約 3,196 件
https://w.atwiki.jp/2010summaxima/pages/16.html
気になっていること 時定数の件、5/18に確認して来ました。↑時定数はちょっと短くなるぶんには全然OKです。普通の設定にしておいた方が、いろいろな用途に使えていいかもしれない。(編集ByPistachio) 了解しました。どういう用途でどういう時定数になるのか、なるべく早く解決します。 予定とか ノイズを減らす PMT、シンチの決定(もうこのままでいいきがする) キャリブレーション(いつになるのかききそびれた) HV部がコンセントで動くようにする シンセと直接つなげるようにする(時定数のばして何か入れればいい?) プラスα的な何か(ミューオンとガンマ線をわけるとか、信号ふやすとか) ~6/22 高圧電源してました 6/8.9 高圧電源をやってました。肝心のPMTとの接続が先生いないとわからないらしく、来週までかかってすいません。実験室の普通のケーブルの耐圧が300だか600だかなのできかないとわからない。 高圧のときははんだづけしたところとかに茶色いセロテープみたいのを貼るといいらしい(おまじない) 6/1 回路のICにパスコンをつけました。いまいち不安定なのはどうしてだろう… 電源回路をブレボ上に試作。次の火曜には基盤上にくみたいです。 マイコン部に15V近く入るのが危険だったらこちらでトリガかけた方がいいのだろうか…後手後手ですいません。 5/26 ひたすら五月祭してました。すいません。 必要最低限はすんだので、+αを考えるといい、と先生が仰っていました。他の検出器使うとか、出力信号増やすとか。今は波形の出るタイミングだけみたいなものだから、線源を近づけると音が変わる仕組みにするとか、シンチ2台にしてみるとか、いろいろやりようはあるみたいです。とりあえずそういうの調べるのと、マイコンの仕組みがわかる必要があるんじゃないかと思っています。 5/25 PMTに繋いで5V程度の信号を出す回路が出来ました。つまんないとこ詰まっててすいません。 5/20 宇宙班の原稿しててすいません… 5/19 Charge-Sensitive、時定数15μs程度。 ノイズ20mV,小信号50mV。ベースラインが100mV下がっているので手を加える必要がある。 5/18 時定数の件について。10μs程度を勧められたのは「50Hz程度と言えど信号はランダムに来る為、あまり時定数が長いと信号が重なってしまう」「時定数が長いとキャリブレーションに時間がかかる」ため。 前者については、確率的には、時定数100μsで1秒に1回程度、10μsで10秒に1回程度重なる。今回の用途ではどちらでもいいと思うが、マイコンとの相談の結果一応10μs~20μsの間で作る予定です。 5/13 宇宙班に行ってました。すいません。 Charge-Sensitiveから煙が出たので組みなおします。 先生がいなくて時定数が聞けずじまい…… 5/12 Charge-Sensitive回路を改良。ちょうどの素子が手に入らず、時定数が98.6μs程度になる予定です。 動作確認は13以降にします。 5/12以前 Charge-Sensitive回路を一応作成し、それなりに動作した
https://w.atwiki.jp/30mmcolors/pages/220.html
季節は秋も終わりかけ、稲穂も実る豊穣の季節 そんな最中、季節外れの芽が一つ 少女は恋をした 自分にはそんな感情は無いのかと思っていたが、その時は来たのだ こないだまで暑いと思っていたら、急激に寒くなり始めていたというのに 立ち尽くす扉の前で、彼女の心は再びポカポカに逆戻り。むしろ汗ばむくらい 少女「…すぅぅぅ~~~……。はァァァ~~~……」 一目惚れ 思い立ったら走り出してしまう性格 彼女は勢いよく引き戸を開けると、ズンズンと部屋の奥へと入り、相手の眼前へ そして多くが見守る中 少女「好きです! 私と付き合ってください!」 思いの丈をぶつけていた 中澤「…はい~~?」 深々と頭を下げるその少女に、呆気にとられる【中澤先生】 少女は目をランランとさせて返事を待っていた 教頭「あ~、中澤さん、ちょっとお話聞かせてもらえますかな?」 と、中澤は肩を叩かれた ここは職員室 まぁ当然と言えば当然である というか、肩に置かれた手は、尋常じゃない力の入れ方だ 痛く、心にまで響く 中澤「えっっと、いや~~。僕この子知らないんですけ……ど…?」 教頭「いいですから! 濱崎さん!! 貴方も後で」 少女「あぁ~~はい」 ようやく少女は自分がやらかした事に気が付き 教頭に引っ張られる中澤を見送った ――――― その日の放課後 少女「はぁ~~先生どうなったかなぁ~~」 自宅に帰った少女。【濱崎彩音】は、海岸線に沈む夕陽を家のベランダから見ながらため息をついた 彩音「どうしよ~~~!? 先生、牢屋に入れられちゃうのかなァ!? 私まだ結婚出来ないから保証人にもなれないよ~~!!?」 じたばたと、ベランダからリビングを行ったり来たり ピロン♪ すると、テーブルの上の携帯が鳴る 母からのメールだった 『今日、ちょっと会社の方を夕飯に招待したんだけど大丈夫?』 珍しい、と彩音は少し考えた 父が亡くなって10年、母もようやく再婚を考えたのだろうか。と 『いいよ、連れて来たら♪』 返事を返すと 彩音「さて、ちょっと作っておきますか」 と、先程までうろたえはどこへやら エプロンを着けるとキッチンへ向かった お酒とかって必要だろうか といっても、まだ自分では買ってこれないが 夕刻 母「ただいま~~さぁどうぞ、大きいだけの家でなにも無いですが」 ??「ああっ。さおりさん、いえすいませんお邪魔します」 その声を聞いて 彩音(おっ来た来た…父親候補♪ でもどっかで聞いた声…?) 玄関に迎えに出るとそこには 彩音「先生!!」 自分の想い人がいた 牢屋で冷や飯を食べているはずの…!! 中澤「いっ!? ウッソ…ォ?」 さおり「あら? お知り合いだったの? あ、そういえば、研修で講義してたんでしたわね。ウチのコの高校だったなんて♪」 驚く余韻も冷めやらぬままに、食卓に着くと料理が次々と出てきた 彩音「いや~~自分の初恋相手がお母さんの再婚相手とは さっすがお母さんだね!」 中澤「はぁ? どゆことよソレ」 さおり「そんなんじゃないわよ、まったくこのコったら 最近お母さんの仕事先で大変な事があってね? それで少し元気が無かったからちょっとでもと思ってね。そこの責任者さんでもあるのよ お母さんの上司なんだから。臨時だけど」 彩音「ぇ~~…。でもさっき名前で」 中澤「ここらの人、ほとんど濱崎さんなんだからしょうがないじゃない 只でさえ皆さん屋号で呼び会うから……」 彩音「あぁ~~そっかぁ」 それを聞いて、ポンッと彩音は手を叩いた さおり「それより初恋相手がってどういう事ですか?」 自分の娘と上司を交互に見つめ、そして軽く睨まれる中澤 中澤「あっいや…。話すと深~い訳があるような。一言でも済むような……」 彩音「ああ。それはまだ私の片想い」 さおり「それで最近学校に楽しそうに行ってたのね 化粧まで聞いて来たの初めてだったから、何事かと思ったわよ」 中澤「いや、まったくどこでそうなったんだか……」 さおり「あんた、ひょっとしてこんな感じが好みなの?」 そう言って、上から下までマルっと見定められる 背は、結構高いはず。歳ほど腹も……出てないはず 顔は…EXMでやらかしたから、ハンサムでは無くとも、シブい魅力は出て来たのではないか? 中澤はふと、鼻で笑う元上司の顔が目に浮かんだ… 中澤「こんなって……」 彩音「お母さん、見た目じゃないよ。なんか惹かれたの 授業を聞いて、この人の事好きだ~…って」 中澤「………」 中澤は少し照れながら箸を進めた さおり「へぇ~~。でも、せめて高校くらいは出て貰わないとねぇ」 彩音「そう言うお母さんこそ! いつまでも独りでいないで、仕事先で誰かいないの!? 先生の同僚さんとか」 さおり「あ、思い出したわ」 彩音「え!? ほんとに居るの!?」 少女が目を輝かせて、母からの返事を待っていると さおり「ねぇ、彩 明日施設に来てみない? 同じくらいの子達がいるのよ もしかしたら、あの子達が元気になる切っ掛けになるかも」 彩音「はぇ…?」 予想だにしない答えが返ってきた さおりは、長年戦地から帰った兵隊のマインドケアや、寝たきりのおじいさんおばあさんのディサービスをしている 今回も、急だがお給金がいい施設が急に出来たと赴いたのだ 大変な仕事とは、彩音もなんとなく理解しているつもりだが… 中澤「でも、さおりさん。うちは……」 さおり「いいんです、何もなく幸せに暮らしてる裏に何があるのか…… 1つの社会勉強ですよ。中澤さん、このコのためと思って…」 さおりはすっと微笑んだ 中澤はふぅと息を吐くと、ゆっくり立ち上がり 中澤「ごちそう様でした。じゃあ僕はそろそろお暇するよ」 彩音「あっ。はい…」 中澤「彩音さん」 彩音「あっ。は、はいっ!?」 中澤「良かったらだけど待ってるよ」 彩音「………、はい!!」 その笑顔が咲いたような気がして、中澤は濱崎家を後にした ―――― 夜も耽った河川敷。海岸線から町の方にさかのぼっていると、どこかから声が聞こえた 『発声練習! 箱はここと違って、響くんだから。何もないここで互いが声を響かせるんだ!!』 可愛らしい合唱が、河川敷からここまで聞こえてくる 見ると、コーチが三人の少女についてレッスンをしているようだった 『あ! プロデューサー!! あの人!!』 すると、その少女の内一人が、中澤に気付く すると、コーチとおぼしき人物が、全速力でこっちに向かってくるではないか! 呆気にとられる間も無く、男は中澤の前に立った コーチっぽい人「失礼します! 中澤ヒデヒサ…さんで、合ってますかね!? 申し遅れました。私はこういう者です」 中澤「そ、そうだけ…ど?」 急に丁寧に会釈をしたその人物の名刺を見ると 【芸能プロデューサー(見習い) 真中次郎】 と、書いてあった 中澤「は、はあ。そのプロデューサーが……?」 見ると、その手に握った名刺に、少しだけはみ出た別の紙が見えた 中澤は、同じく両手で名刺を受け取ると、どちらもさっと上着のポケットへ突っ込んだ 真中「実は、今度彼女達は芸能界へユニットデビューが決まっておりまして、ここで、そのための合宿を開いていたのですよ」 中澤「へぇ。なるほどねぇ」 『『『よろしくお願いします!!!』』』 すると、先程の三人も、近くでお辞儀をしていた ……施設のコにも、彼女らに近い者はたくさん居る その生気抜けた顔に比べ、彼女達は中澤の眼に、ひどく眩しく映った 真中「実は、私は用事で少し本社に戻らねばならなくて…。宿泊先は確保出来ているのですが 自主練させるにも、なかなか土地勘が無くてですね。ははは!」 中澤「あ~。だったら、ウチで歌っていって下さいよ ちょうど、観客いっぱい居るし」 真中「本当ですか!? やったぞみんな! デビュー前の初舞台だ!! ありがとうございます…! 中澤さん!!」 『やった~♪ じゃあ、ファン一号ですね! あ、デビュー前だし、0号とか?』 『なんか、ちょっとカッコいいじゃん。ソレ』 『よかったら、サイン貰って下さい! 絶対に貴重になるようにしますんで!!』 そう言って、少女たちは色紙にサインを書き、中澤は押し付けられるように渡された 代わりに、施設の住所と連絡先とを手渡すと、いつまでも手を振る彼女らに見送られ、帰路に着いた ―――― 収容施設。中澤の仮私室 中澤「まったく。こっち名乗って無いのに名前呼ぶし、たぶん…」 メモには、ここの海岸のような略地図に、明らかに海の所に星マーク …あのコ達はここに匿われているのか 渡された色紙の裏に、【逢坂准将】から渡された特別製の薬品を、水で薄めてかけてみる すると、ジワリと文字が浮かび上がってきた 『拝啓 中澤殿。慣れぬ職場でご健勝でしょうか 自分は現在、先程会ったであろう【真中次郎】氏と共に、とある人物を追っています 施設の風俗斡旋に噛んでいたそうで、彼の内部告発のお陰でようやく尻尾が掴めました 国内外から挟み撃ちにするため、現在自分はその国に居りません 【闇影卿】も力添えをくれていますが、この【常務】という人物。裏に相当なバックが付いていると目されます おそらく【攪拌、捕捉、利権受領団体】と言えば、お判りでしょうか また、【彼女たち】の匿い場所は確保できても、EXMが投入出来ておりません 我らも、そちらの応援に向かいたいですが、もう少しお時間を頂けたらと存じます くれぐれもご注意下さい 敬具』 中澤「…忍者ってスゴイねぇ……」 【攪拌、捕捉、利権受領団体】とは、中澤も小川から聞いた覚えがあった 確か【MSC】。和平派だけどめんどくさい団体と聞いた。敵にしても味方にしても厄介という、あまり触らない方がいい組織らしい。これがまた厄介な事に、国のインフラの一部を握って管理もしているのだからまためんどくさい だが、ここも絡んでいるのであれば、状況は確実に動いている… が、まだこちらは孤立無援に近い それにこうしてわざわざ便りを寄越して来た以上、相手にも何か動きがあったのは確かか… 中澤「まったく。勘弁してよ」 ヒデヒサは、ココからも見える、赴任した高校の校舎を眺めた まだこの時代でも残る自然と、それに寄りそうような住宅街は、戦火の爪痕を修復しようと、夜中も工事車両が行き来している だが、真新しい現代的建物と同じ視界に、焼けた柱だけを残すかつての邸宅が共に映る姿は、まだ格差ある戦時中という事を、嫌でも思い出させてくれた 中澤「今さら悔やむ事でもないけど……ねぇ」 少し前 N海の沿岸から近付いたバイロンの潜水艦隊と、SN海の各民間海運会社の修理ドックに、修理と偽装したバイロン輸送船が、同時にEXMを出撃させ、そのまま連合の駐屯部隊と戦闘が始まった 連合の上層部は、辺境の島国の本土を戦場と早々に定め、その通りに動いてしまったものだから、途中の島々どころか、この辺りまで戦火は一瞬で広がった ここも、バイロンの攻撃で焼けたのか、連合の迎撃の巻き添えを喰らったのか もうわかりゃあしない 中澤「色紙。もう汚しちゃったじゃないの」 明かりを消すと、中澤は床についた せめてここが、戦場にならなければいいのだが ―――― 次の日、彩音はさっそく施設へと赴いていた 住宅地より少し離れた少し小高い場所、元小学校だった施設を少し改装した簡易的収容所 そこには、何人いるのかわからないくらい、多くの少女達がいた 実はここに赴任する際、新しい研究施設が、S県O島に作られる事が決定したらしい なので、建築期間の間。施設に囚われていたコ達を、仮に収容する場所が必要だったのだ カモフラージュのために、他にもいくつかあるのだが ここは、その移転先にもほど近く、すでに結構な人数が連れて来られていた さおり「彩~、こっちこっち」 さおりに呼ばれ部屋に入るとベッドに座る少女と中澤がいた 中澤「やぁ、彩音さん。昨日はどうも」 彼女の顔を見ると、中澤は軽く会釈をした 彩音はこの異質な施設の中、二人を見つけて安堵する さおり「この子ね、ちょっとあって今塞ぎがちなの 彩が嫌じゃなかったら話し相手になってあげて」 中澤「さおりさん、やっぱり……」 さおり「いいえ、こういうのはやっぱり人と人の関わりかと思うんです 何度も経験しましたから」 中澤「わかりました、彩音さんこちら117。よろしくしてあげてね」 彩音「117…? えっ、ひょっとして名前?」 中澤「そうなんだよ。ここの子達には名前も何も無いんだ、そういった子達だけど、大丈夫かい?」 彩音「そうか、それは困ったわね…。だったら、117だからイーナちゃんね」 キョトンとする中澤 彩音「やっぱり名前からよ 初めまして~、イーナちゃん♪ 私は彩音って言うの。あ~や~ね♪ 仲良くしよう、ね?」 イーナと勝手に名付けられた少女からの反応は無かった 彩音「これはこれは でも、任せといてよ、ここの子達みんな元気にしてあげるわ」 ―――― それからしばらく彩音が施設へと顔を出すようになった 学校の友達まで連れてくる勢いだ 『すみませ~ん! ここって聞いて来たんですけど~』 彩音「は~い! みんな~、お歌のお友達が来てくれたよ~♪」 次第に施設の中は明るくなっていった 『みんな~! 聞いてくれてありがと~~!』 「………ッ!」 彩音「……」 ―――― 彩音「ほら、一緒にご挨拶しよう?」 「…たまになら……聞いたげる…から」 『うん! 今度は一緒に歌おうね♪』 「……///////」 彩音「…よしッ♪」 新たな夢も、抱ける程に… 彩音「…どうして……どう、して……ぇッ…」 中澤「………」 だが、そうした裏でも、いまだその先を絶つコがいた。以前より格段に減ったとはいえ その度々に、彩音は涙し、また中澤が落ち込んでいるのに彩音は気付いていた ――そんな、ある日の事―― 彩音「中澤さん、ちょっといいかな?」 中澤「えっ?」 地元の漁師さんにお願いして彩音は中澤を海岸沿いに来ていた そこに、大きな洞窟がある。そう言って 彩音「ここは潜戸と言ってね? 神様が日の光を私達にくれたって言い伝えのあるところなの」 ようやく彼女と並ぶと、そこには 海に向かう岸にも関わらず、見上げるほどの大きな空洞が広がっていた 中澤「なんで、こんなところに?」 彩音「こっちこっち」 と、慣れた足つきで先に行く少女に、男はなんとか置いて行かれまいと足を上げる 少しだけ整備された通路を歩いていくと広い空間に出た そこは波に削られて出来た、大きな大きな洞窟 まるで、神話の世界にでも迷い込んだかのような、どこまでも続くかのような光景 そこには小さなお墓と小石を詰んだモノがいくつも立っていた 中澤「ここは……」 彩音「三途の川原なんて呼ばれてるけど、昔から子供はここにってところなんだって あの施設の子達、帰るところがないならここでねって思ったの ちゃんと、ここにあるよって……」 与えた名前。好きだった色。それぞれに、ちゃんと施してあった事に 中澤は、ここまでの思い出がよみがえってくるようだった 彩音「そしたら少しは中澤さんも楽にならないかなって ごめんなさい、お節介でしたか?」 開いた洞穴の入り口から差す光に、ほんのりと照らされ、首を傾げる彼女の仕草に、少し鼓動が跳ねた気がした… 中澤「いや、ありがとう 僕もまだまだだな。君にまで心配かけるなんて ほんと、まだまだ……」 彩音「それは、生きてる限りずっと、ですから… ほら、ちゃんと顔を見せてあげてください……」 中澤は、傍目には誰とも知れぬ、だが、きっと自分とこの少女にはわかる そんなお墓に手を合わせ、二輪の花は、あの子達の事を共に想った…… 地球連合軍N国。県境駐屯基地内 石田「準備は出来ているか、α!」 α「はい、いつでも」 αと呼ばれたのはあの少年 石田「偽造はいくらでもやってやる どうせ軍の汚点、どうなろうと上は無かった事にしてくれるさ」 不敵な笑いを漏らす石田をよそに α「そんなことはいいよ、僕は117さえ戻って来てくれれば」 少年は、手にした写真をじっと見つめる 報告書のモノをコピーしただけの、薄っぺらい紙 何度見返したのか、くしゃくしゃになり、ところどころ汚れがこびり付いていた… α「ようやく…、会えるよ……僕の…117……」 石田はその様子を気味悪そうに目を背ける 石田「どっちにしろ、それが無ければおまえはただの兵士と変わらん、好きにしろ」 α「ありがとう中佐……。中佐も、欲しかったコが…」 石田「は? あんなの後腐れ無くしたに決まってるだろう。さっさと行け。終わる頃に追いつく」 αはその言葉を聞くと、静かに部屋を出ていった 石田「中澤ァ……! これでうるさい蝿ともサヨナラだ」 デスクスタンドの光だけの暗い部屋で 誰も聞いてないだろう作戦が始まろうとしていた… キャンパスを並べる日3へ続く
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/460.html
【劇場版予告・新垣里沙ver】 待ち続けた女、新垣里沙 ガイノイド“pepper”の旅に同行した女、新垣里沙 ― 彼女は待ち続ける 自らの命と引き換えに里沙やpepper生みの親戸倉博士を救ったアイが戻ってくるのを ― 死ぬの禁止って約束したじゃないアイちゃん 発達したシステムが人間に奉仕するNeo Tokyo Cityの老人ホームで暮らす里沙はリゾナンターやpepperの戦いを周囲の人間に話すのが日課だった 「はいはい、リゾナンターですか。 検索してもヒットしませんよ。 あなたは夢を見てたんです」 ― 改竄された過去 「私、長く生きすぎちゃったのかねえ」 ― 夢と現実の境界線を彷徨う里沙の前に現れた一人の女 「アイちゃん、帰ってきたんだね。 昔のままの姿だからすぐわかったよ」 ― 120年の時を越えた出会いは一つのシステムを起動させる。 “ガイノイド、アイとリゾナンター新垣里沙の接触を確認,akシステム始動!” ― ガイノイドアイに己の邪な野望を打ち砕かれた男の残したシステムが復讐を開始した その標的はアイ―「アイちゃん、危ない」 「どうして、里沙ちゃん」 「あの時はアイちゃんがみんなを救ってくれた。 だから今度は私が…」 判明した敵の本拠、WestTokyoCityにある科学技術丁の旧研究施設 ― 「私はその場所を知っている」 アイちゃんには心があるんだから、私の記憶だって伝わる筈 ― 敵の本拠に乗り込むアイに情報を伝える為にチカラを解放する里沙 重なる額と額、交わる心とココロ、そして明らかになった意外な真実―あなたは愛ちゃん、一体どうして ― 「里沙ちゃんの現在は私が守る」 時空を越えた絆を劇場で確認せよ!! モーニング戦隊リゾナンターR 劇場版『Return to the Future』 試写会参加者募集中 第19話 『覚悟』 客席の入れ替えのために無人になった野外劇場で、愛と中澤ネットワークの面々の会談が行われていた。 愛は自分を拘束しようとしない中澤たちのことを訝しみながら、この世界の事情を探ろうとする。 思い思いの場所に位置を占める中澤たち。 一人黒い戦闘服に身を固めたロープウエイの支柱の最上部に腰掛けている。 場を仕切るスーツ姿の中澤によれば、無限に広がる並行世界の存在は、中澤ネットワークも確認していたという。 並行世界が相互干渉して、歪みを生じさせないように自分たちが動いてきたという。 「全ての世界に存在する中澤裕子が助け合ってな」 中澤は愛にいくつかの言葉を呈示した。 「蒼の共鳴」 「吉澤の幽霊」 「ダークネス2級戦闘員 サイバープログラム管理部所属 セキュリティ担当 A6357148」…。 愛が聞いたことのある名前、行ったことのある世界もある。 だが全く思い当たらない名前もある。 愛の言葉を聞くと中澤は頷いた。 異なる世界の壁を越えるだけでなく、一つの世界に複数の中澤裕子が存在することが可能だという中澤ネットワークの特質を告げ上で愛を指さした。 「それに対してあんた高橋愛。 一つの世界には一人の高橋愛しか存在できない。 世界と世界の間の壁を越えるという点では同じやけど、うちら中澤裕子とあんた高橋愛は決定的に異なる存在や」 高橋愛の世界間の移動は、全ての世界で同時に起こる現象らしい。 全ての世界の高橋愛が、同時に次なる世界に移動することで、一つの世界に一人の高橋愛しか存在しない状況を保っている。 そして異なる世界に移動した各々の高橋愛は、独自の判断で動いているらしい これまで旅した世界でリゾナンターの面々に会えても、高橋愛とはすれ違いで会えなかった理由がこれで判った。 「まあわかりやすく言えば玉突きみたいなもんやね。 それともダルマ落としとか」 暢気そうに言ったジャージ姿の中澤を怖い目で睨みつけると、スーツの中澤は話を続けた。 仲間を救うために、世界を救うために動き回る高橋愛の行動は、事態の複雑化の一因となっているという。 「ほんま、どもならんやつやで。 高橋愛っていう女は」 スーツ姿の中澤は愛に一つの提案を示した。 全ての世界は自分たち中澤ネットワークが守る。 事態を複雑にする要因の一つである高橋愛は世界を巡る旅をやめ、今居るこの世界、つまりポロリ星人の世界に留まり続けて欲しいという。 一人の高橋愛が旅をあきらめることが、他の高橋愛の世界間の移動にどんな影響を及ぼすのか、観察してみたいと言う。 「元居た世界に戻れる保証のないあんたにとっても悪い話やないやろう」 中澤の提案は魅力的だった。 愛が同意すれば、解体されたリゾナントの再建にも陰ながら助力するという。 「この世界はおもろいで~。 ぽろり、ぽろりと言い張る姐さんがラスボスやねんから」 仲間と笑って暮らせる日々が戻ってくることを強調する。 旅を止めるといえば、小春や愛佳の笑顔と一緒に過ごせる。 心が傾いた愛だったが、不審な点があった。 自分がこの世界に来る前にいた筈の別の高橋愛と何故交渉しなかったのか? 全ての世界の高橋愛が同時に異なる世界へ移動するという特質に合致しないかに思える中澤の提案を問い糺す。 「自分、まんざらのアホでもないな。 実は空きが出来てきとるんや。 所々の世界にな。 その影響を受けてこの世界にもしばらくの間、高橋愛は不在だった」 これ以上は言わん、察しろと中澤は言った。 愛の顔色が変わる。 「まさか…命を落とした…」 「かわいそうに若い身空で散りはった高橋はんもおる」 だからせめてあなたはこの世界で生きなさいと、若女将風の中澤が諭した。 愛の身に起こる世界間の移動は、一見愛の意志とは無関係に行われているように見えて、愛の意志が重要らしい。 テレポーターである愛が並行世界を巡るという意志を有し続けることで、世界の移動が発生するという。 「つまり並行世界の間でテレポートが行なわれているわけやな」 スーツ姿の中澤は愛に決断を迫った。 現状で自分たちが晒せるカードは全部晒したと言う。 愛の返事はNOだった。 「たとえ私が笑って暮らせても、その笑顔のために誰かが苦しんでいるなら意味はない」 中澤たちは色めきたった。。 「予想はしてたけど鼻持ちならへん主人公意識やな」 「そういうの、うちは嫌いやないけどな」 「悪いことは言わへん。 考え直しやす」 ポロリ星人は沈黙を守っている。 しかしスーツ姿の中澤から余裕は消えなかった。 奇襲を仕掛けた際に、命を奪うことさえ出来た愛のことを縛りもせずに、屋外に連れ出したのには理由があるという。 支柱の上に陣取った中澤の能力は【毒放出】。 体内であらゆる種類の生体毒を生成し放出することが可能だという。 「あの支柱の上からは久住小春や光井愛佳がいるミラーハウスの空調ダクトが丸見えや」 そこに遅効性の毒を叩き込むという中澤の言葉が終わらないうちに、支柱の最上部にテレポートしようとした愛だったが…。 光に包まれた愛の体が一瞬、消えたかと思うと、2メートルぐらい上空にまた現れて、舞台に落ちた。 「何をした」 自分が力を発動した瞬間、スーツ姿の中澤が宙を引っかくような動作をしたことが、瞬間移動の失敗に繋がったと直感していた。 スーツ姿の中澤の能力は【空間裂開】。 威力こそ大きいが、有効射程は短いその能力を発動すれば、空間の状態に変化が生じ、愛が認識している空間座標をリセットしてしまうという。 「空間座標の三次元的認識は、1プラス1イコール2みたいな簡単な数式じゃ求められへん」 高次元方程式で表される空間座標の認識に、小数点以下一万分の1の誤差が生じても瞬間移動者にとっては致命的だという。 「運が悪ければ遠い宇宙で流れ星になってたかもしれへんで」 愛がチカラを発動させる際に生じる僅かなタイムラグ。 その瞬間を狙って【空間裂開】を発動することで、愛の翼を打ち折ることが出来ると勝ち誇った。 「うちのこのチカラの前にはあんたは無力だ」 「戦いには相性というものがあるからなあ」 「言うたらじゃんけんのグーチョキパーみたいなもんですわ」 「改めて聞くで。高橋愛、並行世界を巡る旅を止めて、この世界に留まってくれ…」 中澤の声が途切れた。 「悪の親玉のあんたらがなんでそこまでして世界を守ろうとする。ちゃんちゃらおかしいわ」 愛が笑っている。 スーツ姿の中澤はここぞとばかりに声を上げる。 「私たち中澤には中澤の正義がある。悪の組織ダークネスもその手段でしかないわ」 「自分はあんたらの申し出を断る」 愛に迷いはなかった。 小春達や他の入場客の命を平気で危険にさらす中澤たちが守ろうとするもの。 それは世界に住む人々の幸せではない。 「支配だ。 お前たちは自分たちが支配するために世界を守ろうとしてるだけだ」 愛の怒りを、スーツ姿の中澤は平然と受け流した。 愚民たちは支配されたがっている。 未来に影を落とす重大な問題から目を背けるばかりか、今ある危機をいかに克服するかという決断さえしようとしない。 自分たちはそんな愚民たちに代わって世界を動かしているだけだとうそぶいた中澤はジャージ姿の中澤に指示を飛ばした。 「気ー使いの姐さん、飛びっきりきついやつを一発お願いします」 愛を抵抗出来ないようにして、何らかの処置を施すつもりらしい。 よっしゃとジャージの袖をまくりながら愛に近寄る気功使いの中澤の前に立ちはだかったのは…、高橋愛だった。 「??」 「ののは世界の破壊者、高橋愛なのれす。わたしは全てを破壊するのれす」 「しゃべり方以前に着てるものが違うがな」 気功使いの中澤は辻希美に対して、邪魔をしないように告げた。 「大人しくしてへんかったら、たとえポロリの姐さんの秘蔵っ子でも容赦せんで」 「いやれす」 希美は訴えた。 高橋愛を装って喫茶リゾナントを窮地に追い込んだ辻希美は、リゾナントに関わる全ての人々が悲しむところを見てしまった。 リゾナンターの面々に常連客の人たち。 「最初はイタズラしてるみたいで楽しかったけど、みんなの顔が曇っていくのを見てたら、心が痛いよ」 もうこれ以上リゾナントやリゾナンターに手出しはしないでと手を広げる辻の剣幕に、【気功】使いの中澤は辟易した。 「あんたもいい加減大人の事情いうもんを理解せな」 なだめるように己の手を辻の肩に触れさせると、辻の体が震えて崩れ落ちた。 「貴様ぁぁっ、何をした」 ポロリ星人が沈黙を破る。 「大丈夫。 寸勁を軽く徹しただけや」 【気功】使いが説明する。 とんだ茶番や。 スーツ姿の中澤は冷笑を浮かべながらその様子を見守っていた。 もちろん高橋愛への警戒は怠ってはいない。 ふん、まだ跳ぼうとするのか。 一瞬光った愛の瞳。 そして何より【瞬間移動】と【空間裂開】。 同じ領域の能力者同士の感覚が愛のチカラの発動を中澤に教えてくれる。 【空間裂開】を高橋に直撃させる必要はない。 愛が跳ぼうとするこの瞬間に手近なところで、空間を引き裂いてやれば…。 脳天と右肩に強い衝撃を受けて崩れ落ちた中澤は辛うじて見届けた。 彼女の真上の空間に出現した愛が体勢を立て直して、中澤に回転蹴りを炸裂させた瞬間を。 何故防げなかった? 割れた脳天からの出血で視界が狭くなっていく。 タイムラグが無かった? 瞬間移動する際に、タイムラグがあることは愛も自覚していた。 空間座標を三次元的に認識するために時間を費やしていることも判っていた。 愛が瞬間移動の能力を使って空間を跳んだ時、出現先にある空間を押しのける形で出現する。 出現先に何かが存在すれば、物体であれ生命であれ、高橋愛によって引き裂かれる。 そんな惨劇を防ぐために、愛は跳ぶ先の空間の座標認識を完璧に行う。 でも本当に早く跳びたい時には、誰も居らん何も無い空中目指して跳ぶことにしとるんよ。 空間跳躍後の修正のために、精神も肉体も酷使するからあんましやりたくないんやけど。 【空間裂開】で【瞬間移動】を妨害する中澤を倒すため禁じ手を使った愛は、返す刀で突っ込んできた気功使いの顎に回し蹴りを見舞うが…。 …硬い、これも気の一種? ジャージ姿の中澤が体内で練った気を攻撃、防御、回復に使い分けながら戦うことを知った愛は長期戦に持ち込まれることを嫌った。 掌底での打撃を捌き、中澤の背後を取ると首に両腕を回した。 「無駄や」 寸経で愛の肘を破壊しようとした瞬間、中澤は空中に移動させられていた。 「ちょおおおおおおっ」 上空数百メートルから真っ逆様に投げ出された中澤は死を覚悟したが、再び現れた愛の蹴りによって軌道修正させられた。 圧縮空気で膨らまされた動物型のバルーンでバウンドした中澤は、ポロリ星人ショーの入場待ちをしていた子供たちの前に落ちる。 「おーい、ポロリ星人の仲間が攻めてきたぞ」 うわぁと目を輝かせ気功使いに群がる子供たち。 「痛い、こらガキども。やめんかい」 手加減を知らない子供たちに散々な目に遭わされる気功使いだったが、中澤ネットワークきっての武闘派の名にかけて子供たちに手は出さない。 大勢の子供たちに仰向けに手足を抑えられた【気功】使いの顔を、ズボンと一緒にパンツを降ろした子供が跨いで…。 「ぶりんこうんこが輝いて見える~♪」 「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ」 「あなたは能力者じゃないし、戦う人間でもない」 【毒放出】能力者を倒しに行こうとした愛の腕を若女将風の中澤が掴んで離さない。 温泉宿の女将として生きている彼女は、世界を支配するなんて大それた考えは持っていないという。 「せやけどウチがウチのことを信じたらな、誰が信じるというねん」 温泉宿の女将に過ぎない中澤に手荒なことも出来ず、手をこまねいていた。 嘘! ポロリ星人の格好をした中澤が、ローブウエイの支柱を垂直に駆け上がっていく。 【毒放出】能力者を殴り倒すと、その体を肩に担ぎ、愛の目の前に飛び降りてきた。 「地球の重力はポロリ星の二百分の一しかないぽろりよ」 気を失っている【毒放出】者の中澤を舞台に横たえると、愛を掴んでいた中澤に辻希美を面倒見てくれるように頼んだ。 良かった。園内に毒が撒かれなくて。 最悪の事態を回避できたことに、胸を撫でおろした愛だったが…。 速い!! 猛スピードで駆け寄ってきた中澤の右腕が、愛の首を襲った。 これってプロレス技のラリアット。って突っ立ってたら首が持っていかれる。 中澤の攻撃をそのまま受けて後方に回転する。 膝から着地した愛を踏みつぶそうと数十メートル上空に飛び上がる中澤。 その攻撃を避けながら愛は訴えた。 子供たちに愛され、【毒放出】を防いだポロリ星人とは戦いたくない、と。 踏み破った舞台の下に潜り込みんだ中澤は、飛び上がって舞台を突き破り、愛の足を掴んで振り回すと、柱に向かって投げつける。 ポロリ星人の中澤は【超人】的な体力で暴れ回りながら、愛の甘さを糾弾していく。 【気功】使いの生命を助け、【若女将】の中澤に手を出さなかった愛には覚悟が足りないと言う。 「ウチが動かんかったら毒姐さんが毒を放出しとったで。何をもたもたしとる!!」 中澤ネットワークには幾つかの不文律が存在するという。 中澤ネットワークの面々が一つの世界に集結する場合は、集結する世界を統括する中澤の要請あるいは承認が必要だという。 並行世界の融合問題への対策として、世界の破壊者高橋愛に接触するプランに賛同した【超人】中澤は、高橋愛の空白地帯であった自らの統括する世界に網を張ることには同意した。 しかし一般人に危害を加えることまでは認めていないという。 「せやから、ウチが毒姐さんのことを止めたのは筋を通しただけや」 ◇ ◇ ◇ 【変身】能力で愛を翻弄した辻希美は、本来は中澤とおなじ【超人】体質の人間だった。 【超人】のチカラを持て余し、失敗を重ねる辻の指導を、同じ【超人】体質者中澤が行うことになったのは自然な成り行きだった。 中澤の厳しい指導により、チカラの使い方に格段の進歩を見せた希美に中澤は釘を刺した。 能力者といえども無敵のスーパーマンでなければ、不死身の怪物でもない。 能力者だからこそ、おのれの限界を見極める必要があるという中澤の戒めを、希美は素直に聞いていたが…。 ののはアホやった。 それもずば抜けたアホやっちゅーのをウチは忘れとった。 非番で町に出かけていた辻希美が、大火に包まれた一軒家の中に子供を助けるために飛び込んだという知らせを受けた中澤は現場に急行した。 希美の活躍で子供は無事に救出されていた。 しかし希美本人は子供を火から守るために、全身に大火傷を負っていた。 希美が生存していたのは【超人】のチカラの効用ともいうべき強靱な生命力のおかげだった。 全身の皮膚が焼けただれて、痛かったろうにあいつは子供のことを気遣った。 大丈夫、助かって良かったねと子供の顔をのぞき込もうとする希美の前から、子供は遠ざけられた。 この化け物をどうにかしてという親の叫びと共に。 それは火傷で全身の皮がズル剥けで、白い骨まで見えてるののが動いて話しかけたら、大抵の人間はビビってもしょうがないやろうな。 しゃあけど自分らの代わりに子供を助けてくれた者に言っていいことやない。 あいつらをミンチみたいにしたろうと思ったウチを止めたんはののやった。 痛くないはずはないのに、全然平気だといって崩れてしまった顔で笑顔まで作りよって。 【超人】体質とダークネスの科学力のどちらがかけてもののは死んどった。 その二つがありながら、ののの身体が元に戻るには時間がかかった。 処刑かと間違ってしまうぐらい過酷な治療、拷問かと思うようなリハビリの間中、ののは笑っていた。 自分が苦しむ顔を見せたら、ウチがメチャクチャなことをしてしまうと思ったんやろうな。 傷が癒え戻ってきたとき、ののは笑顔をなくしとった。 笑顔だけやない、怒ることも泣くことも出来ん仮面を被ったような表情しか出来んようになってしまった。 崩壊した細胞を再生するために大量投与した成長促進剤、再建しきれんかった顔の皮膚の代用として使った人工皮膚の所為やと科学者は言っとった。 でも、それは違う。 ほんまはウチがののの貌を奪ったんや。 今から思えばののはあの時泣いても良かったんや。 化け物やと恐れたあいつらのことを憎むべきやったんや。 ののの色んな感情は死んだわけやない。 でもその感情を表情に出すことは出来んようになってしもうた。 表情で感情を表せんというこては、他の誰かと感情を共有出来へんってことや。 そんなののをウチは手元に置くことにした。 ののが笑ってみせた時は驚いた。 ほんまは笑ったんやない。 笑っている他の誰かの顔をコピーしただけやった。 収縮自在の人工皮膚、細胞活動の活発な【超人】体質、そして何よりどんな形であれ笑顔を取り戻したいっていうののの強い意志。 色んな要素が絡まりあって、ののは【変身】能力者とし生まれ変わったんや。 そんなののの為にウチはこの遊園地を建てた。 配下の連中、そして他の世界の中澤はウチの頭がおかしなったと思うたみたいや。 能力者を子供の内に発見するためやと誤魔化して建てたこの遊園地には子供たちの喜怒哀楽、全ての表情が詰まっとる。 今のののにはそれが必要や。 コピーでも、擬態でも、物まねでもいい。 【変身】能力を足がかりに自分の顔を見失ったののが、いつか笑顔を取り戻すその日まで、うちがののの生きる場所を作る。 高橋愛よ。 あんたからは世界を破壊する悪意なんて感じられへん。 むしろ何とかして世界を救おうという善意に満ちとる。 あんたが能力を全開したら、たかが【超人】体質のウチなんか秒殺されてまうのに、ウチのこと傷つけたないからこんな風に逃げ回って。 でもな、あんたのその善意が、優しさが世界を破壊するんや。 あんたが旅を続けたいんやったら、ウチの屍を越えていけ。 その覚悟がないんやったら…ウチに殺されろ! 誰にも明かしたことのない、明かすつもりのない胸の内を押しつぶす勢いで、中澤は拳を握りしめた。 「ええ加減にせえよ、自分」 中澤は宣告した。 もう間もなく「ポロリ星人ショー」の最終公演が始まる。 客入れのアナウンスが始まったらミラーハウスに向かい、その中にいる人間を全て殺す、と。 「アンタは誰かの血に染まった手で子供たちと遊べるのか」 逃げることを止めた愛が中澤の顔を睨みつける。 「ポロリ星人なんか生きていくための方便じゃ」 リゾナンターの命を奪うと口にした瞬間、変貌した愛に中澤は目を見張った。 狂気を宿した瞳、おのれが闇に堕ちても守るべき者を守るという意志の力。 …もう一踏ん張り根性見せてみろやっ、高橋愛。 目の前の中澤がいくら【超人】体質を誇るといっても、その体力も移動速度も生物の領域を少し踏み出した程度だ。 ならば、問題ない。 瞬間移動の出現地点の座標を中澤の居場所に設定すれば、自分は中澤を…破壊することが出来る。 そのために必要な演算処理に必要な単純かつ膨大な計数処理には、ポロリ星人ショーの行列待ちをしてる子供たちの脳細胞を少しずつ借りよう。 【瞬間移動】と【精神感応】 二つのチカラが中澤を倒すために動き始め、瞬時に解答は出た。 さようなら、ポロリの中澤さん。 あんたは決して悪い人やないけど、あんたが小春や愛佳の命を奪うというなら、わたしはあなたを…。 「待っててぇぇぇ」 中澤の前に辻希美が立っていた。 先刻【気功】使いの中澤から愛を守ろうとしたときのように。 「そこを退いてくれませんか、辻さん」 冷ややかに愛が告げる。 「だめれす。 退かないのれす」 大きく手を広げて、愛の前に立ちはだかる。 辻希美は言った。 裕ちゃんは本当はとても優しい人間だからヒドいことはしないで欲しいと。 「さっきののは愛ちゃんを助けようとしたんだから、今度は愛ちゃんがそのお返しをする番でしょ」 希美の子供じみた要求に愛は言葉を失う。 愛の様子に力を得た希美だったが、その頬が乾いた音を立てた。 「裕ちゃん、どうして」 「お前はガキや」 中澤は辻を突き放した。 その時の感情で誰を助けるかを換える辻の生き様を難詰する。 「揺るぎない信念を持った者同士やったら、たとえ命のやり取りをした後でも、酒を酌み交わすことも出来るけどな」 心強い庇護者であり続けた中澤の思いも寄らない言葉に、目を白黒させながら、それでも弁解を試みようとした辻に対して…。 「…失せろ。私の前から」 中澤は辻にダークネスからの追放を宣言した。 中澤の一連の言動に作為を感じ取った愛だったが、中澤の断固たる口調が異論を挟むことを許さない。そして…。 「こいつの所為でなんかしらけたわ」 戦意を消した中澤から早急な退去を求められた。 閉園時間になっても姿を見た時は、完全決着をつけると念を押された。 「そん時はさっきみたいにはいかんで」 「ポロリ星人ショー」の最終公演の時間が迫っていることを知らせるアナウンスが園内に響いた。 心の中からこみ上げて来た感情を、表現する術も無く、立ち尽くす辻希美を愛は見守ることしかできなかった。 さあ~、みんなでポロリ大魔王をやっつけよう。 司会者に煽られた子供たちがカラーボールを投じる。 「痛いぽろり、やめるぽろりよ」 泣きながら逃げ出したポロリ星人、飛び上がって喜ぶ子供たち―その数分後。 舞台裏ではちゃちな鏡台の前で中澤がメーク落としをしている。 その様子はどこか寂しげに見えなくもなかったが、鏡に映った人影を見て顔を、心を引き締める。 中澤に歩み寄ってきたのは愛だった。 振り返り愛に話しかけた中澤は、閉園時間までの退去を促すと共に、愛の甘さを指摘する。 「さっきウチとやり合ったときはええ線行ってると思うたけどな」 並列分散型の中澤ネットワークには序列は存在しないという建前を守りながら、持ち前の政治力で自分の意向を通してきた【空間裂開】能力者。 彼女との間に遺恨を作ったばかりか、取り逃がしたことは愛のこれからにとってマイナスにしかならないという。 「まあ、ウチには関係ないけどな」 自分を詰るような愛の視線に気づいた中澤は大きく溜息をつくと、辻とのことを話し出した。 やがてこの世界を後にする愛には、真意を伝えてもさしつかえないという前置きをして。 「さっき言った以外にも中澤ネットワークにはいくつかの掟がある。それは…」 中澤裕子が他の世界の中澤と連携を取って行動しているという事実は、部下に知られてはならないという不文律だ。 中澤による支配を確固たるものにしているその要因を知った部下には…。 「死あるのみや」 息を飲んだ愛に中澤は言った。 ネットワーク内の法の番人的な存在である【空間裂開】能力者と辻希美が顔を会わせたのは想定外だった。 あの女は並立世界の融合や高橋愛への対策を立て終えた時点で、辻希美の粛清を求めてくる公算が大きい。 「だから、あんたは…」 小さく頷くと中澤は話を続ける。 「これまでのウチはポロリ大魔王とかいう悪役を演じてきた。 でもそれじゃあかん」 だから本当の悪になって、中澤ネットワークの掟を破ると明言した。 「だったら何もあんな風に…」 辻希美の粛清を拒んだ場合、【空間裂開】能力者自身が他の中澤を率いて、この世界に乗り込んでくることになる。 「そうなった場合、あいつが真っ先に狙うのはののや」 だから辻希美は自分の側から離れ、人混みの中に紛れるべきだと中澤は愛に告げた。 「ののの生きる場所はウチが作る」 自分の思いを伝え終えて、鏡の方を向いた中澤は愕然とした。 愛が二人いる。 そして今、自分と話していた愛が光り輝くと、ずっと自分の側にいた者の顔に変わった。 「裕ちゃん」 お前は追放した筈やと突き放す中澤に、辻希美は言った。 「追放されたんだから、ののはしたいようにするれす」 そう言う辻の顔には悲しみを乗り越えた喜びの表情が宿っていた。 「のの、お前、その顔どうしたんや」 見捨てたと思った中澤さんの本当の気持ちを知ったんやから、それは笑顔だって取り戻すやろ。 愛が中澤の胸に飛び込んでいく辻希美の姿を見守っていると…。 ゴキッという音がした。 「のの、ちょっと放し」 中澤の顔が苦痛に歪んでいる。 そういえば辻という人も元々は【超人】体質やったな。 うわっ、顔を舐めるな。放せ。ののはもう中澤さんを絶対に放さないれす。 二人の【超人】がもつれ合い、ぶつかった壁が崩れると、そこは歌謡ショー仕様に模様替えされた舞台だった。 サイリウムを手にした子供たちが立ち上がってショーが始まるのを待っている。 「一度結んだ絆を頼りに、二人で探したあの日の笑顔。 取り戻すまでが長かった分、もう流しません、しょっぱい涙。 さあ歌っていただきましょう。 浪花の歌姫、中澤裕子。 悔し涙 ぽろり」 鏡台から取り出したマイクを手にした中澤は、辻希美を首にぶら下げたまま立ち上がると歌いだす。 子供たちはサイリウムを振りながら、さびの部分でオイ!オイ!と合いの手を入れる。 「ねえ君たち。 今はまだいいけど君たちが二十歳ぐらいになった時、あのオバさんはもう軽く五十…」 ギロリ。 中澤が物凄い目で愛を見つめている。 怖ええ。 這々の体でその場を後にする愛。 何か物凄く濃厚だったな。 思いを胸に振り返るとそこには辻と子供たちの満天の笑顔。 …あの笑顔には敵わないな。 --続く-- モーニング戦隊リゾナンターR 第19話 「覚悟」 【出演者】 高橋愛:高橋愛 久住小春:久住小春(?[Koha-Mitsu](09)690 『決行☆売り上げ奪還大作戦』 ) 光井愛佳:光井愛佳(?[Koha-Mitsu](09)690 『決行☆売り上げ奪還大作戦』 ) ポロリ星人:中澤裕子(ハロー!モーニング ―ミニモニ。ぴょ~ん星人―) 辻希美:辻希美([Kusumi](02)255 『屋上のリゾナント』) 【空間裂開】能力者:中澤裕子(ダークネスノベル 保護の全う) 【気功】使い:中澤裕子([Junjun](15)730 『譲れない戦い』) 【若女将】:中澤裕子([11](02)760 「恋愛レボリューション21」) 【毒放出】能力者:中澤裕子(???) 間賀時夫(『狂犬は闇夜を奔る』) 忘れとった。 愛は息を切らしてミラーハウスに駆け込んだ。 【ポロリ】の中澤によれば、このミラーハウスは【空間裂開】能力者によって出口の無い迷宮に作りかえられていたらしい。 しかし、愛によって倒された能力者が退散したことでその効果は消えているはずだという。 もう帰ったんかな。 記憶を頼りに足を踏み入れた愛は、聞き覚えのある二人の話し声を耳にする。 「・・リゾナント・・・好き」「・・・・ります」 何を話しているのかと愛が耳をそばだてると…。 「高橋さんですよね」 小春に気付かれてしまった。 鏡の壁越しに小春が話しかけてくる。 「高橋さんは何者ですか?」 浪費によってリゾナントを取り壊しに追いやった愛が偽者だということは、かなり前から判っていたらしい。 捕まえて口を割らせることも考えたが、敢えて泳がせることにしたという。 「だってあんなバカが関わってるんですから、高橋さんの命がすぐ危険に晒されるとは思えませんでした」 そしてこの遊園地に愛が現れることを愛佳の予知能力で知り、駆けつけてみれば…。 「あなたはあの偽者とは違う。 でも私たちの知っている高橋さんでもない。 お願いします、私たちの高橋さんが何処にいるか教えてくれませんか」 必死に訴える二人の様子に、愛は返す言葉を失った。 辛うじてこう答えるのが精一杯だった。 「私にもわからないけど、いつか必ずあなた達のところに帰ってくるはずだから」 「待ってください」 鏡によって遮られているのをいいことに、愛は二人から遠ざかった。 もしも顔を見てしまえば、旅を続けられなくなると思った。 鏡の通路の中を走っていくと、出口らしき所に行き当たった。 高橋愛がいた。 一瞬鏡に映っている自分の姿だと思った愛だが違っていることに気付く。 夏服を着ている愛に対して、冬物の黒のジャケットにマフラー。 愛が蒸し暑いミラーハウスの中にいるのに、冷たそうな雨の降る街角に佇んでいる。 同じなのは鏡の向こうの愛も涙を湛えているぐらいだ。 一つの世界には、一人の高橋愛しか存在できないという【空間裂開】能力者である中澤の言葉は覚えている。 ならばあの鏡の向こうは違う世界なのか。 並行世界を巡るたびの中で初めて出会ったもう一人の自分とコンタクトを取ろうと鏡の前に駆け寄る。 鏡というよりも分厚いガラス? 向こう側の愛もこちらに気付いたようだ。 声を上げているようだが、全く聞こえない。 大きく目を見開き、ガラスを叩いている。 チカラで伝えようとする意志は、見えない障壁に阻まれて伝わらない。 やがて雨の中の愛は、何かを伝えようとゆっくりと大きく口を開く。 リップシンク? 雨の中の愛の唇を一つずつ読んでいき、合っているかどうか同じように口を開いていく。 ア・ナ・タ・・?・・・・・・・・ 自分の言いたいことを全て伝えることが出来たと確信した雨の中の愛は、お願いという風に手を合わせると雨の中に歩を進めていく。 待ってと叫ぶ愛の目の前で、雨に打たれた向こう側の愛の身体は、透き通り、色を失い、消えていった。 消滅のdropが音もなく地上に落ちていく。 【次回予告】 雨に打たれて消えていったもう一人の高橋愛。 彼女からのメッセージを伝えるために、愛は奔走する。 やがて明らかになっていく2年前の集団失踪事件。そして新たなる失踪者。 「一体誰がこんな惨いことを」 やがて愛の前に姿を現した裏切り者。 「私は仲間を裏切った。 たとえ怪物に堕ちてでも…生きたかった」 次回モーニング戦隊リゾナンターR 第20話 「Deserter」 全てを繋いで裏切りを糺せ! back →『モーニング戦隊リゾナンターR 第18話 「中澤ネットワーク」』 next →『モーニング戦隊リゾナンターR 第20話 「Deserter(脱走者)」』
https://w.atwiki.jp/30mmcolors/pages/222.html
現場へと向かう車両があった 石田「くそっ!あの役立たずが!所詮落ちこぼれか」 怒りで窓を殴る 石田「帰るぞ!」 車両が向きを変えようとした時だ ヌッと巨大な手が現れた 荘厳なEXMの手 その漆黒の機体が、車両を掴み飛び上がる 石田「なんだ!? き、貴様!」 闇影「何処へ行かれるのか? 石田中佐殿、現場はこちらですぞ」 石田「や、闇影卿!!?」 紅闇夜は昇る朝日の中を翔んだ ―――― COLORS収容施設 もう建物は跡形も無かった 多くの犠牲者が出た 少し前に、ご相伴をあずかった彼女も…… 中澤「……」 一本だけ、タバコを吹かす 中澤はその光景にかつて自分の部隊が全滅した事 自分を助ける為に散った仲間の事 それが嫌で守る為に走り続けた事を思い出した 中澤「あれ。どこの部隊だったんです?」 ようやく事態が片付いて、今しがた到着した逢坂に話しかける 逢坂「少々訳アリでして。今度改めて…」 テロ鎮圧に来ていた部隊は、逢坂率いる部隊が到着すると同時に、なんの遺恨も無くその場を託し去っていった O島に残した長柄の方にも救援として赴いていたらしく、彼も大したケガも無く無事だったという 今、少女たちは保護され、少し早いが新研究所へ移送を行っている最中だ そこへ闇影に連れられて、ようやく石田がやって来た 中澤は振り返らなかった 石田「中澤大尉、ご苦労だった 今回のバイロン軍の攻撃、よく退けた」 何をいけしゃあしゃあとと呆れながらふいに振り向くと、邪な目をする石田の顔が見えた その視線の先、ほぼ半裸の彩音やイーナが、施設に居た皆が居る 石田「しっかしなんだこの惨状は!! これは早速責任…」 その光景が目に映った時、そう認識した時にはもう遅かった 闇影「ダメだッ!? ヒデヒサ!!」 石田「ん? グエァ!?」 中澤の拳が石田の顔をひしゃげさせた 石田「あ、が…ががぁぁ……ッ!? き、貴様ぁ!! 上官に向かってなにォ…」 中澤「もっと早く! こうすべきだった!!」 闇影「ヒデヒサ……」 逢坂「……」 聞こえぬようにため息をつきながら逢坂が合図を送ると、部下が中澤を拘束して連行して行った その姿を見て 石田「はははっ! この馬ァ鹿が! ザマァ見さらせェ! …あ。いや、ありがとうございます逢坂准将 此度は…」 そんな石田の眼前には、既に彩音が迫っていた もはや自分の格好などお構い無し そんな事より、彼女には優先せねばならない事があった 彩音「アンタがァァァァ!!!」 石田「ぐへぇッ!!!???!」 顔面にキレイなハイキックが決まる 助走をつけた一撃は、痩せぎすの男を吹き飛ばし、地面へと伏せさせた 彩音「ヒデヒサさんが!! あの人が、理由も無く人を殴るはずなんてない!! 私わかってる! あのコたちも…! ヒデヒサさんも……お母さんもッ!!! アンタが…! アンタが!! だからッ!!!」 中澤はその声に振り向き、やっちまった。と、さおりに謝った でも、彼女の行動が、どこか嬉しかったのだけは、本当だった…… ―――― その後。とある執務室 石田「さってぇ!! アイツはブタ箱にぶち込んだし、あとはあの蹴り入れやがった小娘なぁ!! ちっと『トウ』が立ってるが、まあまだネンネなら多少は…」 腫れあがった顔のまま、石田は中澤更迭の書類を纏める 怪我を押しての徹夜明け。ドスドスと基地を歩き、然るべき場所へと足を運ぼうと… 『おっと。そこまでだ中佐殿』 石田「は?」 振り返る そこには、少し前まで共に居た二人 逢坂早瀬と闇影が立っていた 逢坂「違法風俗斡旋にその利用、更には隠蔽の手引き。テロ組織に対する武器の横流し。部下に対する不当な措置 以前に会った以外の事もあげようか?」 逢坂は、彼の罪状を読み上げる そして、自分が纏めた書類の何倍も大きなファイルをヒラヒラさせながら闇影はニヤニヤと笑っていた 石田「は、はァッ!? な、何のことだァ!!? 私は無実だ!! 被害者だァ!! き、貴様ら等、私の後ろ盾を持ってすれば……!」 闇影「敵だと厄介。味方だと案外頼りない… 確かにそうだったが、今回は詫びって事で早かった」 取り出したデバイスの芸能ニュース見出しには 大手芸能プロダクション会長。異例の旅行先での退陣会見という記事と、『真中次郎』による独立事務所設立の記事が載っていた 闇影「この後はどうぞご自由にって『伯爵』より、だと 爵位を名乗ってんのは気に食わねぇが ま、やる事はやってくれたし、騎士として免じてやるって事にした」 逢坂「貴様の後ろ盾はもう無い 私兵によるクーデター未遂、消防各所への業務威力妨害。そして先ほどの婦女暴行宣告 全部纏めて裁判所で聞こうか…?」 もう逃げ場はない そう悟った石田が往生際も悪く、全速で振り返ったその瞬間 暗躍部隊に取り囲まれ、彼はついに床を舐める事となった…… ―――― そうして、季節は巡り、既に春… 光の届かない壁の中では、暖かさを感じる事もない独房生活 上官を殴った事に端を発し 結果それなりのポストの人間を追いやった事 それにより損を受けた者達からの報復から守る為、進んでの投獄 分かってはいるがやはり味気の無い毎日だ。反対されたのも頷ける 中澤「ふあぁ~~…… もう春になっちゃったか…」 大量の資料もだいたい目を通した 今回の件でCOLORSの情報を把握しきれてなかった為の被害 改めて反省をするにはいい時間だった 冷たい壁に背を当て、痛む腰を擦っていると、カンカンと足音が近づいてきた 闇影「よっ、ヒデヒサ」 資料の差し入れは届くが、直接では久しぶりの来客だった 中澤「あぁ、影さん 何、また新しい資料? 頼んだのは僕だけどさぁ…」 闇影「ん? あぁ、違う違う それより何だよその髭は? いくら独房生活ってよォ」 中澤「いいじゃないの。風呂はちゃんとしてるよ」 と顎の髭を擦る 闇影「そんなだから急な事への対処が遅れるんだぜ」 今回の事を言われてると思い、少しイラッとする 中澤「関係無いだ……ろ!?」 闇影の後ろの人影に気付いた 彩音「久しぶり、中澤さん」 中澤「彩音さん!」 と先ほど闇影の指摘が気になり、思わず顔を隠しそうになった 闇影「そういうところだよ」 と笑う 急にバツの悪い顔をする中澤 中澤「何もこんなところに連れて来なくても」 彩音「あぁ、ごめんなさい。今日で出てこられるって聞いたからお願いしたの」 中澤「えっ? そうなの?」 闇影「あっ、聞いてないのか? オヤッさんと逢坂のヤツがいろいろクリアにしてくれたみたいでよ もうお前さんになんかしようってヤツはいないってさ」 中澤は2人の顔を思い出しながら 中澤(何やったんだろ……こわッ) 鍵を開けられ久々の外へと 闇影「ほいじゃあ。出所おめでとうございます。中澤【中佐】殿」 中澤「……へ?」 中澤は大尉のはずだが、彼の親友はそう呼んだ 闇影「お前、ホントになんにも聞いてないんだな どっかから辞令があった 今回の逮捕劇と、無実の罪で投獄された事に対する、せめてもの措置だってさ 二階級特進、おめでとう!!」 正直、寝耳に水というか 叩き上げの自分が佐官に任命されるなど。異例中の異例だ 本当に、裏でナニが起こっていたのやら…… 中澤「えぇ~~…… 俺アイツとおんなじ階級になっちゃったの?」 闇影「上もヤツが失脚したならしたで、ちょうどいい後釜が欲しいんだろ オヤッさんの顔を立てるとでも思って、ありがたく受け取っとけ そんじゃ、俺はちょっと報告に行ってくるから。嬢ちゃんの事頼むな」 気を利かせてるつもりなのか闇影はそう言ってその場を離れた 中澤(余計に辛いよ影さん…) 切り出す会話が見当たらない 中澤「あれからどうしてたの?」 と差し当たりの無いことを聞く 彩音「一応、進級はしたんだけど…」 中澤「そりゃぁ…。おめでとう」 なんだか、互いに歯切れが悪い 彩音「あれから、小川さんが私を養子にって言ってくれて。お母さんの事も…」 中澤「えぇ!? そうなの?」 彩音「うん、だから地元を離れる事になったんだ もう、ココにはほとんど何も残ってないし。お母さんもいないし 小川さんには感謝してる」 はぁという顔で聞いていた 中澤「そっかぁ。小川さんが…」 彩音「ここ出たらまたあの子達のところに戻っちゃうでしょ? そうなるともう会えないかもって…」 彩音が少し寂しそうな顔をした 中澤「そうだね。でも分かったでしょ? 僕の近くにいるって事はそういう事なんだよ」 と彩音を諭すように話を続けた 中澤「まだ、これから楽しい事あるんだからこんなおじさんなんかの事は忘れて、君は…」 彩音「嫌だ!」 話を切るように、彼女は叫ぶ 中澤「彩音さん……」 彩音「絶対にこれは勘違いじゃないの! だから、ちゃんと見てほしいの! 聞いてほしいの…!!」 泣きそうな彩音に、中澤は無精ひげの上から頬をかく 一歩だけ近づいて、慰めるように話を続けた 中澤「分かったよ。 でもさ、僕はしばらくあの子達の為に動かなくちゃいけないから本当に会えないよ」 中澤は真っ直ぐに彩音を見る 彩音もそれを受けとめる 彩音「うん」 中澤「だからさ。彩音さんはちゃんと学校行ってちゃんと大人になりなさいよ そんでもまだ僕の事想ってくれるなら、そん時は僕も覚悟を決めよう」 中澤は笑って見せた 彩音「うん……うん! 私ちゃんと奥さんになれるように頑張る!」 中澤「えぇっ!? あ~…。そういう意味じゃ……まぁいいか」 降り注ぐ春の日差しの中、2人は笑い合った 闇影「あ~~ぁ。見てらんねぇな~~」 と、戻って来た闇影は、急に二人の会話に割って入る 中澤「おわっ! いたの影さん」 闇影「もっとさぁこうガバッといっちまえよ!! こんなとこなら人目ねぇから気になんないって。ほら嬢ちゃんも!」 中澤「あのね、影さんちょっとそれはさすがに……」 と、親友の様子に呆れる。同時に、気を遣ってくれているのを、ひしひしと感じた 闇影「いやいや、ヒデヒサ~~嬢ちゃんもなんやかんや期待して……」 そこまで聞いて顔を真っ赤にした彩音 彩音「馬鹿ぁ!!」 彩音の蹴りが闇影の脚を強打する 闇影「いっ!? …たぁ!!」 声にならない叫びを上げて、さしもの騎士帝もうずくまった それを彩音は、プリプリと仁王立ちで見下ろしている 中澤「影さ~~ん…。大丈夫?」 そのやりとりを見て、中澤はようやく心から笑った ―――― エル「02が起きたって!?」 新研究所に、ほとんどのコが移送された頃、エルは中澤にそう叫んだ 中澤「叫ばなくても、すぐに会えるって」 いくつかの事情が異なるコは、旧研究所の施設をそのまま使う事で、なんとか調整をしていた その解析もほぼ終わり、こちらに移せる算段も整ったのだ 闇影「ああ。あの時の子か よかったなァ。エルちゃん」 エル「……まだ居たの? さっさと騎士の国に帰っちゃえば?」 闇影「ひどくない!?」 中澤「コラッ! なんつ~事を!! ごめんね影さん。彩音さんの態度知っちゃったみたいで… せっかく協力してくれたのに… 此度はお世話になりました。騎士帝殿」 中澤が改めて敬礼を飛ばす 闇影「そんなに畏まらずに…! 親友の為に俺が出向いただけなんで」 中澤「そう? でもありがとうね 何度も行き来させちゃって」 闇影「いいって事よ! では長居するのもアレだし、ここいらで… 他国のEXMの持ち込みは、ここじゃあ検査厳しいからな」 そう言って、騎士帝は所長室を後にする それと入れ替わるように、長柄が別のドアをノックした 長柄「ここだよ。さァ、入っておいで」 と、同時に誰かを招き入れる そして入って来たのは エル「02!!」 そして駆け寄り妹を抱き締めた エル「良かった! 良かったよ!! 02!!」 季節が一巡しようかというくらいの時を挟み、ようやく会えた妹を、エルはもみくちゃにする 長柄「あぁ、いいか? 中澤」 中澤「ん?」 その様子の端で、2人が部屋の隅で耳打ちを始める 02「01……?」 泣きじゃくるエルを不思議そうな目で見ると 02「どうしたの? …何かあったの?」 エル「えっ…!?」 その発言に、エルは戸惑った 02「母さんはどうしたのかな? リサ先生もいないし……」 エル「ちょっ…? 02!!?」 思わず02の肩を掴む 02「痛っ! …何?どうしたの? 01」 中澤「そういう……」 長柄「隠してもいい事は無い。頼む……!」 中澤「ああ。まだ影さんも居るしね。逢坂准将も… さっそく始めるか……」 そう言うと、二人は姉妹の下へ歩み寄る 長柄「ちょっといいかなァ? エル」 中澤「あぁ、こっちもいいかい? 02」 と言うと中澤は02を連れ出し、足早に行ってしまった 見届けた長柄はエルに話を始める… 長柄「いいかい? よく聞いてほしい……。あの子はクローンだ」 エル「えっ?」 何を言われたか分からなかった 長柄「正確に言うと、君達2人は元からクローンなんだ」 エル「はっ?!」 益々分からない だが、長柄は構わず続ける 長柄「君達のオリジナルは産後すぐ死亡したらしい…! それで彼女、イザナギがクローン体を作ったようなんだ もちろん母親も知らない事らしい」 エル「何で…? そんな事……!」 首を振る 長柄「分からない…… 特別に扱っていたのは確かの様だがな 君は5体目、02……あのコは体組織が安定してなくて、もう12体目だそうだ」 エル「………」 長柄のその言葉に絶句する 長柄「前の個体が活動停止すると、自動で記憶をコピーして次の個体が動き出す仕組みになっていたようなんだ。彼女の起床が遅れたのはその為だ。これは彼女に限った事ではない… 解析に時間がかかって、すまなかったと思っている…… これが、イザナギが言っていた「次」と言う事らしい しかし、頭を撃たれたせいか、あの時から目覚めるまでの記憶が、すっぽりと抜けているみたいなんだ」 改めてエルに向き直り、長柄は続けた 長柄「02の身体はまだ安定しきっていない様でなァ… 時々体調を崩していただろ?」 エル「あっ……!」 あの日も、酷く体調を悪くする02を思い出す 長柄「必死に模索はしたが、俺では専門外だし、設備も残されたモノを解析するだけじゃあ限界だ だから、闇影の所 永桜神国へ行ってもらい、身体を治してもらおうと思っている あそこは地球の元秘匿区域。自然もたくさんあって、療養の地として最適と判断された」 エル「それじゃあ……ちゃんと治るの?」 長柄「残念ながら、完全に治ると言う保証はないがな で、どうする? 君も一緒に行くか? 出来なくもないが…」 エル「……」 エルはうつむき、そして考えた エル「……名前… そうだ!! 教えないと…!!」 パッと顔を上げ、彼女はそう言った 長柄「そうだな! 彼女の所へ行こう ちゃんと教えてあげないとな」 エル「うん!」 エルは部屋を飛び出した そして廊下を走りながら考える エル「私は……私は……!」 ―――― 〝新〟COLORS研究所。格納庫 永桜神国行き輸送機前 忙しそうに職員たちが作業をしている中、闇影卿と逢坂准将が立ち話をしていた 闇影「で、結局 あれからなにか割れたか?」 逢坂「元中佐の周りは、既に逃亡していた 我々に内部告発して下さった真中殿が、MSCの重役に成り替わったようで、そっち方面はしばらく安泰かと 自分は、別方面からイザナギの捜査を続行するつもりです ただ、あの場から一人。明らかに匿った人間が居るのが気になりますが…」 闇影「油断していたとはいえ、俺に一発当てやがった例のヤツ、か… 機体がジャンク同然だったからよかったが、それと後経験さえ整えば……」 中澤「おっ。いたいた お~い、影さ~ん。逢坂准将も~」 そんな二人の会話を遮って、中澤は大声で呼ぶ 闇影「お~。なんだ送り迎えなんて…… お? そっちのコは確か…」 闇影は、親友が傍らに連れた少女を見ると、どこかで見覚えがあるかのように見つめる 逢坂「そのコは…資料にあったエルの妹という……」 闇影「やあ、こんにちは。俺は闇影って言うんだ お嬢ちゃんは?」 02「わ…。は、初めまして……ぜ、02…です」 答える少女に腰を落として目線を合わせ、騎士帝は優しく頭を撫でる 中澤「ああ。実はその事でお願いがあってね? 准将殿にも」 逢坂「自分にも、ですか?」 中澤「うん。まずは影さん。うーんとね 単刀直入に言うと、この娘を養子にどうだろって! 親友の闇影君になら任せられるかなってね♪」 闇影「養子!? 俺が!? 正気かヒデヒサ!?」 中澤「うん。もちろん僕は大真面目だよ?」 きょろきょろと、親友と少女の顔を交互に見る 闇影「しかし、このコ。02自身の意思はどうなる?」 中澤「実は、彼女はここの施設だけではどうにもなりそうもないんだ そこで永桜神国が、療養にも成長にも最適と判断したんだよ そうだ、02はどうかな?」 02「私は…、外の世界も見てみたい……です…。だから……」 闇影「うん。そうかァ…。 でも、暫く此処になかなか戻れないかもだよ?」 02「この国は、辛い思い出がいっぱい… でも、長柄博士から、騎士様の国は、とっても素敵って聞いて……それで……」 その二人の言葉を、闇影は噛み締めた 闇影「訳有りか……解った! ヒデヒサの頼みなら引き受けよう!! そうだなァ……」 中澤「引き受けてくれてありがとう、影さん! それと……あ、いたいた。お~い!!」 中澤が手を振ると、先程から作業を手伝っていた一人が振り向く そして、メガネに長い髪を結った少女が、とてとてと歩みよって来た 中澤「准将殿には、このコを任せたいんだ。もちろん養子としてね ここじゃ一番の働き者。決して准将の邪魔にはならないって、僕が太鼓判押しちゃう」 メガネの少女「よ、よろしくお願いします。准将閣下…!!」 逢坂「…………え?」 流れからなんとなく察したが、いざ面と向かって言われるとさすがの逢坂も固まった 目の前に出された少女の、親になって欲しいなんて 中澤「まあ、気持ちはわかるよ? ただ、僕は本気なんだ」 逢坂「そんな冗談を言うわけはないと理解していますが、何故?」 中澤「無論、二人共信頼してるからだよ? 皆月製作所の件だって、僕は知っているからね」 逢坂「ああ……」 メガネの少女「わ、私では、不服だったでしょうか…?」 逢坂「いや、それは断じてない!! むしろ嬉しいくらいだが…… しかし中澤中佐。本当に良いのでしょうか?」 中澤「製作所を文字通り手足に使うなら、養子を頼まなかった。特に今はバイロン侵攻もあって上がこの件も軽視しつつあるからさ。脱走したコ達は、バイロンにも流れてるらしいってのに。まったくねぇ 永桜神国も、今回の件に無関係じゃない。なら、繋がりは強い方がいいに決まってる」 逢坂が製作所の立ち上げに関与した事 そして永桜神国そのものが抱えている事情 この男、中澤ヒデヒサは、全て見抜いていた ひょっとしたら、彼らを巻き込んだのも、この時のことを見越して…… 中澤「運命すらいじられた彼女達に、是非外の世界を見せてあげたいんだよ」 逢坂「分かりました。彼女達がそう望むなら」 闇影「いいだろう。その望み、叶えてやるとするか」 エル「02!」 その声に振り返る02 視線の先には長柄と、走ってくるエルがいた 02「01!」 緊張していた彼女の顔が、パッと顔が明るくなった エル「あっ…」 妹のその顔を見て、彼女は何か答えを得た気がした 02「01。私…ね? この人の子供になるんだって」 おずおずと、先程の会話を切り出す エル「うん、博士に聞いたよ あのね、私名前付けてもらったんだ」 エルのその眼は、まっすぐ02を見る エル「私は、エル。エルっていうの。呼んでみて?」 02「エ……ル。そう、良かったね エル……」 と02が笑顔で返してくれた エル(うん、そうだ) エルは決心をした そして、母から聞いた。02の 妹の本当の名前を告げようと エル「あのね……」 と言いかけたその時 闇影「それじゃ、君はアルだな!」 と、頭上からその紡ぎかけた言葉が降って来た エル「なっ!!」 思わず見上げたと同時に、少女は絶句する あちゃ~~と中澤は顔に手をやった 逢坂も、なにかを察したようだった 闇影「その子がエルなら、反対の意味でアルでも近しい感じがするだろ? 仮に反しようとも、どこまでも一緒の存在!!」 エル「ちょっ…ッ」 エルが文句を言おうとしたが アル「ア…ル、アル……! 私の…名前……! エルとおんなじ、私の…! アル…!! 私も名前付けてもらったよ、エル!」 と、アル大はしゃぎでエルの手を取る エル「う……」 嬉しそうな妹の様子を見て、エルは押しこらえた そして気を取り直し エル「0…、じゃなかった アル、良かったね」 アル「うん!」 中澤「あ~~。アルは出発しないといけないから、2人とも部屋で準備してきなさい」 エル&アル「「ハーイ」」 と返事をして駆け出した するとエルだけが反転して戻って来る そして、その勢いのまま闇影の脛をおもいっきり蹴飛ばした ガンッ!! 闇影「アッ…!? いっ~~~~!!!?」 声にならない叫びに向かって エルはベーっと舌を出しながらニカッと笑う そして中澤の方を見ると エル「決めた! 私ここに残る!!」 なんかこんなこと最近あったなァと思っていた中澤は 彼女のその言葉に一瞬キョトンとしたが 中澤「そぉ…。そうするか、わかった」 とエルの頭に手をやると、エルはまたアルの待つ方へ走って行った ……そしてその横で膝を抱えてうずくまる闇影 強化措置を受けた少女の蹴りが急所に入り、さしもの騎士帝も。といった様子だ 闇影「ったく、何なんだよ…… なんも悪くねぇよな? 俺……」 その様子に、中澤は苦笑いをする 中澤「相変わらず、いいカンしてると言うかなんと言うか あ~、准将は…」 逢坂「我々も、お暇の準備をさせていただきます ……このコの名前も、考えないとですからね」 メガネの少女「…はいッ! 【お父さん】……♪」 その言葉に、さしもの逢坂早瀬も動揺を隠せず、中澤と闇影はからかうように笑った 同時にメガネの少女も、パッと表情が明るくなった ―――― 2人の部屋 2人は荷物を纏める中 おずおずとアルが口を開いた アル「エルは……一緒に来てくれないの?」 エル「ん~? うん、私ここでやりたい事が出来たの」 とエルはアルの目を見て話す エル「私達みたいな子はまだたくさんいて、私1人じゃどうしようもないけど、少しでも助けてあげたい 私は、ここでそうなりたいの EXMも、ちゃんと飛ばせたし。いつか、必ず…!!」 それにアルは笑顔で答えた アル「そうかァ……。じゃあ私もいつか手伝いたいな 騎士様の国みたいだから、私も、そこでエルを手伝えるようになれるかなァ……」 エル「アル……」 2人は笑顔で見つめあった エル「でも、寂しくはなっちゃうね?」 アル「……うん。寂しい…な」 二人の手が、少しだけ止まる エル「そうだ」 とエルは自分のリボンを取ると アルに差し出した エル「アルのその髪飾りと私のリボン交換しよ いつも一緒……! いつか一緒に歩ける様に……約束ッ!!」 それを聞き、アルも髪飾りを取ると エル「うん……。いつか一緒に…!」 その別れに、もう涙は無かった そして、皆を載せた輸送機は飛び立った 少女は、その様子を見守っている 中澤「良かったの? ホントの姉妹って教えてあげなくて」 隣で中澤が訊ねる エル「また言える時が来るから」 そうエルは答えた 中澤は軽く笑うと 中澤「さぁ、これからやること沢山あるよ、後悔無い?」 エル「うん!」 エルは大きく返事を返した ―――― そして時は流れ、現在 N海沖S県O島 〝新〟COLORS研究施設 こうして、「COLORS」の少女達は中澤新指令。現中澤ヒデヒサ大佐の下、改めて調整され普通に生活を送れる様になっていった 弄られた記憶は戻る事無く、アルやエスのように、養子と言う形でここを出る者も多く居た そして、軍に能力を買われたり、個人のスキルから 企業へと引き抜かれたり、または自ら研究機関へ行く者や、放浪し、軍に辿り着く者も居ると情報が入る時もあった あの時既にゲリラや軍に引き渡された子供達の、全ての行方までは追えていない 生きているのか死んでいるのか だが、時折フラッと連絡が入っては、所在が明らかになる例も少なくない それから、「生産」にかけられていた子供達はほとんどが精神異常を起こし違う施設へと入って行った。産まれた子供達はここで育てていた。結局戻って来る子もいくらか居たが そして、「COLORS」はそれぞれの道を歩き出した 程よく小高く、見晴らしのいい丘 海から来る風に髪を揺らしながら、少女が一人。海を見つめていた 「いたいたエルちゃ~ん」 白の少女。エルは呼ばれた方へと振り向く 彼女も、もう16になった すっかりここのエースとして、今や予算捻出のためにあっちこっちへ飛んでいる 愛機の【スノーホワイト】と共に…… エル「あっリンじゃない、どうしたの?」 その視線の先には、けっこう際どいチャイナドレスを纏った子がなにやら大きな袋を抱えながら、元気いっぱいに走っていた リン「ん、ちょっと任務で近くに来てたからね あっ肉まん食べる?」 エル「食べる食べる♪」 と差し出された肉まんを取りぱくり 続いて2個、3個と平らげてゆく エル「リンもだけど、引き取られてったみんなもせっかくこっちから縁を切れるチャンスなのにわざわざさ~~」 リン「あはは それはさぁ。エルちゃんが僕達のためにここで頑張ってるのを、みんな知ってるからだよ」 とエルに笑顔を向けるリン エル「やぁ……。ちょっと、恥ずかしいって」 まぎらわすように肉まんを更に頬張った リン「あはは。美味しそうに食べてくれて嬉しいよ♪」 「あっ。こんなところにいたんですか、エル」 また一人 今度は黒髪を結んだ、竹刀の入った袋を担ぎ、制服を思わせる様な服装の真面目そうな少女 エル「ホノカか。あれ、ひょっとしてもう来る?」 リン「誰か来るの?」 エル「ん? あぁさっきも言ったけど、物好きさん」 エルは、ニコニコと笑いながらそう言った ホノカ「エル! そんな言い方は」 エル「もう、いちいちお堅いなぁ余裕が無いと変なとこからつけこまれるよ」 ホノカ「私に限って、そんなことありません!」 もう大量の肉まんを胃袋に収めたエル 今日はお供の忍者が居ないので、ちゃんと履いている…であろうホノカ 自由な白の少女と、厳格な灰の少女 互いに戯れるようににらみ合う二人の間に入り リン「まあまあ、ほら行って行って」 と、紺の少女はエルの背中を押す エル「うん、行ってくるね」 エルは施設へと走って行った そんなエルを見送る二人 ホノカ「まったく。リンは本当にエルに甘いですね」 リン「そぉ?」 島の中を、新しい風が吹き、その丘を通り抜けて行った ―――― COLORS施設内 中澤は新しく来た所員を連れて廊下を歩いていた 中澤「でも良かったの? また戦場に来るようなもんだよ」 そう言って、本日の新入りに対し、親し気に話しかける 「やっとお医者さんからもちゃんとした回復をもらえたばかりなのに」 その新人所員は立ち止まると 「いいんです、私もあなた達のように守れるようになりたいし それに彩ちゃんが一緒なら頑張れる」 それはイーナだった 以前のような、暗い瞳ではない あの事件のあと、彼女は別施設へと移りケアとリハビリを続けていた そして回復が認められ自由になったのだが、ここCOLORS研究施設への配属を希望し、本日付で馳せ参じたのだ 戦闘は無理なので、オペレーターとして 中澤「ははは、こりゃ頼もしい。彩さんも待ってるし行こうか」 イーナ(ん?) 何かに気付くイーナ イーナ「ちょっと!上司だからって『彩さん』はちょっと気安くないない? もう、おじさんデリカシーに欠ける。だからおじさんなんだよ?」 中澤「君もさぁ。一応上司に対してその言い草はどうかと思うよ?」 タタタタッ エル「あっと、指令お先に」 エルが髪をなびかせ走り去った 中澤「走ったら危ないって!」 エル「は~~い」 嵐のように駆けてゆく、その少女を見送ると イーナ「今の子…」 中澤「あぁアレ。エルだよ 今はウチのエース様」 あぁ、あの時の……。ひどい跳ねっ帰りだ まるで変った様子は無い イーナ「はぁ~~」 イーナは、今後アレに指示を飛ばせるか 来て早々に不安になった ―――― そうしてようやく指令室 中には先ほど駆けていったエルと長柄博士。そして彩音が待っていた イーナは彩音を見るやいなや駆け寄り イーナ「彩ちゃん! 会いたかった~~」 彩音「私も! 連絡取れなかったから心配してだけど元気で良かった~♪」 抱き付くイーナにちょっと気圧される彩音 しかし、二人は当時からの時間を感じさせないくらいにお互いをギュッと抱きしめ合った 中澤「ハイハイ、ごめんね 一応、ちゃんとした自己紹介をね」 それを聞いてイーナは姿勢を正しい敬礼をする イーナ「本日付けで、COLORS研究機関にオペレーターとして配属になりましたイーナです どうか、よろしくお願いします!」 はっきりとしたいい声だった 彩音も、先輩として、それに答える 彩音「COLORS研究機関、メインオペレーターの【中澤彩音】です こちらこそよろしくお願いします。イーナちゃん♪」 その言葉に、イーナの空気はビシッと凍った そして、おどろおどろしい顔でゆっくりと、ここまで連れて来た自分の上司の方へ振り返る イーナ「な~~か~~ざ~~わ~~あ~~や~~ね~~?」 中澤の背筋に、悪寒が伝染する 中澤「あれぇ? 彩さん? もしかして・・・・」 彩音「ん? あぁ~~そういえば……。言ってなかったっけ?」 テヘッと笑う彩音の後ろで、エルと長柄が手を合わせていた ゆらりと近くイーナ イーナ「こ~~の~~ロリコン指令!!」 中澤「誰がロリコンとな!? 法律的にも合法だ!!」 彩音「あははは……」 ―――― 施設内ヘリポート 彩音「今度はH道? ちょっと前に、兵器開発局でのバイロン襲撃を収めたばっかりなのに」 中澤「うん、ごめんね やっぱりウチの案件っぽくて もしかしたら保護するかもしれないからお願いね」 彩音「はい、気をつけて」 ヘリは飛び立って行った それを見送る彩音にイーナが話しかける イーナ「仕事仕事で、全然彩ちゃんの事見てないじゃない」 少しご立腹の様子 彩音「あはは、いいのいいの そこに惚れたんだから」 イーナ「もう」 呆れて何も言えなかったが、彼女のあの時と変わらぬ笑顔に、少女を卒業したイーナは、そっと心の中でだけ、今は二人を祝福した まだこの先も、色彩を巡る戦いは続く どうかいつの日か。この少女達に平穏を 願わくば、全てに命の全うを ただそれだけを想い、彼は今日も駆ける いつか。あの日逃した真相に、自分も辿り着くために ――そして―― ザバァァァ…… 何処とも知れぬ場所 暗い部屋でカプセルから液体が放出され 中から1人の少女が出てきた 「おはよう、身体の調子はどう?」 少女に女が話し掛ける 少女は軽く自分を見ると女の方を向き 「はい……問題ありません…… 母様…」 女は笑うと 「そう…… なら、そろそろ私達もいきましょうか ……エリアル」 その少女をそう呼んだアスカ・イザナギは 遥か青い星を見つめて微笑んでいた…… to be continued……
https://w.atwiki.jp/30mmcolors/pages/221.html
季節は冬。放課後を迎えた時間も風が吹きすさび、すっかり手足もかじかんで来た が、彩音はいつものように、元気いっぱいに施設へと赴いている 彩音「今日も♪ みんなと、遊んじゃお~~♪ ……ん?」 ふと、施設の入り口に人影を見つけた 少し小柄な少女 白い髪が風にキラキラと反射し、それと同じくらい白い肌 そして綺麗な赤い瞳がこちらを見ていた 彩音「あぁ……こ、こんにちは ここの子…? だったかな?」 かなりの人数が居るし、全員が全員出て来る訳でも無い 顔と名前は、お話出来たら覚えているので。そうでないなら、見るのすら初めてかもしれない 少女「ううん」 白い少女はぷるぷると首を左右に振った 彩音「ええ~……? でも、それはさすがに~……」 少女「………」 ジッ…と見つめられる。会話が続かない そこへ イーナ「彩ちゃん!」 彩音「あっ、イーナちゃん! 今日も来たよ~♪」 すっかり友達になった二人、彩音の努力の賜物である 中澤「あっエルさんこんなところにいた」 彩音「あっ中澤さん」 中澤が歩み寄って来るとイーナはなんとなく二人の間に立って半ば睨みがちになった 中澤「あははは……、あぁエルさん、どうしちゃったの。中入ってればいいのに」 エル「ここは、入りたくない」 中澤「そうか、まあ無理は言わないよ」 そんな二人を見て 彩音「はっ!? お子さんいたんですね! いや、いてもおかしくないよね もともとEXMに乗ってあちこち飛び回ってたくらいだし…!! 私、それでも大丈夫ですから!!」 と凄む彩音に気圧されながら 中澤「あっいやこの子は…」 エル「なんで私がこのおじさんの子供なのよ! どう見ても似てないでしょ!」 彩音「あぁ、ごめん! ごめんねぇ~…。私まぁた早とちりしちゃって」 先程の無表情とは打って変わって、ぷりぷりと怒り出す そんな仕草を見て、彩音は戸惑うと同時に、少し安堵していた 中澤「この子はね。訳合って僕が預かってるの、それよりそろそろ行こうか」 彩音「えっ? 今日はどこかに行くんですか?」 よく見ると今日はきちんとした服装、軍服だった 聞いてはいたけど、ほんとに軍の人なんだと少し息を飲んだ 同時に、いつもと違う雰囲気に、また少しドギマギしてしまう 中澤「ようやくここの子達を迎え入れる施設が出来たからね。ちょっと拝見に」 見ると、校舎のグラウンドにヘリが止まっている 道理で風が強いと思った 彩音「そっか、なんだかアッと言うまでしたねぇ。でも良かったァ!」 中澤「うん。ありがとう。だから、少し今日は頼みたくて、待ってたんだ ごめんけど。じゃあ、ちょっと行ってくるよ お~い、エルさ~ん」 エル「は~~い」 と二人は出掛けて行った 彩音「いってらっしゃ~い♪」 ヘリに乗り込み、上空へと上がってゆくのを、イーナと二人で見送る イーナ「彩ちゃん! まだあんな男の事好きなの? オジサンだし、ぜんぜんカッコよくないよッ!」 彩音「うん、大好きだよ~♪ 今度、どんなとこがステキか教えたげよっか?」 イーナ「い、ら、な、いッ!!」 ムッとするイーナの手を引きながら、二人は施設へと入って行った 今日は、いつにも増して、工事に来てるであろう大型トラックが多かった…… ―――― N海沖S県O島 離島のほとんどが国境線の防衛の為、軍基地及び関連施設へとなっている N国も、連合に組み込まれてからは、かなり物々しくなったという それでも、他国に比べると独特の『アレルギー』があるため、配備は遅れ気味 ここはその内の1つ COLORS研究所移設……。言うなればそれは体のいい厄介払いだ かつての本州襲撃が恐ろしかったくせに、未だこうして防人に頼ろうとするのが現状 今回は、それがうまくマッチングしただけに過ぎない…… やはりここも襲撃後に放置された施設を宛がわれただけだったが、小川少将の計らいで今の施設よりはだいぶ良くなっていた 中澤、エル。そして、中澤と共に、研究所を墜とした仲間の一人、長柄を加えた3人は、格納庫で白いEXMを見上げていた エル「これって」 そこに居たのは純白の機体。彼女が研究所時代から使っていた機体 エルにとっては、いい思い出もイヤな思い出もごちゃまぜで、複雑な心境だった 長柄「君が使っていたアルトだよ。これも小川さんの計らいだ。あそこが表向き合法だったというのが幸いした。移送にこそ苦労したけど、いずれここで整備も可能になる」 中澤「はぁ~~……。ますます足向けらんなくなっちゃうよ、ほんと」 と頭をかく エル「でも思ったよりいいところじゃない! ここからって感じがするわ」 中澤「まだ何も始まってないのに鼻息荒くしないの……。ところでさ」 と、後ろに控えていた兵士に問いかける。警備というには物々しいというか、思ったより人数が多いような 中澤「石田中佐はいつお見えになるのかな? もうけっこう待ってるよ」 エル「ほんとよね」 ボリボリとポテトチップスを頬張りながら呆れ顔をする だが、兵士は何も答えない 中澤「愛想無いの良くないよぉ…?」 周囲を一瞥した時、中澤の目に軽く笑う兵士の顔が映る 中澤(しまった!!) 直感。これは警備ではない。『包囲』だ!! 中澤「まずい! 今すぐ戻るぞ!」 長柄「なっ!?」 エル「ふぇ?」 警備兵の一人が、隣の警備兵を殴って昏倒させたのを皮切りに 武装した集団が次々と警備兵を打ち倒し、関節を決める 何人かの警備兵は制服を脱ぎ、サッと口元を隠した あっという間に警備は武装解除され… 兵士?「中澤大尉、どうかお静かに。ここまでの失態を晒して、悪あがきも無いでしょう? そのままお待ち下さい。今我らはテロ組織…ですので!」 いくつもの銃口が、3人へと向けられた ―――― 夜の上空。S県圏内 輸送ヘリ内、そこに石田はいた 石田「さぁ行ってこい、これでケリだ。喧しい叩き上げめ 私は後でゆっくり現場へ向かう。車を用意しておけ くっヒヒヒッ……!」 そこには、石田のいやらしい笑いだけが響いた ―――― S県。COLORS収容施設 部屋の窓から少ない町の灯りをイーナは見つめていた 彩音の中澤を見つめる目にを思い出す イーナ「恋……かァ」 と頭に「あの事」が過る 腹に不快な感触が走った イーナ「あぁ……。やっぱり、ダメ…だよォ……」 涙目で見上げた空に、キラリと一瞬だけ光る星を見た瞬間 ナニか、と認識する前に。その星が落ちて来て、施設の壁を崩した 見られている。その星に…… ―――― ドオォォォォォォン!! 夜は閑静な住宅街に、突如爆音が響く 彩音「な、何!? いったい何の音?」 母の帰りを待ちながら夕飯の支度をしていた彩は、飛び出すようにベランダへと出る そこから見える山の向こう 馴染みとなった施設のある場所。その至る所に火の手が上がっている 彩音(爆発? 火事? なんで!?) 天へと昇る、高い煙の中。夜闇に薄っすらと巨大な影が浮かんで見えた ニュースでよく見る。でも、現物は『あの日』以来、ほとんど見ていない 人を模した機体の四肢。いつも通う校舎よりも大きな、鋼鉄の巨人 EXM… その手には、その体躯に相応しい、巨大な砲口が握られている 彩音(EXM? なんでこんな所にッ!?) 考えるよりも早く、エプロンを脱ぎ捨て家を出た 彩音(お母さん、イーナちゃん、みんな…!!) 彩音は、一目散に施設へと走った ―――― テロリストと名乗った兵士達の銃口が、まっすぐに3人を捉え続けた 兵士「どうか、大人しくしててくださいよ。此方もあんまり血は流したくないので」 ヘルメットにグラス。そして口元を隠し、表情はまったく窺えない だが、息遣いから察して、笑っているのだと思う 長柄「お・・・おい、どうするんだ?急がないと」 焦る長柄に 中澤「分かってるよ エルさん、ちょいと頼めるかい?」 エル「ん?」ボリボリ 肝が座っているのか、状況を理解してないのか 彼女はこんな状況下でもポテトチップスを離さず、食べる手も止めない エル「まったく、あんまり子供頼りもどうかと思うけど?」 と呆れるエル 中澤は懐からチケットを出し 中澤「ドッグカフェのバケツパフェで1つ」 と片手で拝む エル「ふぅん」バリバリ 中澤「デザートにケーキも付けちゃう」 エル「しょうがないわね」 二枚になったチケットを受け取り、白の少女は悠然と前に出る 兵士達の銃口がエルに向く 兵士「子供に何させようと……んん!?」 兵士の目にはエルが消えたように見えた 肘打ちの一撃で一人を打倒したかと思うと、奪った銃で別の兵士のヘルメットを撃つ 跳弾し脳震盪を起こした相手に目もくれず、飛び掛かって来た二人組をしゃがんで避けた後、互いに頭をぶつけた兵士がマスク越しにキスした瞬間、その顎を思いっきり蹴り上げる たまらず銃を撃とうとした相手に、エルは奪った銃を投げつけると、オートで放たれたその銃は、固まった兵士達の脚を撃ち抜いてしまう 誤射にうろたえる暇もなく、目の前に迫った少女に関節を決められ、銃を取り落とすと、そのまま背負い投げの要領で別の兵士へとぶん投げた 兵士「くそっ!? かこめ…」 それを言ったと同時に兵士は膝を後ろから蹴られ、ガクンとその場に倒れる 中澤「さっすがにここまで来たら…ねぇ?」 そうして瞬く間に、周りを取り囲んでいた兵士達は崩れ去った エル「はい、終わり。任せるんじゃ無かったの?」 中澤「あら。いらなかった?」 エル「ううん。でもチケットはまけないから」 兵士「そん、な……ぐぅッ!?」 中澤「君ら、この子達の事な~んも分かってないでしょ? これがCOLORSだよ。いけない大人達の創った、可愛いらしい兵器さ ……責任、取ってくれるよね?」 自分を見下ろす赤い目と、飄々としたその男に、動けなくなった兵士は寒気を覚えた 長柄「おい! 早くした方がいいんだろ!」 長柄は戦闘が収まるや、迅速に白のアルトを起動させていた 中澤「すまん。エルさん、いいかい?」 エル「ハイハイ」 2人はコクピットへ エル「ちょっと! 一緒に入るの?」 中澤「あのね。夜の冬空を風に晒されて飛ぶなんて、普通は自殺行為よ。分かる?」 エル「もうっ」 メインシートにエルが乗り込み、その後ろに備え付けの緊急用座席を展開させ、そこに中澤は座る アルトは格納庫の扉が開くと同時に外へと エル「ところで……飛ぶってどうすんの?」 中澤「はぁ?」 何故そんな初歩的な事を。EXMは中澤が現役だったころからビュンビュン飛んでいた この機体もウイングを装備しているので当然飛べるはずだが 長柄「エルくんはまだ飛行訓練はしてない! それにエルくんの能力は人の動きのイメージを元にしてる。急に飛ぶのは無理だ おまえが何とかしろ!!」 中澤「ぇ~~」 とエルと目が合う エル「何よ!」 中澤「いや、いいかい? まずそこのを引いて……」 どうやらすぐに理解したようでアルトはゆっくりと浮上するが、フラフラとバランスが取れずまったく安定しない 中澤「ちょ!? ホント大丈夫? コントロールこっちに回す?」 エル「このコ、私に合わせてピーキーって聞いたわよ!? 集中するから指示だけちょうだい!!」 そうなのだ。この機体は、エルの『脳波操作』専用に調整が施されている ある程度肩代わりは可能かもしれないが、正直試してもないのにそんな事をして、どんな影響が出るかわかったもんじゃあない エル「……羽、生やして……鳥じゃない…飛行機……それで…」 白の少女はぶつぶつと何かを呟いている 中澤(まさか、ぶっつけ本番で『羽を生やすイメージ』を作る気か!?) 幻肢痛。というものがある 失ってしまった体の部分が、まるで『ある』かのように、脳が痛みを感じる症状 もし逆に、『無いモノをあるとして、それを操作するべく、彼女の脳の意識が、機体にまで伝染』したとするなら ボゥ!! と、ブースターに火が入り、安定して飛び始めた!! 長柄「おお!!」 エル「やった!! いけそう!」 中澤「はぇ~…。大したもんだよホント」 そして、機体は昼まで居た方角に向き直す 長柄「行くのはいいが、アイツらあれだけか?」 中澤「えっ? いや~、どうだろ?」 長柄「ちょっと待て! 俺の安全は!? せめて蹴散らしてからいけ!!」 中澤「あぁ~~。たぶん逢坂さんが誰よこしてくれてるよ。恐らく、いやきっと」 長柄「おいっ!」 エル「行くよ!」 中澤「じゃ。あとよろしく」 とアルトは本土へと飛んで行った 長柄「だ~~~!! 後で覚えてやがれ~~~~!!!!」 その声も振り切り、機体は冬のN海の空気を裂いて、一気に加速していった ―――― 同刻 S県。COLORS収容施設 突然の衝撃に、意識が朦朧としている 何か周りが騒がしい ボヤける視界の中、誰かが近づいて来るのがわかった ?「やぁ、やっと会えたね」 誰? と聞き返す間も無く 「貴方!その子から離れなさい!」 震えるような声で女性の叫び声が聞こえた ?「うるさいなぁ~~」 パン!パン!パン! 「ぎゃっ・・かっ」 なんだ? 何かあったの? 渇いた音が響き、ナニかが倒れたようだったが、恐怖に支配された彼女には知りようもない まだ虚ろな意識 誰かはさらに近づいてくると、少女の身体を無遠慮に触れる 一瞬ゾッとする感触、しかし身体は動かない ?「君も変わらないね・・・嬉しいよ」 そのまま、誰かの手と認識したそれは、ぎゅうっと掴み、離そうとしない ?「あぁ、お帰りぃ……僕の、117」 とイーナは自分を引き裂く痛みに覚醒する イーナ「くぅ…あ……あぁ」 思い出したくないあの感触。だが確信する 覚めた意識の中、目に入ったその顔は忘れもしないあの少年 イーナ「86!?」 かつて愛した人の、爛々と輝く瞳と 遂に、目が合ってしまった α「嬉しいな、ちゃんと覚えててくれて、今は僕にもαって名前があるんだよ これからもずっと一緒だよ…。そうだよね? イーナ、だっけ? 君にピッタリな、カワイイ名前だ…」 イーナ「い、きて……」 名前を呼ばれたのにも驚いたが、彼が生きていた事に驚いた α「あ~~。なんで僕が生きてるか不思議なんだろ? 僕もさ あの後僕らは文字通り廃棄されたんだ でもたまたま一緒に廃棄されてたコイツ」 と後方に控えるように座るEXMを指した α「この僕にだけ反応を示した それに偶然気付いた研究員は慌てて僕を蘇生回復させた その後は施設が閉鎖し、流れ流れて今の隊さ」 αの、彼の動きは止まらない 足掻こうにも力が違い過ぎる イーナ「あっ……いっ…ぐぅ、あァッ!?」 燃え上がる火の手の中 彼の異様なまでに膨らみ上がった感情は、愛する彼女を絡み取って離さなかった イーナは吐き気のするような感情を抑え周りに目をやる 「う、うぅ……」 近くに、彩音の母である、さおりがうずくまっている さっきの声はこれかと気付く そして、施設の壁の向こう 彼が乗ってきたEXMとは違う影が立っていた ポルタ・ノヴァ。連合のアルトと対を成す、バイロンのEXM 連合ではなく、彼を拾ったのはバイロンなのだろうか? しかしその下、施設の少女達を品定めしている兵士達は地球の装備 イーナ(なに…!? 一体どういう……) 節操の無い兵士の何人かが、その場で少女を襲い始めていた イーナ(何? 何なのよッ!?) 街はあちこちで火の手が昇り、その暗闇に乗じた彼らは獲物を貪り始める… 何故だろうか。消防のサイレンすら一切聞こえない いつもであれば、知らない場所で火事が起きていても聞こえるのに… 誰も助けに来ないここは、ただの狩場と化していた イーナ「さ、さっき……EXM…が…っ、反応したって……ッどういう……こ、と…?」 イーナは、されるがままの状態にもかかわらず、彼の目を見ながら何とか口にする αは、彼女を愛でながらも、言葉を紡いだ α「僕が今着ている服……、そしてEXM…ェ…。見覚えないとは言わせない…… 忘れるはずがないだろう…? 自分の『色』を!!」 イーナ「!?」 暗き暗き灰の色。自分の力の源泉。そう教えられた。その色 よく見ると彼は上から下までその色で、乗って来たEXMも同様だった α「ようやく思い出したかい? そう君の色だよ……! 愛しい愛しい、君を示す彩…ォ…! そして君と交わった証なんだよ!! 君から僕が貰ったサイッコウのプレゼントさ!!」」 αがイーナの顔を撫で、見開いたその瞳に自分の顔を映す α「だから僕は助かったんだ。僕だった、あれだけいて僕だけがッ…!! …だから大人は僕を欲っしたんだよ…! だからこそ君も…」 『やめなさいッ!!』 話を遮るように声をした 彩音「イーナちゃんを離して!!」 その声の主は彩音であった、状況は判らない だが、イーナが他の子が襲われているのはわかった イーナ「彩ちゃん!! 逃げて!!」 α「逃がさないよ…!!」 αは銃を構える しかし、その銃口と彩音の間に さおり「彩! いけない早く逃げ…ッ!」 パンッ 渇いた音は、びちゃりと血飛沫を撒き散らし、あっけなく掻き消えた さおり「ぁごっ……」 その凶弾は、さおりの。母の頭を撃ち抜き爆ぜる 彩音「お……、お母さァん!!!」 α「うるさいおばさんだな」 なおもその銃口は彩音へと向けられる イーナ「逃げ……」 α「逃がさないさ」 目に見えない何かが、αを中心に広がる その『彩』の瞬きの奔流が、彼女を母の亡骸ごと包み込んだ瞬間 ズシッ。っと 急に身体が重くなる 彩音「な、に? ………こ、れェ?!」 そしてαが近付きおもむろに彼女の衣服を引き裂いた α「ちょうどいいや。君とも遊んであげるよ」 そう言うαの後ろで横たわるイーナを見て寒気が走った 彩音「いや、いやぁ!!」 その瞬間 大きな銃声と共に白い何かがポルタ・ノヴァを一体吹き飛ばした α「なんだ!?」 真っ白なアルトがこちらに向かって降りて来た コクピットが開く 中澤「彩音さん! 大丈夫!?」 彩音「中澤さァん!!」 その姿に彩音は安堵し、思わず叫んだ 涙を流し、動かぬ体のままであっても とても心強かった…… ――少し前―― N海沖 真っ白なEXMが飛んでいた エル「ウフフ♪ 飛ぶのってけっこう簡単ね」 と、どや顔をしていたが、中澤は彼女の方を見向きもせずに、コンソールに向かっていた 中澤「装備は? マシンガンとナックル……と何コレ? コビッツ? シールドじゃないの? 慌て過ぎたなぁ、武器が乏しい」 無視されてちょっとムッとするエル エル「大丈夫よ! 私のスノーホワイトは強いんだから」 と胸を張る 中澤「ところでそのスノー……って名前何?」 エル「女の子が乗ってるだからやっぱりかわいくね」 中澤「かわいくって……こんなカクカクしてる見た目で?」 エル「もうっ! いいじゃない!!」 とふて腐れる 後に数年、長柄博士を悩ませる事になった会話であった 中澤「そんな事より見えてきた!」 まだ数キロ離れているここからでも火の手がわかった エル「じゃっ、行くわよ!!」 加速するスノーホワイト 一気に陸が見えた 同時に、町を荒らすEXMも確認出来る エル「先制アタック!」 とマシンガンを撃とうとする、が 中澤「ダメダメ! 居住区が近いんだから連射しちゃダメ! オートから切り替えて単射にして」 エル「なんでッ!?」 叱る中澤にエルは悪態をつく 中澤「街にこれ以上被害出たらどうすんの!? チケット使えんくなるよ!?」 エル「ああ! もう!! これじゃあ【00B】との模擬戦の方がよっぽど楽だったわよ!!」 中澤は思い出す。そういえば彼女は、模擬戦はともかく、実戦は初めてなのだ 中澤(この辺から教育かなぁ。女将さんにでも頼んでみようかね) そう思いながらモニターから町の状況を窺う 中澤「とにかく着陸して接近しようか ……まぁまぁ数いるな 今回、影さんのサポートは無いし……」 と思考を巡らせていると困った顔のエルが目に入る エル「着陸……?」 しまった!と中澤が思うより早く エル「止まればいいんでしょ! だったら!!」 とスノーホワイトを更に加速させ敵機へ一直線 中澤「なっ…!? まっ、待ってまって!!」 そのままスノーホワイトはまるで特撮ヒーローの飛び蹴りのような姿勢をとり、おもいっきり近くのポルタノヴァは蹴り飛ばし着陸した ガカァァァァン!!!! ポルタノヴァの頭部はへしゃげ、そのまま地面に倒れる さすがに不意の横転に、パイロットも無事ではないだろう エル「どうよ♪」 中澤「あたた…っ、またなんという…ん?」 頭を抑え、ふとモニターに彩音の姿を見た 中澤「エルさんハッチ! 降ります!」 エル「ハイハイ」 とハッチを開け腕を地面へと下ろした 中澤「彩音さん! 大丈夫!?」 彩音「中澤さァん!!」 こうしてこの状況に至る訳だ 中澤はスノーの腕をスルスルと降りて行く α「誰かと思えば……やっぱり大人は役に立たないな」 悪態をつきながら、少年はいやらしそうな顔をする 中澤「へぇ。あの時の少年じゃない」 とサッと状況を見る 乱れた服の少女たち。血まみれで倒れた女性 そして、目の前の、石田と共に居た少年 中澤「ちょっと悪さが過ぎたかな」 中澤は、自分でも怖いくらいに冷静だった ふと落ちていた鉄パイプを拾い、剣を中段に構えるような姿勢を取る α「ナニそれ? あぁチャンバラで僕をどうにかしようって? …頭おかしいんじゃない?」 と銃を彩音の頭に押し付けた 彩音「…えっ」 母の撃たれる姿が過った瞬間だった バシン!! 銃を持った腕が弾かれる 彩音の目にさっきまで数メートル先にいた中澤が大きく映る α「なっ・・・そんな!」 αには何が起こったのかも分からない ただ、その手にはもう銃は握られておらず、代わりに鈍い激痛が遅れてやってきた 咄嗟に下がりイーナの元に… と、距離を取ったと思っていたαはぎょっとした もう目の前に中澤がいたのだ 先程と同じように、構えからの突きが肩へと入る 咄嗟に頭を庇った腕に、容赦無い一撃が見舞われ、彼は恐怖に慄いた α「そ、そんな! 研究所出の僕が圧されるなんて!? 強化も…訓練もッ!!?」 中澤「知ってる でも君、落ちこぼれだったんでしょ」 α「そんな! 117たすけ…」 ゴスッバシンッ!! 手首のスナップを利かせた連打を防いだと思った瞬間 腹に重い一撃を喰らい、更に後ろへと吹き飛んだ α「か…ッ!? グフッ」 無理やり肺を圧迫され、αは咽返すように空気を吐く だが、腐っても強化兵士。倒れながらも、まだこちらを睨み上げる… その様子に鉄パイプを構え直し 中澤は小川の顔を思い出す 中澤(こういう時は、貴方のしごきに感謝します) エル「おっ♪ 指令もやるじゃない」 何を呑気な…とコクピットから見下ろすエルを見た そしてイーナを見るや、上着を脱ぎ被せた 彩音もそこに駆け付けイーナを抱き締める 彩音「イーナちゃん!!」 イーナ「あァ…彩ちゃん!!」 二人を見て、胸が苦しくなった 中澤「ごめん、2人とも」 今はこれしか出なかった よろよろと立ち上げるα α「くっ……他の連中はどうした!」 と周りを見るとポルタノヴァや兵士達との連絡が取れない 配置しているはずの方向を見ると、もうすでに無力化されかかっていた そして、月明かりすら消えたと思った時、上空を覆わんとする影が迫ろうとしていた…… ―――― エドガー「本艦はこれより、N国S県、K区画地区のテロ鎮圧特別任務を遂行する 各員。街に対する被害は最小限に フォワードは3バーストマシンガンと大型ナイフの携行を許可する 街中でライフルやビームの支援は無いと思え」 その上空に現れた戦艦から、艦長『エドガー・ユーバンク・ヘイルズ』は、出撃する隊に向かい叫んだ エドガー「全艦、油断するなよ!!」 艦長であるエドガー司令。まだようやく30になろうというくらいにも関わらず、冷静な判断で指示を飛ばしていた 急に【市長】から詫びを入れたい案件があると打診が入り、何事かと思い文字通り飛んできたのだが… エドガー(ポルタノヴァ……。偽装はしているが、地球製だな? まったく、他人の事をとやかこ言える立場でもないが。厄介な……) 『……』 『これが……本当の戦場……』 『私たち、これを諫められるのかな……。こんなの経験した人を、ホントに元気づけられるのかな……?』 同じく、簡易潜水艇に匿われていた、『真中次郎』のプロデュースする三人組も保護され、共に上空から戦場を見下ろしていた…… エドガー「君たち。無理であれば、下がっててもいい。私もそう言われているのでね」 『…いえ! 確かに怖い…けど』 『【あのコ】達や、今こうして戦ってくれてる人たちの事を想えば!!』 『プロデューサーの言ってた事が、ちょっとでもわかるような気がするから…!』 エドガーは、その後ろ姿に、かつての自分やそのライバルの姿を重ねた… 確信する。彼女達はきっと、次代の戦乙女として羽ばたくと そして、そんな彼女たちに、負けてなどいられないと エドガー「了解した。ヴァルキュリアの卵たち では、このエドガー・ユーバンク・ヘイルズ。下手な指揮は見せられんな…!!」 ―――― 空中より舞い降りた暗色のアルト その乗り手。ライヒアルト = シュレンドルフは まだ20過ぎの若手であるが 的確にコックピットのみをナイフで引き裂き、テロ機を沈黙させてゆく 『な、なんだよ? レーダーが!? ゆ、有視界せんと…ぐあッ!?』 ライヒアルト「こちらモイライ1 この方面は仕留め終わった。次のターゲットに移ります」 強力なジャミングを撒かれ、機械による視界を遮られたテロ機達は、その中でも悠然と動く部隊に翻弄されていた ライヒアルト「こちらのOSは特別製でな スマンが、生死はそこそこでいいと聞かされている EXMに乗っていたのが運の尽きだったな」 3バーストから単射モードに切り替えたマシンガンでも うろたえた案山子の担い手を撃ち貫くには、彼と【試作AI】の手にかかれば、造作も無い事だった…… ―――― α「なっ…バカな!? EXMが全滅!? どおして? 石田は! 中佐は何してるんだ!!」 中澤「ふぅ、逢坂さん……いや違うか? とにかく助かった~~」 謎の部隊は、町に展開していたEXMを次々と沈黙させ、包囲していた歩兵も捕縛していく 少なくとも、こちらの意図に協力的らしい その様子に、中澤は少し安堵する α「…チッ!」 舌打ちしながら、αがEXMへと向かう 中澤「逃がさないって」 と不意に身体が重くなったのを感じた 中澤(これは…!?) とイーナと目が合うとイーナはいやいやと首を振っていた 中澤(能力…!? 何故だ? イーナじゃない、まさか…!!) その間にαは乗り込む 中澤「エルさんお願い! あとその子たぶんCOLORSだ! 油断するな!!」 エル『はぁ? さっきの男じゃなかった?』 コクピットに座り直しながら聞き返す 中澤「よくわからないけど、そうみたいなんだ気をつけて!」 エル「ったく」 スノーはマシンガンを放つが、弾が反れて地面へと落ちる エル「……ん?」 続けて撃つがやはり同じ現象が起きた エル「何かある!」 とマシンガンを投げつけると敵アルトの手前でマシンガンは不自然に落ちた ガゴンッ! と同時にマシンガンが暴発した ダダダダダッ! 中澤「わっ!わわわわっ!!」 彩音とイーナを小脇に抱え逃げる中澤 中澤「バカ! 銃を軽々しく投げない!」 エル「あぁ、ごめんごめん」 と向きを直し向かい合う 携帯コンソール画面にデータが表示される イーナの能力データ 中澤「たぶんあってる、どういうわけかあの子はイーナの能力をコピーしている」 イーナを見るが言いたくない素振りになんとなく察する エル「さてさて」 α「くっ……フィールド範囲が狭いッ! 途中だったからか…!?」 α機が迫る 触れそうな距離まで迫ると、互いのマニピュレータを掴み合い、取っ組み合いになる エル「遅いって…ん?!」 ガクン。と 膝が落ちそうになる。モニタに表示されるのは、【重量過多】の警告 ギリギリ蹴りを見舞うと同時に、バーニアを吹かせ距離を取った α「ゲホッ!? あ、アイツにやられてなけりゃ、さっきので決まってたのに…!!」 エル「これが『加重』ってのか…!」 そんなに広いフィールドではない、しかし弾は届かない、近付けば捕まる… エルは左手腕に装備されたシールドに目をやる エル「今の私に出来る? ……ううん! 出来る!!」 スノーはおもむろにシールドを掴みα機に投げつけた α「そんなもの……!?」 と軽くかわす するとシールドの影からスノーホワイトが顔を出す がαはニヤリと笑う α「甘いんだよ!」 『加重』のフィールドは常に展開している スノーホワイトは捕まると、今度こそは言わんばかりに地面へと押し潰された エル「くっ……! ぁあ…!?」 ズズン…… 倒れたスノーホワイトを跨ぐように立つα機 範囲内の地面が陥没し始め、αは全力で能力を行使する α「意外と呆気なかったねェ!! 01!! 【00B】に連戦連勝って言うから、どんなバケモノかと思っていたけど こんなのが『母さん』の秘蔵っ子なんて…ッ!!」 自分が落ちこぼれと称されたことへの苛立ちが募る だが、それは今この時払拭されるのだ…!! α機が長刀を引き抜き、スノーの首元へとかざした α「さぁ終わりだ!」 エル「コビッツ! お願い!!」 その言葉に応えるかのように 先程投げられたシールドが青い光を纏って、光の矢の如く飛翔する!! 『加重』のフィールドをものともせず切り裂き、そのままα機の腹部を貫いた! α「なんだ?! ナニが起こって…!?」 フィールドが消えた エル「だあぁぁぁぁぁ!!」 スノーホワイトのナックルがα機の頭部を捉える グワシャッ!!! α「グハァッ!!?!」 今度はα機が地面へと沈む エル「……【アイツ】にタイマンで勝てたのは。私だけだっての…」 そして、それと同時にテロリストとおぼしき部隊の制圧も完了した 長い夜はようやく明け、辺り一帯に日の光が指そうとしていた キャンパスを並べる日4へ続く
https://w.atwiki.jp/30mmcolors/pages/229.html
――数日後―― イザナギが姿を消し、また、施設の重要関係者や、何人もの少女達も、共に姿を消していた ついて行ったのか、騒ぎに乗じて脱走したのか。それもわからない 後に来た軍による捜索でも発見は出来なかった 恐らく、この襲撃は事前に漏れていた これ見よがしな輸送機は全てダミー 加えてイザナギが使った【ゲート】 もはや簡単に見つけられはしないだろう その後の処理を待つため、占拠した所長室に集まっている もちろん、くまなく調査したが、何も出て来る事は無かった もはや暇を持て余した中澤と01がボンヤリと座っている そこへ、闇影が入って来た 闇影「ハイよ、辞令」 と辞令書を渡す 中澤はキョトンとして 中澤「何?」 闇影「今日からおまえさんがここの責任者だとさ」 中澤「はぁ~~~~~~?」 闇影「やり過ぎたんだろ 上の奴らもおまえさんに噛みつかれるんじゃないかって怖くなったんだろさ ちなみに、オヤッさんからの辞令だぞ~?」 ニシシッと闇影が笑う 中澤は頭を掻きながら 中澤「どおしたらいいの? ここ任されてもねぇ~」 闇影「で、その子どうする?」 中澤「ん?」 指刺された、ソファで佇む少女を見る 闇影「まっ。あとは任せたぜ、新所長さん 俺は残りの調書の支度するわ。逢坂も来てるしな」 と闇影は出ていった 中澤は、この後見るであろう顔を思い浮かべて、深くため息をつくと 中澤「あぁ、いいかな?」 話しかけるが反応は無い 中澤「どうするこれから? 一応さ。まだ方針は決まってないけど、悪いようにはしないって約束する 絶対だ」 そこまで言うと01は口を開いた 01「イヤ・・・そんなの…信じられない……」 その目は暗く、憎しみの色をしていた 01「それに、私はアイツを許せない…母さんを…02を……!!」 とても子供のそれとは言えない目をしている 中澤(いけないな…) 中澤が01に小さなメモリーを見せた 01「何?」 中澤「そう睨まないの まぁちょっとこれ、一緒に見てみない?」 01「フンッ」 パシッと中澤の手を払う 中澤「いいの? 本当のお母さんからだよ」 01「えっ?!」 彼女の瞳に、少し光が戻る 中澤「本当に特別に扱ってたのかもね で、どうする?」 01「見る!!」 グイッと彼女は中澤の襟首を掴む 中澤「ハイハイ、待って待って」 メモリーをセットし、モニターに映像を出した ビデオレターのようだった そこには、窶れ疲れきった女性が映っていた 01「母さん……!」 01はじっとモニターを見る 『ありがとう、貴方がこんなこと許してくれるなんてね』 誰かと話している 『いいから、早くしなさい』 それはあのイザナギの声だった 『そうね・・え~っとエル、アル……? お母さんよ… こんな形でしかあなた達に言葉を残せない事をまず謝るわ… ごめんなさい』 その顔は笑顔ではあるが無理しているのが分かる 『まずあなた達の名前は私「エリアル」からよ…。決して左右じゃないからね!』 何気ない話を続ける母 01はその声を聞き涙を流した 『多分。いえ、間違いなくあなた達にも能力が現れるわ 戦争に使われるかも…… 出来るなら戦争なんてしないでほしい 私は戦いの中にいたわ でも、あの人との間に、あなた達を授かった……だから、あなた達には争いの無い所で幸せになってほしいわ』 『今の政府じゃ無理』 『もうっうるさい!』 『ハイハイ・・・』 『2人とも仲良くね……。施設の他のみんなも、きっと貴方達の味方よ…! 年長さんも居ると思うけど、エルだってお姉さんなん……ぐっ!!』 エリアルが急に苦しみ出した 『もういいわ、ここまでよ!早く処置室へ!!』 映像はここで途切れていた 01「母さん……」 少女は涙ぐむ 中澤「で、エルちゃん」 01「エ……ル?」 そう呼ばれて、思わずキョトンとする 中澤「そうだよ さっきお母さんが言ってたじゃない?」 ハッとした。そうだ、今母が言っていた。言ってくれていた エル「エル…。私エル!」 中澤「で? どうする、これから?」 エル「あ……」 そこへ 長柄「ちょっといいか?」 と長柄が入って来た 中澤「どしたの?」 長柄「ああ。02がなんとか生きながらえた」 それを聞いて、エルは長柄に駆け寄る エル「どこ…!? 02は……! どこに…!!」 長柄「ま、まてまて!! まだ残されたカプセルで養生して、眠っているんだ システムはまだ解析中だし、下手に動かしてなにかあったら、安全は保障出来ん!!」 エル「生きてるの…?」 長柄「もちろんだ。それは間違いない…!!」 それを聞いて、エルはへなへなと床にしゃがむ 中澤「よかったじゃないかエル なら、こうしちゃいられない 長柄、たぶん【中佐】が来るだろ? そっちは俺と影さん、逢坂さんでなんとかする お前は…」 長柄「施設のシステム保持と解析だろ? わかってる。脱走したのも、一人や二人じゃねぇ…… その辺も留意しないとな……」 前途多難な状況で、彼らは前へと進み始めようとしていた… 後に、あんな事が起こるとも知らずに……… ―――― とある病室 彼が目が覚めたのは、集中治療室の中だった そこから通常の病室に移された後にあったのは書類の束 新入り「………」 声『目が覚めたようだな あの場から貴様を運ぶのは随分苦労したぞ まさか三帝の一角に、新進気鋭の准将…。それにあの大尉も大したものだ……』 新入り「…はァ」 次の仕事場、役職、そしてこの映像会談の予定。それが現在 声『退院次第、お前は隊長だ』 新入り「私が、隊長?」 声『ああ。隊の編成はお前のレポートを参照にした。こんな机上の空論、本来は棄却されてしかるべきなのだろうが』 しかも書きかけのブツまで見られている。ただの趣味に近いぞあんなもの……だが 声『先方に同じような事を言う方がいるようでな。あちらから提案して下さった道楽だ。間もなく見えるだろうから粗相の無い様に』 新入り「…伯爵」 伯爵『何かね』 新入り「こんな形で『捨てた我が子』を拾ってどうなさるおつもりで?」 伯爵『保険、だ。後は体裁とでも言おうか。七光りでも出世は出世。精々励め』 そう言って通信は切れた 新入り「………」 バンッ!!! 病室の扉が開く 女「ここですか。私達の隊の者が居るというのは!!」 新入り「!?、…ふぅ……」 これが、後の『灰被り』との。追い剥ぎシンデレラたちの邂逅であった ―――― そして…… 00B『ゼロワン……ッ!! この屈辱は忘れない……! 絶対にぃ…!!!』 全ては、その先の未来へと 続いてゆく…… 全ての彩が、光に反射するように……
https://w.atwiki.jp/2010summaxima/pages/18.html
とりあえず、たにおんのTweetを引用。出典はこれ、これ、これ、これ。 プリンタがいうこときかないのでここにメモ。tracopower のコンバータ リンク 入力は4.5~9VDCとすると、±5Vは ここ ±15Vは ここ なぜかcoselはめっちゃ安い。そしてrsコンポーネンツのサイトはめっちゃ重い。リンク
https://w.atwiki.jp/2010summaxima/pages/2.html
メニュー トップページ 検出器進捗報告 マイコン進捗報告動くコード メモ シンセ進捗報告 全体的なこと電源 失敗&解決 リンク @wiki @wikiご利用ガイド 他のサービス 無料ホームページ作成 無料ブログ作成 2ch型掲示板レンタル 無料掲示板レンタル お絵かきレンタル 無料ソーシャルプロフ ここを編集
https://w.atwiki.jp/2010summaxima/pages/9.html
@wikiにはいくつかの便利なプラグインがあります。 アーカイブ コメント ニュース 人気商品一覧 動画(Youtube) 編集履歴 関連ブログ これ以外のプラグインについては@wikiガイドをご覧ください = http //atwiki.jp/guide/
https://w.atwiki.jp/2010summaxima/pages/6.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_117_ja.html たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。