約 1,036 件
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1595.html
佐助について周り、座敷で客のお相手を務める日が続くこと数日。 遂にその日はやって来た。 「幸村を名代に」 客と佐助に軽く会釈をした後に、見世の若い衆は短く告げた。 どくん、と高鳴る鼓動が聞こえる。 この時が、いつか来るものと分かっていても、いざ現実として迫って来ると、途端緊張が背に走った。 乾いた喉を、固唾を飲み込み潤す。前帯に隠れるその手は、人知れず震えていた。 先の見えぬ不安と、先に待つものへの期待感ゆえ…? あぁ、越えなければならぬ壁のある時、人はなんと矛盾した気持ちを持つものか。 力の入らぬ足を奮い立たせ、内心を誰にも悟られぬように、すっくと立ち上がる。 「行ってらっしゃい」 廊下に出た俺に、佐助が声を掛けてきた。 佐助だけが、俺の心を読んだ様な、やや複雑な面持ちをしていた。 若い衆に先導されたのは座敷の入り口まで。 道中一言も口をきく事はなかった。 若い衆が、「失礼します」と声を掛け、障子戸を開く。 座敷中央に座すのは隻眼の御仁。初めてお目に掛かる客であった。 片目を覆うあれは、刀の鍔であろうか。変わった眼帯をしておられる。 上座には空いた席が一つ。本来花魁が初回の客と祝言を交わす為に設けられた席だ。 御仁は、並々注がれた杯を片手に、ちらり、とだけこちらを見やり、そしてまた、すぐに視線を杯へと落とした。 往生していると、若い衆は、俺を中へと押し込め、深く一礼した後、そのまま戸を閉めて行ってしまった。 「花魁の名代を務めさせていただきまする」 進み出で、畳に両手をついて型通りの挨拶を、声が震えぬよう静かに絞り出す。 御仁は、興味もないと言う様に、一息で杯を飲み干し、手酌にて次の杯を満たした。 その落ち着いた物腰ゆえか、一寸見た時は壮年の齢にも見えたが、こうやって並んで見れば、意外と若い、自分とさして変わらぬ歳にも見える。 その周りには、空いて転がる銚子が二本、三本。 手元の危うさからは、これより以前に茶屋で宴を催して来たのだろうと言う事が窺えた。 「相当飲んでおられるようですな」 やはり俺の言葉など耳にも入らぬと言った程に、またくいっと酒を飲み干す。 「程々にしなされ」 無駄だと知りながら、身体に差し障りまするぞと進言する。 御仁は、酒を飲む手を一瞬止め、眼光鋭くこちらを睨んできた。 「うるせぇな、小娘に指図される程落ちぶれちゃいねぇんだよ」 その呂律もおよそ危うく、据わった眼で、値踏みするように俺を見てくる。 「名代だぁ?ふざけんな、わざわざ一番人気を一目拝もうと指名したってのに」 一番人気だからこそ、一目拝むのも難しいのだと言うのに。 佐助を軽々しく捉えた言葉に聞こえて、俺は内心ほんの少し苛立った。 「HA!それが見られねーんじゃー醜女でも選べば良かったぜ!」 言いながら、再び銚子を傾ける。中が空になったと知れば、また苛立たしげに銚子を放り投げ、幾本目かの銚子に手を伸ばした。 その手をやんわりと遮って、自分が銚子を手に取り、御仁の杯へと傾ける。 「今宵は、某がお相手仕りますゆえ」 それでは駄目ですか、と注ぐ手を止め御仁を見やる。 御仁は、その隻眼で、ぞくりとするような光を放っていた。 瞳が合っただけで、首筋が粟立つ様な鋭い視線。 しかしその光も一瞬にして消えていく。 「アホか、酒飲みの相手なんかいらねーんだよ」 と、また茶化したような、酔っ払い独特の口調へと戻った。 「いらぬと申されましても…」 なにせ初めて一人で相手にするお客。このように邪険に扱われて、黙って引き下がる訳にはまいらぬ。 なんとかして、自分で納得して頂けるよう説得を試みよう、と思ったその時。 天地が揺らいで、視界に天井が映った。 花魁18
https://w.atwiki.jp/talesrowa/pages/403.html
Ace combat-The UNSUNG BATTLE- 別に大した望みがあった訳じゃない。 明日も晴れてくれないかなって、その程度のささやかな願いだよ。 夢なんて持てる暮らしじゃなかったしね。でも、そこにはいつも姉さまがいた。 ずっとずっと昔の奥底の、僕の記憶の中に父母の姿は無い。たった一人の僕の家族さ。 望みは? 平穏、それだけさ……老けてるなんていうなよ。 理想というには、子供が見る夢にしては小さすぎるって分かってる。 でも、そんな願いでさえも、僕がいた世界は許してくれなかった。 賢し過ぎるエルフと愚か過ぎるヒト、どちらでもない僕らの血は世界が僕らを締め出すのに十分過ぎる理由なのさ。 諦めたくなかったから、旅に出た。僕たちを受け入れてくれる世界があるって信じて外を知った。 衰退する大地、争う人々、混迷する世界。目を凝らしても皿にしても、僕たちの居場所なんてとても無かった。 でも、前に進んだよ。信じたかったんだ。人の善を、希望を、未来を信じたかった。 世界さえ変われば、人もきっと変わる。僕と姉さまが過ごせる居場所だって見つかる。“だから世界を救いたかった”。 ……今思えば、無茶だったよ。2人分の幸せを手にするのに、世界ごと変えようとしたんだから。 ま、若かったからそれなりに無茶もできた。それに、決して仲間がゼロだったわけじゃなかったし。 どうなったかって? 世界は救えたよ。英雄は世界を守れたんだ。“でも、ニンゲンは汚いままだった”。 そういうことなんだよ、この世界も、僕らが元々いた世界も同じなんだ。 世界に存在する幸せの総和は有限なんだよ。人が二人いたらそれを奪い合う。 だから、きっと僕らの居場所は何処にも無い。 世界を救ってまで作った小さな隙間さえ、あいつらは平気で奪ったんだから。 奪わなければ永遠に手に入らないものもある。だから、僕も奪うと決めたんだ。 姉さまが最後に願った夢と、僕のこの願いを叶えるために、世界さえ捨ててやるって。 そう、思って生きてきた。その願いしか、あの無価値な世界の上で生きていく理由も無かったから。 姉さまの願い―――――前に話したっけ? 元の世界で、僕が何をしようとしたか。 そう、千年王国。誰もが同じ種族の、差別の無い世界。無機生命体の楽園だ。 ……まあ、そうだね。わざわざ死にに来た僕の下に来るようなお前がいるんじゃ、無理だったかもね。 でもさ“この世界はそれを実現してる”んだよ。 常識を超えたサウザンドブレイバー、破壊神ネレイドの顕現、ソーディアンのスペックオーバー。 普通なら世界が終わってしまいそうなカオスがあふれ返っている。 なのに、こうして世界が回っている。罅一つさえ入らないこの空を正しく回転させる“何か”がある。 晶霊術・晶術・魔術・爪術にフォルス。最低七つの世界を内包して尚それを一つに統べる“法則”が機能している。 人も同じ。本来交じり合うはずの無い世界の人間たちが“ルール”によって統制されている。 老いも若きも貴賎も強弱さえも関係ない。殺されるか殺すか騙すか騙されるか、生き残ったものが正しくて真実。 人間だけじゃない。精霊も、晶術も、異なる世界から集められた無数の現象が、 たった一つの法則<王>によって支配されるこの世界は、ある意味にて差別も無い―――――――――まさに千年の王国だ。 笑えよ。そうあれと信じて積み上げた姉さまの理想は誰とも分からない何かに完成されられて、 しかもその願いは間違ってるって、姉さまと姉さまじゃない姉さまに正面切って目の前で言われた僕を。 知らないまま、愚者と死ねればどれだけ楽だったか。 いつだってそうさ。知りたくも無いことばかり、僕は知り過ぎている。 でも、もうそれも終わる。もう、沢山だ。流れも、姉さまも、理想も、僕を動かすものはもう何も無い。何もかも失った。 後は使えない駒の始末だけ済ませて、心置きなく退場だ。 誰が幕を下ろすかって? 決まってるだろ。そのルールの一つを型作るこの首輪か―――――唯の莫迦だ。 あいつが来るかって? そんなの知るかよ。僕は預言者じゃあないんだ。 でも、万が一来るとしたら、あいつ以外に思いつかない。 …………なんでだろう。あの夜もそうだった。あいつは唯のニンゲンで、姉さまとまったく関係がないのに。 僕の計画の上では、ただエターナルソードを得るまでの時間稼ぎ。一夜だけのトリックスターに過ぎない存在。 重要度でいえば中の下。生きてても死んでてもさして変わらぬ駒。 なのに、あいつは僕の前に現れて、最後の最後で僕の願いを打ち砕いた。 僕がリアラを死に追いやったから? スタンとリアラを引き裂いたから? ……不思議だな。これほどまでに分かり易い理由が並んでいるのに、そのどれでもない様な気がする。 まあ、いいさ。その程度の理由でも。僕を殺すには十分だ。 何もかもを失って、自殺する意志さえもなく、ただ終わることを待とうとした僕の人生。 その果てで待っていたのが、僕の影でもあの化け物でも姉さまでも姉さまの仇さえでもなく、何でもないただ英雄見習いとは。 寝た子を起こすくらいが丁度いい。終わりの終わりに迎える暇潰しとして、これほどの娯楽はきっと無い。 来いよ。カイル=デュナミス。復讐でも正義でもなんでもいいからそれで僕を終わらせろ。 その代わり、何も知らないお前に最後に教えてやるよ。 何かを捨てなきゃ、英雄にはなれないのさ。たとえ、その願いがどれだけささやかな願いでも。 ―――――――――― ずっと、昔から憬れてたんだ。 父さん。英雄と讃えられた、俺の自慢の父さん。記憶の中だけの父さん。 追いつきたかった。少しでも父さんに近づきたかった。父さんと同じになれば、もう一度会える様な気がしてた。 英雄になれば、きっと帰ってくる。ひょっとしたら、それくらい思ってたかも。 今思うとすごく頭悪いなあ。今もそんな良くないんだけどさ。 旅を始めたころは、それくらい莫迦で、何も知らなかったんだ。その中で色々教わったよ。 英雄―――――何かを成して讃えられる称号。その英雄になる為に何かをするってことの矛盾。 父さんの道をなぞってるだけじゃ、何時までも父さんの影から抜け出せないってことも。 孤児院の外の現実は厳しかった。でも、挫けはしなかったよ。 俺には、俺を支えてくれる仲間が―――――――俺を英雄だと言ってくれる人がいたから。 <人ひとり……自分の大事な人も守れないやつが、英雄になんてなれっこないです> 貴方も、知っている人に言ったことがあります。俺が目指した英雄の形です。 世界の為に一人を切り捨てるような英雄じゃなくて、その子の為の、英雄。 ウッドロウさんとも、フィリアさんとも、母さんとも……父さんとも違う、俺が目指す俺だけの英雄。 だから、より多くの為にたった一人を切り捨てる遣り方を許せなかった。 ……やっぱ、覚えてましたよね。あの時は、俺も頭に血が上っちゃって。 でも、間違ってたとは今でも思ってません。 それは腰抜けの考え方で、両方を守る方法を見つけ出すことを諦めた弱さなんだって。 俺は“あの時まだ”知らなかった。 英雄という業は、そんな青臭い理想が通じない世界にあるんだって。 今の俺には、それを口にする資格さえない。 それくらい、いろんな物を無くし過ぎた。失っても、それでも前に進む人を見過ぎた。 “もう一度”逢えたなんて浮かれていた俺とは、決意も覚悟も違ってた。 だから、あいつの示した選択を受け止められずに、俺は大切なものを2つも、“二度も”溢した。 貴方も、見てましたもんね。最悪にダサくて、死ぬほどかっこ悪い俺を。 そんな俺を、支えてくれた人がいる。自棄になってた俺に、命の意味を教えてくれた人がいる。 待っていてくれた人がいる。あんなにボロボロになって、それでも守りにきた俺を覚えていてくれた人がいる。 守ってくれている人がいる。例えそれが償いのためだとしても、俺の命を何度も救ってくれた人がいる。 一人じゃ立つことも出来ない俺を、色んな人たちが支えてくれた。 でも、そろそろ一人で立たないと。いくらなんでもダサ過ぎる。敵討ちくらい一人でできないと、さ。 …………でも、なんでだろう……何で、あいつなんだろう。いつの間にか、そう思ってた。 大切な人たちの仇だからだけじゃない。俺が、あいつを倒さないとダメなんだって。 ミトス=ユグドラシル。あいつは、今まで出会った誰とも違っていた。 人間離れしたやつならいっぱい見てきた。英雄殺し、聖女、そして神。アイツはその誰とも違ってた。 たった一人の為に、体の時間を止めてまで千年を生きて、世界を犠牲にする道を選んだ英雄。 最初からあいつの存在が気に入らなかった。その意味も分からなかった。 あいつを、ううん、あいつの口にする“英雄”を、俺は受け入れることが出来なかった。 あの人の時みたいに、全部分かっているけど答えを知りたくないとかじゃなくて、 答えだけは分かっているのに、頭でそれが理解できなかった。 でも今ならはっきり分かる。アイツは、俺の手で倒さなきゃ駄目だったんだって。 負けない程度じゃ全然足りなかった。完璧に潰さなきゃ、勝たなきゃだめなんだって。他でもない俺自身の為に。 ―――――――ディムロス。俺、やっと分かったんだよ。 俺がしたいこと。俺が前に進むための力。俺の中に残ってた、最後の気持ち。 言いたいことがいっぱいあるんだ。俺の我侭に最後まで付き合ってくれた、お前に最初に伝えたいんだ。 だから、生きたい。 まだ、もう少し生きていたい。 出来ることなら、ずっと生きていたい。 けど、血が寒くて、眼が霞んで、砕けた膝が笑ってる。陽の光が無くて、夜が痛い。 ごめん。俺、まだ貴方に伝えていないことがある。貴方が知っている俺が、まだ知らないことを。 本当は、最初から知ってたんだ。知ってたけど、忘れたかった。ううん、無かったことにしたかった 何かを失わなければ、英雄にはなれないって。たとえそれが、たった一人の女の子の為だったとしても。 時間が無いのが、悔しい。音にする時間さえ惜しい。 ああ、誰か、俺に時間を。 話さなきゃならないことが、貴方に―――――――――――――――――― 伝えたいことが、君に―――――――――――――――――――――――― ―――――――――― サイグローグは顎を拳の上に載せて盤面を見据えていた。注視しているのは、駒の密集しているC3ではなくB3だ。 あまり特徴のない上座の男のニヤけ顔を一瞥したあと、サイグローグは考える。 現在、上座・ベルセリオスが『天使』を氷の女王の説得行動を終了させた『炎剣』へと攻撃させてターンが終了。 下座が長考を始めていた。永遠と錯覚しそうな時間、下座は盤上を睨み付けている。 サイグローグは、その下座の停滞を見てある種の断定を下した。 (これは……やはり罠とみるのが妥当でしょうか。指し手を見る限り、上座は下座の行動目的を断定したとみて間違いないでしょう) 下座は現在まで、剃刀の上を滑るような指し手を繰り広げている。 烏の成金、学士の復権、弓士の蘇生……どれも危うすぎる。サイグローグ自身が警告を下す一歩手前の奇手ばかり。 たとえ以前の棋譜から上座の基本戦略を把握しているとしても、一歩踏み間違えれば確実に全滅するような危うい指し手だ。 人間では怖すぎて打てるかどうかも危ういものだか、逆にその指針は明快きわまる。 これほどまでに危険を冒しながら、盤から零れおちた駒は厳密にはたった一つのみ。リスクを極限に引き上げての、リターン重視戦略。 下座は明らかに“生き残った全員を可能な限り生きたままバトルロワイアルから解放すること”を目的としている。 その気持ちそのものはサイグローグにも分からないわけではない。 上座の戦術『バトルロワイアル』が展開している限り常に主導権を上座が握ることになり、下座は受けに回らざるを得ない。 かといってその戦術下に置かれた上座の駒を倒しに行けば、犠牲が大きすぎる。いずれもトップクラスの性能だ。 クラス『マーダー』に属する4駒に真正面からぶつかれば単純計算で最低4駒犠牲にしなけれなならないだろう。 残り10駒のうち8駒が落ちて残り2。そのうちの一人が潜伏ステルス『学士』か烏の中の『海神』が割り込めば上座の勝利確定だ。 仮に2駒が真っ当なクラス『対主催』だったとしても、残り2では王を打ち取るには戦力が足りなすぎる。 そもそも、後一人殺せば生還できる状況でどれだけ自らのクラスを維持できるかという問題さえある。 もしも中盤のように複数の個所で多面的な混乱が起きているならば上座が別の場所へと手を進める間にマーダー同士で同士討ちを仕掛ける策もあるが、 この終盤ではそれは期待できない。そんな緩い手を打てばそこを起点に即座に蹂躙される。“この戦いは読み合いが前提項となるが故に”。 途中からの参戦だからとはいえ、スタートとしては下座が圧倒的に不利な盤面。 とにもかくにも、下座はこの最悪の泥沼から抜け出す必要があった。 だから下座は徹底的に上座の攻撃を耐えつつ、駒を貯え、反撃の時を待っている。それは分かる。 (ですが、全員はやりすぎでしょう。だから今、上座はそれを逆手に恐るべき策を打ってきた) それが即ち、天使のB3撤退だ。マーダーの自殺という定石では決してありえないこの指し手は、下座の戦略を前提に置いたときこそ悪意を見せる。 心の揺らぎを隙とみせ、いかにもな誘い。しかしそこに待ち構えるのは持久戦に最高な回復装置と禁止エリアという名の時限地雷。 要するに上座はこう言っているのだ。 “全員救うんだろ? 早く来ないと殺してしまうよ?” 天使解放を餌に駒を釣り、氷の女王と禁止エリアで挟みあげる釣り野伏。人情を盾とした陰湿この上ない策だ。 そして、下座は炎剣を北へと動かした。その思惑に乗ってかどうかは分からないが、これはあまりに軽率すぎる。 確かに天使と氷の女王は駒としてかなり優秀であり、持ち駒に出来るのであればこれほど便利な物もそうそうない。 全員を割くわけにはいかない以上、その回収役として炎剣を用いるのも妥当ではある。 だが、その為に貴重な自駒を危険にさらすのは更に危うい。それこそが上座の、ベルセリオスの思惑だ。 天使を餌に炎剣を吊り上げ、大々的に放送でその名前を告げる。それを起点として再度氷剣がマーダーに落ちる可能性を残すつもりだ。 例え即時効果は無くとも、王を攻める敵陣の背面を突くための楔としては悪くない。 もしかすれば、上座はここまでを見越した保険としてB3を禁止エリアにしていたのかもしれない。 無論、決して下座が無策で北に攻め入ったとはサイグローグも思っていない。 可能な限りの備えを打った後に攻め入ったのは事実だ。だが、盤面を見る限り下座はTP枯渇による短期決戦を狙っていたはず。 ジャッジメントを巡る攻防は、これを見越していた部分もあったのかもしれない。 魔力切れで達磨にした天使を早々に懐柔するならば、氷の女神の説得含め殺すよりも早く終わらせられたはずだ。 ここまで上手く役を運べたのだ。下座が未練がましく、月が四回転するほどの長考にて粘りたいのは分からないでもない。 だが現実として、その青写真はもう成立しない。上座がそれを阻止した。 メンタルサプライという、あまりにも異常な策をもって切り返した。 体力を削ってでも継戦を重視。もう用済みと言わんばかりなこの非道な手によって、下座の戦略は完全に瓦解したと言っていいだろう。 (ここが引き際でしょう……これだけ傷を負った天使では駒の性能も落ちてるでしょうし、無理をして引き込む魅力がない…… 半壊とはいえ氷の女王を掌中に収められただけでも、好とすべき………………!?) カン、と音が鳴った。停滞という名の錆が、その音にて一瞬で払拭される。 陰鬱な部屋の中に響く凛としたその駒音は、白魚のような指先によって前に進められた炎剣から放たれていた。 「……確認します……このゲームにおいて私が議題としない限り……一度動かした駒の変更は効きません……よろしいですか?」 サイグローグは僅かに訝しみを籠めて問う。盤面を再確認するが、少なくとも現時点で活路があるとは思えない。 最寄は北地区の二つだが、このタイミングでは既に行動フェイズ終了だ。 下座が小さく首を縦に振って返答する。 サイグローグは少しだけ嘆息をついて、それを受領した。 欲に駆られ大局を見失なったか。情に駆られ戦略を放棄したか。 カオスを好むサイグローグ個人としてはそれも嫌いではないのだが、相手が悪すぎる。 この世界を支配するは論理の巣。情に目を曇らせれば即座に捕まってしまう。 だが、あるいは。 サイグローグが柏手を打ち、両者の意思を合一する。 あるいは、それを超える一手がここに残されているというのか。 「両プレイヤーの続行意思を確認しました……それでは……“お待たせしました”。 戦闘再開です……先手、時の紡ぎ手……行動の開始をお願いします……」 ならばその一手はもはや、神のそれに他ならない。 絶望と諦観と失意を知る子供が、空に二人。 帰る場所を亡くした小鳥たちの物語。ただ、それだけのもののかたり。 ―――――――――― 正邪入り交って繰り広げられた村の戦火もほとんど鎮静し、この島は“ほぼ”静寂を取り戻した。 天を見上げれば空の蒼も鳴りを潜め、双月が再び色彩を取り戻し始めている。 だが、まだ眠るには早いとばかりに喧騒が響く。 夕の赤と夜の藍、太陰と太陽が二つ混じり合うこの太極の上で、双極の如く飛び回る二つの点があった。 「・-・-- ・・ ・-・-・ -・-・・ --・・ ・・ ・-・-・ ・-・・ ・- ・-・-・・(水、雷にて解し火を熾す)」 双極の一、ミトス=ユグドラシルの手が前方に突き出される。 そこに握られた神秘の紋章が悲鳴を上げるように輝き、周囲の現象が書き換えられる。 ミスティシンボルを備えたミトスの初級魔術の高速詠唱は最早言語の体を成さない。 「行け!」 火球四発・落雷一閃・水刃三枚。教科書の手本のような三矢が突き立てられた剣指の号令の下、敵を目指し放たれる。 初級魔術とはいえ、それを三つも束ねれば相応の威力を有するだろう。 だが、ミトスはそれを集めることなく散らして放つ。 先ほどまでのアイスニードルと異なり、意図的に統制を乱して繰り出された魔術は眼前の敵に紙一重にまとめて回避することを許さない。 一つ一つ避けるのは容易くともそれを連続してとなればその難度は累乗となる。 敵は細かい回避を余儀なくされ、そしてその姿勢から次を回避しなければならなくなる。攻撃に転じる余裕などない。 「・-- -・-・・ -・・・ -・ ・・-- ・・- -・-・・ ・・ ・・- (焼いた土に木を生やす)」 小技の乱打は止むことを知らない。既に唱え終わっていたか、 正面からのファイアボールに加え周囲からウインドカッター、下方よりストーンブラストが敵に放たれる。 それは当てるというよりは封じると言った方がしっくりくる攻撃だった。 直撃を狙うことなく、周囲を攻囲し機動力を奪いきる。確実に避けられぬ場所まで追いつめて、まだ追い詰め抜く。 一見してただの乱れ撃ちに見える連射はその実詰め将棋のように強かだ。 それを相手もそれを察しているのか、多少強引であろうとも抜け切る必要があると力を蓄える。 そして、その隙をミトスと彼女は見逃さない。 「アトワイト!」 『EXスキル変更、エリアルスペル→キープスペル。充填終わってる!』 「上出来だ。フリーズランサー全弾投擲!!」 ミトスの持つソーディアン・アトワイトがそのレンズとエクスフィアを青く輝かせる。 相手の“溜め”の出掛りを狙い澄ましたように本命の中級魔術が敵を狙い穿った。 その流れるような詰め方は、先ほどまでの闘法と似て非なるものだった。 連射の効く初級魔術が狙うのは相手の機動力そのものではなくその機動力を生かす“空域”だ。 逃げられる場所を削り、行動範囲を絞り取っていく。 檻から逃れよう暴れれば、牽制の合間合間にアトワイトがキープした中級魔術を解凍してカウンターを叩き込む。 戦闘補助こそが骨頂であるアトワイトがミトスの輝石のサポートに回ったことで、その魔術精度はタガが外れたように鋭く歪む。 物理的にも“心理的にも”攻撃にのみ専心することが初めて可能となったミトスの術は、新しい遊び場を見つけた子供のように自由だ。 術しか届きようのない距離で、この空はミトスが圧倒的優勢を得る魔力の楽園と化す。 <Turn Shift> だが、この遊び場は決して一人だけのものではない。 アトワイトが前面で戦っていた時に初級晶術の連射で敵を追い詰めていたように、 空での戦いではダメージより“当てる”ことそのものの方が重要となってくる。 平面から立体へとシフトした戦場はただでさえ攻撃が当てにくく、しかし逃げ場無き空の上では一撃が即死に直結する。 空戦に於いて肝要なのは、どれだけ多く傷を負わせたかではなくどれだけ早く傷を負わせるかだ。 たとえ初級術でも一回直撃させれば連携に繋いで、それでほぼ勝ちを拾いに行ける。それがミトスの術であるならば尚更だ。 その点を考えれば、ミトス達の戦術はあまりに慎重すぎると言っても良かった。一回当てればほぼ片がつくのだから。 戦闘中の調整を可能とするためとはいえ、自分で調整を行うべき輝石までアトワイトに任せてのこの攻撃。 網で完全に囲ってから槍で突き刺すなど、虫や鳥を撃ち落とすためのものにしては豪壮すぎる。それではまるで、獣狩りではないか。 だが、とミトスは双剣を握りしめた。 確実に当てるために周りを囲む。効果領域の広い中級術で堅実に当てる。 それは事実の側面にすぎない。裏側に潜むのは、そこまでしなければならないという事実。 初級術で囲っているのは、直撃が当てられないから。中級術で射抜こうとしているのは、そうでもしなければ止まらないから。 ―――――――――――――――飛ぶ獣が相手では、これでも未だ殺しきれない。 「はああああああッ!!!」 大気に鈍い風斬り音が唸り響く。空気まで歪みそうな程の熱気を纏った一刀が空を斬った。 六連の魔術を辛うじて交わした直後の応対、とてもではないが安定した姿勢をとることなどできない。 だが、彼は振った。技も、何もなくただその大太刀を振り抜き切った。 それだけで仄かな赤みを持った太刀筋に割かれて氷槍が飴と焦げ消え、蒸発による大気の膨張が局地的な突風を生み出す。 『嘘、あの状態から術剣!?』 「違う。技なんて上等なものじゃない。“ただ斬っただけ”だ」 唯の斬撃だけで火を熾しかねないほどの熱量。この距離でさえ肌が渇くような錯覚をミトスは覚えていた。 いや、それは渇きだけではないのだろう。ひり付くような、打ち震えるような何かは彼の内側より喚起される。 『熱量増大!? ミトス!!』 アトワイトが熱源の増大に気づくよりも僅かに早く、ミトスはミスティシンボルを構えていた。 中級を放ったあとの微かな詠唱硬直、一刀により空いた風の道、そして直線。 『ようやく空いた。行くぞ、カイル』 「うん。行くよ、ディムロス』 爆ぜるような音とともに、“敵”の後ろに焔が舞い上がった。 彼と彼のを隔てる距離はまだかなりの長さがあった。それでもミトスは剣を楯とする。それでも間に合うか。 直線距離が幾ら開こうがあのチームには、カイル=デュナミスとソーディアン・ディムロスには意味がない。 どれほど無限に伸びようが、直線である以上は彼らの射程なのだから。 爆熱。自らが発生させた熱に弾かれるように、箒に跨ったカイルが飛翔する。 身を竿に屈め、食いしばる様に加速度と風圧に耐える。 水の足りないパン生地のようにボロボロと崩れてしまいそうな肉体と心を抱えて、それでもカイルは剣を握った。 その眼光は、ただ一点を見据える。竿が指し示すその先には、舞い飛ぶ風の向こうに輝く虹色の翅。 誰かの為にではなく、自らの意志で打ち倒さなければならない存在。 「勝つ。勝って、全部はそっからだ!!」 風を前にして閉じられることなく開かれた瞳が、もう二度と揺るがないと決意を湛えている。 100の距離は3秒かからず4と縮み、互いの睫毛が見えるほどに接しかける。 「・・-・ ・-・・ ・・・ -・- -・--(剣鋭を招き、腕剛に来たる)!!」 間一髪で挟んだシャープネスの輝きを腕にまとわせながら、ミトスは薄暗い表情を浮かべた。 前座に時間を割いて待つだけの値があったとミトスは眼前の大きな瞳に確信した。 蒼と紅の刃が火花を散らし、互いに一歩も引かぬと鍔を競り合せる。 アトワイトとディムロス。かつて番いであった者たちが、文字通りの意味で交り合っているというのは皮肉でしかない。 「躊躇なしで急所狙いか。あの時はフランヴェルジュだったが、得物を変えて少しはマシになったか!?」 「自分じゃ分からない。なったかどうか、その身体で確かめろッ!!」 が、それは一瞬のことに過ぎない。カイルの腕が内側に締まり、その細腕からは信じられぬ力がアトワイトを押しやる。 咄嗟にミトスは右の邪剣をアトワイトの後ろに乗せて交差させ、倍の守りを作る。 この状態が示す事柄のかなり大きさに、ミトスはしかめっ面を隠しきれなかった。 これでは受け切っても反撃に転ずることができない。ただ亀のように凌ぐだけの構え。 補助術まで使い、反撃のために残した力も防御に用いなければならない。ましてや。 「ディムロス!」 『分かっている。このまま受けごと押し切るぞ!!』 更に尾翼より燃える火炎に勢いを受けたカイルの剣が、その全力さえも打ち崩す。 まともに受ければ胴が別れを告げる。防御に全力を割いても、それでも足りぬ。 「突撃ばかりか、進歩ないね!」 付き合えないとばかりにミトスが補助効果を使い潰して弾き、距離を取ろうと下がる。 「進歩が無いのは、そっちも同じだろ!」 だが、カイルは後退を許さない。退くを見るが早いか、ディムロスが計ったように箒を加速させ二者の距離を潰す。 ミトスを捉えながら前進するカイルとカイルを見ながら後退しなければならないミトスでは、出せる速度に差が生じる。 薙ぎ、上段、突き。追うごとにカイルの攻撃は技こそ無くとも幅広がり、培ったモノがその応用を支える。 追撃を弾く度に構えと剣戟音が歪んでいく。勢いの乗った重量のある剣の威力は小刀二振りで止められるものではない。 ディムロスと異界の箒の力によってカイルは己が生命線である“速さ”を一時的にとはいえ取り戻し、 亡き父が最高の武装であったディムロスを手にして“力”を得た。 移動と攻撃が限りなく合一したカイルとディムロスの突撃は逃げるミトスをほぼ完璧に捉えきる。 詠唱も転移の暇もない、剣交わる至近距離。この空に今のディムロスとカイルを“止められる”ものなど誰もいない。 ミトスの退路を追うようにして箒の機動を制御するディムロスは安心を覚えていた。 劣勢転じて優位を得られたことにではない。カイルの太刀捌きにだ。 (防御が成っている。どうやら、少なくとも周りは見えているらしい) 待ちに待ったこの圧倒的状況を得ることができたのは、それまでの攻撃を耐えに耐えたからに他ならない。 無論ディムロスも相手の魔術に合わせて回避行動を行っていたが、 敵の主力がアトワイトからミトスに移った以上、先ほどまでのように彼女の思考を逆手にとって大味に避けることはできない。 まして、回避にかまけ過ぎて速度を殺してしまえばそれこそ終わりである以上、回避には自ずと限界がある。 だからこそ、最低限の速度を維持して凌ぎ切るにはカイルの防御能力が必須だった。 受けるべき術を障壁にて受け、防ぐべき術を剣にて弾く。 耐え凌ぐ。カイルの性格から考えて一番無理そうなそれを、カイルは為している。 【スピリッツの少ないときに攻撃すんな、弾かれるぞ!】 闇雲に攻めて勝てる相手ではない。傷を負っても癒してくれる者はいない。残る力も心許無い。 攻め一辺倒では崩せない。耐えて耐えて、その傷ついた体に残された力を蓄え、一点に爆発させる。 細波立つ心中にかろうじて集中力を取り戻したカイルはその双眸にしっかりと“勝利”を刻み込んでいる。 踏み込むことを恐れて退がるでもなく、狂に身を任せて暴れるでもなく、耐える。なんと気の遠くなる作業か。 だからこそ、耐えに耐えて見つけ出した間隙より切り拓いたこの攻めの手を緩めない。 カイルも、そしてディムロスも分かっているのだ。このまま一気に終わらせてしまうべきだと。 だが、それを易々とさせるのであれば“この2人”がC3村に至るまでこうまで見事な立ち回りができたはずがない。 「空破絶風撃ッ!」 カイルの右より繰り出される豪速の突きによって、ミトスは遂にガードブレイクを起こして仰け反る。 「終わりだ、ミトス!!」 先ほどまでの返しとばかりに、態勢を整わせる間を与えず二連目の突きがミトスを狙う。 <Turn Shift> 『待て、カイルッ』 これで確実に仕留められただろう、ミトス一人だったなら。 『獲ったわ。ニードル、速射!』 完全に止めを刺しに入ったカイルの正面、本来ならミトスの背中に隠れていたであろう場所から氷の針が放たれる。 ディムロスの咄嗟の注意に、カイルは即座に詠唱へと切り替え、解除から素早く術障壁へと切り替える。 目に入りそうな距離で砕け散った氷が、カイルの頬を切った。 『スイッチ! 術の主導権を入れ替えていたのかッ』 「ぐ、ずっけえ~~! 母さんでもここまでセコいことしないよ!!」 『馬鹿を言っている場合か、備えろ。来るぞ!!』 堪らず目を瞑ったカイルが見開いた時には既に遅い。先ほどまで剣が届いた場所にはミトスは疾うに居らず、 転移痕の白き羽を風に舞わせながら、遥か遠くに下がりながら詠唱を進めているミトスが居た。 「そう焦るなよ。今やられた分まとめて倍返ししてやるからさ!!」 顔面の歪曲に明確な怒気を孕ませて、ミトスが闇を除く七属全ての初級魔術を撃ち始める。 『グッ! やはり、外側では向こうに分があるか。カイル、気持ちを切り替え――――』 「分かってるよ!」 カイルは悔しそうな顔をしながらも、迷うことなく防御へと型を切り替えた。 逃げられた以上はもうどうしようもない。また、耐えるしかない。耐えて、耐えて、蓄える。 痺れを切らして大技を放ってくるその時まで。 <Turn Shift> 一度剣を交えた2人の戦いであったが、その様相は昨夜のそれとは一線を画していた。 既にカイルにミトスの能力と経験に対する戸惑いは無く、ミトスもまた小細工を捨て自分の得手で応じた。 ディムロスとアトワイト、カイルとミトス、力と技、そして剣と魔法。 明瞭過ぎるほど得意分野を分け隔てた2組の戦いは互いの距離がそのまま優勢劣勢を表している。 距離が狭まればカイルが、距離が広がればミトスが優位に立つ。 そのあまりに極端過ぎる戦力と相性が、皮肉にも中距離戦の拮抗と膠着を生む。 あの時はミントとコレットという二人の存在がそれを打ち破ったが、それはもう無い。 秒の刻みで切り替わるほどに凄まじい拮抗が時間を貪っていく。 だが、それでもカイルは焦らなかった。焦れる心を懸命に抑えて、考えて剣を振るう。 是が非でも勝たなければならないのだ。生き延びるという意味の勝利ではない。それならモンスターでも出来る。 カイルが得るそれは“相手を打ち破る”勝利でなければならない。そうでなければ前には進めない。 思えば、これが初めてなのだ。 強者ならば幾度と無く見えてきた。だが、その時には仲間がいた。 一人戦ったことはあった。だが、それをカイルが望んだことは無かった。 仲間も無くたった一人で、誰かを倒すために“挑んだ”のはこの一ツきり。 カイルは剋目した。初めて自分の手で倒したいと思った存在を。 自分と背丈も然程変わらぬ、しかし英雄“だった”少年を。 <Turn Shift> そんなカイルの心中など知る由も無く、彼らを追い立てるようにミトスは術を乱れ撃つ。 高速詠唱・圧縮詠唱・古語詠唱etc。持てる知識と技術を総動員させて放たれるそれらはミトスという魔術使いの臨界そのものだった。 それに辛うじて追い縋り、ギリギリの距離でサポートを行っているアトワイトもまた限界以上の機能を求められていた。 既に自ら術を組み上げる余裕などほとんど無い。既に晶術の主導権さえもミトスのもので、使えるのは精々が眼くらましの子供だまし。 コレットを動かしていたときの経験でミトスが動きやすいようにスキルやバイタルをチェック・調整する程度のことしか出来ない。 元々、本来彼女はマーテル復活の過程でミトスに棄てられる捨て駒だったのだ。この連係は使うはずのなかったもの。 むしろ、それに即座に対応できただけアトワイトの補佐能力を称えるべきだろう。 (エクスフィアをつけたことをこんな形で感謝することになるとは思わなかったわ……こんな無茶な戦い方する子だったのね) 連射の片手間に、空けた片手で持った邪剣を首筋に宛がってTPを補充するミトスを見ながらアトワイトは思った。 多少沸点が低く、周りを見なくなるきらいはあるが、それさえなければのミトスの戦いは冷静さを基とするものだった。 彼にとって戦いとはあくまでも目的を達成するための一手段でしかなく、むしろそれを最後まで避けていた風にさえ思う。 その姿に似つかわない老獪とさえいえる戦略体制。そのスタイルが、まったく別のものに変質しているようにアトワイトには思えられた。 ペース配分を計算しつくした長距離ランナーが、急に全力疾走をし始めたかのような幼稚さだ。 後を省みぬ消費、それを補う短絡的対処。戦いの為だけの戦術。しかしてその勢いは大にして苛烈な、波濤の如き攻勢。 それは愚かだとか、思慮が無いというものとは少し違うものだった。そう、それはむしろ―――― 「・・・ ・-・-・ -・・・ ・-・-・ --・-・(氷砕、乱光)!」 発生させたアイシクルの内側にフォトンを放つ。砕かれた氷が、無数の鏡となって光を拡散させた。 突然の光の雨に、カイルの驚きが減速となって離れたミトスにも伝わる。 それをミトスは眺めていた。悪戯に引っかかった相手を物陰からこっそり見て愉しむように。 それは、アトワイトが今まで見てきたミトスの中で物珍しいものだった。 マーテルが傍にいたときの従順なものでもなく、彼女を失ってからの絶望的なそれでもない。 後も先も無い唯快楽よりくる刹那的な喜悦。ミトスにあるはずのないものだった。 「どうした? 今更ディムロスとやり合うことに気が引けてきた?」 突然だったミトスの気遣いに、アトワイトは少しだけ意表を突かれた。 自分はそんなに顔に出易かっただろうか。顔も何もないはずだが。 『別に。よくもまあそこまで無茶ができるものと思っただけよ。こっちも、あっちも』 余計なことを言うのも無粋だと思ったアトワイトは前半分を茶で濁した。 そう、といいながら左右四本の剣指で交差する方陣を刻みながらミトスは空を見下ろす。 遠くにはおぼろげに先ほどまでいた村が、その更に遠くには中央に聳え立つ山が見える。 「悪かったな。ここに呼ばれる前まではずっとユグドラシルでやってきたからね。いま一つ加減が分からない。 ブランクなんて作るもんじゃなかったな。晶術を識って少し新しいものに挑戦したら欲が出てきたなんて、 今更、この僕がだぞ? やっぱり珍しいものになんか手を出すものじゃないね」 彼方より放たれたバーンストライクをリジェクションの障壁で弾きながらミトスはそう言った。 全てを拒絶するはずのそれは、軋んだように呻きを上げる。 『いいじゃない。人も、剣も、新しい出会いが無かったらいつか朽ちるてしまうんだから』 「そういう意味では感謝しなくもないよ。お前がいなかったら、結構早い段階で詰んでた」 二弾目にて破れた障壁の向こうから来る三弾目をアトワイトで弾き返す。カイルの傍で爆ぜた火弾がごうっと火柱を立てて煙る。 ミトスのいる高度からでも揺蕩う黒煙の昇りが見えて、空を縦に区切った。 「つくづく、憎らしいな。この完璧な空は」 『……そうね。本当のマスターでもない貴方が晶術を使って、私が貴方やコレットの肉体で魔術を組んで、 カイルは箒で空を飛んで、ディムロスが炎を操ってる。ここに来る前は、そんなこと考えもしなかったわ』 眩むようなその昼夜の天を眺めながら、ミトスはぽつりとそう言った。アトワイトがそれに返す。 非常識が、さも常識であるかのようにこの世界は大人しい。 これだけの矛盾に満ちた世界ならば、千はあっておかしくないだろう解れ。それが存在しない。 海に石を投げようが岩を投げようが、波紋しか広がらない。それもいずれ波と消え、残るのは大海の巨なる存在だけだ。 『もう、本当に諦めたのね』 「出来ることなら、ミクトランは血祭りに上げたかったけどね。お前の言う神の眼だけでこの空を作れるとは、さすがに思えない。 これを作ったのが奴だとしたら、本当に狂ってる。正直、理解が出来ない」 自嘲するような響きに、アトワイトはミトスの言いたいことのニュアンスを辛うじて掴み取った。 アトワイトも、ミトスもまた、最初はミクトランに抗おうと思った存在の一つだった。 だが、全てを失ったミトスにとっては最早ミクトランと戦うことも、ミクトランに従うことにも意味が無い。 霞んだ瞳に映る世界は“ミクトランに勝てる”という夢想を脱色したモノクロの空だ。 「少し世界に触ったことのあるやつならとてもじゃないが作らないよ、こんな箱庭。トマトを切るのにエターナルソードを使うようなものだ。 バトルロワイアルなんてゲームの為だけに用意するにしては、完璧過ぎている」 万人が矛盾無く共存する天。それはミトスが四千年を費やしても辿り着けなかった世界だ。 矛盾なんて無い。死角なんて無い。弱点なんてあるはずも無い。瑕疵一つ無い、まさに――――― 「認めたくは無い。だけど、これを神業と云わずして表現する術を僕は知らない」 アトワイトは息を呑んだ。知り合って2日あったかどうかという関係だが、この少年の性分を少しは知っている。 その少年が“神”を口に出してしまった。それがミトスの完全敗北を意味していること彼女は知っていた。 それは、新しき理。真理を塗り替える神理。神の御業より生まれし完全なる世界。 残り少ない夕陽が赤く稜線を輝かせ、ミトスの頬を照らした。歪みは感じられない、美しき空が彼らの瞳に映る。 『神様はいないんじゃなかったの?』 「追求し続けるものがなくなっちゃったからね。もう、どっちでもいいよ」 アトワイトは理解するしかなかった。ミトスは、とっくに死んでしまっている。 命の概念が存在しない無機の存在であるが故に、目的や役割を失うことがどれほど空ろなことなのか。 ミトス=ユグドラシルはもう既に死んでしまったのだ。絶望に浸って、それでもなお残していた理想と共に。 だから、この死の淵で残酷な答えを受け入れることができる。 彼にとって世界の真実が如何なるものであろうとも、最早この空に散る灰の一欠けらの価値も無いのだ。 『ミトス……』 憂うような音を漏らすアトワイトに、ミトスはコツコツと刃を十字に重ねて鳴らし、 「そうしょげた顔するなよ。さっきも言っただろ、感謝しなくも無いって。それに……」 <Turn Shift> 「――――――――――空翔ッざあああああああああああンッッッッッッ!!!!!」 「こんな世界でもこういう莫迦がいるからぁねッ!!!」 “頭上から落ちてきたギロチンに噛ませた”。 中空発動の利を生かし、始点に一回転を入れて放たれたカイルの一撃は身と剣の重さ・腕の力に加え遠心力を備えていた。 重力鉛直方向のから、縦の突撃。小枝二本で防げるほど生易しいものではなく、やはり小枝のように守りを叩き割る。 「カッ……」『ミトスッ!』 ミトスの胸に赤い一本線が入り込む。皮二枚を切り裂いて滴らせる天使の血は鈍い。 だが、カイルは更に腕を捻り込み剣をその奥に押し込もうとしている。 カイルに負けず劣らないほど華奢なミトスの肉体では心臓まではさほど遠くない。 <Turn Shift> 「ははカカッ、その程度かよカイル!! アトワイト、回復用意!!」 嘲けるような声と共に、ミトスの体が半歩捻られる。ぶちりと、左の胸に傷の音が歪む。 気にするそぶりすら見せずミトスは更に半歩踏み込む。アトワイトをぶつける様にして腰部へと掌底。 「--・-・ ・・-・- -・--・ ・・-・ ・・- --・-・ ・・-・- -・--・(神経回復、痛覚再起)!!」 詠唱と共にミトスの手のひら、正確にはアトワイトから浮かび上がった青い治癒の光がカイルへと流される。 一体何をしたのかと問うよりも早く、結果が現れた。じゅくりと、カイルの股に赤い染みが再び浮かび上がる。 「う、い″、いっが、~~~~~~~~ずっ!!!!!」 張りつめたカイルの表情が縦横に歪み抜く。脂汗を吹き出しながら現れたそれは露骨なほどに内側に走る激痛を教えていた。 何故今になって股間部の痛みがぶり返すのかという疑問も消し飛ぶほどの痛み。 それでも剣の構えを保ったのは称賛に値したが、握りの緩みは仕様もない。その“たわみ”をミトスは見逃さなかった。 『カイル! ミトス、貴様何をッ―――――!?』 「丁寧に教えてやれるほどの余裕をくれたら答えてやるよ」 ディムロスがミトスに問いただすよりも早く、ミトスの蹴りがカイルの鳩尾を打つ。 足場無き中空であるが故に、作用にてカイルが、反作用にてミトスが離れるように仰け反り距離が開く。 <Turn Shift> 『待て、っく!』 「に″、ご、ごごま、逃げる″!」 ディムロスが再度問おうとしたが、カイルの“悲痛な”叫びが掻き消した。 食い縛るように箒を握ると、それと同時に十の氷針が飛び射られた。退がるしかないというカイルの判断は間違っていなかった。 <Turn Shift> ミトスの代わりに牽制射撃を放ちながらそれを見ていたアトワイトが疑問を漏らす。 『本当に下がった…………ただのファーストエイドだったはずなのに……』 「少し傷を起こしてやった。中途半端に血流が良くしたからな、血の気の多い莫迦にはかなり辛いはずだけどね」 顔をある感情に歪ませるミトスに彼女は空恐ろしさを覚えた。制限下の回復術が弱まることは周知の事実だ。 ファーストエイド一発程度ではせいぜい少し元気になる程度だろう。そして、治りかけの傷ほど痒いものだ。 全ては分かりきった事実の組み合わせに過ぎない。だが、それをあの土壇場で試せるものがどれほどいるだろうか。 ターゲッティングの無効と制限を逆手に取った、敵への回復術の使用。今までのミトスには無かった手管。 カイルの力が研ぎ澄まされていくように、ミトスの技もまた変質し始めていることを彼女は改めて感じた。 『それにしても……痛そうね……どっちの意味でも気持ちは分からないけど』 「嫌なこと思い出させるなよ………それに、こんなの子供騙しだ。次はもうないよ」 そう言われたアトワイトは彼らを見やった。少しずつ対応が早くなっているのは、立て直しが進んでいる証拠だ。 ミトスが剣を持つ手を何度も開いて握り締め直す。目に見えて分かる手の震えは、もうカイルの剣を受け止めきれないことを示していた。 「……捉えてきたな。もう安々と距離をとらせてくれない、か」 打ち合いを経るにつれて爆発的にカイルの“キレ”が良くなっていくのをその身で体感しながら、ミトスは口を曲げた。 あの時自分の精神状態がお世辞にも芳しくなかったことを差し引いても、その力は一日前とは比べ物にならない。 一日前に対峙した餓鬼は、世の中が自分中心に回っていることを疑わない子供だった。 そのなまくらが一研ぎするたびにその刃を鋭くなっていくのをその手がひしひしと感じていた。 恐らくは、これが本当のカイル=デュナミスの“限界”。そして、その限界もまだ伸び代があるように感じられた。 愚直なほどの正攻法で切り込んでくるカイル。遂に小細工未満のチャチな手品にまで手を出し始めた自分。 優劣は明白。あと2,3回斬り合えば競り負けるだろう。自分の手のひらを見て、ミトスの顔が更に歪んだ。 皺もないその無垢な自分の手はどこをどう見ても子供の手なのに、酷く老いて見えていた。 「何を見てるのさ」 ふとアトワイトの視線を感じ、ミトスはそちらに瞳を向ける。 『随分楽しそうだなって思って』 「僕が? 冗談」 馬鹿にするように鼻を鳴らすミトスに、アトワイトは呆れたように言った。 『そう。でも貴方、笑ってるわよ』 中指から三指を突き立て粋護陣を出すと、狙い澄ましたように火礫が着弾する。 アトワイトの攻撃を上回って反撃を許し始めた中、ミトスは老いたその手で自らの顔をなぞった。 その感触で彼は実感する。蒸発する水煙の白に薄く隠れたその口元、否、顔面その全てが笑みに歪んでいた。 だが、ミトスはそれを否定するわけでもなくただ事実を認識し、苦虫を奥歯でひき潰した。 <Turn Shift> 『ッ、しまった! ミトス!!』 一瞬の間隙に放たれた高圧高温の反応を感知したアトワイトは一瞬完全に虚を疲れた。 『遅い! 魔神炎!!』 箒を介した擬似的な主導権の入れ替え。自分たちの模倣に気づき、術管制を引き戻すが二手遅い。 魔神の炎が、微かに乱れた射撃を焼き払い、その業火の向こうから一陣の風が吹きあがる。 大気の分子を焼き尽くし光を放つ流星の如く、斬撃そのものと化してカイルが飛ぶ。 完全に捕まったと悟ったミトスは痺れを押し潰すように双剣を強く握った。 頭蓋を折り斬ってしまいそうな唐竹がミトスへと打ちつけられる。しかしその刹那、ごりっと金属と肉を交ぜたような音が唸る。 「それみろ。そんなふざけたことを云うから」 ミトスが引き攣った様に笑うが、そこにはアトワイトを責める語感はなかった。 今のはアトワイトというより自分のヘマだ。それに、アトワイトがヘマをしようがしまいが腕二本ではどの道もう支えきれない。 この距離では詠唱からの切り返しもままならない。もう手札は無く、身体がカイルの圧に屈し始めている。 心にいたっては、戦う前からと言っていい。 (成長する子供と、時間が止まった大人。なんともしがたいな) 完全に動きを止めたディムロスの剣先には邪剣の柄が縦に割れて食いこみ、その握る掌の肉から血が滴っている。 指ならば小指薬指が飛んでいるだろう深さで剣を止めている。それで“やっと、かろうじて”だった。 横から刃を当てていれば、たとえ闇の武具であろうともその生きた刀身ごと両断されていただろう。 ここまでか、とミトスは無意識に鼻で溜息を付いていた。 体全部の筋に力を入れていなければ付いたであろうそれには後悔も、憤慨も特には無い。 <Turn Shift> とうに目的は消え去り、欲するものも無く、未練などある筈も無い。有機的な死など、この体には無縁だ。 いや、死んでいるというならもうとっくの昔だな。そう思ったミトスの瞳は自然と閉じていた。 (昔の昔に姉さまがいなくなったときから、もう分かりきってた。 僕の居場所は、姉さまの影にしかなかった。そこでしか生きていけなかったんだから) 薄々、分かっていたこと。それを“姉”の口から告げられては認めるしかない。 ミトス=ユグドラシルの全ては、マーテル=ユグドラシルの為だけに存在した。 それを失って、それでもそれに縋って生きるしかなくて、惰性で生きてきた。 (疲れて当然か。楽しみも何も無い、作業だけの時間だったからね) この体は既に歩く死体で、それが四千年の徒労の果てに壊れるだけのこと。 それが最後の最後にこんな狂った世界で姉さまに出会って、僅かばかりの夢を見た。 もう一度、やり直せるんじゃないかって。 でもその夢さえ潰えた。他ならぬ姉さまの手で、夢は覚めてしまった。 だからもう眠ろう。夢さえ見ることの無い、深い深い眠りへと―――――― <Turn Shift> 「待てよ」 深海に落ちていく寸前に手を掴まれたように、その言葉には強い引力があった。 無理やり起こされた寝起き明けの如き不快さを露にして、ミトスがボソリと吐く。 「まだ殺ってなかったのか。さっさと殺せよ、ウスノロ」 振り下ろした刃の圧は緩めることなく、カイルが口を開いた。 「言われなくても、勝つ。でも、それはお前じゃない。お前みたいなやる気の無い奴に用なんてない。 俺が知ってるミトスは、この程度で終わらなかった。道を譲らなかった」 それはこの風渦の中でやけに透き通って聞こえ、ミトスの中の僅かな弛緩さえ引き締められる。 それほどに、ユグドラシルの4000年に埋没したその名が新鮮に感じられた。 「この程度なら、あの時の方がまだマシだ。本気出せよ、腰抜け!!“それでも英雄かッ”!!??」 その一言に、ミトスの中の陶酔が醒めていく。 ああ、このまま酔って死ねればさぞ楽だっただろうに。畜生め。 <Turn Shift> 別に、なんの作為的意味があったわけでもない。ただカイルの口から自然と言葉が出ていた。 何でこんなことに腹を立てているのだろうと、カイルは言葉を吐いた後で自問したくなった。 ディムロスが何かを言いたそうにしたが、マスターの何かを察したのか口を噤む。 それがカイルにとって、ミトスに勝つことと同じくらい意味を持っていると感じていた。 【英雄】。言の葉を舌の上に乗せてカイルはその味を確かめ、得心する。 何故今自分がこうもミトスに挑みかかっているのか。 リアラを殺されたこと、ロイドの世界の敵であること。マーテル。ミント。 それらは確かに戦う倒すべくに足る理由ではあるが“間接的理由”だ。 娯楽に耽っていた時に仕事のことを思い出したかのような不愉快さをミトスが自分に見せている。 カイルという存在が、ミトスという人物を無視できないのはつまるところあの夜の一戦に尽きるのだと。 「お前が、それを口にするかよ。まだ何も分かってないのか」 カイルの怒号と同じくその一言にはあらゆる疑問が詰まっていた。 ロイドらから既に聞いたであろうミトス=ユグドラシルという人物の末路。 既に明らかになっているであろうこの世界におけるミトス=ユグドラシルの目的。 それらを踏まえたうえで、既にあの夜に答えたであろう結論を聞いていて、なお諦めるなと口にするのか。 「なら、逆に聞くがな。お前にとって英雄ってのは何だ? まさかあの時みたいに下らないことを言うつもりじゃないだろうな」 「――――――――なりたくてなれるものじゃないってことは知ってる。 自分のやったことに皆から讃えられて贈られるものだってことは」 ほう、という溜息が聞こえてきそうな軽い驚きをミトスは見せた。 「半分合ってるよ。なんだ、唯の脳無しじゃなかったのか」 あの時のことを思い出して、カイルは苦いものを覚えた。それが刃を少し後押しする。 「英雄を定めるのは、英雄以外のニンゲンだ。これは正しい。だからなりたくてなれるものじゃない。これも正しい。 だから、その逆も正しい。なりたくなくても勝手に英雄にさせられる場合がある。 ――――――――――――――――“英雄以外のニンゲンどもが自分の都合で英雄を欲した場合”、だ」 カイルの剣が朗々と答えるミトスへと少しずつ肉薄する。 この距離でのカイルの優勢は明らか。だが、ミトスから放たれる何かは止んでいない。 それは命の危険に対する怖れでも殺される相手への敵愾心でもなく、もっと視野の広い憎悪だった。、 「そもそも、何故讃える? そんなに英雄を憧憬して讃える暇があるなら自分で英雄になろうとすればいいのに。 ならないんだよ。なるはずがない。英雄を祭り上げる奴は“英雄になる気は無い”んだ」 距離が縮むほどに増大する惨意。自分へ答えると同時に、それはミトスの中の何かを揮発させている。 そのガスの匂いを嗅げそうなほどの距離で、カイルはミトスの中の澱を見た気がした。 「何かを成す為には犠牲は付き物だ。だけど、誰だってその矢面には立ちたくない。 だから希う訳だ、誰か自分の代わりに多く失ってくれないかと!」 堆積した歴史の底に沈殿していた、憎悪よりも煮立ち憤怒よりも焼けたニンゲンへの失意。 剣戟の振動にて舞い上がったその汚泥が、カイルの意識を一瞬釘付ける。 額と額が擦れ合いそうな近接でミトスの下半身はカイルの死角となる。 「で、当然その程度の心根しか持たない奴が良心の呵責に耐えられるわけが無い」 カイルの死角を襲う左の足刀。人間とは異なる視界を持つディムロスはそれを捉えていた。 だが、それをディムロスは言わなかった。寧ろ好機と捉えたからだ。 先の蹴りで調子に乗ったのかは分からないが、今は状況が違う。 この態勢ではとてもではないが腰に力は入らない。加速させる距離も無い苦し紛れの死んだ蹴りなど避けるに値しない。 それよりも、更に崩れるであろう守りを打ち破るべきと考えた。兵の法から導き出される道理。 それをカイルは避けた。火を落とし、剣を弾いて箒を軸にその場で横転する。 その所作は無意識に限りなく近いものだった。その蹴りを何故避けなければいけないかなど分かる筈も無い。 ただ、ミトスの中から表出した何かがカイルの神経に直結した。 もしクルシスの指導者ユグドラシルならば抗うことなくここで滅んだだろう。 だが、“寝た子を起こしたのは果たしてどちら”か。 間髪で横に薙ぎ払われた蹴足がカイルが先ほどまでいた場所を過ぎる。 絶望とは反転した希望。堕とせし英雄の絶望は、未だ何も終わってはいない。 「だからヒトは自分を慰めるために謳うのさ――――――――“どうもありがとう英雄サマ”ってね!!」 刹那、ミトスの足が閃光を射出した。 当人の足よりも伸びた閃光がまるで刃のように伸び、大気を射抜く。 粒の波が空を渡り、焦げついた空気の匂いがカイルの鼻に届いた。 収束する光の奔流の先には、内側からブーツを吹き飛ばされたようなミトスの小さな素足があった。 『ユグドラシル、レーザー……?』 アトワイトが虚空に投げかけるようにその技の名を口にする。 その名のものよりも細く、短くはあったがミトスから放たれた真白き光の一閃は確かにそれだ。 そこに疑問符が付くのは、ミトスがユグドラシル形態をとっていないからではない。 ダオスと共に放ったように、口径の小さな銃で大きな銃弾を放つリスクさえ負うならばミトスの身体でも不可能ではない。 後に省みるものの無いこの戦いにおいて、それは有り得た選択肢だった。その戦いをその眼で見ているアトワイトもそれは考えていた。 『莫迦な……蹴り足からッ!?』 ディムロスが彼女の疑問を代弁する。その閃光が発射されたのは――――眼前の結果を信じる限り――――ミトスの左足だ。 本来ならば掌から放たれるべき光が脚部より放たれたという事実は、事実以上の驚きをディムロスに与えた。 「そんなヒトが勝手に与えた称号に何の意味がある!? 無いね。欠片も無いッ!」 刹那、ミトスの足が閃光を射出した。 当人の足よりも伸びた閃光がまるで刃のように伸び、大気を射抜く。 粒の波が空を渡り、焦げついた空気の匂いがカイルの鼻に届いた。 収束する光の奔流の先には、内側からブーツを吹き飛ばされたようなミトスの小さな素足があった。 『ユグドラシル、レーザー……?』 アトワイトが虚空に投げかけるようにその技の名を口にする。 その名のものよりも細く、短くはあったがミトスから放たれた真白き光の一閃は確かにそれだ。 そこに疑問符が付くのは、ミトスがユグドラシル形態をとっていないからではない。 ダオスと共に放ったように、口径の小さな銃で大きな銃弾を放つリスクさえ負うならばミトスの身体でも不可能ではない。 後に省みるものの無いこの戦いにおいて、それは有り得た選択肢だった。その戦いをその眼で見ているアトワイトもそれは考えていた。 『莫迦な……蹴り足からッ!?』 ディムロスが彼女の疑問を代弁する。その閃光が発射されたのは――――眼前の結果を信じる限り――――ミトスの左足だ。 本来ならば掌から放たれるべき光が脚部より放たれたという事実は、事実以上の驚きをディムロスに与えた。 「そんなヒトが勝手に与えた称号に何の意味がある!? 無いね。欠片も無いッ!」 今自らが成したことなど露も気にする素振りなく、ミトスがカイルに一撃を振り下ろす。 「ッ!」 天地を反転させたカイルの上に流れる唐竹とその我武者羅な一撃が打ち付けあった。 重い。カイルの手に痺れが刻まれる。馴れぬ体勢からの咄嗟の一撃であったことを差し引いても今までとは比べ物にならない。 それには何の小細工も無かったことがカイルには分かっていた。ただ力目一杯に打ち込んできた、それだけの攻撃。 その証拠に、ディムロスの硬さと自分の握力の方が耐えられずにミトスはその手からファフニールを弾き飛ばしてしまう。 (速い。今までと、桁が――――――――) 中を空回るミトスの小柄な身体。華奢と言ってもいいその肉の何処に世界を変える力を持っていたのか。 その片鱗を、カイルは3分の4回転した世界で垣間見た。 「人から散々奪うだけ奪っておいて、その代わりに貰えるのが『英雄』? 要るかよ、そんな屑切れ。向こうだって屑切れだって分かってるから気軽に差し出すんだよ!!」 ミトスの左足が、親指と人差し指で弾かれた剣を器用に掴みあげる。 筋を強張らせるほどに握り締められた剣が、その憎悪そのままにカイルを蹴り斬った。 『カイル!!』 一歩早く上下を戻したカイルの防御が辛うじて間に合う。矢張りというべきか、その威力は手よりも劣ったのが幸いと機能していた。 が、ミトスはその結果云々など端から眼中に無いといった様子で、アトワイトを横に振り被る。 目端が切れそうなほどに見開いた瞳。歯の軋る音。余裕はおろか諦観さえ削ぎ落とされた、剥き出しの感情がそこにあった。 風も凍りつきそうなほどの一閃を前にし、剣では間に合わないと判断したカイルが大きく仰け反って避けようとする。 身体が覚えていたアトワイトの刀身の長さとミトスの腕から差し引いた殺傷範囲からの判断だった。 『晶術反応? これは――――紙一重で避けるな!!』 ディムロスの一言の意味を理解するよりも早く、目の前の光景が推移した。 カイルの鼻先を刃が掠める寸前、ミトスの手からアトワイトがすっぽ抜ける。否、空を握り締めている。 「自分が出来ないこと、したくない事。そういうことを代わりにやってくれる間抜けを嘲笑う為の代名詞だ。 賞賛は、功績は! どれだけ自分を食い潰して他人の犠牲になったかでしか計れない!!」 晶術で精製された氷によって伸びた柄。増した射程が、カイルの目測を超えて迫る。 鼻頭に切れ目が入った瞬間、カイルの左手が半ば勝手に動いていた。 ガントレットを咄嗟に噛ませ、骨まで至る寸前に刃を止める。 やはりその威力故に衝撃で柄の氷が砕け、弾かれたアトワイトが宙を舞った。 半分ほど切れた鼻の頭の軟骨からくっぱりと血を滴らせるカイル。 口に入る血の苦味を覚えた、カイルは目の前の存在に今までとは異なった空恐ろしさを感じていた。 ロイドから聞いていた能力仕様を超えた大技。走る・歩くという意味での足の価値が無い中空とはいえ、脚部を用いた手数の増加。 それらも確かに脅威ではあったが、カイルが感じていたのはそこではなかった。 接近戦というカイルの領域にミトスを踏み込ませたのは、『譲らない』というミトスの強い意志。 ともすれば戦いの結果としての敗北さえ受け入れていたかもしれないその小さな身体を支え始めたものが、暴威と化す。 「うっ、あ、が――――ッ」 『カイル!』 鼻先のアトワイトまでもがその名前を叫ぶ。敵に案じられなければならないほどの苦悶がカイルに表出する。 眼前に運んだ自分の鉄甲に遮られた死角、カイルの膝には蹴り付けるように足指でしっかりと握られた邪剣が深々と刺さっていた。 逆鱗、あるいは最古の生傷に触れてしまったという手応えが、カイルの中で自らの窮地として確かなものとなった。 マーテルの弟でもなく、世界の調停機関であるクルシスの首魁でもなく、ハーフエルフでさえなく、 「英雄の価値はどれだけ失ったかでしか量れない。故に、英雄は誰よりも多く自らの大切なものを捧げる! それが望んだものでも、望まざるものでもだッ!! そうでなければ、人一人の力で世界を変える力は得られない!!」 “英雄”ミトス=ユグドラシルの怨嗟を開いてしまったのだと。 『右足だとッ!?』 怒号の呪言とともに、ミトスが右足の輝きを見たディムロスはそれに気づいた。 短剣をカイルの膝に杭と打ち込んで、足場を固定したミトスの左足は“軸足”だ。 そして先ほどの左を考えれば、これは脚力増強などと温いものではない。 “左で成せたことが右で出来ぬ道理が無い”。 「だから英雄は失う。本当に守りたかったものを、本当なら守れたものを! こんな風にッ!!」 ぐいと左足を相手の膝に押し込み、反動を得たミトスの右足がカイルの横腹を穿つ。 噴出する赤い水が、夜の黒が白き光に呑み込まれる。 アウトバースト。カイルに撃ち付けられた箇所から閃光が迸り、全てを炸裂させた。 光が止んで再び闇が天を覆った空に、ミトスは星を見るようにして大地を睥睨した。 『ミトス。そんな無茶をしたら、足が……』 しゅうと湯気を上げたような両の裸足を見ながらアトワイトがミトスに諫言しようとしたが、 ミトスの放つものにぞくりとしたものを覚えて押し黙る。 先ほどまでの悦楽的な表情とは真逆の乾いて煤けた、全てを侮蔑しきった感情が露出している。 マーテルが死んだときのそれに似ている、と彼女は思った。 だがあの時でさえまだ「マーテルを甦らせる」という希望がそこには残っていた。 闇の中の最後の一条さえ見失ったかのような、ミトスの歴史の中の染みを全て表出させた漆塗りの黒。 何をどう経験すればこの幼い面がそんな面構えになるのか、アトワイトには想像が付かなかった。 今までのミトスが、本気を出していなかったとは思わない。全力でカイルを倒しにかかっていた。 それは彼の武器として在った彼女が一番よく分かっている。だか“ここまでする気は無かった”筈だともアトワイトは思っている。 顔は涼しげでも足を見れば、本来手で使うべきもの遣った代償が確実にミトスの体内に蓄積しているのが分かる。 その内側に掛かっている負荷は想像を絶する。楽しむため、死ぬための戦いに持ち出す技ではない。 自らの拳を砕きながら殴るような戦い方をするような少年だっただろうか。 つまり、眼前の敵はミトスにとって自傷してまで殴るべき相手なのか。 「咄嗟に防いだな。よく選んだね。腕を犠牲にしなきゃ、命は守れなかった」 アトワイトが面を上げるように視界を上げると、少し遠くで白く煙が棚引いていて風に掻き消え続けていた。 煙の先には真っ赤に血を滴らせている左腕があった。あったはずのガントレットは、破片をその肉に食い込ませている。 その庇った左腕と、腿肉を抉り取られたかのように右脚から血を垂らすカイルは4割が紅い。 『そこまで人間を憎むか、ミトス=ユグドラシル。異世界の英雄よ』 浅い息を短く吐き、震える手で膝の血を少しでも留めようとするカイルを庇うように、ディムロスはミトスを睨み付けた。 ミトスから迸るものの大部分を占めているであろうもの。 それがニンゲンという生き物に対する憎悪であることをかつて英雄が担った剣は確信した。 英雄というものが人々から与えられるものである以上、ニンゲンを憎むミトスにとっての英雄の価値は自ずと定まる。 「『嫌い』だ? そんな小さな言葉に収まる程度のものだと思う? ソーディアン。誰かの為に朽ちることを運命付けられた、哀れな生命よ」 端正であろうその小顔を歪ませているのは、感情か過去かあるいはその両方か。 世界を救った英雄に刻まれたものというには、それはあまりにも空虚な絶望だった。 「世界なんてその気になれば誰でも変えられる。簡単に世界を滅ぼすことも出来るんだから。 でも、あいつらはそれをしない。しようとする気さえ起こさない。いつか自分以外の誰かがやるのを待ってる。 いつまで経っても世界は変わらない。だから、僕が変えることにした」 顔の上半分をアトワイトを掴んだ手で覆い、ミトスが傷口から血をひり出すように言葉を紡いだ。 店を畳む古物商が、蔵の中に眠っていたものをひっくり返して懐かしむような寂びだけがそこにあった。 「それなりに辛いこともあった。報われないことも多かった。それでも、少ないけど仲間もいた。 頑張ればいつか必ず夢は叶うと、世界は変わるとあの頃は信じられた……笑えよ、この僕がだぞ」 自嘲さえも浮かばぬ冗談に、笑える余地などあるはずもない。 「そこそこ足掻いて、それなりに努力して、まあ、ありがちな世界の危機くらいは救えそうになった。 これさえ終われば、きっと僕のやってきたことは無駄じゃなかったと誇れたかもしれない」 それはカイルらが見てきた中で、一番素直な表情だったかもしれない。 一等乾ききった、骸骨の笑顔だった。英雄にしか浮かべられぬ絶望が、そこに刻まれていた。 ぞわ、とミトスの背後に列べられた寒気にディムロスが気づく。 無数の氷針が、夕闇の薄暗がりに紛れて並べられている。静かで早く、尚かつ緻密な布陣だった。 (100本以上……蜂の巣どころではないッ!!) 「でもな、そこで初めて知ったんだよ。世界は救えても、変えられないって!!」 風化した想い出。輝いていた最後の時代の化石。もう取り戻せないと知ってしまった全てへの悔恨。 その全てを殺意に転換し、ミトスは殲滅の大号令を繰り出した。 一瞬たりと聞き入ってしまった自分を罵り潰すとともに、ディムロスは再び箒を自分の制御下に置いて素早く対応を敷く。 カイルの意識が戦闘が成せるほどに回復しきっていない今、迷える時間は無い。 剣の裁量で動かせる推進力を全て火力に変えて全面に押し出し、火炎の楯と成す。着弾と共に高圧高温の蒸気が障壁の外側に爆ぜ上がった。 爆音と蒸発の熱は酷いが、反発する属性同士の利がある。これならば凌ぎきれる、そうディムロスが思った瞬間だった。 「犠牲を払えばなんだって出来る。それこそ世界だって救える。 だけど“犠牲を必要とする”世界の仕組みは変化しない。姉さまを奪われるまで、僕は気づけなかった!! お前も、スタンとリアラを失うまで気づかなかっただろ、カイルッ!?」 炎の赤と蒸気の白が視界を埋め尽くす中、少年の声が響き渡る。痛みさえ錯覚しそうな悲愴がこの音の波の中を貫いていた。 ディムロスはそこで自らの間違いを悟った。ミトスは時間稼ぎに昔の苦労話を語ったのではない。 その程度の詐術に心を揺さぶられるほど、ディムロスは易くはない。 ソーディアンが封印された千年。その4倍の年月を経ても残る生傷の痛みだからこそ、ディムロスを穿てた。 アトワイトをバルバトスに奪われ、司令官として非情の決断を下したディムロスを。 そして、今その痛みをカイル=デュナミスただ一人に理解させるためだけにそれは語られている。 人間を信じて最後の最後まで諦めなかった少年が、旅の終わりに知った真実。 彼が守ったものはこんなにも下らなくて、彼が失ったものはあんなにも掛け替えの無いものだった。 世界は変えるものではない。その引き替えに大切なものを、喪ってしまうから。 最後にふらりと訪れた客に対するものとしては破格過ぎるこのサービスは詰まるところ、冥土への土産。 (必ず殺す、即ち必殺の意志。ならばこの拮抗に、更に一枚仕込むか!!) ディムロスの読みとほぼ同時に、ガキン、とファイアウォールにひび割れたような圧力が走る。 堅い。炎にぶつかっても溶けない何かが壁を穿っている。 「英雄になれる素質があった訳でも、英雄になりたかったわけでもない。ただ、一緒にいられれば良かった。それで十分だったんだ」 その圧力点を中心とした部分の水蒸気が一瞬晴れて、蒸気混じりの直線を結ぶ光の輝きが映る。 ミトスの左手には邪剣ではなく槍が、守りを撃ち貫く聖なる槍が握られていた。 「僕は唯のハーフエルフだ。僕には姉さましかいなかった。姉さまと一緒にいられれば、誰にも迫害されない場所があればそれで良かった」 ファイアウォールに食い込んでも融けない槍が、楔と打ち込まれている。ディムロスがミトスの意図を察した時には既に遅かった。 足指で剣を器用にホールドしながら、ミトスは両の手に握ったホーリーランスの片方を投擲する。 先に穿った一投目を寸分違わぬ打ち抜き、壁を更に圧し抜く。 意図を察してもディムロスには打つ手がなかった。未だ雹の如き波濤は押し寄せている。 再び推力を得るために壁を解けば、無数の氷に刺し貫かれるだろう。槍を避ければ針衾、針を防げば百舌の贄。 攻めるも退くもままならず、ホーリーランスだけがじりじりと目の前を進んでいる。 「な? 全部は無理なんだよ。本当に大切なものを知らなければ、いつかそれを失う」 手元に残った最後の一槍をミトスは背中に回す。捻った背筋に全てを貫通する力を蓄え、その眼は壁に刺さった二連槍を狙い済ます。 三本目で、かっきりと貫く。詰め将棋の如き陰湿な精密さに、ディムロスは唸るしかなかった。 「僕は唯のハーフエルフだ。姉さまと一緒にいられれば、誰にも迫害されない場所があればそれで良かった」 全てを守ろうとすれば、何処かで歪みが出る。中途半端に選べば、必ず後悔する。 世界もマーテルも欲するは虫が良く、スタンとリアラどっちともというは傲慢に過ぎない。 「ニンゲンなんかの英雄なんて、願い下げだよ。僕の全ては、姉さまのためだけにあったんだ」 選ばなければならないのだ。英雄であるならば、何かを捨てて進むしかない。 「僕は、ただ、“姉さまの英雄であれれば、それで良かった”」 だから世界を、それ以外の何もかもを犠牲にしてでもたった一人を取り戻すと決めたミトスは英雄として完成している。 「お前にはまだ分からないだろ。でも、理解しろなんて言わない。 分からないまま――――――――ここで死に飛ばせェェェェェェェッッ!!!!!!!」 その一点に収束しきった意思が、全てを引き替えにしても厭わない決意が、そこに至れぬ全ての偽善を撃ち射抜く。 『カイル……!』 投げられた最後の聖槍が飛翔する。アトワイトは無い目を瞑るように、ディムロスを最後に引き合わせた少年の名を呟く。 救済か或いは死出への手向けか、それはいかなる感情から放たれた言葉なのか。 だが、アトワイトはただ道具として己の領分を堅守する。 (知らなかった……あいつ、これだけの想いがあったんだ……これなら、強いはすだよ) 弾道は計算する意味もないほどの真っ直ぐさで壁を崩す槍の柄尻を打った。 『ぐぅっ……ここまで、なのか……』 ディムロスもまた無念を顕わに諦観を漏らした。だがそこに絶望というほどの後ろめたさは無い。 ただ、自らのマスターを勝利に導けない自分の無力が疎ましかった。 全力を発揮したソーディアンどうし、得物は五分と五分。 だが現実は、形振り構わず全てを曝したミトスを前にして、遂に前進した彼の槍がカイルをくり抜こうとしている。 (永い間、一人で抱え込んでたんだろ。そんな気持ち、誰にも理解できないものな) ディムロスはミトスとカイルを分かつものを悟ってしまった。 望まぬまま英雄となり世界しか救えなかったミトス。かつてディムロスに誰一人見捨てない英雄の在り方を説いたカイル。 それのどちらが良いかはディムロスには決められない。 (大切な人を零して、世界を守った英雄、か。ははっ……“他にも”いたんだな、こんなところに) だが、2人の相違がこの一切の望みを棄てた死地に於いて、最後の一歩に絶対的な差を生ぜさせている。 『せめて、俺がもう半日早くお前に会えていたならば……』 後ろ2つの槍が光と爆ぜ、三本分の力に推された初槍が遂にディムロスの焔を破る。 <そう、彼ではミトスに勝てない。それはもう分かり切っている> (否定なんて、俺に出来る訳がない。でもな、一つだけお前間違えてるよ。 失うことでしか、英雄にはなれない。そんなこと―――――) ダメージではない。技術ではない。膂力でもない。 英雄としての経験。ただその一点で、カイル=デュナミスはミトス=ユグドラシルを越えられない。 『我が身の、不甲斐なさを許せ……ッ』 その結果が、彼の肉の中心を―――――――――――――――――――――――― <だが、だからこそ、堕ちた英雄を止められるのは彼しかいない> 「そんなこと―――――“知ってるよ”」 紅黒い鮮血が赤暗い空に散り、傍にあった剣のレンズをびたびたと覆った。 Pause――――――――――――――Next Turn Shift Belserius→Goddess 前 次
https://w.atwiki.jp/gachmuch/pages/1003.html
[Intro] Dre,死んでる奴等がいる Yo Dre,死んじまったかと思ったぜ West Coast [Verse 1] オレはDocterの代弁者(Doctor s advocate),NiggaはDreの銃弾を浴びる 死からオレを救ってくれた、だから奴等は彼をDoctorと呼ぶんだ。 マーベリックと別れ、50と決別 奴はもういない?そりゃいぃ、オレが乗せてやる。 クラブ中が6-4インパラの如く揺れ動く クリスタルを掲げ、呼べハイドロニクスと コップにツバ吐けば、まるでヒプノティック コンプトンの血が流れる、俺はトニックを飲み干す お前等新人は、所詮素人 Bapeの靴履くお前等に言ってんだ、6-4インパラで跳ね、ハンドサインを突き上げる そして500万売るのがもう一人の そう、それがオレ ヤバイ程新鮮、ニガ共またオレはやっちまったぜ 10万ドルを首に引っさげ、キャップにはLAの文字 ランボルギーニの中で、準備はいいか,Snoop?? West CoastでCripじゃない、もう一人の・・・ [Chorus] One blood {*4X*} Blood {*9X*} One blood {*4X*} [Verse 2] オレは6-4インパラのWestside出身 ニガ共が「お前出身どこ?」って言ってきても、答える気にもならねえ 右手にバンダナ、銃は左手に持って New Yorkの奴等はWestsideの仲間に接する方法知ってんだな ワードはEazyに向けて、オレはマジでヤベエ、信じるんだ Jeezy部屋は空けといた、だけど残余、ニガ共の お前がやりやすいようにやればイイ、オレが必要としているのは1つの理由だけ。 キングはオレ、Dreが証言者、West Coastはオレを必要としている お前等ニガー共が何故オレに挑戦し続けるのか分からないんだ 奴等は知ってるオレがAftermathダイナスティの継承者だってこと オレはもうクラブに曲を作る必要が無くなった YoDJ,ダセえ38歳のラッパーがかかるとボリューム下げるっていうけどそれは誰なんだ? お前は38歳だよな?(恐らくJay-Z)そんでもって、お前はまだラップしてんのか?Ugh オレは26だぜ、こっちは真面目にやってんだ 07年のハマー、降りて、誰もごまかせないぜ クロニックのスモークが澄みわたったとき、お前等全員聞きにくるんだろ? [Chorus] One blood {*4X*} Blood {*9X*} One blood {*4X*} [Verse 3] 50 centとのビーフは終った、Jay-Zとのビーフも、もう 無し 6-Treの上座狙いにいった時のビーフは何だったんだ? その二つのゲームは鎖で繋がれ、ディスプレイではその関係保ってる Black T-shirtそしてお前等がいつも目にするのはAのサイン Tvのチャンネル変えれば目に入るのがAのサイン お前等niggaはダンスするのが好きで、ラジオで放送されるのを狙ってるんだな? 指を鳴らし続けろ、オレは逃げたりなんかしない お前にビーフ挑んだのには後悔してない、何故ならオレが言うことは決まっているから Niggazはオレの事で会話が持ちきり、でもあいつらはオレがいつストップするのかなんて知らない Louis Vuitonのベルトバックルを手に入れた、グロック(銃)はいつもオレの手に 豆みたいな弾じゃなく、サイレンサーはついてない、オレだけが知ってる弾が飛び出す瞬間 Lil Jonが来るまで待つぜ、銃を放つとき オレがビルボートNumber1の座を掴んでた Niga共はオレの手の上でステップを踏む、一直線にトップの座に返り咲きしてやるぜ オレはビギー、オレはアイスキューブ、そしてナズにパック これは曲なんてもんじゃねえ、でもオレのアルバムがドロップされるまでの警告だと思っておけよ [Chorus] One blood {*4X*} Blood {*9X*} One blood {*4X*}
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1124.html
佐助は末席に座っていた。別に天井裏でいいのに、と思ったが主人の好意はありがたく受け取ることにする。 祝言といっても近親者を集めて酒宴を開くだけ。それも、婿方のみ。 真田幸村の祝言ともなれば盛大に執り行うべきなのだろうが、何せ急なものだから何もかもが慌しかった。 上座にいる男を盗み見る。深い赤の直垂なんてあったっけ? と考え、 そういえば亡きお父上の形見にあったような、と思い出す。 嫁が纏う打ち掛けも、母の形見を直したものだそうだ。虫が食って穴が開いていたらしい。 後で叱ろう、と佐助は心の帳面に書きとめておく。 虫に食われて穴が開いた部分に刺繍を施し、穴を模様の一部として埋め込んである。 それがまた細やかで華やかで、流石だなぁと感心した。派手なことをさせると、本当に一級品だ。 (女って、すげー) 髢(かもじ:付け毛)をつけて化粧を施し華やかな打ち掛けを纏えば、誰もかの奥州筆頭伊達政宗だと気づかない。 化け物だと思った。 家臣が何か喋りかけている。政宗は椿色の紅を差した唇を持ち上げて微笑み、和やかな声で答えている。声がまた格別、と誰かが言った。 並んで座れば、確かに大変見目麗しい二人である。 中身の正体を知っている佐助は笑いを堪えるのに必死だった。 「佐助」 顔を上げると、信玄の顔があった。佐助は慌てて姿勢を正し、御酒を受けた。 近う、と手招きをされ、膳を脇にどけてから体ごと傍に寄った。 「幸村は、まぐわい方を知っておるのか? まさか一緒の褥ですやすやと寝ておれば、そのうち子ができるなどと考えておらんだろうな?」 まさか、と笑った。しかし次の瞬間に真顔になった。 この時代、性教育といえば所謂「房中術」である。 男の気と女の気を混ぜて云々という理論を学び、像や張型などを用いたり遊郭に赴いたりして華麗に教育を施す。 幸村は、それら一式を「破廉恥でござる」と逃げた素敵な過去を持っている。 「知ってる、と思いますよ。だから「破廉恥」なんでしょ?」 「……その、慣らし方とか、言葉をかけたりとか、そういう――作法をだな」 「知ってる……と思いますよぉ? お館様もご存知でしょ? 旦那ってば、奥州まで逢引に出かけたことあるんですよ? まさかそのときに何もなかったって」 「何かあったと思うか?」 あっただろいくらなんでも。 佐助は信玄を見た。好奇心というより、本気で心配している顔をしていた。 親心を感じ、軽く頭を下げた。 「探れ」 「は」 二人の様子を盗み見る。政宗が幸村の袖を引き、何か話しかける。 耳打ちをする様子はそれはそれは仲睦まじいのだが、情を通じた男女にならあるであろう「匂わせ方」みたいなのが欠けている。 どちらも、あっけらかんとしているというか。 (肌を知ってる、んだよなぁ) 幸村から女の匂いを嗅いだことはある。ああついに、と思ったものだ。 なんとなく親離れをされたみたいで寂しかった。いや仕込んだ覚えはないが。 健康な若い男が、これまた健康でついでに美人の娘が傍にいて、はたして何もしないものなのか。 (大丈夫でしょ) 膳を戻し、信玄が注いだ酒を飲む。酒は常日頃から控えている。 いくら飲まされても平気だが、勘が鈍る事態はなるべく避けておきたい。 女中が、風呂の用意が整ったと告げた。政宗が顔を上げる。 「……ああ……」 その声が妙に落ち着いていて、佐助はやっぱり関係持ってるよな、と確信する。 (やっぱり、探った方がいいのかなぁ) 覗き魔みたいでものすごく嫌なのだが、主の主による命令には逆らえない。 中間管理職って辛いな、と一人ごちた。 螺旋収束13
https://w.atwiki.jp/poke_ss/pages/2760.html
73ページ目 翌日、グリーン軍25000がガルドリア城に到着した。 「援軍、誠にかたじけない。」 かっしーが自らアティーク将軍を出迎えて握手をした。 「ランドラを脅威に感じるのは我がグリーン王国も同じこと。共にランドラから国土を守り切りましょう。」 そしてアティーク将軍に従う李信ら4人も入城し、軍議への列席が許され座につこうと広間に入室した。そこではつい先日、壮絶な殺し合いを演じた宿敵との再会が待っていた。 「お前は…確かに殺した筈だ!何故生きている!」 李信の姿を見つけるなり、エイジスは飛び掛かって李信の胸ぐらを掴む。 「この崩玉が俺の命を長らえたのだ。だが死にかけた。危うく貴様に殺されかけるところだった。」 胸ぐらを掴まれながら平然と李信は答えた。 「俺は団長との約束を果たせなかったというのか!お前を倒すという約束を、俺は…!」 「そろそろ離せフェンリル。俺とてお前を殺してやりたいが此処に来たのは貴様と戦う為じゃない。俺は味方として来たんだ。」 李信はエイジスの手を振り払う。 「お、フェンリルじゃん。次会ったら容赦しないとかお互いに言ったけどまさか味方として再会するとはね。」 「お前はこの前の自称ヒーロー!」 水素が横から割って入る。エイジスも水素の姿を見て目を丸くする。 「俺達はお前らと共闘する為に来たんだぜ?もう啀み合うのはやめようや。俺達の敵はサバだろうが。」 「そうか、もうお前らとは決着をつけられないのか。」 エイジスが残念そうな表情を作る。それに水素がこう答える。 「もう二度と バトルできないねぇ。」 「お前のような外道と共闘しなきゃいけないとはな…。」 エイジスが李信を睨みつける。 「元はと言えばこの世界に来てたまたまガルドリアで目覚めただけの俺を、身分証を持ってないからと詰め寄って逮捕しようとしたあの女騎士が悪い。先に攻撃を仕掛けてきたのは向こうだ。」 李信がエイジスに事実を説明する。 「なっ、お前は身分証をこの世界に来た時に持ってなかったのか!」 エイジスの表情が怒りから驚きへと変わる。 「手に入れたのは理想の力とルックスだけで、金も身分証も地位も住居も無かった。それを攻撃してきたのは其方の方だ。」 「嘘をつくな!この世界に来る時にそんなことはありえない筈だ!」 「嘘なんてついてない。全てほあの女騎士の早とちりだ。」 李信の驚愕の答えに項垂れるエイジスだった。 「元々現実世界でのスペックが俺は最低レベルだったからな。その反動みたいなものじゃないか?」 「…。」 李信が推測を語るとエイジスは黙り込んだ。全ては誤解から始まったのだった。 「静まれ!これより軍議を始める!」 アティーク将軍がその場を静める。各々は話をやめ、座についた。 アティーク将軍とかっしー王子が2人で上座につき、軍議は始まった。 「アティーク将軍、サバはサバ派の軍勢と共にここから20km程のクワータリア城に立て籠もり、ランドラ帝国の援軍との合流を図っています。ランドラ軍は要請を受けて帝都ランドラを出立しました。その数、40000です。」 かっしーが用意していた絵地図を広げてアティークに状況を説明する。 「我が王の策略でランドラ帝国は幻影帝国との国境に兵を回した筈。それでも40000とは、これはかなりの大軍ですね。サバ派の軍勢は如何程ですか?」 「サバの軍勢は1万程です。我らの軍勢も1万程です。貴殿らの軍と合わせて35000となります。」 「皆聞いたか。敵は合わせて5万。我らは3万5千。如何にして戦うか、意見がある者は申し出よ。」 アティーク将軍が広間の将達に促す。 「グリーン王国軍李信だ。発言を求める。」 「李信、発言を許可する。」 アティーク将軍の本軍に加わっている李信が発言を求め、アティーク将軍がそれを許可した。 次へ トップへ
https://w.atwiki.jp/reishi/pages/15.html
地底の世界 皆の党のアニメ系アーティスト、まっこうモグラが地底世界の存在について教え伝えるメールマガジンです。 ~はじめまして~ **地底の世界 第一号 はじめまして、アセプロアーティストのまっこうモグラです。 メルマガを初めて発行することにしました。ファンのみんなよろしくね♪ 今日の話題はワタシの自己紹介と今後の配信予定のメルマガのタイトルのお知らせ と地底王国シャンバラの存在についてお話します。 ■まっこうモグラの自己紹介 ☆ワタシの略歴をざっと自己紹介しまちゃいます☆ ●まっこうモグラ (ひろしげ あや) ☆☆ **地底王国シャンバラの存在 ☆☆ 初めは「地底王国シャンバラの存在」についてお話します。 チベット密教の教えによれば、人類が立っている地面、近く及びマントルの下には 「シャンバラ」という名の世界が広がっている。 そこは地底の楽園であり、聖なる王ルドラ・チャクリンが統治している。 人々はみな仏であり、今日に至るも地上ではなしえなかった理想郷を実現している。 かつて、この世の真理を悟った仏陀は透徹した目によって、隠されし地底の楽園シャンバラの存在を知り、弟子たちに語っていたという。 長い年月の修行によって悟りを得た釈迦が説いた教えは、彼の死後、弟子たちによってまとめられた。 仏典結集は何度か行われ、これによって今日まで続く「お経」が編纂されることになる。 基本的にお経は釈迦が説いた教えをまとめたものである。 直接、釈迦に会って教えを受けた弟子たちが記したものから、時を経て、弟子から弟子へと伝えられら教義が釈迦地震の言葉として経典という形になった。 さらに、時代とともに釈迦の言葉は幾多にも解釈がなされ、さまざまな宗派を生んだ。 原始仏教から上座部仏教、大乗仏教、密教へ。 そして最終仏教がチベット密教であり、原始経典から連綿と続く教典の系譜上、最後の最後、 まさに最終経典がカーラチャクラ・タントラ(時輪密教)であるとされている。 次号に続く ■次回以降に配信する予定のメールマガジン記事のタイトル 次回 シャンバラの場所 レーリッヒの探求 サンポ渓谷のルート ■最後に メルマガ記事を読んでくれてありがとう☆ これからも応援声援宜しくおねがいします☆ 発行者アーティストへのご意見やご感想は下記のメールアドレスにお送りください☆ 基本情報 メールマガジン「地底の世界」 ☆発行責任者:皆の党・まっこうモグラ ☆公式ホームページ:http /// ☆問い合わせ: ☆ここまで☆==== ⑨ シャンバラの場所(第二号) 11世紀にまとめられた「カーラチャクラ・タントラ」によれば、インドから見て北方、シータ河の向こう、 地の果てに楽園シャンバラが存在する。 蓮の花を広げたような7つの山に囲まれ、12の国があるという。 しかし、いうまでもなく、現実の地図を広げてみれば、そこに理想郷は、どこにも見当たらない。 それゆえ、楽園とは神話上の寓意、いわば幻の存在であり、仏教ででいうところの方便であると一般には解釈されている。 しかし、こうした学者や現代人の分析をよそに、チベット密教の最高指導者であるダライ・ラマは14世は、はっきりと断言する。 楽園シャンバラ実在すると。チベットのポタラ宮殿には、シャンバラに通じる秘密の回廊があるともいわれている。 ■最後に メルマガ記事を読んでくれてありがとう☆ これからも応援声援宜しくおねがいします☆ 発行者アーティストへのご意見やご感想は下記のメールアドレスにお送りください☆ 基本情報 メールマガジン「地底の世界」 ☆発行責任者:皆の党・まっこうモグラ ☆公式ホームページ:http /// ☆問い合わせ: 外部リンク 声優ユニットアセンション 声優ユニットアセンション-プロフィール 声優ユニットアセンション-声優出演情報 中村春香FaceBook 声優ユニットアセンション-muzie 声優ユニットアセンション-OKMUSIC 声優ユニットアセンション-インディーズバンド試聴サイトAudioLeaf おもしろフラッシュの館 八咫烏陰陽道公式サイト 愛国公党
https://w.atwiki.jp/chaosdrama2nd/pages/1262.html
《 紳士淑女(しんししゅくじょ)のお茶会(ちゃかい) 》 さあさあ、語りましょう 香ばしいお茶でも吞みながら 素晴らしきこの世界の行く末を 概要 「空白の庭の内側」に潜む謎の集団。物語を何処かから俯瞰している。通称『茶会』。 直接世界に干渉することはなく、それでも戯れる程度に接触して、この世界の行く末を見届ける。 ボンドルド曰く、中立を保つ傍観者。 世界の歴史を観測し、紡がれていく歴史の本筋を設計してきたともされている。 観測対象にある世界の行く末について語り合う秘密会議を行うが、 メンバー全員が気まぐれで神出鬼没の為、総出演することなど滅多にない。 大きな円卓と十二の席のみが存在する真白な空間に潜んでいる。 それぞれの席には各自のティーカップが置かれ、発言の際にはそこに角砂糖を投げ込むという風変わりな儀礼がある。 上座には「 C. 」と呼ばれる最上席の人物が座ることになっているが、登場する場面はない。 メンバーはその「 C. 」を含めて全員で12人いる。 『僕らの物語』にて初めてその存在が明かされるが 組織自体はケイオスの歴史が誕生した当初から既に世界の観測を始めており、 これまでのドラマにおいても度々その描写が幾つかあった。 メンバー ・DJサガラ 『仮面ライダー鎧武』に登場。「序章」より登場。 原作とは異なり「DJサガラのノーミュジック・ノーライフ」という番組で司会者を務めるなど、混沌世界に順応している様子が見られる。 観測者アコールと共に、本編の行く末を見守っているようだが… ・アコール 『ドラッグオンドラグーン3』に登場。「第1章」より登場。 本編でも「観測者」という立場の下、本編の行く末を監視している。 劇中ではDJサガラと会話している様子が見られ、互いに別次元的な立ち位置にいることが仄めかされている。 ・八雲紫 『東方project』に登場。「第4章」より登場。 劇中では、自らがギラティナを利用し「やぶれたせかい」へと誘った「あなた」たちの前へと現れる。 幽々子と妖夢に纏わる事の他、12彗星に関して様々な情報を提供するが、その真意は掴めない。 ・四季崎記紀 『刀語』に登場。 『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にて先行登場。 ・阿万音鈴羽 『STEINS;GATE』に登場。 『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にて先行登場。 ・ウォズ 『仮面ライダージオウ』に登場。 『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にて先行登場。 ・古手梨花 『ひぐらしのなく頃に』に登場。 『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にて先行登場。 ・渚カヲル 『新世紀エヴァンゲリオン』に登場。 『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にて先行登場し、本編では「第7章」より登場。 劇中では、『特異点』として目覚めたばかりのベールに寄り添い、 彼女の幸せを取り戻す為にできる限りの助言を行った。 ・長門有希 『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場。 会議に出席する事は少なく、『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にも登場しなかったが…? ・言峰綺礼 『Fateシリーズ』に登場。「第7章」より登場。 劇中では、最後の目的地へ向かおうとしている「あなた」一行の前に現れ、運命の選択を持ち掛けた。 結果的に、彼の登場は歴史の闇に葬られそうになったベールを救うこととなる。 ・??? 詳細不明。 ・『 C. 』 茶会の創設者にして最後に加わったという謎の人物。組織の『最上席』。 『劇場版カオスドラマ 大乱闘カオスマッシュピード[Re]master』にてその名前のみ先行登場。 離反者 かつて茶会のメンバーとして数えられていたが、何らかの形で離反したメンバー ・??? 詳細不明。 ・鳴滝 『仮面ライダーディケイド』に登場。「第7章」より登場。 世界の破壊者・ディケイドと深い因縁を持つ謎の男。 劇中では、かつて『特異点』への並々ならぬ執着からお茶会との思想相違となり、自ら席を降りた経緯を持つ。 『特異点』に目覚めたばかりのベールに新たな可能性を見出し、 並行世界への戦意とその救済を唆すが、その逆効果な結末に絶句。 最後は渚カヲルの警鐘を受け、ベールから離れる形で姿を眩ました。 僕らの物語へ戻る
https://w.atwiki.jp/bamboo-couple/pages/601.html
「なんだか久しぶりな感じですねー」 「ん~む、仕方が無いのか…」 鎌崎高校での練習試合を終えて、もう一週間。 やる気に火がついた先生がそのやる気のままに、高らかに玉竜旗エントリーを宣言してからも、もう5日が経った。 しかし我等が剣道部の士気は、そんな先生の青春真っ盛り情熱燃焼ぶりとは裏腹に……マイペース、そのもの。 朝練を一時間早く始める様になってからも、その時間に来るのはあたしと精々、ユージくんくらい。 そのユージくんも今日は遅れていて、結果、道場はいま随分と懐かしい事になっている。―――二人、きりの。 「いやーでもなんだか思い出しますねえ」 「まあ…もう随分経つような気がするもんな」 タマちゃん達が入部してから、もう何年も経過したように感じる道場も、 別段壁にかかる絢爛豪華な賞状とかが増えたわけでもなく、相も変わらず殺風景なままだ。 とりあえず床や壁はぴかぴかに磨かれ汚れの一つも無いのが自慢ではあるけども、 この先練習試合の相手を迎え入れる事はあっても、強い高校だとはまず思われないだろう。 その様子は去年と比べてもなんら変わることも無く―――床の輝きも、そのまま。 (本当に、思い出すなあ) ▽▽▽ 一年の、まだ春先の頃。 ”今日は皆で親睦昼食会するから、道場に集まってね” 朝練の後、女子の先輩からお誘いがかかった。 対象となるのは…目下、唯一の新入部員であるあたし一人。 一人と言う事で随分ちやほやしてもらっている気はするのだけれど、やっぱり少し寂しいのが本音だった。 だからせめて、先輩たちとは仲良くしたい。あたしにとっても、こういうイベントは大歓迎だった。 それに昼食会ともなれば、お惣菜屋の娘としては、ウデの見せ所ではある。 自然と、道場に向かう足も早くなる。 「あ、キリノきたきたー」 「遅いよー」 「まぁまぁ、一年の校舎から遠いもんねここ」 入り口を開くと、3人の先輩が出迎えてくれる。 あたしも加えて、これで4人。団体戦にはまだ足りなくて、少し寂しいけども、これが剣道部女子部の全てだ。 よっこいしょ、と端に腰を降ろそうとするとお尻を叩かれ、上座に促される。 「そんな端っこじゃなくてそっちそっち。今日はあんたがメインなんだから」 そう言ったのは、ツンツン髪の太眉の先輩。 何かノリが軽くて変にあたしに構ってくれる。最初に声をかけてくれたのもこの人だった。 も~、と声を漏らして渋々気味に上座にかけると、隣に座るキツめのメガネ美人、部長が嘆息交じりに呟いた。 「いやー、でもホントにあんたが入部してくれてよかったわ」 室江高校の剣道部では、女子の団体戦の戦績は昨年を境に途絶えている。 今日では剣道部に入りたがる物好きな女子もめっきり少なくなり、 3人では幾らなんでも…という事で去年は一年間、団体戦の出場を見合わせていたのだそうだ。 本当に嬉しそうに話す部長を見て、あたしは密かに願っていた。 (いつかこの人達に、ちゃんとした団体戦させてあげたいなあ…) 多少のアテはある。……サヤを引っ張り込めれば。 それがあたしがこの学校で最初に描いた策謀の図だった。 その内心の計画にふっふっふ、と口角を緩めていると、 更に向かいのややぽっちゃり気味の先輩があたしの重箱を凝視している。 「すっごいね、そのお弁当箱…」 こちらにもまた、ふっふっふ、と余裕のある笑みを見せると、おもむろに包みの布をほどいてゆく。 ぱかっと上蓋を開くと、立ち上る薫りと共に現れる、一人ではおよそ食べ切れない程のお惣菜の数々。 息を呑む先輩たち3人を見て、あたしの中の得意気は更に図々しさを増す。 「あたしんち、お惣菜屋さんなんですよー」 中学時代からの友達と。新しく出来た友達と。そして部活仲間と。 あたしが交友を深める得意パターンの殆どがこの、お弁当爆撃にある。 そしてそんな[個性を際立たせる]自己プロデュースという意味合いでのメリットとは別な所で、 何より自分自身が皆でお弁当をつつくのが大好きだからこそこの行為はもはや日常化しているのであり、 すぐさま始まった「これ貰っていい?」「こっちと交換しよ?」という言葉のやり取りは、あたしにとって何より嬉しい物だった。 そして自分もお箸を割り、いただきまーす、とひとつ。すると遠くで、 「ぐぅううううううう~~」 という、地鳴りのような悲鳴のような断末魔のような、しかし明らかにお腹の音だとわかる轟音がひびいた。 辺りを見渡してみれば、道場の片隅、楷書で書かれた剣道訓の下に何か――――在る。いや、居る? 「あれ、先生…ですよね?」 怪訝な顔で尋ねるあたしに、さも当然という顔で次々に返答をくれる先輩たち。 「あっはっはー、あの人はねえ…お金ない時はいつもああだから」 「ここで動かずにあんな感じで、出来るだけお腹空かないように寝てるのよ」 「あたし達もお弁当残しちゃったらたまにあげてるんだけどね……あれ、キリノ?」 それだけ聞き終えると、あたしは重箱を持って立ち上がり歩きだしていた。 さすがにそれは、捨て置けない。――――惣菜屋の娘としては、沽券に関わる。 ……それに前から、気になってはいたのだ。個人的興味が少々。 (なんか、ヘンな人だ…) 当初の先生に対する印象はまさに、そんなものだったかも知れない。 剣道部に入部してまだ2週間と少しだというのに、 廊下や道場で道を譲り合って頭をぶつけたりしたのはもう二度や三度ではない。 休憩中、何の気なしに口ずさんでいた鼻歌が偶然ハモったのだって、同じくらいは。 落ちている竹刀を片付けようとして、手を出そうとした矢先に片付けられてしまった事も、たびたび。 良く分からないけど、そういうものらしい、で片付けるにはこの関係は謎が多過ぎる。そういう段階に来ていた。 ゆっくり近付くと、寝転がる背中の肩の裏辺りを人差し指でつつく。 「せんせー、一緒にごはん食べません?あたしの分けてあげますよ」 「ん?んん?キリノか…くれるの?」 「ええ、昨日のおわびに」 ――――そして昨日も、そうだった。 新入部員の少なさに加え、早くもサボり始めた男子部員の一部は決められた掃除の役割を早々とボイコットし、 その結果、この広い道場の翌日の美観は、その全てがあたしの双肩にかかる事になった。 元々そんなに掃除は嫌いな方ではなかったが……流石に広すぎる。 少しウンザリしていた所に何故かハタキを持って帰って来たのが、先生だった。 (なんで一人で掃除してんだ?) (えー、いやそのー、なんとなくっす) (ふーん。壁のホコリでも掃っとこうかと思ったんだが…手伝うか、それじゃ) (え…でも…いいんすか?) (まぁ別に、ヒマだしな) 特別キレイ好きにも見えないが、少しも苦にならなさそうに掃除をするその姿は、 短い付き合いながらも既にハッキリ見え始めていたその生活習慣のだらしなさとの間に 何か大きなギャップを感じさせ、不思議に思ったのを思い出す。 当の本人は「身についたもんだしな」と言って苦笑していたのだが、その笑顔にも… 何か惹かれるところはあったのは否定できない。 つまる所は、興味。その一点があたしに足を運ばせ、今こうしてお弁当を差し出す動機になっているんだと、そう自分に言い聞かせる。 「…あたし、お惣菜屋の娘なんすよ、ほら」 「じゃあ…いただきます」 「あ。そっちは…」 あたしのお弁当のおかずには二種類ある。 ひとつは、前の日のお店の残り物で拵えたお店の味。 もうひとつは、お店の味を目指して日々進化を続ける…と言うにはまだ遠い、あたしお手製の味。 先生が取ったのは、もちろん後者の方で…折角だから美味しい方を食べさせてあげたいと思ったあたしの思惑は、まずそこでズレた。 しかしもぐもぐとあっという間にそれを食べ尽くした先生の反応は、さらにこちらの思惑とはズレるものだった。 「…うめえなこのメンチカツ!」 お腹がペコペコという事もあったのだろうけど、そのあまりの屈託のない言葉は素直に、 (…うれしい。) と思えるものであったし、またそれ以上に何か、 友達や家族に褒められるのとは少し違った感じを含んでいるような気がした。 何かこそばゆいような、魂の奥を撫でられるような、奇妙な心地好さ。 その初めての感じに少し戸惑い、あるいは酔いしれていると… ずんずんと進められる先生の箸の動きに、 あたしのボリュームたっぷりスタミナ弁当はもう底を尽きかけている。 「あーっ、ストップ先生!あたしの分が無くなっちゃいますよう!」 「もご?」 …先輩たちの、ほら見なさい、という感じの苦笑いが遠くで聞こえた気がした。 ▽▽▽ それからあっという間に時間は流れ、そして…今。 こうして傍にいるだけで満ち足りた時間を過ごせる喜びは、何処から来ているものか。 ふと今、ぴかぴかの床を覗けば、二人で掃除したあの日が自然と思い出される。 そして…あたしのメンチカツを初めて食べてくれた日のことを。 (あの時もう、あたしの方も一緒に…) 「持ってかれちゃってたのかも知れないっすねー」 「ん?なにが?」 「何でもないっすよー」 道場の外に足音が聞こえる。もうすぐ皆の来る時間。
https://w.atwiki.jp/stria/pages/6.html
Ⅰ.インド 語源:sindhu[川]⇒ヒンドゥー(ペルシア)、インディア(ギリシャ)、身毒(中国) XX.地域の特徴 01.インド文明の形成 02.アーリア人の侵入とガンジス川流域への移動 03.都市国家の成長と新しい宗教の展開 04.バラモン教の改革運動 05.統一国家の成立 06.クシャーナ朝とサータヴァーハナ朝 07.インド古典文化の黄金期 08.南インドの王朝 Cf.用語集 XX.地域の特徴 ヒマラヤ~インド洋 沿岸部 雨季と乾季の差がはっきりした[モンスーン気候] 住民: ドラヴィダ系 B.C.3500 アーリヤ系 B.C.1500 01.インド文明の形成 インダス文明 B.C.2300年頃、ドラヴィダ系が建設したとされる 都市文明: インダス川中流域の ハラッパー インダス川下流域の モエンジョ=ダーロ (焼)煉瓦作り 沐浴場(⇒*上下水道の整備) 神殿・宮殿がない(⇒権力者・支配者がいない) 青銅器文明 インダス文字 未解読 →B.C.1800年頃から衰退 02.アーリア人の侵入とガンジス川流域への移動 B.c.1500年ごろ カイバル峠を超えて西北インドに定住 ⇒農耕・部族社会を形成 自然崇拝 『ヴェーダ』 神々への賛歌集 『リグ=ヴェーダ』 最古のヴェーダ B.c.1500年ごろ 肥沃なガンジス川流域へ移動→定住 a 『ヴァルナ ・・・B.C.10~07Cに形成された階層身分制度(種・姓) 『バラモン教 司祭者:宗教的権威→バラモン教(形式主義) 『クシャトリア 王侯・武士・富裕層 『ヴァイシャ 農・工・商人 『シュードラ 隷属民←先住民 ・・・ ---- Cf.アウトカースト →不可触賎民:Untouchables b カースト(ジャーティ) ・・・特定の職業と結びついて、ヴァルナが細分化してできた集団 ジャーティ 生まれを同じくするもの 排他的社会集団 03.都市国家の成長と新しい宗教の展開 a 都市国家の成立 B.C.6C コーサラ国 [マガタ国]が有力化 クシャトリア、ヴァイシャの台頭 ・・・新宗教の支持基盤。バラモンの権威、ヴァルナを否定する。 仏教 創始者 ガウタマ・シッダールタ 尊称 ブッダ(仏陀) =[釈尊] 心の内面から人々の悩みを解くことを重視。 輪廻転生からの解脱(げだつ)を説く。 Cf.生老病死=四苦 ジャイナ教 創始者 ヴァルダマーナ 尊称 マハーヴィーラ ="偉大な英雄" 苦行と不殺生を強調 商人に多い 04.バラモン教の改革運動 バラモンの大衆化 ウパニシャッド哲学 祭式至上主義を反省、批判 内面の思索を重視 「梵我一如」(ぼんがいちにょ)による輪廻からの解脱(げだつ) ヒンドゥー教 [シヴァ神]、[ヴィシュヌ神]が主神 05.統一国家の成立 B.C.4c アレクサンドロス大王が西北インドに進出 インダス川を転戦 ⇒各地にギリシア系政権 B.C.4c末 [マウリア朝]が興る:[インド初の統一王朝] 創始者 チャンドラグプタ王 ・・・マガタ国 ナンダ朝を倒す 首都 パータリプトラ 最盛期 アショーカ王 ・・・仏教に帰依 [ダルマ(法)]による平和的征服 ⇒各地に法勅を刻印 [第3回仏典結集] ・・・布教活動 衰退:官僚組織と軍隊の維持 ⇒財政困難 ⇒バラモン階層の反発 06.クシャーナ朝とサータヴァーハナ朝 1c [クシャーナ朝]が興る :バクトリア方面からイラン系クシャーナ族が進出 中央アジア~ガンジス川中流域を支配 首都 プルシャプラ 最盛期 カニシカ王 第4回仏典結集 中国とローマを結ぶ交通路の要衝 ⇒国際的な経済活動 大量の金貨流入 Cf.[サータヴァーハナ朝] 仏教の革新 上座部仏教 出家者の厳しい修行 ⇒自身の救済を追求する スリランカ、タイ、ミャンマーに伝わる 大乗仏教 紀元前後に成立 ⇒あらゆる人々の救済を目指す 中国、朝鮮、日本に伝わる [ナーガールジュナ](竜樹])が理論を確立する 仏像作成・・・ヘレニズム文化の影響 クシャーナ朝の保護 ⇒より広い範囲で広まる スマトラ ジャワ ボルネオは大乗仏教 07.インド古典文化の黄金期 4c [グプタ朝]が興る:北インド全域を支配 創始者 チャンドラグプタ1世 最盛期 チャンドラグプタ2世 =[超日王](中国名) ・・・中国東晋の僧=[法顕]が訪印 バラモンの復権 ⇒[サンスクリット語]の公用語化 [ヒンドゥー語が社会に定着] (ヒンドゥー教:バラモン教+民間信仰) [『マヌ法典』] (マヌ=人類の始祖) ・・・当時の社会的慣習を体系化 バラモンの特権的地位を強調 ⇒カーストを固定化 08.南インドの王朝 Cf.用語集 ←壱-Ⅵ.ローマ世界? →弐-Ⅱ.東南アジアの諸文明(弐-Ⅱ)?
https://w.atwiki.jp/junretsuwago/pages/1860.html
辞書 品詞 解説 例文 漢字 日本国語大辞典 名詞 もと、「流れの上流のほう」をいった語か。または、「ひと続きのものの初め」をさしていった語か。後には、「土地の高い所」「ある地域で中央に近い所」「人間関係における長上」の意などを示すように転じた。うえ。かん。⇔下(しも)。[一] ひと続きのものの初め。① 川の流れの初めのほう。上流。かわかみ。 ※平家(13C前)四「馬や人にせかれて、さばかり早き宇治河の水は、かみにぞ湛へたる」 上 ② 時間的に古い方。いにしえ。むかし。上代。 ※千載(1187)序「かみ正暦のころほひより、下文治の今に至るまでのやまと歌を、撰び奉るべき仰せごとなむありける」 ③ いくつかに区分されたものの初めの部分。冒頭。前の方。「上の句」「上の巻」「上の十日」など。 ※伊勢物語(10C前)九「かきつばたといふ五文字を句のかみにすゑて旅の心をよめ」 ④ 文章で前に述べた部分。 ※経済小学家政要旨(1876)〈永峰秀樹訳〉三「吾が上に揚げたる法に従ふて雇人を使はば」 ⑤ 和歌の上の句。 ※後拾遺(1086)雑・一〇一三・詞書「世の中を何にたとへむといふ古ごとをかみにおきてあまたよみ侍りけるに」 [二] 位置の高い所。① 高い所。うえ。 ※古事記(712)上「上(かみ)は高天の原を光し、下は葦原の中つ国を光す神、是に有り」 ② 身体の腰から上の部分。また、そこに着けるもの。 ※名語記(1275)五「肩より、かみ」 [三] 地位の高い人。長上。目上。おかみ。① 天皇をさしていう。 ※古事記(712)中「吾は兄なれども上(かみ)と為るべからず。是を以ちて汝命上(かみ)と為りて、天の下治らしめせ」 ② 皇后、皇族などをさしていう。 ※たまきはる(1219)「身の装束、行器(ほかゐ)などまで、みなかみより御沙汰あり」 ③ 将軍をさしていう。 ※吾妻鏡‐建暦三年(1213)四月二七日「義盛報申云、於 レ 上全不 レ 存 レ 恨、相州所為、傍若無人之間」 ④ 一般に、高位の人。上に立つ人。「なか」「しも」に対していう。 ※源氏(1001‐14頃)帚木「かみはしもにたすけられ、しもはかみになびきて事ひろきにゆづろふらん」 ⑤ 政府、官庁などに対する尊称。 ※浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)三熊野「盗賊と云かけ分明ならぬ訴訟、且は上を掠むる越度(おちど)」 ⑥ 主人。主君。 ※狂言記・角水(1660)「それにござりませう。かみへ申ませう」※浮世草子・西鶴織留(1694)六「さる御所にちかふめされし鶯の局と申せし人、〈略〉上(カミ)より御願ひ事ありて、北野の神へ御代参申されての下向に」 ⑦ 親分。 ※仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)下「此男のかみも、ゑひのすけなりけり」 ⑧ 近世以後、人妻に対する軽い敬称。また、茶屋、料理屋などの女主人。おかみさん。 ※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)一「Cami(カミ)、ヲウエ、カミサマ」 ⑨ 年上の人。また、年上であること。 ※源氏(1001‐14頃)若菜下「またちいさきななつよりかみのはみな殿上せさせたまふ」 [四] 皇居の存在する地域、地方、方角。① 都。京都。 ※浮世草子・好色一代男(1682)五「其後は上(カミ)へものぼらぬか」 ② (上方(かみがた)の略) 京阪地方。近畿地方。 ※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)三「あのをくりと申は、てんよりもふり人のしそんなれば、かみのみやこに、あひかはらず、おくのみやことかしづき申」 ③ 近畿地方の中で、大阪から京都をさしていう。 ※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「佐田の天神前にて上(カミ)から来るかごが、替ではないか、と詞かくれば」 ④ 京都の中で、内裏のある北部をいう。「上京(かみぎょう)」「上賀茂神社」など。また、京都のある基準点より以北をさしていう。 ※蜻蛉(974頃)上「おなじつごもりに、あるところに、おなじやうにて、まうでけり。ふたはさみづつ、下のに、〈略〉かみのに」 ⑤ 都から離れている地域でも、その内で都に近い所。 「上毛野(かみつけの)」「上総(かみつふさ)」 [五] 程度や等級、場所などが上位であること。① 人物や品物がすぐれていること。また、そのさま。 ※浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)五「此鑓が直打物(ねうちもの)。何(なん)と上(かミ)でござりませうが」 ② 等級などが上位であること。 ※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉九「お職から上等(カミ)八枚中等(なか)九名が残らず呼出し」 ③ 上位の座席。上座(かみざ)。 ※栄花(1028‐92頃)若ばえ「母屋は南をかみにし、廂は西をかみにしたり」 ④ (台所、勝手などを下(しも)というのに対して) 客間、座敷、客席などの称。 ※浮世草子・好色一代男(1682)六「上(カミ)する女に、心をあはせ、小座敷に入て語りぬ」 [六] (歌舞伎、演劇などで) 「かみて(上手)」の略。→かみのかた(方) 広辞苑 名詞 ➊「うえ」が本来は表面を意味するのに対して、一続きのものの始原を指す語。↔しも。①(空間的に)高い所。㋐うえ。 伊勢物語「この山の―にありといふ布引の滝、見に上らん」 上 ㋑川の上流。川上。 万葉集1「―つ瀬に鵜川を立ち下つ瀬に 小網 (さで)さし渡す」 ㋒身体または衣服の、腰または一定の位置より上の部分。 「―半身」 ㋓(台所・勝手などに対して)座敷。 好色一代女2「―する男、お床は二階へと呼び立つれば」 ②(時間的にまたは順序で)初めの方。㋐昔。古 (いにしえ)。 千載和歌集序「―正暦のころほひより、下文治の今に至るまで」 ㋑月の上旬。 「―の十日」 ㋒ある期間をいくつかに分けた最初の方。 「―半期」 ㋓和歌の初めの方。主にその前半三句。上の句。本 (もと)。 後拾遺和歌集雑「世の中を何にたとへむといふふるごとを―に置きて」 ➋身分・地位などが高いこと。また、そのような人。①天皇の尊称。おかみ。 「―御一人」 ②身分の高い人。 源氏物語帚木「―は下に助けられ、下は―になびきて」 ③年上。年長者。 源氏物語若菜下「七つより―のは、皆殿上せさせ給ふ」 ④(多く「お」を冠して)政府。朝廷。 ⑤主君。主人。かしら。長。 ⑥人の妻の敬称。 「お―さん」 ⑦ 上座 (かみざ)の略。 ⑧皇居に近い方。㋐京都の町で、北の方。 「―京」 ㋑上方 (かみがた)の略。京都・大坂地方。 大言海 名詞 (一){高キ處。ウヘ( 中 (ナカ)、 下 (シモ)ニ對ス) 宇津保物語、樓上、上 六十五 「かみハ空ヲ響カシ、しもハ地ノ底ヲ搖ガス」 上 (二){高ク貴キコト。長 (ヲサ)。カシラ。 源、二、帚木 九 「かみハ下ニ助ケラレ、下ハかみニ靡キテ」「上ノ好ム所、下コレニ傚フ」 (三){初 (ハジメ)。 宇津保物語、俊蔭 八 「木、云云、三分ニワカチテ、かみノ品ハ、云云、中ノ品ハ、云云、しもノ品ハ、云云」(上ノ卷) (四){天子ノ尊稱。ウヘ。 古事記、中(神武) 十四 「 汝命爲 (ナガミコトマシテ) レ 上 (カミト)、 治 (シロシメセ) 二 天下 一 」(綏靖天皇) (五) 官 (オホヤケ)、主人、 尊長 (メウヘ)、 夫人 (オクガタ)ナドノ尊稱。 吾妻鏡、二十一、建曆三年四月廿七日「和田義盛、 日來 (ヒゴロ)有 二 謀叛之疑 一 、云云、義盛報申云、 於 (オイテハ) レ 上 (カミニ)(將軍)全不 レ 存 レ 恨、相州(北條義時)所爲、傍若無人之閒、云云」 (六)皇居ニ近キ方。上 (カミ) 方 (テ)。 「 上京 (カミギヤウ)、 下京 (シモギヤウ)」 (七){年上 (トシウヘ)。年長 源、三十四、若菜、下 廿四 「七ツヨリかみノハ、皆、殿上セサセタマフ」「子ノかみ」(長子) (八){ミナモト。ミナカミ。源 伊勢物語、八十七段「瀧ノかみニ、 圓座 (ワラフダ)ノ大キサシテ、サシ出シタル石アリ」「川ノ上」 (九) 往 (イ)ニシ時。イニシヘ。往時 千載集、序「かみ正曆ノ頃ホヒヨリ、しも文治ノ今ニ至ルマデ」「 上 (カミ)ツ世」 (十)上方 (カミガタ)ノ略。上國 浮世風呂(文化、三馬)二編、上「かみデ云フ、コロ煎リ」「かみヘノボル」 検索用附箋:名詞名称 附箋:名称 名詞