約 454,591 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/331.html
ノンデレはやてに相談 作者:ID psNrYeZE グラスに注いでいた注意をユーノの横顔に向けて、しばらくしてからはやてが言った。 「そういえばユーノ君。最近眼鏡かけてないけど、どないしたん?」 「爆発したよ」 少し、沈黙があった。 「へぇ、爆発。そりゃ難儀やったなぁ」 「全くだよ。予備がなかったからここのところずっと裸眼で、何をするにもいちいち不便でねぇ」 あっはっはと顔を見合わせ笑いあった。 「そりゃ大変やな。ところで、最近は殊に忙しいみたいやけど、ちゃんと寝てるん?」 声に心配が透けて見えた。 「それは大丈夫。年始だから局の部署や学会の外回りが多いけど、それほど忙しくはないよ」 笑うユーノに、安堵したようにはやては微笑んだ。 「ふーん、それは幸いやな。でもなんか、ユーノ君ちょっとやつれてるで。ちゃんと食べてる?」 「昼と夜は出先の振る舞いや食堂で済ましてるよ。あー。でも、朝は面倒でいつも抜いちゃってるかな」 「もう、朝が一番大切やないの。ちゃんと食べな体に障るで。ところでユーノ君、眼鏡はどうしたん?」 「爆発したよ」 しばしの沈黙を経てから、はやては言った。 「……あんな、ユーノ君。一生懸命ボケ役に徹しようっていう心意気は嬉しいよ。 でも、そーゆー外連味でシュールなネタは事前に打ち合わせしてくれないと流石のはやてちゃんも困ってまうやないか」 「や、奇を衒ったボケとかじゃないよ。本当に爆発四散したんだって」 エクスプロージョンだよエクスプロージョン、と淡々と語るユーノの傍らで、はやては悲しみに打ちひしがれていた。 「……ついにハードワークが祟ってもうたか。なんでこんなになるまで放っといたんや、ユーノ君。 いや、違う、私のせいやな。この私が付いていながら気付けなかったなんて……本当にごめんなぁ。 ううん、大丈夫。ユーノ君は私が養ってあげるから。なに、もともと大所帯や。一人くらい増えたところで問題ないで」 一筋涙が目から零れた。はやては悲しみ喘ぎ、崩れた笑顔をユーノに向けた。 「頼むから可哀相なものを見るような目で見ないでくれよ。 ほら、更正プログラムの一環でチンクが無限書庫に配属されたじゃないか。 ナンバーズ更生組の、あのちみっちゃい子」 ユーノは背丈を表すように胸の前で手を翳す。はやては手に顎付いて考え込んだ。 「あー、あの銀髪の。えーと、そう。確かに、あの子は金属を爆発させる能力やったな。 いやいやいや、ちょっとまてちょっとまて。だからって普通、いきなり上司の眼鏡を爆散させるか?」 怪訝な顔で問いかけた。 「それが、ちょっと機嫌を損ねさせちゃったみたいでね」 ユーノはグラスを掲げて微苦笑した。 「はぁ。それでもメガネを爆砕するなんておかしいやろ……ユーノ君、一体なにをしたんや?」 「特に何をした覚えもないんだ。それまでは上司としてそれなりの信頼関係を築いてたつもりだったし。 ……あ、そういえば。その時、ブリーフ&トランクスの『ペチャパイ』をなんとなく口ずさんだけど……」 はやては一拍置いて天を仰いだ。噛み締めた後、直ぐカウンターに糜爛した。 「なんでそんな歌を……ああもう、明らかにユーノ君の悪質なセクハラが原因やないか。 それなら確かに高度な蓋然性があるわな。俄然信憑性が増したわ、この女の敵め」 噛み付くような声と射るような視線に、怯んだユーノはおずおずと顔を上げた。 「だって、その……老成してるのに幼い容姿で、さらにそれを気にしてる様子が可愛かったもんで……つい」 はやては呆れた顔をした。 「つい、やないよ、いつかは捕まるで!確信犯やないの!」 「確信犯!言いえて妙だね。思えば僕は、内奥に根付く確かな信念に基づいて口走ってしまったのかもしれない」 反省の色も見せず口の端に掛けるユーノを見ては、ついに眉間に皺が寄る。 「やかましいわ!いつぞやの卑屈萌えの話?全く反省してへんな。そんな信念捨ててまえ!」 ユーノは大声で捲し立てるはやてにびくりと肩を震わせて、俯いてからぼそぼそと呟く。 「だって、チンクは嘗てない逸材なんだもん。長期投資に値する位だもん。 この薄商いの市場にチンクが上場して、僕は嬉しくて嬉しくて」 「一方私とチンクちゃんのユーノ君株は反落しとるけどな……。ちゃんと謝ったんか?」 草臥れたはやては、なんとかそれだけ問いかけた。 「それが……。謝ろうにも、このところプリプリ怒ってて顔も合わせてくれないんだよ」 「もう、ナンバーズの子達も立派な女の子なんやからね。ユーノ君が全面的に悪い。ちゃんと反省はしとるの?」 「返す言葉もございません……猛省しております」 「謝る気は?」 「チンクが応じてくれるなら直ぐにでも失礼な言動に平身低頭の謝罪をする構えでございます」 うなだれて涙ぐむユーノに、ようやくはやては笑みを漏らした。 「もー、調子ええんやから。しゃあないな。私がギンガ、あー、更正プログラムを手伝ってた子に言って口利いてもらうから」 「はやて様の御厚情に深謝致します」 ははー、と平伏するユーノに、苦しゅうない、と一声かけて、はやてはぱちんと手を打ち合わせた。 「ま、とりあえずそーゆーことで、一旦この話はしまいや。 で、ユーノ君。眼鏡はどうするん?まさか、そのままというわけにもいかんやろ」 「ああ、最近は忙しかったからね。とりあえず、再来週の休日あたりには買いに行こうと思ってるよ」 「またあのダッサい眼鏡にするんか?」 あんまりな言動にユーノは苦笑せずにはいられない。 「ダッサいって……。酷いな。一応僕が渾身のセンスをもって選んだんだけど」 「それがダサいゆーとるんや。よーし、このはやてちゃんが一肌脱ごう。一緒に行ってカッコいいの選んでやるで」 はやては胸をぽすんと叩く。しかし、ユーノは酔ってから初めて気後れしたように口を濁した。 「いや、悪いよ。はやてだって忙しいんだし、そんなわざわざ……」 ユーノの声が孕んだ苦味を、しっかり耳に留めたはやては、頬を張らして喰いついた。 「ええの!そのかわり、私も服買いにいくから、荷物持ちになってもらうで」 はやてはそっぽを向いた。 かなわないな、と思いながら、ユーノは行き場のない苦みを笑いに乗せた。 「それでおあいこ、だね」 「それでおあいこ、や」 二人は示し合わせたように、笑ってかつんとグラスを打った。 SS ユノはや ユーノ・スクライア 八神はやて
https://w.atwiki.jp/narumiayumu/pages/74.html
空に浮かぶ丸い月。悠々と風に流れて、わずかながら存在する薄い雲。 ゆらゆらと揺れる草が一面に広がる原っぱ。 全ては万物流転であり、動かない物なんてどこにも存在しない。 月も、風も、雲も、草も。 それは例え人であっても。 「どうして……」 この原っぱに一人、人間がいた。 腰までかかる長さに鮮やかなハニーブラウンの髪。 束ねていないのか長い髪が風に揺れて髪の毛一本一本が光り輝いている。 「僕は……」 全体的に華奢と言えて、余分な肉のないスマートな体つき。 知性を感じさせる澄んだ緑色の目。 見る人をのぼせさせるような綺麗な――いや、綺麗というよりはかわいいだ。 年頃的には十八ぐらいだろうか。 どちらにしても、顔立ちが優れていることには変わりはない。 「今更なんだけどさ」 頭には白いフリルの付いたカチューシャ、 漆黒のワンピースの上からフリルの付いたエプロンドレスと赤のネクタイの二つを身につけていて、 靴はシックなロングブーツ、簡潔に書くとメイド服だ。 「男なのにメイド服を着るなんてね」 この麗しき少女、いや正確には少年――――ユーノ・スクライア。 本来の彼は九歳である。その九歳の少年で有るユーノがなぜこのような事態になったのか。 時は少し前に遡る。 ◆ ◆ ◆ 「殺し合い、ふざけたゲームだね」 ユーノは表情を曇らせて呟いた。 最後の一人になるまで互いにしのぎを削る悪夢のゲーム。 賭けるのは命。優勝者は一人だけ。 これらの事実を最初はユーノも到底信じられはしなかった。 いきなり殺し合いをしろと言われて信じる方がどうかしているのだ。 「でもあの首輪の爆発は嘘じゃない」 飛び散る血飛沫に肉の生臭い匂い。 ユーノはあの匂いを嗅ぎ、頭が飛んだ二人の少女を見て嘘偽りではないと判断した。 トリックであれほどのことを出来るだろうか? 「それとも、僕ら――参加者全員に幻覚魔法をかけた?でもそんなことできるか?」 ユーノは考えても考えても思考の海に沈んでいく。 おかしい。何かがおかしい。何か、決定的な何かが足りない。 「そもそも僕らの呼ばれる理由からおかしい。僕らは恨みをかうようなことをしたのだろうか」 そう、自分達は何も悪いことなどしていない、ユーノは心の中で断言する。 (プレシア・テスタロッサを死に追いやったこと? 確かにあれはジュエルシードを放出してしまった僕が全ての原因なのかもしれない。 でも!なのは達は何も関係ないだろう!呼ぶなら僕だけでいい!! 全ての原因である、僕だけだ!!!!!!) ユーノは思考の中で自分を責める。 “僕のせいだ、僕のせいでなのは達が!!!” 延々とこのフレーズを頭の中で繰り返す。 「……護らないと」 そのつぶやきはか細く。 「どんなことをしてでも」 その意味は殺人も許容したのか。それはわからないが。 「僕が――」 されどどんな困難にも負けない不屈の意志を秘めていて。 「護るんだ」 誓う。ユーノは自分に。そして、この島にいる三人の仲間に。 「その為には力が必要なんだ」 仲間を護るためには力が必要だ。特にこの何でもありの殺し合いの島では。 自分みたいな子供だと特に舐められる。 「だから、これを使う。例え罠だとしても……」 ユーノがデイバッグから取り出し、手に持っているのはガラスの瓶。 中に入っているのは赤と青の飴玉。 ラベルに書かれているのは――赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬。 ◆ ◆ ◆ 「それがこんな結果になるなんてね」 結果は成功。身長も伸びて今のユーノは十八歳ぐらいに見える。 だがしかし。 「服と靴がこんなになるなんて……」 足元にはビリビリに破けてしまった服と小さな靴が転がっていた。 服と靴がユーノの大きくなっていく体に耐えられなかったのである。 「流石に裸はいろいろとまずいからなぁ……できればこんなの着たくはなかったんだけど」 服が破れた=裸=変態=逃げられる。ユーノはこの公式が即座に浮かんだ。 それだけは駄目だと考える。 第一、裸でうろつきまわっている参加者と接触したい人がいるだろうか、 いやいないだろう。 デイバッグをあさり、何か服が入ってないかと確かめたところ入ってたのが―― 「メイド服だなんて、ね」 正直着たくなかった。だが、裸よりはまし、そう考えた。 「僕には似合わないよ……」 ユーノはスカートの裾を握りながらモジモジとする。 頬は紅く染まりどこからどう見ても女の子です、本当にありがとうございました。 どう見ても似合っています。 「はぁ……やだなあ」 それでも抵抗感はある。自分は男なのだ、女性ではない。 なのはやフェイトならまだしも、僕みたいな奴が来ても似あうわけがない。むしろ気持ちが悪い、とユーノは思った。 「こんな所なのは達に見られたら――僕の人生が終わる!」 想像。そして即座に破棄。 ユーノの頭の中では負のスパイラルが延々と続いている。 「……」 故にユーノは気づけなかった。後ろからの視線に。 数拍遅れてユーノが振り向くとそこには、 「あ、あのすいません。私は時空管理局のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。 少しお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」 ユーノの仲間であるフェイトがそこにいた。 (見られたーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!はい、終わった!!!僕の人生もう終わった!! ああ、これから僕は女装癖の変態として扱われるんだろうなあ。 いやだよ、そんなの。僕はいたって普通なんだ。あのシスコンと違って常識のある……) この間、僅か一秒。ユーノの頭の中ではどうやってこの場を、つまるところ女装をごまかすかその一点のみを考えていた。 (さようなら、僕の日常。そしてこんにちは、変態と蔑まれる日常……って何でもう僕は受け入れてるんだ! 駄目だ駄目だ駄目だ!逃げちゃダメなんだ!言い訳を考え……) 「あのー」 (……思い付かない。もう受け入れるしかないのかな) 「あの!」 「は ?」 ユーノは声の方向に振り向く。そこにはいつのまにかにフェイトが立っていた。 何時の間に?ユーノは思ったが、それはただ自分の世界に入っていて気付かなかっただけ。 ただそれだけだ。 「私は時空管理局のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンなんですけどお話を聞かせてもいいですか? できれば名前も教えてくれると嬉しいのですけど」 ◆ ◆ ◆ 「それでネギさんはこの場に知り合いはいないんですね」 「ああ、うん。そう……だね」 世界はいつだってこんなはずじゃってことばっかりだ。 その後、ひとまず自分達の現在位置から近い街へ向かうこととなったので、その道中に二人は情報交換を行ったが、 ユーノは偽名として“ネギ・スプリングフィールド”を名乗り知り合いは誰一人いないと嘘をついた。 無論、ユーノは偽名を使うことは気が引けた。 (だけど仕方ないじゃないか。この背丈と格好で僕が“ユーノ・スクライア”と信じてもらえる訳ない) 伊達や酔狂でこの格好をしているわけではない。 しかし、ユーノは本当のことを言える勇気がなかった。 女装してます! このようなことを堂々と言える胆力がユーノには存在しない。 (もし本物の“ネギ・スプリングフィールド”と会ったらどうしよう…… どうやって乗り切ろうか) 女装ユーノの苦難は始まったばかりだ! 【I-6/1日目・深夜】 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:健康 、ノーパン、十八歳ぐらいの姿、強い自己嫌悪 [装備]:殺季のメイド服@操り世界のエトランジェ [道具]:支給品一式 不明支給品0~1、赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬@魔法先生ネギま! [思考・状況] 基本:仲間を護る 1 脱出の方法を考える。それと同時に仲間との早期合流 2自分の命を度外視してでも仲間を護る。 3その為の殺人については…… ※二期終了後からの参戦です。 【フェイト・テスタロッサ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:支給品一式、不明支給品1~3 [思考・状況] 基本: 1 仲間との合流。 2ネギ(ユーノ)と一緒に行動する。 ※二期終了後からの参戦です。 【殺季のメイド服@操り世界のエトランジェ】 サイボーグメイドである殺季が着ているメイド服。おまけに靴もついている。 【赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬@魔法先生ネギま!】 外見年齢を調節出来る魔法薬。赤色を使うと大人、青色を使うと子供になれる。 Back マガイモノ~Lunatic Girl~ 時系列順で読む Next この夜空に約束を Back マガイモノ~Lunatic Girl~ 投下順で読む Next この夜空に約束を GAME START ユーノ・スクライア Next 泣き叫んだ少年少女――今日ここに、神はいない GAME START フェイト・テスタロッサ・ハラオウン Next 浅月香介の女難
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/194.html
掟破りのユーノ×フェイト(試作版) 作者 early氏 「遂に抜かれちゃったなぁ……。」 「うん? 何だいフェイト?」 検索魔法を展開していたユーノはフェイトの呟きにその手を止めた。不思議そうにこちらを見つめてくる ユーノに、少しはにかみながら何でもないとフェイトは告げた。 ちょっと首を傾げつつも再び検索魔法を展開したユーノの背中を、フェイトは今度は微笑を浮かべながら 見つめていた。 (昔はおんなじくらいの背の高さだったのに……やっぱりユーノも男の子なんだね……。) 女の子と見紛うような端正な顔や、さらさらの髪などは変わらないが、それでも体つきは随分と男らしく なってきたように思う。 それに何より、背丈が随分と伸びた。同じ目線だったのが、自分の視線は少し上に向くようになった。 それはちょうど、ティーンズ小説に載っていた……「キスをするのにちょうど良い背の高さ」という もので……。 そこまで考えた時に、フェイトは一人、顔を赤くした。脳裏には、そっと背伸びをしてユーノにキスを する自分の姿が映し出されていた。眼前のユーノの顔は、やっぱり綺麗で、でも少し男の子っぽくなって いて…… 「……フェイト?」 「うっひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああああッッッ!!!?」 いつの間にか自分の眼前にやって来ていたユーノの事を知覚した瞬間、フェイトは思わず絶叫してしまった。 「やっぱり今日のフェイトは変だよ、ぼーっとしてるし……。どこか具合でも悪いの?」 心配そうに自分を覗き込むユーノにフェイトは内心嬉しさを感じながらも、しかし先程の自分の妄想…… もとい想像の所為で彼の顔をまともに見ることが出来ず、赤くなった顔を背けるように叫んだ。 「わ、私はだ、大丈夫だよッ!? あ! でも用事を思い出したから今日はこれで失礼するねッ!! それじゃあッ!!」 そう言うが早いかフェイトはあっという間に無限書庫から出て行った。 後に残されたユーノはぽかんとした後、頭を掻きながら呟いた。 「女の子って、良く分からないなぁ……。」 この後、とある出来事でフェイトはユーノと思いがけずキスしてしまう事となるのだが、それはまた 別のお話。 89スレ フェイト ユノフェ ユーノ・スクライア 小ネタ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/196.html
司書長の脱出騒動記 XmEGL6lT レスキュー隊員であるスバルが現場へと辿り着いて最初に思ったことは、驚愕の一言に尽きた。 どの災害の現場へと向かっても同じ、怪我により助けを求める人の悲鳴、家族を案ずる悲痛な叫び、 何処へ向けるとも知れない怒りの咆哮。 ‘それがほとんどと言って良いほど無かった。’ 「えーっと…」 「レスキューの方ですか?」 「あ、はい。あの、状況は―――」 「それが、どうも死人どころか怪我人もほとんどいないみたいなんですよ。」 「「「「ええ!?」」」」 スバルも含めて、隊員全員があり得ないと思った。 写真で見た限りでは、それなりの規模のビルであったはずだ。 それが完全に倒壊したというのに死傷者がほとんどいないなんてことがあるのか。 その疑問に気づいたらしく、現場の一時的な責任者は説明を始める。 「爆弾は人の使用しない中腹の階に設置されていまして。それによる直接の被害者はゼロです。」 「で、では、下層の方はともかく上層の方は!?」 「それが、魔導師の方がおられまして。 倒壊前に転送魔法で私も含めたほぼ全ての方を救出してくださったのです。」 「ビルの上層にいた人間のほとんどを、ですか!?」 「すごい…!」 スバルが感心したのも無理はない。 より巨大に、より多くの人間を転送させるには相応の技量が必要となるのだから。 しかし、隊員達が安堵と感心に色めき立つのを見て、男は沈鬱な表情へと切り替わった。 「ただ…その、転送直前にその方は逃げ遅れた子供を助けるために…瓦礫の中へ…」 「っ―――!」 「なんて、ことだ…」 「あんな倒壊した瓦礫の中だとすると…並のシールドじゃあ、張ってもすぐに潰されちまう…」 「そんな…!」 絶望に染まったのは、スバルも同じであった。 せめて、その使い手が転送魔法と防御魔法。共に卓越した技量でも持っていれば別だろうが。 「っ…隊長。どう、しますか…?」 「…あの瓦礫の量では、撤去にも一苦労だ。とりあえず、崩れないような場所から作業を開始するぞ!」 「「「「了解!」」」」 「あの、身勝手なお願いなのですが… もしも、彼を見つけたのならば知らせて貰えませんか…私達重役は、皆彼に救われたので。」 「…分かりました。彼の特徴は?」 「ええ。金髪で、長い髪を後ろでリボンで束ねていたはずです。」 「男性が、ですか?」 「はい。ああ、綺麗な翡翠の瞳でメガネもかけておられました。」 「…え?」 その言葉に、持ち場へと向かおうとしていたスバルは動きを止める。 何十人もの人間を転送させられるほどの魔法の使い手。 そして、聞いたかぎりのその魔導師の身体的特徴。 「ま、さか―――!?」 マッハキャリバーに命じて自分のプライベートフォルダから‘彼’の写真を呼び出し、 それを隊長、ならびに責任者に見せる。 「あの!ひょっとして、その男の人ってこの人ですか!?」 「は?って、おい、ちょっと待て、スバル!」 「あ、ああ!間違い有りません!彼が、私達を助けてくれた魔導師です!」 外れて欲しかった想像が現実となった瞬間、スバルは頭の中が真っ白になるのを感じた。 ◆ 「よ、いしょっ…と。」 手前にある岩に触れないように移動して、ユーノは視界を確保する。 薄暗いどころか、ユーノが持つペンライト以外に光源が全く存在しない場所で、 ユーノはただため息をこぼした。 (はぁ…失敗したなぁ…転送魔法ももう使えないし…変身して通り抜けられそうな穴もないみたいだ。) 状況から考えれば、酸素が入ってくるぐらいの隙間はある…と考えたい。 もしそれすら無かったなら、確実にタイムリミットが縮まる。 (とりあえず、眠って体力と魔力を回復させよう。 一人分の魔力さえ回復させれば…まあ、それまで崩れなければ、の話か…) 後ろにあった瓦礫に腰を下ろし、ライトも消して瞳を閉じた青年は、やがて静かな寝息を立て始めた。 その近くで、小さな瓦礫がカラリと転げ落ちる。 無限書庫司書長、ユーノ・スクライア。 彼がいるのは…倒壊したビルの瓦礫の中。 ことの起こりは単純なものだった。 管理局への反抗、という名目の無差別テロ。 一般市民を巻き込んだそれの中に、偶然ユーノが紛れ込んでいたのだ。 ビルが瓦解するギリギリまで、ユーノは出来うる限りの人を助けるために転送魔法を敷いていた。 そして、もう限界という状態まで待ったユーノはビル崩壊の限界に魔法を発動―――しようとして、 離れた場所で倒れている子供を見つけた。 そこにユーノが重ねたのは、かつて海鳴で死にそうになって倒れていた自分。 周囲が止めるのもかまわず、ユーノは子供へと飛びつき、魔法陣へと投げ込んで…その瞬間にビルが倒壊。 何とか転送魔法は成功したが、ユーノは魔法陣に入れなかった。 崩れ落ちる瓦礫の中でシールドを張って難を逃れた結果…現在の状況へと陥ってしまったのだ。 大規模の転送魔法、 そして崩れ落ちる大量の瓦礫から身を守るためのシールドにユーノの魔力は完全にエンプティ。 しかも、周囲は今にも崩れ落ちかねない瓦礫の洞窟。 その命のタイムリミットは、少しずつ、だが確実に時を刻んでいった。 ◆ 「おい!馬鹿、スバル!ちょっと落ち着けっ!」 「落ち着いてます!落ち着いてるから探してるんです!」 ユーノが瓦礫の下に埋もれていることを知ったスバルは、 マッハキャリバーで周囲の瓦礫を崩さないように走る。 その状態で、かたっぱしから対人探査魔法を走らせていた。 「分かってんだろ!こんな状況じゃ、助かってる可能性なんて本当に―――」 「分かってます!この事故の状況も! そして、あの人が…ユーノさんが、このぐらいの事故で死ぬような人じゃないってことも!」 「何を根拠に―――…待て、ユーノって…まさか、無限書庫の司書長かっ!?」 「ユーノさんの防御魔法なら、きっと瓦礫を逃れるくらい可能なはずです!」 「なら、どうして転送魔法で出てこない?」 「ユーノさんは魔力量が私達に比べて少ないんです… 大規模の転送魔法と、瓦礫を防ぐシールドで空っぽになったのかも…」 「魔力が回復すんのを待ってるってとこか…よし、スバル!お前はそのまま探査魔法を続けろ!」 「はい!」 レスキュー隊員として冷静な判断を下す一方、女としてのスバル・ナカジマは悲鳴を上げる一歩手前だった。 無事だという確信はある。だが、もしも魔力がエンプティならば次に崩れた時がユーノの終わりなのだ。 これほどの量の瓦礫。人一人を圧殺するのには十分すぎるのだから。 (絶対に…絶対に、助けてみせます!ユーノさんっ…!) 一刻も早く。一秒でも早く。 見る限り、瓦礫はかなりの量が積み上がっている。果たしてこの中のどこにいるのか。 ユーノの身長を考え、それを基準にプロテクションの大きさを予想。 その大きさの物体が停止しそうな場所を念入りにサーチ。 ‘ガシャシャシャ…’ 後ろでわずかな瓦礫が崩れ落ちる音に、冷や汗がどっと流れ出す。 小さな瓦礫であっても、崩れ続ければいつか大きなものを滑らせる原因となりかねないのだ。 (ユーノさん…ユーノさん…ユーノさんっ…!) 初めて会ったときから、多くのことを教えてもらった。 尊敬するなのはのこと。遺跡で起きた災害の現場のこと。 美味しい料理があるお店のこと。マニュアルとは違う魔法の使用法のこと。 そして、誰かを好きになるということ。 (まだ、伝えてないんです…だから…だから、必ず助けてみせます!) 頬を伝う汗。それを頭を振って飛ばし、次のポイントへと蒼の道が延ばす。 この道の先に、今度こそユーノがいると信じて。 ◆ ふと目を覚ます。 辺りを見回せば、相変わらずの暗い世界に自分が残されている。 もちろん、魔力の回復のために今の自分はフェレット状態だ。 (よし。それなりに魔力も戻ってる…転送魔法を使うには、ギリギリってとこかな?) フェレットの身体で隙間を抜けることも考えたが、 下手に瓦礫を踏めば連鎖で崩落する可能性もあるので中止する。 一刻も早く抜けたいが、現在の魔力量ではビルの外ギリギリ。 とすれば、もう少し待つべきか。 その迷いが、致命的な遅れになった。 ‘バァァァン……’ (え!?) 瓦礫の砕ける音とは違う。 明らかに人為的な炸裂音と同時に、ユーノの周囲の停止していた時間が動き出した。 (くっ…転送魔法、は…間に合わないっ!?) 次の瞬間。 足場の喪失と同時に、ユーノは崩壊する瓦礫へと飲み込まれていった。 ◆ 必死に探していたスバルの目の前に、妙な男が現れたのは突然だった。 「ここは危険です!すぐに退避を―――」 「うるっせえ!なんだよ!なんで誰も死んでねえんだよ!?」 「―――は?え?」 「管理局は自らの愚かさを知るべきなんだ!そのための犠牲なのに、なんで誰も死んでねえんだよ!」 「犠牲、って…まさか、あなたがっ!?」 テロリスト。 その言葉が頭に染みこむと同時に、嫌な予感がスバルの全身を襲った。 それは、戦闘機人として発達した五感によるものか。それとも、女としての直感によるものなのか。 どちらにしろ、その予感を払拭すべくスバルがリボルバーナックルを構え、相手へと駆け出そうとした瞬間。 「この中に、俺達の理念を邪魔したやつがいるんだな…管理局の犬がよぉっ!」 「っ―――、止めろおおおおおおおおおおおおおおっ!」 「おっらぁっ!」 男が放った魔力弾が、今なお危ういバランスで保たれている瓦礫の山に直撃した。 ‘ゴガガ‘ズズズズズズズ…’ガガガ‘バキバキバキバキッ……’ガガガガガガ‘ギャリギャリリリリン!’ガガガガガ!‘メギョメギョギョ…’…!’ 様々な破砕音と同時に、あっという間に崩落が始まる。 その中には、探しているはずのユーノがいたはずで―――! 「お、ま…えええええええええええ!?」 「へっ!ざまみやが―――え?」 「一体何―――っ!?」 テロリストがポカンとした表情になったのを見て、怒りの拳が行き場を一度失う。 その驚愕の瞳が何を見ているのかと振り返る。 ―――崩れ落ちる絶望に抗うかのように、翡翠の球体が浮かんでいた――― ◆ 「ぅ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 フェレット状態でのスフィアプロテクション。 巨大な瓦礫の隙間を縫うようにして必至に回避しつつ、細かい瓦礫を弾き続ける。 今度潰されれば、もはやそれに耐えきれるかは分からない。 残された魔力を使い切る覚悟で必死に回避を続ける。 自分がいた階層と落ちていった瓦礫から考えれば、もう落ちてくる量は少ないはずなのだから。 (まだか!まだか?まだかっ!?) 避ける。弾く。砕く。回り込む。飛び乗る。すり抜ける。 フェレットの体躯を活かして必至に飛び回るユーノの視界に、一瞬だけ眩しい光が差し込んだ。 (光が見える!もうすぐ脱出でき―――!?) その光が消えると同時。 自身の何倍もの大きさの巨大なコンクリートの塊が視界を埋め尽くした。 回避―――不可能。 防御―――不可能。 転移―――不可能。 (ち、くしょうっ……!) 何もかもが崩れ落ちていく中で、ユーノ自身の生への執着が絶望に押しつぶされて―――― 「ユーノさあああああああああああああああああああんっ!」 ―――その声に、絶望が弾き飛ばされた。 「ディバイィーーーーン…バスターーーーーーーー!!」 目の前にあった瓦礫が、蒼の光の奔流によって打ち砕かれる。 黒の絶望が消え去って、ユーノの視界に入ったのは突き抜けるような蒼い空。 そして、その蒼を貫く蒼の道を走る蒼の少女。 勢いよくその少女へと飛んだユーノを、柔らかく暖かな腕が抱き留めた。 ◆ 「ユーノさん!ユーノさん!ユーノ、さんっ…!」 「す、スバル…ははは、助けに来てくれたんだ…ありがとう…」 「はい!もちろんです!」 翡翠の光を見た瞬間、それがユーノのものだと知ったスバルはエクセリオンを起動。全力で駆け寄ったのだ。 そして、ユーノの進路上の瓦礫の大半をディバインバスターの一撃で吹き飛ばし、 その隙にユーノを捕まえて脱出に成功したのである。 「絶対に助けるって!そう決めてましたから!」 「そっか…っ!スバル、後ろだ!」 「へ?う、わあっ!?」 安堵したスバルの隙を突いて、テロリストの魔力弾が飛んでくる もっとも、それは目標に当たる前にユーノのラウンドシールドに防がれてチリと消えたが。 「スバル、あいつは?」 「この事件の犯人です!ユーノさん、しっかり捕まっててください!」 「うん、分かった!」 肩にユーノがしがみつくのを確認して、スバルは反転、男に向かって一気に距離を詰めていく。 「スバル!逃がす暇を与えちゃ駄目だ!魔法弾は僕に任せて!まっすぐ突っ込んで一撃で倒して!」 「さすがユーノさん!そういう分かりやすいの大好きです!」 受け取った言葉も、自分が返した言葉も、 以前に尊敬する女性が受け取り、返した言葉と近しかったのは偶然だったのか。 そんなことなど何一つ気にせず、スバルはエクセリオンを起動させたまま全力で相手に接近した。 次々と放たれる魔力弾を、もはや限界寸前のユーノが最期の力を振り絞ってシールドを展開して防ぐ。 「ぅ、おおおおおおおおおおおおおお!」 「ひっ、くそっ―――っ!?」 逃げようとした男の動きが、一瞬だけ止まる。その足に絡みつくのは、翡翠のリングバインド。 ただでさえ少ない魔力の残りかすで作られたそれは、本当に一瞬で破壊されてしまう…が―――― 「ディバイン・バスターーーーーーーーッ!」 ―――その一瞬が、男にとっての破滅までの時間だった。 ◆ 「えへへー。ユーノさーん、ご飯ですよー。」 「…うん。分かってた。分かってたよ、食事はこうなるかなって。」 連続した二度の魔力エンプティにより、当分は休養が必要となったユーノ。 もちろん、一刻も早く復帰するためにフェレットモードでいることに異論はないのだが… 『じゃあ、その間のユーノさんのお世話を私が!』 という、スバルの発言が何故か通った。 無限書庫の司書達が強引に取らせた有休も相まって、フェレットユーノ。 現在スバルの部屋でフェレットフードを囓っていた。 「それにしても、ユーノさんに怪我が無くて本当に良かったです。」 「あのとき、スバルがディバインバスターを撃ってくれなかったら、怪我どころじゃなかっただろうけどね…」 「あの時は、もう無我夢中でしたから…でも、ユーノさんもありがとうございます。 犯人逮捕に協力してもらっちゃって」 あの後、テロリストは担当の部署に引き渡されることとなった。 その件によってスバルの評価がまた一段と高くなったのは、本人のあずかり知らぬところではあるが。 「いやいや。あれはスバルが強かったからで、僕なんて魔力すっからかんで大した役には―――」 「そんなことないです。ユーノさんに守ってもらってるって、 そう思うだけで私…本当に安心して相手を倒すことに集中できました。」 「そうかい?なら、役に立てて良かった、かな。」 「はい!最後のバインドも絶妙のタイミングでしたし! なのはさんが、ユーノさんと一緒に戦ってたときの気分が、少し分かった気がします。」 かつて、ユーノと共に戦っていたなのは。 その尊敬する女性が言う、 背中の温もりというものがどんなものかを知ることができたスバルはご満悦であった。 だからこそ。いつか、背中ではなく隣にこの温もりが来てくれればと。 そう願ってやまないスバルは、 フェレットフードをぽりぽりとかじるユーノが頬を真っ赤に染めるような優しい表情で笑うことができた。 ◆ ~おまけ~ 『…そう言えば、フェレットで誰かの肩に乗って戦うのなんて、なのは以来だなぁ。』 『え、本当ですか?』 『うん。まあ、だから何だっていうような話だけどね。』 そんな会話があってから数週間後。 『―――だって。そうユーノさんが言ってくれたんだよ!』 「そ、そう、なんだ…?」 『なのはさんと私だけしか分からない感覚なんだって~。何だかすっごい嬉しくなっちゃってさぁ~♪ ねえ、聞いてる、ギン姉?』 「え、ええ…聞いてる、わよ…」 妹からのプライベートの話を受けたギンガ。 別に今は休憩時間なので、それは構わないのだ。 スバルからは見えない画面の向こう側に、偶然に出会ったフェイト・T・ハラオウンがいることを除けば。 「…ユーノを肩に乗せて、一緒に戦う…わ、私だって、そんなこと…!」 『それでねー、他にもさー♪』 (ああ、もう…あの人はどうしてこうも…!?) 画面の向こうの温度と、自分の前にある温度。 その差の板挟みに遭いながら、ギンガは八つ当たり気味にユーノへの恨み言を心の中で呟くのであった。 以上です。 えー、毎度毎度恒例の絵描き司書様。マジありがとうございます。既に、自分のSS挿絵が3枚目…感謝の言葉が尽きませぬ。 せめてものお礼として、今度は絵描き司書さんの絵からSSを書いてみようと頑張ります! では、次回予告ー! ヴィータ、ある日起きたらバニーちゃん!? アリア、珍味!フェレットを狩れ! はやて、眠れる我が子が羨ましくて よっしゃー!気合い入れていくぞー!…でも、二番目はこのスレじゃ無理だよなぁ。 95スレ SS シリアス スバル・ナカジマ ユノスバ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/316.html
タイトル未定 ◆kd.2f.1cKc LZcQ2Z2q 一夜限りの関係……の、筈だった。 どうにも関係の進展しない幼馴染達を待ち続けるのが辛くなっていた。 仕事に逃げるのも限界になっていた。 というか、さすがに仕事の疲れを癒してくれる存在が欲しかった。 だが、状況はあまりに孤独すぎて。 だから、つい──── かけられた優しい声に甘えてしまった。 「ままー」 その結果が、これである。 子供が出来た。 はい? つまり、妊娠した。 いやいやいや、言い方変えても同じだから。ってか、魔術的存在でしょ? 妊娠しないとは一言も言った覚えは無いが。 そ、そりゃそうだけど……ぜんぜん認識の範囲外だったって言うか。 一応一通りの生命活動は再現していることになっているからな。 ………… いや、別に耳には入れておこうと思っただけだ。 え? 別に責任を取れとは言わない。私自身の判断の結果だ。 いや……でも…… ただ堕ろしたくはなかったのでな、安心しろ、父親が誰かは例え主にでも絶対に言わん。 ………… それと……その間は情事は避けたい。スマン。 ちょ、ちょっと待って! ユーノ・スクライア(21)。 荒んでも、情交の果てに妊娠させた女性を見捨てられるほど堕落していない。 ただ──── 「周りから見ると、どっちかって言うと僕が『見捨てないで貰った』ようにしか見えないんだよな~」 2DKの安マンションの一室、あやしている娘の頭を撫でながら、ユーノは1人で呟く。 何せ相手はヴォルケンリッターが将、今や管理局内でも知らない者のほうが少ない烈火の騎士である。 かたやバリバリの武闘派、かたや地味な文官系。 無論どちらが重くどちらが軽いというわけではない。 しかしこれで性別が反対だったら、と思うのはやはり、男の矜持である。 不幸か? と言われれば、そうではないと答える自信はあるのだが…… 「まったく『世界はこんなはずじゃなかった事』ばっかりだよ」 珍しく休みをとり、娘アスティナ・スクライアをあやしながら、そんなことを呟く。 いや、そんな事を言ったら世の不幸な人々に悪いことなど承知している。 不幸だとは思わないし、幸福だろうと言われればそうなんだろうと思える。 ただ…… 「ぱぱー」 「こっちの部屋にいたのか。夕食の支度が出来たぞ」 シグナムは、ダイニングキッチンから部屋に入ってくると、背後を向けているユーノにそう言った。 意外なことに、シグナムは主婦業も大抵そつなくこなした。料理は豪快で大雑把な所があるが、まぁ及第点。 ちなみに普段しなかったのは「シャマルがひがむから」との事。 それ以外でも掃除にしてもなんにしてもこれと言って生活の支障(?)になるような事はなかった。 ただ唯一、ユーノもシグナムも結婚当初に持っていた白物の服が全部、雑巾とアスティナのおしめになってしまった程度である。 ちなみに、風呂を入れ忘れて、レヴァンティンと言い争いをしながら、彼の炎で沸かしている所を偶然目撃したこともあるが、それはそっと見ないでおいたことにしてあげたユーノだった。 「あ、うん、今行くよ」 苦笑混じりにそう言って、愛娘を抱えながら立ち上がる。 「本で調べたのだが、子供が言葉を話し始めるのは、本来1歳過ぎとのことだ」 「うん、そうだってね。アスティナはだいぶ早いみたい」 シグナムの言葉に、ユーノも微笑んで、アスティナを抱っこしつつ、そう言った。 「やはり私とユーノの子供だけの事はある」 シグナムはいかにも親バカそうな目で、アスティナの顔を見つめ、その頭を撫でた。 「そろそろ魔法の教練の方針も考えた方が良いかもしれないな。ベルカか、ミッドチルダか。 私としてはどちらも棄てがたいが……いや、基本ミッドチルダで近代ベルカを覚えさせるのもありか……」 「早いって、まだ11ヶ月だよ?」 ぶつぶつと言い始めるシグナムに、ユーノは苦笑して、そう言った。 「何を言う、ユーノだって、物心ついたときには、術式(スペル)の1つも覚えていただろう?」 「ん、まぁ、そりゃ、ね」 スクライア一族の特性上、生まれたときから魔法に浸かって過ごすようなものである。 ただその常識を、一族の外で育つことになるアスティナに適用して良いものか。 それは、ユーノにも悩みどころだった。 「それにこの子には資質がある。ユーノだってそれは認めるだろう?」 「うん……」 アスティナの顔を覗き込んで言うシグナムに、ユーノは頷いた。 シグナム譲りの、紫がかったピンク色の頭髪に、ユーノ譲りの、緑の瞳。 その瞳の奥に、かつての高町なのはを凌ぐかもしれない資質が宿っている事は、ユーノも気付いていた。 なにせ遺伝子配列の半分は、魔力資質そのもので出来ているような子である。 『私の近接戦にユーノの防御と補助。後は砲撃さえ加われば無敵だ。ヴィヴィオにも劣らない』 アスティナが生まれたとき、真っ先にシグナムが言った言葉だった。 ユーノは正直、仕える相手が違うとは言え、仮にも古代ベルカ出身のシグナムが、古代ベルカ聖王より自分の娘の方が上だと断言するのはどうかと思ったが、人の親とはそう言う物なのだろう。 正直ユーノ自信、アスティナを見ているだけ、触れているだけで目尻が下がってくる。 身を引こうとするシグナムに婚姻を迫った当時、心のどこかにあった、『早まった』と言う気持ちも、 今や完全に払拭されていた。 ただ、唯一の不満、感じる不幸はと言えば。 「ままー」 アスティナはそう言って、ユーノの首に抱きついた。 そう、アスティナが口を聞き出したのはいいが、ユーノのことを『まま』と呼び、シグナムのことを『ぱぱ』と呼ぶようになってしまったのだ。 どうもテレビの悪影響らしいのだが、ユーノが女性っぽいのはともかくとしても、シグナムのどこをどう見たら男性に当てはめられるのか。 「やっぱ、行動……なんだろうなぁ」 抱きついてくるアスティナをあやすように揺すりながら、ユーノは苦笑して呟く。 「ん? 何か言ったか?」 シグナムがキョトン、として、ユーノに訊いて来る。 「なんでもないよ。さ、シグナムの手料理がさめないうちに、ダイニングへ行こう」 そう言って、ユーノはアスティナを抱いたまま、部屋を出た。 シグナムは少し赤面し、お玉を持ったままの自分の右手を見てから、ユーノを追った。 「せっかく休みをとっても、1日が短く感じるな」 入浴を終えて、ユーノはダイニングキッチンでそう呟いてから、寝室へ向かう。 すでにアスティナはベビーベッドの中ですやすやと寝息を立てていた。 「なんだ、シグナムは起きてたのか」 多分育児書だろう、読書灯だけつけて本を読んでいたシグナムは、 そう言いながら入ってくるユーノに向かって、視線を上げた。 「夫より先に眠りにつく妻になどなりたくない」 そもそも考え方が古風なシグナムは、そう言って、本を下ろした。 「でも、アスティナの育児で大変だろう?」 ユーノは、労うような穏やかな口調で、シグナムに言った。 「それこそ無用の心配だ。数多の戦場を駆けた私が、愛娘の世話で疲れたなどと言ってられない」 「それもそっか」 きっぱりというシグナムに、ユーノは苦笑混じりに返してから、ベッドにもぐりこむ。 「それに……その……な」 途端に、シグナムは言葉を詰まらせる。 「?」 ユーノが不思議に思ってシグナムを見ると、シグナムは恥らうように視線を逸らしている。 「その、子供というのは、歳の近い兄弟姉妹がいたほうが、情操教育には良いそうだ」 「そう言う説もあるね」 絶対ではないけれど、と、ユーノは言おうとして、それを呑み込み、目を円くした。 シグナムの意図にようやく気付く。 「だから……アスティナの弟か妹を、な?」 「う……」 いや不味いですシグナムさん。家だってまだきちんとしていないのに、2人目は早いです。 そう言いたいユーノだったが、 やがてシグナムにしなを作って抱きつかれては、まったく抵抗も出来ないのでありました。 33スレ SS シグナム ユノシグ ユーノ×シグナム ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/296.html
ユーノって、自分に関わる事ならあまり細かい事は気にしないイメージがある。 たとえばの妄想だが、 休暇を取り、遺跡発掘に向かったユーノが休暇ギリギリに戻ってくる。 普段はもっと余裕を持って帰ってくる司書長に、 首を傾げる司書達だが直ぐにそんな事を気にする余裕はなくなった。 遺跡から帰ってきたユーノから、目が離せないのだ。 それまでも、キレイな人だという印象はあったが、 今のユーノは咲き誇る薔薇の如く、匂い立つような色気を放っていた。 見惚れる司書の前で、 それまでと同じ様にママとの待ち合わせに無限書庫へ来たヴィヴィオが、大好きなユーノに飛びついた。 声無き悲鳴や絶叫、立ち居地を変えられるなら全てを擲つだろう羨望の眼差しを浴びながら、 少女は無邪気な声に微かな疑問を混ぜて言った。 「あれ? ユーノ、お胸があるよ?」 「あぁ。ちょっと遺跡のトラップに引っ掛かってね。僕の性別が反転してるんだ。 幻覚魔法で誤魔化せるかと思ったけど……触るとばれるよね」 アハハ、と。本当に何でもない事の様に口にするユーノ。 彼の前に、無限書庫の稼働率がガタ落ちになった文句を言いに来たクロノが来て。 将来有望な提督が危険な道に嵌りそうになるのが一時間後 自分達の将来設計に重大な危機を覚えた元機動六課メンバーの殆どや、 更正プログラムを終え、各所に配属されたナンバーズがやってくるまで、残り2時間。 30スレ TS ユーノ ヴィヴィオ 電波
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/127.html
スバルと過ごす、クリスマス・イブ 作者:ID pbRGsAHn 鳴海市 12月24日の日没から2時間後、クリスマス・イブのその日、 切りつけてくるような風が一人佇むユーノ・スクライアの頬を撫でていた。 遠くからブォンブォンという音が響く。手を大きく横に振りながらスバル・ナカジマがユーノに駆け寄った。 「ユーノせんせぇー!遅れてごめんなさーい!」 「いや、そんなに待ってなかったアッー!」 勢いあまってずぬりっとスバルの頭がユーノの腹部に吸い込まれる。ユーノは悶絶し、スバルはそれを見ておろおろしていた。 「ああっ、先生大丈夫ですか!?」 「ぐ、あははは、なのはの砲撃に比べたらなんてことないよ」 ユーノ先生ユーノ先生とキラキラと輝く目を向けられては どうも憎めないなぁとユーノはお腹をさすりながら苦笑してしまう。 「今日はあたしから頼んだことなのに遅れてすみません! 遅れて迷惑をかけまいと思ってマッハキャリバーで飛ばしていこうとしたらギン姉に叱られちゃって……」 「そ、それは……怪我がなくて幸いだよ。ホントに……。 でもスバル。いつも言ってることだけど、迷惑ならかけてもいい。でも、心配はかけさせないでよね」 「うう、重ね重ね迷惑をかけてしまって、ホントにすみません……」 「それに、今日は僕の息抜きも兼ねてるんだから、もとから迷惑なんかじゃないんだよ」 スバルの頭を撫ぜる。怯えた子犬のようにしゅんと萎むスバルの様子を目の当たりにしては、 こっちが悪いことをしてしまった様に感じられてならないのだから不思議だとユーノは笑みを漏らした。 「だから、そんなに謝らないで欲しいな 僕も、今日のこの日を楽しみにしてたからね」 スバルの顔がぱあっと明るくなっていく。素直な子だなと改めて感じられた。 「はい!今日はあたしのわがままに付き合ってもらってありがとうございます!」 「うん、それでよし」 きっと尻尾があったらブンブンと振っているのだろう。見ているだけで人を和ませるのは稀有な才能だとユーノは思う。 「じゃあ、とりあえず歩いて回ろうか」 「はいっ!」 二つの人影は人込みに融けてゆく。 「これがクリスマスなんですねー」 ユーノ先生から話には聞いてましたけど人が多いですね、興奮したように言うスバル。 電飾やネオンがキラキラ眩しいです、と続ける。 賑やかな海鳴市の中心部を二人で散策する。 きょろきょろと物珍しそうに辺りに笑顔を振りまくスバルをユーノは傍らから微笑ましそうに見守っていた。 恋人というよりはお転婆娘と、その手綱をさばく父親といった印象だっが、 その調和の取れた二人の様子は否応なしに人目を引いていた。 一瞬厳しい視線を感じたような気がしてユーノの背中に悪寒が走ったが、 露店の香具師や道行くカップルからの温かい視線がこそばゆい気持ちにかき変えてくれた。 「ユーノせんせっ!これなんですか?」 ユーノが少し目を離すとスバルは雑貨店のショーウィンドの中を指差し手を招いていた。 リードを放すと興味のまま自由奔放に駆け回る子犬のようなスバルを見て、 将来この子と付き合う人はきっと大変だろうなあと他人事のように思ってしまう。 「ああ、これは……クリスマスツリーの飾りみたいだね」 「これは?」 「電飾だね。これもツリーの飾りだよ」 当日にこんなに売ってどうするんですかと無粋、ある意味純粋な質問に苦笑い。 「せんせ、これは?」 興味を一向に失わないで矢継ぎ早に質問を放つスバルに、ユーノは提案した。 「外は寒いから、ちょっと中覗いてみようか」 「うわー」 赤と緑のクリスマスカラーと電飾に彩られた店内をぐるりと見渡す。 「あ、これかわいー」 スバルは手近な小物を取り上げてうっとりと悦に浸った。 つい忘れがちになってしまうが、こういった光景を目にするとスバルが一人の女の子であるのを再確認させられる。 「雑貨店は見てて飽きないですね」 「そうだね。こうもいろんなものがあると、発掘者魂が奮われるよ」 うんうんと鼻息荒くユーノが返すと、なんですかそれとスバルに笑われてしまった。 検索魔法を使えば商品目録なんてすぐに作れるのだが、やはり気に入った一品を直接探し出す喜びは大きいもので、 そういえば無限書庫の書物をまともに読んだことなんてあったっけな、と思考が脱線しそうになったが、それはそれ。 今はスバルを案内するのが僕の最優先すべき仕事だ、とユーノは自分に言い聞かせた。 ゆっくりと雑貨を物色していると、ユーノの視界に珍しいものが留まり、ふと足を止めた。 「ん?これは……」 「先生、この知恵の輪みたいな鎖がどうかしたんですか?」 ユーノが目を向けた先には、八つの銀色の細い輪っかが一つに纏まったものが鎮座していた。 「お、お兄さんお目が高いね」 温和そうな店の主人が奥から声をかけてくる。ユーノは生業でしたから、と答えそうになり口を噤む。 「これは、パズルリングですね。でも……」 「おお、若いのによくしってるなぁお兄さん。でも、その指輪はどうも造りが特殊でね。 仕入れた時はちゃんとしてたんだけど、一旦崩れてしまって戻せなくなったんだよ」 「む、ちょっと弄ってみていいですか?」 「もちろん」 かちゃかちゃと細い指で器用に輪を組んだり取ったりするが、ユーノの顔はどんどん険しくなってゆく。 「ん、これなら……あ、駄目だ」 「ははは、そんな簡単には解けないよ」 「いや、ここをこうすれば……」 「おお、新しいやり方だね」 盛り上がる二人の漢にすっかり置いてけぼりになったスバルは人知れず頬を膨らませるのであった。 「そりゃあ、今日はあたしの案内じゃなくて先生の息抜きの日ですもんねー」 「す、スバル……本当に悪かったって」 数十分格闘しても結局解けなかったパズルリングは、絶対に組み立ててやると珍しく躍起になったユーノが買い取った。 一方その間ほったらかしにされていたスバルは、クリスマス案内依頼が自分の我侭であった事実をもってしても、当然面白くない。 店から退却したのも、パズルリングからやっと目を離したユーノがこれまでにないスバルの不機嫌な顔に気付いたからだった。 すたすたとユーノの一歩半前を歩いてゆくスバルを、ユーノは必死に宥めようとしていた。 「いえいえ全然気にしてないからいいんですよー。そのパズルリングの方が大事ですもんねー」 「う、いや、スバルだって僕の大事な教え子だって!」 「でも、そのパズルリングよりは大事じゃないんですよねー」 朴念仁ユーノの殺し文句もあっさりかわされる。 別にそれと意識して言った言葉ではなかったが、ユーノは本能的にこれ以上の説得は難しいと感じた。 「翠屋のケーキセット」 ぴくりとスバルの足が止まる。 「更にクリスマス150皿限定販売のケーキ」 ふるふると体が震える。 「予約しておいたんだ」 その一言にやっとスバルは恨めしそうなぶすっとした顔でユーノに振り向いた。 「あたしって、そんなに食い意地張ってるようにみえますか?」 リイン曹長と同等に扱ってませんかと恥ずかしげに半眼で睨むスバルに、ついユーノは怯んでしまった。 流石に拙かったかと真面目に凹むユーノに、スバルは続ける。 「アイスケーキも、ありますよね?」 噴出したユーノをスバルは顔を赤くして追いかけた。 * * 「ふ、ふふふふ、去年約束をすっぽかしておいて、女の子引き連れてるなんて、なかなかいい度胸してんじゃない。ぶち殺すわ」 「あ、アリサちゃん!落ち着いて!明日こってり絞ればいいんだから!!」 クリスマスパーティーの為に買出しをしていたアリサとすずかの二人がユーノとスバルを視認、翌日ユーノは地獄を見る。 * * クリスマス・イブから数日後、機動六課内 「あれ、スバル、そんな指輪してたっけ?」 「え、あー、これ?えへへ、クリスマスプレゼントにユーノ先生から貰ったんだー」 「……ねぇ、フェイトちゃん、はやてちゃん。私たち、何か貰ったっけ?」 「……ううん」 「……なーんも」 三人の無限書庫乱入まで、後5分のことだった。 13スレ SS スバル スバル・ナカジマ ユノスバ ユーノ ユーノ×スバル ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1009.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 食堂へ続く廊下を歩きながら、ルイズの横でキュルケはまだ笑い続けていた。 大声を上げて笑っているわけではないが、口を押さえても閉じても笑いがこぼれている。 「キュルケ、あなたいいかげんにしなさいよ」 「だって……ルイズ……かわいいって……くぷっ……ダメ、押さえられない」 よほどツボにはまったらしい。 足下ではフレイムが吹き出すキュルケに合わせて炎を吹いている。 「はぁ……」 とりあえず放っておくしかないようだ ルイズの肩に乗っているユーノもため息を吐くような仕草をしている。 廊下を半ばまで歩いたとき、後ろから声をかけられた。 「おはよう。ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー」 「おはようございます。ミスタ・コルベール」 「おは……よ……くぷふふふっ」 またキュルケがこけたらかなわないのでルイズは手を引いてやる。 「どうしたのかね、ミス・ツェルプストーは?」 コルベールが聞いてくるのにルイズは 「いえ……そのままにしておいてあげてください」 と答えるしかなかった。 あまり言いふらして欲しい話でもない。 なので 「ああ、ところでミス・ヴァリエール」 とコルベールが話を変えてくれたのには助かった。 「コントラクト・サーヴァントはうまくできたようだね」 「はい。昨日は薬もいただいて、ありがとうございます」 「ああ、いいよ。それより君の使い魔のルーンを見せてくれないか?」 「はい」 ルイズはユーノを両手に持ってコルベールの前に出す。 コルベールはユーノをじっくり観察しはじめた。 (ル……ルイズ?) (ユーノ、我慢しなさい) ユーノは体中をじっくり見られているうちに脂汗が出てくるような気分になった。 突如コルベールは目を見開いた 「これはっ!!!!」 ルイズとユーノはびくっとする。 まさか何か変なところがあったのか? アカデミー行きになるようなものなのか? 「ルーンが見つからない」 ルイズとユーノの体から力が抜ける。 (そういば、ユーノ。ルーンはどこに刻まれたの?) ルイズは念話でユーノに訪ねる。 契約の時にユーノが痛みを訴えていたからルーンがどこかに刻まれたのはわかる。 でも、そのことはキュルケの乱入でうやむやになったままだ。 (それなら、これのこと?) ユーノが左手を挙げる。 「ほほう、私の言うことがわかるのかな?どれどれ」 コルベールは今度は左手を凝視する。 また突如コルベールが目を見開いた。 「これはっ!!!!!!!!」 ルイズとユーノはまたびくっとする。 こんどはなに? 「ルーンが小さすぎて読めない」 ルイズとユーノの体からまた力が抜ける。 いちいち驚かしてくれる先生である。 「すまないがミス・ツェルプストー」 ようやく笑いが落ち着いてのかキュルケは涙を拭きながら振り向き、コルベールが出した虫眼鏡を持つ。 「これで、ルーンを拡大くれないかな」 「ええ、よろしいですわ」 虫眼鏡を覗き込んだコルベールは2、3回うなずく。 「珍しいルーンだな。いや、止めてすまなかったな。授業でには遅れないように」 そのまま満足そうに食堂に足を向けたが 「ああ、そうだ」 3歩も歩かないうちに振り返る。 「ミス・ヴァリエールの使い魔の食事はまだ用意できていないはずだからね……」 周りを見回し空のお盆を持って急ぐメイドを見つける。 「あのメイドに言っておくといい。用意してくれるはずだ」 コルベールはそういうと食堂に急いだ。 「じゃあルイズ、私は先に行くわ。またね」 ルイズは食堂に行くキュルケを見送ったあと、ユーノを肩に乗せ直してメイドの方に走った。 メイドに話はすでに通っていたようだ。 「はい、聞いております。それで、どのようなものをご用意すればよいのでしょうか」 それはルイズもまだ知らない。 (ねえ、ユーノ。あなた、なにを食べるの?生肉とか?) ルイズはユーノの姿から想像する。 種々多様な使い魔達は、もちろん同じものを食べるわけではない。 肉食、草食、雑食。 魚しか食べない、にんじんしか食べないというのもいれば、中には金属しか食べないというかなりの変わり種までいる。 本来なら使い魔を召喚したすぐ後の授業で申告するものなのだが、気を失っていたユーノの食事についてはまだ伝えていない。 (生肉は食べないよ。お腹に悪いから) (それじゃあ何を食べるの?) (ルイズと同じものでいいよ) 貴族と同じものを使い魔に食べさせる、というのは少し抵抗があるが言葉を話すフェレットがなにを食べるかはルイズは知らないし、変なものを与えてお腹を壊されるのはいやだ。 それでもやっぱり問題がある。 ルイズは自分の日々の朝食を思い出した。 フェレットに出すには量が多い。 あれの半分も食べたらユーノのお腹がはち切れそうになるような気がした。 それに (食堂に使い魔を入れたらいけないの) (そうなんだ) (用意してもらうから。後で会いましょう) 「あの、ミス・ヴァリエール……?」 ユーノとの念話が長引いてしまった。 端から見たらぼーっとしていたように見えたのだろう。 メイドがおそるおそる話してきた。 「ええ、わかってるわ。この子にはお皿一杯分。今日、私に出したのと同じものを適当に盛りつけてあげて」 「かしこまりました」 ルイズはメイドの肩に手を伸ばす。 (いってくるね) ユーノはルイズの手を伝ってメイドの肩に移る。 「きゃっ……あ」 メイドは少しおびえたが、肩に乗ったユーノが大人しいとわかるとすぐに気を取り直した。 「じゃあ、ユーノのことは任せたわ」 「はい。ミス・ヴァリエール」 メイドはルイズが食堂に入っていくまでユーノが落ちない程度に頭を下げていた。 ユーノを肩に乗せたメイドがたどり着いたのは、食堂の裏にある厨房だった。 メイドが厨房の扉を開けると太い声が降ってきた。 「シエスタ!動物を厨房に入れるんじゃねえ」 太い声の主はこの厨房の主のコック長マルトーだ。 「これは、貴族様の……」 「使い魔でも同じだ。どうせ貴族に命令でもされたんだろうが入れるな。全くなに考えてんだあいつらは」 マルトーはオーブンを開けて焼けた肉を机の上に置く。 それを彼の弟子が次々と皿に並べ、その皿はメイドが厨房に運んでいく。 「で、なに言われたんだ?」 「今日お出ししたものと同じものを適当に盛りつけて、この使い魔にお出しするように、と」 「なにぃ!?贅沢な使い魔だな」 文句をいいながらもマルトーは棚から皿を出し、ロースとした肉の切れ端や、サラダの余りなどを乗せていく。 「ほれ、これでも出しておけ」 皿を受け取ったシエスタはユーノを厨房から少し離れたところに連れて行く。 「どうぞ。お皿は後で取りに来ますね」 そう言うとシエスタは走って厨房に戻っていく。 まだ仕事が残っていた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/348.html
サクランボ 作者:ID QQgDGuTa ユーノ・スクライアとスバル・ナカジマは司書長室で仲良くサクランボを食べていた。 ミッドチルダのサクランボは地球のアメリカンチェリーに良く似ており、 真っ赤な色と固めの果肉が特長的である。 甘酸っぱいサクランボを食べていたスバルは、唐突にこんな話題を持ち出した。 「せんせーはサクランボのへたを口の中で結べますか?」 サクランボのへたを口の中で結べる人とか結構いるものなのだが、 これがなかなか難しいものなのである。 うまく舌を使わないとへたは口の中で結べないから、 『サクランボのへたを口の中で結べる人はキスが上手』などと言われている。 ユーノはサクランボ自体あんまり食べない人間だから、へたは口で結べない方だった。 「僕はそれ、出来ないんだよね。」 「私は出来るんですよ。」 スバルは言うやいなや、 サクランボのへたを口の中に入れてしばらくモゴモゴしてから口から取り出すと、 そこには綺麗に結ばれたサクランボのへたがあった。 へたを口に入れてから取り出すまで、二十秒と掛かっていない。 見事な舌使いである。 「へぇ、凄い!」 感心したユーノは自分もやってみようと、口でサクランボのへたを結ぼうとする。 しかし、なかなかうまくいかずに四苦八苦しているユーノを見て、スバルはニヤニヤしていた。 「せんせー、下手ですね。」 「だって難しいんだもん!」 「舌の使い方が悪いんですよ。」 「そんなこと言ったってうまく出来ないよ!」 むきになって口の中のサクランボのへたと格闘しているユーノを見ていたスバルは、 悪戯を思いついた子供のような顔をすると、ユーノの方に身を乗り出してきた。 「手伝ってあげますよ?」 「へ?でもどうやって・・・」 ユーノが疑問を言い終わる前に、スバルはユーノの口をキスで塞いでいた。 「ふぇ!?ちょっ・・・スバル、あむぅ!?」 突然のことに慌てふためくユーノを無視して、スバルはユーノの口の中に舌を入れてくる。 スバルの舌は逃げようとするユーノの舌をあっさりと絡めとると、好き勝手に蹂躙する。 「ん、ふぁ・・・あむ、やぁ・・・だめ・・・スバル!」 「あむ、くちゅ・・・せんせー、逃げちゃ駄目ですよ。」 ユーノの口の中ではスバルの舌が歯茎をなぞり、舌を嬲り、口内を陵辱していた。 舌が絡まる感触にゾクゾクしてしまい、ユーノの体から力が抜けてくると、 スバルはユーノを押し倒して上着を脱がせていく。 スバルの手でユーノの上着とシャツのボタンを外し終わると、ようやく口が開放された。 「ほら、せんせー。結べたでしょう?」 「ふぇ?」 ユーノは何のことかと思いながら呆けた顔で口の中を調べてみると、 そこにはしっかりと結ばれたサクランボのへたがあった。 どうやら今のキスの最中に結んだようである。なんという舌技。 しかし、何故かユーノは未だに押し倒されたままだった。 「あの、スバル?どうして僕を押し倒してるの?」 「いや、何と言いますか・・・今度はせんせーを食べたくなりまして・・・」 「は、はぁ!?」 スバルの発言に身の危険を感じたユーノは逃げようともがくが、力比べでスバルに敵う筈もなく・・・ 「せんせーのサクランボも美味しそうですね。」 「やぁん!?ちょ、スバル・・・そこはサクランボなんかじゃ、ひゃあ!」 「キスだけでこんなにしちゃって・・・せんせーって本当に淫乱ですね。」 「ふぁ、んくぅ!やぁ・・・僕は淫乱なんかじゃ、あぁん!!」 「そう言っても体は正直ですよ?」 「ふぁん!やだ・・・やだぁぁぁぁ!!」 そうしてユーノはスバルに美味しく食べられてしまいました。 なお、その後、某教導官や執務官や部隊長が司書長室に襲撃に来ましたが、多分有害です。 59スレ SS スバル・ナカジマ ユーノ×スバル ユーノ・スクライア 電波
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/198.html
中将の墓前にて 作者:xrg998zN 個人的にユーノはStS時においては、機動六課とレジアスらを上手く繋げようと裏で奔走していたのではないかと妄想している。けれどその努力も実らず、レジアスは死亡してしまい、後日オーリスと共に墓参りをして涙してたりするとかね。 「……ごめんよオーリス……中将を……レジアスさんを守れなかった……。」 「ユーノ……。」 「確かにレジアスさんは、方法を間違えた。 けれど、あの人の地上を……世界を守りたいという想いは本当だった。 だから、死ぬことは……死ぬ必要なんて無かったのに……!!」 そう言って静かに拳を振るわせるユーノ。 オーリスは暫く無言であったが、やがてそっと、彼の拳を優しく握った。 その感触に、ユーノははっとして彼女を見た。 彼女は、オーリスは泣いていた。そして、笑っていた。 泣きながら、それでも微笑を浮かべながら彼女は言った。 「ありがとうユーノ。けれど、これは中将が……父が望んだ結末なんです。」 「…………。」 「自分にとって最も大切な友ですら裏切った時に、父は決意したのです。 この先、どんな汚辱に塗れようと、どんなに非道で傲慢な人間と思われようとも、 地上を守ることに己の全てを賭けると。 そしてもし、自分のしてきた事がやがて自分に返ってくる時が……裁かれる時がきたのなら、 その時は全てを甘んじて受け止めようと。そう決めて……おられたのです。」 ユーノは視線をオーリスから墓標に移すと、ぽつり、と言った。 「……本当に馬鹿だよ、貴方達親娘は。 もっと上手く立ち回ることだって出来た筈なのに、どうしてそんなに不器用に生きようとするんだ。 そんなの……切な過ぎるじゃないか。」 そう言うユーノに、オーリスは先程とは少し違う微笑を浮かべて言った。 「その言葉はそっくり貴方にお返ししますよユーノ。 私達の事なんか放っておいて、幼馴染達の手助けだけしてあげれば、 六課もあそこまでダメージを負う事は無かったでしょうに。 私達まで救おうとしていたから、六課のフォローにまで手が回らなかったのでしょう?」 その言葉に、ユーノは苦笑しつつも言った。 「確かにね。なのは達には悪い事をしたと思っているよ。だけど、後悔はしていないさ」 その言葉が余程意外だったのか、オーリスは目を大きく開いて彼を見た。 ユーノは少し悪戯っぽい笑みを浮かべてその瞳を見返すと言った。 「だって、自分にとって大切な人達を見捨てたりなんかできないもの。 仮に六課のフォローに回ってそれが上手くいったとして、 じゃあ貴方達はどうなる? みんなの嫌われ者のまんまかい? 僕はそんなの許せない。 だって、君達がどんな想いで今まで頑張ってきたか知っているから。 君たちも六課も、僕にとっては大切な人達なんだから、どちらを選ぶかなんて、考えもしなかったさ。 もっとも……結果はこの通り。結局、大切な人を一人、失って……!?」 ユーノはそこで言葉を途切れさせた。いや、正確にはいきなり抱きついてきたオーリスによって中断させられたのであるが。 「うっ……あ……ありがとうユーノぉっ……! うぐっ…うえええええええ……!」 やがてオーリスは大声で泣き始めた。 今までずっと張り詰めていたものが、ユーノの言葉で途切れてしまったのだろう。 だが、これでいい、とユーノは思った。かけがえのない父親を失ったのだ。 今はただ、思いっきり感情を解き放てばいい。 オーリスの髪を撫ぜながら、ユーノは心の中でレジアスに呼びかける。 (レジアスさん……向こうでゼストさんと仲良くやって下さいね……。オーリスの事は心配しないで下さい。僕が必ず護りますから……。) 泣きじゃくるオーリスを優しく撫でながら、ユーノはそう、レジアスに誓った。 むぅ……マイナーカプ好きなんで思わず書いてみた。スレ汚しすまん。しかしユーノ×オーリスも結構いいなぁ。俺ユースバ 好きなんだが思わず心が揺らいだよ。 16スレ SS オーリス ユーノ・スクライア