約 71,484 件
https://w.atwiki.jp/fate_495112834sandy/pages/16.html
許してはならぬ。 許してはならぬ。 一体いつから戦い合っただろうか、物事ついた頃から殺し合っただろうか。 いつかは分からない。何故も分からない。 気づいた時には、そうしていた。 そういう宿命であり、運命だったから、いや……どうだったのか。始まりすら覚えていない。 物心ついた頃には、目の敵にしていたのだ。 感情というものはない。 敵が常に彼だったから、よく争っていたから、敵対していると噂されたのだろう。 実の所、恨みなどない。 特別な理由や動機があって、狙ってやっていた訳ではないのに勝手に噂されていた。 この先、きっと漠然と争い続けるのだろうと思っていた。 感情を知るまでは。 フツフツと混み上がる激情。 何だ、これは。 何故だか、衝動に駆り立てるこの感覚は。 奴を許してはならぬ。奴を野放しにしてはならぬ。 アレは文明も生命も己の信仰すら無関心だ。 俺の知った素晴らしい芸術も、奴に祈る種族すらも何とも思っていない。 奴が目覚めれば、全ての有象無象を滅ぼす。 ふざけるな。 そんな事があっていいものか。 俺は許さない。 許してはならない。決して――…… ☆ 東京では一つ話題になっている事があった。 ニュースには取り上げられていないものの、SNSではトレンド入りするほど話題となっている。 『ホワイトナイト』という単語が。 週刊少年ジャンプで流星の如く現れた新人作家の読み切り漫画。 空前絶後の面白さにアンケートは一位を獲得。 早速、連載に向けて打ち合わせが行われ、ネームも三話分まで完成していた。 「あれ」 一人の少女がはたと手を止める。 違和感に気づいたのだ。 『ホワイトナイト』のペン入れを始めようとした少女『藍野伊月』が呟く。 「どうして、私が『ホワイトナイト』を描いているの?」 ☆ 『ひまわり』があった。 それはかの有名な――恐らく世界中の誰かが必ず知っている『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』の『ひまわり』。 ……それを模した杖を携えた黄色の衣を纏った少年が、伊月のサーヴァント。 少年は伊月の話を聞き、静かに言う。 「ほう……つまり、マスターは己の作品を盗まれた訳か」 「いえ、その。私……引きこもりで一日中部屋にいたんです。部屋に鍵もかけてて、それに私の家って高知のド田舎ですし……」 盗作と指摘され、伊月はドキリとなって言い訳する。 自分が描いていた筈の『ホワイトナイト』が、何故か週刊少年ジャンプで連載されていた。 ありない事だった。 内容などに差異はあれど、間違いなく『ホワイトナイト』だった。 でも、どうやって自分の部屋から『ホワイトナイト』を盗んだのか。 何で、よりにもよって自分の『ホワイトナイト』が盗まれたのか。 訳が分からず、真偽を確かめようと東京へ向かった筈の伊月。 そして、いつの間にか東京に住んでて『ホワイトナイト』の連載を始めようとしていた。 何故なのだろうか。 最初は、ファンタジーな出来事などないと思い、きっとあの『ホワイトナイト』を描いたのは自分と同類の人間だから たまたま 偶然に 伊月と同じ『ホワイトナイト』を完成させたのだと突拍子もない事を考えていた。 そうはないだろ、と突っ込まれても。 だったら、他にどういう理屈で彼女の『ホワイトナイト』がジャンプに連載されているというのか。 こんな――聖杯戦争に巻き込まなければ、伊月は突拍子もない勘違いをし続けただろう。 少年が一蹴する。 「マスターよ。無限に時間があれば 猿がタイプライターでウィリアム・シェイクスピアの作品を打ち出す事は可能と比喩があるが。 現実的ではないだろう。赤の他人がお前と同じ作品を産み出す事は不可能。 間違いなくお前は被害者だ。何等かの手段を用いて『ホワイトナイト』を盗作されたのだ」 「盗作……」 「決して許すな、マスター。 俺は人類の芸術を深く語れはしないが、確かな事がある。芸術を志す者は己の作品に誇りがある筈だ。 己の作品を誰かに見て貰いたい執念で己を駆り立て生涯を尽くす。 それを侮辱したのだ。許してはならない。それと……」 確実な一言を告げた。 「俺はマスターの描いた『ホワイトナイト』を読みたいからな」 藍野伊月は、全ての人類を楽しませる漫画を描きたいと奔走していた。 『ホワイトナイト』は苦節あって構想していた作品だ。 決して、諦めてはいけない、一つの誇りだった。 何より――…… 「アヴェンジャーさんにそう言われたら……応えないと駄目ですね。 はい……! 私、『ホワイトナイト』を完成させます!! 必ず描き切ります! 全人類も――神様も楽しませる漫画を描いてみます!」 読みたいと願う誰かがいるなら、描くものだ。 藍野伊月は笑顔で宣言した。 ☆ 決して許してはならぬ。 この先にある未来の輝きも、残してゆくべき美しさも滅ぼす奴だけは―― 復讐心を抱いた『黄衣の王』が往く。 まだ、世界は壊すべきではない。 ――継続―― 【真名】 ハスター@クトゥルフ神話+『黄衣の王』+史実? 【クラス】 アヴェンジャー 【属性】 秩序・悪 【パラメーター】 筋力:C 耐久:C 敏捷:A++ 魔力:A 幸運:C- 宝具:B 【クラススキル】 復讐者:E+++ 恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。 本来、ハスターは憎悪も復讐心もなかったが、クトゥルフと敵対する逸話から その憎悪と復讐心を得た。一種の『無辜の怪物』。 忘却補正:E+++ 誰も彼もが忘却しても、復讐者は決して忘却しない。 ハスターはクトゥルフと敵対しているが、憎悪や復讐心はない。 だが、サーヴァントとなった事で憎悪と復讐心を得て、それらが常に加速している。 自己回復(魔力):D- 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。 微量ながらも魔力が回復する。 【保有スキル】 魔力放出(風):B+++ 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。 芸術審美:E- 芸術品・美術品に対する理解、あるいは執着心。ごく低い確率で真名を看破できる。 ハスターは人間の芸術を理解し始めたばかりなので、懐疑的。 黄の印:A- ハスターを象徴する紋章。 印を見たものの精神に狂気と破壊を与える……のだが、ある理由により 印をつけたものに加護を与える支援スキルとなった。 ただし、加護だけでなく呪いも与えてしまう。 【宝具】 『黄衣の王(デ・ステーレンナフト)』 ランク:B-- 種別:対陣宝具 レンジ:30 最大捕捉:100~500人 ヒアデス星団のカルコサの地を舞台に、美しくも恐ろしい言葉で埋め尽くされた詩劇。 狂気と恐怖の戯曲を再現する大魔術。固有結界ではない。 ……なのだが、ハスター自身の願望を形にした為、本来の戯曲とはかけ離れた表現が使われている。 天井にはかの有名な『星月夜』が広がり、『黄色い家』が並び、『ひまわり』が一面を咲き誇る。 【weapon】 『ひまわり』の杖 どこかで見た事ある『ひまわり』が杖状になったもの。 『ひまわり』部分が回転して攻撃できる。 【人物背景】 名状しがたきもの、名づけられざりしもの、星間宇宙の帝王、邪悪の皇太子。 そして――『黄衣の王』の異名を持つ怪物。 クトゥルフとは異母兄弟であり敵対関係。 敵対する理由は諸説あるが、少なくとも安息所を巡って争ったのは事実らしい…… かつて宇宙を自由に駆け巡り、地上にも君臨したが、現在はヒアデス星団の『黒いハリ湖』に幽閉されている。 刹那の合間だけ、別宇宙を観測した際、一人の芸術家の作品をお気に召し 宝具や武器、スキルにも影響がバリバリ出ている。 ぶっちゃけると『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』のファンなのだ。 このハスターは芸術面を強く影響した存在であり、 神格ではなく、あくまで『黄衣の王』に登場した怪物としての側面。 クトゥルフと敵対する逸話による復讐心。 人間への関心を組み合わせた奇跡的な『複合』サーヴァント。 クトゥルフという共通の敵を持つ意味もあり、人間には友好的である。 【外見】 金と黒が混じった短髪の少年。 サイズの合っていないフード付きの黄衣を纏っている。 【サーヴァントとしての願い】 クトゥルフの打倒 【マスター】 藍野伊月@タイムパラドクスゴーストライター 【聖杯にかける願い】 『ホワイトナイト』を完成させる 【能力・技能】 天才的な漫画の才能と顧みない行動力。 行動力が行き過ぎて、ある世界線では…… 【人物背景】 自分の漫画で全人類を楽しませたい少女。
https://w.atwiki.jp/irosumass/pages/314.html
キャラクター 妖精さん 一斤さん [[]]
https://w.atwiki.jp/meijikeiei/pages/76.html
備考 出席は毎回 授業内レポート 試験なし 関連 東南アジア文化論(阿部)[共通専門科目]
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/209.html
391 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 45 06.73 ID 6xwiZxR10 [2/9] 『人類惑星移住計画』 西暦20XX年1月―― 俺達人類が住む地球は、極度の環境破壊に直面していた。 世界中で環境汚染を無視した工業化が極限にまで達し、各国で環境問題を原因とした紛争が勃発。 人類の手では、過去の美しく住みよい地球を取り戻すことは既に不可能になった。 そこで国連から、ついに人類を惑星に移住させる大計画が発表されたのだった。 俺と桐乃、沙織と黒猫、そしてあやせの五人は惑星移住のために、成田空港の発着ロビーにいた。 人類初の惑星移住に鑑み国連では慎重を期して、他の惑星環境でも適応し易いようにと、 全世界から十八歳以下の男女を優先的に移住させることにしたらしい。 「沙織も黒猫も、あやせもいるな。それじゃあこれから、惑星間航行用チケットを配るから」 先程から辺りをキョロキョロしていた桐乃が口を開いた。 「……ねえ、地味子は? 地味子がいないけど」 「ああ、麻奈実は来ねえよ。あいつの家、和菓子屋だろ」 俺がそう言うと桐乃は納得したように頷いた。 国連とは別に日本政府の方針として、国内で食品関連の仕事に従事している者については、 政府の許可なくして自由意志による移住が出来ないことになっている。 麻奈実の家が和菓子屋だったことが災いした。 「みんなよく聞いてくれ。チケットは手に入ったんだが……行き先が……何枚かは違う惑星なんだ」 「……先輩? それはどういう事かしら?」 黒猫が疑問を呈するのも当然だった。 俺たち五人は、そろって火星への移住を希望していたんだ。 しかし、月を除けば地球から一番近い火星は大人気で……結局どうなったか、てーと。 「火星行きが3枚、金星行きと木星行きがそれぞれ1枚ずつなんだ……」 「……ということは、先輩? 火星は3人一緒だけれど…… 金星と木星は一人で行かなければいけない……ということかしら?」 黒猫の言葉に一番に反応したのは桐乃だった。 「や、やっぱさー、この世でたった二人きりの兄妹を離ればなれにしちゃあ、まずいっしょ!」 桐乃がさも当然のように言うと、黒猫の表情がキッ! と変わり、桐乃を睨みつけて……。 「あ、あ、あなた何を言っているの! わ、私と先輩は……こ、恋人同士よ。 私たちこそ引き離されては堪らないわ……」 392 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 45 47.13 ID 6xwiZxR10 [3/9] 眉間にしわを寄せ、腕組みしをながらそんな二人の会話を聞いていたあやせは、 すーっと、その瞳から光彩を消失させ―― そして、腹を押さえ口元を手で覆うと……がらりと一変、苦しげな表情になった。 「うっ、おえっ……うっうう……」 俺はあやせの急変に驚いて声をあげた。 「? あやせ!? どうした!」 「……つ、つわりが…………うっ……」 ん? ……つわり? 次の瞬間、桐乃の平手打ちが俺の頬に炸裂し、黒猫の足蹴りが俺の股間を捉えた。 「っ痛て――――! あにすんだよっ! 桐乃も黒猫もっ!」 俺は股間を押さえ身を捩りながら桐乃と黒猫を睨みつけた。 「あ、あ、あああああ、あんたっ! あ、あやせに一体、な、何してくれちゃってるわけ?」 俺を睨みつけながら顔を真っ赤にした桐乃が叫ぶと、それに続いて黒猫も……。 「せ、せ、先輩っ! ど、どういうことなのか説明してもらえるかしら…… わ、私だって………………………………なのに……」 そんな二人の怒りの炎に油を注ぐあやせは……。 「……お、お兄さん……たぶんあの時の……」 そう言ったきり頬を染めて俺を見つめるあやせ―― ん? そう言う割りには……あやせの眼が笑ってねえか? だから俺はあやせに聞いてやった。 「……ほ、ほほう……おい、あやせ……おまえの言うあの時って、いつのことだ?」 俺の予想外の反応にうろたえ、言葉を失うあやせ。 「だ、だ、だから……あ、あの時はあの時じゃないですか……お兄さん……」 最後の『お兄さん』の声が小さくなる。――バレバレだっつーの! 簡単に嘘がばれてしまったあやせは、そっぽを向いて口笛を吹き始めた。 ……ピ~ ピ~ ピ~ ピピッピ~ ♪ 「……でも、お兄さんはわたしに以前、結婚してくれって……言いましたよね」 393 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 46 25.80 ID 6xwiZxR10 [4/9] 再び俺達の間に険悪な空気が流れ始めたとき、沙織が口を開いた。 「まあまあ……皆の者、ここはひとつ、冷静になろうではござらぬか。 チケットの種類と枚数はもう決まっているのでござるから…… ここは公正に、くじ引きで……ということで、いかがでござろう」 沙織の言うとおり、全員で同じ星に移住できる可能性はない。 ならばここは、兄妹だとか恋人だとかといった事情はすべて抜きにして、 残酷だがくじ引きで決めるしかないと俺は思った。 「……なあ、仕方ないだろ? 沙織の言うように、ここはくじ引きで決めよう」 俺達はロビーの床に輪になって座り、チケットを裏返してから、真ん中に5枚並べた。 誰が一番初めにくじを引くのか……全員の顔に緊張感が走る。 (俺が一番に引くしかねえな)そう思って手を出し掛けると……。 「京介氏……待って欲しいでござる。 拙者が言い出しっぺでありますゆえ……拙者が最初に……」 他の4人の目が一斉に沙織に集中する。――くそ! 胃が痛くなってきやがった。 沙織は躊躇することなく5枚のチケットの中から1枚を引いた。 「「「「どこの星!?」」」」 ――沙織が引いたのは、金星行きのチケットだった、 彼女は平静を装ってはいたが、やはり動揺した気持ちは隠せず、少し涙目になっていた。 「……ハハハ、拙者は金星に決定したでござる……ハハ」 俺は沙織には悪いとは知りつつ、心の中に安堵感が広がるのを感じざるを得なかった。 残りは4分の1……桐乃か黒猫か、あやせか……さもなくば、俺のうちの誰かが木星行きとなる。 すでに金星行きが決まった沙織は、俺達と顔を合わせているのが辛いのか、立ち上がり……。 「……拙者、金星で必要なものを買って来ますゆえ、しばし中座するでござる」 誰も沙織の顔を見られる者はいなかった。 そりゃそうだよ。もしかしたら金星行きのチケットを引いたのは、自分かも知れないんだから。 黒猫は沙織から目を背け、口元を手で押さえながら呟くように沙織に告げた。 「……沙織。………………耐熱服はこの先の免税店で売っていたわ」 「そうでござるか。かたじけない黒猫氏……拙者のサイズに合う女性物があるといいのでござるが」 394 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 46 57.06 ID 6xwiZxR10 [5/9] 沙織が俺達の場を立ち去った後、残り4枚のチケットを巡って膠着状態が続いた。 そんな状況を打開すべく、俺は桐乃、黒猫そしてあやせと順番に目をやりある提案を口にした。 「なあ、このままじゃ埒が明かねえだろ。……俺が木星へ行くよ。 だから、おまえらは仲良く火星へ移住しろ……いいな」 俺がそう言って裏返してあるチケットを表にして、木星行きのチケットに手を伸ばすと……。 「ちょっと待ってよ! あんたっ……ううん……あ、兄貴はあたしの兄貴でしょ! ……今までわがままばっか言って……ご、ごめんなさい! だから、だから……あたしをもう独りぼっちにしないでよっ!」 桐乃が泣きながら俺にすがりついてきた。 今まで俺のことなんか兄貴とも思わず、なにかと言えば酷い態度をとってきた妹が……。 火星と木星に別れてしまっては、いつ再び会えるか分からない。 俺は桐乃の頭に手を置いて優しくなでてやった。――これで最後かもな。 「……先輩、そんなの酷いわ! ……わ、私はどうすればいいの? なけなしの勇気を振り絞って私は先輩に告白したのよ……それなのに……」 黒猫の大きな瞳が涙で潤み、顔を両手で覆い嗚咽した。 俺は黒猫の肩をそっと引き寄せ抱きしめてやった。 恥ずかしがり屋で照れ屋の黒猫が、俺に想いを伝えるためにどれほど苦悩したことか、 それを考えると俺は胸が引き裂けそうだった。 実妹の桐乃と恋人の黒猫に泣きつかれて、俺の決断が鈍る。 この二人のどちらか一方とでも離れるなんて、俺にはとても耐えられない。 俺はあやせをそっと見た。 俺の視線に気付いたあやせは、俺が考えていることを察知したのか顔面が引きつる。 「……お兄さん、まさか、とんでもないことを考えていませんか?」 しかし、俺の性格なんてあやせにはお見通しのようだった。 いままで俺があやせにしてきた行状を鑑みれば、とてもあやせに言い出せることではなかった。 そんな俺の思いを知ってか知らずか、あやせは人を小バカにした様にそっぽ向き口笛を吹いた。 ……ピ~ ピ~ ピ~ ピピッピ~ ♪ 395 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 47 46.85 ID 6xwiZxR10 [6/9] 俺が木星へ一人で行く選択肢は断たれた。 かと言って、こいつらのうち誰か一人を行かせるわけにも行かない。 こりゃ進退きわまったなと考えていると、沙織が免税店から戻ってきた。 「………………京介氏? これはまたどういった状況で?」 俺が沙織にこれまでの経緯を伝えると、彼女も困った様子で…… 「うむむむむ……しかし、拙者はすでに金星行きが決まった身。 ……こればかりは拙者がどうこうできる訳でもありませぬゆえ……うむむむむ」 沙織が困るのも無理はない。 俺が一人で木星へ行くことを、桐乃や黒猫はともかくあやせまで反対しているのに、 そいつらの一人に、おまえが木星へ行けとは沙織でなくとも言えるわけがない。 桐乃と黒猫は相変わらず泣いているし、あやせは人ごとのように口笛を吹いているし、 沙織は沙織で眉間に皺を寄せ、思案に明け暮れている状態ではにっちもさっちもいかない。 そんな時、天井から吊り下げられているスピーカーからアナウンスが入った。 ――金星行きJAXA201便にご搭乗のお客様にお知らせいたします。 ……ただいまから搭乗手続きを開始いたします。 Ladies and gentlman…… ―― 「京介氏……すみませぬが、拙者の乗るスペースシップの発射が間もなくの様でござる」 「……沙織、申し訳なかったな……発射前だってーのに」 沙織は一人ひとりと別れの握手をすると、免税店で買った耐熱服を入れた布団袋のような 大きな包みを背負って、出国ゲートへと向かった。 ゲートをくぐる際に一度だけ振り返り…… 「皆の者……さらばでござる。金星に着いたら、必ずメールいたしますゆえ~」 そう言うと大きく手を振って、旅立っていった。 396 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 48 27.40 ID 6xwiZxR10 [7/9] 俺たちが搭乗する予定の火星行きと木星行きのスペースシップの発射までは、まだ時間に余裕があった。 もしこのまま決まらず搭乗手続きが始まったら、俺は木星行きのチケットを掴んで走るつもりだ。 俺は桐乃も黒猫も、一人で木星へなんか行かせたくはない。 それにしても、あやせのヤツ――俺が昔、おまえに惚れていたことを逆手に取りやがって。 俺があやせをチョットだけ睨みつけると、あやせは俺の視線を避けるようにして俯いた。 寂しそうな表情を見せる彼女を見て、俺は胸が痛んだ。――おまえだって、一人で行かせやしねえよ。 あやせに目配せすると、彼女は少しはにかんだ笑顔を見せて俺の傍に寄ってきた。 「……あやせも心配すんな。……俺がおまえをボッチになんかするわけねえだろ」 これじゃ搭乗手続きが始まっちまう。何かいいアイデアは…… 何気なくロビーに設置されているテレビを見ると、今回の惑星移住計画について政治家が意見を述べていた。 (こういう政治家はずっと地球にいるんだろうな)あれ? 政治家? 「なあ、あやせ……おまえの親父さん、たしか議員だったよな?」 あやせの親父さんが議員をやっていることは知っていた。 いつだったか俺があやせと桐乃のオタク趣味で対峙した時、俺は警察官である親父に協力を求めたことがある。 その時に俺の親父は『新垣議員』て言ったんだ。 市議会議員なのか県議会議員なのかまでは分からねえがな。 「……あやせの親父さんに頼んで、 この木星行きのチケットを火星行きに代えてもらうわけにはいかねえかな?」 俺がそう言うと、あやせの顔がぱっと明るくなり、携帯を取り出し早速親父さんに連絡した。 あやせの親父さんでダメなら、もうこれ以上方法がねえ。 彼女が電話を切り、携帯のフラップを閉じる。 「お兄さん……まだはっきりと分かりませんが、もしかしたら出来るかもしれないそうです。 ……ただ、お父さんから、あまり期待しないでくれと……」 「いや、話を聴いてもらえただけでも充分さ。あとは待つしかねえよ」 搭乗時間まであと1時間を切ったところだ。 沙織の乗った金星行きは発射台に据え付けられ、メインブースターが点火されるのを待つだけになっている。 俺は神に祈るような気持ちで時計を見つめていた。――沙織、おまえには感謝してもしきれねえよ。 俺が時計をジッと見つめていると、あやせの携帯が着信音を発した。 俺達の視線があやせの携帯に一斉に集まる。 ゴクリと固唾を飲み込み、携帯の発信ボタンを押すあやせ……。 「……はい、あやせです。……あっ、お父さん! どうだった!?」 397 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 49 07.76 ID 6xwiZxR10 [8/9] あやせと親父さんの通話は10分以上に及び、 ようやく通話が終わったのは搭乗手続きの5分前だった。 しかし、あやせは不思議そうな顔をしたまま首をかしげて押し黙ったままだ。 「あ、あやせ……親父さんはなんだって? チケットの変更は出来そうなのか?」 「……え、ええ。……変更は出来ることは出来るそうですが……」 あやせの口振りは、奥歯に物が挟まったという表現がぴったりだった。 俺は申し訳ないとは思いながら、あやせに少し、きつく言ってしまった。 「あ、あやせ! もう時間がねえんだ。どうすりゃいいんだ?」 「……あっ! お兄さん、ごめんなさい。……でも落ち着いてください。 わたしたちの行き先は火星でも木星でもありませんから」 ――じゃあどこなんだよ。 沙織と同じ金星か? それとも太陽に一番近い水星なのか? ――人間が住めんのかよ! まさか、冥王星とか言うんじゃ……到着する前に俺たち全員死んじまうっつーの! 「わ、分かった、あやせ。……きつく言っちまってすまなかった。……で、行き先はどの星だ?」 「……ニューカレドニアだそうです」 「「「………………」」」 「……どこだって? あやせ?」 「ですから、お兄さん……ニューカレドニアです。南太平洋の……」 今世紀の地球上に残された、地上最後の楽園ニューカレドニア。 島を囲む珊瑚礁は世界遺産にも登録されたリゾート地だ。 取り敢えず地球から他の惑星に移住しなくてもよくなった俺たちは、 あやせから話を聞くことにした。 「お父さんの話によると、地球以外の惑星に移住する必要は……絶対ではないそうです。 地球上にもまだ、いくつか移住先が残っているそうで……」 398 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 22 49 53.94 ID 6xwiZxR10 [9/9] あやせから聞いた話を、俺なりに理解するとこういうことだ。 そもそも他の惑星への移住計画は、各国で工業化が極限にまで達し、環境問題を惹き起こしたことが発端だった。 だもんだから、ニューカレドニアを始め世界的なリゾート地など、 もともと工業化が厳しく制限されている地域では、快適な生活に慣れた現代人にはむしろ住み辛く、 逆に人口の減少を招いているそうだ。 「……なるほどな。……たしかに筋は通ってるよ」 俺とあやせの会話を黙って聞いていた黒猫が、ボソッと呟いた。 「……ねえ、先輩? それが事実だとすると…… いまなら、ニューカレドニアは幾らでも人が移住できるのよね?」 「ああ、たしかに黒猫の言う通りだと思うぜ……」 「「「「沙織!」」」」 ようやく俺たちは、金星に向かって旅立った沙織のことに思い至った。 ――ヤッベー……今ならまだ間に合うかも知れねえ。 そう思って俺たちは、発射台の見えるガラス張りの壁へ一斉に駆け寄った。 そこには……すでにメインブースターに点火され、水蒸気の白煙をもうもうと上げながら、 発射台から離れてゆく沙織の乗ったスペースシップがあった。 「………………間に合わなかったか」 金星へ向かって上昇を続ける、沙織の乗ったスペースシップを見上げながら俺は、後悔の念に苛まれた。 あの時、俺が無理をしてでも沙織を引き止めて置けばと……。 「……先輩、あなたのせいじゃないわ。……あの時は仕方のないことだったのよ。 それに、先輩……沙織には会おうと思えば毎日会えるわ」 黒猫は俺を見つめると『ほら、あれを見て』と言って、沙織の乗ったスペースシップを指差した…… いや、その遥かかなた……朝焼けの空に煌いている一番星、金星を指差していた。 「……そうだな、沙織は一番星になったんだな」 「ええ、天気がよければ夕方にも会えるわ」 俺はこれからも沙織に会える。――それも天気しだいで、一日2回もだぜ! すでに沙織の乗ったスペースシップが、肉眼では捉えられなくなったところで、 ふと、桐乃やあやせが居ないこと気が付いた。 「……黒猫……桐乃とあやせの姿が見えねえけど……あいつらどこへ行った?」 「……移住先がニューカレドニアと知って、免税店へ水着を買いに行ったわ」 (完)
https://w.atwiki.jp/fmic7743logexeworks/pages/117.html
ノッブあれこれ 織田信長(弓)・(狂)・(讐) 女性。織田信勝からは「姉上」と呼ばれている。 経験値氏によるギャグ漫画「コハエース」が初出。"魔人アーチャー"とも。コハエースやぐだぐだオーダーではギャグ・メタネタ・パロディなんでもありだが「Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚」や「帝都聖杯奇譚 Fate/type Redline」ではシリアスな活躍をみせる。 アーチャー(イベント配布)・バーサーカー(水着版)・アヴェンジャー(「魔王信長」)がいる。 ノッブやおき太さんなどの「ぐだぐだ時空」は汎人類史とは異なる世界らしい。ぐだぐだ組は経験値氏がキャラデザ・設定を担当するサーヴァント達。ノッブたち戦国武将とおき太さんたち新選組を中心に日本の歴史上の偉人がメイン。 本物信長 男性。明らかに画風の違う織田信勝も"弟"として認識しているもよう イベント「オール信長総進撃 ぐだぐだファイナル本能寺2019」に登場した本物の織田信長。時系列的に一応「生前の本人」ではなく「サーヴァント」のはずなんですが…… 歴史の教科書とかで見かける肖像画 のあの姿で、顔に黒い影が入っている。メガネはかけていない。 一応ノッブとは別人ではあるというか史実通りの織田信長のはず。マジでなんだったんだろうな……本物信長…… 森くん「解像度の低い大殿」 ノッブ「教科書で見たかのような模範的なわし」 カッツ「……やだなぁ、姉上が男(・)なわけないじゃないですか。」 杉谷善住坊さんが言及した「織田信長」 男性。話に出てくるだけで具体的なビジュアルは現時点で判明していない。 いわく、「虚無でも冷徹でもなく、単にどこにでもいるような普通の男」らしい型月の"普通の男"って結構な確率で逸般人なんですがそこらへんはどうなのかしら? 英霊の座にはいない一応なぎこさんのように生前に偉業を成し遂げた人でも"英霊の座に登録される"ことを拒否できるシステム的なものがあるらしい 杉谷さんや彼を改造した果心居士さんが「汎人類史出身かどうか」は名言されていない。一応彼女(?)が作った「加藤段蔵」・段蔵ちゃんに育てられた「風魔小太郎」の2人に関しては汎人類史のサーヴァントではある。 アルトリア族とノッブ族、どっちが多いの 川澄綾子と釘宮理恵さんのCV担当数で比較しました。 ノッブ系はぐだぐだイベントのたびに胡乱なノッブが増えるし、川澄さん(フォウくんのCVも担当)はバレンタインイベントのボイス収録時に「"フォウくんの台詞"の台本が机にどっさりと積まれた」エピソードがあったような… ざっと数えたがちびノブ系がお茶ノッブ込みで11役、弓ノッブ、狂ノッブ、讐ノッブ×3で16役、川澄さんがアルトリアで14役にアンメア2種で2役にればのんとフォウくんで18役だからやはり川澄さんのが多いな -- 2022-09-17 (土) 20 53 10 釘宮さんはクレオパトラもだから17役かな。川澄さんは厳密に言うと女神ロンゴミニアドとヒロインZ(※霊衣じゃない方)は槍王やXとは別枠の固有ボイスなんでアルトリア系が更に2人追加、そしてぐだぐだ帝都のアルノブとアーサーの承認(プロトマーリン)も入れると22役 -- 2022-09-18 (日) 09 39 47 (「 ノブ - FGO(フェイトグランドオーダー) 攻略まとめwiki 」コメント欄) 時期的には「ぶっちぎり茶の湯バトル ぐだぐだ新邪馬台国 地獄から帰ってきた男」の頃。この後「アルトリア・キャスター(狂)」「ドライノッブ」「謎のヒロインXX(オルタ)」が追加されている。 織田信長(合計5役)織田信長(弓)・織田信長(狂)・魔王信長(讐) 「魔王信長」はあらゆる織田信長の可能性の集合体なので3つの再臨段階全てが別キャラ。弓ノッブに近い「織田信長」・少年寄りの「織田吉法師」・魔王っぽい感じの「魔王信長」 ちびノブ系(合計11役)ちびノブ・でかノブ・ちびノブ戦車・ノブ選組・メカノッブ・ノッブUFO・かぶきノッブ・埴輪ノッブ・凶つ神(*1)・キンノブ・お茶ノッブ・ドライノッブ その他 織田信勝のバトルモーションにノッブ・ちびノブが乱入している クレオパトラ意外なんですが水着などの派生霊基がまだないんですねえ アルトリアとその派生(合計17役)セイバーさん・セイバーリリィ … アルトリア(剣)/アルトリアリリィ(剣)/水着アルトリア(弓) セイバーオルタ … アルトリアオルタ(剣)/サンタオルタ(騎)/水着アルトリアオルタ(騎) 剣(エクスカリバー)のかわりに槍(ロンゴミニアド)を持ってる … アルトリア(槍)/アルトリア(槍オルタ)/水着アルトリア(裁) サーヴァントユニヴァース … 謎のヒロインX(殺)/謎のヒロインXX(降)/謎のヒロインXオルタ(狂)/謎のアイドルX(降)/謎のヒロインXXオルタ(降) アルキャス … アルトリア・キャスター(術)/水着アルトリア・キャスター(狂) 専用ボイスつきエネミー … 獅子王 / 謎のヒロインZ アン・ボニー&メアリー・リード(通常・水着)「アン・ボニー(CV.川澄綾子)&メアリー・リード(CV.野中藍)」で2人一組のサーヴァントですが、バトルグラでは基本的に片方(*2)しか登場しない。 レディ・アヴァロン そのほか(非プレイアブル) … フォウくん / アーサーの宝具ボイス(プロトマーリンによる"承認"アナウンス) / アルノブ(グラフィックは「ノブ選組」) / スーパーメカノッブマークⅡ(何故かアルノブのボイスが流用されている)アルノブというのはイベント「ぐだぐだ帝都聖杯奇譚」の裏面で登場した"第五次聖杯戦争組の声で喋る"ノブのうち1人です。「ノブブ…ノブブー!!(エクス…カリバー!!)」
https://w.atwiki.jp/ixgchord/pages/66.html
楽曲情報 アーティスト名 アズマリム 作曲 まふまふ・田中秀和(MONACA) 編曲 まふまふ・田中秀和(MONACA) 作詞 畑亜貴 備考 コード ①イントロ最後 きょうもなんだっけ挨拶〜 Key=D Em7(9) GM7/A DM7(9) F@ Em7 GM7/A Ⅱm7(9) ⅣM7/Ⅴ ⅠM7(9) bⅢ@ Ⅱm7 ⅣM7/Ⅴ 由来:裏コード型 ②Aメロ 決めたって忘れちゃったおつおつおー! Key=D Em7(9) GM7/A C@ B7 Ⅱm7(9) ⅣM7/Ⅴ bⅦ@ Ⅵ7 由来:裏コード型 ③サビ 訳分からないけど Key=D Bm7 Am7 D7 Ab@ GM7 A7/G F#m7 Bm7 Ⅵm7 Ⅴm7 Ⅰ7 bⅤ@ ⅣM7 Ⅴ7/Ⅳ Ⅲm7 Ⅵm7 由来:裏コード型 ④Cメロ いい感じで一緒に居られそうだから Key=D Em7(9) F#m7 GmM7 C@ Em7/A A7 Ⅱm7(9) Ⅲm7 ⅣmM7 bⅦ@ Ⅱm7/Ⅴ Ⅴ7 由来:SDm型 解説 ①②③はオーソドックスな裏コード型。bⅢ、bⅦ、bⅤと3種類出てくるので聴き比べてみよう。 ④はGmM7のベースをGからCに変えると発生する。GmM7も分数augとして表記すると、Bbaug/G→Bbaug/Cとなる。 同様のコードが同じ田中秀和作編曲のアマカミサマにも登場する。
https://w.atwiki.jp/wiki1_test/pages/5425.html
https://w.atwiki.jp/dtieasdtma/pages/183.html
霊長類の分類 霊長類の進化 霊長類とヒト ヒトの進化
https://w.atwiki.jp/duelrowa/pages/169.html
肉体派おじゃる丸――そんな不名誉なあだ名を付けられ、ネットで馬鹿にされている男が居た。 彼は非常に優れた肉体美の持ち主だ。胸囲120cmを誇り、上半身に比べて下半身が貧弱なわけでもない。絵に描いたような身体は世のホモ達を魅了する――はずだった。 しかし自慢の肉体よりもおじゃる丸のような特徴的なおかっぱをネタにされたせいで彼は「肉体派おじゃる丸」というふざけた名前で様々な動画を作られてしまう。 ホモビデオに出演するというたった一度の過ちが原因でこれほどまでに嘲笑されるとは、彼自身も考えていなかったことだ。 もしも自分がホモビにさえ出ていなければ――そんなことは何度も考えた。 TDNや野獣先輩といった有名なホモ達に対する怨みも凄まじく、彼らさえ居なければ自分はここまでネタにされていなかっただろうと思っている。 事実として始まりの男であるTDNさえホモビに出ていなければ野獣先輩が発掘されることはなく、肉体派おじゃる丸がこうも馬鹿にされる日も来なかったのだろう。 そもそも彼の肉体は本来ならば褒められるべき圧倒的な筋肉量を誇る。だからホモのオカズにされるくらいなら肉体派おじゃる丸も納得出来た。自慢の肉体でホモが抜くなら、名誉なことかもしれない。それほどまでに価値を見出してくれたという証拠なのだから。 だがホモガキ共から馬鹿にされるのは我慢ならない。ホモガキの大半がヒョロガリだろうにネットを駆使して自慢の肉体を嘲笑する。――どうせ目の前では何も言えないくせにネットで好き放題にバカにする彼らを肉体派おじゃる丸は許せない。 だからこの決闘のルールを聞いた時、肉体派おじゃる丸は思わず笑ってしまった。 『詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの『説明書』に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる』 ――これは肉体派おじゃる丸にとって最高の褒美だ。 何故なら肉体派おじゃる丸は淫夢やホモガキを本気で嫌っているし、自分がホモビに出演した過去を悔いている。 このまま永遠に嘲笑され続ける人生だと諦めていたが――ようやくこの運命から開放される好機が訪れた。 叶えたい願いはもちろん、淫夢の根絶だ。 しかし淫夢を完全に滅ぼせば憎きTDNや野獣先輩も救われてしまう。あいつらにはもっと苦しんでもらわなければならない。特にTDNは何故か世間的には許されたみたいな雰囲気になっているのがまた肉体派おじゃる丸にとっては腹ただしい ホモガキを全員この世から決してやりたいが、これも同様の理由で無しだ。TDNや野獣先輩を追い詰めるにはホモガキの存在が必要不可欠。皮肉にも肉体派おじゃる丸にとってホモガキは一定数いなければならない存在である。 だから無難に歴史改変して、自分がホモビに出演した過去を無くす。そうすることで必然的に現代(いま)の世界は変わり、肉体派おじゃる丸という不名誉なあだ名も消え失せるだろう。もちろんくだらない動画の数々から自分の姿も消えるに違いない。 「(これ以上ない最高の機会に)笑っちゃうんすよね」 肉体派おじゃる丸はハ・デスに感謝し、満面の笑みを浮かべていた。 冥界の魔王に感謝するという行為は唯一神GOすらも許さないかもしれないが、淫夢出演とかいうクッソ汚い黒歴史を取り消せる絶好の機会だからね、仕方ないね。 さて。優勝狙いを決意した肉おじゃの行動は早い。 I♥人類というふざけたTシャツの男と黒の剣士を見つけると、彼ら目掛けて全速力で駆け抜ける。 拳をグッと握り締め、全身に殺意を漲らせる。相手は自分よりも年下の男二人――しかも圧倒的な筋肉量を誇る肉おじゃと違い、ひょろひょろで筋肉が全く無いように見える。特に黒の剣士の方は女顔だから更に弱そうだ。 Tシャツの男は腕に装着した謎のカードデッキから5枚を引く。――アレは間違いなく遊戯王カードだ。遊戯王は日本人ならば誰もが知ってるであろうカードゲームであり、肉おじゃだってその存在は知っている。当たり前だよなぁ? だがたかだか遊戯王カードでこの自慢の肉体を傷付けるなんて無理だ。海馬瀬人のようにカード手裏剣でもマスターしているならともかく、あんなものはアニメや漫画の世界だから出来る謎技術。そんなことが現実で出来るわけないだろ、いい加減にしろ! そして女顔の黒の剣士は紫色のライトセーバーを構える。遊戯王カードなんかよりはよっぽど痛そうだが、ライトセーバーなんて所詮は架空上の武器。つまり黒の剣士が持ってるアレはライトセーバーを模したオモチャだと肉おじゃは判断する。きっとトイザらスか何かで買ったものだろう。 「そんなオモチャで対抗しようとするなんて、笑っちゃうんすよね」 あまりにも滑稽な二人組を肉おじゃは嘲笑い、先ずはTシャツの男へ殴り掛かる。 その鍛え上げられた筋肉は見事、男の頭部を―― 「――悪いな、あんたの相手は俺だ」 ――破壊することなく、黒の剣士がライトセーバーにてその攻撃を防いだ。 厳密にはライトセーバーではなくカゲミツG4。GGOというゲームで彼が愛用していた剣だ。 そして黒の剣士キリトは真っ直ぐとした瞳で肉おじゃを見据えた。 「この変なおっさんが初陣か。そんじゃ、ま――ゲームを始めようか」 そしてTシャツの男――空もまた自分が殴り掛かられたことに一切動じず、堂々とゲーム開始を宣言する。 「クキキキキ……」 ただのオモチャだと思っていたライトセーバーが本物で肉おじゃが怒りを募らせる。 彼の鋼の筋肉はカゲミツG4とまともにぶつかり合っても切断されることはなかったが、流石に生身の肉体でライトセーバーを相手にするのは痛い。 当然本来の肉おじゃはこんなにも化け物染みた身体能力があるわけじゃないが、皮肉にも淫夢としてミーム汚染されたことでこの決闘場では補正が掛かっている。 怒り狂った肉おじゃは一心不乱に拳を何度も振るう。なんだこのパワー系はたまげたなぁ。 しかしアインクラッドの英雄、黒の剣士キリトは難なくそれらの攻撃を対処した。いくら肉おじゃのスペックが上がろうとも技量ではキリトが勝る。 「……これじゃ俺は何も出来ることがねえ。ちょいと試してみるか」 空は自分が引いた5枚のカードを眺める。そのどれもがモンスターカードであり、このデッキの重要な要素である罠カードが何一つない。 だがカードゲームというものは、何もドロー力が全てではない。ハッタリや駆け引き――そして様々なカードの効果を用いて戦うのがカードゲームというものだ。ドロー力に恵まれなくても、好きなカードを手札に呼び込むためのサーチカードだって多彩に存在する。 「俺はトリオンの蟲惑魔を通常召喚!更にトリオンの蟲惑魔の効果発動!トリオンの蟲惑魔は召喚に成功した時、デッキから落とし穴かホールのカードを1枚サーチすることが出来る」 空がトリオンの蟲惑魔を召喚すると、デッキから粘着落とし穴をサーチする。この際に空はルールに則りちゃんとサーチしたカードを肉おじゃに見せているのだが、肉おじゃはテキストの確認すらしようとしない。もっともこの殺し合いと同等の決闘で、しかもキリトがいる状況だ。別にゲーマーなわけでもない肉おじゃにそこまで頭が回るわけない。 しかし落とし穴――その言葉だけで何か厄介なものを手札に加えたことは推測出来る。何故かモンスターが実体化しているし、この場で遊戯王カードが如何に重要かを肉おじゃは察する。 「カードを1枚伏せて、俺はターンエンドだ。――さあ、お前のターンだぜ」 空は律儀にターンエンドの宣言をする。この場ではモンスターはバトルフェイズという概念すらなく、攻撃可能なのだが――あえて彼は攻撃すら宣言せず、ターンを終了した。 「なんでもありの決闘でターンなんて、笑っちゃうんすよね」 わざわざカードゲームのルールに則り、まるで正々堂々とデュエルでもしようとしている空を肉おじゃは嘲笑う。 何がターンエンドだ。これは決闘――純粋な力較べであり、ルール無用だ。ターンなんて概念はないはずである。 しかし肉おじゃの前に立ちはだかっている黒の剣士は空の理解不能な行動を微塵も疑わず、肉おじゃの相手に集中している。――まるで空を信じているとでも言うかのように。 「なんすか、その目は……」 その目が――空を信じて肉おじゃを見据えるその瞳が、肉おじゃにとっては何よりも苛立つ。人間なんて醜い生き物だ。たった一度の過ち――ただそれだけで淫夢ファミリーの一員として「肉体派おじゃる丸」という不名誉なあだ名を付けられ、世界中の人々から馬鹿にされてきた。そしてどうしてだろうか――肉おじゃはこの決闘に巻き込まれてから自身の名前すらも思い出せない。 肉体派おじゃる丸という憎悪してる名は鮮明に覚えているのに、何故か彼の名前は忘却の彼方に消えてしまった。――淫夢の肉体派おじゃる丸として決闘場に召喚された彼は、本来の名前すら剥奪される。ハ・デスはホモビ男優の記憶や在り方すらも捻じ曲げたのだ。 「なんというか……人間を信じるなんて、笑っちゃうんすよね……」 肉おじゃは人間不信だ。淫夢で浸透してから、常に誰かに嘲笑われてるような感覚に苛まれている。 そんなどうしようもない運命から逃れるためならば――目の前の剣士も、目つきの悪いゲーマーも喜んでこの手で屠ろう。 哀しき怪物は一度キリトから距離を取り、支給されたカードを天に翳す。 「これが魔法カードか……!」 肉おじゃの右腕の筋肉がみるみるうちに凝縮され、ただでさえ逞しい腕が更なる厚みを増していくのを見てキリトは戦慄する。 鋼鉄のような肉体――そんな言葉すらも今の彼を表すには、あまりにも足りていない。 肉おじゃが発動した魔法カードはゴッド・ハンド・クラッシャー――神のカードの1枚、オベリスクの巨神兵の技名を冠するカードだ。 過酷なデスゲームを生き抜き、クリアへ導いた黒の剣士も。天才ゲーマー兄妹の片割れも。神の一撃を受ければ間違いなくその命を散らすことだろう。 「フフハッ。これは神の一撃らしいすよ。もうあんた達も、終わりっすね!」 支給品の説明には神の一撃と記載されていた。この目でトリオンの蟲惑魔が実体化するのを見るまでは遊戯王カードなんて何も意味が無いハズレ支給品だと思っていたが、どうやら大当たりだったようだ。 勝利を確信した肉おじゃが拳を振り上げた瞬間―― 「この瞬間、罠カード発動。粘着落とし穴!」 肉おじゃの身体は落とし穴に嵌り、その攻撃も地面に打ち付けるだけで不発に終わる。 落とし穴の大きさはそれほど大きくない――一般人でもすぐに自力で戻れる程度のものだろう。だが落とし穴の底には粘着質な液体が溜まっており、それによって肉おじゃは身動きを封じられた。 「クキキキキ……!」 肉おじゃが凄まじい憎悪を募らせた表情で空を睨む。I♥人類という文字の書かれたTシャツが、彼の憎しみを更に高める。 「神の一撃だかなんだか知らねえが――人類ナメるんじゃねえ」 罠カードの発動には1ターンの経過が必要だ。それを考慮した上で空は即座にターンエンドを宣言した。 肉おじゃがトリオンを見た時――彼の口元は僅かに笑っていた。他の者ならば見逃してしまうかもしれないその一瞬の挙動を空は見逃すことなく、彼に何らかのカードが支給されていることを警戒していたのだ。 そして案の定――というか予想以上にとんでもないチートカードが支給されていたから、空はすぐに粘着落とし穴を発動した。 ゴッド・ハンド・クラッシャーには●相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。という効果もあるが、これは任意効果。精神的に余裕がない肉おじゃはその効果を使わず、攻撃手段としてのみ発動した。 もっともそちらの効果を使われてもチェーンして破壊される前に粘着落とし穴を発動したら済む話。つまり肉おじゃは空にゲームで敗北したのだ。 だが空もキリトも決してまだ油断していない。相手は何かまだ切り札を隠している可能性がある――と空が考えていたら、予想的中。粘着質な液体から抜け出した肉おじゃは『強制脱出装置』を発動することですぐさまどこかへワープした。 この強制脱出装置――罠カードなのだが自分自身に使う場合のみすぐに発動出来るという細工を施されている。ゴールドシリーズという特殊なカードであるがゆえに一度使えば消滅してしまうが、それでも肉おじゃはなんとか戦場から脱することが出来た。 あのまま黒の剣士とI♥人類の男を殺したい気持ちも強かったが、あんな未知の技術を使われては勝ち目が薄い。それにゴッド・ハンド・クラッシャーは強力なカードだがその代わり一度使ったら暫く使えないデメリットもある。 「次に出会ったら絶対殺してやるっすからね……」 肉おじゃは憎悪を募らせながら、優勝を目指して歩き始めた。 【肉体派おじゃる丸@真夏の夜の淫夢】 [状態]:疲労(中) [装備]: [道具]:基本支給品、ゴッド・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG、ランダム支給品0~1 [思考・状況]基本方針:優勝して淫夢の歴史から自分の存在を抹消する 1:黒の剣士とI♥人類の男は次に出会ったら絶対殺してやるっすからね…… 2:遊戯王カードはこの決闘で大事すね…… [備考] ※遊戯王カードの存在を知っていますが決闘者じゃないのでルールなどは詳しくありません ※本来の名前を思い出せません 〇 「落とし穴は相手の動きを軽く封じるくらいが精一杯か。……ま、それくらいに制限しなきゃ決闘が成り立つわけねえよな」 空に支給されたデッキ――それは落とし穴を駆使して戦う蟲惑魔だ。特別強い奈落の落とし穴などは入っていないが、それでも粘着落とし穴や落とし穴など本来ならば驚異的な効果を発揮するカードは投入されている。だがモンスターを破壊したり裏守備にすることがそのまま決闘でも適用されるはずがない。じゃなければバランスブレイカー過ぎる性能だ。 もちろんNPCなんかには効果を発揮する可能性が高いが――対人戦では大幅に制限されている。だから肉おじゃも脱出できた。時間を稼いだり、相手の行動を妨害したり――そういう使い方がメインとなるだろう。 ちなみにデッキの解説や遊戯王OCGのルールは説明書に同梱されていた。そして天才ゲーマーの空はそれをすぐに理解した。空から説明書を読ませてもらったキリトも多少は理解している。ゲーマーの彼らはすぐにこの決闘に適応したのだ。 ちなみにキリトと空は偶然にもスタート地点が同じで、情報交換や遊戯王カードについて考察していたところに肉おじゃが襲来した。 キリトが空を信用していた大きな理由はすぐにデッキの性質や遊戯王OCGについて理解したからだ。逆に空もキリトと話して、彼が信用出来る人物だと考えた。デスゲームを生き抜き、生還したという話も彼の瞳を見る限り嘘ではないだろう。 なによりこのデスゲームを開いたハ・デスに対するキリトの怒りは間違いなく本物だ。それは初対面の空にもよく伝わった。 「俺たち自身を駒にしてゲームを始める――か。完全に俺たち人類を舐めた発言だな」 「相手は冥界の魔王らしいからな。それにゲームマスターからしたら、俺たち一般プレイヤーなんて本当に取るに足らない存在なのかもしれない」 キリトの言葉について空は同感だ。完全にこちらが舐められているが、ゲームの運営なんてそんなものだろう。 だが――だからといってキリトと空にこのゲームのクリアを諦める気はない。 「じゃあその魔王様に、人類の可能性ってやつを見せてやろうぜ」 「人類の可能性、か……」 空白に敗北の二文字は無いし、黒の剣士には帰るべき場所がある。待っている彼女が居る。 それにキリトはかつてシステムの力を否定した。システムの力を上回る人間の意志の力――それを黒の剣士は秘めている。 空に「人類の可能性」という言葉を聞いてキリトはヒースクリフ――茅場晶彦との運命の一戦を思い出した。 キリトはプレイヤーで、ハ・デスはゲームマスターだ。だからどうした? 皮肉にも過去にデスゲームを開いた男――茅場のことを思い出し、キリトは前を向く。 「……そうだな、空。あのゲームマスターがどんなシステムを仕組んでも――最後に勝つのは人間の意志だ」 天才ゲーマーの片割れと黒の剣士が手を組み、魔王を名乗る男がゲームマスターのデスゲームに挑む。負けるつもりはないが、油断もしていない。特にキリトはデスゲームの過酷さを嫌というほど経験している。 そして彼らには白やアスナ――大切な人々がいるが、果たして彼女達もこの決闘に参加しているのだろうか? 空と白が。閃光と黒の剣士が揃う時は、やってくるのだろうか――? 【キリト@ソードアート・オンライン(アニメ版)】 [状態]:疲労(小) [装備]:カゲミツG4@ソードアート・オンライン [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2 [思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す 1:空と共闘する 2:アスナやクライン達も居るのか? [備考] ※参戦時期はソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld終了後 ※遊戯王OCGのルールをだいたい把握しました ※アバターはSAO時代の黒の剣士。 GGOアバターに変身することも出来ます。GGOアバターでは《着弾予測円(バレット・サークル)》及び《弾道予測線(バレット・ライン)》が視認可能。 その他のアバターに変身するためには、そのアバターに縁の深い武器が必要です。SAOのアバターのみキリトを象徴するものであるためエリュシデータやダークリパルサー無しでも使用出来ます。SAOアバター時以外は二刀流スキルを発揮出来ません。これらのことはキリトに説明書に記されており、本人も把握済みです 【空@ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版)】 [状態]:健康 [装備]:デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2 [思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す。あまり人類ナメるんじゃねえ 1:キリトと共闘する 2:白も居るのか? [備考] ※参戦時期はアニメ終了後 ※遊戯王OCGのルール及び蟲惑魔デッキの回し方を把握しました 『支給品紹介』 【ゴッド・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG】 肉体派おじゃる丸に支給。 当ロワではこのカードを発動することでオベリスクの巨神兵の技、ゴッド・ハンド・クラッシャーを発動出来る。相手フィールドの魔法・罠カードの破壊も可能だがモンスター破壊効果は失っている。ただし対象が参加者以外のモンスターであれば破壊可能 一度発動すると6時間は使用出来ない 【デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG】 空に支給。奈落の落とし穴などバランスブレイカーになり得るカードは入っていない また破壊する効果はNPCや参加者以外のモンスターにしか発動せず、落とし穴は行動の妨害や時間稼ぎがメインとなる。エクストラデッキ付き
https://w.atwiki.jp/fate_495112834sandy/pages/35.html
. もしも、貴方に優れた能力と劣った能力、二つがあったとして、どちらを伸ばそうと考える? ヴルトゥームは前者だった。 彼は優れた知力があり、あらゆる種族を凌駕する科学技術を産み出す事ができた。 故に彼は科学技術で他種族を圧倒することに注力した。 だが、彼は神だった。 神であるのに、神としては劣っていた。 科学技術という神秘とは正反対の能力に優れている為、他の神々からは軽視された。 彼はどうということはなかった。 プライドなど威厳に固執しておらず、支配や権力に関心がない、彼が一心に赴くのは研究行為である。 しかしどうしてか、根本は神であった。 奇妙な事に神としての本能だったのかもしれない。 知識を与え、救済を与え、罰を与え……それは研究を行う過程に必要だっただけ、なのがヴルトゥームの言い分。 世間体、世界的にみれば結局のところ、彼は神だった。 慈悲がなくとも 愛がなくとも 善意がなくとも 単なる自己満足で、自分勝手で、自分都合で尽くしたとしても――…… そして、宇宙が滅んだ。 何故、滅んだのか? そんなのは簡単だ。ヴルトゥームは科学の力で全てを圧倒してしまった。 神秘を根絶やしに、文明を陳腐に、技術を過去のものにした。 最早、手の施しようがなくなったのである。 宇宙で誰も成す術なかったからこそ、外宇宙より来る白き騎士が全てを灼き滅ぼし、宇宙を終焉へと導いた。 厄介な事だと、ヴルトゥームは頭を抱えている。 あの白き騎士は厳密には『化身』で大本となる神格がおり、それに目を付けられた訳だ。 別に大したことはしていないのに。 支配などには関心がないのに、とんだ傍迷惑な話だ、と。 彼は彼の事をした罪を自覚どころか、罪すらないとさえ思っていた。 ◇ 輝村極道は、己のサーヴァント・ヴルトゥームの最大で重要な欠点に気づいていた。 即ち、執念がない――それに値する感情が無い。 共感ができない欠点は極道も同じなのだが、ヴルトゥームはそれ以上に問題である。 決して、ヴルトゥームに聖杯を獲得する意思がないのではない。 彼が言うに、ある神格に目をつけられたので、その因縁を解消したいというのが彼の望みだった。 悪意がなかったが、目の敵にされて困っているらしい。 奇跡であろうが、叶うのならば叶えて欲しいと。 無理なら聖杯の持つ膨大なエネルギーを研究に活用すると、彼らしい願いである。 ……だが、裏を返せば、別に最悪聖杯が獲得できず、望みが叶わなくとも、まあ別に。……そういう意味だ。 駄目だ。 それでは駄目だ。 ヴルトゥームは膨大な資料を即座に処理できてしまうから、何事も計算式を相手するような態度を取ってしまう。 暗算ができるから、方程式は書かなくていいと回答だけ記入するタイプだ。 彼は火星での戦争で勝ちの目が見えた途端、億劫になり放棄した。 それで己の信仰が衰えようが、まあ別に、と神にあるまじき態度を取って、研究に没頭した。 これではきっと、聖杯戦争をやっていけないだろうと極道は確信している。 彼には『フラッシュ☆プリンセス!』の敵幹部・オトコングのような執念や、 ヤンキラーのような美しさや、 ガキミーラのような狂気すら備えていない。 彼には――本当に何もないのだ。悪い意味で彼は空っぽなのだ。故に、孤独であっても嘆く負の感情すらない。 ならばこそ――極道が自宅にしている場所へ戻れば、ヴルトゥームは参考資料を映像で早送りで流している。 彼が視聴しているのは、どうやら体術などの基本講座。 他にも戦艦や兵器の実際の動きを確認する為に、そういった映像を流していた。 「ちょうど良かった! キャスター。君の為に資料を用意したんだ」 「そうですか。そこに置いて下さい」 極道に顔も向けずにヴルトゥームが答える。 すると、極道はリモコンを操作し、映像を完全に停止させた。極道は饒舌に語る。 「私も一緒に見るからね。『フラッシュ☆プリンセス!』全話視聴会だ! この為に、有給休暇(ユウキュウ)も取った。心行くまで楽しもうじゃないか!!」 それを聞いたら流石にヴルトゥームも顔を向けて、呆れた風だった。 「アナタ、馬鹿なんですか?」 「いいや? 私は真面目だよ。これは君にとって必要な事だ。聖杯戦争が本格化する前に、君も理解を深めなければならない」 「アナタの好きなヒース様という方についてですか?」 「……それは君自身が見つけるんだ」 聖杯という奇跡に極道(ごくどう)の未来を託すべきか。 否、それ以前に、孤独な者の力になるという極道(きわみ)は、がらんどうの神に救いを与えようとしていた。 【真名】 ヴルトゥーム@クトゥルフ神話 【クラス】 キャスター 【属性】 混沌・中庸 【パラメーター】 筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:B 宝具:C 【クラススキル】 道具作成:E+++ 魔力を帯びた器具を作成可能。 ヴルトゥームは近未来の兵器を造作なく量産、展開する事ができる。 領域外の生命:EX かつて猛威を振るっていた宇宙から外宇宙へと渡り、火星に座した。 【保有スキル】 科学の神核:EX 神にして科学を以て神秘と信仰を淘汰したもの。 あらゆる精神系の干渉を弾き、神秘性の高い宝具や英霊ほど攻撃にプラス補正。 宝具と組み合わせれば、広範囲の固有結界や陣地を崩壊させる事も可能。 高速演算:A++ 彼自身が有する演算処理能力。陣地内の情報処理を円滑に行える。 殺戮動植:C 『殺戮技巧』の亜種。 ヴルトゥームは化石状の花を繁殖させ、その芳香で生命を奴隷化させる。 芳香による支配はあくまで精神的なもの為、精神系のスキルで防ぐことが可能。 強力な幻獣。サーヴァントの支配は不可能。 また花の成分に接触した生命は、細胞レベルでヴルトゥームと同質化。 これらを吸収するとヴルトゥームは一時的なパラメーター上昇が望める。 【宝具】 『非幾何学火星演算網(ノン・ユークリッド・マースネットワーク)』 ランク:C 種別:対陣(対神秘)宝具 レンジ:100 知覚能力を利用し、広範囲の時空間を陣地とする。 陣地内のあらゆるものを把握。『殺戮動植』『道具作成』を即座に展開。 また念話とは異なるテレパシーを使い精神会話が可能。 【人物背景】 かつてヴルトゥームは、ある全宇宙を支配し、文明と神秘を淘汰し、彼の趣味趣向を満たす為の実験場とした。 別宇宙で『獣』に匹敵する存在であったが、その宇宙には『獣』の定義はなく、彼に対抗する『冠位』もいなかった。 しかし、異なる宇宙より来る『白き騎士』の襲来によりヴルトゥームは、外宇宙へ逃走を余儀なくされる。 火星に飛来したヴルトゥームは、当時の原住民と交戦、圧倒したのだが、勝ちの目が見えた途端。 当時の火星文明の技術力の底が知れ、億劫になり、戦争を放棄。 信者たちと共に地下へ引きこもり、火星の資源で研究を愉しんでいた。 だが、火星も資源がなくなり、次の目標として『地球』への居住を目論む。 やがて宇宙進出した人類が火星と交流を始めた時代。 ヴルトゥームはある人間に地球の居住に協力を要請するが、人間はこれを拒否。 彼の地球侵略を阻止するのだった。 ヴルトゥームの家系は父にヨグ=ソトース。兄弟にクトゥルフとハスターがいる。 趣味の研究成果を他生命に与える。不死の恩寵を信者に与える。裏切りなどには相当の罰を与える。 神らしく振る舞い、理性的に見えるが、前述にもある通り、かなりの自分勝手。 研究以外の事には向上意識が欠如し、億劫になると途中で投げ出す無責任が極まって、かつて支配した宇宙も無残な在り様になった。 また、億劫になる悪癖で足元が疎かになりがち。地球侵略を阻止された要因もコレである。 クトゥルフとは違い、人類への理解も共感もできない。 故に人類への理解を試みている。 だが、これはあくまで種族単体の研究に過ぎず、人類と分かり合う為ではない。 【外見】 ウェーブのかかった白のロングヘアにビジネススーツを着た中性的な容姿。 【サーヴァントとしての願い】 『白き騎士』を送った神格との因縁を無くす 【マスター】 輝村極道@忍者と極道 【聖杯にかける願い】 極道(ごくどう)の未来を願う その前に、ヴルトゥームの為に力となる 【能力・技能】 中国拳法の心得と短刀と銃の扱いがあり、部下の極道技巧を使用する事も出来る。 また話術で相手の警戒を解く技術を持つ。 『地獄への回数券』 複数の麻薬と増強剤・漢方などが奇跡的な比率でブレンドされたペーパードラッグ。 服用する事で身体強化・再生能力を会得する。 【人物背景】 表は玩具会社『ダイバン』の企画部長。 裏は音羽組傘下二代目竹本組『裏組長』。すなわち極道。 女児アニメ『プリンセスシリーズ』の熱狂的ファン。中でもフラッシュ☆プリンセス!の『ヒース』が大好き。 過去の影響で感情を感じる事がなく、他者との共感ができない。 ただ、最近友達となった忍者(しのは)といる時は、人間らしい情緒がある。 【捕捉】 ヴルトゥームによって複製された『地獄への回数券』または劣化版の『天国への回数券』が裏で流布されています。 同じく、ヴルトゥーム『殺戮動植』の効力がある香水が流行しています。 これによる奴隷化された人間がいるようです。