約 1,975,440 件
https://w.atwiki.jp/uhyozatsu/pages/327.html
ベリーサ 【説明】 マツダより2004年から販売されたショートワゴン車。 カープのヘルメットに無償でベリーサの広告ステッカーが貼り付けられたがその色が水色だった事から 赤といまいちマッチしないんじゃ?という声もちらほら。 その年に赤ゴジラとしてブレイクした嶋が特別監督賞としてベリーサを受賞。 嶋曰く「びっくりですよ。すごいっすよね。車ですよ、車。頑張ったらいいことあるんですね」 泣かせるコメントである。 なんでも奥さん専用の車だとか。 余談だが9月6日の嶋のベリーサ納車式にマスコミに「今日は試合もなくネタが無いだろうからね」 と気配りを見せたその日に、プロ野球選手会が10日の午後5時までに近鉄とオリックスの合併が 一年間凍結されない場合9月11日以降の毎週土日のストライキ権の行使を決定した。 91 名前: 代打名無し@実況は実況板で 04/09/06 19 23 ID 4JBUiy0L 貴公子とお魚が大変なときに、のんきすぎる嶋 ttp //www.carp.co.jp/hedline_flame/4_f.html 嶋、今日はネタだらけの日だよ、嶋 93 名前: 代打名無し@実況は実況板で 04/09/06 19 33 ID +KWGkSh5 車の色に合わせて白いTシャツを着てくる島のセンス萌え 94 名前: 代打名無し@実況は実況板で 04/09/06 19 35 ID E+SCrBBH >「今日は試合もなくネタが無いだろうからね」 >「今日は試合もなくネタが無いだろうからね」 >「今日は試合もなくネタが無いだろうからね」 >「今日は試合もなくネタが無いだろうからね」 プロ野球史上まれに見るネタ満載の日な訳だが・・・ 96 名前: 代打名無し@実況は実況板で 04/09/06 19 36 ID 5OMil6Bv 91 嶋かわいいよ嶋 俺がビル・ゲイツなら、嶋にアーバンビューを1戸あげるのに 98 名前: 代打名無し@実況は実況板で 04/09/06 19 40 ID /Vd1wlMd 嶋号って・・・ほんと楽しそうだな 101 名前: 代打名無し@実況は実況板で 04/09/06 19 43 ID isdjKffS かわいいよ嶋かわいいよ 浮かれて市民球場でお披露目って、可愛すぎる・・・ 世間はこんなだってのにorz ベリーサ公式サイト http //www.verisa.mazda.co.jp/
https://w.atwiki.jp/undeerl/pages/141.html
一話 「IF......?」 二話 「La malefikina」 三話 「La celdin」 四話 「Yst lernxfaro」 五話 「La desniex」 六話 「La appedzerfelle」 七話 「La kacel」 八話 「La jujol」 九話 「La text」 十話 「La snalu」 十一話 「La jujojass」 十二話 「La kutyv」 十三話 「La fergen'artz」 十四話 「La jujol」 十五話 「La dapelteo」 十六話 「La anfi'e」 十七話 「La zirk」 十八話 「La dzarn」 十九話 「La dzeftlorznajanerfeo」 二十話 「La elmess」 二十一話 「La anfi'enerfeo」 二十二話 「La fonti'a」 二十三話 「La setialerta」 二十四話 「La asvio」 二十五話 「La kranteerlessal」 二十六話 「la dzarno」 一話 「IF......?」 やあ、こんにちは。初めまして、というべきだろうか。 近頃は情勢が良くなくてね、私としては非常に迷惑なんだ。 本当、さっさと復旧してくれないかねぇ......この国も。 さて、前置きはこのくらいにして、本題といこうか。 私がこの本を書いたのは...そうだな、もし...もしも、この世界が今と違ったらどうなるのか、それを想像してみたかったから、というのが1番の理由だな。現実逃避だ。 今から数年前、夕張という男がいてね。そいつのせいで、この世界が台無しになっちまったんだ。 その時、私の竹馬の友であるFAFSの知り合いが夕張の計画に巻き込まれたんだそうだ。 正直、その話を聞いてびっくりしたよ。実際その影響は受けていたが、まさかこんな身近に夕張と直接関わった人がいたなんて。しかも大勢。 そこで、勝手かもしれないが、私なりに彼等に敬意を表して、もし今のような世界にならなかったら、......彼らの望まない、こんな世界なんて最初から無かったとしたら。 そんなことを思って私はこの本を書くことにした。 本の題名はまだ決めていない......そうだ、いいことを考えた。折角彼らの望む世界は何なのかを考えるんだから、本の題名を彼等の名前から引用しようではないか。 では、改めて、夕張と戦った勇気ある人達の為に、私の妄想をここに書き残す。 Krandeerl y io lircaと。 巨大な広場。 群がる群衆。 あちこちから聞こえるざわめき。 そんな鬱陶しい空間の中に、一人の少女がいた。 彼女は、この騒然とした広場で、静かに、ただ静かに、その時が来るのを待っていた。 Xelken式典。 今まさに行われようとしている式典が始まるのを、彼女はただ静かに待っていた。 そして…… その時は来た。 壇上に上がったのは黒い服を着た男。 それに気が付いた群衆は話すのをやめ、そちらの方に向き直る。 少女もまた、先程とは違った面立ちでそこにいた。 男が話を始める。 群衆は皆、その声を聴く。 彼等は男の話を聴くことに夢中で、遠くから聞こえる騒音に気づかない。 ただ一人、この少女だけを除いては。 しかし、その少女もまた、何処かで飛行機でも飛んでいるのだろうと、その音を警戒しなかった。 そんな中でも、男は話を続けている。 少女は、男の話に聞き入ってしまった。 ………。 爆音。 吹き荒れる風。 倒れる男。 どよめく群衆。 辺りに響く悲鳴。 少女は唖然としていた。 ただその場に立ちすくんでいた。 今起こったことが理解できない、という風に。 だから、 遅かった。 さらに響く爆音。 倒れていく群衆。 何処からかやって来た男達。 そして…… 少女の目の前に、一発のロケットが着弾した。 少女は動かない。 そして、少女は、何も理解できないまま、意識を闇に落としていった。 目の前には荒野。 先程まで行われていたはずの式典が、そもそも存在しなかったかのように崩れた会場。 倒れている人々。 彼等は真っ黒になっていて元の姿さえ分からない。 一体何人が死んだのだろう。 そんな事を思いながら、立ち上がる少女。 彼女の体は煤こそついているものの、ほぼ無傷だった。 いや、既に傷が癒えた、というべきか。 少なくとも、既に立って歩けるようにはなっていた。 「一体……何があったの……?」 改めて見る惨状。 そして、彼女は気づく。 彼女……リーサが、先程まで行われていたはずの出来事を思い出せないことに。 そして……自分が何者だったのかも。 二話 「La malefikina」 「私は……一体……」 少女はその場に立ち尽くしていた。 いや、立つことしか出来なかったという方が正しいであろう。 少女は自分のことを忘れてしまっていたから、ただただその場で何を待つでもなく立っていた。 とりあえず、現状自分がここに居てはいけないことだけは分った。少女は自分の服の煤を払い、辺りを歩き出した。 「フェー……ユ……フェーユ?」 近くにあった地図板を読むと"Ferju"とあり現在地は連邦広場というところらしい。周りに人の気配は無い。地図板を見ると近くに街があるらしい。とりあえず今日はそちらに移動しよう。歩き出そうとした瞬間、少女はポケットに何かが入ってる事に気付いた。 「公務員身分証明?」 出てきたのは一枚のカード、ポケットの中には財布も入っていた。カードには「公務員身分証明」と書かれてある。ちょうど名前の所だけは読めた。 「リーサ……私はスカースナ・リーサ?」 名前も分った所で近くの町まで少女もといリーサは歩き始めた。 「ふう……着いた……」 町に着いたリーサは近くにある長いすに腰掛けた。町についたはいいもののここからどうするか決めていなかったからだ。夢うつつに眼前の電光掲示板を眺めていると速報ニュースが流れてきた。 『[速報]昨日の爆破事件に関係するとされる武装勢力がフェーユを占拠、政府は拠点をコヴィーナに移動』 それ眺めていた時、電光掲示板の近くを男2人が話しながら歩いていた。 リーサはその二人の会話に聞き耳を立ててみた。 「もうここも陥落するんじゃないのか?」 「ああ、今回は連邦にとってもやばいらしいなデュインにでも逃げ込むか?」 「もう、空港は閉鎖されてるさ。」 どうやら昨日は爆破事件があったようだ。そして、彼等の話から察するに、ここも危険な状況にあるようだ。一体何があったのだろうか。 彼女は疑問に思う。しかし、彼女が一つの大きな情報を手に入れた事は確かだ。これが記憶を取り戻す一つのきっかけとなるかもしれない。 日が傾いてきた。とりあえず、宿を探さねばならない。やるべきことは色々あるがまだまとめきれてない。一旦休むのが妥当であろう。そう思ってリーサは長いすを発った。 三話 「La celdin」 リーサは宿を探すために町を歩き続けていた。しかし、この町にあるホテル、民宿などはあまりにも高価すぎる代物ばかりでリーサのポケットマネーでは勿論、そこに泊まり続けることは不可能であった。 もう既に時刻は12時を回っていた。足はもう言う事を聞かなくなっていた。少しでも前に進もうと重心を傾けるとそのまま前のめりに倒れてしまった。人気の少ないこの夜、どうせ朝になるまで自分の不甲斐なさを呪いながらこの道路で這い蹲るほかあるまい。遠ざかる意識の中、そんなことを思っていると突然倒れた先にあった扉が開いた。 「大丈夫!?」 金髪ショートの中性的な少女が話しかける。緑ギンガムチェックのシャツとキュロットスカートがほんわかとした印象を強調している。少女は扉の先に戻って数人を呼んでリーサを運ぼうとした。担架に担がれた所でリーサはゆっくりと意識を混濁させて闇に落ちていった。 「こ、ここは!?」 がばっと掛けられた毛布をめくって起きる。私はリーサ。無くした記憶と身の安全を求めて此処まで来た。よし、記憶はそれ以上失っていないようだ。周りを見渡すと横に昨晩の金髪ショートの中性少女が座っていた。この少女が指示してこの良く分らない施設に運び込んだらしい。 「ん、起きたんだ……。」 中性少女が目を覚ました。少女は時刻を確認してリーサに向き合う。 「君も、あの爆破事件に巻き込まれた一人だよね?」 「そうだった……かもしれない。」 「え?」 「いや、なんでもないです。」 何故知っているのだろうか。まぁ、確かに服に煤がついていたから分るのであろうがわざわざ此処まで運んで介抱してくれていたのか。 「僕はこのIssvフェーユ西支部の支部長、ターフ・リファン・リファーリンだ。気軽にリファーリンと呼んで欲しい。」 「それじゃあ、リファーリン。Issvとはなんですか。」 いきなり謎の組織名を出されても聞いている側にはただの固有名詞である。 「Issv、イスタンフィアン・スヴィツラティは君たちのような爆破事件に巻き込まれた人々を支援するための組織だ。連邦とは別働で君たちの一時的な居場所と経済的活動の窓口の役目をしている。」 「そんなに被害が大きいのですか?」 「うん、連邦が撤退して仮政府を作るほど厳しい状態だ。だから、僕達はデュインとの貿易の窓口を作っている。」 つまりは、当分は此処を拠点として周りで自分の記憶について調べられるわけだ。 「そうですか、ありがとうございます……」 「僕はもう行くね、気が落ち着いたら下の階に朝食を取りにおいで。」 「はい……」 そういってリファーリンは部屋を出て行った。 四話 「Yst lernxfaro」 リーサはその後朝食を摂り、これからの方針について考えていた。 しかし、彼女は今の所どう行動すべきか分からない。 椅子にもたれかかって思考を巡らせていた所に、リファーリンがやって来た。 「どうかしたかい?」 「......いえ、別に...」 リーサは小声で答えた。 実際のところまだ自分の置かれた状況を整理できていなかった。 「そういえばまだ名前を聞いていなかったね。君は何というんだい?」 唐突にリファーリンが聞く。 「そういえばそうですね。私はスカースナ・リーサです。」 「リーサか。よろしく、リーサ。」 リファーリンは笑顔で答え、手を差し伸べてきた。 「こちらこそ、よろしくお願いします、リファーリン」 リーサはその手を握る。 軽く握手をしたあと、リファーリンはリーサに紙袋を渡した。 「これは?」 「ここら辺の地図とお金、それから君の部屋のルームキーが入っている。くれぐれも無くさないでね♪」 「あ、はい、気をつけます」 リーサが紙袋を受け取ったのを確認すると、リファーリンはドアを開けてどこかへいってしまった。 リーサは改めてその中を確認し、そこに入っていた地図を取り出す。 地図を眺めていると、ここから歩いて5分ほどの所に図書館があることに気がついた。 「...よし」 ここにいけば、何か情報が得られるかもしれない。 そう思って、リーサは服を着替えて外に出た。 リーサは図書館の前まで来ると、衣服を整えた。 なんとなく、自分の知らない事を調べるから緊張してしまったのである。 そして、図書館に入る。 そこは3階構成になっており、多くの本が立ち並んでいる。 リーサは本の多さに圧倒されながらも、自分の興味を持った本をとってはパラパラとめくっていた。 窓の外を見ると、いつの間にか日が空高く昇っていた。 新聞や雑誌も読んだため、最近の情勢も少しだが分かってきた。 どうやらXelken式典の時に謎の爆発が起き、それをきっかけにして各地でテロが発生しているらしい。 その情報から察するに、私はXelken式典に参加して、そこで爆発に巻き込まれたらしい。 リファーリンの言っていた爆破事件とはこの事だったようだ。 Xelkenとは一体どのような組織なのだろうか。 そんな事を思って適当に本を漁っていると、この図書館の司書らしき人が話しかけてきた。 青みがかった髪をツインテールにしていて、とてもきれいな人だなあとリーサは感じた。 「なにか探し物ですか?」 「ああ、えっと......Xelkenに関する本は何かありますか?」 「Xelkenですか...。そうですね、連邦の本などいかがでしょう?あまり詳しくは書かれていませんが、Xelkenがどのような組織かは分かると思います。」 「そうですか、ありがとうございます。」 司書の人が丁寧に教えてくれたので、その本でも調べてみようかとリーサは考え、何気なくその人のネームプレートを見ると、そこには「Fudzimi.cakula」と書かれていた。 今度ここに来たらこの人に色々聞いてみよう。 そんなことを考えながら連邦の本が置いてある所へ向かおうとすると、 「あら?あなた、どこかで...」 そんな風な事を藤見さんは言った。 「え?」 「...いえ、なんでもないです。失礼しました。」 リーサは気になって聞き返したが、藤見さんはそのまま何事もなかったかのように背を向けて歩き出してしまった。 頭の中に疑問符を浮かべながら、リーサは再び連邦の本の置き場に向かった。 リーサは連邦に関する本の一覧を眺めていた。 どうやら数十冊はあるようだ。 「とりあえず、一通り読んでみるとしますか」 リーサは、一覧の上にある本から順に本棚から取ってきて読み始めた。 もう何時間が経っただろうか。 いつも間にか日も沈み、辺りを月の光が照らしていた。 リーサはそれでもまだ図書館に残り本を読み続けていた。 Xelkenに関する事はあらかた調べ終えていたのだが、読んでいる内に折角だから全部読もうと考え始めた為、結局残ってしまったのだ。 暗くなってきた。そろそろ帰ろうか。 そんな事を思いながら自分が取ってきた最後の一冊を読み始める。 どうやらそれは連邦の軍隊に関する本のようだ。 リーサは黙々とページを読み進める。 その中に、陸軍名簿一覧というページがあった。 名簿はあまり興味ないと思いながら、軽く目を通していると、そこに驚くべき事が記されていた。 「ユエスレオネ連邦陸軍特別工作隊隊長 スカースナ・リーサ」 「......!」 そこには、リーサと同じ名前が載っていた。 驚愕の事実を知り、リーサの頭が混乱する。 「私は、以前...連邦に所属していたの...?」 リーサは自分のポケットの身分証明を確認する。 確かに、写真に写っている自分は陸軍のものと同じ服を着ていた。 リーサは机に突っ伏して思考を巡らせる。 「......」 自分が連邦に所属していたとは思ってもいなかった。それが分かった以上、私は連邦に戻るべきなのだろうか。 いや、戻ったところで記憶の無い私はなんの役にも立たない。一体どうすれば... ...... 一旦帰ろう。そして、じっくり考えよう。 そう考えたリーサは、本をしまい、荷物をまとめて図書館を出た。 辺りは凍える寒さにつつまれており、月の光もいっそう眩しく感じられた。 その為か、はたまた天性が成せるものなのか、リーサが図書館にルームキーを忘れた事に気がついたのは支部の目の前まで来たときだった。 五話 「La desniex」 翌朝。 リーサはベッドの上で横たわっていた。 昨日の事が頭から離れない。そのせいであまり眠れていない。 私は以前、連邦の軍隊に所属していた。 その事実を知ってからかなり時間が経ったが、いまだ気持ちの整理が出来ずにいた。 もう一眠りするか、などと考えていると、 「おはよう、今日は元気かい?」 と、突然ドアを開け放ってリファーリンが言った。 「!? は、はい、おはようございます...」 突然の事に動揺しながらも、リーサは起き上がって挨拶を返す。 とりあえずリファーリンにはノックをする事を覚えてもらいたい。 「......あー、そんな目でみるな、僕が悪かった。ところで、今日はもう一人Issvのメンバーを紹介しよう。用意が出来たら降りてくるといい。」 そう言ってリファーリンは階段を降りていってしまった。 「はあ......」 リーサはリファーリンの突然の襲来に驚きながらも、伸びをして体をほぐし、身だしなみを整えて下へ降りていった。 「さて、じゃあ紹介するわね。こちら、Issvの所属団員の一人、レシェール・シュカージュだ。」 「初めまして、レシェール・シュカージュです。よろしく、リーサ。」 「こちらこそ、よろしくお願いします、シュカージュさん。」 「シュカージュで構わないよ。さっきはリファーリンがすまなかったな。」 「いえ、お気になさらず......」 シュカージュはリファーリンの紹介を受けてリーサに挨拶をする。 リーサもそれに応じ、シュカージュに挨拶を返した。 シュカージュはリファーリンとは違い、どこか落ち着いた雰囲気を持っていた。 「さて。シュカージュの紹介も終わった事だし、そろそろ行きましょうか。」 そういってリファーリンは立ち上がる。 それを見たシュカージュも立ち上がって身支度をする。 「あの...どこかに行くんですか?」 リーサはドアを開けようとしているリファーリンに尋ねる。 「いや、別に大した用じゃないから、すぐ戻るけど?」 リファーリンはドアノブに手をかけながら言う。 「...私も付いていっていいですか?」 リーサは少し考え、そんなことを口にした。 今の気持ちを整理するには、気分転換が一番だと思ったからである。 リファーリンは少し驚きながらも、 「......まあいいよ。ちょっと買い物に行くところでね、少し荷物をもってもらえるか?」 と言って、リーサの要望を受け入れた。 「わかりました。ありがとうございます。」 リーサはリファーリンにお礼を言い、身支度を始める。 「じゃあ、外で待ってるから、準備できたら外に来てくれ」 シュカージュはそう言って部屋を出た。 リファーリンもそれに続く。 リーサも必要な物を持ち、部屋から出ようとしたところで、 「...危ない危ない」 財布を忘れていた事に気づき自室へ戻っていった。 「お待たせしました。」 「お、来たか。少し遅かったな、準備に時間かかったのか?」 リーサが外に出ると、シュカージュがいた。 どうやら待たせてしまったようだ。 しかし、準備に時間が掛かってしまったのにはちょっとしたトラブルが... 「...すいません、ちょっと色々あって、あはは...」 ううっ、言えない...!財布を忘れたと思って部屋に行ったら財布が無くて、何故だろうかと思った実はリファーリンの部屋に入ってて、 びっくりして外に出ようとしたらドアに足の小指をぶつけてしばらく悶絶した後、そのまま外に出ようとしてまた財布を取りに部屋に戻ってたなんて、言えない...! 「あれ?リファーリンは?」 なんだか気まずいので、リーサは話題を逸らす事にした。 「あぁ......なんか、忘れ物をしたらしくて、支部に戻ったよ。すれ違わなかったかい?」 「いえ、すれ違いませんでした。」 リーサは一瞬ドキッとしたが、冷静を保っていった。 よく見ると、シュカージュは何処か呆れているようだ。 リファーリンが何かしでかしたのだろうか。 「ああ、そうだリーサ」 シュカージュがこちらを向いて言う。 「なんでしょうか?」 「...多分、結構疲れると思うけど、ごめんな」 「?」 シュカージュは遠くを見るような目でリーサに言った。 リーサには言葉の意味が良く分からなかったが、一つ分かった事があった。 あぁ、この人、リファーリンに散々振り回されてるんだろうなぁ。 「ごめんごめん、待たせたね」 そんな事を思っていたら、リファーリンが戻ってきた。 しかし、リーサには分からない。 リファーリンが今手に持っている物はなんなのか。 「...あの、リファーリン?なんですか、それ?」 嫌な予感しかしなかったが、とりあえず聞いてみた。 「これ?ていうか、何でもっていかないの?」 リファーリンは極めて明るい口調で言う。 何故だろうか、嫌な予感が更に増幅した。大事にならなければいいのだが。 まあそれを持ってる時点でおかしいけれど。 「はぁ...」 シュカージュをため息をつく。 リーサはシュカージュの苦労が少し分かった気がした。 六話 「La appedzerfelle」 「はい、おつりはこれね。まいどあり!」 店長さんらしき人がリファーリンにつり銭を渡す。 「よし、これでオーケー。後少しだよ、頑張れ、リーサ」 「は、はい...わかりました...」 リファーリンは気楽に言う。 だが、既にリーサは両手にそれぞれ二袋、さらに3袋ほど抱えているため余裕はほとんどなかった。 まあ、シュカージュは私よりも悲惨な有様だが。 当のリファーリンは荷物をほとんど持っていない。気楽なものだ。 ...しかし、これまでの経緯も相当だった。 [最初の買い物] 「久しぶりー!おやっさん、元気にしてた?」 「おっ!?リファーリンか!懐かしいなあ!」 リファーリンは店主の顔を見るや否や、とても嬉しそうに声を掛けていた。 声を掛けられた店主も、リファーリンを見た瞬間、ぱあっと顔が明るくなっていた。 「おいおい、何年ぶりだよ!心配したぜ?」 「あはは、ごめーん。色々あってさ、......」 二人はとても楽しそうに話している。 リーサはなんだか羨ましいと思ってしまった。 「シュカージュ、あの二人は仲がいいんですか?」 「ああ。リファーリンがIssvに入る前はよく通ってたらしい。俺はほとんど来た事はないな。」 「そうなんですか...」 昔からの顔なじみならば、仲が良いのは当然かもしれない。 最近は色々な事があったらしいから、中々会えなかったのかもしれない。 しかし、冷静に観察すると、釘バットを持った少女が、いかついおっさんに喧嘩を売っているようにしか見えないから不思議だ。 「さて、俺達も行くぞ、リーサ」 「はい。」 外からずっと観察していても仕方が無いので、私達はリファーリンのところに駆け寄る。 「じゃあ、ありがとう!またね、おやっさん!」 リファーリンは、私達が向かってくるのを見ると、買い物を終えたのか、こちらに駆け寄ってきた。 リファーリンはとても嬉しそうだった。きっと久しぶりに会えて嬉しかったんだろう。 「おう、リファーリン。ちょっと待てや」 しかし、リファーリンは店主に呼び止められた。 リファーリンも不思議そうに振り向く。 しかし、店主はどこか殺気の漂う目でリファーリンを睨み、 「......金、払え」 とにっこり笑って告げた。 「え?お金ならちゃんと渡したはずだよ?」 ところが、リファーリンは表情一つ変えず店主に言い返す。 「ほう...なら今俺が握ってるこれはなんだ」 「?お札でしょ?」 「とぼけるな。これはどう見たってただの紙切れじゃねーか!」 「え? あははー、そんなばかな...」 リファーリンは冷や汗を浮かべ、店主の方に向かっていき"それ"を確認する。 そして、そのままこちらに引き返してきたかと思うと、シュカージュに向けて右手を差し出した。 それが意味する事はリーサにも分かった。 「...これで勘弁してくださいよ」 シュカージュはリファーリンに"それ"を渡した。 リファーリンは店主の所に戻り、頭を下げていた。 「...あの、もしかして、今の...」 分かりきったことではあったが、リーサは一応シュカージュに聞いてみた。 「...多分、お札と紙切れを間違えたんだろう。全くあの人は...。しかも、毎回必ずああなるから困ったものだ」 えーっと...。ひょっとしてリファーリンさん、ボケてる? そんな事を素で思ってしまったが、自分も人の事を言えない事に気づき、ぐっと飲み込む。 シュカージュはよくリファーリンと共に生活して大丈夫なのだろうかと、疑問に思ってしまった。 そんな疑問を浮かべていると、リファーリンがこちらに戻ってきた。 そして、 「一旦戻ろう。」 との事だった。 [洋服店での買い物] その後店を転々としたが、とりあえずリファーリンかリーサが何かをしでかしたのは間違いない。 そしてその度にシュカージュが対処をしたのもまた言うまでも無い。 そんな中、リーサ達はとある洋服店に向かった。 なんでも、制服のクリーニングと、私服を買う為だそうだ。 制服をクリーニングに出した後、洋服売り場に向かう。 「皆、とりあえず自分の好きな服を選ぼうか」 「そうしましょうか。」 「じゃあ各自服を選ぶこと!」 リファーリンの合図でリーサ達はそれぞれ別の服を見に行く。 私は何処へいこうか。そんな事を考えていると、 「どうしたの?服、選んであげようか?」 リファーリンが声を掛けてきた。 「...そうですね。お願いします。」 私は素直に応じる事にする。 記憶が無いからどういう服を選べば良いのかわからないというのもあるが、正直あまり興味がなかった。 リファーリンがついてきて、と手招きする。 私はリファーリンに続いた。 「う~ん。あ、これなんかどうかな?」 そういってリファーリンが私に見せた服。 普通の服だ。リファーリンが見せる物だからどんな服を持ってきてもいいように心の準備をしておいたが、その必要はなかったようだ。 ...ん? それ、今私が着てるのと同じ服... 「......」 リーサはどう反応していいか分からなくなってしまった。 リファーリンの顔からは悪意など感じられない。きっと本気で勧めてくれてるんだと思う。 しかし、何と言うか......斜め上過ぎる。 とりあえず、それは私が着ている服と同じだと伝えないと...。 「あ~、うん、確かにその服いいかな。でも、その~、えーっと~...」 くっ......!言えない!そんな満面の笑顔でこっちを見つめられたら、真実を伝えてはいけない気がする...! どうするべきか...そうだ、何気なく今着ているということを伝えればいいんだ!さて、どうしたものか... 「う~ん。似合うと思うんだけどな~」 リファーリンは眉をひそめて言う。 ここでしっかり言わなければ。 「確かに、悪くは無いんですが......それって今」 「今の流行かと言われるとそんな事はないけれど、それでもこれはこれでいいと思うよ?」 「......」 どうしよう。なんか、言い辛くなった。 これでは同じ服をもう一着買う事になってしまう。一体どうすれば...! 「おーい、そっちはどうだ?」 シュカージュがこちらにやって来た。彼なら、真実を伝えられるかもしれない...! 「あ、シュカージュ!ねえねえ、この服、リーサに似合うと思わない?」 「うん?どれどれ?......」 シュカージュはリファーリンの持っている服と私が今着ている服を見て明らかに疑問を抱いている。 そしてこちらを向き、さり気なく私の服とリファーリンが持っている服を指差し、 「同じだよね?」 と聞いてきた。 「そうなんです。同じのを勧められて、どうすればいいかわからなくて...」 私は素直に答えた。 するとシュカージュは、リファーリンの方を向き、 「これ、今リーサが着てる服だぞ?」 と言った。 そんなこんなで、ようやく帰路に着いたのであった。 空は赤く染まり、日もそろそろ沈もうとしていた。 「あー、疲れた...」 リファーリンはため息をつきながら言う。 それもそうだ。リファーリンは勿論、私も色々迷惑をかけてしまった。 後でお礼と謝罪をしないと。 「久しぶりの買い物だったねえ。色々あったけど」 当の本人はまだ元気そうだ。 私でさえ気が滅入っているのに、リファーリンの神経はどうなっているのだろうか。 「でも、楽しかったですね。今度また行きたいです」 「はは...。まあ、たまにはこういうのも悪くないな」 シュカージュが若干嫌そうな顔をした気がしたが、私は純粋にこの買い物が楽しかった。 また、皆で買い物に行けたらいい。こんな風ににぎやかに。 そんな事を考えつつ道を歩いていると、前の方に人だかりが出来ていた。 「何かあったのかな。ちょっと様子をみよう」 リファーリンがそう言って、人だかりの方へ向かっていく。 私達もそれに続いた。 そこには言い争う人達がいた。 片方は前に図書館で見た連邦の服を着ている人達、もう片方は...見たことが無い服を着ていた。 「いい加減にしろ!あんたら連邦のせいで...!」 「そっちこそ何なんだ!いつも我々の邪魔ばかり...一体何がしたいんだ!」 「何がしたいかって?決まってるじゃない。助けるのよ!」 「...いいからそこをどけ!」 言い争いが激しくなってきた。 もしかしたら戦闘になってしまうかもしれない。 そんな緊張した空気の中、 「そこ!何してる!」 いつの間にかリファーリンが仲介に入っていた。 「おい、Issvだぞ」 「どうする、リーダー?」 「...仕方ないわね。ここは一旦引くわ」 「了解。後で結果を伝えるわ」 「行きましょう」 そういい残して、彼等は居なくなってしまった。 あの人達は一体... 見たことのない服を着た謎の集団。 後で調べてみようか。 「気をつけなさい、あまり強気に出すぎると、信用を失うわよ」 「...すみません、リファーリンさん」 そうこうしている間にも、リファーリンは連邦の人達を注意して、こちらに戻ってきていた。 「さて、それじゃあ帰りましょうか。」 リファーリンは再び帰路に着く。 私は、その時リファーリンの動きに驚いていた。 先ほどまでとは明らかに違う素早い動き。 どこから見てもミス一つしていない完全さ。 仕事とプライベートは別。そんな事をリーサに思わせるには十分だった。 「どうしたの?置いて行くよ、リーサ」 「すみません、今行きます」 私は、どうやらリファーリンの事を勘違いしていたらしい。 私も、あんな風な人になれたらいいのに。 そう思って、リーサはリファーリンの後を追った。 七話 「La kacel」 「なんのことだっけ?」 リファーリンが言う。Issvに戻ってきてロッジの二階のフリースペースでリーサとリファーリン、そしてシュカージュはたわいも無い話をしていた。 「あの変な服着て連邦の人たちと言い争っていた人たちの事です。」 あの時からここに帰ってくるまで気になっていたが言い出そうにもリファーリンがシュカージュにむけてマシンガントークしていたために話を聞く事ができなかった。 「あれか……。」 「……。」 そのことを聞いたリファーリンとシュカージュは黙り込んでしまう。 「どうかしたんですか?」 「いや……。」 「あれは……ちょっとした厄介でね。」 厄介?それは一体どういうことだろう。 「あいつらは地球から来たんだ。」 「!?」 地球というとあの爆破事件を起こした八ヶ崎翔太が居た世界の惑星ではないか。 「あ、アフの子孫の残りは八ヶ崎翔太一人だけじゃなかったんですか!?」 そうだ。確か連邦の調査書にあった。地球に残ったアフの子孫は八ヶ崎家だけであったはずだ。 「それが、そうでもないみたいだ。」 シュカージュが一枚の紙切れを差し出す。そこには「アフの子孫 再度確認」とあった。どうやら新聞の切抜きのようだ。 「これは……」 「彼等の名前は"ヴァルファースト"、爆発事件が起きてから連邦の武力行使の邪魔をしているんだ。そう彼等は皆アフの子孫の残りさ。」 謎の組織ヴァルファースト。その正体は地球に残るアフの子孫の残党であった。 「では、そのヴァルファーストとやらはわざわざこんな所まで何を目的に?」 「それが、分らないんだよね。連邦に歯向かうということは八ヶ崎側なんだろうけどね。」 リファーリンがそういってコーヒーカップをテーブルに置く。 「そろそろ寝よう。」 リファーリンがそういったのでリーサたちは解散し各自自室に戻った。 爽快な朝だ。朝ごはんはいつも一階のラウンジで取る。 今日も食券を買ってその先へ並ぶ。パンと牛乳、簡易リウスニータ粉末とジャムを貰って食事に就く。椅子に座ってパンを頬張ると前から男性が一人やってきた。 「ここ、いいかな?」 少しやせたなで肩の40くらいの男性だ。同じくトレーを持っている。リーサは快く席を勧めた。 「ありがとう、見ない顔だね。名前は?」 「リーサです。スカースナ・リーサ。」 「俺はアレス・リェユだ。君も爆発に巻き込まれたのかい?」 アレスはリウスニータ粉末を牛乳に溶かしながら言う。 「多分、そうです。」 「多分?」 アレスは怪訝な顔をした。 「爆発事件より前の記憶が無いんです。」 そう聞くとアレスは目を見開き好奇の目でリーサを見つめた。 「本当か?記憶が無いのか?」 そう問いかけた瞬間、ロッジの入り口のドアがいきなり開いた。中に入ってきたのは四人。以前見た変な姿の集団だった。 「私は九重葵。ここにスカースナ・リーサが居ると聞いた。」 そういってその少女はIssv職員を睨み付けた。 八話 「La jujol」 強くドアを開けられたせいか、ドアが外れかけている。 また、彼女等が通ったと思われる通路も、ガラスの破片や砕けた石などが散乱している。 「スカースナ・リーサ! どこにいる!」 声を張り上げながら、突如ラウンジに現れた少女、九重葵が言う。 その声は、とても少女のものとは思えないほどの力強さを持っていた。 その少女は、辺りを見回し、目当ての少女を探し始める。 「………」 リーサはその場から動けずにいた。 突然のヴァルファーストの襲来。そして、九重葵が私を探していること。 彼らは何故私の事を知っているのか。何故私を狙うのか。 リーサには全く心当りがなかった。 その事について思考を巡らしているうちに頭がパンクしそうになる。 「……乗り込んで来るとはいい度胸じゃないか」 リーサが頭から煙を出そうとしていたその時、ラウンジのどこからか現れたリファーリンが九重に向かって言った。 リファーリンはどこか怒気を纏っていた。 「あなたはリファーリンね。スカースナ・リーサはどこ?」 しかし、リファーリンの空気に気圧される事なく、なおも九重は要求を続ける。 「答える義理はないね。それより、早く引き返してくれない?」 そんな九重の要求を跳ね飛ばすような口調で、九重とその取り巻き3人に告げる。 リファーリンがここまで感情を露わにしたのを見たのは初めてかもしれない。 さらに、リファーリンの手からWPのものと思われる炎が見える。 それはリファーリンの手の周りを不安定に揺らぎ、青白い光を放っている。時折、そこから雷のようなものが発生している。 一瞬でも気を抜けば殺される。 リーサがそんな風に感じるほど、リファーリンはヴァルファーストに強烈な敵意を向けていた。 「あれぇ?あんたらは好き勝手にあたし達に手出し出来ないんじゃなかったの? いいのか、そんなことして?」 しかし、リファーリンの事など敵ではないという風に、九重は話を続ける。 どこか挑発的な口調だ。 「確かにそうだ。だが、不法侵入、器物損壊、それに今から人を連れ去ろうとしている。流石に黙って見ているわけには行かないな」 廊下を眺めながらリファーリンは言う。 どちらも一歩も譲らないやり取りが続いている。 ラウンジの空気が一気に張り詰める。 リーサはその場にいるのが辛くなってきた。 「それもそうね。まぁそんな事はどうでも良いのよ。もう一度聞くわ。スカースナ・リーサはどこ? 答えないなら、この人がどうなっても知らないわよ」 九重の後ろにいた一人の男が、いつの間にかラウンジにいた男を羽交い締めにしている。 「ぐ……!放せ……!」 その男は懸命に抗っているが、男の腕は解けない。 「あ……!」 そして、その締められている男を見てリーサは驚愕する。 その男は、先程までリーサと話していた、アレス・リェルだった。 「リェルを放しなさい!」 リファーリンが少し焦った口調でいう。 流石に人質を取られるとは思っていなかったようだ。 ラウンジにいた職員も動揺を隠せないようだった。 彼らがヴァルファーストに対して臨戦体勢に入ろうとしたその時、 「私がスカースナ・リーサだ!リェルを放せ!」 リーサが前に出て、自ら名乗りでた。 「リーサ…!どうして…!」 リファーリンはそんなリーサを見て目を見開く。 「ごめんなさい…。彼を放っておけなかったので。大丈夫です。すぐ戻ります」 リファーリンに小声で話しかけた後、 「私に用があるんでしょう?だったらリェルを開放して!」 先ほどよりも声のトーンを下げて九重に言う。 下手に刺激するよりも素直に従った方がいい。リーサはそんな気がしたのだ。 「………分かったわ。山田君、そいつを放しなさい」 九重は少し考える仕草をした後、そう言った。 「え、でも葵…」 「大丈夫。彼女はスカースナ・リーサよ。ほら、さっさとしなさい」 「……分かった」 山田と呼ばれた男はリェルを開放した。 リェルは首を押さえて咳き込んでいる。 「……さて、スカースナ・リーサ。こちらに来なさい」 九重が私を誘導する。 私は警戒を緩めないようにしながら、彼女等の後を付いていく。 後ろからはリファーリンの叫び声が聞こえる。 リーサは、心の中でリファーリンに、ごめんなさい、と謝りながら、ラウンジを後にした。 九話 「La text」 リーサは暗がりの中をゆっくりと歩き、進んでゆく。どうやら九重とやらの拠点まで移動しているようであった。先頭を歩く九重がぼそっと口を開く。 「何故あなたを欲しているのか知っている?」 「えっ?」 そう答えても、返事は無かった。もう少し歩いた所に"スファガル"と書かれた建物があった。私達はその中へ入り階段を登り廊下を進んだ先にあった部屋に入っていった。リーサは九重の指示によって部屋にある椅子に腰掛けた。九重も反対側に座る。 「いきなり、ここに連れ出したことすまないと思っている。」 「……」 九重がそう言ったが、リーサは何を言えば良いのか良く分らなかった。沈黙が部屋を包んだ。 「いきなりだけど、経緯を説明させていただくわ。」 そう九重が言うと横に居た青年が写真を三枚、目の前の机に撒いた。 「誰か分かるか。」 青年が尋ねる。青年には悪意などないように見えた。私を拉致して何か聞き出して捨てるような、そんな感情は受けなかった。リーサは彼らに向かって 「知らない。」 そういってリーサは首を振った。 すると青年は目を窄め、机を軽く叩いた。 「そんなはずは無い、お前はこいつを知っているはずだ。八ヶ崎翔太、知っているだろう。」 そんな訳が無い、図書館でも読んだが八ヶ崎翔太とはあの爆破事件を起こし連邦と戦いを起こしているこの紛争の首謀者じゃないか。そんな人間と何故知り合いになっているというのか。 「まさか、本当に知らないというの?」 目の前の九重が言う。九重のその透き通った目がリーサを見つめる。しかし、リーサは九重の思うような答えを導き出す事はできなかった。知らないものは知らないのである。 「どういうことなの……スカースナ・リーサはユエスレオネ陸軍に所属し、アフの事件当時に翔太と接触していることで彼を知っているはず。」 「それは……」 ユエスレオネ陸軍への所属、それを知っている。何故?知る必要も無い事を、彼等は知っている。そして、それは八ヶ崎翔太と関係している。私は、記憶をなくしてから、私自身について何も知ろうとしなかったではないか。今まで分ってきた事はただ、偶然に出てきた情報ではないか。 私は私自身について雀の涙程度の事柄しか知らないではないか。 それならこれが知るチャンスなのではないか。 「……あの、知りたい事があるんです。」 「ん?」 リーサの言葉に九重は反応する。リーサはとりあえずの質問を九重に投げた。 「確かに私はスカースナ・リーサでも、あの爆破事故以前の記憶が無い。教えてください、私と八ヶ崎翔太が何か関係しているのですか?」 その言葉に動かされたかのように九重はリーサを見つめた。睨みつけるように。 「ええ、あなたは昔、アフの子孫事件の時翔太と一緒に行動を共にしていた。だから、もしかしたら翔太の手がかりがつかめると思っていた。でも、あなたは記憶をなくしたとか言って、引っ張ってきて損した気分だわ。」 「……」 どうやら彼女の期待には全く添えられなさそうそうだ。そういえば自分の状況を完全に忘れていた。彼等は私の個人情報を取り扱うATMではない。戦時中に人質をとって人を拉致するような極悪非道集団である。 「もう一つ質問させてください。」 「……」 九重はリーサを睨み続けている。 「九重葵さん、貴方は何故八ヶ崎翔太を追いかけているのですか。」 十話 「La snalu」 私がスファガルに連れ込まれて、30分が経とうとしている。 窓から差し込む光は先程より明るくなり、私達がいる部屋を満たし始めた。 「……その質問に答える前に、改めて私達の事を紹介しておくわ。その方がわかりやすいでしょうし」 九重はそう言うと、先ほどリーサに写真を見せた青年を指さした。 「彼は山田俊明。ヴァルファーストの戦闘要員といったところかしら。山田、ざっくり自己紹介」 九重の言葉に若干顔を歪めながら、その青年……山田俊明はリーサの方を向いた。 「いきなり無茶ぶりかよ……コホン。まあいい。俺は山田俊明だ。戦闘には自身があるぜ。さっきは脅すようなこと言って悪かったな。まだお前を信用したわけじゃないが……よろしく。」 「いえ、お気になさらず…よ、よろしくお願いします…?」 どうしてだろうか。何故か私はヴァルファーストの一員になった時の様な扱いを受けている気がする。 山田俊明と名乗った青年は、私の返答に満足したのか、そのまま後ろへ下がり、 「九重、悪いが少し野暮用だ。出かけてくるぜ」 そう言い残して部屋を出て行ってしまった。 「全く、あいつは……。まあいいわ。ほっといても死なないし。で、そっちの端末いじってるのが青柳玲奈。戦略係といったところかしら。ほらあんたも」 またしても九重の無茶ぶりが炸裂する中、青柳と呼ばれた少女は特にそれを気にする風もなく、 「…よろしく」 と、ただ一言だけ言い残した。 無口な人なのだろうか。それにしても、やはり私は拉致られたというより、勧誘されているように感じる。 「もう少し言葉を発しなさいよ。……で、そっちで本読んでるのが山吹宏。私達を裏で支える縁の下の力持ちよ」 そう言って椅子に座っている青年に人さし指を向ける。 彼は本から目を離さず、 「山吹宏。最近ヴァルファーストに入った。よろしくな、後輩」 「は、はあ……」 落ち着きなさいリーサ。これは油断させて私から何かしら情報を盗もうとしているヴァルファーストの陰謀よ…! リーサは自分にそう言い聞かせつつ返事をする。 というかこの人達、人を拉致っておきながら随分とくつろいでいるようにみえる。 それとも誘拐というのはこういうものなのだろうか。 「後輩出来て良かったわね。で、本当はもう一人いるんだけど、今は部屋で充填してるから、また後でね。」 そして九重は、自分を指さして、 「そして、私が九重葵。知ってると思うけど、ヴァルファーストのリーダーよ。」 と言い、その手から透明な球体を取り出してみせた。 それは不規則に揺らいでいて、周りの空気を振動させている。 明らかにこの世界にある物質ではない。となると… 「これは私のWP。制御が難しいけど、これくらいならお茶の子さいさいね。ヴァルファーストは皆WPを使えるのよ」 九重が私が思っていたことを代弁してくれた。 しかし、九重の持っているWPは強力なものに見える。 伊達に連邦と対立している訳では無い事をリーサは思い知らされた。 「……で、話を戻すわ。私が翔太を追う理由だったわね」 九重が椅子に座り直し、こちらに向き直る。 彼女が真剣な表情に変わったため、リーサも姿勢を整える。 「色々理由はあるのだけれど……大きな目的の一つは、『翔太を救うこと』ね」 「翔太を……救う……?」 リーサは理解できないという風に首をかしげる。 翔太_八ヶ崎翔太は、Xelken式典で爆破事件を起こした。 そんな彼を救うとは一体どういうことなのか。捕まえて更生させるとかだろうか。 「…まあ、記憶が無いんじゃ言っている意味も分からないわよね……。翔太はね、昔連邦と協力してXelken勢力を倒そうとしてたのよ」 「な……!」 衝撃の事実を知らされて思考が止まる。 「ただ……彼はその途中で大切な仲間を失ってしまってね。しかも、連邦の奴がそいつを殺したのよ。だから、翔太は今まで手を組んでいた連邦と手を切って連邦と敵対し始めたのよ」 「……」 リーサの脳が再起動するのを待った後、九重は話を続けた。 だが、当のリーサはまたしてもシャットダウンしそうになる。 翔太が連邦と敵対しているのは、何やら複雑な事情が絡んでいる。しかも、その原因は連邦にある。 今のところリーサが理解できたのはこの程度だった。 「翔太は、『自分は戦わなければならない』と言ってたの……。でも、いつまでも連邦と戦ってたって仕方無いじゃない……。こんなことしてたって、何の意味もない…!だから、私達は、恩人である翔太を止めて、翔太を苦しめているものから助けてあげたい……『救って』あげたいの!」 九重は、最初こそ事務的に話していたものの、話していくうちに感情が抑えきれなくなったのか、最後はほぼ悲痛な叫びとなっていた。 リーサはそんな九重を見ていて、とても嘘や演技ではないということを理解した。 この人は、本気で翔太を助けようとしている……。 その熱意が、リーサの心に響いてきた。 「少し取り乱しちゃったわね…。ごめんなさい。でも、そんな訳で、私達は翔太を止めようと思ってる。それが私達の目的よ。」 「……」 確かに、彼らの行動の辻褄は合う。それでも、リーサには納得出来ない事があった。 「なるほど。貴方達の話はよく分かったわ。でも、それだと、連邦とやってることは同じじゃないの?彼らと敵対する理由はないのでは?」 そう。連邦が翔太と戦っているということは、翔太を止めようとしているということだ。 なのに協力せず、逆に敵対している。リーサには不可解でならなかった。 「一見、私達と同じ事をしているように思えるけれど、奴らは違う。Xelkenとの戦いを阻止するという名目で活動して、実際は連邦にとって脅威である翔太を倒そうとしているのよ」 「……その証拠は?」 「確証たるものはないけれど……連邦がXelkenを庇う動きを見せていること。戦いを止めるのが目的であれば、Xelken側にも干渉するはずでしょう?それに…彼らは無慈悲よ。特に特別警察はね。恐怖の対象とされるほどよ。そんな奴らに翔太を任せてはおけないわ」 なるほど。彼らの言う事も一理ある。 しかし、リーサがそれよりも気になるのは、特別警察が恐怖の対象であることであった。 連邦は、もしかしたら私が思っている以上に恐ろしい場所なのだろうか。 私は、一体何故連邦に入ったのかしら…。 「どう?納得したかしら。私達が説明できるのはこの辺までなのだけれど…」 九重が少し不安そうにリーサを見つめる。 「いえ、大丈夫です。私もある程度納得出来ましたので」 しかし、リーサはそんな不安を跳ね除けるような返事をしたため、九重の顔が安堵に満ちた。 「そう、良かった…。っていうか、部外者にここまで話したのは流石にまずかったな。やっちまったぜ…」 そして九重はしまった、という風に天を仰いだ。 リーサはそんな九重を見てクスっと笑ってから、 「心配しなくても、ここで聞いたことを他言するつもりはないですよ。私が思っていた組織とは随分違いましたし」 といった。 リーサのヴァルファーストに対する印象が変わったこともあり、このことは誰にも話す気は無かった。 「そう、ありがとう。随分話し込んじゃったわね…。いつの間にかお腹が空いてきたわ。少し外食にでも行かない?」 「そうですね。私もお腹が空いてきました」 「なら、いいお店があるのよ、ちょっと一緒に行かない?」 「いいですね。案内よろしくお願いします、九重さん」 リーサは何気なく読んだが、九重は恥ずかしそうに頭をポリポリと書いて、 「あー、九重でいいわよ。こっちこそよろしく、スカースナさん」 と、素っ気なく言った。 スカースナさん、かぁ……。 若干の感傷に浸っていると、九重が私の腕を引っ張ってドアの前に立ち、 「じゃあ私達ちょっと出かけるから、あとよろしく~」 そうヴァルファーストの皆に伝え、私の腕を握ったまま、外へ出た。 十一話 「La jujojass」 リーサと九重はスファガルを出て、西フェーユを歩いていた。戦乱の中にも関わらずここだけは未だに活気を持っていた。九重は、おすすめの店とやらを既に決めているらしいがどうなのだろう。 「ここね。」 九重が指した先には「ラネーメ料理 シーナリアトン」と書いてあった。シーナリアトンと言うとハタ人の名前なんだがラネーメ料理をやっているらしい。まぁ、似たような料理なんだろうから大丈夫であろう。店内に入ると店員が席まで誘導してくれた。 「とりあえず、何を頼もうか。」 「ラネーメと言えば豆腐ですかね?」 ラネーメ晩餐会というラネーメ一族が集まる晩餐会では爆発する豆腐が出されるらしい。ロックだ。それはいいとしてそんなアレンジがくわえられる豆腐は安定して提供される人口に膾炙した食と言えるだろう。 メニューを開くと豆腐だけの見開きがあった。 「豆腐ステーキ、豆腐サラダ、豆腐コロッケ……」 「とりあえず、豆腐ステーキを頼みましょう。」 「分ったわ。」 呼び鈴を鳴らし店員を呼ぶ。 「豆腐ステーキを二つ、あとリウスニータもお願いします。」 「はい、かしこまりました。」 そういって、店員は去っていった。九重は何故か目をぱちぱちさせている。 「リウスニータ?」 「あれ、九重さん知らないんですか。リウスニータ。」 「何なのそれ。」 「郷土ドリンクというか、そんなもんです。」 「そういえば、九重さんってどこから来たんですか。」 リーサの質問に九重は顔を緊張させる。 「地球、日本から来たの。」 「え。」 地球といえば八ヶ崎翔太の居た所ではないか。何かとユエスレオネにやってくる厄介者どもの居る場所のように考えていたためあまりいいイメージを持っていない。しかも、九重は名前からして地球人だ。そういえば、地球の日本に居るケートニアーであるアフの子孫は八ヶ崎だけではなかったのか。 そんなことを考えていると豆腐ステーキとリウスニータが運ばれてくる。九重はリウスニータを一口のみ、豆腐ステーキを口に運んで頬が緩ませた。 「うん、やっぱり美味しい!ここ選んでよかった。」 そういう九重にリーサは疑問をぶつけてみた。 「九重さん、九重さんはなんでここ……ファイクレオネに来る事が出来たのですか。」 「それはね、ユミリア……あの自己紹介の時言ったもう一人のメンバーが関わっているの。」 ユミリア?という名前のメンバーがもう一人いるようだ。名前からしてユエスレオネ人っぽい。 「私はね。昔、翔太に助けられたの。通学途中で駅で突然爆破が起きて黒服の人がシールドを張って爆破から逃れられた。その人は去って行ったけど私は恩返しがしたくて探していたら黒服の人が八ヶ崎翔太だって分ったの。」 リーサは九重の話に引き込まれていた。 「それでユミリアと突然出合った。翔太を探したいなら、翔太を助けたいなら、協力しないかって、そう言われて私はこのヴァルファーストを作り上げたの。メンバーを日本中から集めて。」 「そうだっんですか……」 アフの子孫はどうやら一人しか居ないわけじゃなかった。ヴァルファーストの一員であるユミリアとやらは翔太を助ける目的を元々もっており、何故かは知らないが九重らを勧誘しヴァルファーストを立ち上げたわけか。 そんな情報を整理していたら、山田が息を切らしながら走ってきた。 十二話 「La kutyv」 「大変だ、九重……!!」 山田はリーサ達の前に来ると、その場にへたりこんでしまった。 店の客が何事かとざわつき始めている。 「ちょ、ちょっと目立つじゃない……で、どしたの?」 九重が少し慌てた風に聞く。 すると、山田は、この世の終わりを見ているかのような顔で、 「コーヒーが……無い……」 と言った。 「「………は?」」 リーサと九重、二人の声がハモる。 しかし、そこには明らかな違いがあった。 リーサは山田の発言が理解できず九重の方へ向いたが、その九重も絶望のオーラを漂わせていた。 「…………」 この二人、そんなにコーヒーが好きなのかなあ。 「……で?状況は?」 九重は山田に重く問いかける。 「……察しろ」 そして、山田はどこか諦めた口調で答えた。 九重は山田の言葉の意味を理解したのか、深くため息をついた。 「……そう。………じゃあ、」 そして大きく息を吸い込んだ。 「なんでコーヒー買ってないのよ!!!!」 「はあ!?こっちはここまで来るのに精一杯だったんだぞ!?」 「知らないわよ!!!いいから早く買って来なさい、私がなんとかしとくから!!!」 「ちょ、おまっ、一応言っとくが相当やべえぞありゃあ!!?」 「そんなの知ってるわよ!!!いいから早く買いに行きなさい!!!リーサ、あんたもついてって!!」 「はいぃ!?」 ただ呆然と九重と山田のやり取りを見ていただけのリーサは、突然名前を呼ばれたので驚いてしまった。 「いい!?これは緊急事態よ!!山田と一緒にコーヒーを買って来なさい!!!」 「いや、そんな、いきなり言われても何が何だか」 「行くぞリーサ!!」 「え!?ちょ、待って、手を引っ張らないでー!!!」 店の中にリーサの声が響き渡る。 そして、九重は「死ぬかも……」と呟きながら、会計を済ませて店を出た。 山田に手を引っ張られながら、リーサは食料品店にたどり着く。 そして飲み物コーナーの前に着いた時、初めて山田はリーサの手を放した。 「はぁ、はぁ……ちょっと、一体なんなんですか!」 リーサはようやく開放された手をぷらぷらさせながら、山田に問いかけたのだが、 「悪いが今それどころじゃないんだ。少し後にしてくれ」 と断られてしまった。 「はぁ……何なのよ、もう……」 リーサがため息をつく。 そうしている間にも、山田は店員を探し出し、 「済みません、この棚にあるコーヒー全部買いたいんですけど」 と頼んだ。 リーサは驚いて山田の方を見る。 ……何を言っているんだこの人は。 「……ああ、あんたか。ほら、全部やるからちゃんと金払えよ?これに入るか?」 そして店員よ、なぜ貴方はそれが当たり前といった風に応対しているのか。 「オッケーです、ありがとうございましたー!」 そして山田は当然のようにコーヒーを袋に入れて店を出た。 「おーい、リーサ!悪いけど、半分持ってくんない?」 そしてまた、いきなり出てくる私の名前。 今日は厄日なのかもしれない。 そんな事を考えながら、山田の後を追って店を出た。 「……いい加減、私の質問に答えてください」 リーサは頬を膨らませながら、山田に話しかける。 リーサ達は帰路に着いていた。 突然コーヒーを買いに行かされて、挙句に荷物持ちだ。不満が無いわけがない。 「……ああ、そうだな。さっきは済まなかった、その……強引に連れ出して」 「いえ、そんな謝ること……」 あるな。 とは口に出さなかった。 「なんでこんなにコーヒーを買ってるんですか?というかそもそもなんでコーヒーが必要なんですか?」 リーサは山田に聞いた。 「あぁ、そうだったな。九重から聞いてると思うが、ヴァルファーストにはユミリアっていう奴がいてね。そいつが、どうやらカフェイン回路症候群らしくてな」 カフェイン回路……症候群? リーサの知らない病名だった。 「……まあ、知らないのも無理はないな。医者の人も、「原因不明の難病」とか言ってたし」 「……で、なんでコーヒー?」 「コーヒーにはカフェインが含まれているからな。どうやら定期的にカフェインを摂取しないと、カフェイン欠乏症になってしまうらしい」 「その欠乏症になるとどうなるんですか?」 「到底人に言えるもんじゃ無いが……部屋をWPで壊し始めたり、突然「野郎オブクラッシャー!!!!」とか叫びながら俺達に襲いかかって来たり、とにかく大変なんだ。しかも、何の作用か知らないが、いつもの数倍の力を発揮するから、一度こうなるともう収拾はつかないのさ」 山田は遠くを眺めて言う。 「カフェインが欠乏しているから、カフェインを摂取させれば収まってくれるんだが……。何せ今のあいつはただの破壊神だ、そう簡単に飲ませられないのが困る」 ひと通り話終えた所で、ため息を着いた。 「はぁ…。今回は何秒もつかな……」 小さい声だったのでリーサにはよく聞こえなかった。 しかし、リーサはくすっと笑った。 「なんだよ。こっちの気も知らないで」 それを見た山田が、少し拗ねたように言う。 「いや、別に……。私はただ、二人がコーヒー好きなのかなあ、って思ってたから。勘違いだったと思うと可笑しくて」 「そんな平和的な話で収まってたら良かったけどな」 「そうね。さて、急がないといけないんでしょ?早く帰らないと」 「だな。少し走って帰るか」 二人は、他愛も無い話をしながら、スファガルへと戻っていった。 だが、リーサはまだ知らない。 この後に起こるであろう恐怖を…… 十三話 「La fergen'artz」 大きく爆破音と衝撃が響く。スファガルの上階から一人落ちてくる。 「うわぁあああ!?!?」 べちっ。 「おい、大丈夫か宏!?」 山田が問う、宏と言われた少年は何事も無かったかのように立ち上がる。 「ごめん、山田君……なかなか抑えられなくて……」 「大丈夫だ。コーヒーが着たから。」 そういうと山田はスファガルを見据える。すると宏が落ちてきた場所からもう一人少女が降りてきた。少女は手に小刀を持っている。瞬間小刀が手から放たれる。 「くっ!?」 さすがに山田でも反応できなかったようだがその小刀は自分達に当たる前に雲散霧消した。その後に居たのは九重であった。 「ユミリア!いい加減にして!コーヒー持ってきたから!!!」 九重の言葉で少女は次に放とうとしていた小刀を持ち直しポケットに入れた。多分彼女がユミリアであろう。 「コーヒーをください。」 そういったユミリアに向かって九重が山田の持つコーヒーを取って手渡す。ユミリアは微笑みながらスファガルの中に歩いていった。 「えっ……と……、彼女がユミリアさんですよね?」 リーサは疑問を九重にぶつけた。九重は頭を掻きながらスファガルを一瞥して答えた。 「ええ、一応。ともかく、スファガルの中に戻りましょう。」 そういって、九重たちはスファガルの中に戻っていった。リーサもスファガルの階段を登って部屋のドアを開けたところ、 「えーっと……」 「……」 そこにはユミリアが居た。部屋の中にはたくさんのコーヒー缶とエナジードリンクがあった。ユミリアはリーサを凝視する。 「何ですか。」 「す、すすすすすみません!!!!」 バタン 得体の知れない怖さがリーサを襲ったためにリーサはドアをすぐに閉めてしまった。九重たちが入ったのはすぐ横のドアであることを確認して、リーサは部屋の中に入った。 「失礼します~。」 「ああ、スカースナさんか。」 そこに居たのは山吹だった。山吹は缶コーヒーをあおって天井を見上げた。リーサはとりあえず山吹の座っている反対側に座った。そして、数分間沈黙が流れた。あれから山吹とは一言も喋っていない。リーサは痺れを切らして一言声を出した。 「あの。」 「どうしたの?」 「山吹さんはどうしてヴァルファーストに入ったんですか?」 とりあえずと出せた話題は思ってみればとても重たいものであった。山吹は顔を天井からリーサに据え、仕方が無いと思ったかのような顔になって話し始めた。 「そういえば、言ってなかったね。本当は言いたくないけれど。本当に知りたいのかい?」 リーサの目を真っ直ぐ見て山吹は言った。 「はい。」 そう言う以外には無かった。そこから逃げる事も出来たが好奇心から逃げる事は出来なかった。リーサの肯定を聞いて山吹も話し出す。 「僕は、実はここに来る前にウェールフープに目覚めていたんだ。小さい頃から、友達の傷を治したり、不治の病と言われた人に能力を使って直していった。この力、治癒能力を苦しんでいる人のために使う。そのために僕は医療系の高校へ行こうと思っていたんだ。」 リーサは山吹の話に耳を傾ける。山吹は、少し視線を落とした。 「駅の爆破事件があったその日は市の救急救命演習に行こうと思って駅に向かっていたんだ。そしたら、爆発が起きた。自分は直接は巻き込まれなかったけれど駅側から多くの悲鳴が聞こえた。きっと、爆発に飲み込まれたんだろう。」 山吹の顔は徐々に下を向いていく。こちらからその表情はよく見えない。 「僕は彼らを助けたくて、駅に向かっていったんだ。多くの人が倒れていた。僕は一人一人能力を使って助けていった。でも、なかなか治らない人もいた。そのうちだんだん周りの呻く声が聞こえなくなっていった。不審に思って回りを見ると、まだ治していない人たちが死んでいたんだ。」 山吹の声が震える。リーサに彼の経験した辛さがひしひしと伝わってくる。 「無力だと思った。能力を使っても、自分が人を助ける能力を持っていても救命の場で使えなければ、無意味。そう絶望しながらも人々を治療していった。治す事が出来る最後の一人を治療しようを手を翳したその瞬間、その背にあったビルが崩壊したんだ。」 そして、山吹が顔を上げる。その顔は、どこか嬉しそうだった。 「もう駄目だと思った。その時、黒服の人が崩れてきたビルを抑えたんだ。そう、僕と同じウェールフープの能力で。彼は僕がなし得なかったことを簡単に成し遂げてくれた。しかも、僕の命まで救ってくれたんだ。」 山吹はとても明るい表情で語る。その事がどれだけ彼に影響を与えたか、リーサにはすぐ分かった。 「僕は彼に一目会いたいと町中を探し回った。何日も探したけど微小な情報しか手に入らなかった。もう見つからないのかと思い、また出かけたある日、葵ちゃんと出会ったんだ。」 山吹が一息つく。リーサは山吹の次の言葉を待った。 「葵ちゃんも僕と同じあの爆破に巻き込まれ黒服の人に助けられた人間としてその黒服を探していたんだ。それで、ユミリアとかによって最終的にヴァルファーストに入ったって感じかな。」 長かった……。リーサはそう思った。長く、そして辛かったであろう現実を乗り越えて救世主であった翔太を今救い出そうとしている。尊敬すべき精神であった。 「……。」 「ごめんね。長かったかな、リウスニータでも飲む?」 「あ、はい。」 まだ、緊張が抜けない。ヴァルファーストの構成員はこうも皆、訳ありなのかと思うと何故そこまで翔太を追い求めるのかが分ってくるような気がした。まだ、三人しか話を聞いていないが他のメンバーがここにいる理由もいずれ知る事になるであろう。 そんなことを思っていると唐突にドアが開いた。 「ごめんなさい、山吹君。この本を分けて持っていって欲しいの。」 ドアの前に立っていたのはヴァルファーストの構成員、あの日無口に挨拶をした青柳玲奈であった。 十四話 「La jujol」 「分かった。どれを持てばいい?」 山吹は青柳の元へ向かい、すっと手を差し伸べる。 「じゃあ、これとこれをお願い。宜しくね」 青柳は山吹に本を持つように促す。 リーサはその様子を眺めていた。 「……あの、私も手伝いましょうか?」 そして、自分だけ何もしていなかった事を悪く思い、そう口にした。7 「ありがとう。じゃあ、これを持ってくれないか」 山吹は本を幾つか差し出す。 「わかりました」 リーサはそれを受け取った。 思ったより重かった。 「ちょっと、山吹、ほとんど持ってないじゃない。これも持ってよ」 「……はいはい」 そうしてリーサ達三人は青柳の部屋へ向かった。 「よいしょっと。二人とも、ありがとう」 青柳は持ってきた本を机の上に置いて、一息着いた。 山吹とリーサも、その隣に本を置く。 「どうってこと無いよ。じゃあ、僕はこれで」 そう言って、山吹は部屋を出て行った。 「リーサさんも、もういいわよ」 青柳は持ってきた本の整理をしながら、リーサに向かって言う。 だが、リーサは動かなかった。 「すみません、その前に少しいいですか?」 折角だから、今のうちに聞いておきたい事を聞いておくことにしたのだ。 「…いいわよ。何か用かしら?」 「聞きたいことがあって……。その、青柳さんは、何でヴァルファーストに入ったのかなって」 青柳はリーサの質問を聞いて作業の手を止めたが、 「……ヴァルファーストに入ってない貴方に話す義理は無いわね」 と、断られてしまった。 そして、また作業を開始する。 「……そうですか。すみません、変なこと聞いて」 リーサは深く追求せずに素直に青柳の言う通りにした。 本当は聞きたかったのだが。 「……まあ、私がここで何をしているかくらいは教えてあげるから、そんなにがっかりした顔しないでよ」 青柳がリーサを気遣ってか、優しい目をする。 すると、リーサの顔が明るくなり、 「お、お願いします!」 と、好奇心旺盛な目線で青柳を見つめた。 青柳は、リーサからの視線を避けるようにそっぽを向き、 「そんな風に見ないで……。慣れないのよ、人の視線」 と、どこか含みのある言葉をつぶやいた。 が、リーサには聞こえていなかったようだ。 「……。まあいいわ。私はヴァルファーストで、主に作戦を立てる事をしているわね。他にまともに出来る人がいないからって九重が言ってたけど、九重の方が出来ると思うのは内緒よ」 そう言って青柳は人差し指を立てて唇に当てる。 「私のWPの事は、説明してると長くなるから、実際に使う時に説明するわ。あ、でも貴方ヴァルファーストに入ってないんだったわね……」 青柳は少し考える仕草をして、うーんと唸る。 「あの、別にそこまで詳しくなくてもいいですよ?」 リーサはずっと考えている青柳に話しかける。 そこまで懸命に考えなくてもいいのに。 「そう? じゃあ大雑把に言うと……「分解」ってところかしら」 分解……どんな力か想像がつかない。 そもそもそんな力、聞いたことがない。 「いずれ見る機会があるだろうから、そんなに悩まなくても大丈夫よ」 分解がどんな能力なのか頭をフル回転させて考えていたリーサに、青柳が慰めるように言う。 「そうですね。色々教えてくれてありがとうございました」 リーサは青柳にお礼を言い、部屋を出ようとする。 「あ、待って!」 が、青柳に呼び止められてしまった。 「何でしょうか?」 「九重に、次の作戦の相談がしたいから、ここに来てって伝えといてくれない?」 「分かりました。伝えておきます」 「よろしくね」 青柳の声を背に聞きながら、リーサは部屋を後にした。 十五話 「La dapelteo」 「九重さん~」 九重の部屋のドアを開けようとリーサはドアノブに手を触れようとして急に開いたドアに頭をぶつける。 「痛っ。」 「……。」 リーサの目の前には、例のカフェイン悪魔ユミリアが居た。 「……。」 「……。」 「……?」 「ちょっと、あなたさぁ……。」 頭をぶつけたのに謝りもしないユミリアを咎めようとリーサは声をあげようとしたところ、後から九重が現れた。 「あら、リーサどうしたの?」 「あっ、青柳さんがこれから作戦について話したいと九重さんを呼んでましたよ。」 「そう……、まぁいいわ。分った。リーサはユミリアと適当に話してて。」 「へ!?」 ちょっと待てくれ。このカフェイン愛している系女子と楽しく談笑できる気がしないんだが……。などと思っているとユミリアが九重に向きかえった。 「了解しました。私の部屋でリーサさんと話をしているので。例の件については、」 「ああっ、分った。分ってるから、考えておくから。」 そう言って、九重は小走りで部屋を去っていった。例の件とは何のことだろうか。 「では、行きましょうか。」 そう言ったユミリアは廊下を歩いてゆく。リーサもその後を付いてゆく。 「どうぞ。」 ユミリアが中に入るように部屋を指した。綺麗な部屋であった。そういえば、さっき見たコーヒーとエナジードリンクの空き缶はどこへ行ったのだろうか。もしかして、あれが全部九重たちが買い求めたコーヒー類だとして、今までに全部飲んで全部片付けてしまったとしたら……。 もう考えるのはやめよう。さらに寒気がしてきた。ユミリアが席を勧めたためリーサは席に着く。ユミリアは奥からカフェオレらしきものを持ってきてくれた。さすが、カフェイン悪魔。用意周到である。 「……。」 「……。」 カフェオレを飲みながら何か話そうとは思うのだが、なかなか話し出せない。そうだ。ユミリアが何故ヴァルファーストを立ち上げたか。それを聞いてみよう。 「あの……ユミリアさんは何でヴァルファーストを立ち上げたのですか。」 ユミリアはその言葉を聞いた瞬間、うつむいた。そして、一つため息をついた。 「あ、あの、話したくない話なら話さなくてもいいんですよ。」 「いえ、そこまで深刻な話ではないですから大丈夫です。」 そういい、ユミリアはカフェオレを飲み、話を始める。 「私は、平和を望んでいます。私がヴァルファーストを創設したのは、八ヶ崎翔太がこのようになることを危惧していたからです。」 リーサはユミリアを見つめる。この組織の核心に迫っている気がした。 「そういうわけで、八ヶ崎翔太を止める抑止力として彼等、アフの子孫の残党を以って、八ヶ崎翔太を無為な戦いから解放する事をこの組織の目的としています。」 「な、なるほど……」 やはり、重い話となるととことん重くなるのがこの組織の関係者なのだろうか。ともかく、それほどの決意を持っているという事なのだろう。 「彼の言ったような未来にはさせません。絶対に。」 「彼?」 ぼそっと言っていたのを聞いたリーサは聞き返した。 「えっ、あっ、ああ、八ヶ崎翔太のことですよ。」 慌てた様子でユミリアは答えた。結局の所ユミリアとの話は数分で終わりまた沈黙が訪れた。しかし、その沈黙も今までのようにつつくわけではなかった。 「っ!?」 耳に響く爆音、窓からは黒煙が見える。 「敵襲ですね。」 そう言ったユミリアは何事も無かったかのように席を立ち奥の部屋へ向かう。リーサも付いていく。奥の部屋のマイクを掴みスイッチを入れる。 「敵襲、敵襲、敵はハフリスンターリブ歩兵小隊、西方から本基地を遠距離攻撃しこちらへ進軍中と思われる。武器はFLWPライフルを装備。即急に対策を求む。」 ユミリアはもう一度復唱し地図を確認したりしていた。これから何が起こるのか。リーサは未だ理解していなかった。 十六話 「La anfi'e」 「リーサ、ユミリア、戦闘準備よ!」 ドアが勢い良く開き、九重が入ってくる。 「分かってますよ。それより、早く準備をしてください」 ユミリアが冷静さを保ったまま答える。 「こっちは大丈夫よ。リーサも、準備はいい?」 九重はリーサの方を見る。 当のリーサは戦闘準備など全くしていなかったのだが。 「あの、なんで私まで……」 「今は1人でも戦力が欲しいの!急いで!」 「わ、分かりました!」 九重が部屋から出て行くのを尻目に、リーサは準備を始めた。 リーサが外に出た時、外には九重、青柳、山田、山吹がいた。 ユミリアは来ていないらしい。 「あの……ユミリアさんはまだなんですか?」 そのことが気になってリーサは九重に聞くと、 「あいつは作戦指揮。現場には降りてこないわよ」 と言われた。 ユミリアは戦闘に参加しないのか……あれでも、戦力になりそうなものだが。 リーサがそんなことを考えている間にも、敵はこちらに迫っていた。 もうすぐ始まるであろう戦闘に緊迫感を覚えていると、ユミリアからの無線が入った。 『いいですか? 奴らがここに向かってきたのは初めての事です。十分に警戒してください。彼らが何をしてくるかわかりませんから……って、九重さん!?』 しかし、そんなユミリアの指示を無視するかのように、九重は敵の方へ向かって突撃していた。 『ちょっと、早速作戦を壊さないでくださいよ!九重さん!?聞いてます!?』 「どちらにしろ、戦わなくちゃいけないんでしょう?なら、先手必勝よ!!」 そう言いながら、九重は腕を前に突き出した。 その腕は透明な何かに覆われていた。 リーサは以前、それを見たことがあった。 ―九重のWP。 しかし、実際に見たのはそこまでだ。発動するとどうなるのかは全く分からない。 『皆!耳を押さえて!』 そして、唐突に九重からの無線が入った。 その直後、リーサの耳に激痛が走る。 さらに、猛烈な風がリーサ達に吹き付ける。 「ぐっ……! これは、一体……!」 リーサは耳を押さえ、押し寄せる風に歯向かいながら九重の方を見る。 そこには、両腕に透明な何かを従え、それを意のままに操り、辺りに騒音と衝撃を撒き散らしている九重がいた。 彼女の前にいたはずの敵の部隊が、半数近く倒れていた。 「……すごい……」 リーサは九重の放つWPに見とれていた。 しかし、そのWPの力はあまりに強大で、距離が離れているはずの私達にまでその影響が及んでいる。 リーサは改めて、九重のWPの力を実感した。 『皆、敵はある程度減っているはずよ。山田、青柳、リーサ、行くわよ! 山吹も、いつもの頼むわね!』 九重から無線が入る。 『了解!!』 それに反応したのは山田だった。彼は九重からの連絡を受けてすぐ、彼女の元へ向かった。 『了解。皆、行きますよ!』 そして、その後に山吹が返事をした。 しかし、彼は九重の元に向かわず、その場で何かを準備している。 「あの……、彼は何を……」 リーサはそのことが気になって青柳に声をかけたその時、彼女の体が一瞬何かに押されたように前に傾いた。 慌てて体勢を立て直すと、自分の底から力が沸き上がってくるような感じがした。 何故かは分からないが、今まで以上に自分の力を発揮できるような気がする。 「どう? 力が出てきた?」 隣にいた青柳が話しかけてくる。 「は、はい……これは一体……」 リーサが困惑していると、 「それは僕のWP。皆の力を引き出すためのものさ。僕にはこれくらいしか出来ないからね」 後ろから山吹がリーサに答えた。 リーサが振り向くと、山吹がこちらに手をかざした。 彼の手からは淡い光が出ていた。 その光が、リーサや、他のヴァルファーストの皆に向けて散らばっていく。 リーサのところに光が到達した時、彼女はまた、誰かに押されるような感覚を覚えた。 どうやら、さっきの力はこの光が及ぼしたものらしい。 「今、リーサ達にかけたのは治癒のWP。自然回復能力を向上させるものさ」 そう言った山吹の体は、少しふらついていた。 「あの……。大丈夫ですか……?」 リーサが心配になって聞くが、 「気にしないで。一気にウェールフーポを使って、疲れただけだから」 山吹は何でも無いというように答えた。 「リーサさん、あまり余裕は無いわ、山田達を追うわよ!」 「は、はい!」 青柳の声で、リーサは山田達の方に向けて走りだした。 いつもより速く走っている。そんな気がした。 リーサが山田達に追いついた時には、敵の残党はほぼいなかった。 「はああああーーっ!!」 九重は、先程の衝撃を生み出した透明な何かを手にまとい、それで敵を殴っている。 リーサは、九重が敵に直接衝撃を与えて、威力を増幅させているように見えた。 その一方で山田は、敵に対して攻撃をしようとせず、逆に待ち構えているように見える。 カウンターを狙っているのだろうか。 敵の歩兵が銃を山田に向けて放つ。 よけなければ致命傷だってありえる。しかし、山田はその場から動かない。 「山田さん、危ない……!」 リーサがそう声をかけた時にはもう遅かった。 山田の体のあちこちに、銃弾が当たっていく。 しかし、山田はそれらを全て跳ね返した。 「……!?」 信じられない。 リーサには山田が何をしたのかさっぱりわからない。 しかし、山田はこうもピンピンしている。そのことが余計にリーサを困惑させた。 それは敵にとっても同じようで、敵の動きが鈍くなった。 「どうした、隙ができてるぜ!!」 山田はその一瞬の隙をついて敵に突撃した。 そして、その勢いを利用して敵を倒していく。 「一体、何をしたのですか……?銃弾を受けても平気なんて、普通ありえない……」 リーサは山田がしてみせたことが、未だに信じられない。 「これか?別に大したことじゃねーよ。WPを使っただけさ。ほら、これ」 そう言って山田がWPを発動させる。 すると、山田の周りに一瞬鎧のような物が見えた。 「こうすると、ものの硬さが変わるのさ。だから、銃弾なんて敵じゃねーのさ」 そう言って山田は胸を張った。 「そういうわけで、メイン盾頼みますよ」 「分かってるって。オラァ、かかって来いやァァァァァァ!!!」 そして、山田は新たな敵の元へ突っ込んでいった。 「なんというか、かわいそう……」 リーサはぼそっと呟いた。 「山田が敵を惹きつけている間、私達は敵の本部に乗り込みます。リーサさん、ついて来て下さい」 「はい!」 リーサは青柳の後を追う。 リーサ達が敵の本部に向かっていると、九重から無線が入った。 『こっちはなんとかなりそうだから、片付き次第合流するわ』 『了解。敵の本部に攻め込みます』 青柳が返答した後、リーサの方を振り返り、 「さて、私達も急ぎましょう」 と言い、今までよりもスピードを上げた。 リーサ達は敵の本部にたどり着く。 敵に気づかれないように、慎重に侵入する。 しかし、そこはもぬけの殻だった。 どこを探しても、敵の親玉というべき人物はおろか、誰一人としてここにはいなかった。 「……囮か?」 青柳がそんなことを呟きながら、近くにあった銃を手に取る。 すると、それは一瞬にしてバラバラになった。 しかも、ただバラバラにしたわけではなく、しっかりと部品ごとにわかれている。 銃をそのまま分解してしまった、と解釈するのが一番しっくりくるだろう。 「青柳さん?一体何を……?」 しかし、リーサには青柳が何故銃を分解してしまったのか分からない。 「ああ、WPで銃を分解したのよ。こうすれば、奴らがどうしてここに来たのかわかると思ったのだけれど……めぼしい情報はないわね」 青柳は銃だったものを床に置いた後、他に情報になりそうなものを探し始める。 リーサも、違う部屋に行き、情報収集を始める。 暫くして、九重たちがやってきた。 やはり、ユミリアはいなかったが。 「どう?なにか見つかった?」 「残念ながら何もなかったわ。一体何のために私達に襲撃なんかを……」 「さあな。ただ、襲撃してきたわりには手応えなかったな」 「あんたは結局ほとんど攻撃を受けてただけじゃない……」 彼らは集まった途端、他愛もない話をし始めた。 敵が襲撃してきたというのに、この余裕。 さすがだな、そうリーサは感じた。 一行はその後、くまなく捜索したが、得られた情報はなかった。 リーサ達は帰路についた。 これからユミリアと合流し、今後の対策を練ることにしたのだ。 ヴァルファーストの皆は帰る時にも賑やかで楽しそうだ。 「そういえば、リーサさんって、どんなWPを使うんですか?」 「え?」 リーサが彼らの様子を眺めていると、唐突にリーサに話を振られた。 「わ、私のですか?えっと……」 自分の事の記憶が無いため、よく思い出せない。 確か、あれは…… 「なるほど。少々侮ってしまったようだ。 思ったよりやるじゃないか、君達」 突然、誰かの声が聴こえた。 そして、 どこからか、大量の銃弾が飛び出す。 リーサ達は不意を突かれたため、全く反応出来ない。 全員が重症を追うことを覚悟した。 しかし、どうやらその弾は、私達から少し外して打たれていたようだ。 リーサ達は全員無傷だ。しかし、この弾の出処がわからない。 「……! 誰だ!」 九重が虚空に叫ぶ。 「危なかったねぇ~、今の当たってたら死んでたかもなァ。この程度避けられないとは、全く、興ざめだよ」 「お前は誰だ!姿を見せろ!」 さらに九重が叫ぶ。 リーサ達は辺りを警戒した。 また、あんな風に不意打ちされたらたまったもんじゃない。 しかし、そんな警戒を嘲るかのごとく、またしても銃弾が飛び出してきた。 警戒はしていたため、反応が遅れる事は無かった。 しかし、それでも、頬をかすめる程度に避けるのが精一杯だった。 ……この攻撃を使う奴は、相当な腕の持ち主だ。 誰もがそう実感した。 リーサの全身から冷や汗が吹き出る。 きっと、先ほどの弾も、避けられていなければ危なかっただろう。 いや、頬をかすめた時点で避けられていない。 この攻撃を受けるのはまずい……! リーサの直感がそう言っていた。 「流石に避けれるよなァ。いいねぇ、これでこそヴァルファースト! 君達の成長が楽しみだ!」 すると、謎の声が終わった途端、九重達の前方の空間が揺らぎ、1人の男が現れる。 その男は身に黒いマントを纏い、禍々しさを醸し出している。 リーサ達を押しつぶそうとするまでの威圧感。 彼の目からは、冷酷な殺意しか感じられない。 リーサは、彼をまともに見ることが出来なかった。 「お前は……、誰なんだ!」 九重がその男に向かって叫ぶ。 ヴァルファーストの面々は、その男を睨み返した。 目を逸したら殺される。 恐怖心ゆえの、絶対に引けない場面だったからなのかもしれない。 そして、その男は、ゆっくりと口を開いた。 「俺? 俺の名前は夕張さ。君らならよーく知っているはずだぜェ?」 十七話 「La zirk」 「お前は一体何者なんだ!」 九重が叫ぶ、半ば錯乱した状態で。他のヴァルファーストメンバーも警戒を緩めない。黒マントの男―夕張と言ったであろうか―はくすっと笑い顔を上げ九重を眼中に据える。 「九重ちゃ~ん、君は、いや、君たちは本当に面白いよ……。」 「くそッ!」 九重が黒マントに突撃する。極近距離で衝撃波を放つ、そうすればどんなケートニアーでも倒れるであろう。しかし、九重も無事ではないはずだ。それほど、強大な力を持っていると感覚が警告しているからであろう。しかし、九重の衝撃波はまったく見当違いの方向へ流れていった。 「っ!?」 驚いた九重は突撃時のスピードのまま地面に体を打ち付ける。勢いは止まらず地面を数メートル転がっていった。 「まだまだ、ってところだねぇ……。九重ちゃん、もう終りかい?」 「うっ……ぐっ……。」 夕張が九重に近づき、髪を持ち上げ無理やり膝立ちにさせる。 「っ……うぁっ……お前は……何者だ……答えろォ!」 九重は夕張に吼えた。ヴァルファーストのメンバーも、リーサも動く事ができない。むやみに動けば九重が殺される可能性があるからだ。 「元気がいいなぁ……ユミリアの手下は……。」 「何を言っているッ!質問に答えろ!」 九重はまだ叫んでいる。 「まぁ、いい。」 掴んでいた髪を投げ離してヴァルファーストメンバーを一瞥する。 「俺と戦うのは君達にはまだ早いことだ。俺は本拠地に戻ることにするよ。」 「ま、待て!」 九重が夕張の足を掴む。夕張はしゃがんで優しい声で九重に囁いた。 「君には苦労をかける、済まないな。あいつに言っておいてくれないか、お前の好きにはさせないと。」 「何を意味分らない事を言って」 そういい終わった瞬間、夕張は黒い霧となって消え去った。 ヴァルファーストのメンバーたちはすぐに九重に近づく、リーサも共に。 「大丈夫か、九重!」 「九重さん!」 山田や青柳をかき分けて山吹が九重に手をかざす。 「いつものようにすぐに治すから心配しないでね。」 「ありがとう……」 「……。」 空気が重い。あの夕張とやらに逃げられたせいだろうか。ヴァルファーストは今まで戦闘を何回も経験しているかのような完璧な立ち回りであった。それでもあの攻撃に、存在に築けなかった。プライドの粉砕と強敵の恐怖が同時にやってきているように見えた。 「夕張。」 「え?」 九重がその仇敵の名を言った瞬間、立ち上がって言った。 「至急、皆は各自夕張について調べるように。」 そう言って九重は部屋を立ち去ろうとした。山田も立ち上がり九重の肩に触れる。 「葵、何処に行く気だ。」 「……ちょっとユミリアのところに行ってくる。彼女も落胆しているでしょう?」 自分が一番落胆していると言うのに他人のことを心配している。なんて他人のことを思いやっているのだろうか、それとも気付いていないだけか。 そんなことを思いながらリーサは九重の背中を見ていた。 「それじゃあ。」 青柳が立ち上がる。 「リーサさんと私は南フェーユ図書館へ。山田君と山吹君は別を当たってみて。」 「分った。行くぞ、宏!」 「えっ、ちょっ、待ってよ~!」 山田と山吹は走りながら部屋を出て行った。 「さて、私たちも行きましょ。」 「は、はいっ!」 十八話 「La dzarn」 リーサと青柳は図書館へ向かっていた。 先程のように予測不可能な弾丸が飛んで来ないか、警戒しながら足を進めていく。 夕張と名乗った男は一体誰なのか。 記憶を失っているリーサは全く思い出せない。 ヴァルファーストの皆も、彼の事は知らないらしい。 どうやって彼の事を調べるか。リーサ達にはそれが問題だった。 彼についての情報は、名前が「夕張」だ、ということしか無いからだ。 ……以前来た時に世話になった司書の人にでも聞いてみようか。 色々と思考を巡らせている間に、図書館についてしまった。 青柳は図書館の入り口を通ると、そのまま部屋の一角へと進んでゆく。 リーサもそれに続いた。 そして、青柳は本棚の前で足を止めた。 「私は、ここら辺を探してみる。リーサさんも、どこか別なところを探してみて」 「わ、分かりました」 そして青柳は適当に本棚を漁って本を読み始めてしまった。 ……とりあえずあの人に聞いてみるか。 リーサは結局、あの司書を頼ることにした。 「え?夕張?」 リーサが夕張について尋ねると、リーサが探していた司書――藤見桜――は眉を顰めた。 「あ、えーっと……その人の事、知ってませんか?」 再度リーサが尋ねると、藤見は不思議そうな顔をして、 「知ってるけど……逆に、なんで貴方が夕張のことを知ってるのかが気になるわ」 と言って、リーサの顔を見つめた。 リーサは不思議そうにしていたが、藤見は怪訝な顔つきになった。 なんだかとても嫌そうな顔である。 「……まあ、教えてあげるけど。でも、こんな場所で話せるような事じゃないわ。一旦場所を変えましょう」 そのまま、藤見はリーサを図書館の一室へ連れていった。 その部屋の椅子に、藤見は腰掛ける。 リーサも藤見の正面に座った。 藤見は周りを警戒して見渡した後、話を切り出した。 「何で貴方が彼について知りたいのかは言及しないでおくけど……彼、FFでも一部の人しか知らないような極秘の存在なのよ?」 「え!?そうなんですか?」 「そうよ。だから貴方からその名前を聞いた時は正直驚いたわよ」 まさか、夕張がそんな人物だとは思ってもいなかった。 ……ところで、なんでこの人はそんな極秘情報を知っているのだろうか。 「で、その夕張はね、八ヶ崎翔太っていう人と色々いさかいを起こしてね。結局、夕張が負けたらしいけど、今でも彼は動き続けているみたいよ」 「八ヶ崎翔太と……!?」 「あら、知ってるの?……見た目も似てるし、やっぱり、貴方……」 藤見はリーサの反応をみて、何やら呟いている。 リーサが不思議そうに眺めていると、 「ああ、ごめんなさい。なんでもないわ」 と、話を戻してしまった。 「他に言えることとしては、彼と翔太は親友ってことくらいかしらね」 「そ、そうだったんですか……すみません、お忙しい中ありがとうございました」 そう言って、リーサは席を立った。 「いいのよ。そうそう、これ、極秘だから、くれぐれも他所では喋らないでね」 藤見も席を立ち、リーサにそう囁いて、仕事に戻っていった。 「翔太と夕張が親友!?」 藤見に聞いたことを青柳に話した所、青柳は相当驚いているようだった。 リーサも驚いているのだから、当然の反応ではあるが。 「こっちはあんまり目ぼしいものは無かったのに……どこでそんな情報手に入れたのよ」 「い、いや、その……知り合い?」 流石に名前まで出すと怒られると思ってか、リーサは言葉を濁した。 「まあ、いいわ。今日はこの辺で帰りましょう」 「そうですね」 そして、二人は荷物をまとめ始めた。 その時だった。 突然、図書館の入口から銃声が聞こえた。 同時に聞こえてくる悲鳴。 「!? な、何!?」 リーサは突然の出来事に動揺する。 青柳も同じだったようで、呆然としている。 銃声が止んだ後、中に入ってきたのは黒服を身に纏った集団。 ……夕張が着ていたのと同じ服だった。 黒服の集団は小さく合図をし、そしてこちらに向かってくる。 「まさか、あいつらは……!」 「夕張の手下でしょうね……!」 リーサ達は戦闘の準備をする。 しかし、その間にも、黒服の集団はこちらに迫ってくる。 何人かが銃を構え、発砲する。 回避が間に合わない……! 思わずリーサは目をつぶった。 しかし、想像していた痛みは襲ってこない。 恐る恐る目を開けてみる。 すると、目の前にいたのはあの司書、藤見桜だった。 黒服は突然の介入者に一瞬戸惑ったが、その後すぐに発砲を再開する。 しかし、藤見は避けようとしなかった。 そして、藤見は彼女の手を目にも留まらぬ速さで動かし、銃弾をいとも容易く掴み取っていた。 「全く……。図書館を荒らすんじゃないよ」 そう言って今とった銃弾を相手に投げつけた。 ヒュン、という風切り音が聞こえたその直後、 黒服数人の体に風穴が開いていた。 後ろの窓にも弾が当たりガラスが割れる。 リーサ達は呆気にとられていた。 当然黒服たちも。 図書館内がざわつく。 突然現れた黒服と、突然現れた図書館司書。 どうみてもカオスだった。 「気をつけな。今回は大目に見てやるが、次はタダじゃ済まさねえぞ?」 そして、藤見は、黒服に向けて警告をしていた。 「奴はネートニアーだ。構うな、殺れ」 だが、黒服はそれを無視して藤見に攻撃をする。 今度はWPを使っての攻撃。当たればケートニアーでもただでは済まない。 「んー、確かにネートニアーだ。けどね……」 しかし、藤見はそれでも余裕の表情で、ポケットから錠剤を取り出す。 「とある筋からちょっとしたものを仕入れてね。それを私なりに改良して、錠剤タイプにしたのさ。そしてこれを飲むと……」 そして、藤見はそれを飲み込む。 しかしその時、黒服達の放ったWPが藤見に届こうとしていた。 どう考えたって避けられない。 だが、黒服のWPは藤見に当たること無く、後ろの本棚に直撃する。 まるで、藤見の体をすり抜けたように。 そして、リーサ達が圧倒されている間に、いつの間にか藤見が黒服の集団の目の前まで迫っていた。 WPとは関係なく身体能力のみで黒服を次々とノックダウンしていく。 だが、黒服も応戦する。 黒服が藤見に向けて拳を突き立てる。 が、藤見はそれを手で流し、そのまま相手の体勢を崩して腹に一発入れた。 そのまま黒服は意識を失う。 この動きを認識できるのは、多分この場にいたケートニアーでも一部しかいないだろう。 リーサには、突然黒服が倒れたようにしか見えなかった。 「な、なんだこいつの強さは……!」 「絶対に普通じゃねえ! まてよ、まさか……!」 「藤見桜……!あの、『残像』と並ぶと言われている『透過』の二つ名を持つネートニアーじゃないか!」 黒服の集団はなにやら叫んでいるが、その叫びも直ぐに悲鳴や呻き声となって消えていった。 図書館の一角に黒服の山が出来るという、シュールな光景だった。 「これで片付いたわね……はぁ。あーあ、この本どうしてくれんのよ」 そして、藤見は何事もなかったかのように散らばった本の片付けをする。 この図書館で騒ぎを起こしてはいけない。 この図書館にいる誰もがそう思った。 リーサ達はその後暫く何もできないでいたが、その後正気を取り戻し、とりあえず帰ろうということになった。 十九話 「La dzeftlorznajanerfeo」 「……というわけなのよ。」 スファガルにて九重と対面して報告をしているのは青柳だ。一応、リーサもスファガルに居る。 「そうだったの、夕張についての情報は?」 「翔太と親友であること、いざこざを起こして翔太に負け現在動いている。それくらいかしら。」 青柳は顔を斜め下に傾けた。 「彼等、夕張はもしかして……」 「私たちを敵と認識している。そういうことね。」 静かに九重は言った。その目は何かを考えている目であった。一応事を整理すると私たちは襲撃を受け、それをどうにかしたあとすぐにやってきた夕張を前に撤退を余儀なくされた。そんな辺りであろうか。 「……山田、報告。」 「特にめぼしい情報は無かったが翔太の軍勢がもう既に西側を制圧したとの情報があった。夕張についてはさっぱりだ。」 「あっ、そういえば途中で特別警察の人に合ったよ。」 九重の目が光る。 「特別警察というと……」 「そう、多分レシェール・クラディアさんだよ。」 当たりの空気が凍った。レシェール・クラディア、という名前が禁忌であるかのように。 「それで、どうしたわけ。」 九重で無く脇に居た青柳が声を発する。何時もに増して慎重で警戒に気を立てているような雰囲気だ。 「いや、何も無かった。こちらには一切気付かれてない。」 そう山田が付け加えた。そんなに重要なことか良く分らないが、レシェール・クラディアはこのヴァルファーストでキーマンのようだ。 「あ、あの……レシェール・クラディアって誰なんですか。」 それを聞き、九重がリーサを一瞥すると、前に立ててあったホワイトボードを立て直した。 「レシェール・クラディア、ユエスレオネ連邦特別警察庁警護部第一班所属の特別警察官よ。」 「特別警察官?」 特別警察がヴァルファーストの敵性勢力であることは分っていた。しかし、ただの警察官がそんなに重要になるのだろうか。 「翔太に接触していた特別な特別警察官よ。あの爆破事件まで共に居たみたいだけれどもあれ以降は、翔太の軍勢と戦っているわ。多分、翔太と敵対する人間ね。」 「そう……なんですか……。」 「リーサ、あなたをここに連れてくる事が出来なければ、私たちは彼女をここに連れてくる予定であった。」 九重は俯き気味に言った。 「しかし、レシェール、彼女は既に敵になっていた。私たちと戦う勢力となってしまっていた。」 静寂が訪れた。敵の存在は膨大、それに加え夕張の存在。さらに情報量は少なく翔太側の中身も不透明。考えてみればヴァルファースともとんでもない橋を渡っていたのである。 そんなことを思いながら、喉を潤しに冷蔵庫を開けようと一人リーサが立った所で呼び鈴が鳴った。誰だろう、と言いながら宏がドアを開ける。すると、 「動くな、警察だ。」 特殊武装の数人が叫ぶ。 中に一人銀髪の少女が立っていた。その正体は、 「特別警察庁警護部のレシェールと言います。あなた達を特別警察法に従って逮捕、勾留させて頂きます。」 二十話 「La elmess」 スファガルの空気が凍りつく。 リーサ達と警察の睨み合いによるものか、はたまた、レシェールと名乗った少女の威厳が成せるものか。 「レシェール・クラディア……!」 そんな中、九重が少女に向かって呻くような声を発し彼女を睨みつける。 「二度は言いませんよ。貴方達、彼らを拘束して」 しかし、九重の視線を気にもとめず、機械仕掛けのような声で部下に命令を下した。 そして、彼女の部下がリーサ達に近寄ってくる。 「さあ、おとなしく我々に従え。」 部下達は、手錠を手に持ってリーサ達に手を出すように促した。 リーサはわけもわからずそのまま棒立ちで、九重等はそのまま動かないでいる。 「そうだ。それでいい。ほら、手を出せ」 そうしてる間にも、彼らはどんどん近付いて来る。 そして、部下達が九重達の手を拘束しようとして、 「ぐはぁっ!?」 そのまま突き飛ばされた。 リーサはその様子をぽかんとした顔で眺めいていた。 「馬鹿じゃないの、あんた達」 「私達がそう簡単に、」 「捕まるとでも思ってんのかァ?」 そう答えたのは、九重、青柳、山田だ。 九重と山田はそれぞれ部下達にパンチを繰り出し、青柳が手錠を分解していた。 彼らの連携は阿吽の呼吸と言うべきな自然なものだった。 「…なるほど。簡単には捕まってくれそうに無いですね。それではこちらも、武力行使と行きましょうか」 だがレシェールはそれを見て驚くわけでもなく、寧ろそれを予期していたように見えた。 彼女の部下も、九重達の不意打ちを食らった割にはそれほどダメージが入った様子はない。 そして、レシェールはこちらを見据える。 先程と違って強い殺気が感じられた。 「いい機会だ、ここであんたらを返り討ちにしてやるよ!」 しかし九重も負けてはいない。 レシェールの放つ殺気にもびくともせず、それどころか顔に笑みまで浮かべていた。 九重に合わせて他のヴァルファースト達がそれぞれ戦闘準備に入る。 「リーサ!あんたも早くしなさい!」 呼ばれてはっと気がついた。そういえばずーっと突っ立ったままだった。 「は、はい!」 返事を返しWP発動の準備に入る。 相手は特別警察。油断ならない強敵だ……! 「……リーサ?」 レシェールが何か小声で呟いた。 だがそれも一瞬の事。 レシェールはWPを発動した。 途端に、辺り一面の気温が低下する。 レシェールの足元の地面に至っては凍っていた。 「気をつけろ!あいつは氷結の力を持っている!」 九重が叫んだ。 レシェールの足元の氷はどんどん広がっていく。 このままでは建物全体が凍るのも時間の問題だ。 「させるかぁー!」 山田がレシェールの元へ走って行く。 その道の先には彼女の部下がいた。 「どけぇーー!」 山田は腕を硬化し、彼らを全力で殴りつける。 しかし、彼らはその攻撃を少しの動作で避けた。 「ぐっ!?」 そして山田に蹴りを入れる。 山田は体勢を崩し、そのまま前に倒れた。 「くそっ……!」 山田は前に進もうとするが、そのたびに部下達から足止めをくらい、結局進めずにいた。 二十一話 「La anfi'enerfeo」 「くそっ……!」 山田の攻撃は、透かされレシェールには近づくことすら出来なかった。 瞬時に九重が戦闘員たちに接近する。 「散れ!」 「!?」 戦闘員たちが吹き飛ばされ地面にたたきつけられる、九重が瞬間でレシェールに接近し、手を翳す。 「終わりよ。」 「どうかしら?」 クラディアが上を向いたその瞬間、乾いた破裂音とともに、九重は何かに吹き飛ばされた。地面に弾き飛ばされ、動かなくなる。 「これで終わりかしら。」 「くっ…」 クラディアは手に纏った冷気を払った。今の瞬間で氷結のウェールフープを放ったと言うのか。そんなことを考える暇も無く、青柳がホルダーからWP拳銃を取り出し、クラディアに据える。 「九重さんを……ふ、ふざけるな!」 トリガーを引いて、銃を撃つ。しかし、クラディアは瞬時に氷板を作り、それを受け止める。青柳は走りながら撃っているが、クラディアはその場を動かず対処している。普通のケートニアーでは無い威厳を持っていた。 しかし、それに対しこちらの戦況は酷い有様だ。九重は負傷、山田も青柳もクラディアに接近・攻撃すら出来ていない。このままでは青柳も山田も攻撃が出来ずこちらの消耗を待つまでだ。 「!?」 瞬間、クラディアが氷塊を青柳と山田に向け投擲する。意識していなかった攻撃であったのか、近くに居た青柳と山田が被弾する。 「くそっ……」 「ちっ……」 双方とも、モーニ器官をやられたようで動けないらしい。クラディアが、リーサに目を向けた。 「あなた達が抵抗することは不可能です。」 「……。」 リーサは押し黙る。どうすればいい、ヴァルファーストの戦闘員は皆倒れたままで動くことは出来ない状態だ。 「さぁ、おとなしく捕まりなさい。」 どうにかしなければ、私たちは捕まってしまう。 クラディアがリーサに手を翳す。 リーサは思った、もう駄目だと。 なす術はもう無くなったと。 「誰が抵抗できないって?」 出てきたのは、九重だった。いつ移動したかは分からないが、山吹とともクラディアの真後ろに立って、手を翳している。しかし、九重は負傷していたはずだ。何故何事も無かったかのように立っているのだろうか。 「ちょっと、手こずったけれどもまあ簡単な傷だったね。」 「治癒能力保持者でしたか……。」 クラディアがそう囁いた。そういえばそうだ、山吹は治癒と強化の能力を持っている。 「……あなたも単純ね。私は山吹君が治療と強化を完了するまであなたを引き付けていただけよ。」 少し回復した青柳がそう言った。まさか、青柳のあのしぐさ、攻撃は全部フェイクだったというのか。 「さぁ、言いなさい。レシェール・クラディア、連邦はどこまで翔太の情報を持ってる?」 「言わない、と言ったらどうしますか?」 九重が手に力を込める、手の周りが陽炎のように揺らめく。 「殺すまでよ。」 「……。」 「……。」 レシェールはその数秒を顔色を変えずに過ごしていた。 九重は、情報を得られないと分かり、手を再度掲げる。 「言わないようね。ならば、死ね。」 「ま、待ってください!」 リーサが叫ぶ。 なぜか良く分からなかったがレシェールが殺されることに生理的な恐れ、嫌悪を抱いていた。 仮にもヴァルファーストの一員だというのに。 「そうだよ、九重、何もころす必要はない。スファガルに連れて行って、拷問でもなんなりすればいい。」 「……そうね。」 九重が山田に目を吸えて承諾した瞬間、紫色の光が九重と山吹を吹き飛ばした。 「!?」 青柳は再度WP拳銃を構える。リーサは不測の事態に目を眩ませていた。 「誰だ……。」 深くこもった声で青柳は囁く。その瞬間、乾いた破裂音と閃光が青柳の手に起こり、WP拳銃がはじかれる。 「くっ……。」 「これくらいでいいかな。」 レシェールの前に特別警察の制服がちょっと崩れた男性が出てくる。 「イェクト……。」 「クラディア君、一旦ここを離脱するんだ。」 「しかし……」 クラディアが逡巡しているところに、山田が走りこむ。 「逃がすかぁ!」 「ちっ。」 イェクトと呼ばれた男性が、山田に手を向けると地面に電撃を放つ。 「うっ!?」 山田はバランスを崩し、勢いそのまま地面に頭をぶつけた。 多分死んでないだろう、ケートニアーだし。 「君は……非戦闘員か。」 イェクトはそういって、リーサの方を向いていった。 非戦闘員……? そういえば、私はウェールフープを使えるのか……? 私はケートニアーなのか……? そんなことを考え始めたが、リーサははっとして我に返る。目の前に敵であった二人の姿、その他の戦闘員の姿さえいつの間に消えてしまったのだろうか。リーサは、自分の無力を悔やみながら青柳と協力して、負傷者を介抱し、スファガルまで連れて行った。 二十二話 「La fonti'a」 スファガルに到着したヴァルファースト一行は、クラディアとの戦いで負った傷を治療していた。 「っつー。あの野郎、絶対許さねえぞ……」 山田はイェクトとレシェールが呼んでいた男の事を思って憤慨していた。 あの時、イェクトが放った雷撃は私達に深手を負わせていた。 「油断していたわ……イェクトはいつもクラディアと共に行動していたはず。なのに今回はいなかったから気が抜けていたのね」 九重は悔しそうに唇を噛む。 「……………」 リーサはそんな二人を眺めていた。 クラディアだけでさえあれほど苦戦したのに、イェクトも加わったことでこちらは更に劣勢となり、結局負けてしまった。 その時、私は何をしていただろうか。 ただ、眺めていただけ。 自分が何も出来なかったという事実が、リーサには重くのしかかっていた。 「どうしました?リーサさん。顔色が悪いようですが………」 青柳が心配そうにして言う。 「いえ、別に……大丈夫、です……」 リーサは極力いつも通りの態度をするように努めたが、言葉の節々が震えてしまっていた。 「無理もないわよ。今回の戦闘は本格的にヤバかったんだから」 九重が慰めの意思を込めて言った。 だが、リーサは頭を振る。 「いえ、そういうことじゃなくて……」 「え?」 リーサの言葉が意外だったようで、九重はきょとんとしている。 九重の反応に少し驚きながらも、リーサは続ける。 「その……。今回の戦闘、私、何も出来なくて……皆に迷惑を……」 「そんなことないわよ」 「え……?」 九重はリーサの言葉を遮る。 「別に戦えなくったっていいじゃない。それに、私達が求めているのは、『力』じゃなくて、『仲間』だから。」 「……どういうことですか?」 「私達は、翔太を助けるために集まった。ただそれだけよ」 「………」 リーサは九重の言葉に何も返せなかった。 ただ単に仲間がほしい。 九重はそう言ったのだ。だから、力が無くてもいいと。 「…ありがとう」 その言葉は、とても嬉しかった。 それでも、リーサは自分の力の無さを見ずにはいられなかった。 「それでも、戦えないという事を重荷に感じちゃうんです……」 「…………」 九重は押し黙る。 他の皆も、どうしようかと頭を抱えていた。 暫く沈黙が続く。 時計の針の音がやけに部屋に響く。 「……一つ、いい?」 その静寂を破ったのは、青柳の一声。 「何かしら?」 九重が聞き返す。 「……リーサは、ケートニアーなの?」 「……私、ですか?」 自分の事を聞かれて少し戸惑う。 そして、リーサ自身危うく忘れる所だった事実を思い出す。 自分自身に関する記憶が無い。 だから、自分はケートニアーなのか、その事すら分からないのだ。 「それは……分かりません」 リーサは正直に答えた。 「そう……。因みに、この前見た本には、貴方がケートニアーだと書いてあったわ」 「そうですか……」 自分自身ではなく、他人から自分の事を教えられるとは……。 納得行くような行かないような、よく分からない気持ちだ。 「でも、明確な証拠がない」 しかし、先程の発言を青柳自身が否定する。 「だから、証拠が欲しいのだけれど……」 そう言って青柳は九重の方をちらっと見る。 九重はその視線に戸惑ったが、 「……そうか!」 それも一瞬の事で、直ぐに顔が明るくなる。 「もしリーサがケートニアーならWPを使える可能性が高い!記憶を失う前のWPが使えれば、きっとリーサも戦える!」 そして、九重は立ち上がり、リーサの方を向いた。 「だから、君がケートニアーである確認がしたいんだけど、いい?」 「はぁ、いいですけど……どうしたらいいんでしょう?」 確認がしたいと言われても、リーサにはどうしたら良いのか分からない。 そんなリーサに、九重は、びしっと人差し指をリーサに突き立て、 「簡単よ。リーサ、ちょっと死んでくれない?」 と、一言だけ言うのだった。 二十三話 「La setialerta」 「リーサ、ちょっと死んでくれない?」 そう、九重は言い放ったのである。いやいや、死ぬってどういうことだ。 「ど、どういうことですか!?」 「なるほど、ケートニアーだったら死なないってことなのね。」 青柳が納得したように頷きながら、そういった。 「いやいや、ネートニアーだったら死んじゃうでしょ!ダメだって!?!?」 リーサが必死で反駁するが、九重の目は輝いている。青柳が近くにあったWP拳銃を取ってリーサに渡す。 「あっそうだ、俺退屈だから俺も参加するぜ。」 「ぇ、どういうことなんですk」 「あー、そっかーロシアンルーレットかな~?」 山田と山吹が目を合わせる。いやいや、アホか。そりゃ、ヴァルファーストの皆は撃ってもしなないだろうが、私が一発目で死ぬ可能性だってあるんだよ。ヴァルファーストはやっぱり皆馬鹿だった。 「あら、面白そうね。」 「私も、やろうっと。」 皆が拳銃を持って、胸に当てている。傍から見れば異様な光景だろうが、このヴァルファースト集団の常識なのだろうか。地球とはそこまで殺伐なところなのだろうか。 「さて、一発目」 おい、ちょっと待て。真面目にやる気か。 そう思った瞬間、乾いた発砲音と粘着性のある破裂音がした。 山田と山吹がが倒れた。お前ら、言いだしっぺの癖に最初に死ぬ(死んでないが)とは、可哀相に、いや、自業自得か。 女子勢は空発だったらしい、二人とも私をにらんでいる。 「え、なんですか?」 「いや、なんですかじゃなくて。」 「引き金引きなさいよ。」 えええええ、ちょっと待って、誰かお助けください。 「早く~」 「……。」 いや、あの、なんでこうなった。 そうだ、この危機を脱するためには……しょうがないがこれしかない! 「」 青柳の胸の中心から血が噴出して、倒れる。 やはりか、私はテスト用に拳銃にはフル装填の状態だ。 そして、 「リーサ!?なんで他人撃ってるの!?それはルール違反でしょ!」 そういって九重が銃口を向ける。私を撃とうとするが、 「!?」 銃から弾は出てこなかった。九重のことだから初弾から全部空発にしてあると予想したが、その予想は的中した。 「残念でしたね。九重さん。」 九重も胸の中心を撃ちぬき行動不能にさせる。 「なん…で…こうなった。」 バタン、倒れる九重を尻目にリーサはスファガルのその一室を走って、出て行った。 「ふぅ……。」 リーサはスファガルの外側にあるベンチに腰をかけて。何でこうなったのだろうかと、考えていた。そもそも、私がケートニアーであることが分からないのが悪いのではないか。そんな気もしてきた。 「どうも。」 「うわっ!?」 ベンチに座っているリーサの隣に、いつの間にかユミリアが居た。ユミリアがいきなり自分の顔を覗き込んでくるので驚いてしまった。 「どうしましたか、そんな顔をして。」 「いや、なんというか。えっと、その……。」 何故か、人生相談みたいなムードになっている。しかし、このカフェイン悪魔が私の相談に乗るのか? 「えっと……なんていうか、ロシアンルーレットっていうか?」 「ああ、なるほど。」 二十四話 「La asvio」 ユミリアはリーサの隣に腰掛ける。 その手には飲みかけのコーヒーがあった。 ユミリアはそれを一気に飲んで、ぷはっ、と一息ついて空き缶を投げた。 「九重達に何かされたんですか? 貴方も大変そうですね」 「えぇ、まぁ……」 ユミリアはポケットからコーヒーを取り出す。 「ロシアンルーレットって言うと、あなた殺されそうになったってことですよね? 何かあったのですか?」 「それが……」 リーサは事の顛末を説明する。 その間、ユミリアは頷きながらコーヒーを飲み、質問をしたついでに空き缶を投げ、そして納得したところでポケットからコーヒーを取り出していた。 リーサがさらに話をする間に、コーヒーの缶が2つ投げられていた。 「なるほど……。大体理解しました」 そしてポケットからコーヒーを取り出す。 一体どうしてそんなにコーヒーが入るのか。ていうか飲み過ぎでしょ。 「結局、貴方は逃げて来たからケートニアーかどうかは分からずじまいってことですね」 「そういう事です」 リーサはため息をついた。 「他に確認する方法、何か知ってませんか?」 リーサが質問すると、ユミリアはうーんと唸りながらコーヒーの缶を投げる。 「他の方法ですか……。ケートニアーには、造発モーニ体という組織が体内にあります。だから、 それが発見出来ればいいんじゃないでしょうか」 「どうやってですか?」 「……解剖とかですか?」 「…………」 結局死ねっていってるじゃないですか。 「冗談ですよ。でも、どうすれば……」 首を捻りつつコーヒーを口にする。 しかし、残りが少なかったようで、直ぐにその缶を投げた。 さっきまで何個投げたか数えてたけれど、途中で飽きてしまった。今何個目だ? 「あ、やば」 「え」 突然ユミリアが立ち上がった。 どうしたんだろうとユミリアをじっと見ていると、突然ユミリアの周囲が揺らいだ。 「ぐはっ……!」 そして、唐突に訪れる衝撃。 何故か腹部に痛みを感じる。変な音がしたし、もしかしたら内蔵が破裂したかもしれない。 何だ?何が起きたんだ? 一瞬の出来事だったので、リーサには何が起きたのか全く分からなかった。 衝撃に耐えられず床に倒れる。 リーサは何が起きたの調べる為、周囲に目をやった。 一瞬、人影を捉えた気がしたが、直後に背中に激痛を感じ、その後リーサの意識は暗闇に落ちていった。 「はっ!?」 目が覚めたら自室に居た。 きょろきょろと辺りを見回した後、起き上がってうろうろしてみる。 ……痛くない。 先程感じた激痛が、嘘のように吹き飛んでいる。 もしかして、夢でも見ていたのかなぁ。 リーサは不思議に思いながらも、リビングに向かった。 「リーサ!」 リビングに入った途端、九重に名前を呼ばれた。 「良かった。無事だったのね」 「?」 何のことだ、と顔を傾けて問う。 「……あー。もしかして覚えてない?ロシアンルーレットの事とか」 む?それは夢に出てきた事だったような。 「もしかして、それ本当にあったんですか?てっきり夢かと……」 「当然よ。貴方に撃たれた借り、いつか返すわよ」 九重にキッと睨まれる。 リーサはごめん、と素直に頭を下げて謝る。 「まぁそれは置いといて。良かったわね。貴方がケートニアーであることが判明したわ」 「本当ですか!?」 リーサは目を輝かせる。 それに驚いたのか、九重は少し気圧されるように後ろに下がる。 そして九重は続けて、 「えぇ、まぁ……。貴方、ユミリアとあったでしょ?後で本人に聞いたんだけど、どうやらリーサにあった時は既にコーヒーを口にしていたみたいで、どうにかして自分を抑えていたらしいけど、手が勝手にコーヒーを取り出して飲み続けたんだって。そしたら、自分を止められなくなって暴走。近くに居たリーサは巻き添え食らったってわけ。良かったわね、生きてて。当たり所が悪かったらケートニアーでも死んでるわ」 と言った。 でも、突然そんなことを言われても、自覚が無いからよく分からない。 ただ一つ覚えていることは、意識を失う前に見た人影だけだ。 つまりあれがユミリアだったというわけか。 九重は一息ついて更に続ける。 「ユミリアの暴走を聞きつけて私達も向かったんだけど、リーサが血塗れで倒れてるからびっくりして。急いで山吹に治癒のWPをしてもらったんだけど、自然治癒力を上げるWPをかけた途端、みるみるうちに傷が治っていったわ。ネートニアーとはとても思えないわね。だから、貴方はケートニアーってこと」 「はぁ、なるほど……」 自分はケートニアーだ、と言われたのに何か釈然としない。 だが、これで私も戦うことが出来るようだ。 「まぁそういうこと。だから、貴方もきっとWPを使えるはずよ。私から言えることとしては、初めてWPを使えるようになった時、第三の腕が生えたような感覚がしたわ。そんな感じだから、頑張ってね~」 「え、ちょ……」 そんなこと言われても困る。 リーサは九重を引き留めようとした。 だがそんなリーサを置いて、九重は部屋から出て行く。 リーサは第三の腕が生える感覚なんて知らないので、どうにかしろと言われてもどうしようもない。 「良かったですね。傷のことも、貴方のことも」 九重と入れ違いざまに、青柳が入ってきた。 「ありがとうございます。けれど、WPってどうしたら使えるんでしょうか」 九重が駄目なら、青柳に聞いてみることにした。 二十五話 「La kranteerlessal」 「どうしたら、と言われても。」 青柳が困惑した表情で言う。 顎に手を当てて、首をかしげる。 「あっ、そうだ。ちょっと、リーサさんついて来て。」 「は、はぁ……」 スファガルの一室から出て廊下を歩いている青柳にリーサはついて行っていた。 目的地を確認するように扉の上を確認する。 「ここね。」 そこには角ばった文字で何か書いてあった。 おおよそこの世界では見たことの無い文字だが、どこの文字だろうか。 そんなことを考えているうちに、青柳がドアを開け部屋へ入っていく。 続いて、リーサも部屋に入った。 「わぁ……。」 声にならない声が漏れた。本も本、凄い量の本がところ狭しにつめられている。 アンティークな階段と本棚が中にある。 しかし、部屋は広いように感じた。 「あれ……司書さんが居ないわね……。」 そういいながら先へ進む青柳を追おうとしたところ、何かぐにっとした触感が足から伝わった。 「ふみゃ!?!?!?」 その声の主は足元だった。 「そこに居たのね。てか、リーサさん、その子踏んじゃ駄目よ。」 「え?」 踏んでいた対象がいつのまにか目の前に居る。 「申し遅れましたが!私がこのスファガルの図書室を預かることになっている司書のヴァレス・フミーヤ・エミーユ!です!!」 まだ変な人間がこのヴァルファーストに居たのか。いや、まだ変な人間とは決まったわけではないが。 「前から地面に寝ないでくださいと言っているじゃないですか。」 青柳がヴァレスに非難がましく言う。 「いやぁ、オールナイトで書庫の検索システムの更新を行ってたら、テスト中に気を失ったようで、あはは~♪」 「あははー、じゃないです。一体何日寝てないんですか。」 「ん~と、ここんとこ一ヶ月?」 「寝てください。」 「え~、無理かな~まだテスト残ってるし~」 「本当に寝てください。」 やっぱり、変人だったようだ。 「てか、そこにいる人は誰です?見たこと無いんですけど。」 「あっ、私はスカースナ・リーサっていって、えっと」 「協力者です。」 青柳が付け加える。 ヴァレスは大きく頷いた。 「それで、今回はなんのようですか?」 「ウェールフープの習得についての資料が欲しいので来ました。このリーサさんにウェールフープを習得させなければいけないので。」 「はい?どういうこと?てか、彼女ケートニアーなの?」 「そのようです。記憶を失っているようで、ウェールフープの制御も失念している感じです。」 「そうねぇ……」 と言って、ヴァレスは席に腰掛ける。 「発達ウェールフープ学かな……?いやいや、ウェールフープ制御の失念と関係があるんだろうか。まあ、こっちのほうでとりあえず調べとくから待っててくださいよ。」 「分かりました。」 そういった青柳とリーサは共に部屋をあとにした。 「どうします?」 「他の人にも聞いてみましょう。例えば、ユミリアさんとか。」 え、あのカフェイン悪魔に……? あの人に会うと毎回酷い目にあっているような気がする。ただ、ここで聞かねば他に聞く要員は居まい。 なんでも、カフェイン欠乏時のウェールフープで世界を滅ぼしそうだし。 「そうですね、行きましょう。」 短く答え、リーサと青柳は歩き出した。 二十六話 「la dzarno」 二人はユミリアの部屋の扉をノックする。 暫く待ったが、返事がないので扉を開けた。いいのかそれ。 「うわぁ………」 目の前には缶コーヒーの山。 しかも開けられていない。予備の缶コーヒーといったところなんだろうか。 土砂崩れが起きないように避けつつ部屋の奥に進んでいく。 「………」 部屋の奥では雪崩が起きていた。 あちらこちらに散らばる空き缶らしきもの。 その多くが潰れていて原型をとどめていなかった。 先に進もうにも、空き缶が地面を埋め尽くしていて歩く場所がない。 仕方が無いので、空き缶を片付けながら、ユミリアを探す。 あの後、ユミリアはヴァルファースト達によって鎮圧された。 何人か死人が出たそうが、どうにかしてユミリアを気絶させることに成功したらしい。 その後ユミリアを引きずってここまで持ってきて、この部屋に安置したそうだ。 もう大分時間が経ったから、そろそろ目を覚ます頃だろう。 ユミリア鎮圧の犠牲者もそろそろ蘇生する時間だ。 閑話休題。 部屋全体を見回すが、ユミリアが居ない。 「おかしいわね……。もう目が覚めて何処かへ行ってしまったのかしら」 青柳がつぶやく。 「とりあえず、奥まで進んでみましょう」 ユミリアはソファの上でだらしなく横たわっていた。 寝息は立てているので、呼吸をしていないわけではない。 青柳はそんなユミリアに近づき、肩をトントンと叩く。 始めは反応が無かったが、何回か繰り返した後、ユミリアがぴくりと動いた。 「ん………あれ……青柳さん」 「おはようございます、ユミリア。少しお話をしたいのですが」 「あぁ……ちょっと待って」 ユミリアはんぅーーと伸びをする。 そして伸ばした腕をおろし、膝の上に乗せる。 「ふぅ……。それで、話とはなんでしょうか」 「その前に、此度の件について事情を説明してもらえますか?」 かすかな怒気を込めて青柳が言う。 「……なんのことだかさっぱりです」 「嘘はつかなくて結構。少なくとも今ここにいるリーサさんに迷惑を掛けたことくらいは分かるのでしょう?」 「う………。ごめんなさい」 「次からは気をつけてください。といっても無駄だとは思いますが」 「あはは…………」 ユミリアは頭をポリポリと書いてそっぽを向く。 青柳は諦めたのか、はぁ、とため息をついた。 「話を戻しましょう。実は、リーサさんがケートニアーであることが分かったんです」 「……そうでしたか。それは良かったですね」 「…はい」 その原因は貴方なんですけどね。死にかけたし。 ユミリアは少し驚いていたが、直ぐに元の顔に戻る。 青柳は話を続ける。 「だから、リーサさんはWPが使えるはずです。しかし、過去の記憶が無い為WPの使い方がわからない。だから、WPを使えるようになるにはどうすればよいか、相談しに来たのです」 ユミリアは青柳の話を聞いていたが、流石に困惑してしまったようで、 「どうしたら、ですか……。難しい質問ですね」 と言ったっきり、腕を組んで考えこんでしまった。 「やはり、難しいようですね。我々も、リーサさんには活躍してほしいのですが……」 「……すみません」 責任を感じて、リーサは二人に謝る。 「リーサさんが謝ることはありませんよ」 「青柳の言うとおりです。不慮の事故に会ってしまったのですから、それをどうこうしろと言う方が変ですよ」 ちくり、と、リーサの胸が痛む。 あの時巻き込まれた事故。 私は、「たまたま」そこにいて、「偶然」巻き込まれたのだろうか。 ……違う気がする。 なにか、意図が有ってそこに行った気がする。事故が起こるかもしれないということを知っていながら。 「……どうしました?リーサさん」 「え!?いえ……なんでもないです……」 リーサがぼーっとしていたのを気にかけたのか、青柳が声を掛けてきたようだ。 そうだ。今はこんなことを気にしている場合ではない。 とにかく、WPを使えるようにならなければ……。 「私に一つ、提案があります」 ユミリアが二人に向かって言う。 「やはり、こうやって話し合ったところで何も変わらないと思います。だから、実戦経験を積むのが最も手っ取り早いかと思います」 「……戦場で戦えと言うのですか?」 「そうは言ってませんよ。あくまで模擬戦です。これならば、間違って殺す事もないでしょう」 「なるほど。それはいい考えですね。戦い方を学ぶことも出来るですし」 青柳は目から鱗が落ちたといった風だ。 確かに、実戦経験を積むというのは、一石二鳥であるかもしれない。 リーサにとってこれ以上の利益はないだろう。 「私はそれでいいと思います。それで、その相手は誰になるんですか?」 「そうですね……。私は危険だと思うので、九重さんとかでどうでしょう」 「あの人加減知らなそうですよ……?山田とかはどうですか?」 「彼の力は加減が難しい。彼自身も苦労しているようですし厳しいのでは」 「山吹は補助だから多分駄目でしょう。となると、ヴァレス……ヴァレスか、ちょうどいいかもしれません」 「……確かに、彼女ならばWPについてもそれなりの知識がありますし、問題は無いでしょう。しかし、彼女は基本自由主義者です。利益の無い提案には乗らないと思いますが……」 「残るは私ですか……。しかし、私の力はあまり戦闘向きではありません。どちらかと言えば解析向きです」 「ふむ……適任者が居ませんね……」 二人は話を進めていたが、会話が途切れてしまった。 リーサは、二人の様子を眺めていることしか出来なかった。 どうして私は、人に頼ってばかりで、何も出来ないんだろう……。 何も出来ない自分に嫌気が差してきた時、突然青柳とユミリアが目を合わせた。 「……いる。1人居ますよ!」 「そうでした。何故気づかなかったのでしょう。彼女とは昔から縁があるし、彼女なら手加減も出来る」 「その上、私達にある程度協力的だし、無償のことでも引き受けてくれるでしょう」 「問題は、彼女がいない間どうするかということですが……」 「山田と山吹と九重が出れば問題無いでしょう。彼らには私から話しておきます」 「では、私はあの人の所行ってきます」 そう言ってユミリアが部屋から出て行った。 リーサは不思議そうに眺めていたが、彼女の後ろ姿が見えなくなった頃に青柳の方を向き、 「一体、誰が私の相手をしてくれるんですか?」 と聞いた。 すると、青柳はこちらを向き、笑顔で言った。 「藤見さんですよ。図書館司書の」 Kranteerl y io lirca(本編2)
https://w.atwiki.jp/tunachang/pages/20.html
#image(アリーサ(2).jpg) 名前:アリーサ 種族:人間 出身:イッシュ地方セッカシティ 性別:男 性格:マイペース 身長:157センチ 年齢:20歳 職業:研究所助手 兼 俳優 たいやきの食べ方:両手で持って頭からサクサクサクサク 鳴かぬなら ○○○○ ホトトギス?:鳴かぬなら 自分が泣こう ホトトギス (ただし嘘泣き 早く鳴け と続く) 遅刻した時の言い訳は?:迷っちゃったごめんねぇ! 好きなもの:甘い物、特にミアレガレットとヒウンアイス 可愛い小物 運動 嫌いなもの:苦い物 じっとしていること 特技:女の子っぽい仕草・泣き真似 相棒or恋人or嫁(夫)ポケモン:リザードンが相棒 説明:自分の容姿などを理解した上で狙って行動している男の娘。 わりとあざといがぶりっこではない。 TPOはわきまえる。 ボタン博士の助手の1人で、毎年新人トレーナーにポケモンを贈る役割を請け負っている。 そのためアドレス帳の内容が増え続けている。 電話をかければいつでも相談に乗ってくれる。 ただし研究中だったりフィールドワーク中だったりで繋がらない時もあるのでそういう時はメールをすべし。 ポケモンに例えるなら、 特性:マイペース 技:ゆうわく・嘘泣き・うたう・甘える 10歳で姉のイレナからヒトカゲをもらい、ポケモントレーナーデビュー。 姉からバトルの仕方を叩きこまれつつ、15歳でサンイン地方に引っ越すまではポケウッドで子役をしていた。 人気があったらしく、今も副業として俳優業は続けている。 映画『ポケモンレンジャーシリーズ』で有名になったとかなんとか。主人公の幼馴染のポケモンレンジャー役でシリーズ皆勤賞。 芸名はアリス。 ポケモンがメインのハートフル映画などに出演する事が多い。 レシラムの伝説に惹かれ、いつかレシラムに出会う事を夢見ている。 ボタン博士の論文を読み、彼女の元で伝説ポケモンについて研究する事を決めた。 研究内容はレシラムの伝説が主だが、他の伝説についてもレシラムと無関係とは言い切れないとして研究対象。 他地方に伝わる伝説や、近年起こった伝説絡みの事件についてまとめている。 伝説ポケモンを狙い行動を起こしてきた組織についての論文を最近発表し、「ポケモンの伝説が残る地ではそれらを利用し悪事を企む者が現れる。何かが起こった後では遅い、対策を立てるべき」と主張している。 が、研究者としてはまだ無名に近いためその主張も重要視されていない。 副職が俳優な事が一部研究者から反感を買っているらしい。 その辺をつつかれるとマジ泣きする。 小柄で力も無いがアクティブ。 じっとしているのが嫌いなので、各地に足を運んでいる。 伝説を調べる事と、持論を証明するためにR団の動向も積極的に探っている。 正義感というよりも、伝説という領域に人間は立ち入るべきではないという考えの元。 因みにかなづち。腰までしか無い深さでも溺れる。 よって水辺でバトルは集中できなくて嫌い。 あと怖いのがだいっきらい。ゴーストポケモンはいいけど、ポケモンタワーやもりのようかん等の施設?は無理。 無理だけど必要があれば泣く泣く入る。手を握っててね!!握りつぶすかもしれないけど! #region(close,手持ちポケモン) #image(アリーサの手持ち.jpg) 色リザードン♀(シャッポ) 特性:猛火 持ち物:普段はりゅうのきば、強敵相手の場合はドラゴンジュエル 技:オーバーヒート・りゅうのはどう・アクロバット・きあいだま アリーサの相棒。 手持ちのリーダー的存在で、まとめ役。 ヒトカゲの頃からアリーサがメロメロで甘やかして育ててきたので甘えっこ。 だが、成長し進化するにつれて外ではクール系を目指しているもよう。 アリーサを背中に乗せて空を飛びまわるのが大好き。 ブースター♀(タルト) 特性:もらい火 持ち物:オボンの実 技:ニトロチャージ・あくび・ねがいごと・ばかぢから 少量の抜け毛でも物凄いことになるのがアリーサの目下の悩み。 寒い場所ではずっと抱っこ。足にひっからまるのが好き。 行動はどことなく猫っぽい。 イッシュのヒウンで捕獲。 シャンデラ♂(チャーイ) 特性:すり抜け 持ち物:ラムの実 技:れんごく・シャドーボール・エナジーボール・おきみやげ ご主人大好き!魂食べちゃいたい!でも食べちゃうと死んじゃうから我慢するね!!って感じ。 入った施設でシャンデリアがあると隣にじっと浮かんで真似をする。 イッシュのストレンジャーハウスで失神しかけながら捕獲。 エテボース♂(キセル) 特性:テクニシャン 持ち物:いのちのたま 技:ダブルアタック・ねこだまし・ローキック・おんがえし アリーサの背中にいつも張り付いている。たまに後ろから尻尾が伸びてくる。 アリーサを片方の尻尾でつかみ、もう片方の尻尾でどこかに捕まって…というようにフィールドワークには欠かせない。 子役時代にジョウトへ撮影に行った時に逆捕獲され(気に入られたらしい)手持ち入り。 レントラー♀(キャロル) 特性:威嚇 持ち物:達人の帯 技:ワイルドボルト・噛み砕く・氷の牙・ばかぢから 勇ましい姉さん系。たまにアリーサを背中に乗せて走る。 アリーサ以外には触ってほしくないタイプ。 子役時代に先生にもらった卵から孵化。 ママンボウ♂(ダイナ) 特性:再生力 持ち物:食べ残し 技:ねがいごと・みずびたし・アクアリング・どくどく まったりのんびりマイペース。 まさにマンボウ。 手持ち入りしたのは一番最後で、サンイン地方に引っ越してから。溺れてたところを助けてくれた。#endregion
https://w.atwiki.jp/maplestorynext/pages/99.html
QUEST<<オルビス>> クエスト名/前提クエスト Lv制限/職業制限 発生場所 報酬 必要アイテム ハークルの魔法材料収集 全職業可能 オルビス[オルビス塔 秘密の部屋 ](ハークル) 魔法石の書x53500exp ファイアストーンボールのかけらx20ジュニアストーンボールのかけらx45アイスストーンボールのかけらx20 ネロの首輪 Lv20以上 オルビス[オルビス公園](エリック) 4000exp 金鈴リボン紐 淋しいボンちゃん Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス](ボンちゃん) - - オルビス[オルビス](リーサ) 500exp - 妖精の角笛/淋しいボンちゃん Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス](リーサ) 6000exp角笛ブルームーン万病治療薬x10 硬い角x100硬い羽毛x20動物の皮x10 妖精の角笛 Ⅱ/妖精の角笛 Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス](リーサ) 500exp 角笛 リーサの特殊治療剤/妖精の角笛 Ⅱ Lv30以上全職業可能 オルビス 500exp - リーサの特殊治療剤 Ⅱ/リーサの特殊治療剤 Lv30以上全職業可能 オルビス 5000exp移動速度の書(ペットの装備)60% 橙色の薬x40青い薬x20解毒薬フェアリーの触覚 リーサの特殊治療剤 Ⅲ/リーサの特殊治療剤 Ⅱ Lv30以上全職業可能 オルビス リーサの特殊治療薬 - 1000exp人気度+5 リーサの特殊治療薬 ボンちゃんの頼み事/リーサの特殊治療剤 Ⅲ Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス](ボンちゃん) - - オルビス塔<秘密の部屋>(ハークル) 3000exp - ボンちゃんのためのエサ狩り/ボンちゃんの頼み事 Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス塔 秘密の部屋 ](ハークル) ビッグホットドックx10ペットのえさx30魔法石の書x44000exp ジュニアペペの魚x100 ボンちゃんのためのエサ狩り Ⅱ/ボンちゃんのためのエサ狩り Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス塔 秘密の部屋 ](ハークル) ビッグホットドックx15ペットのえさx30魔法石の書x45000exp2000メル ジュニアペペの魚x200 ボンちゃんのためのエサ狩り Ⅲ/ボンちゃんのためのエサ狩り Ⅱ Lv30以上全職業可能 オルビス[オルビス塔 秘密の部屋 ](ハークル) 移動速度の書(靴)60%ペットのえさx30魔法石の書x4白い薬x206000exp人気度+1 ジュニアペペの魚x300 スピルナに料理を配達する Lv30以上全職業可能 オルビス[雑貨屋](妖精クリエル) - - オルビス[老婆の家](???) 4000メル1300exp人気度+1 オレンジx20リンゴx20たまごx20 ネロを助けろ!/ネロの首輪 Lv35以上 オルビス[オルビス公園](エリック) 10000exp移動速度の書(ペットの装備)60% ジュニアセリオンx50ジュニアライオナx50ジュニアグリュピンx50硬い角x50 ヒューズの趣味 Lv35以上全職業可能 オルビス[オルビス塔 ヒューズの研究室 ](ヒューズ) 空気の玉x309000exp スキューバペペx50オットセイ人形x10 ヒューズの奇妙な発明品/ヒューズの趣味 Lv35以上全職業可能 オルビス[オルビス塔 ヒューズの研究室 ](ヒューズ) 酸素ボンベ[クエストアイテム]3000exp シュノーケルx50空気の玉x50鋼鉄x5ネジx30 アルポンス・グリーンとネペンデスのジュース騒ぎ Lv40以上全職業可能 オルビス[雲の公園1](アルポン) - - オルビス[オルビス公園](エリック) 100exp - 500exp人気度+1 ルナー腕輪[クエストアイテム] ネロにプレゼント/アルポンス・グリーンとネペンデスのジュース騒ぎ Lv40以上全職業可能 オルビス[オルビス公園](メイドエルマ) 7500expルナー腕輪[クエストアイテム] スターフィクシの星の欠片x100ルナーフィクシの月の欠片x8010000メル アルポンとネペンデスのジュース騒ぎ/アルポンス・グリーンとネペンデスのジュース騒ぎ Lv40以上全職業可能 オルビス[オルビス公園](エリック) ? ネペンシスの種x200D.ネペンデスの種x100 スピルナの悩み Lv51以上Lv70以下 オルビス[老婆の家](スピルナ) 3000exp スターフィクシx20ルナーフィクシx20サンフィクシx20スターフィクシの星の欠片x20ルナーフィクシの月の欠片x20サンフィクシの太陽の欠片x20 パパフィクシの伝説/スピルナの悩み Lv51以上Lv70以下全職業可能 オルビス[老婆の家](スピルナ) ? パパフィクシx1 スカドルの新しい毛皮 Lv60以上全職業可能 オルビス[オルビス](リーサ) リーサの紹介状[クエストアイテム] - エルナス[エルナス](スカドル) - リーサの紹介状[クエストアイテム] ? ヘクタの尻尾x300ホワイトパンの尻尾x300イェティの角x100サファイアの原石x60
https://w.atwiki.jp/undeerl/pages/244.html
二十七話 「la elmesk」 二十八話 「La liaxi」 二十九話 「La niteken fels'haiser」 三十話 「La feucocar」 三十一話 「La fuaraptum」 三十二話 「La desnar」 三十三話 「La zirken zifoscur」 三十四話 「la fudiuresk」 三十五話 「La starnxen」 三十六話 「La mistulet」 三十七話 「la enomionas」 三十八話 「la xorlnarjalfkark」 三十九話 「La ixvarlafirlex」 四十話 「La ixvarlafirlex」 四十一話 「la jyrus」 四十二話 「la stidisno」 四十三話 「La kafi'astan」 四十四話 「La ansournust」 四十五話 「La lattarlfi'e」 四十六話 「La hyrcorfilen」 四十七話 「La makarelm」 四十八話 「La arfeser」 四十九話 「la cuturl」 五十話 「la viroterss」 五十一話 「la viestiest」 五十二話 「la cifurl」 五十三話 「la zelte vynutj nyj」 五十四話 「la farnen larta」 五十五話 「la fontapiedisal」 五十六話 「la cirlastan」 五十七話 「意思」 五十八話「」 二十七話 「la elmesk」 「実戦訓練……?」 「そうです、リーサさんのウェールフープを引き出すために協力できませんか。」 「私は司書よ。あと、ネートニアーだし。」 「前、黒服が来た時の動き。どうみてもテクタニアーですよね。」 うっ。と藤見が引き下がる。 ユミリアとリーサはフェーユの図書館に行っていた。藤見に会うためであった。 「そうですね、缶コーヒーあげますから。」 「要りません。」 さすが、カフェイン悪魔。コーヒーは常備のようだ。まあ、常備してなきゃ怖くて一緒にいられないわけだが。 「お願いしますよ。頼める人があなたしか居ないんです。」 「ん……まぁ、しょうがないなぁ。正午に図書館前に集合ね。」 「……。」 「……。」 図書館前、時刻は15時になっている。 もう三時間くらい待たされているが、藤見は全く来る気配が無い。 「あの人、しらばっくれましたね。」 「そう……みたいですね……」 他に頼める人も、居ないのに。 「もう、帰りますか。」 「いつまでもここに居ても意味は無いでしょう。帰りましょう。」 そう言って帰ろうとしていたところ。 ユミリアが振り返った。 「風が……違う……。」 そういった瞬間、爆発が起きた。 リーサは立ち尽くしたままだった。 ユミリアは、リーサの手を引いて建物の陰に隠れる。 「多分、夕張の傭兵でしょう。」 「どうしてこんなところにいきなり……」 「私たちの情報を得た諜報員が居たのでしょう。もしくは、この地を彼らの統制下に置くため。」 「……でも、どうするんですか。このままでは安全確認できそうに無いですよ。」 「行くしかないでしょう……」 ちらっと見ると男たちが周りの建物を探し、そして、図書館を見つけるとずかずかとその取り巻きと共に入り込んでいった。 「良いんですか、入れちゃって。」 「良いでしょう、多分藤見司書が居ますし。」 そうは言っても、中に居る人が気になるし、もし藤見さんが居なかったら。 「……私、気になるから行きますね。」 「あ、ちょ、リーサさん!?」 リーサは小走りで音を立てずに図書館の出入り口の脇に、移動する。ユミリアもあとを追いかけた。 「リーサさん、危ないですよ。」 「八ヶ崎は苦しんでいる人を放って置いたんですか。違うでしょう。ならば、私たちが彼らを助けるべきです。」 「……そう、ですか。」 ユミリアはそういった。不承不承ながらという感じであったが。 「……。」 しゃがみながら、図書館の中をそっと見る。 中には、先ほどの数名が図書館に居る人々を一箇所にまとめ、銃を突きつけていた。 「おい、司書の藤見はどこに居る。」 「知らない。お前らは誰だ……。」 「ふん、教える必要は無いだろう。」 藤見を探している……?しかし、何故。 「お前ら、図書館内を隈なく探せ。奴はどこかに居るはずだ。」 「了解しました。」 特徴的な帽子を被り、WPライフルを携えた数人の男たちは図書館のかく方向へ散っていった。 「どうしますか。」 「どうと言っても、ここまで来たら倒すほか無いでしょう。我々の敵でもあるわけだし。」 「ヴァルファーストのメンバーを呼びましょう。」 ユミリアがそういって立った瞬間、リーサがユミリアの通信デバイスを奪い取った。 「何するんですか。」 「静かに、ヴァルファーストの彼らは煩いから奇襲作戦に失敗してしまいます。とりあえず、ユミリアさん。偵察能力で図書室の内部に居る人々の状況を探知してください。」 「……了解。」 そう言って、ユミリアは耳を手で塞いだ。目を瞑り、何かを聞いている。そんな感じであった。 「一階に一人のWPライフルを装備した兵と十数名の民間人が居ます。二階には、三人のWPライフル装備の兵とここにも五人単位の民間人が居るようです。三階には特に人は居ないようですが、遮蔽物が少なく低いため多勢との戦闘になればきついです。屋上には、二人のWPライフルを装備した兵と一人何も装備していない兵が居るようです。」 「了解。武器は……WP拳銃が一つあるか、地上階のを殺してWPライフルを奪います。ユミリアさんは通信機でサポートを。」 「分かりました。」 ここから、リーサの戦いは幕を開けることになった。 二十八話 「La liaxi」 リーサは懐からWP拳銃を取り出し、弾丸を装填する。 そして、図書館の扉にもたれかかり、WP拳銃のスライドを引く。 そしてWP拳銃を胸に構え、図書館の中の様子を窺う。 図書館の中にいる民間人を牽制しながら、1人の兵士が藤見を探している。 彼は民間人の近くにいる。このまま撃ってしまっては彼らが危ない。 リーサは兵士が離れるのをじっと待つ。 『リーサさん、2階から1人降りてきます。気をつけてください』 『了解』 ユミリアから連絡が入った。 その時、2階から兵士が降りてくる。 そして、1階の兵士になにやら囁いた後、また階段を登っていく。 『どうやら彼は3階に向かったようです。それに続いて2階の1人も3階に向かっています』 ユミリアから再び無線が入る。 となると、1階のを殺るのにいい機会になりそうだ。 その彼は、今は人質らしき人達から離れている。ここから照準を合わせれば……いける! リーサはWP拳銃を構え直した。 扉から中の兵士に照準を合わせる。 こちらに気づかれないよう慎重に……。 『リーサさん、今なら行けます』 『分かってます。爆音に気をつけてください』 WP拳銃の銃口を兵士の頭に合わせたまま、リーサはトリガーを引いた。 バァン! 『弾丸の命中を確認。大丈夫、頭を完全に吹き飛ばしています』 ユミリアから状況を聞いた後、足早に図書館の中に潜入する。 中の民間人は突然兵士の頭が吹っ飛んだ事に驚いたようで、ほぼ全員が固まっていた。 「急ぎここから逃げて下さい、私が何とかします」 そんな彼らに、リーサは小声で図書館から出るように促した。 その途中、2階の兵士がこちらに向かってくる音がした。 リーサは民間人の避難を確認した後、死んだ兵士のそばにあったWPライフルを回収した。 『2階から1人降りてきます。3階の奴らも音に気づいたようで2階に向かっています。屋上のは動く気配がありません。3人との戦闘は危険です。1人ずつ対処をしてください』 『分かりました』 リーサは急ぎ本棚に隠れる。 その直後、兵士が1人降りてくるのが見えた。 ここから狙えなくもないが、向こうが警戒しているため、当たっても致命傷にはならないだろう。 確実に頭かモーニ体を吹き飛ばす必要がある。 「誰だ!姿を現せ!」 降りてきた兵士が声を上げながらリーサを探す。 リーサは本棚の影から彼の様子を窺う。 どうやら突然の出来事に動揺しているようで、何となく震えているようにも見える。 そして、ゆっくりとリーサとは反対側の方を探しに回った。 「どこだ!どこにいる!」 男が離れていくのを確認し、リーサは本棚の影に隠れながら少しずつ近づいていく。 そして、WPライフルの射程範囲まで彼に近づき、息を潜める。 ライフルに弾丸は装填されていたので、そのまま射撃体勢に入る。 リーサはライフルなど扱った事は無いはずなのだが、何となく扱い方が分かる。 頭でどうこう考えるより、自分の身体に任せた方がスムーズだ。 記憶を失う前に陸軍に所属していた影響なのだろうか。 男はリーサの3つ先の本棚の辺りでリーサを探していた。 『2階の二人が降りてくる気配はありません、殺るなら今のうちです』 ユミリアの指示を聞き、リーサはライフルの照準を男に合わせた。 そのままトリガーを引く。 バァン! 弾丸は男の頭部を貫通し、男は図書館の床に倒れた。 『オーケー、彼ももうこちらに戻ってくることは無いでしょう。2階の奴らにも銃声は聞こえていたと思いますが、動く気配がありません。2階へ続く階段からは離れていますが、民間人の側についています。彼らを人質としてこちらと交渉する目的でしょう。どうしますか?』 『ひとまず、1階の状況を確認して、2階に向かいます。何かあるかもしれないので』 『その点は大丈夫です。私が視た限りでは、危険物の存在は確認されていません』 『では、2階に向かいます』 リーサはライフルを構え直し、2階への階段を登った。 二十九話 「La niteken fels'haiser」 2階に向かおうとしていたリーサは思いとどまった。二人?交渉をするはずが無い。敵と認識した私を即座に撃ち殺すだろう。 では、どうするか。 落ち着いて、倒した敵兵の装備を漁る。WPライフル以外にめぼしい物は無かった。防弾ジャケットの裏に弾倉があった。 「……これだ。」 弾倉から弾を引き抜ぬき弾倉をポケットに入れる。 階段を上り、ドアの脇に移動、息を潜める。 決戦は数秒だ。 対象は二人……少しでも遅れれば、私か罪の無い市民が殺される。 そうすれば、終わりだ。 全てが終わる。 リーサがポケットの弾倉を取り出す。 「よし。」 それをそのまま部屋の中に投げ入れる。案の定、武装していた二人が弾倉に注目する。その瞬間リーサは部屋の中に突入した。 即座に中の二人を撃ち殺す。 『リーサさん、三階の兵士が降りてきています。二人です。』 「了解。」 面白くなってきた。自然にそう感じていた、人を殺しているのにという感情を持っていながらもだ。心拍数が上がり、心地よい血の巡りを感じる。体はいつもより俊敏に反応する。 三階の兵士が降りてきて、それを視認する。瞬間、リーサのWPライフルが音をあげた。銃弾は的確に兵士たちの頭を打ち抜く。リーサにはそれらがスローモーションのように見えていた。 兵士たちが倒れる。思ったより重装備であった。防弾チョッキの中身を探る。 「発炎筒?これは……グレネードか。使える。」 『リーサさん、敵が屋上から急速に降りてきています。民間人が危険です。』 そういった、瞬間銃声が聞こえる。 「!?」 既に敵兵は、階段を下りていた。リーサに銃口を合わせる。 「くッ!」 WPライフルを持ち直し、銃口を向け、トリガーを引く。 甲高い音が鳴り、同時に二人とも倒れた。 リーサ自身自分が何をしたのか、良く分からなかった。 冷静になって確認してみると、銃口は敵の真横に向いていた。つまり。 「ちょ、跳弾?」 そう、リーサは無意識に跳弾を利用して倒したのだ。一体、陸軍に入っていた私はどれだけ能力が高かったのか。そんなことを思い、考えていたところ、民間人の存在に気づいた。 『リーサさん、民間人を早く避難させましょう。』 「分かってます。」 『リーサ……さ……屋上……避難……』 「え?」 ノイズが混じり、ユミリアの声が良く聞こえない。 『……………………………………』 完全にノイズが混ざり、聞こえなくなった。 とりあえず、民間人を避難させ、最後の一人―屋上のWPライフルを持たない兵―を倒しに行く。 「……。」 「動くな、もう既に他の兵士は全員片付けた。降参しろ。」 「誰かな。」 黒いコートにモノクルを付けた印象的な顔、誰かは詳細には分からない。だが、覚えている。この人間が、一体どのような強さなのか。この人間が一体どのような人間なのか。体が、心が、記憶している。そうその存在とは。 「ファル……カス……アレス・ファルカス……?」 「誰のことかな、僕の名前は、シフール=ハフリスンターリブだ。君は。」 「……。スカースナ・リーサだ。」 どういうことだ。目の前の人物を鮮明に私は覚えている。その人間と何があったのかは覚えていない。だが、この人間が、アレス・ファルカスということを知っている。絶対にこの人間は、シフール=ハフリスンターリブという他人ではない。この人は私の記憶の一部だ。 「スカースナ・リーサ、うッ……」 リーサの名前を呼ぶと同時に頭を押さえうずくまる。しかし、すぐに頭を押さえるのを止め立ち上がった。 「記憶の証人か。スカースナ・リーサよ、お前が居ると有害だ。消させてもらう。」 「どういうことだ。」 そう問う時間も与えられずに、リーサは吹き飛ばされる。 「くっ!?」 しかし、リーサも体勢を整えて、壁に背中を預ける。 「僕にはある時からの記憶が無い。だが、夕張様の元、正義世界の創造に携われるのならば本望!しかし、貴様ら記憶の証人が、私を夕張様から引き離そうとする!」 シフールが手に黒い球体を作り出す。瘴気があふれ出している。あれはエネルギーの集合体、プラズマ状態を無理やり押し込めているのだ。 「消えてもらおう、この世界には不要だ。」 三十話 「La feucocar」 「二度とこの世界に戻ってこれないようにしてやるよ」 シフールはそう言い放ち、リーサの方へ歩み寄る。 シフールから放たれる強烈な殺気を、リーサは感じていた。 この人は、本気で殺しにかかってくる……! そう思ったのもつかの間、リーサは胸部に突き刺さるような衝撃を感じた。 気づけば身体が宙を舞い、どうしようもないまま壁に激突する。 受け身も取れないほどの速さで、身体を突き飛ばされたのだ。 胸と背中に走る痛みに堪えながら、リーサはよろよろと立ち上がる。 __見えなかった。 あまりにも速すぎて、何が起きたのか分からなかった。 多分、あの球体から放たれたプラズマにやられたんだろう。 既に結構なダメージを負ってしまった以上、無闇に攻撃を受けるのは危険だ。 せめてタイミングさえ掴めれば、と思うが規則性が分からない。 次がいつ来るか、それが分からなければリーサにはどうしようも無かった。 「どうした。お前はこの程度なのか?」 シフールが残念そうな口調でリーサに問う。 「まあ、お前が『記憶の証人』である以上、消すのが容易い方が」 「どうでしょうかね」 シフールの言葉を遮ってリーサがそう口にした途端、シフールはなにかを感じ取って横に跳躍する。 そのシフールの頬を掠って、弾丸が空気を一閃する。 避けられないからといって、勝ち目が無いわけではない。 相手よりも速く、こちらが攻撃すれば良いのだ。 リーサが立ち上がる時、WP拳銃を懐から取り出し、即座にシフールに向けて放ったのだ。 「なるほど。只者では無さそうだ」 だが掠った程度ではダメージにもならない。 シフールもプラズマを開放する準備に入っている。 リーサはシフールの動きに集中した。いや、そうする事しか出来なかった。 プラズマが収縮された球体から所々放電している。 そして、シフールがプラズマの一部を弾丸のようにリーサに放つ。 音速を超える速度で放たれたプラズマは、爆音と共にリーサの身体に激突する。 その様子を見たシフールはほくそ笑んだ。 もう立ち上がれないだろう、とシフールは心の中で呟く。 __その時、突然銃声が聞こえ、シフールの左腕を弾丸が貫通した。 「ぐっ……!ばかな!」 シフールが顔を上げると、プラズマの軌道から僅かに逸れた所にリーサが立っていた。 リーサはWP拳銃をシフールに向けたまま、再び引き金を引く。 シフールは咄嗟にプラズマを当て、威力を相殺した。 __シフールがプラズマを放つ瞬間、僅かに球体が光る。 多分、発射の際の副作用なのだろう。 その一瞬を見極め、リーサは軌道から逸れたのだ。 「だが、油断したな!」 「かはっ……!?」 しかし、リーサは背後から突き飛ばされた。 ギリギリで受け身をとり、地面に着地する。 リーサが手にしていた拳銃はシフールの方へと飛んでいってしまった。 さっきとは違い、明らかに予兆が感じられなかった。 一体何処からどうやって攻撃をしてきたのかが全く分からない。 シフールが見せた動きに不自然なところなどなかった。 しかも、攻撃は正面からではなく、背後からだったのだ。 シフールは不機嫌そうに左腕を押さえる。 「僕も少し油断してたよ。だが、お前は必ず殺す!」 そう言ったシフールの全身はプラズマで満たされ、身体のあちらこちらから稲妻が発生している。 あのプラズマに当たったら今度こそ死んでしまう。 そう直感したリーサだったが、背中に受けた衝撃が重く、立ち上がることもままならない。 どうにかして攻撃手段はないのか。 せめて、WP拳銃でもあれば……! ん?私は今、何を望んだ? __拳銃?……拳銃か……。 弾丸を詰めて引き金を引けば、弾丸が飛び出す、殺傷能力が高い武器。 何故だろう。今、私の手には拳銃が握られている気がする。 いや、自分自身の腕が拳銃になっているような……。 身体の底から腕に力が伝わって来て、それが腕を拳銃に具現化しているような、そんな感覚。 リーサは拳銃なのかそうじゃないのか、よく分からない腕をシフールに向け、手をかざす。 「どうした、命乞いでもする気か?」 当のシフールはリーサのその仕草にはなんの疑問も抱かずにリーサに顔を向けている。 __これはチャンスだ。こいつに攻撃を当てるための、多分唯一の。 けれど、弾がない。拳銃に詰める弾が。 「だがそんな事をしたって無駄だ。お前は殺す」 シフールがプラズマを形成し始める。 __私は、こんなところで死ぬわけにはいかない。 こいつを倒さなければ、私は生きられない。 リーサの腕にさらに力が伝わる。 それは自分の手のひらに収束し、ひとつの塊を創りだそうとしている。 「お前はここで終わりだ__」 __今だ! リーサはシフールを指さす。 と、同時に、リーサの腕のエネルギーが猛烈な勢いで手に向かって流れる。 拳銃のトリガーを引いた時、火薬が燃焼して後ろから弾丸を勢いよく押すように。 そして、手のひらで創られた塊に、エネルギーが流れ込む。 流れこんで来たエネルギーを爆発させ、その塊……いや、弾丸は、シフール向けて一直線に進んだ。 三十一話 「La fuaraptum」 「ぐはっ!?」 何が起きたかを確認したのは少し後であった。リーサの生成したエネルギーの塊―否、銃弾である―は、リーサが手を伸べたシフールの方に飛びシフールの胸を貫通したのだった。衝撃に眩むシフールであったが、そこはケートニアーとしての能力かすぐに回復していた。 「く、くそっ、WPライフルを持っているからと油断したか。しかし、残念だったな……」 シフールはポケットから何かを端末取り出して、何かを打っている。戦闘中と言うのにのんきな奴だと思ったが、次の瞬間そんなことは思えなくなった。 「!?」 衝撃と共に揺れが図書館を襲う。リーサが立つことも出来ないレベルでそれが進んでいた。シフールは、リーサを背にどこかに行こうとしていた。 「ま、待て!」 「スカースナ・リーサ、お前が居るのは正義世界にとっては有害だが、今のところは生かしてやろう。いずれ、また会おう。そのときはお互い無の世界に居るがな。」 そういってシフールは、リーサの前から消え去った。揺れのためリーサはシフールを追いかけることもままならなかった。 粉塵が目の前を遮る、強烈な衝撃と共にリーサの居た場所が陥没した。 「うわっ!?」 意識は暗転し、何も聞こえなくなった。 誰かが呼ぶ声が聞こえた。 「革命のために。」 「今、貴方が行っても、何も出来ないでしょう?彼らを止めたいのは私も同じ。だから、今回は我慢して」 「こんな時に…何もできないなんて…!」 「直ぐかどうかは分かりかねますが…Xelkenを倒す為の話です」 「私たちには、もう後は無い。」 「勝利への順路など……無かったんだ。全部偶然だったんだ。」 「せめて、シャルの供養のため……。」 彼等は一体誰なのだろうか。 声はだけが聞こえて、姿は見えない。 立ち上がり、戦い、敗北して行く。 そんな風景を何回もここで聞いた気がする。 まるで誰かの過去を見透かしているかのように。 そうだ、私は今一体どこに居るんだろう。 ふわふわと気持ちいい暗闇の中、『リーサ』は無になって彼等の声を聞いていた。 『リーサ』? 『リーサ』とは何だ? 私は一体……。 「リーサ!!!」 目が覚めた。どうやらスファガルのベットの上のようであった。今まで、何か夢を見ているような気がしたが、良く覚えていない。 「リーサ……よかった……。ごめん、ごめんなさい。」 九重がベッドの横に立ち、その様なことを言っていた。他のヴァルファーストメンバーもリーサの横に立っていた。 「さすがに夕張軍勢がこの町をいきなり襲うなんて考えられなかった話よ。気にすることは無いわ、九重さん。」 そう青柳が平然のように言い放つ。 「そういえば、奴等は何を目的に図書館を襲撃したんだ?」 「司書の藤見さんを探していたようです。」 リーサがそういうとヴァルファーストメンバーは皆、何分からんといった表情になった。 「どうして、藤見さんを?」 「さぁ?」 そんな会話を続けていたがヴァルファーストメンバーたちは何か予定があるようで部屋を足早に去ってしまった。リーサは既に大丈夫だと思っていたが、ユミリアに安静にすべきだといわれ、ベッドに横たわることにした。 三十二話 「La desnar」 気がついたら日が昇っていた。 日の光が地面を照らし、やんわりとした熱気を感じさせる。 リーサは目を擦りながら、大きく欠伸をする。 一体何があったのか、リーサは少し考える。 夕張の軍勢と戦ったのは4時くらい。日はそれなりに傾いていた。 でも、今、日は真上に高く昇っている。 __つまり今は昼。 ……寝ちゃったか。 昨日の戦闘で身体が疲れきってしまったようだ。 リーサは軽く伸びをし、肩を回す。 少し疲れは残っているものの、日常生活に支障はなさそうだ。 リーサは階段を降り、リビングに向かう。 いつもより静かだった。 リビングの扉を開けて中を見ると、誰も居なかった。 普段この時間はいつも九重達が騒いでいる時間なのだが。 リーサは不思議に思いながらも、ご飯を食べようと冷蔵庫に近づく。 扉を開けようと取手に手を掛けた時、張り紙がしてあるのが見えた。 『リーサへ 少し出かけてきます。ご飯は冷蔵庫の中に入れときました』 ……なるほど。 とりあえず冷蔵庫の扉を開ける。 すると、いつも扉側の収納を埋め尽くしていたコーヒーが全て無くなっていた。 流石はカフェイン悪魔、少し出かけるのにも相当なコーヒーを消費するようだ。 気を取り直し、冷蔵庫の中を確認すると、リーサの分と思われる食事が冷やされていた。 リーサはそれを取り出し、適当に温めて食べた。 一息ついた後、これからどうしようかと考えを巡らす。 __昨日出来なかった訓練、今日は出来るかな。 そう思い立ったリーサは、机に書き置きをした後、図書館へと向かった。 図書館が無い。 確かにここには図書館があったはずだ。 道を間違えたのかと一瞬疑ったが、リーサは昨日の出来事を思い出した。 だが、突然、地面が崩れた事しか覚えていない。それ以降の記憶は無かった。 どうやら昨日の衝撃で図書館が粉々になってしまったようだ。 リーサはようやくその場で立ち尽くしていた事に気づき、図書館の方へ歩き始めた。 図書館だった物の目の前に辿り着く。 そこには瓦礫の山があった。 図書館の中にあった大量の本が、あちらこちらに散乱して、中には完全に破けて読めなくなってしまったものもある。 昨日の衝撃による影響がどれほどのものだったかを物語っていた。 「あら、リーサさんじゃない。どうしたのこんな所に」 すると、瓦礫の中から本を回収していた藤見さんと出会った。 彼女は軍手をはめて、瓦礫を退けつつ本を残った本を探しているようだ。 「いえ、なんとなく……ていうか大丈夫なんですかこれ」 「大丈夫じゃないわよ。あーもう、私が居ない間に何があったのよ全く」 藤見さんは若干、いや普通に怒っていた。 隠しているつもりでも分かってしまうのか隠す気がないのかは分からない。 だが、藤見さんからは憤怒のオーラが溢れ出していた。 とても昨日の事を言える状況ではない。 「え、えーっと……。と、ところで、昨日どこかへ行ってたんですか?約束の時間にも来ませんでしたし…」 とりあえず話題を逸らした。 「うっ」 すると、藤見さんは痛いところを突かれた、というようで、焦っているように見えた。 「約束をすっぽかす気は無かったんだけど……。えっと……その……ごめん」 「あ、いえ、そこまで気にしてくれる必要は……」 藤見さんに事情があったなら、それも仕方ないことだし。 「次はちゃんと行くようにするわ。……といっても、こっちの修理が先ね」 「はい、またその時はよろしくお願いします」 そう言ってリーサはペコリと頭を下げる。 折角ここまで来たのだし、藤見さんに何か手伝えることはないかと聞いてみたが、昨日の約束を守れなかったのに頼み事は出来ないと言って、そのまま作業に戻っていってしまった。 でもこれで、本格的にWPを扱う術を身につけられそうだ。 ……ところで、この図書館、いつになったら治るんだろう。完全に一から作り直しなんじゃないだろうか。 とはいえ、そんなことを思っていても仕方が無いので、スファガルへと引き返した。 三十三話 「La zirken zifoscur」 スファガルへの帰り道、リーサは周りの景色を眺めながら歩いて行く。 この行動に特に意味は無い。ただなんとなく、目が行った。それだけだ。 視線を彷徨わせながら歩いていると、 「リーサ!」 遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。 なんだろう、そう思って振り返る。 「良かった、やっぱりリーサだ。心配してたんだよ。でも元気そうで何よりだ」 「………リファーリン」 振り返った視線の先。 そこには、九重と会って以来、顔を合わせることが無かったリファーリンが居た。 金髪ショートの髪が以前と比べて少し伸びている気がした。 リファーリンは、乱れた髪を整えながら、 「折角会えたことだし、少し話していかないかい?」 と、提案してきた。 「そうですね」 特に断る理由も無いので、リファーリンの誘いを快く受ける。 「じゃ、そこの店でご飯でも食べながら話そうか。あ、お金は奢るからいいよ」 「そうですか、ありがとうございます」 リファーリンが店の中に入るのにつづいて、リーサも店に入った。 店のメニューをいくつか注文した後、リファーリンはリーサに向き直る。 「それで、リーサ。今、君の状況は?」 「私は今、ヴァルファースト達と共に生活しています」 「なんだって!?」 リファーリンが目を見開く。 「九重達と一緒にいるのかい!?それはびっくりだよ」 リファーリンは心底驚いているようだった。 が、リーサはリファーリンの反応に少し違和感を覚えた。 「……止めないんですか?」 「ん?何をだい?」 「私が九重達と一緒にいることですよ」 私が九重に連れていかれた日。 あの時、リファーリンは明らかにヴァルファーストに敵意を覚えていたはずだ。 それなら、私が彼らと一緒にいることを止めると思ったのだが。 「んー。私としては居てほしくないというのはあるけれど、それでもリーサの行動を制限してまで止めようとは思わないよ。君はそこに自分から関わっているんだろう?だったら止はしないさ」 「そうですか……」 「しかし、これからの行動によっては私の君に対する態度は少し変わってくるかもしれない。それだけは言っておくよ」 少し尖った口調でリファーリンは言う。 その瞳には、リーサの姿がぼんやりと写っていた。 「……は、はい」 リーサは戦慄した。 リファーリンから感じられる、殺意のこもった様な視線。 その圧力にリーサは圧倒される。 この人は敵には回したくない存在だ。そう感じた。 その後、お互い話すことも無く注文した食事を食べ、店を出た。 「じゃあ、またね。次に会うときに敵同士じゃ無いことを祈るよ」 リーサに視線を合わせること無く、リファーリンは足早に去っていく。 リーサはその後ろ姿を眺める。 やっぱり、心の底では私を怒っているんだろう。 そのことを少し寂しく思いつつ、リーサは改めて帰路についた。 三十四話 「la fudiuresk」 夕暮れ、薄暗い道を歩いていった。 分かるか分からないかくらいの濃さの自分の影が、暗い灰色の地面に投影される。袖を少し上げて スファガルに着いた。一つの窓だけに電灯が灯っているので、多分ヴァルファーストのメンバーはそこに集まっているのだろう。階段を行こうとしていたところ、胸ポケットに入っていた携帯が振動する。急いで胸ポケットから携帯を取り出そうとするが誤って地面に落としてしまった。 「はぁ……」 壊れた液晶画面に九重の発信が確認できた。 「あ、リーサ遅かったね。ていうか、どこに行ってたのよ。」 「いえ、あの、と、図書館がどうなってるかなぁと思って……」 とてもじゃないが、リファーリンにあったなどとは言えまい。Issvとヴァルファーストは抗争関係にあるのだ。 「そう、分かったわとりあえず皆座って。」 九重の指示に従って、ヴァルファーストメンバーは着席する。リーサは慌てながらも席に座った。 九重がホワイトボードになにかを書いていく。 「明日、夕張の拠点のひとつであるアル・シェユの最前線基地を叩く。」 「えっ、ええっ!?」 いきなりの宣言に困惑した。夕張の拠点を叩く?この状態で、しかも明日? 「アル・シェユの最前線基地、通称『ジュラール基地』においては翔太らしき人物と同一の固有WP波反応を一ヶ月に十三回ほど受信している。このためここに侵入して調査を行う。」 「し、侵入っていってもそんな簡単に出来るものでは!?」 「該当基地の見取り図、警備や人員の配置から警戒態勢、もう既に天才ハッカーさんがバックアップに入っているわ。」 天才ハッカー? 「あの、これで先月のはちゃらにしてもらえますよねぇ?」 にゅっと九重の後ろから図書室担当の自由人エミーユが出てくる。どうやら九重と事前に何かを約束していたようである。 「ええ、それだけに限らず、働きに準じた報酬を用意できるわ。」 そう九重はエミーユに告げる。確か、この人は書庫のシステム管理などもやってたような。ハッキングやクラッキングも出来るのだろうか。 「と言うわけで、明日に向けて総員早めに就寝するように。以上。解散。」 そういった、九重は部屋を後にしていった。他のヴァルファーストメンバーたちも部屋を出て行く。リーサも自室に戻ることにした。 「はぁ……。」 リーサは自室のベッドに横たわり、ため息を一つついた。明日の作戦。あの図書館での戦闘のように上手くいくとは思えない。ケートニアーだと分かってもウェールフープが使えるとしても、不安はまだ残る。誰かと話したい。話して気を紛らわせたい。そんな気がした。 「……。」 衝動的に図書室まで来てしまった。エミーユは私の話など聞いてくれるだろうか。そんなことを思いながら図書室の中に入っていった。 三十五話 「La starnxen」 九重は、いつもヴァレスは図書室に引きこもっていると言っていた。 それでいて、彼女は天才ハッカーなのだ。引きこもり恐るべし。 そんな彼女だが、性格に癖があり、基本的に自分に利益が及ぶ事以外では動かない。 自分が危機に晒されたらヴァルファーストの皆も捨てるほどだという。 ……それは本当にヴァルファーストの一員なのか。 何の意味もなくヴァルファーストに入るなんて……いや、九重なら強引に入れかねない。彼女の気迫に負けたのだろうか。 ヴァレスに会ったらなんて話しかけよう、無視されないだろうか。 リーサの心に不安が募る。 しかし、それを抑えて、図書室内のヴァレスの部屋を開ける。 ガチャリ。 『暗証番号を入力して下さい』 ……流石引きこもり、自室の警備は万全である。 「話しかける以前の問題か……」 リーサは扉の前で肩を落とす。 しかし、このままでいてもどうしようもないので、どうしたものかと考えていると、 「どうしましたー?」 丁度良いところにヴァレスがやってきた。 彼女は外から帰ってきたらしく、荷物を背中に背負っていた。 「はあ、ここに入った理由ですか?」 エミーユの部屋に入れてもらい、リーサは以前皆にしてきた話を彼女にもする。 部屋の中は案外綺麗に整頓されていて、居心地が良い空間だ。 「ほとんど見ず知らずの貴方に私の事を話すのはどうかと思いますがー?」 しかし、綺麗な部屋とは裏腹に、ヴァレスの返事はあまり良いものではなかった。 「そもそも、リーサさんはヴァルファーストに入ってないでしょ?ならなおさら話すことは無いですよ」 ヴァレスはあからさまに嫌な顔をしてリーサの要求を拒絶する。 自分の利益になること以外には目が行かないというのは本当のようだ。 だが、リーサも引き下がらない。 「そうですね。でも、一応私のウェールフープに関しては協力してくれるのでしょう?なら少しは貴方の事を知ってもいいんじゃないですか?」 「言ってることの意味がわかんないっすよ~。まぁいいです、そのかわりリーサさんの方の事情も聞かせてもらいますよ」 「勿論、そのつもりです」 リーサは近くにある椅子に腰掛け、ヴァレスに今までの経緯を話した。 ……Issvとの関わりを除いて。 「なるほど~。大方は理解しました。つまり、爆発の衝撃によって脳にダメージを負ってしまったと」 「まぁ、そういうことになります」 「その上、先の戦闘で一度だけウェールフープを発動した」 「はい」 「これ私の仕事あるんですかね?」 急に仕事の話に持って行かれても。 実際、ウェールフープを発動出来たのだからヴァレスの仕事が無くなったのかもしれない。 しかし、発動出来るのと扱えるのではまた話が違ってくる。 さらに言えば、リーサは発動すらままならないのが現状だ。あの時使えたのは奇跡に近い。 「でも、使えたのはあの時だけで、今使おうとしても使えません。完全には掌握出来てないと思いますが」 「なるほどねー。初めて使った時、何か違和感とかあったの?」 「そうですね。身体に何かが走っているような感覚はありました」 「その感覚が掴めればウェールフープ掌握まではあと少しですよ~。実戦経験を積めば扱えるようになると思います」 「そういうものですか……」 そう聞いて、リーサは安心する。 「さて、色々教えてもらったし、私の事も話しますねー。彼らの一員になったのには特に大きな理由は特に無いんですが……」 三十六話 「La mistulet」 「さて、色々教えてもらったし、私の事も話しますねー。彼らの一員になったのには特に大きな理由は特に無いんですが……」 そういって、ヴァレスは図書室の天井を仰いだ。 「私には、ITを教えてくれた師匠が居てね。」 「師匠?」 凄腕プログラマーとて師匠は居るものだろう。別におかしくは無いがそれが、これと関係があるのだろうか。 「その師匠が、例の事件が起こった時にここを紹介してくれて、それで入ったって感じかな。まぁ、私はこの組織の目的とかどうでもいいんだけど、簡単なことやるだけでここに住ませてもらえてるし、師匠のお願いだったから、良いかなと思って。」 「は、はぁ」 ヴァレスにはその師匠がとても大切な存在であったのであろう。その特異な性格でヴァルファーストへの参加を承認した程の権威を持っている。しかし、その師匠とやらとヴァルファースト自体に何の関係があったのだろう。 聞こうと思ったところ、ヴァレスも良く知らなかったらしく目ぼしい情報を貰うことは出来なかった。このまま自室に帰っても眠れる気がしなかったから少々本を読むことにした。ヴァレスも自分の邪魔をしなければ勝手にして良いと言っていたし、ここの蔵書も良く知らなかったし良い機会であった。 下の本棚は大体がウェールフープ関連のようだ。S.H.K. WP概論にプレス現象の論文か、興味深い。今度読んでみようかな。 それらの本の間に薄っぺらい冊子が挟まっていた。結構古いようでよれよれになっているため慎重に引き抜く。 「他世界においてのリパライン語の認知についての研究?」 なんか見たことがある気がする。ああ、シャル、アレス・シャルが言っていた。アレス……シャル……って誰だ。思い出せない、その論文の執筆者では無い様であるが私はアレス・シャルがこれを教えてくれたことを知っている。 「……はっ!?」 頭の中に激痛が走る。アレス・シャル、八ヶ崎翔太、レシェール・クラディア、アレス・ファルカス、脳はおぞましい量の情報を想起させた。思い出した。思い出したぞ。私が誰なのか、何者なのか。アフの子孫とXelkenに巻き込まれ、最終的にこうなってしまった。一体どうすれば良いのか。リーサにはこれからが分からなくなっていた。 とりあえず自室に戻る。あの事件は翔太が起こしたのだ。爆破もXelken総長の殺害も、全て。一人で?否、夕張が関わっていることはもう既に分かっている。そういえば、始めて夕張と戦闘するときに確かハフリスンターリブが攻撃しにスファガルに来ていた。夕張はハフリスンターリブをも掌握している……?分からない。一体夕張が何をしようとしているのか。 長い間、深く考えていたのか空が薄暗くも少し明るみの青色になってることに気づかなかった。リーサは少しでも寝ねばと思い。ベットにもぐった。 三十七話 「la enomionas」 翌朝、リーサはベッドから起き上がり、軽く伸びをした。 窓から入ってくる日差しが気持ち良い。 まだ眠気の残った目をこすりつつ、九重達の居るであろうリビングへ向かう。 今日は夕張の基地の一つを攻める日だ。 今までとは違い、戦闘もより激しくなる。 きっと戦場に立ったとしても、私は何も出来なかった。下手をすれば死んでしまっただろう。 しかし、今は違う。 私は今日までの事を全て思い出したのだ。 翔太と夕張の関係、特別警察との関わり、私のウェールフープのこと、そして……シャルのこと。 彼が狂ってしまった原因となった、1人の少女。 彼女とは友達だった。だから、彼女の死は私にとってもショックは大きかったのだ。 しかし、翔太が受けたものはこんなものではないだろう。 だからこそ、あんなふうになってしまったのだ。 翔太を止める。 その理由が明確になったことで、今回の作戦の重要度がどれだけのものか理解出来てきた。 失敗は許されない。 だからこそ__リーサは九重達と真正面から向き合わなければならない。 「今回の作戦の概要を説明する」 リーサが入ってくるなり、九重はリーサを席に座らせて説明を始める。 「今作戦の目的は、アル・シェユにある『ジュラール基地』の調査及び破壊である」 皆の顔が強張る。 「ここでは、翔太と同型のWP波が多く確認されているため、翔太が居る可能性が非常に高い。よってこの基地に潜入してその真偽を確認する。そしてそれと共に、前線基地を破壊しておくことで夕張に歯止めを掛ける」 「それで、どうやって潜入するんだ?」 山田が九重に聞く。 「潜入方法だけれど、まずこの地図を見て」 そう言うと、九重が机の上に一枚の大きな紙を広げた。 そこには、見取り図のようなものが描かれていた。「ジュラール基地」の地図だ。 「エミーユが色々調べてくれたおかげで大分助かったわ。で、まずこの地図なんだけど……」 九重が地図を指差しながら説明を始める。 そこには大まかな基地の構造と、謎の三角が書かれていた。 「まず、真ん中に建物があるでしょう?それは翔太が居るであろうと推測される場所。4階構成になっているわ。翔太が何処にいるかまでは分かってないから一番上まで登る必要があるわ」 九重は指を動かしつつ説明を続ける。 「そしてその建物の西側と南側には宿舎があるわ。当然、ここには兵士達が沢山いるから、彼らに気付かれないように注意する必要がある」 「でも、これだけ近くにあったら流石に基地内の誰かが気付くんじゃないかしら?」 青柳が質問を投げかける。 「そこについてもしっかり考えてあるわ。でも、取り敢えず全体の説明をさせてちょうだい」 「わかったわ。話の腰を折って悪かったわ」 「ありがとう、気にしなくて大丈夫よ。それで、西側の宿舎の南には車が置いてあるわ。南の宿舎から見れば西ね。ここには目立ったものは無かったわ」 九重は息をつく間もなく話を続ける。 「そして、これら全ての建物と車を囲うように塀が立っているわ。横長な長方形といったところかしら。この塀の南北に基地への入り口の門があるわ」 一通り概要を説明し終えたのか、九重がふぅっと息を吐く。 すると、山田が地図を見ながら、 「大体理解したが、この三角形は何なんだ?」 と質問した。 他の皆も疑問だったようで、九重に視線を向けた。 それを見た九重は待ってましたとばかりに顔を輝かせて説明を始めた。 「それはね、警備に回っている奴が何処に配属されているのかを表したものよ。よく見て、その付近に矢印が書いてあるでしょう?それが奴らの移動経路。そこを通らなければ気付かれることは無いってわけ。まぁ彼らの視界に入ったら元も子もないけどね」 「なるほどな。それで、どうやって潜入するつもりだ?」 九重が目を閉じる。 先程よりも張り詰めた空気となり、リーサも緊張せずにはいられなかった。 「さっき青柳が言ったように、宿舎の兵士達に気付かれずに潜入するには彼らが活動していない時間、すなわち夜に潜入する必要があるわ」 夜に潜入……奇襲を掛ける、ということだろうか。 「それでどちらから潜入するかだけど、南側は宿舎に近い分危険性が高い。だから北側から潜入する」 「北に居る警備はどうするつもり?」 「彼らの移動経路を見てくれれば分かるけれど、外側の奴らが入り口から離れた所を狙って潰していくわ。当然音は立てないようにしてね」 「中の奴らはどうするの?」 「遠距離からの射撃で仕留める。片方を殺った隙にもう片方が報告に行ったりすると困るから、両方同時にね」 「宿舎の奴らに気付かれないか?」 「進入者が現れた場合、警備が宿舎に連絡を入れる事になっているわ。だから彼らを潰してしまえば____」 ヴァルファーストの皆が質疑応答を繰り返して作戦の確認をしている。 リーサはその話を淡々と聞いていた。 ジュラール基地を攻めるに当たって、特におかしな点は無い。 けれど、今の私達だけで果たしてこの基地を潰すことは可能なのか? 記憶がもどった今のリーサからしてみれば、彼らの戦力は意外と少ない。 夕張達が弱いなんてことはないだろう。むしろ私達なんかよりずっと強い。 きっと、このまま行けば私達は彼に敗れてしまう。 ……だから、リーサはヴァルファーストの皆に一つの大きな提案をすることを決意したのだ。 議論が中頃になった時、リーサは動き出す。 「あの、皆さん」 「どうしたの、リーサ」 「作戦の話をしている所申し訳ないけれど、意見を言わせてくれないでしょうか」 「いいわ、なんでも言ってちょうだい」 九重は優しく答えてくれる。 ……その優しさが逆に辛い。 「……私は、今回の作戦、成功する確率は低いと思います」 リーサが重い一言を放つ。 部屋の空気が一気に凍りついたように感じた。 「……理由を説明してもらえるかしら」 九重は不機嫌そうに尋ねる。 「多分、今の私達の力じゃ彼らに負けてしまう。少なくとも、あの夕張がこんなあからさまに翔太と通信するとは思えない。だから、これは私達をおびき寄せるための罠なんじゃないかと思います。それに、もし本当に翔太が居たとして、その側に夕張が居ないとは考えにくいですし」 「……あの夕張、ねぇ……」 「……」 「リーサ、あんた記憶戻ったでしょ。あの夕張、なんて含みのある言い方が出来るのは彼の事を良く知ってないと言える言葉じゃ無いわ」 「……えぇ、まぁ。私は事故にあった頃以前の出来事を全て思い出しましたから」 「なるほどね。話を続けてちょうだい」 「……私から見て、夕張達の戦力と渡り合うためにはこちらの戦力は余りにも少なすぎると思います。彼の部下達も相当な実力者が揃っていますから。それに、私達が基地の中心で戦闘を起こした場合、その音に気付いた宿舎の兵士達が下から襲ってくることも考えられます。挟み撃ちにされたらこちらの勝機がほぼ無くなります」 「だったら何か!作戦をやめろとでも言うのか!?」 山田が机を叩いて立ち上がり、リーサを睨みつける。 リーサはその視線から目を逸らすこと無く話を続ける。 「そんなこと言うつもりはありません。こちらの戦力が足りないなら、応援を要請すればいいと、そう言いたいのです」 「誰に?」 青柳がリーサに尋ねる。 「……私達と同じ目的を持っている人達を知っています。記憶が戻った今だから言えることですが……」 リーサは大きく息を吸い、彼ら全員を見据えて告げる。 「特別警察ですよ。……レシェール・クラディアさん。彼女等に協力してもらいましょう」 三十八話 「la xorlnarjalfkark」 「はあ?」 九重が顔をしかめる。他三人も何言ってるんだこいつと言うような顔つきであった。リーサは眼を細め、回りを見渡す。 「私が駄目だったらレシェールさんを取り込む。そもそも元々そういう作戦だったはずです。別に驚くことではないでしょう。」 「だ、だがなあ!俺らはあいつ等に捕まえられかけたんだぞ。今度何もありませんでしたね~じゃけん手組みましょうねぇ~とは、」 山田が反論しようとするが、リーサの手によって遮られる。 「いいえ、可能です。」 「か、可能……?」 リーサの目は一点、九重に据えられた。九重の目も逃さないよぅにリーサを据えていた。 「レシェール・クラディアさんとはxelken総統との闘争、アフの子孫事件まで一緒にxelkenや共産党と闘ってきた。きっと私達と対話してくれます。」 九重がリーサを睨む。 「そんな簡単に事が運ぶとでも?」 「はい、まずはこれを見てください。」 リーサは机に一つ紙切れを置いた。数字の羅列が所狭しと書かれていた。 「これは?」 「レシェールさんの個人携帯電話番号です。これを使ってレシェールさんをおびき出します。そうですね、名目上『連邦郵便局私書箱に停留している税務調書の取り扱いの件』などと件名を付け、ショートメッセージを送ります。」 「なるほど、それは誘き出せそうね。しかし、こんな情報を誰が?」 「ヴァレスさんですよ。」 青柳がリーサを一瞥する。 「報酬は何だったんですか。彼女は報酬無しでは動かないはずです。」 「彼女にスイーツ一年分を保障したら、乗ってくれましたよ。」 ヴァルファーストの皆は顔を歪めていた。 「け、結構乙女なところもあるのね。あの人。」 九重が驚きに満ちた顔でそういう。リーサはそんななか咳払いをして、さて、と話を切り出す。 「多分、レシェールさんの方も、いや、特別警察庁も只ではこさせないでしょう。監視役が居るはずです。レシェールさんを上手く取り込めなければ、戦闘になるでしょう。否、戦闘になる確率のほうが高いと思っていただいたほうが良いかもしれません。」 「リーサ。あなた、本当に軍隊の頃の記憶を思い出したのね。」 「はい、でもこのヴァルファーストを裏切るつもりはありません。私も、レシェールさんもヴァルファーストの皆さんも思いは一つのはずです。八ヶ崎翔太を救う、この不毛な争いから手を引かせる。そうして彼を救うことは私たちの共通認識です。九重さん、青柳さん、山田さん、山吹さん、この戦闘が正念場です。この作戦、絶対に成功させましょう。」 ヴァルファーストの全員は無言でリーサの言葉に頷いた。 三十九話 「La ixvarlafirlex」 「綜合逓信局に行く?」 イェクトが不思議そうにクラディアの顔を見つめる。 クラディアもまた首を傾げつつ今朝受け取った書類に目を落とす。 そこには、『連邦郵便局私書箱に停留している税務調書の取り扱いの件』と書かれていた。 しかし、郵便局からの通達とあっては行かないわけにはいかない。 仕方なく、クラディアは綜合逓信局に向かうこととなったのだ。 「税務調書の取り扱いについてだそうです。直ぐに行って戻ってきますよ」 「そうか。だが、念の為僕とヴァレス、それからカーナも付いて行っていいか?」 「まぁ、いいですよ。但し、これはプライバシーに関わるから少なくとも300fta(90m)くらいは離れて居てくれると有り難いですね」 「あぁ、分かったよ。じゃあ、僕はヴァレスとカーナを呼んでくる」 イェクトは彼らを呼びに部屋の外へ出る。 郵便局に行くのに必要なものでは無いが、念の為にWP拳銃を懐に忍ばせ、クラディアは玄関に向かった。 「待たせたか?」 後ろからイェクトの声が聞こえた。 イェクトの左にはヴァレス、右にはカーナがいた。 二人は何故呼び出されたのかに若干納得していないらしく、なんとなく不機嫌そうだった。 「いえ、私も今来たところです。それでは行きましょうか」 「ああ」 そんな二人に少し申し訳なく思いながら、クラディアは綜合逓信局に向かった。 何処か淋しげな青空の下、クラディア達は歩みを進める。 綜合逓信局まではそれほど遠くない。わざわざウェールフープを使って移動する必要もない。 連邦を出てから15分ほど歩けば綜合逓信局だ。 周りに夕張の軍勢が居ないか警戒しながら、クラディアは道を進んでいく。 イェクトら一行も、クラディアの後から付けていた。 「しかし、随分唐突なように感じるが……」 「そうかぁ?事前連絡なんてぇ普通さそうだし普通じゃぁないかぁ?」 「確かにね。だが今は夕張達によって多くの場所で被害が起きている。そんな中綜合逓信局に来いなんて通達出さないと思うけど……」 「なんでもいいわよ。とにかく、クラディアの身に何かあるかもしれないんだから警戒しときましょう」 「そうだな。ほら、行くぞ」 「あいよぉ」 ヴァレスの返事を聞き流しながらイェクトが前に進もうとした時、違和感に気付いた。 クラディアが歩みを止めている。 そこは綜合逓信局の入り口だった。そのまま中に入って手続きを終えるはずだったのに、何故かクラディアは動かない。 その事に疑問を覚えたイェクトがクラディアの前方を見る。 そこには、何処かで会ったことがある気がする少女と、その後ろに、最近手を焼いていた4人組がクラディアを待ち構えていた。 クラディアは暫くの間驚きを隠せずにいた。 目の前には今迄行方を眩ませていた少女……スカースナ・リーサが立っているのだ。 そしてその後ろには、いつも私達の邪魔をしてきたヴァルファーストの4人。 一体何故リーサが突然私の前に姿を現したのか。そしてどうして彼らと一緒にいるのか。 クラディアの中に一瞬で幾つかの疑問が芽生え、それらがクラディアを混乱させた。 「リーサ……なの?」 「……はい」 一応聴いてはみたが、返事が頭に入ってこない。 一旦頭を落ち着けなければ。 そう思いつつも、目の前に居るリーサが懐かしくてたまらない。 一体何処で何をやっていたんだろう。 ……いや、リーサとは以前会ったことがあるような気がする。 何処でだったかは忘れた。けど一瞬だけ、リーサと似ている人を見たことがあった。 ヴァルファーストのメンバーの中に。 そして今、リーサの後ろには、あの忌々しいヴァルファーストがいる。 やはり、リーサはヴァルファーストにいたんだ。 連邦から抜けだして、一体何をやっているんだか……! 「今日は、クラディアさんに話が有ってきました。偽装した手紙を送ってすみませんでした」 リーサはペコリと頭を下げる。 クラディアはそんなリーサには目もくれず、憤りを露わにしていた。 「貴方、急に居なくなったと思ったらこんな所で……一体何をしているんですか!」 「……すみません」 「謝って済む問題ではないでしょう」 「私にも色々あったんです。全ての経緯を話すには時間が足りませんけれど」 「……まあ、いいでしょう。それで、私に何の用ですか?今ここで決着でも付けましょうか?」 クラディアはウェールフープ発動の準備に入る。 たとえリーサであっても、連邦の邪魔をするならば容赦はしない。 「そういきり立たないで下さい。取り敢えず、私が彼らと何をしていたのかを聞いてもらいたいので」 クラディアの剣幕に気圧されること無くリーサは言葉を続ける。 少なくとも、リーサに恐怖心は無かった。 「Xelken式典を覚えていますか?あの時、私は爆発に巻き込まれて記憶を失っていたんですよ」 「……」 クラディアは黙ったままだ。 「その時出会ったのが彼らヴァルファーストです。特別警察とは結構ぶつかっているようですね」 「彼らは我々の妨害をしているだけです。今この状況と同じように」 彼女はリーサを睨みつける。 「私も最初は貴方達はヴァルファーストを妨害しているだけのように感じていました」 リーサは一息ついて、クラディアを真正面から見つめる。 「でも、それは違った」 「どういうことかしら」 「貴方と彼等に違いは無かったんですよ」 「はい?」 クラディアは訝しげな顔をする。 「だから、違いが無かったんですよ。連邦の目的とヴァルファーストの目的に」 「理解しかねますね。彼等と目的が一緒というのは」 「では改めて確認します。貴方方の目的はなんですか?」 「翔太を止める事です。彼をあれ以上放置していては危険です。それに、彼はシャルを亡くしてから自暴自棄のようになっている節があります。だから彼を止めたい、助けたい。それだけです」 「……知ってますか?ヴァルファーストの活動目的は、翔太を助ける事なんです。彼等にとって翔太は恩人なんですよ。だから、今苦しんでいる彼を助けたい。そう願っています」 「そんな……」 クラディアは目を見開く。 「で、でも」 驚きのあまり、言葉を繋ぐのが必死だった。 「彼等は私達の邪魔をしたことが何度もあります。私達と目的が同じなら、そのような齟齬は起きないはず」 それでも、彼女は納得が行かない。 今まで散々私達の妨害をしてきた。そうとしか思えないから。 「誤解です」 「え?」 「正確にはヴァルファーストの、ですが。彼等はシャルを貴方達が殺したと勘違いしていたんですよ。今までずっと」 「それは……」 「そしてそれが連邦を恨む原因になり、結果的に貴方達を敵と見ていた。同じ目的を持っているはずなのに、何だか悲しいものです」 「っ……!」 クラディアは唇を噛む。 まだ納得が行かない、そんな様子でリーサを見つめている。 「ちょっと」 リーサがどう続けようか考えていると、後ろから九重がやってきてリーサに声を掛けた。 「どういうこと?連邦がシャルを殺したんじゃないの?」 しまった、ヴァルファースト側の誤解を解くのをすっかり忘れていた。 リーサが逡巡していると、 「……シャルを殺したのはシャルの父親であるファルカスです」 クラディアが俯いて答えた。 「それは事実?」 九重が聞き返す。 「ええ。少なくとも、私達がシャルを殺すなんてことはしません。彼は私達の大切な仲間でしたから」 「シャルを利用していたんじゃないの?」 「元々、私達は翔太を保護しようとしてたんです。シャルとは別に。だから、最初出会った時は乱闘しましたからね」 「えぇ……」 リーサがため息を漏らす。 どうして乱闘したのか気になる。だが今は抑えておこう。 「……なるほど」 九重が頷く。 「シャル殺害の誤解は解けたかしら?」 「正直、まだ納得していない節はあるけど、まあ大体分かったわ。私達が誤解していたせいで争っていたとは思わなかったけど」 九重はバツが悪くなったようでクラディアから目を逸らす。 「私だってそうよ……。つまり、私達の争いが意味が無かったと、そう言いたいのですねリーサ?」 「その通りです」 「……」 クラディアと九重が顔を見合わせた。 気まずい雰囲気が漂う。 「争いが無意味であったとはいえ、これで誤解は解けたんです。そこで、今回、我々が立てた夕張の基地偵察に協力していただきたいのです」 「偵察?」 「夕張の一拠点から、翔太の物と見られるWP波が何度も観測されているんです。そこで、夜間そこに乗り込もうという算段をたてています」 「なるほど。それが罠の可能性は?」 「無いとは言えません。しかし、それでも行く価値はあります。そこは前線基地ですので」 「……?そこまで分かっているなら我々に協力を要請する必要は無いのでは?」 クラディアが首を傾げる。 ヴァルファーストのメンバーが少し眉を上げたがリーサは気にせず続ける。 「我々の戦力では太刀打ち出来るかどうか。前線基地ですからそれなりの戦力が居るだろうし、翔太が居る場合夕張も居る可能性が高い。そのような状況で我々が勝利するのは厳しいかと」 「……なるほど。状況は理解しました」 「ありがとうございます」 リーサは感謝の意を表し、そして姿勢を正す。 「それで、提案に乗って頂けますか?」 これが本題なのだ。特別警察がこの提案に乗ってくれなければリーサ達に勝機は無い。 辺りを静寂が満たす。 肌に当たる風が冷たい。 クラディアは暫く考え込んでいた。 リーサやヴァルファースト、そして後方から話を聞いていたイェクト等も、クラディアが言葉を発するのを待った。 ……どれくらい待っただろうか。 それほど長くは無いはずだ。 実際は数分のことでも何十分のことのように感じられる。 リーサ達は息を呑む。 クラディアが返答したのはそれから数十秒経ってからだった。 「一つ、条件があります」 「なんでしょうか」 「今後私達の活動を邪魔しないことです」 「当然よ。これ以上邪魔したってしょうがないし」 九重が即座に答えた。 「……分かりました。引き受けましょう」 クラディアは頷き、返事をした。 ヴァルファースト一行の顔が明るくなる。 山田は「よっしゃ!」と拳を突き上げ、青柳等も陰ながら喜んでいるようだ。 「本当ですか!ありがとうございます!」 それはリーサも同じことで、思わず声が大きくなってしまった。 「えぇ。ヴァルファーストの皆とも協力できるよう尽力します。これからまたよろしく、リーサ」 「はい!こちらこそよろしくお願いします!」 「私からも。これからよろしくお願いします」 九重がクラディアに握手を求める。 「今まで色々あったけど、一旦それは水に流して、一緒にやっていきましょう!」 元気な声でクラディアに話しかけた。 「そうですね。今は今の事を考えていきましょう」 クラディアは九重の手を握り返した。 四十話 「La ixvarlafirlex」 朝、小鳥の声とともに強い光が差す。そんな毎日と同じような情景は心情を通して少し違うものに見えた。今日、クラディアもスファガルに集合し計画の手順と偵察状況について会議を行う。しっかりと合意形成を行う。ここまで来たのだから、私は引き下がることは出来ない。 ベットから体を起こし、少し背伸びをする。着替えをすぐに済ませる。よし、と言ってドアをあけて会議室に向った。 会議室にはクラディアと九重、数名の特別警察官が居た。どうやら自己紹介をしている様子であった。 「ああ、リーサ丁度良いところに来たわね。ちょっと厄介なことが起きていて。」 九重は部屋に入ったリーサに渋い顔でそう告げると、中に入ることを指図した。 「彼女等、クラディアとあと四人の特別警察官はどうやら未来から来たそうなの。」 「み、未来?」 いきなり突拍子のない話と来た。クラディアが未来から来た?何故、一体どうして。 「私たちは、未来を変えにここまで着ました。未来は翔太が暴走しようとして連邦は、壊滅状態。そこでサニス条約機構はその状態を改善するために私たちを送りました。しかし。」 クラディアの顔が曇る。他の特別警察官は顔を背けるように動かした。 「私たちは翔太の制圧に失敗しました。現に私たちがタイムリープしたため、歴史は変わり、今私たちはここに居るわけです。」 耳が痛いほどの静寂が、部屋の中を通った。 「それじゃあ、絶対にこの作戦を成功させなくてはなりませんね。」 「ええ、必ず。」 リーサとクラディアが向き合って、その意思を確認すると後ろから一人の少女が出てきた。 「ええっと、自己紹介の件は……。」 「ああ、そうでした。彼女がプリア・ド・ヴェフィサイティエ・プヴェリア、当分はプヴェリアと呼んであげて下さい。」 「あ、はい、ヴェフィサイティエです。よろしくお願いします。」 ぺこりとお辞儀をする。名前の形式から見て、ヴェフィス人であろうだから名前が前に来て、苗字が後ろに来ている。その他にも戦闘で出会ったイェクト・ヴィエーナ、特別警察研究所所属のファフス・ファリーア・カーナ、同所属でデュイン訛りが激しいヴァレス・ゲーンが紹介された。全員特別警察の精鋭とあって、雰囲気に違いがあった。 「それでは、基地潜入計画について話を始めましょう。」 九重がそう言い、机の上に基地の地図を広げたところで、サイレンが部屋の中に響いた。クラディアたちが警戒する。すぐに駆け足の後に部屋のドアが開かれた。 「敵襲です九重さん、連邦兵数十名がスファガルを目指している模様で。」 ユミリアが息を切らしながら言う。 「ど、どういうことよ!クラディア!話が違うじゃない!」 九重はクラディアを睨み付け呻くように言う。クラディアは目が見開かれ、少々焦り気味になっていた。 「い、いえ、私たちは未来からやって来ていますし、連邦軍を指揮する権限はありません。そもそも、私たちのうち誰かがここに来るまでに通信デバイスを今まで開きましたか。」 「じゃあ、誰の仕業だと言うの。」 「……。」 クラディアは答えることが出来なかった。何故ここを察知し、攻撃できるのか。 「ユミリア、奴等の狙いは。」 「不明です。スファガルに向い進軍中のためスファガルと私たちを一気に仕留めるのが目的かと。」 ユミリアは淡々と言った。考えろ、クラディアは少なくとも連絡するはずが無い、とすると他の特別警察官にも連絡用のツールは持たせないはずである。分からない、どのように情報が漏れ、スファガルに何故攻めてきている。 「ともかく、考えるのは後よ。今は掃討が先よ。」 「私も出ます。クラディアさんたちはここに残っていてください。」 なぜ、とクラディアが尋ねる。 「貴方たちの無実を証明するためです。」 そう言って、リーサと九重たちはスファガルを後にした。 暗がり、西フェーユに位置するIssvの名を冠する建物の地下に位置する一室には緊迫した空気が流れていた。 「なぁ、現在の奴等の戦況は?」 「はい、報告では全滅に近いと思われます。」 「……。僕が直接行こう。それで終わらせる。」 側近は、顔を歪めて明らかな不快感を表明する。 「君は僕を何者だと思っているのだね。」 「し、しかし。」 「取引には影響しない方が、君も良いだろう?僕達は彼らと裏では一体なのだし。」 「ふっ!」 山田が最後の一人を倒す。連邦兵は倒れ、坂を転がって行った。九重が周りを見渡してもう敵が居ないことを確認する。 「リーサ、何でこうなったか分かるの?」 「いえ、ですが特別警察ではないと言うことは分かります。連邦兵力自体も出し惜しみをしている感じがありますね。」 九重の怪訝な表情がさらに深くなる。 「つまり、どう言うこと?」 「裏に誰かが居る可能性があります。今まで私たちに接触してきた誰かが。」 土埃が巻き上げられ視界が遮られる。その先に確かに人影が確認できたヴァルファーストのメンバーたちはその人間を警戒した。 「やあ、やあ、ヴァルファーストの皆、こんにちは。」 「!?」 そこに立っていたのは紛れも無く、あの時リーサを助けたリファーリンであった。一体何が起こっているのかさっぱり理解できない。まさか、リファーリンが連邦兵を送ってきた?しかしIssvは連邦とは別働のはず。何故だ、何故目の前に恩人が立っているんだ。 「どうやら、混乱してるようだね。リーサ。ことの始まりは全て君のせいだったのに何も分からないとは。」 ヴァルファーストの前でそんなことを言われても全く分からない。私が悪かった?一体どういうことだろう。 「さてさて、どうしてこうなったか知りたいかい?」 リファーリンは、私たちを嘲笑するかのような笑みを浮かべていた。 「教えてください。リファーリン、貴方が何でここに居るのか。」 「お前らは商売敵になったんだよ。」 「商売……敵…?」 全く理解できない言葉に復唱することしか出来なかった。 「リーサ、君が入ってきて出てゆくまでは良かった。しかし、ヴァルファースト、貴様等が夕張を攻撃し始めた。それが君等の終わりだった。」 「な、何故夕張のことを!?」 九重が驚いた様子でリファーリンを見つめる。 「取引さ、夕張の攻撃を受けない代わりに、夕張の邪魔をしない代わりに、デュインの非合法市との窓口を開けさせていただいた『お友達』でね。デュインの市場でよく売れるものを爆発に巻き込まれた奴等に作らせて、投げると、なんとまぁ金ががっぽり入るのさ。僕があいつ等を助けていたんじゃない。あいつ等は僕にこき使わされていただけさ。」 驚愕の事実をさらさらと言い放つリファーリン、ヴァルファーストの面々は憎悪を顔にこめていた。リーサは静かに、それでもしっかりとした口調でリファーリンに語りかけた。 「Issvに居た面々はリファーリン、あなたとIssvのスタッフによって管理されていました。食事、衣服、寝床、そこまでしてあなたは彼らを助けようとしたのではないのですか。」 「違うよ、リーサ。甘い甘い。」 リーサの最後の望みを載せた語り掛けはさっとリファーリンの一言、二言で打ち砕かれた。信じられなかった。あんなに無邪気で頼れるリーダーであったのに。 「世の中は金、金は何でも得ることが出来る、人の心もな。夕張の計画などどうでもいい、その爆破に巻き込まれた奴なんかもどうでもいい。僕は僕が何でも得られるようになればいいんだ。だから、爆破に巻き込まれた奴を騙して、僕も優しいけどちょっと間が抜けたIssvの西フェーユ支部長を演じていただけなんだよ。リーサ、あとヴァルファーストの諸君、君たちは私のその望みをぶち壊そうとしてくれた。夕張には指一本も触らせない。私の理想のためにね。」 「聞いたことがあるわ。」 小声で青柳が呟く。 「ほう、そこの娘は僕を知っているらしいね。感心感心」 リファーリンが嘲るようにそういうと青柳がリファーリンを睨み付ける、殺気立った目はリーサをも巻き込みかねなかった。 「『裏切り者改革者』、誰かに似ていると思ったらそういうことだったのね。今やっと気づいたわ。」 青柳が早口で言うその通り名らしき名詞に誰も心当たりは無かった。そう、リファーリン以外は。 「そうだねぇ、そう呼ばれていたときもあったっけ。」 「ショレゼスコ、再構造改革時の連邦の大手投資家だったのだけれども連邦の経済的不安定と外資の急激な乗り込みに乗じて投資系統を次々と外資に売りつけ、幾つもの企業を売って金を得た改革者。結果、連邦の経済はさらに不安定を極め、デフレ促進、失業率・自殺者率の上昇なども引きつられて発生した。そう、その原因となった投資者が。」 青柳の手がリファーリンを指す。 「ターフ・リファン・リファーリン、貴方の正体よ。」 冷たい風が吹いた。リーサが少し前に出てリファーリンを見つめる。それも睨み付けるのではなく、優しく包み込むかのように。もう一回だけ、もう一回だけ確認したいことがあった。 「リファーリン、私は最後に一つだけ言うことがあります。私を助けたのは本当に金のためですか。いままであれほどの人々を助けてきたのに何の感情も生まれなかった、そうなんですか。」 リファーリンは少し考えていった。 「全く、何にも、君たちを思ってやったことは無いよ。だから、夕張の軍勢に攻めようとするのならば容赦無く、殺す。皆殺しにする。」 リファーリンの目が赤く輝いているように見えた。私は幻想を見ていたのだ、ターフ・リファン・リファーリンによって形作られた平和な幻想。しかしそれは彼女の敵となった瞬間すぐに崩れ落ちた。 「そうですか……。」 リーサは顔を背け、もう一回顔をリファーリンに据える。 「それでは仕方がないですが、ヴァルファースト含め私たちの敵ですね。」 「ふふっ、そうこなくっちゃ始まらないよ。リーサちゃん。」 リファーリンの手に何かが集積され、光の球となり、それが空に撃ち上がる。ヴァルファーストは警戒をしていたが、リーサは分かっていた。この人間は人を食ったようなタイプであることはもう分かっていた。だから、毅然とした態度でリファーリンと向かい合っていた。 「スカースナ・リーサは私の正義として貴方を断罪します。」 リファーリンが放った光の球が彼女の真上で独特な火花が散るような音を鳴らしながら、蒼い光を拡散させていた。 「良いだろう、こちらも万全の態勢で対応して差し上げる。高貴な富豪としてね。」 四十一話 「la jyrus」 上空に打ち上げられた玉は青白い光を放って辺りを照らしている。 「さぁ、宴の始まりだ」 リファーリンがその光球の一部をリーサに向けて撃ち落とすとともに地面を蹴る。 プラズマによって加速されたリファーリンは、あっという間にリーサの目前まで迫る。 「……最後の晩餐って事ですか」 しかし、リーサは落ち着いて、自分の身体の周りに弾丸を生成し、リファーリンに向けて数発撃ちつつ飛躍して降り注ぐ光球を躱す。 しかしその弾丸は虚空を切り、リファーリンはニタリと笑みを浮かべつつ上空の光球を操作する。 光球は1つの大きな玉から分散して多数の弾となって地面に降り注ぐ。 1つ1つは小さいが、そのスピードはとても目で追えるものではない。1発でも当たれば身動きが取れなくなるであろう。 リーサはそれらを生成した弾丸を駆使しながら感覚で避けつつ、リファーリンに弾を撃ち続ける。 「どうした、リーサ。そんなものを撃ち続けた所で、私には当たらないぞ?」 リーサが放った弾丸をひらひらと躱しながらリファーリンは言う。 しかし、リファーリンの言葉を聞いていないかのようにリーサは弾を撃ち続ける。 「連れないねぇ。せっかくのパーティーなのにさぁ!」 そんなリーサを見ていて業を煮やしたのか、リファーリンが急加速してリーサの目の前まで迫った。 「……っ!」 リーサはその俊敏な動きについていけない。 リファーリンのプラズマを纏った拳がリーサの顔面に直撃する…… 「なぁ、行かなくていいのか?」 イェクトはクラディアに話しかける。 「何がですか?」 「あいつらの所だよ」 クラディアは少し考える仕草をする。 「……やはり、そうした方が良いですか」 「そりゃあそうだろう。僕達が助けられっぱなしという訳にも行かないだろう」 「そうですね。彼等とは同盟関係にあるのですし、お互い協力しましょうか」 「私も行こうかしら?」 カーナがクラディアに問いかける。 しかし、クラディアは首を振り、 「貴方達3人はここで待っていて。人が居なくなった所を狙って連邦の軍勢が来るかもしれません」 と、言った。 「それじゃあ、僕とクラディアが出る。君達はここを頼んだ」 「あいよぉ」 ヴァレスがやる気のないような返事をする。 その声を聞き終えた後、クラディアとイェクトは外へ駆け出した。 リファーリンが突然左の方に吹き飛んだ。 さっきまでリファーリンが立っていた場所には、九重が立っていた。 九重は、衝撃波を発生させてリファーリンを吹き飛ばしたのだ。 「私達を無視しないでくれる?」 そう言った九重は、どこか頼もしさを感じられた。 「これは失礼。眼中に無かったよ」 一方、リファーリンは特に深手を負った様子はなく、直ぐに体勢を立て直した。 「それじゃあ、君達も交えて続きをしようか。楽しい宴になりそうだ!」 リファーリンが高笑いし、再びプラズマを生成する。 「させるか!」 いつの間に居たのか、後ろから山田が走ってきてリファーリンに襲いかかる。 「遅い」 しかし、山田の拳が繰り出された時、既にそこにリファーリンは居なかった。 そして、いつの間にか山田の背後に回っていた。 「うおっ!?」 そのまま回し蹴りを放ち、山田を突き飛ばす。 「君はそこで寝ていたまえ」 山田は地面に蹲っていて、立ち上がれそうにない。 リファーリンは、硬化された山田の身体をものともしない一撃を放ったのだ。 そして、リーサに向け光球を放つ。 亜音速で放たれたその玉を、身体を反らしてギリギリで避ける。 しかし、そんな避け方をしたにも関わらず、リーサの顔に焦りの色は無かった。 「……へぇ。身体が勝手に動いたってところかな?」 「まぁ、そんな感じですね」 といっても、実際に勘で動いた訳ではない。 リーサは身体に電気を纏っていたのだ。 光球がリーサに近づいた時、リーサとその玉は反発し合い、斥力を受けたリーサは自然と身体が反れたのだ。 「逆にこういうことも可能ですが」 そう言ってリーサは、一つの弾丸を生成する。 リーサが制御を外した瞬間、それはリファーリンに向かって光の如き速さで撃ち出された。 「ぐっ!?」 そして、それはリファーリンの左足を射抜いていた。 四十二話 「la stidisno」 「少しはやるようだね。リーサ。容赦はしない、抹殺する。」 リファーリンはリーサだけを目に据えて、手を翳す。 「私たちを!」 「無視するな!」 衝撃波で加速した九重が一瞬でリファーリンの目の前に接近する。時同じくして、WPライフルを装備した青柳が走りこんでいた。 「君たちには、華麗さと言うものが無いねぇ」 九重の一撃を寸で避け、青柳の背後に瞬間で移動する。 「ッ!?」 WPライフル持ち直しリファーリンに向けようとするが背後にはリファーリンが居なかった。 「ふふっ、私の相手にはならないようだな。」 紫色の閃光と共に青柳が吹き飛ばされる。九重は瞬間で衝撃波による加速でリファーリンの背後を取る。 「リーサ!」 リーサに指示を出す。リファーリン-九重-リーサの位置、リーサは手を翳し銃弾を打ち出す。瞬間九重がそれを衝撃波で加速するリファーリンと彼我の距離を急激に詰め、頭付近で爆発した。 「やったか……。」 「いいえ、彼女は。」 ―上です。 その言葉を言う前に九重が回避行動を取る。 「リーサああああああああああああああああ」 「弾丸誘導―Korlixtel Kvasm―」 リーサが弾道を再度形成し、リファーリンに向けてそれを放つ。リファーリンが接近してきていることもあり、瞬間で足を打ち抜く。 バランスを崩すが、リファーリンはプラズマを形成して反動でバランスを取り戻す。肉体を損傷したのにもかかわらず、顔色は一つも変えていない。 「さすが、リーサ、軍隊仕込みの技術はレベルが高いね。」 「いいえ、これらの技術は軍隊に入る以前からありました。」 「リーサ?」 九重がリーサに問う。 「詳しい話が聞きたいところだが、そんな時間は無いッ!」 強力な爆風と共に掲げられた手にプラズマが集結する。瞬間それらは散ってリーサを標的とする。しかし、リーサは動かない。 「リーサ!避けて!」 瞬間乾いた衝撃音と共にリファーリンの頭が爆破四散した。 リーサの前は霧で見えなくなっている。 霧が晴れ、現れたのはクラディアであった。 「間に合いましたね。」 リーサの後方にはスナイパーライフルをたずさえたプリアが居た。 「ちゃんとできましたよ。クラディア先輩。」 クラディアはその言葉に頷いた。 「クラディア……。」 リーサはクラディアに抱きついた。一人でここまでやってきたが、とてもじゃないが酷い重圧を受けていた。 「わ、私……これまで頑張ってきました……誰一人、全てを知らなかった。でも、でも!」 「分かっています。リーサ、よくここまでやってきましたね。お帰りなさい。」 リーサの嗚咽が聞こえてくる。 お帰りなさい。クラディアはもう一回そういった。 「!?」 乾いた破裂音に目を向けるとプリアが体勢を崩し、倒れていた。 「くっ、そ……。」 「感動シーンのところ、すまないけど、僕はそういうのをぶっ壊していくのが大好きなんだよね。」 趣味の悪いやつめ。 九重の小声が戦場に響いた。 四十三話 「La kafi'astan」 「やはりこの程度では倒れてはくれませんか……」 そう言いつつも、クラディアは残念そうな顔をしていなかった。 「そりゃあそうさ。あんなのでくたばってたらやっていけるわけが無いじゃないか」 リファーリンは乱れた髪を整えながら言う。 彼女の表情に変わりは無かった。 不意打ちに対応出来るだけの力はあるようだ。 「しかし連邦のクラディアまでやって来るとは。いやはや油断していたよ」 そう言ったリファーリンは不気味な笑みを浮かべる。 もはや見慣れたその笑みは、ただこの状況を楽しんでいるだけのように見えた。 「いいえ、私だけではありませんよ」 クラディアがいつもの様子で言う。 「もう一人、ここにいます」 クラディアがリーサを指差す。 「ええ、その通りです。私を忘れてもらっては困ります」 リーサはそれに応じるように続ける。 クラディアに今の自分の苦悩を理解してもらえたことで、かなり負担が減ったようだ。 そしてそのお陰か、リーサは今まで以上の力を出せる気がしていた。 「………クックックッ。アーッハッハッハッハッハ!!!!」 リファーリンが突然大声で笑い出す。 リーサとクラディアはそんな彼女の様子に不気味ささえ覚えた。 「いいねいいねェ、もっと私を楽しませろ!そして、お前ら全員私の前に跪くがいい!」 そう言った直後、リファーリンの身体がプラズマにまみれる。 その影響を受けてか、リーサ達に強風が吹きつける。 吹き飛ばされないようバランスを取っていると、リファーリンの姿が目の前から消えた。 しかし、リーサ達にはリファーリンの居場所は分かっている。 上だ。 リファーリンは、一瞬の内に遥か上空まで昇っていた。 そして、リーサ達めがけて急降下する。 「今日はなんて素晴らしい日だ!これでこそ今ここに生きている価値があるものさ!!」 プラズマをリファーリンの両腕に集中させ、二つの剣を生成した。 そして、落下速度を上げながら、更にプラズマを生成する。 「貴方の生きる価値など知りません。好きにすればいい。しかし、これ以上続けると言うのなら……。覚悟はいいですね?リファーリン」 それに抗うようにクラディアが巨大な氷の槍を創りだす。 両者共に、これで決着を付ける気のようだった。 「……それは私の台詞だよクラディアァァァァ!!!」 「貴方にその台詞を言う余地などない!!」 リファーリンが剣を構え、クラディアに向け突き出した。 そしてクラディアはリファーリンに向け槍を突き刺した。 「……リファーリン。私に嘘でも親切にしてくれたことには感謝してます。今まで有難う。そして、さようなら」 二つの槍と剣は、周囲に多大な衝撃波を放ち激突した。 四十四話 「La ansournust」 砂埃が晴れた頃には、目の前の光景が良く見えていた。 リファーリンが倒れている。 「倒した……のか。」 九重が言う。 「い、いや……まだだァ、クラディア、リーサ、ヴァルファースト、お前等を殺して私は金を得る!うっ、がはっ!」 リファーリンは吐血していた。既に身体も見るも無残な状態、クラディアとリーサはあの一瞬でリファーリンの双方のモーニ体を破壊した。回復能力は失われていた。 「リファーリン、もうこれ以上無駄な抵抗は止めろ。」 先程地面に打ち付けられていた山田が、リファーリンの目の前に居る。 「抵……抗…だと?ふざけるな……お前等は殺す、殺してやるからなァ!」 「……。」 九重が無言でリファーリンに手を翳す。 「私たちですらその活動自体は善いものだと錯覚していた。しかし、お前は皆を欺き自分だけのためにIssvという組織、夕張の被害者を利用し続けた。」 リファーリンは悪びれもせずに九重を指差して笑う。 「何が悪いさ、僕はただ、僕のために生きているだけだ。お前等は皆僕が楽しく生きるための哲学的ゾンビに過ぎないんだ。」 「殺す。この捻くれ者!」 九重が手を掲げる。慌てて山田が止めに入る。 「ま、待て、警察に引き渡すのはどうだ。どの道今ここで殺す必要は無い。」 「警察もこれと繋がってて、腐ってるって話じゃないの。警察に引き渡したら文字通り私たちを殺しに国を挙げてくるわ。」 リーサが手を掲げ、注目を集める。 「一旦スファガルに持って帰りましょう。ほっといても回復はしませんから。」 「んで、どうします。」 リーサは円卓を臨んで言う。九重を始めとしたヴァルファーストメンバー、クラディアを筆頭とする特別警察陣が円卓を囲んでいた。 「リファーリンは地下に監禁しています。ちゃんと鎖で縛ってありますし、WP不可能剤を増量したので当分はWP回復しないと思います。死ぬかもしれませんけど。」 クラディアがさらっと言う、あんた特別警察だろ。というツッコミは多分効かないだろう。 「そうではなくて、作戦のことでしょ。てか、あなた、WP不可能化剤なんて持ってたのね。」 「まあ、基本的なアンプルは持ち歩いてます。見ますか?」 「お、興味ありますね。僕見たいです。」 にゅっと山吹が出てくる。話を元に戻そうとリーサは二回手を叩いた。 「基地への侵攻の件です。リファーリンの話が国家権力に回る前に早期決戦を行いたいところです。」 「情報は十分にある。力も、勝算は十分にあるはずよ。」 「では、近日中に攻め込みましょう。以上、解散です。」 リーサはスファガルの廊下、暗がりを歩いていた。 ある場所へ向っていた。 このヴァルファーストに裏切り者が存在している。 その確証を得たからであった。 図書室に入り、当人を見つける。 「あら、リーサさんじゃないですか。お疲れ様です。」 「こんばんは、ヴァレス・フミーヤ・エミーユさん。」 ヴァレスをリーサは優しくにらみつけていた。 「どうしたんですー?寝ないと体に障りますよ。まあ、私が言うことじゃないけど。」 ふふっと少し笑ってノートパソコンの画面に目を向け、作業する。 「このヴァルファーストには裏切り者が居ます。」 ヴァレスは手を止めずに作業を続けている。 「それが、私と?」 リーサは頷き、瞬きする。 「リファーリンにこのスファガルの位置情報を流しましたね。」 図書室の中に静寂が流れた。ヴァレスの打鍵音だけが空しく鳴っている。 「リーサさん、一つだけ確認しておきます。あなたは何のために今まで生きているんです?」 リーサはヴァレスが言っていることが良く分からなかった。聞いた事に答えろと言おうとしたところ、ヴァレスがまた口を開いた。 「貴方のこと、調べさせてもらいましたよ。ユエスレオネ・アルシェユ出身15歳という異例の若さでユエスレオネ連邦陸軍に入隊。対テロ作戦に投げ込まれて、とんとん拍子で特別工作隊の隊長に任命された。エリートさん。何のために今まで生きてきたんですか?」 「その前に質問に答えてください。」 苦し紛れだった。ヴァレス自身がどんな人生を歩んできたかそんなことは全然知らない。しかし、エリートだという言葉、概念に厭味を持っていることは分かった。 「何のことかさっぱりですね。私が位置情報を漏らして何の益があるんですか。」 「回線に流れるパケットをキャプチャして解析しました。よくもまあ、専用回線で流さなかったものです。」 「…………。」 ヴァレスは下を向いたまま泣きそうな表情になる。 リーサはヴァレスを睨み付ける。 「あなたがリファーリンの差し金であることは分かっています。でも最初からそうではなかったはずです。一体何を対価にリファーリンに位置情報を流したんですか。」 また静寂が訪れた。 「……師匠。」 「え?」 ヴァレスは泣きそうな顔を上げてリーサに懇願するように言う。 「師匠であるアレス・リェユがIssvの地下に囚われているんだ!協力しなければ殺すといわれて、協力する他無かったんだ……。」 ヴァレスは嗚咽しながらリファーリンとの接触から協力について話してくれた。 事の発端はIssvのロッジにヴァルファーストが来てからだった。あれが起こった後、リーサ自身Issvのロッジには顔を出してないのだが、リファーリンはその頃からヴァルファーストが夕張を狙うはずだと見当をつけていたらしい。リファーリンはたまたま外出してきたヴァレスに接近し、親しい友人のふりをしながら使える情報を引き出していたらしい。この基地侵攻作戦も筒抜けであった。本性を表したリファーリンはIssvに丁度居たヴァレスの師匠であるアレス・リェユを地下に閉じ込め、それの解放と等価にスファガルとヴァルファーストに関する情報を漁らせた。ばらせば殺すと脅されていたらしい。 「もうリファーリンは倒しました。恐れる必要はありません。」 「まだ、師匠がIssvに残っているんです!地下だから何されるか分からないっすよ……。」 大丈夫、とリーサがヴァレスの頭を撫でる。 「ばれていないと相手側に錯覚させればいいのでしょう?私一人で、言って取り戻してきますよ。」 「そんな無茶な。」 ヴァレスがリーサを掴む。 「あそこにはまだIssvのリファーリン直下の特殊部隊が残っているんですよ。一人では無理ですよ!」 リーサはヴァレスの手を解いて、図書室のドアに手を掛ける。 「リーサさん!」 「私は、翔太と同じように人を無邪気に助ける存在でありたいんです。そう、そう在らせてください。」 そういって、リーサは部屋を出て行った。 四十五話 「La lattarlfi'e」 「エミーユがリファーリンに情報を流したぁ?」 九重は驚きに満ちた表情で言う。 部屋には九重の他に、青柳、山吹がいた。 二人共リーサの話を聞いて目を丸くしている。 「ええ。しかし、それには色々と事情がありまして……」 リーサは、先程のエミーユとのやりとりを九重達に話した。 「……なるほどねぇ」 九重は神妙な面持ちになる。 「ところで、それは私たちに話す必要は有ったのですか?」 隣にいた青柳がリーサに問いかける。 「念の為です。エミーユが嘘を付いている可能性もありますので」 「それもそうですね。しかし、それだとリーサさん1人では危ないのでは?」 「私は大丈夫です。寧ろここで全員で行くほうがかえって危険です」 「僕がサポートしようか?」 山吹が手を上げる。 「万が一もあるだろう?"念の為"にね」 「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」 リーサは微笑んで承諾した。 「山吹、貴方のWPが届く範囲はどのくらいですか?」 「大体、100mといった所かな。遮蔽物があっても位置が把握できれば問題ないよ」 「なるほど、ではIssvの外で待機していてください。位置情報はユミリアさんを経由して流してもらいますので」 『リーサさんに何かあったらこちらから連絡を入れます』 「了解した」 「では、行ってきます」 「僕の役目が無いことを祈るよ」 山吹の冗談めかした声を合図に、リーサはIssvの扉を開けた。 中にいる人達から奇妙な目で見られたが、特に何もしてこないようだ。 出来るだけ音を立てないよう、慎重に進んでいく。 階段の前まで来た所で深呼吸をする。 階段の段差は少し錆ついているようだった。 年季が入っているようで、段差を踏むと軋む音がする。 「ここから降りれば良いのですか?」 『そうです。そのまま地下まで慎重に進んで下さい』 「了解」 リーサは注意深く段差を降りていく。 時折、音を立ててしまったが、誰かがそれに気づいた様子はない。 上から銃で撃たれるかとも思ったが、誰も追ってこない。 下に待ち伏せも居ないようだ。 警戒心を解かずに、一番下の段を下りる。地下に侵入したのだ。 すぐさま辺りを確認するが、誰もいない。 そこは薄暗い空間で、所々で光っている電球も、点滅をしているものがちらほら見える。 床や壁を見ても、とても手入れされているようには見えない。 リーサは懐中電灯を灯しながら、左の方に進んでいった。 そこは1本の廊下のようになっていて、左右に扉があるが中に人がいる気配はない。 懐中電灯で先の方を照らしてみても行き止まりは見えない。どうやらそれなりの長さがあるようだ。 もしかしたらリェユが居るかもしれないので、扉の向こうを一つ一つ確認していく。 だが、案の定中には誰もいない。 そして、誰もリーサの侵入を止めようとしない。 もしかしてここには誰もいないんじゃないか、と思った矢先、とうとう廊下の行き止まりまで来てしまった。 そのまま元来た道を引き返していく。 ついでにもう一度部屋の中を一つ一つ確認してみたが、やはり人は居ないようだった。 さっき降りてきた階段まで戻ってきた。 今度は先ほどと逆方向に進んでいく。 念の為、ユミリアに報告を入れておこう。 「こちらリーサ。地下の階段から左側を確認しましたが、人の気配はありませんでした」 『了…。状況の…告……が…うござ……す』 どうやら地下に居るせいで通信が途切れ途切れになっているようだ。 このまま不安定なままだと危険なので、リーサは手短に右側を調べる事にした。 左側と同じく、こちら側も1本の長い廊下の左右に扉があるだけだ。 例のごとく扉の中を確認しつつ奥へ進んでいく。 廊下は左側に比べて短いようで、直ぐに行き止まりまでついてしまった。 やはり人が居る様子はない。 エミーユは私に嘘をついたのだろうか。 そう思いつつ、リーサは階段までの道を引き返そうとした。 「誰かな?君は」 リーサが戻ろうとした瞬間、後ろから声が聞こえた。 リーサは自身の背筋が凍っていくのが分かる。 この人の気配すら感じなかったのだ。かなりの実力者であることは間違いないだろう。 リーサは恐る恐る振り返った。 「……貴方は、アレス・リェユ……」 そこには、エミーユの師匠、リェユが立っていた。 四十六話 「La hyrcorfilen」 「誰かな?君は」 リーサが戻ろうとした瞬間、後ろから声が聞こえた。 リーサは恐る恐る振り返った。 「……貴方は、アレス・リェユ……」 そう、エミーユの師匠アレス・リェユは何の変った様子も無く立っていた。 「もう一度聞くよ、君は誰だ。」 「知っているでしょう、ここIssvのロッジで何気なく会話をして、人質にされたあなたを解放しようとヴァルファーストに連れられたスカースナ・リーサですよ。」 リェユははっとした表情でリーサを見つめていた。 「そうか、君を倒せばエミーユは無事という訳か。」 「は?」 リェユが言ったことが理解できなかった。そもそもリェユ自身が何故監禁されておらず普通に出てきているのか。それが理解できなかった。 「リファーリンは私の弟子であるエミーユを間接的な人質としてヴァルファーストの構成員を殺すことを要求した。」 「しかし、あなたはエミーユを守ってくれると考えてヴァルファーストに紹介したのではないのですか。」 リェユはリーサを睨み付ける。 「そう、あの娘はあのような性格だから守ってくれるような存在が必要だった。それがヴァルファーストだった。でも、リファーリン自身の力は優にヴァルファーストを超えていた。ヴァルファーストが邪魔になったのか、彼女のお遊びなのかは知らないが、君たちの命とエミーユは交換されたのさ。」 「そうですか、エミーユさんも同じですよ。」 リェユは一瞬きょとんとするが、再度顔をこわばらせる。 「簡単な嘘を付くんだね。」 「嘘ではありません、エミーユさんはリファーリンにあなたの命とヴァルファーストの情報を提供することを交換していました。」 「証拠は、証拠なんかあるわけが」 リーサは胸ポケットからボイスレコーダーを取り出して再生ボタンを押す。 『師匠であるアレス・リェユがIssvの地下に囚われているんだ!協力しなければ殺すといわれて、協力する他無かったんだ! 』 他でもないエミーユの声。 「子弟のエミーユさんで間違いないですね。」 「は……い、一体、どういうことだ……。何が起こっているんだ!?」 リェユは錯乱状態であった。 「落ち着いてください、二人ともリファーリンに利用されていただけです。今は協力して……」 「そうはさせないがね。」 かつかつと暗い廊下を歩く音。リーサの真後ろには、見覚えのあるシルエットが居た。 「――シフール=ハフリスンターリブ」 モノクルを取って廊下の壁に投げつける。ガラスが割れ、モノクルは粉々になった。 「スカースナ・リーサ、また会うときは無の世界とは言ったが、その願いは叶いそうになさそうだ。」 「やる気ならお相手しましょう。」 リーサは手をシフールに伸べた。 四十七話 「La makarelm」 シフールの方へ手を向けつつも、彼に質問をする。 「貴方はやはり、アレス、ファ―」 「それ以上その名を口にするな!」 だが、彼はそれを聞くのを拒絶するように、リーサの言葉を遮る。 さらに、いつの間にか生成された漆黒の珠から、何発もの稲妻がリーサに走る。 (これくらいなら……!) が、リーサは稲妻の隙間を縫うように抜け、シフールの眼前に迫る。 そのまま突き出した右手から銃弾を生成し、発射する。 しかし、シフールも、身体を仰け反らせつつ展開された球からの稲妻で弾丸を吹き飛ばした。 そのままバックステップをしてリーサから距離をとる。 リーサはシフールに向け銃弾を撃ち続けるが、全て跳ね返されてしまった。 「無駄だ。いくら同じことをしたって俺には効かん」 シフールは稲妻を走らせながら、余裕のある態度で言う。 以前は不意を打てた事で傷を負わせる事が出来たが、今回は別だ。こちらの手の内が分かっている以上は同じことを続けても意味が無い。 「それくらい分かってますよ」 と言いつつ、リーサは新たな弾の生成に入る。 その一瞬の隙を付いて、今度はシフールが急速に距離を詰めてくる。 リーサはシフールに合わせて後退するが、シフールのスピードには抗えず、目の前数メートルの所まで接近される。 「この距離からは避けられないぞ!」 そしてシフールの両サイドから現れた稲妻がリーサを射ようとした。 「……!」 その直後、シフールは急に身体を左に傾ける。 が、シフールは背中に衝撃を受け、リーサの視界の右側へと吹き飛ぶ。 シフールは壁に激突した。しかし、受け身はとっていたようで、ダメージはほとんど負っていない。 「成程……ただ弾を打つだけじゃないな、お前……」 シフールが嫌味ったらしく呟いてリーサを睨む。 リーサは稲妻を撃たれる直前、手からではなく、額から弾を撃った。 それまで手から発射されていた為、シフールはこの攻撃に対応するのが少し遅れた。 咄嗟に身体を左に逸らしたが、今度は何もない空中、シフールの背後から弾丸が発射され、シフールを吹き飛ばしたのだ。 「余裕がある人ほど倒しやすい。その余裕が命取りになる」 「ふん、説教のつもりか。お前と話すことなどもう無い」 稲妻がリーサの眼前に迫る。 すかさずそれを回避するために横に移動する。 が、稲妻は直進して来ること無く少し曲がり、そして今度はズレたリーサに向けて軌道修正がされる。 (当たる……!) リーサは対応することが出来ずに電撃を直に受けてしまう。 そのまま後ろに弾き飛ばされ、床に身体を叩きつけられる。 リーサが起き上がろうとしたのも束の間、次々に稲妻が降り注ぎ、リーサはそれらを避けることに集中せざるを得なくなった。 軌道を見切りながら姿勢を戻したが、リーサは立ち上がる時に足に違和感を覚えた。 (左足が……動かない……) リーサの足がシフールが設置していたトラップに嵌ってしまったのだ。 左足が痺れ、立つのが辛くなってゆく。足に微弱な電撃を与えるものだったようだ。 「おいおい、大丈夫か?まさかさっきのでやられた訳じゃないだろう?」 当のシフールはリーサの様子を見て笑みをこぼす。 「まさか。その程度でやられるとでも?」 リーサは強く返したが、足の痺れは増す一方だ。 見動きが取れず、徐々に右足に重心を預けてしまい、シフールに対して劣勢となってしまった。 (一歩でも動けば倒れて立ち上がれなくなる……動かずにシフールを倒すにはどうする……?) リーサはシフールに警戒しつつ、頭を回転させて、この状況を打破する為の手段を探しだした。 四十八話 「La arfeser」 状況は依然皮肉なる物であった。堂々と入り込んだ私は、その警備のザルさに心を許し警戒を怠っていたためとも一瞬考えた。事の顛末はこうである。 ヴァルファーストの司書(ただの司書ではない、ウィザードライブラリアンとでもいうべきか。)ヴァレスはヴァルファーストの情報を裏からリファーリンに流していた。リファーリンは夕張と繋がっており、夕張の敵となったリファーリンは我々と対峙することになったが苦戦の後に倒すことになったが、我々はリファーリンがスファガルを察知した理由を知る必要があった。 リファーリンがスファガルの位置を特定してしまったのは回線のパケットキャプチャを行っていれば、直ぐ分かった。流していた情報は非暗号化されたこの地帯の情報、出先はそもそもこのスファガルのネットワーク機器が固定IPで全て設定されていたために簡単にヴァレスのものだと察知できた。何故こんなに簡単に分かるような設定にしているのか彼女からは一言も聞いていない。ただ、こういうことかもしれない。 『誰かに気付いて欲しかった。助けて欲しかった。』 そう。ヴァレスが情報を流したのはヴァレスの師匠であるアレス・リェユ(偶然にも私があのIssvのロッジで同席した)という人間であった。ヴァレスの心配を取り払い、無言の要求を受け入れることにヴァルファーストは皆で襲撃しリェユを取り戻すといったが、依然彼らには静かに乗り込むということは向きはしないだろうと私は踏んでいたので連れて乗り込むことはなかった。そして、これは自分に対するけじめでもあった。Issvの、リファーリンの、そしてヴァレスとリェユという全く知る由も無かった関係に対して与えてしまった影響に対する責任を自分なりに取る予定であった。だが、潜んだIssvの内部には人影も無く、ただ騙されていたリェユだけが居た。彼もまた私を倒すことによって捕らえられた(とされている)ヴァレスを取り戻す。そうリファーリンの情報を受けていた。だが、もうリファーリンは居ない。リェユと和解することも簡単にできた。だがしかし、背中には夕張の手下であるアレス・ファルカス、否シフール=ハフリスンターリブが居た。 足の痺れはもう足の感覚を失わせ、リーサは完全に地べたにぺたんと座っていた。ただこれだけみれば可憐で可愛らしい少女なのだろうが、状況はそう可愛いものではない。 「どうした、トラップ程度で倒れていては相手にならんぞ。」 シフールが薄い笑みを浮かべる。余裕の表情に片手は黒球を携えている。状況は非常に芳しくない。どうにか動かずに奴を倒す……いや、この際字段階の攻撃を防げれば時間稼ぎにはなる。どの道、助けは来ない。自分のこの状況でも下手に弾を打てば隙を与えかねない。 黒球は考えている時間を刻々と刻むかのようにその大きさと禍々しさを増していた。数メートル先のシフールを見上げる。気持ちの良い緊張感、木のきしむ音がした。 木が、軋む? 「何を笑っている。無力を前に気が狂ったか?」 「いいえ?」 リーサが手をシフールの頭上に翳す。シフールがその手の向う方向を見上げる。ハッとした表情でリーサへと電撃を向わせようとするが、体勢が整わずに手にある黒球が不安定にその色を薄めた。 「木が軋む音が面白くてね。」 集中したレーザー線が細かい線を描く、天井の木を縫って吸い込まれたかのように消えていった瞬間、天井部の組み木が綺麗に落下してきた。 「ぐっ、貴様ァ!」 叫び声は落下してきた木の衝撃音に打ち消された。シフールは目の前には居なかった。 行きましょう――と声をかけてリェユに手を伸べる。リェユはしかし手を渡さずにリーサの背後を呆然と見ていた。リーサは背後に振り向きその正体を確認した。 四十九話 「la cuturl」 「………?」 リェユが何を見ているのか、警戒しながら振り返ったリーサだが。 誰もいない。 だが、さっきのリェユの様子から見て、そこに人が居たのは確かだ。 リーサは振り返ってリェユを誰も居なかったぞという顔で見る。 だが、リェユはそれでも目を見開いたまま硬直している。 「あの……?」 リーサは気になってリェユに声をかける。 すると、リェユは驚きのあまり上手く喋ることが出来ないのか、口を震えさせながらも、 「確かに……今君の背後に人が居たんだが……君が後ろを向いた瞬間、消えたんだ」 「え?」 「嘘じゃない!確かに私は見た。どこか見たことがあるような服を着ていて、突然現れて、そして消えたんだ」 突然……人が消えた? 何を言っているんだ、とも思ったが、リェユのこの慌てようから見てもあながち嘘では無さそうだ。 だが、その人物が本当にいたとして、わざわざ消える理由などあったのか? それに、嘘では無さそうとは言え、嘘ではないと言い切れる訳でもない。 リェユはまだリファーリンがやられたという事を信じていない可能性だってある。 この発言がブラフである可能性を否定出来ない。 とはいえ、気になるものは気になるので…… リーサは一応牽制の意味で左の手のひらをリェユに向けつつ、首を少し捻って背後を確認する。 ……やはり誰もいない。 「……誰も居ませんよ?」 リーサが後ろを向いたままリェユにそう答えた時、 「……俺の事か?」 という声がリーサの視線の先から聞こえた。 「な……!?」 そして、その声の主――声質からして男だろう――が何の前触れも無く、リーサの正面数メートル先に現れた。 一切の音を立てること無く、気配も感じさせず。 リーサは知覚することすらできなかった。 言葉の通り、突然出現したのだ。 言うならば、「気づいたらそこにいた」というような感じだった。 「お前がアレス・リェユか。リファーリンに利用されていたとは、弟子のためとはいえ愚かな奴だ」 その男は、リェユの方を向いて独り言の用に何かつぶやいている。 彼は頭にフードを被っていて顔は確認できないが、茶髪に近いようだ。 上半身を黒いコートで隠し、ズボンも濃い灰色で、とても地味だ。 他人に容姿を特定されないようにするためであろう。 だが、リーサには心当たりが一つある。 以前にも、似たような風貌でヴァルファーストを襲った男を。 「夕張の仲間か……!」 思わずリーサは口に出してしまった。 コートの男はリーサの言葉にピクッと身体を震わせ、リーサを睨めつける。 そして、リーサの風貌を確認するように視線を巡らす。 リーサもつい対抗して男の顔をガン見してしまう。一応右手でWPを発動する準備をしつつ。 その視線を気にも止めずにリーサを睨み続けていたが、もういいと判断したのか、視線をリーサの顔に持っていく。 「スカースナ・リーサだな」 そして目が合うと同時にリーサの本名を特定してきた。 突然名前を言われて内心ドキッとしたが、「ハイその通りです」と答える訳にもいかないので、そのまま黙ってスルー。 「沈黙を通すなら肯定とみなす。リーサ、俺はお前の言うとおり夕張の一味だ。だが、危害を加えるつもりはない」 男が二人を見据えて言ったが、リーサは警戒を解かない。寧ろ強めた。 自分から夕張の一味だと認めたということは、それが周囲にバレても問題ないということであるのだ。 すなわち、バレたとしても対処できる。それだけの実力があるというこなのだから。こいつが馬鹿なだけかもしれないけど。 「……ならお前は何をしに来たんだ」 リーサが思っていたことはリェユも同じらしく、男に聞き返している。 「……お前達は今ヴァレス・フミーヤ・エミーユに関する事で争っていた。そうだろう?」 「………」 どうやら、この男は事の顛末を知っているらしい。 ヴァレスの名前が出てきた辺り、おおよそ全て知っているのだろう。 「そして、和解に向かっていた所で奴がお前達を妨害したといったところか。しかし、リーサの機転の利かせ方は悪くなかった」 「それはどうも」 男は、上から目線で言葉を繋げていく。 多少イラッと来たが、ここは堪える。 しかし、彼は今さっきの状況を詳しく知っているようだ。あの時既に居たのだろうか。 「奴も暫くは出てこないだろう。ところで、リーサ、お前が穴を開けたせいで上の階では大騒ぎだ。今頃、多くの職員がこっちに駆けつけている頃だろう。そろそろここに付くんじゃないか?」 ……考えてなかった。 咄嗟の判断とはいえ、自ら敵をおびき寄せる形となってしまった。 考えてみれば、ここは敵のアジトの最深部。突入したのは私一人、四面楚歌だ。 「君一人ならどうにかなるかもしれないが、生憎ここにはリェユがいる。見つかれば即殺されるだろう。そうなると脱出は困難じゃないかな?リェユを守りつつここを抜け出すのは」 「………」 リーサは何も言えない。実際そのとおりだからだ。 リーサが悔しそうに下を向くと、 「そこで提案がある。今から俺がお前達をエミーユの所に連れて行く」 コート男が驚愕の発言をしてきた。 「「は!?」」 あまりの言葉に二人とも思わず素っ頓狂な声を出してしまった。 この男は自分がなに言ってるのか分かっているのか。ついさっき自分で脱出は困難だって言ったばっかりじゃないか。 「そう驚くな。今回は俺からのサービスだ。但し、助けられたことを口外するな。これで貸し借りナシだ」 リーサ達が驚いている間にも、コート男はリーサ達を無視して事を進めている。 「ヴァレスの所までの距離は大体こんなものか……よし、準備が出来た。お前達、目を瞑れ」 なにやらぶつぶつ呟いてから、コート男が二人に指示を出してくる。 「…ちょ、ちょっと待って下さい!私はまだ貴方を信用していません!」 「まだそんな事を言うか。いいから早く。捕まるぞ」 「だから、私は……」 リーサがコート男に抗議しようとしたその時。 『ここだ!ここに跡があるぞ!』 と、上から職員のものであろう声が聞こえてきた。 もう間に合わない。そう思ったリーサは、コート男の方に振り返り、 「分かりました、一旦信用しましょう。嘘だったら殺しますよ?」 と言った。 「私も乗ろう。どのみち、上から逃げることは無理だろうしな」 リェユも決意を露わにした。 「良い返事だ。じゃあ、目を瞑れ。身体が後ろに押し出されるような、引っ張られるような感覚が数秒するが、それが収まったら目を開けろ。以上だ。行くぞ!」 コート男が最後の台詞を強く言ったため、リーサ達はその勢いに飲まれてそのまま目を瞑った。 ほんの一瞬、身体が宙に浮いた様な感覚。 そして直ぐ、強烈な勢いで後ろに引っ張られる感覚がした。 まるで、何十人もの人達がリーサの身体を綱引きで引っ張っているかのように。 その強力な力に耐えること数秒。 今度は足が地面に付いたような感覚がした。 ので、目を開けると…… 見覚えがある部屋がそこにあった。 壁際に本棚があり、本がびっしりと並んでいる。図書室だ。 そしてここは、いつもヴァレスがいる部屋だ。 さらに驚くことに、目の前には、突然の目の前に現れたリーサ達にびっくりして目を見開き、そのまま後ろに尻もちを付き、抱えていた本を辺りに散らばらせて愕然としている、ヴァレスの姿があった。 五十話 「la viroterss」 「し、師匠……」 ヴァレスは目を見開いて二人を見る。 「エミーユ……」 「師匠!!」 ヴァレスがリェユに飛びつくようにハグする。リェユもそれに答えて強く抱きしめた。二人は再会を果たした。ついにこれで破壊工作をなかからするものは居なくなったであろうし、リーサ自身彼らの境遇に悲しみを感じていた。解決してすっきりした、という感じであった。 これらの惨事を起こして、連邦を引き回し、関わる人間の人生をめちゃくちゃにした大役者は誰だ。ヴァルファーストという組織の発足とリーサ自身の記憶喪失からここまでの道のりをたどってきたがそれは偶然ではなかったはずだ。まるでその道が綺麗に決まっていたかのようにアレフィス様は私にこの道を見せ付けた。ならば、正義が神にも認められるのであれば、 『夕張』、お前を倒すしかない。 ヴァレスとリェユが感動の再開をしているところにどかどかと入ってきたのはヴァルファーストのいつもの面子であった。本当にこの人たちは静かではない、まあそれが魅力では在るのだけど。 「リーサ無事帰ってきたのね……」 「僕の役目は無かったようだね!」 「お前は引っ込んでろ山吹、今日は再会祝いにパーティーだ!」 「ええ、少しは祝ってもいいかしら。」 「コーヒーいります?」 ユミリアはいつも通りカフェイン悪魔だし、ヴァルファーストに居るのが楽しいなと思うのはこういうときだった。 「そうとも言ってられないようですよ。」 楽しい時間はまだだとばかり言いたげにクラディアが口を挟む。ぱちんと指を鳴らすと奥からゲーンが出てくる。 「夕張ぃはぁどうやらぁ、近くのぉ郵便局ぅデータセンターぁを襲撃するぅ計画をぉしているようだぁ」 癖の在る声はデュイン方言の訛りだ。それはそうと郵便局のデータセンターを襲撃してどうなるというのだ。 「夕張派の兵士らしき人間がデータセンターにすでに偵察に入っています。センターには電信やメールなどの電子通信を仲介する設備が大量にあります。どうやらこれらを破壊もしくは監視するために侵入する可能性があります。連邦の安全保障上の問題も兼ねますがなんと言っても全国十億人の電子通信を把握されるのは私たちのような隠密な行動者にとって問題です。早急に降りかかる火の粉は払うべきです。またデータセンターには夕張関係の重要な情報が残されている可能性もあります。破壊される前に……」 「あー、とにかくそのデータセンターを?守れば良いんだろ?」 細かい長話が嫌いそうなあいつ――山田――が言う。まあ、まとめとしては間違っては無いだろう。重要な場所であるデータセンターを守る、そして検索して夕張の情報を探り出す。 「まあ戦闘要員としては私たちが行けば良いとして、データを引き出すのは誰がやるのよ。」 九重が言う。ヴァレスは多分追加報酬が無ければ来まい。 「私が行きます。師匠、一緒に行きましょう。」 「ああ。」 ヴァレスは能動的に手をあげた。予想に反した行動にヴァルファーストメンバーは目を丸くする。 「別に師匠を助けてもらったからじゃないです。私の意志でヴァルファーストの作戦に参加するだけです。八ヶ崎さんとやらもそうやって正義を貫いたなら私もそうするだけですよ。」 ヴァレスはリーサに向ってウィンクした。畜生、ヴァレスを説得したときの話を覚えていたとは。しかし、ヴァレスのケートニアーとしての能力というのは訊いたことが無かった。 「ヴァレスさん、そういえばヴァレスさんのウェールフープって何が出来るんですか。」 「それはね……」 ヴァレスは誇らしそうに手を掲げた。 五十一話 「la viestiest」 その手に、光が集まってゆく。 ヴァレスの腕を包み込むようにしながら、ゆるやかに光の珠を作り出す。 どこかで見たことがあるどころではないこの光景には、リーサも少し躊躇ってしまう。 「貴方も、プラズマの能力者でしたか………」 リーサが若干の呆れ顔でヴァレスを見る。が、 「………」 本人は黙っている。 これは肯定と見なしていいのだろうかと、リーサがヴァレスを見つめていると、 光の珠が緩やかに消えていった。 残ったのは掲げられたヴァレスの腕だけ。先程までそこにあった光は消え失せている。 もう見せる必要がないと思って能力を解いたのだろう。 と、考えていたリーサだったが…… 今度は、ヴァレスが天に掲げた拳を握り締めた。 「………っ!」 ヴァレスが腕に力を込める。 そして、リーサの方を一瞥した。 「出来れば、隠したかったんですけど。まあリーサさんには色々とお世話になっているので。他言無用で」 「……?ええ、まぁ…」 リーサにはヴァレスが言っていることがよく分からなかったが、一応頷いておく。 ヴァレスはそれを見て納得したようで、更に腕に力を込め始めた。 空気がピリピリとし始める。 リーサはそんな空気を感じ取ってか、身体が緊張し始めた。 自分自身でもよく分からない謎の緊張感に覆われていたリーサだったが、それが一種の誤解であることに気付くまで時間がかからなかった。 これは、ピリピリした空気になったんじゃない。 本当に空気がピリピリとしているんだ。 つまり、空気が振動している。 最初は微小だったその振動は次第に大きくなっていき、リーサの肌で感じ取れるまでになっていた。 そして、その震源は何処かとリーサが探るまでもなく……ヴァレスの握られた拳には衝撃波が発生していた。 ヴァレスは腕を引き、勢い良く前に突き出す。 それにともなって、ヴァレスの腕がまるで銃声のような、しかしそれの何倍も大きな音を立てる。 そしてその腕の前方にあったものが、凄まじい勢いで吹き飛ばされ、前方の壁や天井などに次々と激突していく。 「ちょ、ちょっとやり過ぎよ!」 九重が慌てて止めに入ったが、その辺はヴァレスにも分かっていたようで、直ぐさまWPを使うのを辞めた。 「あー、すいません。未だに加減がちょっと分かんなくて……」 腕を下ろしたヴァレスは九重達に頭を掻きながら謝罪した。 リーサは一連の光景を見て、既視感を覚えた。 しかしそれは同じような力を使っていた人物が目の前に居るからだと、直ぐに思い至る。 つまり、ヴァレスは九重と似た力を使える、ということだろう。 リーサが納得しかけていると、ヴァレスは近くにあった本を手に取った。 それが何なのかはよくわからないが、よく読み込まれているようだ。 ヴァレスはそれを持ったまま、さっき物が散乱した壁の方に歩いて行く。 目の前についた所で、ヴァレスはふうっと息を吐いた。 何をするつもりなのかと疑問に思いながら見ているリーサだったが、ヴァレスの行動に目を丸くした。 ヴァレスは本を持った方の腕を振りかぶった。 それを見ていた九重は「はぁ……」と息をついていた。 しかし、どう見てもヴァレスは壁に向かって本をぶつけようとしているようにしか見えない。 リーサは不思議そうに眺めていると、ヴァレスは振りかぶった腕を壁に向かって振るった。 車にぶつけられた様な激しい音がしたので、リーサは一瞬目を瞑るが……即座に目を開き、そして目の前の光景に唖然とした。 壁が抉れている。 コンクリート……いやそれ以上の強度があるはずだ。 それなのに、大体ヴァレスの身長と同じくらいの長さで、真横に爪で引っ掻いたような痕が残っている。 そして、ヴァレスは何事もなかったかのようにこちらに向き直り、さっき持っていた本を見せてくる。 確かに、壁にぶつけられたその本が……傷どころか、しわ一つ増えていない。 リーサには、何が起きたのか分からなかった。 それを察したらしく、九重がリーサの方を向いて答える。 「硬化よ。本をあの壁以上に固くして、壁をぶん殴ったのよ。あーもう、どーすんのよこれ……」 九重がやけくそ気味に教えてくれたが、 「大丈夫です、後で直しますんで」 と、ヴァレスは特に気にしていない様子。 もしかして、何かとんでもないことをしているんじゃないかと、リーサは思い始めた。 そのまま唖然と突っ立っているリーサに、ヴァレスが近寄り、 「お怪我はありませんか?」 と聞いてきた。 ハッと我に返ったリーサが自分の身体をチェックするが、特に傷は見当たらない。 「い、いえ、別に、ないかなと……」 無意識に声が震えた。 今までの光景が非現実的過ぎたせいだろうか。いつも非現実的ではあるが。 「そーですか……じゃー仕方ないですねぇ」 そう言って、ヴァレスは自分の足に指を食い込ませた。 「……!?何してるんですか!?」 たまらず声を掛けた。 ヴァレスが指を抜くと、直ぐに血が大量に出てきた。 自分から足を指で刺すなど正気の沙汰ではない。 「おー痛てー。まあそんな驚かないでくださいよー」 「いや驚くなって……」 無理でしょう。 そう言おうとした所で、ヴァレスがその患部に手をかざしていることに気付く。 何をしようとしているのかは、何となく分かる。 治そうとしているんだろう。 そうリーサが思った通り、足の傷が徐々に小さくなっていき、最後には前と同じにまで傷が治った。 これも知っている。山吹の力だ。 さっきの硬化だって、山田の力と似ている。 ということは…… 「たぶん今リーサさんが考えていることは当たっています」 そう言ってヴァレスはWP拳銃を取り出した。 それを右手で握るように持ったが、直ぐに拳銃がバラバラになり、小さな部品の集まりと化してしまった。 「………」 リーサの感覚が麻痺してきたのか、ヴァレスがあまり大胆なことはしなかったせいなのかは分からないが、言いたいことは伝わった。 つまり、青柳と似ている力も使える。ということだ。 「ということは……ヴァルファーストの皆の力を使えるということですか……?」 「ええ、まあそうなりますね」 そんな馬鹿な、とリーサは思う。 リーサが出会ってきた人達は皆、一つの力しか使えなかったからだ。 けれど、今ヴァレスはヴァルファースト達の力を使ってみせた。 リーサが驚いているその合間に、いつの間にかヴァレスが、さっき抉った壁に向け、手をかざしている。 (……まさか!) リーサがそう思うのと同時に、ヴァレスの手から高速で弾が発射された。 更に壁の傷が深くなるのを見て、九重がまた溜息をついた。 ヴァレスは、リーサの力まで使える。 「まあこんなものでいいですか?リーサさん」 その事実がわかった時、ヴァレスがとても危険な人物に思えて、ついヴァレスから距離をとってしまった。 「ちょ、そんな避けることないでしょう」 「えっ!?あ、その、すいません……」 ヴァレスが少し寂しそうにしているのを見て、リーサは直ぐに謝った。 「………。そろそろ私の力の事を説明しますか」 若干元気を無くしたような声でヴァレスがリーサに話す。 「私のWPは他人のWPをコピーする力。他人のWPの発動の瞬間を見たりその方法を知れば、それをそっくりそのまま再現できる。まあ性能はオリジナルより劣りますがね」 五十二話 「la cifurl」 作戦は開始された。 既にヴァレスとリェユはデータセンター内の保守を装って内部に侵入している。あとは、夕張の回し者が来ないかどうか各自ユミリアが回した車の中から監視していた。 「ヴァレスさん、データの検索の進み具合はどうですか。」 無線通信で問いかける。 「そうとうガバガバなセキュリティみたいで検索するところまではいけました。ただ、情報の量が多すぎてどれくらい時間がかかるか分かりませんねえ~」 「そうですか、まあ、危険になったら直ぐに逃げてください。本作戦はデータを取得することより、場所を保守することが第一ですから。」 そう、ばれてしまっては元も子もない。夕張の傭兵がこっちに来たら直ぐに二人には退避してもらわないと困る。ヴァルファーストと現役特別警察官が居るにしても、念には念を掛けた方が良い。 数時間も発った。 夕張の回し者も来なければ有力な情報も検索にヒットしていなかった。 「どうしましょう、このまま検索を続けても情報が見つからないかもしれません。」 「まあ、ギリギリまで粘って……」 そうリーサが指示を仕掛けた瞬間同時に二つの声が聞こえた。一つはヴァレス、次にユミリアだった。 「これは……八ヶ崎翔太関連の情報?」 「西方から武装している兵士らしき人物が接近中です。最前列には……これはシフール=ハフリスンターリブですね。」 タイミングがさすがに悪すぎた。 「ヴァレスさん、その情報は有力なものですか?」 「う、ううん。でも、夕張関係で出てきたのはこれが一つだけみたいですし。」 「なるほど、情報の抽出を続けてください。」 リーサ車外に出た。ユミリアも合図を出し、各待機場所に待機していたメンバーも警戒を強める。 「シフール=ハフリスンターリブ……。」 「やあやあ、スカースナ・リーサこれで会うのは何回目かな。」 「誰に操られているのか知りませんが、目を覚まさせてやりますよ。“アレス・ファルカス”。」 その名前を言った瞬間シフールは眉を顰める。 「記憶の証人め、お前の墓場をここにしてやろう。」 「それはどうですかね。」 リーサは余裕に笑って見せた。 「多勢に無勢とはこのことだ。 やれ。」 シフールが指示するのと同時に兵士たちはリーサを照準に捕らえ、引き金を引いた。 五十三話 「la zelte vynutj nyj」 すかさずリーサも腕を構えてWPを発動する。 生成された弾丸はそれぞれ別の方向に飛んで行く。 それらが弾を全て弾き返した。 車体へ、地面へと、それぞれの弾が跳弾する音が響き渡る。 その内の何発かは敵の兵士達に当たるよう仕向けたが、大したダメージになっている様子はない。 こいつらもただの雑魚ではない、というわけだ。 今の状況から得た様々な情報を元に敵の内情を把握しようと試みつつ、身体の方はシフールめがけて一直線に進ませる。 シフールはすかさずプラズマによる防御壁を展開する。 それを見て跳躍し、上からの狙撃を試みる。 何度か訓練をして編み出した、ただの弾よりも威力が増す、ミニ徹甲榴弾の3連射だ。 腕に来る反動も半端ないのだが、この際躊躇している場合ではなかった。 なんだかんだ言ってこれで3戦目。そろそろ決着を付ける時だろう。 先手必勝だ。 腕に来る強烈な反動を全身で受け、徹甲榴弾を放つ。 距離は1mほど。撃つまでのラグも大してない。 シフールの反応までに1発は当たるはずだ。 「……甘いんだよ。そんな程度か」 シフールはこちらも見ずに右腕を上げ、3発全てを受け流す。 地面に激突した弾は爆発を起こしてシフールを爆炎の中に閉じ込める。 徹甲榴弾全受け流しには驚いたが、それはある程度予想できたこと。 多分、プラズマを使って強引に腕を動かしたんだろう。その腕もプラズマで守って。 しかし今問題なのは、シフールの姿が煙に隠れて見えないことだ。 まずいことをした、と舌打ちをする。 リーサは着地し、直ぐに距離を取る。 何かしてきても反応が遅れないようにするためだ。 自分の周囲を警戒しつつ、煙が晴れるのを待つ。 徐々に見えてきた。 煙の中に、シフールの影は……あった。 彼はあそこから動いていないのか。 特に何もしてこない、というのは予想外だった。 調子が狂う。 「油断したな」 「!?」 突然、前触れも無く前方から光線が飛んできた。 ……速い! 咄嗟に避けようと思ったが、リーサはそれをしなかった。 この手法は……以前にもあった。 背後からも光線が飛んで来る可能性がある、と思ったからだ。 とはいえ、何もしない訳にはいかない。 一度躊躇った時点で光線を回避することは不可能だ。 ならば、受け止めるしかない。 (間に合え……!) 弾丸が作れるのなら、その元である金属の塊が作れるかもしれない。 それをひらめいたリーサは左腕を光線に向けて翳し、金属を生成し始めた。 徐々に大きくなりかけていた時に、光線が金属塊に届いた。 五十四話 「la farnen larta」 強烈な破裂音と共に金属が解け散る。 金属生成が間に合わなかったか、それとも精製した金属が耐え切れなかったのかリーサは考える瞬間が無かった。 光線が目の前に迫る。 普通なら、ここで望みが途切れたと思うのだろう。 しかし、今の自分たちには仲間がいる。 最初のように、一人ではない。 最後のように、失っては居ない。 だから、信用できる。 山田がリーサの前方に出てきて、レーザーを受ける。 強化された肉体にレーサは貫通することも出来ず面を滑るようにリーサを射線上から反らす。 計画した攻撃だったものの、非常に驚いたものだった。次の瞬間に九重と青柳が左右から飛び出してシフールの取巻きを倒してゆく。 「ふふっ、自分が弱いと分かってお仲間を連れてきたのか。無様だな。」 「どう考えても私には関係ありません。私の目的はあなた本人ですし。」 「は?」と九重が言う。 この対決を聞いた瞬間からリーサの脳内に残っていたシフールとファルカスの同一説をこの際解決してしまおうと思っていた。 「どうすれば良いか分かりませんけど、あなたはアレス・ファルカルであることに間違いはないと思います。」 「勝手に思っていろ!」 空中にプラズマを拡大して巨大なプラズマガスの集合を作り出す。 あんなものを落とされればデータセンターも私たちもシフールもろともちりじりになって消滅してしまう。 「もうここまでだ、そろそろ夕張様の再教育も切れそうだ。」 「認めるんですね。アレス・ファルカスであることを。」 「ああ、俺の人生は最後まであいつの手に渡っていたからな。生きていたと思っていたシャル一人さえあいつの手には自分の髪の毛を抜くくらいに簡単なことだった。俺が利用されていただけならもうこの世界に居る必要はない。お前等ももろとも死ね!」 巨大なプラズマガスの雲が少しずつ降下してくる。こんなもの逃げようがない。 「ふはあはっはっはははは!死ぬが良いアフツァーフリーガの子孫の生き残りよ!夕張も八ヶ崎も、偽者のシャルさえ俺にはどうすることも出来なかった!だから、お前等だけでも殺してやる。ここで終わりなんだよ!」 狂ったような笑い声から決意が読み取れた。本当に巻き込んで死ぬつもりらしい。さあ、どうする。こんなところで死んではられない。その時、頭を回転させ始めたリーサの前に一人の人影が見えた。 五十五話 「la fontapiedisal」 ふわっ、とリーサの顔に長い髪がかかるのを感じた。 「はぁっ!」 クラディアの気迫のこもった声が聞こえた。 「なに……!?」 直後、上空のプラズマガス、そしてその中にいるシフールも含めて、巨大な球体に覆われてしまう。 一瞬の出来事だったので、何が起きたのか良くわからなかったが、それをよく見ると、分厚い氷で出来ているように見えた。 「流石に、今のはちょっと、疲れます……」 リーサの目の前に立っていたクラディアが、膝をついて倒れた。 「クラディアさん!」 慌ててリーサはクラディアの頭部を守り、そのまま肩を担いだ。 「私はいいですから、早くあの球体を壊して……」 「そ、そんなこと言われても!」 「大丈夫です、プラズマガスはもう収まっているでしょう。それに、そのせいで氷の壁も薄くなっているはずです。壊すことは容易です」 「本当ですか?」 「確信はないけれど……。でも、早くしないとあれの下敷きになりますよ…!」 「あっ!?」 球体の影がリーサ達を黒く染めている。 顔を見上げると、あと数秒で地面に落下するであろうものが、リーサ達を押しつぶそうとしていた。 「速く!!」 返事をすることもなく、リーサは体勢を整えて、必死に自分の使えるWP全てを出して氷塊を粉砕しにかかる。 「「「うおおおおおおお!!」」」 他の皆も必死で氷塊を攻撃する。 「砕け散れえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 九重が渾身の一撃を放つ。 辺りに耳が破裂しそうな爆音が響き渡り、氷塊にヒビが入る。 あと一押し。あと一押しだ! 「そりゃああああ!!」 そのヒビに山田の強化パンチが炸裂した。 ヒビが大きくなり、ピシピシと音を立てて氷が崩れ始める。 「あとは私に!!」 崩れだした氷の塊をリーサが的確に撃ちぬいてゆく。 破片が砕け、また砕けを繰り返し、その大きさが徐々に小さくなる。 それが地面に届く頃には、地面の石ころよりも小さくなっていた。 リーサは地べたに座り込む。 クラディアの方はほとんど元に戻ったようだったので、今度は逆にクラディアに肩を貸してもらう事になった。 九重や山田も息を切らしている。 壁に寄りかかって、身体を休めていた。 「シフール……いや、ファルカスは……」 「意識がないようです。死んでしまったかもしれません」 「そうですか……」 リーサは辺りを見渡す。 氷がそこら中に散らばっているばかりだ。 何もあんな事する程だったかとクラディアに愚痴りたい気もするが、ああしなければ皆吹っ飛んでたし何も言えない。 「とにかく、皆さん身体を休めて…っ!?」 「クラディアさん!?」 突然クラディアが呻き声を上げた。 何事かとクラディアを見ると、腰の辺りから血が出ていた。 「クラディアさん!!」 「……すみません、不覚を取りました……」 「クラディアさん!!しっかり!!」 腰の辺りに手を当てて静かに倒れこむ。 皆も異常に気づいてこちらに駆けつけてくる。 「大丈夫です、モーニ体は無事……気をつけて」 「……!」 リーサはクラディアの後方を見つめる。 そこには、この事件の全てを引き起こした、元凶が立っていた。 「やあ。お疲れな所済まないけど、真打ち登場、ってね」 五十六話 「la cirlastan」 「おま……えは……」 全ての事件、殺戮、混乱、破壊、疑心暗鬼の元凶。ヴァルファーストに対する完全悪。ジュラール基地に居たはずの人物。ヴァルファースとのメンバーを詰り、誇りを傷つけた人物。 忘れることも出来ない。 「まさか忘れたわけじゃあるまいねぇ?健忘症じゃあるまいし。」 あいも変わらず人を食ったかような口調。八ヶ崎翔太の親友。その男の名前は。 「夕張……。」 「ちゃんとフルネームで人を呼びなよ。夕張悠里ってなあ。まあ、それすらも偽名なんだけど。」 ヴァルファーストのメンバーは皆、夕張を目の前にして体をこわばらせていた。何時来るか分からない攻撃は以前の戦闘で十分体に染みていた。夕張はその短い髪を掻き毟りながら、弁明するかのような顔をする。 「まあ、俺はユミリアさえ出してもらえれば良いんだけど、どうせ君たちにはその気はないんでしょ。」 九重は頭にまたもや血が上ったのか目を見開いて夕張を睨み、言う。 「この前も、今回も、ユミリアがどうだとか、好きにはさせないとか。それはどういう意味?なんでヴァルファーストのメンバーの中でもユミリアに固執するの?まさか、恋しちゃったとかじゃないでしょうね?」 夕張は最後の言葉が可笑しかったのか少し微笑して言う。 「それはないよ。だって、俺は女だもの。」 ヴァルファーストメンバーの目が見開かれる。 こいつ、何から何まで人を欺いていやがる。そういう共通認識の空気が流れていた。 「まあ、そんなことはどうでもいい。いいか?俺がこの戦いを始めたのはそこにいるユミリアとの決裂からだ。」 夕張は一点を指差していた。何時の間に指揮車の中から出てきていたユミリアだ。 「お久しぶりですね。元気にしていましたか、ユーリアフィス。」 ユミリアが夕張に話しかける。ユーリアフィス。それが奴の本名か。 「俺はそこにいるユミリアとADLPに居た時代から同期の学生でな。ADLPの世界平和安定部門を一緒に勤めることになったが、決裂した。」 「私はあなたが気に入らなかった。多くを滅ぼして、少なくを救うなんて、アレフィスを愚弄している……。だから」 ユミリアは少し焦った様子で話しかける。 「何がアレフィスを愚弄しているだ。神は存在しない。世界の再構成は人間の手にのみ委ねられている!」 「我等の神、恵みのアレフィスを信じない者は無の世界に落ちます。そうADLPで教わったのではありませんか。」 夕張は小笑いして言う。 「アレフィス、アレフィスと。これだから狂信者はいつまでも合理的な社会の創造に追いつかない。考えても見ろ、神の裁きがあるなら今頃俺は死んでいるさ。」 「アレフィスはまだ、あなたを許しておられるのです。だから、私が鉄槌を下す。」 ユミリアは夕張を睨みつけるが、夕張はそれにニヒルな笑いで返した。 「笑わせるなよ、自分では何も出来ないくせに。聞け、アフツァーフリーガの子孫もどきと、九重よ」 九重は少し嫌そうに目をそらす。 「笑い話だ、そこにいるファリーア・ラヴュール・ユミリアはお前等を利用したに過ぎない。八ヶ崎翔太に関係して、命拾いした人間の記憶を作り上げ、WP可能化剤を打ち込みケートニアー化したに過ぎない。そして実際の記憶をむりやり抹消させた。」 真後ろでヴァルファーストのメンバーたちがうめき声を上げて倒れこむのを九重とリーサは見ていた。ユミリアはいつもの顔が豹変して、怒りに満ちて夕張を睨みつけていた。夕張はまた笑う。 「お前等が見ていたのは幻想だ。一人では何も出来ない臆病者に利用され、ありしない記憶を埋め込まれている。この争いが終わったとして、ユミリアに使い捨てられたお前等の帰る場所はない。いや、正確に言えば帰る場所を思い出せない。」 「う、嘘を言うな!でたらめを言うな!僕は、僕は八ヶ崎翔太さんに救われたんだ!」 「そ、そうよ。嘘よ。惑わされてはダメ。」 「ユミリアが嘘を付くわけがない!」 ヴァルファーストの人間たちは、少しずつ立ち上がってくる。しかし、九重はまだユミリアに向っていた。 「ユミリア、やっぱりあなたはこの子達を騙していたのね。」 山田、青柳、山吹の顔が狂気に反転する。今九重は何を言ったのか反芻できなかったから、否、理解したくなかったからだ。 「……言いたくないことですが、アンポールネムにはこう書いてあります。『汝、汝の意思を果たせ』と、だから私は」 「くっ……。」 九重は悔しげに顔をゆがめていた。 「おい、そこの地球のケートニアーたち。選択肢を与えよう。今俺たちの創造しようとする新世界につくのか、ユミリアについて旧世界として滅びていくのか。」 ヴァルファーストにとって至極難題だった。 五十七話 「意思」 「俺たちは……ただ利用されていただけ……?」 「そんな……」 「じゃあ……何のために今まで……」 山田も山吹も、そして青柳も、ユミリアに利用されていただけと知り、地面に崩れたまま、立ち上がろうとしない。 今まで真実だと信じてきたことは、全て偽りであった。 三人ともそのショックからか目の焦点が合っておらず、立ち直ることは出来そうになかった。 「………」 九重が悲しげな眼差しをユミリアに向ける。 ユミリアはただ、三人の方を向いて目を瞑っているだけだった。 「全く、こんな奴に利用されてたなんて、災難だなお前らも。さぁどうする?」 夕張が問いかける。 「そんなこと言われたって……」 視線を地面に落としたまま青柳が応える。 「貴方達を利用した事は、申し訳なく思っています。けれど、そうでもしなければ、夕張を止めることは出来ない」 「今更御託はいらねえよ!」 山田が怒鳴る。 「お前がどうしたいのかなんて知らねえよ。俺はお前を許す気はない」 「……」 ユミリアが俯いて黙る。 「……それと、九重」 山田が顔を上げ、九重を正面に見据える。 「お前は、この事を知っていたのか?」 「……ユミリアを疑い始めたのは大分前だけれど、その事実が本当だと知ったのは今この瞬間よ」 「そうか……。お前も、感づいてはいたわけだ……」 「そうね」 「……俺はお前を、信頼しすぎていたのかもしれないな」 「……」 山田は声なく立ち上がり、膝の埃を手で払い落とした。 「九重。お前も同罪だ。俺はお前を許さない」 「悪かったわよ」 「けっ、謝る気なんて無いくせに」 「それで?」 「俺はもう、自分で何をしたらいいのかが分からねえ。自分で考えろなんて言われたって無理に決まってんだろ。記憶がないも同然なんだぞ?」 「そうね」 「そこで、だ。お前はどうするんだ?」 「というと?」 「お前はどっちにつくんだって聞いてんだよ。俺はユミリアとお前に裏切られた。俺の人生を狂わされたと言ってもいい」 「何が言いたいのよ」 「けど、それでも、俺はヴァルファーストでの生活を後悔することはない。楽しかったしな。その事に関しては恩を感じてる」 「それはどうも」 「そんなわけで、一時的にお前への罪を不問にする。一時的にな」 「……」 「その上で、問いたい。お前は俺にまだ何か隠していることがあるか?」 「アンタが判断しなさいよ。無いものをどう証明しろっていうのよ。一応言っとくと私はこれ以上の隠し事なんて持ってない」 「何も知らないのにどうするんだっつーの。けど、俺の持つ判断材料はお前の言ったことだけだ。これ以上の隠し事がない、か」 「そ。これ以上は何も無い。約束するわ」 「……そうか。なら、その約束、乗ったぜ。俺はまた、お前についていくことにする。因みにまた裏切ったら殺すからな」 「怖いこと言ってくれるわねー。まーあんたごときに殺されるタマじゃないけどね」 九重が山田に笑いかけ、山田は夕張を見据える。 「言ってくれるぜ。そういうわけだ夕張さんよ。残念だが俺はお前につく気はない」 少し間を置いて夕張が口を開く。 「そうか……。そいつは残念だ」 夕張は心底残念そうに首を振った。が、最初からこうなることを見越しているようだった。 そして、視線を青柳の方へ向けた。 「それで、君は?」 青柳は呆然としたままだ。 口を動かそうとはしているが、言葉が出てこない様子だった。 しばしの沈黙。 徐々に冷静さを取り戻してきた青柳がようやく声を出した。 「…私はそこまで切り替えは速くないから、まだ混乱したままだけど……少なくとも、貴方の望む新世界には興味ないわ」 地面に座り込んだままの青柳が、しかしはっきりと、意志を込めて夕張を睨みつけた。 「お前も、愚かな奴だな。青柳さんよ」 夕張はまたもや首を振る。 その顔には不気味な笑みが浮かんでいた。 「とりあえず今、私がするべき事は、貴方を止めること……だと思う」 最後の方はか細い声でリーサには聞き取りづらかった。 青柳は、きっとそうだ、と小声で反復しながら立ち上がり、九重の後方に位置取った。 「なるほどぉ?君はまだ迷いがあるねぇ。引き込む余地はありってことか」 その様子を見ていた夕張がほくそ笑んだ。 「誰があんたなんかにうちの青柳を渡すのよ」 九重がいつもの口調で、どこか刺々しく言う。 「おー怖い怖い。青柳を引き込むのには手間が掛かりそうだ。じゃあ、そっちの君は?山吹君」 山吹は夕張に名指しされて体をこわばらせる。 「僕は……」 「さあ、俺と一緒に新世界を創造しようじゃないか」 「でも……」 「何を躊躇う必要がある?」 「……わからないんだ」 吐き捨てるように呟く。 「自分の過去もわからない。今何をするべきかもわからない。これからどうしていけばいいのかもわからない。何が正しくて、何が間違っているのかもわからない。何を信じて、何を指標にしていけばいいのかもわからない」 「憐れだな。あのバカに操られたせいで、自分を見失ったか」 「そうだね……。何にも分からなくなった。もうさ、全部どうでも良くなった」 山吹の乾ききった声が辺りに響く。 夕張以外は皆息を詰まらせた。 今までの自分が偽りであった。その残酷な事実が山吹を根本から破壊してしまったのではないかとリーサは思った。 が、その推測はリーサの思う斜め上の結論を導き出す。 「……お陰で、吹っ切る事も出来た」 その言葉に、夕張は疑問を抱いて眉をひそめた。 山吹が軽く息を吸って、思い切り吐いた。 「……ふぅ。とりあえず、お前ら一発殴らせろ」 まず夕張、そして次にユミリアを指さす。 「「は?」」 夕張とユミリアの声が重なった。 「は?じゃなくてだな。まず夕張、君には借りがたくさんあるからね、それをちゃんと返さないと。だから君についていくことは出来ない」 「そんなに俺貸したっけかなぁ」 「多かろうが少なかろうがこの際関係無いだろが。でユミリア、君の夕張を止めたいという気持ちは分かる。けど、やり方が外道だ」 「う……」 「君によって僕が受けた苦しみをそのまま返したいくらいだ。だから僕はユミリア側につく気もない」 「じゃあどうするのよ?」 九重が腕組みをして聞く。 「消去法だ。僕は九重達につくよ。ここから逃げ出そうと思っても逃げれそうにないしね」 「一応私ユミリアについてるんだけど」 「そうかな?二人の立場は同じようで違うように見えるよ」 「まあユミリアの下で色々やってきたつもりはないけれど」 「じゃあいいさ。ユミリアと九重は同盟関係。僕は九重側についただけ。所詮は同盟と考えれば、それくらい平気さ」 「よく分かんないけど、あんたも夕張と戦うってことね」 「結果的にはね」 山吹がポケットに片手を突っ込んで言った。 その一部始終を見ていたリーサだったが、部外者感が否めなかった。 それにしても、山吹の性格が大分変化したような。 なんか色々吹っ切ったとか言ってたし、ストレスでも貯まってたのだろうか。 「あーあ。残念だなぁ。折角新世界に招待してあげようと思ったのに」 「招待されたって断るだけだ」 「招待状が来てたらビリビリに破いていた所ね」 「もったいないからちり紙にしてたかも」 皆それぞれがいつもの調子に戻ったのか、夕張相手に怯むことなく向き合っている。 むしろ今までより団結力が強くなっているんじゃないか、とも思う。 「もう話をしても無駄ってことだね。決意を新たにした所悪いけど、君達にはここで死んでもらうよ」 五十八話「」
https://w.atwiki.jp/handtoact/pages/31.html
リーサル マテリアルごとにある条件を満たした場合、ゲームに勝利することを指す。
https://w.atwiki.jp/opedmiroor/pages/673.html
ついに魔王デストールとの最後の戦いへと赴いたアレックス。 デストール「輪廻を繰り返し永遠に死ぬ事のできない哀れな人間共よ。この私がお前に深い眠りを与えてやろう。」 (デストールの仮の姿を倒す) デストール「永遠に生きるとは、永遠の苦しみを背負う事。生きている事こそ生き物の最大の不幸なのだ。お前にその意味を分からせてやろう。」 デストールが真の姿を現す。 そして、最終決戦が始まった。 苦戦の末、ついにデストールを倒すアレックス。 ついにアレックスは魔王デストールを倒した! その時ソウルがアレックスの心に語り掛けてきた。 魔導師のソウル「アレックスよ。わしらはここに残り、魔界を封印する…。魔界とは、生き物の心の奥に宿る暗闇の世界。この世に生命のあるかぎり、いつかまた、同じ事が起こるであろう。わしはそれをできるかぎりここで食い止めてゆこうと思う。そなたはまだ若い。これからも、様々な経験を積む事じゃ。そして、全ての生き物の気持ち、全ての生き物の繋がり、全ての生き物の存在の意味が分かった時、偉大な天空の神となるだろう。さあ。行くがよい…。」 魔界はやがて静寂と共に、その姿を消していった。 魔界の祠に戻ったアレックス。 神「アレックスよ。ついにやり遂げましたね。今、地上に息づいている命の一つ一つ全てが、アレックスの力で蘇ったのです。さあ、この生命力溢れる世界を、もう一度、その目で見てくるといいでしょう。」 命溢れる平和な世界を回っていくアレックス。 マグリッド王の城にて… マグリッド王「ついにやってくれたな。まずは国王として礼を言わせてもらいたい。私は今度の事で随分と考えさせられた。我々人間界のルールはおかしなもので、人を一人殺せば犯罪者だが、100人の命を奪えば英雄となってしまう。私はこのやり方で今の地位を築いてきたが、心の奥はいつも孤独だった。どんなに多くの家来がいても、美しい女達が周りにいても、一人ぼっちであった。そして私はようやく気づいたのだ。人間は一人では生きてゆけない事に…。私はデストールとの取引で手に入れた黄金を使って、この城に大きな城下町を作ろうと思う。私の欲望のために死んでいった人々への償いの意味もあるが、国民が何に怯える事もなく、自分を信じて生活できる町を作りたいのだ。君には本当に世話になったな。君とレオの銅像を町の中央に建て、二人の事をずっと語り継いでいく事を約束しよう。」 レオの研究所の屋根裏部屋にて… 人形「アレックスさん、やりましたね。これでレオ博士も安心してこの世を去る事ができるでしょう。私達道具は人間に使われるために生きている生き物。人の役に立った時は本当に嬉しいし、誤った使い方をされた時は胸が張り裂けそうになります。その使い方は間違ってるよ。私をそんな風に使っちゃいけないって、言ってあげたい時、自分の気持ちを伝える事ができない辛さ…。でも、レオ博士だけは、いつだって私達の心を分かっていました。あの人に使われていた研究所の道具達は幸せだったと思いますよ。」 山の精霊の棲家にて… 王様「おおっ!よくぞ無事で戻って来たっ!!わしは全然心配しとらんかったんじゃが、このノームが心配性での。わしは宥めるのに一苦労じゃったわい。ほら、ノーム。お前も何か喋らんか。」 ノーム「………。」 呪い師1「まったくこの王様は調子良いんだからなぁ…。」 呪い師2「レオ博士が亡くなられたそうですね。本当に惜しい方でした…。しかし、山の精霊のように1年で年老いて死んでゆく種族もいるのです。生き物の一生の価値は生きている間に過ごした充実した日々の数。レオ博士は普通の人の3倍くらいの人生を送っている事になるのかもしれませんね。」 セントエルズの海底神殿にて… 女王様「アレックスさん。どうもありがとう。このセントエルズの海底にも平穏な日々が戻ってきました。イルカのルーは昔、レオ博士と一緒に住んでいたそうですね。不思議な話なんですが、彼からレオ博士と娘のリーサの昔話を聞くたび、なんだかとても懐かしくて涙が止めどなく溢れてくるんです。レオ博士がいなくなった今、リーサは一人ぼっちで本当に寂しいはず。グラスバレーの町へ立ち寄って、優しい言葉の一つもかけてあげてください。あらっ。ルーがあなたの声を聞きつけてきたようですよ。」 イルカのルーが登場する。 イルカのルー「はあ、はあ。アレックスさん。この神殿へ来て僕に声をかけてくれないなんて酷いじゃないですか。僕は仲間と故郷の珊瑚の森へ帰る事にしました。じつは僕。今度結婚するんです。おーい!ラーラ!入ってこいよっ!!」 イルカのラーラが登場する。 イルカのルー「えへへ。僕にそっくりで可愛い子でしょ。これからは彼女と一緒に頑張っていこうと思っています。アレックスさんもお元気で。」 グリーンウッドの森にて… ターボのお墓はひっそりと佇んでいる…。 アレックスが目を閉じると、ターボの姿が静かに現れた。 ターボ「良く働いた日には心地良い眠りがあるように、一生懸命生きた人生の終わりには、安らいだ眠りが訪れるものです。私もレオ博士と共にゆっくりと眠る事にしますよ。」 ターボが足踏みをしながら尻尾を振り、消える。 鉱山の町グラスバレーにて… リーサは眠っているようだ…。 アレックスはドリームロッドをリーサの額に当てた。 リーサの夢にて… リーサ「アレックスさん…。この場所でならきっと会えると思ってた…。今は悲しみで胸がいっぱいだけど、それもきっと時の流れが癒してくれるはずよね。お父さんが言っていたように幸せって、ゆっくりとやってくるものだと思う…。あなたが人間の男の子なのか、天空の人なのかは分からないけれど、一つだけお願いがあるの。このまま、グラスバレーの町に残ってほしいとは言わない…。でも、いつかここへ戻ってきてくれるって約束してほしい。嘘でもいい。あなたの一言で、これから一人で頑張っていく勇気が沸いてくるから。ね。必ず戻ってくるって約束して?」 今ここで「いいえ」と断ったらリーサが悲しむだろう。アレックスは「はい」と答えて約束する。 リーサ「ありがとう。ああ。永遠にこの夢が覚めなければいいのに…。 リーサ、夢から覚める。そこには既にアレックスの姿は無い。 リーサ「アレックスさん…。いつかきっと、ここへ戻ってきてくれるわよね…。」 暮れなずむグラスバレーの町。金色色に輝く海。蘇った世界は本当に美しかった。燃えるような夕暮れの景色に、全ての地上の生き物達が見惚れた。あるものは子供と、あるものは恋人と共に、その光景を心に焼き付けた。その時、かすかな光の帯が天空へと走ったが、誰一人として気付く者はなかった。リーサは一人たたずんでいた。以前は夕日を眺めるたびに、寂しさだけがこみ上げてきたが、今はそれが、本当に美しいと感じられるようになっていた。父親が不可能を可能にしてきたように信じていれば、いつか幸せが訪れると、リーサは思った。 ─スタッフロール─ 神「我が弟子よ。何か心に引っかかっている事があるようですね。あの人間の娘との出会いが、お前にどんな影響を与えたのか、私には分かりません。しかし、一人の人間に惹かれるとは、まだ天空の神としての心ができていない証拠。あれから1年の時が流れたというのに、お前の気持ちが変わらないのであれば、一度、人間として生活をし、彼らの全てを知っておくべきなのかもしれません。ただし、今度地上へ降りる時は、お前の記憶を全て消す事になりますが…。」 鉱山の町グラスバレーの牧場にて… リーサ「ねえ。ターボ。今日はなんだか胸騒ぎがするのよ。あたし、どうしちゃったのかしら…。」 突然アレックスが現れる。 リーサ「アレックスさん…?アレックスさんなのねっ!おかえりなさい。きっと戻ってきてくれるって、あたし信じてた…。どうしたの…?あたしの事が、分からないの?」 アレックスは「はい」と答える。 リーサ「そんなことって…。あたしよ。リーサよ。発明家のレオの娘のリーサよっ。お願い。思い出してっ。」 アレックスは黙っていた。 リーサ「ごめんなさい…。あなたは嘘をつくような人じゃないものね…。でも、あなたの記憶がまったくないなんて…。わかった…。あたし、何も聞かない…。これもこれで、考え方を変えればいいじゃない。だって、素敵な出会いがもう一度できるんだもの。じゃ、まずは自己紹介。あたしはリーサ。それから後ろにいるのが山羊のターボ。ほらっ!あなたも挨拶しなさいっ!!」 山羊のターボ「メェーーーーーーーーーっ」 リーサ「この山羊はね、昔、あたしが飼っていた犬の面影があるの。それでおんなじターボっていう名前にしたのよ。さあ!行きましょ!!この町を案内してあげる。ほら、ターボもおいで。」 こうして、アレックスは新しい人間としての生活が始まる。 THE END
https://w.atwiki.jp/directors/pages/5066.html
リーサ・ヘルミネ リーフェン・デブローワー リー・H・カツィン リー・カンション リー・コンロッ リー・スタンレー リー・タマホリ リー・チャオ リー・デマーベ リー・ハリー リー・リクチー リー・デイヴィス ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/battler/pages/10958.html
冬はさみいなぁ… ・イーブイは無邪気だな…。 ・からかわれるジタンとゼクロム。 ・リバイアサンが何者かに襲われた? ・キーファ達はまだまだエスタード島探索中。小魚の佃煮うまそう…。 謎の多い時と空間を操る男。名前ぐらい教えてほしいぜ…。 -- あらすじ:??? ????「んっとね、最近復活してしまった女神(笑)がいてね…(かくかくしかじか)」 リバイアサン「ふむ…」 シンボラー「ボクジュウハアニキヨリブラッキーノホウガオニアイダヨ!」 ブラッキー「黙れツンボラー!」 -- 屋敷表側のブイズなど ※現在グランエスタード城入口 兵士達「お帰りなさいませ、キーファ王子!」 キーファ「だから、堅苦しい呼び方はやめろって」 マリベル「…」 -- その頃のキーファ達 バハムート「うむむ...」 ゼクロム「そうだそうだww」 キュレム「もうW墨汁で良いぞ」← 劔「zzz」 -- 屋敷表側 …(本当に王子なんだな...) -- ついて来た狼牙 ????「…時と空間の魔城の塔にあった魂はほぼ全て女神の僕だよ」 リバイアサン「!?」 シンボラー「ツンボラージャネェ!」 ブラッキー「オレは墨汁じゃねぇっての!」 イーブイ「わふぅ」 ビビ「もふもふ」 -- 屋敷表側のブイズなど 兵士達「そんなことおっしゃらずに(ry」 キーファ「あー無理、早く行こうぜ(城の中へ)」 マリベル「恥ずかしいんでしょうね」 -- その頃のキーファ達 バハムート「そうなのか!?」 ゼクロム「墨汁言うなッ!」 キュレム「はいはい」 劔「zzz」 -- 屋敷表側 だろうなw(と言いつつ城へ) -- ついて来た狼牙 ????「少なくとも2億」 リバイアサン「…(多過ぎる…)」 シンボラー「テカ、ツンボラーッテツンベアーミタイジャン!」 ブラッキー「せめてブイズの黒い奴って言えよ!」 イーブイ「ビビ君、やめてよ~」 ビビ「本当に気持ちいいんだもん…」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「早くオレの部屋にいこっと」 マリベル「…(黙ってキーファについていく)」 -- その頃のキーファ達 バハムート「多いな...」 ゼクロム「ブイズの墨汁」← キュレム「…」 劔「んえ?」(起きた) -- 屋敷表側 …(キーファについて行く) -- ついて来た狼牙 ????「それだけ、女神は無理矢理僕をかき集めたってことさ」 リバイアサン「…しかし、あやつは何者なのか…」 ブラッキー「何がブイズの墨汁だ!?」 シンボラー「オマエダヨ」 ※ビビはイーブイをもふもふしています -- 屋敷表側のブイズなど メイド「あ、キーファ王子様、掃除なら終わってますよ」 キーファ「ありがとさん」 マリベル「…(人任せな奴…)」 -- その頃のキーファ達 バハムート「…」 ゼクロム「他に誰がいるんだ?」 劔「何だ夢かぁ...zzz」← -- 屋敷表側 …(エリアルさんを思い出すなぁ...) -- ついて来た狼牙 ????「問題はそこなんだよね。部下がたくさんいると見た」 リバイアサン「…」 ブラッキー「うるせぇ! オレは月光ポケモンと何度言ったら(ry」 シンボラー「ボクジュウポケモン タイプ:ボクジュウ」← -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「オレの部屋に行くのも久しぶりだな…って(部屋のドアを開けるが…)」 ???「キーファお兄様ー!!!(部屋から出てきた!)」 マリベル「…(ニヤリ)」 -- その頃のキーファ達 バハムート「敵は強大だな...」 ゼクロム「月光ポケモン(笑)」← 劔「zzz」 -- 屋敷表側 おっとと!? -- ついて来た狼牙 ????「だけど、一部の部下はいやいや仕事していた」 リバイアサン「その者達から話を聞けぬ物か…」 ブラッキー「(笑)つけんな!」 シンボラー「笑ワライワライ笑(ry」 -- 屋敷表側のブイズなど ???「お待ちしてましたわー!(キーファに抱きつく)」 キーファ「離れてくれぇ!(久々なのは分かるけどよー)」 マリベル「それだけあんたの事が恋しかったんでしょ」 -- その頃のキーファ達 バハムート「うむ...」 ゼクロム「月光ポケモン(笑)(笑)」 劔「zzz」 -- 屋敷表側 君がキーファの妹の...? -- ついて来た狼牙 ????「それも一理あるね。 …ちょっと待て、あの船には人質がいた気が…」 リバイアサン「人質だと?」 ブラッキー「伝説の黒陰(?)ポケモン(笑)」 シンボラー「ウゼェ!」 -- 屋敷表側のブイズなど ???→リーサ「あら、はじめましての方ですわね。私はリーサ、キーファお兄様の妹ですわ」 キーファ「というわけさ…(汗)」 マリベル「キーファ、あんた大丈夫?」 -- その頃のキーファ達 バハムート「人質?」 ゼクロム「おいコラァ!」 キュレム「…」 -- 屋敷表側 君がリーサちゃんか...俺は雨霧狼牙!キーファの友達だ。 -- ついて来た狼牙 ????「そうか、そいつを何何するぞって脅したから港町の人がビビってたのかな」 リバイアサン「誰を人質にしたのだ」 ブラッキー「もしくは墨汁ポケモン」 シンボラー「ソレハオマエノホウダロ!」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「狼牙さん…ですわね、よろしくお願いいたします(キーファから離れて軽く会釈)」 キーファ「あへー」 マリベル「…」 -- その頃のキーファ達 バハムート「むぅ...」 ゼクロム「それはお前だ!」 キュレム「いや、どっちもだ」 -- 屋敷表側 こちらこそ宜しくな! -- ついて来た狼牙 ????「見た所、高貴な奴だったし…」 リバイアサン「まさか…」 ブラッキー「何だとォ!?」 シンボラー「アニキハボクジュウジャナイ!」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「ふふっ…キーファお兄様がお世話になっていますわ」 キーファ「それを言うな、照れ臭い」 マリベル「まーたそんなこと言ってー」 -- その頃のキーファ達 バハムート「リバイアサン、何か心当たりが?」 ゼクロム「んだとぅ!?」 キュレム「…(目を逸らす)」 -- 屋敷表側 ははは... -- ついて来た狼牙 ????「多分アレ(人質)はディザルブ王だな」 リバイアサン「違った」 ブラッキー「うるせぇ鳥もどき!」 シンボラー「オマエハダマッテロ!」 ビビ「…燃やしちゃおっかなぁ?w」 イーブイ「…ビビ君?」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「言い忘れましたが、私のフルネームは『リーサ・グラン』ですわ」 キーファ「フルネームとか堅苦しいからやだー」 マリベル「またまたー」 -- その頃のキーファ達 バハムート「ディザルブ王...まさか!?」 キュレム「いっその事、墨汁トリオを組んだらどうだ?」 ゼクロム「キュレム、てめぇ!」 -- 屋敷表側 つまりキーファは『キーファ・グラン』って訳か! -- ついて来た狼牙 ????「ん? 何か心当たりがあるのかい?」 リバイアサン「…」 シンボラー「ッテソレワレモフクマレテンジャン!」 ブラッキー「ざまぁwww」 ビビ「燃やしちゃうぞー?」 イーブイ「…(汗)」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「狼牙ァァァッ!!!」 リーサ「そうなりますわ。でも、お兄様は堅苦しいから嫌というのです」 マリベル「意外と照れ屋なのかしらね」 -- その頃のキーファ達 バハムート「ソリュート...!?」 キュレム「ゼクロム・シンボラー・ブラッキーの3匹トリオだ」 ゼクロム「止めろォ!」 -- 屋敷表側 はははっ!ワリィw← -- ついて来た狼牙 ????「言われてみりゃそうかも…」 リバイアサン「…」 シンボラー「ナンデワレガフクマレルノサ!?」 ブラッキー「てかオレを外せ!」 ビビ「燃やしちゃうぞ~?」 イーブイ「どうしよう…」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「オレの事は気軽に呼んで欲しいんだってば!」 リーサ「これだからお父様に『王子としての自覚がない』と言われるのですわ」 マリベル「プッw」 -- その頃のキーファ達 バハムート「ソリュート...」 キュレム「シンボラーはよく墨汁を持っていたからな...」 ゼクロム「墨汁はあいつ(ブラッキー)だけで良いっての!」 -- 屋敷表側 分かってるって...キーファ王子w← -- ついて来た狼牙 ????「にしては変だな、何で王が捕らわれるんだ?」 リバイアサン「辺りをふらついていたのでは?」 シンボラー「イマモッテネーヨ!」 ブラッキー「ウゼェこの伝説の墨汁発電機!」← ビビ「…魔力をためるw」 イーブイ「…」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「王子はいらねぇぇぇ!!!(半泣状態)」 リーサ「私はそういうしきたりがあっていいと思いますのに」 マリベル「よねー」 -- その頃のキーファ達 バハムート「あやつはそう言う奴だ...」 キュレム「そうか?」 ゼクロム「うるせぇブイズの墨汁!」← -- 屋敷表側 な、泣くなよ~ -- ついて来た狼牙 ????「あーなるほど、王になってもまだ子どもだしなぁ」 リバイアサン「…(お主も見た目は子どもだろ)」 シンボラー「…(シンボラーの羽から墨汁が落ちた)」 ブラッキー「ウゼェ!」 ビビ「フ レ ア☆(ゼクロムとブラッキーに)」 イーブイ「!?」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「リーサまでぇぇぇ!」 リーサ「…お兄様、どうして泣いていますの?」 マリベル「ほっときなさい」← -- その頃のキーファ達 バハムート「…」 キュレム「持っているではないか」 ゼクロム「ゑ...ギャァァァ!(0/20000)」 -- 屋敷表側 キーファ...(汗) -- ついて来た狼牙 ????「子どもゆーな。オイラ今13歳の姿だけどサ」 リバイアサン「…(十分子どもだ)」 シンボラー「アッ」 ブラッキー「ふぎゃー!(0/9600)」 ビビ「久々に放っちゃったw」 イーブイ「…(凄いを通り越して怖いよ…(汗))」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「オレだって自由に過ごしてぇよ」 リーサ「ですが、お兄様は何時でもフリーダムですわ」 マリベル「www」 -- その頃のキーファ達 バハムート「…(子どもだな)」 キュレム「隠していたのか...ん、ゼクロム?」 -- 屋敷表側 …(やっぱり小春に似てるな...) -- ついて来た狼牙 ????「気まぐれで外見年齢を変えるんだ(今度は7歳の姿に)」 リバイアサン「より子どもになった」 シンボラー「アニキー!?」 ビビ「ボクしーらないw」 イーブイ「…(汗)」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「帰宅後、お父様によく怒られてますもの」 キーファ「うっ」 マリベル「www」 -- その頃のキーファ達 バハムート「更に子どもに...」 キュレム「誰にやられた!?」 劔「zzz」 -- 屋敷表側 …(ふふっ...俺もよく小春に...) -- ついて来た狼牙 ????「大体は10~25歳の事が多いかな(現在24歳の姿)」 リバイアサン「…お主、一体何者なのだ」 ビビ「さぁ?」 シンボラー「アニキー! オキロー!」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「それを暴露すんなぁ…」 リーサ「いつもの事ですわ」 マリベル「www」 -- その頃のキーファ達 バハムート「分からぬ...」 キュレム「…」 劔「zzz」 -- 屋敷表側 …w -- ついて来た狼牙 ????「実際5~90歳までなら自由に変化可能だけど」 リバイアサン「…謎が多過ぎる」 シンボラー「アーニーキー!」 ビビ「…」 イーブイ「…(汗)」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「…」 リーサ「まぁ、久々にくつろいで下さいな」 マリベル「そうよ」 -- その頃のキーファ達 バハムート「驚きの一言だ...」 キュレム「…」 劔「呼んだかい?(起きた)」← -- 屋敷表側 そうだな...そうさせてもらうぜ。 -- ついて来た狼牙 ????「そのせいで何年生きてるか忘れちゃったよ」 リバイアサン「だろうな」 シンボラー「ゼクロムノアニキー!」 ビビ「…w」 イーブイ「…(ビビ君…(汗))」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「さぁ、かえろっか!」← リーサ「キーファお兄様、すぐ帰ろうとしないで!」 マリベル「…」 -- その頃のキーファ達 バハムート「時間を移ろい過ぎたか...」 キュレム「ゼクロム...」 ゼクロム「…」 劔「ゑ」 -- 屋敷表側 キーファ、もう少しゆっくりしようぜー -- ついて来た狼牙 ????「…少なくとも5000年以上という事しか覚えてない」 リバイアサン「それはそれで凄いと思うが」 シンボラー「アニキー! オキテクレー!」 ビビ「多分無☆理」 イーブイ「…(汗)」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「ヤダー、こうしているうちに親父帰って来そうでやだ」 リーサ「そんなことありませんわ。お父様は遠出していらっしゃいますもの」 マリベル「少しゆっくりしなさいよ」 -- その頃のキーファ達 バハムート「うむ...」 キュレム「…」 劔「呼んで...ない?」 -- 屋敷表側 ふー(完全に自宅の気分) -- ついて来た狼牙 ????「未来の事も少しわかる…」 リバイアサン「未来にも行けるのか…」 シンボラー「ハーイ?」 ビビ「あっひゃっひゃっひゃっw」 イーブイ「!?」 ジタン「…(沈んだ顔で屋敷から出てきた)」 -- 屋敷表側のブイズなど マリベル「キーファは狼牙を見習いなさい」 キーファ「…(狼牙の方を見る) えー」 リーサ「えーじゃありませんわ」 -- その頃のキーファ達 バハムート「ん、ジタンではないか。どうした?そんな暗い顔をして...」 キュレム「ビビ!?」 劔「…うわーん!」← -- 屋敷表側 気持ちいいー(ベッドに寝転がる) -- ついて来た狼牙 ????「アレ、君は先程の少年…」 リバイアサン「?」 ビビ「…何でもないよ!?」 イーブイ「…(汗)」 ジタン「…はぁ…」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「狼牙は逆にくつろぎ過ぎじゃ(ry」 マリベル「あんたは拒否反応起こし過ぎ」 リーサ「そうですわー」 -- その頃のキーファ達 バハムート「…ジタン!」 キュレム「…」 劔「うわぁぁぁん!」 -- 屋敷表側 こんな気持ち良いベッド、初めてだ... -- ついて来た狼牙 ビビ「な、何でもないってば!」 イーブイ「…」 ジタン「え? あぁ、バハムートか…(ずっとため息ついてる)」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「気に入ってくれて嬉しいですわ。王室のベッドは高級ですもの」 キーファ「オレは粗末な方が(ry」 マリベル「王子がそんなこと言っていいと思ってんの?」 -- その頃のキーファ達 バハムート「どうした?元気無いぞ?」 キュレム「…」 劔「墨汁のバカー!」← -- 屋敷表側 … -- ついて来た狼牙 ビビ「あ、ジタン!」 イーブイ「え、おサルさん!?」← ジタン「…とてつもなく言い辛い事があってな…」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「ベッドメイクはメイドさんの仕事ですわ」 キーファ「それだとオレ達はサボ(ry」 マリベル「うるさいわね」 -- その頃のキーファ達 バハムート「そうか...無理には聞かぬ」 劔「…(謎の液体が入ったビンを取り出す)」 キュレム「何だそれは」 -- 屋敷表側 …ぐがー← -- ついて来た狼牙 ジタン「いや…言った方がいいかもしれない…」 ビビ「?」 イーブイ「?(瓶に興味深々)」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「てか、狼牙寝てるし!」 マリベル「シーッ!」 リーサ「お兄様、大声で叫ばないで下さい!」 -- その頃のキーファ達 バハムート「ならば聞こう...」 劔「中身知りたい?」 キュレム「無論、知りたいな」 -- 屋敷表側 ぐがーぐがー... -- ついて来た狼牙 ジタン「…フライヤの姿…見てないか?」 ビビ「見てないよー」 イーブイ「ふらいや?(だが、視線は剱の持つ瓶に向けられている)」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「…(何であんなのんきに…)」 マリベル「しばらく起きないでしょ」 リーサ「お疲れですのね…」 -- その頃のキーファ達 バハムート「見てないな...ヨースターエリアに居るのではないか?」 劔「じゃあ教えてあげる!」 キュレム「ああ、教えてくれ」 -- 屋敷表側 ぐがーぐがー...zzz -- ついて来た狼牙 ジタン「見てないか… というより、フライヤの部屋が消えてんだよ!!!」 ビビ「ゑ!?」 イーブイ「教えてー!」 -- 屋敷表側のブイズなど キーファ「…」 マリベル「ま、仕方ないわね」 リーサ「…(狼牙に布団をかぶせる)」 -- その頃のキーファ達 バハムート「何だと!?」 劔「中身は...なんと、16種類の薬草を漬けて作った薬なのだー!」 キュレム「?」 -- 屋敷表側 うーん...小春...zzz -- ついて来た狼牙 ジタン「代わりにオレの部屋とクイナの部屋が少し広がって…」 ビビ「お姉ちゃんの部屋が…」 イーブイ「16種類の薬草?」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「…小春?」 マリベル「狼牙の妹だってさ」 キーファ「…(部屋から脱走した)」 -- その頃のキーファ達 バハムート「何が起こっている...」 劔「名前は良く分からないけどねー」 キュレム「駄目だろそれ...」 -- 屋敷表側 …zzz -- ついて来た狼牙 ジタン「オレだって分からねぇよ!」 ????「…この世界に彼女の気はないよ」 ビビ「ゑ」 イーブイ「…(汗)」 -- 屋敷表側のブイズなど リーサ「妹さん…ですの?」 マリベル「えぇ。話聞いただけだけどね…」 -- その頃のマリベル達 バハムート「!?」 劔「これをゼクロムに飲ませれば...元気一杯になる事間違いなし!」 キュレム「心配だ...」 -- 屋敷表側 zzz... -- ついて来た狼牙 ジタン「はぁ!? どういう事だよ!?」 ????「…そして、もう彼女の存在はない」 ビビ「何でだよッ!?」 イーブイ「大丈夫かなー」 -- 屋敷表側の… マリベル「真面目でしっかり者らしいわよ」 リーサ「へぇ~」 -- その頃のマリベル達 バハムート「何を馬鹿な事を...!」 劔「はーい、おくすりですよー」(ゼクロムに謎の液体を飲ませる) キュレム「…」 -- 屋敷表側 ヤベッ、罠だ...zzz -- ついて来た狼牙 ジタン「てめぇ! いい加減な事言いやがって!」 ????「…」 ビビ「何で…何で平気で言えるの!?」 イーブイ「…」 -- 屋敷表側の… マリベル「…狼牙は方向音痴らしくてね」 リーサ「そうなんですの?」 -- その頃のマリベル達 バハムート「何故そう言える!?」 ゼクロム「…!! 不味ッ!(1/20000)」 劔「おはよう」 キュレム「起きた!?」 -- 屋敷表側 わりぃ小春...zzz -- ついて来た狼牙 ????「予知で…分かってしまった事なんだ」 ジタン「何が予知だ!」 ビビ「なんでお姉ちゃんが消される必要があるの!?」 イーブイ「すごぉい…」 -- 屋敷表側の… マリベル「妹に先に行くなって注意されているのよ」 リーサ「…まるでキーファお兄様みたいですわ」 -- その頃のマリベル達 バハムート「予知...だと?」 ゼクロム「劇的に不味かったぞ!?」 劔「そりゃ、薬草だし...」 -- 屋敷表側 おっ、宝箱♪...zzz -- ついて来た狼牙 ????「…あの女神が執拗に彼女を狙っていたことは覚えてる?」 ジタン「…」 ビビ「うーん」 イーブイ「…(汗)」 -- 屋敷表側の… マリベル「…(それにしても、狼牙の寝言が…)」 リーサ「…お会いしてみたいですわ」 -- その頃のマリベル達 バハムート「うむ...覚えているが...」 ゼクロム「うえぇ...」 劔「青汁飲む?」 -- 屋敷表側 げっ、罠だった...zzz -- ついて来た狼牙 ????「…女神が彼女を捕らえたとだけ言っておこう」 ジタン「何ィ!?」 ビビ「どうして!?」 イーブイ「青汁にがいよー」 -- 屋敷表側の… マリベル「…」 リーサ「狼牙さんの妹と言われる人に」 -- その頃のマリベル達 バハムート「なぬっ?」 ゼクロム「青汁も断る!」 劔「ワガママだなぁ...」 -- 屋敷表側 小春、そんな怖い顔するなよ...zzz -- ついて来た狼牙 ????「ここから先は本当にヤバい…言えたもんじゃないね」 ジタン「…教えてくれ」 ビビ「…」 イーブイ「僕、ジュースがいい」 -- 屋敷表側の… マリベル「…w」 リーサ「気になりますわー」 -- その頃のマリベル達 バハムート「聞かせてくれ...」 ゼクロム「イーブイ君の言う通りだ!」 劔「ジュースかぁ...」 -- 屋敷表側 痛たたっ、杖で叩くな!...zzz -- ついて来た狼牙 ????「lw!o!klp8[xf!92p!99d」←? ジタン「なんだそれ?」 ビビ「うーん…」 イーブイ「リンゴジュースのみたーい!」 -- 屋敷表側の… マリベル「行動的ね…」 リーサ「うんうん」 -- その頃のマリベル達 バハムート「古代文字...?」 ゼクロム「俺はオレンジジュース」 劔「…」 -- 屋敷表側 ...zzz -- ついて来た狼牙 ????「つまり『マジで本当にヤバいけどいいの』という事」 ジタン「いいんだ…聞かせてくれ」 ビビ「…」 イーブイ「無理だったらグレープジュース」 -- 屋敷表側の… マリベル「ところでさ、あのバカ王子は?」 リーサ「…キーファお兄様の姿が…ないですわ」 -- その頃のマリベル達 バハムート「構わぬ...」 ゼクロム「俺はオレンジジュース」 劔「無いってばー」 -- 屋敷表側 zzz -- ついて来た狼牙 ????「『フライヤとしての』感情、記憶が消し去られた」 ジタン「へ?」 ビビ「!?」 イーブイ「ないのー?」 -- 屋敷表側の… マリベル「…逃げたわね」 リーサ「ですが、そこまで遠くには行ってないと思いますわ」 -- その頃のマリベル達 バハムート「…どういう事だ?」 ゼクロム「無いのかー」 劔「無いんだよねー」 -- 屋敷表側 zzz -- ついて来た狼牙 ????「女神が彼女を寵愛する為に余計な感情を抜き取ったと考えられる」 ジタン「何それ」 ビビ「そんなの…酷過ぎるよ!」 イーブイ「どーしよ…」 リーフィア「困った時はミックスオレ!(氷が溶けた)」 ブラッキー「お前、何時の間に!?(1/9600)」 -- 屋敷表側の… マリベル「ま、すぐ帰ってくるでしょ」 リーサ「そうですわね…」 -- その頃のマリベル達 バハムート「何という事を...!」 ゼクロム「ええーっ!?」 劔「まさかの復活w」 -- 屋敷表側 エリアルさん...もう食えねえよ...zzz -- ついて来た狼牙 ????「そして、彼女はもうフライヤじゃない」 ジタン「…」 ビビ「…」 イーブイ「あ、リーフィアお姉ちゃんとブラッキーお兄ちゃん」 リーフィア「喉乾いたらミックスオレを飲むと良いよー」 ブラッキー「オレのお勧めは力の粉(HPは回復するが、なつき度が下がる)を混ぜた青汁だ」 -- 屋敷表側の… リーサ「エリアル?」 マリベル「…聞いたことないわね」 -- その頃のマリベル達 バハムート「あやつが聞いたらどうなるか...」 劔「どっちも美味しそぉ~」 ゼクロム「力の粉か...」 -- 屋敷表側 …zzz -- ついて来た狼牙 ????「感情も記憶も能力も全て奪われた抜け殻さ」 ジタン「…ふざけんなッ!」 ビビ「許せない…!」 イーブイ「ミックスオレはいいけど、青汁やだー」 ブラッキー「何だと!?」 リーフィア「サイコソーダもいいけどねー」 -- 屋敷表側の… リーサ「…ですが、狼牙さんが眠っているので…」 マリベル「聞き出せそうにないわね」 -- その頃のマリベル達 バハムート「…(レシラム...お主は何処にいる...)」 劔「青汁も美味しそう~」 ゼクロム「おいしい水も美味しいぞ?」 -- 屋敷表側 zzz -- ついて来た狼牙 ????「さらに悪い事に姿も変えられてしまった」 ジタン「フライヤは…あんな奴の人形じゃねぇ!」 ビビ「そうだよ!」 イーブイ「だって苦いんだもん」 ブラッキー「…はっ、子どものお前には分からないだろうな」 リーフィア「美味しい水は確かに美味しいんだけど、水だからなぁ…」 -- 屋敷表側の… リーサ「…(それにしてもいい寝顔ですわ…)」 マリベル「ったく、あのバカ王子は…」 -- その頃のマリベル達 バハムート「…(お主が来なければ...始まらぬ...)」 劔「健康に良いんだよ?」 ゼクロム「モーモーミルクも美味いけどなw」 -- 屋敷表側 zzz -- ついて来た狼牙 ????「女神は気に入った奴を寵愛する…」 ジタン「そんな奴に寵愛されてたまるか」 ビビ「ボクだったらされない方がマシだよ!」 イーブイ「そう言われてもなぁ…」 ブラッキー「青汁うまいぜ?」 リーフィア「モーモーミルクねぇ…私、牛乳苦手なのよねー」 -- 屋敷表側の… リーサ「…(キーファお兄様と似てますわ…)」 マリベル「…はぁ」 -- その頃のマリベル達 バハムート「…」 劔「苦手な人も多いけどねー」 ゼクロム「そうなのか?」 -- 屋敷表側 zzz -- ついて来た狼牙 ????「そして、一生逃がそうとしない」 ジタン「そんな束縛されて喜ぶ奴がいるか…」 ビビ「…」 ブラッキー「やっぱり分かる人には分かるんだな」 イーブイ「…僕分かんない」 リーフィア「回復量は多いけど、なんかイマイチなのよねー」 -- 屋敷表側の… リーサ「…(私、小春さんに会ってみたいですわ…)」 マリベル「…」 /このバカ息子がー!\/ゲェッ、親父!?\ -- その頃のマリベル達 バハムート「…」 劔「僕は好きだね!」 ゼクロム「回復量と味は比例するとは限らないって訳か...」 -- 屋敷表側 はっ!?(飛び起きた) -- ついて来た狼牙 ????「…ごめん、こんな話をして」 ジタン「…気にすんな…」 ビビ「だけど…どこに行けば…?」 リバイアサン「フライヤとやらも気になるが、先程の件(リバイアサンが襲った者)については?」 ブラッキー「おおっ、分かってくれるか!」 リーフィア「そう言う事になるねー」 -- 屋敷表側の… リーサ「…お父様?」 /今日という今日は許さぬぞー!\/勘弁してくれー!\ マリベル「ざまぁwww」 -- その頃のマリベル達 バハムート「気にするな...奴が来てから考えるとしよう。 そうだな、その件も...」 劔「うん!分かるよ~」 ゼクロム「勉強になるな...」 キュレム「んっ?」 -- 屋敷表側 …あちゃー。 -- ついて来た狼牙 ????「…そっちの話が島流しになってたね。分かった、そっちの話をしよう」 リバイアサン「うぬ…」 ジタン「…ビビ、どうする?」 ビビ「ボクとしては助けに行きたいけど…」 ブラッキー「ところで…お前の名前は?」 リーフィア「…はーっ、ミックスオレ美味しー」 -- 屋敷表側の… リーサ「私達が雑談している間に戻ってきたのですのね」 /ギャー!\/今日1日城の外に出るな!\ マリベル「www」 -- その頃のマリベル達 バハムート「うむ...頼むぞ」 劔「僕は雨霧劔だよー」 ゼクロム「ミックスオレも美味そうだよな...」 -- 屋敷表側 結局親父に見つかったか... -- ついて来た狼牙 ????「調査は少し進んだ…」 リバイアサン「それで、分かったことは?」 ブラッキー「雨霧劔…か。オレは月光ポケモンのブラッキーだ」 リーフィア「良かったら飲むー?」 イーブイ「僕も飲みたーい」 -- 屋敷表側の… リーサ「狼牙さん、お目覚め?」 マリベル「キーファざまぁwww」 /勘弁し(ry\/駄目な物は駄目じゃ\ -- その頃のマリベル達 バハムート「…」 劔「ブラッキー君だね...宜しく!」 ゼクロム「おっ、飲む飲む!」 -- 屋敷表側 ああ...何か悪かったな...(汗) -- ついて来た狼牙 ????「海賊達をまとめているのは…女だ」 リバイアサン「…」 ブラッキー「こちらこそよろしくな! 青汁飲む?」 リーフィア「はーい(ゼクロムとイーブイにミックスオレを渡す)」 イーブイ「わーい!(ミックスオレを貰う)」 -- 屋敷表側の… リーサ「いいえ、気にすることはないですわ…」 マリベル「ま、いつものことね」 /そんなぁ~\/全く、お前は本当に王族としての自覚があるのか?\ -- その頃のマリベル達 バハムート「女...だと?」 劔「飲む!」 ゼクロム「サンキュー!」(ミックスオレを貰う) -- 屋敷表側 …俺、寝てる間に変な事言わなかったか? -- ついて来た狼牙 ????「…うん、かなり男っぽかったけど」 リバイアサン「…(冷や汗)」 ブラッキー「オッケイ、ちょっと待ってろ」 イーブイ「ミックスオレ美味しー!」 リーフィア「でしょー?」 -- 屋敷表側の… リーサ「…」 /ない(キリッ)\/…\ マリベル「小春やエリアルが何ちゃらって聞こえたけど?」 -- その頃のマリベル達 バハムート「ん?リバイアサン、心当たりがあるのか?」 劔「わーい!」 ゼクロム「…うめぇ!」 -- 屋敷表側 そ、そうか...(汗) -- ついて来た狼牙 ????「どうしたん?」 リバイアサン「もしかしたら…そいつ…我やカーバンクルと共に来ようとした奴かもしれぬ…」 ブラッキー「ほらよ、オレ特製の青汁だ(劔に青汁を差し出す)」 リーフィア「やっぱりミックスオレはおいしいよねー!」 イーブイ「ねー!」 -- 屋敷表側の… リーサ「…」 /イギャアァァァ!!!\/あとで部屋に監禁だな\ マリベル「ところで、エリアルって誰?」 -- その頃のマリベル達 バハムート「そうなのか!?」 劔「美味しそぉ~!」(青汁を受け取る) ゼクロム「ああ!」 -- 屋敷表側 エリアルさんは家のメイドさんだぜ。 -- ついて来た狼牙 ????「マジか」 リバイアサン「…お主の言う事が(ry」 カーバンクル「(登場)呼んだ?」 ブラッキー「かなーり苦いけどな、それがいいんだよ」 リーフィア「でもグレイシアはサイコソーダ派」 イーブイ「僕は苦い物以外ならなんでもオッケー!」 -- 屋敷表側の… リーサ「…お兄様…」 /騒ぐな!\/離してくれぇ~(泣)\ マリベル「ふぅん…」 -- その頃のマリベル達 バハムート「カーバンクル!?」 劔「ん~…もう一杯!」 ゼクロム「サイコソーダも美味そうだよな」 -- 屋敷表側 まぁ...家族同然の存在だけどな~ -- ついて来た狼牙 リバイアサン「呼んでない」 カーバンクル「あっそ。 でも、そいつの話を聞いて戻ってきた ぜ!」 ブラッキー「了解、ちょっと待ってろ」 リーフィア「サイコソーダもいいけど、私はミックスオレが好き」 イーブイ「リーフィアお姉ちゃん、サイコソーダちょうだい!」 -- 屋敷表側の… リーサ「…(汗)」 /騒いだから牢獄行き\/何でだよぉ~!\ マリベル「家族同然…か」 -- その頃のマリベル達 バハムート「そうか...(汗)」 劔「お願いね~♪」 ゼクロム「俺はどっちも好きだな」 -- 屋敷表側 さて...キーファは大変だなw -- ついて来た狼牙
https://w.atwiki.jp/love_3/pages/32.html
シナリオチャート 初めに サブヒロインのイベント等については調査中。 適切ではない選択が含まれているかも知れません。これに従った結果、望まぬエンディングにいってしまう場合があります。 Memoryは00~34の全35種。琴先輩のHシーン以外はリーサ・うらら・フォルネそれぞれのルートで普通に手に入り、エンディング3種はそれぞれのエンディングBへ進めば手に入ります。(エンディングA・CはMemoryに表示されない) ネタバレを含みますので注意して下さい。 攻略ポイント 食事は毎日しっかり与える。 ターゲットにしたいヒロインには、より多くの食事を与えて好感度を高めておく。(例:ターゲット…やきとり*3、水筒*1 ターゲット以外…やきとり*1、水筒*1) 条件判断の都合上、フラグや好感度による比較時は基本的にリーサが優先されるため、3日目までの選択が重要な気配。なので、良く理解してやらないとフォルネルートには中々いけなかったりする。(リーサフラグAとうららフラグAがONの場合、リーサルートへ進んでしまう。) 確認したエンディング数は、リーサ・うらら・フォルネが3パターン。 シナリオチャート初めに 攻略ポイント1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目 11日目 12日目 13日目(クリスマス) 14日目(お正月) 15日目(新学期) 16日目(バレンタイン前) 17日目(バレンタイン) 18日目 19日目-昼 19日目-夜 1日目 【Memory00~01】 選択無し 2日目 【Memory02~03】 分かった。→リーサ・うらら・フォルネの好感度UP 食費を削ることになるけどいいんだな? もう少し街を周ってみよう。→フォルネの好感度UP、フォルネ我慢フラグがON 家に戻ってくるのを待とうかな。 一緒に作る。 1人で作らせて見る。→うららの好感度UP、うらら我慢フラグがON 手伝わせない。 3日目 【Memory05~06】 一緒に探す。→リーサフラグAがON →【Memory04】 探さない。 うらら・フォルネの我慢フラグが以下のパターンと一致する場合、次の選択肢が自動的に選択される。 フォルネ我慢フラグがOFFの場合、「フォルネの案に乗る。」が選択される。 フォルネ我慢フラグがON 且つ うらら我慢フラグがOFFの場合、「うららの案に乗る。」が選択される。 うららの案に乗る。買う!→うららフラグAがON それはだめだ。 フォルネの案に乗る。→フォルネフラグAがONリーサ、頑張れ。 うらら、負けるなよ。 フォルネ、少しは手加減してやれよ。→フォルネの好感度UP 家でゆっくりしていよう。 4日目 【Memory07】 選択無し 5日目 メイデンたちと一緒にいる。 1人外に出る。 「メイデンたちと一緒にいる。」を選択時、以下のパターンでシナリオが進行する。 1. リーサフラグAがONの場合 →【Memory08】 選択無し→リーサフラグBがON(リーサルート確定) 2. リーサフラグAがOFF 且つ うららフラグAがONの場合 終わるまで待つ。→うららフラグBがON(うららルート確定) →【Memory09】 諦めるか…… 3. リーサフラグAがOFF 且つ フォルネフラグAがONの場合 分かった。→フォルネフラグBがON(フォルネルート確定) 無理だって。 「一人で外に出る。」を選択時、以下の選択肢が追加される。 特にないです。→【Memory10】 今はちょっと……。 6日目 【Memory11】 選択無し 7日目 夜の街を散歩だ。 早く家に戻ろうか。 8日目 【Memory12】 選択無し 9日目 【Memory13~14】 選択無し リーサ・うらら・フォルネのうち、誰の好感度が1番高いか分かるイベントがある。(好感度が同じ場合の優先度は、リーサ・うらら・フォルネの順。) 10日目 【Memory15~16】 リーサフラグBがONの場合 選択無し→リーサフラグCがON うららフラグBがONの場合 選択無し→うららフラグCがON フォルネフラグBがONの場合 選択無し→フォルネフラグCがON 誰のフラグBもONでない場合 選択無し、個別イベント無し 11日目 【Memory17~18】 選択無し 12日目 リーサフラグCがONの場合 選択無し→リーサフラグDがON →【Memory19】 うららフラグCがONの場合 選択無し→うららフラグDがON →【Memory20】 フォルネフラグCがONの場合 選択無し→フォルネフラグDがON →【Memory21】 誰のフラグCもONでない場合 選択無し、個別イベント無し 13日目(クリスマス) 【Memory22・26】 リーサフラグDがONの場合 選択無し→リーサフラグEがON →【Memory23】 うららフラグDがONの場合 選択無し→うららフラグEがON →【Memory24】 フォルネフラグDがONの場合 選択無し→フォルネフラグEがON →【Memory25】 誰のフラグDもONでない場合 選択無し、個別イベント無し 14日目(お正月) 選択無し 15日目(新学期) 選択無し 16日目(バレンタイン前) 【Memory27】 選択無し 17日目(バレンタイン) 【Memory28】 選択無し 18日目 【Memory29~31】 選択無し 誰かのフラグEがONの場合、19日目-昼へ。 誰のフラグEもONでない場合、19日目-夜へ。 19日目-昼 選択無し リーサフラグEがONの場合 リーサが妊娠している場合、リーサエンディングAへ。 リーサが妊娠していない場合、リーサエンディングBへ。 →【Memory32】 うららフラグEがONの場合 うららが妊娠している場合、うららエンディングAへ。 うららが妊娠していない場合、うららエンディングBへ。 →【Memory33】 フォルネフラグEがONの場合 フォルネが妊娠している場合、フォルネエンディングAへ。 フォルネが妊娠していない場合、フォルネエンディングBへ。 →【Memory34】 19日目-夜 選択無し リーサ・うらら・フォルネのうち、好感度が1番高いヒロインのエンディングCへ。(好感度が同じ場合の優先度は、リーサ・うらら・フォルネの順。) ED無しのためバッドエンドと思われます。