約 883,863 件
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/2102.html
「のっちぃ〜、あれなん?」 「観覧車だよ」 「なにするやつなん?」 「乗るんだよ。んで、高いところまで行って、そんで降りてくるの」 「……楽しいん?」 「まぁ、のっちなんかはあんま高いところ行くことないしなぁ」 「ふ〜ん」 「あ〜ちゃんは退屈かもね。ジェットコースター乗ってなんとも思わないくらいだもんねぇ」 あ、どうものっちです。 今はあ〜ちゃんと遊園地に来てます。 何を隠そうのっちとあ〜ちゃん、一緒に住んでます。 元々そうだった? い〜え違います。 あ〜ちゃんはもう天使ではないんです。 あ〜ちゃんがそう望んで、のっちと住んでるんです。 意味が分からない? そうでしょうそうでしょう。 のっちだって意味が分かりません。 ついこないだの公園でのことです。 『のっちからあ〜ちゃんに対する気持ちが、何一つ邪念のないものになった』そうで。 『今まで仕えた人は必ずなんかしら悪い事考えてた』そうで。 『のっちは心の底からあ〜ちゃんに対する綺麗な気持ちが溢れていた』そうで。 『そしたらいつの間にかあ〜ちゃんものっちとずっと一緒にいたいって思っとった』そうで。 『この人なら大丈夫って思ったんよ』だそうです。 いやね、のっちの一途な気持ちが天使の心を打ったね。動かしたね。 いやぁ〜、あ〜ちゃんの体は柔らかい。あったかい。いい香りだし、もうヤバいね! え? ゆかちゃんとはどうしたって? それなんだけど…… 「のっちなにボーッとしとるん?」 「え、いや別に」 「変なのっち」 「のっちが変なのは今に始まったことじゃないけぇ、気にしたら負けよ」 「そうなん? なんかゆかイマイチよく憶えてないんだよなぁ、のっちとどうやって仲良くなったか」 「あ〜ちゃんは出会った瞬間からのっちは変なのだと思っとった」 「なんか二人とも酷くない?」 「ヤダ? こういう扱い」 「……ヤじゃないかも。むしろもっとや「のっち」 「……はい」 「キモイ」 「はいすいません」 そう。ゆかちゃんも一緒です。 二人してのっちに見せつけてるのかってくらいにイチャついてます。 そりゃ大好きな二人が目の前で仲良くしてたら、のっちはもうなんだって良くなっちゃうんだよ。 あ〜ちゃんから聞いた話。 天使は仕える人に恋すると、天使ではなくなるらしい。 でもあ〜ちゃんは今まで真面目にやってきたから、堕天使にはならずに一時的に休暇を貰えたらしい。 ってことはまた天使に戻るんだね、いつかは。 そしてそれまでの間は、のっちと過ごすことを望んでくれた。 と同時に、ゆかちゃんと仲良くなれる様に“ちょっと工夫”したそうな。 もう空は飛べないけど。 のっち達となんら変わらない体になったけど。 のっちの気持ちは、分からなくても大丈夫って言ってくれた。 「のっちぃ、次行くよ!」 その笑顔は、天使だった頃以上に天使の様だし。 あたしの願いは、なんだかんだちゃんと叶えてくれたし。 「地球は広いけぇ、死ぬまでに全世界遊び尽くすんじゃ! のっちもちゃんと着いて来んさい」 「あ、えっとあ〜ちゃん。遊ぶにはお金が必要でして、働かないと……のっち貯金がそろそろ底を「のっち」 「……はい」 「手っ取り早い方法があるんよ」 「……え?」 「人気者になって荒稼ぎできる最高の方法をあ〜ちゃん知っとるんよ」 「え、なになに?」 「ゆかちゃんの力も必要じゃ」 「ゆか特技メールの速打ちくらいしかないけど」 「そんなんせんでええ」 「どうすんの?」 「良く聞きんさいよ……」 「勿体ぶるなぁ」 「まぁあ〜ちゃんの考えることじゃけぇ、きっと楽しいことよ」 「ちょっと二人とも耳貸しんさい」 「うん」 「なに?」 「あんね……」 〜end〜
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/1583.html
障碍を砕く者:EX (インドラ) ヴリトラハン。旱魃を引き起こす巨大な蛇竜ヴリトラを滅ぼした逸話がスキルとなったもの。 木、岩、武器、乾いた物、湿った物、ヴァジュラ、昼、夜のいずれにも傷つかないとされたヴリトラを殺したことから、 特定の条件を満たさねば突破出来ない敵の防御能力を無視してダメージを与える。
https://w.atwiki.jp/ranobesaikyou/pages/151.html
. 【作品名】デモンズ・クラッシュ 【名前】世界記 【属性】世界が記された本 【大きさ】世界そのもの(惑星並ぐらい) 【攻撃力】無し 【防御力】大きさ相応 【素早さ】描写なし、自分のページを捲るぐらいしか出来ない 【特殊能力】デモンズ・クラッシュ内の世界は創造主に記されたものであり、 全ての行動、思考、変化などはあらかじめ決められている 世界記はそれを再現する 新たな世界を作っては消滅させていた「奴」や、それに抵抗して大陸を五つに割り、 その裂け目に封印した魔王も予定道理に動かされていたに過ぎない 【長所】大きい 【短所】超引き分けキャラ 【備考】世界記の再現とその支配に抵抗する主人公と敵対した。 old-- 【作品名】デモンズ・クラッシュ 【名前】世界記 【属性】世界が記された本 【大きさ】世界そのものとも言えるが、一応本並み 【攻撃力】詳しくは特殊能力参照 世界を滅ぼすことができ、また人や物を消し去り作ることが可能、ほぼ全能である (ただし自身に記された通りにしかできないと思われる・・・・・ なおこの話の終わりは世界および全てのものの消滅である) 【防御力】この世界の全ては文字に過ぎないため、干渉されることはない 【素早さ】描写なし、人間並 【特殊能力】今あるこの世界は創造主に記されたものであり、 全ての行動、思考、変化などはあらかじめ決められている 世界記はそれを再現する 新たな世界を作っては消滅させていた「奴」や、それに抵抗して大陸を五つに割り、 その裂け目に封印した魔王も予定道理に動かされていたに過ぎない 【長所】この世界を文字ととらえれる上位世界の存在 【短所】所詮は本、限定的にしか全能を使えない 【備考】世界終焉の手前のぺ-ジで参戦 主人公に終末を改変されたが、本来はあり得ない事なので考慮外 28スレ目 43 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 11 04 04 ID qZ3bD5We 世界記考察 ライオット=L様=ジャイナ聖教団教主=カーティス・ニュートン=イリアンソス =ラキア=サイア・ミュウに=で並ぶ 25スレ目 235 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/12/08(金) 15 41 43 ID mE7XKctv 創造主:本の大きさが惑星か宇宙なみかで位置が決定するか? 世界記:防御が本並み?それか世界一つ分になってL様みたない超引き分けキャラ? 24スレ目 746 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 11 10 34 ID 49ZGtznI 745 微妙だな。単なる物体じゃねーのかそれ。 できれば出すなら創造主の方がいいんだが。 747 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 11 18 12 ID /bntR5F+ 744 いや、アルカディモン もっと別格ですね 745 意思あるのかそれ? ていうかそれ効くの作中キャラだけじゃね 749 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 16 39 47 ID 34aH8py7 747 意思はある 後、干渉に関しては作中キャラ限定かもしれないが、世界を滅ぼされたら生きていられるやつは殆どいないだろうとの判断 750 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 16 49 23 ID ddvHMi0u 749 世界滅んでも本残るの?でないと自爆になる。 あと この世界の全ては文字に過ぎないため、干渉されることはない の意味がわからない 751 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 16 51 38 ID /bntR5F+ 良く解らんのだが本=世界だから世界の中の登場人物=文字に傷つけられないという理屈なの? それだと他世界の存在は本の中の文字じゃないから普通に攻撃効くぞ 753 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/29(水) 17 03 12 ID OV0oSbv6 作品スレで修正される前のエンジェルフォイゾンの大将みたい。 世界は自分の夢だから夢の中のキャラからは干渉されないって奴。 今はちゃんと修正されたが。 773 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/30(木) 09 40 19 ID fDn902yx 750 751 長所にも書かれているが、この本は作中世界が文字の集まりに過ぎない程の高次元(高次元か上位世界化は知らんが)の存在 分かり難いが ×文字が形を持ってせかいになった、ではなく ○3次元が文字にしか感じないレベルの存在であるもの(創造主)が、書き記した物語を3次元としてみたもの=作中世界 って感じかな?うまく説明できんけど 文字の中でどう書かれていても、現実には影響がない様に、世界を滅ぼしても本自体には影響がないと思われる 干渉されない理屈も同上、文字レベル(3次元)がどうこうしても現実(この場合は高次元)の石一つ動かせないという話 779 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/30(木) 10 48 59 ID /6V6b9xB 世界が終わると言うがその世界の規模がわからんとどうしようもないとおもうんだが 単一宇宙?平行世界全体? 780 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/11/30(木) 11 52 18 ID mFksStkt ファンタジー世界だと単一惑星並程度の扱いじゃなかったっけ。 852 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/12/01(金) 11 06 40 ID zoQqpxGe 779 780 世界記 そうなると・・・・・地球規模の消滅攻撃になるのか?? それは妙な気もするんだがなぁ・・・・・・・・・・、そんなもんかね? 【作品名】デモンズ・クラッシュ 【名前】創造主 【属性】世界の創造者 【大きさ】上位世界の人並み 【攻撃力】特殊能力参照 【防御力】作品世界は文字に過ぎないため、干渉されることはない 多元宇宙全能でもそちらから干渉されることはないと思われる 【素早さ】作品世界(3次元)が文字に過ぎないので、時間を超越していると思われる 【特殊能力】多元宇宙を好きなように操れると思われる(文字を書く、消す) 【長所】この世界(3次元)を文字と、とらえれる上位世界の存在 【短所】本を燃やすとかやってくれれば良かったんだが・・・・・・、描写が・・・・・ とりあえず著者のほうを書くとこんな感じかな、多元宇宙とか自分で書いてて良くわからんけど 防御で、多元宇宙全能<創造主(の防御) としたのは、文字がいくら好きなように動いて組み変わっても、やはり人間には影響(害)がないと思ったので 文字の書いてあるのも自体を破壊してくれれば、ひとつ破壊能力を上乗せれたのに・・・・ 853 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/12/01(金) 11 32 28 ID sQ6mQ/iv 創造主って出てきてなんかやったの? なんか推察ばっかりだと思うんだけど 854 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/12/01(金) 12 33 57 ID PsovUz+E 本の中の世界に対して外からいろいろ出来てもあんま関係ない。瞬時に上位次元に移動できるならともかく。 無理やり同一次元から戦闘開始ルールがあるから、防御描写が無いなら地球レベルの惑星(世界)が本に見える位の巨人扱い。 855 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/12/01(金) 12 44 41 ID 9eY7aedw 852 ttp //www.jade.rm.st/asukai/ranobe/kami.html こいつみたいになる気がするんだが。 まあ、サイズはもっと小さくなって。 カグヅチの上ぐらいになるかしらんえ。 .
https://w.atwiki.jp/urarojiara/pages/122.html
アリアンロッドRPGの世界設計 F.E.A.R.から発売されているTRPGシステム。 ケルト神話やラグナロクオンラインを意識したシステムや世界設定になっている。 七大神と呼ばれる神々が世界を構築、 動物や人を作り住まわせるが、 人は神を裏切り邪神や魔族を作り出す。 神VS邪神、人VS魔族の戦いの後、 神々は邪神を封印し世界を粛正し、魔族をほぼ一掃する。 それでも人と魔族の戦いは無くならず、 3度目の粛正が行われ約1000年経った時代が主な舞台となる。 エリンディルの基礎知識 アリアンロッドRPGの時代設定 アリアンロッドの世界構造 オリジナル:世界の管理 オリジナル:神具について
https://w.atwiki.jp/openfantasy/pages/296.html
ロイヤルヴァンパイア ロイヤルと呼ばれる種類のヴァンパイア 本来のヴァンパイアとはこの種族のみを指す言葉だったと思われる 不死者の王であり高い知性と強い力を兼ね備える 始祖たる個体とその血を引く者達であるが その個体は悪魔と契約した人間だったとも 生まれつきの悪魔だったとも言われる
https://w.atwiki.jp/hihuou/pages/22.html
[部分編集] 女神 球磨川 女神 名前 性別 詳細 鹿目まどか 女性 童話の女神。童話の世界を救うべく、文たちを送り込んだ。結末至上主義 球磨川 名前 性別 詳細 球磨川禊 男性 童話の世界を消去しようとしている ジョーカー 男性 四天王の一人。絶望 鬼人正邪 不明 四天王の一人。反逆 キャロル・マールス・ディーンハイム 不明 四天王の一人。破壊 武藤遊戯 男性 四天王の一人。ゲーム アザトース 不明 四天王の一人。クトゥルフ。SCPはお友達
https://w.atwiki.jp/bokuchu777/pages/161.html
魔法といっても、最終ファンタジーのように何でもできるわけではない。使える者にとってはそれはちょっとした特技でしかなく、日常生活で普通に使う者は少数派だ。 そしてそんなものだからこそ、人はうまく使うために知恵を働かせる。この力で何ができるのか、どういう使い方ができるのか、工夫次第で別の用途に扱えないか、どうすれば効果的に使えるか。 魔法を使えるというのは、自分の能力を理解し、それをその場その場で有効に扱えるようになって、初めて『使える』というのだ。このことを理解しているものは、実は意外と少ないのだが。 「結城、大翔。自身の能力がわからんっちゅう以外には、別に変わった経歴とかはないんやけどなぁ」 手元の書類を捲り、ひとりごちる。彼女の手元にある書類は、一人の学園の男子生徒の記録だ。 結城大翔。魔法の成績は芳しくないが、一般教養科目の成績は良好。学園での素行も品行方正というものではないが目だって悪いというわけでもなく、ごく一般の生徒といえる。何かと騒ぎを引き起こす友人が傍にいてそれに巻き込まれる形で注目を集めてはいるが、それも火消し役に回っている印象だ。 小学校時代に母親をなくし、父とも中学に入る前に死別。その後は彼女の同僚でもある乃愛が後見人とされているが、ほぼ兄姉妹の三人で生活していたらしい。妙に落ち着きがあるのもその辺が関わっているのかもしれない。 中学時代には多少荒れていた時期もあるらしいが、一時期の入院以降はそれも無くなり、健全な生活を送っていた。 「あの歳にしちゃ苦労はしとるんやろうけど、書類やとこれが限界やなぁ、やっぱ」 放り投げられた紙束が机の上に山を作る。 なぜ、彼女が大翔について調べようなどと考えたのか。それは、数日前の夜、ポーキァとの戦いの折に彼が作戦を立てたのがきっかけだった。 何度も言うように魔法は万能ではない。当然人間の扱うものであるから、その効果は人間の理解できるものに限られる。炎や水を出したり風を起こしたりといったものはこの学園でも扱う人間の数を数えればそれなりになる。しかしそれはあくまで大分類した場合の話。細かい違いを列挙すれば、完全に同じ能力、というものは一万人集めて一組できるかできないか、といったところだ。 それだけに魔法を理解する、ということは実は思うよりも難しい。そもそもが生まれてきて当たり前のように使える力なのだ。人間、歩行や思考のプロセスを正しく理解しているほうが珍しいのと同じことである。 あの夜大翔が立てた作戦は実に単純なものだった。 ポーキァをおびき寄せ大翔が戦う。貴俊はこの隙に屋上に暗幕を運び、ポーキァが戦いに集中している間にそれを窓を隠せるように設置、魔法ですぐに分離できる金具で固定した。その後大翔の合図で廊下一帯の電源をカット。同時に暗幕の金具を分離して完全に廊下を暗闇で覆い尽くしポーキァの視界を封じる。その後ポーキァを瓦礫に埋めてトドメは沙良の魔法で集めた水で一気に押し流す。 沙良の魔法の詳細を説明したのはあの時が初めてだった。沙良の魔法で大量の水を扱うにはそれなりの下準備が必要になるのだが、大翔はそれを僅かの間に理解し、そのための時間までも稼いでいたのだ。 並べてみるとまあ、随分と運の要素に助けられているように見える。実際沙良もそのように思ったのだが現実はあの通りだ。 魔法を正しく理解し、それをどのように使うか。さらにその効果をどれだけ信用し、信頼するか。若さゆえの未熟さはあるが、それでも基本の部分はきっちりこなしていると沙良は感じた。 そんなものを、あの若さで、しかも自身は魔法が使えないというのに発揮してしまう。 沙良にはそれが酷くアンバランスに見えた。 「乃愛が全部しゃべってくれたらええんやけど、あの頑固者が口を割るとも思えへんし」 そういえば、乃愛はよく『自分とヒロト君は似ている』などと口走っていたな、などとどうでもいいことを思い出す。 「他人の魔法を理解することは、自分の魔法を理解することにもつながる。逆を言うと、自分の魔法を理解でけへんのに他人の魔法なんか理解できるわけない。結城大翔。アンタのバランスが崩れんのも、そう遠くないかもしれへんで」 バランスが崩れる。それが何を示すのか、沙良にも分からない。だが、直感が警鐘を鳴らす。 結城大翔を、これ以上魔法に触れさせるのは危険だ。少なくとも、彼が自分の魔法を正しく理解するか、扱えるようになるまでは。だが彼はおそらく自分の言うことなんか聞かないだろう。いや、誰のいうことも聞かないだろう。 「誰かがアイツを支えてやらんことには、いつか壊れるかもしれんな」 不機嫌な呟きが、薄暗い保健室に消えていった。 ついに、調査の結果が出た。その知らせを受けたのは、夏休みに入って一週間ほどしてからだった。 俺達は全員居間に集められた。ユリアさんが全員の視線を受け、静かに口を開く。 「率直に言えば、事態は最悪といってもいいでしょう。うまく偽装されていましたが、この世界と他世界を『物理的に』繋ぐ穴が、いくつか見つかってしまいました」 この世界と、他世界を物理的に繋ぐ……だって!? そ、そんな。それって! 「それってどのくらいまずいことなわけ?」 現世界チーム全員首をひねる。大体この世界と他世界を物理的に繋ぐ穴が想像できない。落とし穴みたいなもんだろうか。 俺達の反応に、ユリアさんはがっくりと肩を落とした。うーん、彼女的にはものすごく重要なことを言ったんだろうけど、こちらの反応の薄さに落ち込んでしまったようだ。 がんばれ、ユリアさん。俺達はいつでも君を見守っている……! 「あの、そんな力強く励ます視線をしなくてもいいですから。み、皆さんまで労る目をしないでください、からかってるんですか!」 もー! とでもいう風に、ユリアさんがすねる。そのかわいらしいしぐさが微笑ましかった。 「まあまあユリアさん、落ち着いて落ち着いて」 「うう、ヒロトさぁん……って、最初にからかったのはヒロトさんじゃないですか、もう!」 ぽかぽかと叩かれる。はははこやつめ、ういのう。 などとじゃれあっていると、周りの視線が白けているのに気がついた。あ、あれ? なんか俺失敗した? 「ねえ、あたし達って何のために呼ばれたんだっけ?」 「ユリアさんのお話を、聞くため、だと、思う、よ?」 「私としては姫様のあのような微笑ましい姿を見るのは非常にうれしいのだが同時に正直なところこう、憎らしい」 「とはいえ、ノロケは自分の部屋でやってもらいたいところだがね」 「こーら、保険医の前で不純異性交遊に発展しそうな意見をださんの」 「もうここまできたら思い切っていくところまでいってもらいたいけどなぁ、俺は」 「やれやれ、庶民はこんなところでまで野次馬根性かい? ボクは遠くから見守らせてもらうよ」 ……ひそひそと小声で話しているせいで聞こえないけど、なんだかものすごく勝手なことを言われている気がする。 こら君たち、本人の目の前でひそひそ話はやめたまえ。ユリアさんも怪訝な表情をしている。 「あのさあ兄貴、別にいちゃつくなとは言わないけど時と場所をわきまえてくれる?」 突然美羽がわけの分からないことを言い出したせいで吹き出してしまった。い、いちゃつくってなんだよ、いちゃつくって。ユリアさんは言葉の意味が良く分かっていないのかきょとんとしている。ていうか、視線で『いちゃつくってなんですか?』って聞いてきている。 知らなくていいですから。これ以上場を混乱させるつもりはないんで。 「言いがかりは良くないぞ、美羽……って、なんだその視線は? 絶対零度にもほどがあるぞ、お前ら!?」 全員冷ややかな目をしている。レンさんにいたっては『貴様遊びのつもりか……』などとよく分からない言葉を吐きながら殺意すらこもった視線を向けてきている。ちょっと、抜かないで、真剣抜かないで下さい! 危険な雰囲気が漂うリビング。おかしい、俺達は話し合いをしていたんじゃなかったのか? なぜこんな危険が危ない事態になっちゃってんでしょーか。 「あのー……そろそろ続きを話したいのですが、だめですか?」 むしろお願いしたいところだ。 「この世界と私たちの世界の世界については、以前に簡単に話しましたね――」 これは私たちの世界でも完全には解明されていないのですが。 そんな前置きの後に彼女の口から語られたことは、なんというか、これまた俺の常識の到底及びつかないような話だった。 世界にはその世界そのものとなるエネルギーが充満している。それは空気のように漂っているものの、海流のように、ある程度決まった流れのようなものがある。 その流れにも室や種類、密度の違いがあり、エネルギーの強い地域と弱い地域というものができてしまう。そしてその強い地域でも特に一部に、渦を巻いてそのエネルギーがたまってしまうことがあるのだという。 一か所に集まった力は自らの圧力によって圧縮されるが、限界を超えると大きな爆発を起こして散り散りになる。地震のメカニズムを想像すれば分かりやすいだろう。爆発といっても実際に世界のどこかでぼんぼん爆発が起きるわけではない。 さて、この爆発の時に瞬間的に異世界とつながる……というより、この世界の壁に穴があく。その時たまたまそばにある異世界の壁もついでに貫通してしまう。時間にして一瞬の話らしいが、たとえばこの瞬間のど真ん中に人が立っていて魔法を使っていると、世界のエネルギーに引っ張られて異世界へ飛んでいくこともあるのだそうだ。 ユリアさんたちがこの世界へやってきたのも、これを人為的に行ってのことらしい。とはいえ世界の壁に穴をあけるなんてどれほどの力を集めればいいのかなんてまるで想像できないが。とにかく、ユリアさんは自分の限界を超えるほどの魔力を貯め続ける。ユリアさんたちの魔法は世界のエネルギーへの干渉力が強いため、そうすることで渦と同じ状態を作ることができるらしい。 あとは限界まで貯めた力を解き放つことで穴をあけるのだとか。なにがなんだかさっぱりだが。 さて、この開いた穴は自動的にしまってしまうらしい。壁という表現を使ったが、それも結局は世界を流れるエネルギーの奔流。水にあけた穴は次の瞬間にはなくなっている。 ところが今回異世界のエネルギーが流入しているのはこの穴が開きっぱなしになっているからだという。視覚的には全く変わらない景色が広がっているのだが、もしその場でうかつに魔法を使うと、エネルギーの流れに乗ってユリアさんたちの世界へぽんとはじき出されるらしい。 「どうやらエネルギーの流入と流出が同時に起こっているようです。それでも流入する量のほうが多いので、やはり世界の崩壊は時間の問題、ということになるのですが……」 それに、今は影響は出ていないが異世界のエネルギーが流入しているせいでこの世界に対してどのような悪影響が出るかもわからない。やはり時間との勝負、ということになる。 さらには放っておけばユリアさんたちの世界側からも人や物が流れ込んでこないとも限らないのだ。しかしこれは取りようによってこちらにとってもチャンスではないかと俺は思った。 「それじゃあ、ユリアさんたちの世界から人を寄越せるんじゃ? ユリアさんたちも簡単に帰れると思うけど……」 「だといいのですけど、なかなかそううまくはいかないんですよ。もし人手を大量に寄越したとしてもその人たちの帰り道を考えるとその穴を閉じるわけにはいきません。そしてこれはこれから話すこととも関係するのですが、穴は徐々に小さくする必要があるのです。そうすれば結局、まともに活動できるのは私たちだけになります」 いくら私でも五人十人を一斉に世界を越えさせるのは不可能ですよ。と彼女は苦笑した。 穴をふさぐだけならなんということのない作業らしい。しかし問題はこの世界に残る彼女たちの世界のエネルギーと、彼女たちの世界に残る俺たちの世界のエネルギーだ。このエネルギーにしても放っておけばそのうちそれぞれの世界に同化するだろう、というのが学者たちの言い分らしい。が、それも大量になれば同化に時間がかかる。そしてすでに大量のエネルギーが互いの世界に充満している。 これをそのまま放っておけば、どんな被害をもたらすかはわからないが、楽観できる状況でもないようだ。 よって穴を閉じる前に可能な限りエネルギーをそれぞれの世界に戻す。そのために、穴は徐々に小さくしていかなくてはならないのだという。 これだけなら残りの時間でも十分に可能な作業だというのだが、問題が先日発生した。 ポーキァたち敵の出現だ。俺が隠していたせいで発覚がつい最近になったのだが。 「それに加えて新たに判明したのですが、どうにもこの世界に流入しているエネルギーが私たちの世界のものだけではないようなのです」 「……は?」 「どうにも彼らはいくつもの世界とこの世界をつないでいるみたいですね。それぞれのエネルギーも分けなくてはいけません」 よくわからないが面倒が増えたらしい。ていうか、人の世界にぼんぼん穴をあけるなよまったく。 「それで、解決策は?」 「手段はいくつかありますが、確実かつ手っ取り早いのは穴の数をまず減らし、この世界のエネルギーで蓋をすることでしょうね」 蓋により流入を防ぎ、世界のエネルギーは同じ世界のエネルギーと引き合う性質を利用し、穴の周囲にその世界のエネルギーをあらかじめ集める。そうしてあらかた集まったところでこちら側のエネルギーを押し出すのだという。 ちなみに、異世界へ流れたこの世界のエネルギーも、異世界側から流入してくるはず、らしい。 「何しろ事例がありませんので、推測憶測のオンパレードです。一応、私たちの世界の研究結果では理にかなっているのですが……」 自信なさげなユリアさんだが、乃愛さんは肩をかるくすくめた。 「なぁに、それで駄目ならまた別の手を考えればいいさ。そもそもこちらの世界ではそれほど世界のエネルギーに関しての研究は進んでいないのだから」 それは暗に研究自体は存在するといってるんですよね、乃愛さん。どうして毎度一般に知られていないような話を知っているんですか、あなた。 「コネだ。あと腕力」 「聞かなきゃよかったっ!!」 「安心したまえ、コネといってもゆすりたかりのようなものだから」 「ああなんだ、そうなんだ……って違うそっちじゃない、聞かなきゃよかったのは腕力のほうだ! ていうかその話のどこに安心する要素が!?」 「あのー、話を続けてもいいでしょうか……?」 ああ、思わずノリツッコミをしてしまった。 そんななか、俺たちのあほな会話にも表情筋一筋さえも動かさなかった沙良先生が口を開いた。 「てことは、や。効率的にそれを行うにもまずは穴の数を減らす。そんでそのあとに残った穴に蓋をする。それはええんやけど、その蓋ってどないして作るん?」 「私の通常魔法を使ってもいいですが、可能であればこの世界の特殊魔法で行っていただきたいです。そのほうが、もしもの時に対処しやすいですから」 もしもの時。それがどんな時を指すのかは、誰も口にしない。ただ、レンさんとエーデルの表情に一瞬の緊張が走った。 それに気付いたユリアさんは小さく二人に微笑んで、話を続ける。 「ミウさんのようなエネルギー操作系の魔法使いの方が向いていますが、他にも時間操作系、空間操作系の魔法でも可能であるはずです。まあ、種類にもよりますが……」 特殊魔法の効果は見た目には同じでもその実はまったく違った過程によってもたらされる、なんてのはよくある話だ。たとえば沙良先生の魔法は見た感じエーデルの通常魔法と似ているが、それは先生の魔法の一面に過ぎない。 ていうか、先日話を聞いたときは血の気が引いた。ぶっちゃけ使い道次第ではポーキァレベルの破壊をもたらせる力だ。 そこでふと思いついた。 「ん? もしかして沙良先生の魔法でもいけるんじゃないですか?」 「んー、可能かもわからんけど世界のエネルギーって言われてもようわからんしなぁ。撃ちの魔法やと理論もないもんを制御するんは、ちょっとしんどいな。そういうのに向いてそうな知り合いは、何人かおるけど」 なるほど。そういえば沙良先生の魔法は……というか、先生の性格なのかな。視覚的あるいは理論的に明確でないと、その扱いに不具合が生じるんだとか。 「それで、美羽の魔法――『弦衰』で蓋を作るって言うけど、それは?」 「簡単ですよ。ミウさんの魔法でそのあたりの空間丸ごとのエネルギーを極限まで減らしてもらって、あとは私がそれを維持する魔法をかければいいんです」 空間丸ごとのエネルギー……そんな事できるのか。 美羽を見ると、 「できるよ? 何となく、感覚で」 あっけらかんとしたものだった。ああなるほど、性格だな。 「……兄貴? なんか非常に不本意な感想を抱かれてる気がするんだけど?」 「安心しろ気のせいだ」 「そう……美優、兄貴にケーキでも焼いてあげて」 「お前信用してないだろ、なあ、信用してないんだろう!?」 「どういう意味かな、お兄ちゃん……」 プチ修羅場が発生した! 世界の終わりの前に俺の人生の終焉がっ!! 「ともかく、明日からは調べた穴という穴に蓋を付けて回ります。それで一応事態の進行は抑えられるはずですから」 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた俺たちを横目に、ユリアさんは今後の方針を決めた。 こちらを見るその顔は呆れていて、それでも優しく笑っていて。そんな笑顔が、やっぱり似合っていて。 だからそれをみた俺は、思わず小さく笑ってしまった。 「兄貴っ「お兄ちゃんっ」!何笑ってるの!!」 ちゃうねん。 だがしかし! 俺は穴の近辺にはこれっぽっちも近づかせてはもらえなかった。ユリアさんに『ダメ、絶対!』といわれてしまったのだ。 「まあ、確かに俺の魔法とは相性が最悪だもんなぁ……しかも制御できないし」 貫く魔法。それが制御されていない上に詳しいことが分からない以上、せっかく作った蓋を片っ端から貫いてしまう可能性だってあるのだ。ちなみに貴俊もここにいる。理由? 魔法じゃ役に立たない上に場を掻き乱すからだよ。こいつの動物的勘だけは頼りになるとは思うけど。 グラウンドの隅の木の陰に入ってもう1時間。作業はまだ終わらないらしい。暇、超暇。遊びたい盛りの男子高校生に夏休みの一日を日陰でぼーっとすごせというのはいくらなんでも酷というものだ。 「なあ大翔ー。お前ユリアちゃんともうキスくらいはした?」 んなぁっ!? 飲もうとしていたピルクルが気道に入った。おかげでむせた。 「いきなり何を言い出すんだ! 暑さで頭がおかし……いやそれはいつものことか」 「いくらなんでもそりゃ酷いってもんじゃないか、マイラバー」 いやだって、貴俊がちょっと脳内に電波がゆんゆんいってるのっていつものことだし。脳内電波規制法とかできたら真っ先につかまりそう。 ……美優もな。 「お前はそーやって大事な話になるとすぐ話し逸らすよなぁ。特に、他人が絡んだ心の問題とか」 そうか? 大体今のはごまかすも何も無いと思う。いきなり意味不明な質問されたら、誰だって驚くだろ。 そもそも、大事な話になるとすぐごまかす点に関して文句をいわれたくない人間ナンバーワンの貴俊に言われてもちっとも心に響かない。 「大体なんで唐突に、その、なんだ、キ、キスだとかいう話題になるんだ」 心底疑問を覚える話だ。 貴俊、ニヤニヤするんじゃない。 「最近のお前ら見てると結構いい雰囲気にみえるけどなぁ」 「気のせいだろ。そもそも異世界のお姫様だぞ? 俺のことなんか気にするもんか」 最近はその事実もたまに忘れるけど。こちらの世界に来て数ヶ月。ユリアさんたちは、にすっかりこちらの生活に馴染んでしまっていた。ドラマに心躍らせる姿なんか、完全にただの女子高生にしか見えない。見ていてほほえましいことだ。 ちなみにレンさんは時代劇に心を躍らせすぎて剣を振り回しそうになる。おかげで彼女が時代劇を見るときは俺が隣で見張る役をすることが我が家の暗黙のルールに追加されている。 「ふーん、そういうかわし方か。まあお前ならそうなんだろうけど」 「なんだよ、いいたい事があるのならはっきり言えよ。気持ち悪いのはいつものことだからそれ以上に……えーっと、ちょっとまて」 なんかこう、うまい言葉は無いだろうか。気持ち悪いを更にぱわーあっぷさせた、すさまじく相手の心をえぐるようなフレーズは。 「きみょい? ぞ」 奇妙+キモイ。 いかん、逆にかわいらしくなってしまった。 「なんかないか、こう、お前をこの上なく痛めつけるような単語」 「なんで俺が自分の悪口を開発しないといけないんだっ!? げちょいとかどーよ? 意味は無いけどなんかいやっぽいイメージ」 お、それはいやっぽい雰囲気がそこはかとなく強烈に伝わってくるな。げちょい。うん、げちょい。 ああもう、貴俊はいつ見てもげちょいなぁ。 いいじゃない、これ。 「言いたいことがあるならいえよ、げちょい貴俊」 「自分で編み出しておいてなんだが結構くるなそれ! ああでも、こういうのもいいかもしれない。新しい趣味に目覚めてしまいそうだぜ」 頬を染めるな体をくねらせるな息を荒げるんじゃない! というわけでげちょいの永久封印が確定した。 「で、話の続きだが。お前、ユリアちゃんのことをどう思ってるわけ? 相手の立場を言い訳にするのはあんまりいい趣味じゃないだろ」 ユリアさんのことをどう思っているか、なんて、そんなこと。 俺が、ユリアさんを好きかどうか、って事か? え、いや、だって、ユリアさんだぞ? お姫様だぞ? 「いきなりそんな事言われても困る。俺はただあの人が元の世界に戻った時に、この世界のことをいい思い出として思い出してもらいたいだけだし」 それは約束で、俺の希望でもある。そしてそれはおそらく、今のところちゃんとできていると思う。 不安要素はあるとはいえ、それをどうにかするのが俺の役目だと思っているし。 ユリアさんにも言ったことだ。こちらの世界ににいるうちは、ただの女の子なんだって。ただの女の子がこちらの世界で楽しい思い出を作る。その手伝いをしたいだけなんだが。 「ただの女の子としてお前が扱ってるんなら、向こうだってただの女の子としてお前に接してるんじゃねーの? お姫様かどうかなんか関係ないじゃん。お前を好きになって、お前が好きになって何か問題があるのか?」 む。それはたしかに……え、そうなのか? そういう話になっていくのか? なんだか混乱してきたぞ。 「そういうもんか? いやでも、それだって向こうが俺に好意を持ってるとは思えないぞ」 「その手の話題に関してはお前の意見は当てにならないから無視な。それにユリアちゃんがお前に好意を持っているかどうかは別にいいだろ。お前がユリアちゃんを好きなのかどうかを聞いてんの、俺は」 「そんなこといわれてもよく分からないのが本音なんだが」 「はあぁぁ。まあ、お前の性格じゃあなぁ。石橋を叩いて砕く性格だし」 今なんつったお前。 「砕いてどうするよ。本末転倒もいいところじゃないか」 「慎重に慎重に様子を見て、それでも安心できなくてむしろ全部ぶっ壊して安心する、そういうことだ」 だからとにかく相手の気持ちを、意思を気にする。自分の気持ちじゃなくて、相手の気持ちがはっきりして初めて自分の気持ちの置き場所を定める。 それでも不安だから。それなら最初から橋なんかなければいい。 「それだけ聞くとずいぶん最低な人間に聞こえるな、おい」 「最低とは言わなくてもそれなりに酷いっていうか卑怯だろ、お前」 ずいぶんな言われようだった。 それに俺は自分を慎重な性格だとは思えない。どちらかといえば行き当たりばったりで、その場の流れに任せていると思う。人に流されやすい自覚もあるし、それでいいやなんて多少諦めてもいる。 がむしゃらだった昔の反動というか、それを反省にしたというか。さすがに人に流されすぎるのは問題なんだろうけど。 「お前が他人の心情あれこれにまで気を配るなんて世も末だな」 「お前が他人の心情あれこれにしか興味を持たないからだろう」 もっと自分の心に気を配れ、と視線が言っている。絶大なお世話だ。 なんだって言うんだ、いったい。そんなこといいじゃないか、別に。惚れた腫れたなんて、そんなに大事な話かよ。 「まあ俺には恋なんてよくわからないけどなー。俺にわかるのは、お前に対する熱い愛だけだぜ!」 ユリアさんたちが戻ってきたのは、それからさらに2時間程たってからだった。賽の河原よろしく石をひたすらに積み上げている俺達を見て、困惑の表情を浮かべていた。 「ごめんなさい、穴の数が多くてどうしても時間がかかっちゃうんです」 「構わないよ」 心底申し訳なさそうなユリアさんに苦笑する。 ただ問題があるとしたら、彼女達が魔法を使うたびにどうしても悪寒が走ってしまうことか。魔法で狙われるときには便利なんだけどな。 「とりあえず、この辺りの穴はすべてふさいでしまいました」 「街のほうは私のほうで手配した人たちに対策をとってもらっているから、君達の役割は一応ここでひと段落、となるかな」 乃愛さんの言葉に、全員がほっと胸をなでおろした。どうやら敵の妨害なども無く作業を終えることができたらしい。後は、この蓋を維持するだけか。 だが、乃愛さんはまだ難しい表情を浮かべて、とんでもないことを言ってきた。 「私はこれからしばらく忙しくなるから、周りには気をつけたまえよ。実は、もしやと思って調査したところ、世界中にこの街にあるような穴が開いているらしいんだ」 へぁ? さらりと出てきた爆弾発言に全員口をぽかーんと開いてしまっている。 世界……中? 世界中って、要するに地球全体まるっとぐるっと、そこかしこにぼこぼこ穴が開いてるって、そういうことか!? 「おかげでその実態調査と対策に入らなくてはならなくてね。悪いが、しばらく戻ってはこないと思う」 「いや、それはいいんですけど……あいつら、世界中にそんなボコボコ穴あけて結局何がしたいんだ?」 そう、連中の目的はいまだに不明なままなのだ。もしかしたら蓋をかけていったところを片っ端からまたあけていくかもしれないし、こうしている間にもどこかに新しい穴を開けているのかもしれない。 はたまた、今もどこからかユリアさんを狙っているのか。 「やはり、彼らが何者で、何を企んでいるのかを解き明かさない事には、事態は解決しないのでしょうか」 「可能性は、ありましょう……そして、彼らが姫様を狙っていることが分かっている以上、これから先も油断はできない」 レンさんは腰の剣に手を当て、何か思うように静かに眼を閉じた。 美羽と美優は、ユリアさんを気遣う視線を向けている。 そのユリアさんは――なんだろう、今までに見せたことの無い表情を浮かべてじっと俺を見ている。初めて見るその顔は、悪い気分にはならないものだけど、酷く危ういように見える。 なんだろう、この表情を知っていると思う。これと同種の表情は、見飽きるくらいに見てきている。そんな確信が胸をよぎった。 それが誰の顔なのかは思い出せないけど。 「ユリアさん?」 「はい、なんですか?」 しかし俺が声をかけると、それは蜃気楼のようにすっと消え、いつもの暖かな笑顔に戻る。 それを見て、胸の奥がざわついた。ああ、だめだと。その顔は、その顔の裏にある決意は間違っているんだと。なぜか、そう思った。 「……ふぅ。やれやれ」 乃愛さんがそっと俺に耳打ちした。 「ヒロト君。君、なるべく彼女と一緒にいたまえ。そうして、いろいろと考えてみることだ」 相変わらず答えはくれない。それでも俺は素直にうなずいた。別に乃愛さんの言うことを聞こうと思ったわけではない。 もうそうする事は、俺の中で決まってしまっていたんだから。
https://w.atwiki.jp/fantasylaboratory/pages/500.html
2005.08.29 19 22 野良(--) コメントがかさんできたので新しくしてみた。 ぼちぼち錬金術に関するところはまとめていきたいので、ちょっと考えてみる。 俺としては、共有世界の錬金術とは、 「あるモノを別のモノに変える術」の総称であり、その手段に魔法的なものも化学的なものも使う。 ということでどうだろうかと提唱する。 これがどういう位置づけになるのかは、研究者によって意見がわかれているが、 (今回の俺と夕としぐれもんの見解が違うように) 本質としてやることは変わっていないだろう。得られる結果も違いはないと思うし。 研究のアプローチの違いでしかないと思うんだよね。 で、これは前回の質問A群の答えとしてどうか、というのをレスください。 質問B群に関して、ここに意見をお聞きしたい。 まず、俺の見解を上げさせてもらう。 B-1、錬金術で物体の変質と形成、どちらが行えるのか、あるいは、どちらも行えるのか。 →錬金術はモノを変質させる術であると限定し、形状の変化は別の術とする。 組み合わせてモノを変質させ形成させるものは、分類上錬金術と呼ばれることもある。 研究者によって呼称は異なっている。 B-2、錬金術は直接的な攻撃の手段として使われるか。 →錬金術はモノを変質させる術であると限定し、攻撃に使用するのは別の技能であるとする。 人によっては練成したものを使って戦うのも錬金術と呼んだりしている。 B-3、錬金術はその工程において魔法と関わりなく行えるか。 →魔法と関係なく変質できるモノもあるし、魔法を使わないと変質させられないモノもある。 魔法陣が必要な練成と、不要な練成がある、ということだな。 化学的変化も錬金術のうちに含まれている、という解釈。 B-4、錬金術師の社会的地位はどのようなものか。 →魔法との関係上、いろいろな形が考えられるんだよな。 宗教とも絡んでくるだろう。 錬金術の国では、当然高いものである。 背景の宗教も、錬金術を肯定する教義であるだろう。 とまずはまとめてみた。 いつものように異論反論賛成反対求む。
https://w.atwiki.jp/fantasylaboratory/pages/357.html
2008.05.28 22 53 ミカヅキX 『かたつむりに白い花を』 マイマイカブリという、黒い細長い瓢箪型の虫は、その名のとおりかたつむりの天敵である。 この日本にしかいない虫に狙われたかたつむりは、いくら殻の中に篭ろうとしても無駄であった。 こいつは、殻に逃げ込んだかたつむりの肉に齧り付き、消化液を吐き出して溶かしてしまうのだ。 マイマイカブリにとって、かたつむりは、誰にも邪魔されない食堂付のご馳走のようなもであった。 僕が部屋に篭ってから、どれぐらいの時が流れただろうか。 一日中部屋を閉め切った僕の部屋ほど、日にちを数える事に向いていない場所はないだろう。 付けっぱなしのPCのモニターが、暗い空間で輝いている。 大げさに言えば、その四角い光が、僕の世界の全てだった。 おまえまじでおかしいんじゃない?そんなにかまってもらいたいわけ? また、奴の書き込みだ。 僕が、PC内のコミュニティにコメントを打ち込むと、かなりの確立で僕にちょっかいをかけてくる。 しねとはいわないよ、つかまっちゃうから。でも、いきてるいみはないよね。 奴は、どこにでも現れる。 僕が常駐するサイトを変えてもすぐに現れて、誹謗中傷のかぎりをつくす。 気にしなければいい。 そう思えた時間は短かった。 最初のうちは気のせいかと思っていた。 どこにでも、こういう輩はいるものだと。 しかし奴は、僕の行く先々に現れて、ぼくに絡んでくるのだ。 そんなことはありえないと、誰でも言うだろう。 奴には、雰囲気というか、はっきりとした個性があった。 今では、一目で奴の書き込みだと見分けられる。 その言葉は、僕の魂を抉り、僕の心を壊していく。 その効力は、僕にだけしか現れないらしい。 僕が何人かに相談したところ、僕の過剰反応だと一笑に付す。 もし実際に会って話していたなら、僕がどれだけ奴に苦しめられているか分かってもらえたかもしれない。 などと、ありえない夢想をしてみた事もあった。 僕は、なんども名前を変え、サイトを変え、書き込み方を変えたりしてみた。 どれも、なんの効果もなかった。 ネット自体を止めようと思ったことも、一度や二度ではない。 そんなことは不可能だったけど。 僕が自分の巣の中で外の世界を切り捨てていられるのは、ネットがあるからだ。 ぼくは奴を呪い、ネットを呪い、理解してくれないHNだけの友人を呪った。 それでも、僕はPCの電源を切ることができなかった。 奴の正体はなんなのだろう。 唯の快楽主義者なのか。 あるいは僕に恨みを持つ誰かなのか。 僕のような引き篭もりなのだろうか。 奴の存在自体に慣れすぎて、いくばくかの興味を抱いたこともある。 しかし、奴の書き込みを見た瞬簡に、そのわずかなシンパシーも霧散してしまう。 そのため、奴の正体というパンドラの箱を開けることは不可能であった。 奴が僕をあざ笑うたびに、僕は奴を拒絶し否定してしまう。 見えそうになった奴の正体は、一瞬で黒い悪魔じみた影に成り代わる。 なにまっかになってかきこんでるの?はずかしいなぁ、まったく ある日、僕の堪忍袋の緒が切れた。 目の前が、真っ赤に、いや、真っ暗になった。 僕は徹底的に奴に論戦を挑んだ。 完敗だった。 次の日も。 そして次の日も。 ネットでの戦いは、ロジックの戦いだと理解し、僕はあらゆる論理のテキストを漁った。 あらゆる情報にアンテナを張った。 ナショナリズムもマイノリティー論も、物理学も映画論も。 それでも、僕が奴に勝つことは無かった。 永遠に。 ある日、パタリと奴は姿を見せなくなったのだ。 僕は、安堵するよりも早く不安になった。 まるで取り残された幼児のように。 半狂乱になって、奴を追い求めたが、奴の新しい書き込みは途絶えたままであった。 僕にできたのは、奴のログを漁るだけであった。 僕は、彼の残したログを、三回読んだ。 三回読んで、涙を流した。 そして、不意に、空が見たくなった。 風が、驚きだった。 こんなにも激しかったのか。 陽が、おどろきであった。 こんなにも眩しかったのか。 僕は、だれもいない家の階段を静かに降り、脱衣場に向かった。 そこにある姿見で、自分の顔を見る。 垢で薄汚れた、とても10代の少女とは思えない、汚らしい顔を。 僕は、鏡に向かって、にっと笑ってみた。 「馬鹿・・・みたい」 私が兄の死を知ったのは、部屋を出た次の日であった。 それ以来、私は、自分の事を僕と呼ばなくなった。 馬鹿らしいことで心を傷つけた私に、ネットという世界を与えてくれた、優しかった兄。 昔から、私のことだけを考えてくれていた、兄は、もういない。 ある日、マイマイカブリに中身を食べつくされた、かたつむりの殻を、庭で見つけた。 マイマイカブリの姿は、もうどこにもない。 私はその殻に、小さな白い花をそっと挿した。 野良(--) おお、これはたいしたものだ。一つの話として完結してるじゃないか。 ブームの兄妹モノだし(笑 ただ、マイマイカブリのくだりはイマイチ反映されていない気がするな。05/28 23 04 モモと 最初、本気で「僕」が男の子だと思いました。伏線に見事に引っかかった(笑) この場合、マイマイカブリとかたつむりを兄妹に映しているのでしょうか?05/29 00 18 水上 える うわあWikiでマイマイカブリみたらこえーーーー 兄妹愛に思えなくなってきたこえーーーーー05/29 00 28
https://w.atwiki.jp/jamaica/pages/22.html
闇の住人の住む世界。一日中、暗い。 闇の住人は、血のかわりに、闇が流れている。 光の世界とは対照的に、魔物がいる。 この魔物は、人間界とは桁外れの強さであり、並の人間では即死してしまう。 闇の王が、世界を治めている。 この世界に、地獄の入り口がある。