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今日はそりゃあもうとんでもない台風が来ていて、更に質の悪いことに、 塾の行きの時には雨風は止んでいたが、帰りには凄まじいほどの雨風が俺と佐々木の二人を 非情に打ち付けていた。 「・・・こんなんじゃあ自転車使えないよな?」 「やめておいたほうが良いね」 佐々木はやや憮然とした面持ちで即答。 「僕はこのような非常事態を見越して、折りたたみ傘を持ってきたのだが」 と佐々木は紺色の折りたたみ傘を出す。用意の良い奴だ。 「キョン、君は甘いのさ。いくら一時的に雨風が止んだからといってそれは台風が過ぎたという証拠にはならないのだよ」 薄々感付いてはいたがな。 生憎折りたたみ傘は我が愚妹がミヨキチの家に行くといって持っているのだ。 ノーマル傘ならあったのだが、自転車に乗ることを考えて面倒になり、結局は手ぶらで出てきたのである。 「さてどうする?傘が一つだけあるから、自転車はひとまずここに置いといてバス停まで向かうという策が最善だと 僕は思うんだが」 幸い、自転車は塾専用の屋内駐輪場に置いてあるために撤去されたり錆びたりというような心配も無い。 帰りに本屋に寄ろうと思って千円ほど持っているしな。 「いや、君は良いのかい?」 何の話だ。 「傘が一つしかないのだが」 あぁ、バス停くらいまでの距離なら別に濡れても平気だぜ。 走ればなんとかなる。 「・・・いや、あまり雨を浴び続けるのは健康面から見て良くないだろう」 何が言いたいんだ佐々木よ。まぁよくわからないのはいつもの事なんだがな。 「・・・この場合は二人で傘に入るのが最も得策かと思うんだが・・・」 と、そこまで小声で言って佐々木はうつむいた。 「嫌なら構わない」 いや、別にいいけどよ。 幸いというべきかこの塾に来ている同学年の連中は佐々木のみだ。 お調子者の男子に見られて翌日妙な噂が立つこともないだろう。 「良いんだね?」 はやし立てるような口調の佐々木。珍しいな。 「あぁ、別に良いぜ。というか折りたたみ式に俺たち二人が入れるほどのキャパシティがあるのかどうかが心配だ」 「大丈夫だよ」 と佐々木は言い、紺の折りたたみを広げ始めた。 なんかずいぶん複雑な手順を踏んでいるな? 「さぁ、行こうか」 折りたたみとは思えないほど巨大な傘が完成した。 よく考えてあるな佐々木。さすがと言うべきか。 「失礼」 俺は佐々木の隣に立ち、傘に入る。 傘を握っているのは佐々木で、くっついた肩の体温がやけに生々しい。 「・・・」 佐々木がやや赤面している。どうした?寒さで逆に熱でも出たのか? 「いや、何でもないよ」 傘をリズミカルに叩く雨粒の音は、俺たちを包み込むかのように傘の下だけに響いていた。 しばらくそうして歩いたか。バス停が見えてきた。 「やっと着いたな」 傘を差していても横風が凄まじいので服が濡れるのなんの。 佐々木の服も、素肌にピッタリとまとわりついていて・・・なんというか。 情熱を持て余した、とだけ言っておこう。 「バスはまだ来ていないようだね」 バス停は屋根に覆われているとはいえ、横風と共に雨が入ってくる。 しつこい野郎だ。どっか行け。 「次のバスは―」 佐々木がそう行って時刻表を見に行った時だった。 「きゃっ!?」 突然の暴風に、佐々木のスカートが捲り上げられ、白い素肌と・・・ ・・・まぁ、あれだ。あっちの方も白だった、と言っておこう。 「・・・見たな」 見ませんでした、とは言ったが本心が顔ともう一箇所に出ちゃっていたようで。 佐々木は赤面しつつ俺の顔と脚の付け根に一瞥をくれると、腕を組んで目を逸らした。 「ま、まったく。只の布じゃあないか、下らない」 バスが来るまで、佐々木はずっとそんな調子で俺に説教をくれていた。 雨粒を弾きながらバスがやってきた時は、何故か俺は台風に感謝していた。
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佐々木「僕は考えたのだがね、キョンが佐々木団に振り向かないのはキャラが弱いからだと思うんだ。」 まぁ、僕は『僕っ娘』だとしてもいかんせん他のキャラが弱い。橘さんは没個性だし、九曜さんは 怖いだけ。藤原にいたっては名前ですでに負けている。だから改革を敢行した。見たまえ、これが 新・佐々木団だ!」 橘「なによ、なんかおかしい?べ、別にあんたの為にやってるわけじゃないんだからね!佐々木さんがやれって 言うからやってるだけなんだから、か、勘違いしないでよね!!」 九曜「―――お兄ちゃん―――」 藤原「俺はもう藤原ではない。これからの俺の名前は・・・」 トゥルルルル・・・ キョン「もしもし、すいません救急車、えーと・・・ひぃふぅ・・・4台。はい、至急お願いします。」
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「妹VS佐々木」 俺は佐々木にいろいろ世話になったから映画を奢ることになった。 「あたしも行くー」 「家で大人しくしてなさい」 「やだー、行くもーん」 行くといいはる妹を宥めるのに苦労したため、約束の時間に遅れてしまった。 「そうだキョンくんー、ハンカチはー?」 ―そういや、忘れた 「取ってくるー、待っててー」 妹はハンカチらしきものを取ってきて俺のポケットに入れてくれた。その時の妹の黒さに俺は気がつかなかった。 待ち合わせ場所にて 「遅刻だよ。キョン」 「すまん、お茶を奢るから許してくれ」 映画は普通に面白かった。 しかし、映画館での、この人の多さはなんだ。 そうだ、佐々木とはぐれないためにしっかりと手をつながないと。 しかし、佐々木の体は柔らかくて良い匂いで・・・いや、妄言だ忘れてくれ 「しかし、今日は暑いな」 佐々木の顔も真っ赤だな。 「ほんとだね。くつくつ」 ハンカチ、ハンカチと ・・・・どおした、佐々木? 「それってハンカチでなく、女もののパン・・・・」 ハンカチの代わりに妹のパ〇ツが。ゲエー、何でこんな物がー パシーン・・・痛いです佐々木さん 「えーと、言い訳して良いかな。俺は変態じゃなくて、ハンカチと間違えただけで・・・」 「判っているよ、慌てて間違えたか、妹さんの悪戯のどっちかだろ」 「すまん、佐々木」妹は今夜おしおきだな 「君はもっと余裕を持って行動すべきだよ。妹ちゃんがついてくると言い張るのはよくあることだし。 前もって妹ちゃんを説教するとか御母上に何とかしてもらうとか色々手が打てたはずだよ おかげで、折角のムードが台無しだよ」 佐々木は俺達の行きつけ中華料理店で、ムードがどうとかいう難しい説教を小一時間された。 もちろん、いつもの割り勘でなく俺の奢りになった。 さらに次の週、佐々木に服を買わされることになった。やれやれだぜ。 せっかくいいムードだったのに。じゃなくて、妹のおかげで大損だ。
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【名前】佐々木<ささき> 【性別】女 【年齢】16 【容姿】「十人中八人が一目して目を惹かれる」美少女。 【性格】性格は控えめ。男相手だと男言葉で、女相手だと女言葉で話す。 【能力】頭脳明晰、才色兼備。だが自己評価は「平均以下の凡人」と低め。 【プロフィール】その名の通り、「涼宮ハルヒ」シリーズに登場する佐々木その人。 元本筋レギュラーの一人。紳士の嫁になった事と、人数調整の関係で現在は非レギュラー扱い。 一応学校には通っているが、COFの活動には携わっていない。 【補足情報】 先述の通り、「涼宮ハルヒ」シリーズの佐々木その物。ただし中の人が「驚愕」を読んでおらず、「分裂」を読んだのも随分前の事であるため、人格においては完全にトレースしきれているとは言い難い。 現在はMSには搭乗していないが、当初は量産型MSに搭乗する事が多かった。プロフィールにあるように、自己評価は低いが能力自体は高かったため、スタークジェガンやバリエントなど、量産機の中でも上位機種を多く利用していた。
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佐々木「キョン、僕は、ずっと君に言わなければならないことがあるんだ」 キョン「どうした佐々木。思いつめた顔をして」 佐々木「黙っていてゴメン! 僕は実は男だったんだ! でもキョン、僕は君が好きなんだ! 男に好意を寄せられるなんて迷惑だろ。いくら君の懐が深いとは言っても、 君の性癖は常識の範囲内であることは分かっているんだ。 だからずっと言い出せなかった。でも、もうこの気持ちを抑え切れなかったんだ!」 キョン「なんだ佐々木、そんなことで悩んでいたのか。バカだなあ」 佐々木「キョン……」 キョン「高校に入ってから、俺、そっちの方も大丈夫になったから。 一緒に男同士の熱い交わりをかわそうじゃないか!」 ------------------------------ 佐々木「うわああああああああ!」 佐々木「な、なんて夢だ! 僕が実は男でキョンに告白してキョンが高校で 男色に目覚めたなんて。なんておいし……、いやおぞましい。 とりあえずあの小泉くんとやらの悪い噂をありとあらゆる方面に流しておこう」 ------------------------------ 佐々木「今日は変な夢をみてしまってね。おかげで寝不足のうえ、すこぶる体調が悪いんだよ。 あれ、どうしたの、橘さん? そうやってファミレスでつっぷして寝ていると、まるで最近はやりの マック難民のように見えてしまうよ」 橘「ううーん、また、また神人があー。なんでみんなお尻押さえて暴れまわってるんですかー(涙」 九曜「……ユニーク」
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「妹佐々木」 さて古泉、解説しろ 「毎日毎日佐々木さんといちゃついてるから涼宮さんが危機感覚えてそーいうふうにしちゃったんじゃないですか? っていうかまた閉鎖空間があるんで失礼します」 古泉は超常現象担当解説役としての勤めを果たした後ハルヒ担当エスパーの職務に戻っていった。 やけにぼろぼろで肩で息をしていたのはここのところ閉鎖空間が頻発しているかららしい。 今もたった一行と少しの解説のために閉鎖空間から飛んできたらだとか。 やれやれ、ハルヒの奴は何がそんなに不満なんだか。 とはいえ今はそれはどうでもいい。 とりあえず現状確認だ。 朝起きたら佐々木が妹になっていた。 以上。 って言うか短いなおい 「くくっ、涼宮さんも面白いことやるもんだねぇキョン。いや、兄さん」 100%の確率で中心人物になってる俺の身にもなれ。 ていうか今までの経験からするとお前のポジションは大抵何事も無かったかのように妹をやっているはずなのになぜお前は普通にしている。 あと兄さんは止めろ、見知らぬ属性が開拓される。 「巻き込まれる苦労においてはわずかばかりの同情とある程度の羨望をあげるよ。 僕にも親友としてのの記憶も妹としての記憶もあるのは涼宮さんと似た力をわずかばかりでも持ってるからじゃないかな? くっくっ、いいじゃないか兄さん。昔からそう呼んでいた、という設定みたいだしね」 俺と同じ行構成で完璧に質問に答えるな。 設定って何だ、というかなんで同じ部屋にいるんだ。 「ふむ、君には兄妹としての記憶は無いのか。それはだね、兄さん、僕らに個別の部屋が与えられていないからだよ」 おいおい、あっちの妹は自分の部屋持ってるじゃないか。 「そこも改竄されてるね、妹ちゃんは両親と同じ部屋で寝てるから自室は無いんだ」 やれやれ・・・・・・まぁハルヒが満足すれば直るんだろ。 急ぎで治さなきゃならない事態じゃないみたいだしとりあえず学校行くか。 「そうだね、兄さん。じゃあ今日も自転車の後ろに乗せてくれ」 ん?学校違うんじゃないのか? 「いや、同じなんだよ。実は僕かなりのブラコン設定みたいでね、兄さんと同じ学校に行きたがったんだ」 まじか。 「まじさ、ついでに言うと双子の妹みたいだから学年もクラスも同じなのだよ」 ・・・・・・やれやれ。 その後のことはざっと解説するだけにとどめることにしよう。 とりあえず接し方は苗字で呼んでいたのを名前に帰るだけでよかったのでたいした苦労は無かった。 違いといえば佐々木が妙に俺にくっついて来たことくらいか。 何故か聞いてみたら「僕はブラコンなんだよ、だからこれが普通なのさ」とか言ってたな 直そうにも直し方が解らないし、実害もないので1月ほど放置していたらいつの間にか直っていた。 理由はよく解らない。 理由といえば古泉が日に日にボロボロになっていったのは何でだろうな。 「今回のことは涼宮ハルヒのみが原因ではない。彼女を彼の血縁者にと願ったのは確かに涼宮ハルヒだがその願いの中に いくつかの改竄が見られる。彼と彼女が同室であったり双子の妹で同学年同クラスだったのがその一例と思われる。 涼宮ハルヒの願った願いを捻じ曲げるということは情報統合思念体でも不可能。 出来るとするならそれは涼宮ハルヒと同等の力を持った者だけ。 改変の効力が消滅する直前に戻そうとする力と固定しようとする力のせめぎあいが合ったのも恐らくそれが原因。 それが可能な能力を持った人物は1人しかいない、つまりもう1人の犯人は・・・・・・」 あー長門、いいじゃないか治ったんだから。 「・・・・・・そう」
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水泳の授業中、自由時間になったので、佐々木と並んで座ってだべっていた。 「くっくっ、今年のプールの授業もこれで終わりだね」 そう言いながら佐々木は立ち上がると、名残惜しそうにプールを眺めながら、 自分の尻に食い込んだ水着の端をクイッと直した。 俺は、今目の前にある佐々木の尻が、無性に隙だらけに感じた。 「とりゃ!」 次の瞬間には、佐々木の尻に俺のワンフィンガーがキマッていた。 驚いて跳び上がるのを期待したのだが、佐々木は「くっ……」と微かに呻いたきり、動かなくなった。 どうやら、あまりの突然の出来事に、思考が停止したようだ。 ひょっとしたら、穴に直撃したのかも知れない。 「は~~~あ……」 俺の指を水着ごと尻に食い込ませたまま、佐々木が溜息をついた。 「キョン……まさか君がこんな幼稚なことをしてくるとは思わなかった」 そういわれると、幼稚以外の何物でもないかも知れないが、何か悔しい。 「ふん、佐々木が隙だらけだからだ!」 うむ、言ってみて思ったが、言い訳するほど幼稚に思えてくる。 「なるほど、キョンがそれほど僕を好きだったとは……」 おいおい、いきなり何言ってんだ? 隙だらけだったって言ってんだぞ。 「はいはい。で、結婚式はいつにしようか?」 聞けよ! 「ん?だから、キョンは僕のことが好きだらけなんだろ?」 何だよ佐々木……ひょっとして怒ってるのか?
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「そう言えば、いつだったかキョンに僕の恋愛に対する認識について話したことがあったね。もう一年以上も前だと言うのに、まるで昨日の事のようだよ。人の時間経過に対する感覚ほど当てにならない物はない。 卒業してからの一年間がそれだけ空隙に満ちたものであったのか、それとも君と過ごしたほんの僅かな時間が僕にとって何物にも代え難い有意義かつ満ち足りたものだったのか・・・どちらだろうね?」 胡乱な言い回しも、訥々と語る穏やかな口調も、俺がよく知る佐々木のものだ。一年前と何ら変わらない。 「自分で言ったことだというのに、僕は本当の意味でその事を理解していなかったらしい。いや、甘く見ていた、と言ったほうが良いのかな?これはまさしく精神病だよ。 あらゆる価値観が崩壊し、理性も論理も狂ってしまう。一度煩ってしまえば最後、もう治らない。ううん、治そうという気にすらなれない」 だというのに、凄まじいまでの違和感を感じる。佐々木の何かが違う。決定的に違ってしまっている。ずっと佐々木が自らを押し込んでいた枠が取り払われたかのような、そんな錯覚を覚える。 「これは君のせいでもあるんだよ、キョン?君にとっては心外なことかも知れないけどね。君に必要以上に近づけば、こうなってしまう事は解っていた。 自分を見失って恋する乙女になってしまうくらいなら、僕は自分を偽っても理性の化け物でいたかった、本当だよ?」 言いながら佐々木は本当に言葉とは裏腹に、本当に嬉しそうに微笑んだ。まるで全てから解き放たれたような佐々木の笑顔は本当に魅力的で―――こんな状況でなければ、俺はアホのように見惚れてしまっただろう。 俺はここに至って、ようやく佐々木がどれほどの自制と自戒、虚勢と欺瞞を重ねていたのかを知るに至った。 「ただ、本当に―――本当に残念なんだけどね、キョン?もう、止まれないんだ。こうなってしまった以上ね。無理だとは思うけど、出来れば君に止めて欲しかったな。 人の身で世界を望むがままに作り替えようだなんて、傲慢にも程があると思わないかい?僕は神になんてなりたくはなかった、平々凡々な一般人でいたかった―――ううん、これは少し嘘かな。この力で君が手にはいるのなら―――どうしても、そう思ってしまうんだよ」 佐々木は少しだけ自嘲するような笑みを浮かべ――――刹那、世界が灰色に『塗りつぶされた』。 「だから・・・だから、“私”は世界を作り替える。こんな世界、要らない―――」 ・・・閉鎖空間。そして、灰褐色の世界の中、なお黒々とした巨大な影が俺たちに影を落とした。それが歩を進める度に地面が揺れ、風が舞い上がる。佐々木の肩口まで伸びた髪が揺れた。 「―――愛してるよ、キョン」
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「暑い・・・」 そうまるで地獄の業火に焼かれる罪人のようにつぶやくと、ちっさなタオルで首筋の汗をぬぐった。 まだ6月の半ばだというのに、なんだっていうんだこの暑さは。 これからますます暑くなっていくかと思うと、余計鬱になる。 地球温暖化反対―。 「自分勝手なエコロジーだね。」 俺のボヤキを聞いた一歩後ろを歩くクラスメイトがそう言って、笑った。 「必要は発明の母っていうだろ?この苦しみが俺をエコロジストへと駆り立てるのさ。」 「君の場合、喉もと過ぎれば熱さ忘れるとも言えるね、キョン。」 こいつは大げさに、まるでアメリカの通販番組のように両手を挙げてみせる。 その喉もとでは熱さではなく、くっくっという独特の笑い声が鳴っていた。 「暑さが忘れられるようなら地球温暖化問題は解決だ。」 「その地球温暖化問題だが、知られてはいないが、実は多くの科学者は二酸化炭素が原因であるという現在の常識に対しては、懐疑的な意見を出しているんだよ。」 こいつの知識量にはいつも驚かされる。 いったいどこでそんなことを調べているんだか。 「ではなぜ、そんな説が堂々とまかり通っているかというとだね―」 と、一瞬うしろを歩くあいつの影が不自然に揺らいだ。 思わず後ろを振り返る。 「おいっ―」 「いや、大丈夫。少し立ちくらみがしただけ―」 と言いながら、額を押さえてあいつは崩れるように、その場に座り込んだ。 「おい、大丈夫か、佐々木!?」 倒れそうな佐々木の肩を支えてやる。 額に汗を浮かべながら、目を閉じてつらそうな表情をしている。 呼びかけには反応しない。 気を失っているようだ。 暑さにやられたか― とりあえず、ここではまずい。 日陰を探して休ませないと。 あとは水分か。 近くにあった自動販売機でスポーツドリンクのペットボトルを買って、佐々木を抱きかかえた。 早く日陰の涼しいところへ連れて行ってやらないと。 苦しそうな額につめたいペットボトルを当ててやる。 ペットボトルで冷やしてやったのが効いたのか、佐々木はゆっくりと目を開けた。 そして― 「きゃっ」 え、なっ? 佐々木も驚いただろうが、俺も驚いた。 なにせ目の前の佐々木はただでさえ大きな瞳を大きく開けて、今まで聞いたことの無いような声を出したからだ。 「お、おい?大丈夫か、佐々木?」 え、あ、うん、と声にならない返事をしながら、佐々木の顔が見る見る赤くなって行く。 こりゃ結構重症じゃねえのか。 「いや、あの、キョン。大丈夫、大丈夫だよ。だからその―」 真っ赤な顔で支離滅裂。 こりゃ結構高熱とか出てるんじゃないか。 「お前、顔真っ赤だぞ。熱が出てるんじゃないか?」 そして、額に手を当てようとすると 「だ、大丈夫。少し恥ず、じゃなくて直射日光にやられただけだから!」 そうなのか? 耳まで真っ赤だぞ。 「そ、それよりも早く降ろしてくれないかな。一人で歩けるから―」 と、言うが早いか、俺の手を強引に振りほどこうともがいて、佐々木は地面に派手にしりもちをついた。 「おい、お前本当に大丈夫か?」 声をかけると、いたた、と尻をさすっていた佐々木はさっと立ち上がり、あさっての方向を向いて上気した頬を両手で押さえている。 「どうした?風邪か!?」 「え、えーと、うん、そうかな。ちょっと今日は朝から熱っぽい感じはしていたから―」 「そうか、やっぱり風邪か。」 そう俺が納得すると佐々木は小さな声で、たぶん、とつぶやいた。 「じゃあ、今日は予備校は休んだほうがいいな。」 「あぁ、そうさせていただくよ。」 言葉遣いはいつもどおりだが、口調は少し挙動不審だ。 「じゃあ、佐々木、俺んちで少し気分がよくなるまで休んでいけよ。」 ふぇ?、と声にならない声を佐々木はあげた。 「いや、お前まだ体調悪いみたいだし、気分がよくなるまで涼しいとこで少し寝ていくといい。」 ますます顔が赤くなっていく。 こりゃ結構重症かな。 「あー、大丈夫。少し寝て気分がよくなったら、俺がお前の家か、病院へ自転車で送ってやるよ。」 「ち、ちょっと待ってくれたまえ。それって、キミも予備校を休むということかい?」 目の前の佐々木は頬を押さえながら挙動不審な動きをしている。 「仕方ないだろ。お前を放っておくわけにはいかないし。」 な、いや、でも、とぶつぶつ呟いている。 「やっぱりお前今日は変だ。自分では気づいていないかもしれないが。」 「いや、確かにそうかもしれないけど・・・」 「今日は妹は友達のところへ遊びに行っているはずだし、親もデパートへ買い物に出かけて夕方まで帰ってこないから、誰に気兼ねする必要も無い。」 余計問題だー、と佐々木が言ったような言わないような。 「安心しろ。一応日本の中産階級らしくちゃんとエアコンはあるから。」 そういう問題じゃない、と佐々木が言ったような言わないような。 「お前、顔が本当に真っ赤だぞ。かなり重症じゃないか?」 そして、重症なのはキミのほうだよ、と佐々木がぼそっと呟いたのがはっきりと聞こえた。
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死屍累々。この惨状を招いた人物は、未だにスピリタスをあおっている。 ハルヒはソファーに頭を突っ込み、朝比奈さんはうつ伏せに潰れ……橘は壁に向かい笑っている。 「げ…………現地人……………ぐぶっ!」 真っ青な藤原がトイレに駆け込む。古泉は、既にバケツとお友達だ。 「ユニーク。」 長門と九曜は、スピリタス片手に皆を見ている。俺は藤原を介抱してやった。 この騒動が起きたのは、1時間前…………。ハルヒのバカが、また酒を持ち出した事がきっかけだった。 北高文化祭の翌日。佐々木達も映画に協力してくれただけに、佐々木達を誘い、長門の家に集まったのだが……… 「世界で一番強い酒って、何かしら?」 というハルヒの一言があったのだ。あとは言わずともわかるな?長門がスピリタスを調合しやがった。 で、このアルコール度数96%という、あまりに酷い物体を長門は、500mlのペットボトルに入れて持ってきた。 率先して口をつけたのが、佐々木。負けん気の強いハルヒが飲み………… そしてご覧の有り様である。 「アルコールに酔うということは、脳の表層の麻痺らしいね。どうやら、僕には耐性があるらしい。」 「もう飲むな。」 酒豪というよりは蟒蛇だ。 「…………へべれけに酔っ払うのを想像していただけに、この結果には寂寥すら覚えるね。キョン、君は飲まなかったのかい?」 「ああ。長門が嫌な笑いをしていたからな。」 長門が首を傾げる。いや、お前の表情に関してなら、お前以上に俺が知っている。 「くつくつ。アルコールというものは、僕にはあまり効かないみたいだね。安心したかい?キョン。」 「それ以前にお前が、誰かと酒飲みにいくとも考えづらいがな。」 「くつくつ。」 何故嬉しそうに笑う。 「20になったら、飲みにいくかい?」 「考えとく。長門、周防、こいつらのアルコールを除去してくれ。」 こうして、騒動は終わった。 …………佐々木がアルコールのせいで歩けないと言い、自転車の荷台に乗せて帰ったせいで、閉鎖空間が発生して、古泉から小言を言われたのは、また別の話だ。 「くつくつ。」 END 関連 68-889『下戸佐々木』 68-890『のんべえ佐々木』