁に行けなーい!!」 「お、お前もか!?」 「「え?」」 〝楽しそうに〟漫才をやっていた2人だが、こちらのセリフに声を揃えて向き直る2人。 「実は俺もガキの頃は自分を女だと思っててだな―――――」 アルトは歌舞伎の〝真女形(まおんながた)〟という日常生活までを女として過ごすものだったから、完全に自らを女と誤認していた。 彼が初めて自らが男だと知ったのは小学校の保健の授業が初めてだと言うからもう始末におえなかった。 一方クラエッタの方は兄2人と弟1人という男所帯であったため、ずっと自らを男だと思い込んでいたという。また、兄弟喧嘩で鍛え上げられた彼女の体術は否が応でも昇華され、柔道の女子どころか男子同クラスでは負けなし。数十Kgのハンデを付けてやっと互角になるというワイルドな少女だった。 そんなこんなで意気投合し、お互いのあるある話に夢中になっていく。 「んーハブられちゃったな・・・・・・」 ヴァイスが寂しそうに呟くとクラエッタは、〝べー〟と舌を出して見せた。 シレンヤ氏 第3話 その2へ
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クロス ビフォアからの古参プレイヤー。萌えの分かるディエリスト。 目下の悩みはバイトで平日調整会にいけないことと流行のデッキを上手く使えないこと。 ペンネームが実は本名だということはあまり知られていない事実。 現在、paint_bbsプラグインはご利用いただけません。 戦績/資格 プロプレイヤー GP1 ???位(5000円) 肩書 サークルメンバーからのコメント HP/ブログ クロスブログ
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マクロスなのは 第30話『アースラ』←この前の話 『マクロスなのは』第31話『聖剣』 EMP攻撃から数分後 電脳空間 フォールド波から電子の流れまで、全ての事象を解析・表示する電脳空間から事件を眺めていたグレイスは、先ほど災害現場に到着したらしいブレラの呼びかけに耳を傾ける。 「どうした?」 『周囲にフォールドネットの原始的生成を検知しました』 「ん?それはどういうことだ。ブレラ・スターン」 もちろん彼のセンサー情報はこちらでもリアルタイムで確認しているが、このように言語を介すのは、体を機械に置き換えてなお残る習慣であった。 こちらに問いにブレラは迷うことなくバジュラのEMP攻撃によって、置物と化していた車両のボンネットを剥がす。そしてパッと見回すと、電子の瞳でただ一点“バッテリー”を凝視する。 『・・・・・・この物質がフォールドクォーツへと変化するのを確認しました』 「バッテリーがフォールドクォーツに・・・・・・。ふふふ、了解したわ。命令変更、直ちにそのサンプルを採取し、帰還しなさい」 『ヤー』 短い応答と共に、彼は腕の単分子ブレードで車からバッテリーを分離させ、VF-27の待つ海岸への帰路についた。 5時間後 ミッドチルダ沖合20km 海上 「あれから5時間でまだこれかい?」 仮眠していたのか髪をボサボサにしたギャビロフは、損害報告モニターの表示に非難の声を上げる。 「面目ない・・・・・・」 はんだごて片手に電子基盤と格闘する部下が、小さく謝罪した。 「まったく・・・・・・それで、修理はどうなったんだい?」 「EMPでかき回された電子系は大方復旧できました。通信の方ですが、これを見る限りこっちは故障じゃないみたいです」 次元海賊「暁」所属、輸送艦「キリヤ」は次元空間からのワープアウト直後に謎のEMP攻撃を受けて航行不能に陥り、緊急浮上。そこで応急修理を行っていた。しかし浮上から5時間がたった今も、迎撃どころか管理局のレーダー波すら飛んでこないことを怪訝に思っていた。 「じゃあ、やっぱり〝アレ〟が動いちまったせいなのかい?」 「ええ。EMPで壊れた拍子に動いてしまったみたいなんで、今わかってるだけでもクラナガン全域をジャミングしてしまったみたいです。効果が予定通りなら、電磁波通信は明日までできないと思います」 「切り札のつもりだったけど、仕方ないね・・・・・・。それで、アマネからの連絡は?」 「はい、地上局の工作員経由の連絡によればなんですが・・・・・・」 「どうしたんだい?」 「それが・・・・・・合流ポイントに、この近くのネズミーランドを指定して来まして・・・・・・」 「あの子、遊びに来てるつもりなのかね・・・・・・」 海賊の首領たるギャビロフも少なくとも科学技術に関しては天才である部下の考えを読みかねて頭をかかえた。 事件翌日 フロンティア基地航空隊 格納庫 そこでは昨日の戦闘で傷ついた機体の補修作業が夜通し行われ、機体を失ったアルトも朝から他の機体の補修作業を手伝っていた。 (そろそろ時間か) 見上げた時計は0945時を示している。 昨日眠い頭にムチ入れつつ、ミシェルの言う通りに田所に連絡を入れていたアルトは、 「1000時までに技研に」 と言われていた。 そんな中、元VF-25専属整備士だったシュミットが、ぼこぼこになったVF-1Bの整備の傍ら聞いてきた。 「ところで昨日から休暇でどっかいっちまった諸橋が、隊長に聞きたいって言ってたことがあるんです」 「諸橋・・・・・・ああ、あの同性愛の新人か」 「え、ええ。まぁ、それでこいつらのエンジン周りのことなんですが、ここにいる連中にはわからない問題だったんで」 「・・・・・・俺にわかるのか?それ?」 「うーんどうでしょう。えっとコイツだと・・・・・・ここか。このブラックボックスのことなんですよ」 シュミットは整備していたVF-1のエンジンカバーをあけて、その箱を指差す。 「諸橋がVF-25にはこんなものついてないのに、他の機体には全部着いてる。どうして必要なんですか?って」 「ああ。そいつは確かメーカーが魔力炉のバックアップ回路が入ってるって触れ込みで、つけたんじゃなかったか?」 「はい。そこまでは我々でも分かるんですが、やっぱりそれ以上のことは分かりませんか?」 「・・・・・・そうだな。ここだけの話だが、VF-25なら魔力炉からの供給がなくても緊急時には質量兵器としての各種兵装が使えるから着けなかったって事ぐらいか」 「なるほど。やっぱりアレ、元質量兵器だったんですか」 「まぁな。黙ってたが、いい加減察していただろ?」 「ええ。主翼の付け根の銃口も観測機器って聞いていましたが、航法システムに全く干渉してこないし、カバー開けたら機器銘板に『25mm荷電粒子ビーム機銃』って書いてありましたから」 まぁ、管理局の封印を見てなんとなく事情はわかりましたけど。とシュミットは苦笑しながら付け足す。 管理局でのバルキリーの運用にはこうした明文化されていない察しを要求するところが多い。本来の技術開発をすっ飛ばして設計図から入ったり、自分のような次元漂流者の機体を改造して使ったりだから仕方ないのだが、いつかこのことがネックになる時が来そうだと漠然と思った。 「まぁ、そういうことだ。10時に技研に行く予定があるから、ついでに聞いてこようか?」 「そうしてもらえるとありがたいです。でも10時に技研に、ですか?もう50分過ぎてますけど」 「ん?バルキリーなら130キロぐらいひとっ飛び─────」 そこまで言って気づいた。 (俺、VF-25墜としちゃったじゃん!) 途端に冷たい汗が背を伝う。 (いろいろ準備しなきゃいけないし、格納庫の予備機は・・・・・・勝手には使えないよな。EXギアでは・・・・・・だめだ。なのは達ならともかく、俺には音速は出せない。遅刻すると伝えるしかないか・・・・・・) そこでシュミットがこちらの思考に気づいたのか、代替案を提案してきた。 「確か天城二尉が技研に出向になるそうで、出発が10時だったかと。今ならバルキリーの発進を早めればあるいは・・・・・・」 「それだぁ!サンキュー、シュミット!」 礼を言うのももどかしく、その場を離れて修理されたばかりのVF-1Bを点検する天城に通信をつないだ。 (*) 3分後 自室で準備を済まして戻ると、すでに天城のVF-1Bは滑走路に待機していた。 (飲み込みが速くて助かる) アルトは開いたキャノピーから後部座席に飛び込み、EXギアを固定した。 管理局の機体はホバリング機能などから来る汎用性から救助作業その他のために全ての機体に後部座席が存在し、必要ならいつでも使えた。 「アルト隊長、技研行きの特急便、発進OKっすよ!」 「よし、出してくれ。」 「了解!」 天城はスラストレバーを上げると、所々被弾孔の残る鋼鉄の鳥を飛翔させた。 (*) 4分後 特急便はすでに技研に併設された格納庫で翼を休めていた。 「時間ぴったりだな。結構結構」 通信機から聞こえた田所の声に、腕時計を確認する。 1000時ジャスト。 バルキリーでなければまず間に合わなかっただろう。 安堵のため息が自然に出て、ドヤ顔を見せる天城に礼を言うと、機体から飛び降りた。 (*) 久しぶりに見る技研は更に改装が進んでおり、もうひび割れたビルなど残っていなかった。 「ずいぶんきれいになったろ」 田所の問いに、アルトは骨組み状態の5階建てビルから目を離して同意の仕草をする。 「最初に来たときは技術棟なんて4つか5つしかなかったのにな」 「まぁな。今では大企業並の予算と設備だ。おかげで陸士部隊の装備のアップデートや新兵器の開発だって上手く行っている」 「新兵器?」 問い返すアルトに、田所は研究施設の一角を指差す。 全てが舗装された他の敷地とは違い、そこにはオフロードと呼べるほどの荒れ地─────いや、よく整備されたコースがあった。 そこを走るは、8輪で鋼鉄の身体を動かし、全方位旋回する箱から伸びる特徴的な長い〝筒〟を備えた車だった。 それは走りながら筒を横に向けると火を吹いた。 次の瞬間には標的だったものは吹き飛び、跡形もなくなった。 「今度は『ベアトリーチェ』か・・・・・・」 もう頭を抱えることしかできなかった。 『ベアトリーチェ』とはフロンティア船団の新・統合軍、首都防衛隊の装備していた装甲偵察車である。 その身に105mm速射砲を装備していたことから俗に戦車とも呼ばれ、バジュラの初襲来時にはアイランド1で迎撃に当たった。 しかし敢えなく撃破されており、以後は対バジュラ戦には投入されず、住民の誘導や治安維持に使われていた。 「ああ、前線からの要請だ。陸士部隊の移動手段の拡充が主な狙いだ。あの砲ならⅢ型など目じゃないし、安全性は従来のトラック輸送と比べて格段に向上する」 「しかし、ねぇ・・・・・・」 走行射撃しながら順調に標的を撃破していく装甲車は、分類上魔導兵器なのだろうが、質量兵器にしか見えなかった。 「すぐに慣れるさ」 人間は順応性が高い。最近バルキリーの運用に違和感がなくなってきたのがその例だ。 しかしこれらは果たして慣れて良いものなのか、アルトにはわからなった。 (*) それから5分ほど歩いて着いた場所はまるで地下鉄の入り口のような地下に続く道だった。 「ところで俺達はどこに向かってるんだ?」 堪えきれなくなったアルトが、田所に問うた。 「ん? なんだ、ミシェル君から聞いてないのか。まぁいい。とりあえず腰を抜かさない覚悟はしておけよ」 田所はまるで宝物を見せようとするガキ大将のような笑みを浮かべると、階段を降りていく。その先には果たして、地下に入るのか?というほど巨大な実験場があった。 「ほぅ、これはすごい・・・・・・」 田所の開けたドアの先は、どうやらエンジンの実験場のようだった。 自分達のいる管制所と、土台に据えられた丸裸の熱核タービンエンジンが存在する実験場とはガラスで隔離され、安全を確保している。 田所は何事かを研究員と話すと、何かのプラグを抜き、手渡してきた。 「なんだこりゃ?」 「とりあえず持っていてくれ」 答えるとともに彼は研究員に次々指示を出していく。 「―――――テストエンジンの反応炉、停止。―――――外部電源カット。―――――システムAからBへ移行」 研究員達は流れるような手つきでコントロールパネルを叩き、田所の指示を実行していく。 「反応炉、完全に停止。強制冷却機スタンバイ」 「全システム、モードBへ移行・・・・・・完了」 次々と準備を行って行く研究員達の傍ら、アルトの目にhPa(ヘクトパスカル)表示のデジタルメーターが映る。徐々に小さくなって行く数値に、どうやら実験空間を真空近くまで減圧している事が見て取れた。 「・・・・・・減圧完了。実験場内0気圧。理想的な完全真空です」 研究員の報告に田所の口が動いた。 「ファーストステージ開始!」 「了解、実験のファーストステージ開始します。試作MMリアクターへの魔力注入開始」 「おっと・・・・・・!」 持っていたプラグからコードを伝わって、自らの青白い魔力が流出していく。 どうやら実験に使う魔力は俺から流用しているらしい。 「俺は電池代わりかよ」 思わず悪態が口をついて出たが、誰も相手にしてくれなかった。 逆らうこともできたが、それほど多い量でもないので妨害は見送る。 「・・・・・・試作MMリアクターの作動状態は良好。実験をセカンドステージに移行します」 「テストエンジンへの流入魔力量、125M(マジック)/h。〝炎熱コンバーター〟、想定のパラメーター内で作動中!これなら行けます!」 「よし、点火!」 田所の号令一下、研究員はパネルの一際大きな赤いボタンを押した。 すると今まで沈黙していたエンジンに火が入る。 (なん・・・・・・だと・・・・・・) それはあり得ないことだった。 今あの中は宇宙空間も同然の真空なのだ。その場合、酸素と燃料から成る推進剤がなければ酸化還元反応は起こらず、火など燃えようはずがないからだ。 しかしそれは青白い炎を噴射口から吹き出していた。 「出力、4分の1でホールド。現在推力は15420kgf」 「タービンの回転運動による起電力で本体反応炉が再起動しました」 「推力を最大まで上げろ」 その指示に噴き上げる噴射炎が2~3倍に大きくなった。 「・・・・・・現在推力64500kgf!テスト段階の数値目標を達成しました!」 「MMリアクター内、魔力素消費率0.02%!従来型の100倍の省エネに成功!」 沸き立つ研究員達。ここまで来て初めてアルトはこの実験の目的を悟った。 ミッドチルダ製のバルキリーは推進剤を完全魔力化しており、推進剤のタンクの替わりにMMリアクター(小型魔力炉)を搭載している。ちなみに、今は亡きVF-25改も同じである。 しかし推進器は自分が追加装備として出すFAST/トルネードパックのように、魔力素の直接噴射により推進力を得ていたので、推進効率は劣悪であった。 そのためFAST/トルネードパックのような無茶な使い方をすると10分と持たない。 しかしこのように炎熱変換して炎として噴射すれば効率は桁違いだ。 簡単に言えば、今まで車を動かすのにガソリンをエンジンで燃やさず、高圧ホースでそれを後ろに噴射していたと言えば分かりやすいだろう。 だが炎熱変換はシグナムのような先天性のレアスキルの持ち主か、カートリッジ弾のように強制撃発させて制御不能の爆発を発生させるのが精一杯のはずだった。 そのため案の定というべきか、雲行きが怪しくなってきた。 研究員の操作するコントロールパネルに1つ、赤いランプが灯った。 「・・・ん?MMリアクターの出力に変動あり」 「なに?うーん、コンバーター側で調整してみよう」 「反応炉過熱中。強制冷却機、出力100%」 「─────ダメだ!変動が不規則過ぎて追いつけない!」 それが合図だったかのように一斉に赤いランプが灯った。 「反応炉、出力上昇中!安全域を超えます!」 「駆動系、ガタつき始めました!」 「強制冷却機、安全基準を突破!120%で稼動中!」 そして事態は最終局面を迎えた。 ガーッ、ガーッ、ガーッ 施設全体に響き渡るサイレン。既に研究員達が操作するコントロールパネルやホロディスプレイは真っ赤に染め上げられている。 「全冷却システム焼き切れました!反応炉の温度上昇止まりません!」 「減速剤注入、反応を抑制しろ!」 「了解。注入開始・・・ダメです!エンジン内部の減速剤、効果なし!」 「伝達系ダウン!反応炉、完全に暴走!」 「炉心のエネルギー転換隔壁、融解を始めました!」 「全電力で融解を阻止しろ!」 「・・・・・・効果なし!第1隔壁融解。第2隔壁を侵食し始めました!」 この段に至り田所はコントロールパネルに張り付くと、それを叩き割り、中のボタンを押し込んだ。 直後実験場内の外壁が開け放たれ、大量の水(減速剤)が流入した。 急流となった水流はエンジンを飲み込み、白い蒸気を吹き上げた。だが温度上昇の方が早かった。 「温度上昇止まりません!反応(核融合)爆発します!」 刹那、眩いばかりの光が周囲を飲み込んだ。 (死ぬなら空の上が良かった・・・・・・・) 思ったがもう遅い。アルトの意識と肉体は、突然出現した太陽の灼熱地獄によって分子レベルにまで還元された。 「ちっ・・・」 静寂の中、誰かの舌打ちが聞こえる。 「え?」 意識の上では既に昨日、今日とで三途の川を渡りきっていたアルトは再び現実世界へと引きずり下ろされた。 (あれ?熱くない) 一瞬で蒸発するはずであり視界は全天を白が覆っていたが、指先も足先も感覚が有り、地面にしっかり立っている感覚もあった。 田所の声が部屋に木霊する。 「コンピューター、プログラムをテスト前に戻せ」 ピッピロリッ 軽やかな電子音と共に周囲の光度が下がる。そして一瞬さっきの管制所程の無骨な壁の覆う狭い部屋となり、再び何事もなかったかのように管制所と実験場に戻った。 「ホ、ホログラムだったのか・・・・・・」 当に仮想現実(バーチャル)技術の極限とも言える完成度の高さだった。 確かにこれならプログラム次第でどんな実験でも行える。 また、地下空間にエンジンテストを行えるだけの設備を整えるのには年単位のスパン(期間)が必要になる。 となればこのホログラム施設を作るほうが遥かに現実的だった。 しかしこれほど違和感がないのは、おそらくこの施設はミッドチルダのバルキリー製作委任企業『三菱ボーイング社』辺りに本当にある施設なのだろう。 1人で納得している内に、田所がコントロールパネルに指を走らせる研究員に問う。 「原因はなんだ?」 「人間側の出力変動が予想値を遥かに上回っていて、炎熱変換機(コンバーター)が対応しきれなかったんです。これから改良に入りますから試作した本物のエンジンでの実践は─────」 「まだ無理か」 田所は肩を落とし、ガラスの向こう(とはいえ全てホログラム)のエンジンを仰ぎ見た。 「えっと・・・田所所長、こいつをもう置いていいか?」 いつの間にか、また握られていた魔力電源プラグを掲げる。 田所は我に返ると、それを受け取り元の場所に戻した。 「すまないな。ウチ(技研)にはアレ(擬似リンカーコア)を必要出力で起動できるほどの魔力資質保有者がいないんだ」 「なるほどな。・・・あ、そういえば所長が見せたかったのはこのエンジンなのか?」 しかし田所はこちらの問いに不敵な笑みを見せると首を振った。 「いや、これからが本番さ。・・・コンピューター、〝アーチ〟を」 すると入って来たドアと別の、現実世界への扉が現れた。 (*) 扉の先は行き止まりだった。 田所は扉の右に着いたボタン群から〝地下2階〟を押すと、扉が閉まり、体が軽くなった。 2人を乗せたエレベーターは下降していくが、大して深く降りぬ内にガラス張りのエレベーターの壁から急に視界が広がった。 その空間は地上の格納庫ほどの広さと高さを誇り、下界の研究員と整備員達が動き回る。彼らの中心には、優美なフォルムをした白鳥が鎮座していた。 (あれは!?) エレベーターが最下点に到達し、扉が開く。と同時にアルトは持っていた硬貨を投げる。 それは目測で10メートル、20メートルと離れるが、いつまでたってもホログラム室の見えない壁にはぶち当たらなかった。 どうやら自分の見ている光景はマジ物らしい。 「どうだ?本物だと信じるか?」 「あ、あぁ・・・・・・」 田所の声に生返事を返しながら、その機体を仰ぎ見る。 キャノピーの後ろに突き出した2枚のカナード翼。しかしそれはVF-11のそれと違い、水平でなく斜めに突き出している。 エンジンナセルはず太く、その力強さを印象づけるのに対して、機首は一振りの剣(つるぎ)のような鋭く美しい曲線を描いている。 そして何より、その翼は鳥がそれを広げたように、大きく前に突き出していた。 「VF-19・・・・・・」 しかしそれは自分の見たことがある新・統合軍制式採用機VF-19のF型又はS型とは違った。 前述のように2枚のカナード翼が存在し、エンジンナセル下にはベントラルフィンがある。 更に主翼も5割ほど大きくなっていた。 アルトはこの特徴を併せ持った機体を4機種ほど知っている。 1つはある惑星や特殊部隊で採用された超レアなVF-19『エクスカリバー』のP型とA型と呼ばれるモデル。 2つ目は20年前、マクロス7においてパイロット「熱気バサラ」の乗機として有名になったVF-19改『ファイヤーバルキリー』。 そして最後の1機は、AVF(アドバンス・ヴァリアブル・ファイター)計画(スーパーノヴァ計画)で試作された試作戦闘機YF-19だ。 この試作戦闘機はある胡散臭い神話を持つ事から有名だ。 惑星「エデン」から地球に単独フォールドし、地球絶対防衛圏を〝正面突破〟。当時迎撃してきた最新鋭試作無人戦闘機「ゴーストX9」を〝単独〟で撃破し、マクロスシティに鎮座するSDF-01(オリジナルマクロス)の対空砲火を掻い潜ってブリッジにタッチダウンした。というものだ。 アルトはどんな兵装を持ってしても地球絶対防衛圏を単独で正面突破するのは不可能だと思うし、当時慣性抑制システムOT『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』はもう1機のYF-21にしか装備されていなかった。 そのためパイロットがどんなに優秀でも、当時のゴーストの機動に追随できたはずがない。 SDF-01も現在、モニュメントとしての要素が強く、対空砲火を打ち上げられたのかどうか・・・・・・ そのためこれは統合軍がVF-19の優秀さをアピールする目的で流されたデマだということが定説だった。 しかし実はこの歴史改変は統合軍の情報制御の成果だった。 この神話にはこの事件に大きく関わったシャロン・アップルの名は一度も出ないし、一緒に来たYF-21も伏せられている。 また当時現場にいた市民・軍属を問わずその時の記憶を失っている。となれば情報の制御は容易だった。 上記した2つの関係者を事実から抹消し、衛星に写っていたYF-19の武勇伝を誇大主張することで現実味を無くしたのだ。 しかし統合軍すら原因を正確に知らず、新・統合軍の機密事項を読める各船団の提督クラスや、それをハッキングして読んだグレイスらすらシャロンがなぜ暴走したのかは謎のままだ。 そのためこの事実を正確に知っているのは最近もエデンでYF-24『エボリューション』(VF-25の原型機)のテストパイロットをした、事件の当事者であるイサム・ダイソン予備役と民間人ミュン・ファン・ローンの2人だけだった。 「そう、VF-19〝P〟『エクスカリバー』だ」 田所が誇らしげに言った。 ―――――――――― 次回予告はここの一番下にあります。 できれば「読みましたよ」ってのでもいいので、ついでにコメントしていってください。とても励みになるのでよろしくお願いします。 また、何らかのミスや小さなアイデアもあったらお願いします。 ―――――――――― シレンヤ氏
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マクロスなのは 第6話『蒼天の魔弾』←この前の話 『マクロスなのは』第7話「計画」 アルトはこちらと同じ様にガウォークで並進するバルキリーに呼び掛ける。 「なぜ生きてるんだミシェル!? 魔法でも死者甦生は無理なはずだぞ!?」 『勝手に殺すな。それともなにか? 死んだ方が良かったのか?』 「いや・・・・・・生きててよかった」 『・・・・・・へぇ、見ないうちに素直になったなアルト姫』 「姫はやめろ!もう一度ここで戦死したいか!?」 アルトとミシェルと呼ばれる謎のパイロットの激しい口撃の応酬。後部座席でそれを聞くなのはは何がなんだかわからない。 「えっと・・・・・・アルトくん、どうなってるの? お友達?」 アルトはこちらを振り返ると怒鳴る。 「こんなやつ友達なもんか!」 すると聞こえたミシェルが言い返す。 『ほう、言うじゃないか。だが女の子に怒鳴るとは天下のアルト姫も地に落ちたようだな』 それに怒鳴り返すアルト。スカした言動で翻弄するミシェル。口喧嘩はさらに5分にもおよんだが、一触即発という雰囲気どころかお互いそれを楽しんでいるように感じられた。そう思うと自然と笑みがこぼれた。 (本当に仲がいいんだ) 自然と思ってしまった思考はどうやら念話に乗ってしまったらしい。2人は同時に否定する。その息の合ったユニゾンに今度は笑い声を隠すことができなかった。 (*) なのはの仲裁によってようやく2人は矛を収めたが、アルトはやっと重要な事に気づいた。 「そういえばお前、その機体どうした?」 ミシェルはしばし沈黙を守ると一言。 『メイド・イン・ミッドチルダだ』 「は!?」 「え!?」 『・・・・・・詳しいことは技研に着いて、田所所長から聞いたほうがいいだろう』 ミシェルのVF-0はガウォークからファイターに可変し旋回していく。アルトはなのはの了解を得ると、ミシェルを追った。 (*) 10分ほど巡航飛行を続けると六課を飛び越し、クラナガン湾に出た。VF-0が降りる大地は六課とは対岸の半島に存在した。下界には湾内に浮かぶ大きな人工島が見える。 『こちらは時空管理局地上部隊、技術開発研究所のテストパイロット、ミハエル・ブラン一等空尉。管制塔、着陸許可願います』 『・・・・・・確認しました。第7滑走路はクリア。着陸OKです』 続いてVF-0の後についてきたVF-25にも通信が入る。 『管制塔からフロンティア1』 「こちらフロンティア1、どうぞ」 『路面が通常のアスファルトのため、ファイター形態にて滑走路に進入、ミハエル機に続いて着陸してください』 「フロンティア1、了解」 コールサインで呼んでいるのは、近くを飛ぶ民間機の多いせいだ。 この滑走路は管理局の施設ではなく、国営のミッドチルダ国際空港だ。レーダーを見ると、100を超える民間の旅客機、次元航行船が写っている。 ちなみに通常のアスファルトやコンクリートの地面だと、ガウォークのエンジン噴射の熱に耐えられずひび割れが発生する。技研にそのまま帰れないのはそのためだ。 「・・・・・・珍しいのか?」 なのはがさっきからキョロキョロしているので聞いてみる。それになのはは目を輝かしながら応えた。 「うん。空戦魔導士でも危ないって緊急時以外近づかせてくれなかったの。・・・・・・こんなに飛行機が飛んでるんだ・・・・・・ほら!あんな大きい飛行機の操縦なんて楽しいんだろうなぁ~」 彼女はそう言って着地のアプローチに入ったVTOLジェット旅客機を指差す。 オートパイロットの見張り役と酷評される民間機のパイロットからすれば、Sランクで自由に空を飛べるなのはの方がよっぽど羨ましいに違いない。だが人間、自分に無いものが羨ましくなるものだ。 その後もひっきりなしに離着陸する民間機に混じって無事着陸。そのままVF-0とVF-25は格納庫へ運ばれ、アルト達はリニアレールで技研に向かった。 その道中なぜミシェルは生きているのか?また、なぜこの世界にいるのか?が彼の口から明かされた。 彼の話によると宇宙に放り出されてすぐ、EXギアの緊急装置を作動させて体を風船のようなもので包み、凍死と窒息の危機から身を守ったらしい。 そして今度は怪我から意識を失いかけていたミシェルだが、そこにアイランド3から誤作動で切り離された脱出挺が偶然通りかかり救助されたという。 その後避難していたフロンティア市民を乗せたまま漂流していた脱出挺はアイランド3から発生した謎の爆発に呑み込まれフォールドしたらしい。―――――その爆発がバジュラ殲滅に使ったフォールド爆弾『リトル・ガール』であることは言うまでもない。―――――脱出挺は奇跡的にフォールド空間へと振り落とされたらしく、乗員達が気づいた時にはこの世界に来ていたという。 「じゃあこの世界には俺たちよりも早く来たのか?」 向かい合わせのミシェルは頷くと話を続ける。 「あぁ、もう8カ月前になるな。そういえばその様子だとバジュラの野郎共には勝ったみたいだな。フロンティアはどうだ?・・・・・・クランはどうしてる?」 (やはりこの男はクランを気にかけているんだな) そういえばなどと言っているが、ずっと気にしていたのは分かった。おそらく彼女にもしものことがあったら・・・・・・と聞くのが怖かったのだろう。 「安心しろ。あれからバジュラとの共存の道が開けたんだ。だから両方とも無事。今ではバジュラの母星に移民した。もう1年になる」 「そうか・・・・・・よかった」 ミシェルはそう胸を撫で下ろした。 ちなみにそれぞれの客観時間がずれていることはフォールド航法を使うとよくある事なので、まったく気にならなかった。 「・・・・・・でだ、なんで知らせてくれなかったんだ?」 「技研の作業がぎっちぎちでな。しかしおまえがランカちゃんと来た時には驚いた。暴動に歌か。まったく昔の自分を見るようだったぜ。しかも俺達が必死こいて守ったオーバーテクノロジーも全部暴露しやがって」 「あ、いや・・・・・・すまない・・・・・・」 機密を漏らすということに罪悪感があったので素直にあやまった。そんな2人の会話になのはが仲裁しながら入り込んできた。 「まぁミハエル君、あんまりアルトくんを責めないであげて。それで他のフロンティア船団から来た人達はどうなったの?」 「なのはちゃん、親しい友人はみんな俺のことをミシェルって呼ぶんだ。だからミシェルって呼んでいいよ」 彼のウィンクに頬を赤らめるなのは。 ミッドチルダとフロンティアでは客観時間がずれている。そのためまだミシェルは17~18歳のはずだ。一方なのはは資料によれば19歳。年上だ。つまり年上しか狙わないミシェルの射程内ということになる。 しかしクランとのことや、なのはが戦闘職であることから外れるかもしれないが、この8カ月が彼を変えたかもしれない。 (こいつ(空とベットの撃墜王)に狙われてからでは遅い・・・・・・) アルトは一応予防線を張ることにした。なのはに念話で呼びかける。 『(なのは、こいつはやめたほうがいいぞ)』 『(? どうして?)』 『(実はそいつ・・・・・・ゲイなんだ)』 「ふぇ!?」 なのははおどろきのあまり素っとんきょうな声をあげた。 「どうしたの? なのはちゃん?」 ミシェルは顔を真っ赤にしたなのはに問う。 「ううん、なんでもない・・・・・・」 「ん? そっか。とりあえず他の人達だよね。民間人は普通にミッドチルダで暮らしてるけど、元新・統合軍の軍人さんはみんなを守りたいって残らず時空管理局の地上部隊に入局してるよ」 不思議なことに、民間人含めてみんながみんな魔力資質があってね。と付け加える。 「ミシェル君も?」 「ああ。大抵クラスBだったんだが、俺はAA+だった」 「へぇ、そっちの世界に魔法がないのが残念なぐらいだね」 なのはが言った辺りでリニアレールのアナウンスが、技研に最も近い駅に到着したことを知らせた。 (*) その後研究員の運転する車で技研に戻ると、彼らを出迎えたのは田所だった。アルトは彼に問いただしたいことが山ほどあったが、田所のたった一言にその気力を挫かれた。 「おかえり」 アルトだからわかる演技でない心からの言葉。父の姿が重なったアルトは少し戸惑いながら 「ただいま」 と返した。 (*) 帰還直後ミシェルは 「用事がある」 とか言って田所と研究員達に連れていかれたが、アルトとなのはは応接室に通された。 しかし入れる部屋を間違えたのか先客がいたようだった。 「レ、レジアス中将!?」 なのはは入ると同時にそのおじさんに敬礼する。 「ん? あぁ、高町空尉。君も来ていたか。第256陸士部隊から君達六課の活躍は聞いている。地上部隊の窮地を救ってくれてありがとう」 もし予算を増やしたのに陸士部隊が敗北してロストロギアを奪われていれば、地上部隊の存続すら危うくなる。リニアレール攻防戦はそういう深い意味のある戦いだった。 「いえ、私達は任務を忠実に実行しただけです」 「それを尊いと言うんだと、私は思う」 彼はそう言ってなのはの肩を叩き、こちらに向き直る。 「早乙女アルト君、君とランカ君には特に感謝しなければならない。君達と我々は元々関係のない間柄なのに、以前の襲撃事件や今回のことなど助けてくれてありがとう」 アルトはその言葉に、以前シグナムに言った事と同じセリフを返す。 「いや、俺たちは偶然あそこにいて、偶然それに対応できる装備があっただけだ」 「とんでもない!我々が助かったことは事実だよ。精神面でも〝技術面〟でも」 技術が各種オーバーテクノロジーを示していることは明白だったが、そこを強調するところはタヌキだ。こうしてこちらの反応を試しているのだろう。 すでにアルトは彼がペルソナ(仮面)をかぶっていることを見抜いていた。しかし、以前のフロンティア臨時大統領、三島レオンのような野心や悪意は感じられない。 彼にあるのははやてと同じような〝守りたい〟という強い思いだけだ。 おそらく彼のような立場になると否が応でもペルソナを・・・・・・権謀術数にまみれた権力の世界を渡るために、被らなければならないのだろう。 「どういたしまして」 そう答えるのと田所が入室するのは同時だった。 邪魔かな?と思ったなのは達は出ていこうとするが、レジアスに呼び止められる。 「丁度いい。君達にも関係ある話だから聞いていきなさい」 そう言うレジアスは空いたソファーの席に俺たちを誘導した。 (俺たちに関係あるってどんな話だ?) なのはのほうも見当が付かないようで、同じようにこちらを見てきた。俺は肩をすくめてそれに応えると、準備する田所所長に視線を投げた。 3人の視線に晒されながら田所は空中に大型のホロディスプレイを出すと、資料を手に説明を始める。 画面には大きく『時空管理局 地上部隊 試作航空中隊についての中間報告』とある。 「今回完成した試作1号機『フェニックス』の実戦テストは無事終了。量産機としてVF-1『バルキリー』の第1次生産ラインの整備が進んでします。現在は第25未確認世界より漂流してきたL.A.I社研究員より提供されたVFシリーズの設計図から選定したVF-11『サンダーボルト』の解析が完了。試作2号機として試作を開始しました。試作機が完成し、テストも順調ならば1ヶ月以内に同機種の生産ラインが整備できる予定です。またパイロットの養成は彼らを教官に順調に進んでおり、1週間以内にVF-1の試験小隊が組める予定です」 ディスプレイに写るVFシリーズの図面は紛う事なきアルトの第25未確認世界のものだ。しかし随所にVF-25の最新技術、またはミッドチルダの技術がフィードバックされている。 2機種のエンジンが初期型の熱核タービンから最新の熱核バーストエンジン(ステージⅡ熱核タービン。AVF型では初期型の2倍。VF-25の最新型では約4倍の推進力を誇る)に換装され、装甲が第3世代型の『アドバンスド・エネルギー転換装甲(ASWAG)』になっていた。 また、推進剤のタンクが本来入るべき場所に小さなリアクターが居座っていた。このリアクターは改修したVF-25の装備と同じようだ。 VFシリーズの装備群は、基本的に反応炉(熱核タービン)のエネルギーを流用する。しかしそれではまるっきり質量兵器と同じなため、このリアクターが搭載されたのだ。 これは名称を『Mk.5 MM(マイクロ・マジカル)リアクター(小型魔力炉)』といい、ミッドチルダにはすでに30年以上前から製作、量産する技術力があった。しかし魔導士が携帯するには大きすぎ、車両に搭載すると質量兵器に見られかねない。・・・・・・いや、まずこれほどの出力が通常個人レベルの陸戦では必要なかった。 かといって基地や艦船の防衛システムに使うには逆にひ弱で、正規の艦船用や基地用の大型魔力炉に比べると受注量は少なかった。 そこに目を着けたのが『ちびダヌキ』の異名を持つ八神はやてだった。 彼女は比較的安価でVF-25に搭載するには十分小型なこの魔力炉を搭載させ、兵装と推進系を改装したのだ。 この魔力炉は『疑似リンカーコア』とも呼ばれており「個人の魔力を最大500倍まで増幅する」というのが本当の機能だ。しかし本物のリンカーコアがないと、使用はおろか起動すら出来ない。 だから誰でも、そしてボタンを押せば使えるような兵器ではない。 「これは魔法そのものである」 というのが六課側の主張であり、報道機関の協力もあって世論からは認められている。 しかし六課自身もこれは質量兵器であり、ランカを守るための希少な戦力であるべきだと考えていた。 「田所所長・・・・・・まさか本気で量産したりしないよな?」 アルトの問いに田所の表情が陰る。彼は正直なのだ。 しかし、今まで『管理局は質量兵器を使わない』と信じていた。または、信じようとしていたなのはやアルトには衝撃だった。 「田所所長、君は答えなくていい。私から説明しよう」 レジアスは立ち上がると、自らの端末を操作してディスプレイに投影する。 〝56回〟 上の見出しによるとミッドチルダでのガジェットの出現回数のようだ。 確か六課はこの回数の半分ぐらい出撃しているはずだ。 六課は新人の研修ばかりやっているように思われがちだが、今回のリニアレール攻防戦以外にも要請を受けてスクランブルしたことは多い。 目立たないのはほとんどが空戦であり、新人達が実戦に臨むことがなかったためだ。 「現在、六課の善戦で地上の平和が守られているといっても過言ではない。しかし、君達1部隊に地上の命運を託すわけにもいかないのだ。そこで突破口となるのがアルト君、君のバルキリーだ」 多少芝居がかったようすで大仰にこちらを指差す。 「俺の?」 「そうだ。バルキリーは改良すれば、魔導兵器として管理局でも採用できるのだ。君が以前襲撃事件の時バルキリーを使い、その業績から世論はそれを許した」 報道機関も珍しく比較的ソフトに表現しており、ミッドチルダ市民はVF-25が上空を飛んでいても不安を覚えず、子供達が手を振っているほどに受け入れられていた。 ちなみに早くも普及の始まったPPBS(ピン・ポイント・バリア・システム)も今では魔法として人々にとらえられており、格闘でもPPBを併用すれば質量兵器を使った攻撃とは見なされない。(VF-25では反応炉で発生させたものであるが、そんなことはもちろん伏せられている) 「しかし、質量兵器廃絶の理念に違反するすれすれではないでしょうか?」 なのはがつっこむが、レジアスは悲しい顔をして言う。 「そこまで追い詰められているのだよ、我々は」 『ピッ』という電子音とともにディスプレイの数字が変わる。 〝12人〟と。 「この数字は、ガジェットとの戦闘で戦死した数だ」 それを聞いた2人の顔が強ばり、田所は顔を伏せた。 「しかしそんな報道は―――――」 「君は住民にパニックを起こせ。と言うのかね?」 レジアスはそう言ってなのはの反論をねじ伏せた。どうやら厳重な報道管制が行われているようだ。 「戦死したのはほとんどBランク以下の者だ。」 列挙される殉死(戦死)者名簿。右端に書かれた魔導士ランクを見ると、確かにB,Cランクで固まっている。しかし1人だけAAランクの魔導士がいた。職種は空戦魔導士。部隊名は『第4空戦魔導士教導隊』。それはどこかで聞いた部隊名だった。 (確かなのはの―――――) 「え?うそ・・・・・・栞!?」 なのははそのAAランクの者の名を叫ぶ。 そう、確かその部隊はなのはの前任地だった。 レジアスはそんな彼女の驚きを予想していたようだ。彼はその宮島栞二等空尉のデータを呼び出す。 「彼女は管理局員の鏡だった」 レジアスはそう前置きをして話始める。 彼によれば教導隊はその日、海上で学生上がりの見習い空戦魔導士の訓練を行っていたそうだ。 しかしその時、部隊は大量のガジェットⅡ型の奇襲を受けた。教導隊は必死の防衛戦の末撃退は不可能と判断し、転送魔法による撤退を選択した。 だが敵の攻撃が激しく、学生を守りながらではとても逃げられなかったという。 「そんな時彼女は、全員を逃がすために囮になったんだ。おかげで新人含め部隊はほとんどが無事に帰還した。だが彼女だけは・・・・・・」 遺体は海上のためか発見されなかったらしい。しかし発見された彼女のデバイスのフライトレコーダーから彼女の死亡が確認されたという。 「彼女はフライトレコーダーに最期の遺言を残していた。それがこれだ」 レジアスは端末を操作してプレーヤーを起動し、再生した。 『みんな、無事に逃げたよね? 私はここまでみたいだけど、きっと仇をとってね。私は空からみんなを見守ってるから! ・・・・・・なのはちゃん知ってるよね?この前見た映画で私、「私も『空からみんなを見守ってる』って言ってみたいなぁ~」って言ってたこと。でもいざそうなってみると、あんまり感慨深くないんだね』 無理にでも明るく振舞おうとする声。きっとそうして恐怖に対抗しているのだろう。 敵に囲まれ後は座して死を待つのみ。その恐怖は想像するに難くなかった。 そしてその声に混じる爆音。それは彼女の後ろに迫る死神の足音のように響く。 『・・・・・・もう時間がないみたい。これを聞く人みんなにお願いします。絶対この機械達に私の無念を晴らさしてやってください―――――』 そこでプレーヤーが止まった。・・・・・・いや、まだ残っているがレジアスが止めたのだ。 シレンヤ氏 第7話 その2へ
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まず最初に青の面でクロスを作ります。 ↑のような状態を作ります。 注意点は青の色の側面の色をそろえなければなりません。 青の面を上にした状態でその側面の色が、赤の右の色が緑、赤の左の色が黄色、そして赤の奥の色がオレンジ、と覚えておきましょう。 ↑のように側面の色が違っていると、いけませんので注意してください。 どうしても、クロスが出来ない方は↓を参考にしてください。
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クロス【オジャマ】 【クロス】 関連タグ>>オジャマ ポップ君がクロスに落下してくるよ ポップンミュージック17 THE MOVIEのネット対戦で初登場したオジャマ。 その名前の通りポップ君がクロスして落ちてくるものだが、具体的には赤ポップ君(5)以外の「1と2」「3と4」「6と7」「8と9」が画面中央で交差するように、斜め方向から直線的に落下するという内容である。 そのため、EXCITEのように本来の譜面の配置を変えるオジャマでもある。 注意点・対策など ポップ君がクロスすることにより動きによって惑わし、押し間違いを誘いやすいのがこのオジャマの特徴である。 普段のプレイヤーの視点が中央よりも少し上という傾向が見られるため、この付近でポップ君が重なりやすく視認が難しくなる、のが要因。 攻略は、SUDDENオプションをつけている要領で下側を見るのがコツ。 ハイスピードを下げて判断の時間を増やすのも有効な手段である。 ラインが入れ替わるという点ではEXCITEを思わせる。 つまり、画面上でラインが入れ替わる視覚的な要素、譜面そのものが入れ替わるプレイ上の要素の両方を兼ねており、規則性があることから実質EXCITEの下位互換という見方ができる。 EXCITEと違いは途中の色の変化がなく、始めから最後に落ちてくるラインの色をしているので、どちらかといえば本来降ってくるラインとは別のラインに移動している爆走と似た感覚になるだろう。 視覚的に混乱を招く地味な爆走をするのが、このお邪魔の正体であるのだ。 ビートポップやキャラクターポップでプレイしている場合は形状変化を受けず、大きさが微妙に変わってそのまま降ってくる形になる。 少しだけファットポップ君の効果がかかっているような感じになる。 事実バラバラポップ君や横分身等に耐性を持っている人には楽なほうといえる。 なおこのお邪魔の特性を利用すると押しやすくなる譜面もあるため、クリア・フルコンボ・パーフェクトの補助的役割として使う、という方法もある。 慣れてしまえばかなり攻略には役立つはず。 しかし、正規譜面ではないので賛否両論となるが… 特に使用する場合はお邪魔Hs2・Hs4も設定した上で速度が合う曲を選ぶのがよい。 オプションのハイスピードに影響するという特徴があるので、斜めに動く影響が一番少なくなるためである。 しかし、ポップンミュージック ラピストリアではオジャマハイスピードの削除により、このような方法が使えなくなった。 ある程度耐性が問われるようになったといえる。 他のオジャマとの組み合わせ ?色ポップ君(ナゾイロ) ただでさえ高難易度なのに、色での判別が不可能になる組み合わせ。しかし、一見無理な組み合わせでも判別方法は存在し、外から内方向に斜めに動くのが上段、逆に内から外方向に斜めに動くのが下段という見切り方ができるため。練習量次第ではクリアできるようになるかも。 ネット対戦 同時押しの多い譜面、特に隣り合った同時押しなら効果的だろう。 ミックスする組み合わせは、ファットや白ポップで誤認させるか、地震で視線を狂わせる等が有効と思われる。 上記にもあるとおり譜面配置が変わるお邪魔のため、特に隣接同時押しが頻発する譜面、および同時押し譜面では譜面の見づらさ及び無理押しになりやすい観点からとんでもない難易度になるため、Lv2にしては理不尽だと思われる。 ポップン18からLv3に格上げ。 ポップン17では爆走系でありながらネット対戦では「爆走の盾」で防げるものに対応していないのもネック。 唯一対抗するには適性Hsを落とすかSUDDENを入れるしかないだろう。 オジャマコンディションとゲージ管理にさえ気をつけていれば、Lv3にバラスピや強制Lowなどの強力オジャマを合わせておくことで、よほどの耐性が無い限り相手にとっては非常に厄介な存在となる。 アイテムによる対策が少ない上、対処方法が少ないためである。 このときはまずクロスを放って、相手がミスをすれば続けてクロスで攻撃すればよく、相手がミスをせずあまり崩れなかった場合は上記のLv3お邪魔で攻撃すればよい。 このオジャマを受けている間、お邪魔発動用のポップ君が降ってきた場合は、譜面に含まれるオブジェと重なる場合がある。 そのため、このようなことになるとほぼ高確率でBADが出てしまう羽目になることも。 ただしお邪魔発動用のポップ君とオブジェと重なった場合、ボタンを押すとオブジェ側の判定が優先される仕様になっている模様。 多少の諦めは必要かもしれないが、コンボ賞で決まるような対戦など、勝負どころの場合は食らいつくという意味でも2連打で対処するほかないだろう。 【仕様・ポイントの変遷】 バージョン ポイント 備考 pm17~19 8 pm20~ 80 ビートポップ・キャラクターポップだと見切りづらい上に、微妙にオブジェのサイズが大きくなる擬似ファットポップ君の効果があるため、判定のタイミングが余計に掴みにくくなるのも厄介。 ポップン17ネット対戦ではこうげきが56以上で獲得できるが、これを入手すると超チャレンジでプレイできるお邪魔が謎のバグにによって「エレビッツ」になる。そのためクロスを超チャレンジで使う場合、「エレビッツ」を入手する必要があった。 関連用語 爆走 EXCITE オジャマ
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マクロスなのは 第6話『蒼天の魔弾』←この前の話 『マクロスなのは』第6話その2 「リパーシブシールド最大!」 『Alright.』 1週間前、ランカのデバイスと一緒にレイジングハートにかろうじて装備されたOTである薄緑色の全方位バリアは即座に展開され、超音速で飛来した弾丸を容易く弾く。しかしそれと同時にカートリッジが2秒に1発、湯水のように消費されていった。 元々マクロスフロンティア船団でもバトルフロンティアの大型反応炉を使って無理やり発生させるシールドだ。被弾しながらのエネルギー消費は半端ではなかった。 加えてベルカ式カートリッジシステムのカートリッジは、決して魔力の電池のような物ではない。 例えば、リンカーコア出力がクラスBの魔導士がカートリッジを大量に用いれば、なのはクラスの砲撃が放てるだろうか? 実はそれは出来ない。 それを行えば、魔法を行使する際に発生するフィードバックに魔力コンバーターたるリンカーコアが耐えられないからだ。 これは奇しくも、シャーリーの事故によって証明されている。まだ試作されて間もなく、ノウハウのなかったベルカ式カートリッジシステムは彼女の絶好の研究課題だった。 しかし、無知による大量消費によって彼女のリンカーコアは田所の説明通り8割も小さくなってしまったのだ。 つまり、ベルカ式カートリッジシステムは有効な手段だが、使用法を誤ると大変な傷痕を残すのだ。 なのははリンカーコア出力がS+のためリンカーコアはこの連続消費に耐えうるが、そのフィードバックは想像を絶する痛みに還元されて彼女の端正な顔を苦悶の表情に歪ませた。 しかし彼女は朦朧とする意識の中、視界の端にキラリと光る物を捉えた。 「鳥・・・・・・?」 大きく翼を広げたそれは周囲に大量の光の球を生成、その光球は青白い尾を引いて攻撃に夢中のガジェット達をぶっ叩いた。 (*) 「間にあったか・・・・・・」 アルトは呟く。 VF-25にはOT『アクティブ・ステルス・システム』の最新バージョンが搭載されており、『隠密接近すればゴースト(新型空戦ガジェット)のセンサーには探知できないだろう』と思い試したが、予想通りの成果をあげてくれた。 アルトは落ちていくゴースト達を見送る。1機は煙を引きながら雲の下に、もう1機は空中分解を起こしてバラバラになっていった。 「大丈夫!?」 親友の危機に、急いで自らに残った2機のゴーストを撃破し、急行してきたフェイトがなのはに問う。 「私は大丈夫・・・・・・それより4人の支援を!」 なのはは山の向こう側に行ってしまったリニアレールの方向を見る。 「うん、わかった。アルト君、なのはをお願い」 そう言い残し、フェイトはリニアレールへと飛翔していった。 アルトは彼女を見送ると、毅然とその後ろ姿を見送っていたなのはを流し見る。 無傷のようだが、かなり無理をしていることがうかがえた。足首に浮かび上がる桜色の羽も小さくなり、点滅している。 アルトはホバリングするガウォーク形態のVF-25のキャノピーを開き、エンジン音に負けないぐらい大きな声で呼び掛ける。 「キツいならなら無理するな!乗れ!」 アルトの舞台で鍛えられたよく通る声に、なのはは微笑みを返してくる。しかし、突然浮力を失ったように倒れ込みながら半回転し、そのまま頭を下にして自由落下を始めた。 「おいっ・・・・・・!」 アルトは慌てて180度ロールするとスラストレバーを押し出す。機体はエンジン噴射によって自由落下を上回る速度で急降下すると、落ちるなのはを通り過ぎる。そこで再び180度ロールして制動掛けつつガウォークの腕を伸ばす。そして彼女がバルキリーの装甲に頭を打たないよう、慎重に受け止めた。 「ああ、ごめんね・・・・・・カッコ悪いところ見られちゃったな~」 なのはは水平飛行に戻ったガウォークの手のひらに座り込むと、頭を掻きながら恥ずかしいような笑顔をこちらに向ける。しかし、その笑顔とは対照的に息が上がっていた。やはり相当な無理をしていたらしい。 「・・・・・・大丈夫だ。新人とかフェイトには山で隠れて見えなかっただろうし、俺はあいつら―――――ゴーストに撃墜(おと)される奴を何人も見てきた。だから初見で撃墜して、尚生きてるお前をカッコ悪いとは思わないさ」 アルトは励ますつもりで言ったのだが、当のなのははクスクス笑っている。 「・・・・・・な、何がおかしい?」 意味がわからず問うアルトに、なのはは暖かい目をして答える。 「いや、優しいんだね。アルト〝くん〟は」 アルトは予想外の答えに顔を真っ赤にして押し黙る。それがまた面白いのか、彼女はまだコロコロ笑っていた。 (*) その後、この事件―――――リニアレール攻防戦は、あっけなく終わる。 はやて達の属する後方指揮・支援分隊『ロングアーチ』の報告によると、キャロの持ち竜である『フリードリヒ』が谷底に落ちる間に主人を助けるため覚醒。 その覚醒したフリードリヒの働きによって運転室のガジェット達を掃討した。 その後スターズ分隊が運転室を制圧して列車を停め、今は合流した第256陸士部隊の本隊と共に列車に残る陸戦型ガジェットの殲滅戦を行っているそうである。 「―――――だってさ。俺達が合流する必要はないな。俺はこのまま六課に帰投するが、お前はどうする?」 アルトは後ろに座るなのはに呼び掛ける。 彼女は今、魔力の回復を早めるためにバリアジャケットを解除して、元着ていた服に戻っている。どうやら訓練の真っ最中に出撃命令が下ったようだ。その服は青白の教導服だった。 「うん、六課までお願い」 「りょう解」 くだけた調子で言い、アルトはVF-25の機首を六課に向けると、ガウォークからファイター形態に可変。空域からのおさらばを決め込む。 しかしその時、安心したアルトの耳にけたたましいミサイルアラートが入った。 「畜生!」 反射的に180度ロールし、スラストレバーを絞る。そしてチャフ、フレアを発射しつつ下降した。 数発のマイクロミサイルが目標を見失うかフレアに釣られて無益に爆発する。 後ろから来たミサイルはゴーストの物だ。どうやらまだ生きていて、身を潜めていたらしい。 元の機体もそのリフティングボディ(機体全体で揚力を得ようとする形状)にある程度のパッシブ・ステルス性は有していたが、これほどではなかった。 となれば最低でもAVFのYF-21クラスのアクティブ・ステルスシステムを搭載しているようだった。 それを証明するようにゴーストが1機、雲のカーテンから出てくるが、レーダーに映るその機体は全長1メートルの鳥程度のレーダー反射しか捉えられなかった。 そしてその1機は迷わずこちらを追ってくる。 迎撃しようにもVF-25は今、大量に迫るミサイルの回避に専念しており、ひどく遅い。それは高熱源になるアフターバーナー使わず、赤外線探知型ミサイルの探知から逃れるためだったが、それが仇となっていた。 迎撃しようにも、ロールしたため頭部対空レーザー砲は射角に入れない。また、自慢の高機動で逃げようにも、EXギアを着けていないなのはは無事では済まないだろう。ベルトに押さえつけられて肋骨を2,3本〝持って〟いかれるかもしれない。 そのため速度も上げられず、ゴーストから見ればこちらはのろくさい的だった。 (仕方ないか・・・・・・すまん、なのは) このまま撃墜されては元も子もない。断腸の思いでスラストレバーを押し出そうとした時だった。 前方の森の中から青白い光を帯びたものがこちらを目掛けて飛んでくる。しかし反射的に避けようとする手を彼の奥底に眠る何かが止めた。 果たしてそれはVF-25の機首スレスレを擦過していく。 そしてそれは回避運動という名のダンスを踊るミサイル群を目前に、ベルカ式カートリッジシステムのカートリッジ弾を散布し、花火のように自爆した。それは5~6発のミサイルを道連れにした。 (あれは・・・・・・対空散布弾か?) 対空散布弾とは第25未確認世界に存在する対地、対空用の弾種でバルキリーやデストロイド(人型陸戦兵器)から発射される。内部に多数の子爆弾を内蔵していて、主に敵バルキリーなどの近くで本体から子爆弾が散布され、敵に当たると炸裂。それに被害を与えるものだ。 同様の砲撃があと2回続き、ミサイルは全て撃墜された。 回避の必要のなくなったアルトは、アフターバーナーを焚いてゴーストに肉薄。ハイマニューバ誘導弾との連携攻撃にゴーストはあっという間に撃墜された。 「5時の方向、30度下よりアンノウン接近!速度500キロ!」 どうやらフェイズドアレイレーダー(三次元レーダーの一種)の見方と使い方を知っているらしいなのはからの報告。 アルトは通信で所属を訊くよう彼女に頼むと、いつ狙撃されてもいいように十分なマニューバをとる。 「こちらは時空管理局本局、機動六課所属のフロンティア1とスターズ1です。そちらのIFF(敵味方識別信号)が発信されていません。ただちにIFFを起動し、通信に応じて下さい。」 その呼び掛けに対する返事は一度で来た。 『ごめんね、まだIFFもらってなかったからさ。・・・・・・それにしてもかわいい声だね。今度お茶でもどうだい? いい店知ってるんだ』 なのはは顔を真っ赤にして 「ちゃ、茶化さないで下さい!」 と怒っていたが、アルトにはそれが誰か一瞬でわかった。しかし到底信じられなかった。 『つれないなぁ・・・・・・わかった。それらしいのがあるから送るよ。そっちの〝姫〟になら、わかるはずだ。』 なのはは 「姫?」 と首をひねっていたが、アルトの疑心は確信に変わり、IFFによってそれは証明された。 そのIFFはフォールド発信式でこの世界には発信及び受信する技術はない。しかし、VF-25はそれを受信した。 多目的ディスプレイに表示される機種、そこは 『VF-25G』 となっており、所属は 『第55次超長距離移民船団マクロス・フロンティア SMS所属 スカル小隊 スカル2』 と認識していた。 前方を見ると、青に塗装された機体。VF-1・・・いや、もっと大型の統合戦争で使われたVF-0『フェニックス』によく似た機体がこちらとすれ違うところだった。 その瞬間コックピットに捉えた姿はまごう事なきかつての友人の姿――――― そして送られてくるダメ押しの通信。 『久しぶりだなアルト姫。シェリルとランカちゃんの次はその子か?』 彼の軽口に 「お前には言われたくないぜ、ミシェル!!」 と返しながらも、アルトは彼の口から再びその愛称を聞くことができて、心から嬉しいと思った。 ―――――――――― 次回予告 VF-0『フェニックス』で現れたミハエル・ブラン。 アルトは彼の無事を喜ぶが・・・ そして明かされる、レジアスの計画とは!? 次回マクロスなのは、第7話『計画』 今、アルトの翼に秘められた意味が明かされる・・・・・・ ―――――――――― シレンヤ氏 第7話へ