約 905,849 件
https://w.atwiki.jp/cscs/pages/2991.html
特徴 マクロスF系を持つキャラ 早乙女アルト《mc1st/mc5th/mcss1》 シェリル・ノーム《mc1st/mc3rd/mc5th/mcss1》 ミハエル・ブラン《mc1st/mc4th》 ルカ・アンジェローニ クラン・クラン《mc1st/mc4th》 モニカ・ラング ミーナ・ローシャン ラム・ホア ヘンリー・ギリアム ネネ・ノーラ ララミア・レレニア ジェフリー・ワイルダー ハワード・グラス ランカ・リー《mc2nd/mc5th》 オズマ・リー ボビー・マルゴ カナリア・ベルシュタイン キャサリン・グラス エルモ・クリダニク ジェシカ・ブラン オゴタイ テムジン あい君 ブレラ・スターン グレイス・オコナー《mc3rd/mc4th》 松浦ナナセ レオン・三島 シェリル&ランカ マルヤマ ジュン ピクシー小隊 リチャード・ビルラー グレイス・ゴドゥヌワ 早乙女嵐蔵 徳川喜一郎
https://w.atwiki.jp/deathpenalty4/pages/15.html
マクロスシリーズの拙作アイコンです。 SRCで使う目的で作成しました。アイコンがない機種もあり ないなら作っちまえ!と思い作成した次第です。 統合軍 新マクロス級を中核とする移民船団。 マクロス要塞艦と駆逐艦。 統合軍の主力となる可変戦闘機。 VF-0系 マクロスゼロに登場した最初期の可変戦闘機です。 VF-1系 マクロスシリーズの代名詞的な可変戦闘機VF-1とその派生機です。 VF-3000系 名機VF-1の発展型として開発された可変戦闘機です。あまりメジャーじゃないような… VF-4系 名機VF-1の後継機種として主に宇宙空間で運用された可変戦闘機です。こちらもあまりメジャーじゃないかも… VF-5000系 こちらもVF-1の後継機として主に大気圏内で運用された可変戦闘機です。 VF-9系 ゼネラル・ギャラクシー社、初の正式採用機です。最大の特徴である前進翼が後のVF-19に影響したとか。 VF-11系 マクロスシリーズ屈指のやられメカVF-1の後継機で完全な上位互換になった最初の可変戦闘機です。 スーパーパック・早期警戒型・フルアーマー・女性型と多種多様のバリエーション機が誕生しました。 VF-14系 VF-11に正式採用の座こそ奪われたが堅牢な構造から移民船団や調査隊に重宝された可変戦闘機です。 劇中では、数カットのみの登場で、派生機のエルガーゾルンのほうがメジャーな始末。 VF-17系 ゼネラル・ギャラクシー社製の特殊作戦機です。ステルス性を重視したデザインの為、大気圏内での運用には問題がある為、 主に宇宙空間での運用が主軸となっています。 VF-171系 VF-17を最新の技術を用いてリファインした可変戦闘機です。原型機で問題だった大気圏内での空力性能や生産コストの問題が解決されマクロスFの時代の新統合軍主力戦闘機の座を獲得しました。 VF-19系 VF-11に変わる統合軍の主力戦闘機になるはずだった可変戦闘機です。前進翼を採用し高度な運動性を発揮する一方で、 腕自慢のパイロットたちでさえ手を焼く扱いづらい可変戦闘機です。 自分たちに聖剣の剣先を向けられる事を恐れた地球至上主義者により移民船団や自治惑星への配備は制限されました。 VF-22系 YF-19の対抗馬だったYF-21を特殊作戦機として採用した可変戦闘機です。特殊な形状記憶合金により最適な翼形状に変形させる機能など、意欲的に最新技術が 採用した結果、非常に高価かつ奇抜な可変戦闘機になりました。量産こそ見送られたものの特殊作戦機として正式採用され数多くのエースパイロットの愛機となりました。 VF-25系 VF-19以降の新世代可変戦闘機です。マクロスシリーズには珍しい格闘武器が搭載されています。EX-ギアの着用や慣性蓄積コンバーターの採用で、 従来の有人機では達成できなかった高Gのかかる機動を実現しました。 VF-31 詳細不明。 SV-252 詳細不明。 VA-3系 マクロスシリーズでは珍しい水中作戦の可能な可変攻撃機。 VB-6系 デストロイドモンスターをベースに開発された可変爆撃機です。 ゴースト系 有人機では達成し得ない高Gのかかる機動を実現する為に開発された無人戦闘機です。 有人機以上の高性能であり、尚且つ人的被害が出ないことからマクロスFの時代では戦闘の主力を担っています。 反統合同盟 SV-51α S.M.S ゼントラーディー軍 メルトランディー軍 -
https://w.atwiki.jp/cscs/pages/892.html
SDF-1 マクロス 銀河を駆ける歌声 UNIT U-012 青 発生 青/黒 2-5-0 U 戦闘配備 装填(3) 武装変更〔SDF-1〕 (自動D) 敵軍防御ステップ終了時に、このカードが交戦中ではない場合、このカードを敵軍ユニットのいる戦闘エリアに移す。 艦艇 LLサイズ [0][3][7] 出典 「超時空要塞マクロス」 1982
https://w.atwiki.jp/yaruoperformer/pages/1853.html
超時空要塞マクロス 柿崎速雄 マクロスF シェリル・ノーム ランカ・リー
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3303.html
マクロスなのは 第4話『模擬戦』←この前の話 『マクロスなのは』第5話「よみがえる翼」 午前の模擬戦を終え、食堂で一息いれていたアルトに凶報が届く。 あらかた食べ終わっていた焼き魚定食と自分との前に現れたのは無機質な金槌だった。 「午後はあたしと戦え!」 そう殴り込みに来たのは隊舎内なのに、未だ赤いバリアジャケットに身を包んだ小さな少女。しかし、アルトは彼女が外見で計れないことは知っていた。 かつて六課設立記念パーティーがあったとき、食堂で珍騒動が起こった。あの時その身の丈の数十倍は巨大化した、そして今、目の前に突き出されたハンマーはなんといったか。そう、確か『グラーフアイゼン』だった。 そしてバルキリーの改修完了時、なのはの砲撃でも一撃では簡単に破れないであろうバトロイド形態の時のPPBを盛大にぶち抜いたのもコイツだった。 そんな事を思い出していると、彼女の後ろにいたもう1人が声を上げた。 「その後、私もお願いするわ」 と言う女性は茶色い地上部隊の制服を着用し、腰すら超える金髪の長髪をストレートにした女性だった。 しかし、その温和な物腰に隠しきれない戦闘意欲が垣間見える。これは彼女がこの六課で、シグナムと並んで〝バトルマニア〟と呼ばれる所以だろう。 「しかしまだ整備が―――――」 「んなん大丈夫だろ? とっとと来い!」 アルトの微々たる抵抗は有無を言わさず却下された。彼はこれを断れない自らの准尉という階級を恨んだ。 目の前の、頭に〝のろいうさぎ〟のぬいぐるみを載せた外見年齢12、3歳(実年齢はどういう訳か特秘となっていた)のヴィータが二等空尉。そして隣のフェイトは1歳違うだけなのに一等海尉(執務官は称号)・・・・・・ 「わかった!わかったからせめて飯を食わせろ」 「・・・・・よし、食ったらすぐ来いよ」 食卓との間を遠く隔てていたハンマーが退けられ、ヴィータとフェイトの2人は食堂から出て行く。 そして自身の食事に視線を戻すと、あと2口ぐらいで完食してしまうだろう定食が目に入った。 (この程度の抵抗しかできないのかオレは・・・・・・) そんなことを考えながらすずめの涙のように残った味噌汁を飲み干してやる。そしてお椀を盆に戻すとき、骨身になってしまったさばの焼き魚と目があった。それは 「次はお前だ」 と言っているような気がした。 (*) 今度の模擬戦は全てのハンデが解消され、可変にPPBに空中戦にと存分に戦えた。しかし、たまった疲労は確実に彼と機体を蝕んでいた。 エンジン出力の不安定な変動などが原因でヴィータとの模擬戦は相討ちに終わり、続くフェイトとの模擬戦は、アルトの撃墜に終わった。 (*) 格納庫へとアルトが機首向けた時、日は傾きかけていた。 VF-25は整備なしで酷使されて機嫌を損ねたのか、ガウォークの右足からは異音がする。そして遂に――――― アルトは突然の浮遊感を感じて驚いた。 警報ががなりたてている。多目的ディスプレイには大きく〝エンジントラブル〟の文字。どうやら先ほどから不調を訴えていた右舷エンジンが止まったらしい。 右舷だけだが、2基の足で空中をホバリングするガウォーク形態だったからたまらない。たちまち姿勢を崩し、キリモミ落下を始めようとする。すぐにスラストレバーを倒し、推進モーメントのバランスがとれるためエンジンが片方だけでも飛べるファイターに可変しようとするが、変形機構も言うことを聞かなかった。 ここは高度2000メートル。下界はすでに陸地のため墜落すれば大破では済まないだろう。 「イジェクト(緊急脱出)しかないのか・・・・・・!」 機体を振り返って確認する。 キリモミ落下の始まった機体を立て直すには高機動スラスターだけでは荷が重いだろう。 しかしアルトはそこで天命を受けた。翼が白い尾を引いていたのだ。それは彼にここが大気のある天体である事を思い出させた。 「そうか、空気に乗れば!」 普段から風を読むことに関して冴えた才覚の持ち主である彼は第六感とも思えるその能力で、見えないはずの上昇気流を地形、日照等から瞬時に割り出す。そして生き残った左舷エンジン(左足)と両翼を駆使してその気流へと突入して落下速度を減殺し、錐揉み方向と逆の方向のラダーを一杯に踏み込み、スティックを錐揉み方向へ目一杯倒す。また、可変ノズルと高機動スラスターもエマージェンシーモードのコンピューター制御で機体を水平にしようと青白いきらめく粒子(現在VF-25は魔力を推進剤代わりに使っているため)を噴き出す。 パイロットを含めた機体の全てのシステムが一体になって墜落を防ごうとその能力をフル活用する。そうした結果、対地距離が100メートルほどになったときにはなんとか機体は水平を維持し、高速で螺旋回転をしながら降下していた。下界の地面が迫る。 アルトは次の瞬間にはやってくるであろう衝撃に備えて呼吸を止め、身を固めた。 (着地!) まずガウォークの足が地面に触れる。もちろんいつもの垂直着陸ではないのでその足はこの形態で出しうる限界の速度で走っており、螺旋回転のエネルギーを地面とその足のサスペンションで受け止めていく。 おかげでカクテルシェイカーのように上下振動するコックピット。 ISC(イナーシャ・ストア・コンバータ。慣性エネルギーをチャージすることでその慣性を一定時間抑制する)によってなんとか〝ケチャップ〟にならず命を繋ぐアルトは意識を失いそうになりながらでも機体を保全するため可能な限りのエネルギーをエネルギー転換装甲へと回し、その生き地獄を耐える。 途中で何かに蹴躓いたら最後、高速道路の車並みのスピードでVF-25とそのパイロットの命は硬い地面に投げ出されることになるだろう。 そのパイロットが誰なのか?と考えると彼は生きた心地がしなかった。 その時、地面にある〝もの〟がその驚異的な視覚によって捉えられた。 (なんであんなとこにブロックが!?) 六課の海岸線に花壇を作ろうと大量のレンガを一時的に置いていた場所、そこへ向かってガウォーク形態のVF-25は邁進していた。 その集積所は見る見る近づいていき――――― (*) 「止まった・・・・・・のか・・・・・・?」 振動が収まり周囲を見渡す。海辺では波が揺れ、植えられた草木は風に気持ちよくそよいでいる。レンガ集積所も無事だ。そして何より、地面が動いてなかった。 トラブル発生からの時間は1分に満たなかったかもしれないが、アルトにとってそれは永遠にも思える時だった。 (*) こうしてアルトはなんとか着地に成功した。 しかしJAF(レッカー車)などないため、ヴァイスの輸送ヘリを要請。格納庫へと空輸した。 こうして搬入されたVF-25に即座に点検が行われる。整備員達が一昔前の医療用の内視鏡のようなものと、超音波スキャナーでエンジン部を点検していく。 2時間後、原因の一端が判明した。 右舷エンジンのファンが破断してズタズタになっていたのだ。これは左舷エンジンも同様で、それでも最後まで動いてくれたことにアルトはVF-25を撫でてやりたくなった。 「見たところ小石が原因ですね。午前の模擬戦で空いた穴を午後で悪化させたみたいです」 とは整備員の言だ。 どうやらそもそもの原因は、午前の模擬戦の時、転換装甲なしのバトロイドで戦闘したことにあるらしい。 推進力アップのためバトロイドでは普段シャッターで閉じられているはずのエアインテーク(給気口)を開けていたのだ。その時入り込んだ大量の小石にファンが耐えられなかったようだ。 整備員は同様の材料を使った補修材で直すことを提案したが、アルトは待ったをかける。 レンガ集積所を反射的にジャンプしてかわしたが、その無茶な運用と、ガウォーク形態で走りながら着地するという前代未聞の不時着方法によって半壊してしまった一体形成型のベクタードノズル(足)は補修材では強度に不安が残るからだ。しかし、そんな規模・設備は技研の方にしかないらしい。 そこでアルトはその許可を求めるために部隊隊長室に向かうことにした。 (*) アルトが廊下を歩いていると、途中でバッタリと、ヴィータとフェイトに出くわした。 (どう文句を言ってやろうか・・・・・・) とずっと考えていたアルトだが、予想に反して2人はすぐに頭を下げ 「ごめんなさい!ごめんなさい!」 と、ペコペコ謝った。 (・・・・・・なんだ。案外素直な奴らなんだな) フェイトはともかくヴィータは階級パワーを使って 「あれくらいで壊れる飛行機の方が悪い」 とか言って逃げると思っていたため、本気で謝っている2人の様子に毒気を抜かれてしまったアルトは、文句を言うのを忘れ、さらりと2人を許して部隊長室への歩を進めた。 (*) 着いた部屋の表札には『機動六課 部隊隊長室』とある。 (そういえばはやてに会うのは2日ぶりになるのか。確か食堂で昼食を食いながら「来週までの書類処理が大変!」とか何とか言ってたな・・・・・・) そんなことを思い出しながらノックしようとした時、ドアの向こうから声が聞こえた。 『わぁ、リイン、綺麗な朝日だねぇ~』 どことなく上の空に聞こえる声。これははやての声だ。 リインとは、正式名称を『リインフォースⅡ(ツヴァイ)』といい、はやてのユニゾンデバイス(術者と融合することで、その者の魔法のパフォーマンスを向上させるデバイス。しかし彼女自身もクラスA相当のリンカーコアを持ち、単独の魔法行使も可能)で、妖精のような小人だ。 アルトは自分の認識が間違っているのか不安になって腕時計を見る。 (間違いない。今は〝午後〟6時だ) つまり、窓の外に見えている太陽が朝日であるはずがない。 『はい~、また仕事が始まるですぅ~』 今度はリインの声だ。彼女の声もどこか浮いている。しかしここで考えていても仕方ない。怪訝に思いつつも扉をノックした。 『はぁ~い、誰ですかぁ~?』 リインの声だ。彼女は普段はやての秘書をしているため、こういう返事は原則的にリインが行うことになっていた。 「早乙女アルト准尉です。八神はやて部隊長にお話があります」 『んがっ!ア、アルト君!? ちょ、ちょっとごめんな。少し待っといてや!』 答えたのはリインでなく、はやてだった。直後内側からは何かが倒れる音や、2人の悲鳴などが聞こえた。 しばし待つと、入室の許可が降りた。 「失礼します」 アルトは注意深く中に入る。そこはまさに異世界だった。 空気は完全にコーヒーの匂いに占拠され、床には所々書類の山がある。 「おはようアルト君。朝、早いんやな」 床から目を離してはやての声のする方を見ると、そこには彼女に見える人がいた。 制服はしっかり着こなしているが、気づかなかったのかサラサラであるはずの茶髪の髪がボサボサで酷く荒れている。また、役者である自分から見ても涙ぐましいほど必死に笑顔を作っているが、目の下の隈が不気味さすら漂わせていた。 (まさかコイツ・・・・・・) 「・・・・・・なぁはやて、今日が何曜日かわかるか?」 はやては突然の問いに思案顔になる。 「うん? 確か書類の処理を始めたのが月曜日の昼で、今は日付が変わったから・・・・・・火曜日やな」 「今は水曜日の午後6時だ!」 どうやら自分が食堂で彼女を最後に見てから今までの2日間を貫徹をしていたようだ。 窓には分厚い雨戸のようなカーテンがあり、それで外光を完全にシャットアウトしていたのだろう。 食事もゴミ箱に放り込まれたプラスチック包装の量から推察できた。たくさんの備蓄が消費されたようだ。 (人間のリズムが太陽の光を浴びないと狂うとはガッコ(学校)で習ってはいたが、まさかここまでとは・・・・・・) のべ48時間を越える彼女の集中力には畏敬の念すら覚えるが、おかげで頭も回らないようで、こちらの突きつけた真実に 「え!? ウチ、タイムスリップしてもうたん?」 と言っているあたり末期だ。 しかし、ここで彼女を追い詰めてもこれもまた仕方ないので早々に本題に入ることにした。 「バルキリーの本格的な修理をするために、管理局の技研に運び込みたいんだ。許可をくれないか?」 「え?まぁ、ウチはかまへんけど、どうして壊れたん?・・・・・・うちの整備員が何か粗相をしてもうたんか?」 「いや、アイツら(整備員達)は知らない技術相手に十分頑張ってるよ。それで壊れた理由なんだが実は―――――」 これまでの経緯を説明すると、彼女はすぐに頭を下げた。 「うちのヴィータがご迷惑をおかけしました」 「いや、さっき本人達から謝られたからそれはもういい。それで修理するとき機密面から俺もバルキリーに同行したいんだ」 そう言うと、はやては気の毒そうな顔をして言う。 「透視魔法に転送魔法。素粒子スキャナーにMRI(磁気共鳴映像装置)・・・・・・ウチは魔法以外のことはよく知らんから他にも色々あると思うんやけど、たぶんランカちゃんのAMFでも守りきれんで」 「じゃあ、この世界は覗き放題か。機密もあったものじゃないな」 と言うと、そこはそれ。 個人情報や機密事項を守るための守秘プログラムがあり、それは主に施設そのものやデバイスの管轄で、個人情報はデバイス、機密は施設とデバイスの双方で守るらしい。 「でも今回は、施設の所有権が向こうにあるから支援は期待出来ん。それにデバイスの守秘プログラムではバルキリーは大きすぎて現状では守りきれんのや」 そう諭すように続けるはやてだったが、あのVF-25はSMSから預かった大切な機体。このまま引き下がることはできない。 「それでもいい。同行させてくれ!」 食い下がると、彼女はあっさりと許可を降ろした。やってみればわかるということなのだろう。 ともかく同行できるだけでもよしとしよう。と思いなおすと、簡単な輸送の手続きを済ませ、部屋を出た。 (*) その後彼女たちは鏡を見たのだろう。結果として、六課の隊舎全てに響く悲鳴が発生したことは、言うまでもない。 (*) 次の日 はやての手配した大型トレーラーに載せられたVF-25は技研へ向かう。しかしそのトレーラーにはアルトの姿はなかった。 「昨日は本当にごめんね」 そう謝りながら自身の愛車を運転するのはフェイトだ。 「あぁ。なんてことはないから安心しろ」 アルトは答えると前方のトレーラーに視線を注ぐ。幸い、トレーラーにはビニールシートが掛けてあり、それをVF-25と思う人間はいないだろう。 ちなみに、フェイトは純粋にアルトを送るために乗せているのではない。もちろん償いの意味もあっただろうが、彼女のデバイスの改良は今度、大規模なOT・OTM取り入れだった。そこで、設備の大きい技研で改良及び調整をするためらしかった。 こうして2人でそれぞれ自分の世界の事などを話ながら2時間ほど車に揺られていると、ミッドチルダ一(いち)の高さを誇る『富嶽(ふがく)山』の麓まで来た。そして大した時も置かずトレーラーが門の前に到着した。 表札には『時空管理局 地上部隊 技術開発研究所』の文字があった。どうやらここらしい。 検問で簡単な確認を済ますとゲートが開き、中に入った。 入ってすぐの建物は鉄筋コンクリート製の六課よりも小さいビルで、所々ヒビが入っていた。しかし企業団の出資によって達成された予算拡大の影響か、補修と拡張工事が急ピッチで進んでいた。 VF-25を載せたトレーラーは新設されたらしい真新しい格納庫へ入っていき、自分達を乗せた車もそれに続く。 格納庫内には人間が1人もいない様だった。代わりに誘導は滑走路の誘導灯ように地面に光の道が浮かび上がり、それに沿って進むよう指示されるようだ。 トレーラーはやがて巨大な自動洗車機のような所で停まった。そしてトレーラー本体と荷台とを切り離してVF-25の乗った荷台を置いていくと、トレーラーはそのまま格納庫から出でいく。だが自分達は誘導によって格納庫内を一望出来そうな制御所の下に停車させられた。 「じゃあ帰りも送って行くから、その時は呼んでね」 フェイトは車を降りたアルトにそう告げると車を発進させ、格納庫から出ていった。 それを見送ると、トレーラーに載せられている愛機VF―25を一瞥して制御所の方を見上げた。 その制御所はそれほど大きくなく、壁にくっついた箱のように設置されていた。 そして足元にはまっすぐ伸びる光の道。どうやら地面には簡易的なホログラムテクノロジーが使われているようだ。 「・・・・・・あれに乗ればいいんだな」 光の道の終着点である制御所すぐ下のエレベーターを見つけて呟く。だがこの広さに比してのあまりの静けさに 「誰もいない格納庫は気味が悪いもんだな・・・・・・」 とSMSの整備員が整備、点検、修理と24時間体制で作業をしていたマクロスクォーターを懐かしく思いながらそこへ向かった。 (*) エレベーターはゆっくり6メートルほど登って止まる。そしてドアが開くと、白衣を着た研究者が1人、アルトを迎えた。しかし――――― (お、親父!?) その顔は自らの父、早乙女嵐蔵にそっくりだったのだ。 「こんにちは、早乙女アルト君。私はこの技研の所長をしている田所だ」 だが他人の空似のようだった。嵐蔵の巌(いわお)のような雰囲気と違って人の良さそうなそれを放っていた。 「・・・・・・よろしくお願いします」 握手を交わす。田所所長は生粋の技術屋らしい。シワの多い手には無数の傷があった。 「君の境遇は八神部隊長から聞いている。早く君の世界が見つけられる事を祈っているよ」 「はい、どうも」 しかしその静かな中、外から場違いな歓声が聞こえた。 『デカルチャー! デカルチャー!』と。 こちらの怪訝な顔に気づいたのだろう。田所が窓越しに1軒の建物を指し示す。 「今所員のほとんどが休憩の許可を受けていて、あそこに集まっているんだ。どうだ?あいつらが戻ってくるまで検査は始められないし、君も行くか?」 「・・・・・・ん、あぁ。わかった。」 1人残されても仕方ない。と、所長の後を追った。 (*) 臨時の休憩所となっている大型食堂は歓声と熱気に包まれていた。 皆一様に展開された大型のホロディスプレイの映像を見ながら声援を送っている。画面の中には自分がよく知る、緑色の髪をした少女がステージ上で歌っていた。 (そうか、ランカのセカンドライブは今日だったな・・・・・・) アルトは2日前に彼女から送られて来たメールの内容を思い出す。 ランカは六課の一員だが、現在次元世界各国でチャリティーライブを続けていた。 ちなみに、管理局の企業団の出資を含めた全予算の25%に上るライブで集まったお金は、9割近くが貧困に喘ぐ次元世界の救援物資に化けている。 「しかしなんて華(はな)だ・・・・・・」 思わず生唾を飲み込む。 容姿が、ではない。もちろんそれを否定するわけではないが、もっと、その立ち居振る舞いのほうだ。 ただ舞台に立つだけで、全ての人間の耳目を集めてしまう〝華〟。 彼女の笑顔が光の矢となって放たれる度に血が熱くなるのを感じる。 第25未確認世界を席巻していた彼女の人気は、この世界でも健在だった。 ランカの歌声は既に全次元世界を駆け巡り、超時空シンデレラの名に恥じぬ人気を叩き出している。 また、彼女によって終結した戦争、紛争も少なくない。 学者達はこの現象を『フォールド波が人の聴覚に直接作用して、理性に直接的な感動を与えている』と言う。 だがそれならフォールドスピーカーを使った全ての歌に普遍的に作用されてしまうはずだ。しかしそんな調査結果は出ていない。つまり科学的にはなかなか説明は難しいのだ。 だがアルトの様な人間には、彼女の歌がなぜこんなにも聴衆を引き付けるかわかる。 彼女の歌には、彼女を支え、愛してくれている世界に対しての無償の愛がありありと感じられるのだ。 それは人々の心の奥で忘れかけている母親の愛を連想させる。そのことが、特に戦場で荒んだ兵士達の心に響くのだ。 上からの命令で日々人を殺めたり、傷つけたりしている内に彼らは、人間より生体兵器に近くなる。そんな彼らに母の愛を思い出させるとどうなるか。 母の愛とは無論、無償の愛であり、よほど偏屈した家庭でない限りそれは自らの存在を許し、生かしてくれるものだ。それが双方敵味方を越えて存在することを思い出した彼らは、もう戦争などという愚かな事はしないのだと。 (*) 熱狂の中曲が2~3曲終わると、休憩タイムに入る。この局は国営放送だがCMを流すようだった。 人混みの中、田所とはぐれたアルトは彼を探していると、視界の端に研究員の白衣や作業員の灰色のジャンプスーツ(つなぎ)とは意が異なる茶色の服を着た女性(ひと)が写った。 「あれ、アルト君も?」 「どうやらそっちもランカ・アタックのようだな」 「うん。着いて誰もいないから、警備の人に理由を聞いたの。そしたらみんなここだって」 フェイトは苦笑を浮かべつつ言う。 『ランカ・アタック』は、第25未確認世界の『ミンメイ・アタック』に相当する。これは彼女らの歌が戦闘を止め、ほぼ精神攻撃とも取れる事からこの名がついている。 また『デカルチャー』も、第25未確認世界の言葉だ。これは元々ゼントラーディ(巨人族)の言語で、『感動』や『驚愕』を意味する。元の世界では陳腐化していたが、ここではランカが時々口にすることから彼女が持ち込んだ新しい文化として大ブレイクしていた。 「まったく・・・・・・」 ため息をつきながらテレビに向き直ると、丁度CMが変わった。 ―――――――――― 大写しになるVF-25のキャノピー。そしてどこからか流れてきた『星間飛行』と共にそれが開く。 「みんな、抱きしめて。銀河の、果てまでー!」 副操縦席で立ち上がったランカのその常套句が、労働争議中の時空管理局本部ビルに響き渡った。 直後曲をBGMに、画面が切り替わる。 「テレビの前の皆さんこんにちは。ランカ・リーです!」 ステージ衣装を身に纏ったランカが挨拶した。バックには、時空管理局のエンブレムが躍る。 「時空管理局は平和を守るっていう、すっごい大切な仕事をしています!だけど・・・・・・」 声と緑の髪が落ち込むようにシュンとなる。そこでランカの肩に手が置かれた。 手を置いた彼女は今、隣でその人が着ているような地上部隊の制服ではなく、本局の真っ黒な執務官の服を着ている。 「でも今、管理局の地上部隊は人材不足に陥っています」 そこに今度は陸士部隊の礼服を着て、画面右側から出てきたはやてがフェイトの後を継ぐ。 「地上部隊はランカちゃんのおかげでだいぶ待遇も改善されたで。それに今なら重要なポストもけっこう空いとるよ!」 「来たれ勇士達。私達は、あなた達を待っている!」 最後にバリアジャケット姿のなのはが画面上からやってきて、アップと共にレイジングハートを〝ズバッ〟とこちらに向けて大見得を切った。 「「みんなのミッド、みんなで守ろう!・・・・・・キラッ☆」」 最後に4人の声が唱和し、同時にやってきたBGMに合わせ〝なぜか〟決めポーズ。 画面がまた切り替わる。そこにはまた大きく時空管理局のエンブレムが描かれていた。 そこにランカの声が重なる。 「こちらは時空管理局広報です」 ―――――――――― 冒頭の労働争議の映像はその時撮られたものではない。1週間前に時空管理局広報部から正式に依頼されてホログラム場で再現したものだ。そのためこのCM撮影は、六課も全面的にバックアップしていた。 しかし完成版のCMを初めて見たアルトは苦笑した。 ランカは台詞を頭で演じているようだ。多分台本通りに読んでいるのだろう。これではあまり聴衆の深層心理には訴えられない。 しかし、他3人の訴えには心がこもっていた。やはりまだ来てから1ヶ月では、日々実感するであろうはやて達3人にかなうものでもなかった。 「思わざれば花なり、思えば花ならざりき・・・・・・か」 だが、これらの考察はアルトレベルの同業者にしかできるまい。 事実、周囲の人々は、 「いいぞ!ランカちゃん!」 「フェイトさん最高!」 「「デカルチャーッ、デカルチャーッ!」」 等々やんや、やんやの大騒ぎだ。 (いや?待てよ・・・・・・「フェイトさん最高!」って言ったか!?) しかし、気づいた時には遅かった。もっと早く気づくべきだったのだろう。ランカが来る前、管理局の『3大美少女オーバーSランク魔導士』として名を馳せていた『はやて』、『なのは』と並んで『フェイト』がいたことに。 振り返るとそこに麗しき金髪の魔導士の姿はなく、奥の方で席に座らせられ、困った顔でペンをサラサラと動かしていた。また、時折シャッターの閃光が彼女を白く包む。 フェイトはこちらと目が合うと、助けて欲しそうな魅惑的な視線を送ってくる。しかしアルトは、胸の前で十字を切って合掌すると、さっと身をひるがえして離脱した。 不利な体勢になったら推力を生かして戦線離脱!混戦から抜ければなんとでもなる! それが空戦のセオリーだ。 そんなアルトの戦線離脱に、フェイトは色紙に次々自分の名を書き込んでいく作業と、記念撮影をせがんでくる所員たちの要望に応えながら、小さな声で呟いたという。 「アルト君の意地悪・・・・・・」 (*) フェイトの臨時サイン会が中断したのはCMタイムが終了したためだった。所員たちは再びテレビの前に集い、ライブ会場に画面が戻ったテレビがそこの人々の熱気を放射する。 現在セカンドライブは、首都クラナガンの中央にあるクラナガンドームで開かれている。そこは普段公式野球に使われるため十二分に広いはずだったが、グランドから客席まで人で埋め尽くされていた。 絶えることのないランカを呼ぶ声。そして彼女が舞台袖から出てくると、それは一気に歓声に変わった。 ランカはその歓声を手を上げるだけで制すると、そのままマイクを〝空中〟から掴み出し歌い始めた。 <ここは『What ’bout my star? @Formo』をBGMにすることを推進します> 〝Baby どうしたい 操縦? ハンドル キュッと握っても―――――〟 彼女のクリアなア・カペラが世界を静寂に引き戻した。しかし、観客は次第にリズムに乗って体を揺らす。 少女はスポットライトに照らされながら、歌い続ける。 緑の髪が別の生物の様に躍って、汗の粒がきらきらと宝石のようにきらめく。 そしてそのメロディがサビになる頃には観客は総立ちで跳び跳ねていた。その動きは、クラナガンの地震計に記録されるほどだったという。 また、待機していた空戦魔導士達がサビ突入と同時にスタントを開始した。 魔導士達は2サビ突入寸前の歌のカウントに合わせて技を披露し、ゼロと同時に全方位にパッと散って美しい軌跡で花を添えた。 ・・・・・・しかし、聡明な読者ならもうお気づきだろう。 『なぜランカの歌という超強力AMFのなかで飛べるんだ?』と。 その秘密は、彼女が空中から取り出したマイクにある。 実はこのマイクはシャーリーの作ったデバイスなのだ。このデバイスは、待機中はブレスレット状態なので、空中から取り出したように見える。 また、攻撃的な装備はないがその他の装備は充実している。 ステージ衣装は言わずもがな、バリアジャケットであるし、バルキリーと同種のフォールドアンプやフロンティア移民船団の装備していたのと同じオーバーテクノロジー系列の全方位バリア『リパーシブ・シールド』。そしてインテリジェントデバイスのため、術者であるランカが歌に集中していても防衛機構は全自動運転できる。 中でも特筆すべきなのは『SAMFC(スーパー・アンチ・マギリンク・フィールド・キャンセラー)』と呼ばれる機構だ。これは不規則に変化するランカのサウンドウェーブの周波数を、体内を流れる電気信号から推測。推測した周波数を周囲の友軍のデバイスにデータリンクを通して伝え、そのAMFをキャンセルするという画期的な装備だった。 これにより六課をはじめとする管理局は、対魔法、対魔導兵器戦では強力なアドバンテージがあった。 その後彼女のセカンドライブは1時間以上続いたが、誰もが時間を忘れて聞き惚れていた。 シレンヤ氏 第5話 その2へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3729.html
マクロスなのは 第27話『大防空戦』←この前の話 『マクロスなのは』第28話 『撃墜』 「あら、来たのね」 スカリエッティにすら知らせていない隠れ家で潜伏していたグレイスが呟く。 彼女はその美貌に似合う凄みある笑みで微笑むと、隠れ家の回線から民間の回線をハック。刹那のうちに地球の衛星軌道上を回る通信衛星の一つを自らの支配下に置くと、その更に高みに存在する静止衛星軌道上の、ある座標へとそのアンテナを向けさせた。 (*) 第1管理世界(時空管理局本部の置かれている世界) 太陽系第3惑星「地球」 静止衛星軌道上 かつてアルト達の乗ったVF-25がフォールドアウトした宙域に、再びフォールドゲートが開いた。 ゲートは向こう側から砲撃でもされたのか、爆風がゲートから吹き出す。そして静かになったかと思えば、おもむろに何かが出てきた。 赤いノーズコーンが確認できてから極めてゆっくり出てくる。しかし機首部分であるはずのそこは、次の瞬間には赤い咆哮をあげて逆噴射を行った。どうやら強力な逆推進スラスターを括り付けていたようだった。 そして4秒近くかけてようやく緑色のキャノピーをもつコックピットが、その姿を表し始めた。 (スラスター燃焼完了。廃棄(パージ)。減速率は94%で予定値をクリア。ISC大容量エネルギーコンデンサより電力を出力、該当の転換装甲に集中。現在は機体構造維持率62%。なお低下中・・・・・・) ようやくこちら側に来たVF-27のパイロット、ブレラ・スターンは、フレームから悲鳴をあげる己の機体に起きている事態に対処するために、全力で対応する。 あちら側でフォールドゲートに突入した時間は機体全体で2秒に満たぬが、こちら側ではその時間は十数倍に引き伸ばされ、その時差が機体を、ゲート部分を断面として引き裂かんとしているのだ。 これに対処するために開発したディストーション・シールドを、艦全体に張り巡らす改良を施さんとしているマクロスクォーターと違って、コックピットとエンジンだけと最低限のそれしか装備しなかったVF-27はそのツケを払っていた。 機体の構造維持はその大部分を内部フレームと外装の転換装甲が担っているが、どちらも主機である反応エンジンの電力を供給してその強度を高めている。しかしエンジン部との時差が十数倍となった機首には、通常の15分の1程度の出力しか到達しなかった。そのため機首にあるISCのコンデンサから電力を出力し、無理やり構造維持を図っていたのだった。 もっとも当初から予想されていた事態だったこともあり、その対応は難しいものではなく、最初の対応から20秒ほど経った頃には主翼がその姿の6割ほどをのぞかせていた。 すでに機体のこちら側の慣性は吸収し尽くし、両翼の反応エンジンとも通常コネクトを果たしてISCを全力運転。ゲート断面部から新たに現れる慣性を打ち消し続けている。予定ではあと10秒ほどで機体全体が通常空間に復帰できるはずだった。 (アイツがここにいるかはともかく、ランカがいるのは間違いないな) 電子の目を通して近くにあった地球型惑星を見ると、惑星フロンティアのようにバジュラクイーンクラスのフォールドネットが惑星全体を覆い尽くしている。どうやらフォールドクォーツの資源に恵まれているようだ。それと同時にランカがそこで歌っていたのであろう期間の長さが窺える。 しかしなにより今、惑星上の弓状列島から放たれる超強力なフォールド波に、機内のフォールドスピーカーが共振して伝わる生の歌こそが、彼女の生存を声高にさえずっていた。 その歌声に安心していると、機体の受信機がいくつかのフォールド式トランスポンダ(IFF)を拾う。 どれもフロンティア船団籍。どうやら探し物以外にも思わぬ拾いものをしたらしい。 それら反応が集まる弓状列島へと電子の目を収束していると、彼女はやってきた。 『(久しぶりだな。ブレラ少佐)』 「オコナー大佐!?」 突然の声に思わずリアル(生身)の口がその叫びを放つ。 そして死んだはずの女が何時の間にか自らの電脳空間に侵入を果たしていることを認識するのに、25ミリ秒ほどの時間を要してしまう。その一瞬でローテクな通信衛星からのハッキングという大きなハンデを背負っていた彼女は、情勢をひっくり返した。 電磁妨害などの機構を使う間もなく彼のシステムは瞬時に乗っ取られ、その自意識には何十ものシステムロックがかけられた。 その数秒後にはVF-27は通常空間に復帰したが、メインシステムであるパイロットはシステムの牢獄にとらわれたままだった。 人間らしさを失い無機質となってしまったかの翼は、アップデートされていたLAI製の最新アクティブ・ステルス・システムを駆使して、誰に観測される事なく現域から離脱した。 それから10分ほど経つと、残されていたフォールドゲートから赤く、長い針の様なものが生える。しかし針は時と共にその全長を伸ばして行き、最終的には10メートルを超えた。 そして本体部分まで出現が始まると、本能からかフォールド波をばらまいて擬似的なディストーション・シールドを展開。時空差を捻じ曲げて赤い物体が高速でゲートから飛び出した。 その赤い物体─────個体名称「アイくん」は、フォールドアウトと同時に不思議な感覚を味わっていた。 クイーンからのリンクが切れたから・・・・・・ではないようだ。しかし自分達(バジュラ)にとってとても懐かしい気のする感覚だった。 アイくんはそれを『〝彼女(リトルクイーン)〟が歌っているからだ』と結論づけると、発信源である弓状列島の中心に進路をとった。 ちなみにこの時巡回任務についていた管理局のパトロール挺は、VF-27ではデフォルトのアクティブ・ステルス・システムでゲートごと観測データを書き換えられて気づかず、アイくんでは彼の発する生体電気シャミングによってシステムダウン。どちらにせよ、あまりに無力だった。 (*) 同時刻 空きビルの屋上には2人の人影があった。 「ディエチちゃん、ちゃんと見えてる?」 そうもう1人に問いかけたのは、メガネを掛けた少女だった。 しかし彼女こそ、海上のガジェット・ゴースト連合を幻術で強化している張本人だった。 彼女の魔法、IS(インフューレントスキル)「シルバーカーテン」は従来の幻術とは違って魔力素の結合に頼らぬため、ランカの超AMFも効果がなかった。 そしてディエチと呼ばれたもう1人の少女は、ある一点を見据えていた。 「うん、遮蔽物もないし空気も澄んでる。よく見えるよ」 彼女の瞳に内蔵されたスコープが、目標である管理局の大型輸送ヘリを捉える。 「でもいいのかクワットロ?撃っちゃって?あの子はただ〝歌ってる〟だけだよ」 ディエチの問いに、クワットロと呼ばれた幻術使いは微笑むと答える。 「ふふふ、ドクターとウーノ姉様曰く、あの子の歌がこのAMFの発生源なんですって。だから今後の計画のじゃまになるし、〝殺しちゃって〟だって」 まるで「今夜のおかずはハンバーグよ~」というような軽い口調で物騒なセリフを吐くクワットロに、ディエチは 「ふーん」 と無感情に返した。 (*) 次々に出現する敵の増援に、サジタリウス小隊はランカが参入してからも20分以上付き合わされた。 そして今でも空域では空戦が続いている。 しかし弾薬の欠乏と疲労の蓄積したサジタリウス小隊は、フロンティア基地から緊急出動した部隊が到着した頃には、帰投せざるをえなくなっていた。 さくらのVF-11Gは今回狙撃任務オンリーだったため、最初に陸戦型ガジェットと格闘戦をやった時に作ったダメージ以外は無傷だ。しかし魔力砲撃の度大出力を使うため、機載の小型魔力炉(MMリアクター)が悲鳴をあげていた。 その横を飛ぶ天城のVF-1Bはひどい有り様だった。さくらと違って直接戦闘の場面が多かった彼の機体は、エネルギー転換装甲なのに所々貫通孔が残り、ガンポッドも紛失していた。また、左右のエンジン出力が安定しないのか何度か編隊を離脱しそうになっていた。 そして2機の前を飛ぶVF-25は飛行を続ける機動こそしっかりしているが、その純白の翼はVF-1Bに劣らぬほどの損傷を抱えていた。 それは最新鋭機に最高レベルのパイロットと言う、理想的な組み合わせでも、敵がしかるべき装備さえ配備すれば大打撃を被るという証明であった。 だがそれより、トルネードパックである両翼のブースターと上部の旋回レーザー砲がなくなっているのに、戦闘空域外ではデッドウエイトになる追加装甲がそのまま残っている。 実はVF-25は度重なる被弾により、反応エンジンと機体本体のエネルギー転換装甲を繋ぐ配電システムが全て断絶し、その機能を完全に失っていた。 通常このまま飛行を続けると構造維持すら困難になり、最悪の場合空中分解という事すらある。 そのためアルトは機体を覆う追加装甲に電力を回し、無理やり構造維持を図っていた。 アルトは細心の注意を払いながら機体を操作する。 転換装甲のないバルキリーなど旧式のジェット戦闘機と同じだ。ミサイル1発、機関砲弾数発で大破する。 アルトは『昔の人は偉かったんだなぁ』としみじみ思った。 60年ほど前、彼らはこの状態で戦い合ったのだ。ほとんど場合で〝たった一撃で墜ちる〟ような戦闘機に乗って。 アルトは感慨に耽けりながら、そして機体を労わりながら、戦闘空域から離れていった。 (*) ユダ・システムである〝彼〟はこの戦いにはゴーストとして参加していた。 彼は満足だった。ガジェットⅡ型改のような急ごしらえの改修機でなく、元から限界ギリギリの高機動に耐えるよう設計されているこのQF2200『ゴースト』という機体に乗り換えられたことに。 しかし前回とは致命的に違う事がある。実は前回の戦闘で被った被害は、ユダ自身にまで及んでおり、記憶喪失に近い状況にあった。 ほとんどはレストアして無事だったが、それでも忘れてしまった内容は、実戦経験を数値化して蓄えられたデータだ。このデータは彼自身の経験だけではなく、第25未確認世界の新・統合軍が統合戦争より脈々と練り上げてきた戦闘アルゴリズムが主である。 それを忘れたとあっては、人間に例えるなら戦場に出たばかりで知識しかない新兵のようなものだ。おかげで今回も無人機部隊を指揮していると言うのに、その指揮と機動には以前と違って稚拙さが目立ってしまっていた。 彼は以前の最後の記憶でこちらを落としかけたVF-25を今度こそ落とすことを目標としていた。しかしVF-25には、こちらの単純な物量戦術や罠がまったく通用しなかった。 また、そうこうするうちに友軍であるガジェットは〝謎の音波兵器〟で弱体化され、他の敵に集中するうちに手負い程度には追い詰めたVF-25も撤退してしまった。 ここに至りあの機体はほんとに最精鋭であり、自分は新兵であると認識した彼は、奴を落とすため経験を積むことを最優先とした。 幸い敵には事欠かなそうだ。フロンティア基地からスクランブルしてきたバルキリーが数多く飛翔している。 そこで彼は手始めに一番動きの鈍い〝VF-1A〟という機種に狙いを絞ることにした。 VF-1Aはまだまだ経験の浅い2期生の乗る機体であり、比較的弱く映るのは当然の結論だった。もし本当に狙われたら航空隊にとって堪ったものではない。 しかし弱点とは言え後進の指導は必須なのだから、航空隊の先輩たちは全力でそれらのフォローを行っている。そのためVF-1Aが全体に占める割合は30%程度のもので、常に連携を維持していた。それに2期生達は「(先輩達の)ケツの匂いが嗅げる位置から離れるんじゃない」と教え込まれている事から、その隙を突くことは中々に困難な事だった。 しかし万事がそうであるとは一概には言えなかった。 彼は不如意にも頭出した1機に狙いを着ける。 傍受した彼らの無線によると、ほぼ無力化されたガジェットをゴースト部隊から離して迂回侵攻させていたのだが、それを発見したらしいその機は英雄的にも立ち塞ごうとしているようだ。 2期生と言えど毎度のスクランブル、そして数ヶ月前の演習空域での大規模空襲ですら持ちこたえて来たという自負を持っている。その事から多少の慢心が生まれるのは必然だった。 しかし今回はその多少が命取りとなる。敵は今までと違って、曲がりなりにも戦術を持った敵なのだから。 彼は管制として高空を飛行していたが、近衛として周囲に展開するゴースト一個編隊におっとり刀でVF-1Aを追ってきた編隊機を押さえ込むよう厳命すると、その1機にドックファイトを挑んだ。 それは高空から急降下した彼に〝上昇〟して迎撃してきた。 彼の持つ知識によれば、それは全く持ってナンセンスな機動だった。 速度の乗ったこちら(ゴースト)に比べてエンジン出力とせっかく稼いだ運動エネルギーを持っていかれるあの機体(VF-1A)。勝敗は明らかなはずだ。 果たしてこちらの放つ新型弾頭『超高初速20mm対(アンチ)エネルギー転換装甲(ESA)弾』が面白いように命中するのに比べ、敵の弾丸はかすりもしない。 そして遂に転換装甲のキャパシティを超えたのか主翼やエンジンナセルがもげる。 数瞬の後、キャノピーが吹き飛び爆散した。 しかし操縦者はキャノピーが吹き飛ぶと同時に脱出し、EXギアで飛翔していた。どうやら判断力は一人前なようだ。 ユダ・システムである彼にとってこれはまだ撃墜とは認定せず、その砲口は当然のようにEXギアに向いた。 伸び行く曳光弾。しかしそれはかわされた。 (ほう、なかなかやるな・・・・・・) 彼は初めてその敵を評価した。 元々フロンティア基地航空隊のパイロットは、全員空戦魔導士の出であり、2期生レベルだとまだ魔導士時代の戦闘スタイルを引きずっている者が多数いた。 さきほどの機動もバルキリーではナンセンスな機動だが、魔導士としてなら実は問題ない機動だった。なぜなら彼らは浮遊魔法で重力を打ち消し、水平飛行と同様の速度で、ある程度の高度までなら上昇できるからだ。 そして本来の身軽な体に戻った彼はなかなか善戦した。しかし、どんなに優秀でも所詮はBランクレベルのリンカーコア。リミッター付きとはいえ、なのはやフェイトといった強者がてこずるゴーストにユダ・システムという彼には敵(かな)いようもなかった。 戦闘から十数秒、事態は動き出した。 突然敵の音波兵器が〝止まった〟のだ。 それによりガジェットが勢力を盛り返し、再び空域をAMFで満たした。 AMFによってその魔導士の飛行速度が遅くなる。 彼はガンポッドを照準すると、一斉射した。たった1発の20mm弾に被弾した彼は、一瞬にして全身バラバラになると、血飛沫を上げて落ちていった。 この時、初めて彼の中で撃墜数1がスコアボードに記録された。 (行ける!これなら行けるぞ!) 敵は音波兵器が止まって浮き足立っている。彼は勢力を盛り返した友軍と共に侵攻を再開した。 (*) 時系列は少し戻る。 ようやく横浜上空に到達したアルトは、懸案事項を思い出していた。 『敵の大軍に突入していったフォワードの4人は大丈夫だろうか?』と。 そこで通信機を操作し、六課のロングアーチに繋いだ。 『お疲れ様です。〝早乙女〟一尉。』 画面に映る〝アルト〟。偶然自分と同じ名を持つ彼女とは、ファーストネームで呼び会う取り決めだった。 また、彼女とはある過去の境遇が同じで、なかなか馬があった。 その境遇とは、自身の性別の誤認だ。 上にも下にも男の兄弟しかいなかった彼女は、最近まで自らが男だと思い込んでいたという。 お笑い草にしかならないこの話題も両アルトにとっては切実なものであり、お互いのシンパシーは強かった。 「サンキュー、クラエッタ。・・・・・・ところでフォワードの4人は大丈夫か?」 『はい。レリックを1つガジェットに確保されたらしいですが、もう1つは確保。途中、アグスタ攻防戦時にガジェットを操作したらしい召喚士一味と戦闘になりましたが、ヴィータ副隊長とリイン曹長の援護で逮捕に成功しました』 それを聞いたアルトは六課の底力に素直に感心した。 援護があったとは言え、入局から半年の新人がこの活躍。全く持って目を見張るものがあった。 『・・・・・・なんなら通信を繋ぎますが、どうしますか?』 そう聞くという事は向こうも暇なのだろう。アルトは 「そうしてくれ」 と頼んだ。 待っている間にも機外から歌声が聞こえてくる。 外部マイクは損傷で断絶しており、気密の高い機内には通常聞こえないはずだった。しかし破損が酷かった事と、ヘリがたった10メートル先を飛んでいる事は無関係ではないだろう。 ヘリの窓からは歌い続けるランカの姿が確認できた。 ランカの方もこちらに気づいたらしく、曲の見せ場である〝キラッ☆〟をこちらに向かってやってくれた。 頷きと共にすれ違い、目前の多目的ディスプレイに向き直ると、すでに通話状態だった。 『─────お、アルトか。私が居ない間に新人達が世話になったな』 ヴィータがグラーフアイゼンを肩に担ぎながら礼を言った。 「なんて事はない。・・・・・・ところで、召喚士は?」 アルトの問いにカメラの位置が横に移動し、リインと4人、そして見慣れぬ青い色の長い髪をした女性を映す。彼女が陸士部隊から来た増援らしい。 しかしアルトの目はその召喚士に釘付けになっていた。 「子供?」 アルトは 10代(ティーンエージャー)にすら達していないであろう、その紫の髪をした少女に意表を突かれた。 『ああ。だが魔力光も魔力周波数もアグスタ攻防戦当時の記録に相違ない。・・・・・・なんだか子供をいじめてるみたいでいい気はしねぇが─────』 (お前が子供って言うな) 『─────少なくとも公務執行妨害、市街地での危険魔法使用についての現行犯逮捕だから間違いねぇ』 ヴィータは言うと、詰問している6人に呼びかける。 『どうだ? なんか喋ったか?』 ヴィータの問いにスバルが否定の仕草を返した。 しかし不意に、少女が口を開いた。 『・・・・・・逮捕もいいけど、大事なヘリは放って置いていいの?』 そのセリフに一同は凍りつく。 『なんだよ!爆弾でも仕掛けてあるのか!?』 ヴィータが詰め寄る。 しかし少女はその問いには答えず、無感情な目でヴィータを見やると言い放った。 『・・・・・・あなたはまた、守れないかもね』 そのセリフはアルトにはピンと来なかったが、ヴィータには効いたようだ。 彼女の顔が蒼白になる。 しかしアルトはこれ以上この通信を見る事ができなかった。 ロングアーチがこの通信をオーバーライドする最優先通信を繋いだからだ。 『こちらロングアーチ!そこから8時の方向、距離3キロの位置にオーバーSランククラスの魔力反応!砲撃です!』 「バカな!ここはランカの超AMF下だぞ!」 アルトは信じられない事態に、まず相手を確認する。 操縦者のその方向への振り返りに機体のセンサーが呼応して、発生地点がホロディスプレイを介して拡大される。そこには全長が2メートルほどの〝大筒〟を構えた人間の姿が映っていた。 大筒の先端では光の粒子が集束されており、何かはわからないが発砲体勢に入っていることは間違いない。 そしてその照準は間違いなく、ランカの乗ったヘリに向けられていた。物体を狙う場合は破壊設定であることは言うまでもないだろう。 また、オーバーSランククラスの砲撃ではヴァイスのヘリのPPBS(ピン・ポイント・バリア・システム)では紙くず同然である。 「メサイア!発砲までの予想時間は!?」 「6 seconds.(6秒)」 聞くと同時にアルトは機体を急旋回、スラストレバーを全開にまで上げてヘリまで戻る。 「ジャマだぁ!」 重い追加装甲がパージされ、多目的ディスプレイに『非常用構造維持エネルギー、限界まで60秒』という文字が躍る。 VF-25が〝ガタガタ〟と軋みを上げ、自機の限界を主張する。 しかし機体だけでなく無線も悲鳴をあげた。 『アルト隊長!無理です!やめてください!』 さくらの叫び。しかし修羅となった彼は止まらなかった。 そして無慈悲にも発砲された(魔力)素粒子ビームに、その機体を曝した。 バトロイドに可変したVF-25は防弾シールドを両腕で保持してPPBSをフルドライブ!着弾したビームが四方に分散する。 しかしビームは減衰するが、止めるには至らなかった。 コックピット内で最後に彼が認識したのは、分子レベルにまで分解されてゆく己の体だった。 (*) ランカにはそれは極めてスローモーに映った。 ヴァイスのいるコックピットからロックオンアラートが聞こえた。 そちらを向こうとしたとき、視界の端につい先ほどすれ違ったはずのアルトのVF-25が映り、そちらに意識が向く。 「ビーム拡散弾、散布。PPBS最大出力!全速回避!!」 ヴァイスの叫びが聞こえると同時に、三半規管が床の傾きを感じ取る。 その刹那、正面に捉えていたVF-25から強烈な閃光が発せられ、視界が白く覆われた。 普段ならば、眩しさに思わず目を細めるはずのその光景。 しかしこの時だけはなぜか目を離さず、凝視し続けていた。 光から視界が開く。 最初に目に入ったのは、炎に包まれ四散する物体。 10秒にも満たないこの時間に凝縮された圧倒的な情報量。 それにより思考は完全に停止し、〝ボーッ〟っとその現場を眺める。 管理局の国籍表示マークをつけた魚のヒレのような主翼や、透明なキャノピー。その他白や赤に塗装された大量の部品が力なく落ちていく。 その光景に自身の脳は一つの結論を導いた。 アルトが、死んだ そんな。 少なくとも緊急脱出(イジェクト)はなかった。 あり得ない。 着弾時に背中に移ってキャノピーを包むファイター形態後部ユニットはそのままだったのだから間違いない。 信じられない。 また、そこから魔力反応は感じられず、転送魔法を使った形跡はない。 嘘だ。 つまり。 そんなはずがない。 結論に。 なにかの。 間違いが、ない。 「い、や・・・いやああぁぁぁぁぁぁぁ!」 (*) 「畜生・・・・・・」 ビームの余波によってPPBSがオーバーヒート。コックピットから小さな火の手が上がって、自動消化装置の液剤まみれになったヴァイスは、よく伸びるソプラニーノの悲鳴を、つぶやきと共に聞いていた。 幸いにして敵はアルトの忘れ形見たる編隊機によって追走。もう攻撃される事はないはずだ。 しかし少女に植え付けたであろう精神的ショックは大きい。 「まだ何も言ってないよアルトくん!もう一度、もう一度『好きです』ってちゃんと言おうって思ってたのに!・・・・・・さっきの念話だって、私の事、本当に大切に思ってくれてるって感じたもん!だからここまで頑張ったんだよ!さっきの歌だって、アルトくんのために歌ってたんだよ!?ねぇ、お願いだから応えて!・・・・・・大丈夫だって言ってよ・・・・・・」 耐圧ガラスを叩いているのであろう鈍い音と共に、その悲痛な叫びが後頭部に届く。それは慟哭にとって変わられ、悲しみを振りまく。 このパイロットという畑に来てそれなりに長いヴァイスから見ても、アルトの生存は絶望的だった。緊急脱出も、転送魔法も、シールド魔法の類も魔力反応の残留すら感じない。 例えこの魔導世界であろうと、それらがなければ大破した機体から操縦者を守る術はない。 彼女を励ませるように何か声をかけてやりたかったが、何もその材料は存在しなかった。 しかし声をかける材料は意外と簡単に見つかった。それが良い事か悪い事かに関わらず。 無線から入荷したその材料に歯噛みし、彼女に唯一してあげられることは自ら直接伝えに行くことだけだと席を立った。 (*) 気づくとコックピットから出てきたのか、目の前にヴァイスの姿があった。どうやら自分はヘリの床に座り込み、膝を抱えて小さくなっていたようだ。 「・・・・・・すまん、こんな時にこんなこと頼みたくないんだが・・・・・・歌ってくれ。AMFが消えて勢力をぶり返したガジェットが押して来てる。もう戦闘空域は三浦半島上空になっちまったらしい。頼む、これ以上〝犠牲者〟を出さないためにも・・・・・・」 ヴァイスが頭を下げて頼んでくる。そんな彼の眼には、涙があった。 (・・・・・・あぁ、悲しいのは自分だけじゃないんだ) 〝自分にはやることがある。〟と自らにムチ打ったランカは立ち上がり、歌い始めた。 〝─────あなたの言葉をひとつください 「さよなら」じゃなくて・・・・・・〟 その歌声は聞く者に、知らず知らずのうちに涙を出させる旋律であった。 私はずっとそばにいた。微笑めば繋がっていたはずだった。六課のみんなと、全ての人がひとつに調和していたあの日々。 ずっとそばにいたかった。でも、どんなに声に託しても、もうあなたまで届かない・・・・・・ 〝蒼い 蒼い 蒼い旅路・・・・・・〟 ―――――――――― 次回予告 姫の悲しみを見たアイくんの逆襲 そしてランカの歌が消え、窮地に残されたフロンティア基地航空隊 次回マクロスなのは第29話『アイくん』 「・・・あら、あなたがアイくん?」 ―――――――――― シレンヤ氏 第29話へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3594.html
マクロスなのは 第14話『決戦の果てに・・・・・・』←この前の話 『マクロスなのは』第15話「魔導士とバルキリー」 後方のはやては爆撃のチャージに入っていた。 「『ホークアイ』、敵の正確な座標を送ってください!」 『了解。二佐の火器管制デバイス(はやての場合はリィンフォースⅡ)へ座標を送信します。1発でかいのを頼みますよ!』 「了解や。任しとき!」 「・・・・・・来ました!未来位置予測開始・・・・・・着弾位置、高度1万メートル。座標、0120-333-906。30秒以内に爆撃してください!」 リインフォースⅡが報告する。 (なんだか聞いたことある番号やな・・・・・・) 一瞬思考を巡らせたはやてだが、今はそんな時ではない。先ほどと同様、合計6つの魔法陣を展開。時間がないため負担が大きいが予備チャージ と詠唱を破棄する。 「フレース、ヴェルグ!」 すると魔法陣より再び白い光の奔流が発射される。しかし予備チャージしなかったので同時にデバイスの魔力コンデンサがオーバーフローして セーフモードに突入した。 バリアジャケットを除く全ての魔法が消失し、融合するリィンの飛行魔法で何とか高度を保つ。 そして詠唱破棄したときの全身に来るピリピリとした痺れにも似た痛みに耐えながらAWACS経由のJTIDS(統合戦術情報分配システム)の戦術俯瞰図を流し見る。 そこではバルキリー隊と魔導士各隊が指示通りの位置に防衛ラインを構築している様子が伺えた。 範囲攻撃に特化した自分はこれから起こるであろうガジェットとの戦闘への参加は、この一撃が最初で最後となる。 確かに全く関与しないわけではないが、それは指揮任務であって実際に目視して戦う彼らとは次元が違う。 彼女は心の中で『みんな頑張ってや!』とエールを送ると、意識を誘導に集束させた。 (*) ゴーストは高空へ。ガジェットは低空にそれぞれ分かれたため、集合したフロンティア基地航空隊は高空にて迎撃態勢に入っていた。 演習に参加した25機の内15機が演習で撃墜され、演習中止までフロンティア航空基地で整備していた。 そのため迎撃するフロンティア基地航空隊の戦力は残った9機(ライアン二尉は現在急行中)と、付近に警戒配備されていた2期生操るVF-1A部隊25機の合計34機。 50を超えるゴーストを相手にするには少し心許ないが、これでも現状出来うる限りの全戦力だった。 しかしそれでも隊の士気は高い。なぜならMMリアクターは一定時間無負荷で休ませたため満タンになっているし、弾薬もVF-1A部隊の持ってきた実弾を補給、換装していた。 そして何よりスペック上ではなく、本当に高ランク魔導士部隊と対等以上に渡り合える事が証明された事が大きかった。 彼らの横を白い光の奔流が通りすぎていく。はやての魔力爆撃だ。 それは遥か前方で炸裂すると、敵をその圧倒的な魔力衝撃波で破砕していった。 この凄まじさに隊の者は一様に息を飲む。 『自分たちはあんなものに狙われていたのか・・・・・・』 と。 幾つかの編隊に分かれていたゴーストだが、その衝撃波に触れた瞬間粉微塵になる。 あのゴーストはどうやらリニアレール攻防戦の時の自律AIでも、最新ゴーストの純正AIである『ユダ・システム』も搭載していないようだ。おそらくガジェットの物を流用して一本化しているのだろう。 狡猾な彼らは本来なら退避する所だが、愚直なまでに直進。その半数ほどが撃破された。 『すげぇ・・・・・・』 2期生の1人が呟く。 VF-25のセンサーによると、それは5発でキロトン級の対空反応弾2発に匹敵する空間制圧力を示していた。 だがアルトはいつの間にかディスプレイから目を離し、その〝花火〟に見とれていた。それは破壊の光だが、反応弾と違ってただひたすら美しい光景だった。 『こちら『ホークアイ』。今の爆撃によりガジェットは4分の1、ゴーストは3分の1が撃破された。今後爆撃の支援はない。各隊市民の安全を確保し、敵を撃退せよ!』 『『了解!』』 ホークアイの指令にこの空を駆け、戦う者達の声が唱和した。 同時にゴーストから中距離ミサイルが雨あられと発射される。その数、250以上。 『迎撃ミサイル発射!』 間髪入れぬミシェルの掛け声に各機から6発ずつ、合計で204発の中HMMが発射され、ゴーストの発射したミサイルへと突入を敢行していった。 (*) 低空域 フロンティア基地航空隊と違って長距離誘導兵器のない魔導士部隊は、目視照準で己が魔力を込めた砲撃を運河のごとく攻め寄せるガジェットに送り込んでいた。 しかしまだどこからか送られているらしく、ガジェットは減らなかった。 また、演習で生き残り空中に残った魔導士は約80名。撃墜組は遠い所に集められて来るのに時間がかかる。それに来た所で民間人の退避と、新たに出現した陸戦型ガジェット(Ⅰ型及びⅢ型)の対応に追われるだろう。空への増援は望みようがなかった。 防衛ライン上ではひっきりなしに魔力砲撃と無線が飛び交う。 『こちら第1小隊、あれから2人やられた!八神隊長、早く増援を!』 『被害が大きい第1小隊は第2小隊と交代。第3小隊は交代を援護しつつ─────』 『こちら第14小隊、敵が多すぎる!高町空尉に援護砲撃を要請する!』 『こちら高町なのは。現在中央で手一杯なので支援砲撃はできません!〝宮原君〟、教導を思い出して、何とか持たせて!』 『り、了解しました!第1、第2分隊で左右に展開!全力で迎撃!なのはさんはオレらを覚えてるぞ!叱られたくなかったら体を盾にしてでも、奴らを決して後ろに通すな!』 『『了解!』』 『ワレ第10小隊第1分隊。孤立した!至急援護を!』 『こちら独立遊撃隊のフェイトです。第10小隊第1分隊、そこを動かないで!今行く』 現在魔導士部隊は14の小隊に再編成され、旧市街(廃棄都市)を守るため南北に小隊間を500メートル間隔にして並んでいる。 両側からこぼれるガジェット逹もいるが、このラインを放棄したら旧市街に現在の10倍以上の数のガジェットが雪崩れ込むことになる。おこぼれは地上派遣隊(撃墜された演習参加者)に任せるしかなかった。 また、初動が早かったため即座に防衛ラインを築けた魔導士部隊だが徐々に押されて来ていた。 そして遂にラインにほころびがでてきた。 『こ、こちら第12小隊、ガジェットにラインを突破された!突破された穴が塞げない!支援を!』 『こちら第11小隊。手が回らん。わかってくれ』 『こちら第13小隊。すまないがこちらも無理だ』 フォローするはずの左右の小隊も自分の持ち場だけで手一杯だった。そこに他から無線が入る。 『こちら特別機動隊空戦部隊だ。第12小隊、これより支援する』 演習中、ガジェットの出現に備えるために温存されていた地上部隊きっての対テロ特殊精鋭部隊『特別機動隊』が遂に到着したのだ。 彼らの到着に戦線の穴が塞がれる。しかしこの濃度のAMFの中では既にラインを突破した20機を超えるガジェットまでは手が回らない。 『誰かラインを抜けたガジェットを迎撃して!』 ホークアイとともに指揮を任されているはやてが無線の向こうから指示を飛ばす。しかし前線の誰もが手が離せない状況だった。 だが後方から飛来した紫と青白い2つの魔力砲撃がそのうち10機近くのガジェットを一瞬で葬った。 急行してきたのはシグナムとライアンのVF-11Sだった。 『『隊長!』』 機動隊の面々が歓喜の声をあげた。 (*) シグナムとライアン、そして特別機動隊空戦部隊の参入により徐々に戦線を盤石なものへと変えつつあった。 『ライアン、そっちは任せたぞ』 「了解。隊長こそ抜かれないで下さいよ」 ガウォークに可変したライアンのVF-11Sとシグナムの2人は左右に分かれて敵へと斬り込み、最も敵の集まる中央と少数の敵が展開する左右の3つに分断する。 そんな2人の分けた左右のエリアを制圧するは特別機動隊の魔導士達だ。 元々同じ部隊の一同は絶妙な連携で敵を排除していった。 そして中央は本隊の鶴翼陣形によるクロスファイア(十字砲火)によって撃破されていった。 (*) ライアンは愛機VF-11Sで担当のガジェット群を切り裂いていく。しかし撃ち漏らした1機がファイター形態のVF-11Sに特攻を仕掛けてきた。 ファイター形態ではエネルギーの大半を推進に使うため、アドバンスド・エネルギー転換装甲の出力が下がって耐久性はバトロイドの時の10分の1以下に低下する。 これは他で例えると20世紀末の重装甲車程であるが、例え人間大の物体であっても相対速度が音速を超えているだけで大破は免れない。 ガウォークに可変するも、もはや回避は間に合わないと見たライアンは反射で目を瞑ってしまう。しかし覚悟した衝撃はいつまでたっても来なかった。 目を開けるとキャノピーの外には懐かしい顔があった。 『よう、ライアン。危なかったなぁ』 彼がいつものお気楽調で言う。 彼─────ウィリアム・ハーディング三等空尉はライアンが特別機動隊に所属していた頃の同僚で、彼とライアンは同部隊で名の知れたコンビだった。 彼は転送魔法のエキスパートであり、同隊では幾多の戦闘を共に駆け抜けてきた。 どうやら、彼の転送魔法に救われたらしい。見るとさっきまで自分のいた位置にミッドチルダ式魔法陣が展開されていた。 「ああ、サンキュー。ウィル」 彼は手をヒラヒラさせると 『気にするなって』 とあしらった。 そんな彼の後ろにキラリと光る物を視認した。ガジェットだ。どうやらウィリアムを狙っているらしく、急接近してくる。 ライアンはスラストレバーを倒して即座にバトロイドへ可変すると、何が起きたか分からない友人を尻目に彼の背後のガジェットとの間に割って入った。 それと同時にガジェットのレーザーが放たれる。ライアンはそれをバトロイドの左腕に装備した防弾シールドで防ぐと、間合いを見て回し蹴りを放った。 空を切り裂き高速でやってきた巨大な足に蹴り飛ばされた哀れなガジェットは、急速に金属部品へと還元されていった。 「借りは返したぜ」 ライアンが外部フォールドスピーカーを通して伝えると、ウィリアムは 『相変わらず律儀な奴だな、お前は』 と笑った。 (*) その後再会したこのコンビは、後の手本となる画期的な戦法を編み出す。それはバルキリーと魔導士の連携だ。 魔導士はなのはやフェイトのようなハイクラスリンカーコア保有者以外は絶望的なまでに殺傷設定の攻撃や、連続する強力な物理衝撃を伴った攻撃に弱い。だがバルキリーの陸戦兵器並の耐久性には定評がある。 またバルキリーはレーダー等が補助するがファイター、ガウォーク形態の時は圧倒的に視界が悪い。しかし魔導士はなんと言っても生身なのでそんな制約はない。 こうして短所が相殺されると長所が生きてくる。 バルキリーでは操縦者はバルキリーと常にコネクトし、武装やその他に魔力を使ってしまう。そのためリンカーコアが最低Aクラスでなければまともな魔法は使えない。一方魔導士はバルキリーとは違い、各種魔法(高速移動魔法や転送魔法など)が豊富だ。 バルキリーも常時、クラスBのリンカーコアにしてクラスAA以上の砲撃力。撃ちっぱなしミサイルの大量使用による制圧力。そして高い耐久性に汎用性。 こんな長所を持つ両者が手を組むとどうなるか。彼らはその答えを示した。 (*) 雨のように降り注ぐレーザーの弾幕の中を突入していくVF-11S。その後ろにウィリアムが続く。 VF-11Sはウィリアムの最高速度である亜音速に合わせており、エンジン出力に余裕ができたため、余剰エネルギーはPPBSと火器に回されている。 そのため前部に展開したPPB(ピン・ポイント・バリア)の出力は4割向上し、この弾幕の中でも耐え抜く。また魔力砲撃の出力も2割ほど向上し、火力と防御力がパワーアップした。 ウィリアムとしても盾代わりがいて安心だ。 しかし通常この速度で飛ぶと、ガジェットはその数と機動力に物を言わせて多方向から攻撃してくる。 その場合加速して振り切るか可変して迎撃することが通常の対処法だ。 今回もガジェット数機がライアンの死角から攻撃しようと忍び寄る。 しかし彼らは後ろで警戒するウィリアムによって発見、迎撃が行われた。 彼はエンジンノズルの真後ろに居るため、青白く光る粒子状の推進排気に曝される。しかしこれは悪い訳ではない。ミッドチルダ製のバルキリーや今のVF-25は推進剤を完全魔力化している。 これは圧縮した魔力を噴射して反動を得るという効率の悪い推進方式だが、今回は好都合だ。魔導士から見れば圧縮した魔力をわざわざ(予備)チャージせずに受け取れるのだ。 仮にこれが莫大なチャージ時間を要するなのはのスターライトブレイカ-であっても魔力のフィードバックやデバイス冷却を無視すればカートリッジを使わず10秒毎。エクセリオン状態のディバインバスターであれば1秒毎で速射できる。となれば通常の魔力砲撃など理論上常時照射すら可能なのだ。 クラスAAのウィリアムの魔力砲撃は空冷の影響もあってまるで速射砲の如き驚異的連射速度で撃ち出され、敵を残らず叩き落とした。 ライアンは死角を心配せず、前方の敵にだけ集中すればいいためずいぶん気楽だ。 2人はそのまま分散していた敵を追い回して暴れ回る。そして敵が包囲作戦に移ったと見るや敵中真っ只中で即時転送魔法を行使。脱出した。 突然目標を見失ったガジェットは一瞬棒立ちになる。そこに集中するは後ろに控えた本隊の130(演習参加組80人、特別機動隊50人)近い魔力砲撃だ。 〝たくさん飛ぶ蚊も集まって止まってしまえば叩きやすし〟 はやての発案のもと実行されたこの囮作戦は、なのは達オーバーSランクを含め魔導士部隊だけでもバルキリー隊だけでもできない。双方が手を組んで初めて実現出来る作戦だった。 しかし敵は多い。まだまだガジェットはたくさんいた。だが遂に高空より援軍が到着した。 その援軍は青に塗装されたVF-11SGを先頭に編隊を組んでいる。 『こちらフロンティア基地航空隊。上空のゴーストは掃討した。これより援護する!』 放たれる大量のミサイル。 逆落としに迫るミサイルにガジェットは一瞬にして火葬にされた。 この時、初めて防衛側は優勢になった。 (*) 時系列は戻って演習中止直後 地上では旧市街(廃棄都市)のスタジアムから近い「核シェルター」への民間人の誘導と避難が進んでいた。 しかし出現した陸戦型ガジェットがそれを襲わんと市外から迫る。 そこで総合火力演習に参加していた陸士達は民間人の安全を確保しようと奮戦していた。 陸士部隊の中には約3ヶ月前にリニアレール攻防戦で活躍した第256陸士部隊もいた。 その部隊でも同攻防戦でロストロギアを守りきった第1分隊隊長であったロバート・ジョセフ准尉は昇進し、小隊を任されていた。 彼の小隊はガジェットを市街に入れぬよう市外に広がる森林に防衛ラインを設定。踏み止まって迎撃していた。 「ロバート隊長、北東40メートル先よりガジェットⅠ型が8機、Ⅲ型が1機接近中。」 声を潜めた観測班の報告を受けたロバート三等陸尉は、小隊に指示を発する。 「Ⅰ型には89式かMINIMI(ミニミ軽機関銃)で対応しろ。Ⅲ型は俺が吹き飛ばす。いいな?」 彼の部下は 「了解」 と応ずると散開していく。 第97管理外世界のJSSDF(日本国陸上自衛隊)の装備をまるまるバリアジャケット化した彼らの緑に溶け込む迷彩は、日本型の森の色彩に合って更に威力を発揮。すぐにどこへ行ったか見えにくくなった。 続いてロバートは自らの愛銃である89式小銃に指令を発する。 「『エイトナイン』、ランチャーパック装備」 『Alright.』 89式小銃のハンドガード下にM203グレネード・ランチャー(米軍の装備する40mmグレネード弾発射機)の口径を小さくしたものが生成された。 彼は弾帯に付けられたパウチを探ると1発の弾を取り出す。それはベルカ式カートリッジシステムの大容量カートリッジ弾だった。だが少し違う。弾頭の部分に後付けの信管が着いているのだ。 ロバートは信管を遅発に設定し、ランチャーに装填。草に隠れて伏せ撃ちの姿勢になる。彼の突然の出現に驚いたのか蛙がピョコピョコと逃げていく。その逃げていく先に敵を視認した。 同時にこちらへと進撃するガジェットに向かって部下達の銃撃が始まり、にわかに騒がしく動き回る。 頭の悪い〝あいつら〟は、多方向同時攻撃に対して一瞬パニックに陥るのだ。 (まったく馬鹿で助かる。バジュラじゃこうはいかないからな・・・・・・) 彼は以前の職場を思い出す。 マクロスフロンティア船団の新・統合軍『アイランド3・地上防衛隊』に所属していた彼は、第2形態のバジュラの大群が船内で暴れた際に同船で必死に市民を守ろうとした1人だった。 (しかしなんで脱出挺なんかに避難民を誘導しちゃったかな・・・・・・) 彼はそう考えて思考の脱線に気づいた。 ロバートは邪念を振り払って意識を集中する。そして目標を狙うと発射機の引き金を引いた。 ひゅぽんっ シャンパンの栓を抜いたような音をたてながら、魔力(で発生させた電磁気)によって加速されたカートリッジ弾が発射された。 音はショボいが、その実音速で飛翔するカートリッジ弾は目標であるⅢ型に着弾した。 しかし遅発のためシールドと装甲を破って内部に侵入。そこで強制撃発すると内包する魔力を解放した。 内側から文字通り吹き飛んだⅢ型。そして部下達がⅠ型を撃破したことを確認すると一息入れた。 そして自身のインテリジェントデバイスである愛銃『エイトナイン』に礼をいう。 「いつも補正ありがとな」 『No problem. This is my job.』 「ふっ、生真面目なやつだ」 彼は銃身を擦ると笑いかけた。しかし休憩もそこそこ再び観測班から通信が入った。 「続いてガジェットⅠ型が5、6・・・・・・くそっ!24機!Ⅲ型も7機確認!続々増加中!」 さっきの数程度なら小隊単位で対処できるが、これだけ増えると手に負えない。 「佐藤分隊、吉田分隊、共に後退しろ。ポイントデルタに集合だ。両隣の第4,6小隊にも後退の旨伝えろ」 隊の皆に指示を出すと、自らも伏せ撃ちの姿勢から起き上がり後退する。 バリアジャケットである各種装備(ヘルメットや防弾チョッキ、野戦服)は純正の物より軽く、物理・魔法攻撃に強く、コンパクトにできていた。 そのため例え森林であっても動きに支障はなかった。 (*) 1分後 ポイントデルタ─────つまり旧市街入り口にロバートが到着した時にはすでに小隊全員の集合が完了していた。 周りを見ると両隣だけでなく、森に展開していた第256陸士部隊全ての小隊が後退していた。 しかし幸いなことにどこも戦略的後退で被害はないようだった。 (*) ロバートの部隊はその後市街入り口にて水際戦をやることになった。 任務はできるだけ時間を稼ぐこと。その間に残りの部隊は後方にトーチカ(防御陣地)を設営する。 幸い入り口付近に木はなく、森から入り口までの間30メートルほどが比較的開けているため間を渡ろうとする移動物の迎撃は容易だ。 また、入り口以外の場所は当時戦時中だったためか鉄条網(100年以上放置されても錆びていないことから〝鉄〟製でないため、この表現が正しいかわからないが・・・・・・)が張り巡らされており、実質的な入り口はこの付近では唯一だった。 部隊は入り口の両隣に建ったビルの2階と道路に展開する。 道路は遮蔽物がなかったので、特殊合金のためか100年経っても原型を保っていた車3台を押してきて横倒しにし、盾代わりとした。 車の背後に隠れたロバートは部下がしっかり展開しているか確認する。 今、彼の小隊の全ての89式小銃にランチャーパック(15mmカートリッジランチャー)が装備されている。 しかしこれらは彼らの魔力によって生成したものではなく、工場で生産されたものだ。 魔法で物を生成するにはインテリジェントデバイス、またはアームドデバイスの補助と、クラスB以上のリンカーコア出力が必要なのだ。 だが大半の隊員は量産された安価なストレージデバイスでクラスCの者が多い。 予算が増えても隊員のリンカーコアの出力が上がるわけではない。昔も今も陸士は空戦魔導士と違って泥臭く、大変な職場だ。そうなると空にいるディーン・ジョンソンのようなポストを狙って本局から来た転職組に代表される優秀な人材は陸士にはならなかった。 しかし昔と違って今はミッドチルダの誇る工業力が彼らを支えていた。 ちなみにロバートの装備するインテリジェントデバイス『エイトナイン』は支給品ではなく、彼が大枚叩(はた)いて買った貴重な代物である。 閑話休題。 小隊は4挺のMINIMIと21挺の89式小銃を保有している。MINIMIは面制圧を得意とするため両ビルに配備され、虎視眈々と待ち受けている。 現在ロバートの小隊は道路に13人、両隣のビルに6人ずつ分散配置されており、上手く立ち回れば撃墜組が到着する20分後(撃墜組は演習空域 の外まで転送されていたため時間が掛かる)まで足止めが効くはずだった。 そしてついに、奴等は姿を現した。 ガジェットⅠ型が数十機、一斉に森から姿を見せたのだ。 「撃ち方始め!」 彼の号令が飛ぶと、MINIMIや89式小銃が一斉に火蓋をきった。 魔法の世界とは思えない〝タタタッ〟という喧しい連発音(これはできうる限り微小な魔力で無理矢理電磁気を産み出しているために発生する音で、〝断じて〟設計者の趣味ではない)。 超音速で飛翔する5.56mm徹甲弾によってガジェットは確実に倒され、骸を中間地点にさらしていく。 銃撃が小康状態になった。 どうやら第1波は重武装、重装甲のⅢ型の姿がない事から斥候部隊だったようだ。 時を置かず、次はⅠ型、Ⅲ型の連合部隊がやってきた。Ⅰ型はともかくⅢ型は通常の徹甲弾ではダメージが少ない。 ここで役立つのが新開発のランチャーパックだ。 ロバート達は待ってましたとばかりにⅢ型にカートリッジ弾を撃ち込む。 一番前にいたⅢ型は他の隊員からも放たれたカートリッジ弾数発を受けて擱座。後続もほとんど同じ運命をたどった。 「圧倒的ではないか我が軍は!」 ロバートの部下である佐藤曹長が高笑いながら言う。確かにこの分なら後方のトーチカはいらないかもしれない。そう思い始めたロバートだったが、 こういう快進撃は長続きしないのが世の常だった。 その2へ
https://w.atwiki.jp/ggame/pages/252.html
マクロスエースフロンティア 簡易紹介 「マクロス」作品がプレイステーション・ポータブルに集結!! プレイヤーは1パイロットとなって、「超時空要塞マクロス(TV版・劇場版)」 「マクロスプラス」「マクロス7」「マクロスF(フロンティア)」の各作品の名場面を好きな時代から体感できます。 (製品情報から引用) データ 公式サイト あり、製品情報 発売元 バンダイナムコゲームス 開発元 ジャンル 3Dアクション 対応機種 PSP 発売日 2008年10月9日 価格(税込) 5040円 廉価版 2009年9月17日に2800円で発売 キャラクターデザイン シナリオライター 音声量 恋愛要素 主人公 4人の男女から選択後、名前と年齢入力可能 備考 乙女@一般ゲーム総合スレッド その5 445 名前:名無しって呼んでいいか? :08/10/10 20 10 04 ID ???? なんかマクロスがオリジナル女キャラが使えるとか 親しくなったら頬染めるとか聞いたんだけど萌えるんだろうか 481 名前:名無しって呼んでいいか? :08/10/12 00 28 07 ID ???? 一作も見たことなくてプレイしたけど、クリアするだけならあまり難しくはないし、わりと面白いと思う。 私は女A&男B&男オペレーターでやってて、好感度4ぐらいまで上げたけど、戦友に毛が生えたぐらいの関係が好きな自分は十分ニヤニヤしてるよ。 もっと上げたらデレると思う。 といっても、そういうセリフはミッション前中後の一言ぐらい(だと思う)。 三角関係になるらしいけど、それっぽいセリフは今のところ聞いてない…… 関係図をみる度に、パートナーとオペレーターは女主に好意を寄せまくってるのに パートナーとオペレーターは友情がちっとも芽生えてなくて、ギスギスしてるんだろうなーと思うとちょっと笑えるw もしかしてこれが三角関係要素なんじゃ……と思ってしまったけどw 560 名前:名無しって呼んでいいか? :08/10/15 11 37 13 ID ???? マクロスの女主人公に対する柿崎の態度クソワロス 987 名前:名無しって呼んでいいか? :08/11/12 21 07 16 ID ??? マクロスエースフロンティアって乙女要素ある? 信頼度があるから甘い台詞とか 988 名前:名無しって呼んでいいか? :08/11/12 21 54 59 ID ??? 眼鏡オペレーターがいいクーデレ?だった。 個人的には禿萌えだったけど ステージ開始時や終了時の台詞ぐらいなので、 このスレ的萌え要素を求めてやるゲームではない。 がっつりバトルアクションものを遊ぶついでに 脳内補完で萌えを楽しむ程度。 乙女@女主人公一般ゲーム総合スレッド その13 154 名前:名無しって呼んでいいか? :10/12/17 03 06 27 ID ??? マクロスの前作やったことあるから書いてみる 萌えるポイントは戦闘中やその前後に一声かけてくれることくらいなんだけど(あとは同時攻撃) 基本異性はコナかけてきて同性は友情&信頼なんだよね(つーか好感度の表記がLoveとconfidence) と言っても原作で色恋沙汰に興味がないタイプのキャラはとことんマイペースだし からかい半分というか挨拶代わりで本気じゃないなって感じのキャラもいるし あとさすがに妻帯者は腕を誉めてくれるだけだったw 主人公だけを使ってる分には主人公とキャラとのやり取りはあっても 原作再現ステージくらいしかキャラ同士の掛け合いがないし 好感度最大になった時の台詞もあくまで気の合う仲間って解釈も出来るし 「なんでその子を誘ってんのよ」的な修羅場っぽさとか気まずさはなかったな 新作で追加される学園モードがどうなるかは未知数なんだけどw 上記を踏まえると無難に友情で終わりそうな気もする でもイベント起こる対象がFのメインキャラ三人だけっぽいし結構はっちゃけてくるかもしれない まあ問題は後々Fの映画の後編が収録されて 学園モードも強化されたものが出るんじゃないかって事なんですけどね…。 乙女@女主人公一般ゲーム総合スレッド その13 578 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/02 21 14 58 ID ??? マクロスゲー学園モード情報おおざっぱなまとめ 一周目はTV版ルート固定っぽい 好感度が大きく上がるイベントでは声あり(フルボイスではなくパートボイス) TV版再現ルートだと容赦なくメガネ割れる、前作に引き続きチュートリアルでも景気よくメガネ割れる。ミシェェェエル! 二股してると嫉妬イベントありっぽい?(未確認) 学園モードで好感度上げたキャラはキャンペーンモードでも仲良し状態 キャラEDはあるけど文章のみ? イベント絵はぼちぼちあるっぽい 593 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/04 00 39 57 ID ??? とりあえずマクロスプレイ中 まだ途中だけど、学園モードいいね! 主人公が空気じゃなくちゃんと女の子として扱われて感動した 不覚にも勉強イベでミシェルに萌えたよ 596 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/04 02 54 42 ID ??? ミシェルのヤキモチイベントとかあったらレポよろ 628 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/04 23 14 18 ID ??? 593じゃないけど、アルトの嫉妬イベはあったよ 汎用だからか相手の名前(自分の時はミシェルだった)出てこなかったが、「何であいつと仲良くしてんの?」みたいな話だった 三角関係ピークだったとはいえ、バレンタインもクリスマスもミシェルとだったのにこの言われよう ちなみに嫉妬イベ起こるとMP0になるから地味に辛い 633 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 00 38 44 ID ??? マクロス、ミシェルクリアした やっと三週目のルートでミシェルEDが見れたよ 告白きたああぁぁぁぁぁよっしゃああぁぁぁぁぁ 636 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 01 04 05 ID ??? EDというか告白って声あり? 638 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 01 37 06 ID ??? 声付きだよ一応スチルも付いてる 「行方不明の俺の恋を見つけてくれたのは、おまえだったよ…」 一瞬悶えた 640 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 02 33 51 ID ??? マクロス自分はミシェルとアルトクリアしたんでおっさんトライアングラーに挑戦中 メインキャラより外出イベント少ねー SMSルートでブレラと変なフラグ立ったんだけどEDあったりするのかな 641 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 03 27 16 ID ??? アルトも告白あり? 642 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 09 37 48 ID ??? 640じゃないが、アルトは告白なし アルトと一緒にお空でランデブーED 643 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 10 34 34 ID ??? お前だけが俺の翼だ!とは言ってくれないのか 644 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 10 49 57 ID ??? 流石にアルトにその手のED用意すると阿鼻叫喚の地獄絵図だろ。。。 作品をとりまく人達的に。。。 645 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 11 00 17 ID ??? 原作ヒロインたちですら2人1まとめであのセリフだからな 言われたら言われたで微妙な気持ちになりそうだ 656 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 16 12 24 ID ??? 上のレス見るとマクロス面白そうなんだけど アニメまったく見ない自分なので、キャラとかストーリーとか設定とか全然分からないんだよね そういう人でも楽しめる? 659 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/05 21 37 57 ID ??? キャラゲーだからちょっと厳しいかもなぁ 元のアニメは変形する戦闘機型メカでの戦闘と歌と三角関係がウリのシリーズだし ゲーム自体もシリーズのファン向けで学園モードはオマケの メインはあくまでシューティング部分だし オマケだけを延々とやり続けるつもりなら流石にボリューム不足に感じるかも (アニメのキャラじゃなくてゲームオリジナルのキャラもいるから攻略対象も多いんだけど) まあいざプレイしてみたらシューティング部分が気に入ったり キャラ気に入ったしアニメも見てみようって感じに目覚めるかもしれないけどw ゲームの情報サイトとかでどんな感じか調べてみてからのがいいかも 677 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/06 18 06 06 ID ??? 640 遅レスだがブレラとのイベントあるのかw もしEDあるなら買いたいから、時間あれば教えてくれ 678 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/06 19 48 18 ID ??? ブレラは分からん 本スレでもまだ報告上がってきてないし グレイスに無表情でオイル塗ってる(CGつき)誰得イベントはあったらしいけどw 679 名前:名無しって呼んでいいか? :11/02/06 22 03 59 ID ??? ブレラは選択肢イベントとりあえず2つあったよ でも2回目失敗したからか時間切れだからかでフラグ消滅したっぽい
https://w.atwiki.jp/cscs/pages/3002.html
特徴 マクロスゼロ系を持つキャラ サラ・ノーム《mc3rd/mc5th》 工藤シン マオ・ノーム ノーラ・ポリャンスキー ロイ・フォッカー《mc4th》 アリエス・ターナー エドガー・ラサール 中島雷造 D.D.イワノフ ハスフォード ケイティ ヌトゥク
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3636.html
マクロスなのは 第19話『ホテルアグスタ攻防戦 後編』←この前の話 『マクロスなのは』第20話「過去」 オークションが終わって隊長陣の警備任務が解けた頃、地上部隊の技研の調査隊がすでにガジェットの破片の調査を開始していた。 「・・・・・・えっと、報告は以上かな?現場の調査は技研の調査隊がやってくれてるけど、みんなも協力してあげてね。あとしばらく待機して何もないようなら撤退だから」 普段の動きやすい青白の教導官の制服に戻ったなのはが、フォワードの4人を前に告げる。 ティアナ達は返事をすると、きびきびと陸士部隊の土嚢の撤去や調査隊の手伝いに散っていった。 (*) ホテル内の喫茶店 そこには警備を終えて一息入れているフェイトとはやて、そしてオークションが終了して手持ち無沙汰になったユーノが仲良く談笑していた。しかし、そこで少し寂しい話題が提供された。 「そう・・・・・・ジュエルシードが・・・・・・」 「うん。局の保管庫から地方の施設に貸し出されてて、そこで盗まれちゃったみたい」 「そっか・・・・・・」 寂しそうな顔をするユーノ。仕方ないだろう。彼がその災悪の根源であるジュエルシードを掘り出した張本人なのだから。 「まぁ、もちろん次元の海は本局が目を光らせているし、地上も私たち六課が追っていく。だから必ず見つかるよ」 「・・・・・・うん。ありがとう」 そこに、この話題には沈黙を決め込んでいたはやてが話に介入してきた。 「・・・・・・実はまだ非公開なんやけどな、この前ガジェットについての報告書が回ってきたんや」 元々物理メディアだったらしい。ホロディスプレイに表示される報告書の表紙。提供は地上部隊・技術開発研究所。しかし表紙には『SECRET(シークレット)』の印が押されている。 「・・・・・・これって僕が見てもいいのかな?」 ユーノが戸惑いながらはやてに聞く。SECRET(機密)の印が押されている書類は規定では管理局の佐官以上でなければ閲覧すらできない。 フェイトですら一等海尉なのに、管理局員でもない民間人に見せていいものではないはずだった。 「大丈夫や、問題あらへん。どうせもうすぐ公開される。・・・・・・でや、まずこの動力機関なんやけど、どうやら簡易化されたジュエルシードみたいなんや」 「「!!」」 「どうやら泥棒さんはジュエルシードの簡易量産に成功したみたいやな」 ホロディスプレイに映し出されているバッテリーに相当する部分の中枢は、ジュエルシードに間違いなかった。 「でも悲観することはあらへん。これと同時にガジェットの製作者も判明した。それが現在、違法研究で広域指名手配されているこの男─────」 ホロディスプレイの画像が切り替わる。瞬間、フェイトの顔色が変わった。 「スカリエッティ!?」 「ん?フェイトは知ってるの?」 ユーノが問う。 「うん。なのはが次元航行部隊、機動課(ロストロギア探索を主な任務にする部隊)に協力していた5年前に。その時、なのはとヴィータ、それと私で彼の秘密基地を強襲したの───── ────────── フェイトは何十体目になるだろう魔導兵器をバルディシュで一閃のもとに葬ると、周囲を見渡す。 周りには太古の遺跡があり、岩でできた建造物が朽ちている。 またすでに魔導兵器の大半は撃破されて、雪の積もる大地に遺跡同様構成部品をさらしていた。 「ヴィータちゃん!」 「おうよ!」 「「これでラストォォ!!」」 上空からのヴィータの魔力球が敵を囲むように着弾。追い詰められて集まった敵を、続くなのはの砲撃で全て葬った。 「ナイスショット。2人とも!」 フェイトの掛け声に、なのはとヴィータはハイタッチした。 (*) 「さて、ここが入り口だね」 フェイトの撫でたその扉は鋼鉄製で、なのはの砲撃でもなかなか破れそうにない程に頑丈だった。 しかし押しても引いてもダメ。無論スライドさせることもできず、開けられなかった。当然だが鍵がかかっているようだ。 「『鍵開け』するから、2人は周りの警戒をお願い」 「うん、お願いね。フェイトちゃん」 「周りは任せときな」 ヴィータとなのははそれぞれ別方向に飛んでいった。フェイトはそれを見送ると高ランク魔法である『鍵開け』を実行する。 この魔法は電子ロックから物理的な鍵までほぼすべての鍵に有効だが、時間がかかるのが難点だった。 フェイトが動けないそんな時、それは起こった。 「なのは!後ろ!」 「え・・・・・・!?」 ヴィータの警告に振り返るなのは。彼女はその半透明の何かを見切ると間一髪で回避。空に退避する。 そしてそれはヴィータの放った鉄球によって大破、沈黙した。 しかし姿を晒したそれが足の付いた地上型だったことや、それが撃破された安心感でなのはは1つの可能性を見逃していた。 『地上型がいるなら、理論上より簡単に姿を消せる航空型がいるかもしれない』と言うことを。 寸前で気づいたなのはは、優秀の一言に尽きる。そして普通の状態であれば問題なく回避できたはずの攻撃。しかし溜まった疲労は彼女の回避行動を寸秒遅らせた。 「「なのはぁぁぁ!!」」 フェイトは確かに見た。空に浮かぶなのはの、小さな体を貫く刃を。 彼女の赤い鮮血によって目視出来るようになった鋭い刃はまるで悪意の塊が友人の体から〝生えた〟ように見えた。 それは人間ならば絶対傷ついてはならない器官の納まっている胸の真ん中から生えていた。 次の瞬間には彼女の体は5メートルほど落下。その衝撃は雪が受け止めるが、ドクドクと怖いほど流れ出る鮮血が雪を染めた。 力なく横たわる大親友の姿と半泣き顔になって彼女に駆け寄るヴィータの姿がぼやけていく。 目の前の光景に現実感が失せていき、いつの間にか視界はブラックアウトしていた。 ────────── 「そんなことがあったんだ・・・・・・」 ユーノが呟く。 この案件は『TOP SECRET(最高機密)』とされていて、彼女の経歴を見てもその事実は確認できず、半年近い入院期間は『持病の悪化に伴う病養』となっている。 そのため家族など極めて親しい者しかこの事実を知らなかった。 だがここで1つ疑問が浮かぶ。 『なぜたった1人の撃墜をそうまでして隠さねばならないか?』という疑問が。 実はすでに流星の如く突然現れ『エース・オブ・エース』という二つ名で呼ばれていたなのはは世間一般に知られ、ヒーローとして祭り上げられていた。 事実それだけの実績もあったし、実力もあった。クラスSのリンカーコアを有しているいわゆる超キャリア組でも、たった14歳で一等空尉に登り詰めるのは容易ではない。 その頃のフェイトやはやてですら、両名とも地上部隊で三尉相当の階級であったことが比較としては適当だろう。(しかし断じて2人が無能な訳ではない。フェイトの所属する本局は事件が少なく、1発が大きい。はやては上級士官を目指し、ミッドチルダ防衛アカデミーの学徒となっていたためだ) そんな出世街道まっしぐらで国民的人気を誇る彼女が撃墜され、瀕死の重傷を負ったのだ。 それがどんな理由であれ公表されれば、管理局全体の士気と信用に関わる。こうなると管理局としては隠さざるをえなかった。 「そう。なのはは今でこそ元気に振る舞ってるけど、一時は「二度と歩けないんじゃないか」って言われて・・・・・・」 俯くフェイト。その背中からは、なのはを撃墜したスカリエッティに対する負のオーラが立ち昇っていた。 「それにあいつは母さんの─────プレシア母さんの研究を続けているらしくて、それがわたしには許せないんだ」 フェイトの母であるプレシア・テスタロッサは、かつては管理局の大魔導士として日夜研究を続けていた。 しかしある日、彼女の実の娘であるアリシアを事故で亡くしてしまった。そこで悲しみに暮れた彼女が手を出したのが禁忌の技術として知られる全身のクローン技術と人造魔導士技術だった。 こうして誕生したアリシアのクローン、それが彼女『フェイト』だ。しかし結局プレシアには受け入れてもらえず、とても悲しい思いをしていた。 「・・・・・・まぁ、とりあえずガジェットの製作者はそのスカリエッティや。ゴーストは第25未確認世界の元の設計から反応エンジンを主機に据えた独自のものらしい。「使われてるオーバーテクノロジーと設計が管理局から漏れたのか?」って揉めてるみたいやけど、当面六課はスカリエッティの線で追っていく。だからユーノくんは無限書庫で関連しそうな情報を調べて欲しいんや」 (そうか。わざわざ機密を聞かせたのはそういうことか) ユーノは納得すると、その依頼を引き受けた。そこに1人の女性が喫茶店の入り口に現れた。 「あ、なのは・・・・・・」 「久しぶりぃ~ユーノくん、元気だった?」 その笑顔に一点の曇りなく、さっきのフェイトの話が嘘だ。という錯覚をおぼえた。 「あ、なのは丁度よかった。これから交代しに行こうと思ってたところなんだけど、交代できる?」 「うん。フォワードの4人は調査隊と陸士さん達の手伝いに行ってるから見てきてあげて」 「わかった。はやても行こう」 「了解や。じゃあお2人さん、〝ごゆっくり〟ぃ〜」 はやてはそう意味ありげに言って外に出ていった。 (はやてここでそのセリフじゃ気まずいよ~!) こころの中で涙声になってしまう。 2人っきりの現状でそのセリフを吐かれては、どうしても彼女を意識してしまうではないか! それについさっきまでその彼女の話をしていたのだ そうでなくとも相手は意中の女性であるというのに・・・・・・ その想いを本人はともかく、周囲に隠し果せているつもりの青年は 「いってらっしゃ~い」 と見送るなのはに視線を向ける。―――――と同時に彼女が振り返った。 「本当に久しぶりだね!ユーノくん!」 「う、うん・・・・・・」 (ダメだ!まともに顔見られない~!) しかしいつまでもこうしているわけにもいかない。相手がいつも通り接して来てくれている以上、こちらもそれに応えなくては嘘だ。 ユーノは何とか自分に言い聞かせながら顔を上げる。 するとどうだろう?なのはもこちらの事を直視しているなどということはなかった 彼女は少し視線を逸らしつつ、頬を赤らめて口を開く。 「えっと・・・・・・今日は偶然、なのかな?」 (か、可愛い・・・・・・) ユーノはそんな幼なじみの仕草に無意識のうちに胸を高鳴らせていた。だがお互いに意識し合っていたらしいことがわかって反対に落ち着くことができた。 「うん。そうだと思う。聖王教会の騎士カリムからの直々の依頼でね」 カリムによれば、どうやらはやてが 「考古学者さんを探しているんだけど、いい人紹介してくれない?」 というカリムに自分を紹介したらしかった。 「それにオークションの鑑定も本命の1つなんだけど、騎士カリムはこの玉の調査を「どうしても」ってお願いされたんだ」 ユーノの手にはさっきフェイトが落下から救った紫色の水晶が乗せられていた。 (*) 所変わってはやてとフェイトの2人は出入り口の玄関で2人の人物と鉢合わせしていた。 「お、アルトくんにさくらちゃんやないか」 「よぉ。やっと見つけたぜ」 「なんや? 探しとったんか?」 はやての問いに、さくらが答える。 「はい。ちょっと今回の敵がどうも妙だったので、そちらはどうだったのかな?と思いまして」 「そっか・・・・・・実はこっちも妙な報告が上がって来ててな。立ち話もなんやし、もっかい喫茶店に行こうか。フェイトちゃんは外の方をよろしく」 ことの成り行きに戸惑うフェイト。なぜなら今あそこは───── 「・・・・・・それはいいんだけど、今喫茶店に行くのはちょっと・・・・・・」 「あ、そうや。なのはちゃんが─────」 「お、なのはもいるのか。丁度いい。頼みたいことがあったんだ」 スタスタ・・・・・・ 喫茶店に向かって歩いていく2人。それを見たはやては人生でそうない大ポカをしたことを悟った。 5日前にカリムにユーノを紹介したのも実は伏線だった。 カリムにその日 「ある〝物品〟の調査ができそうな人と、ホテル『アグスタ』のオークションで鑑定してくれる人を探しているのだけど、いい人知らない?」 と問われたはやては、迷わずユーノの名を出していた。 能力面になんの問題もなかったし、なにより都合がよかった。ユーノはなのはの撃墜事件以降お互い顔を合わせた事がない。 それはなのはが 「こんな姿を(彼に)見せて心配させたくない」 と言ったことにある。 またユーノも、以前地上本部ビルで偶然会った時、仕事の都合でなのはと全く会えないと嘆いていた。 そこではやてはお節介かもしれないがこんな方法をとったのだった。しかし───── (どないしよう!?2人をくっ付けるなんて簡単やと思っとったのに!) そう、このままアルト達が行けばせっかくの2人きりの雰囲気が台無しになる。 はやての頭はフルドライブ。脳内緊急国会を召集、急いで審議が始まった。 第1案、今すぐ呼び止める。 しかし野党の 「何か言い訳はあるのか?」 という反論と牛歩戦術によってタイムオーバー。廃案。 第2案、なのは達を通信で呼び出す。 衆議(直感)院は通過。しかし有識者(理性)会である参議院が 「それでは本末転倒ではないか!」 という理由で否決。衆議院での再可決は見送られ廃案。 第3案、本当のことを話す。 内閣は衆議院解散(思考停止)を盾にごり押し、参議院を通過させる。しかし肝心の衆議院の大多数が 「なんか嫌な予感がする・・・・・・」 と独特の理由で難色を示し、否決。廃案となった。 それによって脳内人格八神はやて内閣総理大臣は伝家の宝刀を行使。衆議院を解散した。 こうして思考停止に陥った〝はやて〟は、『これだから人間は何にも決まらんのや!』と自らの脳内人格(政治家)達を批判する。そして───── (ええい!もう、なるようになれ!) 彼女はついに最終手段である神頼みに入った。 (どうかお願いします。神様、仏様、夜神月様─────あれ?) しかし天はご都合主義(クリスマスも祝うし、正月には神社・お寺に参拝に行くため)で基本的に無信教の彼女を見捨てていなかったようだ。 なんとアルト達が乗ろうとしていたエレベーターになのはとユーノの2人が乗っていたのだ。 「あれ?どうしたんだ?喫茶店にいるんじゃなかったのか?」 「ああ、うん。そうなんだけど人がいっぱい来ちゃって、席が足りないみたいだったから出てきたの」 なのはのセリフを聞いた時、はやては神の存在を信じたという。 自分達が席を離れた時、まだ客は自分達しかいなかった。でなければ、公衆の場で堂々と機密情報の漏洩などやれるはずがない。当に神のみわざといえるピンポイントさだった。 「そうですか・・・・・・どうしましょうアルト隊長?機密もありますし、ここはまずいと思いますが・・・・・・」 「う~ん・・・・・・」 頭をもたげるアルト。胸をなでおろしていたはやては彼らに他の場所を提案した。 「じゃあヴァイスくんのヘリに行こう。あそこなら機密も保てるし、この人数でも十分や」 この案は即採用され、新人たちの所へ行くフェイト以外はヘリに向かった。 (*) 「―――――で、お前は誰なんだ?」 ヘリに入るとアルトは単刀直入にユーノに問うた。 「彼はユーノくん。私達の幼なじみで、管理局の情報庫である無限書庫の司書長をしてるの」 「なるほど。俺はフロンティア基地航空隊の早乙女アルトだ。ついこの前まで六課で世話になってたんだが、異動になってな。よろしく」 「こちらこそよろしくお願いします。・・・・・・ところでそちらの方は?」 ユーノがフロンティア基地航空隊のフライトジャケットを着た黒髪の少女を示す。 「彼女は俺の小隊の2番機を務める工藤さくら三尉だ」 「はじめまして、真宮寺・・・・・・いえ!工藤さくらです」 なぜかは知らないが彼女がいつも使う偽名を名乗ろうとしたが、アルトが先に紹介してしまったことに気づいたのか軌道修正した。 一方ユーノはなぜか『なるほど』という顔になった。 「はじめまして。やはりあなたがあの〝工藤家〟の当主になられたさくらさんですね。騎士カリムからお話は伺っております」 ユーノがおずおずと頭を下げる。 「そんな、頭をお上げになってください。あたしそんなたいそうな者ではありません。ただ工藤家に生まれてきただけの小娘ですよ」 (工藤家?あいつの家そんなに有名なのか?) しかし周りを見ると六課のみんなも知っていたようだった。 そこでよく知っていそうなはやてに念話を送る。 『(すまん。水をさすようだが、工藤家ってなんだ?)』 『(・・・・・・なんや知らんかったんかいな。通りでさくらちゃんを普通に使ってると思った)』 すると彼女は懇切丁寧に説明してくれた。 工藤家とは100年前のミッドチルダ、ベルカ間の全面戦争を終わらせた者の末裔らしい。 元々聖王教会とはその彼らが作ったもので、伝承によれば今では主神として祭られている聖王の力を借りて戦争を終わらせた。 聖王は当時の核兵器や衛星軌道兵器、ベルカ側陣営による隕石の落下すら無力化し、この地に平和を呼び込んだという。 映像や写真すら残っていないが、小学校の教科書にすら載っているこの実績ある神を崇める者も少なくない。そのため聖王を使役した工藤家は代々神との対話役として大切にされていた。 そして工藤家は管理局の魔導士になることが伝統とされており、彼女をバルキリー隊へ推薦をしたのは聖王教会らしい。 さくらはこの工藤家の末裔で、両親が早くに事故で死んでしまっていた。 そのため聖王教会に所属する騎士カリムは工藤家最後の1人になってしまった彼女の身を案じているという寸法だったらしい。 また、あの偽名も工藤家という事を隠したかったのだろう。との事だった。 (育ちがいいとは思っていたが、まさか本物のお嬢様とはな・・・・・・) アルトは彼女のトレードマークである大きな赤いリボンで結わえた麗しい黒髪を見た。するとそれが右に流れていき、さっきまであった場所が少し赤く染まった肌色に変わった。彼女が振り返ったのだ。 「・・・・・・どうしました?」 「いや、なんでもない。それでな、はやて、こっちではゴーストの連中と交戦に入ったんだがいつもより動きが良かったんだ。ここまでは聞いてるか?」 「うん、シャマルから報告は受けとるよ。なんでも賢くなったとか」 「そうだ。それでうちの3番機が早まって特攻しやがった。そしたら奴らどう対応したと思う?」 アルトの問いかけになのはが 「普通に考えたら迎撃だと思うけど、違ったの?」 と問い返す。 「違うんだよ。アイツらギリギリまで逃げて、激突寸前に自爆しやがったんだ。お陰でバカなまねした3番機は無事だったんだが、どうも解せねぇ」 「なるほど・・・・・・」 はやては腕組みしながら自らの考えを更に補強した。 今回ガジェット達を操作した召喚士は、本気で人死(ひとじ)にが出ることを恐れているらしい。 でなければ無人機とはいえ〝タダ〟ではないはずだ。トチ狂った敵のために自爆など、そうそうできることではない。 「聞いた話によればそっちも何かあったみたいだが、何があったんだ?」 アルトの問いに、はやてはガジェットの非殺傷設定と戦闘員への選択的攻撃について話す。 「─────と、こういう訳で陸士部隊の被害が少ないのや」 はやてはヘリの窓から近くに設営されている野戦病院を指さす。 確かにそこにいる陸士達はいずれも軽傷で、陸士部隊の救急搬送用のドクターヘリも駐機したまま、飛び立つ様子はなかった。 「でもおかしいよ。目的がわからない。こっちの被害がないんじゃ『本気を出せばこんなんなんだ!』って言いたい訳じゃなさそうだし・・・・・・」 ユーノの言に、なのはも 「そうだよね・・・・・・」 と同意する。 「やっぱり、シグナムが言っとった車上あらしが怪しいんかな・・・・・・」 はやての呟きに視線が集まる。 「どんな車上あらしだったの?」 「うん、実はな、人間じゃなくて召喚獣や使い魔らしいんや」 はやてはシグナムからの報告を全て話した。手法から撤退まで。ちなみにトラック自体は盗難車であることがわかっていた。 「この流れで行くとその召喚獣が本命っぽいね」 「でも、何を盗んだのかわからないのが困りますね」 「「う~ん・・・・・・」」 一同頭を捻るが、そこまでだ。 ホテル側やシャマルとシグナム、そしてAWACSに聞いてもそれ以上の情報はなかった。 こうなると、今後は調査隊の報告を待つしかなさそうだった。 (*) 「ところでアルトくん、なんかなのはちゃんに頼みごとがあったんやなかったか?」 「え? アルトくんどうしたの?」 考え込んでいたなのはがアルトに向き直る。 「ああ。それなんだがな、さくらがお前のところで1週間でいいから戦技教導してくれって言うんだ」 えっ!?となるなのはにさくらが畳み掛ける。 「お願いします!今日アルト隊長や天城さん─────僚機を守りきれなくて・・・・・・あたし、もっと強くなりたいんです!やる気はありますから、どうかお願いします!」 深々と頭を下げるさくらになのはは困った顔をした。 「え~、う~ん・・・・・・アルトくんやミシェル君には教えてもらえないの?」 「いえ、アルト隊長にもミシェル隊長にもよくしてもらっています。・・・・・・ただミシェル隊長は長距離スナイピングしか教えてくれないし、アルト隊長も主戦術が高速機動による撹乱と誘導弾との連携攻撃なので、あたしの特性に合わないんです。・・・・・・あっ、アルト隊長、全く役に立たないなんて言ってませんからね!」 あたふたしながら否定するさくらに、アルトは 「仕方ないさ。人それぞれの特性があるんだから」 と流した。 「そっか・・・・・・でも私はうちの新人達の面倒を見てあげなきゃいけないからなぁ・・・・・・さくらちゃんは何がやりたいの?」 「近・中距離での機動砲撃戦です。今日の戦いで、長距離からの援護狙撃という戦術に限界を感じたんです」 長距離からの狙撃にはどうしてもタイムラグが出てしまう。そこがスナイパーの腕の見せどころだったりするが、彼女には今が限界だった。 さくらの言った戦術はなのはの十八番とも言える戦術で、彼女が魔法を手にしてから10年間磨いてきた戦術機動だった。 「だったら1週間、なんて中途半端な期間はダメだね。さくらちゃん、3週間でも頑張れるかな?」 「はい!もちろんです!!」 さくらが嬉々として応える。なのはは頷くと、人指し指と中指を立てていわゆる〝ピース〟の動作をすると続ける。 「でも条件が2つ。まず1つ目に、アルトくんがさくらちゃんの面倒をみてあげること。わたし、魔導士としてのスキルしか教えられないから、それをバルキリー用に転換してあげないと」 アルトは仕方ないな。と肩をすくめる。 「2つ目に、どうしてもうちの新人の教導がメインになっちゃうから、教導は早朝と夕方ぐらいしかできないんだけど、それでもいい?」 「はい、構いません!お願いします!」 「うん、いい返事。明日の早朝には始めたいから、部隊に帰ったら荷物をまとめて、アルトくんと一緒においで」 「はい!ありがとうございます!」 さくらは最敬礼して言った。 これが地獄への入り口であった。 To be continue・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 試験駐屯を名目に機動六課に派遣されるサジタリウス小隊 しかし開始されたさくらの教導はあまりに――――― 次回マクロスなのは第21話「サジタリウス小隊の出張」 『なのはさんが、あんな人だったなんて・・・・・・』 ―――――――――― シレンヤ氏 第21話へ