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「ゆ?れいむはおねーさんのことしらないよ」 れいむは私を見つめながらそう言った。 とてもとても透き通った眼で私を見つめている… 私はれいむを掴むと無言で地面に叩きつけた。 「ゆべっ!」 奇妙な声をあげて形がひしゃげる。 私は痛みのためかひくひくと痙攣しているそれを拾うと 何度も何度も地面にたたきつけた。 「ゆぶ!なんでれいむに、ゆべっ!ひどいことす…ぶべっ!」 私がそのゆっくりと出会ったのはとても晴れた天気のいい日だった。 3日間も雨が続いていたのが嘘のように雲ひとつ無く晴れ渡っている。 その日私はいつもの空き地に来ていた。 ここは市街地からはやや離れており子供はおろか人もめったに通りかからない。 「はあ…」 私は今日のことを思い出してため息をついた。 嫌なことがあるとついここに来てしまう…いい加減もうこないようにしないと。 「おかーしゃーーん!」 その時草むらの影から女の子の声が聞こえてきた。 何か事故でもあったのか?私は恐る恐る声のするほうに近づいていった。 そこでは喋る生首と別の生首を食べている子犬がいた。 私は一瞬ぎょっとしたが、その生首がゆっくりといわれる生き物?であることに気づいた。 数年前から突然現れた知性を持つ饅頭、それがゆっくりだ。 田舎のほうではよく見かけるらしいがこのあたりではあまり見かけることは無く、 私もペットショップくらいでしか見かけたことは無かった。 犬に食べられている方のゆっくりはバレーボール大の大きさだったようだが すでに犬に体の1/3近くを食べられている。 すぐ側で泣いているのはまだ子供なのかソフトボール程度の大きさだ。 先ほどの台詞から察するに親子なのだろう。 「おかーしゃんからはなれろ!」 子ゆっくりは子犬に体当たりをしだした。 だが饅頭でできたゆっくりの体当たりでは犬にダメージを与えることはできない。 ダメージこそなかったものの興味を持ったのか子犬は子ゆっくりに向き直った。 「ゆ、ゆっ!こっちにこないでね」 獲物を見つけた獣の目をしている… 『お願い、彩ちゃん私の靴返して!』 『返して欲しかったら自分で取れば?』 がんばってとりかえそうとするけど彩ちゃんは私の頭を押さえつけ 私の靴を持った逆の手は高く掲げており靴を取り返すことができない。 私は子犬に向けて落ちていた小石をいくつも投げつけた。 ゆっくりを助けたかったからじゃない、子犬の目を見ていたら なんだが胸のあたりがむかむかしてきて嫌な気分になったからだ。 子犬は小石が痛かったのかキャンと小さく吠えるとすごすごと逃げていった。 私はしばらく呆然としていたがふと気がつくと子ゆっくりは親ゆっくりの側で泣いている。 「おかあしゃあああぁぁぁん!しんじゃいやだあああぁぁぁ!」 親ゆっくりはぴくりとも動かない。体の破損具合からしても明らかに手遅れだろう。 なんだか居たたまれない気持ちになり、私は子ゆっくりの涙をハンカチで拭いてやる。 「おねーしゃん…さっきはたすけてくれてありがとう」 しばらくしてやっとれいむは泣き止んだがその表情は暗い。 「これからどうするの?」 私はゆっくりに聞く。 「れいむは…れいむはひとりでいきていくよ。おかーしゃんのぶんまで」 私はこの子が放っておけなくなってしまった。 後から考えて見ればこのれいむを助けることで自分を助けたかったのかもしれない。 「わ、わたしが友達になってあげるよだから元気出して」 私はゆっくりの頭を撫でた。ゆっくりはくすぐったいような表情をする。 「ありがとうおねーしゃん、れいむのなまえはれいむっていうのよろしくね」 この日私とれいむは友達になった。 『冷たいよ!なんでこんなことするの!』 彩ちゃんは私に水をかける。逃げたいけどここはトイレの個室。逃げられない。 『あなたの臭いにおいを洗い流してあげるのよ』 彩ちゃんは獲物を見るような眼で私を見つめている… それから私は毎日空き地に来るようになった。 れいむは最初は落ち込んでいたようだがすぐに元気を取り戻し やがて私を笑顔で迎えてくれるようになる。 「こんにちは」 「ゆっくりしていってね!」 私の挨拶にれいむは笑顔で挨拶を返す。 とても澄んだ綺麗な眼。れいむの瞳を見つめていると嫌なことを全部忘れることができた。 れいむは友達だった。多分私が中学生になってからはじめての友達だったと思う。 「おねーさんみてみて!」 ある日れいむに会いに行くと頭から蔓が生えていた。本で見たことがあるがこれは妊娠の前兆らしい。 ゆっくりが妊娠すると植物のように頭から蔓が生えそこから子供がなるらしい。 れいむに恋人ができたらしいことは前に聞いていたがそんな仲にまで発展していたとは。 今度相手を紹介してもらおう。 「多分明後日くらいにはれいむの赤ちゃん生まれるよ」 れいむは嬉しそうに話す。 「その時はおねーさんに最初にみせてあげるね」 れいむはとても澄んだ眼で私を見つめていた。 空き地をでてすぐのところで女性とすれ違う。制服からして近所の高校生だろうか? 「あのゆっくりはあなたのペット?」 女性は私に向けてそう言った。どうやられいむと遊んでいたのを見られていたらしい。 「飼っているわけではないのでペットではないですけど…れいむは私の友達です」 友達という言葉を聞くと女性は哀れむような、蔑むような目で私を見つめた。 「ゆっくりと人間は友達にはなれないのよ」 「そんなことはありません!れいむは私の友達です!」 女性の態度にむっとした私は女性を睨みながら答えた。 すると女性は今度は悲しい目をしながら私に言う。 「ゆっくりはね、とても記憶力が悪いの。 ゆっくりは生まれてくる時、親から生きるために必要なことや 大切な記憶を受け継ぐことができる。 それら受け継いだ記憶は一生忘れることは無いわ。 でも自分で経験した記憶を覚えることはできなくて せいぜい3日くらいしか覚えておくことができないの」 『わ、私のせいじゃないわよ!あなたが私に逆らおうとするのが悪いのよ!』 翌日から1週間、私はれいむのところへいくことができなかった。 足を怪我してしまいうまく歩くことができなかったからだ。 放課後すぐにれいむのいる空き地へ向かう。 いきなりこなくなってれいむは怒っているだろうか? もしかしたら心配で泣いているかもしれない。 自然と空き地に向かう足が速まる。 空き地に入ってすぐ、私はれいむの後姿を発見した。 「れいむ!」 私の言葉にれいむは振り向く。 「ゆっくりしていってね!」 ぴょんぴょんと跳ねながられいむは私に近づいてきた。 「れいむごめんね、しばらくこれなくて」 だがれいむは私の言葉に首をかしげる。 「ゆ?おねーさん何をいってるの?れいむはおねーさんことしらないよ」 背筋に冷たいものが走った。そして先週出会った女性の話を思い出す。 『でも自分で経験した記憶を覚えることはできなくて せいぜい3日くらいしか覚えておくことができないの』 私も記憶力はあまり良いほうではない、でも大切な友達のことを忘れたりはしない。 「おねーさんはゆっくりできるひと?」 れいむは私を見つめながらそう言った。 とてもとても透き通った眼で私を見つめている… いつも私を見つめていた時と同じだが、その時の私には 作り物の人形のような目に見えた。 「ゆ?なんでへんじをしてくれないの?」 ショックのあまり固まっている私に対し、れいむは一方的に話しかけてくる。 「ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ。ゆっくりしたいのならたべるものちょうだい!」 私はれいむを掴むと無言で地面に叩きつけた。 「ゆべっ!」 奇妙な声をあげて形がひしゃげる。 「これでも…思い出さない?」 「れ、れいむはゆっくりできないおねーさんなんかしらないよ!はやくきえてね!」 私は痛みのためかひくひくと痙攣しているれいむを拾うと 何度も何度も地面にたたきつけた。 「ゆぶ!なんでれいむに、ゆべっ!ひどいことす…ぶべっ!」 何度か繰り返し少し頭も冷めてきたので手を止めてやる。 「ご、ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛…でい゛ぶがわ゛る゛い゛ごどじだの゛な゛ら゛あ゛や゛ま゛り゛ま゛ぶ… だがら゛ゆ゛る゛じでぐだざい゛い゛…」 どうやら完全に私のことを忘れてしまったらしい。忘れてしまったのならまた覚えさせれば良い。 今度は二度と忘れないようにしっかりと…! 私はれいむを家に連れて帰った。 れいむを教育するために使う道具を集め自分の部屋に戻った。 れいむは帰宅途中に買ったゆっくり飼育用透明ケースに入てあり、ぐぅぐぅといびきをかいている。 軽く頭を叩くとれいむは目を覚ました。 「ゆっ?ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ、ゆっくりしていってね!」 こいつもうさっきのことを忘れてやがる…私はれいむの口のやや下部に金属でできた道具を差し込む 「ぐげげごご…ふひーっ!ふひーっ!」 これはゆっくり虐待用の道具でゆっくりの声帯をつぶし喋れなくするものだ。 虐待家の中にもアパートやマンション暮らしの人もいるので ゆっくりの悲鳴で回りに迷惑をかけないようにするためのものらしい。 両親にれいむのことが見つかるとめんどうなのでれいむには黙ってもらうことにした。 「ふひーっ!ふひーっ!」 れいむはがんばって喋ろうとするが空気が漏れる音がするだけで言葉は出ない。 私はとりあえずれいむの髪飾りを取り上げてやった。髪飾りの無いゆっくりは他のゆっくりから嫌われ攻撃されるらしい。 「ふひーっ!ふひーっ!」(ゆっ!それはれいむのかみかざりだよ、ゆっくりはやくかえしてね!) れいむは私から髪飾りを取り返そうとぴょんぴょん跳ねる。 私はれいむを右手で押さえつけ動けなくし、髪飾りを持った左手をれいむの目の前にちらつかせる。 「返して欲しかったら自分で取れば?」 れいむは私の手から抜け出そうとするが人間の力にはかなわず抜け出すことができない。 飽きてきたのでライターを取り出すとれいむの髪飾りを燃やしてやった。 「ふひーっ!ふひーっ!」(でい゛ぶの゛がみ゛がざり゛があ゛あ゛あ゛!どぼじでぞん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛お゛お゛!) これでれいむは野生に帰れなくなった。もう私の側でしか生きることはできないだろう。 ふとれいむの体が汚れていることに気づく。今まで野生で暮らしていたので風呂に入ったことは無いだろうし 泥や色々な汚れがついていてもおかしくない。私はれいむを洗ってあげることにした。 れいむをゆっくり飼育用透明ケース(小)に移してやり蓋をした。 ぎりぎりれいむが入る程度の大きさだったのでれいむは窮屈そうだ。 私は蓋の隙間から水を入れてやる。れいむのからだは徐々に水の中に沈んでいった。 「ふひーっ!ふひーっ!」(もうやめてよ!れいむおぼれちゃうよ!) 口のすぐ下まで水が溜まったところで水を入れるのをやめてやる。 私はれいむの入った箱を両手で持って円を描くようにぐるぐる回す。 洗濯機をイメージしてもらえばわかりやすいだろう。 「ぶげぎょぶれ!」(お゛、お゛ぼでち゛ゃ゛…う゛…よ゛…) 汚れも落ちたのでれいむを箱から出してやった。ちょっと皮がふやけているが生きているようだ。 だがさすがにダメージが大きいのか目を回して気絶している。 これ以上やると死にそうなので今日はこれくらいにしておこう。 「これからしっかり私のこと覚えさせてあげるからね…」 私はれいむを最初の飼育用ケース戻してやる。 これかられいむにすることを考えると背筋がゾクゾクしてきた。 数日後、私はまたあの空き地へ来ていた。待っている人は誰もいないのだがついここに来てしまう。 しばらくぼーっとしているとすぐ横かられいむの声が聞こえた。 「ゆゆっ!おねーさんこんにちは、ゆっくりしていってね!」 れいむは家にいるはず!それに喋れないようにしたのになんで!? 良く見るとそのれいむはまだ小さい赤ちゃんゆっくりだった。 「おねーさんとあうのはじめてだね。でもれいむはおねーしゃんのことしっているよ」 会ったこともないのになぜ?ふといつか聞いた言葉を思い出す。 『ゆっくりは生まれてくる時、親から生きるために必要なことや大切な記憶を受け継ぐことができる。』 私は自分の間違いに気づいた。私はれいむにとって大切な存在だったんだ。 だから赤ちゃんれいむに私の情報を移す事ができた。 れいむが私のことを忘れたのも新しい記憶を保持できないゆっくりだからしょうがないことなんだ。 私は泣いていた。彩ちゃんにいじめられても泣かなかったのに久しぶりに大声を出して泣いていた。 「ゆゆっ?おねーさんなんでないているの?れいむがともだちになってあげるからげんきだしちぇ」 私は赤れいむを連れて帰路に着いた。家についたられいむをうんと可愛がってあげよう、そう思って… れいむの体がから金属の器具をはずしてやるとれいむは喋れるようになった。 「ゆっくりしていってね!」 れいむは久しぶりに喋れてうれしいのか嬉しそうに跳ね回る。私はれいむに赤れいむを見せた。 髪飾りがないので心配だったが赤れいむはちゃんとれいむを親だと認識したようだ。 「ゆゆっ!おかーしゃんひさしぶり!ゆっくりしていこうにぇ!」 嬉しそうにれいむにすりすりする赤れいむ。だがれいむは怪訝な表情をしている。 「ゆゆっ!おちびちゃんだれ?しょたいめんなのになれなれしくしないでね。 ここはれいむのゆっくりぷれいすなんだからはやくどこかいってよね!」 れいむは体当たりで子れいむを突き飛ばす 「ふえええ!おかーしゃんなんてことするのおおお!」 「…」 私は無言でれいむを掴むと窓かられいむを投げ捨てた。ゆ゛ぶえ゛え゛え゛え゛え゛!と汚い悲鳴を上げながら庭に落ちる。 「子れいむ、わたしがお母さん代わりにになってあげるからあんな薄情なお母さんのことは忘れようね」 それから子れいむは私の家で飼うことになった。今度はちゃんとれいむの分までやさしくしてあげている。 れいむはあれからどうなったのかわからない。ただれいむを捨てた翌日、庭のほうから 「かざりのないゆっくりはしねえええ!」 「い゛ぎや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!でい゛ぶの゛お゛め゛め゛があ゛あ゛あ゛!」 という叫び声が聞こえていたが気にせず学校へ向かった。 保存方法が間違っていたようなので3102を修正しました。 3日で忘れるとか大事な記憶を引き継ぐ~のくだりは話の都合上追加した俺設定ですがスルーしてください。 過去の作品 ゆっくり転生(fuku3037.txt~fuku3039.txt) ゆっくりくえすと(fuku3068.txt) このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1806.html
冬の足音が聞こえてきた秋の昼時、枯れ木の根元に出来た穴から小さな影が4つ現れました。 「きょうはなにちてあしょぼーか!」 「おいかけっこ!」 「ゆ~それじゃゆっくちできないよ!」 「じゃあかくれんぼ!」 仲良く遊び始めたのはゆっくりれいむと呼ばれる最近になってあらわれたナマモノです。 ゆっくりれいむは紅いリボンと黒髪がトレードマークのもっとも多くいるゆっくりでした。 遊んでいるれいむたちは人間で言う子供で大きさは野球ボールぐらいでした。 まだ生まれて1年も経ってない4匹は仲良くかくれんぼを始めます。 最初ということで一番大きいおねーちゃんれいむがオニになりました。 残りの3匹は思い思いに隠れ場所を探しに行きます。 「も~い~かい!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ~・・・いーち!にー!さーん!だー!らーぶ!・・・」 「ゆゆっ、ここはれいむがかくれちぇるよ!べつのところにいってね!」 「ゆ!わかっちゃよ!」 「れいみゅはこっちにいくよ!」 「じゃあれーむはむこうにいくね!」 一匹のれいむは石の影にかくれました。 もう一匹は枯葉の下に。 「もーいーかい!」 「ゆっくりできたよ!」 「じゃあいくよー!」 石に隠れたれいむも枯葉にかくれたれいむはすぐに見つかってしまいます。 「次はれいみゅのばんだよ!」 「ゆゆ・・・まだれぃむがのこっちぇるよ!」 「みゅ~さっさとみちゅけるよ!」 しかし、残り一匹はなかなか見つかりません。 それもそのはず、最後の一匹はかくれる場所を探して今も移動していたのです。 「ゆ~、なかなかみちゅからない・・・」 この子れいむは遊びということも忘れてゆっくり出来そうな場所を探していました。 やがて、今まで来たこともない遠い場所に来てしまいます。 「ゆー・・・ゆっ!ここどきょ!」 れいむは知らない場所でいることに不安を感じます。 「おねーちゃああああ!れぃむはここだよおおおおおお!」 しかし、叫んでも叫んでも返事は返ってきません。 姉れいむとは子れいむが思っていたよりも離れていました。 子れいむはもときた道を思い出して戻ろうとします。 しかし、隠れ場所を探しながら来たのでどこを通ったか覚えていませんでした。 もう少し大きくなっていれば巣に戻るための方法を親れいむから教えてもらっていたはずでした。 もう少ししたら、きっとお姉ちゃん達が来てくれる。 そう信じて子れいむは木の近くで姉達をじっと待つことにしました。 子れいむが木に寄り添うようにゆっくりし始めると、美味しそうな匂いがどこからか漂ってきます。 「ゆゆ!おいしそうなにおひ!」 子れいむは匂いに引き寄せられます。 匂いの元はある木の根元に生えているたくさんのキノコでした。 「ゆ~!おいしそうなきにょこ!」 子れいむはキノコに飛び込んでいきました。 姉れいむたちは探しても探しても見つからないれぃむを心配になり、巣にいた母れいむを呼びに戻りました。 子の訴えを聞いた母れいむはすぐに巣の周りを探し始めました。 姉れいむ達は危ないからと巣でお留守番です。 母れいむは危険そうな場所を一つずつ調べていきます。 しかし、れぃむはどこにもいません。 母れいむはあきらめずに探し回りました。 やがて、普段は来ない森の奥に足を踏み入れます。 「れいむのかわいいれぃむー!どこにいるのー!」 母れいむは懸命に叫びました。 「ゆっ?」 子れいむがお腹を膨らませてゆっくりしていたころ、どこからか母親の声が聞こえました。 「おかーしゃああああああああん!」 先ほどまでキノコを食べることに夢中で自分が迷っていることを忘れていたれぃむは母親の声で自分のおかれている状況を思い出しました。 そして、母親に見つけてもらおうと声を張り上げます。 先ほど食べたキノコのおかげで大分大きな声が出せました。 大きな声は森に響き、とうとう母親の耳に入ります。 「ゆゆ!れぃむのこえだよ!」 「おかああさああああぁぁぁぁあぁん・・・」 「いまいくよ!そこでゆっくりしててね!」 母れいむは子れいむの声に耳を澄まして位置を探ります。 森の中では声が反射し場所がわかりにくかったですが、子への愛なのか母れいむは迷わずに足を進めていきました。 やがて、一つの木の下で泣き叫んでいる子れいむを見つけました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていっちぇね!・・・おかーしゃん!」 「だいじょうぶだった?けがしてない?」 「れぃむはごたいまんぞくだよ!」 母れいむは子れいむの声を聞き、自分の目で確かめて子の無事を確認します。 「だいじょうぶそうだね!」 「おかーしゃんごわがっだよおおおおおおおお!」 「もうひとりでこんなとおくまできちゃだめだよ!」 「ゆぅうううう、おかーしゃんごめんなさい・・・」 「わかればいいよ!もうくらくなるからはやくかえろうね!」 「ゆっ!そうだ!おかーしゃん!れいむきのこみちゅけたよ!」 「ゆゆっ!きのこ!?」 「しょーだよ!このうらにいっぱいはえちぇるよ!」 子れいむはそういって木の裏へと跳ねていきます。母れいむは道に迷わないように確認してから子れいむの後を追いました。 「このさきにきのこあるよ!!」 「ゆっゆ!・・・しゅご~い!」 「いっぱいあるからおねーちゃんたちにもあげりぇるよ!」 「そうだね!ぜんぶもってかえろうね!」 いそいそと口にキノコを含んでいく母れいむ。 子れいむはどんどん口に入っていくキノコを見て目をきらきらと輝かせました。 「おかーしゃんのいぶくろはうちゅうだね!」 「ゆふん!」 子れいむの声援に答えるように母れいむはキノコを口に含みます。 やがていっぱいになると母れいむは子れいむと共に巣に戻りました。 巣では帰りの遅い母れいむを残った子れいむが心配していました。 「おかーしゃんおかえりなさい!」 「ゆゆっ!おかーしゃんおおきくなっちぇる!」 子れいむが驚いていると母れいむは口から大量のキノコを吐き出しました。 「ゆゆゆ!おいしそう!」 「おかーしゃんどうしたの!」 「れぃむがみちゅけたんだよ!」 そういって母れいむの腋から現れた妹れいむに子供達はさらに驚きます。 「さすがれーむのいもうとだね!」 「でもしんぱいしたんだよ!」 「そうだよ!おかーさんがいないのにとおくにいかないでね!」 「うん、もうひちょりでそとにはいかにゃいよ!」 「れーむたちもきをつけるよ!」 母親と一番上の姉れいむに注意され、もう二度と勝手に遠くに行かないと子れいむ達は誓いました。 そんな子供達への説教が終わると、眼の前のキノコに話が移ります。 「これならしばらくだいじょうぶだね!」 「おかーしゃんがとりにいかなくてもへいきだね!」 「ゆ!そうだね!しばらくは巣でいっしょにゆっくりできるよ!」 「やっちゃね!」 「れぃむといっちょにいようね!」 突然降って湧いた幸運にれいむ達はうれしくてたまりませんでした。 それからしばらく、このれいむ家族は一度も巣から出ることなく、巣の中でゆっくりとしていました。 食べ物が無くなったらまたキノコを採りに行けば良い。母れいむは久しぶりにゆっくり出来たので上機嫌です。 子供達もそんな母親の様子を見てうれしくなり、母親に擦り寄って遊びました。 れいむ家族はずっとゆっくり出来ると思っていました。 しかし、四季の変わり目はもうすぐそこまで来ています。 巣からあまり出なくなったれいむ家族にはそれが分かりませんでした。 「まったく、れいむたちはなにをやってるのかしら!」 風が冷たく感じ始めたころ、一匹のゆっくりありすがれいむの巣に向かっていました。 このゆっくりありすは母れいむの友達で冬篭りの準備が出来てもやってこない母れいむに痺れを切らしてやってきたのでした。 巣の前までやってくるとありすは中にいるであろうれいむ達に声をかけます。 「ゆっくりしていってね!」 しかし、待てども待てども返事が返ってきません。 このまま待っていても埒が明かないので、ありすは巣に入りました。 中ではれいむ達がキノコを食べてとてもゆっくりしていました。 「ゆっ!おいしそうなきのこね!」 「ゆゆっ!ありす!」 いきなり現れたありすに子供達は母れいむの後ろにかくれました。 「こわがらなくていいよ!このありすはれいむのともだちだよ!」 「そうよ!さっきからよんだのにへんじがなかったわ!だからとかいてきじゃないけどあがらせてもらったわ!」 「ゆ~ありすごめんね!」 ありすの声に気付かずゆっくりしていたれいむはありすに申し訳無さそうに謝りました。 ありすはそれで少しだけ悪かった機嫌を直して笑顔を見せます。 「ありすはきにしてないわよ!・・・ってそうじゃないわ!」 「ゆゆっ、どうしたのありす!」 「れいむたちがふゆごもりにこないからよびにきたのよ!」 「ふゆごもり?」 聞いたことのない単語に子れいむが不思議がります。 母れいむは子れいむに教えようとしましたが、時間がないのかありすが急かしました。 「いまはじかんがないわ!すぐにじゅんびしてゆっくりすぽっとにむかってね!」 「ゆ!わかったよ!」 「じゃあありすはもういくわ!れいむもゆっくりしないでね!」 ありすは言いたいことを言うとすぐにれいむの巣を離れました。 れいむ達が住む地域は冬にはかなり冷え込み、ゆっくり家族だけでは越冬できませんでした。 なので、ゆっくりスポットと呼ばれる大きな洞窟などに集まって身を寄せ合って眠り春を待つようになっていました。 ゆっくりスポットにはゆっくり制限があり、主にぱちゅりーの判断で入れるゆっくりの数を制限していました。 ありすが急いでいたのはゆっくり制限で入れなくなってしまうのを恐れたからです。 母れいむも一度ゆっくりスポットで越冬を経験していたのですぐに準備を始めようとします。 「おかーしゃんふゆごもりってなーに?」 「ゆーっとね、もうすぐここじゃゆっくりできなくなるんだよ」 「ゆゆゆゆ!?」 「だから、みんなのいるばしょにあつまらないといけないの!」 「そーなのかー!」 「れーむたちもじゅんびしてね!すぐここをでるよ!」 母れいむはすぐにゆっくりスポットに行く準備を始めました。 母れいむは子れいむもすぐに準備してくれると思っていました。 なので、れぃむが反対したのに驚きました。 「やだ!れぃむはまだうごきたきゅないよ!」 「どおおおしてええええ!はやくうごかないとゆっくりできなくなるよ!」 「でもきのこしゃんまだいっぱいあるよ!」 「ゆゆゆ・・・」 冬篭りには食料は必要ありません。 だから巣に残っている食料はすべて捨てる必要がありました。 れぃむは自分が見つけた食べ物を残していくことが不満だったのです。 「まだあっちゃかいよ!きのこたべてからでもまにあうよ!」 「ゆゆゆ・・・」 れぃむの発言に母れいむは困ってしまいます。 これを見た他の子れいむは相談してれぃむの方に回ります。 この子れいむ達もキノコに不思議な魅力を感じていたのでした。 「きのこちゃべちぇからいこうよ!」 「そうだよ!」 「もっちょゆっくりしちゃいよ!」 「ゆっくち!ゆっくちぇ!ゆっくりょ!」 母れいむは子れいむの反論に去年の冬篭りの記憶を思い出そうとしました。 母れいむが入ったゆっくりスポットはまだ時期が早かったので洞窟の中はすかすかでした。 母れいむは仲間が集まる間スポットの周りの食べ物を食べたり、他のゆっくりと話したりして冬眠まで過ごしたのを思い出します。 今回もまだまだ空きがあるだろう。母れいむはそう結論付けました。 「わかったよ!きのこがなくなるまでここでゆっくりしようね!」 「おかーしゃんだいちゅきー!」 「ゆっくりしようね!」 母れいむが賛成してくれて子供達は大喜びです。 そんな姿を見て母れいむも反対しなければ良かったと思いました。 こうして、ありすの忠告も無視して母れいむは巣でゆっくりし続けました。 今は友達よりも子供達のほうが大事でした。 母れいむはしばらく巣から出てないことも忘れて、巣で子供達と仲良くゆっくりとしていました。 「ゆ~、とうとうさいごのきのこだね!」 「これをたべたらゆっくりすぽっとにむかおうね!」 「とうみんたのちみ!」 「しゅっごいゆっくりできそうだよ!」 「ゆっくちできりゅといいね!」 あれからもキノコを食べ続けて3日後、とうとうキノコがなくなりました。 キノコ以外の食べ物も残っていたので残さず食べました。 もう巣には食べ物は残っていません。 れいむ達は巣を枯葉と枝で上手に隠して外に出ました。 「ゆ~、しゃ、しゃぶいいいいいいいい!」 「ゆっくりできないいいいいいいい!」 「ゆぐぐぐぐぐぐう!」 「ぐるじお・・・」 保温効果のあった土の中からみて外の世界は極寒です。 震えてる子れいむに母れいむは用意していた白いもこもことした綿を被せました。 「これでさむくないよ!」 「ゆ・・・ほんちょだ!さみゅくないよ!」 「ぽかぽかー!」 「これならゆっくりできるよ!」 「ゆぅ~ん」 母れいむの用意していた綿は子れいむ達をすっぽり覆いました。 上手に穴を開けているので動きを妨げることもありません。 元気になった子供達を連れて母れいむは記憶の中で一番近いぱちゅりーの巣に向かいました。 ゆっくりスポットはぱちゅりーが管理してることがほとんどです。 ぱちゅりーの巣の近くには必ずと言っていいほどゆっくりスポットがありました。 れいむ達がゆっくりスポットにつくと、スポットは冬眠のために入り口を閉じている最中でした。 れいむ達は急いで中に入れてもらおうと指揮をとっているパチュリーのところに向かいます。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ぱちゅりー!れいむたちもなかにいれてね!」 「「「「いれちぇね!」」」」 れいむ達はすぐに中に入れてもらえると思い巣の入り口に向かいました。 しかし、ぱちゅりーが行く手を塞ぎます。 「ゆゆっ、ぱちゅりーじゃましないでね!」 「れいみゅたちはさむさでこごえしょうだよ!」 「はやくいれちぇね!」 母れいむの抗議に子れいむも声を重ねます。 それでもぱちゅりーは動きません。 ぱちゅりーは言い聞かせるようにれいむ達に話しました。 「ざんねんだけどもうゆっくりせいげんよ」 「ゆ!?」 母れいむは驚きます。 「そんなわけないよ!まだいっぱいあきがあるはずだよ!」 「あなたたちはくるのがおそすぎたのよ!こんなじきじゃあいてるわけないわ!」 「ゆぐぐぐぐ・・・」 何とか入ろうと穴の辺りを見ましたがこちらをまりさとみょんが見ていました。 ぱちゅりーだけならどうにでもできましたが、まりさとみょんが一緒では勝てません。 「もういいよ!いじわるなぱちゅりーのとこなんかいかないよ!やさしいぱちゅりーをさがすよ!」 「いじわるー!」 「ゆっくりちね!ゆっくりちね!」 れいむ達は別のゆっくりスポットに向かいます。 罵声を受けたぱちゅりーは怒るわけでもなく、どうしようもなかったのだと自分に言い聞かせ、スポットの入り口を防ぎに戻りました。 「どおしてどこもあいてないのおおおおおおおお!」 「「「「ゆわああああああああん!」」」」 あれからいくつかのゆっくりスポットを巡りましたがどこも入れてもらえませんでした。 思いつく限りの場所に向かいますが、制限になっていたり、もう既に冬眠していたりしていました。 最初は強気であったれいむ達も辺りが暗くなるころにはこのまま入れないのではないかと不安げな表情を隠せなくなっていました。 「おかーしゃん・・・」 「ゆっ、だいじょうぶだよ!きっとはいれるところがあるよ!」 「しょ、しょうだね!」 「ゆうううう・・・」 子れいむの不安を母れいむは必死に宥めます。 そんな中キノコを見つけたれぃむがみんなに向かいました。 目には涙が溜まっています。 「おかーしゃん、おねーしゃんごめんにゃさい!」 「ゆゆゆ、どーしたの!?」 「れぃむのせいでこんなことになっちゃから・・・」 「れぃむ・・・」 子れいむは自分のせいだと責任を感じていました。 母れいむも姉れいむも何も言えません。キノコのとき一緒に賛成したことを忘れていませんでした。 母れいむはそんな子れいむににっこりと微笑みました。 「つぎのすぽっとはぜったいあいてるからだいじょうぶだよ!」 「おかーさんほんとう?」 「ほんとうだよ!あそこはいちばんおおきいからね!」 母れいむの自身に満ちた顔に子れいむは涙を止めました。 他の子れいむにも元気が戻ります。 母れいむは嘘を付いていました。 しかし、今は元気であってほしいと母れいむはばれない様に懸命に演技しました。 次のスポットが母れいむの知る最後のスポットです。 ここに入れなかったられいむ達は死ぬしかありませんでした。 「ゆゆっ、ここだよ!」 「ゆ~、おおきいね!」 れいむ達は大きそうに見える洞窟の前にいました。 幸い、入り口にぱちゅりーが見えました。 まだ冬眠してはいないようです。 れいむは今度こそと自分に気合をいれ、ぱちゅりーに向かいました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「れいむたちをいれてください!」 頭を下げてぱちゅりーに頼み込みます。 子れいむはその様子を心配そうに見つめていました。 「ゆぅ・・・もういっぱいだったかしら・・・」 「だいじょうぶだよ!れいむたちはいれるよ!」 制限に来ているか考えるぱちゅりーをみてれいむは入れてもらおうと必死に食らい尽きます。 ぱちゅりーが難しい顔をしているとれいむ達のしった顔が現れました。 「あら!れいむたちじゃないの!?」 「ありす!」 友達の顔を見てれいむは笑顔を取り戻します。 「あなたたちどこもはいれなかったの!?」 「ゆぅ・・・」 「だからゆっくりしないでっていったのよ・・・」 ありすでも制限はどうしようもありません。 れいむが再び不安な顔になろうとした時、奥から二匹のゆっくりが現れました。 「わかるよー、はいりたいんだねー」 「そこのおおきいれいむだけならはいれるんだぜ!」 奥からやってきたのはゆっくりちぇんとゆっくりまりさでした。 ちぇんが入り口の騒ぎに気付き、まりさと一緒に数を調べてくれていたのです。 やっと掴んだ一匹の空き。しかし、れいむ達は4匹。 「おかーしゃんれーむたちははいりぇないの?」 「おかーしゃん・・・」 「ゆぐぅ・・・」 母れいむに置いていかれるのではないかと子れいむは急に不安になりました。 母れいむよりそって離れたくないと頬をむにゅっと引っ付けます。 困った母れいむにまりさは提案しました。 「いっぴきぶんのあきだけどちびたちなら4ひきいけるんだぜ!」 「かなしいのはわかるよー、でもどっちかしかはいれないよー」 「れいむ・・・」 母れいむは決断を迫られました。 答えはもう決まっていましたが。 「じゃあこどもたちをおねがいするよ!」 「わかるよー、かなしいけつだんだねー」 「わかったんだぜ!こどもたちはまりさがかならずせわするぜ!」 「れいむ、ほかにあてはあるの? れいむの決断にちぇんが同情し、まりさが子供を置いていくれいむに心配させないように話しかけ、ありすはれいむの心配をしました。 「だいじょうぶだよ!まだすぽっとはあるよ!」 「そう、ならいいわ!いそいでむかったほうがいいわよ!」 れいむの自信満々な顔にありすも納得し、れいむに激励を送りました。 「むきゅー。きまったようね」 「こどもたちをおねがいね!」 「わかったわ。じゃあここもしめるわね。」 母れいむを置いてゆっくりスポットの入り口が閉まりだします。 子れいむは徐々に見えなくなる母れいむに向かって飛び跳ねていきます。 母れいむは心配そうな子れいむを安心させるように微笑みました。 「ニヤ・・・」 「ユッ!?」 その母れいむの表情は子れいむ達の動きを止めました。 とうとう入り口が完全に閉まってしまいます。 もう子れいむではどうすることも出来ませんでした。 「おかーしゃん・・・」 「だいじょうぶだぜ!ほかのばしょにきっといけるんだぜ!」 「そうよ!それよりはるにおかーさんにあえるようにとうみんするのよ!」 子れいむ達はスポットの奥に向かいます。 初めて入ったゆっくりスポットには様々なゆっくりが犇めいていました。 「ゆ~、なんだかあかるいね!」 「ほんちょだ!おうちはこんにゃにあかるくなかっちゃよ!」 「どこかあいてるのかな?」 「ゆぅぅうん・・・」 子れいむ達はみょんに明るいスポットを不思議そうに思い、辺りを見回します。 やがて空中に浮いている白い物体を見つけました。 「あれだよ!あれがあかりゅいんだよ!」 「あれなんだろ?」 れいむの質問にまりさが答えます。 「あれはみょんのはんれいってやつだぜ!」 「はんれい?」 「よくわからないんだぜ!でもだいじなものらしいぜ!」 「ゆゆっ!」 だいじなものと聞いてれいむは自分のリボンを思い浮かべます。 「あいつがみょんだぜ!」 「ちーんぽ!」 「ゆっくりしていってね!」 初めて会ったみょんは変な泣き声でしたが子れいむ達は不思議と挨拶していました。 他にも様々なゆっくりと会った後、まりさの言っていた空きにつきました。 「ここだぜ!ちょっとまわりにうごいてもらってありすとちぇんもはいれるようにしたんだぜ!」 「さすがまりさね!」 そこには藁が敷かれていました。 これなら暖かそうです。 「わかるよー、ちょっとすくないよねー」 「さすがちぇんだぜ!」 いつの間にかいなくなっていたちぇんが戻ってきました。 子れいむ達からはまりさに隠れて見えませんでしたが、すぐに口に藁を咥えたちぇんが見えました。 「きみたちはそれじゃたりないよー」 ちぇんはそういい、子れいむ達の周りに藁を積んでいきます。 「ぽかぽか~」 「ちあわちぇ~」 子れいむは母れいむとちぇんの用意してくれた藁と綿でぬくぬくです。 しかし、まりさたちの顔はまだ晴れていませんでした。 「ゆぅぅ、これじゃたりないんだぜ・・・」 「こまったわ・・・」 「もうわらはなかったよー・・・」 悩んだ結果、まりさが防止を脱ぎだしました。 「まりさどうしたの!?」 「このぼうしをかぶせばあったかくなるんだぜ!」 「わかるよー!それならじゅうぶんだよー!」 まりさは子れいむの上に帽子を置きます。 「ゆ~、なんだかねみゅくなっちぇきた・・・」 「れーむも・・・」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「ゆゆゆゆ・・・」 子れいむ達は冬眠のための眠気で船を漕いでいました。 「もうだいじょうぶだぜ、まりさたちもいっしょにねるんだぜ」 「またはるにあいましょうね」 「わかるよー、ぜったいだよー」 既に眠っている子れいむを見ながら3匹はゆっくりと眠りにつきました。 「ざ、ざぶいいいいいいいいいい!」 木枯らし吹き荒れる森に母れいむの悲鳴が響きます。 母れいむは必死にスポットを探しました。 しかし、開いている場所を見つけれず、辺りは暗くなっていました。 さらに追い討ちをかける物が空から降り始めます。 「ゆゆっ!?ゆきだあああああああ!」 母れいむには死の雪でした。 たまらずれいむは近くにあった木の根元の穴に逃げ込みます。 雪は降り止む気配を見せませんでした。 「ゆ~、もうつかれたからあしたさがすよ!」 れいむは独り言を呟いて眠り始めました。 一日中飛び跳ねていたれいむはぐっすりと眠ってしまいます。 雪はれいむのことなど気付かないかのように世界を白く変えていきました・・・ 「ゆゆっ・・・すっきりー!」 母れいむは十分な睡眠を取り、元気に目を覚ましました。 そして穴から外に元気よく飛び跳ねます。 そんなれいむの飛込みを白い地面はしっかりと受け止めました。 「ゆ?ゆゆゆゆううううう!」 森は姿を変えていました。 白くなった地面はれいむのとんだあとを綺麗に残していました。 れいむは気付いてしまいました。 もう開いているゆっくりスポットはないのだと。 それでもれいむは探すしかありませんでした。 ちっぽけなれいむなど白い世界では唯の点です。 「ゆーしょ!ゆーしょ!」 「ゆ~、しろくてどこかわがらないいいいいいいい!」 「ゆぅ、なんだかちからがはいらないよ・・・」 「れいむのあかちゃんたちだいじょうぶかな・・・」 「ゆっ、れいむもがんばりゃないt・・・」 ちっぽけな点はやがて見えなくなってしまいました。 「おきるんだぜ!はるがきたんだぜ!」 まりさがまわりのゆっくりを起こし始めます。 その声で周りのゆっくりが目を覚まし始めました。 あれからなにも起きず、スポットの住人は無事春を迎えることが出来ました。 「「「「ゆ~、しゅっきりー!」」」」 子れいむ達4匹も初めての越冬を無事乗り越えれたようでした。 「まりしゃおねーちゃんありがと!」 「しゅっごいあたたかかっちゃよ!」 「それはよかったんだぜ!まりさもうれしいぜ!」 まりさは帽子を被りなおしました。 そこに入り口を開けにいっていたありすとちぇんが戻ってきます。 「いりぐちがあいたわよ!」 「そとははるだよー」 「わかったんだぜ!」 三匹は子れいむに向かい問いかけます。 「れいむたちはどうするんだぜ?」 「れいむはまだきてないみたいね・・・」 「わかるよー、まだおきてないんだよー」 子れいむの返事は決まっていました。 「「「「おうちでゆっくりまちゅよ!」」」」 「わかったよー!ならこれもっていってねー」 「それがあればしばらくもつんだぜ!」 「れいむがもどったらもっとおいしいものをもらいなさい!」 三匹が渡したのは巣の近くで取った植物や虫をまとめたものでした。 「ありがちょー!」 「おいししょー!」 「ちょっとたべちゃいよ!」 「だめだよ!おかーしゃんがかえるまでゆっくちたべるよ!」 それぞれ食べ物を抱えたれいむ達は3匹とぱちゅりーに見送られてこれまで暮らしていた巣に戻りました。 「ひしゃしぶり~!」 「やっぱりここはゆっくちできるね!」 「おねーちゃんゆっくちちていっちぇね!」 「れぃむもゆっくちしていってね!」 巣には食べるものは何もありませんでしたが、それ以外は何も代わりがありませんでした 貰った食べ物を置き、4匹の子れいむは母れいむの帰ってくるのを待ちました。 いつまでもいつまでも待ちました。 それでも母れいむは帰ってきません。 もう貰った食べ物は食べ尽くしてしまいました。 「おねーしゃん、おにゃかすいた・・・」 「もうすぐおかーしゃんがもどってくるからゆっくちまとうね・・・」 子れいむ達はもう食べ物をとりにいく元気は残っていませんでした。 話しているのも二匹だけで、もう二匹は既にうつろな目で上を見つめています。 それでも子れいむ達は母れいむの帰りを信じていました。 子れいむ達の巣の外では、冬を乗り越えた生き物が元気よく動き回っていました。 このSSに感想を付ける
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冬の足音が聞こえてきた秋の昼時、枯れ木の根元に出来た穴から小さな影が4つ現れました。 「きょうはなにちてあしょぼーか!」 「おいかけっこ!」 「ゆ~それじゃゆっくちできないよ!」 「じゃあかくれんぼ!」 仲良く遊び始めたのはゆっくりれいむと呼ばれる最近になってあらわれたナマモノです。 ゆっくりれいむは紅いリボンと黒髪がトレードマークのもっとも多くいるゆっくりでした。 遊んでいるれいむたちは人間で言う子供で大きさは野球ボールぐらいでした。 まだ生まれて1年も経ってない4匹は仲良くかくれんぼを始めます。 最初ということで一番大きいおねーちゃんれいむがオニになりました。 残りの3匹は思い思いに隠れ場所を探しに行きます。 「も~い~かい!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ~・・・いーち!にー!さーん!だー!らーぶ!・・・」 「ゆゆっ、ここはれいむがかくれちぇるよ!べつのところにいってね!」 「ゆ!わかっちゃよ!」 「れいみゅはこっちにいくよ!」 「じゃあれーむはむこうにいくね!」 一匹のれいむは石の影にかくれました。 もう一匹は枯葉の下に。 「もーいーかい!」 「ゆっくりできたよ!」 「じゃあいくよー!」 石に隠れたれいむも枯葉にかくれたれいむはすぐに見つかってしまいます。 「次はれいみゅのばんだよ!」 「ゆゆ・・・まだれぃむがのこっちぇるよ!」 「みゅ~さっさとみちゅけるよ!」 しかし、残り一匹はなかなか見つかりません。 それもそのはず、最後の一匹はかくれる場所を探して今も移動していたのです。 「ゆ~、なかなかみちゅからない・・・」 この子れいむは遊びということも忘れてゆっくり出来そうな場所を探していました。 やがて、今まで来たこともない遠い場所に来てしまいます。 「ゆー・・・ゆっ!ここどきょ!」 れいむは知らない場所でいることに不安を感じます。 「おねーちゃああああ!れぃむはここだよおおおおおお!」 しかし、叫んでも叫んでも返事は返ってきません。 姉れいむとは子れいむが思っていたよりも離れていました。 子れいむはもときた道を思い出して戻ろうとします。 しかし、隠れ場所を探しながら来たのでどこを通ったか覚えていませんでした。 もう少し大きくなっていれば巣に戻るための方法を親れいむから教えてもらっていたはずでした。 もう少ししたら、きっとお姉ちゃん達が来てくれる。 そう信じて子れいむは木の近くで姉達をじっと待つことにしました。 子れいむが木に寄り添うようにゆっくりし始めると、美味しそうな匂いがどこからか漂ってきます。 「ゆゆ!おいしそうなにおひ!」 子れいむは匂いに引き寄せられます。 匂いの元はある木の根元に生えているたくさんのキノコでした。 「ゆ~!おいしそうなきにょこ!」 子れいむはキノコに飛び込んでいきました。 姉れいむたちは探しても探しても見つからないれぃむを心配になり、巣にいた母れいむを呼びに戻りました。 子の訴えを聞いた母れいむはすぐに巣の周りを探し始めました。 姉れいむ達は危ないからと巣でお留守番です。 母れいむは危険そうな場所を一つずつ調べていきます。 しかし、れぃむはどこにもいません。 母れいむはあきらめずに探し回りました。 やがて、普段は来ない森の奥に足を踏み入れます。 「れいむのかわいいれぃむー!どこにいるのー!」 母れいむは懸命に叫びました。 「ゆっ?」 子れいむがお腹を膨らませてゆっくりしていたころ、どこからか母親の声が聞こえました。 「おかーしゃああああああああん!」 先ほどまでキノコを食べることに夢中で自分が迷っていることを忘れていたれぃむは母親の声で自分のおかれている状況を思い出しました。 そして、母親に見つけてもらおうと声を張り上げます。 先ほど食べたキノコのおかげで大分大きな声が出せました。 大きな声は森に響き、とうとう母親の耳に入ります。 「ゆゆ!れぃむのこえだよ!」 「おかああさああああぁぁぁぁあぁん・・・」 「いまいくよ!そこでゆっくりしててね!」 母れいむは子れいむの声に耳を澄まして位置を探ります。 森の中では声が反射し場所がわかりにくかったですが、子への愛なのか母れいむは迷わずに足を進めていきました。 やがて、一つの木の下で泣き叫んでいる子れいむを見つけました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていっちぇね!・・・おかーしゃん!」 「だいじょうぶだった?けがしてない?」 「れぃむはごたいまんぞくだよ!」 母れいむは子れいむの声を聞き、自分の目で確かめて子の無事を確認します。 「だいじょうぶそうだね!」 「おかーしゃんごわがっだよおおおおおおおお!」 「もうひとりでこんなとおくまできちゃだめだよ!」 「ゆぅうううう、おかーしゃんごめんなさい・・・」 「わかればいいよ!もうくらくなるからはやくかえろうね!」 「ゆっ!そうだ!おかーしゃん!れいむきのこみちゅけたよ!」 「ゆゆっ!きのこ!?」 「しょーだよ!このうらにいっぱいはえちぇるよ!」 子れいむはそういって木の裏へと跳ねていきます。母れいむは道に迷わないように確認してから子れいむの後を追いました。 「このさきにきのこあるよ!!」 「ゆっゆ!・・・しゅご~い!」 「いっぱいあるからおねーちゃんたちにもあげりぇるよ!」 「そうだね!ぜんぶもってかえろうね!」 いそいそと口にキノコを含んでいく母れいむ。 子れいむはどんどん口に入っていくキノコを見て目をきらきらと輝かせました。 「おかーしゃんのいぶくろはうちゅうだね!」 「ゆふん!」 子れいむの声援に答えるように母れいむはキノコを口に含みます。 やがていっぱいになると母れいむは子れいむと共に巣に戻りました。 巣では帰りの遅い母れいむを残った子れいむが心配していました。 「おかーしゃんおかえりなさい!」 「ゆゆっ!おかーしゃんおおきくなっちぇる!」 子れいむが驚いていると母れいむは口から大量のキノコを吐き出しました。 「ゆゆゆ!おいしそう!」 「おかーしゃんどうしたの!」 「れぃむがみちゅけたんだよ!」 そういって母れいむの腋から現れた妹れいむに子供達はさらに驚きます。 「さすがれーむのいもうとだね!」 「でもしんぱいしたんだよ!」 「そうだよ!おかーさんがいないのにとおくにいかないでね!」 「うん、もうひちょりでそとにはいかにゃいよ!」 「れーむたちもきをつけるよ!」 母親と一番上の姉れいむに注意され、もう二度と勝手に遠くに行かないと子れいむ達は誓いました。 そんな子供達への説教が終わると、眼の前のキノコに話が移ります。 「これならしばらくだいじょうぶだね!」 「おかーしゃんがとりにいかなくてもへいきだね!」 「ゆ!そうだね!しばらくは巣でいっしょにゆっくりできるよ!」 「やっちゃね!」 「れぃむといっちょにいようね!」 突然降って湧いた幸運にれいむ達はうれしくてたまりませんでした。 それからしばらく、このれいむ家族は一度も巣から出ることなく、巣の中でゆっくりとしていました。 食べ物が無くなったらまたキノコを採りに行けば良い。母れいむは久しぶりにゆっくり出来たので上機嫌です。 子供達もそんな母親の様子を見てうれしくなり、母親に擦り寄って遊びました。 れいむ家族はずっとゆっくり出来ると思っていました。 しかし、四季の変わり目はもうすぐそこまで来ています。 巣からあまり出なくなったれいむ家族にはそれが分かりませんでした。 「まったく、れいむたちはなにをやってるのかしら!」 風が冷たく感じ始めたころ、一匹のゆっくりありすがれいむの巣に向かっていました。 このゆっくりありすは母れいむの友達で冬篭りの準備が出来てもやってこない母れいむに痺れを切らしてやってきたのでした。 巣の前までやってくるとありすは中にいるであろうれいむ達に声をかけます。 「ゆっくりしていってね!」 しかし、待てども待てども返事が返ってきません。 このまま待っていても埒が明かないので、ありすは巣に入りました。 中ではれいむ達がキノコを食べてとてもゆっくりしていました。 「ゆっ!おいしそうなきのこね!」 「ゆゆっ!ありす!」 いきなり現れたありすに子供達は母れいむの後ろにかくれました。 「こわがらなくていいよ!このありすはれいむのともだちだよ!」 「そうよ!さっきからよんだのにへんじがなかったわ!だからとかいてきじゃないけどあがらせてもらったわ!」 「ゆ~ありすごめんね!」 ありすの声に気付かずゆっくりしていたれいむはありすに申し訳無さそうに謝りました。 ありすはそれで少しだけ悪かった機嫌を直して笑顔を見せます。 「ありすはきにしてないわよ!・・・ってそうじゃないわ!」 「ゆゆっ、どうしたのありす!」 「れいむたちがふゆごもりにこないからよびにきたのよ!」 「ふゆごもり?」 聞いたことのない単語に子れいむが不思議がります。 母れいむは子れいむに教えようとしましたが、時間がないのかありすが急かしました。 「いまはじかんがないわ!すぐにじゅんびしてゆっくりすぽっとにむかってね!」 「ゆ!わかったよ!」 「じゃあありすはもういくわ!れいむもゆっくりしないでね!」 ありすは言いたいことを言うとすぐにれいむの巣を離れました。 れいむ達が住む地域は冬にはかなり冷え込み、ゆっくり家族だけでは越冬できませんでした。 なので、ゆっくりスポットと呼ばれる大きな洞窟などに集まって身を寄せ合って眠り春を待つようになっていました。 ゆっくりスポットにはゆっくり制限があり、主にぱちゅりーの判断で入れるゆっくりの数を制限していました。 ありすが急いでいたのはゆっくり制限で入れなくなってしまうのを恐れたからです。 母れいむも一度ゆっくりスポットで越冬を経験していたのですぐに準備を始めようとします。 「おかーしゃんふゆごもりってなーに?」 「ゆーっとね、もうすぐここじゃゆっくりできなくなるんだよ」 「ゆゆゆゆ!?」 「だから、みんなのいるばしょにあつまらないといけないの!」 「そーなのかー!」 「れーむたちもじゅんびしてね!すぐここをでるよ!」 母れいむはすぐにゆっくりスポットに行く準備を始めました。 母れいむは子れいむもすぐに準備してくれると思っていました。 なので、れぃむが反対したのに驚きました。 「やだ!れぃむはまだうごきたきゅないよ!」 「どおおおしてええええ!はやくうごかないとゆっくりできなくなるよ!」 「でもきのこしゃんまだいっぱいあるよ!」 「ゆゆゆ・・・」 冬篭りには食料は必要ありません。 だから巣に残っている食料はすべて捨てる必要がありました。 れぃむは自分が見つけた食べ物を残していくことが不満だったのです。 「まだあっちゃかいよ!きのこたべてからでもまにあうよ!」 「ゆゆゆ・・・」 れぃむの発言に母れいむは困ってしまいます。 これを見た他の子れいむは相談してれぃむの方に回ります。 この子れいむ達もキノコに不思議な魅力を感じていたのでした。 「きのこちゃべちぇからいこうよ!」 「そうだよ!」 「もっちょゆっくりしちゃいよ!」 「ゆっくち!ゆっくちぇ!ゆっくりょ!」 母れいむは子れいむの反論に去年の冬篭りの記憶を思い出そうとしました。 母れいむが入ったゆっくりスポットはまだ時期が早かったので洞窟の中はすかすかでした。 母れいむは仲間が集まる間スポットの周りの食べ物を食べたり、他のゆっくりと話したりして冬眠まで過ごしたのを思い出します。 今回もまだまだ空きがあるだろう。母れいむはそう結論付けました。 「わかったよ!きのこがなくなるまでここでゆっくりしようね!」 「おかーしゃんだいちゅきー!」 「ゆっくりしようね!」 母れいむが賛成してくれて子供達は大喜びです。 そんな姿を見て母れいむも反対しなければ良かったと思いました。 こうして、ありすの忠告も無視して母れいむは巣でゆっくりし続けました。 今は友達よりも子供達のほうが大事でした。 母れいむはしばらく巣から出てないことも忘れて、巣で子供達と仲良くゆっくりとしていました。 「ゆ~、とうとうさいごのきのこだね!」 「これをたべたらゆっくりすぽっとにむかおうね!」 「とうみんたのちみ!」 「しゅっごいゆっくりできそうだよ!」 「ゆっくちできりゅといいね!」 あれからもキノコを食べ続けて3日後、とうとうキノコがなくなりました。 キノコ以外の食べ物も残っていたので残さず食べました。 もう巣には食べ物は残っていません。 れいむ達は巣を枯葉と枝で上手に隠して外に出ました。 「ゆ~、しゃ、しゃぶいいいいいいいい!」 「ゆっくりできないいいいいいいい!」 「ゆぐぐぐぐぐぐう!」 「ぐるじお・・・」 保温効果のあった土の中からみて外の世界は極寒です。 震えてる子れいむに母れいむは用意していた白いもこもことした綿を被せました。 「これでさむくないよ!」 「ゆ・・・ほんちょだ!さみゅくないよ!」 「ぽかぽかー!」 「これならゆっくりできるよ!」 「ゆぅ~ん」 母れいむの用意していた綿は子れいむ達をすっぽり覆いました。 上手に穴を開けているので動きを妨げることもありません。 元気になった子供達を連れて母れいむは記憶の中で一番近いぱちゅりーの巣に向かいました。 ゆっくりスポットはぱちゅりーが管理してることがほとんどです。 ぱちゅりーの巣の近くには必ずと言っていいほどゆっくりスポットがありました。 れいむ達がゆっくりスポットにつくと、スポットは冬眠のために入り口を閉じている最中でした。 れいむ達は急いで中に入れてもらおうと指揮をとっているパチュリーのところに向かいます。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ぱちゅりー!れいむたちもなかにいれてね!」 「「「「いれちぇね!」」」」 れいむ達はすぐに中に入れてもらえると思い巣の入り口に向かいました。 しかし、ぱちゅりーが行く手を塞ぎます。 「ゆゆっ、ぱちゅりーじゃましないでね!」 「れいみゅたちはさむさでこごえしょうだよ!」 「はやくいれちぇね!」 母れいむの抗議に子れいむも声を重ねます。 それでもぱちゅりーは動きません。 ぱちゅりーは言い聞かせるようにれいむ達に話しました。 「ざんねんだけどもうゆっくりせいげんよ」 「ゆ!?」 母れいむは驚きます。 「そんなわけないよ!まだいっぱいあきがあるはずだよ!」 「あなたたちはくるのがおそすぎたのよ!こんなじきじゃあいてるわけないわ!」 「ゆぐぐぐぐ・・・」 何とか入ろうと穴の辺りを見ましたがこちらをまりさとみょんが見ていました。 ぱちゅりーだけならどうにでもできましたが、まりさとみょんが一緒では勝てません。 「もういいよ!いじわるなぱちゅりーのとこなんかいかないよ!やさしいぱちゅりーをさがすよ!」 「いじわるー!」 「ゆっくりちね!ゆっくりちね!」 れいむ達は別のゆっくりスポットに向かいます。 罵声を受けたぱちゅりーは怒るわけでもなく、どうしようもなかったのだと自分に言い聞かせ、スポットの入り口を防ぎに戻りました。 「どおしてどこもあいてないのおおおおおおおお!」 「「「「ゆわああああああああん!」」」」 あれからいくつかのゆっくりスポットを巡りましたがどこも入れてもらえませんでした。 思いつく限りの場所に向かいますが、制限になっていたり、もう既に冬眠していたりしていました。 最初は強気であったれいむ達も辺りが暗くなるころにはこのまま入れないのではないかと不安げな表情を隠せなくなっていました。 「おかーしゃん・・・」 「ゆっ、だいじょうぶだよ!きっとはいれるところがあるよ!」 「しょ、しょうだね!」 「ゆうううう・・・」 子れいむの不安を母れいむは必死に宥めます。 そんな中キノコを見つけたれぃむがみんなに向かいました。 目には涙が溜まっています。 「おかーしゃん、おねーしゃんごめんにゃさい!」 「ゆゆゆ、どーしたの!?」 「れぃむのせいでこんなことになっちゃから・・・」 「れぃむ・・・」 子れいむは自分のせいだと責任を感じていました。 母れいむも姉れいむも何も言えません。キノコのとき一緒に賛成したことを忘れていませんでした。 母れいむはそんな子れいむににっこりと微笑みました。 「つぎのすぽっとはぜったいあいてるからだいじょうぶだよ!」 「おかーさんほんとう?」 「ほんとうだよ!あそこはいちばんおおきいからね!」 母れいむの自身に満ちた顔に子れいむは涙を止めました。 他の子れいむにも元気が戻ります。 母れいむは嘘を付いていました。 しかし、今は元気であってほしいと母れいむはばれない様に懸命に演技しました。 次のスポットが母れいむの知る最後のスポットです。 ここに入れなかったられいむ達は死ぬしかありませんでした。 「ゆゆっ、ここだよ!」 「ゆ~、おおきいね!」 れいむ達は大きそうに見える洞窟の前にいました。 幸い、入り口にぱちゅりーが見えました。 まだ冬眠してはいないようです。 れいむは今度こそと自分に気合をいれ、ぱちゅりーに向かいました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「れいむたちをいれてください!」 頭を下げてぱちゅりーに頼み込みます。 子れいむはその様子を心配そうに見つめていました。 「ゆぅ・・・もういっぱいだったかしら・・・」 「だいじょうぶだよ!れいむたちはいれるよ!」 制限に来ているか考えるぱちゅりーをみてれいむは入れてもらおうと必死に食らい尽きます。 ぱちゅりーが難しい顔をしているとれいむ達のしった顔が現れました。 「あら!れいむたちじゃないの!?」 「ありす!」 友達の顔を見てれいむは笑顔を取り戻します。 「あなたたちどこもはいれなかったの!?」 「ゆぅ・・・」 「だからゆっくりしないでっていったのよ・・・」 ありすでも制限はどうしようもありません。 れいむが再び不安な顔になろうとした時、奥から二匹のゆっくりが現れました。 「わかるよー、はいりたいんだねー」 「そこのおおきいれいむだけならはいれるんだぜ!」 奥からやってきたのはゆっくりちぇんとゆっくりまりさでした。 ちぇんが入り口の騒ぎに気付き、まりさと一緒に数を調べてくれていたのです。 やっと掴んだ一匹の空き。しかし、れいむ達は4匹。 「おかーしゃんれーむたちははいりぇないの?」 「おかーしゃん・・・」 「ゆぐぅ・・・」 母れいむに置いていかれるのではないかと子れいむは急に不安になりました。 母れいむよりそって離れたくないと頬をむにゅっと引っ付けます。 困った母れいむにまりさは提案しました。 「いっぴきぶんのあきだけどちびたちなら4ひきいけるんだぜ!」 「かなしいのはわかるよー、でもどっちかしかはいれないよー」 「れいむ・・・」 母れいむは決断を迫られました。 答えはもう決まっていましたが。 「じゃあこどもたちをおねがいするよ!」 「わかるよー、かなしいけつだんだねー」 「わかったんだぜ!こどもたちはまりさがかならずせわするぜ!」 「れいむ、ほかにあてはあるの? れいむの決断にちぇんが同情し、まりさが子供を置いていくれいむに心配させないように話しかけ、ありすはれいむの心配をしました。 「だいじょうぶだよ!まだすぽっとはあるよ!」 「そう、ならいいわ!いそいでむかったほうがいいわよ!」 れいむの自信満々な顔にありすも納得し、れいむに激励を送りました。 「むきゅー。きまったようね」 「こどもたちをおねがいね!」 「わかったわ。じゃあここもしめるわね。」 母れいむを置いてゆっくりスポットの入り口が閉まりだします。 子れいむは徐々に見えなくなる母れいむに向かって飛び跳ねていきます。 母れいむは心配そうな子れいむを安心させるように微笑みました。 「ニヤ・・・」 「ユッ!?」 その母れいむの表情は子れいむ達の動きを止めました。 とうとう入り口が完全に閉まってしまいます。 もう子れいむではどうすることも出来ませんでした。 「おかーしゃん・・・」 「だいじょうぶだぜ!ほかのばしょにきっといけるんだぜ!」 「そうよ!それよりはるにおかーさんにあえるようにとうみんするのよ!」 子れいむ達はスポットの奥に向かいます。 初めて入ったゆっくりスポットには様々なゆっくりが犇めいていました。 「ゆ~、なんだかあかるいね!」 「ほんちょだ!おうちはこんにゃにあかるくなかっちゃよ!」 「どこかあいてるのかな?」 「ゆぅぅうん・・・」 子れいむ達はみょんに明るいスポットを不思議そうに思い、辺りを見回します。 やがて空中に浮いている白い物体を見つけました。 「あれだよ!あれがあかりゅいんだよ!」 「あれなんだろ?」 れいむの質問にまりさが答えます。 「あれはみょんのはんれいってやつだぜ!」 「はんれい?」 「よくわからないんだぜ!でもだいじなものらしいぜ!」 「ゆゆっ!」 だいじなものと聞いてれいむは自分のリボンを思い浮かべます。 「あいつがみょんだぜ!」 「ちーんぽ!」 「ゆっくりしていってね!」 初めて会ったみょんは変な泣き声でしたが子れいむ達は不思議と挨拶していました。 他にも様々なゆっくりと会った後、まりさの言っていた空きにつきました。 「ここだぜ!ちょっとまわりにうごいてもらってありすとちぇんもはいれるようにしたんだぜ!」 「さすがまりさね!」 そこには藁が敷かれていました。 これなら暖かそうです。 「わかるよー、ちょっとすくないよねー」 「さすがちぇんだぜ!」 いつの間にかいなくなっていたちぇんが戻ってきました。 子れいむ達からはまりさに隠れて見えませんでしたが、すぐに口に藁を咥えたちぇんが見えました。 「きみたちはそれじゃたりないよー」 ちぇんはそういい、子れいむ達の周りに藁を積んでいきます。 「ぽかぽか~」 「ちあわちぇ~」 子れいむは母れいむとちぇんの用意してくれた藁と綿でぬくぬくです。 しかし、まりさたちの顔はまだ晴れていませんでした。 「ゆぅぅ、これじゃたりないんだぜ・・・」 「こまったわ・・・」 「もうわらはなかったよー・・・」 悩んだ結果、まりさが防止を脱ぎだしました。 「まりさどうしたの!?」 「このぼうしをかぶせばあったかくなるんだぜ!」 「わかるよー!それならじゅうぶんだよー!」 まりさは子れいむの上に帽子を置きます。 「ゆ~、なんだかねみゅくなっちぇきた・・・」 「れーむも・・・」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「ゆゆゆゆ・・・」 子れいむ達は冬眠のための眠気で船を漕いでいました。 「もうだいじょうぶだぜ、まりさたちもいっしょにねるんだぜ」 「またはるにあいましょうね」 「わかるよー、ぜったいだよー」 既に眠っている子れいむを見ながら3匹はゆっくりと眠りにつきました。 「ざ、ざぶいいいいいいいいいい!」 木枯らし吹き荒れる森に母れいむの悲鳴が響きます。 母れいむは必死にスポットを探しました。 しかし、開いている場所を見つけれず、辺りは暗くなっていました。 さらに追い討ちをかける物が空から降り始めます。 「ゆゆっ!?ゆきだあああああああ!」 母れいむには死の雪でした。 たまらずれいむは近くにあった木の根元の穴に逃げ込みます。 雪は降り止む気配を見せませんでした。 「ゆ~、もうつかれたからあしたさがすよ!」 れいむは独り言を呟いて眠り始めました。 一日中飛び跳ねていたれいむはぐっすりと眠ってしまいます。 雪はれいむのことなど気付かないかのように世界を白く変えていきました・・・ 「ゆゆっ・・・すっきりー!」 母れいむは十分な睡眠を取り、元気に目を覚ましました。 そして穴から外に元気よく飛び跳ねます。 そんなれいむの飛込みを白い地面はしっかりと受け止めました。 「ゆ?ゆゆゆゆううううう!」 森は姿を変えていました。 白くなった地面はれいむのとんだあとを綺麗に残していました。 れいむは気付いてしまいました。 もう開いているゆっくりスポットはないのだと。 それでもれいむは探すしかありませんでした。 ちっぽけなれいむなど白い世界では唯の点です。 「ゆーしょ!ゆーしょ!」 「ゆ~、しろくてどこかわがらないいいいいいいい!」 「ゆぅ、なんだかちからがはいらないよ・・・」 「れいむのあかちゃんたちだいじょうぶかな・・・」 「ゆっ、れいむもがんばりゃないt・・・」 ちっぽけな点はやがて見えなくなってしまいました。 「おきるんだぜ!はるがきたんだぜ!」 まりさがまわりのゆっくりを起こし始めます。 その声で周りのゆっくりが目を覚まし始めました。 あれからなにも起きず、スポットの住人は無事春を迎えることが出来ました。 「「「「ゆ~、しゅっきりー!」」」」 子れいむ達4匹も初めての越冬を無事乗り越えれたようでした。 「まりしゃおねーちゃんありがと!」 「しゅっごいあたたかかっちゃよ!」 「それはよかったんだぜ!まりさもうれしいぜ!」 まりさは帽子を被りなおしました。 そこに入り口を開けにいっていたありすとちぇんが戻ってきます。 「いりぐちがあいたわよ!」 「そとははるだよー」 「わかったんだぜ!」 三匹は子れいむに向かい問いかけます。 「れいむたちはどうするんだぜ?」 「れいむはまだきてないみたいね・・・」 「わかるよー、まだおきてないんだよー」 子れいむの返事は決まっていました。 「「「「おうちでゆっくりまちゅよ!」」」」 「わかったよー!ならこれもっていってねー」 「それがあればしばらくもつんだぜ!」 「れいむがもどったらもっとおいしいものをもらいなさい!」 三匹が渡したのは巣の近くで取った植物や虫をまとめたものでした。 「ありがちょー!」 「おいししょー!」 「ちょっとたべちゃいよ!」 「だめだよ!おかーしゃんがかえるまでゆっくちたべるよ!」 それぞれ食べ物を抱えたれいむ達は3匹とぱちゅりーに見送られてこれまで暮らしていた巣に戻りました。 「ひしゃしぶり~!」 「やっぱりここはゆっくちできるね!」 「おねーちゃんゆっくちちていっちぇね!」 「れぃむもゆっくちしていってね!」 巣には食べるものは何もありませんでしたが、それ以外は何も代わりがありませんでした 貰った食べ物を置き、4匹の子れいむは母れいむの帰ってくるのを待ちました。 いつまでもいつまでも待ちました。 それでも母れいむは帰ってきません。 もう貰った食べ物は食べ尽くしてしまいました。 「おねーしゃん、おにゃかすいた・・・」 「もうすぐおかーしゃんがもどってくるからゆっくちまとうね・・・」 子れいむ達はもう食べ物をとりにいく元気は残っていませんでした。 話しているのも二匹だけで、もう二匹は既にうつろな目で上を見つめています。 それでも子れいむ達は母れいむの帰りを信じていました。 子れいむ達の巣の外では、冬を乗り越えた生き物が元気よく動き回っていました。 このSSに感想を付ける
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罪 10KB 罪の自覚 「罪」 ※虐待の描写は殆どありません ※現代設定(?)です ※独自設定があります ※ネタ被りがありましたらご容赦ください ※淡々としています ―ブツン。 頭の中で音がした。 その直後。 瞼を閉じていても痛みを感じるような、強烈な光を顔に当てられてれいむは目を覚ました。 体を動かそうにも、何かで押さえつけられているため叶わない。 あんよに何かが触れている感覚があり、ヒンヤリとした空気が体を包んでいた。 「……ゆ、ゆゆっ? ど、どうなってるの?!」 パニックを起こしかけたとき、光が弱まり、白一色だった世界がぼんやりと輪郭を取り戻した。 れいむは手術室のような部屋にいた。 冷たいマットのストレッチャーに乗せられ、ベルトで縛り付けられている。 無影灯があらゆる角度かられいむを照らす。 それ以外に明かりはない。 れいむは自分を見つめる2人の人間に気付いた。 1人は白衣を着ている。知らないお兄さんだった。 もう1人はお姉さん。 そのお姉さんの姿を見たとき、れいむは叫んだ。 「!! おねえさん?! おねえさんなの?!」 彼女はれいむの飼い主だった。 だが、れいむの呼びかけには身体を震わせるだけで答えてくれない。 部屋の明かりはれいむに集中しているため、表情も良く分からなかった。 代わりに白衣のお兄さんがれいむに言った。 「おはよう、れいむ。気分はどうだい?」 「ゆ?! おにいさんはだれ?! ここはどこ?!」 「落ち着いて。私は医者で、ここは病院だよ。 君は大怪我をして、今まで手術を受けていたんだ。 もう少しで“永遠にゆっくりする”ほどの酷い傷だった。 れいむ、覚えていないのかい? 君はおうちのお庭で倒れていたんだよ」 そう言いながら、れいむを拘束していたベルトを外してくれる。 お兄さんが優しい声をしていたこともあって、れいむは幾分落ち着きを取り戻した。 そして、お兄さんの言葉で自分に何が起こったのかをゆっくりと思い出し、震えだした。 「……ゆ、ゆ……! ……あ、……あぁぁ……!」 れいむの脳裏に、あの恐ろしい出来事が再生され始めた。 * * * * * * * * * れいむはおうちの中にいた。 なんで? だってれいむは飼いゆっくりだから。 ここはお姉さんとれいむのゆっくりプレイスだ。 お姉さんはどこ? 昼間はお仕事があるから、れいむは独りぼっちだ。 もう慣れたでしょ? そう、れいむはとてもゆっくりしたれいむなんだ。 だから寂しくなんかない。 お姉さんが帰ってくるまで、ゆっくり待っていられる。 でもその日はいつもと違った。 前の晩に、れいむはお姉さんと些細なことで喧嘩してしまい、朝の挨拶もしていなかった。 バタン、と玄関のドアが閉まり鍵のかかる音がした。 お姉さんが仕事に行ったのだ。 いつもなら見送りをしていたれいむは、居間のソファーで不貞腐れていた。 「れいむはわるくないもん……」 そう言って、れいむはぷくぅ、と膨れていたが、 時間が経つうちに、自分がしたことを後悔するようになった。 「やっぱりわるいのはれいむだよ……。おねえさんごめんなさい……」 謝りたくても、その相手はいない。 我が儘だった自分に腹が立って、ゆっくりできなくなった。 「おねえさん……」 この世界で一番ゆっくりさせてあげたいお姉さんにひどいことをしてしまった。 その罪悪感が、れいむをますますゆっくりできなくさせる。 「おねえさん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」 涙が溢れそうになるのを必死に堪える。 だって泣いたらゆっくりできないから。 お姉さんも言っていたじゃないか。 「笑顔が一番よ、れいむ。あなたに泣き顔なんて似合わないわよ」 いつのことだったか、微笑みながられいむを慰めてくれたお姉さん。 とっても暖かくていい匂いがした。 ―ああ、そうだ。 ゆっくりした想い出が、れいむの心を癒していく。 うじうじした気持ちを吹き飛ばす。 笑顔。 笑顔が一番だ。 お姉さんが帰ってきたらとびっきりの笑顔で迎えてゆっくりしてもらおう! いつの間にか、おうちの中は夕日で赤く染まっていた。 もうすぐお姉さんが帰ってくる。 ポヨヨンとソファーから飛び降りたとき、お庭に面した窓がガシャンと割れた。 冷たい風がれいむの頬を撫でる。 「ゆぅ?!」 振り返るれいむ。 窓を割って入ってきたのは黒帽子のゆっくりまりさだった。 「なかなかいいおうちなんだぜ! まりささまにふさわしいんだぜ!」 薄汚れた体。 典型的な野良ゆっくり。 そしてお決まりのセリフ。 「だ、だめだよ! ここはおねえさんとれいむのおうちだよ!」 反射的に叫んだれいむ。 まりさはそこで初めてれいむの存在に気が付いたようだった。 「……! ……なんだ、れいむだったのかぜ」 「こ、ここはおねえさんとれいむの……」 「うるさいんだぜ! にんげんなんかにかわれているゆっくりが、まりささまにさしずするんじゃないのぜ」 れいむを無視して、おうちを荒らそうとするまりさ。 手始めに、鉢植えに咲いている花を食べようとした。 「やめてぇっ!!」 鉢植えには赤い花が咲いていた。 れいむがお願いして買ってもらったものだ。 れいむとお姉さんはその花の香りが大好きだった。 思わず体当たりをするれいむ。 予想外の攻撃に、まりさは驚きの表情を浮かべて、そのまま転がった。 ポヨンポヨンと勢い良く、2匹はそのままお庭に飛び出した。 ドテッ、ボヨン、と地面に叩きつけられるれいむとまりさ。 暖かかったおうちの中から一転して、肌を刺すような寒さに襲われた。 「ゆうぅぅ……!」 今まで経験したことのない痛みと恐怖に震えるれいむ。 そんな中で、れいむはまりさがどれだけ辛い環境にいたのかを理解した。 まりさがどうしておうちの中に入ってこようとしたのかを理解した。 「……まりさ……ごめんね……れいむは……」 まりさの方を向いたれいむの目に映ったのは。 まりさはれいむを睨んでいた。 ゆっくりできない顔だった。 ブツブツと何かを呟いていた。 「……むの……」 「……? まりさ……?」 「くずのれいむのぶんざいでぇえええええええええええええっ!!」 跳躍するまりさ。 見上げるれいむ。 落ちてくるまりさ。 動けないれいむ。 ―たすけて、おねえさん。 強い衝撃を感じたのを最後に、れいむの意識は途切れた。 * * * * * * * * * ―ブツン。 「ゆわぁああああああ! あああああああああああ!」 「大丈夫だ。れいむ、落ち着いて。大丈夫だから」 必死になって暴れるれいむを誰かが押さえつける。 誰? この声は……確か……。 れいむが見上げると、そこには白衣を着たお兄さんがいた。 「全て思い出したんだね、れいむ」 「ゆ……? おにいさん……? まりさは……?」 「もう終わったよ。終わったことなんだ」 れいむが大人しくなると、お兄さんは手を離した。 部屋全体を照らす明かりがつく。 お姉さんがれいむを見つめていた。 「ゆうぅ……! おねえさん、れいむ……」 そこから先は言えなかった。 お姉さんは泣いていた。 最初はれいむが助かって、嬉しくて泣いているんだと思った。 でも違う。 お姉さんは、とても悲しそうな顔をしていた。 「……おねえさん……? どうしたの……?」 お姉さんはただ涙を流すだけ。 白衣のお兄さんがお姉さんに向かって言った。 「もう充分でしょう。この『まりさ』はれいむの記憶をほぼ完璧に追体験しました」 ―え? ―まりさ? ―まりさがどこにいるの? 混乱するれいむ。 ―れいむ? ―そうだよ、れいむはれいむなんだぜ。 ―あれ? ―いまれいむはなんて……? ―なんだろう、おかしいよ……おかしいんだぜ……。 ―きもちがわるい……たすけて……おねえさ……。 混濁する意識の中で助けを求める。 「システムとの接続は一時的に切ったから、君の自我の優位が戻ってきているんだ。 でも、れいむの記憶から得た知識で、これが何かは分かるだろう?」 お兄さんが何か言ってる。 ―なにをいってるの……? ―いみがわからないよ……? ―れいむを……まりさを……たすけて……。 お兄さんが目の前に何かを置いた。 ―ああ、これは……。 それは鏡だった。 自分の全身が映し出される。 鏡の中にいたのは。 「……ど……、どうして……まりさが……いるの……?」 そこにいたのは自分を襲ったまりさ。 帽子、髪型、目つき、口元。 忘れるわけがない。 「うそ、なんだぜ……? だって……まりさは……」 そう言った瞬間、全てを思い出した。 人間のおうちに侵入して、れいむに見つかったこと。 れいむと一緒にお庭に転がり落ちたこと。 れいむにやられたことで、激しい怒りを覚えたこと。 そして、れいむをぐちゃぐちゃになるまで踏み潰して、殺したこと。 「ゆわぁあああああああああああああああああああああっ!!」 まりさは絶叫した。 * * * * * * * * * 私はまりさに、自分のことを「医者」だと言ったが、実際は少し違う。 確かにゆっくりを治療したりもするが、本業はゆっくりの研究だ。 ストレッチャーの上のまりさには2本のコードが繋がっている。 ちょうど、こめかみの辺りに突き刺すような感じだ。 そのコードの先には機械と、れいむから摘出した餡子が接続してある。 試作品だが、上手く機能してくれた。 ここに運ばれてきたとき、れいむは既に蘇生が不可能な状態だった。 そしてれいむと共に連れてこられた、野良ゆっくりのまりさ。 辛うじて無事だった僅かな餡子と、健康な体。 れいむの飼い主の希望で、れいむの記憶をまりさに移植することとなった。 この処置の目的はふたつ。 ひとつは、まりさに己の罪を自覚させること。 そしてもうひとつは……。 「ゆぅううう……! ゆぁあああああ……!」 れいむの記憶に悶え苦しむまりさ。 それも間もなく終わる。 「まりさ」 私の呼びかけに、まりさは涙でいっぱいになった瞳を見開く。 「君が殺したれいむがどれだけ愛されていたか理解できたか?」 「……」 「君がどれほど酷いことをしたか理解できたか?」 「……」 「まりさ、この『まりさ』のことをどう思う?」 私は鏡の中のまりさを指し示す。 短い沈黙の後、まりさが呟いた。 「……このまりさは……わるいまりさ……だよ……。……ゆっくりできない……ひどいまりさだよ……。 ……だから……せいさいして……もう……ころして……」 「そうか、分かった。その願いは半分だけ叶えよう」 私はコンソールを操作した。 モニターの波形が大きく揺れ動く。 「ゆぐぇばばばばばばばばば……!!」 まりさはグルンと白目を剥き、痙攣した後、意識を失った。 * * * * * * * * * れいむが意識を取り戻したとき、目の前にお姉さんがいた。 「……おねえさん……? っ! おねえさん! おねえさぁんっ!!」 飛びつくれいむをお姉さんは優しく抱きかかえる。 その顔はいつもと変わらない微笑みを浮かべていた。 「おねえさん……! れいむ、こわいゆめをみたよ……! こわかったよぉ……!」 腕の中で泣きじゃくるれいむに、お姉さんは言った。 「大丈夫よ、れいむ。何もかも夢なんだから。私がいるから安心して……」 「本当にこれで良かったんですね?」 誰かがお姉さんに言った。 「ええ……。私にはこの子しかいないんです。たとえどんな姿でも……。 無理なお願いをして、申し訳ありませんでした。……心から感謝します」 彼女たちはそのまま部屋を後にした。 残されたのは1人の研究者。 「体は『まりさ』で、記憶は『れいむ』か……。 ゆっくりの本質はどっちにあるんだろうな……」 れいむの残骸からサルベージできた記憶は完全なものではない。 『まりさ』の自我は消え去ったが、あれを『れいむ』といって良いのだろうか? また、研究テーマが増えてしまった。 明かりを消し、研究者は部屋を出ていった。 (了) あとがき 最後までお付き合いいただきありがとうございます。 れいむ お願いだから話しておくれ 聞かせて欲しいんだよ れいむの救い方を! ゆっくりにとって従順は美徳だ 最高の美徳だよ だから話しておくれ…… ……話せよ! 話せったら話せ! この饅頭がァ!! どこかの狂王がこんなことを言っていました。 いつかは、ストレートにれいむが幸せになる話に挑戦したいです。 書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 392 お前たちに明日はない ふたば系ゆっくりいじめ 411 明日に向って飛べ! ふたば系ゆっくりいじめ 430 幸せ ふたば系ゆっくりいじめ 463 フォレスト・オブ・マッドネス トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓誰がうまいこと言えと・・・ -- 2011-07-01 03 58 28 ↓↓うんうん が詰まらんのか 良かったな快便なのはいいことだ -- 2011-06-30 00 29 20 いい話じゃないか -- 2010-12-07 14 48 17 うん!つまらん -- 2010-11-15 05 06 05
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もはやワルノリの領域 -- カレー。 (2008-11-29 20 55 19) 誰が干したんだw -- 名無しさん (2008-11-29 20 57 03) そしてそのまま雨が降ってぬれいむに戻るという構図が頭に浮かんだ。 -- 名無しさん (2008-11-29 21 07 18) さぁ、次はたたまれいむだ -- 名無しさん (2008-11-29 21 08 57) ふれいむ→ぬれいむ→ほされいむ→ぬすまれいむ→にげれいむ→かえれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 20 48) くたばれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 24 27) いたわれいむ -- 牛鬼 (2008-11-29 21 27 01) おわれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 42 36) くそったれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 21 45 00) あばれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 22 44 40) おちつけいむ -- ケージ (2008-11-29 22 49 03) なんぞこのながれいむ -- 名無しさん (2008-11-29 22 51 30) もうやってられいむ -- 天滅地壊 (2008-11-29 23 13 57) なんというか霊夢への愛が伝わってきますね。あいされいむと言ったところでしょうかw -- 名無しさん (2008-11-30 00 02 01) ふれいむ→ぬれいむ→ほされいむ このループに入る前には(出番を)ほされいむがあることは余り知られていない 全録 巫女の伝統と現実/民明書房 -- 名無しさん (2008-11-30 00 58 27) なんかそのうち、ゆっくりみたいな別の生き物になっていきそうなwww そしてニコニコにはこわれいむというものがあってだな…… -- 名無しさん (2008-11-30 07 14 35) リボンの右にちゃんと燃えた跡があるのがまたwwww -- 名無しさん (2008-11-30 08 43 44) 続編マダー?次は干からびた霊夢? -- 名無しさん (2008-11-30 21 43 52) 名前 コメント
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『鳥籠』 6KB 観察 小ネタ 日常模様 飼いゆ 現代 うんしー 22作目です。前作からかなり間が空いてしまいました、すみません 『鳥籠』 窓際に据え置きされた鳥籠に ゆっくりれいむがちょこんと一匹 ペットショップからやってきた 銅バッジ付きのちいさな子れいむ 大きな大きな鳥籠に小さな小さなゆっくりれいむ 一見似合わぬ組み合わせ それでも道具を一通り 鳥籠の中へ搬入すれば 見劣りしない立派な立派なれいむのお家 不安気だったれいむのお顔も 今はちょっぴり嬉しそう 小さく微笑む飼い主に 笑顔を見せてぴょんぴょん跳ねる れいむが跳ねるお家の底には ティッシュがぎっしり敷き詰められて れいむのあんよはしっとりつやつや 赤いお飾り銅色バッジ 真っ黒い髪に小さなおさげ 薄ピンク色のもちもちお肌 ゆっくりれいむは鳥籠の中で これから素晴らしいゆん生を過ごす 立派な家具をもらったれいむは おうちの中をぐるりと見渡し 思いのままに散歩を始める 籠の中をうろうろすると 大きな木箱に行き当たる 中にはふかふかな綿がいっぱい 小さなれいむはその中へ 木箱の中は居心地よさそう 子れいむはそこを寝床にしようと考え 小さな声でお家宣言 「きょきょはれいみゅのおうちだよ」 異論を唱えるものはおらず 木箱はれいむのおうちになった やがてれいむはうとうとし始め 綿に包まれお昼寝タイム 何かいい夢見ているのかな? お顔がニッコリと笑ってる おめめが覚めたら冒険再開 寝床の外に出てみると 広い砂漠が遠くにちらり そこへ向かって歩き始める とっても遠い砂漠への道 すぐに疲れてしまったか れいむは途中で立ち止まる そして「しーしーでるよ」と言い出して 突然その場でいきみ出す すると飼い主手を差し伸べて 砂場の上へれいむを移す 「ここでしーしーするんだよ」 飼い主はれいむに対して注意する 子れいむは聞いているのかいないのか 体を前後にぷるぷる震わせ 砂場の上にしーしーを出す しーしーが終わるとれいむのお顔は とってもすっきりした表情 ところがそこで辺りを見渡し 何かが無いのに気づいた様子 目をうるうるとさせ始め おきゃーしゃんおきゃーしゃんとすすり泣く 親から離れた子れいむは 1匹だけでは寂しがり 1匹だけでは何もできない 飼い主が鳥籠の中に手を入れて れいむの頬に小指をすりすり 甘えん坊の子れいむは 頬をつたい落ちる涙のしずくを ぷるぷるぷると振り払い 小指に体をすーりすり すりすりするのは落ち着くようで れいむはやがて泣きやんだ 飼い主はそこで手を引っ込めて クッキーの袋を破って開ける 黄金色のクッキーが お家の中に入ってくると れいむはすぐに寄っていき 「なにしょれ?なにしょれ?」と興味を示す 一口ぺろりと味見をすると れいむの顔がパーッとほころぶ 「し、しあわしぇーーーーあまあましゃんはゆっくちできりゅよ!!」 引っ越し祝いのあまあまクッキー 一切れ二切れ頬張ると 悲しいことも忘れてしまい 元気がたくさん沸いてくる 甘くておいしい魔法のクッキー れいむはなんだか元気が出てきて 鳥籠の中をちょこちょこ歩く 水浴びできる小さなプールや キラキラ光る石を見つけて れいむはとってもご満悦 寝床に戻るとふかふかさんがいっぱい 今日はいっぱい冒険したので れいむはとっても眠たそう ピカピカ石を寝床に持ち込み それを抱いて今宵は眠る 今日はとってもいい一日だったね 明日はどんな一日になるんだろうね いろんな思いを巡らせて れいむはすーやすーや寝息を立てる それから毎日子れいむは 心がうきうきするような冒険を積み重ねていった 水のプールで水浴びをした 食べ物がたくさんある場所も発見できた れいむの狩りは百発百中 おいしそうな木の実や葉っぱを 小さなお口に溜め込んで 寝床へせっせと持ち帰る 今では自ゆんの寝床の中に ご飯がいっぱい蓄えられて 子れいむはとってもゆっくりしているようだ 鳥籠の中は意外と広く 体の小さな子れいむは 世界をとっても広く感じた 遠くまで続くティッシュペーパーの海 遠くに見えるは広い砂漠や水のオアシス 世界の端にはとっても高い 銀色をした鉄の山 その真ん中に木箱のお家 子れいむは世界の真ん中に自ゆんがいると感じ 世界に向かってお家宣言をする 「きょきょはれいみゅのおうちだよ!!ゆっくちしていっちぇにぇ!!!」 誰も反対するものはいない 晴れて世界は子れいむのものに 子れいむはとってもとっても嬉しそうだ 世界の内側には外敵が入ってこない 世界の外側には優しい優しい飼い主さんがいて 子れいむのことをとても可愛がってくれる 子れいむは飼い主さんのことが大好きになった 飼い主さんと子れいむの笑顔はとても輝いて見えた それからそれから子れいむは みるみるうちに大きくなって 鳥籠の中で窮屈な日々を過ごしている 少し歩けば行き止まり 今では寝床にも入れないので 木箱の寝床は無くなってしまった ピカピカ光る石もどこかに消えてしまった お水のプールも今では水溜り 広かった砂漠はただのトイレ 床のティッシュはじめじめしていて れいむのあんよは自ゆんの排泄物で汚れている 高くそびえる鉄の山はれいむにとって お外に出るのを妨げる邪魔な棒でしかない 飼い主さんに虐められることはないものの その代わりかまってももらえない 今ではすーりすーりもできない あまあまクッキーも食べさせてもらえない 自ゆん以外のゆっくりに出会う機会も全くない ゆっくりれいむが飼われる前 鳥籠の中で文鳥が飼われていた やがて老いた文鳥は 鳥籠の中で死んでしまった れいむは飼い主の心を癒すただの玩具 しょせん大きくなったら小さいころの可愛さは 跡形も無く消え去ってしまう 飼い主もゆっくりれいむにもう飽きて 今は鳥籠の中に放置するのみ 最低限の餌を与えられ れいむはそこで日々を過ごす 鳥籠は窓のすぐそばにあり れいむは鉄の棒と窓ガラス越しに お外の世界を見ることができる 視線の先には2匹のゆっくり 小道を歩むれいむとまりさ 2匹は広いお外の世界を 自由自在に歩き回る 2匹はれいむの飼い主さんの 家の庭に進入してくる 2匹はそこで高々と 嬉しそうにおうち宣言 その後2匹は仲良くいっしょに 花壇の花をむしゃむしゃしたり 蝶々を追って左へ右へ 2匹のことを羨ましそうに 籠の中から見つめるれいむ 「れいむもおそとにでたいよぉ、ゆっくりできるまりさといっしょに おはなさんをむしゃむしゃして、ちょうちょさんをおいかけたいよぉ」 飼い主さんはれいむの話を聞いてくれない それどころか鳥籠の中からも出してくれない その夜しくしく泣いていると 飼い主さんがやってきて 久しぶりのあまあまさんを れいむの前に差し出した 「ゆ、あまあまさんしあわせーーー!!そうだよかいぬしさんはほんとうはいいひとなんだよ れいむもおりこうさんにしてたらいつかきっとおそとにだしてもらえるんだよ!! かいぬしさん、ゆっくりしていってね!!」 鳥籠はれいむの安全を守ってきたが 同時にれいむの自由を奪った お外に出たいという夢も 籠の中では実らぬ徒花 鳥籠に幽閉されし餡子鳥 飛翔し得ぬも年だけは取り やがてれいむは老いていき 外の世界を知らぬまま 鳥籠の中で息を引き取る 銅バッジは頭についたまま 小さな小さな鳥籠に大きな大きなゆっくりれいむ 一見似合わぬ組み合わせ それでも死骸を一通り 鳥籠の外へ搬出すれば 見劣りしない立派な立派なれいむのお墓 楽しげだったれいむのお顔も 今はちょっぴり寂しそう 鳥籠は 命育む母なる守護者 飼い主の絶対性を示す主従の壁 羽をもぎ取る失意の牢獄 血の通わぬ冷たい鉄籠 さて今度はそこに何が入れられるのだろう 鉄籠あき過去の作品 ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1213.html
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注・続き物です。 洞窟に侵入してどれ程が経っただろうか。 群れの周辺の地理に詳しいまりさは、勿論の事この洞窟の事も知っており大体の作りも覚えていた。 ゆっくりの脳では普通そこまでの情報を記憶する事など出来ないのだが、 狩りの経験が豊富で群れを率いる責任感が強かったまりさはそういった普通のゆっくりには無いものを兼ね備えていた。 出来るならここをゆっくりの集会場か何かにしようと前々から考えていたのだ。 なので、れいむが居るであろう場所も大体の目星は付いていた。 出来るだけ敵のゆっくりに会わずにまりさはその場所へと向かう。 随分と進むと、最初に出会ったみょんと同じ様にゆっくりの見張りが居る。 れいむ種、しかも群れに昔から居た元同胞だ。 「ゆぅ…ゆぅ……」 どうやらうたた寝でもしているのか。 まりさの元にまで寝息が聞こえてくる。 出来るなら戦いたくなど無い。 まりさはそう考え、うとうとと頭を揺らすれいむに気付かれないように、ゆっくりとその脇を通過しようとする。 「そろーり、そろーり」 優秀なゆっくりであるまりさであるが、生物としての本能にも近い癖は抜け切らないのか。 こんな場面にも拘らず、自らの口で出さなくても言い音を出してすりすりと動き出す。 「そろーり、そろーり」 れいむの横から奥への通路へと差掛かろうとした時、突然れいむの「すや…すや……」という寝息が止まったかと思うと、 「ゆっ、そこにだれかいるの?」 と言う声が聞こえてきた。 まりさは心臓が飛び出すような感覚に陥り、その場で少し跳ね上がったりもしたが、 その洞窟の余りの暗さ故に、れいむはそれが元群れの長であったまりさだと気付いてはいないようだった。 「ゆゆ、じつはまりさは……はくれいむさまにたのまれて、このおくのれいむにようがあるんだよ」 「ゆぅ、そうなの。なんだかわからないけどたいへんね。ゆっくりがんばってね。」 「うん、ゆっくりがんばるよ。れいむもゆっくりしていってね」 「れいむはここでゆっくりするよ…すやすや……」 見張りである筈のれいむであるが、そこまで思考能力も高くないゆっくりな上、 寝起きであった事も合わさり全くまりさを疑う事も無く再び眠りに付く。 まりさの心中にはその場をやり切れた安心感と合わせて、そんな暢気なれいむに対して幾ばくかの怒りを感じていた。 自分があれだけ苦心して群れの皆を守ってきたと思ったのに、反乱を起こした者の部下としてこんなにゆっくりしているなんて。 妻であるれいむは敵に捕らわれ、どれ程酷い目に合わされているか。 そう思うと、眼の前のれいむをゆっくり出来なくさせてやりたい衝動に駆られた。 だが、このれいむにも家族は居るのであろう。 はくれいむの戦力に成す術も無くやられてしまった自分にも落ち度が有ったかも知れない。 まりさはそう思うことにして怒りを抑えて、先へと進む事にした。 更に暫く進むと其処には柵のようなものが掛かっており、まりさは其処にれいむが居ると確信した。 居ても経ってもいられなくなり、すぐさま駆け出す。 幸いな事に見張りなども無く、その柵の前まで辿り着くとまりさは中を覗き込む事が出来た。 人間の使う炎。 それをはくれいむは松明というものに移らせて扱う事が出来るらしい。 丁度、その柵の前にも一つ掲げられていたので、まりさは薄ぼんやりでは有るが中を確認することが出来た。 中にはれいむと思しき丸い球体が一つ存在している。 「ゆっ、そこにいるのはだれなの?まりさのいばしょならきくだけむだだよ、ゆっくりどこかにいってね」 「ちがうよれいむ。まりさだよ、ゆっくりたすけにきたんだよ」 「ゆっ、まり……さ!?」 そんなやり取りを交わした後、れいむはまりさの近くへと跳ね寄る。 まりさはれいむが正面を向かずに少し右斜めを向いて立っているのに若干の違和感を覚えたが、 松明の照らす明かりの中ではっきりとその顔を確認した後、顔に笑顔を浮かばせる。 すると次第に、嬉しい筈にも関わらずその目尻から涙が溢れ出す。 「ま……ま"り"ざぁぁぁぁぁ」 「でい"ぶぅぅぅぅ」 溢れ出る感情のまま大声で喜び合いたい二匹であったが、ここは未だ危険な場所であるのを理解して努めて小声でお互いの名前を呼び合った。 頬をすりすりとしようと更にれいむが近寄るが、二匹を隔てる柵に阻まれてそれは出来ない。 少し悲しそうな顔をしたれいむに、まりさは「だいじょうぶだよ」というと、外側からついたてになっている棒を外し、その柵の扉を開ける。 ゆっくりの作り出す牢屋だけに鍵などは無く、そういった手間が省けたのはこの二匹にとって幸いであろう。 「まりさぁ、まりさだ……たすけにきてくれたんだねぇ」 「あたりまえだよ、れいむ。あいするれいむを、まりさがみすてるはずないんだぜ」 そう言ってれいむがすりすりと頬擦りをし、まりさもそれに応える。 ふと、まりさは不思議な感触に顔をしかめる。 以前のれいむだったらもっともちもちして弾力のある肌をしていた筈なのに、この感触はざらざらとして湿気を感じさせない。 それに先ほどから、れいむの動きもどこかぎこちなかった。 まりさは数秒頬を合わせた後、薄暗い中でそのれいむの姿を眼を凝らして眺めてみる。 「ゆうぅ!!?」 音を立ててはいけないと思いつつも、まりさは思わず短い悲鳴をあげてしまう。 そのれいむの姿――以前は群れ一番と言っても過言でなかった美ゆっくりの姿は其処には無く。 髪は半分焼け縮れてボサボサとなり、頭に付いているリボンとにしても、もうほとんど原型を留めずに申し訳程度に頭の上に乗っているといった具合だ。 全身には暴行の後がはっきりと見て取れたし、今この時も頭の後ろには二、三本が痛々しく突き刺さったままだ。 何よりその顔の所々は焦げというのも遥かに超え、黒々と炭のようになっている部分がある。 特に右頬に至っては大部分が炭化し、れいむの笑顔もぎこちなく引き攣っている。 まりさが最初に顔を見せた時、れいむが正面を向かなかったのはこのせいだろう。 無意識の内に、夫であるまりさにその醜くなった部分を見せまいと振舞っていたのだ。 「ごめんね、まりさ…こんなになっちゃった……」 れいむの眼から、ポロリと大粒の涙が零れる。 「まりさ、れいむのこときらいになっちゃったよね?こんなゆっくりできないすがたになっちゃったんだもの」 そう呟くと、れいむは更に涙を零して眼を伏せる。 まりさが助けに来てくれたのは嬉しいが、もうこんな姿になってしまっては一緒にゆっくり出来ない。 そう考えると、れいむの心は哀しみで一杯になった。 すると、そんなれいむにまりさは静かに歩み寄ると、再びその頬に自らの頬をすり合わせる。 「そんなわけないぜ。まりさはれいむだからすきになったんだ。どんなすがたになってもそれはかわらないよ」 「でも、まりさ。まりさだったら、いくらでもれいむとはべつのゆっくりできることいっしょになれるよ?」 「れいむ……それいじょういったらまりさもおこるんだぜ。」 「ゆぅぅ…ぅ!?」 まりさに怒ると言われて少し怯えた表情をしたれいむは、一転して驚愕の表情に変わる。 自分の唇にまりさが唇を重ねてきたのだ。 れいむは一瞬焦ったが、直ぐにとろんとした顔へとなり、まりさにその身を委ねる。 数秒か数十秒か判らないが、れいむとまりさにとって至福の時間が暫く流れた。 時折、「んふっぅ」や「ゆふぅぁ」などという艶めかしい嬌声が聞こえるのは、お互いの舌を絡め合わせての「でぃぃぷちゅっちゅ」を行い、 すっきりとは別の、だがそれに近い快感を感じているからであろう。 先に後ろに引いたのはまりさの方であった。 二匹の間に唾液で出来た糸が出来る。 れいむは物足りないといった顔でまりさを見詰めたが、此処から脱出しなければいけないという状況を思い出し、それを口にする事は無かった。 「わかっただろ、れいむ。まりさはれいむとだけゆっくりしたいんだよ」 「……うん」 それ以上の言葉など要らなかった。 すぐにまりさは元来た道の説明をすると、身体を痛めているれいむに「だいじょうぶ?」と心配そうな顔をしながら寄り添って進もうとした。 するとれいむはまりさから離れ、 「れいむはだいじょうぶだよ。まりさのあしでまといになりたくないから、じぶんひとりであるくね」 と言い、笑顔を見せて前へと進み始めた。 その後頭部には未だに人間の手首ほどの太さの棒が突き刺さっていたが、それを抜こうとは考えなかった。 それを安易に抜いてしまえば、中の餡子が漏れ出て、直ぐに治療出来ない環境ではれいむが死んでしまうと考えたからだ。 まりさは前を行くれいむのその姿を見て、更にその身体の中から憎しみの炎が燃え上がってくるのを感じた。 脱出するのは想像していた以上に簡単であった。 途中の見張りはあの眠っていたれいむだけであったし、潜入直後に殺したみょんの死体も未だに片付けられていなかった。 あのはくれいむにしては無防備過ぎると感じたが、自分達がそうであるように向こうも完全なゆっくりで無いのだろうと考え先へと進んだ。 そのまままりさが入り込んできた穴まで進むと、二匹はすぐさまそこから脱出しようとした。 しかし―― 「どうしたのれいむ?ここから、ゆっくりでればおそとにでられるんだよ」 まりさに先に穴に入るよう言われたれいむであったが、穴に一度入ろうとして再び戻ってきたのである。 「もういちどがんばってみるね!!」 「からだがいたいだろうけど、ゆっくりいこうね」 そう言って、れいむを励ますまりさ。 それに対して笑顔で応え、再び前に進もうとしたれいむであったが、結果は同じであった。 「ゆあッ!!れいむのあたまのぼうさんがひっかかってまえにすすめないよぉ!!」 れいむが涙声でまりさに訴える。 頭に刺さった棒の一つ、頭から斜め上に生えるように伸びているそれが穴の入り口に引っ掛かって前へと進む事が出来ないのだ。 そんなれいむの状態に、まりさも顔をしかめて状況の打開策を考える。 「ねぇまりさ、まりさがれいむのあたまのぼうさんをぬきとってくれれば……」 「ゆっ!?だめだよれいむ、そんなことしたられいむのなかのあんこがもれてしんじゃうよ」 「ゆぅ、でも……」 脱出まであと少しというこんな所で足止めを喰ってしまうとは。 しかも、まりさの足手まといにならないと言ったにも関わらず、自らのせいで先に進めないという状況に陥り、 れいむの顔に影が差す。 暫く考えた後、まりさが覚悟を決めたように、 「こうなったら、しょうめんのどうくつのでぐちからだっしゅつするよ」 と言い出す。 それにはれいむもすぐに反対した。 この洞窟の奥であったからこそ警備が薄いのである。 正面から出て行っては到底逃げ切れるものではない。 自分だけが危険な目に会うだけならまだしも、助けに来てくれたまりさまで危険な目に会わせる事は出来ない。 「だったらどうすればいいのぉ!?」 「ごめんね、まりさ。せめてまりさだけでもここからおそとにでてね」 「どぼじでぞんなこというにょぉぉ!!れいむだけをおいてなんていけないよぅ!!」 れいむのその言葉に、まりさは顔をくしゃくしゃにして否定する。 互いが互いを気遣う為に、脱出への策は全くの平行線を辿るばかりであった。 そんなやり取りをしながら、時間だけが無情にも流れる。 二匹にも焦りの色は隠せない、そんな中。 「まりさ、おねがいがあるよ!!」 「おねがい?」 意を決したようにれいむがまりさに言う。 「れいむのあたまにあるぼうさんを、まりさがなかにおしこんでね!!」 「おし……こむ…!?」 れいむの思いも寄らぬ発言に、まりさは眼を丸くした。 有ろう事か、れいむの中に木の棒という異物を自分に押し込めというのだ。 それには流石のまりさも頭を左右に振って、「そんなことはできないよ!!」と涙声で拒絶するばかりであった。 「でも、それしかほうほうはないんだよ。ゆっくりりかいしてね!!」 「いやだよ、まりさはれいむにそんなことしたくないよ!!」 「まりさにしかできないんだよ!!」 「まりさはれいむをこれいじょうきずつけたくないよ!!れいむこそゆっくりりかいしてね!!」 「ゆぅ、このわからずや!!」 一向に進まぬ事に業を煮やしてか、れいむはまりさにドスンと体当たりをする。 だが、それは全く威力も無く、まりさはすこしよろけて後ろに下がるだけであった。 それでもまりさは突然のれいむの攻撃に非難の言葉を投げ掛けようと口を開こうとした。 「なにするんだよ、れい……む?」 まりさが正面を向くと、れいむはエグエグと泣き出していた。 「れいむだって……でいむだっていたいのはいやだよ。でも、まりざのあじでまどいになんでなりだぐないから……」 「ぞれにまりざのぞんななざげないずがだなんでみだぐないよ!!まりざはいづだっでがっごうよいまりざでいでほじいよ」 「れ、れいむ……」 れいむの涙ながらの訴えであった。 それに対し、まりさは少し眼を伏た後、キッと眼に力を入れれいむに近付き、 その後ろへと回り込む。 「わかったよ、れいむ。まりさがゆっくりなかへおしこむね!!」 「うん、わかってくれたんだね。ゆっくりおねがいね」 そう言って、れいむは来るであろう激痛を予想しながら、まりさに心配を掛けまいと明るい声で応えた。 まりさは「ゆーふー」と一回だけ深呼吸をすると、 れいむの中へ棒を真っ直ぐ差し込むべく一歩後ろへと下がり、空中へと飛び上がる。 そのまま前方へと飛び上がると、棒の頭をその足の下に捕らえ体重を込めて押し込んだ。 餡子の中に棒を差し入れる鈍い感触がまりさの足元へと伝わり、れいむの中へと少しだけ押し込まれて行く。 「ゆぎぃぃぃ!!!」 出来るだけ平常を保って我慢しようと思っていたれいむであったが、思わず呻き声が漏れる。 その後、棒を押し込み倒れ込むように地面へと落ちたまりさがすぐさまれいむへと駆け寄る。 れいむは激痛に身を悶えながら地面を転がっていた。 「ゆがっ、ゆぐぐぐぐぅ!!」 「ゆあぁぁ!!でいむ、でいぶぅ!!ごめんね、まりさがもっとゆっくりおしこめたらこんなにいたいおもいしなかったのに!!」 「ぎぎぎ、ゆ…ぅ……だいじょう、ぶだよ。でいぶ、ごんなのぜんぜんいだぐなんでないがら」 心配するまりさにれいむは、口から餡子が流れ出るのも構わずに笑顔を見せる。 そんな気丈なれいむの姿に、このれいむは本当に強くてゆっくり出来る最愛のゆっくりだと改めて確信し、 必ず守り抜いていこうと心に誓った。 「ゆ…ぐぅ、ま、まりざ……ここから、ゆっぐりおぞどにでようね」 「うん、ゆっくりでようね!!かぞくのもとにかえろうね!!」 よろよろと横穴に近寄るれいむにまりさは力強く応えた。 その横穴は普通でも大人のゆっくりであれば窮屈で身体を岩肌に擦り付け、 全身に切り傷が出来てしまう程の狭さである。 それを頭の棒を中に押し込んだからといって、相当な深手を負っているれいむには厳しいものがあった。 途中何度も岩肌に肌を擦り付ける痛みに耐えられずれいむの動きが止まり、 酷い時には「ゆぎっ!!ゆぐぅ!!」と呻きながらビクビクと痙攣し出すときもあった。 そんな時何度も、まりさは後ろから「がんばってね!!もうすこしだよ!!」や「うごきをとめないでね、れいむ!!まりさをおいてゆっくりしないでね!!」 と、後ろかられいむを励まし続けた。 まりさが進入した時より遥かに時間が掛かった。 そんな正にゆっくりとした脱出であったが、とうとう眼の前に外の月明かりであろう光が見え始めた。 「れいむ、もうすこしだよ!!もうすこしでおそとでゆっくりできるよ!!」 「ゆっ、ゆっ、ゆっぐじぃぃぃ!!」 まりさの掛け声と共に、朦朧とした視界の中へと外の光が飛び込んでくる。 「ゆっぐりい”、まりざとゆっぐりずるよぉぉぉ!!」 「そうだよれいむ、まりさとゆっくりしようね!!」 死力を尽くして、れいむは身体を地面へと擦り付けながら前へと進む。 後ろを続くまりさの眼には、地面に広がる餡子の跡が眼に写る。 何処かの傷口が開いたのだろうか? それとも、苦しさの余り餡子を吐き出してしまっているのだろうか? それでも前へと進むれいむの姿に、まりさは流れ出る涙を抑える事が出来なかった。 その後更に10分ほどで、れいむは横穴を抜け外へと這い出る。 遅れてまりさが飛び出した時には、れいむは横穴の傍で身体を萎ませて休んでいた。 「ゆっ……れれ、れいむ、だいじょうぶ!?ゆっくりしてね!?」 眼を瞑って全く動かなくなったれいむの様子に、最悪の結末を浮かべてまりさは急いで駆け寄る。 「れいむ、でいぶぅ!!ゆっくりへんじしてね!!」 「……ゅぅ、だいじょうぶだよ、まりさ」 「ゆあぁ、よかったよれいむ!!おそとにでられたんだよ!!」 「ぅ…ん、ここですこしゆっくりしたら…おちびちゃんたちのところへ……」 「うん、うん!!みんなでゆっくりしようね!!れいむとまりさとおちびちゃんたちでゆっくりしようね!!」 そう呟いてれいむは眼を瞑った。 まりさは慌てて肌を寄せる――大丈夫、息をしている。 全くいびきもしない、まるで子供の様な深い眠りであった。 ここも未だ安全とは言い切れないが、れいむのこの状態では今の隠れ家まで移動するのは無理である。 幸い洞窟の裏手は群れの方角とは反対で、はくれいむの住処から実質山一つ分越えた辺りに位置する。 はくれいむの部下がこちらの方向に探しに来る可能性は限り無く低いだろう。 そう考え、今晩はここでゆっくりと身体を休めようとまりさはれいむにぴったりと身体を寄せた。 そうやってれいむの体温を感じておかないと、今にもれいむがいなくなってしまうような感覚に陥ってしまうからだ。 「れいむぅ……やっぱりれいむはあたたかいよ」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「ゆっくりおやすみ、あしたもゆっくりしようね」 翌朝、眼を覚ますとまりさのその隣にはれいむの姿は無かった。 又もや最悪の状況を想像し、まりさはれいむの名前を叫ぶ。 すると近くの茂みから、 「ゆっくりしていってね!!」 という声と共に、れいむが姿を現した。 「ゆっくりしていってね……じゃないよ!!れいむのすがたがみえないから、まりさはおどろいたんだよ!!」 「ごめんねごめんね。れいむはちかくのおはなさんをゆっくりとつみにいっていたんだよ!!」 そう言ってれいむは頬袋に溜めた色とりどりの花を吐き出す。 ただ量はかなり少なかった。 炭化して硬質化した右頬のせいで多くの量を詰め込む事など出来なかったのだろう。 「すごいよれいむ!!こんなにたくさんのおはなさんをあつめられるなんて、やっぱりれいむはてんさいだね!!」 「ゆっへん、それほどでもないよ!!」 そんな事はまりさは一切気にせず、れいむが精一杯集めてくれた食事を素直に喜んだ。 れいむの状態にしても昨日から比べれば相当良くなっている。 この調子なら今日中に皆の所まで帰る事が出来るだろう。 「じゃあ、れいむ。これをゆっくりたべたらみんなのところにかえろうか」 「うん、ゆっくりたべて、ゆっくりみんなのところにかえろうね」 そう言った後、二匹は食事を始めた。 れいむは捕囚暮らしであった事は元より、愛するゆっくりと共に食事出来る事で代わり映えしない植物でもれいむは何倍にも美味しく感じた。 それはまりさも同様であった。 二匹はその味と幸せを噛み締めながら同時に「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」と高らかな声をあげる。 そして食事後少しゆっくりした後、まりさとれいむは皆の待つ隠れ家へと進む事とした。 時間にして三時間程であろうか。 二匹は時折休憩を挟みながらも、それでもゆっくりしないで道中を急いだ。 「ゆっ、れいむ!!あとすこしだよ!!ゆっくりいこうね!!」 「いやだよ、まりさ!!きょうだけは、れいむはゆっくりしないでいそぐよ!!」 「ゆぅ、だったらまりさもまけてられないね!!」 二匹はそんな会話を楽しみながらピョンピョンと跳ね続ける。 もうここまで来れば追っ手が来る事は無いだろうとは思ったが、家族の事を思えば自然にその足は進むのだろう。 会話の内容にも、幾分か余裕が出てきた。 すると、そんな二匹の進む道の横にある茂みが急にガサガサと揺れ出す。 れいむはそれにビクリと身を怯ませて、すぐさままりさの後ろへと回り込む。 だが、まりさは怯える様子も無くれいむに語り掛けた。 「だいじょうぶだぜ。きっとなかまのみんながむかえにきてくれたんだ」 「ゆっ、そうなの?」 まりさのその言葉に、れいむの顔も安心の色が窺える。 二匹はそのまま、その茂みの方へと向き直ると「ゆっくりしていってね!!」と呼び掛けた。 予想通りにそこからは「ゆっくりしていってね!!」という声が返ってくる。 しかし――そこから現われたゆっくりは予想外の者達であった。 「ゆへへ、ことばどおりにゆっくりしてやるんだぜ!!」 「わかるよー♪みょんのかたきなんだねー♪ゆっくりなぶるよー♪」 この二匹は――。 「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」 まりさの後ろでれいむが叫び声をあげる。 突然の事にまりさは驚いて後ろを振り向くと、其処にはこの世のものとは思えない恐怖に引き攣ったれいむの顔があった。 囚われの身になっていた間に受けた拷問の数々を、れいむの餡子にはしっかりと刻まれていたのだろう。 その刻まれた恐怖がフラッシュバックとなって頭を駆け巡る。 「ゆじいぃぃぃ!!いやだ、いやだよぉ!!」 「れいむ、れいむ!!おちついて!!」 それに合わせたように、ぞろぞろと他のゆっくり達も出てくる。 総勢で10は居るだろうか。 どちらにしても、こんな状況のれいむを庇って戦える筈も無い。 まりさの顔にはっきりと見て判る程に焦りの色が浮かぶ。 「こんなやつが、このまりささまよりつよいまりさなんだぜ?とてもそうはみえないんだぜ?」 口元を吊り上げ勝ち誇ったような笑みを浮かべて、はくれいむの部下であるまりさが呟く。 周りの部下達も「そうだねー」などと同意する。 「ゆあぁぁぁ、こわいよぉぉぉ!!」 「だいじょうぶだよ、れいむ!!れいむはまりさがまもるよ!!」 「まりざ、まりざぁ!!」 恐慌状態のれいむの前でまりさがプクーと頬を膨らませて相手を威嚇する。 これには敵のゆっくりも失笑を隠せない。 一対一ならまだしも、10対2。 いや、れいむのあの状態を考えれば10対2どころか10対1――足手まといと考えればそれ以上。 最早大勢は決しているのだ。 何を恐れる必要があるだろうか。 「やめでえぇぇぇぇぇ!!ごっぢごないでぇ!!」 れいむが声をあげるが、相手はそれに応える気配すら無い。 精一杯膨らむまりさを囲むように、はくれいむの部下達はにじり寄ると「ゆっくりしね!!」と叫んで一匹がまりさに飛び掛った。 このSSに感想を付ける
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「ゆぶべべべっ!?」 「ま゛り゛さ゛あああああああ!?」 「全く、まぁ~た畑荒らしか ほんと嫌になるよ」 男の草鞋がまりさの舌に乗っていた野菜ごとその舌をぐちゃぐちゃに踏み潰した。 砕けた野菜と舌が混じり異様な色彩を産んだ。 「ぢがうのおおおおおお!!まりさはしんせつしんでおちてたおやさいをはたけにもどしてあげようと」 「瓜田に靴を入れず」 男は舌を踏みにじっていた足を引き抜いて振り上げると思い切り蹴りぬいた。 まりさは宙を舞うと柵にぶつかって嫌な音を立てながら餡子を撒き散らした。 そして柵に餡子の跡を残しながらずるずると地面に落ちて 数度痙攣すると衝撃で飛び出していた目玉がずるりと落ちて動かなくなった。 「どぼぢでええええええええええええ!?まりざなんにもわるいごどぢでないのにいいいいい!!」 餡子が混じり黒く滲んだれいむの涙が何筋も頬を伝った。 「死にたくなきゃ最初から畑に近づくなよ、荒らしとそうじゃないのと見分けるの面倒だからさ」 そう言って男はれいむのリボンを摘むと林の方に放り投げた。 そして帰ろうとして手元に指に引っかかって千切れたリボンが 一欠けら残っているのに気付いて鬱陶しそうに手を払った。 それから数日後、幽鬼のように夜の林の中を放浪するリボンのかけたゆっくりれいむの姿を あるありすは偶然友達の巣から巣へ帰る際に見た。 夜はれみりゃの時間だ、都会派として注意してあげようと思ってありすは恐る恐る声をかけた。 そのれいむはゆっくりと振り返ると壮絶な笑みを浮かべながら言った。 「れいむはれみりゃをまってるんだよ」 そしてけたたましく笑い出したれいむの狂気に恐怖を感じて慌ててありすは逃げ出した。 それからさらに数日後の深夜 れいむの前にれみりゃが降り立った。 れみりゃは獲物を見てその子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔で言った。 「うっうー♪よふかしするわるいこはたべちゃうんだどぅ~♪」 「まって、れいむはれみりゃにおねがいがあるよ」 「う~?」 れみりゃは他のゆっくりとは違う落ち着いた態度でれみりゃに話しかけるれいむに少し驚きながられいむを見た。 無視してそのまま食べてしまっても構わなかったが、とても真剣な表情のれいむに気圧されて、渋々話を聞くことにした。 「う~おぜうさまのれみりゃになんのようなんだどぅ~?」 「れいむをおかして!!れいむっとすっきりして!!!」 れいむは瞳をカッと見開きれみりゃに向かって腹のそこから叫んだ。 れみりゃは困惑して額から汗を流した。 そして思った。 このれいむは頭がおかしいのだろうか、と。 れみりゃとれいむがすっきりする例など聞いたことが無い。 当然だ、二者の関係は捕食者と逃げまとう獲物なのだから。 れみりゃ種にもれいむを性の対象として見るような趣味も無い。 れいむ種がれみりゃ種に出逢ったとき、するべき行動は逃走、ただそれだけである。 なのにこのれいむはれみりゃとすっきりしたいと言うのだ。 生きるための口先三寸かと思ったが 体格差から考えてもそんなことをすれば体が保たないだろう。 れみりゃがれいむの正気を疑うのも当然である。 実際、れいむの熱っぽく開かれた赤く血走る瞳を見てもその正気を疑うには充分だった。 そして十秒間、れみりゃにとってかなり長く熟考したのち れみりゃはこうまかんのおぜうさまとして恥じることの無い結論を導き出した。 「うっうー♪そこまでいうならたっぷりかわいがってやるんだどぅ~♪」 腰をフリフリしながられいむににじり寄って行く。 据え膳食わぬはおぜうさまの恥ってさくやが言ってた。 ちゃんとさくやの言ったことを覚えてた自分はとっても偉いとれみりゃは思った。 そして二匹は朝まで激しく交わりあった。 「ゆひっ、ひゅひひひひひいひ…!」 犯すのに飽きて、かといって自分が交わりあった相手を食べるのも憚られたので どこぞへとれみりゃが去っていった後、れいむは壊れたオルゴールみたいにけたたましく笑い出した。 綺麗だった髪は乱れて絡まり、リボンは男に千切られてかけた部分からさらに裂け目を深くした。 頬からはれみりゃの爪が食い込んだのか痛々しい傷跡と、何条もの餡子が流れた後が付いていた。 そしてズタズタに裂けたまむまむから肉汁と、餡子の混じった液体がどろりと流れ出した。 れいむのその機関はほぼ破壊されて、恐らくもう二度と用を成すことは無いだろう。 焦点の合わない瞳から伸びる視線は宙を漂う。 だがれいむの笑いは決して絶望の笑いではなかった。 「これで…これでまりさのかたきが…ひゅひひひひひ!」 雌としての本能があり得ないはずのれみりゃの子種を身篭ったことを確信して れいむは目の焦点も合わないまま口を歪めて笑った。 一週間後、近くのゆっくりの群の外れに一匹のれいむが住み着いた。 そのれいむは酷い傷を負っていて、群のゆっくりは心配して話しかけたが れいむに一睨みされただけで立ち竦み、それ以上話しかけることが出来なかった。 群のみんなはそのれいむを疎ましく思いながらも中々手を出すことができなかった。 そうして、次にそのれいむの巣をみんなが見に行ったのは れいむの巣から恐ろしい産声が聞こえてきた時だった。 「れいむ!あかちゃんがうまれたならみんなにしょうかいしてあげてね! そしていっしょにゆっくりしようね!」 群の長まりさがれいむの巣の入り口のすぐ横の木の部分を叩いた。 これを気に仲良くなっておかないと、群のみんなが怖がると思ったからだ。 それにみんなかわいい赤ちゃんは見たかったのだ。 巣の入り口を覆っていた草がガサゴソと動いて 長まりさは出てきてくれるのかと思って事前に考えておいた懐柔の言葉を言おうとし 帽子がなくなっていることに気が付いた。 「うゅ~♪たーべちゃーうぞー♪」 はっと気付き見上げると、空を飛ぶゆっくりが長まりさの帽子を捕まえていた。 子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔、口元から生えるキバは長まりさの帽子に突き刺さっていた。 本来地面にあわせて平坦であるべき足からは三本の爪の生えた妙な枝が生えていて長まりさの帽子を掴んでいる。 頭はれいむ種と同じ黒い髪に両脇に髪留めをつけていたが、その最大の特徴であるリボンは無く 代りに薄紫色に赤い布をつけた帽子を被っていた。 そして、その両脇からはあの蝙蝠のような恐ろしい悪魔の羽が生えていた。 「「「れみりゃだあああああああああああああああああ!!!!!」」」 集まっていたゆっくり達は一斉に叫んだ。 そして長まりさの周りに身を寄せ合った。 「ち、ちがう…あれはれみりゃじゃない…!」 長まりさは震えながらその化け物を見上げ言った。 「そうだどぅ~♪れみりゃなんかじゃないんだどぅ~♪」 ソレは長まりさの言葉に頷くと、体の前で悪魔の羽をみょんな形であわせながら言った。 「れい☆むりゃ☆う~♪」 そして足に掴んでいた長まりさの帽子をむしゃむしゃと平らげた。 「ま゛り゛さのだいじばぼうじっびゅべばじゃ!?」 「「「だずげでええええええええええええ!!」」」 一斉に逃げ出したゆっくり達にもみくちゃにされて長まりさはぐちゃぐちゃの饅頭になって死んだ。 その様子を見てれいむりゃと名乗ったその化け物は首をかしげながら言った。 「うゅ~?どうしたんだどぅ~♪もっとゆっくりしてくいくんだどぅ~♪」 不思議がるれいむりゃを他所に、巣の中からはれいむのあの壊れたオルゴールのようなけたたましい笑い声が木霊した。 「たくさんたべて、もっとつよくなるんだよ」 口から虫や木の実を吐き出しながられいむはれいむりゃに言った。 嬉しそうに母から餌を貰いながられいむりゃは応えた。 「うゅ~♪いっぱいたべておおきくなってゆっくりするんだどぅ~♪」 そう言うや否や、れいむりゃの見ていた世界の天地は逆転した。 れいむの体当たりでひっくり返ったのだ。 「あまったるいこといわないでね!おまえはたたかうためにれいむがうんでやったんだよ!! ゆっくりしてないでとっととりかいしてね!!」 「ぅ、うゅ~、わかったんだどぅ…」 目を血走らせて鬼の形相で言うれいむに怯えながられいむりゃはれいむが何故そんなことを言うのか理解できないものの とりあえずもう一転がりしてから頷いた。 「ぜんぜんわかってないみたいだね…」 れいむりゃの暢気な表情を見てれいむは嘆息しながら言った。 「おまえはね、やさいをかえしてあげたまりさをころしたあのくずをころすためにうまれてきたんだよ だからゆっくりしてるひまなんてないの、いっこくもはやくあのくずをころすためにつよくならなくちゃいけないんだよ それができないならおまえみたいなばけものいきてるいみがないんだよ!」 確かに意識ははっきりしているのにどこか焦点の合わない瞳でれいむりゃを睨みつけながられいむは言った。 「うゅ~、ゆっくりりかいしたんだどぅ~♪」 「それがわかってないっつってんだよ!!!!!」 れいむの体当たりがまたれいむりゃを転ばした。 「う、うゅ?」 何故体当たりされたのか分からず起き上がろうとするれいむりゃにまたれいむが体当たりを食らわせた。 ゴロゴロと何度も巣を転がって吐きそうになりながられいむりゃはれいむを見た。 「どおぢでおまえはぞうなの!?どおぢで!おばえはもっどづよぐなんなぐぢゃだべなんだよおお!! なのに!れいむにやられてちゃだべでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 れいむは狂ったように、というか狂っているのだろう。 執拗にれいむりゃに体当たりを繰り出す。 何度も転がり何度も壁に叩き付けられながられいむりゃは思った。 何故おかあさんはゆっくりしないのだろうと。 れいむりゃはこんなにもゆっくりしたいというのに。 いくら体当たりをしても気絶しないれいむりゃの耐久力に満足したのか れいむはボロボロのれいむりゃを放ったまま眠りに付いた。 れいむが眠りに付いたのを確認すると、れいむりゃはれいむを起こさないようにそっとその隣ですやすやと眠り始めた。 朝早くれいむに叩き起こされて外に連れ出されたれいむりゃは 生後まもないにも関わらずもはや痛めつけるのが目的としか思えないほど厳しい仕打ちを特訓と称して行った。 石を投げつけられ、木の枝で叩かれ、土に埋められ、川に落とされ、蔦を巻きつけられ引っ張られる様は とても特訓などという上等なものではなく、れいむの持つ恨みをれいむりゃに押し付けているだけだった。 それでもれいむりゃは子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔を崩さなかった。 そんな生活が何ヶ月か続いた。 れいむりゃは飛び回ってれいむの放つ石ころを避け 土に埋められても足の力と羽ばたきで飛び出し 川の中を皮がふやけるまでの間バタ足で泳ぎ 蔦を引きちぎり、逆に蔦を加えてれいむをぶら下げるほどに強くなった。 れいむはそんなれいむりゃを見て満足そうに頷くと またあの壊れたオルゴールみたいなけたたましい笑い声を上げた。 「これで…ひゅひひひ!これで!このばけものをつかえばまりさのかたきがうてるよおひゅひひひひひ!! やざしかったまりさをころしたあのクズひゅひ!ころせる!やっところせる!!」 れいむの口から餡子色のあぶくが吹き出た。 そんな笑顔でもれいむりゃはとても嬉しくて一緒に笑った。 梅雨の季節が来た。 あれかられいむはれいむりゃの特訓の合間にまりさを殺したあの男の動向を探っていた。 男は殆どの日を畑で仕事をしていた。 畑の中はまずいとれいむは考える。 一緒に畑仕事をしている仲間を呼ばれる危険がある。 いくらあの恐ろしいれみりゃの血を引くれいむりゃでも 二対一では分が悪いとれいむは思っている。 かといって家の中も危険だ。 家の中には色々な道具を置いてあるに違いないし間取りにも詳しいだろうから不利だ。 男が外で一人になる瞬間が知りたかった。 そうして調べている内についにれいむは遂に男が一人になる時間を見つけた。 男は一週間に一度、里の方に一人で出て行く。 特にその時に渡る古びた人気の無い橋の上は逃げ場も殆ど無い絶好のポイントだった。 れいむりゃは、れいむが男を見に行っている間、たった一人でとても寂しがった。 梅雨の最中でもはや濁流に近い流れを持つ川のほとりで雨避けの葉っぱを口に咥えながられいむは言った。 「やっと、おまえのやくめがはたせるんだよ うれしいよね、れいむりゃ」 入念な準備を経て、れいむりゃにもしっかりと計画を伝えてれいむはれいむりゃと橋の前に立った。 「れいむりゃ、わかるね ここであのおとこをころすんだよ」 れいむはちらりとれいむりゃの方を見て最終確認をした。 「うっゆー♪わかるんだどぅ~♪ばっちりなんだどぅ~♪」 れいむりゃはれいむが喜びに震えているのを感じ取って自分も嬉しそうに頷いた。 「そいつにれいむりゃがおしおきしておとうさんにひどいことしてごめんなさいっていわせるんだどぅ~☆」 はしゃぎながらそう言ったれいむりゃに唖然としながられいむはぽとりと咥えていた葉っぱを落とした。 ドン、とれいむは体当たりをした。 不意の体当たりにれいむりゃはゴロゴロと水浸しの地面を転がり泥まみれになった。 「う、うゅ~?」 ちゃんと答えられたと思ったのに何故か怒りの形相のれいむを見てれいむりゃははてなと首を傾げた。 「なにをいっでるの!?それじゃだめだんだよ!! ちゃんところして!!いきのねをとめて!! にどとそいつをゆっくりできなくするんだよ!!」 それを聞いて、れいむりゃは固まった。 「う、うゅー?おかあさんがいってるころすってのがよくわからないんだどぅ~♪ それをしたらゆっくりできなくなっちゃうのかどぅ~?」 困惑し額に汗を浮かべながられいむりゃは尋ねた。 ザアザアと雨粒が顔を打ち据えるのを意にも介さずれいむは捲くし立てた。 「あたりまえでしょ!そんなこともわからなかったの?ばかなの!? わかったらとっととあのおとこをころすじゅんびをしてね!!」 「……じ、じゃあいやなんだどぅ~」 れいむりゃは、搾り出すように言った。 か細い声だったにも関わらずその声は何故か雨音にかき消されずにれいむの耳にちゃんと届いた。 「は?いまさらなにをいって」 「いやだどぅ~♪だれだってゆっくりできなくなるなんてだめなんだどぅ~♪ひとのだいじなゆっくりをとったらだめなんだどぅ~♪ こらしめるだけでかんべんしてあげるんだどぅ~♪そしたらみんなゆっくりできるんだどぅ~♪」 「ふっざけるなああああああああ!」 れいむりゃの初めての反抗にれいむは激怒した。 「あのおとこはねぇ!まりさの…まりさのだいじないのちを…ゆっくりをうばったんだよ!! あんなにやさしくて!つよくて!ゆっくりしてたまりさのゆっくりおおおおおおお!! だからあのおとこはゆっくりをとられてとうぜんなんだよ!!なんでそんなこともわからないの!? ばかなの!?しぬの!?だいたいまりさみたいなすてきなゆっくりからおまえみたいなばけものがうまれるか! しね!ゆっくりしね!!」 れいむは激昂して喉が裂けて口から餡子が飛ぶほど叫んだ。 それでもれいむりゃは怯まなかった。 「それでもいやなんだどぅ~♪ それよりそいつもゆっくりさせたらさんにんでおとうさんのぶんもゆっくりできるんだどぅ~♪ おかあさんもこれでゆっくりできるにちがいないんだっどぅ~♪ うゅー、こんなことおもいつくなんてれいむりゃはてんさいだっどぅ~♪」 れいむりゃはれいむを説得しようとかそういうことだけでなく ずっとそうしたいと思っていたことをれいむに告げた。 「ゆぐがぎゃああああああああああああああああ!! ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああ!! れいむのゆっくりはおばえどなんがじゃない!!おばえみだいなバゲモノどじゃなぐで まりさとぉ!れいむとまりさのかわいいあかちゃんのさんにんでするはずのゆっくりなんだよおおおおおお!!! もういいもういいもういい!!ぜんぶれいむがやる!!おまえみたいなばげもののぢがらはがりない!! だがらお゛ばえがらゆっぐぢぢねええええ!!!」 怒りで血が上ったためか、それとも雨の湿気のせいか古傷から餡子を噴出し目から餡涙を流して 歯茎をむき出しになるほど歯を食いしばりながられいむはれいむりゃに襲い掛かった。 「や、やめるんだどぅ~☆れいむりゃにたいあたりしたらおかあさんのほうがいたいんだどぅ~♪」 実際その通りだった。 れいむは頑丈なれいむりゃに体当たりするたびに古傷を開かせ、ボロボロになっていった。 それでもれいむは止まらない。 れいむりゃは逃げればいいのにれいむを止めようと何度も羽でれいむを包みこみ、踏ん張った。 その度にれいむは羽を振り払って体当たりをして傷口を大きくした。 「やめるんだどぅ~やめるんだどぅ~♪」 「だばっ!れええええええ!!!」 二匹はもつれ合いを繰り返していつの間にか橋の上まで来ていた。 れいむりゃの必死の訴えも空しく、れいむは突進した。 雨とれいむに体力を奪われたれいむりゃは、れいむの前に立とうとして足を滑らした。 何も居ない空間にれいむは突っ込み、そして雨に濡れた木の板に足を滑らせて橋から落下した。 「ゆっ」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!!!」 初めてれいむりゃの子どもが書いた落書きを張り付けたような笑顔が歪んで 驚愕の表情へと変わった。 れいむりゃはその悪魔の羽を羽ばたかせて川に落下したれいむを枝のような足でリボンを掴んだ。 普段ならそれだけですぐに引き上げられるだろうが 濁流に近い流れの前では流石のれいむりゃでも引き上げることが出来ずに一緒に引っ張られた。 「お゛っおばえのぜいだ…お゛ばえが…」 「お゛があ゛ざんしんじゃだめだどぅ゛う゛!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!も゛っどゆっぐりずるんだどぅ!」 呪詛を吐こうとして、れいむは初めて見るれいむりゃの必死の形相に目を留めた。 「も゛うっ、ゆっぐり゛ずる゛もぐぞぼっ!な゛いんだよ…! がぼっがぼっ、れい゛む゛のゆっくりばぼっ、まり゛さ゛と」 ガバガバと水を飲みながられいむはれいむりゃに言った。 それでもれいむりゃは言う。 「ぞんなごどないんだどぅうぅうう!おがあざんはれいむりゃとゆっくりすればいいんだどぅ!!」 初めて泣き喚くれいむりゃの顔を見ながられいむは今にも濁流に流されて死んでしまいそうなのに思わず呆れた。 「もうっ……いいよ…おばえっ、にきたいしがぼがっぼ、れいむが…ばかだったよ…」 「だいじょうぶだどぅうう!れいむりゃは!!おかあさんにいっぱいきたえてもらってじょうぶになったから こんなのへっちゃらなんだっどぅうううううううううう!!」 れいむりゃはそう言うと歯を食いしばり白目を剥いて踏ん張った。 れいむの体が川から少し持ち上がる。 口が自ら出たれいむは疲れ果てた声で言った。 「……れいむとまりさのかわいいあかちゃんがほしかったよ、おまえみた」 その時、ずっと引き裂けそうになっていたれいむのリボンが千切れて ジャボンとれいむは濁流に飲み込まれた。 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああん゛!? う゛ゅ゛あ゛ああああああああああ!!!う゛ゅ゛あ゛あ゛あああああああああ!!」 あっと言う間に下流まで流されていったれいむを追ってれいむりゃは涙を流し絶望の表情を浮かべた。 その枝のような足には千切れたれいむのリボンが握られていた。 結局れいむが最後に「おまえみたいなばけものとちがって」と言おうとしたのか それとももしかしたら「おまえみたいなゆっくりした」と言おうとしたのか それとも全く違うことを言おうとしたのかは濁流の中に飲み込まれてわからなくなった。 ある晴れた日のことだった。 男は畑仕事に精を出していたが ゆっくりが畑に近づいているのに気付いて眉を潜めて木の棒を拾い肩にかけて近づいていった。 そして、少々様子がおかしいことに気付き厭そうな顔をした。 「何お前…」 「れい☆むりゃ☆う~♪」 れいむりゃと名乗ったそのゆっくりは ゆっくりれいむなのかれみりゃなのかどっちとも付かない みょんな姿でパタパタと男の前を飛んでいた。 「うゅー♪おまえがゆっくりしてるのかおしえるんだどぅ~♪」 「今さっきからゆっくりできて無いよ」 男は心中でお前の姿見てからな、と続けた。 「うゅー♪ゆっくりできないなんてあわれなやつなんだどぅ~♪ おまえなんかれいむりゃにかかればいちっころなんだっどぅ~♪」 調子に乗り切ったことをほざくゆっくりを見ながら男は心の中でさっさと潰そうと決心して棒を振り上げた。 「うっゆー♪でもれいむりゃはやさしいからそんなことしないんだっどぅ~♪ これをありがたくうけとるんだっどぅ~♪」 そう言ってれいむりゃと言うゆっくりは口からどんぐりをぺっと吐き出した。 「……?何これ」 意図を測りかねて男は棒を振り上げた手を思わず止めた。 「それをうめればどんぐりのきがはえるんだどぅ~♪ どんぐりいっぱいおなかいっぱいでふゆもゆっくりできるんだどぅ~♪ れいむりゃにかんしゃするんだどぅ~♪」 「とりあえずクヌギが生長するのに何年かかるか勉強してから出直せ」 「お゛ぜう゛!?」 面倒くさくなって男は棒を振り下ろした。 吹っ飛んだれいむりゃは木にぶつかって、そのまま落ちるかと思いきやよろよろと飛ぶと ゆっくりと背を向けて言った。 「いつかそれでゆっくりできるときがくるんだどぅ~♪ そのときはかんしゃしつつゆっくりするんだどぅ~♪」 「とりあえず二度と来るな」 男の言葉を聞いているのか聞いていないのか れみりゃの帽子とビリビリに破けたれいむのリボンをつけたみょんなゆっくりは森の中へと消えていった。 「…はぁー、仕事しよ」 何だかしこたまやる気を削がれて男は肩を落としながら仕事に戻った。 「うゅー、ゆっくりさせてあげるのってとってもむずかしいんだっどぅ~」 少々ばかりうまくいかなかったことに少し気落ちしながられいむりゃは溜息をついた。 「…うっゆー♪でもおかあさんのぶんまでみんなをゆっくりさせるまでがんばるんだっどぅ~♪ おかあさんがきたえてくれたからこのくらいぜんぜんへいきへっちゃらなんだどぅ~♪」 子どもの落書きみたいに無邪気な笑みを浮かべて、このみょんなゆっくりはまた誰かをゆっくりさせにパタパタと飛んでいった。 このSSに感想を付ける
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「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛はんぜい゛じまずがらゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛い゛」 一匹のゆっくりれいむがお兄さんに捕まった。お兄さんの家に忍び込み大切な母の形見を壊したからだ。 ここまではよくある風景だがこのゆっくりはちょっと違った。 「でいぶはどうなっでもい゛い゛がらおながのあがじゃんだげはだずげでぐだざい゛い゛い゛い゛」 このれいむ実は胎生型妊娠をしていたのだ。幸いなことにお兄さんは虐待お兄さんではなかったので 子供が生まれるまで生かしてもらえることになった。 ? ? ? 1 日 目 ? ? ? 「むーしゃ、むーしゃ…」 れいむは逃げないよう檻に囚われ餌として野菜くずを与えられた。 くずといっても野生の食べ物に比べればはるかに美味しかったがれいむは幸せな気持ちになれなかった。 もうすぐ人間さんに殺されてしまう。そう思うと美味しいはずの食事も味が良く分からない。 「ゆゆっ?あかちゃん?」 その時れいむの腹の中の赤ちゃんが動いた。 「れいむのかわいいあかちゃん、げんきにそだってね」 死の恐怖に怯えていたれいむだが赤ちゃんそ存在がれいむの心を支えていた。 ? ? ? 7 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…れいむとってもうれしいよ」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 『子供に罪はないから生まれるまで待ってやる。だが子供が生まれたらお前は殺すからな』 「ゆゆっ!だめだよ、あかちゃんまだうまれないで!」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 やがて赤ちゃんも諦めたのかれいむの産気は収まった。 「あかちゃんうまれるのはもうちょっとだけまってね…」 ? ? ? 1 0 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 「あかちゃんおねがいだからうまれないでええええ」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 だが赤ちゃんは前回より強い力でれいむの体から出ようとする。 「おねがいだからやめてええええ」 自分の力では抑えきれないと思ったれいむは野菜の芯で自分のまむまむに蓋をした。 そのかいあってかしばらくして産気は治まった。 「あかちゃんがうまれるとれいむがこまるんだよ。おねがいだからうまれないでね」 ? ? ? 1 2 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「おねがいだからう゛まれないでっていってるでしょお゛お゛お゛お゛」 だが今回は赤ちゃんもなかなか諦めようとしない。 まるで『なんでうんでくれないの?じぶんはいらないこなの?』と言っているようだった。 「わがままなあかちゃんだね!れいむそんなわがままなあかちゃんいらないよ!」 怒ったれいむはお腹の中の赤ちゃんを罵倒しはじめた。れいむの気持ちがわかるのか赤ちゃんは大人しくなった。 「こんなできのわるいあかちゃんがいるなんてれいむはふこうだよ」 赤ちゃんは寂しそうにごろりと動いた。 ? ? ? 1 7 日 目 ? ? ? 「い゛だい゛い゛い゛い゛、でいぶのおなががい゛だい゛い゛い゛い゛い゛」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむは激痛でのた打ち回った。 お腹の子供が成長しすぎたせいでれいむの体を圧迫しているのだ。 「れいむをいたいいたいさせるあかちゃんはしね!」 れいむは壁や床にお腹を叩き付けた。何度も何度も… あかちゃんは『いたいよ、なんでこんなことするの?』と言う様にもぞもぞと抵抗したが その動きがよけいにれいむのお腹を痛くし怒りを買うことになった。 「あかじゃんあばれるな!はやくしね!はやくしね!」 やがてお腹の赤ちゃんは動かなくなった。壁に叩きつけられたダメージで死んでしまったのだ。 れいむのまむまむからチョロチョロと餡子が漏れる。 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 「れいむの赤ちゃん中々生まれないな」 「し、しらないよ!れいむはあかちゃんになにもしてないよ!」 「…」 「お、お兄さん?」 「なあれいむ…」 「れれれ、れいむはなにもしてないよ、あかちゃんはげんきにそだってるよ!」 「…そうか」 お兄さんは無言で部屋から立ち去った。 ? ? ? 2 0 日 目 ? ? ? 「うーん、うーん」 お腹に痒みを感じれいむは目を覚ました。何だろうと思いお腹を見ると… れいむのまむまむにウジ虫が入り込もうとしていた。 どうやら腐った赤ちゃんの餡子の臭いに釣られて湧いてきたらしい。 「やめでえ゛え゛え゛!むしさんれいむのなかにはいらないでえ゛え゛え゛!」 れいむはまむまむを壁に擦りつけウジ虫を引き剥がした。 ほっとしたのもつかの間腹の中にちくりとした痛みを感じる。 どうやら気づいたのが遅かったらしくすでに数匹体内にウジ虫が入り込んでいたのだ。 チクチクとした痛みはやがて激痛に変わる。どうやらウジ虫が中枢餡子のあたりまで入ってきたらしい。 「いだいよお゛お゛お゛お゛!むしさんでいぶをだめないでえ゛え゛え゛え゛!」 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 赤ちゃんを殺したことをお兄さんにばれないようにしなければならない。 れいむは痛みをこらえて平静を装った。 「れいむがこの家に来てからもう20日になるな」 「れ、れいむのあかちゃんはゆっくりしているからなかなかうまれないんだよ」 自分が疑われていると思ったれいむは聞かれてもいないのに言い訳を始めた。 「俺あれから考えたんだけどさ。れいむ、赤ちゃんが生まれてもお前は助けてやるよ」 「ゆ、ゆゆっ!?」 「俺も幼い頃母親が死んでさ。だから形見が壊されたときすごい怒ったけど やっぱりゆっくりでも母親は必要だと思うんだ。」 「…」 「生まれてすぐ母親がいなくなるのって悲しいからな。お前の赤ちゃんにもそんな思いさせたくないんだ」 「……」 「あの時のことは水に流してゆるしてやるからお前も赤ちゃんのこと大事にしろよ」 「…ゆ、ゆぐっ」 「れいむ?」 「ゆ、ゆげええええええ!!」 「おいれいむ?どうしたんだ?しっかりしろれいむ!」
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《 樽(たる)の中のれいむ 》 大きな赤いリボンをつけた大きな頭が、バラバラに散らばった木の前で途方にくれていました。 「ゆぅ……れいむのお家、こわれちゃったよ……」 頭だけの生き物、「ゆっくり」でした。彼女の名前は「れいむ」と言います。 「れいむ」の他にも「ゆっくり」はたくさんいましたが、その「れいむ」は特別な「ゆっくり」でした。 これからするのは、そのれいむの話です。 私たちの街に住んでいた、特別なゆっくりの話です。 れいむはいつの間にか私たちの街に来ていたそうです。 親もなく、たった一匹でしたから、いったいどこで生まれたのかわかりませんでした。 ある日、街の人がたずねました。 「お前はどこの生まれなんだ?」 れいむはきょとんとしていましたが、やがて頭をゆらしながら考えはじめました。 そうしてから答えました。 「ゆゆっ、お日さまの下で生まれたよ」 その話を聞いて、ある人はバカにして笑い転げましたし、またある人はなるほどと感心したそうです。 れいむは食べ物をめぐんでもらって生きていました。 ある日、とある金持ちのところに行ってお願いしました。 金持ちはうんざりしていました。 もともと大変けちんぼうだったのですが、そのれいむは何度も何度もやってくるのでした。 そのたび何度も何度も追いはらってきたのですが、今日もまたやってきたのでした。 いいかげん我慢できず、金持ちは家の外に飛び出してどなりつけました。 「いいかげんにしろ! お前にやれるものなんか持ってない!」 れいむはニコニコしながら言いました。 「おじさんのお腹のものを少しわけてくれるだけでいいよ!」 その話を聞いて、ある人は「あつかましく無礼だ」と嫌な顔をしましたし、 またある人は感心して、お金だとか財産だとかについて考えたそうです。 れいむに食べ物をめぐんだ人はたくさんいました。 れいむは食べ物をもらうたびに「ありがとう。ゆっくりしていってね!」と言いましたが、 ある日、こんなことがあったそうです。 子どもが散歩中のれいむに、たまたま自分の持っていたお菓子をあげました。 甘いお菓子で、れいむはおいしそうに食べました。 子どもの母親がそれを見て、「えらいわね」とほめました。 するとれいむはとても嬉しそうな顔をしたのです。お菓子をもらったときより嬉しそうでした。 母親が理由を聞くと、れいむはニコニコして言いました。 「ほめられたから嬉しいんだよ」 「この子が?」 人がほめられると自分のことのように嬉しくなるのか、そう母親は思ったのですが、違いました。 「れいむがほめられて嬉しいんだよ。 お菓子をもらえるれいむをほめてくれてありがとう。ゆっくりしていってね!」 その話を聞いて、ある人は「感謝の気持ちを持たないやつだ」と腹を立てましたし、 ある人は「自分に自信があるからまっすぐでいられるのだ」とうなずいたそうです。 れいむは家がありませんでした。 しかし、やがて捨てられた樽の中に住むようになりました。 れいむはそれを自分の「お家」だと思っていましたが、ある人はやはりただのゴミだと思っていました。 ある日、れいむがもらったダイコンを川で洗っていると、別のゆっくりが通りかかりました。 ペットとして飼われているゆっくりで、飼い主と散歩していました。 飼われているゆっくりはれいむに話しかけました。 「こんにちはー、れいむ」 「ゆっ、ちぇんだね。ゆっくりしていってね!」 「ちぇんはお散歩してるからゆっくりしていられないんだよ、わかってねー」 「ゆゆっ、ゆっくり理解したよ」 「ところでれいむ」 「ゆ?」 ちぇんは銀色のくさりにつながれた赤い耳かざりをゆらしながら聞きました。 「なんでちぇんみたいに人間さんに飼われないの? お家にも食べ物にも困らないよ」 れいむは青い葉っぱのついた白いダイコンを水に浮かべながら答えました。 「れいむはお家も食べ物もあるよ。ところでちぇんはそんなくさりをつけていて動きづらくないの? 好きなときに好きなところに行った方が、お散歩たのしいよ」 その話を聞いて、ある人はれいむがのたれ死ぬことを望みましたし、 またある人はれいむがこのままのびのび生きることを望みました。 れいむは頭だけの生き物でしたから、食べるときは地面に顔をつけるようなかっこうでした。 ある日、通りがかりの人がその様子を見て、「まるで犬だ」とからかいました。 れいむは特に怒ることもなく、こんなことを言ったそうです。 「そっちはまるでカラスだね。でもこれはれいむのだからあげないよ」 その話を聞いて、ある人は「ゴミあさりする鳥といっしょにするな」と怒りましたし、 ある人は「生きるために食べ物に集まるカラスの方が、まだましだろう」と考えました。 ある日、この街をおさめる王様がやってきました。 王様は広い領土を持っていて、今も領土をどんどん広げていました。 街の人たちはみんな王様にあいさつにいきましたが、れいむはあいさつしにいきませんでした。 それで、王様の方がれいむに会いにいきました。 れいむについては、いいうわさも悪いうわさもあちこちに広まっていたので、 王様はれいむに興味があったのです。 王様が大勢の兵士といっしょにれいむの所へいくと、そのゆっくりはひなたぼっこをしていました。 王様はれいむの前に立ってたずねました。 「お前がれいむかね」 「ゆっ、そうだよ、おじさん。ゆっくりしていってね!」 王様はおじさんと呼ばれるのは生まれて初めてでしたが、怒ることなく話を続けました。 「お前は私をこわがらないのかね」 後ろではたくさんの兵士が武器を持っていましたが、れいむはそれがまったく見えないかのように のんびりとしていました。 「おじさんは悪い人?」 「どちらかというと悪い人ではないと思うがな」 「じゃあいい人なんだね。こわくないよ」 王様がれいむの勇気に感心していると、れいむが聞きました。 「おじさんは何をしている人?」 「私かい? 後ろの兵士たちといっしょに領土を広げているんだよ」 「広げてどうするの?」 「世界をおさめるのさ」 「おさめてどうするの?」 「おさめられるかわからないが、もしできたなら、そのときはお前のように休みたいね」 れいむは不思議そうに言いました。 「休みたいなら、今かられいむといっしょに休んだらいいのに。ゆっくりしていってね」 王様はそれを聞いて、しばらくきょとんとしていましたが、 やがてあごをいじりながら考えこんでしまったそうです。 れいむはあいかわらずニコニコとしていました。 しばらくしてから王様は言いました。 「私には無理だ。いや、誰にも無理なことだ。すばらしいな、 お前は何も持っていないが、全てを手に入れているのだな」 けれど、れいむは言いました。 「よくわからないけど、れいむにもほしいものがあるよ」 意外な言葉に「ほう」と王様は驚いて、聞きました。 「それは何だね。この私が何でもあげよう」 「ひなたぼっこのじゃまだから、ゆっくりそこをどいてね」 れいむがお願いしたのはそれだけでした。 王様がそこをどくと、日の光がれいむにあたり、そしてれいむは気持ちよさそうに昼寝をはじめました。 れいむのところを立ち去るときに、王様はこうつぶやいたそうです。 「今度生まれ変わるときには、あのようになりたいものだ」 ある日、れいむが散歩から帰ってくると、住んでいた樽がこわれていました。 信じられないくらいバラバラになっていて、れいむはそれが樽の残がいであることにしばらく気づきませんでした。 少しの風も吹いていない日でしたから、そんなふうになってしまったのは誰か心ない人がこわしてしまったのでしょう。 「ゆぅ……れいむのお家、こわれちゃったよ……」 大きな赤いリボンをつけた大きな頭は、バラバラに散らばった木の前で途方にくれました。 持ち物と呼べるものは何も持ってないれいむでしたが、それでも雨を避ける場所だけは持たないと いけませんでした。 しかし、そのただ一つの場所はもうありませんでした。 ある人は、れいむがこの街から出て行くことを望みました。 それだけれいむはひどいことをされたのですが、そうはなりませんでした。 自分の家はありませんでしたが、れいむはこの街にいつづけました。 れいむはいろいろな所で過ごすことにしたのでした。 いろいろな人の家、いろいろな店、いろいろなたてもの。その屋根の下にれいむは自分の身をおきました。 追いはらわれることもたくさんありましたが、受け入れられることもたくさんありました。 そうしてれいむは、樽がなくてもずっと幸せに過ごすことができたのです。 さて、れいむは屋根を貸してくれた人に感謝していたかというと、やっぱりこんなことを言っていたそうです。 「れいむのためにこんなところを作ってくれるなんて、とってもうれしいよ。ゆっくりしていくね!」 それからしばらくして、れいむに新しい樽がおくられました。 誰がおくったのかは知りません。 自分の家を持たせてあげたいと思った人がおくったのかもしれませんし、 人の家をかってに借りるれいむを迷惑に感じた人がおくったのかもしれません。 こうしてれいむはまた樽の中でくらしはじめました。 これが私たちの街のれいむの話です。 そのれいむはこの街で一番に嫌われていました。また、一番に愛されてもいました。 「これほどのゆっくりは、そうはいない」 この言葉を口にする人はたくさんいました。その言葉には人それぞれの意味がありました。 しかし、どのような意味であったとしても、れいむは変わらず幸せだったでしょう。 それだけは誰もがそう思っていました。そうしてそれは事実だったにちがいありません。 れいむはとても幸せでした。 「ゆっくりしていってね!」 このSSに感想をつける