約 2,051,596 件
https://w.atwiki.jp/fantastical_world/pages/422.html
モンモラスとの対峙 ユグドラシル首都ファンタズムを目指す皇帝アーサーと悪魔祓い一行。 そんな彼らの行く手を度々阻んでいたのは、 魔術研究院メイガスの研究院長モンモラスと研究院所属の魔術師たちだった。 幾度にも亘ってアーサーの前に立ちはだかったモンモラスだったが、遂に引導を渡す時が来た。 「今の魔術は見事だった、魔術師(メイガス)」 王の剣を喉元に突きつけ、優越感を含んだ微笑を浮かべるアーサー。 そこにはもはや、王宮に居た頃の優しい皇子の、弱き皇帝だった頃の面影はなかった。 追い詰められた狂気の魔術師は、遂に奥の手、『禁書』の封印を解く。 関連項目 栄光の結晶 era3 ユグドラシル 事件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8868.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第二十八話 『ラグドリアン湖の激戦』 「はぁ…」 水の精霊の涙を求めてラグドリアン湖を目指しているミントは一つ溜息を漏らして何故自分が今こんな目に遭っているのかと考え、その馬鹿馬鹿しさに改めて悲観に暮れる… 「おぉ、どうしたんだい僕の愛しき麗しの女神!その憂いを秘めた「うるさい!くだらない事言ってないであんたは馬の操作に集中しなさい…」」 ミントは自分の馬の手綱を代わりに操っているギーシュがやたらとキラキラした瞳で自分を見つめてくる事にうんざりしながら力無くギーシュを睨み付ける。 「うぅ…ギーシュ…」 「我慢なさい、そもそもあんたが全部悪いんだから。」 「うっ…それは…分かってるわよ…」 ミントとギーシュのやり取りを恨めしげに見ていたのはそもそもの原因であるモンモランシー、そしてミントに無理矢理に連れてこられたルイズである。 今ルイズとモンモランシーはそれぞれ一人で馬に、ミントは非常に不本意ながらギーシュの馬の後ろに乗っている。 それは四人が学園を発つ為、学園の馬を借りようとしたのだが生憎と空いている馬が三頭しか居なかった故の苦肉の策。 そもそもミントはギーシュを学園に置いていくつもりであった。 が、厄介な事に薬の影響下にあるギーシュはミントが目を離すと他の生徒達にミントの魅力を説いて回ったり…挙げ句実家にミントの事を恋人だの紹介したいだのと手紙を綴り始めたりとやりたい放題だったのでしようが無く連れて行く事にした。 「だったら私は行かずに残るわ。」 そう言ってルイズが面倒事から逃れようとするも巻き添えを求めるミントはそれを許さずそもそも馬に乗り慣れていないミントがここは誰かの馬に相乗りするという話しに相成った。 そしてその役目を買って出たのは勿論絶賛ミントにベタ惚れ中のギーシュで、ミントもこれに関して深く考える事も無く了承した。 しかしそんなミントの安易な考えを裏切るかのようにミントの視線の先で手綱を操りながら愛を詠うギーシュはそれはもうひたすらにうざかった… (馬の操作をしなくて済むのは楽だけど精神的にきついわね…これならルイズ置いて自分で馬に乗ってくれば良かったわ…モンモランシーもこいつの何が良いのか全然分からないわよ…) そんなミントの心を知らずギーシュの駆る馬の足取りは軽く、一行は昼を大きく回った頃に目的地であるラグドリアン湖へと辿り着いたのであった。 ____ ラグドリアン湖 「……変ね、ラグドリアン湖の水位が上がってるわ!」 「水位が?」 ラグドリアン湖に到着した途端、モンモランシーはその変わり果てた光景に驚愕した様子を浮かべた。 「ええ、ラグドリアン湖の岸はここよりもずっと向こうだったはずなのよ。……ほら、あそこに屋根が出てるわ。村が湖に呑まれてしまったみたいね。」 「うわ、ほんとだ……」 モンモランシーが指差した先には、確かにワラぶきの屋根が湖から突き出ている。更に水面をよく注意して見れば、家が丸ごと水の中に沈んでいることが分かった。 それを興味深げに観察しているミントとルイズを放置しモンモランシーは波打ち際まで歩いていって水に手を触れて精神を集中させる為、目を閉じる。 因みにミントにとって用済みとなったギーシュは起きていると鬱陶しいだけなので現在モンモランシーのスリープクラウドの魔法で夢の中である。 「……水位が増えてるのはやっぱり水の精霊の仕業みたい。理由までは流石に分からないけど水の精霊は、どうやら怒っているようね。」 「触っただけでそんな事が分かるなんてやるじゃない…あんたを連れてきたのは正解だったわね。」 自分の世界には無かったそのメイジの技能にミントは素直に感心する。 「ふんっ…当然よ、『水』のモンモランシ家は、水の精霊との交渉役を何代も務めていたんだから。」 「務めていた?何?今はその交渉役じゃ無い訳?」 「うっ……そ、それは……」 ミントのその指摘に、思わずモンモランシーは口ごもる。 「モンモランシ家は結構前に干拓事業をする際に水の精霊を怒らせて交渉役を降ろされたのよ。トリステインじゃ結構有名な話よ。」 言い淀んでいたモンモランシーの代わりにルイズが簡潔な説明をミントに行う、家の恥を晒されるのは悔しいが事実なのでモンモランシーとしても肯定せざるを得ない。 「でも少なくとも水の精霊を呼び出すのは問題ないでしょ、モンモランシー?というかそれ位は最低限やってもらわないとね…」 「ぐ…分かってるわよ、黙ってみてて。」 ミントの挑発的な言葉に応え、モンモランシーは腰に下げた袋から自分の使い魔のカエルを取り出した。 「ひっ、カエル!!」 「情けないわね~…たかがカエルじゃない?」 情けない声を上げたのはルイズでそれを嘲笑ったのはミント、ルイズはカエルがどうも生理的に苦手なのだが言われっぱなしも癪である為ルイズは頬を膨らませた。そして… 「あっ、カボチャ!!」 「ひぃっ!!?」 仕返しとばかりのルイズの嘘にこれまた情けない悲鳴が湖畔に響く…咄嗟に反応したミントだったがそれは直ぐに嘘だと気が付いたので恨めしそうな目でルイズを睨む。 「…あんたも人の事言えないじゃ無い…」 「ルイズ!!」 「あ~~~もう!二人ともうるさいから静かにしてなさいっ!!水の精霊を今ロビンが呼びに言ってるんだから騒がないでよ!!」 二人の言い争いの間に使い魔のロビンを湖へと放したモンモランシーが二人に怒鳴りつける事で取り敢えず二人の言い争いは鎮静化したのだった。 程なくしてロビンがモンモランシーの元に戻って来る。すると大きく湖の水面が膨らみそこから不定型な水柱が現れた。 水柱は一行をしばらく観察するような様子を見せた後その姿を徐々に人間の女性のシルエットへと変形させていった。そして、ようやく形作られたそのシルエットはモンモランシーの姿を模していた。 これで取り敢えずの最低条件はクリアできた。それを確認したモンモランシーはルイズとミントが見守る中、水の精霊に向かって一歩前に出る。 「水の精霊よ、私ははモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で旧き盟約の一員の家系に連なる者。カエルにつけた血に覚えはおありかしら。覚えていたならば私達に分かるやり方と言葉で返事をしてちょうだい。」 その言葉に反応したのか、モンモランシーの姿を模している水の精霊はフルフルと震えるように会話を始める。 「………覚えているぞ、単なる者よ。貴様の身体を流れる液体を我は覚えている。お前に最後に会ってから月が52回交差した。」 水の精霊の覚えているという言葉にモンモランシーは心底安堵する。 「良かった。水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部を私達に分けて欲しいの。」 「……………」 今度は何か考えるかのように沈黙をする水の精霊。その様子に一行はどうもイヤな予感を感じずにはいられなかった。 「断る、単なる者よ。」 その水の精霊の一言を聞いてルイズとモンモランシーは内心当たり前かと一応の納得をする。「下さい。」「はいどうぞ。」という話がそもそもあり得ないのだから…しかしミントは違う。 「はぁっ?けち臭い事言ってんじゃ無いわよ!良いからほら、あんたの涙を寄越しなさい。それがないとあたしが困るのよ。」 恐れも遠慮も一切無く、ミントは水の精霊に両手を突き出して軽い催促のステップを踏んでみせる。 これにはモンモランシーもルイズも思わず絶句する… 「断る、ガンダールブよ、我にはお前達へ我が一部を差し出す理由が無い。お前が我が一部を求めるならば我にその力を認めさせ、契約の元で求めるが良い。」 水の精霊には感情が無いのか、ミントの暴言にも特別怒った様子も無く淡々と切り返した。 「ガンダールブって?」 モンモランシーが水の精霊の言葉に疑問符を浮かべるもそこまで怒った様子が見られない水の精霊のその反応にミント以外は胸を撫で下ろした。 が、ミントの続ける言葉に更に精神をすり減らす事となる。 「成る程、涙が欲しかったら自分とバトルして力を見せてみろって事ね?な~んだ、あんた案外話せるじゃ無い。」 そう、青ざめる連れ二人等意に介さず、ミントは精霊の先の発言にとあるシンパシーを感じ、つまりは何を求めているのかを察していたのだ。 「あんた何言ってんのよ!!!!バカなの!?いいえバカよ!!」 「お願いミント、止めて!!これ以上水の精霊怒らせたら私の家取り潰しになっちゃう!!」 大泣きしながすっかりやる気になったミントに縋り付くルイズとモンモランシー、それを正直鬱陶しく感じながらもミントは手にしたデュアルハーロウを水の精霊に突きつけると高らかに宣言した。 「うっさいわね~…ほら、下がった、下がった。、…さ、レッツバトルよ!!」 「………来るが良い…単なる者よ。」 「…嘘でしょう…」 嘆く二人を置き去りに弾かれたようにミントが岸辺を走る。するとミントがつい先程まで居た地点へと高圧縮された水塊がまるで鞭の様に連続で叩き付けられた。 不定形故のしなやかな動きがミントの蹴った地面を次々と水が穿つ… 「相棒、あの水には当たるなよ!水の先住には心を狂わす力がある!」 「オッケー。切り裂け!!」 デルフリンガーの助言を受けてミントのステップは更に鋭さを増す… 勿論ミントは防戦をする気も無く、デュアルハーロウから放たれた魔法、高水圧の水の鋭い刃は未だモンモランシーの姿を模したままの水の精霊の胴を袈裟に切り裂いた。 水の飛沫を巻き上げ、一瞬その形を崩した水の精霊、だが次の瞬間には当然とでも言うか元の姿へと戻っていた。誰が見てもダメージが入っているとは思えない。 「やっぱ効かないか…」 ミントは予想していたとはいえその光景にやはり驚きつつ自分に迫る水の弾丸をたたき落とし次の魔法を放つ体勢に移った。 そしてミントの今の一撃に一番驚いていたのは誰あろう水の精霊であった… 『系統魔法』とも『先住魔法』とも違う永遠を生きる自分にも知り得ない未知の魔法とそれを操る人間等、自然と興味が湧く… 続いて水の精霊を襲ったのは紫電を放つ巨大な暗黒の球体。それは水面を削り取るようにしながら高速で真っ直ぐ水の精霊に向かう。 ハルケギニアには存在しない属性の魔法は水の精霊をそのまま周囲の水もろともに飲み込むと強烈な力場を生んで何も残さず消滅した。 消滅した水面を補うようにして大きく波立った水面…そこにはもうモンモランシーのシルエットを模った水の精霊は居なかった。 しばらくの後、水面が穏やかさを取り戻す。すると姿は見えないにしても再び湖畔に水の精霊の声が響いた。 「…そなたの力我は存分に見せてもらった。我はそなたを認めよう。武器を納めよガンダールブ…」 とミントも半ば予想出来ていたかのように素直にデュアルハーロウを背に納めると戦闘態勢を解除する。 「ったく…判れば良いのよ。」 不遜に言ってミントはルイズとモンモランシーが居た場所へと戻る。ウィーラーフもそうだったが所謂人智を超えた存在というのは人の力を試すのがやたらと好きなようでミントは実際この流れは予測が出来ていた。 だがルイズ達はそうも行かない。 「何なのよ…一体…」 と、理解の追いつかないままルイズとモンモランシーの二人は呆然と水面とミントを見つめていた。 事態に収拾が付いた事で一行はようやく再び水の精霊との交渉を再開する。 水の精霊もまずミントの存在に疑問を抱いた為、ミントが何者であるかを問い、またミントも自分の身分、置かれている状況などを掻い摘みながら水の精霊に答える。 思わぬ形ではあるがミントが王女である事を知ったモンモランシーは「ありえない…ありえないわ…」と譫言のように呟いていた。 そうして互いにある程度の情報を交換した後、ようやくミントが『精霊の涙』を要求するも水の精霊は再びこれを拒否した。 これに声を上げてミントは反論したが水の精霊曰く、ここ数日水の精霊は何者かの襲撃を受けて実際困っており、その襲撃者を何とかすれば『精霊の涙』をミントに譲ると言う。 なんにせよお宝を手に入れる為に、何かと『お使い』を頼まれるのはミントにとっても馴れた物である。無論、面倒だとは思うがこればっかりは仕方が無い。 こうしてミント達は今夜、水の精霊を襲う襲撃者に備える事となったのであった… 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/gods/pages/103664.html
ロランスドクレルモンモントワゾン(ロランス・ド・クレルモン=モントワゾン) フランスのモンモランシー公の系譜に登場する人物。 関連: アンリイッセイドモンモランシー (アンリ1世・ド・モンモランシー、夫)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/965.html
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは困っていた。 何故か? 今しがた召喚した彼女の使い魔(予定)が目の前で壮絶なまでにのた打ち回っているからだ。 ひれの付いた尾が地面を叩くと地響きが起こり、振り上げた頭が塔に当たるとその壁を砕く。 びったんびったんびったんびったん 「流石私の使い魔、生きがいいわね」 「この状況でその発言はどうかと思うわ」 明後日の方を見てそんな事を言うモンモランシーに級友のキュルケが突っ込む、それでも巨大な(30メイルほどはありそうな)魚の様な使い魔はビチビチのたうっていた、砂埃が舞い立ち美しい翠色の鱗もその輝きを失いつつある。 本来ならば陸上であってもある程度の活動が可能なこの魚のような竜、ガノトトスがかくも苦しみのたうっているのは、深い水深に居たところをいきなり陸上に呼び出され肺兼用の浮き袋が急激に膨れ上がったせいだ。 その辺の魚ならば『暴れることも出来ず、程なくご臨終』で終わるのだが、曲がりなりにも魚竜である彼の生命力は容易い死を許さなかった。 しぶといのも考え物である。 「ちょっと大人しくなって来たんじゃない?」 「そりゃ魚を水から上げればいずれは大人しくなるでしょうよ」 「でもこれ、変な魚よね? 脚とか生えてるし」 「…そういう魚なのよ、きっと」 ぴたん…、ぴたん…、 激しくのたうっていた巨体も勢いを失いつつあった 「んじゃ、そろそろ『コントラクト・サーヴァント』といきますか」 「貴方…、こうなるのを待ってたわね」 「おほほほほ、この程度は頭を働かせないとね」 鼻歌交じりのスキップで頭の方に近づいてゆく 「うぇ」 歯茎と白目を剥き、舌を出してデロンとへたっているその顔は人食い鮫を数倍イカツクしたようなシロモノだ、さらに 「さ、魚臭ッ!」 「ま、魚だし」 太陽に暖められて猛烈に生臭くなっていた 「ほらほら、ブちゅっとやったんさい」 「貴方の使い魔なんだから、貴方がやりなさいよ!」 「あ、ほらでもさあ」 「何よ?」 「このままほっといて死んじゃったら、召喚のやり直しにならないかしら?」 「死体は貴方で片付けなさいよね」 「えーっ、貴方のお得意の火の魔法で…」 「いやよ!」 この後コントラクト・サーヴァントをすませ使い魔となったガノトトスが噴水に向かって必死でのたくり進み、水に漬かったまま丸まって動かなくなってしまうのは余談である。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2009.html
「あ、牛がいる……」 シエスタが車の窓から外を見て、嬉しそうに呟いた。 「牛?」 モンモランシーは、何か珍しい牛でもいたのだろうかと思い、シエスタに聞いた。 「ええ、あんなに沢山。のどかで良いところですね」 期待した答えとは違ったので、モンモランシーは「どこにでもいるじゃない、そんなの」と言って両手を広げた。 だが、くだらないことでも、屈託のない笑顔で答えられるシエスタの笑顔に、少しだけ救われた気がした。 二人が馬車に乗り、ラグドリアン湖を目指しているのには理由がある。 ラ・ヴァリエール家でカトレアの治療に当たってから二日目の夜。 二人は大食堂で、巨大なテーブルを囲んで座っていた。 カトレアは大事を取って部屋で休んでおり、公爵と公爵夫人、そしてエレオノールの三名がシエスタとモンモランシーに向かい合って座っている。 カトレアは大事を取って部屋で休んでおり、晩餐には参加しないようだ。 「まずは礼を言わせていただこう、ミス・モンモランシー。そしてミス・シエスタ。よくぞカトレアの治療に尽力してくれた」 「私からも感謝を述べさせて頂きます」 公爵に続き、公爵夫人からも礼を言われ、モンモランシーとシエスタはガチガチに緊張していた。 「ま、まだ治療が完了したわけではありませんので」 モンモランシーが返事をする前に、シエスタが申し訳なさそうに呟く。 「いや、それでも礼を言わせて貰う。幼い頃からカトレアを治癒していたメイジが、君たち二人の治癒の力をとても高く評価していた、それにカトレアの笑顔を見たのは一ヶ月ぶりなのだよ」 公爵は、心底から嬉しそうだった。 貴族の威厳よりも、父親としての喜びが勝っているのだろう、公爵のにこやかな笑顔にエレオノールが苦笑した。 「それで、具体的なことは解ったのかしら?よければ聞かせて頂きたいわ」 エレノオールの言葉に、モンモランシーが「はい」と答える。 「はい。ご存じかもしれませんが、人の身体は本来解毒能力を持っています。ミス・カトレアの身体はその能力が弱く、定期的に水の魔法で毒を浄化しなければなりません」 ヴァリエール家の三名は、モンモランシーの説明をじっと聞いていた。 「こちらのシエスタが持つ『波紋』を流すと、浄化能力が回復しました。『波紋』は身体の全体に作用します、それによって水魔法の効果が二倍にも三倍にも増幅されるのです」 モンモランシーがシエスタに目配せをし、シエスタが続きを引き継ぐ。 「私の波紋は、オールド・オスマンが研究されていたものです。一言で言えば…『魔法の素』です。特殊な呼吸法によって、体力や精神力を増強する技術です」 エレオノールが手を挙げ、シエスタに質問する。 「貴方はオールド・オスマン以上の『波紋』を持っていると聞いたけど、それは生まれつきのもの?」 「私は最初曾祖母が『波紋使い』だとは知りませんでした。実家でも私以外に波紋を使える者はいないと、オールド・オスマンが仰っていました。 祖父にも、父にも波紋の訓練を受けさせたと聞いたんですが…私以外には発現しなかったみたいです」 「ふうん…つまり、波紋は個人差が大きいのね…」 うんうん、と納得したような仕草をするエレオノールを前に、シエスタは冷や汗をかいていた。 訓練を受けさせたというのは嘘だ、オールド・オスマンは波紋を世に出さないつもりだった。 『石仮面』の出現がなければ、シエスタに波紋を取得させることは決して無かっただろう。 波紋を悪用されぬために、血筋以上に個人差が大きいと思わせるため、シエスタは嘘をついた。 少しの沈黙が流れた後、モンモランシーが続きを話し出した。 「ミス・カトレアの治癒を完璧なものとするため。ミス・エレノオールにも、ラ・ヴァリエール公爵と公爵夫人に、協力を願いたいことがあります」 「言ってみたまえ」 「私の見立てですが、カトレア様の身体は突然濁った血が綺麗な血に混ざり、身体の中を循環します。その原因を探るために、水の秘薬をいただきたいのです」 「………わかった、可能な限りの『水の秘薬』を集めよう」 「ありがとうございます」 モンモランシーが公爵に礼をすると、エレオノールが呟いた。 「治療のために水の秘薬が必要なのは解るけど、原因究明のために秘薬が必要なら、薬を作るんでしょう?それなら私の研究道具を持ってこさせるわ」 「いえ、その必要はありません」 「…どういう事?」 「シエスタの波紋は、秘薬の効果を劇的に高めるだけでなく、身体にとけ込ませずに形を保つことができます。ミス・カトレアの身体を走る無数の『水』を、より細かく知ることができるのです」 エレオノールが驚き、目を見開く。研究者としての本能なのか、まるで詰め寄るように身体を前に傾けた。 「それはどのくらいの精度なの?」 「えっと…以前、毒を飲んでしまった生徒をシエスタと協力して助けましたが、そのときは身体の表面にある汗の穴が数えられるぐらい…だったと思います」 「素晴らしいわ、それで、その波紋と…」 興奮気味に質問を続けるエレオノールを、公爵夫人が制止する。 「エレオノール。お客様に失礼です」 「……はい」 モンモランシーは、エレオノールを一言で黙らせる公爵夫人の威厳に驚き、自然と苦笑いが出てしまった。 シエスタは、ほれ薬を飲んでしまった生徒ギーシュを思い出し『毒を飲ませた自覚はあったんだ…』と苦笑いをした。 「ふむ、そろそろ頃合いだな」 公爵がちらりと執事の方を見ると、執事は食堂の扉を開け、廊下で待機していたメイド達を部屋へと導き入れる。 メイド達が運ぶ料理は豪勢の一言に尽き、またもやシエスタとモンモランシーの二人を驚かせた。 「さあ、英気を養ってくれたまえ」 公爵の声が、やけに大きく聞こえた。 三日目。 カトレアの部屋で、香水の瓶より少し大きなガラス瓶を手に持ち、シエスタが波紋を流している。 モンモランシーがシエスタに「頃合い?」と聞くと、シエスタは「お願いします」と答えた。 シエスタから瓶を預かり、モンモランシーがカトレアの口元にそれを持って行く。 カトレアは両手を瓶に添えて、中身の『水の秘薬』を飲み干した。 すかさず、シエスタがカトレアの身体に杖を向け、秘薬の位置を確認する。 じわじわと身体の中を拡散していく秘薬は、波紋の効果により身体に吸収されず、秘薬のまま身体の中を巡っていく。 モンモランシーは秘薬の流れを感じ取り、カトレアの身体の中がどうなっているか、極めて精密に検査していった。 「この香り、貴方の香水?……落ち着いた花の香りがするわ」 カトレアが呟いた。 「え?あ、はい」 一瞬きょとんとしたモンモランシーだったが、カトレアの言葉に気付いて慌てて返事をした。 病人を相手にするので、ギーシュの気を引くために作った香水ではなく、あくまでも落ち着いた香りの香水を使っているのだ。 「いい香りね…風に運ばれた香りがするわ。どこかへ消えてしまいそう」 カトレアはベッドの上で目を閉じて、じっとしている。 その表情は喜怒哀楽のどれなのかわからない、だがシエスタには理解できる気がした。 風に運ばれた香り…それは、シエスタが考えるルイズの印象に近い。 タバサ…いや、シャルロットの母に深仙脈疾走(ディーパス・オーバードライブ)をかけようと決心したときも、タルブ村で治癒を続けたときもルイズの姿が思い浮かんだ。 彼女こそ理想の貴族像、そして儚く消えてしまった残り香だった。 シエスタの手が、じわりと汗ばむ。 「……?」 モンモランシーが首をかしげる。 「どうしたんですか?」 シエスタがモンモランシーを見上げ、声をかけた。 「うーん…今ちょっと気になることがあったんだけど……」 「気になることって、何でしょうか」 「水の流れが突然濁った気がするの、でも、水の流れを掴みきる前だったから、具体的にはちょっと解らないのよ」 「それでしたら、一度図にしてみたらどうでしょうか」 「図に?」 モンモランシーが少し驚く。 「曾祖父の故郷では、人間の身体を微細に記した『解体新書』という本で医療が発展したそうです、日記に書いてありました」 図に描く、それは治癒のメイジらしからぬ考えだった。 なにせ優れた水のメイジは、手で触れるだけでその人の水の流れが感覚的に理解できる。 しかし自分はまだそこまでの力はない、波紋の力を借りて図に表すことでなにができるか…少しの時間考えてみた。 タルブ村で治療した傷病兵の中には、女性もいたが、一人一人身体的な特徴があった。 身体的な特徴が、カトレアの病気を生んでいるのだとしたら? 考えを整理するためにも、一度図に書いてみるといいかもしれない… 「わかった。図に書いてみるわ、大きな紙と、ペンを貰ってきてくれない?」 「はい」 三日目の晩、昨日と同じように、シエスタとモンモランシーの二人は晩餐に参加していた。 食後の紅茶を飲んでいると、不意にエレノオールが呟いた。 「それで、なにか細かいことは解ったの?」 エレオノールが二人に問いかけると、モンモランシーが懐に手を入れて、折りたたんだ紙を取り出した。 執事がそれを受け取り、銀製のトレイに乗せてエレオノールの元に運ぶ。 紙を受け取り、開いてみると、そこには無数の線が書かれていた。 線の形は人間のシルエットのようであり、心臓とおぼしき場所には矢印でいくつもの線が描かれていた。 「これは?」 「ミス・カトレアの身体を流れる、水の流れです」 「…なるほどね、アカデミーで研究していたものとは違う描き方ね…これは貴方のアイディアかしら。ミス・モンモランシー」 「いいえ、シエスタのアイディアです。身体の中を図面化する本があると教えてくれました」 「水系統のメイジなら、身体に触れれば水の流れが解るんじゃないの?」 エレオノールが更に質問する、どこか胡散臭そうに感じているのかもしれない、モンモランシーはエレオノールの視線におびえることなく淡々と答えた。 「黒で描かれた線は、波紋を流してから作ったものです、青で書かれたものは波紋を流さない状態で調べた結果です」 エレオノールがハッとして紙を見る、上から下まで素早く目を通すと、ちょうど心臓の部分に大きな差があることが解った。 「…心臓に異常があるってこと?」 エレノオールが顔を上げ、二人を見る。 公爵と公爵夫人も驚いた顔をして、モンモランシーを見た。 「以前にも身体の中をじっくり調べたことはあったわ、心臓はたしかに弱かったけど…」 顎に手を当てて考え込み、エレノオールはうんうんとうなった。 「…心臓は、綺麗な血を送る部屋と、汚れた血を流す部屋に分かれています。 人間は呼吸で微弱な『波紋』を生み出していますが、その力は心臓から始まって体中を巡り、最後にもう一度心臓に帰ってきます。 ミス・カトレアは心臓が弱いだけではなく、心臓に小さな穴が開いているのだと考えられます。 汚れた血と綺麗な血が混ざって送られ…その結果、体の中が全体的に弱くなり、全身至る所での発作を起こしてしまうのだと、思います」 「「「…………」」」 ヴァリエール家の三人は、皆一様に絶句していた。 エレオノールにしても、今までに聞いたことのない説を聞いたようなものなので、これをどう考えるべきかと頭を悩ませている。 モンモランシーも、緊張のあまり卒倒しそうだった。 カトレアの身体は、波紋によって回復することは解ったが、心臓がすべての原因なのかははっきりとはしていないのだ。 だが、今は「原因」に対処するのではなく「原因と思わしき場所」に対処しなければならない。 もしかしたら自分の説は大きく間違っているのかも知れない、けれども、今は全力を尽くさなければならないと自分に言い聞かせていた。 公爵が、重い口を開く。 「…対処法は、あるのかね」 「水の魔法で穴を埋めることもできますが、危険です。確実な方法を取るためには、もっと大量の水の秘薬が必要になります」 「やはり、水の秘薬か…」 渋い顔をする公爵を見て、エレオノールが口を開いた。 「実は、王宮から『水の秘薬を控えろ』と通達があったの。どうも水の精霊を怒らせた者がいるらしいんだけど…原因はよく分からないわ」 「水の精霊をですか!?」 モンモランシーの顔がサッと青ざめる。 彼女の父は、以前に水の精霊を怒らせてしまい、干拓に失敗したのだ。 それが原因でモンモランシ家は、水の精霊との交渉役を降ろされてしまった。 「そういえば、モンモランシ家は確か、水の精霊との交渉役を務めていたな、今はその役目を退いていると聞いているが…」 公爵の声が、異様なほど重々しい声として聞こえてくる、モンモランシーは今にも卒倒しそうだった。 父の失敗をダシにされて、非難されるのではないかと思うと、冷や汗が額を流れるのを止められなかった。 「どうかね。君の手で、水の秘薬を手に入れることは出来ないかね」 だが、公爵の口から飛び出した言葉は意外なものだった。 「わ、私がですか」 「水の精霊と交渉し、水の秘薬を手に入れ、カトレアを治癒してくれたのなら…ラ・ヴァリエール家から支援を約束しよう」 実家を助けられる…! 願ってもない公爵からの申し出に、モンモランシーはうわずった声で、まるで叫ぶように声を上げた。 「つ、つとめさせて頂きます!杖にかけて!」 シエスタは隣で、『貴族って大変なんだなぁ』と思った。 ヴァリエール家の三人は、ほっとしたようにほほえみを浮かべていた。 そして四日目… 今日はラ・ヴァリエール家で準備してくれた馬車に乗って、ラグドリアン湖に向かう。 そのため朝食も採らずに、朝早くに出発の準備をすませたのだが、準備された馬車を見てシエスタが絶句した。 馬車を引くのは馬ではなく、竜。 噂には聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてなので、シエスタはどうしたものかと冷や汗をかいた。 「…これに乗っていくんですか?」 竜車を指さし、シエスタが聞く。 「そうよ、馬より早いもの。それにこれなら一日で往復できるわ」 「それはそうですけど、なんか、ちょっと怖いですね」 「怖くないわよ、よく飼い慣らされてるわ」 そう言って竜に近づくと、竜はモンモランシーに頭を垂れた。 竜は、無言で頭を撫でさせている、臆病な竜ではこうはいかない、知能が高い竜だからこそ人間とのつきあい方を心得ているのだ。 「御者の方も大変ですね…」 そう言って御者の席を見上げたが、つばの広い帽子を被った御者は、手綱を握ってじっと黙っている。 「シエスタ、これはゴーレムの一種なのよ」 「え?そ、そうなんですか?へぇー…」 まじまじと御者をのぞき込むシエスタ、その様子があまりにも田舎者丸出しなので、モンモランシーは少しだけ恥ずかしそうに顔を背けた。 「お待たせしました」 屋敷の入り口から声がかかる、二人が振り向くと、そこには凛々しい男性の姿…ではなく、男装の麗人とも言うべきカリーヌ・デジレが立っていた。 「「………」」 二人が驚いていると、カリーヌは竜車に近づき扉を開け、二人を中へと導いた。 大きな馬車の中は豪華というよりは上品な作りをしており、居心地の良さを最優先に考えて作られているのが解る。 二人は、カリーヌに導かれるまま竜車に乗り込み、座席に座る。 カリーヌが「出しなさい」と呟くと、馬車はゆっくりと走り出した。 「あの…」 シエスタが呟く。 カリーヌがなぜ付いてくるのか、その上なぜ男装しているのかを質問しようとしたのだ。 意図をくみ取ったのか、カリーヌはどこか懐かしそうにほほえみを浮かべた。 「私は昔、男の姿をして軍隊にいました。お二人の護衛として、マンティコア隊を引退した老兵が務めさせて頂きます」 「は、はあ」 モンモランシーが気の抜けた返事をする。 オールド・オスマンから聞かされてはいたが、目の前に座る人物が『烈風カリン』だとはにわかに信じられない。 「…カトレアを治療して下さったのですから、私から出来るせめてもの誠意ですわ」 カリーヌはそう言って微笑んだ。 がらがらと音を立てて竜車が走る。 カリーヌは窓の外を見て、数日前の森林火災を思い出していた。 (…ピンク色の頭髪、年の頃は20、顔立ちは幼さを残し、顔に大きな火傷のある女性…) (…その女性を『ルイズ』と呼んでいたそうです…) カリーヌは、烈風カリンと呼ばれ恐れられた、希代のメイジであった。 だが、同時に彼女は母でもあるのだ。 ルイズの手がかりを探したいがために、カリーヌは水の精霊にも話を聞いてみるつもりなのだ。 二人の護衛を買って出たのもそのためだった。 見上げた空は、雲一つ無い快晴、どこまでも青い空が広がっている。 だが、カリーヌの心中は未だに曇り続けていた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1596.html
トリステイン2日目は、驚愕から始まる。 「うわあぁぁぁぁぁくぁぁ!!!!!!!!!!!」 廊下を走りぬけ、階段を駆け上がり、扉を蹴り開ける。 朝日にキラリと光る波平-1ヘアーはミスタ・コルベール先生。 「学園長!学園長!!!!がぁくえんちいよぉぉぉおおぉぉお!!!」 ミスタ・コルベールがドアを蹴り開けて学園長室に飛び込みます。 学園長室の主、オールド・オスマンはコルベールに背を向ける形で座っていました。 「あ、会ったことを正直に話しますっ!! つ、使い魔のルーンを調べていて寝オチして起きたら!! いつの間にか目の前でパンツ男が背中に毛布かけてくれたんです!!!! しかもサンドイッチの夜食まで用意してくれててっ!!!! ごくろうさまかっこはぁとかっことじるのメッセージカードまで添えて!!!!! な…なにを言ってるのかわからねーと思うが、私もナニをされたかわかっていない。 頭がどうにかなりそうだ! 妄想とか夢オチなんてチャチなもんじゃあない! もっと恐ろしい何かの片鱗を味わったんですぅぅ!!!!!」 ……………………………………………………………………。 ……………………………………………………………………。 ……………………………………………………………………。 「オスマン………? オールド・オスマン……………!? こ、こいつ……………死んでいる!?」 『怪奇!!パンツ男の恐怖事件』は一晩で学園中の噂になりました。 目撃者は貴族から平民、使い魔にいたるまで多岐に渡りました。 曰く、パンツ男の名前は変態仮面である。 曰く、パンツ男は被るパンツによってゲージ使用技が変わる。 曰く、パンツ男は始祖ブリミルの使い魔の名前すら伝えられていないものである。 曰く、パンツ男のパンツの中に入っていったものは二度と戻ってこれない。 まあそんなこんなで一晩で七不思議の一つに入るぐらいに学園内を練り歩いたわけです。 異世界漂流1日目からナニやってんでしょうねこの男は。 さて、我らのヒロインルイズの寝起きは最悪でした。 まるで半分眠った状態から、いきなり地獄を見せつけられたかのようなテンションでした。 「なんか………ムッチャひどい夢を見た気がする」 なぜかルイズの脳の中ではパンツ被ったパンツ一丁の男が枕元に立ってたり、頭上で回転したりするフラッシュバックが起こります。 恐ろしい。ナニが恐ろしいってそんな見たこともないものが自分の脳の中で躍動的に踊るのが恐ろしいです。 そのフラッシュバックの中にはタバサがいてギーシュがいてキュルケがいてオスマンがいてコルベールがいました。 みんながみんな自分を見て悲鳴を上げたり恐れおののくのを見て、悲しみを感じるよりもなぜか快感を感じていた感覚に恐怖しました。 ルイズは知る由もありませんが、使い魔のルーンを通じて夢に使い魔の記憶が刷り込まれたのでしょう。 ルイズの正気度が1下がりました。 まあ、そんなこんなで朝なので、着替えて授業に出なければいけません。 「服」 「はい」 「下着」 「はい」 「な…ななななな……なんで懐から出てくるの!?」 「……………………」 「ししし、しかもそれ昨日履いてたパンツよね!?」 「姫、暖めておきました」 「嘘つきなさい。それ洗いもしてないじゃないの」 羽柴秀吉作戦は失敗に終わりました。 ルイズ信長はたいそうお怒りになり、乗馬用のムチで叩くこと数度、逆効果でした。疲れました。 しまいには爆発音が轟きました。 すったもんだで硝煙くさい部屋から出ると、部屋の前でキュルケがタバサと話し込んでいました。 「ルイズ、朝から隣で爆発なんてさせないでよ、いやいつでも爆破は勘弁願いたいんだけど」 「騒音公害」 「しつけよしつけ。仕方ないじゃないムチで叩いたら喜ばれちゃったし」 なんだか込み入った事情のようなので、キュルケはスルーすることにしました。 「ところで聞いた?怪人が出たのよ!私見ちゃったのよ!しかもタバサも!!」 「見た。おどろいた」 「「コワ~~~イ!!!」」 息は合ってるもののタバサは棒読みなのでアンバランスです。わざわざ打ち合わせしてたんですかあなたたちは。 「肩に引っ掛けたパンツ一丁で頭にパンティかぶってるの!それでスゴクいいカラダしてるの!!」 「股間から色々なものを取り出していた」 「あと網タイツに皮手袋もしてたわね。ポイント高いじゃないの」 「怪人だけど紳士だった」 「ぜんぜん紳士じゃないわ!なんせ良い所で乱入してきたおかげで私の身体は不完全燃焼よ!!」 「着ていた下着もかぶっていた下着も見たことが無いほど良い生地でできていた。 おそらくはそれなりに爵位を持つか財産を持っている人物が正体」 「よく見てるわね。しかもあの状態の下着に目を凝らすなんて………」 「たぶんメイジかエルフ。窓から飛び降りたり風より早く動いたり壁をよじ登ったりしていた」 ちなみに下着の材質は朝になってから調べて驚き済みだ。 あきらかにトリステインの技術レベルで作れるものではなかったので更に驚きです。 渡されたベビーパウダーも異国の文字で書かれていて読めませんでした。 この時点でタバサは変態仮面の正体を怪しんでいましたが、それを表に出すことはしません。 無表情ですし、正直怖いですし。 ルイズは女たちの噂話を聞いて固まっていました。 「夢だけど………夢じゃなかった」 呆然としながらルイズは潰れました。 いるんですよ、あなたのとなりに変態仮面が……… その日、ギーシュはどこかおかしかった。 いや、ギーシュはいつもおかしいのだが、輪をかけておかしかった。 なんというか魂のネジが外れているというか、頭の中がお花畑に突っ込まれているのか、身動きがとりにくいのか。 どれほど抜けてるかというと昨晩学園を騒がせた『怪奇!パンツ男の恐怖』のことが耳に入らないぐらいである。 そんなギーシュも恒例イベントをこなさないと存在意義がなくなってしまうため、食堂で白いふわふわしたものを落っことしました。 平民、色条狂介がジャストタイミングで拾ってくれるように 「あの、ハンカチを落としましたよ」 「おや、すまないな。ってキミそれはちがうよ僕のハンカチはバラをあしらった見事なものなんだ そんな金モールを過剰にあしらったハンカチは知ら………な……………いや待てよ?」 しかし、それはハンカチじゃなくて!! 「パ」 「ぱ」 「パンティィィだぁ~~~~!!!」 そう、それは小さなぬのきれ、女体の神秘、青少年の希望、アレ、ともいうべき女性の下着だったのです!! 「あ!あのパンツは!!!」 「なんでギーシュのポケットから女物のパンティーが!?」 「あの金モールのドリルロールつきパンツはモンモランシ家に代々伝わるパンツ柄だ!!趣味悪パンツッ!」 「マジか!?モンモランシーのパンツがギーシュのポケットから出てきたということは!!」 「いや待て落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない」 「あのパンツが盗ってきたのか、モンモンから渡された物なのかで非常に意味が変わってくるのですが!!」 「ギーシュ貴様!いや、この裏切りモン!」 若者同士が集まるとゴシップに花が咲くといいますが、咲いたのは嫉妬の花でした。 しかしなんでモンモンのパンツの柄を知っているのかマリコルヌ。 「ああ、それは僕の愛しのモンモランシーが昨夜……ガボッ!………」 「ギーシュ!余計なことは言わないで!!」 口に10本ほど香水の瓶を突っ込まれてギーシュは沈黙しました。 言わないでといいながら、ほとんど言ってる様な気もしますが、そこは伏せときましょう。 それを見ながら狂介は汗をぬぐいながら妻の折檻(対弟用)を思い出していました。 秋冬君はいつも春夏にひどいことをされていたなあ……、と。 あと当然古典的にこけておきました。 何故ならば、彼も古き良き時代のジャンプを象徴するギャグマンガの主人公だからです。 「いや、なつかしい俺も妻と初恋の人(のパンツ)を同時に落とした時はひどい目にあった。 あの時は死ぬかと思った………いやマジで」 「朝っぱらからナニ不道徳なことを呟いてんのよ」 やっぱり平民を召喚するのはゼロの私にふさわしいハズレなのね……… 昨晩のダメージが残っているのか、精神テンションが落ちているからか、一転してネガティブ人間です。 「ギーシュさま!私とのことは遊びだったのですね!」 「ああ、ケティ!確かに僕はキミと馬に乗った! でも僕は昨日気づいたんだ!実は僕はモンモランシーのほうが好…………」 「ひどいわ!」 ふと見るとギーシュが二股疑惑で香水の瓶の束をくわえた状態のままビンタを食らってました。 瓶が割れて流血です。 二股疑惑のお仕置きとしてはひどいほうです。 こりゃスルーしてどっかいったほうがいいな。 と、トラブルメーカー経験豊富な狂介はその場を立ち去ろうとしました。 しかし、トラブルというものは総じて逃げようとすると追いかけてくるものなのです。 「待ちたまえ!そこの平民!!」 「え~~~っとコれはアレですか。二股ばれた八つ当たりですか」 「そんなことはしない!グラモンの人間がそのようなはしたない真似をするか!」 「じゃあ平手打ちと折檻の件で」 「平手打ちでも折檻でもない!むしろ望むところだ!」 望むのですか。 「モンモランシーのパンティーを返したまえ!あと僕以外が嗅ぐな!!」 そっちかよ! そう、まだ狂介はフリフリのパンティーを手に持ったままでした。しかもさっきうっかり汗拭いてました。 「い、いやこれはハンカチと間違えただけなんだ。なんか香水くさいし」 「くっ!しっかり嗅いでるではないか!! これでは無事パンティーを取り返しても、一旦洗って、それでモンモランシーに返して履いて踏んでもらってからまた貰わないといけないではないか!」 「いやその手順はおかしい」 変身後ならともかく、変身前の狂介は基本的にツッコミキャラなのです。ドジッコ入ってるけど。 変身後ならツッコミどころありなキャラになれるのですが……… それにしてもなんてことだ!ギーシュが話しているだけで名門グラモン家とモンモランシ家の威厳やら威信やらがモリモリ下がっていく。 「貶められたモンモランシーのパンティのため!このギーシュ・ド・グラモンが決闘を申し込む!!」 このギーシュはダメな方のギーシュでした。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9466.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第64話 湖の舞姫 用心棒怪獣 ブラックキング 登場! ハルケギニアに平穏な時が流れるようになってから、しばらくの時が過ぎた。 その間、魔法学院やトリスタニアで少々の事件はあったが、世間はおおむね安定を保っていた。 しかし、平穏とはなにもないことを意味するわけではない。平和な中でこそ行われる熾烈な戦いはいくらでもある。 地球で例えるなら、受験戦争、会社内での成績争い。いずれも、他者を押しのけて自己の利益をはかる生々しい争いだ。 だからどうした? そう思われるかもしれない。しかし過去のウルトラの歴史において、たったひとりの負の情念から凶悪な怪獣が出現した例は数知れないのだ。 『ほかの知的生命体では、なかなかこうはいきません。人間という生き物は、ある意味宇宙でもっとも有用な資源ですね』 この世界のどこかで、ある宇宙人がこう言った。 そして、ハルケギニアは貴族社会。当然、それにはそれにふさわしい戦いの場が存在する。 ある夜、場所はトリステインの名所であるラグドリアン湖の湖畔。 広大な湖畔の一角には貴族の別荘地が並び、そこではある貴族の別荘の広大な庭園を会場にして、トリステインが主催の園遊会が開かれていた。 「諸国の皆さん、本日は我が国の園遊会にお越しいただきありがとうございます。ささやかですが宴の席を用意しました。今宵は堅苦しいしがらみを抜きにして、隣の国に住む友人として語り合いましょう」 トリステインを代表して、アンリエッタ女王(本物)が貴賓にあいさつをした。それに応えて、集まった数百の貴族たちからいっせいに乾杯の声が流れる。そして彼らは、解散を伝えられると会場のあちこちに散って、思い思いに食事や談笑を楽しみ始めた。 もちろん、これはただのパーティなどではない。トリステイン貴族の他にも、ここにはゲルマニアやアルビオンの貴族が何十人も招待され、彼らは楽しげな会話の中で、様々な取引や情報交換、場合によっては縁談の相談などを行っている。 貴族とは権力で成り立っている存在ゆえに、その勢力の維持には他の勢力の取り込みや連帯は欠かせず、特に外国の貴族とのつながりは大きな力となる。逆に言えば、貴族の世界で孤立することは身の破滅を意味することに直結するため、園遊会は貴族たちにとって、自らの繁栄や安全を支えるための重要な行事なのである。 「園遊会の一席で、戦争が起きもすれば止まりもいたします」 マザリーニ枢機卿は、アンリエッタへの教育の一環としてこう語った。 さらに貴族の繁栄は、その貴族の国の繁栄にもつながる。アンリエッタもそのために、数々の貴族とのあいだを行き来して話を続けている。アンリエッタは幼いころに参加させられた園遊会で、子供心には退屈のあまりに抜け出して、少年時代のウェールズと出会って恋に落ちた。今回、この場にウェールズの姿はないが、アンリエッタも今では自分の立場の義務と責任を理解できない子供ではない。 様々な政治的思惑が交差し、場合によっては歴史を動かしかねない交渉がなされていく。平民には想像もできない高度で深淵な駆け引きの場がここにあり、よくも悪くもハルケギニアの社会には欠かせない存在としてあり続けてきた。 そして、そんな賑やかなパーティ会場の一角に、ギーシュとモンモランシーが席を並べていた。 「ああ、我らの女王陛下。今日もなんて美しいんだ! まるで夜空に咲いた一輪の百合。この大空に輝く二つの月さえも、陛下の前ではかすんで見えるでしょう」 「ふーん、つまりわたしより女王陛下のほうがいいって言うのね? わたしが一番だって言ってくれた、あの日の言葉は嘘だったのねえギーシュ?」 「あ、いやそんなことはないよモンモランシー! これは、トリステイン貴族としてのぼくの忠誠心から来てるものであって」 「嘘おっしゃい! あんたの視線、陛下のどこを見てたかわたしが気づいてないとでも思うの? ほんとに、ギーシュの言葉はアルビオンの風石より軽いんだから」 高貴な園遊会にふさわしくない低レベルな喧嘩をしている、きざったらしい一応二枚目と、金髪ツインテールドリルの少女。その場違いな様に、近くを通りかかった貴族の何人かは首をかしげて通り過ぎていった。 しかし、なぜこの場にまだ学生である二人がいるのだろうか? もちろん二人とも遊びで参加しているわけではない。まだ学生の身とはいえ、二人とも名のある貴族の一員である。この場にいるという意味はじゅうぶんに理解していた。 もっとも、まだこういう場での立ち振る舞いがわかってないあたり、二人が無理に参加させられているのは周りから見れば容易に察せられた。 「機嫌を直しておくれよモンモランシー。女王陛下は例外さ、むしろ女王陛下と比べることのできるモンモランシーこそすばらしいんじゃないか。ごらんよ、女王陛下の威光はいまやハルケギニア中に知れ渡り、なんとも壮観な眺めだと思わないかい? アルビオンをはじめとする世界中の名士が幾十人も顔を揃えているよ。これに参加できるなんて、ぼくらはなんて幸せなんだ。そう思わないかい?」 「はいはい、はしゃぎすぎてトリステインの田舎者だって思われないようにしてよね。うちの父上は、この園遊会でモンモランシ家の名誉回復しなきゃいけないって張り切ってるんだから、あんたのせいで失敗したなんてことになったら、わたしは実家に二度と帰れなくなっちゃうわ」 はしゃぐギーシュにモンモランシーが釘を刺した。二人とも、今日は魔法学院の制服ではなく貴族の子弟としてふさわしいきらびやかな衣装に身を包んでいた。ギーシュのタキシードの胸と背中には、グラモン家の家紋である薔薇と豹が刺繍されており、モンモランシーのドレスにも同様に家紋が編み込まれている。ギーシュのグラモン家やモンモランシーのモンモランシ家にとっても今日のことは重要で、ふたりともそれぞれの一族の一員として学院を欠席してでも呼び寄せられていたのだ。 とはいえ、普段は二人とも園遊会に参加することなど、まずない。そもそも園遊会に参加したがる貴族は膨大な数に上るため、国内から参加する家は一部を除いてくじ引きで決めることになっている。今回は幸運にも、グラモンとモンモランシ家が名誉なその資格を勝ち得たのだった。 それゆえに園遊会に参加し、どこかしらの有力貴族とコネを作れれば自分の家にとっての助けになると、ふたりとも大きな意気込みを持ってここにやってきた。特にこのふたりの実家は、かなりのっぴきならない状況を抱えている。 「確かモンモランシ家は、水の精霊の怒りに触れてしまって水の精霊との交渉役を下ろされてしまったんだっけ? そのせいで収入も激減して、なんとか新しい稼ぎ口を見つけなきゃいけない君のお父上も大変だね」 「はいはい、あなたのところだって、お父上やお兄様方の女好きが行き過ぎて、貢いだお金が青天井なんでしょう? 出征の出費の数倍は出してるって、もっぱらの噂よ」 「うぐっ! じ、女性に最大限の敬意を払うのはグラモン家の伝統だから仕方ないんだよ。あっ、心配しないでくれよモンモランシー。僕はいつまでも、君だけの、君だけを愛し続けるからね!」 「はいはいはい。あーあ、こうなったらグラモン家の伝統を見習って、わたしも外国のかっこいい殿方を探そうかしら?」 「そ、そりゃないよモンモランシー」 情けない声を漏らすギーシュを、モンモランシーは白けた眼差しで見下ろしている。ギーシュの手に持った薔薇の杖も、持ち主の心情を反映したのか心持ちしおれて見えるが、自業自得であろう。 モンモランシーはギーシュから視線を外すと、会場に並べられたテーブルに並べられている豪勢な料理を皿に取り、不機嫌そうにしながらも舌つづみを打った。アンリエッタ女王の園遊会の予算削減方針で、前王のころに比べれば半分以下の規模になっているが、それでも山海の珍味を集めた料理の数々はたまらなく美味だった。 没落した貧乏貴族のモンモランシーは、普段こんな豪勢な料理を口にすることはない。魔法学院の料理も平民から見れば豪勢だが、この園遊会の料理に比べれば地味と言ってよかった。貴族と一口に言っても、きっちり勝ち組と負け組はあるのである。 「いっそ本当にギーシュなんか捨てて、ここで新しい彼を探そうかしら」 ため息をつきながらモンモランシーはそう思うのだった。 最近のギーシュのおこないは目に余る。このあいだのアラヨット山の遠足のときには、同じ班になったティファニアに終始くっつきっぱなしで自分のところには一度も来なかった。あの後、少々体に教え込ませたが、まだ怒りが収まったわけではないのだった。 この園遊会での立ち振る舞いひとつで、貧乏貴族が大貴族になることもありうる。もしモンモランシーがどこかの大貴族の殿方のハートを射止めれば、モンモランシ家にはバラ色の将来が約束されるだろう。 でも、ギーシュが冷たくされたときに見せる情けない顔を見ると、許してやろうかという気がどこからか湧いてくるのである。まったく、難儀な男を好きになってしまったものだとつくづく思う。 「ふ、ふん! だったらぼくも、このパーティで外国の姫を射止めてやろうじゃないか。後から後悔しても遅いよ、モンモランシー」 「好きにすれば?」 モンモランシーは軽く突き放した。学院の女生徒ならともかく、それこそ誘いは星の数ほどもあるであろう外国の淑女がギーシュごときの安っぽい台詞にひっかかるとは思えなかったのだ。ただ、それ自体は自分にとって腹立たしいものではあったが。 ギーシュとモンモランシーは、その後もパーティの貴族たちからは一線を引いた距離で、いつも学院でしているような会話を続けた。 どのみち暇は有り余っている。二人とも、それぞれの実家から、やっと掴んだ園遊会の出席権に加えてやるから来いと言われて張り切ってここまでやってきたが、ふたりの実家からの期待はすぐにしぼんでしまった。 それはギーシュとモンモランシーの関係をそれぞれの実家が知ったゆえで、モンモランシ家のほうは娘が武門の名家であるグラモン家の息子と懇意であるなら願ってもなしと言い、グラモン家のほうは五男坊のギーシュがそこそこの相手を見つけたのなら特に咎める気はない、とあっさり認めて、無理に売り込みをしなくてもよいぞと解放されてしまったのだ。 これではふたりの、特にモンモランシーのやる気の減退は著しかった。もっとも、実はふたりの実家がふたりを呼んだ主な目的は、今回の園遊会で有力貴族たちに、「うちの子をどうかよろしくお願いします」という顔見せであったために、最初にそれがすめばほかの活躍を期待などはされていなかった。ふたりが先走っただけである。 ただ、いざ誰かに話しかけようかと思っても、会場にはギーシュとモンモランシーの他には同年代はほとんど見えず、話が合いそうな相手が見つからないのが現実ではあった。 「園遊会でポーションの話題を出してもしょうがないものね。わたしの手作りの香水じゃ、本場の高級品に勝てるわけがないし。あーあ、こういうときキュルケだったらファッションの話題とかから切り出してうまくやるんでしょうけど、正直甘く見てたわ」 モンモランシーは、園遊会という大人の世界に足を踏み入れるのに、自分がどれだけ未熟だったかを参加してつくづく思い知らされていた。 対してギーシュはといえば、ときおり通りかかる女性にダンスを申し込んだりしていたが、例外なくけんもほろろに断られている。いつもだったら怒るところだが、こうも見え透いて失敗していると哀れにさえ見えてくる。 賑やかな園遊会の蚊帳の外に置かれ、すっかり腐っているモンモランシーとギーシュ。 しかし、ふたりは幸運であったのかもしれない。なぜなら、華やかに見える園遊会の裏では、どす黒い思念が渦巻いていたからだ。 「この、伝統も格式もない成り上がりめが。貴様など、一スゥ残らず搾り取って、いずれ乞食に叩き落してくれるわ」 「貴様が余計な横やりを入れたおかげでうちの息子の縁談が破談になった。必ず生かしてはおかんからな」 言葉にはならない貴族同士の敵意や殺意のぶつかり合いが笑顔の裏で繰り広げられていた。 園遊会では、時に莫大な金や権力の移動が起こる。そこでは当然、勝者と敗者の間での憎悪の応酬も日常茶飯事なのだ。それは会場の中に限った話ではなく、園遊会に参加できなかった貴族も合わせると、その恨みの量は果てしなく膨れ上がる。自分を差し置いて園遊会に参加したあいつめ、という逆恨みもまた深い。 ギーシュやモンモランシーの親が、園遊会にふたりを本格的に参加させなかった理由のひとつがここにある。ふたりとも、貴族の一員として園遊会で『そういうことがある』のは知識として知ってはいても、生で体験したことはない。学院では、ギーシュをはじめ貧乏貴族たちがベアトリスに媚びを売っているが、そんな生易しいものではない弱肉強食の世界が園遊会の真実なのである。 いまだ少年のギーシュと少女のモンモランシーは、園遊会のほんの入り口に触れたにすぎない。そのことに気づくには、まだ数年必要であろう。 そして、この渦巻く『妬み』の波動に目をつける者がいても、それは何の不思議もなかった。 夜空から、赤い月を背にして地上を見下ろす赤い怪人。そいつは腕組みをして、地上の貴族たちの駆け引きを眺めながらつぶやいた。 「ウフフ、これはまたすごい『妬み』の力ですねえ。これに関しては、私が小細工をしなくても入れ食い状態ですよ。でもそれだけじゃつまらないですし……フフ、せっかくだからもう少し見物してからにしますか」 趣味悪く人間たちを見下ろし、なにかを企む宇宙人。人間たちはまだ誰も、空にたたずむ悪魔の姿には気づいていない。 パーティ会場で続く、園遊会という名の戦争。それは貴族社会の繁栄と新陳代謝のためには必要ではあるとはいえ、その二面性の強さは幼き日のアンリエッタやウェールズが飽き飽きしたのも当然だと言えた。 しかし、そんな泥沼の中にあっても、美しい花が咲くことはあった。 「ルビティア侯爵家ご息女、ルビアナ・メル・フォン・ルビティア姫様。ご入場あそばせます!」 進行役の声が高らかに響き、会場に新しい参加者がやってきた。 その声に、入り口を振り返った貴族たちは、いっせいに天使が降臨したのを見たかのような感嘆のうめきを漏らした。数名の護衛と使用人を従えて入場してきたのは、淡いブロンドの髪を肩越しになびかせながら、輝くようなシルクのドレスをまとった麗しき令嬢であったのだ。 「おお……なんと」 「美しい……」 貴族たちは、一瞬前まで笑顔背剣の争いをしていたことを忘れ、その令嬢の容姿に見惚れてしまった。 年のころはアンリエッタよりもやや上で、大人びた雰囲気ながらも口元は微笑を浮かべているように優しく、かつモンモランシーと似たサイドテールで髪をまとめている姿は活発さも感じられた。それでいてドレスから覗く手足はすらりと細く、しみ一つない肌は最高級の磁器にも例えられよう。そして、一歩一歩静々と歩く様は、まるで天使が雲上を歩んでいる姿をも思わせ、なによりもその美貌は、アンリエッタに勝るとも劣らない。 ルビアナと呼ばれたその令嬢は、例えるならば最上級の人形師が作り上げたドールが生を得たかのような美しさで、一瞬にして会場の貴族たちの目をくぎ付けにしてしまい、粛々と歩むルビアナの姿を貴族たちは惚けながら見送っていく。そしてギーシュとモンモランシーも、初めて見るその美しい姿に感動を覚えていた。 「なんて綺麗な人、いったいどこのお姫様かしら」 「ルビティア侯爵家、ゲルマニアでも五本の指に入る大貴族さ。先代がルビーの鉱山の発見で財を成した一族で、ルビティアの性もその功績で賜ったそうだよ。なにより、侯爵の一人娘は並ぶ者がいないという絶世の美女だと聞いていたけど……ああ、想像以上のお美しさだ。まるでルビーの妖精、いや女神だよ」 ギーシュの例え通り、ルビアナのドレスには無数のルビーがあしらわれており、シルクのドレスの純白とルビーの真紅とで芸術的なコンストラクトを描いていた。 もっともモンモランシーにとってはギーシュのそんなうんちくも、美人の情報にだけは詳しいのね、と嫉妬の火種になってしまうだけで、ブーツの上からヒールを突き立てられるはめになっていた。 やがてルビアナ嬢はアンリエッタの前に立つと、上品な礼をした後にあいさつを交わした。 「はじめまして、アンリエッタ女王陛下。お招きいただき、ありがとうございます。到着が遅れてしまったことを、心からお詫び申し上げます」 「いいえ、遠路はるばる我がトリステインによくぞおいでくださいました。心より歓迎の意を申し上げます。はじめまして、ミス・ルビアナ。本日はささやかながら、トリステインの園遊会を楽しんでいかれてくださいませ」 アンリエッタとルビアナは優雅な会釈をかわしあった。それはまるで、二輪の百合が並んで咲いたかのような輝きを放ち、ささくれだった貴族たちの心を一時なれども癒していった。 だがそれとして、貴族たちは、まさかルビティア家が参加してくるとはと驚きを隠せないでいる。伝統こそないが、ルビティアはルビーの専有により宝石市場に大きな影響力を持つため、貴族と宝石、魔法と宝石は切っても切れない関係な以上、その発言力は単なる貴族の枠では収まり切れないものを持つ。トリステインで釣り合う力を持つ貴族は、恐らくヴァリエール家のみだろう。 さらにそれにもましてルビアナ嬢が参られるとは驚きだ。絶世の美貌を持つ才女だという噂だけは皆耳にしていたが、侯爵の秘蔵っ子なのか表舞台に姿を見せることはほとんどなかった。それを、いくらゲルマニアと同盟関係にあるとはいえ、小国トリステインが招待に成功するとは信じられない。 すると、ルビアナは集まった貴族たちに会釈をすると、鈴の音のような声で話し始めた。 「ここにお集まりの、隣国トリステインの皆さん。そして我が同胞ゲルマニアや、アルビオン、ガリアの皆さま、お初にお目にかかります。わたくしはルビアナ・メル・フォン・ルビティア、以後お見知りおきをお願いします。わたくし、非才の身なれど、祖国のために見識を積み、ひいてはハルケギニア全体の繁栄の役に立てるよう、ここに遣わされてまいりました。どうか皆さま、この若輩の身を哀れと思い、よき友人となってくれることをお願いいたします」 会場からいっせいに拍手があがった。さらにルビアナはアンリエッタと並んで手を取り合い、両者のあいだに友情が生まれたことをアピールする。それは外交辞令のパフォーマンスだとしても、非のつけようもないくらい美しい流れであった。 しかし現実的な問題としては、ルビティアがトリステインを足掛かりにして国外進出を狙っているということを明らかにしたわけだ。アンリエッタ女王はそれを狙ってルビティアを招待したのか? それともルビティアがアンリエッタに売り込んだのか? いずれにしても当然、貴族たちは奮起する。もしルビティア家とコネを作れれば、それはこの上ない力となるだろう。 アンリエッタは一歩下がると、ルビアナに微笑みかけた。 「さあ、堅苦しいあいさつはここまでにして、パーティを楽しんでいらしてください」 「ありがとうございます。では、どなたかわたくしとダンスをごいっしょしてくださいませんか?」 手を差し出したルビアナに、貴族たちはいっせいに前に並んで「我こそは」と競い合った。もちろん、ここでパートナーに選ばれればメビティアとのコネを作る絶好の機会だからだ。 もろちんグラモン家も例外ではない。ギーシュの兄たちもいっせいに駆け出し、ギーシュも兄たちに遅れてはなるまいと兄たちに並んでいく。 モンモランシーは、そんなギーシュの後姿を気が抜けた様子で見送っていた。 「ほんとにバカなんだから……」 止める気はない。グラモン家の一員として、ここで動かなかったら後で父や兄たちに叱られるであろうことはモンモランシーもわかっていた。 しかし、きれいな女性に向かって一目散に駆けていくギーシュの姿を見て、腹立たしいものが胸に渦巻く。後で自分を称える歌の十個でも作らないと許してあげないんだから、とモンモランシーは心に決めた。 そしてあっという間に、ルビアナの前には若い貴族たちの壁が出来上がった。グラモン家をはじめ、あちこちの貴族の子弟たちが、まさに貴公子といった精悍な姿で「私がお相手をつとめましょう」と、ひざまずきながら姫に手を差し出しているのだ。 ギーシュも、四人の兄たちの端に並んでポーズをとっていた。そのポーズの形は、さすが学院で女生徒をデートに誘うのが日課なだけはあって形は様になっているといってもいい。しかしギーシュは、内心では横目で兄たちを見ながらあきらめていた。 「さすが兄さんたち、かっこいいなあ。悔しいけど、ぼくじゃとてもかなわないよ」 いくらギーシュが自惚れの強いナルシストといっても、尊敬する兄たちの前ではなりを潜めざるを得なかった。いまだ学生の身分の自分と違って、すでに成人した兄たちは武門の名門の一員としてそれぞれ武勲を立て、園遊会に出た回数も多い。当然立ち振る舞いも自分とは格が違い、家族だからこそよくわかっていた。 それだけではなく、この園遊会には数多くの貴族が参加しており、グラモンはその中のほんの一部に過ぎない。格式や伝統、資産でグラモン以上はいくらでもおり、さらに見た目美しい美男子も多い。ギーシュを彼の友たちは馬鹿とよく呼ぶが、このような状況を理解できないような愚か者ではなかった。 万が一グラモンに目をつけてもらえたとして、選ばれるのは恐らく長男か次男。末っ子の自分など目にも入れてもらえまい。顔を伏せながらギーシュは、そう思っていた。 しかし…… 「いっしょに踊っていただけますか、ジェントルマン」 声をかけられ、手を握られて顔を上げたとき、ギーシュは信じられなかった。そこには、自分の手を取って優しく見下ろしてくるルビアナの顔があったからだ。 え? まさか、とギーシュの脳はフリーズした。思わず隣にいる兄たちの様子を見てみると、全員が一様に驚きを隠せない様子でいる。ほかの貴族たちも同様で、ギーシュはようやく自分になにが起こったのかを理解した。 「ぼ、ぼくをパートナーに選んでくださったのですか?」 「はい。わたくしと一曲、お相手してくださいませ」 動揺を隠せずに、震えながら尋ねたギーシュに、ルビアナは笑みを崩さずに答えた。 ギーシュの頭が真っ白になる。想像を超えたことが起こったからだけではなく、アンリエッタにも劣らないほどの美貌の令嬢が自分を誘ってくれている。しかも、アンリエッタがまだ”少女”の域にとどまっているのに対して、ルビアナは少女から一歩踏み出した成熟した”女”の美しさを発し、かといって熟れ過ぎた老いの兆候はまったくなく、新鮮な輝きを保っている。まさに、美女という表現の完成形であり、見とれることが罪とはならぬ天女だったからだ。 『こんなバカなことがあるはずがない。これは夢だ!』 あまりの出来事に、ギーシュは己の意識を失神という避難所に逃れさせようと試みた。しかし、隣の兄から「ギーシュ!」と、叱責の声が響くと我に返り、グラモン家のプライドを振り絞ってルビアナの手を握り返した。 「ぼくでよろしければお相手を承りましょう。レディ、あなたのパートナーを喜んでつとめさせていただきます」 「ありがとうございます。ジェントルマン、あなたのお名前をうかがってもよろしいですか?」 「ギーシュ・ド・グラモン。レディ・ルビアナ、あなたのご尊名に比べれば下賤な名ですが、その唇でギーシュとお呼びいただければ、この世に生を受けて以来の名誉と心得ます」 「はい、ではミスタ・ギーシュ。あなたに最高の名誉を与えます。その代償に、わたくしに至福の一時を与えてくださいませ」 「全身全霊を持って、お受けいたしましょう」 覚悟を決めると、ギーシュは己の中に流れるグラモンの血を最大に湧きあがらせてルビアナに答えた。父や兄から教わった女性に尽くすスキルをフルに使い、リードしようと全力で試みる。 その様子を、ほかの貴族たちは呆然と見ているしかなかった。一流の貴族から見ればギーシュの振る舞いは未熟で、なぜあんな小僧がという腹立たしい思いが湧いてくるが、まさか邪魔をするわけにはいかない。モンモランシーは理解が追いつかず、ただ立ち尽くして見ているだけだ。 そして、ふたりはパーティ会場の真ん中に出ると、優雅に会釈しあって手を結んだ。それを合図に、楽団からミュージックが流れ始める。 「交響曲・水と風の妖精の調べ……レディ・ゴー」 涼やかな音楽が始まり、ギーシュとルビアナは手を取り合ってステップを踏み始めた。貴族にとって社交ダンスは基本のたしなみだけに、ギーシュも危なげなく踊りを披露する。 対してルビアナはギーシュに合わせるようにして、ふたりのタップのリズムはほぼ重なって聞こえた。不協和音はなく、ギーシュとルビアナは鏡写しのように美しいシンメトリーを飾り、その心地よさにギーシュはしだいに緊張をほぐれさせていった。 「ミス・ルビアナ、ぼくはまるで白鳥と踊っているように思えますよ」 「うふふ、嬉しいですわ。さあ、ミスタ・ギーシュ、音楽はまだ始まったばかりです。もっと楽しみましょう」 音楽は序曲から第一楽章へと移り、緩やかな動きからタンタンと軽快なリズムに変化し、少しずつ動きが速くなっていく。 月光をスポットライトに、優雅に、時に素早く舞うギーシュとルビアナ。 楽しくなってきたギーシュは、いつもモンモランシーなどにしているように、乏しいボキャブラリーを駆使してルビアナをほめちぎり始めた。 「おお、あなたはなんと美しいんでしょう。世界中のオペラを探しても、あなたほどの人はいない。あなたの髪はキラキラ輝き、まるで海のよう。瞳は……」 そこで、瞳の色を褒めようとしたギーシュは口を止めざるを得なかった。ルビアナの瞳はほとんど閉じられたままで、瞳の色はわからない。するとルビアナはそれに気づいたようで、困ったようにギーシュに言った。 「すみません、わたくしは目があまりよろしくないもので。薄目でい続けなければいけないことを、お許しください」 「そ、それは大変失礼いたしました! ぼくとしたことが、とんでもないご無礼を」 「いいえ、いいのです。それより、もっと楽しく踊りましょう」 気分を害した様子もないルビアナに、ギーシュはほっとした。しかし、瞳が見えないとしても、目を閉じたまま踊り続けるルビアナのなんと美しいことか。 ターン、タップ。音楽に合わせて動きも複雑さを増していく。ここからがダンスの本番だ。 だがギーシュはダンスが複雑さを増すにつれ、ルビアナの信じられない技量を目の当たりにすることになった。ギーシュもガールフレンドをダンスに誘うことは何度もあったが、ルビアナのそれは身のこなし、正確さともに次元が違っていたのだ。 ”この人、とんでもなく上手い!” 心の中でギーシュは驚嘆した。高度なダブルターンを、ルビアナは表情を一切崩すことなく完成させてしまった。その動きの完璧さは、実家で見たダンスの先生のそれを軽く上回っている。 例えるならば、花の上で舞う蝶の妖精。そう錯覚してもおかしくないだろう。 このままだと自分だけ置いていかれてしまう! ギーシュは焦った。全力でリードするつもりが、このままだとルビアナの独り舞台になってしまう。 しかし、ギーシュが焦ったのは一瞬だけだった。ルビアナに置いていかれるかと思ったギーシュの動きが、ルビアナに合わせたように精密さを増し始めたからだ。 「ギーシュのやつ、いつのまにあんなにダンスが上達していたんだ?」 見守っていたギーシュの兄たちが、自分たちの知るギーシュよりずっと卓越した動きを見せるギーシュに驚いて言った。モンモランシーも、以前に自分と踊った時よりはるかにレベルが上の動きを見せるギーシュに驚いている。 いや、一番驚いているのはギーシュ本人だ。自分にできる動きを超えているどころか、知らないはずの動きさえできる。これは、まさか。 「ミス・ルビアナ、あなたがぼくのリードを?」 「はい、失敬かと思いましたが、ミスタ・ギーシュならばわたくしに付いていただけると思いまして。わたくしは少しだけミスタ・ギーシュのお手伝いをしただけ、これは貴方が本来持っている力ですわ」 優しく微笑みかけてくるルビアナに、まいったな、とギーシュは心の中で完敗を認めた。 ダンスを通して、相手の技量をも実力以上に引き出す。操り人形にされている感じは一切なく、それどころか体が動きを元々知っていたかのように自然と動き出している。殿方を立てることも忘れない、この人は紛れもなく天才だ。 「さあ、ギーシュ様ももっと軽やかに。曲はまだまだ続きますわ。もっとわたくしを見て、そしていっしょに楽しみましょう」 「ええ、一時から無限までのすべての時間を、共に楽しみましょうミス・ルビアナ」 「ルビアナとお呼びください。さあ、無限のような一瞬の時間を共に」 ギーシュとルビアナは踊り続けた。ふたりが舞う、その美しさは貴族たちの心に永遠に刻まれ、アンリエッタも心から見惚れた。 だが、それ以上にギーシュは楽しかった。こんな楽しいダンスを踊ったことはない。ルビアナは誰よりも優しく、美しく、ギーシュの目はルビアナの虜になり、ギーシュの体は疲れを忘れて動き続けた。 けれど、永遠は一瞬にして終わる。楽団の演奏が終わり、ふたりの動きが同時に止まる。 それはめくるめく夢の終焉。ふたりに対して、会場から惜しみのない拍手が送られた。 「ブラボー!」 「グラモンの末っ子、まだ学生だというのにやるではないか」 非の付け所のないパーフェクトなダンスに、数多くの賞賛がギーシュに与えられた。ギーシュの父や兄たちも、誇らしげに拍手を続けている。 しかしギーシュの耳には、会場の賞賛はほとんど届いていなかった。彼の意識のすべては、いまだずれることなくルビアナに向かい続けていたのだ。 「ルビアナ……最高でした。ぼくは、こんな楽しいダンスをこれまで経験したことがなかった。一生、いえ来世まで決して今日のことを忘れることはないでしょう!」 「ありがとう、ギーシュ様。わたくしも、心から楽しいひと時を味わわせていただきました。あなたにパートナーになっていただいたことは、間違いではありませんでした」 それはギーシュにとって最高の賛辞であった。この世にふたりといないほどの完璧な女性に認めてもらえたことは、グラモン家の人間としてこれほど誇らしいものはない。 しかしギーシュの夢見心地はすぐに終わらされた。ダンスが終わると、ルビアナには「次はぜひ私と踊ってください」と、貴公子たちが押し掛けてきたのである。ギーシュはたちまち押し出され、現実を意識させられた。 「そ、そうだよね。園遊会じゃ、これが当然さ……」 少しでも多くの貴族とつながりを作るため、有力な貴族は次々にパートナーを変えることが常識だ。 しょせん、自分は偶然選ばれたそのひとりに過ぎない。ギーシュはすごすごと引き下がろうとし、そんなギーシュをモンモランシーはやきもちという名の歓迎で慰めようとやってきた。だが、ギーシュが踵を返そうとした、そのとき…… 「お待ちになって、ギーシュ様」 ぎゅっと手を握りしめられ、振り返ったギーシュは自分の目を疑った。ルビアナが、自分の手を握って引き留めてくれているではないか。 「まだ、わたくしたちのダンスは終わっていませんわ。アンコール、よろしいかしら?」 「ル、ルビアナ……」 「うふふ。さあ参りましょう!」 ルビアナはそのままギーシュの手を引いて駆けだした。ギーシュは訳も分からず、「えええっ!?」と、間抜けな声と顔をしながら引かれていく。 当然、貴族たちは愕然とする。そして、ギーシュの兄たちをはじめとする何人かは後を追って走り出そうとしたが、その背に鋭い叱責が投げかけられた。 「お待ちなさい!」 「じ、女王陛下!? しかし」 「無粋な殿方を好く女性は、この世に一人もおりませんわよ。それにわたくしは、ミス・ルビアナに楽しんでいってくださいと言いました。せっかくのところに水を差して、わたくしに恥をかかせるつもりですか?」 アンリエッタは、自分にも覚えがあることだけに、ふたりを引き止めることを許さなかった。まさかこうなるとは予想外だったが、乙女心がどういうものなのかは自分が一番よく知っている。 がんばってくださいね、とアンリエッタは心の中でエールを送った。この園遊会で、少しでも多くのトリステイン貴族がルビティア家と交友を持ってくれることを期待していたけれども仕方ない。マザリーニ枢機卿は怒るだろうけれど、国家の繁栄とロマンス、どちらが重大であるかなんてわかりきったことなのだから。 女王にそこまで言われては、貴族たちも引き下がるしかなく、悔し気にしながらも足を止めてふたりを見送った。ただ一人を例外として。 ルビアナは、ギーシュの手を引いたままパーティ会場を抜け、邸宅の敷地も抜け、そのままの足でラグドリアン湖の湖畔へとやってきた。 「ふう、ここまで来ればいいでしょう。わぁ、これがラグドリアン湖……なんて大きくて、そして心地よい風が吹く場所なんでしょう!」 湖畔の砂利をシューズで踏みながら、子供のようにルビアナははしゃいでいた。そんなルビアナの姿は、月光を反射するラグドリアンに照らされて、まるで幻想の世界に迷い込んでしまったようにギーシュは思った。 「ルビアナ、いったいなにを……?」 それでもギーシュは、貴族の常識からはあまりにも外れたルビアナの行動を問いかけた。すると、ルビアナはギーシュのほうを向いて、深く頭を下げた。 「すみません、ギーシュ様。ぶしつけだと承知していますが、どうしても他の誰かと手をつなぐのが嫌で、申し訳ありません」 「い、いえ、頭をお上げください。ぼくのほうこそ、レディの心の機微を察せられなかったとは男子として失格……ええっ!」 言いながら、ギーシュは自分の言葉の意味に恐れおののいた。つまり、ルビアナは自分だけと手をつなぎたいと言ってくれている。これが、学院の女子を相手にしたのであれば、余裕を持って大げさにきざったらしく喜びの表現をあげたであろうが、相手はグラモンを歯牙にもかけない規模を誇る大貴族。普通なら、あり得るわけがない。 「ミ、ミス・ルビアナ、お戯れはおよしになってください。ぼ、ぼくなんてまだ未熟な学生の身。あなたのような高貴なお方と、釣り合うわけがありません」 「いいえ、私は自分の意思でここにいるすべての殿方の中から、ギーシュ様、あなたとならば踊りたいと思って手を取りました。私は、自分で認めた相手以外の誰とも踊りはしません」 「で、ですがそれでは貴族としての本分が……あなたも、本国に示しがつかないのでは」 「構いません、すべての責任は私が取ります。私は、いつか骨となるその日まで、自分の踊りだけを踊り続けます。それが私が決めた、生涯ただひとつのわがままです」 はっきりと言い放ったルビアナに、ギーシュは唖然とした。 貴族としての重要な責務のひとつを投げ捨てる。しかも、彼女ほどの大貴族がなどと普通は考えられない。 しかし、同時にギーシュはどこかルビアナがまぶしく見えた。そんなわがままを通しても、彼女の才覚ならば埋め合わせをしてお釣りがくるほどを得られるに違いない。 貴族社会で自分のわがままを通すことがどれだけ難しいか。ウェールズと結婚したアンリエッタも、その道のりは薄氷の連続であったし、平民の才人と恋愛関係にあるルイズも相当な悩みを抱えているのはギーシュにもわかっている。 それでも、自分の通したい筋を、道理に反するわがままだとしながらも通している。貴族社会に合わせるのを当然だと考えていたギーシュには、ルビアナがルイズやアンリエッタと並んで美しく見えたのだ。 「ミス・ルビアナ、いやルビアナ。ぼくはあなたに感動しました。ぜひ、もう一度踊っていただきたい。さあ、お手を」 「ありがとうございます。ギーシュ様、こんなわたしのわがままを聞いてくださいまして」 ギーシュとルビアナは手を取り合い、湖畔をダンスホールにして第二幕を踊り始めた。 ミュージックは風と波の音。スポットライトは変わらず月光だが、湖畔に反射した光が幻想的に照らし出している。 湖畔の砂利を踏みしめる音さえ、ミュージックに加わる。ダンスをするには不向きな足場のはずだが、やはりルビアナとのダンスはそんな不自由さをまったく感じさせないほど素晴らしかった。 踊るギーシュとルビアナ。その中で、ふたりは語り合い始めた。 「ルビアナ、なぜぼくを……グラモンのたかが末っ子に過ぎないぼくを選んでくれたのですか?」 「それはあなたが、あの殿方たちの中でひとりだけ、温かい眼差しでわたくしを見ていてくれたからですわ」 「ぼくが?」 「ええ。わたしがあの会場に入っていったとき、ほかの方々はルビティアの私だけを見ていました。けれどあなたは、純粋に私だけを見ていてくれました」 「そんな、ぼくはあなたの美しさに見とれていただけで……って、あなたは目が弱いはずじゃ」 「ふふ、見えないからこそ、よく見えるようになるものもあるのですわ。ギーシュ様、あなたはとても明るい人……きっと多くのお友達がいて、あなたはその中心で皆を引っ張っていく太陽のような人なのでしょう」 「か、買い被りですよ」 そうは言ったものの、自分が水精霊騎士隊のリーダーだということをほとんど言い当てている。たぶん、口調や態度などを分析したのだろうが、顔色などにごまかされないからこそ、人柄を見抜く眼力は本物だ。 すごい人だ。ほとんど完全無欠と呼んでもいいのではないか? ギーシュは誰もが認めるナルシストではあるが、あまりのルビアナの能力の高さにコンプレックスを感じ始めていた。 しかし、ルビアナは悲しそうな声でギーシュにつぶやいた。 「ですがギーシュ様、私は本来ならギーシュ様と踊る資格のない卑しい女なのです」 「な! どういうことです。あなたのような素晴らしい方に何があろうと僕は気にしませんよ。美しい薔薇にトゲがあるのは当然のことではないですか!」 「そうではないのです。私の出身がゲルマニアだということはご存知でしょう。ルビティアは財力によって爵位を手に入れた成り上がりの系譜……それゆえに、私は神の御業である魔法を使えないのです。あなたと同じ、メイジではないのです」 ギーシュははっとした。確かに、平民が金銭で爵位を買うのはゲルマニアでは珍しくない行為ではあるが、トリステインではまだ一部の例外を除いては貴族はメイジであるという常識がある。 「軽蔑なさいましたか? 私はしょせん、貴族の名前だけを持つ平民の娘……始祖の血統からなるトリステインの正当なる貴族には劣る……」 「そんなことはありません!」 「ギーシュ様?」 「ぼくは、あなたほど美しく優れた貴族を見たことがない。確かに、始祖ブリミルは我々に魔法をお与えになりました。しかし、ぼくの友人や知り合いにはメイジでなくとも誇り高く、強く、国のために貢献している人が大勢います。ぼくは、そんな彼らを魔法が使えないからと見下したことはない……いや、前にはあったかもしれないけど今は魔法が使えない仲間も皆同志だと思っている。だからあなたも、少なくともぼくの前ではメイジでないことを気にする必要なんかありません」 正直なギーシュであった。だがルビアナは目を閉じたままながら、その瞼から一筋の涙を流した。 「ありがとうギーシュ様、私はトリステインにやってきて本当によかったですわ」 「涙を拭いて、ルビアナ。乙女の涙はもっと嬉しいことが起きたときにとっておくべきです。さあ、今はなにもかもを忘れて踊りましょう!」 手を結び、ギーシュとルビアナは観客のいない彼らだけのステージで楽しく踊り続けた。 いや、正確には少しだけ観客はいた。 一人は会場から唯一ふたりをつけてきたモンモランシー。彼女は楽しく踊るギーシュとルビアナを湖畔の木の影から唇をかみしめながら見つめていた。 「ギィィシュュウゥゥ! わたしとだってあんなに長く踊ってたことないくせにぃぃ! なによ、そんなにそのゲルマニア女のほうがいいわけなの! 今日という今日は血祭りにあげてやるわ!」 まるでルイズが乗り移ったような、鬼気迫る嫉妬のオーラを巻き散らしながらモンモランシーは吠えていた。 そしてもうひとり空の上から、あの宇宙人がその嫉妬の波動を感じ取って笑っていた。 「いやはや、ものすごいマイナスエネルギーの波動ですね。たった一人がこれほどのエネルギーを発せられるとは、なんとも人間というものはおもしろい。けど、このエネルギーを集めるのはやめておいたほうがよさそうですねえ」 硫酸怪獣ホーが勝手に生まれそうなパワーを感じたが、この手のマイナスエネルギーは特定の目的を持って動くことが多いので、宇宙人は制御が面倒だと考えて収集をやめた。 扱いやすいとすれば、パーティ会場で貴族たちが発しているような恨みと欲望のエネルギーである。しかしそれも、先のギーシュとルビアナの披露したダンスの余韻で小康状態にある。 「まったく、余計なことをしてくれますねえ。もう量はじゅうぶんでしたけど、こうも澄んだ空気だとどうも気持ちがよくありません。では……我ながら小物っぽいとは思いますが、八つ当たりしてあげなさい! カモン、ブラックキング!」 宇宙人が指をパチリと鳴らすと、ラグドリアンの湖畔が揺らめいて、周辺を大きな地震が襲った。 なんだ! 驚く人々が事態を飲み込むよりも早く、パーティ会場のそばの地中から土煙をあげながら巨大な黒い怪獣が姿を現した。 「わ、か、怪獣ですぞぉーっ!」 貴族たちは眼前に出現した巨大な怪獣に驚き、魔法で立ち向かうことも忘れて逃げ出したり腰を抜かしたりしていた。 しかしそれは逆に賢明であったといえるかもしれない。なぜなら、ここに現れた黒々とした蛇腹状の体を持ち、頭部に大きな金色の角を持つ怪獣は用心棒怪獣ブラックキング。かつてナックル星人に操られて、ウルトラマンジャックを完敗に追い込んだほどの強豪なのだ。とても準備なしで挑んで勝てるような相手ではない。 ジャックに首をはねられ、怪獣墓場で眠っていたところをあの宇宙人に甦らされて連れてこられた。今回ナックル星人はいないものの、あの宇宙人を新しい主人として、唸り声をあげながらパーティ会場へ進撃しだした。 「適当に脅してやりなさい。その人たちはマイナスエネルギーをよく生んでくれますから、あまり殺してはいけませんよ」 宇宙人のうさ晴らしに巻き込まれて、貴族たちは迫りくるブラックキングから逃げまどった。 もちろん、中にはギーシュのグラモン家のように、一時のショックから立ち直ったら反撃に打って出ようとする武門の家柄もある。しかし、それをアンリエッタは止めた。 「やめなさい! 今は招待客の避難に全力を尽くすのです」 外国からの招待客に万一のことがあってはトリステインの恥。グラモン家のギーシュの兄たちは、武勲をあげるチャンスを逃すことに悔みながらも女王の命に従った。 もっとも、彼らはすぐに自らの蛮勇がストップされたことを女王に感謝することになった。ブラックキングが鋭い牙の生えた口から放った赤色の熱線が、会場のある貴族の邸宅を直撃し、一発で粉々にしたからである。 「すごい破壊力だ」 ブラックキングの溶岩熱線。対ウルトラマンを目的に飼育されているブラックキングは全能力がバランスよく高く、弱点が存在しないと言ってもいい。 一方そのころ、湖畔にいたギーシュたちも当然ブラックキングの巨体を目の当たりにしていた。 湖畔から会場まではざっと百メイル。それなりの距離があって、ブラックキングの目的は会場であるから彼らはブラックキングの横顔を見るだけで済んでいるが、ギーシュはここで無駄な意地を見せていた。 「止めないでくれルビアナ。ぼくはグラモンの一門として戦いに行かねばならないんだ。僕が行かなけりゃ父さんや兄さんたちに合わせる顔がないんだ!」 「おやめください! あなたが行ってもあれを倒すのは無理です。危険すぎますわ」 「相手がなんであろうと、トリステイン貴族がやすやすと引くわけにはいかない! 頼むから見守っていてください。あなたに捧げる武勲をきっと持ち帰ってみせます」 明らかに悪い方向で調子に乗っていた。水精霊騎士隊がいれば、まだリーダーとして自制は効くし、レイナールなどの抑え役もいる。 だが、暴走しかけるギーシュに業を煮やし、ついにモンモランシーが割り込んできた。 「いい加減にしなさいギーシュ!」 「わっ! モ、モンモランシー、いつのまにそこに」 「そんなことどうでもいいでしょ! あなたはまた美人の前だといい格好しようとして。こんな場所に女の子ひとり置いていって万一のことがあったらどうするの?」 あっ! とするギーシュを、モンモランシーはさらに叱りつける。 「女の子ひとりも守れないで、なにが貴族よ騎士よ。もしその人があんたがいない間にケガでもしたら、それ以上の不名誉はないでしょう」 「ご、ごめんモンモランシー、君の言うとおりだ。ぼくは間違っていた、手の中の薔薇一輪も守れないでなにが男だろうか。なんと恥かしい! 許しておくれ」 平謝りするギーシュ。モンモランシーは、ほんとにこれだから目を離せないんだからとまだカンカンだ。 ルビアナは、突然現れたモンモランシーに少し驚いた様子でいたが、すぐに落ち着いた様子でモンモランシーにあいさつをした。 「失礼、お見受けするところモンモランシ家のお方ですわね。ギーシュ様を止めていただき、どうもありがとうございます。私の細腕ではどうすることもできませんでした」 「フン! このバカは甘やかしちゃダメなのよ。可愛い女の子と見れば、ホイホイ尻尾を振る破廉恥男なんだから」 怒りのたがが外れたモンモランシーは、もう相手が誰であろうと遠慮はしていなかった。しかし、無礼な態度をとられたのに、ルビアナの反応はモンモランシーの予想とは違っていた。 「いいえ、それはきっとギーシュ様は博愛のお気持ちがお強い方だからなのでしょう。モンモランシー様がお怒りになったのも、そんなギーシュ様がお好きだからなのですわね」 「なっ! あ、あなた、初対面の相手に何言ってるのよ」 「お隠しにならなくてもよいですわ。モンモランシー様の声には、怒りはあっても憎しみはありませんでした。それに、ギーシュ様のそうしたことをよくご存じとは、きっと貴女はギーシュ様の一番なのでしょうね」 「なっ、なななな!」 モンモランシーもまた、ルビアナの洞察力の深さに意表を突かれていた。 だが、危機は空気を読まずにやってくる。モンモランシーの予想した通り、ブラックキングが歩いたことによって蹴り飛ばされた岩のひとつが偶然にも、こちらに向かってすごい勢いで飛んできたのだ。 「きゃあぁっ!」 岩は数メイルの大きさのある庭石で、避けても避けきれるようなスピードではなかった。フライで飛んでも落ちた岩がどちらの方向に跳ね返るかはわからない。もちろんモンモランシーの魔法で受け止めきれる威力ではない。 しかし、ここでとばかりにギーシュは杖をふるって魔法を使った。 「ワルキューレ、レディたちを守るんだ!」 ギーシュの青銅の騎士ゴーレムが、三体同時に錬金されて岩に向かって飛びあがった。受け止めるなんて無茶は考えていない、ワルキューレそのものの質量を使った弾丸だというわけだ。 飛んできた岩はワルキューレ三体と空中衝突し、互いにバラバラになって舞い散った。そしてギーシュは薔薇の杖を口元にやり、どやあとキザったらしくポーズをとってかっこをつけた。 「ぼくがいる限り、君たちには傷一つつけさせやしないよ」 「ほんと、かっこつけるのだけはうまいんだから。けどまあ、助けてくれてありがと」 モンモランシーはぷりぷり怒ったふりをしながらも礼を言い、それからルビアナも感謝の意を示した。 ブラックキングはしだいに遠ざかり、もう岩も飛んでこないだろう。どうやら完全にこちらは眼中にないようだが、ブラックキングの背中を見送りながらルビアナは残念そうにつぶやいた。 「それにしても、ギーシュ様とのダンスはこれからというところでしたのに、無粋な怪獣様ですわね」 憮然とするルビアナの声色は、日没で鬼ごっこを中断させられた子供のような純粋な憤慨のそれであった。 「まったくだね。ルビアナといっしょなら、ぼくは朝までだって踊れたろうにさ」 「ギーシュ、わたしと舞踏会に出たときに「疲れた」って言って先に抜けたのは誰だったかしら?」 いつもの調子に戻ったギーシュとモンモランシーも同調して言う。怪獣は遠ざかりつつある、もうすぐ園遊会で何かあったときのために待機していた軍の部隊もおっとり刀で駆けつけてくるだろうから、自分たちの出番はないはずだった。 そのころ、会場に乱入したブラックキングは貴族たちを追いかけていた。しかしアンリエッタが迅速に逃げることを最優先させたため、少々の軽傷者を除いては人的被害は出ていなかった。 だが、このまま暴れ続ければいずれは追いついて蹂躙することもできるだろう。けれども、宇宙人はそこまでする必要を感じてはいなかった。 「もういいでしょう。これで人間たちにはじゅうぶんに恐怖を植え付けられました。仕込みはこれまで……戻りなさいブラックキング」 死人にマイナスエネルギーは出せない。貴族たちが逃げまどう姿を見て、じゅうぶんに溜飲を下げた宇宙人はブラックキングを引き上げた。あとは貴族たちのあいだで責任の押し付け合いでも始めてくれれば重畳というものだ。 ブラックキングは命令に従い、あっというまに地中に潜って消えてしまった。後には、呆然とする貴族たちが残されただけである。 そうして、一応の平和は戻った。 貴族たちは破壊された会場から少し離れた場所にある別の庭園に移動して、ほっと息をついている。 当然、ギーシュたちももう抜け出しているわけにはいかず、そこに戻っていた。 「おお、ギーシュよ。無事であったか」 「ははっ、父上。このギーシュ、全力でルビアナ姫をお守りしておりました」 「うむ、それでこそ我がグラモンの一門。よくやったぞ」 ギーシュは父や兄たちも無事であったことにほっとしつつ、帰還を報告した。 もしかしたら怒られるのではと内心では恐々としていたが、父は意外にも上機嫌であった。もっとも、ルビアナが後ろで微笑んでいれば、たとえ怒っていたとしても気分は逆転したに違いない。 けれども、褒められていい気分になっていたギーシュに、次に父が浴びせた言葉がギーシュの心を凍り付かせた。 「ギーシュ、ルビティアの姫のお気に入りになられるとは見事ではないか。これはもう、モンモランシの小娘などと遊んでいる場合ではないぞ」 「えっ……」 ギーシュは言葉を返すことができなかった。それは、ギーシュにとって初めて体験する貴族世界の理不尽のひとつであった。 ルビティアとモンモランシでは、比較にならない格の差がある。家のために、どちらと付き合わねばならないかは言うに及ばずだが、そうなるとモンモランシーと付き合うことはできなくなってしまう。 ギーシュの心に霜が降る。嫌だと言いたいが、そうすれば父の期待を裏切り、激怒させてしまうだろう。さらにグラモン家に恥をかかせることになる。どうすればいいかわからない。 父はギーシュにだけ聞こえるように言ったので、後ろにいるモンモランシーとルビアナには聞こえていないはずだ。ここは自分がはっきりと意思表示をしなければならない。だが、なんと答えればいいのだ? 冷や汗を噴き出すギーシュ。耳を澄ますと、会場のそこかしこから言い合う声が聞こえだした。貴族たちが、格上の自分を差し置いて先にお前が逃げ出すとは何事だ、とか、お前の息子はうちの娘にあれだけ求婚しておいたくせに守ろうともしなかったではないかなどと言い合っているのだ。 これが園遊会の実体。ギーシュはその欺瞞を身をもって体験し、打つ手なく戸惑っている。 まさに、あの宇宙人が望んだとおりの、人間の醜い面がさらけ出された煉獄が実現されつつあった。 「ウフフ、いいですね。これでこそ人間のあるべき姿というものです」 しかし、宇宙人が高笑いし、ギーシュが思考の堂々巡りの深淵に落ちかけたそのとき、誰もが予想していなかった事態が起こった。 「うわっ! なんだ、また地震か!」 地面が揺れ動き、土煙が噴き出して、地中から巨大な影が姿を現す。 「出たっ、またあの怪獣だ!」 ブラックキングが庭園のそばから再度出現し、貴族たちを見下ろして再び暴れだしたのだ。 溶岩熱線が集まっていた貴族たちの一団を狙い、十数人が一度に吹き飛ばされる。さらにブラックキングは狂ったようにのたうちながら庭園に乱入していった。 たちまち逃げ出す貴族たち。しかし、驚いていたのは宇宙人も同じであった。 「ブラックキング! 何をしているんです。誰が出て来いと言いましたか!」 彼は命令をしていなかった。しかしブラックキングは出てきて、今度は宇宙人の命令を聞かずに無差別に暴れている。 これはどうしたというのだ? 困惑しながら空から見下ろす宇宙人。すると彼は、ブラックキングの姿が先ほどと明らかに違うところを見つけた。 「角が、機械化されている!?」 そう、ブラックキングの立派な角があった頭部に、角の代わりに巨大なドリル状の機械が取り付けられていたのだ。 さしずめ、ブラックキング・ドリルカスタムとでも呼ぶべきだろうか。ドリルはそれが飾りでないことをアピールするように、先端から紫色の光線を放ち、離れた場所にある別の貴族の別荘を粉々に粉砕してしまったのだ。 「改造手術をされている。ですが、いったい誰が!」 ブラックキングは正気を失っているらしく、無茶苦茶に吠えて暴れながら熱線や光線を撃ちまくっている。それを止めることは、もう誰にもできなかった。 庭園は大パニックになり、もう秩序だった避難は望むべくもなく、貴族たちは皆好き勝手に逃げまどっている。 そしてその猛威は、不運にもギーシュたちのほうへと向けられた。 「ギーシュ!」 「ギーシュ様!」 逃げ遅れたモンモランシーとルビアナに向けて、ブラックキングのドリル光線の照準が定められる。 ギーシュは、ありったけのワルキューレを錬金してふたりの前に立ちふさがった。しかし、青銅のワルキューレの壁でどれだけ耐えられるものか。 ならば、せめてひとりだけを全ワルキューレでカバーすれば守り切れるかもしれない。ギーシュの耳に、父や兄たちの声が響く。 「ギーシュ、ルビティアの姫様を守るんだ」 そんなことは言われなくてもわかっている。しかし、ギーシュはどれだけ道理をわきまえても、それができる男ではなかった。 そう、好きな子の前でかっこ悪いところを見せるくらいなら死んだほうがマシ。それが男だと信じるのがギーシュだった。 「ぼくは、ふたりとも守る! 足りない分の壁には、ぼくの体を使えばいいんだよ!」 ワルキューレをモンモランシーとルビアナの前に均等に配置し、さらにその前にギーシュは立ちふさがった。 これで死ぬなら本望。ギーシュは覚悟し、彼の耳に父や兄たちの絶叫が響く。 だが、まさにブラックキングの光線が放たれようとしたとき、なぜかブラックキングの頭がふらりと揺れて光線の照準が大きくそれた。 光線ははずれ、ギーシュには爆風と吹き飛ばされた砂や石だけが叩きつけられた。とはいえ、それだけでもじゅうぶんな威力で、ギーシュは傷だらけになりながら吹き飛ばされた。 「うわあぁぁっ!」 「ギーシュ!」 「ギーシュ様!」 ワルキューレの影に守られて爆風をやり過ごせたモンモランシーとルビアナは、すぐにギーシュに駆け寄った。 だがその後ろからブラックキングが狙ってくる。ギーシュの父や兄たちは、駆け付けようとしたが、もう遅かった。 「だめだ、やられるっ!」 ドリルからいままさに光線が放たれるかと思われた。しかし、光線は放たれず、ブラックキングは目の焦点を失い、そのままフラリと揺らぐと地面に倒れこんでしまった。 轟音が鳴り、横倒しになるブラックキングの巨体。ブラックキングは口から泡を吐いて痙攣していたが、すぐに動かなくなってしまった。 「無理な改造で、脳に負担がかかりすぎたんですね」 呆然としたまま、宇宙人はつぶやいた。 貴族たちも、突然絶命したブラックキングに呆然とするしかないでいる。だが、モンモランシーとルビアナは傷ついたギーシュを前に、それどころではなかった。 「ギーシュ、大丈夫! わたしがわかる?」 「ああ、モンモランシーだろう。よくわかるよ、いやあ君の顔を間近で見るのは永遠に飽きないねえ」 「バカ! またかっこつけて傷だらけになって。あなた血だらけじゃない!」 「いやいや大丈夫だよ。ちょっと体中しびれてるけど、痛みはないんだ。かすり傷だよ、ちょっと休めば立てるさ」 だが、そういうときが一番危ないのをモンモランシーは知っていた。一時的に痛覚が麻痺していても、いずれ耐えがたい苦痛に襲われる。治療は一刻を争う。 モンモランシーは杖を取り出して、治癒の魔法を唱え始めた。傷の深そうな部分から順々に、しかし治癒に止血が追いつかない。モンモランシーが焦り始めたとき、ルビアナがハンカチを手にそばにかがみこんだ。 「お手伝いしますわ」 ハンカチを包帯代わりに、それでも足りなければドレスを引きちぎってルビアナはギーシュの止血をしていった。 その行為に、ギーシュは「大事なお召し物をぼくなんかのために、もったいない」と止めようとしたが、ルビアナは気にした様子もなく言った。 「よいのです。ギーシュ様のお役に立てて破れたのなら、このドレスは私の誇りですわ。それより、ギーシュ様のために一番がんばっておられるのはモンモランシー様です。モンモランシー様をこそ見てあげてください」 こんなときの気配りもできて、モンモランシーはこれが大人のレディなのかと少し悔しくなった。 だけど負けない。こんなぱっと出のゲルマニア女なんかにギーシュをとられてたまるものか。 やがて手当は終わり、治療が早かったおかげでギーシュはたいした後遺症もなく普通に立ち上がることができた。 「あいてて、まだ少し痛むけどもう大丈夫だよ。モンモランシー、ルビアナ、君たちのおかげだ。ありがとう」 「ま、まあ、あんたに助けられたわけだし、わたしにだって貴族の誇りってものはあるから当然よ」 「わたくしは何もしていません。モンモランシー様が、ギーシュ様を救ったのですわ。本当に、お似合いのふたりです」 ルビアナにそう言われ、ギーシュとモンモランシーは照れた。 しかし、それぞれの家の問題はまだ引きずっている。すると、ルビアナはギーシュとモンモランシーの手を取り、三人の手を重ねて言った。 「わたくしたち、とてもよいお友達になれそうですね」 その光景で、グラモン家はもうなんの文句も言うことはできなくなってしまったのである。 それだけではなく、ルビアナは事態の鎮静に四苦八苦しているアンリエッタの元に向かうと、各国の貴族たちに向かって宣言した。それはまとめると、今日の事件での損失はルビティア家が補填する。自分は、危急の事態にあっても冷静に判断するアンリエッタ女王に深い感銘を受けた、トリステインにルビティアは協力を惜しまない。これからもトリステインで皆さまとお付き合いしたいのだと。 それにより、不満をたぎらせていた貴族たちは一気に大人しくなった。ゲルマニア有数の大貴族とのパイプがつながるのなら、今日のことなど安いものだ。 当然、アンリエッタにとっても渡りに船である。ルビアナの申し出に感謝し、友好を約束した。 そして、夢のような時間は終わりを告げる。園遊会は満足の内に終了し、ギーシュとモンモランシーはルビアナと別れる時がやってきた。 「さようなら、ギーシュ様、モンモランシー様。おふたりと出会えて、今日はとても楽しい一日でした」 「ルビアナ、短い時間でしたけどぼくもとても楽しかったです。あなたからはいろいろと教えられました。今日のこの時を一生胸に焼き付けることを約束します」 「ま、まああなたがいい人だっていうのはわかったわ。だからわたしからも言うわ、ありがと」 手を取り合い、別れを三人は惜しんだ。 これからルビアナはゲルマニアに帰る。そうなれば、また会えるかはわからない。 そうなれば……ギーシュは不安だった。ルビアナにとって、今日のことぐらいは数多くある出会いのひとつに過ぎず、すぐに忘れ去られてしまうのではないか? グラモンとルビティアはそれほどの格差がある。 しかし、ルビアナはギーシュの心の機微を見抜いたのか、再びギーシュとモンモランシーの手を取り言った。 「そうですわ。再会を願って、このラグドリアン湖の水の精霊に誓いを捧げましょう」 「え? 誓い、ですか」 「はい、ラグドリアンの精霊は別名誓約の精霊と聞いております。私たちの友情が永遠であることを誓えば、いつか必ずまた会えますわ」 それは虹色の提案であった。精霊への誓約は違られることはないという。 だが、人間の誓約に絶対はない。するとルビアナは、同じく見送りに来ていたアンリエッタに見届け人を頼んだ。 「ええ、わたくしでよければ見届けさせていただきますわ。あなた方三人の誓約、トリステイン女王の名の下に、この耳と目にとどめましょう」 それ以上の確約などはあろうはずがなかった。ギーシュ、モンモランシー、そしてルビアナはラグドリアン湖を望み、それぞれの誓いの言葉を口にした。 「誓約します。ぼく、ギーシュ・ド・グラモンはモンモランシーを一番に愛し続け、ルビアナを永遠に愛し続けることを」 「誓約します。わたし、モンモランー・ラ・フェール・ド・モンモランシーはギーシュを愛し、ルビアナと変わらぬ友情を持ち続けることを」 「誓約します。私、ルビアナ・メル・フォン・ルビティアはギーシュ様とモンモランシー様に永久に続く友情を貫くことを」 こうして誓約は終わり、三人は固く友情を結んで別れた。 別れ際に、モンモランシーはルビアナに「ギーシュ様をよろしく」と頼まれ、「当然よ」と言い返した。 遠ざかっていくルビアナの馬車を見送りながら、ギーシュとモンモランシーは思った。 いい人だった。そして、すごい人だった……できるなら、あんな大人になりたいものだ。と。 また会える日はいつ来るだろうか? ふたりの胸を、寂しい風が吹き抜けていった。 だが、事態は収束したが、謎はまだ残っている。 空から一部始終を見守っていた宇宙人は、この園遊会で集まったマイナスエネルギーの塊を手にしながらも釈然としない様子でつぶやいていた。 「『妬み』のエネルギー、確かに頂戴いたしました。しかし、いったい何者がブラックキングを改造したのでしょう……ブラックキングが地中に潜ってから出てくるまで、ほんの数十分……そんな短時間で、ブラックキングを改造できるほどの技術を持った者が、まだハルケギニアにいるというのですか? それに、なんの目的で……? 一体何者が……まさか……これは、遊んでいてはまずいかもしれませんね」 ハルケギニアで起きている異変の元凶の宇宙人。しかしこの宇宙人も、ハルケギニアのすべてを知り尽くしているわけではない。 深淵のように美しく純粋で底のない邪悪との邂逅が、すぐそこに迫っていることをまだ誰も知らない。 ハルケギニアの戦士たちとウルトラマンたちを翻弄する、短いが熾烈な戦いが、もう間もなく始まる。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9084.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第二十三話「ラグドリアン湖のひみつ(前編)」 水棲怪人テペト星人 カッパ怪獣テペト 登場 トリステインの戦勝のお祝いから、数日後のこと。才人とルイズ、それからギーシュと、 金色の巻き毛の少女の四人は、トリステインとガリアとの国境にあるラグドリアン湖にやってきた。 才人の乗っている馬にはルイズも跨っており、才人の胸元にギュッとしがみついている。 「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやぁ、なんとも綺麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか! 感激だ! ヤッホー! ホホホホ!」 一人旅行気分のギーシュが馬に拍車をいれ、わめきながら丘を駆け下りた。 馬は水を怖がり、波打ち際で急に止まった。慣性の法則で、ギーシュは馬上から投げ出されて 湖に頭から飛び込んだ。 「背が立たない! 背が! 背ぇええええがぁああああああッ!」 ばしゃばしゃとギーシュは必死の形相で助けを求めている。どうやら泳げないらしい。 「やっぱりつきあいを考えたほうがいいかしら」 金色の巻き毛の少女、魔法学院の生徒の一人、通称『香水』のモンモランシーが呟いた。 「そうしたほうがいいな」 才人が相槌をうった。するとルイズが心配そうな顔で、非常にしおらしい仕草で才人を見上げる。 「モンモランシーがいいの?」 「そ、そういうわけじゃねえよ。待ってろ。すぐに元のお前に戻してやるからな」 冷や汗をかきながら、才人は普段の気の強い彼女とは真逆のルイズに弁明した。 どうして才人たちがラグドリアン湖にいるのか、そして何故ルイズの性格がおかしくなっているのか。 それには長い長い、同時に馬鹿らしい経緯がある。 そもそもの事の発端は、才人が露店で水兵服を購入したことだ。ハルケギニアでは兵士の 制服というだけの服だが、日本人の才人の常識からすると、セーラー服は女子学生の着るものなのだ。 そして同時に、男心をやらしい感じに興奮させるものでもある。それを才人は、シエスタに頼んで 日本のものに近いように仕立て直してもらい、そのまま彼女に着てもらった。シエスタを選んだのは、 比較的日本人顔なので、周囲の人間の中では一番似合うと思ったからだった。 果たして、セーラー服はシエスタにとても似合っていた。着こなした彼女の姿に才人は、 郷愁の念もあり、やばい感じに大興奮した。……と、これで終わっていればマシだったのだが、 この場面をギーシュとマリコルヌの二人に見られたことから話はおかしな方向へ突き進んでいく。 この二人もシエスタのセーラー服姿に目を奪われ、このことをルイズに話すと才人を脅して 予備のセーラー服を譲らせたのだ。そしてギーシュの方は、一度フラれてヨリを戻したいと 思っているモンモランシーにそれを送った。下心が見え見えの贈りものだったが、意外にも モンモランシーは悪いようには思わず、教室にまで着てきた。それを見たルイズは、すぐに 才人の買ったものだと気づき、どうしてモンモランシーが着ているのか訝しんだ。 これに焦ったのは才人だ。モンモランシーからたどられて、シエスタにセーラー服を着せて 楽しんでいたことが知られれば、彼女のことだ、怒り狂ってまたひどい目に遭わされるに違いない。 才人は証拠抹消のために、その日の内にシエスタからセーラー服を返してもらうことにした。 だがその時には既に遅かった。才人の様子がおかしいことにすぐに気がついたルイズは、 姿をくらました才人を探す内に、マリコルヌが自分でセーラー服を着て、映ったものを 正反対の姿で映すマジックアイテム『嘘つきの鏡』で楽しんでいる現場を押さえた。 そして彼から、真相を聞き出してしまったのだ。 そして才人が一番恐れていた時がやってくる。セーラー服の引き取りに向かった才人の下へ やってきたのは、彼との逢い引きと勘違いしてセーラー服を着てきてしまったシエスタだった。 そしてその現場には、ルイズが待ち伏せをしていた。完全に才人とシエスタの関係を誤解した彼女は、 殺意すら抱いて必死に逃げる才人を追いかけ始めた。 この後が重要な点である。才人は、連れ込んだギーシュをある罠に掛けようとしている モンモランシーの部屋に逃げ込んだのだ。すぐに追いついたルイズは、怒りによる喉の渇きを その場にあったワインで潤してから、いよいよ才人を追い詰めたのだが、その時に異常が発生した。 何と、ルイズの怒りが急激に消え去り、代わりに才人への尽きることのない好意が湧いて、 彼にベッタリになってしまったのだ。 才人は助かったことを喜ぶより、不自然に態度が急変したルイズを怪しんだ。そしてその原因を調べると、 すぐにモンモランシーに行き着いた。何とあの時モンモランシーは、極度の浮気性に手を焼かされる ギーシュを自分の虜にするために、ワインに違法の強力な惚れ薬を混ぜて飲ませようとしていたのだ。 それをルイズが飲んでしまったという訳だ。 すぐにルイズを元に戻したいと考えた才人は、モンモランシーを半ば脅迫して解除薬を 作らせることにした。だが、ここでまたも問題が一つ発生した。解除薬に必要な材料の一つ、 ラグドリアン湖の水の精霊の涙が売り切れで、再入荷も絶望的な状態らしい。何でも、 精霊との連絡が取れなくなったとか。だが才人は諦めなかった。待っても再入荷されないなら、 こっちからもらいに行けばいい。 こうして、才人とモンモランシー、そしてついてきたギーシュと才人から離れようとしない ルイズの四人は、はるばるラグドリアン湖へやってきたのだった。 ……ちなみにこの一部始終を、ゼロは心底呆れ返りながら傍観していた。 「サイトぉ~」 ルイズは相変わらずの調子で、猫のようにゴロゴロ喉を鳴らして才人に甘えている。 男冥利に尽きる状況だが、才人はげんなりとしている。 「……やっぱり早く元に戻さないとな。こんな調子で四六時中くっつかれてたら、俺の身体が持たねえや」 『そうだな。このまんまじゃ俺も、怪獣退治の任務を果たせないぜ』 才人の独白に相槌を打つゼロ。何せ、ルイズが片時も才人を離そうとしないので、変身して 怪獣との戦いに赴くことが出来ないのだ。現にここに至るまでに一度怪獣が出現したのだが、 その時も聞き分けのなくなったルイズに捕まってしまったので、グレンファイヤー探しで忙しい ミラーナイトに代わりに出動してもらう羽目になった。ミラーナイトからも現状を呆れられてしまった。 才人とゼロがルイズを元に戻す意志を固めていると、びしょ濡れのギーシュそっちのけで 湖面を見つめていたモンモランシーが、首をひねった。 「ヘンね」 「どうした? どこがヘンなんだ?」 才人が聞き返すと、モンモランシーがラグドリアン湖の異常を説明する。 「水位があがってるわ。昔、ラグドリアン湖の岸辺は、ずっと向こうだったはずよ」 「ほんと?」 「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」 モンモランシーが指差した先に、藁葺きの屋根が見えた。才人は、澄んだ水面の下に黒黒と 家が沈んでいることに気づいた。モンモランシーは波打ち際に近づくと、水に指をかざして 目をつむった。 モンモランシーはしばらくしてから立ち上がり、困ったように首をかしげた。 「おかしいわ。水の精霊の気配を感じない」 「そんなのわかるのか?」 「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。このラグドリアン湖に住む水の精霊と、 トリステイン王家は旧い盟約で結ばれているの。その際の交渉役を、『水』のモンモランシ家は 何代もつとめてきたわ」 「今は?」 「今は、いろいろあって、他の貴族がつとめているわ。ともかく、そういう訳で、わたしは 水の精霊の気配を感じることが出来る。……そのはずなのに、今は何も感じないわ。 どういうことなのかしら……」 モンモランシーが訝しんでいると、木陰に隠れていたらしい老農夫が一人、一行の元へとやってきた。 「もし、旦那さま。貴族の旦那さまがたは、もしや、人さらいの亜人どもを退治しに参られたかたがたで?」 「えッ! それ、何の話? ラグドリアン湖に何が起きてるの?」 いきなり物騒な話をされて驚く一行を代表して、モンモランシーが問い返した。農夫は違うことを 悟ると深く落ち込んだが、それでも事情を教えてくれた。 「まず二年ほど前から、増水が始まったんでさ。ゆっくりと水は増え、今ではわしの屋敷まで沈んじまった。 けど今思えば、それはまだましな方でしたわ。ここ最近は、それに加えて、湖の周辺で見たことのない姿の 亜人が夜中に目撃されるようになったんでさ。それと同時に、村の人間が少しずつ消えてくようになったんですよ。 きっと、その亜人どもの仕業に違いねえ。それなのに、領主さまも女王さまも、今はアルビオンとの戦争に かかりっきりで、こんな辺境の村など相手にもしてくれませんわい。わしらはいっそのこと、村を捨てるべきかと 本気で考えてる次第です」 よよよ、と老農夫は泣き崩れた。彼の話の深刻さに、才人たちは同情を寄せる。 「その見たことのない亜人とは、どんな姿なのかね?」 ギーシュが尋ねると、農夫が身振り手振りを入れつつ説明する。 「わしが見た訳じゃないんですけど、何でも頭のてっぺんが皿でも乗っけてるように平らで、 口は鳥のくちばしのようにとんがってるそうです。しかも、魚のように水の中で生きてるみてえで。 湖の中から這い出てきたとこを見たという奴が何人もおりますわ。水の精霊は、どうしてそんな連中を 湖に住まわせたのやら……」 農夫の証言を聞いて、才人が呟く。 「丸で河童だな」 「カッパ?」 河童を知るはずがないギーシュらが聞き返すと、才人が説明を挟んだ。 「俺の故郷に伝わる……まあ、亜人みたいなもんさ」 「ふぅん? 案外、それが正体だったりしてね」 「まさか。サイトの故郷ってはるか東のロバ・アル・カリイレなんでしょ? そこの生き物が、 トリステインにいる訳ないわ」 話し合っても、亜人の正体はさっぱり分からなかった。それから、農夫が落胆して去っていったあとで、 モンモランシーが腰にさげた袋からなにかを取り出した。それは一匹のカエルであった。鮮やかな黄色に、 黒い斑点がいくつも散っている。 「カエル!」 カエルが嫌いなルイズが悲鳴をあげて、才人に寄り添う。 「なんだよその毒々しい色のカエルは」 「毒々しいなんていわないで! この子はロビンって言って、わたしの大事な使い魔なんだから!」 モンモランシーはカエルを湖の中に入れ、水の精霊を探しに行かせる。だがしばらくした後に、 モンモランシーの下へ戻ってきた。カエルからの報告に、顔をしかめる。 「やっぱり、湖のどこにもいないみたい。どこかの貴族に連れられて、別の場所に行ってるだけなら いいんだけど……この異常な状況じゃ、その線は薄いわね。きっと、何か訳があって身を隠してるんだわ……」 「さっきの人が言ってた亜人ってのが関係してそうだな」 推測した才人は、次のことを提案する。 「その亜人って、夜になると現れるんだったな。じゃあ夜を待って、そいつを捕まえようじゃないか。 きっと水の精霊の手掛かりが掴めるはずだ」 「それ、本気で言ってるのかね!? ぼくは手荒なことは、その、あまりしたくないぞ。危険だし……」 怖気づいて尻込みするギーシュだが、モンモランシーは対照的に意気込む。 「わたしはやるわ。元とはいえ、わたしは水の精霊との交渉役のモンモランシ家に連なる身。 水の精霊の異常を見過ごす訳にはいかない」 「うッ、モンモランシーはやるのか。だったら、ぼくがやらない訳にはいかないな。愛しい モンモランシーを残して学院には帰れないよ……」 まだ怖がっているものの、ギーシュが意見を翻した。 「ギーシュ、わたしのために……」 「当然さ、モンモランシー……」 「はいはい。そういうのは終わってからにしてくれ」 見つめ合って二人の世界に入ろうとするギーシュとモンモランシーを、才人が現実に引き戻した。 そして才人たち一行は、夜になると、湖の岸辺の木陰に隠れ、亜人とかいうものが現れるのを待ち受けた。 「地元の人の話じゃ、この辺りでよく目撃されるみたいだ。どんな顔してるか知らないが、 出てきたらすぐにとっ捕まえてやるぜ」 才人は既にデルフリンガーを抜き、木陰からわずかに顔を覗かせて、岸辺をじっと見張っている。 その背中には、相変わらずルイズがピッタリ張りついていた。 「わたしは戦いなんて出来ないから、捕獲はあなたたちに任せたわよ」 「安心してくれモンモランシー。ぼくの勇敢な戦乙女たちが、亜人なんぞ簡単にひねり上げてくれるさ」 モンモランシー相手に見栄を張っているギーシュだが、恐怖心がなくなった訳ではなく、 脚はガクガク震えていた。それを紛らわすためにワインをあおっていて、顔が赤い。これで本当に 使い物になるのかと、才人は若干不安だった。 そうしていると、デルフリンガーが声を上げた。 「相棒、誰かやってきたぜ」 「亜人か!?」 「ローブをすっぽり被ってるから、そこまでは分かんねえな」 才人が岸辺を確認すると、確かに、デルフリンガーの証言通りの人影が現れていた。人数は二人で、 随分身長に差がある。 亜人でなくとも、既に地元の人間は誰も寄りつかなくなったこの場所にやってくるとは、 ただ者ではないはず。一体誰だ、と思っていると、ゼロが不意に告げた。 『あいつら、キュルケとタバサじゃねぇか』 「え?」 思わず目を見張った才人は、ルイズをどうにかなだめて自分から離し、木陰から出てそっと 人影に近づいていった。そして名前を呼ぶ。 「おい、キュルケ! タバサ!」 「えッ!? その声はダーリン!」 振り返った二人組は、目深に被ったフードを取り払った。その下からは、よく見知った顔が出てくる。 ゼロの言った通り、キュルケとタバサだった。 「お前ら、どうしてこんな場所にいるんだ!」 「そっちこそ、どうしてこんなところにいるのよ? ここ、ガリアの領地よ」 才人とキュルケは互いに同じ質問をした。するとそこに、木陰に待たせていたルイズが 才人へと走り寄ってきて、悲しそうにパーカーの袖を引っ張った。 「キュルケがいいの?」 「だから違うって! ややこしくなるから、お前はちょっと黙っててくれ」 ギーシュとモンモランシーも才人たちの下へやってくる中、キュルケはぽかんと今のルイズを見つめた。 そして才人に聞く。 「いつのまにルイズを手なずけたの?」 「いや、そうじゃねえから」 才人はキュルケたちに、ここまでの経緯を説明した。 「なるほど、モンモランシーのせいでこんなことに……。まったく、自分の魅力に自信のない女って、最低ね」 「うっさいわね! しかたないじゃない! このギーシュったら浮気ばっかりするんだから! 惚れ薬でも飲まなきゃ病気が治らないの!」 「もとを辿れば、ぼくのせいなのか? うーむ」 モンモランシーとギーシュのコントは置いて、今度は才人が質問する番になる。 「それでそっちは、どういう理由でここにいるんだ?」 聞かれて、キュルケは困ってしまった。彼女はタバサの事情を知っているのだが、それは 才人たちに教えるのは憚られる内容なのだ。それで無難な説明をする。 「そ、その、タバサのご実家に頼まれたのよ。この辺に出る亜人が、タバサの実家の領地に 被害を出してるから、退治を頼まれたってわけ」 「お前たちも同じような目的だったのか」 納得した才人は、周辺に目を配る。 「それで、問題の亜人は今どこに……」 と噂したからなのか、周辺の草むらがいきなり、ガサッと音を立てて揺れた。 「きゃあッ!? な、何!? 誰かいるの!?」 モンモランシーが脅えて大声を出したが、草むらからは何も出てこない。だがその代わり、 森の中で黒い影が頻繁に動き回るところが目に入る。 「な、何者だあ!? か、か、隠れてないで出てこい! 卑怯者めぇ!」 半狂乱になってガチガチ歯を鳴らすギーシュが、小刻みに震える手で杖を握り締めて叫んだ。 恐怖に打ち震えるギーシュとモンモランシーを尻目に、タバサが才人とキュルケに囁きかける。 「気をつけて。囲まれてる」 「えッ!?」 「相棒、後ろだ!」 突然デルフリンガーが叫んだ。それと同時に、人間に似た影が湖面から飛び出し、才人たちに 襲い掛かってきた! 「きゃあああッ!」 悲鳴を上げるルイズ。だが素早く反応した才人が振り向き様にデルフリンガーを振るったことで、 影はバッサリ斬られて仰向けに倒れた。 「うわッ!? 河童!」 影の正体を見た才人が叫んだ。口元は鳥のもののようにとがり、四本指の間に水かきを持った容貌は、 河童そのものだったのだ。 しかしそれを、ゼロが否定した。 『こいつは亜人でも、ましてや河童でもねぇ! テペト星人だ!』 「えッ!? テペト星人だって!?」 すぐに才人が通信端末で検索すると、今目の前にいる怪人と全く同じ姿の宇宙人が引っ掛かった。 ラグドリアン湖の亜人の正体は、侵略者テペト星人だったのだ。 「カァ――――――――!」 仲間の一人の後に続くかのように、湖や森の中から、大量のテペト星人が飛び出てきて 才人たちに押し寄せてきた。 「きゃああああ! た、たくさん来たぁ!」 「お、おのれ! モンモランシーには手出しさせないぞ!」 モンモランシーが悲鳴を上げると、ギーシュがなけなしの勇気を奮い立たせた。青銅のワルキューレを 作り出して、テペト星人の軍団を迎撃する。 キュルケとタバサはすぐに攻撃を仕掛けた。火炎球と氷の矢を放ち、迫るテペト星人を片っ端から薙ぎ倒す。 「おらぁッ!」 才人も、今は震えるばかりのルイズをかばい、テペト星人をばっさばっさと斬り伏せる。 突然の襲撃に度肝を抜かれた一行だが、驚いていたのは一瞬だけで、テペト星人を次から次へと 返り討ちにしていった。特にキュルケとタバサのコンビが最も敵を倒した。二人の連携は見事で、 一方が呪文を唱えている間に、もう片方が攻撃魔法を放ち続けることで、全く隙を作らなかった。 「こいつら、アルビオンに出てきた連中より、はるかに弱いわね」 自分たちに手出し出来ないでやられていくテペト星人に対して、キュルケが余裕ぶって評した。 確かに、テペト星人は特筆するような戦闘能力を持たず、巨大化することも出来ない。 かつて地球に侵入した者たちも、ウルトラ警備隊が生身で難なく撃退したほどだ。 だが、敵もわざわざやられるためにやってくるのではない。ブラック星人がスノーゴンを 手元に置いていたように、戦闘力のない侵略者は往々にして、代わりの戦力を所持している ものであることを才人は知っていた。 「! 見て!」 「な、何あれ!? でっかい卵!?」 果たして、テペト星人との交戦中に、ラグドリアン湖の中央に途轍もなく巨大な卵が浮かび上がってきた。 タバサとキュルケが見ている中で卵はすぐにひび割れ、中から巨大怪獣が現れる。 「キャ――――――――!」 卵の中から出現した、一つ目で頭頂部が皿の形状になっている、これまた河童そっくりな怪獣こそ、 テペト星人の用心棒で、彼らの住む星の名前を与えられた大怪獣、テペトであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1250.html
前ページ次ページとある魔術の使い魔と主 「なっ……待て待て、どういうことなんだ?」 「だから言ったじゃない。作れないのよ」 次の日の夕方、当麻は解除薬を貰おうとモンモランシーの部屋に再び訪れた。 ちなみに、今日はシエスタと会っていない。当麻にとって、あそこはあかずの間に見事認定されたのだ。 これでやっとシエスタが解放されるなー、と思いながらドアを開いたのだが、現実はそう甘くない。 ギーシュは隣で残念そうな表情を浮かべて黙っている。そして、モンモランシーが今日の一日を簡潔に説明した。 「仕方ないじゃない。秘薬が売り切れてたんだもの」 「そんなんありっすか!? てかいつごろ手に入るんだ?」 「それがもう、入荷が絶望的なの」 淡い期待をことごとく裏切られ、当麻は深いため息を吐いた。 (なんでこうなっちゃうんですか!? まるで治しちゃいけないような展開……。あー、久しぶりに言いますよこれ。さんはい、不幸だー) 体をぐったりと机に預ける。魂が抜けてしまいそうな脱力感であった。 その様子に少し罪悪感を感じたのか、モンモランシーは詳しい話を付け加えた。 「その秘薬ってのはね、ガリアとの国境にあるラグドリアン湖に住んでる水の精霊の涙なの」 「なんですか、そのファンタジー要素満載のアイテムは」 聞き慣れない言葉に、モンモランシーは首を傾げる。 「? とにかく、その水の精霊たちと最近連絡が取れなくなっちゃったらしいの」 打つ手がないとお手上げポーズをとり、さらにはギーシュも既に諦めている。 「ったく、本当にツイてねーな」 当麻は再びため息を吐きながらも、一人決心して立ち上がった。二人の視線が集まる。 「どうするのよ」 「仕方ない。こちらから行って貰うしかないだら」 「ええええ! 正気? 水の精霊は滅多に人前に姿をあらわさないし、ものすごーく強いのよ。怒らせでもしたら大変よ!」 「ん~、怒らせなければいいだけの話じゃねえか? それにほら、魂の高速ボディランゲージでもすればきっと向こうも出てくるさ」 「だとしても! わたしは行かないんだから! 学校も休むわけにはいかないんだから」 ふん! とそっぽを向くモンモランシーに、当麻はピキリと頭の中で音がした。 「つかあんたがそんなもんを使うからこーなったんでしょーが! ルイズが元に戻るまでちゃんと責任を負いなさいッ!」 「な……勝手に飲んだのはルイズでしょ! わたしは悪くないわ」 「だったらこのことをアンリエッタ女王陛下にお伝えしちゃいますよ!」 グッ、とモンモランシーが言葉に詰まる。 惚れ薬は作られる事を禁じられている。それを、あろう事か女王陛下に伝えられたら人生は間違いなく悪い方向に変わっていく。 つまりは、まだ捕まりたくはないモンモランシーであったのだ。 「わ、わかったわよ……。行けばいいんでしょ、行けば!」 最悪ー……、とうなだれるモンモランシーに、ギーシュは手を肩に乗せた。 「安心してくれ恋人よ。ぼくがついているじゃないか」 「あんたよわっちいし、正直気休めにもならないわ」 そういってギーシュの手をどける。この二人、恋人として大丈夫なのだろうか? と当麻は自分の身ではないのに不安を覚えた。 その後、三人は出発の打ち合わせを始めた。 学校の事もあるので、早く行って早く帰ろうという話になり、出発は明日の朝となった。 シエスタとルイズは留守番である。当麻を敵と見なしているので、おそらく共に行動できないからだ。 はぁ、サボりなんて初めてだわ、とモンモランシーが思わず呟く。 「なあに、サボりなんてすぐに慣れてしまうさ! あっはっはっ」 「俺なんて夏休みじゃなかったら一週間以上休むことぐらい余裕であったぜ」 一方の二人は、全くと言っていい程気にしていなかった。 「凄いなキミは! いつの間にこんな竜を従えてたんだね!」 「あなた……何者なの?」 二人は別々の感想を述べる。当麻はそれに対してハハハと、苦笑いをこぼした。彼の左手のルーンは光輝いている。 そう、当麻とギーシュとモンモランシーは風竜の背中に乗っているのだ。馬より早く目的地に辿り着けるのがポイントである。 タルブ村での戦闘で、当麻はワルドの乗っていた風竜を左手のルーンの力で従えたのだ。本来なら手放す予定であったのだが、なぜか懐かれてしまい、こうして飼っているのである。 しかし、飼っていると言っても基本は放し飼い、こうして必要な時に当麻が口笛を使って呼ぶのであった。 「あれがラグドリアン湖よ」 しばらく時間が経ち、モンモランシーが指差した。二人がそちらに視線をやる。 そこには、太陽の光りがキラキラと輝いている大きな湖が一面と広がっていた。 おぉ~、と二人は感想を口にする。ここが目的地であるのだと理解した風竜は、丘の上へと降り立った。 「これがラグドリアン湖か! いやぁなんとも綺麗な湖だ! ここに水の精霊がいるのか! 感激だ! ヤッホー――!」 地面の感触を得たギーシュは、叫びながら丘を駆け降りていった。 一人、旅行の気分を味わっているギーシュは、ぐんぐんと加速していく。しかし、勢いをつけたスピードはそう簡単に止まるわけがない。 案の定、そのまま湖へと足からダイビングした。 「背が立たない! 背が! 背がぁぁぁあああぁぁあああああッ!」 泳げないのか、必死に手足を激しく動かしている。バシャッバシャッ、と水しぶきが綺麗であった。 「やっぱりもう少し考えたほうがいいかしら?」 モンモランシーの悩みに『俺もそう思うぜ』と言いたいのか、風竜が鳴く。 「まああいつにもいいところはあんだろ……」 さすがの当麻もこれにはなんて言葉をかければいいかわからなかった。 風竜と別れを告げた二人は、ゆっくりと波打ち際まで近づいた。 同時、ギーシュも岸辺にたどり着く。必死に泳いだのか、ゼーハーゼーハーと激しく呼吸をする。 「き、きみたちはなんでほっとくんだ! 泳げないぼくを見捨てないでくれよ!」 ギーシュの必死の叫びも、右から左へと流したモンモランシーはじっと湖面を見つめた。哀れみの意味も含めて、当麻はポンと肩に手を当てた。 好きな子にあっさりとスルーされたギーシュは、燃え尽きたようにその場で崩れてしまった。 「うぅぅううぅぅうう。トウマ! キミだけがぼくの味―――」 「ヘンね」 「どうした?」 モンモランシーの疑問に、当麻は耳を傾け、そばに向かう。 「水位があがってるわ。昔、ラグドリアン湖の岸辺はずっと向こうだったはずよ」 「そんな上がるのか? 見間違いとかじゃねえのか?」 「そんなことないわ。ほら、あそこに屋根が出てるわ」 当麻はそっちの方を向くと、たしかにそこには藁葺きの屋根が見えた。さらによく見ると、澄んだ水面の下に家が沈んでいることに気付いた。ダムに沈んだ村という単語が思い出される。 モンモランシーは水に指をかざして目をつむった。 その間、当麻はギーシュが気になり後ろを振り返る。 そこには、 体育座りでいじけているギーシュの姿があった。 地面にひたすら指でなにか文字を書いている。おまけに、「みんな……みんな……ぼくに扱いが酷いよ」と、呟いているのが余計に怖い。 しばらく放っておくか、と思い再びモンモランシーへと視線を向ける。 「水の精霊はどうやら怒っているようね」 既に目を開けて、困ったような口調で言った。 「それだけでわかるのか?」 「わたしは『水』の使い手、香水のモンモランシーよ。ここの水の精霊と、トリステイン王家は旧い盟約で結ばれているの。その際の交渉役を、モンモランシ家は何代もつとめてきたわ」 「つとめてきた?」 「えぇ……今はいろいろあって他の貴族がつとめているわ」 モンモランシーの口調が少し重くなった。おそらく、あまりよろしくない出来事があったのだろう。 変に蒸し返すのもどうかと思ったのか、当麻は深く追求しない事にした。 「あれか? 水の精霊ってこう女性の体なのかやっぱり」 ファンタジーRPGでの水の精霊といえばそういうイメージを当麻が持っている。実際にこの目で見るのはなんか問題が少しありそうだが……。 モンモランシーが口を開こうとしたその時、ギーシュが二人へと飛びかかってきた。 「なんでぼくを無視し続けるんだよぉぉおおぉおお」 いじけてもかまってくれない事に気付き、怒りよりも悲しさが先行した。なんというか、惨めである。 「キャッ」 「ととと……」 ギーシュの全身を使った愛情表現も、モンモランシーは回避する。その際、態勢が崩れたのか、当麻へと体を預けた。当麻もまた、ガシッとモンモランシーの腰に手を回す。 「な、ななななななななな何してんのよッ!」 「ん? いやまあ倒れそうだったからさ……」 ばっしゃーんと再び湖へと突っ込んだギーシュの存在を忘れ、モンモランシーは顔を真っ赤にして、当麻から離れる。 「べ、別に一人でなんとかできたわよッ!」 「ん……いや、そりゃ悪かったな」 なんで怒っているんだろ? と不思議がる当麻をよそに、モンモランシーは必死に高鳴る鼓動を抑える。 一方、 「し、死ぬ! 今度こそ死んでしまうからぁぁああぁああぁあ」 ギーシュの悲痛な叫びに当麻は、頑張れ、と応援した。 ギーシュはずぶ濡れとなったシャツを脱ぎ、扇いで乾かしている。あまりの落ち込み具合に、モンモランシーも一応は謝ったが、効果ははたしてあったのだろうか? そうこうしている内に、かなり時間が経っていた。当麻は早く水の精霊を見てみたい様子である。 すると、そんな当麻に気付いたのか、モンモランシーは腰にさげていた袋から一匹のカエルを取り出した。鮮やかな黄色に、黒い斑点がいくつも散っている。 「それがあんたの使い魔か?」 モンモランシーの手の平にちょこんとのっかって、命令を待つ姿は使い魔にしか見えない。 当麻の問いにえぇと頷くと、人差し指を立てた。 「いい? ロビン。あなたたちの古いおともだちと連絡が取りたいの」 そういって、モンモランシーは手に持った針で指の先をついた。ぷくーと風船のように赤い血が膨れ上がる。その血をカエルに付着させた。 それからすぐに、モンモランシーは魔法を使って傷の治療をする。瞬く間に傷は塞がり、皮膚に残った血をぺろっと舐めた。 「覚えていればわたしのことがわかるわ。じゃあロビンお願いね。偉い精霊、旧き水の精霊を見つけて盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだい。わかった?」 カエルは肯定の意をこめて、ピョンと湖の中へと消えていった。 「ロビンが水の精霊を呼びに行ったわ。見つかったら連れてきてくれるでしょう」 「ずいぶんと簡単じゃないか」 「呼ぶことだけは、ね。問題は水の精霊が涙を渡してくれるかの話なんだけど……」 瞬間、水面が突如光だした。 なんとも早い、水の精霊のお出ましであった。 前ページ次ページとある魔術の使い魔と主
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/5479.html
ジャン=ジャック・ルソー ■ クチコミ検索 #bf ■ ブログ2 #blogsearch2 ■ ニュース1 「自分のため」と「みんなのため」の両立—西 研さんが読む、ルソー『エミール』#1【NHK100分de名著ブックス一挙公開】 - NHK出版 モンモランシーのジャン=ジャック・ルソー美術館でのヘリテージ・デイズ2024 (95) - Sortiraparis 著作が“炎上”した「ルソー」はどうしたか? すべて「陰謀」のせいにして開き直る…散歩中の思いを書き留めた一冊が面白い!(レビュー)(Book Bang) - Yahoo!ニュース 歯に衣着せぬ発言で人気 元明石市長の泉房穂さんが「ルソー」を語るワケ - アエラドット 朝日新聞出版 歯に衣着せぬ発言で人気 元明石市長の泉房穂さんが「ルソー」を語るワケ(AERA dot.) - goo.ne.jp 沖縄のチャンプ本「人間不平等起源論」、小禄の宮里さん - 読売新聞教育ネットワーク モンモランシーのジャン=ジャック・ルソー美術館(95)で開催されるミュージアム・ナイト2024:プログラム。 - Sortiraparis 欠けたルソーの「一般意志」 日本版DMAへの疑問 - 日本経済新聞 『ルソーからの問い、ルソーへの問い 実存と補完のはざまで』熊谷英人著 - 読売新聞オンライン 生誕300周年のアダム・スミスから見る現代のビジネス 石井泰幸 - 週刊エコノミスト Online 人の厚意を踏みにじり、社会を捨てた「ふり」をし、富裕な庇護者に住まわせてもらう……あの大思想家の「奇妙な行動理念」 - 現代ビジネス ピケティとともに読むべき「古典的名著」は、「審査対象外論文」だった(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 「売れない青春時代」はみんな必死……あの「超有名哲学者」の「なかなかの黒歴史」(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 「愛の大理論家」と言われる男の「不可解な現実生活」……子を捨て、「伴侶」に生涯恋をしなかった「真意」(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 自分の子5人を孤児院に捨て、暴露趣味の自意識過剰……「近代の父」と称えられる男の「不可解な正体」(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 桑瀬 章二郎 SHOJIRO KUWASE | 現代新書 - 現代ビジネス ジャン=ジャック・ルソー美術館でのサビーヌ・ピガールによるユーモラスな展覧会「Citations & Renaissances - Sortiraparis モンモランシ家の歴史:ジャン=ジャック・ルソー美術館の歴史展 - Sortiraparis 不登校が「過去最多」哲学者は「不登校が増えている状況」をどう見るのか。 - 現代ビジネス 「ケーキを食べればいいじゃない」はデマ? 実は節約家だったマリー・アントワネットの“夕食会メニュー”を再現 - 文春オンライン コラム「ルソーの思想とEBPM」 - 経済産業研究所 「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」 - fumufumu news MSCHF が世界の富豪を象ったアイスキャンディーを販売中 - HYPEBEAST 鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト火曜日! #1290レポート - 文化放送 A&G 【出口学長・日本人が最も苦手とする哲学と宗教GW特別講義】日本人が知らない!孟子の「易姓革命論」とルソーの「社会契約説」の共通点とは? - ダイヤモンド・オンライン 戦争と憲法 何を守るのか、それが問題だ 早稲田大学教授・長谷部恭男 - 好書好日 5時起き、一日一食、生涯独身…哲学者カントの生活が異常なほど規則的だった驚きの理由 - PRESIDENT Online 投票することの意味を問い直す ~民主主義社会における選挙との付き合い方~ - 東大新聞オンライン 現代のギリシアたらんとする台湾 生まれ変わった「東洋のルソー」蔡英文総統が自身の思想を表明 - The Liberty Web 【三森すずこ・小原好美さんも!】6月28日がお誕生日の声優さんは? - アニメージュプラス 欲求のまま与えるなら 子供は確実に不幸になる 鹿間孝一 - 産経ニュース ルソーの故郷からインターネットを統治 - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ 自然への愛、そして尽きせぬ情熱|ちくま学芸文庫|木村 陽二郎 - webちくま あとがきたちよみ 『ルソーの戦争/平和論』 - けいそうビブリオフィル 新型コロナは自然からの警告なのか─災禍にたいする象徴的解釈が意味するもの - courrier.jp ルソーだったら…「安倍政権をどう批判する?」と考えてみる | 「民主主義の危機」時代に読み直すルソー(前) - courrier.jp 11月16日 フランスの哲学者ダランベールが生まれる(1717年)(ブルーバックス編集部) - 現代ビジネス 億男、ある日突然「3億円」が手に入ったら ? お金の名言10選 | マネー | おすすめコラム - 大和ネクスト銀行 『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』で新しい未来をはじめるための第一歩を踏み出す - HONZ 青年との語らい - 公明党 ジャン=ジャック・ルソーが暮らしたモンモランシーの家・博物館 - OVNI 森直人の『未来よ こんにちは』評:哲学教師ナタリーが示す、ままならない人生のやり過ごし方 - Real Sound クリスチャン ルブタン クラシックモデルの新たなエレガンス|Christian Louboutin - Web Magazine OPENERS クリス・マーティン、元妻グウィネス似の恋人と交際! - MOVIE WALKER PRESS じわじわおかしい国王と思想家の交流『ヴォルテール、ただいま参上!』 - ガジェット通信 Vacheron Constantin|2011年S.I.H.H.速報! - Web Magazine OPENERS Christian Louboutin|旗艦店「クリスチャン ルブタン 青山」がオープン - Web Magazine OPENERS 「ジャン=ジャック・ルソーの政治哲学」書評 意外なほど現代的な思想家 - 好書好日 2013/8/11 ルソーについて学ぼう!ゆめぽーとライブ第14弾 - 小樽商科大学 「レマンコリア展」、レマン湖の風景と文化をテーマに - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ ルソーを癒した島 - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ 世界的思想家ルソー、生誕300年 - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ 東浩紀「一般意志2.0」書評 政治の未来図を描き出す想像力 - 好書好日 ■ ニュース2 「自分のため」と「みんなのため」の両立—西 研さんが読む、ルソー『エミール』#1【NHK100分de名著ブックス一挙公開】 - NHK出版 モンモランシーのジャン=ジャック・ルソー美術館でのヘリテージ・デイズ2024 (95) - Sortiraparis 著作が“炎上”した「ルソー」はどうしたか? すべて「陰謀」のせいにして開き直る…散歩中の思いを書き留めた一冊が面白い!(レビュー)(Book Bang) - Yahoo!ニュース 歯に衣着せぬ発言で人気 元明石市長の泉房穂さんが「ルソー」を語るワケ - アエラドット 朝日新聞出版 歯に衣着せぬ発言で人気 元明石市長の泉房穂さんが「ルソー」を語るワケ(AERA dot.) - goo.ne.jp 沖縄のチャンプ本「人間不平等起源論」、小禄の宮里さん - 読売新聞教育ネットワーク モンモランシーのジャン=ジャック・ルソー美術館(95)で開催されるミュージアム・ナイト2024:プログラム。 - Sortiraparis 欠けたルソーの「一般意志」 日本版DMAへの疑問 - 日本経済新聞 『ルソーからの問い、ルソーへの問い 実存と補完のはざまで』熊谷英人著 - 読売新聞オンライン 生誕300周年のアダム・スミスから見る現代のビジネス 石井泰幸 - 週刊エコノミスト Online 人の厚意を踏みにじり、社会を捨てた「ふり」をし、富裕な庇護者に住まわせてもらう……あの大思想家の「奇妙な行動理念」 - 現代ビジネス ピケティとともに読むべき「古典的名著」は、「審査対象外論文」だった(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 「売れない青春時代」はみんな必死……あの「超有名哲学者」の「なかなかの黒歴史」(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 「愛の大理論家」と言われる男の「不可解な現実生活」……子を捨て、「伴侶」に生涯恋をしなかった「真意」(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 自分の子5人を孤児院に捨て、暴露趣味の自意識過剰……「近代の父」と称えられる男の「不可解な正体」(桑瀬 章二郎) - 現代ビジネス 桑瀬 章二郎 SHOJIRO KUWASE | 現代新書 - 現代ビジネス ジャン=ジャック・ルソー美術館でのサビーヌ・ピガールによるユーモラスな展覧会「Citations & Renaissances - Sortiraparis モンモランシ家の歴史:ジャン=ジャック・ルソー美術館の歴史展 - Sortiraparis 不登校が「過去最多」哲学者は「不登校が増えている状況」をどう見るのか。 - 現代ビジネス 「ケーキを食べればいいじゃない」はデマ? 実は節約家だったマリー・アントワネットの“夕食会メニュー”を再現 - 文春オンライン コラム「ルソーの思想とEBPM」 - 経済産業研究所 「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」 - fumufumu news MSCHF が世界の富豪を象ったアイスキャンディーを販売中 - HYPEBEAST 鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト火曜日! #1290レポート - 文化放送 A&G 【出口学長・日本人が最も苦手とする哲学と宗教GW特別講義】日本人が知らない!孟子の「易姓革命論」とルソーの「社会契約説」の共通点とは? - ダイヤモンド・オンライン 戦争と憲法 何を守るのか、それが問題だ 早稲田大学教授・長谷部恭男 - 好書好日 5時起き、一日一食、生涯独身…哲学者カントの生活が異常なほど規則的だった驚きの理由 - PRESIDENT Online 投票することの意味を問い直す ~民主主義社会における選挙との付き合い方~ - 東大新聞オンライン 現代のギリシアたらんとする台湾 生まれ変わった「東洋のルソー」蔡英文総統が自身の思想を表明 - The Liberty Web 【三森すずこ・小原好美さんも!】6月28日がお誕生日の声優さんは? - アニメージュプラス 欲求のまま与えるなら 子供は確実に不幸になる 鹿間孝一 - 産経ニュース ルソーの故郷からインターネットを統治 - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ 自然への愛、そして尽きせぬ情熱|ちくま学芸文庫|木村 陽二郎 - webちくま あとがきたちよみ 『ルソーの戦争/平和論』 - けいそうビブリオフィル 新型コロナは自然からの警告なのか─災禍にたいする象徴的解釈が意味するもの - courrier.jp ルソーだったら…「安倍政権をどう批判する?」と考えてみる | 「民主主義の危機」時代に読み直すルソー(前) - courrier.jp 11月16日 フランスの哲学者ダランベールが生まれる(1717年)(ブルーバックス編集部) - 現代ビジネス 億男、ある日突然「3億円」が手に入ったら ? お金の名言10選 | マネー | おすすめコラム - 大和ネクスト銀行 『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』で新しい未来をはじめるための第一歩を踏み出す - HONZ 青年との語らい - 公明党 ジャン=ジャック・ルソーが暮らしたモンモランシーの家・博物館 - OVNI 森直人の『未来よ こんにちは』評:哲学教師ナタリーが示す、ままならない人生のやり過ごし方 - Real Sound クリスチャン ルブタン クラシックモデルの新たなエレガンス|Christian Louboutin - Web Magazine OPENERS クリス・マーティン、元妻グウィネス似の恋人と交際! - MOVIE WALKER PRESS じわじわおかしい国王と思想家の交流『ヴォルテール、ただいま参上!』 - ガジェット通信 Vacheron Constantin|2011年S.I.H.H.速報! - Web Magazine OPENERS Christian Louboutin|旗艦店「クリスチャン ルブタン 青山」がオープン - Web Magazine OPENERS 「ジャン=ジャック・ルソーの政治哲学」書評 意外なほど現代的な思想家 - 好書好日 2013/8/11 ルソーについて学ぼう!ゆめぽーとライブ第14弾 - 小樽商科大学 「レマンコリア展」、レマン湖の風景と文化をテーマに - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ ルソーを癒した島 - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ 世界的思想家ルソー、生誕300年 - SWI swissinfo.ch - スイスインフォ 東浩紀「一般意志2.0」書評 政治の未来図を描き出す想像力 - 好書好日 ■ テクノラティ検索 #technorati .