約 48,545 件
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/351.html
Birth death ◆Ua.aJsXq1I 本当に気楽でいいな、圭一君は…… 私は、あの2人(?)が怪しげな事をしていないかどうか警戒しているのに、圭一君はお構いなしにどんどん歩いて行く。 今までこういったことをしなかった分、余計に疲れを感じた。 しかし、ここでめげるわけにはいかない。圭一君の命もかかっている。 レナは、すっと心臓に左手をあてる。 大丈夫、落ち着いてる。呼吸も正常、精神も安定してる。 クールに、クールになれレナ。本当の敵は一体どこにいるんだ? 彼らが人間じゃないってのは確かであった(故に必要以上に警戒しているのだが) さらにいうならば、その実力に関してはどちらとも不明である。 しかし、ソロモンにおいては確実に強力な力を持っているはず…… それこそ私達が四人がかりで襲っても勝てるかどうか、というレベル。 しかし彼だけなのだろうか? 否、他に強力な力を持っている奴はいるはずだ。 頭がよさそうなソロモンの事だ、きっと同じ事を考えてるに違いない。 じゃあそういった敵に出会った時、ソロモンならどうする? 私達と一緒に戦う? 多分そうだろう……小夜って人の危険が追い払われるのだから…… しかし考えろレナ、私や圭一君(次元さんはわからないが)のようなただの一般人は、むしろ足を引っ張ってしまう。 もし自分が生き残る可能性を1%でも増やそうとしたらどうする? 仮に騙して殺すより、生かして自分の盾にする方がよいのでは? ……痒い、なんでこんなに痒いのだろう 蚊にでも刺されたのか? いやそれでもこの痒みはおかしい……首周り全体が痒い…… 耐えろレナ、落ち着けレナ、どうやったら自分の盾に出来る? 私だったらどうする? 「大丈夫ですか?」 私はいきなりの言葉に驚き、体が止まった。 気付くと目の前にはソロモンが立っていて、後ろの方では圭一君も心配そうに見ている。 どうやら次元さんが、私の様子を見てソロモンに言ったのだろう。 実際首周りが痒いのだが、平気な振りを装った。 「え? あ、はい大丈夫ですよ」 ―洗脳― その間にも私の頭の中に浮かんできた言葉。 そうだ、私達を操り人形にすればいいのではないか? それならば弾除けぐらいにはなるだろう、という考えか? そして確かに実行しそうである。 と、私の目は大きく見開いた。 ソロモンが、胸ポケットから何かを取り出そうとした。 私は反射的に、これまでにない早さで後ろに下がる。 「大丈夫ですよ、僕はこう見えても医者なんですよ」 私の警戒心を解くつもりなのか少しだけ笑みを含めた。 正直その笑みの裏側で悪どい事を考えてそうだが…………待て、今なんて言った? 医者? 私は一瞬監督の顔を思い出したが、振り払った。 医者――という事はもちろん薬とかに詳しいはず。 薬――を注入する為にはもちろん注射器が必要になる。 「症状を聞くだけですよ、心配しないでください」 そして胸ポケットから取り出した物が見えた。 それは――紛れもない注射器であった。 「来るなぁ!!」 私は声を荒げてソロモンに制止をかけ、鉈を強く握った。 その様子に、少なからず全員が驚いている。 落ち着け、相手も手荒な真似は出来ないはず…… やはり敵は私の目の前にいた。 しかし、尻尾をつかんだというのに、相手に逃げ道を作ってしまった。 医者だから――注射器を仮に持っていたとしてもなんら怪しまれない、というわけか。 ならば医者という発言が嘘なのか……? ならばこの痒みもソロモンの仕業? いや過ぎた事を考えても何も変わらない。 問題はこの後、だ。 様子見なのか、相手はこちらとの間合いを詰めてくる様子はない。 それはつまり実力行使に移る気はあまりない、と捉えてもよいだろう。 下手に手を出したら、圭一君や次元さんが黙っていないはず。 私はとりあえずある事を聞きたかった。 「その注射器で何をする気なのですか?」 「注射……ですか?」 ソロモンが答えるのに少し時間がかかった。まるで何を言っているんだ?という感じで…… 私はソロモンの右手の方を指した。そりゃあ「あなたを洗脳するためです」とか言うはずがない。 しかし、圭一君や次元さん、蒼星石にはソロモンの背中しか見えないはず。 ここで注射器の存在を知らせるのは、悪い方向ではないと思った。 すると予想通り、圭一君がソロモンさんの隣に並んだ。蒼星石も一緒だった。 何やら小声で話している。2人とも注射器の方を見ているので、きっと内容はソレだ。 何を話しているのかはわからない。しかし、ここで襲ってしまっては何より圭一君を裏切ってしまう。 圭一君……圭一君は私の味方だよね? 「圭一君……」 私は圭一君に助けを求めた。 可能ならば圭一君とこの場から去りたかった。 説明は後ですればよい。圭一君だけは私の方に来て欲しかった。 何となく壁が出来ていると感じ、とにかく私は圭一君にこっち側に来てほしかった。 しかし、 「レナ……少し休まないか? 寝たらきっと治るからさ」 私は一瞬頭の中が真っ白になる。 え? え? 何を言ってるのかな圭一君? 何で休まなければならないの? 寝ちゃったら最期、ソロモンの言いなりになっちゃうよ? 治るって何? この痒み? ソロモンは何を圭一君に言ったの? 「圭一君……? 私の事を信じてくれないの?」 嘘だよね? 圭一君はずっと仲間なんだよね? 裏切ったりなんかしないよね? いつの間にか次元さんも近くにいた。 レナの頭の中に最悪な状況が入り込んでくる。 「いや……そういうわけじゃないんだけど……とりあえずソロモンさんの言うこと聞こうぜ……?」 言葉が出なかった。私は圭一君がとても憎い存在に感じた。 何でソロモンの肩を持つんだ……新しい仲間の方が大事って事かな、かな? 違う! 圭一君はそんな人じゃない! じゃあ何で!? レナにとっての最悪な状況、それは…… ―圭一君や次元さんがもう洗脳されている― 何かが切れた感じがした。 私は洗脳されない、洗脳されるならここで死んだ方がマシだ!! 間合いを詰めながら鉈を振り上げる。 それに感付いたソロモンは圭一君を、次元さんは蒼星石を抱えて距離をとった。 「レナさんは幻覚症状にかかってると思われます」 ソロモンは、レナに聞こえないぐらいの声で言った。 圭一と、それについてきた蒼星石は驚く他なかった。 ソロモンは続ける。 「このシャーペンを注射器と間違えています」 と、言いながらソロモンは手に持っているシャーペンに視線を向けた。 2人も視線をそっちに向ける。 「原因は不明ですが、おそらく極度の疑心暗鬼やストレスからだと思われます。 しかし、なぜこれだけを注射器と見間違えるのはわかりません……」 「その……治る方法はあるのですか?」 「治療薬がない今はとりあえず体を休めるのが第一条件です。 しかし、私の言う事は聞いてくれない様子なので、圭一君から伝えてくれませんか?」 ソロモンの提案に黙って頷く圭一。 しかし、彼の頭の中ではなにか引っ掛かる点があった。 それは彼自身がこのような状況に陥った……気がするのであった。 「圭一君……」 と、いきなりレナが優しい声をかけきた。 確かに、今までずっと仲間だった圭一になら耳を傾けてくれるかもしれない。 そういう思惑があった。 圭一も同じように出来る限り優しい声を出した。 「レナ……少し休まないか? 寝たらきっと治るからさ」 レナは圭一の言葉を聞いた瞬間、キョトンとした目になった。 まるで自分にとって予想外の出来事にあったかのように…… 「圭一君……? 私の言うことが信じられないの?」 圭一自身『幻覚』という言葉は使わなかった。 使ったら余計な誤解を招く物だと思っていた。 ここで圭一やソロモンらの勘違いが一つだけあった。 レナの幻覚症状のきっかけはソロモンや蒼星石と出会った時、『力』を持った存在との行動。 そして、その症状は他ならぬ極度の疑心暗鬼から起こったのであった。 「いや……そういうわけじゃないんだけど……とりあえずソロモンさんの言うこと聞こうぜ……?」 ここでソロモンの名ではなく、圭一自身の名前を取ればまた話は違ったかもしれない。 その言葉を聞いた途端、レナの目が変わった。 今まで見たことがない鋭い目つき、一言で表すならばそれは狂気。 レナは一気に間合いを詰めてきて、鉈を振り上げた。 それに反応するかのようにソロモン達は後ろに下がり、鉈は地面に食い込んだ。 追撃は――こなかった。 思いとどまったのか、ソロモンがレイピアを構えたからなのかはわからなかった。 とりあえずこの緊迫した状況下でも圭一はソロモンに事情を聞こうとする。 「ソロモンさん!」 「まずいな……」 見てわかる。レナは狂ってしまったのかもしれなかった。 「おいおい、どうするんだ?」 次元は腰の銃に手を当てる。 蒼星石もナイフを構えだす。 「彼女の目でわかりますが、非常に危ないです。ここで被害を止める為死んでもらうしか……」 対するレナはいつソロモン達を襲ってもおかしくない状況であった。 しかし、圭一だけが、圭一だけがなんとなくわかっていた。 疑心暗鬼からの幻覚症状、もちろん圭一自身レナみたいな状況になった事は一度もない。 しかし、なぜか記憶にある自分……それは今のレナと変わりがなかった。 圭一にとってレナは大切な、むしろ一番大切といってもいいほどの仲間である。 そんな人を殺せるのか? 圭一は周りを見る。みな臨戦態勢であり、自分だけが呆然と立ち尽くしていた。 違う違う違う違う!! このいかれたゲームで最初に出会えた仲間じゃないか! それだけでも奇跡なのに皆まだ生きてる――奇跡は起こり続けているんだ!! それなのにその奇跡を潰していいのか!? レナはちょっとした病気にかかっただけだろう!? 圭一は自分に何度も言い聞かせる。 ここでレナを殺してしまったら、俺は一生後悔するに違いない、と。 圭一は決心するかのように、目をつぶりながら大きく深呼吸をとった。 「ソロモンさん、次元さん、蒼星石……ここは俺に任せて下さい」 レナには聞こえないが、3人にははっきりと聞こえた。が、誰もが耳を疑った。 既にレナの精神がおかしいのは見ての通り、脱出派としてはここで被害を最小限に抑えるのが最善策。 それなのに1人に任せるなど言語道断、蒼星石はそれを口に出す。 「圭一くんだけに任せるわけにはいかない。ここで止めるのが道――」 「じゃあ聞くが蒼星石の友達が狂ってたとしてもだ。目の前で殺されるのは許される事なのか?」 蒼星石は圭一の反論に対抗できず、黙った。 確かに自分の姉、翠星石が仮にこのゲームに乗ってたとしても目の前で殺されるのは見てられない。 それは他の2人にも言えた事でもあった。 「それに……」 圭一が続ける。 「レナを救ってやりますから。そんで、きっとそれは俺にしか出来ない事です……その間にレナも信頼してくれる仲間、見つけて下さい」 笑っていた。こんな状況下で、仲間の1人がおかしくなったのに…… もちろん圭一は信じている、レナが元に戻ってくれるのを、だから笑える。 信じる事が奇跡の連鎖を続けるのだから…… ソロモンは圭一を見る、圭一もまたソロモンを見る。 言葉は発せられない、目で訴えているからであった。 「わかりました。ここは任せましたよ圭一君」 ソロモンは圭一の決意の強さに折れたのか、クルッと反転してやや小走りでこの場を去っていった。 蒼星石も反論せず、黙ってソロモンに従った。 次元は考え事をしながらも、圭一の事を時々見ながらソロモンの後についていった。 レナがこの間何のアクションも起こさなかったのには理由があった。 それはレナが異様なまでに冷静であったからだ。 レナはここで死ぬ気であった。 しかし、普通に戦って4対1――しかも1人は銃を持っている。 とてもじゃないが1発で終わるかもしれない状況であった。 ゆえに自分の不甲斐なさに憤りを感じた。 ずっと信頼してた圭一君に裏切られた。 それだけ……だがそれがレナにとって最も重要な事であり、熱くなってしまった理由…… だから圭一だけが残って他の人が去っていったのは正直嬉しいと感じた。 微かにだがレナはソロモン達が喋った事が聞こえた。 「……りま……。……任せ……」 ソロモン達は圭一に任せた、と捉えていいのだろう。 理由は考えなかった。むしろレナにとっては、今ここで圭一との戦いに集中したかった。 ここで圭一を殺せば、レナの命はまだ延びる。彼らを殺すチャンスが手に入るという事であった。 「ソロモンさんに洗脳されたかわいそうな圭一君……せめて私の手で殺してあげる」 「洗脳? 何言ってるんだお前、馬鹿じゃねーのか?」 あざ笑う圭一、レナは目を細めて何も喋らなかったが、内心相当怒っていると目に見えてわかった。 レナはもう躊躇わなかった。この圭一君は今までの圭一君ではない。 洗脳されてしまった、と言い聞かせて鉈の射程範囲内にまで距離を縮めて右からの薙ぎ払い。 圭一は防ぐかのように、ナイフを壁代わりにつかった。 甲高い金属音と共に発生された火花、レナはこの時少しだけ……興奮した。 「ちょい落ち着こうぜレナ、このまま俺の楽勝勝ちってのはやっぱりつまんないだろ?」 ギガゾンビ……てめーには悪いが、この前原圭一様を動かすには悪魔の脚本程度じゃ無理だって事だな!! 閻魔の大王様の脚本なら動くかもしれねえなぁ! もちろん、このイカれたゲームから脱出する役をなぁ!! レナは俺とは違ってとても強い。その証拠に最後まで俺に話しかけたじゃねえか!! きっと……今だって心のどこかで……俺の事を信じてる部分があるはずだろ!? だから俺は死なねえ! レナも魅音も沙都子も梨花ちゃんも皆死なせねえ!! 俺は絶対に諦めねえ!! こんな迷路壁ごとぶっ壊してやるぜ!! 「ソロモンさんに洗脳されたかわいそうな圭一君……せめて私の手で殺してあげる」 レナ……お前は悪い病気にかかってるだけなんだよな。 どうやれば治るかはわからない。だけど俺は信じる。信じて信じて信じて! いつも通りいってやろうじゃないか圭一!! 殺し合う運命なんてぶち壊してやる!! 「洗脳? 何言ってるんだお前、馬鹿じゃねーのか?」 あざ笑ってやった。そりゃあもう自分でもむかつくぐらいに、な。 レナが腹立ていると目に見えてわかる……といきなり俺の方へと突っ込んできた。 ヘヘッ、そうこなくっちゃな!! 俺は避けるという概念を今だけ捨てた。 ここは開戦の合図、それを受け入れなきゃいけないだろ!? ナイフを迫りくる鉈と自分の間に入れ込む。 否応なしに響く甲高い金属音、僅かに発生した火花に俺は、少し興奮した。 だけどこのまま興奮したまんまじゃだめだ。 命をかけた戦いでも俺達は楽しんでいこうじゃねえか!! 「ちょい落ち着こうぜレナ、このまま俺の楽勝勝ちってのはやっぱりつまんないだろ?」 落ち着けの部分は、自分にも言い聞かせた。 その間も金属と金属が擦れ合う、力はほとんど互角、どちらも引く気配がなかった。 「何を言っているのかわからないかな、かな。圭一君は私に勝てると思ってるの?」 「あぁ! 勝つ気満々負ける気無し、だな!! どうだ、ここはいっちょ部活らしくやっていこうじゃねえか!?」 「アハハハハハ、いいかな、かなぁ!!それって勝った方が」 言葉を止め、鉈への力をさらに強くしてきた。 いきなりの出来事であったので俺はたまらず、後ろに下がった。 「正義って事だね!!」 おいおい、女に力負けしてどーする前原圭一! 俺は負けじとレナの方へと突っ込み攻撃に移り変わる。 「レナが勝ったら認めてやろうじゃねえか! むしろお前の言いなりになってレナの手となり足となり……なんだったら盾にでもなってやろうじゃねえか!!」 「へー、じゃあ今動かない盾になってくれるかな! かなぁ!?」 レナの鉈を動かすスピードが早くなった。 しかし、力に関しては鉈の方が上であるが、小回りに関してナイフの方が上である。 むしろレナのスピードが速まる事で、1発1発の力は軽減され丁度よかった。 上! 右! 左! 斜め! いろんな方向から鉈が俺の体めがけて襲い掛かってくるが、全部ナイフで上手く受け止めた。 「圭一君防戦一方だよ? もっと頑張って欲しいな!!」 「バーカ、ハンデを与えてるんだよ! すぐ勝ってもつまらないじゃねえかよ!! てか俺が勝った時の褒美を言い忘れてたなぁ……そうだな、俺の義理の妹になって毎日『お兄ちゃん』って愛情込めて言ってもらおうか!? 服は日替わり定食、制服、メイド、コスプレその他諸々ぉ! もちろんネコ耳、眼鏡などのトッピングもつけさしてもらうぜええええ!!」 「なぁ?」 「いいかな?」 「ちょっといいですか?」 3人がほとんど同時に喋り、立ち止まった。 少し気まずい雰囲気が出たが、ソロモンが次元の話を進めようとした。 「なんですか?」 「……悪いが、俺はあそこに戻らしてもらうわ」 蒼星石が「え?」と口からこぼしてしまった。それだけ驚きな事であった。 一方のソロモンは察していたのか、それといった動揺は見られなかった。 次元は帽子をさらに深く被り、もう一度「悪い」とだけ言った。 「あなたが行ってどうするのですか?」 「あいつらは……特に圭一はこんな所で死んではいけない奴だと思うんでな。なぁに、危なくなったら助けてやる程度さ」 目はわからなかったが、口調は少し笑みを含んでいた。「これぐらいいつもの事だよ」、みたいな意味が含まれていたかもしれない。 ソロモンは次元や蒼星石に聞こえない声で「任せます……」と言った。 怒る気配は全くなく、むしろそれを受け入れる準備があったかのように、 「6時の放送にC-5で落ち合いましょう。禁止区域になってしまったらB-5、B-6、C-6と最初の方が優先ですので忘れないでください」 と、言った。 それが合図だった。次元はそれを聞くと「サンキュ」とだけ言い、さっき来た道を再び戻っていった。 取り残されるソロモンと蒼星石、蒼星石は次元が見えなくなった途端、ため息を吐いた。 「あなたはどうしたのですか?」 「ん……僕もちょっと心配になってね」 「僕もですよ」 少しだけ上を向いて、少しだけ笑った。 皆同じ思いであったのだ。なんだかんだいって圭一とレナが心配なのであった。 蒼星石は黙ってソロモンを見る。 「だから、次元さんに任せたんですよ。思えば僕達があんな事をしなかったら、もしかしたらここを笑って通っていたのかもしません」 蒼星石は初めてレナと圭一に会った時の事を思い出す。 確かにあの時ソロモンと蒼星石の行為で少なからずレナに疑心暗鬼を抱かせたに違いない。 それが直接の原因かもしれないし、追い討ちをかけたのかもしれない。 「ならば僕達は行かない方がいいでしょう……少なからず僕の事は相当嫌ってますからね……」 やれやれといった感じの苦笑いをとった。蒼星石も「そうかもね……」と呟いた。 「なぁに、彼らならきっとうまくいくでしょう。信じてやりましょう。 僕達は僕達でレナさんでも信頼できるような仲間を探しましょう。彼らと再会したとき文句を言われない為にも」 蒼星石はちょっとだけ吹いてしまった。「レナさんでも」というのがちょっと面白かったからだ。 蒼星石は姉、翠星石の事を思う。 ソロモンもまた、音無小夜の事を思う。 あのレナの姿を見た今、彼らは一刻も早く見つけなければ、と思うのであった。 【B-2とB-3の境界線辺り・一日目 昼】 【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】 [状態] 若干興奮、半覚醒(レナと似たような状況に圭一は陥った自分があるのでは? と思っている) [装備] コンバットナイフ [道具] 支給品一式(水食料一食分消費) [思考・状況] 1:レナを救い出す。今はそれしか考えていない。 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】 [状態] 祟りへの恐怖、雛見沢症候群発症、若干興奮 [装備] 鉈@ひぐらしのなく頃に [道具] 支給品一式(水食料一食分消費) [思考・状況] 1:今は圭一との戦いにだけ集中している。 【次元大介@ルパン三世】 [状態]:健康、圭一達がいる場所に急行中 [装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@HELLSING ズボンとシャツの間に挟んであります [道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、13mm爆裂鉄鋼弾(35発) [思考・状況] 1:早く圭一達がいるところに辿り着く 2:圭一が殺されそうになったとき、助ける。 3:ルパンを探す 4:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す 5:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する 基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない。 【ソロモン・ゴールドスミス@BLOOD+】 [状態]:健康、僅かながらの焦り [装備]:レイピア [道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、白衣、ハリセン、望遠鏡、ボロボロの拡声器(運用に問題なし) [思考・状況] 1:音無小夜と合流し、護る 2:他4人の知り合いを探す 3:圭一達が生き残ってくれると信じる 基本:次の次(夕方)の放送でC-5(禁止になったら次に該当する場所)に行くようにする。それまでは探索 【蒼星石@ローゼンメイデンシリーズ】 [状態]:健康、少しだけ焦りと心配 [装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱 [道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、リボン、ナイフを背負う紐、双眼鏡(蒼星石用) [思考・状況] 1:翠星石と合流し、護る 2:他4人の知り合いを探す 3:圭一達が生き残ってくれると信じる 基本:次の次(夕方)の放送でC-5(禁止になったら次に該当する場所)に行くようにする。それまでは探索 時系列順で読む Back 一人は何だか寂しいね、だから Next 正義の味方Ⅱ 投下順で読む Back 一人は何だか寂しいね、だから Next 正義の味方Ⅱ 124 Lie!Lie!Lie! 前原圭一 161 「あはははは!」 124 Lie!Lie!Lie! 竜宮レナ 161 「あはははは!」 124 Lie!Lie!Lie! 次元大介 161 「あはははは!」 124 Lie!Lie!Lie! ソロモン・ゴールドスミス 161 「あはははは!」 124 Lie!Lie!Lie! 蒼星石 161 「あはははは!」
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/225.html
蛇足~はみ出しモノ~ 第5話 「ほらタチヤ、ここからでも見えるわよ。もう少しで着くわ」 「レナさん、タチヤはには聞こえてませんわよ」 目的の街が、うっすらと黙視できるようになってきた。レナは先ほどからずっと ぐったりとしているタチヤにそれを知らせようとする。目に見えて疲労が溜まっ ている様子だったのでこうして抱えてやってるのだが、いまさらになってそれが 逆効果だったのではと思い始めてきた。 いや、最初からこうなるであろう事は予想していたが、ゆっくりペースがじれっ たくて達哉を担ぐ事にしたんだった。達哉の呼吸のリズムや心音からして、そこ まで深刻な状況ではない事が、レナには感じ取る事が出来たのだし、結果オーラ イと言うヤツだろう。 クユラもレナの後ろから、苦しむ達哉を眺めて相変わらずの笑顔を浮かべている。 ガルナはそろそろレナのペースに着いてこれなくなって肩で息をしていた。まあ もう少しで目的地に着くのだし、配慮をする必要性はあまり感じられない。 「か、がろうじで……聞゙ごえで、いまずお……ゔぅ…」 「そのまま吐いたりしたら、明日の日の出は見れないと思いなさい」 口元を押さえてる所為でくぐもった声だが、達哉から返事が返ってきた。限界の 近い事が読み取れるが、適当に脅しを入れておけば達哉の性格からして、まさか 本当に吐く事はないだろう。やはりヒトと言うだけあって、精神力だけは並み以 上にある。命が掛かれば失敗はしないだろう。 その証拠に、肩に感じる達哉の体が一気に固くなったように思えた。吐かないよ うに力んでいる事は間違い無い。 「タチヤが辛そうだし、残りは少し本気で走るわね。 私たちだけ先に行くから、クユラとガルナは後から着いてきて。 タチヤ、多分5分くらいで着くから、しばらく揺れるけど我慢しなさい」 レナはそう言うとすぐ、達哉の返事も待たずに地面を蹴って駆け出した。これま での道のりが序章としか思えないような加速。スペースシャトルで地球を飛び出 すときには体に物凄い力がかかるそうだが、そう形容して良いのかどうか、達哉 にはそんなモノに乗った経験はないが、なんとなくそういう感覚を連想させるよ うな状況だ。 意識が飛びそうになったり、朝食べたスープを戻しそうになったりするのを必死 に耐えつつ、最後にもう一度クユラとガルナに目を向ける。化粧を直しいたとこ ろで達哉の視線に気付き、慌てていつもの笑顔を作るクユラ。そして、もはやカ ワイソウなほどに荒い息をしながら、必死にクユラのスクーター(?)のような 乗り物に着いていくガルナ。なんというか、鬼マネージャーとヘタレ部員という 言い方がしっくりくる光景だ。まあ、クユラの実年齢を考えると、鬼畜顧問とヘ タレ部員と言うのが合ってるのかも知れないが。 そんなしょうもない事を考えている間に、どんどんと2人の姿は小さくなってて いき、最後には完全に見えなくなった。 「もう少しの辛抱よ。 これでもお前に負担を掛け過ぎないよう抑えてるから我慢なさい」 「そ……な…ッ…ぁッ…!!!」 達哉もレナの言葉に返そうとは思ったのだが、舌を噛みそうなので諦めて口をつ ぐんだ。やはりヒトの能力の限界と言うのはわきまえておいた方が良いに決まっ ている。身体能力の違いは嫌と言うほど見せ付けられたし、意地を張るような真 似をするつもりはない。どうやったってスライムが勇者に勝てないのと同じだ。 元から勝てる様には出来ていないのだから。 (でもいつか絶対に仕返ししてやる……) 無理だと分かってても、そう思わなければやっていけない。 × × × × ミリアルドはオルスのいなくなった喫茶店で不貞腐れていた。レナたちは一応 見える範囲にいたものの、もう少し時間が掛かりそうだったので戻ってきたの だが、戻ったら戻ったで誰もいない。もう一度レナたちの方を見に行けば、知 らない奴が一人混じっていて、どうにも自分が飛び込んで行けるような雰囲気 では無かった。しかも、そいつがみんなと楽しそうにしてたのが余計に腹を立 たせる。 「うぅ……オルスどこ行ったんだよぉ……。 俺が頼んだメニューも注文してないし……グス…ッ。 だいたい、レナ姉たちと一緒にいたヤツ誰だよ。 馴れ馴れしくししてバッカみてぇ。」 レナに担がれていた男を思い出して、落ち込んでいた気分が更にどん底へと下 がっていくのを感じる。せっかく見付けた自分の居場所だと言うのに、もう誰 かに奪われてしまうのではと思うと、不安に押し潰されそうだ。 頭からそんな考えを振り払おうとしても、中々思うようにいかない。そもそも なんであんなのがレナたちと行動を共にしていたのか分からない。だからこそ 余計にムカツク。あんなのより、自分の方が絶対に凄い筈だと言い聞かせる。 そんな事を繰り返していると不意に、知っている名前が、誰かの言葉の中に聞 こえた。 “レナさん、次は事前に酔い止めでも買っておきますから・・・。 今回のは、もうホント勘弁してください。体中が痛いですよもう……” 情けない男の声、しかしその言葉の中には、間違いなく『レナ』と言う名前が 入っていた。今ミリアルドが待ち望んでいる人物の名前に、ハッと顔を上げる。 そこにいたのは、自分が知っている通りのレナと、あと一人知らない誰か。 「ええ、なるべく今回限りにしたいわね。 お前にもう少し体力が有ればの話しだけど。 それより、ここが待ち合わせの場所よ。 ほら、そこで泣いてるのがミリアルド。タチヤの先輩ね」 ぼんやりと見ていたのだが、レナが自分を指差した事でミリアルドはビクンと反 応した。『そこで泣いてるの』などと説明されて、顔から火が出る思いに駆られ る。目をゴシゴシと擦り、連れの男を精一杯の威圧的な瞳で見た。 「アハハ、ホント可愛いですね。聞いてた通りの子だ。 確か愛称はミリーだったよね。僕は達哉。 これから“蛇足”の医者として仲間になるからさ、宜しく」 そう言って達哉はミリアルドに手を差し出す。ミリアルドはまだ喫茶店の椅子に 座ったままポカンと達哉を見詰めていた。しかし、少し間を置いて、ミリアルド の中に沸々と怒りが沸き起こる。コイツの所為でレナたちのところへ行けなかっ たし、戻ってきたらオルスもいない。 コイツが来なけりゃ、レナたちと合流して楽しく話しながら街まで来れたのに。 「ミリーとか言うな!だいたいお前ヒトじゃんか! 奴隷のクセに俺と対等ぶるなよな! お前が一緒にいる所為で俺だって待たされたんだよ!! 弱っちいクセに俺を子ども扱いしてんじゃねぇよ!」 達哉の差し出した手を跳ね除けて、ミリアルドは怒声を発する。目の前の男が自 分子どもとして扱ってるのが悔しくて堪らなかった。しかも相手はヒトだ。世界 で一番弱くて、なんにも出来ない奴隷だ。そんなヤツ子ども扱いされる謂れはミ リアルドにはない。 そう考えると余計に腹が立って仕方が無い。どうしようもなくムカツク。しかも いつも自分が嫌がっている、“ミリー”と言う愛称で呼んでくるなんて、馴れ馴 れしいヤツは好きじゃない。そんな女性名で呼ばれるのを嫌ってるって、レナた ちはこいつに話してなかったんだろうか。 とにかく沸き起こる怒りを隠しもせず、思いっきり険悪な表情で達哉を睨み付け た。しかし、あろう事か達哉はそのミリアルドの表情を見て、プッと吹き出す。 「な、何がオカシイんだよ!俺は本気でお前なんか大ッキライだ!!」 その達哉の反応に、当然ながらミリアルドは激しく激昂する。拳を握って振り回 しながら、駄々をこねる子どものような態度で達哉に突っ掛かる。達哉はそのミ リアルドの逆鱗に触れてしまった事に苦笑しつつ、一歩退いて言った。 「君さ、目が赤いよ。さっきまで泣いてたんだろ? それに目の周りの羽毛が不自然に濡れた跡があるし」 「――ッ!!!」 さっき咄嗟に目の周りを擦ったが、それだけでは涙が拭き取れなかったらしい。 ミリアルドは慌ててもう一度目の周りを両手で擦る。初めて会う奴に泣いてた のがバレて、それを笑われてしまうとは思わなかった。 そんなミリアルドの慌てふためく姿を見て、今度は2人のやりとりを傍観して いたレナが楽しそうに笑った。 「フフフ、相変わらずねミリアルドは。 オルスに置いてきぼりにでもされて泣いてたんだろうけど、 新入りの前でそんな様子じゃ、流石に情けないわよ」 「うううううるさぁ~い!!俺は絶対に泣いてなんかない!! あ、タチヤも笑うな!!新入りだったら先輩に気を遣えよ!」 大声を出してレナに反論しいたミリアルドだが、不意にその矛先が達哉へと向か った。何処の世界でも生意気な子どもはいるものだ、と笑みを浮かべながら見て いた達哉だが、いきなり名指しで呼ばれてビックリしてしまう。 ヒトと言う事でミリアルドは自分を見下している思っていたが、さり気無く達哉 を新入りと認めてまでいる。その事実に驚いてしまった。目を丸くしてミリアル ドを見ていると、その視線に気付いたミリアルドがまた睨み付けてきた。 「なんだよ」 「あ、ごめん。君ってヒトが嫌いそうだったから、 名前を呼んでくれた上に新入りと認めてくれたのに、ちょっと驚いてた」 「~~~ッ!! ・・・・別に、お前を仲間って認めてやったワケじゃないからな」 ミリアルドは、顔を赤くしつつそっぽを向いてそう言った。あまりの分かり易い 反応に、達哉はまた苦笑した。ツンデレってこういうのを言うのだろうなと、も う2度と見る機会のないであろう、元の世界のアニメやらマンガやらを思い浮か べた。毎週見ていた番組が今頃は最終回しているのだろうと思うと、少し切なく なってしまう。 その表情が何か癇に障ったらしく、ミリアルドはまた怒り出して、達哉をがなり たてる。 「さ、自己紹介は終わったわ。次はオルスを捜しに行くわよ。 勝手に待ち合わせの場所から移動するなんて、良い度胸してるわね」 しばらくは傍観していたレナだが、ミリアルドの服を掴んで達哉から引き離すと、 2人を交互に見てそう言った。ミリアルドはレナを相手にする気は流石にないよ うで、渋々ながら引き下がる。達哉の方は、一方的に絡まれていた側なので、今 回はレナが有り難いと思った。 「ミリアルド、オルスは何処へ行ったか分かる?」 「分かってたらここで不貞腐れてねぇよ」 レナの問いに、ミリアルドはムスッとした表情で答えた。確かに、分かっていれ ばミリアルドもオルスがいる場所に付いていった筈だ。それが予想できたからこ そ、オルスもミリアルドがいない隙に場所を移動したしたのだし。 しかしそれは、場所を変えてもレナならば直ぐに気付いて、自分のところまで来 るだろうと予想しての事でもあった。狭い街の中に場所を絞ってしまえば、レナ にもオルスを探す事は容易だ。後でどやしつけてやろうと計画しながら、レナは 静かに目を瞑った。 「あれ、どうしたんですかレナさん」 「少し黙ってなさい。今、オルスの匂いを辿ってるところだから」 達哉がレナの行動の意味を計り兼ねてそう聞くと、レナはピシャリと言い放つ。 レナに言われてようやくそれに気付き、達哉はレナの挙動に注意を払ってみる。 そうすれば成る程、クンクンと匂いを嗅いでして、髭がピクピクと動いていて、 達哉が知っているネコ科動物の仕草そのものだ。 レナのそんな様子を、達哉は不覚にも可愛いと感じてしまい、頭を垂れた。確 かに獣医を志していたが、別にそっち方面の属性があるわけではない。今は別 れてしまったが、今までも2人くらい彼女がいたし、女性の獣人なんてマイナ ージャンルもいいところだ。 「・・・・あっちの方か。思ったよりも匂いが近いわ」 レナは目を開くと、匂いを感じた方向へ目を向けながら言った。辺りにはオル スの残り香が漂っていて、割と簡単にだいたいの方向を導き出す事が出来た。 後は匂いのする方向へ歩き続けて、匂いが強くなったところにオルスがいるわ けだ。 「あっちなら、酒の匂いはあまりしないし、酒場は少ないわね。 タチヤ、あの道を真っ直ぐ行って、 途中にある酒場を片っ端から調べてきなさい。 そしたら、コートを着て隻眼で片耳の掛けたイヌがいるから、連れてくるのよ」 「え、僕がですか?」 レナは素っ気無くそう言ったのを、達哉はウソだろと言わんばかりの口調で聞 き返した。全員で迎えに行くとばかり思ってたし、この世界でヒトが一人でう ろつくのは危険ではないだろうかと不安になる。思えば、こちらの世界に来て から、一人で行動した事が一度も無い。 そんな達哉の不安を察したのか、ミリアルドが嬉々とした口調でレナの援護射 撃をする。 「頑張れタチヤ。初めてのおつかいだろ?」 「上手い事言ってくれるね・・・」 子どもからこのような事を言われてしまえば、成人している身として黙ってい られない。良いように乗せられている気がしなくもないが、達哉は勢いに任せ てレナに言った。 「分かりました。僕が迎えに行きますね」 「ええ、よろしく頼むわ。私たちはここで、ガルナとクユラを待つから」 達哉は直ぐに歩を進めた。BGMがミリアルドの達哉をはやしたてる声なのは 気に入らないが、相手は子どもだと自分に言い聞かせて我を保つ。ここで戦い を挑んだところで、相手は子どもとは言えヒトとは違う。達哉の力では倒す事 はできない筈だ。 (くぅ~っ、あんなテンプレートな生意気小僧なんて、 物語の中だけの存在だと思ってたよ。あ~~!!ムカツクっ!!) 口に出す事のできない文句を心の中で叫びながら、達哉はその喫茶店を後にし た。レナが示した方向へと歩いて行く。これが終われば、今日は久しぶりにベ ッドで熟睡できる筈だ。しかも、この街には大きな温泉が湧いてるそうで、ほ とんどの宿屋には露天風呂や大浴場が備え付けらしい。風呂に入る機会など、 それこそこちらの世界に来てからほとんど無かった。 出来るとしても、濡れたタオルで体を拭いたり、川で水浴びする程度。この機 会を絶対に逃す事は出来ない。 達哉は鞄の中からこの街の地図を取り出すと、この付近の酒場をチェックする。 そして一番近くにある酒場を目指して、足を速めた。 × × × × 「はぁ、この瞬間こそ至福の時だな」 一人でのんびりと酒を飲んでられる。その幸せを噛み締めつつ、オルスはホッ と一息ついた。できればレナたちが着くのは、あと1日くらい待って欲しい気 分だ。もう2週間近くミリアルドと2人っきりで仕事に就いていたので、ここ まで癒される時間など、一時も無かった。 こうやって酒場のカウンターで頬杖をついて一人で酒を飲んでられる、その時 間を少しでも多く味わっていたい。どうせレナたちが来れば、勝手に待ち合わ せ場所から移動した事をどやされるのだろうし。ミリアルドからもしつこく小 言を言われる事も予想できるし。 「・・・!」 そんな事を考えていると、自分の近くに誰かが近寄ってくるのに気付いた。コ ツコツと言う規則正しい足音がオルスに近付いてくる。それは間違いなく自分 を目指して近寄っている事が、音の方向やら背中に感じる視線やら諸々で感じ 取る事が出来た。この街に自分を知っている相手はいない筈だが、何故こうし て近付いて来るのだろうか。 オルスはそれを考えながら、バーカウンターに立て掛けられている槍を掴んだ。 「えと、あなたがオルスさんですか?」 「・・・相手に尋ねる時は、自分から名乗れ」 名を呼ばれた事で、オルスは一層警戒を強めた。裏ではそれなりに名の通って いると言う自負はあるが、普段は待ち合わせにも使わないような、小さな村に 知ってる奴がいるとは考え難い。 そしてオルスが振り向くと、疑問は更に膨れ上がった。自分を呼ぶ声の主は、 ヒトだったからだ。ヒトに名を知られるような機会は、オルスが今まで生きて きた中で、数えるほどしかない。しかも、今会っている相手はオルスの知らな い相手だ。記憶を掘り返してみるが、会った事は一度も無い。 オルスが不機嫌(傍から見ればそう見える)そうな表情で思考を巡らせている と、素直な相手のようで、オルスの言う通りに自己紹介を始めた。 「僕は達哉と言って、“蛇足”に入れて貰える事になったので、それで挨拶をと・・・」 「ふざけるなっ!!」 酒場の中に、オルスの怒声が響いた。ガヤガヤと騒々しくも和やかだった場の 空気が一気に凍り付き、酒場の中がシンと静まる。布に包れていた槍はいつの 間にかその刃を煌かせて、達哉の喉元に向けられていた。突然の出来事に達哉 は反応しきれずに硬直していた。まさかいきなり刃物を向けられるとは思って いなかったし、オルスの腕の動きを追いきれる動体視力も、ヒトである達哉は 持ち合わせていなかった。 何がそこまでオルスを怒らせているのか、達哉は分からないまま呆然と立ち尽 くしている。 「貴様のようなのが、軽々しく口にして良い名ではないんだよ」 槍の先っちょで喉を少しだけ突付かれた。血が一筋流れ、槍を伝って行く。ま さかこんな目に遭うとは、夢にも思っていなかった。どうやってこの状況を抜 け出すか必死に考えた。イヌ科動物の弱点は鼻面で、そこを強打されれば簡単 に倒せるらしいが、こんな相手に戦いを挑むほどバカじゃない。 どうせ死ぬならこんなコワモテのむさい男に殺されるんじゃなくて、実年齢が 外見年齢と合致するクユラの胸の谷間とか、妖艶な魅力漂う20代半ばの女性 の胸の谷間とか、90代になってから老人ホームのベッドの上で眠ってる間に ポックリとか、そんなのがいいのに。 とにかく、その他諸々あってこんなところで死ぬわけにはいかない。と言うよ りもただ死ぬのが嫌なだけだ。誰だってそれは嫌な筈だ。達哉はこの状況を切 り抜けるための唯一の方法は、会話の交渉だけだと悟り、オルスの誤解を解こ うと話し掛ける。 「僕は、元の世界から落ちてきたばかりのところをレナさんに拾われたんです。 医療の心得があって、レナさんも丁度良いって言っていました。 今はミリー君とあなたがさっきまでいた喫茶店で待ってます」 「・・・・」 槍を喉元に突き付けられて、両腕を挙げながら達哉が言った。その達哉の言葉 にオルスは依然として疑わしそうな表情を向けつつも、半分ぐらい達哉の言い 分を信じ始めている。ミリーと言うミリアルドの愛称を知ってるのは、“蛇足” のメンバーぐらいのものだ。部外者が知ってるとは考え難い。 それを目の前の“タチヤ”と名乗る人間は言ったのだし、信憑性は高い。そし てオルスとミリアルドが、さっきまで喫茶店にいた事も知っている。そして何 よりも、このヒトがレナに対して敬意を払っている事が、言葉の中に感じ取る 事ができた。 「分かった。すぐに行くぞ」 オルスは槍を下ろすと、また槍を布に包んでバーカウンターに立て掛ける。周 りの客はそれを合図と言わんばかりに一気に騒ぎ出した。今さらだが、あんな 話しを人前で堂々として良かったのだろうかと、達哉は不安になってしまう。 挙動不審になりながら辺りを見回していると、それを察したオルスが達哉に言 った。 「気にするな。意味が分かる筈が無い」 「あ、そうですか・・・・」 オルスの答えに納得したように相づちを打ちながら、達哉はオルスを上目遣い で見た。オルスの身長は2メートルを超えていて、達哉と比べてずっと大きい のだが、その所為で話す時に上を見上げなくてはならない。しかしオルスから 威圧的な視線を向けられて見下ろされると、どうしても怖いと思ってしまう。 (ガルナはこんな相手をオッサン呼ばわりしてんのか……。 ミリー君も思いっきり呼び捨てにしてたし、分からない・・・・) 何と言うか、ゲームやアニメにでてくるような、典型的な傭兵と言った風貌を している。顔に大きな傷、隻眼、荒々しい態度、そしてビックリするほど血の 気が多い。本当にそれっぽい相手だ。 しかし、そこまでそれっぽいヤツならばきっと、実は人情深い性格とか、仁義 に厚い熱血漢だったりとか、そんな隠れた性格を期待しても良いかも知れない。 達哉はそんな事を考えて、もう一度だけオルスに話し掛けた。 「あの・・・、よろしくお願いし……」 「ウソだったら、貴様の思惑を全て吐かせた後、俺が殺してやるからな」 言い終わらない内から自分に向けられた言葉に、達哉は冷や汗を流して身震い した。やはり今まで会った誰よりも怖い。こちらに来てから最初に会ったオオ カミの傭兵たちなんかとは、比べ物にならない。全身の雰囲気が洗練されてる と言うか、場数を踏んだだけのオーラを纏っている感じがする。 それはレナやクユラもある意味で同じだが、オルスの場合はコワモテの外見が それをさらに引き立てていた。それに状況が状況だから仕方ないが、オルスは 達哉に向かってプレッシャーを与え続けている。視線や態度などその方法は様 々だが、その効果は絶大で達哉は軽く震えてさえいた。 しかし、達哉の反応にオルスは分からなくなってしまう。オルスの名を知って いる者の中で、これほど威圧的な態度を取られて逃げ出さないヤツなど、数え るほどしかいない筈だ。ましてヒト奴隷など武器や魔法を使わなくても一瞬で ケリが付く。 オルスを騙そうとしているのなら、絶対にこのプレッシャーに耐えられる筈が ない。そう思うのだが、かと言って初対面の相手を信用する事など出来るワケ がない。結局考えても切りがない問題なので、オルスは細心の注意を周囲に向 けながら、酒場の外へと足を進める。 「あ、待ってくださ」 「あまり俺に近付くな。 ただでさえ寿命が短いクセに、さらに縮める気か?」 後ろから、慌てた様子で達哉が追い掛けてきた。ヒトならば背後を取られよう とどうにでもなるが、後ろから近寄られるのもいい気がしないので、オルスは そう言って達哉に脅しを掛けた。 効果はてき面で、達哉はオルスの半径3メートル以内に入ろうとしない。これ だけ距離があれば、よしんば短銃や呪符を持っていようと、そんなモノで手傷 を負うつもりはない。それにヒトが相手ならば、取り出す前に首を刎ねる事も 容易い。 それにしても、もしも達哉の言う事が本当ならば、ヒトを“蛇足”に入れる レナの気が知れない。医者の心得があると言っていたが、直接命に関わるよう な怪我を負う事などオルスには無い筈だ。ましてそれほどの困難な任務にヒト が同行できるとは考え難い。考えれば考えるほど、達哉を仲間として受け入れ た理由が思い付かない。 ヒト奴隷の最もポピュラーな利用法だろうか、色恋沙汰に縁の無いレナはとも かく、クユラはいつだったかヒト奴隷が欲しいと言っていた記憶がある。しか し達哉を拾ったのはレナだと言う話しだし、もしかするとレナの一目惚れか何 かだろうか。 「……いくらなんでもそれは有り得ないか」 酒場の外へ出て、レナの匂いがしないか鼻をクンクンと言わせつつ、オルスは 苦笑した。しかしその表情は達哉から見ればどう見ても笑いとは見えない代物 で、意地の悪そうなその顔に達哉は身震いした。 待ち合わせの場所はここから風下なので、レナたちの匂いはする筈が無い。だ が、何故かレナの匂いを近くに感じた。微かに匂うそれの匂いを辿っていくと、 その匂いを放つのは達哉だった。さっきまでは酒場の酒臭さに邪魔されて匂わ なかったようだ。 「どうやら本当の話しらしいな」 「え、信じてくれるんですか?」 達哉が付けている首輪から、間違いなくレナの匂いを感じた。それだけでなく、 全身からさっきまでレナに抱えられていたかのように、レナの匂いを発してい る。もしかしてレナは本当にこのヒト奴隷を愛玩具として側に置くつもりなの かも知れない。レナの意外な一面を見たような気がして、オルスは唖然として しまう。 そんなオルスの動揺を達哉が知るよしもなく、話しを信じてもらえた事に嬉し そうな表情を見せた。話せば分かる相手なのだと、自分を信じてくれた理由も 分からないまま、自身に交渉の才能があるのではと、一人思ってみたりする。 「じゃ、早く行きましょうか。 みんなを待たせるのも気が引けますしね」 そんな気の緩みからか、達哉はオルスにそんな場を仕切るような事を言っての けた。オルスの隻眼がギラリと光を放ち、次の瞬間にはオルスの拳骨が達哉の 後頭部へ飛んだ。 「うぁあいたっ!?」 「調子の乗るのもいい加減にしろ。 自分の立場が確定した瞬間、手の平返したようにはしゃぎやがって」 オルスは相当に加減したつもりだが、ただでさえヒトの達哉が、この世界の住 人の中でもかなり上の腕力を持ったオルスに殴られたのだ。これまで受けたど んな拳骨よりも痛かったのは確かだ。もっとも、平和馴れした日本の中で典型 的な優等生だった達哉が、誰かに拳骨される機会などそう無かったのだが。 達哉は後頭部を両手で押さえながらしゃがみこみ、目尻に涙を浮かべてその痛 みに耐えていた。しかし、オルスは立ち止まってはくれずにさっさと先に進ん でいる。達哉は歯を食い縛って立ち上がると、走ってオルスを追い掛けていっ た。 (やっぱりあの人って怖いよ。あーヤダヤダ) 口に出して文句を言う勇気など有る筈もなく、またも心の中で不満を漏らした。 早くレナとミリーが待っている喫茶店に向かわなくては。思ったよりもオルス を探すのに時間が掛かったし、案外クユラとガルナももう来ているかも知れな い。最後に見たガルナはかなり息が上がっていたが、あそこからあのまま走ら されてるのなら、どんな顔で待っているか楽しみだ。 × × × × × 「ゼェーハァー・・・、つ・・・、疲れた……」 「が、ガルナ、ホントに疲れてるだけかい? 医者じゃなくても、絶対に苦しそうに見えるよ」 達哉とオルスが待ち合わせの場所に着いた時、やはりもうクユラとガルナの2 人はレナたちに合流していた。達哉の予想通り、ガルナは今にも失神せんばか りに消耗しきっており、着いた時にはクユラに引き摺られていたらしい。 今も口を大きく開いて細長い舌を垂らしながら、テーブルに突っ伏して肩で息 をしている。余程疲れたのか、たまに咳き込んだりしていた。達哉もそれを心 配して気遣うが、ガルナ本人は疲れただけだと言っているし、ヒトと同じ尺度 で考えるなと、他のみんなも言っている。 しかし、ガルナはそんな(あくまでこの世界の中での話しだが)人間離れした 身体能力は持ち合わせていない。レナもオルスもあくまで例外なのだ。そんな 中に比較的一般人に近いガルナがいては大変だろう。 少なくとも、ミリアルドは飛ぶ事が出来るのだし、クユラは道具を使って移動 する事ができるのだから。達哉がガルナに向かって同情の視線を向けていると、 レナに肩を叩かれて我に返った。慌ててレナの方に向き直り、次に出てくる言 葉を待つ。 「それじゃ、今日はこの街に一泊するわ。 オルスとミリアルドが泊まっていたところがあるでしょう。 温泉付きだと嬉しいところだけど、どうかしら?」 田舎の村で唯一の観光スポットが温泉だったり、よくある話しだなと達哉は思 った。昔、そんな感じの小さな村へ家族旅行で行った事が会ったと思う。ロク にTVも見れない生活に初日で嫌気が差し、見たかったアニメも見れずに泣い ていた記憶がある。 そんな懐かしい記憶を思い出しつつも、達哉は現実的な問題に歓喜の表情を浮 かべた。これまでの道程で、靴擦れは起こるし足にマメは出来るしで、随分と 苦しい思いをするハメになった。しかも連日歩き通した所為で、足が慢性的な 筋肉痛の状態だ。 それでなくても体中に疲労が溜まって、あちこちの間接がギシギシと悲鳴を上 げている。達哉にとってレナの提案はとてもありがたいものだった。しかし、 オルスとミリアルドの2人は不服そうな様子でレナの話しを聞いていた。そし てオルスが、その不満をレナに伝える。 「待て。俺とミリアルドは、もう5日もここで待ち惚けを食らってるぞ。 早くアジトへ帰って、次の仕事を引き受けたいんだがな」 「だったら1人で帰りなさい。私とクユラはともかく、 そこの2人を見たらこのまま出発だなんて言えないわよ」 オルスの言葉に応えながら、レナは達哉とガルナを指差した。そこにいたのは、 目を潤ませながら、期待を込めた目でレナとオルスを見詰める2人の姿だった。 意地でもここに居座ると言わんばかりにテーブルに抱き着き、「行かないで」 と目で訴えかけている。このまますぐにここを立ち去ってしまうなど、疲れき った達哉とガルナには耐えられない事だった。 せめて一泊はしないと、次の街まで歩き続けるなんて無理な相談だ。しかし、 そんな達哉とガルナを見ながら、オルスが呆れたような表情で言った。 「なあ、そもそもこいつら、特に達哉は何でここにいるんだ?」 女々しい態度の2人を睨み付けながら、これ見よがしにそんな事を聞く。このよ うな経験は、ガルナはもう慣れてしまっているが、達哉はそれを真に受け、ギク リと言う擬音を立てて冷や汗を流している。 「ガルナはあれね、これで結構役に立つところもあるじゃない。 自分の身ぐらいは自分で守れるし、戦い以外の工作も手際が良いし・・・」 レナがガルナを褒めているところを、達哉はあまり見た事が無い。それは偶然で はなく、本当にガルナが褒めてもらえる事などほとんど無いらしい。達哉の横で ガルナは少し震えて目に涙を浮かべていた。 「わぁっ!姐さんてば感激っスよ!!! いつも扱いが酷くて不安だったんスけど、安心しt」 「お前は黙っていろ」 さっきまでの疲れは何処に行ったのか、ガルナは飛び上がって喜んでいた。だが オルスにギロリと睨まれてそんな事を言われると、たちまちの内に意気消沈して またテーブルに倒れ込む様にして突っ伏した。 そんな一連の出来き事をレナは奇麗にスルーして、続きを話す。次は自分の事が 話されるのだなと、達哉は意味も無く身構えてしまった。 「それと達哉は、そうね。気に入ったからよ。 医者だし家事も出来るって言うのもあるけど、 それと前々から思ってたけど、ヒトが一人いた方がメリットが多いのよ」 それを聞いて、なんとなく達哉は気分が落ち込んだ気がした。確かにメリットが あると言うのは嬉しいかも知れないが、達哉本人によるものではなく、あくまで もヒトだからのメリットなのだから。達哉が売りにしてた、医者と言う職業と、 家事の技能はあくまでオマケ程度の扱いだ。 現実逃避も兼ねてヒトのメリットと言うのを考えていると、ここまで傍観を貫い ていたクユラが、口に出してもいないのに何故かそれを察して、ヒトを仲間に入 れる事のメリットを、前と同じく何処からか取り出したホワイトボードを使って 説明してくれた。因みにミリアルドは、先ほどからずっとマンガの本に夢中にな っていて、話しに加わろうとすらしていない。 「まずですね、ヒトと言うのはこの世界でも貴重な存在ですから、 誰かに対して近付く必要があるとき、“貢ぎ物”とでも称して、 密偵として遣わせたりできますのよ」 クユラが指差し棒でホワイトボードをポンと叩くと、達哉が檻に入れられて、犬 人の女性にプレゼントされてる様子が浮き出てきた。自分が売り買いされている 絵と言うのは、想像以上にシュールな感覚だ。ブラックユーモアは結構好きだが、 こんなのは余り笑えない。 どんな顔をすれば良いか分からず達哉が苦笑していると、またクユラが指差し棒 でホワイトボードを叩いた。そうすると、再度そこに描かれている絵が変わった。 今度は、達哉が手紙を伝書鳩に付けて飛ばしている後ろで、犬人の女性が寝てい る絵だ。 「ヒトと言うだけで大抵の人間は油断してくれますし、 そうなればこっそり情報をやりとりするのも容易い事ですわ。 世の中には、政治家を傀儡にして贅沢三昧してるヒトだって存在しますのに、 なんで皆さんはいつまでもヒトを甘く見てるのか、 わたくしには理解に苦しむ事ですわ。 いつまでもこの調子なら何千年か先に、 この世界をヒトに乗っ取られてしまっても文句は言えませんことよ」 最後の方では、クユラの口調は半ば嘲りを含んでいた。その嘲りの対象は、安穏 と暮らすのんきな人間に向けられたのか、それともそんな事態を傍観するクユラ 自身へと向けられたのか、どちらにせよゾッとする冷たいものを、その笑みの中 に秘めていた。 達哉は一瞬それに鳥肌を立てたが、すぐに気を取り直してクユラの言葉を頭の中 に反復させた。それはつまり、いつか分からないが自分がそんな仕事をさせられ る事になるのだろうか。出来れば願い下げしたいところだが、断れば自分はここ に居てはいけなくなるのだろう。必要とされるから居場所があると言うのは、ど この世界に居ようと絶対に変わらない世の中の法則なのだから。 「・・・うん、ありがとう。 僕がここに連れてって貰えた理由が、やっと分かったよ」 達哉は力無い笑みを浮かべながらクユラの説明に対してのお礼を述べるが、誰の 目にも達哉がダメージを受けている事は明らかだった。しかし、強がって笑顔を 作れるだけまだマシだ。レナは達哉の表情をチラリと伺うと何かを言おうとした が、何も言わないまま口を噤んだ。 達哉とて、これくらいの事で慰めてもらうようでは、この先のためにもならない だろうし、何よりも今この場で達哉を慰めるのが、何処か照れくさい気がしてな らなかった。それは、レナの恋愛経験の稀薄さに寄るところが大きかった。 場に居心地の悪い雰囲気が蔓延する。苦しい笑みを浮かべるコウヤに、それを愉 しんでさえいそうなクユラ。まだマンガを読んでいるミリアルド。この手の面倒 事には顔を突っ込みたくないらしく、だんまりを決め込んでいるオルス。そして 達哉に掛ける言葉が見付からず、内心の焦りを表に出さないで居る事に精一杯の レナ。しかし、その雰囲気を打ち壊せる人材も1人だけ残っていた。 「まあまあ、さっさと宿屋へ行って温泉浸かって、 美味しいもの食べて寝た方がいいっスよ。 こんな重苦しい雰囲気は俺、苦手っス! それにホラ、タチヤはタチヤだから拾って貰えたんスよ。 ヒトだからってのが有っても、 タチヤはヒトだって事のメリットを、理解して使いこなせるから拾われたんス!」 ガルナが達哉の背中をパンパンと叩きながら、いつも通りの笑顔でそう言ってく る。多少無理してる感が否めないが、それでも場の雰囲気を打ち壊すには十分な 効果を発揮した。 「そっか。それもそうなんだよな。 僕も仲間に入れて貰えたからには、それなりの資質があるんだよ」 ここぞとばかりに達哉も便乗し、白い歯を見せ付けるような笑みを浮かべつつ、 調子に乗った発言をする。その笑顔からさっきのような暗さは消え去りはして いないものの、随分と緩和されていた。 「そこ調子に乗ったらダメね。おまえはまだ新米なのよ。 役に立ちたかったら、せめて感情を表に出さずに いる事ができるようになりなさい」 「うへぇ・・・それ自身無いですよ」 考えてる事を隠すつもりも無い達哉は、情けない声で頭を垂れた。レナはそれ を見て笑ってしまいそうになるが、それを必死で堪えて平静を保とうとする。 だが、耐えられなくなってついつい顔に笑みが浮かんでしまう。最後には我慢 するのも面倒に感じて、堪えるのを止めてしまう。 「フフフ、ハハ、・・・・ほら、拾ってきて良かったでしょう? 少なくとも、これだけ楽しい思いができれば言う事無しだわ」 オルスとクユラに目配せをして、レナはそんな事を言ってしまう。本来ならば 傭兵としてどうかと思う発言だが、今の雰囲気はその発言にも違和感を与えな い。ちょっとした事で随分と急変するものだ。 オルスとクユラはと言うと、特にオルスがだが、急変した場の雰囲気に付いて ゆけず、置き去りにされている。クユラは比較的すぐにその場に合わせる事が できるが、オルスは頑固で融通が利かないところもあり、相手に会わせて自分 を変えると言うのは苦手分野以外の何物でもない。ただ、少しくらいなら達哉 というヒトを認めてやっても良い気分になってきた。少なくとも、嫌な性格を した相手ではない事は確かだし、中々こちらを笑わせてくれるのだから。 「まあ、中々の拾い物かもな」 人差し指で耳の裏をポリポリと掻きながら、オルスは達哉を見て言った。もう 随分と長い間、感じの良い青年になど会ってなかった。こういう職業に就いて いると、他人との出会いを楽しめる事が少ない。だが、たまにはこういう面白 い出会いもあるものだと、少しだけ嬉しくなった。 そんな会話を繰り広げつつ、一行は宿屋へ足を進めた。その宿屋は今いる場所 から少し遠い様で、途中の交通機関を使っても40分ほどの時間を要してしま った。 「うわぁ、オルスさんも随分ボロっちいところ借りるなぁ・・・。 こんな寂れまくりの宿屋、元の世界でも見たこと無い・・・」 「実際に潰れてるんだ。ここは。 温泉の規模も小さいし、建物自体もみすぼらしいしな。 売りに出されてたのをを貸し切って、ここ数日ここに泊まっていたんだ。 買い手も付かない物件だが、格安で借りられる」 温泉付きの宿屋に泊まれると聞いてやってきたのは、街の端っこにある古ぼけ た建物だ。元々は宿屋として経営されてたらしいが、いたるところに温泉の湧 くこの街では、こんなみすぼらしい宿屋がやって行ける筈も無く、あっさりと 潰れて売りに出されていたそうだ。 達哉が露骨に嫌そうな表情をすると、オルスが説明して、「諦めろ」とばかり に経緯を説明してくれた。お金があるならもっと高いところに泊まろうと言い たかったが、新米の分際でそんな事も言えず、達哉は黙るしかなかった。 周りを見ると、レナとクユラとガルナの三人も、露骨に失望の表情をしていた。 特にクユラは凄まじく失望しているようで、汚らしいモノを見るような目で、 建物を見ている。そしてとうとう、達哉の言いたかった台詞を代わりに言って くれた。 「こ、こんな古臭くてみすぼらしい宿屋など、わたくし耐えられませんわ!! わたくしは一人で高級ホテルに泊まってきます。 お金は自分で払いますし、それでいいでしょう。 わたくしは醜く劣化したものが何よりも嫌いだと、 貴方たちも知っているでしょうに、 こんな宿屋で十分だなんて考えられるなど、 わたくしに対する侮辱としか思えませんことよ!」 そう言って、誰かの返事を聞く事も無くクユラはその場を立ち去ってしまった。 達哉は追い掛けようと思ったが、レナに服を捕まれて止められた。振り返って レナの方を見ると、困ったように顔を横に振って言った。 「いいのよ。止めて戻ってくる相手ではないし、 無理に呼び戻そうとしたら、タチヤ程度は返り討ちよ」 「・・・・それもそうですね」 レナの言葉に達哉は納得してクユラを追い掛けるのを止めた。よっぽど不満だ ったらしく、達哉が呼び掛けたところでどうこうなる問題ではなさそうだ。割 と冷静に見えるクユラだが、意外なところで怒りだすものだ。 「それよりもさ、今日は早く寝ようぜ。 明日出発なんだろ、もうこの街は飽きたし、楽しみだよ」 「はいはい、ミリーは一人部屋で寝れるように なってから発言した方がいいっスよ」 「か、カンケーないだろ!!それに俺は一人でも寝れるかんな!!」 クユラの後ろ姿をなんとなく見詰めていると、ミリアルドがそう急かしてきた。 やはり暇を持て余しているようで、退屈そうな表情であさっての方向を向いて いた。 そんなミリアルドをからかうように、ガルナはワザとミリアルドの嫌がる名を 呼んで、更にミリアルドが触れてもらいたくないであろう部分に、土足で上が りこむような事を言ってのけた。 当然ミリアルドは顔を赤くしながら見え見えの強がりをする。しかし図星を突 かれて動揺しているのは誰に目にも明らかで、もはや微笑ましいくらいに子供 らしい反応をしてくれている。 「いーから早くいこーぜ!!!」 ミリアルドが一人で建物の中へと駆けてゆく。苦笑しながら他の大勢もそれを 追い掛けていった。 × × × × × × (あれ・・・・ここはどこだろ?・・・・) 気が付くと、見覚えのあるような無いような、懐かしくも恐ろしい空間の中に突 っ立っていた。そこに居たいとも思うが、一刻も早くそこから抜け出したいとも 思う。そんな自分の心の動きを理解する事が出来ない。 (・・・なんか怖い。・・・気持ち悪い) 全身に鳥肌が立つような感覚を覚え、この場から逃げ出したい衝動が、そこに留 まりたい衝動を遥かに上回った。達哉はすぐに走ってそこから逃げ出そうとした。 長い長い廊下を走り続けていると、その先にドアが見える。何も考えずにその扉 のドアノブを握って捻る。ぎぃーっと音を立てて扉は開き、達哉は更にその先へ 駆けていった。 しかし逃げていた筈なのに、達哉の一番見たくないものがそこにある。 (なんだよ・・・コレは) 達哉の目に入ってきたのは、あの日の光景。院長室で父親から暴行を受けている 達哉自身の姿。達哉が唖然としてその光景を見ている内に、父から暴行を受けて いるもう一人の達哉が床に落ちているカッターナイフを掴んだ。 あの時の光景が再現されるのかと思うと、達哉はどうしようもなく気持ち悪くな り、現実感のまるでない脆弱な世界に、現実以上の恐怖を感じて立ちすくむ。な んの反応もできずにいると、もう一人の達哉は持っていたカッターナイフで父親 を刺した。 それで正気に戻った達哉が駆け寄ろうとした時、今度はペーパーナイフを握った。 達哉は必死で駆け寄るが、間に合わずにもう一人の達哉はペーパーナイフを振る う。同時に父の断末魔が聞こえ、吐き気がするほどの悪寒が全身に走った。 「・・・・ッ!!!……夢か」 次に気が付いた時には、自分に割り当てられた部屋の床の上に寝転がっていた。 せっかく忘れようとしていた記憶がまた蘇った感覚に戦慄を覚え、全身がガクガ クと震える。 震える体を鞭打って立ち上がると、この部屋のベッドを占領しているミリアルド の姿が目に入った。何故こんなところで達哉のベッドを奪っているのか思い出そ うとし、すぐに答えを思い出した。 『タチヤが一人では眠れないだろうから』とか言ってズカズカと入ってきたのだ った。恐らくレナにもオルスにも部屋に入れて貰えなかったが、ガルナと相部屋 というのも嫌で、消去法で残ったのが達哉だったのだろう。 「ミリー君も寝顔はナマイキじゃないんだね。て当然か」 大抵の動物の寝顔は可愛いモノだが、鳥の寝顔も中々の可愛い。まあ大きくなっ てしまえば、オルスのようにむさ苦しいだけの、ただの羽毛になってしまうのか も知れないが。 ミリアルドの寝顔を少し覗くと、達哉は鞄を漁ってタオルと着替えを取り出して 部屋を出て行く。結構な量の寝汗をかいてしまったので、ここについている温泉 でサッパリしておきたい。 寝る前に入った時は、ミリアルドが湯船で泳ぎ出したり、ガルナがのぼせたり、 オルスの傷だらけの身体を見て驚いたりで、あまりくつろぐ事ができなかった し、明日にはこの街を発ってしまうのなら、今の内にもう一回くらい湯船に浸か っておかなくては。 「夜中に起きた時1人になってても、泣いたりするなよ?」 音を立てない様にゆっくりとドアを閉めながら、達哉はボソリとそう呟いた。ミ リアルドを起こさない様に気を遣いつつ、足音を立てずに廊下を歩き、階段を下 ってゆく。 それなりに長い距離のある廊下をずっと行った先に、露天風呂があった。やっと 着いたと溜め息を吐きながら扉を開けて脱衣室へ入って行く。ここの露天風呂は 男女兼用だが、貸し切りだしこの真夜中の時間帯なら遠慮は要らないだろう。 「フンフ~ン♪」 ドラゴンクエストのテーマをハミングしながら、服を脱いでゆく。今度はタオル を腰に巻いたりはせず、生まれたままの姿で温泉へと向かっていった。たまには 誰にも遠慮せずに、こういう自分だけの時間も必要だ。 天然温泉から出る独特の匂いを持った湯気を大きく吸い込んで深呼吸し、ここに 来る途中に街の雑貨屋で買った桶を使って、お湯を頭から被る。辺りにはザパァ と言う音が響いた。少し熱めのお湯なので、最初に馴らさないと入る時に辛い。 「はぁ・・・・極楽だなー」 足から少しずつ湯船に浸かってゆき、肩まで浸かったところでそう漏らした。や はり風呂と言うのは、日本人にとって心休まる場ナンバー1だなと、ふにゃけた 表情でそんな事を思った。 歌でも一曲歌いたいような気分になりながら、温泉の中から突き出る大きな岩に 背をもたれて全身の力を抜いた。こんなに心から脱力できる事など、この世界に 来てからは滅多に無い事だ。今の内に思う存分味わっておかなくては、後で後悔 する事は確実だろう。 「はあ、やっぱり一人で入る風呂が一番落ち着くかな・・・・」 「まったくね。でも邪魔をされてしまったわ」 達哉が頭上に広がる星空を眺めてそう呟くと、一人しかいない筈なのだが、達哉 の言葉に返事があった。慌てて立ち上がって辺りを見回すが誰もおらず、どうな ってるのか分からず混乱しそうになってしまう。 そんな達哉の様子が面白かったのか、今度は笑い声が上がった。その声を聞いて ふと気付いたが、それは達哉にも聞き覚えのある声だった。と同時に、女性が同 じ空間にいると思った瞬間、急に恥ずかしくなってしまう。 「れ、レナさん!意地悪してないで出てきてくださいよ!!」 「出ていっていいの?2人とも裸よ」 「あ、それは・・・!」 慌てている所為で忘れていたが、ここは露天風呂で2人とも裸だ。女性相手に何 を言ってるのだと、達哉は無性にやりきれない気分になり、また湯船の中に体を 沈めていった。鼻の直ぐしたまで湯船に浸かり、口でブクブクと泡を作る。その 行動を見ていたかのように、もう一度レナの笑い声が聞こえた。 今度はその声の聞こえる方向が達哉にも感じ取れた。さっきまで自分が寄り掛か っていた岩の裏側にいるようだ。 「やっぱり、タチヤは面白いわ。 タチヤのように純真な男って、滅多にいないと思うのよ」 「な、何を言ってるんですか。僕なんか最低のヤツですよ」 レナから向けられた予想外の言葉に、達哉は照れ隠しも含めてそんな風に返した。 だがそれ以上に、自分がそんな言葉を受けるのに相応しい人間には思えなかった 事がある。言葉の最後の方が少し自嘲気味になってしまったが、それでもいいや と達哉は黙ってしまう。 レナは、達哉の反応に何かあるなと思いつつも、しかしその達哉の様子に何か危 ういものも感じた。そう言えば初めて会った時、元の世界に帰りたくないと話し ていた。それも関係があるのだろうか。悪いとは思いつつも、好奇心を抑える事 ができず、レナは達哉に尋ねてみた。 「そうかしら。私が今まで見た中では、 タチヤのように好感が持てる男は、そういなかったわ。 自分が最低だという理由が、何か有るの?」 そのレナの質問に、達哉は何か返す言葉はないかと、必死に考える。本当の理由 を言うのが怖くて堪らず、ウソでもいいからこの場を切り抜けたい。しかし中々 次の言葉が見付からず、時間だけが経っていく。 達哉は結局、黙って時間が過ぎるのだけを待つ事にした。そうすればレナも最後 には諦めるか飽きるかするだろうと思っての事だ。しかし、重苦しい雰囲気を残 したまま、時間はゆっくりと流れて行く。 その時間の流れの遅さにイライラしていると、不意に後ろで温泉からあがる音が 聞こえた。そのまま音は達哉の方へ近寄ってきて、真正面まで移動すると、達哉 のうつむいた顔に両手を添えて、無理矢理に上を向かせた。 「話し難いなら話さなくていいわ。でもあまり感心はしないわね」 レナの言葉が達哉に届いているのか、ハッキリ言って微妙だ。なぜなら達哉の目 にはレナボディラインが現在進行形で焼き付いている途中なのだから。普段なら 毛皮に包まれている所為で目立たないが、今は温泉に入っていた所為で身体のラ インに毛が引っ付き、芸術的とも言える身体のラインをハッキリと見る事が出来 た。 これで全身がヒトと同じような柔肌なら言う事無いのにな。意外に冷静な達哉の 脳内で、そんな声が聞こえた。しかし冷静でいられたのは最初の数秒だけ。その 後、時間が経つと共にどんどん顔の色が赤みを帯びてくる。 それを分かっていて、レナは達哉の顔に添えた手を離さない。くっくとのどで笑 いながら、達哉の頬から顎にかけてを指でなぞった。毛皮で包まれた指先はむず 痒いようなくすぐったいような微妙な感触で、快感というには心地良いとは言え ず、不快と言うには嫌悪感も無い。 「なななな、ナンデスカ・・・?」 「フフフ、別になにも。ただ、タチヤの反応が面白くて」 達哉を見下ろしながらそう言ってくるレナに、一抹の薄ら寒さを覚えた。達哉の ような一般的な大学生(元)が、年上のお姉さんから温泉でこんな事をされるよ うな経験など、ある筈が無い。それを知っているかどうかは分からないが、どち らにせよ達哉には少々刺激が強い。 無理矢理でもそっぽを向いてしまいたいのだが、この状況を少しだけ美味しいと 感じてしまっていて、今は達哉の頭の中で2つの感情がせめぎ合っているところ だ。 その一方で、レナの方も自分が何故こんな事をしてしまっているのか、自分自身 の感情が、どうにもよく分からなくなってしまっている。実はレナには男性経験 は2度か3度ほどしかなく、この手の感情を自分で推し量るのはどうにも苦手だ。 「な、なんでもって・・・・。 そんな態度を取ってたら、僕が本気にしても知りませんよ」 なんとか視線だけでもあさっての方向へ向けながら、それでもまだレナの胸元を チラチラと見てしまいそうになるのを堪え、達哉はそう言った。昼間、自分とい う個人の無価値さを自覚した後でもあったし、どこかでそれを期待していた。 レナは達哉の言葉に、一瞬だが目を丸くした。まさかこんな大胆な事を言ってく る相手だとは思っていなかったし、そう言われた後の返答も見付からない。こん な格好をしていては、どんなに毛並みに艶を出そうがスタイルが良かろうが、モ テるなんて事はない。 幼い頃『男みたいだ』とよく言われた。女性で半獣の外見をしている人間などは そういうのが多い種族を覗いて滅多になく、男性のマダラが生まれる可能性より も更に少ない。だから偶にそういった女性が生まれると、そんな嘲りの対象とな ってしまうのは当然の流れだ。マダラの男性のように“中性的な魅力”とかそう いうのを売りにしてモデルになるような事もなければ、良い意味で注目を集める ような事も無い。 「そうね。本気にしてもらえたら嬉しいかも知れないけど、 冗談はほどほどにしておかないと、身を滅ぼすわよ」 レナは達哉の耳をつまんで軽く引っ張りながら言った。精一杯、表情を平静に保 つ努力をしながら、内心での動揺を悟られないよう祈る。達哉に限ってそこまで 鋭いと言う事は無いと思うが、こんな経験が今まで無かったので、安心して対応 する事はできない。 そしてレナの不安は適中した。達哉はレナの顔を黙って見詰めた後、思いっきり 吹き出した。 「くく…ッ…。……レナさん。尻尾がピンと立ってるし、表情もぎこちないですよ。 なんかこういうところは、普通の女性と変わらないんですね」 達哉に言われて、照れ隠しの為に下を向くと、水面に映ったのはいつに無く慌て ている自分の表情。その表情をなんとかしたいとは思うのだが、なんとかしたく てもなんともならない。慌てて達哉から顔を背けると、自分の尻尾を掴んで強引 に緊張をほぐす。 「い、今のは見なかった事にして。 冗談でここまで反応しちゃったなんて、知られたくないの」 動揺した口調で達哉に語り掛けてくるレナを、達哉は可愛いと思ってしまった。 いつか動物園でライオンやら虎やらの診療をしてやるのが、子どもの頃からの夢 だったなと、なんとなく懐かしい気分になる。 今、達哉の目の前のライオンは、クールビューティを気取ってるクセしてどこか 初心で、全てを達観したような事を行ってても、中身は意地っ張りなだけの普通 の女性。ちょっと見た目が達哉の中の普通と言うか、この世界の中での“普通” からもちょっと外れてるだけだ。 そして、こことは別の世界から来た達哉にとって、この世界での普通はどう見て も“異常”だ。レナのような外見の女性を見ても、それを珍しいとは知識で知っ ていても、思う事はそれだけ。 そもそも達哉がこの世界に来て一番初めに会った女性がレナなのだから、最初の 3日間くらいはこの世界の全ての獣人が毛皮やら羽毛やらウロコやらに包まれい て、ヒトのような柔肌の人類など誰もいないと思っていた。 ようするに、達哉から見ればレナのような女性も、その他の“一般的”な“普通” の女性もそこまで大差があるわけではない。そして、達哉の心の声が叫ぶ。『今 このまま放って置いたら、男が廃る』と。 こちらに来てからは散々自分自身の無力さを思い知らされて、今さら廃る男もな いのではという疑問はあるが、心だけはまだヒトの尊厳は失っていない筈だ。 「でもレナさん。僕から見てもレナさんは奇麗ですよ。 そんな奇麗な毛並みをしてるのは、レナさん以外には知りませんし、 レナさんみたいにカッコ良くって、強い女性も知りません。 それに、レナさんみたいに優しい女の人も、今まで一度も会った事が無いですよ」 最後の以外は女性に求める事じゃないかも知れないが、それでもレナのそんなと ころが気に入ってたりする。そして最後の一つは、達哉の本音だった。 今まで何度か女性と交際した事もあったが、全員が達哉がお金持ちの子どもだと 言う事を前提にアプローチしてくる相手だった。それが嫌だったし、それ以外に なんの魅力も持ち合わせていない自分がもっと嫌だった。 「僕は、頼り甲斐のある女性が好みなんですよ。 守るよりも守られたいタイプ」 レナの背中に向かって、満面の笑みを浮かべながらそう言った。何か反応を貰え たらいいのだが、空振りだけは何としても勘弁して頂きたい。沈黙を保ったまま レナの返答を待っていると、不意にレナがこちらへ振り向いた。そして反応が貰 えた事に喜ぶ暇も無く、手を掴まれて立ち上がらせられた。 「そこまで言っておいて、冗談でしたじゃ済まないわよ?」 そう言って意地の悪い笑顔を浮かべるレナの表情からは、完全にいつものペース に戻っているのが分かった。そしてそれはつまり、ここからはレナが絶対的優位 に返り咲く事を意味していた。 自分よりも少し背の高い獅子の両目を見詰めながら、もしかしてレナから怒号で も飛ぶのではないかと恐れてしまう。よく考えれば、リーダーのレナに随分な口 を利いてしまったかもしれない。 「そりゃ、冗談でそんな事を言う筈――ッ!!?」 目を見開いた。こんないきなり口付けされるとは思っても見なかった。そして今 さらだが『冗談でしたじゃ済まない』の意味を理解する事ができた。ホントにな んて鈍感でバカで女性の気持が分からないヤツなんだと、自己嫌悪に陥りそうに なる。 だがそんな達哉の理性とは裏腹に、レナは腕を達哉の背にまわしきつく抱き締め てくる。少し強く抱き締められ過ぎて苦しいとも思ったが、そんな事を言ってし まってはムードが崩れそうだなと思い、黙っている。 そして何より、達哉がレナの魅力に気付いてしまったような気がした。小さい頃 に母親が蒸発してしまった達哉にしてみれば、レナのように心も身体も強く、頼 りになる女性は好みに100%合致する。まあ、あくまでも中身の問題であって、 外見で言えばクユラのような色白でネコミミの美人だったりするのだが。 「ぅ……」 半ば自棄になりながら、達哉はレナの口の中に舌を差し込む。こんな積極的に誰 かにアプローチするなんて、達哉には初めての経験だ。少し恥ずかしくもあるが、 それでも誰かに求められると言うのは心地良い感覚だ。 ザラザラした感触のレナの舌と口の中で絡み合い、相手はヒトとは違うなと、改 めて実感した。しかしヒトでなくとも、達哉と同じように考えて同じように感じ て、何も違わない。この世界での“人間” だ。 言葉が通じて意志の疎通ができる限り、恋愛はできるんだろう。そもそも、それ さえなくたって恋愛感情が生じる事だってあるかも知れない。昔、イルカと結婚 した女性のニュースを見た事があったと思う。 「僕も、本気にしちゃいましたから」 「フフッ、いいわよ。私は絶対に放してやらないから覚悟してなさい」 レナからそんな事を言われてしまうと、猛獣に狙われるガゼルの子どもみたいな 気分になってしまう。レナは笑っているんだろうが、動物の顔で笑われると牙を 剥いているように見えて仕方が無い。 実際は愛情を持って接してくれてるのだろうし、それを雰囲気とか、レナの表情 以外の挙動で感じ取る事はできる。尻尾がゆっくりと誘うように振れてたり、こ ちらを見る瞳にはいつもと違う光が宿っているように見えたり。 「タチヤは、何回くらい経験があるの?」 「・・・・3回」 情けないが、初めて彼女ができた高2の夏から数えてこれだけだ。やろうと思え ばもっとやりたい放題できるのだろうが、そんな事をする度胸も甲斐性も達哉に は無かったし、自分から求めた事は一度も無かったと思う。 今回も、キッカケは作ったとは言え似たような感じだ。 「そう、私も似たようなものだわ。よろしく頼むわね」 「そうですね・・・、よろしく頼みます」 互いにぎこちない仕草で、温泉の水位の浅い場所へ移動しながら、互いの目を見 詰め合い、もう一度だけ確認を取った。この世界でもっとも脆弱な筈のヒトは、 この世界でも屈指の強い女性と惹かれ合って。ちょっとした偶然が折り重なり、 こうしてお互いの気持を確かめ合っている。 ――最も弱くて脆い存在だからこそ、誰の心にも入り込んでくる。 それは本当みたいね。入り込まれた後じゃ、気付いても遅いけど―― 獅子の女性は想った。 ――僕一人じゃ何もできない。けど、こうして守ってくれる相手がいる。 大切に思ってくれる相手がいる。元の世界よりも、幸せかもしれない―― ヒトの青年も想った。 「奇麗ですよ。レナさんて」 今度は達哉がレナの頬に手を添えて、余裕を強調した微笑を浮かべて言った。思っ ていたよりもスムーズに体は動き、レナの前で情けない姿は晒さずに済んでいる。 そのまま勢いに任せて再度レナと唇を重ね、互いの舌を絡ませ合う。 そろそろ慣れてきた事もあり、最初の口付けよりは2人のぎこちなさがとれてきた。 レナはまるで壊れ物を扱うかのように、優しく達哉の背中に腕を回し、唇を重ねた ままの状態で抱き締める。達哉も同じようにレナを抱き締めた。 達哉がレナの背中をゆっくりと撫で上げると、レナはネコ科特有のゴロゴロ声を出 した。相手がリラックスしてくれていると思うと、達哉も気が楽になる。 「お世辞なら・・・ッ、いいわよ」 また唇を離すと、すぐにレナからそんな言葉が返ってくる。やはり自分の容姿に対 して自信が無いと言う事が、達哉にも窺い知る事ができる。そんな謙遜することも なかろうにと達哉も思うのだが、そうもいかないらしい。 「お世辞なんかじゃなくって。レナさんに惚れましたから。 自分からこんなに行動したのも初めてだし、 誰かがこんなに素敵に見えたのだって、初めてですよ。 レナさんの所為で元の世界への未練とか、吹っ切れました。 医者ならこっちでもできるし、 元の世界だったら、僕みたいなのなんてごまんといるし。 もう、こっちで暮らす方が幸せかもって。」 本当に、元いた現代の日本で手に入らなかったような事が、こっちに来てから一気 に手に入る。悩みの種だった運動不足も、最近は解消されてる。愉快な仲間たちと の旅は、さながらRPGの世界のような気もして、慣れれば楽しかったりする。 なによりも、少し早合点だがレナみたいな女性が恋人なんて、幸せじゃないか。 「タチヤ、言ってくれるわね。 まあ、そこまで言ってくれるんなら安心できるわ。 ・・・こっちも、ウソ言ってるとは思えないしね」 「ちょ、レナさん!!」 レナは達哉の下半身に手を伸ばすと、歳相応の大きさをもった達哉の肉棒を掴んで 軽く刺激する。こんな事を自分からしたのは、やはりレナの方も初めてだ。しかし 達哉になら何をしても嫌われるような気がせず、思い切った行動がとれてしまうか ら不思議だ。 それは、達哉が自分に依存していると、ハッキリ分かっているからだろうか。達哉 は面白いほどに正直者で、少し読心術に長けた人間なら、簡単に心の内を読み取る 事ができる。 レナからの刺激に耐え兼ねて、今にも絶頂に達しそうになっているのも、手に取る ように分かった。いや、これは読心術とかそれ以前の問題だろう。レナはそこで手 の動きを止めて、達哉をイかせない。 「一人だけ気持ち良いなんて、不平等よね?」 「そうですけ・・・どぉっ!?」 レナは言いながら、達哉を押し倒す。レナの言葉に応えていた達哉だが、自分の体 がどんどん傾いていくのに驚いて、すっとんっきょうな悲鳴を上げた。今いる場所 の水位は足首くらいまでだが、ばちゃんと音を立ててお湯が飛び散る。 水がクッションになって痛かったりはしなかったが、それでも達哉は心臓が飛び出 るような思いだった。トキメキとは違う意味で高鳴ってしまった鼓動を落ち着かせ て、深呼吸した後で目線を上げた。そこにはやはりレナの顔があって、達哉を見下 ろしていた。 こういうのは普通、男が上になるべきなんだろうが、このシチュエーションも中々 捨て難いかもしれない。女性から押し倒されるなんて、そうある事じゃないだろう。 ・・・・よく考えたら、この世界のヒト奴隷♂にとってはこれが普通か。 「何ブツブツ言ってるの。続きよ」 「わ、分かってますよ」 少々ながら考え事にのめり込んでしまった。レナの声で我に返って、現実と向き合 う。考え事をしたのが少し勿体無く感じた。 そのままレナの胸に手を伸ばし、前に大学の悪友から借りたアダルトDVDの一場 面の如く揉みしだく。レナは経験が少ないだけあって初々しい反応を示し、それが 達哉を更に昂奮される。やっぱ理数系を狙っても男は男で、原始的かつ強大な欲望 に逆らう事は無理っぽい。 「うぁっ・・・!」 いつの間にかツンと立っていたレナの乳房を、軽く歯を立てて口に含む。当然だが 乳房に毛皮はついておらず、口の中に毛が入って嫌な思いをする心配はない。胸の その他の部分を舌で刺激しようとでも思えば、動物の毛が口の中に入るという微妙 な不快感は避ける事ができないのだろうが。 とかなんとか考えていると、その隙に今度はレナの方が達哉の首筋を舐めてきた。 首筋にゾリゾリした感覚を覚え、達哉は微かに身震いした。予想はしていたが、ラ イオンの舌はネコよりも強烈だ。前に家で飼っていネコに耳を舐められた事がある が、その時とは比べ物にならない。レナが本気で力を込めたら、多分首の肉が抉れ るだろうなと、グロテスクな妄想をしてしまった。 まあ、舌で殺されるなんて某オカマ超能力者の大佐みたいな事にはならないだろう。 ちゃんとレナは加減してくれている。しかし、女に力加減されるのも男として非常 に心苦しいモノがある。 レナの胸を揉んでいた手を、体の表面をなぞるようにして下腹部まで持っていく。 まず最初にレナの恥部の周りを刺激し、返ってくる反応に確かな手応えを感じつつ も、今度は中心を押し広げて指を少しだけ入れた。すでにそこは濡れ始めている。 「暖かいですね・・・」 「温泉よ。…ッ…当然でしょう」 「そういう意味じゃなく。レナさんの、ここがって意味」 そう言いながら、強調するようにレナの恥部の中を指で掻き回した。レナは体全体 でそれに反応し、弓なりに身体をしならせた。その姿はやはり色っぽく、何故レナ がモテないのか、達哉にはイマイチ分からなくなってしまう。 普段あんなに強くて、達哉他“蛇足”の男性メンバーをコキ使いまくってるレナ が、非力な達哉の指先でこうも乱れているのが楽しくて、更に何回もレナの中を 掻き回しては、淫らに乱れるレナを見てついつい笑みを浮かべてしまう。日頃から 100%抑え込まれてる、サディスティックな面が表に出てしまう感じだ。 「気持ち良いですか?」 ニヤニヤと笑顔を浮かべながら、達哉はレナにそう尋ねてみた。答えは分かってい るが、あえてそう尋ねてしまうのは、やはり意地悪だろうか。レナは何か答えよう とするが、達哉がレナの恥部に差し込んだ指を動かせば、言葉はぶつ切れになって しまい、何も答えられない。 「いっ・・・加…ッげんに!!」 達哉からの思わぬ反撃に、レナは達哉の頭を叩こうとした。だが、身体に力が入ら ず思ったようにいかない。繰り返される刺激に耐えながら、やっとの思いで達哉の 頭に手を置いたが、ポフポフと叩く事しかできない。 普段の自分との違いに苛立つが、それさえも快感の波に攫われて、徐々に頭の片隅 に追いやられていく。いつも心に着込んでいた鎧が一枚、また一枚と剥がされ、強 く振る舞わなければならない筈の、“蛇足”のリーダーとしての自分ではなく、た だの女としての自分を引きずり出されていく。 「タ…チヤぁ……!!」 レナがひときわ大きく身体をしならせ、恥部に入れられた達哉の指を大きく締め付 けた。一瞬だけだが頭が真っ白になり、イってるところを達哉に見られてしまった かと思うと、顔から火が出る想いだ。しかし想いとは裏腹に、口から出るのは甘っ たるい声だけ。そのまま達哉に抱き着き、身体の力を抜いてもたれかかった。 達哉はレナの恥部から指を抜くと、自分にもたれかかるレナを優しく抱き締めた。 指を抜くときにレナはビクリと震え、恥部からは愛液が滴り落ちる。達哉はレナの 頭から背中にかけてをゆっくりと撫でた。レナが落ち着くのを待つ事にする。 「大丈夫ですか・・・・・?」 レナが中々反応を見せてくれないのが不安になり、達哉はレナの顔を覗き込んでそ う尋ねた。もしかして背中を撫で過ぎて、気持良くて寝てしまったのではないだろ うか。何せ相手はネコ科なんだから、簡単に寝てしまってもオカシくない。 しかし、達哉の不安とは裏腹にレナの意識はハッキリとしている。ゆっくりと身体 を起こすと、達哉の肩に手を置いた。そして達哉の瞳を真っ直ぐ見詰めながら。 「……大丈夫なワケないわよ。 ああもう! いつもは無害そうな態度のクセに、 なんでそんなはっちゃけてるの? ここまで来る中で、そんな片鱗はチラとも見せなかったのに」 達哉を激しく揺さぶって不満をぶちまけた。達哉から上手に出られるなんてやはり 悔しい。達哉だけは無条件で自分の言葉に絶対服従だと何処かで思っていた。その 勘違いを後悔してももう遅く、達哉の非力な腕に抱かれて幸せを感じていると言う 事実は変えようも無い。 「もう、今さら隠し事しても仕方ないから素を出すけど、 誰にも話したらダメだからね。 私はクールビューティなお姉様で通ってるんだし、 これからもそのスタイルを崩すつもりはないの。 それをアンタはもう……!!あっさり私の心へ入り込んできて、 白状するけど、本気で誰かを好きになったのは初めてよ。 それにこうやって親以外の前で素を出すのも初めて。 親はもういないから、正真正銘タチヤは世界でただ一人だけ、 素の私と話した相手よ。私は虚勢を張る事でしか保身ができないけど、 タチヤの前でならそんな事をする必要もないわ」 口調は今までよりもずっと軽いもので、普段からは想像もつかない口数の多さと、い つもとは全く違う雰囲気を放っている。その豹変ぶりは、女性には裏表があるという 話しを実話だと実感できるものがあるのだが、達哉にそんな事を思っている余裕はな い。 先ほどからずっとレナに肩を掴まれて、物凄い勢いで揺さ振られているのだ。そろそ ろ意識が朦朧として、昨日の晩御飯を戻してしまいそうな気分だ。 「れ、レナさん・・・。分かりましたから、参りましたからぁ~・・・・」 今度は達哉がいつもの調子に舞い戻る。レナやクユラに良い様に使われてる情けない 達哉に。その情けなさを象徴したような声を出してレナに揺さ振りをやめるように求 めた。それでようやくレナは我に返ったらしく、達哉を揺さぶるのをやめだ。 「あ、大丈夫? ごめん。少し慌てちゃってね」 「大丈夫じゃありませんよ、まったく・・・・。 ムード打ち壊しじゃないですかもう。 さっきまでなんか物凄く良い雰囲気だったのに」 「小さい事を気にしてると、器が知れるわ。さ、続きよ続き」 レナはまた達哉を押し倒すと、達哉の下腹部へと手を伸ばし、イかせないまま放置し ていた達哉の肉棒を掴んだ。それから逃れようと達哉はもがいているが、手を少しだ け上下に動かせば、その抵抗も完全になくなる。さっきとは、完全に形成が逆転だ。 さっきの仕返しとばかりに、焦らしながら少しずつ刺激していく。 「れ、レナさぁん・・・・、そんな、中途半端に・・・ッ」 「ん?どうして欲しいの?口で言わないと分からないわよ?」 またもや情けない声を上げてレナを見るが、返ってくる言葉はテンプレートな濡れ場 の台詞。それは男が言う台詞ではないだろうかと思いつつも、ライオンに捕まえられ た赤ちゃんガゼルそのものの自分の状況は、そう言われて然るべきかもしれない。 レナが一度握った主導権を放すとは思えないし、達哉は観念してレナが望むように動 こうと思った。 「うぅ・・・・入れたい・・・です」 「え?ナニをナニに入れたいの?」 もはや、レナが悪鬼にしか見えない。こちとら恥じらい深い年頃の男性だ。レナの望 むようなセリフを素で言えるワケが無い。せめて酒でも入ってれば勢いで言ってしま えそうだが、今のままではかなり難しい。 願いを乞うような視線をレナに向けるが、レナは不気味な笑みを返すだけだ。どう見 ても獲物を狙う猛獣の表情にしか見えない。というか実際に獲物を狙う猛獣なのだ今 のレナは。 逃げ道がどこにも無い事を、達哉はイヤでも理解しなければならなかった。 「僕の生殖器をレナさんの膣内に挿入した後、 オーガズムに従って行動したいです」 これは大学の講義だ。抗議のときの、そういう性に関する問題の時だ。射精だの膣内 分泌液だのオーガズムだの、実務的な堅苦しい言葉に当てはめてしまえば、少しは恥 ずかしさも緩和される。 レナは難しい言葉を使われた事に不満そうだが、それでも構いはしない。達哉は死ぬ ほど恥ずかしい想いで先ほどの言葉を吐き出したのだから。それはレナも察してくれ たらしく、未だに満足はしていないようだが、それでも言葉責めから解放してくれた。 「そうね、今はそれで許してあげるわ。じゃ、行くわね」 レナは達哉の腰までズリズリと移動すると、膝を視点に立ち上がり、手で掴んである 達哉の肉棒を真っ直ぐ上に向け、その上に腰を落としてゆく。 「うっ・・・!」 まず最初に先の方が少しだけ入る。充分にレナの恥部は馴らされていたので、予想よ りも簡単に入った。 「タチ…ヤ……」 「レナさん……」 少しずつ少しずつ、ゆっくりと挿入を続けていく。お互いに不慣れな所為で、一気に 奥まで突き入れるとか、そういう発送はあるものの実行に移せない。しかし確実に奥 へと入っていく。少しすれば、レナと達哉の腰が完全に密着した。 「すっごい、気持ち良いですよ……」 「そっちこそ…ッ…、ヒトとするのが一番気持ち良いって、ホントね」 根元まで入ったところで、一息つきながらの休憩。笑いながら言葉を交わして、その 後で口付けを交わして、そのまま抱き合って。何度も何度もそれを繰り返す。 「そろそろ、動きます?」 「・・・・そうね。タチヤはへなちょこだから、 本気でかかってこないとダメよ」 「うわっ。言いたい放題ですね・・・」 いくらなんでも“へなちょこ”はないだろう。さっき達哉の事を好きだと言ったばか りなのに、その相手に対して”へなちょこ”は。それ以前に、レナと比べられたらほ とんどの男は“へなちょこ”だ。機嫌を損ねるだろうから言っていないが、レナの体 は筋肉質で、結構重い。それを上に乗せてるのだから、達哉だって“へなちょこ”じゃ 無い筈だ。 しかし反論したとして、レナが取り合ってくれなければそれまでだし、実際レナの視 点から見れば、達哉がへなちょこだと言うのは動かし難い事実なのだろう。ここまで の道程で散々情けない姿を見せてきたのだから。 とにかく、レナからのへなちょこ発言への反論は、行動で示す事にした。体位を変え て達哉が上になるようにすると、後は普通の男女間のやりとり。ギリギリまで引き抜 いて、また根元まで突き入れるの繰り返し。しかしその間にも、運動に合わせて揺れ る、胸の膨らみを掴んで揉みしだき、唇を重ね合わせるのは忘れない。 ヒトとかその他一般的なこの世界の女性と、レナとでは口の形が違うので、キスする のにはちょっと考えてやらなくてはならない。まず最初に唇を舌でなぞり、開いた口 に舌を差し込む。方法は普通と変わらないかもしれないが、形が違うので大変だ。 この世界の男女は、こんなんで苦労しないのだろうか。男と女でここまで外見が違う と、色々大変だと思うのだが。 「ふっ、あっ…あっ、うぁっ…ん!」 「レナさん。ホント、奇麗です……!!」 レナの嬌声が耳を刺激する。達哉が腰を打ちつける度、レナの秘所がビクビクと達哉 の肉棒を締め付け、さっきまで焦らされ続けてた事もあり、今にも絶頂に達しそうに なってしまう。それを必死に抑え込むのだが思うようにいかない。 一旦腰の動きを止めて仕切り直ししようにも、もう勝手に動いて止ろうとしない。そ もそも止めようと言う気が怒らない。もういっそ欲望に逆らわずに出してしまいたく なる。 「レナ…ッ…さん! ……レナぁ!!」 「――ッ!!」 結局そのせめぎ合いに負けて、達哉はレナの中に精液を吐き出した。いきなり溢れ出 してきたそれに、レナもビクリと反応して、今までで一番強く達哉の肉棒を締め付け た。達哉の背中にまわしてた腕に力を込め、力いっぱい抱き締めた。がしかし。 「ぎぎぎ、ギブ!ギブ!!身が出るぅ~~!!!!」 レナの背中をパンパン叩いて、達哉が有らん限りの声で叫んだ。しかし、胸を獅子の 力で抱き締められていては、息が詰まってしまい、そこまで大きな声は出せない。し かし流石に達哉の異変に気付き、レナは腕の力を緩めた。 レナの中に入れていた肉棒も一気に萎えてしまい、小さくなったそれが音も立てずに 結合部から抜け出し、その後には白い液体が垂れ流しになっていた。 「あ、ごめんなさい。そうだわ。タチヤはヒトなんだし、 私が全力で抱き締めたりしたら、ひとたまりもないのよね」 「えぇその通りです・・・・、女性に抱き締め殺されるなんて、 見る人から見れば贅沢な死に方でしょうけど」 肋骨がギシギシと痛むのに耐え、なるべくレナに心配をかけないよう気丈に振る舞お うとする。だが、やはり痛みに慣れてるワケでもないし、あっさりと表情へ出てしま った。もう少し精神力があればと思ったが、もう仕方が無い。 レナは心配そうに達哉を抱きかかえ、次からは今のような事を無くそうと、堅く誓っ た。今の達哉は息も絶え絶えで、よっぽど苦しかった事が伺えた。それを見ていると、 今さらながら自責の念が込み上げてきた。 今度は力加減を気を付けながら、できうる限り優しく抱き締める。レナから見れば疎 ましいだけの毛皮だが、この時は達哉を包んであげられるようで、なんとなく役に立 つようで嬉しい。 そのまま達哉の顔に頬擦りをして、この世界においては特徴的な耳に、吐息がかかる ほどに口を近寄せる。やはり息がくすぐったかったようで、達哉は軽くもがいた。だ がそれを気にせずに、達哉にそっと呟いた。 「好きよ・・・・」 「・・・・ッ」 こんな事まで言われて、達哉の顔は一気に赤く染まっていった。素で言われるとやは り照れてしまう。顔を背けてしまいたくなるが、雰囲気的にそれは無理っぽい。やめ てくれ。そんな真っ直ぐ期待を込めた目で見ないでくれ。もう言う以外の選択肢が何 もないじゃないか。 「・・・・僕って、落ちてきたヒトの中で、一番運が良いかも知れませんね」 「……?」 少し間を置いてから達哉が語り出すが、脈絡のない言葉にレナは首を傾げた。そんな レナの様子を見て、達哉はクスリと笑い、続きを話した。 「この世界に落ちてきて、速攻で捕まりそうになったけど、 その時はレナさんが助けてくれたし。 しかもそのまんま連れてって貰えて、僕を奴隷扱いもしないで。 そいでもって、トラウマになるような酷い目にも遭わないまま、 まだ短い間だけどみんなと旅して、笑いあって。 今じゃレナさんに好きだって言ってもらえて。 苦労も知らずにこんな幸せになれるなんて、 ホント何万分の一の確立なんでしょうね」 言われてみれば、達哉はかなり運が良い事になる。まず、落ちるときに死んでしまっ たり、落顎病を患ったりしなかった。そして奴隷として責め苦を受けたりなんて事と も無縁だ。ヒトにできる範囲で家事などの無い様でこき使われる事はあるが、それだ けで済んでるなんて、この世界では珍しい。 元の世界で学んだ医学知識を、こちらで役立てる機会にも恵まれ、自分が自分である 事を許されている。それは、ヒトにとって最も欲しいもので、だがどんなに欲しくと も手に入るかは運に寄るところが大きい。達哉のように、理解を示してくれる人間に 拾われるか、脆弱な身体で精一杯の主張を続けるか。 後者には命の危険が伴う上に、相当の苦痛を味わうのだろうが。 レナは達哉が言おうとしている事の全容が分かり、レナを褒めるような内容も少し入 っていた事もあり、気を良くして微笑んだ。 「そうね。達哉は私がいなければ、あのまま売られてたわ。 じゃあ、恩人の私に一生尽くしてくれるのも道理よね?」 「まあ、できる限りレナさんの期待に添えるよう頑張ります。 僕じゃできる事なんてあまりないでしょうけど」 「そんな事ないわよ」 「じゃあ何ですか?」 「それはまた明日にでも答えるわ」 人差し指で『チッチッ』と相手をたしなめるような仕草をしつつ、レナはそんな事を 言って話しをはぐらかした。達哉も落ち着いたようだし、そろそろさっきの続きをし ても良さそうだと思う。達哉も体力の無い人とは言え、男は男だ。一回出したくらい では満足できない筈。 またまた達哉を押し倒すと、口付けをしてザラついた舌で優しく刺激する。 「さ、タチヤ。続きよ、続き」 「なんか、すんごいデジャヴな光景です」 達哉は観念したように目を瞑る。多分明日の朝は、疲れで立つ事ができなくなってる んだろう。今だって全身の筋肉痛と戦っているというのに、この上で夜通し行為を続 ければどうなるか、予想するのは簡単だ。 大学の受験勉強で、3日間ぶっ続けで徹夜した事もあったが、ここまで疲れたのはそ のとき以来だ。いや、そのとき以上だ。もう何日も歩き尽くめで、やっとベッドで眠 れると思ったら悪夢を見て、温泉に入ってリラックスしようと思ったら、夜の世界へ 突入。 「もう好きにしてください・・・・」 もう諦めた。一生この相手の奴隷でいいや。もう抜け出せないだろうし、抜け出した いとも思えない。幸せ感じちゃってるから。 なんでレナに惚れたのかも分かんない。男女の関係なんてそんなモンだろうけど、そ れでもハッキリと分からないのは、どこか釈然としない。 ああでも、そんなんどうでも良くなってきた。ありのままの自分を必要としてくれる んだから。 × × × × × 「おらぁ~! タチヤ起きろ~!」 「ぐみゃ!?」 カーテンの隙間から光の射し込む部屋の中、深い深い眠りから、ミリアルドの体当た りで叩き起こされた。子どもとは言え相手の力はヒトと比べ物になるようなものでは なく、疲れた体に追い討ちをかけられ、達哉は苦悶の表情を浮かべた。 全身の筋肉痛はもはや悪化しており、昨日はほとんど眠れなかった所為で、疲労もあ まり回復していない。昨夜レナに強く抱き締められ過ぎたダメージはまだ残っていて、 ミリアルドの体当たりは、その身体にかなりの負担を掛けた。 「うお~い。タチヤ、朝飯作れよ。昨日買って来た食べ物があるだろ? タチヤの料理は結構美味いって、ガルナが言ってたぞ」 うわ。またいらん事を教えちゃって。こっちは凄く疲れてるのに、ここまでワクワク モード全開のミリアルドを相手にごり押しされては、最後には達哉が折れるしかない じゃないか。ホントもう後生だから、お願いだから寝かせて。 「後でミリー君だけに作ってあげるから、今は寝かせて。 僕はすっごい疲れてんの。ヒトの身体で何日も歩き続けてるんだからさ」 「ミリーって言うなぁ!!それと“君”とかもやめろ!むず痒い!」 ああっもう、ちょ、頭叩かないで。キミは加減してるつもりでも、僕はすっごい痛い 思いをしてるから。ほんとやめて。死ぬ。本気で死ぬ。僕を殺したらレナさんがいき なり未亡人になっちゃうよ。それでもいいの? あ、一回しただけでいきなりそこまで期待してたら駄目か。うん。なんか頭の中がこ んがらがって、そいでもって少し暴走。ろくな恋愛経験が無いんだから、仕方ないで しょ。若い内から運命の相手に出会っちゃったとか、そんな事を本気で思っちゃって る僕の愛読書は、ベル薔薇といちご100%さ。 ああ、うん。21にもなって流石に痛いか。気にしないで。僕は気にしてないから。 「じゃあミリー。僕は疲れてるの。 今日出発しちゃうんだから、 少しでも長く布団で寝られる喜びを謳歌したいの。 分かったら寝させて。僕を寝かせて」 それだけ言って、頭から毛布を被った。そのまま目を瞑ると、瞼の裏に昨晩の情景が 蘇る。多少は妄想の中で美化してしまってるかもしれないが、やっぱりレナは奇麗だ と思う。いいじゃないか見かけが獣人でも。奇麗って感じれるし。 「もういい!タチヤなんかここに置いてってやるからな! そしたら、こんなボロっちい建物に一人っきりだぞ! そんで一人で淋しくて泣いちゃえ!」 あはは。ミリー君は可愛いね。僕は君と違って夜中に一人でトイレに行けるよ。だか らそんな心配はしないで。泣いたりしないから。それにレナさんも僕を置いてったり しないよ。2人でお互いの気持を確かめ合ったばかりだから。 「とにかく、僕はいま幸せなんだよ。・・・・だから、オヤスミ」 第五話 終
https://w.atwiki.jp/aaarowa/pages/471.html
魔眼のピアス バックアタックが回避出来る。 このロワでは視野が広くなる、敵意を察知する(確実ではないかも?)等の効果を発揮。 なお対象との距離や、精神的疲労によって効果は減少する模様。 ※以下、ロワ内でのネタバレ +【アイテム追跡メモ】 【アイテム追跡メモ】 [支給された参加者] ヴォックス [所有者] ヴォックス(29話、54話、56話) ↓ オペラ(56話、66話) ↓ レナ(87話) ↓ ディアス→アルベル→ディアス(93話) ↓ レオン(93話、102話、107話) ↓ レナ(107話、116話、121話(前)(後)、129話(前)(中)(後)、131話(前)(後)、137話) [メモ] 56話でヴォックスを殺したオペラが回収。 87話でオペラの死体からレナが回収。 レナ→ディアス→アルベル→ディアス→レオンの流れは93話参照。 107話で再びレナが持つ事となり、以降はレナが所持。 支給品一覧に戻る
https://w.atwiki.jp/dqff1st/pages/498.html
「ここが新しいフィールドね」 「寒いよう…」 レナとバーバラは身を寄せ合う。 どうやら森の中のようだ。樹の上にも足元にも冷たい白い物が積もっている。 「これが雪っていうのね。はじめてみたわ」 「えっ、そうなんだ。お姉ちゃんのいた世界は雪は降らなかったの?」 「ええ。暖かい所だったから…。小さな頃、雪の絵本を読んでもらって姉さんと一緒にいつか見にいこうね、って言ってたわ…」 レナは静かに幼い日の思い出に目を伏せる。 そして、いつも自分を安心させてくれる大好きな姉の綺麗な笑顔を。 「お姉ちゃん…」 「あ、ごめんなさいね。もう大丈夫よ。そういえばイリーナさん、どうしたかしら」 「うーん。また会えるといいんだけどね。誰か会った人がいるかもしれないから、そうしたら聞いてみようよ!」 「ええ、そうね。でも気をつけて。今は決して安心できる人ばかりではないから…」 レナは言い聞かせるようにバーバラに念を押した。 その時。 「あ、あそこに誰かいるよ!」 森の木々の間から薄緑色の髪の毛の少年の姿が見えた。 おそらくバーバラよりも少し年上だろう。 少年は必死に何かを探すかのようにさまよっている。 「ねえねえー!そこのあなたー!!」 レナが止める間もなくバーバラは少年の元へ走りよる。 少年は驚いたようにバーバラを振りかえったがそれがまだ子供だと気付きいくらか安心した表情になった。 レナもあとから追いかけて少年に尋ねた。 「あなた、一人?名前は?」 「う、うん…僕はソロ…」 2人に殺意や闘気がないことを察し少年はおどおどと口を開いた。 「ソロっていうの?あたしはバーバラ!このレナお姉ちゃんと一緒に、お姉ちゃんのお姉ちゃんをさがしてるの」 バーバラが元気に自己紹介し、それにあわせてレナも頷く。 「ねえ、君達は信用してもいいよね?僕を裏切らないよね…?」 2人の笑顔をソロは泣き出しそうな目で見上げた。 「ところで君達の探してるお姉さんって、どんな人?」 もしかしたらそれがティファかもしれないと一瞬ソロの目が光った。 「僕も女の人を探してるんだ!もしかしたらその人かも…」 「え、ええ。髪の長い…」 レナがそこまで言っただけで間髪入れずソロが問い返す。 「色は!?」 「綺麗な紫色の…」 それを聞いてソロの顔が曇った。ソロの記憶するティファの髪は黒色だった。 「違う人みたいだね。残念だよ」 すかさずバーバラが言った。 「あ、そうだ。あたし達もう一人人を探してるんだけど、知ってるかな?」 「それは?」 「あのね、こう短い金髪でスーツを着たお姉ちゃんなんだけど…」 ソロの頭の中をイリーナの姿がよぎる。 そして目を覚ます殺意。狂気… 「お前達もか…」 その声は先ほどと打って変わって低かった。 レナとバーバラは背筋に寒気を走らせる。 「お前達もデスピサロの仲間だったんだな!?また僕を裏切るんだな!!!」 「ちょ、ちょっと待ってよ!!なんであたし達が裏切り者なの!?」 「バーバラちゃん、この子変だわ!逃げましょう」 とっさにレナがバーバラの手を握って走る体制に入る。 「変?僕が?変なのはお前達だろう?あの女の仲間なんだろう!?」 「こ、怖いよう…」 一刻も早く走り去ろうとするがバーバラの足がすくんでなかなか立ちあがれない。 「もう嫌だ…せっかく信じられると思ったのに…みんな僕を裏切るんだ…みんな、みんな…」 ソロが呟きながら鞘からエンハンスソードを抜いた。 危険を察し逃げることを諦めたレナはメイジマッシャーをソロめがけて投げ付けた。 しかし、手に持った長剣で跳ね返されてしまう。 「バーバラちゃん、早く逃げて!!」 武器を失ったレナは観念した。が、この少女だけでも生かそうと大声で叫ぶ。 「お姉ちゃん!!」 バーバラはなんとか立ちあがり叫ぶがもう遅い。 次の瞬間、レナの腹から背にかけて長い剣が突き刺さっていた。 雪の上のその身体がどさりと倒れる。 「に…げて…」 バーバラに声をかけるのがせいいっぱいだった。 「姉さん、バッツ…ごめんなさい…私、もう…」 どくどくと赤い血が流れ白い雪を染めていく。 レナの薄れ行く意識の中では数々の人々の姿が浮かんでいた。 勇ましい父。 優しい母。 そしてかつての戦友、ガラフ。ゼザ、ケルガー。 ふっとその中かから白い手が差し伸べられる。 レナは暖かいその手に自分の手を重ねその人物の顔を見る。 穏やかに微笑むその人物は紛れも無く最愛の姉の姿だった。 「レナ…」 エメラルドの宝石のような4つの瞳が見つめ合う。 2人はお互いに手を伸ばし、抱き合った。 「ねえ…さ…ん…」 それがレナの最後の言葉だった。 「お姉ちゃん!!」 ソロは完全に事切れたレナの腹から剣を抜くとバーバラに向き直る。 「こ、こないでよ!!化け物!!!! 」 バーバラは足元の雪を掴んで投げつけるのがせいいっぱいだった。 ソロは血の滴る剣をバーバラに容赦なく振り下ろそうとする。 「もう嫌だよおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 その瞬間バーバラの身体からものすごい魔力が放たれた。 ともすれば大爆発をおこしそうな勢いの魔力だ。 「いやーーーーーーーーーーーーーー!!!!」 ソロはその魔力に当てられ、一瞬目を瞑る。 次に目を開けたとき、そこに少女の姿はなかった。 「しまった!逃げられた!?」 ソロは走り出した。 もしもあの少女に自分のことを触れまわられたら、そしてそれがティファの耳に入ったら… 想像すると寒気がする。とにかくあの少女だけは殺さなければならない。 ふと横に倒れたレナの死体が目に入る。 一体どれだけの人物が自分のせいで死んでいったのだろう。 恐ろしいほどの罪悪感がソロを支配せんとする。 「なんだってみんな僕を…みんなあいつが、デスピサロが悪いんだ…」 「僕は悪くない…僕は悪くないぞ…」 ソロは再び森の中をさまよいはじめた。 【ソロ 所持品:エンハンスソード スーツケース核爆弾 イリーナの社員証 第一行動方針:バーバラを殺す(最優先) 最終行動方針:デスピサロを倒す】 【現在位置:ロンダルキア南の森】 【バーバラ 所持品:果物ナイフ ホイミンの核 第一行動方針:ソロから逃げる(森の中を逃走中) 第二行動方針:仲間の捜索】 【現在位置:ロンダルキア南の森】 ※核には記憶とかいろいろ詰まってますが、そこから肉体は再生できません 【レナ 死亡】 【残り 61人】 ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV バーバラ NEXT→ ←PREV レナ NEXT→死亡(炎の鳥) ←PREV ソロ NEXT→
https://w.atwiki.jp/aaarowa/pages/449.html
第116話 She Has The Sticky Fingers G-5エリアの山道。辺りは暗闇で視界が殆ど利かない。 唯一の自然光源である月明かりは密集している樹々の葉に遮られてしまっている。 稀にその隙間から僅かに射し込む光は、暗闇に目を慣らしたい人間にとってはむしろ逆効果となり、 余計に暗闇を強調しているかのようだった。 レナとプリシスの2人はランタンを点けてこの山道を下っていた。 『夜道に揺れ動く照明は人を寄せ付ける効果が有る』というのは、 この島でのたった半日だけの仲間、アリューゼがプリシスに教えてくれた事だ。 いや別に2人には誰かを呼び寄せるつもりなどは全く無い。 この暗闇の山道を歩くには、灯りを点けなければ余計に危険であり時間を取られてしまう、というだけの事だった。 一応不意打ちには備えてレナが左耳に魔眼のピアスを装着していたが、今のところピアスは何の反応も示さなかった。 「この辺だよね?レナ」 「そうね…」 もうすぐ最初の目標地点である、G-5エリアの三本の道が合流する地点に到着する。 そこには、半日程前にレナとディアスが見つけた2つの死体があるはずだった。 2人が平瀬村に行く事に決まった後、レナはまず最初にこの場所の死体の事を伝えた。 出来る事ならあのような惨殺死体など何度も見たくは無い。見ないで済むならそれに越した事は無いのだが、 この島からの脱出に繋がるかもしれない“首輪の結晶体”を回収するには 平瀬村への通り道にある彼等の死体は非常に都合が良いのだ。泣き言など言っていられなかった。 「あ…あそこかな…」 しばらく早足で進んでいると、左右に別れる道が見えてきた。倒れている2つの人間らしき物体も視界に入ってくる。 死体はレナが昼間見つけた時のままの姿のようで、周辺の荒れ具合も変わっていない。 2人は立ち止まり、レナがプリシスに話しかけた。 「酷い状態だから、覚悟しておいた方が良いわよ。…こんな言い方もあの人達に失礼かもしれないけど。でも…」 「…ねえ、レナ?――」 レナは言葉を続けようとしたが、死体を眺めていたプリシスがそれを遮って質問をする。 その声は、気のせいか若干震えているように聞こえた。 「――ここで死体見つけたのって、お昼頃って言ったよね?」 「え?…そうよ。最初の放送が終わってから…そんなに経ってなかったと思う」 「…その時から、首が斬られてたの?」 聞かれて、レナはプリシスに死体の状態までは話していなかった事を思い出す。 さっきは、ただ2つの死体がここに有る事を伝えただけたった。 「…ええ…酷いわよね…こんな事をするなんて…」 レナは再び見る事になったこの惨状に気が滅入りそうになる。 と同時に、プリシスの事が気になった。彼等に同情して塞ぎ込んだりはしないだろうか。そう思いプリシスの方を振り向いた。 だが、レナの心配など杞憂であるかの様に、何故かプリシスは死体に向かって走り出したではないか。 「プリシス!?」 プリシスは女性の死体の元に駆け寄ると、屈み込んで死体を調べ始めた。 (…首輪を回収するだけじゃないの?) 首輪の回収の為に死体の首を自分達で切断しなくてもいい、という点でも彼等の死体は都合が良かった。 だが今、どうもプリシスは首輪を回収しようとはしていない。何をしているのか、レナには見当がつかなかった。 「どうしたの?プリシス」 声をかけるがプリシスは返事を返す事無く、もう1人の死体も調べ出し、更にランタンをかざして死体周辺を調べ始めた。 視線を地面に落としながらも時折レナの方向を向くプリシスの表情は、真剣そのものだ。 どうやらレナの声は届いていない様子である。 レナは、極力死体が目に入らないようにプリシスに近付き、もう1度声をかけようとした。 プリシスはこの2つの死体を見て、瞬時に昼間発見した夢瑠の事を連想していた。 現在地からほんの半エリア程の距離だけ南に離れた地点で、 そう、まるで、この男女の死体と同じ様な状態で殺されていた夢瑠の事を。 続けて連想される事はプリシスの最も考えたくない事だったが、 『きっと状況が似ているだけで、夢瑠の事とは関係が無いに決まっている』 プリシスは無理矢理にそう思い、それを証明する為に死体を調べ始めた。 (…そんなことないよね?) 放送後に発見された死体。その1、2時間後に夢瑠達に訪れた惨劇。半エリア程度の距離。 (…まさか…だよね…?) 切り裂かれている男女の身体。切り裂かれていた夢瑠の身体。身体に残る傷跡。 (…この人達も…首輪が無い…?) 切断された首。持ち去られている首輪。 だが、調べれば調べる程、考えれば考える程、両方の出来事は関連しているようにしか思えず、 プリシスの考えたくなかった或る1つの答えが導き出される。 すなわち、彼等2人を惨殺したのもアシュトンである、という答えだ。(首輪を持ち去る理由は不明だが) プリシスもそんな答えは認めたくはなかったが、それ以外の推論をいくら都合良く組み立ててみても、 これだけの状況証拠の前では“アシュトン犯人説”以外の推論など何の説得力も持たなかった。 「…アシュトン…」 無意識に、呟いていた。 (この人達も…あたしのせいで…) 再び遭遇したアシュトンの狂気の足跡。 ネルと夢瑠の事。レオンの腕の事。アシュトンを恨みながら退場してしまったジャックとアーチェの事。そして今の彼等の事。 その足跡は否応なしにこれらの事を思い返させる。 そして思い返す度に、一度は抑え込んだプリシスの自責の念が、少しずつ膨らんで大きくなっていった。 (…あたしのせい…それじゃあ…) だが今のプリシスには、 (あたしがアシュトンを止めなきゃ!) 泣きじゃくっていた先程までの様な自虐的な考えは無かった。 勿論、自分のせいでアシュトンを人殺しにしてしまった事や アシュトンが死なせてしまった人達への悲しみと贖罪の気持ちは大きい。 しかしその気持ちよりも勝り、そして彼女の自責の念が働きかけたのは “どうにかしてアシュトンを止めたい”という前向きな、希望に通じる想いだった。 (でも…止めるって言ってもどうしたらいいのかな…? いつもだったら…どうしてたっけ?アシュトンが落ち込んでたりしたら… あ、ひっぱたいて励ましてたんだ。いつもならそれで立ち直ってくれたんだけど 今のアシュトンは『いつも』のアシュトンじゃないんだもんね… …ひっぱたいたくらいじゃダメだよね…人を…殺しちゃうくらい…だもん。 こんな残酷に…何人も何人も。…あたしの為に…あたしのせいで… でも…あたしの為にやってるんなら…あたしにしか止められないんだよね! 「――ス」 どうしたらいいのか…まだ分かんないけど…頑張らなきゃ!アシュトンの為にも…) 「――シス…―リシス」 そしてその想いは少しの間、プリシスを思案に暮れさせる事になっていた。 レナが呼び掛けている事にもなかなか気が付けない程に。 「…プリシス?……プリシス?」 「……ほぇ?」 何度目かの呼び掛けで、ようやくプリシスの意識はレナの呼び声を認識したようだ。 振り向いたプリシスの目は、まだ今一焦点が合っていなかった。 「…あ、ゴメンゴメン、なぁに?」 「…大丈夫?何か…あったの?」 「え?…あ、ううん!……首輪。そう、この人達の首輪がどこにも無いんだよ!」 プリシスは妙に慌てた様な態度で、微妙にチグハグな返答をした。 何かを誤魔化そうとしている?レナにはそう感じられた。 だが、プリシスの誤魔化そうとしている事も気になるが、『首輪が無い』という指摘も気になった。 「…首輪が?」 あまり直視したくなかったが、レナは死体を確認してみる。確かにどちらの死体にも首輪が無かった。 昼間はどうだったかと思い返すが、駄目だった。覚えていない。 惨殺されている事自体に気を取られ、首輪にまでは気が回っていなかったのだ。 そもそも昼間首輪が無い事に気付いていたら、この場所でわざわざ立ち止まろうとはしなかったが。 「何処かその辺りに落ちてるんじゃない?」 レナもランタンをかざして辺りを見回してみるが、少し見回した程度では周りに何が有るかまでは良く分からない。 辺りの探索をしてみようと考えたところで、 「…ん、無いと思う。多分首輪は犯人が持ってったんだよ」 プリシスがそう言い、立ち上がった。 「犯人…?こんな事をする犯人がどうして?」 自分達のように脱出を目指している者ならともかく、殺し合いに乗った者が首輪を持ち去っていく必要は無いはずだ。 「…そんなの…分かんないよ…」 プリシスは小さく、悲しそうに呟いていた。 だが小声だった為、レナは聞き取る事が出来なかった。 「え?」 「……ん!何でもないよ!さ、行こっ!」 プリシスは平瀬村の方向へ歩き出した。そのあまりにもあっさりとした様子にレナは疑問を抱く。 (…探さないの…?) 首輪は、脱出する為にはおそらく必要な物なのだ。 確かに今死体には首輪は無いのだから、彼等を殺害した犯人、もしくは他の誰かが持ち去ったと考えるのはまあ良い。 だが、それはあくまでも推測に過ぎないのだから、もう少し周辺を探してみても良いはずだろう。 なのにプリシスはあっさりと彼等の首輪を諦めてしまっている。 プリシスは“首輪は犯人が持ち去ってしまいここには無い”と『考えている』のではなく『確信している』ようだった。 「プリシス…――」 レナは思った。プリシスはここで何かに気付き、隠そうとしている。 そして、はっきりとは聞き取れなかったが、先程プリシスが考え込んでいた時に呟いていた言葉。 今思えば、名前を呟いていたような気がする。レナにある予感と不安が芽生えた。 プリシスがレナの呼び掛けに振り向いた。 (この人達を殺した犯人はアシュトンなの?) レナはそう聞こうとした。プリシスがわざわざ誤魔化そうとする事などはそれ以外考えられなかった。 「――ううん…何でもない」 だが、聞くのは躊躇われた。 『彼等を惨殺した犯人はアシュトン』 その答えはレナ自身が聞きたくない事でもあったから。 「……うん!さ、急ご!レオン達より先に戻ろーね!」 まるでゲームでもやっているかのように言い、プリシスは前を向いて歩き出す。 レナも、胸の中に芽生えた暗い不安からは目を逸らす事にして、プリシスに続いて歩き始めた。 余談ではあるが、もし今2人がこの周辺で首輪の探索をしていれば、 もしかしたらディメンジョン・スリップを握ったロジャーの死体を見つけ出せたかもしれない。 だが、2人は探索せずにこの場から離れていく。当然、ロジャーには気付きようも無い。 誰かがロジャーを発見する時はいつになるのだろうか?いや、その時は来るのだろうか? それはまだ、誰にも分からない。 死体の有った場所からしばらく道なりに進んだところで、レナは地図を出して進路上を確認した。 目的地である平瀬村に入るルートは現実的に考えて2つ有る。 1つはF-3を通るルート。 こちらは村から出る、または村へ入ろうとする参加者と出会う可能性が有り、比較的危険度の高いルートだ。 もう1つはH-3北西部からG-3の禁止エリアを掠めるように通過してG-2に抜けるルート。 こちらは一見したところは禁止エリアに阻まれているが、首輪の30秒の制限時間のお陰で通り抜ける事は可能だ。 そして、首輪の30秒の制限時間を知らない人物ならあまり近寄る場所ではないだろう。 つまり、他の参加者が通る可能性は低く、安全性は高いと思われる。 レナとプリシスの2人は事前に、 レオンの『エルネストは村に居る可能性が高い』という推理、 アルベルの『出来るだけ安全なルートで進む』という旨の提案から、 安全性の高いルートであるH-3ルートから平瀬村に向かう事を決めていた。 「ねえ、平瀬村に到着する前に少し休憩しない?村に着いたら…何があるか分からないし」 レナが確認していたのは、進路上で休憩を取り易そうな場所だった。 今、レナはプリシスの事を心配していた。 その理由は、先程の死体を調べていた時と、その場所から今ここに来るまでの間の、 沈痛そうに眉根を寄せて思案に沈んでいたプリシスの様子にある。 いつものプリシスだったら何かを悩んでいる時や悲しんでいる時でも、 先程の様な、露骨に思案に沈んでいる姿などは周りに見せようとせず、表向きは明るく振舞おうとするのだ。 だが、今のプリシスにはそんな様子があまり見られない。 それはつまり、感情を取り繕う余裕も無いくらいに肉体的、精神的な疲労が大きい、という事だろう。 他の参加者が集まっていると思われる平瀬村に到着してしまえば、 どんなタイミングで、どんな参加者と出会い、どんな事が起こるかは全く予測出来ないのだ。 最悪を考えれば、氷川村のガブリエル戦のような事が起こる可能性だって有る。 出来る事なら、そんな危険な場所に今の状態のプリシスをこのまま向かわせるより、 村よりも安全であるはずの進路上で少しでも休ませて疲労を回復させてやりたい。 レナはそのように考えていた。 「大丈夫大丈夫!休むのはレオン達と合流してからにしよ!」 「…でも…」 「それに、今は時間がもったいないじゃん?はやくエルネストを見つけなきゃ!」 「……そう…ね」 だがプリシスを休ませたい気持ちと同時に、『時間が無く、急がなくてはならない』という気持ちもレナの中に存在していた。 状況は刻々と変化する。いつ仲間達が危険と遭遇してもおかしくないのだから、 今はプリシスの言うように、休んでいる暇を惜しんでも仲間達を探す事を優先するべきなのは間違っていない。 いや、むしろ正しいと言えるだろう。 その気持ちも持っていたレナは、今のプリシスの言葉に自分の提案を通せる意見を持ち合わせておらず、 『プリシスを休ませたい気持ち』と『急がなくてはならない気持ち』 自分の中に在るこの2つの相反する気持ちに、無力感にも似たもどかしさをただ感じる事しか出来なかった。 そして、自分が先程のプリシスの様に沈痛そうな表情を浮かべている事には気付いていなかった。 一方のプリシスは、レナが休憩を提案した真意に、何となくではあるが気付いていた。 プリシスは目の端でレナを捉える。その表情は明らかに暗い。そして微妙に空気が重く感じられる。 (やっぱり…心配させちゃったかな?) おそらくレナは、先程から度々上の空になっていた自分を心配してくれてあの様な事を言い出したのだろう。 心配してくれるのは純粋に嬉しい事ではあるのだが、 『自分を心配して』と言うのは『自分のせいで心配させてしまった』と言う事でもあるのだから素直に喜んでもいられない。 プリシスはアシュトンの事を考えるのは後回しにして、重くなってしまっている今の空気を何とかしようと考えた。 別に誰かが決めた訳では無いのだが、前の冒険でもパーティの雰囲気を盛り上げるのは彼女の役目だったのだ。 そのムードメーカーが自身のせいで雰囲気を暗くしてしまっては元も子もない。 (そだ!アレがあったっけ) プリシスは自分の持ち物を思い出した。『アレ』の思い出話ならレナを元気づけられるかもしれない。 「あ、そだ。レナ、良いもの見せてあげる!」 「…良い物?」 ちょっといきなりすぎたかな?と思いながらもプリシスは自分のデイパックをまさぐり、 「じゃ~ん!」 1つの道具を取り出した。 「あ…それ」 「そ、『盗賊てぶくろ』だよ!懐かしいでしょ?」 『盗賊てぶくろ』 他人の持つアイテムを一定確率で盗む事が出来る手袋だ。 成功すればどんなに厳重に守っているアイテムでも気付かれずに盗み取れるが、 失敗すると、何処からともなく聞こえてくる『ブブー』というベタな効果音のせいで必ずばれる。 「本当、懐かしいわね。…持ってきてたの?」 「違うよ。これね、あたしの支給品の中に入ってたんだよ」 「へぇ、こんな物まで有るのね。…ふふ、クロードがよくそれ持って街中走り回ってたわよね」 レナはクロードの姿を思い出した。まだこの島でクロードとは再会出来ていない。 クロードは無事なのだろうか。放送では呼ばれてはいないが、誰かに襲われて怪我をしてないだろうか。 そのような事を考え、ほんの少し、不安で胸がチクリと痛んだ。 「な~に言ってんの。レナもじゃん」 プリシスがニンマリといった感じの笑顔で言う。 「そ、そんなことないわよ」 あまり突っ込まれたくない話に、思わず赤面して叫んでしまった。 「みんな言ってたよ!『関わり合いになりたくないカップルだな』って!」 「…もう…みんなって、ボーマンさんとエルネストさんでしょ?そんなこと言うの」 赤い顔がますます赤くなる。だが、その赤い顔からは自然と笑みが浮かんだ。レナは少し楽しい気分になってきていた。 「アハハ、当ったり~♪よく分かったじゃん! ね?ね?そういえばさ、リンガのクロードとエルネスト覚えてる?」 空気が明るくなってきたと感じたプリシスは、話を広げようとする。1つ面白かった話を思い出したのだ。 「あれよね?クロードがエルネストさんの持ってたバトルスーツを狙って、リンガ中つけ回してたのでしょ?」 レナもその話は良く覚えている。 その時のエルネストは自分をつけ回しているクロードに気付いており、 居心地悪そうにリンガの町中をうろうろと移動していたらしい。 「そーそー。そんで何か変な本に影響されてたオペラがさ、 『エルは渡さないわよ!クロード!』な~んて変な誤解しててボーマン先生が大笑いしてさ…」 そこまで喋ってから、プリシスはしまった、と思った。 オペラの名前を出した時からレナの表情が段々曇り出したのだ。 「あっ……えと…ゴメン」 「…ううん、平気よ」 再び暗い雰囲気に戻ってしまった。 だがプリシスは悪気があって言ったのではない。 この場を少しでも明るくしようとして言ってくれた事なのだ。それはレナにもよく分かっている。 「…ボーマンさんって言ったらクロスよね」 プリシスの『お姉さん』としては、プリシスだけに気を遣わせる訳にはいかない。今度はレナが話を始めた。 「…クロス?」 「ほら、クロスで首輪にオリハルコンつけた犬が居たじゃない?」 それはプリシスも覚えていた。確か、茶色の雑種犬だ。 「あ、あの犬?可愛かったよね~♪そだ、思い出した! ボーマン先生さ、『犬っころの分際でオリハルコンとは生意気だ!』とか言って盗ろうとしてたっけ!」 「そうそう!結局失敗しちゃって。たまたまそばに居たアシュトンと一緒にその犬に追いかけられて、 ボーマンさん『アシュトン!お前犠牲になれ…」 プリシスの顔を見て、レナはハッ、と口に手を当てた。 プリシスの笑顔は先程のレナ同様、徐々に悲しげな、力の無い笑みに変わっていく。 今は『アシュトン』は禁句に近い言葉だった。 「あ…ごめんね…」 「……ううん!い~んだよ。楽しかった事を話してるだけじゃん!」 「…そうよね…」 「…そうだよ…」 楽しかった思い出話。 そう、かつての冒険は辛い事も有ったが、思い返してみれば楽しかった思い出ばかりが蘇る。 いや、辛かった事だって、今になってみれば笑いながら話せているのだ。 きっと10年、20年と経っても、何十年も経ってみんながヨボヨボの老人になっても、 あの冒険は楽しい思い出として心に刻み込まれていたはずなのだ。 …こんな事に巻き込まれさえしなければ。 今の気持ちを素直に表すかの様に沈黙が2人を包み、笑みは無くなった。 並んで歩いていた2人だったが、プリシスの歩みがやや遅れ始めた。 2人はかつての冒険を思い出して、理解した。 あの冒険の思い出は今、痛みと悲しみに包まれているのだ。 決して傷の有った思い出ではない。つい2日前までは、ただ楽しかった思い出だった。 その思い出を、何故今は思い出すとこんなにも心が痛むのだろうか。 理由は分かっている。 この無意味な殺し合いが、仲間達を傷つけているからだ。仲間達との思い出や絆までをも傷つけているからだ。 では、何故楽しかった思い出を、こんなにも悲しく思い返さなくてはならないのだろうか。 何故レナが、プリシスが、他の皆がこんな思いをしなくてはならないのだろうか。 その答えは、2人には出せなかった。 (…え?)(…え?) 代わりに、2人は気付いてしまった。 (もしかして…ずっと…?)(もしかして…ずっと…?) あの冒険を、今までのように楽しく笑って思い出せる日は、もう二度と来ないのだという事を。 どうしたってレナを人質に取ったオペラの事を思い出してしまうのだから。 何の躊躇いも無くレオンの腕を切断したアシュトンの事を思い出してしまうのだから。 こんな事で命を散らせてしまった仲間達の事を思い出してしまうのだから… その事に気付いた2人は、心が抉り取られたかのような、激しい喪失感を感じた。 その喪失感は瞬く間に胸全体に広がり、大きな痛みへと変化する。 今までに経験した事の無い形の喪失感と、全く想定していなかった痛みに不意を衝かれた2人は 思わず泣き出したくなった。声を上げて泣いてしまいたい。 (駄目よ!私が泣いたらきっとプリシスも泣き出すもの。 堪えなきゃ!私はプリシスの『お姉さん』なんだから!) レナは、無意識にまばたきを繰り返していた。涙を堪える為だ。 自分がしっかりしなくてはプリシスを護る事は出来ないのだから、泣く訳にはいかない。 (だめだめ!…あたしが泣いたらレナも泣いちゃうよ。 …我慢しなくちゃ……あたしは…ムード…メーカー…だもん…!) プリシスは盗賊てぶくろを手に装着すると、後ろからレナに近寄り、スッ、と手を動かしてレナを追い抜いた。 「へへ~」 プリシスは後ろ向きのまま手に持った短剣を掲げ、レナに見せる。 「え…?何それ?…ってちょっと!?プリシス!?」 レナは自分の腰に手を当てる。無い。腰に挿していた短剣が無くなっている。 するとやはりプリシスが持っている短剣は… 「成功~♪」 プリシスはレナの方を振り向く事なく、そのまま走り出した。 「『成功~♪』じゃないわよ!ちょっと、待ちなさい、プリシス!」 (ゴメンね、レナ…今は…待てないんだ…) プリシスは泣いていた。 プリシスの泣くまいとする想いとは裏腹に、彼女の喉は強張り、胸は熱くなり始め、涙が溢れ出てくる。どうしても止められない。 せめてムードメーカーとして、泣き顔をレナに見せる訳には行かなかった。見られたくなかった。 だから逃げる。涙が止まるまで、逃げなくてはいけない。レナにこれ以上心配させない為に。この場を暗くさせない為に。 それがムードメーカーとしての役目なのだから。 (ごめんなさいプリシス…『お姉さん』なのにあなたを慰める事が出来なくて…) レナはプリシスが泣いているのに気付いていた。 プリシスは気付かれてないと思っているようだが、彼女の声は涙声で上擦っていた。 それにレナも涙を堪える事が出来ているだけで、プリシスと同じ気持ちなのだ。 いくら誤魔化そうとしても分かってしまう。 そして、同じ気持ちである分、この暗く憂鬱な気分を晴らす方法が無い事にも気付いていた。 どうすればこの気分が晴れるのかレナには分からない。 つまり、同じ様に落ち込むプリシスを慰める方法も分からなかった。 (だから、この鬼ごっこには付き合ってあげるね。あなたの気が済むまで…) 「プリシス!待ちなさいってばー!」 レナも走り出した。プリシスを追いかけるのだ。 この悲しい鬼ごっこが終わるまでは、せめて、何も気付かない振りをして。 自分に出来る事はそれくらいしか思いつかないのだから。 レナの目に再び涙がにじむ。レナはそれをこぼさないように空を見上げた。 樹々の隙間からは輝いてる星々が見え、涙を通して見る星の光は、様々な方向に長く伸びて広がっている。 レナにはそれがまるで、自分の代わりに星が涙を流しているように見えていた。 【H-04/黎明】 【レナ・ランフォード】[MP残量:45%] [状態:仲間達の死に対する悲しみ(ただし、仲間達のためにも立ち止まったりはしないという意思はある)、精神的疲労大] [装備:護身刀“竜穿”@SO3、魔眼のピアス(左耳)@RS] [道具:荷物一式] [行動方針:多くの人と協力しこの島から脱出をする。ルシファーを倒す] [思考1:プリシスと共に平瀬村を目指す。次の、ないしその次の放送までに鷹野神社に戻る] [思考2:レオンの掲示した物(結晶体*4、結晶体の起動キー)を探す] [思考3:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考4:アシュトンを説得したい] [思考5:エルネストに会ったらピアス(魔眼のピアス)を渡し、何があったかを話す] [思考6:クロードに会いたい] 【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%] [状態:アシュトンがゲームに乗った事に対するショック(更に大きく)] [装備:マグナムパンチ@SO2、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔100/100〕@SO2 盗賊てぶくろ@SO2] [道具:無人君制御用端末@SO2?、ドレメラ工具セット@SO3、解体した首輪の部品(爆薬を消費。結晶体は鷹野神社の台座に嵌まっています)、荷物一式] [行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを倒す] [思考1:レナと共に平瀬村を目指す。次の、ないしその次の放送までに鷹野神社に戻る] [思考2:レオンの掲示した物(結晶体*4、結晶体の起動キー)を探す] [思考3:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考4:アシュトンを説得したい] [備考1:プリシスの支給品は盗賊てぶくろでした] [備考2:適当なところでレナに護身刀“竜穿”を返しています] [現在位置:H-04北東部~北部の道] 【残り21人+α?】 【盗賊てぶくろについて】 盗賊てぶくろを装備すれば、他人が持つアイテムを盗む事が出来ます。 盗みを行えるのは、使用者の手が対象者に触れられる距離に居る場合とします。 盗む事が出来るアイテムは、装備欄か道具欄に表示されている物をランダムで1つとします。 デイパック自体や、食料、コンパス等の基本支給品は盗めるアイテムの対象外とします。 盗んだアイテムに説明書が残っているならそれも同時に盗みます。 道具の効力で盗むので、どんなに厳重に守られているアイテムでも成功すれば気付かれる事無く盗めます。 失敗時には必ず盗みを行った事がばれます。失敗時の効果音が聞こえてくるかどうかはどちらでも。 使用者は1人の対象者に1度盗みを試みたら、次の放送までは同じ対象者から盗む事が出来ません。 成否の確率、成功時に盗めるアイテムは適当に決めて下さい。 第115話← 戻る →第117話 前へ キャラ追跡表 次へ 第107話 レナ 第121話 第107話 プリシス 第121話
https://w.atwiki.jp/chaosdrama/pages/2702.html
大変お手数ですが、真下から閲覧してください。 戻る 坂田銀時「 えっ、ちょっ「バカ犬ゥ!」とか言ってくれねーのうわっわっ(引き摺られて去って行った) 」 神楽「 ちぃ ほほう、苦しゅうない。ってバカやってないで帰るアルよ銀時(引きずっていく) 」 坂田銀時「 あーあーあーあー、あいつ逃げちゃったじゃねーk……くぎゅうううう!メロンパン貢がせてくださいいいいい!! 」 竜宮レナ「 け、圭一くぅ~~ん!!!(泣(逃亡) 」 坂田銀時「 おい神楽、冗談もほどほどに…くぎゅうううううう!!(発症) 」 釘宮症候群患者「くぎゅうううう!!(次々と発狂) 」 神楽「 うるちゃいうるちゃいうるちゃい!!(刀をブンブン振り回す)フフ、フッフッフ……あそこで大人しくくたばってればここまでの目に遭わずにすんだものを(刀を向けてレナに) 」 坂田銀時「 …えっ 初対面だけど…や、違うからァァァァ!?逢い引きとかねーから!俺ァ結野アナ一筋だっつーの!俺の初恋終わってないの!! 」 竜宮レナ「 Σ(〃゜△゜〃)えっ!そ、そんなの知らないよぉ~!(涙目) 」 神楽「 …心中だぁぁぁ?銀ちゃん夜中にコソコソどっかいってたと思ったら まさか銀ちゃん、この女に会いに行ってたんじゃないアルか!? 」 竜宮レナ「 Σ(゚ロ゚ ) はぅ!? 」 神楽「 ジャキィィン!!(物凄い剣幕でレナに刀を向ける) 」 ルシフェル「 心中(笑) 」 竜宮レナ「 (戻ってくる)はぅー……何だか疲れちゃって、幻覚が見えてた。あの人(銀時)がケンタ君人形に見えちゃってつい…えへへ……。(苦笑) 」 神楽「 し、心中……!!!(アルムの発言を聞いてムカムカしてきた) 」 ルシフェル「 ろっとお…………終わってしまったようだな 」 ダニエル「 ちょwwwレナさんあんたって人はぁ!!何やってるんすか!!ww(汗) 」 アルム「おー・・・心中。(眺めてる) 」 槭「工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工 」 DJ.オキマル「なななな、なんっとぉっ!!!両者場外へ転がっていき共にOUTォォォオオオオーーーー!!!ドローです!!ドローです!!!本大会のルールに従い、両チーム敗退!!残念ですが、敗退でございまああぁぁーーーす!!!! 」 神楽「 ってなにしてるアルかそこの女!あー!(レナと銀ちゃんが場外に転がっていってしまって) 」 坂田銀時「 ……神楽お前頭いい!でもマジやめて、蓄積戦で死なないっつっても死ぬほど痛いからお前の蹴り!(汗) ――――っ…ど、どんだけェェェェェ!!!(為す術もなく場外へ転がって行く) 」 ルシフェル「 まったく、今日は観客席が発火するわでうるさいな 」 竜宮レナ「 はぅ~、お持ち帰りぃ~♪(急にどうしたのか、高く跳躍して宙に浮いた丸腰の銀時に抱きついてそのまま場外へごろごろと共に転がっていく) 」 神楽「 だ、だて、こうしないと、銀ちゃん勝てないアルよ!ウチがあの女に協力すればあの女は反則負け、銀ちゃんの勝ちネ! 」 坂田銀時「 ほら怒られちゃったじゃん!僕しらない!負けたらジャンプ買ってこ……ぅうおぼろげしゃァァァァァァァァ!!!(神楽に蹴られ軽く浮く)な、何すんの神楽ちゃん…!?(笑顔が引きつってる) そうそう、そういうモンスターボールみたいな…あ?モンスターボール?――――い゛ぃぃいいいぃぃ!!??ルギアっすかァァァァァ!ッうぉおお!!(運悪くエアロブラストが直撃し、宙へ浮く) 」 竜宮レナ「 女の子らしいって感じかな?かな?(笑) 」 ピカチュウの中の人「森野は調子いいな!明日からも頼りにしているよ!(観客席に座る) 」 現時点でのダメージ%―――――坂田銀時:43% 竜宮レナ:56% ルギア「(レナが投げたボールから出現し、くす玉から彼女を守る)ブワサッ、ブワサッ…… ギュォォオオオオッッ!!!!!!!!(ある程度飛躍した後、銀時が隠れている家々に目掛けエアロブラストを放つ) 」 神楽「 ふぇっ、そうだたアルか!?むむむ、仕方ないネ…銀ちゃん、ちと痛いけど我慢するヨロシ!(銀ちゃんにも思いっきり蹴りを入れる) 」 竜宮レナ「 女の子らしい、かぁ……じゃあ(さっき回収したアイテムの中からモンスターボールを取り出す)ポイッ ボムッ!!(ボールを目の前に投げる) 」 キノピオ(審判)「乱入者はこれ以上特定のチームだけを協力した場合、直ちに退場していただき協力したチームも敗退と見なします。(神楽に) 」 坂田銀時「 神楽ァ!テメー選手登録してねェんだからあんま出しゃばるんじゃねーぞ!!(と口ではいいつつ、顔は少し嬉しそう) おらァァァ!!(その辺りに落ちていたくす玉をレナに投げつける) 」 神楽「 弱いもん(銀ちゃん)イジメはウチが許さないネ! どしたどしたぁ!ばっちこーい! 」 竜宮レナ「 ―――――!ぎ…ッ…!?(鉈が弾かれたことで手放し、丸腰をなったところを木刀が直撃し場外までではないが吹き飛ぶ) 」 ハルシオン「はははは…!これは面白いな。(愉快愉快と笑いながら観戦) 」 坂田銀時「 うるさいよォォォ!!てめーが考え無しにバカ真ッ直ぐ投げちゃうからだろォォォォ!!?(汗) あのねレナちゃんつったかなもう少し女の子らしい得物使ったらどう!?(あいさつのまちの、家がある所まで下がって木刀をレナに投げつける) 」 神楽「 銀ちゃんイジめようならウチが相手アルヨ!!(刀でレナの鉈を弾く) 」 あいさつ坊や「 あいさつするたび、ともだちへるね。 」 竜宮レナ「 ふぅ……危なかったぁ。……じゃ、続きをね♪(再び凶変し、鉈を持って接近する) 」 神楽「 なにやってるアルか!避けられてもうたやないアルか! 」 アルム「・・・腹減った。(会場に入る) 」 坂田銀時「 アァァァ……ああッ!?(回避されてごろごろと転がる) 」 ルシフェル「 面白い対決だな、ふっふっふ 」 坂田銀時「 やめてェェェェェェェェ!!(――弾切れ…ッ!)見つけたいなァァ~~!!叶えたいなァァァ~~~ッ!!!(投げられた勢いを乗せたままレナの横腹を木刀で殴る) 」 現時点でのダメージ%―――――坂田銀時:22% 竜宮レナ:14% 竜宮レナ「 あーーっはっはっは!!……カチ、カチッ… ……?(球切れ) 」 神楽「 そんならさっさと決めんかぁぁぁい!!(銀さんそのものをレナに向かってぶん投げる) 」 坂田銀時「 おぼろげしゃァァァァァ!!(神楽の飛び蹴りが見事に背中へHIT!)神楽ちゃァァん!?これお前らん為にやってんだよ!?お給料の為にやってんだよォ!?って、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!般若の形相ォォォォ!!??(裏声 スーパースコープをかわそうとするも多くHITしていく) 」 竜宮レナ「 きゃぅ…ッ(女の子故か蹴りだけでかなり吹き飛んだ)やったね…ッ!(そこら辺に落ちてたアイテムを回収)あっはははは!!!(すんげー怖い表情でスーパースコープを連射) 」 神楽「 でぇぇぇぇい!(観客席から銀さんに飛び蹴りしてくる) 」 ただいマンボウ「ただいマンボウ~ 」 坂田銀時「 くっそ可愛いバラにはトゲがあるねェ!(剣道よろしくすり足で足を引き、鍔迫りを押し返して前蹴りを繰り出す) 」 伊達政宗「(なんじゃあのぽぽぽぽんとやらは… 」 ありがとウサギ(擬人化)「ありがとう詐欺 」 あいさつ坊や「 楽しい~♪ 仲間が~♪ ぽぽぽぽーん♪ 」 竜宮レナ「 ガキャンッ!!!(そのまま鍔迫り合いとなる)足がお留守だよ!?(回し蹴りで転倒させようとする) 」 キョン「 あぁ…どうやらそうみたいだ 」 ヒデノリ「 ったく…ヒデノリだっての!なんで俺は名前弄られるんだいっつもよ 」 坂田銀時「 …!?お前らッ、記憶を無くしたのか!ヒデノ・リ・ブラッドエッジ!!キョン・ジャスアントォォッ!!(ぇ) 同じ得物じゃねーと…フェアじゃねーからな、コレつか…でぇぇええぇぇ!!??ぽぽぽぽーんと秘めたる内面出ちゃってるけどマネージャーさん大丈夫なんですかコレェェェェ!!!(木刀で鉈を受け止める) 」 キョン「 どぅゎれだよおおお!俺キョンだし!(ハモる) 」 竜宮レナ「 ひゃあああああああああッ!!!一撃で叩き割ってあげるよおおおおおおおッツ!!!!!(※公式台詞デス)(鉈を持って振りかかる) 」 ヒデノリ「 どぅゎれだよおおお!俺ヒデノリだし! 」 ルシフェル「 随分癖のある観客だが大丈夫なのか? 」 坂田銀時「 よう生き別れの兄弟のヒデノ・リ・ブラッドエッジ、キョン・ジャスアント(手を振る)え、えぇぇ~~……な、なんなんですか?まさかドラッグとかキメちゃってるアブない方でしたか?(ビビって声が上ずってる) 」 キョン「 おーい!兄弟ぃー!(銀さんに) 」 ヒデノリ「 あ、あー…そうなんすか… 」 キョン「 ほら見ろよ、あそこで戦ってるのが、もう一人の兄弟なんだぜ(ヒデノリに) 」 ヒデノリ「 知らねーよ!誰が兄妹だ 」 竜宮レナ「 ………あっはははははははは!!!こんな試合レナ一人で十分だよ!!(雛見沢症候群レベル5) 」 リオ・チェリッシュ「おうふ、大勢人がいるもんだから行き倒れてみれば、天下一舞踏会でしたか 」 DJ.オキマル「ダニエル選手!!味方のレナ選手に軽くあしらわれ、場外OUTォォォーーー!!ダニエル選手敗退です! 」 キョン「 よう兄弟、元気そうだな(ヒデノリに) 」 坂田銀時「 ちょっとォォォォ!!大串くんんんんんん!おまっチームメイトだろ!?完全にただのボール扱いだったよね!?いいのォ女の子らしさもっと表に出そうよ!!? 」 ダニエル「 ちょwwwレナさ…アァーーッ!!!(場外OUT) 」 伊達政宗「(投げあいになっておる… 」 竜宮レナ「 ゲシッ (飛んで来たダニエルを軽く脚であしらって場外へ送る) 」 ダニエル「 あ~~~~!投げないでぇぇぇ~~~(投げ返される) 」 伊達政宗「(ポテトほおばってる) 」 キョン「 そんなこんなで俺は、なんとなーく試合を見ることにした 」 坂田銀時「 や、神楽ちゃん!?女の子の命にかかわる事だかrうわ痛ァ!(ぶつかられる)てんめっ!手裏剣のくせしてボール扱いされてやんのー!た~のし~い、な~かま~がッ!ぽぽぽぽォォォォん!!(ダニエル君を手裏剣みたいに投げ返す) 」 ヒデノリ「 どうでもいいが、なんとなく試合を見てみよう 」 竜宮レナ「 はぅ…?今は今晩はだよ?だよ?(あいさつ坊やに) 」 ルシフェル「 今日はトラブルが無いようにカメラの充電をしてきた、いい試合を頼むぞ 」 ダニエル「 えぇぇぇぇ… でででも僕弱いしあんな強そうな人相手に無理でsアーッ(蹴とばされ銀時にぶつかる) 」 坂田銀時「 よーしこい小串君(木刀をバットみたいに構えてる) 」 神楽「 アホ!スカポンタン!白髪(しらが)!ジジイ!それでも男アルか!? 」 あいさつ坊や「 こんにちは! 」 竜宮レナ「 ぃよーし、いっけーダニエル君♪(ぇ 」 坂田銀時「 あ?古墳?アレか?ちっちゃいう○このことか(ぇ)…ぽぽぽぽ~ん 」 坂田銀時「 あい(ハナクソをほじりながら待機)アホか!ガキと手裏剣居んのに殺傷なんて出来るか!……いや手裏剣は殺傷武器…うわ寒気すんだけど 」 DJ.オキマル「第六回戦のバトルステージは『あいさつのまち』だああぁぁーーー!!!……それではGブロック第六回戦……レディー?……バトル・スタート!!!!! 」 平面なバトルステージが、よくCMで誰もが目の当たりにしたACの「あいさつの魔法」にでてきた舞台…『あいさつのまち』にへと変化する ダニエル「 ななな、失礼な。僕は手裏剣じゃなくて古墳なんだ、ダニエルっていうんだだだ。(緊張) 」 神楽「 ちょっと!なんで殺傷にしないアルかバカギン! 」 キノピオ(審判)「第六回戦は蓄積戦に決定しました。続いてステージを展開いたします。両チームとも、合図があるまでしばらく待機を願います。 」 坂田銀時「 蓄積戦で頼まァ。つーかあの緑の手裏剣みたいなのなんなの?投げるの?投擲物なの?(汗) 」 キノピオ(審判)「では、バトルスタイルの選択権は坂田銀時様に与えられます。殺傷戦、蓄積戦…どちらにいたしますか? 」 坂田銀時「 って女かよ…ぽんっと(グー) 」 ダニエル「 あううぅ…(罵声を浴びせられ)な、なんだかマジで強そうっすよ。(汗) 」 竜宮レナ「 わぁ、ダニエル君ダニエル君!男の人が相手だよー。 あ、じゃんけん。(チョキ) 」 観客「んだこの舐めたエイリアンは!? 」 キノピオ(審判)「ではまず、両チームの代表者、前に出てじゃんけんをしてください。 」 ダニエル「 あわわああわわ… れれれれレナさん待ってくださいよぉ。ていうか、こんな大勢の観客を見たの人生初めてです。(汗) 」 坂田銀時「 いっかっくせ~んきん、いっかっくせ~んきん(ステージに上がる) 」 竜宮レナ「 はぅ~♪レナがんばっちゃうよ♪(ステージへあがる) 」 DJ.オキマル「HOOOOOOOOO!!!!!!!!それではあぁっ!!Gブロックの予選を開始いたしまーす!第六回戦は――――“『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング隊』VS『HOW'ズ』”だああぁぁーーー!!!両チーム、ステージへどうぞぉ!!!! 」
https://w.atwiki.jp/shineoflife/pages/167.html
翔平「着いたーーーーエジプトーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼‼」 竜「随分長い船旅だったな」 レナ「一ヶ月以上かかっちゃったけど、大会開催まではまだ一週間あるから間に合うでしょ」 エレン「車用意してくれてるって聞いたけど・・・どれかな?」 クロ「さぁ・・・ってか船どうすんだよ」 夏希「SEASの役員の方が船番してくれるみたいですよ」 竜「・・・あの駐車場じゃねーか?」 クロ「行ってみるか」 部下「お待ちしておりました」 翔平「おー、サンキュー」 部下「ところで、誰か運転の出来る方はいらっしゃいますか?」 レナ「そんなのいるわけ」 竜「俺出来る」 レナ「マ・・・マジで‼‼‼?」 部下「現地までの地図はナビに入っておりますので、どうぞ」 竜「ども」 部下「私は船のメディカルチェックと管理をさせて頂きます」 エレン「お前、運転出来たのか」 竜「UB時代、俺は運転手もやってたからな」 翔平「楽しいなー、たまにはドライブってのも悪くないぜ」 レナ「でもこの速度じゃ間に合わないわよ」 竜「お前らさえよければ飛ばすけどどうする?」 クロ「安全な範囲内でな」 夏希「え・・・だって制限速度が・・・」 竜「じゃー行くぞ」 2日後・・・エジプトのとあるキャンプ場 開催委員「さて、今回の参加者はどれくらいだ?」 開催委員「確か50組だったかな」 開催委員「ま、まだ3日以上あるし、もっと来ると・・・」 開催委員「・・・な・・・何か来るぞ‼‼‼‼‼‼‼」 キキーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 開催委員「・・・・・・な・・・なんだ?」 カチャ レナ「ケホッ・・・ったくもう・・・死ぬかと思ったわよ」 夏希「・・・生きてる・・・ウソみたい・・・」 カチャ エレン「お前・・・無茶だろ今の・・・ってか今までの」 竜「やれって言ったのお前らだろうが」 カチャ クロ「だからって・・・加減しろよな・・・たった2日でここまでって・・・どんだけ速く来たんだよ」 翔平「いやー、楽しかったなぁ」 開催委員「あの・・・参加でよろしいですか?」 翔平「おう、参加する」 開催委員「ではこちらの用紙に記入をお願いします」 翔平「えーっと・・・U」 アホかーーーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 竜「テメェいつもそうだな‼‼‼‼‼」 クロ「わざわざ自分からそれを教えてあげるってどういう事だ‼‼‼‼‼‼」 レナ「自分が狙われてるってのは自覚してよね‼‼‼‼‼‼‼」 エレン「俺らはチームKKだって決めただろ‼‼‼‼‼?」 翔平「あー悪い悪い」 夏希「・・・」 レナ「って訳で、今全く生活資金が無い、よって今日一日でみんな稼いで来て‼‼‼‼」 竜「なるほど、いつものパターンか」 クロ「りょーかい」 エレン「はいよー」 夏希「あ・・・あの・・・その・・・」 翔平「・・・夏希、俺と来い」 夏希「え・・・あ、はい‼‼‼‼‼」 レナ「今晩この車に集合して、明日の朝から会場周辺の下見をするよ」 竜「よし」 クロ「じゃ、一旦解散‼‼‼‼‼」 工事現場 棟梁「ん?本日限定でかい?」 竜「そういうことだな、頼めないか?」 棟梁「そりゃいいが・・・力仕事だぞ」 竜「生憎だが、得意分野だ」 近くの森の中 エレン「・・・」 ズガンッ‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 狩猟部隊「やるなぁ新入り」 エレン「まーね」 狩猟部隊「虎かぁ・・・いいトコを一発ブチ抜い撃てる」 エジプトレース開催記念祭会場 開催委員「いやー助かりますよ、料理人は不足してたもんで」 クロ「そーかい、役に立てたなら光栄だよ、焼きそばお待ち」 開催委員「しかし・・・サングラスは外せないのかい?」 クロ「ん・・・あぁ、ちょっと訳ありなんだ」 翔平「よー」 クロ「どした?」 夏希「まだ見つからないんですよね」 クロ「ま、そればっかりは後でレナからお叱りを受けなさいとしか言いようがないな」 翔平「マジかー・・・」 ドンッ‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 不良「痛ってーなぁ・・・どこ見て歩いてんだ」 翔平「・・・あ?」 不良「随分かわいい子連れてんなぁ・・・妹にしては似てねーけど・・・」 翔平「触るんじゃねえよ・・・」 不良「あ?やるならやるぞ」 翔平「上等だよ」 ヒュッ‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 不良「んな・・・」 シュート‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 夏希「あ・・・あの・・・」 翔平「おー、結構金持ってんじゃん・・・1万円頂き♪」 夏希「それ・・・まずいんじゃないですか?」 翔平「こいつが襲って来て、財布から現金が俺の手に吸いついて来たんだから仕方ない、ほら行くぞ♪」 不良②「おいおい・・・坂原やられてるよ」 不良③「テメェか?」 翔平「おぉおぉ・・・懲りないねぇ諸君」 夏希「私もやります」 翔平「おう、それは助かる・・・・・・いくら儲かるかな・・・」 その夜 レナ「・・・で、いくら儲かった?」 竜「工事現場で2万円、あと昼食出たんで、弁当をいくつか持って帰ってみた」 エレン「狩猟部隊で1万5000円と虎肉」 レナ「虎の肉‼‼‼?」 クロ「祭りの屋台で1万円と大量の食材、あと今回のイベントの参加概要を記した紙」 レナ「やるじゃん」 翔平「俺らは屋台裏の不良締めて、5万稼いだぜ♪」 レナ「目立つ事するの辞めてよ‼‼‼‼‼」 夏希「すいません、止めたんですけど・・・」 翔平「ウソつけ‼‼‼お前もノリノリで参戦してたろ‼‼‼‼?」 レナ「ハァ・・・まあいいや、行こう」 翔平「凄かったんだぞ、夏希」 夏希「やめてください‼‼‼‼」 レナ「ホントにやめてよね‼‼‼‼」 クロ「お前戦ったのか」 夏希「まあ・・・相手は大人数だったので・・・」 エレン「お前やるじゃん」 竜「無駄口たたくな、辺りを見ろ」 翔平「だってさー、いくら見てもジャングルなんだもん」 レナ「クロが持って来た紙からすると、今回の規模は大きいわ」 レナ「つまり、敵も多い・・・場所取りは大事なんだからちゃんと探してよ」 翔平「そんなに大きいレースだったのか」 レナ「そうみたいね、ボディガードの人数も多いし・・・ずっとジャングルなのかな?」 クロ「さぁ、だとしたら大変だぜ、俺らのホームは海だしな」 夏希「どう・・・しましょうか」 レナ「とにかくフィールドの回りを周回して、何らかの痕跡を探すしかない、目を配って‼‼‼」
https://w.atwiki.jp/shineoflife/pages/166.html
翌朝 翔平「エジプト?」 竜「俺は賛成だ」 レナ「あれ、珍しいね」 竜「気分転換だ、詳しくは分からんがそこまでハードなレースだとは思えん」 エレン「だな、俺も賛成」 レナ「私も良いけど・・・」 クロ「どうだかな・・・今はゆっくり休んだ方がいいと思うけど」 翔平「まぁ・・・まだ痺れが残ってるしな」 夏希「すいません、あと2日ほどで治ると思うのですが・・・」 翔平「じゃーいいじゃん、楽しそうだし行こうぜ♪」 クロ「ったく・・・しょーがねーなー」 基地長「では準備致します」 翔平「何の準備?」 基地長「船はよくても、上陸後に現地まで移動する足が必要かと」 クロ「おー、さすがだな」 基地長「上陸地点に車を用意させます、すぐに出港しても構いません」 レナ「じゃあ行こうか」 船 基地長「では、お気を付けて」 翔平「あぁ、色々サンキュー」 クロ「そんなに遠くないもんな」 レナ「エジプトまで海があるからほとんどは水面移動よ、割と距離はある」 竜「へぇ・・・そうなのか」 クロ「おいお前ら‼‼‼飯出来たぞ‼‼‼‼」 エレン「やっほー‼‼‼‼‼‼」 翔平「んまそー‼‼‼‼‼」 夏希「こちらスープとサラダです」 レナ「上品♪」 クロ「あれ、剣士どこいった?」 翔平「竜‼‼‼‼‼‼‼‼‼飯できたぞ‼‼‼‼‼‼‼‼‼」 竜「そうか・・・じゃあ頂くとしよう」 エレン「うめー‼‼‼‼‼‼‼」 レナ「スープおいしい」 翔平「波で揺れるのにスープってなかなか攻めたな」 クロ「だから大き目のカップ使ってこぼれないように出来てるだろ?」 夏希「おいしい・・・」 クロ「さーてメインディッシュだ、鶏の唐揚げお待ち」 エレン「っひょー‼‼‼‼‼」 翔平「早く食わねえとなくなっちゃうぞ‼‼‼‼‼」 クロ「さて・・・」 竜「おい、お前食わねえのか?」 クロ「この後デザート出すからな、その後食うよ」 夏希「いいんですか・・・みなさんで盛り上がられてますけど・・・」 クロ「料理人として最も嬉しいのは、俺の料理で盛り上がる客を見る事だ」 カチャ レナ「・・・やるわね、あいつ」 竜「・・・あれが料理人魂ってやつか」 翔平「いやーうまかったなぁ・・・唐揚げ」 エレン「うまかったよなー、夏希」 夏希「はい」 カチャ クロ「こちら新感覚デザート、干瓢ゼリー抹茶風でございます」 竜「何だ?これ」 クロ「干瓢ゼリー抹茶風って言ったろ、聞いとけ」 翔平「へー・・・いただきまーす」 ゴクッ エレン「うんま‼‼‼‼‼」 夏希「・・・・・・感動です・・・こんなにおいしい物が・・・」 レナ「大丈夫?」 夏希「・・・はい」 翔平「うめー・・・・・・おかわり‼‼‼‼‼」 クロ「まだ固めてない、原液はあるから明日また固めといてやるよ」 翔平「やったぜー」 竜「ごちそうさまでした・・・・・・さて、筋トレして来るかな」 クロ「うん・・・今日も我ながら上出来だな」 翔平「アブ・・・何とか島を出発してどれくらい経つ?」 レナ「もう二週間くらいね」 エレン「かかったぞ‼‼‼」 翔平「お、来たか‼‼‼‼手応えは‼‼‼‼‼‼?」 エレン「大物だと思うぜ・・・そーーーーーーれっ‼‼‼‼‼‼‼‼‼」 クロ「ほぉ・・・シクロ鮫だな」 竜「シクロ鮫?」 クロ「脂は超乗ってるぞ、だいたい鮫の肉っつったら今はシクロ鮫だ」 カチャ 夏希「で・・・でか‼‼‼‼」 エレン「冷蔵庫入れとくぞー」 ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 夏希「きゃっ」 翔平「ヘリ‼‼‼‼‼?」 クロ「ただのヘリじゃねえな」 竜「あぁ・・・空軍だ」 エレン「空軍‼‼‼‼‼?」 レナ「・・・・・・大丈夫・・・かな」 翔平「大丈夫だ、そこまで強い気は感じない」 ヒューーーーーーーーーーーーー・・・ レナ「爆弾‼‼‼‼‼?」 夏希「ま・・・まずい・・・」 エレン「爆発させんなよ、爆煙で見えなくなっちゃうし」 翔平「分かった」 ダッ クロ「どうする気だ?」 翔平「掴んで海へ落とす‼‼‼‼‼」 ビュッ 竜「このままじゃ消耗戦だぞ」 エレン「まぁ落ち付けよ、遠隔攻撃なら狙撃士の俺の出番だろ?」 夏希「ど・・・どうするんですか‼‼‼‼‼すごいたくさん降ってきましたよ‼‼‼‼‼」 クロ「俺がどかす、何とか撃ちこめ‼‼‼‼‼」 エレン「船に当たりそうなのを避けてくれりゃいい」 翔平「・・・いいのか?」 エレン「あぁ、任せろ」 レナ「狙撃士の本領発揮ね」 カチッ クロ「いつもよりも随分でかいな」 エレン「この程度の高度なら全く問題ないな」 CONTROL BOMB‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 夏希「一個ですか?」 エレン「ヘリなら、羽の一部を壊せば落ちるっしょ」 カチッカチッ 竜「ラジコンのコントローラーじゃねえか」 エレン「あぁ、あのダイナマイトにはラジコンと同じ様に噴射口と方向調整口があって操作出来る」 レナ「珍しくエレンがマジね」 エレン「そーだな、俺の本職だし」 クロ「おー・・・もう到達するぞ」 夏希「すごい・・・」 エレン「HIT‼‼‼‼‼」 ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン 翔平「ふぅ・・・やるなエレン」 エレン「まーね♪」 クロ「うーん・・・機体が落ちてるのは間違えないな」 ザッパーーーーーーーーーーーーーン エレン「どんなもんだい‼‼‼」 翔平「サンキュー、エレン」 エレン「飯~飯~」 クロ「・・・ハァ、分かったよ・・・ちょっと待ってろ」 レナ「‼‼‼‼」 竜「・・・どうかしたか?」 レナ「あの雲・・・まずいね」 翔平「何が?」 レナ「全員今すぐに帆をしまって‼‼‼外輪準備‼‼‼‼‼‼」 エレン「よし来た‼‼‼‼」 クロ「外輪いつでも動かせるぞ‼‼‼‼」 翔平「うぉ、いきなり風が吹いてきたぞ‼‼‼‼‼」 夏希「一度風が強くなると帆をしまうのは至難の技・・・さすがレナ」 レナ「褒めても何も出て来ないよ、外輪で進んで‼‼‼‼‼舵は私が・・・」 竜「お前の筋力じゃ無理だ、俺がやるから指示くれ」 レナ「またそうやって遠回しにバカにして・・・」 竜「どうすりゃいいんだ‼‼‼‼‼?」 レナ「八時の方角にしといて‼‼‼‼‼外輪でも少し角度調節手伝って‼‼‼‼‼」 クロ「了解」 エレン「じゃあそっち強く回してくれ」 クロ「だな」 翔平「前方からでかい岩石接近中‼‼‼‼今の雨で増水したのが原因かな?」 夏希「恐らく」 翔平「竜、切れ、邪魔」 竜「舵頼むぞ」 翔平「あぁ」 竜「じゃ、斬って来るか」 ダッ レナ「・・・で・・・・でか‼‼‼‼‼」 エレン「船が当たっても問題無いくらいまで細かく頼むぞ‼‼‼‼‼」 竜「なら・・・これが最適だろうな」 津波‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 夏希「・・・・・・」 エレン「相変わらず・・・半端ないな」 クロ「当然だ」 翔平「ナイス竜‼‼‼‼‼」 竜「お安い御用だ・・・さて・・・ってお前‼‼‼‼舵頼んだろ‼‼‼‼‼‼?」 翔平「あぁ悪い悪い」 レナ「もう、これだからあんた達は・・・」 エレン「でも時化は終わったっぽいぞ」 夏希「突発的な物だったんですね」 翔平「みたいだな、よかったよかった」 夏希「あの・・・皆さんの診察をするには・・・カルテが必要なんです」 竜「?」 クロ「・・・んで?」 夏希「ほとんどの人は自分で持っているんですけど・・・みなさんは・・・」 レナ「こいつらが持ってるわけないでしょ、私はあるよ、はい」 夏希「どうも・・・では作るので、少し検査をお願いしたいんです」 クロ「まぁ大事な事だな」 エレン「やろーぜやろーぜ」 竜「・・・ま、仕方ないな」 翔平「おう、いいぞ」 エレン「・・・・・・さすがに医者の目はごまかせないみたいだな」 夏希「はい・・・あの・・・これは・・・どういう・・・・」 エレン「俺の持病だ・・・あいつらには黙っといてくれよ」 夏希「はい・・・でも・・・」 エレン「・・・・・・治るのか?」 夏希「・・・それは・・・やってみないと・・・」 エレン「じゃあいいや、今の状況でも俺は見ての通り生活出来てるし♪」 夏希「・・・はぁ・・・」
https://w.atwiki.jp/hakanaki/pages/84.html
「俺様か?俺様は”かみさま”だ!!」 「いやー、人間ってほんとわけわかんねぇ。好き」 プロフィール 名前:ナーレ 性別:女(外見がレナのものの為) 年齢:19歳(外見がレナのものの為) 身長:164cm(外見が略) 体重:46kg(外見が略) 好物:大地で取れた野菜 嫌物:火を通さないもの全般 レナのもう一人の人格のような存在。彼女との区別は口調と服についているジッパーで判別できる。 上から目線が目立つかなり乱暴な性格。本人これが素の口調。 結構暴力的で、レナが危険になった時はナーレが出てきて防衛する事もある。 だが記憶を共有していないので、状況を把握する為に誰彼構わず聞く事がある。 一応、お互いの存在は認知している。 自分の事を「かみさま」と言わせたがる時がある。 が、何故言わせたがるのかはレナも知らない。世間知らずなのか、色んな文明とかに興味津々。 その所為で勝手にふらふらしてはレナの知らない所で迷子になったり問題ごとを起こしてしまう。 レナの身の危険を感じると迷わず交代してくる。 +正体 正体は現に10人いる神の一人で司るは”大地”。 ミクラとも面識があり、かなり昔から存在する神らしい。 昔は大地の様子を管理しながらひっそり人間達の住む土地にまぎれて住んでいた。 が、ある日ハエレティクスに力を狙われ肉体を失ってしまう。 肉体を失い消滅しかけた所を、幼いレナの体内へと逃げ込む形で消滅を免れた。 よってある意味では彼女のもう一つの人格的存在となってしまう。 それに関しては本人も申し訳ないと思いつつ、償いとして彼女が人としての道を踏み外さないよう願っている。 大地をつかさどっていると自称する通り、大地を操ることができる。 といっても悪い地形で平然と歩けたり、大地の声を聞き取ったり、 大地に流れるエネルギーを弄ったりとその程度。大地に関してもかなり詳しい。 だがこれはほんの力の一旦でしかなく、全盛期はかなり操れたそうだ。 それ以上使うと、レナの身体が耐え切れないとの事。
https://w.atwiki.jp/puyokei/pages/1070.html
chapter0.果てしなく澄んだ青い穹 宇宙歴752年 夏 名も無き漁村 波止場の繋船柱に鴎が留まる。 船は波の鼓動に合わせ、規則性なく鳴動する。 辺りには磯の香りがどことなく漂い、道行く人は、どこか船乗りの雰囲気を纏わせていた 海に視線を送れば、軽く湾曲した水平線が、星の丸さを小さく誇示している。 海の反対側は、連なる家々の先に小さい山が遥か遠くのように微かに頭を見せていた。 小さな島にある小さな漁村。そんな言葉が浮かぶような名も無き村だった。 水平線の先の世界には夥しい数の大陸があるが、そんな大陸は、ここからはどこか遠い、異国よりももっと離れた何かに思える程、この島は平和だった。 そして、砂浜で一人、海を眺めていると、なんだか自分が酷く小さく思えてくる。 特に、隣に座る幼なじみも口論した後なら尚更だ。 時折聞こえてくる鴎の鳴き声も、気まずさを煽る一つの事象に成り下がる。 かといって、二人ともいつまでもそっぽを向いている訳にはいかない。 話しかけないといつまでもこの空気が終わらないことは相手も気付いてるのだろうが、それでも頑なな態度に思わず笑みが零れそうになる。 しかしそれでも話しかけるのは辛い。 貧乏くじだなあ、とため息が漏れそうになるが、この空気では、それすらも即発の元だろう。 それでも、早々と終わらせたいので、口を開く。 「……ねえ、レナ」 「何よ、バカでマヌケなフェイ」 酷い言われようだが、口論の内容的に、どうして自分が馬鹿なのかわからない。 「やっぱり筏で世界一周は無理だと思うよ」 聞いた途端にレナが再び怒り出して振り向く。 これでどうして自分が悪いと言われるのだろうか。 その発言が再び口論の種火になっているということは、フェイは気がついていない。 「はあ…」 ため息しか出ない。 何せ、隣には、 「なんでため息なんかつくのよっ」 と言って怒る幼なじみがいるのだから。 もう怒りの矛先がどこに向いているのかフェイには見当がつかない。 きっと全知全能の神でさえ苦戦するだろう。 彼女がいよいよ暴れ始めたとしたら、フェイでは止めることは出来ない。 せっかく浜辺で潮風が頬を撫でている素晴らしい環境だのに暴走を始めると全てが台無しだ。 早くどうにかしたい心情が実を結んだのか、目の前の空に変化が現れる。 「雲行きが怪しくなってきたな…」 見れば水平線から垂直に入道雲がみるみる大きくなってきていた。 夕立が近い。 入道雲の影響の早さを知っている二人は、理由が出来たとばかりに漸く立ち上がる。 「じゃあね、今日もつまんなかったわ」 レナはそんな憎まれ口を吐いてとっとと背を向け、家路につく。 そして、フェイはそんな相変わらずな様子を思わず許してしまう馬鹿な自分に呆れながら、海に背を向けるのであった。 フェイは帰りながらやりとりを反芻していた。 レナが世間知らずなのはいつものことなのだが、さすがに筏で世界一周は子供でも無理だとわかるはずだ。 何か他に目的があるのだろうか…。 フェイには、船ではなく筏で、それも二人で旅をするメリットなんてないように思える。 何か隠してるのかもしれないが…。 そこまで考えたところで、ぽつぽつと雨が振り始める。 入道雲の雨脚はやはり早い。 フェイは無駄な思考を中断し、家までの道のりを駆けていった。 † 次の日、雨上がりの快晴。 結局昨日の夕立は夜間を通して降る激しい雨になった。 風は窓を鳴らし、雨は地面に打ち付ける。 雷鳴は轟き、嵐と言っても差し支えがない程の規模だった。 フェイが昨日と同じように浜へ行くと、波が少し高く、砂に湿り気がある以外は昨日のそれと寸分の互いもない光景がそこに広がっていた。 もちろん、レナもいる。 昨日の今日なので少し心配していたが、文字通り雨降って地は固まるものらしい。 なぜか妙に機嫌が良かった。 「おっはよ~♪」 という挨拶をノリノリでブイサイン作って、音符を付けるくらいリズミカルに言われたら逆に悪寒が走る。 「うん…おはよう…」 と、返したら次は「声が小さい!」やら「もっとノリノリに!」とか言われてしまう。 どうして一晩隔てるとこんなに豹変するのだろうか。 とりあえず聞いてみることにした。 「えっと…レナ…?」 「ん?なに?」 「昨日、なんか変なものでも食べた?」 叩かれました。 人を叩いておきながら機嫌が全く変わらない気の大きさには心底驚かされる何かを感じる。 「あ、今日も浜じゃあつまんないから磯に行きましょ」 しかもその後すぐにこんなことを言えるのだから凄い。 そしてフェイは断ることなど出来ずに、半ば無理矢理と言った感じで連れて行かされる。 磯は浜を挟んで港の反対側にあり、港からは岩影にあったり、需要がなかったりといろいろな理由が重なり、人は驚く程少ない。 「ん。今日もここは静かで魅力的!」 昨日浜で喚き散らしていたのは誰だったか。とは言わない。 まあ、確かに、西向きに海を臨む岩場は、潮風が心地よく吹き抜け、港のほうから時折小さく聞こえる鴎の鳴き声が程よい湿り気のある沈黙を齎している。 「滑りやすいから気をつけろよ」 実際、雨上がりの岩場程滑りやすい場所はないのだが、本人は生返事をするだけで全くわかっていない。 空元気ではしゃいで岩場に出来た水溜まりを飛び越えて先へ駆ける。 まあいいか。と思ってしまうのがフェイの甘さだろう。 しかしフェイは歩きでレナは駆け足な訳で。 しかもレナのほうが元々走るのが得意な訳で。 そんなこんなでレナとフェイの間にかなりの距離が開く。 全く無理矢理連れてきたのは誰だよ。とは思うが口には出さず、代わりに、 「おーい、一人がいいなら俺は戻るぞー」 と、大きな声を出して言った。 レナは一人で結構先まで行っていたが、声が聞こえたのか結局戻ってくる。 「まったく…」 と言ってる時に、異質なものが視界の端を過る。 歩みを止めて数歩元来たところを戻ってみる。 それが帰るようにでも見えたのか、後ろからは「待ってよー」など聞こえるが、無視して歩く。 そして、岩に少し隠れた波打ち際に、それはあった。 それは人の形をしていて、つまりは人なのでした。 フェイはそれを見た時、不意に幽霊や人魚の類を連想したのだが、足はちゃんとあった。 きっと昨晩の酷い雨で流されてきたのだろう。 「あれ、何か見つけたの?」 後ろから不意に声がかかる。 「うわっ、何この子誰?」 「そんなこと知らないよ。流されてきたんじゃない?」 普通に返事を返したのだが、レナからの返答は、 「…フェイ、あんたデリカシーないよね」 「えっ?」 再び見れば髪はショートカットでうつぶせだが普通に胸はある。 「アホでスケベでマヌケでドアホなフェイ」 「アホって二回言ってるぞ。っていうか何も…」 「うるさいスケベ」 見てない。って言うつもりだったのに途中で邪魔されて本当にスケベみたいになったので尚更頭を抱えたくなる。 レナは自分の着ていた上着をかけてから言った。 「とりあえずあんたの家に運ぶから」 いや、どうして自分の家じゃないんですかねレナさん。 そして家まで運んだのはいいが、いろいろと無理矢理すぎる。 私運べないからフェイが運んでね。 とか言われてもいろいろ大変だった訳で。 男が運ぶのは当たり前なのかもしれないが、デリカシーがないのはどっちだ。って言いたくなったりして。 さらには、上着は洗ってから返して。とか言われたりして散々な訳である。 フェイが一人暮らしなのを良いことに、風呂場を勝手に使われ、レナは今風呂場で流れてきていた彼女を洗っている。 そしてフェイはその間に服を買ってこいとか言われ、強制的に家から追い出された。 自分の家なのに…。 † 全く、図々しい。 レナもそうだが、目覚めた瞬間に腹が減ったと言って家の冷蔵庫にあった食料を全部食べたらしいのだから図々しい。 食べるだけ食べたら人の布団で眠てるし…。 レナは見てるだけだし…。 帰ってくるなりレナにそんなこんなを言われても…。 とりあえずフェイはダメ元でレナに聞いてみることにした。 「で、この子が誰か聞いた?」 「ん、聞いてない」 全く悪びれる風もなく言うものだから呆れる。 「…じゃあ…、次に起きた時に聞こうか…」 「まあ、私も気になるからね」 それならどうしてさっき起きている時に聞かなかったんだよ…。 結局、次に彼女が目覚めたのはその日の太陽が沈んでから4時間は経った、夜中だった。 レナはレナで帰るのかと思ったら今日はここにいるとか言ってくるし…。 彼女が目を覚ました時、フェイはだらしなく船を漕いでいたのだが、 「あ、起きた?」 というレナの大きな声に喚起され意識が現実に覚醒する。 「…ここはどこ…。私は誰…」 え、まさかのパターンですか。 「…って言うと思ったぁ?」 どうやらレナの右斜め上を行く悪い性格らしい。 「うん。思った」 レナはそれに几帳面に返す。 この二人、気が合うのかもしれない。 「ん、冗談はこれくらいにしといてー…。本当にここはどこぉ?」 寝ぼけ眼のとろんとした瞳でそんなことを訊ねてくる。 妙に間延びしたしゃべり方が尚更イラつく。 「ああ、ここは私の隣にいるフェイの家ね。」 口を開きかけた時にレナがしゃべり始めたものだからフェイがなんとも間抜けな感じになってしまう。 そしてそんなことはお構い無しにレナは続ける。 「ところで、あんたは誰?」 ふぅん。と言って辺りを見回していた彼女は、そこで初めて名乗ってなかったことに気がついたかのようにはっとする。 これが演技なら余裕で女優にでもなれるだろう。 「ん、私ぃ?私はメリルだけどぉ」 「へー。んで、どうして流されてきたの?」 レナは名前が本当に気になっていたのだろうか。 「なんでだろー?コアに不都合でも起きたのかなぁ…」 「コアって何?」 こんな時、単刀直入に聞けるレナが少しうらやましかったりする。 「ああ、コアってゆーのはコアクリスタルのことでー。時間の中の危険分子を発見して運ぶ役割のものなのー」 いきなり話が飛躍しました。 イミフです。 さすがのレナも目が点になっている。 いや、てゆーか本当に点だよ。どうやったんだよその目。 「あ、疑ってるぅー」 当たり前だと思う今日この頃。 「うん。じゃあ決めたー。あんた達二人は旅の伴侶ねー」 「「はあ?」」 話の前後がつながってないようにしか思えないフェイだった。 「ちょ、ちょっと待ちなさい!あんた何なのよいきなり旅の伴侶って!」 こんな時、単刀直入に聞けるレナが以下略。 「何?気に食わないー?でももう無理、私は一度決めたら取り止めないからー」 「丁重にお断りしま…「じゃあ明日までに準備しといてねぇー」」 人の話を聞かないどころか被せてきやがった。 「とりあえず私は絶対行かないからっ」 レナがかなり怒っているんですけど。 後から八つ当たりされるの自分なんですけど。 「あ、でも、家を長期間空けておくことは出来ないんですが」 「ああ、それなら大丈夫。時間を跨いだ旅なんだからぁー、帰って来た時に出発から5分後にここに到着すればいいのー」 ちなみに、この後はレナとメリルの低レベルな言い争いが朝まで続いた。 † 「なにやってんだ。おまえら…」 いつの間にか窓から朝日が差し込む。 フェイがどれだけ眠くてもレナが寝ることを許さなかった。 そして朝が来て入り口から声がかかる。 聞き慣れているが、最近滅法聞かなくなった声。 フェイはゆっくりと入り口へ振り返る。 外からの光の逆光で黄金色した髪しか見えない。 しかしフェイにはそれだけで充分だった。 「ユーク…?」 「おう、久しぶりだな」 島の別の町へ引っ越した、フェイとレナの幼なじみである彼は、逆光に負けない明るさで、そう言ってから不器用に笑った。 「で、何か楽しいことでも見つけたのか?」 「楽しいですって…!」 ユークの発言にレナがいちいちつっかかる。 「ちょうど良かったー。誰かは知らないけどあんたも旅の伴侶ねー」 「ん?いいけど。それよりお前誰だ?」 いいのか。 「メリル」 「なるほど」 ユークが腕を組んでうなずいている。 一体何がわかったのか…。 「お前らも行くんだろ?行くよな?」 ユークとメリルはグルなんじゃないか。と思ってしまう。 「わかった。行くよ」 「えっ」 レナが驚いてフェイのほうを向く。 レナは自分一人だけが仲間外れになることを嫌うことを知っているフェイだ。 フェイは久しぶりに三人で遊びたかったのだ。 不本意かもしれないし、第三者が一人いるが、それでもフェイは三人で一緒に行動出来ることを嬉しく思った。 だからユークがこの漁村に戻って来た理由を聞きそびれたのかもしれない。 それが決定的な間違いになるのはもう少し後の話。 † 「あれぇー?あんまり荷物持って来なかったねー」 待ち合わせ場所の港へ来たフェイはいきなりメリルにそんなことを言われた。 自分が一番最後だったらしい。 レナもユークも苦笑いしているから、きっと同じことをメリルに言われたのだろう。 「じゃ、行くよー」 メリルの隣にはどこから出したのか身の丈程のクリスタルがある。 クリスタルが回転を始める。 四人を包むようにクリスタルから光が溢れ、そして光が四人を完全に覆う。 その光が消えた後には港に偶然いて驚いている人々以外、何も残っていなかった。 フェイが光に包まれる前に見えたのは、故郷のどこまでも果てしなく澄んだ青い穹だった。