約 3,338,585 件
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/281.html
―――左脚部 電気神経切断 ―――――右腕肘部 破損、右小指 破損 状況Dと判断 機体の放棄と自爆を推奨 D-42スラッシュゲイルのコックピット内にあるモニターに機体の状況が表示される。 それは今、自身がどれほど窮地にあるのかを示していた。 左足の電気神経が無理な高度からの着地、そして即座に走るという行動を取ったために機体の脚部に多大な負荷をかけてしまったようだ。 もはやスラッシュゲイルの左足は地面に踏ん張る事すら出来ない、無用の長物に近いものであった。 また、右腕も動かなくなったとまでもいかないまでも大きなダメージ受けている、ワイヤーで機体を引っ張った際、それに直結していた右腕に機体の全体重がかかった為だろう。 無理な動きはさせることは出来ないという事は想像するのに優しかった。 クーガはスラッシュゲイルにムラマサを鞘に刺し込み、それをつっかえ棒のようにして立ち上がらせた。 回りを確認する。 獣種のうめき声を探知する。 どうやら、先ほど切り裂いた、妖魔の前に立ちすくんでいるようだ。 運がいい、そう……まだ運がいい。 もし先ほどの倒れた音で奴がこちらに襲ってきていたらこの機体は間違いなく破壊され、己が殺されていただろうと率直にクーガは思った。 音が聞こえていなかったわけではない。 奴の同胞を既に4体も切り裂いたこの機械人形を妖魔は警戒し、即座に攻撃する事に迷いを生じさせているのだろう・・・。 それに妖魔はまだこの機体が今、多大な損傷を受けている事を知らないはずだ。 どうする?どうすれば長く生き残ることが出来る? もはや機体がこの状況では逃げることすら出来ない。 ならばどうする? クーガは深呼吸した。 熱くなった頭をクールダウンさせるためだ。 そう奴はまだ、この機体がこのような状況だとは知りらず、襲ってこずに慎重になっている。 だが、時間が立てば、奴は何故、1体しかいない自分に先ほどまで猛攻をかけていたこの機体が襲っていないのか?その事実に気づくだろう。 何の対策ももてないままそういう状況になったら終わりだ。 妖魔はただの獣とは違う、高い知能を持ち、その中には人間の辿り着ける境地を遥かに上回ると言われるほどのものもいる。 そんな強敵に立つことすらままならない、この機体でどう立ち向かうというのだ。 それに先ほどから嫌な予感がしている…。 何故、あんなに残りの3体の妖魔は未だ自分を襲いにこないのかだ? 自分を追わず、セイムを追ったのか? それとも、仲間がやられた事で自分に確実なトドメを刺すために新しく仲間を呼びに言ったのか? クーガにはこの悪い2つの予感が先ほどから頭について離れなかった。 前者ならセイムの終わりを意味するだろう。 いくら積み荷がなくなったトレーラーの速度とはいえ、追いつかれずに村に着くことが出来ても、搭乗から起動するまでの時間をもらえるかどうかすら微妙なところだ。 なによりも自身が囮として失敗している事を意味する。 後者ならそれはまた最悪だ、この機体にもはやあれ以上の妖魔と闘うほどの余力は無い。 そうどちらをとっても最悪。 クーガはそのような考えを消すように頭を振る。 どちらにせよこの状況を打開しなければ、どう転ぼうと関係ないのだ。 クーガは考える。 残り7分、あの俺様口調の奴が来る約束の時間まで残り7分もある。 絶体絶命とはこういう事を言うのだろう。 打つ手は無いのかもしれない。 「まだだ・・・」 だが、お前は言ったのだ。 たとえそれが強がりだとしても、あの男に向かって「余裕だ」と そう、それだけ大それた事を言った責任は持たないといけない。 奴がここに駆けつけた時、頑張ったけど死んでいましたじゃなんの意味も無い。 あの男は来るといった。 そう来ると――変に軽い奴で俺様口調を使う奴だが、信頼にたる人物だとクーガは確信していた。 そういう思いに駆られ、クーガは呟く。 「まだまだだ…。」 そう、まだまだだ。 たかが左足が動かなくなっただけじゃないか。 それだけでたかが妖魔に遅れを取るわけにはいかない。 「大体、あいつが俺をみて呆れたらそれこそ腹が立つ!」 残り時間5分 残存する妖魔3体(うち2体は行方がわからず) セイムとの約束の時間まで残り5分、クーガの乗るスラッシュゲイルと一体の獣種と区別される妖魔は死闘はまだ続いていた。 残り時間6分を過ぎた辺りでさすがの妖魔もスラッシュゲイルの様子がおかしいと気づき、攻撃を仕掛けてくることになった。 それに対してクーガがスラッシュゲイルにとらせたのは崖を背にして座り、自分に向かって来る妖魔に向かって横ナギの一閃を放つという待ちの戦法だった。 最初の妖魔の攻撃はこちらの行動に考えが及ばずまっすぐに直進して突撃してきたため、絶好の機会だったが その時、妖魔に警戒心があったため、皮一枚のところで斬撃が回避されてしまった。 それ以降、妖魔はこちらの考えを理解したのか、ゆっくりとこちらの隙をうかがうように見るようになる。 状況は1体1、だからこそ取れる戦法だった。 もし、先ほどと同じく上と左右からの三方向攻めなどを受けたら、今度は対処する事が出来ないだろう。 その為、お互いに動く事が出来ずにいる。 ならば、この状態をあと5分保たせればいい、ただそれだけの事だ。 だが、そうはうまくはいかないのだろう。 先ほどから妖魔は何かを待っているそぶりを見せている。 恐らくは先にあった悪い予感の後者…妖魔達の増援だ…。 その確信めいた考えに辿り着いたとき、クーガは少し安心した。 己が囮としてしっかり役に立てていたという事実にだ。 残るのはあと4分と30秒程度生き残るというだけだ。 手段は0ではない。 だが、非常に危険な手段だ、この機体をそのまま自爆させてしまうような羽目になるかもしれない。 だがやらねばどちらにしろ死ぬ事は明白、ならばやれるだけの事はやった方がいい。 クーガはそう思い、コックピット内のモニターにあるパネルを弄っていた。 この『システム』を使うには厳重なプロテクトがかかっている。 いや、元々はかかっていなかったのだが、このシステムを使うのに必要な第三機関に異常の可能性が示唆されていた為に機体が自動的にプロテクトをかけてしまったのだ。 少し厄介な過程を踏まないとはいけないがプロテクトを解除する事は出来る。 とはいえ機体がこの状況で『システム』を起動させていられるのは8秒が限度だろう。 この『システム』は機体に多大な負荷をかける。 もしそれ以上、の起動をすれば機関が自爆しそのままジャンクになり、その爆発で自分も死ぬだろう。 そもそも第三機関は現在不安定なのだ・・・。 起動した際、その8秒という時間すら関係なく自爆という可能性も0ではない、いや、むしろ高いかもしれない。 プロテクトの解除が終わり、起動コードを入力していく・・・。 残り四分、レーダーが新たな敵影を捉える・・・2、3、4…。 高速で動く生体反応、疑うまでもない増援に駆けつけた妖魔だ。 目の前にいた最期の一体だった、妖魔は吼える。 自身がどこにいるかを示しているのだろう。 奴らは5体揃えば全員で総攻撃を仕掛けてくる。 ならばチャンスはそこだけだ…。 増援で来ていた妖魔がモニターに映った。 翼種が2体に獣種が4体を確認する。 その時、モニターに示される。 ――状況Eと判断 ―この状況を打破できる可能性は0と推定 ―対応――――――――全リミッターを解除 ―あとはあなた次第です、幸運を 最期の一文はあの爺がAIに表示させるために入れたものだろうか? ならばあいつも粋なことAIに刷り込んでおいたものだとクーガは思う。 実の所は機体の状況は状況Eとよばれる最低の状況ほど悪いほどのものでもなかった。 妖魔が迫る。 さきほどからいたのを含め、獣種が5体に翼種が2体…。 獣種と翼種それぞれにコードを振る。 その場での簡単なものだ。 獣種にはA、B、C、D、Eの5つ、翼種にはA、Bの二つ。 クーガは深呼吸をする。 まだ、システムを起動するのは早い。 なにせこのシステムは時間制限付きだ…。 この機体が完全な状態でも15秒以上の稼動は禁止づけられている上、起動後に緊急冷却に入るため、数秒間だけ動きが停止してしまうという大きな弱点付きだ。 この機体の状況ならば8秒も稼動していられれば御の字だろう。 ならば、その8秒に自身の生存を全て賭ける。 セイムには悪いがもうタイムリミットまで待つという事は不可能のようだ。 ゆえにこの状況を打破するのは一つ、こいつらを全て倒すこと…不可能だろうとそれをこなさなければならない。 奇跡…そう奇跡が求められる。 もう一度、クーガは深呼吸をする。 妖魔達が迫る。 あと10秒―― 妖魔達は咆哮をあげる、それは勝利の雄たけびか ――5秒 レバーを握りなおす、冷や汗が流れる ――3秒 焦る思いを必死に繋ぎとめる、まだ早い、まだ早いのだ ―2秒 あと少し、もう少し引き付けて 1秒 ―――――――――――――――コード確認 ―――第三機関フルドライブ 全圧縮エネルギー解放―――― 『Polar Acceleration Mechanism』起動 スラッシュゲイルの肩部分と膝部分が展開する。 大きな蒸気がそこから噴出される。 与えられた時間は8秒、その時間だけこの機体は戦神に祝福される。 そしてそれと同時にスラッシュゲイルは右足で大地を蹴り飛び上がった。 蹴り飛ばした大地が割れた。 残り7秒 空中に舞い上がったスラッシュゲイルは地上にいる自身に襲い掛かろうとしていた翼種Aの一体のいる高さに辿り着く 翼種Aは襲い掛かるために低空飛行をしていたという助けもあり、片足での跳躍でも『PAM』を作動させたスラッシュゲイルはその領域に進入した。 その間、一瞬、出来事に翼種Aは反応できずに呆然とする。 だが、その隙をスラッシュゲイルは逃すわけもなく… 斬魔一閃。 一振りにて翼種Aを斬り捨てた。 残り6秒 もう一体の翼種Bの位置を確認する。 さっき斬り捨てた翼種Aが斬られる瞬間にスラッシュゲイルの存在に気づき、回避行動を取っている。 射程外、もはや、ワイヤークローも無いこの機体にはこのままもう1体の翼種を追撃する術は無い。 ならばとクーガは素早く思考を切り替える。 スラッシュゲイルは地上にいる獣種達に目掛けてムラマサを向けた。 残り5秒 機体から吹き上げた蒸気でスラッシュゲイルを見失った獣種達はその機影を探す。 その内一体、最初からスラッシュゲイルと闘っていた獣種Aは考える。 先ほど、同胞はどのようにして斬殺されたのか? 答えはすぐに出る。 即座に上空を確認する。 そこには先ほどと同じように自身らを狙う奴の姿があった。 それに気づきその獣種Aは吼え、仲間にその存在を知らそうとする。 だがそれも間に合わない、その獣種Aは素早く回避するために飛んだ。 残り4秒 着地の衝撃緩和代わりにスラッシュゲイルは地上にいた獣種Bめがけて振動刀『ムラマサ』で突く。 その攻撃に獣種Bの反応は間に合わずに胴体ごと串刺しにされた。 『ムラマサ』が獣種Bの体を貫き大地に突き刺さる。 機体の全体重を乗せた攻撃の反動の衝撃がスラッシュゲイル自体にも跳ね返り、スラッシュゲイルの右腕がバラバラに吹き飛んだ。 もし機体が万全の状態であったならば、両足を用いた着地もできたが、既に左脚部は機能を停止している。 それゆえに攻撃しながら着地をするにはこの手をとるしかなかった。 獣種Eが自身に向かって来る。 妖魔を貫いたムラマサを引き抜いていては、妖魔の攻撃に対応できない。 ならばとクーガは素早くムラマサで攻撃するという選択肢を捨てる。 牙を向けて襲い掛かる獣種Eの攻撃に対して掌を頭の上に当てた。 当てた、というよりは触れたともいったほうが正しいかもしれない。 その瞬間、妖魔はそのまま痙攣して舌を出したまま、泡を吹いて倒れた。 残り3秒 残る妖魔は4体、残る時間は3秒、猶予はない。 一体に1秒を賭けていては時間が足りないとクーガの細胞が判断する。 ならば駆けろ、一閃で一体で割りに合わない。 ならば一閃で二体を斬ればいい。 ならばそう駆けろ! 左腕を地に着け、右脚部に力を込め、全力で大地を蹴る。 逃げる獣種達にこれで追いつき一振りにて斬り捨てる。 そう思いクーガは機体を操作する。 だが、運命とは残酷なもので… その行動すらクーガには許されることは無かった。 スラッシュゲイルが動きを止める。 それと同時に機体は冷却モードに入る。 「ここまでか……」 ディスプレイに映るのはたった一行の文字列。 ―第三機関、緊急停止―再起動、不可 残り 0秒 ―――そして機体は沈黙した。 シャドウミラージュ・SSに戻る next back
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/271.html
シャドウミラージュ・プロローグ「戦神」 その者は強さを渇望していた。 その者は戦いを愛していた。 その者は勝利に飢えていた。 ゆえに己の命の炎が寿命により燃え尽きると知った時、 自身の命を寿命ではなく戦いの中で散らすことは決して譲れぬ思いであった。 だが彼の強さは既に伝説であり誰も彼に挑んでくる勇者はいなかった。 それゆえに彼は凶行を行う事を決心する。 全ての人間と妖魔を対象とした無差別の虐殺を その中で自分を倒しうるものが現れる事を信じて…。 プロローグ「戦神」 「お母さん、お母さん…。」 「助けて…死にたくないよ…。」 「ああ、太陽と月の神よ、我々をお救いください…。」 それは突然の事だった。 王国の一つの都市が妖魔の強襲を受けた。 妖魔の数は1。 都市を守る騎士団なら容易に対処できる数だった。 だがその都市を襲った通常の妖魔とは格が違った。 妖魔の中でも最高位に存在する十魔獄に位置する上位妖魔「戦神 オロチ」。 人の手には負えないとされる最強種の一体。 その絶大な力の前にその都市はもはや壊滅は免れなかった。 「いいか、俺達の任務は住民を出来る限り生かして逃がすこと、奴と前からぶつかっても俺達に勝機は無い、てめえらの命は住民を逃がす為にあると思え。」 「「了解。」」 「いいか、俺はお前達に死ねと言っている、住民を守る為に死ねと言っている、国の為に死ねと言っている、お前らは死ぬのも仕事の内だ!ならば後世に言い伝えられるような死に様を晒せ!!」 「「了解。」」 都市に駐在していた騎士隊の隊長が自身の部下達に発破をかける。 「H型部隊は奴の足止めをしろ、通常弾では意味が無い、奴の目に閃光弾をぶちかませ、暗闇で生きてきた泥種の奴にはそれなりの足止めになる筈だ!!」 「「了解。」」 眼前には一本の長く巨大な頭が存在する、形容するなら巨大な蛇といったところか…。 それがこの世界においても最大の巨体を誇る妖魔オロチの一部である。 オロチは泥種と呼ばれる妖魔であり通常は地下に潜んでいる。 よって強烈な光は泥種には泥種の目を暗まし非常に高い効果が得られるのだ。 「F型部隊は逃げ遅れた人々を回収して、街の外へ逃がせ、その飛行能力と機動性を活かせ!!」 「「了解、必ず戻ってきます、隊長!」」 5機編成のF型部隊が街の人々の救助活動に入る。 「S型部隊は俺に続け、俺達は囮だ、出来るだけ注意を俺達に引き付けろ!!」 「「了解。」」 隊長と呼ばれたものは深呼吸をした…自身の手にこの街の人々の命の全てが載っているのだ。 出来るだけ、生かして返さなければならない。 「さあ、俺達の最後の華だ、行くぞ!!」 オロチは歓喜していた。 決して勝てない戦いだと知りつつ、同族を守る為に自身の命を捨てて戦いを挑んでくる人間達の姿に そう、命をかけて戦う生物の姿はなんとも美しいのだ。 この生への執着と自己犠牲の交じり合った混沌の光景が そして、その光景を自身の力でねじ伏せるのはなんとも言えない快感を得られる。 さあ、もっとそのもがく姿を見せてくれ… オロチは自身の長い胴体で自分の周りに居る鋼機を住居ごとなぎ払った。 たった、一薙ぎ、たった、一薙ぎだった…さっきまでいた総勢50もの鋼機達は一瞬で残機数20まで破壊されたのだ…。 「ば、化け物だ・・・あ、あんなのとどう戦えっていうんですか、隊長!」 あまりの圧倒的な力の差に恐怖した部下が叫ぶ。 死の覚悟をしていた騎士達もその恐怖に麻痺させていた自身の死の恐怖を引き出されてしまった。 「落ち着け、てめえら!!副隊長、生きてるか!!!」 俺は大声で副隊長に呼びかけた。 オロチの哭き声が聞こえる。 奴がなぎ払いをかける瞬間にH型による閃光弾頭の一斉放射をしかけることに成功した。 すかしっぺだが、奴の視力を奪う事に成功した、当分奴に視力が戻る事はないだろう…。 「な、なんとか…」 副隊長は答える…息が切れ切れだ…。 「生存者の確認、センサーでわかるだけでいい、生きている奴はいるのか」 副隊長機には広域の索敵用センサーが装備されている。 それを使えば部隊の仲間の生死を確認できるのだ。 「…かくにん…しました、行動可能な残機数は20、内戦闘行…動可能…なのは…17、一般の生存者は・・・生体反・・応がありません・・かはっ…」 血を吐く音を聞こえた…。 「すみません、隊長、間違った報告をしました、残機数は19です…すみません」 「そうか、ご苦労だった…そろそろ休んでいいぞ。」 「・・・・ありがとうございます。」 そして通信は切れた…。 もはや、守るべき国民達はこの街にはいなくなってしまった…ならば俺がすることは一つしかない。 無線を開く…そう、俺がすることは一つだ…。 「俺だ、聞こえるか、これから隊長から全部隊に最後の命令を伝える…逃げろ、全力でだ!時間稼ぎは俺がする…逃げろ!!!」 部隊から動揺の声があがる。 それはそうだ、さっき俺は奴らに死ねと言ったのだから…。 部隊の一人が答える。 「隊長、自分も残ります、この機体はまだ動きます、死んでいった仲間達の為にもここで戦わせてください。」 その声は真剣そのものであった。 だが、それを認めるわけにはいかない。 「馬鹿野郎、確かに俺達は国とその礎たる国民を守る為の人間であり、死ぬのも仕事の内だ…だがな、守るべきものもないところで無駄死にする為にその命を使うんじゃねえ!無駄死にと国の為に死ぬのはまったく違う、俺の言ってる事がわかるか!」 「はい…でも…」 「わかったらさっさと行け、てめえらは生きろ!…最後なんだ、ちょっとぐらいカッコつけさせろよ…。」 静かな静寂が訪れる… 「隊長、では…また…。」 「おう、また会おうぜ、糞野朗共。」 部下達が退却を始める…全力でブーストを駆ければこの場から逃げ切ることも可能だろう。 『終ったのか?』 その声と同時にさっきまで聞こえていた哭き声がいつの間にか消えている事に気づいた…。 さっきまでそこで喚いていた怪物が人語を話したことに少々驚いたが、なるほどと俺は納得した。 相手は妖魔の中でも最上の十魔獄、そのくらいの芸当が出来てもおかしくはない…。 「なんだ、優しいんだな…待っててくれたのかい?」 『お前を久方に見る勇者と認定した、それゆえの敬意だよ…。』 なんとおとなしい声なのだろうか…さっきまで破壊の限りを尽くした悪魔とは思えない語り方だ… しかし、勇者呼ばわりとはなんとも昔気質な妖魔なのだろうか… 「光栄だねぇ、光栄の限りだ、その勇者様がお前さんに一言、言いたい事があるんだとよ…。」 酒瓶を開けて、そのまま一気に飲む、蒸せたがこんな感覚も悪くない。 『ほう、なんだ…聞いてやるぞ…。』 そうかい、と呟きつつ、酒瓶の中身を飲み干す。 正直、まずかった…だが今は、なんとも酒の力を借りたい気分だ…。 深呼吸をする。 酒は回ってきたが思考は衰えるどころかむしろ冴えてきたように感じる、それでいて冷静沈着、ようし、今の俺は最高にクールだ。 そうしてもう一度深呼吸をして、俺は大声で叫んだ。 「言っとくがな、俺はとっくにキれてんだよ!!防衛隊長がな、まったく防衛できずに死人を大量に出したってだけで十分すぎるぐらい、大恥なんだ!!俺の面子に泥を塗りやがって!!!貴様みたいなのが来なければ俺の人生は安泰だったんだ!!よくも人の部下を俺の目の前でゴミのように殺しやがったな!!理不尽な無力感を感じさせやがって!!てめえなんぞこの俺様がとっちめてボロ雑巾の肥溜めにしてやる!!!!!!」 ようし、確認しよう。 頭に血を昇らせて斬りにかかったせいで俺の機体の右腕は大破してしまっていてもう使い物にならない。 いや、むしろこの程度で済んだ俺はついているといっても過言では無いだろう。 ならばこの幸運を活かし今、俺の有利に立てる点はなんだ…。 力勝負、もとより勝ち目は無い。 速度、奴の巨体は小細工を無意味と化す。 俺の乗るD―33 セルウイングは他のD型と違って特殊な性能は無い。 だがそれゆえに余計なものを付けることなど無く総合的な面での高能力を目指した機体だ、それ故に俺は最強を自負してもいる。 だが突出した部分がないゆえに奴に勝てる面は見当たらない。 ならば、俺の優位性は奴が今、視力を失っているというこの一点。 連撃では勝てない、遠距離からの攻撃でも勝てない、優位性を活かした上での一撃必殺、これしかこの絶望的な状況を乗り越える術はない。 「へ…」 少し笑いがこみ上げる。 0.00001%でも勝つ方法はあるじゃねえか…。 ならばやるしかない、俺なら出来るはずだ。 奴が鼻と耳で俺を追ってきている。 『どこにいる!さあ、我にその剣を突き立ててみよ!』 無音移動により、仕掛けを作り上げる。 奴は嗅覚で探してはいるものの土の中にずっといた妖魔である為に嗅覚はあまりよいとはいえない筈だ…。 そんな奴が今、俺の探し出す為に使う最大の道具は聴覚だ。 ならばこの聴覚さえ潰せば奴に近づくことは容易となる。 そしてこの切り札を使えば…。 『そうか…出て来ぬのか…さっきの無謀とはうってかわって慎重な行動をするな…ならば…。』 その掛け声と共に大地が揺れ始めた。 「な、なんだ…。」 『どのような小細工をしているのかは知らぬが無意味と知れ!』 大地の揺れがさらに大きくなる。 あの野朗、自分の意思で地震をおこせるのか! 地下にどれだけ体を隠してやがるのかはしらねえがこいつは…。 どんどんゆれ幅が大きくなる…それと同時にバランスを取れなくなり鋼機を立たせておくことすらが出来なくなる。 まずい、このままだと移動すら出来なくなる…。 せめてあと、一つ、あと一つなんだ、これだけでも…。 悲鳴を上げる機体に鞭を打つ、いけぇぇぇぇぇぇぇぇ! 『くくく、見つけたぞ・・・今ので地震で貴様の機体はもはや立つ事すら出来ぬだろう・・・さあ、これで最後だ、楽しかったよ。』 機体の脚部が壊れている、さっき無理な機動をしたせいか…。 そこから発せられる電気回路のショート音を奴に聞きつけられたようだ。 逃げようにもこの機体は立つ事すら出来ない。 絶体絶命、その言葉はこういう時に使うのだろう…。 しいて言うならオロチが周りの建築物を破壊していたので建物が地震により倒壊してくるという危険性がなかったのは幸運だった。 奴が俺の正面に来る、トドメを刺す気なのだろう。 だが、既にこの糞野朗は俺の術中に嵌っている。 「俺の勝ちだ!!この蛇野朗!!!」 俺はスイッチを押した。 暴音爆弾SB 連鎖式起爆 各所で気が狂わんぐらいの暴音が鳴り響く。 奴への一つ目の切り札、暴音爆弾SB。 元々は耳が良い、獣種への武器なのだが、今、仕掛けた数は俺が12個 これだけの暴音をくらってまともな聴覚を持つできる生物はこの世に存在しないだろう。 そう、奴はついに視覚に続き聴覚すら失ったのだ。 また、その音により一瞬の隙が出来る。 この一瞬、0.1秒に全てをかける。 「さあ、気合入れろよ!セルウイング!!!これが俺達の意地だ!!!!!」 背部のブーストを全開にする。 一気に奴の頭部へと飛翔する。 そして喚いている奴の口の中へ最後の切り札、圧縮爆弾ヘルゲイザーを投げ込んだ。 圧縮爆弾ヘルゲイザー 爆発を圧縮することによって、更なる高温の爆発を起こす兵器。 鋼機の武装では最強の威力を誇る武装の一つ。 たとえ、どのような強固な外殻をもっていようともこんなものを内部から爆発させられたならば生きて帰れるモノはいない。 そして爆破させたのはオロチの口内、それは頭ごと爆破するということである。 つまり一撃必殺。 これが隊長と呼ばれた男の切り札であった。 爆発、セルウイングはその爆風と共に吹っ飛ばされた。 「ん…。」 俺は目を覚ました。 どうやら今の爆発で機体ごと爆風で吹き飛ばされ少しの間、気絶していたらしい。 奴は、奴はどうなった…。 即、自分の機体のカメラを奴の頭に合わせる…。 「くくく、ははは……。」 奴を見て笑いを止められなくなった。 見上げた所にあったのは木っ端微塵になった肉塊。 そう奴の頭は原型を止めていないほどに破壊されていたのだ。 絶対的な戦力さによる絶体絶命、それすらも乗り越えることに成功した。 「何が、十魔獄だ…ちょろいじゃねえかよ…。」 気分がいい、先ほどまでの酷い命のやりとりしていたことから来る解放感だろうか…。 今の俺は空だって飛んでいけそうだ。 帰ったら部下共に散々おごらせてやる。 そしてお祭り騒ぎだ、とことん楽しまないと。 『素晴らしいな…。』 その時、ありえぬ声を聞いた。 「え…。」 ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、 ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない。 『まさか人間が我が頭の一つを持っていくとは…二鋼神すら用いずにただの機械人形で…我は今、貴様という人間と戦えたことに感動している。』 頭をぶっ飛ばしたんだぞ、なんでだ、なんでだよ! なんで奴の声が聞こえるんだ!!! 『さっきまでの威勢のいい返答がないな…絶望に浸っているのか?…良いだろう答えを見せてやろう。』 地面の中から謎の触手のようなものが出てくる。 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ。 遅れてその触手が全て頭なのだと俺は認識した。 『我が名はオロチ、九つの頭と八つの尾を持つもの、大地の征服者、我を殺したくばこの全ての頭を潰さなければ倒せぬ。』 な、なんだよ…そんなのありかよ…。 『初手から全力でいかなかった非礼を詫びよう、お主ほどの勇者の戦意を失わせるのもどうかと思ってな、そして我が完全なる姿をお見せしよう。』 大地が割れる。 その中から恐ろしいぐらいの巨体が現れる。 全長1000mは超えているだろうか…。 その姿は歴史の重みともいうべきものを持つ威圧感を持っていた。 圧倒的とでも言うのだろうか、その時、俺は唐突に理解したもとより俺が適うような相手では無かったのだと…。 勝率0.00001%だって…ははは、とんだ勘違いだ…これじゃあ0%じゃねえかよ…。 『声も出ぬか…貴様は自分の無力差を味わっているのだろうが恥じる事はない、貴様この我の頭の一つを破壊したのだ、5000年生きてきた我の人生においてもたったこんなことをしでかした人間は貴様が初めてだよ。』 褒めているのだろうか…だが勝てなきゃ意味がないんだ、勝たないと意味が…。 『さて、殺す前に貴様の名前を聞いておきたい…。』 こんな、こんな理不尽を認められるのか? 俺はこんな理不尽を認められるのか? こんな理不尽を認めることが出来るのか? 「そんな…そんなこと…」 嫌だ、認めたくない、死にたくない、生き延びたい。 「そんなこと出来るかぁぁぁぁ!!!!」 そうだ認めることなど出来ない 簡単な話だ、今やったことをあと八回繰り返せばいい。 ただ、それだけの事、ただそれだけの事だ!! 「俺の名はトーマ!トーマ・フレイスター!!覚える必要は無いぜ・・・覚える必要が無くなるからな!!」 これが俺の決意、例え可能性が0だろうとそれを打ち破ってみせる。 『そうか、忘れぬよ…。』 この世界が生まれた時から、 人間は妖魔に捕食されるという宿命を与えられていた。 だが妖魔は絶対者であったが為にしつように人間を襲おうとはせず、人を喰らおうと思った時のみに喰われていた。 そう、妖魔にとって人間は生物というよりただの餌としか見られていなかったのだ。 そんな中で人間はその妖魔に抗う術を手に入れる、それが鋼機であり鋼獣であった。 とはいっても妖魔の圧倒的な優位性には変わることは無く、人間は負け続ける日々を送った。 だがそんな中で妖魔たちは人間の捕食への考えを改めなおさなければならない事件が起こる。 リヴァイアサン事件。 スーサウ共和国に乗り込んだ十魔獄の内の一体、リヴァイアサンが人間の扱う鋼獣という兵器の前に敗北したのだ。 十魔獄とは妖魔の中でも最上の能力を持つ者であり、畏怖と尊敬の念を持たれる最強の妖魔達のことである。 それゆえにその十魔獄が敗れたという報は全妖魔に戦慄を走らせ、 それと同時に人間を強力な敵であると再認識されることになる。 そして強大な人間達からの反撃を恐れ中枢都市への攻撃をしないようになっていった。 だがそんな中で人間達に戦いを仕掛けようとしたものがいた。 十魔獄の一である「戦神 オロチ」である。 戦いをなによりも渇望していたオロチは自身の強大な敵と出会えた事に歓喜し、さらに人間達への攻撃を過激化させた。 だがその戦いもある日唐突に終末を迎える事になる。 一瞬だった。 これから人間の都市へ戦いを仕掛けようとしていた時にそれは起こった。 気配も無く近づいてきた「それ」はオロチの強固な外皮を持つオロチの背中に大きな斬撃放ち、その外皮を切り裂いた。 その傷は内部の奥まで浸透し、オロチに命を落としかける程の重傷を負わせた。 妖魔の中でも最大といわれる巨体が無ければ間違いなく死んでいただろう…。 それからオロチは地下に潜り10数年かけてその傷の治癒をすることになる。 その屈辱はナニモノにも変えられぬモノであった。 そうして傷の治癒が終った時、自身の体が以前ほど生気に満ち溢れてはいないことに気づく。 オロチは唐突に理解した、自身の寿命が尽きようとしているのだと。 妖魔は長寿の生物ではあるが不死の生物ではない老い、そして死んでいくのは全ての生物に共通することだ。 その事実は、オロチにとって耐え難いものであった。 自身は戦いによってその存在の証を立ててきたものである。 戦い以外の理由で自身が死ぬ事など許すことは出来なかった。 そしてオロチは決意をする。 全てを敵に回してでも自身は戦いの中で生き、戦いの中で死ぬのだと…。 それからオロチは同族、人間共に手当たりしだいに戦いを仕掛けることになる。 だが、衰えたとはいえ十魔獄、その強大な力に適うモノはいなかった。 同じ十魔獄達はオロチが寿命で死ぬ事を知り、自分に被害を受けまいとオロチとの無理な戦いを避けてもいたため。 オロチが満足するような戦いをすることは出来なかった。 だが、だが先の人間はどうだ…。 圧倒的な力の前に屈することは無く執念と確固たる意思で自身に立ち向かい。 ついには自身の頭の一つを爆砕した。 その後も執念と意地で戦い我に多大な悦楽を与えてくれた。 そこで一つの可能性が思いつく。 そう、人間ならば…人間ならば我を殺しうるのではないだろうか.…。 その答えを得た時、我はついに欲しかったものを手に入れる事が出来るのかもしれないとまた歓喜する。 次はこの王国の首都に攻撃をしかけるか…。 オロチはその時に得られる結果が楽しみで、楽しみで仕方がなかった。 「でもね、オロチ…君のしようとしている事を叶える事は出来ない。」 急にオロチの後ろから声がした。 気配すらもなく自身の後ろにたったのだ。 デジャブ、過去にこのような経験をしていることをオロチは瞬く間に思い出した。 現れたのだ…己を十数年をも動けなくした重症を負わせた敵が…。 『待っていたよ、貴様が前に我に攻撃した時も人間に攻撃を仕掛けようとしていた時だったな…人間に攻撃を仕掛ければ貴様が現れるのではないかと思っていた。』 後ろの敵は前回とは違いすぐには攻撃を仕掛けては来ない。 ならばと一瞬で、地中に潜り、自身の頭の一つを地面からだし、敵を視認した。 それは人間大の大きさであり、全身に黒いマントのような者を着ている。 フードに隠れて顔を確認する事すら出来ない。 その姿はさながら死神を彷彿とさせた、その異種的な威圧感は人間ではないことを教えてくれる。 『貴様さえ、貴様さえいなければ我はもっと闘争の愉悦に踊ることが出来たのだ!この十数年貴様の事を忘れたことなど一度もなかったよ!!』 その言葉には嫌でも怒りの感情が入る。 あの時、なまじ生かされたせいで戦いとは無縁な治癒などという時間に自身は身をおかなければならなかったのだとオロチは思う。 戦いに生き、戦いの為に生きてきたオロチにとってその時間は最たる苦痛と呼ぶべき時間であった。 「そうだね、あの時、僕がきちんとトドメを刺したか確認しておくべきだった…あの一撃を受けて生きていられるとは思わなかった、正直な話後悔している。」 黒い死神はなんとも平然に呟く。 『つまり、我を殺すと?不意打ちでしか我に傷を負わせられぬ貴様がか?我を誰だと思っている!戦神にして大地の征服者、臆病者などに負けるわけがなかろう。』 「だから、今回は待ったんです…僕の名前はトール、君達には道化傀儡という名の方が通りがいいかな…さあ、始めよう。」 その瞬間トールは腕を振った。 それと同時に強烈な光を放たれオロチに向かってくる。 トールが放ったのは一度オロチに重傷を負わせた斬撃、だが同じ技を二度も受けるようなオロチではない。 その巨体に似合わぬ速度で地中に身を隠すことに成功した。 「へぇ、その巨体でこの雷閃をかわすのか…流石は十魔獄と呼ばれる妖魔だけのことはあるね。」 『いきなり攻撃を仕掛けてくるとはやはり貴様は卑怯者だな…それにしても道化傀儡だと…人間に味方する十魔獄か!!』 道化傀儡 トール…その名は勿論知っていた。 十魔獄の一体と認識される、妖魔の一体。 だがその実体を知るものはほとんどいない。 十魔獄と呼ばれるほどの強力な力を持つ妖魔であるが何故か、人間に味方する道化であり、大量の同族を殺めているとされている。 つまり人間を虐殺する我を殺しにきているのだ、この妖魔は…。 「本当は道化傀儡ってネーミングはあんまり好きじゃないんだよね、言い得て妙だとは思うけど。」 またどうでもいいように呟く。 「しかし、君が地中に全身埋めてたら僕を攻撃できないよ、さっきの戦いみたいに地震程度で僕を倒せると思っていないよね。」 地中に潜るという絶対防御。 そして地震による攻撃という。 防御と攻撃を同時に行うことが出来ることこそオロチの強さの最大の秘訣であった。 だが相手はトール、道化傀儡の名を持ち十魔獄に名を連ねる者、地震程度でその力をねじ伏せる事など無理だろう。 だが、オロチは十魔獄である、上位妖魔であり、戦神と伝えられし単体。 そう、だからオロチは笑った。 『ハハハ、笑止千万、我を誰だと思っている、オロチぞ、妖魔の誇りを捨てた妖魔なぞ我に勝てぬことを知るがいい!!』 大地が揺れる、先の戦いの比較ではない。 だがただの地震ではないことをトールは感じ取っていた。 これは地震ではなくその先のことを見据えた攻撃なのではないだろうか…。 「これは…まさか…。」 『気づいたか、だが気づいたところで貴様は何でも出来まい!我が体は地中にあるのだからな!!!』 最地下層にあるマグマを絞り上げ、高熱の土を精製し、その土を操作し攻撃する。 自身は地下にその身をおき誰もが到達できぬ領域におき絶対防御とする。 この攻撃と防御を同時に行う型が戦神オロチの必勝の型である。 『ハハハハ、貴様如き下賤、この土で死ぬがいいわ!!』 その時、死神はなにかを呟いていた。 リミッター解除・・・申請。 SUN認可。 LUNA認可。 リミッター解除。 プログラム……起動。 徐々に土が熱を帯びて来ている。 このまま時間が経てばトールに勝機はない。 だが、トールは特に慌てた表情も見せなかった。 「リミッター解除、完了、五億回転、左腕形態変化。」 ポツポツと呟き始めたトールの声を聞きオロチは笑う。 『あまりの絶対的な力と絶望についに気が狂ったか!さあ、ついに完成するぞ!死ね、さっさと死ね、土に圧殺されて死ねええええ!!!』 ついに熱土が完成した。 「いや、“俺”の勝ちだ。」 トールは腕を地面に突き刺す、トグロを巻いた腕は地下の奥深くまで伸びる その腕は螺旋を描いており高速で回転をしていた… そして、その鋭利な腕は超高速で地下にいたオロチの元に辿りつきその巨体の強固な外皮を貫いた。 『グガア…。』 自身を貫かれた痛みでオロチは大声をあげる。 「その巨体が仇になったな…特に的を絞らなくても命中させる事が出来たよ。」 『ググ…だがこれがなんだというのだ…この程度で我を殺せると思っているのかぁぁぁぁぁぁぁ!!!』 所詮は貫かれただけ。 回転によるねじ切られるような痛みこそあったものの、その巨体にはたいしたダメージにはなっていない。 つまり、この程度の攻撃でオロチを倒すことなど出来はしないのだ。 だが死神は笑う。 「い~や、これでいい、さっき言わなかったか?これで“俺”の勝ちだと…。」 『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。』 突如、オロチの体に強力な電撃が流される。 オロチの体を貫いた腕を起点にして700mもの巨体に強力な電撃を流しているのだ。 いくら外皮が強固だろうとも内部は脆い、内部からの電撃による攻撃。 この攻撃に耐えられるものはいない、いかなる生物であっても絶対死を与える技。 「雷神十六式が一、雷突。」 トールは地下にいるオロチを掴み。 その700mの巨体を片腕で地下から引っ張りだした。 『ガ…ァ…。』 「ほう、まだ意識があるのか…だがもう駄目だな…その体ではもう助からん…。」 そう言ってトールは真横にその巨体を投げつけた。 妖魔でも最大といわれるその巨体はまるでお手玉のように吹っ飛んでいき、絶壁にぶつかった。 リミッター再設定。 ロック。 先ほどまで死神を覆っていた空気が変わった。 「ふう、オロチさん…最後に聞いておきたい事があります、今、あなたの悲願が叶いました、気分はどうですか?」 悲願、そう悲願だった、戦いの中で死ぬことが。 手を抜いて敗北するのではない、全力で戦い、全力で敗北する。 その時、得られる感情が知りたかった…。 その悲願が今、叶ったのだ…。 『…最悪だ…。』 「そうですか…それはよかった…。」 そういって死神は闇の中に去っていった…。 オロチの命はもう尽きようとしている。 そんな中でオロチは16の瞳で空を見た…。 ずっと大地の中にいる泥種であったオロチにはその風景は余りにも新鮮だった。 何千もの年数を生きてきながらこんなに真正面から空を見た経験は初めてだった。 なんと広いのだろう、なんと美しいのだろう、なんと清らかなのだろう。 解放感じみたものを感じる、この世の楔からわが身が解き放たれるのだろうか。 『…最悪だ…だが悪くない…。』 そうして戦神はその一生を終えた。 グラナダ襲撃事件。 十魔獄の襲撃によってイングラ王国の都市グラナダが破壊された。 当然、国に与えた影響は多大なモノで即、厳戒態勢とスーサウ共和国への助勢を申し込む。 かつてあった大事件、リヴァイアサン事件の再来と人々は恐れ、恐怖した。 だが事件は意外な形で結末を迎える事になる。 イングラ王国のとある村落の近くでそのグラナダを崩壊させた妖魔オロチの遺体が発見されたのだ。 あまりに謎が多いこの事件は未だに民の語り草になっている…。 また、これを受けた王国はさらなる脅威から自身を守る為、軍備の強化 手に入れたオロチの遺体の鋼獣化。 そして対妖魔を意識したD型のみで編成された特殊部隊「シャドウミラージュ」を編成する。 これがこの物語のプロローグである。 シャドウミラージュ・SSに戻る next
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/8060.html
【TOP】【←prev】【SUPER 32X】【next→】 TEMPO タイトル TEMPO テンポ 機種 SUPER 32X 型番 GM-4009 ジャンル アクション 発売元 セガ・エンタープライゼス 発売日 1995-3-24 価格 7800円(税別) テンポ 関連 Console Game 32X TEMPO SS SUPER TEMPO Handheld Game GG TEMPO JR. 駿河屋で購入 SUPER 32X
https://w.atwiki.jp/irarchive/pages/575.html
サイト ホームページ(テンポス) IRサイト(テンポス) CSRサイト(テンポス) 各種ツール 事業報告書(テンポス) アニュアルレポート(テンポス) CSRレポート(テンポス) 総会通知(テンポス) 有価証券報告書(テンポス) 決算短信(テンポス) 中期経営計画(テンポス) その他資料(テンポス) 戻る
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/313.html
『カムフラージュ』 ともだち以上の気持ち ずっと閉じこめてきたけれど ココロがもう ウソを吐けなくて こんなに切ない…… 【1】 【2】 【3】 【4】
https://w.atwiki.jp/librariberia/pages/154.html
118:いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/04/29(木) 21 27 54 発信元 125.200.198.57 ちょっとこれから変なものを投下?させていただきます 119:ブーン系コラージュ1/2:2010/04/29(木) 21 29 04 発信元 125.200.198.57 ( ^ω^)「水汲んできたお!」 ξ*゚⊿゚)ξ「あとはこれを入れて煮るだけよね!」 ノパ⊿゚)「そうだぞ!そっと入れてくれよおお!!」 ( ^ω^)「把握だお!」 ブーンはカレーの鍋にボウルに汲んできた水をゆっくりと注ぎこむ ( A`)「さて、これでしばらくは暇だな」 ( ^ω^)「クー!ハインー!サラダはできたかおー?」 川 ゚ -゚)「こっちも終わったぞ」 从 ゚∀从「オレ様が本気をだしゃあこれくらい余裕だって」 120:ブーン系コラージュ2/2:2010/04/29(木) 21 29 47 発信元 125.200.198.57 ドックン…、ドックン…、ビキビキ… 久々にカレーを目の前にしたブーンのそれはいきり立っていた (;^ω^)「と、とりあえず…、こいつを何とかするお!」 (;^ω^)「ハァハァ…、い、インドカレー…インドカレー……い、インドカレエエェェェ!!!」 ガクガク… ( ゜ω゜)「アッー!!」 121:いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/04/29(木) 21 31 49 発信元 125.200.198.57 と、こんな風に違う作品のレスを繋げてみれば面白いんじゃないかと思って 実験的にやってみました、しかしなかなか難しいです。 ちなみに、今回使った作品は、前半が( A`)たちは水の上に生きるようですの15話、 後半が( ^ω^)ブーンはすごいフェチのようですの1場面からでした。 127:便乗コラージュ1/2:2010/04/30(金) 01 56 15 発信元 118.8.13.224 (#゚ω゚)「こんなもんで殺せると思うなお!!」 眼前。 右手で、Fを掴んだ。 [;`二´]「なっ……!!」 近くの兵のDを使って、瞬時に放ち返した。 首を射抜く。頭と体が同時に城壁を滑り落ちる。 背のアルファベットJが転がった。 (´・ω・`)「バカが……お前如きで相手になるか」 心底、呆れていた。 自分の部下が死んだというのに。 (´・ω・`)「やぁ、すまんな。バカが勝手な真似をした」 (#゚ω゚)「降りて来いお!! お前を殺してやるお!!」 (´・ω・`)「勝てると思っているのか? 俺に」 (#゚ω゚)「殺してやるお!!」 (´・ω・`)「冷静さを欠いたか。まぁ、お前のそんなところは嫌いじゃなかった。 お前はいい部下だったさ。だからこそ、ラウンジに連れて行きたかったんだが」 (#゚ω゚)「ドクオもツンも殺したのに、誰が……!!」 128:便乗コラージュ2/2:2010/04/30(金) 01 57 06 発信元 118.8.13.224 前言撤回、早く死んでくれ糞ジジイ。 さっきから犬を二匹、おばちゃんを三人、白バイ隊員を一人吹き飛ばし、 なおも走り続けている。 「止めてくれ」 願いは届かない。 耳が遠いのか、意味が理解出来ていないのか。 爺さんは狂ったようにハンドルを切り、アクセルを踏む。 (´・ω・`)「うわああああああああああああああああああ (´・ω・`) ああああああああああああああああああああ (´・ω・`) ああああああああああああああああああああ (´・ω・`) ああああああああああああああああああああ (´・ω・`) ああああああああああああああああああああ」 出た―――― 一気に五人轢きよった―――― これはコミッショナーサイドも黙っちゃいないぜぇ―――― 僕が唖然としていると、運転手いや犯罪者の爺さんが口を開いた。 「若僧……人生とは、こうやって突き進むのだよ」 気が付けば、タクシーはツンのマンション前に到着していた。 爺さんの仰っている事は意味不明だが、とりあえず格言のようなので、 分かった振りして降りた。 129:いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/04/30(金) 01 57 48 発信元 118.8.13.224 元ネタ ( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです http //boonsoldier.web.fc2.com/arufa.htm ( ^ω^) ブーンはノックしているようです http //vipmain.sakura.ne.jp/end/263-top.html 119に便乗してみたが難しいもんだな
https://w.atwiki.jp/ez_sirengold/pages/26.html
シュテン銅山 ダンジョン仕様 攻略 クリアアイテム 敵出現フロア コメント ダンジョン仕様 アイテムの持ち込み可 道具に「大きなおにぎり」一個を加えた状態でスタート。道具欄に空きがないと、大きなおにぎりはもらえない。 全30F 店あり、店売り限定アイテムは以下の通り 大きなおにぎり、祈りの巻物、合成の巻物、いかづちの杖、鈍足の杖、睡眠の杖、鉄の矢(15F?~)、木甲の盾、白虎の斧、どうたぬき(30Fのみ?) モンスターハウス、水辺(宝島を含む)、大部屋なし 全てのフロアで必ずあかりが点いている 登場する罠は以下の11種のみ 木の矢、鉄の矢、地雷、吹き飛ばし、ワープ、ハラヘリ、デロデロ、回転盤、鈍足、眠りガス、装備はずし 1~5Fには罠がない 階数 ワナの数 1-5F 0 6-30F 5 階数 新しい敵が湧くまでのターン数 1-20F 40ターン 21-29F 52ターン 30F 40ターン 攻略 白紙の攻略書のシュテン銅山を参照 クリアアイテム 武器 防具 腕輪 矢 杖 巻物 草 食料 白虎の斧+3 青の盾 おはらいの巻物・地の恵みの巻物 敵出現フロア 敵キャラ名 出現階 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 マムル 1-3 ★ ★ ★ あなぐらマムル 1-4 ★ ★ ★ ★ ヤミウッチー 4-7 ★ ★ ★ ★ チンタラ 5-9 ★ ★ ★ ★ ★ つえふりわらべ 6-8 ★ ★ ★ ガマラ 7-10 ★ ★ ★ ★ 死の使い 8-11 ★ ★ ★ ★ かんにん袋 8-11 ★ ★ ★ ★ 骸骨魔道 10-13 ★ ★ ★ ★ ちゅうチンタラ 12-19 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 敵キャラ名 出現階 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 かさたぬき 13-19 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 毒サソリ 14-19 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ぬすっトド 14-20 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ドラゴン 20-24 ★ ★ ★ ★ ★ パコレプキン 20-24 ★ ★ ★ ★ ★ ボウヤー3 20-25 ★ ★ ★ ★ ★ ★ にぎり変化 22-26 ★ ★ ★ ★ ★ タイガーウッホ 25-30 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ミドロ 30 ★ 骸骨魔人 30 ★ おおチンタラ 30 ★ コメント どうすればクリアアイテムが貰えますか教えてください -- aodigimon (2011-12-18 18 21 42) クリアしたら勝手に倉庫に追加されるよ。もしかして倉庫に空きがなくて貰えてなかったり? -- 名無しさん (2011-12-18 21 00 23) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/zakuaku/pages/2528.html
ヘルラージュ*魔法 秘密結社のボス。大層な古代魔法を操る結構な小心者。 超風耐性/沈黙無効。MP消費量がやや高い
https://w.atwiki.jp/zakuaku/pages/2532.html
ミアラージュ*魔法 ヘルちんの姉、極めて高い魔法能力と、 数多くの特殊[[スキル]]を持つ神童。ただし、炎にとても弱い
https://w.atwiki.jp/lucs/pages/1801.html
《カモフラージュ》 通常罠 自分フィールド上のレベル2以下の爬虫類族モンスター1体が 相手モンスターの攻撃対象になった時、 1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。