約 115,752 件
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/85.html
912 :愛エプ reverse ver. 1:2005/06/28(火) 19 09 00 ID ??? 敦賀さんのお部屋で夕飯の準備。 今日は何にしようかなぁ~、このあいだ買っておいた豚肉が残ってるから チャーハンがいいかな?なんて考えながらキッチンをぐるぐる回っていたら。 「っ…」 急に目の前の世界がぐにゃあと歪みだして、なんだか立っていられなくなって キッチンの床にしりもちをついて倒れこんでしまった。 しまった…今日忙しくてお昼食べてないからだ…これじゃ人のこと言えない。 「今の音何…ってちょっと!」 衝撃音を聞きつけたらしい敦賀さんが血相を変えて飛び込んできた。 私の顔を見るなり大きなため息をつく。え?何で?なんかついてる? …呆れてる? 「あ、や、大丈夫です、ちょっと立ちくらみっていうか」 「…大丈夫じゃないだろう、わからないと思うけど、顔青いよ? ここはいいからちょっと休んでなさい」 本当に大丈夫なんだけどな…。 でも敦賀さんはそんな私の言葉には耳を貸す気もないふうで そばにくると、私の身体をひょい、と抱え上げた 「君ももうスケジュールがかなりキツくなってるんだろう? …本当に、無理しないでくれ、頼むから」 敦賀さんの足がベッドルームに向かってる。 その道行きでしみじみと諭すように敦賀さんがそう呟いた。 …そう言われると何も言い返せない。 今夜お邪魔してもいいですか?とお願いしたのは私。 顔が見たくて…無理矢理押しかけてきてしまったんだもの。 結局心配させてしまってご飯の用意もできないよ…反省…。 「ちょっとここで寝てて。食事の用意は俺がするから」 ベッドに私を下ろすと、敦賀さんがそう言ってベッドルームを出て行こうとした。 あ、どうしよう、そんなのさせられない、っていうか私の食事を食べてもらわなきゃ ここに来た意味がないというか…。 「え、そんな、少し休んだら私できますから」 慌ててベッドから出ようとする私を制止すると、膝をついてしゃがみこむ。 「だーめ、俺に心配させた罰」 「うっ…それは…その…ごめんなさいっ」 そして、痛いところを突かれてうなだれる私の頭をゆっくり撫でた。 「食事くらい作れるよ。ああは言ったけど、君の顔を見られただけで俺も嬉しい」 だから寝てて? 敦賀さんはそう言ってキッチンへ向かった。 残された私の頭からは湯気がでていたと思う。 っっ…、あんな蕩けそうな笑顔に言われたほうが顔から火を吹きそうなセリフ、反則だ…。 不謹慎にも心臓がバクバクしてしまってる、私。ね、熱がでそうだ…。 仕方ない…ここで大人しく待っていよう。 布団をかぶって横になると、 ほのかに漂う敦賀さんの香りが眠気すら呼び起こすような気がした。 そういえば、昨夜もあんまり眠れなかったっけ… あの監督…セリフころころ変えすぎよ…。 カーット! 「京子ちゃーん、さっきも言ったでしょ?そこのセリフはこうで、ああしてこういうふうにして」 「はっ、はい、すみません、もう1回お願いしますっ」 ちょっと待って、カット! 「ちがーう、だーかーら、こうして、ああしてって言ったでしょう!」 「きゃああああすみませーんっ」 「はぁっ!…あ、ああれ?ゆ、夢?」 どうやら完璧に寝てしまっていたらしい。しかもとんでもない夢付きで…。 自分の叫び声で目が覚めるなんて…それにどういう夢よ…縁起悪…。 ん? 「つ…敦賀さん…?」 妙な夢で飛び起きたすぐ後。 ふと右手にあたたかいものを感じて視線をやると、 敦賀さんが私の手を握ったままベッドに突っ伏しているのが目に入った。 …ついててくれたんだ。 ほんとに寝てるって思って呆れただろうなあ…。 でも貴方も寝てしまってる…ふふ。 サイドテーブルにはお粥らしきものが載っている。 「やだな…風邪引いてるわけじゃないのに、敦賀さんたら」 そんなに私青い顔してたんだろうか…。 私からすればキッチンに駆け込んできた敦賀さんのほうが よっぽど青い顔だったと思うけど。 でも、さっきよりは幾分身体が軽い、というか頭がスッキリしている。 …かなわないなあ、この人には。 寝てしまっているのが敦賀さんにとって多分不本意だと思うので、 寝かせてあげたいところだけど起こしてしまおう。うろたえた顔も…見ものだ。 私の右手を握っている、敦賀さんの左手をそっと持ち上げて、手のひらにキスをした。 「敦賀さん、起きて」 耳元でそう囁くと、敦賀さんの身体がかすかに動く。 でも、それは敦賀さんを眠りの淵から引き上げるにはインパクトに欠けたらしい。 また「寝込みを襲うのが趣味なの?」、と言われそうだ。 起きてる時は敦賀さんのペースに巻き込まれっぱなしなんだもの。 無防備で穏やかな寝顔を至近距離から見下ろしながら、 さて次はどうやって起こしにかかろうかと思っていた時。 敦賀さんがむくっと起き上がり、その肩と私の顔がぶつかりそうになった。 「ひゃあああっ」 「あれ、…もしかして俺寝て…」 目をこすりながら敦賀さんがバツが悪そうに呟く。 「…ちょっとだけ、かな?」 「そうか…」 私が自分が寝ていた時間をごまかすようにそう言うと、 敦賀さんは照れたように後ろ頭をかいた。 そんなのもなんだか可愛いと思ってしまう。私は重症だ…。 「ごめんなさい、私が寝ちゃってたから、ですよね…」 「いいんだよ、それより随分顔色が良くなってる、…気づかなくてごめん」 顔をなでなでされてしまった。 恥ずかしいやら申し訳ないやらで…ついついまた謝ってしまった。 「…気をつけます…」 「そうだね…、そうして下さい。目の届かないところで倒れられでもしたら… 俺は生きた心地が…しないよ」 ハイ…。 「食事…一応できてるけど、食べられる?」 ベッドルームをでて、リビングへと続く廊下を並んで歩きながら 敦賀さんがそう言った。 「はい、…寝たら余計お腹すいちゃったみたい」 「それはよかった」 って、あれ? ベッドサイドにあったあのお粥は? 「…お粥のこと?頭の上にはてなマークが出てる」 思考を言い当てられてしまい、焦って敦賀さんを見上げると笑ってる。 少し黙って考えただけなのに、なんでそんなにすぐ見透かされるんだろう。 電波飛ばしてたかな?いやいや、そんなの飛ばせないし。フフ…。 「っな、なんでわかるんですかっ」 「…なんでもわかるよ?君のことは、ね。…なんて。あれは、ちょっとおもしろくて作ってみただけ。 あれも食べてみてもいいけど、もっと美味しいものを用意しておいたから」 「…なんですか?」 「見てのお楽しみ」 敦賀さんの後からリビングへ入ると、とたんにすごく良い匂いがした。 あれ?この匂い…もしかして。 「ハンバーグ!」 視線の先に鎮座する姿を確認して、思わず叫んでしまった。 敦賀さんはくすくすと笑っている。っは…またやってしまった。 「どう?」 「めめ目玉焼きも!…実はあまりに久しぶりなんで今度作ろうかと思ってたんです!」 テーブルに並べられた目玉焼きのせハンバーグは、とても美味しそうに湯気を立てていた。 ああ…ぷくっとした黄身のつややかな輝き…五感をくすぐるその香り…すっごく美味しそう…。 お昼を食べ損ねたからか、仮眠が効いてるのか、目の前のハンバーグにつられて すごくお腹がすいてきちゃった。ああ…早く食べたい。 …あれ? …敦賀さん…お料理もすごく上手なんじゃないの。…隠してたのね…。 これだけお料理ができれば、実は私なんか作りにこなくてもいいんじゃないの…? 私の好きなものを憶えていてくれて、しかもそれを作って食べさせようとしてくれた。 嬉しい、それはとっても嬉しいけど…なんか微妙…。 「敦賀さん…お料理すごくお上手なんですね」 ついぼそっと呟いてしまった。心の声を。 い、いやあの、別にそんな卑屈になってるわけじゃなくて…うぅ。 それが顔に出てしまってたらしい。くるくる百面相みたいに思われただろう。 「…料理が上手いとか関係なくてね、俺は君がいいんだけど。 だから機嫌直して、ハンバーグ食べて?……ん?」 「じゃあ遠慮なく、いただきます!…今度からは、敦賀さんにご飯作ってもらおうかな」 ハンバーグを目の前にして、いつまでもすねてる私じゃない。 それに…あんなことを思ったけど、本当はすごくすごく嬉しかったから…。 でもちょっぴりイヤミを言ってしまった。 普段は、料理なんて全然しません、っていう顔してるから。 それくらいは許されるよね? …本当は、薄々気づいてたけど…調理道具が揃いすぎなんだもの…。 能ある鷹は爪を隠す…って本当なんだ。 なのにあんなに食生活には無頓着だなんて…。 ちなみに…件のお粥はなんと!…梅味で…それもとっても美味しかった。 ごちそうさまでした。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/51.html
446 :1/7:2005/06/09(木) 01 35 53 ID ??? 一瞬、絵画を見ているのかと思った。 窓から入る初夏の風と光。 壁際のソファーで眠る子供のような寝顔の少女と。 自分の上着を少女に被せて、 近くの椅子に座ってゆったりと足を組んでいる長身の青年と。 でも、青年の目は絵画ではありえない強さで 俺に「何をしに来た?」と語っていた・・・ 『お疲れ様です、敦賀さん。キョーコちゃん寝ちゃってるんですか?』 『うん、俺が来たときには熟睡してた。 相変わらず危なっかしいコだよ・・・どうしたの?』 『いや、今昼休みだしキョーコちゃんいないかな、と思って。 ちょっと渡したいものがあったんですよ。敦賀さんは?』 『・・・ちょっと彼女にお礼を言いたかっただけなんだけどね。 あんまり平和に寝ているもんだから起こせなくて。』 ・・・男の人の声が聞こえる。 どちらも結構、身近で聞いてる、声。 『そういえば、石橋君・・・だよね?最上さんと親しいんだ?』 『あ、彼女俺らの番組でアシスタントしてくれてるんです』 『へぇ、初耳だなぁ・・・なんて番組?』 『「やっぱ気ま 「ちょっと待ってーーーーー光さーーーん!!!!!」 ・・・夢?夢でも見たの? ・・・目をこすって周りを見回すと。 ・・・夢じゃなかったんだ・・・(汗 「最上さん?」 「キョーコちゃん?」 「あ、すいません。敦賀さん、光さん。寝ぼけてたみたいで・・・ ・・・?あれ?お二人とも、どうしたんですか?」 目を覚ましたと思ったら、いきなり叫びだした彼女。 ・・・いや、行動が突拍子もないのはいつもの事なんだけど。 ・・・『光さん』・・・? ふーん、名前で呼ぶほど、親しいのか・・・? ・・・俺の顔を見ると彼女は何かに怯えたかのように。 「あ、敦賀さんごめんなさい!上着お借りしてたみたいで・・・」 ありがとうございました、と彼女に掛けていた上着を俺に差し出すと、 上目遣いに俺を見上げる。いつも思うけど・・・その目は、反則だ・・・ 「今日は結構風が入ってたからね。不用意に寝てると風邪引くよ? ・・・君にお礼を言いに来ただけだったから、 起こすのも悪いな、と思ったんだ。・・・お弁当いつもありがとう。 いつもは俳優部で受け取るだけだけど、 今日は昼過ぎまでは君は部室で待機してるって聞いたから・・・」 「え?・・・ってことは、敦賀さんまだお弁当食べてないんじゃ? 社さんどこ行っちゃったんですか?二人分作ってるのに! こんなとこでぼんやりしてるヒマがあったら、 ちゃんと食べてください!!」 「・・・俺、今まで君の弁当残した事なかったろう・・・?」 「そりゃ、そうですけど・・・でも敦賀さんだし・・・」 「・・・信用ないなぁ」 「日頃の行いです!」 何か不思議な会話を交わしてる二人。 お弁当ってどういうことだろう? それにしても、あの敦賀さんにこんな叱るみたいな物言いするなんて キョーコちゃんって結構強気?っていうか大物?? 「・・・そういえば、光さんはどうしてここに?」 二人から視線を向けられて、俺ははっと我に返った。 「いやね、貰い物なんだけど、これ女性用なんだ。 俺じゃ使えないから、キョーコちゃんにどうかな?って思って」 「・・・いいんですか?光さん。彼女さんとか、他にあげる人いるのでは?」 「俺今彼女いないって~(苦笑 それに、俺の知合いだと君が一番似合いそうだな、って思ったんだよ。 ・・・開けてみて?」 貰い物なんて嘘なんだけど。 こないだ、自分のトワレ買いに行ったときにふと目に入ったんだ。 試用の香りがすごく気に入って、・・・君に似合うと思って。 ごそごそと不思議そうに包みを開けている彼女を、 俺はにこやかに、敦賀さんは・・・心持ち憮然として、見ていた。 包装を丁寧に剥がすと箱から出てきたものは、 宝石みたいな形の薄い色の瓶。 「これ・・・香水ですか?」 「うん、そう。Wishって言うんだ。 オーデトワレだから軽い感じの香りだよ。試してみて?」 勧められるままに手首に一吹きしてみると、 さわやかな甘い香りが漂った。 「・・・いい香りですね~」 「嫌味がなくて付けやすそうじゃない? こういうさっぱり系のやさしい香りって、 キョーコちゃん似合いそうだなーって思って、さ」 「私香水なんて初めてです・・・嬉しいんですけど・・・ ホントに私なんかがもらっちゃっていいんですか?」 「俺も貰い物なんだから気にしないで?」 「・・・はい、ありがとうございます!」 光さんの気さくな微笑みに精一杯のお礼を言うと、 ノックの音が聞こえて。 「キョーコちゃん?リーダー来てない?」 ・・・と、ブリッジロックの他の2人が ドアから顔をひょこり、と出した。 じゃ、敦賀さん失礼します!キョーコちゃんまたね? ・・・と、ブリッジロックの3人は部室を出て行った。 光君を引きずるようにして・・・ 「・・・イイモノを貰ったね?」 「・・・敦賀さん、なんで怒ってるんですか?」 「・・・怒る理由なんてないけど?」 しれっと言っては見たけど、君は変わらず訝しそうだ。 「ひょっとしてコレ、私が付けたら変ですか? 光さんはああ言ってくれたけど、全然似合ってないとか・・・?」 「ん?そんなことないよ?・・・君によく似合ってる」 彼女に近づきWishを取って空中にさっと吹いた。 さっき吹き付けたのとは反対側の手首を軽く掴んで 甘い香りのする空気にくぐらせる。 「薄めに付けたいときには、こうするといい」 心持ち赤くなった彼女にそう言うと、社さんが呼びに来た。 もう一度お弁当の礼を言って部室を出たら、社さんが 「・・・お前、なんだか甘い香りがするな? キョーコちゃんの移り香かw?」と俺をからかう。 まさか、と苦笑しながら振り返って呟いた。 本当によく似合ってたよ・・・不愉快な位に、ね・・・ 多分誰にも聞き取れない低さで――… 「リーダー、あそこに居てなんとも思わなかったの?」 「鈍いにも程ってもんがね・・・(汗」 何が?と、にへらっと笑ってかわしながら、 他の2人と次の現場に向かう。 そりゃね、なんとなくは分るよ? でも、多分。 キョーコちゃんはそんな風には意識してない。 敦賀さんは、・・・自分の気持を伝えていない。 芸能界一イイ男がどうしてだろう・・・? それが何故なのかは分らないけど。 でも、結局はキョーコちゃん次第だろ? そりゃ見込みは薄いかもしれないけど。 見えていても気が付かないフリして、 キョーコちゃんがいつか。 俺の事意識してくれるようになったらいいなぁ――…
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/89.html
924 :鶏のつっこみ。1/3:2005/06/28(火) 20 53 18 ID ??? ぷきゅう。ぷきゅう。 「やあ、最近どう?ドラマ好評みたいだね!よかったじゃないか~」 鶏の彼がいつもの様に片手を挙げてきた。 「うん、おかげさまでね。君のおかげかもよ?」 「君の実力だろ・・・そういえば、例の彼女とうまくいってるの? 愛の演技に困らなくなったって事なんだろ?」 ・・・距離があるからこそ、演技がうまくいってるんだよ。 彼にはそこまで言えないけれど、ね・・・ 「・・・まさか。以前もいったろ?『ここでは大切な人は作れない』って」 「・・・ふーん。ねぇ。すごく基本的なこと聞いていい? 彼女の気持ちって・・・どうなの?君に気があるってことはないの?」 君って日本一モテてる男子なんだからさぁ~などと軽口を叩かれ・・・ 鶏に冷やかされてもな・・・人としてどうなんだ、それは・・・ 「いや、彼女は俺の事全然意識してないよ? 俺、男だと思われてないみたいだ」 「・・・・・・それってさぁ。何って言うか、知ってる?」 「・・・いや・・・??」 「君に限ってまさか、とは思ったんだけどね・・・(ハァ それ、世間一般ではね。『片思い』って言うんだよ? 大切な人ウンヌンの前にさ、そこまでたどり着いてもいないじゃないか?」 「君が何で『大切な人を作れない』って 悩んでるのかは僕には分んないんだけどね? スタート地点にも立ててないのに、 それってすっごく、全く、全っ然、 今んトコ無駄な悩みなんじゃないのかな~~w; まず彼女の気持ちが自分に向いてから悩めば?アハハ~・・・」
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/60.html
537 :ダクムン・飛鷹.1:2005/06/13(月) 01 05 04 ID ??? 533 ありがとうございます。 では、勇気をもってアップ。 ダクムン・飛鷹編.1 新しいドラマの仕事が決まった。 ダークムーンの主人公・嘉月の子供時代を演じる事になった。 家族を殺されたった一人、運良く生き残った子供。 復讐を糧として生きていく事になる、その始まりの役だ。 実力者俳優を集めた超話題作。 『俺の実力が認められたんだよ』と、家族も事務所も大喜びだった。 でも、俺の口からは溜息しか出て来ない。 貰った台本をパラパラと捲り、またも溜息をつく。 「奏江に会いてぇ………」 例のドラマの撮りが終ってからは、まったくと言っていいほど 接触する機会も、接点もなくなった俺だった。 嘉月子供時代のシーン。 その台本読み 打ち合わせも終わり、廊下に出た俺は、 松田(マネージャ)の姿が無い事に驚いた。 きちんと仕事をこなし、俺を待っている彼女の姿が見えず、 奏江も会えないイライラも募り、近頃口にすることも無くなっていた “再起不能にしてやる!”を、松田に投げつけてやる!と プリプリ怒りながら、松田の姿を捜した。 よく耳を澄ますと、廊下の曲がり角の先から松田の楽しそうな話し声が 聞こえてきた。 クソッ!誰と話してるか知らないが、一緒に怒鳴りつけてやる!! ズンズンと怒りに任せて角を曲がった俺に、能天気な声がかかった。 「あっ!飛鷹く~ん。おひさしぶり。元気だった♪」 黒髪ショートのぽやぽや笑顔。 「今度は、私と同じドラマに出るんだ。よろしくね♪」 誰だ、このなれなれしい女は? 『クスッ…そう。そうだったんだ。 先生、復讐の為にお姉さまに近づいたんだ… フフフフフッ……』 黒いオーラを身に纏い、毒のある笑顔で未緒が、嘉月に迫っていた。 美月は知ってるのかしら。先生のお父様が、自分の家族を殺した事を…』 『……美緒ちゃん』 『よりによって自分の愛した男の父親が、 幸せのすべてを奪ったなんて知ったら、どう絶望するかしらね』 世の中すべてが呪わしいと、全身で物語っていた。 そんな美緒の演技を周りのスタッフ達は、大絶賛している。 「相変わらず凄いな彼女の美緒」 「俺、今回も鳥肌立ちまくり」 「普段は、あ~んなに悩みなんてなさそうな子なのに、 役に入ったらあんな闇色のオーラが纏えるなんてすごいわ」 ケッ!なにが凄い闇色のオーラだ。 俺には判る。 あのオーラは、素だ。 元々、持ってるもんを出しまくってるだけだ。 なにしろ、あいつは黒い悪魔なんだからっ! ド・ピンクのつなぎを着て、少しでも誤魔化そうとしているようだが、 あいつは悪魔だ。 俺の頭の中で、奴の悪魔の行為が次々と蘇ってくる。 「それでね。この間、モー子さんとカラオケに行ったのよ。楽しかった~」とか 「私が作った、キョーコ人形を毎日持ち歩いてくれてるのよ~♪」とか 「今度、二人でショッピングに行く約束をしたのよ~♪」とか とかとかとかとか…以下エンドレス 俺は、姿を見るどころか、声さえ聞けない日々を送っているっていうのに、 奴は奏江との楽しい日々とやらを惚気…違う!自慢しまくりだ。 奏江の実家は知っているが、用もないのに行くのはストーカーのようで 躊躇われ、会いたいのを我慢しているっていうのに、 奴は遠慮もなく“モー子さんが、モー子さんがっ”を連発していた。 そして、俺の反応をみるように 「羨ましい(ニヤリ)」と、笑いやがった。 (注:あくまでも飛鷹視点) 「う、羨ましいなんてあるかっ!!」 「へ~。ほ~。ふ~ん。そうですかぁ」 訳知り顔で笑う、その顔が気にくわねぇ!! 「OK。カット」 その声で、今まで緊迫していた空気が一瞬にしてなくなる。 先程までは全身で拒絶していた美緒は、 嘉月と今はもう楽しそうに話している。 今度、親友と出かけるので、どこか良いお店を知らないかと、 敦賀蓮に聞いている。 抱かれたい男№1に、女子高生にお薦めのお店を聞く女なんて、 アホなのかあの女。 しかし、敦賀蓮も「そうだね~」と真面目に考え始め、そ れを黒い悪魔は期待に満ちた目で見つめていた。 芸能界いちイイ男と言われている男が、女子高生の人気スポットを 知っているわけが無いだろうがっ! 「おい!黒い悪魔っ!」 ゲインッ! 周りのスタッフがギョッとするのも気付かず、 奴はまたも俺に拳固をお見舞いしやがった。 「誰が、黒い悪魔よ」 そんな抗議は無視して、奴に視線を合わせた。 「そういう人気スポットは俺に聞け! この間、そういう仕事をしたからな。詳しいんだ。 お前が、ど~~してもって頼むんなら、案内してやってもいいぜ」 「…………ふ~ん。じゃぁ、お願いしよっかな~(ニヤリ)」 だから、見透かすように笑うんじゃねーよっ 俺が、最上さんとの楽しくも辛い時間を過ごしていると、 小さなモノが突然割ってはいってきた。 「おい!黒い悪魔っ!」 黒い悪魔!? 一瞬、自分の事かと思ったら、ゲインッ!と ものすごい音がスタジオに響いた。 「誰が、黒い悪魔よ」 最上さんに拳骨をお見舞いされても、彼は怯むことなく、その顔を上げる。 「そういう人気スポットは俺に聞け! この間、そういう仕事をしたからな。詳しいんだ。 お前が、ど~~してもって頼むんなら、案内してやってもいいぜ」 一瞬、呆けたような顔をした最上さんが、途端に優しい顔になり 「じゃぁ、お願いしよっかな~」と極上の笑顔を彼に向けた。 「ああ。お願いされてやる。」 少々テレながらも、偉そうにふんぞり返る彼。 そんな態度の彼を、ニコニコと見つめる彼女。 上杉飛鷹。芸能生活9年になる、俺の先輩。 どうして、彼女と親しいのかなんて判らない。 ただ判っているのは、俺にもう一人恋のライバルが出現したって事だけだ。 “黒い悪魔“と呼ぶそのキョーコ本人から、 大魔王サタンと恐れられる敦賀蓮の嫉妬心を煽った事に、 飛鷹は、不幸にも気付いていなかった。 おしまい。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/35.html
268 :267:2005/05/28(土) 02 13 18 ID ??? "やかない あなたと 白いフラメンコ" やや横長なポスターの上を、いまいち理解のできないキャッチコピーが斜めに走る。 その後ろには、奇抜な色をした日焼け止め「アミッサ」を手に 大げさなフラメンコポーズ(?)を決める少女が一人。 フラメンコの衣装を思わせなくもない、 胸元と腰の辺りが妙にヒラヒラとした真っ赤なビキニ。 水着のヒラヒラに隠されてはいるが、 こういった格好をするには少々貧弱な体つきである。 しかし無駄なお肉はついていないらしく、白く伸びた手足はスラリとしていた。 背景にはスペインを感じさせるものは何もなく、 何故か公園の砂場と赤いリボンを巻いたアヒルの大群が広がっている。 そこで白いバラをくわえて笑むその顔には、 一年前にドラマで見せた恐ろしさを微塵も感じさせなかった。 ■蓮の場合(のみ)■ 「道込んできたみたいだね、蓮」 助手席に座った社はそう言うと、首を伸ばして前方を見た。 確かに先ほどから流れが緩やかになってきている。 蓮はやれやれ…と小さくつぶやくと、 「でもこのまま直で向かえば間に合いますね」 信号に合わせてブレーキを踏んだ。 「せっかくまともに昼飯食べさせる時間ができたと思ったのに…」 ブツブツと言いながら社は肩を落とす。 「お前最近またちゃんと食べてないだろ。いつか本当にぶっ倒れるぞ」 「大丈夫ですよ、一応栄養は取ってますから」 蓮のその言葉に、一息置いてハァ…とあからさまなため息が続く。 「蓮…サプリメントというものはあくまで"栄養補助食品"なんだぞ。 どうしたら食べてくれるのかな、こいつ……またキョーコちゃんに助けを頼もうかなぁ」 沈んでいた表情から一転。ニヤリと楽しげに笑みながら、 社はゆっくりと蓮の方へ視線を向ける。 信号が青に変わった。 しかしついに本格的に混みだしたのか、 前方の車が動き出す様子はまったく見られない。 蓮はドアに寄りかかると、左手で軽く頭を抱えた。 「あの子だって忙しいでしょう。前のようにいちいち俺の食事を……社さん?」 社側から妙な視線を感じた。 「どうかしたんですか?」 社はこちらを見ていた。ものすごい目を見開いてこちらを見ていた。 でもどうやら自分を見ているわけではないらしい。 社の右手がヨロヨロとあがっていき、自分の方――窓の外を指差した。 その指の先を追う。 蓮の車が停まっている所はちょうど化粧品店の前だったらしく、 ガラス張りの壁にはいくつかのポスターが貼られていた。 その中でも一際目立つ一枚のポスターで視線が止まる。 "ありえない" その一言しか思い浮かばなかった。ありえない。いろんな意味でありえない。 ありえないポスターの中でありえない格好でありえないポーズを決めるよく見知った少女は、 蓮の目にはありえないほど何故か楽しげに見えた。 「キョ、キョーコちゃんってこんな仕事もするんだね…」 何とも言えない顔をしながら何とも言えない感想を述べる社に、 蓮は平常心を保ちながら(実際は表情だけだが)答える。 「タレントですからね」 自分でも意味がわからなかった。 「でもあれだね、どんな格好しててもやっぱりキョーコちゃんって可愛いよね。 最近さらに可愛くなったよね」 どうやら復活してきたらしい社のフォロー(?)を聞き流しつつ、蓮は一人考えふける。 (さて、この件に関してあの子にどう伝えようか。仕事を選ぶことと一般的な感想。それと…) それとあと個人的な感想も、ね。 前の車が動き出す。 今夜は楽しくなりそうだ、と蓮は少しだけ、 社に気づかれない程度にほんの少しだけ微笑んだ。 ******************** 「お疲れ様でした~」 スタッフに笑顔を向け、キョーコはスタジオを後にする。 マネージャーはとてつもなく具合が悪そうだったので、今日はもう帰らせていた。 「この後は仕事もないからお見舞いに…あっ」 視界の端に長い黒髪をなびかせた女性が颯爽と歩く姿が映る。 「あれはモー子さんだわ!モー子さーんっ!!」 叫びながら駆け寄ると、奏江と奏江のマネージャーがギョっとした表情で振り返った。 「もー!あんたももう子どもじゃないんだから、 でっかい声で叫ぶのはやめなさいよね!」 「ごめんなさい、嬉しくってつい」 マネージャーに軽く会釈し、奏江に向かってテヘッと舌を出す。 キョーコは奏江の手をしっかと握り、 「出先で会うのなんて珍しいじゃない?何か運命のようなものを感じちゃった」 キラキラと目を輝かした。 「はいはい。それより見たわよ、例のCM…いろんな意味で驚かされたわ」 「今日から流れるのよね、あれ。すごかったでしょ? さすがの私も勇気が要ったのよね~」 「街にポスター貼られてたけど、そっちもなかなかのものだったわよ。 いったい何だってあんな仕事受けたのよ」 呆れ半分、感心半分といった顔で奏江が尋ねる。 「…そこにはいろいろと複雑な事情があって…って、あれ」 視線を落とした先にあったトートバッグの口から、 点滅した携帯電話の青白いランプが見えた。 「誰から…留守電?2件も?…モー子さんって、今急ぎ?」 おずおずと奏江の方を見る。 「いいえ、今日はもう帰るだけよ」 「ホント!?じゃあ一緒に帰ってもいい?」 「いいけど…その前にその留守電聞いたら?急ぎだったら困るじゃない」 「うん、ちょっと待ってて!すぐ聞くから」 手でゴメンナサイという仕草をし、キョーコは携帯電話を耳に当てた。 すぐさまキョーコの表情が苦い顔に変わる。 (あの表情は…"バカ"からね) 留守電の声は、奏江にも内容が聞き取れるくらい大声で喋っている。 どうやら例のCMについてのようである。 キョーコは声の漏れ続ける携帯を耳から離すと 何のためらいもなく「えいっ」とボタンを押した。 (…消したわね) 再度耳に当てると、今度は表情が微笑に変わった。 うっすら頬が赤らんでも見える。 (あれは…敦賀さんかしら) 嬉しそうにしちゃって、と奏江まで顔が緩みかけたその瞬間、 キョーコの表情がピキッと固まり、そしてみるみると青ざめていった。 ゆっくりと携帯を下ろすその手は心なしか震えているようだ。 「ど、どうしたのよ…」 尋ねるとキョーコはグワッっと冷や汗を撒き散らしながら振り向き、 「モー子さんごめんなさい!私行かなきゃ!!」 言うやいなや、青い顔をしたまま猛スピードで走り去っていった。 「え、あ、ちょっと、え、え!?」 嵐が去った後のように静まり返った廊下に、 奏江と奏江のマネージャー(結局一言も喋らねぇ)が残される。 「なんなのよいったい…」 奏江がその疑問の答えを聞かされるのは、もう少ーし後のこと。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/44.html
386 :1:2005/06/04(土) 15 53 02 ID ??? 6月だしウエディングドレスネタが書きたいなー、なんて思ってるところへ 本誌の萌え攻撃。たまらず、勢いでこんな話を書いてしまいました……。 せっかく萌え祭りのところ水さすようで恐縮ですが、お許しを~。 荘厳なオルガンが響く教会で、神に誓いを告げる。 そして、銀色に光る指輪を君の薬指へ―――…。 これで……君は俺のものになるはずだった。 「ちょっとまった!!」 厳粛な雰囲気に不釣合いな、大きな声が教会内に響きわたる。 正面扉から堂々と突入してきた、招かれざる客に、参列者の視線が集中する。 着崩れたシャツの襟元に、汗を光らせた男は、息をきらせて近づいてくる。 「どういうつもりだ!」 こみ上げてくる怒りを抑えず、そのままぶつけた声にもかまうことなく、 男は隣の花嫁に一直線に向かってくる。 「……行くぞ」 強引に握られた手を君が振り払うものと、その瞬間まで信じていた俺はきっと 世界一愚かな男だろう…―――。 古い映画のワンシーンのように、愛しい人は背を向け、その男と駆けていった。 ざわめきが空間を満たす中、ただ、俺は立ち尽くすしかなかった……。 「―――カット!!」 メインシーンを撮り終え、キャスト、スタッフ共々、一様に安堵の表情を浮かべる。 モニターをチェックすべく、式場の外へ出る。 静かな別荘地に建てられたこの小さな教会で、本日のロケは行われた。 木々の青葉を揺らし、夏の訪れを感じさせるさわやかな風が吹き抜けていく。 そんな場所で、この夏から放送の連続ドラマの冒頭のシーンが撮影されたわけだけど……。 こういう立場になってみると、けっこうキツイこの展開。 恋してやまない婚約者を、ようやくこぎつけた結婚式の日に他の男に奪われてしまう。 見る角度によっては、情熱的でロマンティック。 けれども、置いていかれる側はたまったものではない。 この後ドラマでは新たな出会いをし、傷を癒して新たな愛を得るストーリーとなるのだけれど……。 すっきりと澄んだ空気とは対照的な、後味のよくないもやもやとした思いを抱えつつ、 モニターが設置してある教会のテラスに向かう。 そこには、先ほどの逃げた花嫁、こと俺の愛しい婚約者殿もいた。 「お疲れさまです、敦賀さん」 走りやすいようにと、スカートがひざ上の丈にデザインされたウエディングドレスを着た彼女は ブーケを持ったまま、にっこりとこちらに微笑みながらあいさつをくれる。 先ほどまでその顔を覆っていた、白く薄いベールも今は上げられ、 少し潤みをおびた黒い瞳、つややかなピンク色の唇、デコルテから首筋へのラインもまぶしく、 思わず目をそらしてしまった。まったく、仕事とはいえ、心臓に悪い……。 「こんな形でウエディングドレスを着るとは思いませんでした」 こちらの心知らずの彼女は、嬉しそうに自分のドレスをながめている。 「楽しそうだね、最上さん」 思わずそうこぼすと、ぱっとこちらを見上げて、はいっとこれまたとびきりの笑顔で 答えてくれる…のはいいんだけど――…俺の忍耐力を試してるのか?君は。 「こういうお仕事してたら、いつか着られるかな、なんて期待してたんですけど、 まさか走って逃げる役とは思いませんでした。しかも、こーんなにかっこいい花婿さんから」 ふわりと広がった、短めの丈のスカートをつまんで、はにかみながら 上目遣いにイタズラっぽく彼女は言う。 「嫌味?それは」 そんなふとしたしぐさすら正視できなくて、咳払いをして冗談めいた言葉を返す。 「まさか!今から怖いんですから、オンエア後が。日本中の女の子のひんしゅく買っちゃいそうで」 こうして彼女と軽口をたたいていると、先ほどのもやもやした気持ちも、知らない内に消えていて 胸の中をほんわりと、なにかは分からないけど、あたたかなものがあふれてくる。 まったく、君といると、自分の知らない部分がどんどん出てきて、とまどってばかりだよ……。 でも……こんな自分が嫌いでないのも確かで。 「ザ・テレビレモンです!敦賀さん、京子さん、ポーズお願いします」 階段の下の芝生の上から、雑誌記者に声をかけられる。 夏の新ドラマ特集を組むらしく、今日は取材陣も賑やかだ。 急にかけられた声に、とまどっておろおろしている彼女がなんだか可愛らしく、 つい、からかいたくなってしまった。こんなガキっぽいところが自分にあると 気が付かせてくれたのもまた彼女。 ふわり、隣にいる彼女を抱きかかえて、カメラに向かって笑顔でポーズをとる。 「こんな感じですか?」 いわゆるお姫様抱っこ状態になった彼女が悲鳴を上げる。 声をかけた記者も、まさかこうくるとは思っていなかったらしく、一瞬呆けていたようだが、 気を取り直して、シャッターを切りまくっている。他の記者も、慌てて集まってきて さながら結婚会見のような状態になってしまった。まわりのスタッフからはひやかしの声が飛ぶ。 「なにするんですか?!敦賀さん、おろしてください~」 「どうして?せっかくお互いこんな格好してるんだし。記者さん達にもサービスしないとね」 「って、私ヒロインじゃないし、ドラマでもちょい役なんですけど!」 「だからこそ貴重なショットなんじゃないか。ほら笑って」 ほほを赤く染める彼女を笑顔で言いくるめ、しばらくこの感触を楽しませてもらうことにする。 即席の短い撮影会を終え、ようやく床に足をつけた彼女はご機嫌ななめ。 どうしてかな。ウエディングドレスにお姫様抱っこ、なんてロマンチストな彼女なら 喜んでくれると思ったのに。 「そんなにお気にめさなかった?俺のお姫様抱っこ」 彼女の口から決定的な拒絶の言葉が出たらどうしよう、そんな小さな怯えも抱きつつ、 隣でふくれている彼女の顔をのぞきこみながら、問いかけてみる。 「そういうわけじゃありませんけど……。くやしいだけですっ! また敦賀さんにからかわれて、翻弄されて、あたふたしちゃって。 隣で敦賀さんは涼しい顔してるのに、自分だけバカみたいじゃないですか……」 翻弄されてるのは、どっちだと思う……。仕事の現場だというのに、君の声が聞きたくて、 こちらを見て欲しくて、触れたくて――…。こんなふらちな感情をもてあます自分がいる。 この甘くも切ない想いが、君に伝わらないことが、こんなにも……苦しい。 「君だけじゃないよ……。俺も、思わず見とれた。君のその姿に。 控え室から出てきたとき―――…心臓が止まるかと思ったよ」 きっと君は本気にはとってくれないから、本音を正直に伝える。 案の定、目を大きく見開いて驚いた表情をした彼女は、次の瞬間には はぁ~と大きくため息をついて、あさっての方向を向いてしまった。 こっちが精一杯の気持ちを伝えてるっていうのに、そのリアクションはないんじゃない? 「敦賀さん、私にならまだしも、そういう天然キザなセリフは控えたほうがいいですよ。 あらぬ誤解を招いて、大変なことになっても知りませんから!」 あきれたように、俺に忠告してくれる彼女の表情は幾分かやわらいで、やっと 機嫌をなおしてくれたようでほっとする。でも……正直に気持ちを伝えただけなのに どうしてお説教されなきゃならないんだろうか。いささか腑に落ちない。 「本番ではどんなドレスが着たいの、最上さんは」 せっかくなおった機嫌をそこねないよう、話題を転換する。 「本番って、自分の結婚式ですか?……んー、……考えられません」 意外だな。きっと、きっちりと理想のウエディングドレス像を 思い描いているとばかり予想していたのに。 「お仕事で着られるだけでも、満足ですよ。こういうミニのドレスも可愛いですし」 彼女の表情にふと影を落とした、その思考の正体を探ってみたい気もしたが、 ……彼女にとっても、自分にとっても気分のよいものではない気がしたので触れずにおく。 「君なら、どこかの国のお妃さまみたいな、すその長いドレスが憧れなのかと思ってたけど……。 違った?」 うっ、と言葉をつまらせ、瞬時に赤く染まる顔が図星をさしたことを物語っている。 こういうところ、昔から変わってなくて可愛らしいんだよな。 「わ、悪かったですね!どうせ私はメルヘン世界の住人ですっ! フリルがひらひらした世界最長のすそのドレス着るのが夢なんです!悪いですかっ」 どうも、今日は意に反して彼女の怒りのツボを押してしまうらしく、何を言っても機嫌をそこねてしまう。 まいったな。でも、そういうドレスも君に似合うだろうね、きっと。 「俺も、そういうドレスのほうがいいかな。大切な花嫁さんが逃げちゃわないように……、ね」 腰に手をまわし、耳元でささやきかけてみると、君の顔はさらに真っ赤に染まっていく。 ドレスを着た君を想像する。きっと輝かんばかりに美しい。 そしてその隣には…―――。 ――…かなわない、夢。ただ、今この時だけは、その夢にひたってみるのもいいだろうか。
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/16.html
尚×キョ 15825649
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/78.html
744 :ひそかなる支援者 1:2005/06/22(水) 23 17 07 ID lRE8/3SL ……やっぱり。 最近気が付いたことなのだけど、嘉月と美月のシーンに入る前、 敦賀君が、何かを探すように視線をただよわせる瞬間がある。 ほんの短い間のさりげない仕草なので、気が付く人はほとんどいないだろうけど。 そして、その視線の先をたどると…―――かなりの確率で京子さんがいる。 宝田社長の演技テストを無事パスし、撮影現場に戻ってきてくれた敦賀君。 それも一段とパワーアップして! おかげでDARK MOONの撮影も順調そのもので、僕の理想どおりの形に仕上がりつつある。 彼に嘉月をお願いしたのは間違いではなかった。 そうさらに強く確信しているのだけれど……。 その彼が、ため息をついているのをこの頃よく見かける。 最初は嘉月に入り込んだゆえのことだと思っていた。 嘉月が美月を想う苦しい気持ち……撮影を休む前の敦賀君とは明らかに違う、 その深い表現に、毎回、現場のスタッフからも感嘆のため息と絶賛の声があがっている。 嘉月の感情が残っているがゆえのため息、そう考えたりもしたけれど……。 なにか、違う気がする。 もしかして……京子さんと関係があるのだろうか? マネージャーの社さんにそれとなく聞いてみたら、 「うーん…。蓮のやつ、一人で抱え込んじゃうタイプなんで、俺にもすんなりとは 打ち明けてくれないんですよね……。まぁ、だいたい検討はついてるんですが…―――」 と、ちょっと寂しそうに答えられてしまって、あまり深くは突っ込めなかった。 それならば……。 「京子さん、ちょっといいですか?」 監督権限を利用して、スタジオの隅に京子さんを呼び出す。 特殊メイクをほどこし、衣装に着替えた彼女は、黙っていれば未緒独特の暗く沈んだ空気を放っているけれど 今は役に入っていないので、一声かければ、にこやかに明るい雰囲気で応対してくれる。 うーん、いつもながら驚くなぁ。これで演技を始めたばかりの新人だなんて。 「敦賀君のことなんですが……」 「あっ!監督も気がつきましたか?!そうなんですよ!敦賀さん、最近また食が細くって。 撮影に集中されてるのは分かるんですが、こういう時こそ体調の管理って最重要課題だと思うんです! 敦賀さんのことだから、仕事に支障をきたすなんてことはないと思いますけど……。 だからって、食べないにも限度ってものがありますよね!!」 「えっ…と、うん。そうですよね……」 いきなり話が思ってもないほうに飛び、こぶしを握り締めながら力説する彼女の勢いに流されそうになる。 食事もノドを通らない……か。けっこう深刻なのかな、敦賀君の悩み事……。 「それで、お弁当を差し入れたりもしたんですけど、最近なかなか目線を合わせてくださらないし……。 近くに寄ろうにも、なんだか避けられてる気がして…。あれこれうるさいのが迷惑だったんでしょうか……」 そうシュンとなって、彼女が告げた言葉に、前にも一度思いついたことのある仮説が、 ふたたび頭をよぎる……。 やっぱり――…敦賀君、京子さんのことを…―――。 「未緒とは天敵同士ですしね……。役に集中しているからこそじゃないですか? 僕からも、食事のことは聞いてみますから」 「はいっ、ぜひお願いします。敦賀さんには万全の体調で嘉月をやり遂げてほしいんです」 そう強い瞳を向けて彼女は言い、軽く会釈をして現場に戻っていった。 ふと、視線を感じて振り向く。 そこには敦賀君がいて、目が合った瞬間、あわててそらされてしまった――…。 京子さんの話から察するに、京子さんも敦賀君のことを心配していて、 しかも、お弁当を渡したりする仲のようで、何も悩むことなんてないようにも思えるんだけど……。 たんなる僕の勘違いなのだろうか……。 ん?―――…そうか!! 同じ事務所内の芸能人同士の恋愛はタブーだと聞いたことがある。 あの二人は、LMEのロミオとジュリエットなのかもしれない! ああ、なんてことだろう……。 せっかく気が付いた想いにも蓋をして、抑えようとしているからこそのため息に違いない! 「敦賀君……」 休憩中の彼に歩み寄り声をかける。 「なんですか、監督」 穏やかな笑みを向ける彼の瞳からは、先ほど向けられていた視線の強さは感じられない。 これからも、そうやって隠していくつもりなんですか?あなたは……。 「たとえ、宝田社長がどんなに反対しようとも、僕は味方ですから!!」 なんとか元気になってもらいたい気持ちをこめて、両手に握りこぶしを作りながら伝える。 「……は?……いったい、何がどうしてそういう……」 きょとんとして、なんのことやらさっぱりという表情の敦賀君。 その演技力、さすがですね。でも……ふふ、もうばれちゃってますから。 父を超える。そのプレッシャーにつぶされそうになった僕を救ってくれたのは、 敦賀君、そして、新しい未緒を生み出してくれた、京子さん、あなた達です。 その恩には、どんなことをしてでも報いたい―――…。 ――――ダメな奴は、切り捨てろ。 演技の出来なくなった敦賀君のことで、宝田社長は僕にこう言いきった。 その時の、冷たく鋭い眼は今でも心にやきついている。 そして……その時感じた怖ろしさも。 僕に…―――できることは無いのかもしれない。 それでも、僕は、あなた達に幸せになってもらいたい。 だから、あきらめちゃだめです! 信じていればきっと、道は開けるはず。それを教えてくれたものあなた達じゃないですか。 たとえ、誰が反対しようとも、僕は応援しています!!
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/86.html
939 :ume1:2005/06/28(火) 22 21 02 ID ??? 【PS2】スキップ・ビート!(コナムザベスト) 定価 2,100円(税込)特価 1,785円(税込) -ゲームの説明- プレイヤーは一流芸能人を目指す「最上キョーコ」になって、ライバルの「琴南奏江」と共に、 LoveMe部を結成し、オーディションや試練を受けていくことになります。 ゲームは主人公キョーコが幼馴染の松太郎に裏切られ、大手芸能事務所LMEに入るところから始まります。 ゴールはLoveMe部卒業式。この三年間をシミュレーションして遊びます。 目的は、トップ女優、高感度ナンバーワンタレント、社長夫人、などさまざま。 演技の勉強に明け暮れてみるも良し、LoveMe部活動に専念してみるも良し、かつら剥きを極めてみるも良し。 もちろん、恋にときめいちゃってもOKです!バレンタインデーやクリスマスなどの行事もあります。 坊vs尚バドミントンゲーム、や、マリアちゃんをおびき出せ!恋?呪い?占い1、2、3! モー子さんを救え!怨キョ飛ばしゲーム、潜入!!ローリィの秘密のクローゼット、などのミニゲームも充実! そして…過ごし方しだいでは、卒業式の日に憧れの人から告白を受けることも…―――。 恋愛、演技、友情、プレイヤーの気持ち次第で幾通りにも楽しむことができる、 それがPS版『スキップ・ビート!』です。 登場キャラクター: 敦賀蓮、不破尚、ローリィ宝田、社倖一、石橋光、黒崎潮、新開誠士、緒方啓文 ほか 940 :ume2:2005/06/28(火) 22 22 07 ID ??? 【PS2】スキップ・ビート!― Boy s Side ―(コナムザベスト) 定価 2,100円(税込)特価 1,785円(税込) -ゲームの説明- プレイヤーは、敦賀蓮(俳優)、不破尚(歌手)、石橋光(タレント)のいずれかになって、 恋する「最上キョーコ」にアタックすることになります。 ゲームは主人公が、キョーコと出会うところから始まります。 ゴールは3年後。それぞれの芸能界での活動をシミュレーションして遊びます。 目的はもちろん、最上キョーコと仲良くなることですが、その為には、 定期的に行われる好感度調査で、上位も狙わねばなりません。 演技の勉強に明け暮れてみるも良し、精力的にライブツアーに出るも良し、レギュラー番組を増やすも良し! もちろん、恋の逃避行をしちゃってもOKです!社長やマネージャーによる妨害もあります。 わがまま女優をフォローしろ!撮影続行できるかなゲーム、芸能人なら声が命!地獄のボイトレゲーム、 突っ込み&ボケはタイミングが大切!間合いで笑わせ1、2、3!などのミニゲームも充実! そして…過ごし方しだいでは、授賞式(プレイヤーによりことなります)の日に キョーコから告白を受けることも…―――。 恋愛、演技、友情、プレイヤーの気持ち次第で幾通りにも楽しむことができる、 それがPS版『スキップ・ビート!― Boy s Side ―』です。 登場キャラクター: 最上キョーコ、琴南奏江、ローリィ宝田、社倖一、ブリッジロック、松内瑠璃子、 ほか 960 :ume3:2005/06/29(水) 01 55 06 ID ??? 【PS2】スキップ・ビート!― Manager s Side ―(コナムザベスト) 定価 2,100円(税込)特価 1,785円(税込) -ゲームの説明- プレイヤーは一流マネージャーを目指す「社倖一」になって、担当俳優の敦賀蓮と共に、 芸能界の頂点を目指します。 ゲームは、敦賀蓮が所属事務所LMEにて最上キョーコと出会うところから始まります。 ゴールは3年後。その間の芸能界での活動をシミュレーションして遊びます。 目的は、敦賀蓮をマネージメントし、より大きな俳優に。そして、彼の幸せバロメーターを最大限に高めること。 日本一の敏腕マネージャーを目指すも良し、兄貴分として優しく見守るも良し、恋のキューピッドになるも良し。 もちろん、出世のために暗躍してもOKです!バレンタインデーやクリスマスなどの行事もあります。 蓮、頼むから食事してくれSOSゲーム、や、追っかけから蓮を守れ、必殺電磁波ビーム!ゲーム、 ごまかせ、ばっくれろ、恋のスキャンダル、1、2、3!、本日の対局、などのミニゲームも充実! そして…過ごし方しだいでは、最後の日に素敵なことが…――――? 仕事、恋愛、友情、プレイヤーの気持ち次第で幾通りにも楽しむことができる、 それがPS版『スキップ・ビート!― Manager s Side ―』です。 登場キャラクター: 敦賀蓮、最上キョーコ、ローリィ宝田、黒崎潮、新開誠士、緒方啓文、椹武憲 ほか 968 :ume4:2005/06/29(水) 22 36 57 ID ??? ―― ゲーム紹介 ―― 待望のシリーズ最新作『 Lory s City 2005 』ついに登場! プレイヤーは大手芸能事務所LMEの、ローリィ宝田社長となり社内におこる様々な問題を解決します。 社員の要求などが反映される愛の目安箱で要求を確認しながら事務所の発展に努め、 企業評価「トリプルA」を目指します。 芸能人や社員が働く場所や憩いの場所を提供し、時には彼らの苦情を聞きながらそれに対処していく。 愛と苦悩のあふれる社長の仕事。でも、そんな苦難を乗り越えて大きくなった社内を豪華衣装で闊歩できたら、 きっと大きな喜びを得られるはず!そんな市長の苦楽を見事に再現したシミュレーションゲームが この『 Lory s City 2005 』です。 初めて芸能事務所づくりを体験する初心者に最適なのが「ビギナーズモード」。 おなじみ名マネージャー、社倖一や、タレント部門主任、椹武憲、そのほか優秀な部下たちが 個性的な社長の力となって事務所の発展を成功に導いてくれます。 ビギナーズモードで基礎を覚えたら「シナリオモード」で腕試し。このモードの目的は、 シナリオによって異なるアクシデントから社員を守り、制限時間内に事務所を運営させていくこと。 スキャンダルや人気俳優のスランプなど、事態はまさに深刻。 あなたは見事、事務所を守り、全21シナリオをクリアすることができるでしょうか? LMEの内部をさまざまな角度から視点を切り替えて見ることができ、社内を歩いたり、 天井裏やラクダなどの乗り物から各部署を観察して、快適な事務所づくりを進めていくこともできます。 社内には多くの芸能人、社員が働いており、彼らに直接話しかけることで、LMEには今何が必要なのか、 社員の要求は何なのかをリサーチしながら、よりよい事務所づくりを目指します。 LMEを発展させ、その手腕が認められた社長には、協会から「プール付き豪邸」や「超高層マンション」 といった「ボーナスビル」が贈られることも。大きなプレゼントを手にして、社長としての喜びをかみしめよう! 対応機種 Z-BOX メーカー ローリィズ・マジスティック・エンターテイメント ジャンル 企業発展シミュレーション 価格 7,790円(税込)
https://w.atwiki.jp/skipbeat617/pages/96.html
237 :1:2005/07/06(水) 00 30 53 ID ??? TBM。数あるスタジオの中のひとつ。そのドアの前。 今日ここで、敦賀さんがドラマを撮影しているという。 私はついさっきまで、別のスタジオで「やっぱきまぐれロック」の収録があった。 それが終わったので、ここに来たんだけど…。入っても怪しまれないかな。 いくら私も芸能人の端くれとはいえ、 ここの現場では敦賀さん以外に関係ある人がいないし。 まあ、いっか。撮影現場に興味がないといったらそれは嘘になるし。 だいたい、私に「見においでよ」と言ったのは敦賀さん本人だ。 とりあえず覚悟を決めてそろそろとドアを開けた。 数日前の夜、もうそろそろ寝ようかというときにケータイがぶるぶると震えた。 こんな時間に誰が、と一瞬びっくりしたけどすぐ止まったので とりあえず着信じゃないことにホッとして、改めて ケータイを見たら、敦賀さんからのメールだった。 「こんばんは、もしかしてもう寝てたかな?夜遅くにごめん。 ○日、君もTBMにいるっていうから、よかったら撮影見においで。 勉強になると思うよ」 なんてもっともらしく書いてあるから…私も…ついのこのことやって来てしまった。 やっぱり…撮影現場に入れるっていうのはスゴク魅力的…。 それなりにドラマのお仕事もこなせるようになってきたけど、 敦賀さんには…まだまだ及びもつかないから…勉強できるなら、って。 ドアを開けてそっと中を伺うと、すぐ左の壁際に社さんが立っていた。 「あれ?キョーコちゃん、どうしたの?蓮に用意?」 「こっこんにちはっ…いや、あの…敦賀さんが…参考になるから見においでって…」 なんとなく恥ずかしくなりながらここに来たわけを話すと、 社さんは少し考えてから、そうなの…?と不思議そうに私を見た。 「今日は来ないほうがよかったかもしれないよ…?」 え、どういうこと?思いがけない社さんの言葉に、不安な気持ちがむくむくと湧いてくる。 「なな、なんでですか?…敦賀さん、わざわざ日にちを指定してまで私に…来いって」 「そう…、蓮のヤツ、何考えてるんだろう…まあ、とにかくあと30分くらいで終わるから そういうことなら見ていったらいいよ。えと…文句は、蓮に言ってね?」 社さんはそう言って私に微笑むと、 電話をかけてくるから、と、スタジオの外に出て行ってしまった。 私はといえば、社さんの不可解な発言に…なんだか不吉な予感がしてきていた。 「じゃあ次のシーンで今日最後ねー、なるべく1回でよろしくー!」 スタジオの奥を見ると、順調に撮影が進み、社さんの言うとおり、 もう少しで終わりそうなところまできているようだった。 それにしても…さっきの社さんの言葉…「文句は蓮に言ってね」って…なんなんだろう。 今日は来ないほうが…っていうのも引っかかる。 少しもやもやした気持ちで、撮影を遠くから眺めていると、ちょっとした異変に気づいた。 さっきまで、わあわあ言っていたのが一変、がらりと雰囲気が変わって、 今、撮影中シーンに出てくるのは、どうやら敦賀さんと…その相手役の女優さんだけみたい。 ん?なんだか…これは、ラブシーン、ぽい? 放送開始前で、詳しいことを聞かなかったので内容はほとんど知らないんだけど 敦賀さんが言うには、軽いサスペンス仕立てのラブコメディ、らしい。 聞いたときには、あまり気に留めてなかったけど…ラブコメディの主役…。 そう思い出したのと同時に、スタジオの撮影では、敦賀さんと相手役の女優さんが キキキ、キスをしていた。 うひゃあ…。 み、見てしまった…。 なんだか変な感じ。 ドラマやなんかで見たことはあるけど、こうして目の当たりにするのは… 初めてじゃないけど…その…そういう関係になってからは初めてだったりする。 な、なんかスゴク恥ずかしい。 自分も、…その…敦賀さんとそういうことをしてたりするわけで…。 脳裏に「敦賀さんとしているそういうこと」が、ぱっと浮かんだ。 途端に顔から火が出そうになって、私は慌ててスタジオを出た。 廊下を突っ切り、普段は誰も使わない階段を少し下りて、踊り場で、 なんとか頭を冷やそうと壁に額を押し当てた。 わざとだ。敦賀さん、わざと私を呼んだんだ。ああいうシーンを撮るっていう日に。 だから社さん、文句は蓮に、って。 信じられない、…何なのよっ、敦賀さんは。絶対面白がってやってる。 初めて会ったときからイジワルはひどかったけど、 ここ最近は、ちまちましたものがエスカレートしてるような気がする。 それにしても…こんな状態で顔合わせられないよ…。 絶対に、からかわれるに決まってる。私が見に行ってたの、わかってるだろうし。 もちろん、途中で消えてることも。 「わああぁぁあ、もう、どうしようううぅぅっ」 「何を?」 …1人で壁に向かって 頭を打ちつけながら叫んでいたら 耳慣れた声が後ろから…後方上から降ってきた。 ひっ… 「つ、敦賀さんお仕事、撮影は…っ」 「終わったよ」 何とか振り向いて応対しようとしたら、 その前に、後ろから腕を回されて、 ぎゅううと音がしそうなくらい抱きしめられてしまった。 「なんで逃げるの?」 「ににに、逃げてないですよ、そそそそれより、こんなところでこんな」 「誰も来ない、知ってるくせに」 敦賀さんが耳元でクスクス笑う。 まだ私は彼に捕まったまま、低音で囁かれて…さっきよりも体温が上がりそう。 「最後のシーン撮るまでは見てたのに、…妬いてる?」 な、なんてことを。そんな私は公私混同もできないヘンな女じゃないですってば! …敦賀さんじゃあるまいし。 「ち、違いますよっ…あれは演技じゃないですかっ、そんな お仕事とプライベートを混同したりしませんよっ」 「…ふーん?…じゃあ、なんで逃げたの?」 っ…い、言えない…いつも…あなたとしてることが頭に浮かんで離れないなんて。 「キョーコ、ちゃん?」 「だから逃げてないですってば、なんでもないですから放し…っひゃあっ」 敦賀さんの腕と低音攻撃から逃げようともがいていたら、 耳の下、髪の生え際に生暖かいものと…皮膚を吸われる感触、少しの痛みを感じる。 っ…またそんなところに…っ。 それに…やだ…そこにそうされると…。 「ここで…そんなことしないでください…っ…聞いてます?敦賀さん…っ」 「聞こえないなあ…」 「敦賀さんっ」 「…静かにしないと、誰かに聞こえるかもよ?」 なおも下に唇が移ろうとする。もう…ダメ。 力が抜けそうになるところを、上手く抱え込まれて、 身体を敦賀さんの正面に向けさせられる。 ああ…いつもの…パターンになりそう…。 指を顎にかけられて、強引に唇を重ねさせられた。 ああやって…私が首が弱いってわかっててやるんだから…反則だ…。 「ん…」 最初はただ唇が触れたりお互いを挟むようにしていたのが、 口づけがだんだん深くなるにつれて、 薄く開いた唇の隙間から、ときおり息と一緒に声が漏れてしまう。 大きな手で頬から耳を塞がれると、口の中の絡み合う音が響いて…。 「っは…、こ、こんなところで…やめて…くださいって言ってるでしょう…」 「可愛い恋人に消毒してもらおうと思って」 ようやく唇が離れて、いつにもましてイジワルな敦賀さんを少し睨みながら 抗議するように呟くと、彼はしれっとした顔でそう言った。 は?消毒? 「何のですか…」 「見ただろ?キスシーン」 「っ…別にそんなのどうでも」 「やっぱり妬いてる」 っっ… もう! 「お仕事に妬いたりするわけないじゃないですかっ」 どうしても私がさっきのシーンに嫉妬してることにしたいんだ、この人は。 「俺は嫉妬するよ…言わないけどね、君が口を利いた人にも、君の持ち物にも 君が好きなものにもみんな嫉妬してるよ…」 だからどうして貴方はそういうことを素面で言えるんですか…信じられない。 「っ…何言ってるんですかもう…、あっ、ほら社さん待ってるんじゃないですか? そうでしょう?」 「今日はもう終わったからあとは帰るだけ」 「ででででも社さんを送っていったりするでしょう?私も帰らなくちゃ」 「一緒に帰ろう」 嫌な予感。 「ど…どこに…?」 「俺の部屋」 そっと見上げると…それはそれは艶かしく笑う恋人の…顔。